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1971-09-20 第66回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年九月二十日(月曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君   理事 小宮山重四郎君 理事 武藤 嘉文君    理事 中村 重光君       江藤 隆美君    遠藤 三郎君       大久保武雄君    佐々木秀世君       田中 榮一君    坪川 信三君       長谷川 峻君    八田 貞義君       松永  光君    山崎平八郎君       石川 次夫君    中谷 鉄也君       横山 利秋君    相沢 武彦君       近江巳記夫君    松尾 信人君       川端 文夫君    米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君  委員外出席者         通商産業政務次         官      稻村佐近四郎君         通商産業省貿易         振興局長    外山  弘君         通商産業省鉱山         石炭局長    莊   清君         中小企業庁長官 高橋 淑郎君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 九月二十日  辞任         補欠選任   海部 俊樹君     江藤 隆美君   坂本三十次君     長谷川 峻君   塩崎  潤君     山崎平八郎君   増岡 博之君     坪川 信三君   山田 久就君     佐々木秀世君 同日  辞任         補欠選任   江藤 隆美君     海部 俊樹君   佐々木秀世君     山田 久就君   坪川 信三君     増岡 博之君   長谷川 峻君     坂本三十次君   山崎平八郎君     塩崎  潤君     ————————————— 七月二十四日  一、兵器の輸出禁止に関する法律案伊藤惣   助丸君外一名提出、第六十三回国会衆法第二   九号)  二、寡占事業者の供給する寡占商品価格等の   規制に関する法律案辻原弘市君外十名提   出、第六十五回国会衆法第一七号)  三、通商産業基本施策に関する件  四、経済総合計画に関する件  五、公益事業に関する件  六、鉱工業に関する件  七、商業に関する件  八、通商に関する件  九、中小企業に関する件  一〇、特許に関する件  一一、私的独占禁止及び公正取引に関する件  一二、鉱業と一般公益との調整等に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商中小企業経済総合計画に関する件(最  近の国際経済情勢に伴う通商及び産業経済政策  等)  国際経済情勢の激変に対処するための中小企業  緊急対策に関する件      ————◇—————
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 ただいまより会議を開きます。  通商に関する件、中小企業に関する件及び経済総合計画に関する件について調査を進めます。  最近の国際経済情勢に伴う通商及び産業経済政策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 大臣長官、御苦労さまでした。長い間御旅行で非常な激務だと思います。しかし、あなた方を待っておりました国民気持ちからすれば、たいへん不安におびえておりまして、お帰りになりました各大臣が一体どういうお気持ちか、率直に国民としては承りたいところであります。  時間が三十分しかございませんので、私の意見を若干交えながら簡潔にお伺いするつもりでありますが、お帰りになってまず大蔵大臣が、国民皆さまに訴えるという、いわゆる悲壮といわれる声明を発表なさいました。この大蔵大臣声明につきましては、もちろん御両所とも同意見考えてよろしゅうございますか。
  4. 田中榮一

    田中国務大臣 大蔵大臣声明には、事前に連絡はしておりません。おりませんが、課徴金制度もなかなか目的が達成しないと廃止をしないようである。なお円平価切り上げ等に対して強い要請はありますが、多国間交渉でなければならない。また、そうでなければ保証がないわけでございます。また、IMFの十カ国蔵相会議でこれをきめるとすれば、当然平価調整前提として、一部ドル切り下げ金価格変更というものが議論せられておるわけでございます。アメリカはこれに対してはかたい姿勢をとっておりますので、それらの情勢から考えてみても、時間的にも相当長期が見込まれる。ですから、変動相場制の中で輸出を確保していくような状態国民理解を求めなければならないという基本的な考え方、大体われわれが考えておるのとも同じ、こういうことでございます。
  5. 横山利秋

    横山委員 要するに国民がこの声明で受けました印象は、長引くががまんをしてくれ、そして、その中には円の切り上げがときとしてはあるであろうという印象を与えておるわけであります。おそらく国民全体としてそういうふうに受け取りまして、ますます不安を感じておる。特にその談話の中で、「見かけの不安におびえた軽率な言動や、浮き足だった無思慮な態度ではなく、」ということばがありますが、見かけの不安におびえるなといったって、現に不安が見かけでなく現在あるのだから、少し言い過ぎではないかという考え方がいたしますし、もう一つ一番大事なことは、ここには産業政策ということに触れていないのであります。これはもちろん大蔵大臣でありますから、あなたの所管でありますから触れられないのは当然でありますが、産業界としては、これからは一体どうなるんだ、円の切り上げが相当長引くということはさておくとして、またドル切り下げ、二つの決着がつくのが相当おくれるとして、それまで一体どうなるのだということと、そのときにはどうなるのだという点についての何らの解明が、もちろん大蔵大臣ですからございません。  そこで、まず最初に伺いたいと思いますのは、通産大臣としてこれから通商産業政策をどういう基本的態度でおやりになるつもりであるかということであります。  その前提として私がお伺いをいたしたいと思いますのは、この蔵相声明の中には、自分たちのとってきた態度について何らの反省がない。端的にいいますと、アメリカが悪いことはもちろん言うまでもありません。私もそう思う。けれども高度経済成長政策そのものについて何らの反省がないのではないか。これからどういうふうに政策を実行するにいたしましても、いままで何か大きいことはいいことだ、設備投資はいいことだ、給料も低いことはいいことだ、そして輸出することはいいことだ、製造工業中心にすることはいいことだ、働くことはいいことだ、遊ぶことは悪いことだ、たとえて卑近な例で申しますと、こういう感覚が産業政策中心になってきたと私は思うのです。これは感覚的に言っておるのでありますから、一々ことばやりとりしようと思いませんが、大体そういう産業政策でございました。これから、この変革期にあって産業政策はどういうふうに展開すべきものなのか、非常に原則的な御質問で恐縮でございますが、率直にこれからの産業政策あり方について大臣の腹蔵ない意見を伺いたいと思う。
  6. 田中榮一

    田中国務大臣 御指摘の問題に対して一括して短い間にお答えをすることは非常にむずかしいことでございますが、あなたがいま御指摘になられたように、新しい事態に対処して長期的視野に立ってもう一ぺん考えなければいけない、また考えて新しい政策をスタートさせていかなければならない時期であるということはそのとおりだと思います。私はいままでの産業政策が間違っておったとは考えておりません。間違っておったとは考えておりませんし、まあようやく戦後二十六年、国際的な経済体制確立をされたということはいえると思います。しかしアメリカで、日本だけではもちろんありませんが、日本を含めたいろいろの国々からの輸出拡大というものが、アメリカ貿易収支逆調に導いておる、そのために調整を必要とする、御協力が願わしい、こういうことを言われておるのでございますから、やはりオーダリーマーケットの確立をはかったり、また両国、日米間だけではなく、世界自由貿易の中において日本が望ましい姿で永続的なおつき合いができるような日本産業体制というものをつくっていくように努力をしなければならないということは事実だと思います。隣の日加経済閣僚会議に参りましたら、アメリカを対象にして送ってきた品物アメリカに揚げられないということで、今度はカナダに洪水のように陸揚げされるんじゃないか。だから、日米経済閣僚会議主題はダイバージョンの問題だというふうに言われておるのでございますから、そんなことはありません、そういうことを御懸念になる必要はないと思いますと口で言うだけではだめなんで、やはりカナダ側日本を了解するような体制でなければならないと思います。  なお、ヨーロッパにおいても、これは私は直接当たったわけではありませんが、アメリカ課徴金制度をとったのも、またこれから課徴金を相当永続的に継続していくということも、あたかも日本円平価切り上げをやらないからだといって、日本に対して集中攻撃が浴びせられておるような状態でありますから、そういうことのないように——それは誤解もたくさんあります。日米間でもいろいろなやりとりをしましたが、言ってみればああそうかというところも多々あるのでございますから、誤解に基づくものもありますけれども、また、政治的に日本を攻撃することによってみずからの利益を守ろうというたくましい発言も存在するだろうと思います。いずれにしても、焦点に浮き彫りにされておる日本というものから望ましいよきパートナーとしての、ある意味においては、経済的には世界の平和のために、また望ましい貿易体制をつくっていくために指導的役割りをさえなさなければならないという日本の新しい立場、その自覚に立って産業政策経済政策というものも考えてまいるということは当然必要だと思います。  最終的に申し上げたいのは、日本経済力がうんと大きくなり過ぎてというのではなく、それは一面においてはあなたがいま言外に意を含めて、遊ぶことは悪いことだ、働くことがいいことだと言われましたが、私は日本産業は必ずしもそんなになっているとは思いません。思いませんが、指摘をする面一つだけを申し上げますと、道路の幅もアメリカに比べれば三分の一である。それから国民一人一人の持つ空地面積考えてみても、公園面積考えてみても、夫婦子三人の標準世帯の住宅の保有面積考えてみても、社会資本が不足をしておることだけは事実でございます。働くことを主題にして社会資本というものの投資の立ちおくれがあったということであるならば、その面をここ一年でも二年でも重点的にやらなければいけない。それで長期的に見て、日本経済が安定するように、コストダウンができるようにということは当然考えていかなければならない。そういう意味日本産業政策日本経済政策日本輸出政策というものを洗い直してみて、そして凹凸があるならばそれを積極的に平準化していくように努力を積み重ねるときであるということは事実だと思うわけでありまして、すなおに事実を見て信頼される日本経済体制をつくるべく努力をいたしたい、こう考えます。
  7. 横山利秋

    横山委員 いままでやっておったことが間違っておるとは思わない、しかし、これからもう一ぺん諸般政策を洗い直す、こういうお話でございます。  経済企画庁長官にお伺いしたいのでありますが、大体大臣国会へいらっしゃると、いままでやったことはいいけれどもこれからは考え直すと言うのが普通で、御責任をおとりにならないようでありますが、長官は先般中政連の会合へ行かれまして、政府やり方も悪かった、日本としても行儀よく経済成長を伸ばすべきであったという反省をしていらっしゃる。まことに率直な反省だと思うのです。いま通産大臣の言われるような洗い直しのあり方でございますね。諸般経済計画道路五カ年計画なりあるいは新全総なり、いろいろな計画政府の中には山ほどございます。これらの計画につきまして、実際問題、いまもう実情に合わないではないかという感じがいたしますが、これらの諸般計画の洗い直しをどういうふうにお考えになりますか。
  8. 木村俊夫

    木村国務大臣 率直に申しまして、いままで国民エネルギーを集中してきた一つ目標がこの時期に達成したと思います。そこで、一つ目標が達成したそのときから新しい目標国民の前に出ております。したがって、私どもはいままでの政府政策すべてを検討し直すというわけではございませんけれども、その中で新しい時代に即応しないものはこれを捨てる。したがって新しい目標に適応するような新しい政策を立てること、これは政府として当然の責任だと思います。したがいまして、いままでの経済成長、これは確かに国民エネルギーを結集した結果きわめて急激な成長を遂げましたが、またその対価を支払うべき時期にもきておると思います。そういう意味におきまして、そういう再検討の時期に立って新しい次の目標に向かって政府も新しい政策をこれから確立しなければならぬ、これは当然のことだと思います。  また、いまお触れになりましたような新経済社会発展計画あるいは新全総、こういうものについての一つ見直しをやらなければならぬと思います。中でも新経済社会発展計画は昨年九月にこれを閣議決定いたしましたが、明後年の見直しの時期にも差しかかっておりますし、また新しい経済情勢が次から次へ生まれておりますので、その新事態に即応するような修正作業準備をいまや始めようとしております。しかしながらその内容につきましては、いま申し上げましたような新しい時代に適応するような考え方はすでに現在あります新経済社会発展計画の中にも基本方向としては織り込まれておりますので、それをまた新しい見直しによって追加するということは必要であろうと思います。したがいまして、私どもにおきましては、来月早々にもこの準備作業に取りかかろうとしております。経済審議会ももう一度開いていただこうと思っておりますし、またその面におきまして経済社会発展計画そのものの本体には触れなくとも、それに対する見直しないし追加的な、補完的な作業には直ちに着手したい、こう考えております。  ただ、いまお触れになりました新全総、これは国土開発についての全体計画でございますから、新しい、たとえばニクソンの新経済政策によって直ちにこれを改定するような性質のものではございません。しかしながら、もう来年に迫っております沖繩の返還、復帰と同時にこの新全総についても新しい一つのブロックとして沖繩を見直す、沖繩を包含するということについての改定は必要であろう、こう考えております。
  9. 横山利秋

    横山委員 通産大臣に伺いますが、当面いたします変動為替相場であります。変動為替相場に移ってから今日までのわずかな期間ではありますが、事態がきわめて深刻でありましてほとんどの取引はだめである。先物取引はもう大幅にダウンをして、十一月ころにでもなろうものなら輸出認証はがた減りになるだろうといわれている。まあ先物取引にも日銀介入をするということに一応なっておるのだけれども日銀がそういうふうにどんどん介入をするとするならば、まさに日銀が、ちょうどアメリカベトナム戦争のどろ沼介入したと同じようなことになるのではないか。これは一昨日でありますか、社説にも出ております。私もそう思うのであります。いまの変動為替相場ほんとうに自由な変動為替相場であるかというと、それもまたそうでもありません。規制をされたような、まあある意味の変形的な固定相場ではなかろうか。そしてそれはいつ切り上げ切り下げがあるかもしれないという底冷えしたものありますから、各商社筋はやむを得ず独自レートをとったりしばらく時期を待ったりということで、かえっていまの変動為替相場あり方ではだめではないか。さりとて私は、政府のいわれるように日本が単独で円の切り上げなり何なりをすることを賛成するものではありませんが、少なくともいまの変動為替相場というものが政府考えておった事態と非常に違っているのではないか、それをどういうふうに反省をされておるか、貿易がこれでとんざしてしまっているではないか、その点についてどうお考えでございますか。
  10. 田中榮一

    田中国務大臣 円の平価を変えないで、流動する国際情勢の中で一時的にも対応をしてまいるということになると、変動為替相場に移行する以外には方法はないわけでございます。非常に長い間固定為替相場の中で生きてまいった日本経済というものは、変動為替相場制の中で活動するになじんでおらない、なかなか即応できないということは理解できます。理解できますけれども、それにかわる方法はなかなかないわけでございます。ここで、一部には円平価切り上げをやってしまったほうがやりやすい。それはもう平価がきまればやりやすくなるにきまっておりますが、しかし円平価変更というものは、いまの変動為替相場の中で五%、六%というような上下変動幅ということだけで済むのかどうか、課徴金の分は一体どうなるのか、なお他の国々からの平価の圧力、それが一体いまきめられるような幅の中に包含をされておるかどうかと考えれば、結論的には水田大蔵大臣が帰朝後声明を発しましたように、長期的多国間、特にIMFの十カ国等で慎重に審議をして決定をする以外に道はない。きめるには慎重にやるが、きめると相当期間長期的安定をした各国平価というものをきめる以外にないのであって、しばらくの間いまの変動相場制の中で国民皆さまから御理解と御協力を得たい、こう述べておるのでございますから、いまの状態でいうと、変動相場制という中で仕事をしたことがないので、輸出契約等に対して見込みをつけて営業を進めていくということがなかなか困難であるという事実も確かに理解できます。といって、それにかわる円平価腰だめ切り上げが可能かどうか。それは可能ではない、こういうのでございますから、そうするとあとに残るものは日銀が一体関与しておるのかしてないのかということ、それだけではございませんが、しかし日銀総裁大蔵大臣変動為替相場制の中であまりブレが大きくならないように適正な状態を確保するために介入をいたします、こう言っておるのでございますから、適宜介入をしておる、こう理解をすべきでありましょう。そうすると、適宜介入をしておるという面を一体どういうふうに技術的に合わせるのかという問題だけが残るわけでございます。  いずれにしましても、この問題は日本だけの立場考えられない問題でございますし、実際経済活動しておる方々は直接困難な場合に逢着しておるわけでございます。水田大蔵大臣声明基本とし、国際情勢の推移に合わせながら、特に変動相場制の中でも営業活動は活発にやっていくにはどうすればいいのかということを考えて処理していく以外には、いまのところ方法考えられないわけでございます。
  11. 横山利秋

    横山委員 なれてないからなれるまではたいへんだが、なれてもらえばというお話のようでありますが、なれられる仕組み体制を持っているのは大企業であり、大きな商社だけなんで、中小企業はなれろといったってなれられないのです。そういう仕組みでもないのです。ですから、この問題についてはよほどお考えを変えていただかないと、この間のドル買いと同じようなものでありまして、一体だれが得をしだれが損をするか、公正な、公平なやり方ならともかくとして、結果というものをよくお考えにならないと、私はだめだと思うのです。  それからその次の質問は、アメリカでずいぶん隔意のない論争をなさったそうであります。蔵相声明を見ましても、われわれが直面している国際経済不安が米国の国際収支が著しく悪化していることにある。端的に割り切って、アメリカ経済が悪いからこうなったんだ、こういうふうに言ってお見えになる。そこのいろいろなやりとりについては、新聞、テレビで知るよりほかはないのでありますが、アメリカ経済について立て直しこそ根本なんだから、一体どこまで迫られたのか、ドル切り下げをやれとほんとうに言われたのか、またニクソン声明の中でも、アメリカ対外国民間設備投資を抑制をしなければならぬと私は思うのですが、世界各国対外投資をどんどんやってドルを使っておいて、そしてドルがないないと騒ぐのはおかしなこと、ベトナム戦争のどろ沼ドルを使っておいて、そしてドルがないないと言って騒ぐのもおかしなこと、それからアメリカドル切り下げをかりにしたって、円の切り上げをかりにしたって、根本アメリカインフレ政策をやめさせなければそれができないことなんです。根本的解決にならないことなんです。他国のやり方について口をはさむのもなんでありますけれども、しかしそのアメリカの失敗が私ども日本各国に大きな影響を与えるのでありますから、そういうことを言うならあなたのほうもこういう点をお考えになったらどうかと、いま例示をいたしましたような点につきまして、どの程度一体力説をなさったのか、伺いたいものであります。
  12. 田中榮一

    田中国務大臣 ニクソン政策につきましては結局三点の目標が明示をされております。一つ国際収支バランスをするように努力をする、もう一つは六・二%というように高い失業率が恒常化しつつある現状にかんがみ、失業問題を根本的に解決しなければならない、第三点はインフレ傾向にあるアメリカのこのインフレ問題を押えろ、この三つですから、なかなかむずかしい問題でございます。国際収支バランスはとれることがあっても、失業問題とインフレ問題はそんなに簡単には片づくとは思わないという指摘に対しては、いや、この三点が目的が達成されるまで政策をやるのです、こういうことでございますから、非常に強い姿勢であるということはおわかりだと思います。  まずその中で一番現実的なものは、ことし貿易収支を見ると、いままで長いこと出超であったアメリカ貿易収支が二十億ドルくらい赤字になる。ちょうど日本からアメリカに対する輸出超過が二十億、ドルであるので、これはバランスをとってもらいたいというふうに、極端な言い方でございますが、これはとってもらわなければならない。それは日本だけではなく、対米貿易に対しては各国ともバランスをとろうということであります。だから日本の自動車は二〇〇%増しにもなり、カラーテレビは六〇%増しになり、繊維などでもって問題にしておるのは、カテゴリー別に見ると二倍、三倍になっておるものがある、こういうことでございましたから、二、三倍になっているものもあるけれども繊維などというものはそういうものなんだ、きわものですから、去年の柄ものはただになる、ゼロになる場合もある。新しい品物は何十倍になるということは、あるのはあたりまえなんです。ですからカテゴリー別政府間協定はできないのです。こういうことを言ったわけでございますが、いずれにしても二十億ドルも、ほっておけば二十五億ドル日本からアメリカへの輸出が伸びるから、これはバランスをとれるようにしてもらわなければならぬということが非常に強く主張されました。ですから日本から一〇%ふえておって、ほかの国から二〇%ふえておるなら、そっちのほうを先にとめたらどうか。人のことを言う前に日本アメリカとの交渉はまず日米バランスを保つことに御協力を願いたい、そのほかのことはアメリカとそのほかの国でやります。こういうしごく当然なことでございますが、だから課徴金などというものを、こんなものはおやめなさい。とにかく自由貿易拡大論者のリーダーであるアメリカがかかるものを取ることはよろしくない。こんなことをやっておると縮小均衡につながるから、これはどうぞおやめください、こう言ったんですが、大きな目的が達成をしないうちはやめられません、こういう非常に強いことでございますから、第三者的に見ると課徴金も相当長期間どうしてもやめられないようだ、こういうふうになるわけでございまして、やはり日本アメリカとの間には日本輸出の三〇%ほどが対米輸出であり、これは過去も現在も将来も変わらないような状態である。その変わらないことはいいんです、それが三五%、四〇%つ拡大されると困るんです。こういうのでありますから、やはりアメリカにいわれるまでもなく日米間の秩序ある輸出というものはどうしても確保しなければならない。特に相手に、このように異常に輸出が大きくなることは、日本のダンピングによるものであるという考え方前提にいささかでもありとしたならば、そのような考え方を払拭できるような体制を整えるべきだということはお互いが十分話し合いをしてまいったわけであります。
  13. 横山利秋

