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1972-05-23 第68回国会 衆議院 商工委員会石炭対策特別委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月二十三日(火曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員   商工委員会    委員長 鴨田 宗一君   理事 浦野 幸男君 理事 小宮山重四郎君    理事 橋口  隆君 理事 武藤 嘉文君    理事 中村 重光君 理事 樋上 新一君    理事 吉田 泰造君       稲村 利幸君    内田 常雄君       小川 平二君    神田  博君       坂本三十次君    始関 伊平君       田中 榮一君    前田 正男君       増岡 博之君    石川 次夫君       岡田 利春君    加藤 清二君       松平 忠久君    岡本 富夫君       広沢 直樹君    伊藤卯四郎君       川端 文夫君    米原  昶君   石炭対策特別委員会    委員長 鬼木 勝利君    理事 大坪 保雄君 理事 神田  博君    理事 藏内 修治君 理事 岡田 利春君    理事 桑名 義治君 理事 伊藤卯四郎君       有馬 元治君    篠田 弘作君       菅波  茂君    三池  信君       山崎平八郎君    細谷 治嘉君       田畑 金光君    田代 文久君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 角榮君  出席政府委員         通商産業政務次         官      稻村左近四郎君         通商産業大臣官         房長      小松勇五郎君         通商産業大臣官         房参事官    増田  実君         通商産業省企業         局長      本田 早苗君         通商産業省企業         局参事官    田中 芳秋君         通商産業省公害         保安局長    久良知章悟君         通商産業省鉱山         石炭局長    莊   清君         通商産業省鉱山         石炭局石炭部長 青木 慎三君         労働省職業安定         局審議官    中原  晁君  委員外出席者         参  考  人         (経済同友会副         代表幹事)   藤井 丙午君         参  考  人         (福島県知事) 木村 守江君         参  考  人         (全国鉱業市町         村連合会会長) 坂田九十百君         参  考  人         (日本大学生産         工学部教授)  笹生  仁君         参  考  人         (國学院大学経         済学部助教授) 大崎 正治君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  工業配置促進法案内閣提出第五〇号)  産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五一号)      ————◇—————     〔鴨田商工委員長委員長席に着く〕
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより商工委員会石炭対策特別委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行ないます。  内閣提出工業配置促進法案及び産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を行ないます。     —————————————     —————————————
  3. 鴨田宗一

    鴨田委員長 両案の趣旨につきましては、お手元に配付した資料によって、御承知願いたいと存じます。  本日は、参考人として経済同友会代表幹事藤井丙午君、福島県知事木村守江君、全国鉱業市町村連合会会長坂田九十百君、日本大学生産工学部教授笹生仁君、国学院大学経済学部助教授大崎正治君、以上五名の方々に御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ御出席いただき、まことにありがとうございます。  本委員会におきましては、工業配置促進法案及び産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案について審査を行なっておりますが、本日は、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査参考にいたしたいと存じます。  なお、議事の順序でありますが、初めに御意見をそれぞれ十分程度に取りまとめてお述べいただき、次に委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。  まず藤井参考人にお願いいたします。藤井参考人
  4. 藤井丙午

    藤井参考人 私はきょうは経済同友会の副代表幹事という資格でお呼び出しをいただきましたが、実は御高承のように、一九六〇年代から七〇年代にかけまして、世界に類例のない非常な急激な高度成長をしました結果、御案内のように非常な太平洋工業ベルト地帯を中心とする都市過密化現象農漁村過疎化現象が起こってまいりまして、特に高密度社会の形成によりまして切実な社会問題としての公害問題をはじめといたしまして道路交通難の問題、住宅難の問題、都市スプロール化現象による生活環境破壊自然環境破壊、まあこういったことが結局自然の許容量と申しますか、包容力の限界を越えておることは御承知のことでございまして、私ども公害発生の源となるような企業におきましては、目下公害対策に万全を期しておる次第でございます。が、一方また農村は御承知のように青少年等がどんどん流出いたしまして、全く老人の社会といったようなことになりまして、教育なり医療等の設備も不足でございますし、また地方財政も非常に困窮化しておるというような現象もあらわれておりまして、この辺でどうしても国土総合開発、特に産業の再配分による国土総合有効利用ということを考えなければならぬということで、実は私は個人といたしましても、両三年ほど前からそういう持論をもって、佐藤総理にも直接進言を申し上げましたし、また経済同友会といたしましても新しい国土総合開発利用についての一つ提言を本年の四月いたしまして、世論喚起一助としておる次第でございます。  私がかような提言を申し上げました最大の理由は、これ以上高密度社会が進展いたしますと、いかに企業公害対策に努力し、あるいはまた住宅道路交通等公共投資を進められましても、これはあとから追っかけるという形でございまして、根本的な問題の解決にはどうしてもならない。そこでいま申しますように、産業の再配分による国土有効利用ということをこの際思い切って考えなければならぬ。私ども鉄鋼業であるとかあるいは石油精製事業であるとか造船産業であるとか、こういった大量の物資を海外から原材料を輸入しまた製品を輸出するといったような産業は、これはどうしても臨海工業地帯立地をしなければ成り立たないことは当然でございますけれども、自余の一般の産業工作機械あるいはまた家電産業等々、こういった必ずしも臨海地帯立地を要しない産業につきましては、思い切ってこの際東京、大阪、九州を通ずるこの臨海工業地帯から、比較的未開発地方へ疎開すべきだ。と申しますのは、私全国各地講演等で回っておりますけれども、先般も東北へ行ってまいりました。北陸あるいは山陰、あるいは四国、南九州等も回っておりますけれども、狭い国土といいながら、まだまだ広大な土地が遊休未開発状態になっておるわけでございまして、しかもここに工業用水なりあるいは道路交通あるいは通信網その他の公共施設をして、工場誘致の条件を整備すれば十分疎開し得る。実は、はなはだ私ごとにわたりますけれども、私は岐阜県の山間部の出身でございますが、美濃太田市という岐阜県でも飛騨に近い山間部日本の代表的な家電メーカーを誘致いたしました。ところが地域社会ではそれが非常に歓迎されまして、同時にこの家電会社も非常に好成績をあげたというので、今度は日本のネパールといわれるような飛騨の高山に新しい工場をつくる、こういうことになったわけでございます。と申しますのは、鉄道、道路交通網等がかなり発達をしておりますし、それから、もう東北その他の皆さんはよく御存じのように、住宅はがらがらにあいているという状態でございまして、しかも最近は、若い青少年の諸君も大都会の生活に失望して故郷へ帰る、逆流現象すら起こっておるのでございます。また日本農業労働人口というものが、諸外国特に近代国家に比べましては非常にその人口の比率が高うございまして、その意味では農村にはまだ潜在的な労働力もございますし、そして地方工場を分散すれば、いわゆる出かせぎ等による非常に悲惨な問題の解消にもなるということで、私はぜひこれを促進していただきたい。今回のこの工業配置促進法案の概要を拝見いたしますと、私の言わんとするところ、また経済同友会提言申し上げておりますこととほとんど大同小異の内容を持っておりますので、私は本法律案成立賛成であるばかりでなしに、ぜひこれを実現していただきたいということを希望するものでございます。  ただここで問題になりますのは、一つは、いわゆる工業を疎開するほうの移転促進地域、このほうはもう問題はございません。これは私は東京都知事等にもしばしば進言しておりますけれども、ぜひ思い切った都市の再開発をすべきだ。それには東京の特に下町地区にある工場を全部疎開すべきだ。一部すでにそれが進行して、中小企業工業団地等各地移転しております。私の関係しております会社におきましても、砂町における工場を今度全面的に疎開することにいたしまして、かなりの土地等による買い上げ資金によりまして十分に地方移転建設するだけの費用が捻出できるわけでございますから、こういうことを思い切ってやって、都市の再開発、なかんずく広い緑地地帯あるいは広い道路あるいは高層建築等によって、空閑地を大いに有効活用することによって都市の再開発が促進されるということ、これはぜひやっていただきたい。  同時に、いま申しましたような工業を今度誘致するほうの地域についてでございますが、これはいま申しましたように全面的に賛成でございますけれども、ただ本案によりますと、今後通産省関係各省協議の上で工業配置計画を策定し、これを公表するということになっております。これは当然のことでございますが、ただ問題になりますのは、土地政策との関連でございます。と申しますのは、もう現在でもすでにかなり大資本とかいろいろなデベロッパー等地方に進出して、レジャー産業等、大量の土地の取得をやっておりますけれども、もしこの再配置に伴う計画が具体的に発表されるということになりますと、良識ある民間の企業は必ずしもそうではございませんけれども、現在までの傾向といたしますと、そういう計画が発表されますと、もうすぐにデベロッパーその他が手を回しまして土地の先取りをやる。それが地価高騰に結びついて、せっかくの構想も実現不可能になるようなおそれなしとしないということを私は非常に心配するものでございますから、この問題に限らず全般の公共投資等有効活用効率化という面からも、どうしても土地についての思い切った対策をこの際あわせて十分お考えいただく必要があるのではなかろうか。財政、税制あるいは金融等ではいろいろお手厚い施策を講じていただくようになっておりますので、その点は問題はないと思いますけれども、ただ地価の異常な高騰が結局開発のネックになるということがもう実情でございますので、ここで私が申し上げますのは土地の規制と申しますか、それにつきましては並行的に——まあこれについてはいろいろな方法がございますけれども、それはまた別の機会にわれわれからいろいろ御提案申し上げたいと思いますけれども、この問題につきまして特に御留意いただく必要があろうかと存じます。  以上、簡単でございますが、私の意見を申し上げました。
  5. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に木村参考人にお願いいたします。
  6. 木村守江

    木村参考人 私は福島県知事木村守江でございます。全国知事会並び東北自治協議会を代表いたしまして、工業配置促進法案並びに産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案に対しまして、意見を開陳いたしたいと考えております。  まず、同法案制定趣旨となっておりまする、工業化都市化の基調のもとで発展してきたわが国経済社会における現実的問題である過密過疎の弊害の解消国土利用の再編成を進める施策といたしまして本法案制定しようとしておる趣旨につきましては、まことに時宜を得たものと考えまして、満腔の賛意を表するものであります。このことにつきましては、さきに東北県知事会議からも要望をしておりまするが、今国会におきましてぜひともこの法案成立することを要望してやまない次第であります。  しかしながらこの法案の具体的な運用あるいは適用のいかんによりましては、今日かかえておりまするようないろいろな問題を再び惹起するおそれなしといたしませんので、法案主要事項四点につきまして意見を申し上げたいと考えおります。  まず第一は、工業配置促進法案の第二条の中の誘導地域についてでありまするが、この地域のうち除外地域となる区域につきましては、単純に人口増加割合工業集積度のみできめないように十分な配慮を必要とするのではないかと考えております。特にいまだ発展途上にありまする新産業都市及び既成の中核拠点都市あるいは産炭地域に属するところの市町村区域を除外することのないように要望するものであります。さらに誘導地域のサイドからこの問題を考えてみるときに、農村地域工業導入促進法あるいは新産業都市建設促進法、また産炭地域振興臨時措置法あるいは低開発地域工業開発促進法などの地域開発のいろいろな法律との関連におきまして工業導入を円滑に推進する必要があるのでありまして、これら地域開発法律との調和と十分なる協調配慮する必要があると考えるのであります。すなわち、開発途上にある東北地方にありましては、町村の合併によります広域面積、しかも一つの市が香川県の三分の二以上、千二百平方キロメートルというような広域面積を擁する市町村があり、また産業構造の質的な転換に伴う就労構造の改善も進められ、また工業がようやく下請的活動から脱皮しつつ、本格的工業生産へと整備拡充されつつあるところもあるのでありまして、一律に人口増加割合工業集積のみで除外市町村を設定することのないように、その質的特性を十分精査されますよう要望するものであります。特に東北地方にありましては数多くの除外市町村を招来することのないよう心から期待をいたしてやまないものであります。  次に、同法案第三条の工業配置計画に関しましては、まず通商産業大臣が策定する工業配置計画、この中には各県における長期計画振興計画等のいろいろな計画並びに地域実情を十分に反映いたしまして策定されるように要望してやみません。  また同計画には、できるだけ具体的に地域特性ないしその実情に沿った公害防止施策を明らかにするとともに、ガイドポストの作成にあたりましても、これら公害防止対策環境保全対策につきましての基本方向を明確にされまして、いやしくも公害分散化にならないよう十分なる配慮が必要であると考えるのであります。  さらに工業配置計画が、法制定趣旨に基づきまして円滑かつ合理的に推進されるためには、移転促進地域において将来残存する企業に対しましては、工業地方分散に伴って必要となる誘導地域における産業基盤整備や、生活環境等都市的施設整備に要する経費に対応する適正な税負担を課しまして、いわゆる移転誘導地域の将来の財源一助ともいたすようにいたしてもらいたいと考えておる次第であります。  三番目には、同法案第八条の「財政上の措置等」について申し上げますが、工業配置計画に基づきまして、計画的かつ円滑に工業導入するためには、東北地方の場合、東北新幹線や、東北縦貫自動車道建設をさらに促進してまいる必要があり、また東北横断自動車道早期着工をはじめ、主要幹線道路網再編整備都市機能あるいは社会福祉施設あるいは教育施設などの整備促進をはじめといたしまして工業団地計画的先行造成、あるいは工業用水開発とその広域的利用等産業基盤整備を促進する必要があるため、今後地方公共団体は先行的に多大の財政負担を余儀なくされることになってまいりますので、これに対する十分な財源確保がなされるよう、法令中にその措置基準を明確にされるように強く要望するものであります。  最後に、産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案について申し上げますが、同法案の中におきましては、産炭地域振興事業団改組、拡充いたしまして、工業配置・産炭地域振興公団が発足いたしまして工業配置業務を行なうことになっておりますが、工業配置業務は、前に申し上げましたように地域開発ときわめて密接かつ重要な関連を持つものでありまして、このため公団実施体制を確立されることはもとより、事業の運営にあたりましては、国、地方公共団体及び公団との三機関が十分な協調体制をとる必要があると考えるのでありまして、その具体的事業執行体制を明確にする必要があると考えるものであります。  以上をもって、工業配置促進法案並びに産炭地域振興事業団法の一部改正する法律案に対する私の陳述を終わりますが、東北自治協議会といたしましては、この法律案成立によりまして、長い間経済的にも文化的にも貧困生活にあえいでまいりました東北地方に明るい生活がもたらされるものと期待いたしまして、心から喜びにたえない次第でございます。  すみやかなる成立を心から待望いたしまして、賛意を表する次第でございます。
  7. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、坂田参考人にお願いします。
  8. 坂田九十百

    坂田参考人 ただいま御指名いただきました全国鉱業市町村連合会長田川市長坂田でございます。  本日は、工業配置促進法並びに産炭地域振興事業団法の一部改正について、産炭地市町村立場から意見を申し上げる機会を与えられましたことを厚くお礼申し上げます。  まず最初に、産炭地域現状について申し上げたいと存じます。  最近、石炭政策産炭地の復興はほぼ終わったのではないかという声を聞きますが、これは全く認識不足の見解でありまして、以下申し上げます数字の示すとおり、窮乏の極にあるのでございます。御高承のとおり、石炭鉱業は特殊な地域構造をとっているため、一たび閉山となりますと、炭鉱労働者関連中小業者等のおびただしい人口流出をもたらすものでございます。六条指定地域、これは炭鉱のある地域もしくは炭鉱のあった地域でございますが、昭和三十五年三百二十万人の人口が同四十六年には二百二十万人となり、百万人の減少を来たしておるのでございます。北海道におきましては、炭鉱所在集落閉山によって地域ぐるみ壊滅した実例もございます。また福岡県山田市、北海道歌志内市のごとき、かつて四万人をこえていた人口がいまや一万五千人を割るという実情にあるのでございます。特に、関連中小企業は、閉山影響により経営不能におちいり、資金、居住の関係から転業、転出も思うにまかせず、全く悲惨な状況に置かれておりまして、閉山に伴う中小企業対策強化要望されておる次第でございます。  また、市町村財政力指数に例をとってみますと、昭和三十五年当時六二・四と全国平均をやや上回っていたのでありますが、同四十五年には全国平均六〇に対し、六条地域平均は三二と約半分の力に落ちておりまして、まさに一割自治という貧困さであり、六条指定市町村の約八割が過疎地域指定を受けておるという現状であります。その上、閉山関連する特殊な財政支出は非常に多額で、たとえば炭鉱離職者中の高年齢層並び関連産業離職者等は就職の機会もなく、生活保護者として地元に滞留いたしまして、保護率は、昭和四十六年度において、全国平均一三に対し六条地域平均は六四・四%と約五倍、福岡筑豊地区平均は一一九・二%と九倍、同糸田町におきましては実に二九〇・九と二十倍以上となっておる現状であります。これは昭和三十七年以来の打ち続く閉山がその原因でありまして、炭鉱数では同三十五年六百二十二炭鉱が、十年後の四十六年には六十七炭鉱に激減し、出炭量においては、同三十七年、五千四百万トンが、四十六年三千百万トンと減少いたしております。特に近年の急速かつ大規模閉山影響は甚大であります。昭和四十四年度から同四十六年度まで三カ年間の合理化閉山進行状況を申し上げますと、四十四年度閉山計画三百二十万トンが八百四十万トンと約三倍、四十五年度計画三百万トンが六百五十万トン、四十六年度計画四百二十万トンが六百一万トンと、いずれも閉山実績が大幅に上回っております。四十七年度は二百七十万トンの閉山規模となっておりますが、石炭鉱業抜本的安定策がとられない限り、目標をはるかに上回る閉山が出るおそれがあるのであります。  現在、石炭鉱業審議会体制委員会におきまして、昭和五十年度における石炭の需給を二千万トンを下らぬという位置づけをいたしまして、鋭意第五次対策立案審議中でありますが、閉山地域経済に与える影響の重大さに思いをいたし、ぜひとも二千万トン確保長期安定策が樹立されますよう、諸先生方の御支援を心からお願いを申し上げる次第であります。  工業配置促進法及び産炭地域振興事業団法改正が伝えられましたとき、私どもはあるいは産炭地振興に支障を来たすのではないかといささか不安でありましたが、種々説明を承りますと、むしろこれらの法を活用することによって産炭地振興強化になると考えられますので、この法の施行に関し二、三の要望を申し上げまして、諸先生の御高配をお願い申し上げたいと存ずる次第でございます。  まず第一は、誘導地域指定についてでありますが、産炭地は、前述のとおり、その蓄積された社会資本有効利用という点と、通産省において本年改定されました産炭地域振興計画による産業基盤整備交通通信の新ネットワークの形成等りっぱな計画ができ上がっておりまする点を勘案し、受け入れ態勢の整っている産炭地市町村の全部に優先指定されることが私どもの希望であり、国としても社会資本有効利用という利点を考慮されるものと考えられます。しかしながら仄聞するところによりますと、山口県宇部、小野田地区、長崎県佐世保地区等は除外されそうだということでありますが、単に人口等による画一的制限でなく、個々の実態を十分御考慮いただきたいものと存じます。  第二点は、産炭地域振興事業団改組についてでありますが、同事業団は十年の輝かしい歴史と貴重な実績を持っており、さらに現地市町村と緊密な連携のもとに業務を行なっておりまするので、われわれといたしましては、この事業団機能強化充実を希望いたしております。改組のため万一にも弱体化するようなことのないように、特にお願いいたしたいのでございます。  ちなみに事業団工業団地造成の現況を申し上げますと、昭和四十七年、すなわち本年四月現在で、完成団地は八十二団地面積千三百一万平米、目下造成中の団地は十二団地面積三百七十一万平米、着工準備中のもの九団地面積千百七十七万平米に及びまして、この広大な団地活用を最優先的に取り扱うととが非常な重要なことと存ずる次第であります。  公団としても、移転促進対策は別として、工業団地造成等業務は、事業団実績を積極的に活用することが有利でありましょうし、公団事業部有機的連携の必要上、公団首脳部には炭産地に理解深い人材を用いることが重要であろうかと考えられます。また、工業立地審議会等工業配置関連する審議会委員には産炭地関係者をでき得る限り多数加えていただくことも強く要望したい事項一つであります。  次に、私ども団地造成の経験から申しますると、公団の行なう道路団地等造成には、必要に応じ土地収用法の適用が行なわれるよう考慮することが業務遂行上必要な事項と考えております。  また企業受け入れ側といたしましては、環境保全対策がきわめて重要でありまして、世論もまた公害、環境問題には非常に神経質でありますので、再配置公団工業を誘導し、また中核団地造成にあたっては、公害防止はもとより、生活環境自然環境の保全に万全を期するよう、国の十分な措置が望ましいのであります。  最後に、これは私ども産炭地関係者にとって最も憂慮される問題点でありますが、工業配置企業局、産炭地域振興は鉱山石炭局と、所管部局が異なるために生ずる連絡の欠如、対策の相違等を実際問題としていかに措置できるかという不安感があるのでございます。特に新公団においては、予算勘定の違いと監督官庁が二途に分かれるような場合、両事業部に生ずる違和感をどう処理するであろうかと懸念されるのであります。関係官庁の有機的連携が絶対的に必要であり、公団及び私どもに対して協力一致の態勢によるあたたかい指導、育成こそが本法の目的達成のため不可欠の重要点と考える次第であります。  以上、るる申し述べましたが、産炭地市町村現状は、企業はぜひ誘致したい、しかし多額の地元負担にたえるだけの財政力がないという泣きどころがあるのでございます。本法発足と同時に、国は、産炭地市町村に受け入れに十分な助成措置を講ずるとともに、産炭地の利点を生かし、遠隔地にあるという不利な点をカバーする方途をも御検討いただき、本法の制定産炭地振興に大きく寄与されまするよう切にお願い申し上げまして、私の陣述を終わらせていただきます。
  9. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、笹生参考人にお願いいたします。
  10. 笹生仁

    笹生参考人 日本大学の笹生でございます。  私は工業立地論を専攻するものでございますので、この機会に、日ごろ私ども工業立地問題、あるいは地域問題について、今日特に迫られている政策課題というものをどう見ているかということについて、いささか私見を述べさせていただくと同時に、そのような観点に立った場合に、今回の工業配置促進法案がどのような意味を持つものであり、また、どのような問題点を内包しているかというふうなことについて、触れてみたいと思います。  まず、私どもの今日当面をしている政策課題については、幾つもございますけれども、主要なものとして、私は常平生次の三点をあげております。  第一点は、これも先刻御承知のごとくでありますけれども、エネルギー産業や装置系の各種コンビナートの立地に対しまして、地元住民側からの拒絶反応が各地に発生をしているという動きであります。この端的な争点は言うまでもなく公害問題にあるわけでありますけれども、しかし、その根底には、これまでの工業開発地域開発といった、いわば工業の持つ地域開発効果というものに対する不安、疑念というものが根底に流れているというふうに見ておるわけであります。したがいまして、今後の地域工業開発は、それがだれにとってどのような意味合いを持ち、どれほどの有効さを持つかというふうなことを念頭に置かずしては、進めることはできない問題ではなかろうかというふうに考えております。  第二点は、工業立地政策は、当然より広い工業政策の中の一つと位置づけられるわけでありますけれども、最近の動向の中では、そのような産業構造政策としての関連といいますか、要請が、これまでになく強まってきているという点があげられようかと思います。昨年制度をいたしました農村地域工業導入促進法は、言うまでもなく農業面での構造改善という面からの立地政策へのドッキングであるわけでありますが、また、同じく昨年五月ぐらいに通産省から発表されました「七〇年代の通商産業政策」の中でうたわれておる、従来の重化学工業という概念あるいは構造というものから知識集約型の工業という概念なり構造への転換という方向は、これはこれまでの立地政策に対してまた新たな課題を投げかけている問題だと理解をしております。  それから第三点は、近年の立地動向の中ど、特に四十年代に入りまして三大都市から地方への分散化が次第に大きさを増しておりまして、それまでの巨大都市集中への流れがようやく地方分散へとその基調を変えたように思っておるわけでありますが、その中におきましても各工業地区では、その立地した企業、それを受け入れた地域住民というものの中で必ずしもいわばしっくりといかないという問題が散見されますし、また巨大都市においても工業が分散し続けているにもかかわらず、なお依然として過密化の状況というのは深刻さを増しておるという点であります。したがいまして、こういったことは、この分散化の速度を一そう速めていかねばならないという問題とともに、いわば新しい一つ集積のあり方について今後どうあるべきかということが問われている。言うならば、日本列島全体についての新しい一つ集積構造をこの際再構築をすべき問題に当面をしておるのだというふうな問題があろうかと思います。  今回の法案の持つ特に政策上の特徴といたしましては、私どもは、いわばこの大都市問題と地方開発問題を有機的に結合して、この日本列島全体についての工業配置の合理的な姿を追及し、両者を接近さしていこうという点にあろうと見ております。したがいまして、これは私がいま申し上げました第三の課題にまさに対応するものでありまして、細部についてはともかくといたしましても、いわば全体像を政府の責任のもとで見詰めようとする点については高く評価さるべきものだと考えております。またこのために、法案では将来の業種それからその地域的なシェア、立地的な課題等についてガイドポストを公表することにしており、また工業団地造成のためにかつてない助成案を盛り込んでおります。これらの諸施策というのは、特に高次加工型のいわば内陸部の工業展開を重視をしているという点が十分うかがわれるわけでありまして、これは私の第二の課題に対応する問題だというふうに考えております。  ただこの法案では、私の冒頭に申し上げました第一の課題に関しましては、必ずしも施策の面について明示された形で対応していないように見受けられます。ただ、もとよりこういった課題は工業立地政策のみで対応し得るものではございませんで、またこの法案では、いわば特定な地域開発計画にまで立ち入るというふうなことは考えていないようでございますので、したがいまして、こういった問題は今後の運用の過程において解決をはかっていくべき問題だというふうに考えるべきなのかもしれないと思っております。  ただ、この問題がきわめて基本的な問題であるとともに、今日解決を急がれている問題だという点に関しまして、この機会に私なりの意見を若干申してみたいと思います。  これに関しましては、すでに問題の焦点になるところの公害の防止、それから環境の保全、清浄技術あるいはそれに関するソフトサイエンスというふうな点に関して、政府諸機関で鋭意検討を進めております。また、地域開発のいわば効用評価という点についてもおくればせながらいろいろな研究機関で進められております。これらの点については一そう実践的な成果があがるよう政策的な促進をぜひはかっていただきたいと考えておりますが、こういった問題とは一応別に、いわば生産関連施設に対して、各工業基地でのいわば生活環境関連投資の立ちおくれといいますかあるいはアンバランスというものが、しいて言えば住民の一つの拒絶反応というものに深いかかわり合いを持っているという点にひとつ留意をする必要があろうかと思います。  法案では、いわば補助金というふうな形で関係市町村あるいは企業に、それに関連する生活関連施設あるいはレクリエーション等の施設の整備を助成するような形をとっておりますが、私どもの断片的な知識をごくまるめて申し上げますと、おおむね臨海工業地帯における生産関連社会投資とそれから生活関連社会投資は一対二ないし二対三ぐらいの割合ではなかろうかと見ております。また、内陸部におきましてはその割合がさらに一対二〜三ぐらいに高まっているというふうに見ております。それにもかかわらず、実際の投資の状況を見ますと、生産関連についてはほぼ計画に近い進捗率を示しているに対しまして、後者の場合はむしろけた違いほど低い進捗率にとどまっている例が非常に多うございます。これは先ほど坂田市長からも御意見がございましたような、いわば地方財政貧困さということが非常に大きく響いておるということがまず指摘されるのではなかろうかと思うわけであります。したがいまして、いわば望ましいような形での工業基地を造成されるためには全国的な一つのスケルトンを造成すると同時に、地区地区の工業造成のあり方を健全な形に進めていくためにはさらに広範な社会資本政策というものが、この法案を取り巻いてバックアップをするということがぜひ必要であるというふうに考えます。  以上をもちまして、簡単でございますが、私の意見を終了いたしたいと思います。
  11. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、大崎参考人にお願いします。
  12. 大崎正治

