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1972-04-26 第68回国会 衆議院 外務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月二十六日(水曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 青木 正久君 理事 石井  一君    理事 坂本三十次君 理事 正示啓次郎君    理事 永田 亮一君 理事 山田 久就君    理事 松本 七郎君 理事 西中  清君    理事 曽祢  益君       宇都宮徳馬君    小坂徳三郎君       田川 誠一君    田中伊三次君       西銘 順治君    野田 武夫君       福田 篤泰君    福永 一臣君       豊  永光君    勝間田清一君       黒田 寿男君    楢崎弥之助君       三宅 正一君    中川 嘉美君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 福田 赳夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         外務政務次官  大西 正男君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 高島 益郎君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      吉岡 俊夫君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十六日  辞任         補欠選任   田村  元君     田中伊三次君   勝間田清一君     楢崎弥之助君 同日  辞任         補欠選任   田中伊三次君     田村  元君   楢崎弥之助君     勝間田清一君 同日  理事石井一君同日理事辞任につき、その補欠と  して山田久就君理事に当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任についておはかりいたします。  理事石井一君から、理事辞任したい旨の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  引き続き、理事補欠選任を行なうのでありますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。   「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認めます。よって、理事山田久就君を指名いたします。      ――――◇―――――
  5. 櫻内義雄

    櫻内委員長 国際情勢に関する件について、調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本七郎君。
  6. 松本七郎

    松本(七)委員 最近の国際情勢を見ますときに、私どもが十年前の安保国会で憂慮しておりました事態が、現実の差し迫った問題となって出てきたことを痛感するのです。すでに外務大臣も、あるいは総理大臣も、参議院の予算委員会その他で、事前協議の問題についてはかなり御答弁を繰り返しておられますが、依然として明確なものがつかめない、進んだかと思えばまた退くというような状況で、いかにこの問題に対する政府が確固たる方針を持っていないかという姿が浮き彫りにされておるように思うのであります。当時のことを回想しますと、私どもはこの事前協議というものについて、日米間においてかなり解釈というか、これに取り組む姿勢と申しますか、考え方に違いがある。アメリカ側とすれば、山前協議というものは一応形だけのものであり、協議であって、その議題に日本が賛成するとか反対するとかいうことはたいした問題ではない、というよりも無視してかかれる性質のものだ。協議さえすればいいのであって、日本側がどういう態度をとろうが、アメリカは自分の立場を貫き、やることをやれるのだという、こういうものが協議制の本質ではないかということを、当時私どもは何回も何回も繰り返して論争中心として進めたわけであります。  それともら一つは、事前協議というけれども政府はしきりにこれが歯どめになるということを強弁しておりましたが、決して歯どめにはならないのではないか。緊急の事態において作戦行動を起こす場合に、そんなに協議をゆっくりしているというような間がないのが普通だ。それから私どもの過去の軍隊の実績と申しますか、過去の実情を振り返ってみましても、われわれ自身の経験したところは、あるいは演習の名目で出かけて、そしてその途中から作戦命令が下るということは、これは軍隊としては当然あり得ることです。そういう点から考えても、かりに協議というものが先ほど指摘したようなものではなくて、政府の言うように協議アメリカ側も尊重する。日本側の意向を尊重して行動に移すということがかりに期待できるとしても、実際の出撃命令というようなものは事前にはそういう命令は出ない。そこに大きな抜け道があるのではないかということを、当時繰り返して論争の種になったことを思い出すのであります。今日この事態が、ベトナム戦争の激化する中で、岩国から飛び立ってもこれが戦闘作戦命令を受けていなければ、飛び立った後に受けたものであるならば、これは打前協議対象にはならないという、こういう事態になってきたことは、過去の日本政府立場というのが現実に根底からくつがえされたものであるということが明らかになったといわなければならないと思います。こういう点について、長年安保体制を堅持し、そして安保条約日本外交一つの大きな柱にしてきたこの自民党政府としては、根本的に考え画すべき時期に来ておると私は考えるのでありますが、外務大臣の所見をこの際伺っておきたいのであります。
  7. 福田赳夫

    福田国務大臣 事前協議制度につきましては、先回もお答え申し上げたのですが、これは要するに、安保条約わが国に必要である、しかし、安保条約の運用によりましてわが国が逆に戦争に巻き込まれる、わが国益を害するというようなことになってはならぬというための歯どめである、こういうふうに存じまして、私どもはこの制度に深い関心を持っておる。これは松本さんとちょっと見解が違う点なんです。松木さんは、歯どめの役にはならぬ、こういうふうにおっしゃいます。私どもは、これはまさに、わが国益から見て、わが日本戦争に巻き込まれることがないようにという歯どめの役目の制度である、こういう理解を持っておるわけであります。  しかしながら、この制度ができてからもう十二年経過する。その間におきましてまだ一回も事前協議制度の発動ということはありませんけれども、しかし、国会におきましてずいぶんいろいろな論議が戦わされており、その論議の中で政府見解も幾たびか述べておるわけです。その述べた見解につきまして、アメリカ側との理解というものにつきまして、十分でないという点も見受けられるような状態もあるわけです。そういうようなことを考え、かつ沖繩が今回いよいよわが国に返ってくる。そうなりますと、沖繩の方があの稠密な基地状態について深い関心を示しておるというようなことを見ますときに、ちょうどいい機会だ、事前協議制度について総ざらいをしておくということは適当である、こういうふうに考えまして、国会でも済みましたならばそういう問題を広く検討してみたい、かように考えておるのでありまして、要するに、私どもは、事前協議制度というものは、松本さんの言われるところと違いまして、これを重要視しておる、わが国益のために必要な制度である、そういう見解でございます。
  8. 松本七郎

    松本(七)委員 われわれの見解と違って重要視している、しかも歯どめになると言われるなら、現実に起こっている事態に、われわれがなるほど歯どめになるだろうと納得するような対処がなければならぬと思うのですね。  それでは聞きますが、いま岩国から飛び立った後に日本領海外戦闘作戦命令を受けた場合には、どういうふうなことで歯どめがかかりますか。
  9. 福田赳夫

    福田国務大臣 問題は、そういう作戦行動命令というような形式、これも大事なことですが、しかしそれにとどめてはならぬという考え方を持っておるのです。つまり、実体が、わが国米軍作戦行動基地として使われるか使われないか、こういう問題です。岩国の話が出ましたが、岩国部隊南方に移駐をする。それが南方からさらにどこへ行ったか、私は存じませんけれども、いずれ戦闘作戦行動基地ということがきめられるのだろう。そこからベトナム地域に向かって発進をする、それがその基地中心にして反復して行なわれるということになると、その個所が作戦行動基地になる。わが国岩国は、岩国に駐留しておった部隊がそこから南方へ移ったということでありまして、形式的に見ましても作戦行動命令は受けておりませんけれども実体につきましても、作戦行動基地として岩国が使われたというふうな理解は持っておりませんので、したがいまして、松本さんが言われるように、事前協議対象とならなかった、したがってわが国はノーと言う機会がなかった、したがってわが国戦争に巻き込まれる危険がある、こういうようなことをおっしゃるのだろうと思いますけれども、そういうふうには私ども考えておりませんです。
  10. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、いままで日本基地から出たものが戦闘作戦行動には一切参加してないと言われるのですか。
  11. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカ太平洋艦隊あるいはアメリカ太平洋航空部隊、これはアジア全域を遊よくをしておる。それがどこへ移動するか、これはわがほうとして関知すべきところじゃないと思うのです。問題は、岩国なら岩国作戦行動基地として使用されるということになると、そこでわが国が複雑な関係に巻き込まれるというおそれがある。そういう際には、どうしたってわが国は、わが国国益を踏まえての意思決定をしなければならぬという立場にありますけれども、ただ単に岩国にある部隊南方に移りましたというだけでは、わが国はそういう事態には巻き込まれない、したがいまして事前協議対象というものにはならない、こういう見解でございます。
  12. 松本七郎

    松本(七)委員 日本基地から移動して、一たんどこかにとどまるかとどまらないかは別として、あるいはとどまって、戦闘作戦命令を受ける場合もあるでしょうし、日本の領海を出た後に戦闘作戦命令を受けて戦闘に参加するという場合もあるでしょうし、そういう場合も当然これは日本基地戦闘作戦基地に使われたと見るべきだと思うのですが、あなたのいまのお話を聞いていると、そういう場合にも戦闘基地としては認めないと言われるのですか。
  13. 福田赳夫

    福田国務大臣 要は実体だと思うのです。つまり岩国基地戦闘作戦行動自体基地として使われるのか使われないのか、そういう問題だろうと思うのです。そうでなくて、ただ単に、作戦行動基地は別にある、そこへ岩国から移駐いたしました、こういう限りにおきまして、岩国戦闘作戦行動基地であるというふうにはいえないと思うのです。あそこからほんとう作戦体制を整えまして、そして戦闘地域に向かって発進をする、またそれが反復して行なわれるというようなことになれば、これは岩国基地作戦行動基地になる。そういう際にはこれを私は事前協議対象にしたい、こういうふうに考えておるのです。その辺にもこれから検討を要する問題があるというふうに考えますが、現実の問題といたしまして、今回の岩国発進、これは作戦行動基地岩国からの発進ではない、作戦行動基地は別にある、こういう理解をいたしておるわけであります。
  14. 松本七郎

    松本(七)委員 それでは結局歯どめにならないと思うのですね。いま起こっているのは、岩国を出る前には命令を受けてないが、出た後に命令を受ける、これは事前協議対象にならないとあなたは言われるから、問題になったわけでしょう。それはその程度ならば作戦基地でないのだ、攻撃基地にはなってないのだというあなたのいまの御答弁、そしてアメリカ軍行動については深くは関知しない、こう言われるならば、これは事前協限対象にすることもできないし、ましてや歯どめにする方法なんというものは皆無だと思いますよ。アメリカ軍行動が、形式的には命令あとで発せられても、実際には攻撃基地として使われておるというこの実体をどうしてつかんで、そうしてこれに歯どめをかけるかということが今日の問題なんですから、いまのようなあなたの考えでは、結局いままでと同様、アメリカ軍行動については十分な監視もできないし、ましてや歯どめをかけることはできないということになると思うのです。そういう点を、実際にニクソン・ドクトリンなどで新しい情勢が生まれる中で、しかも沖繩がその軍事基地はそこなわないという、こういう共同声明の趣旨で、いよいよ返還されるという事態を前にして日本国民は非常に憂慮しているわけですから、そこに安心できるような歯どめの方法があるならば、一刻も早くお示し願いたい。いまのような答弁では少しも国民の不安は解消できないと私は思いますが、いかがですか。
  15. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は事前協議対象としての戦闘作戦行動への出撃、それにつきまして一番端的に証明できますのは、これは戦闘作戦行動命令を受けた部隊であるかどうか、こうなりますると、非常にはっきりしております。しかしそこまで形式的にははっきりはいたしませんけれども、しかし実体としてこれは戦闘作戦行動そのものである、こういう際におきましては、私は事前協議対象として論ずべきではないか、こういうふうに考えるのです。さればこそ、そういう点をアメリカとの間に明らかにしておく必要がある、そういうふうに考える。その辺は松本さんと考え方においてそう違いはないように思いますが、しかし現実岩国発進のことに触れられました。松本さんは岩国発進、これをどうして事前協議対象としないのかというようなお話でございますが、あれはとにかく、岩国実体的な戦闘作戦行動基地というような性格として使われてない。そこで単なる南方への移動であるというふうに考えますので、私がいま拡大しました事前協議対象という観念から見ましても、私は今回の岩国基地発進、これは事前協議対象とはならないのじゃないか、そういうような感じがいたしております。
  16. 松本七郎

    松本(七)委員 それは事前協議対象にするかどうかに限っていたのでは、私はこの問題はなかなか日本国民の安心するような処置はできないと思いますね。こういう事態になれば、日本基地からかりに移動したものであっても、それが後に戦闘に参加するというようなことは一切やらないのだという新しい日米間の話し合いというものを進める時期に来ているのじゃないかと思います。この安保条約で規定された事前協議対象云々ということは、もういままで長い間国民がしり抜けだとかあるいは日本政府はこれを把握もできないのだというような状況に不安が増大しているのですから、やはり事前協議対象にする、しないの問題以上に、日本基地から飛び立って移動したものでも、それが戦闘に参加しないという新しい大きなワクを、新しい情勢に応じて日米間で話し合う時期に来ているのじゃないかと私は思います。これが沖繩基地の返還問題とも関連してくるわけですけれども、将来において、日本政府は、一たん施政権が返還されれば、その後において基地の問題も徐々に解決するというのが先般からの政府答弁でした。そういうことがほんとう日本国民の期待に沿うものと、現実化するためには、いま申しますように、ただ事前協議対象云々ではなしに、日本にある基地は一切戦闘行動には参加しないという、そういう大ワクをここにあらためて日米間で協議する時期に私は来ておるように思うのですが、この点外務大臣としてのお考えを伺っておきたい。
  17. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国米軍基地戦闘作戦行動基地として使用されることは、これは事前協議対象とする、これは私は松本さんのおっしゃるとおりでいいと思います。ただ問題は、あなたはさらにそれを広げまして、いやしくも日本基地戦闘作戦行動には使われないが、しかしその基地から発進した、あるいは航空部隊あるいは艦船が他の戦闘作戦行動基地として使用する、そういう場合におきましてもこれを禁止するんだというようなお話でございますが、これは非常にむずかしい、私はこれは賛成できません。その問題は私は、アメリカとの間に話し合うというような意図は持ち得ないということをはっきり申し上げます。
  18. 松本七郎

    松本(七)委員 きょうは非常に質問者が多いですから、この程度にしたいと思いますが、もう一問、それは、最近、中国自民党の幹部の方々もしきりに行かれる、あるいは民社党春日委員長も行かれる、こういう行かれた方のお話外務委員会としても懇談の形でいろいろ伺っておるのですが、その御報告を聞きますと、あなたがいままでここで答弁されてきたように、すべては政府間の話し合いを始めてから解決の糸口をつかみたいというこの方針は、非常にもう現実性のないものだということは明確になってきました。とにかく話し合いをやってみよう、これはやはり基本的に台湾の問題をどうするかという点が明確にここで打ち出されない限りは、そういった政府間の折衝そのものもあぶないでしょうし、あるいはかりに何らかの形で接触はできても、ほんとう国交回復に向かっての話し合いというものはおそらく不可能であるということが、これらの訪中された方々報告によって明らかになったと思うのですが、この点の外務大臣の御反省が生まれておるかどうか、この点を伺っておきたい。
  19. 福田赳夫

    福田国務大臣 日中間で問題は台湾の問題があると思うのです。しかし、それより前に、三木さんも力説しておりますが、日中間相互信頼、こういう問題があると思う。しかし、そういう信頼関係がなければ話し合いなんということはできませんけれども、その上に立って、国交の問題をどうするかという際に、台湾問題というものが一番大きな問題になる。それに対しまして、間接的ではありまするけれども、いろいろな北京側の意見が伝えられております。それが、台湾中華人民共和国の不可分の領土である、そのことを日本政府がまず認めよ、日華平和条約はこれを廃棄すべし、これを日本側が認めよ、こういうことです。そのことが認められない限り日本との話し合いには入り得ないのだ、こういうふうに私は聞いておるのです。それから春日民社党委員長あるいはその他の方々も同様のことを伝える。しかし私は、これはわが日本とするとはなはだむずかしい問題である、こういうふうに理解をいたしておるのです。  領土帰属問題につきましては、さきに統一見解を示しております。中華人民共和国が、台湾中国領土であるということを主張する。この主張に対しましては理解が持てるということでございます。しかし正式の領土権帰属がどうなるか、法的にどうなるか、こういうことにつきましては、わが国はこれを云々すべき立場にはないのだ、私はこれは筋の通った話ではないかと思う。私は、このことは、よく話せば北京政府も必ず理解できる問題じゃあるまいか、そういうふうに考えております。  それから、第二の、日華平和条約の問題でありまするけれども、まだ日中の政府間接触も始まらない、そういう段階におきまして、現存しておる国民政府との間の平和条約、これを廃棄する、その結果一体どうなんだというようなことも考えなければならぬ。そういうようなことを考えまするときに私は、今日この段階において日華平和条約が廃棄されるというようなことをわが国として言い得る立場ではない、こういうふうに考えるわけなんです。したがいまして、この問題は、日中政府間接触が始まりましょう、始まったその段階において日中間においてもよく話し合う、その話し合いの結果に基づいてわが国がこの条約をどうするかこの意思決定をする、こういうことになろうかと思うのです。  そういうようなことで、わが国中国政策日中国交打開方針、これはきわめて明瞭なんです。この明瞭な、しかも私は、これはわが国民にとっても理解され得る問題である、そういうふうに考える。また、同時に、中華人民共和国の側におきましても理解し得る問題である、私は、そう無理を言っているという考えはいたしません。いま、いろいろの間接的な方法でありますけれども、この考え方北京政府にも伝わるように努力をいたしておる。私は、いろいろな情報がいま伝えられておることはよく承知しております。承知しておりますけれども、わがほうにもわがほうの立場がある。その立場を踏まえまして、日中間相互理解をもって話し合えるところの場、つまり政府間接触というものが一日も早く開始されるということを期待しておるというのが現況でございます。
  20. 松本七郎

    松本(七)委員 私は、台湾帰属決定論を、明確に政府がすみやかに否定する時期に来ていると思うのです。そういう明確な態度の打ち出しがないと、かりに政府間接触はできても、問題の現実的解決については一歩も前進しないと思いますので、この点はさらに他の機会にまた論議するといたしまして、きょうはこの程度にとどめておきたいと思います。
  21. 櫻内義雄

