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1968-12-19 第60回国会 衆議院 社会労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年十二月十八日(水曜日)委員長の指 名で、次の通り小委員及び小委員長を選任した。  障害者対策小委員       橋本龍太郎君    増岡 博之君      三ツ林弥太郎君    渡辺  肇君       西風  勲君    山本 政弘君       本島百合子君    大橋 敏雄君  障害者対策小委員長       橋本龍太郎君 ――――――――――――――――――――― 昭和四十三年十二月十九日(木曜日)    午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 橋本龍太郎君 理事 藤本 孝雄君    理事 河野  正君 理事 田邊  誠君    理事 田畑 金光君       大坪 保雄君    海部 俊樹君       世耕 政隆君    竹内 黎一君       谷垣 專一君    中野 四郎君       中山 マサ君   三ツ林弥太郎君       箕輪  登君    渡辺  肇君       枝村 要作君    加藤 万吉君       後藤 俊男君    島本 虎三君       西風  勲君    平等 文成君       八木 一男君    山本 政弘君       本島百合子君    和田 耕作君       大橋 敏雄君    中野  明君       伏木 和雄君    谷口善太郎君       關谷 勝利君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君  出席政府委員         法務政務次官  小澤 太郎君         厚生大臣官房長 戸澤 政方君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省保険局長 梅本 純正君         労働省労働基準         局長      和田 勝美君  委員外出席者         法務省矯正局医         療分類課長   樋口 幸吉君         大蔵省主計局主         計官      辻  敬一君         文部省体育局学         校給食課長   柳川 覚治君         厚生大臣官房企         画室長     首尾木 一君         厚生大臣官房国         立公園部長   広瀬 治郎君         厚生省公衆衛生         局長      村中 俊明君         厚生省医務局看         護課長     永野  貞君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         厚生省年金局長 伊部 英男君         専  門  員 安中 忠雄君     ――――――――――――― 十二月十九日  委員大橋敏雄君辞任につき、その補欠として中  野明君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 十二月十六日  医療保障確立に関する請願加藤万吉紹介)  (第一五号)  栄養士法第五条の二改正に関する請願菊池義  郎君紹介)(第一六号)  同(神田博紹介)(第六〇号)  同(八田貞義紹介)(第六一号)  小規模保育所認可基準改正に関する請願(谷  口善太郎紹介)(第一七号)  むちうち症患者治療保障等に関する請願(谷  口善太郎紹介)(第一八号)  同(松本善明紹介)(第一九号)  同外一件(山本政弘紹介)(第六四号)  同(岡本隆一紹介)(第一一二号)  同(西風勲紹介)(第一一三号)  同(野間千代三君紹介)(第一一四号)  老齢福祉年金増額等に関する請願西岡武夫  君紹介)(第二〇号)  戦没者弔慰金増額に関する請願大久保武雄君  紹介)(第五九号)  自閉症児治療施設整備に関する請願八田貞  義君紹介)(第六二号)  同(山本政弘紹介)(第六三号)  未帰還者調査及び留守家族援護に関する請願  (渡海元三郎紹介)(第六五号)  同(堀川恭平紹介)(第六六号)  同(砂田重民紹介)(第一一五号)  ソ連長期抑留者処遇に関する請願武藤嘉文  君紹介)(第六七号) 同月十七日  未帰還者調査及び留守家族援護に関する請願  (山下榮二紹介)(第二六四号)  同(伊賀定盛紹介)(第八三九号)  同(河上民雄紹介)(第八四〇号)  自閉症児治療施設整備に関する請願河野正  君紹介)(第三六一号)  同(和田耕作紹介)(第三六二号)  むちうち症患者治療保障等に関する請願(小  川半次紹介)(第三六三号)  同(八田貞義紹介)(第三六四号)  同(柳田秀一紹介)(第三六五号)  同外百件(和田耕作紹介)(第三六六号)  同(井上泉紹介)(第五七六号)  同(加藤万吉紹介)(第五七七号)  同(田邊誠紹介)(第五七八号)  小規模保育所認可基準改正に関する請願(後  藤俊男紹介)(第三六八号)  同(加藤万吉紹介)(第五七九号)  同(田邊誠紹介)(第五八〇号)  同(宇都宮徳馬紹介)(第八四三号)  清掃事業地方自治体直営化による転廃業者の  補償救済に関する請願丹羽久章紹介)(第  三六九号)  同(臼井莊一君紹介)(第四一二号)  同(神田博紹介)(第四一三号)  同(福家俊一紹介)(第四一四号)  失業対策事業就労者身分保障に関する請願  (池田禎治紹介)(第三七〇号)  出産の健康保険適用に関する請願外二百五十件  (小沢貞孝紹介)(第四二六号)  同(玉置一徳紹介)(第四二七号)  同(本島百合子紹介)(第四二八号)  同(麻生良方紹介)(第五六二号)  同外一件(池田禎治紹介)(第五六三号)  同(岡沢完治紹介)(第五六四号)  同(内海清紹介)(第五六五号)  同(春日一幸紹介)(第五六六号)  同外一件(小平忠紹介)(第五六七号)  同(佐々木良作紹介)(第五六八号)  同外一件(鈴木一紹介)(第五六九号)  同(竹本孫一紹介)(第五七〇号)  同(玉置一徳紹介)(第五七一号)  同外一件(西尾末廣君紹介)(第五七二号)  同(西村榮一紹介)(第五七三号)  同(吉田泰造紹介)(第五七四号)  同(吉田之久君紹介)(第五七五号)  同(麻生良方紹介)(第八六二号)  同外百十八件(小澤貞孝紹介)(第八六三  号)  同(折小野良一紹介)(第八六四号)  同(岡澤完治紹介)(第八六五号)  同(曾祢益君紹介)(第八六六号)  同(永江一夫紹介)(第八六七号)  同(本島百合子紹介)(第八六八号)  同(山下榮二紹介)(第八六九号)  同外一件(和田耕作紹介)(第八七〇号)  同(中村時雄紹介)(第八九二号)  同(神田大作紹介)(第八九三号)  厚生年金保険及び国民年金制度改善に関する  請願關谷勝利紹介)(第五八一号)  国民健康保険財政強化等に関する請願外十一  件(細田吉藏紹介)(第五八二号)  同外十一件(櫻内義雄紹介)(第八三五号)  同(神門至馬夫君紹介)(第八三六号)  同外十二件(大橋武夫紹介)(第八三七号)  同外十一件(竹下登紹介)(第八三八号)  動員学徒女子挺身隊等戦争犠牲者援護に関  する請願外五百五十二件(倉成正紹介)(第八  二一号)  老齢福祉年金増額等に関する請願倉成正君  紹介)(第八二二号)  父子家庭援護対策に関する請願砂田重民君  紹介)(第八二三号)  クリーニング所適正配置に関する請願増田  甲子七君紹介)(第八二四号)  重症心身障害児予算に関する請願池田清志君  紹介)(第八二六号)  昭和四十四年度社会福祉及び保育所関係予算に  関する請願西村英一紹介)(第八二七号)  国民年金制度改善に関する請願広沢直樹君  紹介)(第八二八号)  同(田村元紹介)(第八二九号)  障害者扶養共済制度に関する請願増田甲子七  君紹介)(第八三〇号)  引揚医師の免許及び試験の特例に関する請願  (田川誠一紹介)(第八三一号)  同(藤本孝雄紹介)(第八三二号)  同(八田貞義紹介)(第八三三号)  原爆被災者援護に関する請願外千百九十九件  (倉成正紹介)(第八三四号)  ソ連長期抑留者処遇に関する請願外二十三件  (大橋武夫紹介)(第八四一号)  同外十二件(櫻内義雄紹介)(第八四二号)  労働災害補償制度改善に関する請願谷口善太  郎君紹介)(第八九一号)  原爆被害者援護に関する請願谷口善太郎君紹  介)(第八九七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月十四日  世帯更生資金増額等に関する陳情書  (第六〇号)  環境衛生金融公庫貸付資金の増加に関する陳情  書(第六一号)  児童手当法早期制定に関する陳情書外四件  (第六二号)  同和地区小規模保育所設置費助成に関する陳  情書(第六三号)  国民健康保険制度改善に関する陳情書外三件  (第六四  号)  福祉年金所得制限額撤廃等に関する陳情書  (第六五号)  精神障害者リハビリテーションセンター設立  等に関する陳情書  (第六六号)  社会福祉施設拡充整備に関する陳情書外一件  (第六七号)  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  の適用緩和に関する陳情書  (第六八号)  厚生年金保険法及び国民年金法改正に関する  陳情書外五件  (第六九号)  原子爆弾被爆者援護に関する陳情書  (第七〇号)  林業労働者に対する共済制度確立に関する陳  情書(第七一号)  失業対策事業継続に関する陳情書外六件  (第七三号)  国民年金制度改善に関する陳情書外三百二件  (第七四号)  福祉年金支給制限平等化に関する陳情書  (第七五号)  らい患者処遇改善に関する陳情書  (第七六号)  特別養護老人ホーム拡充整備に関する陳情書  外一件  (第七七号)  医療保険制度改善に関する陳情書外七件  (第七八号)  登録日雇港湾労働者に対する日雇労働者健康保  険の受給資格改善に関する陳情書  (第七九号)  小児がん対策に関する陳情書外一件  (第八〇号)  医療保険制度における分べん医療給付適用に  関する陳情書外九件  (第八一号)  社会福祉対策に関する陳情書  (第八二号)  吉野熊野国立公園内大台ケ原原生林の保存に関  する陳情書(第八三  号)  食品衛生行政充実に関する陳情書  (第九九号) 同月十七日  吉野熊野国立公園地域拡張に関する陳情書  (第一八二号)  失業者生活保障等に関する陳情書  (第一八三号)  老人福祉対策に関する陳情書  (第一八四  号)  同  (第二五四号)  児童手当法早期制定に関する陳情書  (第二四五号)  過疎地小規模保育所設置等に関する陳情書  (第二四六号)  国民年金制度改善に関する陳情書外一件  (第二四七号)  医療保険制度改善に関する陳情書外一件  (第二四八号)  厚生年金保険制度改善に関する陳情書  (第二四九号)  医療保険制度における分べん医療給付適用に  関する陳情書  (第二五〇号)  失業保険適用条件変更反対に関する陳情書  (第二五一号)  失業対策事業運営円滑化に関する陳情書  (第二五二号)  老人健康診査費交付基準額引上げに関する陳  情書  (第二五三号)  社会福祉行政適切施行に関する陳情書  (第二五五号)  基準看護適用病院患者取扱いに関する陳情書  (第二五六号)  登録日雇港湾労働者に対する日雇労働者健康保  険の受給資格改善に関する陳情書  (第二五七号)  食品衛生行政充実に関する陳情書  (第二五八号)  戦争犠牲者援護に関する陳情書  (第二六〇  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  厚生関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。八木一男君。
  3. 八木一男

    八木(一)委員 斎藤厚生大臣を迎えまして、厚生行政の問題で質問をさしていただきたいと思います。先輩、同僚がおられますのに最初質問をさしていただくことを、非常に光栄に存ずる次第でございます。  厚生大臣という、特に社会保障中心とする厚生行政を担当されることになりました斎藤さんは、それについて強い決意をお持ちだろうと思いますので、この点についてまず伺っておきたいと思います。
  4. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私も、はからずも厚生大臣を拝命をいたしまして、その任務の重いことをほんとうに心から感じているわけでございます。  私は、今日日本産業経済が非常に発展をしてまいりましたが、反面厚生関係行政はそれに追いついていない。今後ますますまだ日本産業経済が伸びていくと思います。したがってそれに応じて、いままでのおくれを取り戻すのみならず、先のことも見通してやってまいらなければならない。日本人口構造も非常に変わってまいりますし、いままで予想されていないような公害問題もますます大きくなってくるでありましょうし、またいままで谷間に置いておかれた人たちもおられるわけであります。そういうことをかれこれ考えてみますと、非常に責任が重い。とにかく国民皆さんほんとうにしあわせな世の中だと言うようになってもらうために最善の努力をいたしたい、かように思っております。
  5. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣がいま厚生行政を担当されるについての熱心な御決意を御披瀝になりました。そのことばの内容や、それをお話しになる態度といいますか、恐縮でございますが、そのもの腰を拝見いたしまして、非常に熱心にまじめに取っ組んでいただく決心をなさっておられることを拝察をいたしました。国民のために非常に力強く存ずるわけであります。しかしそのおっしゃる中に、もう一段と強いことばが望ましかったと思うわけであります。産業の伸展と比較していろいろとおっしゃいました。それに取り残された方々の問題、谷間人たちの問題に熱心に対処したいとおっしゃったわけでございますが、それ以上に、これからも斎藤大臣に、決意を固めてより力強く取り組んでいただきたいと思うわけであります。  斎藤大臣の担当になります社会保障中心とする厚生行政の問題は、ほかの問題と違いまして、日本国憲法に明記された問題がその大部分であります。産業発展というのは一般的に必要なものとされておりますけれども、日本国憲法においては、産業発展すべしという条文はございません。当然のこととして書いてないのかもしれませんが、条文にはっきり書いてあるのは、憲法第二十五条の第二項に、社会福祉社会保障公衆衛生について、国がこれを改善増進をしなければならないという具体的な条文は明記されておりますけれども、ほかの産業発展であるとか、その他国家の行政上、普通大事とされておる問題については、憲法上に明記がされておらないわけであります。たとえば減税という要望があるけれども、それは憲法には明記されておりません。社会福祉とか社会保障公衆衛生増進改善については、特に国に対して憲法が具体的な問題について指令をしているわけでございます。したがって、この国会における論議においても、閣議における論議においても、あるいは各省間におけるいろいろな話し合いにおいても、減税しなければならないから社会保障予算はそれだけ組めませんというようなことは、憲法第九十九条の精神を知っている限り、政治家も公務員も一言も言ってはならない情勢であります。それにもかかわらず、言ってはならないことがまかり通っている。主計局において、予算が足らないから、厚生省がどれだけ要望されても、それはできませんというようなことが、平気でまかり通っているというような間違った世の中であります。日本国憲法ほんとうに尊重されておらない情景であります。そういうことをひとつ厚生大臣はじめ厚生省の方がもっと深く認識をされて、断々固としてやらなければならないことを貰いていくという決意を、さらに強く持っていただきたいと思います。そのことについて、もう一回斎藤大臣の前向きの力強い御決意を伺っておきたいと思います。
  6. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 まことに力強いお話、励ましをいただきまして、ありがとうございます。申すまでもなく、健康にして文化的な生活を営む、これは憲法で保障されております。また政府に義務づけているものだと私は思います。私は当然のことだと思って申し上げませんでしたが、その気持ちでやってまいりたいと思いまするし、また八木さんにおかれましても、ひとつそういう意味で、国民全般にも、また政府に対しても、御指導、御鞭撻をいただきたいと思います。
  7. 八木一男

    八木(一)委員 御決意を伺いまして、非常に力強く存じます。満足をいたします。大臣の非常に熱心な御決意を伺っておるわけでございますから、同僚皆さんもひとつ静粛にお聞き取りを願いたいと思います。  次に、この問題に関連をして、ひとつ具体的な決意を固めていただきたいことがあるわけであります。  行政をするときに、それを促進するための法律が必要でございますが、裏づけをするためとして予算が具体的に大切であることは、疑いをいれないところであります。ところがこの数年間、現在の自民党内閣、最近は佐藤内閣が続いているわけでございますが、これは池田さんのときからそういう状況がありましたが、大蔵省、特にその中の主計局が、非常に怠慢にして横暴なる態度を示しております。予算の編成のときに、前には、前年度予算の五〇%以上の第一次要求をしてくれては困ると言いました。それが三〇%になり、現在は二五%というような制限をつけているようであります。そのようなことを主計局が立案をし、大蔵大臣内閣に提議をいたしますと、閣議においては歴代厚生大臣が幾分と抵抗は示してはおりまするけれども、総体的にはそのような方針でということがまかり通っているようであります。こういうようなことは言語道断であります。  最終的に予算の総ワクの中に歳出をおさめなければならないことは言うまでもございませんけれども、それは第一次要求をどのくらいのワクにとどめおくかということとは関係がないのであります。第一次要求をある程度のワクにとどめておいて査定をしていけば、それは主計局の操作は楽でありましょう。主計局の役人が楽なだけであって、そんなものは本質的なことではありません。必要な要求各省が全部出す。それを財政当局として歳出ワクにおさめなければならないのを、その中でどれが重点であるかというようなことを、各省と交渉しながらおさめるということをしなければならない。第一次要求や第一回の査定、第二回の査定でどのくらいにしなければならないという数字を、初めからかぶせる必要はないのであります。かぶせたほうが主計局が楽なだけであって、そういうことをすることによって、各省予算アクセントが、また政府全体の政治政策アクセントが、そこで一次的に最初のところで消されてしまうおそれがあるわけであります。  ことに斎藤さんがあずかられる厚生省は、社会保障全般の問題で、たとえば今度取り組まれる年金の問題にしても、重要な問題になっている医療保険の問題にしても、いま急速に進めなければならない公害対策の問題にしても、その他ありとあらゆる問題、たとえば公衆衛生の問題でも、それからガンその他の老人病対策を至急に進める問題にしても、障害者人たちに対処する問題にしても、すべてがいま即刻に対処しなければならないし、そのすべてが相当の予算を必要とするものばかりであります。厚生省がそのような前年度予算の二五%とめ置きをうんと了承する。その中でいえば、自縄自縛、自分の省の中で、年金を伸ばそうとすれば医療保険を圧迫をしなければならない、医療保険を伸ばそうとすれば公害対策を少しゆっくりしなければならない、ガン対策をしっかりしょうとすれば障害者の問題はあと回しにしなければならないというような問題が起こります。そのようなことは、政治の問題として許されるべきものではないのに、それを、大蔵省なり主計局のイージーゴーイングのやり方、そして実際上よこしまな権力を持っている者のわがままの主張によって、そのような国政アクセントが消される。最終的には消されないにしても、消される方向で最初の第一次予算要求制約をされるということになろうと思う。厚生省予算などは、各項目が、二五%でなしに二五〇%ずつの予算要求しても、まだ足りないところがたくさんあります。それを全部出して、国政全体で、厚生省の十の要求が全部——たとえば防衛庁の第一位の要求よりも厚生省の第十位の要求のほうがはるかに国政全体の問題としては大切な問題であるということは、国全体で審議をすればわかるわけであります。それをすれば、厚生省自体が、中で食い合いをしたりブレーキをかけるようなことはしないで済む。それを各省別に二五%というワクによって、中で制約をしなければならないことが起こります。  そういうようなやり方は、国政全体として間違っております。閣議でこのような問題を大蔵大臣が提起をしたときに、断じてそれを論破をし、どんなことがあっても承知をしない。総理大臣がそれを安易にうのみに承知するようなことがあれば、国政国民のためにりっぱなアクセントをつけてやらなければならないのを忘れるような総理大臣は首班としての資格がない。大蔵大臣の言うことを唯々諾々として聞くような総理大臣指導性がないではないかというような勢いで、そのような間違ったやり方を改める決意をお持ちであるかどうか、持っていただけるかどうか、その点について斎藤さんのお考えを聞かしていただきたいと思います。
  8. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 御趣旨の点は私も同感でございますし、ものには例外というものもあるわけでありますから、厚生行政についてはできるだけ例外主張してまいりたいと思います。
  9. 八木一男

    八木(一)委員 厚生行政例外とおっしゃいましたが、それ以上に、国政全体としての政策アクセントを消すような、そのような第一次要求は一律前年度の二五%というような間違ったやり方自体をさせないようにしていただきたい。特にその中で厚生省——厚生省だけじゃありません。たとえば労働省社会保障を受け持っておるし、また交通関係や何かでも大事な問題があります。ですから、国政全体としてそのような大蔵省主計局のよこしまを許さない。特に厚生省については断固として許さない。その二重の意味で、ひとつ厚生大臣としての斎藤さん、それから国務大臣としての斎藤さんの両方の御決意を伺いたかったわけであります。もう一回ひとつ御答弁いただければありがたいと思います。
  10. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は仰せのとおりだと思っております。どの省にもそういうことがありましょう。したがいまして、いま何が一番緊要かということを重点にして予算は組まるべきものだと思いますから、そういう主張で通してまいりたいと思います。
  11. 八木一男

    八木(一)委員 それにつきまして、前年度は園田前厚生大臣が、仄聞すると、その問題のときに閣議抵抗されたようであります。その前の坊秀男さんも、私どもしょっちゅう言っておりましたから、ある程度の抵抗を示されたようでございます。私の聞いている範囲では、歴代厚生大臣、この二、三代の厚生大臣閣議抵抗を示しておられるだけで、まだ全般に及んでおらないようでございますが、どうかひとつ前大臣や前々大臣以上に強く主張されて、ほかの大臣はそういうところにおっかなびっくりの方が多いようでありますが、斎藤さんの指導性のもとに、ほかの国民の権利や生活をしょって立つ各省大臣が同じく大蔵省の専横に対して立ち上がるように、ひとつリーダーシップをとっていただきたいと思います。  その次に、去年はそういう経過を示しておりますから、厚生省も残念ながら一応は二五%のワク制限を表面的に受けているようであります。ただし、改定期を迎えております年金の問題、重要の問題であります医療保険の問題については、これが別ワクになっているか、あるいはプラスアルファという約束ができているか。現に二五%絞切りぽっきりのものではない状態に置かれているように仄聞をしているわけでございますが、その状態についてどうでございましょうか。
  12. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 年金問題その他特殊の問題につきましては、当然一般の査定権といいますか、そういうものの支配は受けない、かように私も了解をいたしております。
  13. 八木一男

    八木(一)委員 そのようになっているのですと、はなはだ幸いでございますが、それをひとつ断固として貫き拡大をしていただきたいと思うわけであります。  これから年金についても御要望を申し上げますが、もう一つ医療保険という非常に重大な問題があります。この医療保険の抜本改正というものを政府が前に幾分準備され、いま与党のほうで何か準備されているそうでございますが、その中で私どもは危険な案が出てくることを非常に心配をいたしておりますけれども、もし非常な御努力があったとしても、国のほうの予算を大幅につぎ込むという裏づけがなければ、どのようなひねくった案でも、それがスムーズに受け入れられるという情勢はない。でございますから、国がそのような医療保険とかそういうものに思い切ったものも入れるという体制でなければ、あと論議をされていることは机上の空論ということになるのではないか。そういう点もありますので、とにかく医療の問題なり、あるいはまたそういう年金の問題、公害の問題について、いままで別ワクあるいはそういう別な扱いをするという申し合わせとか、そういう既得権、これをさらに、予算編成期でございますから、もう飛躍的に拡大をする、それについては断じて引かないということを、ぜひ決意をもって当たっていただきたいというふうに思うわけであります。  次に、その中のいろいろな問題について同僚各位がいろいろとこれから御追及になる、御論及になる御予定だそうでございますから、私はおもに年金の問題にしぼっていろいろと申し上げてみかいと思うわけであります。  先日、年金についての厚生省の考え方が新聞で発表になったようであります。その前に、社会保険審議会の厚生年金部会及び国民年金審議会で意見書が十月十七、十九日に出ているようでございます。この意見書は、前の社会保険審議会の厚生年金部会の意見書よりも、内容的にやや後退した内容のようでございます。でございますが、新聞報道でございますので、いま、この前発表になりました構想の内容を、時間がございますから、簡潔でわかるつもりでございますから、簡潔にひとつ御説明をいただきたいと思います。
  14. 伊部英男

    ○伊部説明員 ただいま先生御指摘のように、厚生年金につきましては、社会保険審議会の厚生年金保険部会から「厚生年金保険制度改正に関する意見」という意見がまとまっておるのでございます。国民年金につきましては、「国民年金制度改正に関する考え方」、これが国民年金審議会でまとまっておる次第であります。年金制度は、先生御存じのとおり、五年ごとに財政再計算を行なうわけでございますが、この五年ごとの財政再計算期に厚生年金が明年度当たっておるわけでございます。このため、昨年の秋以来労使をもって構成されます厚生年金保険部会の懇談会を開きまして、約一カ年間にわたって労使の意見の交換をしてまいったのでございますが、この結果が、ただいま申し上げた「厚生年金保険制度改正に関する意見」という形でまとまった次第でございます。  一方国民年金につきましては、国民年金の財政再計算期は昭和四十六年に当たるわけでありますが、厚生省といたしましては、四十一年の改正を行ないましたけれども、その後の所得の伸びあるいは物価の状況等を考慮いたしますと、四十六年まで国民年金を据え置くことはできないという考え方で、国民年金審議会にもいろいろ御審議をいただいておったのでございますが、国民年金審議会は、厚生年金の財政再計算期と合わせて国民年金についても改正を行なうべきであるという考え方を打ち出されまして、厚生省といたしましては、両審議会の御意見を参考としつつ厚生省案を作成をして、ただいま政府部内におきましていろいろ意見の調整をしておるという段階でございます。  国民年金制度に関しましては、非常に基本的な線といたしましては、国民年金につきましても厚生年金並みの給付を求める、この要望にこたえるということが非常に基本的な点でございまして、これにつきましていろいろな具体的な方法があるわけでございますが、基本線としては厚年並みのレベルを目標として改善を努力をするということが第一点であります。  それからまた、昭和四十六年から開始されますいわゆる十年年金の優遇、あるいは制度発足当時高齢任意加入されなかった高齢者についてもう一回拠出制年金に結びつけるくふうをしてはどうか、あるいは物価の上昇に対応するくふう、こういった点の御意見をいただいておるのでございますが、これによりまして、厚生省といたしましては政府部内においての意見の調整をいたしておるのでございます。  福祉年金につきましても、「必ずしも拠出制年金の額の引上げと関連させる必要はないものと考えるが、物価の上昇、消費水準の伸び等を勘案して財政事情の許す限りその改善を図るものとし、その実質価値が低下することのないようにすべきである。」こういう御意見をいただきまして、福祉年金につきましても改善を行なうべく考えておるという状況でございます。
  15. 八木一男

    八木(一)委員 その経過は知っているのです。厚生省の案が新聞に出たそうですが、私、新聞をよく読んでなかったので……。ずばり幾らにしたのですか。たとえば厚生年金二十年払い込み、標準報酬二万五千円の場合、定額が五千円で、平均して標準報酬部分を合わせて一万円のものを、巷間伝えられるところによると、倍にするという話があったのを八千円くらいにするという案が出ていたようですが、そういう金額だけぱっぱっとおっしゃってください。
  16. 伊部英男

    ○伊部説明員 ただいま政府部内での調整中の問題でございますので、国会で申し上げるのはいかがかと思いますけれども、ただいま厚生省のサイドでの考え方といたしましては、厚生年金につきましては労使の意見が、おおむね二万円をめどとすべきであるという意見の一致を見ておるわけでございます。ただしこの二万円の解釈につきましては労使それぞれ意見がございまして、労働側の意見あるいは事業主側の意見、それぞれあるわけでございますが、厚生省の考え方といたしましては、次の財政再計算期までに現実に発生する年金受給者を頭に置いて、おおむね二万円を目途として老齢年金が得られるような引き上げを行ないたい。このため、基本年金額中定額分につきましては、現行一年につき二百五十円を四百円に引き上げる、あるいは報酬比例分につきましても各種の改善措置を講ずる、あるいは加給年金額についても引き上げるといったような措置を講じたいと考えておるのでございます。  国民年金につきましても、こういうふうに改善される厚生年金を念頭に置きつつ、国民年金は御承知のとおり夫婦で被保険者になりますので、夫婦単位では厚生年金にたてまえとしての年金額がそろっていくという方向で国民年金についての改善をはかりたい。基本線としてはかように考えておる次第でございます。
  17. 八木一男

    八木(一)委員 何か奥歯にはさまったような説明ではっきりわからないが、それじゃ厚生省の案はまだきまってないのですか。
  18. 伊部英男

    ○伊部説明員 厚生省としては大臣の御決裁をいただきましてきめたわけでございます。これはただいま政府部内において意見を調整いたしておる……。
  19. 八木一男

    八木(一)委員 厚生省としてきめたのは幾らですか。厚生年金、国年の根幹を言っていただけばあとはわかりますから……。
  20. 伊部英男

    ○伊部説明員 厚生省といたしましてきめました案は……。
  21. 八木一男

    八木(一)委員 言うとぐあいが悪ければ言わなくてもいいですよ。ただ、きまっていて発表したといっているから……。
  22. 伊部英男

    ○伊部説明員 厚生省といたしまして発表されましたのは、厚生年金につきましてはおおむね二万円を目途としていろいろな改善措置を講ずる……。
  23. 八木一男

    八木(一)委員 おおむね二万円……。
  24. 伊部英男

    ○伊部説明員 おおむね二万円です。それで国民年金につきましては……。
  25. 八木一男

    八木(一)委員 わかりました。もういいです。  大臣にお伺いします。何かいま詰めのところで歯切れの悪い答弁です。伊部局長は頭がいいので有名なんですけれども、ばかに歯切れの悪い答弁で、どういうことで歯切れが悪いのかわかりません。言ったらまた大蔵省が何かがさがさ言うのか、それとも、言い方が少なかったら質問者ががあがあ言うからということでちょっとごまかしたのか、どうしてかわかりませんけれども、とにかくそういう歯切れの悪いことではなしに、ばちりとこの五年目の再改定期に、年金というものが社会保障の中で十分でないことはもう論議の余地のないところであって、諸外国におくれていることももう論議の余地のないことですから、この機会に勇敢に上げていかなければならない。そこで、二十年払い込み二万五千円ベースのものについておもに論議をされておりますが、それについては、少なくともいま一万円のものを二万円にしてほしいという論議が社会保険審議会でございます。少なくともそれを下回らないものにしなければいけないと思いますが、どうも厚生省の動きはそれよりも少し微温的な動きのように思うのですが、そういうことをいまごろ大蔵省要求する前に言っていれば、また大蔵省の、困ったとか金が要るとか、いろいろな意見でまた後退するおそれがあると思うのです。少なくとも社会保険審議会で出ているものを、あらゆる点で一切これを下回らない要求を、それを最低限度であるとしていま態度をきめていただく必要があろうと思う。局長のお話でははっきりきまっていないようでございますから、ひとつ斎藤大臣が、社会保険審議会の中で労働者の主張するものを、すべての点でびた一文値切らないものを最低として、それ以上によい内容をつけ加えたものを原案として確定をしていただき、それを値切らさないで実現をするという決意で邁進をしていただきたいと思います。それについての斎藤さんのお答えをいただきたいと思います。
  26. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 年金制度を考えます場合に、やはり労使の関係ということも考えなければなりません。おっしゃいますように、労働者側の要求はびた一文値切らないでという御趣旨の点はよくわかりますけれども、やはり事業者側の意見も聞き、ここらがもう良識的だというところでいかざるを得ないんじゃないだろうか。しかし良識の線は、おおむね現在の一万円年金といわれているのを二万円年金といわれるまでにいたしたい、かように考えております。
  27. 八木一男

