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1971-11-02 第67回国会 衆議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月二日(火曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 齋藤 邦吉君    理事 宇野 宗佑君 理事 木野 晴夫君    理事 藤井 勝志君 理事 山下 元利君    理事 広瀬 秀吉君 理事 松尾 正吉君       上村千一郎君    倉成  正君       地崎宇三郎君    中川 一郎君       中島源太郎君    原田  憲君       坊  秀男君    松本 十郎君       村上信二郎君    毛利 松平君       森  美秀君    山口シヅエ君       吉田 重延君    阿部 助哉君       平林  剛君    藤田 高敏君       堀  昌雄君    西田 八郎君       小林 政子君  出席政府委員         大蔵政務次官  田中 六助君         大蔵省主税局長 高木 文雄君  委員外出席者         経済企画庁国民         生活局参事官  齋藤 誠三君         国税庁次長   村田  博君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 十一月二日  辞任         補欠選任   寒川 喜一君     西田 八郎君 同日  辞任         補欠選任   西田 八郎君     寒川 喜一君     ————————————— 十一月一日  付加価値税創設反対に関する請願中井徳次郎  君紹介)(第一九号)  自動車損害賠償責任保険料の算定に関する請願  (橋本龍太郎紹介)(第一二六号)  同(松野幸泰紹介)(第一二七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件   租税特別措置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一〇号)   所得税法の一部を改正する法律案内閣提出   第二〇号)      ————◇—————
  2. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 これより会議を開きます。  租税特別措置法の一部を改正する法律案所得税法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、貿疑を続行いたします。阿部哉君
  3. 阿部助哉

    阿部(助)委員 政府は、ドルショックだということで景気対策をやる、こういうことで、減税公共投資の増額をおやりになるわけですが、国民はいま物価の猛烈な値上がりで非常に困難をしておるわけであります。また減税の問題についても、これと関連をしながら聞いてまいりたいのでありますが、何といっても、これは経済政策基礎であります。ことに低額の所得層には減税の効果もない、そして物価値上がりで苦しくなる、こういうようなところへきておるのであります。いま物価問題は国民最大関心事でありますし、また政府は、いままで施政演説あるいは財政演説で、常にこの物価問題は最大政治課題であって、これに対して努力をするということをいってきたのでありますが、物価問題、何をやっておるのかさっぱりわからない。ことに今度の国会における総理演説でも、財政演説でも、この物価問題には何にも触れていない。一体これはどういうことなんですか。物価問題はもう投げちまった、こういうことなんですかね。次官にお伺いいたします。
  4. 田中六助

    田中(六)政府委員 物価問題には何も大蔵大臣も触れていない、政府も触れていないということで、何をしておるかというおしかりでございますが、物価をどうするかということは、もう表に出す出さぬにかかわらずいつも政府の頭にあることでございまして、今回の補正予算における措置の全体の構想の中にも、所得税減税あるいは国際均衡国内均衡という観点からも、国際均衡では変動相場制国内均衡では金融、財政面から、そういうものをあわせまして、こういう際にこそ物価問題とつながってすべてを考えるべきだという考えのもとに出発しております。
  5. 阿部助哉

    阿部(助)委員 口に出す出さぬは別にして、物価問題には真剣に取り組んでおる、こういうお話なんですね。
  6. 田中六助

    田中(六)政府委員 さようでございます。
  7. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それでは順次聞いてまいりますが、これだけ国民関心の強い中で、いろいろ手を打っておるというけれども国民にはさっぱりわからない。いまたしか政府は九月の消費者物価指数発表したと思うのですが、現状、物価はどうなっておるのですか、なるたけ最近の時点の報告をしてもらいたい。
  8. 齋藤誠三

    齋藤説明員 本年になりまして春以降、消費者物価は比較的落ちついてまいりましたが、九月に入りまして季節商品値上がり等が顕著にございまして、対八月、九月の前月比総合指数で三・八%でございます。これを前年の九月同月対比いたしますと八・四%で、最近にない上昇でございます。十月になりまして野菜等の出回りが若干回復してまいりましたので、季節商品につきましては東京都区部だけでございますが、八・二%低下いたしました。しかし同時に非季節商品がほぼ横ばいでございまして、東京の場合には九月に物価は非常に上がったわけでございますが、十月にわずかでございますけれども、〇・八%低下いたしております。しかし、十月におきましても前年の同月に比べますと、東京で六・七%の上昇ということでございます。
  9. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ことしいっぱいだったら大体政府見通しは五・五%でしたね。これは今度はどの程度までなりそうですが。
  10. 齋藤誠三

    齋藤説明員 今年度の見通しは五・五%でございますが、九月までの上期の平均が七%でございます。そういうことで五・五%の目標を達成するためには、下期が相当下がらなければならぬわけでございますので、われわれといたしましても関係各省と協力いたしまして、当面野菜その他の生鮮食料品、あるいは公共料金抑制等について努力して、できるだけ、五・五%を上回る可能性は非常に多いわけでございますけれども、極力物価を上げないように努力いたしております。
  11. 阿部助哉

    阿部(助)委員 次官政府は努力しておる。またいままでも努力しておったはずなんですね。努力しなかったわけじゃないんでしょう。総理は毎国会約束をしておるのでありますから、努力しておったんだろうけれども一つ政府見通しどおりになったことがない。ことにいまの齋藤さんの報告によりますと、これは二十六年の八月以来の上昇ぶりだ、これくらい上がっておるわけです。そうすると、いまいろいろやっておるなんと言うけれども、やっておると言うなら、私はもっと具体的に示してもらわぬと、国民は、またうそつくんだ、政府はうそばかりついておるじゃないかということなんですが、またうそつくんだということでこれは納得しないと思うんでして、もっと具体的に、どうやって五・五%に近づけるのか。それでなければ政府は明らかにこの数字を直すべきなんです。前には経済見通しを改定されておるのですから、この際に、本来ならば国民に、やはり国民生活設計をするのにこれは必要なんですから、当然それは改定すべきなんです。政府一体これからどうしようというのか、具体的にひとつ教えてもらいたい。
  12. 田中六助

    田中(六)政府委員 先ほど事務当局から説明いたしましたように、消費者物価指数は非常に高騰しておりますが、卸売り物価指数横ばい並びにむしろ低下しているような状況でございまして、特にドルショック、それから変動為替相場制度ということによりまして輸出は伸びず、むしろ輸入が入る。そういうものを勘案しますと、輸出が伸びないというのは、結局国内の需要を喚起する以外にないわけでございますし、そういう観点から一つ物価値下がり要因があるわけです。それから輸入が入るということは、やはりこれも物価値下がり要因になりますし、そういう二つの要因、そういうような観点からいずれにしても物価は下がるという方向にあります。  それから、もちろん物価問題も私どもいつも念頭に置いているわけでありますが、現在の段階ではむしろ国内景気刺激ということに観点が優先しておりまして、これが無視されて国内景気が非常に悪くなるということになりますと、物価問題よりもより大切な国民生活に大きく響くという観点から、いままず景気浮揚策ということに焦点を合わせておりまして、これが何とか切り抜けられますならば、その次に具体的な物価問題、あなたのおっしゃるように本年度の見通しが五・五%だ、これはもう明らかに下期にそれを回復するというようなことがはたしてできるかどうか疑問でございますので、いつの日にかそういうようなこともやらなくちゃいかぬのじゃないかと、私の私見として申し上げられると思います。
  13. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ここは私見じゃ困るのでして、あなたでだめならやはり大臣に出てもらわぬとこれはだめだということなんです。ここを速記をとめて私見をお互いしゃべり合うなら、これはそれでまた別にやりますけれども——委員長、どうしましょうかな、私見ばかり述べてもらっても困るんですがね。
  14. 田中六助

    田中(六)政府委員 最後の、私は私見と申し上げましたが、大臣と正式に、物価指数の改定をどうする、見通しをどうするということは相談申し上げておりませんが、常日ごろ大臣とも相談してあらゆる問題をやってきておりますので、やはり私が発言することは政府責任だというふうに思っていいと思います。     〔委員長退席藤井委員長代理着席
  15. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私がいまお伺いしておるのは、消費者物価指数のことを申し上げておるのでして、卸売り物価が安定しておるとあなたはおっしゃっておる。安定しておるのに消費者物価がこれだけ上がっているなんというのは、私はなおさらけしからぬ、なんならあと管理価格の問題をお伺いしますけれども、こういう形の中で大企業労働者一般国民を収奪しておるのだと、私はこう言いたくなるのです。だから、いま私はその問題に触れないで消費者物価のことを言っておるのでありますが、いまの次官の御答弁からいたしますと、いま当面は物価が上がってもしようがないんだ、問題は景気浮揚策なんだ、こういうふうに私は受け取ったのです、一つは。もう一つは、物価は何とか下げていくんだ、こういうふうにおっしゃったように私聞いたのですが、これが五・五%の目標まで下がるには下がるような具体的な話をもう少ししてもらいたい。この二つありますので、こんがらかると悪いので、一番最初の問題だけ、まず答弁をお願いしたい。
  16. 田中六助

    田中(六)政府委員 一番先の、まあ私ども経済的な通念といたしまして、卸売り物価が安定しておるならば、その経済一つの根幹となるものは健全なものであるというふうに信じております。したがって、消費者物価が非常に上がっておる、高騰しておるということの要因をいろいろ分析しますが、その一つには、やはり多くの大衆の人を犠牲にして消費者物価が上がっておるという考えもあるでしょうが、やはり卸売り物価から店頭に並んでおる小売り物価まで達するまでには、流通機構の間におきましていろいろな人の所得があるわけでございます。したがって、その中には賃金あるいはそれぞれのサラリー、いろいろなことがありまして、それだけ消費者物価にはね返る、そこに要因があるわけでございまして、私は必ずしも低所得者の人々を犠牲にして消費者物価が上がっておるというふうには考えておりませず、むしろ賃金高騰の中にも——賃金高騰といいませんが、賃金の中にそういう消費者物価値上がり要素があるというふうに考えております。
  17. 阿部助哉

    阿部(助)委員 どうも私の意見とかみ合わないのですが、それなら少しはずれるようだけれども一つ一つあれしましょうか。  卸売り物価は安定しておるんだ。それで消費者物価が上がるのは流通機構に食われるんだといういまの御答弁ですね。
  18. 田中六助

    田中(六)政府委員 流通機構の中にあります、たとえばいろいろな従業員、それを運ぶ運賃もあるでしょうけれども、いろいろな人がそこに参加しているわけでございます。卸売り物価から消費者物価に達する間の過程にいろいろな諸要素があるというふうに思っております。
  19. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それならば、まず流通機構政府はもっと指導しなければならぬわけです。これは六〇年から七〇年までのこの十年間の統計ですけれども日本の場合には、卸売り物価は、これは政府発表数字ですよ、この十年間で一三・七%、そうして消費者物価は七六・六%上がっておるのですよ。ところが、西ドイツの例を見ますと、卸売り物価が二五・四%、消費者物価は三一・四%ですから、卸売り物価のほうは西ドイツの場合、日本の倍上がっておって、消費者物価のほうは日本の半分だ、こういうことなんです。一体、これは政府は何をしておったかという、私はそれを聞いておるのですよ。だから、いまの消費者物価、途中なかの流通経費がどうだこうだとおっしゃるならば、それは流通問題をもっと政府は指導してやるべきだけれども、問題は、政府一体消費者物価対策を何をしておられたのだ。一体これからどうしたらあなたのおっしゃるように値下がりをしていくのだということに国民関心を持っておるわけであります。  いまのように、まず景気浮揚策だ。この景気浮揚策は結局大企業のための景気浮揚策なんだ。国民のほうは、いま一番困っておるのは生活の問題なんです。そこで、先ほど企画庁のほうの発表は八・二とかおっしゃったけれども、これは新聞で出ておるから皆さん承知だと思うが、東京都では生活実感からいくと二四%も上がっておるとこういっておる。またサラリーマン同盟ですかの調査では、一五・六%も上がっておるとこういっておる。政府統計自体にこれは非常に不信感を持っておるのですよ。私もデータのとり方に不信感を持っております。実際の生活実感はこのようにたいへんなところへきておるのですよ。この物価問題をいまあと回しにして、とりあえず景気浮揚策なんだ、こうおっしゃるのだと、私はこれはやはりもう一ぺんこれを聞かなければならぬ。どうなんです、その辺。
  20. 田中六助

