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1971-09-03 第66回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年九月三日(金曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 松澤 雄藏君    理事 小島 徹三君 理事 田中伊三次君    理事 高橋 英吉君 理事 沖本 泰幸君       秋田 大助君    有馬 元治君       石井  桂君    小沢 辰男君       大橋 武夫君    鍛冶 良作君       小金 義照君    佐藤 守良君       谷垣 專一君    中島 茂喜君       橋本龍太郎君    勝澤 芳雄君       黒田 寿男君    三宅 正一君       青柳 盛雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 前尾繁三郎君  委員外出席者         警察庁警備局警         備課長     鈴木 貞敏君         法務政務次官  村山 達雄君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         法務省矯正局長 羽山 忠弘君         法務省保護局観         察課長     大谷 猛雄君         法務省人権擁護         局長      影山  勇君         法務省入国管理         局長      吉田 健三君         文部省大学学術         局大学課長   大崎  仁君         通商産業省公害         保安局長    久良知章悟君         消防庁予防課長 永瀬  章君         最高裁判所事務         総局総務局長  長井  澄君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢口 洪一君         最高裁判所事務         総局刑事局長  牧  圭次君         法務委員会調査         室長      松本 貞矣君     ————————————— 委員の異動 九月三日  辞任         補欠選任   大竹 太郎君     大橋 武夫君   河本 敏夫君     佐藤 守良君   島村 一郎君     谷垣 專一君   中村 梅吉君     小沢 辰男君   中村庸一郎君     橋本龍太郎君   永田 亮一君     有馬 元治君   松本 十郎君     秋田 大助君   村上  勇君     中島 茂喜君   山手 滿男君     小金 義照君 同日  辞任         補欠選任   秋田 大助君     松本 十郎君   有馬 元治君     永田 亮一君   小沢 辰男君     中村 梅吉君   大橋 武夫君     大竹 太郎君   小金 義照君     山手 滿男君   佐藤 守良君     河本 敏夫君   谷垣 專一君     島村 一郎君   中島 茂喜君     村上  勇君   橋本龍太郎君     中村庸一郎君     ————————————— 七月二十四日  一、事業活動伴つて人の健康に係る公害を生   じさせた事業者等の無過失損害賠償責任に関   する法律案細谷治嘉君外十名提出、第六十   五回国会衆法第五号)  二、裁判所司法行政に関する件  三、法務行政及び検察行政に関する件  四、国内治安及び人権擁護に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  裁判所司法行政に関する件  検察行政及び人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 松澤雄藏

    松澤委員長 これより会議を開きます。  本日、最高裁判所長井総務局長矢口人事局長牧刑事局長及び大内経理局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松澤雄藏

    松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 松澤雄藏

    松澤委員長 裁判所司法行政に関する件、法務行政に関する件、検察行政に関する件及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。沖本泰幸君。
  5. 沖本泰幸

    沖本委員 きょうは少しお時間をいただいて、最近話題になっております、また問題になっております爆発物使用する問題、爆弾事件そういうものと、それからせんだって大阪の刑務所のほうに不正入試事件調査に私たちは行ったわけですけれども、それの締めくくり的な、そのままになっておりますから、そういうふうな点について御質問したいと思います。  まず、爆発物に対してでありますけれども、一日の新聞通産省のほうが、いままでの保管とか管理とかこういうものがずさんだった、こういうところから省令でもう少し厳重にすると、こういうふうな内容をお出しになったようでございますが、これの詳細についてお答え願いたいと思います。
  6. 久良知章悟

    久良知説明員 火薬類取締法関係省令を九月の一日に公布施行ということで改正砕いたしたわけでございます。これは先生御指摘のように、最近火薬庫などからの盗難事故が頻発いたしておりますので、これを防止いたしますためにこの火薬類貯蔵上の技術上の基準、これを大幅に強化を進めたわけでございます。そのほか若干取締法の整備をいたしました。  今回の改正中心でございます盗難防止上の基準強化につきましては、第一が販売業者に関するものでございます。これは販売業者火薬庫外貯蔵場所、たとえば店舗等火薬類貯蔵いたします場合に、第一に、火災それから盗難防止留意をするという義務、それから二番目に、火薬類貯蔵いたしますものは金属製のロッカーその他堅固な構造を持った設備に収納して施錠をするという義務を課したわけでございます。それからさらに、そういう設備については容易に持ち運びができるというふうなものであってはならないということにいたしました。それから非常の際に外部に通報ができると申しますか、非常ベルその他の装置を備えることを義務づけたわけでございます。  それから土木事業者等中心にいたします使用者に対しましては、やはり火薬庫外での貯蔵場所火薬類貯蔵する場合には錠をかける義務があったわけでございますが、たびたびの盗難例その他から、従来使ってまいりました南京錠それからエビ錠というふうな簡単な錠では容易にあけられますので、そういう錠の使用を禁止いたしました。錠の構造基準というものを強化したわけでございます。  それからその他の一般の消費者がやはり火薬庫外貯蔵場所火薬類貯蔵する場合に、第一に火災盗難に対する防止留意をする、それから堅固な設備に収納をしてやはり施錠をするということを義務づけまして、設備基準強化したわけでございます。  それからその次の問題といたしましては、火薬庫のとびらでございますが、二級火薬庫の外被について従来制限がございませんでしたが、今回はやはり盗難予防ということを重点に置きまして、二ミリメートル以上の鉄板をとびらに張るという構造基準強化いたしました。それから火薬庫に三種類ございます。一級火薬庫、二級火薬庫、三級火薬庫でございますが、こういう火薬庫屋根天井というものは、万一爆発したときのことを考えまして軽量な構造にすることになっておるわけでございますが、そのためにやはり盗難の危険があるということで、天井裏または屋根に金網を張ることを義務づけたわけでございます。  それから一級火薬庫、二級火薬庫、それから三級火薬庫、これと実包火薬庫に対しましては、原則としてベルその他の警鳴装置の設置を義務づけまして、盗難予防上の措置強化をしたわけでございます。  以上でございます。
  7. 沖本泰幸

    沖本委員 いま御説明があったわけですけれども、これは新聞にも報じられておりますように、最近はこういう爆発物を使う事件が非常に多いわけです。それに伴いまして非常な世情不安、人心不安、これはたいへんなものだということが考えられますし、また大ぜいの人の中で事件が発生した場合は多数の生命に危険を及ぼす、こういうことになるわけですから、基本的には厳重にやってもらわなければならないわけです。そういう観点からしなければなりませんけれども、こういう点について各省のそれぞれの最近のこの種事件に対する対策、いま通産省はああいうお話をなさいましたけれども、他の省の対策についてお伺いしたいと思います。先に警察庁、それから消防庁
  8. 鈴木貞敏

    鈴木説明員 お答えいたします。  いま先生のおっしゃいましたように、爆発物使用した事犯、これが非常に数多くなっております。特に私たち注目しておりますのは、ことしの六月十七日に明治公園のあれで無差別的に警察部隊に投げつけられまして、三十七名が重軽傷を負った。この事件がありまして、その後非常にふえているわけでございます。  こういう非常に深刻な事態を踏まえまして、警察といたしましてもいろいろな手を打っているわけでございますけれども、まず第一に、やはり何といいましても犯人を検挙する、徹底的に犯人を追及、検挙する、これがやはり第一の手だてである、連鎖的なそういう反応を断ち切るというのが第一であろう。こういうことでございまして、六・一七的なその後起きました爆発事件につきまして、それぞれ全国的に力を合わせまして、現在鋭意努力しておるということでございます。  第二点は、何といいましてもこういう反社会的な犯罪行為をやらかす被疑者でございますが、これは何といいますか、あるセクトから非常にドロップアウトしたような者、あるいはいろいろ分化しておりますので、そういうごく少数グループがきわめて秘密裏に、いわば彼らのことばでいいますれば革命というものを目ざしまして一応社会不安を醸成する、こういうことを言っておるわけでございますけれども、しかし、非常に少数秘密グループがやっておるということでございますので、これを事前に把握するという手だてを尽くさなければならぬわけでございます。そういう意味情報収集体制といいますか、あるいは虞犯的な、こういうことをやらかすおそれのある、そういう者を情報の網に入れまして、これを徹底的に監視をして、そうして未然にこういう事犯防止する、こういう手だてをしていかなければならぬということでございます。  それから第三には、先ほどの御質疑にも出ておりましたように、やはりこういった爆弾爆発物原料になるものがたやすく手に入るというようなことのないように、いろいろの手だてをしていかなければならぬということでございまして、関係各省それぞれ御努力されておるわけでございますが、火薬類あるいは爆弾原料となりまする化学薬品等、こういったものが簡単に手に渡らないように関係機関が力を合わせまして、販売保管の面で適正な措置をとるということが大切であろうと思います。警察立場でもそういう意味銃砲火薬あるいはこういう劇毒物というものを含めまして、それぞれの手を打っていくということで現在推進中でございます。  また、次に考えられますのは、こういう爆弾をしかけられる場所、いわゆる重要な施設、そういったものに対する警戒警備措置というものを徹底するということでございます。いままでの一連の経緯をずっと見てみますと、爆弾事件というものは御承知昭和三十七、八年ごろの草加事件というものがあったわけでございますが、こういった過激暴力学生による爆弾使用爆発物使用というものは大体四十四年の三月をはしりにしまして出てきておるわけでございますが、当初は内容物もわりあいに程度の低いもの、またしかける場所等につきましても警察施設あるいは自衛隊基地等をはじめといたしまして、そういう施設にひそかにしかけられるということでございましたが、最近の動向は無差別的に、最近成田等でもございましたように、列車のレールにしかける、こういう人の命をねらうというふうなことにもなってきておるわけでございます。そういう意味で重要な施設につきまして警察としても十分警備体制を整えて、さらにまたそういう場所管理する管理者、これが徹底した自主的な管理措置あるいは防衛措置をとりまして、それと相まちまして、こういうものをしかけられぬように警戒の目を張る、こういうことをやっていかなければならぬということでございます。  大体以上のような線で進めてまいりたいと思います。
  9. 沖本泰幸

    沖本委員 次に、消防庁からも御調明いただきたいのですが、いまの御答弁に対して少し疑問がありますので、先に御質問しておきたいと思うのです。  こういう事件がいろいろ起きているわけですけれども、いまは過激派学生、こういう表現もあったわけです。しかし、朝日新聞によりますと、右翼朝日新聞爆破計画をしたということで、それがつかまったということなんですが、そのときにはダイナマイトを二百二十五本持っていたということなんです。この内容について少し御説明していただきたいと思うのです。
  10. 鈴木貞敏

    鈴木説明員 いまの御質疑でございますが、新聞に出ておるようなことでございまして、この事件はやはりそういう右翼ということで関係被疑者が数名逮捕されておるわけでございます。愛媛県と警視庁が協力いたしまして、愛媛県に居住する者が東京に上京いたしまして、過激派学生を含めて相当荒れる、したがってこの機会に何らかのアクションを起こさなければいかぬという、異常な事態に対する認識の危機感、そういうものから発しまして、まず左翼的に偏向しておる朝日新聞社、これをやっつけよう、こういうことで二百二十五本のダイナマイト愛媛から持ってまいりまして、それで事情を知らないある人のところに預けておった、そういうものを含めて二百二十五本が押収されておるわけでございます。  現在警視庁で身柄を押えて鋭意捜査中でございまして、背後関係あるいはほんとうの使用目的、そういったものは今後の取り調べに待たなければならぬ面が多いようでございます。いま出ておる段階では、一応目的としてはそういう新聞社の襲撃というものに使う予定であったが、時期尚早といいますか、もう少し模様を見ようということでまだ使うまでに至らなかった、こういうふうに存じております。
  11. 沖本泰幸

    沖本委員 それでは消防庁のほうから御説明願います。
  12. 永瀬章

    永瀬説明員 消防が所管いたしております危険物につきましては、ガソリン類を主体といたします燃えやすいもの、これが主でございまして、危険物そのもの爆発性を有するというものはきわめてまれでございます。しかしながら、いままでの例から見ますと、その危険物が使われましていろいろに配合されたりなどいたしまして爆発する、こういう使用用途があるようでございます。これは何とかいたさなければならないものと考えておりますが、いままでのところでは、私どもとしますと、その保管に関しましては所有者その他の管理者管理について十分配慮するということにいたしております。と申しますのは、通常使いますものが非常に多うございますし、商品として直ちに流れるものもございます関係で、今後の問題といたしましては、いまの管理上の責任を持つということだけでなくて何らか他の措置も講じなければならないかと思いますが、いままでのところでは法令改正等が特に行なわれておりません。
  13. 沖本泰幸

    沖本委員 きのうの新聞で、大学文部省に対してこういう爆発物管理を厳重にしてほしい、こういう申し入れをなさったということなんですが、いままでにこういう問題で大学研究室かぎを破られていろいろなものを持ち出されたとかいろいろなことがあるわけですけれども警察庁のほうから見て大学管理面に対してどういう欠陥があるか、あるいはこれからはどういう形でそういう問題に対して大学のほうにしてもらわなければならないか、そういう点について御説明をいただきたいと思います。
  14. 鈴木貞敏

    鈴木説明員 お答えいたします。  極左暴力学生集団でございますが、今後も九月から授業再開になるわけでございます。そういうことで彼らはやはり学園を拠点化する、こういうことをねらいまして、学内凶器類を準備するあるいは隠匿するというようなことを彼らは言っておるわけでございます。  また、新聞にも出ておりましたが、過日京都大学の理学部のいわゆる危険物の収容の貯蔵庫、このかぎがこじあけられまして、金属ナトリウム、これが相当多量に盗まれたという事犯もございます。さらに過去の例で見ますと、最近でございますが、東大あるいは東工大、こういった学内のキャンパスで爆発する、こういうような事犯もございます。  こういうことで、全体の流れとしましてのそういう傾向を踏まえまして、やはり学園大学というものはいろいろ研究施設その他を含めまして、いわゆる爆発物原料になり得るものが相当あるわけでございますので、そういうものを何とかそういう目的に使われないように厳重に保管していかなくちゃいかぬということでございます。いままでもいろいろな手だて文部省中心に各大学に御指導願っておるわけでございますが、今回のそういう事態を踏まえまして、警察庁から文部省のほうにそういう面の厳重な適正な管理というものについて特にお願いをいたすというようなことでございます。
  15. 沖本泰幸

    沖本委員 いまのことにつきまして、以前から事件がいろいろ発生したという段階で、文部省なり大学側といろいろな管理面についてのお話し合いはなさったわけですか。その点どうですか。
  16. 鈴木貞敏

    鈴木説明員 そのとおりでございます。文部省としてもこういうことを踏まえまして、ひとつ十分適正な管理について努力してまいりたいということでございまして、具体的にいろいろの指導をするということを聞いております。
  17. 沖本泰幸

    沖本委員 それは結局大学側ともお話し合いはなさったわけですか。それについてはこういうふうな管理方法があるとか、いままでこういう点が破られやすいとか取られやすい状態にあるとか、人手が足りないとか、あるいは保管状態が悪いとかあるいは施錠が悪いとか、いろいろな点があると思うのですが、そういう点についてはどうなんですか。
  18. 鈴木貞敏

    鈴木説明員 もとより警察庁から文部省に申し入れましたのは、そういう一般的な状況を踏まえましてお願いしておるわけでございますが、御承知のとおり関係都道府県警察ではそれぞれすでに、たとえば警視庁等では都内の国公私立大学事前に、そういう管理やあるいは暴力学生凶器の持ち込みあるいは不法占拠、そういったことのないように特段の努力お願いしたいということはやっております。関係都道府県それぞれの情勢に応じましてやっているわけでございますが、警察庁としては全体的な立場から文部省にそういうことをお願いいたしておるわけでございます。御質疑の具体的なかぎのかけ方、保管場所、そういったものについてはもとよりそれぞれの事犯事犯に応じまして大学当局に十分そういう点は申し入れておるということでございます。
  19. 沖本泰幸

    沖本委員 大学のほうはその程度にいたしまして、最近伺った話なんですけれども通産省がこういうふうな管理面についての通達を出したわけですけれども、それに関連してこういう爆発物あるいは銃器というものの認可とかあるいは取り締まり監督ですね、そういうことは地方自治体が持っていると思うのですけれども、そういう点について警察庁のほうではこれから立ち入り検査をどんどんやっていくというような話は伺ったわけです。  それで、先ほど通産省お話があったわけですが、私もこの管理面については数年前からいろいろとお話もし、厳重にやっていただきたいということは申し上げてきました。それにつきまして、たとえば土木業者現場保管場所が単なるセメントのあるところに置いてみたり、あるいはトタンぶきの簡単なところに置いて施錠もしてなかったようなことが以前にはあったわけです。そういうものについて厳重にこういうふうな通達を出したと思うのですけれども、それについて、この中にもありますように巡回するとかいろいろなことが出てくるのですが、人の問題とか管理監督とかという面でどの程度盗難が防げるのか、その点について現在の通産省のこの通達だけでそういう管理が完全にできるのかできないのか、こういう点について御両者のほうから御説明いただきたいと思います。
  20. 久良知章悟