    八木(一)委員 労使のとおっしゃいましたけれども、そこでよく考えていただきたいのは、老齢保障をしなければならないのは国民に対してであり、特に労働者の関係の厚生年金その他の年金制度は労働者に対してである。ですから、社会保障が権利である、所得保障が権利である、政府はそれをやらなければならない義務があるということを考えると、国民年金ではほかの国民になりますが、国民、それから労働者の年金では労働者、その意見がまず第一義的に尊重されなければならないと思います。保険料負担という問題があるから、使用主という問題が、保険審議会のメンバーにもになっているので、それは幾ぶん論議されることはいいですけれども、それがほんとうの権利を持っている国民なり労働者と対等のものと考えて判断されることは、これは間違いである。産業のことを論じているんじゃないのですから、国民の所得保障、労働者の所得保障のことを論じているのですから、それと直接関係のない、ただ保険料を負担するというその一部分だけで関係のある使用主を、同じように重視されて考えられるのは間違いだと思う。そういう点で労働者側の委員の意見を最重点として考えて、それを値切らない、それを実現するようにひとつやっていただきたい。  その次に、そこで非常に心配なのですが、二十年払い込み二万五千円ということが最低のベースとされているのに、どうもそれを少し値切ったような案が厚生省の部内で論議されているんではないかというおそれ及び疑いを持っているわけです。おそれがあり、その疑いを持っているわけです。その点について伊部君にひとつはっきり伺っておきたいと思います。それがなければ幸いであります。
  28. 伊部英男

    ○伊部説明員 厚生年金部会の御意見といたしましては、「当面、次の財政再計算期までに現実に発生する年金受給者を頭におき、概ね二万円見当に引き上げることに略意見の一致をみた。」こういう表現になっておるわけでございますが、この際少数と申しますか、労使から御意見が出ておりまして、労働側の御意見といたしまして——労働側と書いてございませんが、「資格期間二十年のものの年金額を二万円とし、改正後直ちに実現をはかるべきであり、」こういう意見が労働側の御意見となっておるわけでございます。これに対しまして事業主側の御意見といたしましては、次期再計算期までの間に発生する資格期間二十五年のものを基準として二万円というものを考えるべきであるという御意見があったのでございまして、厚生省といたしましては、これらのいわば少数意見、二つあるわけでございますが、「次の財政再計算期までに現実に発生する年金受給者を頭におき、概ね二万円見当に引き上げる」というこの主文を中心厚生省の案を考えておる次第でございます。
  29. 八木一男

    八木(一)委員 そうすると、いま考えているのは、今度の改正法案には、定額部分を幾らとして出すことを予想していま準備をしておられますか。
  30. 伊部英男

    ○伊部説明員 一年につき二百五十円を四百円に引き上げるということが定額の基本でございます。
  31. 八木一男

    八木(一)委員 一年につき二百五十円を四百円とするとなると、結局それは六割増しですね。いま定額五千円のものが定額八千円ということですね。この意見舌の中にあるほぼ二万円ということは、いまの五千円、五千円のものを倍にするというのが大体の総括的な意見である。そうすれば定額部分は一万円にならなければいけない。しかもそれでは足りないから定額部分を一万二千円にすべしという意見があったということはこの中に明記をされております。定額部分というものをふやさなければ、所得保障のほんとうの趣旨のほうに進まないということは、これは定説です。ところが、普通に考えて定額部分が五千円が一万円になるととろを、しかもその中で一万二千円にすべしという意見が書かれておるくらい強烈に出ておるのを、いまあなたのほうの準備のものは、二百五十円を四百円といったら六割増しでしょう。五千円が八千円でしょう。そんなものを審議会の中の大体の意見——それよりも後退したような意見をいま考えておるのじゃ、大体厚生省がその任務を果たしておるとは言えないと思う。少なくともあなた方が一万二千円くらい考えて、いろいろな折衝の間でそれが一万一千円になったという経過ならば、それでも怠慢であるけれども、まあまあわからないわけではない。初めから八千円とは何事ですか。いまからでも考えを改めて一万二千円にして、斎藤さんの指導下にそれを実現するようにやらなければいけないでしょう。何ですか、二百五十円を四百円。そんなへっぴり腰の態度でなぜ二百五十円を四百円にとどめたのか。めんどくさいからとどめたのか。年金審議会がそうなっても、それを値切ろうという考え方なのか。主張しても大蔵省がじゃまをするからだめだということで、初めからしっぽを巻いておるのか、どっちかはっきり言ってください。
  32. 伊部英男

    ○伊部説明員 厚生年金部会の御意見を尊重してかようなものをきめた次第でございます。
  33. 八木一男

    八木(一)委員 それで尊重していると言えますか。ほぼ二万円という答申でしょうが。ほぼ二万円という答申は、すなおに日本語で解釈すれば、いまの一万円のものをほぼ倍にするということでしょう。ほぼ一万円に当たるものの定額部分を五千円、報酬比例分五千円というのが見方でしょう。そのとおり、すなおにするのなら五千円でしょう。五千円を一万円にするのがあたりまえじゃないですか。それをなぜ八千円。しかも、一万二千円にすべしという、一部であるけれども熱烈な要求があったということまでここに書いてある。なぜあなたは、厚生年金部会の意見を尊重すると言いながら、一番大事なところでそういうことをやろうとしているのか。大臣聞いてください。これはすなおじゃないですよ。厚生年金部会は、ほぼ二万円にする、いまの倍にしよう。いまは定額部分五千円、標準報酬部分五千円、すなおに倍にすれば、これが一万円と一万円になるのが普通だ。しかも労働者の中では、それを一万二千円にしてほしいという強烈な意見があって、この中に書いてある。それを伊部君の用意しているところでは八千円にしようとしている。すなおに厚生年金部会の意見を受け入れたとは言えないわけです。どういう理由があってこういうことになったのか。厚生年金部会の意見を尊重したいと言いながら尊重していないじゃないか。それとも、厚生年金部会のメンバーは全部がでたらめな意見だから、そういうことには従わないという気持ちか、どっちかはっきり言ってください。尊重するのみら尊重したらいいのですよ。斎藤さん、そういうことですから、伊部君が答えなければ、斎藤さんはいまの厚生省の方針を、——厚生省の方針ですから直されて、八千円というものではなしに、定額部分一万二千円ということで案を組み直して、それを実現するようにひとつ決心していただきたいと思います。
  34. 伊部英男

    ○伊部説明員 先ほど読み上げましたように、「当面、次の財政再計算期までに現実に発生する年金受給者を頭におき」ということになっております。次の財政再計算期は四十九年でございますが、四十九年までに現実に発生する年金受給者、この間に現実に請求をされる年金受給者、こういう方々がおおむね二万円見当の年金を受けられるようにしてほしいということが、まず共通的な認識であったと思うのでございます。  そこで、「次の財政再計算期までに現実に発生する年金受給者」というのは、厚生年金も相当年数がたっておりますので、二十三年あるいは四年といったような年数になっておるのでございまして、そういった資格期間を念頭に置いて計算をいたしますと、いま申し上げましたいろいろな改善措置によりまして、昭和四十五年ごろには二万円の年金が実現するような改善をいたしたいということで、ただいま努力をいたしておる段階でございます。
  35. 八木一男

    八木(一)委員 これは大まかなことですから、幾らもかってな読み方はできると思うのですが、やはり前向きにこれを読まなければいけないと思う。「次の財政再計算期までに現実に発生する年金受給者を頭におき」ということは、この文言だけでいけば、たとえばあした発生する人を頭に置いたっていい。四十六年まで延ばす必要はない。幾らでも解釈のしようがある。すなおに年金制度をさらに充実をするという前向きな解釈でやらなければいけないと思う。そうなれば、今度提出するものが二万円年金ということにすれば、定額一万円、標準報酬一万円というところが一番すなおなんです。さらに前向きであれば、一万二千円定額という意見があれば、それを入れて計画をするのが厚生省年金局の態度でなければならない。いまはまだ厚生省だけの問題ですから、この問題について斎藤さんがひとつ再検討されて、厚生年金部会の答申を上回るような内容をつくることは、それをいけないという意見は厚生年金部会においてはほとんどない。ですから、厚生年金部会の問題を一番すなおに解釈する——どちらでも解釈できるところはそれを前向きに解釈する。厚生省がそれ以上でもやったほうがいいというのは、それにプラスして充実した内容で案を組むという態度で、いま検討中でやや内定したそうでございますが、これをさらによくするように、ひとつ斎藤さんの御努力をお願いいたしたい。御答弁をいただきたいと思います。
  36. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 おことばでございますので、できるだけ善処をいたしたいと思いますが、年金部会におかれましても、いろいろと御検討の上かような主文をおきめいただいたと思います。したがいまして、年金部会の御意見を尊重して、次の再計算期までにおおむね二万円に達するということで前大臣の在任中にきめられたものだと承知をいたしておるのであります。そういうわけでございますから、御意見の点もございますが、年金部会の答申にあまりにもはずれているということであればまた考え直さなければいけないと思いますが、事務当局の説明を聞いてみますると、これでおおむね年金部会の答申に沿うておる、かように思います。しかしさらにもう一度よく検討してみます。
  37. 八木一男

    八木(一)委員 次に厚生年金部会のことで、いま尊重していると言いましたけれども、全くなまけた部分があるわけです。厚生年金部会の意見の中で一番なまけた部分はどういう部分であるか、大臣局長、御意見があったら伺っておきたいと思う。
  38. 伊部英男

    ○伊部説明員 労使で構成されておりますので、いろいろ少数意見もあるわけでございますけれども、厚生省といたしましては、この部会の大筋の御意見にはつとめて従い、かつこれを実現するように努力をしたいと考えておる次第でございます。
  39. 八木一男

    八木(一)委員 質問をちゃんと聞いてください。いまのこれを尊重しているかどうかじゃない。厚生年金部会の意見の中で欠点のある部分があるようです。これについて大臣局長が、そういう意見があったら端的に言ってくれということです。これで完ぺきであると思うか、不完全であると思うか。あなたも年金が担当だから、これを読んで、これはいいものだな、これは不完全なものだなという、そういう感想があってしかるべきだ。それを端的に言ってください。また大臣に御意見があったらおっしゃってください。
  40. 伊部英男

    ○伊部説明員 労使の関係者が一カ年にわたって大いに議論を重ねた結論でございますので、現段階におきましてはこれで適当なものと考えております。
  41. 八木一男

    八木(一)委員 この中には五人未満の事業所についてはどう書いてありましたか。ごく基本的な書き方しかしておりませんね。それから日雇いについてはどういうことが書いてありますか。一言も書いてありませんね。年金を担当している国の責任者が、そういうことを一つも書いてないものを完全だと思うのですか。五人未満の事業所というような不安定なところにいる人は、蓄積が少ないから労齢保障が特に必要です。日雇い形態のところにいる人は、さらに蓄積が少ないから老齢保障が特に必要なんです。一番必要な人たちに対して制度を適用することを言っていない。十分に言っていない。そういうところに欠点がある。そのことも気がつかないような年金局はどうしているのです。社会保障の本質をほんとうに考えていないから、事務的に問題を考えているからです。斎藤さん、どう思いますか。
  42. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私もまだ年金制度には勉強が足りませんので、ただいま指摘をされますとそうであろうかとも思うわけであります。しかし年金部会におかれましては、多年の経験者の方が集まられて、現段階においてはこの程度が適当であろうという御答申をくださったわけでありますから、私は厚生年金部会の方々の現段階における御意見に沿うていくのが適当ではなかろうか。年金部会の方々に、おまえたちは経験も何もないじゃないかと言うわけにもあまりいかぬじゃないかと思いますが、私どもも勉強いたしまして、このことにつきまして、今後さらに必要があれば改善を加えるように、年金部会のほうにもお願いしたいと思います。
  43. 八木一男

    八木(一)委員 伊部君はもっとしっかりしてもらわなければ困る。斎藤さんも、なられたばかりだからしかたありませんが、こんな問題を衆議院や参議院ではいつも言っているのですよ。五人未満と日雇いの適用ということは、論議は何回もしたことがある。社会保険審議会の各代表ですから、御自分の団体に関係のある主張が多いから、それは総体的な点が抜けることもあります。しかし、ほんとうは学識経験者なんという人は、そういう抜けたことも答申の中に入れません。そういう点が不十分だ。だから斎藤さんに申し上げたいのでありますけれども、厚生年金部会の答申だからといって、よいものはどんどんやったらいいです。よいものを値切るようなことは許されません。そしてそれで足りるということではない。これは社会保障を推進する厚生省の主務大臣としては、それだけでは足らないのだ。年金局長としては、それでは補佐の任務が足りません。五年目の再改定期に、労働者の年金制度をやっているときに、一部の人が該当していないというのをなぜ頭に入れないか。しかもここでは、五人未満の問題についてはちょっとぼやっとしたことを書いてあります。ほかの事務的ななんとかなんとかとの関連において、なんとかなんとかと書いてある。非常に憶病なことを書いてある。老齢保障というものを適用するという大前提と、事務上それがうまくいくかどうかという問題と、天と地ほどの高さの違いがあるのですよ。それを事務上の問題を解決してなんというよけいなことを言って、それがおくらされることはしかたがないというような意見が出てくるような、そういう意見書については、この部分については役所自体が痛烈な批判をして、それを改めていかなければならない。日雇い労働者の厚生年金については、一つも考えていないような、そんな不十分な論議については、いい点は尊重していいけれども、不十分な点については、徹底的にあなた方自身がそれを直していかなければならない。  いまの問題にしてもそうです。一部の人に、一万二千円という定額部分の主張があった。これは、保険料を払いにくい人は蓄積が少ないから、退職や老齢になったときにその人が一番所得保障の必要がある。いまのような保険制度では、保険料をたくさん払った者がたくさんもらうというような間違った保険制度がぬぐい切れない。それを直していくために、定額部分を高くしょうという社会保障の理念に従がった正しい意見が一部の意見として書いてあるけれども、いま言ったような欠点があるものだから、そのようなりっぱな意見が出ても、それが満場一致の意見になっていない。一部の意見として出している。しかし所得保障の本質としてはこの中に書いてあるのです。端的に言って一番とうとい意見だ。いま社会保険審議会の意見を大体尊重して、それにそういうものを厚生省がプラスをして、そうして原案をつくるのがあたりまえだ。それをただノミナルに、厚生年金部会の意見を尊重しましたからいいというようなことであってはなりません。  現に厚生省は一つだけいいことをやったことがあります。国民年金の問題で、社会保障制度審議会がなかなかいい答申を出しているところでありますけれども、国民年金に関する限り、実にけしからぬ間の抜けた内容の、非常にばかみたいな答申を出したことがあります。昭和三十四年です。老齢だけ考えて、母子や障害を重点に置いていない、そのような国民年金勧告を出したことがある。そのときに、厚生省はややその任務を理解して、その社会保障制度審議会の勧告に障害と母子の要項をつけ加えて、貧弱な政府案だけれども、昭和三十四年に出してこられたことがある。そういういい前歴も少しはあるわけです。厚生年金部会のこの意見書、これが一〇〇%完全なものだという考え方で、イージーゴーイングにそのような案を検討するのではなしに、いま言ったような、定額一万二千円くらいのものは断じて取り入れて、そして厚生省の案をつくる、そのような前向きな強力な態度を示していただきたいと思います。  いま言ったような、五人未満の事業所についてあいまいもことしたことを書いてあるが、厚生省は断じてやるのだ、五人未満を適用させるというのがなぜ入れられないのか。日雇い労働者についてだって、ぼくらが考えたって、日雇い労働者は厚生年金を適用するぐらいのことはできます。日給と月給の換算を精密にすればできる。そして日雇い労働者が、そうじゃなく常時雇用される労働者になったときに、その期間が厚生年金としてちゃんと換算されるという状況になって、早く資格を獲得して、早く老齢についての保障の権利を獲得するということをさせなければならぬ。五人未満や日雇いの問題について、これから検討してこれをあの中に入れる、そのような決意をひとつ斎藤さんから伺いたいと思います。
  44. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま厚生省が一応案をきめまして、大蔵省と折衝を始めておるわけであります。また、党のほうとも調整をしておるわけであります。八木さんの御意見はごもっともだと思いますが、この段階で変更してというのは、ちょっと時間的に間に合わぬように考えまして、次期の適当な機会に御意見を尊重して盛り込むようにいたしたいと思います。
  45. 八木一男

    八木(一)委員 斎藤さんは非常に熱意を持って、まじめに取っ組んでおられると思う。しかし、りっぱな大臣でいらっしゃいますけれども、厚生省というような膨大な所管をいま急速に担当されたので、その点について、実際的には各局長なり局のスタッフの協力を得て、いろいろな準備をされておられると思う。だから、年金局が一部このようなだらしのない点があっても、けしからぬじゃないか、直せということがなかなかお言いになりにくいと思うけれども、この五年目の再計算期のあれが出たら、その次はまた数年間おくれるわけです。数年間おくれることによって、五人未満の事業所の労働者なり日雇いの労働者は、五年間その機会を逸するわけです。あとで取り返しても、期間通算がそれだけ少なくなるわけです。二十年間が資格期間とすれば、それを獲得するためにまたおくれるわけです。気の毒な労働者で老齢保障がないままに過ごさなければならない人がふえるわけです。だから、五年目、五年目で、来年に再改定期になってまた出すならばいいですよ。それならばまだ弊害は少ないのですけれども、いままでの例からいくと、またこれは二、三年出しません。今度ぜひそれを入れていただきたいと思う。それをひとつ検討し直していただきたい。伊部君は頭のいい人だから、そんなものは簡単にできる。伊部君は能吏で有名です。やろうと思えば、そんなものをつくるのは五時間でできます。伊部君ができなければ、私が手伝って三時間でつくってやる。あんなものはすぐできる。すぐやってください。斎藤さん、それがさつき決意を伺ったことを実際にやっていただく厚生大臣ほんとうの道だと思う。年金局はいままで、いいところもあったけれども、なまけた風習もありますから、精神を引き締めても、六十点のものが一ぺんに百点にはならない。六十五点ぐらいにしかならない。斎藤さんが八十点や九十点にばちっとやらせなければならない。伊部君が斎藤さんから諮問を受けたら、やればできますと言うのがあたりまえだ。いまからではおそくてなかなかむずかしいですというような返事をしたらしいけれども、そんなことではいけません。国会でそういうことを言っているからつつかれるのです。伊部君は、それを実現するために命がけでやって、大蔵省閣議で通らないときは奮戦して討ち死にをすればいい。こういう大切なことは大蔵省がかなえ、こういう大切なことは大蔵大臣がかなえ、総理大臣がかなえ、それを大臣なり局長が天下に声明して、この問題が将来に早く発展するようにやらなければならぬ。それをやらないでおいて、準備の都合があるからまたこの次だというようなことでは、ほんとうに取っ組んだことになりません。直ちにこの案について、きょうこの委員会が終わったら組み直しをして、もっとりっぱなものにして、政府部内でこれを実現するというふうにやっていただきたいと思います。もう一回斎藤さんのひとつ前向きのお考えを伺いたいと思います。
  46. 伊部英男

    ○伊部説明員 五人未満の問題につきましては、ただいまの事務的な考え方といたしましては、当然健康保険問題との関連もあるわけでございます。健康保険の問題につきまして、いろいろ基本的な議論が行なわれておるのでございますが、それらとの関連を見つつまいりたいということでございますが、この問題につきましては、前向きに取り組んでまいりたい、かように考えておるわけでございます。  ただ、日雇い労働者につきましては、雇用形態が日々雇い入れるわけでございますので、厚生年金の事務的な機構に非常に乗りにくい。しかし今後とも検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  47. 八木一男

    八木(一)委員 斎藤さん、御努力をひとつやっていただきたいと思います。この問題について、いま一応御答弁になりましたけれども、とにかくいまの案を、いま言った定額分一万二千円にするとか、それからいまのような五人未満の問題、それから日雇いの問題、そういう問題を入れる問題についてやっていただきたいと思います。何ならいろんな方法がありますよ。日雇いの問題について、法律の中に、昭和四十四年度から日雇い労働者を入れるという条文を書くという方法だってあります、一年間準備期間が要れば。法律にはちゃんと書いてある。そして発動は来年にするというやり方だってあるわけです、ほんとうにやろうとすれば。そういうことも含んで、ひとつこういう問題が、いま斎藤さんが就任されたこの時期に、飛躍的な前進をするもとをつくっていただくように——いままだ厚生省の案ですから、内閣の案じゃありませんから、ひとつ至急に組み直して、内容がよくなるようにやっていただきたいと思います。斎藤さんの御答弁をひとつ願いたいと思います。
  48. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先ほども申し上げましたように、案を書くのはすぐできるでありましょう。しかしながら、それを党の意見とも調整をし、政府にも持ってまいるということになりますと、なかなかもう時間的には私は間に合わぬと思います。私は、やりますと言えば必ずやれることを申し上げなければなりませんので、この予算編成のまぎわに、これからまたその点をもう一ぺん練り直してやりますということは良心に恥じるわけであります。良心的に申し上げまして、できるだけ早い機会にそういうことができるならば、あるいは再計算期を待たずにでも党の意見もまとまればお出しをいたしたい。そういう線で検討いたしたいと思います。     〔委員長退席、橋本(龍)委員長代理着席〕
  49. 八木一男

    八木(一)委員 では、最大限の御努力をお願いしたいと思います。検討しますと言うけれども、検討にひとつ努力をつけ加えていただいたと解釈してよろしいですか。  では、その問題は終わりまして、今度は国民年金の問題に移りたいと思います。  国民年金についても、先ほど伊部局長は金額をはっきりいたしておりません。ですけれども、大体そういうことではないかと思います。厚生年金の定額部分というものは、国民年金の金額にいままで厚生省年金局は関連づけておりました。したがって、厚生年金の定額分を上げるということは、国民年金の給付額を上げるということと、厚生省のいままでのやり方ではつながっておるわけです。ですからそれをぜひ考えていただきたい。もし厚生年金が固定して動かないのであれば、そんな関連づけを無理にする必要はありません。ですから、国民年金について、そのようないまのおっかなびっくりの態度を乗り越えた、もっと金額の上昇、充実というものをぜひ考えていただきたいと思います。それについてひとつ斎藤厚生大臣から……。
  50. 伊部英男

    ○伊部説明員 先生御指摘のように、厚生年金国民年金とのバランスという問題につきましては、今後の改善の上におきまして、十分努力してまいりたい、かように考えております。
  51. 八木一男

    八木(一)委員 ちょっとはぐらかしちゃった。バランスを考えてくれと言っておるのではないのです。国民年金充実をしなければならない。あなた方は、厚生年金とのバランスとか、妙なバランスにも何にもならないものを関連づけて考えておる。それをやらなければならないのは、厚生年金を上げろということを言っておる。それから国民年金を同じく上げろ。上げてほしい。ですから、厚生年金がそういうふうに固定したのだったら、国民年金だけでもバランスを飛ばして上げてほしいということを言っておるのに、あなた方はバランスのほうだけ答えておる。それは質問要旨と逆のことを答えておる。そういうことでなしに、国民年金充実するように一生懸命やってもらいたいということであります。斎藤さんの御答弁をひとつ……。
  52. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 国民年金もこの際同様に二万円年金になるように努力いたしたいと思っております。しかし、厚生年金よりも飛び越えるということは、現実にむずかしいだろうと思います。そういう事情でございますので、その点は御了承願いたいと思います。
  53. 八木一男

    八木(一)委員 斎藤さんに申し上げたいのですが、いま伊部君がバランスなんて言っておりましたけれども、ほんとうのバランスではないのですよ。いままで厚生年金については、二十年払い込みの二万五千円ベースで一万円年金なんということを言っておるのです。国民年金は、二十五年払い込みで単独五千円、夫婦で一万円ということで、それがバランスだと称しておる。こんなものバランスでも何でもない。片一方は二十五年かかる、片一方は二十年ですから、国民年金のほうがはるかに悪い。しかも開始年齢は、厚生年金は六十歳、国民年金は六十五歳。六十歳と六十五歳だったら、支給金額や原資を計算すれば、七掛けくらいにしなければ計算が合わない。要件でそれだけ五年間違う、金額で五年間違う、支給年月日で五年間違うということは、何かバランスをとっておるように見えて、片一方は一万円のところを、片一方は夫婦一万円と称しているが、五、六千円にしかなっていないのです。バランスにも何にもなっていないのです。それを、厚生省なり年金局なり、そのことをはっきり見詰めない審議会などがバランスと称しておる。そんな間違ったバランスは直して、国民年金がよくなるようにしなければいけません。ですから、そういうバランスというようなくだらぬことにとらわれずに、国民年金の内容をよくするということをやっていただかなければならない。ところが、いまの厚生省年金局では、そういうくだらぬバランスということを考えて、厚生年金はこれだから国民年金はこれだということを考えているらしい。それを改めていただきたいということを、特に予算編成前で、案が内閣として確定する前に申し上げたいので、きょういま質問を申し上げておるわけです。ですから斎藤さん、それをまた再検討されて、年金局のぼやぼやした優柔不断の前向きでない態度を厳重にしかりつけて、案をきょうすぐ組み直さしていただきたいと思います。これを斎藤さんにお願いします。
  54. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 年金局も相当真剣に、そして勇敢に踏み切ってやってくれておると私は思うのでございます。まあ八木先生から見れば、まことにだらしないというおしかりを受けるであろうと思いますが、御意見のほども参酌をいたしまして、今後さらに努力いたしたいと思います。
  55. 八木一男

    八木(一)委員 時間がだんだんと迫ってきましたので、非常に残念ですが、実は斎藤大臣に申し上げたいのは、この前閉会中の審査で、園田前大臣年金の問題についてつぶさに二時間ほど申し上げました。たいへん恐縮ですけれども、それは園田さんに申し上げたのではなくて厚生大臣に申し上げたので、一月ほど前のものでございますから、ぜひひとつ至急御熟読いただいて、そこで、年金局は熱心なところもあるけれども非常に怠慢なところがあるし、非常にぼやぼやしたところがあるということを言って、園田氏はそれに対処を約束されておるのです。ですから、それを熟読されて、そのとき約束になったものがいま厚生省の案の中に抜けておるものだらけだから、なぜ抜けておるのか、これをなぜ怠けておるのかということをひとつ今晩でもお読みになって、厳重にしかりつけていただきたい。それを直していただきたい。抜けたものだらけです。  そのうちのおもなものを申し上げます。  年金の問題については、これは社会保障ですから、社会保障ということを念頭に置いてこの問題をよくしていかなければならないと思います。ところが、まず第一に、国民年金で申し上げますと、国民年金の中の拠出制年金では免除という制度があります。免除という制度は、保険料負担にたえられない人に対して認定をして、その期間の保険料免除をするわけでございますが、免除した人に対しては、その当時の保険料に当たる部分に対して五割の国庫負担がつく。この五割の国庫負担分だけを積み立てて、したがって、いま十の保険料に対して五の国庫負担がつきますから、ほかの人は保険料十、国庫負担五で十五の積み立てになるのに、免除の人は五しか積み立てがないからという数理計算で、一定の期間を経た年金支給のときには約三分の一の年金しか確保されていないわけです。免除を受けるような人は、収入が少なくて保険料負担にたえられないわけでございますから、もちろん蓄積は少ないわけでございます。したがって、その人が老齢になったときに、その人が障害を受けたときに、その人がなくなって遺族の生活を考えなきゃならないときに、一番年金の必要の度が多い人です。その人の年金及びその人の家族の年金が三分の一にしかならない。これは社会保障のさか立ちであります。社会保障の理念は、必要なところ、必要な人に必要な給付が、無条件に必要な期間だけ給付をされるということでなければなりません。幾ら保険料を払ったからというようなことは、生命保険の原理と同じであります。そういうような間違ったシステムにあるものを、正しいシステムのほうに変えていかなければならないわけです。特に国民年金法は、珍しくも憲法第二十五条がその第一条に明記をされておる。その精神に従ってやるということが国民年金法の定義に出ている。社会保険などということは書いていない。それを、内容の組み立てば社会保険にしてしまってそういうことをやっておりますので、その免除を受けた者の年金をもっと充実をするということは、衆議院、参議院の社会労働委員会で、五回にわたって附帯決議が満場一致でついております。自由民主党をはじめとして各政党全部賛成している。これがこの数年間やられているのに一つも手がつけられていない。国会無視これほどはなはだしいものはありません。また、憲法の条章をこれだけないがしろにしたやり方もありません。しかも今度年金の案を出すときに、与れを幾ぶんでも直すというような思想が一つもないように承っております。これについては、国民年金法改正案に、その免除者に対して年金を優遇する条項を即時につけ加えていただきたいと思います。それについての斎藤さんの御決意を伺っておきたいと思います。
  56. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま御意見のほどを伺いましたので、よく一ぺん検討してみます。
  57. 八木一男

    八木(一)委員 ありがとうございました。いままでももっと時間をかけて申し上げた方が多いのですが、それをよくやりたい、やるために善処する、検討するという御返事をいつもいただいております。ところが年金局が怠慢でこれが実現をしていないのです。斎藤さんはぜひ、これを断じてやらせるということでやっていただきたいと思います。何回言ってもやらないんだったらこれは論議のむだであります。だけれども、これだけ何回も言ってやらなかったら、結局、日本国憲法はそれだけじゅうりんされておる、国会の論議はそれだけ無視されている。非常に重大な問題になりますので、斎藤さんはこの年金改正の時期にぜひそれを実現するようにしていただきたい、それが一つの点です。  それから拠出制年金で申し上げます。大臣、御答弁をすぐしていただけるような質問をいたしますので、伊部さんの書類をごらんにならなくても、それはあとでごらんになって……。  非常に重大な問題がございますが、いまの国民年金法の拠出制年金は、ほんとう社会保障で組み立てられなければならないのに、社会保険という間違ったことで組み立てられているわけです。その点に非常な欠点がございます。いま斎藤さんに事例を申し上げて御判断をいただきたいわけですが、十九歳で全盲になった人がいます。その人は、いま老齢福祉年金というもので、その人の世帯及び本人の所得がなければ、月額二千七百円の老齢福祉年金が支給をされるようになっております。また二十一歳の全盲の人がいます。その人が二十歳で入ってから一年間保険料を払った後に交通事故か何かで全盲になったとすれば、その方については、たしか月六千円の障害年金が、所得制限というものなしに、したがって、その人のおとうさんや家族にどれだけ収入があろうとも、その人にどんなに財産があってその人自体の収入があろうとも、それはおかまいなしに一級障害年金というものが支給されている。これは非常にバランスがとれていない問題だと思いますが、斎藤さんはどうお感じになりますか。片方は二千七百円、片方は六千円。しかも片方は、ちょっとでもある程度以上の収入があったらくれない。片方はどんなに財産、収入があろうと一生涯もらえる。片方は十九歳で全盲、片方は二十一歳で全盲であります。こういうことが非常にアンバランスだと思いますが、斎藤大臣の、ほかの加薬を入れない率直な御判断をひとつ願いたい。
  58. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 いま伺いましたところでは、何だか非常におかしなような感じがいたします。よく研究をいたしたいと思います。
  59. 八木一男

