運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-03-10 第65回国会 衆議院 大蔵委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月十日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 毛利 松平君    理事 宇野 宗佑君 理事 上村千一郎君    理事 丹羽 久章君 理事 藤井 勝志君    理事 山下 元利君 理事 広瀬 秀吉君    理事 松尾 正吉君 理事 竹本 孫一君       奥田 敬和君    木野 晴夫君       木部 佳昭君    木村武千代君       佐伯 宗義君    坂元 親男君       高橋清一郎君    登坂重次郎君       中島源太郎君    中村 寅太君       原田  憲君    福田 繁芳君       坊  秀男君    松本 十郎君       森  美秀君    吉田  実君       阿部 助哉君    佐藤 観樹君       藤田 高敏君    堀  昌雄君       貝沼 次郎君    坂井 弘一君       春日 一幸君    小林 政子君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君  出席政府委員         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省関税局長 谷川 寛三君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君  委員外出席者         経済企画庁国民         生活局参事官  山下 一郎君         通商産業省通商         局国際経済部長 室谷 文司君         通商産業省鉱山         石炭局石油業務         課長      斎藤  顕君         中小企業庁計画         部計画課長   牧野 隆守君         参  考  人         (日本化薬株式         会社社長)         (関税定率審議         会会長)    原 安三郎君         参  考  人         (武蔵大学経済         学部教授)   岡  茂男君         参  考  人         (日本国際貿易         促進協会業務第         一部長)    中田 慶雄君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ――――――――――――― 委員の異動 三月九日  辞任         補欠選任   田村  元君    稻村左四郎君 同日  辞任         補欠選任  稻村左四郎君     田村  元君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第六一号)  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三五号)      ――――◇―――――
  2. 毛利松平

    毛利委員長 これより会議を開きます。  この際、租税特別措置法の一部を改正する法律案議題といたします。     ―――――――――――――
  3. 毛利松平

    毛利委員長 まず、政府より提案理由説明を求めます。中川大蔵政務次官
  4. 中川一郎

    中川政府委員 ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、今次の税制改正一環として、当面の経済社会情勢に即応して、公害対策海外投資資源開発対策貯蓄奨励及び住宅対策中小企業対策企業体質強化等に資するため所要措置を講ずるとともに、輸出振興税制見直しを行ない、交際費課税強化をはかる等のため、ここにこの法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案につきましてその大要を申し上げます。  第一は、公害対策に資するための措置であります。  すなわち、公害防止施設特別償却の率を現行の三分の一から二分の一に引き上げるとともに、公害防止事業者負担金について、その納付したときに一時に損金算入を認める特例制度を設けることとしております。  第二は、海外投資資源開発対策に資するための措置であります。  すなわち、海外投資損失準備金対象地域拡大及び出資要件の緩和をはかるとともに、石油開発投資損失準備金制度資源開発投資損失準備金制度に改めて、そての適用対象拡大積み立て率引き上げ等拡充を行なうこととしております。  第三は、貯蓄奨励及び住宅対策に資するための措置であります。  すなわち、貯蓄奨励対策として、勤労者財産形成に資するため、少額貯蓄非課税制度の別ワクで、元本百万円を限度とする勤労者財産形成貯蓄非課税制度を創設するとともに、少額国債非課税限度現行元本五十万円から百万円に引き上げる等の措置を講ずることとしております。また、住宅対策として、住宅貯蓄控除制度について、その対象貯蓄に一定の勤務先預金等を加え、税額控除限度額を一万円から二万円に引き上げる等その拡充をはかるとともに、新築住宅登録免許税軽減制度について、その内容拡充した上、適用期限を延長する等の措置を講ずることとしております。  第四は、中小企業対策に資するための措置であります。  すなわち、青色事業者について、青色事業主特別経費準備金制度を創設することとし、毎年の事業所得の五%相当額、最高十万円を限度として、準備金に繰り入れた金額必要経費に算入することを認めることとしております。また、特恵関税供与に伴い事業を転換する中小企業者についての償却特例制度を創設するとともに、信用保証協会抵当権設定登記等登録免許税軽減制度を設ける等の措置を講ずることとしております。  第五は、輸出振興税制見直しであります。  すなわち、輸出振興税制については、その縮減合理化を行なった上、適用期限を延長することとしております。まず、輸出割り増し償却制度については、輸出貢献企業に対する特別割り増しを廃止するとともに、割り増し償却率輸出比率の一〇〇%から八〇%に引き下げることとしております。また、海外市場開拓準備金については、輸出貢献企業特別割り増しを廃止する一方、中小企業負担を緩和するため、積み立て率を五割程度引き上げることとしております。さらに、技術等海外取引所得特別控除制度については、工業所有権譲渡等を除き、その所得控除の率を二分の一に縮減することとしております。  以上のほか、交際費課税強化をはかるため、損金算入割合現行の六〇%から七〇%に引き上げ適用期限を延長し、山林に関する課税特例制度について合理化を行なうとともに、証券取引責任準備金制度等期限の到来するその他の特別措置について、実情に応じ適用期限を延長する等所要措置を講ずることとしております。  以上、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由内容大要を申し上げました。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  5. 毛利松平

    毛利委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ります。      ――――◇―――――
  6. 毛利松平

    毛利委員長 引き続き、関税定率法等の一部を改正する法律案議題といたします。  本日は、まず関税定率法等の一部を改正する法律案について参考人出席を求め、その意見を聴取することといたしております。  本日御出席をいただいた参考人は、日本化薬株式会社社長関税定率審議会会長原安三郎君、武蔵大学経済学部教授岡茂男君及び日本国際貿易促進協会業務第一部長中田慶雄君の各位であります。  参考人各位には、御多用のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。本案に対し、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  なお、各位の御意見は最初におのおの十分程度にお取りまとめ願い、その後に委員から質疑によりお述べ願うことといたしますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。  それではまず原参考人よりお願いいたします。原参考人には着席のまま御発言になってけっこうでございます。
  7. 原安三郎

    原参考人 それでは御命令によって私から陳述をいたします。  関税率審議会は、四十五年の十月に大蔵大臣から、最近における経済情勢変化に即応して、現行関税率をいかに改むべきかということが諮問されました。その後同審議会は、本年初めまで七回にわたって審議をいたしましたが、本年の一月の七日大蔵大臣答申しました。いま御審議をいただいております関税定率法等の一部を改正する法律案は、この答申に基づいて作成されたものかと思います。  私は、きょう関税率審議会会長として、四十六年度の関税改正についての意見答申書に基づいて申し上げたいと思うのです。関税率審議会は、事務局から出た書類を六回にわたって審議しましたが、この審議経過は略しまして、今日われわれが当面する問題は、日本の国の国際的地位の向上とともに自由化促進が非常にやかましくいわれ、同時にまたわれわれもさようしなければならぬわけで、及び後進国の援助の問題がまたここにございます。国内では高度成長によるひずみとしての物価並びに公害の問題がございます。これらに対処して何か施策一環をあらわさなければいけないということでございまして、関税機能をこれに活用することは大いに意義のあることだと考えられるのでありまして、その具体案を鋭意検討いたしました結果、まずケネディラウンドKRの繰り上げ実施、これは千九百二十三品目ございます。ところがほか二百二十一品目につきましてはまた改正を行なうことになりまして、特恵関税のほうもこれを実施するという考え方実行したいという結論に達しました。この結果、減税額は総計で三百六十一億、四十六年度の予定になっております。これは昨年度の九十億に比べますと四倍という減税額でございます。今回の改正は、品目数におきましても、減税規模のいま申し上げた数字におきましても、まず画期的なものでございます。  この中できょう一応申し上げたいのは、物価政策の問題、また貿易自由化の問題あるいは輸入自由化の問題、公害問題、ちょっと触れました特恵問題、それと連関する中共関税格差解消、こんなものがございます。  まず、物価問題に対してどういうふうに関税政策を扱うかという問題でございますが、輸入政策ということで関税政策を活用することはまあ世界的の要請でございます。今回のKRの繰り上げ実施によりまして約百七十億円の減税を行なうことにいたしましたほかに、バナナ、羊肉、馬肉など三十八品目生活関連品目についてこのほうでは約百二十億、両方で二百九十億の大幅な減税を行なうことにいたしましたのは、いま申し上げました趣旨によるわけでございます。  ただ、この際政府に要望したいのは、このような減税効果末端まで、すなわち消費者末端まで到達するように影響を与え、すなわち、安い品物を消費者が使えるように、物価に反映するようにしなければならぬ。それにはまず流通面あるいは販売頒布面消費者面に近い販売頒布面において万全の措置をしていただかなければ、せっかく税率を下げた効果があらわれません。この点については私も非常に――関税率審議会の問題ではございませんけれども、行政面でやりますか、国民全体の意思でやりますか、また消費関係流通面をつかさどっておる人たちに対して呼びかけますか、あらゆる角度から減税効果をできるだけ消費者に徹底さしたい。これがなかなか思うようにいっていないことを遺憾に思います。しかし、それかといって、この減税をした――あるいは二〇%したものは二〇%響きませんが、あるいは一五%、少ないものは五%ということに響きますから、やはり減税することは効果がある、これは言えます。ただ、その程度が完全に消費者に徹底するということが希望されております。これはわれわれの審議会委員全員の希望でございました。こういう関係で、この次、来たる四十七年度以降もやはりこういう観点に立って物価政策減税を行ないたい。しかし実行面はいま申し上げたものが絶えず強い要請と相なりますわけでございます。  次に輸入自由化。これも先刻申し上げましたカテゴリーですが、これについて政府は現在の残存――ずいぶん長い間百二十品目で残しておりましたが、これが現在八十品目だけで、本年九月までにそのうちの四十品目自由化されます。残るところ四十品目になります。この点はだいぶおそまきの進歩でございますが、要するに九月末までには制限品目というものが四十品目になる。このいまの四十品目のうちで輸入自由化ということの実行にちょっとむずかしい点がございますのは、なぜこれがこんなに制限されて置かれておるかというと、国内産業保護という点から、こういうふうに列国から幾らか白眼視されながら置いておるわけでございますが、これをやはり解き方も適当に減税していかなければいかないわけです。せっかくある日本産業、こんなに市場を伸ばし、ファンを伸ばしておったものをつぶしてしまってもいけない。しかしながら、またそれが増税になることも避けなければならぬ。だから、これをやるということの効果があまり保護に徹してもいけないが、この点がなかなかむずかしい問題でございます。残存品目国際競争力が元来弱いからこんなふうに残存されておったわけなんでございますが、自由化にあたりまして経過的な関税上の保護措置というもの、これがちょっと必要なんでございます。これは認めていただきたいと思って私たちもいたしましたけれども、いま言ったような趣旨で、ただ関税の単純な引き上げだけではいけないということが問題でございます。ことに原料品に関する関税などは、これはどうしても引き下げなければなりませんが、その他これを措置する方法としては、いま申し上げたいろんな事情が原因しまして、まず関税割当制度をこれに援用するとかあるいは季節によって下げる期間をきめるとか、いわゆる季節関税、それから差額関税、すなわち上限と下限の価格をきめて、その中間価格においての輸入された金額を税で取るという、関税制度としては差額関税と申し上げておりますが、それを採用するとか、その他いろいろの方法関税の諸機能を十分に発揮して、ここに二十五品目だけ所要改正をいたしたのであります。  輸入自由化については、これは国際的の要請に基づいて、わが国がすでに現在置かれておる世界の貿易国中の日本としては、金で行なわれておる資本の自由化と並んで、両方とも積極的に推進しなければならぬ問題でございます。それで関係業界方々並びに消費者方々、この人たちにも申し上げたいし、またそういう面の配慮もわれわれが、業界はつぶれないようにあるいは利を失わないようにという保護的の問題消費者の面ではまた値を下げることが主であるが、一方ではかような問題もあるということなどの調整をはかる必要がございました。この点で税制措置を検討するにあたっては最も苦慮いたしました、やりにくかった問題でございます。立場立場によってその意見考え方が違い、また実効面あらわれ方によって影響が違います。私たちはでき得る限りの策を講じまして、これによって自由化促進をはかることができればということでこの結論を出しましたわけでございます。  その次、公害政策の面からの税制改正のことでございますが、四十五年度以来実施されておる重油脱硫重油の中に硫黄の入っておるこの問題に対して、この作業をやっておる人たちに税を引いております。この脱硫減税です。その減税の単価の引き上げ、すなわち保護をよけいしてあげようということが行なわれまして、考えを決定しておきました。  そのほかに新たに低硫黄硫黄の少ない、一%以下の硫黄を含んでいる原油を入れる、この方面にもまた税の軽減をしてあげる。前から行なわれておったものには重油脱硫に対する減税を少しふやしましたし、また新しく低硫黄原油を入れられる方々に対して減税をいたしました。これによって、大気汚染防止政策ということが近ごろやかましく言われておるが、これを進める上にまことに意義のある考え方だと思ってそれを決定しておきました。  本審議会としてはかねてからエネルギー資源――これはちょっと問題が連関しておりますが少し離れますが、エネルギー資源として原重油関税相当長期に行なわれております。この関税はできるだけ引き下げなければならない。私は各国の例から見ましたら、むしろ無税にしたい。ことに日本ではわずかばかりの原重油しかございませんから、その面からいえば税のないのが列国のあるべき姿であり、国民としてもそれを希望しておる。でございますが、この関税が、引き下げばかりでなく、なくしたいとまで思っておるのでございますが、この原重油暫定関税率というものが四十八年度まで据え置くことにこれも今度決定しましたわけなんでございます。これはいわゆる石炭関係特別会計につながっておるもので、前から皆さんから御決定願ったものですが、これがこのために原重油関税というものは四十八年度まで続きます。これについては附帯決議をつけまして、できるだけ早い機会に、四十九年度にならぬ前、四十八年度、もっと前にこの問題を解決する、どういう方法をとるかということをやってほしい。またわれわれの審議会の席上の意見では、政府が何かこれに依存して、石炭対策が終わってもまだこれを収入の道として使われると、列国から見れば、日本国民生産高の少ない原重油のために税負担を非常に多く持たなければならぬ。最近では兆に達する数字が出ておりますから、この点は大きな負担で、知らず知らずの間に負担しておるようではありますけれども、大きなものである。ことに最近OPEC関係で、五年にわたって相当引き上げが油の代価の上に加えられておりまして、たいへんな問題だと思います。こういう問題も連関しますので、これは最近に起こった問題でございますが、これをなるべく引き下げ、またはなくしてしまう、そしてまた四十九年に期限がくるのだから、四十八年の末に勉強しようというやり方でなく、われわれ自身も四十七年からでも勉強してこの問題の解決をはかりたい、かように考えております。これは税に連関している問題で、将来のことをちょっと申し上げたわけであります。  その次に、さっき触れました特恵関税は、御存じの国連の貿易開発会議、UNCTADの会議で、ずいぶん長い間問題になっております。日本は、これについて、国内産業のことの考え方からいって、なるべく延ばしておるというような情勢であり、アメリカ日本の何となく一緒に進みそうでありましたが、アメリカがついに一年前からこれを認めるというふうに踏み切りました。日本アメリカのまねをしておるのではございませんけれども、さような形で、この問題は、国際的な要請わが国もこの開発途上国に対して特恵関税供与する、こういうことに相なりましたが、その特恵関税実行するにあたりまして、開発途上国と競合するような仕事をしていらっしゃる中小企業日本に非常に多いのです。この点では日本の国がアメリカその他よりも一番悪い影響を受けるのではないか、かように考えておりますから、特恵関税は重要な問題でございますので、慎重に検討しました。政府案特恵供与品目の選定、あるいは供与ワクの問題及びその管理方式関税上の緊急措置の問題、すなわち税を運営していく上においての緊急措置の問題などについて、きわめてこまかい配慮がされておりますし、別途中小企業のための特別対策の法案も通産省あたりからも出ておるかと思われますが、こういうことによって、実際どんな影響日本中小企業に、この関税供与によって起こるかについての配慮を、政府方面でもいただいておるようでございます。すなわち、特恵関税によってわが国産業に大きな混乱を生ずるということのないようにしたい。しかし、わが国中小企業合理化近代化が、この問題に対処するばかりでなく、その他の面においても非常に大切な問題である。ぜひこの方面の問題も、当委員会の問題ではございませんが、審議会の個人それぞれみながさようなことを希望しております。この点で、政府はぜひ今後ともそれがためにいろいろな国内中小企業及び産業に迷惑をかけないような施策を、ひとつ推進していただきたいということを希望されております。  これで一応大きな柱は終わりましたが、中共が出しておる産品の問題です。これに関税格差がいろいろな関税解消の結果起こりました。もうすでに四十三年から四十五年度の改正で三百九十三品目、これに対する格差解消をやっております。これは当然伸ばします。今度新たに三十一品目加えると、四百二十四品目だけこの措置をとってあげることに相なったわけなのであります。  その他には、これは関税率改正のときにも行なわれております、農林漁業用重油免税制度、または肥料製造用原油免税、それと還付制度、並びに石油化学用揮発油、これに対する還付制度、これを拡大していただくし、また製造用原料品減免税制度がございます。並びに加工に対しても、加工品を再輸入する場合、一ぺんほかの国で加工したものを再輸入する場合、このときの減税をやはりやっていただく、この制度適用対象拡大したり、延期したりなどすることがつけ加えられております。  そのほかに、まだ重要機械類免税制度ガス製造用原油免税制度還付制度等々、たくさんございます。これなどは期限を四十六年度末まで延ばしていただく、こういうことで、いまつけ加えた機械その他に対しておるものでございます。  以上、私たちがつくった答申の中からピックアップした問題でございますが、この政策を総合的に勘案しますと、今度政府が提出された関税定率法等の一部を改正する法律案は、答申のとおりにやっていただいておるということから、私たちは賛成しておりますことをここに申し上げます。しかし、それはまだ実行の面においてたくさん問題が残っておりますし、また、関税のこまかい問題でやはりお取り計らいを願わなければならぬ問題もありますし、私自身はこまかい個々の商品についてのお話を申し上げる立場ではございませんが、基本的には賛成しておりますが、実際のこまかい面では、たとえば物価影響しそうな問題とかいうものは、御実行の面において起こると思います。そういう点ではぜひこまかく注意をしていただいて、そうして実行に入っていただきたい。その面から問題は多分に残っておると申し上げてもいいわけです。その上に、四十七年度以降もこの考え方を徹底していただくように、大きな変化経済情勢になければ同じ方向に進めていただくように、かように希望しておるわけでございます。  私は御報告の第一次としてこれだげを申し上げておきます。どうもありがとうございました。
  8. 毛利松平

    毛利委員 長他の参考人の御意見を承る前に、この際、原参考人に対する質疑を先に行ないます。広瀬秀吉君。
  9. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 原参考人は早くお帰りにならなければならぬ用事があるようでございますので、一つだけお伺いをしたいのですが、今回の関税定率法改正で、中華人民共和国に対する関税の取り扱い、これは、一番大きい問題はいわゆる差別の問題でありますが、いまおっしゃったように、四十三年から四十五年にかけて、そしてまたことしも引き続いてやったということで、四百二十四品目は解消した、こういうことでありますが、私どもは、なおそれにもかかわらず、ケネディラウンドの段階でもまだ二十三品目差別が残っておる、こういう状況にあることはたいへん残念に思っておるわけなんです。特に今後日本中国の問題、きょうは政治的な問題は抜きますが、いずれにしてもすぐ隣の八億の人口を持つ中国との関係というものは、経済的にも政治的にも友好の関係というものを深めていかなければならない。こういう非常に差し迫った条件にきている、こういうように私ども思っているわけなんですが、今回特恵を国際的な要請もこれあり、これは時代の趨勢であり、先進国の後進国に対する当然のこれは経済援助の一つのスタイルでもある、こういうような立場で、このことに私ども反対ではありません。これも大いにやることによっては地球上から貧困をなくしていこうという一つの努力のあらわれとして評価をしておるわけなんですが、しかしこの制度をやることによって、いわゆる社会主義圏、特に日本が一番近い朝鮮における差別、あるいは中国との差別、北ベトナムというような、ああいう分裂国家の片方には非常にこの特恵の恩恵というものがきわめて強く作用する。ところが逆に今度はその差別が、中国、朝鮮民主主義人民共和国、北ベトナムというところには非常に差別拡大された形で特恵をやることによって出てくる。こういう問題について、たとえば中国の場合でも、輸入実績のある有税商品のうちで約七〇%が今度は格差がこの特恵によって出てくる。品目数で三百三十七品目にも及ぶ。金額で大体百四十六億、百五十億くらいになるのじゃないか、こういうことなのでありますが、こういうものについてやはり差別を解消する道というものを、どのように原参考人お考えでございますか。この点についての先生のお考えをひとつお聞きをいたしたいと思うのであります。
  10. 原安三郎

    原参考人 この案は、大体調べを大蔵省の事務段階というか、われわれの関税率審議会の事務関係方々にお願いして、われわれはその書類を拝見してやっておるのですが、ここで私の――これは私が会長としての意見ということは、審議会にかけておりませんからちょっと申し上げかねますが、私個人の意見は、やはり中共もほかの諸国と同じ扱いにすべき方向にいくのが当然だと思います。その点では、何で二十七品目がまだおくれておるのかという問題については私いまわかりませんが、これは全部その他の発展途上国と同じ状態に持っていくべきものだ、貿易の自由化の面からいったら、差別があってはいけないということを私は考えます。でありますから、全部を同じような、発展途上国と貿易ができる同じ情勢に持っていくのが原則だ、かよう考えます。
  11. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 時間もあれですから、終わります。
  12. 毛利松平

    毛利委員長 堀君。
  13. 堀昌雄

    ○堀委員 実は審議会会長としてお伺いをいたしたいのは、非常に膨大な審議が実はきわめて短時間のうちに審議会を通過をしておる、この点でございます。それで私は、どうも各種の審議会というものが、ややもしますと審議会という形式だけをとりまして、中身がどうもないところが多いと思いますが、ちょっと資料で見ましても、昨年の十月でございますか、ぐらいからスタートをして、数回の審議会の経過でこれだけ膨大なものがさらさらっと通ってきておるというのは、やや中身の議論が十分に行なわれていないのではないか。中身の議論を行なうに足る資料を大蔵省が十分出して、審議会の皆さんの御意見が十分この答申の中に反映できていないのではないかという感じがちょっとしておるわけでございます。そこで、やはり審議会というものが設けられております以上、審議会独自のいろいろな御意見というものが出されて、そうしてそれが――いま私、会長のお話、個人的にはこうだというお話を承ったのでありますが、おそらくその審議会委員の皆さんが、個人的にはいろいろな御意見があろうと思いますけれども、そこに多数意見、少数意見というようなものがどういうふうに取り扱われているのか、その点等が私ども実は外から見ておりますとはっきりいたしませんのでございます。そこでそういう意味では、たいへん失礼な言い分でございますけれども、やや審議会は形式に流れ過ぎておるのではないかという感じがしますので、今後の関税率審議会のあるべき姿と申しますか、もう少し各委員の皆さんが十分御意見が述べられ、その御意見を述べられるための参考になる資料を大蔵省が十分準備をして、大蔵省の考えておる方向に――大蔵省の考えておる方向と申しますと、必ずしもそれは大蔵省だけではなく、農林省なり通産省なりの意向を体して調整点で出てきたものは、ともかくこのままでお願いをしますというような形で処理をされておるのは、まことは私はいかがかと思いますので、その点ひとつ今後のあるべき関税率審議会のあり方、特に審議会に御出席をいただいておる皆さんが、ある意味ではそういう通産行政とか農林行政というワクを越えて、国民的視野から御判断になる御意見、こういうものが十分その中に反映をされて答申になってくるということが本来の審議会の姿ではないのか、こう私は考えるわけでございますが、この点についての会長の御意見を承りたいと思います。
  14. 原安三郎

    原参考人 との問題は、政府審議会に私はその他二、三出ておりますが、事務局はみな政府下ございますから、われわれのような審議会が別の調査機関を持って三百六十五日やるのが一番完全だと思います。費用が要るし、人間の能力が、いい人が得られれば。そこで、われわれの審議会は四十七、八人いると思いますが、そのうち一部は役所の次官級の人がお出になっておりますが、三十幾人ほどは全部業界のあらゆる方面の、水産、農林あらゆる方面人たちが出ております。貿易商の方も出ております。また、いわゆる高い知識なり常識を持っていらっしゃる方も数人出ておられます。そういうふうで、委員のメンバーのほうはよろしいのですが、いま御質問のあるのは、その審議会にかける準備、方法が十分検討する余裕があったかどうかということ、及びそういう材料の提出のしかたで審議ができたかどうか。  これは一応申し上げますが、本年は二百二十一品目決定しました。昨年は百八十七品目決定しました。それを七回でやったとすれば一回に多いときは七十品目です。ところが、この品目中に、御注意を願いたいことは、石油製品というと、その石油製品というカテゴリーがまた十か十五に分かれておる場合もあります。でありますから一回に七十品目やったかというと、石油品目のうちが幾つか分かれております。アンモニア品目が分かれております。金属でもそういうことになっておりますから、この品目の数ほど多くはない。しかし何といっても参加しない方々から、二百二十一品目を七回の審議会で決定はずいぶんひどいじゃないかということをお考えになる。私たち考えますのは、われわれがさつき申し上げました調査機構を持って三百六十五日、すなわち四十七年度をもうきょうから始めるというくらいの考え方、これを尽くせばよろしゅうございますが、いま出ておる事務局からの材料に対する私たちの判定は、四十六年度が終ったらもうすぐ四十七年度の問題について、関税局を中心にしてやっておる事務局は、その関係しておる各省、主管各省の方々、農林省でありまた通産省であり、その品目関係している官庁の方々とお話しを始める。この方々は業種の別にそれぞれ折衝を三百六十五日あるいは三百日やられた結果を持ち込まれておるものだという考え方を一応われわれはしておったわけです。でありますから、私たちが持ち出されて大体決定するには、一応説明があって、その次の会に決定するのですが、その間にわれわれが疑問とするところを政府に聞いてみますと、そういう質問をする場合に専門家が聞きますから、なかなかはっきりした説明があるのです。いままでのところ別段――私たち自身が調べたものを出すものじゃございませんが、これは政府委員会はみなそうですが、その点において現在のところは、本年のごとき、ものを考えることが多い、大切な一つの節々になっております点では、特に今度のものが短期過ぎた、短か過ぎたと感じたものは、ございません。それでございますから、実行面にできるだけの配慮をしていただきたいことをここでも申し上げておるし、われわれの決議の中にも置いておるわけです。さように御承知を願いたいと思います。
  15. 堀昌雄

