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1968-09-03 第59回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年九月三日(火曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 八百板 正君    理事 小笠 公韶君 理事 金子 一平君    理事 砂田 重民君 理事 唐橋  東君    理事 武部  文君       青木 正久君    中山 マサ君       木原  実君    戸叶 里子君       村山 喜一君    吉田 之久君       有島 重武君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局長    柿沼幸一郎君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         大蔵大臣官房審         議官      田代 一正君         農林省畜産局長 立川  基君         食糧庁次長   田中  勉君         通商産業省企業         局長      下山 佳雄君         運輸省鉄道監督         局長      町田  直君         運輸省自動車局         業務部旅客課長 菅川  薫君         郵政大臣官房電         気通信監理官  柏木 輝彦君     ───────────── 八月十日  一、物価安定緊急措置法案堀昌雄君外九名提   出、第五十五回国会衆法第二三号)  二、物価問題等に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ───────────── 八月七日  公共料金値上げ反対等に関する請願(谷口善太  郎君紹介)(第二〇五号) は本委員会に付託された。     ───────────── 八月七日  公共料金値上げ抑制に関する陳情書  (第一二七号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ────◇─────
  2. 八百板正

    八百板委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武部文君。
  3. 武部文

    武部委員 経済企画庁長官がおくれるようでありますから、最初に公正取引委員会食糧庁見解を求めたいと思います。  八月二十五日の読売新聞に、北海道の十勝、留萌の米穀業者独禁法違反の容疑で公正取引委員会立ち入り検査をされたということが報道されておりますが、その内容について、簡単でいいですから説明をお願いしたいと思います。
  4. 柿沼幸一郎

    柿沼説明員 八月二十五日の読売新聞の記事は、必ずしも実情を正しく伝えておるとも思われないのでございますけれども北海道の米の卸売り業者小売り店との取引に関しまして、独占禁止法規定違反をしている疑いがあるということで、現在公正取引委員会審査部において調査をいたしておるわけでございます。調査内容につきましては、現在調査中の事件でございますので、いまここで申し上げることは差し控えさせていただきたいというふうに考えております。
  5. 武部文

    武部委員 それならば、登録がえを拒否をするということを談合したということになれば、独禁法第何条の違反になるか、それをひとつ……。
  6. 柿沼幸一郎

    柿沼説明員 卸売り業者の問題でございますけれども北海道の場合には卸売り業者一つ団体をつくっております。その団体行為として行なった場合には第八条違反疑いが出てまいりますし、団体でなしに、個別に申し合わせしたということになれば、カルテル行為ということで第三条違反疑いが出てまいるわけでございます。
  7. 武部文

    武部委員 正当な理由がないのに小売り業者の要求を拒否をした、こういった場合は第何条違反になるのか。
  8. 柿沼幸一郎

    柿沼説明員 現在、米の卸売り業者小売り業者との取引関係につきましては、食管法規定が設けられております。したがいまして、食管法の解釈との関連の問題が出てくるかと思います。  それから、ただいまの御質問の、個別の卸売り業者行為として不公正であるかどうかという問題が出てきた場合には、第十九条違反の問題が出てまいります。
  9. 武部文

    武部委員 そうすると、ただいままでの公取立ち入り検査の情勢から見て、第八条、第三条、第十九条の違反疑いがある、それに基づいて公正取引委員会調査をしておる、このように理解してよろしいですか。
  10. 柿沼幸一郎

    柿沼説明員 どの条項に違反疑いがあるかという点につきましては、現在調査中でございますので、いまこの席上で申し上げることはできないわけでございますけれども、ただいま申し上げた範囲内の違反疑いがあるということで、ただいま調査中でございます。
  11. 武部文

    武部委員 それでは、きょう報道されました熊本人吉の同様の――これはわれわれは調査をしておるわけでありまして、もっと悪質でありますが、このことについて調査をしておられますか。
  12. 柿沼幸一郎

    柿沼説明員 私はまだ調査をしているという報告を受けておりません。
  13. 武部文

    武部委員 同様な事件熊本、岩手、宮城、香川、奈良の各県で起きておるというふうに報道されておりますが、公取は、このような全国一連登録がえ拒否をめぐった紛争について、積極的にこれを調査する意向があるかどうか。
  14. 柿沼幸一郎

