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1972-05-23 第68回国会 衆議院 運輸委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月二十三日(火曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 小峯 柳多君    理事 宇田 國榮君 理事 加藤 六月君    理事 徳安 實藏君 理事 古屋  亨君    理事 細田 吉藏君 理事 箕輪  登君    理事 内藤 良平君 理事 田中 昭二君    理事 河村  勝君       石井  一君    江藤 隆美君      小此木彦三郎君    佐藤 守良君       關谷 勝利君    井岡 大治君       金丸 徳重君    久保 三郎君       斉藤 正男君    松本 忠助君       宮井 泰良君    内海  清君       和田 春生君    田代 文久君  出席政府委員         運輸政務次官  佐藤 孝行君         運輸省海運局長 鈴木 珊吉君         運輸省船舶局長 田坂 鋭一君         運輸省船員局長 佐原  亨君  委員外出席者         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正巳君     ————————————— 委員の異動 五月二十三日  辞任         補欠選任   内海  清君     和田 春生君 同日  辞任         補欠選任   和田 春生君     内海  清君 同日  理事細田吉藏君同日理事辞任につき、その補欠  として古屋亨君が理事に当選した。     ————————————— 五月十九日  関西国際空港建設反対に関する請願(浦井  洋君紹介)(第三三六三号)  同(土井たか子紹介)(第三四九七号)  国鉄運賃値上げ計画撤回等に関する請願久保  三郎紹介)(第三四五七号)  同外一件(内藤良平紹介)(第三四五八号)  同(長谷部七郎紹介)(第三四五九号)  同外四件(古川喜一紹介)(第三四九八号) 同月二十日  関西国際空港建設反対に関する請願土井  たか子紹介)(第三六四七号)  国鉄運賃値上げ計画撤回等に関する請願(米田  東吾紹介)(第三六四八号) 同月二十二日  国鉄運賃値上げ計画反対等に関する請願田代  文久紹介)(第三八二五号)  同(田代文久紹介)(第三九九四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  海運に関する件(外航及び内航海運に関する問  題)      ————◇—————
  2. 小峯柳多

    小峯委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任の件についておはかりいたします。  理事細田吉藏君から理事辞任いたしたい旨の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、理事補欠選任の件についておはかりいたします。  ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。  それでは理事古屋亨君を指名いたします。
  5. 小峯柳多

    小峯委員長 海運に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。和田春生、君。
  6. 和田春生

    和田(春)委員 きょうは、当面しております海運ストライキ関係をいたしまして、政府側考え方、並びに関連する海運政策、特に内航関係について所見をただしたいと考えているわけでございます。  御承知のように、漁船のほうだけは、先般船員中央労働委員会あっせんでどうにか解決をいたしましたけれども外航団体並びに内航二団体につきましては、現在のところ解決めどが全く立っておりません。加えて、船員中央労働委員会調停にかかっておりました内航関係小型船中心としたところの全内航も、ついに委員会意見がまとまらず、調停不調に終わりました。二十一日からこれまた夜間荷役拒否ストライキに入りました。したがいまして、未組織船を別にいたしますと、内外航を通じて組織をされている船は、フェリー並びに一部の旅客船を除きまして、全面的にストライキの態勢に入ったわけでございます。  そこで、このストライキ影響についてでございますけれども、まず最初に、政府側としては、現在までのストライキによって、内外航どれだけの船舶停止をし、どれだけの影響を与えているか、その点についてお伺いをいたしたい、こう思います。
  7. 佐原亨

    佐原政府委員 お答えいたします。  現在までのストライキによりまして——五月二十二日十二時現在でございますけれども外航船のいわゆる出航停止による停船、百九十一隻、約五百万総トン、これだけの船が停船しております。  それから、夜間荷役拒否のほうは、これは時点を追って刻々と変わってまいりますので、五月五日現在だけの時点でとらえますと、荷役拒否船舶は、外航船で七百二十六隻、内航船で六百九十三隻、合わせまして、千四百十九隻でございます。
  8. 和田春生

    和田(春)委員 いま隻数についての運輸省調査の結果が報告されたのですが、それによって貨物輸送に与えている影響というものは、どのくらいのものが出ているか、推定をしておられれば、お伺いをしたいと思います。
  9. 鈴木珊吉

    鈴木(珊)政府委員 お答え申し上げます。  外航につきましては、全般的に申しまして、特に輸入物資でございますが、石油あるいは鉄鉱石石炭等をはじめといたしまして、概してストックが多うございまして、したがいまして、現在長期にわたっておりますわりに、それほどの影響がまだ実は出ておらぬ実情でございます。  全般的に申し上げますと、そういうことでございます。  特に、いわゆる出初めと申しますのが、コンテナでございます。輸出船コンテナがそろそろ滞貨が始まっておりまするが、現在私どもで調べましたところによりますと、約二千個は船に積んだままになっておる。したがいまして、あるいは陸上はだいぶあると思いますが、船に積んだものが二千個ぐらいだろう。自動車は約七千台、これが積んだままで船が出られない。その他の一般貨物が約十万トンぐらいが積んだままになっておるということでございます。わり影響度が少のうございますのは、荷主筋が早日に外船の手当てをしておりまして、外船のほうに相当回っておるということが一つと、それから先ほど申し上げましたように、全般的に滞貨わり——滞貨と申しますか、予備のストックがあるということでございまして、日数わりにはそう影響はいまのところはひどくないのが実情でございます。  それから内航につきましては、荷役拒否をいままでやっておりましたので、それほどの滞貨——現在調査ができておりませんけれども目立って何トンあるというふうには、私どもは聞いておりません。  それから外航、内航を通じまして、荷主筋からのクレームを私どもは聞いていないというのが現状でございます。  一般概要はそれぐらいでございます。
  10. 和田春生

    和田(春)委員 現在のところ、いま海運局長が言われたように、きわ立った影響は出ていない、こういうことでございますけれども、これは組合側が比較的柔軟な戦術をとっているということとの関連もあると思うのです。しかし内航の二団体に加えて、全内航三団体が全部この争議に入ってまいりますと、当然夜間荷役拒否によって、荷役がおくれてまいります。滞船日数もふえてくる、あるいはバースがふさがれる、こういうような形になってみますと、海運ストライキの本質として、陸上とは違って、じわじわと影響が出てくる。回復にはかなり長時間を要するわけであります。よくストライキ影響を、海運ストライキというのは、たとえてみれば、肺結核のようなものだということが言われているわけです。いまは、たいしたことはないと言っておりますけれども、だんだん影響拡大をしてくると、特に国内輸送の場合には外船を手配をするというわけにもいきませんし、いま国内輸送の大きな部分を内航海運が背負っておるわけですから、バースが占拠されれば未組織船もだんだん動きにくくなってくるということが出てくると思うのです。そういう点について、いまの海運局長の御説明を聞いていると、荷主クレームも別段ないようだ、こういうお話ですが、ほっておけということですか、この争議は。その点、ちょっとお伺いしたい。
  11. 鈴木珊吉

