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1972-06-08 第68回国会 衆議院 逓信委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月八日(木曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 高橋清一郎君    理事 内海 英男君 理事 加藤常太郎君    理事 古川 丈吉君 理事 本名  武君    理事 水野  清君 理事 古川 喜一君    理事 中野  明君 理事 栗山 礼行君       池田 清志君    宇田 國榮君       小渕 恵三君    亀岡 高夫君       佐藤 守良君    坪川 信三君       中村 拓道君    羽田  孜君       林  義郎君    森  喜朗君       阿部喜男君    武部  文君       米田 東吾君    樋上 新一君       池田 禎治君    土橋 一吉君  出席国務大臣         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君  出席政府委員         郵政政務次官  松山千惠子君         郵政大臣官房長 森田 行正君         郵政省貯金局長 石井多加三君         郵政省人事局長 北 雄一郎君  委員外出席者         大蔵省銀行局総         務課長     磯辺 律男君         農林省農政局参         事官      松元 威雄君         逓信委員会調査         室長      佐々木久雄委員の異動 六月八日  辞任         補欠選任   左藤  恵君     坪川 信三君     ————————————— 六月七日  郵便貯金法の一部を改正する法律案内閣提出  第一一三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  郵便貯金法の一部を改正する法律案内閣提出  第一一三号)      ————◇—————
  2. 高橋清一郎

    高橋委員長 これより会議を開きます。  郵便貯金法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。     —————————————     —————————————
  3. 高橋清一郎

    高橋委員長 まず、提案理由説明を聴取いたします。郵政大臣廣瀬正雄君。
  4. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 郵便貯金法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  郵便貯金は、簡易で確実な貯蓄制度として、一世紀にわたり国民大衆に親しまれ、利用されて今日に及んでおります。総貯金額は十兆円という膨大な金額となっておりますが、これもすべて国民の零細な貯金の積み重ねであり、しかもこの資金は全部財政投融資のための原資として社会公共資本の充実に寄与しているのであります。  ところで、一般国民が、ふだん入院、結婚などでまとまった資金が必要になった場合でも手軽に貸し付けを受ける道はほとんど閉ざされておりまして、せっかくのたくわえを不利な条件で払い戻す預金者が少なくありません。  わが国個人向け金融は諸外国に比べてきわめて不十分であります。特に小口生活資金の貸付は採算ベースに乗りにくいといったような事情もあり、超金融緩和期の今日にあっても、なお国民の要望にこたえるまでに至っていない実情にあります。  郵便貯金預金者小口資金貸し付けを行なうことは、一時の出費のために預金をおろすことなく安心して貯蓄を続けることができることとなり、ひいては、国民の健全な資産づくりに役立つものでありまして、郵便貯金にとって欠くべからざる制度であります。また、同時に国民福祉増進を第一義とする国の施策に沿うものであると考えます。  このような意味におきまして、本制度の創設につきましては、かねてから預金者はもちろん、各方面から熱心に要望されており、特に衆参両院におきましても、昭和三十七年度以降四回にわたってこの趣旨決議が行なわれております。  預金者貸し付け制度は、諸外国においても、郵便貯金でフランス、スウェーデンなど多数の国において行なわれており、また、西ドイツ、イタリアなど欧米のほとんどの国では公共団体等が営む貯蓄銀行で行なわれております。  わが国郵便貯金のようにただ預かるだけというのは、むしろ例外といえましょう。  次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。  第一は、郵便貯金預金者に対して、積み立て郵便貯金定額郵便貯金または定期郵便貯金担保として貸し付けを行なうこととしております。  第二は、貸し付け金額は、担保とした貯金貸し付け申し込みの日における現在高の九〇%相当額の範囲内で、その総額は預金者一人につき十万円を限度とすることとしております。  なお、貸し付け期間及び貸し付け利率郵政審議会に諮問した上、政令で定めることとしております。  第三は、貸し付け金弁済がないときは、担保とした貯金をもって貸し付け金弁済に充当することとしております。  第四は、この貸し付け制度新設に伴い、資金運用部資金法及び郵便貯金特別会計法について所要の改正を行なうこととしております。  なお、この法律案施行期日は、昭和四十八年一月一日といたしております。  以上がこの法律案提案理由であります。  何とぞ十分に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  5. 高橋清一郎

    高橋委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  6. 高橋清一郎

    高橋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阿部喜男君。
  7. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大臣にお伺いいたしますけれども郵便貯金預金者貸し付けをすることを目的とする郵便貯金法の一部改正については、かねてからその趣旨に賛同をしていたところでございますけれども新聞等報道するところによりますと、郵政大臣がこの預金者貸し付け制度を設けるために郵便貯金預金金利引き下げに同意をした。いわゆる裏取引が行なわれた、こういう報道がなされておるようでありまするが、そういう事実があったのかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  8. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 そういうような事実は全くございませんのでございまして、郵便貯金預金者貸し付けの問題は、本年の二月の当初ごろから私ども提唱してまいったわけでございますが、関係省庁間の意見の調整がすみやかにできなかったために、たいへん法律案の作成、国会提出がおそくなったわけでございます。時たまたま一方におきまして、経済情勢に伴って預貯金金利引き下げをしなければならないというような情勢になっているというようなことが世間にいわれておりますわけでございまして、時をたまたま同じくいたしましたものですから、そういうような誤解を生んだかと思いますし、またこの郵便貯金預金者貸し付け法案が作成されましたころに、ただいま御指摘のように、どこから出たか、そのニュースソースはわかりません、大体推測はいたしておりますわけでございますけれども、実に事実に相違したそのような報道新聞等に書かれたわけでございまして、まことに遺憾千万に思っておりますわけでございます。そのような取引をしたような事実は全くございませんことをはっきり申し上げておきます。
  9. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 庶民金融が、特に今回大臣発想で国内に伝えられてからというものは、国民の多数の方々が、私、新聞の切り抜きも持っておりますけれども、これに期待する声は非常に大きかったわけでございます。しかし、いまお話のありましたように、預金金利引き下げられるということになるならば、むしろ六千万を対象とする郵便貯金金利が下げられるくらいならば、庶民金融はつぶれてもしかたがないではないかという声もまた起こってきたことは周知の事実であります。しかし、何といっても大臣郵便貯金金利を決定する権限を持っておられるわけでございます。そこで、今日まで私ども新聞等報道で見た限りにおいては、いろいろな報道はされておりますけれども大臣決意には変わりがないように私ども推察しておるわけでございますが、今日なお大臣はこの庶民の零細なお金を預かる郵便貯金責任者として、郵便貯金金利引き下げについては断固最後まで反対をして、その所信を貫くお考えかどうか承りたいと思います。
  10. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 ただいま御質問郵便貯金金利引き下げに対する私の所信、これはきわめて重大な問題でございますから、はっきり私の所信を申し上げておきたいと思うのでございます。  私は郵便貯金銀行預金とは全く本質が違うものである、こういうように考えておるのでありまして、もうすでに阿部委員承知のように、郵便貯金はほとんど一〇〇%、九割九分六厘まで庶民大衆の粒々辛苦の結晶による零細な貯蓄の集積でございまして、いわば生活資金あるいは考え方によりましては消費者資金ということになりますわけで、きわめて貯蓄性の高い預金でありますわけでございますが、銀行預金のほうはそうではございませんで、その大半は法人つまり会社預金であります。したがって、その内容産業資金ということが言えると思うのでございまして、そういうわけで本質が非常に違うのでございます。  したがって、庶民生活資金であります郵便貯金は、ことに現下のように消費者物価が上昇しておるというようなときにあたりましては、金利引き下げるべきでないというように私は確信をいたしておるのであります。こういう見地から昨年の暮れ、公定歩合引き下げに伴って預貯金金利引き下げをしなければならないという連動性があるかのごとき説がおこなわれたわけでございますけれども、私は少なくとも郵便貯金の利子の引き下げには絶対に反対であるということを主張してまいりまして、現在に及んでおりますわけでございます。  しかし今回は、昨年暮れとはいささか事情が変わっておるということは知っておるわけでございまして、景気がまだ十分上がっていない。いろいろな方策を講じておりますけれども、浮揚しないというような状況でございますし、また外貨滞留が非常におびただしいのでございまして、その解消には大いに措置しなければならない、努力しなければならない。こういう状態が続けば円の再切り上げをしなければならないというような、まことに緊迫した状況にあると存じております。しかしながら、だからといって郵便貯金銀行預金と同様に引き下げなければならないとは私はいささかも考えていないわけでございまして、さきに申し上げましたように、郵便貯金銀行預金とは異質のものである、本質が違うという考え、つまり別個取り扱いをやるべきものと私は確信をいたしておりますわけでございます。  しからば、この際郵便貯金金利はどうしたらよいかという問題になるわけでございます。私もいろいろ考えておりますけれども、さらによく教えていただきたいという考えから、法律に基づきまして、ただいま御承知のように郵政審議会に御相談を申し上げておりますわけでございまして、その御答申を待っておるかっこうでございます。結論的に申しますれば、この郵便貯金銀行預金とは本質が違うものでございます。そして金利の問題は、庶民生活にきわめて大きな関係を持ったものでありますから、私も重大な決意を持って対処してまいりたい、こういうように考えておりますわけでございまして、どうかこの私の信念をひとつ御了承賜わりたい、かように考えておりますわけでございます。
  11. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大臣決意をお伺いしまして、率直にいって、しかしからあとは私は要らなかったと思うのです。初めだけでいいのですが、去年の暮れに大蔵当局公定歩合引き下げ等について発表をしたときにも、大臣庶民お金を預かる立場から強硬にその政策反対をされて、その後ことしの春ころだったと私は思うのですけれども大蔵大臣公定歩合引き下げなり預金金利引き下げについては、もうやらないということを一応言明されておったように思うのです。それだけに今回のこの金利引き下げなり公定歩合引き下げ考え方が、庶民金融関連をして出てきた。たまたま庶民金融の話が出たので、これを奇貨として大蔵当局国民大衆に負担を押しつけようとしておる、そういう感じ国民は免れないのです。先ほど御説明がございましたが、どうもいまの大臣お話では、経済情勢の変革に伴ってということでしたけれども、私は、昨年の十二月の見通しから今日までの日本経済見通しが、そう大きい変り方をしているとは思いません。しかも、その間一ぺん金利引き下げ公定歩合引き下げを打ち出した大蔵大臣が、途中でそれをやらないと言明しておったのに、最近に至ってこれをやるようになった。これは本来なら、大蔵大臣答弁を求むるのが筋だと思いますけれども大蔵大臣が見えておりませんので、大臣でわかっておったら、その間の事情を、庶民金融金利あるいは公定歩合引き下げ次元の違うものだということを、もう少し国民納得のいくように御説明願いたいのでございます。
  12. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 一般金利の問題につきましては、ただいま阿部委員指摘のように、何カ月くらい前であったかはっきり記憶いたしておりませんけれども、ついせんだってまでは、大蔵大臣は、金利引き下げ考えていないということを国会でも答弁されておったようでございますし、ことに日銀の総裁なんか、公定歩合引き下げ金利引き下げを急いでやる必要はないということを申しておったと私も記憶いたしておりますわけでございます。それが急に預貯金金利引き下げを方向づけるような形勢になりましたことは、これは対外関係OECD等に対する日本立場と申しますか、そういうような対外的な関係から、外貨が非常に滞留しておるという、これをすみやかに解消しなければならないというために、特に金利の問題を、従来の主張と変えて、新しい政策として打ち出すというようなことになったのじゃないか、私はかように考えておるのでございます。  あとの御質問は、ちょっと私、理解いたしにくうございますから、もう一回おっしゃっていただきたいと思います。
  13. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 冒頭申し上げましたように、いわゆる庶民金融郵便貯金金利引き下げは、次元の違うものだということが国民はなかなか納得がいかないわけです。取引された、庶民金融さえ出てこなかったならば、郵便貯金金利引き下げの話は出なかったのではないか、国民としてはこういう感じを持っておる。したがって、この二つの間には、そういう関連性があるのかないのかという点を、明らかにしてもらいたいということでございます。
  14. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 これは先刻お答えしましたように、やみ取引は全然ないというわけではございますが、関連性につきましては、私は、直接関係はないというふうに考えております。  庶民金融の問題は、先刻、私の発想ということで非常におほめいただいたのでございますけれども、これは必ずしもさようではないのでありまして、昭和三十七年のころから、四回にわたりまして衆参両院において、今回私どもが打ち出しておりますいわゆる庶民金融、簡便に庶民金融と申しますが、その庶民金融という制度は創設すべきである、そういうものは検討すべきだという国会の御決議をいただいております。それに基づきまして、ときあたかも国民福祉増進のおりからでもございますから、特に強調して世間に訴えたわけでございまして、御承知のように、ただいま政府提案というかっこうで御審議を願うことになっておりますわけでございます。これは、実は政府提案になりますまでには、いろいろ紆余曲折があったわけでございまして、その間国会議員方々議員のサイドにおきまして、これは与党も野党もこぞって推進していたのでありまして、それが実って今回やっと政府提案ということになったわけでございます。実質与野党共同提案であるというようなことを申しても差しつかえない。私どもはそのことを最も希望しておったのでございますが、何かの都合で政府提案という形にしなければならないということになったわけでございまして、この点はむしろ恐縮に存じておりまするわけでございます。また、ここまでこぎつけてくださった御協力に対しましては、ほんとうに感謝を申し上げておるわけでございますが、関係はない、以前からの別個の独立した制度の問題である、こういうように考えておりますわけでございます。
  15. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 よくわかりました。それでは第一点目の質問につきましては、庶民金融郵便貯金金利引き下げ関係のないものである。したがって、大臣は、本来の御決意のとおり、不退転の決意をもって、郵便貯金金利引き下げはやらないという方向で努力をされる、そのように私は理解をいたしますが、よろしゅうございますか。
  16. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 郵便貯金銀行預金とは異質のものであるという立場をとって、重大な決意をもって進みたい、かように考えておりますわけでございます。
  17. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それでは次の質問に移りますが、いま法案をいただきましてまだ十分読んでいませんから、十分な内容になるかどうかわかりませんが、まず、六十五条を読んでみますと、「一の預金者ごとに十万円を超えてはならない。」ということで、十万円という限度法律できめられておるようでございます。今日の経済事情から考えますと、十万円というのは、私は非常に少ないような気がいたします。特に、十万円預金している人も、十一万円預金している人も、十万円借りることになりましょうが、五十万円預金のある人も十万円、百万円預金のある人も十万円、これでは少し預金者の側にとって不都合ではないか。たとえば五十万円あれば二十万円はお貸しできるとか、あるいは百万円以上であれば三十万円を限度としてお貸しできるとか、そういう段階を設けなければ、預金者立場からしても、十万貯金している人も、百万貯金している人も同じ十万しか借りられないということはきわめて不合理である。その十万がかなり効果のあるものならば別として、今日の経済情勢では、巷間伝えられるように、十万では必ずしも十分な役割りを果たせないのじゃないか。下は幾ら低くてもけっこうですが、いわゆる上の限度が設けられておるわけですから、その点については段階を設けて、二十万、三十万というようなものをつくるべきじゃないかという気がいたします。特にこの法案でこれを政令、省令に委任せずに、法律上明文化したところに問題があるような気がしますが、どういうお考えでしょうか。
  18. 石井多加三

    石井政府委員 お答えいたします。貸し付け限度を一人当たり十万円といたしましたことにつきましては、貸し付け資金ワクの中でできるだけ幅広く、たくさんの預金者の方に御利用いただけるようにするということが一つの目的でございましたし、また利用者一人当たり定額貯金は、私たちの持っておる数字でいいますと大体十四万円が平均でありますので、そのことを考慮いたしましたことと、生活資金貸し付けということが今回の課題でございますので、一般に行なわれておる町のサラリーマン金融等貸し付けの実績を見ましても、平均四、五万円でありますとか、多くて十万円程度貸し付けられておるというふうな実態等考えまして、十万円という限度を設けたわけでございます。  また、これを法律にいたしましたことにつきましては、小口生活資金貸し付けであるということを法律で明確にする必要があるというふうに考えたからでございます。
  19. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 平均が十四万程度だからということのようでございますけれども、しかし、貸し付けを受けるのは個々方々でございます。個々方々がそれぞれに持つ預金というのは、それぞれ違うわけでございますが、私は、下は二万でも三万でもけっこうだと思うのです。しかし、五十万の預金のある人も十万しか借りることができない、それから百万の預金のある人も十万しか借りることができない、そうなってくると、預金者立場からするならば不合理ではないか、そういう感じを持たないだろうか。これが第一点目。  それから二点目は、資金の運転上、資金そのものワクがあるから、より多くの方々にというお話のようでございますけれども、しかし先般、一番最初郵政省が試案としてだか何か知らぬけれども発表されたときには、私は三十万円であったというふうに記憶いたしております。三十万円で計画をされたものが十万円に減るというところにも問題があるようで、それでは最初の三十万という計画はきわめてずさんな数字であったのか、三十万で計画が立てられたものならば、今日それを十万に減さなければならない理由はないのではないか、その点いかがでしょうか。
  20. 石井多加三

    石井政府委員 ただいま御指摘のとおり、確かに当初私たち考えました際には三十万円ということも検討いたしたわけでございます。ただ、その後実際の状況、先ほど申し上げましたような民間の実態等も調べましたし、三十万円という数字になりますと、日常生活生活資金という立場よりも、事業資金とでも申しますか、営業資金的なにおいもちょっと出てくるのではなかろうか。実際の生活ほんとう不時出費ということになりますと、せいぜい四、五万から十万程度でわれわれは用が足るのではないかということで考えたわけでございます。  なお、もちろん御指摘のように、貯金の実際の額は百五十万円までの限度でございますので、百万円、百五十万円いろいろの預金をなさっている方がありますけれども、こういった場合のような、不時出費ということになりますと、いま申し上げましたような趣旨で十万円程度で皆さん公平に限度を設けて、それで特に公平を失するということはないのではないかというふうに考えた次第でございます。
  21. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 少しこまかい質問になりますけれども、そうしますと、不時の場合に貸し付けを受けたいというような方々は、一人が十万円でございますから、したがって、一人の名義で二十万円貯金をするよりも、家族があるならば二人の名義で十万円ずつ貯金をしておけば、その場合には二十万円まで、というと語弊がありますが、少なくとも二十万に近い額までは借りることができる。そうすると、郵政省としてはことさらに取り扱いの口数がふえてくる。結果的には、世帯からいえば同じ結果をもたらすのにもかかわらず、単に煩瑣な手続が起こるだけの問題ではないでしょうか。どうでしょうか。
  22. 石井多加三

    石井政府委員 定額貯金の場合は何口でも持つことができるということになっておりますので、その限度額は百五十万円に押えておりますけれども、現実には一人当たり平均いたしますと二口程度持っておるというのが定額貯金実態でございます。いまおっしゃいましたように、今後の貸し付け制度新設に伴いまして、こういった場合の、不時出費のための貸し付けを受けるために、わざわざ預金者が自分の預金家族名義に分散するということもあり得ないこととは思いませんけれども、その場合はその場合で、われわれとしては別々の、個人預金者のそれぞれについて十万円の限度額でお貸しするということに応ずるつもりでございます。
  23. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 いまの局長答弁の中で、ちょっと気になるのが一つあったのですが、ここにいう「一の預金者ごとに十万円」というこの「一」は、一口という意味でございますか、一一人という意味でございますか。
  24. 石井多加三

    石井政府委員 ことば足らずでございましたが、これは一人十万円でございます。
  25. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そうすれば、いま貯金局長からお話のあった、一人が二口なり三口なり持っておったとしても、二十万円の定額預金を二口持っておったとしても、やはり借りるのは十万円しか借りられない。しかし、家族名義を分散をして、たとえば奥さんの名前でするとか、子供の名前預金をしておる場合には、それぞれについて貸し出しを受けることができる。しかし、日本の今日の家族構成状況からいうと、大体経済というものは家庭を中心に運営をされておる。そうなれば、いま申し上げましたように、一人が五十万預金しておる方に二十万貸すというのも、二十五万ずつ二口に分けて家族預金をしておって十万ずつ貸すというのも、理屈は同じにならないかということをお伺いしておるわけです。
  26. 石井多加三

    石井政府委員 私が申し上げましたのは、一人何口でもできる、また実際の平均は、定額貯金は二口平均になっておると申しましたのは、先ほど御質問の中にありましたように、郵便局の手数と申しますかは、分散して貯金が預けられることによってふえるのじゃないかという御質問でございましたので、現実にはそういったことはすでに行なわれておるという意味で申し上げたのでございまして、さように御了解いただきたいと思います。
  27. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 その点はわかりましたけれどもあとで申し上げた二点目の、御主人の名前一名で五十万貯金をしておる場合には、十万しか貸し出しを受けることができない、しかし、もし奥さんと二人の名義に分けておるならば、二十万円の貸し出しを受けることができる。そうするならば一人五十万の場合に二十万貸し出すのも、その家族に二口に分けて二十五万ずつ預金をして二十万を借りるのも、結果的には——今日の日本経済の家庭的構成といいますか、経済の構成といいますと、家庭を単位にして経済が運営されておる。その立場からするならば、五十万円の場合に二十万貸すのも、同じ家族が二口に分けて持っておって二十万貸すのも、理屈は同じではないか。だから十万という限度が非常に不合理なものになってこないかということをお伺いしておるわけです。
  28. 石井多加三

    石井政府委員 五十万の預金を持っておられる方に、三十万と二十万の二つの預金に分けられれば、それぞれ十万ずつお貸しできるわけでございますし、本人御自身がそういうふうに二口に分けましてもこれは十万円しかお貸しできませんが、家族に分散する場合は、これはおっしゃるとおりそれぞれ夫婦で十万ずつということもできるわけでございます。これは不公平と申しますか、十万円という限度は、そういったことよりも全般的に生活資金貸し付けということで設けました数字でございまして、先ほど申し上げましたように、資金限度がございますので、一人でも広くお貸ししたいということでございまして、この制度、十万円と設けましたために、いま御指摘のように預金者がわざわざ自己の名義預金家族に分散するというような傾向が出るといたしますと、これはわれわれとしては手間の上では困ることでございますが、この制度をいまのように設けます限りやむを得ないことではないかと考えておるわけでございます。
  29. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 くどいようですけれども日本経済というものは、家庭を中心にして動いておるということを考えなければなりません。個人個人でなくて、家庭が中心になって経済が動いておるわけです。したがって私は、一人の人間の名義で五十万貯金をしてあればそのときは二十万とか、百万の貯金があれば三十万——三十万の限度ならば三十万の限度でけっこうでしょう。そういうふうにすることも結果的には同じにならないか、いたずらに手数をふやすだけにならないかということをお伺いしておるわけなんですよ、どうでしょうかね。
  30. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 まあその辺のことについては、ただいま貯金局長から御答弁したとおりでございまして、ただいま御審議を願っております法律案のたてまえから申しますれば、答弁のとおりでございますけれども、とにかく私どもとしましては、これは庶民金融という制度が創設される、そのことに非常に重点を置いて提案をいたしておるわけでございまして、今後の運営におきまして、私は、阿部委員の御指摘のような、金額が十万ではあまりに少な過ぎる、もう少し増額をすべきだという御意見もよくわかるわけでございますが、将来の実態に応じて、法定事項でございますけれども、皆さん方の御協賛をいただきまして、国民の、庶民の要請に応じて将来改正をしていく必要があるのじゃなかろうか、こういうように考えておるわけでございます。
  31. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 十万に押えるということについて、私はあまり意味がないという気がしたものですから——いたずらに手数だけがふえるのじゃないか、十万円に押えてみても意味がないものだという気がしたから、あまり頭のよくない法律を、特にここに法文の中に入れておることについてどうだろうという気がしたので、これは将来の課題として検討してもらいたいと思います。  次に移らしてもらいたいと思いますが、六十六条で貸し付けの期間及び利率については、もちろん郵政審議会の答申を得ますけれども、「政令で定める。」こうなっております。したがって、郵政審議会の答申を得ないうちはなかなか答えにくい内容ではあろうと思いますけれども、しかし、この法律の中心になるところでございますから、いま当局でお考えになっておる期間並びに利率について、もし差しつかえなければ御発表願いたいと思います。
  32. 石井多加三

    石井政府委員 お答えいたします。まず今度の貸し付けの条件の中で、期間を幾らにするかという問題がございますけれども、これは私たち大体半年ということを予定しておるわけでございます。と申しますのは、郵便貯金預金者の大宗を占めるのはやはり勤労者階級でございますが、サラリーを受けられる関係で、夏冬大体二回のボーナスというのが一般的に出されておるようでございますし、農業の関係等でも、大体春秋二回の大きな収入が入るというふうなことも考えあわせまして、半年の期間であれば、かりに最高の十万円程度金額でありましても必ずお返しいただける機会が来るというふうなことも考えあわせまして、しかも、この半年というものは、借りかえを認めないということでやりたいというふうに考えております。  もう一点の貸し付けの利率の問題でございますけれども、これも郵政審議会で当然いろいろ御議論をいただきまして最終的な数字が出ることかと思いますけれども、私たち事務当局といたしまして試算をいたしますと、大体六%程度でお貸しできるのではなかろうかというふうに考えております。  多少ふえんさせていただきますと、現在郵便貯金のコストは、昭和四十五年度の実績でいいますと、六・二七という数字に相なっております。この六・二七の中で、これはすべての郵便貯金を含むわけでございますから、今度貸し付けの対象になりません通常貯金、これは御存じのように出し入れ自由でございまして、こまかいお金が出たり入ったりいたしますので、比較的コスト高になっております。この通常貯金を除きますと、その他の貯金はコストが六%程度になっておるということでございますので、六%の貸し付け利率でお貸しすれば、いわゆるコスト割れにはならないものであるというふうに考えておるわけでございます。  それから、なお条件の中で一番大きい問題の一つは、貸し付けワクの問題でございます。これは大蔵省その他関係各省との協議によって、これはもちろん政令ではございませんが、協議によって総ワクをきめる。大体一千億円程度を予定しまして、次年度以降は、貯金の新規増加額の一%程度を必要があれば加えていこう、そういうふうな考え方を特っております。  以上でございます。
  33. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 まず、第一点の貸し付け期間の問題ですけれども、サラリーマンの場合には年に二回のボーナスがあるという局長の御意見、私はそのままだと思います。しかし、農家にしても春秋二回収入があるというのは、少し認識を欠いておるように思うのです。今日、農家が春に一体何の収入があるだろうか。大体農家の収入は、米を主体にした場合には秋にしかないというふうに考えられるわけでございますけれども、そうなりますと、私は、サラリーマンの場合も含めて、六カ月というのはちょっと短いような気がします。たとえばサラリーマンが四月にお金が必要になった。六月にボーナスをもらって返せるものならば、それは二カ月くらい、そう無理をせぬでもどうでもなるだろうと思うのです。ある程度長期の必要がある場合にこの融資を受けることになるだろう。そう考えますと、農家の場合も含めて、やはり最低一年は必要ではないか、そういう気がするのです。もちろん要らない人は早くお返しすればいいわけです。したがって、庶民の希望に沿うためには最低一年くらいを考えるべきじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  34. 石井多加三