    久良知説明員 先ほどお答え申し上げましたように、盗難事故の頻発を契機といたしまして省令改正に踏み切ったわけでございますが、省令だけでは、これは紙に書いたものでございますし、やはりそれを厳重に守るというところに効果があるわけでございます。先ほど先生おっしゃいましたように、火薬類取締法の関連では、産業火薬の製造だけは通産省が直轄いたしておるわけでございますが、その他の花火その他の火薬類、それから販売消費の面につきましては、これは一括して都道府県お願いをしておるわけでございます。したがいまして、都道府県を通じましてそういう関係方々に厳重な業務の実施をお願いするということになるわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、第一は、やはり各都道府県におきまして火薬類取り締まりの一線の業務を担当しておられる方々が、火薬類取り締まりについての法律の運用、解釈、それからまたは実際の技術的な面の知識を的確に持っていただくということ、それからやはり火薬類取り締まり徹底してやるという意欲を持っていただくということが必要でございますので、年に二回、全国の各都道府県担当者の方にお集まりをいただきまして、いま申し上げましたような事項について会議を開催するとともに徹底をするようにしておるわけでございます。それから通産省に各地方に八つの通産局があるわけでございますが、この通産局で年二回、ブロックごと会議を開催いたしまして、これは関係業界中心になるわけでございますが、直接そういう業界を通じて所要の事項徹底努力をいたしております。  それから、そのほか毎月取り締まり月報を発行いたしまして、法令解釈上の問題点でありますとか指導方針、それから都道府県からの照会に対する回答等を掲載いたしまして、これは都道府県の職員の方の行政上の指針にいたしております。  そのほか、火薬類のメーカー、それから販売者、それから使用者を網羅いたしまして、火薬類自主保安ということを盛り上げるために、その中核団体といたしまして全国火薬類保安協会というものをことしの一月に設立いたしたわけでございます。この協会を通じまして、以上の趣旨の徹底をはかっていきたいと考えております。  それから、そのほか三月に起こりました事件契機といたしまして、県、それから業界には私どものほうから厳重な注意を促すと申しますか、通達を出しまして徹底お願いいたしておるわけでございます。今回省令改正いたしましたので、その改正徹底と同時に、やはり最近の事例にかんがみまして、盗難防止中心として、なお一そう厳重な取り締まりをやっていただくように都道府県を通じて通達をもってお願いしたい、そういうふうに考えております。
  21. 鈴木貞敏

    鈴木説明員 警察といたしまして、先ほど来の御質疑のように、銃砲等こういった爆発物取り締まり、これは非常に重要なことでございますので、もうすでに何回となく通達も出し、さらにまた外勤を含めました警察の総力をあげまして、こういう面でのいろいろ指導警戒ということに当たっているわけでございますが、最近もこういった火薬類、毒物及び劇物、これについての取り締まり強化ということであらためて通達を流しております。  具体的な方法といたしましては、火薬類取り締まり場所、これに対する全国一斉の立ち入り検査でございます。全国で三万数千のたくさんの場所があるわけでございますが、これに対しまして一斉立ち入り検査をいたしまして、その不備な個所を発見し、さらにまた私たちことばでいいますと、防犯診断といいますが、現場で具体的に管理者の方と一緒になりまして、施設十分現場で点検いたしまして、不備な点を補うというか改めると同時に、施設警戒面につきましても、そういう管理者警戒体制、特に夜間が問題でございますので、夜間どういうふうな警戒をするか、何か起こった場合にどういうかっこうで警察に通報するか、通報を受けた警察がどういうアクションを起こすか、そういう具体的な手はずを十分打ち合わせておきまして、それでいざという場合に備える。さらにまた警察といたしましても、重点的にそういう場所は警らをする、パトロールをする。その際も、徒歩はもちろんでございますが、むしろパトロールカーの運用、こういったものとの関連で十分運用を考えていくというようなことでございます。  さらにまた毒劇物取り締まり場所、これにつきましても全国一斉に防犯指導をするように指示をいたしております。また爆発物の製造あるいは所持事犯、こういったものをひとつ徹底的に取り締まるというふうなことで、これは検問検査、こういった技術も含めまして、総合的にそういうものを取り扱うように進めていくということで実は努力をしている次第でございます。
  22. 沖本泰幸

    沖本委員 大体わかったわけですが、盗難についても資料をいただいたので、ちょっと御質問したいわけです。  火薬類盗難件数のいろいろ表をいただいております。新聞にもありますとおり、四十六年一月から五月までで爆薬が百五十四・二キログラム盗難にあっている。火薬が八十八・三キログラム、雷管が千六百五十五個ですか、導火線が百二メートル、実包が四千五百三、こう出ているのですが、そういうたとえば実包が四千五百三の中の実包というものは、散弾銃の実包であるとかあるいはカービン銃とかそういうものの実包であるとか、その種類によっていろいろ違うわけですね。実包があっても銃がなければ用はなかなか足さないわけですけれども、この間のように銃が多量に盗まれたとかあるいは外国から何かの形で運び込まれるとか、そういうこともありますけれども、四十五年の爆薬盗難は、一年間で百七十二・〇五キログラム、こうなっております。ところが一月から五月までの間で、もうことしはすでに百五十四・二キログラムの盗難が出ている、こういう表が出ております。この内容ですが、急にこういう数がふえる。あるいは四十五年の一月から五月までの対比でいきますと、去年の同じ上半期では三十三・六キログラムが爆薬の盗難数である。こういうように通産省から数字はいただいたわけですけれども、これについて通産省なり警察庁のほうで、内容について、どういう種類の盗難であるのか、あるいは盗難にあったものが実際に今度は回収されたのか、そのまま盗難にあったなりであるのか。たとえば四十五年の百七十二・〇五キログラムのこの盗難がそのまま出てこないで、さらにまた本年の一月から五月までの間に百五十四・二キログラムも盗難にあった。ずっとその前の年から盗難にあったまま、盗難品が出てこないままであるということになりますと、膨大な量が国内にあると想像できるようなことになるわけで、実包の数もやはり同じようなことが言えるということになりますが、そうなってくると、われわれは非常な問題を考えなければならないわけですが、そういう点について通産省のほうと警察庁のほうの御説明をいただきたいと思います。
  23. 久良知章悟

    久良知説明員 火薬類盗難につきまして種類別に見ますと、いま先生の御指摘のとおりでございます。爆薬類につきましては前年の約四倍、火薬については十倍近い数字になるわけでございます。この一々の内容につきましては、私どものほうで的確なデータは持っていないわけでございます。むしろ警察庁のほうからお話があるかと思いますが、火薬庫につきましての盗難の被害を見ますと、先ほど申し上げました施錠と申しますか、錠についての規定を強化いたしたわけでございます。ことしの一月から五月までの間に、錠をこわして火薬庫に侵入したのが三件、それから屋根を破って入ったのが一件、それからとびらをこわして入ったというのが二件、それから窓からが一件、合いかぎを使ったのが一件、全部で八件という内容になっております。
  24. 鈴木貞敏

    鈴木説明員 数字的なあれは、実は持ち合わせておりませんので失礼いたします。  先生のおっしゃいました実包の問題でございますが、これは実は栃木県の真岡市でことしに入って、いま詳しくはあれですが、散弾銃が二千数百発盗まれた。一部回収しておりますけれども、それが非常に銃砲としての実包というものの数でも大きなウエートを占めておると思うのです。これの一部はあれしておりますが、残念ながら猟銃八丁、それと散弾銃のこういった一部がまだこちらに押収しておらないというふうな状況でございます。  それから火薬類でございますが、これもいろいろなケースがございまして、盗まれた中に、はたしてこうした暴力的過激集団の犯行であるかどうか、これは犯人を検挙してみないとわからないわけでございますが、ことしに入りまして、特異なものとして、兵庫県であったかと思いますが、非常に多量の火薬が盗まれた。これはたいへんだということで捜査した結果検挙している事例がございまして、少年でございまして、これが火薬庫に忍び寄って多量の火薬を盗んだというような例もございます。  そういうことで、統計上の数字はそれぞれ暦年度で計上している数字かと思いますけれども事犯事犯に応じまして非常に神経をとがらして鋭意捜査をしているわけでございますが、全般的に見ますと、実包あるいは火薬というようなものについては、数字面で若干ふえておるのじゃなかろうか、こういう気がいたします。
  25. 沖本泰幸

    沖本委員 この火薬類盗難件数の中に出ていますけれども、自動車の中でことしに入って九件、自宅保管中三件と、こういうふうなのは通産省からの一覧表で出ているのですが、自宅保管中というのは、自宅にこういう火薬類を持って帰っておったということなんですか。それから自動車の中へ置き忘れて九件もこういう事件があったのか。前年度は自動車の中で盗難にあったのは三十三件、自宅保管中にあったのが十五件ということでございますけれども、こういう内容はどうなんです。
  26. 久良知章悟

    久良知説明員 実包につきましては、千発までは自宅で保管ができるというふうになっておりますので、おそらくその範囲内での実包を家に置いておいたときに盗まれたというケースだろうかと思います。
  27. 沖本泰幸

    沖本委員 数字だけで見て、内容はこれに載ってないわけではっきりわからないけれども……。  そうしますと、話は少しそれますけれども、個人が猟をしたいから猟銃を手に入れたい、あるいはクマとかイノシシとか撃ちたいのでそれに類するような銃器を手に入れたいとか、こういう場合の入手の手続方法、こういうものは簡単にできるのですか、できないのですか。またそれを入手した場合の保管管理というものは監督されているのでしょうか、いないのでしょうか。
  28. 鈴木貞敏

    鈴木説明員 銃につきましては、猟銃を含めまして、これは公安委員会の許可ということでございますので、これは厳重にそれぞれのケースケースで審査いたしまして、それでいわゆる譲り受けでございますけれども、これを含めまして公安委員会の許可事項、こういうふうになっております。
  29. 沖本泰幸

    沖本委員 許可になっておりますけれども、たとえばそれは狩猟免許を持って、あるいはどこでそういう専門に銃器を扱う人たちであるかどうであるか全然——私なら私が銃を持っておきたい、将来は狩猟をやってみたい、こういうことで買いに行った場合に、手に入って、それを保管していることが警察では全部わかるのかわからないのか。あるいはそういうものを点検なさったり監督していらっしゃるかということなんです。また実包を何らかの形で練習に使ったりそうした場合には、何発使ったとかなんとか、そういう報告とか手続とか、そういうものがあるのかどうかということです。
  30. 鈴木貞敏

    鈴木説明員 お答えいたします。  公安委員会の許可事項でございまして、一人一人全部、だれがどういう目的での所持を許されているか、これは全部把握しているわけであります。したがって台帳、そういうものは十分完備しております。しかもこれを年に少なくとも二回、現在も実は進行中でございますが、こういう猟銃を所有している方の検査をやっております。したがって、それがどういうかっこうで保管され、不正にいわゆる他人に貸したり、あるいは持っていることになっているけれども実はないとか、そういうことがないかどうか、こういう点を現在一斉に検査中であるということであります。
  31. 沖本泰幸

    沖本委員 いまも数字なんかで質問したわけですけれども、たとえば今度の通産省省令の中のおしまいのほうに、学校教育法に基づく高等専門学校及び防衛庁設置法第三十一条に基づく防衛大学校を新たに受験者の区分に加える、こういうふうな規定が載っているわけです。ですからそういう内容で、火薬類とかそういうものを扱う責任者自体が一つの教育を受けて管理監督をしているというのか、ただ名目的に一人の人がそういう資格を持っておって、そのほかはもうずたずたで出ているのか出てないのか、そういう面についても何かあると思うのですが、その点どうなんですか。
  32. 久良知章悟

    久良知説明員 使用者に対しまして、鉱山等では、これは有資格者指定鉱山労働者というふうに一定の教育を要求しておるわけでございますが、全体について申しますと、この使用責任者を定めまして、その責任者がさらに実際の使用者についての保安教育をするというシステムをとっておるわけであります。
  33. 沖本泰幸

    沖本委員 いままでのいろいろな点から考えますと、私たちの社会の中では、こういう非常に危険なものを扱う方の観念とか責任感とかそういうふうなものが非常に薄いのじゃないか、こういうふうに考えられるのです。単純に持ち出して単純に扱ったり、あるいは保管管理がいままでずさんであったから、結局こういうふうな非常事態的なものが出てきたりすると、あわてて対策を立てなきゃならない、そういうところにも何かこういうものがいとも簡単に人々の中で扱われているんじゃないか、こういうふうに考えられるわけです。  そこで、通産省のほうは、この省令に対して義務づけたという表現をなさったわけですけれども、こういうものに違反した場合、これはどういう罰則があるんでしょうか、これは警察庁のほうもあわせてお答え願いたいと思うのです。
  34. 久良知章悟

    久良知説明員 火薬類取締法に罰則がついてあるわけでございます。この火薬類貯蔵につきましての技術上の基準に違反しました場合には、五万円以下の罰金刑になっております。それから、先ほどちょっと話が出ました火薬類を無断で製造するというふうな場合に、やはり罰則があるわけでございます。それから、製造業者それから販売業者基準に違反いたしまして、災害を発生したり、それから公共の安全を害したりしたというふうな場合には、これは大臣が製造、営業の許可を取り消す、または一定期間の事業停止を命ずるというふうな行政上の処分の道がきめられておるわけでございます。
  35. 鈴木貞敏

    鈴木説明員 銃砲に関連してでございますが、この五月に銃砲刀剣類所持等取締法、これの改正をしていただきまして、保管義務規定、すなわち保管する保管箱にかぎをかける、そういう一つの義務規定に違反した場合には一万円以下の罰金ということが新たにつけ加えられまして、それまでの行政的な、ただ訓示的な規定であったのが、はっきり罰則の対象になった。こういうことにつきましては、行政処分の取り消しの対象になるということはもとよりでございます。そういう罰金、罰則ということが非常な前進でございます。そのほか、不法所持あるいは不法携帯、こういうものにつきましても、それぞれ三年以下、三万円以下の罰金ということで法に規定されております。
  36. 沖本泰幸

    沖本委員 いまお答えがありましたけれども、結局人の注意を喚起する。多数の人命にもし不法に使用されたりあるいはずさんに使用されたりした場合、たとえばそれが過激派学生でなくても、先ほど言ったように、子供がダイナマイトを多数に持ち出していたというようなことがあった、その子供がどこかのところでうっかりして火をつけたりした場合爆発する、そういうような場合でも、効果的には同じ効果が出てくる。たいへんな問題が出てくるわけですから、そういうことに対して、ただ罰金とか小さな義務づけあるいは取り締まり内容では、罰金払ったらいいんだ、こういうふうな観念で過ごしてしまうんじゃないかというふうに考えられるわけです。そういう点でもっとこの取り扱いを、調べた上非常に不注意あるいは無関心であった、こういうことですと、そういうものを取り扱う資格がもうないんだということにして、厳重な取り締まりをしていただかなければ、単に過激派学生だけで云々という問題ではないと思うわけです。その点を私は心配するわけです。  それから、これは警察庁とか消防庁にも申し上げたいわけですけれども、たとえば私、盛んにいま言っているわけなんですが、羽田空港のまん前に三愛石油のタンクヤードがあります。金網が張って、外から見えますけれども、私は車でしょっちゅうあそこを回りますが、まあ管理者側が相当監視しておるというお答えは前にあったわけですが、一向にそういう人影も見えないわけです。そういうところに強力なものを一つ入れられて、時限爆弾のような形で爆発させられたら大惨事が起きてくる、こういうことになるわけです。ただこういう火薬とか爆発物保管場所だけの立ち入り検査ということも考えられますけれども、以前には、新幹線の中で非常な危険な状態になった、あるいは山陽電車の中で爆発した、こういう時限爆弾的なものもあるわけです。人心を不安におとしいれようとすれば、多数の人に迷惑をかけたり、生命に危険を及ぼしてしまう事件に発展することも考えられるわけです。そういうことを考えていきますと、新幹線は絶えず車掌さんが、持ち主のわからないものがあった場合はすぐ知らせてほしいということを言っております。そういうふうな絶えず人の注意を喚起したり、あるいはそういう危険な場所を指摘して、それで厳重に注意をしたり、そういう方向に持っていかなければ、それでも完全が期せられるということは考えられないわけですけれども、こういうときですから、最大限の危険物に対する観念というものを高くしていかなければならない。  このごろの思想というもの、一般的な情勢、世間の考え方というものは、自分だけよかったらいいんだ、他人は多少は迷惑したってそれはかまわないんだというような考え方あるいはそういう気風、そういうものがいろいろなところでいろいろな形で見えると思うのです。そういうものに対する厳重な態度あるいは内容で臨んでいかなければならないと思うわけですが、各担当の省からこの問題についてのお考え、今後の対策、そういうものをお伺いしたいと思うわけです。
  37. 久良知章悟

    久良知説明員 火薬類取り締まりにつきましては、先生御指摘のとおり、社会不安のもとになるものでございますので、私ども、やはりその社会的責任ということを自覚することが第一であるというふうに考えております。したがいまして、通産省といたしましては、各都道府県に対しまして、火薬類の取り扱い義務者に対します講習会をできるだけひんぱんに開催をしてもらいたいという要請をいたしますと同時に、省からも講師その他を派遣いたしまして、できるだけその援助をしていきたい、そういうふうに考えておるわけでございます。  それから、六月一日から一週間、この火薬類につきましての危害予防週間というものを実施をいたしておるわけでございます。この関係の行事につきましても、将来できるだけ強化をいたしまして、火薬類関係者の保安意識を高揚していくと同時に、やはり社会的な責任というものを自覚してもらいたい、そういうふうに考えておるわけでございます。  それから、業界につきましては、先ほど申し述べました全国火薬類保安協会というものが本年一月にできておるわけでございます。これを通じまして、自主的な管理強化をさせるという方向で指導してまいりたいと思っております。やはり問題が問題でございますので、私どもといたしましても、できるだけその取り締まり強化ということに努力をしていきたいと考えております。
  38. 鈴木貞敏

    鈴木説明員 警察といたしましても、こういった爆発物使用事案というものにつきましては、動機あるいは理由のいかんを問わず、これはきびしく追及するということで、あらゆる手を尽くしてまいりたいと思って努力しております。  つきましては、羽田空港の問題が御指摘がございましたけれども、御承知のとおり、ハイジャック「よど号」事件発生以来、現在国内五十数カ所の空港がございます、それに昼夜間を通じまして、約三百有余名の者を新たに投入いたしまして、実は警戒をしております。もとより情報がございますればそれに上積みする、こういうふうなことでやっておるような状況でございまして、羽田空港につきましても、警視庁の機動隊一個中隊の約七十名、それに空港警察署の私服七名、これがそれぞれ昼夜間にわたりまして警戒をいたしております。特にこれは侵入口と思われるようなスポットあるいは出入り口、さらにまた御指摘にありましたような非常に重要な対象施設、こういったものにつきましては、重点的に自主警備体制とあわせまして警らをするというふうな手だてをしておりますので、全然人が見えないということについては、この点は私確かめますけれども、一応体制としてはそういうことで、特に羽田については警戒の目を光らしておるというのが実情でございます。
  39. 永瀬章