    柿沼説明員 北海道の場合には、現実に申告が公正取引委員会北海道事務所にあったわけでございますが、現在、御指摘の事実がどの程度のものか、私どもまだ確認しておりませんけれども、御指摘のような事実が内地にもあるとすれば注意してまいりたいというふうに考えております。
  15. 武部文

    武部委員 昨年、秋田で同様な問題が起きて訴訟ざたになって、これが双方和解のもとに、小売り業者言い分が認められて登録がえが行なわれた。したがって、裁判ざたにはなりませんでしたが、そういう事実を公取は知っておりますか。
  16. 柿沼幸一郎

    柿沼説明員 私は聞いておりません。
  17. 武部文

    武部委員 それでは食糧庁にお伺いをいたしますが、ただいまのような登録がえをめぐって各地で紛争が起きておりますが、この事情をよく承知しておりますか。
  18. 田中勉

    田中説明員 私ども、そういう事例につきましては、配給責任監督を地方の知事に委任をいたしておりますので、地方庁から報告のあった限りにおきましては把握いたしておるわけでございます。
  19. 武部文

    武部委員 この登録がえが問題になり、今度食管法の実際の具体的な改正として、小売り業者消費者が自由に選ぶことができる、こういうようなことが云々されておりますが、小売り業者登録業者を自由に選択できる、変更できるというふうになっておりますか。その根拠は何ですか。
  20. 田中勉

    田中説明員 小売り業者登録業者、と申しますと卸業者を自由に変更できるかどうかということでございますが、いまの規定では、小売りが卸を変更いたしたい場合には、卸に申し出た場合に、正当な事由なくしてはこれを拒否してはならない、こういう規定になっておるのでございます。
  21. 武部文

    武部委員 正当な事由ということは具体的にはどういうことでしょう。
  22. 田中勉

    田中説明員 正当な事由というのは非常に抽象的になっておりますので、三十一年に食糧庁が、一応正当な事由によって拒否し得るというような場合に該当するということの中に、むしろ拒否し得る場合を掲げておるわけでございますが、小売り販売業者卸業者に対して買い掛け金があるような場合、それから、その卸売り業者やみ米を扱ってくれとか、あるいは配給計画と相違した配給を行なうなど、食糧管理法違反になるようなことを小売り販売業者がその卸に対して言って、その要望が通らないということで変更承諾を求めた場合と、それから当該卸業者に対して、サービスに関して通常の範囲を越えるようなことを要求するというような場合につきましては、これは正当な事由によって拒否し得る、こういうことで、むしろそちらの積極的な規定を設けて指導しております。
  23. 武部文

    武部委員 いまお聞きしますと、その限りにおいてはむしろ小売り業者の側の問題があるようです。  そこで、食管法施行規則第十八条第四項、これでいわゆる卸の登録業者変更ということはできるというふうに食糧庁は考えておるわけですか。
  24. 田中勉

    田中説明員 食管法施行規則第十八条の第四項の三というところは「その登録した卸売販売業者及びこれに代えて登録しようとする卸売販売業者承諾したとき」ということが載っておるわけでございます。それから第六項には「卸売販売業者は、第四項第三号の承諾を求められたときは、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」こういうことに規定いたしております。
  25. 武部文

    武部委員 施行規則第十八条第四項のあなたがおっしゃった第三には、双方卸売り業者がこれを承諾したときということが載っておりますね。それを受けて第六項で「正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」このようになっておるわけです。現実問題として私は先ほど北海道の例を申し上げ、人吉の例を申し上げたわけでありますが、この内容を調べてみると、明らかに正当な理由がないにかかわらず拒否をしておる。先ほど秋田の例を私は申し上げましたが、食糧庁は、秋田ですでに昨年からそういう問題が起きて裁判ざたになろうとしたけれども和解によって、卸売り業者が折れ小売り業者の主張が通った、そういうことを知っておりますか。
  26. 田中勉