    八木(一)委員 率直な御判断でけっこうでございます。まさにおかしいのであります。国民年金法を非常にけしからぬ仕組みをしましたためにこういうことができた。国民年金に保険の思想を入れまして、二十歳で被保険者になった後の原因による障害について障害給付を行なうというような仕組みをつくっているからであります。それで十九歳の人は被保険者になっていない。したがって、そのときの障害がどんなにきつくても、これは国民年金の拠出制年金の被保険者になれないので、一生涯いまの少ない障害福祉年金しかもらえない。しかも自分のところに収入があったらそれもくれない。所得制限がある。非常に間違った制度であります。これは保険会社の保険システムが間違って入っているわけであります。一級障害、たとえば全盲というようなものに好んでなる人はいないわけであります。保険会社は逆選択という理論がございますので、こういうようなことで、被保険者になってからの事故でなければいけないということは、生命保険会社が障害年金づきの契約をするときにはそういうことをやると思い、ます。けれどもこれは国民全体の社会保障であって強制適用であります。一部労働者の奥さんに任意適用の点がありまするけれども、本則として強制適用のものでございまするから、障害を受ける危険度のある人が任意的に入る、そうじゃない人が入らないというようなシステムではないわけです。全部が入るわけです。また障害を受けた人は、年金をもらいたいから障害を受けたというようなことはあり得るはずはないわけです。したがって、そういうような制約をつける必要はないのであって、生まれたときに全盲であっても、また三歳で全盲になっても、七歳でなっても、十九歳でなっても、こういう制度がある以上、それは同じく、そのような十分のほうの障害年金というものを所得制限なしに支給を受けられるということが、公平の原則であり、また所得保障の精神を貫く道ではないかと思うわけです。その点についても、社会労働委員会、衆参両院で論議をされ、与党、野党の人がみなその点を認められて、この点について共同の附帯決議が何回もついているわけであります。それにもかかわらずそれが実現をしておりません。こういうような点について、ぜひ斎藤さんが勇断をもって障害年金の給付に入れるように、ひとつ今度の国民年金法改正案にぜひ盛っていただきたいと思う。これについてお答えをいただきたい。
  60. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先ほども申し上げましたように、附帯決議もあるというお話でございますが、それらも検討いたしまして、できるならいたしたいと思いまするし、前向きで考えていきたいと思います。
  61. 八木一男

    八木(一)委員 ありがとうございました。率直な御答弁で非常に感謝を申し上げます。これはもうどんな観点からも入れなきゃならない問題なんですが、これは役所の、そういうふうに法律を変えてしまったということを抜け切れないという繁文縟礼のために、その障害者の方の人権が侵害されている。人権の侵害に対して保障されていないで停止をされているという状況でありまして、いままでの約束に対して攻撃はいたしませんけれども、伊部さんもいまの怠慢を改めて、斎藤さんが熱意をもって当たっておるのですから、その補佐を申し上げて、今度の国民年金法改正案に入っていくようにひとつやっていただきたいと思う。そういう点がもう一点あります。  残された時間がわずかになりましたから問題をしぼります。  福祉年金のほうに移りたいと思いますが、斎藤大臣、特に申し上げておきたいことがございます。実は二年後に拠出制の老齢年金で十年間経過をした人、これは任意でありますが、それの年金支給が始まるわけでございます。そういう方々は、拠出制でございますから、六十五歳で支給を受けるということになる。それからもう一つは、所得制限なしで支給を受けることになる。昭和四十六年から拠出制の国民年金、十年間任意加入というものが始まります。ですから六十五歳からしかるべき老齢年金を所得制限なしに受け取る。それまでに解決しなければならないのでございます。というのは、老齢福祉年金というのは七十歳開始でありますから、いまの拠出制の年金を開始されたときに、六十五歳の方がお受け取りになると、その一つ上のお年寄りの方が、年金を理解し、年金を熱望しても、その方は年次的に拠出制の年金に入る機会を与えられなかった。その方が六十六歳であってもこれはもらえないわけであります。一つ下の方は六十五歳になってもらえるわけであります。非常に時期的に断層が起こるわけであります。ですから、七十歳開始の老齢福祉年金をそれまでに六十五歳に合わせていかないと、時期的な非常な断層が起こって、国民に対する不公平が起こる。それを前から提起をいたしておりますのに、そのことについての附帯決議が出ておりますのに、厚生省がまだ踏み切っておられないわけであります。四十六年でやるとすれば、二年間で七十歳開始を六十八歳にする、あるいは六十六歳にする、六十五歳にするというように段階的に合わせられたほうが、政府としてはおやりになりやすいのではないか。私は一発七十歳開始を六十歳にしていただいて差しつかえないのでありますけれども、政府のほうからいえば、いまのほうがやりやすいのではないか。おそらくそうなれば、ことしからスタートを切らないとやりにくいことになる。そのことをぜひやっていただきたいと思います。  そこで大蔵省が、七十歳を六十歳にすると原資がずいぶん要りますから、斎藤さんは聡明な方ですからよくおわかりでありますが、最初の五年間は、任意適用ですから全部ではありませんが、その次の五年間たちますと、強制適用になった老人の十年間の給付が始まります。そのときは、強制適用ですから、ほとんどの人が拠出制の年金に入っているたてまえになっております。年金発足のときは、幾ぶん無理解がありましたから入らなかった人もおりますけれども、原則としては入っております。そうすると、拠出制の老齢年金をもらう人がぐっとふえますから、老齢福祉年金をもらわなければならない人の数は激減するわけであります。したがって、七十歳開始を六十五歳開始にして原資がふえても、その差は一時的なもので、十五年たてば完全に解消いたします。そして五年くらいたてば三分の二くらい解消いたします。一時的には原資がふえますけれども、これは大蔵省が心配するような、恒久的な何百億という原資がふえることにはならないわけです。その点は大蔵省の人にもひとつ理解をさしていただいて、この問題をぜひ実現をしていただきたいと思います。でないと、これはほうっておけば、お年寄りですから声は高くございません。それで、その方がなくなってしまわれたあとでお墓に持っていっても、あとの祭りであります。ですから、ずうずうしく政府がかまえるならば、ほうっておいてもそう大した問題にならない。国民運動で国会を取り巻くということにはならないと思います。ならないにしても、お年寄りにそういうような不合理な点、ほかの人たちはもらえるのにその人たちは六十六歳でもらえないという点を、政治の面で解決することがわれわれの責任ではないか。いまどんなにお年寄りの声が少なくても、われわれの時代をつくってくださった親たちでございますから、あの人たちが遠慮があって言わなくても、不合理なことはわれわれで直すということをやっていかないといけないと思います。その点で、ぜひ斎藤厚生大臣、このことをよく御理解をいただいて、七十歳開始の老齢福祉年金を可及的すみやかに六十五歳に合わせる。十年間の拠出制老齢年金の開始までに合わせる。そしてその境になったお年寄りが、なぜわれわれだけがこんなに無視されるのだろうと、老齢になってから国の政治に対する悲哀を感じられないようにぜひやっていただきたいと思う。それについての斎藤さんのお考えを承っておきたい。
  62. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は率直に申し上げまして、附帯決議のこともあるというお話でございますから、附帯決議の点もよく研究いたしたいと思いますが、老齢福祉年金につきましては、年齢をもっと引き下げて六十五歳からという説にはちょっと私はいまのところ賛成しがたい。と申しますのは、御承知のように平均年齢もずいぶん延びてまいりました。私は少なくとも七十歳ぐらいまでは元気で働いてもらわなければならぬと思う。そして無拠出の福祉年金ということであれば、やはり現状からかんがみて七十歳ぐらいが適当ではないかという私は率直な感じを持っております。もう六十歳、六十五歳から老人扱いをするのは、ちょっとこれからの日本の人口構成を考え、いろいろの点を考えてみましても、また実際においても、むしろ働いていただけるようなそういう場をつくり、そして働くことのできない方には別の方法で社会保障として考えていく必要があるのではないか、かようにいま率直に思っているわけでありますが、御意見の次第もございますから、いろいろ研究はいたしたいと思います。
  63. 八木一男

    八木(一)委員 斎藤さんの率直な御意見でございますから伺っておきますけれども、しかし厚生大臣としての斎藤さんとしては、そのお考え方については、さらに再検討をして改めていただかないと困ると思う。一個の斎藤さん、また一個の政治家斎藤さんとしての御提言は御提言でけっこうであります。厚生省というところは、老人の問題について対処しなければならない。その中で老人の所得保障について特に対処をしなければならない省であります。年寄りが仕事を好む、仕事をしなければ生きがいがないということは私も承知いたしております。斎藤さんも思っておられるでありましょう。それは、生活というものがある程度確立されておって、そういうことの中で、自分の能力、自分の気力を生かして仕事をされることは、老人にとってしあわせでありましょう。ところが老人の中で声のある人は元気です。元気な人は老人としての声を出します。われわれは年金をもらうよりも仕事がほしいということを言われます。これは大学の教授を六十五歳までした人はそういう意見を持っておる。しかしこれは国民の中の少数であります。また所得保障など一切関係のない失対労働をしている人には老齢保障も就業保障もない。そして生活保護以外は制度がないというところで、生活保護ではあまりに非人間的だから少しでも働いて賃金を得たい、押し詰められた気持ちで働きたいということを言っている。こういうような政治の貧困によって押し詰められた人の声、また特に優秀で健康で意欲を持っておる老人、そういう人たちの考え方で一般の老人を律することは間違いのようであります。老人の中には弱い人もさびしい人もいろいろあります。その中で、老人になってから自分が働かなければ生活ができないということこそ不幸なことはありません。また家族制度が、民法では堅持されておりますけれども、実際上は崩壊をされておりますから、老人に対する所得保障というものが厳然として大切な問題であります。  そこで、たとえば厚生年金で、炭鉱の労働者については五十五歳から退職老齢年金がある。労働者については六十歳からある。普通の国民年金は六十五歳からあるという場合に、それまでの不幸な、対象とされなかった老人に対しては七十でいいということが言い得るか。そういうことは言い得ないと思う。斎藤さんのお考えになった、お年寄りが意欲を持って働ける場所をつくることは、これは厚生省でもお考えになったらいいし、労働省でもお考えにならなければいけないし、いろいろなところで考えなければいけないけれども、それと老齢保障がある年代から必要であるという問題は、画然と別に考えなければならない問題であります。厚生年金は六十であり、国民年金が六十五歳であれば、当然六十なり六十五歳なりで老齢保障が必要であるという国の本筋がきまっておるのであります。そとを、ただその制度の始まる一年前に生きたからといって、その老人だけは七十歳までほったらかしておいていいという理屈は、政治の公平性、政治の正しさからは通らない問題だと思う。その点で、六十五歳の老齢年金国民年金で始まる以上、始まる時点において六十六歳の老人がいて、六十五歳の人は支給を受ける、六十六歳の人は支給を受けないというような政治的な不合理を直さなければならない。直すために、その場にいって、ことしから直せと申し上げたならば、たいへん政府も急速でお困りになるだろう。したがって、その二年前から、三年前からその問題に取り組んで、そして六十五歳から老齢福祉年金を支給するということをすべきだ。  そこで、国民年金は一部を除いては強制適用でございまするから、老齢年金の適用を全部が受けることになる。老齢福祉年金例外である。したがってそれだけ金額は多くなりません。一時的に例外期間十年間ほどの支出はありますけれども、これは老齢年金の十年以上の拠出期間を持った人の年金として、そこに吸収され、解消さるべきものである。その十年間の間に日本のお年寄りの一部に不幸がないように、不公平がないように、いま対処をしていただきたいということを申し上げたわけであります。また委員会においてもそれをみな御同意を願って、満場一致の附帯決議がついたわけであります。どうか、斎藤先生の別の意味の御定見は御定見として、厚生大臣としての斎藤先生は、その問題について強力に進めるということをぜひ決意をされ推進をしていただきたいと思う。それについての斎藤さんのお答えを伺いたい。     〔橋本(龍)委員長代理退席、田邊委員長代理   着席〕
  64. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私、先ほど申し上げたとおりでございますから、非常に御熱心な御意見でもございますので、私の意見を変更しなければならぬかどうか、よく検討いたしたいと思います。
  65. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、時間がまいりましたので、実はこの前園田厚生大臣に申し上げたときには、この時間の倍ほどの時間で申し上げました。いま申し上げたことはその中の一部分であります。ぜひ熟読をしていただきたいと思いますし、年金の問題が今度発足するときですから、いま申し上げたことをひとつぜひ今度の案に組み入れる最大の御努力をしていただきますように、また年金だけではなしに、社会保障全般厚生行政全般について、ひとつ前向きに、強力に、勇敢に御推進になっていただきますように要請をいたしまして、私の質問を終わらしていただきます。
  66. 田邊誠

    田邊委員長代理 島本虎三君。
  67. 島本虎三

    ○島本委員 新任の大臣で初めてでございまするけれども、きょうは栄養改善法等の改正の必要に関する質問、これを展開してまいりたい、こう思っておるわけであります。  まず、給食の衛生管理について、文部省の方来ておられると思いますので、その方面から逐次聞いてまいりたい、こういうように思いますので、ひとつよろしく御答弁願いたいと思います。  まず、私のほうでは総体的に大臣にお伺いしておきたいのです。それは厚生省では、公衆衛生関係の栄養改善法によって、集団給食施設における栄養管理、こういうようなものがはっきりきめられてあるわけです。しかしこれは義務規定ではなく、必置条件もございませんので、ある場合には、この問題が重大な手抜きになっている場合が往々にして見受けられるわけです。この全体の問題として、現在働いておる人または集団給食を必要とするような事業所、いわゆる労働力であります。現在の高度成長政策をいわば成功さした貴重なる労働力である。まして集団給食をしておるところの文部省関係の学校、児童等に関しては、二十一世紀をになう重要なる人材なんです。そういうような意味では、粗略にできない問題でありますから、総体的に国民の体位の向上とあわしてこの集団給食——給食のこの問題は、最近だいぶ手抜きになってきているような傾向がある。労働省にもある。文部省にもある。刑務所にもある。こういうような傾向は、私どもはこれを見のがすことはできない。大臣はこういうような傾向についてどういうふうにお考えでございましょうか。まず所信を伺って、それから逐次質問に入らしてもらいたいと思います。
  68. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 栄養管理の問題は、まことに大事な問題だと思っております。現在の法制のたてまえすらも守られておらないということであれば、それはまことに遺憾なことだと思います。また、現在の法制で足りるか足りないか、おそらくまだこんなことじゃだめだという御意見であろうと思いますが、御意見の次第も伺い、また私もまだ大臣になったほやほやでございますので、十分御意見も伺いながら善処してまいりたいと思います。
  69. 島本虎三

    ○島本委員 まず文部省にとりあえずお伺いしておきたいと思います。これは給食衛生管理の問題であります。  この夏、最も涼しいはずの北海道のほうで、千四百名をこえる集団赤痢、食中毒の発生があったわけであります。この原因を調べたところが、食品衛生の管理の不手ぎわである。ことにこれはセンター方式による給食によるところの被害であったということがはっきりされたわけであります。最近の傾向としては、学校給食の普及と市町村の経費負担軽減、学校間の給食格差の解消、それから教職員の労働軽減、こういうような理由のために給食センターを利用することが往々にして行なわれているようであります。この問題等につきましては、これはやはり文部省としても十分関心を持っておられると思うのです。集団中毒を発生さしたその問題については、あくまでもあらゆる点でこれを管理しなければなりません。この集団中毒の発生した北海道の帯広中学校ですけれども、千四百名というのはこれはちょっと大き過ぎる。北海道では戦後最大だといわれている。こういうようなのはあまり望ましい例じゃないのですが、これに対してはっきりした管理を今後当然していかなければなりません。その後の経過等についてどうしているのか、これを伺っておきたいと思うわけです。
  70. 柳川覚治

    ○柳川説明員 御指摘の学校給食におきまして集団中毒発生の事件は、今年度におきまして全国で六件を生じております。そのうち二件が給食センターによるものでございまして、その原因となりますものは、大体使用いたしました食品によるものと見られておるものでございますが、帯広におきましては千四百名に及ぶ下痢症状患者を発生したということでございまして、学校給食における衛生管理の問題につきましては、文部省といたしましては、毎年通達をそのつど出しまして衛生管理の徹底をはかっております。また、各種の衛生管理講習会あるいは学校給食研究集会などの講習会、研究協議会等を通じまして衛生管理の徹底をはかっておるわけでございます。なお、今後ともこの面の充実をはかるという点に努力してまいりたいという考えでございます。
  71. 島本虎三

    ○島本委員 これは学校の場合には昭和三十五年十二月の通達によって、「学校給食に従事する職員の定数確保および身分安定について」というのが出されておるわけでございます。ところが最近、前に申しましたような理由で給食センターを大規模に使う傾向になってきた。そうなった結果、二分の一の補助だけで文部省はそれに手を触れておらない。そして問題点としては、給食センターの調理員、それから学校栄養士の配置基準、こういうようなものが全然ない。そして給与は特に低くて一万二千円以下の人が多い、時間は朝の七時から晩の五時まで、労働科学研究所の調査によると中労働に属する、これに対する社会的な認識も低く臨時雇員も多い、こういうような結果がはっきり証明されておるわけであります。そうすると、最近の傾向として給食センターを使う、使うけれどもそれに対する基準が野放しである、こういうようなことではやはりだめなんじゃないか。満足な配置基準があるのかどうか。この問題については、文部省のほうに、再三にわたって教育委員会のほうから、配置基準がないからやってくれ、給与の点等についても低賃金過ぎるから善処してほしい、身分の点も安定させてほしいというような陳情があるかのように承っております。しかしながら依然としてナシのつぶてである。その結果が児童のほうにはね返るということになると、これはたいへんなことになるのです。文部省が、給食センターに対する、また利用に対する、はっきりした的確な認識を欠いているんじゃないか、こう思われますが、いま私が言ったこと、これははっきりしたデータによる調査の結果でありますから、これははっきり答弁願いたい。
  72. 柳川覚治

    ○柳川説明員 学校給食が開始されました当初は、いわゆる単独校方式で学校給食の実施がなされてまいりましたが、三十七年当時から、桐生における給食センターを最初といたしまして、センター方式による学校給食の実施が地域によってはかられてまいりました。これにつきまして、新しい制度として発足してきたセンター方式につきましての指導が十分徹底していないということは、私ども御指摘のとおりと反省をいたしておりまして、現在保健体育審議会におきまして、センターの適正規模及びこれに対する改善の方途ということを含めまして検査中でございます。  なお最近の傾向では、特に中学校における完全給食の全面実施の推進という観点からセンターの実施が促進されておるというような動向がございますので、緊急にこの点の適正基準をつくりまして十分な指導をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  73. 島本虎三

    ○島本委員 大臣もお聞きのとおり、こういうような事態がまずあるのです。これは大臣としては、政治谷間が児童のほうにはね返るというような傾向は、今後二十一世紀を背負う重大な人材養成という立場から、これをそのままにしておくわけには当然まいらない。文部大臣同様だと思う。しかしながら、給食の面ではこういうような手抜かりもあったことがはっきりいたしました。そうすると、給食センターには今後いろいろな点で、管理栄養士または栄養士、こういうようなものについてははっきり配慮してやらぬといけないと思う。これは知事からも議会のほうからも再三陳情があったそうじゃありませんか。依然としてナシのつぶてだということなんですが、これはやはりそのままにしておくわけにいきません。しておいてはいけません。したがって、こういうような一定規模以上の集団給食施設に対しては、必置義務をはっきりつけるべきだ。それから身分の安定、こういうようなものを当然考えてやらなければいけない。そして給与のほうも、一万二千円という給料、これは労働省も来ておるだろうけれども、ちょっとそのままにしておかれませんぞ。三条件も四条件もそろって悪いのです。ぜひともこれは改善してもらいたい。そしてその場合には、法によってはっきり資格のある人の必置義務をつけるようにしてやっておいてもらいたい。このことも特に要請しておかなければならないと思うのです。これは閣議なんかにおきましても、厚生大臣も、この点等につきましては、文部大臣に対しての話し合いの機会もあろうと思いますが、いまの質疑のこの状態を通じて、文部省からの答弁とあわせて、大臣もこれに対するはっきりした見解を示してもらいたいと思います。
  74. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 文部大臣にもただいまの御意見のあった次第をよく伝えまして、ともどもに検討してまいりたいと思います。
  75. 島本虎三

    ○島本委員 文部省のほうはどうですか。
  76. 柳川覚治

    ○柳川説明員 学校給食センターにおける栄養士の設置状態につきましては、年々増加してまいっておりまして、本年五月一日現在で申しますと、給食センターは千二十一カ所ございます。このうち実際に栄養士を一人以上置いているところが九百三十カ所ほどございまして、栄養士の設置個所率は九一・七%というように一応上がってまいりました。  なお、未設置の個所につきましては、いわゆる親子給食等の二校程度の小規模なセンターで、市町村に置かれます栄養指導職員が指導するという形で行なっておるもの、あるいは離島につきましてのもの、あるいは同一市町村内に他にセンターがございまして、そこに栄養士を置きまして、その栄養士が兼務しているというような形で、なお未設置のところ八十カ所ほど残しておりますが、これらにつきましても、少なくも各センターには栄養士が一人配置されるべきであるという方向で文部省としては指導及び援助をいたしております。  三十九年以来、センター設置につきましては、必ず一人の栄養士の設置を二分の一国庫補助で見ていくという方向を現在とっておりますが、なお御指摘のとおり、学校栄養士の必置の問題及び身分、地位の確立の問題は、各方面から強く要望されておる問題でございますので、鋭意文部省として前向きに検討していきたいと思います。
  77. 島本虎三

    ○島本委員 それで、私はもう、実行してもらいたいということを強く要望して、これで質問を終わるわけですが、ことに一言加えさせてもらいたいのは、給与が低過ぎる。それと労働時間が長過ぎる。それから臨時雇用が多過ぎる。これじゃどうもしようがありませんので、これはいろいろな関係があろうかと思うのですが、この問題だけは粗略にできない問題ですから、これはもういまの発言のとおりに実行してください。このことを強力に要請して、文部省のほうの関係はこれで終わります。  次に刑務所の関係でちょっとお伺いしたいのですが、札幌刑務所で集団赤痢が発生して六十一名隔離されたということが本年あったようでありますが、これはどういうようなことになっておるのか。この原因、感染経路は一切不明だということでございます。大体これはわれわれが調べた情報によりますと、七月二十五日ごろ、男子受刑者六名が腹痛と下痢状態を訴えたので、一千名の受刑者と職員を調べた。その結果、八月の二日までに男子六十一名が赤痢と判明した、そしてこれを隔離した、こういうことなんですけれども、原因その他判明しない。経路もわからない。これだけで全部終わっておるようです。いわゆるこれは衛生管理、ことにこれは人権にも関する問題になりかねない。こういうような方面に対しては、一体どういうようなことだったか、報告順いたいと思います。
  78. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 札幌刑務所におきまして、過般赤痢が発生いたしまして、まことに申しわけない次第でございます。その発生の状況また感染の経路、またそれに対する措置等につきましては、関係の者から詳しく御説明申し上げます。
  79. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 御指摘のとおり、本来の七月二十三日ごろから微熱を伴う腹痛、下痢を訴える患者が多発いたしました。約四十名でございます。そこで、札幌刑務所の医務部におきましては、検便を行なうと同町に患者の隔離、治療につとめ、検便の結果、七月二十七日に赤痢であることが判明したわけでございます。その後八月の五日までの間に、真性患者四十四名、保菌者三十七名、計八十一名の発生を確認したのでございます。そして八月五日、発生の五名を最後といたしまして、新患者の発生はなくなりました。重篤症状を呈する患者もなく、一応九月五日全員治癒したのでございます。これが私どものもとに入りました発生状況でございます。  これに対する防疫の実施状況といたしましては、患者の発見とともに、患者を所内の病舎に全員収容いたしまして、厳重隔離し、一般の収容者との接触を防ぎ、さらに保安職員を応援させて防疫班を編成し、所内の消毒を徹底的に行ない、蔓延防止につとめたのでございます。また一般の収容者につきましても、七月二十九日から八月十一日までの間、作業を中止いたしまして感染の防止につとめました。患者に対しましては、赤痢菌の薬剤耐性検査を実施いたしまして、抗生物質薬ウイントマイロン、メタコリマイシン等を投与し、その治療の万全につとめたわけであります。さらに職員及び収容者の一斉検便を繰り返し実施いたしまして、御指摘の千七十五人の収容者に対し、検便の延べ人員は五千五百七十三名でございます。患者の早期発見に鋭意努力したわけでございます。  札幌刑務所には、当時医師五名、薬剤師一名、栄養士一名、衛生検査技師二名、看護人三名、レントゲン技師一名などの医務関係職員がおりましたが、とてもこれでは手が足りませんので、本省指令で八王子医療刑務所から医師一名、衛生検査技師一名を急拠応援派遣し、また札幌矯正管区内のもより施設から看護人二名を応援させましたり、さらに七月三十一日には本省から医師一名を現地に急行させて監督指導させたわけでございます。さらに、施設の職員に疲労が見えますので、八月五日から終息に至るまで、宮城刑務所から衛生検査技師一名を応援派遣いたしました。  以上が対策の経緯でございますが、この集団発生の原因につきましては、その発生状況、患者の分布などから見まして、共通経路感染と考えまして、徹底的に炊事職員、担当者の検便をいたしたわけでございます。その結果、炊事夫のうち一名が健康保菌者であるということを確認いたしました。  これは札幌刑務所に限らず全国の刑務所では、炊事夫を選定するにあたりましては、厳重な健康診断を行ない、性病、皮膚病などの伝染病罹病の有無を確認し、また検便を実施いたしまして、赤痢とか腸チフスなどにつきましても検査を行なって就業させております。さらに就業後も毎月一回は必ず検便をするというのがたてまえでございます。当の炊事夫につきましても、入所時及び就業前に検便を行なっておりますが、赤痢菌は発見できなかったわけでございます。そこで私どもとしては、この検便によって必ずしも一〇〇%児つがるわけではございませんので、結局、直腸鏡によって精密検査を行なった結果、さっきの炊事夫が保菌者であるということがわかったわけでございます。結局この保菌者である炊事夫からばらまかれたのではないかという推定でございます。  今後の対策といたしましては、矯正施設において収容者の集団生活を管理するためにも、また伝染病の発生を防止するためにも、できるだけ検便、健康診断をさらに徹底的に行なうよう指導するとともに、こういう給食関係職員あるいは給食の衛生管理という面についてはさらにその徹底を期したいというふうに考えております。
  80. 島本虎三

    ○島本委員 よくわかりました。ただこれは法によりまして、当然栄養士のうち少なくとも一人は管理栄養士であるようにつとめなければならないことになっております。いまの報告にはこういうようなのがないようでございまするが、これはどうしたことでございましょうか。
  81. 樋口幸吉

    ○樋口説明員 札幌刑務所の栄養士は管理栄養士になっていると一応伺っております。
  82. 島本虎三

    ○島本委員 こういうような場合は、やはり国の機関でございます。どこの場所よりもこの管理にはよく気をつけなければならない。これはやみからやみに葬られるようなことがあっては困る。いまここだからようやく聞けた。一般には公表されない。こういうようなことであると、その責任はだれなんだ、こういうようなことをさえもわからぬわけです。報道機関の調査によると、騒ぎを起こした責任は感じておるが、発見が早かったから少ない数で食いとめられそうだ、もちろん対策については万全を期したいという所長談話が載っているだけでありまして、こういうふうにするのはもう法務大臣じゃないか、私はこう思うのですが、責任はどなたになるのですか。私はわからぬのです。
  83. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 結局するところ、法務大臣の責任であると思います。
  84. 島本虎三

    ○島本委員 今後所長を督励して対策に万全を期さなければならない、こういうようなことに相なろうかと思います。まして国の機関である以上、これは軽々に扱われない問題です。いかに刑務所であろうと、受刑者を対象にしようと、その方面はなおさら手厚くしなければならないはずです。そういうようなことからして、栄養士の配置については今後なお十分配慮しておかなければならない。そして管理栄養士はおるかと思いますという程度ですから、これもはっきりさしておいて、その辺手抜かりないようにすべきである、こういうふうに私は思います。これは不安な状態をそのままにしておいてはいけませんので、この二つだけははっきりと皆さんのところで善処してもらいたい、こういうふうに思います。
  85. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 ただいまのお話のとおり、ことに収容者の共同生活、集団生活をいたしております関係もあります。またこの人たちは自由が限られております。こういうことでありますので、ことにその方々の栄養管理と申しますか、生活の問題は人権の問題でございまして、特段の注意を払ってまいりたいと思います。  御指摘の栄養士の問題、これは実際は予算その他のこともありまして、全国の収容施設に対する配置が十分ございません。したがいまして、いろいろくふういたしまして、あるいは札幌刑務所におります栄養士は管区の栄養士を兼ねたり、北海道の各収容所の栄養についても責任を持たせるというような措置もとっておりますけれども、これはもちろん不十分でございます。こういう点につきましては、今回の事件を契機といたしまして、さらに私どもその充実に努力をいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  86. 島本虎三

    ○島本委員 なお、発見されたあとの対策は機敏であったようであります。しかしながら、発見されたあといかに機敏であっても、問題は起こさないにこしたことはないのでございますので、その点等も十分考えて今後の対策——ことにこれは人員削減のような現在の状態のもとに、皆さんのほうにこれもしわ寄せがいっているのです。ことばに言わなくともそれは私わかっているのです。おそらく二重、三重に資格を持った人がやっているのです。十分手は尽くしていないのです。こういうようなことはいかに隔離されてありましても、大臣としても十分考えて対処しないといけません。これは憲法上の問題にもなりますので、人権の問題ですから、再びこういうようなことがないように十分対処しておいてもらいたい、このことをお伺いしておきますが、よろしゅうございますか。
  87. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 栄養士の問題もさることでございますが、急性伝染病の発見というのは、なかなか保菌者の発見というのは実際むずかしいものでございます。今回も十分注意はいたしておりますけれども、そういう結果に相なったわけでございます。したがいまして、この保菌者の発見というこの一点に限りましても、いままで月一回の検便とかというだけのことで事足れりとせずに、ことにこういう給食等を扱っている者につきましては精密のものをやっていきたい。これには予算や人員などの制約もございます。そういう点について特に努力をいたしたいと思います。
  88. 島本虎三

    ○島本委員 特に努力してもらいたいことを要望して、ではそっちのほうはこれで終わります。  なお、皆さんの場合には、やはり下部のほうへまいりますと、この点なかなか不便が多いようであります。私どもしょっちゅう入る機会はございませんけれども、しかしながら、受刑者の人、一人一人に出てきてから聞きますと、それはいろいろ不便が多いようであります。こういうようなことがないように対策の万全を期しておいてもらいたい、ではこれで刑務所関係のほうは終わります。どうも御苦労さんでした。  次に、今度は労働省に入ります。労働省の場合には、これは労働基準関係になるのではないかと思うわけですけれども、労働安全衛生規則の二百二十二条によって管理がいろいろきめられておりますけれども、ここには法文によると、いろいろな栄養士なり衛生管理者、こういうのは必置義務になっておるようであります。しかしながら、これが往々にして行なわれていないようであります。「事業場において、労働者に対して、一回三百食以上又は一日五百食以上の給食を行う場合には、栄養士を置くようにしなければならない。」こういうことが間違いなく行なわれているように、これは調査いたしましたか。いたしておりませんか。いたしておりましたら、そのデータをお知らせ願いたいと思います。
  89. 和田勝美