    横山委員 時間でありますから、最後に一つだけ。その秩序ある輸出体制貿易政策という点についてお触れになりましたそこをもう一つだけお伺いをしたいのでありますけれども、どういうふうにこれから貿易政策を展開するのか。アメリカ課徴金をやめろ、そして日本責任体制、秩序ある体制をとる方法は一体何であろうかということであります。今回も、もちろんヨーロッパにも問題はあるが、主としてアメリカだけに問題があった。そこに正しく焦点を注いだらどうであろうか。繊維につきましては、政府間協定は業界は反対しているし、政府もやらないでしょうね、ということが一つ伺いたい点であります。  それから、巷間伝うるところによりますと、こういう意見があります。アメリカだけに問題があるんだから、この際秩序あるという意味において輸出税というものをつくったらどうか。そして輸出税の中で、品目ごとに整理をすればいいのであるから、アメリカだけに抑制できるような品目ごとの整理をしたらどうかというような意見があるわけでありますが、また基本的には業界の自主規制というものが繊維で見本を示しましたけれども、もっとやっぱり発展をする必要があると思うが、その点はどうかということ。  それから、アメリカに三〇%からどんどんふえる。それは好ましくないという点についても私は同感であります。だとするならば、もっとほかのほうの貿易を伸ばす方法考えなければならぬ。当然のことのように、中国なり共産圏への貿易をこの際思い切って伸ばすべきではないか。ときしもあれ、十月にココムの品目の洗い直しをパリでやるそうですが、この点について政府はどういう態度をもってお臨みになるのか。この際百六十何品目——ばかな話でありますが、それはイギリスあたりでは全部公表しておるのに日本では公表なさらないそうでありますが、それは別な話といたしまして、ココムの禁輸政策を一ぺん全部やめてしまったらどうか。  それから同じような問題として、すでに大臣御存じのように、アメリカはもう一カ月も前から輸出入銀行のお金を中国向けの貿易に使うことを国会で採決をして認めておる。アメリカが中国の貿易輸出入銀行を使うことを認めておるのに、いまもなお日本が認めないという傾向というのはまことに私はおかしいと思うのですが、この際、輸銀の金を使うということを考えさしたらどうか。  あるいはまた朝鮮との貿易につきましても、ネックの一つになっておりますのが技術者の入国なんであります。多くの商談がありながら向こうから検査に来るという技術者の入国が認められないということにつきましても、この際考え直したらどうか。やるべきことは、視野を変えますならばいまたくさんのやることがある。貿易政策一つの転換期に立つとするならば、そういうことについて思い切った措置を通産大臣としてなさるべきではないか。いかがでございますか。
  14. 田中榮一

    田中国務大臣 今度日米、日加両経済閣僚会議をやってみまして、いま御指摘になったような問題、これはもう焦眉の急だから通産省が考えなければいかぬということを考えてまいりました。通産省の中で意思統一をまずやろう、いままでの法律や制度やいろいろな政策もひとつ勉強し直してみよう、業界に対しても率直にひとつ新しい事態を告げよう、こういう考えでございます。新しい考え方を述べて業界でも新しい芽生えを育てようということでございます。これは表に大きく出ておりますのは日米貿易だけでございますが、日加でもそうなんです。それから日加だけではなく、今度はそのあおりでもって日米、日加の品物が全部ヨーロッパへ攻め寄せてくるんじゃないかということで、ヨーロッパに行かないうちにヨーロッパでは門戸を閉じようとしておる。この二つというのは、日米は少なくとも貿易バランスしてくれ。バランスをさせるための方法があるかというと、政府間協定をやろう、カテゴリー別にぴしゃっと押えよう、そうすれば貿易上のバランスはできますから。そんな法律は出してもなかなか通りません、与野党間で反対しておるような法律を出しましても通る見込みはない、通る見込みのない法律をあたかも通るようなことを言って協定することは不信になりますから出しません。私はこういうふうに米国に申し上げた。そうすると、政府間協定ができないならどうするか。自主規制です。自主規制をやっておっても真に政府間協定の実効はあがらない。あがらない場合どうするか。課徴金などはやめません、いまの課徴金プラス課徴金ということも考えられる。これは非常に緊迫したものなんです。絶対に日米間の貿易バランスせしめるためには、せしめ得る実効のある手段をとります。こう言っているのですから、これは非常に強いわけです。それではアメリカ政府だけでとるということよりも、法律で規制をするよりも、また課徴金アメリカに払うよりも、もっといい手がないかどうか日本考えますよ。こう言って別れてきたわけであります。  そうすると、いまあなたが言うように、アメリカで一〇%取られるなら、日本輸出税をかけてそれを中小企業や零細企業、立地政策などに使ったらなおいいんじゃないか、それは知恵はなくてもその程度の知恵は出るわけであります。ですから、そこまでいろいろ話をしてみているのですから、そんなにならないようにするのには、実質的に自主規制というものが実効あるようにしなければいけない。そのためには業界の自主規制体制をどうするかという問題もありますので、通産省でも十分研究をしながら、業界にもこれ以上もっと損をするようなことまで追い込まれないうちにまずうまくやろうじゃないか。うまくやるためにはどうするんだ。業界の体制をどういたします。場合によれば貿管令を使って政府も手伝ってもよし、そうしてそれはあくまでも政府政府立場でやるのではなく、業界が自主規制をするところに貿管令が補完的な役割りをすることができればもっと合理的にできるわけであります。これはアメリカだけではないのであります。日加、すなわちカナダは何もないといっておるが、何もないどころではないのです。カナダはダイバージョンといって、アメリカに行く品物が全部カナダに来ては困るので、通産大臣が来ないという保証をしてくれれば別だが、保証してくれなければカナダも何か考えなければならぬというくらいに非常に強いのでございます。同時に、いままで日本に買ってもらっておる鉄鉱石とか銅の鉱石とか、いろいろなものの何割かはカナダで製品として、その製品を買ってください、製品を買ってくれるという約束がないと原材料の供給も法律で調整をしなければならないかもわかりません。こういうことでありましたから、そんなに一世紀も逆戻りするようなことを考える前に、お互いもっと意思の疎通をはかって、事前に両国が理解できるような、共存共栄できるようなことをやろうじゃないか、カナダは原料供給国であり日本世界における最大の原料輸入国であるのだから、最大の供給国と最大の輸入国が事前に調整ができないはずはない。こう言ったら、まあできるでしょうから一生懸命やりましょうということでございまして、なかなか各国でみなそういう日本輸出というものに対して脅威を感じておるような傾向にありますから、やはりそういうことに対して日本輸出はノーマルなんだ、日本とは永続的につき合っていかなければならぬしつき合っていけるんだということで、私は、最終的には日米間の問題などは非常に短期的な現象です。大体アメリカが輸入がふえたのは、港湾ストが長期化すると思ったので、アメリカの人たちが先を見越して買い急ぎ、輸入急ぎをしたという面も多分にあるので、それが一体幾らあるのかということを計算してもらいたいし、日本がこれから公共投資を行なって、第二に民間の設備投資が刺激をされ輸入に結びつけば、半年後ぐらいになると相当バランスが変わってくる。半年後を見なければ真の日米間の貿易状態は、いまがノーマルかアブノーマルなのかわからない、だから静かに数字の推移を見ましょう、こういうことを言ってきたわけでございますが、やはりいろいろな問題をいま含んでおりますので、通産省も業界も、法律をつくらなければ、二国間の条約によらなければ、課徴金によらなければ、もう一ぺん新課徴金、タリフクォータ制度を全品目に適用されて、一定の制限を越えるものには二〇%、三〇%、均一的な罰金を払うようなところまで追い込まれないという、まあそれがオーダリーマーケットということだろうと思いますが、秩序ある輸出体制確立というものを広範な立場で検討し、直ちに実施に移していかなければならぬじゃないかと思っております。
  15. 横山利秋

    横山委員 ココムと輸銀の問題は。
  16. 田中榮一

    田中国務大臣 ココムの問題等は以前にも申し上げたとおり、だんだんともうチンコムもなくなっておりますし、ココムも、純粋のココムの精神に合致するようなものはごく少なくなってまいると思います。ですから、まあこれは日本が全部やめたらどうかというところまで踏み切れるかどうかわかりませんが、私は、もうトラックも銃座を持たないトラックは中国にも出しておりますし、この間いろいろ新聞にも書いてございましたが、人命救助用のヘリコプターは兵器ではない、こういう考えでもう輸出をやってもいいということになっておりますし、このような方向から見れば、日本の通産省がココムに対してどの程度の理解を示しているかということは御理解いただけると思います。  輸銀等の問題を中国その他に適用せよ、これはもういつも申し上げておりますように、バイケースでもって考えまして、全然私はそれを拒否しようなどという先入観を持ってもおりませんし、そういう考え方政府前提になっておらない、それだけは明確に申し上げておきます。ただアメリカはだめだから共産圏全部急激にといっても、なかなか今度そんなに消化できるものじゃありません。ただやはりこういうときを契機にしまして、日本輸出の多様化、輸入の多様化も考えなければいけないと思いますが、輸出の多様化というものは当然積極的に推進をさるべきものだ、こう理解いたしております。
  17. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、石川次夫君。
  18. 石川次夫

    ○石川委員 きょうはドル・ショックの問題が中心なんでありますけれども委員の皆さんの御了解を得て、お許しをいただいて、地元の緊急な問題を一つだけ簡単に、前に質問をさせていただきたいと思うのです。  それは、鉱山石炭局長お見えになっておるようでありますけれども、実は常磐炭鉱の関係です。常磐炭鉱には福島県に磐城鉱の東部、西部と、それから茨城県に神の山と中郷と、この四つの炭鉱があったわけでありますが、硫黄分が多いということで、福島県のほうの磐城の東部、西部はまず閉山になりました。それから残された茨城県のほうでも、神の山鉱のほうは来年の初めに閉山ということを予定されておりまして、残る中郷だけを新鉱開発をして大いに希望を託しておったわけでありますけれども、急な出水という状態になったわけであります。したがいまして、きのうまで掘っておった炭鉱に次の日行ってみたら、もう水が一ぱいで山に入れないという不慮の災難というような状態におとしいれられたわけであります。  地元北茨城市といたしましては、ほんとうに炭鉱だけでもっておった町でありますが、さきに大日本炭鉱という大手がつぶれ、今度はまた全面的に常磐炭鉱が閉山になるというような事態に追い込まれたわけであります。ところが、日立製作所関係の日立がすぐ隣にあるわけでありますけれども、これまた御承知のようにドル・ショックの関係で、高等学校、中学校は全面採用禁止、あといまいる従業員もどうしようかというような状態で、それは連鎖反応で下請のほうにも影響しているということでありますから、地元で就職したのはまだ八人しかないというような窮地におとしいれられておるというような、きわめて憂慮すべき事態になっておるわけであります。  いろいろ申し上げたいことはたくさんございます。たくさんございますが、こういうときで時間がありませんから、緊急の問題として二つだけ御要望を申し上げたい。  それは、いまのように就職はほとんどできないというような状態、しかも非常に不慮の災難である。しかも関連会社が、たとえば練炭工場あるいは運輸会社というようなのがあるのですが、これは全部実は鉱山にたよってやっていたので、自分のところで独立してやっていたわけではないのです。だからそれもほとんど一緒に離職をするというようなことに追い込められるというような現実を見きわめていただいて、政治的な配慮をひとつぜひ早急にやってもらいたい。  その一つとしては、緊急公共事業というものを地元で早急にやっていただいて、とにかく離職者の食いつなぎといっては恐縮でありますけれどもドル・ショックが一段落するまでの仕事は急いでひとつ緊急公共事業というようなものを考えてもらえないか。これは非常に大ざっぱな要求でたいへん恐縮でありますけれども、そういう努力を現在しておられるかどうかという点が一点です。  それから、いまのような不慮の災害であるということと、それから系列会社がほとんど同様に、あるいはその中に入っている組員といいますか臨時員といいますか、それも一緒にほとんど同様に離職をするというような背景というものも十分お考えいただいて、いろいろ合理化閉山ということに認めていただいた御好意というものは心から感謝いたしますけれども、さらにその埋蔵量あるいはまたいままでの出炭量の計算というものは大体わかっておるわけでありますが、坑道の長さの計算などというもの、こういうものについても政治的な配慮をいただいて、できるだけひとつ失業者、離職者について恩典を与え得るような配慮を政治的に払っていただけないか。端的に言うと買い上げ価格の問題になるわけであります。  その二つの点について、簡単でけっこうでございますが、御答弁いただきたいと思います。
  19. 莊清

    ○莊説明員 常磐地区の雇用問題につきましては、重大問題でございますので、先般関係十二省庁の会議を開きまして、各省の総合対策について検討をいたしたところでございますが、それに基づきまして緊急の公共事業といたしまして、明年度以降着工と予定されておりました磯原B工業団地の造成を本年度に繰り上げまして、諸準備を進め、おそくとも明年一月から工事に着工するということにいたしております。これがとりあえず定めました緊急のものでございます。  それから予定外の閉山に伴いまして、地元の中小企業全般に直接間接の影響がございますので、この点につきましては産炭地域中小企業に対します信用保険特別措置法の運用によりまして別ワクの設定を行なうほか、中小企業金融公庫、あるいは国民金融公庫から特別の金融措置を増強するという方針で対処することにいたしております。  それからもう一点、御指摘のございました西部鉱に対する閉山交付金の問題でございますが、八月末に会社から正式の申請が提出されております。現在書面によりまして審査中でございますが、一部現地調査等を要する点もございますが、早急に進めまして、おそくとも十二月中旬ころまでには支払いが完了するように鋭意促進いたしたいと考えております。その場合に、水没いたしました坑道その他の資産につきましても、私どもといたしましては評価の対象に含めまして、交付金を算出いたしたいと考えて目下検討いたしております。
  20. 石川次夫

    ○石川委員 きょうはドル・ショックのことが中心課題になるわけでありますから、その程度にいたしますが、通産大臣ひとつ、地元としてはたいへんな緊急の問題でありますので、これは不慮の災難であるということをよく含んでいただいて、善処方をお願いいたしたいと思います。  それではドル・ショックの問題でありますけれども、これは横山委員のほうからもだいぶ質問が出ておりますので、重複を避けまして、二、三の点について質問をしたいと思うのでありますが、アメリカとのいろいろな協議でもって、日本も思い切って言いたいことは言ったと、こういうことが言われておりますけれども、最近コロンビア大学のブレジンスキー教授が、日本経済などでも発表しておりますけれども日本立場というものをよく理解させる努力というものが十分なされたかどうかということで、一まつの不安があるわけなのです。それはその教授の意見などによっても、これはアメリカ人でありますから、米国の日本観というものは過大評価である。それから日本が超大国のイメージだというふうなことを持っていることも、これは幻影にすぎないのではないか。そういうことで、いまの日本は安定の最終段階に来ておって、国内政治を大きく転換を迫られておる。したがって、いままでの高度成長というものはとうてい望み得ないのであるということをアメリカ人自体が、大学教授でありますけれども、言い切っておるような日本の実情というものを十分理解させるだけの努力をしていただいたかどうか。新聞だけで見ますというと、どうも不況によって輸出ドライブがかかったのだというような、一時的な現象であるというようなことについては強調されたようであるけれども、本質的な日本経済の力というもの、これは一つの例としておもしろい例でありますが、大邸宅をかまえて膨大な海外資産、これはユーロダラーだけでも五百億ドルあるといわれておりますが、こういう人のすねをかじっていた息子がバラックの家にたまたま住んで日本における預金が多かったというので、こいつけしからぬといっているようなかっこうじゃないか。これは日本アメリカ経済力なんというものはたいへんな相違があって、海外資源などを見ても、これは歴然たるものであって、いま日本がたまたま百億ドルくらいの金がたまったからといって超大国のようなイメージを持ち、けしからぬというような考え方を持つということは、どう考えても私は理屈に合わないと思うのですが、そういう点についての理解を十分深めていただいたか、この点簡単でけっこうでございます。
  21. 田中榮一

    田中国務大臣 こちらからは相当述べたつもりでございますが、必ずしも結論的には、とはいっても日本の力は強い、だからアメリカ日本品物が洪水のように入ってきておるのだ、だから規制をしてもらいたい、政府交渉に応じてもらいたい、どうしてもだめなら何か考えます、いい悪いといわれても、それは別に考えざるを得ないのですと、こう言っておるのでありますから、私は必ずしもわれわれの努力が全部理解されたとは思っておりません。思っておりませんが、先ほどもちょっと述べましたように、出血輸出とあなた方が一言に言っておられますが、出血輸出ではない。しかしわれわれは国内的にまだまだ環境整備をしなければならないものがたくさんあります。それは自動車がアメリカ並みにふえる傾向にありながら、道路は三分の一以下しかない。ですからこの道路アメリカ並みにするためにはどうしなければならないか。しかも公園や緑地や、公害を除去するためになさなければならないものが一体どういうものであるか。全国土に対する二%という狭隘な地域に過度集中をしておる都市の状況や産業立地の状況を考えて、この十年、二十年、三十年の長期展望に立って立地的な政策を進めていくためには膨大な投資を必要とするのです。結論的にはアメリカ国民総生産に比ぶべくもない第二位である。二位とはいいながら、二、三位、四、五位がなくて、五、六位が数字の上では二位になっておるというにすぎない。しかも国民所得一人平均についてはアメリカの三千九百ドルカナダの二千六百ドル日本の千六百ドルアメリカの三千九百ドルに達するには十五年の歳月を必要とすると述べたことは述べたのです。相当述べたのですが、それもよくわかるが、いずれにしても日本経済力というものは強い。だから二十億ドルアメリカにおいてはすでに日本輸出超過になっておるのだから、これのバランスをとることがもう議論をする前の最大の問題である、こう言ったのでございますから、理解をしなくはないのでありますが、理解はしながらも、目の前の貿易のアンバランスに注目して話をしておったということが事実だと思います。
  22. 石川次夫

    ○石川委員 いまのおっしゃることなんですが、ただ過去の蓄積が日本にとっては全然ないという点もあわせておそらく御主張いただいたのだろうと思うのでありますけれども、バラック住まいと富豪が大邸宅をかまえている違いも、これは相当アメリカ理解をいただかなければならぬ点じゃないか。これから日本は蓄積していかなければならぬ、公共投資をやらなければならぬというようなことの点も理解をしてもらわなければならぬ点じゃないかと思うのであります。  それから、そういう点でアメリカが今度やった行為というものは、金とドルとの交換停止によってIMF体制というのはまるで崩壊をした。それから課徴金制度というもので、かつてカナダとイギリスが課徴金制度をつくろうとしたときに、まっ先に反対をした当のアメリカが今度は課徴金制度をつくるということで、ガット体制というものをみずから踏みにじっておるというのは、自由世界の指導者にあるまじき一方的行為じゃないかという非難がきわめて強いわけで、そういう点に対する日本側からの主張は相当行なわれておったように、先ほどの質疑応答の間でわかったわけでありますけれども、ここで一つだけ私は伺いたいのでありますが、これは内政干渉ということになるかもしれませんが、何といってもベトナム戦争が大きなガンであったというのは言うまでもない。そのほかに通貨の流出ということがありますけれども、そうすると今度のニクソンの八項目、これは先ほど言われたような趣旨で出されたわけでありますが、その中には全然ベトナム戦争をやめるということは書いてないのであります。ベトナム戦争の縮小ということばしか使われておらない。それからあと一つは、国防予算の縮小ということにも全然触れておらない。これはわれわれから言わせると、ずいぶん基軸通貨であるということの上にあぐらをかいて、自分だけが一方的にかってなことをやっているのじゃないかと思われる一番の中心がここではないかと思うのです。たとえていうと、レアード国防長官は、来年度の国防予算は、ことしの予算のプラス三十億ドルだ、こういうようなことまで言っておるわけです。この国防予算の縮小ということも触れておらない。こういうことは内政干渉になりますので、日本側としては言いにくいことであるけれども、事実この点がアメリカ姿勢として正されない限りは、アメリカドルの信認についての努力というものをわれわれは認めるわけにいかない、こう思わざるを得ないのでありますが、その点についてどうお考えになりますか。
  23. 田中榮一

    田中国務大臣 公の席上でいろいろなことは述べられることと述べられないことはございますが、同じメンバーであって、公式、非公式という別な会合もあったわけでございますから、その非公式な会談では、アメリカドル保有高が少ないなどと言っておるが、海外に投資をされた総額は六百億ドルないし七百億ドルにのぼっておるじゃないか。こういうドルというものを国内的に投資をするように誘導政策もしくは金融政策等のものが並行して行なわれれば失業問題も片づくと思いますがな、ということは申し述べまして、貴重な御意見として承っておきます、こういうことで、これはお互いに紳士同士の話でございますから、またよきパートナーとしていろいろ思ったことを言うということでいろいろな意見交換が行なわれております。しかし、対外協力の一〇%削減とかいろいろなことを向こうでも言っておりますし、私はさしあたり貿易の問題だけをやっておりますが、先ほど申し述べた三つの大きな問題が解決するまでは不退転の決意を持ってやります、またそれをやることがアメリカのためだけではなく、お互いのためにもなり、世界各国のためにもなるのでありましょうという、いわゆる自信に満ちたというよりも非常に懸命な努力を続けるという強い意思の表明があったわけでございます。  ですから、先ほども申し上げたとおり、国際収支の改善が可能であっても、他の二つのもの、インフレ、失業というようなものは簡単に片づく問題ではないと私は思います。思いますが、これらの問題解決のために最終まで努力を続けておるということは、これは強い印象として——理解をしておるというようなことよりも、相当強い印象を受けてまいったわけでございまして、こちらも強く課徴金の撤廃を要求しておる。この日本の発言に対して、三大政策目的を達成するためには別なこともやらなければいかぬかもしれませんからということで、ただ外交辞令だけども受け取れないというぐらいに、非常に真剣な考え方、そういうような決意がわれわれに看取できたということでございます。
  24. 石川次夫