    田中説明員 承知をいたしております。当時の、小売り業者変更を申し入れたいろいろな理由の中には、取引条件とかあるいは事業拡大新設大型精米工場の設置の範囲というようなことで、相当深刻な業者間においての紛争があったわけでございますが、最後には、御指摘がございましたように地裁調停により、本年四月一日、全業者結びつき登録変更が行なわれまして、十三人の小売り業者秋田県経済連にかわったという事実がございます。
  27. 武部文

    武部委員 一応秋田はこのような形で円満に解決をしておるわけですが、北海道においては、当初は裁判ざたにしようとした、こういう経過がありますが、一応公取にこの内容調査を依頼をした。熊本県の人吉においては、去る八月二十八日に地裁人吉支部に訴状を提出したという事実があります。  私がきょうこれを申し上げるのは、十八条の四項という項目が不当に卸売り業者というものを保護しておる。そうしてそのことによって、卸売り業者が適当な精米を行なって、質の悪い米を小売り業者に押しつける、押しつけられた小売り業者がそれが売れないから、もっといい卸売り業者登録がえを求める、これに対して十八条第四項をたてにとってその変更承諾しない、同時に北海道においては談合の気配がある、こうなってくると、小売り業者というものは一切の登録がえを実際は拒否される。こういう結果になれば、必然的にばかを見るのは悪い米、精米度の悪い、色の黒い、そうした米を食わされる消費者の側に影響がくる、こういうふうにわれわれはこの二、三の事件を見て考えるわけですが、食糧庁はこれを一体どういうふうに見ておりますか。
  28. 田中勉

    田中説明員 十八条第四項は、やはり正当な事由なくしては拒んではならない、むしろ承諾を与えなければならないというのが一応のたてまえでございまして、正当な事由がなければ拒んではいけない、こういうことになっておるわけです。問題は、業者間のいろいろな利害関係等があって、食糧配給上の規定に照らしましてそれが正当な申し出であるかどうかという認定をめぐりまして、いろいろ配給責任を持っております都道府県知事等が中に入りまして、あるいは販売業者間における配給協議会というような、そういう広い場におけるいろいろな意見を徴して、県自体としてそこのところを勧告し、また指導をいたしておるわけでございますが、何ぶんにもそれらの事例が、私ども聞いております範囲におきましては、小売り業者言い分の中にも、また卸売り業者言い分の中にも、いろいろそれらの食管法上の配給規定上の正当な話だけでなくして、役員の問題とかいろいろな感情上の問題もあるようでございます。それらがそういう問題のいわば解決を鈍らしておるというような面もあるわけでございます。そういうようなことからいたしまして、そういう問題のためにいたずらに正当な要請あるいは正当な承認、そういうものがおくれることは、やはりこれは望ましくないわけでございます。特にこの際、都道府県知事という配給責任を担当しておりますところに対しましては、過去におきましても私ども長文のいろいろな指導通達を出しておるわけでございますが、なお、最近の事例等をさらにさらによく調査をいたしまして、そういう配給責任を持っておる都道府県行政当局を積極的にひとつ指導してまいりたいというぐあいに考えております。
  29. 武部文

    武部委員 この問題が起きたときに、食糧庁馬場業務部長――いらっしゃいますか。
  30. 田中勉

    田中説明員 きょうは来ておりません。
  31. 武部文

    武部委員 馬場業務部長は、非常に残念だというような談話を出して、同時にその中で、実はことしの秋をめどに具体的な改善策を練っていたところだ、それがこういう事件が起きて非常に残念だというような意味談話を発表しておるわけであります。いまの次長言明を聞きますと、確かに施行規則の中には知事の権限ということがうたわれております。しかし究極にはこれは食糧庁であるはずであります。政府であるはずであります。知事責任云々といっても、北海道ではこの問題が北海道庁に持ち込まれて、どうにもならぬので実はそのままになってしまった。双方よく話し合ってもらいたい、それだけで、実は知事段階でも各県ともこれはお手あげの状態です。したがって、抜本的にこの問題の解決をはからなければならぬ。これは私は食糧庁責任だと思う。そういう意味で、いま数府県でこの問題が起きておるわけであります。食糧庁としては正当な事由、これを一つたてにとっておられるわけでありますが、小売り業者が不当なリベートを要求するとか、そういうことがあったときには、それは当然だろうと思います。しかし現実にこうした問題を考えると、そのてんまつは明らかに卸売り登録業者が何らの正当な理由なくして拒否をしておる、この事例が次々と出てきておる。これはわれわれが調査したところにおいても明らかです。正当な理由は全然存在しない。少なくとも対等な立場で小売りなり卸というものは自由に商取引ができるというものでなければならない。そういう意味からいって、食管法施行規則十八条四項、こうしたものは即刻廃止すべきだというふうに考えるわけですが、食糧庁見解をひとつ求めておきたい。
  32. 田中勉