    ○堀委員 早過ぎたかどうかは、私もこれは皆さんのお仕事ですからいいのですが、要するに、どうも原案がそのまま通っておるような感じがするわけです。原案が審議会の中で、事務局が出しました案に対して審議会の皆さんの御意見で多少でも変わっておるところがあるのでしょうか。どうも私、こういう形のものですから、原案が出てきたらこれは変えようがないというような感じで、そのままで通るのだとちょっと問題があるんじゃないか。で、それは変わらなくてもいいのですけれども、それは至れり尽くせりの理想的な案が出ておるのなら別でありますが、これもやはりいまの調整の産物でございますから、私、大蔵省必ずしもこれで満足していると思いません。通産省もまた満足していると思いませんし、農林省も満足していると思いませんが、やはりそのいろいろな妥協の産物でありますものを審議会にかけますのは、そういう妥協の産物だから、これは役人同士の問題でございますから、それを別の角度から見ていただいて、これはちょっとおかしいんじゃないか、こうすべきではないかという問題が提起をされ、それが実現するのが審議会の任務ではないのか、私はこう思っておるのです。
  16. 原安三郎

    原参考人 私はその問題についてはこう思うのですがね。ことほどさように調査が完全でけっこうであったという見方もありますよ。しかしながら、何か質問をしたり異議があるべきなのがあたりまえだという前提でものを考えてもいけませんね。中にはなかなかうるさくて、たった一つの品目が通らないであとへ回す場合もあります。それは必ずしもめくら判ではございません。それから同時にまた、この人たちも自分の参加した仕事をみな持っておるのですから、重要な問題というものは何らかの角度で御存じです。これは重要な問題だと思ったものには、原案になってしまうまでも相当ディスカッションがあることがございます。ということでありますから、ぜひ直すべきものだということでもないし、原案がさほど完全に、各役所が業者との間に三百六十日御相談を願ってやっていただいたなということに信頼を置いてわれわれの審議を進めなければならぬわけですね。それはさっき申し上げたとおり。でありますから、いままで議論すべき問題があればそれは議論しています。そうしてその日にきまらないで翌日に繰り越す。本年度の場合も、四十六年度の場合も、十二月末にきまりをつけたかった。それがとうとう、ある問題がやはりディスカッションする問題がありまして、一月の七日になったのであります。全部が古包みのままめくら判を押しているということではない、私はかよう考えます。  ただ私の希望したいのは、もう少し余裕を与えていただくと私たちの日常の仕事を――十二月の忙しいときにぱっとやられるのは困るのです。これは民間のほうの業者も反省していただきたいので、最後のところまで各省を経て粘っていられる方がいるわけだ。できるだけお役所としてはその意見を聞くわけです。それだから三百日も三百六十日もなにして、われわれの決定のときにはわずか十日か二十日で決定しなければならぬことになるわけだ。しかしながら、その前のディスカッションなり討議を完全に行なうためには、大衆のためにやむを得ないとわれわれはしんぼうしながらやっておりますわけです。希望は、二カ月ぐらい余裕があるような形でディスカッションしていただけば、それは持って帰って見る時間が長いというだけで、結論は同じになるかもしれません。さように御承知願いたいと思います。
  17. 毛利松平

    毛利委員長 松尾君。
  18. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 時間がありませんから、一つだけお伺いいたします。  中共関税差別の問題については格差しないことが原則だ、こういうことですので、これは省略いたしますが、原参考人から、今度のこの対策について大事なことは、物価公害等に重点を置いて、これが末端にことごとく影響することが全員の意見であるし、これが重点だ、こういうお話がありました。私もまさしくそう思うわけです。そこで物価安定会議等から、各物価関係する審議会には消費者代表を増員しろ、こういう強い意見がありますが、消費者代表については増員をされたのか、あるいはまたこの意見についてはどう考えられるか、その点を……。
  19. 原安三郎

    原参考人 消費者代表ということですが、消費者代表というと、品種たくさんありますからね、全部の代表者をわれわれの委員会には入れませんが、しかし消費者代表の御意見まで聞いておられるかどうかは、私どものほうは確かめておりません。ですから、それはそういうものもいろいろな角度から、役所としての立場からほかの場合にさような取り扱いをしていらっしゃいますから、関税局も同じような形をとっておられるのではないかと思いますが、その点について委員会では詳しく消費者代表の話を聞いたかどうかということはチェックしておりません。これはどうぞ御承知を願いたいと思います。  しかしこの問題も、ちょっと私がものをつけ加えると相すみませんが、実は消費者代表は、ある特別の消費者代表はなかなかはっきり説明していただくのですけれども、米なんて、日本全国の人がみんな高くなることをこわがっておるものが、消費者代表がやかましく言ってもついにここまで上がってきて、最近にストップしておりますが、こういうことでなかなか消費者代表――私自身がそういう問題で十数年前に消費者代表を集めた会議をやりましたが、なかなか骨が折れたのです。しかしお役所としての立場からはどういうふうにそれが集約できるか、これは別でございますが、しかしそういうことが完全に聞けることができれば、たいへんいいと思います。
  20. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 これで終わりますが、これにはぜひその効果を期待するために――全員が意見しても効果があがらなかったら何にもならない。そういう意味で今後、これに付した強い意見等もぜひ織り込んで進めてもらいたいと思いますが、今度の考え方だけ一言伺って、終わりにしたいと思います。
  21. 原安三郎

    原参考人 いまの御意見よくわかりましたから、私はさよう――そういうことも必要だということは私自身は考えておりますから、委員会委員を加える必要があればしてまいりますが、どうもこれは消費者、種類がたくさんありますからね。なかなか実際に実行ができない場合がある。その点を配慮しながら考えなければならぬと思います。
  22. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 以上です。
  23. 毛利松平

    毛利委員長 原参考人には、御多用のところ御出席をいただきまして、貴重な御意見を伺うことができました。厚くお礼を申し上げます。どうぞお引き取りになってけっこうでございます。     ―――――――――――――
  24. 毛利松平

    毛利委員長 次に、岡参考人から御意見を承ります。岡参考人
  25. 岡茂男

    ○岡参考人 それでは、今回の改正の全般につきまして、一応私の考えました全体の特色及び意義、それに関連しましてどういう問題点があるかというふうなことについて申し上げたいと思います。  いま原参考人からは非常に詳細な御報告がございましたので、小さな点につきましては触れませんけれども、改正品目数それから減税額、こういったような改正の規模の点から見まして、今回の改正というものが非常に画期的なものであるというふうにいえると思います。  それから内容の点から見ましても非常に内容が豊富でありまして、ケネディラウンド関税引き下げの九カ月の繰り上げ実施、それから特恵関税制度の新設、そのほかさまざまな新しい政策機能というものをいろいろな目的のために設けた。いわば最後の政策機能の点につきましては物価対策とか公害対策ないしは自由化対策というふうなことで、この関税政策というものが従来ややもすれば産業保護という点に傾きがちでありましたものが、今度はかなりとの物価対策等におきましては積極的な姿勢が出されております。これはただ一般品目のいわゆる生活関連物資三十八品目ですか、これの引き下げというだけでなくて、このケネディラウンドの繰り上げにいたしましても、特恵関税実施にいたしましても、この関税がかなり大幅に下がるわけでありまして、すべてこれは物価対策に貢献することになりますが、そういうものを含めて今次改正の一つの大きな特色であろうと思います。  それから自由化対策につきましても、従来はある品目輸入制限を解除する、自由化するといいますと、ややもすれば単純引き上げ、つまり保護税率を強化するというふうな点が強かったわけでございますけれども、今回は自由化対策といっても、単に自由化に逆行するような形で産業保護機能強化する、そして自由化のメリットを打ち消すような、そういう改正、対策というものはとらなくて、かなりきめのこまかい配慮がされている。そのために季節関税だとか差額関税だとか、タリフクォータ制度というものが、従来は産業保護のために常識として使われていたものが、この自由化対策としては産業保護機能は役立たしておりますけれども、物価対策の面で、たとえばバナナ関税あたりに差額関税を適用するということ、ないしは自由化対策としてもグレープフルーツについて季節関税を適用することによって、国産品の出回りがない時期にはこの関税を下げていくといったような配慮がなされている。こういった点については今回の改正というものが非常に積極的な、関税機能というものを多角化したと申しますか、多様化した、そういう点で評価できるのではないかと思います。そういう意味で、戦後の関税政策の流れから見まして一つの新しい転機が、政策の転換というと大げさでもございますけれども、そういうものが感ぜられるわけでございまして、ぜひこの物価対策等、こうした新しい関税政策機能というものを今後も一そう、国内産業保護ということも配慮しながら積極的に推し進めていただきたいというふうに思います。  あと、今回の改正につきましての問題点でございますけれども、まずこの改正によってもたらされます効果というものを、メリットの限定という立場から考えてみますと、これも先ほど原参考人からも指摘ありましたけれども、いま申しました自由化対策としての関税改正というものは関連二十五品目ございますけれども、これがすべて保護強化というわけでもございませんけれども、主としてそういう保護強化ということが織り込まれております。政策上当然でありますが……。これはやはり暫定税率でございまして、ほぼ二年間、しかも実施は原則として自由化をする時期に合わせてこの新しい関税実施するというふうなことになっておりますけれども、この本来の趣旨というものはややもしますと、過去の前例を見ますと、当初は期限を付した暫定的な改正であったものが、それが延び延びになりまして非常に長期化する。そうすると暫定税率というものが実質的には基本税率に転化してしまう、動かせなくなるということになる例が非常に多かったのではないか。特にバナナ関税あたりもそういう印象を私は強く持っておりますので、自由化対策としての関税改正につきましても、暫定税率である、暫定期限についてもこれは厳格に守っていただきたい。もちろんこれを検討いたしまして保護の必要なものは継続するということは必要でございますけれども、過保護にならないように、そういう点は十分な検討が必要ではなかろうかと思います。  それからまた効果の限定という点から申しまして、これも先ほど原参考人からも最後に御指摘がありましたように、石油関税というものはわが国産業の基本的なエネルギーでございまして、こういうものに関税を課するということ自体が基本的におかしいということがあるわけでございます。これは石炭対策上必要だということで続いておりますけれども、これもこの石炭会計というものがあと二年で一応期限がくるということでもありますので、この機会にぜひこの石油関税については十分な検討が必要ではないか。石油の精製業界においてはかなり高収益をあげておるというふうにも聞いておりますし、これが過保護になっている。そういう面でもっと石油関税については税率の改正という点を積極的に推し進めてよろしいのではないかというふうに思っております。  それから逆に、今次改正効果というものを確保する、それを拡大するというたてまえから考えてみますと、先ほど申しました物価対策としての改正でございますが、これについてはさらに同じ趣旨に基づきまして改正を進めていただきたいと思いますけれども、それと同時に、いかに関税を下げましても、それがはたして末端消費者価格にまで反映するかどうか、これも先ほど御指摘があったところでございますけれども、私もこの趣旨としては非常にけっこうでございますけれども、これが末端消費者価格に反映しないとなればこの意義というものも大きく失われることになるのではないか。そういう意味で末端に反映するように監視体制というものを強化する、整備するということが必要であろうかと思います。特に流通機構に関税の引き下げ分が吸収されてしまうという可能性が、過去の例を見ましても、これは自由化の場合もそうでございますけれども、そういう憂いがございますので、そうした対策について、これは直接関税とは関係――この会の問題ではないとは思いますけれども、そういう配慮をぜひお願いいたしたいと思います。  それから効果の確保、拡大という観点からし、まして、これも先ほど問題になりましたが、中国産品に対する格差措置というものでございますが、これもやはり前向きの方向で撤廃をしていく。政治的な問題を別としますと、この中国産品について格差ないしは差別を設けなければならないという理由経済的なものしかないわけでございまして、この経済的な理由というものがはたしてこういう差別を必要とするのであるかということを十分検討いたしまして、この格差品目を積極的に減らしていくという努力をする必要があろうかと思います。このKR関係ではまだ二十三品目残っておるそうでありますけれども、この中には生糸等重要品目もまだ残っておるようでございますし、そういう点も積極的な御検討をお願いいたしたいと思います。  それから特恵関税につきましては、これが実施されますと中国産品に対しましてはさらに格差が拡大するということで、先ほども御指摘のあったところでございますが、この点で問題があるとしますと、これは挙手方式と申しますか、特恵の受益国というものが希望しなければならないというふうな条項がございますけれども、これにしても私はかなり形式的な規定であろうと思いますので、解決の道はあるように思われます。  それから、この効果の限定ないしは拡大という両面から問題になりますのがこの特恵関税の問題でありまして、特恵関税につきましてはいろいろ問題がございますけれども、要点だけ申し上げますと、一つは、わが国に対してガット三十五条を適用している低開発諸国がまだ残っておりますが、こういう国に対する措置というものをどうするのか。この特恵の供与に関連しましてこういう三十五条の適用国というものはすみやかになくするような努力が必要であろうかと思います。  それからシーリングワクの決定に際しまして、原則は先着順ということでございますけれども、特定品目につきましては事前割り当て制がとられるということでございます。これはかつて一かつてと申しますか、現在でも残存輸入制限品目についてはこういう割り当て制がとられておりまして、非常に行政的にも繁雑な問題でもありますし、こういった点についてさらに慎重な考慮が必要ではなかろうかと思われます。  それから、これも直接関税の問題ではございませんけれども、特恵関税供与に伴いまして、わが国国内産業影響が出ることが十分予想されます。もちろんわが国供与方式の中には他の先進諸国に比べましてかなりきびしい関税上の措置がとられておりますので、私はそれほど大きい被害は生じないとは思いますけれども、万一の場合に備えて業者に対する調整援助対策というものを十分整えておく必要があろうかと思います。  時間が参りましたので、これで終わります。
  26. 毛利松平

    毛利委員長 次に、中田参考人の御意見を承ります。
  27. 中田慶雄

    中田参考人 特恵関税の台湾、南朝鮮への適用に反対し、対中国敵視の関税差別を撤廃すべきであるという意見を申し上げます。  わが国は、戦後二十五年たちましたが、いまだに中国との間に戦争処理が行なわれておらず、中華人民共和国との国交は正常化されておりません。その上、わが国政府中国敵視政策によって、日本中国との友好交流、人事交流、貿易経済交流は大きな阻害を受けてまいりました。貿易の面だけでも、わが国政府関税差別、吉田書簡、ココム、食肉輸入禁止、輸入の諸制限等々の障害を設けているため、その発展が大きく妨げられております。そのため私どもは広範な民間の方々とともにこれらの障害を除去し、日中友好貿易、経済交流の発展拡大のため長年にわたって営々と努力を続けてまいりました。  御承知のように、今日お隣の中華人民共和国は、七億人民みずからの努力と奮闘によって革命と建設の成果をもたらし、プロレタリア文化大革命の大成功をおさめ、ことしからは雄大な第四次五カ年計画に入り、全国人民代表大会開催の準備が進み、農業、工業、科学技術、教育、文化の各方面においてすさまじい発展を遂げております。  また、国際関係におきましても、世界の平和と人類の進歩のために積極的な外交と諸交流を進め、中華人民共和国の国際社会における威信は急速に高まり、昨年来だけでも、カナダをはじめ赤道ギニア、イタリア、エチオピア、チリ、ナイジェリアなど相次いで国交を樹立し、中国承認国は今後ますます増加する趨勢にあります。中華人民共和国との国交関係を打ち立てることはいまや世界の大勢でありへわが国にとっては国民大多数の久しい願望であり、差し迫った課題であると考えます。  しかるに、わが国政府が内外の世論に反して、中国敵視政策をかたくなに推し進め、一九六九年十一月の日米共同声明の発表以来、国民の願望に反する方向に拍車をかけておりますことは、歴史の流れに逆行するものであると考えます。特に昨年日米安保条約をわが国大多数国民の反対を押し切って自動延長し、続いて第四次防衛力整備計画案概要や防衛白書に見られるような軍備拡張に拍車をかけ、最近ではアメリカのアジア侵略政策に積極的に呼応して、ベトナム、ラオス、カンボジアヘの侵略戦争拡大に積極的に加担しております。その上、昨年われわれの反対と内外の世論の反対を顧みず、いわゆる日韓協力委員会と日華協力委員会なるものを開かせ、台湾や南朝鮮に対して円借款や大陸だな開発という美名のもとの侵略的経済進出を積極的に推し進め、日韓台連絡委員会なるものをでっち上げて、日韓台結託を強めていることはまことに危険な道であり、中国、朝鮮をはじめ、アジア諸国の人民に対する敵対行動を強めるものであり、容認することができないものだと考えます。これらのいわゆる日華協力委員会や日韓協力委員会では特恵関税問題も協議され、一九七〇年七月二十三日の日韓閣僚会議におきましては、その日韓共同声明の中でも明文化されております。  ここで第一に私は、特恵関税実施に伴って、対中国貿易、対朝鮮民主主義人民共和国貿易、対ベトナム民主共和国貿易に生じる関税の格差に反対する意見を申し上げます。  すなわち、これら地域に特恵を適用せよという意見ではなくて、特恵関税実施に伴い、中国、朝鮮民主主義人民共和国、ベトナム民主共和国に対して生ずる格差がないようにという意見であります。一九六九年の実績の例だけ見ましても、わが国中国よりの貿易輸入総額は二億三千四百五十四万ドル、すなわち八百四十四億三千四百七十万円で、輸入品日数にしますと六百三十六品目であります。この中国よりの輸入額と輸入品日数に対し、わが国政府の特恵案を照らしてみますと、中国よりの輸入品日中、特恵対象品目輸入額は百四十六億七千三百万円であり、特恵適用対象品目数は三百三十七品目であります。すなわち、輸入金額に対して二六%、輸入品目にいたしまして七〇%が格差を受けることになります。わが国中国商品輸入の業者と需要家の被害は甚大であります。中日貿易におきまして中国よりの輸入はすでに数量規制、品目規制等々不当な規制を数多く受けており、輸入拡大も阻害されておりますが、加えて、特恵関税実施に伴い、他の地域や他の国との間に同一品目や類似品目関税の面においても大きな格差が設けられ、日中貿易の輸入は甚大な被害をこうむります。また特恵適用地域よりの輸入に無税のレールが敷かれ、輸入増加が容易になるため、中国よりの新規商品の輸入も困難になります。輸入の縮小はひるがえってわが国の一中国輸出にも悪影響をもたらすことは申し上げ2までもございません。したがいまして私は、特恵関税実施に伴う対中国貿易に関税の格差を設けてはならないと考えます。この際、わが国としての一中国関税政策で他地域との差別をつけないよう明確な政策を打ち立つべきであると考えます。  なお、日中貿易が特恵との間に生ずる格差の解消につきましては、宮澤通産大臣も福田大蔵大臣も、そのために事務作業を進めておると言明されております。しかし、宮澤通産大臣や福田大蔵大臣の言明は、相手国に頭を下げろというものであって、またこのような口先だけでの言明によって、あたかも政府当局に日中関係打開の思思があるかのように見せかける二面政策であると私は考えます。  そもそも政府、大臣言明の意思表示ルールなるものは、どのような機構、場所で行なわれたか。御承知のように、これは国連貿易開発会議、UNCTADの場所で議論されたものであります。この機構は、中国問題を議論する場所ではございません。  またUNCTADでは、だれがこのような主張をしたのかと申しますと、特恵適用対象国に対して、各国は各自の自国の利益からまちまちの意貝を出しました。意思表示ルールなるものは、その実はいわゆる先進国の好みによる自己選択ルールであります。これは、いわゆる特恵を供与する牛進国側、つまりOECD側だけの意見であって、新興国はまっこうからこれに反対いたしました。いわゆる先進国側は開発途上国に対して意思表示を求め、意思表示をした諸国に対しては、いわゆる先進国は政治経済の面で判断し、好みによって選択する。あくまでも特恵供与国側のイニシアのもとで行なおうとしているものであります。これに対して開発途上国といわれる側は、アルジェ憲章に基づく七十七カ国グループ、現実には九十一カ国でございますが、を少なくともまとめて、すべて適用すべきであると言って譲らなかったのであります。これら以外の意見として、ルーマニア、ギリシア、マルタ等は、自国にこそ供与せよと発言いたしました。英国は香港のような属領にも供与してほしいと要望しました。以上のように、いわゆる先進国側と開発途上国意見は、最終的には合意に至らず、さらにそれ以外の意見も含めまして、一九七〇年十月二十四日、国連における特恵関税合意書では、ついに適用対象国については、それぞれの意見はそのまま並記するに至ったのであります。  さらに、意思表示ルールなるものを日中間に適用するのは筋違いであると考えます。UNCTADの機構自体、中国問題を議論すべき場所でもなく、また意思表示ルールなるものは、いわゆる先進国側の黒い意図が含まれており、日中間にこれを当てはめることは大きな筋違いであると考えます。  本件につきましては、むしろわが国は、関税自主権に基づいて日本として独自に対中国関税政策を打ち立てるべきであると考えます。すなわち、いわゆる意思表示ルールではなくて、関税自主権に基づいて特恵との間に生ずる対中国関税差別を解消すべきであると考えます。  二番目に、私は特恵関税を台湾、南朝鮮に適用することに反対する意見を申し上げます。  現在、台湾、南朝鮮への特恵の適用は、復活した日本軍国主義の台湾、南朝鮮に対する経済侵略の一手段であり、一構成部分であると考えます。特恵関税の適用は、円借款供与とともに、この適用に伴って台湾や南朝鮮への経済侵略と企業進出を促進し、中華人民共和国、朝鮮民主主人民共和国に敵対する行為をますます強めるものであると孝えます。先般の中華人民共和国周恩来総理と藤山愛一郎先生との会談でも、繰り返して強調されておりますように、日中間の関係を改善し、日中国交回復を実現する上で最大の問題は、中華人民共和国を中国の唯一の政府として認め、台湾は中華人民共和国の領土であるという立場に立つことであります。そうして二つの中国とか一つの中国、一つの台湾といった陰謀をめぐらし、中国の内政に干渉することを日本政府がやめることであります。台湾、南朝鮮に対する特恵の適用は、これらの地域に対する日本経済侵略にさらに拍車を加えるものであり、日中関係改善、日中国交回復実現に障害をさらに大きくするものであると考えます。  特恵関税の台湾、南朝鮮への適用は、台湾や南朝鮮の勤労者を苦しめ、日本勤労者中小企業をも苦しめるものであります。特恵関税意義と役割りにつきまして、政府は関発途上国への援助という説明がございますが、特恵が具体的に実施されれば、実際はだれが受益し、だれが被害をこうむるのか。特恵によって受益するのは、ごく一部の特恵目当てに進出していく企業主と現地の提携企業主だけであります。台湾や南朝鮮の勤労者は、低劣な賃金と労働条件をしいられて苦しみ、また特恵目当てに進出していく日本の企業の労働者も、同一産業の労働者も低い賃金をしいられ、これらの経営者も輸出市場を失うことになります。これらの状況は、特に労働集約を要する産業の企業、たとえば繊維、食品、雑貨、弱電に多くあらわれております。たとえば昨年十一月九日の日刊工業新聞では「特恵の恩典をねらう」という見出しで、企業がすでに三十五社も南朝鮮へ進出しており、これはわずか七カ月間に、昨年までの五年間に許可をとった数に相当すると報道しております。同新聞の記事では、大蔵省や通省産では、対韓投資の急増は特恵とも関係があると見ていると書いております。また同、日刊工業新聞の昨年九月十二日号では、その具体的事実としまして、三菱商事、帝人、日清紡、高原シャツは、南朝鮮の三都物産と提携して、原反を輸出し、ワイシャツ生産、輸入をする計画と報じております。このようにして進出する企業がねらうものは安価な労働力であります。朝日新聞の昨年十二月二日号では「はびこる女工哀史」というタイトルで、過酷な労働条件に抗議して焼身自殺をした南朝鮮ソウルの裁断師チョン・テイルさんの手紙を載せて、次のように書いております。その工場は「換気や採光が悪く、立つと頭を天井にぶつける、マッチ箱のような職場。一日十数時間労働。それでいて休日は月二回。従業員は大部分で少女で、彼女らの賃金は月三千ウォン(約三千六百円)程度。病人も多い。全君は「肉体的にも精神的にも成長期にある彼女らに社会は回復できない打撃を与えている」と記している。」と報道しております。  昨年九月台湾に進出し、合弁事業を行なっているわが国の企業二百社を対象に「経営労務コンサルタント」という雑誌の編集部がアンケート調査を行ないましたところ、これらの企業が台湾に合弁会社を設立した理由として、台湾を加工輸出基地とすることが第一位で、回答四十四社のうち二十社を占めております。安い労働力を求めて進出したのが十五社で第二位を占めております。加工輸出先はアメリカ、ヨーロッパ、日本、東南アジア諸国であり、特恵のメリットをねらったことは明白であります。特恵関税開発途上国援助という美名のもとに、実際は日本が台湾や南朝鮮に盟主として君臨する経済手段の一つであります。特恵関税は新植民地主義であり、台湾や南朝鮮を下請工場にするものであり、日米共同声明の路線のにのっとった日本軍国主義の経済侵略の手段以外の何ものでもありません。したがって私は、特恵関税の台湾、南朝鮮への適用に反対でございます。  最後に、対中国関税差別の撤廃でございます。ケネディラウンド実施に伴い対中国関税差別が生じております。現在、中国よりの輸入商品に対する関税は、特恵以前からもきわめて多くの差別をこうむっております。すなわち関税一括引き下げ最終年度においても、中国よりの輸入商品は他国との間に、生糸をはじめ二十三品目が依然として差別を受けております。政府格差解消はやっている、ことしも五十二品日中三十品目やったと言われておりますが、なぜ残りの二十三品目格差解消ができないのか。格差解消をしない理由は、技術的には何らの根拠がございません。私はむしろ、なぜ中国には引き続いて二十三品目を格差として残すのかという理由を承りたいと考えております。KP実施に伴い生ずる対中用関税格差は、二十三品目を含めて本年の四月一日から無条件で即時解消すべきであると考えます。  以上でございます。     ―――――――――――――
  28. 毛利松平

    毛利委員長 参考人に対する質疑を許します。阿部君。
  29. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 時間がございませんので、ごく筒単に二、三お伺いしたいと思います。  先ほど岡先生のお話で、中国産品に対しては前向きで格差の拡大をないようにしろ、これは形式的な規定だ、やり方があるのではないか、こういうお話がございました。いままた中田先生からは、関税自主権に基づいてこれは格差をなくすべきだという強い御意見がございました。  そこで、岡先生にお伺いしたいのでありますが、この関税自主権を発揮してやるという方法があるのかどうか、もう少し具体的にお伺いしたいと思います。
  30. 岡茂男