    石井政府委員 期間の設定につきましては、いまの御議論もよくわかるわけでございますけれども、先ほど申し上げました資金の総ワクとの関係もございます。長くなりますと、これは貸し付け限度額を十万円と押えたことも関連がございますが、ボーナスその他、いまいろいろの御指摘ございましたけれども、その間のいろいろな御本人の努力によりまして、お返しいただける幅は大体半年じゃないかというふうに考えたわけでございます。これは一年というものが絶対に長過ぎるとかなんとかいうことは私たちも言えないと思いますけれども、一つは資金の回転を考えまして、一千億の金をできるだけ広く皆さんにお貸しするということも考慮いたしまして、いま六カ月という数字を申し上げたわけでございます。審議会において十分この辺御議論いただきたいと思うわけでございます。
  35. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それから二番目の貸し付け利率関係ですけれども、私ども若干郵政事業に関係をしておりましたから、貯金事業というものの仕組みはわかっております。しかし、先般ある団体が私のところに反対の陳情に参りまして、郵政省は、六・二五という数字を使いましたが、六・二五というコストが必要であるのに六%でお金を貸すということは、国がその間の逆ざやといいますか、六・二五%と六%との差を国が負担する。国が負担をしてまでお金を貸すというのはおかしいじゃないか、そういう話が出てきたのです。六・二五という数字がどこから出たのか、いまのお話は六・二七のようでございましたけれども、その辺についてはかりに六%と決定をするとするならば、それは決して国の負担で行なわれるものではない、郵便貯金事業の運営の努力の中で行なわれるものであるということについて、もう少し明らかにする必要があるのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  36. 石井多加三

    石井政府委員 貸し付け利率の決定につきましては、いろんな見方があろうかと思います。まず、現在行なわれております政府関係貸し付け、たとえば私たちの郵政省でやっております簡易保険の契約者貸し付け、あるいは国民金融公庫の恩給担保貸し付け利率、これはいずれも六%でございます。それから民間の金融機関、主として銀行等で同じような定期預金担保貸し付けを現在やっておるわけでございますが、その利率も、いろいろございますが、平均いたしますと大体六%というところになっておるようでございます。先ほど申し上げました郵便貯金のコスト、これは総体として申し上げますと、昭和四十五年度の決算の数字で六・二七%もいうことになっておるわけでございます。先ほど申し上げましたように、この六・二七%は全預金でございますから、その中から今度の貸し付け対象にならない通常貯金のコストを差っ引いて考えますと、六・〇六という数字になるわけでございます。つまり定額貯金、定期貯金、積み立て貯金、この三つの平均は六・〇六でございます。なお、この六・〇六%の数字の中から、実際にもし今度この制度がないといたしますと、貯金が一たん払い戻されるということになります。その新規の預入をかちとるためには預金吸収の経費を要するわけでございますけれども、今度の貸し付けの場合は、このおかげで払い戻されずに貯金としてそのお金が継続されることになりますので、その預金吸収のための経費が不要となるわけでございます。これを差っ引いて考えますと、六%を割る五・八一くらいの数字になるかと思います。したがいまして、郵便貯金事業の中で、いまの四十五年度の決算の数字で申します限り、六%でお貸しすることはコスト割れにはならないというふうに私たちは考えておるわけでございます。
  37. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大体資料による説明で、私もそういうふうに、六%でいけるのではないか。そうして私は可能な限りその利息は安いほうがいいと考えます。しかし、巷間伝えられるように、郵政省が六・二七も——ぼくは六・二五と聞いたのですけれども、六・二五ものコストのかかるものを六%で貸すのだ、その負担は国がするのだ、こういう意見が堂々と述べられておるわけですから、その点については行き違いのないように、十分利用者納得ができるようにひとつ宣伝をお願いしたいと思います。  その次に、貸し出し資金量の問題ですが、初年度一千億ということのようでございます。その一千億というのは、先ほど来のお話によると、十万円で六カ月というを基本にして考えた場合に、それで十分まかなえる総ワクなのか、あるいは一千億が限度であるから希望者が多くても期待に沿えないような状況が出てくるということを想定されるのか。どちらでございますか。
  38. 石井多加三

    石井政府委員 お答えいたします。いま一千億の数字をかりに期間を半年の期間で設定いたしますと六カ月になりますが、それがまた大体平均半分の三カ月くらいで回収していけるというふうに考えますと、一千億の金を四回転することができるわけでございますので、四千億という数字を一応頭に置いておるわけでございます。また実際の貸し付け限度額は十万円でございましても、町のサラリーマン金融その他の実態等から見まして、平均四、五万円をお借りになる方が非常に多いように聞いておりますので、かりに五万円といたしますと、四千億円を五万円で割りますと八百万件ということになるわけでございます。八百万件を、非常に大ざっぱに申し上げまして全国二万の郵便局で割って考えますと、一局平均が四百件ということになるわけでございまして、大きな郵便局も小さな郵便局もおしなべまして大体一日に一件から二件程度貸し付けを行ない得るということでございます。これが今度の預金者貸し付けとして実際に利用される方々の御要望にちょうどぴったり合っておって、多過ぎも少な過ぎもしないということを、私たちちょっといま予測することはできないのでございますけれども、かなり大幅に預金者の救済にはなるのではなかろうか。これによって、従来なら預金をおろしておられた方々が、一時のお金の立てかえは、この貸し付け制度を御利用になるということによって貯金が継続化し、御本人のためにも、また国の財投のためにもプラスになるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  39. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 かなり科学的な検討をされておるようでございます。そうしますと、私は一つ疑問が出るのです。まず一つは十万円というワクを設けた、一つは六カ月という期間を設定した。そうなりますと、これだけの規制があれば、それでもう一千億というようなワクを設ける必要がないのではないか。もし一千億を幾らかでもこえるからといって、しまいの方で急に必要になった方々に、その金融ができないとするならば、それは私は仏をつくって魂を入れない結果に終わると思うのです。したがって、科学的な分析に基づいて一千億というものを一応想定しながら、そこに十万円の限度を設け、六カ月の期間を設けたとするならば、その一千億を少々こえることがあっても、あるいは一千億に満たないことがあっても、少なくとも申し出のあったものについてはこれを全部受け入れてやる、融資をする、やはりそういう思想に立つベきで、もし資金限度を設けるならば、十万円とか六カ月というようなものは設ける必要はなかったんじゃないかと思いますし、私は十万円なり六カ月は、ある意味では、より多くの人に利用してもらう意味では意義があると思います。しかし、その総ワクが一千億で押えられることについて、私は非常に疑問があるのです。年の暮れになった、あるいは年度の終りになった、そこでたまたま郵政省の貸し出しが一千億になったから、あなたはたいへんお気の毒ですがもう貸せないというのでは、これは無理ですから、十万と六カ月の制限を設ける以上は貸し出し総ワクを設ける必要はない、そう思うのですが、どうでしょうか。
  40. 石井多加三

    石井政府委員 一千億の総ワクを設けますことは、今後の関係各省の話し合いでございますけれども、実際に、十万円で半年の期間の貸し付けというこの新しい制度がどの程度の御要望があるか、端的に申し上げまして私たちもいま十分その予測、見通しをつけることは困難な状況でございます。お説のように、あるいは一千億という限度を取っ払っても、そんなに資金の総需要が膨大になるということもないんじゃないかというようなお話もありましょうし、またあるいは限度の十万円ということも、そういう意味では必要じゃないんじゃないかという御議論にもなろうかと思いますけれども、この辺は実際にやってみまして、いろいろ実際の御要望がどの程度あるか見ないと、私たちも的確な判断はできないわけでございます。ただ、やはり今度の新しい貸し付け制度は、郵便貯金制度といたしまして初めてつくる制度でございまして、この制度ができます、こういった政府原案ができますまでにも、いろいろな方面から相当強い反対論もあったわけでございまして、非常に膨大な資金をこういう方面に預金者保護とはいえ使われるということにつきましてのいろいろな批判もございましたし、まあとにかく一千億で出発してみまして、あと実際にこれが足りないようであれば、その次の年度からは郵便貯金の伸びの中で一%程度をこれに加えていくということによって、かりに二兆円がふえるといたしますと、次の年度は千二百億、その次はまた千四百億というふうにふえていくわけでございますが、そのようなことによって国民の皆さま方の預金者の御要望に大体応じられるのじゃなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  41. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私は発想が逆だと思うのです。貯金局長としてもかなり科学的な根拠に基づいて数字をはじいておられます。したがって、大体一千億でまかなえるという見通しを立てて十万円の六カ月というものをおきめになったはずでございます。したがって、初年度はやってみて、どのくらいになるのかやってみた上で、これはどうにもならぬほどこのために資金が要るのだということになってくれば、そこで考えればいいのであって、先にワクをはめておいて、もう十万円、六カ月のワクははまっておるのですから、その上にまた総ワクをはめますと、これは運用上非常に大きな問題が出てくると思うのです。たとえばもし具体的に一千億というワクがきめられて希望者が非常に多くなった、そうすると郵便局は、あなたには貸す、あなたには貸さないという認定権を持つことになってくるのです。いままで市中の銀行が最も評判が悪いのは、預金をするときは頭を下げてくるけれども、貸し出しをするときは何か大名のところに行って土下座をするようなかっこうになる。これが利用者の声だったのです。いま一千億というワクを設けるとするならば、もし貸し付けの希望が多ければ、また利用者はそれに非常に不満を持ってくると思うのです。したがって私は、初年度についてはワクを設けるべきではない。やってみた上で、それが二千億も三千億も金が要るという結果になるならば、これは考えなければならぬかも装いけれども、しかし、本来庶民の金を預かった郵政省が、庶民の希望があるならば何も財投にだけ回さなければならぬという原則はどこにもないのですから、ほんとう庶民を保護する意味からいうならば、私は希望があるならばその希望に応ずべきである。そのために十万円と六カ月というワクをはめてあるのでしょう。だから、その上になお総ワクに制限を設けることは、これは運用上、利用者にとって非常に不都合が生ずるという気がするのですが、どうですか。
  42. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 その点は阿部委員の御指摘のとおりでございまして、せっかく庶民金融制度を創設して、かえってそのことによって資金が足らない、貸す人と貸さない人が出てくる、その間に、もし故意に貸し付け者を選定するというようなことにでもなりましたら、せっかくのこうした制度が全く怨嗟の的になるということを一番心配しておるわけでございまして、総ワクについてはおっしゃることもよく私どもわかっておるわけでございますけれども、何ぶん郵便貯金は御承知のように財政投融資の非常に大きな要素をなしておるわけでございまして、そういうような関係省庁との打ち合わせの関係もありまして、一千億ということをただいま予定いたしておるわけでございます。しかし、実際やってみまして、総ワクをそういうことに限定することによって非常に大きな支障を来たす、不都合を来たすということでございますれば、そうした実情に応じてまたさらに考えなければならないきわめて大きな点だと思っておるわけでございまして、一応事業の創設のためには、そういうこともやむを得ないということで考えてこういうことにいたしておるわけでございますから、将来最も大きな検討事項、改正事項といたしまして考えてまいりたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  43. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 貯金局長にお伺いしますけれども大臣お話はわかりましたが、具体的に一千億というワクを設けた場合に、一体どういう取り扱いをすることになりますか。毎月の取り扱いの量を定めるとか、半期ごとの量を定めるとか、そういうことになるのか、ずっと申し出があれば全部貸していって、最後に一千億に到達したところであとは一切金融をしないという打ち切りをするのか、どういう考え方を持っておられるわけですか。
  44. 石井多加三

    石井政府委員 貸し付け資金を初年度一千億円を予定しておりますけれども、これは当初、いまおっしゃいました後段のほうで進めたいと思います。つまり最初からどこは幾らというふうなワクを設けませんで、どんどん貸していきまして、ワクが一ぱいになりそうになりましたら、そこでこれをストップするというような形になろうかと思います。
  45. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それならば、各個人についてはあまり不満はないかもしれません。しかし、これはうそをいう結果になりますよ、もし希望者が多いと。おそらく預金をするときには、こういう制度がありますということを話をするでしょう。そういう制度を期待して預金をされた方が、その時期になって貸し出しを受けられないということになりますと、郵政省預金者をだました結果になりませんか。もう資金がなくなりましたからこれで終わりますということになるわけでしょう。私は、取り扱いとしてはそのほうがいいと思います。郵便局が認定権を持って、あなたには貸します、あなたには貸しませんということではこれはたいへんですから、申し込み順にずっと貸していくのがいいと思いますけれども、しかし結果的には、預金者については、資金がなくなりましたからこれでがまんを願いますといって、うそをいわなければならぬ、そういう結果になると思うのですが、どういうふうになりますか。大体年次の途中からでも、この辺で貸し出しができないようになりますということをテレビかなんかで宣伝をするとか、何かお考えですか。
  46. 石井多加三

    石井政府委員 実際の運営につきましては、貸し付けを受けられた方々がみんな半年の最高の期間をお借りになるとも思われませんし、また十万円で——先ほど五万円と申し上げましたけれども、あるいはもっと少なくなるかもしれませんし、いろいろ資金の回転をやりまして、できるだけたくさんの方々にこの制度を利用していただくようにわれわれつとめたいと思うわけでございます。  なお、そういうことをやりましても、なお、いまもおっしゃいましたような形で、郵便局に行きました場合に、もう資金ワクがないので貸し付けをお断わりするという場合も起こり得るわけでございますけれども、その場合でも、しばらく待っていただければ、前にお貸しした方が最高半年でお返しいただくわけでございますので、若干の期間をお待ちいただくことがありましても、また御要望に応じられるのではないかと考えております。
  47. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そういう理屈でいけば、もうワクを設ける必要はないではないかという逆論になってくるわけですね。どうも率直に言って、あなた方の計算には少し疑問があるのです。三十万貸し出しで二百億という計画を当初立てておったわけですが、今度は十万にはなったけれども一千億という計画でしょう。三十万貸し出しで二百億で足りるというような勘定をしておったのが、今度は十万円貸し出しで一千億というのでしょう。どうもあなた方の勘定が具体的に——さっき科学的なと申し上げましたけれどもほんとうに科学的な基礎に基づいておるのかどうか、非常に疑問を持つわけです。それだけに貸し出しを受けようとする国民にとってはたいへんな問題になってくるわけで、それを予定して預金をしておったのに貸し出しが受けられない。しかもこの一番いいところは、手軽にすぐ貸してもらえるということがあなた方のうたい文句じゃないですか。それを若干の期間待ってもらわなければならぬということになってくると、手軽はいいとしても、すぐには貸してもらえぬ。すぐ貸してもらえぬということは、手軽ではないということになってくるのです。そうすると、創設をした意味が非常に半減してくるという気がするのです。ここで一番いいのが預金の貸し出し総ワクを取っ払うことだ。あなた方がほんとうに科学的な根拠に基づいて数字をはじいてお持ちになっているとするならば、そう一千億を大きくオーバーすることはないはずです、そのために十万、六カ月ができたのですから。それならば、もう一千億というワクを取り払って、希望者には全部お貸しをする。その結果が八百億になるのか、千二百億になるのか、それはわかりませんけれども、そう大きい変動があるような数字をはじいておるとするならば、あなた方は何の仕事をしておったのかということになりますよ。そうでしょう。したがって、私は一千億を目途としてとかいうようなものならば、まだ幾らか理解ができます。私ども数字は自信があります、若干一千億を上回っても下回ってもその近所でとまります、とお答えになるならば、それでけっこうです。一千億という限度をはめてしまいますと、どうにもならぬ問題が起こってくるのですよ。その辺、どうですか。
  48. 石井多加三

    石井政府委員 一千億のワク考えました場合に、いずれにいたしましても限度額に達してお断わりしなければならぬということは起り得るわけでございまして、ただいま御指摘のように、総ワクを制限しないでお貸しすれば、そういった心配は一切ないということでございますが、私たち計算いたしました際に、定額貯金を中心に考えたわけでございますが、定額貯金の中で半年は据え置き期間でございます。この据え置き期間内に払い出しをいたしますと、半年たてば四・二五%の利率を適用されるわけでございますが、それがペナルティーと申しますか三%という低い利率で払い戻しをせざるを得なくなるわけでございます。その半年の期間の方々は、特に新しい貸し付け制度利用者であろうかと思いまして、この間の利用者方々は、総数の六割の方が今度の貸し付け制度を利用されるのではなかろうかというふうに考えまして、そのあと半年を過ぎました定額貯金の場合は、十年間預金ができるわけでございますが、その間の方々は大体一二%ばかりの方々が利用されるであろう。ちょうど先ほど私が申し上げました一千億円を四回転ということをいたしますと、大体そういう方々の御要望には応じ得られるというふうに逆に計算しておるわけでございます。  この計算が正確で絶対間違いないかどうかといわれますと、それはまさに推測でございますので、いろいろいまおっしゃいましたようなときにお断わりを申し上げるというようなことも起こり得るかと思いますけれども、できるだけそういうことのないように努力したいと思います。やむを得ない場合は、窓口にその旨を掲示いたしましてお客さまにお断わりを申し上げて、トラブルの起こらないように十分注意したいと考えておるわけであります。
  49. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私は専門家でありませんから、その数字の根拠については詳しくないのです。たとえば六カ月以上のものの貸し付けを受けるものが一二%とか、あるいは六カ月未満のものが六〇%とか、そういう数字は詳しくありませんけれども、少なくともあなた方が計算をされた十万円で六カ月、そして八百万人に貸し付けをするという計算でいくならば、一千億の資金が必要であろうというふうにお考えになったわけでしょう。したがって、その一千億というものは、それが十倍になってみたり、それが十分の一であったりするものではない。確かに利用者は相手ですから、ぴしゃっとした数字は出にくいでしょうけれども数字を扱っておるあなた方としては、大体一千億が必要であろうという計算をなさったのですから、狂いが出たとしても上に五百億とかあるいは下に二百億とか、その程度の狂いでしかないというのでなければ、数字が全く根拠のないものになるのです。数字というのはやはり根拠のあるものでなければならない。そうすると、一千億というところに限度を引いてしまうのは問題がある。全然取っ払うのが困難であったとしても、少なくとも一千億を目途とするとか、何かそこに一応の目標として、若干それが上回っても運用ができるような方法を講ずべきではないかというわけです。どうでしょうか。
  50. 石井多加三

    石井政府委員 その点につきましては、今度実施までの間に、関係各省でいまの一千億円の総ワクも含めて相談することになろうかと思います。御指摘の御趣旨はよくわかるわけでございますが、いろいろ関係方面との折衝もございますので、ただいまの御意見を体しましてよく話し合いをしたいと考えております。
  51. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 関係方面にばかり気をつかわぬで、貸し出しを受けるほう、国民のほうに目を向けて、国民が何を期待しているか。こういう制度をつくったことそれ自体が、あなた方は預金者の保護、預金者の利便ということを考えておつくりになったのですから、せっかくつくったのに、関係方面で仏つくって魂入れずということのないように、たとえ一千億が一千二百億になっても、この程度のことはやれる、数字にも自信があればやれるはずですから、その辺はこれから検討課題として十分に御努力願いたいと思います。  大蔵省、お見えになっていますね。大蔵省のお考えは、大臣に私は一度この前予算委員会の分科会でお伺いしたのですけれども、一九七二年三月十四日の「エコノミスト」に「エキサイトする庶民金融戦争」というのが出ておるわけです。これによりますと、庶民金融については大蔵省はまっこうから反対だというふうにずっと出ておるのですが、今日でもなお反対でございますか。
  52. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 お答えいたします。この郵便貯金法の一部改正法案が生まれ出るまでには、やはり関係各省でそれぞれの立場から大いに議論したことは事実でございます。しかし、そういった議論の過程を経まして政府提案をいたしました現在におきましては、そういった議論というのは全部関係各省間ですでに氷解いたしまして、意見の一致したところでこの法案が出ておるわけでございますから、大蔵省がこの法案反対ということは決してございません。
  53. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 われわれが聞く限りでは、当時大蔵大臣も私にあまり賛成でないということを述べておられたのです。ですから、会議録を見れば明らかですけれども、私は、大蔵大臣反対をしようとも、これだけ国民の要望のある庶民金融については議員立法でもつくりますよと言明したことがあるのです。したがって、少なくともことしの四月ごろまで大蔵大臣反対であったということは間違いないし、大蔵省も幾つかの理由をあげて反対をしておるようでございます。この「エコノミスト」の記事がうそだということになればこれは別ですけれども、これだけでなく、多くの新聞記事等を見ましても、ずっと大蔵省が反対を続けてきたようでございますが、いまおっしゃるように、政府としての方針がきまったわけですから、これ以上大蔵省としても反対するわけにいかぬでしょうが、そこでお伺いしたいのですが、これも新聞報道ですけれども、この問題が出たときに、特にこの郵便貯金は何か非常に優遇してあるので、百五十万円までの免税について一般金融機関と同じように申告をさせるべきである、そういう何か意見が出たように聞きましたが、そういうことございましたか。
  54. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 お答えいたします。この法案が生まれるまでにつきましては、各省間でいろいろ意見の交換があったことは事実でございます。また、現在の郵便貯金制度、それからまた民間金融機関との権衡の維持という意味におきまして、より一そう合理的に今後検討していこうというふうな考えを持っていることはまた事実でございます。
  55. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 だから私は、責任の持てる人を出席させてくださいと言うてある。銀行局長か理財局長が来てくださいと言ったら、何か参議院のほうに会議があって出られないということであった。責任持てますかと言ったら、責任持てますと大蔵省のほうから言うからあなたに来てもらったのですが、私の聞いておるのは、いろいろ議論があったことはだれが考えてもわかっております。いま私が具体的にお伺いしましたように、郵便貯金は百五十万円まで免税である、銀行預金についてはマル優の制度があって、百五十万円までは申告制度をとっている、したがって、郵便貯金についても申告制度をとらせるべきであるという意見があったかどうか、それを聞いておるのです。
  56. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 それは課税上のバランスをとる意味におきまして、どういった方法をとれば一番いいかということで、議論の途中におきましてはただいま阿部先生御指摘のように、百五十万円の限度というものを守るために申告したほうがいいのじゃないかとか、いろいろな意見が出たことは事実でございます。しかし、それはこの法案が出るまでに、やはり税制問題だけではなくて、金利の問題、それからいろいろな問題につきまして、いろいろな、そのときそのときに議論が出ましたので、そういった議論が出たことは事実でございますけれども、今回の郵貯法の法律案が出ましたときには、そういった問題、つまり申告制度をどうするというふうな問題についてはもう氷解しております。
  57. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 氷解したということですからけっこうですけれども、私はそういう大蔵省の発想がおかしいと思うんですよ。大蔵省は大体常に金融資本のほうばかりに目を向けて、銀行がどうかという、郵便貯金は補完的な金融機関であるとか、私は郵便貯金こそ国民の大衆のためには基本的な制度だと思っておるのです。したがって、百五十万円の預金総額があるわけですから、もし預金総額の限度百五十万円までを申告させようとするならば、同時に郵便貯金になぜ百五十万円という預入制限を設けるのか。民間と同じように無制限に貯金さしたらいいじゃないですか。その百五十万という総ワクの制限は設けておきながら、申告をさせるべきだとかハチの頭だとかいうのはおかしいじゃないですか、大体話が。だから私は責任の持てる人をと言ったのですが、これはどうですか。
  58. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 大蔵省がその申告のことを云々いたしましたというのは、決して郵便貯金の百五十万円の限度があるなしということではございませんで、巷間伝えられるところによりますと、まあこれはきわめて一部の不心得な人かと思いますけれども郵便貯金という形を借りまして、そこにいろいろと限度オーバーの預金をしておるとか、あるいは税務署のほうからの郵便局に対するそういった源泉監査であるとか、あるいは所得の調査等をいたしませんために、それを奇貨として郵便貯金に脱税資金預金しておるというふうなことを巷間聞くわけでございます。ですから、そういった不心得な人をやはりチェックする必要があるのじゃないか、決して郵便局のやり方が悪いという意味じゃございませんで、そういった不心得の脱税者を何とかチェックできないか、そういった観点で申し上げたわけでございまして、決して現在の郵貯制度の百五十万円の預金限度云々の問題については申し上げたわけではございません。
  59. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 あなた巷間のことをたいへん気にしておるようでございますけれども郵政省と話し合いをしてみて、そういう事実があるのかないのか。それは全然ないとは言えぬかもわかりません、人間のしておることですから。それは銀行のマル優だって私はずいぶんあると思いますよ、卒直に言って。郵便局だけじゃない。それを言うならば、特殊な例を取り上げるならば、銀行のマル優だって私はあると思うのです。特に郵政省の扱った郵便貯金のほうにそういう事例が多いとするならば、役所同士で話し合いをして、そういうことが起らないようにすべきであると思うのです。郵政省は、そういう問題について大蔵省が大きい疑惑を持たれておる、それをどう考えて一体どういう手を打っておるのですか。話し合いをしたことがあるのですか。
  60. 石井多加三

    石井政府委員 お答えいたします。昭和四十五年の三月に、いまお尋ねの問題につきまして、郵政省と大蔵省、所管といたしましては貯金局と主税局の間におきまして「郵便貯金の百五十万円の総額の制限規定の励行等について」という通達を流しまして、具体的に申し上げますと、架空名儀の預入の防止、総額制限の規定の励行、あるいはまたそれらを徹底するための名寄せの厳格化といったようなことを具体的に指示する通達を流したわけでございます。これはただいま話題に出ておりますような、郵便貯金によってそのような脱税をしておるような一部の不心得者があるということについて、これは郵政省といたしましても、現在の国営の郵便貯金機関といたしまして、そのような脱税の温床になるようなことはわれわれとしても避けなければならないというふうなことで、大蔵省と相談しましてこのような通達を流したわけでございます。いずれにいたしましてもそのようなことのないように郵政省としても協力しておるという現在の実情でございます。
  61. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 通達を流したということはわかりましたが、励行されておるかおらぬか。通達を出した以上はそれが励行されておるかおらぬかを当然把握されておるはずですから、どういうことになっていますか。
  62. 石井多加三

