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政府委員(
安原美穂君) 今
国会に
法務省が
提出を
予定し、また、すでに
提出いたしました
法案につきまして、
内容を簡単に御
説明申し上げたいと存じます。
お手元に「第六十五回
国会提出予定法案」というリストが差し上げてございますので、この順序に従いまして御
説明をいたしたいと存じます。
法務省がすでに
提出した
法案並びに
予定をいたしておりまする
法案は全部で十三件でございまして、それに
米印が二件ございますが、これは
予算関係法案ということでございます。その他の
法案が十一件ということに相なります。
最初は、
法務省設置法の一部を改正する
法律案でございます。要旨は、羽田入国管理
事務所を廃止し、成田入国管理
事務所を設置すること。これは現在羽田にあります
東京国際空港において行なわれております
出入国管理業務は、成田市に設置されます新
東京国際空港の新設に伴いまして、同新空港において行なうことになりますので、これを実施するため羽田入国管理
事務所を廃止いたしまして、成田入国管理
事務所を設置するということであります。
第二点は、苫小牧市等に入国管理
事務所の出張所を置くこと。苫小牧市所在の苫小牧港、相生市にあります相生港、因島市にあります土生港、鹿児島県の揖宿郡の喜入町にあります喜入港、これら四港におきます出入国者数の
増加に対処いたしまして、
出入国管理の
事務を一そう有効適切に行なうため、この四カ所に入国管理
事務所の出張所を新設しようとする
内容であります。
第三番目は、市町村の配置分合等に伴い官署の位置等の表示を改めること。これは市町村の配置分合に伴いまして、札幌
法務局の管轄区域内の
行政区画等の名称の一部を改め、愛光女子学園、岡山
少年院及び広島入国管理
事務所尾道
港出張所の位置の表示をそれぞれ改める
内容であります。
以上が設置法の一部を改正する
法律案の
内容でございまして、すでに二月の四日、衆議院内閣
委員会に
提出済みでございます。
それからその次に、
裁判所
職員定員法の一部を改正する
法律案でございまして、
内容は
判事補の員数を十二人、
簡易裁判所判事の員数を二人、
裁判官以外の
裁判所
職員の員数を十九人それぞれ
増加することを
内容とするものであります。この
判事補の員数十二人の
増員は、
公害事件その他特殊損害賠償事件の
裁判事務の
迅速化と
充実をはかるためのものでございます。これもすでに衆議院の
法務委員会に二月三日に
提出、現に
審議中でございます。
三番目は、旧執達吏規則に基づく恩給の年額の改定に関する
法律の一部を改正する
法律案でございます。
内容は簡単でございまして、一般の公務員の恩給の
増額に伴いまして、執行官の恩給の年額も改定されることとする措置を講ずるという
内容でございます。特に、詳しく申し上げる必要もないと存じます。
その次は、
民事訴訟費用等に関する
法律案、
刑事訴訟費用等に関する
法律案、それからさらに
民事訴訟費用等に関する
法律及び
刑事訴訟費用等に関する
法律施行
法案、こう三つでございますが、この三つは互いに密接に関連いたしますので、一括して御
説明申し上げます。
要旨は、ここに書いてございますが、これを要しまするに、現在多くの規定上の不備のあります
民事訴訟費用及び
刑事訴訟費用に関する各法規を体系的に
整備、明確化いたしまして、いわば訴訟費用に関する基本法を制定しようとするものでございます。
なお、この際、当事者間の費用償還請求権の対象となる費用につきまして、その範囲を制限列挙的に明確にするとか、あるいは手数料が過大に納められた場合におきまして、
裁判所が納付者に対し超過金額を金銭で還付する道を開くということ、あるいは証人、鑑定人等に対しまして、出頭当日について
日当を支給するほか、新たに出頭のための旅行に要した日についても
日当を支給するものとすること、あるいは証人、鑑定人等の
旅費の種目として新たに航空機を利用した場合を加えるというようなことの