    大崎参考人 理論経済学を専攻しております大崎と申します。どうぞよろしくお願いします。  この法案に関しましても新全総という計画のある意味の一環であろうかと存じますが、私の第一の主張点は、はたしてこの法案によって人口が分散したり、あるいは過密過疎を解決することができるかという点について主として時間をいただきたいと存じます。  今日、環境問題が起こり、また過疎過密ということが意識され、社会資本の充実によって問題を解決しようというふうによくいわれるわけですけれども、ただ私は経済学者でございますので、経済学的にそもそも過密過疎という、そういうメカニズムといいますか、それは何であったかということ、やはりそれについてある一定の認識を持ち、それに対して対策を打つということが必要であろうかと思います。その場合に、たとえばこの法案あるいは新全総というものがそういった目的を達成する手段として可能であるかということが一つ問題であると思います。  もともと太平洋ベルト地帯に工業集積して、人口がある意味でそちらにも集積するということの対策としては、やはり旧全総が最も大胆に問題を提起したと私は思います。すなわち、所得における地域格差を是正し、そしてある意味の、過密過疎ということばはいまほど激しくいわれておりませんでしたけれども、やはり過密過疎ということを問題とし、それを解決しようということがあったわけです。そしてしかも旧全総は、御存じのとおりいわゆる拠点開発方式という形式でもって工場をある意味で分散しようということにおいては、私はこの工業配置法案よりももっと大規模な構想であったと思います。しかし御存じのように、そのことによって工場がはたして分散したか、あるいは過密過疎のきめ手になる人口が分散したかということを見てみた場合、たとえば——私は主としてこのいまお配りしました資料に基づいて話をしておりますので、恐縮でございますが、七二ページの第一表及び第二表を見ていただきたいと思います。その数字を見ていただきましても、昭和四十五年の国勢調査の統計を使いましたけれども、四十五年になっても依然として人口の集中は消えていない。あるいは工業出荷額についてみても、特定地域に対して集中しているというふうになるわけです。ここでは関東、東海、近畿というのがそれにあがるわけです。  このような問題に関しまして、ある意味のちょっとした初歩的な統計学上の問題が出てくるわけです。たとえば東京都というのをとりまして、ウエートが下がった、人口あるいは工業出荷額が下がったというふうによくいわれやすいわけですね。しかしよく考えてみますと、それは東京から東京に近い周辺の県に移ったにすぎない、こういうふうに、特に人口ははっきりしております。そういう意味で、ある意味で過密地帯がふくらんでいっている。いわゆるスプロール化現象というふうによくいわれますが、住宅のスプロール化ということと同様に工場のスプロール化ということもいえようかと存じます。そういう意味で、やはり統計の地域のとり方によって分散が進んでいるというふうに見えたりするわけですけれども、実は私のような考え方に立ちました場合には、むしろ地域集中は続いている、こういうように考えざるを得ないわけです。  新全総に移りますが、新全総は、ある意味の旧全総の失敗というふうに言っていいと思いますが、地域格差を是正し、人口をある意味で分散させようというわりあいはっきりしたキャッチフレーズを出しておったわけですけれども、新全総におきましては、過密過疎の解決ということは新全総の前文に、冒頭に掲げられておりますが、それが具体的な手段としてあるいは計画の機構の中に入れられているかというと、そういうことはないわけです。それからさらにもっといいますと、旧全総にあげていた地域格差是正というそういうことばは、ある意味で消されてしまっているわけですね。もっとキャッチフレーズが抽象的になってしまっている。そしてはっきりイメージとして出されているものは、結局それは新しいネットワーク、あるいはそういったものによる交通のフレームワークを体系づけることによって工業を分散する。特に工業分散ということが新全総の焦点である。その点で旧全総に比べてある意味で正直になったというふうに言ってもよろしいかと存じますが、ある意味でまた失敗を確認している、こういうふうに言っていいと思います。その上で、それでは旧全総がはっきり掲げていた地域格差をどのように是正するかということに関しまして、新全総はある意味であいまいになっている。そして工業を分散させるということが何もかもうまくいくかのように書いておられる、こういうことが結論としていえると思います。そういう意味で、われわれはこの工業配置法案というものは、やはりそういう新全総の一環であるというふうに考えてよかろうと思います。  新全総について、やはり工業配置法案の背景として新全総というのがあるわけですから、それについてもう少し考えてみたいと思います。  いままでは、旧全総のように工業を分散させようとして非常に努力された。それにもかかわらず集中がとどまらなかったのは、それは周囲の環境が問題である。当時公害ということ、あるいは環境問題ということは意識されていなかった。しかしいまは意識されている。そして政策もとっている。だから今度は二度とそんなことはないというふうにいわれているわけですけれども、それではどういう手段が講じられているか。結局それは工業分散ということしかないわけですね。ネットワークというものを一つ取り上げましても、はたしてネットワークは人口を分散させる力になるか。私は十分な研究をまだしておりませんが、まあ非常によくいわれていることで卑近な例をとりましても、たとえば東海道新幹線が通ることによって、たとえば広島県あるいは岡山県の人々が東京に行く回数がはるかにふえてきた。あるいは名古屋市の中枢管理機能あるいは管理職の数がある意味で減ってきている、こういうようなことがいわれております。それをネットワークによって全国化していった場合に、やはり中枢管理機能あるいは管理形態、あるいはこれを言いかえれば行政、文化の中心、そういうものが次第に東京に吸い取られていくということになろうかと思います。また事実、新全総は東京中枢管理機能をもっと大胆に徹底的に集積しようということを掲げております。そういう意味でいまここで人口分散ということを私は第一目標として掲げたいと存じますが、はたしてそれについて解決となろうかということを過去の経験というものを見ることによって、やはりそれについてメスをふるうということがないといけないのじゃないかと思います。  御存じのように、経済学の中で、国民所得のいわゆる第一次産業、第二次産業、第三次産業のうち、経済が発展すればするほど第三次産業がある意味でふえていく傾向があります。これは言いかえれば、程度の差はありますが、管理機能あるいは中枢管理機能がふえていく、それに従事する人口がふえていくということを意味しているわけです。したがって、工業分散によって、人口を分散させるという効果はきわめて小さい、あとの時代になればなるほど小さいということになろうかと存じます。したがって、まず工業の分散によって人口を分散させるということは、見通しとしまして、たとえば十年先、あるいは十五年先としまして考えてみました場合に、はたしてこれによって、新全総は非常にあいまいにしておりますが、過密過疎の解決になるかということが一つ疑問点として出てくるわけです。ネットワークについても、先ほど申しましたように、ネットワークを整備することによって、むしろ人口は首都圏に、あるいは従来の過密地帯にある意味で集まってくるということになりかねないという危惧を持っております。  もう一つ申し上げますと、意外に最近の地域開発された地帯を歩いてみましても、むしろ公害ということに関する関心が高まることによって、工業の分散ということが、ある意味で——これは私は工業の分散によって工場に働く人々が地域的に分散するという効果は認めないわけではありませんが、逆にまた公害が広がるという形式でもって、公害に関心を持った住民は、首都圏あるいは既存の過密地帯のところで都市開発をされ、ある意味で環境条件がよくなるということによって、かえって人口は集まってくるという逆の効果も、波及効果として、間接的な効果としてあるのではないか、こういうことを見通しとして持っております。  それでは、一体どんな案があるのかということになろうかと存じますが、この再配置法案というようなものでなくても、実は重要なきめ手があると存じます。私は経済学者でございますが、いわゆる経済学の定理にこういうことがございます。すなわち、市場のメカニズム、あるいは自由にまかされたといいますか、市場制度、自由な自由経済というもの、それは必ず最もよい資源配分をもたらす。それぞれの持ち分の中で最適な結果になる。こういう公式がございますが、そのときに、経済学においては重大な前提が置かれているわけです。すなわち、それは、最近のもうはやりことばともなっておりますが、いわゆる外部不経済あるいは外部費用というものがないという前提があります。外部不経済、外部費用というのは、御存じのように、市場のメカニズムにおいて、相手にある意味で損害を与えながら負担しないで済ますことができるということ、その結果として、たとえば私が公害を出し、そしてある意味で社会的に損失を与える、しかしその損失を私が負担しないということによって、ある意味の利得を逆に得る。間接的な利得です。いわゆる経済学にいうオポチュニティーコストというように、財務会計では出てこないような、そういう利得が出てくる。そういうものをやはりおつりとして社会が返していただくということが必要ではないか。そういう意味で、私は、いわゆるOECDの公害費用発生者負担という原則がありますが、その原則を文字どおり法案として出していただきたい、これが本来、人口の分散あるいは過密過疎解消ということをもたらすものではないかと存じます。  どうもありがとうございました。
  13. 鴨田宗一

    鴨田委員長 以上で参考人意見の開陳を終わりました。     —————————————
  14. 鴨田宗一

    鴨田委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。  なお、藤井参考人から、所用のため先に退席いたしたいとの申し出が偽りますので、まず藤井参考人に対する質疑を行なうことにいたします。中村重光君。
  15. 中村重光

    ○中村(重)委員 わずかな時間でありますし、また松平委員のほうからの質問もありますので、できるだけ時間を短くいたしましてお尋ねしたいと思います。  なお、藤井参考人はただいま委員長が申されましたように時間の関係があるようでありますから、私が藤井参考人にお尋ねをいたしまして、次に樋上、伊藤両委員の質問を続けていただきたい、そういうようにお取り計らいを願いたいと思います。  藤井参考人に、お尋ねというよりも、実は御意見を伺いたいわけですが、先ほど、一番問題点である、本計画を推進をしてまいりますと起こってくる土地の値上がりということ、この問題が私どもも一番重大な関心を持っているところであります。土地値上がり防止のための地価対策として、これも時間の関係もありますので簡単でけっこうでございますけれども、何か御提言をいただければ幸いだと思います。  なお、移転促進地域について、工場集積している地域でございますから、この地域を規制地域ということで指定をいたしまして、外形的な付加税を課するといったような方法はいかがなものか、その財源をもって本法推進の財源にするというようなことが必要ではないかと思うのでありますが、その点に対する御意見を伺ってみたいと思います。  第三点といたしまして、先ほど、買い上げた土地その他設備等をもって今度移転するところの設備に充てることができるというようなお話も実はあったわけでありますが、土地の買い上げは計画の中にあるわけでありますけれども、これは不要設備と申しますか、未償却資産に対しましては、これが廃棄であるとかあるいは譲渡といった場合に、加速償却ということだけでありますか、それでよろしいのかどうかといったような点、これら三点に対しまして御意見を伺いたいと思います。
  16. 藤井丙午

    藤井参考人 ただいまの土地対策の問題でございますが、これは公共投資等の場合でも一番頭の痛い問題になっておりまして、政府におかれまし七も、年一回地価の公示制度というものを実施しておられまして、これを公開して一般の土地取引の基準を提示しておりますけれども、実のところこれはあまり実効があがっておりませんことは皆さんの御承知のとおりでございます。このために、これをどのように効果的にしたらいいかという点で、実は経済同友会といたしましていろいろ検討いたしました結果、その公示価格を固定資産税等の不動産関係諸税の評価額と一致させる。御承知のように、いま固定資産税等の基本になる評価額というものは非常に低いわけでございますから、これと一致させる態勢を整えたらどうか。ただ、その際問題になりますのは、現在住宅等に住んでおりまするところが急に税金が上がるということになると、これはたいへんでございますから、そういう点では税額の急上昇を避けるような、つまり税率の引き下げを行なうとか、あるいは用途別に、いま申しましたように、現在宅地に使っておるところとか、あるいは公共用地に使っておるところとか、こういったようないわゆる用途別に、あるいはまた地域別に税率を弾力的に運用するといったようなことをお考えいただいたらどうかということと、そこでいまお話しのように、土地のブローカー等による先取り買い取り、こういった問題を防ぐためには地方自治体等の公共団体ないしは事業団等で先取り買い上げをするといったような方法も一つでございますし、それからいま言ったような弊害を防止するためには、民間の一般取引について公示された評価額をこえた取引の場合には、そのこえた分につきましてはかなりきびしい累進的な税率を適用なすって、適正価格による土地の取引というものを税制面から誘導されるというようなことをお考えになったらどうかというのが一つの考え方でございます。  それから先ほどの過密都市の付加税の問題でございますが、これは現在たしか一・七五の付加税がついておりまして、これがさらに二年間延長されるということになっておるようでございますので、この問題はそれを財源として有効活用されればいいではなかろうか。まあ率直に申しまして、もう少し高い税率で規制するということも考えられますけれども、御案内のようにいま産業経済界は非常に深刻な不況に見舞われて減収減益といった状態でございますので、これ以上の税負担は少し困難ではなかろうか。ですから現在の付加税を二年間延長されるということで事足りるではなかろうかと存ずる次第でございます。  もう一点は何でございましたか、中村先生……。
  17. 中村重光

    ○中村(重)委員 もう一点は未償却資産の廃棄あるいは譲渡等に対する加速償却という問題。
  18. 藤井丙午

    藤井参考人 これは今度の法案を拝見しましても、この未償却資産を早期に償却するということについての特別の税制を考えておられるようでございますので、これはこれで片づくのじゃなかろうかと私は存ずる次第でございます。
  19. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に樋上君。
  20. 樋上新一

    ○樋上委員 それでは藤井参考人に簡単に一、二問お伺いいたします。今回の再配置計画はいわばわが国国土の再編成と言ってもいいものではなかろうか、こう思うのでございまして、当然国の国土利用に関する総合計画に基づいて行なわなければならないのですが、特に計画を実施するにおいて最も重要なかぎは、既成都市に比較して社会資本が非常に立ちおくれている農村地域に対してこれをどのように整備していくか。また特に時間的、経済的距離の短縮は工業立地においては必要不可欠な条件と思われるのですが、高速かつ高能率的移送システムをいかにするか。また国土利用の偏在化を改め、地域住民にひとしく快適な生活の場を提供するためには上下水道、住宅、医療、レクリェーション施設の増設を全国的に整備する必要があるなど、社会資本の先行的、計画整備を促進する必要があると思うのですが、この点はどのようにお考えになっておりましょうか。
  21. 藤井丙午

    藤井参考人 お答え申します。  ただいまの先生の御質問、御意見は全く私も同感でございます。これはこれからのこの法案実施上の一番大きな問題でございまして、御指摘のように地方道路にしましても住宅にしましても、上下水道その他の生活環境に関する資本の投資というものはまことに低く、また欧米各国を回ってみましても、道路の舗装率等も非常に低うございまして、そういう点では社会資本を思い切って投入するということはもう当然のことと思います。特に私が先ほど申しました中で、まあ工業用水はどちらかといえば地方は恵まれておりますけれども、一番問題になりますのは道路交通網と通信網ということと、それから先ほどもほかの参考人からも御発言になりましたように公害を持ち込まない、これが一番大きな問題で、同時にまた自然環境破壊しないような地域社会、特に自然環境と調和のとれたような産業を誘致するということが一番大切な問題でございまして、いま御指摘のように地方の所得の増大、つまり中央と地方の経済格差をなくするということと同時に、快適な生活環境を保全、強化するという点にむしろこの法案の実施面の一番の重点が置かれてしかるべきではなかろうかということで、私は全く同感でございます。
  22. 樋上新一

    ○樋上委員 第二の質問は、わが国の産業構造を考えてみますと、ほんのわずかな大企業を頂点として九〇%以上は中小企業が占めているのが現状であります。したがいまして、何らかの形で大企業中小企業とは関連があります。またそこに従属関係ができているといっても過言ではない、こう私は思うのでございます。そこでもし大企業が移動する場合、その関連中小企業等には非常に大きな影響を与えるのではなかろうかと私は思うのですが、この点はいかに考えておられますか。  これで私の質問を終わりたいと思います。
  23. 藤井丙午

    藤井参考人 お答え申します。  ごもっともでございます。一口に大企業と申しましても、ある意味では下請またその下請といったようなことで、私どもはこれを関連産業と申しておりますけれども、非常にすその広い関連産業を持っております。製鉄なんかはそれほどでもございませんけれども、特に自動車工業、電機産業等は御指摘のとおりに非常に幅の広い、そしてすその広い関連企業を持っておりますので、当然そういった大企業移転する場合には、まあ民族移動というほどじゃございませんけれども、それに付随する産業はほとんどこれと同時に移動しなければならないという必然的な動きになってまいります。そこで、大企業は大企業としての移転のメリットも十分考えますが、中小の関連企業もその移転のメリットというものを十分考えて移動することになります。そこで、先ほど私がちょっと申しましたけれども、たとえば東京都内の工場移転する場合、相当高い土地収入等ございまして、それで十分移転し、新鋭設備を建設するに足るだけの収入があがっておりますので、おそらくこのことは大企業といわず中小企業といわず共通して言われることじゃなかろうかと思いますが、ただその場合に私どもの希望といたしましては、大企業は大企業としてそれらの関連企業に対して協力をすることは当然でございますけれども、疎開する場合の土地の買い上げ等につきましては、政府なり地方自治体なりあるいは住宅公団等々、こういった機関がかなり思い切った、助成の意味を含めての買い上げをしていただくということが一番中心課題になるのではなかろうかと考える次第でございます。
  24. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に伊藤君。
  25. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 藤井さんが時間がないそうでございますから、二点だけお伺いしておきたいと思うんです。  この工業配置、いわゆる誘導地域でありますが、そこにうまく工業が再配置されていくかどうかということは、かかって土地問題と公害問題、この二点にあると思うのです。そこで、土地問題でありますが、これは法律的に歯どめをする何ものもないのです。でありますから、県が音頭とりをして、その地域市町村などとの間において、土地のあっせんのできるようなものをつくるということがよくはないか、その地域自治体はその地域土地がどのくらいするものであるかということがわかっておりますから、したがって、自治体とでそういうものをつくって土地をあっせんするということになれば、これは土地の暴騰を自然に押えていくことができると思うのです。土地所有者と工業配置をする企業者との間でこの交渉をするということになったら、これはどうすることもできない暴騰が起こってくると思うのです。そういう点について、もちろん政府もそのあっせんをせなければなりませんけれども、しかし、現実問題としてはやはりいま私が申したようなことが一番意義のある、また実績のあがることだと思うのですが、そういうことについて企業者団体であるそういうところで、そういうことを具体的にして、政府なりあるいは県なりそういうところに処置をしてもらいたいというようなことを要請されるというようなことが私は一番大事じゃないかと思うが、こういう点についていかがでしょうか。
  26. 藤井丙午

    藤井参考人 お答え申し上げます。  全く同感でございまして、実はいままででも、私ども地方へ進出する場合には地方の府県もしくは市町村等の御当局のごあっせんをいただきまして、漁業補償の問題等にいたしましても、土地取得の問題につきましてもごあっせんをいただいて、なるべく適正な価格で取引のできるような御尽力をいただいておりますが、当然今回の誘致計画につきましては、これは国も当然でございますが、地方自治体が相当介入すると申しますか、協力すると申しますか、そういう措置をとられてしかるべきではなかろうかと思います。  そこで、先ほどもちょっと申しましたけれども地方自治体あるいは各種の事業団等による土地の先取り買い取りということと同時に、いま伊藤先生の御指摘のような積極的なあっせんをしていただくように実はわれわれも提言しておりますが、さらに、実は経済同友会といたしましてはもう少し強い線を先般公表しました。それは公共投資等に対しましてなかなかいわゆる経済効果があがってこないということで、公共用地等につきましては、むしろある程度の、土地の収用法だけではまだまだ行き足らないので、私権の制限と申しますか、土地の所有権のある程度の法的制限を加えるくらいの思い切ったことをやらなければこの問題は解決しないのではなかろうか。私、先般もヨーロッパ諸国を回ってみまして、いかにも公共投資、社会資本が充実していることに驚いたのですが、結局、だんだん話を聞いてみますと、土地問題が非常に手ぎわよく、これは国によっては日本の一人当たりに対して六倍とか八倍という広大な土地を持っておるという自然的な条件に恵まれている点もございますけれども土地政策に対して非常に有効な手を打っておるということがそういう結果を招来しておりますので、もう日本の政府もこの土地問題につきましてもっともっと国民に積極的に呼びかけて、PRをして、土地政策に関する限りは、与党といわず野党といわず、国会全部をあげて、先生方の力によって土地問題について果断な政策を展開していただかなければ、いま議題になっておりますような誘導政策もなかなか実効はあがらない、こんなふうな感じを持っております。
  27. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 いま一点の公害の問題なんですが、企業がその地域に入っていこうとする場合に、それは公害が起こるから反対だということが必ず起こってくるだろうと思うのです。それは冷静な意味において、あるいはその地域の発展の上においてのみではなく、むしろあるいは政治的なあるいは宣伝的ななにで、いろいろな意図をもって——公害といっても一体とこまでが公害かということについて、これはとても範囲が広いものですから、そういうような意図をもって、公害が起こるから反対だということになってくると、その地域の人たちは、ほとんどの人がその公害ということについて分析した知識を持っておるわけではありませんから、これはことばがはなはだ不適当ですけれども、付和雷同ということもありますから、そういう点等で反対を盛り上げてこられるということになってくると、そこに企業が入っていけなくなってしまう。そこで、それなら再配置をする国あるいは通産省、そういうところで、この公害はほんとうに公害が起こるのではなくて、そういう特殊な関係公害宣伝等を起こされておるものだということについて、それを押え、納得さすだけのものが、正直なところ政府のほうにないのです。でありますから、私、先日も通産大臣と論争したのですが、やはり公害国立研究所というような権威あるものをつくって、そこで、こういう原理を使ってこういう品物をつくれば、こういう設備をしなければこういう公害が起こってくるということはわかっているのですから、そういうものを早くつくって、その再配置地域に対して、そういう問題が起こった場合には、その権威ある、信頼のできる機関で、公害はあり得ない、だいじょうぶだというようなものを国が持って、そういう反対運動を納得さす、ある場合には押えるというぐらいなものがなければだめだぞということもいろいろ話し合ったのです。ところが国のほうではそれはないのです。ありませんから、これはもちろんわれわれの問題になるのですが、これはつくらせなければなりませんけれども、いま急に間に合いません。でありますから、やはり事業家団体、そういうところでも、通産省あるいは政府のほうと、企業が行く場合に、こういう公害問題が起こされてくれば入っていこうにもいけなくなるが、そういう場合には政府が責任をもって、その公害の防止ができ、もしくはそういう反対運動を押え、納得さすことのできるような措置を事前にとっておいてくれなければ、再配置地域企業が乗り込んでいくということは不可能であるが、そういう点について政府はその処置をとってくれるかどうか、だいじょうぶか、というような点等を、経済同友会あたりで政府のほうと事前に相当配慮をしておかれないというと、なかなか困難じゃないかと思うが、そういう点についてひとつ藤井さんの御意見を聞かしていただきたい。
  28. 藤井丙午

    藤井参考人 お答え申し上げます。  ただいま伊藤先生の御指摘のように、公害問題はいま当面する日本の、あるいは世界の一番大きな社会問題でございまして、政府におかれましても、あるいは国会におかれましても、先般の臨時国会で世界に類例を見ないほどのきびしい環境基準を御設定になりました。また企業も、日本は諸外国と比べまして非常に狭い国土に、十二万平方キロぐらいの平地に一億以上の民族が生存しなければならぬという特殊の自然環境のもとに置かれておりますので、公害に対しては最も真剣に、最も敏感に対処しなければならぬ。そういうことで、いま各産業とも公害に対しては非常に真剣でございまして、私の会社の例を申しましてはなはだおそれ多いことでございますけれども、昨年度も公害対策費だけで百七十億円を投入いたしました。ことしは全体の設備投資の二五%を公害対策に投入して、公害の根絶を期しております。最近できました大分製鉄所等をごらんいただけばわかりますが、ほとんど公害のない工場ができております。そういうふうで、鉄綱業といわず公害発生源となり得るおそれのある企業は、いま真剣にこの問題に取り組んでおりまして、私は、ある意味では日本公害対策の先進国になり得るのではなかろうかとすら思っておるわけでございまして、問題は二つございます。  一つは、いま先生の御指摘になったように、公害の発生とその及ぼす影響の因果関係をどう解明していくか、こういうことについての権威ある機関がまだございません。そのときそのときによって、いろいろ学者グループ等あるいは研究所等によっての検査が基準になっておりますけれども、はたしてこれがほんとうに間違いのないものであるかどうかということについては、確たる判定のしがたいような場面も間々あることでございます。その意味におきましては、最も権威のある公害の判定機関——公害基準法で規制しておる、また地方自治体は、むしろ公害基準以上のきびしい条件をいまつけておられますので、そういったものに対して十分判定し得るような機関をぜひつくっていただきたいということを、私どもも政府に要請を申し上げたい。  同時にもう一つのお願いは、公害対策に対しての技術開発あるいは施設の開発がまだまだ不十分でございます。たとえて申しますと、大気汚染の原因になりまするSO2に対して、石油精製の段階での硫黄を取るいわゆる脱硫技術、これはまだ世界的に完全に完成されておりません。また、したがってその脱硫設備も、いま直接脱硫、間接脱硫等々いろいろな苦心をしておりますけれども、まだ完全に硫黄を取り切るところまでいきません。そこでいまの低硫黄原油の輸入であるとかLNGの輸入とかいうことにだんだん転換しつつありますけれども、こういった問題もかなり大型なプロジェクトでもって公害対策技術を開発していかなければならぬ。これには民間企業企業としての全力を尽くしておりますけれども、膨大な資金を要するような問題につきましては、これまた政府の大幅な助成、援助というものを期待したいと思っております。  ただ問題は、いまの先生の御指摘の因果関係ということになってまいりますと、これは非常にむずかしい問題でございまして、私は学者でありませんから多くは申しませんけれども、結局自然にはバクテリアであるとかプランクトンであるとか、こういったようなもの、あるいは植物から酸素を吐くといったような作用でもって、いままでは公害を吸収する自然の循環作用があったのですが、高度の経済成長、工業化の結果、公害発生のサイクルと自然のそういうものを吸収していくサイクルとの非常に大きな違いができてまいりましたのが、これが公害の発生原因でございまして、はたしてその結果が人体にどういう影響を及ぼすかということになりますと、当面しておりますイタイイタイ病等は、これも二十数年前からの原因があるわけでございますけれども、子々孫々にどういう影響を与えるかということになってまいりますと、科学的にこれを解明することは非常にむずかしい問題でございますので、そういった問題まで立ち至っての解明ということになりますと、いま御指摘のように、相当権威のある機関を必要とするということでございますので、御説のように、われわれとしましても、政府にそういう施策を講じていただくよう、また、国会の先生方にもそういった御配慮をいただくようにお願いしたいと思っております。
  29. 鴨田宗一