    鈴木(珊)政府委員 いま、現在の状況を申し上げたのでございまして、これが長引いたあげくは、あるいはかりに収束しましても、これはもうたいへんなことだと思います。先生承知のとおりであります。内航のほうももちろんのこと楽観できません。ですから、もとの状態に戻るまではたいへんなことでございます。先ほど申し上げましたのは、現在こうだということで、決して影響が甚大でないということは、申し上げていないわけであります。したがって、私どもといたしましては、船主経済の問題からも、それからそういった荷主筋生産筋消費筋、そういった影響等から見ましても、なるべく早く円満に解決されることを望んでおるというのが基本でございます。
  12. 和田春生

    和田(春)委員 これは外航、内航のすべての面にわたっておるのですけれども、御承知のように、外航と内航は、少し性質が違うと思うのです。外航海運の場合には、政府の積極的な援助というものもありましたし、また業界努力というものもあって、特に中核大手は立ち直りを見せてきた、かなり企業の力がついてきている、これは間違いない事実だと思います。それを反映しているのかどうか知りませんけれども、われわれは聞くところによると、直接聞いたわけではございませんが、船主サイドでは企業が苦しいからあるいは不況だから出せないというのではない、組合体質改善をするためにわれわれは断固ストライキを受けて立つ、こういうことを主張して、外にも発表いたしております。また、聞くところによると、運輸省にも事務次官ですか、その種のことを通告している。こうなってくると争議が経済問題を離れて、いわゆる労使の激突といいますか、そういう様相をますます深くしてくることになるのではないかというふうに考えられるわけです。船主側から事務次官通告があったという内容を正確にひとつここでお聞きしたいと思うのです。
  13. 佐原亨

    佐原政府委員 先生ただいま御指摘のとおり、それから新聞紙上にも出ておりましたけれども、日はちょっとはっきり覚えておりませんが、約一週間くらい前だと思いますが、事務次官あて外労協中小船主会長、二名が参りまして、話し方、受け取り方、ちょっとニュアンスが非常に微妙でございますので、正確にこれを伝えられるかどうかわかりませんけれども先生ただいまおっしゃいましたような組合体質問題というようなことも若干口の端にはのぼっておりました。とことんまでそのように考えておるのか、それは一種戦術、テクニックとしての表現であるのか、その辺の真意はわれわれもうかがい知れずにおるわけでございますけれども、一応表面的にはそういったようなことばも出ておりました。かなり長期化することあるべしということを一応事務次官の耳に入れておく、こういう趣旨で参った次第でございます。
  14. 和田春生

    和田(春)委員 いま私が大体言ったような趣旨が述べられたということですけれども一体運輸省はそれを聞きっぱなしなんでしょうか。労働争議というのはもちろん労使自主的解決というのがたてまえであるわけです。さらに労働委員会等紛争調停機関もあるわけですけれども、経済問題として組合側要求しているわけです。要求の額が高いか低いかは、これは団体交渉の対象になるわけです。しかし、経済的な理由で出せないというわけではないんだ、組合体質改善をしなくてはいかぬとか組合がそういうべらぼうな要求をしてくるんなら断固受けて戦うとかそういうことを運輸省に報告に来ているのを聞き流しておいたとすると、一体運輸省というのは争議をどう考えているのか非常に疑問に感じます。きょうは参議院のほうの審議の関係で、運輸大臣がこの席に来れない、こういうことでございまして、あらためて機会を求め争議解決しなければ運輸大臣責任並びに所見を問いたいと思いますけれども、そういう話を聞いて運輸省としては船主に何らかの勧告をしたか、意見を述べたか、はいそうですかといって了承したままになっているのか、その点を確かめたいと思います。
  15. 佐原亨

    佐原政府委員 そのまま聞き流して成り行きまかせということは決してございません。ただ先生御存じのように、この前参りました直前に漁船調停案が出されまして、これが見方はいろいろございましょうけれども船主側から見た場合にはかなり予想外高額妥結であったというところの一種ショックの直後参った点もございまして、ただそのときは一応聞いておくという態度でございますけれども、決してそれでいいんだというふうには考えておりません。時期を見て運輸省あるいは船員中央労働委員会、何らかの善処する気持ちは十分あるわけでございます。ただその持点でへたに介入いたしますと、これまた先生御存じでございますけれども感情的になっておる時点でございますので、慎重に次官は見ておる、こういうようにお受け取りいただきたい、このように思います。
  16. 和田春生

    和田(春)委員 この漁船賃金解決船主側から見れば高過ぎたのでえらいショックを受けたという話ですけれども、これは別に組合の側から見ればそう高過ぎるというわけではない。しかも、これは船員中央労働委員会あっせんによって、しかも会長がみずからあっぜんに乗り出して、ここで解決したらどうだという線を示したわけですから、言うならば第三者機関による客観的な船員賃金引き上げに対する一つ評価である、こう考えていいと思うのです。従来の経緯で見ますと、外航関係汽船の乗り組み員の賃金がきまると、大体その賛金を横ににらんで漁船特殊性を勘案しながら大型漁船賃金がきまる、こういうパターンがずっと続いてきたわけでございますけれども、今回は漁船のほうが、先ほど言ったようないろいろな事情もあって全く交渉も進まない、労働委員会にも持ち込まれない、団体交渉を再開するめどもない、こういう状況で、つまり労使が四つに組んだ形のまま推移をしている。一方漁船の場合には、御承知のように漁期があるわけですからいつまでも解決をしないわけにはいかない。そういうせっぱ詰まった状況の中で漁船のほうが先に解決をした、しかもそれは労使自主交渉ではなかなか解決しない、船中労委会長あっせんに乗り出して解決をした。そこに一つ第三者の今回の賃金問題に関する評価が出てきたわけです。そうすれば当然それを今度は逆に、従来の大型漁船外航汽船との関係から見れば、それを横に見れば汽船のほうも、労使にとってはたとえ不満であろうとどうであろうと客観的に見てどの辺が妥当か、およそ目安がつく。そういうものを上台に交渉が始まればよろしいわけですけれども、逆に船主サイドから断固対決するのだ、受けて立つ、こういう形になって、しかも経済判題を離れてどうこうという形になれば、これは非常に深刻になると思うのですね。労働組合も当然その立場がありますから、そういう形で船主サイドは出る、運輸省はそういう話を聞いても何にもしない、船中労委も動こうとしない、こういうような状態になれば組合としてはますます戦術を強化をして、では受けて立つというならそれをまたこちらも受けて立とうという形でどんどんエスカレートしていくことになる、こういうことにならざるを得ないと思う。私はいまつとめて第三者的にものを言いながら伺っているわけなんですけれども大かた陸上春闘はほぼ終息の段階に向かっておるわけであります。海が大きな争議として残っておる。しかもそれはこれからますます拡大をする、こういうことについて、運輸省争議に変な介入をしろという意味ではないのだけれども、やはり海運政策を通じて船主と結びついているわけですし、船員政策という面でも組合サイドの間にも関連があるわけです。何らかそこに手を打たなくてはならないのではないかという考えがあってしかるべきだと思うのです。一体そういうことを相談しているのですか、何らかの考えがあるのですか、ただ、いまのところ手をこまねいて傍観をしているということなんですか、その点を伺いたいと思います。
  17. 佐原亨