    石井政府委員 ただいま申し上げました四十五年度の数字でございますが、郵便貯金が総額制限を超過したものの件数がございます。四十五年度の実績で申し上げますと一万六千八百十二件、それから四十六年度におきましては一万五千九百七十一件、これはそれぞれの年度におきまして百五十万円の総額制限を超過いたしましたので、減額措置をとりました件数でございます。ちなみに金額で申し上げますと、制限超過額の金額で四十五年度は百九十一億円、四十六年度は百三十八億円、このような数字が出ております。
  63. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 郵政省はちゃんと通達を出して、その結果も把握をして、そういう不心得な脱税者がないように努力をしておるように私はいまの答弁からは受けられます。その通達は四月に出したのでしょう。四月にそういう通達が出ておるのに——あなた方大蔵省と話し合いをして出した通達でしょう。それにもかかわらず、大蔵省が百五十万円まで申告制度にすべきであるなどというのは、話し合いした郵政省は全然信用されておらぬということになる。大蔵省は郵政省を信用できぬから申告制度にすべきであるという意見が出てきたのですか。話し合いをして、通達を出して、その結果についてもちゃんと把握をして、不心得者についても厳重に取り締まっていくことになっておるのに、なおかつ脱税者があるかもしれぬから、申告制度にしろという御意見であったということですが、それでは、話し合いをしてみても、大蔵省は郵政省の言い分は信用できぬ、郵政省がしておることについては一向信頼ができないということですか。
  64. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 先ほど申しましたように、法案ができますときには、やはり各省間でいろいろと議論を戦わすことは事実でございますけれども、現在、法案をつくりました段階におきましては、決して法律案そのものに対して大蔵省のほうとして異議があるということはございません。  それからまた、いまの脱税云々の問題につきましても、郵政省のやり方が悪いとか、不徹底だとか、そういう意味では決してございませんで、これは先生御承知のように、やはり遺憾ながら納税思想というものが、必ずしも全国民的に見て、りっぱな人ばかりとは限らぬ。これは市中の金融機関につきましては、私たちは絶えず少額貯蓄の源泉監査をやるとか、あるいはまたそういった脱税資金が流れ込んでいないかということについて、絶えずいろいろな機会をとらえて監査あるいは調査いたしている段階でございます。ですから、郵便貯金につきましても、郵政省のやり方がまずいとかいう意味では決してございませんで、やはり数多くの郵便貯金者の中にはそういった人もおるではなかろうか。だから、民間の金融機関に対して源泉監査をやったり、あるいは脱税資金を追っていったりするのと同じように、納税者に対する公平という意味において、それをやってはどうかという意見が出たというだけでございまして、これは繰り返して申し上げますけれども、決して郵便局のやり方そのものにわれわれがとやかく申し上げたわけではございませんので、この点はどうか御理解いただきたい、かように考えております。
  65. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そうすれば、大蔵省のほうは、申告制度にすれば不心得な脱税者がなくなる、郵便局にそういう監査をさしておったのではそれはなくならない、やはりこういうことになりませんか、どうもあなたのお話を聞いておりますと。郵政省はおたくと話し合って通達も出し、その百五十万の限度をオーバーしないように十分監査もしながらそれをやらしておる、こうさっき郵政省のほうは答えておるのです。おたくのほうでは、申告制度でなければどうも脱税が出そうだ、不心得者がありそうだ、したがって、申告制度にするならば脱税はない、しかし、いまの郵政省の監査方式でいくならば、脱税がある、こう見ておるわけですか。役所同士で話し合ってみてもだめだということですかと、こう聞いておるのです。
  66. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 それは先ほど申しましたように、法律案ができるまでに、そういったいろいろな議論が出たということは事実でございますけれども、この法律案ができました段階においては、郵便貯金の申告制度を適用するというふうな問題はもう全部解決しております。
  67. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 だから私は責任のある人に来てくださいと言ったんです。この話を私はずっと新聞を追って見ていますが、この話が出たのは、さっきの四月ごろじゃないんです。もっとあと、五月になってから出ておるんです。郵便局のいわゆる脱税問題については、これは四月に始まったんじゃないですよ。もっと前から、大蔵省が郵政省を呼んで脱税についてやかましく言ったという記事があって、私はずっと前のこの委員会質問をして、郵政省にはとるべき措置ということをちゃんと話をしてあるのです。郵政省もそれに従ってその措置をとってきているはずなんですよ。しかるに、今日こつ然として百五十万の申告の問題が出てきたということは、郵政省のやっておることを信用していない、大蔵省が直接申告制度をとらなければ信用ができない、こういう思想があなた方にあるのじゃないか、こう聞いておるのです。これはあなたの発想かどうかわかりませんから、あなたばかり責めるのは酷だと思いますけれども、私はなぜそう言うかというと、この「エコノミスト」を見てごらんなさい。何と書いてある。大蔵省の役人が大蔵省は国家だと思っておるというんです。ちゃんと書いてある。こういう発想があるんだ。大蔵省は国家だ、大蔵省の言うことを聞かなければだめだ。私はこの「エコノミスト」をかなり信頼しておりますがね。これだけ非難をされるというのは、あなた方のものの考え方に——あなたを責めるのは酷だけれども、だから、私は責任者に来てもらいたいと言ったんだけれども、そういう思想が大蔵省にある。だから、いまのように、話し合いをして、郵政省としては通達も出して一生懸命努力しているのに、なに郵政のやることは信用できるか、申告制度にしなければだめだとか、そういうことをすぐあなた方は考え出す。きわめて不当じゃありませんか。法案段階でどうこうと言いますけれども法案段階で出てきたのでしょう、これは。脱税の問題はずっと前に出ておったのです。そうでしょう。だから、私はどうもそこのところは納得いかないのですが、これだけ議論しておってもしょうがないから、次にもう一点伺います。  巷間伝えられるところですけれども、いわゆる公定歩合引き下げをやって、あわせて長期の金利引き下げをやりたいという大蔵省の考え方があるようでございますけれども、これは法律案でございませんから、残念ながらわれわれ審議にタッチできませんが、そういう考えがあるならば、どういう内容のものかお聞かせを願いたいのです。
  68. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 お答えいたします。全般的に現在の日本金利水準を下げて、それによって現在の日本の景気のすみやかな回復をはかりたい、同時に、国際的に金利水準というもののバランスをとらなければ、今後さらにますます外貨というものがふえていくであろう、その結果、さらにまた円の切り上げという問題も起こりかねないというふうな観点から、現在国内の金利全般にわたりましてその引き下げをはかるべく努力しているということは事実でございます。したがいまして、公定歩合の問題につきましては、日本銀行総裁の決定することでございますので、私のほうから申し上げるのはいかがかと思いますけれども、これもまた巷間伝えられるところによりますと、一応日本銀行総裁は公定歩合引き下げを行なう、それによって、同時に金利水準の全般的な引き下げ金利体系のゆがみを是正していくというふうな考えを持っておる、そのことは事実でございます。それからまた、金利体系の全般的なゆがみをこの際是正していきたいということ、これは大蔵省としてもいま希望しておるわけでございます。  ただ、郵便貯金金利の問題につきましては、先ほど郵政大臣のほうからお答えがございましたように、現在郵政審議会のほうで御検討をいただいておるわけでございますので、私どもとしましては、その郵政審議会の推移というものを慎重に見守っておるという段階でございます。
  69. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 いわゆる銀行、特に日本銀行筋では、郵便預金金利引き下げがきまらなければ公定歩合引き下げをきめない、こういうふうなことをいっておるようでございますけれども、これは指導機関である大蔵省としては、少し主客が転倒しておりはせぬかという気が私はするわけです。あなた方は常に、私らは不満だけれども郵便貯金というのは金融機関の補完的なものであるということをおっしゃっておる。それならば、その主流をなす銀行筋が、公定歩合なり長期の金利引き下げを実施して、郵便貯金郵便貯金なりに独自の立場考えるべき筋のものだと思うのですけれども郵便貯金がどうなるかによって公定歩合引き下げとか長期の預金金利の問題を考えるというのは、主客転倒じゃないでしょうか、どうでしょうか。
  70. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 お答えいたします。私ども考えておりますのは、やはり金利というものは同じでなければならないという原則でございます。大蔵省の考えを申し上げますと、確かに庶民預貯金というものは郵便局にもいっておりますし、それからまた市中の金融機関、これは大銀行だけでなくて、相互銀行、信用金庫、信用組合、農業協同組合というほうにも流れておるわけでございまして、そういった中において、市中の金融機関の金利が下がればやはり郵便貯金金利も同じように下げてもらいたいというのが、大蔵省としての希望でございます。ただ、これは公定歩合だけを下げて一般の貸し出し金利引き下げをはかるというにはもう限界がございまして、この際公定歩合を下げて一般の貸し出し金利を一斉に下げていく、それから各種の資金コストを下げていくというためには、やはり一斉に金利水準そのものを下げていかなければならないというふうな観点に立って、いま検討をいたしておるのでございます。
  71. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私は、その専門的な日本経済の動きがわかるわけではございません。ございませんが、しかし景気を刺激するために、率直に言って、一番庶民大衆と呼ばれる方々の利用しておる郵便局の金利引き下げることによって景気の刺激を行なおうとするならば、大資本、大企業のために庶民を犠牲にするということになるような気が私はするのです。どうも大蔵省の考えは、大資本、大企業に有利でありさえすればかまわないじゃないか、庶民にどんなに犠牲をかけようとそれはかまわないという思想があなたの方の頭の中にあって、金利引き下げということが至上命令のように思われておるようですけれども、一方では、今度の国会で、外貨を減らすために、外貨を大資本に貸し付けて、その利子は全部国が補助するとか、そういうようなことも考えられておるようですが、そんな余ったお金があるのなら、何も国民から、零細な庶民金融の中から、さらに零細な郵便局の金利引き下げて犠牲にすることはないのじゃないでしょうか、どうでしょうか。
  72. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 お答えいたします。非常に大きな問題でございますので、どうも私から御答弁申し上げるには役不足なんで、その点についてはお許しいただきたいのでございますけれども、ただ金利を下げることによって、それで全部いわゆる預金者が一方的に奪われるというのではなくて、それによって、たとえばいろいろな庶民ローンの金利が下がるとか、あるいはいろんな公共料金の上昇というものに対して、それを引き下げる効果を持つとか、あるいは非常に成功いたしますと、公共料金そのものの引き下げにもつながってくるというふうなことがございますので、その預貯金金利を下げるということは、必ずしも国民大衆にとってマイナスだけではなくて、長い目で見れば、やはりそれが還元され、プラスになってくるのではないか、かように考えております。
  73. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 浅学ですから、私も詳しいことはわかりませんが、せんだってのある新聞によると、公定歩合が〇・五%引き下げられると、新日鉄は一兆円の借り入れがある、したがって、黙っておって年間五十億利子を払わなくて済むことになるという新聞報道がありました。しかし、新日鉄という会社が、一体郵便局なり銀行にどれだけの預金をしておるのでしょうか。それはあなたの理論から言うならば、そこに働いておる労働者の賃金は上がってくるだとかどうだとかという、その理屈は成り立つかもしれません。しかし、少なくともその五十億の犠牲になっておるのは庶民大衆じゃありませんか。金利引き下げることによって受くる被害が、新日鉄に五十億の利益をもたらす反面、庶民大衆はたまたま郵便局や農協や、そういうところに貯金をしておったばかりに損をした、こういう結果になってこないのでしょうか。私は、あまり詳しいことはわかりませんよ、専門でありませんから。しかし、あなたが言う、行く行くは公共料金もどうだとか、あるいは庶民大衆の利益にもなるという言い方をする前に、預金もしていないような大資本が寝ながらにして、何十億という利益になる。そうなるかならないか、大蔵省の計算はどうでしょうか。
  74. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 ただいま御指摘のございましたように、銀行、金融機関の借り入れの非常に大きい企業というのは、貸し出し金利が下がることによって金利負担がそれだけ少なくなるということは事実でございます。当面の問題としてはそういうことが起こるわけでございますけれども、またそれが結局は、長い目で見れば、回り回って、いろいろな物価の引き下げにつながってまいりますし、それから貸し出し金利引き下げ等は、単に企業だけでなくて、やはり今後の庶民ローンあるいは住宅を建てるための住宅金融、そういった金利引き下げにもつながってまいりますので、やはりその金利引き下げによるメリットというものは、国民全般がそれを受けるというふうになるのではなかろうかと考えております。
  75. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それで次に、少しお伺いしたいのですけれども、私は、もう少しいまの問題を議論したいのですが、かなり時間が過ぎましたし、しかもあなたでは率直に言って、国の政策にかかわる問題についてはっきりした答弁はできないと思いますから、また機会を改めてやりますけれども、私どもの感情から言うならば、——あなたは近視眼的なものの見方と言うかもわかりません。しかし、だれが一番大きい利益を受け、だれが犠牲になるか。どこかに損をする人がいなければ、どこかにもうかる人がいないことは間違いないでしょう。世の中の経済はそうでしょう。その原則に立って考えるならば、たとえばいま貸し出しが三十三兆といわれておりますけれども、そうすると、千六百億ですか、膨大なお金がこの金利引き下げ公定歩合引き下げによって浮いてくる。それはもうかる人間があれば、そのために損をする人間がある。だれがもうかるか、だれが損をするか、そこを原則に考えてもらわなければならない。このことをここでは特にあなたに申し上げておきます。  そこで、間もなく七月ですが、国債あるいは政府保証債を出すころになると思うのですけれども、国債並びに政府保証債についての金利関係はどういうふうに考えておられるのですか。
  76. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 ただいま大蔵省として考えておりますスケジュールは、公定歩合引き下げによりまして、短期の金利引き下げをやりますが、それと同時に、できましたら七月債から国債、政保債、地方債、事業債、金融債、そういったものを含めて一斉に引き下げをやっていきたい、かように考えております。
  77. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大蔵省の考えておる、特に国債とか政府保証債は大蔵省の所管ですから、大蔵省が考えておる金利引き下げ、保証債の利子の引き下げは何%ぐらいを考えておりますか。
  78. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 これはただいま検討中でございますが、やはり昨年の十月に一応そういった長期金利引き下げが行なわれました。本年の四月にまた再度その改定がございました。かりにことしの七月にやるとなりますと、この約半年ほどの間に長期金利の条件改定、金利引き下げを三回行なうかっこうになります。したがいまして、今回幾らというような詰めは、まだ十分できておりませんけれども、その半年の間の引き下げを見ますと、かなり大きな引き下げ幅になろうかと考えております。     〔委員長退席、内海(英)委員長代理着席〕
  79. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 これもまた巷間伝えられるところですから、確固たる根拠があるわけではありませんけれども、大体国債、政府保証債あるいは地方債等についての大蔵省の考えでは、表面金利を七%から六・五%に引き下げるのじゃなかろうか、公定歩合に見ならって〇・五%、こういうふうに聞いておりますが、その場合のいわゆる応募者の利回りはどのぐらい下がってくることになりますか。
  80. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 国債は現在十年ものが七%でございますけれども、これをかりにクーポンレートを六・五に引き下げますと、アンダーパーの発行をいたしますので、応募者利回りが必ずしも〇・五下がるというのじゃなくて、たとえば〇・三下げとかいうようなかっこうで、アンダーパーで調整して発行条件をきめる、そういうことになろうかと思いますが、ただ最終的にどの程度アンダーパーで発行するようになるか、これはまだきまっておりません。
  81. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大体計算でいくと、〇・二ないし〇・三、そういう数字になるのじゃないかというふうに考えられますけれども、国債、政府保証債の引き受けはどういうところが大きゅうございますか。一般方々がたくさん引き受けておられますか。企業とか金融機関がたくさん引き受けておられますか。
  82. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 本年度の国債について申しますと、一兆九千五百億の発行に対しまして、金融機関の引き受けが、ちょっと私、急なので手元にございませんが、約九割は、金融機関の引き受けでございます。
  83. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 わかりました。大体私がお伺いしたいことは、何回にもわたっておりますが、少なくとも日本のいわゆる経済の基本をなす金融機関が金利引き下げについていろいろ議論をされておる中で、この引き受けておる応募者利回りの利子の下がりは、大体〇・二ないし〇・三程度のものである、そういうふうに私は理解しておりますけれども、それでよろしゅうございますね。
  84. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 お答えいたします。七月債からの条件改定だけを考えますと、そういうことに相なりますけれども、昨年の十月以降の累計をいたしますと、これは〇・五以上にかなり大幅のものになることになります。
  85. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 最後に、ひとつ大臣に希望として申し上げて、大臣のお考えを承りたいのですけれども、るる討論しましたように、郵便貯金というものはあくまでも国民大衆の零細な貯金である。しかし、今日郵便貯金の事業の運営は、企業努力によってかなり業績は悪くはないようでございます。したがって、幾らかでも経営努力によって資金の余裕等が生ずるならば、それを国民全体に還元をするという意味で、社会福祉関係とか、あるいは公害等の対策に対する還元とか、そういう方面について、郵政省としても幾らかでも、経営努力によって余裕が生ずるならば、それは社会福祉の方面あるいは公害防止の方面等に振り向けるような施策を国民全体のためにお考えになっていただけないかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  86. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 その点につきましては、私どもも着眼いたしておりまして、将来の検討事項ということで、十分研究してまいりたい、こういうように思っております。
  87. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それでは大臣、最後にもう一点。  郵便貯金金利引き下げについては、ひとつ大臣決意をもって、庶民立場、大衆の立場預金者立場を守るということを確認しまして、私はこの質問を終わらしてもらいたいと思います。
  88. 内海英男

    ○内海(英)委員長代理 次に、中野明君。
  89. 中野明

    ○中野(明)委員 ただいま阿部委員からいろいろと金利引き下げというようなことについて議論がありましたが、私もこの問題につきましては、かねがね当委員会におきましても、再三にわたりまして大臣決意をお伺いしたわけであります。いろいろ伝えられているところによりますと、相当金利引き下げに対する圧力といいますか、大臣にいろいろの圧力が陰に陽にかかっているやに聞いておりますが、先ほどから大臣も、重大決意をもって臨むというような御答弁がありました。私ども庶民お金を預かっているところの郵便貯金金利引き下げは絶対反対であります。いま大蔵省と阿部委員との議論にもありましたように、公定歩合引き下げて、結局大企業擁護の姿勢がそのまま庶民大衆にしわ寄せになってくる、こういうことはとうてい認めることのできない問題でありまして、金利引き下げと交換条件にこの庶民金融法律が出てきたのだという巷間のうわさも、先ほど大臣はきっぱりと否定をなさいましたので、その大臣のことばを信用いたしておりますが、何といいましても郵便貯金の利子の引き下げ問題これが当面の課題になってくるのじゃなかろうかと思います。大臣の決心によってこの問題は左右される問題になっておりますので、私から申し上げるまでもなく、まじめに働いている人たち、こつこつ貯金をしている人たちの金利を犠牲にしてまで公定歩合の問題云々に協力する意味は、私は全然ないと思います。そういう意味で、大臣決意にすべてがかかっておりますので、そういう底辺におる零細な人たちの心を傷つけないように、大臣決意で乗り切ってもらいたいということを思うわけでありますが、重ねて大臣決意のほどを披瀝していただきたい、こう思います。
  90. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 現下の日本の諸情勢、つまり景気の浮揚が思うようにまいっておらない、また外貨がどんどん滞留している、それを何とか解消していかなければならない、こういう状態が続けば、円の再切り上げもやむを得ないというようなことに前提を置きまして、御指摘のように、郵便貯金の利子を含めて金利引き下げの要請が強くあっておりますことは事実でございますけれども、私といたしましては、郵便貯金本質におきまして銀行預金と違うのだという、その信念に基づきまして、先刻るるお答えいたしましたように、ただいま郵便貯金金利のあり方については、郵政審議会の御論議を願い、その答申をいただきたいと思っておりますが、ただいまおっしゃったような、郵便貯金庶民大衆のきわめて大切な、貯蓄性を持った生活資金預金の集積であるということを前提といたしまして、重大な決意をもって対処してまいりたい、こういうように思っております。
  91. 中野明

    ○中野(明)委員 大蔵省が見えておりますのでちょっとお伺いしておきたいのですが、日本の国の物価は、政府がいろいろと公約をしておるにかかわらないで、年々歳々上昇は目を見張る思いで、国民生活を非常に圧迫しておるわけであります。この物価がどんどん上昇しておるにもかかわらないで、わが国貯蓄率というのが非常に高い、このようにいわれておる、これについて大蔵省の皆さんがどういうふうに思っておられるのか。物価が上がっているのになぜ貯蓄率が高いのか、どういうお考えをお持ちになっているのか、御意見を聞きたいと思います。
  92. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 非常にむずかしい問題でございまして、私の考え答弁になりますかどうか、はなはだ自信ございませんけれども貯蓄がふえるということは、基本的には可処分所得がふえるということが前提かと思います。また現在の貯蓄動向調査等を見ますと、貯蓄をする動機というのは、やはり不時出費に備えるためであるとか、あるいは老後の蓄積のためであるとかいうふうなことがその貯蓄の大きな動機になっておると思います。かれこれ考えますと、一方においてはなるほど物価の上昇というのはございますけれども、同時に可処分所得が非常にふえてきておるということと、一方においてはやはり平生から、自分の不時出費に備えていく必要があるというふうな国民感情から、世界的にいいますと二〇%をこえるというふうなきわめて高い貯蓄率でございますけれども、そういった貯蓄の慣行がいま生まれておるのだろうと思います。
  93. 中野明

    ○中野(明)委員 いま日本人の大多数の人たちが、現在は確かに気づいてない人もあるかもしれませんけれども、一番心の底で不安を持っているのは、いまの御答弁にありましたように、不時出費家族の中で一人でもたいへんな病気になったときにはどうしようかという心配、もう一点は、いまもお話が出ておりました老後、社会情勢がこのようになってまいりますと、年を寄ってから子供に見放されたらどうしよう、そういう二つの不安、これが非常に大きな比重になって国民全体にのしかかっておることは事実でありまして、私ども考え方は、こういう大多数の皆さん方が人間として心配をしておるこの二つの問題を解決するのが政治の力である、このように信念を持っておるわけであります。ところが、現在のわが国の政治の状態は、残念ながらこの二つの問題については、先進国からいえばまだまだほど遠い現状でございます。そういうところから、結局国の政治が行き届いてない、そのために国民の皆さん方が自己防衛といいますか、やむにやまれず、自分のことは自分でする以外ないというところから、苦しい中から貯金をしている。その貯金がいわゆる郵便局に集まっている貯金内容の大多数だろう、私たちはこのように理解をしているわけであります。いわば国の政治の足りないところ、本来ならば国がやらなければならぬ、そういう社会保障の充実を怠っている、そのために貯蓄率が高いという一つの傾向となってもあらわれてきているんじゃなかろうか、このように見ている一人でございます。  そういうことから、あれこれ考えていきましたときに、とにかく公定歩合引き下げなければならないという考え方になって、大蔵大臣もかなりこの点については深刻に考えておられるようでありますけれども、その公定歩合引き下げ、これと、これを下げたことによってすぐに連動的に郵便貯金の利子まで引き下げよう、しかも、これは同時にやりたいというふうな考え方のようにも私たちは見えるわけでありますが、この点について、この両者の連動性公定歩合引き下げ預貯金金利引き下げ、それも、郵便貯金まで含めて同時にやりたい、こういうふうな考え方になっておられるのかどうか、そこら辺はどうでしょう。
  94. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 私は説明員でございますので、きわめて事実的に申し上げたいと思いますけれども、御承知のように、一昨年の十月から公定歩合、いままで五回の引き下げが行なわれました。近く第六回目の公定歩合引き下げをやろうという考えでいま進んでおるわけでございます。現在、過去五回にわたりまして公定歩合引き下げまして、なるほど市中の一般の約定金利というのは下がりました。下がりましたけれども、実は、これは私たちが期待し、また考えておるほど下がっていないというのも事実でございます。     〔内海(英)委員長代理退席、委員長着席〕 このたび第六回目の公定歩合のかなり大幅な引き下げをやりたいということでいま進んでおるわけでございますけれども、やはり公定歩合引き下げまして、ただ、それが公定歩合引き下げだけにとどまらず、それが約定金利引き下げということにつながってこなければその効果はないわけでございまして、その約定金利の実際の引き下げにつながってくるというためには、どうしても過去五回の経験にかんがみまして、金融機関の資金コストというものが、その金利引き下げの下ざさえにもうなりつつある、事実またなっているところもございます。そういうこともございますので、公定歩合引き下げを行ないまして、全般的な金利水準の低下をはかっていく、つまり景気に対して金利面からその上昇の刺激を与えていくためには、公定歩合引き下げ、それからそのコストの下ざさえになっておりますところの預貯金金利引き下げをやらなければその効果が出ないというのが、事務的に私たちの考えておるところでございます。  そういった意味で、現在預貯金金利引き下げということをお願いしておるという段階でございます。
  95. 中野明

    ○中野(明)委員 理屈の上でいえば、一応そういう理屈も成り立つんでしょうけれども、先ほど私が申し上げましたように、その貯金の性質、そしてまた百五十万円以下は免税点にしているという、そういう一つの趣旨から考えましても、すぐこれをそのまま連動させていくという考え方、ここには大きな疑問もありますし、議論のあるところでありまして、まあ、先ほどお断わりになられたように、あなた御自身ではこれ以上の答弁は無理だろうと私も思いますが、先ほどから議論が出ておりますように、相当国民全体の中にも、銀行はもうけ過ぎている、銀行はもうかっているんだという考え方、また事実そのとおりになっております。ですから、そういう辺も考えていきましたとき、いま公定歩合を下げて、銀行はそれだけで十分やっていけるのじゃないか、無理に預金の利子を下げなくたってやっていけるのじゃないかという意見もあります。そういうことも考えますと、もうけ過ぎている銀行の利益を、公定歩合引き下げたことによってすぐ預金の利子を下げて、銀行の利益をそのまま現状維持さしていくという考え方ではなしに、もうかっているところならば、しばらくの間でもやれるものかやれないものか、大体やれるという意見の人が相当多い、私はこのように見ております。そういう考え方も持てるのじゃないか、このような意見を持っておるわけであります。  それで、大臣は午後御用事があるようでありますので、できるだけ大臣関連してお尋ねしておきますが、五月十九日に、「郵便貯金預金者貸付制度について」、これは自民党の政調会長があっせんをされた、そういうことが新聞に報じられているわけでありますが、そのあっせんの中で、第二項目に、「わが国金利制度の実効を確保するために、必要な郵便貯金金利について、別途大蔵、郵政両省間で協議決定する。」このように書かれてあるわけでありますが、郵政大臣はこれをどのように受けとめておられるのか、あらためてお尋ねをしたいわけです。
  96. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 郵便貯金は、貯金法にもうたわれておりますように、国民大衆と申しますか、庶民と申しますか、そういう階層の経済的な利益を増進する、福祉を向上するというような、まあ庶民の保護をたてまえとするということになっておるわけでございますが、しかし、その金利の問題については、全般的な国の金利の水準、上がり下がりというようなことも配慮しなければならない、考慮に入れなくちゃならない。つまり、郵便貯金の利子につきましては、全般の金利と均衡を保たなくちゃならないという趣旨の条文が書かれておるわけでございます。そういう意味におきまして、従来もそうしてまいったのでございますが、金利の上げ下げ、郵便貯金金利の問題につきましては、そのつど関係の大蔵省と協議をいたしておるわけでございまして、最後の決定権はもちろん郵政大臣にありますわけでございますけれども、協議はそういう法律趣旨にのっとってやっておるわけでございます。またかたわら、郵政審議会の諮問に対する答申もいただくということになっております。そういうことに基づいて、最終的に郵政大臣が決定するということになるわけでございます。  今度、簡便に申しますと庶民金融、この制度の創設につきまして、自民党の政調会が調整、まああっせんの労をとりましたときに、そういう事項がございまして、「協議決定する」という文句がうたわれておるわけでございますが、これは従来も実行してまいりました。金利の問題については、十分大蔵大臣と協議するというように私は解釈いたしておるわけでございまして、最後の決定は、もちろん郵便貯金法に基づきまして郵政大臣がいたしますことは当然でございまして、郵政大臣金利決定権が大蔵大臣に移譲されたというような意味のものでないことは、先刻大蔵省のほうからも、総務課長から御答弁があったとおりでございまして、そういう意味の協議だと私どもは解釈いたしておりますわけでございます。
  97. 中野明