    ○石川委員 私のいまの質問には答えておらないと思うのであります。一番のベトナム戦争というものがドルを崩壊させた最大の原因である。それに対する反省というものがいささかもなされておらない。こういう点についてほんとうによき意味のパートナーシップであるならば、反省を求めるという姿勢がほしいのでありますけれども、これはいままでの佐藤内閣は全面的にこれを支持してきたといういきさつがあるので、いまの佐藤内閣のままではきわめて言いにくいであろう、こう私は思うのです。それを言っても答弁はしにくいのだろうと思いますから、それには触れませんけれども、いま申し上げたような、アメリカが三つの問題を解決するまではこの態度はくずさないと言っているし、またそのことがほかの国の利益になるということは、いまのくずれ去ろうとするIMF、ガット体制の上に基軸通貨であるということであぐらをかいている態度であって、私のほうから言わせれば言語道断ではないかと思うのです。自分たち反省が少し足りなさ過ぎるから、自分の不始末をほかの国の犠牲において補っていこう、こういう態度にしか見えない、こういう点についてはやはり鋭く日本としては追及をする必要があるのではないかと考えざるを得ないのです。  その点についての質問は時間がありませんからその程度でやめますけれども、さて、当面の国際通貨体制でありますが、変動相場制というのは、事実上これは円の切り上げなのであります。そこで、ドル本位というのは、当面これは続けざるを得ないというのは宿命みたいなものだろうと思うのですけれども、多国間調整は一体どうするかというと、いつになったら全部けりがつくかということは、これはほとんど見通しが立たないというような状態ではないか、少なくともことし一ぱいはかかるのじゃないかというのが大かたの見方でありますけれども日本に対する風当たりは相当強いし、また日本の円に対する各国の関心というものが非常に強いわけです。円が強過ぎるので、あるいは日本輸出があまりむちゃくちゃにやり過ぎたので、このような課徴金という制度を生んだんだというような同情心すらヨーロッパのほうでは出ておるというようなことを考えてみますというと、私の意見——党の意見というわけじゃないのですけれども、あなた方の党内でも意見が出ているように、円がまず切り上げをするということで多国間調整のイニシアをとらなければ、なかなかこの多国間調整というものはむずかしいのではないか。そういうような、いまのような変動相場制だけでは、先ほども質問がありましたように、輸出成約ということは非常に困難で、日本はますます行き詰まってしまう。まあ大商社、大企業のほうは何とかかんとか見通しを立てていくでありましょうけれども中小企業のほうはほとんど見通しが立たないということは、ほとんど必然であります。したがって、あなた方の党内でも非常に有力な方が、円がまず率先して切り上げをやるということで、多国間調整のイニシアをとるという決意がいまこそ日本にとって課された課題ではないか、任務ではないかというような意見も出ているわけであります。われわれ必ずしもこれに賛成ではないのでありますけれども、この点については、先ほど一応御答弁はいただいております。おりますけれども、多国間調整というものの成立というものを早めるという目的、それから日本輸出というものを促進をしなければならぬ。この障害を取り除くという意味で、やはり円の切り上げを率先してするということも一つの案として考えるということは必ずしも不当ではないというふうに個人的に考えられるわけであります。この点についてどうお考えになりますか。
  25. 田中榮一

    田中国務大臣 大蔵大臣でございませんから、さだかなお答えはできないことを遺憾といたしますが、しかし、日米間の公的、非公式の会談の中で、特に公的な会談の中にも、あなたがいま指摘をされたことと同じようないろいろな意見が強く再三再四述べられておる。通貨は円の切り上げ平価調整を行なっても、日米の間で理解を示すことができても、他の国がこれをある程度ある期間容認するというような保証がない、言うならば、両国間の平価調整は腰だめ調整になるので、そんな保証のない調整はいたしません。こういうことを言うと、それはそうでしょう。まあ日本アメリカとの間だけでこれくらいだと言ったら、そんなことでとてもうんと言わないということであって、ではヨーロッパのほうだけ新たに課徴金制度を設けましょうということが起こらないという保証は全くない、だからそういう暫定的なものはできません。こう言ったときに、理由はよくわかる、多国間調整というものでなければならないということはわかるが、しかしそうやっておると、なかなか長く時間がかかる。それはそうでしょう。三十八年のIMF総会でもって、ドル不安、新通貨問題が議題とされ、国際流動性を確保するための新しいテーマが提起されたときに、三十九年の東京総会まで結論が一年間持ち越されたSDRの制度が発足したわけでございますから、なかなか多国間調整を十カ国の中でも結論を出すことが必ずできるかどうかということはむずかしい問題であります。  もう一つは、基準がないことをきめるのでありますから、なかなか時間がかかる。ただもっとむずかしいのは、ドルの金交換価格を改定せよという、すなわちドル切り下げがありますから、ドルは絶対に切り下げないといっても、いまの体制を一体どうして調整できるのかということを考えると、なかなか時間がかかるということは常識的に考えられるわけであります。そうなれば、日本が腰だめであろうと何であろうと、いまの日本が国際通貨の安定と流動性を確保するために指導的役割りをなす覚悟で、日本がまず切り上げてくれるべきだという強い要請がございました。これは公式発言でも、非公式発言でもありましたが、それにいまこたえられるような日本ではないというようなことは、横山さんさっき言ったように、日本経済実勢はあなた方が考えておるほど強くはないのです、こういうことでいろいろ議論はしましたけれども、まずここで、日本指導的役割りをなして、平価切り上げるというような状態にはとても、学問的にいろいろな議論は存在しても、石川さんいまいみじくも述べられたように、私は議論としてはわかるが、私自身も賛成ではないがというような、やはりそのような状態で、なかなか結論を出せるような状態ではない、こう考えております。
  26. 石川次夫

    ○石川委員 時間がないので、その点についても申し上げたいことがたくさんあるのでありますが、さてこれは大蔵委員会でないと、ちょっとここで質問するのは的はずれになるのでありますが、将来の国際通貨体制を一体どうするんだということで、抜本的に考え直さなければならぬ時期に来ているのではないかということは、金とドルとの交換停止というものは、金の非貨幣化を一挙に進めるつもりなのかということが一つ考えられる、あるいは金の価格引き上げの布石なのかということが一つ考えられる、あるいは金の減少をアメリカとしてはとことん防いで、過剰ドルがある程度吸収されたところで金の交換を再開するのか、この三つの見方の一体どれなのかという点について御意見を伺いたい。  ついでに申し上げるというと、八月十六日、ロンドンの国際会議でボルカー米財務次官でありますけれども、金の役割りは終わった、こういうことをはっきり言っておる。それからコナリー財務長官は、ロンドンのランカスターハウスで各国代表と話をしたときに、米国は金・ドル本位制に戻るつもりはない、こういうことをはっきり明言をしておるということが新聞で伝えられておるわけであります。そうなると、先ほど言った三つのうちで、非貨幣化を一挙に進める、あるいはまた金の価格引き上げということなのか、それらの点についてどう御判断になりますか。
  27. 田中榮一

    田中国務大臣 財政担当の国務大臣でありませんから明確な意見を述べることは差し控えたいと思いますが、しかし、いまの御質問で常識的に言い得ることは、金本位制に帰らないということは、これはもうだれが考えてもそうだと思います。これは地球上の人口はふえておる。このふえる人間の生活レベルは上がっていくわけであります。そうすると、貿易量は必然的に拡大してまいる趨勢にあります。地球上から年間産出する金の量が一定量であって、この膨大化していく貿易量の決済に見合うものでないということを考えてみると、金本位制が適当でないということは、もうこれはだれでも当然だと思います。でありますから、金本位制というような問題についてカナダやフランスのドゴール政権があのように大きく発言をした中においても、十年前新しい通貨として考えられるものは金ではなく、やはり新しいものでなければならない、それらの暫定的なものとしてSDRの制度が採用され、流動性を確保するためには新しい世銀債が自由市場で調達される道が開かれたということを考えると、私はやっぱり金本位制に帰るということは常道ではないし、そのようなことはないということ、特に日本においてはもう絶対にそういう議論は存在をしない、こういうことを考えております。  特にSDRの制度を発足せしむるときに、金との交換をしないということで、三十九年における金保有が約四億四、五千万ドルであったものが、現在百二十五億ドルという大きな外貨保有の中で、金を五億ドルないし六億ドルしか保有しておらないという事実に徴しても、金本位制というものは全然、学問的な議論は別にして、現実的議論としては区別して考えるべきであって、ドルをどうするかということになれば、新しい基軸通貨との間にドルをどういう換算率でもっていくのか、ドルをキーカレンシーとしてほんとうに維持せしむるためにはどういう政策を必要とするのか、ドルとSDRとの交換比率をどうするのかというような問題、これは新しい問題として提起される問題だとは思いますが、もう金問題とは全く区別をして議論を進めるということが正しい、私はそのように理解をしております。
  28. 石川次夫

    ○石川委員 時間がございませんで非常に残念であります。いまの問題も掘り下げたいのでありますけれども、これは一九四四年の七月にブレトンウッズ体制ができ上がった。しかし、このときはアメリカが中核でしかも世界の指導者で、世界の金の七〇%を保有しておった。そういう条件のもとにおいてもケインズ案、ホワイト案というものが対立し、三年間余もみにもんだ。しかし、そのときといまとはだいぶ情勢が違うと私は思うのです。といいますのは、UNCTADというのができましたのと同じ意味において、南北問題というものが新たに加わっておる。そういう問題を含めての通貨体制というものを、これは相当問題がふくそうしておりますけれども、新たにつくらなければならない。SDRというものを新たな市場介入通貨にするということは、いま長期ドル債務の残高は三十八億ドルにものぼっておる、これを全部SDRでもって増加をし吸収をするということになれば非常にダブついてしまうということもありますので、SDRは市場介入の通貨にかわり得るという保証は私はないと思うのです。そうなりますと、時間をかけても新しい体制のもとで、UNCTADというものができたと同じような趣旨を含めての通貨体制というものをつくるということがどうしても必要になってくるのではなかろうか。したがって、大国のエゴでもってできたといま思われておるブレトンウッズ体制というものは崩壊をした、こういうふうに考えて、新しい通貨体制というものを時間をかけてもつくり上げる。これは大蔵大臣質問するのが当然なのでありますけれども経済企画庁長官、この点について、簡単でけっこうでございます、どうお考えになっておりますか。
  29. 木村俊夫

    木村国務大臣 先ほど通産大臣からお答えしたことに尽きておりますが、将来の国際通貨体制、国際通貨がどうあるべきか、これは学問的分野ではいろいろ論じられておるところでございますが、基本的にいえば、ある特定国の国際収支の状況によって左右されるような通貨であっては困る、また同時に金のような自然産出物によって左右されるような通貨であっては困る、こういうような基本的状況のもとにおいて、第二のSDRのような管理通貨体制考えられないかというようなことで、今後GテンあるいはIMF総会等を通じて、当面の処理は別として、こういう基本的な問題について将来検討が行なわれるであろう、こういうような見通しを持っております。
  30. 石川次夫

    ○石川委員 いろいろ意見はありますけれども、時間がありません。最後にひとつ中小企業対策一問だけを伺いたいと思うのです。  中小企業庁長官が九月十九日の日経に出した「中小企業政策確立の時」というのは大体において肯綮をうがっておる、こう思うのであります。中小企業であるがゆえに公害防止措置に万全を期す義務は軽減され得ず、賃金上昇もなお継続するなど、コスト上昇の要因は増しておるというようなこと、中小企業は特に重い負担になっておるという点で、知識集約型の産業構造へと変化していくテンポがここで一段と速まることになると思うというようなことが書かれておるけれども、私はこの知識集約型の産業構造にしなければならぬことは、これも理論としてはわかるのです。しかし、中小企業にそれだけの力があるかということになると、たとえば大学出の理工系の連中がどういうところに就職しておるかということを見ますと、大体小企業では百二十五社に一人、中企業では五社に一人、大企業では一社に五人というような差があるわけです。そういうようなことを考えると、そうでなければならぬけれども、実際の力としてはなかなかそういうことにはなり得ないのが現実の実態ではなかろうか、こういう点で認識不足が一つあるのではなかろうか。これは中堅企業には当てはまるかもしれないけれども、下請とか小企業では全然当てはまらない理論倒れのことばではなかろうかという感じがすることが一点です。  それからあと一つは、経済の国際化の過程でそれに適応してきた中小企業の活力と創造力が一朝にして消えうせるというようなことはあり得ないと信じている、というようなことで、たいへん信頼をしておるようでありますけれども、いまたとえば大企業の下請なんというのは、右往左往でどうしていいかさっぱりわからぬというのが実態なんです。活力があるといっても、大企業自体はいまは自分のところの人減らしをしなければならぬというような事態のときに、下請だけを例にとっても、もう仕事は全然減る、あるいはなくなってしまうというような非常な危機に見舞われておるというようなときに、何かそういう創造力が一段と消えうせるというようなことはないのだということを言っても、実態はとうていそれに伴っておらないという現実をよく踏まえてもらわなければならぬと思うのです。  そこで、いろいろ申し上げたいのでありますけれども中小企業対策として、輸出手形買い取り制度の復活とか、為替銀行への外貨の預託とか、それから中小三金融機関の融資条件は緩和するというようなことをいろいろ言われておりますけれども、この中で中小三金融機関の融資条件の緩和というのは具体的にはどういうことを現在お考えになっておるか、また一千億円の中小企業融資を考えておるということが出ておりましたけれども、それは非常にけっこうでありますが、それと同時に大企業は下請に対して注文をする内容を明示しろというようなことも言って、これも適切な指導だと思うのですが、どこまでそれが実現をし、どこまでそれを指導できるかということが現実の問題としてはたいへんな問題だろうと思うのです。その点をどうお見通しになっておるか、その点を伺いたい。
  31. 高橋淑郎

    ○高橋説明員 いま先生が引用されました記事でございますが、これは全く私の私見といいますか、意見として申し述べたということをまず申し上げます。  それから、中小企業の実態に対する認識が甘いのではないかということにつきましては、私はあの欄で申し述べましたことは、現在の困難な事態を何とかして克服しなければいけない、しかしそれだけではなくて、いまの時点から真にあるべき中小企業の姿というものをどう考えるのだという意見を求められましたので、私は将来の展望といいますか、考え方として申し述べたわけでございます。  それから、御質問の融資の条件、これは目下連日大蔵当局と折衝して詰めております。何とか今週中には結論を得たいと思っております。  それから、下請に対するしわ寄せの防止についての指導ということは、仰せのとおり非常に実行上むずかしい点があります。これはよくわかっておりますが、公正取引委員会とも十分連絡をしてわれわれとしてできるだけの努力を尽くしたいと思っております。
  32. 石川次夫

    ○石川委員 ではこれで終わりますが、ぜひいまのことを確実に実現できるような配慮をひとつ通産大臣と御相談の上はかっていただきたいということを強く要望しておきます。
  33. 鴨田宗一

    鴨田委員長 近江君。
  34. 近江巳記夫

    ○近江委員 両大臣、御苦労さまでございました。きょうは何か昼から御予定があるということを聞いておりまして、できるだけ簡潔にお聞きしたいと思います。   まず初めに、木村長官が急がれておるようでございますので、初めに木村長官にお尋ねしたいと思いますが、最近のこのドル・ショック以来非常に経済界が不況ということになってまいりました。私も先月新潟県の燕市のほうに視察にも行ってまいりました。非常に現地のほうも、契約ができないとか、あるいは足元を見られて値切られてくるとか、あるいは滞貨の問題、為替差損の問題とか、そういういろいろなことで困っておりました。それが地域社会にも非常に影響しておるわけでございます。そういうことで国民全般といたしましても、不況になってくれば一体どうなるのだろうかと非常に心配をしておるわけでございます。そういう中で、例年いつも秋になってきますと値上げ問題が出てくるわけでございます。こともまず交通機関としてバス料金の値上げあるいは私鉄の値上げあるいはタクシーの値上げ、あるいはふろ代の値上げ、あるいは給食費の値上げとか、そういう不況ムードの中に非常に国民が心配することがメジロ押しに出てきておるわけでございます。こういう一連の値上げ問題に対して経企庁長官としてはいかにお考えか、また今後どのように対処されるか、この点についてまずお聞きしたいと思います。
  35. 木村俊夫

    木村国務大臣 最近非常に不況が加わってまいります中で、卸売り物価はその影響を受けまして横ばいに終始しておりますが、消費者物価は必ずしもそうではなく非常に強含みでございます。しかしながら、この不況が進む、景気刺激対策はとらなければなりませんが、しょせんその中で全体の物価情勢というものはそう私はきびしいものではないと思います。したがって、私どもの心配しますのは、その不況の中における物価負担感といいますか、国民の負担感、相対的な問題でございますけれども、そういうものが非常に増大することを実は懸念しておるわけでございます。したがいまして、その中で自然にといいますか、任意にきまる物価でなしに、いまおあげになりました公共的にきまる公共料金の上昇がもしありますれば、先ほど申し上げました国民の不況下における物価負担感に非常に大きな影響があると思います。そういう観点から、公共料金の抑制につきましては依然きびしい抑制の態度をくずしてはおりません。ただ経済は合理的でなければなりませんし、またその間におきまして非常に不合理に押えてきた物価も公共料金もございますので、そういうものを玉石混淆して私どもはこれを認可しようとは思っておりません。したがいまして、いまおあげになりました中で地方団体の認可に属するものもあるようでございますが、政府がきめなければならぬ公共料金の面につきましては、まだ私ども現実にその値上げについての検討を始めてはおりませんけれども、従来どおりきびしい抑制の態度をとるつもりでございます。
  36. 近江巳記夫

    ○近江委員 こうした水道とか、ふろ代とか、あるいはごみとか、屎尿、そうしたものについては地方団体に属しておるわけでございますが、こういう問題については国から財政援助でもしてやっていけば当然押えることができるわけです。そういうような点、いまおっしゃったように不合理に押えてはならないものもあるということをおっしゃったわけでございますけれども、しかし、政府努力によっては押えることができるものがたくさんあるわけでございます。そういう点でこの地方団体に属するもの等について、それじゃ政府としてはどういうように考え、また地方団体にどういう指導なりなんなりをなさるかという問題が一点です。  それから、不合理に押えてはならないということをおっしゃったわけですが、具体例としてはどういうものについてお考えになっていらっしゃるわけですか、その二点についてお聞きします。
  37. 木村俊夫

    木村国務大臣 地方団体に対する助成と申しますか、これは直ちに政府としてとるべきことでもないと思いますので、まず地方団体で極力努力をしてもらった上で、もしそれが地方団体の財政全般に大きな影響があれば、これは当然国としても考えるべき筋ではございましょうけれども、当面その考えはございません。  また、先ほど私が申しました経済的にきわめて不合理な、企業の採算上不合理な面については必ずしもそれを押える一方ではいけないということを申し上げましたが、その例としてはいろいろございましょうが、まずまだ出てきておりませんが、国鉄の再建計画の中で当然国鉄の運賃を上げなければならない段階がございます。それにつきましても、いままでと違いまして財源の再配分等を通じて極力運賃の値上げは抑制するつもりでございますが、すべて全体をただ財政的措置によって、受益者負担の原則を貫かずに財政負担のみによってこれを抑制することがはたしていいことか悪いことかということもともに考えなければならぬ問題でございますので、そういう面につきまして今後財政負担の増強も含めて総合的に考えていきたい、こう考えておるわけでございます。
  38. 近江巳記夫

    ○近江委員 国民の負担を防ぎたいということがあくまで基本であって、抑制の態度で終始一貫した態度政府としていかれるといま長官はおっしゃったわけでございますが、こういう不況下の中でございますし、非常に公共料金の引き上げということがまた他物価にも及ぼしてくる。輸入が少し安くなるじゃないかという話もありますが、ほとんど流通機構等でもってそれが吸収されてしまう、ほとんど安くもならない、そういう効果はないだろうということも、大体みなそのように感じておるわけでございます。そういう中で、不況下のこういう値上げという問題、これは国民生活にとってたいへんな問題でありますし、政府としてもこれはもう極力万全のひとつ態勢をとっていただいて、値上げは押える、こういう態度でやってもらわなければ困ると思うのでございます。恐縮ですけれども、重ねてもう一度ひとつ長官の御決意をお聞きしたいと思うのです。
  39. 木村俊夫

    木村国務大臣 その方針で検討したいと思います。
  40. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは長官お急ぎのようでございますので、あと一点だけお聞きします。円の調整の問題でございますが、田中大臣は、お帰りになった十七日の記者会見で、一二・五%程度の切り上げはやむを得ない——ちょっと間違っておればまたおっしゃってもらいますが、一二・五%やむを得ないというようなことが新聞にも出まして、それで、木村長官はやや異なる発言であったように私思うのです。できるだけ切り上げを少なくして、そしてワイダーバンド三%ぐらいですか、というようなことをたしかおっしゃったように私、記憶しておるのですが、この辺両大臣のお考えというものは相当食い違いがあるように思うわけでございます。その問題についてひとつまず木村長官からお聞きしたいと思います。
  41. 木村俊夫