    田中(六)政府委員 景気浮揚策が当面第一だというふうに申し上げておるわけでございますが、といって、物価問題をないがしろにするということではないわけでございます。物価問題につきましても、阿部委員指摘のように、流通機構整備ということは私ども長年言っておることでございまして、流通センター整備とかいろいろなことをかなり予算をかけてやっておりますし、各地方においても自治財源でそういう流通機構整備で、生鮮食料品とかそういうものに対する値下がりのことについては、政府も補助を出してやっておりますが、なかなか思うにまかせないのが実情でございます。  それから、これはもう先ほどから何度も申し上げているわけでございますが、景気浮揚策というのは、やはり一つは今回のアメリカのニクソンの声明によるドルショックからきているわけで、したがって輸出が伸びない。輸出が伸びなければ、それだけ国内に回す品物がいろいろな点で、雑貨から機械、あらゆるもので出てくるわけでございますし、その上、先ほども申しますように、輸入の面でまた円高になっておるわけで輸入が促進されるという両面で、かなり物価に響いてくるのじゃないか、そういうような気がしているわけでございます。  それから、いま阿部委員卸売り物価指数のことを西独との比較をしておりますが、私は賃金がどうであろうかということを考えるわけでございます。日本の場合、一九六六年を一一・六にした場合に、現在、七一年の一−三月でございますが、かなり高騰を示しておりまして一六・九、こういうのを見ますと、年の平均上昇率が一九六六年から一九七〇年で一五・五でございますが、やはり非常に高騰しておる。これはよその国、あなたの御指摘西ドイツの場合と比べましてもすごい。西ドイツの場合は一九六六年、日本が一一・六のとき六・七でございますが、それがわずか七・六です。一ポイントだけ上がっておるわけです。それが日本の場合は五ポイントも上がっておるということが指摘できるわけでございまして、やはりここに小売り物価指数が上がっておるのは賃金の影響がかなりある。そういう意味から申しましても、大衆あるいは低所得者層犠牲にして云々ということが言えるかどうか疑問に思っておるわけでございます。
  21. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私が物価をいま申し上げるのは、皆さんがこれから来年度の予算をお立てになる場合、また国民が自分の生活設計をする場合、また、いま減税云々といわれるけれども、そういう場合のこれは一番基礎になる問題だから、いま税金の問題の前にこれをお伺いしておるわけなんです。  いまお伺いすると、日本では労働賃金値上がりがそのもとなんだ、これだけじゃないでしょうけれども、これを非常に強調されるわけですが、それならば、ひとつ西独アメリカとの労働賃金のあれを述べてください。どちらが高いのです。
  22. 田中六助

    田中(六)政府委員 先ほど私申し上げましたが、日本の場合一九六六年、賃金指数を一一・六といたしますと、ちょうど七一年の一−三月が一六・九になっておるわけでございまして、五・三上がっておりますが、西ドイツの場合を見ますと、ちょうど一九六六年、日本のいま申しました一一・六の場合が六・七でございますが、それが同じ七一年一−三月をとってみますと——年平均を見ますと、日本が一九六六年から一九七〇年の間の年平均上昇率が一五・五でございます。それが西ドイツでは七・六になっておるわけでございます。だから、それを見ましても、かなり日本のほうが年間の上昇率は多いのじゃないでしょうか。
  23. 阿部助哉

    阿部(助)委員 上昇率はそうだけれども金額はどうなんです。
  24. 田中六助

    田中(六)政府委員 金額は、私の手元ではちょっと指数がないわけでございますが……。
  25. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それは、一万円とっている人が二万円になれば倍になるのですよ。十万円とっている人が十五万円になったって五割しかふえてないのですよ。そんな数字を出したところで、日本労働者はいま物価高で苦しんでおるのですよ。いま国民最大関心事は、物価高生活が苦しいというところに一番大きな関心があるでしょう。その問題を私は聞いておるのでして、あなたがだんだんはずれるから、私もそれに沿ってはずれていくのだけれども、今度円を切り上げをすると外国から安く来ると言うが、一番代表的なものは石油でしょう。灯油一体下がるのですか。業界は下げないとこういっておるのでしょう。大手の消費者には、たいへんお世話になっておるからこれは下げるというのでしょう。電力だとかああいう多く使うのは下がるだろうけれども灯油はOPECのほうで少し値上がりするからあれだが、貯蔵をふやさなければいかぬからどうだとかいうことで、下げるという意思表示はしていないのですよ。また、西ドイツでいままでマルクの切り上げをやったけれども、このときだって、西ドイツ消費者物価は下がってはいないのですよ。ましてや日本みたいに流通機構がこれだけ複雑である場合には、その過程で吸収されるだろうということは、これは大方の想像するところでしょう。そうすると、いま物価がこれだけ上がってきておる、この問題を安定させるには全く円の切り上げに期待しておるだけだ、政府はそれに期待しておるだけだ、こういうことなんですか。
  26. 田中六助

    田中(六)政府委員 変動相場制の問題は一つの例として取り上げたわけで、そういうものがそこの条件一つであるというふうに言っておるわけでございまして、政府施策の中には、たとえば生産性の低い農業についてはどうするとか、あるいは中小企業流通部門合理化近代化の促進というようなことも、阿部委員も御承知のように、私ども国会でいろんな手をいままでやってきておりますし、輸入自由化につきましても、すでに八項目につきましていろんな諸点を発表しておりますし、それから競争条件整備労働力流動化などにつきましても、各般の施策をいままで数年間にわたってやってきておりますし、私が申し上げたのは、たまたま変動相場への移行、そういうものも一つ要素だ、いろんなものの中の要素一つだということを申し上げておるわけであります。
  27. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私がお伺し、国民が知りたいというのは、もっと具体的な対策を持ち合わせておるのかどうかということを聞いておるのです。     〔藤井委員長代理退席委員長着席〕 それでなければ、あなたが、いままでやってきたんだ、こう言うけれども、いままで政府は、総理は、何べんか国会の本会議場物価問題は最大政治課題でこれに努力するということを言い続けたけれども、この約束は守られてこなかった。だからいま具体的にどうするんだということを聞いておるのです。いま農業の問題が出ましたけれども農業野菜の問題はどうなんですか。一体どうしたら野菜を下げることができるのですか。価格支持政策をとるならとる、そしてただいま横浜でとっておるとか京都でやっておるというような施策をこれからとって、それで物価の安定をしますとこう言うなら、これはある程度私は期待をいたします。しかし、ただ農業に対して何らかの手を打ちたいみたいなことでは、これは何も期待できない。なまじっか農林省が万博のときは西高東低だと天気予報みたいなことを言うから、ますます東京のほうは高くなってしまう。今度も減反で野菜が出回るだろうというようなことを農林省が言うから、言ったとたんに、これはおそらく農民はつくれば下がると思うからつくらなくなるでしょう。野菜が高くなってくる。だから政府の言うことだけは、もっと具体的な施策をやって下げる、ほんとに国民の納得する、そして物価の下がるという具体策でなければ、いま円の切り上げをやったら外国からのものは安く入るでしょうなんと言ったって、それは国民は信用することができないのじゃないですか、どうなんですか。その点で、私は物価——これだけいま困難をしておる生活状態、それに物価問題は今度は触れていない。一体政府は何をするのかということに対して国民は疑問を持っておる。それに答えてもらいたいということなんです。
  28. 田中六助

    田中(六)政府委員 先ほど申しましたように、農業部門、低生産性部門に対する処置など長い間やっておるわけでございまして……(阿部(助)委員「何をやったのですか」と呼ぶ)阿部委員承知のように、物価というものの値上がり各国が苦しんでおるわけで、国内だけの対策だけでなく、いまはもう経済が国際的になっておりまして、国際的なインフレーションというものは、日本がそのらち外におるわけにはいかぬという一つ要因がある。それから国内的に見ましても、季節的な要因がありまして、異常な低温だとか、台風などの現象によって、野菜などが値上がりするとか、これは一つ農業の宿命でしょうが、ブタ年輪とかトマト、キャベツ、白菜だとか、そういうわあっとつくったときにはまた低落するというような一つの特性がございまして、物価全体をいろいろ考慮するときに、これをとってこうだああだと言っても、なかなか各国とも苦しんでおる問題でございまして、私ども先ほど申しましたように、生産性の低い部門とか、あるいは輸入自由化だとか、あるいは競争条件整備、あるいは労働力流動化などでいろいろの処置をやっておりますが、それを具体的にどうといま指数で示せないのが残念ですが、そういうふうにいろいろな諸施策をとっておるわけでございまして、無為無策で終わっておるということにはならないというふうに考えております。
  29. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いや、どうも私はあげ足をとるわけじゃないですが、物価各国悩んでおることは私も承知いたしております。国際的な問題だからしようがないのだ、こうおっしゃる。そうすると、それならば私はまた御質問をせにゃいかぬのですが、これは国際的に上がっておるのだから、日本物価も上がるのはしようがないのだ、こういうことですか。
  30. 田中六助

    田中(六)政府委員 しようがないというのじゃなくて、いろんな諸要素があって、国内的な、国外的な諸要素がある。したがって、阿部委員のおっしゃるように、具体策がないじゃないか、こう言われても、各部門で努力しておるということを申し上げておるわけでございます。
  31. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いや、いままでも総理は、就任以来物価問題について努力をするということは言明をしてきたのですよ。だけれども物価はこうなっておる。いまお話を聞いておると、いろいろやってきたのだけれども上がったのだということで、もう手がないのだということなら、これは責任をとってもらわなければいかぬですよ。国民はそんなことでは承知をするはずがないのです。だから物価を安定させられないのだ。国際的な経済の中で日本物価だけ安定させるということは困難なんだというなら困難だということで、そこからいろんな施策、たとえば生活保護世帯に対する手当をふやすとか、あるいは社会保障制度をやって、低所得層にあたたかい手を差し伸べるとかという問題が当然そこから出てこなければいかぬでしょう。その問題はやらない。そうして国会では施政演説物価安定に努力します、物価安定に努力します——そうして政府の当初の年初めにおける目標は、これはごまかしの目標というか……。   〔発言する者あり〕
  32. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 静粛に願います。
  33. 阿部助哉

    阿部(助)委員 初めからごまかしの数字だと言われてもいいような、何か国民に期待だけ持たせるような低い数字で押えておいて、今度だって経済見通しは変更したけれども物価のほうはこれは努力目標だ、こんな言い方をされて、そうして物価のほうはどんどん上がっていくのでは、国民はどういう計算で生活設計を立てたらいいのですか。もっと国民生活を真剣になって考えてもらわないような政府では困るじゃないか、それを私は言っておる。努力したかもしらぬ、しかし努力のしかたがいまのようにまずいのでは、これはそれなりに国民責任をとってもらわなければいかぬということです。だからこれから一体、いまのように激しい物価上昇大臣も預金の利子よりも高くなるようなことは、これは悪質な物価値上がりであって、何としてもそれ以下に押えなければならないとこう言っておるけれども、もうさっきの数字を見ても八・何%といえば定期預金の金利よりも上回っておるでしょう。だからそこで、一体政府はこれから何をしようとするのかということを私はお伺いをしておるわけなんです。
  34. 田中六助

