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1972-05-16 第68回国会 衆議院 地方行政委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月十六日(火曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 大野 市郎君    理事 上村千一郎君 理事 大石 八治君    理事 塩川正十郎君 理事 中村 弘海君    理事 豊  永光君 理事 山本弥之助君    理事 小濱 新次君 理事 門司  亮君       高鳥  修君    中島 茂喜君       中山 正暉君    永山 忠則君      橋本登美三郎君    宮澤 喜一君       三池  信君    綿貫 民輔君       井岡 大治君    山口 鶴男君       横山 利秋君    桑名 義治君       林  百郎君  出席政府委員         警察庁長官   後藤田正晴君         警察庁刑事局保         安部長     本庄  務君         自治政務次官  小山 省二君         消防庁長官   降矢 敬義君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部防犯少年課         長       川崎 幸司君         警察庁警備局警         備課長     鈴木 貞敏君         労働省労政局労         働法規課長   岸  良明君         労働省職業安定         局業務指導課長 加藤  孝君         消防庁予防課長 永瀬  章君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ————————————— 委員の異動 五月十六日  辞任         補欠選任   細谷 治嘉君     井岡 大治君 同日  辞任         補欠選任   井岡 大治君     細谷 治嘉君     ————————————— 五月十三日  地方公務員共済組合制度改善等に関する請願  (山口鶴男紹介)(第三〇八二号)  同(山口鶴男紹介)(第三一二〇号)  同(小濱新次紹介)(第三一五五号)  同(山口鶴男紹介)(第三一五六号)  同(山口鶴男紹介)(第三二一〇号)  同(山本幸一紹介)(第三二一一号)  同外五件(横山利秋紹介)(第三二四三号)  地方公務員退職年金スライド制実施等に関す  る請願八田貞義君外四名紹介)(第三一五四  号)  ドライブイン等において酒類の販売を禁止する  法律の制定に関する請願菊池義郎紹介)(  第三一五七号)  同(倉成正紹介)(第三一五八号)  同(中島茂喜紹介)(第三一五九号)  同(細田吉藏紹介)(第三一六〇号)  同(石井桂紹介)(第三二四二号)  特別区の自治権拡充に関する請願山本政弘君  紹介)(第三二〇九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  警備業法案内閣提出第八五号)  消防に関する件(大阪デパートビル火災事故  に関する問題)      ————◇—————
  2. 大野市郎

    大野委員長 これより会議を開きます。  消防に関する件について調査を進めます。  大阪千日デパート火災について、当局から報告を求めます。小山政務次官
  3. 小山省二

    小山政府委員 御心配をおかけいたしました大阪千日デパート火災概要につきまして御報告を申し上げます。  去る五月の十三日夜発住いたしました大阪市千日デパート火災は、百十七名というとうとい犠牲者を出す惨事となりました。まことに痛ましい事故であり、心から遺憾に存じ、災いにあわれた方々の御冥福をお祈りするとともに、御遺族に対し衷心よりお悔やみ申し上げる次第であります。  以下、その概要について御報告を申し上げます。  出火場所は、大阪市南区難波新地にある千日デパートでありまして、火災は、五月十三日二十二時四十分ごろ消防機関側覚知され、翌十四日七時四十一分に鎮火したものであります。  事故のあった千日デパートは、鉄骨鉄筋コンクリートづくり地下一階地上七階建てで、延べ面積は二万六千五百平方メートル、高さは約二十二メートルございました。この建物は、昭和七年に建築され、昭和三十三年まで歌舞伎座として使用されてまいりましたが、その後、昭和四十二年九月に、貸し店舗として、現在の使用状況の形で建築確認を済ませました。現在は、地下一階を機械室及び店舗に、一階、二階をデパートに、三階、四階、五階を衣料品売り場に、六階を遊技場に、七階をキャバレーとして使用しておりました。  出火したのは三階の衣料品売り場で、出火原因については、工事関係者の失火によるものと言われておりますが、なお調査を続けております。  出火後約四分で消防隊現場に到着し、直ちに消防救助活動に従事いたしました結果、二階から四階までの売り場約八千八百平方メートルを焼損しましたが、七階への火災の拡大は防止することができました。  ところが、七階のキャバレーには客及び従業員合わせて約百七十名の人がおり、また、三階から六階までには工事関係者若干名がおりました。七階は、通常、エレベーター二基のみで昇降し、階段に通ずる部分防火戸はすべて閉鎖してありましたので、当日も、出火後の停電によるパ二ック状態もあって、避難に困難を来たし、窓から飛びおり墜死した者十六名、墜死したと思われる者五名のほか、避難ができず、煙によって死亡した者、はしご車等により救出後死亡した者を含め、死者百十七名に達しました。この間、消防隊はしご車等による必死の救助作業等によって五十三名を救出しております。  この建物消防用設備は、警報設備として、火災報知設備消火設備として屋内消火せん設備スプリンクラー設備が設けられており、また、避難設備として利用できる階段が四カ所ありましたが、これらはいずれも閉鎖されておりました。さらに、七階には、救助袋が一カ所設けられておりながら、使用方法が適切でなかったため、有効に使用ができませんでした。  この建物では、消防機関予防査察上も、消防設備の面では、現行法令上特に指摘すべき点はなかった反面、その運用面に欠ける点が多かったように思われます。  今後、事故原因をさらに徹底的に究明し、これを教訓として、避難誘導訓練の徹底、この種複合用途ビル共同管理体制の強化及び用途規制の検討、避難路を煙から守るための措置などを重点として、建設省とも十分協議の上、今後の対策に万全を期することといたしたいと存じます。  なお、このため、とりあえず、現地消防機関に対しては、特に、上層部に不特定多数の者を収容する建築物中高層複合用途建築物等避難体制及び通報避難設備の総点検を早急に実施し、緊急時にこれらの機能が十分発揮できるよう指導査察を強化するよう指示したところでございます。  以上御報告を申し上げます。
  4. 大野市郎

    大野委員長 以上で報告の聴取は終わりました。  質疑の申し出がありますので、これを許します。上村千一郎君。
  5. 上村千一郎

    上村委員 大阪千日デパートの今回の火災の件につきまして、若干の点について御質問をいたしたいと思うわけでございますが、それに先立ちまして、ただいま次官より御報告がございましたように、死者として百十七名、負傷者として四十九名という、非常に大ぜいの方々につきまして死傷者を出した。なお、当時の状況を新聞紙が報道しております。その写真の中には、あるいは窓側に相擁して死亡し、あるいはフロントにおきまして大ぜいの方々が死亡しておる、その写真が載っておりました。そのさまを拝見いたしまして、ほんとうに涙なきを得ない惨事であろうと思うわけでございます。そういう意味から、なくなられた方方に対し心から御冥福をお祈りするとともに、御遺族の方、その他関係者方々に対しまして、深くお悔やみ並びにお見舞いのおことばを申し上げたいと思うわけでございます。  次に、質問をさせていただきたいわけでございますが、きょうは、建設省あるいは通産省、その他これに関連してお尋ねしたい省庁があるわけでございますが、消防部面に限局いたしましてお尋ねをいたしていきたいと思います。  先ほど次官の御報告の中にありましたように、本件大阪千日デパートは、かつての旧歌舞伎座建物だと御報告がございました。要するに、一つの新しい建築をされまして、用途目的がきちっときまっておる場合より、従来の建物を改造いたしましていろいろな用途に使うという場合におきましては、消防部面におきましてもいろいろ苦心があるところであろうと思うのです。また、新しい建物建てて、それの用途目的がはっきりしておるときのやり方とは多少違うところに、一つの大きな落とし穴と言いましょうか、非常な問題点があるような感じが印象的にいたすわけです。当委員会としましても、つぶさに現地を視察して、二度とかかる悲惨事の起こらないようにしなければならぬような感じがいたすわけでございますが、そういう意味からいたしますれば、最近新聞その他でも報道がございまするが、建築材におきまして有毒なものを発生させる、特に煙を多く出させるとか、いろいろな多くの問題がございますので、この対策につきましては、建設省関係あるいは自治省と消防庁だけでは対策は十分でないと思いまするけれども、本日は消防関係だけにつきまして若干のお尋ねをいたしたいと思うわけでございます。  それで、まず、今回の事故が発生したということについて、一体どういうところに大きな事故原因があると消防庁としてはお考えになっておられるか。その点をお尋ねいたしたいと思います。
  6. 降矢敬義

    降矢政府委員 今回の多数の死者が出ました原因はいろいろあると存じますけれども、今回、全く端的にこの事件を見ますと、三階売り場にあります衣料品を中心にして火災が出ました結果、火炎は五階でとめましたけれども、煙が発生いたしまして、それが七階に参りました。しかし、七階は、いま政務次官の御報告がありましたとおり、エレベーター一基——当時は一基だけになったわけでございますが、出入口でありました四つの階段はいずれも閉鎖をされて、いわば密室のような状況になっておりました。しかも、そのドアは施錠されておりまして、開くことができないという状態でありまして、したがいまして、一瞬の間にあのような多数の死者を出したというのが直接的な現象であろうと考えております。
  7. 上村千一郎

    上村委員 私どもは本件建物構造につきましてよく存知しておりませんのでお尋ねをいたしたいと思うのでございますが、旧来の建物を、その建設当時の使用目的と違ったいろいろな用途に現在は使われておるわけですね。そういう点から考えますれば、その構造上の施設について、消防の現在の立場から言って完備していないというような点があるのかないのか。まだ調査中で、その点がはっきりしないのかどうか。その点につきましてお尋ねをいたしておきたいと思います。
  8. 降矢敬義

    降矢政府委員 この建物は、四十二年に現在の使用目的変更確認を得ておりますが、消防立場からこれを見ますと、複合用途ビルのこの建物は、階段が全部で六つございまして、しかも、屋上へ出る階段及び七階から外に出る階段はついておるわけでございます。したがって、避難という点からいたしますと、施錠されておるドアがこの瞬間において開扉されておるならば、相当多数の方々が外に出られる状況に相なっておったわけでございます。そういう意味で、避難立場から見まして、今回の事故は、実は、私たちは、現場におる支配人が、管理人として、ドアをあけるマスターキーを持っておったように聞いておるのであります。本人自身がまだ警察のほうで調べられておりまして、本人に直接会っておりませんけれども、関係者の言ではそういうことも言われておりまして、そこがどうも最大の問題であるというふうに考えておるわけでございます。消防施設それ自体につきましては、消防査察からいたしましても、現行法に照らしまして、今回の事故を引き越こすに至った原因となるような欠陥はほとんど指摘されておりません。そういうことでございまして、現場にある支配人、つまり、防火管理者の行動あるいはふだんの心がまえというものが今回の事故を大きくしたように感ずるわけでございます。  もう一つは、いま御指摘がありましたとおり、このビルはいろいろな用途に使われております。この用途がそれぞれ別でありますと同時に、六階までは大体午後九時で終わる、七階は十一時までやっているというふうに、営業あるいは活動をしている時間が違っておるわけでございます。そこで、それぞれの立場から、使用する階段について、営業時間が過ぎればシャッターを締めてしまうというようなことが行なわれておりまして、しかも、これが結局避難を不可能にならしめた一つの要因でもあったわけでございます。また、同時に、営業主体ごと防火管理者はそれぞれ別になっておりまして、これが共通した管理、つまり早期発見早期通報安全早期避難という点におきまして、共通の管理体制を整えておりませんでした。したがって、保安要員火災を発見し、覚知いたしまして、消防にそれを知らせ、同時に、七階におる——つまり、そのときは七階しか営業しておりませんので、七階の営業しておる場所に対する火災覚知ということをやっておらないようでありまして、七階の方々は煙が上がってきたということで承知したような事情があります。この辺は複合用途ビルあるいは雑居ビルと言われておりますビルに対しての管理体制というものに重大な不備、欠陥がございまして、これが今回の避難をおくらしめたことの原因になっておるように考えております。いずれにいたしましても、複合用途ビル管理というものが、早期発見あるいは早期通報早期避難というものについて一元化されていないというところに重大な問題があると考えておるところでございます。
  9. 上村千一郎

    上村委員 大体そうであろうと推測いたすわけでございます。特に、中高層ビルの中で、複合用途ビルというものにつきまして、新しい一つの大きな問題点を投げかけておる。今回の事件はそうであろうという意味で、慎重に原因その他対策について御検討賜わって、二度とかかることのないようにしなければならぬと思うわけです。  いま、長官の御説明によりますと、避難設備という点に非常に欠陥があったのではないかというようなことになるかと思います。要するに、屋上に上がりますところのとびらがかぎがかかっておってどうしようもなかった。これは管理体制の問題にもからんでくるだろうと思いますし、また、いろいろと建築構造関係にもからむかと思います。  ちょっと観点を変えまして、一点お尋ねをいたすわけですが、御報告によると、消防職員が十三名負傷をされており、警官が二名負傷をされておるということです。職務のことでほんとうにお気の毒であると思いまして、つつしんでお見舞いを申し上げるわけでございますが、今回の火災発生について、消防施設というもの、器具というものがもっと充実しておったならばこれを助け得たというように、今度は逆に消防活動の面におきまするところの器具施設というようなものについてお考えになっておるかどうか。その点はいまのところでいい、これで十分だとお考えになっておるか。その点をひとつお尋ねをしておきたいと思います。
  10. 降矢敬義

    降矢政府委員 今回の活動職員の方が負傷をしたわけでございますが、現場に到着いたしまして、相当の火炎がありまして、いわば耐火構造の中で多量の火燃物が延焼しておるという状況でございまして、したがって、いろいろな施設、たとえば防毒マスクとか、そういうものはもちろん全部用意してございます。はしご車につきましても、大阪としては七台出動いたしまして、外からの救助に当たったわけでございますが、実際の負傷した原因がどこにあるかということにつきましては、私のほうで参りましたけれども、まだ調査がそこまで至らなかったわけでございます。  いま御質問のございましたような点、こういうことを教訓にして施設改善についてさらにするところがあるかどうかということは、さらに検討させていただきたいと考えております。
  11. 上村千一郎

    上村委員 私はこの程度で質問を終わりたいと思いまするが、一度現場その他もよく見て——従来、火災とか災害は、起きてからびっくりするというようなことになってしまうのですが、火災とか災害というようなものは、起きないようにするということが第一義的なものだと思います。けれども、起きてしまった以上はどうしようもございませんので、これを一つの大きな教訓として、二度とかかることのないように、かかる事故の起きないように配慮しなければならないと思うわけでございます。  いずれいろいろな資料が整いました後にまたあらためて質問をさせていただくといたしまして、私としましてはこれで終えたいと思いますが、塩川委員から関連をいたしまして御質問をされますので、お許しを賜わりたいと思います。
  12. 大野市郎

  13. 塩川正十郎

    塩川委員 二、三簡単にお聞きしたいと思います。簡単にお答え願いたいと思います。  防火施設について、消防のほうから、こういう施設をしろということをよく言われます。器具等についても、備えつけをしろとおっしゃる。けれども、建物建築許可される場合、いわゆる建築基準法に基づく仕様書の中にそういうようなものが組み入れられていないものが多い。たとえば、いまはやりの中高層ビル住宅の五階建ての大きなものがありますが、ああいうようなものでも、避難ばしごをつけろとか、袋をつけろとか、そういうことをおっしゃるけれども、建物建築するときにそういうものをはめ込んでおくということがない。最近においてはそれは相当配慮されておるけれども、いままでのものは、たとえばはしごをつけろと言われても、どういうふうにはしごをつけるのか、それができていないから、真剣に取り組まない。住んでおる人も投げやりになってしまっておる。こういうことになるのですが、要するに、そういう消防防火施設予防施設というものと、建築基準法にいう建築仕様関係というようなものはきっちりいっておるのでしょうか。消防消防でこういうようなものをつけなさいと指示をするが、建築認可を受ける場合の申請書では、そんなものあってもなくてもいい。それではだれもつけないですよ。その点どうなっておるのですか。
  14. 降矢敬義

    降矢政府委員 現在の法制では、いま御心配の点は、消防設備士というのがもちろんおりまして、それが消防法に基づいて工事のときに設計をして、そして着工届けを出すということになっておるのでございますけれども、いまお話がありましたような古いビルにつきましては、その点はおそらく御指摘のとおりであると思います。  また、私たちのほうで、四十四年に改正をしていただきまして、誘導灯とか、あるいは避難器具とか、異常警報設備等につきましては早急に適用をさしていただきまして、そういう関係で、古い建物については、先生指摘のような点があると存じますけれども、現在の法制ではそういうことを防いで、あわせてやるという仕組みにしてありますが、なお十分に留意してまいりたいと考えております。
  15. 塩川正十郎

    塩川委員 それでは、最近になってそういう高層建物中層建物建築認可をするときには、消防関係共管事項として承認を得るのですか。これはどうなっているんですか。
  16. 降矢敬義

    降矢政府委員 消防法第七条によりまして、建築主事等確認をする場合には、あわせて事前に消防同意を必要とするということになっております。
  17. 塩川正十郎

    塩川委員 その同意をした以上は、そういう防火施設というものを取りつけ得られるようにちゃんと設計上はなっているんでしょうね。
  18. 降矢敬義

    降矢政府委員 先ほど申し上げましたように、そのようにしてあります。
  19. 塩川正十郎

    塩川委員 そうすると、あとはそういう取りつけた器具訓練といいますか、運用、こういうものだけであるということなんですね。それは確かにそういうふうになっていましょうか。消防庁として、自信を持ってそういうことが言えるでしょうか。最近の建物の中で、しっかりした建築主の場合は、往々にしてそれは大部分は達成されておるように私は思うのですが、しかし、間々、建築後の確認というものが、使用してしまってから起こるんです。使用してしまって一年、二年たってから実は消防査察があって、これは抜けておるではないかというような問題が多い。そういうようなものの逸脱というものに対する対策を講じておるかどうか。
  20. 降矢敬義

    降矢政府委員 先生指摘のように、予防査察によって消防施設維持管理等消防側としては万全を期するということにしてあるわけでございますが、予防査察の結果、もちろんいままでも旅館等火災でもありましたように、するべきものもしていないということも発見されておりまして、これは、告発という前にさらに命令をかけて、期日を指定してこれをさせるというようなことで、消防側としては、必ずこういうようなものを整備させるようなことをさせる体制をとっております。  いま御指摘がありましたように、この運用の問題につきましては、査察のときに、もっと機能的な査察——つまり、非常の際にどうして動かすのか、はたしてそれはうまく作動するのか。単に施設があるというような査察でなしに、そういうような査察教育的と言いますか、機能的と言いますか、そういうような査察をぜひしなければいかぬということをもちろん痛感しているところでございまして、いま御指摘にありましたような点はさらに注意をして、十分に留意して施行していきたいと思っております。
  21. 塩川正十郎

    塩川委員 たとえば、非常口かぎがかかっておって逃げ場がなかった、上に上がろうと思っても上に上がれなかったというような場合は、責任はどうなるのですか。
  22. 降矢敬義

    降矢政府委員 今回の非常口につきましては、いま私たちの承知しているところでは、支配人マスターキーというものを持っておって、そして、非常のときには支配人があけるということになっておるように承知しております。ただ、現在、支配人そのものが逮捕されておりますから、直接こちらは聞いておりませんけれども、千日デパート保安設備責任者のほうでは、夜はプレイタウンしか開いておりませんので、非常の場合は支配人マスターキーを渡してあるというようなことを言っておりますので、支配人がその際あけられる仕かけになっておったわけでございます。この点、本人がいち早く避難しましたので、どなたもかぎをもってあけられなかったというのが実情でございます。
  23. 塩川正十郎

    塩川委員 それから、先ほどの話に少し出ました防火施設のいわば防火責任者、これは、こういう雑居ビルの場合、責任体制はどうなるのでしょうか。すなわち、防火責任者というものは、各契約使用者ごとにつくっておる。大体そうだろうと思いますが、それをさらに統括して、ビル全体の防火責任者というのがあると思うのです。そうした場合、二階でそういう工事をやっておるというような場合に、七階の防火責任者とお互いの連絡というものがとれっこないだろうと思う。そうした場合に、ビル全体を管理しておる防火責任者というものが全面的に責任を持って、いわゆる管理をしていかなければならぬ。こういうぐあいになるわけですね。そうした場合に、ビル全体の防火責任というものがはっきりとしておったのか。千日デパートビルですか、あのビル全体の管理体制というものは、おたくのほうが査察をされた場合に明確にとれておったかどうか。
  24. 降矢敬義

    降矢政府委員 防火管理体制は、複合ビルであっても、それぞれの施設ごとに置くという、とにしてありますので、七階には、いま申しました高木という支配人防火責任者として届けられております。三階、四階はニチイの管理者が届けられております。あとの分は千日デパートの人間が管理者として届けられております。そして、全体の管理につきましては、その管理者が協議して共同防火管理総括防火管理者というものを選任して、避難早期発見通報というような権限をそれに付与するというようなことで、三者協議の上で全体の防火防災体制を統一するような仕組み法律上してあるわけでございますが、三人の防火管理者の間で協議をしての共同防火管理責任はまだ行なわれておりませんでした。したがって、それぞれのところで防火管理をやるということになっておったわけでございますが、もとより、この火災が起きました場合に、保守要員のところに火災通報を今回もやっておるわけでございます。保守要員のところにそれを受けました場合に、それを通報するというところは、三者の間で協定をしてきめておったわけでございます。しかし、全体として、われわれが予想しているような共同管理体制というものはまだでき上がっておりませんでした。
  25. 塩川正十郎

    塩川委員 そうすると、ビル全体としての責任というものも、今後そういうものに対する指導をきびしゅうやってもらわなければいかぬわけですね。  最後に、補償問題ですが、遺族に対する補償。新聞で見ましたら、とりあえず葬祭料として二十万円渡したというのですけれども、私らの感じでは、こういう雑居ビルで、しかも直接の事故を起こしました死者を出したところ、あるいはその関係のあるところで完全に補償が行なえるのだろうかということが心配なんです。しかも、旅館等におきましてはきびしく保険等に入っております。客の保険があるが、こういう施設のところは、聞いてみると保険にも入っていないそうですね。そうしますと、全都その企業の負担においてやらなければならぬことになってくると思うのです。そういうときに、これは全額補償すべきが当然であるが、能力のないようなときにはどういうふうになるだろうかという心配が起こる。そういうものに対して、消防庁としてはどういうふうに感じておられるか。これは将来の問題でありましょうから、答えられる範囲内でけっこうです。
  26. 降矢敬義