    ○岡参考人 関税自主権といいますか、これはもう当然関税上のことはわが国が自主的にやれるわけです。これは国際的な条約に基づきましてきめられていること以外はやれるわけでございます。しかし、今度の特恵関税に関します法律の中には、そういう、挙手主義と申しますか、希望する国に与えるということが受益国の条件として盛り込まれております。したがって、形式的には中国のほうが希望という意思表示をしなければ与えないということになるわけでございます。  ところが私もこの点、法律的な専門的なことはよくわかりませんけれども、中国は低開発国であるから何とかそういう恩典を与えてほしいという、そういう言い方をすることがこの意思表示になるのか。いま御説明のありましたような、他の地域との格差を解消すべきである、つまりそういう特恵関税中国にも適用しろ、そういう要求として出されても意思表示には変わりないのではないかというふうな気がいたします。  ですから、これはいかなる意思表示があるにしろないにしろ、この特恵関税が適用されれば、適用される国はこれはいわゆる低開発国ということに結果的にはなるのではないかと私は思うのです。この点、法律的な解釈と申しますか、そういう点を私よくわかりませんけれども、そういった点について話し合いがあれば解決できるのではないだろうかということで申し上げた次第でございます。
  31. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 中田先生にお伺いしたいのでありますが、いまいろいろとお話を拝聴いたしましたが、韓国、台湾に特恵を実施される、それは、いまもお話がちょっとありましたけれども、中国問題にますますむずかしさを加えてくるという。もう一つは、日本の企業、資本が入ると、韓国等ではスト権も奪ってしまう、スト権もなくなってしまうというような話を聞いておるのでありますが、そういうことになってくると、言われる帝国主義的な進出ということをますます強める、私はこう感ずるのでありますが、その点をもう少し説明をしていただければありがたいと思うのであります。
  32. 中田慶雄

    中田参考人 先ほど申し上げましたように、すでに台湾に対しても南朝鮮に対しても、あるいは南ベトナムに対しても東南アジアに対しても、日本の多くの企業が進出をしており、特に民間の企業進出は政府の円借款等によってささえられております。  今回のこの特恵関税は、私どもは資料をいろいろ調査いたしましたところ、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ各地域に一応適用することになっておりますが、しかし実際パーセントから見ましても、該当品目の一番多い地域は台湾と南朝鮮であります。そして、先ほども申しましたように、これらの地域に対しては、すでに特恵関税によるメリットを目当てに多くの企業がなだれを打って進出していっております。これがもたらすものは、先ほど日刊工業新聞や朝日新聞等の報道の内容でも申し上げましたように、当地では、第一に安価な労働力をねらう、そして、はなはだしきに至りましては、日本は特恵の被適用国でないものですから、日本からアメリカ、ヨーロッパ等に輸出いたしますと高い関税が課せられる。これを回避するために、台湾や南朝鮮から直接アメリカやヨーロッパに輸出する。実際はこれは日本の商品である。こういう形で特恵が利用されているというふうに考えられるということも伺っております。したがいまして、これがもたらす現地の勤労者に対する抑圧は、先ほどあげました例でも十分に明らかなとおりであると考えます。
  33. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 最後に、この特恵が実施されたら、中国がやってくれといって意思表示をするというふうに中田さんはお考えになりますかどうか。  もう一つは、この前私大蔵省当局に質問いたしましたら、生糸の問題では、中国の生糸は安いからまあこうだ、韓国から入る生糸よりも関税が一五%、片方は七%ですか、高いのだ、こういう答弁でありますが、これはどうなんですか。関税が高いから、向こうが輸出するためにそれに合わせてくるのか、それとも、関税が同じならば向こうも高く売れるなら高く売れたほうが私はいいと思うのですが、その点で、関税を下げてもなおかつ、あそこの価格形成が私よくわかりませんけれども、やはり安いということで、関税が安くなったらその分だけまた安く入ってくるものなんでしょうか。私は反対に、関税が高いところへ輸出しようとすれば何がしか安くしてこないと日本へ入らないから安くしておるのではないかという感じもするのですが、この二点をお聞かせ願いたいと思います。
  34. 中田慶雄

    中田参考人 第一の御質問でございますが、意思表示問題でございます。これは、われわれとしましては、先ほど申しましたように、これを中国に適用することは筋違いであるという見解を持っております。これに対して中国側がどのような見解を表明するかは存じ上げておりません。これが第一点でございます。  それから第二点の御質問でございますが、生糸の問題でございます。本日は全般的なことでございますので、できるだけ単品目については遠慮したいと思いましたけれども、御質問がございますので申し上げますと、先ほど原審議会会長の御発言もありましたように、関税問題は、一つは国産の保護ということが政策の上での配慮になっておるというふうに承っております。したがって、生糸の場合も国産の生糸を保護するというのが関税の面でとる政策のあらわれであると考えますが、中国の生糸は、まず第一にどのような格差が生じたかと申しますと、現在一五%の関税がついておりまして、これがこのままになります。しかし片一方、顕著にこれとの違いが出てまいりますのは、南朝鮮の輸入生糸であります。これは七・五%、つまり五〇%の関税の開きがあらわれます。ちなみに数字をあげてみますと、昭和四十五年、わが国の生糸の需要は四十二万俵前後でございました。そのうち国産は三十四、五万俵と見られております。今後の見通しといたしましては、昭和五十年には五十万俵くらいが必要である。そのうち三十四、五万俵が国産、どうしても十五万ないし十六万俵を輸入しなければならない。これは国内の需要がそれだけございます。昨年は輸入は六、七万俵でございました。これも国産では国内の需要をまかない切れずに輸入しておるのでございます。昨年の例を見ますと、このうち南朝鮮から輸入いたしましたのが三万五千俵でございます。中国から輸入いたしましたのが二万俵でございます。これは明らかに南朝鮮からのほうが中国からよりも多く輸入しております。それで、本来関税によって国産を保護するという精神から考えますと、当然輸入量の多い南朝鮮の生糸に対して関税を高くして、輸入量の少ない中国生糸に対しては関税を少なくするというのがこの精神の意味だと考えますが、そこまでいかなくても、少なくとも同じ税率にすべきであるとわれわれは考えます。ところが全く単純な計算で見ましても、輸入の多い南朝鮮のほうには安い関税を適用し、輸入の少ない中国ものには高い関税を適用している。ここにわれわれは理解に苦しむものがございます。  なお、阿部先生のほうから価格の問題の御質問がございましたが、生糸の場合は国際相場がございまして、われわれ関係の業者が生糸を輸入しております実績を見ますと、中国価格をオファーしてくる場合に、大体国際価格を見て、年間を通してコンスタントにオファーしてくる、こういう仕組みになっております。したがって、日本の相場が上がったから大量に出すとかあるいは下がったから出さないとか、そういう考えではございません。できるだけコンスタントに一定の価格で国際相場とにらみ合わしながら供給する、このような安定した貿易にこの精神がとられております。したがいまして、私は、生糸の例をあげただけでも、残存の二十三品目がいかに不合理なものであるか、したがってKR残存二十三品目は今回から即時無条件に全品格差をなくすべきである、このように考えます。現にこれらには多くの業者がからんでおりまして、特は三井物産とか伊藤忠商事、これらの大手の商事会社が南朝鮮の業者に前渡金なんかを渡して生産をさしておる。この間農林省の荒勝蚕糸園芸局長はこのように言っております。いまは南朝鮮のほうが確かに脅威である、これは認める。当然、当面この南朝鮮のほうが相場の上でも日本に悪い影響を与えている、これも認めるというように言明しておられますし、また、南朝鮮の生糸を日本としてはまるがかえにしなければいけない、南朝鮮は持っていきどころがないんだ、したがって中国生糸は西欧諸国へ回してくれ、こういうことも発言しておられます。しかしこの理論はまことに奇妙な理論であって、中国生糸を日本に入れるなと言わぬばかりの発言でございます。また荒勝局長は、もちろんこれは蚕糸園芸局段階のものでなくて、政府の対中国問題なので、今後中国関係をどうするか、内閣の方針次第なんだ、上から検討しろというニュアンスの指示もない、このようなこともわれわれに表明しております。したがって、一商品の問題であるかのように見えますけれども、しかし実際には、これには政治商品の印象をわれわれは強くしております。しかも商行為の面では、三井物産とか三菱商事とか、死の商人がこれを扱っております。  以上でございます。
  35. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 どうもありがとうございました。
  36. 毛利松平

  37. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 時間があまりありませんので、岡参考人に一つ伺いたいのです。  今回の関税定率法と直接関係はないのでありますが、しかしこれは沖繩復帰の問題で非常に問題になることだと思いますので、先生の御意見をせっかくの機会ですのでお聞きしておきたいと思うのです。  来年の何月に具体的に沖繩の復帰が実現するかはわからないのでありますが、七月なら七月、四月なら四月ということを仮定いたしまして、その日に――今日の沖繩では関税がほとんど無税である、輸入した物品に対して琉球政府が大体五%くらいの物品税をかけておったということなんですね。これが沖繩のいろいろな港や空港などでやはり輸入相当あるだろうと思うのです。その際一挙に国内関税定率法の適用をそのまま受けていくということが、住民の生活物資を含めて非常に生活に激変を与えるのではないかという問題があるわけでありますが、こういう場合に、確かにたてまえとしては国内で二つの関税定率が適用されるというようなことは考えられないわけだけれども、しかし暫定的に何らかやはり便法というようなものを講じて、関税面における激変緩和の措置というようなものは考えていいのではないかということを私ども考えるわけでありますが、そういう問題について先生のお考えをひとつお聞きしたい。
  38. 岡茂男

    ○岡参考人 私もこの問題はよく研究しておりませんけれども、確かにいままでほとんど無税状態にあった沖繩が日本に復帰いたしますと、日本関税がそのままかけられるということになりまして、非常に条件が急変してくるわけでございますね。沖繩住民の立場を考えますと、これは非常に大きな政治的な変化でございます。こういう変化ということはまあめったにない事態でもございますので、いまおっしゃったような暫定的な経過措置というものは、特別立法によって関税負担を漸次減らしていく、そういろ措置はとれるのではないか、また、とることが望ましいのではないかというふうに私は思っております。
  39. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 終わります。
  40. 毛利松平

    毛利委員長 松尾君。
  41. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 最初に岡先生にお願いしたいのですが、物価問題について、結局末端影響がいままで見られなかったので、この監視体制等は大事だというお話がございました。この中で、石油については業界がもう安定しているのだし、これは積極的に進めるべきだ、こういう御意見はありましたけれども、一方考えますと、石油業法等の関連がありますので、これらについては多少難点があるのではないかということも感じられるわけです。そこで先生にこの問題について、石油業法等の関連を通して、さらに具体的にこういう方法があるではないかというような構想がおありでしたら、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  42. 岡茂男

    ○岡参考人 石油関税の問題についてそれほど詳しく私どもはやってはおりませんけれども、確かに原則的にはこういう基本的なエネルギー源に対する関税というものは無税にすべきであるということは皆さんも異論はないところだろうと思います。現在では石炭対策という非常に重要な問題との関連がありますし、また、先ほど原参考人からも御意見がございましたけれども、最近の石油価格、国際価格が急騰している。そういうわが国の資源対策という観点からも考えていかなければならない新しい情勢も生じております。ですから、この点について直ちに無税にするというふうなことはあまり現実的ではなかろうと思います。この石油関税収入の使い方というのは今後情勢を考えながら、慎重に、どういうふうに石油関税収入というものを生かして使っていくか。基本的にはできるだけ減らしていくということが望ましいと思います。そして特に末端消費者価格関係のありますのは灯油だとか、そういう石油関係品目の中でも限られておりますので、そういうものについてはもっと輸入自由化を進めるというふうなこともできるのじゃないかという、部分的にはそういうことも考えられますし、基本的にはいま言ったような新しい情勢も踏まえて、さらに慎重な検討をした上でないと、どうも私ここではっきりは申し上げにくいのでございますけれども、その程度でごかんべん願いたいと思います。
  43. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 もう一点は、中国産品に対する格差の解消、生糸を中心として、いま中国参考人からもございましたし、岡先生もこれは撤廃すべきだ、こういう御意見でありました。しかし、その意見の中で、特に中田参考人からは、どんどん伸びてまるがかえするような韓国製品が安くて、中国の少ないものが高い、こういうことは不合理じゃないか、こういう面でお話がありましたけれども、先生は、この問題については経済問題だけが問題なので、解決の道がある、こういうお話ですし、また、先ほど中田さんのお話では、これは政府考え方なんだ、こういうふうにこの生糸を中心にして差別の問題にいろいろな意見が出ておりますが、先生の、経済を中心にして生糸問題については解決ができるのだ、こういうお話がありましたけれども、もうちょっと具体的にこの点をお願いしたいと思います。
  44. 岡茂男

    ○岡参考人 中国産品につきまして私が先ほど申しましたのは、政治的な問題を別にすればというふうに申し上げたわけで、これが政治の問題がどの程度からまっているかということは私にはちょっと判断しにくい問題でもございます。しかし、本来中国を政治的にそういう差別をするということがあってはならないことだろうと思います。そういうことを前提にして考えてみると、経済的な問題しか残らないのじゃないか。そしてまたいままでいわれております、問題になっておりますことも、経済的な面から格差の解消ができないのだという御答弁もあっているように私ども承っておりますから、そうだとすると、経済的に格差の解消ができないのはなぜかという点をさらに突き詰めてみるべきではなかろうかということで申し上げたわけです。  それで、この経済的な観点からは、御承知のように中国の場合は社会主義の国で、資本主義の国とは体制が違っているわけでございますね。そこで経済体制が違いますと価格機構の面でも、輸出価格の形成がどういうふうに決定が行なわれるかということは日本あたりとは違ってくるわけで、ある面では計画価格であるということは安定しているというふうにも言えますし、また他の面では恣意的に価格が決定できるんだということで不安定だということも言えるわけですけれども、しかしながらもうすでに、社会主義の国々とわが国との貿易関係というものは、ソビエトをはじめ長い歴史も経験も積んでおりますし、こういう体制の違う国との貿易によってわが国がどういう被害なり影響を受けるかということはほぼわかるんじゃないか。ただ中国についてはそういう貿易関係がまだ十分全面的には行なわれておりませんので、若干の不安があるということは事実であろうと思いますけれども、それにしましても、もう過去のこれまでの実績を見てみますと、中国産品の輸入によってはたしてそういう被害なり影響が出た事実があるのかどうなのか。そういうことを見ますと、私もそういうことを聞いておりませんので、あるかもしれないという、そういうことでもって格差を解消しないというのはどうも理屈が通らないのじゃないか。そして、たとえば特恵あたりにいたしましても、今度の法案の中には非常にきびしい規制措置がとられておりまして、農産品につきましてもエスケープクローズによって、輸入が急増して国内産業に悪い影響を与えた場合には特恵の撤廃ができるという救済措置が講じられておるわけでございますね。そういう措置がある以上、そういう単なる不安だけでもってこういう格差を継承するということは、私は理論的にもおかしいんじゃないかというふうに思っております。
  45. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 時間がありませんから、中田参考人に一点お伺いしたいのですが、先ほど台湾、韓国への集中進出、これに対して企業が進出することにつきまして、労働力という問題、それから分裂国家にこういうことをやることはいけない、こういう意味の御発言がございました。私も、分裂国家だけに問題はあろうと思います。しかしわが国経済の現状を考えたときに、数年たつと現在の経済力が二倍になる、こういうような情勢から考えますと、どうしても労働集約的なものはやはりどこかへ求めなければならないという現状は避けられないと思うのです。したがって私は、労働力等について過酷な行き方に対しては賛成できないのですけれども、しかし国際分業的な考え方というものはこれを否定するわけにもいかない、こういう考え方を持っておるわけです。ただ先ほど中田参考人からのお話で、韓、台へ集中していくことは反対だ、こういう御意見でありますけれども、わが国政策として、労働集約的な分野をぐっと大きくヨーロッパまで広げていく、こういう考え方に対しても反対されるのかどうか、その点を一点伺いたいのです。
  46. 中田慶雄

    中田参考人 私が南朝鮮と台湾に対して適用されることに特に反対であるということを強調いたしますのは、今日、わが国政府のこれらの地域に対する政策と不可分の関係経済政策が進められておるということからであります。御承知のように昨年、台湾との関係では日華協力委員会が開かれました。一昨年の日華協力委員会の発表したコミュニケでは大陸反攻を支持するということまでうたっております。それから日韓協力委員会でも、南朝鮮に対して、これは関税を利用した企業の進出はその一部でありまして、もっと大きな円借款を利用した馬山地域に対する鉄鋼コンビナート建設に関連する日本の企業の進出、こういったものもあります。つまり日本の大手企業の台湾と南朝鮮に対する進出は、しかもこれらの日華協力委員会、日韓協力委員会では安全の問題や文化の問題までも協議され、申し合わせが行なわれておる。これらとの関連で、関税特恵の問題もこれら二つの委員会でも話し合いがされておった。それから政府間ベースの日韓閣僚会議においてもこれが話し合われ、コミュニケにもうたわれておる。このように現実に進行している事態は、単に平和的に貿易を行なって、これらの地域と有無相通ずるというような平和的な貿易ではなくて、明らかに政経一体となって、そうして台湾、南朝鮮地域に対する日本の政治進出と企業進出が合体しておるというところに大きな問題があると私は考えます。したがって、このような特恵がこの地域に適用されることはますますこれを深めるものであるという観点から反対の意見を申し上げたのであります。  われわれは、国際貿易促進事業でございますので、世界各国の間に平等互恵、有無相通ずるという原則にのっとって、平和共存の五原則に基づく友好的な平等な貿易が行なわれることを主張しております。したがって、そのような貿易であるならば大いに発展させなければならぬ。しかし現実にはこのような地域に対する収奪的な貿易になっておる、関税はその一部分であるということを申し上げたのであります。
  47. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 その他の問題につきましては、先ほど開陳された御意見でよく了解できましたので、以上で終わります。
  48. 毛利松平

    毛利委員長 春日君。
  49. 春日一幸

    ○春日委員 最初に岡先生にお伺いをいたします。  UNCTADの協定に基づく特恵供与の原則と、これを受けてわが国が特恵供与を行なう場合における態度がいかにあるべきか、というよりもむしろいかにあり得るか、こういう事柄についてお伺いをしたいと思うのでありますが、この協定文を読んでみますると、これは大体において拘束力のある約束となるものではなくと、こうあると思うのでございます。だから、わが国としては、その協定を受けて国内立法を行なう場合は、やはり自主的な立場において立法がなし得るものか、あるいは、このUNCTADの協定に相当拘束を受けるものか、この点についてどういうぐあいに御理解になっておりますか、その点をお伺いいたしたい。
  50. 岡茂男

    ○岡参考人 UNCTADにおきましては、御承知のように先進国側と低開発国側とが意見が非常に対立をいたしまして、それだけではなくて、先進国の中でも意見が対立しましたし、また低開発国の中でも意見が対立するということで、特恵問題につきましても意見がまとまらなかったわけであります。それでこのようなあいまいなと申しますか、非常に弾力性のある文章になったわけでございますが、そういう意味からしますと、わが国は、関税自主権に基づいて自主的に、この特恵の供与をどういう方式でやるかといったようなことについても自主的にきめ得るわけでございますが、しかしそれと同時に、わが国は、先進国のグループの一員としましてOECDに加盟をしておりまして、ないしはガットの一員としてガットのメンバーでもあります。その他国際的な立場の中で、OECDにおきましても、ガットにおいても、この特恵の問題については長い間検討が続けられてきまして、そしてお互いの、いわば道義的なと申しますか、先進国側の中においての一応の了解というものは、おそらく練られてきたのではないかというふうに思っております。したがって、そういう面である程度の制約と申しますか、そういうものがあるのだろうと思いますけれども、これは外交上の問題になってまいりまして、私どもにはなかなかそういう機密に属するようなことはわかりませんけれども、形式的に申しますと、そうした約束に大きく違反しない限り、わが国関税自主権に基づいて供与方法ということは決定できるのではないかというふうに思っております。
  51. 春日一幸

    ○春日委員 UNCTADの協定がもしわが国を拘束するものでありといたしまするならば、当然協定そのものは国会の批准事項になってくると思うのでございます。しかし、批准が行なわれることなくこういう国内立法がなされております限りにおいては、そのアローアンスというものはもっぱらわが国の自主的判断でやっていけると思うのでありますが、そこで問題となりますのは、ただいま岡教授が、希望しなくても受益国を指定する道があるように思うと述べられておりました。これについて必ずしも明確な御答弁がございませんでしたが、もう一ぺん、いかなる具体的な手段があり得るか、先生からちょっと御教示を願いたい。
  52. 岡茂男

    ○岡参考人 どうも私のこれは非常に個人的な推測みたいなことを申し上げて申しわけなかったのでございますけれども、希望するということが、どういう形式をとれば希望するという意思表示になるのか、そういう点について、具体的にどういう処理をされていくかということは私まだよく存じておりませんけれども、必ずしも文書とか明確なそういうことをしなくても、意思が何らかの形で表示されれば、それを意思のあったものとして判断することができるのではないかというふうに私は考えるわけです。それがたとえば、格差の解消というふうなことで特恵関税中国産品にも適用すべきであると、そういう要求の形で出たとしても、それはやはり適用を希望しているということには変わりはないのじゃないか。そこにかなり妥協的な話し合いということでそういう決定はできないものだろうかということを、私は推測として申し上げたわけでございます。
  53. 春日一幸

    ○春日委員 私は、ただいまの質疑応答を伺いながらちらっと頭に浮かんだ事柄なのでございますが、関税定率法の中にはUNCTADの協定に基づく特恵の制度と、それから本来法律に規定されておりまする一般特恵、いわゆる最恵国待遇という制度と、二本立てがあると思うのでございます。最恵国待遇においては、これはその特恵を供与せんとする国が一方的にかつ自主的に行なうことができると思いまするし、UNCTADの協定に基づく特恵供与は、相手方の申し出に基づいて、しかるべしとその国が判断した場合にそういう特恵供与がなし得る。こういうふうに、特恵と一般特恵にはそういう差異があろうと思うのでございます。  そこで、このUNCTADの協定それ自体が、その協議の過程においてさまざまな意見が錯綜したことにかんがみ、それは決定的な拘束力を国々に課するものではないという宣言が付加されておりまする以上、そのムードみたいなものを援用いたしまして、この場合、中国産品との間にやはり格差を解消せなければならぬという政策目的がここに必要でありとするならば、また一方において中国との間に友好親善を増大しなければならぬという外交政策上の要請を実現するといたしますれば、この一般特恵の機能をここに発動する。すなわち、相手からそういう注文がなくても、あるいは変形されたところの申し出がなくとも、意思表示がなくとも、やはり日本が自主的に、要するにそういうような格差を解消し、かつ中国自体の自主性を尊重しながらなお友好親善の効果を確保しようと思えば、一般特恵の機能を発動するというような手段もあるように思うが、ただ問題として私がなおわかりませんことは、外交関係というものが結ばれていない国に対して特恵機能を発動することができるかどうかという問題ですが、この点はいかがなものでございますか。
  54. 岡茂男

    ○岡参考人 この点につきましては、たとえば香港あたりも、これは独立の国でもありませんし、国交といいますか、そういう点では正式なものではないわけですが、独立国でなくとも、そういう特定の地域に対しては適用できるということは今度の法案の中にも盛られております。その点につきましては私は問題はないのではないかと思われます。ただ、なぜ希望するという意思表示を特恵関税についてのみ要求したのかということを考えてみますと、いまお話もございましたように、いわゆるKR等の最恵国待遇を前提とする、いわゆる協定税率の適用というものは、これはガットが原則になるわけでございますが、ガットの全加盟国、これは低開発国のみでなくて全先進国にも平等に適用するわけですね、KR関税というのは。ところが特恵関税というものはいわゆる先進国が低開発国を経済的に援助する、そういう目的でございますものですから、この特恵関税というものは先進国には適用しないという内容を含んでおるわけです。この点でケネディラウンド特恵関税というものには本質的な差があるわけなのです。そこでどの国が特恵の供与国であり、どの国が特恵の恩典を受ける受益国になるかということは、何らかの基準を設けてきめなければならない。その基準のきめ方につきましては、UNCTAD等におきましても、ないしはOECDにおいてもずいぶん議論をされたようでございますけれども、結局、たとえば一人当たりの国民所得とかいろいろな基準をとってきめようとして、機械的に形式的に割り切ろうとしてもできなかったということで、意思表示の問題が出てきたわけでございます。
  55. 春日一幸

    ○春日委員 この際問題点を明らかにいたしたいと思いまするが、関税局長からちょっと伺いたいが、外交関係のない国に向かって最恵国待遇といいますか、一般特恵を発動することができるかどうか、ちょっとお伺いいたします。
  56. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 誤解のないように願いたいのですが、われわれが一般特恵と申しておりますのが今後の特恵でございまして、いま一般特恵に対するものが特殊特恵だろうと思いますが、これはたとえばイギリス連邦諸国の間で特恵をやるとか、そういう政治的な結びつきの間にある国同士でやりますもの、それから、たとえばある国が後進国に特恵をやる、そのかわり後進国からも先進国から入るものに対して優遇を与えてくれ、逆特恵と申しておりますが、こういうものが特殊特恵であって、今後考えておるものは一般特恵であるというふうにOECD、UNCTADでは考えておるわけでございます。ですから外交関係のない国につきましても、さっき岡先生からもお話がありましたように、それから私ども法案に書いております、これは今度の法案の暫定措置関係の八条の二でございますが、正式な国交はありませんけれども、独立した関税体制、待遇、それから貿易制度を持っておる地域と書いてありますが、そこに何らかの統治の組織がある、確立しておるというところにつきましては、その国が――これが今度の特恵の本質でございますが、いま岡先生からありましたように、挙手主義ということが合意になっておりますので、挙手をした日から与え得るように法律は書いております。すぐ与えるとは限りませんが、そのときに与えないとはいえない。
  57. 春日一幸

    ○春日委員 それはわかっているのですが、私が質問しているのは、特恵、一般特恵というとちょっとわかりにくいと思うのだが、たとえば最恵国待遇というのですか、これは一方的にいえるのでございましょう。かつ相手が先進国であっても、その最恵国待遇の関税税率は適用することができるのでございましょう。できるのでございますね。
  58. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 通商航海条約がございまして、その中に最恵国待遇の規定を持っている国につきましては、一国に便益を与えましたらその国にも与えなければいかぬ。そこでちょっと、先ほど来岡先生に対する御質問で誤解があるといけませんので申し上げておきますが、今度の場合は後進国に対する特別な便益でございますから、本来ならばアメリカとかイギリスとか、最恵国待遇を持っている、通商航海条約を持っている国につきましても全部与えなければいけない、ガット第一条の精神におきまして。ところがそれは、先日来私御説明しておりますが、合意書によりまして、今度の一般特恵をやる場合においては、先進国は最恵国待遇の規定があってもそれを要求しないということを合意しております。その点は今度は各供与国が一緒になってガットにウエーバーを申請することになりますが、一条のあれに反しまして、最恵国待遇があってもそれは要求しない、これを認めてくれというウエーバーをとることになっております。その点御了承いただきたい。
  59. 春日一幸