    田中(六)政府委員 まあ物価値下がりというものに対する努力をすると同時に、結局実質的な所得が上がれば相対的に物価は下がるわけでございます。この実質所得の向上ということも、やはり物価対策一つじゃないか。そこの意味ではそういうふうに考えられます。したがって、阿部委員のおっしゃるように社会保障制度の充実ということは、やはり大きな眼目じゃないかというふうに考えられます。御承知のように、いままでは民間主導型の経済、つまり国際収支に焦点を合わせたような経済でございましたし、今回アメリカのこういう態度にかかわらず国際収支はぐっとよくなっておりますので、これからほんとうの国の主導、つまり財政主導型の経済にしなくちゃいけないというような大きな観点から、私ども今回の予算、それから四十六年も多少そのけが見えますが、補正予算、四十七年度も、社会資本の充実とかあるいは社会保障制度の充実というようなことで、財政主導型の経済に持っていこうという考え方はあるわけでございます。
  35. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だから、その程度では、そんな言い方では国民はわからないのですよ。また期待もできないのですね。  経済企画庁の齋藤参事官にお伺いしますが、企画庁のほうでは一体どういう手を打って物価を五・五%にするつもりなんですか。
  36. 齋藤誠三

    齋藤説明員 最近の消費者物価値上がりのおもなものが生鮮食料品の価格の上昇でございます。これについては、目下農林省ともいろいろ協議いたしておりますが、まず、秋の集荷をいかに確保するかという点につきまして、農林省等におきましても係官の現地派遣等、あるいは生産出荷協議会等への協力要請等によりまして、できるだけ摩擦のない、若干予想よりは生産量は低いわけでございますけれども、そういうねらいでいろいろ手を打っているわけでございます。
  37. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いろいろじゃ困るのです。具体的に言ってください。
  38. 齋藤誠三

    齋藤説明員 それは地域の生産出荷協議会等との協議によりまして、秋野菜につきまして出荷の円滑化をはかるよう指導、要請しているわけでございます。  また、流通段階の卸売り市場等につきましても、中央卸売市場法が改正になりまして、現在新制度への移行の準備中でございますが、よく問題になります手数料問題等につきましても、農林省におきましても検討されておりますし、企画庁におきましても、物価安定政策会議調査部会におきまして緊急な提言をするよう、現在先生方に御検討をお願いしておるわけでございます。  また、輸入物資が円高に伴ってあまり安くならないといういろいろの問題がございますので、先月末、物価担当官会議輸入価格部会というものを設けまして、輸入価格の低下に伴って、それが中間段階で吸収されないよう監視体制を強める意味におきまして、毎月調査を行ない、問題点を整理いたしまして、関係各省の指導のもとにできるだけ消費者価格に反映するよう努力しているわけでございます。  企画庁といたしましては、そういった問題につきまして関係各省と連絡を緊密にいたしまして、できるだけ物価抑制の実があがるよう努力している次第でございます。
  39. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まあそういう努力も必要でありましょうけれども、もう少し具体的に、たとえば野菜の問題ならば、価格保障をするとか、あるいは作付面積に応じた助成をするとかというようなことをしなければ、と同時に、流通機構をもっと徹底的に改善する手を講じなければ、これは下がらないのじゃないですか。ただ皆さん会議を開いた、何か学者に相談したというだけなら、いままでもずっとやってきたわけでしょう。それで下がらないわけですよ。それで政府は下がらないなら下がらないと言えばいいのだけれども、安定させる、安定させると言って安定しないところに私は問題があるのだと、こう言っておるわけなんです。  そういう点で、きのう何か参議院で六%にするとかなんとか言ったようでありますけれども、私しっかり聞いておりませんので、新聞で見たわけでありますが、ほんとうに六%なら六%にできるのですか。
  40. 齋藤誠三

    齋藤説明員 昨日の参議院における貿疑について、私まだ正確に聞いておりませんので、ちょっとお答えできませんが、たとえば野菜につきましても、この秋の非常な出荷不足は夏の異常気象その他いろいろの原因がございますが、夏場における野菜価格の低下による生産意欲の減退が相当影響しているわけでございます。農林省におきましても、八月以降、秋野菜対策としましていわゆる価格保障の基準の引き上げ等いろいろな対策を講じてまいりましたが、そういう自然現象の影響等によりましてまだ実があがっていないわけでございまして、ただいま先生御指摘のとおり、まだ野菜対策が十分ではないという点は重々われわれもわかるわけでございます。そういうことで、この秋の野菜対策としましては即効的なものがなかなか見つからないわけでございますが、冬以降あるいは来年度の野菜対策につきましては、農林省もすでにいろいろ予算も要求しておりますし、またさらにもう少し強力な措置を講ずるように現在検討中でございます。われわれのほうはまだそういう結論を聞いておらないわけでございますが、先ほど申しましたように、物価安定政策会議におきましてもいろいろ諸先生方の御意見を聞いておりまして、間もなく何らかの形でわれわれの意見をまとめ、あるいは農林省にもそういう協力を求めたいと考えておるわけでございます。
  41. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この問題はあまり時間をとりたくないのでありますけれども農林省でもいろいろと、こうおっしゃるのだが、そのいろいろというのを聞きたいのです。
  42. 齋藤誠三

    齋藤説明員 間もなく農林省からまとまった意見が出ると思いますが、われわれのほうとしましては、さしあたりそういう供給体制をどう確保するかという点につきまして、秋だけの問題でございますが輸送補助費の問題、それから台湾タマネギの輸入の問題等、あまりきめ手になる秋の対策はございませんが、そういう点でも現状の制度の中でできる限りの努力をしたい所存でございます。
  43. 阿部助哉

    阿部(助)委員 次官、いまお話を聞いておるように、あまりきめ手になるものはないのですよ。そうしますと、またあなたの言外のことばの意味をとりますと、やはり私はいまあなたの言ったのがほんとうだと思う。それは、当面景気対策に重点があって、物価問題は二の次なんだというのがいまの政府のほんとうの腹の中なんじゃないかというふうに私はいま感じたわけであります。そうすると、国民のほうにとってみれば、いろいろな政策も大事だろうけれども、当面これだけ生活が追い込まれておる。その中で物価対策というものはいまお話があったようにきめ手はないのだ。口では安定安定と言うけれども、これはことばだけの問題であって、実際はきめ手はないというのがどうも私の受けた感じなんですが、これは違っておりましょうか。
  44. 田中六助

    田中(六)政府委員 順序としてまず第一に景気浮揚策だ、このニュアンスのとり方でございますが、物価問題というのは政府がいつも言っておりますように、いつの時点においても取り組んでおる問題でございまして、先ほど経済企画庁の事務当局から説明いたしましたように、すでに物価安定政策会議総合部会で「野菜の価格安定対策について」ということを昨年の十月に答申して、それにのっとっていろいろやっているわけですが、そのきめ手がどうにもならない。それはやはり物価問題がいかに広範囲にわたって、いかに困難かという証左にもなると思うのです。それで当面その物価問題はさておいて、景気浮揚対策だけに没頭しているかというとそうでもないのでして、全体的に考えて推進しておりまして、ただ、いま私どもが眼前に予算というものを提案して御審議願っているのは、やはり景気浮揚対策というものを中心にしたものをお願いしているわけでございまして、そういう意味からは当面景気浮揚対策が前面に出ておるということは言えると思います。
  45. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だから、これはいつまでも繰り返しになりますので、これで次に移りたいと思いますけれども物価問題はいつも取り組んでいるのだがなかなか問題解決しないのだ、こういうお話、また広範でなかなか具体的なあれがうまく見つからないのだ、こういうお話、こうしてくると、極端にいえば佐藤内閣にはもう物価安定の能力なし、こういうことになるわけでありますが、そういうことで大体いいですな。
  46. 田中六助

    田中(六)政府委員 能力なしでいいのですなと言われましても、私、それでいいというわけにもいきませず、私どもは全力をあげてこの問題に取り組んでおるということ以外には申しかねます。
  47. 阿部助哉

    阿部(助)委員 物価問題これは終わりたいと思っておるのだけれども、なかなか切りがつかない。たとえばさっきあなたが円の問題を出した。私も灯油の問題を出した。これは聞くところによれば一〇%の円の切り上げがあると、石油の業界は千二百億ももうかるという話を聞いておるのでありますが、それにかかわらずなかなかさっき言ったようにOPECのほうで少し値上げしろとかあるいは貯蔵設備に金がかかるのだというようなことで、これも値下がりするという希望は持てないようであります。ところが、いまのように、こうやって、この物価はなかなか安定しない、当初の政府見通しでも五・五%、そしていま、もうそれも守ることはとうてい不可能だというようなところへきておるとすれば、むしろこの物価値上げによって一番打撃を受ける層に何らかの政策、対策を講じてやるというのが当然だと思うのであります。  そういう点で、先日、この委員会でわが党の堀委員から、いわゆる低所得者層に対してはどうなのか、所得税を納めてない層は一体どうなんだという問題が出ましたけれども、これは当然最も政府がここに意を注がなければならないところに政府のほうはさっぱりこれに対処していないじゃないか。今度の減税の場合にも、この前も指摘がありましたように、どっちかといえば三百万円以上、この人たちにわりかた手厚い減税はされるけれども、低いほうに対してはされていない。これもやはりいま言う私はこの点で問題があるだろう、こう思うのであります。  いま税金を納めておる人は、皆さんの資料をいただきますと、二千六百万、こう記憶しておるのですが、それでよろしゅうございますか。
  48. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 大体その数字、二千六百万人でございます。
  49. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そして三百万円以上の方々は約百万人、こういう大見当でよろしゅうございますか。
  50. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 五百万円超で約一%、それから三百万円超、ずっと上全部合わせまして約二・五%。
  51. 阿部助哉

    阿部(助)委員 何がでございますか。
  52. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 人員でございます。二千六百万の中で……。
  53. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だから、人間の数で何ぼになりますか。
  54. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 五百万円超が約二十万人、三百万から五百万の間が約四十五万人くらいでございます。
  55. 阿部助哉