改善をはかりたいと考えておる次第でございます。
次に、
民事訴訟費用等に関する
法律及び
刑事訴訟費用等に関する
法律の施行
法案は、要するに、現行の
民事訴訟費用法、
刑事訴訟費用法、
民事訴訟用印紙法、商事非訟事件印紙法及び訴訟費用臨時措置法は、いずれもこれを廃止することといたしますので、廃止に伴う経過措置及び新法制定に伴う
関係法律の整理をすることを
内容とするものでございます。
次は、
下級裁判所の設立及び管轄区域に関する
法律の一部を改正する
法律案であります。これは、市町村の廃置分合等に伴いまして、
下級裁判所の設立及び管轄区域に関する
法律の別表に所要の改正を加えるものでありまして、同
法律の別表に百カ所ほど、かような整理をする必要がありますのでこの
法案を
提出するものであります。
内容は、簡単と存じます。
その次は、民法の一部を改正する
法律案であります。
根抵当権の意義及び効力等について新たに規定を設け、不動産登記法その他の
関係法令に所要の改正を加えることという要旨でありますが、要しまするに、根抵当は、御案内のとおり、銀行と取引先、商社と取引先などの間において、反復継続して生じます多数の債権を一定の極度額において担保する抵当権といたしまして、民法上明文の規定がないまま、明治以来、判例、学説によりまして、その有効性が承認され、
経済取引におきまして重要な役割を果たしてきたのでございますが、この
法律案は、明文の規定がないために生じます複雑、困難な問題を解消いたしますため、従来の慣行を基礎としつつ、根抵当をめぐる
法律関係を明確化、合理化し、根抵当取引を安定したレールの上に乗せようとする
内容のものであります。
要点といたしましては、根抵当権を設定するには、極度額のほか、一定の担保すべき債権の範囲を定めるべきものとするとともに、その変更もできるものとする、あるいは根抵当権の優先弁済権の範囲を明確にする、あるいは根抵当権者または債務者に相続・合併がありました場合の
法律関係を明確にする、根抵当権の譲渡、その他の処分をめぐる
法律関係を明文化する等の
内容のものでございます。
次は、商法の一部を改正する
法律案であります。
ここに書いてございますように、要旨は、監査役の職務及び権限を拡張し、決算について公認会計士の監査を受けなければならないものとすること及び累積投票制度、転換社債の発行、準備金の資本組み入れによる抱き合わせ増資等について所要の改正を加えるものであります。要旨は、株式会社の監査役は、会計監査だけではなく、
業務監査をすることとし、そのために必要な権限を与えますとともに、適正な監査が行なわれるよう、任期を一年から三年に延ばすなど、独立性の
確保、地位の安定等のための措置を講ずるというのが第一点。
第二点は、株式会社は、決算について、定時総会前に公認会計士の監査を受けなければならないものとし、株主、取引先、下請企業者、従業員等
関係者の
保護をはかるということ、それから、一年決算の会社について中間配当の制度を認め株主の便をはかる、あるいは取締役の
選任につきまして、定款でいわゆる累積投票の制度を完全に排除することができることとして経営の安定をはかる、あるいは転換社債は新株と同様取締役会の決議で発行できることとし、また、法定準備金の資本組み入れによる有償、無償の抱き合わせ増資を認め資金調達の便をはかる、廃業した休眠会社の整理を行なうという
内容のものでございます。
その下にあります株式会社の監査の特例に関する
法律案は、一定規模の株式会社の監査について監査役の権限等の特例に関する
法律を制定するものでありまして、先ほど申し上げましたような
内容の監査役の権限
強化あるいは決算定時総会前の公認会計士の監査を、資本金一億円未満の会社については、これを除外するというようなことを
内容とする特例法でございます。
その次は、
民事訴訟法等の一部を改正する
法律案であります。
裁判書、調書等の署名押印方式の合理化を図り、即決和解に関する請求
異議の訴え等の事物管轄に所要の改正を加える
内容であります。さらに詳しく申し上げますと、即決和解等に関する請求