    ○春日委員 そうするといま岡教授がおっしゃったように、手をあげるか、しからざれば非難するか――われわれにそういう差別の状態を置いておくということはけしからぬといって非難してもそれは挙手に通ずる、こういうような拡大解釈でものごとを処理する以外にない、こういうことになるわけですね。わかりました。  そこで、その次に伺いたいのは、この政策効果をさらに拡大するために、流通機構がそのプロフィットを吸収してしまって消費者の利益に通じない場合があるから監視せよ、監視機構を設ける必要がある、こういうことの期待を述べられておりましたが、具体的にはたとえばどんなことが考えられますか、ちょっと御教示を願っておきたい。
  60. 岡茂男

    ○岡参考人 この点につきましては、実はやり方としましては非常にむずかしいのではないかというふうに思います。この監視をするといたしましても、どういう場所をどういうふうにして監視をし、チェックをしたらよろしいのかということをやるためには、やはり流通機構の実態というものを実証的に把握をいたしませんと、たとえば関税の引き下げ分というものが一体どこに吸収されるのかということがわかりませんと、これは輸入業者が吸収する場合もございますし、その輸入品を加工する原材料を消費するメーカーが吸収する場合もございます。それからさらに、その末端の卸なり小売りの段階の流通業者が吸収する場合もあり得るわけでございます。したがって私は、個々の重要品目につきましては、この引き下げられた関税が現実にどういうふうな形でどこにどれだけ吸収されているのかといったような実態調査と申しますか、それは同時に監視を兼ねた、そういう調査をきめこまかくやってみる必要があるのじゃないだろうか。その上で措置をとる。たとえば関税は下げましても末端価格は下がらない、しかしながらほかの理由によってさらにその製品の価格を上げるというふうなことになりますと、一体何のために関税を下げたのかわからなくなるということになってしまいまして、現実にはそういう例も私あるように思います。それで一つは、私は行政管理庁あたりがこの問題について――行政監理委員会でございましょうか、ああいうところでも問題は取り上げているように新聞あたりで見ておりますけれども、あの行政管理庁あたり、または公正取引委員会あたりの官庁の組織をやはり動員して、またもちろん中心としましてはその責任の主務官庁のほうでそういうことを厳重に取り締まる、監視するという必要があるのではないかと思います。
  61. 春日一幸

    ○春日委員 現実の問題として、従前の例におきましても、ノリだとかまたバナナだとかあるいは落花生だとか、そういうものを輸入する。ところが国内産品との間に大きな格差がある。その利益が結局輸入シェアを持つものの独占利益にゆだねられておる。今後こういうような特恵関税実施に伴って、輸入価格国内価格との間の大きな差益金がどのように消費者の利益のために配分されるか。この税率改正というものはもとより自由化対策であり、南北問題であり、必ずしも物価対策そのものではないとは思いますが、かたがたもって効果をふえんするためにはそういう問題について何らかの措置が考慮されなければならぬと思うが、これについて政府は何か考えていますか。
  62. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 これまた先日来いろいろ議論されておるところでございますが、私どもさしあたってどうせいというふうに、なかなか指導はむずかしゅうございます。しかし関係各省がお互いに協力し合いまして……(春日委員「何らかの措置をとる……」と呼ぶ)はい。今度の改正趣旨等も話しまして、協力、指導する、監視をしていくという姿勢でおります。
  63. 春日一幸

    ○春日委員 中田さんと政策論争をやる気はないのですが、あなたの陳述の中で、特恵供与によって台湾と韓国の労働者がさらに労働条件が過重になってきて、一そう労働者を苦しめる形になる、だから反対だ、こういうことを述べられておりました。しかし特恵供与政策目的の中心は、その地域においてその産業拡大していく、そうして輸出の機会を進増していく、仕事の分量がふえてくれば利益がふえてくる、利益がふえてくればパイが大きくなるから、パイの配分を受ける労働者の労働条件あるいはその所得というものは増大するであろう、常識的にはそう考えられるし、このUNCTADのねらいもそこにあると思うのだが、特恵を供与することによって重労働の結果を来たす、こういうことは幾らかあなたの独断のような感じがするが、どうでございますか。
  64. 中田慶雄

    中田参考人 先ほども例を申し上げましたように、特恵のもたらす利益を目当てにして進出していく企業がはっきりふえております。したがって、もちろんそれだけではございませんが、諸要件が重なって現地の労働者に苦しみをもたらすわけですが、特恵はそういうものの一部分であるということを申し上げたわけでございます。
  65. 春日一幸

    ○春日委員 時間がないですけれども、実際はこういう場合のあなた方の陳述はできるだけ政策的なことでなく、経済的な立場でお述べいただくのが望ましいと思う。やはり主観によっていろいろと政策を論ずるということになりますと、公正なる御陳述によってわれわれがいろいろと参考にさしていただく点についてむしろ有益のウエートを減殺するのおそれありと考えますので、ちょっと私の所感を申し上げまして、私の質問を終わることにいたします。
  66. 毛利松平

    毛利委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用のところ御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。どうぞお引き取りになってけっこうでございます。  午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十四分休憩      ――――◇―――――     午後二時十四分開議
  67. 毛利松平

    毛利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  関税定率法等の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。松尾君。
  68. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 今回の関税定率法改正によって減税額も三百六十億と、四十五年度に比較して四倍に当たる大幅な措置がとられた。特に今回、物価公害、さらに自由化の問題等について積極的に関税機能を活用する、こういう努力が払われたことに対しては評価を惜しまないものでありますが、前回の委員会でわが党の同僚委員公害並びに物価等に対する質問、さらに今日まで論議された点等をあわせて考えてみますと、物価公害等に対する効果その他に問題点がないでもありません。その問題点を中心にただいまから質問を行ないたいと思いますが、まず、企画庁おいでになっていますか――。今回の関税改正にあたって企画庁からの相当強い要請もあった。関税改正等、輸入にあたって十分考慮すべきであるという要請もあったということでありますけれども、今回の関税改正にあたって、その要請した試算あるいは試案等がありましたら示してもらいたいと思います。
  69. 山下一郎

    山下説明員 企画庁といたしましては、御指摘のように物価対策の観点から輸入政策の活用、輸入自由化促進、あるいは関税率の低減等がその一つの有力な手段であるということをかねがね検討いたしておりまして、昨年の六月、物価問題閣僚協議会におきまして物価対策の重要事項について御協議いただきましたときにも、その問題の一環といたしまして関税率の引き下げということを提案をいたしまして、閣僚協議会の御了承をいただいておるわけでございます。その方向に従いまして、たとえば昨年の十月二十二日でございますけれども、関税率審議会に企画庁の事務次官が出席して発言をさしていただきまして、最近の物価動向、物価対策の観点から、この際、昭和四十六年度において関税引き下げについて前向きの方向で御検討いただきたいということをお願いをいたしたわけでございます。その際に、具体的に試算等はいたしておりませんけれども、企画庁といたしまして物価対策の観点から特に重要と思われるようなものについて若干の例示等もあげながら、その席でも関税率審議会委員の皆さま方に、企画庁として考えておりますことを御要望を申し上げ、またその後具体的に政府部内で四十六年度の関税定率法等改正が検討される段階におきましても、物価当局としてできるだけ消費者物価影響のある、国民大衆の生活に影響のある物資に重点を置いて関税率の引き下げをはかっていただきたいということをお願いした次第でございます。
  70. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 その具体的な対策についてはまたあとでお伺いしますけれども、結局、いまお話がありましたように、生活関連物資中心に強い要請を受けて関税局ではいろいろ手を打ったわけですが、関税局長、この三十八品目について相当関税面で手は打ったのですけれども、実際に税改正というものの一つの柱として消費者物価対策が、最終的に今度のこの三十八品目全体でどの程度効果があがるものか、こういう試算はございますか。試算があったら示してください。
  71. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 ただいま企画庁のほうからお話がありましたように、企画庁だけじゃございません、各省からいろいろ御意見が出まして、先ほど原関税率審議会会長さんの参考人意見がありましたように、関税率審議会消費者代表の方々からもいろいろと御意見が出まして、われわれといたしましては精一ぱいの努力をいたしまして今回の改正案を御審議願っているわけでございます。  さて、いまお話がございました、かりに三十八品目――これは、今度の物価対策はこれだけではございませんで、ケネディラウンド関係の繰り上げ実施もございます。あわせまして、最終段階での監視体制を怠らないようにすれば相当程度物価は下がるはずだと思っております。この間お話し申しましたように、ケネディラウンドの繰り上げ実施によりましては当該物品の輸入価格は約一%下がるはずであるというふうに考えておりますが、三十八品目だけをとってみますと、加重平均をいたしまして約七%強下がることになるはずであるというふうに計算をいたしております。
  72. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 これは全体で一%、ないし三十八品目だけでも七%余りの効果が期待できる。このまま効果があがれば非常にりっぱな措置であるわけですけれども、時間の関係で全部は洗えませんが、この中でバナナ並びにその他一、二についてひとつ伺いたいと思うのです。そこで、バナナの減収額はどのぐらいになりますか。
  73. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 六十六億でございます。
  74. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 いま関税局長は、この六十六億がそのまま期待できる、こういうふうに言われておりますけれども、この点、農林省どうですか。
  75. 荒勝巖

    荒勝政府委員 四十一年から四十五年にかけまして実はバナナの輸入量が飛躍的にふえてきておりまして、たとえば四十一年を例にとりますと約四十一万六千トンの輸入数量がありましたが、それが四十五年では約八十四万四千トンというふうに輸入数量はふえております。その間、輸入数量がふえておりますので卸売り価格も下がってまいりまして、四十一年をかりに一〇〇といたしますと卸売り価格が九三くらいに下がってきております。さらに小売りにつきましても、一〇〇だったものが八一というふうに下がってきておりまして、しかも四十一年は当時七〇%の関税がかかっておったのが、四十三年に六五、四十四年に六〇というふうに下がってまいりまして、今回季節関税等を設定することによりまして、私たちの感じでは、年々卸、小売り価格とも順調に下がってきておりますので、関税率が下がりますればそれに相応いたしましてバナナの小売り価格も下がっていくのではなかろうか、こういうふうに理解している次第でございます。
  76. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 そうすると、国内卸、小売り価格が下がったので、このまま関税措置消費者に期待できるということですね。
  77. 荒勝巖

    荒勝政府委員 世界的にバナナのいわゆる供給関係が順調にただいまのような形でありますれば、輸入量がふえ、かつ関税率が下がれば、日本政府といたしましてバナナの輸入につきまして制限をいたしておりませんので当然に下がるもの、こういうふうに理解しております。
  78. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 そこで具体的に伺いたいのですが、四十五年度の年間の輸入実績は八十四万トンということです。そうすると、今度季節関税措置が採用されておりますけれども、四月から九月、十月から三月、こういうふうに分けたバナナの比率、それから今度の措置がリンゴその他に合わせて講じられておりますので、この期間のリンゴの出荷の比率、この点をひとつ伺いたいのです。
  79. 荒勝巖

    荒勝政府委員 まず季節関税を設けました大きな理由といたしまして、物価に寄与するということではありますが、さらにわれわれといたしましては、国内産果実に対して悪影響を与えないという、農林省といたしましてはそういう考え方をもって今度の季節関税に対応したわけでございます。季節的に申し上げますと、たとえばリンゴ等につきましては早出しあるいは非常におくれて出てくるもの等もございますが、大体の全体の量、パーセンテージで申し上げますと、おおむね九月からリンゴの出回りが始まりまして、たとえば東京中央卸売市場に対するリンゴの入荷割合からいたしますと、九月が一〇・二%それから十月が一七・八%、十一月が一二・五%、十二月が九・九%、これが新リンゴの出回りで、翌年に入りまして一月に八・二%、二月に九・九%、三月に一〇・五%、四月に七・六%、五月に五・五%、六月に三・二%、七月に一・二%、八月に三・五%、こういうふうに季節的に出回り量に非常に大きな幅がある。この全体をにらみ合わせまして、季節関税といたしまして、十月に始まるリンゴの出回り期から三月までの期間が一番ウエートを占めておるということで、リンゴに対する悪影響を防止するという意味で、この間はバナナの関税は従来どおり、リンゴのない、あまり回らない時期はバナナを入れても悪影響はないという意味で季節関税で四〇に下げた、こういうふうに御理解を願いたいと思います。
  80. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 いまの説明を聞くとほとんど心配ないようですが、バナナの保存設備等は相当改良されておるわけです。安価であるし量が多いという点でほとんど心配ないと思いますけれども、関税が二〇%安いときに大量に仕入れて、リンゴの出回り期に放出されるというようなことで影響はないかということが一部心配されておるわけですけれども、そういう点についてはほとんどその心配はない、こういうふうに確信を持っておられるわけですね。
  81. 荒勝巖

    荒勝政府委員 バナナのいわゆる熟成加工技術というものは、御指摘のとおり非常に発達してきて、おりますけれども、われわれの通常のコマーシャルベースで現在加工といいますか熟成されているものの関連から申し上げますと、輸送期間が、短いもので台湾産が三、四日、エクアドルあたりになりますと二十日くらいかかっておりますが、この間バナナボートの中で十一度から十四度くらいの間で、青いまま入ってくる。そして陸揚げされましてから熟成といいますか、黄色くなるわけでございますが、熟成期間は大体六日前後で、初日に大体二十度くらいにしまして、だんだん下げて十五度くらいにするのだそうでございますが、こういたしましてさらに小売りに出される。小売りで大体熟成されたものは三、四日がせいぜい商品価値の限度だろう。したがいまして、われわれのほうの推定によりますと、どんなに長く――かりに安い関税率で入れまして、高い関税率の間の関税率格差の利益を期待するものは絶無とは申せませんが、いま申し上げましたようにぎりぎりまで持ってもせいぜい六日から十日前後じゃなかろうか。多少その間あるいは輸入が多くなるかもわかりませんけれども、バナナは御存じのようにあまり貯蔵期間が長いと黒くいたんでまいりますので、そういうことはそう大量にはできないのではないか。むしろ大量に輸入されるとかえって需給バランスをくずしまして、しかも値下がりをかえって招くのではなかろうか、こういうふうに理解している次第でございます。
  82. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 このバナナについては量も非常にふえてまいりますし、きょうの参考人意見開陳によっても、結局消費者価格ということに重点が置かれているわけです。ひとついまの心配ないという答弁を十分私ども今後見守ってまいりたいと思います。そういう面でひとつこの点には努力を注いでもらいたいということを要望しておきます。  次に、具体的な問題の第二は灯油についてであります。通産省にお伺いしたいのですけれども、灯油の四十年以降の輸入実績、輸入量、これを示していただきたい。
  83. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 昭和四十年から四十四年度までは輸入量はございません。四十五年度に五万三千キロリットル輸入しております。
  84. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 四十年から四十四年まで、それ以前もなかったわけですね。そのなかった理由はどういうことですか。
  85. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 灯油の販売の需要と供給につきましては、その需要供給関係がバランスが保たれておったということ、それからもう一つは輸入価格が必ずしも国内価格よりも安いというふうなことがなかった、こういう二つの理由によるものと存じます。
  86. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 そうしますと、現状では価格相当動いていると思うのです。それで今後の輸入計画はどうですか。
  87. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 輸入灯油の価格は非常にフレート、船賃に大きく影響されます。それから今回の関税引き下げという、この二つが非常に大きなファクターになるものでございます。フレートが非常に安いというふうな時点においては、今後輸入される可能性はあると思います。
  88. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 具体的な計画はないのですね。――そこで関税局長に伺いたいのですが、今度灯油について大幅な関税率の引き下げが行なわれた。ところが従来は石油価格国内生産よりも必ずしも安くなかった。今後についても具体的な計画がない。こういうものに対して税率を引き下げたということはちょっとおかしいと思うのです。そこで今度の灯油の関税率の引き下げにあたって、もちろん消費者価格を重点に置いて考えられたと思うのですけれども、試算等はしてみたことはございますか。
  89. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 灯油につきましてこれがそのまま反映されるとしましたら、一かん当たり税額分でございますと九円くらいは下がることになる。  なお、灯油につきましては、引き下げの理由につきましていま御質問がございましたが、私ども、ただいま通産省からお答えがありましたが、とにかく率直に申しまして、灯油をはじめ石油製品の関税率が必ずしもバランスがとれてないという面もあるのではないか。それから一方におきましては、灯油がだんだん原油の値上がりがしわ寄せされまして上がってまいっておる時期でもございましたから、安い税率にいたしまして外国から入ってくることを期待することもできるのじゃないか。しかし、先ほど話がありましたように、最近灯油の輸入が必ずしもたくさんございませんので、どういう内外の価格の開きになっていますか正確につかめない。ですから、灯油の値上がりの時期で、ございましたので、とりあえずキロリットル当たり五百円下げまして、この次の昭和四十七年度の税率改正までに、ひとつ全体の石油製品の関税率につきまして見直しをしようじゃないかということを通産省とも相談をいたしまして、いまのような措置をとりあえずとった次第でございます。
  90. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 今度の措置で試算をすれば大体九円は下がるであろう、こういうことですけれども、先ほど通産省のお話ですと、この船賃が非常に高いというのですね。四十五年度の灯油の輸入価格の船賃はどのくらいに当たっているのですか。
  91. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 灯油の船賃について申し上げますと、四十五年の八月で契約されたものはキロリットル千二百円、中東から日本まででございますが、それが現在の船といたしますと大体四千円くらいになります。非常に高くなっておるというのが現状であります。
  92. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 その千二百円と四千円、ものすごい開きがありますけれども、これは大型の船で多量の輸送をやった場合でもそういうふうに大きな開きになるのですか。
  93. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 私どもが通常マンモスタンカーと呼んでおりますような二十万トンとかあるいはそれ以上の船、これはほとんどが原油を運ぶ船でございまして、原油の荷動きに比べまして、このようなガソリンとか灯油とかいうふうな品物はほとんど動かない。動いても量が非常に少ないというふうなことから、われわれクリーンタンカーと呼んでおりますが、そういうふうなきれいな油を運ぶ船というのは非常に少ないわけでございます。それから規模もせいぜい一万トンとかというところまででございまして、大型タンカーの値上げ幅と、こういうふうなクリーンタンカーの値上げ幅、しかもその購入が、原油大型というのは何年というふうな長期契約をやっておりますが、これらのいわゆるクリーンなものはスポットで契約し、スポットで船をつけるというふうなことから非常に高くなる、原油に比べて非常に割高になるというのが通常でございます。
  94. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 そうしますと関税局では、引き下げしてみて九円現状よりも下がるだろう、こういうのですが、いま国内の灯油の仕切り価格、これは幾らになるのですか。
  95. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 卸売り価格で大体キロリットル一万一千円前後でございます。
  96. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 一万一千円前後のものが九円、約十円下がるということですね。ですから先ほどの答弁のように、どうもいままで輸入がなかったのは海外のものが必ずしも安くなかった。そういうためにいままで、四十四年までほとんどなかったということですね。四十五年度に輸入してみたけれども、実際運賃が高かったというんですが、この運賃の高い面については、これは定期的に契約する、あるいは船を大型化する等で私は十分考えられると思うのです。もしこういう点が、四十五年度わずかぽっと輸入した、これが非常に運賃が高かったということで、もう輸入価格のほうが国内のものより高いんだという考え方、これでは今回の税改正という毛のも意味がなくなるのではないかと私は思うのです。そんな点で、実際に灯油というものが今後、いま値上げが予想されているときにこういう措置をとったということに対しては、どこまでも私は消費者第一であるべきだと思うのです。これを主管省でうんと努力をした結果、やはり国内生産価格と仕入れ価格との間に差があって現状無理だというならばこれはやむを得ませんけれども、関税を引き下げる、そして運賃等に検討を加えれば十分これは入れられるんではないか。この点どうですか。
  97. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 先ほど関税局長のほうから九円というふうな数字がお話しございましたが、これは一般家庭で使っております十八リットルかん、いわゆるドラムかんに直した引き下げ額でございまして、私が先ほど来申し上げております数字は、どうも混同いたしましてたいへん失礼でございますが、いわゆるキロリットルでございますから。家庭用のドラムかんというのは、ガロンかんというのは十八リットルで、私が申し上げた数字はキロリットルでございますので、約六十倍。したがいまして、今回の関税引き下げはキロリットルで五百円ということになっておりますので、先ほど来申し上げたような数字をもとにして計算いたしますと、国内価格の上昇を押える、いわゆる上限価格としての意味合いは出てくるというふうに、私ども感じております。そのような意味から、今後のフレートのいかんによりましては輸入ということもあり得るというふうに、私先ほど申し上げたはずでございます。
  98. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 ですから、キロリットルであると五百円の差があるわけですね。したがって、先ほど物価安定のための措置ということがあげられておるわけです。これに対して、これだけ引き下げられるとすれば、先ほど企画庁からも、物価閣僚会議等でもこれはもう大きな問題になっておるわけですから、したがって輸入計画ゼロで今後検討するということでは、これは先ほど来参考人山ら指摘されたような、末端価格にはほとんど影響がなくなってしまう。こういうことで、特に今度の場合も当面の物価対策としてやられたわけですから、こんな点についてちょっと関税のほうでは手を打ったけれども、それ以後入ってから消費者に渡る間の手がほとんど打たれぬ。こういうことに対しては私どもちょっと納得ができないわけです。したがって、これは早急に計画を立てて、そしてこれだけのもので国民にこたえるというものがほしいと思うのです。  大臣おりませんけれども、政務次官、いま聞いたとおりですが、今度のものは、当面は上限価格を押える、こういう考え方なんですね。関税局としては、これは値上げその他を考慮して、これだけ下げれば確かに五百円は引き下げることができるのだ、こういうことで、ここのところに非常に考え方の開きがある。したがって、油関係審議会ではどういうものがあるのか。ここではどういう論議がされておるのか。こんな点については、政略次官ではなしに通産省に、油関係審議会ではどういう論議が重ねられておるか。
  99. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 石油審議会という審議会がございまして、ここでは石油の量の問題、低廉安定確保ということを柱といたしましていろいろな施策について審議しておるわけですが、低廉で安定的な供給というのが石油業法の柱になって、目的となっておるわけであります。したがいまして、この低廉な供給、末端消費に低廉な油を供給するということにつきましては、あらゆる施策がそれを目的としておるというふうに、私どもも努力しておるつもりでございます。
  100. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 石油の審議会においては、低廉で安定的なものを供給しようというわけですね。物価安定政策会議においても、わが国物価は、今後ますます海外物価及び国際収支面からの影響を受けることになろうが、これを適切に調整するためには、輸入制限等現存する貿易面の種々の保護措置について再検討をはかるべきである。その際、国内の関連産業への影響には配慮しなければならないけれども、これにとらわれるのあまり何らの施策をも講じないならば、旧来の保護措置を残したまま内外物価の不均衡是正の問題に直面せざるを得ないことになる、こういうことで、こんな点を非常にきびしく指摘しておるわけです。しかも、目的では、物価安定を経済政策の第一義的目標としてきびしい態度で臨まなければならぬ、こういうふうに強い要請があるわけですから、価格の引き下がるものを、従来は高かった、こういうことで当面の上限価格なんだということでは、これは今度の措置に対して納得できないのですね。現実に試算をしてみるとキロリットル当たり五百円引き下がる、安くなるということはわかっておるのですから、そうしたならば、この提言の趣旨に沿ったならば、今年度から直ちにこれだけはもう必要だ、そうして国民にこたえようという姿勢がなければならないのではないですか。こんな点、次官どうですか、政府立場で。関税措置は講じた。現実に国内では消費者価格等は上がるのではないかと――わかりませんけれども、上がるのではないかということが不安になっている時期です。こういうときに、それぞれ物価対策については十分国内でいろいろな面で手を打つべきだ。各審議会でも、消費者を増員してまでも検討すべきだという強い要請があるわけです。そうして関税局はその意見を入れて引き下げておるにもかかわらず、何ら輸入の手当てを講じないというのはあまりにもおかしいと思う。大臣にかわって政務次官、どう考えますか。
  101. 中川一郎

    中川政府委員 灯油につきましては、値段が従来に比べて今日そう変わっておらない。ただ外国から四十五年度、初年度として入ってきておるわけですが、何ぶんにもまだ数量が非常に少ない。現在関税はキロリットル当たり二千二十円、それを五百円引き下げて千五百二十円ということに改正案はつくっておるわけですが、そのことが今後輸入灯油についてどういう反響をもたらすものか、今後の推移を見て、さらに必要があれば検討を加えて引き下げをして、国内灯油需要にこたえるというふうにしていったらいかがかということで、今回とりあえず五百円引き下げたわけであります。(松尾(正)委員「それはいまの問題ですよ」と呼ぶ)そういうことで、あと、言われんとするところがちょっとわからないのでございますが、もう一回……、恐縮でございます。
  102. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 関税局で試算したところによると、キロリットル当たり五百円安くなる、こういう試算をしたわけですよ。いいですか。現状は原油引き上げ等国内消費者灯油価格というものが相当はね上がるんじゃないかということが不安に思われている。こういう時点で、聞いてみると、一番真剣に考えなければならないのは通産省の石油関係だと思う。これが、いままで船賃が高かったということで、当面輸入はまだ計画ができていないんだということなんですけれども、この措置とあわせて、試算をして安くなるというのですから、その試算は誤りだとか、あるいは確かに安くなるとすれば、計画を立てて至急輸入量をきめて考えなければならない、こういう措置があって当然と思うわけですよ。ところがまだないというわけです。それで、関税局長も四十七年度からはというのですけれども、現状こういう開きがあって、当面の措置としてこれではあまりにも国民に対してごまかしじゃないか、こういう感じを受けるのですが、この点どうですか。
  103. 中川一郎