    永瀬説明員 先生御指摘になりました、たとえば羽田の三愛のタンクヤード、そのようなものをはじめとします危険物施設は、わりに人の入りやすい、目につきやすいところにかなりございます。これにつきましては、火炎びん等を投げ込まれました場合にはかなりの火災になることが予想されます。先ほどお答え申し上げましたように、全般的には、管理についての規程をそれぞれ危険物施設にはつくらせて管理責任を持たせておりますが、いまのような世情でございますので、これをさらに、十分管理が行き届くよう指導強化していきたいと考えております。
  40. 沖本泰幸

    沖本委員 この問題も終わりたいと思いますが、警察庁のほうにお願いしたいのですけれども、この間も大阪で学生のデモがあった。それについて大阪の府警本部は神経をとがらせて、持ちもの一つ一つ点検しておったということが報道されておりました。それについて、ただ自分のいろいろな要求を通してほしい、こういうことで行なう正規の運動とかデモとか、そういうものは許されていいはずなんです。ところが今度は、取り締まりの面では非常にむずかしい面、苦労なさる面もあると思いますけれども、ただそれが、そういうことをかえって弾圧してしまうような形にならないように、その点に十分気をつけて対策を立てていただきたいと思います。その点についてどうでしょうか。
  41. 鈴木貞敏

    鈴木説明員 おっしゃるとおりでございまして、デモ等につきましては、いわゆる集団示威運動等につきましては、全国的に公安条例というふうなものがございまして、これによって慎重に運用しているわけでございます。したがって過激学生集団、これらが特別な直接行動あるいはテロ、ゲリラ的な行動をするというふうなことで広言し、いろいろの武器を使うということが明らかなような場合には、警察の犯罪を未然に防止するという責務からいたしましても、それぞれの対象に応じまして慎重に検討して、対象のそういう目的あるいは行動の具体的な内容に応じまして、検問とか検索、こういったものの手だてを通じまして、そういう犯罪が起こらないようにする義務があろうかと思います。しかし、それぞれの目的に応じて、いまおっしゃいましたような平穏なる大衆示威行動、デモというようなものについては、何ら警察として関与するつもりはございませんし、具体的な状況に応じまして主催者の方とも十分打ち合わせをしまして臨んでまいりたい、こう考えております。
  42. 沖本泰幸

    沖本委員 これでこの件については一応御質問は終わりたいと思いますが、先ほどからお願いしましたとおり、こういうときでもありますし、また通産省通達をお出しになったほど管理面が非常にずさんだということが裏から見ればいえるんじゃないかということですから、今後も十分厳重な警戒取り締まりあるいは監督管理というものをお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。
  43. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 関連して。  おくれてきたので沖本君の質問を十分聞かなかったのですが、参ってからいろいろ聞くと名答弁ばかりで、完全ないろいろな体制ができ上がっているというふうにも考えられますけれども、われわれは現にもう革命時代に入っているような気がするので、平和時の正常的ないろいろの方法ではなかなか問題の解決がむずかしいと思うのですが、関係者の方々はみなどうでしょう。たとえばもっといろいろな関係法規、具体的に一つの例を言いますれば、予防法律規則の強化もしくは管理その他犯罪捜査の強化、そういうものや、それからまた専従人員の増加とか予算の増額、そういうふうな面についてもっと徹底的に改正する必要があるのではないか、そういうふうな必要性を感じられていないかどうか。法律をこしらえるのがわれわれの任務ですから、われわれは皆さんのお話によって、それを資料として、もしそういう必要があるならばそういう立法をしたいと思います。法律規則の強化、すなわち予防的なもの、それからまた捜査の強化、学校なんかの関係でも、従来は学校の自治性、特殊性に遠慮せられて憶病なと思われるふうにわれわれは感ずるのです。そういうふうに思われるほど慎重にやられておるのですが、しかし、現在においてはそういう必要はないのではないか。とにかく社会不安を除去するという理由から犯罪防止のために徹底的な予防措置をとる必要があるのではないか。爆弾管理関係とかそういういろいろな問題に対しましても、現在の法規を励行して完全にこれを解決できるのかどうか、予防できるのかどうか。たとえばいま聞いてみると、罰則なんかでも一万円とか五万円とか、そんな金額は現在においては金のうちに入らないような金額であり、刑罰としての効果もないと私は思うのですが、とにかく予防的もしくは権力的なことで法律規則の強化、それから人員の増加といいますか専従関係の大幅な増員、それからそういうふうなものに必要な予算関係の増額、そういう必要を感じられないかどうか、関係者にお答え願います。
  44. 村山達雄

    ○村山説明員 最近の社会情勢のもとで、いろいろな過激団体が法秩序を破るような、ただいま出ましたようないろいろな事案が出ておりますことは、まことに遺憾に存じているわけでございます。われわれ法務省といたしましては、法秩序の維持に万全の措置を講じたいと思っているわけでございます。  ただいま御質疑のありましたその点について法改正の必要があるかどうか、それぞれの法案につきましては関係の当局の御意向にまちたいと思いますが、いま法務省のほうでは一般的に現在の罰金、これが戦前の罰金になっておる、これの改正をいま検討しているところでございます。ただ何ぶんにも非常に広範な問題にわたるわけでございますので、この点についてはできるだけ慎重に、しかも急ぎましてこの問題の解決にあたり、そして当面の要求にもおこたえ申し上げる、こういうことで検討している最中でございます。
  45. 久良知章悟

    久良知説明員 先ほどお話し申し上げました、九月一日に火薬類盗難防止に重点をしぼりまして所要の省令改正いたしたわけでございます。私どもといたしましてはこの専従者の問題、予算の問題もあるわけでございますが、やはり火薬類につきましては管理に直接当たる人が社会的な責任を自覚をして厳重に業務をしてもらうということに主眼があると考えておりますので、今回の強化いたしました省令を的確に運用するということに重点を置きましてやっていきたいと考えておるわけでございます。  予算につきましては、取り締まり関係の予算を若干増額をして今回お願いをすることにいたしておりますので、その点の実現にも努力をしたい、こういうふうに考えております。
  46. 鈴木貞敏

    鈴木説明員 罰則、法律規則の強化という面につきましても、法務省のほうから答弁のあったとおりでございますが、ただいまあげられました例は非常に低い罰則で、これは一番低いものであります。御承知のように爆発物取り締まりということで、もし人を殺すというようなことで爆発物を爆発させれば、これは死刑でございます。そういうことでそれぞれのケース、ケースにおいて、刑法をはじめとしての適用があるということでございまして、そういう面につきましては私たちの実務的なあれからさらにまた検討してまいりたいと存じております。
  47. 永瀬章

    永瀬説明員 消防庁といたしましては、先ほど沖本先生にお答え申し上げましたように、管理の面でございます。これにつきましてさらに効果のあがる方法、特に管理者の自覚を促することは当然でございますが、それ以外の方法につきまして実効のあがる方法を検討していきたいと考えております。
  48. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 いろいろ御答弁伺いましたが、結局平常時的なお考え方であって、革命時におけるお考え方ではないと思うのです。たとえば爆発物云々ということは、われわれの郷里なんかでは、ダイナマイトで魚をとるというようなことをやると一年とか六カ月とか実刑を科せられる。死刑、無期もあり得る。私は専門家だからよくわかっておるけれども、そういうふうなものに対する予防的なもの、権力的なもの——いまどれを検挙されたか、私たちの近所の小金井の交番の時限爆弾なんかは、これは大体嫌疑者がつかまったようなことがけさの新聞には出ておりましたけれども、現在発生しておりますすべてのものが検挙されておらないというふうな事態、そういうものは、何かやはり現在の平常時における法規、それをやや強化したくらいのことでは対応できないのではないか。もっと画期的な、治安維持法なんかというとまたおこられるけれども、そういうふうなところまでいかなくとも、もっと強化してほしい、こうしてほしいとかいう御要望があれば遠慮なくひとつ、ここでおっしゃらなくてもまた別の機会におっしゃっていただいて、われわれ立法の参考にさせていただきたいと思います。  それからちょっと関連で、辻局長さん見えておりますのでお尋ねしたいのですが、本格的に聞くならまた本格的に聞こうと思うのですが、自衛隊機と全日空機の衝突事件ですね。あれはわれわれしろうとから見ると、自衛隊機が先を飛んでおって全日空機があとから来て、しかも速力が速い。当日は快晴であって、肉眼でも注意すれば相当の距離から自衛隊の機影が発見できたというふうなこと、太陽の方向はどうとかこうとかいうふうなことは新聞にも出ておったようですが、しかし、これはどういう結論になるか別問題として、最初からこの問題を一つも取り上げられておらない。警察では取り上げられたかどうか。警察庁関係者が来てないがどうか。そういう点についてマスコミでは少しも報道されていない。かりに全日空機の接触が不可抗力であって、自衛隊機のほうに過失、間違いがあったにしても、しかし、前方を注意したらそれを免れることができたんではないか。道路でも、子供がうろうろしておっても、前方注意すれば、それは歩道でなくても停車しなければいかぬわけだから、そういうふうな意味で前方注意をすれば、前方をほんとうに注意に注意を重ねておれば、そういうふうな事態が起こらなかったんじゃないか。舗装道路なんかと違って、普通の道路などと違って、天空海闊といいますか、縦横無尽に大空で飛しょうできるわけですから、そういうふうな意味においてそういう問題をマスコミが少しも取り上げられなかった。そういう問題について警察や検察庁は御研究になったのか、お調べになったのかというふうなことについて、結論は別の問題として、それは不可抗力であったかどうかというふうなこと、幾ら注意しておってもそれはいろいろな関係で、いろいろな条件でとうてい避けることができなかったという結論になるならともかく、その点に対する分析、研究というものはなかったわけでしょうか。マスコミと同様に、警察も検察も少しもその点についてお調べにならなかったかどうか、ひとつその点についてお答え願いたい。
  49. 辻辰三郎

    ○辻説明員 突然の御質問でございまして、現在資料を持ってまいりませんでしたので、私の記憶に基づいてお答え申し上げたいと思います。  全日空機と自衛隊機の接触事故でございますが、これにつきましては、当初から警察及び検察におきましては、まず自衛隊の二人の自衛官に刑事責任があるかどうかという点を直接の対象にして捜査を進めてまいったわけでございますが、その間におきまして、ただいま御指摘のとおり、全日空機のほうにも過失があるかどうかという点につきましても、捜査当局としては十分捜査を尽くしたわけでございます。その結果、結論といたしましては、全日空側については、全日空側の過失というものを認定して、刑事事件として立件するだけの資料が獲得できないという一応の結論になっておるわけでございまして、全日空側につきましても、フライトレコーダーをはじめいろいろな観点から、全日空の飛行状況というものをできるだけ捜査いたしたことは事実でございます。
  50. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 もし許すことができますならば、次の機会に私は本格的に質問する場合がありますが、そのときにどういうふうな条件で、どういうふうな関係で接触が不可抗力であったか、あとから来た全日空のほうが避けることがどうしてできなかったかというふうなことに対する、捜査の機密もありましょうけれども、できるだけのことをひとつお調べの上で御答弁を願いたいと思います。
  51. 沖本泰幸

    沖本委員 それでは爆弾事件関係の方、どうぞけっこうでございます。  次に、ことしの三月ですが、大阪で、大阪刑務所を中心にする大学入試不正事件ということが問題になりまして、私たち法務委員は大阪刑務所のほうを視察したわけですが、その後この問題にあまり触れておりませんので、この関係について御質問してみたいと思います。  当時、視察しまして、刑務所の中のいろいろな問題点も現地で出たわけですが、その後小倉刑務所でも、入試の不正ではありませんが、受刑者が外部との連絡をとったり、いろいろなものが投げ込まれた、こういうことも新聞で報道されておりますし、それから府中刑務所のほうでも同じような外部との連絡問題があった、こういうことが報道もされております。府中刑務所のほうは、私、四十二年に行きまして、当時も中の方の御説明で、受刑者が外部と野球のボールのようなもので連絡をとり合っている。それは金をほうり込んだり、あるいは中にたばこが入っておったりというようなことが常時あったんだ、防ぐのに困るというような話も聞いております。その後、類似事件もありましたし、金嬉老の問題で刑務所が大きな問題になった。こういう後、大阪刑務所の不正事件、こういう一連のものがずっとあったわけです。  そういうことにつきまして、その後どういう点を法務省としては問題にしたか、その点についてどういう対策をお立てになったか、この点についてお伺いしたいと思います。
  52. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 お答えいたします。  一般的に外部からのものの投げ込みというところまでまだ十分の対策の研究はしていないのでございますが、お尋ねの大阪刑務所におきまする入学試験問題の抜き取り事件につきましては対策を研究いたしました。その若干を御報告申し上げます。  あの事件に関しまして非常に反省をいたしましたのは、具体的に人的、物的に分けまして、人的な面から申し上げますと、外部から入学試験問題を盗みに来るという前例は大阪刑務所が初めてではございませんで、前にもあったわけでございまして、盗みに来るかもしれぬということは当然予期すべきであったということを痛感いたしておるのでございます。そこで、盗みに来るかもしれぬということで、はたして人的な体制がとれておったかどうかという点でございますが、遺憾ながら保安対策上手抜かりと申しますか、若干の遺漏の点が見受けられるのでございます。たとえば大阪刑務所は、御承知のように長期囚を入れておるのでございまして、十年、十五年というふうに入っておる受刑者の中には、職員よりも詳しく所内の警備体制などに熟知しておる者もあるわけでございまして、それが毎年相当数出てまいるわけであります。したがいまして、所内の警備体制がある程度同じことを漫然と繰り返しておりますと、これが公知の事実になるという危険性があるにもかかわらず、そういう点に対する配慮が全然なされていなかったうらみがあるのでございます。たとえば、あの場合におきましては所内巡回は何時に回るということを十分に承知いたしております。その巡回が回った直後に、へいを乗り越えて中に入るというようなことをいたしております。それから入学試験問題を印刷しております工場の中には、用のない者は入るなという達示が出ておるのでございますが、用のない者は入るなという薬が効き過ぎまして、巡回もその工場のそばに寄らない。よって、へいを乗り越えて屋根を破りまして入りました人間が、二十四時間中におりまして、弁当まで食って、そして問題を盗んで出ていったというのを巡回も気がつかなかったというような事実もあるわけでございまして、それは警備体制というものがまことに漫然としておったといわざるを得ないのでございます。これらの点にかんがみまして、警備体制、配置個所その他の再検討をいたしまして、今後こういう場合、すなわち外部から入ることを予想すべき場合には、徹底した警備体制をとるということにいたしておるわけでございます。  第二は、物的面でございますが、御承知のように刑務所のへいは多少の高低はございますが、大体四・五メートルぐらいの高さでございます。   〔委員長退席、高橋(英)委員長代理着席〕 これを幾ら高くいたしましても限度がございますし、刑務所のへいはあまり高くないほうが行刑の理想から申しますといいわけでございます。また、へいを高くいたしましても、乗り越えるほうはそれに応じた乗り越える技術を考えてくるのではないかというようなことにかんがみまして、物的面といたしましては、所内外の外へい周辺の夜間照明などを強化するとか、あるいは見張りの要員を配置する。見張りの要員を配置するということはまことに人手を食うのでございまして、行政整理というようなことが申されております傾向からはいささか逆行いたすのでありますが、しかし、そんなことは言っておられませんので、見張り要員を配置する。それから、場合によりましては視察テレビその他のものを備えまして、広範囲に視察をするようなことはできないものであろうか。これも私どもしろうとがいろいろ既製品のテレビのようなものに飛びつきましてやりましても十分に効果を期待することができませんので、ただいま特定の若干の専門家に依嘱いたしまして、刑務所の勤務状況等を十分のみ込んでもらった上で、十分な視察ができるようなテレビとか、あるいは侵入者があった場合の自動報知機というようなものができないものであろうかということを、目下検討しておる段階でございます。
  53. 沖本泰幸

    沖本委員 いまのお答えについて論議がありますけれども、テレビは検討している、見張り員の配備、夜間照明、こういうお答えがあったわけですが、反省なさったわけですから、その後検討していらっしゃるのか、あるいは人員を増強されたのか、見張り員をふやしたのか、あるいは夜間照明はもうお取りつけになったのか、その点どうなんですか。
  54. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 大阪刑務所につきましては、人員の配置等の強化はいたしましたけれども、まだテレビ等はつけておりません。
  55. 沖本泰幸