    阿部(助)委員 三百万以上となると、これで六十五万ですか。
  56. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 それを合わせると六十五万でございます。
  57. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうなりますと、大体三百万以上でわずかに六十五万ということになると、二千六百万人のうちごくわずか、その大半は、いまのように物価値上がり減税なんていうものは食われてしまう、こう見て間違いがなかろうと思うのですが、いかがです。
  58. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ちょっとただいまの御質問の意味がはっきりいたしませんでしたが、今回の税率と控除とを組み合わせて考えております減税の案では、各所得階層、非常に高いところは別といたしまして、各所得階層の減税割合が大体一二、三%から平年度で一四、五%くらいのところに平均的になるように考えておるのでございまして、その場合に物価問題との関連でどう考えるかということになりました場合に、所得の高い階層についてはすなわち余裕があるから、物価が上がっても全く考えなくてもいいという考え方をとっていいのか、それともやはり所得の大小にかかわらず、名目的ないわゆる所得増、貨幣価値の低落による所得増ということもあるわけでございますから、所得税の制度を考えます場合には、必ずしも特定階層だけでなくてすべての階層について同じように考える必要があるのかということについては、いろいろ御議論があるところであろうかと思います。私は別にその問題について、ここで特に先生の御意見について申し上げるつもりもございませんが、それでは現在の状態のもとにおいて、三百万、五百万、七百万という階層については全く考えなくてもいいというわけにもまいらないのではないかというふうに考えているわけでございます。
  59. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、三百万以上のほうは全部ぶん投げてしまえという話をしたわけじゃないのです。問題は、こっちのほうに手厚くて低いほうに少な過ぎる。たとえば調査会の答申の出た翌日の新聞は、もうあげて今度の減税は低所得者層には何らの効果もないというきびしい批判をしておったわけであります。そういう点で低いほうの低所得層に対する減税の効果があまりにも薄過ぎるということを私は申し上げておるのでして、上のほうは考えなくたっていいという極論を吐いておるわけじゃない。その点で局長はどういう見方をされるのですか。
  60. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 今回の減税を、最近の経済情勢を前提として、特に年内減税ということも含めて実施に移そうではないかということを考えられました契機といたしましては、一つはよくいわれておりますように、景気浮揚ということでございますと同時に、一つはやはり何というか、このように日本経済が強固になったということに対して、それはやはり国民全体の勤労の一つの成果だということから、何か明るい一つのニュースとして、単に経済的効果だけじゃなくて心理的な効果をねらって、減税をしたらどうかというような感じから取り上げられてきたように思います。その場合に、私どもの受けとめ方といたしましては、なるべく各階層に同じような割合で均てんするような減税の形が望ましいのではないか、特別な階層に特別に寄るということよりは、同じような割合で軽減が行なわれることが望ましいのではないかという考え方をとったわけでございます。そこで、ただいま御指摘のように、百万なり百五十万なり二百万なりの階層についての軽減割合が低いかどうかということでございますが、その点は、一つには、やはり全体としてどのくらいの財源規模によってどのくらいの減税規模で減税を行なうかということによってきまってまいりましょうし、それからもう一つには、全体の減税規模の中で、上の階層と下の階層とでどういうふうに階層別に分け合うかということによろうかと思いますが、その点につきましては、実は来年度以降の所得税制の姿ということもひとつ考えてみなければならないということを考えますならば、前回の四十四年度と四十五年度にお願いをいたしまして、現行法の基礎となっておりますところの全体の構造が、御存じのように、二百万、三百万、四百万あたりから累進の限界税率が、いわば階段が急に立っております関係上、所得税制の姿としては、できるならばこれをなだらかなものにする必要があるという要請がかねがねございますので、そのことも考え合わす必要がある。彼此いろいろ欲を出しました結果、このような案になったわけでございまして、ただいまの、低い階層についての軽減割合が少なくないかという御指摘に対しては、政府の中で、この案を諮問して税制調査会に意見をお尋ねをいたしましたときにも非常に熱心な議論がございまして、二つの相対立する議論があったわけでございます。そのことでも明らかでありますように、その結果御承認はいただいたわけでございますが、過程においてはたいへん議論があったわけでございますので、御指摘のような御意見をお持ちの方も決して少なくはないと思っておりますけれども、私どもは、いまいろいろごたごた申しましたような要素考え合わせまして、現在の案でお願いをするということにいたしたわけでございます。
  61. 阿部助哉

    阿部(助)委員 局長、わからないことを言うてだんだんぼかしていくようですが、財源の額によってきまるとか、そんなものはわかり切っておることなんですよ。ただ問題は、それをどのようにやったら、いま一番生活に困っておる人たちに少しでもあたたかくやれるかというのが政治だと思うのですよ。そういう点で、物価が上がった、こういたしましても、それはみんな同じ値段で金持ちも貧乏人も買って食べるんだから公平だというわけにはならぬでしょう。その負担の割合は、物価が上がってきた、その物価による痛手というものは、どちらかといえば低所得者層に重くのしかかってくるでしょう。また、景気浮揚策といえば、この前堀委員から指摘がありましたように、どっちかといえば、低いほうへこれを出せば、やはり購買力に回ってくるだろうという点からいっても、景気浮揚策としてもこれは疑問がある。それよりももっと大事なのは、いまの物価高の中でこの減税をやるということになれば、もっと低所得者層にこれを手厚くするのが当然なんじゃないか。  そういう点で、私、一つお伺いしますが、なぜことしは給与所得控除を上げなかったのか。これを引き上げて、労働者の大幅な減税をまずやるべきであったのじゃないかという感じが私はするのですが、その点はどうなんです。
  62. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 第一の、景気刺激策という見地から、あるいは物価が上がっている現状においての生活費負担を軽減するという見地から、どのような所得税の改正を行なうべきかという見地に立つならば、もう少し別の考え方があるじゃないかという御指摘に対しては、お説のとおりであると思います。しかし、所得税のどういう改正をするかという場合に、単にそれだけの見地からだけでよろしいのかどうかということについては、私どもは多分に疑問を持つわけでございまして、やはり税は税として、一番基本的にいわゆる負担の公平論というものが背後に一本通ってなければならないのではないかと思うわけでございます。その意味からいきまして、やはりある程度のなだらかな階層に応じた負担の増加ということを考えて組み合わせをつくらざるを得ないのではないかと考えたわけでございます。  第二点の、給与所得控除の問題につきましては、現在までここ数年の間かなり給与所得控除の拡充をはかってまいりました。いわゆる課税最低限の引き上げの内容といたしまして、基礎控除、配偶者控除等のいわゆる人的控除の拡充と給与所得控除の拡充を通じて今日まで改正がはかられてきたわけでございます。現在、たとえば年収五十万円の場合の控除額は二十万四千円になっておりますから、すでに控除率としては四〇・八%というかなり高い率になっております。そろそろ他の所得者との均衡の問題も起こりつつある状態になってきておるわけでございます。  そこで、その問題は、今後基本的にどういうふうに考えるか、さらに給与所得控除の引き上げを今後とも継続的に行なっていくべきかどうかはなお御議論いただきたいところでございますが、今回の場合につきましては、この春の改正の際に、定額控除を十万円から十三万円まで一挙に引き上げていただきました。その前から申しますと、四十一年に四万円、四十二年に八万円、四十三年に十万円と上げてまいりましたものを、四十六年に十三万円まで定額控除を上げてまいったわけでございます。今回は、先ほども申しますように、特に給与所得者だけを中心の減税ということよりは、どちらかといえば、事業所得者も含め、また農業所得者も含め、その他の所得者も含めて、同じような割合で同じような程度に各階層に減税効果を及ぼしたほうが望ましいのではないかという考え方から、いわゆるサラリーマンだけを特別に優遇する——ことばを改めます。特別に厚くするということよりはむしろ一律であるほうがいいのではないかということで、給与所得者についてだけメリットが及びます給与所得控除である、他の特別な所得層についてだけメリットがございます何らかの措置ということは一切見送るということにいたしたわけでございます。
  63. 阿部助哉

    阿部(助)委員 今回はそうした、したのだから皆さんはそれを推そうとするのだろうけれども、他の農業であろうと中小企業であろうと、やはり百万円、二百万円以下の層にもう少し手厚くしたらどうかということを私は言っておるのでして、それの代表的な問題として給与所得控除を上げる。これに見合ってそれを上げればいいのであって、今度の景気刺激だという観点からいっても、いまの、先ほどお聞きのような物価情勢からいってみても、これを引き上げるということがまず重点であるべきだ、こういう議論を私は申し上げているのです。その点で、もう皆さんは一応案を出してしまったらなかなか大蔵省は変えないのでしょうけれども、問題は来年はどうするのです。来年いまのような物価上昇の中でこういう低所得者層に対する減税というものはお考えないのですか。
  64. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 今回の年内減税のやり方といたしましては、具体的には所得税法の改正ということでお願いしておるわけでございまして、その場合には四十七年度以降に適用になります基本法の改正という形でお願いをしているわけでございます。そこで、とりあえず四十七年度に適用になる所得税の姿を描きまして、そのほぼ四分の三を繰り上げて年内に実施をするという形をとっておるわけでございます。しからば四十七年度には所得税の減税についてはもう考えないのかどうかということにつきましては、先般の当委員会におきまして堀委員の御質問に対して大蔵大臣がお答え申しておりますが、来来の財政需要等を現在見通すことは非常に困難でございますから、決定的なことは申し上げられないわけでございますが、それにいたしましても、大臣のことばによりますと、これ以上の余裕が来年度歳入の見込みからはむずかしいのではないかというふうに考えておりますが、しかし、そういう案をいかに出してもきめるのは国会でございますから、来年は来年でまた何らかの手直しをされるかどうか、そういうことはこれはまた国会のされることでございますから、私どもとしてはそういう気持ちで今度の減税案を出したということでございます。こういう答弁を、私どもの手元で控えましたメモではいたしておるのでございまして、私ども事務当局といたしましても、来年度の税収の見積もりが、全く見当はつきませんが、大ざっぱにいって非常にいわば暗い見通しを持っておるものでございますから、いまここであまり楽観的なことを申し上げるのはかえっていけないのではないか。そこで現在お願いしております所得税法のままで、きわめて部分的な手直しというのはあるいはあり得るかもしれませんが、かなりの額を必要といたしますような減税は困難ではないかというふうに考えております。
  65. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうすると、ことしは財政需要がたいへんよろしいので減税されたわけですか。
  66. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 決して本年もよろしいわけではございませんのですけれども、そこはいわばいろいろな政府主導型のポリシーをとる……(阿部(助)委員「いろいろとは何です。」と呼ぶ)公共事業の投資をふやすことと、それから減税を行なうことと、それを組み合わして、いわば民間主導型経済から財政主導型経済へというふうに切りかえを行ないます場合に、どうも公共投資をふやすことによる刺激効果というものは、乗数効果は大きいけれども早く出てきそうもない、効果のあらわれ方は少しおくれぎみであるので、減税をそういう意味で取り上げるのであれば、早くやることに意味があるであろうということで、どちらかと申しますと、減税の大きさよりも時期に重点を置いて早くやるということに意味を見つけて、ことし、かなり無理をして年内に繰り上げてやったというような事情でございます。
  67. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だから、財政需要がこうだからああだからということよりも、これは次官、もう一つ考えなければいかぬと思うのは、私は、今日円切り上げが迫られておるなんというのはやはり日本の産業構造自体に問題もあると思うのです。それは何と言っても日本の低賃金というものがやはり根底にあるので、いま切り上げをやってみたところで、いままでみたいにまた低賃金労働者をこき使っていけば、これはまた同じようなところへはまってくるのは当然なんです。そういう点からいっても、またいまの物価の問題からいっても、低所得層に対する手当てというものは何と言っても急務だと、私はこう思うのでして、財政需要が許せばなんて、ことし財政需要はあまり許していないのに公債発行してまでやるわけでしょう。それを考えれば、日本の産業構造を平和な産業構造にしていくためにもこれは必要なんじゃないかと、私はこういう感じがするわけですが、次官はいかがです。
  68. 田中六助