    中川政府委員 いま通産省にも聞いてみたのですが、これからは、原油の高騰がありますし、灯油もかなり値上がりするのではないか。そうなってまいりますと、相当外国からも入るようになりますし、五百円引き下げたことが値上げの防止あるいは外国から入る役目をするであろう、こういう見通しのようであります。何ぶんにもことしまだ事情が、先々よく見越すことができませんので、とりあえずこういう措置をしてあるわけでございますが、今後、特に来年からという関税局長の答弁があったとおり、ことし一年こういうことでやってみまして、来年は十分前向きで検討いたしたい。松尾委員からは、当面いま困っておるからという強い要請ではありますが、まだどういう情勢になるか見通しが立たない現状でございますので、しばらくこの程度でひとつ検討をさしていただきたいと存ずるわけでございます。
  104. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 関税措置を講じ七月から実施しようというのに、これから来年、この様子を見通してということでは、今回の措置に対しては考え方がちょっと甘過ぎやせぬかと考えるわけです。できればこの輸入計画を早急に立てるなり、あるいは今回の改正の灯油分を変えるなり、ここらの措置まで考えなければならない問題だろうと私は思うわけです。しかし政府立場でいま、そういった消費者を守るための措置としてはやはり検討する面がある、こういうふうにお考えのようですから、ぜひひとつこれは検討していただきたい。強く要望しておきます。  次は、KRの問題について二、三お伺いしたいのですが、今回のケネディラウンドの繰り上げ実施について、対中国産品のうち二十二品目が残される、こういうふうになりました。このおもな品目について、これを残した理由関税局長から伺いたいと思います。
  105. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 この点については、せんだっても御説明申し上げたところでございますが、一番大きなものはやはり生糸、絹織物でございますが、全体といたしましては、先般来申し上げておりますように、私ども第五十八回国会における当委員会の決議の旨を体しまして、とにかく日中貿易の健全な発展のためにできるだけ前向きに格差解消につきましては考えていこう、今度のKR実施時期繰り上げに際しましても、御審議願っておりますように、あわせて繰り上げするというふうな措置を講じつつ、さらに格差解消をいたしまして四百二十四品目までは、九四%程度までは解消する、二十三品目残っておるわけでございます。  そのうちおもなものは生糸、絹織物でございます。これにつきましては先般も御説明申し上げましたが、とにかく中共生糸と国産生糸の価格差を比較いたしまして二三%余りの格差があるわけです。それから生産力から見ましても、これまたあとで蚕糸局長から詳しいお話があると思いますが、日本に続きまして――日本は三十四万俵でございますが、中共の生糸は十七万俵ぐらい、非常に潜在的な輸出余力がある。最近の動向を見ますと、もとはわりあい質が悪かったのでございますけれども、最近は和服になる非常に上質の生糸の輸出がふえておるということでございますので、今度の改正に際しましてはこれは格差解消はできなかったわけでございますけれども、その他のおもなものといたしましては、にかわとかゼラチン、皮関係の同和対策関係品目がございます。それからバリウム関係、そういったところがおもなものでございます。  四十六年度で格差解消をしたい、これはするほうでございますが、ごらんいただきましたように――するほうはどうも御指摘がありませんけれども、だいぶ中共関心品目改正しております。たとえばシャープペンシル、万年筆、それからトウいすとかトウ製品関係相当巨額に入っております。それからわら製品とか竹製品、それからニンニクなどが相当入っておりますが、これも格差解消をしております。そういったように前向きに考えておりますが、一部、いま申しましたようなものにつきましては直ちにその解消ができない事情にありますことを御了承いただきたいと思います。
  106. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 具体的なものを農林省にお願いしたいのですが、この残したものの中心的なウエートを占めるものが生糸だということですので伺いたいのですが、生糸の年間需要が大体四十万ないし四十一万俵、これに対して国内生産が三十四、五万俵ですから、不足数は大体六万俵ぐらいになると思うわけですが、この国内需要の将来の見込みと、それから国内生産の将来の見込み予想はどうなっているでしょうか。
  107. 荒勝巖

    荒勝政府委員 農林省といたしまして、昭和四十三年でございますが、当時、農産物の需要と生産の長期見通しというものを立てまして、その際に昭和五十二年、当時からいえば十年後の五十二年における生糸の需要量を測定いたしましたところ、大体五十二万ないし五十四万俵というふうに測定いたしまして、それに対応する国内の生糸の生産量を五十三万俵といたしております。しかし、その後におきます生糸の需給の状況を実績で見ますと、生産は、先ほども御指摘がありましたが、ほぼ見通しに近い水準で、最近三十五万俵くらいで推移しておる次第でございますが、最近の時点では需要のほうが長期見通しよりも上回る結果になりつつあるというふうにございます。これにつきましては、われわれの検討では、やはり国民所得が非常に伸びまして、生糸あるいは絹織物に対する消費の旺盛なる需要があるのだというふうに考えております。したがいまして、ちょうどただいま農林省では、米の過剰を契機といたしまして、いわゆる稲作転換ということを強く打ち出しまして、こういう国内で多少不足ぎみの農産物につきまして、たとえば大いに蚕糸業の振興をはかる、稲作転換を進めていくということで、ただいま大いに生産指導並びに助成事業を行なっておる次第でございます。
  108. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 生産ないし需要面を考えると、国内生産では多少需要が満たないということが考えられるわけですので、一応今後輸入をしていかなければならないではないか、こういうことが考えられるわけですけれども、この現状、最近三年間くらいの生糸輸入国と輸入量の状態はどうなっておりますか。
  109. 荒勝巖

    荒勝政府委員 この三年間の実績で申し上げますと、四十三年、これは暦年でございます。四十三年暦年では、輸入数量が約二万二千俵、それから四十四年は四万四千俵、倍増いたしております。さらに四十五年暦年では六万六千俵というふうに、年々非常に増大しておる次第でございます。  輸入先につきましては、四十三年では韓国が七千五百五十五俵、それから中国が九千七百七俵、そのほかイタリア等で千三十九俵、あるいは北朝鮮で千三百三俵というふうで、合計二万一千八百二十四俵というふうになっております。それに対しまして四十四年の場合は、韓国が一万七千三百七十九俵、それから中国が一万九千五十一俵、それからイタリアが千六百七十俵、それから北朝鮮が千九百八十九俵と、各国とも軒並みふえております。あと多少誤差がございますが、それはその他の世界じゅうから生糸が入っておりますので、こまかい点は省略さしていただきます。それから四十五年になりますと、先ほど申し上げましたように六万五千九百七十八俵というふうにふえておりますが、その内訳は、韓国が三万一千九百八十俵ということになって、中国が二万二千五百八俵、イタリアが四千二百五十九俵、北朝鮮が二千五百九十五俵というふうに、各国とも全体として輸入増大に比例いたしまして、ある程度みなそれぞれ輸入が増加しておる、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  110. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 四十三年、四十四年はいいと思うのですけれども、四十五年で韓国が急にふえてきている。そこでこのKR関税実施についての関連ですね。韓国の地域は結局非常にふえている分に対していよいよ関税引き下げが適用されて七・五%、ところが中国のものは少ないにもかかわらず一五%が据え置かれる。こういう点を側面から見ると非常におかしいと思うのです。もし国内消費者サイドに立ったならば、これは逆で、多いほうをむしろ下げなければならない、こういうふうに考えるのですが、この生糸とあわせて――時間の関係で私のほうから申し上げますが、絹織物についても南朝鮮は一〇%が適用されるし、中国はそのまま据え置きで二〇%。しかも絹織物について見ますと、中国のものは各国向けにつくられておるわけですね。ところが韓国の場合にはほとんど日本向けにつくられる。こういう面で、国内消費者保護しようという立場から考えても、この関税の適用は中国並びに韓国の関係というものは何となくおかしい、こういう感じを受けるのですけれども、関税局長、この点はどうなんですか。
  111. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 これまたこの間お答えしたところでございますが、韓国との比較が出ましたので申し上げます。  韓国産の輸入は確かに若干ふえているようでございますが、韓国産の生糸の値段は国産のものと比べますと一四%くらいの値開きでございます。中共生糸のほうは先ほど申しましたように二三%余りでございまして、価格のバランスから申しますと、中共生糸は一五%で、それから韓国生糸が七・五%のKR税率ということで、その点でのバランスはとれておるというぐあいに考えております。ただ品質から申しますと、先ほども申し上げましたように中共生糸は和服向けの上質のものがふえているのに、韓国の生糸は劣るものが逆にふえておる。かつ潜在的な輸出余力という点から申しますと、中共生糸のほうが格段に差があるということでございますので、一般的に税率を下げるとなりますと、国内産生糸との関係でなお慎重に検討しなければならぬということを考えておる次第でございます。
  112. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 いま関税局長は品質にも触れたのですけれども、品質面では非常に高級なものが用いられているというのですが、先ほどの農林省の説明ですと、この増産と同時に品質については格の向上を指導している、こういうお話でしたね。むしろ国内では、品質向上に努力をしていくとすれば、絹織物全体では格の低いものも相当需要は考えなければならないと思うのです。そういう面で考えていくと、韓国ものは非常に質はいいけれども、中国ものは非常に広い範囲からとれますから、格の希望するものがとれるのではないか。韓国のものは一律にいいものがとれるけれども、中国のものには品質に相当のアンバランスがある。したがって品質からいえばむしろ逆ではないかと思うのですが……。国内で、一級品、二級品、三級品に分ければほとんどが一級品で、二級、三級がほしいという場合には、品質からいっても中国ものは一級、二級、三級とそろっているからそのほうがむしろいいのではないか、こういうふうに見られるのですが、この点農林省どうですか。その品質の需要と韓国並びに中国の状況をお答え願いたい。
  113. 荒勝巖

    荒勝政府委員 中国の生糸につきましては、従来は生糸の糸格があまりよくありませんで、たとえば昭和四十四年をとりますと、私たちの調べでは中国ものは2A格以上、H本でいえば多少高級な和服にも合います糸格でございますが、それが総輸入のうち一二%で、A格以下のものが八八%あった次第でございます。それが、昨年輸入が非常にふえた過程でも、中国のものが昭和四十五年では2A格のものが三四%というふうに非常にふえてまいりまして、A格以下のものが六六%というふうに、逆に悪いものが下がってきております。こういうことが、われわれといたしましては国産生糸に対する重大な悪影響といいますか、非常な影響力を持ってきておる、こういうふうに理解しておる次第でございます。
  114. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 そうしますと、中国のもののほうがA格が多いから競合面が強いということですか。要するに、日本国内の需要は、A格、B格、C格とあれば、ほとんど生産面ではA格のものをつくるように努力しているわけですね。そうすると、B格、C格クラスのものが韓国にあるのか、あるいは中国にあるのか、こういうことなんです。
  115. 荒勝巖

    荒勝政府委員 農林省の国内の繭生産あるいは生糸生産の指導につきましては、世界の最高の技術水準を持っている関係もございますが、われわれの指導も結局2A以上の格のものを生産奨励をいたしておりまして、そういうものが約八〇%以上を占めているのではなかろうか、こう見ております。それに対しまして、輸入し始めた当初の四十年ごろまではA格以下の、われわれ日本からいえばあまり上等でない系統の生糸が中国大陸からも、それから韓国からも同様に悪いものが比較的多く入ってきたわけでございます。ところが四十五年、去年のころから、中国も非常に技術努力をされたのか、その辺の事情は私たちもわかりませんが、非常に高級なものが入ってきて、国内産の織物にも非常に悪影響を及ぼしてくる、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  116. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 質の面の競合でもう少し詰めたいと思ったのですけれども、ちょっとこれは時間がかかりますから、もう一点織物のほうについて、これは通産省に伺いたいのです。  南朝鮮の場合には、先ほどもちょっと触れたように、ほとんどが日本向けに生産されている。これに対して一〇%も安い中共の場合はどうかというと、普遍的に、欧州その他各国に向くように生産されておって、高い税率が課せられている。こういう面を見ると、生糸のほうと同様に、国内の企業保護という観点からは、ずれているのではないかというふうに考えるのですけれども、これはどうでしょうか。
  117. 室谷文司

    ○室谷説明員 中共からの絹織物につきましては、約九八%がしぼり以外のものでございますが、片や韓国のものはほとんどがしぼりということで、品質的には競合面が少ないのではないかというふうに思われます。わが国の絹織物の総輸入に占める地位も、中共からのウエートは非常に高くて、量でいたしますと約五〇%強ということで、四十三年、四十四年ともに比較的安定というか、総輸入に占めるシェアは安定をいたしておりまして、この均てんされていないということによる不利益はさほど大きくないのではないか。一方、輸入量のふえ方も、四十一年から比べますと、中共の場合は四十二年は四十一年の六倍、四十三年は四十二年の二七%、四十四年は四十三年の二七%ということで、かなり急速な伸びをいたしているわけであります。
  118. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 時間が経過しちゃったのであまり詰められないのですが、生糸の面でも絹織物の面でも、やはりKRというものの本質から考えてみてちょっと問題がある、こういうことは私の質問以外に、いままでのやりとりで明らかになっておるわけですけれども、こうした問題点をはらむこのケネディラウンドの繰り上げ実施によるいわゆる格差の問題については、きょうの参考人意見もことごとくこれはもうすみやかに撤廃すべきだ、また撤廃する方法もあるはずだ、こういう意見が中心でありましたけれども、政務次官はこの格差を撤廃していくという点について、政府立場でどういう考えを持っておられるのか、それを伺いたいと思います。
  119. 中川一郎

    中川政府委員 けさほど来の議論もありましたし、また当委員会における各委員からの御指摘もありましたし、また国会での決議も、たしか五十八回国会であったようでございます。これらを体して、政府としてもKRの格差については中共についても解消をはかるということで、今日まで非常に前向きに努力してきたつもりであります。今後も生糸の問題を含めて格差解消には前向きで検討し、解消につとめてまいりたい。  ただ、申し上げますのは、決して中共だからといって意地悪しておるわけではございませんで、純粋に国内産業――日本の農村も総合農政からいってお米がいま非常にきびしい情勢にあります。そういうときに、他の農業を育成しなければならない。生糸・繭農家もその一つでありますが、その農家に打撃を与えてはならないという、純粋な国内産業保護というところからまだ踏み切れないでいるわけでありますけれども、今後日本の繭生産についても構造改善を通じまして合理化をはかり、中共からも格差解消して入ってこられるような体質改善ができた暁は格差解消に踏み切るよう、ほんとうに前向きで検討してまいることをはっきり申し上げておきたいと存じます。
  120. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 政府立場格差解消に最善の努力をしていくということでありますから、これはひとつ実行をわれわれ見守ってまいりたいと思っております。  なお、だいぶ時間が経過しちゃって恐縮ですけれども、この特恵供与が行なわれる、あるいはKRの繰り上げが実施されるということで、非常に国内産業影響ということが重視されておるわけでありますけれども、四十四年度の発展途上国からわが国への輸入した産品、原料等の中で、原料関係と製品関係に分けまして、どういうふうに推移しているか、その実績を伺いたいと思います。大きく大別してけっこうです。原料品で何%、それから製品関係で何%――数字がなかったら、若干時間がかかるから、あと輸出の状況あるいは輸入の状況、それから競合状況等を一応聞いておきたかったんですけれども、いずれにしても、私の手に持っている範囲では、わが国の輸出入の実績、これらが軽工業品、特に繊維、雑貨ですね、こういうもので占められており、しかも低開発国の追い上げが非常にきびしい状況になってきているんだ。こういうことはもう御承知のとおりですけれども、これがさらに今回の税改正措置によって、特恵供与によってこの追い上げというものはもっと激しくなるだろう、こういうことが当然予想されると思うのですが、この見通しはどうですか。
  121. 室谷文司

    ○室谷説明員 最近、御指摘のように発展途上国からの繊維、軽工業品等の輸出の増大はかなり著しいものがございます。ただ、そういう点におきましては、特恵のスキームの上で今後の国内産業等への影響を考慮いたしまして、あるいは例外品目、あるいは例外品目の前にシーリング方式ということをとることが一つ。それからそのシーリング方式の中でも、ある特定国がシェアが五〇%をこえた場合には、以後の輸入については普通の税率に戻る。また繊維、雑貨を中心としまして五十七品目のうち、維繊につきましては二十六品目、雑貨につきましては十一品目という、いわゆる五〇%カット品目を設けてございます。その他特定の時期に特恵輸入が集中をして市況の混乱を起こさないように、おそれのあるものにつきましては事前割り当て制あるいは輸入のシーリングを上期と下期に分けるというような、運用上、これらの製品につきましての国内的な影響につきましては、きめのこまかい配慮をいたしておる次第でございます。今後特恵の供与によりましていわゆる追い上げ、そういった面における輸入の増大という犬のはさらに加速されるおそれはございますけれども、そういった面で十分国内産業との調整をはかってまいりたい、そういうふうに思っておるわけでございます。
  122. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 先ほどの一次産品、製品の割合でございますが、日本についての数字はありませんが、世界について見ますと、四十四年の数字しかございませんけれども、開発途上国からの状況を申し上げます。四十四年でございます。製品が百十二億ドルでございます。それから一次産品が三百七十億ドル、割合を申しますと、一次産品のほうが七七%、概数で申しますが、残り二三%が製品ということになっております。
  123. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 そこで国内影響面について少し突っ込んで伺いたかったのですが、この対策については、このたび中小企業特恵対策臨時措置法、これがいま提案されておりますが、この中で一点だけ伺いたいと思うのです。それは「目的」の中で「中小企業者が行なう事業の転換を円滑にするための措置等を」とありますが、この臨時措置法によっては事業の転換だけが中心になるのかどうか。この点はどうでしょうか。
  124. 牧野隆守

    ○牧野説明員 お答えいたします。  この、今度御審議いただきます法律案の第七条のところに「近代的施策の推進」という条項がございまして、特恵供与による影響に対しまして、基本的には従来講じておりました近代化構造改善措置を積極的に推進してまいりたい、このように考えております。なお、従来の措置に加えまして、どうしても転換等をせざるを得ないという業種につきまして、財政金融等のもろもろの助成措置を講じていきたい、この点につきまして今後御審議いただく、こういうことになっているわけでございます。
  125. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 そうすると、転換だけでなしに、いままでやったもののほかにさらに転換を考えていくという、こういう趣旨ですね。
  126. 牧野隆守

    ○牧野説明員 御趣旨のとおりでございます。
  127. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 それでは時間がだいぶ経過しましたからこれで打ち切りますけれども、とにかくきょうの午前の参考人意見においても、関税措置が生きるか死ぬか、これはもうそのあとの手当ていかんによる、こういう趣旨意見が述べられておりますので、これら臨時措置等も講じられておるのですから、十分に転換についてはひとつ努力をしていただきたいと思います。  特に私、最後に一つだけこの問題について申し上げたいことは、いままで生糸に対しても構造改善その他中小企業近代化等の手当てをやってまいりました。ところがこの手当てが終わった時点――話によりますとこの措置をもう二年ほど延ばしたいということでありますけれども、終わった時点で、一方輸出で非常に大きな問題が起こる、まあ繊維問題が起こる、こういうようなことになりますとまるでイタチごっこで、むだ金のような感じさえするわけです。わが国経済の伸びを見てみますと、もう個人の小さな転換ではこれは相変わらずイタチごっこで終わるのではないか。したがって、今度の措置にも共同転換事業等については十分な措置がとられておるようでありますけれども、むしろそういう方向に大きく手を打っていく、これがむしろ特恵に対する国内としての考え方ではないか、こういうふうに感ずるわけですが、そういう方向でひとつ努力をしていただきたいことを申し上げて、以上で終わります。
  128. 毛利松平

    毛利委員長 藤田君。
  129. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 すでにいろいろな角度から質問がされましたので、私の質問も若干関連いたしますが、重点的にしぼりまして二、三質問をいたしたいと思います。  その一つはグレープフルーツの自由化問題に関連をすることでありますが、その前段として再確認の意味においてお尋ねしますが、グレープフルーツの自由化の時期とケネディラウンドによる関税実施の時期、これは同一であるかどうか、いつからやるか。
  130. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 グレープフルーツといわず、自由化対策として講じます関税改正につきましては、自由化の時期に合わせることにしております。かつ、念のために申し上げますが、いろいろそういう措置を講じなくてもいいようになればまた別の措置をとるということで、暫定措置ということにしております。
  131. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 いつからやるのですか。
  132. 荒勝巖

    荒勝政府委員 グレープフルーツの自由化につきましては、昭和四十四年の日米協議の際日本側から、米国が日本産温州ミカンの輸入解禁州を実質的に拡大するとの了解のもとに、日本はグレープフルーツを四十六年十二月末までに自由化することとする考えであることを表明いたしまして、かつ、この場合にグレープフルーツに先ほどの季節関税を設定することを明らかにいたしております。  このような日米協議の結果を勘案いたしまして、四十四年十月十七日の関係閣僚協議会におきまして、四十六年十二月末までに自由化することが決定した次第でございます。その後内外の情勢にかんがみまして、四十五年九月十日の関係閣僚協議会におきまして、四十六年十二月末までに自由化するものと決定される品目については、四十六年四月末日を目途にその完遂につとめると決定されたいきさつがございます。しかしながらわれわれといたしまして、グレープフルーツにつきましてはさきの日米協議の経緯もありますので、これらを念頭に置きながらただいま慎重に検討中でございます。
  133. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 非常にわかったようでわからない答弁ですが、経過としては、日米共同声明のときに、いま問題になっておる繊維の自主規制の問題、このグレープフルーツの問題がトップのところで、経済、貿易、外交の面ではなくて、いわゆる一種の政治的な取引がなされたということは周知の事実であります。ですからそういう経過の上に立って、いまはなかなか慎重な答弁をなされたようでありますけれども、単刀直入にお尋ねしたいのは、慎重に検討をして云々、こう言われるのだが、実質的にはいつからやるのだ、何月からやるのだ。これは少なくともきまっておると思うのですよ。これは大蔵省の何になると思うのだが、関税のほうは何月から実施する、グレープフルーツの自由化はこれまた何月から実施する。関税改正案として出されてくる品目が、しかも重要な品目がいつから自由化がなされるかということがわからないで関税の税率の改正がなされるなんというのは不見識だと思うのですよ。私はそういう点で時期を明確にしてもらいたいと思うのです。
  134. 荒勝巖

    荒勝政府委員 先ほど私が答弁いたしましたのは、前の九月の閣僚協議会でこの四月に完遂につとめるというふうに決定はいたしておりますが、自由化実施の時期につきましてはあらためてこの四月以降、何らかの形で政府部内において意思表示があることになっておりますので、われわれといたしましてはいまの時点におきましては、いつから実施するということの答弁はできないと思います。
  135. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 自由化対策の税率の改正を政令で定めることにいたしまして、自由化の時期と合わせておることにつきましては私は間違ってないと思うのでございます。下げるものもありますけれども上げるものもあるわけでございますので、そういうものは消費者対策としてもなるべくあとへ延ばして、ほんとに自由化に必要なときからというふうにしたほうがいいわけでございまして、これは間違ったことではないと考えております。
  136. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、間違っておるとか間違ってないというようなことは何も言ってないのですよ。いつから実施するかという時期のほうを尋ねておるわけです。その点では、去年の九月十日の閣僚協議会では、いわば繰り上げて四月から実施したいというような一応の申し合わせがなされたけれども、なお慎重に検討したいというのがいまの答弁だったと思うのですよ。そういうふうに確認をしてよろしいのかどうか。それとも、いつから自由化をするのかという時期の問題、それと直接的に関係のある関税の適用の時期ですね、これはあなた方局長の段階では答弁できない問題であるのかどうか、その点ちょっと聞かしてもらいたい。
  137. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま申し上げましたように、端的に自由化の時期はいつかとお尋ねになりましても、いまの段階では慎重に検討としか私の立場としては申し上げられないと思います。ただ先ほど関税局長が御答弁になりましたように、この関税定率法が通りますれば、自由化と同時に新関税率を適用する、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  138. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 なぜ私がこういうことをあえてお尋ねするかと申しますと、昨年、四十五年度の第四分科会において、このグレープフルーツの自由化の問題について倉石農林大臣にただしたわけであります。ここに私、議事録を持ってきておりますが、大臣の答弁は、その経過は省略いたしますけれども、「いまお尋ねのような四十六年末以前にやるということは、こちらは考えておらないわけであります。」これは結論だけ言うと、グレープフルーツの自由化はことしの年末以前にはやらないという言明なんですね。それからまたずっと経過を追っていろいろな論議のやりとりがありましてから、倉石農林大臣は、「グレープフルーツはこれは国際的な問題で、もう四十六年中にいたすという約束をしておりますから、」こういうことで、グレープフルーツの自由化の時期は来年、いわゆることしの十二月末だということをわれわれに言明しておるのです。それからしばらくたって国会が休会になったとたんに、グレープフルーツの自由化は四月からやるんだということが新聞に大きく発表された。国会で約束したことが閉会になると突然そういう閣僚協議会や何かで変わってくる。そうしていまこういう形で質問をすると、その時期については不明確だと、こう言うのですね。これはもうすでにこの委員長でも問題になったと思いますが、このグレープフルーツについては、ミカンの生産者は、極端な言い方をすれば生活上の死活問題として重大な関心を持っておる。そういう時期が明確になされないまま関税の率を下げるとかやれケネディラウンドの繰り上げをやるだとか、そういったことを国会論議の対象にすることは不見識だと思う。そういう意味で、去年のこの国会審議で農林大臣が答弁したこれの時期との関連において、いま、その時期をいつにするのかということを政府は明確にしてもらいたいと思う。これは局長の段階でできなければ次官の段階で、次官の段階でできなければ私は政府の統一見解を明確にしてもらいたいと思う。その上でないと関税の率を何ぼにするかということは――季節関税の問題なんかはこれは一つの対策であって、自由化するのかしないのか、残存品目として残すのかどうか。自由化するのであれば、自由化する条件として季節関税を設けるのかどうか、率を幾らにするのか、こういう段階になると思いますね。そういう基本的なことが不明確なまま論議することはできないと私は思いますが、どうですか。
  139. 中川一郎

    中川政府委員 グレープフルーツを含めて、自由化については繰り上げといいますか、時期を早くしなければならぬ要請が一方にございます。そこで四月以降という、わりあいピッチの上がった時期がうわさされ、云々されるようになってきたということも事実だと思います。しかし、農林大臣の言明にもありますように、かんきつ農家のことも十分考えてこの時期をきめなければならないということでございまして、いまここで四月にするとか九月にするとか十二月にするとかいうことをなかなか言いにくいというのは、いま申し上げましたように、国会での審議の経緯もあり、またかんきつ農家のことも考えなければいけない。それらを勘案しまして慎重にその時期は決定をいたしたい、こういうことでございます。加えてそのときに新税率を適用したいということで提案いたしておるようなところでございまして、いまはっきり時期を言えとおっしゃられても、そう簡単に結論の出る問題じゃない。御指摘のようないろいろな問題がありますので、慎重にこの時期は検討して、特にかんきつ農家に悪影響のない時期ということを重点にしてきめてまいりたい、このように考えるわけでございます。
  140. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 なかなか苦しい答弁のように判断をいたします。そこまで慎重に検討しなければ自由化する時期が明確にできないのであれば、急いでこの国会にグレープフルーツの関税問題を提示する必要はないじゃないですか。昨年の国会における農林大臣の明確な答弁があるわけですから、来年の――去年でいえば来年だけれども、ことしの十二月まではやらないのだから、私の質問に対しては心配するな、相手のほうにも約束しているのだから、もうやらないのだ、こう言っておるのだから、それであれば来年の通常国会に出したらいいじゃないですか、この改正案をもしやらざるを得ないのであれば。どうですか。
  141. 中川一郎

    中川政府委員 来年の国会にしてもいいじゃないかという議論もあろうかと思いますが、十二月と藤田委員に農林大臣がお答えしておるとしましても、四十七年一月以降の問題がございます。しかも実質税率が響きますのは、季節関税でありますから十二月以降ということになります。したがって、国会における藤田委員に答弁した時期を含めましても、今年中に措置をしておかなければなりませんし、時期については十分検討してみたいと存じます。
  142. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 これは必要があれば場所を変えて農林大臣にも注文したいと思います。  それではここで一つ確認をしておきたいと思いますことは、昨年の国会の議事録等との関連においても、十二月以前に自由化することはないということだけは、そういうふうに理解してよろしいですか。
  143. 荒勝巖