    降矢政府委員 ただいまの問題につきましては、旅館等事故にかんがみまして、いま御指摘のような保険によってそれを担保するようなことをわれわれとしてもずいぶん慫慂してまいりました。その点は御指摘のようなかっこうになっているわけでございます。この問題につきましては、大臣も大阪に行かれまして、その際、市長ともいろいろお話をされておるようでございます。このデパートについては、ある程度資力もあるようでございますので、したがって、その点は市長のほうにもお願いをして——あるいは、人によっては、生活保護といいますか、そういうような状況にならないとも限らないような状態の人がおるようでございまして、そういう点は、市長のほうに大臣から十分お願いしてまいったようでございます。  結局、将来こういう大きな問題が起きた場合にどうするかということでございますが、第一次的には、やはり出たところの問題でしょうけれども、たとえば災害の救済というような問題もある程度話が出ているようでございます。その点は、災害とこういうふうな火災と同一に考えていいかどうか、ちょっと私はいま断定できませんけれども、犠牲者について、そういうかっこうで、法的な、あるいはそれに準ずるようなものについて考えるかということについては、将来の問題として考えていきたい。さしあたっては、いまの旅館、ホテル等に行なわれておりますような保険制度というものを活用した何かが考えられぬかという気が私はいたしますけれども、将来の問題としまして考えさせていただきたいと思います。
  27. 塩川正十郎

    塩川委員 質問を終わります。
  28. 大野市郎

  29. 井岡大治

    井岡委員 私、千日デパートでなくなられた百十七人の方々並びに四十九人のけがをなさった方々にお悔やみとお見舞いを申し上げて、質問に入りたいと思います。  実は、昨日、私は視察をしてまいりました。そこで幾つかの問題点を発見したわけですが、いま長官からお述べになっておりました復合ビル管理体制の問題は、ぜひ改めていただかないと、たとえば一階、二階は火災はないわけです。三階、四階、五階が焼けている。三階、四階はまるっきり焼けてしまっている。それから、六階は火災を起こしていない。七階は全くどうにもなっていない。そのままなんです。そういう状態であります。  そこで、いろいろ新聞などで報じておりますが、見た人たちの批判が出ておりましたから、まず聞きましたら、保安員が火災を発見したのは二十二時三十八分。それから、その保安員から一一〇番、警察のほうに直ちにかけているわけですけれども、警察は三十九分に受けております。そして、一一〇番から一一九番、いわゆる消防局のほうに通知をしているのが四十分、それから消防車が直ちに出動命令を受けて、四十二分に出動しております。現場に到着したのが四十四分、自動車の数は八十一台、そのうちはしご車が七台、空中放水車が五台、これだけを含んでおります。したがって、大阪のほとんど全市の消防車がそこに行ったというように考えていいのではないかと思います。したがって、消防局としては非常に迅速な処置をとったと考えられます。同時に、警察のほうも、非常に早い警備体制をとっておいでになります。四十五分に、現場に、機動隊の二個中隊と、それから南署の署員全員を出している。こういうことでございまして、四十八分には一千名の人間を動員している。こういう状態でございますから、非常に迅速な処置をとられて、円滑に消防活動が行なわれたというように理解をしていいのではないかと思います。  そこで、いま言われておりました管理体制ですが、お説のとおり、千日デパートには千日デパートの何がある、ニチイにはニチイの何がある、キャバレーにはキャバレーの何がある、と、これを総合して、保安要員として毎日何人かを置いている。したがって、その保安要員自体がそのキャバレー支配人通報することはできたとしても、それからの指示ができない。こういうところに、雑居ビルと申しますか、複合用途ビル一つ欠陥があると思うのですが、この点について、今後どうしたらいいか。この点を考えていくべきだと思うのですが、何か考え方がありましたら、お教えをいただきたいと思うのです。
  30. 降矢敬義

    降矢政府委員 いま先生指摘のところが一般の問題であろうと私も思っております。それで、先ほどお答えいたしましたとおり、昨年、法律を改正して、雑居ビルで統一的な管理体制ができないときには、その統一的な管理体制をやれという命令を、建物使用する権限を有する者、つまり、いまの場合で言えば三者あるわけでございますが、三者の責任者に出せる仕組みをつくっていただいたわけでございます。その中に、統一管理者として何をやるかという、あるいはいまのことばで言えば、どういうことをやる権限をお互いに委任するかということを三者の間で協議してきめるという規定を置いてあるわけでございます。ところが、現実には、先ほど申し上げましたとおり、この統一的な管理者を設けるまでに至っていないでこの事故になったわけでございます。私は、私案でありますが、いま与えておりますのは、早期に発見をして、早期通報をする、そうして避難すること。この三点につきましては、法律でこういうビルについては義務づけをする。要するに、お互いの話し合いでなしに、義務づけをして、たとえばいま先生からお話があったように、一カ所で、保安要員のところでその点だけは一括して、全部指示命令もできるようにする。少なくとも、この点だけは、協議でなしに、制度的に確立しなければいかぬのじゃなかろうかということを強く感じておるところでございます。
  31. 井岡大治

    井岡委員 これが確立されないと——あの階段は、緊急避難階段でなくて、普通の階段使用できておれば問題はないわけなんですね。御報告があったと思いますが、そういうことなんです。ところが、その各階をおのおのが管理をしておるものですから、その大きな階段——歌舞伎座だったものですから、非常に大きな階段です。幅は四、五メートルぐらいあるでしょうが、その階段使用されておらない。しかも、ここはガスは通っておらないわけです。何にもよごれもありません。ほかはまっ黒けになってますけれども、そこはよごれがないわけなんです。だから、そこを通り抜ければ使用はできるわけなんですが、その使用ができなかった。ここに最大の一つ原因があると思う。もう一つは、先ほど言われておりましたように、屋上のドリームランドに上がれば、それはいいわけですが、それ自体は、管理者が逃げてしまっておってどうにもならなかった。それからもう一つ非常口、それ自体も管理者が逃げてしまってどうにもならなかった。と同時に、普通のカーテンがあるわけですが、そのカーテンをくぎづけにしているわけですね。だから、従業員は、ここが非常口だということを知らなかった。だから、そこにはだれも来ていない。死んでいる場所をずっとしるしをつけてありますが、全部そこまでは来ていないわけです。みんな自分のおったところぐらいのところで窒息死している。こういう状況です。ですから、こういう点について早急に結論を出していただきたい。これが一つです。  それから、きょうは建設省がおいでになりませんが、これは建設省の問題でございますけれども、消防の側からこれは建設省に要求をしていただきたい。そして、改善をしてもらいたいと思うのですが、御承知のとおり、三十七年に建築基準法をつくって、これから建築をするビルについてはこれこれこういう設備をしなさい、こういうことをやりなさいというように規定をしてありますが、三十七年以前のものについてはこれは適用しないことになっていますね。ここに問題があると思うのです。ですから、消防のほうも、建築の側も、警察も、消防局長、建築局長、警察の刑事の庶務課長に来ていただいて私は事情を聴取したわけですが、消防の側も、警察の側も、建築の側も、全部、われわれの手に負えないところがあります、三十七年以前の建物については、われわれとしては、こういう指示をしたい、こういうように避難場所を設けたいと考えるけれども、それは免除されておることであるから、おかまいなしということになっておることであるから、われわれはどうにも手のつけようがありません、この点はぜひひとつ改めてもらいたいということを繰り返して言っておいでになりました。ですから、消防の側の立場から、長官はこの点消防協会などでやかましく言っているのだというようになっておりますが、これらの点について長官の御答弁をひとつ伺っておきたいと思います。
  32. 降矢敬義

    降矢政府委員 端的に言いまして、私たち同感でございます。建設省とも昨日そういう問題について話し合いをいたしておりまして、今後も法律の改正も必要なことでございますので、いわゆる避難というような見地から、少なくとも、必要な施設は、消防の側からもどうしても遡及適用をしてもらうように考えてくれぬかと申しましたが、建設省のほうもそういう空気を非常に強く持っておるようでございました。さっそくきのう話をしましたが、今後、両者の間で、そういう問題を中心にぜひ実現いたしたい。そういうように措置していく考えでございます。
  33. 井岡大治

    井岡委員 それからその次の欠陥は、複合用途ビル、いわゆる雑居ビルと言われておるこれらについて、統一した火災警報機がないということです。この点については、これは消防の側でございますが、どこか一カ所が火災を起こしますと全館に響くような統一した火災警報機を取りつけるということが必要ではないかと思うのですが、長官のお考えをお伺いしてみたいと思います。
  34. 降矢敬義

    降矢政府委員 このビルは、御案内のとおり、手でボタンを押して、そして保安室に通ずる。それを受けた保安要員が放送設備を通じて全館に知らせるというしかけになっております。で、いま先生のおっしゃったのは、おそらく自動火災報知機だろうと思います。この点につきましては、消防法を四十四年に改正いたしましたときに、この自動火災報知機を設置する場所を、原則としてはやはり遡及しておりませんでした。御案内のとおり、ホテル、旅館、病院、文化財だけについてはこれは遡及させたわけでございます。今回の事件にかんがみまして、特に、いま、デパートのような、燃えると多量の煙を同時に出すような可燃物が大量にあるような施設につきましては、私たちは、自動火災報知機の遡及適用を、病院、ホテル並みにぜひ考えていきたいという気持ちを痛切に持っております。そうすれば一瞬にして全館に指導できるというふうに考えておりますので、ぜひ検討させていただきたいと思っております。
  35. 井岡大治

    井岡委員 これは法律で規制をすることも必要でございましょうけれども、これは悪い意味においての大都市における典型的な火災だと私は思うのです。これは単に大阪だけでなしに、きのう東京で調べたところが、東京にもたくさんあるということらしいですね。そうだとすると、これは早急に、省令なり何なりによってとりあえずやっておくということをしておかないと、法律改正ということになりますと、この間やりました、また追加をしてやるということでは、一年先にならなければできぬということになりますね。ですから、私は、ぜひこれをやっていただきたいと思うのですが、この点、考えるだけでなしに、明確に御答弁をいただきたい。
  36. 降矢敬義

    降矢政府委員 いまお話しがありましたような点につきましては、行政指導とともに、政令等の改正でできそうでございますので、至急検討させていただきたいと思っております。
  37. 井岡大治

    井岡委員 もう一つ、これはだれに聞いていいかわかりませんけれども、政治的な問題ですから次官にお伺いしたいと思うのですが、ああいう高層のビルで、しかも、非常に高いところにキャバレーなどの営業を認めること自体が間違いではないかと私は思うのですね。この点は、警察のほうも、やかましく言っていました、ああいうところに規制がないものですから、私のほうも文句の言いようがありませんのでと、こういう話をしておりましたが、私は、この点はぜひ考える必要があるのじゃないかと考えるのですが、この点、政治的な問題ですから、次官からお伺いしたいと思います。
  38. 小山省二

    小山政府委員 御指摘のように、適当でないとは考えますが、最近の高層建築などを見ますと、一番高いところに食堂などを設けるように、言うならば、客を誘致するに急のあまり、そういう防火面からの点などが考慮されずに、最近たいへんたくさんのビルに許可が行なわれておるということは、これを契機に、私どもも関係各庁とよく相談をいたしまして、将来を考えて、そういう面についてはこの際できるだけ是正の方法を考えてみたいというふうに承知いたしております。
  39. 井岡大治

    井岡委員 特に、キャバレーというような、ああいう企業というのですか、御商売というのですか、ああいうところには、非常に不特定多数な、無責任な人たち——責任という表現が適当であるかどうかは別として、あまり責任感じない人たちばかりが集まって酒を飲んでいるわけですから、責任なんて感じておったら酒なんて飲めばしませんから、だから、そういう食堂とかなんとかいうのでなくて、キャバレーというようなものは、この際やめたほうがいいのじゃないのかと思うのですね。この点ぜひひとつ考えていただきたいと私は思うのです。  もう一つの問題は、今度の火災でおなくなりになった人は、救命袋の使用法を十分知らなかったということでございますが、それはさておいて、その救命袋を伝わっておりしなになくなられた方以外は、全部窒息死なんですね。しかもそれは、石油繊維、石油化学製品というものからくる煙、有毒ガスというものによって窒息をされておるわけです。ここで強く言われたことは、消防局長が、これの解脱と言うんですか、有毒ガスを消すような研究をいま進めておるけれども、まだ実用化されない、これが早急に実用化されない限りこれはたいへんなことだと言っておりましたが、全くそのとおりだと思うのです。   〔委員長退席、中村(弘)委員長代理着席〕 ですから、消防庁あたりで、積極的にこの開発をするための援助をするということは考えられないものか。これは各都道府県なり市町村でやっておっても、なかなか費用のかかることですから、実用化まではなかなかいかないのですよね。だから、結局は国が——もうすでに開発はできているんだけれども、実用化ができないと言っていました。金がかかるんでできないと言っていましたが、こういう点については、何らかの援助をするなり、それを消防庁が引き取って実用化のために努力をするというようなことをおやりになるお考えはありませんか。
  40. 降矢敬義

    降矢政府委員 繊維製品が燃えた場合に、発生する有毒ガスの排除方法の研究ということは、消防研究所のほうでは現在やっておりません。これは通産省その他とお話をしまして、今後どうするか検討させていただきたいと思いますが、私たち消防研究所がいま研究しておりますのは簡易ガスマスクでございまして、小さなもので、これを当てることによってガスを吸わないで済むというように、非常に簡易なガスマスクの研究をしておるのでございます。これは、旅館とか、そういうところの施設に置いていただきますと、非常の場合使っていただけるということで、かなりこれは研究が進んでまいっておりまして、業者のほうでも、一部ある程度完成いたしたものもございます。しかし、いま御指摘のように、全体として、新建材を含めた有毒ガスの発生を、ある装置によって吸収をするという研究につきましては、私のほうでいまやっておりませんが、これは通産省その他ともお話をして、今後どうするか検討させていただきたいと思っております。
  41. 井岡大治

    井岡委員 マスクもけっこうなんですよ。悪いとは私は言いません。悪いとは言いませんけれども、百貨店で火災が起ったときに、マスク何ぼ出したって、何ぼ客がおるかわからぬのですよ。ですから、それは、旅館とか従業員の分とか、あるいは定員の分とかいうんならいいけれども、不特定多数の集まるところには、マスクということも決して悪いとは言いませんけれども、それよりもっと数等上なものを考え出していただかないと、一朝事があったときには間に合わないじゃないですか。せっかく一部でも自分らで開発研究して、こうしたらいけると思うんだけれども、まだ実用化にいっていないんだと言っておるときでもありますから、これらの問題をさらに早急に推進するために御努力をお願いをしたいと思うのです。  最後に、今度の犠牲者と申しますか、おなくなりになった方は、ほとんど家庭の気の毒な人ばかりなんですね。お客さんのほうは別として、ホステスは、御承知のとおり、一番最高の人は五十です。子供さんが三人あるということですね。なくなられた方は、ほとんどみんな子供さんをかかえて働いておいでになった方々ばかりなんです。そこで、この子供さんを将来どうするかというようなことが、大きな一つの社会問題として考えられていかなければならない問題じゃないかと思います。ところが、火災の発生したところはニチイであって、そこにはなるほど衣料はみんななくなってしまっておりますけれども、被害を受けたのは七階なんですね。火災の起こった原因はいろいろ言われておりますけれども、これは目下調べ中でございますから、私たちそれにくちばしをいれようとは思いませんが、非常にこれは気の毒なことだと思うんです。ですから、これは、長官でなくて、次官のほうから伺いたいのですが、これらの問題について、残った遺児なり家族のめんどうを一体どのようにして見てやるかということですね。たとえば、典型的な例を申し上げますと、七十幾つになるおとうさんがあって、前日まである病院の看護婦長をやっておいでになったが、婦長ではとうていおとうさんを養っていくことができないのでホステスになったが、その行った日に事故にあっておいでになる。こういう方がいるのですよ。おとうさんは病気で寝ておいでになるわけですね。そういう点を考えると、一体だれが補償してやるんだというようなことでは、おとうさんはまことに気の毒だと思うんです。あるいは、三つと六つの子供さんをかかえていたとか、六つと十の子供さんがいたとか、こんな方ばかりなんですね。ですから、この点については、これはだれが補償するんだなどという責任問題だけでなしに、社会問題としてこの問題を処理をしてあげなければいけないんじゃないかと思うのですが、次官、ひとつお聞かせいただきたいと思うんです。
  42. 小山省二

    小山政府委員 先生指摘のように、この原因は一応調査中ではございますが、なかなか内部事情は複雑でございますので、ある意味において、責任のなすり合いというようなことになっており、補償問題等がたいへん時間を要するというようなことになりますことも、これは一つの社会問題でもございます。   〔中村(弘)委員長代理退席、委員長着席〕 政府としても、十分関係者指導いたしまして、将来もやはりこうした問題が相当起こるということはあり得ることでございますので、それらの点を考えまして、関係者の補償については十分配慮をして問題の解決に当たりたいということをお答え申し上げたいと思います。
  43. 井岡大治

    井岡委員 最後にもう一度繰り返して申し上げておきますが、こういう複合用途ビル等についての管理体制をすみやかに詰めていただきたいということ。それから、三十七年以前の建築物に対して建築法の適用がないということで、野放しになっており、したがって、建築指導をしようとしても指導ができないという点。それから三番目は、こういう合同ビルというか、複合ビルでは、直ちに火災が探知できるように、全館に統一した装置をつけるということ。それから、有毒ガス等の問題については、すみやかに研究開発をして、実用化をするようにしていただきたいということ。これらのことをお願いしておきます。  また、遺族方々は非常に気の損な方々ばかりです。ほんとうに気の毒です。私は、五十歳のホステスというのは初めて聞きました。これが仲居さんということならわかりますけれども、ああいうキャバレーで五十のホステスというのは私は初めてで、あの新聞を見てびっくりしたんです。四十五、五十という人がおるんですからね。こういう状態は、非常に家庭的に気の毒な方だということですね。そういう点も考慮されて、最大の御努力をぜひひとつしていただくことをお願いして、私の質問を終わりたいと思います。
  44. 大野市郎

    大野委員長 桑名義治君。
  45. 桑名義治

    ○桑名委員 まず、最初に、今回事故にあわれた方に対して、心から御冥福をお祈りいたしたいと思います。  先ほどからいろいろと問題点指摘がございましたが、私は、今回のこの火災が異常なほどに犠牲者を出したという、その原因を大きく分けてみますと、まず第一に、管理体制が不備であったということが一点。それから、いままでの消防体制が炎を中心にした消防体制であったが、ところが、現在の火災というものは、いわゆる煙害といいますか、煙による死亡率というものが非常に高くなっておるということ。それに対する研究が足りなかったところに問題点がある。それからもう一点は、言うならば、こういう複合ビルに対する消火体制の不徹底ということが一点。さらに、先ほどから論点にあがっておりましたように、三十九年に建築基準法の改正があり、さらに、昨年度は、高層ビル建築基準に対する法改正がありましたけれども、その法の効果が遡及しないということ。特にこういう点に問題があったのではないかと私は思うわけでございますが、こういった点から質問を進めていってみたいと思います。  まず、一点でございますが、今回の惨事も煙による死亡が中心であったというふうに報道によればなっておるわけでございます。現地をまだ視察しておりませんので、こまかい事柄はわからないわけでございますが、一応、報道機関の報道を中心にいろいろと質問を進めていきたいと思いますが、戸川教授の算定によりますと、「出火場所を三階とすれば、煙は十秒足らずで七階まで上昇したことになる。」というふうに言われておりますし、「煙に巻かれると、それに含まれる一酸化炭素だけでも、〇・三%程度の濃度で意識を失うのに二、三分しかかからない。」というふうになっておるわけでございますが、この点について、消防庁としてはどのように考えておられますか。
  46. 降矢敬義

    降矢政府委員 煙の速さについては御指摘のとおりでございまして、しかも、先ほど御説明申し上げましたとおり、火災が起きましてから、消防車が着きましたときも、まだ、七階では煙は窓からは出ていなかったようでございますけれども、速さとしては、いま御指摘のような速さでおそらくのぼったのだろうと思います。  それから、死者百十七名のうち、七階で死亡した者が九十六名ございまして、その方はほとんど、いま御指摘のように、煙による窒息死というふうに考えております。
  47. 桑名義治

    ○桑名委員 最近の火災における煙によって死亡した人の数と言えばちょっとむずかしくなりますが、大体、死亡者の何%ぐらいを含んでいるかということはおわかりになりますか。
  48. 降矢敬義

    降矢政府委員 四十五年度で見ますと、四九・二%になっております。
  49. 桑名義治

    ○桑名委員 これは、新聞では消防庁の発表ということになっておりますが、火災の煙によって死亡した数が六割に達するというふうに載っておるわけです。多少数字は違いまするけれども、大体半分以上は煙によって死亡するというふうに解釈してもいいと思います。いままで、炎に対する消火ということが重点的に行なわれたわけでございますが、今後、煙をどうおさめるかという方向に消防体制を切りかえていかなければならないというふうに考えられるわけでございますけれども、その点について、消防庁としては、どの程度調査研究が進んでいるか。あるいは、法的な処置としてどのような処置を考えられているか。その点について伺っておきたいと思います。
  50. 降矢敬義

    降矢政府委員 煙は同時にガスを含んでいるわけでございますが、その対策としては、一つは、建設省を中心に私たち消防研究所のほうでもやっておりますが、建材について、ガス、あるいはそれを燃えないようにするという、いわゆる不燃化の問題でございます。それから、燃えた場合に、一つは排煙の問題でございます。煙を外に出すという問題で、これは、昨年の建築基準法の改正でも、いま御指摘のように、高層ビルにつきましては、避難階段の前に一つ特殊の部屋をつくり、そこに入った煙は全部排煙機で外に出すというような排煙設備の設置が義務づけられたわけでございますが、そういう点が一つでございます。  それから、もう一つは、やはり避難をして外気に触れるという問題でありまして、私たちは、避難階段はぜひ屋外にするというようなことをお願いをし、これは建築基準法の改正の問題でありますけれども、行政指導としては、外に避難をする、屋外に出すということによって煙を避けるということを研究しておるわけでございます。  なお、旅館等を中心に、先ほど申しましたように、簡易なマスクをつけておれば、吸わずに煙の中でも出られますので、そういう研究もやっておるわけでございます。  それから、もう一つは、消防研究所でやっておりますのは、防火シャッターのかわりに、ちょうどエアドアのように空気を出して、そして煙を遮断して、消防活動としては簡単にエアカーテンをくぐっていけるというような研究を三年来続けておるところでございます。
  51. 桑名義治