    沖本委員 印刷問題にからんでのことですけれども全国の刑務所内には同じように印刷工場がたくさんあるわけです。そしてやはりこういう不正事件が多いから問題にするということでなくて、何らかの形で外部との——いろいろなものを入れるとか、金を入れるとか、いろいろなことが実際に出たわけですから、それに対して全体的に刑務所に対してこういう警備体制の強化をしていくとかなんとかという処置が必要だと思うのです。単に大阪刑務所だけではなくてですね。ほかの刑務所もいろいろな点の欠陥場所をお調べになって、それに対する早急な対策というものが必要だと思うわけですが、そういう点についてはどうなんですか。
  56. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 まことに御指摘のとおりでございまして、私どもが目下一番苦慮いたしておる点について御意見を承ったわけでございます。実は最近も名古屋の刑務所で外へい飛越の侵入事故があったわけです。それは出てまいりまする受刑者、釈放になってまいります受刑者にたばこを入れてくれ、百個か二百個か忘れましたが、たばこを一定数、入ってきて工場の裏にあるごみ箱の中に隠しておいて、その入れたときにごみ箱の前にバツの字を書いてくれ、そうすれば、おれが出てから二十万円おまえに払うというようなことで、出たやつが引き受けまして、その計画は、外へいの外に近寄りまして、自動車で参りまして、自動車のライトを点滅いたしまして、クラクションを相当鳴らして帰ったわけです。刑務所のほうでは警戒いたしておりまするから、夜明けを待ちまして内部の徹底的な検査をいたしました。何も入っていないということで——あとでわかったところによりますと、それが向こうの作戦であったわけでございます。何かあったけれども、何も入っていないというようなことをやりまして、同様のことを若干回数やりましたあとで、その次に全然静かに参りまして、へいを乗り越えてたばこを置いて帰ったという事故が発生いたしております。いまだこの侵入者を検挙いたしておりませんので詳細は不明でございますが、この事故が実は本年の四月でございましたか五月でございましたか、名古屋の刑務所に起こっております。これは、あたかも私どもが国会で大阪の問題でおしかりを受けた直後でございまして、自来いろいろこのケースをも参考にいたしまして検討いたしておるのでございます。  たとえば、外へいの外にもう一つ鉄さくをつけることはどうかとか、上のほうにさらに有刺鉄線をめぐらすことはどうかとか、内部にもう一つ二重にフェンスをつけることはどうかとか、それからまた堀のようなものをつくったらどうかとか、いろいろなことがあるのでございます。何ぶんにも、御承知と思いますが、大刑務所になりますと、一辺の外へいの長さが四百メートル、五百メートルというようなものが少なくないわけでございまして、それをいたしますにつきましては、相当の金もかかりますし、それから人間を配置いたしますると、非常に大ぜいの人手を要する。特に人間の問題でございますが、一年三百六十五日のうちに一日か二日しか入らないかもしれない事故のために相当数の人間を配置するということも、なかなかできにくいわけでございまして、しょせんできるならば、テレビとか自動報知機とかいうものにならざるを得ないんじゃないかというような点で目下検討を重ねておる実情にあるのでございます。
  57. 沖本泰幸

    沖本委員 ちょっとお答えで私疑問を持つのですが、いまのお答えで、ことばじりにひっかかるというのはよくない申し上げ方かわかりませんが、一日しか入らないものに対して——お答えのほうの表現でそういうことになったと思うのですけれども、われわれ善良な国民から見れば、いろいろな事件を起こし、犯罪を犯して、それで社会に迷惑をかけたから体罰なり刑罰を与えて、社会に罪悪を流さないように一つの囲いの中に入れて監視しなければならない、そういうのが刑務所だと私思うのです。そうすると、一日であろうといっときであろうと、そういう人たちが危険な連絡をとり合うとかいうようなことがあってはならないわけですし、われわれに対する治安の維持ですね、それはあなた方のほうで一番重視しなければならない問題点だと思うわけです。ですから、たとえば大阪の刑務所であれば、この表によりますと、強盗で刑を受けている人が四百四十二名当時いたというのです。殺人で刑を受けている人が四百七十一。同等数おるわけです。そういう人たちが長期刑で入っておる。まあ殺人の動機、内容にはそれぞれのものがあると思いますけれども、われわれから見ればそういうたいへんな人が入っているわけです。その人たちが常時外と連絡をとれるとか、入るとか出るとかというようなことで、簡単にお考えではないと思いますけれども、そういう簡単な角度でこの問題を論じたり研究なさったりしたのでは、われわれは困るわけです。ですから、一億国民の立場に立っていただいて厳重にこの問題に対処してもらわなければならないのです。それには金とか人とかということは言っておれないということが一番の根本問題じゃないかと思うのですね。  で、当時行きましたときに刑務所長さんの話あるいは担当者お話ですと、刑務官の絶対数がもう不足だ、いわゆる定数が不足なんだ、だから定数どおり満たしてもらってもだめである、夜間の見張りはもう全然人がいないというのです。それからいまおっしゃった侵入個所なんかの照明も全然ゼロだ、こういう点でいつでもその条件を満たすだけの材料があるということで、結論的には、この種のことは今後も起こり得る可能性が十分あるし、防ぎ切れないというのが結論だったわけです。これはもう大問題だと思うのですね。ただ、今後そのような不正入試事件が起きるとか起きないとかということだけでなく、またこれは単なる会社が情報化時代でスパイ活動をやったとか社員がどうしたとか入ったとかという問題ではないわけです。その点については、私はいまのお答えでは満足できないわけなんです。  たいへんことばじりにひっかかったような申し上げ方をしましたけれども、その防ぎ切れないという問題あるいは絶対数が足りない、それに対して、いまテレビを据えるとかなんとかというお話がございましたけれども、早急に検討をして、テレビならテレビを据える、照明をして危険な個所には十分目が届くような方法を講じなければならない、こういう結論になるわけですけれども、それに対する予算要求も、事態の重大性というものをお考えになってそれぞれおやりになるべきだと思うのです。この点について次官のほうはいかがお考えですか。局長さんと両方からお答えいただきたいと思います。
  58. 村山達雄

    ○村山説明員 受刑者につきましては、一面におきまして、その受刑期間中社会から隔離いたしまして、それらの人たちが一般の社会に悪い影響を与えないように考慮をすることは当然でございます。また他面におきまして、受刑者が社会復帰のためにいかなる作業あるいは訓練をすべきか、実はその両方の問題をかかえておるわけでございます。今般の問題は、そういう問題をかかえておる刑務所の情勢におきまして、物的あるいは人的の施設が足りない、あるいはそのことから注意を怠っておるために出たことだと思うのでございます。   〔高橋(英)委員長代理退席、委員長着席〕  率直に申しまして、刑務所の作業をわれわれは矯正局長等を通じていろいろ伺っておりますと、いわゆる刑務所の公務員の仕事というのは社会における特殊の仕事でございます。そういったことからいたしまして、人員が第一非常に不足しておる。もちろん毎年毎年その人員の増加を要求し、あるいは俸給の面におきましても一般職よりは高いようなことをお願いし、すでに実現しているわけでございますけれども、実際問題としてなかなか人的補充が得られない。これは定員の関係、削減の問題は別にいたしましても、その問題はあるわけでございます。一方定員削減の問題もございますけれども、この両面から人的の補給をはからなければならない、これは私は第一だろうと思います。今度の予算要求におきましても、この点を十分配意してまいりたいと思います。  第二の問題は、刑務所の公務員の仕事は、受刑者のいろいろな作業時間中は、もちろんその間は勤務をやらなくちゃならぬのでございますが、それを越えてどうしてもあとの仕事の整理とか夜の見回りとかいろいろなことがありまして、普通の受刑者の作業の時間をはるかに越えて勤務しなければならない。したがって、一般の公務員の仕事の時間をはるかに越えておるという実情にあるわけでございます。これを全体としていかに能率化し、そうしていま必要とされるようなところに重点的にその仕事を向けていくか、ここに一つの問題があるわけでございます。そういった意味で、先ほど申しました、矯正局長が言っている普通の業務については、できるだけ能率をあげる意味で工場にテレビを入れるとかいろんな合理化をはかってまいりまして、とにかく全体として余裕のある、そういうところに少し重点の移し得る執務体制を第二にはとらなくちゃならぬ。  それから第三には、もちろんこれは一番大事なことでございますが、いま言ったような外部との連絡がつかないような、直接物的あるいは人的の対策を講じる、こういう三つの問題がございましょうし、それから何と申しましても、これは刑務所限りではどうにもならないわけでございますが、外部から連絡をとるわけでございます、たいへんな利益をもってこれをはかるわけでございます。しかも相手が受刑者という、どちらかと申しますればそういった誘惑におちいりやすい人間でございます。こういった点を十分に考えまして、総合的にその対策を立てねばならぬと思っておるのでございます。有効なる方法、たとえばこういを施設をやればいいんだというような有効な方法がありますれば、われわれも万全の努力を尽くしてまいりたい。また、そこには先ほど申しました受刑者の社会復帰という一つの理想があるものでございますから、それとの調整を一体どうすべきか、そういいますと非常に高い理想も一方において矯正行政はかかえておるわけでございます。そういった調整もわれわれ十分に今度検討してまいりまして、有効な手段を今後とも重ねて検討してまいりたい、かように思っているわけでございます。
  59. 沖本泰幸

    沖本委員 結論的なお話に飛んでしまったわけですけれども、先ほども矯正局長お話があったとおり、名古屋でたばこを入れてくれたら二十万円出す、こういう話が刑務官と受刑者との間で取りかわされ、一番でかいのは金嬉老だったわけですね。これは中におって弱点を握って逆用したというようなこともあるわけですけれども、そういう点で、結局この種のことが起こるということは待遇が悪いからという点が一番にかかっていると思うのです。ですから、たとえて言うなら、詳しいことは知りませんけれども、刑務所のすぐ近くに刑務官の官舎がある。大阪の場合も刑務所のすぐそばに古ぼけた官舎がありました。周囲のほうの建物はもう近代化されていってどんどんよくなっているのに、そこの一角だけがまるで戦時中の兵舎みたいなところだと思うのですね。たとえば便所にしても、ほかは全部水洗化されていっておるのに、そこだけはくみ取りじゃないかと思われるような建物、あるいは給与が悪い、あるいはいろいろな待遇が悪いから、受刑者からの誘惑に刑務官が負けてしまう。高い理想と誇りに立って、それで勤務するという立場に立てるようにしてあげれば、こういうことは起きないはずです。  ですから、このときの数字にも出ておりますけれども、実際には夜間では五名しかいない、中で五名の人が一晩じゅう巡回しておるということですから、とうてい千何ぼおる人たちのめんどうが見切れるわけでもなんでもないわけです。それから見張りは全然ないし、仕事の場合でも、事件の起きた四十六工場と四十五工場、四十六工場は監視二名だった、あるいは刑務官が二名だったわけですね。四十五工場のほうは一名だった。こういうことですから、そういうふうな待遇が悪いとか非常な不満があるとか、それから一カ所に長く勤務をくぎづけにされている、それで結局社会と途絶している生活をしているのではないか、こういうふうにも思われます。以前にも刑務官の方と会って話し合ったことがございますけれども、全然社会のできごとからシャットアウトだ。大体刑務所というものは社会からずっと隔離されたような場所にあるわけで、大阪刑務所とか東京の中にある刑務所というようなものは町中になってしまっておるわけなんですけれども、そういう中で生活条件が非常に悪い、待遇が悪いということになれば、やはりある程度反発的なものが出てくるということになると思うのです。子供の教育にまでそういう問題が起こってくるのではないか。向こうの幹部の方が言っておりましたけれども、われわれは年限がくると勤務がえの転勤が非常にあるのだ、その場合に一番困るのは子供の教育だ、高等学校に行かすのにどうしたらいいかというのが一番の悩みなんだ、ということが上級幹部の方の悩みでもあったわけです。こういう問題が解決されない限り、精神的な問題、物質的なものが解決されない限り、そういうものに対する対策というものはできない、こういうふうに考えられるわけですけれども、といって、予算がしぼられておるとか、こういう全般的な問題がかかっていると思いますけれども、事はそういうことを越えて考えていかなければならないと思うわけです。ですから、先ほど次官がおっしゃったテレビの点についても検討をする、こういうお話なんですけれども、見張りのところへ照明をつけて、テレビのカメラを据えて、そのカメラ自体も照明で見える。それからへいの内外がカメラの移動によっていつも見張りができるような状態であれば、テレビカメラというものを通して、たとえ見張っていなくても心理的に見張られているということで防げる、こういうことになるわけです。  要は、この種の問題に対しては、金とかなんとか言っておれない、国民の安全を守っていくためにはどうしてもやらなければならない、こういうことになると思います。警察なんかはどんどん交通事故がふえていくから、警察官の増員をどんどんはかっていっておる、こういう社会情勢の事態に応じて人員の問題もできていっておるのに、刑務所だけは社会から途絶されているという内容から、やはり内容そのもの、全体が途絶されている考え方の上に立っているのではないか、こう考えられるわけですけれども、両方とも含めまして、どういう前進策、解決策をお持ちか、お伺いしたいと思います。
  60. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 名古屋の事件は職員が関与しておりません。先ほどちょっと説明が不正確であったことをおわびいたしますが、名古屋は職員が関与しておりません。  それから大阪の事件は、御指摘のとおり、目下起訴されております職員が二人関係しておる。これにつきまして、待遇が悪いのではないかという御指摘がございまして、まことにありがたく拝聴したのでございます。私どももお説のとおり、刑務官の待遇がいいとは思っておりませんし、現在の人員が十分であるとも思っておりません。今度の予算要求につきましてもいろいろなことを、たとえば増員にいたしましても約三百名ばかりの増員要求をいたしておるものでございまして、できるだけその改善をはかってまいりたいというように考えておるわけでございます。  ただ、私どもが大阪事件に関しまして反省いたしておりますのは、やはり待遇と並びまして教育訓練と申しますか、待遇は最も大事な問題でございますけれども、待遇と並んで教育訓練ということを考える必要はないか、あるいは士気の高揚策、と申しますのは、これまでも毎年従来の統計で職員が不正物品の授受、職員が外部の者から頼まれて受刑者に物品を授受するという事故が五年間平均で毎年二十件くらいずつ、合計百件くらいずつ起きて行政処分をいたしておりますが、それの半数をこえる者が四十歳をこえたいわゆる中年の職員でございます。そこで、それのもちろん生活状態というようなものもつぶさに検討いたしてみますと、生活がむしろ安定した中年の職員がひっかかりやすいという実態になっておるように見受けるのでございまして、これはやはりその人たちは、何と申しますか、立身出世というようなものに取り残されたと申しますか、そういう見込みがなくなりまして、おれはもうだめだとかいうような、あきらめたような気持ちを持っている人が多いように見受けるのでございます。そこで、いま中年の職員で士気が上がらなくなってしまった職員、しかもこの職員が一番長く受刑者と接触するわけでございまして、ここが士気が上がらなくなってしまうということが一番困るわけでございます。これの徹底した再訓練と申しますか、現に実施いたしておりますし、それを相当やろうということでまた予算の要求もいたしておるのでございます。  本所のみならず、御承知のように刑務所は支所というのがございまして、支所にもときどきえらい犯罪者が、被告その他の身分を持って入ることがあるわけでございまして、それらの点のすべてにわたりまして、遺憾なくいろんな点に処置いたしますことは相当の費用がかかるのでございますが、御質問の趣旨を体しまして、ただいま次官も申されましたが、総合的にひとつ努力してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  61. 沖本泰幸

    沖本委員 いま矯正局長は精神面の点を非常に強調なさっておるわけですけれども、やはり腹が減ってはいくさができないわけでして、精神訓練、いろんな教育上の訓練をして、綱紀をきちっときめ、勤務状態をよくしていくという点に観点を置いても、やはり豊かな心の持ち主、情操の持ち主でなければならないと思うのです。ですから、これも質問の中に入りますけれども、刑務所と刑務官の官舎というのは一定の距離があって、いつでも招集に応じられるような状態に置かれておる、それが社会と隔絶してしまう、年齢がどんどん上がっていってしまう、暮らしが豊かではない、ですから問題が起きてくる。いわば外で勤務して、精神的には受刑者と同じような状態に置かれている。それに、おまえたちしっかりした精神を持ってがんばれと言ったって、これは無理だと思うのです。そこにやはり豊かなものを持たしてもらわなければならない。家族も含めて言えるのじゃないか。それにはやはり年に何回か温泉地に行けるとか、いろいろなところに行ってもこれる、まあ勤務状態でそういうゆとりのない人員配置という点もあると思いますけれども、そういうような厚生施設とかいうものも早急に対策を立ててやっていただかなければ、年のいった方は無理だということになりますし、といって、待遇が悪いから若い人を募集したって来ないわけです。何か最近では、ことばの上でも若い人は何かを見ればかっこいいということを言うわけですね。ですが、刑務官に限っては全くこの世の中で一番かっこう悪い職務になるのじゃないでしょうか。そういう点を十分配慮していただかなければならないと私は考えるわけです。これはあらためてあとで次官にお答えいただきたいと思いますが、十分その点御配慮をしていただきたい、こう考えるわけです。  それからもう一つの点は、先ほど申し上げましたとおり、人が足りなければやはり物で補っていくということで、早急に照明なりテレビのほうは開発していただいて、もういろいろな社会でやっているわけですし、東京の国鉄でも私鉄でも、人がたくさんあふれるところはどんどんテレビカメラで人の流れを誘導しているような方向に行っているわけですから、そういう点も十分おやりにならないということは、やはり人的な面、物的な面でもずいぶんおくれている、こういうふうに考えなければならないと思います。  余談になりますけれども、あわせて申し上げたいことは、法務省の中に、そういうような現状に対して見ていかなければならない問題、いわゆる飛行機はどんどん発達して飛ぶようになって外国からはどんどん人がふえてくるのに、一向に入国管理に関する審査官がふえないというような点にも、やはり同じことが言えるのじゃないかと思うのです。それもこれも、裁判所の中の定員が足りない点もありますけれども、早急に対策を立てて人をうんとふやさなければならない問題があるわけですから、そういうものと一緒に考えていただくのは間違いだと思うのですね。ほかで考えていただかなければならないと思います。  それから、やはりこの事件を見て言えますことは、われわれがどうしても疑問に思うのは、長期受刑者が仮出所で事件を起こしていることです。一番最近問題になっているのは大久保清の問題ですね。これも仮出所後事件を起こしているという点にあるわけです。この仮出所について私は欠陥があるのじゃないかというふうに考えますけれども、この点についていかがですか。
  62. 大谷猛雄