    荒勝政府委員 昨年の通常国会前後におきましては、われわれ事務当局といたしましても当然四十六年十二月末までにグレープフルーツは自由化する方針ということを考えておった次第でございますが、その後のいろいろな事情で、昨年の九月十日に、四十六年十二月に自由化すべき品目は一括して四十六年四月に繰り上げるというふうになったいきさつがございますので、前の、農林大臣の御答弁されましたその後の時点における事情に変更があったというふうに御理解願いたいと思います。
  144. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私はそういう意味では政府委員の答弁は実に不親切だと思いますよ。そういうふうに国会ではっきり答弁しておるのだから、この時期をたとえば九カ月も繰り上げてやるということであれば、事情変更の原則じゃないけれども、よほどそこには重大な事情変更がなければできないはずでしょう。それはいまのあなたたちの答弁によれば、必ずしも四月だとは言っていないが、ニュアンスとしては十二月、ことしの年末以前にやるということだけははっきりしてきておるわけですよ。そうじゃないですか。その場合には、なぜそれでは国会で約束をしたことをたがえてまで繰り上げてやらざるを得なくなったのか、その具体的な事情というものを明らかにしてもらいたい。何だかあっちのほうからこっちのほうから要請があったとかなんとか、繰り上げてやらざるを得ない事情があるとか、何が何やらさっぱりわからぬじゃないですか。それほど重大なことがあるのであれば、はっきりしてください。
  145. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 グレープフルーツに関します詳しい事情につきましてはさっき蚕糸園芸局長から御説明申し上げましたが、わが国を取り巻くいろいろな事情からいたしまして、自由化の時期を全体的に早めようじゃないかという決定が関係閣僚会議でありまして、先ほど申しましたようにテンポを早めて、四月末までには制限品目を六十品目にする、それから九月末までにはとにかく西独並みに、四十品目まで下げようじゃないかという姿勢を示しました一環といたしましてそうなったというふうに御理解をいただきたいと思います。
  146. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 全くのれんに腕押しというか、歯車がかみ合いませんね。かみ合わぬというよりも、わかっておって明確にしないとすればこれは重大な問題だと思うし、ほんとうに不明確であるとすれば、私はグレープフルーツを今度のこの自由化品目の対象にすべきでなかったと思うし、関税あるいは自由化の時期についても、これはそれこそ、沖繩返還の問題に関連してことしは臨時国会を開くと言っているのだから、そういう臨時国会で出してきても私はおそくはなかろうと思うわけであります。そういう点について、私はその時期についてはぜひ政府の統一見解として、くどいようでありますけれども明らかにしてもらいたい。私があえてここまでくどく言うのは、こういうようなことになるのじゃないかと思って去年国会で質問しておるのですよ。いま紹介したように、大臣の答弁からいけば四十六年末以前にやるということは、こちらは考えておらないわけであります、やらないと言明しておるのですよ。いろいろな事情があったとはいえ、国会でここまではっきり答弁していることをそういうふうに変更しているのですが、変更しているというのであれば、その具体的な理由をもっと明らかにすべきじゃないですか。私の要求しておることは無理でしょうか。
  147. 中川一郎

    中川政府委員 藤田委員の御指摘、まことにごもっともだと思うのです。国会でそういうことをおもんぱかって時期をただす、それに対して責任ある大臣が時期について明確にお答えをしておるわけですから、先ほど申し上げましたように、その国会における発言について、無責任に、知らなかったというようなことは言えないというふうに存じます。ただ、グレープフルーツを含めて、自由化の時期を全体として繰り上げなければならない日本を取り巻く国際状況――繊維問題にいたしましても、あるいは世界の中で日本がいろいろ発言をする場合に、自由化促進しないでの発言は非常に弱い。ここで一日も早く西ドイツその他の諸国に劣らない自由化をやっていかなければ、日本は強力な発言、あるいは経済行為に支障があるという、その後の事情変更といえばそういう大きな流れがありましたために、閣議において、四月末に六十、それから九月末に四十というところへ踏み切りました。その中のところに、あるいはどちらかに入るのがグレープフルーツ、そこでかんきつ生産者のことも考えつつやらなければならない事情になってきたということでございまして、御質問の趣旨、言われる点はそのとおりだと思いますが、そういう事情変更があることもひとつ御理解いただきまして、今回これを入れることについて御賛同をいただきたい。しかし、時期については、かんきつ生産者に対する対策その他いろいろ配慮して、慎重に決定してまいりたい、このように思うわけでございます。
  148. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、時期の問題だけで時間をとりますとあとの質問ができませんからこの程度で、昨年の国会における農林大臣の答弁との関連は一時保留したいと思いますが、私はことばじりをとらえるわけではありませんが、大臣の昨日のある答弁ではありませんけれども、言い回しがなかなかじょうずです。しかし、一つ中身の問題として私はいまの答弁で理解できないことは、グレープフルーツのいわゆる自由化及び季節関税の特定の引き上げ措置の問題です。これについては生産者の立場も考えてと、こう言いますが、昨年の国会のこの答弁の趣旨からいうと、実は生産者のことは考えてないのですよ。やはりニクソンと佐藤さんが約束をした繊維と同じじゃないですか。国会の決議を無視して繊維交渉がああいう形になった。このグレープフレーツの場合も、われわれのこの国会におけるこの種の答弁で確認をしておることでも、国会でどういうふうに確認をしても、そんなことはかってに行政府の外交交渉でやれるのだ。私は、国会軽視の形がここにあらわれてきておることについてはきわめて残念です。そういうことは厳に政府としては反省をし、今後のこの種の問題の取り扱いについては十分慎重にやってもらいたい。これは強い抗議と警告を発しておきたいと思います。  そこで、いろいろ前後しますが、バナナの関税季節関税として、四月から九月まで四〇、十月から三月までが六〇、グレープフルーツが六月から十一月まで二〇で、十二月から五月までが四〇、こういうふうに、その率において、いわばバナナの商社を保護するためなのか。おそらくリンゴのことを考えて、気持ちを考えてこれはやったのだ、こう答弁をなさるだろうと思うが、これはあとでも触れたいと思いますけれども、政府が四十二年にああいう果樹農業の長期見通しについての方針を立てて、三十六年に制定を見ました果樹農業振興特別措置法の精神に沿って、いわばミカンをたいへん奨励したわけですね。しかしながら、さっきのここの論議じゃないですけれども、桑はとにかくやめてしまって米をつくれ、こういって米を奨励しておいて、最近になると、さっきの答弁を聞いておると、また生糸をやれ、こう言ってきておるわけですね。ミカンを一生懸命つくれつくれと言って、ミカンをたくさんつくらせた。ミカンなんか、私の県なんかでは良田をつぶしてミカン畑にしておりますよ。そこまで政府が奨励をしたこのミカンと、グレープフルーツとの関係というものは、競合するのですね。これはすでにこの関税問題の冒頭にこの種の質問もあったと思いますけれども、しかしそれほどまでに政府の奨励した重要な果樹農業と競合するグレープフルーツがなぜバナナより安い関税をやらなければいけないのか。私はここがわからないのですよ。これはどういうことなんですか、バナナとの関係では。
  149. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 特にリンゴの気持ちだけを重くあれしたわけではございません。バナナにつきましては、藤田先生も御案内のとおり古い沿革がございまして、三十八年に自由化をしたわけでございますが、とにかく自由化以前には差益金と関税を入れますと一〇〇%かかっておったわけです。それを自由化いたしまして七割に下げまして、その後逐次下げて、ただいまは六〇%になっておる、こういう事情でございます。  そこでその六〇%の関税が高いじゃないかという非常な御意見がございまして、今回季節関税をとって六割、四割というふうなバランスにしたわけでございますが、まあバナナの世界の貿易額などを見ましても、グレープフルーツとは比べものにならぬぐらいはるかに多いわけでございます。それから日本のバナナとグレープフルーツとの輸入の量なんかを見ましても、これもまた問題にならぬぐらい多い。かつ日本はバナナの輸入のごときは世界でも二番目に多いような状況でございまして、そういったふうな税率の沿革、それから両者の世界の貿易量、それから日本輸入量を見まして、それが一方の果実とどういうふうに競合するか、競合の度合いから見ましたらバナナのほうが圧倒的に多いわけでございますから……(藤田(高)委員「何と競合するのか」と呼ぶ)日本のリンゴとか、とにかく量が違いますから……(藤田(高)委員「直接競合するのは何か、言っていただきたい」と呼ぶ)バナナはリンゴと、グレープフルーツは日本のハッサクとかナツミカン、これが直接ぶつかりますが、とにかく量から競合するのを申しますと、ぶつかり方が問題にならぬぐらい多い。いま申しました、ものすごく高いところから下げてきました沿革、そういうものが一方にございます。それからグレープフルーツは今後出回り期――ミカン、ナツミカン、ハッサクの出回り期に四割にいたします。そのバランスをどうしてきめたかといいますと、ハッサクならばハッサクをとりまして、そうしてグレープフルーツの内外の価格差をとって、四割が適正なあるべき関税の差であるという計算をいたしましてやりたわけでございまして、バナナとリンゴの気持ちをよけいくんでなにして、ミカンとの関係で大事なグレープフルーツについておろそかにしたということではございません。内外の価格差を比較してこれで適当だというバランスでございます。バナナについてはいま言ったような沿革とか、いろいろなものを考えましてきめた次第でございまして、決して特殊な事情で差をつけたというものではございません。
  150. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、同じ競合する果樹農産物でも、バナナとリンゴの場合と、グレープフルーツとミカンの場合は、だいぶ質が違うと思うのですよ。グレープフルーツとミカンというものはもう昔から兄弟みたいなものですわね。ところがリンゴとバナナというのはやはりだいぶ――いとこ、はとこですか、場合によれば。(笑声)そういうくらい違うのじゃないか。これはやってみなければわからぬということを言われるかもわからぬけれども、この程度関税をかけて自由化をすれば、現在二百五十円なら二百五十円しておるものが百二十五円なり百円なりになるのか。国内の消費がどうなるのかという想定のしかたによっても違うかもしれませんけれども、私は、言うたら兄弟的な性格のグレープフルーツの場合はあまり影響はないだろう、こう思って自由化をやると――私がかつてこれは商工委員をやっておった当時だと思いますが、例のレモンの自由化をやったときに、サンキストレモンの自由化をやってもそう打撃、影響はありませんと、こう国会で答弁された。ところがどうですか、結果的にはとのレモンのなにはもう壊滅的な打撃を受けたじゃないですか。そういう経験があるから私は、これはある意味においては相当慎重な検討もされておるかもわからないけれども、そういう過去の実績から見ると――これはあとで時間があれば指摘したいと思うのですけれども、ミカンの場合は農林省自身が策定した計画を上回って、その需要量上りも生産量のほうがはるかに上回っている。そうしてまたうしろにはどういう条件があるかというと、かれこれ四割から四割五分の未成園が控えておるのですね、まだ成木に達していない。そういう条件の中でこのグレープフルーツの自由化をやると、これからまた一部計画変更をしたって、ミカンの木といえども生きておるわけですからだんだん大きくなりますよ。これはおとなになっていくわけですから。その圧力との関係においてやはり重大な影響が出てくるだろう。さすれば、取引国との関係もあるだろうけれども――これは私は妥協的な意味で言っておるわけですよ。私はグレープフルーツの自由化には反対なんだ、こんなことをやるのは。先ほどから言っているように、ニクソンのきげんとりをするようなことをやることは反対なんだ。しかしかりに季節関税を認めるにしても、バナナを四〇、六〇でいくのに、これほど全国のミカン農家が重大な関心を持っておるこのグレープフルーツの自由化についてそれより安い関税で歯どめをするなんというのは、政治的な圧力でこんなになっているんじゃないですか。あえて言えば、バナナの場合は政治的関税ですよ。関税なんかはもっとやはり適正なそういう需要供給の関係なり、国が音頭とりをして奨励をした農作物なり果樹であれば、果樹園芸に対してもう少し一貫した政策の筋を通した関税政策が出てこないと、これはあなたたちのように、失礼だけれども机の上で計画を立てている者はそれで済むかもわからないけれども、たくさん金を借りて、そうしてミカンをつくっておるようなミカン業者にとっては重大な問題ですよ。これは名ざしをして失礼だけれども、大蔵委員長は私と同じ愛媛ですけれども、委員長のおる南予なんかは、おととしでしたか・二人もミカンのなにで自殺者が出ているのですよ。それほど重大な問題を、私はバナナとの関係だけをいまのところ引き合いに出しておるのだけれども、これは時間の関係で質問点をしぼりますが、せめてこれはバナナと同じぐらいにできないかどうか、これはひとつあとで政務次官の意見も聞かしてもらいたい。それと、重大な影響が起こった場合には、これはガットの緊急措置ですか、それによって輸入制限をするとかやめるとか、あるいは関税についてのそういう特別措置を講じるとか、そういう具体的な対策を講じる用意があるかどうか。これはひとつ、しかと答えてもらいたい。この問題については私は何ぼ時間がかかっても少しやりますから……。
  151. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 ただいま御質問がありましたが、決して政治的なそういう配慮はやっておりません。(春日委員「くさい、くさい」と呼ぶ)それは全く経済的な見地から検討しております。(藤田(高)委員「ベテランがくさいと言うんだから間違いないだろう」と呼ぶ)とんでもない。さっき申しましたように一〇〇%の税率を徐々に下げてきておるわけですが、片一方グレープフルーツは上げるわけです。これを価格差で適正だという税率以上に上げるということは、それは消費者対策から申しましても許されないことだと思います。かつ、私ども率直に申しまして、ナツミカン、ハッサクと、二つ、グレープフルーツとは競合する品質的なものがございますが、ナツミカンよりも三割高のハッサクの価格との価格差をとって四割をきめた次第でございます。それから先ほどミカン、ミカンというお話がございましたが、ミカンにもたくさんございますが、温州ミカン等と競合するオレンジについては自由化はいたしません。そういうことでございまして、やはり適正な価格差でなければ消費者の御納得も得られないのじゃないかと思っております。  かつ、いまお話がありましたが、こういう措置で私はだいじょうぶだと思っておりますけれども、かりに被害が出て総合農政の展開にも非常な支障があるという場合には、ただいまガットの規定に基づきました緊急関税の規定が関税定率法にございます。それを発動いたします。いままでは何さま産業保護でやってきておりますから、そういう発動の機会がありませんでしたが、これからは国際化、自由化時代に入ってまいりますから、あるいはそういう事態も生ずるかもしれません。その場合には機を失せず発動する用意がございます。
  152. 毛利松平

    毛利委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  153. 毛利松平

    毛利委員長 速記を始めて。  質疑を続行します。藤田君。
  154. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 いま私がバナナとグレープフルーツの関税率の問題で質問をしたわけでありますが、先ほど私が指摘したような観点から考えて、いまの局長答弁によりますと、関税定率法の九条の二、緊急関税の条項に沿ったいわゆる緊急措置をとる用意がある、こういう答弁であったと思いますが、この点は非常に大事なところですから、そのことに間違いがないかどうか。そうして、いま用意があると言ったことの中身を少しく具体的に答弁いただくと同時に、時間の合理化をはかるために重ねてお尋ねしておきますが、いわゆるバナナなどの関連において、しかも私が冒頭の質問以来少ししつこくお尋ねしましたように、昨年の国会における倉石農林大臣の答弁とのいきさつから考えて、政府としては自由化の時期あるいは関税実施時期についてはいまのところまだ慎重に検討中、こういうことでありますから・検討中であれば、そういう検討をしなければいけない事情も含めて、バナナと同じ関税率にならないかどうか、この点重ねてお尋ねしたい。ぜひそうしてもらいたいと思うのです。
  155. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 まず第一点でございますが、緊急関税につきましては、関税定率法の九条の二にありますような事態が生じました場合は、これは先ほど申しましたように発動をいたします。  それから実施の時期につきましては、私のほうはとにかく上げるほうでございますから、関税率を上げるのはなるべく避けなければいかぬわけで、これだけじゃございません。とにかく自由化の時期に合わせまして政令で定めることにいたしております。  それから関税率につきましては、適正な関税率が四割ときめられておるわけでございますから、これをバナナが六、四だからすぐにそれにするということは、これはとるべき策ではない、かように考えております。
  156. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 グレープフルーツの季節関税が二〇%、四〇%が適切であるかどうかについては、これはそれぞれの立場によって私は考え方が違うと思うわけであります。そういう点では、私はいまの質問の局面だけとらえていえば、バナナとの対比において考えると言いましたけれども、いわゆるミカンとグレープフルーツが競合する。ミカンの場合は、農林省が策定をした需給計画との見合いにおいても、とにかく需要を上回る生産条件というものが具体的に発生しておるわけですから、そうしてしかもこの未成園が約四十五%も占めておるわけですから、そういう条件の中で考えた場合、これは場合によれば緊急関税措置をとらなければいかぬような事態さえ起こり得るのではないか。そういう背景から考えて私は、この関税率をバナナ並みにする必要があるのではないか、こう言っておるわけで、私の主張すべき根拠というのはむしろいま申し上げたところにあるわけですから、そこに重点を置いて私は再検討をしてもらいたいと思うわけでありますが、その点についてのひとつ見解を聞かしてもらいたい。  次に、これは農林省のほうに聞きたいのでありますが、これは民間の会社でも経理部門と現業製造部門とは、必ずしもその経営方針について意見の一致を見ないような場合もあるように、やはり大蔵省と農林省の間においては意見の違いがあってもやむを得ないのではないかと思うのです。農林省は――もう時間的な関係で詳しい経過は言いませんけれども、これだけミカンを奨励してさておいて、そして私がいま指摘しているような事情があるんだけれども、グレープフルーツの自由化をこの条件によって実施した場合、日本のミカン農家に具体的な影響が起こらないと判断しておるのかどうか。影響が起こったとしてどういう程度影響かどうか。そのあたり、農林省自身が想定をしておる実態をひとつ説明してもらいたい。
  157. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま御指摘の点につきまして、今回のグレープフルーツにつきまして季節関税を設けるに際しましては、大蔵省との間にいろいろな意味で検討を加えまして、その結果、意見の一致したところで今回の税率を出した次第でございます。いわゆるグレープフルーツの自由化によって直ちに温州ミカンに悪影響を及ぼすというふうにはわれわれとして考えていないのでありまして、温州ミカンには温州ミカンのそれなりのやはり経済価値がありまして、これはどちらかといえば、多少推測でありますが、オレンジが重大な強敵になるのではなかろうか、こう思っております。グレープフルーツにつきましては今回、先ほど関税局長からお話がありましたように、ハッサクとかナツミカンとか、いわゆる日本でいえば晩かん類に属するものに、単なる手放しで自由化すれば多少の影響があるということで、この晩かん類の出回り期である十二月から五月までに四〇%の季節関税を設けますと、約九〇%の出回り出荷量のカバーをすることになりますので、おおむね悪影響を防止できるのではなかろうか、こういうことでこの税率を政府部内において意思決定した次第でございます。
  158. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 この問題についてはもうあと一つだけで終わりますが、グレープフルーツの自由化を行なう場合には、昨年の私の質問に対する農林大臣の答弁としては、自由化をする以前の対策として、一つは季節関税の問題、一つはミカンの主産地に対する流通施設としていわゆる貯蔵庫をたくさんつくっていくというような、たとえばそういう施設を充実さしていく。いま一つは、これはまあ本委員会でも論議になったと思いますが、アメリカを中心とする輸出量の増大及びソ連圏を中心とした社会主義圏に対する貿易のワクを新たに開拓をしていく。あえていえばこういう三つの条件を中心に整備した上で自由化問題については考えていきたい、こういう答弁がこの議事録の中にも載っているわけであります。  そこで、いま言った季節関税の問題は先ほどから論議しておるわけでありますが、あと二つのそういった施策については今年度は昨年に比べて、流通手段としてもどういう積極的な対策を講じたか。また輸出の見通しについても、新たに自由化しても、向こうから入ってくるくらいなものは当然こちらからも輸出量を拡大する見通しというものは明確に立っておるんだというようなことについて、政府がいまこの計画をしておる実情を説明してもらいたい。
  159. 荒勝巖

    荒勝政府委員 まず国内の生産対策について申し上げます。これからは自由化も近づいておりますし、また貿易に対して強力な生産対策が必要でありますので、従来からやっております果樹広域主産地形成事業を昨年よりも個所数もふやしましたし、また品種更新事業等もそれぞれことし強化してまいりたい、こういうように思っております。さらに温州ミカンにつきましては、特に四十五年度はカナダのいわゆる東部地区への輸出市場の開拓の事業を仕組みましたが、四十六年におきましてはさらにヨーロッパに市場開拓をいたすということで、実験事業でございますが、約二千三百万円ほどの金額を計上いたしております。それからソ連圏につきましてはまだ十分に、いきなりミカンを輸出するといいましてもいろいろな問題点がございますので、ことしからはソ連市場の開拓を調査するということで、わずかでございますが、向こうへ行きまして市場調査をするということで六十万円見当の全額を計上しております。  さらに温州ミカンの貯蔵庫につきましてもふやしましたし、特に高級雑かん類については単なる去年のような貯蔵庫ではだめですので――だめというのは先礼いたしましたが、それよりも低温貯蔵の必要性があるということで、雑かん類については品質保持のための貯蔵庫の特別事業をことしは新たに設定させていただいた次第でございます。この事業は今後まだ逐次強化してまいりたい、こういうように考えています。
  160. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 グレープフルーツとミカンとの関係については以上で終わりますが、最後に局長から答弁のありましたような施策については積極的にひとつ進めてもらいたい。これを強く要望しておきたいと思います。  そこで次に私は、今回の物価対策としてあげておりますカラーフィルムですね、あるいは乗用車、家庭電気製品、まあたくさんここには出ておるわけでありますが、この物価対策としてどれだけの影響が起こるだろうかということは疑問であります。たとえばいま私が指摘したようなカラーフィルムとか、自動車、あるいは家庭電気製品というようなものは、これは私は物価対策としてやったという理由は非常に薄弱じゃないか。これはなるほど、あえて言えばそういう要素も理屈の上では出てくるかもしれないけれども、私はこの関税問題として見る場合は、これらの問題はやはり国内産業の企業保護的な性格のほうが強いのじゃないかと思うのですけれども、その点についての見解はどうでしょう。これはあとで具体的な材料を提供してさらにお尋ねしたいと思いますが。
  161. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 それは逆じゃないかと思いますが……。いずれにいたしましてもいま御指摘がありましたカラーフィルム、自動車等は、一方におきまして、先日来るるお話し申し上げておりますように、物価対策でもございますし、それからまた自動車にいたしましてもカラーテレビにいたしましても、先日も通産省のほうからお話しいたしましたように、これはアメリカを中心にいたしまして輸出も相当なされておりまして、一方その税率は先進国に比べまして相当高い。これは関税を高くして入ってくるものは保護しておいて、どんどん出ていくことをやっておるじゃないか、こういう非難も出ております。そういうことでもありますから、一方において物価対策ということを考えながら、一方においては輸出環境を整備するという意図でやっておる次第でございます。  実は自動車につきましては昨年税率の引き下げをいたしました。その際に当委員会でも議論がございまして、たとえば小型の二割の税率を一ぺんにケネディラウンド並みには無理だから一七・五にし、その次には一五にして、最後はまあEEC並みの二%程度まで下げるということを考えたらどうか。政務次官のほうからそういう配慮をするとお答えいたしましたが、今回は暫定税率は中間の税率をやめまして、一挙にEECよりも下回る一〇%に下げて、いま申しましたように物価対策、輸出環境整備ということをはかった次第でございます。  それからカラーフィルムにつきましては、これまた四十八年度において、一般用のロールフィルムもそれから商業用のフィルムもともに二割に下げるということを法律に書きまして、その前段としまして、一挙には無理でございますから、四割のものは二六%、三割のものは二三%に下げることに考えたわけでございまして、これは逆でございます。
  162. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 逆というのはどういう意味でか。
  163. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 業者の保護ということではございませんで、いま申しましたような趣旨でやっておるわけでございます。国会の御意見よりもむしろ、自動車のごときは先に進んでいるわけでございます。
  164. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、カラーフィルムの場合、競合するもの、外国から入ってくるフィルムとの関係において考えても、現実的な価格の問題からいけば、たとえば段階的に四〇が二六、三〇が二三、四十八年度から二〇というふうに、こういうふうに段階的なこの措置をとらなくとも、いわゆる二〇であれば二〇に関税を引き下げても、十Aこれは太刀打ちができるのじゃないかと思うのです。その一つのなにとして、富士と小西六の関係からいけば、この二つで市場のほとんどを占有しておるのじゃないか。そういう具体的な条件の中からいけば、局長が盛んに何か逆じゃないか、逆じゃないかと言うのだけれども、さっきのグレープフルーツにこだわるわけじゃないけれども、グレープフルーツなんかバナナよりも思い切って安い関税にして、こういう企業家関係については、十分競争力があると見なされるものについては段階的にやっていくのは、それはなるほど一面では物価対策の条件もあるかもわからないけれども、やはり企業保護的な性格がこういう段階的な関税率の設定の中に私はあらわれているのじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
  165. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 本質的に違うのでございまして、グレープフルーツのほうは、一時期でございますけれども二割も上げるわけです。これは下げるわけですね。二年後には二割に下げることを法律に書いております。下げることを目標にしておりますが、やはり海外の有力な企業、コダックをとってみますと、世界の七割以上の市場を制覇しております。こういうことでございますから、日本のカラーフィルムも相当強くなってはおりますけれども、カラーフィルムも世界的には後発でございますから、もう少し合理化をして競争力をつけていく必要がある。一挙に二割に持ってまいるのは若干問題ではなかろうかということで、目標は与えつつも中間税率を設けた次第でございます。決していま申されましたような業者の保護をはかるとかということを考えてやっておるわけではございません。御理解いただきたいと思います。
  166. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 これは私の限られた資料ですけれども、たとえばコダックの場合、現在の販売価格が五百四十円くらいだ。今度は関税の引き下げでどの程度下がるのか、これはひとつ教えてもらいたいと思うのですが、私のある資料によれば七十円くらいは値下げなるのではないか。そうするとこのフジやあるいはさくらの関係からいって、現在四百十円か二十円か知りませんが、その程度の差はかなりは縮まってくる。しかし、コダックの場合は現像代がこの二倍以上だ、こういうような全体的な条件からいけば、いま閣税局長が言われるような、そういう理由というのはどうも見当たらないと思うのですね。理屈とこう薬はどこでもつくというか、どうも政府委員の答弁を聞いておると、こういうふうに段階的にやるものはむしろグレープフルーツの場合なんかはやるべきであって、こういうふうにはっきり、ある意味では具体的な比較対照になり得るものについては非常に何というか、過保護とは言いませんけれども、産業保護というか企業保護の性格が強い関税措置のように思えてならないわけであります。そういう点少しく、いま私が指摘したような数字的な比較、そういうものもあわせてひとつ答弁してもらいたい。
  167. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 たとえば、私どもが一般に使います二十枚どりのロールフィルムをとりますと、私どもが見当をつけられますのは輸入価格でございますが、関税率がいまのように下がりますと、四割が二割六分になりますと、約一割、三十円程度下がると考えております。これは輸入価格でございますから、さらに小売りの段階にいきますとそれ以上下がってまいるのではないか。自由化を一月一日からやりましたので、自由化効果も響いてまいります。いままで入れておりませんから。そうしますと、五百円あるいは五百円以下に下がるのじゃないかというふうに考えております。
  168. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 この点についてはひとつ問題点の指摘にとどめます。  なお家庭電気製品の問題ですが、これも今度七・五%まで下げるということでありますが、私は現在テレビあるいはラジオ、電気洗たく機といったような、そういう家庭の耐久消費財、電気製品の全体的な普及率から見て、この種のものについても、カラーテレビの二重価格の問題ではありませんが、国際的な競争力の面についても心配はない、そういうものについては、この税率の関係ですね、これは諸外国との、いわばEECとかアメリカあるいはイギリスあたりとの比較において、この種の関税率というのはどうなのか。アメリカ、EECあるいはイギリス、そういった諸国との比較において、この関税率が適正な税率であるかどうか。
  169. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 大体アメリカあたりを見当にいたしまして、先ほどお話がありましたようなカラーテレビ、ラジオ受信機、その他の家電関係の機器につきましては七・五%まで下げた次第でございます。これは九%から二一%までの開きのある現行税率でございますが、下げた次第でございまして、おおむねバランスがとれる。むしろEECとかイギリスに比べますとずっと安くなったと思っております。  なお、先ほど来お話がありましたいろいろな物品につきましても、今後また国内産業合理化、それから競争力がさらにつきました場合にはもっと下げたいという意図は持っておりますことをこの際申し上げておきたいと思います。
  170. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 参考までに、その電気製品関係のEECその他の率を言ってください。
  171. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 おもなものについて申し上げますと、カラーテレビ――これは来年の一年からのケネディラウンドの最終税率で申します。だから現行よりももっと下がっておるところで申します。米国が五%でございます。EECが一四%、イギリスが一五%でございます。それから白黒テレビが、アメリカは同じく、EECその他も全部いま申しました税率であります。五、一四、一五です。それから電気冷蔵庫で申し上げますと、これはアメリカが五%、それからEECは、このほうは日本より低くなっておりますが、五%、イギリスは七・五で日本と同じ。それから蓄音機が、アメリカが五・五、EECが九・五、イギリスが一〇。これはケネディラウンドで下がったところで申し上げました。現行は若干……。
  172. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 この点についてはこれまた、私は先ほど指摘しましたように、物価対策のワクの中だけで今回の関税ケネディラウンドの線にまで繰り上げ実施をするということ、極端にいえば、あたかも一般の国民に対してはここまで政府物価対策としてこうやっているのだ、物価対策オンリーでやっているのだという、そういう主張というものは当たらないのじゃないか。なるほどそういった面の政策上のねらいもあることは認めます。けさ方の参考人意見にもありましたが、それが結果として末端物価面にどうはね返ってくるかということは別ですけれども、政策的意図としてはそういうものもあるでしょう。しかし私はやはり、いまの説明を聞きましても、依然として企業保護的な性格も強いということだけ、これは見解の相違でしょうけれども、指摘をしておきたいと思います。  私の持ち時間もまいりましたから、最後に結論的に申し上げますが、特恵問題です。特恵問題については多くの委員から指摘をされておりますし、けさ方来の参考人意見も拝聴したのですが、日本国の国会の論議として、特恵問題と中国産品との関係の問題はもう少し明確にしておかないと、これは私の杞憂であればいいんですけれども、中国をいわゆる経済開発途上国、いわば特恵国扱いをしなければいけないような国だという目方を私ども自体がすることは、独立国家として発展をしていっておるいまの中国に対してはいささか失礼にあたるのじゃないか。限られた私の知っておる事情ですけれども、中国は自力更生で、号して国際貿易の関係では平等互恵でやるんだということで、いわゆる特恵国扱い的な条件でたとへばわが国と貿易をしたいとかするとか、そういったことは中国の側からは一つも出てないと思うのですね。その点では、中国との貿易関係については文字どおり対等の原則、平等の原則で、いわゆる平和共存、政経不可分の立場に立って中国としてはわが国と貿易をする、あるいは国交の回復をはかるというのが基本であって、われわれが何だか特恵国扱いをしなければいかぬのじゃないかという認識があるとすればそれは誤りじゃないか。この点は政府もそういう考え方は持っていないと思いますが、基本的な考え方としてひとつ見解を承りたい。これが一つ。  いま一つは、現在取引をしておる中国産品との問題は、台湾やあるいは韓国との生糸をはじめとしてまだ差別扱いをしておる問題がありますから、韓国や台湾に対して特恵国扱いをして、そういう特別な条件の中で取引をすることが、結果として中国との貿易交流の中に差別的な条件が生まれてくるじゃないか。私はこれは別の問題として、そういう差別を撤廃していくべきじゃないかと思うわけでありますが、その点についての見解。  最後にもう一つの観点は、先ほどの答弁を聞いておりますと――時間があればそれこそ生糸の問題でもちょっと煮詰めていきたいのですけれども、政府の答弁は率直に言って私はなってないと思うのです。中国のそういう差別関税の問題については前向きで、なくしていくという次官の答弁も先ほどありましたが、いま日中関係の問題は非常にむずかしくあるとはいえ、これはお互い民族的な課題として国交の回復は実現しなければいかぬ。そういう具体的な、ある意味では政治課題としてあがってきておる段階においては、今度の改正によって残されておる差別関税を、政府としては少なくともいつごろを目標に努力していくのだということで、この審議にあたって政府の決意なりあるいは努力目標ぐらいはひとつ明確にして、差別関税というものをなくしていくべきじゃないか、こう思いますが、以上三点についてお答えいただきたい。
  173. 中川一郎

