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1969-05-14 第61回国会 衆議院 外務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年五月十四日(水曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 北澤 直吉君    理事 青木 正久君 理事 秋田 大助君    理事 田中榮一君  理事 山田 久就君    理事 穗積 七郎君 理事 曽祢  益君       川崎 秀二君    坂本三十次君       世耕 政隆君   橋本登美三郎君       福田 篤泰君    宮澤 喜一君       毛利 松平君    石橋 政嗣君       大柴 滋夫君    木原津與志君       田原 春次君    堂森 芳夫君       渡部 一郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         外務省条約局長 佐藤 正二君  委員外出席者         外務省欧亜局大         洋州課長    田中 常雄君         外務省国際連合         局政治課長   大川 美雄君     ————————————— 五月十四日  委員毛利松平君及び勝間田清一辞任につき、  その補欠として川崎秀二君及び田原春次君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員川崎秀二君及び田原春次辞任につき、そ  の補欠として毛利松平君及び勝間田清一君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 五月九日  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国とグレート・ブリテ  ン及び北部アイルランド連合王国との間の条約  の締結について承認を求めるの件(条約第一〇  号)(参議院送付)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国オーストラリア連  邦との間の協定締結について承認を求めるの  件(条約第一一号)(参議院送付)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国イタリア共和国との間の条約の締  結について承認を求めるの件(条約第一二号)  (参議院送付)同月十二日  世界連邦建設決議に関する請願石野久男君  紹介)(第六〇九六号)  同(後藤俊男紹介)(第六〇九七号)  同(浜田光人紹介)(第六〇九八号)  同(福家俊一紹介)(第六〇九九号)  同(河村勝紹介)(第六一八八号)  同(小川平二紹介)(第六三〇八号)  同(田原春次紹介)(第六三〇九号)  同(中嶋英夫紹介)(六三一〇号)  同(原茂紹介)(第六三一一号)  非核武装核兵器禁止に関する請願松本善明  君紹介)(第六一八九号)同月十三日  世界連邦建設決議に関する請願久保三郎君  紹介)(第六四七六号)  同(倉石忠雄紹介)(第六四七七号)  同(平等文成紹介)(第六四七八号)は本委  員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  太平洋諸島信託統治地域に関する日本国アメ  リカ合衆国との間の協定締結について承認を  求めるの件(条約第一五号)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国ベルギー王国との間の条約締結  について承認を求めるの件(条約第七号)(参  議院送付)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国アラブ連合共和国  との間の条約締結について承認を求めるの件  (条約第八号)(参議院送付)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 北澤直吉

    北澤委員長 これより会議を開きます。  太平洋諸島信託統治地域に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国ベルギー王国との間の条約締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国アラブ連合共和国との間の条約締結について承認を求めるの件、以上三件を一括議題といたします。     —————————————  太平洋諸島信託統治地域に関する日本国アメ  リカ合衆国との間の協定締結について承認を  求めるの件  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国ベルギー王国との間の条約締結  について承認を求めるの件  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国アラブ連合共和国  との間の条約締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 北澤直吉

    北澤委員長 政府より提案理由説明を聴取いたします。愛知外務大臣
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま議題となりました太平洋諸島信託統治地域に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、かねてより、戦前わが国委任統治地域であった太平洋諸島信託統治地域住民国連に対し提起している戦争損害請求問題につき、このような請求には応じられないとの法的立場を堅持しつつ、その実際的解決をはかるため、同地域施政権者たる米国政府交渉を行なっておりましたが、この問題については、日米両国が、第二次世界大戦の結果住民がこうむった苦痛に対し同情の念を表明することとし、他方、住民福祉のために両国がそれぞれ十八億円相当額自発的拠出を行なうことにつき合意を見るに至りました。また、この機会に、平和条約規定されている信託統治地域に関する日米間の財産請求権処理の問題につきましても、その最終的解決を確認することに意見の一致を見るに至りました。よって、政府は、米国政府との間にかかる合意の線に沿った具体的な協定案文作成交渉を進めました結果、その成案を得るに至りましたので、昭和四十四年四月十八日に東京で、わがほう私と米側オズボーン駐日臨時代理大使との間でこの協定署名を行なった次第であります。  この協定は、本文四カ条からなっており、さらに、これに交換公文が付属しておりますが、その内容は、信託統治地域住民の戦時中の苦痛に対する日米両国同情の念の表明を前文に規定しつつ、本文において、両国が、住民福祉のためにそれぞれ十八億円相当額自発的拠出を行なうことを定めるとともに、両国は、信託統治地域に関する財産及び請求権処理の問題で平和条約第四条(a)にいう特別取りきめの主題となるべきすべてのものが完全かつ最終的に解決されたことに合意する旨を規定し、交換公文において、このような解決の結果、日本国及びその国民信託統治地域側請求から完全に免除されることを確認しております。  この協定締結は、日米間で多年の懸案であった問題を解決するとともに、経済協力を通じ、わが国信託統治地域との間の経済関係の増進をはかるものであります。なお、このほかにも、この協定に基づくわが国経済協力が実施の段階に至れば、わが国漁船は、信託統治地域のトラック及びパラオへの寄港を認められることとなり、漁船の操業の便に資するところ大と考えられます。  よって、ここにこの協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国ベルギー王国との間の条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、ベルギーとの間の所得に対する租税に関する二重課税回避のための条約締結するため、昭和四十一年五月以来ブラッセル及び東京において交渉を行ないました結果、昭和四十三年三月二十八日に東京においてわがほう三木外務大臣ベルギー側ユッペール駐日大使との間でこの条約署名を行なった次第であります。  この条約は、本文二十九カ条及び付属議定書からなり、その規定は、OECDモデル条約案にできる限り従ったものであります。条約のおもな内容は次のとおりであります。  事業利得につきましては、相手国にある支店等恒久的施設に帰属する利得についてのみ相手国において課税できるものとし、船舶または航空機による国際運輸からの利得につきましては、相互全額免税としております。投資所得に対する源泉地国での課税につきましては、配当及び利子については一五%、使用料について一〇%をこえない税率課税し得るものとしております。さらに、政府職員短期滞在者短期滞在教授学生等の受け取る報酬や手当等につきましては、原則として滞在地国免税としております。  この条約締結によりまして、二重課税回避制度を通じ、両国間の経済技術及び文化面での交流は一そう促進されるものと期待されます。  よって、ここにこの条約締結について御承認を求める次第であります。  最後に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国アラブ連合共和国との間の条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、アラブ連合共和国との間の所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための条約締結するため、カイロ及び東京において交渉を行ないました結果、昭和四十三年九月三日にカイロにおいて日本側アラブ連合共和国安藤大使アラブ連合共和国側シャーバーン財務次官との間でこの条約署名を行なった次第であります。  この条約は、本文二十六カ条からなり、その規定は、OECDモデル条約案をできるだけ採用しておりますが、発展途上国としてのアラブ連合共和国経済構造を考慮して投資所得について源泉地国課税相当広範囲に認めている点に特色があります。内容のおもなものは、次のとおりであります。  すなわち、事業所得につきましては、相手国内にある支店等恒久的施設に帰属する利得についてのみ相手国において課税できるものとし、船舶または航空機による国際運輸からの利得につきましては、相互全額免税としておりますが、これらの点は、OECDモデル及び先進国との最近の条約例と同様であります。  次に、投資所得のうち特許権等使用料に対する源泉地国での課税につきましては、先進国との条約例と同様に税率は一五%をこえないものとしておりますが、利子及び配当につきましては、源泉地国での課税相当大幅に認めております。すなわち、利子につきましては、源泉地国においてその国内法令に従って課税し得るものとし、配当につきましては、わが国源泉地の場合には、一五%をこえない税率課税できるものとしておりますが、アラブ連合源泉地の場合には、ほぼ同国の現行国内法令による課税ができるものとしております。  さらに、短期滞在教授学生等が受ける手当等につきましては、他の条約例と同様に原則として滞在地国免税としております。  この条約締結によりまして、二重課税回避制度を通じ、両国間の経済技術及び文化面での交流は、安定的な基礎の上に発展するものと期待されます。  よって、ここに条約締結について御承認を求める次第であります。  以上三件につきまして、何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  5. 北澤直吉

    北澤委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  三件に対する質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  6. 北澤直吉

    北澤委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。坂本三十次君。
  7. 坂本三十次

    坂本委員 おとといの新聞にも、近藤日出造漫画に、愛知外務大臣夢にまで核抜き御苦労していらっしゃるという漫画が出ておりました。くぎ抜き漫画でありますけれども、多言は申しませんが、まことに外務大臣御苦労はお察し申し上げる次第でございます。ほんとう御苦労さまです。  そこで、この五月の末にいよいよ渡米をされまして、そうして私どもの待望しておりまする沖繩返還交渉の本舞台の幕があくわけでございます。この日程などについて、どういうふうな日程でどなたとお会いになられるのか、ひとつお伺いをしたいと思います。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日米交渉、特に沖繩返還問題につきまして、最初の正式の話し合いをいよいよいたすことに相なりました。それにつきまして御激励のことばをいただきまして、まことに感謝にたえない次第であります。いろいろ事前の日程等打ち合わせがございまして、当初予定いたしましたことと若干変更のあったような点もございますが、六月の三日間から大体三日にわたりまして、ロジャーズ国務長官を主として会談をいたすことに日程を取りきめた次第でございます。同時に、この問題は非常に大切な問題であり、またまことに困難な問題でもあると予想もいたされますので、六月の、ただいま申しました三日間にわたる米側との交渉皮切りにいたしまして、七月の二十八日ごろには、今度は日米貿易経済合同委員会ロジャーズ国務長官をはじめとしてアメリカ関係閣僚が来日することが内定いたしておりますので、その場合に、私と国務長官との個別会談ということもあらかじめ予定をいたしておるわけでございます。また、東京先方が参りますわけでございますから、ロジャーズ国務長官としても、私以外の人とも接触することも考えられるかと思います。それからさらに、少し先のことを申して恐縮でございますが、九月中の国連総会の場合におきましても、やはりロジャーズ長官と私との会談というものも予想いたしておるわけでございます。こうして相当の期間にわたって相当回数会談を重ねてまいりまして、十一月の下旬ころを予想しております日米頂上会談で本件の最終的な決着をつけたいものと、こういうふうな日程で考えておりますが、何ぶんにも第一回の皮切りが一番大切であると考えますので、私といたしましても、十分な心がまえで十分な努力をいたしてみたい、かように考えておる次第でございます。
  9. 坂本三十次