    ○大谷説明員 ただいま先生御指摘の大久保事件とか、あるいはいまお話に出ました大阪の不正入試事件、保護観察という事柄で、仮出獄中の関係でこういうことが起こったことは非常に反省させられておるわけでございます。  仮出獄というものの現在の状況ということで、どういう尺度でそれが行なわれたかということは、刑法二十八条の、有期刑であれば刑期の三分の一、無期刑であれば十年経過、それから改俊の状がある者、こういうことを受けまして、われわれのほうの関係の運用通達で、なお仮出獄期間中に再犯のおそれがない者で、そして社会感情も仮出獄を是認するというような、こういうようなものを基準としまして、さらにいろいろ本人の性格とか態度、行刑成績、犯罪歴、あるいは釈放後の職業、生計の見込み、こういうようなものを総合して、ただいま申し上げました改俊の状があるとか、あるいは期間中再犯のおそれがないという心証を固めて地方更生保護委員会の主査委員が審理して、その合議体にかけて表決されて決定される、こういうことになっておりまして、私どものほうでは、施設の長から申請が出て、こういった仮釈放の審理が行なわれる、こういうことでございます。
  63. 沖本泰幸

    沖本委員 御説明はわかるのですが、しかし、「保護観察読本」の表紙の裏にずっとつながりが出ております。これによりますと、地方更生保護委員会あるいは刑務所の所長、こういうふうな両方の観点から改俊の状があり、まじめであるということで社会へ一時仮釈放しても心配はないということで、法の許す限りで仮釈放している、内容がそうなるわけです。それに関しましては、保護観察所なり保護司なりという施設があって、社会の中へ出てきた人たちは絶えず監視しておるということになるわけですけれども、たとえば保護司さんなら保護司さん、これは話は飛びますけれども、この保護司さんが実際に暴力団のような人たちを保護観察できるか、こういうことになってきます。こうなってくると、もう形式的な問題だけということになってきます。あまつさえ地方の保護司というのは無給であって非常勤で、その人の努力にまつ以外にない、こういうふうな現在の状態なんですね。これは前々から法務省に要求したり申し上げたりはしておるわけですけれども、現代の社会で——昔なら家作を持って豊かな暮らしの中にあって時間を自由にとって、そして良心的にいろいろなこういう公の社会的なことに携わっていただけるということも要求されるかわかりませんけれども、現代のような目まぐるしい社会情勢の中で、制度そのものが昔なりであるということを考えてみたり、あるいは最近の国民のいろいろな風潮、そういう内容を考えていく。それから保護司の方の年齢——先ほど刑務官の年齢が、矯正局長、非常に上がって四十歳平均だというようなことをおっしゃっておりましたけれども、全くこの保護司の方は高年齢に属しておるというようなことになりますと、保護司の制度そのものを考えなければならないんじゃないかと私はこう考えるわけです。読んでみますと、報告書とかいろいろな文書的な扱いが一ぱいこの中にあるのですね。そうすると、ただそういう制度上の問題が形式的に、義務的に行なわれているんじゃないか、こう考えられます。そうすると、事件を起こして刑に服してはおるけれども、まじめな人が、ほんとうに社会復帰してもだいじょうぶだというような人たちが陰に隠れておって、刑務所の中で心証が非常によくなっていく人、そういう人たちだけが仮出所していく。むしろそういう人たちのほうに危険があるんじゃないか。ただ本人から申請が出たから、刑期の三分の一をつとめたから、あるいは十年たったから検討して、それで事務的に出していっている。そういうふうな形式的なものに流れているんじゃないか、こう考えられるわけですけれども、その点についていかがですか。
  64. 大谷猛雄

    ○大谷説明員 ただいま御指摘になりましたような暴力関係、非常にわれわれの処遇の困難なものというようなそういうものはあるわけでございますが、これは先ほど仮釈放の点で申し上げましたけれども、十分な心証の見きわめを得て社会に出して、社会内処遇にバトンタッチする、こういうようなことが刑事政策の理想として行なわれるわけでございますが、監獄太郎といわれるように、中で優秀な行刑成績だということで、実際は外へ出ると扱いにくい、こういう者もなきにしもあらずですが、そういうことについて委員会の審理において惑わされてはいけないと思うのでございまして、あくまであとで受ける保護観察の効果というものを一緒に考えて、そうして実際扱うのは、ただいまおっしゃいましたように保護司の方が相当主になって保護観察を行なうわけでございますから、そういったことを総合判断して仮釈放のいい時期を見きわめる、こういうことが今後一そう努力されねばならないと思います。  また、現在の保護司が、だんだん時代の変化が激しくて、しかも老齢化してまいるという実情もあるわけでございますが、われわれ関係者としましては、保護司さんと共同体制ということで保護観察をやる保護観察官の数が、先ほど刑務官のお話も出ましたが、非常に少な過ぎるということで、年々これの要員について予算要求をお願いしておるわけでございます。その保護司さんとの関係で、月々担当しておられるその成績報告書というものを的確に出していただき、そうしてこれに対して保護観察官がそれぞれ適時適切な補導を一緒にやっていく、こういう点でなおこれから改善すべき点があることを考慮しまして、先ほどのように非常に処遇の困難と思われるケースはあらかじめこれを分類して、重点的に観察官が前面に出て主体的に保護観察を行なう。そうして保護司さんに負担をあまりかけないで行なうように、こういう努力を目下しているわけでございます。
  65. 沖本泰幸

    沖本委員 質問に答えていただいておる、こういうことになるわけですけれども、ただ現在までのことをいろいろ考えて言っているのではなくて、いまこの問題行き詰まっておるのじゃないか、そこに問題があるのじゃないか。保護観察制度そのものに、保護司にも問題があるのじゃないか。だからいまの時代においては、結局保護司一つとらえてみても、非常勤で無給でただ実費だけを出すというようなことだけで、はたして現代的な中においてその人々がそれに応じるかどうかということになるわけです。そういう点ある方に伺ったわけですけれども、制度上の問題、あるいはいろいろな問題について保護司の方自体はどういうふうなお考えを持っておるか、こう聞いてみたら、勲章をもらえるような制度にしてもらいたい、こういうふうな御要求があったというようなお話も伺ったわけですけれども、そうであれば、そういう方々の考え方というものが現代のこういう社会に即したお考えを持っていない。ただ名誉職的に、私は保護司である、こういうことでとどまっているのじゃないか。それならそういう制度はなかったほうがいい。もっとはっきりしたものがなければならない。それをずっと上に突き上げていって考えてみると、現在の受刑者の仮出所の内容そのものに問題があって、そのために事件を起こす人たちが仮出所してきておる、こう考えられるのじゃないでしょうか。ですからいわゆる法律的に、刑務所の中にあって仮出所というごほうびがあるから、刑務所の中で暴動を起こしたりいろいろな事件を起こさせないような一つの押えになっておる、そういうことだけである。しかし、その仮出所後におけるいろいろな問題については真剣に検討されていないのじゃないか。それで在来の制度だけをたよっていっているということになると私は考えるわけです。ですから、刑務所の中におけるこの受刑者の犯罪の内容そのもの、あるいはどれくらい前科があるとかないとか、あるいは大久保清のような場合、おそらく出て再び事件を起こすんじゃないか、こう考えられる人とか、こういうものは真剣に検討しなければならないということですから、地方更生保護委員会そのものの制度、中身、こういうものは再検討しなければ、現在のこの種の事件に対し、ほんとうに防ぎ切れないんじゃないか。刑務所の刑務官をふやしたり、テレビをつけるという問題も重要ではありますけれども、そういう制度そのものに事件をはらんでいる問題がある、こう考えられるわけですけれども、大臣お越しになりましたから、制度を変えなければならないという問題について、法務大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  66. 村山達雄

    ○村山説明員 ちょっといま大臣、途中でおいでになったので、まだ御報告を申し上げる時間がありませんので、私から便宜答えさせていただきたいと思います。  ただいま沖本委員のつかれている問題は、実は非常に人間性についての深い問題を私はついているように思うのでございます。確かに保護観察制度という問題は、仮出所した者の保護観察期間中の問題なのでございます。しかし、もう一つ根本的にさかのぼりますと、それなら保護観察期間が過ぎたあと、その受刑者のやはり再犯を犯すという危険性については、これは保護観察制度ではどうにもならぬことなのでございます。いまおっしゃっていることは、保護観察と仮出所との関係を言って、仮出所が早いんじゃないかという点が一つ言われております。それからもう一つは、かりに仮出所が適正であるとしても、その保護観察でその期間中に犯罪の予防が、あるいは犯罪の累犯が予知できたのではないか、その点について保護観察官ないし保護司制度というものがはたして役割りを果たしているか、こういう点をおつきになっていると思うのでございます。  それで、まず保護観察制度のほうから申し上げますと、ただいま申し上げましたように、いま保護司は大体五万人おります。それで保護観察の対象になる人は大体九万人でございますから、二人ということでございます。保護観察のような名誉職ではなくて、ちゃんとした官吏をやったらいいじゃないかという、一方にお説のあることもよく承知しておるのでございますが、私たち聞いておるところでは、やはりかた苦しい官吏という形も一つ考えられますけれども、そうでなくて、そういう人道的なあるいは犯罪予防的なことにほんとうに使命感を持っておる通常の人と接触をしたほうがかえって社会復帰が容易であるという点も多く見られる。この点が現在民間の保護司をあわせ活用している点であろうかと思うのでございます。問題はその運用がどうかということになるわけでございますが、保護司につきましては、処遇の点、実費弁償制度をとっております。この点は昨年実費弁償制度の大幅な改善が行なわれまして、問題はむしろ私たちの見る限り、今後は保護観察官、官吏であります観察官のほうの人間が不足しておる。そのために保護司との連携がよくとれない点にむしろ問題があるのではなかろうか。現在七百名ぐらいでございますから、せめて保護観察の初期におきましては、少なくとも全部保護観察官がみずから把握して保護観察の任に当たるということが必要でありましょうし、そしてまた、その保護観察に付された人の内容を見まして、特殊なものについてはやはり保護観察官がみずからやる必要がある。こういうふうにして、まず保護観察官を主にして、これと保護司との連携に私には今後の保護観察制度の重点があるように思われるのでございます。  それから根本的な問題として、その保護観察制度と、それからいまの仮出所の問題でございます。およそ一点でも再犯の疑いがあったら、現在刑法上認められております——これは社会復帰ということを理想にしての行刑制度だと思いますけれども、およそその仮釈放制度というものは厳格に適用するのだということにどこまで踏み切るか、これも程度の問題かと思うのでございます。一方におきまして、通常の社会を法秩序維持の立場から擁護しなければならない。同時にまた、人道的見地から受刑者の社会復帰を願うのが行刑の、むずかしい話でありますが、私は二つの要請であると思うのでございます。まさにその運用のちょうど限界点が、仮釈放制度をいかなるところでやっていくか、これは、それなら一点の疑いがあったら出さないということになりますと、いまの仮釈放制度というものの運用は全部非常に狭められることになるわけでございます。刑政の根本に反する問題でありますので、この点は十分研究しなければならぬと思います。  それよりもさらにさかのぼって考えますと、はたしていわゆる犯罪者というものの受刑行政というものが、ほんとうの意味で社会復帰というものを目的にしたときに、いま世界はみんなこの問題に苦しんでいるわけでございますが、はたして社会復帰が可能であるのかどうか、この点をやはり医学的にも心理的にももっと追跡しなければならない。またそれぞれの態様に応じまして、たとえばこれは精神障害者として処遇すべき問題であるとか、あるいは精神薄弱者として処遇する問題であるとか、あるいはこれは経済問題として律すべき問題であるとか、いろいろないわゆる犯罪分類学あるいは医療分類学の領域に属する問題がこの領域にはたくさんあると思うのでございます。その根本にさかのぼりまして、受刑者全体の刑務所内における処遇あるいは仮出獄の運用、それとの関連において保護観察制度をどうすべきか、これはまさにいま全世界がやはり大きな問題として追及している問題ではないかと思うのでございます。先生のおっしゃるのはまさにその基本をついている問題だと思いまして、私たちもこの問題の重要性を認識いたしまして、十分検討してみたい、こういう気持ちでおることを御理解賜わりたいと思います。
  67. 沖本泰幸

    沖本委員 大臣がお越しいただきましたので、時間もあまりいていただけないようでございますから、大臣がいらっしゃらなかったら質問しないつもりでいたのですが、大臣お越しになりましたからお伺いしたいと思います。  これは入国管理についての問題でございますが、せんだっても新聞で中国に対するいろいろな問題点を緩和するというような記事が出ておりました。あるいは竹下官房長官の談話もあったようなわけでございますが、また韓国と朝鮮民主主義人民共和国との間にも最近はいろいろな折衝、そういうような問題も報道もされております。こういうことから、お墓参りとか里帰りというようなものを盆と正月、そういうときにいろいろ要求してきておりますし、こういう問題は人道的な見地に立って考えてあげなければならないと思うわけでございます。そういう点から、「よど号」に関しても私たちは十分こたえていないということも言えるんじゃないか。こういうものを考えまして、もう少し前向きに検討していただいて、大幅にこの問題を取り上げていただかなければならない、こう考えるわけです。  それから密入国問題でいろいろ問題にされるわけですが、たとえば日本に生まれて日本で育って日本語しかわからなかったけれども、韓国に一時帰ったためにもう籍が離れて事実が消えてしまって、その後は密入国せざるを得ない、こういうふうな方々がときどき私たちのところに相談に来るわけですが、こういう問題もやはりもう少し幅広く考えてあげたほうがいいんじゃないか、こう考えるわけでございますが、この点について現在までは、朝鮮民主主義人民共和国のほうも非常に人員が制限されているということでいろいろ陳情も受けております。こういう観点からもう少しお考えを変えていただいて、そういう情勢に合ったような再入国の問題を御検討いただきたいと思うのですが、この点について大臣、いかがでございますか。
  68. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 結局は未承認国の間ではやはり相互主義というのが中心になると思うのです。そしてまた人道上の問題は、これはもう当然考えていかなければなりませんが、いろいろ出入国することが政治的にどういう意味を持つか、言いかえれば政治活動というところにわれわれは考えていかなければならぬ問題があったわけであります。  中共の問題について考えますと、たとえば最近非常に交流がだんだん緩和されてまいっております事情、あるいは国連に少なくとも中共が入ってもらいたいというような状況にだんだん変わりつつある。その点については私は、いわゆる政治活動と考えるべき問題であったものが、むしろ逆に政治活動でないと考えたほうが、人道上の問題とかそういう考え方もとっていったほうが妥当ではなかろうか。そういうことは、結局においていろいろな情勢が変わってきております。その点について私は決してやぶさかではないのであります。ただ、あまりに先ばしって出入国の問題だけが先に進むということはやはり慎まなければなりません。要するにそのときそのときの客観情勢に応じて判断していくべき問題だ、かように考えておるわけであります。  したがって、北鮮との交流という点につきますと、方向から言いますと、韓国と北鮮の関係は非常に緩和される見通しがだんだん強くなってきております。そういう意味からしますと、将来はこれはもう非常に考えていかなければならぬ問題だ。ただ、現時点において、客観情勢としてすっかり変わっているかというところまでは私ちょっと判断しかねる。したがって、緩和の方向にあることは私は決して否定するものではありませんが、従来とっておりました立場が一ぺんに変わってしまうというような考え方はとらないのでありまして、その実情に応じ、また個人的な一人——さっき韓国人のお話がありましたが、やはり個々の人について的確な判断をしていくべきだ。これは個人審査が原則であります。そういうような考え方でやっておるわけであります。その点御了承願いたいと思います。
  69. 沖本泰幸

    沖本委員 そうしますと、中国へ行ったり来たりする問題、向こうからいろいろな方が来る問題、そういう問題も、高校生のピンポン使節団が行ったりスポーツ団体とか、交流がいろいろな形で激しくなっていっておりますけれども、そういう点についても在来からの考えをだんだんと将来に向かって変えていく。また朝鮮のほうの南と北の問題もやはりそういう情勢に応じながら今後は考えを変えていく、こういうふうに私たちは受け取ってよろしゅうございますか。
  70. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 さようでございます。
  71. 沖本泰幸

    沖本委員 それでは時間もありませんから、大臣にこの前の小林法務大臣当時の問題で、大学入試不正事件でお伺いしておったわけですけれども、結論からいきますと、この事件が起きた原因なるものは絶対的な定数が足りないということ、定数自体が不足で防ぎ切れない、こういうものが一つ出ております。ですから夜の見張りとか、へいを乗り越えて入る者に対する監視とかそういうこともできないし、中の監督も非常にむずかしい、それから待遇の面が非常に悪い、私たちは刑務所の中身につきましてはそういう点を指摘しているわけです。さらに人の点、物の点を補うためにテレビ等を据えて監視体制を強化しなければならないし、照明ももっとふやさなければならぬ、これは全体の刑務所について言えるのではないか。ですから私たちの国民の立場から考えれば、刑務所に入るような者がいつ何どき外へ逃亡するとか、また同種の事件を起こすようなことがあってはならぬ。社会情勢の不安を起こしますし、国民に非常な不安を与えるわけですから、この問題に厳重に対処していただかなければならぬ。こういうことなんですが、これはそろそろ検討して、研究してみてから考えてみようということではないと思うのです。もう早急に対策を立てていただかなければならない、こう考えるわけです。概算要求の時期にも入っておるわけでありますが、この点について大臣はどういうお考えでいらっしゃいますか。
  72. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 率直に申し上げまして、法務関係の仕事を考えますと、やはり人間ということになるわけであります。一方から国家的要請として、できるだけ人員は節約しろ、節減しろ、こういう方向でありますが、ものの性質、また事件が多くなっておるかどうかというような点から考えて、私はやはり人員が非常に不足しておる。また一面からいいますと、いろいろ質も低下しておるといりては語弊がありますが、適当な人がなかなか得にくいという事情がいろいろ反映しておると思います。そういう点をあくまで研修会とかいろいろな教育によって補っていかなければなりません。そういう面で今回の予算は、定員の増加ももちろんのことでありますが、研修会とかいろいろなことで今後質の低下しないように、またさらに一段と質が向上するようにというような考え方のもとに予算を要求いたしておるわけであります。
  73. 沖本泰幸