    木村国務大臣 ただいま田中通産大臣否定されましたとおり、そういうことは政府としてまだ統一した方針はもちろん出ておりません。また、私が申しましたのは、日米会議の中で、マクラッケン経済諮問委員長と個別会談しましたときに、マクラッケン経済諮問委員長からの質問に答えて、個人的見解ではあるがという前提のもとに申したそのことであろうと思います。当然国益判断上、たとえ円の切り上げを行なう場合におきましても、その切り上げ幅はできるだけミニマムであるということは当然でございますが、しかしながらそれと同時に、国際的に協調が得られるということも一つの条件であろうと思います。したがって、マクラッケン経済諮問委員長質問いたしましたときは、そういう問題、円の切り上げを行なう場合に、なおあなたの言うとおりそれがミニマムである場合には、おそらくそれだけでは済まない場合があるであろう、たとえばクローリングペッグあるいはワイダーバンドというようなこともそこに併用して行なわれるべきではないかというように考えるが、その場合に一体日本としてはいずれの方法が望ましいか、こういうような非常にフリーな質問がありましたので、私もさらに、これは個人的見解ではあるが、ミニマムな幅で切り上げた場合を仮定しまして、その場合におきましても、いまあげられたクローリングペッグだとかあるいは自由変動ということは日本としても望ましいことではないと思うが、そこで考えられるのは、その場合に、従来の固定為替相場、いま御承知のとおり一%の幅を設けておりますが、それをかりに三%ぐらいに広げて、それを併用するのも一つ方法ではないかと思うというようなことを、きわめて個人的な見解のもとにマクラッケン経済諮問委員長に答えたのがそういう記事にあらわれたと思います。御了承願いたいと思います。
  42. 田中榮一

    田中国務大臣 一二・五%などということを考えたこともございませんし、言ったこともございません。新聞には、私のところに配達をされる版には出ておりませんでしたので、いま提示されて見てみましたら、そういうことがあったようでございますが、私は述べてはおらない。これは何らかの——私は少し早口でございますし、いろいろなことを言っているときに、いまどっちかにきめるなどといっても事実なかなかむずかしいんですよ、その例にIMFの試算でも二五%というのだから——二五%など切り上げ日本人がもつわけがない、話半分にしても一二・五%じゃないかということが、一番最後だけお聞きになるとそのようになるかなあということで、私がそう述べたものでもないし、もちろん政府の統一見解でも全くないということだけは明らかにいたしておきます。
  43. 近江巳記夫

    ○近江委員 この問題は非常にむずかしい問題であろうかと思います。それで私、先ほど冒頭に申し上げましたように、新潟県の燕へ参りまして、代表的な地場産業でもございますそういうところでそうした実態というものを見てきたわけでございますが、そういう点でこの為替の変動相場制移行に伴って、中小企業というものが非常にいろいろな問題を持っておるわけでございますが、政府としてもいろいろと対策をお考えになっていらっしゃると思うのですが、まだ正式に決定はなされていらっしゃらないようには思うわけでございます。そこで、こういう状況の中にある中小企業に対して、通産大臣としてはどういう対策でいかれるか、問題点は非常にたくさんあろうかと思いますが、その点について今日までのほぼ固まった線をひとつ御報告願いたいと思うわけでございます。
  44. 田中榮一

    田中国務大臣 まだ長期的な問題を討議し、固めておるわけではありません。でありますから、円平価の問題は、先ほどから述べられておりますように多国間調整でなければならない、相当長期間の討議を必要とするということであれば、当然変動為替相場制のもとで輸出既契約分をどういうふうにするか、新規契約をどういうふうに促進するか、また輸出業者、特に中小企業等の困難な問題を具体的にどう解決をするかということでなければならないと思います。その意味で、きのうも報道せられましたように外貨預託を行なったり、いろいろなことをきめこまかくやっておるわけでございます。通産省としましても、中小企業各種業界との意思の疎通をはかりまして、具体的にどういう問題が一番当面する問題としては問題があるのか、それは一体金融でカバーしていくような場合、それから別に措置しなければならないもの等、具体的な問題を詰めまして、中小企業にしわが寄らないように考えなければならない。なかなか長期的な問題になると思いますし、それだけではなく、下請の支払い遅延防止の問題が取り上げられたように、場合によればやはりこれはいろいろな制度上の問題にもメスを入れなければならない問題があります。輸出業者も中小企業の弱い面を見越しながら、三百円なら、三百二十円なら、三百三十円なら輸出商談をまとめてみるがどうだ、こう言われると持ちこたえられない、中小零細企業はだんだんだんだんたたかれてしまうということになるわけでありますから、そういう問題にメスを入れてやはり中小企業というものを守ってやらなければいかぬ。ここらでもってひとつ国際化の中における中小零細企業というものの像を明確にして、制度上整備をしなければならないものには手をつけてまいる、やはりこういうきっかけをつかまなければいかぬ、こう思っております。
  45. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま大体基本的な中小企業に対する考え方をお述べになったわけですが、きょうは中小企業庁長官もいらっしゃいますのでちょっとお聞きしますが、新規の輸出契約が非常にストップしておるわけです。そういう点で契約時での為替レートで日銀が買い上げる制度、外国為替買い取り制度ですね、これについて政府としてどういうお考えであるかどうか、これが一点です。  それから金融の措置でございますが、政府系の三金融機関につきましてはそれぞれ拡大考えていらっしゃると思うのですが、その規模なりが具体的にある程度固まっておればおっしゃっていただきたいと思うのです。それから信用保証協会の拡大について具体的にどのぐらい出ておるか。  それから為替差損についての考え方ですが、これについて非常に大きな打撃を受けておりまして、特に燕などではメーカーへ商社から全部持ってきておるわけですね。ですから、そういう六%なりというものをかぶせられてくると全然立ち行くことはできない、こういう点について政府はどういうふうに考えていらっしゃるか、この二点について中小企業庁長官からお聞きしたいと思います。
  46. 高橋淑郎

    ○高橋説明員 新規の商談が事実上ストップしておるということで、これを打開するということが私、中小企業対策として一番大事なことであると思います。  それで問題は二つありまして、船積みが終わったあとの手形の買い取りの問題と、それから契約から船積みに至るまでの問題とあります。船積み後の問題については、大蔵省との間の話もほぼ固まりつつあります。ただ一番むずかしいのは、契約から船積みまでの間に起こり得る為替リスクをいかにして回避して中小企業が安定した取引ができるかということについて措置を講じなければいかぬ。これは非常に困難な交渉でありますが、目下大蔵省といろいろと話をやっております。  それから第二点の金融の措置の問題でございますが、これは先ほども申し上げましたように、三機関に対してどの程度の規模で追加を行なうか、また利下げの幅をどうするか、その方法をいかにするかということを連日詰めております。  なお、御指摘のように金融が円滑に流れていくというためには、何をおいても信用補完制度の拡充ということが大事でございますから、これは結局は信用保証、それが保険というようなつながりになるわけですから、保険の引き受けワクの拡大、これはとりあえずすでに上期分として一千億の拡大を行ないましたが、さらに大きくこのワクを拡大していくということ、それから保険の限度額というのがありますが、これが現行の制度のもとではきわめて不十分であるので、特例措置としてこれを広げたい。それから大事なことはてん補率であります。このてん補率を引き上げる。こういうようなことを主体にして、これまた大蔵当局と折衝を鋭意やっておるという段階でございます。  為替差損の問題につきましては、この取り扱いは直接に補償するということはなかなか困難なように思われますので、税制上の措置とかあるいは金融上の措置とか、そういうことで対処すべきではないか、私はそのように考えております。
  47. 近江巳記夫

    ○近江委員 中小企業に大企業がしわ寄せをする。これはいままできまった一つのパターンのように思うのですが、これは公取などが今後うんと力を入れていただかなければならない問題でございますが、きょうは公取委員長は来ておられませんが、今後私たちとしても公取に取り締まりの強化をさらに要請をするつもりでございますが、大臣としても、大企業から中小企業、零細企業全部を、要するに通産省のもとで、また中小企業庁のもとで監督し、適切な手を打っていらっしゃるわけですが、そういう大企業から中小企業へ一切しわ寄せする、たとえば代金の支払いとかあるいは単価の一方的な切り下げとか支払いの遅延とかいろいろあるわけでございますが、こういう点、大臣として公取とともにやはりそういう監督は厳重にしていただく必要があるんじゃないかと思うのです。これに対して大臣の決意をお聞きしたいと思うのです。
  48. 田中榮一

    田中国務大臣 そうでなくとも変動為替相場制の移行、課徴金問題、それから将来円レートが移動するおそれがあるということなど非常に不安定な中で中小企業にしわが寄るわけでございます。特に不安定の中で輸出を継続していこうということになりますと、中小企業輸出にウエートのかかっておるものは、事情承知をしていても条件の悪い契約に踏み切るということが予測をせられます。そういう意味で、先ほども基本的な姿勢を申し述べましたが、中小企業に対して将来どうあるべきか。かつて商工委員会中心にして下請代金支払遅延防止法なるものが議員立法のような思想からできたわけでございますが、やはりあの当時のような気持ち中小企業にしわが寄らないように、中小企業が不当な圧迫を受けないように万全の配慮を行なわなければならないということでございます。でありますから、これからいろいろ優遇政策その他プラスになる面については地方財務当局等と十分連絡をとりながら、本省の財務当局とも十分連絡をとります。また金融に対しては、日銀等とも一般金融に対しても十分な連絡をとってまいりたいと思います。制度上は皆さんのお知恵も拝借をしながら、信用保証制度やその他のものをどうしていくのか、立法の必要があるのかどうかという問題もまじめに考えてまいらなければならないと思います。  それから、不当な圧迫を受けないようにということについては、やはり中小企業、零細企業が地方通産局とも連絡をしながら、元請に対しては弱いんだから、いろいろなことがあっても言えないというようなことがないように、組合等でこの問題をすなおに取り上げることができるように、通産省も出先機関を督励をしながら十分な配慮をしてまいるということでございます。
  49. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど一例としてあげました輸出依存度の高い地場産業でございますけれども、県独自で中小企業輸出関連倒産防止資金制度あるいは中小企業経済変動対策資金制度、こういう制度融資を始めておるように私は思うのです。これらの県に対してやはり国としてバックアップする必要があるのじゃないか、このように思うんですが、これについて大臣はどう考えておられますか。
  50. 田中榮一

    田中国務大臣 御指摘のとおり、なかなか制度だけでもってこのような応急処理ができない場合がございます。ですから、倒産防止とかつなぎ資金を応急的に確保していくためには、町、府県等が信用を提供しなければならないような場合もあるわけでございますので、このような問題についても自治省等とも意思の疎通をはかって、そのような前向きな姿勢に対応できるような状態を考慮してまいりたいと存じます。
  51. 近江巳記夫

    ○近江委員 約束十二時半まででございますので、もう終わりたいと思いますが、先ほど経企庁長官に、公共料金の値上げをはじめとした一連の値上げ問題について基本的な長官態度をお聞きしたわけでございますが、田中大臣として、私、特に影響力の強い大臣であると思いますし、これはもう全大臣がやはりそういう一致した姿勢に立ってもらわなければ困ると思うのです。その点、このメジロ押しに並んだ公共料金の値上げ問題に対して田中大臣の強い決意を最後にひとつお聞きしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  52. 田中榮一

    田中国務大臣 公共料金の引き上げは極力押えてまいりたいというのは自民党内閣の一貫した姿勢でございますから、私も自民党所属議員であり、閣員の一人としてこの基本政策の範疇にありということはひとつ御理解いただきたいと思います。ただ、私が申し上げておきたいのは、何でもかんでも公共料金といって押え過ぎた感じも一部になくはない、こういう感じがいたします。通産省が所管をしておる電気料金とか、それから厚生省所管の水道料金とか、ガス料金とか、こういうものは生活に直ちに影響のあるものでございますから、これは厳に抑制をしなければならないと思います。ただどうも自由に選択のできる鉄道料金とかそういうものに対して一切を押えることによって、地方の開発も全部できなくなる、しかも輸送の増強もできない、それが隘路になって生鮮野菜、物価にはね返ってくる、都市生活者は全くまいってしまうというようなものがもしありとせば、このようなものには画一、一律的ではなく、料金でまかなうもの、税金でまかなうもの等の区別というものはやはりなしていかなければならないのじゃないか。今度公共投資というものが拡大をせられなければならない。一対四であるというような——もちろん一のほうが日本でありますが、社会資本のストックがアメリカ日本は四対一であるということを述べてまいりましたが、このバランスをとるために公共負担をどう加味すべきかというような問題はもちろん野党の皆さんの御意見も十分伺いながら結論を出していくべきだろう、こういうふうに考えます。ただこれはあるものは引き上げるということではありませんので、しごく常識的のことを申し述べたということで御理解いただきたい。      ————◇—————
  53. 鴨田宗一

    鴨田委員長 この際おはかりいたします。  先般産業経済の実情を調査するため委員を派遣いたしましたが、派遣委員から、それぞれその報告書が提出されております。  これを本日の会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 鴨田宗一

    鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は本号末尾に掲載〕     —————————————
  55. 鴨田宗一

    鴨田委員長 午後二時から委員会を再開することにし、この際暫時休憩いたします。    午後零時三十二分休憩      ————◇—————    午後二時十五分開議
  56. 鴨田宗一

    鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。川端文夫君。
  57. 川端文夫

    ○川端委員 大臣に御質問いたす前に、一つ貿振局長からでもお答え願いたいわけですが、私ども輸出産業の工場へ行きますと、一番先に目につくのは輸出貢献企業として通産大臣の表彰状がりっぱな額に入れられてかかっておるわけです。したがって、本年まで輸出のために通産大臣の表彰状を与えた企業数がどれくらいあって、その中に中小企業がどれくらいおるかということがおわかりになれば、局長からお答え願いたいと思います。
  58. 外山弘

    ○外山説明員 輸出貢献企業制度は三十九年度に始まりまして、現在まで続いたわけでございますが、当時は、三十九年の数にしまして三千五百二十ほどでございますが、昨年四十五年度は五千七百九十三、それから四十六年度におきましては五千四百九十七の表彰企業を数えております。そのうち中小企業の割合でございますが、四十五年度の数で申しまして約八割が中小企業でございます。
  59. 川端文夫

    ○川端委員 そういたすと、大体四千八百なり五千近い中小企業輸出関係業者がおる、こういうふうに理解できるわけですね。——そこで皆さんの、皆さんと申しますか通産大臣の表彰した企業と、その企業につながる関連産業、従業員を含めると大体どれくらいの人が今回の問題でドル・ショックによって影響を受けるかということを何か計算されたことがあるかどうか、ひとつお聞かせ願いたいと思うのです。概算でいいです。
  60. 外山弘

    ○外山説明員 現在概算した数はちょっと持ち合わしておりませんけれども、もちろん先ほどの八割と申しました中には中小商社も入っておりますから、非常に数の少ない従業員しか持っていないところもあると思います。全体としてどれくらいになりますかわかりませんが、輸出の中に占める中小企業の割合が約四割でございますから、それで見ましても輸出国民経済全体に占める地位から見まして、その中小企業の関連の従業員なり企業の数なりは大体おおよそ察知できるかと思います。
  61. 川端文夫

    ○川端委員 そこで私は、大臣にお尋ね申し上げるわけですが、これらの昨年までは輸出貢献企業として表彰されてきた制度のもとに営々として輸出貢献をしてきた企業に、今年に入って急にいわゆるドル・ショック前から円切り上げの問題がいろいろ論議されて世評に伝わってまいるようになってから、政府も六月には八項目を実施してできるだけ円切り上げを繰り延べようと、こういう考え方でおいでだと思うのですが、それに違いありませんか。できるだけ円切り上げを引き延ばすために八項目の目標を立てて、円切り上げをしないで済むようにという努力をされたという、そのように理解してよろしいかどうかということです。
  62. 田中榮一

    田中国務大臣 円平価切り上げ回避のために八項目をやったのではないわけでございます。これは景気浮揚対策、その他輸出が好調になり、輸入は依然として低水準にある、また、世界各国から貿易バランスをとるようにという声も自然に起こってまいりますのと、国内的に八項目対策を具体的に行なわなければならないような状態にありましたので、一つ目標を持って行なったものではございませんが、いずれにしても国内緊急重点政策八項目ということでこれを決定し、推進に踏み切った、こう理解をいたしております。
  63. 川端文夫

    ○川端委員 貿易バランスをとるために八項目の設定をして調和をはかりたいという、その答弁はわかりますけれども日本の通貨問題は、きのうきょうの論議ではなかった。かなり前からいろんな学者の中からも、やがては円を切り上げるなり、通貨の問題を解決しなければならぬ時期が来るであろうということをたびたび指摘されてまいっておるものであって、この点に対して後ほど質問申し上げるニクソンの八月十五日なり六日の、ドルと金の交換停止というあのショックといわれる対策が、まさかというにはあまりにも見識がなさ過ぎるのじゃないかといわざるを得ないように思うのですが、いかがですか。
  64. 田中榮一

    田中国務大臣 あのようにきびしいものであるという想定はしなかったわけでございますが、私が通産大臣に就任をしたのは七月の五日でございますから、七月の六日に、九月初めにおける日米経済閣僚会議のときには、日本の外貨保有高は百億ドルをこすという状態において訪米をしなければならないかもしれないので、緊急な対策等は至急これを実施に移すべきである、特に公共投資社会資本拡大等に対しては、もう一度読み直して積極的な姿勢をとるべきであるということを公の席上で発言をしたわけでございます。でありますから、その前提となる数字は、私も久し振りで各国の外貨の状態をずっと調べてみましたら、当時だと思いますが、西ドイツのドル保有高百八十億ドルに近く、第二位であるアメリカが百十二億ドルかなにかだと思いました。日本が六十四億ドル、第四位のイタリアが六十一億ドル、これは百億ドルを割るなという感じでございました。金準備が百億ドルを割るような状態であると何らかの処置に出るなという感じでございましたが、あのくらいどうも具体的なものを相当前から用意をしておったとは理解できなかったわけでございます。
  65. 川端文夫

    ○川端委員 いまここでその政治責任を追及しようとは思いませんけれども、ただ一つ解せないのは、言うならば八月十六日に日本に伝わったこのドル・ショックといわれるアメリカの新経済政策というものが明らかになってから日本が為替変動制をとるまでの間、十一日間あったわけですね。その間にどういうことが国内に行なわれたかということを思い起こしていただくと、どうもいろいろな点で政治が後手後手を繰り返しているのではないか。大体伝えられるところによりますと、新聞情報でありますから正確かどうかわかりませんけれども、大体この十日間余りの間に四十億ドルないし四十五億ドル日本ににわかに導入されたと伝えられております。もしそうであるとするならば、日本円に直すと一兆四千四百億円になるし、四十億ドルと評価いたしましても、かりに将来平価変更が行なわれる、固定相場制になって変更が行なわれるとしたら、一二%の差があるとしたら、だれかが二千二十八億円の利益をあげた者になったのじゃないか、だれか不当利益を得た者がおるのではないかと伝えられておりますし、私らもそう疑わざるを得ないのですが、だれかに用意させるために十日間の猶予期間を置いたように思うのだが、いかがなものでしょうか。
  66. 田中榮一

    田中国務大臣 長いこと固定相場制でやってまいったわけでございます。その間においては一部のドル自由使用を認めよとか、またその後直接外貨貸し制度を行なうべきである、特に八項目政策の中の一つの項目として直接外貨貸し制度もあったわけであります。そういうものの結論が出ないままに八月十五日を迎えたわけでございますが、長いこと戦後ずっと固定相場制をとってきて、しかもIMFの十四条国から八条国になり、十カ国の主要メンバーとして日本から総務も出しておる状態において、これを変動相場制に切りかえるということ、また平価自体をどの程度変更するのか、私は財政当局として慎重に配慮をしたものだと思います。特にこれらの問題については日銀及び大蔵省が法制上も主導的な役割りを果たしておるわけでございますが、非常に専門的なものでありますから、私はあとになって考えてみて、八月十五日のニクソン政策発表後二十六、七日までにとられた変動相場制への移行、いろいろな見方やいろいろな批判は私はどんな場合でも存在すると思いますが、政府日銀当局がとったこれらの処置が不当なものであったというような感じは全然持っておりません。長い固定相場制の中から現在の変動相場制に移行するにはそれ相当の各国情勢ニクソン政策そのものの実態の把握、また日本の国内における金融市場その他の混乱を避けるという意味からいっても、専門的な立場から結論を出されたものだということを考えておる。われわれはその道の専門家じゃありませんので、また体系的にも勉強いたしておりませんから、(「前大蔵大臣」と呼ぶ者あり)私は大蔵大臣の経験者であるというにすぎないのであって、どうも学問的に田中論文を出しているわけでもございませんし、そういう意味であの当時大蔵、日銀当局がとったものは、あの事態としては是なり、それ以上の方法はなかったのだろう、こう思っております。
  67. 川端文夫

    ○川端委員 欧州ではマルクの切り上げなりフランの切り下げなり、いろいろな経験を積んでおいでるいきさつもあるけれども、直ちに変動為替相場制をとったり為替管理を強化したり、いろいろな手を打って投機的な導入を防いだ結果が、大して大きなドルの導入がなかった。日本だけが十日間の空白を置く間にだれかにもうけさせるためにやったのだろうと言われてもやむを得ない結果が出ておるではないか。この点にはやはり大蔵大臣ではなくてもやがては総理大臣と言われている田中さんが、そういう意味においてはもっと閣僚として発言は強化して指導性を発揮してもらってもよかったのじゃないか、それくらいわからぬ田中さんじゃないと思って、わざわざ大蔵大臣を呼ばないで聞いておるのだが、やはりこの問題に対してはある程度失敗だったという考え方がおありかどうかということ、これがやむを得ない妥当な対策だと言い切れるかどうかということをもう一ぺん念のためにお聞きしておきたい。
  68. 田中榮一