    和田政府委員 いま御指摘になりましたような条文がございます。附属宿舎規程のほうにも大体同趣旨の規定がございまして、私どもが監督に参りますときには当然そういう点を確認してまいります。私どものほうで監督を実施しました関係で、衛生関係——それ以外に非常にいろいろございますが、衛生関係についての違反がございましたが、その栄養士関係について、これだけの違反というふうにまとめませんで、衛生関係全体でまとめておりますので、いま先生の御指摘の、栄養士だけではどれだけかというのは、ちょっと統計資料にございません。ただ衛生関係には違反がございます。
  90. 島本虎三

    ○島本委員 その衛生関係の違反の件数をはっきり発表願いたい。
  91. 和田勝美

    和田政府委員 全体の監督を実施しました中で、衛生関係の違反は二・九%でございます。
  92. 島本虎三

    ○島本委員 二・九%の違反があったわけですか。それ以外は違反がないわけですね。
  93. 和田勝美

    和田政府委員 いま申し上げましたのは、それ以外の基準法違反はございますが、衛生関係では二・九%が違反である、そういうことでございます。ただ、その中で栄養士関係が何%を占めているかは、ちょっとはっきりいたしません。
  94. 島本虎三

    ○島本委員 栄養士関係でも衛生関係の中に入るのではありませんか。これは入らぬのですか。
  95. 和田勝美

    和田政府委員 その衛生関係の中には栄養士は入っておりますが、だから二・九%の中でございます。ただ、栄養士関係の違反は何件かというのは特別にとっておりませんので……。
  96. 島本虎三

    ○島本委員 北海道では、これを調べたら四八%より置いているところはない。それだのに二・九%では……。では北海道より全部がいいのですか。うそ言ってはだめだよ。そんなのは調べてあるんだよ。そんなことをやりながらも、基準局を廃止したほうがいいなんて、こういうふらちな考えを持つなんてもってのほかだ。
  97. 和田勝美

    和田政府委員 先ほどパーセントで二・九%と申し上げましたが、数で申し上げますと、衛生関係の違反は四十二年で六千六百五十七件でございます。先生のいまお話しのは、基準関係でございますか、あるいは栄養改善関係でございますか、ちょっとわかりませんが……。
  98. 島本虎三

    ○島本委員 わからないことないよ。基準法関係だと言っているじゃないか。
  99. 和田勝美

    和田政府委員 いまの六千六百五十七件、これは全国でございますから、北海道だけでそんなに高い数字を占めているかどうかは、いま手元に資料がございませんので、資料を整えてお答えをいたします。
  100. 島本虎三

    ○島本委員 栄養士関係でこれをちゃんと置いていた職場が総体の四八%よりなかった、これは北海道議会で問題になったのだ。完全に労働基準法関係の違反じゃないですか。全国的なパーセンテージも何かあいまいなデータしかないようです。こういうようなのはやはり基準法違反ということになりますが、こういうような違反業態に対しては摘発する準備はありますか。
  101. 和田勝美

    和田政府委員 基準法の安全衛生規則と附属宿舎規程にははっきり明示しておりますので、それに違反することであってはならない。もちろん監督をいたしまして、事情を聞いた上で処理をいたしますが、あの条文がある以上はそれに反しておれば違反ということでございます。
  102. 島本虎三

    ○島本委員 そのとおりであります。答弁はりっぱですよ。だけれども私は少し不可解なものがある。いまたった一つ厚生省関係で調べたのです。そうしたら、あなたが所管している労働基準関係の労働安全衛生規則、この方面にまで集団給食を要するような事業所のものもはっきり規定してある。それには必置条件まで付してある。こういうようなのに、それを実行していないような業態が意外に多い。こんななのに、巷間伝えるところによると、基準局をほかのほうに移管したらいいじゃないか、こういうようなうわさが流れている。あなたのほうに聞くと、そんなことはないという。うわさだけ流れてきている。業務も完全に果たせないで、そして局だけ廃止していいような、こういうような怠慢な管理はいけませんよ。これが炭鉱だった場合にはどうなります。管理は通産省でやっていますよ。指導もやっていますよ。しかしあとは全部労働省のほうでこの被害者に対する救済を見なければならない。やはり通産省のほうは勢い採算を主にする傾向になる。だから被害はだんだんと起きてきている。これはもう基準法を完全に守らないためだということさえ言えるのです。あなた方もう少し熱を入れてやらなければいけません。私どものほうでは、なぜこんなりっぱな条文まであってこれを守らせないのだ、守らせることができないような理由があるのですか、それをまず局長に聞いておきたい。
  103. 和田勝美

    和田政府委員 栄養士の設置義務につきまして、守らせられない理由が特段にあるとは思えません。ひとつどういう事情か事情をよく調べさせてもらいたいと思います。
  104. 島本虎三

    ○島本委員 それはもう事情があるなしじゃなく、もうすでに具体的に守っているのは四八%よりない。北海道だけのデータはあるのだ。その理由も知らない、こんな怠慢なことはありませんよ。もうすぐ手を入れて、これははっきり法にもとっていますから、それを続けているようなところは摘発しなければなりません。そうさせなさい。そうして労働基準法の価値の高さを天下に表明しなさいよ。あなたたちがぼさぼさしているから、廃止したほうがいいのじゃないかという声が出る。私のいまの質問はあなたを通じて鞭撻になっているかもしれないが、もうこれ以上の怠慢は許されないはずです。したがって、これはもう法にもとっている場合には摘発する準備がある、この決意だけでもはっきり示しなさい。
  105. 和田勝美

    和田政府委員 法律違反がはっきりいたしておりますれば、もちろん私どもとしては厳重な監督をする心がまえは十分あります。
  106. 島本虎三

    ○島本委員 これは摘発する準備もあるのですね。
  107. 和田勝美

    和田政府委員 摘発ということばの問題でございますが、司法処分にまで持っていくかどうかにつきましては、十分実態をはっきりさせてからにしていただきたいと思います。
  108. 島本虎三

    ○島本委員 それは結局は、いままでいろいろ言ったことでおわかりのとおりに、黙っていれば現在の状態が続くということでしょう。続いたらそれだけ法違反が繰り返されるということでしょう。よく調べてみなさい。おそきに過ぎたらどうなんですか。炭山、山なんか、おそきに過ぎたら全部つぶれてしまうのです。しかしそうでないもんだから、のんべんだらだらしている。こういう考え方ではだめだ。ほんとうに善処しなさい。これからでも全力をあげてこれに対処する、こういうようなかまえでこれを進めていかなければいけないと思います。これはよろしゅうございますか。
  109. 和田勝美

    和田政府委員 御趣旨に沿うように厳重に努力をいたします。
  110. 島本虎三

    ○島本委員 大臣、いまずっと聞いたように、集団給食をしているようなところに対しては、いろいろな手落ちが見られるようです。法的な一つの体系に対する手落ちも若干あるようであります。また法的な体系ができておっても、それを実施する機能において欠けるところがあるようであります。そういうような点を主宰し監督する、また指導しなければならないのが厚生省になっているわけであります。優秀な局長もいることですから、この点等において完全に善処するようにしておいてもらいたい、私はこういうように思うわけです。  したがいまして、ここに問題になってくるわけですが、これはもう各病院だとか学校だとか事業所だとか、法律はそれぞれありますが、事業所に対しての法律が一番きびしいのです。学校に対する集団給食に要するその決意のほどは先ほどわかりました。しかし、今後総体的に、現行のままではなくて、給食施設に対するはっきりした管理者、こういうような制度も置いて、これが万全を期する必要があるのじゃないか。たとえば環境衛生関係でも、いわば中間管理者と思われるような管理美容師、管理理容師というような制度さえあります。やはりこういうような場合でも、法にやってもいいことになっておるのですから、こういう事業所等については、ことに病院、学校等の集団給食施設にははっきりした管理者というものを置くように指導すべきである。ことにもう小さい場合には、法にはっきり触れないような場合には調理士でもいいではありませんか。それにはっきり指導もお願いしておく、やらせる、こういうこうにして衛生管理の万全を期するように今後指導すべきである、こういうように思いますが、大臣いかがでございますか。
  111. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 厚生省といたしましては、いままでもお説の趣旨に従って努力してまいってきておることと存じますが、お話を伺いますと、だいぶ抜けたところもあるようでございます。今後そういった管理体制について一そう努力いたしてまいりたい。局長も聞いておることでございますから、十分肝に銘じておると存じます。
  112. 島本虎三

    ○島本委員 具体的な問題は、一定規模以上の集団給食施設に対して管理栄養士または栄養士を置いてもいいことになっております。置いてもいいから、置かなくてもいいのであります。わざわざ法律の中にありますのに、この中には「置くように努めなければならない。」とあるので、必置義務ではないのですね。これはやはりいろいろな点からして重要な要素を持っていますから、せっかく「置くように努めなければならない。」というのですから、この点は必置義務にしてもいいのじゃないか。それで内容の充実を期してもいいのじゃないか。こまかいところまで及ぶというのではないのですから、いま言ったような大規模な給食を要する施設でございますから、その点等については必置にするよう今後検討を順いたい、そういうように思うわけです。これは九条の二にはっきりありますから、その点等についても御考慮願いたいと思うが、いかがでございましょうか。     〔田邊委員長代理退席、委員長着席〕
  113. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 お説の次第もございますから、よく検討をいたしてまいりたいと思います。必置義務を命じているところでさえも、ただいま御指摘のようなわけでございます。したがって、「努めなければならない」というものを必置義務にするかどうかということも、よく実情を検討いたしまして——衛生の見地からいえば、それが望ましいにきまっておるわけでございますけれども、どういうわけで必置義務になっていないのか。そういった義務を負わしてももういい状態になっておる血もあろうとも思いますから、よく検討いたしまして、前向きに御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  114. 島本虎三

    ○島本委員 いまいろいろ具体的な例と法案を示しながら、その詳細を検討願ったわけであります。大臣、せっかくそこまでお考えがあるようでございますので、今回は私はこれ以上聞かないことにしておきたいと思います。きのうは公害のほうでだいぶ大臣に御勉強を願いましたので、きょうは時間が十分早くなってしまいましたけれども、これはちょっとおまけになりますが、ちょっとまけたのですから、ただ喜ばないで——大臣はお笑いにならない大臣だそうでございますが、きょうは初めて笑ったようでありますが、しかし今後この問題等については、いままで言った経過等もございますから、厳重に実施するように強く要望しておきたい、こういうように思います。  それでは、これで私は終わります。
  115. 八田貞義

    八田委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  116. 八田貞義

    八田委員長 速記を始めて。  田邊誠君。
  117. 田邊誠

    田邊委員 今国会、内閣改造がありました直後の臨時国会でありまするから、われわれとしては、当然、所管の厚生行政なり労働行政に対して、その基本にかかわる問題についていろいろと討議を進めておるわけであります。きょうは、臨時国会における社会労働委員会最初の日でありまして、そういう意味合いでは、今後の厚生行政のあり方に対して国会がいろいろと審議をする非常に重要な出発点であろうと思うわけです。私どもは、この審議に協力する意味合いで、それぞれ時間を詰めて各委員の発言をしていただいておるわけでございます。それにもかかわらず、当局のほうが、国会軽視の立場で時間におくれて、出席をしない、こういうことでありまするならば、われわれもわれわれでまた考え方を新たにして対処しなければならぬと思う。一体いかなる理由で約束の委員会の時間に出席できなかったのか、ひとつその根拠を明らかにしてもらいたい。
  118. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 山本先生の御質問の御要求がありましたことは承知いたしておりました。待機をいたしておりましたけれども、連絡を受けましてすぐに出たわけでございますけれども、おそくなりまして、まことに申しわけございません。
  119. 田邊誠

    田邊委員 官房長を呼んでください。官房長を。われわれは、十二時五十分から山本質問があることを、あらかじめ連絡をしておいたはずであります。あなたのほうには、一時五十分になっておったか、二時になっておったかしれませんけれども、われわれ委員会の運営として、あらかじめ時間を割り振って協力をしていただいておる。しかも、その前の島本君が、委員会の審議に協力をして時間を切り詰めて終了させておる。こういうことでありまして、そこへいって五分や十分の間前もって来ているのは常識であります。一体あなたはいつ連絡を受けて、いつ出席されようとしたのか、ひとつもう一度お聞きをいたします。
  120. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 十二時五十分からということを私が私どもの職員から聞きましたのがちょうど十二時四十分ごろでございます。すぐに用意いたしまして出てきたようなわけでございます。まことにおくれましたことは重々申しわけないと存じます。
  121. 田邊誠

    田邊委員 官房長を呼びなさい、官房長を。
  122. 八田貞義

    八田委員長 いま呼んでおります。
  123. 田邊誠

    田邊委員 そういうような内部の体制では、今後われわれは厚生省を相手にしていろいろな問題を審議することはできませんよ。私はただ単に時間が何分おくれたという問題じゃないと思うのです。一体国会の審議の中身に対する受け取り方が違うんじゃないかと思うのですよ。ただ当座答弁をしておればそれで事が相済むという、まさに国会を軽視する、そういう考え方も私は官房の中にあるんじゃないかと思うのですよ。この際ひとつ厚生省としての責任ある国会に対する、当委員会に対する考え方を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  124. 八田貞義

    八田委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  125. 八田貞義

    八田委員長 速記を始めて。  田邊誠君。
  126. 田邊誠

    田邊委員 大臣、あなたが委員会から出られたあと——御承知のとおり委員会の審議をスムーズにやるために、各委員に発言時間を制限をいたしまして、委員会を円滑に終わりたいというのが私どもの希望であります。特にきょうは厚生行政に関しては初めての日でありますから、できるだけ全般にわたって、いわゆる私どもの考え方を大臣にも知っていただき、厚生行政にこれを反映してもらいたい、こういう気持ちで運営をしておるわけであります。  ところが、それに対応する側の厚生省が、委員の熱意なり、そういった努力にもかかわらず、委員会に対して出席をおくらせ、その審議を渋滞させるというようなことは、私はまさに本末転倒しているじゃないかと思うのです。国会は、国会のいろいろな都合でもって事態が遅延することもあります。しかし、国会のほうが審議を促進しておって、政府委員のほうが委員会の審議を渋滞させるというようなことがあっては、これは国会軽視ももちろんのことでありますけれども、行政が立法に対してさらに一つ軽視をしておる、こういうゆゆしき問題であろうと思うのです。したがって私は、ただ単に時間が何分おくれたというようなことを言っているだけではなくて、厚生省の国会に臨むところの基本的な考え方というものに、大きな誤りがあるのじゃないかと考えるわけでありまして、大臣が中座しておったのを、またわずらわして出席を早めさしたのは、私どもたいへん恐縮だと思っておりますが、そういう考え方、態度に対して、私は、やはり今後絶対にこれを繰り返さないような措置をとっていただくことが肝要ではないかと思うのです。こういう意味合いで、この際ひとつ大臣の、厚生省を代表して国会に臨む基本的な考え方、今後のいろいろな法律案の審議等にあたってどういう考え方で臨もうとするのか、あとになって法律案だけ早く通してくれ、そういう虫のいいことを言っても私は聞こえないと思うのです。したがって、この際ひとつ大臣の心がまえをお聞きをしておきたい、こう患うわけです。
  127. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先ほどは、委員各位におかれて審議促進のために非常に御配慮くださっております点を私は感謝しながら、昼食の休憩時間で出てまいったのでありますが、いまその政府委員の出席が非常におくれて悪かった、しかもそれは連絡不十分であったということを聞きまして、まことに申しわけない、かように思って出てまいった次第でございます。いままでおそらく厚生省として、国会軽視の考えは毛頭持っていなかったと私は思いますが、以前の点はよく存じません。いままでもそういうことはなかったと思いますが、今後はさらに一そう、何といっても国会第一主義ということで、省員全体に徹底をいたさせまして、皆さま方の御審議に御不便をかけないように、積極的に御審議をいただけるように、そういう体制をつくるのに間違いなくやってまいりたい、かように存じまするので、よろしくお願いをいたします。
  128. 田邊誠

    田邊委員 ひとつ、この際心を引き締めて、山積する問題の解決のために、あげて奮励されるように、特に要請をしておきたいと思います。
  129. 八田貞義

  130. 山本政弘

    山本(政)委員 それでは質問いたします。  十一月二日の新聞だったと思いますけれども、日赤の中央病院をはじめ社会保険病院が看護婦さんが足らない、だから人をふやしてくれ、それから夜勤を減らしてくれというようなことで実はストライキがありました。それから十二月十二日にも東大の病院で看護婦さんのストがあったわけですけれども、そのことと関連してお伺いいたしたいのは、昭和四十四年度の予算要求の中で、看護婦さんを何人くらい増員をされるように要求をされておるのか。それからその金額、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  131. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 来年度の看護婦一般の養成のための予算といたしましては、第一は、看護婦になる方を誘導いたしますために、看護婦等に対します貸費生の補助金を予定いたしておりますが、この看護婦貸費生の補助金は、従来都道府県に対しまして六千四百四十人に対して約八千八百万というものが四十三年度でございます。それを人員も約倍にふやし、かつ奨学金の額も月額の引き上げをいたしまして効果をあらしめたいということで、二億九千八百万の要求になっております。  それから第二の問題といたしましては、看護婦養成所を整備していくという必要がございます。これに対しましても、今年一億三千四百五十六万六千円でございましたけれども、約五億一千四百万の要求をしております。特に新設の高等看護学院というものの増設、あるいは特に定員を増しますような増改築というような補助金が入っております。また内容の整備につきましても、その中で見ていくつもりでございます。  それから、こういう看護婦の養成につきましては、一般にその運営が必ずしも楽ではございません。そういったような面についての助成もやってまいりたい。  それから潜在看護力と申しますか、現在職場を離れて家庭等におられる有資格の看護婦さんに、できるだけ復帰をしてもらいたい。そういうために一定の講習を行なうような費用四百十八万というものを要求しておりまして、これらが大体看護婦の養成計画の基本になるものでございます。  さらに本年から特別地方債のワクといたしましても対象にしていただけるようになりましたので、さらにそれを増額をしてまいりたい。基本的な対策としてはそういうことを考えておるわけでございます。
  132. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、実際の必要数と就業数といいますか、それの比率、充足率というのは、昭和四十四年度で一体どれくらいになるんだろうか。それはわかりますか。
  133. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 就業数は、四十二年末の統計では二十五万三千人というところまで到達いたしました。一面新規に卒業して就業いたしますものが、最近のところ大体二万八千名強でございます。現職の中から退職をしていかれる方がございます。一年間の就業者の自然増というものは、最近の傾向としては大体一万五千人程度でございます。したがいまして、現在二十五万三千程度の就業者が確保できてございますので、この傾向が続くならば、さらにこれに一万五千程度増加したものが就業者の増として期待されるというふうに踏んでおります。ただ、それの全体の充足率という形になりますと、すぐにその計算はできかねますが、なお相当不足するというような事情でございます。
  134. 山本政弘

    山本(政)委員 なぜ私充足率をお伺いするかと申し上げますと、私の手元にあるのでは三十五年から四十一年まで、ここで九〇%をこえたことがないのです。三十五年が八二・七%、三十六年が八三・三%、三十七年が八二・六%、三十八年が八二%、三十九年は下がって八一・二%、四十年が八三・八%、四十一年がやっと八五・六%、最高ですね。四十二年、四十三年は私の手元にありませんけれども、四十四年度についてもそういう比率が出てくるはずなんですよ。少なくともあなた方のほうではそれだけの計数が出てくるはずでしょう。九〇%をこえているのか、あるいは一〇〇%になっているのか、私はその辺をちょっとお伺いいたしたいのです。それから次の質問をしたいわけです。
  135. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 私少し先生の御質問をあるいは取り迎えておったのかもわかりません。ただいま御指摘の数字は、看護婦養成学校における充足率、こういう意味でございますね。——入学定員に対します充足率は、先生お述べになったような傾向を大体たどってまいりました。最近やや上がってまいりましたので、四十四年度におきましては、充足率といいますか、入学定員に対しまして高等看護学院では大体九一%くらいというふうに私ども期待をしております。  それから准看につきましては、従来とも入学定員よりもやや上回って収容いたしておりますので、この傾向はそのまま数%定員増の形で入学者があるというふうに私どもは予想いたしております。
  136. 山本政弘

    山本(政)委員 本年度の予算を決定する中で百四十人たしか国立病院の看護婦の定員が増員されたと思うのです。そのときのきっかけは、あの仙台の国立病院の赤ちゃんの取り迷え事件というものがあって、それがきっかけになって実は百四十人の定員増になった。そういう事件がないと、人員というものはあまりふやさない。今度東大事件とか、日赤の事件——日赤は別としても、東大の事件なんかありました。そうしてもたもたしておりますけれども、ともかく看護婦の絶対数が足らないわけでしょう。だから、前にも私はそういう話をしたと思うのですけれども、少なくとも何カ年計画かで、要するに抜本的に看護婦さんをふやすという方向をとるべきだと思うのだけれども、何かその辺に手抜かりといいますか、——手抜かりという言い方は何ですけれども、非常に消極的な態度をおとりになっておるのじゃないか、こういう気がするからお尋ねしたわけです。  それでは、私ひとつ資料を申し上げます。三十一年を一〇〇といたしますと、四十一年は一一三・五、これはふえた指数です。正看の場合です。准看の場合にはこれは多くなります。しかし、いずれにしても、正看と准看とを合計しますと、指数は、三十一年を一〇〇とした場合には、四十一年の場合には一七七・八なんですよ。ところが、病院数とか、病床数の推移を見ますと、同じように三十年を一〇〇とした場合に、三十年ですから一年前ですが、それを一〇〇とした場合に、四十一年は一七八・九になっておるわけです。そうして在院の患者数も、外来の患者数も、在院患者数は三十年を一〇〇とした場合、四十一年は一八五・九、ふえておるわけです。外来患者数も一七一・八、ふえておるわけです。  そういうような状況の中で私は一つの傾向が出ておると思うのです、この三十年から四十一年の間に、患者数にしても病床数にしても……。ここで見ると、大体外来の患者数、あるいは病床数の増加に比例して、あなた方は正看並びに准看をおふやしになっているような気がする。しかし、そのふえること以上に正看並びに准看というものをふやす計画というものを計画的にお持ちになってないという気がする。だから東大の病院とか、あるいはその他の国立病院で、あとで御質問いたしますけれども、いろいろな問題が出てきておるのです。根本的な問題というものは、あなた方は対策というものをお考えになっていない気がする。一体根本的な対策というものをどういうふうにやろうとしているのか。ただ年次年次にこれだけのものを新設しますということだけでは、私は依然として、ここ長期間にわたって、看護婦さんの不足というものは続くだろうと思うのです。どこであなた方はそれを充足し、そしてどこで労働条件なりその他の条件というものを完全に満たすおつもりになっているのか、私は、その辺の考え方を全然お持ちになっていないような気がするのです。その辺は一体いかがでしょう。
  137. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 ただいままでとってまいりました養成計画の基礎といたしましては、ただいま先生御指摘のように、医療法のベース並みに一人というようなことを標準にいたしながら、一方でそういうような病床数の伸びというものを推測いたしまして、かつそれに外来者の伸びというものも考慮いたしながら、それに法定上必要な看護婦というものを割り出していく。この点につきましては、一般のベッドの場合と、結核、精神というような場合とは多少違っておりますので、その辺は考慮いたしまして計算をしていくという計画はあるわけでございます。すでに御承知だと存じますけれども、四十一年当時そういう計算をいたしまして約三万強の不足であるという数字が出てまいりました。そのあと、そういう自然増加的なベッドの増加というものを考慮しながら、徐々に埋め合わせていくというような計画で、大体四十八年ごろにバランスがとれるか、という目標のもとにいままでの計画が進められてまいりました。しかしながら、ただいま百四十何名の定員のお話がございましたように、新たにたとえば新生児看護というような問題等の要素が加わってまいります。また、単純にそういう計算だけじゃなくて、勤務体系というようなものから計算をしていくという問題も当然新しく加味しなければならない問題でございます。また一方医療内容の向上というものがございまして、そういったものが各病院の病棟の単位なり、あるいは看護の集約度なりというものにもいろいろ影響を与えてくる。当然そういったものも加味して問題は考えなければいけないと思います。  それからもう一つは、そういう全国的な推計をいたします場合に、やはり平均的なものの見方になりますために、要するにプラスとマイナスとが打ち消し合うような需給関係というものが出がちでありますけれども、こういうような看護婦の需給計画を考えます場合には、必ずしもそういうことだけで満足できるかどうかというような問題も十分考慮して再検討しなければならないのじゃないかというのがただいま私の持っているプランでございまして、このためには相当精密な分解した作業をしませんと、なかなか確定した数字が出にくいんじゃないかということで検討を続けているような状態でございます。
  138. 山本政弘

    山本(政)委員 四十一年のときですか、三万足らない、こういうお話ですね。そうすると、これはたしか厚生省のあなた方がお考えになっていると思うが、いま全国の看護婦は大体二十三万人、正看護婦が十二万人、准看護婦が十一万人、そうすると、この中で四万人足りないのです。つまり四十一年度から今年度になって足らない人数というのは、あなたのおっしゃることをそのまま私が受け入れれば、年を経過した上に一万人要するに不足数がふえているということになるでしょう。不足数が四十一年度三万人、これはたしか厚生省のあれだと思いますよ。そのまま言いますと、厚生省の計算でも看護を一応保証できる定数は四万人足りない。二万人から六万人といわれているけれども、四万人足りないというふうにここに出ておる。そうすると、四十一年度にあなた方は三万人足りないから、これを一挙に何とかしたいというお考えを持っていたかもしれないけれども、どうも二年後の四十三年度になったら四万人足りないと言っているのです。そんな対策のしかたがあるのかどうか。あなた方は思い切ってやりたいと言っているけれども、結果的には足りない人数が多くなっているじゃありませんか。そういうことがどうも私は理解できない、こう申し上げているのですよ。その点は一体どうお考えになっているのか。
  139. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 当時三万不足ということで、先ほど来申し上げたようなことでスタートして、それを埋めていくという計画は立てられてまいったわけでございますけれども、私も、いま申し上げましたようにその根拠自体が、本来の需給計画の上でほんとうに新しい情勢を加味して十分であるかどうかということは、やはり再検討を要する問題だというふうに申し上げているわけでございます。また一方、病床の増加といったようなもの等につきましても、必ずしも完全にそれが推定どおり捕捉できるとも限っておりませんので、そういうような誤算も生ずるかと思います。したがいまして、こういう需給計画のかなり流動的な中で考えなければならない問題については、やはりプラスアルファの弾力を持った計数でなければほんとうの動きというものはなめらかにならないのじゃないかということで、いろいろ基本的に洗い直してみようと思っておるところでございます。
  140. 山本政弘

    山本(政)委員 たしか四十二年だと思いますけれども、看護婦の三年課程の養成の学校数というのは二百十三カ所、総定員が二万三百二十九人だと思います。その二百十三カ所の養成所の中で、厚生省が直接関係をされておるのは四十八カ所しかないのですよ。人数にしますと、二万三百二十九人のうちの四千七百十名でしかないわけです。これは三年の課程の看護婦さんです。二年の課程になりますと、九十八カ所のうちで十四カ所しかないのですよ。そして総定員六千四百二名の中で約一割、六百十名しかないわけです。准看護婦になりますと、七百五十二カ所のうちで五十九カ所しかないわけです。そして総定員六万一千百七十一人の中で二千四百三十名しか厚生省直接のものとしてはないわけですね。私はここに問題があると思うのですよ。三年の場合、二百十三カ所のうちでわずかに四十三カ所、しかも准看護婦の場合には七百五十二カ所のうちで五十九カ所しかない。そして総定員六万一千百七十一名に対して二千四百三十名しかないじゃありませんか。あなた方は飛躍的に増大させると言いながら、現実には全部の数の中でこれだけの比率しか占めていないということは、あなた方がどうおっしゃろうと、現実には正看並びに准看の養成に対して、それほどあなた方がおっしゃっているように努力をされておるとは私は思わないわけです。その点どうなんです。
  141. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 ただいま御指摘のものは国立病院、療養所というところにおける養成施設と存じますが、これにつきましても決してないがしろにしているわけではございませんで、できるだけこういう国の機関、国立施設あるいは公的機関というものがこういう養成については率先してやるべきなんだ、特に国みずからが、自分の機関に付置できるものについては努力しなければならない、こういう態度ですべてまいってきておると私ども承知しております。私自身もまたそういうように考えておるわけでございます。ただ、私もそういう意味でいろいろ検討いたしてみましたが、国立病院なら病院というものをとりまして、そこで養成所をやる——四十八しか三年課程が持ってないということでございますので、なおほかに余っている、養成施設を持たない病院がいまあるということになるわけでございますけれども、これもしさいにその能力、余力というものをいろいろ詰めてまいりますと、みずから養成施設は持っておりませんけれども、ほかの養成機関の実習機関としてもうすでに引き受けておるというような場合が相当出てまいりました。したがって、そこに養成施設がないためにつければすぐに養成ができるという私どもの感じでありましたけれども、中にはそういうように他の養成機関の実習場という形で引き受けておりますために、そういう実習関係でうまくいかないと思われるようなケースが出てくるというような例もございまして、決してこういう国の施設がそういうものは少ししかやらなくていいという意味でもございませんし、また国みずからが使う者を養成すれば足りるというような気持ちでもございません。むしろ率先してやりたいという気持ちには毛頭変わりはございませんが、ただいまのようないろいろの制約等もございまして、御指摘のように少ないという状態になっているかと存じます。
  142. 山本政弘

    山本(政)委員 これは昨年、国立の西多賀の療養所であれしたときに、仙台の家庭裁判所が医療事故の背景にあるものを指摘してこう言っているわけです。「事件は四十八人もの患者を預かる深夜勤のさなかに起きた。その上、准看の」——名前を私は申し上げませんけれども、「その人は正看と全く変わらぬ業務をまかされ、六月の深夜勤はこの月で十回目だった。その疲労と、病院の薬品管理の不手ぎわが事故を誘発した。こういった医療行政のひずみが」云々というふうに書いてあるわけですね。これは去年ですわ。ことしこういう実態が起きたことをあなた方御承知の上で、局長ことばをそのまま受け取れば、かなり新設あるいは増設というようなことに努力をしているけれども、とおっしゃるのだけれども、准看が一月に十回も夜勤をしなければならぬというのは、これはもう絶対数が不足だということをあらわしていますね。そうですね。  もう一つ申し上げますと、私は、これは国立久里浜病院の勤務実態の調査を実はお願いをして、してもらったのですけれども、これはアル中の病棟ですが、十一月の八日から十一月の十四日までの間に看護婦さんは、婦長さんも入れて六人の中で、二人の人が五十九時間三十分の仕事をしているわけです。一週間ですよ。そして五十一時間の勤務をしている人が一人おるわけです。そして深夜勤というのはみな一人勤務だ。こういう状況なんですよ。これは非常に思い切った対策をやらなければ——もしもかりにあなた方のようなお考えでやっておるとすれば、百年とは申し上げません、十年河清を待つにひとしいような気がするわけです。特に四十一年が三万人で四十三年が四万人不足だという実態を考えると、私は、あなた方の努力——なるほど努力されていると思いますけれども、しかし、それにもかかわらず事態は改善されないというような気がするのです。これをひとつ大臣にお伺いいたしたいのですけれども、思い切った対策というものをおとりになるお考えはないでしょうか、どうです。
  143. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 看護婦の数が非常に足りないことは、御指摘されるまでもなく私も痛感をいたしておった次第でございます。来年度予算には、このための相当の費用を要求いたしておりますので、来年度はこれを貫徹をしたい。そうすれば前年度よりもずいぶん飛躍的な改善になるだろうと考えておりますが、しかし、ただいまも御指摘がありましたように、看護婦の充足計画というものをもっと洗い直してみまして、そしていままでの考え方をもう少し改めていかなければならぬのじゃないかという気がいたしておるわけでございます。御指摘のとおり需給計画を十分精密に洗い直してみて、そして一日も早く完全充足のできるようにいたしたい、かように思います。
  144. 山本政弘