  22. 青木正久

    青木委員 私は、先日楢崎委員が取り上げましたアメリカ海軍長官のいわゆる電報日米核部隊の創設問題に関する点につきまして、大臣に御質問申し上げたいと思います。  あの問題は、問題が提起をされましたその日の夕刊で幾つかの新聞がトップで報道しておりました。さらにその後、各週刊誌かたくさん取り上げておりまして、おそらく日本国民の何百万あるいは何千万の方がこの問題を見たり聞いたりしている。しかもある人は非常に不安を持っているのではないかと思われます。この電報に関しまして、すでに政府あるいは在日米大使館が公式にでたらめであるという発表をしております。また大臣はじめ佐藤総理も、もしこれがほんとうならば責任をとる、ここまで言っているわけであります。しかしながら社会党の皆さんは、これは事実であるとなお言われておりますし、たとえば社会新報の四月二十三日号には、「この内容の真ぴょう性は一二〇%確信している。」ここまで書かれているわけであります。  そこで、われわれもわれわれなりにいろいろ調査をいたしましたけれども、やはりこの電報は本物ではないという確証だけしかあがらないわけでございます。たとえばアメリカ海軍長官チャーフィーさんがこの種の電報を直接部隊指揮官に発信するわけがない。またこの電報の発信時間が楢崎さんの説明によりますと、一九七二年一月五日十四時五十二分グリニッジ標準時、こうなっておりますけれども、われわれが調べますと、チャーフィー海軍長官は一月四日の二十三時現地時間、グリニッジ標準時五日の午前七時であります、カリフォルニア州のノートン空軍基地を出発されまして五日の一時、グリニッジ標準時で十一時タヒチ島に着いておる、こういう調べができております。したがいまして電報にありますところの二時五十二分は、海軍長官タヒチ島に着きまして約四時間たったあとだ、こういうことになっているわけであります。電報が出るはずがない、こういうことがいえるんじゃないかと思うわけであります。さらに海軍長官あるいは海軍作戦部長の両事務室とも、この電報を発信したという記録はないという連絡があります。さらに形式でありますけれどもアメリカ海軍電報様式においては、ヘッディングとしてフロム、ツーの次にサブジェクトのラインが入るのが普通でありますが、この電報にはこれがない。さらにすでに伝えられております、あて先として電波関連部隊名を先にあげて、在日米海軍司令官の直接の上司であるところの太平洋艦隊司令官あとにするようなことは絶対ない、こういうこともあります。  さらにエリクソン日本部長の話でございますけれども電報用紙に使ったゴム印でLIMDIS、リミテッド・ディストリビューションとあるが、これは国務省だけで使用しているもので、海軍では絶対に使わない、こういうことも出ているわけであります。したがいまして、まず形式的から申し上げましても、どう考えてもほんとうのものではないと結論を出さざるを得ないわけでありますけれども、もしこれがほんとうだというのなら社会党のほうで、ほんとうであるという挙証責任があると思うのです。こういう点につきまして、この前大臣は、なお調査を進めると言われましたけれども、その調査の結果がわかりましたら、ひとつ御報告をお願いいたします。
  23. 福田赳夫

    福田国務大臣 この問題は、もとよりアメリカ政府において調査すべき問題であって、わが国調査すべき問題ではないのでありますので、アメリカ政府に対しまして、真相いかん、こういう照会をいたしたわけであります。それに対する答えがいろいろ来ておるわけでありますが、いま青木さんから御指摘になったような点が実は回答として来ておるわけです。四月十四日の回答でありますが、完全に偽造と断言するということです。  その理由といたしまして、米海軍長官がこの種電報を直接部隊指揮官あて発信することはない、こういうこと。  それから第二に、同電報の発信日時には海軍長官は国外におります。  第三点は、海軍長官及び海軍作戦部長の両事務室とも、この確報の発信記録を持っておりません、こういうこと。  それから第四点、米海軍電報様式においては、ヘッディングといたしまして必ずサブジェクト、つまり表題を書くそうです。ところが本電報にはその表題がない。  第五点、この電報の通報のあて先といたしまして、そのあて先の順序が非常に通例と異なっておる。まず最初にあげなければならぬ太平洋艦隊司令官、これを配下の部隊あとに掲げる、これも非常に奇異なことである、こういうようなことでございます。  なお、在米大使が米国務省を往復した際に、エリクソン日本部長が、ただいまお話しのようになおつけ加えまして、電報用紙にゴム印で限定配付というふうに押してありますが、これは国務省だけが使用しているものでありまして、海軍では使っていない様式である、こういうようなことを言っておるのであります。  それでなお、四月二十一日に米海軍調査隊長がこれ以上の調査はしないと通告してきたというような報道があります。しかしこれは事実に反するという回報を得ております。
  24. 青木正久

    青木委員 一般的に、ないものを証明するのは非常にむずかしいわけでありまして、偽造であるということを証明する方法はなかなかむずかしい。したがって電報が事実だと主張する社会党に私は挙証責任があると思いますので、それこそ秘密理事会でも開いて本物であるという説明でもいただきたいと思うくらいでございます。しかしながら、私も私なりにいろいろ調べました。ただ、米国はすでに偽造であるということをはっきりいたしまして一笑に付す態度で、さらに問い合わせるということはたいへん失礼に当たるわけであります。しかしながらこのままほっておきますと、にせ電報の不安がまだ残りますし、さらに日米関係にもひいては悪影響を与える。そこで私は先週の金曜日二十一日に、チャーフィー海軍長官に個人的な電報を送りました。そしてチャーフィー海軍長官からの返電が、昨日の午後私のところに参りました。海軍長官が一個人に返事を出すということは前例がほとんどないんじゃないか、こう思うわけでありますが、あえて返事をよこしたというのは、アメリカとしてもこの際はっきりさせようという、そういう確信に基づいているものと私も思うわけであります。そこでまず私がチャフィー海軍長官にあてた電文を読み上げさしていただきます。   日本社会党の楢崎氏が国会で提出され、偽造の疑いがある去る一月五日付海軍長官発パーク提督あての日米間核戦力部隊についての電報と称されるものに関し、すでに米国政府より示された下記諸点につき、おそくとも東京時間四月二十七日(火)までに私あてに返電(返信料受信人払い)方切に要請いたします。  一、 海軍長官は一月五日にかかる発電をされましたか。  二、 当日海軍長官は米国におられましたか。  三、 上記のいわゆる電報の内容が米国政府の対日政策を反映するものですか。また海軍長官の在職中に、日本に関するこのような政策を実際的提案として考えられたことがございますか。  四、 いわゆる電報の真偽についての御意見を承りたい。  五、 偽造と考えられるならば、その考え得る作成者、動機及び日本社会党への伝達の経路に関する長官の見解ないし結論、並びにその証拠、理由ないし根拠をお知らせ願いたい。  こういう私の電報でございます。  これに対しまして、昨日チャフィー海軍長官から私のところに参りました電報、これを申し上げます。私が訳したので、多少おかしな点があると思いますけれども、お許し願いたいと思います。  チャフィー海軍長官の返電であります。  親愛なる青木殿   日本で騒がれました私の名前を使用したにせ電報につき、あなたの電報で提起されました質問に答える機会を与えられたことに感謝いたします。   私は、一九七二年一月五日にそのような電報を打ったことはございません。またそれ以外のときにもこのような電報を打ったことはございません。   あなたが、本件につき関心のあるすべての人々に対し、このことを伝えられるようお願いをいたします。   また、私は一月五日にはワシントンからニュージーランドに行く途中におりました。   さらに、このにせ電報の内容は、過去及び現在の米国政府の政策を反映しておりません。   また、私の在職中ないし私の知るほかのいかなるときにも、このような政策が主張されたことはいまだかつてございません。   さらに、この電報がいかにでたらめであるかは、ほんとうの米国海軍指令とは似ても似つかぬ不適当な用語、また不適当な構成によってもはっきりと示されております。   私は、このにせ指令の考え得る作者ないし国籍について示すべき結論は持っておりません。しかしながら、日米両国政府が、今日、両国民の平和という共通の目標を支持するため緊密に協力する限り、この種の害毒をつくった人たちをそれほどおそれる必要はないと思います。たとえその人たちが米国にいようと日本にいようと、あるいはそのほかの地域にいようと。  ここで海軍長官のサイン、署名がある。「ジョン・H・チャフィー海軍長官」これが返電の全文であります。  いまのがほんとう海軍長官電報でございまして、問題の発信人であるところのチャフィー海軍長官がサインをしている、いわば一つの証言でございます。この電報の中に、関心のある皆さんに知らせてくれとございましたので、あえてここで公表したわけでございますけれども、この内容を見ますと、形式的にもこれはでたらめである、また内容的にも、こういう政策はアメリカはとったことがないと断言しているわけでありまして、これが信用できなくて――サインがあり、しかも海軍長官という立場を明らかにしまして書いたこの電報、これが信用できなければ、はたしてわれわれ一体何を信用したらいいか。私はこの電報を出したのは非常に失礼であったわけでございますけれども、あえて長官が返事をよこした。やはりこの問題、私ははっきりしなくちゃならないと思います。白黒をはっきりさせる必要があると思いまして、とことんまで調べ上げまして、われわれの言うところのいわゆるにせ電報ほんとうなのかどうか、とことんまでこれからも調査を進めたい。もしこれが、いわゆるにせ電報ほんとうであれば、それこそ私は議員をやめなくちゃならない。そのかわりこれがでたらめだとわかりましたら、関係の方はそれ相当の責任をとるべき問題だと思います。日本国民に陳謝をしなければならない、それほど私はこれは重大な問題だと思うわけであります。委員長の御配慮をお願いするとともに、外務大臣の所信をお伺いしたいわけでございますけれども、その前に委員長、この資料を配ってよろしゅうございますか。
  25. 櫻内義雄

    櫻内委員長 ただいま青木委員より、委員に資料を配付されたいとの要望がありますので、これを許します。
  26. 福田赳夫

    福田国務大臣 申し上げるまでもございませんが、わが国は非核三原則というものを堅持いたしております。またその背景といたしまして、わが国は核爆弾の洗礼を受けた最初の被爆国である、そういうようなことで、国民すべてが核の問題については深い関心も持ち、したがいまして、この非核三原則を支持してくださる、こういうふうに思います。  その非核三原則と背馳をするがごとき行動、これがもし隠微の間にでも行なわれておるということがありとするならば、これは重大な問題である。私は予算委員会でも申し上げたんですが、まさにそれが事実だとするならば、政府においてこれはもう責任をとるべき問題である、こういうふうに申し上げ、また総理大臣もはっきり、これが事実でありますれば責任をとる、こういうふうに言明をいたしておる。それくらい重大な性質を持った電報事件である、こういうふうに観念しておりまするので、これがにせであっていただけますればはなはだ幸いである、こういうふうに存じます。またにせであるということを確信をいたしておりまするが、そういう同じようなお考えを持たれまして青木さんがみずから努力をされまして、そうして海軍長官まで電報を出される、その御努力、またその考え方に対しまして、非常に深い敬意を表する次第でございます。  私どもといたしましても、私どもは力は乏しい、ですからアメリカに依頼をするほかはありませんけれども、そういう方法を通じまして努力はいたしますが、どうか、これは国会自体の問題でもございますので、国会側においてこの問題を解明をし、国民に不安を与えることのないようにぜひひとつお願いしたいもんだ、かように存じます。
  27. 櫻内義雄

    櫻内委員長 青木君にお答えいたします。  委員長に対する御要望でございますが、この点は理事会と協議をいたし、善処をいたしたいと思います。
  28. 青木正久

    青木委員 終わります。(拍手)
  29. 櫻内義雄

    櫻内委員長 石井一君。
  30. 石井一

    石井(一)委員 ただいまの問題に関連いたしまして、同僚の青木委員海軍長官からの電文で問題はほとんど結末に達したというふうな感じがいたすわけでございまして、これ以上この問題を追及すること自体どうかという感じがいたすわけでございますが、ただ私はこの問題の当初から理事といたしまして、また連合審査会その他にずっと出席をいたしておりまして事態を注目いたしておりました。そういう関係の中から、結局私たちと意見を異にするグループの考え方というのは、日本政府アメリカ政府も信用できないじゃないか、こういう意向でありまして、基本的にイデオロギーの相違、問題の認識のしかたというものが違っておるわけでございまして、こういう確固たる証拠物件が出てまいりましても、さらに議論の展開を続けるというふうなことが考えられるわけであります。  私はしさいにいろいろなものを調べまして、もう末端に至る問題は多くを申し上げようとは思いませんけれども、たとえば先ほど問題になりました三日前の二十三日の社会新報の中にも、「これでも「偽造」というのか」、そういう表題のもとに「楢崎議員に聞く」という文章が載っておりますけれども、前半は事実関係の問題で、これが本物であるという立証、後半はいろいろと内容についての、これがさらに一二〇%本物であるという立証がなされておったわけでありますが、前半の事実関係において、まず第一点は、アメリカの大使館が一時間後ににせものであるということを発表した、しかし、それは事前にそういう事実を把握して、もう準備しておったのだ、こういうお話のようでございますが、私がしさいに調べましたところ、委員会の質問が始まったのが十二時二十分、この問題が配られてアメリカ大使館に到着したのが一時半という時間でありますから、これが一番最初に発表されたのが四時であり、その次に新聞記者に発表されたのが四時半、一時間ではなく二時間半以上の経過が時間的にあったということが一点。  それから第二点に事実関係としておっしゃっております点は、当日の連合審査会に、こういうことを事前に察知してアメリカ大使館の高官が傍聴に来ておった、こういうことでございますけれども、その事実はありません。私は傍聴人のあらゆる書類その他を調べましたし、個人的なことを申しますが、傍聴に来られる場合は、これまでの個人的な関係で、必ず私の部屋から傍聴券を取っていかれる。その日には来ておられない。この辺も全く事実に反するということを私はチェックいたしました。  それから第三点に立証されておるのは、海軍長官アメリカにおられたかどうかという点であります。この点は、御本人の先ほどの電文の証明のようにはっきりいたしておる。  こういうことでありますから、内容については申し上げませんけれども、事実関係から、あらゆる観点から見てもこの確報は間違いであると言わざるを得ないという状態が出ておる。しかしながら、それをもあえてイデオロギーの相違からその論議を展開する。相手の言うことを信用しない。日本政府の言うこと、その他あらゆるそういう証拠書類というものを信用されない。こういうことになれば、司法権にゆだねて犯人をさがすか、あるいは行政府の発言を信用されないのでありますから、外務委員会なり外務委員長個人の立場でもけっこうでありますが、アメリカの立法府に対して調査を依頼するか、そこまでする必要があるかないか。もう国民は審判を下したと思いますけれども、さらにあえてそれを追及されるのであれば、アメリカの与野党が集まっておるアメリカの立法府の外務委員会であるかあるいは軍事委員会に対して、わが国委員会の名のもとにこれがどうかということを御要請なさったらどうか。私はそこまでしなくてもいいということをつくづく感ずるわけでありますが、これまでの経過から見ておりますと、秘密会では、やってみないとわからぬじゃないかと言うて連合審査をやってみた。連合審査をやれば全然やる気がない。およそ問題の核心に触れる問題から別の問題に入っておって、そのときは要するに防衛庁内部の問題の追及をやっておる。ここまでくれば、ほんとうは口火を切った社会党が決然として、それに対するニュースソースを明らかにするなり、あるいはそれなりの挙証責任があると思うのでありますが、それをあえてなさらない。政府のほうは、総辞職をしてもかまわない、責任をとるというところまでの決然たる態度を示しておられるのに、それに対しての挑戦がない、こういう状態であって、まだ行政府の表明というものに対して信用されない、こういうことであれば、私は、立法府としては立法府としての措置をとられるべきではないか、この点を委員長にお願いすると同時に、外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  31. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまお話しの第一点の問題、つまりアメリカの反応が少し早過ぎるような感じがあるという問題ですね。これから第二の問題は予算委員会に当日アメリカの高官が傍聴に来ておったということに関する問題、いろいろ御調査になられたその石井さんの御努力、またこの問題がいかに重大な問題であるかという御認識、それに対しましては私は深い敬意を表する次第です。ただ、この二つの問題は、いまお話にもあるように、私も初めて聞くのですが、社会新報において楢崎さんが御発言をされておる、その御発言を引用してのお話でございます。ですから、これは私にその点について具体的にどうかと聞かれても、私はお答えするわけにはいかない、こういうことでございますから、これは御了承願いたい。  また最後の点につきましては、これは国会の問題でありますので、国会において御善処願いたい。私どもといたしましては、核というものは国民全体が非常な大きな関心を持っておる問題である、その関心を持っておることにかんがみまして、政府におきましては非核三原則という大方針を表明をいたし、これを堅持しておるわけです。それが隠微の間に踏みにじられておるんだというようなことがもしありとすれば、これはもうたいへんな問題であります。これは日本国あげての問題である。私は、先ほども申しましたけれども、もう政府が責任をとらなければならぬ問題である、総理大臣も、はっきり責任をとる、ここまで言っておるのですから、どうか国会におきましても、この国民的心配事、これに対しましてはぜひ御解明のほどをお願いしたい、かように存じます。
  32. 櫻内義雄

    櫻内委員長 石井委員に申し上げますが、ただいま御提案並びに御要望があったわけでございますが、これは理事会において十分協議をいたしたいと思います。
  33. 石井一

    石井(一)委員 私は、時間の関係もございまして、いろいろほかに客観的な事実を調べたわけでございますが、そのことは紆余末端に至ることでございますから、もうこの席で申し上げません。ただ私は、ここまできてもさらに平行線をたどるのではないかということを非常に憂慮しておる一人であります。そうしてその結末をつけないままで国民に幾ばくかの――私は、賢明なる国民はもうすでに一つの判断をした、そういうふうに確信をいたしますが、そういう平行線のままでこの問題を放置するということ自体非常に問題である。したがって、これ以上追及する必要がないという御判断でありましたら、それもいたし方ございませんけれども、先ほども申しましたように、ないものを証明するということは非常にむずかしい。そういうことから、非常に異例なことであるかもわかりませんけれども、そういう要請をすることによって、ひとつ審議をうやむやにすることなく徹底的に糾弾をしていただき、御決断をしていただきたい、こういうことを要望いたしまして、私終わりたいと思います。
  34. 櫻内義雄

    櫻内委員長 田中伊三次君。
  35. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 青木石井両君の御発言で、この問題に関する私たち党の見解は十分に尽くされておると思います。しかし、一言私から委員長にも申し上げ、外務、防衛両当局からも、大事なことで明らかにしておいていただきたいと思うことがございます。  一体、アメリカ海軍長官が、日本におる米軍司令官に対して打った電報がにせものであるとかないとかいう問題は容易な問題ではない。この問題を何か水かけ論であるかのごとき姿でいつまでも結論をつけないでこのまま置くということは、わが国益のためにおもしろくない。そればかりでなく、一体国会の権威は地に落ちるではないか。ただいま外務大臣からおことばがありましたように、この電報が真実のものであるということならば、本物だということになるならば、わが国が、総理大臣以下政府が一貫してとっておる非核三原則はじゅうりんされている。重大責任くらいなことじゃない。すみやかに内閣は総辞職をすべきものだ。かようなことで総辞職をいたします内閣は、次に組織すべき内閣は野党にまかすべきものだ、次は野党内閣であるべきだ。こういう大失敗で責任をとるという結果はそういう結果にならざるを得ない。これは一大事であります。同時に、これがにせものであるということが事実であるとするならば、発言をされた発言者は、院外において責任をとる必要はありませんが、院内において重大責任をとるべきである。責任をとらなければとらすべきである、こう私は信ずるので申し上げたいのでありますが、この電報が真実であるかないかという究明のしかたであり、ここに幾らか世に誤解があるのではなかろうか、国会人の間においても幾らか誤解があるのではなかろうかと思うのは、発信をした発信者が発信をした事実がないと言う、受信をした受信者がそういう電報を受け取った覚えがないと言う。この言明が明瞭であるならば、これ以上何を証明するのか、これ以上どういうことを証明するのか、一体そんな挙証責任がありますか。こういう電報は打った覚えがないと言うが、打った事実があるではないか、受信をした覚えがないと言うが、受信をした事実があるではないかということの立証は、本物だと主張をする側において行なうべきものだ。ただいまもアメリカの立法府まで乗り込んでいって調査をしてもらおうなどという話も、熱意のあまりにおっしゃったおことばではあろうと思いますが、それはむだなことだ。打った覚えがない、受け取った覚えがないという事実以上の証明は必要がない。むだな努力である。そういう考えを持つから水かけ論になる。この問題は水かけ論で終始すべき筋合いのものではありません。国会の権威のために、全国民に対して、当委員会において委員長中心としてこれを明確にすることに決意をしていただきたい。いかなる事態があってもうやむやにすべきものではない。この決意を委員長にしていただきたいということを要請して、委員長の御意見を向いたいのであります。  続いて、外務、防衛両当局に承りたいのは、この電報で私はどうもふしぎで得心のいかぬことがあるのです。電報の発信者である米海軍長官というものの立場は言うまでもなくシビリアンであります。電報を受け取ったといわれる在横須賀の米司令官は制服の軍人である。一体シビリアンコントロールを使命としておる米海軍長官が、この電報に表現されておるような内容の事柄について、制服の命令系統を通さないで、現地の日本に駐在をする司令官に電報を打つなどということが理論的にあるのか。何かアメリカに特殊な制度があるのか。これは一体外務大臣はどうお考えになり、防衛庁の責任者はどう判断をするか、これをまず伺いたいと思います。
  36. 久保卓也