    佐原政府委員 手をこまねいて傍観しているわけではございませんで、寄り寄り船員中央労働委員会会長とも相談はしております。ただ、非常に両方がエキサイトしている微妙な時期でございますので、先生おっしゃるようにへたな介入はできないと思いますし、また変な介入のしかたをすればかえって火勢を強める結果にもなる。したがいまして、俗にいう潮どきと申しますかタイミングを見ておる、こういうのが正直なところ現状でございます。ただ、何もずっとこのままいくというつもりはございません。ただ時期を待っているということだけしか現時点では申し上げられませんが、慎重にいろいろな情報を集めながら時期を見ている、こういうことでございます。
  18. 和田春生

    和田(春)委員 これ以上、責任者大臣もいらっしゃらないわけですから事務当局をあまり責めてもそれは無理だとは考えます。しかし私の所見を言えば、外航関係については解決する気に船主側がなれば解決できると思う。それはいまほど外航海運体質を強化されていない、改善されていないずっと昔でも相当長期ストライキを経ながらも、著しい状況の中からやはり世間並み賃金をにらみつつ、それは船員にとっては不満だったかもしれないけれども、ある程度解決の線というものを出してきた。いまから数年前までの海運に比べると比べものにならないくらいその体質改善をされているわけです。したがって、経済的な問題としてこれを考えていく、同時にこれからの労使関係というものを大切にしていきたい、ちょうど陸上春闘鉄鋼経営者が言ったような考え方、それをそっくりそのまま是認するわけではございませんけれども、そういう考え方というものも参考しながら解決をする気になる、そうなれば解決の糸口は見つかるのではないか。同時に外航でも、中小労協に所属している船主の場合はこれはオーナー中心ですからたいへん経営が苦しい。しかしそのオーナーの船をオペレートしているのは大手中核六社を中心とする海運業者ですから、用船料なり何なりの面において適当な配慮をするという考え方がそこに出てくれば、外航外労協並びに中小労協を含めて解決するということになるのではないか。経済問題以外に妙な労使の対決をあおるような考え方が入ってきて無用のストライキを激発する、争議をこじらせるということは日本海運の将来にとって決して賢明なことではないと思う。また船主外船を手配しているので荷主からのクレームがついていないと言われますけれども、それは日本海運の将来にとって決して好ましいことではないわけです。海運マーケット外国船の手にゆだねるというわけですから、そういう点を考えれば、私はここに介入しろという意味で言っておるのではございませんけれども運輸省労働官庁というよりも事業官庁の性格が強いわけですから、船主、側との間には常に密接な関係があるということで、争議を早期に解決をするために前向きの姿勢をとるように適当な配慮をしてしかるべきであるというふうに考えるわけです。現在は外航海運についてはその程度にとどめまして、さらに争議深刻化をするようになれば、あらためて運輸大臣の御出席を求めて、いろいろな面でただしたいとは考えますが、本日は外航についてはこの程度にとどめたいと思います。  次いで内航関係に焦点を移したいと思うのですが、私は内航関係については外航とはだいぶ様相が違うと思うのです。といいますのは、海運助成政策の面でも非常に立ちおくれている。さらに内航二法案というもので業界を再建、整備させよう、こういうふうなことで努力がされてきましたけれどもあとから逐次質問をいたしますけれども、いろんな事情に妨げられて、決して内航海運の業績というものは好転をしていない。体質も決して改善をされていない。したがって、これは全く経済的な理由から、船主側が出す気になっても出すに出せない。全部が全部ではないけれども、そういう様相を非常にかかえていると思うのです。そこに内航海運争議というものはむしろ深刻化をするとすれば非常に陰惨な形になって、日本国内輸送にはかり知れない大きな影響を及ぼすようなところに発展をしていく危険性を私はかかえていると思うのです。外航関係は当事者の考え方を変えれば解決の道がつく、内航海運ではなかなか自主的には解決できない、こういうところにあると私ども考えているわけですけれども、それだけに運輸省の果たす役割りは多いと思うのですが、内航の争議解決という問題について、現在は運輸省はどういうことをお考えになっておるか、その点をこれは海運局長にお伺いしたいと思います。
  19. 鈴木珊吉

    鈴木(珊)政府委員 まず船員局長ということですから、ひとつ船員局長に答弁していただきます。
  20. 佐原亨

    佐原政府委員 内航につきましては先生御存じのように、例の火曜会、一洋会の内航二団体と、先ほどちょっとお話が出ました小型船中心とする全内航とこの二つに分かれるわけでございますが、内航二団体につきましては全く交渉らしい交渉も持たないまま今日に至っております。ただ、夜間荷役拒否ということでストが打たれておりますが、これは言い方次第によってはおこられるかもしれませんけれども、たまたま現在内航船腹過剰というような現象がございまして、ある意味船腹調整的な機能を持っておるというような予期せざる効果が出ておりまして、社会的な問題に非常にならない。これは言い方によってはおこられるかもしれないけれども、そういうような受け取り方をしておるわけでございます。  全内航につきましては三月三十一日に調停申請がなされまして、調停作業が七回にわたって行なわれましたけれども、残念ながら五月十七日に調停不調ということで、内航二団体と同じように五月二十二日から夜間荷役拒否に入っておる、内航全体も夜間荷役拒否に入っておる、こういう状況でございます。何せ外航と内航とは違うと申しますけれども、やはり親会社、子会社の関係もございますし、外航べースがまずきまりませんとも内航がそれに先んじてきめるということは非常にむずかしい、このように思っておりますので、非常に残念でございますけれども外航のほうをまず重点的に処理したい、それから内航のほうに移して、まいりたい、争議につきましてはこのような考え方でございます。
  21. 和田春生

