○二宮
文造君 私は公明党を代表して、
昭和四十三年度
決算について
政府に対する警告決議を除き、不承認の
意思を表明するものであります。
以下本件
決算審査の過程で、わが党各
委員の
質疑によって明らかになった幾つかの点に触れつつ不承認の理由を申し上げたいと思います。
第一は、国庫補助金の問題であります。開拓パイロット事業国庫補助金及び団地造林事業国庫補助金が農林事業の振興政策として国から支出されたのにその事業対象地域が前者は民間ゴルフ場に、後者は民間ゴルフ場付属の別荘地に転用された例であります。
いま一つは、町道改良事業国庫補助金が地元観光企業のために不当に支出された事例であります。
いずれも地元企業の利益のために
国民の血税が悪用され、その陰では中央、地方の政界人が何らかの形で力添えをし、その背景のもとに補助金行政が曲げられたという事例であります。
昭和二十年代の末期、わが国の補助金行政は災害復旧事業の国庫補助金経理を中心として乱脈がその極に達し、ついに補助金適正化法の立法を招いたことは、御承知のとおりであります。
本件
決算の審査の経過において明らかになったこれらの事例は、ゴルフ観光等の第三次産業の隆盛を伴った
国民経済の大きな変動の中に起こったことに注目すべきだと思うのであります。
この新たな国庫補助金の紊乱の趨勢、そしてそれが、地域地域における政界、財界、官界の癒着によって進行していることは看過してはならないことであります。
そして残念なことはこの趨勢に牽制を加える大きな期待と
責任を背負うべき
会計検査院が人員の不足等のため、あるいは、その同じ地点に検査を施行しながら、これらの
指摘に至らなかったり、あるいは全く関心すら示さないまま
決算の検査を了しているとしていることであります。
これらの
質疑の結果明らかになった事例については、その後それぞれ補助金の国庫返還などの是正措置がとられたのであります。
この
ように初歩的な行政
ミスが
国会の
指摘をまって初めて是正されるということは全く言語道断のことといわねばならないのであります。
会計検査院当局あるいは
関係各省当局の猛省を促しておくものであります。
第二は、いわゆる外郭団体の問題であります。本件
決算審査の過程において明らかになった外郭団体の事例はいづれも行政の機能ときわめて密接な
関係に立つ公益法人の問題として提起されたのであります。
すなわち、郵便切手にまつわる全日本郵便切手普及協会、水先料の認可行政に密着した日本パイロット協会及びそれに関連する一連の公益法人並びに雇用促進事業に
関係する中高年齢者福祉協会の事例であります。
一は、郵政省発行の有価証券としての郵便切手が収集趣味の対象に転化して、いわゆる郵趣商品化する過程に介在するものであります。
二は、水先案内料を
政府が認可する権限を持つことによって水先人の給与額から
政府の方針として一定部分を吸い上げ、それを財源として多数の公益法人の設立運営をはかる仕組みのものであります。
三は、雇用促進事業団の業務の委託機関の名目でつくられながら実質の機能が伴わないものであります。そして、これらの公益法人は、ほとんど全部がそれぞれの行政部門の一部の高級官僚の天下りによって構成されているのであります。
過去本
委員会において、いわゆる外郭団体の問題は幾多取り上げられたのでありますが、従来のそれは民間企業としてあるいは企業的実質を持った法人として
政府または
政府関係の機関との
契約等につき
会計検査院の正規の
批判にさらされる形のものであったのであります。
それに比し、これらのいわゆる公益法人は、まことに高級公務員にとって新しい優雅なべールに包まれた外郭団体の形成といわねばなりません。しかも、これらの法人は、役員数が職員数よりはるかに多かったり、類似業務について重複して設立されたり、あるいは有名無実であったりするばかりでなく、記念切手を特権的に優先して手に入れて販売するなど、
国民大衆の側からきびしく
批判されねばならぬ要素を多分に含む実態だといわねばなりません。
わが党の
委員は、切手収集に幼い夢を抱く少年
たちも含め、各界各層の大衆の支持のもとに幾たびか
政府に対して
質疑を重ね、きびしく問題を
指摘してまいったのであります。しかし残念なことに、これらはすでに高級公務員の利権の場と化し、既得権は一種のなわ張りと化しており、もはやがんとして抜きがたいものとなっているということであります。この
ような一部の高級公務員が行政をあたかも私物化していこうとする
状況というものは、これでよいものでしょうか。強い警告を
政府に対して発するものであります。また、この種の問題の追及が今後本
委員で一層強化される
よう特に要望するものであります。
第三に、国有財産の管理に関する問題であります。米軍ゴルフ場として米国に提供している国有土地の問題及び全国的に存在する里道畦畔等の国有地の管理処分の問題であります。