    鴨田委員長 以上で藤井参考人に対する質疑は終わりました。  藤井参考人には、御多用中のところまことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  次に、他の参考人に対する質疑を行ないます。中村重光君。
  30. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは、時間の関係がありますから、各参考人に一問ずつお尋ねをすることにいたします。  まず、木村参考人にお尋ねをいたしますが、第五条の認定というのがあるわけですが、この認定に必要な事項は、すべて政令事項になっているわけです。私は、この移転をしてくる工場の規模、それから期間、公害防止確保であるとかあるいは団地造成の基準、さらに受け入れ側の市町村の同意といったような程度のことは、法律に明記する必要があるのではないか。木村参考人はこの条文について十分御検討いただいておるようでありますから、御経験も特にあるわけでありますし、この点に対するお答えをいただきたいと思います。  次に、坂田参考人に御意見を伺いますが、課税の特例の点でございます。固定資産の免税措置は三カ年ということでありますが、これは短いのではないか。いろいろと折衝の結果こういったことに落ちついたようでありますが、田中通産大臣の構想である二十五年は無理といたしましても、ある程度固定資産税の免税をする必要もあるであろう。そうなってまいりますと、地方自治体の財源の問題が出てまいりますから、当然国がこれを補てんをしていくということでなければなりませんが、それらの点に対して、坂田参考人の御見解を伺いたいと思います。  次に、笹生参考人にお尋ねをいたしますが、本法案計画、いわゆる工業配置計画というのは、先ほども意見がございましたように、全国総合開発計画であるとか、あるいは首都圏整備計画であるとか、その他拠点開発政策並びに地域開発との調和ということを求めておるようでありますが、本法案による工業配置計画と、それぞれ独自の行動をいたしますところの地域開発、拠点開発の政策とうまく結合するものかどうかという点であります。この工業の適正配置を進めていくためには、工業立地政策の基本を示す立法が必要であろう。そういったような考え方に立ちますならば、私は本法案では不十分だと思っているわけです。そこで、本法案とは別に、工業立地の基本法と申しますか、そういうものの必要はないかどうか、その点に対する御見解を伺いたいと思います。  大崎参考人に御意見を伺いたいのは、本法案工業配置法案というけれども、これは現実には公害の分散立法になるのだという酷評が実はあるわけです。確かに従来の地域開発計画あるいは拠点開発計画に基づくところの推進の実績を見てみますと、地価は上がる、公害は続発する、交通事故はもうどんどんふえていく、ごみなんというものは堆積していくといったようなことでたいへんな問題が起こっていることは御承知のとおりであります。さらにまた、先ほど御意見がございましたように、開発はなかなか進まない、しかもいままで進めてまいっております地域開発、拠点開発政策というものは全くばらばらということで一貫性が実はございません。そこでこの公害地方分散ということの歯どめというものが必要になってまいりますが、この歯どめに対するところの御提言というようなものを私は伺いたい、このように思います。それぞれひとつお答えをいただきたいと思います。
  31. 木村守江

    木村参考人 ただいまのお尋ねでございますが、御指摘のとおり移転促進地域並びに誘導地域の認定に際しましては、これは法律できめることが最も好ましいとは考えておりますが、この法案を見ますと、政令で定めることになっております。したがいまして政令で定める場合には、先ほど申し上げたように地方実情をよく精査いたしまして一律的な考え方でなく、よく地方自治体等と相談をいたしまして、この運用の面において法律とやや同じような効果をあらわせるような状態をつくっていただきたい、というように考えております。
  32. 坂田九十百

    坂田参考人 固定資産税の免税期間の問題ですが、当初私どもの承りましたところによりますと、二十五カ年とかいうようなことでございましたが、免税期間は三カ年になっておるようであります。産炭地域臨時措置法で免税期間は三カ年になっておりまするが、実際問題といたしまして、工場を新設いたしますと、やはり五カ年程度はかかると思うのでございます。しかしこれもわれわれ市町村側から申しますと、全額国庫から助成があるのではなく、二〇%は市町村の負担になってくるわけでございます。そうなりますると、それでなくとも疲弊のどん底にある市町村財政から申しますると、二〇%の負担を長らく続けさせられるということになりますと、市町村側としては非常に苦しいわけでございまして、でき得れば新しい工場に対しては五カ年くらいの延長をやっていただきたい。そうして二〇%の負担は市町村にさせないようなお考え方を持っていただきたい、私どもはこういうふうに考えております。
  33. 笹生仁

    笹生参考人 お答えをいたします。  二点ほどあったと思いますが、一つは、この法案が他の開発計画との結合、調和がうまくいくかどうかということが一点だと思います。それからもう一点は、より基本法というふうなものの制定の必要性がありやなしやということであろうか、そういうことでよろしゅうございますか。——第一の問題については、先ほどのところでもちょっと触れましたが、私の理解ではこの法案は具体的な地区それぞれについての開発計画を立案、推進をするということよりは、全体構成について一般的な促進政策をとるというところに重点があるというふうに考えております。したがいましてたとえば新産、工特あるいは低工法といった地区別のものとはこれは相補完をしていく形のものであろうかと思っております。またこの法案の中で公団による中核工業団地造成という点が一つうたわれておりますけれども、この辺は特に先般の農村地域工業導入法との関係が具体的には出てくるであろう。それの地区選定のところで問題が出てくるかもしれない。これは当然農村地域工業導入法については農林、通産、労働三省で協力してやっていくというふうな形をとっておりますので、そういった点で調整をはかっていくべきものであろうというふうに考えております。他の一般的な開発計画、たとえば新全総計画というふうなものにつきましては、これはまたこの法案一つの前提条件になっているという点もあるわけでありますし、それから新全総が最近の新聞情報等によりますと、見直し作業が引き続いて行なわれていくというふうな過程にあるようでございますので、全体の骨格というふうな問題についてはその過程の中で十分討議し、コンセンサスが得られるように進めらるべきだというふうに考えております。  それから第二点の基本法の問題につきましては、私なりには先ほどの陳述の中でも申し上げましたように、今後の工業立地というふうな問題は、いわば産業中心から地域中心といいますか、そういった形へ展開さるべきものであろうと思いますので、いわば工業立地に関する基本法というふうな問題はもっと違った次元で考えるのが妥当ではなかろうかというふうに考えております。  以上です。
  34. 大崎正治

    大崎参考人 お答え申し上げます。  公害をどうして歯どめするかという御質問でございますが、私が前回に申し上げましたように、やはり公害費用を発生者が負担するという今日のこの市場のメカニズムの欠点というものを補うということが第一の対策でないかと思います。その点、たとえば公害費用を政府なりが補助金を与えて公害をなくすように誘導するという政策は、経済学者の間ではブライブズという英語を使っておりますが、日本語に訳しますとわいろということであります。直訳として非常にショッキングなことばになるのですけれども、ブライブズという概念がある意味で問題性というものを指摘してくれるのじゃないかと思います。あとの対策としましてやはりそう変わった政策はございませんで、一つはやはり地方自治というものを確立されまして行政機構における中央集権的なものをできるだけ分散させるということあるいは開発事業に際しましてもなるべく一般公衆に経緯を公開していただくということ、この点はイギリスのことわざに、光を当てるということがある意味で警官を一人ふやすよりも有能であるというふうなことわざがあると思いますが、そういうふうなこととしてお考えいただければけっこうでございます。
  35. 鴨田宗一

    鴨田委員長 細谷治嘉君。
  36. 細谷治嘉

    ○細谷委員 時間がありませんからまとめて御質問いたしたいと思います。  最初に木村参考人にお尋ねいたしたいのでありますが、今度のこの工業配置法案というものを見てみますと、きわめて特徴的なことは、県知事ということばが一つも出ておらぬわけですよ。すべてもう通産大臣あるいは主務大臣と、こういうことでやっていくわけですね。そしてまあ最後のほうに、税金をかけるとかなんとかという、あるいはいろいろな施設をつくろうという地方負担になる分については地方公共団体ということばが出てきているわけです。これは私は前例のない法律じゃないかと思うのでありますが、現実にそれぞれの地域あるいはそれぞれの県で開発計画を持っておるわけでありますし、またいまの公害問題等、たいへん重要な問題でありますから、地方公共団体の知事なり市町村長というものの意見というものが、この工業配置に全く織り込む余地がないように法律ができておるので、私は問題点の一つではないかと思うのでありますけれども木村さん、どうこれを受け取っておるのかということであります。  それから坂田参考人にお尋ねいたしたい点は、全国鉱業市町村連合会の会長ということで、先ほど産炭地の苦労、依然として深刻さが続いておるということをるると述べられたわけでありますが、それにもかかわらず、こういう法律ができ、そして産炭地域振興事業団公団になれば、産炭地域振興強化になるのだ、こういうふうにきわめてあっさりと割り切っておる根拠は一体何なのか。これをひとつお聞きしたいと思うのであります。もちろん、そのことばの中にぜひ優先的に産炭地指定してくれ、こういうことでありましたけれども、それだけでは悲惨な産炭地の長として割り切り方がきわめて簡単過ぎるのじゃないかというように感じます。  それからもう一つ、これに関連いたしまして、工場立地及び工業用水審議会委員産炭地の人を入れてもらえばそれで事済むのだ、こういうふうなおことばもございましたが、それでよろしいのかどうか。この法案あるいは事業団法律公団に変わっていくという経過からいきますと、しかもいままで事業団が営々として造成をやった、あるいは産炭地域振興に努力してきた成果、そういうものを生かして社会資本の効率的な活用、こういう点になってまいりますと、審議会委員に入れていただくということだけでは片づかないのじゃないか、私はこういうふうに感じます。この点、ひとつお答えいただきたいと思うのであります。  それから笹生参考人にお尋ねいたしたいわけでありますが、私のあるいは聞き違い、理解の違いかもしれませんけれども、今度の法律は政府の責任でやる、こういう点で評価できるのだ、こういうおことばがございました。先ほど中村委員の質問に対するお答えと比べてみますと、中村委員の質問に対しては、むしろ産業立地、こういうことになりますと、この法律でなくて別途法律が要るのじゃないかというようなことばがありましたけれども、たとえば知事や市町村長の意見を聞かぬで、通産大臣等が一方的に法律を推進するわけでありますから、そういう点で政府の責任がきわめてすっきりして評価できるという意味なのかどうか一この辺のひとつお考えをお聞かせいただきたいのであります。  それから大崎参考人にお尋ねしたいことは、この法律案は評価できない、いままでの実績、しかも新全総計画、そういうものを前提としての再配置法という構想でありますから賛成できないということで、たとえばPPP原則等をきちんとした法律でやったほうが実効があがるのではないか、こういうおことばでありました。私も、大体先生の基本的な考えと同感であります。けれども、PPP原則だけで問題が片づくかといいますと、それほど簡単じゃないのじゃないか。おっしゃった経済の原則、こういうものが大きく働いてくるのではないか、こう思います。けれども、いま問題のものはPPP原則でありますから、具体的にたとえばニクソンがやっているような公害罪という構想、あるいはいまの日本の環境庁長官の言っておるような公害罪というような構想、いろいろあるわけでありますけれども、私は、やはりニクソンが考えておるような公害罪、たとえば硫黄を排出するならば、基準というものじゃなくて絶対量というものが問題でありますから、硫黄の根っこから、亜硫酸ガスになるわけでありますから、根っこからやはり課税していくという構想、ほかのものでも同様でありますけれども、そういうことが必要であろうと思うのであります。この辺について具体的にどういうものをお考えになっておるのか、お聞かせいただければ幸いだと思います。  以上です。
  37. 木村守江

    木村参考人 ただいまのお話でございますが、今回、この工業配置法案というようなものが国会に提出されておりますことは、何といっても誘導地域というのは社会資本の投入が非常におくれておりまして、産業基盤整備が立ちおくれておるような状態、こういうものが現在の誘導地域というものをつくっておるものと私は考えております。そういうような観点から考えますれば、この法律をほんとうに生かしてまいりますためには、先ほど申し上げました交通網の整備通信網整備、また教育施設あるいは社会環境の整備というようなものに思い切って力を入れてもらわなければ、この法律はほんとうに生きてこないと考えております。そういう点から考えまして、この法律を生かしてまいります基本的な考え方といたしましては、やはり地方自治体と話をし合わなければならないことになっておるだろうと考えております。  ところが、この条文の明文の中には県知事ということばが一ぺんも出てこないというようなお話がございましたが、先ほど来の第五条の認定の問題でございます。この移転計画をつくる場合にはやはり地方自治体と話をしなければつくれないだろうと思います。そういうような移転計画をつくりましてこれを通産大臣に提出して、通産大臣の許可によりまして認定されることになります。こういうようなことから考えますれば、明文としては県知事という名前は出ておりませんが、実際問題としては地方自治体と話をしなければできない問題じゃないかというようなことを考えております。  いずれにいたしましても、この法律を生かしてまいりますためには地方財政貧困な、いわゆる社会資本の投資の貧困地域が誘導地帯でございまして、この点から考えますれば、そういう点に主力を置いてもらわなければならないというような考え方から、先ほど陣述の際に詳細に申し上げたとおりでございまして、明文には県知事と書いてありませんが、十分に県知事と相談をしなければできない問題だ、またそうしなければいけない問題だというように考えておるのでございます。
  38. 坂田九十百

    坂田参考人 工業配置促進法についてきわめて簡単に割り切っているのじゃないかという御意見でございますが、ただ委員を入れたからこれでよろしいというわけではございませんし、やはり新しい公団首脳部には、産炭地に理解のある人を入れていただきたいということも申し上げておるわけでございます。特に産炭地振興につきましては事業団が懸命に努力もされておりまするが、やはりこの法律によりまして過密地帯から過疎地帯に工場配置されるということになりますると、たくさんの団地造成されておりまするし、産炭地にはやはりこの法律があることによってより一そう産炭地振興がスムーズにいくんじゃないかというような見解を持っておるのでございます。ただ、そうした法律の内容について、効率をあげるような法律に立法府においてひとつお願い申し上げたい、特に先生方にお願い申し上げたい、こういうふうに考えております。よろしくお願いを申し上げます。
  39. 笹生仁

    笹生参考人 お答えをいたします。  私がいわば政府の責任のもとで云々と申し上げましたのは、もし記憶違いでなければ、私としては工業配置の全体像を政府の責任のもとで見詰めようとするというふうに申し上げたと思いまして、政府が実施をする、あるいは政府だけがそれを実施をするというふうには申し上げなかったように記憶をしております。というのは、実は各地域産業のあり方、構成とか伸びの問題については従来いろいろな政府諸機関でも発表はされておりますけれども、それはいわゆる見通しという形でしか出しておりませんで、ここでは産業配置計画をいわばガイドポストというふうな形で公表するというところに着目をして私は申し上げた。言うならば、それについては単なる見通し以上の一つの裏づけといいますか、姿勢というものが私なりには読み取れるというふうな点で申し上げたつもりでございまして、決してこういった問題が地方住民を抜きに進め得るとは毛頭考えておりません。  以上でございます。
  40. 大崎正治

    大崎参考人 お答えを申し上げます。  委員の、公害の濃度だけではなくて絶対量を規制すべしという御意見は、全面的に賛成でございます。  次に公害を防止する方法について、たとえば最近環境庁が設置されて次々と実行されていること、あるいは法として準備されていることということについての一つのコメントを申し上げさしていただきたいと思いますが、確かに法律によっておっしゃいますようなニクソンの非常にきびしいという感じを受け、また非常な、よくやるというふうには言えるのですけれども、やはり私は指摘しておきたいのは、幾ら法によって、あるいはまた行政によって取り締まろうとも、それによって利益を得るとなればなかなかなくならない。そういう意味で、今日のこの現実の経済、やはり法の裏づけをある意味で銭勘定でつけてもらおうと、これがPPP原則の意味だと、思うのです。そういう意味で、私はPPP原則を主張するわけですけれども、それは法律が意味がないとかそういうことを言っているのじゃなくて、むしろ法律を実効あらしめるものだということを主張したいわけであります。ただ、私はむしろ公害をどうして防ぐかという御質問では梗概を述べたわけですけれども、もともと地域開発というものについての問題点を述べておりますので、その点公害費用発生者負担法案ということよりも、もっと目をむしろ広げていただいて、公害をも含む外部不経済発生者負担法案、こういう形で持っていきたい。その際には、しきりにいま議論になっております土地問題というものについても、やはり経済の論理によって解決するということが確信されるわけです。たとえば最近過密過疎対策ということで、たとえばフランスが、首都パリに事務所なり工場なりが人一人雇うごとに、その企業から、雇用者から幾らかを取り立てる。それでもってたとえば地方の過疎の対策を打つ、あるいは地方の近代化というものをはかる財源にする、こういうふうな法がもう出ているわけです。私はこれはやはり日本でも適用すべきじゃないか。たとえば過密過疎という問題のときに、やはり何といいましてもローカル線が問題となって、たとえばこれは過疎の一つの例でありますが、なぜこのようなローカル線が赤字になったかといいますと、人口が過密地帯に集中しているからだ。そういう意味で、過密地帯が問題を起こしているというのは、それはある意味で過疎ということに悩むところによる損失、あるいはそういった費用というものを負担させれば、ある意味で過密ということはチェックされるはずです。そういう意味で、過密と過疎とは別個の現象ではなくて、一つ現象地域的に分けたことにしかすぎないので、やはりそういう意味で、たとえばローカル線赤字について首都の責任である、あるいは過密地帯の責任であるという論理を、税でもって、あるいは銭でもってあらわしていくというのが、この私が申しております外部不経済発生者負担法案というようなものであるのではないか。その点は、付加税ということが、一時この法案が構想されまして、立ち消えになったようでございますけれども、一・七五%かその程度の付加税では金額的に問題であるというよりも、やみくもにただ税として負担することによって、ある意味で税制上の傾斜をつけることによって誘導する。ある意味で、過密地帯に工場を置くことがその点だけ不利益になるということで、けっこうでございますが、やはり私の申しておりますように、どういう原因によってその税が課せられるかということをもっと明確にしていただきたい。それならばある意味で、精神的にも道徳的にも一そう過密現象を防ぐという効果が働きますし、公害を含むわけですから、公害を出さないということが働くのではないかというふうにいま考えるわけです。
  41. 鴨田宗一

    鴨田委員長 松平忠久君。
  42. 松平忠久

    ○松平委員 二点お尋ねしたいのです。  第一点は、木村さんにひとつお願いします。私も長野県の副知事をやっておったのだから、地方の三業政策というものに若干経験があったわけなんです。そこで、一体どうして地方工業が興らなかったのか、あるいは地方にいままで工場があったのが全部都会のほうへ移ってしまった、こういう現象なんです。鐘紡、呉羽紡あるいは昭和電工という大きな会社工場が、私のいるころは方々にありました。そこで、どうしてあなた方はこんな山の中へ大きな工場を建てたのだと聞いてみたところが、その当時は電力が非常に安かったから建てたのだ。電力についてその後統一料金というものができてしまって、そしてその当時水力発電でありましたけれども、発電県において買う電力料金と東京や名古屋で買う電力料金と同じなんだ。これじゃもうやっていけないから自分たちはそちらへ移るといって移った大工場があるわけなんです。そういうぐあいに、今日の経済環境というか、それはほとんどが都会中心の法律制度というものができ上がっているわけです。電力だけではなくて、金融制度にいたしましても同様であって、本店まで行かなければ大きな金を借りられない、こういう実情なんです。それからもう一つは、都道府県知事あるいは市町村長に工業に関する権限がほとんど与えられておりません。あなた方知事が工業政策を立案してやってみたところで、金融に対するあなた方の命令、監督というのは信用組合と保証協会しかない。あとは全部大蔵大臣が握っておる。これじゃ絵にかいたもちなんですよ。したがって、私は今度のこの法案に関しましても、いわゆる通産行政、工業に関する行政というものがあまりに直接行政が多過ぎるのです。そうして農業に比べたらまるっきり間接行政というものがない。ここに非常に問題点があるわけです。したがって、この法律制定したところで、県知事にある程度の監督権、指導権というものがなければ、やはりこれはうまくいかぬわけですよ。したがって、現在の直接行政があまりに多いということに関して、ひとつ何らかの方法をもって間接行政を多くするようなことを考えていかなくちゃならぬし、同時に、法律制定の場合に、ある権限は知事に移管するのだ、こういう内容のものでなければならぬ、私はつくづくそう考えておる。ことに中小企業のようなものは地方にえらい分散しているのです。分散しておりますから、したがって地方の責任のある機関というものがそれだけの権限というものを持っていなければうまくいかない、私はこういうふうに常々考えておるわけなんですが、この点について先ほど、通産省とあるいは政府と都道府県というものが緊密な連絡をしてやらなければならないという御答弁があったわけなんです。そうするためには、あなたはどういうふうに考えるか。法律をそういうふうに改正したほうがいいというのか、ないしは附帯決議ぐらいでいいということなのか。その点に関する御意見があったら、ひとつお伺いいたしたい。
  43. 木村守江

    木村参考人 ただいまのお尋ねでございますが、先ほどのお尋ねと関連がございます。御指摘がございましたように、先生地域と私の地域とはやや似ておりまして、私のほうでも発電県でありまする関係上、昭和電工とか日曹とか三菱製鋼とかそういうようないわゆる電力を非常に使う工場が会津の山の中にたくさんできました。ところが最近電力料の一定化によりまして、非常に交通の便が悪い、採算がとれないというので、漸次閉鎖するような状態になってまいりました。このことは、先ほども申し上げましたように、なぜ一体その工場企業立地するのかということを考えますれば、やはり何といっても交通網、それから通信網あるいは教育機関あるいは生活環境整備、こういうものが整っておりますれば、私はいまこういうような工業配置法案というものをつくらなくてもよかったのじゃないかと思うのです。ところがいまこういうものをつくらなければならないというようなことは、これはほんとうに非常に立ちおくれておりまするけれども、しかしこういうようなものをこれからまだつくっていってやらなければならないというのも実態でございます。ところがいままであるいは新産建設計画とか、それから低開発地域の時限立法いろいろありますが、いずれもたくさんの法律ができましたが、それには財政的な裏づけが乏しいためにその目的を達成できなかったのが実態でございます。そういう観点から考えまして、今回のこの法案の内蔵するところは地方財政貧困なる誘導地域、これに対しましていろいろな財政的な裏づけ等を考えまして、そうして移転計画の認定につきましても、移転計画をつくりまして、これを通産大臣に提出してこれが許可を受けるというようなことから考えますれば、名前は県知事の権限というものはございませんが、内容におきましては私は実権は握ることができるのじゃないかというように考えております。しかし先生方地方の知事の権限を非常に強化すべきであるというような御意見につきましては、これはでき得ますればそういうふうになったほうがいいだろうと思うのですが、この法案がいまここで成立するかしないかというようなときにあたりましては、その名目の問題ではなく実質的なものをとらえまして、そして成立をさせていったほうがプラスになるのじゃないか。そうしてまたその後にいろいろな問題がございましたら、皆さま方の御協力を得まして法律の一部改正等によりましてこれを是正するということも考えておりますが、いまのところはできるだけ早く成立を見ることのほうが実質的にプラスであるというような考え方から、先ほど来の陳述を申し上げておりますような次第でございますので御了承を願います。
  44. 松平忠久

    ○松平委員 それ以上は申し上げませんが、笹生参考人にちょっと伺っておきたいと思うのですが、これに似たような法律制定の考えというものはいまから十何年も前にありまして、そうしてわれわれが主としてイギリスの法律体系というものから工場の再配置をしなければならない、こういう提案をいたしたことがございます。ところがそのときに問題になりましたのは、イギリスのような工場を新しく設置するという場合には許可制度にして、おまえどこへ行け、おまえはここへ行け、こういうふうにすることが憲法違反であるという考え方が、政府のほうの法制局にはあったのであります。ところが衆議院のほうの法制局は、それは憲法違反ではない、こういうことでありまして、私どもは衆議院の法制局の考え方に当時立脚しておったのであります。  そこでお伺いしたいのは、戦後とこの国も——第二次世界大戦後というものは、ヨーロッパにおいては荒廃をいたしまして、そうしてちょうどいい時期だから過密過疎というものをなくしていって全般的に産業というものが発展するようにしたいという考え方で、そういう方向に踏み切ったように思うのであります。日本は遺憾ながらそういうことをいたしませんでした。そこでお伺いしたいのは、英、仏、独というような当時ヨーロッパで第二次世界大戦で相当被害を受けた国々のその後におけるいわゆる工業政策、これは先ほどから出ておりました立地政策でありますが、それはどういうふうになっておるのか、その場合にその法制的たてまえというものはどういうふうになっているのか、私がいま申しましたように、イギリスはこれは基本法のような関係があって、そして政府自体がこの立地の調査をして、そこに行くのだといって行くことを条件にして許可をする、こういうことになっていると聞いておるわけです。そのほかの国については知りませんが、そういう法律制度というものはどういうふうになっておるか、もし御存じでしたらひとつここで御答弁をしていただきたいと思います。
  45. 笹生仁

    笹生参考人 工業配置についてその許可制をとるかいなかというふうな問題に関連して、先進諸国の法制上の問題はどうであろうかということのようでございますけれども、私はエンジニアでございますので、法制上の細部については承知をしておりませんので、御説明をいたしますと、いわば耳学問でかえって誤ったことになるといけませんので、それについては特に触れないでおきたいと思います。  ただ、問題の発端でございます許可制がどうかという問題については、工業の実態というふうな面から見ますと、やはりかなり検討すべき問題があるのではないか。というのは、御承知のように工業というのは技術によって日進月歩しております。したがいまして、規制をする、許可をするというのが、きわめてありきたりの業種であるとか規模であるとかいうふうなことからだけしか許可できない。その後の変化というものをどうやってチェックをしていったらいいかという問題が実はございます。そういった点から見ますと、私自身は許可制というふうな法規制でするよりは、その後の行政指導といった面で接していったほうがこれはむしろ合理的ではないかというふうに考えております。
  46. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に樋上新一君。
  47. 樋上新一