    和田(春)委員 海運局長あとから伺いますけれども、いまちょっと聞き捨てならぬことをあなた言ましたね。争議によって予期せざる船腹調整効果が出ている。何だかストライキを歓迎しているような——政府無為無策によって船腹過剰になる、内航海運市場という非常にむずかしい条件を満たしたにかかわらず、あなた肯定的な発言したじゃないですか。そしてそういうことがあるからほっとけ、まず外航解決しろというふうに聞こえたんだけれども、これは議事録にちゃんと残っておるけれども、確認しておきますよ。いまの御答弁は取り消さないですね。
  22. 佐原亨

    佐原政府委員 まことに申しわけない発言をいたしました。夜間荷役拒否が決して好ましいということで申し上げたつもりではございません。ただ夜間荷役拒否によりまして、若干船の回転率は鈍っておりますけれども、いわゆる荷主関係にはさほど影響はないだろうということを申し上げたのでございまして、決してそのために予期せざる効果が出ておるということは全くの失言でございます。取り消さしていただきます。
  23. 和田春生

    和田(春)委員 大体、船員行政の衝にある船員局長——運輸省の中には海運局船員局船舶局とあるけれども船員行政は労働省が主管しているのではなくて運輸省なんです。その中心にあるのは船員局長、あなたなんですよ。あなたが何も荷主のことを心配することはないじゃないですか。船腹が過剰になって、内航運賃が下がっているということは、これから私の質問したい主題の中の一つだけれども、それは船主努力の問題があるかもわからぬが、内航と外航と両方ある。外航のほうはどうにか軌道に乗ったけれども、内航が軌道に乗らないというのは、運輸省だらしがないからじゃないですか。運輸省責任がありますよ。それを争議によって船の回転率が鈍ったから予期せざる効果が出て船腹調整ができて荷主が困っておらぬというのは何ですか。取り消すというんだから取り消してもいいけれども、そういう考え方だからうまくいかないと思うんですよ。そうでしょう。もし運輸省のそういう考え方を突き進めていけば、内航海運には未組織の分野もかなりあるわけです。組織されておる分野がストライキを受けて船主も損害をこうむる、船員賃金を失う。そのことによって運賃市況をくずし、海運政策の成功を妨げるようなでたらめなことをやっている多くの群小未組織船主を助けることになるのじゃないですか。一体、そういう考え方でいいのですか。もう一ぺんはっきり言ってください。
  24. 佐原亨

    佐原政府委員 全く申しわけない発言をいたしました。内航といえどもなるべく早く争議が妥結するように、運輸省としては労使双方に働きかけをいたしたい、こう考えます。
  25. 和田春生

    和田(春)委員 ともかくいまそういうことを言ったって、いままで何にも考えていなかったということは、はしなくも船員局長の答弁によって暴露されたわけです。政務次官もここにいらっしゃいますけれども、よく聞いておいてください。そういう運輸省の姿勢だから、海の関係というものが労使の間にいろんな面で——何も労使関係のみならず、いろいろな面でだんだんまずくなっていくのだとぼくは思う。特に内航の場合には、いま船員局長の言ったことは、運輸省省の事務当局だからぼくはおこったわけですけれども、実態的な問題としては相当船腹が過剰にある、これは事実だ。そして内航海運市況というものは非常に悪化の一途をたどっている。結局船主サイドとしては、せめて人並みの賃金を払って船員も優秀な船員を確保して海難を起こさないように安全確実に輸送をしようと思っても、それがなかなかできないのだ。出したいと思う、良心的に考えている船主でも現在の海運市況では出すべきものが出せないのだ。そういう苦しい立場に置かれている船主がたくさんあることは否定できないと思う。組合側も、賃金問題として考えれば要求にこたえようとしない船主に対しては断固ストライキその他の闘争によって戦っていかなければならぬ、こういう気持ちを持っておるけれども、二面考えれば、著しい現実というものを見ればどこに解決時点を求めようかということに非常に苦しんでいるわけです。  しかも、船主経済の許す範囲内でほどほどの賃上げて解決をするという形になれば、当然世間並みの賃上げが行なわれない。モラルが低下をします。求人がますます困難になる。そればかりではない。現職の船員もどんどん逃げ出してしまう。そうすればそれはやはり内航海運の危機につながっていくという非常なジレンマに置かれているのだろうと思う。いまはまだそんなに影響は起きてないなどといって運輸省はたかをくくっているかもわからぬけれども、これがどんどん進行していくと、日本国内輸送の非常に重要な部門をになっている内航海運が阻害をされてくるという形になると、国内経済にも景気の立ち直りにも私は大きな影響を与えると思う。  しかも、いま船員局長が言っているように、組繊船のストライキによって未組織船の分野がどんどん動いて調子がよくなるというような考え方でほっておけば、必ずピケその他実力行使で未組織船の出入港や荷役の妨害をするという行為に発展しますよ。それはそうでしょう。自分たちが苦しんでストライキをやって未組織船がその間にうまい汁を吸う、運輸省はそれを奨励するような考え方があるということになれば、そんなものはとめてしまえということになる。非常に深刻な争議に発展をする。そういう点について、これはやはり海運政策の観点から見てもほっておけない問題です。そこで私は船員局長よりも最初海運局長にお伺いしたのですけれども運輸省としては、これは労使の問題だから労働問題としてほっておけ、こういう考え方ですか。
  26. 鈴木珊吉

    鈴木(珊)政府委員 海運政策の問題から申しますといま先生御指摘のとおりでございまして、内航海運日本経済の中で置かれております地位はたいへん重要なものでございます。にもかかわらず、これをになっておる船主業というものは非常に零細ですし、したがいまして、そこに働く船員が職場の魅力を失うというようなことがあってはたいへんなことになると思います。その辺の認識は私どももちろん持っておりますので、したがいまして、内航がそういった船主基盤のしにおきまして使命を労使が十分果たし得るような企業環境なり職場環境なりに持っていくということが私どもがとるべき、進むべき道ではないかと思います。そういう目標に向かっていくべきだと思います。そういった面からいいますと、あるいは御指摘のように、いままでの海運政策上、外航にからみまして非常に足らないところがあるということは、私ども率直に認めざるを得ないと思います。したがいまして、今後そういう点につきましては、外航に劣らず行政でできることはできるだけやりまして、企業の立て直しなり、そういった労働のできる、それが社会的な使命を達成するのだという職場に内航でも持っていきたいというように目標は置いておりますので、それに向かいまして今後努力したいというふうに考えておる次第でございます。
  27. 和田春生