    田中国務大臣 結論的に申し上げると、衆参両院の予算委員会を開かれたときに、日銀総裁が専門家として、また責任ある立場として両院に答えましたが、私は聞いておって、その結論は妥当なり、こういう感じでございました。私もしろうとでございましたし、大蔵大臣在職中三年間にわたって、いまの佐々木日銀総裁、当時の日銀副総裁でございましたし、私もじっと答弁を聞いておりまして、専門的にはそうだろうな、こういうことでございましたから、結論的には至当なものである、こういう考えでございます。  私なりに考えると、ヨーロッパのような状態で直ちに変動相場制に移行したほうがよかったのか、またいまでも腰だめで円平価切り上げるべきだという議論も世の中にございますから、何で一体多国間調整にゆだねておるのか、このヘビのなま殺しのような状態輸出契約さえも進まない状態で、ずっといつまでいけるのかという問題でもって比較論争が毎日毎日続けられておるわけでありますが、変動相場制への移行が十日間あったということ自体もやはりそのような角度から議論はあるものだと思います。しかし、私たち日米間でも議論をしてみましたが、西ドイツのように日本が自発的に円平価切り上げ平価調整指導的役割り、推進力になってほしいというアメリカの要請に対して、必ずしもそうなり得ないのだということを述べたわけでございます。それは前提条件が違うわけでありますから、西ドイツのようにコストインフレ的な国内的な要請もあってみずから平価切り上げを行なう、それが指導的役割りを果たしたような結果になるということもございますが、日本自体としてはどうもそのように積極的な体制がとれるのかどうか、これは専門的に非常にむずかしい問題だと思います。私は通商産業大臣としては輸出業者が混乱をすることは非常に困るし、また特に中小零細企業等が金融でもって非常に困るというのも避けなければならぬことであります。また変動相場制へ移行することによって業者自身の利益が守られないということであるならば、これは守ってやらなければならない所管にございますから、私はそういう立場でものを見なければならないわけであります。しかし国務大臣として国全体の責任もまた当然負わなければならない、こういうふうに考えてみますと、日銀総裁大蔵大臣等の両院に対する説明等を静かに理解をするときに、結果的にはいろいろ議論が存在するにしても、事実あれ以外に手もなかったろうし、まあ理想というか、比較論争としては一番よかったのではないか、このように理解をいたしておるわけであります。
  69. 川端文夫

    ○川端委員 変動為替相場制をとったといってもまだまだ日銀介入が強いという国際的な批判もあるはずだし、それにしても現時点においてはわれわれは単独に円の平価変更をやるべきではない、多国間協議に持ち込め、こういう考え方を持っておるわけですが、その過程において一部のものをもうけさせたという見方は私の頭からは払拭できない、世間もそう見るんじゃないか。  そこで私は、ものごとにはタイミングというものが非常に大事じゃないか、こういうものの見方を考えざるを得ないのであって、変動為替相場制を十日間ちゅうちょしておる間に一部のものが利益をあげた、こうであるならば、それに浴し得なかった中小企業輸出業者の人々にはたしてそれに値するような恩恵をタイミングよく出せるのかどうかということ、後ほどこの委員会委員長提案によって決議案の上程がなされるわけでありますから、大体質問の要点はそこにお互いに盛り込んで尽くされておるわけでありますが、問題はこれを実行するタイミングというものが、やはり延ばせば一部もうかるものもおる、延ばせばなま殺しになって死んでいくものもおる、こういう問題のタイミングはいかに大事かということもあると思うのです。たとえば今日影響の強い繊維なり雑貨、機械等の輸出業者の中に、九月の半ばで大体今年度の成約が終わってあとの注文のないものもあるし、十月の半ばまでまだ注文残を持っておるものもあるわけです。しかしながら、大体十月一ぱいくらいに中小企業の受注は終わるのではないか、こういうのがいまの状態であり、その後のいわゆる契約価格の問題に対しては平価の問題が明らかでないためにやりにくいということで低迷しておる姿をどうお考えになっておるか、お答え願いたい。これらの問題に対して、この時間的な空間をなくするためにタイミングをどのようにいつやるべきか。おやりになろうとする誠意はたびたび聞いておるのです。新聞でも聞いておるし、テレビでも見ておるし、この委員会でも午前中もおっしゃっておるけれども、いつから実行してやるんだということがなかなかタイミングよく出てこないというところに中小企業の泣きどころがあるように思うのです。この点に対して、たとえば為替差損の問題なりそれらの問題に対してどのような対策を立てて、しかもタイミングよく心配のないように仕事のできるようにしてやるということを明確にできる決意があるならお聞かせ願いたいと思います。
  70. 田中榮一

    田中国務大臣 なかなかむずかしい問題でございます。その問題に結論が出ないのでいまみんな苦労しておるというのでございます。これは円平価が一ぺんに多国間協定によって九月のIMF総会までの間にちゃんときまれば、これは短い間のものでありますから、そこからすぐ変動相場制移行への為替差損をどうするか、またこれから、未回収のドル債権がございますから、そういうものの差損は一体どうなるのか、平価調整によるものが一体どうなるのかというような問題が出てくると思うのであります。ところが、非常に長期的な問題、しかもその長期的な中間的な妥協案のような、大勢としては中間的、やむを得ない処置としては変動制にかわるものもいま見当たらない、腰だめの平価調整もできない、こういうことをいっておるのでありますから、ほんとうに相手のある話であるということで、ヘビのなま殺しのようなものになっておるわけでございます。だからそういう状態において中小企業輸出契約ができないというようなものに対しては、できるようにするのにはどうするか、またいま金融でもって非常に困っておるものが、一体どういうふうに金融手当てをするか。それで最後はきまってから、これはいろいろな制度上の欠陥があれば、それまで調べてみてどう救済するかという問題が出てくると思います。私も、この問題が起こってから、しろうとながらいろいろな法律を見てみましたが、なかなか合理的なようで合理的にできておらぬというのが法律のようであります。政治家がつくればもう少し合理的な法律をつくりそうなものだがなと思ったわけでございますが、政府がつくった法律はなかなか官僚的になっております。これは見て驚いたのです。ドルは一切保有しておってはならない。政府に売らなければならない。しかし、政府は必ずしも買わなければならないというふうに書いてない。ちょうど食管制度がそうなんです。政府に売らなければならない、しかし政府は買わなくてもいいのだ。何てこううまい法律をつくったものだろうというふうに私自身は見たわけでございますが、新しく新憲法下議員立法でもやればこんな法律はつくらないと思うぐらいに、いろいろな法律を勉強してみますと、法律の条文の中にはめんどうな条文があります。しかし、条文そのものとは別に、現実に為替差損が生ずる。とにかく造船企業などは二兆円という長期債務を持っておるのですから、これが一〇%平価調整でもって切り上げられれば、二千億は直ちに損をするわけでありますから、一体これをどうするかというのが避けがたい論争だと思います。そういうものはやはり別に考えまして、いま当面するいろいろなネックを除去することに全力をあげて、その他の問題は、日本株式会社ともいわれておるように、やはり日本人は一つだと思うのです。そういう中で、やはり優先順位がありますから、画一、一律的に補償するということはできません。これは国会審議を経て何らかの立法措置を行なうとか、その他のことでなければ処理できないわけでありますから、国民全体が納得をするような状態で、この為替差損その他の問題は最終的に結論を出していただくということで、御承知のとおりいま政府に結論を求められてもちょっとお答えができない、また、政府自体がお答えをすることは専断に過ぎることである、これは国会の論争に待つべきであろう、こういうことでございます。
  71. 川端文夫

    ○川端委員 なかなかじょうずに答弁して、土俵に上がってくれないので、われわれ相撲をとりにくくて困るのですが、そこで問題は、お話がされておるけれども、一昨日ですか、水田大蔵大臣が、この通貨の問題に対しては長期のかまえが必要であるということを明確にされておる。私どもは、できるなら来月行なわれるIMF会議において結論が出ないものかという期待をかけておるのだが、これも容易でないということを大蔵大臣が言われておるとすれば、待ち切れぬ、いわゆるその期間中に死ななければならぬ中小企業が多く出てくるおそれが強くなってきておるわけですから、いうなれば、この際思い切ってそういう為替変動制によって仕事が停滞しておるものに対しては、長期、無利子の資金を出すとか、思い切った勇気がやはりいまの時世には要るのじゃないでしょうか。たとえばニクソンが、あれだけ米帝国主義といわれておった中国へ、日本に話もしないで頭越しに訪中するようなことが行なわれる今日の時世ですから、やはり政治が思い切って優先してこのような為替差損等の問題を憂えて、なかなか協定できないものに対しては現在の相場で一応政府責任を持ってやるから契約しなさい、今後のものに対しては長期、無利子で相談に乗るから仕事をしなさい、契約しなさいというぐらいのことは言えないのでしょうかね。あなたがしろうととおっしゃるなら、われわれはそのまた輪をかけたしろうとなのでお尋ねしているわけです。
  72. 田中榮一

    田中国務大臣 八項目政策も実施しなければならないということでございますし、日米間の協議を終え、日加間の協議を終えてまいりまして将来を予測しますと、相当予測できることがまだあるわけです。いろいろな問題が具体的にあります。そうであるならば、これらの情勢に対応して、日本が国内的な体制を整備しなければならぬということは、もう腰だめではどうにもならないというような緊迫感を持っておりますので、国務大臣立場として、所管事項はもちろんのこと、それ以外の問題であっても、臨時国会を控えておるわけでございますから、臨時国会に法律的措置を必要とするものに対しては積極的な意見を述べる、事務当局をしても検討させ、成案を得るものに対してはタイムリミットを置いてどんどんと片づけてまいるという気持ちがあることは事実でございます。いずれにしても、まだ帰ってまいりましてからすぐ日曜日であり、きょうはすぐ国会にということで、まだ事務当局全部を呼んでお互いが意見交換もできないような状況にございます。しかし私は、アメリカにおりますときにも、事務当局に省としてなさなければならない問題は具体的に連絡をしてございますし、通産省をあげていま御指摘になったような気持ちで、新しい産業政策の一環としてスタートすべきものはスタートしてまいろう、また応急的に処理をしなければならないものに対しては、過去の例のあるなしにかかわらず、これこそ過去に例がなかった戦後初めての事態でありますので、対応する施策に遺憾なきを期してまいりたい、こう思っておきます。
  73. 川端文夫

    ○川端委員 時間もありませんから、ただ一つ、先ほどからお話を聞いておると、なかなか考えがまとめにくいという結論のようでありまして、もう少し検討させろというようなことも含めてのお話であったと思うのですが、このことに対して、いまここに私は申しませんけれども、社公民の政策審議会長が集まって、できれば自民党の政策審議会長にも入ってもらって、国会の意思として、きょうの商工委員会できめるものよりももう少し具体的なものをつくって政府に申し上げよう、こういう方針でいま準備してくれておるようであります。そこで、それらのときに、野党が言うからなんというようなことで時間を延ばさないで、いいことなら聞くという、こう少し将来の総理大臣らしい、田中さんらしい勇断をもって受けて立ってほしいということを希望しておきたいわけです。これは希望ですから答弁は要りません。  ここで、時間がなくなったからこまかいことは言いませんが、たった一つ別な意味で、一昨年来の不況の中にさらにこのドル・ショックの問題が加算されてダブルパンチ的な影響が深刻になってきておる現状は御存じのはずだと思うのですが、そこで私は、日本長期のかまえをするとするならば、景気浮揚策として、一つの問題だけでなく、土木事業や何かやるだけではなくて、いまこそ中小企業の体質改善をする時期だというこのかまえをもって、大ぜいでやれば、一台ずつ機械を買ったって何万台と注文が出るわけですから、これらの対策もあわせてやってほしい。やれるはずだ。予算さえふやせば従来の制度でできるはずだし、もう一つは、いままで政策金融として、いろいろな構造改善なり近代化資金を借りて仕事をしてきた連中が、中小企業の受注の状況を見ますと、大体仕事が半分になっております。これらの中で、その月その月のバランスをとるのが精一ぱいで、弁済金まで回ってこない。そういう意味で非常に黒字倒産的な傾向もかなり加わっていく、この暮れには多くなるのではないかという心配もしているのでありますから、過去に政策金融として貸した中小企業の金に対しては、長期繰り延べの弁済を認める、あるいは利子補給なり利子を下げてやるということはできないものかどうか、ひとつお答え願いたいと思います。
  74. 田中榮一

    田中国務大臣 いまお述べになりました具体的な問題に対して具体的にいまお答えをする段階ではございませんが、基本姿勢に対しては全く同じ考えでございます。農業問題に対して系統金融をやっておりますし、利子補給、無利子の制度等を行なっておりますが、このような問題から政策が一歩変わって、休耕をしなければならない、他の用途に転換をするというような場合、いままでの制度に対しては全く別な法制上の処置がとられておるわけでございますから、中小企業や雰細企業というもの、対症療法だけではなくて、長期的に日本産業政策の中で中小企業をどう位置せしむるかというような考え方とあわせていまの対症療法をやるわけでございますから、私は法律は不動なものであるのではなく、やはり中小零細企業対策というものはどうしてもやらなければならない不動の政策であるということで、いままでのものを根本的に改める必要があれば改めることにやぶさかではない。これはもう全く根本的にメスを入れるものがあれば当然入れるべきであるという考えでありまして、あまり過去のしきたりやそういうものにとらわれないで、新しくこれからも起こり得ることが予想されますから、そのときでも中小企業や零細企業が二十五年、三十年、五十年同じ政策をやっているというようなばかげたことはありませんから、そういう立場でひとつメスを入れるという基本的な姿勢だけ明らかにいたしておきます。
  75. 川端文夫

    ○川端委員 最後に一つだけ。午前中も質疑がありましたが、信用補完制度の問題、これは今日こそ保険制度ができて、かなり国の影響力が強くなっておりますけれども、大体スタートは地方自治体が保証協会をつくって育成してきている歴史があるわけです。そうして代位弁済ということで地方出資をして今日まで育成してきておるわけです。しかもいま地方自治体が独自に幾つかの府県では、このドル・ショックに対する中小企業対策として資金を出すということをそれぞれの府県で発表いたしておるわけです。こういうときに、関連のあるこの信用補完も大きな役割りを持たなければならぬときに、地方自治体と相談されておるように見受けられないのですね。いわゆる地方自治体を集めてこれらの事情を話して信用補完制度協力を求める、国が協力を求める姿勢があってしかるべきだと思うのだが、この点はおやりになっているかどうか、もう一つだけ聞いておきたいと思う。
  76. 田中榮一

    田中国務大臣 私は閣議の席上、あなたがいま述べられたようなことを自治大臣に要請をしてございます。また事務当局でもそのような連絡はあるようでございます。私は新潟県の選出でありますが、特に新潟県では大きな問題が二つ、まあ日本の縮図のような状態でございます。それは一つは燕の洋食器でございます。洋食器産業の九九%が燕であり、あと一%くらいが岐阜県の関であるということでございますから、これは町全体が影響をこうむっておるわけでございます。特にもう一つは見附、栃尾というところに繊維の町がございまして、これもまたたいへんでございます。  ですから、いまあなたが述べられたように、組合が共同して信用担保を出すというような域を越えておるわけであります。ですからその意味では、市が保証してもらう、それから県が共同で担保を提供してもらうというようなことに踏み切ってもらわなければ、政策を行なうまでにもたない、こういう事実がございますので、これは県選出代議士として要請をしておるわけでございますし、同じようなことを閣議では通産大臣として要請をいたしておるわけでございますので、それらの問題に具体的に対応できるように、先ほどもここで御答弁申し上げましたが、必要があれば財政当局、また自治省当局にも十分理解を求めながら、町ぐるみ、県ぐるみでもってやらなければ、とても持ちこたえられないという面があると思いますので、臨機応変に処置してまいりたい、こう思います。
  77. 川端文夫

    ○川端委員 最後に、時間が来たようですから一言だけ。  田中通産大臣の心情というか意気込みは十分理解しました。しかしながら、裏づけになる問題ともう一つは時期の問題、タイミングの問題に対しては、どうもまだ信用できない面もあるから、まあしばらくの間見守りながら、勇気を持ってやってもらいたい。しかも時期をはずさずに実行してもらいたい。このことを強くお願いして、私の質問を終わりたいと思います。     —————————————
  78. 鴨田宗一

    鴨田委員長 この際おはかりいたします。  現在中小企業、特に繊維、雑貨等を中心とする輸出関連中小企業は、米国の新経済政策、特に輸入課徴金制度の実施及び円の変動相場制への移行等、最近の国際経済情勢の激変によりきわめて深刻な事態となっておりますので、この際、国際経済情勢の激変に対処するための中小企業緊急対策に関する件について決議をいたしたいと存じます。  本件につきましては、先刻理事会において御協議をお願いいたしましたところ、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党間の協議がととのい、お手元に配付いたしておりますとおり案文がまとまりました。  まず、決議の案文を朗読いたします。     国際経済情勢の激変に対処するための中小企業緊急対策に関する件(案)   米国の輸入課徴金制度の実施及び円の変更相場制への移行等によって、不況下に悩む中小企業は、まさに深刻な打撃を受けるに至っている。   特に、繊維、雑貨、軽機械部門等の輸出関連中小企業は、新規輸出契約が停止され、このまま放置すれば、操業停止のやむなきに至り、一部においては地域ぐるみのパニック状態を現出するおそれもある。   よつて政府は、従来の中小企業政策の大転換を図り、新たな観点に立って、速やかに左記事項を決定、実施すべきである。      記  一、中小企業輸出成約の停滞を打開するため、当面、中小企業に限り、日銀の外国為替手形買取り制度を早急に復活拡充するとともに、商談成立時以降の為替変動リスクをカバーする緊急暫定措置を講ずること。  二、中小企業者の減産・滞貨金融の円滑化を図るため、政府関係中小企業金融三機関等の融資枠を拡大するとともに、特利の適用、返済期間の延長等融資条件を緩和し、このための所要の財源措置を講ずること。    なお、中小企業信用補完制度については、中小企業信用保険公庫の引受枠を拡大するとともに、保険料の引下げ、てん補率の引上げ、実情に即応した新種保険の創設等の措置を講ずること。  三、中小企業者の為替差損については、適切な救済・補償措置が講じられるよう検討するとともに、直接、為替差損に該当しない波及的損害についても負担軽減の措置がとられるよう配慮すること。  四、中小企業者のうち事業の転換を余儀なくされるものについては、事業転換を円滑に行なうことができるよう適切な指導を行なうとともに、金融、税制等必要な措置を講ずること。  五、下請中小企業は特に深刻な影響を受けることにかんがみ、親企業の下請企業に対する下請代金の支払遅延等下請関係の悪化を防止するため、監督官庁の立入検査等監督を強化すること。  六、不況を早急に克服するため、強力な景気浮揚策を講ずるとともに、中小企業者に対する官公需の増大に努めること。  右決議する。 以上であります。  おはかりいたします。  ただいま朗読いたしました案文を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 鴨田宗一

    鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたします。  この際、政府から、ただいまの決議に対し発言を求められておりますので、これを許します。田中通商産業大臣
  80. 田中榮一

    田中国務大臣 ただいまの御決議に対しまして、政府は各省連絡をとりながら遺憾なきを期してまいりたい、かように存じます。
  81. 鴨田宗一

    鴨田委員長 なお、本決議の議長に対する報告及び関係方面への参考送付の取り扱いについては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 鴨田宗一

    鴨田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  83. 鴨田宗一

    鴨田委員長 引き続き最近の国際経済情勢に伴う通商及び産業経済政策について質疑を続行いたします。中村重光君。
  84. 中村重光

    ○中村(重)委員 通産大臣にお尋ねをいたしますが、御承知のとおりにわが国の経済に深刻な打撃を与え、またIMF、さらにガットの崩壊の危機に直面するという重大なアメリカの新経済政策中心にしまして、さきに日米経済合同委員会が開かれたわけであります。その中で事の重大性にかんがみまして、日米双方とも相当突っ込んだ活発な論議が展開をされたようであります。私ども日本経済協力の実態を調査するため実は中南米を回っておりまして、昨日帰ってきたわけであります。ちょうど経済委員会が開かれておりますときはまだ南米のほうにおりまして、非常に関心を持って私どもも現地の新聞の報道を実は見守っておったということであったわけです。結論といったようなものは出ていないようでありますけれども、私はそれなりの意義というものを見出しておるのではないかと思うのですが、今回の合同委員会におけるその意義、あるいは通産大臣がそれに対するそれなりの評価をしておられるとするならば、その点についてひとつ考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  85. 田中榮一