    ○中野(明)委員 いまの大臣の御答弁にありました、そのとおりでなければならぬと私も思いますし、どこまでも決定権を大臣が持たれて、たいへんな責任のもとに立っておられますので、大臣決意をさらに固めていただきたい、私はこのように思います。  それから、二、三、法案についてお尋ねをしておきたいと思いますが、一部に、郵便貯金の貸し出しをやるこの庶民金融制度は、貯金法の本来の目的に反するのではないかというふうな意見も出ておったやに聞きますが、この点について当局はどういう解釈をお持ちになっておるのか、最初にそれをお尋ねしたいと思います。
  98. 石井多加三

    石井政府委員 お答えいたします。今回やろうといたしております郵便貯金預金者貸し付け制度は、預金者を対象としまして、その不時出費に際し、定額貯金などを担保として貯金額の範囲内で、小口の一時的なつなぎ資金貸し付けるということによりまして、貯蓄を継続しやすくし、国民の健全な資産づくりに資するということでございます。これは、つまりこのことは貯蓄制度の一還をなすものであって、郵便貯金の性格を変えるものではないというふうに考えておるわけでございます。  今度の貸し付け制度の創設を政府提案として出しますまでの過程において、いろいろの議論がございまして、その中には、このような預金者貸し付け制度を設けることは、郵便貯金の基本的な性格を変えるもので、いわゆる金融ということを始めるのではないかという批判もありましたけれども、その点は最終的には、あくまで郵便貯金の本来の性格、これは郵便貯金法第一条に掲げておりますその性格に沿ったものであるという、お互いの意見が一致しておるということを申し上げておきたいと思います。
  99. 中野明

    ○中野(明)委員 それじゃこの法律の、郵便貯金法の「この法律目的」、この第一条ですね。その一条の精神で、十二分に現在の貸し付け制度はできる、こういう結論になったということですね。  では次に六十四条ですが、この中で、貸し付けのところですがね、「当該郵便貯金担保として貸付けをすることができる。」こういうふうに書かれてあるわけですが、裏を返せば、貸し付けをしないこともある、しないことができるといいますか、そのようにも読めないことはないのですが、その逆の場合ですね、貸し付けをしないとき、どんな場合を考えておられるか。
  100. 石井多加三

    石井政府委員 第六十四条は、郵政大臣貸し付けをする権限を付与したものでありまして、預金者貸し付けの申し込みを受けましたときには、いかなる場合でもこれに応じなければならないという義務を負うものではないと考えております。先ほどもちょっとお話が出ましたように、貸し付けにあたりましては、郵政大臣は、預金者の社会的な身分等により差別をするというようなことができないことは申すまでもありません。これは郵便貯金法の同じく第一条に、公平に扱うというところがございますので、その趣旨からいっても当然のことでございます。もしどうしてもお断わりをしなければならぬということがあるといたしますと、たとえば貸し付け総額が十万円の限度をもうすでにこえておる場合、あるいは貸し付け資金の総ワク、かりに一千億と予定いたしておりますが、その総ワクに達しまして、どうしても資金が足りないというふうな場合、つまりいずれにいたしましても、貸し付けをしないということについて正当の理由がない限り、これはすべての申し込み者に対して公平に貸し付けを行なわなければならない、さように考えております。
  101. 中野明

    ○中野(明)委員 先ほどの議論にもありましたが、いわゆるその総額ですか、貸し付けの総額、一千億とおっしゃいましたが、これはどこでどのようにしておきめになるのですか、そこのところを……。
  102. 石井多加三

    石井政府委員 今度の貸し付け制度を始めますためには、貸し付けの期間でございますとか、貸し付けの利率でありますとか、いろいろ政令できめなければならないことがあるわけでございますが、ただいまの御指摘貸し付けの総額の問題は、またそれとは離れまして、別個関係各省と協議して定めるということになるわけでございます。
  103. 中野明

    ○中野(明)委員 そのときに、先ほど阿部委員の議論にもありましたように、少し弾力条項といいますか、弾力を持たしてやらないと、いま申し上げたように公平の原則、利用の公平ということ、結局資金が一ぱいだからもうだめだ、こういうことになりますと、やはり利用の公平ということが満たされない。こういうことになりますので、その辺の弾力を持たしての交渉というものはできないものですか。
  104. 石井多加三

    石井政府委員 今後の折衝によっていろいろ話し合いをすることになると思いますが、従来までの考え方は、大体一千億ということでこの制度の歯どめをしたいというふうに考えておったわけでございます。ただいま御指摘の点もございますので、関係各省との折衝にあたりまして、その辺の事情は十分主張したいと思うわけでございます。
  105. 中野明

    ○中野(明)委員 主張しても結局通らなければ何にもならないことになるわけですが、これは実際に貸し出しの制度を始めてみないとわからない問題でしょうけれども国民の中にたいへんな強い要望があり、国会でも多年の懸案事項でございましたので、かなり利用者はあるのじゃなかろうか、このように私たちも想像するわけでありますが、そのときに、いまよそと十分交渉してみるということなんですが、やはりある程度、これは相当弾力性を持ったことでないと私はぐあいが悪いと思いますが、その辺、大臣のお考えをお聞きしておきたいです。
  106. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 御承知のように郵政省の原案と申しますか、旧案と申しますか、それは一人の貸し付け限度を三十万円ということにいたしまして、総額を二百億円——二百億円と申しましても、六カ月の期限でございますと、先刻も御説明申しましたように、四回ぐらい回転するというところで八百億円になるというような案でございましたけれども、そうだと、さっき阿部委員も御指摘になりましたことがもう少しひどくなりまして、郵便局に貸し付けを願い出たけれども、全くそのようなことができなかったというようなことで、むしろ庶民金融に対するこの制度の創設に非常な恨み——怨嗟の声とさっき申しましたが、そういうようなことが出るということが非常に心配になりますわけでございまして、そこでいろいろ各方面で御検討をいただいております御案を承りますと、各政党がそれぞれこの問題につきましては真剣に御研究いただいたようでございまして、各党それぞれ違った御見解のようでございますが、結局いろいろ勘案いたしまして、私どもといたしましては、まあ乏しきを憂えず、ひとしからざるを憂えるというようなことで、金額は十万に減らしまして、乏しくなりましたけれども、そうすることによって多数の方に利便が移ると申しますか、利用の貸し付けの希望者を多くすることができますわけでございます。しかも、総額も一千億円ということに、二百億に比べますとかなり大きく飛躍いたしたわけでございます。しかし、これはただいまのおことばにもございましたように、その辺が今度の制度の一番心配の点でございますけれども、先ほど申しましたように、郵便貯金の原資は財投のお金になっておりますことは御承知のとおりでございまして、そういうことであるにかかわりませず、こういう制度を創設したということになっておりますわけでございますが、私どもは、財投にはほとんど関係ない。ということは、預金者生活上の不時の入費に際しまして預金を引き出す。それを引き出すことは金利の面から不利ですよ、他にお立てかえいたしましょうというのがこの構想の根本をなしておりますわけでございますから、郵便貯金を引き出すべきものが、引き出さずに貸し付けをするということでございますから、私は、財投の原資とは関係ない、こういうように私考えておりますわけでございますけれども郵便貯金が財投の要素であるということは間違いないわけでございまして、そこで今度の法律案のたてまえは、この貸し出しの総額につきましては、関係省庁の協議事項ということにいたしておりますわけでございまして、法定いたしておりますわけではございませんので、今後の推移を見まして実情、実態に応じてさらによく協議を重ねまして、増額の必要があれば増額するというようなことで納得を取りつけなくてはならない。もともと庶民金融制度を開くそのことについても、各方面にいろいろ反対の御意見もあったわけでございますけれども、皆さまの御協力をいただきまして、私ども説得に努力いたしました結果、道が開かれたわけでございますから、そのときと同様な努力をひとつ重ねまして、御指摘のような点が将来非常に難渋を来たす、そごを来たすということであれば、ひとつその方面は打開していく。そしてほんとう庶民から喜ばれる金融制度にいたしたい、こういうように考えて進みたいと思っておりますわけでございます。
  107. 中野明

    ○中野(明)委員 大体の見通しが、貸し出しを始めてみましてから途中ででもついてくるわけですから、もしこれがとうてい無理だということになったときには、関係各省とあらためてその時点で少し早目に相談をして、限度額をもう少しふやす、そういうふうな含みを持った折衝をしておいていただきたいというふうに思うわけでありまして、各省間で相談したときに、一千億でこれでもうだめですよということでなしに——両方考えられるわけです。全部満たされるか、一千億希望者が出るかどうかこれも疑問ですから、一がいに云えないわけですけれども、そういう最悪の事態が来た場合には、あらためてその少し前の時点で相談できる。そこまでは交渉の余地をひとつ残しておいて取りかかっていただきたい、このように思うわけであります。  それから次、六十八条「省令への委任」のところですが、「貸付けの条件及び手続に関し必要な事項は、省令で定める。」このようになっておりますが、どういうことをお考えになっておるのか、具体的に説明をしていただきたい。
  108. 石井多加三

    石井政府委員 第六十八条の省令で定める事項として予定いたしておりますのは、まず貸し付け条件の細目、貸し付け及び弁済の具体的な手続等を定める予定でございます。  おもなものとして考えられますのは、まず貸し付け手続きでございますが、これは貸し付けを受けようとするときは、郵便貯金担保貸し付け申し込み書兼貸し付け金受領証あるいは借り入れ証書というような、これは仮称でございますが、そういうものとともに、担保とする貯金の証書または通帳を提出していただくというふうなことを予定しております。  また、弁済の手続きでございますが、これは期限前弁済、つまり半年以内でも弁済ができるというふうなことを認めますとか、あるいは弁済はすべて一括弁済を予定いたしておりまして、分割した弁済は認めない、そういうふうなことを弁済手続の中で触れたいと思っております。  また、貸し付け金の利子の計算の方法等につきましても、この際に省令できめたい、そういうふうなことがおもな内容でございます。
  109. 中野明

    ○中野(明)委員 それで証書を持っていけば郵便局で借りられる。必ずしも自分が居住しているところの郵便局でなければならぬ、そういうことじゃないのですか。どこでも借りれるようにするというお考えなのですか。
  110. 石井多加三

    石井政府委員 どこの郵便局でもいいことにいたしたいと思います。
  111. 中野明

    ○中野(明)委員 そうなりますと、この貸し付け限度額ですね。貸し付け額はいわゆる制限額十万円をこえた場合、このように書いてあるわけですね。十万円をこえてはいかぬ。こえたときは「その旨を当該貸付けを受けた預金者に通知する。」こう六十五条でなっております。あちらこちらでもし借りられた人がおったとしたら、どこでだれがチェックするか。チェックというのですか、限度額をこえたということを確認するというか、そこら辺はどうお考えになっています。
  112. 石井多加三

    石井政府委員 ただいま御指摘貸し付け金限度額の監査でございますが、このようなことを考えておるわけでございます。  まず、現在郵便貯金利用者方々実態を調べてみますと、九六%までは利用する郵便局が一カ所に定まっておるというふうな数字を持っておるわけでございます。そこで郵便局では、預金者の方から貸し付けの申し込みがありましたときには、自分の局に備えてある貸し付け帳簿等によりまして、その方がすでに貸し付けを受けておられるかどうか、また十万円の額を超過しておるかどうかといったことのチェックをするわけでございます。なおまた、地方貯金局におきまして、これは百五十万円の限度額をオーバーしておるかどうかということと同様の名寄せを行ないます。再度超過の有無をチェックする。そういうふうなことで、いまお尋ねのようにAの局、Bの局、Cの局でそれぞれ同じ人が十万円を借りるということがないようにチェックをするわけでございます。その手続等につきましては、法律でこまかくいろいろ書いておるわけでございます。
  113. 中野明

    ○中野(明)委員 そのようになりますと、非常に数は少ないにしても、チェックをしようとするとめんどうなことになると思うのですが、こういう制度ができたことによって、いわゆる郵政省の要員の問題ですが、これは現状のままでいけると思っておられるのか。やはりこういう新しい仕事がふえたので、要員をふやさなければならぬというふうにお考えなのか。
  114. 石井多加三

    石井政府委員 今度の貸し付けを行なう場合に、要員が増になるかどうかというお尋ねでございますが、先ほどちょっと御説明申し上げましたように、大体全国二万の郵便局でこの仕事をやるといたしまして、大体一局、一日、一件から二件程度平均になるであろうという推定をいたしておるわけでございます。しかも、この手続は非常に簡単に、貯金証書さえ持ってくればすぐそれに判こをぽんと押して貸したということを記載すればすぐお返しするといふうな、きわめて簡単な手続でやるということを考えております。  これは現在でもその方が郵便貯金をおろしにおいでになった場合は、やはりおろすための手続が必要でございますので、今度はその手続は必要でなくなる、それが振りかわるというふうに考えられますので、この新しい預金者貸し付け制度ができることによっての事務増は、ほとんど問題にならないであろうというふうに考えております。なお、実際にやってみました上でいろいろな問題が出てくるかと思いますけれども、現在のところさように考えておるわけであります。
  115. 中野明

    ○中野(明)委員 いまのことはよくわかるのですが、私いまチェックすること、これはかなりめんどうな余分な労力になりはせぬかというふうな気がするわけでして、その面での要員というものをちょっと心配したのですが、これは実際にやってみないとわからぬこともございますので、現在の答弁では、要員は現状のままでいけるということで了解をしておきます。  それから、先ほどこれまた問題になっておりました制限額十万円というのは、私も非常に不満でありまして、現在の貨幣価値からいいましても十万円というのはあまりにも少額に過ぎる。せめて当初の考えのように、最高制限額を三十万円くらいにはすべきじゃないか、こういう考えを持っておるわけでありまして、もちろん預金がない人は当然借りられないわけですから問題はないわけですけれども、最高の制限額を三十万円にしておいたからといって別に差しつかえはないのじゃないか、そのように考えておるわけでございます。特に今日の社会情勢から考えましても、せっかくこの制度を開くわけですから、利用者からほんとうによかったと喜ばれるような制度にしていかなければなりませんので、先ほど大臣も将来の懸案事項ということで御答弁になっておりましたが、ぜひ最高限度額を引き上げていくように、これはもう法律事項となって法律に書かれてしまいまして、省令事項じゃないので、また法律改正が必要になってくると思いますが、ぜひ早い機会にそういう方向に努力をしていただきたい、このことを重ねて私の立場からも要望しておきます。  それからいま一点、預金者貸し付けを受けた場合と、払い戻しをしてあらためて預けた場合と、プラスマイナスといいますか、どちらが得でどちらが損か、こういうことについて簡単に説明をしていただいて、もしあれでしたら資料を届けていただきたいのです。一応いまの問題について説明だけしていただいて……。
  116. 石井多加三

    石井政府委員 この点は具体的な数字をあげまして資料で見ていただいたほうが一番よくおわかりいただけると思うのでございますが、実際の扱いといたしましては、郵便局の窓口に、お借りになった場合に有利であるという場合と、むしろ貯金をおろされたほうが有利であるという場合とを、それぞれ明快にわかるような表をつくりまして、利用者方々の便利に供したい、さように考えております。  なお、御指摘数字を表としてまた別途お届けしたいと考えております。
  117. 中野明

    ○中野(明)委員 委員長、いま資料を要求しておきましたので、よろしくお願いいたします。
  118. 高橋清一郎

    高橋委員長 はい。
  119. 中野明

    ○中野(明)委員 それからもう一点、お金を取り扱うのには必ず事故とか犯罪とかいうことが起こるのはもう通例でありますが、郵政事業を現在まで行なっているにあたりましては、やはり内部でも監察があり、かなり努力しておられるようですけれども、犯罪ということについては、あるいは事故ということについては、あとを断たないというのが現状でありますが、このたびまたこういう新しい制度ができる。そういうことになりますと、やはりその点も心配になる一つでありまして、国民の要望にこたえてこういう制度ができるという形になってきたわけですから、新しい制度のもとでそういう不祥事が起こらないように、ぜひ指導監督というものを強化していただきたいと思うのですが、この予防措置といいますか、対策といいますか、そういう点について大臣の御決意をお聞きしておきたいと思うのです。
  120. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 御指摘の点も、新しく庶民金融を創設するについてはきわめて重大な問題でございまして、いませっかくこういう制度を創設しましても、金銭的な事故が起こる、あるいはまた取り扱いに不公平があるというようなことになりましてはたいへんでございますから、その点は特に戒めてまいりたいと思っておりますが、郵政省は、御承知のように、事業の性質上現金を扱います事柄が多いので、特に郵政監察局というのを設けておりますわけでございまして、この局で特にそうした事故の防止あるいは事故の摘発等については、絶えず努力を特別な機関といたしましていたしておりますわけでございますが、御承知のように、郵便局の窓口のお金を貸し出すという制度の点から申しますと、すでに約五十年ばかり前から、簡易保険の加入者に対しまして、払い込み金額の範囲内において契約者貸し付けということをただいままでずっと長く実行いたしておりますわけでございますが、こういう簡易保険の関係の加入者貸し付けについても、すでに事故が非常に少なくなっておると私は考えておりますわけでございます。同じような性質の仕事でございますから、全然新しく貸し付けを創設するということとは違いますわけでございますけれども制度の創設にあたりまして、事故の防止については、関係の従業員の間違いのないような指導をさらによく平素いたしますとともに、郵政監察の機能を十二分に発揮いたしまして、事故の防止あるいは摘発に努力いたしまして、国民の期待に沿うようにしなければならない、こういうように考えておるわけでございます。
  121. 中野明

    ○中野(明)委員 いま大臣お話にありましたように、ひとりこの制度だけのことじゃございませんけれども、事故を未然に防ぎ、郵政事業の信用を失墜しないように、特にこういう新しい制度ができて、そしてこの制度のもとで事故が起こるということになりますと、ますます信用の面にも影響してくるわけでございます。ただいま大臣から懇切な御答弁がありましたので、それで一応了承いたしますが、今後ともに、お話がありましたように現金を扱う仕事が大半でありますので、事故の絶滅に努力していただきたい、このことを重ねて申し上げておきます。  それから、農林省からもおいでいただいておりますので、これ一点だけ説明をしておいていただきたいのですが、先ほどちょっと触れました五月十九日の政調会長のあっせんの中で、四項目にこういうことが書いてあります。「郵便貯金貸付けの実施と関連し、農漁協の金融体制の整備をはかるため、農漁協貯金保険制度を創設するとともに、為替、国庫金取扱等の業務を農漁協に行なわせる。」このように四項目に出ておりますが、この中で、農漁協保険制度の創設と、もう一点為替業務、この二点について、内容はどういうふうにお考えになっているのか、また具体的にどうなるのか、御説明をいただきたいのです。
  122. 松元威雄

    ○松元説明員 お答え申し上げます。第一点の預金者保護でございますが、これは一般金融機関につきましては、四十六年に預金者保護制度法律ができたわけでございます。その場合に、農協は、同じ金融機関ではございますけれども、御案内のように単協は金融事業以外の事業をいたしておる。いわば販売事業、購買事業をいたしておるということもございまして、したがいまして、一般金融機関と同じ制度でもって預金者保護制度の中に入ることは制度上いろいろむずかしい問題があるということで、その段階では入らなかったわけでございます。実は農協におきましては、別途、いわば自主的と申しますか、そういうことで自主的に預金者保護制度をやっておったわけでございますが、やはり自主的制度だけでございますと、力の点でいろいろ不利な点もございますものですから、かねてから、いわば農漁協にふさわしいような預金者保護の制度はないだろうかということを検討しておったわけでございます。いよいよ金融情勢がますますむずかしくなるものでございますから、農漁協にふさわしい預金者保護制度を創設いたす、もちろんこれは法律改正を要するわけでございますから、したがいまして、次の国会を目標といたしまして検討しようということで、目下検討を開始している、こういうわけでございます。  それから第二点の為替業務でございますが、これも御案内のように、農協は金融機関でございますが、一般金融機関と違いまして、為替業務は現在認められていないわけでございます。したがいまして、たとえば卑近な例を申し上げますと、出かせぎした農家が国元へ送金しようという場合でも、自分の系統の農協を利用するということができかねる、こういうわけでございます。したがいまして、いわば預金の受け入れあるいは貸し出しというだけじゃございませんで、さらに広い意味で、金融業務、これをよりスムーズにするという意味から申しまして、為替業務をいたしたい。ただし、これにつきましても、御案内のように農協は非常に数も多うございます。一般金融機関でございますと本支店の関係、こういうことでございますが、農協はそれぞれ独立の人格を持っておるわけでございまして、非常に数も多い。したがって、為替業務をやるためにはどのようにしたらよろしいか、それには業務上の体制の整備が必要でございます。そういう点も検討いたしまして、これも法律改正を要する事項でございますから、次の国会を目標にいたしまして内容を検討いたしたい、こういう趣旨でございます。
  123. 中野明

    ○中野(明)委員 わかりました。  では以上で私は質問を終わりたいと思いますが、先ほども阿部委員も申されましたように、郵便貯金金利引き下げについては、私どもも異常な関心を持っておりまして、絶対にそうあるべきでないという強い信念で大臣も臨んでいただきたいということを、蛇足で、だめ押しで申しわけないのですけれども、あらためて強く要望いたしまして、終わりたいと思います。
  124. 高橋清一郎

    高橋委員長 この際、午後四時まで休憩いたします。    午後一時二十分休憩      ————◇—————    午後四時九分開議
  125. 高橋清一郎

    高橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  郵便貯金法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続けます。栗山礼行君。
  126. 栗山礼行