    ○桑名委員 いまのお話によりますと、エアカーテン等、いろいろなお話が出ました。実際に今回の火災を見てみますと、これは火災の直接の原因かどうかわかりませんが、エレベーターが故障しておったというような事柄が載っておるわけです。エレベーターが故障しておるという原因は、電気がどこかで切断されたのじゃないかというふうに考えられるわけでございます。そうなってくると、エアシャッターというのは電気で操作するのじゃないですか。
  52. 降矢敬義

    降矢政府委員 現在、いわゆる誘導灯であるとかその他につきましても、非常電源切りかえ装置というものを相当のビルにみなつけさしておるわけでございますし、そういう施設は当然予備電源としてつけさせる必要があると思います。
  53. 桑名義治

    ○桑名委員 いずれにしましても、この煙の対策あるいは有害ガスの対策というものを消防の今回の大きな一つ問題点として、これに積極的に取り組んでいくことが、いわゆる近代消防のあり方の一つではなかろうかというふうに思うわけでございますので、そのためには、薬剤による化学的なそういう問題もありましょうし、建築基準法の問題もございましょうし、あるいは物理的にこれを排除するという方法もございましょう。あるいはまた、ある程度法で規制をするというような方法等いろいろあると思いますが、多角的な方法によって、こういった惨事を二度と起こさないような方向で、全力をあげて研究と努力を続けていただきたい。このように思うわけでございます。  また、私は、この事件を通して考えますことは、いわゆる消防法もたびたび改正になっております。改正されることは、いい方向に改正されるわけでございますので、私は、非常にけっこうなことだと思うのです。ところが、この改正にはたして完全についていっているかということが一番問題になるのじゃなかろうかと私は思うのです。防火管理者というものがこういった場合には当然いるはずでございますけれども、その防火管理者のもとに、いわゆる避難訓練がどの程度行なわれたか、そういったチェックが実際に行なわれているかどうかということがまた一つのポイントにたるのではなかろうかと思うのです。話によれば、支配人は第七番目に助けられたということでございますが、では、支配人は、少なくともこういう避難に対する処置についてある程度の知識はあったのではなかろうか。ところが、この支配人に七番目に逃げられちゃったのでは、あとは右往左往するばかりで、お客さんは何にもわからないのは事実でございます。しかも、酒を飲む場所でございますので、そういった責任者が逃げたということは問題でございますし、たとえ支配人が逃げても、——大体、この場合には、防火管理者というのはだれであったか。ここらへんも今度の問題の一つではなかろうかと思うのですが、このアルサロの防火管理者はどなただったのですか。また、現実にその人はいたのですか。
  54. 降矢敬義

    降矢政府委員 消防署に専任届けが出されていますのは、いまお話のありました高木支配人防火管理者として届けられております。
  55. 桑名義治

    ○桑名委員 防火管理者というのは、従業員何名に対して何名ということでございますか。これはちょっとまだ不勉強でございますのでわかりませんが、その点お尋ねしたいと思います。
  56. 降矢敬義

    降矢政府委員 収容人員五十人以上の施設防火管理者を置く。こういうことにしてあります。
  57. 桑名義治

    ○桑名委員 五十人以上であるならば一人でいいということですか。何名に対して何名という割合じゃないのですか。
  58. 降矢敬義

    降矢政府委員 割合ではございません。一人責任者として置くということにしてあります。
  59. 桑名義治

    ○桑名委員 そうすると、支配人防火管理者であったとするならば、このアルサロについては、避難訓練が何回行なわれておったか。また、ごく最近に避難訓練が行なわれておったかどうか。この点についての調査はもう終わっておりますか。
  60. 降矢敬義

    降矢政府委員 最近行なわれましたのは、四十六年の十月でございます。
  61. 桑名義治

    ○桑名委員 四十六年の十月に行なわれたとするならば、避難に対するある程度の訓練は当然行なわれておったと思われるのですが、いろいろな情報によりますと、避難場所のいわゆる非常ドアが締まっておった、かぎがかかっておったというような事柄でございますとか、あるいはまた、そういう非常口まで行って倒れている人はいなかったという事柄が載っておるわけでございますが、これは全然知らなかったのでございましょうか。
  62. 降矢敬義

    降矢政府委員 先ほどお話がありましたように、階段のいわゆる非常口というところにつきましては、びろうどが打ちつけてありまして、一番端的に言うと、クロークのうしろに、まさに、そこに、開口部を持つ階段があったわけでございます。けれども、そのクロークのところはびろうどが打ちつけてありまして、クロークを預かっている人すらそれを意識していなかったというような事情がございます。同時に、また、先ほど申し上げましたとおり、下の保守の関係の方の話では、マスターキーというものを支配人に預けてありまして、それによって、屋上に通ずる階段及びクロークのうしろの階段は当然あけられるようなことになっておったのでございますけれども、支配人そのものが、いまお話がありましたように早く避難いたしまして、結局避難に対する心がまえというようなものも実は欠けておりまして、このような惨事になった次第でございます。
  63. 桑名義治

    ○桑名委員 そうしますと、もう一、二点お伺いをしたいわけですが、警報設備は完全だったのですか。
  64. 降矢敬義

    降矢政府委員 消防法のたてまえから言えば、火災報知設備としての自動式のものがございまして、これは、そういう意味からは完全でございます。
  65. 桑名義治

    ○桑名委員 この、いわゆる報告書によりますと、放送設備が設置されていたが、七階だけは別系統になっていたというふうに載っているわけですが、これはやはり、火災が起きたという放送をする設備ですか。七階だけ別にしておったということは、これはやはり一つの不備でしょうね。
  66. 降矢敬義

    降矢政府委員 さようでございまして、保安室から七階だけは電話で連絡するというようなことで、七階自身には、御案内のとおり、一斉の警報装置がございますけれども、通知するのは電話でやるというしかけになっておりまして、この点は、確かにやはり一つの不備な点でございます。
  67. 桑名義治

    ○桑名委員 それから、消火設備の中にスプリンクラーは一応設備はされておったけれども、火災部分には設備されていなかったというような悪条件が載っかっているわけですが、こういうことを考えてみますと、はたして適法なる消火設備が施されておったかどうかという点については非常に疑問視される点があるわけですが、こういう建築物ができますと、消防署が必ず調査をしているはずでございますけれども、この点はどうなんですか。
  68. 降矢敬義

    降矢政府委員 この点は、四十四年に、例のスプリンクラー設備の強制設置の施設を拡大いたしましたときに、病院とホテルと重要文化財だけは遡及適用をいたしました。その他については遡及適用をいたしませんでした。したがって、この点については、いまのたてまえとしては適法な施設になっておるわけでございます。
  69. 桑名義治

    ○桑名委員 そうしますと、法改正はやったけれども、法の効力の遡及はしなかったところに問題がある。この点につきましては、こういうことになるわけですね。  そこで、もう一点お伺いをしておきたい点は、このビルには階段が六カ所あり、多くの死傷者を出した七階には、直通階段が五カ所通じていたが、そのうち四カ所には施錠されておった。こういうことでございますが、この非常の場合を考えた場合には、そういった事柄については、一切のかぎをはずしておくことが消防立場から考えた場合は当然なことだと思いますが、この点については、消防署の指導はどういうふうになっているんですか。
  70. 降矢敬義

    降矢政府委員 この点は、私たちは、内から錠をはずせる施設というようなことで指導しておりまして、昨年の建築基準法施行令の改正でも、あれは百二十五条の二だと思いますが、やはり、内側からは施錠を錠を用いずにはずせるようなドアにしなさいという規定を設けてあるはずでございます。もちろん、この点は、いわゆる遡及適用の問題がありますけれども、こういう規定が設けられたはずでございまして、私どもの指導としては、いま言ったように、盗難ということも一面ありますが、内からあけるときにはキーを用いずに開けるようなしかけのドアということで指導してまいっております。
  71. 桑名義治

    ○桑名委員 そうしますと、大体結論的に考えられますことは、もちろん、建築基準法の効力が不遡及であるところに一つの問題はありました。それと同時に、法の改正はしたけれども、その実施についてのチェックをある程度怠っていたのではないか、不備であったのではないか、そういうところに今回の災害が非常に大きくなった一つ原因が特にあるのではないか、こういうように思うわけです。今回の災害については、非常口があいておったならば、あるいはそこへの責任者の誘導が成功したならば、屋上に上がってある程度助かったんじゃないか、こういうふうに言われてもおりますし、あるいは、救助袋使用方法が完全に徹底をしておったならば、このくらいの人々はある程度助けることができたんじゃないかとも言われております。あるいは、救助袋使用方法がわからないで、逆に、上に乗っかって下におっこったというような事柄があるわけです。こういうことを考えてみますと、これは起こるべくして起こったいわゆる大災害であるというふうには私には考えられない。完全に現在の法律を施行しておったならば、最小限度にこの人身事故は防げたんではないかというふうに私は考えるわけでございます。その点について、消防庁はいまどのようにお考えになり、今後、いわゆる防火に対する、あるいは火災避難に対するそういった対策をお考えになっていらっしゃるか。その点を最後に承っておきたいと思います。
  72. 降矢敬義

    降矢政府委員 制度上、運用上の点についていろいろ御指摘をいただきましたが、端的に言いまして、いま先生が最後に言われましたように、ここの七階は火災がのぼっておらないわけでございまして、煙だけでございまして、したがって、少なくとも、ドアの、屋上に出るやつと、南側にある階段で、外部に開口部を持つ階段に出られるドアがあいておれば、おそらくこんな惨事にはならなかったと私たち考えております。  制度の問題をいろいろ御指摘いただきました。当然でございますが、まさに、この場合には、そこにある施設運用そのものを全く熟知していなかった、あるいは、それに対する心がまえというものがこの場合非常になかったという一点に尽きるわけでございまして、救助袋につきましても、使用方法を全然知らないで本人は行ってしまっておる。こういうことでありまして、そこのところが惨事についての一番の問題でありまして、私たちも、避難、誘導訓練というものについて、もっと施設等と結びついた、具体的な、機能的な、教育的な訓練というものを、消防方々が参加してこういう施設について行なうということが一番肝心ではなかろうかというふうに痛切に考えておるところでございます。
  73. 桑名義治

    ○桑名委員 最後に、こういう雑居ビルは、新聞によれば、現在大阪では二百八十四カ所、東京では六千五百カ所というふうに発表されているわけでございます。したがって、こういう惨事は二度とあってはならないわけでございますけれども、そういう可能性は十二分に含んでいるのではないかというふうに私は考えるわけでございます。そういった事柄を考えますと、法が完全に守られておるとすれば、こういう惨事は防げた。そうすると、消防庁としては、こういう問題に対しては、実施訓練はある程度義務づけるということが必要であろう。それから防火管理者も、こういう一つ災害が起こった場合には、一人ではなかなか適切な処置がとれない。これが複数であるならば、ある程度お互いに相談をし合いながら、短い間ですけれども、適切な処置をとるということもできるわけでございますから、そういった意味から、五十人以上何人までは何名、百人以上何人までは何名、何人をこえるごとに一名というふうに複数にして、こういった災害のときにはお互いに早急に相談がし合えるようにする。そうするとお互いに心強くて——こういうときには気分が動転してしまいまして判断がなくなりますけれども、これが複数になれば、ある程度のそういった適切な処置がとれるのではないかと思いますので、それを複数にすることと、さらに、先ほど申し上げたように、そういった訓練については、これを義務的に一年に何回か行なう、それが必ず消防署の立ち会いのもとに行なうというような義務づけをやっていくことが、今後のこういった大災害を防ぐ重要なポイントになるのではないかというように私は考えるわけでございますが、その点について伺っておきたいと思います。
  74. 降矢敬義

    降矢政府委員 防火管理者をまず複数にしてはどうかという御意見でありますが、私たち、実際の運用は、相当な施設になりますれば、何班かに分けまして、一つ管理者のもとに班を分けて、班の責任者を置いて運営をするように指導しておりまして、たとえば霞が関ビル等につきましても、防火管理者責任者は一つでありますけれども、各階にそれぞれの責任者がおって、班制度で、一つの統一した指揮命令のもとに班が動くということにしてありますので、私は、そのほうが実際の運用としてはベターではなかろうかと思う。もちろん、交代する場合には、管理者の代理者という者が責任者になってやるという仕組みはとっております。  それから、訓練につきましては一応義務づけはしておりますが、少なくとも年一回というふうなことにしてありますけれども、その点については、大体、普通管轄署で計画をつくりまして、二回程度を目標にしてやるようにしておるのが実情でございます。その点については、さらに現地消防署とよく話をしまして、具体的なやり方について、どのようにやるかということもなお研究させていただきたいと思います。
  75. 桑名義治

    ○桑名委員 防火管理者の問題でございますが、防火管理者の問題は、霞が関ビルのように、一人で、あとは各階ごとに班をつくって、その体制をつくっていくのがベターであろうというようなお話でありますが、防火管理者は、班長となるよりも、各階で防火管理者を設けたほうが、むしろ責任の度合いが違うと私は思うのです。班長になるということよりも、防火管理者であるという自覚と責任を持たせるためには、やはり任命をするほうがベターであろうというふうに私は考えます。  それから、年一回の災害避難訓練でございますが、これは回数はもう一回くらいふやしたほうがもちろんいいと思いますし、さらに、警察の事故の問題を減少させるためには、ドライバーに事故の悲惨な状況を見せることが非常に役立っておると言われます。ドライバーに実際に聞いてみますと、あの写真を見ると、やはり半年くらいはよくきくなと話しております。避難訓練の場合も、火事ということはみんな案外無関心なんですね。各会社で避難訓練をするぞと言いましても、なかなかついてこないのですね。だから、悲惨な火事の状況写真がおたくにもおありと思いますから、そういうものを訓練のときに全部展示して見せる。ごく最近にはこういうものがあったと言って見せる。そういうことをやれば、身近に災害というものを感じて、そういった訓練には応じ、意識を高めることができるのではないか。私はこういうふうに考えるわけでありますが、その点どうでございますか。
  76. 降矢敬義

    降矢政府委員 確かに、一つのお考え方だと思います。また、たとえば私のほうでは、うちにおります家庭の主婦を対象にするときは、いまお話がありましたような、その近所で起きた実際の火災の実例というものをみんな展示し、また、それをもって説明して、家庭防火教育ということをやっておるわけでありまして、いまのようなところをさらに現地消防とも話をしまして、一つ考え方でございますので、ぜひ考慮させていただきたいと思っております。
  77. 桑名義治

    ○桑名委員 これで最後にしたいと思いますが、いずれにしましても、今回の事故は、防ごうと思えば防げたというふうに考えるわけでございます。そういった今回の教訓をそのままにしないで、いい教訓として、今後二度とこういう惨事が起こらないように万全を期していただきたいことを要望しまして、質問を終わりたいと思います。
  78. 大野市郎

    大野委員長 門司亮君。
  79. 門司亮

    ○門司委員 今回の大阪火災による事故については、罹災者に対しましては全くお気の毒と言う以外にないと私は思います。しかし、きわめて遺憾なできごとを再度繰り返さないというのが政治のあり方だと私は思います。  そこで、消防法との関係について少し聞いておきたいと思うのですが、いままでの質疑応答を聞いてみますと、この問題の所在というものについて大体わかるような気もしますけれども、まだ、どうも所在が明確でないような気がする。そこで、私は、消防庁長官に一応聞いておきたいと思います。  意地の悪い聞き方ですけれども、こういう事故は、これだけではありません。たびたび発生するのであって、しかも、先ほどからお話しのように、最近の火災というものは、いままでの火災の概念で律することのできないことはもう事実であって、消防は、昔は火消しだと言えばそれでよかったけれども、このごろは煙消しでなければならない。火消しでは間に合わぬ。そういうことにもなろうかと思うのであります。そういうことについて、いまの消防法というものについての概念的の改革というか、法の改正をする必要があると思うのですけれども、そういう点について何かお気づきの点がございますか。また、同時に、この国会に消防法の一部改正が出ておるようですが、これを契機に、もう少し念の入ったものを出すというような考え方はございませんか。
  80. 降矢敬義

    降矢政府委員 煙の対策につきまして、一つは、燃えない材料による建築というものにつきまして、研究所ともあわせて研究していることは御案内と思いますが、そのほかに、火災になった場合に煙を外に出すというしかけ、つまり、避難とからみ合わせた排煙のしかけというものが、昨年の建築基準法で高層ビルにありましたが、さらに、こういうような古いものにつきまして考えられないだろうかという問題がございます。  また、火災につきましては、火がのぼる前に煙によって早く探知をして、早期避難をするという、煙探知器の普及の問題があろうと思います。これは、先ほどお話がありましたように、自動火災報知設備一つでございますが、こういうものの設置対象範囲の問題があろうかと思います。  それから、もう一つは、煙が一たび出た場合に、外に早く出るということが肝要でございますので、こういう施設、屋外に出る階段というようなものについてぜひ検討をしていかなければならないというふうに私たち考えておるところでございます。  それから、煙を吸い取るような装置、あるいは、煙とともにガスという問題が先ほど提起されましたが、煙だけの問題につきましては、東京消防庁の研究所を中心にしまして、静電気によってある程度吸い取る実験的な結果は出ておるわけでございますが、ガスまではまだいっていない状況でございます。そういうところは、今後さらに検討を進めていかなければならぬと考えておるところでございます。
  81. 門司亮

    ○門司委員 いまのお話のように、消防の研究をしておる場所では、煙等を吸収するとか、集めて外に逃がすとか、どういう形にすればいいかという設備のあることも一応承知いたしておりますし、これの検討をされておることも、いつだったか、実地に見に行ったときにあったかと思いますが、それはそれとして、実際問題として、そういう科学的な消防に対する一つの画期的なものをこしらえることが必要だと思うが、問題は、消防庁は、こういうものについて一体どれだけの調査費と研究費を持っておるかということです。今日の日本の火災状態を見てみますと、消防庁は一体何をしているのかと言う以外に言いようはないと思う。わかり切ったことだ。こういう火災を何回も繰り返しておる。そのたびに研究所に行ってみれば、係員の方は一生懸命やっていることはわれわれも否定することはできないけれども、一向にその効果はあらわれてきておらない。この原因が、端的に言って、もし、消防庁の持つ研究費あるいはこれらに使う費用が少ないということならば、そこから直していかなければ、どんなにやかましいことを言っても、実際上の火災が起こらぬとは言えないわけでありまして、どんなに万全を期しておっても火事というものは起こるものであって、その場合のことを考えると、消防関係の予算というものをふやすべきだと思うんだが、その点に関して一体どういうお考えですか。
  82. 降矢敬義

    降矢政府委員 火災の様相というものが、御指摘のように非常に変わっています。消防研究費といたしましては、先生御案内のとおりいろいろとやっておるわけでございますが、端的に言ってどうかということになれば、私は、決して十分ではないということをお答え申し上げることができると思います。
  83. 門司亮

    ○門司委員 問題はやはりそこにあると私は思うのです。次官のほうでもひとつよくお考え願いたいと思います。世の中のほうが進んでいるのですから、それを一つの概念として、火消しだという概念がどうもなかなか取り切れない。その上に、建材のほうはどんどん変わっていって、そして毒ガスがどんどん出てくるようになっておる。普通の火事であれば、木材だけなら、従来の概念からいけば、あのような悲惨事が起ころうとは考えられない。そこで、基本的なものとしては、消防庁にもう少し権威のある研究所をこしらえる必要がありはしないかということが一つ考えられます。  それからもう一つの問題は、現地における監視と消防訓練の問題でありますが、いまのお話のように、消防責任者というのをきめておいたって、責任者がいなければ何もなりませんし、責任者自身が、また十分にその役を果たすことのできないような人であっては、これまた何もなりはしない。したがって、責任者はむろんその建物自体の所有者であることは間違いないのであって、その人以上に責任者があるはずはないのであって、現場責任者としては、単なる責任者の届け出というのではなくて、この場合にも、夜ではあっても、ある程度のそれを補助するというような人が必要ではないかと私には考えられる。火災というのは、起こると非常に大きな損害を与えるが、しかし、常時それに備えておくということも何だかむだのような気がするのであって、往々にして、人間の節約なんというのはその辺から出てくるということなんです。ところが、その油断は非常に大きな問題であって、今度のような問題も引き起こすのではないかということが考えられる。したがって、消防法の改正の中には、いまのような、ただ、建物で何人以上がいなければならないというようなしゃくし定木的なものではなくて、消防要員というものが大体どのくらい必要かというようなことがある程度きめられる必要がありはしないかと私は思うのです。いま、会社や工場にはおのおの消防隊員を持っておって、ある程度の自家消防も持っておるが、こういう建物にも自家消防の必要があるのではないかということが私は痛切に感じられる。もしそういうものがあれば、もう少し厳重にこういうものを防止することができはしないかと思いますが、こういう構想についてのお考えをひとつ聞かしておいていただきたいと思います。
  84. 降矢敬義

    降矢政府委員 危険物関係につきましては、いま、法律制度によって、自衛消防組織の体制その他が書いてございます。その他の施設につきましては、防火管理者消防計画をつくらせまして、そして、その中に自衛消防組織をつくるということを計画の第一項の項目として施行規則できめておるのでございます。しかしながら、危険物施設と比較しまして、それがいま御指摘のように、どういうしかけで、どういう要因でということは、すべて現地消防署と防火管理者の間で、いわば指導というかっこうで行なわれておりますが、この点については確かに一つの問題であって、はっきり制度的にするほうがベターであることは間違いありません私は考えておりまして、この辺は、もう少しいまあるものを強化することで研究させていただきたいと思っております。
  85. 門司亮