    中川政府委員 中国特恵関税の対象国とするかどうかという問題は私は非常に微妙だと思うのです。中国をどうするんだという御質問がありましたが、何といっても開発途上国というのは前のことばで言えば後進国という、どちらかというと先進国に対比して恵まれておらない国という範疇に入るわけでございます。したがって、もしかりに日本が、手をあげればもちろんいいのですけれども、あげない場合に中国に対して特恵国扱いをするということになりますれば、日本みずからが、先進国に対比した後進国というレッテルを中国に張る、まことに無礼な話でございます。そういうことは無礼なことになるだろう。したがって、国情がどうなっておるか私たちもつまびらかでありませんが、中国自身がなりふりかまわずというか、ひとつ特恵国扱いにしてほしいということがありました場合は、向こうが自主的にそういうふうにお考えになるのであれば、これは受けて立とうということであります。受けて立とうというのは、特恵供与の対象国にしてほしいという何らかの意思表示があれば、日本としてもこれが相談に乗る用意があるということで、これはいま答弁したとおりであります。  そこで、藤田委員御指摘のように、そういう形とは別に、特恵国という考えではなくて、中国日本との間において互恵の精神で貿易をやっていこうという、別の角度からそういう扱いをしていくべきではないかという点については、これは今後、日本中国との政治的な経済的ないろいろな交渉過程において別途考慮せらるべきものであって、いまにわかに、それがよかろうとか、するとかいう結論ではないのではないかというふうに思います。別の問題である。特恵のこの関係とは切り離して考えるべきことではないか。  もう一つ、今後特恵を供与することによって台湾、韓国の生糸がさらによくなるではないか、格差がまたできるのではないかという御指摘でございましたが、この点については、特恵品目の中に生糸とか大豆等は入っておりませんので、そういった格差は出てこないということになろうかと存じます。  それから最後の御質問のケネディラウンド格差解消ということについては、今後ほんとに前向きでやってまいります。これは過去の実績を見ていただきましても、すでに四百二十四品目、ことしも、昨年の国会の審議を通じましていろいろ御指摘のあった万年筆等について格差解消をはかっております。今後についても、これは三年後やる、二年後やる、来年やるというわけにはまいりませんが、格差解消を阻害している要因は、決して意地悪とかいうようなことではなくて、国内産業、特に生糸については繭生産農家の実態というものを考えてやっておるわけでございまして、今後これの構造改善その他を通じて、中国から入ってもいいというような状況ができました段階においては解消をはかっていくということでありまして、これが二年かかるか三年かかるか、お約束はできませんが、ほんとに前向きに、そういう方向でやっていくということだけははっきり申し上げますし、この点については過去、政府がとってきた格差解消の実績を見ていただいても御理解いただけるのではないかと存じます。
  174. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私の質問の中に一部、特恵問題とケネディラウンドの問題でちょっと混線しておったところもありましたので、その点は整理して再質問をいたしますが、前段の特恵扱いの問題は、相手国が特恵扱いをしてくれといういわば立候補をしてくるわけですから、これは私の推測でもありますが、中国はそういったことはやらないだろう。中国はやはり自力更生、先ほどから言っておりますように、諸外国との交易関係においては平等互恵の立場をとっておるから、そういう立場からは、中国が、悪い表現ですけれども、頭を下げてきたらとかあるいはいま特恵扱いをするような形の、そういうものの見方は対中国との関係においてはやらないほうがいいだろうと思うのです、われわれ日本国としては。そういう基本的な考え方でして、いま次官が言われたように、向こうからそういうことの申し出があれば、そういう考え方があればどうする、そういう発想は対中国に関する限りはなくすべきじゃないかというのが一つです。  それから最後の、ケネディラウンドとの格差解消の問題ですね。これは時間がありませんから抽象的なことでとどめますが、次官の答弁によると、いまやその格差解消については二年先とか三年先とかいうわけにはいかぬ、こういうのですけれども、これは生糸の問題じゃないですけれども、格差解消の問題については中国との間にまだ幾つかの関税の格差があるわけですから、これはやはりケネディラウンドの線でいわゆる平等な関係を結んでいくんだという、この時期設定については、政府は一年以内にやるとかそういう努力目標を設定すべきではないか、そういう用意があるかどうか、この二点をあえてお尋ねして、私の質問を終わりたいと思います。
  175. 中川一郎

    中川政府委員 第一番目の特恵供与国になるかどうかの問題については、日本側から中国に向かって、手をあげたらやってあげますよというような積極的なことは無礼なことだと思います。ただ、先日来の質問で中国にはやらぬのかというお話がございましたから、まあお申し出があれば用意がありますと答えたことであって、政府がみずから中国に向かって、手をあげたらやってやりますよということはあってはならないことだというふうに思います。  それから第二番目のKR格差解消、これについて目標を設定せよ、一年、三年、五年、何年になるか知らないが、目標を設定せよという御指摘もわかりますけれども、これは先ほどの農林大臣のグレープフルーツじゃございませんけれども、何年といいますとまた実体がそこに伴わない場合、そのことによって日本の繭生産農家に迷惑がかかるようなことがあってはなりませんので、気持ちとしては一日でも早く格差解消に全力を傾けるということでひとつ御了承をいただきたいと存じます。
  176. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 最後の答弁についてはきわめて不満足ですけれども、私の質問をこれで終わります。
  177. 毛利松平

  178. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 関税定率法等の一部を改正する法律案について御質問をいたしますが、最初に、今度の措置ケネディラウンドの繰り上げ、一般的な関税率改正、さらに物価対策、公害対策、こういうような関税機能をきわめて多角的に、あるいはまた自由化対策の関税措置、特恵、しかも日本の歴史始まって以来の特恵という大きな制度を導入した、こういうことになっておるわけであります。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 その関税引き下げの減税分が三百六十一億だ、こういわれておるわけですが、これをいま申し上げたような一般的な関税改正でどのくらい、ケネディラウンドの繰り上げでどのくらい、物価対策でどのくらいという、項目別に整理して減税額を一応お示しいただきたいと思います。
  179. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 申し上げます。  ケネディラウンドの繰り上げで約百七十億。それから特恵供与でございます。これは政令で定める日から実施されることになっておりますが、一応七月実施と仮定いたしまして計算いたしますと三十一億であります。それから公害対策で三十五億円。それから物価対策、これは減税的な制度改正も出ておりますが、百二十四億。締めて約三百六十一億でございます。
  180. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そこで物価対策として百二十四億である、こういうわけでありますが、経済企画庁にちょっとお伺いをいたしますけれども、物価問題がやかましく論ぜられてから、物価安定政策会議あるいは推進会議その他で、しばしば関税政策輸入政策を活用せよ、こういう答申あるいは提案がなされてきたわけで、これが明確に物価対策という形で今度かなり大幅に取り入れられた。そういう意味では画期的なことのようであります。輸入政策によって、そして今度の物価対策ということによって、関税引き下げを行なうことで、政府は七一年の経済見通しで消費者物価の上昇率は五・五%だ、こういう見通しをしておるわけだけれども、これでそれがおさまるかどうかは別問題といたしまして、どのくらいこれが五・五%の中に織り込まれておったか、これは織り込まれていないものであるかどうか。この点を明らかにしていただきたいことと、このことによって消費者物価指数をどのくらい引き下げられるか。これはもちろん百二十一億という数字ではなしに、それから波及する効果、そういうようなものを含めて、物価上昇を妨げる要因として指数的にどのくらいの評価がなされるか、この点の試算があったらここではっきりお示しをいただきたいと思います。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕
  181. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 御指摘のとおり、物価政策として輸入政策というのをわれわれは非常に重視をいたしております。そこで、四十六年度の予算に関連いたしましても、本日御審議をいただいております関税の引き下げ問題、そのほか直接予算に関係ないものといたしまして自由化促進、これも御承知のようにスケジュールがきまっております。それからさらに、自由化が行なわれない品目につきましても輸入の割り当て額を増額してもらうということで、大体そういうような政策をそれぞれ推進いたしまして、できるだけ物価の安定のほうに寄与していただきたいということで、われわれもそれぞれにお願いをいたしておるわけであります。  そこで、いま御指摘の関税の引き下げに伴う物価への影響の問題でございますが、御承知のとおり、四十六年度におきまして消費者物価の上昇率五・五%という見通しを出しておりますが、これは個別の品目を積み上げていくものではございません。むしろ成長率とかあるいは各種の経済指標との相関関係を見ながら、しかも政府として物価政策として取り組みます、たとえば公共料金の抑制の問題でありますとか輸入の問題でありますとか、そういったもののそれぞれごとのある程度効果ということを頭に置きまして、全体として五・五%以内に押えたいという、いわば若干政策目標としての数字を出しておるわけでございます。したがいまして、本日問題になっておりますこの関税の引き下げによる消費者物価への影響ということを数字的にお示しすることはできないわけでございますけれども、先ほどからの御質問にもいろいろ出ておりましたように、バナナでありますとかあるいは肉類でありますとか、それぞれ生活にかなり関係のある重要なものについて全体で百二十億程度の試算が行なわれるわけでございまして、これが、流通機構その他でいろいろの影響があると思いますけれども、そのまま消費者物価の引き下げにはね返ってくるということになりますればそれだけの影響があるわけでございますし、またこういう形で関税が引き下げられることによりまして輸入がふえて、それによりましていろいろ国内の産地との競争問題というのが出てくると思います。そういうことによる二次的な効果もある。それやこれや入れまして、こういった形での影響ということもわれわれとしては非常に重要な一つの問題である、こういうふうに考えておる次第でございます。
  182. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そうしますと、消費者物価指数にどのくらいの寄与をするかという寄与率、この施策によって、関税引き下げによってどのくらいの影響があるかということは、少なくとも数字の上ではわからない、こういうことでございますね。
  183. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 ただいま申しましたような形でございますから、数字的に幾らということを言うことは非常に困難でございます。ただ、大ざっぱな目安ということで申し上げておきますと、四十六年度における個人消費支出というものは約四十兆円でございますから、そういった大きさのものに対してこういうような政策が響いていく、こういうふうに大きく見ればわれわれは見ております。これは単に税率の引き下げによる現象だけではなくて、ただいま申しました競争による国内生産物等に対する影響ということも、これはいいほうに働いていけばそれだけまた効果があるわけでございますから、そういったことをできるだけ今後実行においてやっていきたいと思っておるわけであります。
  184. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 一たんいまの問題の質問を中断します。  通産大臣においでをいただきまして、非常に忙しい商工委員会での採決を予定しておられる間の時間だそうでありますから、通産大臣に対する質問だけまず申し上げたいと思うのです。  OPECとメジャーの交渉によって一バーレル当たり三十五セントの値上げがテヘラン会談で妥結をした、こういうことで、その後日本に対して、メジャー側から日本の精製業者、こういう人たちに対してそのままほぼストレートに原油の値上げ交渉があった。これはまだ解決はしてない、また妥結もしてないわけです。ところが、もういち早く日本国内市場では、四月一日からガソリンをキロリットル当たり二千円上げようというような動きが出ておる、あるいはそれに追随して灯油なども上がろうという情勢にあるということが大きく新聞に報道されて、国民は四月一日からは、若干灯油などの面では季節的に消費がそう旺盛な時期ではないけれども、これはやはり国民生活にとってたいへんな脅威であるということになっておるわけです。しかも、いま私どもここで関税定率法審議をしているわけでありますが、今回は、原油輸入にあたっても、重油脱硫についていままで三百円の減税を五百円に上げよう、そうしますとほとんど無税で入るというような形に実際の姿はなるわけです。そういうことも考うたり、あるいはまた生活関連物資ということで灯油を二千二十円から千五百二十円に下げるということも、物価対策としても関税の面で今度はかなり画期的にそういうものを取り上げている。こういうような状態にあるにもかかわらず、日本の精製業者あるいはまた卸、小売りというような流通機構の中でそういうことが出ているということに対しては、私ども何としても納得がいかぬわけです。新聞の報ずるところによると、通産大臣はこの国内の値上げは認めないという強い態度をとっておられるということで、私ども敬意を表しているわけなんですが、しかし最近の新聞では、もうすでに四月一日から上げるのだということを、元売り、卸というようなところがどんどん下部に流して、既成事実をつくっているというような状態がある。こういう問題に対しても、大臣としてどういう基本的な立場で、今後この値上げを阻止するためにどういう有効な手を打たれるお考えがあるのか。これを阻止する決意は、私どもは新聞では承知しているのでありますが、その決意と対策というものについてひとつお聞きをいたしたいと思います。
  185. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 脱硫並びに低硫黄原油輸入につきまして、関税定率法上いろいろ特例を御審議願っておりますことを心からありがたく存じております。  次に、当面の問題でございますが、いまガソリンスタンドの値上げ云々が報道され、またうわさされております部分には二つの部分がございまして、第一の部分は、昨年の十一月に十セント近い値上げがございましたわけですが、それがいまごろスタンドに多少あらわれているという部分が一つございます。それから、最近問題になりました OPECとメジャーとの交渉は一応二十八セントといわれているものでございますけれども、これにつきましては、御指摘のように、わが国の精製業界がそれを黙って受ける手はないのではないかと私ども申しておりまして、交渉は継続いたしておるわけでございます。したがって、その幅というものもまだきまったわけではございませんし、かりにある程度のものを覚悟しなければならぬという状況になったといたしましても、それをガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油等々にどのようにして開いていくかということはまだこれからの問題でございますから、いま、今回のことがスタンドで四月から値上げというようなことになってくるのは、これは理の通らないことでございまして、おそらく精製業者の中には、元売りとして特約店に対して大体の大勢を話して、どうしようかというようなことの相談をかけておるといった程度の向きはあろうかと思いますけれども、これが現実に四月からこうなりますといったような大きな幅を示すということになれば、それはまことに不適当なことでありまして、私ども適切な指導をしてまいらなければならないと考えております。
  186. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 通産大臣の気持ちはよくわかりました。しかし、はたして四月以降末端価格が、石油なりガソリンなりナフサなりあるいは重油なり、こういったようなものが上がらないで済むと私どもは受け取ってよろしいのか。いまの大臣の気持ちというものは私どもそのとおりであろうと思うのですが、そのとおりになるように必ず行政指導なり監督なり、そういうような形を通じて実現される-値上げが実現じゃなくて値上げを阻止することが可能である、こういうことについて私どもそのように受け取っていいのか。大臣はそう答弁されたけれども、やはり四月には上がってしまったではないか、こういうことになるのか。そこについてこれからどういう具体的な手を打たれるのか、その点をお聞かせいただいておきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  187. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今回の値上げをまともに、仮定の問題として、受けるといたしますと、一年間の国民経済負担はおそらく二千四百億円程度になろうかと思われますから、したがって、そういう負担についてガソリンだけがそれを免れるということは、事実問題としてなかなか楽観はできないと私は思います。もとより、どれだけをかぶるかということは、交渉でありますから、いま二千四百億円全部かぶるという必要は毛頭ございませんけれども、全部これをかぶることも、ゼロで済むということもまた、可能性としては非常に少ないと考えなければなりません。したがって、それらのものを製品の間にどの程度に開くか、分配するかは別といたしまして、ある程度のことは実は考えなければならぬであろうと思いますけれども、しかし、そのことをいま政府並びに消費者があきらめてしまうというのは、値上げの幅をわれわれとしては幾らかでも防いでいきたいという努力、それと逆行いたしますから、いまとしては、ガソリンスタンドも相当現実には乱設をいたしております、そうしてガソリンの値段もところによって違うといういわゆるバイヤースマーケットの現状でございますから、そういうことも考えながら、安易にこういうことをわれわれは受け入れることはない、こういうことを私としては申し上げておるわけでございます。
  188. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 先ほどの質問に戻りますが、けさ私どもはこの関税定率法の問題で三人の参考人を呼んで、いろいろお伺いをいたしたわけであります。特に、関税率審議会会長の原安三郎さんにいたしましても、また岡教授にしましても、物価対策ということに非常に重点が置かれている今度の関税定率法改正であるということを、異口同音に申されたわけです。そこで、せっかく物価対策面に対するこういう意欲的な関税機能の発揮というものが今回とられたわけだけれども、それが確実に末端消費者価格に反映されていくということがきわめて望ましい。しかしながら、なかなかこれもむずかしい面もある。特にこの委員会でも何人かの委員の質問において、いわゆる流通機構、中間マージンにそれが吸収されてしまって、末端消費者価格にはちっとも影響が及ばない、こういうようなことになるのではないかということが一番心配されるわけであります。そこで、参考人の方たちも、やはり関税でこれだけの措置をしたということが、末端消費者価格にストレートに反映されるような仕組みというものを考えていかなければならぬということが意見でも述べられておるし、私もそうであろうと思うわけなんですが、そこで監視体制というものを――安い関税によって輸入業者が利益を受ける、その利益が国民への還元になるように、三十八品目あるし、そのほかたくさん引き下げた分は――ケネディラウンドの問題にしてもあるいはその他の公害の問題にしても、そういうものそれぞれ政策目的はあるにしても、引き下げそのものがやはり一つの物価の値下げ効果を実は持っているものだと思うのです。そういうものを考えて、一つ一つの主たる物品について業者の状況というものを、製品価格あるいは輸入品そのものの販売価格等に、関税下げ分をどういうように価格引き下げに実現していくかということを十分これはトレースして、追跡調査なり何なりということをしてでもやはりやってもらわなければ、おそらくわれわれが危惧するような流通機構の中にこの関税引き下げ分がみな利益となって吸収されてしまって、ちっとも物価引き下げ効果は発揮しないという状態になるのではないかと思うのですが、企画庁は、この関税引き下げ効果物価引き下げ効果に直接結びつけていくような、具体的なそういう問題についていかなる対策をお考えであるか。このことがやはり非常に大事なことだと思うのです。その点についてお考え、構想があったらお聞かせをいただきたい。
  189. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 確かに御指摘のように、輸入にかかわるものにつきまして、関税引き下げとかあるいはこういう自由化とかいうような措置がとられましても、なかなか思うように末端価格影響が出てこないという場合がございます。昨年度でもジュースの問題であるとか、あるいは最近ではウイスキーなども問題になっておりますが、こういったような形で問題になるものもあります。私どもで若干調べてみたところによりましても、なかなかそれぞれ事情が違っておりまして、流通機構そのものも非常に複雑になっております。こういう状況でございますから、ともかく今回輸入自由化なりあるいは割り当ての増加なり関税の引き下げというようなことが行なわれるにつきまして、輸入にかかわるものについての流通の問題、特に価格について一種の障壁があるような問題、こういうものについて少し突っ込んで取り組む必要がある、こういうことで昨年以来感じておりまして、私どもの中でもいま若干調査をやっておりますが、ものによりましては民間の調査期関も使いましてそういったものの調査をやりたいということで現在実施中でございます。来月ぐらいには中間的な結果を得たいと思っております。  一方、この関税の問題につきましては、私どものほうからも大蔵省に特にお願いをいたしまして、かなりこれは認めていただいたわけでございますので、この引き下げが実際に行なわれることになりました際に、この効果が十分出ないということでは困りますから、こういった具体的な問題につきまして、法案の進行状況等もございましょうが、なるべく早い機会に物価担当官会議を開きまして、それぞれ各省によって所管する物資でございますから、いろいろの行政指導なり施策を講じていただいてその効果が浸透するようにしていただく、こういうことをお願いしよう、こういうことをいま考えておるわけでございます。たとえば小型自動車等につきましては、昨年関税率の引き下げが行なわれた際に通産省の行政指導がありまして、かなり価格が低下したというような場合もございますので、やり方によってはかなりの効果を期待できるのではないかと思いますから、ただいま申しましたようなことで各省の方々にも知恵を出していただきまして、そうしてその効果を十分に発揮していくようにつとめてまいりたいと思っております。
  190. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 ぜひひとつ、経済企画庁としても追跡調査をされるということをしっかりやってもらいたいと思うのです。  それと同時に、これは大蔵省も関税定率法の主管官庁として、物価対策でこれだけのものを受け入れて関税引き下げをやるわけでありますから、これは大蔵省の所管で国税庁の関係等も、一部の輸入業者のマージンがふえたということだけになっては相すまぬわけであるから、そういうものについて物価値下げをやってないというような場合には、そういうところに対して、物価対策としての関税率引き下げの恩恵に浴した業者というようなものに対しては、最近よく戸押し調査ということをやられておるようでありますが、特にこれはおかしいぞというようなところにはべたに調査をする、そういうようなことなども税の面からもやって、中間でぬくぬくと関税引き下げのメリットを横取りしてしまうというようなことは許さぬというかまえを、やはり一貫して、大蔵省自身としても関係の向きにも連絡をしてやっていく必要があろうと思うわけですが、そういう点での配慮をなさるおつもりがあるかどうか、この点ひとつ次官からお答えをいただきたい。
  191. 中川一郎