    ○栗山委員 郵政大臣を主として中心に、郵便貯金法の一部改正案が難産をいたしておりまして、ともかく本委員会に上程されまして質疑をいたすということにつきまして、非常に感慨深いものがあるわけであります。おそらく今国会でこの法律案件について質疑をいたすべき場面は皆無でないか、こういう想像をいたしておったのでありますが、はからずも一決をいたしまして、きょうの委員会の運びになったということにつきまして、私もともに喜ぶ一人でございます。私はそういう前提できょうは若干の時間をおかりいたしまして、なぜこの問題がいろいろデマも誤解も含めまして非常に混迷化して進んでまいったかというような点を明らかにいたしまして、この法律のあるべき方向を定めてまいるということが望ましい、かように考えておりますので、同僚の皆さんの若干のごしんぼうをいただいて時間のお運びをお許しをいただきたい、このように考えておる次第でございます。  大臣がお見えになりましたから、大臣からお伺いを申し上げますが、いわゆる新聞を通じましてうかがう範囲でございまして、直接はこの問題にあまり突っ込んで意見を交換いたしておりません。ただ、ときおりの場面で、庶民ローンの問題について政治生命をかけて取り組んでまいるというようなことを、直接、間接お伺いをいたしてまいったのでありますが、率直に申し上げまして、その後かねや太鼓の鳴りもの入りでこの問題が非常に国民の拍手かっさいを受けるという法律に発展いたしましたことも承知をいたしておるのでありますが、そのやさきに、私はふと感じましたことがございます。大臣は政治生命をかけると間接に言われておる。確かにミクロ的にも、マクロ的に申し上げましても、政治生命をかけるに値する、その内容の高い価値判断があるのじゃないか、こういう大臣の政治的識見について、疑う余地のない評価をいたしておったのでありますが、ただ、その手段と方法というものが、私は今日の結果から申し上げるのではありませんけれども、あなたの御記憶を新たにしていただいたらいいと思うのでありますが、非公式の場面でそういう話がございましたときに、私は若干大臣の意見に迎合せず、しかも、それは賛成だということを表明いたさなかった場面を御記憶をあらためていただきたいと思います。その事柄は、私は一つは大臣があまり行き過ぎられると、かえって政治家としての政治責任の問題に発展するやもしれない危険が内蔵するのじゃないかということが、私のインスピレーションで受け取った一面でございます。  それから一面は、私は廣瀬大臣の人格をいろいろな人から伺っておるのでありまして、個人の、あるいは政治家としての御人格あるいは徳望というものを疑うものではありません。それだけに私はとまどう感じを持ったのでありますが、それだけのこの問題を実現せしめる事柄につきまして、少し安直な姿勢でながめておられるのではないか、こういう感じを受けたのであります。何かいろいろ問題を行ないますときには、いまの政治は大蔵官僚政治であるともいわれております。財政を握っておるところがいろいろと直接、間接に日本の政治に、政策の方向に、困難な障害にぶつかっておりますことは、私どものサイドからながめましても、それから官僚の行政をやられる皆さんからも、身に徹して経験豊かな問題であろうかと思うのでありますが、さらに一般の市中銀行や他の金融機関の受けとめ方というものをどう評価するか、こういうこと等々を私は先見性をもちましてながめてまいって、そしてこれに向かって政治的な適応策をもって、笛や太鼓ではやし立てることによってできた事実をもって国民的なかっさいと歓呼の期待を求める、これが政治の政治たるゆえんではないか。こういうふうに実は理解をしておりますが。これがいまなお私の一つの政治についての哲学と申しますか、感覚でございます。こういうことから、率直に申し上げまして、国会でいろいろ附帯決議がございましたことも私も承知をいたしております。またいまの日本金融機関で、信用組合をながめましても、信用金庫をながめましても、あるいは農漁業協同組合をながめましても、あるいは市中銀行をながめましても、個人を対象といたします庶民ローンの問題につきまして、統計の示すところによりますと、四・四というような低位な——この数字の根拠はよくわかりませんが、それほど庶民金融について否定されておった、あるいはらち外に置かれておった、こういうようないままでの金融制度実態と照合いたしまして、これはこの種の庶民貯金の、寛容の精神を堅持しつつ、しかも、みずからのものを、みずからの必要なときに、一定の制約と限度において利用ができるのだ、こういう制度ができてまいりますことは、むしろおそきに失する、私はこういう判断をいたしておったのでございますが、それほど日本金融はゆがんだ金融政策をとっておったということが、政治家としてこれを評価しないということであれば、何か少しおかしいのではないか、こういうふうに私は考えておったわけでございまして、あなたにやるべき問題が山積いたしておりますか、そのことを裏返していえば、準備一切完了、発車という態度がございますかという私の態度であったわけであります。その根底は、先ほども申し上げたのでありますが、ともかくこの問題に大きな拍手を送り、これの実現のトップをひとつ廣瀬郵政大臣にしていただこうという大きな期待をひそかに寄せておったというのは、私もその人後に落ちない一人でございます。そういう点から、私自身といたしましては、官僚の一つのへつらいや、あるいは思いつきや、あるいは大臣がひとつ将来の先見性を十分持って土俵に上がれば勝負は必ず勝つんだという一つの体制の上にものごとを運ばれるということが望ましいのであって、その内容に到着しないときに、私は、庶民ローンというような一つの打ち出し方をされるというところに実は幻滅を感じ、これは失敗に発展しなければいいがということを、心ひそかにこいねがった一人でございます。  私は、きょう公式に私の心の中を申し述べて、その態度を表明してみたい。とかくへつらいとおべんちゃらと追従については日本人は一番弱いのであります。しかし私は、やはり厳とした父のようなきびしい姿の中に、底知れない本性の愛情と本質を求めていくということも、政治に加えられた役割だ、こういうふうに考えてまいりますときに、私は、安直な迎合と妥協は許さない、こういう一つの考え方でございます。果たせるかな、新聞あるいは各省、各金融機関、私どもに至りますまで、市中銀行あるいは農協、そういう金融機関たるすべての団体から猛反対の陳情や要請等が参って——私は御案内のとおり、きょうは古川丈吉先輩がいらっしゃいませんが、大阪の純農村でございます。それから都市近郊農村がございます、それから、都市化というものがごく最近行なわれました。後進的な都市化への様相に転じておるというような地域におる者でありますが、私の親戚の者も農協の幹部をいたしております。また、私が借金いたしまするときに、その幹部の判がなければ金を借りられぬ、こういう経験等も持っておるわけなのでありますが、これなんかにつきましても、そういう農協の基本的なものの見方から私に一つ鋭い批判と意見がございました。国会内容についても、大蔵委員方々、あるいは名前は申し上げませんけれども、農林に参加している委員方々が、痛烈なるこの問題の論議を展開するというところに発展をいたしてまいった。私は、この問題をそのように大きな、将来の郵便貯金庶民ローンということが適切か、あるいは立てかえ払い制度という表現が適切か、これは学者が一つ定義をするのが望ましいというふうに思うのでありますが、いずれにいたしましても、郵便貯金それ自身が庶民ローンとして貸し付け制度を行なうというところに、所管の大蔵省から、あるいはまた金融機関から一つの大きな反響をまき起こしたということは、大臣みずから、いいことにつけ悪いことにつけ、あるいはさびしいことにつけ、あるいはいろいろな意味において、悲喜こもごもの心情で今日をお迎えになったということについて、私は十分了解ができるのであります。  簡単にお尋ねいたしますが、ただ、長年のそういうような衆参両院、それから日本に、少なくともそういう庶民を対象とする庶民ローンがない、せめて財投の原資を傷つけずに、しかも、むしろ貯金が増強されて、そして信頼を高めて、その中からみずからのワク内における貯金限度内立てかえを求めようという一つの事柄につきましては、先ほど申し上げましたように、非常にりっぱな政策的な内容でございますので、これは大臣のみずからの発想によって石井貯金局長に命ぜられたのか、官房長に命ぜられたのか、あるいは幹部会に提出をされて、その所信を表明されて同意を求められたのか、私はその間の事情はよく存じないのでありますが、私はまず原点はそこから入ってまいりたい。たいへんことば長いようでございますが、まずその基本姿勢ということ、少なくともこの問題を取り上げようという動機と、あなた自身の独自路線によると発想の経緯はどうか、この点について明確にお答えをいただきたい。
  127. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 郵便預金者貸し付け、これは簡便に庶民金融と申しておるわけでございますが、この創設にからんで、私の困難はたいへんなことであろうという御推察をいただきまして、当初から非常な御同情を賜わり、また何かと複雑なお気持ちになっておられたという御心境を拝察いたしまして、まことにかたじけなく、感謝にたえない次第でございます。  栗山委員指摘のように、実は二月の早々にこの構想を打ち出したわけでございますけれども、当初世間の世論は、意外に圧倒的多数の御支持をいただいたかのごとく思われたわけでございますが、その後の進行ぶりは、御心配を賜わったようなたいへん困難な道をたどって、やっと今日に到達をいたしたわけでございまして、その間いろいろお話がありましたが、各方面の反発というものが非常に強力に行なわれたのでございます。やっと法律案ができ、きょうはこうして熱心な御審議を賜わっておるわけでございまして、ほんとうにあれを思い、これを思って感慨無量、一口に申しますと、皆さま方の御協力に対しまして感謝の念で一ぱいであるわけでございます。  大蔵省との関係、農林省との関係、それは農協との関係になるわけでございますが、そういうふうなところに非常に隘路がある。むずかしい問題が横たわっておった。また、政府外におきましては、民間の金融業界あるいはただいま申しました農業協同組合、漁業協同組合というようないろいろな複雑な関係があったわけでございますが、逐次こうした方面の御理解と御協力を賜わって今日に至ったわけでございます。  私が一番心配いたしましたのは農協の関係でございますが、これはお互い国会に席を持つ者は農協を忘れてはならない、農民層の支持をいただかなくちゃならないというようなことがあるわけでございまして、この点は最初から私格別な配慮をいたしてまいったつもりでございます。幸いにこの点は、先刻中野委員から農林省当局に御質問があり、また御答弁がありましたように、農協としましては、この庶民金融法案ができるに伴いまして、非常に大きな収穫があったと私は考えておるのであります。これは農協の貯金の保険制度の創設あるいは国庫金の取り扱いあるいは為替の取り扱いというような、非常に意外のえものがあったのだ、収穫があったのだと私は考えているわけでございまして、農民の方々、農協の方々に対しましては、せめてもこのことによって御満足をいただけるものだ、私はかように確信をいたしておるわけでございます。  また、大蔵省の関係も、これまた午前中御答弁がありましたように、いろいろ複雑な問題がございまして、これも折衝にはいろいろ骨を折った経路をたどったわけでございますけれども、どうやら最終的には御了解いただきまして、今日のような法案になったわけでございます。  いずれも、いまから考えますと、各方面の御協力に対しましては非常に感謝をいたしておるわけでございまして、この上は一刻も早く成立をさしていただきまして、そうして庶民に喜ばれる制度の創設でなくちゃならない、こういうように考えております。  重ねて申し上げますが、栗山委員には、その間において私の立場を非常に御理解賜わりまして、格別な御同情をいただきました。その御懇情に対しまして心からお礼を申し上げる次第でございます。  この法律案の立案、つまりこうした考え方をだれがやったのかというお尋ねでございますが、これは申すまでもなく、昭和三十七年度から四回にわたりまして、衆参両院でこういうような制度を創設すべきである、そういうような検討を真剣にやるべきであるという御決議をいただきましたことが源であるわけでございます。源泉であるわけでございますが、さらに世界各国の状況を調べましても、郵便貯金をやっております国が、かなり多く、貯金の預入ばかりでなくて、貸し出しも実施いたしておりますし、また営利を目的としない公共的な貯蓄銀行、これは外国に例が多いわけでございますが、こういうような機関におきましても、庶民金融をいたしておるという事実もございます。こういうような事実も踏まえまして、さらに、特に私のこうした発案につきましては、申すまでもなく、ただいまは国民福祉増進を最も重点的に優先的に考えなくちゃならないというあらわれである、こういう際にこそ、かねがね考えておりました郵便貯金の預入者の庶民金融の道を開くことこそ、そうした考え方にマッチするものであるということを強く考えたところにその発想のもとがあるわけでございます。  しからば、こういうことをだれが考えたかと申しますと、これは私はじめ郵政省関係者がこぞって考えを練り、そうして案をつくり、さらにみんな力を合わして努力いたしまして今日に至った。つまり私を先頭といたしまして郵政省あげての熱願、その熱願の達成に時を得たことでございますから、この際ぜひやろうということで、みんな気持ちを合わせ、力を合わせまして今日の法案ができたのだ。しかし、そのいきさつを考えますと、国会議員の皆さん方には格別ごやっかいにあずかっておるのでありまして、最初、今度の国会政府提案で出したいという念願を持っておったのでありますけれども、あっちにぶつかりこっちにぶつかりまして、これはとうてい実現はできないという絶望感に一時はおちいったわけであります。しかし、議員の各位が与党、野党ともに、ぜひともこれは実現すべきである、国民のそうした期待に沿わなくちゃならない、国民の支持が圧倒的に強そうだ、大蔵省に対しても農林省に対してもいろいろ問題はあろうが、そういうことを解決して、ぜひそうした制度を創設すべきであるという皆さん方の御協力、実はそうしたことが非常に刺激になりまして、最終的に自民党のあっせんということになりまして、関係各省庁の折衝がうまく済むということになったわけでございます。その原動力は、国会議員の皆さん方、与野党一緒の皆さん方の御鞭撻、御協力によって今日になったことをしみじみ考えておるわけでございます。最終的な形は政府提案ということになったのでございますけれども、私の気持ちは、これは議員提案でやるべきだということを私は党内におきましても強く繰り返し主張いたしたのでございますが、どうした都合でございますか、結局政府の責任をもって提案すべきである。つまり、百年の歴史を持っております郵便貯金制度におきましては、貸し出しという新しい制度を創設しますということは、郵便貯金制度の画期的な改革であるわけでございますから、これは政府が責任を持ってやるべきだという党の御意見であったかと思います。私は議員提案のほうが国会で御理解がいただきやすいというように考えておったのでございますけれども、こういう形になったのでございます。こういうことになったについては、皆さん方の非常な御協力が背後にあって、その御促進によってこういう結果になったということを感謝いたしておるわけでございますが、だれがこういうことを思いつき、だれがこういう案をつくったかと申しますお尋ねに対しましては、ただいま申しましたように、私を先頭にいたしまして、挙省一致の協力によって、また考え方によって、こういうような案ができたのだとお考えいただきたい、かように思っております。しかも、それは累次の先年来の国会決議に基づきましての考え方であるというふうに御理解賜わりたいと思っております。
  128. 栗山礼行

    ○栗山委員 ちょっと委員長にお願いを申し上げておきます。私の話は、要約いたしたいと思うのでありますけれども、非常に重要な内容を将来に持つのでありまして、若干の時間の経過は、ひとつ委員長の御配慮でお願いを申し上げたいということを、この席で公式に申し上げて御了解をいただきたいと考えております。  加藤先生、ちょっとお願いを申し上げておきます。あなたは自民党を代表される筆頭の理事で、私の尊敬する先生でございます。お願いをいたします点は、私が時間を経過いたしますと、発言中止のじょうずな連絡がどことなくあるわけでございますが、きょうはもしそういうことがございましたら、たいへん先輩に礼を失するのでありますが、私の質問を保留するという態度でひとつ臨みたい、こういう私の意思が存しておりますことを御賢察願って、そういうことのないようにひとつお願い申し上げたい、かように考えております。  いま大臣にお伺いをいたしまして、どうも私の推定認識ということよりないわけであります。なぜ申し上げたかということにつきまして、私は大臣がこれだけの先見性と、それから大臣としての識見をお持ちになっていらっしゃるということについてはけっこうであり、高い評価をするという一人なんであります。これは先ほど申し上げたとおりであります。だから、おれの発意である、そしてそれについて政治生命をかけて実現に向かって幹部諸賢の、あるいは関係方面の了解と同意を得られるようにということでお運びされるということは、これはきわめてりっぱな政治家のとるべき態度でございまして、私はそういう勇敢にひとつ発言を求めたかったのであります。しかし、発意をして、いろいろ稟議の内容等も伺ってみた。それから、かねがね自分もそういう庶民ローンの問題というのをこれは検討したらどうか、いわゆる廣瀬アイデアという一つの発想をもって、関係の幹部諸君とはかって、これに専心しようということで今日に至っていろいろ紆余曲折を踏んだのだ、こういうふうに理解をいたさなければならないような御答弁であった、こういうふうに独断でありますけれども、そういう推測的な判断よりないわけであります。私は、一つは率直に申し上げまして、これだけの議員歴と、そして郵政大臣としての政治的能力を発揮されるという廣瀬郵政大臣としては、アイデアはよろしい。アイデアも、そして実現に向かって有効適切なる一つの手段を伴う一つのアイデアと行動が望ましい。若干根回しをしないうちに、ある人によると、これはひとつ大臣になると何か一点スタンドプレーで、あるいはまた点数かせぎというふうなことがよくあるので、廣瀬大臣はそういう人格の方でないけれども、官僚というものは何か大臣を祭り上げて、そしてそういうふうな方向に進ませていくという弊が各所にあるんだというようなことを私は常々耳にいたしておるし、またある一面は肯定し得る実感に触れておる一人でございます。私はいずれにいたしましても、最終的には郵政大臣それ自身の誇りであり、それ自身の責めとして私は取り扱っていただかなくてはならぬ、こういうことであろうかと思うのでありますが、しかし、走るのみであって、それを足固めをして優勝のゴールに入るというプロセスを忘れた一つの内容の感をいたすのであります。この点を大臣がどのように考えていらっしゃるか。先ほどいろいろ議員立法の問題とか、国会の議決という問題がございますが、その以前に、やはり閣議の問題もございましょうし、それから関係する各省との関連もございましょうし、これはなかなか、事務サイドの問題もございますけれども大臣の政治的な一つの折衝の方向をもって進めていくという、いろいろ一つの問題をお運びになるのにいかように御苦心なさるかということにつきまして、私は野党でありますけれども、与党の皆さんのその役割りについても、また高い評価を、理解をいたしておる一人でございます。たいへん大言壮語するようでありますが、みずから知り相手を知るというところに私はほんとうの民主政治があるんだ、今日のように、みずからの論で、みずからの力とみずからの政策が絶対だというところに私はいいものが生まれてまいらないし、これは民主主義の破壊者である、こういうふうに私は結論づけておるのでございます。  たいへん説教めいたことを申し上げるようでありますが、そこで、前段にお尋ねいたしましたのは、少し勇み足程度でなくて、ものをほんとうにはかっていこうというものについては、ひそかに諸準備を整えて、あけたときにはものがなくなったと、こういうふうに運んでもらえなかったということについて、私自身非常にざんきにたえない感情をいまなお持ち続けておる。ゆえにこの問題はどうだという一つのお尋ねを申し上げた内容でございます。  実は、貯金局長が二、三回会いにいらっしゃった。私は会う必要を認めぬということで会うておらないのであります。私は、大臣を補佐する、それで所管の局長が何回かいままでに、こういう問題で国会審議を求める、あるいは御意見を、御協力をというようなことで、またわれわれとも不可分の関係として、説明を求めたりあるいはレクチュアをやりましたりすることは当然でございますが、そういう方向が、小党であるがゆえかどうか存じませんが、一回もございません。こういう中で今日終始をいたしておるのでありますが、貯金局長の行政才能を一ぺんテストしようじゃないかということで、私は会う必要はないということで会うておらないのでありますが、実は次長に、私はたまたま他の用件がございまして会いました。これはこのことで会いに行ったのじゃないのであります。私語になりますけれども、私の旧知の関係であります。かつて大阪郵政局で人事部長をいたしておりましたのがいま貯金局の次長をやっております。こういう人間的な関係がございます。私はそのときも知って知らないふりをいたしておったのであります。やあ君か、という一つの親近感を持って胸襟を開いて語るということを避けてまいった内容がございます。ただ、これだけはっきり申し上げた。ほんとうに諸君らはこれをやっているのかどうか。おれは大賛成なんだ。大賛成なるがゆえにこういう大げさな庶民金融制度というような看板を掲げるというのは、だれがこういうことをするのだ。宣伝か、ぶちこわしか、あるいは建設か。こういう路線をぼくは疑うのだ。だからその点で私は所見を異にするから、以上この問題について深く取り上げて皆さんと協議をするという意思はない。こういう態度で、私はある意味でそのあやまちを善意に警告してまいった一人でございます。  だからほんとうにやろうとすれば——なかなかうまい表現を小坂案で書いております。さすがに彼は、自民党の政調会長としての表現と内容だということに感服をいたしたのでありますが、このような形でこの問題を運んでまいるべきものなんでありまして、こんな大げさに庶民金融、いわゆる庶民ローンという一つの制度的な内容という中身はないのです、調べてみたら。結局、私自身から率直に申し上げますなれば、庶民ローンというものについては、もっと別な角度からこれをとらえていかなければならないのではないか。たとえば貯金をする、申し込んだ、そして一回か二回か確実にそれを支払うという条件のものをお貸しいたしましようじゃないか、これがいわゆる一つの庶民ローンといいますか、ローンのローンたる本質であります。  ところが、これは定められた貯金の中で、この限度内でこれを立てかえすることもやぶさかではない。しかも、金利というものについては、きわめて一時的利用になるのだから低利で進めていこうじゃないか。これはどこに金融制度内容を持つのか、こういうことなんです。運用制度もしくは立てかえ払い制度というものが本質であるというふうに理解をするのでありまして、そういうオーバーな表現をして騒ぐことを拍手かっさいだということであっては実現を至難にするという根源的なこういうところの発想や取り組み方、官僚諸君やまた大臣も自信過剰で、おれのところに妨害なしというような感があったのではないか、こういう感じをいままで持っておったのでありますが、重ねて私は、いまの心境として、きょうこの問題がやがて、私のあとで土橋委員質問がございまして、おそらく決着する、結論に到着するものと思うのですが、ほんとうに顧みて、あなたがどのような一つの考え方を、私のそういう意見についてお答えになるか、再度明確にひとつ御答弁をいただきたい。
  129. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 重ねて御指摘でございますと、なるほど私は郵政大臣でありまして、郵政省のトップでございますから、私の考え方もかなり今度の制度創設についてはありますわけでございますけれども、その辺は御解釈は御自由でございますけれども、やはりこうした大きな問題は、省の幹部、少なくとも省の幹部が力を合わせていろいろ知恵をしほり、努力を重ねていくというようなことでなければでき上がらないわけでございまして、そういう体制で進んでまいりましたことは事実でございます。しかし、勇み足であったというような御指摘をいただきましたが、いまから顧みますと、ああもやっておけばよかった、こうもやっておけばよかったという反省をさせられる点はいろいろありますわけでございますが、非常に困難な事態にぶつかりまして、ここ数カ月、私自身といたしましては、この庶民金融のために頭が一ぱいでございまして、とにかく何とかして実現させていただきたいという念願で明け暮れいたしたわけでございますが、今日の段階になりましたことを非常に心から感激をいたしておりますわけでございまして、どうも手回しが足らなかった、少しかってに進み過ぎたじゃないかというようなおしかりも、私は当たらない点はないというように、いまになっては考えさせられておりますわけでございます。  それから、まあ内容につきましては、金融ではないじゃないか、ほんとう庶民ローンという——大げさに打ち出したことは不当じゃなかったかというようなお話でございますけれども最初庶民金融というようなことで相当大きく打ち出したわけでございますけれども、なかなかこういうことでは大蔵省の理解がいただけないということで、実質は、ただいま先生が御指摘のように、郵便貯金預金者に対しまして、その預金の範囲から、生活上の不時出費に対しまして預金を引き出すべきであるけれども預金を途中で引き出しますと利率の点において非常に不利があるし、それで別途お立てかえいたしますよという実質のものであることは間違いないわけでございまして、最初から構想といたしましてはそういう考え方でございましたが、庶民金融というように打ち出しましたものですから、実質についていろいろ誤解を招いたことを反省いたしまして、その後は説明を変えて、ただいま申しましたようなことにやり方を変更いたしたわけでございますが、なるほど一回かけた、二回かけた程度の人に、とにかく郵便貯金をやるというその人の意思がわかれば、そういう方に金融をしてもいいじゃないか、それがほんとう庶民ローンじゃないか、庶民金融じゃないかというお尋ねでございますけれども、そこまではまだ踏み切れずにおるわけでございまして、まあ郵便貯金の堅実なあり方という本質から申しまして、どうしてもこういう制度にならざるを得なかったわけでございます。しかし、これでも私は郵便貯金預金者には非常に喜んでいただけるというように確信をもって、ぜひひとつ成立させていただきたい、こういうように念願してやまない次第でございます。
  130. 栗山礼行

    ○栗山委員 ただ、一々理屈を言うようでありますが、私は、庶民ローンというものに値するものでない。ようございますか。それを庶民ローンだ、庶民金融だという、中身の伴わないのに膨大な一つの、公取でいうたら問題になるような誇大広告のような一つの認識を与えるような内容として、じゃんじゃんジャーナリストもそれを取り上げたというところに私は問題があるんじゃないか。私は、ジャーナリストの責任ということじゃなくて、やはりどういうことを言えばどういう記事になるかというようなことは、そんなことはもうわれわれの良識の問題でありまして、そこを責める問題ではないのであります。中身からいくと、庶民ローンでないんだ。将来、マクロ的に見ると、それは輝やかしいひとつ庶民ローン、こういうふうな——これはある一つの歴史的な経過を見て、それは未来図を描く場合には言えるかもしれぬ。しかし、ミクロ的にいうと、立てかえ払いとか、あるいは運用制度、こういうふうなささやかな、食べたら中身に味があるんだということで、ものを運んでいけなかったのかということで、まあ理屈を言うなら、ほんとう庶民ローンだというなら、相互銀行でもいろいろやっております。信用金庫も信用組合もやっておりますように、農協等もやっておりますが、月掛け貯金でやるとか、あるいは契約貯金でやるとかいうようなもので、そして対人信用さえあれば、一回でも入会したらすぐ金をそれだけ——こんなけちくさい、預金の九〇%の範囲内と言わずに、百万の契約なら、おたくなら五十万使ってもらいましょうと言うて、三万の積み立てをしながら貸すというのが庶民金融の本来性じゃないか、こういうふうに私はこれをやれというのじゃなくて、本来的に庶民金融をいうならば、そういうものが庶民金融の本来のものじゃないか、こういうつけたりを申し上げたわけでございまして、それをやれのどうのと言っていま御質問をいたしておることではないというふうに御承知をいただかなくちゃならぬ、こういうふうに考えております。  石井貯金局長、いま大臣と私の発想について、私はあなたと初めてものを言うんだが、あなたにはものを言う資格もないという程度考えておったのであるが、きょうは公のことでありまして、大臣と私のやりとりを見て、そして所管局長としてこの問題の相談にあずかり、ぜひ実現をして、ひとつ貯金行政の有終の美を、スタートラインにしたい、こういうことでなければならぬ、こういうふうに私は考えておるのでありますが、あなた、私と大臣とのやりとりを見てどのように今日的にお考えになっておるか、所見をお伺いしたい。——みずからの意見じゃないと、私はなにしませんぞ。
  131. 石井多加三

    石井政府委員 お答えいたします。ただいま先生と大臣お話内容につきましては、私も十分理解できるわけでございまして、私たちも、当初大臣のおっしゃいましたように、庶民金融という名のもとにこういった話が打ち出されまして、それがために非常に一般に必要以上の誤解を与えました。またそれがこの制度に対する反対論にもなったような気がいたします。その点は十分反省をいたしております。  今度御提案申し上げましたのは、あくまで、いま先生御指摘のとおり、郵便貯金預金者が、自分の預金の範囲内で生活上の資金を一時お借りするというような制度考えたわけでございまして、これは将来、いま御指摘のように、もっと本格的な意味庶民金融に発展するための一つの礎石であるというふうにわれわれも考えておるわけでございます。
  132. 栗山礼行