    沖本委員 この問題は十分に御検討いただきたいと思うわけでございます。  さらに、時間がなくなりましたので、文部省もお呼びしておるわけなんですが、文部省のほうとしては、この大学不正入試事件に対して、きのうの新聞では医学部についてのいろいろな対策をお出しになりましたけれども、不正入試問題は今後起きるかもわからない、防ぎ切れないかもわからない、こういうことを刑務所ではおっしゃっておったわけです。そういう問題を踏まえて文部省としてはどういう対策をお持ちか、お答え願いたいと思います。
  74. 大崎仁

    ○大崎説明員 先生御指摘の事件に関連しまして、今後この種の事件の再発を防止するという観点から、私どもといたしまして昭和四十七年度の大学入学者選抜の実施要項というものを出します際に、特に公正な入学者選抜の実施の確保という点につきまして注意を喚起いたしまして、各地で行なわれます説明会等におきましても、特に印刷、運搬、保管というような具体的な面にわたりましての注意を払わられるような指導、協議というものを実施しておるわけであります。  具体的には、印刷の問題が当面最も直接関係があるわけでございますが、各地の刑務所側の御意向をも勘案をいたしまして、この際は大蔵省の印刷局に試験問題の印刷はお願いをいたそうということで、これまで刑務所その他にお願いをいたしておりました国立十九大学のうち、本年度からは十五大学につきましては印刷局にお願いする。それから残りの四大学につきまして明年度からお願いをするというような措置を講じてございます。それからまた、明年度の概算要求の時期でもございますので、保管あるいは運搬というようなものについて、安全を期するための経費というものも相当額要求をするということで計上をいたしておるわけでございます。
  75. 沖本泰幸

    沖本委員 時間がなくなりましたので、大臣に、初めからいらっしゃらなかったので、話の向きは十分御承知いただいていないのでございますが、再びこういうことの起きないように、国民の不安を起こさないように、いろいろな点もありますが、刑務所についての警備体制、これは厳重に、早急に対処していただきたい、こういうふうに御要望したいと思うわけでございます。  では、以上で質問を終わります。
  76. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 ごもっともだと思います。
  77. 松澤雄藏

    松澤(雄)委員長代理 青柳盛雄君。   〔委員長退席、石井(桂)委員長代理着席〕
  78. 青柳盛雄

    ○青柳委員 法務当局に最初にお尋ねいたしますが、法務省訓令第一号、検察庁事務章程というものを見ますと、各検察庁に公安部という部を置くということが明らかでございます。もっとも最高検察庁、高等検察庁はすべて公安部が置かれるようでございますが、地方検察庁になりますと、東京、大阪、横浜、京都、神戸、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌、高松というように、高等検察庁のあるところあるいはそれと同じように重要と思われる横浜とか京都、神戸にそういうものが置れることになっております。  そこで、お尋ねですけれども、それ以外の地方検察庁あるいは区検察庁については全然何もございません。そういうところに公安部がないことは、この通達をそのとおり読む限りないわけでございましょうけれども、それに類するもの、言ってみるならば公安担当の検事、検察官あるいは検察事務官、そういうものが公安部という形ではないけれども、あるのかどうなのかという点でございます。
  79. 辻辰三郎

    ○辻説明員 全国の検察庁に公安部があるかどうかという点でございますが、公安部のございますのはただいま御指摘のとおり、最高検察庁、各高等検察庁それから地方検察庁のうちでは、東京、大阪をはじめといたしまして、六大都市の地方検察庁と高等検察庁所在地の地方検察庁、要するに合計十一になるわけでございますが、ここには公安部というものが設けられておるわけでございます。  そこで、それ以外の地方検察庁につきまして公安部的なものはどうなっておるかという点でございますが、これらの地方検察庁につきましては公安部は設けられていないわけでございます。  そこで、この公安部的な仕事はどうしてやっておるかという点でございますけれども、この点につきましては、ただいま御指摘の検察庁事務章程の第七条に基づきまして、地方検察庁以上の各検察庁には各種の係検事を置くことになっておるわけでございます。これは部と関係なしに、一つの係検事を置くという制度があるわけでございます。これに基づきまして、各地方検察庁におきましては、少なくとも一名以上の、公安関係でございますならば公安労働係検事を置いて、公安関係の検察事務を処理いたしておるわけでございます。
  80. 青柳盛雄

    ○青柳委員 いま地方検察庁に公安部のないところがあって、そこでは検察庁事務章程第七条で係検事というものを各一名以上指名するということでございましたが、区検察庁というものはその対象になっているのでしょうか、ないのでしょうか。
  81. 辻辰三郎

    ○辻説明員 対象になっておりません。
  82. 青柳盛雄

    ○青柳委員 さらにこの章程によりますと、その実務を担当する事務局的な任務を行なう事務課というものが置かれているようでございますが、これはすべての地方検察庁以上のところには置かれている。区検察庁についてはこういう公安事務課に類するものはないわけでございましょうか。
  83. 辻辰三郎

    ○辻説明員 区検察庁におきましては、公安事務課に類する組織はございません。
  84. 青柳盛雄

    ○青柳委員 そこで、このような制度の内容についてお尋ねをするわけでございますが、その公安部の仕事は別表の第二に掲げられておりまして、「一 公安関係事件及び労働関係事件の捜査及び処分の決定に関する事項、二 前号の事件の公判の遂行に関する事項、三 公安労働情勢の調査その他資料の収集整備に関する事項、四 前各号に関連する事項」こういうことに一般化されております。  そこで、第一号の公安関係事件及び労働関係事件といわれるものは具体的に言うとどういうものとしてきめられておるか、その内容をお尋ねしたいと思います。
  85. 辻辰三郎

    ○辻説明員 私どものほうで公安事件と申しておりますのは、一般的にいいまして、まず騒擾その他これに類する群衆犯罪にかかわる事件に関するもの、それから違法な集団示威運動、集団示威行進または集会に関する事件に関する事項、それから学生運動その他大衆運動に関連する違法行為事件に関する事項、ほかにも多少ございますが、これらのものが公安事件ということで処理されておるわけでございます。  それから労働事件ということになりますと、これは労働関係法令違反事件に関する事項がまずその第一でございますが、これは労働基準法その他労働者保護関係法令に違反する事件と、それから次に違法争議行為その他労働組合運動に関連して発生した不法事犯に関する事項、これも労働事件ということにいたしております。  以上が公安事件及び労働事件の大体の内容でございます。
  86. 青柳盛雄

    ○青柳委員 非常に概括的に公安事件内容お話しになったのですけれども、これは法務省として各検察庁に何らかの指示を文書で出しておられるのかどうか、おおむねいま御説明の趣旨で適当に扱えということで、あとは解釈にまかしておるのか、そこをお尋ねしたいのでございます。
  87. 辻辰三郎

    ○辻説明員 ただいま申しましたこの公安事件及び労働事件内容につきましては、法務省といたしましてこういうものは公安労働係の者が担当するものであるということで、一応大ワクは全国一斉に定めておるわけでございます。
  88. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私があるところから入れた情報によりますと、破防法とかそれから安保条約に基づく秘密保護法とか刑事特別法とかいうようなもの、あるいは公務員法の違反事件、自衛隊関係の違反事件、教育に関する特別法の違反事件、正確にいうと義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法違反というのですね。それから武器または爆発物に関する犯罪で特異または重大なものに関する事件というようなものも入るのだというふうに指摘されているようですが、その点はいかがですか。
  89. 辻辰三郎

    ○辻説明員 ただいま御指摘の関係事件、これも公安係といいますか、公安事件の中に入ることにいたしております。私は先ほど公安事件のうちのおもなものを申し上げたのでございまして、細目につきましてはただいま御指摘のものも公安係の範囲に入るわけでございます。
  90. 青柳盛雄

    ○青柳委員 このような制度が戦後の民主化された日本の検察制度の中へ取り入れられたわけですが、戦前に思想検事の制度がありまして、これがいわゆる治安維持法、治安警察法その他国家総動員法、いろいろの思想統制の実定法を運用する場合の専門職のような形で大いな威力を発揮したわけでございます。これが戦争犯罪的な制度であり、また戦争犯罪にもつながるということで戦後糾弾されたわけですが、それを廃止した後の日本において、これに類すると一般には理解されるような公安労働事件扱いの公安部制度、こういうものを設けられたことについて戦前の非民主的なやり方に対する反省というものはどういうふうにこの中に取り入れられているか、それをお尋ねしたいと思います。
  91. 辻辰三郎

    ○辻説明員 私は戦前のいわゆる治安維持法であるとか、そういう関係の検察というものがどういうことであったかつまびらかにしないわけでございますが、現在各地方検察庁以上の検察庁において設けられております公安係の仕事の内容でございますが、これは申すまでもなく、すべて検察の対象にいたしますものは実定法上犯罪として規定されておるもの、それに対して初めて検察というものが動くことは申すまでもないところでございます。こういう各種の犯罪のうちで、集団犯罪的なものであるとかあるいは違法争議行為に伴う犯罪であるとか、そういうものはやはり捜査及び公判の技術において他の一般事件と異なっていろいろむずかしい問題もあるわけでございます。法律上並びに事実認定上いろいろむずかしい問題があるということで、こういう関係事件につきましては、検事においても平素から法律上の問題点であるとか事実認定上の問題点であるとか公判遂行上の問題点であるとか、そういうものにつきまして十分研さんにつとめまして、この種の検察が適正に行なわれるように練摩しておく必要があるということでございまして、こういう観点から各検察庁に公安労働係検事が設けられているというふうに解しておるわけでございます。
  92. 青柳盛雄

    ○青柳委員 実定法の運用が非常に特殊性を持っておるから、実定法そのものが特殊なものであることに基づくのかもしれませんけれども、それを運用する場合に慎重を期さなければならぬというような、いわゆる適正ということばをいまお使いになりましたけれども、適正ということばの中に、基本的人権をいささかでも侵害するようなことがあってはならないというそういう配慮から、特別に公安部というものを設けて研修を厳重に行なうとか、それから指揮命令を明確にして、かりそめにも逸脱しないようにするとかいう配慮が払われているのかどうかという点が実はお聞きしたかったわけです。なるべくある法律、それが守られているように、またこれを犯した者に対しては絶対に容赦なくやらなければいけないのだ。治安をつかさどる検察庁とすれば、この点で抜かりがあったということで世論の批判を受けるようなことがあってはならないのだという姿勢でこういう制度が設けられたとするならば、具体的には個々的な国民の基本的人権が侵害されるというようなことは場合によっては犠牲にしても、かりそめにも治安が犯されるようなことに対して鈍感であってはならないというようなことのほうに重点が置かれるということではちょっと問題なんでございますが、その点はいかがですか。
  93. 辻辰三郎

    ○辻説明員 ただいま私が関係事件の適正な処理を期するというふうに申したわけでございますが、この事件の適正な処理という中には、もとより関係人の基本的人権を全うしていくという趣旨のことも当然含んでおるわけでございます。
  94. 青柳盛雄

    ○青柳委員 公安部関係の検察官あるいは事務官、職員の人たちのために特別な教育を制度的に設けているかどうかという点はいかがですか。
  95. 辻辰三郎

    ○辻説明員 各種の係検事に対する研修、教養という問題でございますが、これは公安労働係に限ったわけではございませんで、各種の特殊な検察あるいは一般の検察もその対象になるわけでございますが、一般的に法務総合研究所におきましてその研修の対象にいたしているわけでございます。その一環といたしましてこの公安労働係事件関係の研修もいたしますし、また自庁においてもそういう関係のいろいろなそのときそのときのあれによりまして、各種の分野の検察の研修をいたしておる、こういう状況でございます。
  96. 青柳盛雄

    ○青柳委員 統計的にお調べになったことがあるかどうか存じませんが、正確な数字がわかればなおけっこうですけれども、概略でもいまわかったらお知らせ願いたいのですが、公安部に関係する検察官の数、その全体との比率、公安関係の事務に携わる検察事務官とか職員の数及び全体との比率などは現在どうなっておりますか。
  97. 辻辰三郎

    ○辻説明員 先ほど申しましたように、地方検察庁以上の検察庁におきましては少なくとも一人以上の公安労働係検事が設けられておるわけでございますので、そういたしますと公安労働係検事というものは少なくとも五十八名——地方検察庁が四十九ございましてその上に高等検察庁が八つ、最高検察庁一つということになるわけで、五十八名の公安労働係検事は設けられておるわけでございまして、またそれを補佐するものといたしまして担当の検察事務官も相当数あることは事実でございます。  ところで、検察庁の事務につきましては、公安労働係検事が各庁におるわけでございますけれども、公安労働係が公安労働事件だけをやっておるわけではございません。公安労働事件がなければその検事は仕事がなくて遊んでおるというわけではございませんので、平素は公安労働事件がなければ一般の事件をどんどん処理しておるわけでございます。検察事務官についても同様でございます。また一つの大きい集団的犯罪事件があった場合に、各一人の公安労働係検事でそれを全部処理しておるというわけではございませんので、その場合は公安労働係検事以外の検事がこれを応援して一緒に処理をしていくという実情になっておるわけでございまして、全国検察庁におきまして公安関係の事務に従事しておる職員、検事や事務官は何名かということの御指摘に対しましては、事柄の性質上かような運営をいたしております関係で常に流動的でございます。これはそういう意味での何名ということは事柄の性質上確定しないということになりまして、したがってお答えできないという結果に相なるわけでございます。
  98. 青柳盛雄

    ○青柳委員 この問題についてもう一つ。  法務省あるいは検察庁とすれば、公安事件と称するものあるいは労働事件ということばを使ってもいい、公安労働事件といってもよろしいのでしょうけれども、こういうものの扱いが裁判所において適正に行なわれることを期待するという立場から、裁判所のほうにもこれに対応するような制度的な配慮があったほうがいいというような考えがありますかどうですか。またそして、そういう考えがあって裁判所のほうにその意向を伝えるというようなことがあるのかないのか、それをお尋ねしたい。
  99. 辻辰三郎

    ○辻説明員 私ども検察の立場におきましては、先ほど来申し上げておりますように、検察の適正な運営を期していくという理念から各種の係検事を設けておるわけでございまして、その一環としての公安労働係検事というものが設けられておるわけでございます。これはそういう観点からのものでございますので、裁判所に対して特別の公安的な事件を処理する裁判部があってほしいとか、そういうようなことについては私どもは全く白紙の立場でございます。したがいまして、そういうことについて裁判所に何らかの意思表示をしたというような事実も全くございません。
  100. 青柳盛雄

    ○青柳委員 裁判所側にお尋ねをいたしたいのでございますが、裁判所ではいまお聞きの検察庁の公安部というようなものに対応する体制として公安事件担当の専門部的なものを考えている、まあ正式な決定としてそういう組織はないにしても事実上それにかわるようなそういうものを考えているかどうかという点をお尋ねしたい。
  101. 牧圭次

    ○牧最高裁判所長官代理者 裁判所におきましては、ただいま法務省のほうから御説明がございましたような公安部というのに相当するようなものはございませんし、またそういうものをつくろうという考えも全然ございません。
  102. 青柳盛雄

    ○青柳委員 そこで、ないし、考えもない、こういうお話でございますが、いま私注意深く、その公安事件の専門部というものが制度的に確立されているかどうかということだけの質問でなしに、事実上それに類するようなそういう特別措置を講じているような事実はないのかどうかという点をお尋ねしたのですが、お確かめになったことがありますか、全国裁判所について。
  103. 牧圭次

    ○牧最高裁判所長官代理者 それに類するようなものもございません。
  104. 青柳盛雄

    ○青柳委員 それではお尋ねをいたしたいと思うのでございますが、私の得たある種の情報によりますと、鹿児島地方裁判所におきましては、昭和四十五年四月十八日付で「公安事件の勾留関係事務の事務分配について」という裁判官会議の議事録のようなものがあるようでございます。それは「昭和四十三年五月八日の常置委員会で決定した公安事件の勾留関係事務の事務分配の全部を次のとおりに改める。」「公安事件の勾留関係事務は「昭和四十五年度鹿児島地方裁判所事務分配、裁判官の代理順序及び開廷日割」の定めにかかわらず、判事松本敏男、判事島信幸、判事藤田耕三、到事寺井忠、判事露木靖郎、判事補松本光雄、判事補稲葉威雄、判事小島建彦の順序で担当する。但し公判担当その他で支障があるときは次順位の裁判官が担当する。」こういうような趣旨の決定が出されたようでございます。こういう事実について調べたことがございますか。
  105. 牧圭次

    ○牧最高裁判所長官代理者 そういう事実については私ども承知いたしておりませんが、大体事件の分配はそれぞれ裁判官会議が定めるわけでございまして、各年度の初めに裁判官会議におきまして事件の分配並びに部の構成その他について決議をいたしまして、それに従って機械的に通常は行なわれているのが普通でございます。裁判官会議の権限でございますので、事務分配についての変更ということがございますれば、それは年度途中にそういう必要が生じましたときには事務分配を裁判官会議で変更することは可能であろうかと存じますので、あるいは裁判官会議で、お話のありましたような事務分配の変更の議決があったのかとは存じますけれども、私どもその詳細について何も承知いたしておりません。
  106. 青柳盛雄