    坂本委員 今度六月の三日間の会談では、ロジャーズ国務長官を主としてお話し合いをされるということでございますが、国務省とかそれから国防総省、こういういろいろ政府内のアメリカ話し合いもあることでもありましょうし、また私の聞きましたところによりますと、その上に国家安全保障会議というようなものもあるそうでありますけれども、キッシンジャーさんなどとはお会いになる日程はございませんか。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私といたしましては、いまの両国日程、会合のやり方などの打ち合わせにつきましても、国務長官に対する接触というのが、私といたしましては一番本筋のところと考えておりますけれども先方の都合あるいは国務長官考え方等によりまして、随時、たとえば国防長官なりあるいは大統領府の実際の責任者でありますとか、そういう人との接触もやはり予想されるところと考えております。特に具体的に人名をあげてどうこうということはまだお答えする段階でございませんで、いま申しましたような考え方で進めてまいりたいと思っております。
  11. 坂本三十次

    坂本委員 ぎっしり詰まったスケジュールの中で、ひとつ十分に意を尽くして御奮闘をお願いいたします。  沖繩問題は、申すまでもございませんけれども、結果いかんによっては、日米両国間に深甚なはね返りを持つ問題でございます。うまくいけば、これからほんとうイコールパートナーとして非常に積極的な協力関係が期待されます。へたにいきますと、非常に混乱を生ずる問題でございます。アジア情勢全般についても悪影響をもたらそうかという重大問題でございます。日本の国内問題としては、これはもちろん日本平和国家で、しかも主権と独立の国家でありますから、沖繩が四分の一世紀占領状態から一日も早く解放されたいという念願があるということは、これは正しいナショナリズムとして国民のひとしく認められるところでございましょう。この願望にこたえようとして外務大臣が御奮闘なさるわけでございますが、どうも国民感じといたしましては、戦後二十四年を経ておる今日でございますから、早期返還、こう政府が唱えましても、この早期ということばが非常に空疎な響きを与えておるのではないかという心配がございます。おそ過ぎたという、これは国民感じでございましょう。交渉の場は非常に慎重におやりになることはけっこうですけれども、ひとつ迅速にこの問題を解決していただきたいと思うのでございます。  そこで、早く解決したいとお考えのことはもちろんでございましょうけれども沖繩返還のおくれた原因というものは、基地の持つ軍事的重要性のワクのためであったと思います。そしてその背景極東情勢でございますけれどもベトナム中共朝鮮半島も、これから当分の間を見ましても、相当変化が考えられると思います。動いておると思うわけでございますが、外務大臣は、この当面のベトナムを含む極東情勢というものをどう見ておられますか、簡単にお答えを願いたいと思います。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まさに坂本委員の御指摘のとおりでございますので、先ほどもお話がございましたが、核抜き核つきあるいは自由使用云々というような、いろいろな意味ことばが出ておりますけれども、そういうぎりぎりに詰めたところにまいります前に、やはり極東情勢の推移、その分析のしかた、将来の予測というようなことで合意ができることが、一番基本で必要なことであると私は思います。したがいまして、将来にわたる非常に大切な問題でございますから、早期に話をつけて早期返還を求めるという大原則はもとよりでございますけれども会談それ自体はきわめて慎重に、しかもある程度時間のかかることを予想しながら、十分日本の主体的な立場に立って、そして国民世論の動向を踏んまえて決着をつけ、御期待に沿うような早期返還であり、かつ、日本立場からいって、最も望ましいと思われる方向に導くように最善の努力をいたしたいと考えております。
  13. 坂本三十次

    坂本委員 そこで、極東情勢背景、すなわち、これからしばらくの間、当面のベトナム中共朝鮮半島の動きというものについての予測ということですが、それをひとつ外務大臣から簡単に承りたい。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ベトナムについては、お互いに国民の一人一人、あるいはまた世界的に申しましても、パリ拡大会議の一日もすみやかな成果というものを期待しているという現状であると思います。最近ではいわゆる十項目の提案というようなものも出ておりますし、私どももその成り行き等については十分関心を持ちながら見詰めておりますけれども、どうかして何らかの方向に向かって決着ができるということを期待しておるわけでございます。そしていわゆるポストベトナムになりましたならば、今後国際的な緊張が再び起こらないように、当該地域住民福祉の向上というようなことに日本としてもできるだけの協力を惜しまないという態勢でまいりたいと思います。  また同時に、朝鮮半島を含んで極東情勢については、緊張が緩和できるような努力はこの上とも続けてまいりたいと思いますが、やはり日本自身の安全ということが第一義的に最も必要なことでありますから、従来そうであったように、今後におきましても、日本国民沖繩の県民を含めて自由と繁栄が期待できるような、そういう安全な守りというものを、十分一方においては固めていかなければならない。  なおまた、沖繩の問題について申しますれば、それはそれとして、たとえば極東状況がこうなったならば返還の問題を取り上げるというような角度ではなくて、先ほども話がございましたが、四分の一世紀にわたって他国の施政権下にあるこの異常な事態は、一日もすみやかに解消すべきである、こういうことでひたむきにこの問題の解決をはかっていきたい、こういうふうに私は考えているわけでございます。
  15. 坂本三十次

    坂本委員 外務大臣の、極東情勢の多少の緊張変化というようなことはともかくとして、ひたむきに四分の一世紀占領下にあった沖繩の解放のために努力したいという姿勢というものは、高く評価さるべきだと思います。しかし、極東情勢緊張緩和ということ、これは非常に望ましいことでありますし、それを大きく阻害する原因もさほど見当たらないということは、アメリカに対しまして返還説得力が有力になってくるということでもございましょうから、歓迎すべきことだと私は思っておりますが、そこで、沖繩返還が実現するのはおそらく一九七〇年代の当初であろうと思いますけれども、ここで、一九七〇年代のアジアをどういうふうに予測しておられるかということを、ひとつ大きな意味で、政治家の第一の要素は先見性でございますから、外務大臣先見性を御披露いただきたい、こういうふうに思うのであります。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、具体的な沖繩の問題ということとも関連することと思いますけれども、一九七〇年代というのは、日本にとりましても、非常に大きく発想の転換をすべき十年間ではないかと考えておるわけでございます。それは東南アジアのみならず、世界的な状況変化が流動的で、どうなるかということについてはいろいろな見方もございましょうけれども、われわれとしてなすべきことは、やはり終局的にはそういった緊張が起こらないようにするということについては、一つには、それらの地域民生が向上し、かつ安定し、将来にそれぞれの希望が持てる、そういう環境を着実につくり上げることではなかろうかと考えるわけでございます。幸いにしてと申しますか、現状のようなスピードで日本経済力その他の力がついてまいりますれば、たとえば一九八〇年には、前にも申し上げましたように、日本の総生産というものが相当高度に達し得る。ここ数年来の状況から見ると、多少控え目に見ても、五千億ドルくらいのGNPになるのではないか。DAC、UNCTADその他でかねがね要請されておりますように、GNPの少なくとも一%くらいは、先進諸国発展途上国に対していろいろの意味協力をすべきものであるということが要請されておりますが、かりに一%ということをとれば、一九八〇年には五十億ドルという数字が自然に出てくるわけでございます。ところで、ひるがえって現状はどうかといえば、〇・五%程度ということになっておりますから、これを年を追うごとに比率を上げながら、また基準になるGNPが増加してまいりますれば、一九七〇年から八〇年ごろまでの間の十年間を考えてみますと、その間になし得る寄与の額というものは相当巨額なものであって、現状からはちょっと予想を越えるような規模も考えられるのではないかと思います。  幸いに、こういう考え方、そういう発想は、私だけではございませんで、関係各省庁、政府部内におきましても、相当積極的な、意欲的な考え方が盛り上がってまいりましたことは、先般のアジア開銀総会において福田大蔵大臣からも意欲的な数字をあげての意見表明がありましたし、あるいはまたエカフェ総会において木内国務大臣日本政府代表として表明いたしましたことも、一連のつながりがあるわけでございまして、こういう面で権威あるところのいろいろの国際機構ができております。たとえばASPACもその一つでございましょうし、東南アジア開発閣僚会議もそうでございましょうし、あるいはエカフェもそうでございましょうし、こういうふうな平和的な目的でもって地域的な協力をする。日本としてもなし得る限りの協力をする。具体的な構想を練りながら、地域協力構想に応じ得るような、平和的で効果的な援助を展開していく。そして日本のような平和憲法を持つ国として、軍事的な協力ということはかりそめにも考えない、こういう考え方を定着させながら、主として経済の面、技術の面あるいは文化の面において積極的な協力をしていくということが、とりもなおさず直接に民生の安定につながっていく。そこから矯激な考え方あるいは国際的な紛争を起こすような発想というものもできるだけ未然に防止することができるのではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございまして、その間にはそれに応じたような反応も必ず出てくるに違いないし、またそれを起こしていきたいということで、力によって他国に脅威を与える、あるいは脅威を与えるどころではない、具体的な紛争が起こるようなことが未然に防止されるような、まあ一面から言えば、夢みたいなロマンチックなことばかりを言うとおしかりを受けるかもしれませんが、先ほども仰せがございましたように、一つの政治のビジョンとしてこれを持ちながら、具体的に着実に進めていくということに大きな期待をかけていくべきではないか、私はそういうふうに考えておる次第であります。
  17. 坂本三十次