    田中国務大臣 日米経済閣僚会議交渉の場ではなくて、意思の疎通をはかり、互いに理解の度を深めるということで設立をされたもので、回を重ねておるわけでございます。しかし去年はこの会議を行なうことはできなかったわけでございます。やはり毎年やろうというのが一年間何か省かれたというようなことは、日米間の意思の疎通を欠くことになったと思います。ですから、私たちが冒頭から申し述べたのは、どうもそんなに強くもない日本経済力を最大級に評価をして、あたかもことし想定されるアメリカ国際収支逆調日本からの輸入によってそのようなことが起こるのだというような判断は、それは誤りであります。ですから、日本アメリカとの関係をもっと数字によってこまかくひとつお互いに理解するようにいたしましょう。ことしは確かにアメリカ貿易収支初めて二十億ドル赤字かもしれませんが、そしてちょうど日本からのアメリカに対する出超が二十億ドルであるので、二十億ドル日本からのアメリカ向け出超をとめれば、アメリカの問題が片づくというのではないと思います。同時に一九五一年から七〇年までの二十年間の統計をとると、アメリカの統計を見ても三億二千万ドル日本の入超である。日本の統計をとれば四十六億ドル日本の入超である。七〇年ベースでもって考えればアメリカ企業から三十億ドルも石油その他を買っておりますから、去年だけでも二十六億ドル日本の入超でございますから、そういうものもひとつずっと土台として考えて、将来どうなるか、それに思惑輸入がどうなるか、日本の景気が非常に悪い、アメリカの景気がいいという反対の経済情勢の中にあるときに、過去に何回も輸出ドライブが行なわれたことがあるので、一体そういうことはどうなるのか、八項目の実施に対して景気が浮揚され、民間の設備投資拡大にどのくらいなテンポで結びつくのか、輸入拡大に結びつくのがいつかということをこまかく述べまして、一日目よりも二日目、二日目よりも三日目ということで、少なくとも最終段階における共同声明では、両国は互いに理解をして結論を出したわけでございますから、やはり会議はそれなりに意義があった。もちろんこれは次回の会議を待つまでもなく、日米はひんぱんに会合しながら接触をして理解を深むべきである、それが両国の利益を守ることであるというふうに理解をしたわけでございます。  もう一言申し上げると、この次にアメリカは何を考えているか、何をやりそうだなというようなことも何かわかるような気がいたします。そういうことをさせないためにはどうしなければいかぬかなということを暮夜ひそかに考えておるわけでございますので、それだけ意義はあった、こういう感じであります。
  86. 中村重光

    ○中村(重)委員 先ほど来同僚諸君からいろいろ質問がなされたわけですが、その中で変動相場制で公正な為替相場が実現をしていないということについて、日銀のこまかい介入というものはあるのではないかといったような指摘に対して、通産大臣としても、活発な営業活動をするように対処することが必要であろうという意味のお答えがあったように記憶をいたしますが、そのことはきびしい為替管理をやはりゆるめなければならないであろうという考え方の上に立ったお答えであったと理解をしてよろしいのかどうか。
  87. 田中榮一

    田中国務大臣 固定相場制をとっておらない、変動相場制に移ったのでありますが、この変動相場制も変則な変動相場制でございます。これを全然介入しない、相当なところまで上下の幅がある、ワイダーバンドは全くフリーであるということではなく、とにかく変動相場制に移ってはおるが、為替管理は基本法に基づいて適宜やります、こういうことを前提にして変動相場制に移っているわけでございますから、非常にやりにくいということはよく理解できます。そういう意味でネックになっている問題は具体的に摘出をして、そうして既契約のものをどうすれば円滑に契約を遂行できるのか、新規契約を推進するためにはどうすればいいのか、中小企業が十分な金融を受けられるためにはどうするのか。あとに残るのはリスクの問題です。このリスクの問題でもなかなかめんどうな問題があるのです。学問的にも実際的にも制度の上から考えてもむずかしい問題があるようでございますが、これは最終的には国会が意思をきめれば済む問題でございますから、その為替リスクの問題そのものに対して結論を出すことは、これは国会の意思がきまらなければむずかしい、私はそう思います。しかし現実的にネックになっているものだけは排除しなければならない、こういう意味から考えると、いまよりも民間で、産業界で、輸出業界で必要とする方向で緩和をしてまいる、適切な処置をするというのは当然のことだと思います。
  88. 中村重光

    ○中村(重)委員 木村長官にお答えをいただいたほうがいいと思うことは、この平価調整が相当長期化するということは十分予想される。そう長期化するにいたしましても、かりにそれは解決をするにいたしましても、わが国の経済に大きな変動がもたらされるであろうということは、先ほど来新しい体制確立が必要であるということを両大臣ともお答えになったわけでありますが、そうなってまいりますと、わが国の経済成長の主要な指標というものをどう描いているのかということが問題になってくるのではないか。その点に対しての考え方がありましたらひとつお答えをいただきたいと思います。
  89. 木村俊夫

    木村国務大臣 このたびのいわゆるドル防衛措置によって、わが国の経済がいろいろ各方面において相当な影響を受けるということは当然でございますが、特にその中で、輸入課徴金、これがわが国のいままで回復過程に向かっておった、経済指標その他から出てきます一般的な情勢にいろいろ影響を与えておる。私どものほうで、この課徴金が課せられたことによって、昭和四十六年度中にわが国のGNPにどの程度の影響があるかということを、これはきわめて大胆でございますが、試算をいたしましたところ、四十六年度中で約一%経済成長率を低下させることになるというようなことも出ております。ただ、いま御指摘の為替変動相場制に移行したことによって、わが国のいろいろな経済指標あるいは経済成長率にどの程度の影響があるかということについては、現在とにかくフロートに移っておりますが、これがどの程度の平価水準に落ちつくかということがまだきわめて流動的であり未確定でございますから、それについての大胆な試算はできないような状況でございます。この為替相場変動がかりに五%程度とすれば、これまた昭和四十六年度中において一%くらいのGNPに対する影響が出やしないかというような、これはきわめて大胆な試算で、政府部内の統一した考え方ではございませんが、そういうような影響を考えております。
  90. 中村重光

    ○中村(重)委員 時間の関係がありますから議論をする余裕はないわけですが、そこで、私ども先ほど決議をいたしました中に、景気の浮揚をはかるということに実は触れたわけです。政府も、景気の浮揚策を講じなければならない、次の臨時国会において補正予算を御提案になるという。ところが、景気の浮揚策は講じなければならぬけれども、その浮揚策でインフレ化するということになっては、国民の生活の安定ではなくて、さらに大きな不安定になるであろう。どのような浮揚策をとるかということ、またその浮揚策の中で日本経済をどういう姿に持っていくのかということが問題になってくるのではないかと私は思います。景気の浮揚策をお考えになります以上は、描いておられる姿、それは当然なければならぬと思っておりますから、その点に対する考え方をこの際明らかにしていただきたいと思います。
  91. 木村俊夫

    木村国務大臣 今回のいわゆるドル防衛措置、これによってわが国の経済にいろいろ大きな影響がございますが、この問題と別個に、われわれとしましては、従来の日本経済政策あり方基本的に修正すべき時期にすでに来ておったのだというような理解を持っております。したがいまして、今後特に、今回のニクソン大統領の声明によって生じたいろいろの日本経済に対する影響ももちろんその促進の要因にはなっておりますが、それとは別にいたしましても、今後の日本経済政策あり方というものを、先般私ども経済企画庁できめました経済白書の中にすでに明らかにしておりますとおり、従来の民間設備主導型の経済政策より財政主導型の経済政策に思い切って転換すべき時期ではないか。したがいまして、従来のGNP成長に非常にウエートを置いたやり方から、今後は社会資本の立ちおくれを挽回して、いわゆる国民生活、また福祉に中心を置いた経済政策に転換すべきではないか、そういう時期にすでに到達しておるという認識のもとに、今年度の経済白書を「内外均衡達成への道」という副題のもとに決定したことは御承知のとおりでございます。したがいまして、この経済白書でわれわれが考えましたこの路線は、ニクソンドル防衛措置によって強まりこそすれ、むしろわれわれとしてはこの機会に、思い切っていま申し上げた経済政策の転換をはかるのに天与の好機ではないかということさえ考えておる次第でございます。
  92. 中村重光

    ○中村(重)委員 この際私は、田中通産大臣に、インフレなき景気浮揚策、どういう方向へ持っていったならばインフレへの懸念というものがなくして景気の浮揚をはかることができるのか、その点についてあなたの考え方を端的にお聞かせいただきたい。
  93. 田中榮一

    田中国務大臣 これからの問題の中でそれが一番大きな問題だと思います。とにかく財政で景気を刺激するという最もオーソドックスなやり方で景気を刺激する、また考え方によっては低開発方式をここで強行しようというわけでございます。財政が景気刺激の主導的役割りをなす、こういうことでありますから、これはもうインフレ問題がついて回るわけでございます。ですから、インフレなき財政による景気刺激ということはめんどうなことであるが、これはどうしてもやらなければいかぬということでございます。財政が先行しないと第二次的な動きをする民間の設備投資意欲はついてこない、設備投資意欲が刺激をされなければ輸入拡大につながらないという、もうだれが考えてもわかっている、小学校の算術のような経済政策をやるわけでございます。それだけにインフレなき投資というのはなかなかむずかしいと思います。むずかしいけれどもやらなければいかぬ。そういうときで、今度は議論倒れではなく、相当突っ込んだ意見交換をして、与野党ともこれならインフレなき投資ができるのだということにならなければいかぬと思う。それはやはり、いま木村長官がいみじくも述べられたように、当然拡大をしなければならなかったもので不足をしておる社会資本、それなるがゆえにそれがインフレへの淵源になっておるというような問題、隘路やネックが物価問題の一つのポイントにもなっておるとしたならば、それを除去するための投資はインフレなき投資と言い得るわけでございます。  ですから、オーソドックスな議論として今度考えられる政策の中では、四半期、四分の一として減税をやろうということをいっておるわけであります。画一、一律的な減税政策というものはこれは景気浮揚にはつながりますが、必ずしもインフレなき投資にはつながらないわけであります。しかしこれはどうしてもやらなければいけない。これは課徴金だけでもGNP一%、この一%を財政だけで浮揚すると五、六千億、大ざっぱに考えて五、六千億ぐらいの投資を必要とするだろう。ですから、この間四千八百十億の財政投融資の拡大をいたしたわけでありますから、あの上五、六千億やると、新聞に出た一兆円ベースになるわけでございます。それがもう二千億ばかりプラスをされて、四千八百十億プラスの合計が一兆二千億程度になれば、何とかかんとかいっても二%程度押し上げる力にはなるということになります。しかし、現実的に一〇・一%年率を考えておったものが、その後変動相場制にも移りましたし、平価調整ももう堂々と議論をされておるということになると、これは三%ぐらい押し上げなければならぬということになれば、もっともっと計算上投資が大きくならなければいけませんので、今度は腰だめでもって二次、三次というようなことではもう間に合わないということだと思います。ですから、そのインフレ的な要因になるおそれがあるというのは、いままで申し上げた中で画一、一律的に減税を行なうというようなもの、これは減税を行なうが、別に資本蓄積やその他でもって吸い上げの方法がちゃんと処置されておれば別でありますが、そうでなく消費にそのままつながるということだけを考えた面は、これは必ずしもプラス要因だとはいえないわけであります。そのインフレなきという面からいうと問題はあります。ですから、その他もっともっと大きな投資という面をインフレに直結させないというと、これはいままでは与党、野党との対立の焦点になっておりましたが、今度は与野党とも一致になると思うのです。それは量的な問題ではなく質の問題、今度投資をされるものがネックの解消であり、そういうものを解決しなかったからインフレになったのだというものありとすれば、そういうところに投資をしなければいかぬ、こう思うわけであります。ですから、その意味で住宅の高層化とか、それから質の問題、規模を拡大するとか、ハウジングが一つの大きなポイントだと思います。それから道路の幅がいままではどうにもならなかったものを三倍にしなければいかぬとか、それから起重機とか、港湾の規模を何倍にするとか、こういう直接つながるものがあるのです。だからまずそういうもの、学校や病院その他もみなそうでありますが、ですから、今度拡大される中でただ画一、一律的に金をばらまけばいいのだというわけにはまいらないので、これはちょっとあるところはがまんしていただいても、これだけ四兆一千億余も計上されておる四十六年度予算の中の公共投資プラスほんとうに大きな額のものが集中投資されるわけでありますから、やはり質の面は相当吟味をして、量から質への転換をここで進めていくということでないと、どうしても結論的にはインフレを伴う投資ということになりやすいので、これはとにかく野党の皆さんからも今度はやらなければいかぬなと御推進を願えるような内容をひとつ国会に出したい、こう思っております。
  94. 中村重光

    ○中村(重)委員 与野党今度こそ完全に一致し得るインフレなき景気浮揚策、それはひとつ大臣がいまお答えになったような構想で十分な自信を持ってひとつ提案をしてもらいたい、また、政策を打ち出してもらいたいということを要請をいたしておきます。  それから、先ほどもどもも決議の中にも明らかにいたしましたし、同僚の皆さんからも指摘をいたしましたのは、為替変動相場制の中で中小企業者の為替リスク、これをカバーしなければならぬ。この点は大臣も異存がないところでございましょうが、さてその方法論はどうするかということになってくると、これはたいへんむずかしい問題でありましょうし、大蔵省もお金の面でこれを渋るということになってくる。しかし、これはぜひやらなければいかぬということになってまいります。具体策はどのようにお考えになっておるかということをお尋ねをしなければならぬところでありますが、時間の関係もありますから次のこととあわせてひとつお答えをいただきたいと思うのです。  昨年の十一月であったと思うのですが、停止されております日銀の外国為替手形買い取り制度、これは当然この復活、拡充をしなければならぬと私は思う。この点に関してどのようにお考えになっておられるのかという点であります。またそれだけではなくて、波及的に大きな影響を受けた中小企業者に対する損害をどうカバーしていくか、これも決議の中で私どもは強く触れているところでありますから、それらの点に対して、この際通産大臣の御所見を伺っておきたい。
  95. 田中榮一

    田中国務大臣 財政当局とも意思の疎通をはかりながら万全の体制をとってまいりたいという基本の上に立ってお答えを申し上げるわけでありますが、当面する問題としていま輸出契約が停滞をしておるというようなことがありますから、これが解除され、契約が進むようにしなければならぬ、そのために手形買い取り制度拡大等、制度上の問題をまず解決しなければなりません。そのためには新聞にも報道されましたように外貨の預託その他も必要であります。これからは、厳密な状態よりもだんだんと幅のある変動相場制に移っておるのでございますから、いままでの固定相場制の時代のように自主運用を絶対にさせない、それから外貨貸しは困りますというようなことでは、これはいままで財政当局かたくなに固い基盤を守ってまいりましたが、これからは、やはり為替変動のリスクを全部国が法律的に負うという制度になっておらないだけに、ある程度柔軟な体制というものが制度の上でも認められていかなければならないのだろうということを考えておるわけであります。  第三の問題は、これは将来的な問題、為替リスクを一体どうするのかという問題、これは変動相場制に移ったその中におけるリスクの問題、これから変動相場制の中で変動相場制を承知のもとでみずからレートをきめて商売をしたが、しかし法律的には三百六十円レートでもって仕切っておるのじゃないかというその為替差損といいますか、為替差金というものをどう国は処理してくれるのだという問題が当然出てくると思うのです。平価調整が行なわれたときに、三百六十円と平価調整との差額をどうしてくれるのかという問題、みな出てまいります。  ですから、そういう問題は日本国内における企業と国との問題でございますから、それは税制でもってカバーされるものがどうなるのか、金融でカバーされるものがどうなるのか、現実的に三百六十円マイナス何がしかの差額を国民の税金の中から負担するということはなかなか結論として私はできないと思います。しかし、救済をする方法というものは幾多考えられることでございますし、これはやはり国会の英知がしかるべき結論を出すであろう、こういうことを考えております。国会へ出すまでには、政府国会の英知だけにまかしておるわけではありません、無責任なことを言っておるわけではございませんので、政府政府として責任のある案をお出しをして国会でもって御審議をいただき、必ず国民が納得する結論が出される、こう考えておるわけであります。
  96. 中村重光

    ○中村(重)委員 外国為替の買い取りの制度復活、これだけではなくて、やはりこれに加えて外国為替手形を買い取るこの予約制度ですね、これは私は新設になるのだろうと思うのです。ところが、これは異例なことで非常にむずかしいことだと思うのですが、これはやらなければ問題の解決にならないと思うのですが、この点の考え方はいかがでしょう。
  97. 田中榮一

    田中国務大臣 法律事項ではございませんので、財務当局と意見を交換しながら救済措置の一つとして合意点が得られれば十分制度上発足ができる、こう考えております。
  98. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから今回の輸入課徴金、それから外国為替市場の閉鎖、それから私ども今度アメリカに参りましてアメリカの進出をしているところの企業、金融機関を含めていろいろな団体との懇談会等実はやったわけですが、港湾ストの影響ということが非常に深刻であるということが実はわかったわけなんです。金融機関というものは、これは現地法人でありますから、一企業に対する貸し出し金額というものが押えられてきている、それから預貸率というものが非常に悪化してきている、手も足も出ないという状態の中にあるのですから、だから、外貨貸しというものを強く望んでいるわけです。この点に対しても何らかの措置を講じていくのでなければならないのではないかというようにも実は感じたわけでした。  それから輸出保険というものが相当事故が出ているのではないか、出ておるとするならば実績がどうなっているのか、どのような取り扱いをしたのか、そのことについて一応の御説明を伺ってみたいと思います。
  99. 外山弘

    ○外山説明員 外貨貸しの制度につきましては、現在大蔵省の関係当局と話を進めているところでございます。  それから輸出保険の状態につきましては、今回のような課徴金の実施によりましてキャンセルが行なわれます場合は、これを保険事故として認めるということをすでに宣言しておりますが、現在までのところ、そういった意味での問題があるかもしれないという意味での通告はかなりございます。しかし、現実に保険金の支払いなるケースというのはまだ一件もございません。これはおそらくはそうした場合でも、貨物の他への転売といったような始末をしてから申請してくるというかっこうになるかと思いますので、現実の支払いには至っておりません。
  100. 中村重光

    ○中村(重)委員 現実の支払いというものは出ていないということですが、当然私、起こってくると思う。港湾ストによりストップしておる。それに対して課徴金は取らないということが決定はしましたね。その決定が非常におそかった。そのために金融機関が融資をしない。持ちこたえができない。これによって倒産をしてしまったという企業があらわれておるという事実も明らかになってきた。つまり、もうすでに為替が発行されている。それに対しては輸出保険がついているわけですから、これは事故というものが当然起こってくる。ところが、それは輸出保険というものがあるんだから、為替というものはすでに発行しているんだから、その点は金融上差しつかえないではないかということになってくるけれども、そうはいかない。相当長期にわたった実はストライキである。そのために荷物自体は動いている。だからこれは貿易商社だけじゃなくて生産メーカーというものも、中小企業の場合は非常に弱いわけですから、その影響を受けて、これまた倒産という事実があらわれてきている。ですから、非常に深刻な事態になっておるということです。しかし時間の関係もありますから、これらの問題はまた適当な機会に十分、政府も検討してもらいましょうし、私もまたお尋ねしていくということにしたい、こう思うわけです。  それからこの際もう一つ、いま当面起こりつつある問題であるわけですが、輸入課徴金というのは御承知のように無税の品目にはかからないわけですね。ですから、東南アジア等における特恵の対象になっているところの商品に対しましては、課徴金はかからないわけです。そうなってくると、アメリカの市場を中心にいたしまして、日本中小企業というものはこれまた二重、三重のパンチを受けるということになってくる。今後どういう事態が起こってくるかということになってくると、日本中小企業というものが海外進出をするということになってくるでしょう。いまでも海外進出をしつつある。そうして外地でつくりましたところの特恵品目、そういうものが日本の市場に今度は逆上陸をするということになってくるのです。そうなってまいりますと、私がただいま申し上げましたような二重、三重のパンチを受けるということになってくるわけですから、このことについては、まあこれは分業的なやり方ということになるなら望ましいではないかというような議論をする人もあるわけですけれども、私はそう簡単にこの問題は考えてはならない、だから、野放しではいけない、これに対しては十分検討し、慎重な配慮をもって適切な指導というものがなされなければならない、私はこう思います。これらの点に対して通産大臣はどのようにお考えになっておられるのか、ひとつ考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  101. 高橋淑郎

    ○高橋説明員 中小企業も、こういう時代になりましたらやはり海外に進出していくということも必要になってまいると私は思います。現に進出しておる件数も近年相当に増しております。ただ御指摘のように、外に進出した企業がいわゆる製品を日本へ逆流させるということでは国内の市場が混乱いたしますから、その点に対する配慮は行政指導で進出する以前にいろいろと講じなければならないと考えておりますし、それからたしか日本の国から部品を外に出しまして、それを現地で組み立てあるいは加工して、それを発展途上国から日本へ持ってくるというときに、特恵は原則としては供与されますけれども、雑貨とか繊維とか問題のある品目については適用しないという制度もできておりますので、そういう面での最小限のチェックはできると、このように考えております。
  102. 中村重光

