○峯山昭範君 私は公明党を代表して、
昭和四十三年度
補正予算二案について、
総理並びに
関係大臣に
質問を行なうものであります。
総合予算主義が四十三年度
予算の重要な柱であったことは、
政府がかねがね主張してきたとおりであります。また今
国会冒頭の
大蔵大臣の
財政演説の中で、
昭和四十四年度も引き続き
総合予算主義のたてまえを堅持する、そのため、
公務員給与費、
食糧管理特別会計への
繰り入れ等について、所要の処置を講じた、と述べております。この
財政演説をされたとき、すでに
補正予算を組まねばならない
事態があり、
総合予算主義がまさにくずれようとしていたことは承知のはずであります。といいますのは、一月六日付の野田自治大臣と
大蔵大臣との間にかわされた
地方交付税に関する覚え書きによれば、四十三年度
補正を組んで、
地方交付税七百三十六億円をふやし、その引き当て分として、四十四年度
予算では、国は地方から六百九十億円を借り上げることとなっているからであります。したがって、四十三年度
補正は四十四年度
予算編成の前提条件であったわけであります。このことを百も承知でありながら、
大蔵大臣は一月二十七日の
財政演説で、四十四年も四十三年に引き続き
総合予算主義を堅持いたします、と述べていますが、これは明らかに事実に相違し、
大蔵大臣の食言と言う以外にありません。これは四十四年度
予算の
国会審議を欺くもので、
国民の断じて承服できない点であります。さきの
衆議院のわが党代表の
質問に、
大蔵大臣は、今後も
補正予算を
提出することがあると
答弁しておりますが、もしそうだとすれば、四十四年度
財政演説で言った
総合予算主義の堅持は、
予算成立もしない今日の時点で、すでに雲散霧消したことになります。
財政演説でまたまた詭弁を言ったことになるではありませんか。
さらに、四十三年度当初の
予算審議に際しての
財政演説で、
大蔵大臣は、
公務員給与の改定に備えて
予備費の充実をはかった、と言っております。しかし、公務員の給与改定に備えて
予備費の充実をはかったと言いながら、
現実には、
人事院勧告は
完全実施されなかったのであります。わが党は、
補正予算を組んでも
人事院勧告は
完全実施せよ、年度内の
自然増収から見ても
完全実施できるではないか、
総合予算主義にこだわらなくてもよいではないかと主張してきたのであります。ところが、
政府は、
総合予算主義のたてまえから
完全実施できないことをたてにして、
完全実施をしなかったのであります。あれからまだ二カ月もたっていないのでありますが、
補正は組まないと言ったのに、豹変して
補正をなぜ
提出したのか。もし二カ月足らずの
財政見通しすらできないというのならば、
大蔵大臣は不適任と言わざるを得ないが、この点についてどう
考えているのか
伺いたいと思うのであります。
次に、今回の
追加補正の最大要因は、「一つに、四十三年度産米の買い入れ量が一千十万トンと異例にふえたこと、二つに、四十三年度の税の
自然増収が二千四百億円を上回り、このうち七百三十六億円を地方交付金の増額に回す必要がある」と述べております。
初めに最大の要因の一つである米の異例の買い入れについて
伺いたい。四十三年度当初
予算審議の際、「米の買い入れ量
見込み額八百五万トンは過小である、こうした無理な
予算はむちゃであり、
補正は必至である」といわれていたのであります。ところが、当時の
政府側の
答弁は、過去の実績を勘案した妥当な買い入れ量であり、もし買い入れ量がふえても食管
特別会計予備費千五百億円と食管
特別会計内の操作でできるとし、また、四十二年度の買い入れ量九百八十二万トンは大豊作による異常な
事態で、四十三年度買い入れ予定量をこれより百三十万トン減らして八百五万トンにしたことも妥当だと強弁したのであります。一議員が、「米の買い入れ予定量八百五万トンで食管
特別会計の帳じりを合わせても結局は破裂する」と指摘できたのに、
政府や食糧庁は、多数の優秀なスタッフをかかえておりながら、今日、
国民の前に失敗を露呈したわけであります。
政府は何をさして米の買い入れ量の
増加が異例だと言うのか。私は、これはなるべくしてなったのであり、当初から当然予測できたことであると言いたいのであります。異例だから
補正を組み、
国会で承認してほしいとの理由は、理由にはならないと私は思うのであります。
さらに、消費者への国内産米の売り払い
見込み量のずさんが
原因ではないかと思うのであります。
政府の米の売り払い代金の収入
見込みが当初
予算の額を大幅に下回っている点であります。
昭和三十九年度までは、当初
予算の米の売り払い
見込み量に対し売り払い実績のほうがよくなっている。ところが、四十年度以降は、
予算の売り払い
見込み量に実績は及ばないのであります。そうして、
歳入予算と決算の数字で見ますと、四十年度四十五億円、四十一年度七十七億円、四十二年度二百五億円の収入不足となっているのであります。売れる
見込みも立たないのに、
予算書の数字だけ合わせるような食管
特別会計予算の組み方は納得できないのであります。こうした収入
見込みの手違いについては一言半句も触れていないのはどうしたわけか、また、四十三年度も売り払い代金の収入