    ○栗山委員 まあそれでけっこうです。この問題はこれで打ち上げたいと思いますけれども、その若干の経過だけを申し上げて御参考に供してまいりたい。そうでないと、またいじめられるということでは困るので、これをもって、もうスタンドプレーやあるいは深甚なる配慮を必要とするという——私は問題の一歩、一里塚として運んでいただければけっこうだということで、私も、実にいやな役割といやな発言でございますが、これはもう御了承いただかなくちゃならぬ、こう考えておるわけなんであります。大臣は、これは野党じゃなくて、絶対多数の、何でもできるということの一つの与党の誇りある大臣、その与党の中にも、甘く評価をされたのではないか。この制度の問題について、あなたの人格等を知る人については、この中では反対の人はございますまい。与野党通じてそれはございますまい。まあ土橋委員の意見は伺っておりませんが、私の知る限りについては反対はございますまい。しかし、肝心のあなたのところの総裁の態度、大蔵省の態度、あるいは後ほど伺うのでありますが、農林省の態度の経過をながめても、みずからの敵とみずからの内部の評価を適正にしなければならぬということは、私もしみじみこれを戒めてまいらなくてはならぬというように考えるのであります。  そこで問題は、一つの関所にやはり政調会というものもございましょう。それから総務会というようなうるさい機関もございましょう。これはあってしかりでございます。これは当然でございます。また通信部会という直接の機関もございましょうけれども、なかなかこれもすなおなものでないという事柄については、私は外からながめておるのでありまして、たいへん言いにくいことでありますけれども、外からながめることが案外よく実態がつかめる、こういうことでなかろうかと思うのでありますが、なかなかむずかしい問題でございます。  そこで、これをされるについてあなたが出されて、通信部会がいろいろなアドバルーンをあげた。これはぶっこわすつもりだな、こういうように私は直観をいたしました。同時に、野党が相談いたしました。社会党、公明党、民社党の理事関係が集まりまして、この問題は流れるぞ、せっかくやった問題について、中身をわれわれは注文するということよりも、制度の問題の突破口をひとつ協力をするということにしてまいりたい。これはもうはっきり申し上げますが、そういうことで相談いたしました。いずれにしても三党の政審に移そう。政審サイドでひとつ問題を検討さしてみようということで作業がされまして、最後にできたものについてわれわれがよかるべしということになりまして、意見を最終的にひとつきめてまいろうという会合等も実はしばしぱ持ったのであります。  その中で出ましたことは、与党のベースで一つの案を出している。野党が片や旗上げするといったらこれはぶちこわしをするのであって、これは決して建設的な対案にはならない。しかし、与党の案が不満足で、野党の政策路線がこうなんだということをアピールするという問題にとどまるとするなれば、私は一つの価値があるけれども、実現せしめようということになれば、これは野党ががまんをしなければならぬ。少なくともこの問題は、内部で政府がどう出るか、野党がどう出るかという対応策を持って臨んでまいらなくてはならぬ。そのためには理想的な望ましい意見や内容等は一切伏せるべきである、こういうような経過を踏んでまいったことが一点であります。  第二点につきましては、私はおおむね皆さん御想像つくと思うのでありますけれども、これは結局あまりに人気がよ過ぎて、森の中におって外をながめるという力がなくて、できるものだという評価の上に大臣が乗っかっていらっしゃる。こんなものはできっこない。だから何とかこれは与党も、ああいう情勢の中では困難だろう。しかし、与野党とも力を合わして逓信委員会が知能をしぼっていくということなら、その方向性が立つのじゃないか、いかがでしょうかということで、私は先輩の意見を求めて歩きました。しかも、私の勘どころについて、それは客観的にいろいろ技術上の問題もございますけれども、そういう一つの路線で野党が理解をしていくのなら、われわれもひとつ決意を新たにして対処しようじゃないか、こういうような合意の問題等もございましたが、こういう一つの中身をわれわれに素っ裸にもなれず、そして皆さんが点数かせぎや独自路線を歩んでこられたということについては、私はどうしてもわからないというのがいまの現状でございます。これにお答えをいただこうとは思いませんが、こういう今日までのわれわれの真情、経過処置のありましたことを、これは後世の記録に明確に残しておきたいと思いますので、あえてひとつぜい言を呈するということで御承知をいただきたい、かように考えております。  同僚の委員から、先ほどまで農林省と大蔵省——農林省の松元農政局参事官に御足労をわずらわしておるということであります。大蔵省磯辺銀行局の総務課長さんでございましたか、御足労願っておって、先ほどちょっと御答弁を伺っておったのでございますが、若干一、二の問題についてお伺いを申し上げてまいりたいと考えております。  お願いをしておきますが、なかなかエリートでありますから、官僚中の最高峰のエリートでありますから、頭の回転が早いし、われわれをひとつうまくなにをするということはなんでありますが、この問題はもっと純真に、素朴にひとつお答えをいただきたい、こう思うのであります。  率直に申し上げまして、大蔵省が大反対をされた——私はずばりものを申し上げます——その根拠は何か。たとえば今日の低金利政策との関連とか、いろいろ政策上の問題もございましょう。しかし、郵便貯金金利公定歩合との問題 一般の市中金利の問題との関連において、どのように認識をされて水田大蔵大臣がこれに反対されたか。先ほどの一つの説によりますと、それはプロセスだ。結果においては閣議決定して出しておるということは賛成じゃないか。——とんでもない詭弁だと私は思う。私はそういう結果が、私とけんかをいたしました結果、仲よくなって、合意に達することはあるいはございましょう。しかし、それは結果であります。そのプロセスがどういうものであったかというところに私は問題の重要性があると思うのでありまして、私は磯辺課長にそういう政治上の責任まで負わせるということはどうかと思うのでありますが、ほんとう言うと水田さんと一騎打ちを私はやりたいのです。農林大臣を尊敬しておって、その尊敬しておる農林大臣にここまでやられたというようなことについては、一言もって私は裏切られたという感から、農林大臣にものを言いたいのでありますけれども、なかなかそうも参らない、こういうことであなたに当たるのでありますが、大蔵省が筋道立てて反対する根拠、政策的な根拠というものをお伺い申し上げたい。
  133. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 お答えいたします。最初に、ただいま先生から御指摘ございましたように、率直にいままでのプロセスにおいてどのような理由反対したかそれを言えということでございますので、お答えさしていただきますが、ただ結論的に申しまして、午前中にも御答弁いたしましたように、法律案をつくりますについては、それぞれの立場、それぞれの意見によって、それぞれの忌憚のない意見をぶつけ合うということは事実でございます。したがって、これから私が申し上げますことも、そういった法案をつくりますまでの間に議論いたしましたことでございまして、現在においても、なおかつこれにこだわりまして、この法案に大蔵省が反対の態度をとっておるという趣旨ではございませんので、その点あしからず御了承願いたいと思います。  こういった法律案をつくりますについて、大蔵省として問題であると言いました第一の論点は、簡単に申しまして、第一番目にはわが国金融制度から考えまして、郵便貯金というのは制度が一貫して国民大衆貯金の受け入れ機関である。したがって、そのためにいろいろと特別な貯蓄増強のための、定額貯金制度であるとか、あるいは税制面において、これは優遇といって、かつてしかられたことがございますけれども、特別な、民間金融機関の預貯金に対する制度と違った制度をとっておる。そういうふうなことで、純粋に貯蓄機関としていままで歴史的に育ってきた。したがって、これに新たな与信機能というのを持たすということについては、これは金融制度上非常に大きな変換につながってくるので検討する必要があるということが第一点でございます。  それから第二点の問題といたしましては、財投に関連する問題として取り上げましたけれどもわが国では民間金融機関、それから政府関係金融機関というふうに大きく信用事業というのは分かれておりまして、国の営む金融信用事業というのは与信業務と受信業務というのが明らかに分かれておるではないか。郵便貯金としてはその受信業務というものを専門にやっておって、それを財政投融資計画ということで一元的に与信業務を運用しているのであり、したがって、こういった与信業務、受信業務が明らかに分かれて、そして、それがわが国経済の発展なり、あるいは社会生活の改善、そういったことに寄与して定着してきた制度であるにもかかわらず、その受信業務である郵便局の窓口においてこの与信業務までやるということにいたしますと、この財政投融資制度による一元的なそういった資金の運用等の問題から見まして、それは問題となってくるのではないかということが第二点でございます。  それから、第三番目の問題といたしましては、民間金融機関との関係でございまして、これは官業、民業というふうないわゆるなわ張り争いをするわけではございませんけれども、民間の金融機関は、都市銀行から各種の中小金融機関を含めまして、その与信業務というものについては、それまで伸びてきたわけでございますけれども、ただ庶民金融については、最近においてかなり力を入れてやっていこう、それからいろいろな貸し出しの内容金利の問題についても、一生懸命やっていこうというふうなところに、郵便局という、窓口をたくさん持っている官業の金融機関があらわれて、そこで官業、民業の業務上の争いというものが第一線において行なわれることはいかがかというふうなことが第三点でございます。  それから、第四点としまして、郵便貯金金利のあり方につきまして、かつて郵便貯金のシェアというものがそれほどでもないときには、あえて問題にもならなかったことでございますけれども、現在のように、十兆円をこえるような膨大な資金量を持っておる、そういった郵便貯金制度があるわけでございます。しかも、その郵便貯金金利というのは、御承知のように一般金融機関とは違った規制を受けておりまして、郵貯法によって規制を受けておる。いわば金融制度のらち外にあるといいますか、そういった状況でございますが、これが貸し出し制度を認めることによって、ますます巨大なそういった一つの金融機関が出てくる。そうすると、金融の一元的な運営というものに支障を来たすようになるのではないか。  こういったわけで、主としてその四点からこの貸し出し制度については非常に問題が多いということを私たちは申してきたわけでございます。
  134. 栗山礼行

    ○栗山委員 大体問題の予想されておる公式な説明をされたと思います。私は、四点について肯定し得る内容を持たなくてはならないのでありますが、その根拠を私申し上げて、再度あなたと論争を展開するというようなことは、他の委員諸公も御迷惑だということを考えるのであります。  お尋ねせない第二問として、一般公定歩合及び金融機関の金利値下げ問題と郵便貯金の値下げ問題とに関連を寄せて、いみじくもあなたの御答弁があったのでありますが、これなんかもまさに主客転倒の感を私はいたすのであります。私が先ほど大臣といろいろやりとりしていることをお聞きをいただいていたように、あなたの言われておる一つの論点の郵便貯金制度上の問題というものについての取り上げ方が、全くそれは小学校の算術計算の一つの答えの理論の展開をされておる、こういうことであろうかと思います。私はそこに発想の大きな根源の誤りがあるのじゃないか。  それから、割り切って、財投原資という郵便貯金制度の本来性からその種の運用、与信的な運用制度をやってまいるということについては問題がある、こう言われるのであります。これは先ほど申し上げているように、一定の積み立てたものについてのワク内の九〇%案が小坂案でありますが、どういうことになってくるか、政令の決定する問題でありますが、その範囲内でひとつお立てかえを短い期間いたしましょう、これがあなたの言われる金融政策という一つの結びつきになるかどうかということが一つの問題であります。  それからいま一点は、公定歩合郵便貯金金利との関連性をお尋ねいたしますが、法的根拠で、あなたはどこにそういうものが——頭のいい人でありますから、郵便貯金法もおそらくお読みになっていらっしゃると思うのでありますが、臨時金利調整法の適用の中でひとつこれを、金利問題を対処しようというようなことまで水田大蔵大臣が発言されておるということに私は漏れ承っておりますが、とんでもない。大蔵省というものはこれほど横車を大企業のために——私は民社党でありますから、共産党の発想をしたくございませんが、ほんとうに市中金融のためにそれほど必死な反対をされるという根拠は一体どこにあるのだ、こういうふうに考えざるを得ないのであります。本来から申し上げると、この立てかえといいますか、あるいは仮払いといいますか、一つも金を貸さないのです。お預けになって、緊急やむべからざる問題について、絶対かたい、一銭も損しないワク内でお立てかえしよう。利息は、郵便貯金の本旨にかんがみて、営利じゃないんだから、一つの適正な金利をちょうだいしよう、こういうような立てかえ払い制度といいますか、仮払い制度というものが金融政策だという一つのすりかえをされるところに問題があるのじゃないか。そういう事柄がだんだんエスカレートいたしまして政調会の調整となり、結果においてはいろいろ言われたとおりの、あなた方は功成し名を遂げて、いまや日銀も——あなた、きょうの新聞をお読みになったと思うのでありますけれども公定歩合の問題で、郵便貯金金利との、審議会の経過まで見合わして、それとの関連において公定歩合を延期するというようなことを佐々木日銀総裁が言われておる。日銀総裁にもものを申さなくてはならぬという一つの問題は、あまりにすりかえがあり過ぎるのじゃないか、これが私の率直な意見であります。  本来金融政策上の問題からいきますと、やはり一般庶民が、財投原資として大きな役割りを果たしておるのです。十兆に近い預金残高、しかも、貸し出し対象の資料等も私は持っておりますが、財投の大きな役割りを果たしておりますことは御承知のとおりなんです。零細から金を集める、その財役資金の運営が、どのようにわが国経済国民福祉につながるかということが、明瞭に郵便貯金法に示されておるのです。また今後の財政政策、財投政策の本来性というものは、一部の産業資本及び金融資本に奉仕するということではなくて、零細な汗とあぶらの貯金を守り、そうして、それの未来に託する一つの貯金というものを保管いたしますとともに、その人たちの福祉役割りに果たしていくということの内容を持たなくちゃならぬ。汗とあぶらをかいたやつは、一方のほうでどんどん太らせていく。汗のかき損、貯金のし損、こういうふうな戦時中の苦い経験を持っております。戦後の経過も私は承知しております。どだい、郵便貯金について、国民が大きな犠性を戦時中、戦後に負うてまいりましたなまなましい経験を、私は明治の人間でございますから持っておるのでありますけれども、よくもそんなような公式な議論がおわきになるものだ。私は理論的に、感情を申し述べませんけれども、あなたの飛躍であり、そしてごまかし論をこの委員会に少なくとも展開されておるという感が抜け切らないということだけ申し上げて、あえて論戦をいどむということなく、各論でまいりたいと思います。  金融の問題については、少なくともいままでの景気浮揚というものの状況は、金利政策によってある程度チェックと方向づけをいたしておったという時代もございます。しかし、いま景気の浮揚をはかってまいるとか、あるいはこれからの日本経済の浮揚と安定化をはかってまいろうということについては、財投その他による経済政策というのが、これからのポイントでしょう。そうでしょうが。しかも、産業の資本なんかというものも、いままでに設備投資過剰という無原則と無方針のことが、今日の日本の混乱と経済の不確定な要素になっておる。そこへまた膨大な借金をして、何とか経済の浮揚をはかってまいろう、こういうことでありますが、私は率直に申し上げますなれば、金利の問題からいきますなれば、銀行それ自身の合理化と、銀行の不健全な経営体がございますから、この中で金利をみずから定めて、そして預金者について負担を与えないという制度の行政指導をされるということが、本来の大蔵省のこれからの政治の役割りでなければならぬというふうに考えておるのでありますが、こういう点から申し上げましても、私は非常に基本的な相違点が見出されるのであります。特に財役の原資、しかも零細な国民のそういう一つの貯金であったものが、吉凶禍福について、あるいは一時短い形において、貯金はしたいが、減らしたくないが、何かやすい一つの運用はないかということで、それを貸してくださいということについて運用するという制度金融政策だと、こういうはめ込み方で規制をされるという大蔵省のそれこそ頭と政策を転換しなければ、日本の一大危機に直面いたしておるということを、私はあえて言わざるを得ない、こういうことであろうかと思うのですが、いかがでしょうか。
  135. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 御答弁するには非常に役不足でございまして申しわけございませんけれども、私が先ほど金融政策の一元化と申しましたのは、郵便局の窓口でその貯金担保にして一口当たり十万円までお貸しするということが、金融政策そのものに影響したということではございませんで、むしろそのようにしてますます郵便局の窓口に集まる貯金が多くなって、資金量が多くなってくる。そうすることによりまして金利政策の一元化が阻害されるおそれがあるというところを問題にしたのが大蔵省でございます。御承知のように、金融政策は貸し出し面、それから吸収面、いろいろとございますけれども、その中で金利をどういうふうに操作していくかということが金融政策の非常に大きな柱の一つであろうかと思いますが、ただその一元的な運営が阻害されるのがこわいということを申したわけでございます。
  136. 栗山礼行

    ○栗山委員 これは何時間やりましても平行線におちいると思いますから、後日速記を見ていただいて、大蔵省は硬直な方向ではいけないというときに来ておるのではないかということだけは——何もかもすぐれた頭脳を持っておる皆さんでありますから、特に皆さんの頭の転換が、日本の政治の未来を方向づける重要な要因になるということを私はこの公式な委員会で申し上げて、いままでの経過についてあえて苦言を申し上げておきたい、かように考えております。  農林省さんですか、これもまたうまい説明をされたら困るのでありますが、いろいろ関係団体をかかえていらっしゃるので、その立場においては私も理解する。私も実は、先ほど申し上げた農協と深い関係がある。廣瀬郵政大臣でも、農協に見放されたらおれは困るんだと言うほどで、いわんや小党野党の私どもは、農協をどのように評価をいたしておるかということは、これはもうほんとうに与党の先生よりもっと深刻なものがあるわけでございます。あなたのところが反対されるということ、それはもちろん一つの新例及びそういう金融機関との関連でありますが、一つは郵便貯金のいわゆる立てかえ払い制度であります。これはなかなかじょうずにいいますと立てかえ払い制度、これを契機に火事どろで、どさくさまぎれに収穫を得ておられるのが農林省である、こういうふうな結果が出てまいりますが、あなたのとこるは、この問題が閣議やあるいはいろいろ大臣折衝や行政サイドで折衝されて、どのように評価をされてこの問題に取り組んでこられたかということについてお伺いいたしたい。赤城農林大臣にかわって、ひとつゆう然としてやってもらいたいと思うね。
  137. 松元威雄

    ○松元説明員 まず、この経過におきまして、農林省がこの問題に対していろいろ申し上げましたのは、基本的にはこの制度が農協、漁協の経営にどのような影響を与えるかということを、いろいろ心配をいたしたわけでございます。御案内のとおり、もちろん農協というのは、本来農民の組織でございますが、一部準会員等もございますし、員外利用もあるわけでございます。そこで、現在は農協も漁協も、金融機関として預金も引き受け、貸し出しもいたしておる。それに対しまして、郵便貯金のほうは、貯金の受け入れということでやっておる。そこで一種のバランスがとれている。もちろうお互いに、ある意味では商売上競合する面もありますけれども、一種のバランスがとれている。それに対しまして、新しく出た問題が御承知のとおり預金担保貸し出しでございます。それを始めますと、それがいわば貯金吸収の道具になる。そういたしますと、末端においてはさらに競争が激化する。そうなると、これはなかなかむずかしい問題になるわけでございます。したがいまして、この制度を始めるにつきまして、農協、漁協の経営にどのような影響を与えるか、そのためには、この制度の実施についてどういうことを要望するかということで、いろいろ協議し、検討したわけでございます。同時に、これは単にこれだけでは困るというわけで、確かにそれだけでは済まぬわけでございまして、農協、漁協自体もみずからの経営をしっかりせぬといかぬわけでございます。  そこで、ただいまのおことばではございますけれども、実はそこにございます預金者保護制度あるいは為替問題というようなことについては、私たちとしますと前からいわば懸案事項であったわけでございます。この問題は、本来ならば私たちが十分検討して、何とか実現したいと思っておったわけでございますが、農林漁業をめぐる金融問題でなかなかむずかしい問題がございまして、簡単にできなかった経緯もございます。しかしながら、預金者保護につきましては、これは一般金融機関につきましては、四十六年四月施行になった。その場合、農協、漁協というものは、金融業務以外にいろいろ事業を営んでおりますから、同列視しがたいということで、一応ワク外になったわけでございます。自主的にやっておる面もございますけれども、さらにこれを強化する必要があるということで、これを契機といたしまして、預金者保護制度の実現をはかってまいりたい。それから為替業務につきましても、これも長年の懸案でございましたが、何ぶん従来は、先ほども触れましたが、農協の数も多うございますし、また事務的に未整備の点もございます。これはみずから経営をしゃんといたしまして、そうした上で制度的に為替業務を認めてもらう、こういうふうに実現をいたしたいということで、ちょっと火事どろと言われますと、いささか、なんでありますが、これは一つの契機ではございますけれども、それ自体前から私どもの検討課題であったわけでございまして、これを契機にみずからを強くしてまいりたい、そういう趣旨でございます。
  138. 栗山礼行

    ○栗山委員 参事官もなかなかじょうずな表明をされていらっしゃる。まことに御答弁としては名答弁ということになるのでありますが、しかし、私からいうと、それほどごまかしのインチキの答弁はない、こういうふうな一つのことばに尽きるのでございます。漁協の問題あるいは農協の問題の制度上の問題や、預金残高や貸し付け残高等についても、私自身はいろいろ資料を持っておるつもりでございます。そういうことをいろいろ公式にお尋ね申し上げたり、農協の役割りあるいは漁協の役割りというようなもの、員外利用の問題等含めまして、これはいろいろ意見がございます。したがって、地域信用組合と信用金庫との間における問題とか、あるいは単協の問題、あるいは農協それ自身の拡充強化、運営問題等、いまや農協自身は、ある地域に行きますと、金融機関が農協の存在かのごとき観を呈するというような内容を持ちますところもございます。これは農協自身の本来の姿でございませんけれども、都市近郊の地域農協というものは、ほんとうの農業協同組合の役割りよりも、どっさり金を集めるという視野で競争されておる、こういうふうなのが都市近郊における単協なり農協の方向づけだ。実際に金を持っておるのはどこかというと、農協の幹部である。私は貧乏人でひがんでいるわけじゃございませんけれども、そういう実情でございます。だから政策政策として、望ましい方向、路線をわきまえてお出しになることはよろしい。しかし、問題は、りっぱな望ましい姿を郵政省が出した。そしてけんかして反対すれば、パンチをきかせたほうが得なんだ、ごね得が利益を生むのだ。こういう姿では、何ぼりっぱな政策の立論を述べられましても、ごもっともだというような形にはいかぬ。政策上の問題についての是非は別にいたしまして、きれいごとをいわれておるのであって、それは筋を通してあなたのほうが議会に、あるいは与党の内部の一つの部会で立法化をされて堂々とお出しになればいい、こういうことでございますけれども、今度の問題は、どさくさまぎれに、あれもこれも承知の上でやることについて認めようじゃないか。こういう条件闘争といいますか、政治取引といいますか、あるいはしてやったりということで、笑いがとまらぬというのが農林省の一つの結果の問題じゃなかろうかということを考えると、実際ひどいじゃないかという私の結論を持たざるを得ないのであります。  これは「郵便貯金預金者貸付制度について 一九七二年五月十九日 政調会長小坂善太郎」でございますから、与党の政調会長さんであることは御案内のとおりでございます。しかも、これは与党の方式か、あなたが言われたことか、あるいは大蔵省の言われた公式な郵便貯金制度についての概念の規定をされております。一ぺん参考に読みます。これは郵政大臣もよく御承知だと思うのですが、こんなばかばかしいことはないのです。  「郵便貯金は、官の営む貯蓄受入のための制度であって、国の営む受信は郵便貯金であり、国の営む与信は財政投融資計画である。」これだけなんです。貯金法の法律の定める内容について一つも生かした内容がないのです。  それで、「郵便貯金の主務官庁である郵政省が貸付事業を行なうことは、預金収集機関として金利面、税制面で有利な立場に立つ官業が民間金融機関を圧迫することとなる。」与党の先生もたいへんりっぱな政調会長を持っていらっしゃると私は思います。  「さきに郵政省から提案されている、郵便貯金預金者貸付制度庶民金融とよばれ、一般から歓迎されているところであるが、前述の趣旨において制度上の矛盾をはらんでいる。」間違いだといって皆さんが言われていることと究極にしてなにされておる。だから敵は、福は外、鬼は内、こういうことを大臣はお考えにならなければ、ちょっと困るのじゃないかということを私は申し上げたのでありますが、こんな一つの発想です。これは基本原則を示しておる。あとはなかなかじょうずにやっていらっしゃる。  「しかしながら、この提案預金の中から一定期間の貸出を行なうとするもので、いわば満期前の立替払いである。」なかなかここは政治家であります。うまいことを言っております。  「即ち実体が立替払いであるという点において、この際、左記によりこれを取り上げることを適当と考える。」だから庶民ローンでない、こういうものだ。こういうふうにものを区分されて、省がいろいろなにされた。  一人当たり十万円の問題の明文化の問題とか、最低限度六カ月、貸し出し金利はコストの逆ざやがないようにせよとか、年間の総額が一千億円の郵便貯金預金者に対する貸し付けがなし得るよう郵便貯金法の一部改正を行なえとか、「わが国金利制度の実効を確保するために、必要な郵便貯金金利について、別途大蔵、郵政両省間で協議」するというワクまではめられておる。  三は、「一人百五十万円迄、貯金金利無税の優遇措置が郵便貯金においても正確に行なわれるよう、他の金融機関預金者との均衡をはかる。」これは筋違いだと思います。  四は、「郵便貯金貸付けの実施と関連し、農漁協の金融体制の整備をはかるため、農漁協貯金保険制度を創設するとともに、為替、国庫金取扱等の業務を農漁協に行なわせる。」  新しい立法措置の内容等も別途書いておるのですが、「今回の貸付制度の条件を変更する場合は、政府関係各省間で、意見一致を見た上行なうこととする。」  こういう、政調会がもみにもんだことが、与党の政調会長から各省に示されて、不承不承これはよろしい、あるいは表面はけしからぬ、そしてこの問題を認めてまいろう、こういうことでございます。  先ほど私が大蔵省に言うたように、金利の問題一つを見ても、金利機関それ自身がみずからの金利を下げるということについて、なぜ預金者金利を下げていくというようなことをするのか、どこに保証しようとするのかという一つの問題もお訴えいたします。確かに農協、漁協等も、拡充なり今日的な問題をかかえておりますが、もしそれであるならばみずからの体質改善を、行政指導して、将来の日本の農政、あるいは農協を育成する一つの措置、方策としてこういう政策の方向を樹立してもらいたい。そうでなくて、今度は問題が起こったどさくさまぎれに火事どろでものを申して袋だたきにしてしまって、おれのほうは、ただじゃ置かぬのだ。これだけやってくれたら認めようじゃないか。これと違いますか、どうなんですか。
  139. 松元威雄

    ○松元説明員 先ほどの答弁と同じ趣旨になるわけでございますが、二つございまして、第一点は、郵便貯金がこういう貸し付け制度に乗り出すことが農漁協にどういう影響を与えるか。少しでもその影響を緩和して、モデレートに実施していただくということを要望しておったわけでございます。それと同時に、あわせてみずからも体質改善をしなければならぬ。先生御指摘のとおり、確かに最近の農協系統金融問題は、非常に重要な問題を含んでおります。御指摘のとおり、いわば古典的な農協と申しますか、農業金融中心の古典的農協に対しまして、最近は農家の兼業化の進行等もありまして、かなり変貌しております。それに対しまして農協みずからも対応していかなければいかぬという課題をかかえております。そこで一方では、たとえば本国会でも合併助成法の議員提案があったわけでございますが、合併を推進する、農協系統金融問題につきましても農政審議会の中に金融部会を設けて検討いたしておるわけでございまして、その中でもいま申し上げたことは課題になっていたわけでございますが、その課題は、かりにこれがなくても、みずから検討して実現をはかっていかなければならないわけでございます。たまたま機が符合したと申しましょうか、時期が、私たちは来国会と思って検討しておりましたところが、ちょうどこの時期に関連してこういうことをするという方針を決定した、こういう次第でございます。
  140. 栗山礼行