    ○樋上委員 大崎参考人にお伺いするのですが、最近の傾向として、地域住民の意識の高まりによりまして住民パワーなどが公害企業などの誘致に対してかなりの抵抗がある。また電力等のエネルギー産業及びその基幹資源産業の新規立地が困難になりつつありますが、これらの基幹産業の発展は、経済基盤の基礎があることを考えるとき、立地拠点の確保にあたって、国、地方公共団体などに非常に困難な問題があると私は思うのですが、この点はどうお考えになりますか。
  48. 大崎正治

    大崎参考人 お答えします。  いま、たとえば新全総で計画しておりますような電力エネルギーの需要を満たす電力生産、それはある意味で石油化学の需要を意味するわけです。これが一番初めに藤井参考人がおっしゃいましたように、やはり日本のこの狭い国土で環境のリミットにぶつかっておりまして、むしろ新全総の計画は、環境のリミットを上回る、そういう環境破壊というものをもたらすのではないか。そういう意味で、人が死んでも電力を確保するのがよいということなら、私はいまさら申し上げることはございません。結局ここで、成長というものにどこかで歯どめをかけないと生きていけないのだというところに来てしまった、それほど日本の成長というのは激しいものである。そういう意味で、過去、人間の何十世紀という世代の中で、こういうふうに環境を維持するために生産力の発展をある程度管理して、コントロールして、この辺でおいておこうというような新しい発想というものが必要なのではないか。現にいま工業配置法案のその背景にあります前提といいますのはやはり環境問題でございますから、私はそれを徹底していただいて、ここではっきりと見通しを持って成長にあきらめをつけていただく、こういうことがいま日本で必要なのではないか、こういうふうに思うわけです。
  49. 樋上新一

    ○樋上委員 時間の関係上、産炭地の問題につきましては木村参考人にお伺いいたしますが、産炭地振興事業団というのがございます、この過去の実績と今後の課題は何かということについてお伺いしたいのです。
  50. 木村守江

    木村参考人 産炭地振興事業団の今日までの使命並びに今後の行き方というような非常にむずかしい話でございますが、産炭地振興事業団法につきましては、私が国会時代に率先して皆さま方とともにこの法律をつくった一人でございます。私は産炭地に生まれました関係上、廃山になりました産炭地のあとを見まして、こういう悲惨な状態を放置すべきではないというような考え方から、ちょうど通産省関係しておりましたのでこの法律をつくることに努力をしてまいりまして、この法律が今日までわれわれが企図したとおりに動いておるというようには考えておりませんが、しかし産炭地振興につきましてはある程度の効果をあらわしておるというように考えております。  また産炭地のその後の状態でございますが、これは御承知のようにエネルギー革命によりまして私の県の炭鉱等はほとんど、常磐炭鉱の一部を残しまして全部廃山になりました。この状態を考えまして、この産炭地事業につきましては事業団が今日までより以上な力を尽くしていかなければならないというような考え方を持っております。そういう観点から今回この工業配置法案ができましてこれと一緒になったような形態になりますが、あくまでも産炭地振興事業団の本来の使命を忘れることのないように、特に工業配置法というようなものと組み合わせてこの効果を一そうあげていくようにしてもらいたい、そうすることが一番大事なことだというふうに考えております。
  51. 樋上新一

    ○樋上委員 誘導地域指定にあたりましては私は産炭地域を最優先にすべきではないか、こういうように考えておる者の一人でございますし、また第三条一項に、工場立地及び工業用水審議会意見を聞かねばならない、こう出ていますね。そこで私は、産炭地振興審議会意見も聞かなくてはならない、これを入れるべきではないか、こう思うのですが、この点いかがでございましょうか。
  52. 木村守江

    木村参考人 ただいま申し上げましたように産炭地振興法の趣旨を生かしてまいりますために、これは最善の方法をとっていただきたいと考えております。
  53. 樋上新一

    ○樋上委員 ですから、申しました第三条一項に、この産炭地振興審議会意見を聞かねばならないということを一行それに入れておかねばならないと私は思うのですが、この点に対する御意見を伺いたいのです。
  54. 木村守江

    木村参考人 ただいまのお話でございまするが、この法案の、まああまり詳しくわかりませんが、この法律では工業配置・産炭地域振興公団というものができてまいりまして、産炭地振興審議会の話も聞くことになっておるのじゃないでしょうかね、私はかように考えておりますが、いかがでございましょうか。
  55. 鴨田宗一

    鴨田委員長 参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見を述べていただきましてまことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  午後三時三十分再開することにし、暫時休憩いたします。     午後一時十一分休憩      ————◇—————     午後三時四十一分開議
  56. 鴨田宗一

    鴨田委員長 休憩前に引き続き連合審査会を開会いたします。  政府に対する質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。細谷治嘉君。
  57. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は、工業配置促進法産炭地域振興事業団法の一部改正について、産炭地域振興というサイドから若干の質問をしたいと思います。どうも時間の制限がつけられておりますので、私も簡潔にお聞きいたしますから、大臣ひとつ簡潔に明瞭にずばりとお答えをいただきたい、こう思います。  まず最初に、この法律案の位置づけについて伺いたいのでありますが、昭和二十五年に国土総合開発法が制定されましてから、その後毎年のように今日まで枚挙にいとまのないほど、数え切れないほど、いわゆる開発立法がなされたわけです。その開発立法というのは、いずれも地域格差の是正とかあるいは所得格差の是正とか、あるいはひずみの——ひずみといいますと、過疎過密あるいは都市農村、そういうひずみの是正、こういうことを目的につくられたのでありますけれども、その効果というのは、端的に申し上げますとすべて期待するものと逆の結果を生んでおった、こういうふうに申し上げてよろしいかと思うのであります。そういう中で、今日都市問題、過疎過密問題、あるいは公害問題等やかましく議論されておるときに、この工業配置法が、いわゆる通産大臣の、言ってみると目玉法案、こういうかっこうで提出されておると思うのでありますけれども、この法案についてどれだけの自信と期待を大臣お持ちかどうか、まずお尋ねしたいと思います。
  58. 田中榮一

    田中国務大臣 二十五年に国土総合開発法ができましてから、御指摘のとおり、新産業都市建設法、その他山村振興法や離島振興法、地域振興法等々、いろいろなものができたわけでございますが、効果を十分にあげておらないというお話もございました。これは、そういう立法はできましたけれども都市に集中をするというメリットのほうが多かったために、なかなかあのような法律制度では法律目的を十分達成できなかったと思います。しかし、明治百年を迎えてから、御承知のとおり、過密過疎の問題はたいへん大きな問題になってまいりました。それだけではなく、大都会に工場が集中するために、地価の値上がり、複合公害の問題、住宅不足、物価の値上がり等々、いろいろな問題が出てまいりまして、最後にとどめを刺したのは公害問題でございます。ここで新しい公害投資というものを行なうわけでございますが、いまの状態において都市集中のままで大きな投資を行なうということもなかなかむずかしいということと、抜本的な公害除去の対策をとるにいたしましても、やはり新しい立地を求めなければならないという必然性というものが非常に強く急速に出てまいったわけでございます。今度の中小企業白書を見ましても、大都市内の中小企業の二六%は直ちに移転をしたいといい、条件さえ整えば移転をしたいという企業を合わせますと五〇%以上にものぼっておる、こういうことから考えまして、これからも成長がとまるわけではありませんので、七%、八%、一〇%というような数字でもって十年、十五年の成長を続けるとすると、これ以上無計画、無制限な大都市における工業立地というものは許されないという状態が前提になっております。そういう意味で水や土地や質のいい労働力を求めて六十年には二次産業比率の平準化、必ずしもこの平準化が完全に実行されるとは思いませんが、方向としてはどうしても推進しなければならない。そのような目標に向かって努力を続けるために最小限必要な法律にはなり得る。これからだんだんとこの条文を整備をしてまいりまして、まだまだこのような状態ではいけないと思います。最終的にはロンドンのニュータウン法に近い法制にまで整備をすれば、そのことによってこの法律の目的とする工業の分散ということは十分可能である、こう考えております。
  59. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いまのお答えで、この工業の再配置の問題については未完成のものだ、こういう意味のおことばであります。  そこで私のお尋ねしたい点は、これは四十二年のことでございますからおそらく通産大臣が自民党の幹事長をなさっておる時代のことかと思うのであります。新聞等でもかなり書き立てられました工業立地適正化法案というものの要綱が発表されました。これはおそらく工業立地適正化法というものもいま論議されております工業配置促進法案とほぼ同じねらいを持っておるものだと思うのでありますが、四十二年の十二月にこういう法案ができてどうして提案されなかったのか。今回大体同じような目的を持ったこういう法律が出てきた。四年半か五年後に出てきたわけであります。この辺はどういう事情にあったのかお答えいただきたい。
  60. 田中榮一

    田中国務大臣 今度の法律案も考えようによっては工場配置というものを六十年展望に立った工場立地の適正化法と呼んでも間違いのないものだと思います。いま御指摘がありましたように、四十二年に通産省工業立地適正化法をつくろうとしながらできなかった。これは時が違ったということでございます。一つには時が違った。いまのように、過密の弊害、このままにいったならば一体どうなるのだろうかというような状態、それから工場立地適正化をはからなければならない、誘導政策、禁止政策というものをあわせて行なわなければならないのだというような考え方について、住民また産業人、経済人の考え方が、いまと比べものにならないほどであったということが一つあります。もう一つは、今度のものは、ちょうど要求しておる、何とかしなければならないという国民の考えに対して答えを与えるように、助成政策を行なうようになっております。ところが、四十二年に通産省が考えましたときには、工場の適地でないようなところは許可しないような、制限をしようという立場からつくったものでございます。これは言うなれば官庁でつくるとやはり制限をしようという感じでいきますし、いまはだんだんと、議員が考える頭というものは、これは道を開いておけばずっと流れてくるという誘導政策を主体にするということの違いがあります。もう一つ、禁止をしよう、調整、禁止、抑制をしようという考え方に立つときには、ちょうど首都圏の中において住宅地域内において工場をつくってはならないとか、そういう意味で首都圏整備法の中で工場の新増設の禁止を行なうとか、それから都市計画法の中において工場地域住宅地域や住居専用地区や、いろんな地域を設けて、できないようにするとか、そういう他の法律との競合問題があったようでございます。いろんな理由はありますが、結論的に言うと、時が熟さなかったということだと思うのです。私も昭和四十二年、ちょうど時期を同じくして、自民党の都市政策調査会長として同じことを考えたわけですが、そのときは大綱を発表したというにすぎない。各党でもってみんな同じような方向で検討しまして、これはマスコミでもテレビでも取り上げ、相当な世論となったわけでございますが、その当時、政府提案として立法をするに至らなかったというのは、やはり機が熟さなかったということだと思います。しかし、いまになりますと、公害問題というものがこれほど起こった中には、複合公害という問題に対しての考えが一つありますし、もう一つ、いまでさえこんなになっているところに、これ以上に一体経済が膨張すると、その工場は都会を基盤にしてつくるのか。その場合は交通も住宅地価公害もどうしようもなくなる。こういう切実な数字が目の前に出てきたという場合には、これはどうしても工場の再配置を考えなければいかぬ。国全体から見れば工場立地の適正化を考えなければいかぬ、こういうことになりますが、少し時が早かった、こう思います。
  61. 細谷治嘉

    ○細谷委員 通産大臣、当時幹事長、そしておそらく先見の明といいますか、これからの問題というのは都市問題だ、こういうことを喝破されて、都市政策に取り組んだ通産大臣としては、どうも機が熟しなかったということは、これはどうも私は聞きおくにすぎないと思うので、どうももっとほかに事情があったかと思うのです。いまのことばはどうもほんとうに私が納得できる理由ではない、こう申し上げたい。  そこで、しかしこの工業立地適正化法の骨組みというものは、やや権力的といいますか、たとえば許可制がありますから、今度の立法と比べると権力的だ、こういう、その辺が難点であったと私も仄聞をいたしておるわけですけれども、ところが私が工業立地適正化法案と現在審議中の工業配置促進法案と見てみますと、今度の法案は誘導政策なんだ、だから権力的なものではないのだといいますけれども、四十二年のこの要綱を比較してみますと、どうもむしろ今回のほうが権力的ではないか。なるほど許可とか何とか使っておりませんけれども、特徴点が二つあるのです。一つ工業立地適正化法案では、すべての計画立案、調査等をやるにあたって、政令の制定等も含めまして、関係都道府県知事の意見を聞くということがあらゆるところに出てまいっております。そして許可権というものはどこにあるかといいますと県知事にあったわけですね。ところが工業配置促進法案という今度の法案を見ますと、県知事ということばは一ぺんも出てこないのです。地方公共団体の長ということばも一ぺんも出てまいりません。最後のほうに税とか何とかについてこの軽減措置をやった場合あるいは誘導されていった工場道路とかいろいろな基盤等について地方公共団体の協力というものを要請されておるところに地方公共団体ということばが出てくるにすぎません。こういう点では許可とか何とか権力的なことばはありませんけれども、今度の法律は主務大臣というものが一切がっさいやってしまうわけです。けさも実は参考人の御意見を聞きました。福島県知事木村さんは、県知事とか地方公共団体の長とか何とかいうことは書いてありませんけれども、そんなこといっていますと、この法律成立いたしませんから、いずれにしても地方のほうは協力するのだから通してください、これが木村参考人のことばでございました。これは権力的でなく誘導的にやるのだといいますけれども、非常に中央集権的性格を持っておるのではないか、これが一つであります。  もう一つの特徴は、いま通産大臣が言いましたように産業公害というのは今度の工業配置法にはあまり出ておらないのであります。第一条の目的に環境保全、こういったようなことばが出ておりますけれども、四十二年の要綱によりますと、かなりきびしく公害問題あるいは公害基本法に基づく公害防止計画というものを踏まえていかなければならぬという厳格な規定がございます。こういう点で誘導的だという形で権力的でないように見えますけれども、きわめて中央集権的な法律の性格を持つのではないか、こういうふうに私は考えざるを得ないのであります。  もう一つ例を申し上げたいのでありますけれども、昨年の国会で成立をいたしました農村地域工業導入促進法、この法律を見ますと、基本方針は主務大臣がきめる。基本計画は都道府県知事がきめる。そしてその実施計画は都道府県または市町村がきめて主務大臣に対してそれを送付する。そして、こういう基本計画なり実施計画をきめる場合に都道府県や市町村は、この法律の第十八条で、条例で審議会を置いて、その審議会意見を聞くことができる。こういうかっこうになっております。こういう点からいって、私は、この法律というのは、地方を無視した、表面上はきわめてやわらかい誘導政策をうたっておりますけれども、きわめて中央集権的な法律ではないか、こういうふうに言わざるを得ないのでありますけれども、いかがですか。
  62. 田中榮一

    田中国務大臣 工場全国的な再配置を考えておるのでございまして、これを実行するために必要な法制であり、組織をつくろう、こういうのであって、権力的にどうしようという考えはごうもないということをひとつ御理解いただきたいと思います。これは個別の地方問題として地域開発を行なうというような場合ではなく、全国的視野に立って、水、土、地、労働力地方特性、こういうものも十分勘案しながら、六十年展望の二次産業の理想図というものを描くための推進政策だ、こう考えておるわけでございますが、そういう意味で、国が責任をもって、俗に言う公営住宅法のような状態で、こういう法制になっておりますが、審議会委員等には、地方公共団体の代表を入れるとか、もしあなたの指摘をされるようなことが、事実起こるというようなことは考えておりませんが、しかしそういうことの起こるおそれがあるのでもう少し考えたほうがいいだろうということであれば、将来的に、国全体の立場から均衡ある地方の発展ということを推進するわけですが、地方公共団体地方住民の意思が無視されるなどということであってはならないし、そんなことは全く考えておらない、これは地方公共団体と住民が一体にならなければできない仕事であります。そういう意味で、法制を整備していく過程において、付加するものがあれば、いろいろなことを考えて一向差しつかえない。これは通産省だけでもって一方的にものをやろう、権力的にものをこうしていこう、そういう考えはごうもないということをひとつよく御理解いただきたい、こう思います。
  63. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そこで、ごうもない、こういうことでありますので、私は、法律案の条文に従って質問をいたしたいと思います。  第三条で工業配置計画、こういうことがうたわれておるわけでありますが、まず質問の順序として、第三条三項について質問をいたしたいと思います。この工業配置計画というのは、全国総合開発計画、それから三つの整備計画、それから北海道総合開発計画、まだできておりませんけれども沖繩振興開発計画、それから農村地域工業導入基本方針その他の法律の規定による国の計画との調和が保たれるということでありますけれども、この法律案というもの、その一端をになうべき事業団法の改正によりでき上がる工業配置・産炭地域振興公団というものが、産炭地域振興事業団の発展的な解消という形を帯びておる以上、この第三項の中に産炭地域振興計画というものがないというのはおかしいのではないか、こう思うのであります。と申しますのは、工業配置計画というのは全国総合開発計画に基づけばよろしいわけです、端的に申し上げれば。北海道総合開発計画も、これからできます沖繩振興開発計画も、全国総合開発計画の中に織り込まれておるわけですから、それとさえ調和を保っておればよろしいわけでありますけれども、個別にあげてまいりました。そして昨年できました農村地域工業導入基本方針、こういうものだけ書かれてあるわけですね。そして産炭地域振興計画というのは全然ないわけですよ。私は、この第三条三項は、全国総合開発計画その他の法律の規定による地域振興または整備に関する国の計画と調和を保つということでうたわれてあるなら文句を言いません。具体的に個別法をあげておるわけですね。たとえば昨年できました農村地域工業導入促進法におきましては、国土総合開発計画、首都圏、近畿圏、中部圏、北海道、新産都市工業整備、山村振興、農業振興過疎地域振興その他の法律の規定と、こういうふうに列挙しておるわけですね。そういうことからいってみますと、産炭地域振興計画というのは、農村地域工業導入基本方針に基づく計画と同列なんですよ。生まれは、大臣御承知のように早いわけです。ところが、それを書かないで、「その他法律の規定」といって「その他」に入れたということは、この法律をになうべき公団との連関からいって、私はこれは問題がある。これはどうしても産炭地域振興計画というのは入れていただくべきである、それが筋だ、また入れていただかなければ了承できない、これが常識だろうと思うのであります。いかがですか。
  64. 田中榮一

    田中国務大臣 そんな四角ばったことで入れなかったのじゃないのです。これは修正して入れていただいても一向差しつかえないのです。これはほかの大臣が所管しておるものは、これは列挙しなければならないということでございますが、産炭地域振興計画もこの工場配置計画の基本計画も、これは、通商産業大臣が定めるのでございます。そうしていうなれば、この法律も制度も、見てみますと、産炭地に付加してこの工場配置までいくと、いままで芽を出せなかった、その実効のあがらなかった産炭地域振興が可及的すみやかに実効があがるようになる、これはだれが見てもそうなるのです。そういうことで、これも公団も一緒にしよう。また、この法律が、産炭地振興のためには非常でいいし、プラスになる。それで、同一の大臣が主管大臣であるということでこれは書かなかっただけなんです。これはもう当然調整も行なわれるし、無視されるはずはありません。もともと全く不可分的なものであるというような立場で明記しなかったにすぎません。しかし、ほかの省の大臣の問題、ほかの主管者が違う法律は、これはやはり列挙すべきだろうということで列挙したにすぎないのです。ですから、通産大臣といえども法律が違うんだからやはり並べて書いたほうがいいといえば、それは書いても悪いことは何もありません。そういうすなおな意味でひとつ読んでいただきたい。
  65. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私もきわめてすなおにお聞きしているのですが、いまの大臣のおことばを聞きますと、おそらく大臣の最初の考えというのは、工業配置計画は、全国総合開発計画その他の規定によるといううたい方をしたかったんだろうと思うのですよ。それが私は一番姿としていいと思うのですよ。ここまで列記してきますと、農村地域工業導入促進法というのは、あなたも主管大臣ですよ。農林大臣と共管でありますけれども、主管大臣であります。しかし、おれ一人のものだけは入れないで共管のものを入れたということになりますと、なわ張り根性をここに持ち込んだということです。これはよろしくないです、反対に解釈しますと。でありますから、これはこの法律のていさいばかりじゃなくて、この法律がよって来たる経過からいっても、産炭地域振興計画というものは、農村地域工業導入基本方針よりも先に生まれているわけですから、沖繩振興開発計画との間にこれは入れておくべきで、あなたの主管だからおれがかってにやるんだからということでは法律は許されない。私物じゃないわけですから、ひとつぜひそうしていただきたいと思います。いかがですか。
  66. 田中榮一

    田中国務大臣 入れてじゃまになるものじゃありませんし、明確になることでございますから、これは私は列記することに異議はございません。
  67. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そこで第三条の一項についてお尋ねしたいのであります。「通商産業大臣は、関係行政機関の長に協議し、かつ、工場立地及び工業用水審議会意見をきいて、工業配置計画を定めなければならない。」こういうふうに書いてあります。私は三項で大臣がきわめてすなおに、おれの主管だけれども入れよう、こういうことになりましたから、私はあまりここでこだわった議論を申し上げたくはございませんけれども工場立地及ご工業用水審議会意見を聞くということになりますと、現在通産省設置法で二十八の機関がございます。工場立地及び工業用水審議会というのも、産炭地域振興に関する重要事項を調査審議する産炭地域振興審議会も同列のものであります。これは通産省設置法二十五条に書いてあるわけですね。しかも私はこの問題について、産炭地域振興審議会が、いわゆる二十五条に基づく審議会が、昨年の十一月二十四日に「今後の産炭地域振興対策の推進について」ということで次のような建議をいたしております。簡単に読んでみますと、「産炭地域への企業導入にあたっては、国の立地政策の効率的実施の観点から、過疎過密対策としての全国的な規模での工業の分散再配置対策との調整について充分に配慮し、工業誘導地域としてすぐれた条件を有している産炭地域への企業進出を促進すべきである。」そしてその次に「政府の当面の景気浮揚策としての公共事業の実施にあたっては、公共投資の効率的実施の観点から、産業基盤の先行的整備が必要であり、かつ、比較的土地取得の容易な産炭地域において積極的に実施すべきである。」こういう建議が出ております。この建議の精神をくんでまいりますと、工場立地及び工業用水審議会と同様に、私は産炭地域振興審議会意見を聞くということをこの間に入れるべきではないか。そうなってくると、全国総合開発のほうの審議会みたいなものも入れなければいかぬ、産業構造のほうも入れなければいかぬということになって、いろいろ問題があるとするならば、これをどう具体的に解決するかという具体的な問題があります。私はいままでの経過からいきますと、産炭地域振興審議会というのも入れて差しつかえない、こう思いますけれども、二つの審議会に聞くというのは問題がありますから、この辺をどう大臣として考えているのかが一つ。  もう一つ関係行政機関の長に協議するということでありますが、通産大臣は関係行政機関の長に協議すると同時に、やはり都道府県知事の意見を聞く、こういうことぐらいは、先ほど私は指摘した点から、公害問題もありますし、いろいろ重要な問題があるわけでございますから、やはり知事の意見を聞くぐらいはこの中に入れていかなければ、ほんとうの意味の誘導的な工業配置計画というのは生まれてこないんじゃないかと思うのでありますが、いかがですか。
  68. 田中榮一

    田中国務大臣 まず第一点は、産炭地域審議会意見を聞くということ。あなた自身もいま述べられておりますが、二つの意見を聞けば三つの意見も聞かなければならぬ、四つにも五つにもなる、これはそのとおりです。これは実際に低開発地域工業開発促進法とか山村振興法とか離島振興法とかいろいろなものに審議会がございますから、これは全部聞かなければいかぬ。これは制度上もそういうことはむずかしいのです。法制のたてまえからいっても非常に複雑になり、これは法制上もやっぱり一つ審議会ということが望ましい。これはもうそのとおりだと思います。しかし実際的に産炭地振興意見を聞くためにどうするか。産炭地振興に対する権威者とか関係者とか、そういう産炭地関係者委員に追加するということで足るわけでございます。これは審議会委員に有識者、その道の権威者、代表者を入れるということで十分調整はできると考えております。  それからもう一つは、地方の長の意見を聞かなければいかぬ。これも意見を聞いて悪いことは何もないのです。当然地方開発でございますから、関係機関の長の意見を聞くとともに、地方の代表者の意見を聞くということも法制上整備しても私は何も問題はないと思います。が、これもいまの産炭地審議会と同じように、都道府県知事、地方の代表というものを審議会委員に入れますから、そういうことで十分意見を反映する、これはもちろんそういうことでなければならない、こう思っております。将来的に私もいま御発言がございました地方の長、これは全部入れるということになるとどれだけ一体、各市町村長みな入れるということにもなるでしょうが、そうではなく、審議会委員に網羅をするということで十分反映できるのではないか、こういま思っております。  しかし将来この法律を運用していく過程においていろいろな具体的な問題が起こってくれば、それは考えてしかるべき問題である。現時点においては、審議会委員に入れることによって、あなたが指摘をされた問題に対しては解決が十分可能である、またそうするつもりである、こういうことでございます。
  69. 細谷治嘉