見込み額は九千三百六億円となっているが、これは達成できる
見込みがあるのか、また、この米の売り払い数量七百九十六万八千トンは売れる
見込みなのか、なぜ
補正予算で売り払い数量を四十万トン減にしたのか、これらの点について
国民の納得のいく説明をしていただきたいと思います。私は四十三年度の米の売り払い量七百九十六万八千トンは無理であると思うのです。四十二年度売り払い実績を五十四万トンもこえる消費増が期待できるだろうか。たぶん四十三年度も国内産米の売り払いは予定量に達せず、その結果、売り払い収入が
予算額に達しないことも間違いないと思うのであります。この点について、なぜもっと適正な
国内米の売り払い量及び売り払い金収入を掲げないのか、その理由を聞きたいのであります。そし
てこの
補正予算でも、そうした点については口をつぐみ、ただ異常に買い入れ量がふえたからという説明ばかりを繰り返しているのであります。当初から
歳入見積もりに穴があくことを承知で
予算書を作成したり、また、
歳出見積もりでは、無理な八百五万トン買い入れで
予算書をつくったり、まさに粉飾
予算と言わざるを得ないのであります。こうした
予算書に
補正の必要が起こることは当然であり、これは
財政法二十九条の「
予算作成後に生じた事由」には当てはまらないのであります。したがって、
政府に
補正予算提出の資格はないと断言するものであります。この点について
総理並びに
大蔵大臣はどのように
考えているか、承りたいと思います。
第三に
伺いたいのでありますが、もし四十三年度
補正予算において
地方交付税交付金を組み込まなかったらどうなるか。
財政法の規定によって、この七百三十六億円は四十五年度
予算で
地方財政へ支出されるわけであります。このほか、四十五年度には、国は四十三年度に地方から借り入れた四百五十億円の三分の一に当たる百五十億円と、四十四年度に借り入れた六百九十億円の三分の一に当たる二百三十億円を地方に返さねばならないわけであります。したがって、これだけで合計千百十五億円に達し、その上、四十五年度には、国税三税の
伸びとスライドして同年度の交付金がふえるし、一方では、四十四年度において六百九十億円も地方から借り入れており、当然
増経費としての
地方交付税交付金は、四十五年度には巨大なものとなることは必至であります。しかるに、これでは四十五年度
予算の姿が著しく悪くなる、だから
政府は、
食管会計補正という
事態に便乗したわけであります。したがって、今後も現在のように国税三税の三二%を自動的に
地方財政へ支出する仕組みが続く限り、たとえ米や災害に異常がなくとも、好況で
自然増収が大きく出るならば
追加予算を組む必要性があると見なければならない。この意味からも
財政硬直化打開の努力をしなければならないと思うのであります。そうでなければ、
財政の行き詰まりが必ず生じて、
財政は新しい
政策を何一つ打ち出せなくなるばかりか、
景気調整の
役割りも果たせなくなってしまうのであります。この点について、明快なる
答弁を
伺いたいのであります。
次に、
歳入についてであります。
自然増収は当初の
見込みより二千四百五億円もふえ、また、
税外収入においても二百五億円と、大幅な
増収であります。しかし、
減税もせず、
国債発行予定額の
削減に千六百二十三億円を
計上しているのであります。
国債発行予定額を
削減することは、今日のフィスカルポリシーを織り込んだ
財政上の原則論から言えば、一応の筋論とも言えないことはないが、しかし、
租税の
自然増収二千四百億円のうち、
所得税の
増収が千三百五十六億円も見込まれ、実に税収の六五%はサラリーマンの血税なのであります。しかるに、これだけの
予想外の税金が
政府のふところに入ってくるのであれば、今日の
物価高や住宅難で困っているサラリーマンの
減税を
国債減額よりも優先して行なうべきではないか。まして、四十三年度の
減税は、酒、たばこの
値上げで実質ゼロになっており、また、四十四年度の税制改正では、
自然増収一兆二千億円のうち、わずか千五百億円という、当初の
減税見通しよりも大幅に後退しているのであります。したがって、以上の点から、わが党は、四十三年度の実質ゼロを
補正する意味においても、せめて五百億円ぐらいは
減税に振り向けるべきであると思うのですが、
総理の
見解を
伺いたい。年度の途中で
減税することは、技術的に難点があるとしても、やろうと思えばできないわけはない。過去の例をとっても、三十五年度の
補正予算においては五十八億円の
減税をやっているのであります。そうでなくとも、クロヨン(九・六・四)と呼ばれているように、給与所得者の課税負担は、他の所得者に比べてきわめて重いのであります。つまり、サラリーマンの課税負担が重いがゆえに、
政府は涼しい顔をして楽々と
補正予算を組むことが可能になったのであります。したがって、もしこのサラリーマンの税金がこんなに
伸びないとしたならば、
政府は、うまくつじつまを合わせることができなかったはずであります。この点、日本
国民の首長たる
総理の決意のほどを
伺いたいのであります。
以上をもちまして私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