    ○久保政府委員 この電報の内容とするところは、アメリカの最高の外交政策あるいは軍事政策でありますが、こういった問題は、大統領、国務長官あるいは国防長官といったレベルの問題でありまして、海軍省の取り扱う問題ではなかろうと思います。ただし、海軍長官の任務とされておりますのは、組織、管理、運用、法律といったような面でのコントロール、いま言われましたように、シビリアンでありますから、全般的なコントロールというようなことが任務でありまして、かりに在日米海軍司令官命令が出るとしますならば、それは太平洋艦隊司令官あるいは太平洋軍司令官もしくは海軍にあります海軍作戦部長という制服の系統から来るのが常道でありまして、シビリアンからまっすぐ来るということは考えられません。
  37. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほどお答え申し上げましたが、アメリカは、この電報をにせ電報である、こういうふうに断じておるわけであります。その最初の証拠といたしまして、米海軍長官がこの種電報を直接部隊指揮官あて発信することはない、このことを掲げておるのでありまして、まさに田中さんの御指摘の点、これを非常に重要視しておる、こういうことかと存じます。
  38. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 ありがとうございました。
  39. 櫻内義雄

    櫻内委員長 田中委員に申し上げます。田中委員の言われましたことは十分理解できますが、理事会において十分協議し、善処をいたしたいと思います。  楢崎弥之助君。
  40. 楢崎弥之助

    楢崎委員 与党の皆さんがこの問題の真相究明のためにたいへん御努力をなさっておることを私も敬意を表します。私自身この問題を取り上げた十三日の日、もしこれが事実であるならばたいへんなことだから、この真相の究明をしていただきたい、むしろ私のほうから望んだことであります。  そこで、私がこの問題を取り上げた真意からまず御説明をいたしたいと思うわけであります。私は、十三日の日も十七日の日も申し上げましたとおり、この問題を取り上げました真意は、この電報の内容の可能性に対する私どもの危惧であります。その背景にある現実というものを重視しておるのであります。電報形式の真偽、それはどちらが勝ったとか負けたとかいうような問題ではない。何回も私は申し上げておるとおり、皆さん方から言われないまでも、責任をもって私は発言をいたしております。   〔発言する者あり〕
  41. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御静粛に願います。
  42. 楢崎弥之助

    楢崎委員 電報の内容をまずよく分析をしていただきたいと思います。それは米海軍部内の特別委員会の結論であるということ、したがって米国としても、政策決定以前にまず米海軍としての考え方を制服レベルで日本の海上自衛隊の意向を打診してみるということはごく自然のことであります。あり得ることであります。そしてそのような核の問題に対する話し合いの事実は、過去あったわけであります。全然ないということはうそであります。先日も説明しましたとおり、六七年九月、米国にABMが設置されたときには、現に日米はその問題について話し合いをした。国防総省ペンタゴンが発表いたしております。それから昨年七月、レアード長官随行のフリードハイム国防次官補代理が、八〇年代初めに日本は海上ABMを持つことになろう、これも外人記者会見で発表をいたしておるところであります。これに関してワシントン・ポストは、これらについて米国防総省の国際安全保障局の当局者がレアード長官に随行、日本の防衛計画立案当局者と協議していると発表をいたしております。そして当時このニュースが米国から逆に日本にはね返ってきたときには、今回と同じように、在日米大使館日本の防衛庁は、いち早くこれを否定なさいました。全くよく似た反応ぶりでありました。その内容の可能性、その背景の現実についてはもう十七日に明らかにしておりますから、私はここでは申し上げません。私たち日本人は、核アレルギーといわれるほど核については異常な関心を持っております。また唯一の被爆国としてはそれは当然の現象であろう、その核アレルギーといわれるものはまさに正常であるし、これは持ち続けなければならないと思います。したがって私たちは、事核に関する限り、どんなにささいな情報でも国会でそれを取り上げて究明し、政府が非核三原則といっておるとおり、核武装に近づく芽が少しでも出たらいち早くこの芽をつみ取る、また火種がちょっとでも出たらそれを消していく、それが私は国民に対する私たちの責任を果たす道であると確信をいたします。(「それがうやむやじゃないか」と呼ぶ者あり)こういう立場から私たちは岩国の核部隊の問題あるいは辺野古の核貯蔵庫の問題、公明党は横田の核問題、共産党は沖繩の核部隊、核爆弾投下訓練などを取り上げてきました。これはまさにこの線に沿うものであります。いまうやむやとおっしゃいましたが、うやむやにしておるのはアメリカ政府日本政府であります。私は国会法に基づいて詳しい質問をいたしております。その回答は、いいですか、外務大臣も御承知でしょう。その回答は、日米安保協議委員会を開いて、そこで明白にした後回答するという、いわゆる国会法に基づく回答をいただいておるのであります。うやむやにしておるのはわれわれのほうではありません。むしろ日米政府でありましょう。まずそれを明確にしてください。それほどおっしゃるならば、問答をもらってそれは論議をいたしましょう。   〔発言する者あり〕
  43. 櫻内義雄

    櫻内委員長 私語を禁じます。
  44. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は同じような立場から今度の日本部隊密議電報の内容を取り上げたのであります。私たちは、このような情報を無視するわけにはいきません。これを無視するとすれば、私たちは、国民から負託された義務を果たすことにならないと思うからであります。   〔発言する者あり〕
  45. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御静粛に願います。
  46. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そこで私は、いまから、ゆっくりその問題を論じてみたいと思います。  まず、これが、形式がおかしいとかなんとかいわれます。まず私はその前に訴えたいことがあるのです。日米政府の言っていることが信用できない、これはイデオロギーからではありませんよ。あのベトナムの秘密文書の内容はどうでした。全くこれはアメリカの、国会国民を愚弄しておることであるし、それに基づいて佐藤総理は、二度も、共同声明の中で、ベトナム戦争を支持されております。あれが完全にペンタゴンによって仕組まれた挑発的な侵略戦争であることは明白でありませんか。そのように、なかなかアメリカの言うことが信頼できないというその基礎をつくったのは、われわれじゃない、米国自信であります。  日本政府の場合はどうでありますか。もう言うまでもなく、前回の沖繩密約の問題であれほど国会国民に、うその答弁で終始した。それでもなお信用せよとおっしゃるのですか。まずそこが基礎であります。(発言する者あり)つまり、あなた方の言うことは、すべてアメリカの言っておることを基礎にしておるじゃありませんか。そうでしょう。あなた方が言っておるのは、アメリカが言っていることを基礎にしてこれはにせものとかなんとかおっしゃっているじゃありませんか。まずそこが基礎です。あなた方は、アメリカの言っていることを基礎にして、うそとかなんとかおっしゃっているから、それは信用できないと私は申し上げておるわけであります。   〔発言する者あり〕
  47. 櫻内義雄

    櫻内委員長 静粛に願います。私語を慎んでください。
  48. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それで、アメリカのおっしゃることを――そんなに言われるのだったら、まさにチャフィー長官は電報発信の四時間前に出発されたとおっしゃいました、そのとおりです。だから電報が打てないということにどうしてなるのでしょうか。  それから、その種のことをここで言い合いすれば、こういうこともありますよ。在日米当局筋、書式は本物と同じ。ある在日米当局筋は、十三日、米海軍電報について、その内容に関しては論を避けながらも、一つ公表された電報の写しの書式は正規のものと同様と見られる、配付先の名称に間違いは見られない、こういうことも言っておるのです。  また、防衛庁がいち早く対応なさいました。いろいろ略語の問題を取り上げられたけれども、その太平洋海軍保安グループ、これはその長はディレクターではなくてコマンダーということもおっしゃいましたが、さっそく反応がありまして、コマンダーのほうが正しい、こういう反応もあっております。  それから、ブラックメール、これは普通スレットを使うとおっしゃっておるけれども、ブラックメールを使うということも反応があっております。  こういうことはたくさんあります。だから、そういうことをここで言い合いしても私は問題にならないと思うのです。だから私は、むしろこのような内容に可能性があるかどうかを問題にしたいのです。  そこで、防衛庁は、この問題の反論として、われわれは非核三原則のもとに核兵器を持つ考えがないからこういうことがあり得るはずがないとおっしゃいましたね。四次防の技術研究開発計画の中に、原潜の建造の問題も既定の事実としてあげられておる。UAUM、水中・空中・水中ミサイルです。これはサブロック、防衛局長がおっしゃったとおりです。これも研究の課題の中に入れているじゃありませんか。さらに私はいま一つ申し上げたいのは、われわれはこの核問題のときに、核弾頭だけを問題にしてはいけない、核もシステムとして考える必要があるということは、沖繩国会以来私どもは指摘しておるところです。いまたとえばポラリス原潜あるいは攻撃型原潜に積んでおるサブロックの問題、あるいは護衛艦に積んでいるアスロック、あるいは対潜核兵器のルル、こういった戦術核兵器を第七艦隊は持っておる。その第七艦隊と共同作戦をとれば、アメリカの戦術核システムの中に海上自衛隊は完全に組み込まれるのです。そこで私は徹底的に審議せよということでありますから、ひとつ資料を要求したい、いまのような事実を立証する一つの問題として。防衛庁は毎年統合戦略見積もりをつくっておられますね。二種類の見積もりがあるはずであります。一つは統合年度戦略見積もり、いま一つは統合長期戦略見積もり、これは大体十年先ぐらいを見越したものであります。それで私は、そのうちの一つでけっこうです。四十年度統合年度戦略見積もりの資料というもの、これをぜひ私は出していただきたいと思います。その中にはどういうことが書かれているか。「イ、方針」、その中のB、核と海外派兵に関するところだけあげます。「作戦準備は、核脅威のあとに行なわれる非核の局地戦形態の作戦に対処することを主眼として実施するが、核戦に対処することをあわせ考慮する。」C、「外部からの武力攻撃に対しては米軍と緊密に共同してこれを排除する。この場合に自衛隊は主として作戦の守備面を担当し、その他は米軍に期待するが、守勢面の作戦についても極力米軍の支援を得るにつとめる。作戦実施の間、必要な場合核戦力の支援を受けるものとする。」E、「防衛の対象区域はわが国の施政下にある全領域とし、自衛隊の行動区域は防衛目的達成のため必要な範囲とし、要すれば外国領域を含むものとする。」「ウ、作戦実施、」A、「わが国の周辺における航空優勢確保のための作戦。」「一、わが国周辺における航空優勢を確保するためには、積極的に敵の航空基地を攻撃し、その航空戦力を撃破するとともに、侵入に対しては防空作戦を実施してこれを阻止することが必要であり、特に前者の攻撃作戦の本作戦全般に占める地位はきわめて大きい。わが能力上の限界から、攻撃は米海空軍に期待し、自衛隊は防空作戦を実施することとなるが、状況によっては、能力の範囲内において、近接する地域に対し攻撃作戦を行なうことを考慮の要がある。」関係のあるところはこういう個所であります。この戦略見積もりの意味するところは、日米共同の核作戦に自衛隊が参画をしておることを意味します。すなわち自衛隊は、先ほども申し上げたとおり、海軍に例をとればポラリス原潜、攻撃型原潜のサブロック、対潜核兵核のルル、あるいはアスロックというような、アメリカ海軍の戦術核システムの中に完全に組み込まれていることを意味します。二番目に、能力の程度によって敵領域を攻撃する、外国であります。それを既定の事実にいたしております。海外派兵を禁じたのは昭和三十四年であったと思いますが、参議院で決議をされておる。これは明らかに国会決議をじゅうりんするものである。さらに四次防の先取り問題から、江崎長官は航空優勢構想は放棄すると答弁されておる。しかし、すでに数年前から航空優勢構想は、制服段階では定着しておるのであります。まさに憲法、国会決議、国会答弁とは無関係に独走しておる制服の実態を、私はこの見積もりは示しておると思います。なお、私はこれはすでに四十四年に取り上げました。秘密であるから出せないとおっしゃいました。しかしこのことは、御承知のとおりすでに松本清張氏は三十九年十月の文春において、防衛官僚論の中で明確にこれを指摘しております。さらにあの自衛隊違憲の恵庭裁判の第二十一回公判記録、二千五百四十三丁から四十六丁にかけて、質問者は内藤弁護士であります。答弁者は三矢作戦の統裁官であった田中義男元陸将であります。この田中証言もこの事実を肯定いたしております。実態はそこまで進んでおるのです。われわれがこの電報の内容があり得ることだといって心配しておるのは、そのような事実が現にあるからであります。徹底的に審議されることに私は賛成をいたします。この資料を出していただきます。
  49. 久保卓也

    ○久保政府委員 統合戦略見積もりは、防衛庁の中では秘密になっております。防衛庁といいますか、自衛隊の全般的な戦略を書いてありますので、国益上お出しできません。
  50. 楢崎弥之助

    楢崎委員 こういう問題を出さないで、一体何が審議できるのです。われわれが内容だというのはそこなんです。それだけ皆さんがこの電報の内容について全然あり得ないことだとおっしゃるならば、その証拠に、与党の責任においてこの機密資料を委員会に出していただきたい。
  51. 久保卓也

    ○久保政府委員 ただいま御指摘になりましたのは、四十年度とおっしゃいましたが、私は、ここ一年何カ月防衛局長をやっておりますが、現在統合戦略見積もりの中にはそういった思想は全然入っておりません。ところで、私は前に防衛局の課長も数年やっておりまして、この見積もりはずっと見ております。そこで、統幕の中で審議されました時期に、核脅威というものを全然度外視をした戦略というのは一体いいだろうかという反省があった時期があります。これは統幕の初期のころにはそういうのはなくて、中期のころに、やはり核戦争というものがあり得る、今日でこそ核戦争というものはほとんどあり得ないという考え方でありますが、ある時期においてはその可能性が議論された。そこで日本でもそういうことはやはり考えなければいけないのじゃないか、核があった場合に日本はすぐ手を上げるのか、あるいはどうするのかということが議論をされました。その場合に、核があった場合に、わがほうが核を持つという思想は、これは自衛隊にとっては終始ございません。したがって、核があった場合にもし核を使用する必要があるならば、それは、自衛隊は持たないわけでありますから、アメリカに依存せざるを得ない、どういう場合それがあるかということは一つの研究課題であろうということでございます。それから海外派兵の問題も、これも終始自衛隊として海外派兵するということを考えたことはございません。ただし法律論としては、御承知のようにミサイルなどで日本が攻撃されてもうそれを本土で防ぐ余地がないといった場合に、座して死を持つのがいまの憲法のたてまえではあるまいという思想あるいは憲法解釈が述べられておりますように、必要な場合には相手国の基地をたたく場合もあり得る。しかし通常の戦略においては、これはわがほうでそういった爆撃機なども持っておりませんし、かりにF4であれ数が少ないわけでありますからそういった能力を持ち得ない。ですから、通常の場合には米軍にそれを依存するというのが終始われわれが説明してまいった戦略の方針であります。しかし何らかの理由でどうしてもやらなければいけないという場合には、ただいまの憲法解釈が出てまいる。しかしながら、実はそれは法律論でありまして、百機や二百機のF4が一体どの程度の効果があるか。たとえばかりにシベリアまで、と言いますよりもソ連領ならソ連領まで行くとしますと、これは仮定の話でありますが、そうするとその場合には一機の戦闘機は一トンしか持てません。そうするとかりに百機持っていきましても百トンでしかありません。御承知のように、ベトナムではたしか十六万トンでありましたかあるいは六万トンだったかそのどちらかでありますが、とにかく何万トンというものをベトナム戦で使われておる。百トン、二百トンというものは問題でないということであります。ドイツのケルンがやられました場合には、一つの町で二万トンの爆弾が消費されたというようなことがいわれております。そういうようなことで、私たちはそれだけの能力は将来といえども持ち得ない。したがって、いま御指摘のようなことはあるいは研究の過程であったのかもしれませんが、厳密にお読みいただければ、日本が核装備を前提としたものであるということは読み得ないものだと考えます。
  52. 楢崎弥之助

    楢崎委員 読み得るか得ないかは当委員会が判断することでありますから、ぜひ資料として出していただきたいと思います。  なお、外務大臣にお伺いをしておきますが、非核三原則は平時の場合の原則でありますか、それとも緊急時あるいは戦時を通じても堅持される原則でありますか。
  53. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは平戦両時を通じての原則でございます。
  54. 楢崎弥之助

    楢崎議員 いまのお考えもすでに三矢計画の中ではそうではなくて、大統領と総理大臣が相談をすることになっておりますね。これは政府はこの三矢計画はコミットしていないという答弁でありました。しかし制服段階での研究の成果であります。かつて問題になったとおりであります。したがって、重大なことが隠密で行なわれてはならない、外務大臣もおっしゃるとおりであります。私もそれがあってはならないことと思います。しかし現実にはそれが行なわれておる。したがって、先ほど申し上げた資料をぜひ委員長の責任において当委員会に提出させるようにお願いをいたします。
  55. 櫻内義雄

    櫻内委員長 楢崎委員に申し上げますが、先ほど久保防衛局長より政府委員としての答弁が行なわれておりますので、これもまた理事会においてよく協議させていただきます。
  56. 楢崎弥之助