    ○細谷委員 現在産炭地域振興審議会委員というのは三十二名おるようであります。各ブロックごとに地域部会というのがありまして、そこにもそれぞれ委員の方がおるようでありまして、合計関係者は四十八名ぐらいおるようであります。工場立地及び工業用水審議会委員というのは全体として三十名のようであります。規模からいきますと産炭地域のほうが大きいわけですね、人数だけできまりませんけれども。この第三条の第三項で計画に入るわけでありますから、必然的にその積み重ねということになるわけですから、私もこれ以上この問題について議論はいたしませんけれども、少なくともこのねらいというものは産炭地域振興審議会で言ったように、農村工業導入、こういう問題、それから産炭地域、いままでやはり事業団を中心としてかなりの土地造成しておりますし、工場も誘致いたしました。今後またああいう中核企業というものを重点を置いてやるということになりますと、いろいろとやはり密接な関係というものを持ってくるわけでありますから、十分にそういうものが効果的に実効があがるように活用されるような体制を整える必要があると私は思っております。そういう点でひとつ十分な御配慮をいただきたいと思います。  そこで、これは大臣ということにはならぬと思うわけでありますけれども通産省の事務当局に工業配置関係指標、こういうことで、その中に昭和六十年における地域工業出荷額、こういうものが工業配置というものをやっていった場合と従来の立地性向を延長した場合に起こるであろう差異というものを指標としてあげております。最近建設省のほうでこの通産省の指標とは別途に地域工業出荷額、こういうものを一定のフレームをつくりまして作業されたのが新聞に出ております。これは残念なことに公式の結論じゃありませんが出ておりまして、それがどういう形で産業基盤整備なり生活基盤の整備なり等をやっていくか、それに要する経費というのがどれくらいかということが明瞭になってまいりますと質問が非常にしやすいのでありますけれども、まあ建設省のほうではできておらない。そしてこの通産大臣のものは一〇%の成長率でありますけれども建設省のものは八・四%という成長率を前提として作業しておるようであります。その辺の数字の差が出てきておりますから、一〇%が是か八・四%が是かいろいろと議論したいのでありますが、与えられた時間がありますからそういう点だけを申し上げて、私の質問いたしたいことは、通産大臣の工業配置関係指標としていろいろと書かれてありますけれども地域工業出荷額の中において産炭地域振興というのは全国に全部べたにあるわけではありませんから、たとえば北海道なり九州等では、この指標の連関においてどのくらいのウエートを北海道なり九州なり常磐等では持っておるのか、めどがついておったらひとつ教えていただきたいと思います。
  70. 田中芳秋

    田中(芳)政府委員 御指摘の工業配置目標でございますが、いまだ通産省の公式的な数字ではございませんで、本法案成立を見ましたときにこの法律に基づきます計画といたしまして、経済企画庁はじめ関係各省協議いたしましてこれを策定いたしたいと考えておるわけでございます。  御指摘の数字は暫定数字でございますが、昭和六十年までの工業生産の伸びを年平均一〇%と仮定して計算をいたしたものでございます。これによりますと、いま御指摘のたとえば北海道あるいは九州について申し上げますれば、六十年の工業出荷額について北海道が約十六兆、九州が三十一兆、こういう数字になるわけでございまして、四十四年からの年平均伸び率でこれを見ますと、北海道は一六・八%の伸び、九州が一五・九%の伸び、こういう形になろうかと思います。そして北海道及び九州産炭地域の伸びをこの伸び率でかりに計算をしてまいりますと北海道は一兆八千億円、九州は十一兆三千億円と、一応そういう数字になるわけでございます。もっとも昭和四十六年の十二月に策定されました産炭地域振興実施計画におきまして昭和五十七年の産炭地域工業出荷額、これを北海道は九千億円、九州は六兆四千億円と見込んでおるわけでございます。先ほど申し上げました数字、すなわち現在におきます産炭地のシェアが北海道なり九州そのままといたしまして、そしていまの工業配置の暫定数字の伸びでそのまままいりますとすれば、五十七年北海道一兆八千億円、これに対しまして現在の産炭地域振興計画は九千億円、約倍という形になるわけでございます。九州につきましてはいまのような仮定の計算でいたしますと十一兆三千億円、これに対しまして産炭地域振興計画では六兆四千億円とこれまた倍に近い形になるわけでございますが、以上申し上げました数字はあくまでシェアを固定して考えましたこともございまして、この点につきましては、先ほど来御指摘のように、当然今後の作業の段階で両者の調和に十分留意してつくってまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  71. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大臣、いまこれは言ったんですけれども、私の質問のつぼをお答えいただいてないんですけれども、大体そういうことでしょう。昨年の十二月二十八日に決定されました産炭地域振興計画に基づいて地域別とそれからこの通産大臣の指標とについて私が試算してみまして、これは五十七年までしかありませんし、こちらのほうは四十四年でありますから、一応私なりに一〇%の成長率ということで五十七年を六十年に修正いたしましてやった概算でありますけれども北海道は四十五年に工業配置目標の一兆五千百二十億円に対して産炭地域振興計画のウエートはおおよそ一六%であります。ところがこの指標に基づいた六十年に産炭地域振興の五十七年をエクストラポレートしてやって概算いたしますとおおよそ七・六%くらいになります。ずばり言いますと、北海道工業配置目標をやっていく間に産炭地域振興の基本計画は現在のウエートよりほぼ半分くらいになるということになります。九州のほうはどうかといいますと、工業配置目標の四十五年というのが大体四七、八%ぐらいであります。ところが六十年になりますと、同じようなことで概算してみますと二八%程度になります。言いますと、これもおおよそ半分くらいになります。現在のウエートより半分くらいのウエートになってくる、こういうことであります。そうなってまいりますと、これは一口に言って、工業配置計画というのがこの目標どおりに進んでいった場合に、北海道ブロックにおいても九州ブロックにおいても産炭地の地位はいまより相対的にまだ陥没する、そういう結論になるわけであります。ここに私はこの数字から読んだ限りにおいては産炭地域振興計画の位置づけというのは、少なくとも全国、しかも工業化をやっていく産炭地審議会の建議という精神からいって、現在の位置よりも半分くらいの位置に下がるということは、どうも全体計画の中の調和、格差の是正、こういう点から問題があると思うのでありますが、私のこの概算からいく議論というのは誤りかどうか、いかがでしょうか。
  72. 田中榮一

    田中国務大臣 ここに書いてある数字そのものが工業配置目標を六十年に置いた暫定試算でございます。いまいろいろな青写真をかこうと思っておるのですが、とにかく工業の再配置を行なわなければならない。また六十年を展望して二次産業比率の平準化という姿を描き出さなければならぬという必要性はわかりますけれども、まだこまかい地方別、地域別、産業別の計算は全くできていないのです。私がいままで計算をしたいろいろな指数を持っております。もう一つは、通産省が各局でまとめた指数というものを一応試算して計上しただけなんです。ですから、この法律ができて審議会でほんとうに計画をすればこの数字よりも相当変わってくるものが出ます。また、そこで変わってこなければだめなんです。またこの予測の調整を必要といたしますから、そこで産炭地域にウエートを置く。これは今度の誘導地域に第一次産炭地指定する、全部指定するということになると思いますが、そうなると、今度産炭地のウエートは全く変わってきますから、これは積み重ねの数字そのものが違ってくるわけです。ですから、この数字を基礎として、あなたがお手持ちの資料で計算してみるといろいろな結果が出ると思いますが、もし、そういう結果が出るとすれば、産炭地のウエートをいまよりうんと落とすようなことをしないためにこの法律をつくるのでございますから、そういうことはいたしません、そういうことにならないようにいたします、こういうことでひとつ御理解いただきたい。
  73. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いろいろな結果だというわけで、大臣、私の試算したものは、当たらずといえども遠からずであって、大体この指標でいったとすると、先ほど申し上げた建設省の八・四と通産省の一〇という目標で大きく違ってくるのは、関東、東海、近畿ですよ。あとのところはコンマ以下のところの違いしか出ないのです。でありますから、いろいろな前提でシミュレーションをやったにしても、私の言った方向、現在のウエートよりおおむね半分ぐらいしか、あるいは六割ぐらいの相対的な地位にしかならぬという考えは——この振興計画と大臣のこの指標に基づいて見る限りは、私は計算は一つしかないと思う。そういうことであります。  そこで農林省にも詳しく聞きたいのでありますけれども、四月十一日に農村工業導入促進法の計画案というものが新聞等で発表されました。時間がありませんからその内容だけを申し上げますと、昨年の十一月二十五日に農林大臣代理である山中国務大臣と通産大臣と労働大臣できめられた基本方針に基づいて、各ブロック、県が策定した結果は、残念ながら政府が決定したこの基本方針よりも工業出荷額において二〇%へっこんでおるのですね。雇用労働力において二〇%へっこんでおるのです。その雇用労働力のうちで農村労働力をどれくらい吸収するかというのを六十万と予定しているのに四十七万しか計画には出てきていないのです。工場用地のほうだけはちょっと計画より上回っております。ことほどさように、農村工業導入促進法もあるいは産炭地域振興というものも今日まで長い間の経験を踏まえてみてもいろいろ困難がありますから、よほどのことをやらなければ、いま私が試算申し上げたように、現在の地位よりも相対的な地位は半分以下になってしまう、あるいは六割くらいに九州はなってしまう、こういう結果が出るのは当然でありまして、そこに私は配慮を要すると思うのです。  そこで大臣にお尋ねしたいのでありますけれども、いま産炭地域というものは全部誘導地域指定されることになるのではないかというおことばがございました。しかしけさほどの参考人のことばの中に、いや、産炭地域指定されておる地域は二条指定と六条指定ということで大別されますけれども、二条指定地域の中で落ちるとうわさされているのが現にあるのだ、総理大臣の足元の山口県は落ちるのだということばがありました。いま、石炭を掘っている、掘っていないにかかわらず、石炭のたいへんな後退によりましてその地域社会が破滅しているわけでありますから、この計画に沿うようにという、三条三項の点について大臣は、進んで法律を直してもいいということでありますから、産炭地域として二条に指定されておる地域は間違いなく誘導地域として指定されるべきものではないか。むろん二条地域の中には現在の指定都市ども入っているところもあります。それで若干問題がありますけれども、原則として私は産炭地振興の臨時措置法の二条指定地域は全部誘導地域として指定されるというお約束をこの席で大臣からいただきたい。いかがでしょうか。
  74. 田中榮一

    田中国務大臣 北九州市のような大きな都市があるということで、こういうところはいま誘導地域から除くというようなことで考えておるようでございます。私自身もまだこまかい状態承知いたしておりませんから、十分勉強しなければならぬと思います。この間、宇部の炭鉱地帯の周辺に実際に行って、終閉山が行なわれているために住民数がどんどん減っておるというような陳情を受けました。この問題は現実を調査をしようということでございます。この指定に対しては、この法律目的が達成されるような状態でなければならないし、またこの法律の適用を受けることによって工業比率が向上しなければならない地域であるならば、当然指定しなければならぬわけです。ただ、いま考えておる案については技術的、事務的に事務当局から一ぺん説明をさせまして、政治的に判断をする面があればその上で判断をいたしたいと思います。
  75. 田中芳秋

    田中(芳)政府委員 御指摘の点でございますが、問題はやや法律技術的になりますけれども、二つあろうかと思います。第一番目は二条の二項の一号におきまして誘導地域指定しているわけでございますが、その中で「政令で定める要件に該当する市町村区域を除く」、この点が第一点かと思います。私どもといたしましては、工業集積の程度が低く人口増加割合の低い道県という形で、北海道東北ブロック、北陸、山陰、四国、九州、沖繩、こういったものをあれしたいと思っておりますが、その中で先ほど大臣からお話がございましたような産炭地域では、二条地域ではございますけれども、北九州福岡、そういった大都市を政令で除く要件の中に入れるかどうかという問題が一つあるわけでございます。  第二点は、先生の御指摘になりました、山口県の瀬戸内付近の産炭地域地域であろうと思いますが、これは二条の二項の二号の連接市町村の問題であるかと存ずるわけでございます。この点につきましては、この条文で書いてございますように、工業集積の程度及び人口増加割合が一号に定めます程度に類する市町村という形でございますので、これを一号の市町村とどの程度の類似点を求めて政令で定めていくかということであろうかと思います。御指摘の産炭地域等につきましては、実情を十分勘案いたしまして、この二条の二項二号の精神を生かしてまいりたいというふうに考え、現在検討中でございます。
  76. 細谷治嘉

    ○細谷委員 もう時間がありませんから、端的に荘さんか青木さん、二条の中に指定市が含まれていることはわかっているわけだ。指定市というのは、過密とは言わぬけれども東京都とは比べものになりませんけれども人口百万都市ということです。それなら、たとえば北九州とか福岡市は二条指定されておるでしょう。あるいは札幌もされているかもしれませんが、まあ指定市は別として、その他の地域——六条地域なんていったら問題になりませんよ。大臣の構想というのは、六条地域なんてやったら構想がきわめてちっぽけなものになってしまうのですから、そんなものでは工業配置なんてできませんから、少なくとも二条地域、その中の指定地域を除いたら、これは全部指定されるべきものだと思うのですよ。それは、いま石炭のことでよくやっている、産炭地で苦しんできた荘さんか部長、ずばり答えてくださいよ。明瞭ですよ、これは。
  77. 青木慎三

    ○青木政府委員 ただいま田中参事官のほうから答えましたように、今後の問題でございますので、まだ十分企業局のほうと打ち合わせしてございませんが、極力先生の御趣旨に沿うように企業局のほうと相談してまいりたいと考えております。
  78. 細谷治嘉

    ○細谷委員 これは法律ができても魂が入るか入らぬかということで、大臣、いま私が言った趣旨は御了解いただけると思うのですよ。まだ法律審議中ですから先ばしったことは言えないにしても、これは産炭地の二条地域というのが、やはりいままでかなりの大きなウエートを持っていたところで、それが陥没しているわけですから、特別な過密都市というように考えられるところより、もっとこの地域での土地総合的な利用という意味において、公害等も含めて分散をさせるということでありますと、これはやはり原則として特別なものを除いて全部入るんだ、私が言ったような趣旨は御理解いただけると思うのです。ひとつ簡単にお答えいただきたい。
  79. 田中榮一

    田中国務大臣 過密を促進するような状態であれば別でございますが、過密を分散せしめることによって均衡ある発展をはかろうとするということでありますから、この法律の精神に適合する地域は進んで指定をし、含める、こういう精神でまいりたい、こう思います。
  80. 細谷治嘉

    ○細谷委員 時間ですから、あと一問で。  そこで大臣、いろいろ質問したいのですが、最後に一点だけ。今度の公団は総裁一人と副総裁二人なんです。この二人というのは、どうも産炭地のほうの流れをくんでいる昔のおもやが今度は工業配置と一緒になるので、副総裁は二人に分けるという構想だと思うのですけれども、いまの事業団というのは二百十五名前後の職員だろうと思うのです。それに、今度公団になりますから、どのくらいの人がふえるか知りませんけれども、私は副総裁を二人置くことを反対するということじゃありませんけれども、ものの考え方として、どうも産炭地のほうに気がねして二人。副総裁二人おるとけんかする可能性もあるわけですね。しかも、このくらいの規模で総裁と副総裁二人ということが必要かどうか、こういう感じがいたします。これは悪くとりますと、おそらく産炭地域振興事業団、おまえおもやを貸せ、おれのほうがおもやに入るから、おまえひさしのほうに入っておけ、こういうことで当面副総裁を二人置いたというように悪くとられないとも限らないと思うのです、この機構、規模からいって。むしろ、やはり農村工業導入法なりあるいは産炭地域振興計画というものが条件も整っているから、優先的にそれを活用していく、しかも、土地造成されており、わりあいに入手しやすい、安く入りやすい、こういうことでありまして、条件が整っておるのでありますから、私は、大臣が二人置くから心配ないなんということじゃなくて、竿頭一歩を進めてやはり条件のいい、審議会が答申しているような方向でおやりいただくということが必要であって、副総裁を二人置くことが目標じゃなくて、問題はやはり活用することだ、こういうことに尽きると思うのです。この点どうか。  もう一つは、今度は事業団から公団に行くわけで、職員の過半数というのはいま現に事業団の職員である人であろうと思うのであります。公団に新しく入ってくるという中において、労働条件なり仕事の面なりいろいろな面でトラブルが起こっては問題があるわけでありますから、そういう職員の待遇等も含めてきちんと整備して、一体となって大臣の目玉というものが逆の方向ではなくて、やはり期待する方向に行くような体制をとるべきではないか、こう思うのであります。  この二点について、大臣の率直な御見解、御所信を承って、その答弁が納得できるものでありますれば、私の質問を終わっておきたいと思います。
  81. 田中榮一

    田中国務大臣 産炭地振興事業団の職員は新公団に引き継がれるわけでございまして、これはもう各公団との振り合いもございますので、不利なような条件には絶対にしてはならないし、そんなことになるわけはありません。それから、工業配置・産炭地域振興公団は二百六十四名、五十四名増ということになっておりますが、いまおる職員二百十名というものが中心で発足をすることは事実でございます。  それから役員、総裁一名、副総裁二名、理事七名、監事二名。監事を一名ふやし、理事を三名ふやし、副総裁が新規に二名ということでございます。そういうことで、この二名あるいは命令二途に出でてというような感じもいたしますし、これは一人でいいじゃないか。これはある時期一人でいいかもしれませんが、いま私はやはり二人のほうがいいと思って、私がしたのです。相当私ががんばってやったのです。これは新しい公団として発足をするときに、産炭地だけに集中してしまって、新しい仕事が全然できないという場合も困るのです。また新しい仕事ばかり興味を持って産炭地が従になったら、これこそえらいことになります。そういう意味で、産炭地域振興事業団よりも大きな公団とすることによって、いまよりももっと実をあげようということでありますから、産炭地担当の副総裁というのは必ず一人要る。そしてもう一人は新しい方面、全国的な計画をこれから練り直したり、各地方知事等と連絡をとったり、産炭地とは別ないろいろな面から検討を進めなければならない面があります。新しい公団の任務がありますので、そういう意味で二人置いたのです。それで、それを統括するのは総裁である。総裁は現実的にはいま産炭地に金をつける以外にはないのです。産炭地を中心にして誘導地域指定をし、事業を進めていくということが主体になります。ですから、言うなれば二人の仕事というのはあるのです。そして、ある時期に産炭地の仕事が終われば一人になってもいいかもしれません。産炭地の仕事が完全に終わってしまった、そして産炭地以外の仕事だけということになれば別でありますが、いまは産炭地を専門にやるという人がどうしても必要であるということで、異例でございましたが、特に二人にしてもらったのです。そういう意味で、専門家を一人どうしても必要であるということと、それから全国的に勉強する人ということで二人にしたわけでございますから、二人にしたことによって権限上の問題を起こしたり、どうも集中的に産炭地振興ができないということではまた逆でございますから、そういう意味で理解をしていただきたい、こう思います。
  82. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次は桑名義治君。
  83. 桑名義治

    ○桑名委員 私は、一番最初に公団の分からお聞きをしていきたいと思います。  今回の産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案でございますが、この問題につきましては、非常に産炭地の問題が後退したのではないかというような意味の事柄がいろいろささやかれてもおりますし、またそのような危惧を抱くものでもございます。また、一部新聞の中にも、いわゆるひさしを貸しておもやを取られる心配があるというような論理を展開している新聞もございます。そういった立場から、今回の法改正産炭地域に対する国政上の位置づけが後退したのではないか、こういうような心配をするわけでございますが、この点について大臣の所見をまず伺っておきたいと思います。
  84. 田中榮一

    田中国務大臣 全くそうではありません。これはもう産炭地域振興事業団はずっとございましたが、なかなか実効をあげられないということでございます。それはどういうことかというと、産炭地の実態は、産炭地域振興事業団というものが地元の要請を受けて、そして地元が工場誘致をするという体制でございました。それではなかなかいいものが行かないということで、今度は高い立場、国の立場から、集中しておる工場を分散をせしめる、分散をせしめるだけではなく、これからなお拡大をする二次産業というものは、従来のように大都市に、拠点都市には集めない、新しい産業立地計画を進めて、そして均衡ある発展をはかろうということであります。そしてその過程においては、全国地域的に必要な、また適合する産業の種類もこれから検討してまいります、こういうことでありますから、産炭地に対してはこういう事業を持っていきたい、また移転の希望のある者に対しては全国にこういうものがございますといって紹介したり、情報提供の役目もできますし、いろいろなことが行なえるわけでありますので、いままで産炭地域振興事業団としては、規模が小さくて全国的なものとしてできなかったものが今度はできる、こういう考えでありますし、とにかくさしあたり百五十億という金は、いま産炭地域指定すればそこが一番早く仕事にかかれるわけでございます。そういう意味で、産炭地域振興事業団というものに活が入り、二つ合わせればもっと、とうとうたる流れになる、一本の水がちょろちょろ流れておったものを、今度は水を合わせることによって大きな流れにしよう、こういうことでございまして、産炭地域のウエートを軽くするものであるという議論は全然逆であるということをひとつ御理解いただきたいと思います。
  85. 桑名義治

    ○桑名委員 通産大臣の説明を聞いておりますと、実に大きく前進をしたような感じを受けるわけでございますが、またその反面に、新しい公団をつくるには現在の段階では非常に抵抗がある、そういった意味から今回はこの産炭地域振興事業団法の一部を改正するという形をとりながらこの公団をつくった、こういう考え方もありますし、あるいは石炭会計は一応四十九年度まで、それから今回の答申も一応五十年までの答申をお願いしているというような、そういった面からいろいろと考えをいたしてまいりますと、今回のこの法改正の措置というものが、産炭地域に対するいわゆる国政上の位置づけが後退をしたのではないかという一応の論理は私は立つと思うのです。それと同時に、参議院におきましてはもう石特は解消をした、こういうふうな事柄もございますし、あるいは、これはうわさの域を脱しないわけではございますが、いままで産炭地にはいろいろとばく大なお金をつぎ込んできた、ばく大なお金をつぎ込んでも、これはちょうど砂の中に水をつぎ込むみたいなもので、どんどん吸い込んでしまう、切りがない。国政上のベランスの上から見ましても、もうそろそろここらで産炭地の特別の処置というものは考えなければならない時期ではないか、そういう考え方も多少あるわけでございます。そういったいろいろな問題を合わせてみますと、なるほどこういうふうな同居のような公団をつくっておけば、時期が来た場合にその産炭地振興に対する部分を削除することは非常に抵抗が少ないであろう、これは非常にうがった考え方で申しわけございませんが、そういうような考え方を持っていらっしゃる方もずいぶんとおるわけでございますので、そういった危惧の中で私はこの問題を提起したわけでございます。大体大臣のお考えは前の答弁でわかったわけでございますが、そういった危惧があるということで再度大臣の御答弁を願いたいと思います。
  86. 田中榮一

    田中国務大臣 産炭地域振興事業団とは全然別にこうした再配置公団をつくっても一向差しつかえなかったのです。しかし、そういうことをするよりも、この再配置というものは、これはやむにやまれずやらなければならぬ仕事である、しかし産炭地域振興も必要不可欠のものである。同じ通産大臣の所管のものをつくろう、こういうのですから、これは一緒にすることによってメリットがあるかデメリットがあるか、こう考えるのはあたりまえであります。  これはメリットはあるのです。なぜか。今度三菱美唄という大きなものが閉山したわけです。北海道の美唄といえばだれでも炭鉱の町だという。こういう美唄が、八万人おった、それが六万人になり四万人になり、今度の閉山になってそれが二万人に減るかもしれぬというときに、さて何か産炭地域振興事業団で仕事ができるかというときに、いまの産炭地域振興事業団だけではなかなかあそこにまとまった工場は来ない。私は閉山とかあの人たちを全部よそへ出すなどということを考える前に、できるなら定着をさしたい。そればかりではなく、労働者だけじゃないのです、町全体が分散しなければならないようになる。そういう考えでいろいろやってみましたら、産炭地域振興事業団法以外に国が誘導政策を進めてもらうということであれば、われわれも犠牲に応ずるし、協力はいたします、こういうことで、美唄に対しては、いま三菱と交渉しております。一カ月続ければ一億ずつ損をするというのだから、二年間損をすれば二十五億損害が累積するわけであります、単純計算をすれば。長い歴史から見て、二十五億赤字が出たと思って三菱の工場を持ってきなさい、しかしこれは、やはり国も地方も誘導政策も行なわれなければ、私はそんな無理な——炭鉱というのは石炭を掘ることによって町づくられたところでございまして、必ずしもほかの産業の適地であるかどうかといったら、なかなかむずかしい問題があるのです。そういうときに、この工業配置法が通れば、美唄には工場をつくらなければいかぬでしょうなということが現に議論されているのですから、それだけメリットである、私はそう思うのです。だって、この法律によるいろいろな施策が付加されるのですから。——いや、これは美唄は一番いい例であるから申し上げているのでございまして、この法律によって、この制度によって付加されていくのでありますから、少なくとも産炭地振興には裨益し、貢献をする。しかもこれは国会でもこれだけ答弁をしておるのでございますし、これは国会で常にこの公団の、この法律の運用に対しては絶えず議論になるわけですから、後退するわけはないのです。あなた方がみんな黙ってしまって、もう産業地域振興というのは要らないんだということになればこれは別でございますが、そうじゃない、これだけ法律をつくるときに審議をしていただいて、これから予算をつけるときには、ちゃんと去年は予算のうち産炭地域に幾ら使われたか、そうすると前年の、この公団ができなかったときの実績と比べてみれば、これはもう申すまでもなくこの法律は、この制度というものは産炭地域振興に貢献をするものである、これは私はこういうことに評価されるという自信を持っております。
  87. 桑名義治

    ○桑名委員 いまいろいろな産炭地についてのいわゆるばら色のビジョンをお聞きしたわけでございますが、いずれにしましても先ほどから私が申し上げたような危惧が起こらないように、今後積極的な姿勢の中で運営に努力をしていただきたいと思います。  それから、先ほどから一応問題になっておりましたが、いわゆる工業配置促進法案の第三条でございますが、この中で「工業配置計画は、全国総合開発計画」云々とたくさんのいわゆる開発計画がのっかっております。その中で、いうならば産炭地域振興計画が含まれていない。これは当然そういった先ほどからの大臣の御答弁のようであるとするならば、これは挿入をすべきではなかったか。それはもちろん主管大臣でございますので、おれのさいはいでどうでもなるんだといわれればそれまでではございますけれども、やはり法律というものは明確にしておく必要があるわけでございまして、そういった明確になっているかなってないかというところに政府の一つの姿勢がうかがわれるわけでございます。そういった意味からも、この中に入れるべきではなかったか、こういうふうに考えるわけでございますが、その点についての大臣の所見を伺いたい。
  88. 田中榮一

    田中国務大臣 先ほども申し上げたわけでございますが、明確に申し上げますと、産炭地域振興計画法案の第三条三項の「法律の規定による地域振興又は整備に関する国の計画」、これに含まれるものだ、こういう認定に立っております。それからもう一つ工業配置計画は、当然産炭地域振興計画と調和を保たるべきものである。第二の認定でございます。第三は、産炭地域振興計画工業配置計画も、ともに通産大臣が単独に策定するものであるという第三の認定があるわけでございます。  そういう意味で、もう工業配置計画の策定にあたっては、産炭地域振興計画というものとは不可分であるという認定に立ってこれを特記しなかったということでございますが、特記してじゃまになるものじゃございません。そうして同じ通産大臣の所管であっても農村工業導入法というものが書いてあるじゃないか、これは通産大臣も農林大臣も共管じゃないか、こういうことでございますから、私はだからしいて私の説を固持するものじゃございません。これは法律に書いてあっても一向差しつかえないものである。これはいま申し上げた三つの認定の上に立って法文としては書かなかったというにすぎない、他意ないものである、こういうふうにひとつ御理解を賜わりたいと思います。
  89. 桑名義治