    ○中村(重)委員 事務的な答弁に実はなっておるわけですけれども大臣、この点は今後さらに起こってくる深刻な問題として真剣に対処していただきたい。私どもはこの特恵関税の審議をいたします際、宮澤通産大臣とこの問題に対しましてはずいぶん議論をしたこともある。今回のドル・ショックというようなことからさらにそうした面が拍車をかけられるだろうということは十分想像できるわけです。いま、むやみにやらしてはいかぬ、チェックはしなければならぬ、チェックはできるのだ、こういうことですが、さて、それでは進出しようとする企業に、おまえさん、いけないよ、ということが簡単に言えるのか、これはなかなかむずかしい問題である。かといって、野放しにしてはいけない。ですから、この点は十分政策的に配慮というものをなさるべきであるということを申し上げておきたいと思います。  それから、現在もでありますけれども、今後の日米関係におけるところの重要な問題は、先ほども議論がございましたが、私はダンピング問題であると思います。円の切り上げということになってまいりますと、輸入をする原材料というものは当然値段が下がるわけになりますね。下がるということになってまいりますと、生産コストというものが当然下がる。その分だけ輸出価格というものが下がるという形になるでしょう。これは、理論的にそうならなければいけないわけですね。ところが、ダンピングということになってまいりますと、日本の国内に販売されておるものの価格が幾らか、輸出価格が幾らかという比較になってくると思うのです。ところが、原材料は安く入った、国内に販売されておるところの商品の価格は下がってないということになってくると、ダンピングだということになってくるわけですね。円切り上げは当然避けられないことになってくるでしょう。原材料は下がるでしょう。ですから、国内の価格というものが下がるような十分な政策配慮、強力な指導というものがなされなければ、ダンピングの問題というのは今後さらに起こってくるということが考えられますから、この点に対しては強力な行政指導をされる必要がある。いま御承知のとおり、カラーテレビの問題はダンピングでたいへんな問題となっているわけです。またその他の問題もダンピングでびしびしといまやられておるわけでございますから、この問題は十分配慮しなければなりません。それらの点について、この際ひとつ通産大臣はどのような対処のしかたをするのか、方針を明らかにしていただきたいと思います。
  103. 田中榮一

    田中国務大臣 アメリカにおきましても、カナダにおきましても、ダンピング問題は強く指摘をせられました。またこちらからも、ダンピングでないものをすべてアメリカカナダのものさしでダンピングと呼ばれることははなはだ心外である、ですからダンピングであるかないかという実態を見きわめるまで、また提訴をする場合でも慎重にやってもらいたいということはまず述べて、それに対応する国内政策としては、いままでは日本には指摘されるような行政指導などはないんだ、こうは述べましたが、ダンピングというような問題ではしかるべくじょうずに行政指導いたします、こう言ったらみんな笑っておりましたが、やはりあるのですなというようなことでした。日本では行政指導という非常にうまい輸入抑制の手があるというようなことでございまして、日本は法律に基づかずして大臣が任意にやるような権限はない、こう述べた直後ではございましたが、業界に対してダンピングと思われるごとき事態が起こらないように、そこは行政指導をしかるべくやりましょう、こう答えておったわけでございますが、ほんとうにいま御指摘になったように、国内価格よりも高い価格であれば問題はないわけでございますが、国内価格よりも幾ばくかでも安いということは全部ダンピングであって、一応調査の対象になるということでございますから、業界にはそのような問題に対して十分調整できるような行政指導をしていかなければいかぬだろう、こう思っております。そのためには、私もまあ冗談のような立場で述べたわけですが、アメリカ課徴金をやめないとしたならば、課徴金を一〇%納めるならば、こちらで輸出税を一〇%取ったほうが合理的ですな、こういうところまで述べてまいりました。それから、やはりいまのダンピングのような体制でおると、自由な商売でネゴシエーションをして、いい品物を安く納めるというようなよさというものは全くないので、これはもう統制経済と同じことだ、こういうような意向も述べたわけでございますが、まあ両国間輸出入のバランスを均衡させるということになると、両国間においてはやはり協定をする、統制をするということが前提でないと、両国のうまくバランスをとるような貿易はできない、こういうことでございます。  ですからダンピング問題が起こっているからそれが一つの問題になっておりますが、ダンピング問題がなくなっても貿易輸出入がアンバランスになれば何か問題が起こってくる。ですからダンピング問題を起こさないように業界を指導することは当然のことでありますが、ある程度輸出入のバランスをとるために自主規制を相当強化をしていくということがどうしても前提条件として実行されなければいけない。これらの問題をあわせて業界とひとつ意思の疎通を十分はかってまいりたいと考えております。
  104. 中村重光

    ○中村(重)委員 二、三お尋ねしたいことがあるのですが、申し合わせの時間が参りましたからこれで終わります。  政府も米国の輸入課徴金制度の実施及び円の変動相場制への移行に伴う中小企業対策項目を閣議決定をされた。また私どももただいまの決議、これに対して通産大臣も対処する決意を明らかにされたわけです。ところが、もうたびたび申し上げておるように、大蔵省はさいふのひもを締めてなかなかシビアな態度をとるであろうということが従来の経過からして予想されます。私は、この問題の解決、この決議が生かされること、政府の閣議決定がおざなりにならないこと、これは通産大臣の政治力にかかっておると思います。ですから先ほどの決意が、いつも私どもの決議の際に慣例的に言われる決意表明ではなくて、私、真にこのことを実行するという決意の表明であったと理解をいたします。そういうことでひとつ対処していただきたいということを強く要請をいたしておきます。  それから最後に、ペルーの銅山開発についてペルーの鉱山大臣の強い要望がありましたので、この際これをお伝えをし、善処方を要請をいたしておきたいと思うのです。小宮山代議士に対しては、前の政務次官であった関係上特に名ざしての要請が実はあったわけですが、かつてこの土光ミッションがペルーの銅山開発の問題で行ったことがあるわけです。ところがペルー政府としては、ひとつ新たに日本からミッションを出してもらいたい、開発に協力していただかなければいただけないでやむを得ません。だがミッションだけは送ってもらうことを前から要請をしているんだから、この際これだけはぜひひとつお願いをいたしたいということの強い要請がありましたし、私ども武藤、小宮山両代議士とも、この点に対しては十分政府とも話し合い、これを派遣をするように善処するということを実は約束もいたしたわけであります。この銅山開発、これは資源開発という点から重要であると思います。ミッションを送るという強い要請もあるわけでありますし、さきに政府も、従来東南アジアに偏しておった経済協力を今度は中南米に広くこれを拡大をしていくという方針の決定もされたようでありますから、このミッションを送ることについて至急に検討し、関係方面とも話し合いをして、ぜひひとつ善処をしてもらいたいと私は思うのですが、この際この点についての考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  105. 田中榮一

    田中国務大臣 初めて伺ったことでございますし、いま鉱山局長おるかどうかただしたのですが、鉱山局長いま出ておりません。おりませんので、いま連絡をさしておりますが、御一緒に行かれた方々もおるわけでございますし、いま御指摘になられた案件は後ほどよくお聞きをしまして検討いたします。
  106. 鴨田宗一

    鴨田委員長 松尾信人君。
  107. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 けさほどからの質疑でだいぶ明らかになってまいりました。また要するにいままでの通産大臣の大部分のお答えは、まず新しい通商政策というものも考え直していかなければならぬであろうというのが一つと、もう一つ社会資本の充実、公共投資を通じた社会資本の充実という面も大いにやっていかなくては相ならぬ。このような点にしぼりまして質問をしたいと思います。また、ただいま企画庁長官からお答えがあったのでありますけれども、従来の経済政策基本的に変える時期がきておったのだ、それは何かといえば国民生活、要するに社会の環境といいますかそういうものをまず最優先に考えていかねばならないし、そのように思っておる、こういう答えがあったわけであります。  この国民生活最優先という立場からお尋ねしたいのでありますけれども国民がいろいろ非常に迷惑しておる点は、まず大気汚染の問題であります。空気も悪い、水も悪くなった、それから大地のほうも汚染されております。いわゆる公害の問題でございますけれども、こういう面につきまして、今後政府は積極的に施策を進めて、まず国民生活というものを安定、また安全にしなくてはいけない、こう思うわけでありますけれども、その点まずお答え願いたいと思います。
  108. 木村俊夫

    木村国務大臣 当然国民生活優先の立場から社会環境、国民生活環境をこれからよくするということ、言うまでもございませんが、その際に公害についての企業負担ということもあわせて確立しなければならぬと思います。これは通産大臣もおられることでございますが、まず公害についての責任は第一義的に企業にあるという原理だけは、基本方針だけは確立すべきであるという考えのもとに経済政策一般を対応していきたい、こう考えております。
  109. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 通産大臣、ひとつ。
  110. 田中榮一

    田中国務大臣 これから公害は絶対に出さないということでなければならない、これは基本である。私もかつて自民党の都市政策調査会長として都市政策大綱をきめたときに、公害は企業者、原因者負担が原則でなければならない、こう書いておるわけであります。また通商産業大臣に就任いたしました第一声といたしまして、産業公害は通産省自身がこれを出さないという気がまえに立たなければ除去できない、こう言っておるわけでありますから、これは環境庁などのお世話にならなくとも、企業公害は通産省公害保安局でやりたい、こういう考えでございます。
  111. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 よくわかりました。  次は、企業が真剣に公害を出さないとなりますと、輸出関連企業等は自然とコストが上がっていくと思います。それも当然のことであると思うわけであります。そういうことをあまりいままでやらないでおっての国際競争力の強化であったのではないか、こういうわけでいま質問しているわけでありますが、通産大臣は先ほど公共投資にうんと力を入れる、日本アメリカの住宅その他の比較もなされまして一対四である、そういうおくれを取り返したい、このようなお話でわれわれは意を安んじております。しかし、かりに住宅の問題になりましても、いま高層の公団住宅等もできておりますけれども、家賃が三万円とかそれ以上だとか、なかなか大衆の手に届かないという、そういう現状が固まりつつあります。ですから、国民生活最優先という立場をとる以上は、同じ住宅をつくるにしてもほんとうにみんなが喜ぶ、そして三万ぐらいの家賃を取るならば、十年ぐらい払っていけば自分のものになるのだというぐらいの思い切ったそのような住宅投資というものがなされなければいかぬのじゃないか、家賃の高い住宅を幾らつくっても、これは国民生活優先とは言えぬのじゃないか、このような感じも他方持つわけです。家のない人は家を建ててくれれば喜ぶでしょうけれども、今度はいよいよ入る段になりますと、現在の自分の収入ではなかなか入りにくい、こういう問題がありますが、公共投資一つの面における住宅の例について聞いておるわけでありますが、どうでしょう。
  112. 田中榮一

    田中国務大臣 住宅問題は確かにもう量から質へ移行しなければならないと思います。質は、規模とか、木造から不燃へというような質の問題もございますし、同時に一カ月の収入の何一〇%以下でなければならないかという質の問題、二つあるわけでございます。三つ目は、土地まで一体つけるほうがいいのか、土地というのはもう全然分離をした、他の先進工業国のように土地を財産として考えないで、建物のスペースを大きくすることを考えるほうがいいのか、いろんな問題はございますが、いずれにしても量から質へ急速に転換をしなければならないということは事実でございます。いままでヨーロッパなどは非常に片づいておりますが、実際は片づいていないのです。片づいているようなかっこうをしていますけれども、一番高いのは平均月収の六〇%を家賃にさいておるのがいまヨーロッパの状態でございます。イタリアあたりでも四五%から五〇%。それをアメリカ的に解決しようというのが職住近接ということで、住宅と職場を近接させることをいまやっております。その代表的なものがニューヨークのマンハッタン地区、これが大改造をやっておるわけでございます。日本では一体どのくらいでいいのか。アメリカのように国民所得が三千九百ドルというものの四〇%ということであっても残りが非常に多い。千六百ドルの二五%、二〇%でも残るところは少ないということを考えると、いまの千六百ドル国民所得からいうと、やっぱり二〇%というのが家賃として支出をする限度じゃないかということをいま建設省も答えておるわけでありますから、そうなると1DKと2DK、これもスラム化することは目に見えるようでありますから、せめてもう少し大きくしたらどうか。質の問題を今度こそこの公共投資拡大するという——国の財産として残るわけでございますから、そういう意味では全く量から質への転換を強力に進めるということが大事だと思います。
  113. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いまの質の問題は、家賃を含めての質の問題ですね。そのように理解いたします。  それからもう一つ国民生活優先という立場からお尋ねしたいのでありますけれども日本国民総生産というものと国民所得というものの格差がございます。これは日本ではその格差というものが相当大きい。どうしてこれを埋めていくかという問題でありますけれども、こういう総生産というものと国民の所得という格差を埋めていくことこそ、やはり何といっても国民生活最優先であるという立場を貫くのが政府姿勢ではないか、こう思いますが、その点につきましてひとつ経企庁長官のお答えを聞きたい。
  114. 木村俊夫

    木村国務大臣 国民総生産と個人所得、これの計算いろいろまたございますので、必ずしも国民総生産と個人所得との割合、各国との比較がそのままその国の個人所得の実態をあらわしておるとは考えません。非常に人口の少ないクウェートのような国では、国民生活水準が低いにかかわらず一人当たりの国民所得は非常に高いという面もございます。必ずしも実態をあらわしておりませんが、総じていいますれば、個人所得の伸びというものがその国民生活の程度、水準をあらわすものとして理解していいと思います。御承知のとおり、国民総生産がふえたからといって個人所得が低位にとどまっているということは、その国の国民経済政策がどこかまだ不足の点があるということにもなりますので、この国民総生産と個人所得の割合をできるだけ近づける。もうすでにわが国は個人所得がかつて二十位くらいにおりましたが、最近は十五位になっております。そのようにして、国民総生産と個人所得の各国との比較を漸次これを縮めていくという方向に経済政策を運営していきたい、こう考えております。
  115. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 その縮めていく具体策ですけれども、どのようにして縮めていくかということであります。いま通産大臣おっしゃいましたように、住宅を質的にも充実していこう。道路の問題、公共投資の問題ございますけれども、他面国民自体の所得を増してやることも大きな必要があるのじゃないか。景気浮揚策というようなことも先ほど言われましたけれども、やはり国民自体に購買力をつけていくというのが基本的には大切な問題であろう、こう思いますが、国民自体の所得をふやしていこう。たとえていえば、老人の医療を無償化していくとか、またいろいろの社会福祉の諸問題を解決するとか、その方面に対する考え方はいかがでしょうか。
  116. 木村俊夫

    木村国務大臣 国民の所得をふやす方法にはいろいろあると思います。あるいはその所得を最も端的にふやす方法としては、やはり賃金の上昇ということも一つでございましょう。また国民の税負担を軽減するというのもその一つでございましょう。また国民生活に直接関連するいろいろの生活関連物資の価格を安定させるということも一つでございましょう。そういう消極、積極面のいろいろ経済政策を通じて個人所得をふやすということは、当然政府としての責任であろうと考えまして、そのように経済を運営していきたい、こう考えます。
  117. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 社会保障の問題はどうでしょうか。
  118. 木村俊夫

    木村国務大臣 当然いま申し上げました中には、社会保障ということは含まれておることでございます。
  119. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 そのような面で、かつて所得が二十位ぐらいであったのが、いま十五番目だとおっしゃいますけれども、そのようなことは、まだまだ大いに足らないということにも当然とれるわけでありますから、大いにこの点は今後とも力を入れていただきたい、このように強く要望したいと思います。  それから、通産大臣に対してでございますけれども、新しい日本通商政策について、このようにしていかなくちゃならないという感じをもって帰られたと思うのです。具体策はどうか、こういうことはいまからいろいろ鋭意実現されると思うのでありますけれども、先ほどやはり輸出に秩序を持たせるということも必要だとおっしゃいました。しかしそれはすでに言われたことでありまして、なかなかそれが実現できない。でありますから、いつの間にやらアメリカが、どんどんどんどん日本商品がはんらんしているとか何とかで、円の切り上げ問題まで出てくる。オーダリーマーケティングということを言われましたけれども、これはそういうことを速急に具体化すべきじゃないか。輸出急増品目というものをどのようにながめていってチェックしていくかということも大体お考えだと思いますけれども、ひとつそういう面も含めて、しっかりやっていくということはお考えでしょうか。
  120. 田中榮一

    田中国務大臣 戦前は安かろう悪かろうという面もございましたが、今度日米でそこまで話をしてきたのです。安かろう悪かろう、少しくらい悪くても安いものには飛びつくものだ、そういうことで日貨の排斥となり、やがて日本商品のボイコットとなり、生きる道のなかった日本は戦争を始めたのじゃないか。これは歴史だ。そんなことを日本はやろうとは絶対しておらぬのだが、アメリカカナダ日本商品のボイコットや日本商品の排斥は困る、平和維持のためにも困るんだということだけは強く言ってまいりました。こちらがいかによかろう安かろうでも、アメリカにもアメリカ国民がおるのでございますから、自衛的な手段は当然とらざるを得ないということは理解するので、こちらも求められない前に輸出秩序の確立考える、そういうときには、あなた方に言われておる行政指導をうまくやりますよ、こう言ってきたのです。ですから、あまり矢つぎばやにばたばたやらないでほしい、こういうことを言ってまいったわけでありますが、やりとりの中にはいろいろな問題があるのです。とにかく、軍事費用としてたくさんの金をつぎ込んで開発をした電算機のようなものは、アメリカがやったほうがメリットがあると言いますから、それなら電算機はアメリカが全部やって、繊維は全部日本によこすか、こう言うと、そうもいかないということで、大体話してみればそんなものである。電算機も適当にやる、繊維も適当にお互いがやる。そんな理想的にうまくいくものか。高い理想を掲げながら、現実を踏まえて一歩一歩お互いが相寄っていくのがやはり国際的協調じゃないか。こういう考え方でざっくばらんにものを話してきたつもりでございます。  ですから、いい品物が安くとも、やっぱり問題があるのです。ですから、やっぱりお互いに貿易バランスをとるということでなければならない。そういう意味で、自主規制ということは新しい視野に立って、一挙にもうけるというのではない。この間鉄の自主規制でもって相談をしたら、対前年度二・五%増し、こういう考えのところに、自動車は二〇〇%、前年度は前々年度に比べて三〇〇%増しであるというのですから、まあ飛び上がるような状態であることも理解できないわけではないわけでございます。私はここに指摘されたものを持っておりますが、通産省にこれはほんとうかと言ったら、遺憾ながらほんとうです、こういうことでございますから、やっぱりそういう問題は事前に調整せざるを得ないと私は思うのです。それが新しい通産政策だと思います。やっぱり長いつき合いをやるのでありますから、そういう意味で、お得意が困らないような、喜んで日本商品を買ってもらえるようなというような状態を業界の中にも植えつけていかなければいけない。そのためには、いい品物が安くできるのですから、考えようによっては、百のもうけを出して百ドルもうけるよりも、八十のものを出して百ドル利益をあげる道が考えられないのか。そうすれば低賃金低コストとも言われないし、新女工哀史とも言われないで済むし、日本人ははだしで働いているのじゃないか、日曜日も働いているのじゃないかということで、中には日本の山は全部はげ山である、こういう話がございました。それは誤解だ。北海道を除いて大体はげ山じゃないかと言うから、それはいつのことをあなたは言っているのか、安いアメリカ系の石油を使っているので、まきもたかず、炭も焼かないので、日本の山は青々としておる、そう言ったら、じゃそれは韓国の間違いか、こう言うのでございますから、相当向こうも高度の政治性を発揮して交渉を続けたわけでございますから、やっぱりそういういやみを言わないで済むような二国間というものの貿易こそ望ましい、私はそう思いました。今になってアメリカ政策の立案者が、日本の山ははげ山だ、山に木さえ植えないで、低賃金低コストでやってダンピングをやっているのだというような、そういうことを言わせないような輸出体制というものはやっぱり必要である、私はそう思っております。
  121. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いま言われたように、いい品物をつくっていけばいいんだ、ほんとうアメリカが、少々値段はどうであろうとも、買いたいというようなものの方向へひとつ中小輸出企業を持っていったらどうか、こう思うわけなんです。需要というものがだんだん高度化しておりまするし、多様化しております。近代化だとか構造改善という一つの通産省の指導理念があります。これも、下請なり、大企業に準じていくような企業は非常にけっこうな面もありますけれども輸出雑貨等につきましては、なかなか現実には、そういうことよりもむしろ創意くふうを生かした、高度化、多様化に応ずる中小企業の独特の製品というものをつくる方向に持っていくべきじゃないか。  これはすでに政府のほうもそのような考えを述べておられますけれども、これはあくまでも民間というものが中心にやるべきであって、政府はそばから応援していくんだというようなことはありますけれども、私はそうではなくて、やはりどうしても中小企業はこのようないろいろな問題が起こるとすぐ弱る、また政府もいろいろ対策を講じなくてはできないということでありますが、基本的に中小企業輸出雑貨等を考えますると、やはり創意くふうを生かした、高度化、多様化に応じた、ほんとうに値段はある程度問わない、ほしいから買うんだという方向へはっきりとそれを位置づけて、政府が指導的にやっていく必要があるのじゃないか。特許等の問題もありましょう。またデザイン等の問題もありましょう。これは世界的な問題を、やはり政府はそれをつかまえて、そうして中央は中央で、また地方は商工会議所等を中心に、そういうものを展示して見せ、方向を示したりしていく、ほんとう中小企業の特徴を生かした輸出産業というものを確立するという、こういう点についてはどのように考えておられましょうか、聞きたいと思います。
  122. 田中榮一