    坂本委員 外務大臣がいま七〇年代を見通して、日本の外交の大きな方針は平和外交であり、またアジアに対する経済援助に大きく寄与していこうという方向は、これはもうビジョンだけではなしに今後、大いに期待をされるし、これは動いていくものであろう。またそれがほんとう日本の外交の姿であろうと私も確信をいたしております。  そこで、沖繩返還関係をすることでありまするけれども、いままで沖繩は太平洋のキーストーンといわれてきましたけれども極東の安全保障のために、アメリカが重要視する沖繩軍事的重要性の度合いを軽くするためにも、極東の安定策にも日本は寄与をしていかなければならない。その寄与のしかたとして経済協力を主にしていこうといういまのお考えは、まことに同感でございます。  それにつきまして、先ほど、大蔵大臣がアジア開銀の場所で五年間に倍増しようとかいうことを言われたことを一例として申されましたけれども、この六月にもASPACがありまして、今度は日本愛知さんが主人役で開催されるわけでございまするけれども、このASPACにあたりまして、外務大臣といたしまして、何か具体的な提案というものを関係諸国にされる構想がございましょうか。差しつかえない範囲でひとつ承りたいと思います。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ASPACにつきましては、申すまでもないところでございますけれども先ほど申しましたように、平和的な相互協力関係で、いろいろの問題を隔意なく意見を交換するし、あるいはこういうプロジェクトが適当ではないかというものがあったならば、これをそれぞれフリーに提案をし、そして討議をして、みんなが合意するようなものであるならば、それを実現の道に乗せていこうというのが従来からの考え方でございまして、まず第一に、私は、具体的な提案ということはともかくといたしまして、基本的には、従来からASPACが持っておりました性格というものをますます明確にする。たとえば世上、あるいはある人たちといってもよろしいかと思いますが、ASPACというものは軍事同盟にするつもりであろうというような説が行なわれておりますけれども、今回は日本が議長国の番でございまして、伊東の川奈で六月九日から三日間総会が行なわれる。その準備のためにすでに五回か六回常任委員会というものを東京で開いておりますが、この常任委員会には東京駐在の各国の大使が常任委員として出席をいたしておりまして、今回の総会の準備のためにもいろいろの案を出しております。その間を通じて私もみずから観察し、みずから議事運営に当たっておりますけれども、このASPACを軍事同盟化しようなどという意見はどこの国からも全然出ておりません。われわれとしては、ここまで育て上げてまいりましたこの性格というものは、あくまで平和的な相互協力である、こういう考え方が定着しておりますので、このASPACが軍事同盟化するというようなことは絶対に予想されません。また、かりに観念的な問題として万々一そういうような意見があり得たとしても、これは特に主催国とし、あるいは多くの協力国との合意がいま申しましたようにできておるのでありますから、私といたしましても、日本政府といたしまして、ASPACのこうした性格というものは今後とも大切に育て上げていこう。そして実は日本の一部にもそういった懸念に基づく言動をされる方もありますけれども、事実においてさような御心配は全然ない。のみならず、こういうものを育て上げることによって、先ほど申しましたような考え方が創造されていくのである。またぜひそういうふうにしていきたい、こういう気持ちでリードしてまいりたいと考えております。  それから、具体的な提案というものについては、いま申しましたような、いわば次元の高い託し合いといいますか、意見交換からしますと、やや次元が低いようにも思われるかもしれませんが、たとえば日本側といたしましては、かねがね、太平洋をめぐる国々が多いものですから、たとえば国際的な海難救助、海洋関係相互連絡を強化するということは、人道的な立場から見ましても非常に望まれていることでございます。また日本に対する期待も非常に大きいものでありますから、日本といたしましても、関係省庁と十分協議をいたしまして、そして海難救助等を中心にする、そういうふうな海洋の面での協力関係というものを、どういうふうに組織をつくり、どういうふうにお金がかかり、どういうふうな相互連絡の方法をとったらいいかというようなことを含めた一つ提案をして、そして各国でも十分相談をしてもらいたい、こういうふうに考えておりますのが一つの例でございます。そのほか、農業関係、肥料関係あるいは軽工業関係等にわたりまして、それぞれの立場で各国代表からいろいろの提案が過去においてもあり、その中においては、すでに何々センターというようなことで、関係参加国の知能を結集いたしまして、具体的な成果をあげつつあるものもございます。また文化面においてもそうでございます。  しかし、相対的に言えば、先ほど申しましたアジア開発閣僚会議というようなものもあり、エカフェというようなものもあり、あるいはアジ銀総会というようなものもあり、多くの機構がございますから、あまり具体的な問題は、ASPACとしては積極的に提案するというよりは、関係国がほかの機構ではなかなか取り上げるのに適当でなかったり、あるいは便宜が少ないというようなものを取り上げるというような姿勢でやっていこうというのが、大体現在の空気のように私は観察いたしております。また、そういうふうに運営していってしかるべきではないかと考えております。
  19. 坂本三十次

    坂本委員 時間がないので進ましていただきたいと思いますが、次は世論と外交の姿勢ということでございます。  最近の世論調査、十二日の毎日新聞にも、四月十八日から三日間本土と沖繩で世論調査を行なっておりますが、本土並み以上のものは一歩ももう譲れないぎりぎりの線であるというものが本土で七七%、沖繩で六八%もありました。国民世論が事外交に関してこれほど合意に達したということは、私は近来あまりないのじゃないかと思っております。それはもう明白に核抜き・本土並みの基地ということでございます。この世論を外交にどう反映をさすかということにつきまして、外務大臣の姿勢をお聞かせ願いたいと思うのですが、世論をバックにした外交ということが、これはもう常道であり、原則であろうと思うわけでございますけれども、これ以上の方法で沖繩問題処理しようとすれば、混乱は必至である、こういうふうに私は思っておるのです。この本土並み・核抜きの世論というものに対してまだ政府は明確な態度をお示しになっておりませんけれども、もしそれがいかぬという理由がありましたら、これは率直に国民に語り、納得を求めなければならぬ問題だと思っております。政府はそういうようなことはまだやっておりませんので、私としましては、すなおに世論の上に立った外交をやろうとしているのだろうと思いますが、どういうふうに世論を外交に反映させようとしているのか。最も強力な外交というものは国民とともにある外交であることは、これは間違いありませんので、外務大臣の率直な御答弁をお願いいたしたいと思います。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 最近の毎日新聞の世論調査、これは内地と沖繩と同時に行なわれており、いまおあげになったような結果が出ていることも私は精読いたしまして、私どもとしても非常に参考になったわけでございます。申すまでもないところでありますけれども先ほどもちょっと触れましたように、国民世論の動向を踏んまえてと申したわけでございますが、同時に、何よりも国会における一月以来の——これはもう数年来と申してもよろしいわけでございましょうけれども、特に今国会におけるあらゆる委員会、本会議等における論議が、相当世論の動向を浮き彫りにされていると私は思います。これは非常に貴重なことであり、また、これを国民の世論のあらわれとして相手国に対しても十分な御理解と納得を求めるということが、私は外交の本筋であろうかと、かように考えているわけでございます。ただ、率直に申しまして、何ぶん話し合い交渉にかかわっている問題でございますから、ある程度のフリーハンドを持たしていただき、そうして先ほどもるる御説明いたしましたように、あらかじめ日米両方とも双方の満足できるような合意に達するのには、相当長い討議が必要であることは認めているわけでございますから、この話し合いの進捗に応じて、何と申しましょうか、秘密外交というようなことにならないように十分の配慮をして、その経過に応じて国民の御理解を求め、また御協力を求めるように最善の努力をいたしたい、かように考えているわけでございまして、おりに触れて、たとえばだんだん話が煮詰まっていって、トップ会談になるというような段階におきましては、政治の面においても、総理が党首会談等をもお願いをすることをいまから配慮しているということを公に申しておりますのも、その一端である。かような気持ちを体しまして、私も最善の努力を尽くしてまいりたいと思っております。
  21. 坂本三十次

    坂本委員 この五月十一日のワシントンポストで、アメリカ政府部内でもやはりいろいろ意見の対立があるやに伝えております。国防省は核つき・自由使用を要求する、国務省は日本政府立場相当考慮しているものですから、核抜きを認めるが、できるだけ有利な条件をかちとる、こういうふうにして対立がある。近く国家安全保障会議でニクソン大統領の裁断を待とうというようなことが報じられております。この核のことにつきましては、私は、これはもう核抜きになってしかるべきであるし、そういう結論を期待するのでありますけれども、問題は自由使用のほうでありますが、これがいつまでたってもちらほらと新聞紙上から消えない。核ももちろんでありますけれども、自由使用などにつきましても、そうなったら本土との差別待遇でございます。人権無視でも二十四年間は長過ぎた、だから、ひたむきに沖繩返還に進むのだと外務大臣はおっしゃられましたけれども、基地は本土と沖繩を差別するようなことはなくて、安保条約をそのまま適用しなくてはならない、これはもう疑うべからざる国の方針になってしかるべきだ、こういうふうに私は思うておるわけなのです。そして一九七二年までには返還を実現する、この二つでございますね。これ以外にもう選択の余地がないんじゃないかと私は思うておるわけでございます。  それで、外務大臣は、総理、大統領の頂上会談の前には何か外交方針が明示せられるがごとくにおっしゃられましたけれども外務大臣も、これはもうもちろん一国を代表するわが国の代表でございますので、渡米の前にひとつ基本方針を明示していただきたい、こういうふうに私は思います。外務大臣の行かれる前には、国の基本方針を明示をしなくてもいいのだ、総理の行くときにすればいいのだというようなお考えは、これはちょっといただけない、こういうふうに思うのです。外務大臣の御出発前まで、相かわらず世論の動向は尊重して努力をするというお気持ちはよくわかります、特に私どもには。しかし、国民に対して白紙ということを続けられるということは、これはどうも許されないんじゃないかと私は思いますが、どうかひとつ基本方針を渡米前に内外に明示していただきたい。先ほど外交は相手方もあることだし、また手の内なども見せてはいかぬという技術的なお話もございましたけれども、そういう手の内だとか相手もあるというようなことで根本方針を明示できないということになると、外交を国民とともに行なうというような態度ではないんじゃないか。細部のその他のことは、これは一切おまかせをいたしまするけれども、やはり交渉の基本方針と姿勢というものは、国民にどうしても明らかにしていただきたい。そういうことは、外交の手の内などというような次元を越えた問題だと私は思うておるわけなのです。だから、民主政治における外交の取り組み方の原則の問題でございますから、どうかひとつ、核抜き・本土並みが政府の方針である、これに従って七二年を期して最善の努力をするのだ、国民の盛り上がった世論をバックにして、国民とスクラムを組んで、おれはアメリカへ行くのだから、しっかり応援をしろ、こういう態度が私は最も望ましいし、当然だと思うのですが、ひとつ率直に御意見をお述べ願いたい一思います。
  22. 北澤直吉