    中川政府委員 昨日来その点が非常に問題になっております。せっかく物価対策上やった措置が、業者あるいは流通機構で吸収されてしまったのでは意味をなさないわけでございますので、これが物価に直接影響が出ますように指導監督、あるいは企画庁とも相談をいたしまして、実効のあがる方法を十分検討し、最善の努力を払いたい、このように考えております。
  192. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 物価関税引き下げの問題はそのくらいにいたしまして、次に、KRの一括繰り上げ実施の問題と関連いたしまして対中国差別の問題、これはもう何人かの委員が取り上げられた問題でありますが、その中で、私どもどうしてもまだ納得できない問題は、たとえば生糸あるいは絹織物の問題が代表的にあるわけでございますが、いままでの各委員の質問に対して、どうもきわめてあいまいな見通しで、何か感情的にというか、あるいはその裏に大きな政治の背景があることかもしれませんけれども、納得のできない答弁で終始しておるわけでありまして、非常に残念なんです。「養蚕業の現状と見通し」を農林省のほうからいただいたわけでありますが、これからかなり努力をいたしまして、大体五十二年あたりで国内の生糸生産量は五十二万五千俵ぐらいだろう、こういうようにいわれておるわけでありますが、現状、昭和四十五年現在で三十四万一千俵ぐらいの生産量である、こういう状況の中で、今日米の生産調整転換というようなことからいってかなり期待が持てるんだというようなことでありますが、養蚕業はやはり非常に労働集約的な産業であるというような状態で、今日の非常な労働力不足は農村をもおおっておるわけでありまして、こういう生産目標というようなものがはたして達成されるのかどうか。この点について、まず農林省の、確固たる見通しがあるのか、希望的な数字であるのか、この点について説明をしていただきたいと思います。
  193. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま御指摘になりましたように、われわれといたしましては、将来、いわゆる五十二年の長期見通しにつきましては、国内生産量を五十二万五千俵というふうに置きまして、これに向かってただいま努力いたしている次第でございます。それにつきましては、今回農林省といたしまして、約五十五万ヘクタール近い水田面積が過剰になってまいりましたので、その部分を含めまして、われわれといたしましては、水田からのこういう畑作物への転換、特に桑園につきましては、国内需要も約五十数万俵ございますので、なお一そう努力してまいりたいということで、ことしの予算でも特に、従来からのいわゆる旧産地の養蚕地帯についてはある程度限界が来ておりますので、新興養蚕団地育成事業の予算等を組みまして、いままで養蚕があまり入っていなかった地帯に、今後五年間の間に急速に養蚕を導入していったらどうかということでわれわれとしましては努力してまいりたい。したがいまして、面積といたしましては、将来、五十二年の面積を約二十万ヘクタールと見込みまして、現在の面積は約十六万三千ヘクタールでございますから三万七千ヘクタールの面積増加を見込み、このうち水田からの転換は約半分弱の一万五千ヘクタールを見込み、かつ反収につきましても、現在の繭の生産量をもっとふやして、今後こういった面で努力してまいりたいというふうに思っております。
  194. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この見通しの問題については、これをめぐって議論していますと切りがありませんので……。この数字は、桑園面積も三万七千ヘクタールふやすというお話を伺っておりますが、なるほど桑をつくろうと思えばそれはできないことはない。しかし、その桑をえさにして養蚕をやり、繭の生産をあげていくということは、なかなかいろいろむずかしい条件がやはりあるだろうと思うのです。もはや古い産地をふやすということはむずかしい、そういう状況も一つ。これからの問題についても団地、大型規模、スケールメリットを非常に取り入れたというようなことにいたしましても、これはかなり労働集約的な産業ですから、かなりむずかしい面があると見なければならない。そのことだけ指摘して次に移りたいと思うのですが、今日国内の生産と需要の関係、そして輸入を昭和四十五年度、これは若干見通しも入ると思いますが、それを加えて需給状況、輸入状況、この数字をお示しいただきたいと思います。
  195. 荒勝巖

    荒勝政府委員 四十五年の暦年でございますが、昨年一年間の結果からいたしますと、繭の生産数量が約十一万二千トンございまして、それから生糸の生産量が三十四万二千俵、それから輸入数量が、昨年は非常に国内の旺盛な需要がございまして、ほとんど世界じゅうの生糸生産国から輸入が行なわれまして約六万六千俵、そのほか一万五千俵ほどの絹織物の輸出がございまして、純内需といたしまして三十九万二千俵、四十万俵近い数字になっております。
  196. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 四十五年度の輸入量が六万五千九百七十八俵だということになっておるわけですが、中国と韓国その他諸国、これからどういうように輸入されておりますか。
  197. 荒勝巖

    荒勝政府委員 四十五年の暦年の輸入量といたしましては、数字を申し上げますと、韓国からの輸入量が三万一千九百八十俵でございます。中国からの輸入量が二万二千五百八俵、それからイタリアからの輸入量は四千二百五十九俵、北朝鮮から二千五百九十五俵、その他四千六百三十六俵でございまして、合計六万五千九百七十八俵というのが私たち数字でございます。
  198. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 これからも日本の生糸の需要が漸増をしてまいる見通しであることは間違いないわけであります。そういうような中で、中国と韓国との間に関税差別が、今日一五%と七・五%という形でついておるわけでありますが、そのほんとうの理由は、農林省当局としては、こういう関税差別ケネディラウンドの段階において生糸についてつけなければならない理由はどういうことでありますか。私どもはこの輸入数量を見ましても、韓国のほうが三万一千俵あるいは三万五千、大体三万俵を最近では絶えずこえているというようなことになっておる。中国の場合は二万二千五百俵だ。こういうようなことで、輸入量の多いほうが安い半分の税率の適用を受け、片方が高い一五%の適用を受けるということはどうしても納得がいかない。それで、なぜそういうような差別をつけなければならぬのか、この点についてのお考えはどういうものでございますか。
  199. 荒勝巖

    荒勝政府委員 私たちといたしまして、中国の生糸の生産量につきましては、これは推定でございますが、約十七万俵の生糸があるんではなかろうか。これは中国研究所等に委嘱して調べた数字でございますが、国交がない関係もありまして、中国のほんとうの意味での生糸の潜在生産量というものが十分につかめないのでございますが、これでいきますと、中国は、先ほど申し上げましたように日本が約三十五万俵でございまて、日本に次ぐ生糸では大国である。韓国に比べますと格段の供給量があるというふうにわれわれは理解しておる次第でございます。しかも韓国につきましては、相当大きな計画はお持ちのようでございますが、われわれの見たところでは、実際の達成率等から判断いたしますと、どんなに大量に生糸を生産されても七万俵くらいが限界ではなかろうかということで、韓国の輸出量についてはまあおおむね限界があると見ておりますが、中国につきましては、どこまで潜在供給力があるのか十分につかめてないというのが問題の一点でございます。しかも最近になりまして中国生糸の糸格が――昨年までは糸格が、日本側から見ますと相当品質が悪くて、日本輸入されましても国内のような高級な着物用の織物には向かないということで、多少安心しておった次第でございますが、昨年一年間で中国の生糸の糸格が非常にりっぱになってきたということに重大な関心を持たざるを得ない。しかも値段につきましても、国際相場とは多少無関係に、常にある程度輸出しやすい価格といいますか、日本側から見ますと輸入価格を常に下げて、国際競争力が非常に強いというふうに理解しておることと、基本的には、先ほども多少申し上げましたが、ただいま農林省としましては総合農政の展開といいますか、米生産から養蚕とか果樹とか、そういったいろいろな園芸作目等への転換をはかっておる最中でございまして、こういう中からわれわれは新産地を育成していきたいということで、ただいまそのスタートの第一年目に立った現在において、さらに輸入条件を緩和するということはわれわれとしてはきわめて困難だ、こういうふうに理解しておる次第でございます。
  200. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いまの答弁は、いろいろ言われたけれども納得できないのであって、なるほど中国はあれだけの大国ですから、供給力、生産力において大きなものがあるだろうということでありますが、そういう問題については、中国が十七万俵生産する、それを全部日本に持ってくるというわけのものでもないことなんだし、しかも、関税差別しようがしまいが、そういうものとは関係なしに、中国としてはその国内産業開発の計画によってそれはやられる。であるけれども、その場合においても、どれだけ世界的に需要があるかというようなことを――これはやはり計画生産の国でありますから、もうかるからよけいどんどん幾らでもつくるのだというような国家的な体制にはまずないだろうと思うのです。そういうようなことですから、安定した需要というものに対して、需要がある限りにおいて国内向けに幾ら、国外向けに幾らというように、これは完全に計画生産をされているだろうと思うのです。これはそう思って間違いない。したがって、こちらの需要がないものを中国がどんどん生産して売り込むというようなことは、社会主義体制の国としてこれは全くあり得ないことなんだということが、まず潜在生産力が脅威であるという言い方に対して私どもは明確に反論できると思うのです。  それからもう一つの価格の問題なんですが、中国価格は常に非常に安くて、品が悪くてという言い方だけれども、品質の問題では最近非常によくなってきているということである。やはり国内の絹織物の実情などでも、私もよく繊維のことは知らないけれども、二十一中Aというようなものが通常の一番需要の多いものらしいのですね。そういうようなものと、また非常に品質のいいと申しますか、そういういいものだけを国内でどんどんつくるようになる。そういうようなことで、かえって品質がやや劣るというようなものの需要もそれぞれの向き向きによって必要なんで、そういうものに対しては、バラエティーがある中国からの品物を国内の業者がむしろほしがるというような実態もあるというようなことなんですね。そういうような状態にある。  それから価格の問題については、むしろ韓国のほうが、国際相場にかかわらず、やはりどうしても韓国としては国内経済体制全体からいっても、出血輸出でも何でもしなければならぬ状況にある。ノリでもそうだし、それからこういう生糸、絹織物などでもそういうものをやっていかなければならない、そういう経済情勢にあるということで、かなり無理した出血輸出をしてくるというようなことは、むしろ韓国のほうにそういう点では危険があるのであって、中国は国際相場に比較的忠実であって、それをある程度守りながら、日本の相場をくずすとかあるいは過度の供給をやるというような点で、そういうことを利用して価格をつり上げたり、あるいは日本の農民が困るような状態でも売り込んで、押し込んでくるというような事態というものは比較的少ない。そういう点では、中国の貿易姿勢というものは非常に信義に厚い体制にある、こう見ていいんじゃないかと私ども思うのです。いままで中国の安いものが入ることによって価格が非常に撹乱されたというような実態がありましたか、そのことを伺いたい。
  201. 荒勝巖

    荒勝政府委員 データで申し上げますが、たとえば中国生糸のCIF価格で申し上げますと、四十五年の平均をとりますとキログラム当たり六千二百四十九円、国内の生糸価格が、同じ二十一中の2A格で八千七十五円というのが昨年の相場でございました。ここでCIF価格国内価格の間にも相当差があった。それに対しまして韓国の生糸の輸入価格、これはCIFでございますが、六千七百三十六円、中共糸に比べますと五百円ほど実は高くなっているのでございますが、これは過去四十一年以来のデーターをとりましても、それぞれの年度において多少の格差がある、韓国糸のほうが少し高いということを御理解願いたいと思います。  なお、われわれといたしまして、過去の年度におきまして輸入が一万俵、あるいは四十三年度のように二万二千俵というふうな事態におきましては、外国産生糸につきまして、糸格等の点から比較いたしましてそれほどの脅威といいますか、日本農業に重大な影響を及ぼすものとは実は考えていなかった次第でございますが、四十五年のように、先ほども申し上げました六万六千俵も、国内需要量の約二割前後の生糸が輸入される、さらに四十六年度におきましてはもっと大きな数量の生糸の輸入が行なわれるということになりますと、われわれといたしましては、やはりこれについて、これ以上の輸入条件の緩和ということについては十分慎重に対処せざるを得ないというのが実情でございます。
  202. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 確かに資料を見ますと、韓国へらのものは、キログラム当たりですか、六千六百三十円で入っている、中国からのものは五千九百五十八円だ。そういうようなことで、諸経費などをプラスし、さらに片方は七・五%の関税をかけ、片方は一五%の関税をかけて、それでも韓国のものが三十円ばかり高いという数字になるわけですね。韓国のもの、キログラム当たり七千六百五十三円。これは関税がかかる。七・五%と一五%の税率になるわけですが、中国の場合が七千六百二十一円ということで計算してみると、そういうことになる。こういうことであるけれども、国内価格は四十五年度において八千七十五円だ。この間には、どっちも国内価格とは相当価格の差というものはあるわけです。それで最終価格で四、五百円の差に縮めているわけだけれども、これを、その価格の問題をさらに品質の向上などともからめて、韓国の価格中国価格というものがそれほどたいした開きがあるわけではないのだから、それにもかかわらず関税の中で倍、二分の一という関係で一五%、七・五%ということでやるということ、その差別をここで設けるということはやはり非常に問題だと思うわけです。国内の生産価格はこれからもかなり上がるだろうと思うのです。そういうものに対して比較的安いものが入ってくるということになって、なるほど国内の養蚕農家を保護するという面からいえば、中国、韓国から安い価格で入ってくるということについて関税障壁を設けるならば、大体同じような関税でやったところで、国内産業に対する脅威という点ではそうは変わりがない、そういうように見ていいんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  203. 荒勝巖

    荒勝政府委員 多少われわれの資料につきましてただいまから御説明いたします。  十分確認したわけでもございませんが、実は最近、ことしに入りまして、二月十二日前後だと思いますが、中国のほうで生糸の輸出の関係の建て値を約五%下げてきた。昨年八千円相場ということで日本内地でまいったのが、さらに五%輸入生糸について下げてきたというようなこともございまして、われわれとして現在非常に神経をとがらしておるわけでございますが、その結果、国内の生糸相場が一月、二月というふうに下がってまいりまして、少し言い過ぎかもわかりませんが、今回七千五百円前後の相場で横ばいを始めたということで、昨年が異常な高値だったかどうかわかりませんが、どうも中国生糸の五%の建て値引き下げが非常な影響を持っておるというふうに、これは最近の一つの情報といいますか業界筋の意見もございまして、われわれとしては慎重にならざるを得ないというふうに御理解願いたいと思います。
  204. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 局長は、国貿促の代表の諸君と会われたときに、具体的にいろいろ問題をせんじ詰めていくと、むしろ今日でも五割もよけいに入っているのが韓国の生糸なんだというような実態、そして価格の問題についではそれほどの差があるわけではないというようなことから、さらに韓国におけるかなり大幅な増産計画というようなものなどもあるようだし、そういうことから見て、韓国の生糸のほうがむしろ脅威ではないかということを認められた。けさの参考人意見の中にもそういうことが述べられておるわけなんですが、そうだとするならば、大体同じくらいの量を中国からも韓国からも入れるならば入れるというようなことで、しかも関税率においても差別をしないということに踏み切って様子を見てみたらどうなのか、こういう感じを受けるわけです。これはひとつ局長からお答えいただいたあと、大蔵省でも、関税率を同じくして差別を撤廃してやってみて、その様子を見てみるというようなことをやってみてもいいのではないか、こういう気がするわけなんですが、その点の見解をお聞きしたいと思う。
  205. 荒勝巖

    荒勝政府委員 韓国の生糸につきましては、先ほども多少申し上げましたが、韓国側のいわゆる生産計画といたしましては、たとえば四十五年では六万七千八百三十三俵、約七万俵近い計画、それから四十六年では八万八千四百三十三俵というふうに計画を持っておられますが、実績におきましては、去年の実績では約七割、六九%に当たります四万六千八百俵ということで、韓国の生糸の増産計画というものはおおむね限界が来ている。その前年の四十四年は四万二千六百八十三俵ということで、四十四年と四十五年の間に多少しか増産されていないということで、韓国の生糸についてはおおむね限界が来ているのではなかろうかというふうに私は推定しているわけでございます。しかし、韓国側の生糸が今後日本輸入が増大することについても、一応今度のKR均てんで七・五%にはいたしましたものの、やはり相当重要な影響力を持つのではなかろうかということにつきましては、昨年来われわれとしましても心配しておりまして、本件につきましては昨年の夏、韓国生糸について、KRのほかにさらに特恵供与という問題もございましたが、韓国生糸を含めて輸入生糸について特恵を適用することは非常に困るということで、これはお断わりしたようないきさつ等がございまして、われわれとして、ただいまも申し上げているように、韓国並びに中共について、今後さらに輸入促進されるような道を開くということについてはさらに慎重な判断が要るのではなかろうか、こういうふうに理解している次第でございます。
  206. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 ただいま農林省のほうから理由もるるお話がありましたが、私も大体同様の意見でございまして、そのほかに通関統計のほうからさらにつけ加えて申しますと、中共生糸のほうは輸入したものの大部分が、ほとんど全部が国内に流通しております。ところが韓国の生糸は、半分以上が保税で入りましてまた出ていくということを考えますと、やはり競争力の点で考えなければならぬのは国内に流通する中共生糸であると思うのでありまして、とにかく中共に均てんさせておいて様子を見るということは、国内生糸が重要な総合農政の展開上の作物でございますので、若干危険があるというふうに判断しております。
  207. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 私も生糸の問題は専門家でないものですから、ほんとうの実情というのはなかなかよくつかめないのですが、この中国差別関税の中で一番大きい残った問題点であるということで、これは日中友好、日中国交回復、こういうふうな政治問題ともからんで、いま現に韓国からよけい輸入しているわけですよ。しかも年々これが増大の傾向にある。特に韓国の生糸がアメリカにあまり売れなくなったということで、ほとんど日本へ転嫁して、日本へ持ち込まれている。こういうような状態でどんどん数量がふえてきている。そのふえてきているほうは安い関税を適用している。国内産業保護という立場でほんとうにそれを徹底させるならば、そういう面についてはむしろそれのほうが脅威でなければならぬのだけれども、量の少ないほうを差別をしてこれを入れないという、そして片方においてはどんどん韓国のものは増大をさしていく、こういう姿勢は私どもとしてどうしても納得するわけにはいかない。これは中国との国交未回復ということで、向こうの実情もなかなかわからぬということがあるけれども、こういうものの差別を撤廃していくというような形で、友好の積み上げをやっていくというような立場から、中国問題の国交回復へのアプローチの一つとしてもやはりこの問題は考えていかなければならぬと思うのでありますが、この生糸の問題は大臣にもう一度見解を聞くことにいたしましてこのくらいにいたしますが、そのほかたとえば、全体で二十三品目あるわけです。いろいろな品目があるわけでありますが、マグネシアクリンカーなんというようなものも相当問題がある。今度韓国から入ってくるものは無税になる。中国からは十分の一くらいしか入らないわけですよ。韓国のほうが十倍くらいよけい入っている。それを無税にしてやる。中国からのものは七・五%というような差別もついておる。こういう問題もあるし、あるいは金属塩といわれるもの、塩化バリウムだとか炭酸バリウム、硫酸バリウムとか硝酸バリウムとか水酸化バリウムとか、こういうようなものなどにつきましても、これはやはり相当問題があるのではないかと思うわけなんです。中国からこれらの原料である重硝石を月一万トンくらい輸入をしている。しかも北海道産のものがトン当たり一万一千円くらいする。これに対して中国のものが七、八千円くらいだ。こういうようなことになっているようでありますが、はたしてこういうようなものについても、国内産業保護という立場からこういうものをやらなければならないのか。その中におきましても関税差別は、それらの問題についてやはり二〇%、一〇%というようなことで差別がついているわけですが、この問題などについても、こういう差別を当分つけておかなければならない具体的な理由というものが、単に価格差がそれだけついている、三、四千円あるということだけでこういうものに差別をしているのかどうか、この点お伺いをいたしたいと思います。
  208. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 二十三品目残っておりますが、そのうちおもなものは六品目、生糸、絹織物であります。それから、同和対策といたしまして重要な品目が三品目ございます。そういったものがおもなものでございますが、その他農政の関係ですね。くだものの関係もありますし、いま申されましたバリウム関係国内合理化、生産体制をまだ整備中というようなものもございまして、価格の問題、いま言ったようないろいろな農政との関係、それから国内合理化体制の進展の状況等を見なければいかぬということ、その他いろいろなあれからいきましていますぐこれをどうするかということは言えませんが、前向き前向きに毎年洗い直して再検討はしておりますがどうしてもことしは二十三品目を残さざるを得なかったということであります。
  209. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 一つ一つやりますとたいへんでありますが、先ほど藤田委員もその点を追及したわけですけれども、現在残っているKR差別というものについては前向きに検討していくということでありますが、明年度におきましても何品目かは必ず差別を解消するようなことをされるという方向で進みますか。明年度でもとりあえず何品目かは差別をなくするように努力をする、こういう約束はできませんか。
  210. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 何品目解消するというような約束を申し上げる自信はございませんが、とにかく前向きに毎年毎年洗い直して、できるものから解消をしていくという姿勢でございます。
  211. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 少なくとも明年度においても何品目かは格差を解消する、そういうようにしたい、こういう気持ちでございます、そういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  212. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 国会の御趣旨、御決議の旨を体してやるつもりでございます。
  213. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 だいぶ時間が過ぎているのですが、もう少し特恵関税の問題について、特恵受益国をどういうようなことで選定をし、大体何カ国くらいに供与をするおつもりであるか。これはまあ政令できめることになるのでしょうけれども、そのことについて……。
  214. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 御案内のとおり、法律ではこういう条件をつけております。開発途上にある国と、それからUNCTAD、つまり国連貿易開発会議に加入をしておる国、それから先ほども御議論がありましたが、特恵供与を希望する国という三つの条件がございます、原則のほうはですね。その中からいよいよ挙手がありましたときに適当であるかどうかということを、諸般の事情を考えまして、具体的には法案成立後政令できめたい。国の数につきましはただいま何カ国になるということを申し上げることができませんが、いま申しました条件を頭に置きまして政令できめたい、かように考えております。
  215. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大体推定でどのくらいになる見込みでございますか。見込みでいいのですが……。
  216. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 まあUNCTAD加盟国のうちAグループ、Cグループというのが、アジア・アフリカ諸国、中南米諸国というのがございます。これが百カ国近いところになりますか、それをにらみながらどうするかを検討していきたいのでございますが、数十カ国になるのじゃないかというような感じでございます。
  217. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 シーリングワクをつけるわけですが、これはやはり、ちょっとワクをこえたかどうかということが適用を停止する基準になるわけですけれども、その場合にこのチェックのしかた、こういうようなものはどういうぐあいにやられるおつもりですか。
  218. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 あまりこれ厳格過ぎるとまた特恵供与の意味がなくなりますけれども、国内産業に及ぼす影響も考えなければいけませんから、まああまり心配する必要がないものは月別に管理をしてまいりたい。毎月ワクをつくりまして、達したかどうかを見ていく。非常に問題になりますものにつきましては、日別のワクをつくりまして管理をしていく。そのほかに、一時期に集中しますと国内の市況をくずしたりいたしますので、上期、下期に分けるものも、これはあまりたくさんあってはいけませんが、きめてまいりたいと思います。それからそのほかに繊維等になるわけでございますが、これはうんと数を限定したいとは思いますけれども、そういう方法でもなお国内産業にとりまして心配だというものにつきましては事前割り当てもしてまいりたい。まあいろいろな方法でこのワクの管理をいたしまして、特恵供与の意味がくずれない範囲におきまして国内産業対策もきめこまかく配慮をしてまいりたいと思います。
  219. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この特恵税率の適用は先着順でやっていくというわけでありますが、ある国からのある特定の品目に対して貿易商社が当然複数あるだろうと思うわけでありますが、そういう場合に先着順という場合、かけ込み、商社のせり合い、こういうようなものをどういうような立場でどのように規制というか調整をはかっていかれるおつもりでありますか。
  220. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 やはり輸入申告をとにかく早くおやりになった方を先にせざるを得ません。先着主義でございます。でございますが、いま申しましたように、ものによりましてはあらかじめ割り当てをして調整をしてまいりたいと思います。
  221. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 たとえば輸出組合、輸入組合、輸出入組合というようなのが、ワクをまず独占するために非常に順位を高めるような活動をして、そのシーリングワクをほとんど独占してしまうというような、そういう弊害というものはこういう中から出てくる可能性はありませんか。
  222. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 その事前割り当てをたくさん取ろうとしていまお話がありましたようなことにならぬように、これまた割り当てもまあ先着主義ということを中心にいたしまして、適正に、混乱が起こらないように配慮してまいりたいと思っております。
  223. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 次にお伺いしたいのは、委託加工貿易、特に原料を日本から輸出して、韓国なり台湾なりあるいは南ベトナムなりというようなところで加工をして、それを日本に持ってくるという場合は、加工輸入減税、いわゆる原料分は関税から抜く、こういうことになっているわけですね。そういう品目がこれからどんどん加工輸入の方式で、委託加工貿易方式というものにかなり重点が置かれてくるだろうということは、もう前の委員も何人もこのことを伺ったわけだけれども、そういう場合に、このいわゆる加工輸入減税を受けると同時に、その品目及びその対象輸出国が特恵の対象であり、また特恵の品目であるということになりますと、加工輸入減税を受けたほかにさらに特恵の適用を受ける、まさに二重にも三重にもメリットを受けるというようなことになるわけですか。その点の関係はどういうようになりますか。
  224. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 その点につきましては、同様な配慮をいたしまして、今度の改正法の七条の七にこの加工輸入の規定がございますが、そこに二項を起こしまして、ダブっては受けられない、どちらか有利なほうを選択して受けるように配慮してございます。まあ大体申しますと、原料のウエートの大きいものが再加工輸入減税のほうを選択したほうが得じゃなかろうかというように判断をしております。
  225. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 それから、先ほどから、農産物の自由化等に伴って非常に輸入が増大するだろう、そういうことを通じて国内産業にかなりの影響を及ぼすおそれがある。この場合の緊急関税の発動というようなものに対して、これはやはり今度の措置を通じてかなり真剣に考えていかなければならぬことでありますが、いままで日本ではあまり発動したことはないことでありますが、こういう状況になりますとこの発動のしかたというものは非常に問題になってくるだろう。これについて、どういう考えでこの緊急関税を発動していくか。これを機動的に運営していかないとかなりの問題が起きる可能性があると思うのですが、それに対するかまえ方、これについて御見解を伺いたいと思います。
  226. 谷川寛三

    ○谷川政府委員 御案内のとおり、ただいまガットの規定に基づきまして、関税定率法に緊急関税が九条の二、それからダンピングも予想されますから、不当廉売関税といたしまして九条に規定を設けまして、もうすでに準備は整っております。いままでは自由化、国際化の完全な体制に入っておりませんから発動の体制がありませんでしたけれども、今後はそういう事態も予想されますので、そういう場合には機を失せず、ただいま御答弁いたしましたように発動する準備を整えております。関税率審議会にかけまして政令を出す。常に現場の税関でも価格関係の異動を見ておりますし、それから関係官庁でも業界の状況をにらんでおりまして、常時関係官庁とも接触しながら、機を失せず出るような体制を整えておるような次第でございます。
  227. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 時間もありませんから、これで私の質問を終わります。
  228. 毛利松平

    毛利委員長 次回は、明十一日木曜日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十二分散会