前者については従来、米軍基地の総点検等のわが党の党活動の上に立って、米軍ゴルフ場は米軍への提供施設とすること自体に疑義があるとの東京地裁の
判決事実を踏まえ、米軍ゴルフ場の使用の実態を明らかにしつつ、その解消を本
委員会においてもしばしば
政府に求めてきたところであります。しかしその後、在日米軍人の減少に伴い米軍によるゴルフ場の使用は閑散をきわめたにもかかわらず、
政府のその返還交渉は遅々として進まなかったのであります。
本件
決算審査の過程で明らかになったところによると、それらの米軍ゴルフ場は米軍側の独立採算制のもとでの管理費等の支弁のため、一般日本人に会員権を販売しあるいは公然とビジターに有料でプレーさせるところまで変質するに至ったのであります。これではまさに、米軍がゴルフ場の営業をするのに、国有土地を無償で使用させているといわざるを得ません。
政府は、その
ような不要不急の米軍ゴルフ場の返還を一刻も早く実現して、そこを住宅や都市公園に何ゆえに当てないのでしょうか。これは
政府の対米姿勢の問題というより、むしろ
政府の怠慢であると断ぜざるを得ないのであります。
国民の要望にこたえる米軍ゴルフ場返還措置は即刻とらるべき緊急事だということを、再度ここに申し上げておくものであります。
後者は、民間ゴルフ場と日本住宅公団との土地売買に関連して明らかになった問題でありますが、ゴルフ場の造成にあたってその地区内の里道畦畔等の国有土地が
政府に無断で形状変更され、あるいは無
契約のまま処分されているということであります。里道畦畔といえば、文字どおり、あぜ道等のことでありますが、一ゴルフ場当たりにすれば数ヘクタールにもなり、金額も数千万円にものぼる貴重な国有財産であります。大蔵省は通達まで発して出先に注意を促しているにもかかわらず、その管理の実態は怠慢そのものといわねばなりません。あるところでは一坪の土地のことで国からひどい仕打ちを受けて、その管理がきびしいことをいやというほど知らされるのが弱い
国民の
立場であります。一方で何十万坪という土地のゴルフ場経営者は、何のとがめも受けず国有地をのみ込んでしまって、当局も見てみぬふりでは不公平もはなはだしいといわねばなりません。当局は戦後のあと始末として行くえ不明になった国有地を求めて、いわゆる実態
調査を全国的に長年月にわたって行ないました。
いまや全国的開発ブームの陰で、この
ような形で消えてゆく国有土地について、通達の実効をあげ、これらの国有土地のあと始末に困る
ようなことがない
よう巌正な措置を強く要求し警告いたすものであります。
第四に、
政府ないし
政府関係機関の行為がみずから守るべき規範に違反しているという問題であります。
国立大学付属小学校において入学に際して違法な寄付収納をしている問題、日本専売公社において、タバコの販売価格は定価でなければならないにもかかわらず意外にも値引きを伴う卸売り販売という異常な
事態が発生している問題であります。
前者については入学金ないし寄付金として入学者全部から一人につき数万円の金を徴収している事実が明らかになったのであります。これが義務教育の無償をうたった
憲法の精神をじゅうりんするものであり
関係法令に反することは明らかであります。
次に、専売たばこは専売法によって定価販売が規定されていることは御承知のとおりであります。にもかかわらずパチンコ店の景品としてたばこの大量需要が起きたことに伴い、公社は従来の小売り店設置の基準をゆるめて、その需要に応じて大量販売が可能な、いわば卸売りの形態を容認しているということであります。その結果卸売りに伴う値引きが現実に行なわれ、そしてその取り締まりはほとんど放任状態であって、公社は専売法違反をこの
ように放任することによって販売量の増大をもくろんでいるのが実態であるといわねばなりません。
すなわち一つは、大蔵省のおひざ元における
政府関係機関の法律に対する基本
態度の誤りであり、もう一つは教育の
機会均等という義務教育の基本理念を
政府みずからの手で無視しているということであります。換言すれば、みずからを拘束する法規範の厳然とした法益に行政当局が眼を開くことなく、実勢と惰性に安易に引きずられて法規範をないがしろにするという、行政としては絶対あるまじき姿であるといわねばなりません。
行政の法に対する姿勢という原点について
政府の覚醒を強く促さざるを得ないのであります。以上四点はいずれも予算執行の根本的姿勢に関するものであって、その結果である
決算の承認不承認を
決定するにあたって特に重要なポイントとなるものであると確信するものであります。
これらの四点のほか、
政府の公害対策、物価対策等にわたって
質疑を重ねました。その結果、
政府は口では人間尊重といいながら、その実績は人間尊重とはうらはらのものであったといわざるを得ないことを付言いたします。
以上をもって、
昭和四十三年度
決算についてこれを不承認とする理由とするものであります。
これをもって討論を終わります。