    田中国務大臣 御指摘のとおり、国際的に信頼をされながら、日本の製品をいやしくもダンピングをしているんだなどと指弾をされないで、永続的に国際協調の中で貿易を続けていけるような新しい日本産業体制輸出体制というものはどうあるべきかということで、現象だけにとらわれるということではなく、やはり理想図をかいて、その理想までの行程を予測しながら産業政策を進めていく。それで理想を追うことに急であって、大地に足がつかなくては困るので、現実的なもの、また変化しておる事態に対応する、当面するものというようなやはり区別をしながら——まあ通産省も並列的な官庁の機構でございますが、中には十年後の理想を着々と実現をするための局もあり、課もある。また、現実問題を国際的に処理をしていく局も、課もある。当面する緊急な問題には直ちに対応できるようなことを考えるものもあるというふうに、通産省自体も多様化していかなければいかぬだろう。これからは通産省の省内でも大いに議論をして期待にこたえたい、こう存じます。
  123. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 先ほどの決議の中でございますけれども、為替問題で輸出契約から船積みまでの問題はここに出ております。それから為替銀行が輸出手形を買う問題も出ておりますけれども、やはり一番問題は、契約から船積みまでの問題は解決できるようにしてありますから、これはやってもらえばいいわけですが、ほんとう輸出手形が三カ月とかあるいは四十日とか、百日、いろいろ手形の先物がございます。すると、為替銀行は買った以上はやはり損をしてはいけませんから、先物で為替相場を予約せぬといかぬわけです。ところが、いま変動相場制のもとにおいて、こういうことがなかなかとりにくい。でありますから、為銀が輸出手形をなかなか買わない。ですから、今度はこういう手が打たれるわけでありますけれども、先物の輸出手形に対する為替予約も含めて、これで解決されるかどうか、これ一点だけ聞きます。
  124. 田中榮一

    田中国務大臣 私の立場から言うと、あなたの御発言のようなことが望ましいことでございますが、これはやはり最終的には大蔵、日銀とも話し合いながら、制度上の問題として実現をしてまいらなければならないことでございます。いずれにしても、非常に輸出業者は困っておりますから、通産省としてはこれが打開のために、全力をあげてまいるということを申し上げておきます。
  125. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 これで最後でございますが、この融資ワクの幅を広げていく、また信用補完制度をしっかり強化していくというような決議がなされております。きょうは具体的な、政府三機関に対する融資ワクをこのくらいにしていくのだ、このようなワクを持って交渉しておるとか、信用補完制度はこのくらい増していくのだというようなことの答えは出ておりません。抽象的に、しっかりこういうワクを広げて大いに金融を緩和していきましょうという決議であります。この点につきましては時間がありませんのでこれ以上申しませんけれども、ひとつ中小企業庁その他におき・まして早くこのワクをきちっと確定して示すべきである。また先ほど言われましたけれども、時期的にも、言うだけであって実行がおくれますと、その間非常に困るという問題もあります。  最後に一言、倒産の問題でありますけれども、すでに中小企業輸出企業が八月には四件倒産しております。九月も現在わかっておるだけで十一件出ております。これが九月の末また十月、年末となりますと、非常に倒産が次々と出てくるであろうという心配が当然なされております。極端なものは倒産までいっておりますし、こういうものも含めて、特に倒産関係についてはどのようにやるかぐらいの決意を聞いて、最後に輸出中小企業に対する総まとめをしてもらいたい、こう思うわけであります。
  126. 田中榮一

    田中国務大臣 八月十五日のニクソン政策発表後、急激に倒産がふえておるというようにまだ承知をいたしておりません。しかしそのおそれのあることは理解をいたしておりますので、特に黒字倒産、こういう事態なかりせば倒産などは絶対になかったというものが倒産するということになると、それはたいへんなことでありますから、これを事前に回避するために万全の体制をつくってまいろうということでございます。倒産をした例があれば、これは中を分析しまして、そうして将来そのような新しい政策を立てるための準備をしなければなりませんし、そのような政策がどのように影響したかということを調査するためには絶好なものでございますので、そこまで今度はひとつ検討を進めてまいるということでございますから、通産省でも非常な決意であるということで御理解をいただきたい。
  127. 鴨田宗一

    鴨田委員長 米原君。
  128. 米原昶

    ○米原委員 弔う時間もあまりありませんし、できるだけ簡単に、それからいままでの各委員の質疑とダブるようなことは最大限避けようと思います。ただ若干、はっきり答弁がなかった点なんかについてもう少し聞いておきたいと思います。  午前中の質疑の中で、社会党の横山委員や石川委員からも質問されたのですが、現在日本経済に大きな打撃を与えているドル危機の根本原因が、アメリカベトナム戦争中心にした膨大な軍事支出やあるいは海外投資、それからいわゆる経済援助、こういうものにある、そういうものが基本的な原因になっている、そういう点について日米経済閣僚会議で一体話されたのかどうかということの質問がありました。それに対して、対外投資の問題については非公式の会談の際に話されたということでしたが、ベトナム戦争の問題については全然答弁されなかった。  おそらく、いままでのいろいろな関係がありますし、いままでのいきさつもあるし、日米共同声明その他のいきさつからしましても、へたにそういう問題を提起すると防衛費の肩がわりというようなことを押しつけられるというようなこともあったかもしれませんが、実際この問題については、アメリカの議員の中にもすでにそういう発言をしている人がかなり出ておるわけです。ニクソン声明が出た直後のアメリカの上下両院合同経済委員会のプロクシマイアー委員長声明も、ドル危機の原因は過大な防衛支出にある、そのことをたな上げをして、諸外国の通貨の不均衡に一方的に責任を負わせるのは正しくない、防衛支出をまずアメリカ自身が削減すべきである、こういう発言、これは日本の新聞にも出ておりました。それから昨日の日本経済新聞を見ますと、来日されたジョージ・S・マクバガン上院議員が日本記者クラブの昼食会で演説された趣旨が出ておりますが、その中でも、アメリカ国際収支を改善するためにはベトナムからの米軍の全面撤退、それからヨーロッパにいる米軍の半減、米国内のインフレ抑制が必要であるということを強調されて、米国が金とドルとの関係を変えないで、他の国々にだけ通貨調整をやってもらおうと期待することは非現実的である。もちろんドル切り下げには政府内でも議会でも強い反対がある。だが個人的見解をいえば、諸外国だけでなく米国自体も譲歩して解決を見出すべきであるというようなことを日本で演説されているわけですね。そういう点から考えましても、これはかなり重大な点だ。閣僚会議の非公式の場でも、この問題については全然発言なかったのかどうかということを最初にお聞きしたいと思います。
  129. 田中榮一

    田中国務大臣 私は通産大臣所管の問題で一ぱいでございまして、そういう問題に言及するいとまがなかったということでございまして、私に関する限りベトナム問題等一切出ておりません。
  130. 米原昶

    ○米原委員 それでは通産大臣としての立場上、その問題には触れられなかったということですが、しかし根本的なこの問題の見方ということは非常に大切だと思うのですが、これに対してはどう考えられますか。こういう見解がアメリカでもかなりあるし、そのほかの国では、もう今度のニクソン声明以来圧倒的なほどそういう見解は方々に出ております。こういうことに対してはどういう見解をとられるのか。そしてまたこれは今後の日本の防衛政策にも関連してくるかと思いますが、アメリカのいままでとってきたああいう政策、軍事政策、これに対していままでの形をただ続けて、それに日本協力していくというような形を一体続けていいのかどうか。この問題をやはり考えの中に入れておかないと真の日本政策の転換はあり得ないのじゃないかという気がするのです。そういう点で率直な見解をひとつ聞きたい。
  131. 田中榮一

    田中国務大臣 私は、いま日米間の問題としては、ニクソン政策の実行にあたってまず日米間の貿易逆調という、国際収支逆調問題に対していろいろな具体的な問題を指摘をされております。それに対して日本産業界では影響が出ておるわけでございます。この問題に対して日米間に意思の疎通をはかり、理解を深め、当面する困難な問題を処理をしなければならないということでございますから、私はいま言われたような部面の問題以外に、私としては時間一ぱい仕事があるので、自分の専任の仕事で一ぱいであるということをまず第一に申し上げておきます。  第二は、ベトナム戦争というようなものがアメリカ国際収支にどのような影響を持っているかは、アメリカの諸君の中でそれだけ活発の議論があるなら、私はそれでけっこうじゃないか、こう思います。私はそんなことに言及をする前に、私が答えなければならない問題でまだ答えておらない問題がたくさんありますし、アメリカ理解せしめなければ日本産業界が困る、日本中小企業や零細企業が倒産するかもしないという大問題がありますから、そのほうにウエートを置いておりまして、第二の問題を話すようないとまもない、こういうことでございます。  第三の問題は、日米間がどうなるかというような問題でございますが、これはもう二十六年間もやっておりますとおり、日本は過大評価をされるほど力がまだありません。国民所得を上げたり、日本の量から質に転換をしたり、社会保障を拡充したりいろいろな問題があります。そういう状態前提にして考えると、日米安全保障条約というような体制は望ましい姿であるという考えにはいささかの変更もありません。
  132. 米原昶

    ○米原委員 大臣はこの問題についてはやはり将来の方向というものは考えられるべきじゃないか。少なくとも総理大臣候補でありますから、単なる当面の経済政策の問題だけに頭を突っ込むというのじゃ私は非常に失望するのですが、まあその問題はこれ以上触れません。  その次に、企画庁長官にも聞きたいんですが、為替差損の補償という問題は非常に論じられて、この委員会でもずいぶん質問が出たわけです。しかし同時に、為替差益をあげている企業もあるわけですね。ある経済評論家が経済雑誌の十月号にたとえばこういうことを書いております。「為替差損金の大きい業種・企業と対照して、ぎゃくに為替差益の大きい業種・企業は、たとえば石油、鉄鋼、電力など主として原料輸入依存の企業、またはインパクト・ローン、社債などにより、海外借り入れの多い業種・企業である。これらの業種のうちとくに差益のばく大な企業は、石油会社であって、たとえば日石は一〇〇パーセント子会社の日本石油精製を通じ、二九〇億円の輸入ユーザンスと二五〇億円のインパクト・ローンをもち、東亜燃料はユーザンス、インパクト・ローン合計三六〇億円に達している。独占のナンバー・ワン新日鉄は輸入ユーザンスが約一〇〇〇億円、外貨建て借り入れ金が三〇〇億円という巨額である。したがってこれがもし一五パーセントの円切り上げが実現した場合、その差益は、日石八一億円、東亜燃料五四億円、新日鉄およそ二〇〇億円という巨額になる。」こうした不当為替差益を押えて、そして国家補償で差損の補償をやるわけだけれども、一方でばく大な差益をこの事態の中であげるという点も考慮した政策を打ち出す必要があるのじゃないかということを、この経済評論家は書いておるわけなんです。  ところが御存じのように、一番だれでも知っているのは石油企業なんですね。これはかなり差益が大きくなっていくだろうということはだれでも認めている事実なんですが、さまざまな理由をつけて石油値下げなどはしないということを何回も言明しているだけでなくて、逆に値上げ要求すら言っておるようであります。そういうことになりますと、これはたいへん不当なことだと思うのです。こういう問題に対して経済企画庁としては当然このような不当なやり方はやめさせて、製品をむしろ値下げするくらいが当然なんだ、経済界が  これだけ全体として大きな打撃を受けているときに値上げなんということはもちろん認められないが、値下げしても当然なんだというような指導をされるのが私は必要じゃないか、こう思いますが、長官どう考えられますか、この点について見解をお聞きしたい。
  133. 木村俊夫

    木村国務大臣 為替差損、為替差益、両方とも出てくると思いますが、これらの点は国民の公平感からして政府のほうで適当な処置をしなければならぬ、これはもう基本原則でございます。特に海外債務が今回の為替の問題で相当大きい業界もありましょうし、また輸入価格が低くなることによってもうける業界も出てくると思います。したがいまして、そういう為替差益あるいは輸入価格の低落によって生ずるそういう利益というものは、当然利用者、消費者に還元してもらわなければならぬと思います。しかしながら、たとえばいま御指摘の石油業界のごとき、かりにOPECによる再値上げがないとすれば、当然これは、その為替によって生ずる価格の低減は、消費者に還元してもらわなければならぬと思いますが、一部に灯油の値上がりのような話もございます。これは私はまことに首肯しがたい問題であると思いますので、ここに通産大臣おられますので、通産省の行政指導を通じて国民の公平感に耐え得るような行政措置をとっていただきたい、こう考えております。
  134. 米原昶

    ○米原委員 これはきわめて常識的な考え方で、もっと突っ込んで議論しないといけないかもしれませんが、差損が出たときには国民の税金で補てんしようというわけでしょう。そういうことをやっている以上、一方では差益を相当上げる会社もあるというような中で、やはり差益と差損とを全体としてプールして相殺するような何かの政策を打ち出す必要があるのじゃないかということを感ずるわけなのですよ。こういう点についてもひとつ通産大臣の石油の問題に対する見解も聞いておきたいと思います。
  135. 田中榮一

    田中国務大臣 為替差損という問題は、そのことによって倒産をしたり、そういう結果をもたらすおそれがございます。でありますからその差損を計算をして補てんをするということよりも、事業を続けていく過程において税制等の措置をなすことにより、営業が続けられるようにしなければいけない。それはその間は法律に基づいて為替管理を政府がやっておった過程におけるものでございますから、利益が当然得られるものを損失に置きかえられる部面を結果的には補てんをするような措置を、これは現ナマで補てんをするというのではありませんが、制度上救済をするということになるわけであります。その差益というのはこれは完全に——食管の中にあるような制度であれば、これは米に対しては二万円のものでも一万円でもって消費者に売るという、米ではマイナスが立ちます。外麦に対しては同じ食管会計の中にあるものでありますから、一万円で買ったものを二万円で売ればその差益は同じ食管の中で操作されるわけでございます。しかし、今度のたてまえは、差損はその常識的な考え方の中で現実的に起こってくる現象に対して、中小企業や零細企業が倒産をしてはならないので、三%の利息で貸したけれどもこれを無利子にしてたな上げをしようという措置と同じことをするわけでございます。しかし、石油や鉄鋼がドル建てでもって債務があるので、これを差益と認めて徴収をするにはこれは立法的措置を行なわなければならないが、これは法律的に行なう根拠は、もう私が申し上げるまでもなく乏しいことでございます。しかし、これは常識的に判断をする場合、片手落ちになるかというとそうではない。これはちゃんと利益を得た法人からはそれなりに、高い配当を生ずれば配当に見合う高い税金を徴収することになっていますから、それなりの調整は行なわれるわけでございます。あとは人がみんな損をするときに石油会社などは損をしない、もうかるということ考えるのではなく、現行制度のままにおいてはこれはあたりまえのことなのだ、差損の出るのは現行制度の中では利益が出そうなものが損をするおそれがある、今度はそのままの状態が続いていくわけでございますから、これを差益を徴収するということはできることではないと思います。しかし、そういう状態があるにもかかわらず値上げなどをしたらもってのほかで、それはそのとおりでございます。  だからOPECで六月になると二千億ずつ上がるということを全部消費者に転嫁できない、その場合は、千億分でも、千五百億分でも業者が負担をしなさい、こういう行政指導をしているわけでございますから、今度は普通ならば為替差損に置きかえればこれくらい君たちは損をしたはずだから、損をしないで済んだのだから、高額配当をしないでくれよ、そういうような余裕があったら、少なくとも上げなければならないと思っておった電力やガスに対する重油の供給は現状で据え置いてくれ、そのかわりに電力やガス料金の値上げも押えよう、こういうようにこれは広範に考えるのがほんとうであります。そこらが通産省の存在する理由であると思うのです。ですから右から左に子供の算術のように、こっちが損をしなかったんだから、それを取ってそれを補てん金の原資として使えというふうには右から左にはいかないものでありますから、やっぱりどなたが見ても、通産省はよくやっているわいというくらいな常識的な状態で行政を行なうということだろうと思います。
  136. 米原昶

    ○米原委員 私もその右から左に持っていくなんということができると思って聞いているわけじゃないのです。ただ基本的な考え方としてこの点は考慮に入れないとならぬと思ったわけですが、実は公害委員会調査団について昨日も名古屋に行っていたのです。そこで新日鉄のあそこの製鉄所の社長、それから中部電力の副社長に会ったところが、やはり公害問題では重油の問題が根本問題でしょう、そうすると値段の問題になってくる、そうするとやはりOPECから相当値上げの圧力がかかっておるような話をしていましたね。だからおそらくこれはまた問題になってくるのじゃないかと思うのです。しかしいまの考え方からしますと、そういういまの状態のもとで油の値上げをするということだけはあまりにも常識はずれで許せない。それはひとつしっかりやっていただきたいと思います。  もう時間がありませんから、あと簡単に言いますが、中小企業の救済策、だいぶ本委員会でも議論がありました。これは来月またやるそうですけれども、先ほどの委員会を通過した決議にも出ていない点なのでちょっと聞いておきます。  先ほど通産大臣は地元の燕の問題を話されました。ああいう企業、単なる企業の救済だけじゃなくて、地域の、燕市という市が洋食器でもっているわけですから、これは単なる中小企業対策以上のものが必要ですね。私たちもその点同感です。これは今度のドル・ショックで打撃を受ける企業が地場産業として重要な地位を持っている。たとえば東京で言いますと、品川のクリスマス電球だとか、あるいは神戸のケミカルシューズとか、そういうような地域の問題としても取り上げなくてはならぬじゃないか。そういう意味でたとえば地域に対して産炭地振興法などのような救済のための特別立法が必要じゃないかというように私感ずるのです。そのほかに地方自治体の当然入る税金も少なくなるから、これに対して、やはりそういう自治体に対して国が相当補助してやらなくてはならないのじゃないかということを感ずるのです。そういう問題についてどう考えておられるかということをひとつ聞きたい。
  137. 田中榮一

    田中国務大臣 御承知のとおり四十年、四十一年の不況のときには法人税を二%引き下げたわけでございます。二%引き下げたのでございますから三税に対する収入は減ってまいります。そうすると交付税が非常に減りますので、交付税率を二%引き上げて三二%、現行にしたわけです。これは私、大蔵大臣のときに取り上げたものでございます。そのときに比べてみて、そのときより以上に深刻なことをやはり前提として諸般の施策を考えなければいけないだろう、こう私は考え、財政当局などに対しても強く進言をいたしておるわけでございます。特に今度の貿易問題は中小企業が地域的に非常にまとまっておりますので、いま御指摘になったように新潟県の燕とかケミカルシューズの問題とか、確かに御指摘のものも五、六十種あげられるものがあります。そういうものは地域ぐるみでありますので、これは産業政策だけでは救済できない、地方公共団体の地方財源等の問題もあわせて研究していかなければならない、対応策を立てなければならないということは事実だと思います。どのような法律を必要とするのか、どのような事態になるのか、これは一つずつ場所場所によってみな違うわけであります。産炭地のように、画一的、一律的な政策をいま立案をしてそれで足れりとするわけでないわけでありますので、やはり業界別にまた地方別に事情をよく調査をして、これに対応できるような措置が必要であるということでございまして、これからわれわれも臨時国会、通常国会を前にしてかかる問題を十分把握をして、その処置に遺憾なきを期さなければならないという考えでございます。これはもう私だけではなく、自治省当局とも十分話し合いをして、地域的な問題解決になるように措置をしたい、こう考えております。
  138. 米原昶

    ○米原委員 時間がありませんから最後一問だけ。  実はドル・ショックで相当困っている中小業者の人が手紙に書いてよこしてきた。これは金融の問題なんです。いろいろ国でもそれから地方自治体でもある程度の緊急対策を打ち出されて、新聞によると出ているけれども、実際に銀行に行ってみるとなかなかそういう状態になってない。これは前からの問題ですが、このドル・ショックの中で深刻な状態になっている。ところが、その人が電車に乗っていたら、ちょうど金融機関の支店長、次長クラスの人が三、四人乗っていて、そこで話していることを聞いたのです。この問題はぜひ議会で取り上げてくれということで書いてきているのです。たとえばこういうことをしゃべっているというのです。国が中小企業の融資を大幅にふやすといっても銀行に政府から金をくれるわけじゃないのだ、実際の貸し付けは私どもの銀行でやるのだから、実際は選別融資をせざるを得ない。協会の——おそらく保証協会のことでしょうが、協会のワクを倍くらいにふやすらしいが、実際あぶないから既存の貸し付けもこのワクの中に入れることだ、こういうようなことをしゃべっていた。銀行というものはこういう連中なんだということで投書してきておるのです。この問題は実際にいろいろ政府としてやられましても、末端にいくと、なかなかいろいろな問題が実際に出ておる。私も中小企業の人から国民金融公庫にあさって立ち会ってくれないかといって頼まれておるのですが、そういう点をやはり強力に指導しないと、新聞にどんどんでかでか出まして、そうして大臣は非常にいいことを言っておるというふうに受け取っておるのですけれども、実際には何もない、こういう面もあるわけです。こういう点について今後よろしくお願いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思いますが、それについて一言だけ……。
  139. 田中榮一

    田中国務大臣 そのような事態、いまお示しになられたような事態がないとは私も考えておりません。しかし、政府が行なう中小零細企業対策がみなそのようなものであるとは絶対に理解しておらぬのでございます。それは過去においても政府が行なった中小企業対策や、国会が議決して、各委員の皆さんが議決した結果は、中小企業や零細企業にやはり高く評価をされておるという事実に徴しても明らかでございます。そういう問題に対して、この間も信用金庫協会が五千億の大幅融資を一括決定したという異例な表明をいたしておりますように、政府も金融機関もやはりこの戦後最大、初めての事態に対処してその深刻さというものを十分理解して対応策を立てていくということでなければならない、ころ思いますので、全部が全部中小企業者や零細企業者がどこへ行ってもみんな無利息、無期限、無条件で貸せるというのではございませんが、ケース別にもちろん調査をしなければならないことではございますけれども、この事態に対応して十分な施策と思われるような効果のある施策を行ないたいということだけは明らかにしておきます。
  140. 米原昶

    ○米原委員 これで質問を終わります。
  141. 鴨田宗一

    鴨田委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十六分散会      ————◇—————