    楢崎委員 沖繩の密約の問題でもそうでした。私は若干過去の経過を振り返ってみたいと思うのです。  四十三年度の予算委員会で三次助の技術研究開発計画、この中にアンチミサイル・ミサイル、核兵器が研究課題に含まれておる、その指摘をしました。そうしたら、それはないと言う。ないとおっしゃる。現実に秘密理事会で突き合わせをした。あることを認められた。そうしたら、委員会では何とおっしゃるかというと、草案の草案の中に確かにありました、最終案にはありません。  いいですか、同じくこれは古い事件じゃございませんから御記憶にあると思いますが、沖繩国会の始まった予算委員会で私は第一回の佐藤総理訪米資料を問題にした。そのとき佐藤総理は烈火のごとくおこられた。それは怪文書だとおっしゃった。そんな資料があるなら出せとおっしゃった。これまた秘密理事会で現物を突き合わせをした。そうしたら、確かに総理府の中にあった。極秘の判を押してあった。そうしたら、委員会で総理は何とおっしゃったか。それは私は知りませんでした、声を大きくして申しわけありません、これでした。四次防の技術研究開発計画の先ほど指摘した問題もそうです。秘密理事会で突き合わせをした。突き今わせをしてやっと認められた。しかし最終的な原案にはないとおっしゃる。沖繩の軍用地復元補償の問題もそうでしょう。われわれが内容を確実に指摘した。秘密理事会においても繰り返した。それでもないとおっしゃる。結局現物を出さないとあると言わない。いままでの経験からいうと、現物を突き合わして、やっとありました。そうしてそのあげくは何です。草案の中にはあったが最終策にはない。最終案を見せるかと言うと、極秘だから見せられないと言う。沖繩密約の問題もそうでしょう。交渉の過程でこれっぽっちもないと言った。電報なんかはないと言った。連絡はすべて電話でやると言った。そうして外務大臣は、両局長が言っておることは信憑性がありますから私もないと思います、総括して外務大臣はそういう答弁をなさいました。そうしていよいよ突き合わせができたら、どうですか。われわれもいろいろな非難を受けましたけれども、あそこまでしなくてはあなた方はあると言わないじゃないですか。そうしてそれが明らかになったら、何ですか。交渉の過程ではあったかもしれないが最終案にはありません。いつもそのようなパターンでしょう、あなた方の言っているのは。(「今回はどうするんだ」と呼ぶ者あり)今回でもそうですよ。(「ソースを出せよ」と呼ぶ者あり)
  57. 櫻内義雄

    櫻内委員長 私語を慎んでください。
  58. 楢崎弥之助

    楢崎委員 沖繩問題のときにはソースがわかるようなやり方は拙劣だ、このような非難を浴びた。そうして今度はソースを出せよという。一体何を言っておるんですか。内容はやがて私は事実となってあらわれると確信をします。したがって、時間も参りましたから、資料を出してください。確実にこのような内容の方向へ現実は近づいておるんですよ。それをわれわれは心配している。ぜひこの文書は出してください。  一応保留します。
  59. 櫻内義雄

    櫻内委員長 午後一時再開することとし、暫時休憩いたします。    午前十一時五十八分休憩      ――――◇―――――    午後一時八分開議
  60. 櫻内義雄

    櫻内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について、質疑を続行いたします。楢崎弥之助君。
  61. 楢崎弥之助

    楢崎委員 休憩時間中いろいろ検討いたしましたが、私どもがこの文書が信憑性があるということを立証するためには、入手経路のすべてにわたって明らかにしなければならないと思います。しかしこの前の沖繩密約問題でも明らかなとおり、もしそれを明らかにするという、ソースを明らかにするということになれば、日米双方にわたって大がかりな刑事的弾圧が加えられることが予想されます。したがって、そのソースについてはやはり明らかにすることはできないという結論に達しました。したがって、私どもが文書の信憑性を明らかにする手だては傍証以外にない、そういう線に沿って、私どもは内容の信憑性についていままでいろいろとその事実を指摘してまいったところであります。問題はやはり内容の信憑性であり、またそのことが重大であろうと私どもは思います。そういう点からやはり、アメリカの核戦略体制の中に日本の自衛隊が組み込まれておる、特に沖繩返還の共同声明の第一章に述べられております朝鮮地域あるいは台湾海域の重大性、もしその地域で紛争が起こったら日本の自衛隊が日米共同の上に参画していくというコースが既定の事実として考えられるわけであります。その一環として私は先ほど四十年の総合年度戦略見積もりの内容を問題にいたしました。先ほども指摘しましたとおり、四十四年の六月十二日と十三日、二日間にわたってこの問題を私は衆議院の内閣委員会で取り上げました。そのときも機密だから出せないという返事でありました。一つ一つ聞いていっても、御答弁は、機密だから何も言えません、そういうお答えでありました。したがって、先ほど委員長にぜひこの機密文書を提示してもらいたいということをお願いしたところであります。この問題はまたその資料が出てまいって継続をいたしたいと思います。  そこで、残された時間を、せんだっての連合審査で問題になりました、いわゆる沖繩復帰後の沖繩の防空任務を来年一月まで引き続き米軍に依頼することになったわけでありますが、その依頼の根拠について公明党の同僚諸君から質問がありましたが、さらに詰めていってみたいと思います。  せんだっての御答弁では、その米軍にまかせる根拠は岡崎・マーフィー協定ということをおっしゃいました。これは御案内のとおり昭和二十八年に結ばれたものであります。  で、岡崎・マーフィー協定は現在もそのまま有効でありますか。
  62. 高島益郎

    ○高島政府委員 お答えいたします。  岡崎・マーフィー往復書簡は新安保条約締結の際に藤山・マッカーサー両代表の間で口頭によりましてこの効力延長について確認いたしました。このことを新安保国会におきまして国会に御報告しております。したがいまして、私どもといたしましては岡崎・マーフィー往復書簡は現存、つまり新安保締結後におきましても依然として有効であるという考えをとっております。
  63. 楢崎弥之助

    楢崎委員 たしか四十四年度であったと思いますが、予算委員会で松前・バーンズ協定が問題になった。そのときにやはり秘密理事会に持ち込まれました。わが党からは問題を提起しました岡田春夫さんと私が出ました。そこでいろいろ出された資料がお手元にございますか。
  64. 久保卓也

    ○久保政府委員 私は実は承知いたしておりませんが、私の手元にいまございません。
  65. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そのとき、その理事会に参加された方はいまここには一人もおられませんね。おられないから言うわけでありません。あとで確かめていただいたらわかりますけれども、空が日本に返ってきた、つまり岡崎・マーフィー協定にかわるものとして松前・バーンズ協定が結ばれた、簡単にいえば、そういう説明を受けております。文書もいただいております。   〔委員長退席、永田委員長代理着席〕 そのことと岡崎・マーフィー協定が生きておるという口頭了解とはどういう関係になるのでありますか。
  66. 高島益郎

    ○高島政府委員 従来政府国会で御答弁しております要旨を私ここで簡単に申し上げますと、ただいま申しましたとおり岡崎・マーフィー往復書簡は新安保後におきましても依然として有効であるというたてまえに基づきまして、そのもとで、日本の防空当局と米第五空軍司令部との間に、その日本の領空侵犯問題に関する技術的取りきめについて打ち合わせをして、そのことを文書に定めたものが、松前・バーンズ取りきめであるというふうに了解しておりますし、私ども国会でそういうふうに御答弁しているというふうに考えております。
  67. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それはちょっと不確実ですね。よく調べてください。つまり昭和三十五年にそのような新安保の場合の口頭了解があったかもしれないが、松前・バーンズ協定が結ばれたのは昭和三十九年でしょう。岡崎・マーフィー協定にかわるものとして松前・バーンズ協定が結ばれたという説明をその秘密理事会でわれわれは受けておるわけであります。
  68. 高島益郎

    ○高島政府委員 お答えいたします。  私のほうの記録によりますと、松前・バーンズ取りきめは、昭和三十四年九月二日に締結されておりまして、新安保条約は昭和三十五年、たしか一月に署名されたと思っています。
  69. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それだと私の記憶の違いであります。でありますが、その秘密理事会で説明を受けたのは先ほど申し上げたとおりであります。したがって、岡崎・マーフィー協定はそのとき問題にしたのであります。例の、一切の可能な措置をとるという、岡崎・マーフィー協定のこのくだりについても議論をしたのであります。しかしそのときのお答えは、いやこれはもう新安保条約に引き継がれて、そして岡崎・マーフィー協定にこれがなっておるんだという説明であったわけであります。この点は、そのときの出されておる文書がありますから、その理事会で。それを、いまお手元にないとおっしゃるから、私もこれは当然御存じと思って持ってこなかったのですが、あとでお調べになればわかると思います。  それで、来年一月まで沖繩の空を米軍にゆだねる、その根拠は岡崎・マーフィー協定であるという点について、米側は合意をいたしておるのですか。
  70. 久保卓也

    ○久保政府委員 合意いたしております。
  71. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、岡崎・マーフィー協定、いわゆる現行の安保条約との関係はどうなるのですか。
  72. 高島益郎

    ○高島政府委員 お答えします。  岡崎・マーフィー往復書簡と申しますのは、旧安保で申しますと、旧安保条約第一条、つまり米軍日本駐留を認めた根拠規定、新安保条約で申しますと、第六条、つまり施設、区域を提供するこの規定に基づきまして、米軍が一般的に日本の安全に寄与するという権能を持っております。また他方、領空侵犯を排除するということは、本質的にはわが国が持っております主権的な権利でございまして、どういうふうにしてこれを排除するかということは主権の発動でございます。したがって、わがほうの意思に全くかかわりなく米軍がこのような領空侵犯を行なうことはできません。しかしわが国が要請をして、その要請に応じて米軍がそのような日本の領空侵犯行動を万一の場合に補助するということは、当然、一般的に申しますと、安保条約第六条の規定に基づきましてできるものとわれわれは考えております。したがいまして、こういう根拠規定に基づきましてわが国米軍に要請し、米軍がこれに応ずるということを取りきめたのがもともと岡崎・マーフィー往復書簡であったと思います。その後、わが国の防空能力が非常に向上いたしまして、現実にはほとんど米軍のそのような援助というものにたよる必要がなくなった現在におきましては、当時わがほうが要請した時代とは根本的に変わっておりますけれども、ただ非常に、可能性といたしましては、全然そのようなものを必要とはしないというような状態ではないので、依然としてそのような岡崎・マーフィー往復書簡を、新安保後も引き続き有効にするということは必要であると考えて、効力を延長したというふうに私は了解しております。
  73. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これはただ安保条約の条項のもとに必要かつ適当とされる一切の可能な措置をとる、この中にある安保条約というのは旧安保条約です。つまり事前協議がない安保条約です。それを口頭了解ごときで、この効力を持続させるなんていうことが適当ですか。このような重要な協定をです。いかがですか。
  74. 高島益郎

    ○高島政府委員 お答えします。  新安保に効力を引き継ぐにあたりまして、ただいま先生御指摘の事前協議条項と関係があるではないかというお話でございまするけれども事前協議対象といたしまする戦闘作戦行動のための日本の施設、区域の使用という点から考えましても、これは第五条の場合を除くというふうになっておりますし、もっぱらわが国の安全に寄与するための米軍行動という観点から申しますると、安保条約のたてまえとしましては、旧安保と新安保という観点から特別に差異はないのではないかというふうに考えます。そういう観点から申しますと、この往復書簡を新安保の体制下におきましても引き継いだということが無理であるというふうには私ども考えておりません。
  75. 楢崎弥之助

    楢崎委員 どういう口頭了解であるか、明確に文書にして出してください。
  76. 高島益郎

    ○高島政府委員 私どもが了解しておりまするのは、昭和三十六年三月十四日の国会におきまして、政府側からこの口頭了解をした旨を説明いたしておりますので、そのときの記録を御提出いたします。
  77. 楢崎弥之助

    楢崎委員 普通の常識からいえば、そこに、たとえば安保条約の条項のもとにというこれは、新安保条約と読みかえるなら読みかえる。そういうふうに明確な文書上の確定がやはり必要であろうと私は思うんです。単に口頭了解で口約束なんていうことは、私は重大な問題があとに残る、このように思わざるを得ません。したがって、もしこれがそのまま残るというような関係であれば、その岡崎・マーフィー協定としては、防空任務に関する限り事前協議は適用されないということに厳格に言えばなります。  それから、北海道上空の領空侵犯のための対応協定ですね、それがどうして沖繩に適用されるのですか。
  78. 久保卓也

    ○久保政府委員 岡崎書簡の中に書いてありますように、最近北海道方面において領空侵犯措置が多いということで、日本政府として領空侵犯に対する措置を米側に要請したということで、北海道だけについて要請したということではありません。つまり政府から要請をしたわけでありますから、主権のあるところというふうに読めると思います。
  79. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、日本全土にわたってこれはまだ生きておるということですか。
  80. 久保卓也

    ○久保政府委員 さようであります。
  81. 楢崎弥之助

    楢崎委員 「一切の可能な措置」の中にはどういうものが含まれますか。
  82. 久保卓也

    ○久保政府委員 「適当とされる一切の可能な措置」でありますから、「適当」なというのは、その事態の範囲によって違ってまいろうと思います。単純に、たとえば信号弾を発するとか、あるいは信号弾を撃つまでもなく、翼を動かすことによって相手に警告を与えるというような場合であろうと思います。しかしながら、たとえば問題なのは沖繩でナイキ、ホークがありますが、これは領空侵犯措置とは考えないとは思いますけれども、そういうようなものは領空侵犯措置の場合に、「適当」なということには当然入らない、そういうものは入り得ないというふうに考えます。
  83. 楢崎弥之助

    楢崎委員 岡崎・マーフィー協定にかわるものとして、松前・バーンズ協定ができたという前提に立てば、松前・バーンズ協定は単にスクランブルだけではありませんね。もう私が指摘するまでもありません。もしこちらの警告に従わない場合は、当然いわゆる戦闘行動に入ることも松前・バーンズ協定で明白であります。そういう点はどうなりますか。
  84. 久保卓也

    ○久保政府委員 岡崎・マーフィー書簡あるいはその前に日米安保協定というものが基礎でありますから、したがってわがほうが米側に依存しておるのは領空侵犯に対する措置だけでありますから、その範囲内において適用されるはずであります。
  85. 楢崎弥之助

    楢崎委員 しかし松前・バーンズ協定はそうなっておりませんね。
  86. 久保卓也

    ○久保政府委員 安保協定あるいは岡崎書簡といったものが基本にありますから、当然基本の中で拘束されるというふうにわれわれは理解をいたします。
  87. 楢崎弥之助

    楢崎委員 松前・バーンズ協定はそうなっていないのです。何もそういう制約を受けるようになっていない。これは松前・バーンズ協定はずっと行き続けておるという、岡崎・マーフィー協定もそうでありましょうが……。
  88. 久保卓也

    ○久保政府委員 松前・バーンズ協定をお示ししておりませんので、具体的な議論ができませんが、もちろん御承知のとおり基本法がその下の、つまり法律は政令を拘束する、政令は法律の範囲を越えるわけにいかない、それと同じ関係にあります。
  89. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この松前・バーンズ協定が問題になったときに、そういう答弁は行なわれなかったのですよ。それであのときも審議がストップになって、秘密理事会に持ち込まれたのです。そのときのやりとりをもう一ぺん振り返られてひとつ御答弁をいただきたいと思います。防衛庁長官は、いずれにしても来年一月までだから、短時日だからというような御答弁がこの前ありました。短時日であろうとこれは明白にしておかなければなりません、その間に問題が起こらないという保証はないわけですから。  それで、そうなると、米軍のADIZと日本のADIZは違いますね。米軍は当然米軍のADIZによって行動していいわけになる。もし日本がきめたADIZに米軍を従わしめるとすれば、私は特別にその確認の取りきめが必要ではなかろうかと思いますが、その点はどうですか。
  90. 久保卓也

    ○久保政府委員 この前もお話し申し上げたところですが、米側にはわがほうでこういうふうにいたしますという申し入れをして、おそらく米側は了解すると思いますが、そうすれば、米側ではわがほうのADIZに従って当面運用してもらえると思っております。
  91. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは不確定だと私は言っているのです。そういうことは厳格にしなければなりません。だからもう少しこれを文書上明確にする、そういう必要があると私は言っているのです。あなたのお考えはわかりましたから、長官のお考えを聞いてみたいと思います。
  92. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 決定は四月末から五月初めごろまでには行なわなければならぬと思っております。したがいまして、当然日本のADIZについて米側と協議をすることになります。したがいまして、いま御指摘のような点については、十分米側と了解をつけたい、こう考えております。
  93. 楢崎弥之助

    楢崎委員 何らかの形でそれが出てくるかと言っておるのです。
  94. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 すでに事務当局でもだんだん話し合いの積み重ねをいたしておるわけでありまして、こういった問題は従来は話し合いで済ましておるというのが慣習であります。したがいまして、十分了解をつけたい、こう思います。
  95. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは、その点については、いつ、どういう形で了解を取りつけたということは明白になさいますね。
  96. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御要望があれば明白にいたしたいと思います。
  97. 楢崎弥之助

    楢崎委員 先日も公明党の伊藤君から指摘がありましたとおり、空を米軍にまかせるということになりますと、やはり情報は米軍が一手に握ることになる。福岡に設けられたあの新しいシステムによって沖繩一帯の防空情報は米軍の判断ですべて処理される。そして、それが自動的に韓国にもつながる仕組みになっていますね。これはもう御承知のとおりです。そうすると、沖繩周辺あるいは韓国一帯にわたってもし空のほうで緊急事態が生じた場合には、日本の意思と関係なくいわゆる米軍行動する可能性はないか、それを心配するわけです。いかがでしょうか。
  98. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御心配になる意味は私もわかるような気がいたしますが、施政権が日本に戻ってまいりますれば、当然安保条約沖繩においては本土並みに適用されるわけでありまするから、重大な事態が惹起されるというような場合には、当然日本政府協議なり、しかるべき措置がとられるもの、こう考えております。
  99. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それではその点はしかと、私は厳格にやってもらいたいと思います。  それから、せんだって、もう再三にわたってお願いしたCF130の嘉手納飛来の事実は確かめられましたか。
  100. 久保卓也

    ○久保政府委員 まだ実態をつかんでおりません。
  101. 楢崎弥之助

    楢崎委員 なぜそんなにひまが要るんですか。
  102. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは、外務省を通じ、大使館を通じて現地の情報を求めておるわけでありますが、その結論を私ども手にしておらないということであります。
  103. 楢崎弥之助

    楢崎委員 なぜ催促なさらぬのですか。
  104. 久保卓也

    ○久保政府委員 係のほうでは催促していると思いますけれども、いずれにせよ、結論をまだ得ておりません。
  105. 楢崎弥之助

    楢崎委員 こんなに返事がおくれていいと思われますか。
  106. 久保卓也

    ○久保政府委員 不適当であると思います。
  107. 楢崎弥之助

    楢崎委員 長官、お聞きのとおりですよ。何ですか、これは。せんだっても申し上げたとおり、核部隊の問題では非常に対応が早かった。けっこうですよ。しかし、これは事実です。しかも、もしベトナムで戦術核が使われるならば、これはたいへんなことになる。そういう可能性と結びついた問題だから、私はこの事実確認を急いでくださいということを言っておるのです。こういうことこそ急ぐべきではありませんか。もう一度申し上げます。十四日の午後に、CF130が二機飛来しておる、その直前に、知花からトレーラー二台で赤線の入った高性能爆弾が多数運ばれておる、これは重大な事実ですよ。われわれはそれを確認しておるんです。だからひとつ政府としてもそれを米軍に確認をしてもらいたい。それでお願いしておるんですよ。それがおくれておるのを、不適当だと思います、何たる答弁ですか、それは。
  108. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 答弁として、ことばがまさに足りなかったと思います。ただ、問題は、御承知のとおりまだ施政権が戻っておりませんので、したがって局長が申し上げましたように、外交ルートを通じて照会をしなければならぬという隔靴掻痒の感があるわけです。したがって施政権が戻ってまいれば、そういう、じんぜん日がおくれるといったような不手ぎわはないわけでありますが、現在まだ施政権がないという悲しさ、髀肉の嘆をかこつわけでありますが、なおひとつ、早急に回答を得るように、それぞれのルートに請求をしたいと思います。
  109. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これは、先ほども青木委員電報を打ってまで確かめられましたね。すぐ返事が来ました。これぐらいやったらどうですか、自民党の諸君も、こういう問題こそ。ほんとですよ。  沖繩への自衛隊の移駐、特に海上自衛隊の対潜部隊、いうところのハンターキラーですが、これは予定としてはどうなっておりますか。
  110. 久保卓也