    北澤委員長 坂本君に申し上げますが、だいぶ約束の時間が過ぎておりますから……。
  23. 坂本三十次

    坂本委員 はい、わかりました。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまの御意見、御質疑は、私はまことにごもっともだと存じます。ことに私が最初申しましたように、六月が皮切りであろが、皮切りであるだけに、非常に大事な場面である、私もこれはよく自覚しておるつもりでございます。したがって、この問題に向かう基本的な姿勢ということにつきましては、ただいまの御意目もございましたので、十分その御意見を尊重いたしまして、善処いたしたいと思います。  ただ、基本姿勢ということと同時に、ただいまお述べになりましたような数点は、実はその焦点としての最もむずかしい、一番の難点でございますので、先ほど申し上げましたように、まず基大姿勢、そしてその基本姿勢をつくり上げるための双方の情勢判断の合意というようなことが、またその基本において非常に大切なことであるということも考えますると、先ほど申しましたように、ある程度のフリーハンドというものも持たせていただきたいと思いますので、基本姿勢はもちろん明らかにしなければならぬことでございますが、御満足のいく程度においてまではっきりさせることができるかどうか、これらの点につきましては、なお十分検討させていただきたいと思います。
  25. 坂本三十次

    坂本委員 佐藤総理大臣は、沖繩返還なくしては日本の戦後は終わらないという名文句を吐かれましたが、きょうは私は、愛知外務大臣沖繩の本土並みの返還なくしては日本の政治は始まらぬとここで言ってほしかったのでありますが、非常に残念でございます。  最後に、一言だけ御要望を申し上げたいのですが、スタンズ商務長官が来られまして、資本の自由化の問題、残存輸入制限の問題、特に繊維の自主規制などの問題について、日本政府と渡り合いました。幸い日本政府は、国会の決議などをバックにいたしまして、き然としてこれをはねつけたということが新聞紙上に出ております。まことにけっこうなことだと思います。この繊維のことなどは、日本の国内でも関係者がずいぶん多くて、非常に心配しております。私の選挙区に行っても、これは絶対に反対してくれという要望が強うございます。特にこれから日米関係というのは、沖繩が済めば——済まなくても、いまからでもですが、経済的に緊迫した競争時代に入ると思うのです。  そこで、私非常に心配いたしますのは、日本のこれからの沖繩返還日米交渉の大問題、これを煮詰めていくうちに、どこかでどうも経済問題が、自主規制などの問題が取引に使われるのではないかということです。これはもうアメリカ側にすれば、日本を押えるのには沖繩問題が最後のチャンスかもしれない、こう言う人さえアメリカ人の中にはあるそうでありますので、ひとつ日本政府沖繩を有利にしようとして自主規制などを取引に使われないように、それはそれ、これはこれで、はっきり割り切って、最後まで断固たる反対の態度を自主規制などにはとっていただきたいということを特に御要望いたしますが、簡潔にお答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま坂本委員のおことばにありましたが、まさにそのとおりで、それはそれ、これはこれということで、今回自主規制の問題には対処いたしたわけでございます。繊維の自主規制の問題については、少なくともアメリカ側の主張は根拠がないか、少なくとも乏しいということは、いろいろのデータ等から見て、確信を持って主張できることでございますから、これについては、日本としては応諾することはできないわけでありますから、それはそれ、これはこれとして処理する体制を固め、またそれに終始したつもりでございます。経済問題の中には、あるいは先方に言い分のあろうかと思われる問題もないわけではございませんが、これは繊維の問題とはまた別でございますから、これもそれはそれ、これはこれとして処理に当たりたい、こういうふうに考えておりますが、沖繩問題を取引にというようなことは、私どもとしては、全然さような考え方をすべきでない、こういうふうに考えております。
  27. 坂本三十次

    坂本委員 けっこうです。外相訪米の成果を御期待いたします。
  28. 北澤直吉

  29. 田原春次

    田原委員 戦前われわれが西ニューギニアと称し、戦後インドネシアが西イリアンと改名いたしましたが、わが国のすぐ隣にある大きな島に暴動が起こって、鎮圧隊を出しているということが、数日来新聞に出ておりますが、その真相について外務省はどの程度把握しておられるか、お伺いしたいと思います。
  30. 愛知揆一

    愛知国務大臣 詳細にわたりましては、事務当局から御説明申し上げるほうがより詳細であろうかと思いますけれども、御案内のように、西イリアンの住民の今後につきましては、一九六二年の八月にニューヨーク協定というものがあって、それに基づきまして、インドネシア政府の責任のもとに、今年末までに、インドネシアにとどまるのか、インドネシアとの関係を断つのかについて、西イリアン住民の自由適択権を行使させることになっておるわけでございます。この選択権の行使におきまして、インドネシアは国連代表の援助と参加を受けて、その結果を国連総会に報告をする。その報告によって、インドネシアもオランダも、国連を中心とする協定や勧告に従って処理をするということになっていることは御承知のとおりと存じます。  それで、国連といたしましては、協定に基づきまして国連代表を任命した。そうしてこの大使が、昨年の八月から活動を開始して、そうして本年の三月には、現地におきまして、現地及びジャカルタと、両方において現実の行動を開始しておるわけでございます。  その後、国連の西イリアン代表部のことしの一月十九日の発表によりますと、サンズ国連代表は、自由選択権の行使に関連して、インドネシア政府に対して次のような示唆を行なったようでございます。  一つは、西イリアン地域住民に対して自由選択権の行使についての啓発をまず行なうこと、それからその次には、住民の基本権、言論、報道、集会の自由を保障すること、それから、自由な意思を確認するための方法等決定するために地方議会と協議をすること、あるいは西イリアンの政治拘禁者を釈放すること等々といったような示唆をいたしたのでございますが、これに対しまして、インドネシア側も、原則的にこれに応ずる態度を明らかにしておる。そうして所要の措置と思われるものをとっておるようでございます。  そこで、現在の状態でごいますけれども、西イリアンのインドネシアへの帰属に反対する自由パプア運動というようなものが現在行なわれておりますが、西イリアンに残留する一派とも連絡をとっていたもののようでございますし、日本にもこの支部が設けられて、自由パプア運動という本のの支持者というものも一部にあるようでございます。  そこで、少しこまかくなりますけれども国連としては、先ほど申しましたような経過に応じまして、開発の進んでいる海岸の地方においては一人一票主義、それから未開発の内陸部においては原住民代表との協議を勧告いたしたのでありますが、インドネシア側は全地域住民代表をもって構成される特別協議会の話し合いによることを主張いたしまして、国連側も結局これに同意をいたしたわけでございます。  このような自由選択権の行使の方法は、西イリアンを構成する八つの県議会の同意を必要といたしましたが、各県議会との協議は、四月十四日に行なわれたジャャプーラ県議会、これは西イリアンの首都の地域のようでございますが、それとの協議を最後として終了し、すべての県議会がインドネシア政府の主張する方法に同意して、これが最終的に確定をしたのでありますが、この方法による自由選択権の行使は七月半ばから八月初めにかけて行なわれるというふうに情報は伝えておるわけでございます。  それから、海外の自由パプア運動の指導者が一人一票主義を全面的に主張しておるということが外電によって伝えられております。真相はわかりませんが、先ほど申しました制限的な一票主義に反対をしておる。四月の十一日ごろ、ジヤヤプーラの県議会に対して、西イリアンの学生、青年二百名が一人一票主義を主張するデモを行なって、インドネシア軍隊と衝突をして、死傷者があり、パプア人の行政官のあるものが逮捕されたという、これもまた確認されておりませんが、外電の報道がございました。  それから、ごく最近、五月六日、シドニー並びにポートモレスビーからのABC放送としては、西イリアンの中部高地のウイツセル湖岸の地方におきまして、四月二十五日、パプア人警官を含めた住民三万人の反乱が発生して、同地駐在のインドネシア人行政官及びその家族を強制退去させた後、飛行場を破壊し、同二十七日から同地の飛行場を含めた五つの飛行場を占拠したという事件も起こっておるようでございます。  これが現に起こっております事態でございますが、われわれといたしましては、この状況の発展に対しまして関心を持って現在見詰めておるというのが今日の状況でございます。
  31. 田原春次

    田原委員 住民の意思によるということはきまったようでありますが、住民の定義の問題です。インドネシアから派遣されておる軍隊、警察官、官吏等も、住民として一票ずつ行使するのか、現地に生まれて現地に住んでおる居住民だけに限るのか、明らかじゃないのです。したがって、いまあなたのおっしゃったような情報については、われわれも多少聞いておりますが、東京でほのかにわかる程度によりますと、パイプの中にも、独立運動をするものが政党で七つあり、それから独立運動者として四団体ということで、たとえばオランダに亡命しているカセッポとか、アメリカに亡命しているヘルマンとか、そういうものからのいろいろなニュースや陳情書もきておるわけでございます。日本としては、単に隣の火事のようなつもりで見ておっちゃいかぬと思うのでありまして、太平洋戦争、大東亜戦争というものの結果、東南アジアから始まり、アフリカに及んで、多くの民族が独立いたしました。パプアが最後に残っておる民族だと思うのです。いまインドネシアに帰属するか、パプアに帰属するか、あるいは第三の道として関係国の暫定的な委任統治にするか、この問題について議論いたしません。問題は、隣でありますから、もっと正直、親切にわれわれが手を伸ばすところは伸ばしていかなければならぬじゃないか。聞くところによりますと、アメリカは一億ドルの借款をインドネシアに与えて、銅山の開発に着手しておるそうでございます。そういうむしり取りのような政策はいけないのでありまして、やはり独立の完成、それから経済、衛生、文化、交通等の改善発達、隣の国として協力し得る限度はたくさんあると思うのですが、そういう点についての態度がまことにはっきりいたしておりません。この際、いまお話を聞きますと、暴動あるいは対処しておる動きだけでありますが、日本はどう対処するか。単に見物であるのかどうか。特に南米のボリビアからもサンズという大使が国連代表として現地へ行っておりますが、日本は全然関与しない。人によっては、インドネシアに対する遠慮があるとか言いますが、そうでなくて、正しいことに対してはやはり正しい方法を示していくのが日本の行く道じゃないかと思うのです。だから、先ほどの御解説、御説明の次にあるものとして、日本はどう対処するかという対策をぜひ聞きたいと思います。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど説明いたしましたのは、従来の経過と現状の暴動について得ております情報の大要でございますが、先ほど申し上げましたように、西イリアンの問題につきましては、国連がいわばテークアップして、そして国連として相当努力を展開しておる現状におきまして、日本がこの紛争等に介入するということは好ましくないことである。同時にしかし、事態の推移については、先ほど申しておりますように、関心を持って見詰めておるのが現状でございます。  それから今後どういうふうにするかということにつきましては、こういう紛争などが片づいて、そして国連の示唆によるような決着がつきますことを期待しておるわけでございますけれども、同時に、パプアあるいは当該の地域における開発や民生の安定については、われわれといたしましても、なすべきことについては十分の用意をしながら対処する心がまえを持っておるということが大切なことではなかろうか、かような考え方を基本的に持っておるわけでございます。
  33. 田原春次