    ○門司委員 いまのことですが、だから、具体的に言えば、この場合でも、責任者がいたとかいないとか言ってあとから追及したって間に合いませんし、それから、ここでは支配人責任者だが、こういう問題でなくて、ビルならビル全体を一応見る自衛消防のような形で消防員というものが絶えずいるんだという形が、私は、今後の問題としてはどうしても必要だと考える。そしてそれらの諸君が十分気をつけるということ。火災が起こった瞬間から、どうするかということ等については考える。それから、私はなぜこういうことを言うかといいますと、この場合、先ほどからお話しのありましたように、六カ所も逃げる場所はあったのだと実際新聞には書かれておる。それが、かぎがかかっておってあかなかったというのだけれども、かぎがあいておればこの場合にはどうだったと思うのですか。私は、行ってみなければほんとうのところはわからぬと思うのだが、そうすればこういう悲惨事はなかったという断定ができますか。かぎがあってもなくてもこういうものが起こるのだ。かぎがあって、かりにあいておれば、大体こういう悲惨事はなかったのだという断定がはっきりできますか。
  86. 降矢敬義

    降矢政府委員 確かに、一カ所、クロークのうしろのところには、非常口と遭いてある誘導灯もつけてございます。そこは、ビロードがあっても、かぎさえふだんあいておればおそらく——もちろん、ふだんあいておれば、そこはおそらく避難階段として十分利用できたと思います。それからもう一つは、庭上に出る階段でございますが、これも出口は、いま申し上げたところと、あと屋上に行く出口しかございませんので、結局、そこがあいておれば、おそらくそこに人々が行って、当然屋上に出られたと思います。  ただ、具体的に先ほど御質問がありましたとおり、そこがビロードで、一応カーテンで仕切ってあるかっこうになっておりますので、そのうしろにドアがあるということを、お客さんすべてが、あるいは従業員の方々が十分自覚していたかどうかということになりますと、単にドアが施錠されていなかったということ自体でこのような惨事が全くなかったかということの断定はちょっとむずかしいと私は思っております。
  87. 門司亮

    ○門司委員 この種の火事はここだけではない。旅館その他でたびたびあったことであります。最近の火災が、焼け死ぬということよりも窒息死のほうが多いということは先ほども数字を発表されましたけれども、そういう時代となっておる。ところが、さっきから何度も言っておりますように、それに対して一体どれだけ消防庁が検討しているかということ。それから、各地区における消防関係の諸君がこれに注意を払っておるかということ。この場合も臨検その他等は十分行なわれておって、そして法規的には別に問題はなかったのだというお話でしたね。そのお話のように、法規的に別に問題がなくてこういう事故が起こる。ただそれは処置が悪かった、いわゆる誘導のしかたが悪かった、その場における対策の誤りだということに今度の場合もなろうかと思うのです。いわゆる重過失というような形になってきやしないかと思うのです。しかし、そういう意味から言って、単に重過失だということだけでこれの罪科がきめられていいか悪いかということについては、私は、かなり問題があると思うのです。それはなるほど、かぎのあるところをあけなかったからいけないのだ、誘導のしかたが悪かったからだめなんだ、火災責任者がいなかったから悪いのだと言えば、そういうことになると思うのです。しかし、かぎがあいていないということ自身についても、十分訓練が日ごろから行なわれておれば、こういうことはなかったと私は思うのです。かぎをかける必要があるかないかということをもう少し議論する必要があろうかと私は思うのです。それは、営業主のほうから言わせれば、どこでもドアがあいて、どこからも出たり入ったりされるということになると、盗難のおそれもあるということは考えられる。これはわかる。しかし、盗難があるからといって、かぎをかけておったのじゃ、結局、かぎを持った人がいなければどうにもならぬということで、結果は今日のような状態になっている。盗難がこわいのか火事がこわいのかといえば、どっちかといえば火事がこわいのであって、盗難はそう根こそぎ持っていったり、人の命まで持っていったりしない。そういうことをもう少しこの際検討していただくことのために、消防関係に対する知識のためにといいますか、新聞の報ずるところによると、これらの関係の諸君を集めたら三百人以上も集まったなんということを大阪の地方では書いてありました。たくさんな関係者が集まってきて、予想以上に盛会で、各自が真剣に問題の所在を検討しておったなんということをちょっと新聞紙上で見たような気もいたしますけれども、これもいずれも、あとから幾ら検討してみたところでどうしようもない。まず、起こらないようにするにはどうすればいいかということです。  それから、消防関係一つだけこの際十分注意をしてもらいたいと思うことは、単なる消防だけでなくて、ほかの問題もあるのであるからこの場合も断定はできませんが、けさの新聞までの新聞情報だけを免れば、何か、たばこを吸った吸いがらが原因ではないかということが一応書かれておる。もしこれが新聞報道されているような下火だとすれば、いわゆるくわえたばこというものが問題になってくる。これは火災原因のかなり大きなウエートを占めていると私は思うのです。それから同時に、このことは、町をよごしてどうしようもないので、町を歩くときにくわえたばこで歩いているのは大体あまり文明国の国民じゃないというような悪口々言われるのですが、私もそういうことだと思うのです。したがって、こういう事故原因について処置が悪かったということも、処置については十分検討すべきであるが、火災発生原因等についても、消防庁の側から、たとえばくわえたばこをするなとか、寝たばこをやめろとか、そういうような具体的な注意をもう少しするということも実質的には必要じゃないかと私は思う。いま、駅や停留所等がどうしてもきたなくてしようがないので、市の美観のために吸いがらだけは捨てないようにしてくれなんということを言っておりますけれども、これは美観ということよりも、問題はむしろ火災だと思うのですね。たばこの不始末からきた火災の比率というものはかなり多いわけです。こういう点に対して消防庁としては、消防法の中の改正というものは考えられませんか。これはあるいは行き過ぎかもしれない。くわえたばこで町を歩いてはならないとかなんとかいうことを消防法の中に入れろと言ったところで、これは無理かもしれない。無理かもしれないが、しかし、事実はそういうことがたくさんあるということであって、たばこの吸いがらからくる火災というものはかなりたくさんあるということである。今度の場合も、新聞紙の報道ではどうもそうらしいと書いてあるのであるから、もしそうだとすれば、これはえらいことであります。専売局におこられるかもしれないが、あまりたばこは吸わないようにしろということになるかもしれないが、その辺のお考えはどうでしょうか。
  88. 降矢敬義

    降矢政府委員 確かに、たばこの問題は、ここ数年火災原因の中で最高でございます。いまおっしゃったように、投げ捨て等がおもな原因でございます。私たち、おっしゃるとおり、法律で規制するということにつきましては、いま直ちに結論を申し上げるわけにはまいりませんが、実際の運動として、一つは都市美観という名のもとに、消防協会を通じて消防団の方々に、町をきれいにする、火から守るという意味合いでの運動をしていただくように予算措置も実は講じてございますし、また、先生御案内のとおり、最近、過疎の地帯では、山菜とり、レジャー等の名においてたばこが捨てられて、山の火事を起こしておる事例が相当ございますので、こういう面からも、やはり、くわえたばこ、投げ捨てというものについて、いま言ったような事実に即した運動を、消防団の方々を中心に、町に出てやっていただくようなことを計画しております。また、同時に、ただそれだけではいけませんので、最近、小さな袋で灰ざらがわりになるようなものもできておりますので、そういうものも実際配って、具体の運動としてことしから始めるようなことを一つ計画し、予算措置も講じておるところでございます。
  89. 門司亮

    ○門司委員 それで、いまのように、問題は、いわゆる火災の発生の原因がたばこが一番多いというなら、何とかこれを規制することが火災をなくする最も大きな問題であって、火災が起こってからどんなに火消しだけを充実するような形をとっても、それは一つの現象に対する対症療法であって、根本的の解決にはならない。それから、最近における連築物が鉄筋コンクリートになったから、家が全部まる焼けになるというようなことはないのだが、結局、中の建材、それから中にあるすべてのものが化学製品であるということ。いわゆるそのもとをただせば、大体石油化学製品が多いということで、これは火をつければ有毒ガスになることはもうわかり切ったことであって、こういう幾つかの悪条件が重なっておるということですね。この悪条件の重なっておる条件を一つ一つほぐしていって分析をしていかないと、この種の問題は、私は、なかなか解決はつかないと思うのです。  そこで問題になってくるのは、通産省あるいは建設省の所管にもなろうかと思いますが、建築の様態をどうするかとか、あるいは通産省における、こういう毒ガスをたくさん出すようなものをどういうふうに処理をしていくかとか、あるいはそういうものについて、火がついた場合にはどういう対策を講ずるかとか、そういうようなことが真剣に討議さるべきではないかと私に思う。建設省のほうでは、単に建築用材等についても、わりあいに値段が安くできて、そして見ばのいいようなもの、あるいは、火がくっつけば困るんだけれども、普通の場合は、かなり耐久力があるというような、経済的な面からだけものが考えられておって、こういう災害等のことがわりあい考えられておらないというようなことがありはしないかと私は思う。こういう点について、もう少し有機的な連絡とか、有機的にものを考えていくということはできないものですか。そういう会議はいままで一体どのくらいやっているんですか。こういう問題についての各省との協議会というようなものは、何かやる機関があって、忠実にやっているかどうかということは私ども疑わしいんだが、その辺はどうなんですか。
  90. 降矢敬義

    降矢政府委員 新建材の防煙対策につきまして、これは建設省が中心になってやっておりますが、私たち消防研究所のほうにおきましても、それから通産省の関係のほうにおきましても、研究所間で、あの基準をつくるについては、それぞれ協議をして、建材に対する防煙の基準というようなものをつくっておるようなことでございまして、常時寄り合って、研究所間で協議を重ねておる事実がございます。
  91. 門司亮

    ○門司委員 私も詳しいのですが、その基準をきめた基準というのは安全性でしょう。別に危険性の基準をきめているんじゃないでしょう。そうすれば、今度のようなことが起こるということはおかしいんじゃないですか。ほんとうに基準がはっきりしておって、どの程度燃えてもこの程度のガスしか出ないというんなら、何も人間の生命まで脅かすほどのことはないはずです。基準どおりやっておって、こういう大災害が起こるんなら、その基準自身が怪しい。正しい基準とは言えないじゃないですか。御承知のように、いままでの普通の木材のときの煙と、かりに木材にある種の塗料を塗ったとして、その場合の悪質のガスが出る度合いというのは非常に違うはずであって、従来の日本のほんとう建物、それから、従来の木綿を中心とした、あるいは絹を中心とした、天然資源を中心とした什器あるいは家屋というようなものであれば、かなりの煙が出たからといって、人間が煙で死ぬようなことはほとんどないと言っていいくらいだ。ところが、最近のものはそうでなくて、結局、天然の資源でなくて、やはり化学製品というものが中心をなしているところにこういう問題が起きてくるんじゃないか。科学がここまで進歩してきておって、そして悲劇がこういうふうに起こるのでは、科学に対する科学でこれを制圧していくという検討がなされなければならない。そして、その結果が、このくらいまではよかろうということでその建材が使われておるんなら、こういう悲劇は起こらぬはずだ。これは三百理屈のようなことになりますけれども、私はそういう感じがする。したがって、そういう問題について、何らかの形でもう少し十分検討し得る方向がほしいということと、これは私は率直に言っておくが、消防庁考え方というものが、その中で、どの辺まで力の中でものが言えるかという立場ですね。消防庁が検討して、これはだめだということになれば、建設省で何と言おうと、通産省で何と言おうと、結局そういうものはつくらせないというところまで、いまの消防庁として行けますか。
  92. 降矢敬義

    降矢政府委員 いままでの消防審議会の答申を見ましても、各省にわたり、高層ビルについてのいろいろな今般の建築基準法の改正におきましても、消防審議会の答申というものをほとんど取り入れていると言っても過言ではないわけでありまして、いま先生の御心配のような点は、私たち、少なくとも私は、従来ともがんばってきておるわけでございまして、今後ともこういう点については、いまのおことばのとおり、十分われわれの考え方を——つまり、われわれの考え方というのは、現地消防方々現場で体験されていた一つ考え方だと私は思っておりまして、そういう点については、おことばに従いまして、十分反映するように私自身努力してまいる考えでございます。
  93. 門司亮

    ○門司委員 それから、これはちょっと方向が違いますが、あと次官に意地の悪いことを少し聞かなければならぬかと思いますが、この火事で、一応七階までなら、いまの消防車が届かないはずはないのであって、この場合は、消防が来て救出作業がどの程度行なわれたかということ等についても、これは現場に行ってもう少し私は聞いてみたいと思いますので、ここではお聞きすることは避けておきたいと思いますが、七階ですから、消防車で十分やれたはずだと思います。ところが、全体の火災に対する消防車、はしご車の数というのは非常に少ないのであって、しかも、建築のほうはどんどん上に伸びておるということで、結局、さっきから申し上げておりますように、それ自体についての消防というものが、ちょうど職場に現場消防隊を持っているような形で、こういうデパート等についても、十分なそういう自家消防のたてまえというものがとらるべきではないかと私は考えております。これはさっきの話と重複するようですけれども、こういう構想については持っておいていただかぬと、外部からの消防だけではもうすでに限界が来ておる。これ以上どんなに外部からやってみたところで、先ほどのお話しのように、煙が上がってきて数分間というか、あるいは数秒というような間に人間が死んでしまうような事態だと、これは、消防車を外から持ってきてはしごをかけてなんて言ったところで、事実上間に合わないようなことがかなりありはしないか。だから、どうしても、一面においては消防機材の充実と、それから一面においては、そういう内部的の施設消防の組織というものを持つべきだと私は思う。この二つについての御答弁を願っておきたいと思います。
  94. 小山省二

    小山政府委員 今回の火災にあたりまして、消防の力によって救出された者は五十三名と言われておるわけであります。いままで御指摘になりましたように、わが国の消防力の実態を見ました場合、必ずしも機械化が十分進んでおるというところまでは至っておらないようでございます。ことに、都市の火災につきましてはその感を特に深くするわけでございまして、救助対策専用の機械化と、一方において消火用の機械化ももちろん必要でありますが、人命救助ということが、今日の世相から見て第一義的に考えられなければなりませんので、消防体制の中で、特に人命の救助について、もう少し間度な機械化をはかって、言うならば、消火体制とこれが相一致して、消防の機械化の中心にならなければならぬというふうな感じが私はいたすわけであります。  もちろん、今回の千日ビル火災については、いろいろ原因等がございまして、私どもも、今回の火災を将来の消防体制の大きな教訓として、十分その原因の究明につとめるとともに、これが対策については、今後省をあげてこの改善に取り組んでまいりたいというふうに私どもも決意をいたしておるような次第でございます。
  95. 門司亮

    ○門司委員 私、ここでもう一つ突っ込んで聞いておきたいと思いますことは、それは消防訓練のことですが、いま、消防訓練はどういう形で行なっていますか。この消防訓練を、たとえば月に一回なり二回行なうということは、そこの従業員だけに避難訓練を教えるとか、あるいは指導を教えるというだけではやはりこと足りない。危険性というものを身に感じさせるには、お客さんも一緒に巻き込んだ消防訓練をやっていくということが必要だと思う。その時点だけはそれは少し迷惑をかけるかもしれないが、しかし、きょうは何時から何時までは消防訓練をやるんだというように明示して、たとえばさっきの話のように、救命袋があっても、その救命袋が使えなかったというようなことのないように、これがときどき行なわれておれば、かなり普遍的に全体のお客さんにも避難訓練が行き届くと思うのです。それを、ただ知っている者だけが知っている、知らない者は知らないというようなことでは、やはり今度のような悲劇になりはしないかと思う。今度の事故などは救命袋があったというのですから、それが完全に使われておれば、何も消防車でなくても、化学車でなくても、普通のはしごでも十分届くところの、消防の機材の活動のできる範囲内であったということは間違いないのであって、どうも高過ぎて手が届きませんでしたというようなところにあるわけじゃないので、やれる。ところが、そういう訓練がしてなかったために、せっかくあった救命道具というものが使えなかったというようなことはまずいと私は思うのですがね。  それから、これはいろいろの問題があった。たとえば、救命用のロープが一つ下がっておると言ったところで、これにつかまってどういう形でおりるか。あるいはなわばしごがあるにしても、あのなわばしごというのは、のぼりおりが非常にむずかしいのであって、へたにおりると、ぐるぐる回ってばかりおって使いものにならぬのであって、ああいうものの訓練も、ただ知っている者が知っているというだけではなくて、迷惑ではあろうけれども、常時、三分か五分であるから、お客さんも協力してもらうという態度の訓練が私は必要だと思う。これはここだけではありませんで、よく旅館で、迷路のようなところでたくさんけが人を出すというのでありますから、この宿は非常口がこことここにあるんだということをある程度お客さんにわかるようにしてもらえば、かなり役立つと思うのですね。こういう訓練のしかたも私は一つの方法だと思う。こういうものを義務づけるかどうかということが一つの問題になる。が、しかし、これは法律の過程の中というより、むしろ当該消防署の運営の問題だと私は思うが、そういう点についての、あなたのほうの消防署に対する指導というようなものは、そうむずかしい仕事じゃないと思うのだし、デパートなどでもそうぐずぐず文句は言わぬと思うのですけれども、どんなものですかな。その辺の感想を、もしあったらひとつ話してもらいたい。
  96. 降矢敬義

    降矢政府委員 従来、不特定多数が集まる施設についての訓練は、従業員の避難誘導訓練を主体としております。旅館のようなところでも、お客さんとともにやるということは、実際の問題としてはなかなか協力を得られない。特に、夜間お客さんが来るのが普通でありますが、そのときこそ一番大事なんでありますが、たとえば、旅館でお客さんと一緒に訓練をするということは、実情としてはなかなか困難だということを聞いておりますけれども、短い時間でも、十分ぐらいでも、たとえば停電を仮定してやるというようなことは、実際問題として、お客さんの協力を得られるようにしてやるようなことも確かに一つの方法でありますが、ただ、具体的な問題として私たちが言いますと、非常に困難であるということは業界の方々は言っておられます。
  97. 門司亮

    ○門司委員 もうこれから先は、やっていると、本会議があるからおこられちゃう。本会議開会中委員会を開いてはならないということになっている。懲罰になるかもしれない。  最後に聞いておきますが、これは次官にも要約して聞きますが、通産省と建設省との話し合い、その場合の消防関係立場消防庁長官立場というものが、いまの位置づけではまずいじゃないかという気が私はするのです。要するに、自治省の一つの内局であって、局長クラスとの話はできるかもしれないが、大事な予算の折衝等になると、次官クラスとの会合、折衝というものがなかなかむずかしいのじゃないか。だから、この辺ももう少し役所の機構を改めて、消防庁長官を、政府内部の予算折衝その他のときに十分にものの言えるような立場に置くことが一つの方法だと私は思うのです。消防関係がそうしたからといって、何も急に官僚化するわけでもなかろうと思いますし、実際の問題として、日本のいまの消防というものは、昔より幾らかよくなっているのです。昔は警察の子分みたいになっていたのです。独立しただけ幾らかよくなっていると思うけれども、せっかく消防庁というものがあるなら、内部の取り扱い等について、いま言ったような形で、もう少し消防庁長官の発言権が政府内部で強くなるような方法は一体考えられないものですか。
  98. 小山省二

    小山政府委員 私も、次官を拝命しましてから、いま御指摘のように、消防庁の機構というものが必ずしも強力なものだというふうに理解いたしておりませんが、内部のいろいろな関係もあることでございますので、御指摘の点は、よく大臣にお伝えをいたしまして、消防庁の機構強化については、大臣ともども私も善処いたしたいというふうに考えております。
  99. 門司亮

    ○門司委員 終わります。
  100. 大野市郎

    大野委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後零時五十六分休憩      ————◇—————    午後三時三十分開議
  101. 大石八治

    ○大石(八)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長所用のため出席できませんので、私が委員長の職務を行ないます。  消防に関する件について調査を進めます。  質疑を許します。林百郎君。
  102. 林百郎

    ○林(百)委員 午前中にだいぶいろいろ問題が出たわけなんですけれども、なくなられた方々にはほんとうにお気の毒しごくのことだと思います。  それで、まずお聞きしたいのは、七階にキャバレーか何かがございまして、そこの人たちが有毒ガスで窒息してほとんどなくなっておられる。だから、焼け死んだというよりも、窒息死をしていたということだそうでございますが、この七階に通ずる階段が四カ所も五カ所もあるわけなんですが、この階段を使って下へ逃げることがどうしてできないような状況になったのでしょうか。まず、その点を伺いたいと思います。
  103. 降矢敬義

    降矢政府委員 その点は、防火戸というものが全部つけてありますが、それをすべて締めてあったわけでございます。それは、管理形態が、業者がみな違いまして、九時以降は七階しか営業がございませんので、そういう意味から、ふだんは九時になったら下のほうの営業は全部終わってしまいますので、締めるわけでございます。しかしながら、締めたドアは、七階の場合においては、先ほど御説明申し上げましたとおり、そこの支配人に開くためのマスターキーというものを渡しておるようでございまして、いざという場合にはそのマスターキーかぎをあけることができるわけでございます。ところが、この支配人避難を先にいたしまして、同時に開くということをやらなかったわけでございます。そういう結果、いずれの階段使用することができなかった。こういうことでございます。
  104. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、かぎのかかっていたのと、それから、入り口があったが、そこはビロードの陰で、隠されていたようになっていたのとあるのですか。
  105. 降矢敬義

    降矢政府委員 階段ドアはすべてかぎがかけてございまして、そのうち二カ所につきましては、ビロードのおおいがかかっていた。こういうことでございます。
  106. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、入り口は全部かぎ身かけたまま営業をしていた。これは何カ所ですか。四カ所ですか。五カ所ですか。——四カ所というのが正確のようですね。そうすると、入り口は全部かぎをかけたまま営業していた、と、そう聞いていいんでしょうか。
  107. 降矢敬義

    降矢政府委員 さようでございます。出入りは全部エレベーターでやっておりました。
  108. 林百郎

    ○林(百)委員 四カ所ですか、出口は。階段は。
  109. 降矢敬義

    降矢政府委員 階段は、直接関係する階段としては四カ所でございます。
  110. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、密封された部屋の中へ心の窒息性のガスが入って、もう逃げることができないで窒息した形になっているわけですけれども、そのキーを持った管理人というのは、これは消助法第八条にいう管理者なんでしょうか。それともキーの管理者なんでしょうか。どちらなんでしょうか。
  111. 降矢敬義

