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高田参考人 高田でございます。
私は、
番組向上委員会の
委員長というものをしておりまするが、本日は
向上委員会の
委員長としての
発言でなくて、
個人高田元三郎の
発言としてお聞き
取りを願いたいと思います。と申しまするのは、本日
放送小委員会に
参考人として出席するにあたりまして、
委員会にそのことをはかって、
委員会としての
意見をまとめてという手続をとりませんでしたから、したがいまして、
個人の
意見としてお聞き
取りを願いたいと思うのでございます。
そうは申しますものの、私はこの
向上委員会の
委員として、
番組問題をそういう見地から扱っておりまする
関係上、やはり最近、性あるいは
ポルノというようなものを扱う
番組が非常に多くなりまして、中には非常に問題とされるものが見受けられるということにつきまして、やはり
向上委員会として、どうしてもこの問題は閑却できない。これについて
委員会として十分検討して、とるべき
措置があったならば十分ひとつそれをとるということをやっております。したがいまして、本日私が申し上げたいことは、
向上委員会としてこの問題をどう見ているか、またどう扱っていくかということを中心に申し上げたいと思うのでございます。もちろん、性とか、
性道徳あるいはそういうような問題につきましても、これは
時代とともに
価値観が変わっていくと同じように、その問題に対する見方というものも、当然変わってまいるだろうと思うのでございます。私
どもが
子供のときには、むろん
全裸のいわゆる
裸体画というようなものは、いわば禁止されておるといったようた
状態であったわけでございますが、今日は美術館に参りましてもそういうことは全然なく、また
裸体を写した
写真などというものが、公然と世の中には行き渡っておる。それを見ても、人々も、昔われわれがそういうものに対して
感じたというような
感じも持たず、そういうものは別に問題としないというような
状態でございます。でありまするから、
テレビの
番組にそれを扱う場合にも、そういうものを一がいにやってはいかぬというようなことでわれわれは見ておりませんし、またそうであってはならぬと思う。ある程度そういうものをやってももう差しつかえないような
時代になったんじゃないかと思うのでございまするが、問題は、
テレビで扱う場合に、
番組をつくる
姿勢、あるいは
表現のしかた、さらにまた
放送結果の
影響というようなことを、十分考慮してやっておるかどうかというところに問題があるだろうと思う。
昨年以来、主として
民放各社の
番組の中に、いわゆる深夜
番組と申します、まあ十一時以後の
番組の中に、そういうものを扱う
番組が非常にふえてまいりまして、ことに私
どもが問題としましたのは、
内容を見るまでもなくて、その
番組のタイトル、
表題というようなものが非常に扇情的なものがある。どうもそのことだけでも、若い人に対してどうかと思うようなおそれをわれわれが感ずるようなものが多く、また
内容に至りましても、
テレビでこういうような
場面を扱っていいかどうかというようなことは、非常に問題でないかというふうに感ずるものが多々あったわけでございます。
むろん、
テレビのいわゆる
放送番組基準、
——テレビ番組には、NHKといわず
民放の
各社といわず、みな
放送番組基準というものが設けられまして、その
基準に従って、こういうものは
放送に出してはいかぬという限度がおのずから守られておらなければならぬわけでございますが、そういうことにつきましては、あるいは
全裸のものを露骨に出してはいかぬとか、非常に嫌悪の感を抱かせるような性行為の
表現というものは、これをやってはいかぬというようないろいろの
番組基準ができておる。しかし、それがはたして十分守られておるかどうかということが問題でございまして、露骨にこれに違反するということでないにしましても、やはり
基準すれすれのものが多い、あるいは
基準に必ずしも抵触しないまでも、さっき申し上げましたように、
放送した結果どういうような
影響、ことに年少の
人たちにどういうような
影響を与えるか、これはやはり
考えざるを得ないようなものが非常に多かったわけでございます。
向上委員会といたしましてもそういう点を非常に考慮しまして、現実に
番組を見、それから
委員の間でいろいろ
意見も戦わし、
一般の
世論も
向上委員会として集められるだけは集めて、その結果に基づいて、これは放置できない、やはり局のほうで自粛をしてもらう必要があるのじゃないかということで、
民放連の
会長あてに、昨年の十二月、
向上委員会委員長の名をもって、そういう点で一応
申し入れをしたわけでございます。それに対して、
民放連の
会長から私
どものほうに、
申し入れの御
趣旨はよくわかったから、
民間放送連盟としても
善処する、
各社でひとつ十分その
趣旨を体してやるようにしてもらうことにしたいというような
意味の返事をもらったわけなんでございます。
私
どもがそういう
申し入れをしたためにそういう
影響があったのかどうかわかりませんが、本年の初めから少なくとも二、三月ころまでは
——前には盛んに扇情的な
表題などが多かったのでございまするが、そういうことが少しなくなったような気がいたしまして、多少の
効果はあったんじゃないかと思っておりましたところが、またこの四月ごろから、御
承知のように新しい
番組ができて、それが以前にも増してかえって激しくなるというような
傾向が見られたわけでございます。いろいろの
方法をもって