    和田(春)委員 内航海運と一口に言いましてもその中には幾つかの業態があるわけで、これは御存じのとおりであります。俗にいう元請、あるいは元請オペレーター、それからオーナー、そういうような分類があるわけですが、苦しい苦しいといってもあまり苦しくない船主もおるわけです。一番苦しいのは、自分で船を持ち、船員を雇っているというところがすべてのしわ寄せを受けておるわけです。回漕手数料だけをかせいでおるというようなところについては、運賃が下がったら下がった分だけ収人は減るかもわからないけれども、そのことによって別に欠損になるとか赤字になるとかいう心配はない、そういういろいろな業態がある中で、いまも海運局長が言われましたように、内航海運二法ができまして、これによって業界の秩序を確立する。そして標準運賃制度を設け、適正な運賃水準を維持しようということが意図されましたけれども、私どもの見るところでは、当初期待されたほどの効果はほとんど発揮してない。むしろしわ寄せをオーナーにどんどん寄せていく、こういう結果になっているというふうに考えられるわけです。現在の内航海運の法律的な面から見て、あるいは内航海運の二法に基づく行政指導の面において現状のままでいいと私は思わないのですけれども運輸省としてはいいと思っておるか、悪いと思っておるか、あるいは改善するためにはどういうことが必要と考えられておるか、その基本的な取り組みの姿勢についてお伺いしたい。
  28. 鈴木珊吉