    ○桑名委員 それと第三条の三項の問題でございますが、ここに「国の計画との調和が保たれたものでなければならない」こういうふうにうたい上げてあるわけです。概括的にいいますと、このことばで一応わかるわけです。ところが、個々のいわゆる整備計画なりあるいは振興計画なりがあるわけでございますが、この調和の一致点というものは、どういうふうな形で調和さしていこうとなさっておるのか。これはたとえばこれのいわゆる話し合いの場所といいますか、あるいはどういう形でこの調和というものを見出していこうとなさっているのか、具体的に何かここにお考えがございますか。
  90. 田中芳秋

    田中(芳)政府委員 法律案の第三条第一項に明記してございますように、工業配置計画をつくります際は関係行政機関の長と協議するという形になっておるわけでございます。そこで第三項でいま御指摘の計画との調和がうたわれているわけでございますが、この両者を密接に結びつけますために、関係行政機関の長と協議という段階で計画相互間のすり合わせ、調和をはかりたい、このように考えておるわけであります。
  91. 桑名義治

    ○桑名委員 そうしますと、先ほどから一つの議論にもなっておりましたが、言うならば産炭地審議会意見はどういうところでしんしゃくされていくのか、いわゆるこの協議のときにそういう審議会のメンバーをこの協議の中に入れるとかいう方法をとることがベターではなかったか、こういうように考えるわけですが、その点についてはどうなんですか。
  92. 田中芳秋

    田中(芳)政府委員 産炭地域振興審議会通商産業大臣の諮問機関という形でございますので、関係行政機関の長とはその意味で違ったポジションにあるのではないかというふうに考えております。そこで法律の第三条第一項で「工場立地及び工業用水審議会意見をきいて」という形になっておるわけでございますが、この工場立地及び工業用水審議会意見は、産炭地域振興審議会委員あるいは産炭地域に深い学識経験を有する方々を追加いたしまして、その場を通じまして産炭地域の御意見を十分拝聴する、こういう形にいたしたいと思っておるわけでございます。
  93. 桑名義治

    ○桑名委員 その点は十二分に今後とも御配慮を願いたいと思います。  今回のこの法律をいろいろと検討さしていただきますと、この工業の再配置促進についてはいわゆる税の減免措置あるいはまた移転をする企業に対する財政措置、そういった事柄が一応中心になっているようでございますが、工業配置というものがそういう金銭的なものを導入することによって、はたして成功するかどうかという、この問題を非常に危惧するわけでございます。それはもちろん当然そういった減免措置やあるいは企業に対する財政措置が必要ではございますけれども、これのみではたして工業の再配置が促進できるであろうか、この点が非常に心配でございますが、その点はどのようにお考えでございますか。
  94. 田中榮一

    田中国務大臣 工業配置というのは確かに産業立地産業立場からメリットがなければなかなかまいりません。都市に集中をして過度集中の現象を起こしたということは、それなりに都市集中のメリットがあったからであります。いまは、産業はこれ以上寄ってこられると困るのです。なぜかというと、一番わかりやすいのが東京でもって車が一台増車されると、車を運行する人は別として国民の立場からいうと千五百万円年間道路の維持補修費を負担しなければならぬわけでございます。全国平均で見れば五十万円であります。五十万円で済むものを過度集中を是認することによって三十倍の千五百万円以上を負担しなければならぬという現実でございます。ですから、いまでも工場一つ東京にできることによって国民全体の負担は驚くべき増大をするわけでございますが、しかし、その企業の独立会計の上からいうと企業としてはまだペイラインに乗るのであります。産業一つのバランスの上からの利益を確保するために、国は何倍、何十倍という負担をしいられるわけでありますから、そういう意味で、大きな意味からやはり工業の再配置というものもはからなければなりません。そういう意味で都会の中では工業用水のくみ上げを禁止しております。住宅地域指定地域内に工場の増設は禁止しております。それからある一定規模の工場は、ある時期にはもう出なければならないようになっております。それから今度自治省が考えておるように、事務所税も考えております。複合公害という面から考えれば、必ず公害費用負担はうんと大きくなります。そういう面からだんだんとしほられてまいりますから、うんとしぼっていけば、ちょうど通産省が四十二年に考えたように押えつけるということになれば、これは必ず出ていきます。しかしやはりその前にどうしても誘導政策を前提に、先にすべり出す。助成政策と誘導政策をやって、しかる後に禁止政策というものが合わさってきて逆の流れになるわけであります。どうしても東京や大阪に来たほうが得であれば来るにきまっておるのです。これはとめられません。ですからこのような、いまの法律で規定をしたぐらいのもので工業立地の流れが変わるかといわれますと、これにだんだんと付加していくということに——いままで産炭地域振興だけでは現実的に産炭地域工場が行かなかったわけです。しかし今度それにプラスをした政策をやることによって、だんだんと地域振興ができるということになるわけでありますから、これは誘導政策や補助政策だけではできない場合には、反対の面は禁止政策をとればいいわけであります。  これは一番簡単なのは、西ドイツでもって自動車で重い物を運ばれると国民の負担がうんとかかるので、中距離は鉄道に乗せたい。鉄道から今度遠距離は船にしたいということをやるときにはどうしたかというと、トン税をやったわけです。ある一定規模のものを自動車で運ぶとべらぼうもなく高い。日本の税の十倍という高い税金をかけておるわけであります。そして経済ベースで計算すれば、やむを得ず鉄道に移さなければいかぬ。発電機のようにもっと重いものはもっと高い税金をかけられますから、これはやむを得ず船に移らなければならない。非常に合理的でありますが、この工業の再配置というときに禁止的な政策だけを付加していくということは、どうもスタートがまずいということで誘導政策を先行さしたということでございまして、これからはあなたがいま指摘するように、どうしても出さなければならない政策であるということは間違いないことであって、しかもこれはもう他に方法がないというものであるなら、やはりまず誘導政策や補助政策を先行さしていって、あわせて今度は過密地帯におけるものは、好むと好まざるとにかかわらず負担は多くしなければならないようになる。こういうことで六十年を展望しますと、バランスがとれ、政策効果はあげられる、こういうことを考えておるわけであります。
  95. 桑名義治

    ○桑名委員 そこでさらにお尋ねをしたいことは、現在までの産炭地に対する特別措置で、産炭地道路あるいは産炭地のいわゆる環境は非常によくなっておるわけでございます。ところが工場団地もたくさんでき上がりました。工場団地は七〇%から八〇%の工場を一応誘致はしております。先ほど通産大臣のお答えの中にもありますように、一応工場誘致はしましたけれども、弱小の、しかも若年女子労働型の企業が中心になっているわけです。たとえば電機産業であるならばコイル巻きだとかあるいはまた縫製工場だとか——この縫製工場は今回のドル・ショックで相当いかれました。そういったことで地域の全体のいわゆる経済力をつける、あるいは地域のそれぞれの生活を向上させるという点については、まだまだの感があるわけです。  そこで、今回この工業配置促進法案が提案をされているわけでございますが、この法案によってさらに工場の誘致を促進をしたとしても、前の産炭地におけるそういうふうな欠陥が一つ出ている。その欠陥を除去しない限りにおいては、さらに前の失敗の上塗りをするのじゃないかと思うわけです。その点について大臣は、その欠陥は一体どこにあったと御認識になっていらっしゃるか。その認識の上に立ってその欠陥を除去することによって、産炭地のさらに新しい出発ができる、こういうふうに考えるわけでございますが、その点について伺っておきたい。
  96. 田中榮一

    田中国務大臣 都市集中のメリットを追求する価値があったということでありますが、この二、三年来でもって都市集中というもののメリットはだんだんと少なくなり——少なくなりというよりもデメリットが今度多くなる。それは労働人口を考えますと、昭和四十年対比六十年で、二十年間でございますから、どう考えてみても生産は五倍以上になるわけでございます。ところが労働人口は四十年対比六十年、二十年間で三〇%である。いままで都市に集まってきたものは労働人口でございましたが、今度は産炭地の移動を考えて追跡調査をしてみるとよくわかるように、移動する中高年齢労働力の五分の四もしくは四分の三以上は社会保障対象人口である。これが千百万人に達するので、今後九百七十万戸の住宅をつくっても際限なく住宅不足になるということにつながっておるわけでございます。それがみんなコストアップの原因になっておって、都市集中のメリットというものがなくなってきておる。こういうことでありまして、やはり先ほど申し上げたように、中小企業者の二六%は無条件に移転をしたい、それから条件がそろえば移転したいという企業を加えると五〇%以上が移転を希望しているという状態までも追い詰められておるということが一つあります。  それからもう一つは、いままで三百工場ばかり産炭地に出ましたが、これは全く下請の下請工場のようなものであって、これは国際経済波動に非常に弱い。まともに受ける。今度の繊維問題などでもって、産炭地に行った縫製工場が、軒並み正面からそのあおりを受けたということであって、やはりある一定規模の町の中核になれるような産業でなければだめなんです。だからまたこれは美唄が出て申しわけありませんが、美唄という炭鉱は八万人の町をつくったのです。寒冷の地に八万人の町をつくったというやはりそれなりの結晶、核になるような産業でなければならぬ。そういうことをやるには、いままでの産炭地振興法でも新産業都市建設法でも非常に弱かったのです。ただ、いまの新工業港のように、新潟とか田子浦とか金沢の新工業港とか、いまの苫小牧とか鹿島とか大分湾とかそれから四日市とか水島とか、こういうところは集中的にやりましたので成功しております。成功しておるかわりに、今度思わざる公害の集中ということで、えらく問題を起こしておるわけであります。  だからこのような弊害を伴わないで、地域からの要請ではなく、国の政策として工業の分散が必要であるという立場に今度立ったわけでありますから、これは相当総合的な政策が前提となる。私はそういう意味で自動車トン税法とかそれから新幹線建設促進法とか本四連絡架橋公団法とかいろいろなものが前提となって、ある時期が来るとこれが全部結びついて総合的に働くということが、ばらばらにではございますが、立法化されておるわけでございます。  そういうような意味で、この上になお水の確保工業用水確保、港湾の整備、高速道路建設、こういうものを総合的に全部やっていくことによって、効果をあげることによって、地域工業化、二次産業比率を上げることができる、これはもうそのとおりでございます。ですから私はいますぐこの法律の効果というものがあがるというほど自信はありませんが、しかし千五百億にのぼる一・七五%の法人税付加分これはそのまま財源になって特別会計をつくり、これでもってこの事業を推進しようとしておったのですが、景気が悪いのと、財源がないというので、一年間暫定でもってこのまま延長したというような前提条件が具備しないところに、御指摘のように中途はんぱだといわれるところがあるのです。来年になればこの問題も片をつけなければいけませんし、二十五年も三十年も免税しなければ長期投資ができないのを、現行法上やむを得ないということで、三年間でまずスタートということ自体が中途はんぱだといわれれば、そのとおりだと思うのです。しかし、制度をつくっておいてだんだんとそれを整備をしていくということでなければ、なかなかすべてを一ぺんに片づけてしまうというほどのことは、現実的に抵抗があるということで、こんな法律になっておりますが、これは皆さんのお力で、私が当初企図しました原案のようにだんだんとひとつこの法律を実効あるものに育てていただければはなはだ幸いだと思います。
  97. 桑名義治

    ○桑名委員 私は産炭地の問題に限ってさらに問題を提起をしていきたいと思いますが、言うならば工場の再配置産炭地に中核企業が来たとします。また来るとします。いま産炭地でやはり一番問題になりますのは、鉱害の問題ですね。いわゆる地盤沈下のほうの鉱害でございますが、この鉱害の問題が片づかないところに地域のほんとうの意味の開発は行なわれないんだ、こういうふうに私は考えるわけです。  さらに鉱害の問題でも、特に有資力の鉱害——いわゆる無資力鉱害はどんどんと国の力で復旧をされておりますけれども、有資力鉱害というものがいまだ解決をされていない。たとえば田川の問題を考えてみましても、あの田川市周辺の大炭鉱というのは三菱、三井であったわけですが、この三菱、三井はまだ有資力です。したがって、いわゆる有資力の鉱害についてはほとんど手つかず。ところが、この有資力の炭鉱の鉱害というものは非常に広範囲にわたっているということがいえるわけです。さらにそういう有資力の大きな炭鉱というのはまた大きなボタ山があります。このボタ山の処理をどうするかということです。それとこの鉱害をどうするかというこの二つの問題が、その地域を今後どういうふうに開発していくかという大きな一つのポイントになるわけでございます。そういった意味で、これをおろそかにして産炭地工業の再配置を考えましても、ほとんどこれは不可能に近いんではないか。これは多少極論ではございますけれども、そういうように考えられるわけです。したがって、この法律を提案をされておりますけれども、これに関連してそこまで考えをいたさなければ、ほんとうの意味の開発にはならない、こういうふうに考えるわけでございますが、その点についての大臣の御見解を伺っておきたい。
  98. 田中榮一

    田中国務大臣 産炭地の鉱害復旧を急いでおるわけでございますが、しかしこの国会に法律改正案を提案をしまして十年間復旧の期間を延長しなければならないという実態にあることは御指摘のとおりでございます。しかも有資力でありながらなぜ一体鉱害が片づかぬのかという問題もございます。これはもう鉱害復旧が産業誘致や地方開発の前提でございます。鉱害さえも復旧もしないし、ボタ山さえも片づかないで、なおいつ片づくかさだかでないという状態で、地域振興ができるはずはありません。そういう意味で、有資力鉱に対してはこれを強力に指導しながら、まず環境の整備をはからなければならないことは申すまでもありません。  それからもう一つボタ山の問題は、これは監督官が現地を常に見ておりまして、ボタ山の整理、危険排除というものに対しては万全の体制をとっておるわけでございますが、ただ鉱害の問題でいわゆるボタ山の整理とか陥没地の復旧とかいう場合に、原形復旧ということでたんぼにしなければならないとか、そんなばかなことではないでしょうが、何かどうもしゃくし定木過ぎると思うのがあったわけです。ところがこれは宅造にするとか工場地帯をつくるとか、別にいろいろなものに内容自体も整備をされてきておる。またそういうふうにしなければならないし、ほんとうに工場が進出をするという特定な計画があれば、それに合わせて改良復旧をやって一向差しつかえないものだと思うのです。そういうことが、いままで、考えると、多少しゃくし定木であったということもいえます。今度は産炭地域振興事業団工業配置事業団と一緒になるわけでありますから、そういう意味で、原形復旧よりも改良復旧というものが今度前面に出てくるわけでありますので、いま御指摘になったような問題に対しても積極的に取り組んでいけるし、また取り組んでいかなければならぬ、こう考えております。
  99. 桑名義治

    ○桑名委員 いま、いわゆる鉱害の問題とそれからボタ山の問題については、原形復旧じゃなくて改良復旧で今後鋭意努力をする、これは法改正を考えていらっしゃるわけですか。
  100. 田中榮一

    田中国務大臣 現行法で十分できます。ただ少し金がかかるとかいうことだけでございますから、それはバイケースで、金がかかっても投資量を増せば直ちに収益事業に結びつくというならそういうものを先行させるべきであるしウエートをかけるべきである、こういうことであります。
  101. 桑名義治

    ○桑名委員 現行法でできることは、これは当然なことでございますけれども、問題は、現行法でやった場合に地元の負担金に非常に大きな荷重がかかるというところに問題があるわけです。したがってなかなか改良復旧ができないというのがいままでの実例でございますので、そういった意味で法の改正が必要な時期に来ている、こういうように私は申し上げたつもりでございましたけれども、ことばが足りませんでした。
  102. 田中榮一

    田中国務大臣 これからひとつ実情を十分勉強をいたしますし、必要があれば制度を整備するということに踏み切って一向差しつかえないと思います。いろいろなケースがあるでしょうから。私はこの工業配置・産炭地域振興公団というのは、これは内政の中で一番おそくなった問題だが、これを推進する以外に解決をすべきことはないと思っておるくらい重要視しておるのです。そういう意味で産炭地の問題とかいろんな問題に対してもっと勉強し、制度上完備しなければならないものがあればそれと取り組んでまいりたい、こう思います。
  103. 桑名義治

    ○桑名委員 終わります。
  104. 鴨田宗一

    鴨田委員長 暫時休憩します。     午後五時二十九分休憩      ————◇—————     午後六時六分開議
  105. 鴨田宗一

    鴨田委員長 休憩前に引き続き連合審査会を開会いたします。  質疑の申し出があります。これを許します。田畑金光君。
  106. 田畑金光

    ○田畑委員 大臣にお尋ねいたしますが、この法律移転促進地域から誘導地域工場移転を促進する、工業の再配置を促進するというのが趣旨であるわけです。言うなれば、過度の産業人口の集中した太平洋ベルト地帯のようなところから、低開発地域に誘導していこう、こういう思想だと思いますが、考えてみますと、昭和三十五年、国民所得倍増計画ができて、あの当時経済審議会の中で今後十年間工業開発投資は太平洋ベルト地帯を中心に、こういうようなことで国の投資その他社会開発等がこの地帯に置かれたわけです。ところが考えてみますと、今日振り返ってみると、今度は逆にこの地帯があまりにも産業人口が集中し過ぎて、そこで今度はそこから誘導地域移転促進をしていこう、こういうことになったわけです。いかにもむだな、無計画な投資が都市機能を麻痺させて、公害や交通戦争やらいろいろな問題を巻き起こしておる。こういうことを考えますと、私はこうした再配置促進法というのは、従来の政府のとってきた所得倍増計画なり、産業中心なり、成長中心の行き方の大きなつまずき、そうしてその反省の中からの再出発、そういうのがこういう工業立地計画であると見るのでございますが、間違っているかどうか、大臣の考え方を承りたい。
  107. 田中榮一

    田中国務大臣 御指摘のとおり戦後急速な都市集中が行なわれたことは事実でございます。しかしこれを失敗であった、政策の失敗から来たものであるというふうにきめつけるのは、なかなか問題があると思うのであります。都市人口が集中するというのは世界的な傾向でございます。一次産業人口から二次、三次への人口の移動の過程において都市化が行なわれる、こういうのでございます。都市化が行なわれると、振り子運動のようにどうしても一方的に集中をするというときには、計画的に集中を避けようと思っても、慣性の理屈というのですか、集中するときにはやはり過度集中になる。これは社会主義国のモスクワでも人口が集中し過ぎて困っておるということでございますから、そういう意味ではどこでもみんなそうなんです。マンハッタン地区がそうであって、立体化を進めていく以外にはない。ロンドンが戦後ニュータウン法をつくって、ロンドン八百五十万の都市から百五十万をニュータウンに移動せしめなければならない。これはホノルル等でも新しい都市改造を行なわなければならない。ブラジルはもう新しい首都を別に建設しなければならない。ブラジリアです。これは一ぱい例があるのです。ですから、そういう意味でそういうことを承知しながら過度集中を是認したといわれれば、その点においてはもっと歯どめを必要とすべきだったということは考えられます。ところが明治からずっと一貫した経済議論としては、メリットのあるところに集まってくるのはあたりまえだ、説をなす人は、全国民が東京に集まってくるとすれば、それもまた可なりだ、こういう議論があったということで、なかなかいまのような政策を、言うなれば先行投資になるわけでありますから、こういう政策を推進をするということに対しては理解を求めるに難かったという前提もあったわけでございます。しかし自民党二十五年近くも政権を維持しながらもっと歯どめ政策をやらなかったのか、明なかりし、こう言われればそういうことの一端の責めは負わざるを得ない、こういうことでございます。
  108. 田畑金光

    ○田畑委員 私は、いろいろ諸外国の首都、大都市の例を引かれましたが、日本東京、これをいま例に引かれたところと比べると格段の違いがあると思うですが、そういうようなことに時間をとるわけにはまいりません。  そこで私、このいただいた資料を見ますると、昭和二十五年に国土総合開発法ができて、これがよりどころとなって総合開発計画ができた。その後昭和二十五年から三十年の間に北海道開発法であるとか、離島振興法であるとか、地域開発法の立法ができた。さらに昭和三十二年から三十五年の間に東北開発促進法とか九州、四国、中国、北陸地方開発立法ができた。さらにまた昭和三十六年になってくると、主要拠点開発立法として低開発地域工業開発促進法、また昭和三十七年にはあれほど血みどろの競争をして指定を争うた新産業都市建設促進法、そうしてまた昭和三十九年には工業整備特別地域整備促進法、とにかく次から次にいろんな法律地域開発やら地方開発やらあるいはさらには相前後して首都圏の整備法であるとか、近畿圏の整備法等と、都市の再開発についての法律もできておるわけでございますが、こういう一連の経過を振り返ってみて、さて私たちのいま生活しておる環境はどうなのか。公害に痛めつけられておる。自然環境破壊されておる。かくしてさっきの話に戻るわけでありまするが、経済の高度成長の中、産業の発達の中で、私たちの国民の生活環境というものは終始不均衡の中に、かえって国民生活にいろんな面の脅威を与えてきておる。こういうような経過を経て、さて今度は田中通産大臣の雄大な構想の中から、まあ言うならば国土全体を新しい視点に立って均衡ある発展をひとつ進めていこう。その思想の一環として工業配置促進法というものが提案されたものと私は見るわけでありまするが、いままでの諸立法、諸政策、諸計画と、今回出されました工業配置との関係というのはどう見るべきなのか、どう位置づけるべきなのか、こういうような点がやはり大きな疑問として出てくるわけでありますが、ひとつ御説明を願いたいと思うのです。
  109. 田中榮一

    田中国務大臣 御指摘のとおり、昭和二十五年に国土総合開発法ができましてから、国土総合開発に関する立法というものはたくさんできました。できましたけれども、それなりに国土総合開発に必要なものもできておるわけです。それは河川法の一部改正を行なったり、それからガソリン税を目的税にし、有料道路制度をつくったり、現行道路法をつくり、道路法の中には新しい道路法の精神として、この国土総合開発法を受けて、総合開発のために必要な道路は全額国が負担することができるというような新道路法の改正の焦点ともいうべきものもつくられたわけでございます。その後地域立法が行なわれました。北海道開発法など、いまあなたが説明せられたものはそのとおりでございます。それから新幹線建設促進法とか高速道路促進法とかダム特別会計法とか水の特別会計に踏み切った治水特別会計法とか、港湾特別会計法とかいろいろな歴史を経ております。しかしこれは、いま申し上げたような法律を除いて、地域立法は全部地域という狭義な建設促進立法でございます。熱海国際観光温泉文化都市建設法とか京都国際文化観光都市建設法、旧軍港市転換法とか、それが大きくなって首都圏整備法とか、こういうことになっているわけですが、これは山村振興法や新産業都市建設促進法工業整備特別地域整備促進法等、みんな地域から声をあげた立法であり、地域格差の解消という面からだけ考えられた立法でございます。  今度はそうではなく、これだけの集中が行なわれましたが、これから少なくとも一〇%成長の潜在成長率を持っておりながら、これを七%にするか六%にするか五%にするかは別にして、少なくとも二次産業比率はいまよりも上がっていくのだ。上がっていく場合どこに一体その中心を求めるのかという、これは不可避の問題にぶつかってきたのです。これは水の問題、土地の問題、地価の問題、公害の問題、交通の問題、あらゆる問題が集中的になってきたわけでございます。そこで、これ以上大都市を拠点にしてやっておると、成長のメリットというものが全部投資で食われてしまって、名目成長になってしまうということが数字的に明らかになってきたわけでございます。そうすると、いまのわれわれの生活だけでもってこのまま納得はできないのでありますから、成長のメリットは当然国民生活の向上に結びつかなければならない。その場合一体どうなるか。それは国土総合的な均衡ある開発をはかる以外にない。だからいままでの立法はたくさんありますが、全部地域立法でございます。今度は国が正常な状態で経済を拡大し、国全体が長期的にその恩恵を受けてわれわれの生活をレベルアップするために不可欠な政策として取り上げておるというところが基本的には全く違うのです。これは地域立法ではない。これはもうこうする以外に一体方法があるのかないのか。それは東京や大阪を立体化すればいいという議論は、私も都市政策の中で明示しております。都市の改造はできるけれども、そこに全国民の八〇%も寄ってくるようなことを是認すれば、空気中に占める亜硫酸ガスは人間の呼吸を困難にするという問題にもぶつかるわけでございまして、これはもう非常に正確な数字の上に立って予測できる六十年であり七十年であるということになれば、どうしても国土総合開発を行なう。アメリカがテネシーバレーをやったような立場ではないのです。これはこれからのある一定限度の成長というものを前提として、国民がその恩恵によって生活を高めるというための不可欠の政策である、こういうところがいまある地域立法とは全く性質を異にする、こう理解をしていただきたい、こう思います。
  110. 田畑金光

    ○田畑委員 大臣の雄大な構想は大いにけっこうでありますが、私も時間が制限されておりますし、大臣の答弁を聞いているうちにいつの間にか時間が来てしまうので、それも考慮しながら御答弁をいただきたいと思うのです。  この工業配置促進法というのは、いままでの地域開発とは違って国全体の立場に立って、国の責任で遂行するんだというお話でございます。だがしかしこの簡単な条文から読む限りにおいてそれがどこに出ておるのか。都市化工業化の急速な発展の中で、また地方分散政策を進められても、再びスプロール現象、そういうような虫食い現象というものがむしろ全国的にばらまかれはせぬであろうか。ことに今後の人間の価値観というものは単に経済成長を追求するのではなくして、やはり自然環境の保護、自然と人間生活の調和、それを求めて、そこに人間性を尊重する福祉優先の施策がある、こう見ておるわけでありますが、この法案を見ますと、目的の第一条に単に環境の保全をうたっておるにすぎないので、従来の政策傾向からどこに違いがあるのか私は疑問を感ずるわけで、またまた失敗の繰り返しではなかろうか、それをおそれるわけでありますが、大臣、特にいままでのものとこの点でこう違うんだと端的にお示しをいただきたいと思うのです。
  111. 田中榮一

    田中国務大臣 新産業都市建設そのものも地域立法ではございますが、しかし先ほどの御質問にもお答えをしましたように、局限された地域振興ということにウエートが置いてありますから、国土全体から考えると、必ずしも理想的な姿になっておりません。これは、苫小牧とか鹿島とか水島とか四日市とか大分湾とか、こういうところを見てもわかるとおり、地域的に、非常に小さくまとまったというところに問題があると思います。そういう意味で、拠点都市をつくるにしても、全国的な水の状態それから土地状態総合農政を続ければ一次産業人口はまだ減るわけでありますが、この人たちをその地域に定着せしめて、二次産業との調整をはかっていくということが全国的に考えられるという点においては地域立法とは全く違う、こういうことだけはいえると思うのです。ですから、これから水、土地それから労働力公害調整それからその地域に適した新しい産業というものを総合的に検討し、立案をし、年次計画を進め、六十年にはこうしなければならないということであって、しかもそのときにはこれ以上東京や大阪や名古屋のような大拠点の、あなたの言うスプロール現象というようなものを排除し、いまよりも都市改造の実をあげるためにはやはり不可欠な政策である。こういう地域全体の工業化がはかれると同時に、東京や大阪や県庁の所在地に流れ込まない、産業が過度集中にならないように、少なくとも現状よりも生活環境をよくするためには、これ以上工場東京や大阪に入ってこないような何らかの措置が必要じゃありませんか。ですから、そういう二つの面を持って、国土全体の理想像を描こう、そのための手段である。その手段としてはまだまだ完ぺきなものではありませんが、だんだんと完ぺきなものにしていかなければならない。こういうところが地域立法とは全く違うという感じで見ていただきたいと思います。
  112. 田畑金光