    山本(政)委員 昭和四十年五月二十四日に、人事院は夜勤の制限に関して一カ月八日が望ましいという判定をしましたね。それ以後そういうことに対してどういう御処置をおとりになっていますか。
  145. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 人事院の判定が出ましてから、国立病院や療養所につきましては、まずその勤務条件と申しますか、勤務環境というものを改善したい、こういうことで四十一年度から四十三年度にかけまして、たとえば病棟間における看護婦の諸君の連絡設備でありますとか、あるいは仮眠をする設備でありますとか、そのほかそういうような環境条件を改善するという予算を特別に計上いたしまして、それでまず環境条件というものを、なるべく勤務条件がよくなるような形で努力してきたというのが実情でございます。しかし、来年度以後におきましては、実人員の増加ということによってこの判定の線に沿い得るようにという計画をもって予算要求中でございます。
  146. 山本政弘

    山本(政)委員 時間があまりないようですから、せっかく基準局長においでを願ったのですけれども、ともかくも看護婦の労働基準法の問題点についても、基準の労働時間とか、労働条件とか、休憩時間とか、深夜勤とか、全部人事院の判定が出ているのですが、その判定というのは守られていないのですよ。  ちょっとお伺いしますけれども、看護婦あるいは准看でもいいのですが、これの任務というのは具体的にどういう任務がありますか。看護婦の任務です。
  147. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 看護婦の任務は、一口に申し上げれば傷病者の看護と診療介助ということになるわけでございます。その場合に、看護婦はそういうことについて独立的な判断を行なってまいりますけれども、准看は医師または看護婦の指示を受けてその業務を行なうという点に相違があるわけであります。
  148. 山本政弘

    山本(政)委員 看護婦あるいは婦長さんでもけっこうなんですが、あなた方は具体的に詳細に看護婦の任務というものをちゃんと、病院といいますか総婦長といいますか、そういう人たちに与えているはずですね。その内容をちょっとおっしゃっていただきたいと思います。
  149. 永野貞

    ○永野説明員 現在のところ、昭和二十三年につくりました病院勤務看護婦の業務指針というのがございまして、こまかく業務が規定してございます。それをただいま改正中でございます。
  150. 山本政弘

    山本(政)委員 ことしの三月にあなた方は、地方のあるいは各国立病院の看護婦さんたちに対して、指針を与えているでしょう。四十三年三月五日に「看護婦制度に関する資料」としてあなた方は看護婦さんの任務をちゃんと与えているはずですよ。自分たちでお出しになっているでしょう。それはおわかりになりませんか。——時間がないから私のほうで申し上げます。  看護婦の任務というのを六つにお分けになって、まず基本的看護として、看護計画の立案と実施。身体的側面の看護。精神的心理的側面の看護。環境に対する看護。栄養と食事に対する看護。観察、記録、報告の責任。患者の安全対策。死亡患者の取り扱い。第二は看護管理業務。第三は診療への協力で、治療、処置、検査。第四は他の医療関係者と協調して行なう業務。第五は看護内容の向上。第六は学生生徒の実習指導及び研究への協力。こういうことをいっておるわけですよ。  私はなぜこれをお伺いしたかというと、これだけのことを正看の人たちがやるわけですね。これだけの内容なんですよ。つまり、基準法ではたしか五十四時間ですか、特例としてきめられておる。しかし、これだけの内容をかりに五十四時間やるとしたら、これは非常にオーバーワークになると思うのです。現在は五十四時間でなくて四十八時間になっておるけれども、それにしてもこれだけのものをやるとなれば、私はたいへんなオーバーワークになりはせぬかと思うのですよ。あなた方現実にお考えになっても、最近の科学装置やメーターを見ながら操作をしているほうがむしろはるかに神経を使うのじゃないか。これだけの業務というものを患者さんをかかえながらやるというのだったら、これはオーバーワークになることはあたりまえでしょう。それならばもっとあなた方は看護婦の増員に対して真剣な対策をやるべきだ、私はそういうことを申し上げているのです。そうじゃありませんか。
  151. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 看護業務は、御指摘のとおりただいまのような項目についてさらにそれが具体的にこまかく分かれ、個々の患者について行なわれるわけでございますから、相当やはり業務の遂行の上にすき間がないと申しますか、間断のない状態で追われておるというのが実態だと存じます。したがいまして、私どももこの行政というものは、やはり人をつくっていく以外にないというところに大きな意義を持って努力しておるわけでございます。
  152. 山本政弘

    山本(政)委員 どうも平面的な答弁で、私は少し不満なんですけれども、その夜勤の日数について人事院の見解と判定が出ております。これは夜勤だけですよ。夜勤だけに対して、「夜勤に関連する諸条件を改善する措置としては以下の事項が考えられる」として、人事院はちゃんとあなた方にお出しになっているはずです。これはかなり前のものです。これは「看護婦等の行なうべき業務の範囲、特に夜勤時における範囲を明確にし、夜勤業務を整理すること。夜勤業務の遂行を容易ならしめるための器材、器具等の導入を考えること。休憩室へ仮眠室その他の設備を改善、整備し、夜勤者の利用に供し得るよう措置すること。夜勤時、特に一人夜勤における処置、連絡等を容易ならしめる方策を講ずること。夜勤交替時の通勤事情に即応する対策をたてること。看護婦の補助業務を行なう看護助手の充実をはかること。」これだけのことを出しているのだけれども、いまの私の申し上げた業務内容というものはまことにたいへんだとお考えならば、当然夜勤業務に対しても、この人事院の判定に対してあなた方は処置をすみやかにすべきだと思いますが、どんな処置をおとりになったのか、それをお伺いしたいと思います。
  153. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 そういう環境の改善につきましては、四十一年には三千三百三十四万円という新たな予算を計上していただきまして、これは国立関係だけでございますけれども、そういう予算によりまして、なお不足している夜間の連絡の系統を確立する、あるいは仮眠室を整備する、そのほか暖房の問題でございますとか、あるいは夏の扇風機の問題でありますとか、そういうような勤務に必要な器材、あるいは連絡、あるいは休憩のための部屋の充実、こういったようなことは、三年間でそれぞれ措置をしてまいったわけであります。
  154. 山本政弘

    山本(政)委員 大蔵省の主計官の方おられますか。——私いまのような質問を申し上げたのですけれども、そのことに対して大蔵省のほうでは一体どうお考えなのか、あなたの見解を聞かしていただきたいと思います。
  155. 辻敬一

    ○辻説明員 先ほど厚生省から御説明申し上げましたように、四十一年度以来夜間勤務者の勤務条件の改善のために、緊急時の連絡の設備でございますとか、仮眠室の設備でございますとか、その他必要な経費を計上いたしております。四十一年度から四十三年度まで三年間合計いたしますと五千五百万円ほどの経費を計上しております。また御承知のように、従来から支給されております夜勤手当のほかに、四十年八月以降であったと思いますけれども、看護婦の夜勤につきまして夜間看護手当というようなものも支給することによりまして当然所要額を計上いたしておるわけでございます。  大体そういうようなことで看護婦の勤務条件の改善をはかりますとともに、なお現在でも国立病院、療養所には欠員もございますので、極力欠員を充足するとか、あるいはまた職員配置の適正化を行ないますとか、あるいはまたただいまいろいろと施設の整備を行なっておりますけれども、この施設の整備に伴います労働の集約によりまして、条件の改善をはかるということも可能であると思います。いろいろな方面あわせまして、条件の改善をはかっておる次第でございます。
  156. 山本政弘

    山本(政)委員 だから、いまあなたのお話をお伺いしておると、私は非常にあたりまえ——と言うとことばとしては悪いのですけれども、とにかく何とかしょうというのではなくて、非常に平面的なお考えであります。そういうことで夜勤の人員の不足を補いたい、これだけですね。あなたは最初からおいでになったと思いますけれども、私は先ほどから、もっと人員というものを飛躍的に増大することについて、大蔵省のお考えを実はお伺いしたいと思っていたのです。これだけ足らぬ。先ほど申し上げましたように、四十一年は三万人不足といわれていたのが、四十三年には四万人くらいだろうというふうになっている段階の中で、一体財源を握っておられる大蔵省は、それではたしていいのかどうか。一体どうしようとされておるのか。そのことを私はお伺いしたいのですよ。
  157. 辻敬一

    ○辻説明員 一般的な看護婦の確保対策につきましては、財政当局といたしましても従来からいろいろ配慮してきたところでございまして、これも先ほど厚生省のほうから御説明いたしましたけれども、行政施設の整備の拡充でございますとか、あるいは就学資金の補助でございますとか、所要の施策に伴います経費を計上いたしております。年々増額いたしてまいりまして、一般会計におきましてはその他の経費を合わせますと大体二億八千九百万円くらい、そのほかに御承知のように国立病院あるいは療養所におきまして看護婦の養成をいたしておりますので、その関係の経費が九億七千万円でございます。一般会計、特別会計の合計では、十二億六千万円というような経費を計上しておる次第であります。
  158. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃ、前の厚生大臣が人事院の勧告どおり月八日の夜勤回数は当然である、こう言っているわけですよ。そのことに対して担当の局長である松尾さんは、一体それだけのきちんとした予算というものを、あるいは対策というものを、いま来年度の予算上において現実にお立てになっておりますか。
  159. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 先ほど来申し上げましたように、一応の環境条件の整備ということは三年間努力をしてまいりましたが、これからも八日の夜勤体制の合理化のために人員要求を来年度はいたしております。
  160. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃもう一つだけお伺いいたしますけれども、昭和四十年九月に、行政管理庁が「医療機関に関する行政監察結果に基づく勧告」というのを出しております。ここ数年来、行政管理庁というのは一省一局削減とかそういうことをいって、私どものことばで言うならば合理化というものを進めておる。しかしこの四十年九月の行政管理庁の勧告というのは、看護婦の不足について「近年病床数が急激に増加していること、医療技術が複雑、かつ高度化するに伴い、看護婦を必要とする施設が増大していること、看護婦の勤務時間が短縮の傾向にあること、ならびに産業構造の変化によって若年女子労働者の需給に不均衡を生じていること等のために看護婦の不足傾向が顕著となっており、公的医療機関等においても看護婦不足のために病床の閉鎖等診療に支障を生じている」ということで、看護婦の不足対策について募集人の増加等を思い切ってやりなさいといっておるのですよ。大蔵省も特に行政管理庁の一省一局削減には賛成かもしれぬけれども、すでに昭和四十年に、むしろ一省一局削減をする任務を負っているといえる行政管理庁が、思い切って募集人員を拡大しなさいと言っているじゃありませんか。そのことに対して、四十一年度の予算で飛躍的にふやしましたか。何で大胆にそういうことをやらないのです。大蔵省自体も、こういう勧告が出ているのだったら、少なくとも看護婦の増員のためには、これはひいては患者の保護をするんですから、もっと思い切ってそういう施策というものをやるべきじゃないか。その勧告をあなた方は御存じか、御存じでないか、そのことをちょっとお伺いしたいんですけれども、あなた方どうなんですか。
  161. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 承知いたしております。
  162. 辻敬一

    ○辻説明員 承知いたしております。
  163. 山本政弘

    山本(政)委員 承知しているのだったら、これは松尾さんはその当時の局長ではありませんから、それは別として、厚生省自体は、そのことについてもっと思い切って予算要求なり、看護婦をふやすなりの措置を講ずべきだったでしょうし、同時に大蔵省でも、そのことについて私はもっと予算両において寛容であるべきだったと思うんですよ。しかし四十一年度は、少なくとも四十年度の勧告によって飛躍的に伸びたという事実はありませんよ。あったらお示しください。
  164. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 飛躍的には伸びておりません。
  165. 山本政弘

    山本(政)委員 それでは、行政管理庁がふやしなさい、ふやすべきだと言っておるのを、あなた方は何でふやさぬのです。私はそれがわからぬのです。何を遠慮することがあるんです。行政管理庁ですらこの実態を知っているんですから、何で大蔵省にこれだけのことを大胆に要求しないんです。あなたにそれをいま申し上げたのは無理かもわからぬけれども、しかし、私は厚生省の所管の局長としてやはり言わなければならぬと思うのです。同時に、私はそういうことが出ておることについて、今後かりにそういう勧告なり提案なりが出たときに、一体どの程度まで大蔵省はそういうものについて考慮するのか。もっとも人事院勧告というのはあまり守られておりませんけれども。しかしこれは人事院と一緒に、行政管理庁ですら言っているという事実があるんですよ。そのことについて一体どうお考えなのか。
  166. 辻敬一

    ○辻説明員 四十二年度の国立病院、国立療養所、合わせまして定員はどうなっておるかということを申し上げますと、二百七十名ふえております。全体といたしましては御承知のように定員の増加を抑制するという方針もございますし、また先ほど来お示しのとおり、看護婦が全体として不足しておるという問題との関連もございます。また先ほど申し上げましたように、欠員の補充でございますとか、あるいは職員の配置の適正化でございますとか、そういう点によってカバーできる点もあろうかと思います。なお、そういういろいろな面から今後検討してまいりたい、かように考えております。
  167. 山本政弘

    山本(政)委員 じゃ、検討して善処してまいりたいというふうに私は理解していいですか。善処したいというふうに理解していいですか。検討の上、善処してまいりたいというふうにあなたはおっしゃったけれども、検討の上、善処したいというふうに私は理、解してよろしゅうございますか。
  168. 辻敬一

    ○辻説明員 どうも繰り返して申し上げるようでございますけれども、定員全体といたしましては増加を抑制するという方針もございますので、厚生省の中でどのくらい振りかえることができるかというような問題もございます。また全体として看護婦が不足でございますので、定員をかりにふやしましても早急に充足できるかどうかという問題もあろうかと思いますし、その他いろいろ職員の配置の適正化等によってカバーできる面もあろうかと思いますが、いろいろそういう面を総合いたしまして、厚生省と相談いたしまして十分検討してまいりたいと思います。
  169. 山本政弘

    山本(政)委員 不足なことは絶対的にわかっているわけでしょう。そして病気にかかった人たちを、患者——これは外来にしたって、入院患者にしたって、そういう人たちを十分にめんどうみなければならぬという事実もあなたはお認めになるわけでしょう。そうしたら、定員とか何とかいう問題もさることながら、もう少し看護婦の養成とか何とかいうことについても、もっと思い切った対策を考えるというのが私は常識的な考えと思うのですけれども、それはどうなんです。定員があるからという役所的なお考えだけで、それが検討ということだけで私は済ますことじゃないと思うんですけれどもね。
  170. 辻敬一

    ○辻説明員 国立病院、あるいは国立療養所の看護婦さんの定員の問題でなくて、一般的な看護婦さんの確保対策という点につきましては、先ほど申し上げましたように、養成施設の整備の補助でございますとか、あるいは看護学生の修学資金の補助でありますとか、そういう施策を従来から行なっておりまして、これは先ほど来申し上げておりますように着実に前進してまいっておる、こういうことになっております。
  171. 山本政弘

    山本(政)委員 時間がありませんので、最後にちょっと質問いたしたいのですけれども、国立病院における看護婦業務の分担基準というのがあります。これは御承知ですね。課長さんも御承知でしょう。三十年の十一月十七日に出ているものです。私見てみたのですけれども、この中で正看護婦と准看護婦の業務内容というものは全く変わっておらないのですよ。変わっているのは、法規的に准看護婦は医師及び看護婦の指導のもとにということばがあるだけの話で、正看護婦の場合は、医師の指導のもとにということばがあるだけで、内容はほとんど変わっておりませんよ。ずいぶんたくさん書かれているけれども。これを一つ。  もう一つは、昭和三十五年から四十一年に至るまでの間に、看護婦の数というのは、三十五年六〇・二%だったのが漸減をして、四十一年には五一・一%になっている。准看護婦のほうは三九・八%から漸増して、四十一年には四八・九%になっているのです。この傾向を続けていったら、四十八年には看護婦は四〇・五%で、准看護婦は五九・五%になるというのがあなた方の計算です。そうすると、こういうことに対する対策というものは、一体どういうふうにおやりになっているのですか。つまり正看護婦よりか准看護婦が、結局数としては多くなっていくという趨勢がここに傾向として出ているのですね。これに対してあなた方はどうお考えになっているか。
  172. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 御指摘のとおりの養成計画の趨勢でございますから、現在のところ、ほぼあなたの言うところに到達している。今後このままの養成計画でまいりますれば、准看護婦のほうが上回るのは御指摘のとおりでございます。したがいまして、この准看護婦から——この准看護婦がこういうふうにふえてまいりましたということは、先ほど来御指摘のように、日本全体における看護婦不足というものが非常に深刻でございましたので、こういう准看護婦の養成というものが非常に盛んに行なわれてきた、こう存じますけれども、今度はその准看護婦が看護婦のほうに変わっていく、看護婦に切り変わる道をなるべく多く開いてあげたい、こういうことで例の進学コースでありますとか、あるいは夜間の進学コースというものを逐次増大いたさせまして、できるだけ准看護婦から看護婦になるという人の便宜をはかりたい、こう考えているわけであります。
  173. 山本政弘

    山本(政)委員 看護婦の不足で、いまあなたがおっしゃったように、夜間のコースということを考えているというけれども、夜間のコースをつくっただけでは、必ずしも准看護婦さんはその夜間の施設ですか、そういうところに参りませんよ。私自身准看護婦の人たちのお話を聞いたことがありますけれども、いまの状態では、少なくとも夜間の施設をつくっても、その人たちは行く条件がないということですよ。これはあなた方お考えになっておりますか。たとえば勤務条件が変わらなければ、あるいは給与条件というものが変わらなければ、その方々は現実には行くことができませんよ。勤務条件一つとってみても、一月の間に十日、ひどいのは一月の間に十五日ぐらい夜勤をやっている人が、どうやって行きますか。夜勤を月の半分やっておって、そうして残りの半分で夜間のコースに行けといっても、これはとてもじゃないが無理な話なんですよ。そういうことをあなた方は——これは言い過ぎかもしれぬけれども、お役所的に、画一的にお考えになってつくれば、要するにそういう問題は解消されるとお考えになっておるところに私は非常に硬直した対策といいますか、硬直したお考えしかお持ちになっていないような気がするのです。その点については一体どうお感じになっていますか。
  174. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 御指摘のように看護婦に夜勤勤務がございますために、そういう施設をつくっただけですべてが容易にそこに行けるということではない、そういう場面のありますことは、私ども十分予想し、かつ承知いたしております。ただ一般的に准看の方々が、中学を卒業いたしまして准看になりましてから、こういう進学コースでない夜間高校というものに非常に希望を持ってかなり通っておられます。そういう実態もあり、また同時に二年間の昼間コースであるということであれば、勤務をやめて二年間行かなければならない。しかも同僚内でいろいろと差し繰りをしていただくという結果だと思いますけれども、そういうことによって夜間高校と同じように夜間の進学コースも行きたい、こういう希望も相当あったために、こういうものがだんだんにふえてまいったし、また私どももそういう道を開いてあげたいというふうに考えたわけであります。御指摘のようにすべての准看さんが、それだけで何ら心配なくそこへ行けるというふうに考えるかといわれれば、いろいろ隘路があるということは私どもも承知しております。
  175. 山本政弘

    山本(政)委員 看護課長さんにお伺いしますけれども、准看の方の給与は幾らですか。
  176. 永野貞

    ○永野説明員 まだ改正されておりませんが、今度改正されますと、准看護婦は中学校を卒業して二年間勉強した者が約二万円だったと思います。それから高等学校を卒業して三年間勉強した者が、二万五千六百円ということだと思います。
  177. 山本政弘

    山本(政)委員 二万円で生活をして、そして松尾さんのおっしゃるように夜間の高校に行くような資金が出るとお思いですか。現実にいまの世の中の物価とかなんとかという条件の中で夜間の高校に行けるとお思いですか。
  178. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 二万円のサラリーで生活をし、かつ夜間高校へ行くということが容易でないとは思います。しかし、現実には相当希望を持ってそういうところへ行っておられますので、全く不可能ではないということではなかろうかと思います。
  179. 山本政弘

    山本(政)委員 率直に申し上げましょうか。准看さんが修学しようと思えば、アルバイトをしなければ現実には行けませんよ。行ける人は非常に少ない。たいへん悪いけれども、そういう人たちはアルバイトをやっておりますよ。現実にアルバイトをやって修学資金をかせぎながら行っておるのですよ。二万円やそこらで自分の生活を立てて、そして着る物を着、女性ですからお化粧もするし、そういう費用を差し引いて修学資金というものが出るか出ないか、たいへん問題です、それは。私、断言いたします。アルバイトをやらなければそういうところへ行けるはずがありません。看護課長さん、その点はどうなんです。
  180. 永野貞

    ○永野説明員 進学コースに行く者は准看護婦の免許を得ましてから三年間の実務経験につきますので、大体その三年間の実務経験で進学コースに行っている間じゅうの学費を貯金しているというようなことを聞いております。そして、うちに仕送りしながら貯金している、そして進学コースに行ったということも聞いておりますが、たいへんに苦しいだろうというふうに考えております。それから修学資金をもらっている者もございます。
  181. 山本政弘

    山本(政)委員 それではもう一つ、保母さんは、児童福祉法だったと思いますけれども、補助金が出ていますね。しかし看護婦の場合には補助金が出ていないはずです。この辺について、補助金が出ないのだったら看護婦養成のために民間の施設に委託費くらい出す気持ちはないのですか。また同時に、大蔵省も看護婦さんが少ないということはお認めになっておるのだから、民間の委託といいますか看護婦養成の場合に委託費くらいは出せないのか。保母さんは出ておるのですからね。看護婦さんが、補助金が出ないということは、私は筋としてはおかしいと思うのです。しかし、補助金が出せなければ委託費くらいは出してもいいと思うのです。絶対数が少ないですからね。私は時間があれば、試算したものをお話をしたいと思うのですが、時間がないから申し上げられませんけれども、そういうことについてお考えになったことがあるのかどうか。この辺はひとつ松尾さんと大蔵省の方と、お二人の御見解をお聞きしたい。
  182. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 看護婦の養成施設に対して運営費に対する補助という御質問でございます。公立のものであっても非常に苦しい状態でやっておりますので、そういう人件費等の補助金をぜひほしいと考えております。また民間につきましても、民間の養成施設ではございますけれども、そこで養成されました看護婦、准看というものは、すべてひとしく国民の医療のために働いてもらっておるわけで、したがいまして、私どもは来年度ではそういうものを委託費の形で一部をぜひひとつお願いしたい、こういう要求をいたしておるわけであります。
  183. 辻敬一

    ○辻説明員 一般的な看護婦の確保対策として、どういう方法が効率的であるかという点についてはいろいろ御議論もあろうかと思います。従来からは、先ほど来再三申し上げておりますように、整備費系統の補助、あるいは看護学生の修学資金の補助ということで行なってまいりました。そういう施策は着実に伸びてきたわけでございます。今後全体の看護婦の需給状況等を考えまして、どういう方法が効率的であるか、なお検討いたしたいと思います。
  184. 山本政弘

    山本(政)委員 委託費についても検討していただけるわけですね。
  185. 辻敬一

    ○辻説明員 この問題につきましては、いろいろ経緯もございますし、いろいろな見方もあろうかと思います。必ずしも保母養成所の場合と同一に律するわけにも参らぬ点もあろうかと思います。要するにどういう方法が一番効率的であるか、その点につきまして慎重に検討してまいりたい。
  186. 山本政弘

    山本(政)委員 保母の場合と違うというのだったら、その違うという事情なり、どういう条件が違うか、それをひとつ聞かせてください、あなたそうおっしゃるなら。
  187. 辻敬一

    ○辻説明員 保母養成所の場合でございますと、県立の養成所がございまして、そういう点も違っておりますし、委託をいたすといたしましてもどの範囲に及ぼしますか、看護婦の場合には、公立のみならず民間にも相当ございます。また、先ほど厚生省からも申し上げましたように、当面の目的といたしましては、自分のところの病院へ行く看護婦を養成するということを第一義的な目的としておる場合もあろうかと思います。その辺のところをいろいろ検討いたさなければならない、かように考えておるわけであります。
  188. 山本政弘

    山本(政)委員 あなたのおっしゃるのは、私の申し上げるのは非常に口が過ぎるかもわからないけれども、やはり大蔵省という官僚のお考えだと思うのです。極端な場合は一人で百二十床持っておる看護婦さんがおるんですよ、現実に。百二十床ということは、もしその病院に何か事故があったときは、夜勤の場合はその人が一切の責任をとらなければならない。百二十床というのは、私に言わせたらただ見て歩くだけですよ。そういう状態の中でふやさなければならない絶対的な問題があるわけです。そういう場合に委託について、あなた方はただそれだけの条件が違うというのだったら、看護婦養成に対して委託費あたりは当然考えるべきじゃありませんか。あなたは病気におなりにならないからそうおっしゃるのかもしれませんが、現実に病気になって、患者の立場になってごらんなさい。もっとすなおに、委託費についても検討を加えるというくらいのことを、あなたが大蔵省の方だったら言えるはずですよ。ほかに幾らでもむだがあります。あなたのおっしゃるような条件の違いだけだったら、現実には納得できませんよ。もう一ぺんお答えをお願いしたいと思います。
  189. 辻敬一

    ○辻説明員 どうも繰り返しましてまことに恐縮でございますけれども、看護婦養成の場合には、それぞれの病院に不足している場合が多いわけでございまして、さしあたりの目的といたしましては、自分のところの病院の看護婦さんの確保、充実という点を目的にしている場合もございますので、そういう点は保母養成所の場合と若干ケースが違うだろう、こういうことを申し上げたわけでございます。
  190. 山本政弘

    山本(政)委員 看護婦の養成は、正看についても、三年の課程についても、二年の課程についても、むしろ民間のほうが多いのですよ。特に准看については、医師会がその大半以上、ほとんどをやっているわけです。民間のほうが多いのですよ。あなたはそうおっしゃるけれども、厚生省関係の施設と、それから国の施設と合わせても、これは問題にならないくらい民間のほうが多いのですよ。それを考えたら、保母のほうは、民間云々というけれども、あなたのお答えになる理由には私はならぬと思うのです。
  191. 辻敬一

    ○辻説明員 この問題につきましては、いろいろ御意見なり御議論のあることも承知しておりますので、なお検討してまいりたいと思います。
  192. 山本政弘

    山本(政)委員 それでは、松尾さんにお伺いしますけれども、潜在の看護婦、つまり家庭にお入りになった方々のことをおさしになっているのだと思うのですけれども、これは聞きますと、二十五万くらいおるのじゃなかろうか、こういうことだそうですが、その中から二万人か三万人を出していけばいいわけです。二万人か三万人出していけば、かなり埋められるのですけれども、その再教育の費用というものは出ていると思うのですけれども、再教育をやっただけで、一体その方々が実際に自分の家庭を一応おいて、そして看護業務にお入りになるとあなたはお考えになりますか。
  193. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 再教育をいたしましただけで、はたして出てくるとは限らないと思います。しかし、現実にそういう希望を持っておられる、そういう条件がある、いろいろな条件がございましょうけれども、自分が出ていって、看護業務に少しでも働きたい、こういう御希望の方がおられれば、その場合にその再教育ということは非常に有効に働くのではないかというふうに考えております。
  194. 山本政弘

    山本(政)委員 それは、たいへんあれなんですけれども、いまの給与では家庭から出ませんよ。松尾さん、それを御承知だと思うのだけれども、出るとお考えになっていますか。再教育をやっただけで出るというようにあなた方はお考えになりますか。給与というものをきちんともう少し考えないと出てきませんよ。
  195. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 潜在看護婦の教育問題は、まだ手をつけて日が浅いわけでございますけれども、昨年度の実績だったと思いますが、約百名程度の方が、いろいろな希望に応じまして、そういう看護婦に戻っていただいたという実績もございます。  いまの給与の体系でこのままいけるかということでございますけれども、いろいろな条件があるかと存じますが、要するにフルタイムで、ずっと夜勤をするような形で看護婦という業務をやりたいという方もおられましょうけれども、また部分的な形でいろいろとお手伝いをしたい、戦力に加わりたいという方もおられると思います。そういう、組み合わせの問題として私どもは解決してまいりたいと思っているわけでございます。
  196. 山本政弘

    山本(政)委員 それでは大臣がお見えになりましたからお聞きしますけれども、その前に辻さんにちょっと参考までにお話ししておきますけれども、看護婦の三年課程でさっき申し上げたように施設の数が二百十三、その中で厚生省が持っているものが四十八、国が三十五、その他のものは都道府県が三十七、市町村が十七、日赤が三十九、済生会が二、厚生連が四、社会保険団体が九、そしてその他が二十二になっている。あなたは民間云々と言われたけれども、民間がこれだけの負担をしているんですよ。二年課程の中では都道府県が——民間という言い方は何ですが、都道府県が二十八、市町村が九、済生会が一、厚生連が三、社会保険団体が九、医師会が六、その他が二十七です。これが准看になったらもうたいへんな数になってくるわけです。市町村が百五、都道府県が六十五、済生会が十、厚生連が二十四、北海道社会福祉事業協会が三、そして医師会が二百八十四持っているわけです。あなたの私に対するお答えというのは、そんなに根拠がないんですよ。看護婦には委託費が出せないというようなことは、根拠としてはあなたのおっしゃることは希薄だと思うんですよ。  それをお考え願いたいと思いますけれども、それはそれとして、先ほど大臣のお見えにならなかったときに、四十一年から今日まで看護婦さんの増員に対してあまり積極的にお考えになっておらないというお話をしたのですが、四十年の九月に行政管理庁ですら看護婦の不足に対しては思い切った施策を講じなさいと、こう言っている。私は行政管理庁が言っていることはたいへん意味があると思う。行政管理庁というのは、要するに一省一局の削減を基本方針としているから、その行政管理庁がふやしなさいと言っていることに対して、四十一年に何ら抜本的な対策、考え方というものを厚生省はおとりになっておらないというところにたいへん問題があるのではないか。看護婦は労働させておけば黙って働いているのだ、——今度初めて夜勤をなくしますとか、それから夜勤の一人勤務ですか、そういうものをなくすとか増員をしてほしいということで出ております。しかし、その前に実際はそういうことの要求が出ておったのだから、あなた方はやはり大胆にそういうことを要求していいだろう、そして大蔵省もそのことについてお考えになるべきじゃないかという話をしたのだけれども、いままで人手の不足、特に看護婦の人手の不足とか、労働条件というものがたいへんひどいという状況をお話ししましたが、厚生省としての責任をお持ちになっている大臣として、一体どう対処なされるおつもりであるか、その点についてお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  197. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 看護婦の不足の問題につきましては、先ほど私は中座しましたが、その前の間に伺っておりました段階におきましても、仰せのとおりまことに緊要な問題だと私は考えております。一昨日の参議院の社労の委員会におきましても、同じような御意見がございました。私は就任早々でございますが、来年度の要求の概要について説明を聞きましたが、来年度の看護婦の増員対策としての規模が、昨年要求いたしましたものよりもずっと多い要求をいたしておりますので、これならばと思ってそれを貫徹いたしたいと思っておりますが、御指摘にもありますように、需給関係の洗い直しをやりまして、そうして時代の要求に沿うようにいたしたい、かように考えます。
  198. 八田貞義