    鈴木(珊)政府委員 現在の内航二法は内容的に申しまして、むしろほかの漁業にはあまり見られないような内航発展のための基本的ないろいろな措置ができるようになっております。これはもちろん行政指導のみならず内航業者自身、あるいは組合自身が自主的に行なうこともできる。したがいまして、いまの内航工法というものはきわめて高度なレベルの高い内容を持った法律であると私どもは思っております。ただ、問題は、そういう法律があるにもかかわらず、実施の面が問題でございまして、御指摘のように、こういういい法律があるにもかかわらず、実施政策が内航の実情に沿ってないというふうに御批判されてもやむを得ないのではないかと、私ども率直にここで認めざるを得ないと思います。特に零細船主が多いために過当競争におちいるということで、たとえば企業の許可制でございますが、これなどもわざわざ許可制に直したというような手を打ったのでございますけれども、その結果、以前に比べまして業態もだいぶはっきりしますし、それから過当競争といいますか、オペレーターの数もだいぶ整理をされましてすっきりはしてきたのでございますけれども、なおそれでも現状はこういったふうなことでございまして、一たび不況が来ればたちまち倒産しかねないというような非常にひよわな企業でございますので、そういった面におきまして企業体質改善という問題がやはり一番ではないかと思います。これには現在あります法律に基づましてひとつこの方法論を改めて、もっと実行力のある政策をやっていくべきではないかというふうに思いまして、実は昨年でございましたか、もう市況がいよいよ苦しくなってきた。さらにドル・ショック等で国内の荷主が減少した。特に鉄鋼の減産が非常に響いたということで船腹過剰におちいってきた。これはいよいよいかぬと思いまして、実は昨年の補正予算でとりあえずの当面の策といたしまして、船腹の過剰を何とかしてやる必要がある。係船と解撤ということを実は考えましてやってみたのでございますが、ちょっと瞬間が間に合いませんでした。また業界の中のまとまりも悪うございまして、四十五年の補正予算では実現できなかったのでありまして、四十七年度の予算に早急に実現できるように、まず船腹調整の面では一般貨物船が現在大体二百三、四十万トンございますけれども、その一割くらいオーバーしていると思いますので、大体二十万トンを目標にいたしまして、二十万トンのうち十五万トンくらいをまず係船、あと五万トンを完全に解撤してしまうという、係船及び解撤のための国のつなぎ融資という予算を四十七年度に要求いたしまして、幸いにいたしまして国会の御審議も得まして、実施をされることになっております。四月早々からもう実施に入っております。現在係船の希望者が十二万デットウエート——まだ三万トンを割っておりますけれども、すでに十二万デッドウエート出ておりますし、解撤のほうも、これは五万トンに対しましてその倍くらいも実は出てきておるというようなことで、現在実施に着手しております。そういった面で、船腹の過剰対策につきましては、当面、係船、解撤でやっていくということで現にやっております。  それから、その面ではうしろ向きの対策でございますので、前向きにはただいま先生が御指摘されましたように、やはり体質改善といいますか、構造改善といいますか、そういう面をひとつ、これは行政指導ももちろんでございますし、それから業界自身もいろんな自主統制機関を通じましてやっていただく、そういった指導方針をきめまして、現在私どもは一案を持っておりまして、これを各関係の内航の組合にお見せいたしまして、ひとつこういう方針でどうだろうかと、いまよりより相談しております。非常に真剣な討議をいまやっていただいております。その内容につきましては、これは私ども航海運の構造改善対策というふうに呼んでおりますけれども、中身は、まず海運組合の活動自身が法律できめられておるような効果を実はあげていない。これはむしろ海運組合というものの組織の実態が実情に合わないのではないだろうか。たとえて申しますると、オーナーとオペレーターが一緒になって組合をつくっておるところもある。これは元来、利害が相反する。特に不況の場合、利害が相反します。そういうものが一緒になった団体ですと、オーナーが必要とする用船料要求するとか、両者がそれぞれ取引し合う場というものは、やはり別個のものであってしかるべきじゃないか。そういうふうにオーナーとオペレーターの組合を分けて、利害相反するものについてはお互いに組合同士でやり合う。その結果、妥当な線が出てくる。そういったように組織の面でも今後変えていく必要があるのではないだろうか。現在、組合は五つございますけれども、タンカーの組合は別といたしまして、貨物船関係組合につきましては、そういった整理を行なう必要があるのではないか。これにつきましては、各組合にこういう案を示しまして、いま各組合で持ち帰って前向きに検討しております。そして各組合自身も、そういう点は従来あまり効果をあげていなかった、ひとつ直そうじゃないかという機運にあるのが現状でございまして、いずれ近く結論が出ると思います。そういった組織の面でも再編成を行なう必要があると思っております。  それからもう一つは、ある一定の地域だけに限られた特定の船がございます。たとえば伊勢湾なら伊勢湾だけしか動かない船とかあるいは特定の貨物だけを積んでいくという一つの集団があると思います。それから一般コモンキャリアも一緒くたにした組合というものもまた、対荷主関係におきましても、あるいはオペレーターならオペレーターの関係におきましても、だいぶ違うじゃないか。そういった点をいままでごっちゃにしておりますので、これを分類してそれぞれの特殊性に応じた組合組織がえをする。特に一地区だけを動いているような船と、全国とか瀬戸内全般を動いている船を一緒にするのはおかしいんじゃないだろうか。そういった船の性能とか職能とかを別にした組合をつくる必要があるのではないだろうか、そういった二点につきまして、いま検討してもらっております。  それから次は、海運組合はいろいろ調整行為をなし得る。たとえば運賃調整とか配船調整、建造調整等となっておりますが、現益一番効力を発揮しておりますのは建造調整であります。これは内航総連合でいま船が余っているから、鉄鋼を運ぶ船はここ一年間建造をお互いに自粛しようじゃないかという申し合わせをしまして、それに縛られまして、皆さんつくりたいけれどもがまんしておるというので、かなり効果をあげております。そういったような建造調整をやっておりますけれども、単に建造調整だけにとどまらず、これからは、たとえば配船調整、つまり交錯輸送だとか二重の配船とか、そういったようなものによってお互いにつまらぬ競争をすることをなくすような配船調整を、再編された組合がやるというようなことも必要ではないだろうかというふうに思っております。そういう点につきましても、いま各組合で検討してもらっております。  それからさらに、地区の海運組合は、いままでややともしますと中央集権主義で全部中央に持ち帰って方針をきめてしまう。したがって、地区、地区の特殊性を没却されるおそれがあるということで、地区、地区の実情に応じた政策が足らないといううらみがございます。したがって、先ほど申し上げましたことと同じような思想でございますけれども、地区の海運組合にひとつ調整機能を持たせようじゃないか。地区、地区で調整し得るものは全部中央に持っていく必要はないのではないか。地区、地区の特殊性に応じた調整行為ができるように、そういう地区の海運組合の調整機能を強化しようじゃないか、そういった問題につきましても検討項目の中に入っておりまして、現在検討してもらっております。  以上が組合の編成並びに組合の調整行為についての改善策ということでございまして、これがどの程度いままでの内航海運業の基盤強化に役立つか。一つの進歩した案だと思いますけれども、一応自主的に考えてもらいまして、これでいいということであれば、こういうことで踏み切って再編成してもらいたいというふうに私は考えておるわけでございます。  その次に、今度は企業体そのものの改善はどうかという問題が実はございます。私ども企業体質改善という問題につきましては、たとえばいままでの海運業法によりますと、オペレーターを許可したときの基準は、自分の持ち船が非常に少なくてもいいということ、たとえば二割自分の船を持っておれば、一応あとの運航委託だろうが用船だろうがかまわない、オペレーターの資格を与えようという基準になっております。これをむしろもっと船を持たして、自分で責任をもって支配できるようにしませんと、先ほど先生御指摘のように、二重、三重の下請、下請ということをして、オーナーが一番最後に下積みになってしまう。それを幾らかでもやわらげようということで、そういったオペレーターの許可の基準を引き上げたらどうだろうか。要するに自社船の保有についての緩和制度を廃止するという方向へ持っていきたいということで検討しております。  それからもう一つは、やはりオーナーの集約化というものが必要ではないだろうか。もちろん現在一ぱい船主もおりますけれども、これからは一ぱいで船をがたがたやるということは、不況が来た場合には非常に弱い。やはり数はい持ってないとだめじゃないだろうか。そのためには集約ということで、たとえば新船をつくる場合に、集約したら優先的に新船をつくらす、そういった方法を講じまして、できるだけ複数の船を持つというふうにしていきたい。既存の一ぱい船主はやめろというわけにはいきませんから、これはやむを得ないと思いますけれども、これからは一ぱいだけで商売をやることはなるたけやめさせて、複数持つというふうにやっていきたい。またそういった集約化のために、たとえば公団の共有船という制度を利用しまして、できるだけ集約するものを優先的にやっていくという方法でオーナー業の集約化というか、企業規模の適正化をはかっていきたい。これも一つの案と思ってやっております。  以上のようなことをいま考えておりまして、また現に関係組合に提示いたしまして、業界の中で真剣に討議してもらっております。私ども担当の者はしょっちゅう議論をやっておりまして、なるべく早く案を出して、一日でも早くこういった体制に持っていきたいというのが私ども現在考えておる政策でございます。  何かこれ以上にございましたらお教えを願いたいと存ずる次第でございます。
  29. 和田春生