異議の訴え等の事物管轄の改正と申しますのは、
簡易裁判所におきまして成立した訴訟上の和解調停に関する請求
異議の訴え等は、現在、すべて
簡易裁判所の専属管轄とされておりますが、請求の価額が三十万円をこえます場合は、これらの訴えの管轄
裁判所を地方
裁判所に改めようとするものでありまして、これは
裁判所法の一部改正法の
審議の際における衆議院
法務委員会の附帯決議の
内容を実現しようとするものであります。
もう一つの
裁判書、調書等の署名押印方式の改正と申しますのは、これは
民事裁判手続の合理化、
能率化をはかりますため、判決書以外の
裁判書、調書、訴状等におきます現在の
裁判官等の署名捺印を、
刑事訴訟法と同じように記名捺印または認印で足りるものとするというのが改正の
内容でございます。
その次は、
刑事施設法案でございます。これは現行の監獄法をより積極的に、被収容者の基本的人権の保障と受刑者に対する効果的な
矯正処遇、
社会復帰の促進をはかる観点から全面改正しようとするものでありまして、御案内のとおり、監獄法は明治四十一年の制定公布にかかるものでございまして、現在に至るまで、一部の改正を除きましては、制定当初のままで推移してきたものでございますが、その後の行刑の発達、特に、日本国憲法の施行後二十年あまりの間におきます人権思想の推移、世界行刑思潮の進展あるいは一九五五年の国際連合決議にかかる「被拘禁者処遇最低基準規則」等に照らしますとき、現行監獄法を全面的に改正すべき時期にきていると存ずるのでございます。
本省におきましては、全面改正を目途といたしまして鋭意
作業を続けてまいりました。最近に至りまして、主管局であります
矯正局におきまして
刑事施設法案を確定するに至ったのでありますが、この原案は何分にも百六十条あまりの大部のものであり、なおこれから省内の
関係部局等あるいは
関係省庁等との意見調整あるいは法制
審議会による
審議を行なう必要がございますので、この
法案につきまして
国会提出には、いましばらくの日時を要するものと考えております。
最後は、
出入国管理法案でございまして、ポツダム政令であります
出入国管理令を廃止いたしまして、新たにすべての人の出入国の公正な管理等に関する
法律を制定しようとする
内容のものであります。ポツダム政令である
出入国管理令を廃止いたしまして
出入国管理法を制定する。それから、その他の改正のおもな点といたしましては、第一に、出入国者の数の激増に対処いたしますため、在留期間の短い外国人等に対しまして、入国手続の簡素合理化をはかる。たとえば観光、スポーツ、会議参加、
業務連絡等の入国目的を包括いたします短期滞在者という在留資格を設けるとか、査証なしでも一時的な上陸が許される者の対象の範囲を拡大するというようなものであります。
次に改正のおもな点といたしましては、外国人の在留管理の合理化をはかる。特定の者、たとえば在留資格者——教授、商用
活動者、留学生、技術研修生、興行
活動者、熟練特殊労働者等の在留資格のある者は、必要に応じまして在留を許され、
活動の種類や場所を指定できるようにする。そして
活動の指定に違反した外国人または一定の政治
活動をした外国人等に対しましては、その行為の中止または同種行為の反復の禁止を命令することができるようにいたしました。その命令に違反した場合は処罰ないし強制退去の対象とするというようなこと、あるいは重要な
犯罪人につきましては、暫時出国手続を留保できることとして、その重要
犯罪人の国外逃亡の
防止をはかるというようなことであります。
最後にそのほかの
出入国管理事務の
改善をはかるために、容疑者を収容しないでも、退去強制手続を進め得ることとし、また収容できる期間を従来よりも短かくする。退去強制令書が発付された者に対しては、本人が希望すれば自費により本人の希望する国へ退去できるようにする。あるいは出国者に対する再入国許可の有効期間の廷長を認めるというようなことが
内容であります。
以上が
法務省が今
国会に
提出をしたあるいは
提出を
予定しております
法案の
内容でございます。何とぞよろしく
お願いを申し上げます。