    ○久保政府委員 ハンターキラーといいますのは、沖繩に配備する計画はございません。沖繩には構成用の小型艦艇と、それからP2J哨戒機であります。もし哨戒機がハンターキラーという意味でありますれば、本年の十二月の末に配置の予定であります。
  111. 楢崎弥之助

    楢崎委員 今後もその予定は全然ありませんか。
  112. 久保卓也

    ○久保政府委員 ハンターキラーグループといいますのは、われわれのことばで申せば護衛艦数隻、われわれが考えておりますのは八隻でありますが、場合によってはヘリコプターを搭載する護衛艦を含めてハンターキラーグループをつくるわけでありますが、それは沖繩へ配備する計画は全くございません。
  113. 楢崎弥之助

    楢崎委員 四次防では、護衛艦にNTDS、戦術指揮システムを装備する計画がありますか。
  114. 久保卓也

    ○久保政府委員 四次防の内容としては、これから検討してまいりたいと思いますけれども、海幕の考え方の中では、指揮装置、これはコンピューターを含めたものでありますが、要するに情報の処理とそれから指揮管理を自動化するという組織でありますが、こういったものを逐次艦艇に備えてまいりたい。どの程度の規模にするかは総体の予算その他の関連があろうと思っております。
  115. 楢崎弥之助

    楢崎委員 護衛艦の中で放射能の汚染洗浄装置は何%つけられておりますか。
  116. 久保卓也

    ○久保政府委員 汚染を洗い落とす装置をつけたのがありますが、何隻でありますか、ちょっと私記憶しておりません。
  117. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これは、ほとんど装置をつけておると私は思います。それからNTDS、これも日米海軍同上が共同作戦をするときには必須の装置であります。しかも護衛艦はほとんど放射能汚染の洗浄装置をつけておる。つまり、私が申し上げたいのは、いわゆる海上の場合でも米海軍の核システムの中に組み込まれておるんだということを私は申し上げたいわけであります。  時間がまいりましたのであの資料の点はそのまま保留にして、理事会の決定を待ってまたあと質問を続けたいと思います。(拍手)
  118. 永田亮一

    ○永田委員長代理 西中清君。
  119. 西中清

    ○西中委員 沖繩の返還も旬日のうちに迫りましたが、一方ではベトナムにおいて北爆が激化いたしておるわけでございます。こういう背景から、いわゆる沖繩基地について返還後どういう態様になるかということは非常に国民の不安とするところでございます。従来の政府答弁は一貫して、日米安保条約及びその関連の取りきめのワク内に入るということでございますが、事実問題として、これは非常な疑点があるということはだれしもが危惧いたしておる重大な問題だろうと思います。したがいまして本来でございますと、返還後の沖繩の問題については、六九年の日米共同声明の第四項の中にあります、いわゆる再協議をするというこの問題について、何らかあるのではないかというように私たちは考えておるわけでございます。しかしその点についてはいまのところ明快な、そしてわれわれ国民を安心させるだけのものは出ておらないと思います。特に「米国の努力に影響を及ぼすことなく沖繩の返還が実現されるように、そのときの情勢に照らして十分協議することに意見の一致を見た。」こういうようにあるわけでございますが、北爆激化の今日においては、安保条約というようなそういうワク組みでは律し切れないものがある。私は協議をするのが当然ではないかというように考えるわけでございますが、この点どのようにお考えでしょうか。
  120. 福田赳夫

    福田国務大臣 一九六九年の共同声明のいわゆる沖繩協議条項、これは朝鮮におきまするフエブロ事件、これはまあたいへんな事件であったわけでございますが、その後の状態を踏まえてできた声明である、まあこういうように理解しております。したがいまして、あの時点での日米両国の認識、そういうものが基礎にあった、こういうふうに思うのです。ところが、その朝鮮半島の事態もおさまっておる。しかしベトナムの問題、これは当時もどうなるか、そういうようなこともありましてまたああいう状態も出てきた、条項も出てきておる、こういうような次第でございますが、不幸にして最近においてこれが激化しておるというような状況であります。しかし沖繩の返還、これはもうすでにその期日がきまっておる。これを動かすことはできない。またこの沖繩返還の実体、これも協定によりまして、また協定の付属諸文書によりましてことこまかにきまっておる。こういことでありまして、これももう動かすことができない。そういう性格のものであることは御理解がいただけるだろう、こういうふうに思います。しかしまあ想像してみますと、あとは、ベトナムの新事態に即しまして沖繩戦闘作戦行動基地として事前協議対象となすケースが出てくるか出てこないか。その場合に、日本がこれに対してイエスと言う弾力的な姿勢をとるかとらないか、こういう問題があろうか、こういうふうに思いますが、しかしこれに対しましても、しばしばお答え申し上げているとおり、今月沖繩ベトナム戦争作戦行動基地として使われる可能性というものはない、こういうふうに考えており、したがいまして、あらゆる角度から考えまして、安全保障条約並びにその関連諸とりきめは本土同様に沖繩には実施される、適用される。そういうふうに考えており、これに対して何ら特例を設ける必要はない、かように考えております。
  121. 西中清

    ○西中委員 ただいまの御答弁ではございますけれども、サイミントン委員会におきましては、「返還後のヴィエトナム戦争継続と米国の沖繩基地の使用」という項におきましてジョンソン次官が証言をいたしております。それでここでは「次に第四項で言及するのはヴィエトナムについてである。注意いただきたいのは、もし、平和が「沖繩返還時に至るも実現していない場合には、両国政府は、南ヴィエトナム人民が……を確保するための米国の努力に影響を及ぼすことなく沖繩の返還が実現されるように、そのときの情勢に照らして十分協議する」」こうありまして、この最後の「十分協議する」という点についてさらに言及いたしております。「「協議とは、日米安全保障条約に規定されている協議ではなく、」、これがまず第一点、問題であろうと思います。「沖繩返還時以前に行なわれる協議を指すものであることを注意しておきたい。」」そして「この第四項の意味は、沖繩返還が予定されている時点において、米国が現に沖繩から発して行なっていること、あるいは、行なうことを欲することがある場合には米国が沖繩から発して行ないたいと考えるところを継続して行なう同国の能力を損なうことのないような合意又は取り決めを日米間で作成することとなろうということである。」現に行なっていること及びこれから行なうことを欲することがある場合には協議をしなければならない。あくまでもこれはベトナム戦争に関する質疑の証言でございます。  したがってこの内容からいったならば――少なくとも国会におきまして次官が証書をしておる。そしてそこでは合意ないしは取りきめが必要だという明言をいたしておるわけでございます。これは外務省から出ている資料でございますから、また翻訳でございますから、当然これに関して何らかの話し合いがあったはずだというふうに私は理解をいたしておりますが、その点はどうでしょうか。
  122. 福田赳夫

    福田国務大臣 沖繩基地の運用に対しまして特例を設けよ、こういうような趣旨でアメリカ側から協議があったというような事実は全然ございませんです。なお、今後沖繩返還時までにそういうような協議があるというようなことは予想しておりませんです。
  123. 西中清

    ○西中委員 予想はしてないということですが、実際問題として海兵師団とかまたF4とか、こういったものがいろいろと行動を起こしておるというそういう背景も伝えられておるわけであります。しかも、返還時においてこういう状況が急激な変化をするという保証もいまのところはないわけであります。アメリカ軍が現在行なっておるこういうことが急激に低下をして、何ら問題がないというような状況になるという判断もあるいは一つの判断かもしれませんけれども、常識的に考えて、沖繩基地というものがいままでとは全く違った形で運用をされるというように考えるほうがむしろ不自然ではないかというように私は考えるわけです。ここで日本政府がこういう事態を控えて何もこういう協議をする意思を持たないのかどうなのか、またあったけれどもたいした問題にならなかったというのか、またはアメリカ側から何の提案もなかったのか、この辺はどうでしょう。
  124. 福田赳夫

    福田国務大臣 わがほうといたしますると、本土並みに基地の運営をするという立場にあるわけです。でありまするから、例外を設けてくださいというのをこちらから話を持ちかける、そんなことは考えられません。これはどこまでも、例外を設けてください、こういう話はアメリカ側から来るべき話なんです。   〔永田委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、いままでありませんし、あのような事態は私どもでは想像できませんし、また同時にそういう動きもありません。
  125. 西中清

    ○西中委員 ないとすれば、実はまことにふしぎだという考えは依然として残るわけであります。それはそれとして、防衛庁長官もお出になるそうですから、先ほど楢崎委員からも質問がありました岡崎・マーフィー協定についてお尋ねをしておきたい。ということは、本来は私は共同声明の第七項にあります原則、いわゆる沖繩の問題について、日本が負っておる基本的な義務というものを考えていけば、当然これは再協議というものも行なわれなければならぬというふうに認識をしております。ここでむしろ再協議をすることを避けて何らかの穴埋めをしなければならない。たとえば空軍機の自由出撃なり、そういった問題を処理するためにはある種の手当てをしなければならぬ。そこで岡崎・マーフィー協定が出てきたのではないかという疑問が実は新聞報道等でも盛んに伝えられておるわけであります。私もその点はなぜこういう昭和二十八年にできました岡崎・マーフィー協定、言うなれば死文化しておるこういった協定を、まるであの世から呼び寄せるような亡霊を引っぱり出してくるような今回の処置というものは、まことに不自然、まことにおかしな状況、こう思わざるを得ないわけであります。わが党の伊藤議員からもせんだって内閣委員会で質問をいたしておりますけれども、先ほどこの点について質問もございましたので、その点は省略いたしまして、少なくともこれは一時は死文化しておった、わがほうではそのように認識をしておる。またそれが常識になっておったのではないかと思いますが、その点はどうでしょう。
  126. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 岡崎・マーフィー協定の内容そのものは日米安全保障条約の本行にのっとって行なわれたものでありまするから、日米安保条約が生きておりまする以上、これが著しく逸脱したり死文化したものとは思いません。したがって、生きておったという解釈のほうが私は自然であると考えます。
  127. 西中清

    ○西中委員 この中で、「北海道上空」ということがございますが、せんだっての新聞報道では、これは例示であるというようなことを防衛庁の見解として言っておったように思います。この解釈は間違いございませんか。
  128. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 まさにそのとおりでございまして、北海道に著しくというアクセントがついておるというふうにお考えをいただきたいと思います。
  129. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、これは日本本土すべてに適用されるということでございますから――死んでおったか死んでないかは別問題として、現在復活されようとしておるわけでございますが、これは日本本土全部に適用されるわけでございますか。
  130. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 現実的には、先ほどから政府委員もお答え申し上げましたように航空自衛隊にその能力ができてまいりましたので、直接的な領空侵犯についてはわが航空自衛隊がその任に当たっておる。ただし今度の沖繩の場合は、例外中の例外ということで過去の合意をそのまま受け継ごう、こういうことにしたわけでございます。
  131. 西中清

    ○西中委員 もしこれが本土に適用されるとするならば、明らかに事前協議が空洞化するのじゃないかという疑念を私たちは持っております。そこで先ほどの御答弁の中でもございましたが、沖繩に適用するというのは一年限りだ。そしていまのお答えで日本本土にはこれは事実上はないんだということでございます。こういう重要な問題についてしかもわれわれ国民としては死文化しておったという認識下にあったこの岡崎・マーフィー協定が復活をするという、これは自動的に有効であるということでしょうけれども、いずれにしてもこれは至要な問題でございます。当然アメリカ側と合意をされたというふうに思いますし、先ほども久保局長からお話があったようでございますが、その合意をされたのはいつ、どこで、だれとだれが話し合って、どういう経過だったかということを簡単におっしゃっていただきたい。
  132. 久保卓也

    ○久保政府委員 前段は外務省の問題でありますが、たしか昨年の初めのころであったと思いますけれども、外務省と大使館とで話し合われたということであります。私どものほうでは幕僚レベルで、つまり航空幕僚監部と五空軍司令部の幕僚とで常時沖繩の返還について話し合いをしております。そこで大使館と外務省の基本的な話し合いに基づいて、この書簡に基づいて侵空侵犯措置をわがほうが引き受けるまではいたしましょうということで話し合いがついております。具体的な日時はちょっと記憶いたしておりません。
  133. 西中清

    ○西中委員 一年間とか沖繩に限るということについては、何か文書がございますか。
  134. 久保卓也

    ○久保政府委員 いまの理解は本土全般つまり沖繩を含めた本土全般に書簡が有効であるということであって、事実上は本土に米空軍の部隊は存在しません。岩国の海兵隊部隊がありますが、その他ではございませんので、事実上働かないということであります。そこで沖繩についてはわがほうの準備ができませんので、本年一ぱいは米側にやってくれということで話し合いがついておるわけで、格別文書でもって沖繩に限るということではございません。
  135. 西中清

    ○西中委員 そういう重要な、また国民には疑惑になるような問題なんですから、私は当然こういうものは文書にすべきではないかというように考えるわけです。ないといえばそれまででございますけれども、この辺ははっきりしてもらわなければならない問題だろうと思います。その点先ほども関連して、ちょっと意味は違いましたが何らかのというお話楢崎委員にもございましたけれども防衛庁長官、こういう点で合意すべき文書か何かをおつくりになる気持ちはございませんでしょうか。
  136. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 従来の慣習は、話し合いでこういうことは片づけてきた。たとえば領空侵犯をひとつそちら側で御協力願いたいというものも一つの書簡になっておったわけではあります。さっきもお答えしたように、慣習は話し合い、こういうことになっておりますが、十分念入りにしてみたいと思います。
  137. 西中清

    ○西中委員 米軍の防空行動は、いわゆる自衛隊でいうスクランブルというようなものと違って、戦闘行動も含まれる。したがって、この岡崎・マーフィー協定で述べております米軍は一切の可能な措置をとるということについては、これは非常な問題であろうと思います。少なくとも事前協議の適用ということは実際上はむずかしいだろうし、また米軍行動を規制し、戦闘行動をさせない、こういうことは事実上は不可能な事態も予想される可能性があるというように考えますが、その点はどうでしょうか。
  138. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御心配される意味はわかりますが、沖繩の施政権が戻ってまいりますれば当然安保条約のもと、これは本土並みでありまするので、本土並みに扱われるもの、こう確信いたします。したがいまして、御心配の点等については、もし何か事があるというような場合には、当然連絡もありましょうし、協議があるものと考えます。
  139. 西中清

    ○西中委員 いずれにしましても、私は日米共同声明の第四項の再協議によって国民が持ついろいろな不安、そして疑惑というものをむしろ除いていかなければならぬ、こういうように考えております。おそらく私は勘ぐりであろうかとは思いますけれども、今日まで久保・カーチス協定ないしは沖繩の自衛隊配備に関しての問題、いろいろと国会でも問題になり、国民の反発も買っておるわけでございます。だから、国会対策上新たな軍事的な取りきめというものを避けたのじゃないかというように考えられるわけでございます。この観点からさらにもう一歩私は話を進めまして、ベトナムの北爆、これに関連してまず最初に法的な問題で御質問をしておきたいと思います。  アメリカ軍わが国から戦闘作戦行動及び戦闘行動を行なった場合、これは戦争法規の適用の上で根本的な区別があるのかないのか、その辺はどう考えていいかお伺いしたいと思います。
  140. 高島益郎

    ○高島政府委員 西中先生の御質問の意味が必ずしも私よくわかりませんが、米軍が、たとえばベトナムで戦闘する場合に、どういう戦闘法規が適用されるかというお話かと思いますけれども、これは第二次大戦を契機といたしまして、戦争の概念がすっかり変わりまして、現在では武力の行使というのは国連憲章のもとで自衛権の行使以外のためには使ってはならないということになっております。第二次大戦前では戦争が必ずしもそのように非合法化されておりませんで、一般的に宣戦布告さえすれば戦争をやれるという法規でございました。戦後はそういうふうに戦争ということは一般的に法律で禁止されております。したがって、この自衛権のもとでの武力行使、ただこのような状態のもとにおいてどのような法規が適用されるかという点につきましては、いろいろ学説もございまするけれども、私は戦闘に関するいろいろ陸戦の法規、こういったものは当然戦場においては適用される。したがって、いろいろの、捕虜の交換の問題とか、それから戦争関係のない一般の市民の被害を防止する関係の法規とか、そういったものはすべて適用されるというふうに考えております。しかし、それ以外に、たとえば中立法規とか戦争全般にわたって適用されるような戦前の一般の戦時国際法というふうなものが適用されるというふうにはわれわれは考えておりません。
  141. 西中清

    ○西中委員 質問が、ちょっとことばが足らなかかったかと思いますが、要するにアメリカ軍わが国から戦闘作戦行動を行なう、ないしはそういうことでなくても、わが国から戦闘作戦命令を受けないで出動する。しかしながら、これは他方の交戦国から見れば、北側から見れば、明らかにこれは一つの敵の戦力、わが国からの戦闘行動という、広い解釈で入るのではないか。その意味では戦争法規の適用に戦闘作戦行動も、戦闘行動も差はないのじゃないかというように私は聞いておるのですが、その点はどうでしょうか。
  142. 高島益郎

    ○高島政府委員 私、一般論として申し上げます。  日本の施設、区域を使用して米軍戦闘作戦行動を行なう、この前提になります国際法といたしましては、米軍はいわゆる国連憲章第五十一条に基づきますところの集団的自衛権の行使として日本の施設、区域を使って第三国に飛んでいく。したがいまして、この第三国が米軍の攻撃を受けたからといって、これに対しまして日本に対する反撃を行なうということは、私どもといたしましては、もともと侵略がありまして、これに対して自衛権の行使が行なわれるということでございますので、法律的に申しますと、さらに侵略を行なった国が日本基地を攻撃するということは、いわゆる侵略の拡大であるというふうに法律的には考えております。
  143. 西中清

    ○西中委員 そうすると、私は法的にいま厳密に聞いておるわけですが、アメリカ軍が侵略するしない、また北側が侵略するしないというのは別問題として、事実行動としての面で私は平等に扱われるべき問題ではないかというように聞いておるのですが、それも違いがあるとおっしゃいますか。
  144. 高島益郎

    ○高島政府委員 安保条約のたてまえは、国連憲章優先ということをはっきり原則として第七条にうたっております。したがいまして、米軍行動につきましては、これは侵略とかなんとかということはもってのほかのことでございまして、あくまでも国連憲章第五十一条に基づく個別的または集団的自衛権の行使として以外は認められない。そのもとでさらに事前協議対象になった場合には、これを日本がチェックしてイエスまたはノーと言うというふうに、こういう二段がまえの歯どめになっているわけでございます。
  145. 西中清