    田中(六)政府委員 日本の産業構造が誤っていないかという御質問ですが……(阿部(助)委員「低賃金だということです。」と呼ぶ)低賃金に押えられておるという産業構造になっておるのじゃないかということですが、私はそういうふうには解釈しておりませんで、やはり日本経済はかつては二重底の経済で低賃金者層と上のほうと二つあったというふうにいわれておりますが、それは年とともに解消しているのじゃないかと思うのです。それで、経営者と勤務している人、労働者というのは、資本主義機構における限りどこにでもあるわけでして、その差がどうなるかということが問題じゃないかと思うのですが、それは先ほど申しましたように二重底の経済というものはだんだんよくなっておりますし、私どもも今回の補正予算の中の内容につきましても、先ほどから高木局長が申しますように、税全体のことを考え、つまり納税義務者はだれかということを考えた場合、税負担の能力あるいは税を現実に納めておるのはやはり三百万以上の人が半分ぐらいは納めているので、人間にしてこれはわずかでございます。あなたも指摘しておりますように百万足らずでしょう。その人が半分以上も納めておるという税制のあり方を考えたときに、今度は減税する場合はそういう人はほうっておいて特殊な人に考えるという考え方が、税の体系から見ましてはたしてどうか、つまり財産の使用収益処分というような課税の対象という原則から考えてどうかという疑問点がありますし、そういうところは全体的に見てやはり考えなくちゃいかぬのじゃないかという気がいたしております。
  69. 阿部助哉

    阿部(助)委員 どうも少し極論されるですね。数が少なかろうと何であろうと、よけい収入のあるところの人たちがよけい納めるのは当然のことじゃないのですか。局長、それは当然のことじゃないですかね。
  70. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 所得の多い方がよけい税を納められるのは、現在の所得税の構造上当然なことと思います。
  71. 阿部助哉

    阿部(助)委員 次官、だから上のほうを全部ぶん投げてしまえといっているのではないのです。今度の減税はその層に厚過ぎるといっているだけの話であって——厚過ぎると思うのですよ。しかも物価のこういう上がる中で、低所得者ほど生活が困っておるんだから、それを引き上げていくべきだ、こういうことなんでして、あなた、こっちのほう全部ぶん投げてしまえというような極論をされるようだけれども、少し話が違うんじゃないですか。しかも日本——あなたは私の話をよく聞いていないのだが、私の言っているのは、じゃ日本労働賃金は、大体アメリカ並み、ヨーロッパ並みだということですか。低いんですよ。これは間違っておったらあれですが、私の調べたところによって、自動車産業の労働者だけとってみたって、これはたいへんに差があるんですよ。たとえば、これは六九年の統計ですが、自動車産業の一時間あたりの労働賃金は、アメリカが千四百五十一円、西ドイツが七百八十九円、イギリスが六百十一円、そして日本は三百二十六円です。アメリカの四分の一です。西ドイツの二分の一です。そうして、これはまあ余分なことだけれども、労働分配率なんというのも日本がずば抜けて低いんですよ。  私はそういうことを言っておるんでして、低所得者ほど物価が上がれば困る。しかも物価先ほど言ったようにこう上がっておるじゃないか。そうすればそっちのほうにウエートを置いて減税するのが当然じゃないか。そうしてことし、いま皆さんが案を出せばなかなか変えない。局長は、国会できめるんだという。国会はなるほど形式上はそういうことになっているかもわからないけれども、これは皆さんのほうから提案をされてくるということになれば、来年ぐらいはこれを直して、低いほうの基礎控除等をもっと引き上げていく、そうしてこちらのほうにもう少し手厚くやってやるというのが当然なことじゃないかという意見を述べて私は質問をしておるわけでして、その点はいかがなんですか。
  72. 田中六助

    田中(六)政府委員 もちろん低所得者層に非常に低い——非常にということは語弊がありますが、いずれにしても税率と控除というものを組み合わして累進課税をしているわけでございまして、局長も指摘しておりますように、なだらかな一つ減税という方向が根底に考えられているわけでございますので、したがって、低所得者層の低い部分はこれからも徐々に直していって、阿部委員のおっしゃるようにしたいというふうに考えます。
  73. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ちょっと補足させて御説明させていただきますが、今回の千六百五十億の減税のうち、ほぼ半ばの金額が控除のほうに充てられて、ほぼ半ばの金額が税率のほうに充てられている。控除のほうに充てられたものがいわば低所得者層のほうによく、いわばきく減税になるという点からいえば、阿部先生がおっしゃるような傾向にあるのではないかという御意見に、ある意味で共感するわけでございますが、この春の国会でお願いしました際に、やはり今回と同じ規模の千六百六十六億の規模の減税をお願いをいたしまして、そっちのほうは全部控除でやったわけでございます。で、所得税というものは年分課税でありますから、春の分と今回の秋の分とが一緒になって年末調整なり来年の確定申告なりにあらわれてくるわけでございます。そこで所得税の改正をいたします場合に、やはりどうしても控除と税率とはある程度組み合わせてやらざるを得ない構成になっておりますので、そうかといって税率の手直しをいたします場合には、控除をやらずして税率だけやるということはできませんから、それである程度大規模の控除の引き上げがある機会でないと税率が直せませんから、この春の改正と合わすならば、今回の控除はかなりの額になりますので、今回税率をあわせて直す案を提案させていただいたということをつけ加えてお含み願いたいと思います。
  74. 阿部助哉

    阿部(助)委員 先ほど局長は、税は公平でなければいかぬというお話をなすったのでありますが、どうも私はあまり公平じゃないと思うのです。  ひとつ特別措置のことをお伺いしたいと思うのであります。いま輸出関係の特別措置による減収額は幾らですか。
  75. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 四十六年度の見積もり額では約七百十億と記憶しております。
  76. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私の手元の、皆さんからいただいた資料は、たしか四十四年の資料だと思うのです、四十五年十一月二十七日でありますから。これによりますと七百八十五億になっておりますね。そうでございますね。
  77. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 先ほど数字、ちょっと訂正させていただきます。  四十四年が五百三十六億、四十五年が先生おっしゃるとおり七百八十五億で、四十六年は先ほど七百十億と申しましたが、七百三十七億でございます。これが減っておりますのは、この春の国会で特別措置法の輸出所得控除の期限切れのときに、単純延長でなしに一部改正をしていただきまして、いままでよりは振興の中身を薄くしていただきましたので、ことしは特別措置による減収額が一部減ってくるということになるわけでございます。
  78. 阿部助哉

    阿部(助)委員 皆さんのこの四十五年の数字でいきますと、七百八十五億、そうして全体の特別措置の中で占める比率は二〇・四%、こうなっていますね。この数字だけを見ますと、それほど大きいように思えないのでありますけれども、これはきわめて大きな企業にだけ減税しておるのであって、これはやはり外国でも文句をいってくるのは私は当然のことじゃないかと思う。それで国民が、こういう形の中である意味でまた収奪をされておる。円・ドルの問題が引き起こされてくるこの大きな原因の一つになっておるのではないか、こう思うのであります。  そこで、これをもう少しここでお伺いをしてまいりたいのでありますけれども、いまこれを見ましても、これを利用しておるのはごくわずかな大企業だけであります。輸出割り増し償却の実施額は幾らになっていますか。——じゃ、私のほうで読みますから、間違っておったら訂正してください。輸出割り増し償却の実施額は千七百三十五億、違いますか。
  79. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 その表は、昭和四十五年十一月二十七日に税制調査会の臨時小委員会に出した表でございまして、その備考にありますように、六カ月決算法人の上位四百社のうちの輸出振興税制を利用している法人でございまして、全体の大体の姿を見当をつけていただくにはそう間違っていないと思いますが、中小法人がおっこちています。上位の四百社のうちから拾っておりますので、その意味で、申しわけございませんが、実は全法人の統計がないものでございますから、いろいろ議論していただきます場合にはこの表で見ていただいておりますが、その前提だけひとつお含みおき願いたいと存じます。
  80. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これを見ますと、百六十八社で千七百三十五億、海外市場開拓準備金の実施額は五百三億、そうして技術輸出控除は百二十三億、海外投資損失準備金は九十八億、これを合計いたしますと二千四百五十九億、こうなる。しかも、ここへ出てきている会社はわずかに百六十八社ですよ。これだけの会社でこれだけの恩典を与えておる。しかもいまの日本の円の問題等を引き起こしてきておる大きな原因だ。こうすれば、これはもう撤廃をする、全廃をするということが当然だと思うのですが、いかがですか。
  81. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 一言補足させていただきますが、そのことにつきましては、この六月四日以来、御存じのように総合対外経済政策八項目ということの中で、この春に法律を改正をしていただきまして圧縮された分をさらになお圧縮してはどうかということで検討を続けてまいったわけでございます。そして政府全体の取り組みとしては、阿部委員指摘のような方向で進んでおったわけでございますが、この八月十五日のいわゆるニクソン・ショックによりまして、アメリカ側がいわゆる自衛手段をとってきたというような関係もあり、いろいろショックを受けた。それが大企業だけでなくて下請企業等に非常に寄ってまいりますので、その寄ってくる状況からいって、八月十五日以前に考えていたようなやり方でいいかどうか、そこがたいへん議論が分かれておりまして、政府部内で検討中という段階でございます。
  82. 阿部助哉

    阿部(助)委員 検討中というのは、これは残す方向で検討しているのですか、それとも廃止する方向で検討しているのですか、どっちなんです。
  83. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 率直に申しまして、政府部内の意見が分かれておるわけでございまして、残す意見とやめる意見とで争っておるわけでございます。
  84. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ではもう少し先へ進んでみます。  海外市場開拓準備金というのは、八社だけで幾ら積んでおりますか。
  85. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ちょっと申しわけございませんが、八社だけの統計はございませんで、全商社七千三百三十社で、四十四年度末の残高が千三百五十三億六千七百万円という数字をいま持っておりますが、八社だけの数字をちょっと手元に持っておりません。私の申しましたのは残高でございます。
  86. 阿部助哉

    阿部(助)委員 皆さんのやはり四十五年十一月二十七日に出したこれを見ますと、八社載っておるじゃないですか。
  87. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 お手元にあるのは、たぶん一年間の繰り入れ額だと思います。繰り入れ額は、八社でございますと四十四年度で百億四千百万円でございます。
  88. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それで、申告所得に対する割合は幾らです。
  89. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 四十四年度で二四・四%になっております。
  90. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうですね。わずか八社で、申告所得の二四・四%も商社は積み立てておるのです。そして問題の鉄鋼ですが、時間を急ぎますので私のほうで読みますが、これも間違ったら指摘をしてください。鉄鋼は、十三社の輸出割り増し償却は六百三十億、申告所得に対する割合は実に四三・四%ですよ。そうでしょう。そして造船はわずかに四社で百五億、申告所得に対する割合が二七・六%、自動車は十一社で三百二十三億、申告所得に対する割合が二五・七%、海運ではわずかに三社だけで百十四億、そして所得に対する割合は二二四・二%と、こう出ておる。これは税の公平なんというものじゃないじゃないですか。しかも、日本の円がこれだけ強いといわれる。裏返して言えば、日本の品物は安いということなんです。それにこれだけ手厚い保護をしておれば、それはニクソンでなくともおこりますよ。どうなんです。
  91. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ただいま阿部委員のおっしゃいましたような見地から、私どもも前回、この春の改正のときに若干割り増し償却を縮小していただいたわけでございます。同時に、現在まで私どもの立場では税の公平論という見地から、まさに阿部委員のおっしゃるような角度でさらにもう一段と縮小の方向へ進んではどうかという提案を申し上げているところでございます。  ただ、一言お含み願いたいのは、いまの鉄鋼なり造船なり海運なりのこの措置は、これによって輸出かなり円滑にいっていることは否定できないのでございまして、それによりまして受けている利益は、その企業あるいはその出資者だけということではなくて、その産業を取り巻く一切の関係者に及んでおるわけでございます。つまり下請企業等にも及んでおりますし、そこに従事する方々にも有形無形の利益が、及んでおるわけでございますので、この差し迫った段階までいきますと、はたして急激なるショックを与えるような改変を行なっていいものかどうか、非常に判断に迷っておるという現状でございます。
  92. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それは何か少し変えりゃ影響が来るのはあたりまえですよ。鉄鋼がみななくなってもいいなんということにはならないでしょう。だけれども、この特別措置はあまりにもひど過ぎるというて外国指摘しておるんですよ。また、われわれもこれはあまりにもひど過ぎると思うんですよ。これを直せば下請にも影響が来る、労働者にも影響が来るなんということを言っておれば、何も不公平を是正するわけにはいかないでしょう。そんな理論で、そんな理屈で、これだけ大企業のめんどうばっかりみて、そうして物価は引き上げていく。労働者のほうはだんだん物価高でむしろ苦しんでいく。いまの農業なんてどうなんです。米価の据え置きというてみたところで、あれは引き下げでしょう、金の価値が減っていくんだから。それに減反だ不作だというて、そっちのほうは少しもめんどうみないで、大企業のほうは、これは下請もある、労働者もおるなんというても、そんな理屈はこれは国民は理解するわけにはいかないでしょう。そんな理屈を立てれば、日本株式会社と言われてもしようがないじゃないですか。これではほんとうに日本株式会社じゃないですか。これだけ輸出が伸びておる、しかも外国からいろいろな規制までされておる、そういうときに、輸出振興のためにだけこれだけのものを出すなんというのは少しひど過ぎる。ひど過ぎはせんですか。そこらあたりを思い切って直さなければ、私は皆さんから税の公平なんということばを言ってもらうのはおおきに迷惑だと思うんです。その辺、次官どうです。この辺で思い切って、これは全廃するというくらいの方針が出せませんか。
  93. 田中六助