    八田委員長 田畑金光君。
  199. 田畑金光

    ○田畑委員 大臣もかわられたので、私、健保特例法の今後の取り扱いについてお尋ねをしたい、こう思うのですが、大臣御承知のように、健保法、船員保険法の臨時特例に関する法律は、昨年の五十六国会で修正を受けて、昭和四十四年八月三十一日限りその効力を失うという時限立法になっておるわけです。この間に、政府は医療保障制度の抜本改革案を国会に出し、医療財政の安定はもちろん、医療制度、医療保険、公費負担、など万般にわたる改革案を実現するという公約がなされて今日に来ておるわけでありまするが、これが準備作業はいまどのように進んでおるのか、これを初めに承ります。
  200. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 医療保険の抜本改正の問題は、前大臣のときから、これはまことに重要な改正でございますから、党の意向も十分参酌しなければなりませんので、党と一緒になっていまその方針を検討中でございます。
  201. 田畑金光

    ○田畑委員 御承知のように、厚生省は昨年の十一月、改革試案なるものを発表されて、いわば世に問われたという形になっておるわけです。厚生省のこの改革試案に盛られた思想で今後この制度の抜本改革に取り組むのかどうか、あるいはまた、そうではなくして、この改革試案なるものが世の一般の議論を巻き起こす一つの資料として提供をされたのか、あるいは与党のいわゆる調査会等のこの問題検討にあたってのたたき台的な資料として出されたのか、この辺の事情を明らかにしていただきたい。
  202. 梅本純正

    ○梅本政府委員 厚生省の案とおっしゃいましたが、事務当局試案でございますので、私からお答え申し上げますが、先ほど大臣がお答えいたしましたように、この抜本改正の問題は、単に医療保険だけでなしに、医療制度全般にわたるものでございますので、政府与党一体となって考え方の体系をきめる必要があるという御方針でございまして、自由民主党の中に基本問題調査会というのが設けられまして、それと厚生省側といろいろな意見の交換をするという形になっております。  事務当局試案と申しますのは、いまお尋ねがありました経緯につきましては、その調査会が検討するに際して一つのたたき台として、事務当局が数年にわたって研究しておるそうであるから、その研究の一つの結果というふうなものを事務当局試案、いわゆる厚生省案でなしに、事務当局試案という形でもいいから提出するようにという要請によりまして提出したものでございます。  その後与党におきましては、その調査会におきまして、この事務当局の試案も一つの意見という形で検討が進められておりまして、御承知かと思いますが、関係十三団体の意見をその調査会におきましては聴取されまして、関係団体の意見、事務当局試案、それを勘案されて党の案というものがきまってくるだろうと思いますし、その最終的にきまります段階におきまして、政府と十分意思の疎通をした政府・与党の案というものを作成するように、ただいま準備中でございます。
  203. 田畑金光

    ○田畑委員 いま局長のお話にありましたように、先ほどの私のことばが正確でなかったわけでありますが、厚生省は専務当局の試案なるものを発表されたわけです。その後与党の鈴木調査会においては、ある時期においては、事務当局試案なるものにはとらわれない、単なる参考にすぎない、こういうことなども明示して、今日にきているわけです。すでに鈴木調査会なるものは、いまお話しのように関係団体等の意見も聞いて、そうして一つの素案なるものがまとまったということも聞いておるわけです。その内容の中には、たとえば被用者保険の家族を国保に移管する、そういうような内容であるとか、あるいはまた政管健保についてはこれを公社化に持っていくとか等々、重要な改革内容が含まれておると聞くわけでありまして、いわゆる事務局試案なるものと、伝えられる与党の調査会案なるものとには、制度の面から見ても、内容の面から見ても、大きな違いがあるわけでありますが、そうしますと、政府としては、あるいは厚生省としては、与党の調査会案なるものが即政府案、こういうような形で今後この改革に取り組むという姿勢であるのかどうか。この点を明らかにしていただきたいと思う。
  204. 梅本純正

    ○梅本政府委員 いま先生がおっしゃいました鈴木調査会の案としまして、家族の問題その他のお話がございましたが、この点につきまして私のほうで聞いております限りを申し上げますと、鈴木調査会とおっしゃいましたので、鈴木調査会のいまの運営の状況といたしましては、総会を五回開かれまして、その後小委員会を継続いたしておられます。そのときに一つの試案として小委員長が出された案が外に漏れておる段階のものでございまして、それからこれをたたき台として小委員会が御議論になり、総会としてきめられるように聞いております。したがいまして、いずれかの段階におきましては、政府側と十分相談の上、政府・与党の案という形になるものと考えます。
  205. 田畑金光

    ○田畑委員 私がお尋ねしておることは、政府あるいは厚生省としては、与党の調査会の案が煮詰まらなければ板木改革案については出さないのかどうか、取り組まないのかどうか、この点をどのようになさるのかということを端的に承っておるわけです。これは大臣が日が浅いからということも私は同情いたしますが、しかし、その道の大家であるし、また、大臣みずから昨年の特別国会並びに臨時国会におけるあの騒ぎを振り返ってみられるならばよく御存じのわけでありまするが、この法律は来年の八月末までに効力を失なうという時限立法になっているわけです。そうして法案審議の中におきましても、政府はしばしば、必ずそれまでには抜本改革案なるものを国会に提出するということを公約しておるわけです。ところが、いまのような状況で進んでまいりますると、はたして政府は来年の通常国会に提出する準備ができるのかどうか、こういうことを私たちはおそれているわけです。申すまでもなく政党内閣でありまするから、いま局長からお話がありましたように、与党の意見をくんで政府案なるものができ上がるということは常識として承知いたしておりまするが、しかし、今日までの推移をながめてみますると、万事与党まかせだ、こういうことです。政府の責任の所在というものがぼけてきておる。与党と政府であっても、おのずからその権限において、あるいは機能においては別個の問題だと私は考えておるわけであります。いまのような状況で推移するならば、厚生省はみずからの権限なり職分なりを放棄して、万事与党の動きにまかせておる、依存しておるという形をとっておるわけでありまするが、一体このような状況で、このまま推移をただ単に傍観するということで政府並びに厚生省はいくのかどうか、この点をひとつ大臣から明らかにしていただきたいと思うわけです。
  206. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 お尋ねの点、しごくごもっともだと存じますが、政府ことに厚生省といたしましては、与党まかせにしておいてという考えは毛頭ございません。しかしながら、おっしゃいますように、与党の同意も得られる案でなければ、与党の同意さえ得られないというものではとうてい提案ができませんので、与党の意をくみながら——いま与党の特別調査会でいよいよ成案の段階に近づこうとしておられますから、われわれの意見もそこに十分取り入れてもらって、そして政府もこれならりっぱな案だといえるものに一緒になってやってまいりたい、かように私は考えておるわけであります。したがいまして、これから精力的に厚生省、それから与党の調査会が一緒になって結論を一日も早く出してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  207. 田畑金光

    ○田畑委員 率直にお尋ねしますが、大臣としては次の通常国会には改正法案、いわゆる抜本改革法案を出すという御意思であるのかどうか、この点を端的に承りたいわけです。
  208. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 次の国会中には必ず出さなければならぬ、かように考えて進めてまいりたい、かように思っております。     〔委員長退席、田邊委員長代理着席〕
  209. 田畑金光

    ○田畑委員 大臣は次の国会までには必ず出すということを明確にされましたから、私はそれを了としますが、ただ私が心配しておることは、大臣のお答えの中に矛盾があると思うのです。あるいは現実に正しく即していないと思うのです。と申しますことは、いま与党の調査会でいろいろ各層の意見を聞いて、煮詰めの段階に入っていることは私も承知いたしておりますが、その間厚生省当局の意見なるものは、別段取り上げられていないわけです。ただ先ほど事務当局試案なるものが論議の一つの材料を提供したというにすぎないだけであって、その間政府並びに厚生省の考えはこうだということは、鈴木調査会の段階では顧慮されていないというのが事実だと思うのです。そういうことを考えたときに、結局厚生省としては、与党のまとめた案、即厚生省の案、即政府案という形になる以外にないのじゃないか、こう思うのですが、この点はどうでしょうか。
  210. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は願わくは与党で最終結論を出されるまでの間に厚生省の意見も十分取り入れてもらって、そうして与党・政府一体の案としてまとめてもらいたい、かように思っておるわけであります。
  211. 田畑金光

    ○田畑委員 しかし大臣御承知のごとく、次期通常国会に大臣は必ず出すというお話でございますが、そのためにはやはり、与党の結論というものがいつまでに出なければ、政府としての法案として国会に出すのにはタイミングの関係で事実上次の通常国会には出せないという、いわばタイムリミットという制約があろうかと見るわけです。次の通常国会に出して国会の議を経るためには、また時間的な要素ということも十分顧慮されねばならぬと思います。ことに次の通常国会は、四十四年度の予算の審議ということになれば、従来の国会運営の慣例を見ても、三月末までは予算審議が中心となって、四月以降でなければ法案の審議ができぬというのが現実だと思います。そういうタイムリミットを考えたときに、いまのような状況で推移すれば、大臣のお話のように次の通常国会に一体提案できるのかどうか、この点を私は深く心配するものです。与党の案がまとまれば、その次には当然政府としてもこれについて検討をするという手続が必要でしょう。さらにまた、このような大きな問題であるだけに、社会保障制度審議会なり社会保険審議会の議を経るというまたむずかしい関所も控えているわけですが、いつごろまでに与党の案がまとまれば次の通常国会にタイミングとして出せるか、この判断についてはどのように見ておられるわけですか。
  212. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 御指摘のように、田畑さんの御心配になるように私も実は非常に心配をいたしておるのでございまして、できるならば本年中に与野党一致の、少なくとも基本方針でもきめたい、またきめてもらいたい、かように存じておるわけでございます。しかし、これは見通しとしては必ずしもそのとおりいくかどうか、いまの状況では若干ずれるのじゃないだろうかと心配をいたしております。さらに社会保障制度審議会、あるいは社会保険審議会等の議も経なければなりませんので、来年予算審議が終わって直ちに審議していただけるように出したいという念願で最善の努力をいたしたいと思っておるわけでありますが、必ずそれまでに出せるかどうかということを率直にお答えを申し上げますると、必ずしも三月一ぱいに法案が提案できるかどうか、私ども危ぶんでおりまして、刻々時間切れが近づくような気持ちで、心せわしく思っておる次第でございます。     〔田邊委員長代理退席、藤本委員長代理着席〕
  213. 田畑金光

    ○田畑委員 だんだん大臣の腹のうちを聞いてまいりますると、来年の三月までに成案が得られるかどうかも危ぶむということになってくると、事実上これは次の通常国会では、政府の公約というものが来たせないということになるのじゃありませんか。私は先ほど大臣のおことばの中に、与野党というのがちょっと耳に入りましたが、これは与党・政府ということだと思います。
  214. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 与党・政府でございます。
  215. 田畑金光

    ○田畑委員 私が先ほど来指摘したように、すでに鈴木調査会なるものが相当なところまできておるわけです。それで今度は鈴木さんが総務会長になられたので、元厚生大臣の西村さんが、従来の副会長が会長に昇格されて、西村会長で作業を継続されておるわけですから、ほんとう大臣にその決意があるならば、これは来年の三月までに出せるかどうか、そういうあやふやな答弁ということは、もうすでに特例法の暫定延長でまたいこうかというその気持ちがうかがえてならぬわけですが、この点についてはあれだけ国会において、あの五十五特別国会、五十六臨時国会における政府の公約から見ても、また二年の修正案というのが党と党との約束という形にもなっておるわけで、そういうことを考えてみるならば、厚生大臣のいまのような御答弁は、次の通常国会に必ず出して云々ということだと、これをだんだん追及していくとまことに後退してしまって、これまたおかしくなるわけですが、ほんとうにきちんと次の通常国会においては、政治的にも道義的にも、また今日の医療保障全般の状況を見るならば、これは万難を排してやらねばならぬ、こう思うのですが、この点もう一度大臣の所見を承っておきたいと思うのです。
  216. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私も実際はなかなか答弁が苦しいのでございます。と申しますのは、政府と与党の成案ができましても、社会保障制度審議会あるいは社会保険審議会にかけなければなりません。この審議もできるだけ急いでもらいたいと思っておりますが、命令的にあまり制約をするじゃないかというそしりを免れぬとも限りません。しかしながら、急ぐだけ急いでいただいて、希望といたしましては三月には提案のできるように最善の努力をいたしたい、こう申し上げる以外にないと存じます。
  217. 田畑金光

    ○田畑委員 局長にお尋ねしますが、特例法が実施されて以降、保険財政の経営状況はどうなっておるのか。四十二年度末の政管並びに日雇健保、船員健保の収支の状況はどうなのか、四十三年度はどうなのか、この点について計数的にひとつ承りたい。
  218. 梅本純正

    ○梅本政府委員 計数的な問題は社会保険庁がお答えすべきだと思いますが、一応私のほうで持っております数字につきまして御報告申し上げます。  まず、政府管掌の健康保険におきましては、四十二年度の決算におきまして五十八億円の赤字でございます。これは二百二十五億円の国庫負担をいただきまして五十八億円の赤字、こういうふうになっております。したがいまして、四十二年度末の累積赤字は千九十九億円という形になっております。四十三年度の見込みでございますが、一応当初の見込みといたしましては百四億円程度の赤字というふうに考えておりますが、最近の数字におきまして、これが少し赤字額が減るような趨勢にございます。これが政府管掌の健康保険の状況でございます。  それから次に日雇労働者健康保険につきましては、四十二年度の決算におきまして百二十三億円の赤字でございます。このうち御承知の三割五分の国庫質担が百六億円入ってございましてこういう結果になっておりまして、四十二年度末の累積赤字は四百五十九億円という形になっております。四十三年度の見込みでございますが、当初予定しました見込みとしましては百四十五億円程度の赤字というふうに見込んでおります。
  219. 田畑金光

    ○田畑委員 特例法を実施してみたところが、事務当局の当初考えた赤字よりも案外赤字の幅が減った、こういうようなことで、結局また安易な道を選んで、特例法の延長でいこう、こういうようなことなどがすでにささやかれておるようです。だがしかし、いまの局長の答えの中にもありましたように、四十二年度の政管健保だけの素秋赤字が千九十九億、四十三年度の累積赤字見込みは千二百億台に乗るわけです。千二百七十八億ともいわれておるわけでありまするが、なるほど赤字のふえ方は確かに特例法以前とは相当な違いがあることは事実でありまするが、この赤字幅が減るということに政府はたよって、結局困難な、しかし、国民の健康と生命を守るためには、一度は突破しなければならぬ医療保障制度の抜本的な改革というものを努力しないで、そうして行くところまで行ってどうするか、こういうようなことにまたなりそうな感じがするわけです。第二の食管制度のような形になってしまうおそれがもうすでに出ておるわけです。こういうことを考えてみた場合、ほんとうに医療保障制度の近代化、あるいは国民医療を確立するためには、どうしても政府としては公約どおり、政治的な道義から見ても、次の国会をめどに法律改正をやるべきだと思うし、やる勇気なくしてもし今日のこのままの姿を放任するならば、さらに大きな傷口を広げるだけだと、こう考えるわけであるが、この点について、もうすでに厚生省としては特例法の延長でなどという弱気の議論も出ておるやに聞いておりまするが、大臣としては、与党の結論がもうすでにタイムリミットにきておるということを考えてみるならば、政府政府の立場において、この問題の促進をはかるべきだと思うのだが、この点についていま一度大臣決意のほどをひとつ伺っておきたいと思うのです。
  220. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 おっしゃいますとおり、決して安易な道については相ならぬと思います。それだけに、せっかく抜本改正の機会でありますから、後世に悔いの残ることのない完全な案にいたしたい、かような意欲も出てくるわけでございます。しかし、タイムリミットの点もありますから、与党にまかせきりということでなしに、厚生省も積極的に加わりまして、一日も早く成案を得たい。先ほども申し上げましたとおり、努力をいたしたいと思っておる次第でございます。
  221. 田畑金光

    ○田畑委員 ひとつ大臣、これは就任早々えらい仕事を引き受けられたわけですから、万難を排して、国民の期待に沿うように御努力を順いたい、こう思うのです。  時間の制約もありますので、話は飛びますが、来年の一月から薬価基準の引き下げが行なわれると聞いておりますが、それについてどの程度の引き下げがなされるのか。同時にまた、それによって医療費がどの程度削減できるのか、これをひとつ局長からお答え願いたいと思います。
  222. 梅本純正

    ○梅本政府委員 今回の薬価基準の改定は、本年の二月に行ないました薬価調査の結果に基づきまして基準を改定したものでございまして、薬につきまして平均五・六%の引き下げになっております。これが総医療費に換算しまして——これは見方がいろいろございますけれども、約二%弱でございます。金額にいたしまして三百億弱、こういう計算になろうかと思います。
  223. 田畑金光

    ○田畑委員 すでに聞くところによれば、日本医師会等からは、人件費や物件費の値上がりによって医療費の一二%引き上げを求めておる、こういうことを聞くわけでありますが、事実であるかどうか、これについて政府厚生省としては、どのように対処してこられておるのか、この辺の経緯を明らかにしていただきたいのであります。
  224. 梅本純正

    ○梅本政府委員 先生おっしゃいましたように、医師会をはじめ歯科医師会でも、人件費、物件費の値上がりに伴いまして、医療費の値上がりの要求が中央医療協議会に出ております。ただいま中央医療協議会におきましては、その問題の取り扱いにつきまして御相談をいただいておるということでございます。
  225. 田畑金光

    ○田畑委員 薬価基準の引き下げは、来年の一月から実施をされる、こういうことになるわけでありまするが、その医療費の引き上げについては、いまお話しのように、中央医療協議会でいろいろ検討なさっておるということを、われわれもかねて承知しておりますが、この医療協議会の検討というのは、いつごろ結論を出す見通しなのか、あるいはまた、今回の医療費の引き上げ等については、たしか昨年の九月でございましたか、中央医療協としては、医業経営の実態調査とかいろいろな問題を提起しておるやに聞いておりますが、それらとの関連において、今後の推移はどうなるのか、これを御説明いただきたいと思います。
  226. 梅本純正

    ○梅本政府委員 中央医療協議会におきましては、先ほど御指摘がございましたように、昨年の九月に、二年有余を費やされまして一定の建議というものをいただいたわけでございます。その建議によりまして——従来のいろいろの懸案でごさいましたものが、中央医療協議会といいます診療担当側、あるいは支払い側、公益委員という三者の構成の委員会におきまして、全会一致で建議がきまったわけでございます。その建議の一つの大きな考え方といたしまして、三年に一回医業経営実態調査というのを行なおうという合意がなされておりまして、その第一回の調査が、昨年の十一月を調査月としまして大きな調査をされたわけでございます。そして、その結果がただいま集まってきておりまして、その調査票の検討もほぼ終了いたしまして、電子計算機に入るという段階にまで来ておるわけでございます。そして、その建議の一つの大きな考え方といたしましては、その医業経済の実態調査の完了を待ちまして、抜本的に診療報酬体系の適正化を行なおうというふうなことが合意になっておるわけでございます。したがいまして、この調査の結果が出ました暁におきましては、抜本的な適正化が行なわれるというふうに考えられます。ただし、先ほど申しました医師会なり歯科医師会からの御要求は、そういう抜本的な適正化とは別に、最近の人件費や物件費の値上がりに基づきます御要求でございまして、その取り扱いにつきましては、中医協で御審議がなされるものというふうに考えております。
  227. 田畑金光

    ○田畑委員 医業実態調査調査結果は、すでに電子計算機の中に入るところにまで来たということでございますが、そうしますと、日本医師会あるいは歯科医師会等から申し出があり、医療費の引き上げとは直接の関係はないんだが、今後の抜本改正案の重大な柱である医療報酬体系の改正との関連において生きてくる、こういう御説明でしたが、そのように受け取ってよろしいわけですね。
  228. 梅本純正

    ○梅本政府委員 ちょっと誤解があってはなにかと思いますが、中央医療協議会で建議を出されました明確な線といいますのは、調査の結果を待って診療報酬体系のいわゆる点数表の抜本的な改正を行なおうということが、関係者、すなわち委員全員で合意がなされております。したがいまして、その線がひとつ大きく生きておるわけでございますが、先日出されました医師会の要求というものにつきまして、それを抜本的な適正化の中で行なうか、あるいはそれと切り離して行なうかというのが、今後の中医協で問題になる点であろうというふうに考えておるわけでございます。
  229. 田畑金光

    ○田畑委員 伝えるところによれば、去る十二月二日に日本医師会は、明年一月一日より四カ月間、完全診療月間を実施するということをきめたということを承っております。完全診療ということはどういうことなのか、おおよそ、しろうとはしろうとなりの解釈はしておりますが、完全診療ということになってくると、どういうようなことなのか、また完全診療を行なわれたことによって、この保険財政や、あるいは今後の国民医療全体に対してどのような影響があるのか、こういう点について、停止省は当然いろんな場合を想定されて検討なされておると考えるわけでありますが、この辺の事情、また今後のこれに対する対策なりについてひとつお聞かせをいただきたいと思うわけです。
  230. 梅本純正

    ○梅本政府委員 完全診療の御指摘の点でございますが、医師会のほうの出されました資料によりましても、その実施要綱は今後定めるというふうにされております。したがいまして、われわれのほうでは詳細が明らかでございませんので、その辺は十分に把握いたしておりませんけれども、完全診療、完全治療、完全疾病管理を柱として、具体的には医師会病院及び診療検査センターの全国組織を中心とし、これらの施設のないところでは簡易検査を項目ごとに列記して、その実施を促すものであるというふうなことは明らかになっておりますけれども、実施要綱が追って定められるということでございますので、その点は、内容につきましてはその程度でございます。  で、これに対しまして厚生省はどう対処するかという御質問でございますけれども、具体的な実施要綱が明年早々にでも出るんではないかというふうに考えますので、現在のところ慎重にその推移を見守ってまいりたいというふうに考えております。
  231. 田畑金光

    ○田畑委員 大臣に私はお尋ねするわけですが、いま局長からお話がありましたように、日本医師会としては完全診療、こういうことを打ち出しておるわけです。実施要綱については今後さらに具体化されるというお話でありまするから、その内容を見なければどのような影響が国民医療全般に、あるいは保険財政に加わるかということは知るよしもないわけでありまするが、しかし、いろいろ伝うるところによれば、各種検査を完全に実施する。たとえば尿の検査も実施する。尿の検査をやることによって潜在的な疾病が発見される。それに対して完全診療。こういうことになってまいりますならば、医療財政にとっては非常な負担になるであろうということだけは明確に指摘されておるわけです。  こういうふうなことなどを考えてみた場合、やはりさっきの話に戻りまするが、とにかくわが国の国民皆保険、国民皆医療制が施行されて、今日長い年月が経過しておりまするが、いろいろ医療保険制度、あるいは医療保障、医療の内容を検討してみますと、もろもろの問題が介在しておるわけです。それだけにこの問題の解決処理に非常に苦労があることも、われわれも十分承知いたしておるわけでありまするが、さればしからば、こういう困難であるがゆえにということでじんぜん日を送るなら、ますます困難の度を深めるばかりだと思うわけです。したがって、佐藤総理のおことばではないですが、勇断をもって事に処するということは、これはもう医療保険制度の場合は一番大事なことではないかと思うのですね。幸い大臣は、その道においては勇気のある大臣ですから、この問題についてもとくと念頭に置かれて対処されなければ、これは国民としてもえらいことになるという感じを持つわけです。したがいまして、いまいわれておる完全診療の問題をとらえて、私は、なるがゆえにこそ医療保険制度の抜本改革については勇気をもって取り組んでもらいたい、こういうことを指摘するわけでありまするが、このような機関というものを一体大臣はお持ちになっておるのか、厚生省は持っておるのかどうか。またおそらく主管大臣であるから、大臣はおわかりであろうが、与党の調査会の中等において、一体そのような機関を持ってこれに取り組んでおるのかどうか。ということは、私が一番遺憾に思うことは、こういう大事な問題を取り扱っておる厚生大臣が一年ごとにかわっておる。そうしてまた与党の大事な調査会が、また一年ごとに、内閣の更迭と党役員の入れかえでかわっていくということで、はたしてほんとうに真剣に取り組む気持ちがあるのかどうかということを私は疑いたくなるわけです。いや、これは疑うのです。これは国民全体が疑っているのです。この点についてもう一度大臣、どうかひとつ次の通常国会には、これは万難を排してやるぞということを明らかにしていただきたいと思うのですが、もう一度御所見を承ります。
  232. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 抜本改正につきましては、先ほど申し上げましたとおりでございます。そして厚生省厚生省のいままでのスタッフを動員し、また経験を生かしてやってまいりたいと思いますが、特にこの問題についての特別機関というものを持っておるわけではございませんし、党においても特別ふだんから研究しているという機関を持っているわけでもございませんので、それだけに今後勇断をもってやれるという案を見出すのになかなかいままで時間がかかったわけでございますが、しかし、だいぶ煮詰まってきたようでございますので、先ほど申し上げますように、できるだけ早く結論を得まして、次の通常国会の御審議に間に合うようにぜひいたしたい、かように考えている次第でございまするので、成案を得ました以上は、ぜひ慎重に、しかも急速に御審議をいただけるようにお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
  233. 田畑金光

    ○田畑委員 まあ、ひとつ大臣に、特に勇気をもってこの問題に取り組まれることを私は強く要望しておきます。かりそめにも特例法のまた延長で安易な道を選ぶようなことがあれば、ますますどろ沼に入り込むだけでありますので、この点は十分留意して、今後に善処されることを切に願いたいと思っております。  次に私は、話はだいぶ違ったテーマになりまするが、出産費の健康保険適用に関する問題でございます。この点については、特にわが党から、あるいはまたわが党の友誼団体等から、特に婦人の労働者をたくさんかかえておる繊維関係の組合等においては、切に痛感する問題でありまするが、この出産の健保適用について、法律改正をぜひ急いでもらいたいということを今日までしばしば政府には申し入れをなしておるわけです。前厚生大臣の園田さんは、非常に妥当適切な御意見であり、ぜひひとつ次の通常国会には成案が出せるように事務当局に検討を急がしてみましょう、このような確約なども得ておるわけでありまするが、この問題も、すでに四十四年度の予算編成という重要な時期にも差しかかった今日、そろそろ成案を得るのでなければ、時期的にもタイミングを失するわけでありますが、この点について厚生省事務当局としては、どのような作業を今日まで進めてこられたのか、また今後の御方針いかんということをひとつ御説明をいただきたいと思うわけです。
  234. 梅本純正

    ○梅本政府委員 御承知かと思いますが、この八月になりまして概算要求財政当局に出すという時期におきまして、分べん対策中心とする総合的母子保健対策という形で、厚生省の重要政策という意味におきまして、一つの柱を打ち出したわけでございます。そしてこれによりまして、母子保健関係対策に合わせまして、保険関係といたしましては、従来からございました現金給付の額を大幅に引き上げまして、これに基づきまして現在のところ予算財政当局要求いたしておるという段階でございます。今後全力をあげて予算折衝をやりまして、この点が財政当局によって削減されるようなことなく、まず予算面におきましてこれが実現いたしましたならば、社会保険審議会の御了承を得まして、法律にして、早急に法律案を国会に提出いたしたいという順序でございます。
  235. 田畑金光

    ○田畑委員 実は私がお尋ねしたのは、局長の答弁はもうすでに来年の予算要求のことについて触れられておりますか、まず第一に私が念を押したいことは、いまの健康保険法のもとにおいては、異常分べんについては病気ということで保険給付の対象になされておるわけでありまするが、正常分べんも含めて、出産費については健保の適用という法律改正を、ひとつ根本的に改めてみたらどうか、こういうのが、われわれ今日まで政府にたびたび申し入れてきたことだし、また園田前厚生大臣も、それはいいことだし、ひとつ事務当局で検討を急がしてみましょう、このような確約を得て今日にきておるわけです。大臣御承知のように最近の医学の進歩というものは非常に目ざましいものがあるわけです。しかし乳児、妊産婦の死亡率というものは依然として高く、また異常出産も増大しておる。こういうようなことは医療施設の不足あるいは主婦の過重労働などが原因でありますが、特に経済食掛が非常に重いので、十分事前処理ができないところに精神上、肉体上欠陥のある子供が生まれてくるというようなこともしばしば見受けられるわけです。先ほど申し上げましたように、現行の健康保険制度では、出産は病気ではない、こういうので、健康保険の医療の適用を受けられない、したがって、妊娠時の健康管理や検査も御承知のごとく自己負担だ、こういうようなことに今日なっておるわけです。こういう問題について、やはり働く婦人が職場にどんどん進出してきておる、そうしてまた働きながら、家庭に帰っては母として家庭の仕事もやらねばならぬ、こういうように生活環境というものが著しく変わってきておる現状にかんがみて、やはりこの際健保法の根本的な改正をはかって、分べんについてはすべて健保を適用し、産前産後の健康管理などもやるということが、真の母子福祉の総合施策を進める上から大事な課題ではなかろうか、こういうことを考えておりますがゆえに、われわれとしては、分べんについてはひとつ、これすべて健保適用の改正ということで御検討いただきたい、このように強く今日まで要請してまいってきたわけです。先ほど局長はその大事なところを飛び越えて、もう来年の予算の話になっておりますが、そうじゃなくして、前段の一番大事な基盤をどうするかという点を明確に、ひとつ大臣のほうから、政府の今後の方針なり厚生大臣としてこの問題についての基本的な姿勢なりをまず伺っておきたいと思うのです。
  236. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 母子対策のまことに大事な一環といたしまして、分べん対策につきましては、基本的な考え方は、私は田畑先生と全く同感でございます。医療保険の抜本改正の際にこれを十分に組み入れてまいりたい、かように思います。暫定的に先ほど局長から来年度予算の点を御説明申し上げましたが、抜本改正の際には基本的にこれを取り入れてまいりたい、かように思っております。
  237. 田畑金光

    ○田畑委員 これもまた抜本改正に逃げられたわけですが、どうも都合のいいときは抜本改正に逃げちゃうのですね。そして抜本改正はいつになるかめどがつかぬという不安な状況で、どうも抜本改正ということばが都合よく利用されやすいので残念です。しかし先ほど大臣は、来年の、次の通常国会に抜本改正を出すと言われておるから、そのときはだいじょうぶこの問題も含めて法律改正になってくると思うのですが、前園田厚生大臣から事務当局はこの問題について検討をしろと言われたはずですね、局長。検討してみた結果、現行法の改正ということについて何か難点があるのかどうか、どうなんですか。
  238. 梅本純正