    和田(春)委員 海運局長の説明がだいぶ長かったので、時間がとられちゃったわけですけれども、いまの海運局長の説明の中に大体問題点が出ているのですが、私は端的に質問し、要望も兼ねておきたいと思うのです。確かに内航二法は、効果を期待されたけれども、先ほど来海運局長も認められたように、それを生かすための行政指導というものが十分でなかった。また業界体質というものが十分に改善をされていないという面がなおさら効果を減殺した、こういう面があったと思うのです。  そこで、うしろ向きの面においては、第一には船腹調整だ。この点について一応運輸省としては二十万トン調整をたてまえにして、十五万トン係船と五万トン解撤。いまお伺いすると解撤のほうには倍くらい要望が出ている。私は、むしろそこに重点を置いて、それは五万トンくらいしか予定をしていないからというのではなくて、積極的に進めてもらいたい。予算が足りなければやはりそれに追加する予算措置を講ずるなり、いろいろな方法を講じて、この際これは徹底的に進めてもらいたいと思う。というのは、戦後の船腹調整の歴史を見ると、最初はいい目標を掲げてやるわけです。途中で腰砕けになる、残った分がまた余る、こういうことを繰り返しているわけですから、今回はそれを、係船並びに解撤は目標を上回ってもかまわないから積極的に進めてもらう。しかもこれは船主が要望するわけです。同時に、それについてはもちろん船員の失業対策もあるでしょうけれども、その点に対して抜かりがないような措置を講じてもらいたいと思う。その点が一点ただしたいこと。  第二点は組織面ですけれども、確かに現在オペレーターとオーナーが同一組織に入っている。しかもオペレーターに対する基準がたいへん甘い。そこで自己船腹を非常に少なく持っておる荷扱い業者が手数料をかせぐには標準価格を守らなくたって、運賃を下げてもオペレーターは用船料をたたけば利ざやはかせげるわけです。自己所有船による損失というものはかぶらなくて済む。こういう形になるために弱い船主船主へとしわ寄せされていく。いまの内航の実情は、陸上における大企業下請、孫請という関係よりももっとひどい圧迫を受けている。したがって、このオペレーターの基準として少なくとも自己所有船腹というものを五〇%以上持つ。またその保有船腹総量というものについてもいまよりも基準を大幅に引き上げて、やはり過当な競争によって標準運賃を引き下げるという形になればオペレーター自体も損失になるんだ、自分で犠牲を払わなくてはいけないんだという体制をつくらないと内航海運は立ち直らぬと私は思う。いまのような状況では、幾ら運賃を下げたってもうけが少なくなるということはあってもオペレーターが損するということはないのですから、それじゃ決してよくならぬ。したがって、そういう面で組織の面とオペレーターに対する基準の引き上げ、規制、こういうものを積極的にやってもらわなくてはならぬ。これがやはり第二のポイントだと思うのです。  第三のポイントは、統制行為という中で建造調整はもちろんけっこうだと思う。しかし、もう一つ運賃並びに用船料というものについてこれがある程度守られるようにしなければならぬと思います。荷主は安ければ安いほどいいわけです。荷扱い業者は手数料さえもらえれば、運賃が高いか安いかということはもうけの多少に関係するだけのことであって、直接自分の経営の根本を脅かす状況ではないというふうになっていくと、単に運賃面ではなく、用船料の面からも不当な用船料を下請のオーナーに押しつけるというようなところについては、適当に規制できる、そして業界の秩序を保つということが必要だと思う。これは何も高い運賃を吹っかけてぼろもうけをしようというのではなくて、適正運賃を守れることが結局海運の秩序を維持する上に非常に大事なことだ。  いろいろ並べられましたけれども、そのポイントは三つ。それに配船調整、こういうことももちろん時宜に応じてやらなくてはならぬ。こういう点について四十六年の十二月に運輸省から、内航海運構造改善対策要綱案というものが発表されておるわけです。海運局長はこの中の幾つかの項をいま説明しているわけですけれども、この構造改善の対策要綱案というのは、多少いま言ったような点でなまぬるい点もあるけれども、的はおおむね正しいところを射ていると私は思う。  そこで、以上の私の質問したポイントについてよりはっきりした的確なお答えを、あまりくどくどした説明は要りません、私わかっておりますから、それをはっきりお答えを願いたいということと、この内航海運構造改善対策要綱、これを運輸省の政策の根幹として、もっと補強しながら積極的に取り組んで実施するということをお約束願えるかどうか、締めくくりとしてそのことをお伺いしておきたいと思う。
  30. 鈴木珊吉

    鈴木(珊)政府委員 この要綱で大体的を射ているという先生の御批判でございますが、いま先生が四点ばかりおっしゃいましたまず解撤の問題でございますけれども、そういう希望もございますが、これは予算のワクがございまして、係航の金が余ったらこっちに持ってくるというわけには実はまいらないわけでございます。しかしこれが非常に効果があれば、私どもといたしましては、ここで約束できませんけれども、さらに追加していくということで努力していきたいと思います。  それから組織面での、いまのオペレーターの基準が甘いから、自分が痛い目にあわないで用船料は下げるということが多いということでございますので、この点につきましてはだいぶオペのほうも反対があるようでございますけれども、十分業界全体の利益ということのためにそういった面でいい線を出してみたいということでこれから努力したいと思います。たぶんこれにつきましては私ども十分説得し得ると思います。  それから、運賃、用船料の問題、先生の御指摘もっともと思います。特に荷主に対しましては非常に多うございます上に、さらに中で用船料を引き下げるという、こういうばかなことはないと思います。この点につきましてもひとつ適正な用船料が確保できるような手順について、十分私どもも、どういう方法がいいか、もう一ぺんよく検討して、そんなばかなことはしないようにしていきたい。特に荷主に対しましても、自分は正当なものは要求するという態度でもっていきたいというふうに、この点はさらに検討したいと思います。  以上のようなことでございますので、この要綱にさらに足すべき点があればもちろん補正いたしましてひとつ進んでいきたい、こういう覚悟でいきたいと思いますので、何とぞ御後援をお願いしたいと思います。
  31. 和田春生

    和田(春)委員 いま大体お答えを得たわけですが、まだその御答弁では不十分だと思いますけれども、きょうは時間の関係もございますし、この程度にとどめますが、やはりそういう積極的な内航海運に対するてこ入れという政府の政策的措置がないと、内航海運労使関係というものは悪化しこそすれ、改善の見通しはないと思う。また争議解決についても、労使の激突にまかしておいたのではかえって悪い状況になっていく危険性が非常にあるわけです。したがって、争議の推移を見ながら、あらためてまたこの種の問題について質問をいたしますし、運輸省にも要求をしたいと考えますが、本日はそのことを要望して私の質問を終わりたい、こういうふうに思います。
  32. 小峯柳多