    田中(六)政府委員 こういうニクソン・ショックと申しますか、ドル・シックがある前には、御承知のように八項目対策としてあげられておるわけで、方向としてはその方向にありますが、いま高木局長が説明しましたように、鉄鋼、造船、自動車、海運という阿部委員の御指摘の産業は日本の基幹産業で、しかも輸出に貢献し、その産業界は下請業者もきわめて多うございますし、急激なショックを与えてよいかどうかという、政府としては非常に疑問点がございますし、対米関係にもかけ引きもございますし、そういう点で、方向にはあるということは、私はこれは国内委員会でございますからはっきり言えますが、いまこれを全廃しろというようなことに対しましては、政府としてはまだそこまでは考えていないということがいえると思います。
  94. 阿部助哉

    阿部(助)委員 下請があるとか、これは基幹産業だからこうだということなら、基幹産業ならもうあげて日本株式会社になって、全面的な援助をするということになるんじゃないですか。まあ、あなたのほうのなんぼか前向きで検討する、なくする方向で検討するというあれは私も了解をしますけれども、それにしても、いまの言い方からすれば、基幹産業だからこうなんだということなら、では、ほかの連中はみんな死んでも基幹産業だけ太らせればいいんですか。私はそういう理屈にはならぬと思うんですよ。労働者や農民は死んでもいいんですか、基幹産業さえふやせば。そういう理屈にはならない。しかも、いま、輸出の問題でこれだけ問題になっておる。しかも、外国もこの問題は指摘をしておる。財政ダイビングだ、こういう非難まで浴びておるときに、これくらい思い切って直せないようでは、いまの自民党政府は、全くこれはもう財界大手と癒着をしておる、こういわれてもしかたがないじゃないですか。もうこれだけ問題になれば、こんな輸出関係の特別措置なんというものは、これは思い切って全廃をして当然のことなんです。そういうものをむしろ低所得者や社会保障のほうに回していくなんということは、これは当然過ぎるほど当然の話だと私は思うのです。  それで最後に、この問題もう一つ聞きますけれども、経団連のほうでは、この輸出関係の特別措置はうんと減らしていくというこの前の方針がありました。それで、これを減らした場合には、今度は特別償却や準備金を要求しておると聞いておるのですが、そういうことは、政府は御考慮なすっておるのですか。
  95. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ある時期では、輸出割り増し償却は全部やめてもいいのではないか、海外市場開拓準備金につきましても、これを輸出だけに限っておるのはあまり対外感触がよろしくないのでありまして、輸出輸入と両方含めたもので、そのかわりもう少し積み立て率を薄くしてやるというようなことに組みかえてはどうか、それから輸出の奨励措置は、これはまだまだわが国の輸出が不十分だからそれは残していただくということでどうだろうかというような御提案があった時期がございますが、その後、先ほども申しましたようなニクソン・ショックがございましてから、新しい事態に対応してどうするかということについては、公式なお申し出を私どものほうはまだいただいていないのでございます。
  96. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そこで、時間もだいぶたちましたのであれですが、法人税でちょっと聞いておきたいのでありますが、来年度の案が出てくれば、またなかなか皆さん変更するわけにいかぬのでありましょうが、今日までの高度成長をささえてきた大きな柱でやはり税制があったと思うのであります。特に法人税の税率は、主要などこの国よりも日本の税率が低い。その反面、減価償却率は非常に高い。こういう形で大企業を保護してきたわけであります。いま申し上げた輸出関係の特別措置だけでなしに、まあいろいろな特別措置皆さんのこれを見ましてもたいへん多いのでありまして、世界に例がないほど至れり尽くせりの特別措置でこれを守ってきたわけであります。それでちょっと不況だといえばこの法人税率を引き下げてきた。去年ですかおととしでしたか、ちょっとだけ手直しをしたけれども、まだ法人税率は外国に比べて低いのですが、それでも何か財界は不況なんだからこれをもっと引き下げろ大体不景気になってくると法人税率を引き下げてきたといういままでの例がございますので、財界はまたこれを引き下げろ、こういっておるのでありますが、政府のお考えはどうなんですか。
  97. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 前回昭和四十五年のときに特別措置で一・七五%の加重税率をお認めいただきましたが、そのときは一つには国際的に見ましても法人税率がわが国の場合には決して高いということはないということもございましたが、一部ではやはりたいへん景気がいいので、負担力があるから臨時的に一・七五を二年間だけ負担をするのだという理解で、この制度に入ったというような理解がございます。今回は景気が悪くなりましたので、この加重税率を、二年の期限が到来したならば当然やめるべきではないかという御意見が出ております。ただ、私どもは、先ほどもあげましたように、来年度の財政需要が相当大規模なものが見込まれますし、それに比べて税収の見積もりは、見通しとしてたいへん暗い状態でございますので、最終的に政府の態度をきめているわけではございませんが、私どもの段階では、何とか現在の制度をそのまま存続していただくことはできないもんだろうか。そうでないと、なかなか来年度の予算の編成等も困難ではなかろうか。  かたがた先般来ときおりお話がございますが、一方においてニクソン・ショック等によって非常に被害を受けた企業がある。一方において利益を受けた企業もある。法人税率が下がるということは、むしろ利益を受けた企業のほうの負担率が下がってくるようになりますので、そういう趣旨からいっても、負担の公平のほうからいっても、むしろこれを存続したほうがいいのではないかというようなことを考えておりますが、これはかなり高度のいわば政治問題でもございますので、私ども考えどおり進みますかどうか、いまの段階で私限りの考えを申し上げるだけであることをお含み願いたいと思います。
  98. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いままで不景気だといえば下げ、不景気だといえば下げしてきたけれども、じゃ景気が回復してきたときもとへ戻してきたかというと、これは四十五年たった一回だけなんですね。そういう点からいって、また不景気だから下げろという圧力のかかるのはわかるのでありますが、これは世界じゅう比べてみたって日本のほうは低いんだから、そう下げるということには——私はむしろ引き上げるべきだ、こう思うのです。そういう点で、税率を引き上げたら企業経営はそんなに困るのですか。
  99. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 一般的には、税率が上がりましても、被害を受けた企業のほうは所得が減りますので、納める税金は減るわけでありますからそういうことはないとも言えるのですが、ただちょっと問題は、最近諸外国でもだいぶ経済事情ががたがたしてきておりまして、法人税の税率を臨時的に下げるような動きも一部の国に見え始めておりますので、それらのことを考えますと、やはり国際競争力等の関係からいままたある程度負担を下げてもらわないと困るんだというような御意見の方もあるようでございます。
  100. 阿部助哉

    阿部(助)委員 吉國さんの「法人税法」、これを見ましても、最近法人税というのはそう影響しないんだ、経営には困らないんだというようなことをお書きになっておるので、この際下げるなんていうことはない、むしろこれは引き上げるということでひとつがんばっていただきたい。まあこれは私の要望を申し上げておきます。  それで、法人税の所得金額に対する税の負担割合というのは、これは非常に逆進的になっておると私思うのですが——そうでしょう。たとえば、これは私の調べたものですから、これも間違っておったら御指摘を願いたいのですが、総統計では所得金額が六兆八百六十二億、税額が一兆八千五百十四億、その割合は三〇・四%。ところが一億以上になりますと、もうこまい数字は言いませんけれども、三二・一%、十億以上になると三〇・九%、五十億以上になると二九・三%、百億以上になると二七・七%とだんだん割合が大きくなるほど負担割合は軽くなっておる。まあ法人税と所得税とでは多少違うということになりましょうけれども所得税の場合はもうだれでも知っておるように大きくなればなるほど累進税率で重くなるのでありますが、法人税の場合は、会社が大きくなり利益が大きくなるに従って負担割合は軽くなっていく。こういう実態になっておる。これは何らかの手で直すという考えはないのですか。
  101. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 いま手元の数字でおっしゃったような数字になるかどうかちょっとチェックができませんのですが、しかし一つ問題がありますのは、基本税率は三五でございますが、配当に対する分につきましては大法人の場合でも二六%というふうに下がっております。そこで、百なら百の所得が出ました場合にどれだけを留保に回し、どれだけを配当に回すかということによって実効税率は二六と三六・七五の間を動くことになるという問題が一つあります。したがって、配当によけい回せば実効税率はどんどん下がってくる、二六に向かって非常に近づいて下がってくるという構造になっておるのが一つでございます。このような配当軽課措置がいいかどうか。どうしても大企業ほど資本の額が大きくなっておるということでございますから、したがって配当の額がふえてまいりますので、そっちの関係から配当額がふえておりますから、十億以上の資本金の会社の配当のほうに回しておる所得の割合が二〇%をこえておりますし、それ以下のところでは二〇%を割っておるというようなことがありまして、そういう関係が一つございます。  それからもう一つは、いまの法人税額というのは、所得に税率をかけまして出したものから源泉で納めたものを引いておりますので——源泉で納めたものというのは、たとえば利子配当について銀行とかあるいは発行会社のほうですでに分離課税その他で納めている分がありますから、その分はこっちの法人税から引きますもんですから、大企業ほど預金を持っていたり株を持っていたりしますので、そこで所得に税率をかけて出ました法人税額から源泉税額、所得税額を引くという関係上、大会社が納める法人税の額は比較的小さくなる、表面法人税率は小さくなるという関係がございます。  そこらあたりは私どもの勉強も不十分でございまして、いまは比例税率のたてまえでございますけれども、ただし中小法人の年所得三百万円以下については税率が下がっておりますけれども、それを除いては、比例税率でございますけれども先ほど阿部委員の御指摘のように、特別措置等の関係もありまして実効負担がいろいろ動いてきておりますから、この辺は私どもも相当勉強しなければいけないというふうに考えておることは事実でございます。ただ、基本的にいまの二点が大きく響いておるということをお含みいただきたいと思います。
  102. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まあこの問題はひとつ御検討を願いたいと思うのであります。  以上、私は物価問題、所得税、特別措置、法人とお伺いしてきたのですが、いまこうやってお伺いをしてきた結論はといえば、アメリカが円切り上げ要求だとか課徴金という無理難題をふっかけてきた。しかし、アメリカもむちゃだけれども、また私たち日本自体も反省すべき点が多々あると私は思うんです。まあどっちかといえばアメリカとの交渉がなかなかうまくいかない。そしていま労働者や農民、中小企業へそのしわ寄せがきておる。労働者合理化だ、賃下げだ、首切りだというところまでいまは追い込まれておるし、農民は米価の引き下げだ、減反だというところへやられておる。そして政府景気対策といえば、これは公債発行してまで公共投資というけれども、これまた大体大手です。少さないなかの市町村ではもう自己財源は何もないから、これは幾ら公共投資を急いでやれなんて言っても地方財源、持ち出し財源がないのだからできやしない。また、いまの陣容ではそう大きな仕事を一ぺんにかぶされても、仕事の消化能力はないというところへいま追い込まれておるわけですし、何か政府物価問題は放棄しておる。むしろこの物価を上げるという政策をてこにして高度成長してきたんだし、そしてこれからもこういう収奪をしていこうとしておる。だから、いまのような政策を続けていけば、いま円の切り上げをやってもまたすぐ同じように二度目、三度目と円の切り上げに追い込まれていくのではないか。そういう点で、私、先ほどから指摘しておりますように、労働者賃金をもっと上げる、年金をふやすという社会保障の面にもっともっと重点を置く。そういう観点から、やはりこの税の問題も考えていただかないと、大企業だけが肥え太っていく、そして公害だ物価高だというこういう問題はなくならない、そしてそのたびに切り上げを迫られるというような悪循環を繰り返すだけじゃないか。この際に思い切ってやはり低所得層に対する施策を施す、社会保障をもっと充実するというやり方で、ひとつ政府は思い切った政策をこの辺で立てていただきたいという要望をするわけであります。  そしてもう一つ、最後にたいへん恐縮だけれども、国税庁のほうにお伺いしたいのでありますけれども、こういう情勢の中で国税庁はいろいろな税金の調査をやっておられるのだが、あれはいつまでやるのです。
  103. 村田博