局側のほうと懇談して、われわれはしよっちゅうそういう点について、われわれの
考えを
局側のほうに伝えて
善処してもらうというような
方法をたびたびとっておりました。すでにそういう
番組を比較的多くやっておるというような社に対しましては、
委員会のほうから
委員がその社に出向きまして、
社長以下
首脳部と懇談してわれわれの
考えを申し上げて、
局側の
善処を求めたというようなこともございます。さらに、四月になりましてからそういう
傾向がますます顕著になったということを
考えまして、
委員会としてはもう一応、正式に文書をもって
局側の
反省を促したらどうかということで、そういうような
措置もとったのでございます。これに対してまた
局側のほうからも、
委員会の
申し入れの
趣旨は十分了承する、適当な
改善方法を必ずとるというような御返事をいただいておるわけでございます。でありまするから、今後は多少そういうような
効果が期待できるんじゃないか、かように
考えております。
しかし、
先ほども申しましたとおり、これは
テレビでそういうようなことをやる、つまり、いわゆる
ポルノというものを、非常に露骨な
場面を
テレビ番組に乗せて、
一般家庭にそれを送り込むというところにやはり問題があるので、これは映画でありまするとか、あるいは
刊行物にそういうような
写真が載ったというのとさらにまた違った
意味があるというところに問題があるのでございまするが、これはやはり何らかの
方法をもって、そういうことをひとつやめてもらうということが望ましいのでございます。申し上げるまでもなく、これは法律をもって規制するというようなことはできないわけでございまするから、どうしてもやはり
局側の
善処にまつ以外にはないと思うのであります。結局、
番組基準というものがあって、これを十分よく守ってもらえるならばそういうことはないわけでございまするが、やはりそれが十分に守られておらぬというのが実情であろうと私は思うのです。
局側にいたしまするならば、やはり
視聴率というものがわれわれにとって一番大事なんだ、
ポルノということをいっただけで
視聴率が非常に上がるのだという、どうも
局側は
経営というものを一番重く
考える
立場から申しますると、
視聴率の上がる
番組をやらなければならぬという宿命的なものがあるのだというようなことを申しますが、しかし、はたして
視聴率が上がる、あるいは
経営効果が非常にあがるというようなことをするためには何をやってもかまわぬか、これは決してそういうわけのものではなかろうと思うのであります。結局、帰着するところは、これは
委員会でも私
どもいろいろ
方法をもって
局側のほうと懇談もし、
申し入れもしたりなんかしておりまするが、どうも
局側の
姿勢と申しまするか、態度と申しますか、ことに
経営首脳部あるいは
制作の
首脳部の
認識の問題に帰着するという結論を私
どもは持っておるわけでございます。さらに、これはいろいろの手段、
方法をもちまして、どうもやはり
局側の
制作首脳部あるいは社の
首脳部の
認識をひとつ正してもらうという以外にはないのではないかと思うのです。
私
どもは、最近ある
地方局の主脳と懇談したことがございまするが、この
地方局の主脳などは、やはり私
どもが言っているようなことを
考えておるのです。現にその局ばかりでなくて、その
地方に隣接する同じ
キー局につながった局の
首脳部と話し合って、その
番組審議会の名をもって、あるいは局の名をもって、その
キー局の
社長に厳重な
申し入れをして、そういう
番組はひとつやめてもらいたいというような
申し入れをしておるというようなことも聞いておるのであります。さらに、
効果がない場合には、もっと大規模なそういうような
番組審議会の
委員あるいは社として、
キー局の
社長にひとつ
申し入れをする、そういうようなことをやっておる。どれだけの
効果があるかわからぬが、
効果があるまでわれわれはやるつもりだというようなことをやっておりまするが、私は、これは非常に大きな
効果があるのではないかということで期待しておるわけでございます。これからわれわれがとるべき
方法としては、やはりそういうようなことが一つあるのです。やはり局の中にも現在その
キー局から送ってくるところの
番組そのものが好ましくない、あるいはそういうものはやめてもらいたいということを
考えている人が多いのでございまするから、こういうことの声を強く反映して、その
人たちと一緒になって
向上委員会としてもそういう声を強くして
経営首脳あるいは
制作首脳の
反省を促す、それ以外に
方法がないのではないかというふうに
考えておるわけでございます。でありまするから、
向上委員会としては、外からごらんになっておるとまことにやっておることが手ぬるいじゃないかというような御批判が必ず出るだろうと思うのでございます。しかし、われわれとしては、強権をもってこれをするとか、あるいはわれわれの申し出を
強制をして、まあ
強制力はないのでございまするが、これを
局側のほうにどうしてもやらせるというようなことはできない。やはり、
先ほど来申しますとおりに、良識によって結局
局側のほうの
姿勢を正すというようなことで、そういうものはもうやらぬようにするということでやってもらう以外にないと思うのでございます。そのために、ただいま申したような
方法をも
考えまして、できるだけ
局側の
反省を促し、
効果のあがるまでひとつそういうような
方法をいろいろ続けたい、かように
考えております。
御
参考にもなりませんが、それだけ私として申し上げたいと思います。ありがとうございました。(拍手)