    ○西中委員 事実関係をいま言っているのじゃない。法的な問題として言っている。ですから、もう一ぺん言い方を変えますと、一方の交戦者に補給基地を与えたり、または軍隊、軍艦等の集結基地を認めたり、軍隊の通過を許す場合、これはベトナムも、また日本の場合、こういうことに関係なしに、一般論として国際法上ではどういう地位に置かれるのかということです、私が聞いておるのは。その場合、国際法はその国は交戦区域となるのかならないのか、その点はどうでしょうか。
  146. 高島益郎

    ○高島政府委員 お答えします。  これは戦前の戦争の概念から申しますると、戦争があった場合に交戦当事国以外は、いわゆる中立国ということで中立国としての特別の義務を負わなければならない。したがって、その交戦国に対して基地を提供するとか、交戦国の必要とする戦略物資を補給するとかということは禁止されております。これはしたがいまして戦前の戦争を前提とした国際法の概念でございまして、戦後は先ほど申しましたとおり、自衛権の行使として以外の武力の行使は認められない、または国連自体が決定をした強制措置以外、たとえば朝鮮におけるがごとき場合以外は各国がかってに武力を行使することは許されないというたてまえからいたしまして、そのような前提に立ちますと、ただいま先生がおっしゃったような戦前の交戦国あるいは中立国、これとの関連におきまするいろいろの法規の適用ということは、現在はございません。したがって、戦地においては、先ほどいろいろ申しましたとおり、いろいろ戦闘に関する諸法規が適用されるというふうに思いますけれども、それ以外の国を中立国として中立法規を順守しなければならないというような関係には立ちません。したがって自衛権の行使に対して特定の基地を提供するというようなことは、何ら現在の国際連合憲章のもとで禁止されておる行為ではないというふうに確信しております。
  147. 西中清

    ○西中委員 これで押し合いをしてもしようがないのですけれども、私は非常に重要な問題だと思います。いま戦前の解釈、戦後の解釈というようにおっしゃっておりますけれども、やはりこういう場合には交戦区域というようにみなされるのは当然だろうと私は思います。現にこれは四十一年六月一日の外務委員会でございます。与党の鯨岡委員が質問をされて、それに対して椎名元外務大臣がはっきりとお答えになっている。いわゆる日本はベトナムのこの戦争については敵性を持っておるというように明言されております。その点は変わったのか変わらないのか、この事実は認められますか、どうですか、その点をもう一ぺん。
  148. 高島益郎

    ○高島政府委員 ただいま御引用になりました椎名元大臣の御答弁の趣旨が、速記録をよく読んで前後の関係を見ませんとわかりませんので、御答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  149. 西中清

    ○西中委員 では鯨岡委員の質問は、アメリカベトナム戦争に参加している。したがってわが国は直接ではないが間接的な基地になっている。だからアメリカの相手国である北ベトナム等から見れば、日本は直接の敵ではないが、敵性国になっている。それによって起こる危険はやはり日本にある。そういうものをなしに安保条約考えられないという質問に対しまして、椎名外務大臣は、ベトナム戦争がもう少し近いところで行なわれているとはっきりする。私は危険はないとは言えないと思う。一般的に言って、安保条約体制にあるがゆえに一種の敵性を持ったと認められて、そうした攻撃を受けることはあり得ると思うというように述べております。さらに、しかもそれは一般的な問題であって、いま非常に距離が遠いベトナム戦争に関しては現実的ではない、こういうような御答弁になっておるわけです。ですから私が先ほどから言っている、いわゆる交戦区域としての認識を、北側から見れば起こり得るのではないかという、これは法律上の問題もありますが、そういう観点から私は確認をいたしておるわけですが、これは間違いですか、変わっておりますか。
  150. 高島益郎

    ○高島政府委員 私先ほどから申しておりますのは、ベトナムという事態を前提にした答えではなくて、一般国際法の問題として、現在国連憲章下のいろいろな不幸な武力行使の例につきまして法律的にどうかというお話しなものですから、そういう観点からお答えしておりました。ただいまの御質問はこれはまさにベトナムの事態を前提にした当時の質問、あるいはこれに対する同等でございまして、私からどうこうというお答えをするのはあるいは不適当かと思います。ただ椎名元大臣が敵性と申しました意味が私もどうもよくわかりませんのですが、法律的な意味で敵性というのは少しどうかという感じがいたします。ただ一般論と申しまして、これはあくまでも一般論でございますけれども、あるところで侵略が行なわれて、これに対して米軍が集団的自衛権の行使として日本から発進していく。そのことに対しまして、その侵略をした国が日本に対して反撃するということについて、その侵略をした国が日本をどう見るかという点について、全く法律的な観点を離れましてこれを敵性のある国というふうに観念することはあり得るかもしれないという点は、私も事実問題としては考えられます。しかし厳密に現在の国連憲章下の国際法という観点からいたしますと、これは非常に無理な法律見解でございまして、やはりあくまでも侵略の拡大であるというふうに私たちは考えております。
  151. 西中清

    ○西中委員 ただいまの問題について大臣はどのようにお考えになりますでしょうか。
  152. 福田赳夫

    福田国務大臣 まずわが国立場から申し上げますが、主観的に申し上げまして、わが国が北ベトナムと戦争しておるというそういう考え方は全然これはあり得ないと思います。  それから客観的な情勢から申しましても、わが国アメリカの対北越戦、その作戦行動基地となる、こういう事実は私は起こり得ないと思うのです。つまり作戦行動基地と、米軍のわが日本安保条約にのっとって滞在する地位、これは私は区別して考えてもらいたいと思うのです。つまり作戦行動というのが起こり得ることは、考えてみれば、航空隊がわが国が提供しておる米軍わが国基地から発進をして、そしてそれが直路ベトナム戦に参加をする、そういうことが反復される、そういうことになると、まさに私はこれはわが日本米軍基地作戦行動基地になる、こういうふうに言えると思うのですが、そういう実態は私はいまベトナム戦の様子を見まして起こり得ない、こういうふうに考えるのです。したがいまして、今度は北越側の立場から見てどうか、こういうことになりますが、日本の国が北越と戦争だというような主観的立場にはならない、同時に、客観的な事実も存在しない、こういうことで、北越がわが国に対しまして敵国であるというような考え方を持つことはあり得ない、かように確信をいたします。
  153. 西中清

    ○西中委員 私は先ほどの法的な解釈そのものがどうもまだ納得はしておらぬわけですが、向こうが日本が敵性を持っておるというふうには考えないだろうというふうに確信をしておられる、外務大臣がいまお答えでございます。しかしそれは非常に私は甘いのじゃないかというふうに考えます。やはり現に岩国から航空隊が移動しただけでも、これは北側から抗議をしておるわけでございます。たとえばまたベトナム海域で作戦を行なっていたアメリカの空母コンステレーションは四月三日再び緊急に横須賀を出港して、ベトナム海域に向かっておる。また九日にはハノイ放送が、いま申し上げたように、この岩国からのF4ファントムの移駐について非難をしておる。こういったことはいずれも直接の戦闘作戦行動ではないということになっておるし、かりにそうだとしても、私はベトナムにおいて戦闘行動を行なうためだという、やはりこれは事実関係ははっきりしておると思います。ですから、わが国がこの戦争のために当地の使用を認めるということは、やはり交戦区域ないしはそれに近い印象を持たれ、また法的にもいささかの疑点があるというふうに考えます。おそらくそこには当然自衛権というものも相手側にすればあるということもあるわけでございますから、相手側が意思とか能力とかいうものを十分保持しておったならば、わが国は攻撃されるという可能性は出てくる、特に沖繩においては、この返還後において重要な問題になるということを考えるわけでございます。いま日本としてはないんだ、しかし沖繩から大量の米軍の移動、補給にしろまたこういった直接の戦闘作戦行動でないにしても、何らかの行動がたいへんな頻度また量において行なわれたとしたならば、これはそう言っては済まないのではないかというふうに考えますが、その点どうでしょうか。
  154. 福田赳夫

    福田国務大臣 私はベトナムの地理的関係、そういうようなことを考えますと、わが国の国土が北ベトナム戦に対する基地として戦闘作戦行動のために使われる、こういうようなことはあり得ないと思うのです。もしそういう目的のために、たとえばB52の発進を認めろ、こういうようなことがあれば、私どもはそういうことに対してノーと、こういうふうに言うつもりでございますけれども、とにかくわが国基地といたしまして作戦行動が行なわれるという事態は、私どもは想像いたしておりません。どうもいろいろお話がありますが、私はそういう心配、それは全然感じておりませんですが、沖繩が本土に返ってくる、ベトナムに近い地域にこれは位している島々でありますけれども、もう安全保障条約の制約下に完全に入るわけでありまして、この安全保障条約の歯どめ、これは厳重に守ってまいる、かような考えであります。
  155. 西中清

    ○西中委員 そこで、ベトナム海域で戦闘作戦行動戦闘作戦を行なって後に、補給その他の目的でわが国基地に入ってくる場合、たとえば軍艦とか航空機というものがベトナムのほうで戦闘行動戦闘作戦を行なって、補給その他の目的でわが国基地に入ってきた場合には事前協議対象になりますでしょうか。
  156. 福田赳夫

    福田国務大臣 帰ってくる場合は、これはもう別に事前協議対象にはいたしません。しかし、これがほんとう戦闘作戦行動のために今度は出ていくのだ、こういうことになりますれば、これは事前協議対象になる、こういうことでございますが、私はそういう事態は大体あるまいと思うんです。ただ観念的にもし万一そういうことがあったらどうだというお話でありますれば、この事前協議申し出に対しましては、わが国はノーと答える。これははっきり申し上げます。
  157. 西中清

    ○西中委員 あり得ないとおっしゃいましたが、むしろ沖繩ではそういう可能性が非常に多いというように私たちは認識をしておるから聞いておるわけでございます。そのときにはいま大臣もノーと答えるんだということでございます。  それでさらに具体的な例を申しましてお聞きをしたいんですが、現在アメリカ海軍がベトナム海域へ戦闘行動を行なっております。そして、いままでの戦闘の様子とは違って、米国の軍艦が被害を受けておる、損害を受けておる、こういうように伝えられております。この軍艦がたとえば横須賀のドックに修理に入ってくる、こういうことは事前協議対象となるのかならないのか、その点はどうでしょうか。
  158. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほど申し上げましたように、帰ってくる――まあ戦闘に参加したにいたしましても、戦闘が終わって帰ってくるということでございますから、そのための修理、これも事前協議対象にはいたしません。これもただ、先ほど申し上げましたが、戦闘作戦行動のためにそこから出ていく、こういうことになりますれば、そのときは事前協議対象にする、こういうことであります。
  159. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、修理を終わってもう一度ベトナム海域に直接出るという場合はまずいというわけですか。
  160. 福田赳夫

    福田国務大臣 戦闘作戦行動のために出港する、そういう際におきましては、これは事前協議対象にする、こういうことを申し上げておるわけです。ただ単に、今度はハワイに行きます、フィリピンに行きます、そういうような移動、移駐、そういうために出かける、これは事前協議対象にはいたしません。
  161. 西中清

    ○西中委員 私が言っておるのは、ベトナムで戦争をして損害を受けた、横須賀のドックに入って、そして修理をして、そのまままたベトナムに帰ったとき、この場合は事前協議対象になるのかということです。
  162. 福田赳夫

    福田国務大臣 それが戦闘作戦行動だというためでありますれば、ベトナムであろうがどこであろうが、これは事前協議対象になります。
  163. 西中清

    ○西中委員 事実上戦闘作戦行動というものの命令を受けておらない、こういうことであれば、事前協議としては対象にならないということに一切はなるわけでございます。この点でわれわれとしては死文化しておる、こういうような判断をするわけであります。御答弁を聞いておりますと、今日まで事前協議が一度も発動しておらないということも当然じゃないか。むしろ政府自身がいろいろな危険性ないしは外国から批判を受けたり誤解を受けるようなこういう形について、つとめてアメリカに都合のいいような解釈をしてきた、これが今日の事前協議制の実体である、私はそのように思います。むしろ岩国の場合、海兵隊が移動したとか、そのほかいろいろな問題が出た場合に、政府としては実態調査なり、米軍にその真意というものをきちっと申し入れて調査をするくらいの襟度がなければ、事実上この事前協議というものは空文化しておるということが言えると思います。いずれにしても米軍基地使用を認めること、特に沖繩の場合はベトナムに近いわけでございますから、そこで先ほどもちょっと話が出ておりますが、敵性として見られるような立場に立つような危険性のあるものは、むしろ日本側から積極的に排除して、それを防ぐためにやっていくということが事前協議の上ではまことに重要な問題だと思います。こういう点で、外務省としては、事前協議というものをどうもいろいろと検討するというようなお答えがあるかと思うと、またへこんだり、参議院における答弁ももう一つ明快にしておらないわけでございますが、事前協議について今後どういう内容の検討をされるのか、またアメリカ側話し合いをされるのか、具体的にお答えを願いたいと思うのです。
  164. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は事前協議制度につきましては、もうとにかくこの制度は創設されて十二年も経過しておる。その間に国会においていろいろと御議論がありまして、政府もそれに対して政府見解というものをいろいろなケースについて申し述べておるわけなんです。ところが顧みてみまして、政府見解にしましてもまだ不明確というか、詰めていくと明確を欠くような点もある。それからなおあります問題は、アメリカとの間にこれでお互いに正しい合意ができておるかというと必ずしもそうでない面もあり、つまりわが国の一方的解釈だというような面もある、そういうようなことを考えますると、沖繩返還ということで、いま西中さんからいろいろと沖繩を頭に置きながら御心配だという御意見を含めての御質問もある、こういう状態であります。いい機会でありますから、この機会にひとつ十二年間の論議の過去をいろいろと検討してみる、そして考え方を固めてみたい、そして皆さんにも御理解が行き届くように努力してみたい、こういうふうにいま考えておるわけたんであります。そういうことが私の、事前協議問題についてアメリカ話し合いをしてみたい、こういう考え方の基本でございます。
  165. 西中清

    ○西中委員 私が先ほど来からの質問をいたしておる真意は、確かに事前協議そのものが現実では空洞化しておるという認識を持っておって、これについては多くの反省をしていただきたいという一点。  もう一つは、この事前協議の運用上の問題もございますが、むしろアメリカの議会でも批判が出、そうして国民の間でも反戦運動が盛り上がっておる。このアメリカの国内的な反戦ムードといいますか、そういうもの、そういう中でアメリカがやっておる戦争というものは、何も日本がこれについて基地を提供して支援をしていくという形をとっていかなくてもいいんじゃないか、この辺は、外交姿勢の上でもう少し明確な態度というものを、アメリカ側に対する姿勢というものを立て直していただかなければならないのじゃないか。どこまでほんとうかわかりませんけれども、大統領が突っ走って北爆を再開したのだ、多くの反対があるのだ。私はそういう面では少なくとも北ベトナム側から見れば交戦区域、そこまでいわなくても敵性を持つようなこのベトナム戦争における日本の位置というものを何とか変えていかなければならない、こういうように考えるわけでございます。ですから、事前協議の問題とあわせて、特に沖繩の返還を控えて、今後のアメリカ軍行動について、特にベトナム戦争に関する行動については十分な話し合い協議をお願いをしたいと思います。しかし事前協議も内容の検討とあわせて、双方が信頼関係を結んで忠実に実行すればそれなりの意味があるかと思います。しかしながら、外務大臣とか総理がこの事前協議について検討したいというような御答弁をされている一方、これはどこまで真実か知りませんが、二十五日の新聞によりますと、外務当局、防衛事務当局、こういう事務当局のほう、お役人さんのほうではむしろ非常に冷淡であるというか消極的であるということが伝えられております。私はそういうことはないと思いますけれども、外務省の役人は少なくとも日本国民の信託を受けて外交というものを展開されておる、そういう自覚に立っていただかなければならない面もあるわけでございます。事前協議制度、そのためにどこをいじるのだ、どこを直すのだ、こういうような認識にあっては絶対にならない。こういうことが新聞に伝えられるようでは、大体この事前協議も先行きが見えておるのじゃないかというようにおそれるわけでございますが、もう少し前向きで取り組んでいただきたいし、そういう姿勢ではないかというように思うのですけれども、念のためにこの機会にお聞きをしておきたい。どうでしょうか。
  166. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが外務省においては私が皆さんに申し上げていることにつきまして事務当局が消極的であるとか協力をしないとか、そういうことは一切ございませんから、これは御安心のほどをお願いしたいと思います。  事前協議制度は安全保障体制のもとに、わが国戦争に巻き込まれない、こういうための歯どめである。そういうことでありますから、非常にこれは厳粛な大事な制度であります。そういう認識の上に立ちまして、これはどこ左でも運用を適正にしていかなければならぬ、こういうふうに考えます。ただ、つけ加えますれば、この安全保障条約、こういうものにつきましては私どもは西中さんといささか考え方が違う。私どもはこれはどうしてもわが国の侵略に対する抑止力といたしまして必要である、こういうふうに考えますので、この制度を棄損をする、こういうようなことになることはこれは絶対に避けなければならぬと思います。しかしそういう前提のもとに、この制度の運用につきましては適正にこれが運用されるよう今後とも努力をするということを申し上げさせていただきます。
  167. 西中清

    ○西中委員 終わります。
  168. 櫻内義雄

    櫻内委員長 曽祢益君。
  169. 曾禰益

    ○曽祢委員 きょうは国際情勢に関する質問を申し上げるつもりだったのですけれども、はからずも青木さんから海軍長官あての電報並びにその返事、アメリカのいわゆる極秘電報に関する問題が提起され、また楢崎委員からもそれに対する質問といいますか、所見が述べられたので、私も、これは非常に重大な問題でございますから、この点について意見を開陳しながら政府に質問をしたいと思います。  最初に申し上げたいのは、実は四月十三日の外務、内閣両委員会の連合審査の際に私はっきり申し上げましたように、問題は二つあるのではないか。一つ楢崎君から提起された電報、それが本物かそうでないのか。この問題と、もう一つは、アメリカの核政策の新段階において、あの電報が示唆しているような日米両国の共同の核部隊をつくるという構想そのものが、蓋然性といいますか、政策的理屈からいってもそれがほんとうらしいのか。その政策の信憑性についての議論、この二つある。かりに政策論からいってこの信憑性があるといっても、しかしそれだからといって電報が本物かどうかは、これは別問題。私どもはその電報の信憑性を知るべくあまりにも十三日の段階においてデータは少なかった。やはりこれは合同委員会の席上で出された重大な問題ですから、これは十分にかつ徹底的にこの電報の真否についてのはっきりした見きわめをつけてからでないと、軽々にそれを断定するのは適当でない。こういう意味で、私はあえてこの電報そのものの真否についての私の見解、当座の見解等もないではございませんが、これは申し上げない。もっぱらその時点では、このアメリカの核政策から見て日本に対してこういうBLFというような構想を持ってくることのいわゆる信憑性についての私の研究の結果から見てどうかなと、かなり重大な疑問があるのではないかということを申し上げたつもりです。そこで、しかし本日さらに一つの新たな段階になっていると思うのです。当委員会、外務委員会としては初めてですけれども、厚木委員から重大な電報の紹介がございました。また楢崎委員は、いまおられないで残念ですけれども、やはりニュースソースを秘匿するために、そうすれば、最終的にはこの電報については結局電報の真相を証明することは非常に困難であって、いわゆる傍証、間接的にしかないように御発言になりましたが、私は非常にそれは残念です。どういう機会にどういう方法で、このデータについての人手の秘匿をしながらでも、この問題についての黒白を明らかにするのがほんとうだと思います。したがって、この問題についてはぜひひとつ委員長にお願いしたいのですけれども、本委員会の権威にかけてこの問題についてやはり徹底的にこの真相を――政策論もけっこうだけれども、また電報そのものの真否もけっこうですが、やはりそれを明らかにする徹底的なこの委員会における審議をひとつするように、これは理事会で御相談願いたいと思います。その中に私は、これは単なる希望ですけれども、この重要な資料を提供された同僚委員楢崎君もまた青木君も進んでわれわれの質問にも答える用意がおありであるかどうか、これもひとつ委員長のほうからお聞き願って、またその取りまとめはひとつ理事会でやっていただきたいと思いますが、その点をまず委員長にお聞き申し上げたいと思います。
  170. 櫻内義雄