    ○村田説明員 調査のほうは、申告が出ますというと、その結果によりまして随時調査に入っておる状況でございます。——ちょっとことばが足りませんで恐縮でございましたが、もちろん年末の繁忙期とか、そういうときは避けておりますし、その点は御了承を賜わりたいと思います。
  104. 阿部助哉

    阿部(助)委員 よく聞こえないのだけれども、年末何ですか。
  105. 村田博

    ○村田説明員 年末等の繁忙期は避けまして、なるべく納税者の方に御迷惑をかけないように配慮いたしてやっておるつもりでございます。
  106. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この問題は十一月いっぱいくらいに打ち切られたらどうです。
  107. 村田博

    ○村田説明員 先生のおっしゃることよくわかるのでございますけれども、私どものほうとしましては、やはり九月から十一月ごろ、あるいは十二月の初めごろまでは一番あぶらの乗り切っているときでございますのでその点はどうか……。
  108. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まあ皆さんあんまりあぶらが乗り切ってしまうと、中小企業これみんなつぶれるんでね。それで、また公平の原則という観点からも、大体これは日を切るということが私は正しいと思うので、これはやっぱり十一月いっぱいぐらいに切るべきだと思うのですが、もう一ぺんひとつ……。あまりあぶら乗り切らぬでください。
  109. 村田博

    ○村田説明員 ことばがいろいろすべりまして恐縮でございましたが、私どもとしましては国税局長のほうにそのところはまかせてございますので、大体めどとしましては十二月の十五日ごろまでには少なくとも調査は終える、そういうことでやってまいりたいと思います。
  110. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これでやめますが、高木さんも何か新聞、日経ですが、「財源難でも徴税強化せず」こういういいことをおっしゃっておるのだから、国税庁もやはりその方針で、あまり年の瀬の迫るまでやるなんていうことのないように、一つはこれは公平の原則という観点からもありますけれども、たいへん時間をとりましたのでこれで終わりますが、そういう点で十一月一ぱいくらいにやめるという方針でやってもらいたいです。
  111. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 広瀬秀吉君。
  112. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 まず最初にお伺いしますが、今度しばらくぶりに年度当初の減税に対して年内減税をもう一ぺんやる、こういうことになったわけですが、この事の起こりはもちろんドルショックによる景気の停滞、これを上げよう、最も早く需要喚起効果といいますか、消費喚起の効果を持つ、そういう意味ではGNPを上げる効果を持つ、そういうものとして即効性のあるものはやはり減税だ、可処分所得をふやすということを通じてそういうことをはかるのだ、こういう御答弁であったろうと思います。しかもこのことは、佐藤総理が五百億とかなんとかいうようなことじゃなしに、少なくとも一千億をかなり大きくこえる減税が必要だという指示があったというような経緯もあるわけであります。  そこでちょっとお伺いしたいのですが、所得税減税、今回千六百五十億やられるわけですが、可処分所得がふえることによってどれだけ景気回復効果というものに役立つのか、これを数字的にどのくらいと読んでおられるのか、判断をしておられるのか、まずお伺いしたい。
  113. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 所得税の減税の乗数効果がどのくらいあるかということにつきましては、種々の計量モデルによりまして過去の計測はやっておりますが、その計測の結果は必ずしも一致していないのでございます。特に今回のように年内減税の事例がございませんので、今回のような場合の乗数効果がどのくらいあるかということについては、的確なる見通しが立てにくいのでございますが、過去の事例からいいまして、まず乗数効果は一・七くらいではないかというふうに見込んでおります。ということは、千六百五十億の一・七でございますから大体三千億、その程度の需要拡大効果があるのではないか、一応の推計でございますが、そう考えております。
  114. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 その三千億というのは年間でございますね。十二カ月ということでございますか。
  115. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 そのとおりでございます。
  116. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そうしますと、GNPをどれぐらい上げる効果がありますか。〇・何%ぐらいになりますか。
  117. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 約〇・四ぐらいになるかと思います。
  118. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いま不況が六、七月で明るさを取り戻したというところにドルショックがきたということで、これがおそらく一年あるいはそれ以上も景気停滞、不況が長引くであろう、こういうようなことに見られておるわけでありますが、そのためにこういう所得減税、あるいは事業規模で五千億の公共投資の増額をはかっていこう、こういうような財政政策がとられておるわけであります。そこで一体デフレギャップとよくいわれますが、そういう景気停滞によって供給力過剰というか需要不足というのか、そういういわゆるデフレギャップというものが総体的にどのくらいというように判断をされておるのか、その点……。
  119. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ちょっといますぐに出ませんが、当初の経済計画では、国民総生産が実質で一〇・一ということを見込んでおりましたのが、先般経済企画庁が一応暫定的に出しました、しかも対外諸条件が一応現状のまま推移した場合の暫定試算ということで出しましたのが五・五でございますから、約四・五落ちる。そういたしますと、それで国民総生産が八十四兆三千二百億というのが八十兆に落ちるということでございますので、四兆三千億ということになるかと思います。
  120. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 国民経済の伸びという、GNPにおいてはそれだけの落ち込みがあるということと、さらに私が申し上げたデフレギャップ、こういうようなものについて、国民経済研究協会あたりで計算したところによると、約一兆七千億から二兆くらいになる、こういう判断があるわけです。減税によって大体三千億くらいそれがカバーできる、また公共事業を事業規模で五千億追加される、これで大体二倍くらいの乗数効果があるだろうということですから、一兆円ということになりますと、少なくとも六、七千億以上のデフレギャップがなおカバーされない、こういうこともあるわけであります。そこでもう少しそういう点から言うならば、一・七の乗数効果を持っている所得減税を思い切ってやるならば、さらに百尺竿頭一歩を進めるということで、もうちょっと減税幅を大きくするように、少なくとも三千億をこえるような程度のものをやって、年度当初のものと合わせれば五千億くらいになる、このくらいにはやはりすべきであったというように考えるのでありますが、これは財源の落ち込み、特に税の自然増収の伸び悩みというよりも減少というようなことで、財源問題とも当然からむわけでありますから、そういうことになったと思うのでありますが、しかし、こういうときこそ最も効果的な、即効的な効果のあるものをもって早く景気を回復させて、そういう税の自然増収の落ち込みというようなこともむしろ避けられるんだ、こういうことでやはり思い切った措置をこういうときこそやらなければならないということがあると思うのでありますが、その辺のところは田中大臣、いかがでございますか。
  121. 田中六助