    ○青柳委員 知らないということですから問題になりませんけれども、もしあったとするならば、これはまさに公安事件に関する特別の措置をその裁判所が行なったということを意味すると思います。だから公安事件専門部というものができ上がったわけではないけれども、普通の事件の配点、代理順序というようなものとは別に、どういう原因によるのか、特定の裁判官が特にすぐれておる、その面ではベテランである、だから第一順位を与える、第二順位を与える、あまりすぐれていないようなのはあと回しにするということのようでございます。これはおそらく検察庁のほうで公安事件の勾留請求などをした場合に、最近問題になっております青法協加盟の裁判官などにそれが担当されることになれば却下されてしまうかもしれない。勾留却下で準抗告などということをやっておったのでは、これは治安維持上裁判所も任務を十分に果たさないことになる。検察庁の要望にもこたえられない、そういう配慮がこの中にあると考えることは常識だと思うのですね。だから、まさにこれは公安ということについて特別な配慮を払っていることを反映していると思うのです。これは許されるのかどうなのかという点、これについてお尋ねしたい。
  107. 牧圭次

    ○牧最高裁判所長官代理者 私ども詳細は存じておりませんので、あるいは推測というようなことになるのかと存じますけれども、先ほど青柳委員のほうからお示しになりました勾留を担当する裁判官の数から見ますと、ほとんど鹿児島地裁の裁判官が加わっておられるように考えます。そういたしますと、まあ従来少数の人員で勾留事件を分配いたしておりましたのが、事件が非常に多くなったというようなこと、あるいは個々の事件の複雑、困難さというようなこともございまして、全体でそれらを処理するということにされたのではなかろうかという想像はいたしますけれども、その実際の変更された理由を承知いたしておりませんので、まあ推測にとどまるかとは思いますが、そういうことではなかろうかと存じます。
  108. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私の質問にまともにお答えになっていらっしゃるように理解できないのですが、すべての裁判官でやれるのならば、別に代理順序などをきめる必要はないわけなんですね。だれでも順番が回ってきたらやってくださいということでいいわけなんで、それがわざわざ松本敏男という判事を筆頭にして序列ができている。野球でいうと打順がきまっているような形になっているわけですね。ですから、これは最後までいってまたもとへ戻るというような制度でもないと思うのですね。あるケースが来た。そのときに第一順位の松本裁判官が都合悪かったら次順位の島裁判官がやる。またその方が悪い場合にはその次の方がやるということで、まあ一斉に事件の数が七つも八つも来た場合はこれは全部が担当することになりましょうけれども、一つや二つ来た場合には、上のほうの一位、二位の方がやる。また次に来る、また一位、二位の方がやるというので、三位あるいは四位、後順位の方にはいく可能性がないというふうにも理解できるわけですね。この点についての検討が少しも払われないような御答弁では、何らふしぎはないじゃないか、公安事件というものを特別扱いをしているわけじゃないのだということにはなるまいと思うのです。これでいいのかどうかということです。
  109. 牧圭次

    ○牧最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたように、その経過、並びにどのような議決がなされたかについて、私ども承知いたしておりませんので、正確なところを申し上げかねておるわけでございますが、推測するところでは、先ほど申し上げたような事情によるものではなかろうかというふうに考えておるとだけしか、ちょっとお答えいたしかねるわけでございます。
  110. 青柳盛雄

    ○青柳委員 こういうことが国政調査の中で立法活動に関連して最高検察庁に質問が出たという事実がある以上、事の真偽は当然お調べになって、適当な機会に明らかにされることが望ましいと思います。どうも四十六年度においても同様の趣旨の事務分配の決定がなされているようです。しかもそれは代行所長あるいは常置委員の人たちだけが関知するような形で一方的にきめられている。いわゆる裁判官会議といって、全体の判事補も含めたような会議でもって討議されるというのではなくて、一部の方々によってそういうようなことが鹿児島地裁において行なわれているんではないかというふうに考えられます。  それから、これはたまたま有名な飯守所長のおられた鹿児島でのできごとであって、異例なことにとどまるのか、あるいはこれに類することが他の地裁あるいは——おもに地裁でございますね、地方裁判所において行なわれているかどうか。これは一ぺん、裁判所の公安部を設けないという立場をとっている以上は、当然調べてみる必要のあることだと思うのですね。これこそ司法行政上重要な事柄だと考えます。その点についてどうお考えか、最後にお尋ねしたいと思います。
  111. 牧圭次

    ○牧最高裁判所長官代理者 昭和四十六年度、本年度でございますが、本年度の事務分配によりますと、四人の裁判官がそれぞれ四分の一ずつの勾留事件の担当というふうに事務分配が定められているというように聞き及んでおりますので、先ほど青柳委員お話にありましたような内容とは若干異なるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございますが、青柳委員の御質問の趣旨等は十分承知いたしましたので、それらの点については後刻十分調査いたしてみたいとは考えております。
  112. 青柳盛雄

    ○青柳委員 次の質問に移ります。  これは最初法務省にお聞きして、また裁判所にもお聞きしたいと思うのでございますが、刑事確定記録に関する質問でございます。  刑事訴訟法の第五十三条第一項によりますと、「何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる。但し、訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるときは、この限りでない。」第四項に「訴訟記録の保管及びその閲覧の手数料については、別に法律でこれを定める。」ということになっております。ところが、訴訟記録の閲覧の手数料については別に法律ができておりますが、保管については別に法律ができていないようでございます。少なくとも私の現在知る限りにおいては。そこで実際はどうなっているかといいますと、戦前からの習慣でございまししょうか、そういうものを踏襲する形で検察庁がこの確定記録を保管する、そして閲覧の事務も検察庁が扱っておる、こういうようでございますが、この法的根拠はどこにあるのか、まず法務当局にお尋ねをしたいと思います。
  113. 辻辰三郎

    ○辻説明員 刑事の確定訴訟記録の保管につきましては、ただいま御指摘のとおり、刑事訴訟法では第五十三条の第四項におきまして、法律で別に定めることになっておるわけでございます。ところで、この法律は現在まだできておりません。なぜできてないかという問題になるわけでございますが、これは現行刑訴法になりまして、手続構造が旧法とはたいへん変わってきたわけでございます。確定記録の保管庁が裁判所であるか検察庁であるかという点につきましていろいろな意見、いろいろな説がございます。そういう点でまずこの説を調整をしなければならないという点が第一点でございます。  それから第二点は、この現行刑訴ができましてから各種の確定訴訟記録につきまして、どういう記録はどれくらいの保存期間を設けるべきかどうかというような各記録ごとの保存期間というものが法施行当時すぐにきめられるということは、きめられたかもしれませんが、やはり多少の運用の実績を見てからきめるのが相当であろうということで、この保存期間を少し運用実績を見てからやろうという配慮もあったわけでございまして、そういう事情で現在までこの点の法律が制定されていないわけでございます。  そこで、現在どうなっておるかということになりますと、確定記録は大部分は検察庁において保管をいたしておりますけれども、一部の高等裁判所あるいは最高裁判所もそれに当たるかと思うのでございますが、一部の裁判所におきましては判決原本というようなものは裁判所で御保管になっておるという実情もございます。しかしながら、大部分の確定訴訟記録は、現状におきましては検察庁が保管をいたしておるわけでございますので、私どもといたしましては、この法律ができ上がるまで保存事務の適正を期するという観点から、施行当時から最近まではずっと昔の通達によりましてまかなってまいったわけでございますが、本年に至りましてとりあえず暫定措置といたしまして、検察庁に保管しております訴訟記録につきましては新たな取り扱い要領を定めまして、法律ができますまでの適正な保存事務を行なっていこうということにいたしておるわけでございます。
  114. 青柳盛雄

    ○青柳委員 その暫定的な事務の内容について一々お尋ねするわけじゃございませんが、少なくともこの法五十三条の第一項の趣旨の何人も閲覧ができるということを十分に担保するような形で保管をしているのかどうかという点でございます。もちろん、ただし書きがあって、事務に支障のあるときは別だというのですが、そういうこととは別に、何かこの条文の趣旨を、またそしてこれが設けられた憲法との関連における人権擁護的な、また裁判の公正というようなものを担保するような意味の趣旨が没却されているのではなかろうかという具体的な事例にぶつかったものですからお尋ねをするのですが、閲覧について何か一定の制限を設けている、そういう事実はないですか。
  115. 辻辰三郎

    ○辻説明員 この刑事訴訟法の五十三条に規定してございます刑事確定訴訟記録の閲覧事務につきましては、法務省におきましてこの現行刑訴施行後間もなく、閲覧の場合の事務取り扱いの要領を定めまして、これを全国検察庁に通達いたしております。これはこの現行法ができましたときの閲覧事務を適正に行なっていくという趣旨から、この取り扱い要領を定めたわけでございます。
  116. 青柳盛雄

    ○青柳委員 だからその全部をお尋ねするのではなくて、閲覧についてその通達は事務の支障ということとはおよそ縁のない無関係の概念の制限を設けてはいないかという質問をしているわけです。
  117. 辻辰三郎

    ○辻説明員 そういう制限は設けておりません。
  118. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私がぶつかったのでは、確定記録というのは犯罪事件の確定記録でございまして、無罪になった事件でも確定すれば確定でございますけれども、有罪になった事件のほうが多いと思いますね。そういうので被告になった者、あるいはその他関係人の名誉にかかわるような内容を含まれていることは事実でございます。破廉恥犯罪というのが多いわけでございますから、それが閲覧されてしまったのではその人の名誉を害するということになる場合があり得るのでしょう、だから訴訟関係の名誉を害すると思われる場合にはこれは見せないでよろしい、それから事案の性質の無法性がはなはだしいとか、残忍性が極端だとか、さらには純風美俗に反するといったような、古いことばですけれども、そういうようなことを理由に閲覧を拒否するということができるような通達が出されているようでございますが、いかがですか。
  119. 辻辰三郎

    ○辻説明員 私ただいまお答えいたしましたように、現行刑訴施行後間もない昭和二十五年から、訴訟記録の閲覧事務についての取り扱い要領を定めて全国検察庁に流しておるわけでございます。その内容についてただいまお触れになりましたので御説明をさしていただきたいと思うのでございますが、この刑訴五十三条の二項にございますように、「一般の閲覧に適しないものとしてその閲覧が禁止された訴訟記録」という条項がございますが、どういうものを各検察庁の責任者が閲覧を禁止すべきであるかという五十三条二項の基準が、この取り扱い要領の中に定められておるわけでございます。その基準が、一つは犯行がきわめて巧妙である等の事由により模倣を生むおそれのある事件の記録、それから第二が犯行が残忍またはわいせつ等の事由によって公開が善良な風俗に反すると認められる事件、かようなものはこの五十三条の二項の閲覧に適しないものとして閲覧を禁止すべきものであろうという取り扱い要領を定めておるわけでございます。  それから、ただいま御指摘のように、閲覧事務全般といたしまして、かりに閲覧人が精神病者であるあるいは閲覧人が未成年者であるというようなことで、閲覧事務そのものが記録を廃棄されるおそれがあるとかということで、そういう観点から閲覧を認めないという措置も当然許されるべきことであろうと思うのでございます。  さらにまた、五十三条の「訟訴記録の公開」というものはもともと公開裁判の趣旨を徹底していくというところから出てきた規定であると思われるわけでございますので、公開裁判をもう一つオーバーすると申しますか、本来法廷で明らかになっておることを閲覧するわけでございますけれども、閲覧した結果をゆえなく流布して訴訟関係人の名誉を著しく害するおそれのあるようなものは本来の五十三条の裁判公開の原則をさらにオーバーしたような結果になるわけでございます。もともと閲覧というものは訴訟関係人の名誉を多かれ少なかれ害する結果を生ずる場合がきわめて多いと思うのでございますが、それをさらにゆえなく流布するというようなおそれがある場合には、本来の制度そのものからいって閲覧を制限してもしかるべきものであろうということで、そういう場合にも閲覧を許さないというような取り扱いを定めておるわけでございます。
  120. 青柳盛雄

    ○青柳委員 五十三条の二項の中途のところにある「一般の閲覧に適しないものとしてその閲覧が禁止された」というこの禁止する権限をだれが持っておるかというようなことについて、一応保管人であるところの検察庁が持っているんだ、こういうことでいまのようなお話が出てきたと思うのでありますが、これは一般的にいうならば明らかに裁判公開の原則にも反するし、また言論の自由、表現の自由に対しても制限を公的に行なう、要するに制度的に行なう、こういう結果になってくるわけでございます。公共の福祉に反するというようなことばからくるならば、全面的に閲覧を禁止してしまうということだって不可能ではない。特別に必要のあることを説明し、疎明した場合にのみ見せるという結果にならざるを得ないとも思うわけであります。現に私どもが経験したのでは、弁護士がある事件についての確定記録を見ようとしたところが、これを新聞記者などに知らせるんだったらもう見せてやらないというようなことを言って、一札を取るということが行なわれているわけですね。弁護士でさえもすでにそうなのであります。一般人はなおさらの話でございまして、これになると、今後この規定というものは有名無実にされていく可能性がないとはいえないわけです。だから法務省とすれば、こういう法律ができていないような状況、これについてもっと積極的に国民の総意によって法律ができるような措置をとる、すなわち法案をつくって国会に提出するというようなことを考え、しかも運用上、そういうことがかりそめにも行き過ぎにならないような保障もその法律の中にきめておくという考え方はないのかどうなのか、それをまずお尋ねしたいと思います。
  121. 辻辰三郎

    ○辻説明員 おことばでございますが、刑訴五十三条四項で、訴訟記録の保管については別に法律で定める、こうなっておるわけでございまして、この保管という中に閲覧まで含むかどうかという点は一つ問題点があろうかと思うのでございます。保管に関する法律が現在まで制定されていない事情につきましては先ほど申し上げたとおりでございます。  それはそれといたしまして、記録の閲覧事務を適正に行なうべしという観点からその点の適正な担保の措置を講ずべしという御意見に対しましては、私ども全く同感でございます。その点につきましてはすでに、先ほど来申し上げておりますように、現行刑訴施行間もなく訴訟記録の閲覧事務について要領を定めておるわけでございます。この要領そのものは閲覧の適正な運営ができるように定めたわけでございまして、この要領を守っている限り本来の法律の趣旨に沿った閲覧事務ができるものと私どもは考えておる次第でございます。
  122. 青柳盛雄

    ○青柳委員 まあ法務省とすればそういう考え方ですが、裁判所は自分が扱った事件の記録がこのように検察庁のほうで保管されており、しかも五十三条の運用が裁判所とは無関係に、どうも法律解釈からいっても、確定後保管者が一般公開しないということを決定すればそれで事は済んでしまうのだ。だから検察庁のほうで保管するということになれば検察庁が適当に禁止してしまう。そしてそれが今度は裁判所に権利侵害という形で提訴されてきたときに判断するという程度でいいのか。それともみずから進んで裁判所がこの保管の任に当たって、そして禁止すべきものかどうかということも裁判所が決定するというようなことにして、この五十三条の持っている憲法的な趣旨を生かすような考え方があるかないか。これを裁判所のほうにお尋ねをしたいと思うのです。
  123. 牧圭次

    ○牧最高裁判所長官代理者 五十三条四項のその別の法律がつくられておりません事情につきましては、先ほど法務省のほうから御説明があったとおりだと存じます。裁判所といたしましては、やはり法の提案権は法務省でございますので、法務省との間に十分意見の調整をして適切な法律ができるようにいたしたいというふうに考えているわけでございます。  閲覧の点につきましては、一応法律で定められておりますので、その法の適切な運用がそれぞれ保管者によってなさるべきであろうというふうに考えておるわけでございます。
  124. 青柳盛雄

    ○青柳委員 一般的に、法律提案権が法務省のほうにあるからというだけのことでなしに、何か法務省に働きかけて、これは裁判所のほうでも、人権にもかかわる問題であり、憲法の規定にもかかわる問題だからこうしょうではないかというような積極的な取り組みの意欲があるのかないのか、それをお尋ねしたいわけです。
  125. 牧圭次

    ○牧最高裁判所長官代理者 確かに保管についての問題が基本でございまして、保管についての立法がこれまでなされておらなかったということについては、いろいろ事情もあろうかと思いますけれども、やはり好ましくないことであることは事実であろうかと存じます。したがいまして、これらの点につきましては、法務省にも裁判所としての意見を十分述べ、適切な処理を定めるような法律ができますように法務省との間に努力してまいりたいというふうに考えております。
  126. 青柳盛雄