    田原委員 客観的に静かに見るということは、無策ということでありまして、一定の方針を立てて民族の独立運動を支援した以上は、解決に対してこういうふうにしなさいという積極的な仲裁なりあっせんなり調停なりをやるべきじゃないかと思う。国連にまかせるといっても、国連も駐在員の数も少ないのでありまするから、日本からやはり力をかして——力という意味は、いろいろな調停、あっせんの努力意味であります——やるべきだと思いますが、それに対する努力が足らない、もう少しやるべきだと思いますが、いかがでしょう。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申しましたように、国連がいま大いに努力をしておる。そしてこの解決策については、国連の一員としての日本も参加いたしておるわけでございますから、今後必要とあらば、また適当と考えれば、国連を通じてこの紛争問題等につきましては日本側としてお手伝いをすべきではないか、こう考えております。
  35. 田原春次

    田原委員 日本国連の一員でありますから、隣の国でもございまするから、日本から、どちらに属するということでなく、どちらを支援するということでなく、真相調査団のごときものを国連の了解を得て派遣する必要があると思うのですが、いかがでしょう。
  36. 愛知揆一

    愛知国務大臣 現に紛争が行なわれている最中でございますから、その調査団なりあるいは将来の再建といいますか、開発についての目的を持つ調査団——調査団としてもいろいろの性格が考えられると思いますが、今日のこの時点において直ちにいま政府としての態度を表明することは困難であろうかと思いますけれども、しかし、先ほど申し上げましたように、日本としてはやはりパプアの問題については相当な関心を持たざるを得ない、また持つべきである、こういう御発想に対しては、私は十分傾聴すべきものだと思いますので、おそきに失したとおしかりはあると思いますけれども、あるいは民間等におきましての御計画等につきましても、十分御相談をし、十分御協力を申し上げる用意は持っておるつもりでございます。
  37. 田原春次

    田原委員 もういいです。
  38. 北澤直吉

  39. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 私は、臨時に外務委員にならしていただきまして、与野党の外務委員の皆さんの御了解を得まして、本日はパプア・ニューギニア問題を主として質問をいたしたいと思っておるわけであります。このバックグラウンドといいますか、背景を一応先に外務大臣にのみ込んでいただきまして、質問をしたいと思うのであります。  昨年の九月ごろからだったと思いますが、東西ニューギニアの問題につきまして、パプア民族の独立を含めまして、豪州領あるいは国連信託統治地域における開発の諸問題について、日本の国会議員も関心を持つべきである、ただいま御発言のありました田原さんは、長く南方のほうに戦前、戦時中をも問わず御関係がありまして、いろいろとお呼びかけがありました。ここにいらっしゃる秋田大助君あるいは中曽根康弘君、大平君等といるいろ相談をいたしまして、国会議員のニューギニア懇話会というものを細々ではありますがつぐり、だんだんこれを発展さしているわけであります。そういうものがあるわけです。そこで、ニューギニアというものは、世界における全く未開発——開発途上国というようなことばでいう範疇に入らぬ未開発の国であることは御承知のとおりであって、往年の国権主義者からいえば、日本民族の夢である。われわれはそういう見解はとっておりませんが、しかし、距離的にも非常に近いところであるし、東西ニューギニア開発に対して非常に関心を持っておった。十四年くらいも前になりますか、一九五五年に、私はニュージーランドの総理大臣、当時のホランドというのに呼ばれまして、ニュージーランドにおける社会保障、ことに国民年金の問題を勉強に行ったことがあるわけでございます。その当時は、豪州、ニュージーランド両用とも日本に対する警戒、対日戦争の憎悪心などというものもなお残っておりまして、ニューギニア開発問題などは、日本民族として当然頭の隅に入れ、あるいはこれがだんだん拡大していく要素を十分に持ったところでありますが、なおタブー的なものになっておったと思うのであります。近来、これらは国連の舞台におきまして、非常に日本の将来協力する体制の上において情勢の変化ありというふうに私は見ておるわけであります。こういう問題に対しての基本的な方針、ただいま西イリアンにおける。パプア民族の独立の問題を伺いましたが、東西ニューギニアひっくるめてその開発が世界の進運に寄与するというたてまえで、わが国はまたどういう協力をすべきか、基本方針をまず伺っておきたいと思います。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまお述べになりました経過や、あるいはアイデアと申しましょうか、そういうことについては、私もかねがね仄聞と申し上げてはいかがかと思いますが、若干は伺っておったわけでありまして、たいへん意欲的なアイデアであることは私も承知いたしております。ただ、先ほど申し上げましたように、たまたまいま現地で騒乱が起こっておる。私の期待並びに観測としては、早晩何らかおさまるのではないだろうかと期待いたしておりますけれども、ちょうどただいまそういう時期でございますから、いつごろどういうふうな目的でこういうふうにやるのだということをこの時期に政府として表明するということは、ちょっといささかいかがかと思いますので、十分将来の好ましき状態を頭に描きながら、日本として協力をするという考え方や体制を検討しておる、こういうことが現在の段階として好ましいやり方、態度ではなかろうか、かように考えているわけでございますが、先ほど田原委員にもお答えいたしましたように、いろいろの御計画あるいはアイデア等に対しましては、政府といたしましても十分御相談に乗り、また御協力をお願いする、こういう姿勢でおりたいと考えております。
  41. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 前の話を受けての答弁もありましたので、したがって、西イリアンの問題に執着されたような感じなんです。私がきょう取り上げようというのは、逆にパプア・ニューギニアといわれるいわゆる東部地域、面積でいえば、西イリアンに比して大体一・二倍ぐらい多いと思うのですね。この中は、御案内のように、国連信託統治地域と豪州領パプア、こういう植民地の形態を持っておるわけですが、そこで、その東部ニューギニア、この開発については、かなり国連信託統治委員会、ここで相当膨大な資料も出され、討議をされておるのですが、わが国の代表はこの委員会には入ってないわけですか。それからまた、国連総会において、あるいは経済社会理事会等においてこの問題をわが国の代表が発言しておるかどうか、伺いたい。
  42. 大川美雄

    ○大川説明員 お答え申し上げます。  ニューギニア信託統治地域は、国連の信託統治理事会がその施政を獲得しておりますが、わが国は信託統治理事会のメンバーではございません。信託統治理事会は毎年国連総会に報告を出しまして、わが国は、国連総会の第四委員会における信託統治理事会の報告の審議の過程でこの問題に参画している状況でございます。
  43. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 その場合に、委員会のメンバーでなくとも、関心を寄せておれば、どういう国かとの接触をとったりあるいは単独に発言する立場はありませんか。
  44. 大川美雄

    ○大川説明員 信託統治理事会は現在六カ国のみをもって構成しておりますし、理事会のメンバーでない国が直接会議に出ましてその討議に参加することは手続的には認められませんが、理事会の各メンバー国との非公式の接触においてわが国の意向を反映することはできるのであります。
  45. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 それで、過去において、東部ニューギニアのパプアの問題あるいは国連信託統治地域を将来どういうようなものにするかということについては、リベリア代表の意見に賛成であるというようなことを伺っておりますが、そうですが。リベリアの代表の意見というのはどういう意見ですか。
  46. 大川美雄

    ○大川説明員 昨年の第二十三回国連総会で、パプアニューギニア問題が第四委員会で審議されましたとき、この問題につきまして二つの決議案が提出されました。その一つが、昨年の暮れまで信託統治理事会の理事国でありましたリベリアの提出した決議案であります。それからもう一つは、主としてアフリカ諸国を中心とするアジア・アフリカ諸国二十七カ国案でございました。両方の決議案とも、信託統治理事会の報告をテークノートし、ニューギニア信託統治地域の自治ないしは独立への過程を促進すべき点では同じ意見表明しておりましたが、二十七カ国案は、施政国に対しまして早期に独立の日取りをきめるよう要求しておりましたのに対しまして、リベリア案のほうは、そういったはっきりした日程を要求せずに、徐々に自治への発展を推進すべきであるというような表現になっておりました。実は、この両方の決議案がいずれも総会の第四委員会で可決されたのでございますが、わが国はリベリア案には賛成をいたしまして、アジア・アフリカ諸国二十七カ国案には棄権をしたのでございます。総会の本会議におきましては、結局二十七カ国案のほうが三分の二の多数をとりまして、採択されたのでございます。
  47. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 いまの問題は、国民一般に十分な理解がないわけですから、できる限りそういう報告は外務大臣の発言においても適当な機会に発言をされて、そうして将来ニューギニア問題の解決のいろいろな過程がありましょう、いろいろな段階があるけれども、これを慎重に、かつまたときには大胆に、日本のニューギニア開発に対する協力を国策として打ち出すならば、非常に有利に展開していくところもあるのではないか。人口問題にしても、あるいは世界の住宅問題にしても、いろいろ考えられるところが多いわけです。いま西イリアンの問題は、インドネシアとの関係日本人もよく知っておるし、またインドネシア政府の方針と深い関連があることでありますから、発言も慎重にしなければなりませんが、幸いオーストラリアとの関係は今日非常に順調で、しかもそのオーストラリアが最近では日本経済協力を期待する——これは民間だけです。一昨年の日豪経済委員会は、たしかオーストラリアのキャンベラで行なわれたと思う。このときに、オーストラリアの経済委員長、ちょうど足立さんと同じ立場にある人が、突然東部ニューギニアの開発については、日本と共同開発をする意向がある、細目については今後あらゆる機会に検討していきたい、こういうことを言い出しているわけであります。これは書類で知ったのではなしに、永野重雄さんから私は伺ったわけです。その後いろいろ調べてみると、政府と日豪経済委員会のこの問題に関する限りの折衝は必ずしも順調でない、政府のこれに対する関心、協力というものがまだ示されておらないように思うのです。実際実務的にやっているのは、商工会議所の手塚という専務理事ですが、この間電話で話したら、だいぶおじいさんのようですけれども、しかし、事情は非常に詳しく知っておって、実は政府側の協力をも期待しておるのだけれども、今日まで何ら具体的な折衝をしておらぬ。だから、あなたらのほうもおかしいじゃないかという話を私はしたわけですが、これはざっくばらんな話が、いまどういう段階にありますか。こういうことがオーストラリアの足立正氏に比する者から言われて、その後一年半も東部ニューギニアの経済開発について何ら具体的な進捗がない。何でも調査団みたいなものは民間で一ぺん出したそうですが、それはどういうような関係に立っておるか、この際、詳しく聞きたいと思うのです。
  48. 田中常雄