    櫻内委員長 曽祢委員に申し上げますが、先ほど来各委員の要望がございまして、それぞれを理事会で協議するようにお答えを申し上げました。ただいまの御発言もまことにごもっともでございまして、その御趣旨に沿って理事会において御協議申し上げたいと思います。
  171. 曾禰益

    ○曽祢委員 私、この間申し上げたことに関連して、大体趣旨は同じようなことになると思うのですけれども、どう考えてもアメリカの核政策というものは六〇年代の初めとそれから六六年、七年、八年、だんだんに変わりまして、六八年の核防条約をいよいよつくったとき以来はさらに一そう――かりに自分の同盟国であろうと、それがNATO諸国、西ドイツをはじめとする、あるいは日本であろうと、一切核接近を許さない方向に、核拡散防止という方向に強く動いている。現在なおアメリカがその方向をたどっていることは疑いのないところじゃないかと思う。むろんこれは日本の防衛庁あるいは政府に対する姿勢の議論もありました。ことに外務省の沖繩返還交渉におけるいわゆる秘密交渉等から疑念を深めた。あるいは防衛庁のいろいろなやり方についての疑惑、日本側からの心配を持つということは、これは国民として当然だ。日本の姿勢はいましばらくおいても、また同時にアメリカの言うことだから何でも信用するというのじゃなく、アメリカの政策のやはり慨然性からいって、どうもこの時点で日本に核接近をはかるようなことを持ってくるということについて、これはもう何もしろうともくろうともないので、むしろストレートなしろうとの意見から考えてもどうも慨然性は之しいというのがほんとうじゃないか、私はこう思うのです。核防条約ができる前の六〇年の初めの時点においては、確かにNATO諸国と一緒になって、お互いに海軍の乗り組み員は一緒に出し合う、これはNATO央諸国は統合軍をつくっているのですから、核兵器がなくても共同の乗り組み員なんかは船の場合でもあるわけなんですから。しかしいずれにしてもこの核兵器を搭載した潜水艦、あるいは浮上艦艇にNATO諸国共同の乗り組み員を出して、核兵器の引き金は、これはあくまでアメリカの司令官が、まあ最終的には大統領ということになりましょうが、アメリカ側が核兵器の発射の引き金は絶対にどことも共用しない、しかしこの核兵器の政策についてもNATO諸国と相談する。核兵器を撃つ場合に、少なくとも一定の拒否権は――拒否権のほうですよ、引くほうじゃない、拒否権はNATO諸国にも与えるというような構想の多角的核戦略、MLF、あるいは北大西洋核戦力、ANF、アトランティック・ニュークリア・フォース、MLF、ANFというような構想が現実に存在して、国際外交場裏でしきりに、論議されたということは、はっきり記録にあるわけです。その場合においても米日間のそういう話はわれわれの知る限りなかった。ありそうもないし、われわれはそれはなかった。ただ、NATO方面には確かにそれはあった、これは事実です。しかし、それは六六年の十二月のNATO外相理事会を最後として完全に消えてしまった。何となれば、このような西ドイツの核に対する接近はソ連邦が絶対に反対するところであるし、またNATO諸国の一部であるフランス、これはNATOに関していろいろ限定的な解釈はしておりますけれども、フランスも西ドイツのそういったような核接近には反対だ、そういうようなことから、六六年十二月のNATO外相理事会を最後としてこれは消えて、逆に六七年にはむしろ米ソが一緒になって、いますでに条約案として確定しているいわゆる核拡散防止、核兵器の秘密及びそのコントロールは、管理権は、これは絶対にいまの核保有国からほかの国に渡さない。こういう方向に強くかじをとったということは、これは歴史に明らかなことです。したがって私は、そういうような歴史から見て、まず六八年以後のアメリカの政策が、日米合同核戦力のほうにいくということはほとんど信じられないことではないかとまず思うのです。  それからそれに関連いたしまして、これは外務省にお聞きいたしますが、この間問題となりました、このフレッド・グリーン著「アメリカの政策とアジアの安全保障」、こういう研究があります。これは日本で訳して発行したのはことしですけれども、この本が発行されたのは六八年二月であり、しかもその前書きによりますと、著者がこういうことを言っている。「本書は六四-六六年にウイリアムズ・カレッジで書かれた。」つまり国務省に一時入る前に学者として書いた。その時期は六四年から六六年まで。私が申し上げたMLF、ANFというようなNATOにおける合同核戦力の問題が盛んなころ。それで六四年というのは中国が核爆発実験に最初に成功した年であるし、したがってこの著者が一つの研究として、アジアにおける二国間あるいは多数国間の核戦力の問題をNATO諸国の方向となぞらえて、同じようにアジアでもどうかという研究をしたことは事実です、この「下書きが完成した百後、私は六六年中頃、一時的に国務省で東アジア問題を扱う仕事を提供され、受け入れた。しかし、この研究は編集の小さな手直しと内容の更新を除けば、六六年春に完成したときのままである。」これは明瞭に一民間人の研究であり、その研究も非常によく研究していると思うのですけれども、りっぱなものでありますけれども、しかし民間人のものであって、国務省の意見ではない。しかもそれは六六年までの問題で、六四年から六六年のその当時の国際情勢一つの研究であるにすぎない。それがどうしていわゆる傍証的の力が、現時点において日米間の合同核戦力の問題として取り上げられるほどの力はないのじゃないか、私はかように考えるのです。この間も大臣諸公は大出委員にしかられたので――これは読みましたか。この本研究しましたか、読まなくても。お答え願いたい。
  172. 福田赳夫

    福田国務大臣 大体話は聞きましたが、それから特に序文につきましていま曽祢さんがお読みになったそのことは、あの席でも私が申し上げたとおりのことを、いま曽祢さんがおっしゃっておられるのです。つまりあの書物ができましたのが一九六四年から六六年、その時点においてつくられた。そして著者が国務省に入ったというのはその後なんです。そういうことにつきまして私は先般の連合審査会でも申し上げまして、これをもって傍証――傍証ということばは使いませんでしたが、まあ説明の根拠とされるということは理由のないことだということを申し上げております。
  173. 曾禰益

    ○曽祢委員 まあこのはしがきだけちょっと勉強したんじゃいけません。いいことが書いてあるからもっと勉強してほしいと思います。  そこで私は、そういう核政策、これはアメリカだけでなくて世界の核保有国の基本的な動向として、これは動かすべからざる――それはいい悪いは別です。確かに核拡散防止ということもこれは当面必要だろうけれども、逆に言えば核保有国、五大国の核保有を実際上認めるということにならないとも限らない。いろいろありますけれども、その基本的方向にあまり違うような政策を諸国がとるということはどうも私は合理性が薄い、こういうふうに考えるから申し上げているわけです。  それからいま一つ、この間申し上げたのは、日本の場合とNATOの場合と基本的に違うということですね。これはもう憲法のたてまえからいっても、むろん海外派兵をせず、それから完全なギブ・アンド・テークの相互安全保障条約日本以外のところに攻撃的な武器を持って出かけるということはないのですから、したがって日本の場合には合同、それは合同演習があったという御指摘もあるでしょうけれども、少なくともNATOみたいな常設的合同軍なんということは、これはもう絶対私は憲法違反だと思います。外務大臣どうですか。核を除いても日米安保条約のもとに統合軍というものを日米で常設的につくる。これは私は現にやっていないと思いますが、やるつもりはないということと、もう一つは私は憲法上そういうことは禁じられていると思うのですが、お答えを願います。
  174. 福田赳夫

    福田国務大臣 合同軍をつくることが憲法に違反をするかしないか、こういうことについてのお尋ねでありますが、さて憲法とどういう関係になるか、そういうことにつきましては、これはまあ慎重に考えてお答えをすべきだと思うのです。突如としてそう聞かれまして、私がああだこうだという見解を述べることは、私は非常にこれはあぶないことになる、こういうふうに思いますので、お答えはいたしかねます。  ただ、実際問題として、いま日米の間に合同の軍隊編成をするというようなことは、これは海軍に限らず、空軍あるいは陸軍におきましてもそういうことはありませんから、実際問題としてはないことだ、こういうふうにははっきり申し上げますが、しかし憲法問題になりますと、私はその憲法の解釈というのはなかなかこれは微妙なところがありますから、お答えは留保させていただきます。
  175. 曾禰益

    ○曽祢委員 そんなことこわがらないで、憲法の精神からいえば外国の軍隊、しかもそれは性質が違うのですから、軍隊ですからね。どこへでも行く軍隊、それと日本の限定された、憲法論ありますけれども、私は限定された自衛力は憲法はこれを否定するものではないという解釈をとっておりますが、その限定されたものと外国の軍隊と統合戦力をつくるということは、もう憲法に反することは明瞭だと思います。しかしいずれにしてもそれで時間をとっているわけにいきませんから、これは憲法にも反するし、断じてそういうこと、はやっていけないし、今日までまだそういうことをやっている証拠は私はないと思う、合同演習についていろいろありましたけれども。ですから、そういう意味からいっても、わが国の場合はNATOの場合というよりかさらにむずかしい問題があって、日米のBLF、二国間の核合同戦力というようなことが、幾らアメリカ人の、どこの国でも軍人というのはずいぶんすっとんきょうなことをやりますけれども、まさかどうも考えそうにもない。まあそっちのほうの推定のほうが反証があがるまで強いのではないか、私はそういうように考えます。  それからもう一つ、私は理屈からいって、確かに各国ともに、アメリカですらいわゆる産軍複合体がひとりでに歩き出すとかあるいはシビリアンコントロールが不十分であると常に反省しているのは私はりっぱだと思います。しかし少なくともアメリカは、ほかの国よりもシビリアンコントロールがきいている国のうちではないか。決してこんなものは完ぺきなものはありません。非常によく注意して、いわゆるピープルが、そしてそれを代表する議会あるいは大統領が、直接に選ばれたシビリアンが軍部をコントロールしていく、そういう国において、少なくとも大統領の専決事項といわれているような核問題について、外国とかりに内交渉でもするというようなことが軽々に許されるかどうか。私はないんじゃないかと思う。これは現実わが国にそういうことがなかったか、それは証明するのは困難だと思いますけれども、普通NATO諸国の場合には、いずれもこういうものは国務長官レベル、まあせいぜい国防長官レベル。いきなり、基本的な話がないのに、いわゆる前ぶれ的な準備行動として制服グループにやらせるなんということは、アメリカがそれほどだらしのない国じゃないように、その対日政策のいい悪いは別にして、シビリアンコントロールだけはきいている国じゃないかと思うのです。その点は外務大臣はどうお考えになりますか。
  176. 福田赳夫

    福田国務大臣 その点は全く曽祢さんと考え方は一緒でございます。
  177. 曾禰益

    ○曽祢委員 それから、以上のような核政策の流れからいって、この一九七二年の現時点において、アメリカがこういった構想を持ち、そうしてしかも在日米海軍司令官、悪いけれどもこれはかなりレベルの低いほうで、日本にいる司令官の中でも、これは空軍司令官が在日全司令官になっておりますし、これはむろん太平洋軍司令官の下にあるし、そういうレベルで、訓令によってこういう問題で日本側とアプローチさせる、予備交渉させるということは、非常に蓋然性が少ないあるいは乏しいように考えるのでございます。  特に最近のアメリカの動向から見て、すでに御承知のように、けさもまたキッシンジャーが覆面外交をやって、これは特にベトナム戦争のああいったような北爆開始というようなことの結果、五月二十二日の歴史的なニクソン訪ソにマイナスになってはいかぬということで秘密にまた行ったんでしょうけれども、そのことは何を物語るかと言えば、私はやはりアメリカがソ連との間に戦略核兵器制限交渉、核兵器のとめどない競争、核ミサイルの競争を何とかして相互の利益にのっとって何とか部分的にも戦略核ミサイル競争に終止符打ちたい、あるいは少なくとも歯どめをしたいという真剣なあらわれだと思う。  これに対するソ連のわりあいに柔軟な態度は、ソ連もそれに大きな関心を持っていることの証左じゃないかと思う。また言うまでもなくニクソン大統領がこの間訪中したばかりで、中国側は日本の軍国主義復活ということに非常に重大な懸念を持っている。こういう際に、アメリカのほうがむしろイニシアチブをとって、日本に一緒にひとつ核艦隊をつくろうやということを言うのは、ちょっとどう考えても、しろうと的センスからいっても理屈に合わない、間尺に合わないという感じが私はするわけであります。  それかあらぬか、これだけのことが、かなりの信憑性があるなら、もうすでにわが国だけでなく、国際的に、それ見たことか、日本の核接近だ、たいへんだということで、方々で、必ずしも中国、ソ連だけでなくて、日本の核武装なり重武装に非常な反対と懸念、関心を持っている発展途上の東南アジアの諸国を含めて、これは相当騒ぎそうなんだけれども、一向にどうも、少なくとも新聞紙面にあらわれたところ不気味なぐらい平静なんです。これはどうもおかしいんじゃないか。そうするとこっちのほうがおかしいのか、向こうの頭がおかしいのかということになるのですけれども、外務省はいままでこの問題の国際的な波紋についてどういう報告を得ておられるか、ひとつこの際教えていただきたい。
  178. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この点につきましてはわれわれも海外からの波紋を非常に待っていたわけでございますが、いままでのところ何にも波紋はございません。  なお、在京各国の大使館員がそれぞれこの問題についてわれわれと意見の交換に参りましたが、彼らもこぞってこの内容が彼らの見解からいってもあまりにも非常識であって話にならない、こういうことで、まあ一種のお茶飲み話で終わった次第でございます。
  179. 曾禰益

    ○曽祢委員 重ねて聞きますが、そうすると正式の外務省に対する問い合わせ、あるいは存外公館に対する問い合わせ、これは一つもありませんか、あるいはこの問題を取り上げた外国の新聞論調、これもございませんか、はっきりしていただきたい。
  180. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この点につきましては、われわれは少なくとも電報に関する限りは何にも受け取っておりません。  なお、海外の新聞にそういうものが取り上げられているかどうか、これについてもまだ何にも報告がございませんから、いままでのところ何にもございませんということでございますが、万一ありましたらまた適当な機会に御披露いたしたいと思います。  なお、米国といたしましては、全般といたしまして最近のこのような傾向に対して非常に心配しておるというようなことは、大使館を通じてわれわれのところへ言ってまいりました。
  181. 曾禰益

    ○曽祢委員 きょう同僚の青木委員がみずからのイニシアチブで海事長官に電報を打たれ、それで返電をもらって一つの資料としてここに御発表になった、私はそれは国会側としての真剣な態度だと思うのです。この前の十三日に私が、情況証拠から見るとありそうもないと思うけれども、事これは日本の核政策あるいは安保政策の基本に触れる大きな疑いをかけられている問題であるから、ただ外務省あるいは防衛庁、政府側が、電報の問題だけにもう早くも大使館から否定があったからいいというような安易な態度ではいけない。これは核政策、安保政策の基本に触れる問題である以上は、これを機会にはっきりとこれを政策的に否定することが必要であるということを申し上げておったんですが、そのこととともにいま国会議員のほうはああいった特別の措置をとっておられる、政府のほうはアメリカのほうだからこのままでいいのか、私はそんなことじゃいかぬと思うのです。これは想像ですけれども、少なくともアメリカの国防省付近にセミプロみたいな人がいて、でなければあれだけの電報はつくれないと思うのです。つまり、反戦グループか何か知りませんが、相当アメリカ側にこの作成者がいるんではなかろうかという疑いがある。日本側ではあれだけの手の込んだ電報をつくるということは、私は常識的に考えて不可能に近いと思う。だとするならば、それは日本政府としてこういうものが出ることは非常に迷惑なんだ、ならばもっと日本政府が強くアメリカに犯人の割り出しを徹底的にやってくれと。けさの青木さんの御報告並びに政府の御答弁によると、新聞に伝えられた海軍の何とか調査部とか何とか特捜部だか何だか知りませんが、いわゆるカウンターインテリジェンス、防諜部のことだろうと思うのですが、これがこれ以上割り出しはやめたといったような新聞報道は誤っておる、つまり続けているそうですけれども、これはアメリカ側のことだからアメリカ側にまかしてこっちは知らぬ顔、私はそんなことじゃないと思うのです。事日本の名誉がかかっている。日本の国際的な名誉、日本の核政策、安保政策に関するあるいは日本の自主性に対する疑いとか軍国主義の道じゃないかという重大な問題がかかっているのだし、とにかく火の出どころがニューヨークやワシントン方面らしいということならば、これはやはり日本としては、言い方はいろいろあるでしょうけれども、そんな不徹底のことじゃ困る、はっきりひとつ犯人割り出しまでやってくれ、これは私は外交交渉として要求するのは当然だと思う。いかがですか。
  182. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカ政府はどういう立場にあるかといいますと、これは第三国の人がやったのかどういうことかわかりませんけれども、とにかくアメリカ政府の名誉にも関する問題だ、こういうふうに考えるんです。これはわが国政府ばかりじゃない問題だ。でありまするから、わが国といたしましてはアメリカ政府に対しましてこの調査方を依頼をしておる。アメリカ政府におきましても調査を続行しておるのです。調査の結果いろいろな中間的な事実は出てきておるようでございまするけれども、まだ調査中だ、こういうので、まだ開示いたしておりませんが、なおこれは非常に重大な問題である、こういうふうに考えておる。これがほんとうに事実とすれば、これはわが国の政治の基本に触れてくる問題である、こういうふうにとらえておりますので、なおアメリカ政府とも接触をいたしましてできる限りの手を尽くしてみたい、かように考えます。
  183. 曾禰益