    小峯委員長 関連質問を許します。關谷勝利君。
  33. 關谷勝利

    ○關谷委員 私は質問と申しまするか、ひとつ海運局長に宿題を課しておきたいと思います。  いまの内航海運が困っておりますることは、いまるるお話があったのでよくわかっておるであろうと思います。賃金の払えない状態であります。借金も払えないので、いろいろ私たちは金融機関等に口を聞いて延ばしてもらっておるような状態でございます。賃金の払える、そうして借金の払えるような内航海運にしてやらなければなりません。外航に対しては手厚い助成策等が永年講じられてきました。その金科玉条のように言いましたことは、外貨の獲得ということが至上命令だというのであのとおり手厚い助成をしたのでございます。いま外貨は余って始末のつかないような状態になっております。円が再切り上げをやられようかというくらいにまで外貨が余っておるような状態でありますので、これからは内航対策にもっと力を入れなければならないのじゃないか。内航対策に力を入れるということになりますと、もう少し積極的に政府責任を感じたこの助成策をやってやらなければなりません。  そこで第一の宿題でございまするが船腹過剰だからということでそれを放任をしておりまするが、その船腹過剰の責任政府にあるのであります。上限をきめた必要トン数を政府がきめたのであります。もちろんこれは組合に自主的にやらせたのではあるけれども、やはりこれは監督をして、そうしてそれが適当なりと認めて、政府がそれなりに造船許可も出しておるのであります。これがなければ、好況時には輸送を果たすことができなかったのであります。そのために必要に辿られて上限をきめて必要なだけをつくらした。今度不況になった、その船が要らなくなったということになりましたときには、その余剰船舶については政府がその責任を持ってやるというのが、これが情けのある行政でなければなりません。これを放任しておいたのでは、内航海運というのは、好況時にはやっていけるけれども、不況時にはそれはもう消えてなくなれ、自分たちでかってにせいということになるわけであります。この不況時とそれから好況時につくらしたその間の船腹の過剰ということについては、これは政府責任を持ってやるというこの政策を考えなければなりません。これについては私いろいろなことを考えておりまするが、こんなことはおそらく海運局長の頭のすみにもないのでなかろうかという気持ちがするのでありますが、ひとつ、これについてどういうふうにしたらいいものかということをこれから考えてみてください。そうして、いずれ私はこれから先の委員会で御質問をしたいと思います。私はこういう考えを持っておるということも申し上げまするが、それまでに局長のほうでもこういうふうにしなかったらやれるものではないというぐらいのことは考えてもらってもいいと思います。この船腹過剰の過剰分に対してはどういうふうに処置してやったらいいか、これをひとつ考えてもらいたいと思います。  それから標準運賃の決定でありまするが、この標準運賃については、以前に私は、昨年の委員会であったと思いまするが、海運局長に質問したことがありまするが、あのきめ方自体が間違っておるのであります。もう少し情勢をよく分析して、その上に立ってきめなければならない。その標準運賃が、米の値段をきめるのと同じように逆算をしてつくられた、こういうふうなことになっておるのであります。あの当時の速記録を見てごらんなさい。あの答弁がちぐはぐな答弁になっておりますることは海運局長気づいておられると思うのでありまするが、標準運賃というものがありますと、これを守らなくても、この標準運賃から何割引きくらいのものだということで取引をされるのが通例であります。それを低くきめますと、その低いところをさらにきめる、こういうことになってくるわけであります。それとまた、このような船舶過剰のようなときになりますと、たたかれる。こういうことで標準運賃のきめ方自体について、いま不況時ではあるけれども、この標準運賃をきめるのならどういうふうにきめたらいいかということをよく、これも第二の宿題としてお答えをいずれ、あらためてでいいのです、きょうすぐ返答しろとは言いません。  それからもう一つは、オペレーターが荷主からある運賃で請け負います。ところが、場合によりますと、そのほとんどを手数料で取って、そうして船主にはわずかしか渡さないというこの現実があるのですよ。理屈じゃないのです。現実があるのです。たとえば愛媛から阪神へ荷物を積んで行きますと、行くときの運賃は標準運賃に近いものをもらっていく。ところが、今度は復便の場合には、このオペレーターのほうが、帰り便だから油代と米代だけがあったらいいだろう、からで帰るよりいいのではないかということで、ほとんどを取り上げてわずかを渡す。半分以上オペレーターが取るというようなことがあったりいたします。事実あります。そういうふうなことがありますので、このオペレーターというものの帳簿の記載方式、いまでも大体きまってはおるようでありまするけれども、これは法律できめて、そして荷主から受け取った運賃はこれだけ、それからいろいろ、通信費その他雑費、これがどれだけ要った、それから発荷の手数料が一〇%、着の手数料が三%ないし五%、こういうものを引いて差し引いたものが船主の手に渡る。渡らなければならぬ。そして立ち入り検査ができるというようなことにしてやっていけば、不当なオペレーターの搾取行為はなくなるのではなかろうか。前から私は考えておるのでありまするが、こういうことを考えてみてはどうか。  それから、いまさっき考えておりましたら、集約をするということを海運局長は言うておられた。集約をするということは、やりやすいようでなかなかむずかしい問題。そこには何か助成策が伴わなかったならば、集約はでき得ないのであります。大手でやったときでもいろいろと助成策をかみ合わして、そしてあの集約化をやったのであります。内航海運でも集約をさせようといえば、何らかの助成策がなければなりませんが、何らの助成策もいままではやっておりません。その中で、かってにおまえらは、弱いんだから一つになれと言ったって、なかなかなれるものではありません。何かそこに呼び水というものがなければならない。そこで、助成策としてこういうふうにしてやる。たとえば利子補給というような問題、そういうふうなことも考え得られると思いまするが、そんなことについてひとつ、どうしたらいいのかということを考えてみてもらいたいと思います。いずれ海運局長と私と両方が、これは意見の持ち寄りということにもなるであろうと思いますが、私は一つの案を持っておりますが、海運局長、そういうふうなことを考えたことがありますか。これもひとつ宿題として差し上げておきますから、ぜひやっていただきたいと思います。  また、この解撤等につきましても、これは助成策、相当思い切った助成策をやってやるべきだと思います。  いま申し上げましたような事柄について、きょうすぐ答弁をしろと言うてもこれは無理だと思いますので、答弁をすぐしろとは言いませんが、今国会が終わるまでぐらいにということはちょっとどうかわかりませんが、もし会期が相当大幅に延長でもするようであったならば、その会期の切れるまでに、私はまたもう一回お尋ねいたしたいと思いますから、そのときに答弁のできるように、ひとつ考えておいていただきたいと思います。  それからもう一つは、これは船舶局長にお願いしなければいかぬのかもわかりませんが、船舶局長というよりむしろ、造船所の対策というものは海運政策に従属して行なわれるものでありますので、これも海運局長のほうでも船舶局長と相談をしてきめてもらいたいと思いますが、いま造船所におきましてはキャンセルが出てきたりして、もうそのうちにアイドルが出るようになってまいります。船をつくらないのでありますから、造船所ががらあきになる、こういうようなことになりまするが、この機会にやはり船質を改善さす。それについて何か助成策でも考えてやる、こういうふうなことで造船所対策を考えてやらなければ、中小の進船所はつぶれてしまいます。大手はもちろん外航船舶等の受注が一年半分くらいまでまだあるはずでありますので、これは何とかなると思いますが、中小造船はどうにもならないことになってまいります。これを救済するためにはどうしたらいいのかというこの案は、海運政策が先行しなければできません。そして、それに対してはどういうふうな考えを持っておるか。  以上、四、五点申し上げましたが、これについての御答弁ができるように、きょう答弁しろとは言いません、これは宿題として申し上げておきますから、ひとつ答弁ができるように早急に御検討を願います。  それだけ申し上げておきます。
  34. 小峯柳多

    小峯委員長 次回は、明二十四日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十九分散会