    ○田畑委員 今度の工業配置促進法で従来の産業立地政策と違っているのは、工業配置・産炭地域振興公団という実際に仕事をやる機関を提示された。そこに今度の田中構想というものがほんとうに生きてくる、こう私は見ているわけなんです。従来の、さっきあげました各種の地域開発立法等を見ますと、それは国が財政上、税制上、金融上のいろいろな措置はやっておるが、実際それらの財政的な援助全体というものはとるに足らないものであった。しかし今回工業配置促進法と同時に産炭地域振興事業団法の一部改正をされて、従来の産炭地域振興事業団というものをさらに大きな規模にして、そこに思い切って予算を投下して、しかも従来の産炭地域振興事業団実績、経験、技術、スタッフ、そういうものを含んで、それをさらに大きなものにしていく、そうしてこの公団で積極的に仕事をやっていくんだというところに、私は田中構想が初めて生きてきておるのだ、こう思うのです。私は、評価すべきものがあるとすればそこに評価する面がある、こう見ておるのですが、この点どうでしょうか。
  113. 田中榮一

    田中国務大臣 一点は、都市などは過密で困っておるにもかかわらず、産炭地振興というのは、ちょうど十年の歴史を持って、産炭地域振興法律や制度がありながら、ここは依然として実効があげられない。こんなことではなりません。そういう意味で、産炭地域事業団と今度の工業配置政策が一緒になって、産炭地域振興政策に付加して、今度またいろいろな誘導政策が行なわれます。同時に機構も非常に大きくなる。それで今度は地元の産炭地域市町村が飛んで歩かなくても、この工業配置公団そのものが産炭地域振興に必要なものの選択や誘導や情報提供やいろいろなものを行なえるということで、いままでの産炭地域振興にプラスをされる面が非常に大きい、こういうことだけは御指摘のとおりです。私もそういう意味で、工業配置公団を別建てにしないで産炭地と一緒になることが非常にいいことである、メリットのあることである、こう考えておるのでございます。
  114. 田畑金光

    ○田畑委員 大臣の答弁の中で、私聞き違いであるとすれば訂正しますが、従来の産炭地域振興事業団ではあまり所期の効果を達し得なかった、そういう反省の上に立って今度公団に持っていったというお話でありますが、従来の産炭地域振興事業団というのは、この法律第一条の目的の中に書いてあります「石炭鉱業の不況により特に疲弊の著しい産炭地域における鉱工業等の計画的な発展を図るため、当該地域における鉱工業等の振興に必要な業務を行なうことを目的とする。」後段十九条に事業団の具体的な業務内容が書いてありますが、今日まで産炭地域振興事業団土地造成やあるいは融資の面、中核企業を持ってきてその地域の疲弊に対して明かるい一つの再建のめどを残したということは、私は大きな成果であったと思う。実はこの産炭地域振興事業団実績というものを見て、たまたま通産大臣に就任された田中さんが、かねて描いていた工業の再配置、それを実施する機関としてそれをさらに大きなものとして、公団によって、ことしは百五十億程度であるけれども、四十八年度以降は相当にここに思い切って金を入れて、国土の均衡ある国づくりをやってみよう、こういう構想で生まれてきたのじゃなかろうかと私は善意に推測いたしておるわけでございまするが、それに間違いがないかどうかということと、もう一つ、この際ひとつ、産炭地域の人がたが、いま答弁の中にもありましたが、これが今度公団の中に入ったということで、従来産炭地域では、この事業団あるいは産炭地振興法によってようやくここまで来たが、今度公団になることによって、どうもいままでのあたたかい措置が薄められるのじゃないかな、こういう不安も持っておるわけです。しかし、そのようなことがあってはならぬということで、経理も別建てにし、予算も別建てにし、御丁寧にも副総裁を二人——副総裁を二人置いたというのは実に意味深長だ、その点においては田中通産大臣の、特に自分の考えで二人副総裁を置いたというが、私はその点にはむしろ賛成です。そういう構想で、ひとつ産炭地振興事業団が今日まで残してきた、積み上げてきた経験なり実績なりを、やはり全国的な視野に立って拡大し具体化していく、こういうようなことでいかれるならば、いままでのようなもろもろの立法や政策と違って、生きたものが生まれてくるのじゃなかろうか、私はこのように見ておるわけでありまするが、ひとつその点について大臣の見解を承っておきたい、こう考えます。
  115. 田中榮一

    田中国務大臣 第一点は、産炭地振興のために振興事業団が非常に貢献をしてまいったということはそのとおりでございまして、これはその実績を認めるものでございます。同時に、産炭地振興というものに対しては、もっともっと現状よりも産炭地振興しなければならないということ、特にいままでよりももっと中核的企業が移れるようになれれば非常に産炭地のためにもなる。だから産炭地振興のために企業誘致をするというだけではなく、過密の状態の中から企業を分散させなければならないし、また、さなきだに過密のところにこれ以上過度集中をさせてはならないという別な政策目的を持っておるときでありますから、産炭地事業団を合わせることによって産炭地振興というものにスピードがかかり力がかかるということであって、少なくとも産炭地振興事業団の仕事が減るというようなものでは絶対にない、これだけはもうそのとおりでございます。しかも、この公団はだんだん大きくなってまいります。しかも、皆さまの御質問で御意見を述べられております、これで二年、三年たったときに、産炭地事業団であったころよりももっと計画的に新しい公団実績をあげられる、またあげられるように政府を御叱責になると思うのです、そういう目的でつくった公団じゃないか、予算も増大しなさい、しかも産炭地に対しては、少なくとも企業誘致の工業化計画をつくりなさい、こういうふうに御鞭撻をいただけることでございますから、この公団に移行することによって、産炭地事業団がやっておった実績に付加されるものはあっても、減殺されたり圧縮されたりするものは全く考えておりませんし、そういうことがあってはならない、こういうことでございます。地元の皆さんなどがいろいろ心配があるということであるなら、それはお互いに全く反対である、安定をさせるために、早く産炭地域振興を行なうために必要な制度として運用していくのだということでなければなりませんし、またそうしてもらわなければならないだろう、こう思います。
  116. 田畑金光

    ○田畑委員 そこで、私は大臣に具体的な問題を一、二お尋ねいたしますが、先ほど細谷委員の質問の中にもありましたように、やはり私は、この工業配置促進法の第二条第二項の一号ないし二号、こう出ておりますが、特に産炭地域については、政令都市に相当する大都市は別にいたしましても、やはり産炭地域についてはどういう状況にあるかということは、先ほど大臣の御答弁の中によく出ておりましたが、やはりこれらの地域はこの新しい工業配置促進法に基づいて指定されて、さらに従来以上にもっと明るい環境が、地帯開発ができるようにぜひひとつこの産炭地域指定については配慮願いたいということが第一点。  第二点としましては、公団の会計というのは別建てになっておりますが、大臣御承知のように、現在の産炭地域の予算というのは全部石炭特別会計、こうなっておりますが、これはいずれ、六月末と聞いておりまするが、石炭鉱業審議会の答申に基づいて、四十九年以降どうするか、こういうような問題等について、石炭対策についての特別会計がどうなるかということが、同時に、これは産炭地域振興あるいは石炭産業自体が存続できるかどうか、あるいは国土保全に関係の深い鉱害復旧事業等々に石炭特別会計はわたっておりまするが、この特別会計の存続について、大臣、ひとつこの際はっきり、あくまでも存続させて地域開発等にもさらに一そう寄与する方針であるかどうか、この点をもう一つ私はお尋ねしたいわけであります。  さらに、私が第三点としてお尋ねしたいことは、公団が今後、もう一つのこの法律の柱である、移転促進地域から移転する工場のあと地を買収する、あるいは買い上げる、譲渡する、こういうことになっておりますが、その買い上げた土地——これは東京のようなところでしょう。これはあくまでも、買い上げた土地のあとの利用というものは、公共のために利用するということでなければならぬと思いますね。今度の国会にも公有地の拡大の推進に関する法律案、これは市街化区域における公共用地等の先行取得については地方団体が、あるいは地方開発公社がまずこれを取得するということに政府みずからが法律を出しておられるわけでありまするから、そういうことを考えてみますると、今後移転促進地域から移転する工場のあと地等について、これはあくまでも公共のためにその土地は利用する、こういう原則を、運用にあたってははっきり打ち立てていただきたいということが一つ。  さらに私は、こまかな問題になりまするが、さっきの質問の中にも出ておりましたが、今度事業団公団に移ると、そこの役員も、あるいは職員も、公団としての待遇ということに当然引き上げ措置が講じられると思いますが、これは大蔵省の問題にかかってくるようでありますけれども、大もの田中通産大臣でございまするから、こういう点等についても、大蔵省とよく話をなさって、事業団公団に格上げされるということであるならば、そこの職員なり、そこの役員等についてはやはり公団並みの措置を講ずる、こういうことを当然とらるべきであると思うし、その点について大臣の方針を承りまして、私の質問の時間が参りましたから、ひとつ大臣の答弁いかんによって私は質問を終わることにいたします。
  117. 田中榮一

    田中国務大臣 石炭特別会計の存続という問題でございますが、これは私も、五十年度千五百万トンしか需要のないという石炭を、二千万トンを下らないというかんぬきを入れようと努力いたしまして決意をいただいたわけでございます。また、六月一ぱいで答申をいただくであろう審議会の答申につきましても、通産省そのものもいま勉強いたしております。石炭の二千万トンは五十年だけであって、あとからだらだらとだめになってしまうんだということでは困るんだ、エネルギーの中に占める石炭の位置というものをちゃんと確立しなければならない、そういうことで二千万トンの石炭の使用先もきちっと通産省で検討し相手とも話し合いを続けておる、こういうことでございますし、また産炭地域振興事業団とこの公団を一緒にするということで、早く公害を復旧をして産炭地域振興をはかろう、こういうことを考えております。いままた公害復旧に対しても十年間延長して理想的なものをつくらなければならない、こういうことを考えておりますから、石炭というものに対して積極的な前向きな姿勢で対処しておる通産省ということで、ひとつ理解をしていただきたい、こう思います。  それから先ほどもお答えをいたしましたが、この公団が発足しても二百余名の人たちの大半はいまの産炭地域振興事業団の職員を中心にして発足をするわけでございまして、これは多くの人たちが新しく採用されて、産炭地域振興事業団へつとめておった人よりもはるかに多くの人たちが直ちに採用されるわけはない。この新しい公団産炭地域振興事業団が大宗になってスタートするんだということでありますから、その組織や人的な関係として問題はないと思うのです。あるとすれば副総裁という問題がありましたから、これは先ほど申し上げたように副総裁は二人にして、新しい勉強もできるような副総裁、産炭地に専念しなければならない責任を有する副総裁、こういうふうに考えたわけでございます。  待遇は、これは大蔵省との問題でなくとも、これは同じような公社、公団がたくさんあるわけでございますし、事業団も仕事が十分でき責任が果たせるような待遇、身分その他が確保されなければならない、これは申すまでもないわけでございます。だからこの公団をつくりこの法律を提案することは、当面する日本の混雑を回避し、しかも将来長きにわたって成長のメリットというものを国民生活に受け得るように、そして産炭地振興もあわせて理想的に行なえるようにという、少し欲ばっているかもしれませんが、しかし実際そういう目標をもって御審議をお願いしている、こういうふうに御理解いただきたい、こう思います。  土地は、これは過密の都市から出ていくのでありますから、これはもう金になるから売ります、財源に充てますというのじゃこの法律の精神に反する、これはもう都市改造にのみ利用さるべきものである、こう考えております。
  118. 田畑金光

    ○田畑委員 終わります。
  119. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、田代文久君。
  120. 田代文久

    ○田代委員 通産大臣に質問いたしますが、きょうも同僚議員からいろいろ国土開発につきまして疑問点が出されましたが、いままで新産都市計画から拠点開発方式、そして新全総までいっておるわけですね。今度のこの工業配置促進なんという法案と特に新全総、この関係はどうかということをお尋ねしたいわけです。というのは、私が疑問に思うのは、この新全総とこの工業配置が両立するかどうかという非常に疑問を持つわけです。そうすると大臣としては両立する、双方ともこれは全力を尽くしてその政策は実行するんだということになるのかならないのか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  121. 田中榮一

    田中国務大臣 これは新々全総ということになるわけでありますが、この新々全総というものはこの工業配置法というものが通過をしてこの青写真とほんとうにマッチするものが望ましいし、またそうすべきである。いままでの新々全総、いまの改定全総のもとになったものは全国総合開発計画というものでございますが、これはやはり過去の成長の線を引き伸ばして何年後はこうであろう、それに対して必要な公共投資はこうあるべきだということで書いたものが全国総合開発でございました。ところが過去の線よりも非常に数字が変わってきたわけです。一五%と見ておった民間設備投資が二四%、二五%になり、しかも全国的にうまく膨張すると思っておったら、東京や大阪や都市、県庁所在地で集中的に投資がされたというようなことでいろいろな問題が起こってまいったわけでございます。そこで改定新全総ということになったわけです。それでもなおだめで、今度それをまた六十年展望で書き直さなければならないということでありますから、自然発生というよりも、ある意味では計画を進めながら六十年にはこうなるというのではなく、こういたしますということでなければならない。その意味では新全総とこの工業配置というものはマッチすることが望ましいし、マッチしなければならない、こう思っております。     〔鴨田商工委員長退席、鬼木石炭対策特別委     員長着席〕
  122. 田代文久

    ○田代委員 そういたしますと、瀬戸内海の西部地域あるいは九州関係を例にとりますと、周防灘計画あるいは志布志湾計画というものも計画どおりそれが十分成功するような方向でこれは進めていかれる、こういうことになるわけですか。
  123. 田中榮一

    田中国務大臣 私はこの法律ができれば、工業配置という面から少なくとも全国的な青写真をかいてそれに合うような政策を進めてまいる。しかもこの法律に書いてありますように、他のいろいろな法律の基本計画や実施計画関連をとり、合わせなければならないということでありますので、これは十分検討いたしてまいりますから新全総とマッチします、こう言っているわけです。新全総の中にはいまの拠点開発がございます。ございますから、これはこのまま前進をする、こう考えていいわけでございますが、ただ瀬戸内海というような問題は、これはやはりいままできまっておるからそのとおりのプロジェクトを全部進める、そうすれば水島にもっと大きな製鉄所をつくる、こういうものがそのまま進むと考えることはないと思うのです。計画はあっても絶えず検討に検討を続けて、新しく出てくる公害問題とか水の汚染とかいろいろな問題もありますし、制度も完備しつつありますので、こういうものをずっと考えながら、常に六十年になっても、七十年になっても、八十年になっても過密の弊害というようなものを再び起こさないように検討を進めていくべきだと思います。そういう意味で志布志とか拠点の開発——開発方式は別にしましても、拠点として開発が進められるべきであるということは論をまたないところと思います。
  124. 田代文久

    ○田代委員 そういたしますと、先ほど来いろいろ御答弁の中で、今度の法案産炭地振興させる意味において、この法案ができることによってそれは産炭地振興に非常に上積みすることにもなるし、したがってまた工場を誘致するという側からいいましても、また誘致させるという面からいきましても非常に産炭地のためにウエートを置く、そういう点で産炭地振興ということについてこの法案が果たす役割りというものがきわめて積極的な意味を持っているということで説明がありました。けれども実際問題として私それに対して非常に疑問を持つわけです。実際にそういうことを、抽象的にはおっしゃいますけれども、できるかという問題なんです。産炭地の例を申し上げますと、たとえば全国産炭地で一番惨たんたる状況になっておるのは福岡県の筑豊地帯なんかがその典型です、その尤なるものである。ところが筑豊地帯の産炭地計画なるものが、この法案ができることによって、大臣が先ほど来説明されたような形で一体これが進行するかどうかということについて、私ははなはだ疑問を持つわけです。なぜかというなら、大体この筑豊の産炭地域は、北のほうには北九州の八幡製鉄を中心として大工業地帯があるわけです。それから今度またこのいわゆる新々、あるいは拠点計画によって、そして周防灘計画なんかがどんどん進められるといった場合に、筑豊地帯の日本一の産炭地域というのは、はさみ打ちになっているわけですね。そういうところに工場が来るかという問題です。実際においてこれは工場が来る。先ほど来の御説明では、いまあるような産炭地に起きておるような下請のまた下請の毛のはえたような、そしてまたちょっとドル・ショックが来れば消えてなくならなければならないような、そういう経営ではなくて、少なくともその自治体における中心になるような、中核になるような工場が誘致される、持っていくということがやはり本願だというようなことをおっしゃいました。これは言うことばは非常にけっこうですけれども、実際問題において、たとえば北九州の大工場地帯がある、こっちにまた周防灘計画を進めるということになりますと、大体工場を運営する基礎の問題としての水はどうするかという問題です。現在すでにあの地帯は水は飽和状態になっていますね、実際において。それはもうすでに北九州の水はこれをまかなうだけでもたいへんです。実際に不可能な状態、飽和状態になっている。ましてや東のほうの周防灘なんか、この計画を持ってきた場合に、水を持ってきようがないと思うのです。それからもう一つは、これは結局工場をするとすれば労働力ですね。この筑豊の産炭地にどこから労働力を持ってくるかという問題です、実際に。大体いままでに産炭地がつぶれたために地域にあった炭鉱労働者や失業者というのは全部県外に流出して、そして現在中高年者の方々で、労働力から申しますと非帯に能率の低い労働力しかいまないという状態になっている。それで現在産炭地にある工場地帯というのは、先ほど来しばしば言われましたように、十五、六歳の女の子を使うというような状態で経営をしておる、それがぱたっといく、こういう状態になっている。それから産炭地域計画のもとに、工場誘致地方自治体がぼた山をわざわざくずしてその地区に団地をつくっておるけれども、そのままペンペン草がはえておるような地帯も相当にあるわけです、実際において。これは思うにまかせておらないのです。私は全然むちゃとは申しませんけれども……。したがって労働の賃金も安いわけです、実際において。そういうところにこれは地場相場で、たとえば生活保護の問題をとりましても、あれほど失業のために住民が困っておる、その人たちが、生活保護の指定地としては一級地にされない、安いランクに置かれておるとかいうような状態、あるいはまたこの地場賃金自身が非常に安いというようなそういう状態。水もない、あるいは労働力も、とにかくばりばりした労働力がなければ、やはり中核になるような産業が起こらないのですから。ではどこから持ってくるか。これは大体私は悲観的にならざるを得ないと思うのです。しかも北九州を控え、あるいは周防灘を控えている場合に。ですから、これに対して大臣は、心配要らぬ、わしにまかせておけ、筑豊の産炭地にはこの法案ができることによって十分そういう中核的な産業も来るし、産炭地振興というものはより以上発展するという確信があるかどうか、その点、御説明願いたいと思うのです。
  125. 田中榮一

    田中国務大臣 産炭地というのは石炭鉱山というものがあって、そこに人が定着をしたわけでございます。ございますが、エネルギー革命の余波で、これは休閉山のために労働力は全部土地を離れてしまった。この離れるということには、私はもっと政策が行なわれるべきだったと思います。これはできるだけその地域に働く場所が提供できればよかったと思いますが、それは鉱害が発生しておったり、直ちに就職するところもなかったりということで、どうしても散らざるを得なかった、こう思います。いま、散ってしまって疲弊しておる産炭地がどうなるかということでありますが、これは産炭地振興という政策が、いま行なわれております。まず鉱害を除去して原形復旧というよりも改良復旧でもって、少なくとも生産の基盤にでき得るように地ならしをしなければならない。そのためには産炭地域振興法という法律があるし、事業団もあります。まずそれをやりながら、企業誘致をしていかなければならないというのが現状でございます。  そこへ今度の工業配置という法律目的を持って今度公団が一緒になるわけでありますが、その結果はいま産炭地域振興事業団だけでやっていることと、今度新しい公団になることによって、どっちにメリットがあるかといえば、これは産炭地振興事業団プラスアルファであって、少なくともいまよりもよくなる方向であることは、法律が企図しておるところが、そういう地域振興ということを考えておるだけではなくて、地域振興はその地域からする行政だけでありますが、今度は過密地帯から工場を追い出して持っていこうという一つ法律目的を持っている公団でもありますから、そういう意味ではいままでの単細胞的な使命を持つ産炭地振興の政策よりもメリットはあるでしょう、こういうことであります。あなたはいま、そうは言いながら、大規模プロジェクトというものもそのまま行なうといえば、北九州の特に田川地区、筑豊地区は一体どうなるのだ、こういうことでありますし、水もないのだということでありますが、そういう意味で、これはいままで拠点に過度に集中しておったものをこれから集中排除をしよう、言うならば分散ということは集中排除であります。これから一〇%ずつ十五年間伸びるとすればということで、試算数字で計算をすると、六十年には三百兆円にもなります。三百兆円とは何ぞや、いまの経済の四倍である、こういうことであります。三百兆円にならなくても、これは七・五%成長にすれば幾ら、五%成長にしても百五十兆円になる。これは事実であります。百五十兆円とは何ぞや、いまの生産の倍になることであります。  そういうことでございますので、そのときにいまの過密の弊害を排除して国土総合的な均衡ある開発をはかるための政策をいま進めておるわけでございますので、産炭地という局限された筑豊という問題で処方せんをちゃんとして、いつどうなるのだということをいますぐ述べろといってもむずかしい問題ではありますが、その意味で地域的にとらわれないで、九州全体とか四国とか中国とかいう、国の立場で見た計画をつくります、その中には水の問題や労働力の問題や地域間の問題等の調整も十分はかります、ほかのいろいろな法律に基づく計画とも関連性をちゃんとつけて基本計画をつくります、こう言っているのでございますから、この法律がスタートすることによって、いままでもやもやしておったような筑豊地区の経済再建というものに対しても、スケジュールが組めるようになるだろうということは言い得るわけでございます。
  126. 田代文久

    ○田代委員 いまの御答弁は全く納得できないです。先ほどおっしゃった産炭地振興がこれに非常にウエートを置いて、そうしてこれが栄えるのだというようなことをおっしゃると、いまの御説明では非常に一般論でごまかされておるのであって、実際において、水の問題にしましても、あるいはさっき私が申しました労働力の問題におきましても、あるいは、大臣は集中排除とおっしゃいますけれども、こういう状況産炭地に排除された工場が来るかというと、現実に来る可能性がない。これは採算ベースなんですから、そういうところに行って、実際水もなければ、あるいは労働力もとにかくない、しかもそれは、求めようとすれば、高い労働者を雇わなければならぬというようなところに行くというようなことは、採算ベースからいっても、企業家にはこれは考えられませんよ。ですから、いま大臣がおっしゃったことは、これは全体的に抽象的に言えば、それはとにかく過密地域からこれを排除するということはいいではないか、それはメリットになるんじゃないかというようなことは言えますけれども、ほんとうの国家の政策としてこのようにとにかくなされてきた政策が非常に行き詰まり、そしてまた三百兆とかいうようにおっしゃいましたけれども、そういうことをもし日本の経済の発展の立場から考えておられましたら、とてもこれは私は政策にならないと思うんですよ。三百兆まで行くということは、ただ三百兆ということだけをいえば、非常に日本が発展しているようでありますけれども、その場合における公害とか人口問題とか農村問題とか、ありとあらゆる問題をどう解決するか、それは全然ないです。ですから、そういうことでなくて、私は根本的にこの日本の経済の均衡ある発展を考えるなら、そういうただ馬が走るようにどんどん走っていって成長さえすればいいと、こういうことでは片づかない問題でございまして、その点で、大臣の発言と非常に食い違うわけですけれども、時間がもうあと五分ないんだというあれが来ていますから急ぎますが、その中で大事な問題としては公害対策——きょう大臣の説明をいろいろ伺っておりますと、東京とかあるいは大阪における公害も分散する必要があるというようなことをおっしゃいましたけれども、それも抽象的で、実際に大臣の説明によると、住宅難、交通渋滞、あるいは環境悪化、過密問題、過疎問題等が同時に発生しているということで、ここでは説明されておりますけれども公害についての害毒、公害の発生をどうするかということが一言も書いてないわけですね、実際に。     〔鬼木石炭対策特別委員長退席 鴨田商工委     員長着席〕 なぜこれを説明をはっきりさせないのか。それから、地域住民としましては、工場が来るのはいい、しかしいま私が申しました筑豊のわずかな、産業らしくないような産業でも、すでにやはり公害問題が問題になりつつあるような状態なんです。ましてや大都市における公害を分散させるというようなことになりますと、少なくともこの産業発展と公害対策をどうするかということがこれは基本的な政策にならなければならないと思うのです。ところが全然これが説明もされておらないというような状態。この公害対策については、この法案では大体どのように解決されることになるのであるかということが第一点。  時間がないから次々申し上げますが、私はもう少しこれをどうともかく押えるかという点で、思い切った、これは一つの例ですけれども、また先ほど学者の参考人もおっしゃっておりましたけれども、これを押える方向としてはやはり公害税とか——これはたとえばですよ、公害税とかあるいは過密税とかいうような、そういう問題をはっきり考えて、こうやりますから公害の心配は要りませんということにならなければ、これは地域住民は安心できない。ところがそれについては全く抜けておるという問題、これをどうされるかという問題が一点。  それからもう一つは、この地方自治体がこれによって財政的に非常に負担が増加して、実際上においてはあまり実績がないのにこれが負担してきて、それでなくても地方財政が全く危殆に瀕しておりますのに、それがますますこれから拡大するんじゃないかという問題についてはどうお考えになるかという問題。  それからもう一つ。こういう計画をなさる場合に、私はこれは地域住民の意見をほんとうに民主的に聞かなければいけないと思うのです。しかし、現在のたとえば志布志湾の計画にしましても、あるいはこの周防灘計画にしましても、住民は公害の問題その他の関連で、拒絶反応といいますか、非常に反対されておりますね。そういう場合に、そういうことを押し切ってこれを強行されるのか。ある人はこういうことを言いました。今度の場合においては、もし住民が何のかんの言う場合には、とにかく土地収用法なんかをどんどん施行してやるべしというような意見もありましたけれども、私はやはりこういう計画のためには、地域住民の方々の意見をほんとうにとことんまで聞かなければ成功しないと思うのです。そういう点をどうされるのかという点。  それからもう一つ、これは最後ですが、先ほどの、公団ができることによってということで、その公団の人員というのは、これはいままで事業団におった人たちを活用されるということでございますが、実際いままでの産炭地事業団の従業員の方々は非常に給料が安いのですね。たとえば住宅公団などと比べて、二十歳代で五千円くらいの開きがある。それから四十歳代になりますと一万二千円も開きがある。こういうような同じ公団でありながら賃金差別がある。そうすると、これが今度公団に昇格することによってこういう従業者の賃金、これを引き上げられる御意思があるかどうか。そういう点を伺いまして、質問を終わります。
  127. 田中榮一