    降矢政府委員 七階のプレイタウンの防火管理者として、正式に消防署に届け出られた人間でございます。
  112. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、全建物管理者があって、そのうちの七階のフロアの管理者。八条の二ですね。それぞれの部分の者が協議をし合って管理の任に当たるというのでしょうか。それとも八条の全ビルディングの管理者ということになるのでしょうか。
  113. 降矢敬義

    降矢政府委員 防火管理状況は、七階のプレイタウンは支配人一人でございます。それから三階、四階は、ニチイという衣料品を販売している業者の店長が管理者となっております。それから地下と一階、二階、五階、六階は、千日デパートの課長が防火管理者として届け出られております。この建物全体の統括防火管理者という八条の二の関係防火管理者につきましては、このビルについてはまだ定められていなかったわけでございます。
  114. 林百郎

    ○林(百)委員 これは昨年の十二月八日に、南消防署の者が現場に立ち入って検査をしているわけなんですが、そのとき、この八条の防火管理者をきめるなり、八条の二の防火管理の協議をするような指示をしなかったのでしょうか。
  115. 降矢敬義

    降矢政府委員 このビルは、私たち調査によれば、三十八年三月に、千日デパートという一つビルとしての消防計画の提出が消防署にあったわけでございます。しかし、いま申し上げましたとおり、この使用形態における管理者というものは三者ございまして、それでは、この消防計画が実情に合っておりません。そこで、南消防署は、四十六年六月に、この防火管理者の三名を呼びまして、そして打ち合わせをさせたのでございます。それは、いま御指摘のような共同防火管理体制を至急とるようにという打ち合わせをさせたのでございますけれども、そのときに直ちに三者協議をして防火協議会というものをつくり、統括防火管理者というものをきめるというまでには至らずに今日まで来ておる状況でございます。
  116. 林百郎

    ○林(百)委員 しかし、これは、八条で防火管理者がきめられない場合は、罰則があるのじゃないですか。
  117. 降矢敬義

    降矢政府委員 昨年その点を改正していただきまして、防火管理者がきまっていない場合には、八条におきまして防火管理者を早くきめろということをそのビル責任者、権原を有する責任者に命令することができるようにいたしました。その命令に従わない場合には、つまり定められた期限までにきめない場合には罰則をかけるというふうに昨年改正していただきました。
  118. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで、昨年の十二月八日に南消防署は行っているわけですけれども、この防火管理者の任命については、どういう注意を与えたわけですか。
  119. 降矢敬義

    降矢政府委員 昨年の十二月に予防査察をいたしましたとき、すでに、いま申し上げました三人の防火管理者というものは定まっておったわけでございます。したがって、予防査察のときにはこの点は指摘しておりません。
  120. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、南消防署は、管理者が三人もあるから、それがお互いに協議をして統一をしろという注意は与えたのですか。
  121. 降矢敬義

    降矢政府委員 昨年の十二月に査察をしたときには、そういう注意はしておりません。しかし、その六月に、とにかく集めて、早く共同防火管理者の責任者としてだれかをきめるようにということで、わざわざ消防署で協議をさせたわけでございますが、その点が協議整わず、まだ、統括防火管理者というものはきまっていない状態になっております。
  122. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、防火管理者の協議の三者というのは、もう一度聞きますが、何と何と何ですか。
  123. 降矢敬義

    降矢政府委員 千日デパート防火管理者と、ニチイの防火管理者と、七階のキャバレーのプレイタウンの防火管理者の三者でございます。
  124. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、いわゆる消防法八条の、責任を持ってこのビル全体の防火管理をする者がまだきまっていなくて、それぞれの三人の者がいた。しかし、それを総合して、だれが最終的な責任を持って防火管理をするかということはさまっておらなかったということになるわけでしょうか。
  125. 降矢敬義

    降矢政府委員 消防法におきましては、それぞれの施設について防火管理者を設ける。いまで言えば、キャバレー衣料品店それからデパート、それぞれの施設についてまず防火管理者を設けなければならぬことになっておる。それが八条でございます。その設けられた防火管理者が協議をして、その全体のビル、つまり、雑居ビルの統一的な管理者というものをだれにするかということをきめるのが八条の二の規定でございます。そのときの協議の内容の一つとして、代表をする統括防火管理者にそれぞれの管理者がどの程度の権原を付与するか、何をさせるかということをきめる規定が施行法令にもきめてありまして、そこに従って統括的な管理をするということに相なっております。
  126. 林百郎

    ○林(百)委員 それは消防庁の解釈とちょっと違うのじゃないでしょうか。建物について「学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、」となっておるのが八条で、それから八条の二のほうは、それぞれの部分に分かれておる場合は、それぞれの権原を有する者は、「前条第一項に規定する消防計画の作成その他の防火管理上必要な業務に関する事項のうち自治省令で定めるものを、協議して、定めておかなければならない。」とあるんだから、八条の二のほうが協議で、八条で、やはり一人の、そういう大ぜいの人が出入りする千日ビルなら千日ビル管理者というものが必要になるのじゃないでしょうか。ちょっと解釈が消防庁と違うんですがね。
  127. 降矢敬義

    降矢政府委員 政令で定める防火対象物というものが別表で書いてありますが、(一)から(一六)までございます。それで、いま御指摘のように学校、キャバレー、劇場、旅館、病院というように書いてありまして、いま問題になっています一つビルでいろいろな業態に使っているものをいわゆる複合用途ビルと申しておりますが、複合用途ビルにつきましては、その施設について、衣料品なら衣料品の販売、キャバレーならキャバレーというところを一つ施設としてまずとらえるという書き方を別表ではしておるわけでございまして、したがって、キャバレーならキャバレーというところが、八条のほうで、防火管理者をまず置かなければならないという規定を適用されるわけでございます。しかしながら、雑居ビルでございますから、防火管理上それでは適当じゃないということで、その雑居ビル全体としてどういうふうに防火管理をやるかということについて共通した消防計画を定めさせる。そのときには協議会を開いて定める。同時に、それをだれが統括するかという統括防火管理者というものを選任して、それを消防署に届け出ろという規定にしてあるわけでございます。
  128. 林百郎

    ○林(百)委員 これは小山政務次官でもいいんですが、八条の二の、いま言った防火管理者の協議の中で「消防計画の作成その他の防火管理上必至な業務に関する事項のうち自治省令で定めるものを、協議して、定めておかなければならない。」とありますが、「自治省令で定めるものを、協議して、」という、この「自治省令で定めるもの」の内容というのは、どういう内容ですか。
  129. 降矢敬義

    降矢政府委員 これは消防法施行規則の四条の二というものがございまして、共同防火管理協議会をまず設置する。それから協議会を代表する者をきめる。それから総括防火管理者の選任をする。以下「統括防火管理君に付与すべき防火管理上必要な権限」その他七号まで書いてあるのでございます。
  130. 林百郎

    ○林(百)委員 私も、消防庁には理解を持って、常に激励もしてきたわけですけれども、しかし、これが、昨年の六月に注意したにもかかわらず、八条の二の三者の防火責任者の協議もできていない。それから、自治省令で定める、いわゆる消防法施行規則の四条の二のこれらの事項がきまっておらないということは、これは消防署としては非常な大きな手落ちではないでしょうか。どうでしょうか。
  131. 降矢敬義

    降矢政府委員 これは確かに一つの手落ちだったと思います。ただ、このビル自体が、いま申し上げたとおり、四十六年の六月にようやく各階施設ごと消防計画をつくって管理者を定めるというところまで、呼び出して指導をしてきて、ここまできたわけでございます。しかし、いま御指摘のような、共同の責任者を四条の二の規定において明確にされておるところが欠けておったという点は欠陥だったと、私も率直に思います。
  132. 林百郎

    ○林(百)委員 われわれの聞くところによると、この三階、四階のニチイの衣料スーパーですか、ここの衣料品が焼けまして、そこから出た有毒ガスと、七階にあるプレイタウンですか、キャバレーですか、そこの建材から出た有毒ガスとが七階へ集中してしまって、そのために、七階で、焼け死ぬよりは、毒ガスでなくなった人が多いというのですから、三階、四階のニチイと七階のプレイタウンとが、お互いにどこかで、発火した場合はどういう方法で退避し合うかとか、そういうことを相談させておかなかったということは、これはたいへんな手落ちになるのじゃないでしょうか。特に、三階、四階のニチイの衣料の中には、焼けると有毒ガスを出すものも相当あったということが新聞に出ているわけですからね。これはやはり、消防法の八条の二の協議を至急させて、相互の連絡をさせておくべきではなかったのでしょうかね。そういう点はどうでしょう。
  133. 降矢敬義

    降矢政府委員 この火災は三階から発火したというふうに現時点では言われておるのでございますが、したがって、いま御指摘のように、そこの衣料品が煙となって七階まで行ったわけでございます。ただ、五階以上の階には火が入っておりません。それは五階でのところに通ずるシャッターが締まっておりまして、火炎はのぼらなかったわけでございます。煙だけが七階に参りました。七階は全然焼失しておらないわけでございます。  それで、いま御指摘のような、早期発見通報避難という点についての仕組みでございますが、この点は、保安要員が一階の保安室に三人詰めておりまして、ここに火災のボタンを押して火災通報がございまして、それから、一一九番の通知とともに、実際は、七階には保安室から電話で火災を通知をする。こういうことに取りきめがしてあったわけでございます。ところが、実際の私たちのいまの調査では、保安要員が七階への通知をどうも怠っていたように承知しておるわけでございます。そこのところの仕組みは一応整っておったように思いますけれども、現実に運用されたかどうかということになりますと、いま申し上げたようなことが、調査として、現時点では判明しているわけでございます。
  134. 林百郎

    ○林(百)委員 最近の火災というのは、火で焼け死ぬということもありますが、むしろ、建材や、あるいは燃えるものから発生する有害ガスで窒息して死ぬという例が多いわけなんですから、そういうことを考えますと、八条の二のせっかくの規定があるのに、それぞれ協議をして、相互の連絡をし合い、そして最高の責任者もきめるという点で欠けていたということは、これは火が七階まで行かなかったから法理上欠陥がなかったとは言えないと私は思うのですね。それに施行規則の四条の二、これもまだきめてなかったという点はそう思いますので、これからはそういう手落ちのないようにすることと、ことに、こういう総合ビルディングのようなところは、相互の連絡のし合い方と同時に、火、煙、有毒ガスなどが行った場合の退避のしかたを至急訓練させるようなことをしなければいけないのじゃないか。  そこで、お尋ねしますが、ここで南消防署が退避訓練をさせたことがあるという報告を聞いていますか。
  135. 降矢敬義

    降矢政府委員 最近では、四十六年の十月に署員が行きまして、避難訓練を実施しているということを承知しております。
  136. 林百郎

    ○林(百)委員 十二月八日に行ったときには退避訓練をさせているのですか。退避訓練をさせているとするならば、重要な問題が一つあるのですけれども、救助袋の入り口の、人が入るところですね。この口は開いたのですか。開かないのですか。
  137. 降矢敬義

    降矢政府委員 四十六年十月には避難訓練をやっております。十二月には、消防施設等の査察をやっておるだけでございまして、十月に訓練をやっております。その訓練のときに、その救助袋をどういうふうにしたかということは、実はまだ承知しておりません。  それから、いまの御指摘の、落としたあとで開いたのかということは、要するにあれは、一たん落としたのを開く……。
  138. 林百郎

    ○林(百)委員 自然に開くわけだね。
  139. 降矢敬義

    降矢政府委員 押して倒さなければいけません。そうすると、九十度に開くわけでございます。それは、こうすれば開くしかけになっております。当然に開いたわけではございません。今度のやつは、開かずに使っちゃったわけです。ですから、普通の使い方をしていないわけでございます。
  140. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、防火訓練をしていたとすれば、救助袋の入り口のところを開くことぐらいは知っているはずじゃないですか。それをあわせて救助袋は下へおろしたわ、入り口は締めてあったわじゃ、どうしようもない。私の聞くところによると、しかたがないから、救命袋の外から手でつかまっておりたところが、手が摩擦で熱くなってしまって、つかみきれなくて、途中で救助袋から手を放してしまって、地上へ落ちてなくなったという例を聞いておるのですが、あなた方が訓練させたにもかかわらず、高いところから下へおりるときの、救助袋のからだを入れる大事な入り口のところが開かない救助袋の落とし方なんというものはないじゃないですか。それはどういうわけなんですか。
  141. 降矢敬義

    降矢政府委員 従業員の方がそういうことは承知しておるわけでございますから、当然に承知しているはずだと私も思います。承知しているのになぜそのように動かなかったか。それは従業員の方が——従業員と言いますと、ホステスも含めました従業員の方でございますが、そもそも、防火管理者におきましても、その点はどうもはっきりしていない。それから従業員の方々は、御案内のとおり、すべてが承知しているわけではございません。ああいう業態でございまして、それは御案内かと思いますけれども、出勤も必ずしも日常的なものではございませんし、要するに、それをほんとうに知っている者があの操作を現実にしていないというところに問題が、この救助袋についてはあったわけでございます。
  142. 林百郎

    ○林(百)委員 これは、参議院での消防庁の次長の答弁によりますと、その救助袋も一個あったが、ネズミにかじられており、しかも窓ぎわに取りつけてなかった。そして、レバーをおろさなかったため、もぐり込む穴もあかず、宝の持ちぐされだったと言っているのですがね。これは次長が答えているわけですよ。だから、ネズミにかじられて穴があいていて、下へおろしても、その圧力でもって開くものが開かなかったということと、それから、レバーも開かなかったということもあるでしょうけれども、そういう状態のもとで、しかも、窓ぎわに救助袋がなかったというようなことは、あなたのほうが行って調べたとか、あるいは防火訓練をしたとか、そういうことでは責任をのがれられないことになるのじゃないでしょうかね。
  143. 降矢敬義

    降矢政府委員 その点は、次長の表現が多少適切でなかったと思いますし、現にいまここにいます予防課長が、現実にそれを自分の目で確かめてまいりましたので、どういうものか説明させたいと思います。
  144. 林百郎

    ○林(百)委員 ちょっと説明してください。
  145. 永瀬章

    ○永瀬説明員 救助袋は窓ぎわにございました。ただ、あの場所は、座席のシートなどで使いにくいところであったのではないかと思われますが、窓ぎわについておりました。そして、次長が御説明申し上げましたのは、窓ぎわにあったけれども、ワクを起こします窓のふちに、あとからほかのものが、台のようなものが工作されました関係で、もし立ち上がったとしても、ほとんどきちんと立たない形であったということを申し上げたように私は記憶いたしております。現実に救助袋は、窓の下に、回転部分を上にしましておさまっているわけなんでございますが、このワクを上に立てますと、上のほうに袋の穴があくわけでございます。これをあかないままで使用いたしております。要するに、中へもぐれない形でたらしたままになっている。  それからネズミに関しましては、多少ネズミが食った穴はありますが、使用にたえないというほどの、それを使ったら切れるとか、人が落ちるとかいうような……。
  146. 林百郎

    ○林(百)委員 いや、私の考えでは、空気の圧力でレバーが自然に開くようになっていたと思うから、ネズミの食った穴があれば、そこから空気が漏れるから、圧力でレバーが開かなかったために——そのレバーは手でやるわけですか。
  147. 永瀬章

    ○永瀬説明員 これは手動式でございます。人が持ち上げなければ立たない形式のものでございます。
  148. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、そのレバーを手で開く。自動のもあるのでしょう。ないのですか。
  149. 永瀬章

    ○永瀬説明員 自動のはほとんどないように私は聞き及んでおります。
  150. 林百郎

    ○林(百)委員 あることはあるのですか。
  151. 永瀬章

    ○永瀬説明員 私は、自動のものは聞き及んでおりません。
  152. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、手で開いても、人がもぐり込むような入り口の穴があくような、そういう状態に置かれていなかったことはいなかったのですね。
  153. 永瀬章

    ○永瀬説明員 一般に救助袋は、平生時は、他の使用の障害になります関係で箱の中におさめておりますので、使用時には箱を取りまして、起こすあるいは延ばすという動作を常に加えるのが通例でございます。
  154. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、それが、箱から出して、レバーを手で開いて、それで、ちゃんと人が入れるように、レバーが開くような位置にあったのですか。何か、あなたの言のは、ワクか何かあとから人がつくったものがあって、レバーで開いても人が入れるだけの余地があかなかったというのじゃないですか。
  155. 永瀬章

    ○永瀬説明員 これはちゃんと使えるような位置にありました。
  156. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、それをどうして使わなかったのですか。
  157. 永瀬章

    ○永瀬説明員 生存者が少ないために、現場状態がどのような状態、心理で、あるいはどのような混雑がその周辺で起きたかははっきりいたしませんが、火災後の、おなくなりになった方の位置等を写した写真等から判断いたしますと、そのワクの下で二人ばかり倒れておられる。さらにいろいろ聞き合わせたところによりますと、救助袋が下に投げおろされまして、二階部分のネオンサインで末端がひっかかっておった。これを消防隊はしごをかけまして、末端を落としまして、そして消防隊と、見物人といいますか、心配そうに来ておられた市民の方とでひっぱって延ばしたわけでございます。そこを上からおりてこられた……(林(百)委員「入り口のところは」と呼ぶ)入り口のところは、操作を知らなかったのか、あるいは押されてそのワクが上がらなかったのか、その辺が、推定といいますか、はっきりさせるすべが現在までのところは全然ございませんが、要するにワクをあけなければ使えないものがあけないままで使用されてしまった、延ばされてしまったという現実でございます。
  158. 林百郎

    ○林(百)委員 しかし、そういうときに、そういう防火器具防火用に使うために管理者があるわけでしょう。八条の二ですか。そのときその人はどうしていたのですか。
  159. 降矢敬義

    降矢政府委員 プレイタウンの防火責任者がどうしておったかということについては、現在よくわかりません。それは警察に行っておられますので、調査の結果はわかりませんが、先ほどから申し上げますとおり、避難階段に通ずるドアもあけておりませんので、したがって、防火管理者としての任務を全然遂行していないということでございまして、具体的な行動をどういうふうにそこで彼がやっておったかということはつまびらかにいたしません。
  160. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、まるで怪談じみてくるのですけれども、防火管理責任者で、いま言った救助袋の穴をあけたり、出口のキーもあけたりなんかしなければならない人、その人がどうして助かって、そしてあと百十七名の人が窒息死してしまったのですか。それが消防庁でわからないというはずはないと思うのですがね。だって、防火に対して一番責任のある人が一番先に逃げちゃって、あとの者は何もしようがないじゃないですか。そこは訓練を十分しておらなかったのか、日ごろ消防署との関連が薄かったのか、あるいは、その男がはなはだ人間性に欠けていた男か。われわれ聞いていて、どうもちっともわからないのですけれども、どうしたのでしょう。
  161. 降矢敬義

    降矢政府委員 実は、私たちもそこがわからないのでありまして、それは、本人がいま警察のほうに留置されておりまして、その本人から聞くすべも全然ないわけでございます。したがいまして、いま言われましたようなことで、要するに、防火管理者のもとに従業員というものを使って防災に当たるわけでございますが、その本人及びその従業員が、防災あるいは防火避難というものに対する心がまえといいますか、そういうものが全く欠如しておるということだけは明確に言えると思います。
  162. 林百郎

    ○林(百)委員 その消防管理者というのは、その晩にそこにいたことは間違いないのですか。
  163. 降矢敬義

    降矢政府委員 プレイタウンの防火管理者はおりました。支配人でございます。
  164. 林百郎

    ○林(百)委員 消防管理者がそこにいたのに、それだのに、自分だけは逃げることができて、あとの者はだれも逃げられなかったという、そういう消防管理者というものは一体あるのでしょうかね。これは、やはり日ごろの消防署の訓練のしかた、消防管理者としての自覚の促し方が足りなかったのじゃないいか、こういうように思いますがれ。   〔大石(八)委員長代理退席、委員長着席〕 まあ、その点は、それじゃしかたないから、今後の警察の取り調べにまかすことにしますが、全くそんなことも知らないで、そこへ一晩の楽しみに行った客や、そこで働いていたホステスの皆さんというものはほんとうに気の毒な運命にあった。そして、その管理者は、もうかればどうでもいい、人さえ入ればどうでもいい、人の生命のことについては何の考えも持たないという、無責任管理者だったというように私たちとしては思うわけです。  そこで今度は消防署のほうのことをお尋ねしますが、大阪市の消防車で、高いところへはしごを伸ばすことのできる車というのは、みんなで一体何台あるわけですか。
  165. 永瀬章

    ○永瀬説明員 三十メートル以上のはしご車は八台ございます。それから、十五メートル級がスノーケルが八台ございます。それからもう一つはしご車ではありませんが、中高層ビルの消火活動に使うスクアートという十六メートル級のものがございますが、これが一台ございます。
  166. 林百郎

    ○林(百)委員 これは、われわれも予算の点で十分考えてあげなければならない。国会も共同の責任がありますが、大阪の高層ビルは、十五メートル以上のものが四十六年度で四千九百五十九カ所ある。そういうように聞いているが、どうでしょうか。調査した数字がありますか。もしそうだとしますと、四千九百五十九カ所の高層ビルがあるのに、いま言ったはしご車は、みんな合わせてせいぜい十七台。これではとてもとても高層ビルに対する消防の機能などは発揮できないということになるわけですが、その辺はどんな数字をおつかみですか。
  167. 降矢敬義

    降矢政府委員 大体、私たちの基準で計算しますと、十五メートル以上のはしご車に、基準では二十二台ということになります。それに対していま十六台、七一・一%程度の充足率、こういうことでございます。
  168. 林百郎

    ○林(百)委員 高層ビルは何カ所あるのですか。
  169. 降矢敬義

    降矢政府委員 高層ビルと私たちが意っておりますのは、三十一メートル以上のものを法律で高層ビルと言っております。これは一昨年の十二月でありますが、大阪府全体で見まして、主として大阪市中心でありますが、四十三ということになっております。
  170. 林百郎

    ○林(百)委員 私のほうの数字ですと四千九百五十九カ所とありますが、どうでしょう。
  171. 降矢敬義

    降矢政府委員 それは基準のとり方で、私たち法律で言う高層ビルというのは、三十一メートル以上をとっておりまして、先生の言うのは、おそらく十五メートルくらいのところではないかと思いますが、それは、ちょっといま手元に資料がございませんので……。
  172. 林百郎