    田中(六)政府委員 補正予算景気浮揚策と銘打って二本の柱、公共事業費の効果とそれから減税の効果、二つをねらって、二つの柱にして景気浮揚策をねらっているわけでありますが、御指摘のように、やはり財源の問題で、国債発行につきましてもいろいろとやかくいわれておるさなかでございますし、もともと四十六年度予算でこれほど大幅な減税をさらにつけ加えるということは考えていなかったわけでございますし、財源との関係上そうでございますし、それは景気浮揚の即効薬として大幅に広くやることは一つ施策でしょうが、やはり何と申しましても財源の関係上、この程度が適当ではないかというふうに政府では考えておるわけであります。
  122. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 この点は幾ら言っても、政務次官ではおそらく水かけ論になるだろうと思うわけで、これ以上申しませんが、われわれは、まず所得減税、今回は少なかった、少な過ぎたというように考えるわけであります。そこで、今回やはり景気回復ということが非常に大きな目標であった。税の体系を整備するというよりは、やはりこの景気回復を中心にした政策効果をねらっての減税だったと思うのです。そういうような立場からするならば、最も景気が回復に結びつくような形での減税体系というものが立てられなければならなかった、こういうように思うわけでありますが、先ほどからその問題についてはいろいろ質問もあったわけであります。どうも何といっても佐藤総理に学者の立場において東大の内田忠夫さんが進言をした、これが聞かれたということなんでありますが、内田さん自身の論文を見ましても、景気回復効果というところは、やはり消費性向の高い百万以下の階層、しかもここには人員で千七百四十八万人もいるそうであります。税額を二千六百七十六億も負担をしている階層なんですが、こういうところが、減税に対する消費性向というのはおそらく一〇〇%だろうと思う、こういうことなんですから、こういうところをやはり減税すべきである。税率は二の次にしてよいのではないか。  たとえば一般低所得階層に及ぶのは何といっても基礎控除であるとか、給与所得控除であるとか、あるいはまた扶養控除なり配偶者控除という、こういうようなところを上げれば全部に及ぶのだ、今度はウエートをそこにかけてやるのが当然のことであったのではないか、このように思うわけであります。そうなると、税率の上昇カーブ、税率累進のカーブが非常に乱れが出てくる、こういうようなことから、あえてこの税率に少なくとも半分のウエートをかけてこれをやられたということは、やはりどうも首尾一貫しない、やや分裂的な形になっているのではないか、こう思うわけであります。  特に、かりに二百万円以下で二千四百五十万ぐらいの納税人員になっている、そういうところがきわめて消費性向が高いというのでありますが、その部分での減税額は大体七百億程度だ、あとそれ以上三百万以上のところで九百五十億以上にもなっている、これはやはり問題ではないか。三百万をこえる階層あるいは五百万をこえる階層というのは全部合わせても百五十万人ぐらいしかないわけなんですね。そういうところに、あと九百何十億というものが減税の恩恵を受ける。そういうところのものは、むしろ、消費需要の喚起というようなところに結びつかないで、あるいは証券投資だとか、あるいは貯蓄だとかいうところに行ってしまうのではないか。このほうがむしろ非常に大きいだろうと思うのです。そういうことを考えましたならば、これはむしろ逆な形に当然すべきであったと思うのでありますが、その辺のところはいかがでございますか。
  123. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 先ほどから内田先生のお名前が出ておりますのですが、私ども経済学者として内田先生にはしばしば御指導をいただいているわけでございます。内田先生は今回は公共投資をふやすこともけっこうだが、減税を大いに、特に年内減税を大いにやるべきだ、これが経済効果として大きいということを強調されたわけでありますが、その際、一般論として所得階層別に低い階層のほうが限界消費性向が大きいから、低所得層減税のほうが景気浮揚効果が大きいというようなことをおっしゃっていることは、そのような御意見をお持ちのことは、私ども承知しておるわけでございます。それで、いろいろ資料を調べてみましたのですが、現在ございますわが国のいろいろな資料、家計費調査であるとかその他の資料をいろいろ調べてみましたのですが、全体的な傾向として所得が大きいほど限界消費性向が落ちる、所得が小さいほど限界消費性向が大きいということは間違いない事実でございますけれども、現在の所得税の納税対象者であるところの百万円くらいから三百万、五百万あたりの所得階層をとってみました場合に、はたしてそんなに限界消費性向が所得階層別に違うかどうかということをいろいろ調べてみましたのでございますが、残念ながらいまの統計ではそれを実証できるだけの資料がどうもございませんで、そう明確に所得階層別に限界消費性向が著しく違うということは読み取れなかったわけでございます。それが、消極的な説明になりますが、一つの理由でございます。  それから第二点は、今回の減税は四十七年度の所得税制を頭に置きまして、それをうしろに戻してやるということで組み立てられましたのですが、その結果、今回分だけでは千六百五十の約半ばを控除に充て、半ばを税率で充てるというかっこうになりましたが、先ほど答弁を通じて申し上げましたように、当初の減税で千六百六十六億がもっぱら控除で行なわれておりますから、両方を考えますと四分の三は控除で行なわれておりまして、税率は四分の一ということになっておるわけでございまして、全体としましたら決してそんなに税率に片寄っているということは言えないのではないか。私どもはその春の分と今回の分を合わせて総合的に判断してそのように考えたわけでございます。そして、先ほど来申しておりますように、来年度もう一度何か所得税の基本的な手直しをする機会があるのであればまた考えようがいろいろあるのでございますけれども、どうもいろいろな事情から、主として財政事情から、今回の税制で四十七年度一年間このいまお願いしております改正後の状態でずっとやっていかなければならないというふうに考えますと、今回急遽こういう異例の減税が行なわれることになりましたきっかけは景気浮揚ということでございますけれども、どうしても所得税の構造そのものの立場というものを考えざるを得ないと考えまして、先々の所得税の構造というものを考えますならば、やはり累進度の緩和ということを、いままでも累進度が厚くて困っておったところでここで控除だけに寄せますと非常に極端な累進度のカーブが上がってまいりますので、それでは制度としてうまくもてないだろう、執行その他を考えましてもうまく所得税制は運営がむずかしくなってくるだろうということを考えまして、やはりきっかけは景気の浮揚であっても、所得税の構造そのものはある程度整った姿でなければぐあいが悪いのではないかと判断した次第でございます。
  124. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 四十七年度の税制を頭に描きながらという発言があったわけでありますが、おそらくそういうことだったろうと思うのです。かりにそういうことであったにしても、この年内減税をやる際に同じく並行してやるということについては、私どもはどうしても納得ができない。まあ年度当初の千六百六十六億と合わせれば、なるほど税率はことしの春はいじらなかったわけですから、したがって四分の一くらいのウエートしかないのだということは勘定としては合いますけれども、しかしこの税率の問題も、また課税最低限の問題もそうでありますが、課税最低限がまだまだ低過ぎる。こういう実感を私どもも持っているわけであって、たとえばこの税率にいたしましても、三十万円以下というようなところは今度の税率改正によって何の恩恵も受けない、こういうことでありますし、六十万円以下のところでようやく二%。これは四十四年から比較しまして、ことしの春を飛び越して今度のもので比較してみますと、二%だ。さらに百万のところで四%税率が下がっている。百五十万のところでは六%下がっている。百六十万のところで一〇%下がっている。二百万のところで八%、二百六十万のところで一三%、それから三百万が一〇%、三百二十万が一四%。これは四十四年度の税制改正に比較してそういうことになっているわけですが、三百八十万のところでは一二%、四百万のところでは八%、四百四十万のところで一二%、五百万のところで八%、六百万のところで八%、七百万のところで四%、九百万のところで四%、さらに千二百万のところで五%、それから四千万のところでは五%、六千万のところでも五%、八千万のところでも五%というように、税率改正は非常に中堅所得層といわれるところからずっと上に、高額所得層にまで及んでいる。はたしてこの所得税が、累進税率のカーブがなだらかに上昇するということだけが問題ではないと思うのであります。ある程度の所得階層から上は急激に上がるというようなことがあってもちっとも差しつかえないものだと私ども考えるわけだ。事務的になだらかな線をたどって上昇するというだけではいけない。もうこのくらいの、たとえば七百万なら七百万、あるいは五百万なら五百万、これ以上は高額所得層なんだから、ここから急激に上がっていってもいい、超過累進税率があってもいいのだ、こういうような立場がやはり所得税における累進構造の中にあっていいのだというのが、やはり税というのは何のためにあるか、税の基本には所得の再分配という、これはもう忘れられてはならない要素というものがあるわけでありますが、高額所得のところに減税を大幅にやるうといことは、やはり今度のように低額所得層のところにきわめて薄い減税しか行なわれないという、部課長減税から今度は重役減税だと言われるような状況の対比の中で、これはやはり一つ所得税における基本的な問題点として考えていただかなければならないということを私ども考えるわけなんですが、そのところはいかがでございますか。そういう思想はありませんか。
  125. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 税率のカーブはどういうふうなカーブが望ましいのかということは、御指摘のように絶対的なことはないと思います。それで所得税に再分配機能が非常に重要な使命を持っていることは御指摘のとおりでございますので、高額所得層がそれなりに相当高額の負担をしてもらわなければならないことは事実でございます。ただ、私どもも何が一番理想的な姿かという尺度が見出しがたいので、しばしばよその国の税率のカーブ等と比較してものを見ておるわけでございまして、前回の四十四年度、四十五年度の大改正のときにも、そこらを頭に置きながら直していただいたわけで、先ほどお読みいただきましたような軽減割合も、四十三年以降の改正率、税率の引き下げ分を合わせるとそういうふうになるということの御指摘であったわけでございますが、実はこれまでの四十四年、四十五年の改正後におきまして、一番典型的には西ドイツの税率と日本の税率と比べますと、三百五十万くらいのところでカーブがクロスいたしまして、それまでの階層では実効税率が三百五十万までは西ドイツのほうが上のカーブをとってきて、日本のほうがカーブが下に来ているのですが、そこからクロスして、三百五十万あたりから西ドイツが下に来まして日本のほうが上へずっと行くということで、つまり傾斜のカーブが日本の場合は急カーブに立っておるわけでございます。西ドイツの関係の税率との関係はそこでクロスしておりますから非常に明確になっておりますが、他の諸国のカーブから見ましても、どうも少しカーブが、いわばちょっと専門用語のようになりますが、立ち過ぎておりますので、それを少しなだらかに寝かしたいというように考えたわけでございます。今回の措置によりまして、三百五十万のところでクロスしておりましたのが、かなり上のほうにクロスポイントが移るというふうに変わっていくようになるわけでございます。これは今後とも私どもももっと勉強しなければいけませんし、専門家の間で研究してもらおうと思っておりますが、所得分配機能ということと、それから執行面におきますところの理論だけにあまり走っておりますと、今度は所得分散が行なわれるということになりますので、その所得分散を避ける趣旨で、あまり急激なカーブを描きますと脱税でなしに節税という形で所得分散がはかられて、制度が予測したところの負担が期待できないということになるのを、どの辺で妥協してといいますか、調和点を認めたらいいのかというあたりがむずかしい問題だと思います。いろいろ御批評はあろうかと思いますが、私どもとしてはちょっといまの税率では、そしてさらにここで控除だけでカーブを立てますと、執行面といいますか、税制が所得配分についてむしろあまりいい影響を与えないのではないかということを考えて、ある程度カーブをなだらかにすることにウエートを置いたわけでございます。その点についていろいろ御意見ございましょうと思いますが、私どもとしての気持ちはそういうことでございます。
  126. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 もうちょっと……。  ドイツの例を引かれたわけですが、そこにはやっぱり前提条件日本とどう違っているかということについてどういう分析をされたのかということが当然問われなければならぬと思うのです。というのは、国民所得階層別納税者人員、こういうものがどういう分布になっているかということが一つ問題がある。それからもう一つは、やはり社会保障の充実の度合い、さらに住宅その他のストックの保有の状況、こういうものが同時に比較されなければ、単純に税率で西ドイツのものはこうだというようなことで、それと同じくしょうというようなことは、やはりそれは説明としては不十分である。もしそのことで今度の改正における正当性を立証しようとするならば、ドイツのいま申し上げたような点についての問題を、日本と比較をした表をこれは資料として出してもらいたいと思うのです。  そこで四十四年から四十五年——四十五年の税法改正におきましても、こういうことが起きておわるけなんです。単身者で四十万のところで、今度は四十万は問題になりませんけれども、五十万のところをかりにとってみても、旧法と新法の差額、軽減額が千円であった、軽減の割合は七・六%、給料一万円当たりの軽減額というのが二十円だ。ところが夫婦子一人で百五十万のクラスにいきますと、給料一万円当たりの軽減額は百三十六円に上がって、夫婦子二人の二百万円というところでは百三十三円に軽減額が上がっていく。夫婦子三人として三百万のところで三百三十八円、さらに若干飛んで五百万のところで五百二十九円、五百五十万で五百三十五円、六百万で五百二十三円、七百万で五百十八円、八百万で四百六十六円、九百万で四百五十七円、一千万のところで一万円当たりの軽減額が四百二十一円。五十万の単身者でわずか一万円当たりの軽減額が二十円にしかなってない。こういうような矛盾が四十五年も出ておる。今度の四十六年のトータルをとって一万円当たりの軽減額を出しても、少なくともそういう五百万、七百万、九百万、一千万というような高額所得層のところの軽減額というものは非常に大きいだろうと思うのです。このことをひとつ今度の資料としてこれは要求しておきます。  給与収入に対する軽減税額表、というのは、給与総額、収入が幾らで、旧法の税額が幾らであって新法の税額が幾らだ、差し引き軽減額が幾らか、軽減の割合が幾らか、それに対する一万円当たりの軽減額というものはどういうようになるというのを一覧表にして、これは少し高額のところ、八千万までずっと出してもらいたいと思います。これを一つ要求をしておきます。  きょうは時間がありませんのでこれだけにとどめて、残余の質問は、次の機会に譲りますが、もう一つ資料要求をいたします。軽減割合を算出するにあたって、社会保険のふえた分あるいは住民税の上昇分、厚生年金なども含むわけでありますが、あるいは失業保険、こういうものの負担増というものも含めて、大蔵省から出した資料に対応するものとして、そういうものを含めて軽減割合というものをひとつ出してもらいたい、こういうように思うわけであります。  以上、二つだけ資料要求をしまして終わります。
  127. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 第二の資料は若干時間がかかるかもしれませんので、その点だけお含みおき願いたいと思います。第二の、年金や何かの増加額の資料が手元にありませんので、関係省から聴取いたしますから。
  128. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 次回は、来たる五日金曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時九分散会