    田中国務大臣 都市から工場を分散せしめることが公害の分散だということは、これは全くおかしい考え方なんです。これは、日本には工場が存在するんです。存在するだけではなく、これからも国民総生産は拡大してまいりますから、これは工場というのは大きくなっていくのです。なっていく場合に、いままでのように、過密の東京や大阪や名古屋というような大拠点にそのまま集められるかというと集められない。集めればますます公害はひどくなるということでありますから、集め得ない。これは全国総合開発の中で吸収し定着せしめるべきだというのは、これはもう理論的にも現実的にもそうでなければならない。  もう一つ産業が存在する限り、公害というものは起こる。しかし、いままでは生産第一主義だといわれるような生産にウエートを置いたので、今度はそうではなく生活第一主義にだんだんと移行していかなければならぬ。だから、賃金も上がらなければならないし生産も上がらなければならないが、そのかわりに公害はあたりまえだというような議論では困るんだ、だから公害のないような、公害のないことを前提にして生産を上げなければならない、それにはどうするか。それは前の国会なりこの国会に公害立法を行なっておるじゃありませんか。公害立法を行ない、水質保全、大気汚染防止ということをずっとやっておる。それ以外にない。しかし、同じ地域の中に一ぱい工場が寄っておるから複合公害が起こるのであって、少なくとも煙突が一本あっても——これはふろ屋では煙突はやむを得ない。やむを得ないとしても、同じところで十本も煙突があればこれは複合公害が起こるが、これは全国的な状態で均衡ある間隔をもってふろ屋が建っておれば、それは自然の浄化作用でもって浄化するじゃありませんか。すなおな気持ちで考えていただかなければならぬわけであります。  そういう意味で、公害の除去というものはお互いが国会でもって制度もつくりなにもつくり、やっておるわけでありますから、今度の工業配置促進の中に公害は絶対起こしませんということに何も書いてないということでありますが、それは基本計画をつくったり建設計画をつくるときには、道は何メートルでなければならない、建蔽率は幾らでなければならない、とにかく工場の中にも緑地や遮断緑地は必要である、こういう企画がいままでのものとは違って計画をされますし、またそういう基本計画の過程において公害が除去できるような計画が立てられる。いまの東京や大阪だったらどうにもならないじゃありませんか。そういうことで、これから少なくとも拡大する経済の面はもっと公害が起こらない立地に誘導する、そのために法律や制度が必要である、こう述べておるわけでございます。  それから公団をつくるために、公団に移行していく事業団の職員の給与や待遇や身分はどうなるか。これは先ほども御質問がございましたが、この種の公団はたくさんあるわけでございます。水資源開発公団や電源開発株式会社とかいろいろなものが、同種のものがあるわけでございますから、どうして一体、いま御指摘のように、産炭地振興事業団の職員の給与が少ないのか、私もさだかに承知いたしておりません。しかし事業団公団になることによって月給や身分が下がるのではなく、これは少なくとも平準化される。平準化されるのは二次産業比率だけが平準化されるのではなくて、やはり同じ政府関係機関におる公団の職員に差別があってはならない。そういう意味でだんだんよくなるであろうということは当然のことでございます。ですから、何かあなたはこの法律をつくって、そして産業を分散せしめるということがどうも公害をまき散らすのだというような前提に立ってお考えにならないで、このままにしておけば東京や大阪は破裂をしてしまう、そういうことよりも具体的に計画をして水や土地労働力やみんな計画をして、調整が事前にできるような状態でスタートすることが自然発生を是認するよりも合理的である、そのための処方せんだ、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  128. 田代文久

    ○田代委員 これは地域住民が心配しているのですよ。ですからその点ひとつ考えていただきたいのです。
  129. 鴨田宗一

    鴨田委員長 稲村利幸君。
  130. 稲村利幸

    ○稲村(利)委員 今国会の重要法案として国鉄運賃改正法と健保改正案がうたわれておりますが、私は商工委員会工業配置促進法案はこれに劣らない重要なものだと信じております。そこで田中大臣が単なる通商産業省を担当する大臣ということでなしに、非常に国土利用総合開発に関心を持っておられる実力政治家として、私は自民党のヤングパワーの一人として率直な質問をさしていただきます。  実は私、前置きが長くなりますが、大臣が先般二十五年の永年勤続表彰を受けられて、そのときのおことばに実は感銘しておるのですが、私は二十五年間日本土地の利用、総合開発について一筋に研究してきたというこのおことばです。そして青年時代、土建業に従事されているときに大地を彫刻する楽しみがあるという名言を吐かれている。私はこの大臣の情熱のためにもこの法案を骨抜きでなく、実をあらしめたい、諸先生と協力して成立を期待している者です。そこで、大臣の時間もあまりございませんので、重複するかもわかりませんが、簡潔に取り急いで聞きたいのです。  第一は、言うまでもなく、東京、大阪、名古屋地域への人口産業の集中は、もう過密問題は深刻の域を脱しておる。国土面積の一%に人口が三二%、産業生産は七三%が出荷されている。それだけに公害が多く、交通渋滞、地価高騰というものが目立つだけではなく、さらには用地、用水の生産資源、重大なものが不足し、経済成長それ自体が危機に瀕そうとしている。さきの全国総合開発計画あるいはその後の新全総によって工業出荷の拠点開発あるいは大規模開発のプロジェクトを中心とする全国的主軸形成をはかられておりますが、過密過疎の問題はこれは解消しておりません。そこで私はこの法案成立した暁にはたいへんな評価をされる意義があろうと思いますが、大臣にお伺いしたいのは、この法案成立して、フル回転したとしてどのくらいで、完全といわないまでもおよそ何年くらいでこの目的を達成できるかということと、法案成立すると、また次に新しい法案ができて、その法律が影が薄くなるというようなことでなしに、この工業配置促進法案だけはずっと光を失なわせないようにお願いしたいのでございます。その点大臣のお考えをお伺いしたい。
  131. 田中榮一

    田中国務大臣 この法律が目的としておりますのは、昭和六十年に全国の二次産業比率をおおむね平準化していこう、これはいま工業出荷率が七三%になっておる太平洋ベルト地帯を五〇%に引き下げて、残余のものを五〇%にしよう、こういうことでございますから、これは六十年に、理想といわなくとも一つの目標を達成したい。ですからこの法律は六十年まで稼働する法律である。これは六十年になってももっと続くと思います。とても六十年で完ぺきな状態になるということは考えられない、こう思うのです。
  132. 稲村利幸

    ○稲村(利)委員 現在のわが国の経済状態はミステリー不況という珍しいことばが使われているように非常に珍しい経済状態が続いておりますが、大臣が昨年七月就任されたときに、六十年まで年平均実質一〇%の成長を遂げ、また六十年にはGNPが約三百兆になるという想定を発表されておられますが、大臣は今後ともこの見通しに変わりはございませんでしょうか。それと産業構造はいかがになるか、その想定をお聞かせいただければと思います。
  133. 田中榮一

    田中国務大臣 どうも誤解されておるようでございますが、昭和六十年度に国民総生産が三百四兆円になるという数字は一つの試算数字なのであります。いままでは全総をつくり新全総をつくって案外成功し懸かったのはなぜかというと、目標数字が少なかったのです。それは、十年間の国民総生産の伸び率は幾らでございまして十年後は五十兆円になると思います、国民総生産が五十兆円になれば国民所得は幾らになって、そしてそのときに経済活動を可能ならしめるようなバランスのとれた状態確保するためには公共投資を幾らにしなければなりません、二十七兆五千億です、とこう言ったんですよ。ところが結果は政府が発表したものよりもはるかに大きな数字になったのです。それは先ほどもちょっと申し上げましたが、一五%くらい設備投資が行なわれるだろうと思っておったら三〇%も行なわれた。ですから世界に例がないような対前年度比二〇%も一般会計の予算がふえる。その一般会計の予算の中の二〇%が公共投資である。これは世界に例がないのです。アメリカは四、五%、ヨーロッパの諸国もみんな四%ないし六%。一番日本に近いのが西ドイツの一〇・何%、まあ一〇・八%というのが一番高い。日本はその倍も公共投資をやっていながら、道路、よくならぬじゃありませんか。なぜか。それは経済のほうが大きくなって、社会資本の蓄積率はどんどんとアンバランスになっていく。そういうことですから、計画投資をするならば計画の数字は大き目に見なければならない、こういうことで四十五年の国民総生産を基礎として年率一〇%ずつで十五年間たった六十年度を計算するとそれは三百四兆円になります。四十五年価格で三百四兆円になる。八・五%だと二百四十八兆円、まあ二百五十兆円になる。七・五%だと二百十六兆円になる。五%だったら百五十二兆円になる。五%経済で一体やっていけるか。やっていけない。そこで七・二%ないし七・五%、七・五%といえばすでにもう二百兆円をこすのだ。だから潜在生産力というものは三百四兆円を確保するだけの力は持っておるのだ。だからこれを目標にして、これから経済政策を積み重ねなければならない。このままでもって自然発生を是認して三百四兆円やろうと思えばどうなるかといったら、栃木県など北関東も含めて現在二千七百五十万人の首都圏の人口が四千万人をこすというのです。総人口の四〇%がこの百キロ圏に集まって一体やっていけるかどうかという問題、そこに理想的な青写真が必要である、こういうことを述べておるわけであります。
  134. 稲村利幸

    ○稲村(利)委員 時間の制約がありますので続けて二、三点質問させてもらいますが、通産省では産業構造審議会の答申案で、七〇年代のわが国産業は無公害、知識集約産業に移行すべきであると考えているようでありますが、一方では新全総等をもとに大規模工業基地の建設をはかろうとしておりますが、この工業配置構想においてはこの点をどういうふうに考えておられるか、簡潔でけっこうです。  それと、工業配置構想は、当初過密地域工場に税を課すことによって過密を解消し、工場分散のための有力な手段とするとともに、特別会計を設置して抜本的な施策を講じようとしておりましたが、今回の施策の内容を見ますと、これがちょっと後退しているように見受けられる。たとえば固定資産税の二十五年から三年というような点です。それと、大臣は財政中心より税制中心の政策を主張されて、ガソリン税、自動車重量税等を実現されましたが、今回の対策においては特に税制面で不十分だと考えるが、このような施策では現下緊急に解決を迫られている過密過疎の問題に効果的な対処ができないような気もいたします。これらの施策をもっと拡充するような検討をお願いいたしたいと思います。
  135. 田中榮一

    田中国務大臣 重化学工業中心であったものではとてもやれない、だから知識集約的産業に移行しなければならない、それはそのとおりでございます。これは鉄鉱石を持ってきて、インゴットをつくって売るか、それからそれを引き抜き鋼管にするか、それよりもっとこまかいサッシにするか、それよりもっとこまかい時計にするかということになれば、同じ材料でも付加価値が違うわけでありますから、だんだんそういうものに移行しなければならぬということ、これはもう将来避けがたい事実である、こういうことであります。  もう一つ、この政策を進めるために特別会計をつくらなければいかぬ、これは全くそうなんです。これは来年か再来年必ずできます。できなければならないのです。しかもこれは半期、十月一日発足ですから、半年で百五十億を出す。平年度で三百億を出す。これは最初三百億ではなかったのです。これは話半分ということがあるのですが、十分の一になってしまったのです。初めは三千億くらいを考えておったわけです。平年度三千億。それはどういうことかというと、去年度千四百億あった一・七五の暫定税率の法人税率をこの特別財源に回すつもりだったのです。そうすると、特別財源だけでもってやるわけにはいかぬから、一般財源とフィフティフィフティにすればちょうど三千億になるというので、非常に正確な計算のもとに立ってスタートを考えておったのでありますが、しかしなかなか財政当局はのまなかったわけです。これは御承知のとおりです。これは暫定税率の一・七五をやめるような経済状態になかったから、ことしはとにかく何とか見送ってくれ、そのかわりに産投出資合わせて百五十億を出します。——よくも出したものですよ。半期で百五十億、平年度三百億に踏み切ったのですから、これは相当の政策であることは事実であるわけであります。しかし三千億から見れば十分の一でしかないということでありますが、そういう特殊な事情があってスタートせざるを得なかったということで、これはもう、この税問題に手をつけるときには必ず三千億の大台に乗せる、こういうことでございます。  その他いま御指摘の問題がございましたが、それはまず入れものだけをつくり、それから制度をスタートさせていって、それで完ぺきなものにここ一、二年のうちに、これは一年も早く半年も早く完ぺきな制度に仕上げることによってこの政策目的というものは達成できる、こう考えております。
  136. 稲村利幸

    ○稲村(利)委員 大臣が長年情熱を傾けられた力作が、日本列島改造論として近いうちに発表されようとしている。一方世はまさに一億総不動産屋で、日本列島総買い占めが行なわれようとしている。実は昨日の日興証券のリサーチセンターが発表した三月期の決算分析によると、地価のつり上げの元凶はやはり大企業であるという見出しをつけ、固定資産のうち土地を中心とした投資勘定は昨年九月期に比べると四千八百億の増加を示し、残高は四兆一千六百五十億円にものぼっていると言われております。確かに土地をめぐる最近の動きは完全に狂っているというのがこれはもう定説だろうと思う。  そこでこの工業配置促進法案をほんとうに具体的に進めるには、新全総の早期実施に関しても土地対策強化をあげているように、これについてどうか土地私権の制限とか公有地先買い権の強化等について基本的な方針をひとつ大臣のほうでしっかりやっていただきたい。
  137. 田中榮一

    田中国務大臣 土地問題に対しては非常にむずかしい問題でありますが、政策的には自由民主党は明確な党議をきめて世の中に明らかにしております。それが現行制度というものとの調整にやはりある程度時間が要るということで、政策的に前進をしないという面があることははなはだ遺憾でございます。これはこういうことなんですよ。この法律がなかりせば、提案しなければという問題とすぐぶつかってくるのです。先ほどあなたが指摘されましたが、東京、大阪、名古屋三地点の五十キロ圏の総計は全国土面積の一%であります。そこに三千二百万人の人が住んでおる。ですから、地価が上がるということを言われましたが、それはもうそのとおりであります。とにかく総国土面積の二%の中に日本人口の七〇%の人が都市生活者として住んでおるのです。月給も上がるけれども、月給より土地のほうがなお上がる、それはもう当然のことであります。ですから、それを二〇%の中に分散をして住ませるとしたならば、少なくとも地価は十分の一になる。地価とは、物価とは需給のバランスの中から出てくるのです。だから過度に集中させるというところに、集中を是認しておるところに地価がウナギ登りになって、口では、集中は人間の本能であるといって是認をしておきながら、東京に人間がみんな集まるのが何で悪いのだと言いながら、反面地価を下げろと言うのは、これはもうおかしな議論の最たるものなんで、そんなことはないでしょう。東京と大阪を三時間で結べば東京は大阪になり、大阪は東京になるのです。名古屋は東京都内になり、東京は名古屋市内になるではありませんか。しかしそうなることが全国的に行なわれるためには新幹線が必要である、交通網が整備されなければならないということなんです。そういうことになれば、水があり、山紫水明であり、土地が豊かであるということになれば、この地価問題というものは片づくのです。  だから土地の利用制限ということ、これはちょっと時間があれですけれども、一、二分聞いてください。これは私権の制限ということと税金だけをうんとかけろということを言っておるのですが、そして公共用の先買いということを言いますが、これはある意味においては地価をつり上げることになるのです。税金をよけいかければ、その分が販売価格に転嫁されるにきまっておる。そうでしょう。だから農産物なんかには税金をかけないのです。そのようにかけないものは物価政策としては当然安いものになるので、高い税金をかければ結論的には消費者が負担をするようになる。だからそれはそうじゃなくて、たとえば東京都でもって超高層のビルを建てるようなところは何百万円もします。三十一メートルの九階ないし十階を建つようなところは百万円します。住居地区では二十メートルで七階までしか建ちませんから、こういうところは五十万円で頭打ちです。これが住居専用地区となると十メートルで三階までしか建たないのです。三階までしか建たなければ、三階以上は建てられぬというようなところの土地は、これは三十万円以上しないじゃありませんか。しかも緑地地帯でもって何せ建蔽率は一割である、一〇%以上のものは建ててはいけないといえば、東京の中でも坪一万円以下じゃありませんか。そういうふうに国土の二%の過度集中ということを認めないで、これを一〇%にするか二〇%にするかして、そこの利用制限をすればいいのです。だから都市計画法によって制限をしておるから東京都内においては公示価格はできるのです。国土開発法に基づいて知事が、これは工場地帯である、これは緑地帯である、しかも工場地帯であっても一万坪の中で建蔽率を三〇%にして三千坪しか建てることができないと条例で指定すれば、その価格は据え置きになるのです。それで、日本人は六十年になっても一億一千七百万人、千五百万人しかふえないのですから、いま北海道を全部買い占めておる人があったらいまに土地は暴落しますよ。そんなものまで買うだけの力があるわけがないし、しかもこれからみな立体化されるでしょう。いま東京は一・七階平均でありますからこれを十倍にすれば十七階になるわけです。十倍にしなくても六階になれば地価は三分の一になるはずであります。だからそういう制度が完備しておらぬところに地価というものはつり上げられておるんだが、しかしいま買いあさっているような諸君が、高いものを買い、地価をつり上げておって、これがはたして売れるかどうかというと、私は少なくともこの法律整備されて二段目の改正に移るときには、地価をつり上げている連中はみな泣くようになるだろう、こう思っているのです。
  138. 稲村利幸

    ○稲村(利)委員 時間がもう少し与えられていますので、先ほど聞こうと思っていた点に戻りますが、この工業配置法案というのは先ほど大臣は六十年を目途にといいますか、これは早ければ早いにこしたことはないんで、早いうちに効果をあげるために移転した企業に対して法人税、所得税、固定資産税の減免措置を講ずることにしていますが、同時に都市からのいわゆる追い出しについてもっと具体的な強力な措置を願いたいということであります。  それからもう一点、ほんとうに再配置を考え実をあげるには工場立地制限なんというのはいかがだろうかと思うのです、それを許可制にしたらどうかと思うのでございますが、いかがでしょうか。
  139. 田中榮一

    田中国務大臣 誘導政策、助成政策というものを先行させておるわけです。ところが誘導政策、助成政策よりももっときめ手になるものはいまあなたの言ったように追い出し政策、これは法律用語でいうと禁止政策であります。禁止政策と誘導政策があって、片方は禁止だといえば当然傾斜がつくから誘導政策のほうが政策効果があがるわけであります。だからこの法律をつくったときには、率直にいって東京、埼玉、群馬を考えますと、東京では税は一割高い、それから埼玉県は現行法どおりである、群馬県は一割安い、これがこの法律の目標としているところでありますが、今度スタートするにはそれがなかなかできなかったということであります。それは経済上の問題とかいろんなことがあってできなかったということであって、これは完全にそのようになるというふうに考えておいていただきたい。  それから工場を許可制にというと、さっき言った四十二年に通産省が考えた案になってしまうのです、これ以上来るなら税金を取るか許可をしないということになるのですが、許可しないというなら経済成長を全然とめるのか。ノーマルな経済成長を助成しながら、認めながら環境悪化をさせないようにするなら、新しい工場ができる逃げ道というものをちゃんとつくっておいてでなければだめなんです。全然逃げ道をつくっておらぬで、戸を締めておって追い出せば、けんかになるにきまっている。平和が維持できないのです。これは政策以前の問題なんです。結局国民には、比較をして取捨選択をして、利益を追求できる余地というものを絶えず与えなければいかぬ。その場合に、まずその政策を出しておく。来年ごろやりますよ。東京都知事はもうやっているのです。まず山手においては地下水をくみ上げることを禁止している。工業用水を提供しないで、地下水のくみ上げの禁止をまずやっている。それだけではない、住居専用地区では工場の増力、ガスも電気の増力も認めない。それだけではない、その次に税金を上げますよ。騒音税とか、住居専用地区の中では騒音を立てられちゃかなわないから、深夜営業はいかぬ……。一日の稼働率が非常に少なくなる。そうするとペイしなくなるのです。これは案外どこの国でもみんなやっている追い出しのやり方ですが、それでもきかなければ、住居専用地区や東京都内、首都圏では新しい工場の増設は許可しない。これはちょうどいま首都圏整備法によって禁止をしているわけですから。それで、そこに急激に移る、移転先もなくて直ちに土地収用に応じなければ代執行する、こういうわけにはいかないわけですから、やはり誘導政策を先行さして、そして来年、再来年と、だんだんと過密地帯というのは相当強く制限をされ、しまいには、ある県知事などは申請書を受け取らぬというのもありますから、そういうものは現実には禁止なんです。そういうことでやはり過密を排除するには両々相またなければいかぬということであります。
  140. 稲村利幸

    ○稲村(利)委員 今度は質問というよりお願いでございますが、この工業配置計画が実現の暁には、国内はもちろん外国への輸送のウエートが非常に高まってくると思います。先般、北関東大規模開発構想が発表されましたが、ぜひこの法案と並行して、無公害で知識集約産業というような、配置をうまくしていただきたいということと、東京湾の機能を分担するような、海のない栃木県、群馬県に流通センターをうまく考えていただけたらと思うのです。  それと最後に、実はきょうは私の郷里から田中大臣に質問するということで熱心な有力な市会議員が来ている。繊維工業都市で有名な足利が私の郷土ですが、田中先生と同じ田中橋というのがあるのです。これは足利で一番重要な橋なんです。大臣の名前をとったような橋なんですが、これは足利の先輩が非常に先見の明がありまして十二年前に着手して一番混雑した市街地から織物工場を分散さしてトリコット繊維工業団地を、非常に大規模なのをつくった。ところがその後また工業団地が幾つかできた。そしてその団地と市街地を結ぶ産業道路にかかる田中橋が乗用車二十円、バス、トラックが三十円という有料なんです。私ども、市会議員の皆さんも言わんとすることは、有料橋が観光道路につながる橋なら理解できるけれども、こういうことなんです。橋の総工費は六億百万、そして足利銀行の起債と大蔵省の外郭団体の公営企業金融公庫のほうから出していただいているわけでございますが、きょう実は五時のニュースを聞いていると、経団連へ行って大臣が、外貨の活用で余ったドルを三十億ドルの半分は輸銀と石油開発のほうに向けて、その他大企業に三%台で融資する、それで赤字の利子補給をすると言われているのを聞いて、大臣に実はさっそく橋の——これは年間六千万円が利子に充てられているのですが、二十円、三十円と取る。私はこれは、実力大臣どころか、もうほんとうにごく近い将来に日本の最重要人物になられる田中大臣、私もそう願っておる一人なんですが、ぜひこの利子補給の面、あるいはこの一日も早い無料をお願いしたい。  もう一つ先生。群馬県の太田市と足利市の西部の混雑した市街地を結ぶ緑橋というのがあるのです。これは木橋で非常に危険でよく人が落ちたり年寄りが落ちたり、自転車に乗りながらの事故が多い。これもひとつ緑橋のためにも、大臣にこれはお願いで恐縮なのですが、よろしくお願いいたします。
  141. 田中榮一

    田中国務大臣 私は現行道路法の立法者であります。現行道路法は、大正八年制定の旧道路法に対して、二十八年公布として議員立法で現行道路法をつくったのです。私はそういう意味で道路にはちょっと詳しいのです。有料道路法の起案者でもあります。ガソリン税を目的税にした立法者でもある。そういう意味で道路三法をみずから昭和二十七年にやりましたからその意味でお答えしますが、道路は無料公開の原則に立つべきものである。しかし、二点間を結ぶ複数以上のものは有料であってもよろしい。無料公開なのですが、しかし昔は、海上を国道が走っておったこともある。県道でも新潟県佐渡相川線などは海の上を走っておる。だから道路運送法ではなくて船は道路法に基づいて免許を受けておったときもあります。東京の勝鬨橋のように橋でも賃取り橋というのは有料である。これは二十八年に制定のときに担税力のあるところ、負担能力のあるところは有料制度を加味しようということで有料道路法をつくった。有料道路法をつくったから道路公団なるものができた、高速道路制度が二十八年から発足した。こういうことです。ですから、まあ県道にかかっている田中橋ですから、これは無料公開が原則である。しかし有料制度も認めておる。有料制度を認めると同時にやはり府県の有料道路を認め、道路公団を認め、それから今度東京湾岸のように工事費を認めたわけです。いまのものは六億四千万ばかりかかっております。建設省、建設大臣が答弁すれば、償還も順調に進んでおりますので、よろしくというようなことでしょう。しかしこれは四角定木にいって法律どおりに言うと、残余の償還価格を地元が負担をして、そして償還済みの部分の価格は国に無償で提供すれば、これは無料公開の道路になります。道路公団に移行する手もあります。しかし道路公団に移行するにしては小さ過ぎるということで道路公団のものにはならない。すると結局県と地元と建設省と話し合いをして、この県道にかかっておる橋、本来ならば県が負担すべき——県が事業主体となって国が補助しなければならない、三分の二補助です、それで行なうべきものを有料で行なったのだから、これはそういう意味では調整を行なえば法律上調整の可能性はある。これは会計検査院と法制局と建設省と県と地元と十分話をして、その橋の公共性の強さの順位からいって、しかるべき救済の道はある。しかるべく処置する道はある。こう思います。  それからもう一つの緑橋は、これは木橋だそうで、どうも有力なあなたの選挙区にそういうのがあるとは私も初めて聞いたんですが、これはいま景気回復のために鉄を使うということで、木橋は可及的すみやかに鉄橋にかけかえるというのが政府の方針であります。そういう意味で、いま永久橋、鉄橋にかけかえるというのは全く時宜を得ておる発言だ、こう考えます。
  142. 稲村利幸

    ○稲村(利)委員 たいへんありがとうございました。そこで、実は私どもの足利は十八年の間、与党の議員がいなかったものですから、田中先生にぜひおぶさっていろいろ御指導いただきたいと思うのです。何ぶんよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
  143. 鴨田宗一

    鴨田委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。  これには散会いたします。     午後七時四十五分散会