    ○梅本政府委員 それではこの際ちょっと申し上げておきますが、先生の用語の点で、ちょっと失礼でございすけれども、現在の健康保険法におきましては、この分べんの給付につきましては明確に保険給付としてございます。問題は、現金給付か現物給付かという問題でございまして、そのおっしゃる点は、現金給付でなくて現物給付がどうしてできないか、こういうことだろうと思います。  その点につきまして御説明いたしたいと思いますが、われわれのほうも先生おっしゃいましたとおり十分に検討をいたしました。どうして困難であったかということにつきまして二、三申し上げますと、異常分べんは御承知のように現物給付になっておりますけれども、正常な経過をたどるいわゆる正常分べんにつきましては、わが国におきましてはやはり医学上の点から、これは単なる生理現象の範囲内でございまして、疾病として必ず医者の監視のもとにおいて取り扱う必要はない、胎児娩出の介助は助産婦のみでも行ない得る行為であるということで、正常分べんは疾病ではないという医学上の常識から、健康保険法のスタートでその説をとってきたわけでございます。したがいまして、保険制度が発足しました当初から、やはりこの正常分べんにつきましては現物給付の方式をとらずに、現金給付の方式をとってまいりました。そして現物給付にしますものは、主としてお医者さんの行為を点数化しまして、それによっていろいろ支払いをするという方法できたわけでございます。  そういう点から、発足以来四十年たっておりますけれども、その現金給付にしましたために、正常分べんにつきましては、お医者さん、あるいは助産婦さん、昔であれば産婆さん、それと妊婦との関係におきましては、分べん介助料というものの性格は、まあいわゆる助産婦さんに対する謝礼も含めましての諸雑費ということになっておったわけでございます。したがいまして、この分べん介助料につきましては、私的な医療機関につきましては、慣行料金ということによりましてずっとまいっておりますし、助産婦さんの点につきましては、各地区の協定料金ということでまいっております。  この慣行料金の現状を見ますと、最低が四千円から最高は一万円以上というふうに各地区の協定料金、慣行料金が非常にぱらついておるわけでございます。そういう点がございまして、これを現物給付にするということになりますと、点数化をする、点数にするということが必要になるわけでございますが、四十年来こういう慣行料金、協定料金で全国的にばらついておりましたものを、全国一律の点数表にするということにつきまして非常に困難がございますし、またすでにございます医療行為の点数との均衡の問題につきましてもいろいろむずかしい問題が出てきたわけでございます。こういう点がございますのと、それからまたここで点数表を設定いたします場合に、単に助産婦さんだけの行為につきましての点数を新たに設定しなければならぬというふうなこともございますし、そういう点からいたしまして、この点数化の問題、すなわち現物給付化の問題につきましては、やはり相当の研究を要するというふうに考えたわけでございますし、また点数の問題でございますので、中央医療協議会におきまして十分御審議を願った上、点数を新設していただくというふうな関係もございまして、これは抜本的な適正化の点におきまして十分御検討願うつもりでおります。したがいまして、抜本改正とは一応関係しないで、できるだけ早く実現できるように——現在ございます現金給付は昭和三十六年以来放置したままになっておりますので、いろいろの諸条件を勘案いたしまして、現行の諸物価その他の点に合わせまして改正を企図しまして予算要求をしているという事情でございます。
  239. 田畑金光

    ○田畑委員 局長が、さきの私のことばの中でちょっと誤解を受けておられたとすれば、これはひとつ訂正しておきますが、私が先ほど申し上げたのは、正常分べんも異常分べんと同じように、病気や負傷と同じ扱いとして、それに伴う諸経費を健保の適用で見る、すなわち現物給付にしたらどうか、ひとつこういうようにこの法改正をやったらどうかということを指摘したわけなんです。  いまの答弁の内容で、慣行料金の問題、あるいはまたこれを点数化した場合のいろいろな、その他とのつり合いの問題等々指摘をされたわけでありますが、しかしあなたの答弁も、これを現物給付にすることがだめだというのじゃなくして、さらにその他との均衡なども考えながら、これを前向きに、現物給付の形に進めていこう、こういうぐあいに私は受け取ったわけでありますが、そのような受け取り方でよろしいわけですね。
  240. 梅本純正

    ○梅本政府委員 けっこうでございますし、先ほど言いました八月に出しましたこちらの要綱におきましても、その点は明確に現物給付を行なうことが望ましいと考えられるが、これについては検討すべき多くの問題があって早急には実現しがたいので、さしあたりこういう現金給付の改善を行ないますということをはっきり打ち出しまして、要綱を発表いたしたわけでございます。先生のおっしゃるとおりでございます。
  241. 田畑金光

    ○田畑委員 私は、時間もまいりましたので、もう結論を急ぎますが、そこでこの点はひとつぜひ抜本改正案との関連で検討されることも当然と思いますが、また問題が非常に広範な女子の——特に婦人の労働というものは、農村にあろうと、都市にあろうと、だんだん婦人労働者というものがふえてきた現状から見ますれば、これは国民の過半数の婦人にとっては一番大事な問題じゃないかという感じを持つので、この点については新大臣ぜひひとつ善処願いたいと考えておるわけであります。  同時に、先ほど局長から御答弁がありました、来年度の予算要求にあたっては、この現金給付について健康保険法の五十条でございましたか、被保険者本人ならば標準報酬の半額、最低保障六千円、こういうことになっておりますし、被保険者の家族であれば三千円というようなことになっておりますが、これを幾らぐらいに来年の予算の中で増額要求なさっておるのか。  また私は同時に、やはり妊娠中の健康診断なりあるいは検査というものは、いわゆる公費で負担するという公費負担、こういうような問題の強化であるとか、あるいはまた先ほどお話がありました今後の母子乳幼児の健康管理の問題等について、今日存在する母子健康センターの増設なり強化なり、こういう問題について、来年は格段の御努力を順いたいと考えておるわけでありますが、それらの事情の御説明を承ると同時に、ひとつ局長の答弁のあと、大臣の所見もあわせて伺っておきたいと思います。
  242. 梅本純正

    ○梅本政府委員 医療保険の分野におきます分べん対策につきましては、健康保険の関係におきまして、現在は被用者本人につきましては標準報酬の二分の一というふうになっておりますが、この最低保障額が六千円になっておりますのを二万円に引き上げる、それから配偶者が三千円の定額になっておりますのを一万円に引き上げる、それから国民健康保険につきましては、二千円程度の任意的な給付になっておりますのを一万円に引き上げまして、できるだけ義務的な給付というふうに変えていきたいというのが、保険につきましての改正点でございます。
  243. 渥美節夫

    ○渥美説明員 妊産婦・乳幼児対策のおくれが相当目立っておりますことは、先生御指摘のとおりでございます。したがいまして、今後は妊産婦・乳幼児の特に早期健康診査というものに重点を入れていきたい、かように思います。現在は保健所に参りました際におきまして、無料でこういった検査が行なわれるわけでございます。今後の考え方といたしましては、一般の医療機関等におきましても、所得の低い者に対しましては健康診査を徹底してやっていくべきではなかろうか、かように思っているわけでございます。  なお、特に農山漁村等におきます母子健康センターの重要性はますます増してまいっております。したがいまして、来年度の概算要求におきましては、母子健康センターを従来の倍増という考え方をもちまして要求をいたしておるところでございます。
  244. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま児童局長が説明をいたしました点につきましては、厚生省といたしましても重点施策の一つとして貫徹を期したい、そのように存じておる次第でございます。
  245. 田畑金光

    ○田畑委員 私の質問はこれで終わるわけですが、最後に大臣にまた重ねて御要望申し上げますが、大臣は何回も大臣をおやりになっているわけですから、大臣になってとてもうれしいのだなどという気持ちじゃないと思うのです。これはひとつ、大臣になった以上は、この大事な厚生行政ほんとう国民のための厚生行政にやっていこうという、そういう情熱と決意にあふれて再度大臣に就任されたものと私は十分承知しておりますが、どうぞ先ほど申し上げた非常に困難な問題もいろいろありますけれども、ぜひこれが実現のために格段の努力をひとつ切に希望して、私の質問を終わります。
  246. 藤本孝雄

    藤本委員長代理 伏木和雄君。
  247. 伏木和雄

    ○伏木委員 私は時間があまりないようですから、児童手当と保育所の問題について若干お伺いします。  その前に、新大臣にお伺いをしておきたい基本的な問題が一つございます。と申しますのは、佐藤総理が総裁三選後の記者会見におきまして、こういうことを言っております。今後の重要な課題としてまず治安対策が最も肝心だ、こういう意味のことを述べておりますが、私は今日のこうした社会の混乱に対して、治安対策を強化ということよりも、むしろそのよってきたるところの原因、すなわち生活不安、社会不安、ひいては政治不信というものの一掃こそ賢明なる治安対策ではないか、このように考える次第です。今日の私どもの生活環境を治めるところのこの社会保障制度というものの実態、こうしたものがはたしてどこまで社会保障といわれるものにでき上がっているかどうか、あるいは物価の高騰、ベトナム戦争よりも多いといわれる交通事故による死亡者、こうした環境の変化こそ唯一の社会保障の道ではないか。そういったことを考えますと、厚生大臣として、社会保障をつかさどる担当大臣として、佐藤内閣が治安対策という前提のもとに施策を立てるとするならば、厚生大臣こそその先頭に立ってこうした社会不安の一掃につとめてこそ、総理の言う完全な治安体制というものができるのではないか、ただ力をもって力を屈していくというようなことは、次の社会不安を起こす要因になっていくのではないか、こういうふうにわれわれ考えるわけですが、こうした点について所管大臣といたしまして、特に安心した生活、国に対して全般の信頼を国民から寄せられる最も大事なかぎを握っている所管の大臣としての所見をまず承っておきたいと思います。
  248. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいまの御所見、まことにごもっともに存じます。私も同様に考えております。総理の言っておられます治安対策ということも、そういう広い意味を含めて、当面目立っておる、表面化しておる問題も、やはりその根底からつちかっていかなければならないというお考えだと私は思っております。私は長い間警察関係を担当したことがございますが、そのときにも私は痛切にそのことを考えておりました。ただ、表面にあらわれた事態を処理するというだけではほんとうの治安対策にはならない、かように考えております。
  249. 伏木和雄

    ○伏木委員 そこでお伺いしたいことは、新大臣としてこの予算編成期に就任をされて、特に来年度、四十四年度に対して従来になかった力強い福祉政策と申しますか、社会保障制度に対する大きく一歩前進の姿をそこに示してこそ、いま大臣がお述べになった社会不安一掃の原因になっていくのではないかと思いますが、困難な四十四年度予算編成期にあたりまして、具体的に伺うのは無理かもしれませんが、特に来年度予算について大臣のお考えがもしありましたら、ここで伺っておきたいと思います。
  250. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 来年度の予算要求は、すでに前大臣の時代にいたしておられるわけでございます。御承知のように、前大臣も特に社会福祉という血には卓見を持たれまして御編成になったものだと信じておりますが、私はこの提案をされました予算をできるだけ削られること少なくして、そうして通るようにするのがまず今日の当面の急務だ、かように考えております。
  251. 伏木和雄

    ○伏木委員 そこでお伺いするわけですが、前大臣は、四十四年度においてはぜひ児童手当は何とかやっていきたいということを国会におきましてしばしば答弁されております。御承知のように、この児童手当制度というものは、すでに戦後、昭和二十二年から議論になっておりまして、そのつど政府は前向きで、前向きでと言っておきながら、今日までの経過を経てまいりました。池田総理のときもあるいは佐藤総理になりましても、この児童手当を一刻も早く実現したい、こういう御答弁がしばしばございまして、ただいま申し上げたように前園田大臣は、四十四年度からは何とかこれをやっていきたい、この児童手当については明確にこういう答弁をされておったわけであります。先ほど大臣が言われておりましたような、積極的にこの福祉行政に臨むという観点に立てば、今日わが国でただ一つ社会保障の中で実行されてないこの児童手当については、もう来年度から即刻始めていかなくてはならない問題ではないか、かように考えますが、この児童手当についての大臣のお考えを承りたいと思います。
  252. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 児童手当の問題は、政府といたしましても党といたしましても、以前から必要だということを認めて答弁をし、選挙に臨みます際にも、私が党におりました時代も、自民党の重要施策の一つだということで打ち出されておったわけでございます。しかしながら、私は党におりました際に、一体児亜手当の内容はどうなんだということを問い詰めてみますと、はなはだばく然としておって、なかなかまだわかっていない、それでは困るじゃないかということを言い続けてまいったわけでありますが、厚生省に参ってみますと、いま児童手当懇談会において審議をしてもらっている、その答申はこの二十一日にも出るであろうということでありますので、大体いただけるものと思っておるのであります。しかし、その発想方法だけでいいか、その内容だけでいいか、私は就任早々でございますので、どういう答申が出るかということについての事前研究もまだ十分足りませんが、もう二、三日のうちにこの懇談会が開かれまして、ある程度の結論が出ると思いますので、それを検討し、私の考えも入れまして、少なくとも次の国会には間に合うように、あるいはこういう骨子でいかがでありましょうと皆さんにお示しできるようなものにつくり上げてまいりたい。したがって、それに基づいて予算要求というところまでできるかどうかわかりませんが、率直に申しまして、できるならば予算要求にも入れてもらいたいと思います。しかし、児童手当と一口に言いましても、その内容等もなかなか複雑多岐でございますから、最悪の場合におきましても、こういう考え方はどうであろうかという結論だけはなるべく早く出したい、かように思っております。
  253. 伏木和雄

    ○伏木委員 児童手当懇談会の問題が、この児童手当に関してはしばしば出てまいります。七月のときも、たしか七月に懇談会の答申が出る、それが延びて八月には間違いなく出る、こういうことになってまいりまして、ただいま、明後日ですか、二十一日ですかにいよいよ……
  254. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 二十日だそうです。
  255. 伏木和雄

    ○伏木委員 二十日にこれが出されるということで、私どもも大いに期待しております。この答申というものが大体概略どんな形で出るか。いままで長い間これを待ち望んでおったわけですから、これがあまりにもいいかげんなものであってもなりませんし、大体どんな方向、どんな形で出るか、企画室長、おわかりになっておったらお答え願いたいと思います。
  256. 首尾木一

    首尾木説明員 先ほど大臣からお話がございましたように、二十日に児童手当懇談会を開きまして一応の報告といいますか、そういうものにつきまして大臣に提出をされるという一応の予定になっております。私どもは、その日に提出されるということになろうというふうに考えておりますが、実は最終の懇談会を開きませんと、懇談会としてこれで発表したいということの最終的な了解を皆さんがなさっておりませんので、したがいまして、懇談会がこういうものを懇談会の意見としてお出しになるということを申し上げることは、ちょっと差し控えさせていただきたいと思うのでございますが、全般的な考え方といたしましては、従来からも若干お話を申し上げたこともございますが、本格的な児童手当制度ということを頭に置きまして、いわば単なる貧困家庭に対するその児童のための扶養の手当ということにとどまらないで、本格的な社会保障の一環としての児童手当制度というものをつくろうということで、大体考え方としましては、被用者を対象とする制度と、それから被用者以外の人を対象とする制度というものに大きく分けまして、相当な大きな財源のものに将来はなるのであるから、したがって、考え方としては拠出制度ということを原則にいたしましてものごとを考えていくべきではないのか、こういうようなお考えでもっていままで審議が進められてまいっておるはずでございます。大体そういうようなことを骨子にいたします具体案というものをお示しになりまして、さらに、今後政府としてこの問題をどう取り扱うべきかというようなことにつきましても、それぞれの委員方の御意見をおまとめになりまして、大臣のほうに報告するということになろうかと思います。
  257. 伏木和雄

    ○伏木委員 先ほど大臣からのお答えで、予算化できなくても、その考え方だけはできれば今度の国会に出していきたい、こういうお答えがあったわけでございますが、私一つ危惧する点は、この懇談会というものがいわゆる法律で定められたところの審議会とは性格が違っております。法律で定めた審議会においても、しばしば政府は審議会の答申というものをよく言われている隠れみの的なものとして都合よく解釈していく。ましてやこの懇談会の意見というものが出て、これは法律に基づいているものではないということで、せっかく今日まで懇談会が答えを出してからということできたその懇談会の答えというものに対して、これを軽々に扱ってはならない、私はこう思うわけですが、この懇談会の意見というものを、法律で定めたところの答申と同じような形でこれを尊重し、その線に沿って政府が具体案をつくろうとするのかどうか、それとも単なる一片の私的な団体の意見ということにしてしまうか、この点を私どもは危惧するわけですが、この点について出た答え、懇談会そのものを大臣はどこまで尊重されるお考えか、これを承っておきたいと思います。
  258. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 この懇談会は、おっしゃるとおり法律に基づいたものではございません。しかしながら、厚生大臣が学識経験者、民間の関係者の方々にわざわざ願いをして、そして専門知識を集めてつくっていただいた懇談会でございますから、それから出てまいりました結論は、法律に基づいた懇談会と同様、あるいはそれ以上に貴重なものとして尊重してまいり、さらにそれをよりよく実行していくのにはどういうようにやっていったらいいかということを検討してまいりたい、かように思います。
  259. 伏木和雄

    ○伏木委員 この児童手当が今日いかに世論に支持をされているかということは、大臣もすでに御承知と思います。全国の知事会におきましても、あるいは全国市議会議長会におきましても、この要望書が政府に出されているということは御承知であると思います。また都道府県等におきましても、十数カ所、あるいは市町村におきましても数十カ所の議会の決議がされまして、国に対して意見書、要望書が提出されて、まさに全国的な問題になっていると思います。一刻を争うような状態になりつつあるこの児童手当につきましては、明日の懇談会の答えと同時に、いままで以上の積極的な、ただいま御答弁がありましたように、来国会には何とかこの形をつくり上げていくというような姿にしていただきたいということを強く要望いたしておきます。  続いて、もう時間もありませんし、保育所の問題を簡単にお伺いしたいと思います。それは、一昨日ですか厚生省におきまして、保育所の実態の全国調査の結果が発表されたわけでありますが、この調査によりますと五十一万人の乳幼児が保育所に入れない、実際いますぐにでもほしい、保育所に入れないで困っているということが出ております。政府としまして、保育所に対して今後どういう施策をおとりになっていくか、この点について大臣のお考えを承っておきたいと思います。
  260. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 現在、保育所は社会の要求に比べまして非常に不足であり、また不完全なものが多いのでございます。したがいまして、できるだけすみやかに社会の要求に合うように、そしてまた不完全なものは完全なものにするように最善の努力をいたさなければならぬ、かように思っております。
  261. 伏木和雄

    ○伏木委員 この保育所は、従来あるところの保育所約一万二千カ所、このうち七千六百でしたか、七千数百カ所が公立によるところの保育所、そのほか四千数百カ所が民間、このようになっておりますが、そのほかにも無認可の保育所が相当数あるのではないか。そこに収容されている子供さんも相当数あると思います。無認可が大体二千ないし三千カ所あるのではないかと思いますが、そうしますと、この五十一万人と、無認可の保育所に収容されている子供さんとをそこへ合わせますと、これは五十一万人をはるかに上回った人たち法律に守られずに不自由な思いをしているということになると思います。この無認可の保育所も、法律で基準がある以上は、あくまでも認可するたてまえに立ってその基準を守らなくてはならないのは当然のことでありますが、あまりにもこの施設の数が足りないという今日、この無認可の保育所に対して何か法の助けを寄せられないものか。何らかの形で補助金を出せないものだろうか。私どもはこういった点を考えるわけですが、こうした無認可の保育所に対する救済の手当て、これを厚生省で何かお考えになっているかどうか承りたいと思います。
  262. 渥美節夫

    ○渥美説明員 仰せのとおり、昭和四十年の調べでございますが、無認可の保育所は全国で二千二百カ所。そこで保育をされております子供の数が約十一万五千、こういうことになっております。しかしながら、無認可の保育所の実情を調べてみますると、その設置主体が市町村とかあるいは社会福祉法人のような場合もございますし、あるいはまた町の私人、個人というものもございます。それからまたその規模も、十人以下とか十五人以下というふうな非常に小さなものもございますし、また六十人、八十人、百人、こういうふうな大きなものもあります。したがいまして、無認可保育所を開所をするということにつきましては、いろいろなそのような現状を十分慎重に考慮した上で考えなければいけない、かように思うわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、特に都市あるいは都市近辺におきましては、小型の保育所——先生御承知のように、保育所の認可基準は子供が六十人以上ということを一つの条件としておりますけれども、都会におきましては、小さな子供さんも多いし、また土地の確保も非常に困難であるという実情におきまして、六十人を割って子供を保育しているという施設も無認可の状態で残されているわけでございますので、本年度から、小規模の保育所という制度を実施いたしまして、このようなことで一つの解決をはかることにしておるわけでございます。また、農村等におきましては比較的大規模の保育施設が多いわけでございますので、こういったことにつきましては、必要に応じましては、児童館の設置ということも考えなければならないと思うのでございます。  なお、また都会の一部におきましてはほんとうの零歳児保育ということをやるために、無認可の小さな規模の施設もございます。したがいまして、この零歳児保育と乳児保育といいますか、これにつきましても今後解決をしなければならない問題でございまして、これを解決することによりまして、無認可保育所の解消にもなる、かように考えるわけでございます。しかしながら、いずれにいたしましても、保育所が先ほど御指摘のように足りないわけでございますから、正規の保育所をたくさんつくっていくことによりまして、いわば正面作戦といいますか、そういうことで無認可の保育所の解消をはかるということが必要であろう、かように考えるところでございます。
  263. 伏木和雄

    ○伏木委員 正規の保育所をたくさんつくる、これはまことにけっこうなことなんです。現実はそう簡単にいくかどうかという問題です。実際市町村が保育所の建設にあたっては相当の財政負担をして、ただでさえ苦しい地方財政を、相当圧迫していることも事実であります。したがって、正規の保育所がそんなにどんどんでき上がる、ここ何年かのうちに需要を満たすほど公立もしくは認可を受けた保育所ができるなんということは、ちょっと考えられないのじゃないか。またそれを厚生省が考えているとしたら、あまりにも現在の財政措置というものはお粗末過ぎるのじゃないか。正気でそんなことをお考えになっているのか。現在の財政措置でもって、そんなに需要を満たすほど保育所ができ上がると考えているとしたら、あまりにも甘過ぎると思うのです。したがって、そうした正規の保育所ができ上がるまで、この無認可の保育所に対して、法律どおりのことはできないとしても、何らかの形での救済措置はできないか、われわれはこう考えるわけですが、もう一回この点についてお答えしていただきたいと思います。
  264. 渥美節夫

    ○渥美説明員 先ほどお答え申し上げました点をやや繰り返すようでございますけれども、いずれにいたしましても、小規模保育所でございましてもこれは正規の保育所ということに相なりまして、そこで保育される子供に対しましては、公費をもちまして措置費が支弁されるわけでございます。本年出発いたしました小規模保育所は、約百カ所でございますけれども、大部分が大都会にあるわけでございます。この小規模保育所を認可いたしますことによりまして公費が支出されるということで、一つの解決のめどはついたというふうになっております。しかしながら、まだやはり小規模保育所制度だけでも解決しない問題がございます。特に大都会におきますところの零歳児保育でありますので、こういった点につきましては現在いろいろと検討しておりまして、乳児保育を促進するように来年度予算の概算要求におきましてもその制度を打ち立てたい、かように考えておるところでございます。
  265. 伏木和雄

    ○伏木委員 ただいまも、今日の財政措置が保育所をたくさんつくるに至らないということを私申し上げましたが、実際法律の上では、保育所建設にあたっては建物について二分の一の国庫負担ということが定められているにもかかわらず、現在一所当たり百万円までということになっております。これは非常に私たち納得できない。法律で定められておりながら、しかも急務を要する保育所の建設にあたって、入れない子供が六十万人にも及ぶというその保育所に対して、あまりにも低過ぎるのではないか。大体一カ所定員六十人以上の普通の保育所と考えましても、一人当たり五平米以上ですか、そう法律では定められておりますが、そうしますと三百平米、約百坪に近い建物を建てなければ普通の保育所とはいえない。それがわずか百万円の補助金である。どう見ても建物に一千万円近くかかっている。その一千万円に対して、法律のたてまえからいえば五百万円の補助金が出て当然のことであるにもかかわらず、たった百万円しかやらない。しかも、需要はこんなにどんどんふえる一方です。今日の物価高によって、共かせぎをしなければならない家庭は相次いでできております。日を追って共かせぎの家庭がふえている。勢いその子供の処置に一番親が頭を悩ましている。今日までのような保育所に対する政策では、とうてい現在の子供でもまかなえない。ますます保育所を必要とする子供はふえる一方になってまいります。こうした中にあって、法律でせっかく二分の一と定められておりながら、わずか一〇%にしかならない補助金しか出されていない。ここが保育所建設の最も立ちおくれている問題点ではないかと思います。しかも、これには用地費は全然見られておりません。今日都会で建物を建てるとすれば、その用地費というものは建物の二倍、三倍となってくるのは当然のことです。そういうところにあって、最も金の要る用地費は一銭も見てない。建物の二分の一というのも十分の一しか見てない。こうした現状では、先ほど局長が言われたところの今後の保育所対策というものは全くやみ夜も同じようなものではないか、こう考えますが、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  266. 渥美節夫

    ○渥美説明員 私ども昭和四十二年度からおおよそ五カ年間の計画をもちまして、三十万人の子供のための保育所づくりをいまやっておるところでございます。その計算でまいりますと、一年間に約六万から六万五千人の子供さん方を新たに保育所に入れるということになるわけでございます。その計算からまいりますと、七百五十カ所から八百二十カ所ばかりの保育所づくりという必要が出てまいるわけでございます。実はこの計画は、いまのところ一応順調に進んでおりまして、毎年約六万ないし六万五千の子供が保育所に新たに入れるようにはなってきております。そして保育所の数も四十三年度におきましては七百七十カ所くらい新設されたのであります。しかしながら、まさに先生の御指摘のように、この建設費に対します国の補助額が現在百万円でございまして、金額が非常に少なく、したがって、地方における超過負担を誘発しているわけでございます。したがいまして、この百万円の補助額の増額につきましては従来からも努力してまいりまして、実は昭和四十二年度までは七十万円だったのですが、昭和四十三年度にようやく百万円になったわけでございますが、今後ともこの補助額の、補助単価の引き上げにつきましては、大いに最善の努力をいたさなければ保育所づくりが円滑にいかない、かように考えておるわけであります。
  267. 伏木和雄

    ○伏木委員 来年度予算ではどのくらい見ておりますか。
  268. 渥美節夫

    ○渥美説明員 ただいま要求している金額といたしましてはちょうどその二倍の二百万円を要求しておるところでございます。
  269. 伏木和雄

    ○伏木委員 ぜひそれを取っていただきたいと思います。  ただいま局長は、順調に保育所が建設されているということを申されましたが、それはちょっと何か考え違いされているのではないかと思います。実際地方自治体におきまして、当初予算等において保育所の計画は確かに出されております。具体的に申しますと、一例をあげますと、横浜市等におきましては、四十三年度の当初予算におきまして、保育所六カ所の建設の予算を計上したわけであります。ところが、今日に至っても、いまだに一カ所も建っていない。その原因はといえば、建物の建設費は計上してありますが、用地費を計上してない。どこかで用地を寄付してもらえないか。要望があったところへ建てるというような行き方で、用地費を計上せずに、建物のみの予算を計上しているという市町村がだいぶあります。しかし、これはあくまでも相手方の必要なことであって、相手が出てこない限りはその予算を実行することができない。四十三年度六カ所の建設予算を持っておりながら、まだ一カ所も建つでいない。これが保育所建設の実態であります。何か局長は、ただ百万円だけ市町村に出してやれば、それでスムーズにできていくのじゃないかというような錯覚をされているようですが、実態はそういうものですから、ひとつ御認識をいただきたいと思います。  最後に承っておきますが、やはり保育所における措置費の補助金でございます。これも今日まで八割が国で補助をしておったわけであります。新聞によりますと、大蔵省では補助金の整理合理化、この上に立って来年度は保育所の補助金を五割に引き下げたい、こういうことを厚生当局に申し入れた、こう新聞に出ておって、私はあまりにも保育所の実情を無視した行き方だと、半ばあきれるような、怒りを覚えるような感じすらあるのですが、これを受けとめる厚生省としましては、これは今後の保育所行政の上に立って大事な問題であると思います。この点については、この大蔵省の申し入れについて厚生当局はどう受けとめられるか、この点大臣からお伺いしたいと思います。
  270. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 保育所の措置費について、大蔵省がどういう査定をいたしてまいりますか、まだ私承知いたしておりませんが、伝えられるようなことであれば、これはとうてい容認できない、かように思っておるわけであります。
  271. 伏木和雄

    ○伏木委員 ひとつ厚生大臣、がんばっていただきたいと思います。  最後に、総まとめに大臣にお伺いしておきますが、ただいま、このように補助金にしても大蔵省は五〇%に切り詰めようとする。あるいは建設費一千万円に及ぶような建物を必要とする保育所に、法律で五〇%の補助金を定めておりながら一〇%しか出していない。また、最もネックになっている用地費は全然見られない。こうした保育所は必要性を唱えられておりながら、あまりにも厚生省自体が保育所の建設に対して冷たいのではないか。私はこう断定せざるを得ないような条件があまりにもそろい過ぎている。こうした冷たい保育所行政を一刻も早く立て直していただきたいと思いますが、この保育所行政について、こうした今日までのおくれた保育所行政から今後どう対処されるか、大臣からのお答えを承りたいと思います。
  272. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 最初に申し上げましたとおり、分べんから保育という点に至りましては、いままでの保育の施策はきわめて不満足であったと思います。よく、公共投資は一般の産業投資に比べて非常に立ちおくれておるといわれておりますが、とりわけ私は、社会投資ということばはあるかないか知りませんが、そういう意味におけるいわゆる社会開発に要する国の投資というものは産業投資に比べて非常に立ちおくれている。しかも需要はますます多くなってきておるという現状にかんがみまして、まず分べんから保育、これが第一に着手しなければならぬ点だと思いますので、全力をあげたい、かように思います。
  273. 伏木和雄

    ○伏木委員 とにかく、物価はとどまるところを知らず、本年度ももう六%をこえる物価の上昇であります。それに伴って所得は一向にそれを満たしていかない。したがって、夫婦共かせぎという状態はますます深刻になっていくのではないか。そうなってくると、先ほど申し上げましたように、子供の問題が一番親の頭を痛める問題であります。しかも、かわいい子供のためであります。それが満足されないということになりますと、政治不信というものはますます強まるばかりだろうと思いますが、温情ある施策をお願いいたしまして私の質問を終わりまして、中野委員とかわります。
  274. 藤本孝雄

    藤本委員長代理 中野委員
  275. 中野明

    中野(明)委員 ちょうど大臣も出ておられますので、この機会に海中公園のことについてお尋ねしておきたいと思います。  昭和四十四年、来年は海洋の年というふうに一般でもいわれておりますが、世界的に海洋開発に目が向けられる年であると私どもも考えております。すでに三十七年にアメリカのシアトルで世界国立公園会議が開かれて、海洋資源の保護、自然の景観、これを保存する上から、各国において海中公園について検討するよう勧告が出されております。それに呼応しまして、わが国においても海中公園について現地の調査法律改正の案とを考えておる、このように聞いておりますが、その調査された個所、あるいはいままでの経過について、簡単に御説明願います。
  276. 広瀬治郎