    ○青柳委員 時間がありませんからあと二、三点お尋ねをいたします。  実は裁判所でも法務省でもともどもですが、四十七年度予算要求をいたしました。時間の関係裁判所のほうにだけお尋ねいたしますけれども、一応ことしも二二%くらい額を上げて予算要求をしたようでございます。この中でやはり職員をふやす、これは裁判官を含めてですが、そういう予定のようでございます。そうだといたしますと、当然いままで欠員のために予算が余ってしまったというか、決算の上で返してしまうというようなことが行なわれたのでは、一方では予算要求で人員増加をはかりながら欠員のためにせっかくの予算が消化できなかったというようなことにならない保障、これはどう考えているのか。これは裁判官の場合についてもたとえば青法協の会員である司法修習生卒業生はとらないといったような方針のために充足できないということもあり得るでしょうし、また裁判所のあり方について疑問を持ってやめるという方もあるとか、民間からはなかなか入りたがらないとかいろいろなことがありましょうが、私はそういうことをいまこの時間の短いときにやろうとは思いませんので、速記官についてこの前横路委員からも質問がありましたけれども、重ねてお尋ねするのですが、速記官についてこれを充足する、また速記官の労働条件をよくするというようなことについて何らかの配慮があるのかないのか、非常に抽象的な質問ですけれども、まず裁判所にお尋ねしたいと思います。
  127. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 御承知のように、裁判所の速記官は非常に特殊な機械速記の形態をとっておりまして、それに伴いましてその養成の困難さ、あるいは現実の問題としてはその速記官が女性が非常に多いというようなことによります配置の困難さ等、いろいろとむずかしい問題があるわけでございます。現在これをフルに活用いたしまして裁判の公正な記録の作成ということに非常な成果をあげておるわけでございます。もっとも東京地方裁判所のように、非常に事件が多いところでございますと、手持ちの速記官だけでは足りないというようなことで、外部に速記を依頼するというようなこともあるわけでございますが、そういった速記官の精一ぱい働いております状況というものを踏まえまして、速記のやり方ということについて、これ以上速記官の負担を軽減して適正な速記官の執務体制というものがとれないかどうかというようなことにつきましては、実はかねてより心を砕いておるわけでございます。これはすでにこれまでも予算の要求をいたしておりますし、また今後も続けていくことに相なるかと思いますけれども、たとえば速記にございます反訳に非常に時間がかかるというような問題、これは現在のところ一時間の速記に大体十倍くらい反訳がかかるというような状況にあるわけでございますが、そういったものをコンピューター等を利用いたしまして軽減することができないかどうかといったようなことも検討いたしておるわけでございます。私どもそういう方向にも予算の措置としては力を入れておるわけでございます。ただ現在のところは御承知の機械速記でこれを手で反訳する、あるいはマツダタイプという特殊のタイプを使いまして反訳するというような作業をいたしておるわけでございますが、外部速記を使っておるというようなこと等の関連もございまして、フルに活用いたしておりますので、この人たちの仕事をする上からくる御承知のいわゆる職業病といったようなものもあるわけでございまして、こういったものが発生いたしました際には、それがいわゆる公務に基因するものであるかどうかというような補償の観点からもできるだけのことはいたしておるわけでございます。  それからまた速記官の待遇そのものでございますが、これは御承知のように一般の職員に比べましてその技術の特殊性といったようなことから特段の有利な扱いをいたしてきておるわけでございますが、そういった扱いにつきましてはもちろん今後も最大限の努力をいたしていきたい、このように考えて鋭意努力しておるわけでございます。
  128. 青柳盛雄

    ○青柳委員 いろいろと知恵を働かす、研究をされる、けっこうだと思いますが、私の質問の重点は、いつも予算はもらうけれども、そして相当請求をしても削られることは例年のことでございますけれども、削られながらもなおかつ消化できない。その根源が、定員をもらいながら充足できないというところにあるわけです。これはそれぞれ原因があるわけでしょうが、速記官の場合はその労働条件をよくするのには、少なくとも人員の不足ということが最大の原因でもあるわけですから、要求しただけの、そうして予算が通っただけのものは充足させるという、そういう努力があるのかないのかという点なんです。ですから、どうも希望者が少ないというような話がありますが、それでは衆議院や参議院の速記官の方々に希望者がそんなに少ないかというとそうではない。だから裁判所の速記官だけ希望者がないというのは、何かまたほかにも原因があるのではないかというようなことも研究してみるとか、ただ一般的にもう速記官はいくら募集したって来ないとか、養成しようと思っても希望者がいないというようなことで、どうも適格者がいないというようなことは理由にならない。それが一つ。  それから等級がストップしておるというか、一定数に満たない。四等級の発令というのは非常に少ないというのが実績のようでございます。  ですから、こういうような待遇の問題とか人員を補充するとかいう問題についてどう考えておるか。機械化の問題、翻訳をどういうふうにやるか、もちろんそれも合理化の世の中ですから、大いに研究しなければならぬ。しかし、いま私申し上げたような点について、今度また予算を請求するにあたってどういう気がまえでいるのか、それだけお尋ねしたいと思います。
  129. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 速記官の充員の問題でございますが、御承知のように、先ほども申しましたように機械速記という特殊の方法をとっておりまして、いわゆるハンドライティングの形をとっておりませんので、実はその供給源と申しますか、そういったものが非常に限られてくるわけでございます。現在のところいろいろやってはみましたけれども、やはり部内の職員から採用するのが一番いいのではないかということで、今日は部内の職員の中から希望者を募りまして、これに種々の適性試験をいたしまして、それに合格した者を養成所に入れて養成しておるという形をとっておるわけであります。私どもといたしましては、できるだけこれを養成して充足していきたいという立場でございますけれども、養成の過程におきましては、やはりある程度、実際にやらしてみますと、適性検査等では発見できなかったような欠陥と申しますか、そういったものも出てまいりまして、かなり脱落者を出すといったようなこともございますので、なかなか十分に所要の人員を満たしていくということができがたいような状況にあるのが現在でございます。しかし、充足の必要性というものは、先ほども申し上げましたように十分ございますので、今後ともこの点についてはできるだけ多くの適性者を得てこれを多く一線に供給したいということで考えておるわけでございます。  それからまた、待遇等の問題でございますけれども、これはその当初の下のほうの等級の者は別でございますけれども、上のほうになってまいりますれば、お話しの四等級というようなことになりますれば、当然相当高い待遇でもございますので、あらゆる観点から見まして適任者であればそれを四等級にするということはいささかもちゅうちょするところがない、そういう状況で運用いたしておるわけでございます。
  130. 青柳盛雄

    ○青柳委員 同時に、頸腕症候群といったような特殊な病気について公務災害申請というのが相当出ておると思うのですが、こういうものの扱いもなるべくすみやかに、しかも適用をするという方向で扱うことは考えているかどうか、これだけお尋ねしたいと思います。   〔石井(桂)委員長代理退席、沖本委員長代理着席〕
  131. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 もちろん、それが公務に基因するということの認定を得ますれば、できるだけ手厚い、現行法の規定どおりの保護をいたしていきたいという精神に変わりはないわけでございます。
  132. 青柳盛雄

    ○青柳委員 これで裁判所のほうに対する御質問はおしまいにいたします。  そして、法務省に二点だけお尋ねいたしますが、一つは関西電力の人権じゅうりん事件、前の委員会で私が質問をいたしました関西電力の職員がいわゆる思想的な調査あるいはそれによって差別待遇をやっておるという具体的な問題を人権擁護委員会に提起しておりますが、その後の状況はどうなっておるか、お尋ねをいたしたいと思います。
  133. 影山勇

    ○影山説明員 お尋ねの件でございますが、これは今年の四月末日に神戸地方法務局に申告がございまして、その後神戸地方法務局といたしましては大阪法務局とも連絡いたしまして、鋭意調査を続行しておるわけでございます。  現在までの調査の経過を申しますと、六月の二日及び七月二日に申告者側の四名、それから六月十八日及び七月二十二日に相手方四名の方々からそれぞれ事情を聴取いたしました。その後七月の末に至りまして二十九日に一回、八月に入りまして八月二日、十日、十二日、十八日というようにひんぱんに五回にわたりまして申告者の同僚の方六名につきまして事情を聴取してきたという報告を受けておりますが、その内容につきましては、所管の神戸地方法務局が検討しておる模様でございまして、私どものほうに一々のこまかいことの報告は受けておらない状況でございます。  なお、調査方法は、今月中に引き続き会社側関係者数名から事情を聴取するという予定である旨の報告を受けているのが現在の状況でございます。
  134. 青柳盛雄

    ○青柳委員 その状況をなお別な機会に逐次お尋ねいたしたいと思いますが、私の聞いたところでは、いわゆる人権侵害者とされて提訴された関係者あるいは会社側のほうでは、問題になった文書に書かれたことは必ずしも事実に合致しておらぬ、たとえば人権を侵害されたという人のロッカーをあけて私物を盗み出した、あるいは盗み読みしたというようなことは、あれは事実としてはなかったんだ、しかし報告書には、自分の手柄とするためにオーバーに書いたのだというようなことで事実に反することなのだから、別に人権じゅうりんはないんだというようなことを弁明して、問題を糊塗しようというような動きがあるということを聞いたわけです。また人権擁護委員方々のほうでも、そういう答弁も何か一理あるのじゃないか。やはり自分の会社に対する成績をあげようと思ってオーバーなことを書いて報告する、しかし実際はやっておらぬというようなこともあるのじゃなかろうかというふうに見て、この問題を軽く扱うようなことがあってはいかぬと思うのです。大体そういうような報告があった場合に、明らかにこの犯罪的な行為があった、単に動静を調査したというようなことではなくて、人の私物に手をつけるというようなこと、これは場合によっては窃盗罪になる、その他軽犯罪になることも明白でありますが、いろいろの法律にも反するし、不道徳でもあるわけで、そういうことが報告書にあったら、会社とすればここまでやってはいかぬのだという注意をすることがなければならない。それが全然問題にされていなかった。これがたまたま人権擁護委員会に持ち出されたら、そのときになって加害者と一緒になって、これは実際のことじゃないから問題じゃないのだというようなことで、弁護の立場に立つというようなことがあって、また人権擁護委員会がそれに動かされるということがあったのでは、この問題の持っておる本質的なものを徹底的に究明するということには縁がなくなると思うのです。その点も今後法務省としては十分留意していただきたい、かように考えるわけです。
  135. 影山勇

    ○影山説明員 人権侵犯事件につきましては、この事件に限りませず、双方の主張を十分聞きまして私ども調査能力の及び限り公正な結論を得るよう、これは所管でございます現地の地方法務局が当然そういう考えで事に当たっておると考えております。
  136. 青柳盛雄

    ○青柳委員 最後に川島民事局長さん、たいへんお待たせをいたしましたけれども、予定でございますから簡単に御質問申し上げます。  それは、八月十三日付でしたかの読売新聞によりますと、法務局登記所統廃合の計画が進められている。九月早々に民事行政審議会という法務大臣の諮問機関に登記所整理部会(仮称)を新設して、登記所の適正配置基準というものを諮問する、こういうふうにしてその答申を得た上では、法務省の考えで登記所の数を現在千七百六十八あるのだけれども、これを七割くらいに縮小しよう、統廃合しよう、したがって職員の数も整理される形になると思いますけれども、そういう計画が進められているというのでございますけれども、この内容新聞に発表されているとおりでございますか。
  137. 川島一郎

    ○川島説明員 お答えいたします。  ただいま登記所の数が千七百幾つというふうに仰せられましたけれども、この中には法務局、地方法務局の法務局支局、それから出張所、こういったものが含まれております。現在問題になっておりますのはそのうちの法務局の出張所でございます。法務局の出張所、これは御承知のとおり相当多数配置されておりまして、現在千五百近くのものが全国に置かれております。  ところで、この出張所を配置いたしましたのは明治時代、当時は区裁判所の出張所ということで置かれたわけでございますが、それが法務局出張所となりまして、全体としてはほとんど明治時代に配置されたままの形で現在に至っている、こういう状況でございます。もちろんその間に増減はございますけれども、大きな骨組みといたしましては明治時代の配置の状況がそのまま現在に及んでおる、こういう状態でございます。  ところが、明治時代に配置いたしましたときには、その当時の社会経済事情、交通事情その他を考慮してきめたわけでございますが、御承知のようにその後社会経済情勢というものは大きく変化しておりますし、人口も大きくふえましたけれども、都市化現象というものが非常に顕著にあらわれておりますし、交通事情も非常に変わってきております。こういった最近の社会の事情からもう一度出張所の配置を再検討してみる必要があるのではないか、こういうことはかねてから考えられておったところでございます。  それからまた、法務局の出張所が千五百近くあると申し上げましたが、この中には非常に規模の小さい、職員の数にいたしますと一人とか二人あるいは三人、これくらいの小規模な出張所というものが全体の出張所のうちの八割ぐらいを占めている、こういった状況でございまして、これが事務能率の面あるいは庁舎の管理の面、その他いろいろな面で非常に大きな支障を来たしているというのが実情でございます。   〔沖本委員長代理退席、委員長着席〕  そういう事情もございまして、出張所の配置につきましては何とかしなければならぬというふうに考えておったわけでございますが、御承知のように昨年の十二月に閣議決定がございまして、行政整理の一環として法務局の出張所も極力整理統合する、こういう方針がきまったわけでございます。そこで私どもといたしましても、その閣議決定の方針にも沿うような措置をとりたいと考えておりまして、先ほど御質問にもございましたような民事行政審議会、これは法務大臣の諮問機関でございますが、これに登記所の適正な配置の基準を諮問いたしまして、その答申を得た上で具体的な整理計画というものを策定して、そしてこれを実現に移していきたい、このように考えておるわけでございます。  なお、ただいま御質問にございました登記所の数が減れば職員の数も減るのではないかという点でございますが、この点は実は私どもはそういうふうに考えておりません。現在登記所は事件を非常に多くかかえておりまして、その増加の傾向というものはまだ続いております。むしろ反対に登記所の職員は現在手不足の状態にありますので、さらにふやしていかなければならない、このように考えておるわけでございます。  それから、整理の方針として七割くらいというふうにおっしゃったように伺ったわけでございますが、これは民事行政審議会に諮問いたしまして、どの程度の整理が行なわれるかということを答申していただいた上で決定するわけでございますので、現在のところどの程度というようなことはさまっておりません。七割というのは私どもいままで新聞にもそのようには出ていなかったんではないかと考えております。  以上のような次第でございます。
  138. 青柳盛雄

    ○青柳委員 問題は合理化でございますから、何ら消極的な否定的な面はなくて、すべて積極的ないいことばかりだというふうにもとれるわけでございますけれども、これは複雑なもので、いま職員を減らさないということでございましたから必ずしも失業をするわけではございませんが、しかし、これも統廃合されますと、いままでつとめておったところからだいぶ離れたところに配置がえになるというようなことで、職員の場合でも必ずしも賛成するとばかり限らないと思うのです。それはそれといたしまして、地元でございますね、これを利用する人たちの反対というのが当然起こってくると思うのです。これは利用する人の数というものは財産を持っている人に限られるわけで、無一物の人、不動産登記などに関係のない人たち、商業登記などに関係のない人たちは登記所がどうあろうとあまり関係ございませんけれども、それにしても相当地元の有力者の人たちは反対をする。それからこれで生計を立てている司法書士の方々も、自分の営業がどうなるかということで心配をすると思うのです。こういう地元及び関係者の方々の意向は参酌した上でやるのかやらないのか。これは一般論でございますけれども、お尋ねしたいと思います。
  139. 川島一郎

    ○川島説明員 もとより登記所の整理統合を行ないます場合には、地元との関係が非常に大きな問題になるわけでございます。ことに登記所を整理してほかへ移されるということになりますと非常に不便になる、こういう問題はございますので、地域住民の利便にどういう関係があるかということは十分検討しなければならないと思いますし、また地元の方にも十分事前に御連絡して、そうして趣旨を説明して納得していただいた上でこの整理統合を行なっていきたい、このように考えております。
  140. 青柳盛雄

    ○青柳委員 その態度はぜひ貫かれなければ民主主義的でないというふうに私も考えますので、ぜひそうしていただきたいと思うのですが、それのテストケースのような形で昨年からことしにかけて具体的な問題になっているのは、テストケースという意味は統廃合そのものではございませんけれども、広島法務局の海田出張所の庁舎を広島市内に移転をするという事実上の統廃合に類するやり方が行なわれる。これはいまあるところから九キロも離れたところに行ってしまう。だからいままでのところへ来るのにすでに十キロも離れている人になると、倍の二十キロも離れたところに行ってしまうことになるので絶対にこれは反対だというので、関係八町村長が陳情を議会の採択に基づいて法務省にも持ってきていると思うので、よく御存じだと思うのです。ところが、いま言われたような方針のテストケースといいますか、それとはケースは違うのだとおっしゃるかもしれません。海田出張所という名称は残すのだからという。しかし、これは形式論でございまして、実際上は広島法務局に統合されたと同じような結果になってしまう。こういう点について陳情もあるのですが、再考慮しているというような面はあるのでしょうか、ないのでしょうか。
  141. 川島一郎

    ○川島説明員 お尋ねになりました広島法務局海田出張所の件でございますが、これは少しいきさつがございまして、ただいま最初にお尋ねいただきました出張所の整理統合、これから行なおうとする分でございますが、それとはやや違う面からこの問題が始まったわけでございます。もちろん出張所の整理統合という、まあ出張所の移転でございますが、実質は整理統合であろうとおっしゃる。そのとおりだろうと思いますが、整理統合の面はございますけれども、これからやろうとしている、それよりも先に問題が起こってきた特殊な問題でございます。  これは簡単に御説明申し上げますと、数年前に広島市に広島第二行政合同庁舎というものを建設いたしまして、そこに近くの行政機関を収容する、こういう話がございました。このときに広島法務局の海田出張所もそこへ入れたらどうかということが問題になりまして、入れるかどうかにつきましては、ちょうどほかの出張所を整理統合すると同じように地元の意向も十分伺って、その上で事を処するのが適当であったわけでありますが、庁舎の建築というのは予算の要求からでき上がるまで非常に長い年数がかかるわけでございます。その間いろいろいきさつがございまして、現在のところ先ほど御質問にありましたような反対の陳情も出ておるわけでございますが、目下そういった点につきまして、私どものほうでも地元と折衝を重ね検討を続けているところでございまして、まだ最終的にどうなるかはさまっておりません。
  142. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私はここで別に陳情を取り次いでいるわけではありませんが、問題は先ほども言われたように、地元の意向というものを無視して一方的にこういう整理統合をおやりになると、摩擦があって非常に民意と離れてしまう。この海田の出張所の庁舎移転の問題なども、その非常にいい例ではないかというふうに私考えるのですよ。ですから今後、最初に質問したことの実施にあたっての参考にもしなければなるまい。そして海田の場合何よりも地元が反対をしている。あらかじめ了解を得なかったからというので、ただつむじを曲げているという意味ではなくて、具体的に大ぜいの人たちが困るのだということを言っているわけですから。これは建物だけの問題でしたら、海田のほうに大きな建物を建てればよろしいのです、予算だけの問題ですから。それをあまり安直なことを考えて、合同庁舎ができるからそっちのほうへやればスぺースも広がるからいい。しかし、場所が問題でございますからね。こういう点をひとつよほど慎重にやってもらいたい。  これだけ申し上げまして、私の質問を終わります。どうも長いことありがとうございました。
  143. 松澤雄藏

    松澤委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後二時三十四分散会