○高木(文)
政府委員 先ほどから内田先生のお名前が出ておりますのですが、私
どもも
経済学者として内田先生にはしばしば御指導をいただいているわけでございます。内田先生は今回は
公共投資をふやすこともけっこうだが、
減税を大いに、特に年内
減税を大いにやるべきだ、これが
経済効果として大きいということを強調されたわけでありますが、その際、一般論として
所得階層別に低い階層のほうが限界消費性向が大きいから、低
所得層の
減税のほうが
景気浮揚効果が大きいというようなことをおっしゃっていることは、そのような御意見をお持ちのことは、私
どもも
承知しておるわけでございます。それで、いろいろ資料を調べてみましたのですが、現在ございますわが国のいろいろな資料、家計費
調査であるとかその他の資料をいろいろ調べてみましたのですが、全体的な傾向として
所得が大きいほど限界消費性向が落ちる、
所得が小さいほど限界消費性向が大きいということは間違いない事実でございますけれ
ども、現在の
所得税の納税対象者であるところの百万円くらいから三百万、五百万あたりの
所得階層をとってみました場合に、はたしてそんなに限界消費性向が
所得階層別に違うかどうかということをいろいろ調べてみましたのでございますが、残念ながらいまの
統計ではそれを実証できるだけの資料がどうもございませんで、そう明確に
所得階層別に限界消費性向が著しく違うということは読み取れなかったわけでございます。それが、消極的な説明になりますが、
一つの理由でございます。
それから第二点は、今回の
減税は四十七年度の
所得税制を頭に置きまして、それをうしろに戻してやるということで組み立てられましたのですが、その結果、今回分だけでは千六百五十の約半ばを控除に充て、半ばを税率で充てるというかっこうになりましたが、
先ほども
答弁を通じて申し上げましたように、当初の
減税で千六百六十六億がもっぱら控除で行なわれておりますから、両方を
考えますと四分の三は控除で行なわれておりまして、税率は四分の一ということになっておるわけでございまして、全体としましたら決してそんなに税率に片寄っているということは言えないのではないか。私
どもはその春の分と今回の分を合わせて総合的に判断してそのように
考えたわけでございます。そして、
先ほど来申しておりますように、来年度もう一度何か
所得税の基本的な手直しをする機会があるのであればまた
考えようがいろいろあるのでございますけれ
ども、どうもいろいろな事情から、主として財政事情から、今回の税制で四十七年度一年間このいまお願いしております改正後の状態でずっとやっていかなければならないというふうに
考えますと、今回急遽こういう異例の
減税が行なわれることになりましたきっかけは
景気浮揚ということでございますけれ
ども、どうしても
所得税の構造そのものの立場というものを
考えざるを得ないと
考えまして、先々の
所得税の構造というものを
考えますならば、やはり累進度の緩和ということを、いままでも累進度が厚くて困っておったところでここで控除だけに寄せますと非常に極端な累進度のカーブが上がってまいりますので、それでは制度としてうまくもてないだろう、執行その他を
考えましてもうまく
所得税制は運営がむずかしくなってくるだろうということを
考えまして、やはりきっかけは
景気の浮揚であっても、
所得税の構造そのものはある程度整った姿でなければぐあいが悪いのではないかと判断した次第でございます。