    ○広瀬説明員 ただいまお話がありましたように、シアトルで第一回の国際国立公園会議がありまして、そこで今後各国は海中公園をつくって、海中のすぐれた景観を保護しようという勧告がなされております。わが国は特に海洋国でございまして、わが国の近海には非常にすばらしい海中の景観がございますことは御指摘のとおりでございます。たとえば南のほうでございますとサンゴ、熱帯魚、あるいは北のほうでございますと海藻類等の景観がございます。この勧告を受けまして、私どもは昭和四十一年から海中公園の候補地の調査をしてまいりました。具体的に申しますと、まず四十一年度には海中公園の設定の可能性につきまして、海中景観の概要を調査いたしました。その具体的な調査場所につきましては、高知県の竜串・見残、それから日南海岸、宇和海、若狭湾につきまして調査をしました。それから昨年、四十二年度におきましてはさらに海中の動植物の種類とか分布状況、あるいは海中公園制度をつくった場合のその規模をどうするかとか、保護をどうするかというような詳細なことにつきまして、竜串・見残、宇和海、潮岬等につきまして調査をやってきました。また本年度に入りましては海中景観を保護するためにはどういうふうにすればいいかということに主眼を置きまして、天草諸島、日南海岸、錦江湾、能登半島等について調査してまいりました。これらはいずれも厚生省が直接行なった調査でございますが、これと並行して県独自に竜串・見残、宇和海、潮岬、天草諸島、日南海岸、伊勢志摩、三河湾、熊野灘、若狭湾、能登半島、佐渡島、越中海岸、奄美大島などについて調査をしております。
  277. 中野明

    中野(明)委員 いまの調査された結果で一、二お尋ねしてみたいと思いますが、諸外国の実例から見ましても海中公園の最適地はやはり黒潮暖流に洗われておる南海の亜熱帯地方、その中でも特にサンゴ礁の発達しておる海域、この方面が景観が非常にいいということになっております。これらの条件から考えまして、先ほど調査報告のあった地域の中で、竜串・見残方面の調査の概況と、そして今後海中公園指定に至るまでの手順等について御説明願いたいと思います。
  278. 広瀬治郎

    ○広瀬説明員 竜串・見残につきましては、ただいま申し上げましたように、四十一年度と四十二年度両年にわたりまして調査しております。それから私自身も本年の夏現地を見せていただきました。  その概要を申し上げますと、まず竜串一帯におきましては非常に変化に富んだ造礁サンゴあるいは熱帯魚等がございます。特に弁天島のあたりにおきましては、シコロサンゴ、みどり石などの造礁サンゴが非常に発達しておりまして、またウミトサカ類も非常に豊富でございます。いわゆる海のお花畑という形容詞が非常に当てはまるような気がいたします。それから熱帯魚でございますが、あの付近はソラスズメダイ、チョウチョウウオ、キンチャタダイ、フエヤッコダイその他いろいろの珍しい形、美しい色の熱帯魚が非常に豊富でございます。また見残湾内におきましては、シコロサンゴが非常に発達しておりまして、中には二十平方メートルもあるような非常に巨大なシコロサンゴの群体が見られまして、いずれも非常に景観としてはすぐれておるばかりでなく、学術的にもきわめて価値の高いものでございます。  なお私どもの考えといたしましては、このように海中の景観のみではなく、今後海中公園制度をつくる場合には、陸域の自然がすぐれておって、これがよく保護をされておること、あるいは海水が非常に透明であること、あるいは潮流、波浪があまり激しくないこと、そういうようなことも同時に条件というふうに考えておるわけでございますが、ただいまお話しの竜串・見残につきましては、陸域につきましては御承知のとおり足摺国定公園の区域内でございまして、その景観も海蝕崖は世界的にも非常に珍しい景観をしておりますし、また南国風の植物が群生しておりまして、陸の景観も非常によろしい、こういうところでございます。また透明度につきましても非常にいいわけでございまして、平均十五メートルの透明度があるということが調査の結果わかっております。それから潮流、波浪につきましてもあまり激しくないところでございまして、私ども事務当局として考えております海中公園の指定の基準から見ますると最も適当した場所であろうと考えております。  今度の段取りといたしましては、私どもはこの海中公園制度を法律上の制度にいたしたいと考えておりまして、現在国立公園、国定公園などの制度を定めております自然公園法の一部を改正いたしまして、この海中公園制度の規定を設けたいというふうに考えております。ほぼこの構想もまとまりまして、海のことですからいろいろ魚の問題とか船の航行の問題等、ほかの行政も入り組んでおりますので、関係省庁と目下協議をしておりますが、間もなくその意見調整も整う見通しでございますので、次期通常国会にこの海中公園創設のための自然公園法の一部改正を提案し、御審議をしていただく予定にしております。
  279. 中野明

    中野(明)委員 概略わかりましたが、ただいまお話にもありましたように、最近の人口増加は自然美をそこなうところまで非常に膨張してまいっております。そういうことで、陸といわず海といわず、非常に自然美についての考え方を強く持っていただく。一日おくれたらおくれただけ、貴重な資料が滅失し散逸するおそれがございます。特に海中公園というのは、人類に対しても未知の世界を紹介する、最も魅力のある場所だろうと私どもも考えております。ぜひいまお話にありましたように、早急に法律改正を出していただいて、そうして一日も早く海中公園の指定が行なわれることを特に私ども希望しておるわけであります。最後に、大臣のほうからそういう点についての所見がございましたら一言……。
  280. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 海中公園の必要なこと、またいままでの調査、それから立法準備、ただいま部長が御説明を申し上げたとおりであります。私も三重県出身でございますが、やはり海にめぐらされておりまして、この海中公園制度の必要なことを痛感いたしております。ぜひ、なるべく早く成案を得、次の通常国会には成立をいたしますように御努力をお願いいたしたいと思います。
  281. 藤本孝雄

  282. 谷口善太郎

    ○谷口委員 私も保育所の問題ですが、ことしの四月二十三日の本院決算委員会で、政府がことしから保育所の国庫負担金の問題について内示したことにつきまして問題になりました。しかも、その内示額が政府負担金を予想しております自治体の考えに比べて非常に低いということから、自治体の間に非常に騒ぎが起こっておるというような問題から質問がありましたときに、局長はこういうふうに答えて、保育所の措置費の国庫負担は当然精算払いにするものであるし、その旨答えた、しかしそういう混乱があれば、これについてあらためてしかるべくその趣旨を徹底させるようにしたいという答弁をしておるのですが、通達かなんか、その措置をおとりになりましたか。
  283. 渥美節夫

    ○渥美説明員 昭和四十三年二月二十九日付の厚生省児童家庭局企画課長発都道府県民生所管部長あての通知を出したのは御指摘のとおりでございます。この通知の趣旨は、昭和四十三年度におきまする保育所の措置費の使用に関する運営につきまして、一応の都道府県ごとの大ワクといいますか、ワクを示した通知でございます。したがいまして、前国会におきまして私が御答弁申し上げましたように、保育所の措置費自体は児童福祉法に基づきまする国の義務費になっておりまするので、その精算の結果を審査さしていただいた上で、処置をするというふうに申し上げたのでございます。昭和四十三年度はまだ保育所の運営がなされておりまして、まだ結果が出ておらないわけでございますが、さかのぼりまして昭和四十二年度におきまするこの精算状況等について申し上げまして、昭和四十三年度もそれと同じようなことをするということを申し上げたほうが私はいいかと思います。実は昭和四十二年度におきましても、当初私どもが予定しておりました措置費の予算額をはるかにオーバーすることがすでに昭和四十二年の一月、二月ごろにわかってきたのでございます。したがいまして、昭和四十二年度分におきましても、昭和四十二年の予備費の流用をいたしまして、十一億七千八百万円の予備費を支出したわけでございます。しかしながら、これでもまだ不足でございまして、四十二年度の精算をいたしましたところ、なお四億以上の不足額を生じております。したがいまして、この精算予定額につきまして大蔵省と折衝いたしまして、この点につきましても予備費で支出するということにいま段取りをつけておるところでございます。そのようにいたしまして、保育所の措置費自体がそのような性格をもっておりますので、精算の結果を待ちまして善処するということにしておるわけでございます。したがいまして、昭和四十三年度におきまして先ほど申し上げましたような通知を出しましたけれども、これはその当該都道府県におかれましての一応の目安ということでございまして、都道府県の実情に応じまして、保育所が非常にふえたところもございます。子供さんが非常にふえたところもございます。したがいまして、そのワクの中で押えてしまうというふうな意向は決して持っておらないわけでございまして、四十三年度の事業が終わりました後におきまして、その不足が生じました場合には当然これは補てんするということにいたしたいと思います。
  284. 谷口善太郎

    ○谷口委員 局長、たくさんお語いただきましたけれども、私が聞いたのは、局長こう言っていらっしゃるのですよ。そういうふうに疑問や問題点があれば、さらに繰り返して精算主義の趣旨を徹底するように周知したい。これは、自治体に知らしていただきたいという要求の中でこうおっしゃっている。そういう通達をお出しになったかどうかということ聞いておる。
  285. 渥美節夫

    ○渥美説明員 この点につきましては、ようやく四十三年度も第三・四半期が終わろうとしております。したがいまして、都道府県におきましても、いろいろとその四十三年度の実施状況をそろそろ把握してまいる段階にまいっております。したがいまして、近日中にそのような方向につきましての通知を出す手配にしてあるわけでございます。まだ通知は出しておりませんが、その手配をしているわけでございます。
  286. 谷口善太郎

    ○谷口委員 この予算内示額といいましょうか、つまり政府負担金の内示ですね。これを見ますと、これはもうすでに問題になっているところですから繰り返す必要はないと思いますが、大体非常に低いということで、自治体が非常に心配しているという問題があるわけです。これはこの前も問題になっているところですから繰り返し言う必要はありませんが、そこで、自治体からもその後に、たとえば東京都その他七大都市の陳情を受けております。もしこれをこのままでやられると、超過負担が多くなるということを心配して、陳情を受けておりますが、通知を出していただく、あるいはそういうふうに心配しなくてもいいのだ、必ず精算払いにしてやるのだというふうに言っていただければそれでいいのでありますが、いずれにいたしましても、私どもはこの通知をお出しになった問題は、少し政府の越権というと言い過ぎかもしれませんが、お考え違いがあるのではなかろうか。この保育所の措置費の問題は、必要に応じて市町村長が、これは法律に基づくわけでありますが、そういう乳幼児があれば措置しなければならないということで、事業が始まり、その上でどのくらいの経費が要ったということが出て、それから父兄の負担金を差し引いたあとの残りの八〇%というふうに法律できまっているわけですね。ですから、政府予算の都合だとかなんとかであらかじめこういう通知を出してワクをきめるということは、あるいはワクをきめなければならないような受け取り方をせざるを得ないようなものを出すことは、それはやはり法律のたてまえからいつて正しくないのだろう。やはりこれははっきり取り消すという立場をとってもらいたい。数日中にこれは通知をお出しになるならけっこうです。そこはけっこうなんですが、政府のほうでは、四十一年度からずっと実際に精算されるときに、特に四十一年度は精算されてしまっているのですが、一〇〇%お出しになっていないという実情がございます。これはどうなさいますか。どういう理由でこういうふうに削ったのか。つまり値切ったというふうに普通に言われているが、どういう理由で値切られたか。
  287. 渥美節夫

    ○渥美説明員 昭和四十一年度におきまして、実は当初の予算額でございますが、百四十八億円の国庫負担分を計上しておったわけでございます。しかるに、その予算を積算いたしました当初の予定をはるかにオーバーいたしまして子供さんがふえたという事実もございます。つまり予算で予定いたしました後、児童につきましても三万六千名も保育所に通う子供がふえた。同時に先生も御承知のように、経費がかさみますし、三歳未満につきましては一万四千名もふえているということでございます。そのようなことで、四十二年度補正におきまして八億五千万円の補正予算を計上いたしまして、穴埋め、赤字補てんをいたしたのでございます。その際私どもも、各都道府県でまとめられました市町村ごとの精算書を審査さしていただいたわけでございますけれども、やはり保育所におきまして、もちろん市町村長が適確に、適正に措置しておるたてまえにはなっておりますけれども、私どもの監査その他の点から考えますと、真に保育に欠けるというような子供でないような子供さん方も措置児童の中に、保育所の中に加わっておるというふうな問題もあるわけでございま写。そういうふうな観点からいたしまして、精算の要求書のうち約二・五%程度を査定して調整をいたしまして、精算をさしていただいたというのが四十一年度の実情でございます。
  288. 谷口善太郎

    ○谷口委員 ちょっと局長に申しますが、私の時間は三十分でございます。だから、簡単にお返事をいただきたいと思います。  いま何か不正入所といいますか、適正でない入所、そういうものがあるということをおっしゃったのですが、これは調査されましたか。
  289. 渥美節夫

    ○渥美説明員 これは毎年度保育所行政事務監査をやっておりまして、その結果より推定したわけでございます。
  290. 谷口善太郎

    ○谷口委員 それはあなた、調査じゃなくて推定でしょう。実態調査はなさいましたか。
  291. 渥美節夫

    ○渥美説明員 その点につきましては、都道府県に出しまする私どもの措置費は、都道府県ごとにまとめて出すのでございますので、個々の保育所につきましての監査の点等につきましては、都道府県にお願いするよりほかにないのであります。
  292. 谷口善太郎

    ○谷口委員 あなたは、実態調査をしないで頭から値切るというようなことはとんでもない行政じゃないですか。東京都なんかそのために抗議したら、あなた方のほうはおつき合いだからひとつがまんしてくれというようなことを言っているじゃないですか。  私は、ここにまた別な資料を持ってきております。これは長野県茅野市の議会の決議です。これは四十一年度の分をあなた方が値切ったことに対する抗議です。これは実にけしからぬというので、ぜひ一〇〇%出してもらいたいということの上申書を出そうという決議です。ここでは議会は市長のやっております措置に不正がなかったということを認めておりますから抗議してくれ、それから県も県の出すべきものを一〇〇%出しておる。ここのところであなた方のほうでは相当値切っておる。こういうやり方をしていらっしゃるのです。そんなことで値切られたらたいへんだと思うのです。この四十一年度の分は完全に追加払いするという気がありますか。
  293. 渥美節夫

    ○渥美説明員 四十一年度につきましては、そのようなことで処理をいたしまして、完結をしておるというふうに考えております。
  294. 谷口善太郎

    ○谷口委員 大臣、お聞きのとおりなんですが、政府が一方的に完結していると言うけれども、実は自治体のほうでは完結してないのです。これは当然追加払いすべきだと思うし、四十二年度以降も、こういう値切るというようなやり方は、しかも実態調査をしないでやるこういうやり方は、正しくないと思う。それは全く不正なことであれば、当然そういうことがあり得ると思う。しかし不正でないかどうかわからないで、大体二%ぐらいはやっておりますというようなことでやられたのでは、自治体はたまらぬのです。こういうことであります。大臣、この点は現実の問題です。ちょうど二月段階になりますとことしの分の報告が出るわけですから、そうしてことしの分が査定されるわけですから、そういう時期ですから、ぜひこれはちゃんと一〇〇%払うようにしてもらいたいと思いますが、これは大臣の気持ちを聞いておきたいと思います。
  295. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 よく実情を検討いたしまして、法の趣旨に合うようにやってまいりたいと思います。
  296. 谷口善太郎

    ○谷口委員 実情を調べた上で、全国的に法の規定に合うようにする、こういうことでありますね。御返事いただきましょう。
  297. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 実情を調べましてと申し上げましたが、全国的に再調査をする必要があるのかどうかそれも調べまして、少なくとも具体的に問題になっておるところはどこなのか、法の趣旨がどうなのか、私もまだしろうとでございますから、十分検討いたしたいと思っております。
  298. 谷口善太郎

    ○谷口委員 実は私は、まだたくさんのことを用意してきているのですが、飛ばします、時間がないんだから。  そこで、次に無認可保育所の問題でちょっと聞いておきたいことがあります。無認可保育所は福祉法人にならなければ国の援助が得られぬというようなことになっているようですが、無認可保育所が福祉法人にならねばならぬ法的根拠はどこにあるのでしょうか。
  299. 渥美節夫

    ○渥美説明員 御承知のように、社会福祉事業法によりまして、第一種の社会福祉事業を行なうものは社会福祉法人であることを原則とするということになっております。第二種社会福祉事業でございます保育所につきましては、その規定はございません。したがいまして、社会福祉事業の法的な面からいいますれば、保育所の経営につきましては、社会福祉法人でなくてもいいというふうなことが一応いわれるわけでございます。しかしながら、やはり社会福祉事業の本来の趣旨といいますか、精神から申し上げましても、保育所のような社会福祉事業につきましては、その事業の公共性でありますとか、あるいは中立性であるとか、あるいは永続性というようなことを考えまして、社会福祉法人で経営していただくように行政指導をしているところでございます。と同時に、社会福祉法人になりますれば、公的の設備費に対するような補助金も支出されますし、そういった財政的な基盤も強くなってくるというふうなことになるわけでございます。
  300. 谷口善太郎

    ○谷口委員 法律に根拠のないものを、政府が一片の通牒といいますか、あるいは行政指導でそういうことをされるのは、これは全く越権行為といってもいいんじゃないですか。前にはそうじゃなかったのでしょう。社会福祉法人でなければならないという通牒をお出しになる前ですね。そうでない保育所に対しても、ちゃんと認可を与えているということをやっておったでしょう。これは法律に根拠はございませんよ、調べてみましても。保育所は第一種じゃない、第二種ですからね。その法律に根拠がないものを、あなた方が行政指導でそういうことをやっていくということは——先ほどもお話ごさいましたが、いま重大な問題は、無認可保育所をいかにして育成拡充するかという問題が、保育所運動では重大なことになっていると思うのですが、この道をふさいでいることになっている。  これは大臣もよく御承知だと思います。最近東京都は、都民の要望にこたえて、保育所の拡充をやるということが目的で、無認可保育所に対して無利子長期の整備資金の貸し付け制度をつくった。ところが、無認可保育所が都からこの金を借りて施設を整備し、さて認可をとろうとすると、二分の一以上の借金があるという理由で福祉法人に認められない、認められませんと一年以内に金を返さなければならぬ、しかも、認められなければ国の援助は得られぬ、借金でせっかく施設を整備したことが何にもならない、そこで東京都のこの制度を利用しない、こういうばかばかしい事態が起こっているんですな。これは御存じでしょう。こういう点を考えてみますと、福祉法人にしなければならぬとか、あるいは借金をたくさん持っているのはだめだとか、そういう融資を受けて施設をつくったのはだめだとかいうような条項は撤廃して——あなたのおっしゃるように、公共性とかあるいは純粋性とかというような問題は、当然だと私は思うのです。  同時に、そこに集まっている人たちが金を借りてやっても、将来こういうふうにして返還するのだという計画を持っているなら、これは当然認めてやって、やはり国からの援助をやるという方途をここで切り開きませんと、ほんとうに無認可保育所がさらに発展してりっぱな保育所になるという道がふさがれることになる、そういう問題が起きているわけなんです。こういう点について、そういう態度をとる、そういう方策をとるという考えはありませんか。
  301. 渥美節夫

    ○渥美説明員 先ほど申し上げましたように、社会福祉事業は、それぞれの特殊性を持っておりますので、社会福祉事業法には明定はされておりませんが、やはり私ども社会福祉事業の性格から考えまして、社会福祉法人によって設置、経営されるというような行政指導をさらに進めてまいりたい、そのような気持ちでおります。しかしながら、社会福祉法人ということになりますると、そういういろいろな条件等におきまして困難な面も生じてまいることは御指摘のようなわけであります。したがいまして、私どもは社会福祉法人で設置、経営されることを原則としながらも、やはり必要に応じて、あるいは場合におきましては財団法人を設置していただいて、財団法人で経営することにつきまして、これもやむを得ないというふうな行政指導をしておるわけでございます。したがいまして、無認可保育所の問題に関しましても、私どももできるだけそれを認可の正規の保育所に上げるように、そのような運営の考え方を適用していきたい、かように思っているところでございます。
  302. 谷口善太郎

    ○谷口委員 大臣、これはあなたにお聞きしたわけなんですが、具体的に申しますと、資産の二分の一以上借財のあるものは認めぬという、大体そういう方針でやっておられるようだ。ところが、いまあります無認可保育所は、いろいろの種類がございますけれども、しかし多くの地域にありますものの多くは、おかあさんたちが集まって、そして全く自分たちの子供あるいは友だちの子供を集めてやろうという熱意から、非常な苦渋の中で保育所を始めているのです。東京都が幸いそういう制度をつくったので、金を借りて施設を拡充しようという計画を立てたのですが、これは具体的な例が幾つもあるが、ところがそうしますと、資産はできましたけれども、同じだけの額の借金がある。差し引き資産はゼロなのですから許可されぬというこの矛盾、そういうものが起こっている。せっかくのおかあさんたちの熱情、保育所をりっぱに立てていこうという熱情、これが無視されてしまう。これは児童福祉法の精神からいいましても、こういう状況に置かれているのは非常に正しくない状態だと思うのです。ですから、この点を何とか撤廃する。二分の一以上の負債があるのは認めないというような条件、若干そういうような条件がありますが、こういう条件を撤廃して、社会福祉法人であろうと、財団法人であろうと、あるいは場合によったら個人の場合でも、ちゃんとこれが正規の保育所として発展できる、国もそれを援助できるという道を開くようなそういう態度をとる、この点、具体的な大臣のお考えをお聞きしたい。
  303. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいまの具体的な設例の場合におきましては、これは財団法人にしていただければいいのじゃなかろうか。その場合に、財団法人が金を借りてやった場合に、これは二分の一の負債だからといって財団法人が許されないことはないだろう、かように考えます。ただいまの場合は、財団法人になればいいと事務当局も言っておりますから、間違いがないと思います。
  304. 谷口善太郎

    ○谷口委員 念を押しますが、それでは東京都から金を借りて七百万円の施設をつくった、ところが施設は持っているから、それは一つの財産ですか、一方に東京都から七百万円の借財があるので差し引きゼロだ、これでも財団法人をつくってやれば、その資金返済計画、その他に確かなものがあれば、これは認める、こういうことですね。
  305. 渥美節夫

    ○渥美説明員 財団法人につきましても、社会福祉法人と同様ではないにいたしましても、もちろん財団法人を認可する一応の基準があることは当然でございます。したがいまして、その場合でも、いままさに御指摘いただいたようなプラスマイナス全くゼロであるというふうな、そういった人格なき財団がはたして財団法人として認められるかどうかというような点につきましては、もう少しほかの要素、財団の内容でありますとか、あるいは経営者の内容でありますとか、設置者の状態でありますとか、そういういろいろな点から条件を判断いたしまして認可することになろう、かように思います。
  306. 谷口善太郎

    ○谷口委員 そうすると、同じことじゃないですか。名前が社会福祉財団と財団法人というふうに違うだけで、財政上の問題は、一定の制限があれば同じことじゃないですか。いまある地域的な小規模保育所といいますか、あるいは無認可保育所、これはさっきから繰り返すとおりに、実際父兄たちが集まってやっている、どこかの家を借りてやるとか、寺を借りてやるとか、たとえば寺を借りてやるという場合には、これは借りているというはっきりした貸借関係があればいいと思いますが、その場合でも最低百万円以上の現金を積まなければだめなんでしょう。だから、これは財団法人であろうと社会福祉法人であろうと——つまり貧乏人はなかなか浮かび上がれぬということですね。これは何とか打開しなければならないし、これを打開する道を政府は真剣に考えてもらいたい。現にこれは東京都だけでも二百カ所近い無認可保育所があって、これに相当の人たち関係して一生懸命やっている。この人たちの情熱を無視したら、国の施策としてやっております児童福祉事業を発展させる、協力させるということにはならないわけです。ここのところを私は言っているのですが、大臣いかがですか。
  307. 渥美節夫

    ○渥美説明員 ただいま端的に一つの例を御質問いただいたわけでございますが、本年度から始めました小規模保育所の制度でございますが、この制度に乗りまして、いまのような無認可保育所が解消されるというふうなことを意図したのでございまして、現在まで東京都からも相当数小規模保育所としての認可を受けたいというふうな施設が出てきております。したがいまして、私のほうの基準によりまして、たくさんある東京都におきます無認可保育所も、小規模保育所として認可されるという例もあるわけでございまして、ただいま  一つの例を御指摘いただいたわけですが、その例につきましても、さらにもう少し具体的に伺いまして、いろいろと検討させていただきたい、かように思います。
  308. 谷口善太郎

    ○谷口委員 もう時間がございませんので、結論に入らなければならぬが、私が一つの例を言ったのは、そのことを計画している何々保育所を代表してあなた方と団体交渉をするという気はない。そうではなく、こういう形で一つの制度として——こういうふうにおかあさんたちの情熱が、実際は許可が得られないようなことになっている。しかも東京都は、保育所の発展のためにいい状況をつくるような、こういう制度をつくった。そしてこれは他の地方自治体にもできるかもしれません。できているところもあるかもしれません。だから、これらを活用して発展させる上からいいましても、いまの政府の言っている制限条項というものはやはり過酷だ。資産の二分の一以上の借金があるものはだめだということは一つの条件だし、それから三十人以上でなければいけないということももちろん一つの条件でしょう。しかし、十五人ということでも保育所というものはできるわけです。そういういろいろな条件がありますが、これらの条件を緩和して、そして無認可保育所が正規の保育所に発展して、保育事業に大きな寄与をするように、そういう道を開くためにここでやっぱり思い切った政策をとる必要があるのじゃないか。もちろん信用のできないものは、これはチェックしなければならぬ。非社会的なもの、それはそうだと思う。しかし、そうでない限り、やっぱり国民大衆の熱情を生かすという立場、これは保育所事業にとって大事だと思う。そういう立場で施策を講ずる必要がないか、この点についてやはり大臣ほんとうに根本問題の一つとして考えていただきたい。御所見を伺いたい。
  309. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 東京都としてそういう人たちに金を貸して、そしてやらして、それで保育所として十分責任をもってやっていける、こういうようなことであれば、むげにしゃくし定木にとらわれる必要はないと存じます。したがいまして、ケースバイケースで、そういうようなすでに一定の基準に合っているものは、これはよろしいのでございますが、そうでないものはやはりケースバイケースで東京都と相談しながらきめてまいりたい、かようにいたさせたいと思います。
  310. 谷口善太郎

    ○谷口委員 いままでの条件を緩和して、いままでの条件に適格でないにしても、その人たちの計画が当然発展性があり、将来性があり、社会性を持っているというような場合には、これは認可する、こういうことと理解してよろしいでしょうか。
  311. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 大体さような意味に御理解いただいてけっこうだと思います。そういう場合に、なぜ財団法人にできないか、それはこういう理由でこうなんだという何があり、東京都もそれに金を貸して、そしてやってもいいという自信があるというような場合、よくひとつケースバイケースで、財団法人にしてくれれば無条件といえると思いますが、そうでない場合にはよほど内容を伺って、例外的にそういうものがあってもいいじゃなかろうか、かように思います。
  312. 谷口善太郎

    ○谷口委員 それでは、最後に簡単にお伺いいたします。  この保育所の問題、実際上やはり保育事業を実行し、発展させていく上で困難になっている問題で、定員の問題と、それから保母などの給与の問題があります。これは常に保育所問題でいわれることですけれども、たとえば保母さんたちが夏休みをするとか、あるいは八時間やらぬで、午後三時ごろにやめてしまうとかいうことが常に問題になって、そういうときに、保育所が休むと子供が行かなくなるんだから、だから、そこらは削るべきだという意見も政府部内にあるようですか、いずれにしてもそれはそこに出ております子供たちにとりましても、非常に困るわけですから、これは結局は定員がちゃんと必要なだけおり、夏休みがありましても、あるいはきちんと八時間働いている、五時なり六時まで遅くまでやらなくても、それが充足できるような代替要員があるということであれば、それはできるわけですね。父兄の望んでおりますのは、もちろん夏休みは休んでもらいたくないし、それから毎日夕方 五時、六町までやってもらいたいと望んでおります。特に農村に行ったらそうだと思う。そういう場合に一番障害になっておりますのは給与が安いことと人が足りないこと、これが問題になっております。給与は私ここにちょっと書いてきたのでありますが非常に安いですよ。これはこういうことですね。大臣、聞いていてください。甲地域の園長で本俸月三万三千五百五十四円、期末手当など加えまして約四万八千円、保母で本俸二万五千三百三円、手当を加えまして三万八千円強なんです。手当、いろいろなもの全部計算して……。こういう状況におりますから保母のなり手もありませんし、またやはり長時間やれといっても無理だという問題が起きてくるのですから、ここらのところを改善する御意思はありませんか。そういう計画はありませんか。
  313. 渥美節夫

    ○渥美説明員 ただいまの措置費でお支払いをしておりますところの施設長、あるいは保母さんの基準単価は、先生のお読み上げになりました数字でございます。私どもといたしましては、このような処遇改善するために、毎年努力をしておるわけですが、こういった処遇につきましては、特に甲地、乙地の差などがございまして、甲地、乙地の差をなくするようなことにいたしたいというのがまず第一点でございます。  第二点といたしまして、実際問題といたしまして、全体としての労働条件を緩和するというふうな意味におきまして、受け持っておりますところの子供の数を減らしていくということも考えなくてはいけないと思っております。特に三歳あるいはそれよりも小さいような子供に対しましての定数の改善ということも、毎年計画しておるところでございます。もちろん民間におきましては、公の施設に比べますと、相当処遇が悪いわけでございますので、そのためには民間経営調整費というような費目をもちまして、民間に対しましての援助策を講じておるところでもございます。なお、これは当然のことでございますが、ベースアップにつきましては、公務員に準ずるようなベースアップを措置して毎年見ていくということにしております。そのようなことで施設職員の処遇改善をはかっておるところでありますが、今後ともさらに努力したい、かように思っております。
  314. 谷口善太郎

    ○谷口委員 じゃ、これを最後に終わります。  ベースアップはなされましても、民間保育所は特にひどいのですが、大体初任給が低いのです。動かないのですね。ベースアップはやりますけれども、これは物価が上がったので当然でありますが、これは給料が上がったのではない。初任給のところでみなとまっております。園長さんも、保母さんも、こういう状況だから長続きしないのですよ。そういう人たちがそういう条件で働いておるというのですから、保育事業としてはやはり大きな欠陥を持つわけです。だから、単にベースアップの問題だけではなくて、民間に対してはもう少し積極的に、この人たちが一人前の保母さんとして、あるいは園長さんとして、あるいは人間として生活できるようなそういう道が開けるような体系を考えていただきたい。これを望んでおきます。  以上です。      ————◇—————
  315. 藤本孝雄

    藤本委員長代理 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  労働関係基本施策に関する件について調査するため、明二十日、日本鉄道建設公団副総裁篠原武司君に参考人として御出席いただき、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  316. 藤本孝雄

    藤本委員長代理 御異議なしと認め、さよう決しました。  次回は明二十日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時九分散会