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参考人(板野學君) 本日は、まことに貴重なお時間をいただきまして、会社事業の概要につきまして御説明申し上げる機会を得ましたことを、心からありがたく存じまするとともに、平素格別の御指導を賜わっておりますことに対しまして、厚く御礼申し上げる次第でございます。
本年は、わが国の国際電信が、明治四年に初めて取り扱われるようになりましてからちょうど百年になります。当時を顧みまして今日の隆盛を思いますときに、まさに今昔の感にたえないものがあるのでございます。当
国際電信電話株式会社も、今年をもちまして、
昭和二十八年の創立以来十九年目を迎えたわけでございますが、この間におきまする通信技術の進歩発展はまことに目ざましく、いまでは通信衛星や海底同軸ケーブルなどによって広帯域の通信幹線網が世界的な規模で形成されつつありまして、かつての短波通信時代には想像もできなかった豊富で良質な回線の運用が可能となりました。先進国はもとより、発展途上の国々に対しましても、電報、テレックス、電話をはじめテレビジョンの宇宙中継やデータ通信など、新しいサービスが提供できるようになったのでございます。
当社は常に国際通信の最先端を行く技術を持って鋭意諸設備の拡充整備につとめてまいりましたが、ことに近年におきましては、茨城と山口に世界最高の性能を誇る衛星通信地球局を
建設し、また二宮と直江津をそれぞれ起点として、太平洋と日本海を横断する海底ケーブルを成功裏に敷設いたしましたほか、島根県浜田にはマイクロ散乱波通信方式によりまして、日韓両国を結ぶ通信基地を新設するなど、真剣な努力を重ねてまいりました結果、現在では対外通信回線総数約千三百回線を擁して施設、サービスいずれの面におきましても世界有数の地歩を占めるに至りました。今後は一そう会社の使命を自覚いたし、どなたにも、いつでも、たやすく御
利用いただける国際通信をモットーといたしまして、サービス中心の事業運営に徹し、国民の皆さまに御満足いただけるよう努力いたしたいと存じております。何とぞよろしく御指導、御支援をお願いいたす次第でございます。
つきましては、ここにまず最近一年間の事業の概況について御報告申し上げます。
昭和四十五
年度における設備の拡張改良
計画のうちおもなものといたしましては、衛星通信の
関係、中央局における基礎的通信設備の拡充等がございます。
まず第一に衛星通信の
関係でございますが、ただいま茨城衛星通信所におきましては、第三地球局の
建設が着々と進んでおります。この新地球局は本年一月大西洋上に打ち上げられましたインテルサット四号衛星に引き続き、最近のニュースでは、九月または十月ごろ、少し、一、二カ月おくれることになっておりますが、そのころに太平洋上に打ち上げが
予定されております同型の衛星に対応して運用されるものでありまして、八月には完成する見込みでございます。一方、山口衛星通信所にはすぐれた国産技術をもって開発をいたしましたテレビジョン標準方式変換装置を新設いたしました。この装置は日欧間など、テレビジョン方式の異なる国相互間の伝送に際し大いに偉力を発揮しておる次第でございます。
第二には、基礎的通信設備の拡充整備でございます。そのうち大きなものといたしましては、まず、電信運用の近代化を目ざして
建設を進めておりました電報中継機械化の設備が完成を見たことであります。この新しいシステムは五月から順次運用を開始いたし、十月ごろには移行を完了する
予定であります。次に国際電話の第二交換システムの増設でございます。この設備は能率的な交換作業を行なう交換台多数の増設を可能にするものでありまして、これによりまして急速に増大しつつある電話
需要に対処いたし、サービスの向上をはからんとするものであります。
さらに、
昭和四十四年に運用を開始いたしましたテレックスの全自動交換設備を増設いたし、自動取り扱い対地の拡張につとめました結果、現在ではテレックス通信量の約八三%までが自動即時で取り扱われるようになっておる次第でございます。
このほか、
昭和四十五
年度の当社
事業計画に掲上いたしました諸設備の拡充
計画はおおむね順調に実施いたしております。
続いて、
昭和四十五
年度の営業概況について申し上げます。
まず、取り扱い