    田中説明員 お答えいたします。  いまから四年ほど前の日豪経済合同委員会で、日本と豪州が協力してパプア・ニューギニアの経済開発を問題にすべきであるという決議がされました。それに基づきまして、三年前でございますが、西川日商社長を団長といたしまして、財界のメンバーを加えたパプア・ニューギニア調査団というのが現地に行ったのでございます。その調査団の報告書によりますと、パプア、ニューギニアとも木材等非常に資源が豊富のように見受けられる、しかし、あまりに未開発の地域であって、これを開発するためには、港湾施設をはじめ道路、交通問題、その他非常に膨大な固定資本の投下が必要であろうという結論になったわけであります。そして関係業界といたしましては、簡単に申しますと、どこから手をつけていいのかわからない、また、手をつける場合においても、非常に膨大な資本を必要とするということがございますので、あまりいまのところ積極的な進出を実際問題として示していない状況でございます。  一方、御存じのように、豪州の西部及び北部において新たな鉱山等がどんどん発見され、開発されているのが現状でございますので、日本の大手は、どちらかというと、そちらのほうの開発に現在力を入れているというのが現状でございます。  以上でございます。
  49. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 経過はよくわかりました。それはオーストラリアの西部地域が非常に有望である、最近でもいろいろな資源が開発され、また発見されて、世界的に話題をまいておることをわれわれも承知しております。しかし、それとともに、将来性、未開拓なものを今後切り開くという意味で、東ニューギニアの状態というものは、なるべく早い機会に日本自身も知っておく必要があるのではないか。これはオーストラリア政府の了解が要ります。伺いますと、オーストラリアがそういうことを言い出しても、日本から行く者があると、こまかい身分調査などもしておるようでありまして、必ずしもそう簡単にいくものとは思わないけれども原則が打ち出された以上、政府はやはり日豪経済委員会とも十分な連絡をとって、これが状態の知悉ということについて全力をあげるときに入ったと思うのです。  で、実は国会ニューギニア懇話会も、ひとつこの夏には調査団を出してみたらどうかということでありまして、何か私にも御勧誘があり、団長候補にも上がっておるので、まことにこれはありがたい話ではあるけれども、——眠けざましに一つ申し上げる。私は解散があるという説なんです。大学立法は解散をしてもやらなければならぬものである。解散を覚悟してもやらなければならぬ。もとより、沖繩問題解決は外政上、内政上非常に重要な問題であるが、これがあらわれてくると自民党が有利にならないというための早期解散説ではない。大学立法も解散の要素ではないか。また大義名分があるという説を反主流派ながら立てて、佐藤総理大臣に塩を送っているわけであります。どうも佐藤総理大臣も、公明党にポーカーフェースだなんて言っておりますけれども、私が申しましたような雰囲気にだんだんなってきておるし、田中幹事長はやりたくてうずうずしておる。こういう状態ですから、このニューギニアの問題は持ち越しになる。けれども、もしこういうような企てがあって、そして超党派的にこの問題を推進すべきだということになれば、政府はニューギニア開発に対してもっと積極的な姿勢をとり、少なくとも昭和四十五年度あたりからは何らかの予算措置も講ずる考え方を持たなければいかぬというふうに私は感ずるのですが、これは大臣から答弁を伺っておきたい。
  50. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま従来の経過は御説明申し上げたとおりでございますが、今回の日豪経済委員会、民間の委員会の方々、これは東京で今回やられたわけで、私もお目にかかりましたけれども、特にニューギニアの問題を私にはお話はございませんでした。しかし、そういう経過もございますし、先ほど申し上げましたように、こういう御計画、アイデアに対しましては、私も敬意を表しておるわけでございます。いま解散のお話もございましたが、そういうことは抜きにして、ひとつお進めをいただく場合におきましては、できるだけの御協力を申し上げたいと考えております。
  51. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 いまのニューギニアの問題について、西川調査団というのは行ったわけですね。それの報告によると、まず何から着手すべきである——それからその報告は出ているわけですね。
  52. 田中常雄

    田中説明員 さようでございます。
  53. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 どういう輪郭になっていますか。
  54. 田中常雄

    田中説明員 先ほど概略御説明したのでございますが、調査団の報告書、私いま手元に持っておりませんが、やはりどちらかというと非常に多くの困難性を指摘しております。その困難性のべースは、やはり膨大な投下資本が必要であるということでございますが、たとえば木材等については、一つの有望な商品であるということがうたわれております。  以上でございます。
  55. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 外務大臣、もう解散問題ではないのですが、あなたはこれから訪米をされる寸前であります。それから後の外交上の政治日程というか、すでにスケジュールがきまったものがあります。国内政局というものは、ときにはそういう外交問題よりも優先するわけですけれども、また私は別の見解を持ちますけれども、いまきまっておるのはどういう順序になりますか。
  56. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これも突然のことでございましたから、正確にここへ表を持ってきておりませんけれども、まず本日この委員会でも冒頭に御質疑がございましたが、対米関係で申しますと、七月の二十九日からになりましたか、数日間日米経済合同委員会、これは東京で開催される、これは決定いたしております。それから国連総会は、御承知のように九月中旬に予定されております。それから十一月総理訪米ということも、日米間では原則的な合意ができております。対米関係で年内のおもな問題はそういうことでございます。それから近くドイツの総理大臣が来日されます。それから追っかけてインドの総理大臣が来日されることに、これも先般インドの大統領が急逝されましたが、にもかかわらず、予定どおり行なわれるはずになっております。それから八月は日韓の経済合同委員会、これは東京で本年は行なわれます。それからそのほか、九月には、ヨーロッパの関係ではブリティッシュフェアというのが東京で行なわれまして、マーガレット王女、それからクロスランド商工大臣というような方々が来日されて、これは九月二十七日か八日からの行事でございます。  そのほか、御必要に応じましてプリントで差し上げてもよろしゅうございますが、いわゆる外交日程相当詰まっております。盛夏のほうにかけましても、先ほど一、二申し上げましたとおりございます。大体年内は、率直に言わせていただ分れば、応接にいとまなしというわけでございまして、出かけていかなければならぬもの、あるいけこちらで迎えなければならぬもの、それぞれ相当の重要性を帯びた議題予想されておるわけでございます。
  57. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 外交日程は承知いたしました。政局の重大性というものは、それをオーバーすることもあるという私の見解であります。それ以上はきょうは申し上げないことにいたします。  ニューギニアの問題できょうは御質問をいたしたわけですが、最後にもう一つだけ、きょうは政治的な議論は申し上げませんが、ただ非常に残念なのは、ベトナム戦争というものがまだ終わってないわけです。ところが、去年の春ぐらいまでは、ベトナム問題を言わざれば人にあらずであったが、その後パリ会談が開かれて、やはりいろいろな曲折があるわけですから、そのたびごとに、日本政府は少しでも完全平和が達成されるために努力をしなければならぬというふうに私は思うのです。その原則は何かといえば、やはり北爆停止の問題でも、アメリカが一歩北ベトナムに先んじて、みずから停止を実現するということで、和平は切り開かれていくということを、昨年以来、外務委員会でも席をかりて申し上げたし、総務会ではもう十数回申し上げて今日に至り、どういうことでございますか、これは決して自分の申したことが当たったという意味で申しているわけではございません。そんな大げさなことではありませんが、とにかく私どもの見通しのように、ベトナム戦争というものは、単にイデオロギーあるいけ主義、主張の戦いだけではない、民族戦争的な性格を多分に加味した戦争であるという経過をずっとたどって今日に至ったのであります。  昨年、私は、予算委員会の総括質問をしたいというので、その際にいろいろなごたごたがありまして、ついにさせられなかったが、質問趣意書というものを出したときに、明確に長期展望として、南ベトナムの連立政権の樹立、中立の厳守、アメリカ軍の撤退の時期明示、北ベトナムのこれと対応する撤退、アメリカ軍にかわる国連監視機構、実力を有するもとでの自由選挙、これは第三者が言うわけですから効力はないにしても、それが一つの道であると言っておったのが、非常にわが意を得ておりますのは、解放戦線が数日前に十項目の新提案をしておる。これ、みんな同じですわ。国連監視機構のもとにおける自由選挙ということが、ただの自由選挙、民主的な自由選挙というだけであって、ことごとく私どもの見解と解放戦線というものは同じ考え方を大体持っておるということは、南の解放戦線というものはきわめて現実的で、他の共産主義諸国と必ずしも同一の硬直した考え方で臨んでおらないという点で、実力を持っておればこそかもしれぬが、高く評価していい提案であると思う。これはおそらく多少の波乱曲折はあろうけれども、これにアメリカが対応する柔軟性を発揮したときに、完全にベトナム和平というものは達成されると私は思うのです。サイゴン政権というものは別に壊滅するわけじゃないけれども、いまのサイゴン政権というものは発展的解消をして、やっぱり新たな民主的政府の一員になるということを決意しなければ、この問題は解決できないというふうに私は見ておるわけです。私は、ベトナム和平に対する熱心な現実的な主張者でもあるし、万一これが解決しない限りは、沖繩を何ぼ言ったって返るわけがないという考え方を持っておるわけであります。で、この一、二年くらい後にベトナムの完全平和が達成されて、そして一、二年後に沖繩は本土並みで返還をしてもらいたいというのが私どもの希望です。沖繩問題はさておいて、解放戦線が出した十項目の新提案に対し、アメリカがこれに対応して柔軟な姿勢をとるべきであるという考え方くらいは、政府が陰に陽にアメリカに伝えるべきだというのが、きょうニューギニア問題以外の私のただ一つの質問であり、これは悲願であるわけでございますが、聡明なる外務大臣はどういうふうにお考えであるか。
  58. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ベトナム戦争の終結につきまして、川崎委員がかねがね御熱心な、また一つの基本的なお考えのもとに御意見をお述べになっておられますことは、私も昨年当委員会で委員としても拝聴いたしましたし、その後いろいろの機会に拝聴いたしまして、私も敬意を表している次第でございます。ただ、この十項目の解放戦線の提案について、現在の私の立場として、これにコメントすることは差し控えたいと存じます。ただ、私も、その終結について一日もすみやかに、俗なことばで言えば、撃ち方やめができて、そしてその後の再建に取りかかれるような日の一日もすみやかに来たらんことをこれ希求しているという次第でございます。
  59. 川崎秀二