    ○林(百)委員 十五メートルというと、もうそろそろはしご車を持たないと——そろそろどころか、はしご車がないと消火の訓練ができないので、それに対して二十台ということは、これは消防施設についても非常に欠陥がある。だから、これは至急予算も十分に取って、万遺漏なきを期するようにしなければならない。それは、われわれもまた御協力をしなければならないと思います。  そこで、これは私のほうの新聞の所蔵でありまして、非常にいい適切な御意見だと思うのですけれども西山夘三という京大の都市工学の教授が、「新聞などを見た範囲によると、千日デパートは旧歌舞伎座を改造したもので、内部は錯そうした空間がつくられていたとみられる。このため外来者が自分のいる位置がとっさの場合、わからない。とくに不特定名数を相手にするデパートや水商売の場合、危険は加算される。目先のもうけ主義が前面にでて、避難口なども完備せず、焼けてしまったら百年目という考えももある。いずれにして複合建築ビルの場合の安全対策を、法規上も検討し直さなければならない」ということを言っています。要するに、営利重点主義で、防火避難対策を全く手抜きにして、こういう複合建築ビル建てられている。そして、もうけ主義で、客さえ来ればいい、あとは野となれ山となれ、百年目だというような営利主義にとらわれますので、これは、消防署のほうが一そう積極的に、そういう営利主義に対して冷静な忠告を与え、十分な訓練を与えなければならないと思うのです。ことに、複合建築ビルの場合は、自分自身のいる位置と非常口もわからない。もし火事になった場合、火なりあるいは毒のガスから身をのがれることなどはとうてい考えられないような、複雑な状態に最近の複合建築ビルはなっておりますから、消防署は、そこにいる従業員に対して常日ごろ訓練をしていなければならないと思いますが、その点のために、いま私が申し上げたような意見が学者の間にもあるということですが、この点についての、小山次官消防庁の御意見はいかがでしょうか。  最近のようなこういう複雑な複合建築ビルの場合、特に、そこにいる客自身は、自分の位置が全然わからないわけなんですから、そういう客に責任を持つ人たちが、十分な責任を持って、消火なり退避なりの訓練、それから防火あるいはそういう毒のガスで窒息するようなことからの退避の訓練をさせておかなければならない。これはいかに訓練しても訓練し足りないことだと思いますけれども、その点について、次官消防庁長官の御意見を聞かしていただきたい。
  173. 小山省二

    小山政府委員 使用目的が当初とかなり違ったような形の中で営業が行なわれている、使用が行なわれているというようなビルに対しては、従来の建築基準あるいは消防、それに増して指導監督を強化しなければならないことは、いま御指摘のとおりであります。たまたま今回その典型的な災害が発生したというわけでございますので、今後、消防法あるいは建築基準法、いずれも十分再検討いたしまして、再びこのような災害が起こらないように万全を期してまいりたいというふうに考えております。
  174. 降矢敬義

    降矢政府委員 不特定多数の人間の集まるところの防災については、そこにおる管理者をはじめとした人たちが、災害の場合にいかにいち早く避難誘導をするかということが非常に大事なことでありまして、そういう点を重点に、それぞれについての訓練というものを行なうべきでありますし、また、いままでもそういうことで心がけてまいりました。しかし、御指摘のように、今後も、そういう点を重点とした訓練を実施させるということについて、さらに十分行政上指導をしてまいる考えでございます。
  175. 林百郎

    ○林(百)委員 あと二問で終わりたいと思いますが、一つは被害の賠償の問題ですけれども、一番上にあるもの、これはキャバレーと呼んでいいのですか、プレイタウンですか、これは被害の責任者は一体だれになるとお考えになりますか。お聞きすれば、五十にもなるような方がホステスとして働いていたとか、あるいは、子供一人かかえて、生活の道がないのでホステスをしていたという、四十をこしたホステスの人たちもそこで働いていたということも聞いているわけですが、そういう人たちははなはだお気の毒だと思いますけれども、こういう複合建築ビルというような場合に、だれがどういう責任の負い方をしたらいいのでしょうか。もし考えがありましたら、長官でも、次官でも、どちらでもいいですが、お聞かせ願いたいと思います。
  176. 降矢敬義

    降矢政府委員 これは、まず火災の出たところが三階でございますが、そこの施設について権原を有するところ——賃貸借をしているか、所有権を持っているか知りませんが、施設についての権原を持っているところは当然だろうと思います。それから、それが煙となって上の七階におった方が多数おなくなりになりましたが、先ほどから御指摘のような、そこの避難誘導体制にやはり重大な欠陥があったのじゃないかと私たち考えております。そうすれば、当然の施設について、権原を有する者も、この問題について責任を免れることはできないと私は考えておりますけれども、これは純然たる民事の問題でありますし、ここでそういうふうに私は断定はできないと思いますけれども、一応の考え方としては、そういう考え方をすることができるのじゃないかと私は思います。
  177. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、制度的には、補償の制度が法制的にも確立されてはおらない。したがって、過失がどこにあったかということで、過失の所在者が連帯して責任を負うようになる。こういうことになるわけですね。ビルの所有者自体はどうでしょうか。
  178. 降矢敬義

    降矢政府委員 こういう複合ビルであれば、所有者がそれぞれの施設ごと責任を持たせるようなかっこうでやっているのが普通でございます。おそらく、この場合もそうだと思います。しかし、なお、自分が管理について責任を持つような体制にそもそもの契約その他についてなっておれば、その点もおそらくあるだろう。全くないということは、これはむずかしいのじゃなかろうか。しかし、これは複合用途ビルの権原の帰属の問題でございますので、ここで全部断定してこうだと言うわけにはまいらないと思います。
  179. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、ビルの所有者も、このビルについて、防火管理者としての責任を持ち、そうして、防火管理者としての諸法令によって命じられたことが行なわれていなかった。そういう過失があったとするならば、責任を負わなければならないのじゃないか。本件の場合は、その点についてに今後の事態の究明を待つということですね。  それからもう一つ消防署員ですけれども、消防署員の負傷者が十六名と聞いておるわけですが、消防署の署員の負傷者はどうなっていますか。
  180. 降矢敬義

    降矢政府委員 消防職員は十三名でありまして、軽傷上十二名、中等傷一名ということになっております。
  181. 林百郎

    ○林(百)委員 こういうような日本の火災史上かつて例のないような、非常に無残な火事が発生したわけですが、こういうところへ出動した消防職員の手当というものは、これはわれわれもまた協力しますが、どのくらいの手当がどういうようにもらえるものなのでしょうか。
  182. 降矢敬義

    降矢政府委員 これは、当務の方については、その当務についての手当、特に夜間出動の手当とか、そういうものが当然出るわけでございますし、それから、非番の人があるいは出ているかもしれません。そうすれば、そういう方についても当然手当が出るわけでございますが、金額につきましては条例できめておりますので、いまその点詳細に承知しておりませんが、当然、手当は支給されるということでございます。
  183. 林百郎

    ○林(百)委員 この手当のわかる人はおりませんか。私のほうでごく概括的に調べたのですが、消防職員としての手当が三百円で、それから、時間外の手当が五百円から八百円の間のものがつくのではないか。だから、合わせてみても千円をこすかこさないかの程度だ、こしてもわずかこす程度だというように聞いておりますが、わかりませんか。これはやはり消防署員にとっても命がけの仕事ですし、たいへんなことでして、われわれは十分その待遇を見てやらなければならないし、この国会にもそういうような法案も考えておるようですけれども、これはどうでしょうか。もう少し具体的に金額はわかりませんか。
  184. 降矢敬義

    降矢政府委員 これは大阪市の条例できめておりますので、いずれ私のほうで調べまして……。
  185. 林百郎

    ○林(百)委員 大体どんなものでしょうか。
  186. 降矢敬義

    降矢政府委員 私、いま見当がつきませんので、いずれ調べて御報告させていただきたいと思います。
  187. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、あとで資料をいただきますが、おそらく、消防庁長官は、あまり少ないので言うのをちゅうちょしておるのではないかと思います。それは思い過ぎかもしれませんが、もしそうだとすれば、これはまたこれで別な問題として、非常に危険な仕事に携わるわけたんですから、われわれは、消防職員の手当てについても十分見てやらなければならないと思います。  いずれにし出しても、これは消防署の方々が、ことに長官をはじめ首脳部の方々が、こういう営利主義に徹して、人の生命を二の次にして常業しておるような人たちに対しては、十分な警告、法令の順守、日ごろの訓練というものをとりあえず行なうこと、それからさらに、消防施設がこれではあまりに貧弱であるので、これを十分充実すること、それから、消防職員の手当を、こういうような危険な仕事に携わる者にふさわしいだけの物質的な保障をするというようなこと。災いを転じて福をなすように、これらについて今後努力していかなければならないと思いますが、私も現場を見ておりませんので、明日現場を行って見てきまして、そしてまた質問をいたしたいと思いますが、きょうの質問はこれで終わらせていただきます。
  188. 大野市郎

    大野委員長 関連して、小濱君より質疑の申し出があります。これを許します。小濱君。
  189. 小濱新次

    ○小濱委員 特別なはからいをいただきましたので、一点だけお尋ねしておきたいと思います。  いま、小山政務次官も、再びこのような災害が起こらないように十分対処していきたいという決意を述べられましたが、ここで、今度の、この提出をされた書類の中で教訓を読んでみましても、避難訓練であるとか、管理体制であるとか、煙に対する対策であるとか、いろいろ出ておりましたけれども、もう一つ、大事な問題で、私は、これは十分お考えいただきたいと思いますので御質問するわけですが、いま林委員からも質問がございましたけれども、出動消防車両、これは八十一台だということになっている。この中で、はしご車が七台。それからシュノーケル車というのですか、これは日本語にするとどういうふうになるのか、これが正規な名称なのか、これをまず伺いたいと思います。ちょっと御答弁ください。
  190. 降矢敬義

    降矢政府委員 シュノーケルと言っておりますが、屈折はしご車というものであります。
  191. 小濱新次

    ○小濱委員 どうしてそんなむずかしい名前をつけるのですか。風折、伸縮ですね。伸び縮みのもの。横にぐっと行くか、上にこう行って横に行くのでしょう。とにかく変な名前がついているものですから、私ども、解釈をするのにちょっと困るのですけれども、片方ははしご車となっているのですから、できれば片方も日本語でやってもらったほうがいいのではないかと思いますが、わかりました。  そこで、先ほどの林委員質問に対するお答えは、三十メートル、これが最大のものだという御説明がございましたけれども、もっと大きいのがあるはずなんですが、それが非常に少ないということを聞いているわけです。高層住宅ができておる今日、それ以上のはしご車がないというのは、私どもにはどうも解せないわけです。この点についても、もっともっと力を入れていかなければならないと思うのですが、大体それ以上の車、四十メートル、四十一メートルの車があるはずですが、どの地域にどのくらいの台数があるのか。御存じならばお答えいただきたいと思います。
  192. 降矢敬義

    降矢政府委員 ただいま林委員にお答えいたしましたのは、三十メートル以上のはしごということでお答え申し上げました。大阪市には、四十一メートルが一台と三十八メートルが一台ございます。それから、私の承知しているところでは、最近三十八メートルのものを東京で用意したというふうに承知しております。
  193. 小濱新次

    ○小濱委員 四十一メートルは日本には一台しかないのですか。
  194. 降矢敬義

    降矢政府委員 私の承知しているのは、一台大阪で所有したということを承知しております。
  195. 小濱新次

    ○小濱委員 横浜にもございます。それから東京にはないのですね。そういう点で、なぜ東京にないのであろうかと思うわけです。その点を強調しておかなければならないかと思いますが、今回の記録を見ましても、「梯子車による救助五十名(うち九名は死亡)」と書いてあるのですね。死亡というのは病院でなくなったかと思うのですけれども、この死亡の内容はどういう内容なのか。もう一つは「消防隊シートによる救助三名」と書いてある。シートを広げて三名が救われただろうと思いますけれども、シートが小さいので、漏れて、たいへん被害が起こったという話も聞いておるわけです。どこから飛び出してくるかわからないから、下に張っておっても、そのところにシートを張ることができないのじゃないか、間に合わないのじゃないかという感じも受けるわけですが、このことと、このはしご車から救助された五十名のうちの九名の死亡内容をそれぞれお知らせを願いたい。
  196. 降矢敬義

    降矢政府委員 はしご車で救援され、病院に搬送された後になくなっております。ほとんどガス中毒だろうと推定されております。  それから、「シートによる救助三名」と申しますのは、救命袋で伝わって降りようとして、そして下に来てから落下したわけでございます。それをシートを張って受けとめて助けた。小さいからどうとかお話がございましたが、そういう事実はございません。
  197. 小濱新次

    ○小濱委員 こまかいことを聞いて中しわけありません。あとで結論をお伺いしますが、はしご車でいまの中毒症の人が上から伝わっておりてくるわけです。いろいろと写真やら何か見ますと、消防隊が下からささえながらおりてくる姿が出ておりました。私も、三十メートル、三十五メートルぐらいの綱渡りをやった経験がございますけれども、若いときには、高いところに上がるなんということを自分は自慢して上がっておった時代があったんですが、いまはもう、二階、三階から下を見ても目が回るような、何だか知らないけれども、ばかに恐怖感にとらわれるような、そういう今日になってしまいましたが、あの場合に、三十メートルいわゆる百尺の上から伝わるときの恐怖感というものはどういうものであろうかということを私は想像するわけです。あの伝わるときの、一番高いところの場面をテレビで見ますと、えらい難渋してあそこへおりてくる姿が出ているんですけれども、あそこの対策は何かないんですか。その辺が大事じゃないかと思うのですが。
  198. 降矢敬義

    降矢政府委員 確かに、今度のはしご車による救助は、通常の高さの使用の方法による救助と違っております。先生御案内だと思いますが、要するに、ワゴンがエレベーター式になっておりまして、通常のワゴンには、消防職員が一名乗って、ほかに救助される方二名を乗せまして下へおりてくるわけでございます。つまり、エレベーターでおりてくる仕かけになっておるわけでございます。ところが、今度の場合は、うしろからどんどん押してまいりまして、ほんとうはしごに手をかげながらおりてきた状態でございます。したがって、消防職員の方が下でささえながら実際救助しているという、通常のワゴンでおりてくる救助のしかたとは若干違っておるわけでございます。その点は、確かに、御指摘のように、そういうときにいかにしてはしごを伝わっておろさしてくるかということについては、今度の実際の経験者の話を聞きながら私たち考えなければと思います。つまり、はしご車による救助の通常の形態とは全く違った形態で救助したところに、新しい問題として救助対策考えなければならないところがあると思います。
  199. 小濱新次

    ○小濱委員 政務次官、これはいままでも当委員会ではずいぶん強調されてきた問題ですけれども、先ほども他の委員からも御質問がございましたように、まだまだこれは体制が整っていかない。いまのように高いビルがたくさん建っているにもかかわらず、四十メートル、四十一メートルのはしご車大阪と横浜にまだ一台しかない。東京はありません。最近三十八メートルができたとかなんとか言っておりますけれども、そういう状態であって、これは何とかしなければならないと思う。消防車両、しかもはしご車の整備をして、上でどうそれを救済していくか。ガス中毒になった人が三十メートル、四十メートルの上から階段を伝わっておりるなんというのは、無我夢中でおりてくるだろうと思うのですね。一歩誤ったらたいへんなことになる。消防署員も犠牲になってしまう。こういうことで、あそこの対策も講じなくちゃならぬ。  それからシートの問題。シートの張りぐあいを、その場所によって大きくするか小さくするかという問題。これは十階、二十階ぐらいからおりるわけにはいきませんから、シートを、下で張っているのじゃなくて、上で張ることができないものか。これ教訓として、もっと救助作業を考えなくてはならないと思うのです。それは予算の面もあるでしょうし、大いに研究もし、強調していかなければならない問題だと私ども思いますが、テレビや新聞でいろいろと見たり伺ったりした中で特に感じたのは、救助作業のここのところの教訓をもっと生かしていかなくてはならないと思うのですが、お答えいただきたいと思います。
  200. 小山省二

    小山政府委員 今回の千日デパート火災というものは、私は、今後の消防のあり方に大きな教訓を与えた面が非常に多かったのではないかと思うのです。従来、火災を主体に消防施設というものを整えたわけでございますから、消火ということが第一の任務になっておる。しかし、最近の状況を見ますと、やはり、人命救助ということが消火と並んで消防業務の大きな仕事になってきたようであります。特に、最近、有毒ガスの発生というような、面を考えますと、消火に先行してまず人命救助をやらなければならぬ。そういう人命救助体制というものが、いままでの消防体制の中に十分確立されておったかというと、私は、必ずしも十分とは考えられない面が多いように思うのであります。したがって、これから消防器具そのもの総点検しなければならぬし、消防体制そのものにも再検討を加えなければならぬ。やはり、新しい時代の要請をできるだけ敏感に受けとめて、これから再び多くの人命を失うような災害を起こさないように、消防体制の面からも十分再検討をしてみなければならぬ。そういう意味では、今回の火災というものは私どもに教える面が非常に多かった、非常に大きな教訓であると考えておりまして、私も、これから大臣ともともどもに、できるだけの勇気をもって対処してみたいというふうに考えております。
  201. 小濱新次

    ○小濱委員 関連でありますので、この程度で質問を終わります。
  202. 林百郎

    ○林(百)委員 関連。スプリンクラーですね。これも専門のことばが出てくるが、スプリンクラーが、千日デパートの場合は、地下一階と、一階と、六階、七階に装置されていただけで、発火の場所と見られる三階をはじめ、焼けた二階、四階に設置されていなかったというのですけれども、スプリンクラーはどういう状態になっていたのですか。動いたのか動かなかったのか。動いたとして、どことどこの階にはあって、どことどこの階にはなかったのですか。
  203. 永瀬章

    ○永瀬説明員 スプリンクラーは歌舞伎座時代に設置したもののようでございまして、用途変更をしましてからあと、その用途に応じた配管のやり方はいたしておらないようです。地下に十三個、一階の玄関正面の入り口を入りましたところを中心に十五個、その程度しかスプリンクラーはついておりませんでした。これらが地下と一階の関係で、火災のそこに及んでおりません関係で、作動いたしておりません。
  204. 林百郎

    ○林(百)委員 もう一つ。そうすると、総合建築ビルとしては、スプリンクラーも非常に不十分な施設しかなかったと理解していいですか。
  205. 永瀬章

    ○永瀬説明員 この建物が、先ほど申し上げましたように、歌舞伎座時代にでき上がった建物でございまして、その後用途の変更、多少の改造をしております関係上、従前の用途そのままで適法になる仕組みになっております関係で、法令上は違反という形には相なりません。もし、この建物が新たにできたとしますと、部分的にはスプリンクラーの要る部分に出てまいります。このような状態でございます。      ————◇—————
  206. 大野市郎

    大野委員長 次に、内閣提出にかかる警備業法法案を議題といたします。  この際、おはかりいたします。  本案について、参考人の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ君あり〕
  207. 大野市郎

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、参考人の人選、出席日時等については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ君あり〕
  208. 大野市郎

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  209. 大野市郎

    大野委員長 それでは、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。桑名義治君。
  210. 桑名義治

    ○桑名委員 最初に、警備業法に対する政府並びに自民党の姿勢について一言申し上げたいと思います。  委員長も見ればおわかりのように、今回のこの警備業法の審議にあたりまして、非常に少数の出席しかございません。本来ならば、私はここで質疑を中止をしたいわけでございますけれども、たっての、要望でございますので、質疑を続行いたしますけれども、二度とこのような状態が起こらないように、ひとつ十二分に御配慮を願いたいと思います。まず、それを要望して、審議を続行していきたいと思います。  今回出されました警備業法につきましては、俗に言うガードマン法でもありますし、あるいは、これに該当をいたします会社は、警備保障会社というふうに銘打たれているわけでございます。したがいまして、この警備業法は、ただ単にその会社の運営並びに資格等についてのいわゆる規制——規制ももちろん大事ではいますけれども、いわゆる補償についての内容がほとんど盛られておりません。ところが、いろいろな資料をながめてみますと、外国におきましては、この警備業に対する規制と補償が行なわれている国々が多いようでございますが、この補償の点をなぜ削ったのか。その点について明快にまずお答えを願いたいと思います。
  211. 本庄務

    ○本庄政府委員 警備業法を今回立案するにあたりまして、補償に関する規定をなぜ削ったかという御質問でございますが、先般も申しましたように、警備業というものはだんだんふえてまいりまして、その増加に伴いまして、いろいろ社会的に不正と申しますか、不当と申しますか、そういったような事案がぼつぼつ出てまいりました。そういった行為を防止するというのがこの法案の主眼でございまして、この警備業務に伴って、警備中に損害を生ずるということも絶無ではないわけでございますが、現存のところ、それぞれの会社と依頼者との間に、補償契約に基づきまして、あるいは民事の一般原則に基づきまして、適切に処理をされておる。中には一、二、いわゆるトラブルということになっておるのも聞かないわけではございませんが、いま直ちに法律でそのことを義務化するという程度の事態にはないというのが一つの理由でございます。  それともう一つは、この損害補償につきましては、当然、その補償契約のバックに損害保険というものが関連してくるわけでございます。そういった損害保険業界といったものの体制が、必ずしも、この警備業界との関連におきましてしっくり確立されていないというふうに見られる点がございまして、そういったような諸般の事情からいたしまして、今回の最初の立案の際には削ったと申しますよりも、一応ペンディングにいたしたということでございまして、将来、情勢の推移によりましては、そういうものを挿入するということは当然考えられるかと思います。
  212. 桑名義治

    ○桑名委員 では、現在の警備保障会社と、それから被害者の間にどういうふうな補償がなされているという実情でございますか。
  213. 本庄務

    ○本庄政府委員 これは、会社によりまして、契約内容が差がございますから、一律ではございませんが、おおむね一定の補償の限度額、たとえば五千万円なら五千万円という限度をきめまして、警備中にその警備会社の警備員の責めに帰すべき事由によって損害を生じた場合には、その限度内において補償をするというのが通例のように聞いております。
  214. 桑名義治