業務量の実績でございますが、これは回線の新増設によるサービスの向上、貿易の伸長等による
需要増の結果、
業務量はおおむね順調な伸びを示しております。すなわち、主要
業務別に概数で申し上げますと、国際電報五百九十五万余通、国際加入電信四百四十万度余、国際電話は二百十五万度余と相なっておりまして、このうち、特に国際加入電信、国際電話につきましては、前
年度に比較して加入電信は度数で五五%、分数では二四%、電話は三五%と著しい増加を見ております。
次に経理の概況を申し上げますと、まず、
昭和四十五
年度上期の収支状況は、営業収益百七十二億余円、営業費用は百二十八億余円となり、これに営業外収益、営業外費用及び特別損益を加減したこの期の
利益は、二十六億円余となっております。四十五
年度の下期は内定額でございますが、営業収益は百八十一億円余、営業費用は百三十七億円余となり、これらに営業外収益、営業外費用及び特別損益を加減したこの期の
利益は二十六億五千万円余となります。資産の状況につきましては、
昭和四十六年三月末現在におきまして資産の総額は五百二十五億円余で、そのうち流動資産は百六十二億円余、固定資産は三百六十三億円余となっております。一方、負債総額は二百一億円余で、そのうち流動負債は百八億円余、固定負債は四十一億円余、引き当て金は五十二億円余となり、したがいまして、
差し引き純資産額は三百二十四億円余となります。
以上で
昭和四十五
年度の概況の報告を終わります。
続いて
昭和四十六
年度の
事業計画の
関係について御説明申し上げます。
本
年度は各種通信設備の拡充整備に引き続き意を用いますとともに、広帯域回線の活用をはかり、これをもとにサービスの一そうの改善を目ざして諸般の
計画を進めてまいる所存でございます。
すなわち当社の今
年度の設備
計画といたしましては、茨城第三地球局の完成を期するほか、電話交換設備や新たなサービスのための施設等、基礎的通信設備の拡充、整備につとめ、また通信回線の新増設、営業
関係設備の整備、新国際通信センターの
建設、非常障害対策、訓練設備の充実、新技術の研究開発等を推進することとし、これらに要する経費といたしまして百十億円余を
予定しております。
このうち対外通信回線につきましては、さらに大幅の拡張をはかることといたしまして、電話回線百十七回線、加入電信五十九回線をはじめとして、専用回線、電報回線等総計二百九十五回線を新増設する
計画であります。これが実現いたしますと、当社の対外回線は全体で約千六百回線となり、国際通信サービスは一そうの改善向上を見ることとなります。
営業所設備につきましては、お客さまの御
利用の便をはかるため、新東京国際空港ビル局や大阪南局を開設することといたし、また来年二月開催の札幌オリンピックでは、同地に臨時営業所を設けるよう準備を進めております。次は、新国際通信センターの
建設でございますが、御存じのとおり、現在使用中の大手町局舎が広帯域通信
関係設備の拡張に次ぐ拡張によりまして、場所的にほとんど設備増強の余地がなくなってまいりましたこと、及び今後
予想されまする急激な
需要の増加に対応するための電子交換システム等新鋭設備の拡充に備え、また経営の各種機能を統合する必要があることなどの理由によりまして
建設いたす
計画を進めているものでございます。この通信センターは
昭和四十九
年度完成を目途に本
年度は設計を終え、
建設に進みたいと考えております。
非常障害時の通信確保対策につきましては、広帯域連絡線の二ルート化につとめる等、さらに強化充実をはかり、また新技術の研究開発につきましては、衛星通信や広帯域海底ケーブル中継方式、国際電話の電子交換、データ通信、画像通信等に重点を置いて行なってまいる方針でございます。
なお、新技術に対応する各種訓練なども施設を充実して成果をあげてまいりたいと存じております。
最後に、本
年度の収支につきましては、主要
業務の
需要量を国際電報五百九十五万余通、国際加入電信五百七十一万余度、国際電話二百八十六万余度と見込みまして、この
予測のもとに収入については約四百七億円余、支出につきましては一そう経費の効率的使用につとめることといたしまして、約三百五十五億円余を
予定いたしました。
以上、簡単でございますが、
事業概況の御報告といたします。
何とぞ今後とも一そう御指導、御鞭撻のほどをお願いする次第でございます。
ありがとうございました。