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北村暢君 新全総それから農用地転換の問題については、あまりしっくりしませんけれどもそのくらいにしておきまして、若干
国有林の問題について触れておきたいと思うのですが、
国有林の使命については
林業基本法で明らかにされ、さらに
国有林野の
活用についても基本法第四条でその趣旨が明らかにされておるのでありますけれども、今日、
国有林に対する批判というものは私は相当いろいろな面で出てきておるだろうと思うのです。それで
国有林のあり方の問題について若干触れておきたいと思うのです。
「
国有林を重要な林産物の持続的
供給源としてその
需給及び価格の安定に貢献させるともに、
奥地未
開発林野の
開発等を促進して
林業総
生産の増大に寄与するほか、
国有林野の所在する地域における
林業構造の改善に資するため積極的にその
活用を図るようにするものとする。」ということではっきりしておるのでありますが、この基本法でうたっているこの使命というものについて、私どもこの基本法を論議する際に若干疑問を述べておりましたし、
国有林の見方について、この基本法の考え方と私どもの考え方と若干違います。違いますが、この基本法四条における
国有林野の管理運営の事業が「その企業性の確保に必要な考慮を払いつつ」ということで、
国有林の企業性というものについて非常に第一義的に出ている。私どもはこの
国有林の使命というのは、企業性の確保ももちろんこれは当然やらなけりゃならない問題でありますが、
国有林は国土保全という機能、それから
木材の持続的な
生産、こういう国土保全の機能と
経済的な機能と、こういうものを両々持っておるというふうに私どもは見ておるんです。ところが、この基本法の四条には国土の保全機能というのはあと回しになったような形で表現されている。まず第一に企業性というようなものがうたわれてる。ここに感覚の差が若干あるわけですが、それはまあさておいて、今日この
国有林の運営に当たって、たとえば価格調整の機能を持つという使命を
一つ持っておりますね。ところが、企業性を追求するがゆえに、
国有林が今日
木材の価格を調整する機能を十分に果たしているかどうかというと、これは全く逆だ。これはまあしばしば言われてるととですが、
木材の価格が値上がりをした、そういう場合に増伐をして
木材の価格が上がったときに冷やす役割りをすれば調整の機能を果たしたと、また
木材の価格が安くなったときに
国有林材を節伐して価格を安定させるのに寄与させる、これは価格調整の機能でしょう。ところが、価格調整機能を持ちながら、法律でうたいながら、全く逆なことをやってる。
木材の価格が上がれば、
国有林は収入がどんどん上がりますから節伐をするんですね、増伐はしないんです。節伐をして
木材の価格が上がるのに協力するような形。
木材の価格が低落した場合には収入が上がらないといけないので増伐をして、ますます
木材の価格が下がるように協力する。価格調整機能だなんていうことをうたいながら、全くそれと逆なことを現実にやっておる。これは
一つの例ですけれども、そういう批判は当然出てくる。かつて河野
農林大臣のときに、たった一回だけ、
木材価格がものすごく上がってたいへんなときに、茨城県あたりから
国有林材を緊急増伐をやって輸送したというような例は、たった一回かある
程度です。そういう点。
それからもう
一つは、この
国有林は企業性を追求するがゆえに、今日自然保護ということで非常にやかましく言われてる。ところがこれは、
奥地林を
開発する使命も持ってるわけです。そのことと自然保護ということが今日の
段階で非常に矛盾が起こってるわけですね。まあ秩父の国立公園地帯とか、あるいはこの間災害特別
委員会でも問題になりました大山の国立公園地帯におけるブナの原始林を皆伐するという問題。貴重な天然原始林というものが、
奥地林
開発の使命のために伐採せざるを得ない、それは自然の破壊になる。しかも機械化し、作業能率をあげるためにこれはもう当然皆伐をやらざるを得ない。そういう問題が出て、
国有林は企業性を追求するがゆえに、国の事業でありながら自然をどんどん破壊していってる、こういう批判が一面に起こってくる。かつて
——これはまあ
長官に技術的な問題ですから後ほどお答えいただきたいと思いますが、皆伐作業級と択伐作業級の比率は今日一体どうなっておるか、
国有林は。かつてのオーソドックスな
林業技術としての択伐作業なんというものは全く顧みられなくて、最近では機械化に伴いまして大面積の皆伐をどんどんやっている。しかも採算性を云々するために、低質広葉樹の
奥地のところの赤字事業所というようなものについては閉鎖をするというような形で、積極的に林種改良をやらなければならないようなところで将来当然切らなければならない問題でも、赤字なるがゆえに閉鎖をする。したがって、企業性優先的な感覚で
国有林というものを運営しておる。そのほか問題になります合理化の問題で、きのうも触れられました薬剤散布の問題
——公害をみずからばらまく、こういうようなことを平気でやる。こういうことが今日
国有林のいわゆる官僚独善的な運営に対して大きな批判が出てきてる。
国有林の
活用等の問題についても、現在の共用林制度等においても、なかなか
条件がきびしくて、地元が直接的に利用できない、薬剤散布のために、従来の共用林野で山菜等をとってるものがとれなくなるというようなことで、この
国有林の運営について、確かに先ほど来私が言いました
林道だとか
造林だとかいうような問題については
計画量にやや合致するような
計画的な運営がなされておりますけれども、全部が全部悪いとは言いませんが、非常に大きなやはり国民的な批判を受けているんですね、
国有林は。これは私は改めなきゃいけないと思うんです。
その根本が何にあるかといえば、やはり特別会計の独立採算制というものにある、このように私には思われる。で、独立採算制で、企業性をルーズにやれというようなことを私は言ってるのじゃない。企業性的な性格を持ってるんですから、そういう意味における企業性の追求はいいんですが、その企業性が行き過ぎるというといま言ったような国民の批判を受ける結果になるのではないかというふうに思われるのです。したがってそういう意味における
国有林の反省というものが必要ですが、さらに
国有林野特別会計の
現状であります。
国有林野特別会計は従来剰余金、損益計算、まあ両方あるようですが、戦後の
昭和二十二年以降
国有林野特別会計はこの剰余金においてマイナスになったことが三回、損益計算でマイナスになったことが三回で、あとは全部
国有林は黒字であります。それで、剰余金は二十二年以降から一千四十億円
程度、一千億円をこえる剰余金を出し、損益計算において一千三百六十一億余、一千三百億円余の利益をあげてますね。しかしこれは、利益をあげることが悪いと言っているのではないのですが、こういう利益をあげながら四十六年度の
予算では御存じのように五十億の赤字
予算を組んだわけです。したがって、この特別会計の今後の収支の見込み、将来の見込みは一体どのようになる見込みであるか。かつてこの
見通しもやりまして、おそらく
昭和四十四、五年からは毎年百億くらいづつの赤字になるという試算をした事例もあります。ところが最近の
木材価格の低迷
状態、賃金の
上昇というようなことで特別会計もようやく赤字傾向に転落しつつあるのですね。そういうようなことで、これの
見通しは一体どのように考えておられるのか。まず
国有林の批判に対する反省と特別会計の今後の
見通しというものについてお伺いいたしたい。