    ○桑名委員 そうしますと、現在の警備保障会社は、その与えられた物件に対するいわゆる警備はもちろんのこと、被害を及ぼした場合には補償をするというような形で運営をされておるということになれば、その保障会社の責めに帰すような事態が何か起こって、そこで損害を及ぼしたならば、当然、その保障会社の補償力が問題になってくるのではないかというふうに私は思うわけでございますし、現在設立されている会社でさえも、その業務内容が補償ということをうたっている以上は、何らかの形で担保ができるような、いわゆる義務化を早急に推進をしなければ、名と実態というものがそぐわないものになってくるのではないかというふうに考えられるわけでございますが、その点についてはどういうふうに今後やっていこうとお考えでございますか。
  215. 本庄務

    ○本庄政府委員 その点につきましては、まず、そういった補償事案につきましての実態を十分に把握することが必要であろうかと思います。先般も申しましたように、現在のところ全く規制法規がございませんので、正式に調査する、あるいは報告を求めるということもいたしかねる次第でございますが、そういった補償問題が現実にどの程度発生して、どういうふうに扱われておるかということについて、必ずしもこまかく正確には承知いたしておりません。したがいまして、この法律ができましたならば、この法律に基づきまして、そういった点についての調査を、これは業者のほうの協力を求めるということでやっていきたいと思っておりますが、これを契機といたしまして、そういう実態をまず調査をいたしまして、そういうことを義務化する必要があるかどうか、必要があるとすればその内容をどうするか、そういったことについて早急に検討をしたいと考えております。
  216. 桑名義治

    ○桑名委員 現在、警備保障会社は日本の中では幾つあって、しかも、資本金が一番小さいのは幾らぐらいの資本金でございますか。
  217. 本庄務

    ○本庄政府委員 約四百五十あります会社の中で、一番小さいのは幾らかということでございますと、実は、個人の事業がございまして、資本金幾らということをちょっと正確にお答えいたしかねる次第でございますので、まことに申しわけございませんが……。
  218. 桑名義治

    ○桑名委員 と申しますのは、要するに、補償力があるかないかを調べたいわけです。補償力のない保障会社ということになれば、これは「保障」の点だけは取り除かなければならない。警備会社なら話はわかる。警備保障会社と名前がついている以上、補償が当然ついているのだという一般のいわゆる概念があるわけです。ですから、その点についての、一般の人々に害を与えないための担保として、いわゆる補償能力を知るために一番最低の——保障会社ですから、会社形態を一応持っているはずなんですから、だから、どのくらいの補償能力があるかということが知りたかったわけです。
  219. 本庄務

    ○本庄政府委員 大部分と申しますか、相当多くの会社は、何々警備保障会社という名前で補償契約を結んでいるのが多いようでございますが、中には、そういう補償ということを全然やらない会社がある。したがいまして、名称といたしましても「保障」という名前をつけておらないで、単に警備だけをやる。したがいまして、補償はいたしませんということを別に宣伝はいたしませんが、全然ノータッチの会社がございます。利用者のほうも、補償はされないということは承知の上で契約しておる。そのかわり、料金が安いとかなんとか、いろいろな経済上の問題があると思いますが、現実に補償契約を結んでやっておるのは七、八〇%ということでございまして、あとの二〇ないし三〇%は補償契約を結んでおらない。しかし、その補償契約を結んでおらない会社がいろいろ問題を起こしておるかといいますと、幸いに、ここのところ、そういう話は実は聞いておらないわけでございまして、私たちのほうは、警備保障会社業法ではなくて、警備業法ということで、補償するものもしないものも、先ほど申しましたようないわゆる警察障害の除去という問題で、とりあえず今回基本的なものをつくったという趣旨でございますから、その点御理解をお願いいたしたいと思います。
  220. 桑名義治

    ○桑名委員 いずれにしましても、警備会社といたしましても、名前がそういうふうな名前でありましても、補償というものは当然付随的につくものである、警備と補償が一体のものである、こういったところから初めて危険負担が完全に担保される、こういうふうな考えが正当な考え方でなはかろうかと私は思うわけでございますので、私の意見でございますが、そういった方向で今後ともひとつ研究を願いたいと思います。  それからまた、次に、一般的な問題をまず最初にお聞きしたいと思いますが、まず、いままでの警備保障会社は、いわゆる非公認の会社であったわけです。今回のこの立法措置によりまして、警備保障会社というものは公認の存在になってきたと言われても、これは決して過言ではないと思います。そういった意味から言いますと、いわゆる警備保障会社自体も、あるいはそれらの従業員も、すべてが公認になったということで、強権的なものを発動するような、要するに多少行き過ぎが出るのではなかろうかというふうな危惧が多少あるわけであります。これは、一部の人はそういう意見を吐く人も私のところに来ております。その点についてはどのようにお考えになっていらっしゃるか。これはばく然とした質問ではございますが、まずお聞きしておきたいと思います。
  221. 本庄務

    ○本庄政府委員 今回この警備業法がかりにできますと、この法律ができましたことによりまして、国がこの警備業というものを公認したというふうに一般の人がとって、したがって、いままで日陰者であったものが大手を振るというふうな印象を受けるのではないかという御懸念もごもっともかと思いますが、先般から申しておりますように、今回の立案の趣旨は、そういったいわゆる公認をして特権的なものを与えるという意味での立法ではございません。そういう点の誤解のないように、たとえばこの条文を見ましても、第八条は、「この法律により特別に権限を与えられているものでないことに留意する」というふうなことを念のため明記をいたしております。この法律の趣旨、内容というものを一般の国民の方々が十分御理解いただけば、そういう御心配は解消するのではなかろうか。また、法律ができました暁には、私たちは、その啓蒙、PRにつとめ、国民に理解をしていただくということに十分努力をいたして、さような御心配のないようにいたしたいと考えております。
  222. 桑名義治

    ○桑名委員 いま御答弁がございましたように、確かに第八条には、「警備業務実施の基本原則」というところで、「警備事業者及び警備員は、警備業務を行なうにあたっては、この法律により特別に権限を与えられているものでない」というふうに一応うたってあります。うたってありますけれども、先ほど申し上げましたように、一応これは警察の公認ということになりますね。届け出ですから、届け出をすればやってもよろしいということになれば、一応それが公認されているわけですから、そういうことになれば、やはり、一般市民は、そういうふうな事柄に対しては、法律的には云々という前に、ああ警察が認めた団体なんだな、会社なんだな、と、ここに一番留意をするのではなかろうかという懸念がしてならないわけです。だから、そういう懸念が懸念でなければいいのですけれども、そういうような事態が出たときが非常に行き過ぎがあらわれてくるのではなかろうかと思いますので、いまから先、この警備業法が通過した後には十二分にPRをするというお話でございますけれども、その点はまず十二分に留意をしておいていただきたい。これを要望しておきたいと思います。  それから、警察当局としてはすでに御存じのように、ガードマンによる不正というものが非常に多くなっております。この事柄に対しては世の中から非常にひんしゅくを買っているわけでございます。何となれば、いわゆる警備を依頼をされるというのは、ほとんど、その会社なりあるいは一つの団体が一番弱点をさらけ出しているときにその仕事に従事しているわけでございますので、これは、そういう犯罪を犯そうと思えば簡単に犯せるというふうな立場にあるわけでございます。そういった意味からも今回の警備業法が提出をされたんだろうというふうに思うわけでございますが、前からの質疑の中にもありましたが、いわゆる学園紛争あるいは組合の争議介入といった問題がいままでにいろいろと世間の耳目を集めているわけでございます。こういった事柄についてまず最初にお伺いをしておきたいと思いますが、ガードマン会社が、学園紛争あるいは労働争議、あるいは一株主運動等に、集団をもって、いわゆる機動隊的業務を行なった事例がいままでにどの程度あるか。具体的に二、三述べていただきたいと思います。
  223. 鈴木貞敏

    ○鈴木説明員 お答えいたします。  御指摘の、いわば集団的な事例、事犯についてのガードマンの存在ということでございますけれども、いままでのケースですと、そういう例で注目され始めましたのは四十五年くらいからでございまして、それ以前は、マスコミを含めまして、そういう問題についてそうスポットを浴びていなかったように思います。四十五年の中盤ごろから、株主総会とか、ああいった問題をめぐりましていろいろ注目を浴びてきたということでございます。したがいまして、四十五年中盤ごろからの事犯として、一応世人の注目を引きましたのは、チッソの株主総会であり、あるいは最近では、那珂湊の問題であり、また、報知新聞社の事件でありますとか、あるいは、昨年度の成田の代執行にからみまするガードマンの存在でありますとか、そういうところが一応大きなものとして世上に論ぜられたというふうに承知しております。
  224. 桑名義治

    ○桑名委員 そのほかに、千代田学園の紛争や、宮崎放送、東京発電機、森村金属、細川鉄工、日本テレビ等、いろいろと問題がたくさんあるわけでございます。こういった問題から、今回のこの警備業法に対する反対の声も相当あがっているわけです。  そこで、今回の法案の中の、第三条の警備業務の「定義」の一項の四号に「人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止する業務」とあるが、これは具体的にはどういうふうなことを想定をしているわけでございますか。
  225. 本庄務

    ○本庄政府委員 これは、場合はきわめて少ないと思いますが、自分が何らかの危害を受ける。危害と申しますのは、要するに違法、不当な侵害。そういったものからからだの安全を守るということを内容とするものを一応観念的には考えておるわけでございまして、個々具体的な場合によってかなり違うと思いますが、こういったものを必要とする数は少ないんではないかと思います。しかし、現実には、多くの会社の定款、規約の中には、そういうことを業務内容としてうたっておるのがかなりあるようでございます。
  226. 桑名義治

    ○桑名委員 そうしますと、第八条に、「他人の権利及び自由を侵害し、又は個人若しくは団体の正当な活動に干渉してはならない。」とあるが、これは具体的にはどういうふうに解釈すべきですか。抽象的で申しわけないですが……。
  227. 本庄務

    ○本庄政府委員 他人の権利及び自由の侵害、それからもう一つ、後段は、個人もしくは団体の正当な活動の干渉、この二つになるわけでございますが、権利、自由の侵害については、憲法その他の法律でいろいろ認められた諸権利がございますし、あるいは自由というものがございますが、これの侵害ですから、一般的に申しますと、おそらく何らかの刑罰法令に触れる犯罪行為になる場合が多いと思います。  後段の「個人若しくは団体の正当な活動」については、団体というのは、いろいろ各種の団体というものがあると思います。労働組合その他、もろもろの団体がございますが、それの正当な活動に干渉する。この干渉というのは、必ずしも犯罪行為ではない。刑罰法令には直ちには触れない。が、しかし、その個人あるいは団体の正当な活動に、威圧的なと申しますか、その行動の自由あるいは意思の自由に影響を与えるような、そういったよくない事柄。大体そういったもの。きわめて抽象的な表現で恐縮でございますが、基本的にはそういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  228. 桑名義治

    ○桑名委員 世の中の反対理由の中には、労働争議に介入するのではないかというような危惧を抱いている事柄が大きな比重になっているわけでございます。あるいはまた、先ほどちょっと前段に申し上げましたように、行き過ぎという事柄によって、個人の自由を束縛するような事柄が出てくるのではないか、あるいは自由を侵害するようなことが出てくるのではないかというふうな心配をしているわけでございますが、この「団体の正当な活動に干渉してはならない。」ということは、これはすなわち、労働争議にも干渉しないということですね。介入しないということですね。
  229. 本庄務

    ○本庄政府委員 団体に労働組合が含まれることは言うまでもございません。したがいまして、労働争議について申しますれば、労働者や労働組合の正当な活動に干渉するということ、言いかえれば、警備員が不当な介入をするということ、これは当然禁止されているということになろうかと思います。
  230. 桑名義治

    ○桑名委員 そうすると、たとえば第八条によって、労働争議への介入が禁止されている。一応こういう説明でございます。その中に「正当な」ということばが入りましたけれども、しかし、先ほど申し上げましたように、第二条の第一項の四号で「人の身体に対する」云々という項目があるわけでございます。そうした場合にたとえば大学の学長あるいは会社の役員といった人々から、今回の労働争議は非常にエキサイトしそうだから、私の身辺を守っていただきたいというような要請があれば、そういうふうな二つの競合の中にあって、それがとりもなおさず労働争議の不当介入になり得る可能性が多少あるのではないかというように考えるわけでございます。その点はどういうふうにいわゆる限界を設けるわけですか。
  231. 本庄務

    ○本庄政府委員 いま御設例の、大学の学長が、いわゆる学園紛争の際に、その前後の事情からいたしまして被害を受けるおそれがあると判断をいたしまして、その学長の身体を、まわりにおいて警戒をする警備員を頼んだという場合に、その警備員が警備員の業務の範囲内において学長の身辺を警戒するという行為は、そういった学園紛争、そういった活動あるいは学生の活動といったものについての干渉にはならない。かように解しております。
  232. 桑名義治

    ○桑名委員 往々にして、そういうふうな事柄から一番最初出発しているわけです。そして、成田の紛争のような問題も結局起こっているわけです。それから、先ほどいろいろ例をあげられましたような問題は、最初の出発はそこから起こっているわけです。そして、この問題がだんだんエキサイトしてくる。あるいはまた、底流に、そういうものを労働争議に干渉させようという意図があったかどうか、そこら辺はわかりませんけれども、そういったことからこの問題が、いままでの問題では惹起しているわけでございます。だから私はこの問題を提起したわけでございますけれども、その点については、いまの説明ではどうも満足いきかねるわけでございますが、この点、労働省としての解釈はどうですか。
  233. 岸良明

    ○岸説明員 先ほど来先生質問のとおり、労使関係というのは、これはあくまでも労使の自主的な話し合いできめることであります。そういうものに第三者が介入いたしますと、いままでのいろいろな事例から見ましても、どうもこれは感情的になりやすい。ですから、なるべく第三者というものは介入すべきではないというふうに考えております。しかしながら、これは、先ほども、前回の会議におきましても御指摘いただいたのでございますけれども、現実には、企業の中に、守衛の部門等についてすでにガードマンに委託をしておるというような事態がございます。これは一つの傾向だと存ずるわけでございます。そういう場合に、これを争議の際に全く関係せしめないというわけにもいかないわけです。特に、使用者といたしましては、財産権その他の所有権を自己的に守っていくというたてまえがございまして、こういうことについてまで禁止するというわけにいかないだろう。そこで、そういうような労働争議の場所にガードマン等を採用される場合には、特にこれは慎重でなければならぬだろう。ましてや、これは当然でございますけれども、正当なる組合の活動に対して、それに干渉をするということはいけないということで、八条の規定では、正当なる団体の活動に対しては干渉してはならぬということを規定しておる。こういうふうに私たちとしては考えております。
  234. 桑名義治

    ○桑名委員 いま労働省のほうからお話がございましたように、いわゆる、いままでの当初の目的というのは、いままで問題になっているチッソの問題や、あるいは報知新聞の問題や、あるいは宮崎放送の問題や、こういった問題に対しては、一番最初は労働争議に介入するという事柄はなかったかもしれません。意図はなかったかもしれませんが、そういうふうな問題が惹起してきた。こういうふうになれば、もう少しこの八条の項目については配慮が必要ではなかろうかというふうに思うわけでございますが、その点について、長官としてどのようにお考えでございますか。
  235. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 御質問のようないろいろな点を配慮したしで、実は原案を作成したつもりでございます。ただいままでお答えをいたしましたように、個人なり、会社なり、あるいは団体なりというものは、法令の範囲の中では、やはり、自分自身の生命なり、あるいは財産なりというものの安全を確保するという固有の権利を持っておるわけです。その権利の行使をこういった会社に委託する。いい悪いはいろいろありましょうけれども、そういう最近の風潮になっているわけですね。したがって、ガードマンの会社としては、当該個人なり、団体なりが持っている当然の財産なり、生命なりの安全を確保するという、基本的な権利の範囲内において業務を営むという以上は、これは、かりにそれが労働争議の場合であっても、それをしも禁止するというわけにはいかぬだろう。しかし、現実には、労働争議等の場合において、警備会社等から雇っていろいろなことをやらせるということについては、私は、特に慎重な配慮は当然望みたいと思います。  というのは、やはり双方がエキサイトいたしますので、とかく、個々具体的な場合には行き過ぎて、ガードマン会社が委託を受けておる範囲を越えていろいろな問題を惹起をするということがあり、それは、結果としては、ここに書いてありますように、個人または団体の正当な活動に干渉したり、場合によれば、それが違法行為になったりするということがあるわけですから、特にこういう点については慎重な配慮をしてもらいたいと思います。  しかしながら、法律として書く以上は、そういった基本的権利がある以上は、それをしもやっちゃいかぬぞというのはちょっと行き過ぎではなかろうか。やはり、法律として書く以上は、ここにありますように、個人または団体の正当な活動に介入することは絶対まかりならぬ、それをすれば、かりにそれが違法でなくともいけませんよということを書いたつもりであって、私は、御心配の点はないのではなかろうかと思います。  まさに、おっしゃるように、最近の、一昨年あたりから出ておる不都合な事例等も、私どもとしては、頭に置いた上でこの立法をいたしたわけでございますので、そこらは、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  236. 桑名義治

    ○桑名委員 次に、第四条の問題に移りたいと思いますが、第四条の問題は、いわゆる届け出制になっているわけでございます。端的に申し上げますと、古物商あるいは質屋といったたぐいの商売も一応許可制というふうになっているわけでございますが、今回の警備業法案が出たいきさつの中には、いわゆる問題点が多少惹起したために、それを規制して、そういう事柄がなくなるようにという配慮のもとに行なわれたということになれば、当然、届け出制にするよりも、認可制あるいは許可制という方向に持っていくべきではなかっただろうかというふうに私は思うわけでございますが、なぜ届け出制にとどめたかということ、その点について伺っておきたいと思います。
  237. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 その点も、実は、立法過程で部内的に非常に議論をした点でございますので、お答えいたしておきたいと思います。  本来、私は、基本的には営業は自由であると思います。そういうことですから、できれば許可制なんというものは避けたほうがベターである。しかし、法律的に考えますと、こういった立法は多くの場合許可制が多いわけですね。そこで、私どもも、許可制にしたらばどうであろうかといったような法律屋的な考え方も一方にございました。しかし、やはり基本は、規制の目的さえ果たせられるならば、法の、こういった許可制にするか届け出制にするかということは最低限のやり方にとどめるべきであろうということで、いろいろ法律屋には議論がございましたけれども、届け出制にする。しかし同時に、よくないことがあるならば、それによって直させるような指示をしますよ。指示に従わない場合には、場合によれば営業を、許可であれば取り消しになりましょうけれども、廃止という処置でやっていこう。これで十分目的は達せられる。目的が達せられる以上は最低限にしたほうがよかろうということで、あえて届け出制にした。これが実情でございます。
  238. 桑名義治

    ○桑名委員 そこで、第十五条と多少関連が出てくると思うのですが、第十五条は営業の停止の項になっているわけです。そこで、「警備業務の適正な実施が著しく害されるおそれがあると認められるとき、」となっているわけでございますが、その「適正な実施が著しく害される」ということは、具体的にはどういうことを一応想定しているわけでございますか。
  239. 本庄務

    ○本庄政府委員 「著しく害される」場合、表現が抽象的でございますが、たとえば一、二例をあげてみますと、先ほどから話題になっております第八条に相反した場合、あるいはその他でも、法律違反行為というものが考えられるわけでございますが、そういった法律違反行為をたまたまその警備員がやったということではなくして、会社の幹部の方針によるものであるというような場合、これなんかは明らかにこの十五条に該当するのでなかろうか。あるいは、会社自体にそういう委託はなかったといたしましても、会社が警備員に対する指導、監督を十分やっておらないで、はなはだしい不行き届きと申しますか、そういったことが原因となって警備員が強盗をやったというふうな場合、こういう場合が十五条に該当する場合の一つの典型的な例と申していいかと思います。
  240. 桑名義治

    ○桑名委員 あまりはっきりした事例が出てこなかったわけでございますが、この法によりまして開業の許可をとった、それから営業が始まったということになるわけでございますが、届け出制ですから、大体ほとんどが許可になるんじゃないかというふうに考えられるわけでございます。その場合、届け出をする前に、いろいろな欠格事由というものが前段に出ておりますけれども、私は、一応許可制にして、開業する以前に厳格な資格基準というものを設けるほうがむしろベターではなかろうか、欠格事由が出て、初めてそこで停止をしたりするよりも、最初に強い規制を行なっておくほうがむしろベターではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございますが、その点について……。
  241. 本庄務

    ○本庄政府委員 議論になって恐縮でございますが、許可制ということになりますと、禁止する、そして特定のものに禁止を解除するという、そういう法律的な考え方というものが一般的でございます。したがいまして、先ほど長官が説明いたしましたように、営業というものは、本来自由であるほうが一般国民にとって望ましいんだという考え方。観念的な議論になるかと思いますが、そういった考え方をもとにいたしまして、まあ、あまり実質的に差異がなければ、その営業の自由というものをもとにした届け出制のほうがベターではなかろうかというふうに考えております。
  242. 桑名義治

    ○桑名委員 先ほど一番初めに申し上げましたように、言うならば、この業務というものは特殊な業務であろうというふうに私は考えるわけです。そこから一切の発言の基礎が出ているわけでございます。そういった立場から考えまして、届け出制よりも、むしろ許可制のほうがベターではなかろうかというところに私の発想はあるわけでございます。そういった意味で私は質問しているわけでございますが、公安委員会への届け出ということにした理由ですね。普通一般の会社であるならば、そういったような考え方であるならば、警察庁の所管よりも、労働省の所管や通産省の所管のほうがむしろベターであったのではなかろうかというふうに考える。ここに、公安委員会への届け出にしたところに、許可制にすべきでなかったかという議論が生まれるのではなかろうか。こういうふうに考えるわけでございますが、労働省や通産省といった所管にしないで、公安委員会の所管にしたという、その根底にあるものは一体何ですか。
  243. 本庄務

    ○本庄政府委員 この警備業法は、いま労働省というお話が出ましたが、労務管理の適否等というものに関する法的規制ではございませんで、警備業務を実施するにあたりまして、違法あるいは不当な行為を防止することを目的とする法的規制でございます。こういった法的規制の担当機関といたしましては、公安委員会が適当ではなかろうかと、かように考えております。
  244. 桑名義治