    ○栗山委員 何ぼ、なにされても、議論するほどあなたが、真実を行政的な能吏として誠実にお答えになるかどうかにつきましては、与野党あげてそれぞれ評価されると思いますので、それ以上あなたと議論をさらに継続するということを避けてまいりますけれども、こういう日本人の悪いどろなわ式な、火事どろ的な一つの方向だけでは、これをもって終わりにしてもらいたいということを私は農林省に強く要請をいたしてまいりたい。ただし、建設的日本の農政の方向については、重大な岐路に直面しておりますので、これは私なりにいろいろ、超党派の農政に参加いたしておりますし、またみずから農民組合の幹部をいたしておりますから、若干愚見がございますが、こういうところで政策論争をする場ではございません。ただ、この問題に対しては何としても了承しがたいという内容だけかたく私は表明をしておきたいと思います。  それから、あと戻りをするようでございますが、磯辺総務課長、先ほどちょっと申し上げましたように、私は筋を立てぬと、感情ではありませんが、大まかにいろいろ申し上げました。どうです。実際は、こんなことをされましたら日本の政治、ますます不信がつのってまいるということにひとつお気づきになりませんか、皆さんは。少なくとも今度の低金利政策、これは私は基本的に賛成でございます。ただし、郵便貯金をそこへ巻き込んで取り組んでいくことや、あるいは銀行が笑いがとまらぬほどもうけておる中で、そうして喜んで幾らでも自然に金利を下げていかなければならぬいまの金融状況下であることは、皆さん御承知のとおり。どうかお使い願いたいということで、借金して、何とか景気の浮揚策をやっていこう、こういうときでありますから、実際は銀行は、安い利息で貸して、お使いくださいということで有効に進めてしかるべきなんです。ところが問題は、銀行はそのまま置いておいて、貸し付けも下げていく、預金者の利息も下げてください、こういうことで、全く銀行の、金融マンとしての本来性を、露骨なエゴを発揮するというようなものにあなたのところがこの問題をからめて、そして財投の根源であり、多くの国民の零細な貯金をもって国の財投に貢献し、しかも、それが困ったときに立てかえ払いを短い期間でしてくれというときに、金利まであなたのほうの支配下に置き、金融機関や産業資本に奉仕しようという一つの姿勢、私はこれは大臣がおられたら、こんな大臣ならおやめなさい、もうみずからわが国あぶなしということを私は提言するつもりだったのでありますが、所管課長のあなたは、私が申し上げたことについてどう受けとめられるか。かってに言うておれということならそれでけっこうでありますが、謙虚に検討されるかどうか、もう一回お伺いしておきたい。
  141. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 ただいま先生の御指摘のございました市中金融機関の金利が下がっていない、これ以上貸し出した金利を下げようとするためには、まず金融機関の自己努力によってそれを下げるべきだ、一般の大衆預金金利まで下げて、金融機関は全然自分の腹は痛まずにぬくぬくと過ごそうというのはけしからぬという、これはまことに私は同感でございます。私らとしては、一昨年の十月以来公定歩合引き下げが、五度にわたって行なわれました。その公定歩合引き下げ幅が一・五%でございます。それに対しまして、市中の金融機関の貸し出し金利の下げ幅というものは、実は私どもが期待したほど下がっていない。過去、昭和四十年あるいは四十二、三年、あの当時の公定歩合引き下げ、それからまた市中金利の追随幅、それに比べますと現在の金利の下げ幅が非常に低い。それは大蔵省としてもはなはだもって不満なことであります。そういったことをやっておるわけでございますけれども、さらに一そう金利の低下をはかっていくために、この際また第六次の公定歩合引き下げをやろうというのが日本銀行のほうの考え方でございます。  ただその場合に、やはりこれ以上下げてまいりますと、一つにはまず純粋に金利体系の面から見まして、非常におかしなことがございます。たとえば現在の金利水準を見ますと、公定歩合が四・七五でございます。それから市中金融機関のプライムレートが五%でございます。そして一年定期預金が五・七五%、それからコールレートというものが、これが翌日ものが四・七五でございます。こういうふうな金利体系を見ますと、極端なことを言いますと、一流企業というのは金融機関からプライムレート五%で金を借りて、それを定期預金にする。銀行から金を借りてただ定期預金にしておくだけで、その間年〇・七五%の利ざやがかせげる、こういうふうな妙なかっこうになっております。  これはなぜこんな妙なかっこうになったかといいますと、公定歩合を中心にいたします貸し出し金利、それからそれに追随いたしますところのプライムレート、それだけが下がってきまして、そうして預金金利について全然手がついていないということでございます。世界各国を見ましても、金利を上げたり下げたりいたしますときには、当然その吸収面でありますところの預金金利、これもそれに追随して上げ下げするというのはこれは当然のことでございまして、いろいろなところで申し上げるわけでございますけれどもわが国金利の弾性値、標準偏差を見ますと、ほとんどゼロに近い。各国は非常に大きくフラクチュエーションしています。日本ではそういった金利の標準偏差はほとんどゼロに近いというのが最近の現状でございます。したがいまして、この際金利体系というものを正常化する必要があるということがまず一つでございます。  それから同時に、先ほど申しましたように、低金利政策を遂行しておりますにもかかわらず、一般の約定金利が下がらない。したがって、この際金融機関に対しては一そうの努力をさせるということは当然でございます。事実また都市銀行等につきましてはそういった余力がございます。ございますけれども、中小金融機関、そういったところにつきましては、だんだん余力がなくなってきている。一つには、貸し出し金利だけではございません、コールレートというのが極端に先ほど言いましたように下がりまして、雑金の資金の運用面に依存しておりましたコールレートが非常に下がってきた。これが、預金を吸収してそれを出す、そのことで全く逆ざやが出ております。この調子でいきますと雑金融機関というものの経営破綻は目に見えております。したがいまして、雑金融、雑というと非常に申しわけございませんけれども、いわゆる相銀、信金がこれ以上貸し出し金利を下げようとすれば、きわめて危険なところに資金を貸すか、あるいは全く逆ざやで貸すかいずれかに迫られている。つまりその運用資産面において非常に不良資産をかかえるか、あるいは経常収支面で非常に悪化するかいずれかに追い込まれてきている。したがいまして、公定歩合を下げ、それから市中の自主規制金利を下げ、プライムレートも下げていく、これを実効あらしめるためには、どうしてもそういった中小金融機関を中心とするコスト面の問題を解消しなければならないというのが私ども考えでございます。  しからば、そういった弱小の金融機関、いわゆる限界金融機関を温存しておく必要があるかという問題が起こるかと思いますけれども、これにつきましては御承知のように三年ほど前でございますか、金融機関の合併及び転換に関する法律というのをつくりました。これによって弱小金融機関の合併あるいは転換等については強力に指導しております。それからまた同時に、昨年は預金保険法をつくりまして、こういうふうな金融機関が経営破綻いたした場合には、預金者一人当たり百万円までの限度においてその預金者預金をカバーするという制度もつくっております。ですから、一方におきましては、こういった限界金融機関あるいは弱小の金融機関の経営合理化、整理、淘汰ということは、当然覚悟してやっておるわけでございますけれども、やはり一挙に、こういった金融機関が次々とつぶれていくということになりますと、これは昭和二年の金融恐慌の例を考えるまでもなく、単に金融機関の経営破綻ということだけでなくて、これは大きな社会不安につながってくるのみならず、そういった雑金融機関が全部整理、淘汰されまして、そこに都市銀行の店が出てきたらそれでいいじゃないかということに対しましては、これは私たちとしては非常な疑問を持っておりまして、やはり一般庶民大衆が気軽に資金の融通を受けるためには、都市銀行のようないかめしい店ではなかなか行けない。そうすると、ずっと地元の人たちが経営している信用金庫であるとか、信用協同組合であるとか、あるいは農業協同組合であるとか、そういった庶民金融機関というのがどうしてもなくてはいけない。これはたとえとしては非常に悪うございますけれども、たとえば都市銀行というのは総合病院みたいなところ、庶民金融機関というのはこれはいわば町の開業医みたいなものだ。したがって、こういう金融機関の経営の合理化をすることがやはり必要でございますけれども、それが正当に営業できるように考えなければいかぬというふうなことも考えております。  かたがた、そういったことで一口に申しますと金利体系の正常化と、それからそういった一そうの金利低下をはかっていくということを、金利面それから行政面両方で達しようというのが今度の政策でございます。
  142. 栗山礼行

    ○栗山委員 いろいろあなたの博識の点をお伺いを申し上げました。私はそれなりに一つの立て方が存すると思います。しかし、いろいろ問題になっております、たとえば五月二十七日の毎日新聞で、岡崎嘉平太先生とそれから法政大学教授の力石先生、それから例の郵政審議会の会長でございます藤井丙午先生の座談会もいろいろこれに載っております。郵便貯金の同率は無理、貯蓄心をそこなうおそれ、円対策は公債で、というようなことで、時間がございませんが、なかなか、いろいろりっぱなお説がそれぞれ記載をされております。私は相当資料を用意いたしておりますけれども、いろいろ論者がございます。そういう中で、わが国金利体系あるいは金融政策の一元化、こういう一つの問題をとらえておるわけでありますが、確かに、今後の財投型の景気浮揚策というものあるいは財投というもののいままでの一つのあり方、今後の日本経済の方向づけというものは、大きな転機と内容の転換がなされなければならない状態に立ち至っておるということを、私はオーソドックスに先ほど申し上げました。金利の体系の一元化の問題が、郵便貯金という本来性の異色のものと、そしてみそもくそも引っかかえてこれで抱き合わせて一つの体系にしようという、これは皆さんの単純素朴な頭でありまして、頭の切れた人のやるべきことではないのです。汗をかいて苦労した人のやったことではない。エリートの一つの観念でものを運んでいらっしゃるという内容のものだ、こういうことで、私は若干苦言を呈しまして、大蔵省の今日のゆがんだ一つの方向路線について転換を求めるということを申し上げて、私は農林及び大蔵の関係者に——土橋委員の問題はよく存じませんが、私は、以上両省について質疑を打を切ってまいりたい、こう考えております。  そこで、問題は、これからそういうようなことを郵政省大臣に申し上げることに相なるわけでありますが、先ほど読んでまいりましたようなことが、結局、いろいろ苦心をされた点はわかるのでありますけれども、私からいうと、これは小坂調停案という一つの内容だ、政治的に。しかも、あなたのほうと、それから大蔵省、農林省との考え方というものと、一つの相違がございません。そこで、私は残念なことに、なぜこういうふうな誤った方向に対し一線を引いてもらえなかったということ、少なくとも明記されておるのだから、具体的に。ここではあなたが〇・五%大蔵省から要求された、いろいろ抵抗されたけれども、最後には〇・二半にひとつ下げてくれないかというような妥協案まで提示されたということが伝えられるわけであります。これは真相はよく存じません。いわゆる一つの妥結をするという、政治的妥協ということになりますか、与党内の一つの調整に従わるを得ない、こういうことになりますか、そうすると、それを前提と踏まえてものを運んできておる。そして、帰ってきて郵政審議会にかけてまいるというような一つの事柄については、私は、大臣の諮問機関でございまして、しかも法制化されておる審議会の問題として審議されるにあたって、前提をつくってひとつ審議されるということについて、いささか行き過ぎがありはしないかというような感をするわけであります。  資料をちょうだいいたしましたが、五月二十九日の月曜に開かれました郵政審議会の議事の要旨、この中には賛成論者、あるいは反対論者、あるいは現実を見直してひとつ妥協論者、それぞれのいろいろ意見が載っております。六月二日に続いて開かれました問題等についても、賛否がそれぞれ載っておりまして、いずれも傾聴すべき内容だと思いますが、また今回の一つの処置が、郵政省の取り組んだ内容について、私はもっと勇敢に、初心貫くということで進めてもらいたかったという感がいまなおこれはあるわけでありますが、まあ結論を伺いますと、私は、こういうことだと思います。いまさら私どもは、貸し付けを二十万円にしろとかあるいは返還期限を一年にしろとか、そういうふうな酷なことを申し上げようといたしません。もっと基本的な一つの問題の筋をなにするのであります。  最後に私はお尋ねを申し上げるのでありますが、二点ございます。  その一つは、審議会が、私の理解する範囲内におきましては、今度は最後のまとめをする一つの審議会になるのか、あるいは草案を、いろいろないままで論議された問題を集約して、そうして大臣に答申をするという一つの内容の会合になるのか。また一つのそういう経過の過程にあると思うのです。こういう中で、あなたを支持する郵政省が、これはがんばらなくちゃならぬという支持の意見も具体的に出ております。また反対するための御用的意見が出ておりますことも事実であります。またここまでくれば、こういう一つの中身を取って、実を取って進んだらどうか、こういうふうな一つの案もこの中に出ておりますことは事実でございますが、お尋ねする一点は、大臣は、なお公定歩合引き下げに名をかりた郵便貯金預金者金利引き下げという事態について、断固として最後までがんばって進むという勇断と英知ありやということが一点でございます。この点をまずお伺いいたします。
  143. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 栗山委員がたいへん誤解を持っていらっしゃるので、私は心配いたしておりますわけでございますが、郵便貯金の利率引き下げの問題については、何ら大蔵省その他と話し合いをしたことはないのでありまして、大蔵省が〇・五%引き下げを要請しておるのに対しまして、郵政省が〇・二五%程度でがまんしてもらいたいというような趣旨を述べておることは全然ございません。現在は、郵政審議会に諮問いたしておりますのは全く白紙でございまして、こういう時節にあたりまして郵便貯金の利子のあり方はいかにあるべきかということについて、第一回の諮問をいたしまして、いまその諮問に基づきまして郵政審議会で論議を重ねております段階でございます。総会を二回いたしまして、昨日から小委員会に入っておりますわけでございますが、この小委員会も何回続きますか、相当回数重ねまして一応の結論が出ましたならば、さらに総会にかけて第一回の答申があろうかと思っておりまして、この答申は、郵便貯金の利率はこういう時節であるにかかわらず全然引き下げる必要はない、あるいは幾らか引き下げる必要があろうかというような答申ではないかと思っておりますが、そうなりますと、私の考えでは、まだ具体的にはっきり打ち合わしておりませんけれども、全然引き下げる必要はないということでございますならばそれで結論が出るわけでございます。それに基づきまして私の決断というものが下りますわけでございまして、その答申に基づいて私の腹をきめるということになるわけでありますが、それとは違って、もし幾らかでも下げなければならないということになりますれば、しからばその引き下げの幅は幾らであるべきか、また引き下げの時期はいつ実施すべきかというようなことについて諮問をしなければならないというように私は考えておりまして、現在の段階は全く白紙でございます。そのような打ち合わせは絶対いたした事実はございません。
  144. 栗山礼行

    ○栗山委員 以上、私はむしろ激励し、あるべき郵政業務の方向をひとつ建設的に推進したいという書生の一人でございますから、大臣の言は大臣の言として私は頭にとめておくということにいたしてまいりたいと思いますが、そのかわりに申し上げておきますよ。後日わかりましたら、あなたが郵政大臣でございましても、そしてあなたが新しい内閣のもとで国会議員でございましても、あなたの政治責任は必ず追及する。みずからその責めを果たすべきだということを深く御自覚いただかなくちゃならぬ、こういうことだけ私は付言をいたしてまいりたい、こう考えております。  架空の問題を議論いたしますともう二、三点あるわけでございますが、まだあなたは白紙で、そして審議会の答申待ち、こういうことでございます。どうもそこのところこれ以上突っ込んでまいりますと、いろいろむずかしい問題等起きますから、これでとめおきまして、二、三の関連する質問もこれで中止をいたしてまいります。しかし、いずれにいたしましても、非常に卓見で、理想を目ざし努力されたことは高く評価をして、その御労苦に私は深甚の敬意を表しますけれども、今日の段階までの経過をながめてまいりますときに、はなはだ残念しごくな状態にいまやある。また、片や預金者が、郵政省に対して拍手かっさいした人たちが、怨嗟の声で郵政業務をながめるであろうということと、もう一つ、暴言ではございましょうけれども、あなたの発想をやられることによって郵便貯金がふえてまいるでしょう。決して財投の原資が減ってまいるのではありません。ふえてまいるのです。ところが、このことでどれだけの弁明をされて筋道を立てましても、私は来年の財投の資金計画が立つかどうかということの一面を憂えるものであります。それほどものを貸してもらっても、貸してもらうのにいちゃもんつけられて、来年から金を貸すといっておるけれども郵便貯金金利がこれと抱き合わせによって下がってまいるんだ、このデメリットというものは、国民感情は鋭敏でございますから、郵便貯金に信を置かざる内容に発展するであろうということを深刻に憂慮する一人でございます。皆さんも、大臣も、そういうことのないことを願っておりますけれども、そういうことのあり得る客観情勢というものをながめておるということを私はとくと大臣に申し上げて、私の質問を終わることにいたします。
  145. 高橋清一郎

    高橋委員長 土橋一吉君。
  146. 土橋一吉

    ○土橋委員 いま議題となっておる郵便貯金法の一部を改正する法律案の具体的な質問をする前に、前々から私が要求しておりました高知県南国市の稲生郵便局の問題など、二、三短い時間でただしておいて、そして二番目には金利の問題、三番目には法案の問題を一時間以内に質問したいと考えておりますので、ごく簡単に答えていただきたいのであります。たくさんのことを答えてもらいますと非常に迷惑千万でございまして、親切なお答えにならないのでありますので、その点をあらかじめ申し上げておきたいと思います。  ちょうど先ほどの休憩時間に、私は郵政局の方から「稲生局貯金違則処理事件」というので、これだけのものをいただいたわけです。この中には南国市の稲生郵便局の問題がございますほかに、他の質問した案件についても一応回答しております。しかし、この回答が非常に不十分で、誠心誠意を欠いておるといおうか、内容がきわめてずさんな説明をいたしておるのであります。  そこで、郵政大臣にもう一回私はお尋ねを申し上げますが、この前松山郵政局の永末郵政局長に対する責任の追及をしておいたわけですけれども、この中の一つの核心になっておる問題は、沢本さんというのが四十六年の四月ごろに郵便切手十五円を張るのを忘れて自分の局の中の区分函に入れておいた。ところがこれは十五円の切手を張らない、郵政のサービスをごまかしたということで処分をしておるわけです。郵政のサービスというのはポストに入れるか、あるいは窓口に持っていって、それを区分して、さらに行のうに締めて、自動車あるいは船に乗せて、その到達局でまたさらにこれを区分して、それが配達の手にかかって相手方に配達されたときに初めて郵便のサービスを盗み取ったということになるのであります。すべて犯罪は、犯意あり、行為あり、その結果がなければ犯罪は成立をしないのであります。この基本的な原則を侵して、この二番目の説明を見ると、やはりサービスをごまかしてというふうに説明をしておるのだが、一体こういう説明は、郵政局は刑法の基本的な原則を知らないのか、あるいは知っておってこういうでたらめな処分をやるのか、この点について北さん、簡単に答えていただきたい。そういうことを知っておったか、知らないのか、それでも犯罪であるというのか、犯罪でないというのか、イエスかノーで答えていただきたい。
  147. 北雄一郎

    ○北政府委員 御本人がこの料金別納の判こを押しまして、切手を張らないでそれを手元に持っておったのではなくて、その局の差し立て郵便物を区分して入れる区分函に入れておった。そこを発見されたわけでございますから、発見されなければそのまま他の人の手によりまして差し出され、相手方へ到着すべきものであります。したがいまして、区分函へ出したということでもって差し出した、かように認定したわけであります。
  148. 土橋一吉

    ○土橋委員 いまの説明を聞いてわかりますように、もとは労働組合も官庁側においても、おのれが転勤をしたとか、あるいはいろんなあいさつ状を出すときに、通信事務で無料で出しておったわけです。また全逓労働組合でも、つまり労働組合の分会の責任者から地本あるいはその地域の労働組合の分会なり本部に、いわゆるここに書いてある別納印を押してやることをお互いに了承をした上でやっておったわけですよ。ところが、この話し合いがついてしまってから、通信事務もやらない、また別納もやらないというので、その事実がはっきりしておるにかかわらず、なぜそういうでたらめなことを言うのですか。しかも、これはサービス全部をやっていないじゃありませんか。ただ局の人が間違えてボックスに入れた。どこに郵政省はサービスをやったんですか。いま申し上げるようにそういう意図があって、しかも、その行為を完了してサービスを侵したというのなら、これは十五円切手を張らないでそういうことをやったということになる。現に同じ局内のそのボックスの中にあるんだ。それでどうして犯罪行為が成立するんだ。刑法の原則を知らないでそういうことをやったのか、知っておってもそれをやったのか、イエスかノーで答えてもらいたい。
  149. 北雄一郎

    ○北政府委員 転勤のあいさつでございましても、むろん通信事務とか料金別納でいくものではございません。それから先ほど申し上げましたように、本人がまだ手元に持っておったというのであれば、いわば未遂でございましょうが、すでにそれを当該局の区分函に出したということは、他の区分函の関係の職員によってそのまま差し出され、局外へ出ていく、こういう動きの中に入ってしまっておるわけでございますから、やはりこれはとがむべきこと、こういうふうに考えております。
  150. 土橋一吉

    ○土橋委員 いま北さんの説明大臣もお聞きになったと思うのです。そういうことで犯罪が成立するのですか。大臣、どうですか。犯罪というのは必ず一定の犯意を持ち、行為を行なって、たとえばけがをさせるとか、どろぼうするとか、あるいは印紙を偽造するとか、そういう事実がなければ処断することはできないのです。局長がそれをもし見たならば、おい沢本君、切手を張ってないじゃないか、早く張りなさいと言えば済むことでしょう。それを注意すらもしないで、直ちに監察を呼んで、さあ犯罪行為だと延べ二十五時間も調べ上げて、減俸三カ月の処分をする。つまり本人の月給の一〇%を三カ月減俸しておる。そんなこと許されますか。もしこれが行のうに入って赤自動車に乗ったというならサービスの一部分をやったということはあるけれども、自分がたまたま間違えて、そして労働組合本部からもらっておった十五円の切手のうち、残りは四枚だ、一枚張れば三枚しか残ってないのが自分のところに四枚あるから、自分でも明らかに張らないでうっかりしておったということを証言しておるにかかわらず、それがサービスの侵奪行為をした、サービスをとった。どこにそういうことがありますか。もし局長がそれを見てわかっておるなら、すぐ本人を呼んで、切手を張りなさいといえば済むことです。どこにそのサービスの提供を郵政省はやったでしょうか。どういうサービスを提供したというのですか。犯罪というのは必ず犯意あり、行為あり、結果がなければ犯罪にならないのですよ。その原則すらも知らないような松山郵政局長というのは、いかにこの問題についてべっ見、つまり偏見を持っておったかということは明瞭じゃございませんか。郵政大臣おわかりになりますか。あなたも局にいらっしゃったからわかるでしょう。局員が間違って切手を張らないで自分のところのボックスに置いた。それは労働組合の関係の人ですよ。それを局長が見たら、おい、切手を張っておきなさいと言えば済むことでしょう。そこへ置いてあるのをよしとして、監察を呼んで、延べ二十五時間も調べて、そうして本俸の一〇%の三カ月の減俸をするというのはどういうわけです。それはどこに郵政省、サービスを提供したのですか。犯罪の基本的な原則からいっても許されないじゃないですか。しいて言うならば、未遂行為じゃございませんか。その発見をしたときに未遂行為じゃございませんか。未遂行為が犯罪行為になるというのはどういうことですか。そんな刑法上の基本原則すら知らない松山郵政局長の責任、重大じゃございませんか。郵政大臣、どうですか。
  151. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 土橋委員の御質問を承っておりますと、いかにも先生のおっしゃることがごもっとものようでございますけれども、まあ私は信頼する北君の答弁でございますから、北君のお答えしていることも真実だと思うのでございまして、もう一回北君から答弁させたいと思います。
  152. 土橋一吉

    ○土橋委員 それならば、時間があれですから、もう一回調べていただいて、その犯罪を構成するかどうかというのが中心でございます。私は犯罪は構成しないと思う。かりに見つかったところで、それはせいぜい未遂のその未遂くらいのものである。これを犯罪行為として取り上げて減俸処分をするのは、犯罪の基本的な構成要件を充足したということにならないわけです。こういうずさんな報告をすることについて、私はさらにもう一回きちっとするということを要求します。  二番目の問題でございますが、ここにこういうことが書いてあるわけです。四十六年十一月十一日、九時十二分から松山郵政局において、稲生郵便局の周辺の方々が、三千名の署名を持ってきて、そうして郵務部長、集配課長、業務課長と四名の代表が話をした。この中には、要するに郵便の遅配の問題や、局長の配転要求の問題や、増員の問題あるいは無集配局の増置の問題等の話があった。この局長は非常によくないからぜひ配転をしてもらいたい、こういう要求をした。ところが、この問題について、事実は何ら処置をしていないわけですね。地域から三千名の署名を持って、この局長さんじゃ困るという話し合いに来たのに、何の処置もしないというのはどういうわけですか。郵政局は、もしそういうことがあっても何もおかまいなしということになるのか、この責任は重大です。地域住民の半数以上の人が署名を持ってこの局長さんを何とかしてくださいということを言っておるのにかかわらず、こういう態度は郵政局として正しくない態度である。それでも正しいというのか、正しくないというのか、簡単に答えてもらいたい。
  153. 北雄一郎

    ○北政府委員 当時、松山郵政局でそういう地域の代表者とおっしゃる方、四名がおいでになって、郵便局の問題だとか、いろいろお話がございました。そのときにいま先生のおっしゃるような陳情書もあったわけでございます。しかし、これは配転ということでございます。したがいまして、人事の問題でございますから、そこでどうする、こうするということを申し上げるべき筋合いのものでもなかったわけであります。しかし、そういった動きがあるということは、郵政局としても十分承知しておるわけでございますので、そういったことを腹に入れておるということは申し上げられるわけであります。
  154. 土橋一吉

    ○土橋委員 腹に入れて何もしないのですか。この前から私がいろいろ質問をして、やっときょうお昼の時間にこれだけのものをつくり上げて持ってきた。その内容については何ら反省するところがない。たとえばその次の京橋郵便局の問題でも、この前私は大臣に、京橋郵便局の第一集配課と第二集配課のそれぞれの課長、課長代理あるいは補佐というような幹部の人が、第一集配課や第二集配課の計画室で、しょっちゅう酒を飲んでおる。そしてマル生運動のことをやっておる。つまり全逓にいたのじゃ昇給しないとか、おまえは全郵政に入れとか、こういうことをやっておることについて私は大臣に強く要求したと思うのですよ。ところが、この問題についてこういうような回答をしておるわけですね。まあ聞いてください。これで一体郵政省が事済むと考えておるのか、この回答をちょっと私は読みます。  「仕事で遅くなった場合、打合会が終った後などで、慰労の意味計画室を利用して簡単にコップ一杯程度飲むことがあるようである(課長または副課長がポケットマネーで買い置きのもの)。局内でみだりに飲酒したり職場秩序を乱したりすることはもちろんいけないこととして指導しているが」、この程度の回答なんですね。冗談じゃないですよ。郵便局の中で課長、課長補佐が一ぱい、酒の買い置きをしておって、終わったら計画室で月に一、二回はやると書いてあるわけなんだ。一体そんなことをやってよろしいのですか。現場の片方じゃ、一生懸命で交代勤務してきた人が仕事をしておる。片方の部屋では歌いながら酒を飲んで、そして赤い顔をしてちょっと来いと言う。おまえ全逓から脱退せいというようなことをやっておる。こんなことが正しいとでも考えておるのですか。この課長や課長代理や局長は、一体どういう責任を負わせたらいいと思いますか。あなた方は全然責任はないというのですか。私が郵便局にいたずっと古いときでも、そんなことはしていませんよ。マージャンをするとか酒を飲むといえば、外へみんな出ていってやっておったですよ。計画室は酒を飲むところですか。しかも、課長や課長代理が酒を買ってとっておいて、一ぱい飲ますなんて、そんなことを正しいこととしてあなた方は私にこういう報告を出しておるのかね。ここに書いてある内容を読めば、何ら反省するところがない。これでも郵政省は正しい指導をしておるというのですか。郵政大臣に聞きましょう。どうですか。
  155. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 人事局長からいま話を聞いたのでございますけれども、時間外、勤務時間以後のことでございますし、計画室でございまして、作業室とは遮断されている、いま先生の御指摘のような放歌高声というようなこともなかったようでございまして、決してほめたことではないと思いますけれども、常識的に、仕事が終わって、買いだめの酒があるから一ぱい飲もうじゃないかというようなことも、これは絶無だとはいえないと思うのでございます。しかし、御忠告の次第もございますので、その辺のことは明朗な健全な職場をつくりますために十分注意してまいりますように指導してまいりたい、かように考えております。
  156. 土橋一吉