    川崎(秀)委員 どうもありがとうございました。
  60. 北澤直吉

    北澤委員長 曽祢益君。
  61. 曾禰益

    ○曽祢委員 きょうは、坂本委員川崎委員の与党の委員諸君からも、非常に建設的な意見を含めての有益な委員会の審議が行なわれたと思うのでありますが、私は非常に関心を深くしております。  大体同じような問題になるかもしれませんが、まず沖繩問題であります。この前から私は外務大臣に伺っておりますように、もう外務大臣の御出発も近づいているのであります。本日の段階において、自民党の党議もまだ交渉原案がきまってないようにうかがわれるのであります。これは他党のことについて内政干渉するつもりじゃありませんが、自民党の与党の党議もきまり、政府交渉に対する基本的な方針の中に弾力性があってもいいと思うのです。しかし、そういうものがやはりもうきまる時期が来ているのではないか。これはしばしば過去二回にわたって伺ったのでありますが、御出発が三十一日と承っておるので、もう時日もあまりないようですが、これも一回限りの交渉じゃありませんけれども、一体外務大臣としては、第一回の重要な交渉に臨むにあたって、交渉の基本方針について党議及び閣議がきまるのをいつ、どのようにお考えになっているのか、もう一ぺんひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  62. 愛知揆一

    愛知国務大臣 だんだん時期が迫ってまいりましたので、御質疑のように、私といたしましても、これはここでお述べをするのが適当かどうかわかりませんけれども、自由民主党のほうとも密接に連携をとって、交渉に臨む基本的な考え方あるいは交渉にあたる私に対しての心得べき姿勢というようなものは、おっつけきめてもらうことになるであろうことを私も期待いたしております。
  63. 曾禰益

    ○曽祢委員 閣議の決定といいますか、政府の方針というものはどういうことになるのですか。交渉の原案という基本方針ということでなくて、言うならば基本的姿勢とでもいいますか、そういうような形できめられるのかどうか。これは先ほどの御質問にもありましたが、毎日新聞の世論調査を見ても、われわれがかねて主張しておったように、早期——これは即時を希望するけれども、やはり両三年中という意味だと思うのです。早期かつ核抜き・本土並み——本土並みというのは、安保条約の厳格な適用、本土と何ら法律上、条約上あるいは運用上区別しない、これがわれわれは基本方針だと思うし、これを基本的かまえといいますか、国論の大体のコンセンサスと見て、これを尊重しながら、そこに弾力性を持たしてもいいとは思いますけれども、そういうようなところできめて、大体国民的な世論のバックと祝福と激励を受けながら、むずかしいと思われるけれども、この交渉に臨まれる、そういうようなおつもりではなかろうかと思うのですが、政府の方針はどういうふうになるのかということを伺いたいと思います。
  64. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府の方針として、たとえば一発勝負の交渉ごととは考えられませんので、交渉原案、訓令という形のようなものを私は予想はいたしておりません。やはり交渉に臨む基本的な心がまえというようなことになろうかと思いますが、それは早期返還であり、それから日本の主体的な立場に立って沖繩を含む日本の安全を確保するということであり、安保条約の体系の中で処理したいということであり、それらを全部総合して国民的世論の上に立って交渉する、おおよそ柱と思われる基本的な姿勢はそういうことになるのではないか、かように考えております。     〔委員長退席、秋田委員長代理着席〕
  65. 曾禰益

    ○曽祢委員 これ以上この点は突っ込みませんが、核抜き・本土並み・早期返還という基本的な態度でぜひひとつ交渉に当たっていただきたいと希望を申し上げておきます。  それから、これは少し早過ぎるような議論というふうにお考えかもしれませんが、やはり重大な問題だと思うのは、いよいよ総理が十一月の末に行かれていわゆる決定的な段階になるわけですが、総理が最後に詰めとしての頂上会談をやられた結果どういうものが生まれるのであろうか。これは総理が行かれて何か形式的な条約を結んでぐるということはあまりに異例ではないかと思われるので、やはりトップレベルにふさわしい基本方針が合意されたというような形になろうと思うのですが、その場合に、われわれとして重大な関心を持っているのは、単に早期返還、たとえば七二年以内に返すということだけが、いわゆる基地の態様、あり方と離れてきまって、それで基地の問題については、時間を置いて継続審議みたいな形になることが一つ理論的にあり得る。おそらく総理もそういうことをやや否定した形で、やはり基地と返還とはうらはらの関係にあるのだから、早期返還はその場合に時期はおくれるけれども、トップレベル会談における会談内容は、当然基地の態様についても少なくとも大まかな線の合意がなされて、つまり、基地については大体こうだ、安保並みあるいは総理や外務大臣が心配される特別協定が必要かどうかということを含めて、返還の時期と基地のあり方についての概要の意見交換がなされて、そのことが少なくとも共同コミュニケに出る、そのほうが普通じゃないかと思うのです。つまり、基地の返還の時期だけがきまる、これが共同コミュニケに発表される、それで基地の内容については、やはり継続審議という形で続けてやる、このパターンと、そうでなくて、基地の態様も含めて合意して、そもそも両方含めたものが共同声明、共同コミュニケの形で発表される、その点をどういうようにお考えになっておるか、お示し願えれば幸いだと思います。
  66. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点については、ことしの初めですか、あるいは昨年暮れの臨時国会のときですか、その当時から私申し上げておりますように、大体いま曽祢委員のお話しのようなことが普通考えられる結末ではなかろうか、かように考えております。時期だけがきまって、あとのことはきまらないで継続的に審議するというようなことでは、これは双方とも不適当ではなかろうか。ただしかし、その頂上会談のときにどういう形にその合意表明されるかという方式、フォーミュラ等については、いまにわかに予断は許しませんけれども、少なくとも返還の時期と基地の態様の、おことばにもございましたが、大まかな考え方というものについては合意が望ましい。また問題としては、これはいわゆる条約とかなんとかいう形になるのかならないのか、そういうことは別といたしまして、考え方としては、一つの中で討議し、また結論づけたい問題だ、かように考えるのがすなおな考え方ではなかろうか。私、昨年就任以来そういうふうに考えておりますし、現在も大体そういうことを予想していいのではなかろうか、かように存じております。
  67. 曾禰益

    ○曽祢委員 そうだろうと思うのですが、そこで、これは新聞報道だけのことで、私の記憶が違っているか、あるいは事実が違っていれば別ですけれども、そう遠からざる前に、たしか田中幹事長が、総理が行かれる以上は、単なる共同コミュニケ——これはおそらく普通の場合には一種の合致ではあるけれども、国際条約として国会に承認を求めるという意味で、普通はないという形だが、そうではなくて、文書か何であるかは知らないけれども、やはり国会に承認を求めるような形の合意書みたいなものをつくってきてほしいというようなことを言われたやに聞いておるのです。その事実を直接外務大臣から別に確認を求めるのじゃないけれども、そういう意味で、第二の問題は、原則としていまの第一の問題からいえば、時期だけきめて、基地のあり方については継続審議、これはよほど困った場合とか特別な場合以外にはちょっと考えられない。返還時期と基地の態様の基本に関する合意が最高レベルできまった、それは普通だったら共同コミュニケ程度のものになる。しかし、その場合に、内容もそうですが、形式等についてもまだ全然考えていないが、あるいはそういうような場合に、ワシントンの合意そのものが条約的な、直ちに国会に提出するような場合があるのか、それとも、この前の佐藤・ジョンソン会談のように、普通のコミュニケが出て、その中で時期が到来している小笠原のほうだけが先に別途外交の通常ルートで協定という形で決定され、これが国会の承認を得る、そのどっちの形になるとお考えか。もう一ぺん言うと、トップレベルの共同コミュニケ的なものを一種の国際条約として、直ちにそのものを国会にお出しになる、そうすると、これは政治の時期に非常に関連するわけですね。十一月総理が帰ってこられて、直ちに通常国会あたりにそのものが国会承認の形として出るわけですね。そういう場合と、そうでなくて、一応共同コミュニケだけを出して、これはあくまで政治的なものですから、国会に報告はされるだろうけれども承認を求める意思決定の条約案件は、別途普通のレベルで、普通のチャンネルで協定書をつくって、そしてそれをあらためて国会に承認を求めるとすれば、これは通常国会の相当進んだときに同会に承認を求める、やはり七十年の春というような形になるのかどうか。そこら辺のことは非常に政治的の判断に重要な影響を及ぼす事態だと思うので、どちらをお考えであるか、その点について御意見を伺うことができれば幸いだと思います。
  68. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほども申し上げましたように、どういうフォーミュラでその合意が表に出るかということについては、これは中身に関連いたしますものですから、まだ現在こうこうこういうようなものになるというようなことを予断で申し上げるのには時期がちょっと早いと思います。いろいろの角度から申し上げてみれば、通常の場合で、しかも内容が国会承認の必要というものが見られないような内容であれば、たとえば共同声明、従来のような形であれば、国会承認を求める法規的な手続は必要ないのじゃないかと思います。しかし、政治的にはもちろんその共同声明に対して大いに御論議をいただくことになると思います。それから、何しろ観念的な問題でございますから、そして先のことでございますから何ですが、国会の御承認を得なければならないという事項を含みます場合には、その形式のいかんを問わず、これは当然国会の御承認を得なければならないものであると考えます。これは条約という形の場合もございましょうし、あるいは交換公文という形もございましょうが、これは形式並びに内容によって国会承認の手続を経るべきものだ、かように思います。  それから、先ほどお話がございましたように、私は考え方としては、時期と基地の態様の少なくとも大まかなところには合意を求めるべきものであると現在の状態では考えておりますけれども、しかし、この基地の返還は、何しろ長年にわたって、そして相当な基地がございますところでもありますから、具体的な、あるいは技術的な処理すべき問題はずいぶんたくさんあると想定されますから、そういう点については基本的合意がきまりましてからあと、いわば事務レベルと申しますか、あるいはそれの中にも、問題の大きなものと、法律事項あるいは予算事項等が予想されるわけですが、そういう問題については、当然それぞれの項目、形において国会の御承認を得なければならないものがあるのではなかろうかと想像されますが、それは大まかな合意がありました後に、いわば継続協議というものが行なわれるということも予想しなければなりませんし、国内的には所要の手続が必要じゃなかろうかと考えるわけでございます。いま予想し得るいろいろのフォーミュラ等についても、頭の中にはたくさんございますけれども、何しろ中身がまず先でございますので、たいへん行き届かない答弁で恐縮でございますが、さように考えておるわけでございます。
  69. 曾禰益