    ○桑名委員 労働省としてはどういうふうにお考えですか。
  245. 加藤孝

    ○加藤説明員 労働省といたしましては、直接、この警備業が、職業安定法で規制しております労働者供給事業とか、そういった面で違法な面が出てくれば、それについて、職業安定法の規定に基づいて処置をする。それからまた、その違反があった旨を公安委員会のほうに通報いたしまして、営業の取り消しとか廃止等の措置をとっていただく。こういうようなことで考えておりまして、私どものほうとしては、直接こういう警備業務というものについて所管をいたしておるわけではございませんので、いま申し上げましたように、わが労働法の面で違反する面があれば、その面からわがほうとしての必要な措置をとり、また、公安委員会のほうへ通報して、そういう営業の取り消しというような形をしていただくということでいいのではないかというふうに私どもは考えております。
  246. 桑名義治

    ○桑名委員 この問題は、まだどうもすっきりしないのですけれども、次に移りたいと思います。  次に、第三条の、いわゆる欠格事由になるわけでございますが、これは、端的に申しまして、警察官の欠格自由というふうに尋ねられたら、どういうふうにお答えになられますか。これは警備業のこれとは別ですよ。警察官の欠格事由というふうに質問された場合はどういうふうにお答えになりますか。
  247. 本庄務

    ○本庄政府委員 警察官の法律的な欠格事由といたしましては、地方公務員法に規定がございまして、「禁治産者及び準禁治産者」、それから「禁こ以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者」、これらは、「条例で定める場合を除く外、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。」ということが規定をされております。これが法令上の欠格事由であろうかと思います。
  248. 桑名義治

    ○桑名委員 警察官を採用する場合にも、相当な、いわゆる欠格事由を厳格に審査した上で採用ということになっているわけでございます。それのみではなくて、いわゆる教育、訓練、これも警察官としての特別なきびしい訓練が行なわれているのが実情ではございます。それにもかかわらず、最近はまま警察官の不祥事件が起こっておるわけでございます。そういった立場から考えた場合に、今回の警備業法のこの業務内容というのは、先ほどからもたびたび申し上げておりますように、人間の非常に手薄なとき、あるいは一つの団体の手薄なとき、そのときにこそこの業務の実体があるわけでございます。そういった立場から考えた場合に、第三条の欠格事由だけではたして十二分であろうかどうか。これは多少疑問視しておかなければならない問題ではないかと私は思います。この法律によりますと、「禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して三年を経過しない者」というふうに欠格事由が出ているわけでございますが、三年以下の刑であっても、いわゆる暴行、傷害、脅迫あるいは恐喝、窃盗あるいは銃砲刀剣不法所持という粗暴犯もむしろ加えるべきではなかろうか。私はこういうふうに考えるわけでございますが、その点はどうでしょうか。
  249. 本庄務

    ○本庄政府委員 いま先生のおっしゃいました粗暴犯等の御設例の犯罪も、禁錮以上の刑に処せられる者につきましては、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して三年を経過しない場合は欠格事由に該当するということでございますから、すべての犯罪についてそういう扱いになる。もちろん粗暴犯は入るわけでございます。
  250. 桑名義治

    ○桑名委員 そこで、次に、十一条に入りたいと思いますが、十一条では教育の問題があがっているわけでございます。十一条は、「警備業者は、その警備員に対し、この法律により定められた義務を履行させるため、総理府令で定めるところにより教育を行なうとともに、必要な指導及び監督をしなければならない。」と書いてあるわけでございますが、具体的にはどのような教育を想定しているわけですか。
  251. 本庄務

    ○本庄政府委員 警備員に対する教育といたしましては、一つは、いま御審議いただいておりますこの警備業法その他警備業務の実施に必要とされる法令、刑法その他各種法令があると思いますが、そういった法令につきましての知識、それからもう一つは、たとえば、護身用具の適正な使用その他警備業務の適正な実施に必要とされる技能といったものを一応ぜひやっていただきたいと私たち考えております。しかし、そのほかに、それぞれの会社、業者によりまして、いわゆる自社教育と申しますか、社内教育と申しますか、その社として必要な教育を当然行なうということを予想しております。
  252. 桑名義治

    ○桑名委員 どうも、その教育の内容が具体的に明快でないようでございますけれども、この総理府令で定めるところの教育というのは、大体どういう教育ですか。どういう教育をしなければならないという、資料か何かございますか。
  253. 本庄務

    ○本庄政府委員 いま手元には持っておりませんが、成案ではございませんけれども、一応部内で検討しておる程度のものは準備しております。
  254. 桑名義治

    ○桑名委員 それは出していただけますか。
  255. 本庄務

    ○本庄政府委員 じゃ、あとで提出いたします。
  256. 桑名義治

    ○桑名委員 そうしますと、この種の業務につきましては、規律の非常に正しい教育の内容を持っておかなければならないと私は思いますが、現在の業者は、こういう教育をどのようにしているか。実態はどうなんですか。
  257. 本庄務

    ○本庄政府委員 業者と申しましても、大は五千人、六千人をかかえておるガードマン、警備員を持っておる業者もあり、中には五人、十人という小さいものがございますので、まことに千差万別でございます。大手のところはおおむね一週間程度、先ほど申しましたような法令上の知識——警備業法はまだできておりませんから、それ以外の法令上の知識あるいは護身用具の使用法とか、さらに車両、通信機械、そういった最近の装備についての教育その他警備業務に必要な諸般の教育をやっておるようです。中には、肉体的なトレーニングといったようなものをやっておる会社もあるようでございます。しかし、その一週間といったような程度に至らないもの、あるいは極端な場合には、ごく一部のものでは、ほとんど教育らしい教育をやっておらないで現場に使っておるというのもあるようでございます。
  258. 桑名義治

    ○桑名委員 この警備業法を通過させましても、成立しても、結局、一番むずかしい問題は、警備保障会社が大なり小なりいろいろ千差万別であるということ。そういった中でこういうふうな教育を行なうように第十一条でうたって、はたして実質的に教育ができるかどうかという問題があるわけでございますが、この点はどういうふうに考えられ、また、教育をしているかどうかというチェックはどういうふうになさるつもりですか。
  259. 本庄務

    ○本庄政府委員 たいへん重要な問題だと思います。総理府令で教育につきまして必要な事項をきめまして、さらに、警備員ごとの教育の実施簿と申しますか、訓練簿と申しますか、そういった簿冊も備えつけることを義務化いたしまして、そして報告を求め、あるいは現実に立ち入りをやって、この法律に規定したような教育が行なわれているかどうか、十分監督をいたしたいと思っております。もちろん、事前に、行政指導によりまして、そういうことの徹底はさせたいと思います。行政指導のみで目的を完遂できない場合には、そういった法律に基づく措置も最終的にはとるということも考えております。
  260. 桑名義治

    ○桑名委員 労働省の方、もうけっこうでございます。どうもありがとうございました。  いわゆるこの教育が行なわれているかどうかというチェックですが、これはせっかく法律で、第十一条でこういうふうにうたい上げたんですから、これが実施されなければ法律をつくった意味は何にもなくなるわけです。実際に単なる行政指導ということだけででき得るものかどうか、これはちょっと疑問視する節があるのですが、これについてもう一歩突っ込んだ考え方はございませんか。
  261. 川崎幸司

    ○川崎説明員 教育の実態の掌握につきましては、公安委員会が所要の報告を求める権原がございますので、あらかじめ事前に、各社の教育計画というものはどういうものであるかという報告を求める予定にいたしております。そして、教育を実施しました結果につきましても、実施結果報告という形におきまして報告を求めることにいたしております。  なお、そのほかに、警察官が営業所に立ち入りまして、先ほど部長の御説明申し上げましたような個人別の教育実施簿の検査をいたしまして確認をしてまいるという実態になっております。
  262. 桑名義治

    ○桑名委員 次に、十条の問題でございます。十条は「護身用具」ということですが、「必要な護身用具を携帯することができる。」というふうになっているわけでございますけれども、この使用についての規制というものはどういうふうに考えられているのか。その点について伺っておきたいと思います。  と申しますのは、これは調査室から出ている資料でございますけれども、新東京国際空港用地の強制代執行の際にこれが問題になりまして、衆議院の予算委員会で、荒木国家公安委員長は「ガードマンの警棒は正当防衛、緊急避難以外は使うなと行政指導しているが、これを徹底させるために規制を検討中」と発言しているというふうになっているわけでございます。そういった荒木前国家公安委員長の発言に対して、これに適応して、今回のいわゆる護身用具の携帯について、あるいは使用について、どのような規制を考えられたか。その点について伺っておきたいと思います。
  263. 本庄務

    ○本庄政府委員 護身用呉につきましては、第十条に「法令の規定により禁止されているものを除き、必要な護身用具を携帯することができる。」とあり、それから第二項に、「公共の安全を維持するため必要があると認めるときは、都道府県公安委員会規則を定めて、」「護身用具の携帯を禁止し、又は制限することができる。」というふうに書いていますが、携帯につきましては、いまのところ、具体的にはほんとうに自分の身を守る。たとえて申しますならば、現在の警察官が持っておる警棒程度のものについては、これはやむを得ないんじゃなかろうか。しかし、護身用具と申しましても、攻撃的な性質のもの、あるいはもっぱら防御的な性質のもの、その中間のもの、と、いろいろございますが、そういった攻撃的なもの等につきましては、持たせないような措置を講じたい。  それから、その使用につきましては、先ほど先生のおっしゃいましたように、当然関係法令の制約を受けまして、正当防衛、緊急避難、特に、急迫不正の侵害があって、自分の身を守るというときでなければ使えない。そういうことであろうと思います。
  264. 桑名義治

    ○桑名委員 いまの御答弁であるならば、荒木前国家公安委員長が発言したのと一歩も出てないというふうに一応考えられるわけであります。一応こういうふうな法律ができ上がったということが前進といえば前進というふうにとれるわけでございますけれども、この点については十二分な配慮をしていただきたいと考えるわけでございます。それでなくても、先ほど申し上げたように、非公認が公認になったんだという、いわゆる意識過剰な行為が起こった場合にはまた問題になりますので、その点については十二分に御配慮を願いたいと思います。  そこで、大阪府の警備保障事業連絡協議会というのが「警備業法案に対する意見書」というものを出して、皆さま方のお手元にもおそらく行っているのじゃないかと思いますが、この意見書の中において、第七条に対する意見として、「警備員の制限として第三条一、項で欠格事由が定められているが、この該当の有無について警備業者が確実に調査することは現在のところ不可能である。業者としては警備員の採用にあたって選考に慎重を期し、身元調査も行なっているので、このような期待不可能なことを法律で規定することは問題である。」と言っているわけでございます。端的に言えば、こんな法律は守られるわけがないじゃないかということばになるわけでございますけれども、この点についてはどうですか。
  265. 本庄務

    ○本庄政府委員 第七条の第二項の「警備業者は、前項に規定する者を警備業務に従事させてはならない。」要するに、十八歳未満の者または先ほどからお話のございました欠格事由に該当する着を警備業務に従事させてはならないという規定になっておりますが、この規定は、当該の人間が欠格事由に該当しておるということを知りながら、警備業者がその人間を警備員に採用してはならないということをうたったのでございまして、その者が欠格事由に該当するかどうかということにつきましては、警備業者としては、現存の日本の制度のもとにおきまして完全に知り得るようにはなっておりません。その者が欠格事由に該当するかどうかということにつきましては、たとえば、本人の経歴について、通常世間で行なわれているような調査を行ない、あるいは確認をする。あるいは本人から、自分はこの欠格条項に該当する者ではないという誓約書をとる。そういった、考えられる妥当な合理的な方法で確認するように努力をしてもらいたいという、こういういわゆる努力義務を課したものだと御理解をいただきたいと思います。
  266. 桑名義治

    ○桑名委員 第三条は努力義務でございますか。
  267. 本庄務

    ○本庄政府委員 第三条でなくて、第七条です。先ほどの大阪の警備業者の要望は、業者が警備員を採用するにあたって、いわゆる欠格条項を知り得ないということについての意見だったというふうに、私、先生質問を聞いておりました。したがいまして、これは第七条の問題になろうかと思っております。第三条につきましては、これは努力義務ではございません。
  268. 桑名義治

    ○桑名委員 そうでしょう。それで、第七条の中に「十八歳未満の者又は第三条第一号に該当する者は、警備員となってはならない。」となっていますから、第七条が努力目標ということになれば、第三条も努力目標ということになりますよ。「十八歳」の部分はわかりますけれども。
  269. 本庄務

    ○本庄政府委員 第三条は、「次の名号のいずれかに該当する者は、警備業を営んではならない。」とあって、要するに、これはもう明確に禁止をした規定でございまして、第三条のほうは努力義務ではございません。
  270. 桑名義治

    ○桑名委員 そうすると、第七条も努力義務じゃないでしょう。
  271. 川崎幸司

    ○川崎説明員 お答えいたします。  第七条は、御案内のように、一項と三項に分かれております。一項の規定は、警備員になろうとするその者、本人についての義務規定でございまして、十八歳に自分がなっているかどうか、あるいは欠格事由に該当しているかどうかということを本人は十分承知できる筋合いのものでございますので、そういう者については警備員になってはならないという禁止規定を設けているものでございます。第二項の規定は、業者についての義務規定でございますが、この規定の趣旨といたしますところは、欠格事由に該当しておるということを知りながら警備員につけるということを禁止するということと、それから、そういうことのないように業者自身が所要の調査をいたしまして、そういう欠格事由に該当している者は警備員にならないようにする努力義務。この二つを課している規定であるというふうに解しております。
  272. 桑名義治

    ○桑名委員 第三条の欠格事由は、絶対にこういう者であってはならないということでしょう。そして、第七条で、そういうふうな人は警備員になることはできないし、あるいはまた、そういうことを知りながら業者は採用してはならない。そういう努力をしなさい。こういうことになるわけですか。
  273. 川崎幸司

    ○川崎説明員 第三条の規定は、部長が御説明いたしましたように、業者として警備業を営んではならないという禁止規定でございます。それから、七条の第一項も、同様禁止規定でございます。それから、七条の二項が御質問の問題の点であろうというふうに思うわけでございますが、七条の一項につきましては、中身を申し上げました場合には、十八歳未満の者かどうかということの調査につきましては、住民票を取り寄せるなり、あるいは戸籍抄本を取り寄せるなりいたしまして、業者として調査が比較的簡単にできるものであろうと思うわけでございます。そういうふうな調査をして、十八歳未満の者であるということを知りながら、なおかつ警備員になることを禁止する。あるいはまた、そういう調査をしなくて十八歳未満の者を警備員につけるということをしないようにする努力義務、そういうものを課しているわけでございます。  問題は、前科に該当するかどうかということの調査についてであろうと思うわけでございます。この点につきましては、部長が御説明申し上げましたように、現在の制度のもとにおきましては、民間におきまして、前科に該当しているかどうかということを調査することはそう簡単なことではない、容易ではないであろうというふうに思うわけでございます。この点につきましては、やはり十八歳未満の者について申し上げましたと同様に、この二項の規定の趣旨は、先ほど申し上げましたように、本人が、警備員になろうとする者が、欠格事由に該当する者であるということを業者が知りながら、なおかつその者を警備員につけることを禁止するということを趣旨にするものでございまして、あわせまして、それについて必要な許された範囲内の調査努力をするという義務を課しておる規定でございます。
  274. 桑名義治

    ○桑名委員 そうなってきますと、この大阪府警備保障卒業連絡協議会が言っていることのほうがほんとうのようにとれちゃうのですよ。非常にむずかしいが、こういうふうに努力してくれ、こうなってきますね。そうすると、調査してわからないと言えば、それまでになっちゃうわけですか。
  275. 川崎幸司

    ○川崎説明員 この規定は、御案内のように、そういう前科の欠格事由に該当する者は警備員として不適格であるという趣旨のもとに、そういう者を警備員にしないというたてまえで設けられた規定であるわけでございますが、それにつきまして、先ほど申し上げました最善の努力をしてもなおかつわからないという場合につきましては、一応この規定に違反にはならないというふうに解しております。
  276. 桑名義治

    ○桑名委員 そうすると、この条項は非常に抜け道が多いということになりますね。
  277. 川崎幸司

    ○川崎説明員 この規定が特にそういうふうな努力義務を課しておりますのは、通常の社員採用の場合における必要な調査、それだけでは足りませんよ、それ以上の、社会通念上考えられる必要な調査をしなさいよ、という意味を込めた規定であるというふうに解しておるわけでございます。
  278. 桑名義治

    ○桑名委員 もうこの問題はこの程度にしておきたいと思いますが、この問題は、第三条の「禁錮以上の刑に処せられ、」云々という問題でございますが、いわゆる業務の内容から十二分に厳格に査定をしていただかなければたいへんなことになるのではないかと考えますので、その点も十二分に今後の問題として留意をしていただきたいと思います。  そこで、次の問題でございますが、チッソの株主総会の警備に当たった警備業者の社長が、今後も思想警備専門で伸びていきたいという発言をしておるそうでございますが、この点については、警察当局としての考え方はどうですか。
  279. 本庄務

    ○本庄政府委員 その社長が申しております思想警備というものが一体どういうことを言うのか、私ちょっとその点は理解しかねるわけでございますが、思想警備あるいは特殊警備と、いろいろな名称で宣伝をしておる会社もあるようでございますが、私たちといたしましては、この法案に出ておりますような警備業務というものを期待しておるわけでございまして、これに反するものにつきましてはこの法律に書いてありますような所要の措置をとって、規制をして、適正な警備実施が行なわれるように万全の努力をいたしたいと考えております。
  280. 桑名義治

    ○桑名委員 この社長の思想警備ということはどういうことか、私も明確にはわかりませんけれども、大体概略的にはわかるような気がするわけです。そういうことで、こういう発言は非常に危険性がある発言だと思いますので、ひとつ、十二分に留意をしておいていただきたいと思います。  と同時に、アメリカと日本では国内事情が違いますけれども、アメリカでは、ガードマンの規制が甘いばかりに、ガードマンの私設警察化がエスカレートして、治安の乱れと警察不信を招いたというような実例があると聞いておりますので、この点は十二分に今後注意をしていかなければならない問題であろうと考えます。  そこで、最後に、基本方針というものをお聞きをしておきたいと思うわけでございますが、警察業法に対するこの法案が成立いたしましても、先ほどから、あるいは前々日から、いろいろとこの問題につきましての審議が行なわれているわけでございますが、まだまだ完全なものではないと断定しても間違いはないと思うわけでございます。先ほどからの御答弁の中にも、今後の推移を見ながら云々というおことばがございましたように、今後に残された具体的な問題がたくさんあるわけであります。それと同時に、これが発足した後にも、具体的にいろいろな問題が出てくると思いますが、今後、この警備業に対していかなる方針のもとに指導をしていくお考えなのか。言うなれば、こういった業者の指導、育成についてはこういう形で持っていきたいという基本的なお考えがあればそれを明らかにしておいていただきたいと思います。これは長官からがいいと思いますので、よろしくお願いします。
  281. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 御案内のように、最近雨後のタケノコのように警備会社あるいは警備保障会社というものがどんどんできておるわけです。これは、営業自由ですからやむを得ません。しかしながら、その業務の内容から見て、いまにして何らかの規制を加えなければ、これはとんでもないことになるおそれがあるということで、私どもとしては、今回立法を考えたわけなんです。  そこで、何ぶんにも対象が千差万別、大小さまざまです。また、その業務の内容も、当初に御質問がありましたように、警備のものもあれば、保障のものもあるし、あるいは調査といったようなものもあるといったようなことで、千差万別である。今日ともかくこのまま放置できない。今日弊害を流しておる部面、つまり、言えば、有形力を行使して財産等の管理を引き受けておる部面、これが非常に問題を起こしておると私は思います。そこで、私どもとしては、いろいろ落ちなくきめたいんだけれども、何ぶんにもそういった千差万別の状況もあり、このまま放置できない。そこで、一番弊害のある面についてだけ最小限の規制をこの際やりたい。そして、それによってこの法律がお認め願えれば、この法律を根拠にして、まず行政指導を徹底したい。その上で、推移を見て、これでは不十分である、あるいはこの点は不要であるといったような点があれば、それは、私は、今後の推移をまって検討をし直していきたい。今日のこの警備業というものは、正直言って、必ずしも望ましい仕事だとは私は思っておりません。これは警備会社の人に聞かれればおしかりを受けるかもしれませんけれども、これは私どもが反省しなければならぬ事柄であるというくらいに私は思っております。しかし、やはり社会の需要があり、また、私どもも十分手が届きかねる。また、それぞれの個人なり団体は、自分自身の財産なり、安全なりは、自分自身で守るという基本的な権利があるんだ、それをこういった業態にまかせるのが今日の社会の実態であり、経済的な必要性だということであるならば、そのあるという前提をやはり認めながら、適正な規制によって正しい業務運営に導いていきたい。これが私の今日の将来に対する一応の方針でございます。  当初に御質問がありましたように、補償等についても実はやりたいなということも考えました。しかし、いかにも対象が千差万別だ。あるいは許可制度のお話もあったのです。これは許可にしても一向——これは立法政策の問題だと思います。御質疑の点は、私よくわかるのです。しかしながら、今日ここであまりにもきびしいものをやったときには、これはみんな会社をつぶしてしまう結果にもなりかねない。そこまで私どもが踏み切るのはいささか無理があるだろう。やはり、最小限の規制によって、まず、ともかく健全化をはかっていきたい。そういうことで補償の面も実は除いたわけです。  さらに言えば、私は、調査業務に非常に問題があると思います。端的に言うならば、これはりっぱにやっているところもありますけれども、今日、探偵社なるものがたくさんあります。これは探偵業務だけやっております。しかし、この警備保障会社だって、調査業務という内容で、この面に進出していく可能性が十分あります。これはよほど私どもが見ていかないと、将来大きな問題になるだろう。問題になる萌芽がある。こう思います。ここらの点についても、私は、将来の私どもの課題としてやっていきたい。  さしあたりは、ただいまお答えいたしたような次第でございますので、いろいろな点について、これは不十分でないかとか、いろいろな御議論があると思いますが、そこらは、今日の実態から見て、ひとつぜひ御理解を賜わりたいと、かように考えております。
  282. 桑名義治

    ○桑名委員 以上で終わります。
  283. 大野市郎

    大野委員長 次回は、来たる十八日木曜日、午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十九分散会