    ○土橋委員 こういうことが公然に、あたかも正当であるかのように説明をして、何ら反省をしないところに問題があるわけですよ。私は一々処分せよ、そういうことを言っているのじゃないのです。こんなことをやってくれば、現実に働いている人との関係で、そういう局の幹部、課長とか、課長代理とか、課長補佐という人たちが一ぱい飲んでおって、赤い顔して出入りをするでしょう。そんなことが一体職場の正しい秩序と考えておるのかどうか。なぜこれをやめさせないのか。こういう郵政省の、さきの松山郵政局長の態度、ものの考え方、あるいはこの京橋郵便局の処置のしかた、こういうふうに郵政省は非常に腐敗堕落をしておる。これを直すことなく郵政の業務の刷新なんかできないのですよ。もっと正確な、だれにでも納得できるような報告をあらためてしてもらいたい。こんなでたらめな報告を、しかもきょうの午後三時ごろ持ってきて、先生これでかんべんしてください。一体何を言っているのですか。これはきわめて不都合といわなければなりません。これはあと大臣もごらんになればいいかと思います。いかにでたらめな報告をしているか。これでこの問題は終わりましょう。次に、大蔵省の方にお尋ねしたいのですが、今度の金利の問題は、わが国経済情勢がドル.ショック、あるいは企業が非常に停とんをしておる、そういうような問題で、特にこの間、閣僚会議におきましても、七つの項目をきめまして、そしてあと今月の上旬でございますか、OECDの会議などを開くにあたりまして、日本は、決してアメリカなどに対する輸出はいわゆるダンピング的なことをやっているものではない、国内の整備もしておる、こういう形式だといわれております。そういう中で金利を下げるということがいまの情勢においてなぜ必要なのか。そのことがわが国経済の全体をどのように景気を浮揚させるものであるのか、なぜそういう趨勢に向かっているのか、なぜそういうことをしなければならぬのか、それはわが国の国益上どういう関係がありますか。簡単に三つくらいの要点にまとめて答えていただきたい。
  157. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 お答えいたします。まず第一は、やはり金利水準の低下をはかるということが国内景気対策上きわめて必要であるということであります。これは御承知のように、従来日本経済というのは主として製造業の設備投資を中心に動いてきたわけでございますけれども、最近はそういったことから社会資本の立ちおくれであるとか、それからまたいろいろと非製造業方面に対して資金を流す必要があるというふうなこともございますけれども、御承知のように、製造業と非製造業との金利負担を考えますと、全費用に占めます金利負担の割合というものが、製造業では大体五%程度になっておりますけれども、非製造業、つまり電力とかあるいは輸送機関、こういったものは金利負担が大体一五%ぐらいだというように考えております。とても高金利に耐えられない。したがって、こういった高金利金融負担に耐えられない方面に資金を流す、そしてそれによって今後の日本経済に浮揚力をつけていくということのために金利政策で低金利政策をとらなければならないというのが第一かと思います。  それから第二の問題といたしましては、やはり最近の外貨事情の問題だと思います。御承知のように、輸入金融等を見ました場合には、国内でコールをとって輸入手形を買い取るか、あるいはまた輸入ユーザンスというかっこうで外銀借り入れをするかという問題でございますが、しかし、この場合に関係してまいりますのは、国内金利と主としてアメリカのBAレートとの関連だと思いますが、そういった国内金利とBAレートの金利差が縮まった場合には、外銀借り入れのふえ方が少ない、つまり輸入ユーザンスのふえ方が少ないということになります。したがいまして、国内的にも国際的にも金利水準をさや寄せすることによりまして外準がこれ以上増加することを防ぐ必要があるのではないか、この二点だと思います。  それから同時に、今後の経済政策といたしましては、やはり庶民金融であるとか、あるいは社会資本の充実であるとかいう方面に、どうしても資金を流す必要がある。先ほど申しましたことと関連いたしますけれども、そういうことから低金利政策を推進する必要があるというふうに考えているのだと思います。
  158. 土橋一吉

    ○土橋委員 私は今度の政策は、自由民主党内閣が続く限り、一般庶民や零細な預金者は、郵便貯金をして損をし、払い戻しを受けてまた損をし、元金利息を全部受け取るとき、また大きな損害を受ける、こういうまことにみじめな状態に置かれると思います。  ところが、大きな金融業者は、昨今の税金の長者番付にも載っておりますように、日本銀行を先頭として各市中銀行はすべてたいへんな収益をあげて、軒並みにばく大な資金貯蓄しております。したがって、今度の金利引き下げによっても、借りてもうけ、貸してもうけ、利息引き下げでまたもうける、こういう方式になってくる。つまり資本家階級の有利と、一般勤労者階級や漁民農民の窮迫を告げる、こういう内容であるわけです。  そこで、いまお話しになった抽象的な説明では、金利を下げるという理由が非常に乏しいというふうに私は思うのですよ。問題は、要するに対米輸出の問題だというふうに考えております。いまのユーロダラーのだぶつき問題についての説明なんかでも、これは他に方法があると思う。また、社会資本が非常に金利が安いなんという、特に電力をあげられました。電力はこれは金をもうけるために会社がやっているのです。したがって、一面は公益性を持っているでしょう、しかし、他面では利益を追求している、公害を発生させている、こういうものであります。ですから、私は今度の金利については、先ほど前質問者からもお話がございましたように、金利が安いということは、資本主義体制の中では好ましいことだと思うのですよ。金利が高いのはよくない。しかしながら、郵便貯金がこの金利ワクのうちから考えまして、御承知のように預金額の制限を受けているわけですね。ところが片方は、大資本あるいは法人が預金をいたしまして、ばく大な資金の操作をするわけです。それで、借りてもうけ、また貸してもうける、こういう方式におちいる。片方の郵便局のほうはそうじゃないわけです。それはもう先ほどからずっといわれておるわけであります。百五十万円を限度とする、あるいは住宅資金についてもそうですが、定額貯金や定期預金ども、大体そういう部類なんですね。こういう情勢にありますので、私は金利の安いことは好ましいとは思う。しかし、佐藤政府や自由民主党は、物価をどんどん上げてくる。そのために、定額貯金にしても、あるいは定期預金にしても、おろしてみたときは非常に金の価値は下がっている。そこへもってきて金利を下げるとは一体何ごとであるのか。しかも、この郵便貯金には、この資料によっても、八千万という口座がある。その八千万人の口座の人に対してそういうことをやれば、どんな損害になるか。たとえば〇・五%やっただけでも、約九兆円以上でしょうから、そうすると目に見えて何百億という損害を与えるわけなんだ。ところが資本家は、借りる金は安い金を使っておいて、自分が貸すときにはどうしても高い金利をとるわけです。金利をとらなければ、土地を買ったり株券を買ったりして、とにかく金をもうけることに抜け目はない。こういう制度が許されているわけですね。その合法性を主張されておるわけだ。そうなってくると、百五十万円限度の非常に零細な人が、要するに自民党の政府のもとにおいて物価はどんどん上がってくるから、預金をしておっただけでもすでに損害を受けている。そこに金利が下げられてまた損害を受ける。ダブルパンチじゃありませんか。しかも八千万口座もあるそういう諸君に対して、大蔵省は一体どう考えておるのか聞きましょう。  それと、たとえば市中銀行において金融資本が大口の貸し出しをしておるのは、ある統計によると、七四%までは要するに大金融、企業が金を借りておるといわれておるわけだ。残りの二〇何%、それは中小企業もあるわけでしょうけれども、ほとんど八〇%近い金は全部金融資本同士で借りたり、企業が借りておる。そういうものを保護するためになぜこういう過酷なことをするのか、そういうことを知らないでやっておるのか聞きましょう。
  159. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 お答えいたします。確かに先生から御指摘ございましたように、金利引き下げますとそれだけ預金者の手取りが減るということは、これは事実でございます。しかし、その金利引き下げることによりまして、たとえば電力であるとか、あるいは私鉄であるとか、料金あるいは運賃に金利コストが非常に影響してきておる、そういったような公共料金、それの引き下げにもやはりつながってくる、あるいは一般庶民が住宅を建てる場合の、そういった借り入れ金利引き下げにもつながってくるというふうなことがございますので、金利引き下げによる手取り額を上回って、長い目で見ればやはり庶民大衆にそれが還元されてくるということになろうかと思います。ただ先生御指摘のように、そういった金利引き下げによる中間利潤というものが全然貸し出しの金利に反映しない、あるいは物価の引き下げに反映しないということになりますと、これはたいへんな問題でございますので、大蔵省といたしましてもそういった金利の低下が直ちに庶民に還元されますように、その点については十分に行政指導をするつもりでございます。
  160. 土橋一吉

    ○土橋委員 磯辺さんにもう一回それでは簡単に答えていただきたいのですが、あなたはそういうふうに仰せになりますけれども、現在の私鉄とかあるいはバスとか電鉄というのは大きな企業が経営しておるわけですよ。これらの諸君は、御承知のように今度また料金引き上げを要求してくる。すでに名鉄は三〇数%要求しております。したがって、非常に高いものになろうとしておる。しかし、これらの諸君は、私鉄専業でやっておるのじゃないのです。これらはホテルをやったり、デパートをやったり、スーパーをやったり、特に不届きな者は土地不動産ブローカーをやっておるわけですね。私鉄でもうけた金を、さらにそういう方面で利殖をふやそうとしておる。こういう連中を相手に、いまのような説明では——それは知らない人は納得するでしょう。たとえば日本の円が、ドルと金との交換停止によって価格も上がったといわれて、それじゃ外国の石油が安くなったか、灯油が安くなったのか、あるいはアメリカから入ってくるものは安くなったのか。安くなっていやしないのですよ。そういうごまかしの、うその答弁をしてはいけません。私鉄が、ほんとうに料金を上げて、それでサービスをよくして、安全装置をきちっとして、従業員をふやして、そしてA点からB点までの快適な旅行なり輸送をするかといったら、そうじゃないのですよ。私が大正十五年に出てきたときの国鉄のこみ方と、いまと、さっぱり同じことなんですよ。大正十五年ですよ。四十八年前私は東京へ来た。そのときの東京のこみ方といまと同じことなんです。これは京王電鉄に乗っても同じ状態ですよ。一向サービスは改善されていない。それにかかわらず運賃を上げていく。こういう質本主義の矛盾を基本的に解決をしなければ、この金利引き下げるということについても非常に不公平が出てくるということを私は言っておるのです。大体あなたの腹はわかりました。  次は郵政大臣にお尋ねします。  この日本経済新聞によりますと、二月四日、あなたは総額二百億円以内で具体的の内容指示をするということで新聞に出しております、あなたの写真入りでね。このときは要するに二百億で、大体金額は五十万円から百万円くらいまで貸し出しをしたい、こういうふうに言われておるわけです。おそらくこれについてはだれも非常に歓迎したと思う。特にこの中でこういう例をあげてある。アメリカ、フランス、西ドイツ、ベルギーあるいはスペインなどでは非常にこれがやられておる。特にスペインの場合には、六カ月から一年くらいで大体六十万ペセター、約三百万円の利子四分で貸し出しをする、あるいはスランスの場合でも最高四万フラン、約二百六十万円、これが利子は二%、返済期限は二年から十年、こういうものをヨーロッパの国ではやっておる、だから日本でもせめて五十億から百億くらいやる、こういうりっぱな願望をもっておやりになったのです。ところが、いま法案をながめてまいりますと、この金利とか期限は省令にゆだねる、そして貸し出しは大体九〇%で十万円、どういう都合でこんなに低下したのですか。どういう理由でこんなに、当初の新聞発表されました、これは日本経済です。かなり正確に書いておるようです。ところが今日のこの法案を見ると、その十分の一あるいは五分の一に低下しているわけですね。この経過を、簡単でよろしいです。
  161. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 ただいま御質問の問題でございますが、これは当初二月の初めごろに私がいわゆる庶民金融、正確に申しますと郵便貯金預金者貸し付け、この構想を打ち出した当初のころなのでございまして、いわゆる素朴な私の考え方を申したわけでございます。その後各方面の意見をいろいろ拝承いたしまして、そうして金額は少なくとも、なるべくたくさんの人に潤うように、利便を差し上げるように、先刻申したのでございますけれども、乏しきを憂えずひとしからざるを憂えるというような考え方におきまして、そうすればできるだけ一人当たりの最高制限額を小さくいたしまして、全体の総額はなるべく多く、今度一千億ということにいたしておりますわけでございますけれども、そういうことに考えが変わってまいったわけでございまして、最初の素朴な案が、そのような考えを持ったわけでございます。
  162. 土橋一吉

    ○土橋委員 私は貯金局長にちょっとお尋ねしたいのですが、あなたがお出しになったこの資料によりまして、これを見ると、いまの一千億で半年のうちに十万、そうすると要するに二回入れかわりができるわけです。ここで見ますと、定期貯金のほうは口座数が一万八千口座で現在高は五十二億だといっておるわけです。そうしてこの構成比率は〇.一%だ、それで一口当たりの現在高は二十八万九千円だ、こういう表を出しておるわけです。ところが定額貯金の場合は八千百万口座ございまして、そうしてこの現在高は五兆四千三百三十八億円あるといっておるわけだ。構成比率は七〇・一%、現在高は一口当たりは六千七百円にしかならないといっておるわけだ。こういう構成から見て、いまの年間二回回転をするということから言うならば、大体どの程度金を貸すことができるのか。だあっと郵便局へ来て、さあ十万円金を貸してくださいというときに、予定は大体どの程度の人が来るというふうに予定しているのか。
  163. 石井多加三

    石井政府委員 お答え申し上げます。ただいまごらんになっておりますこの表は、定額貯金は一口当たり六万七千円でございますが、御案内かと思いますけれども、通常貯金は一人一冊しか持つことができないことになっておりますけれども定額貯金は幾口持ってもいいということになっておるわけでございます。現実にわが国郵便貯金平均を見ますと、定額貯金平均二口持っておるというのが実績でございます。したがいまして、この六万七千円の倍、つまり十三万四千円でございますか、十四万程度が現実に定額貯金を持っておられる金額でございます。そのようなことから、今度預金者貸し付け制度をやるにあたりまして一番大きな対象になりますのは、この定額貯金でございます。十四万円くらいが平均でございますので、今度の貸し付け限度の十万円であれば、大体その限度内に入るということでございます。  いま一千億円の原資の問題についてお触れになりましたけれども、大体半年の期間でございますから、二千億円には使えるわけでございます。また現実には、大体半年の期間はお借りにならないで、半分の三カ月くらいでお返しになる方が多いのじゃないかというように考えます。したがいまして、年間を見ますと、一千億の四回転、四千億円というふうに計算しておるわけでございます。また、実際の金額は十万円までが限度でございますけれども一般のサラリーマン金融実態なんかを見ますと、大体四、五万円のお金が必要でサラリーマン金融をお借りになっている方が非常に多いようにわれわれ聞いておるわけでございます。したがって、いま申し上げました四千億円を五万円でかりに割るといたしますと、大体八百万件の件数を扱うことができるわけでございますが、二万の郵便局で扱うわけでございますので、平均いたしますと、一つの郵便局で四百件を扱うことができるというふうな試算をいたしておるわけでございます。
  164. 土橋一吉

    ○土橋委員 すると、全国に約二万二千ぐらいの郵便局があるわけで、一つの郵便局で四百件扱うということになれば、大体一日一件半ぐらいの割合ということだと思うのですよ。あなたがいま仰せになったように、五万とか、四万とか借りたい、いま五万とか四万の金では、とてもじゃないが何をしてもたいしてやっていけぬ。せめて二十万とまとまれば、屋根を直そうとか、あるいは娘の嫁入りに役立つとか、いまよほどのかけ込み融資のような場合以外は、普通の場合ですと、二十万か三十万程度が非常にほしい金だと思うのですよ。もし、あなたのほうでそういう計算で、四万か五万ぐらいだろうなんて考えておったら、これは世間を知らないのもはなはだしいと思うのですよ。いまほんとうに必要な金は、大体二十万前後の金が必要ですよ。もし四万程度考えてそれで試算をして、一つの局で大体四百件で、一日一件半ぐらいだというような金の回転ならば、これは八千百万の口座があるんですよ。そして、積み立ての口座は一千百万あるんですよ。どうしてこれを解決するんですか。そういうことになれば、十万円ぎりぎりまで措りようということになってくるので、その四百件なんていう見積もりは非常に甘い考えではないかというふうに私、思うのですよ。その回転数はおそらく二回以上でしょう。それは私はわかるわけですよ。しかし、とにかく借りるのが四万とか三万くらい借りるだろうなんて簡単に考えても、いま四万とか三万の金ではどうすることもできないわけだ。少なくとも二十万程度の金はみんなほしいと思うのですよ。そうしてくると、計算上においても私は非常なずさんなものがあるのじゃないかと思うのですよ。貸せないよりは貸せることがいいことなんですよ。しかし、私が申し上げたい点は、物価がどんどん上がってくる、そこで一月借りて払っておいてまた借りるというようなことがどんどん起こってくるというふうに私は思うのですよ。初めてのことですから、これから相当研究をしていただきたいと思うわけです。  それで、政令に依存するということは、これは現在佐藤政府の——先ほどからいわれておる金利の問題と深い関係を持っておると思うのですよ。これは、きのうかきょうかの日本経済の記事ですが、郵政大臣の似顔が入りまして、この説明を見ると、郵政省は結局押し問答の結果、〇・二五%を押す考えだろうというようなことを新聞が予測しておるが、郵政大臣はそのような空気を察知しておられるかどうか。〇・五%はできないけれども、大体郵政省も〇・二五%くらいならば認めておる。つまり、ここに、郵政省としては大体〇・二五%ならばよしとするだろうということを、ほかの新聞も書いておりますよ。一体そういう言質を郵政大臣は与えたのかどうか、ちょっとお聞きしたい。
  165. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 そのような言質を与えた事実は全くございません。私が与えた事実がございませんので、私の部下諸君も決してそのようなことを漏らしたことはないと思います。また、具体的にそのようなことは全然考えていないのでございまして、金利の問題については、ただいま郵政審議会の議に付しておるわけでございますから、その答申をいただきまして、最終的には私の決断を定める。それについては重大な決意をもって対処したいということを申し上げております。先刻御説明いたしたとおりでございます。
  166. 土橋一吉

    ○土橋委員 ただ、郵政審議会の藤井会長さんが、これは新聞記者の勘で書いたのか、藤井さんがそうおっしゃったのか、よくわかりませんけれども、こういうことを言っている。「一部には、「表向き論議を尽くし、時間をかければ広瀬郵政相の顔も立ち、また郵貯利下げは〇・二五%で十分と語った藤井会長も引っ込みがつく。いまはひとつひとつ形式を踏んでいるところ」——と楽観視する向きもある。」藤井さんはなかなかりこうな方ですから、おそらくこういうことを新聞記者に発表されたと思うのです。あるいはそういう意向のことを言われたと思うのですよ。ですから、「筋通すと郵政相」という題で、郵政大臣が筋ば通して、時間をかけておいて、そして全体から押されたかっこうになっちゃって〇・二五%を認めたというような空気を、この日本経済ではもうちゃんと出してきておるわけです。だから、私はそこを聞いてみたわけなんですよ。あなたが、絶対にない、私が郵政大臣である限りは、辞表を出してもそんなばかなことを相談に乗らないということであれば、私は非常にけっこうだと思いますけれども、しかし、この内閣はいつ倒れるかわからぬわけだ。もう秒をもって数えるといわれるほどの状態でございますので、これはひとつ郵政大臣国会議員として今後いろいろおつき合しなければなりませんので、信義を守っていただきたいと思いますよ。私は、あなたが郵政大臣のときにそういうことがあっては困りますので、これはきちっとやはり筋を通して、これからもこの問題については努力をしていただきたいと思うのですが。
  167. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 御要請は十分尊重いたしまして対処してまいりたい、かように考えております。
  168. 土橋一吉

    ○土橋委員 最後に、私は、私の発言を妨害するかのように自由民主党、与党議員が騒いでおりますので、一つの質問をして終わりたいと思います。  最近の新聞ではこういうことを書いておるわけですね。私は非常に残念に思うわけですが、「郵便貯金庶民のものに 金持ちの脱税防げ」という題で、読売新聞が書いておるわけです。これを見ますと、「一世帯一通帳、現行利息で」ということをいっておるわけです。これはどこがこういう宣伝を出してきたか、私はわかりませんが、「郵便貯金ほんとう庶民預金にするアイデアがひとつある。住民登録をもとに本人であることをしっかり確認したうえで、各世帯共通の通帳を一冊発行して、この通帳に郵貯でも民間金融機関の預金でもよいから少額貯蓄非課税の範囲まで預貯金ができる仕組みにし現在の利息を保証すればよい。こうすれば脱税も防げる。個人の資産の一部が区役所などでわかることについて抵抗があるかもしれないが、このくらいの思い切った措置をしないで郵貯の庶民性を議論するのは本末転倒ではないだろうか。」という横山二郎記者のこういうのが出ておりますが、郵政大臣はこういうのに対してどういうように考えておられるのか。
  169. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 郵便貯金に脱税があるなんということを言われることはまことに迷惑千万なことでございまして、御承知のように、郵便貯金も各貯金局で名寄せを厳重にいたしております。さようなことはないと私は確信いたしております。
  170. 土橋一吉

    ○土橋委員 それではいよいよ最後に、この内容によって、ある新聞はこう書いております。おもな大企業の銀行借り入れ金について、公定歩合〇・五%引き下げでもうかる額というので、新日本製鉄はいま借り入れ金が大体七千百四十八億円ほどあるわけです。これで〇・五%下がれば三十五億は黙ってもうかるというのです。三菱重工も三千三百九十一億円の借金をしょっている。これは長期の金を借りているわけです。これが〇・五%下がれば大体十七億円ごっそりもうかるというわけです。そのほかに関西電力が、大体千九百十二億円長期の借り入れをしておるわけです。それで〇・五%下がれば大体九億円もうかるというわけです。日立製作所は千三百二十八億円長期の借り入れをしておるわけですね。これで〇・五%下がれば大体六億円もうかる。その次は、日産自動車でもこの方式で大体六億円もうかるといわれておる。ここに書いてある会社五つで、結局五十億円以上の金をもうけるわけです。ところが庶民は御承知のように、物価が上がって、引きおろすとき、払い戻してもらった金は前ほどの値打ちがない。そこへもってきてまた金利を下げられれば、これはたまったものじゃない。ですから、基本的にこの問題については、私は、金利を下げることは絶対反対です。これは法律案の中に明記すべきだと私は思うのです。あるいは附帯決議の中にもきちっと書いて、金利を下げない。しかし、庶民は要求しているわけです。そういう過酷な社会情勢の中でも、十万円でも十五万円でも貸してもらえればけっこうだ、この願いを私はやはり無視するわけにはいかないと思います。だから、自由民主党や佐藤内閣のこのむごたらしい金利政策についてわれわれは反対する。反対した結果、もしこの法案が通らなくなってきたときには、十万円でも貸りたいという人の気持ちをわれわれ共産党としては妨害することになる。これは忍びがたい。結局、納めておいてまた借りる分でも、一まつの希望を持っていると思うのです。共産党は、基本的な自由民主党の金利政策反対だからといって、庶民の願いをここでぶち切ってしまうということは忍びがたいのであります。ガンでわずらっている人を、ガンをなおすというのでガンの治療をしてやったら本人は死んでしまったというのでは、これは問題にならない。ですから、そういう意味でこの法案には賛成します。しかし金利は、やはり断固として附帯決議なりあるいは法文の中に明記すべきであるというふうに思うのです。  もう一つは、この問題は突如としてきょうの理事会で話されました。本来ならば、いわゆる実際の庶民の代表十名くらいと、それから銀行なり業界の諸君を呼んで、公聴会を開くべきだったと思うのです。自由民主党の委員諸君ば、何らそういう手を打たないで、急遽本日のこの委員会でこういうことを決定されました。そういう非民主的なやり方は、多くの有権者である庶民の意思を無視するものだというように私は考えざるを得ない。大阪とか名古屋とか東京でどうして公聴会を開かないのか。この金利問題は国民の死活の問題であります。特に佐藤政府のいまのような状態においては、金利を下げてももうかるのは大資本家、実業家、市中銀行です。  こういうことを付言をいたしまして、私はこの郵便貯金法の一部を改正する法律案に賛成します。しかし、金利は何としても下げてはならない、この点を強く訴えまして、私の質問を終わります。
  171. 高橋清一郎

    高橋委員長 これにて本案についての質疑は終了いたしました。     —————————————
  172. 高橋清一郎

    高橋委員長 これより討論に入るのでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  郵便貯金法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  173. 高橋清一郎

    高橋委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  174. 高橋清一郎

    高橋委員長 この際、羽田孜君外三名より、本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  趣旨説明を求めます。羽田孜君。
  175. 羽田孜

    ○羽田委員 ただいま可決されました郵便貯金法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案について、その趣旨を御説明いたします。  まず、案文を朗読いたします。     郵便貯金法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   この法律の施行に当り、政府は次の各項の実施につとむべきである。  一、預金者貸付制度については、経済事情並びに利用者の需要等を勘案して、貸付限度額及び貸付資金総額の拡大をはかること。  一、貸付期間については、同種の金融機関の実態を参酌して、これを延長するとともに、貸付利率については、この制度趣旨にのつとり、なるべく低位に設定すること。  一、郵便貯金事業の経営努力によって剰余金を生じた場合は、貯金会館等利用者福祉施設のために還元するように努力すること。   右決議する。  この決議案は、自民、社会、公明及び民社の四党共同提案にかかるものでありまして、あらためてその趣旨を御説明するまでもないこととは存じますが、その概要を御説明申し上げたいと思います。  第一は、預金者貸し付け制度につきましては、かねて預金者から強い要望もあり、また、当委員会におきましても再三にわたって貸し付け制度の創設について決議を行なってきたところでありますから、今回預金者貸し付け制度の実現を見ることは、その意味で喜ばしいことと思うわけであります。  しかしながら、この制度内容につきましては必ずしも十分であるとはいえないと思います。  すなわち、貸し付け限度額が十万円というのでは、現在における生活水準あるいは物価の上昇等の経済事情考えましても、決して利用者の需要に十分こたえ得るとは、考えられませんし、また、資金総額一千億円ということでは、貸し付けを受けられない利用者も数多く出てくるおそれもあるわけでありまして、こういうことでは、庶民金融の名に値しないとさえ考えられるわけであります。その改正案につきましては、諸般の事情もあって、このままで認めざるを得ないと思いますが、政府は、今後、この制度を真に庶民金融という名に値する制度にするためにも、この法律の施行にあたって、利用者の需要等を十分勘案して、限度額の引き上げと資金総額の拡大を積極的にはかるべきであるというのであります。  第二は、貸し付け期間と、貸し付け利率についてであります。これらはいずれも政令で定めることとなっておりますが、政府答弁では期間は六カ月、利率は六%を予定しているようであります。  しかし、貸し付け期間の六カ月というのは、同種の金融機関の実態に比して短いように考えられますので、利用者の利便の増進をはかるためにも、この貸し付け期間を延ばすべきであるというのであります。  また、貸し付け利率につきましては、預金者生活上の必要を満たすためにこの貸し付け制度を設けた趣旨にかんがみまして、逆ざやにならない限度でなるべく低位に設定すべきであるというのであります。  第三は、郵便貯金事業の経営努力により剰余金が生じた場合には、郵便貯金国民経済生活の安定をはかり、その福祉増進することを目的としていることにかんがみまして、この剰余金を郵便貯金会館等福祉施設のために還元するよう努力されたいというのであります。  以上、簡単に、御説明申し上げましたが、全会一致御賛成くださるようお願いいたします。(拍手)
  176. 高橋清一郎

    高橋委員長 これにて趣旨説明は終りました。  採決いたします。  羽田孜君外三名提出の動議のとおり、本案に附帯決議を付するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  177. 高橋清一郎

    高橋委員長 起立総員。よって、附帯決議を付するように決しました。  この際、廣瀬郵政大臣から発言を求められておりますので、これを許します。廣瀬郵政大臣
  178. 廣瀬正雄

    廣瀬国務大臣 このたびはたいへん御熱心な御審議をいただきまして、ただいま郵便貯金法の一部を改正する法律案の御可決をいただいきましたことを厚く御礼申し上げます。  当委員会の御審議を通じまして承りました御意見、御論議されました点は、ことごとく私どもの深い教えとして拝聴いたしました。  また、ただいまの附帯決議につきましては、政府といたしましても、今後郵便貯金事業を進めていく上におきまして、その御趣旨を十分尊重してまいりたい所存でございます。  まことにありがとうございました。(拍手)
  179. 高橋清一郎

    高橋委員長 おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  180. 高橋清一郎

    高橋委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  181. 高橋清一郎

    高橋委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時一分散会