    ○曽祢委員 念のため申し上げますけれども、それはもしいわゆる犯人がおるとして、にせ電報だとして、その犯人の国籍が問題じゃないんですよ。しかしどうもこれは日本で得た資料でないというような、これはうわさだから私はほんとうは知りません。どうもしかしアメリカから出てきた。つまりもしこれが犯罪ならば、それは属地主義によってアメリカで起こった事件であることは間違いない。だれが、国籍がどうあろうと、そんなこと関係なしに、だからアメリカで起こった、アメリカ海軍省を含むそういうところに何かあったのではなかろうかという推定があるんですから、その意味で日本側では調べる方法はないのじゃないかという感じがするので、属地主義からいって、アメリカが自分の国の名誉もあるでしょう、国益上からもこれはやはりはっきりしたいという気持ちもあるでしょうが、アメリカのほうで起こったものとすれば、これはやはり日本のほうからも徹底的にやって結果をすみやかに知らしてくれと言うのは私は当然だと思うので、これはひとつぜひ強くやっていただきたいと思うのです。  それから最後に、こういう疑いがかかることはまことに実は迷惑。幸いにいまのところはまだ国際的に大きな波紋を起こしてないようですけれども、これがもしほんとうだったら、言うまでもなく内閣の首をさっそくちょうだいしなければならないものです。しかほどさように重大な問題であるから、私はいついかなる段階でどういう方法がいいかはわからないけれども、きょうは国会議員のほうから海軍長官に問い合わせた電報の御披露がございましたが、私はもっとそれを政府レベルでこの割り出しを徹底的にやってほしいということと、タイミングは外交ですからおまかせするけれども、やはりハイレベルの段階でこういう核政策に関する、日本が接近するというようなことに関して、あるいはアメリカもそれは迷惑だと言うなら、両方一緒がいいか別々がいいかは別、これも御研究願いたいんですけれども日本のハイポリシー、最高政策としてこういったことをはっきり否定するような適当な――議会におけるわれわれに対する答弁もむろん重要です。しかしまとめて政府の正式の声明くらいをお考えになるべきではないか。その段階はいつがいいかは別として、これをひとついまお考えになるということでもいいですけれども、もう一ぺん御返事をいただきたいと思います。
  184. 福田赳夫

    福田国務大臣 本件はたいへん重大な問題でありますので、そういう御提言につきましてもこれは積極的に検討してみることにいたします。
  185. 曾禰益

    ○曽祢委員 終わります。
  186. 櫻内義雄

    櫻内委員長 松本善明君。
  187. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣に若干伺いたいのですが、ハノイ、ハイフォンの爆撃後、日本が実際上アメリカ軍基地になっておりますので、この点に関するいろいろの疑惑があります。この点について若干伺いたいと思います。  事前協議対象となる場合について外務大臣は、米軍日本戦闘作戦行動基地として使うという場合は、戦闘作戦命令を受けていたかどうかということだけでなくて、わが国戦闘作戦行動基地として使われたかどうかという実体から判断をするということを言われました。ところで、その実体の有無というものはどのようにして判断をするのでありましょうか、外務大臣見解を伺いたいと思います。
  188. 福田赳夫

    福田国務大臣 まずアメリカ側から詳細に事情を聴取する、こういうことかと思います。
  189. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると結局においては、実体を判断をすると申しましてもアメリカ側から聞いて判断をするということだ、事実上は戦闘作戦命令を受けているかどうかということを判断の基準にするのとそうたいして違いはございませんね。
  190. 福田赳夫

    福田国務大臣 たいして違わない場合もあるし違う場合もあろうかと、こういうふうに思いますが、要するにアメリカ側の説明をまず聞く、こういうことであります。
  191. 松本善明

    松本(善)委員 どういう場合が違うことになりましょうか。
  192. 福田赳夫

    福田国務大臣 戦闘作戦行動命令は受けてはおらぬという場合でありましても、行き先がどうであるとかあるいは装備がどうであるとか、そういう問題があると思うのです。そういう場合には戦闘作戦行動命令は受けておらなくともこれはわが国作戦基地として使う、こういうことになろうかと思う。その場合が違う、こういうことです。
  193. 松本善明

    松本(善)議員 行き先がどういう場合、装備がどういう場合に、実体戦闘作戦行動基地として使われると、こういうふうに判断をされるわけでありますか。
  194. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはケース・バイ・ケースというか、その場合場合でいろいろ対応は違うと思います。私は一つの例示を申し上げたわけなんで、いろいろな内容、そういうものがケースによってはひっからまってくると、こういうふうに考えます。
  195. 松本善明

    松本(善)委員 私は、アメリカから聞いて、しかもその場合にケース・バイ・ケースでということであればたいして基準をきびしくしたことにはならないというふうに思いますが、これ以上外務大臣にお聞きしてもそれ以上の答弁が出るとも思えませんので、これはこの程度にとどめます。  ところで、現実日本から在日米軍がベトナムに行って戦闘をしております。外務大臣は、これは戦闘作戦行動基地として使っておるのではない、将来にわたっても戦闘作戦行動基地としてベトナムのために使うということはないだろう、こういう答弁をされています。しかし、在日米軍が行って戦闘していることも事実なんです。こういう形の基地の使い方、日本基地の使い方を外務大臣のことばでいえばどういう基地として使っているというふうに考えておられるのでありましょうか。たとえば後方基地とか補給基地とかいろいろな言い方がありましょうけれども、どういう基地として日本基地を使っているというふうにお考えでありましょうか。
  196. 福田赳夫

    福田国務大臣 日本に駐留する米軍は太平洋各地を遊よくをいたしておるわけなんです。ですから、その一々がどういう目的でどういうところへということを確認をする、そういうふうなことは、これはまあ非常にむずかしい問題であり、また私どもそういうことを確認を求める考えを持っておりません。おりませんが、とにかく日本米軍が駐留する、これは日米安全保障条約によって日本から基地の提供を受けて駐留する、そういう性格のものであると、こういうふうに考えます。
  197. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣は在日米軍が結論においてとにかくベトナムに行って戦闘しておる、これは認められるでしょう、この点を伺います。
  198. 福田赳夫

    福田国務大臣 一部のものはそういうことになっておるようです。しかしこれは何も日本基地作戦行動基地として使われておるということじゃございませんから、その辺ははっきり私は区別して考えております。
  199. 松本善明

    松本(善)委員 私ども戦闘作戦行動基地として使っておるのではないかというふうに考えますけれども、この点で外務大臣と押し問答しても始まりませんから、私が外務大臣にお聞きしたいのは、これはやはり補給基地――KC135は補給するわけですから明白に沖繩は補給基地外務大臣考え方からいって補給基地というふうになると思いますし、それからとにかく南方に移動して、そこを戦闘作戦行動基地としているというふうに外務大臣は先ほど来御説明なさっているわけですが、そういう意味では後方基地というふうな言い方もありましょうけれども、いずれにしても日本がベトナムでの米軍の軍事行動基地になっておることは間違いないのではありませんか。
  200. 福田赳夫

    福田国務大臣 ベトナム戦を頭に置きましてその基地となっておるかどうかというと、私はベトナム戦争戦闘作戦行動基地にはなっておりません、こういうふうにお答えするほかはないのであります。
  201. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣、冷静に私の質問をお聞きいただきたいのでありますが、外務大臣の先ほど来の答弁日本がベトナム戦の戦闘作戦行動基地になっていないというお考えは、私は承認しませんけれども先ほど来再々述べておられる、このことはよくわかりました。わかりましたが、しかし戦闘作戦行動基地というのではないけれども、何らかの意味で日本米軍基地がベトナム戦の基地になっておるということは間違いないのじゃないか。あるいは補給基地とか休養基地とかあるいは後方基地とか、いろいろ言いようがあるかもしれませんが、外務大臣のお考えからいってもやはり何らかの意味でベトナム戦の基地ということになりませんかということを私は伺っておるわけであります。
  202. 福田赳夫

    福田国務大臣 日本米軍基地がどういう性格であるか、こういうことをまっ正面からお尋ねだということでありますれば、これは日米安全保障条約に基づく施設、区域の提供による基地である、こういうふうにお答えするほかはないんです。ベトナム戦との関係はどうなんだといえば戦闘作戦行動基地にはなっておりません、そういうお答えをするほかはない。また補給基地だとか、いろいろなことをお尋ねがありますが、うっかり答えますとまたいろいろの問題がこんがらかってきますから、それ以上のことはお答えいたしませんです。
  203. 松本善明

    松本(善)委員 福田外務大臣、その辺はうっかりするとというようなことじゃなくして、やはり事態の真相を国民に知らせるということが大事なんで、やはりそれは率直にお答えいただくのが当然ではないかと思うのです。佐藤首相もこれは補給基地になっておることは間違いないということを認められた答弁があります。事実そうではありませんか。そういうような意味で何らかの基地になっているということは間違いないんじゃありませんか。もう一度伺います。
  204. 福田赳夫

    福田国務大臣 基地基地とおっしゃいますが、基地と言いまするとそれがまた戦闘作戦行動基地じゃないかとか、そういう印象を与えますものですから、私はその基地という名称をいま避けながら答弁をいたしておるわけなんです。いずれにいたしましても、米軍わが国日米安全保障条約に基づいて駐留をしておる、そして太平洋全域を遊よくをしておる、そういう性格の基地である、こういうとらえ方をいたしております。
  205. 松本善明

    松本(善)委員 念のために申し上げておきますが、六八年四月二日に佐藤首相がその趣旨の答弁をしております。日本は補給基地にもなっておりませんか。
  206. 福田赳夫

    福田国務大臣 補給に関連をすることはありますが、それが基地だと言うと、戦闘作戦行動と非常に密接な関連をつけながら理解されるものですから、私は基地ということばを使うことを避けているのですが、あえて使いますれば、これは日米安全保障条約に基づく基地です。そして、この基地に駐留するところの軍隊は太平洋全域を遊よくをしておる、こういうことでございます。
  207. 松本善明

    松本(善)委員 そこが大事なんで、別の形でお聞きしますが、この安保条約による基地の提供というのは、言うまでもなく六条の「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する」という目的に合致をしなければならないわけだろうと思います。在日米軍が、外務大臣の言い方であれば、戦闘作戦行動基地としては使ってないと言うのでありますが、実際にベトナムに行って戦闘をしているわけです。こういう形で日本基地が使われることは、安保条約の目的に合致をいたしますか。
  208. 福田赳夫

    福田国務大臣 安保条約の目的に背馳しない、こういうふうに思います。つまり、安保条約に基づきまして、アメリカ軍わが国から施設、区域の提供を受けておる。その提供を受けた米軍は、太平洋各地を遊よくをするというか、そういう行動をとっておるわけなんです。その遊よくの途上におきまして戦闘作戦行動に移るということがあり得る。今回のベトナム戦の場合なんかその事例に該当する、こういうふうに思います。したがって日本基地として、いかなるベトナム戦争との関連において米軍基地を提供しているのだ、こういうお尋ねでありますれば、これはベトナム戦との関連におきましては戦闘作戦行動基地にはなっておりません、こうお答えするほかはないのです。しかしそれじゃ何だと言えば、日米安全保障条約に従って受けておる基地の提供、その基地である、こういうことでございます。
  209. 松本善明

    松本(善)委員 端的に伺いたいのでありますが、米軍のベトナムにおける軍事行動は、サイゴン政権を守る、援助するという目的のためにやられておる。そのことのために間接にしろ、戦闘作戦行動基地というふうには言わないにしても、在日米軍がそこへ行って軍事行動をするということは、この安保条約の目的との関係で一体どうなるのか。サイゴン政権を援助するという米軍の目的は、この安保条約の六条の目的に合致するのかどうか、この点については外務大臣いかがお考えでありますか。
  210. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは先ほどから申し上げておりまするとおりかりに――これはかりにです。かりに日本基地を使って戦闘作戦行動をやる、こういう際には事前協議対象となる、こういうことになります。その事前協議に対しましては、わが国はノーとこれを言う、こういう考え方である、こういうことでありまして、したがって安保条約との関連いかん、こういうことでございまするが、そういう関係においては安保条約との関係が出てくる、こういう御理解を願います。
  211. 松本善明

    松本(善)委員 結局外務大臣、直接的にはお答えにならぬわけですが、私は戻ってお伺いしますが、外務大臣のように、日本基地として使っておる米軍は太平洋を遊よくしておるのだ、その途中で戦闘作戦命令を受けて出かけていくのだということになれば、在日米軍は事前協議の拘束を全くなしに、いつでもそういう形で世界じゅうのどこへでも戦闘に出かけていくことができる、こういう性格を持っておると思いますけれども外務大臣いかがお考えですか。
  212. 高島益郎

    ○高島政府委員 安保条約第六条に規定されているとおり「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が」日本において施設、区域の供与を受けるわけでございます。しかしながら、彼らが日本の地域、施設、区域を離れますと、これはもはや在日米軍ではございません。したがって彼らがどこか他の地域に移動してそこからいろいろのことをやろうと、これは日本の施設、区域を使用することではございませんから、その意味ではヨーロッパにおいて戦闘作戦行動に参加しても、われわれの関するところではございません。
  213. 松本善明

    松本(善)委員 そうするともう一回、たいへん大事な問題ですから外務大臣に直接お答えいただきたいと思いますが、外務大臣の言われるように在日米軍が太平洋を遊よくしている、あるいは、ほかの基地から行くのであればヨーロッパへ行こうとどこへ行こうと自由である、こういうふうに考えられるということになれば、そういう手続をとっているといいますか、そういう間接的な道をとっていくならば、在日米軍は世界じゅうどこへでも行って戦う軍隊である、こういうふうに考えていいですね。
  214. 福田赳夫

    福田国務大臣 事前協議制度というのはどういうために存在するのかということをお考えくださったらいいと思うのです。これはどういうことかと申し上げれば、もうこれは申し上げるまでもないことでございますが、安全保障条約わが国のために必要である。しかしこれの運用を誤りますと、わが国戦争に巻き込まれるおそれがある。そこで、そのための抑制というか、歯どめをいたしておる。これが事前協議ですね。そういう趣旨にもとるかもとらないか、こういう問題だろうと思うのです。したがって、私は先ほどから言っておるベトナムの場合を想定してみますると、これはベトナム戦にわが国戦闘作戦行動のそれ自体の基地として使われてはならない。そういう際は日本としては重大な考慮をめぐらさなければならぬから、その際には事前協議対象とする、こういうことなんです。現実の問題としては、事前協議がありましてもノーと言うつもりではございまするけれども、そういう際に事前協議というものが働くわけなんです。太平洋を遊よくしておるアメリカ軍隊が、その途次、いずれかの地点を基地といたしまして戦争に参加するという場合がありましても、これは事前協議対象とはならない。ならない状態で、それでわが国国益には何ら支障はない、かような考え方をいたしておるわけです。
  215. 松本善明

    松本(善)委員 先ほど条約局長が、一般論として、集団的自衛権の行使の問題について答弁をしました。ベトナムにおけるアメリカ軍行動も、アメリカのほうでは集団的自衛権の行使だというふうに言っているわけですけれども、在日米軍が集団的自衛権の行使というふうにわれわれはとうてい考えられません。ベトナム侵略をやっておるというふうにしか考えられませんけれども、侵略のために日本基地を使ったということになれば、これは当然に安保条約の目的に反し、安保条約廃棄の原因になりますか。
  216. 高島益郎

    ○高島政府委員 一般論といたしまして先ほど私説明したとおり、集団的自衛権の行使としての米軍行動の場合以外の戦闘作戦行動というのは、安保条約考えられない、そういうことを申し上げたつもりでございます。
  217. 松本善明

    松本(善)委員 いや私が聞いておるのは、日本基地が侵略のために使われたということになれば安保条約の廃棄の原因になるかということを聞いておるのです。
  218. 高島益郎

    ○高島政府委員 したがいまして米軍が、これは仮定の問題でございますけれども、集団的自衛権の行使として以外の、つまり先生がおっしゃったような侵略というために日本基地を使うということは、たいへんな条約の違反でございます。
  219. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣に最後に伺っておきますが、ベトナムはこれはもう明白に私はアメリカ軍の侵略だと思います。これは外務大臣が侵略でないというふうに言われるかもしれませんけれども、全世界の人が、どこから見てもアメリカはベトナムから引き下がれ、民族の自決権をということを言うならば――ベトナムのことはベトナムにまかせろということを全世界の人が言っているわけです。アメリカの中でもそういう声があるわけです。これは私は明白に侵略だと思います。そのために日本基地が使われていることも、これは私は事実だと思います。たいへん苦しい答弁外務大臣はされて、安保条約に基づく基地の提供だというふうなことをいろいろ力説をされましたけれども、客観的に見れば日本基地が使われて、それを戦闘作戦行動基地というふうに言うか言わないかは別といたしまして、ベトナムの侵略が行なわれているということは明白なんです。私は外務大臣にお聞きしたいのは、日本は自主的な立場に立って、一体この戦争はだれの侵略戦争か、アメリカの侵略戦争ではないかということを日本政府としては冷静に、ほんとうに世界の平和を守るという観点で調べ、もしそのようなことが行なわれておるならば、アメリカに対して厳重な警告をする、そういうために安保条約を結んだわけじゃないのだということを言うのが、私は世界の平和を愛する人たちに対する義務でもあるし日本国民に対する義務でもあるというふうに思いますけれども、この点についての外務大臣見解を伺いたいと思います。
  220. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカは、ベトナム戦争はこれは同盟国である南ベトナムから依頼を受けて、要請を受けて派兵をしておる、こういう説明をいたしております。日本政府は、前からこのアメリカ考え方、これに理解を示してきたわけであります。が、特に今回の北爆を中心とする事態です。これはアメリカ政府ははっきり言っているのでありますが、中立侵犯をして北ベトナム軍が南進をしてきた、これに対して対応をする、こういうことなんであります。私はそのアメリカの主張というものは大体世界的に客観的に容認されておる主張じゃあるまいか、そういうふうに見ております。何か松本さんのほうでは私にずいぶん言うんです。アメリカ政府に対して抗議を申し込めとか、いろいろそういうことをおっしゃいますけれども、私どもはこの戦争については、これは戦争の当事者じゃないのです。それはどちらがどうか。北でも北の言い分がありましょう。ありましょうが、そのいずれが是であり非であるというようなことを判断する立場にはないのです。そこで、そういう御要請がありまするけれども、私はそれはできませんと、こういうふうにはっきりお答えを申し上げておるわけでございまするが、根っこになっておるところのベトナム戦争はどういう事情で起こっておるのかということにつきましてはただいま申し上げたとおりでございます。
  221. 松本善明

    松本(善)委員 終わりますけれども、これは北からの侵略ということを言いますけれども、これは軍事境界線で、それを国境線のようにしてしまったのはだれなのかという問題なんです。一体ベトナム民主共和国の人たちがベトナムに対して外国人なのか。そういう根本問題があるのだ。アメリカの言い分をそのままうのみにするというようなことでは、私は日本の自主的な平和的な外交というのはあり得ない。私は、外務大臣ほんとうに平和を愛して真実を愛するならば、この事態を率直に見詰めて日本の外交を進めるべきだと思うのです。そういうようなやり方ではない。(「ソ連にも言え」と呼ぶ者あり)時間が十分にあればその不規則発言にも十分にお答えをして、質問をすることができますけれども、私は時間がありませんので、たいへん残念でありますけれども日本政府はそういう立場をとらなければならない、平和を愛し真実を愛する、そして侵略には反対をする、それが日本の国のあり方ではないかということを申し上げて私の質問を終わります。
  222. 櫻内義雄

    櫻内委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は来たる二十八日午前九時四十五分より理事会、午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後三時三十四分散会