    ○曽祢委員 いまお話しのように、なかなかむずかしい情勢といいますか、内容がまだ不確定要素が多いのに話を詰めるのはいかがかとも思うのですが、もう一点だけ伺いたいのは、いまのお話しのように、共同声明で返還の時期あるいは基地の態様の原則的なことがきめられる。それは普通だったら外交文書としてそれ自身が承認を受けることにならない。また、おそらくそれだけでは足りないので、どうせ付属協定的なものがかなりついてくるだろうという点からいっても、一応共同声明だけは出るということが予想されますが、ただその場合に、内容が、私は、これはそういうことがあってはならないと思うのですが、かりに基地の使い方について、総理や外務大臣が、いざというときのいわゆる留保条項的な特別協定を、どうしても安保条約をそのまま適用できないというような条件で、合意せざるを得なかったというような場合には、そのことは非常に大きな政治的な約束の意味をなしますから、もしそういうことを明確に共同コミュニケにするような場合には、その共同コミュニケそのものが一つの大きな国際約束として新たな義務を負うことになるので、それはある場合には普通の共同コミュニケでは済まないような感じがするのです。付属のいろいろなこまかい規定の問題ではなくて、共同コミュニケの合意そのものが新たなる条約上の義務というふうに考えられる。そういう場合には、共同コミュニケそのもの——共同コミュニケの形になるかどうかわかりませんけれども、ワシントンのトップレベルの会談の結果そのものが、国会の承認を経るような内容の外交文書になることもあるのではないかと思うのですが、その点だけもう一回伺いたいと思います。
  70. 愛知揆一

    愛知国務大臣 内容と形式と両方に問題が観念的にあろうと思いますけれども、国会の御承認を得なければならないという性格のものがありますような場合には、これは形式が条約であるといなとを問わず、これは所要の手続をしなければならぬと思いますけれども、いまのところそういうところまでは考えておりません。
  71. 曾禰益

    ○曽祢委員 第二に伺いたいのは、スタンズ商務長官との応酬において、国会の議決もありまして、繊維のいわゆる自主規制については、はっきり言えば、これをはねつけたといいますか、これは断わったわけですが、先方説明の中に、かなりこまかく、たとえば五%ぐらいの年率で上がるぐらいならいいけれども、年に二五%も上がっては困るのだ、実績は認めて、ある程度の率でそれ以内に押えてくれというような、そこまで譲ったといいますか、細目に触れて、だから考えてくれというような話は全然なかったものであろうかどうか。だからそれでもいいという意味ではありませんよ。それでいいという意味では毛頭ないのですけれども、向こうも、つまり自主規制に対する熱意、まあ言うならば、あらゆるテクニックを使ってまでもきたかどうかということの判定の意味で伺うのですが、その点はいかがだったのでしょうか。
  72. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点はございません。話の中に出ておりません。これは詳細に新聞に報道されているとおりでありまして、政府といたしましては、この繊維の自主規制については、沿革的にも、経済的にも、あるいは見通しの問題からしても、あるいはアメリカを除く国際的関係、各国間の動向から見ましても、理のないことであると思いますから、これはオーケーができない。二国間においてオーケーできないのみならず、そのほかの場にお持ち出しになることをもわれわれとしては反対せざるを得ない、こういうことで終始いたしております。  それからなお、こちらがあげました数字的の根拠等について、若干先方は違うところがあるのではないかということで、議論の基礎になった数字の突き合わせということを先方は求めましたが、これは事務当局間で突き合わせましたが、ほとんど何ら違いがなかったという結果でございます。そういう状況でございますから、これはただいま申し上げたとおりで、何らうそ偽りのないことでございます。
  73. 曾禰益

    ○曽祢委員 たいへんに明るいニュースなのですが、ただ、総理大臣との会談のあれからいいますと、これは外交辞令もむろんあるでしょうけれども、事務的のレベルで数字の突き合わせということばは総理大臣言っておられたとは思いませんが、何らかの事務的レベルの相談といいますか、意見の開陳、交換、これはいまのいわゆる自主規制の問題を含めてやるというようなことではなかったかと思うのです。むろん、おそらくそればかりでなくて、当然に、残存輸入制限をなるべく早く減らせとか撤廃しろ、それから、特に自動車を念頭に置いてでしょうけれども、資本取引の自由化、自動車関係の自由化あるいは制限緩和の問題ですね、時期を早くしろとか明定しろとかいうことを含めて、そういうものを含めての事務レベルの話だという意味ですか、それとも、毛及び化合繊維製品の自主規制に限っての特別の事務レベルの話はいいというふうになっているのか。そういうことを含めて、外務大臣のワシントン会談は、向こうから話される場合は別として、主としてこの問題で行かれるとは思いません。したがって、これは七月ですか、日米経済閣僚会議の場合の大きな主題になるのがこの問題だと思うのですけれども、その点どういうふうになっておりますか。
  74. 愛知揆一

    愛知国務大臣 繊維の問題につきましては、ただいま申し上げたとおりで、ほかにつけ加えて申し上げることはございません。同時に、先方としては、ただいま御指摘の資本自由化の問題がございます。それから、たとえば非関税障壁の問題、NTBですか、これもだいぶ大きく取り上げておりますが、この非関税障壁の問題については、双方ともに必ずしも相手方の情報を正確に掌握していないか、あるいは掌握していないと思われる節も双方にあるわけでございますが、こういう点に関連して、率直に意見の交換といいますか、いままでやっている慣行について、双方ともざっくばらんに資料を交換し合いましょう、そうして二国間でやった結果、あるいはガットその他のところへ持ち出してマルチプル会談に臨むことも一方法ではないか、こういう点については引き続き話し合いをすることは話に出ておりましたし、これは原則的に何らこちらも拒否すべきではございませんから、そういう点はあとにつながると思います。  それから、資本自由化、自動車の問題、残存輸入制限の問題、これらは当然に、向こうも言っておりましたけれども、七月末の日米合同経済委員会で先方提案がございましょうし、こちらもこれらの点については再検討してしかるべきかと思われるものもございますから、これらの点はこちらも相当の準備をしてかからなければいけない、かように考えております。  それからなお、私の関係するところから申しますと、スタンズ長官が、君も近く来られるのだから、そのときにワシントンでもまた会いたい、話をしたいと言っておりましたが、それはいま申しましたようなものの扱い方についてというふうに私は理解いたしております。
  75. 曾禰益

    ○曽祢委員 もう一点伺いたいのは、これからの外交日程に関連して、キージンガー西ドイツ首相並びにインドのガンジー首相が来られる。いずれもこれはわが国と同様に核兵器の平和利用に非常に熱心な国であるし、また、それぞれの立場が違いますが、米ソを中心とする大国の核軍縮を早くやるべきだ、核防条約の趣旨は必ずしも悪くないにせよ、事実上は核兵器の保有が必要と思えば保有する潜在的な能力を持っている国に、言うならば、その核兵器を持たせないという義務だけを押しつけられる不平等的な関係におちいる心配を持っている国です。そういう意味で、政府のこの核防条約に対する態度は、外務大臣が就任される前から一つの方針があったと思うのですが、まだ核防条約に調印しておりませんし、私はそう簡単に調印するのは適当でないと思うので、そういう意味で、これらの国とのトップレベルの会談で、当然にその一つの題目として核防条約に対する態度ということが議題になると思います。ここら辺で日本の核防条約に対する態度、これは言いかえるならば、大国のわがままは許さない、核軍縮を進めるという、何らか具体的な証拠と誠意を示せということ。それから非保有国、核兵器を持ち得る国に対しては、核のおどしや核の攻撃に対して何らかの保障をなし得る限り完璧なものをやるということ。第三は、核の平和利用に関しては、不当な制限、特に差別待遇、核兵器保有国は何らおかまいなし、非保有国だけは厳重に、商業スパイを許すような条件で核の平和的開発まで縛られるということのないように、核兵器非保有国の平和利用について核兵器保有国との差別待遇は絶対にしない。あるいはまた、これは西ドイツとわが国の場合にはむしろ競争関係がありますが、EECの国だけが寛大な、やや自己査察に近い状態を認められ、わが国が一番平和利用について損をするといいますか、非保有国の中でも、EECよりも厳重な査察を受けなければならぬということのないように、これらの問題について、いろいろ共通の面もあるし、競争者の面もありますが、そういうことを踏まえて、核防条約の問題をどういうふうにキージンガー首相、ガンジー首相と話されるのか、この点をひとつ伺いたいと思います。
  76. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまお話しのとおり、西独にしてもインドにいたしましても、日本立場を同じゅうするところもあるし、また考えようによっては逆な考え方もあるようでございます。しかし、いずれもがいわゆるクッド・ハブ・カントリーズでございます。そういうことでございますから、今回両首相が来られた場合に、この核の問題、あるいは具体的には核防条約に対する態度、見方というようなことで、こちらとしても十分に聞きたいところも多いわけでございます。かたがた、私もアメリカに参りますし、そういうような段階を経まして、核防条約に対する調印並びに批准を求めるということについての態度というものをそろそろ明らかにすべきときではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  77. 曾禰益

    ○曽祢委員 これだけで終わりますが、いまの点について、最後に核防条約について希望でございます。それぞれの立場は違います。違いますが、やはりインド、日本、西ドイツは、米ソに対しては一つの抵抗といいますか、当然の非保有国としての共通の立場があり得ると思うのですね。いわゆる非核クラブという思想といいますか、きちんと厳重にしゃくし定木に考える必要はありませんが、そういう点を極力発揮して、なるべく不当な圧迫に対する抵抗という姿も含めて、ひとつ交渉を願いたいと思います。これは私の希望です。  最後に、きょうの晩ですか、ニクソン大統領が、ベトナム問題について重要な国民への発表をやるということになっておりますが、そういう問題について、アメリカのほうから事前に、大体こういうことをやるんだというような通知、通報、そういうものはあったのですか。その点をひとつ伺いたいと思います。
  78. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまの時点において、私自身としてはまだ何ら通報を受けておりません。
  79. 秋田大助

    ○秋田委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次回は、来たる十六日午前十時より理事会、十時十分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。     午後零時四十一分散会