    田中説明員 私ども現在、卸、小売り間の流通秩序結びつきの問題につきましては、現在の十八条の四項の規定によって、これが適正に運用されることによって――現実問題としてそういういろいろな紛争が長引くとか、また卸、小売り間においてのいろいろなトラブルが惹起することを想定してこの規定を設けておるわけではございません。むしろこの規定によって、正当な問題であれば、それが両者の話し合いあるいは都道府県知事の介入によって、十分円滑に行なわれることを考えておるわけでございます。なお、こういう事例が頻発するような状況下におきましては、さらにこれらの運用につきまして、中央地方庁を通じまして積極的な態勢を示していくということが必要ではなかろうか、こういうぐあいに考えております。
  33. 武部文

    武部委員 それならば、先ほど馬場業務部長言明を私は申し上げましたが、この秋をめどに具体的な改善策検討中であるということは一体どういうことですか。
  34. 田中勉

    田中説明員 この秋に具体策検討中であると申しまするのは、要するに配給制度全体についての改善を――私ども従来も配給制度改善ということにつきましては努力をいたしてまいったつもりではございますが、さらに過去におきましての米価審議会等におきましても、いろいろ建議なりまたそういう注文がついておるわけでございます。したがいまして、配給制度改善ということは、消費者米価改定がこの十月一日を予定をいたしておりますので、これを契機にいろいろ配給制度上の問題を幅広くひとつ取り上げていこうということが、その当時私ども考えておったことでございます。なおこの中には検討中のものもございますし、また即刻この機会改定をして出発すべきであるというようなこともあり、いろいろ段階的な問題はございますが、総括的にそういう考え方でおるということで、その当時この秋までというようなお話がされたのじゃないか、こういうぐあいに思っております。
  35. 武部文

    武部委員 去る八月二十八日に農林省は、米価問題をめぐって小売り業者農協あるいは消費者、そういうものとの懇談会を持ったはずであります。その懇談会では期せずして、現在の配給機構自由化、特に卸の登録制自由化ということを主張しておったというふうに私ども承知しておるわけですが、そういう懇談会の席上でも農協消費者やあるいは小売り業者が一致してこの登録がえの自由化ということを主張しておる。あるいは物価安定推進会議もすでに勧告をしておるわけであります。物価安定推進会議勧告は、米の配給機構について競争原理の導入をはかるべきだ、こういうことをいっておるわけです。それと、いまあなた方がたてにしておる食管法施行規則第十八条第四項なり第六項、このものとは全く私は逆行するものだと思うのです。したがって、早急に卸売り業者登録がえ、これを自由にする必要があると思うわけですが、再度見解を求めたい。
  36. 田中勉

    田中説明員 先ほどお答えしたとおりでございまして、この規定をむしろ積極的に運用していくことが必要ではなかろうかと実は考えておるわけでございます。ただ、だいぶ前のことから申し上げて非常に恐縮でございますが、かつてやはり登録がえ――これは昭和三十年以前でございますが、卸について新設を認める、あるいは小売りについても、やりたい米屋資格要件があればそれを認める、また卸、小売り結びつきがあってもこれも自由であるというときで、登録がえをそういう方針運用したことが一、二年あるわけでございますが、その当時非常な登録合戦卸段階におかれても起きましたし、また卸と小売り間におきましても、われわれが社会通念上考える競争原理をこえたような、非常に目に余る卸、小売り間のそういういろいろな取引が行なわれたわけでございます。そういうことからいたしまして、二十九年ですか、登録につきましては一つのフリーな形のそういう合戦というものはこの際一応終止符を打ちまして、実際の面におきましてこの登録がえなりそういうことが円滑に行なわれるようにという配慮をしてまいったわけでございますが、逆に今度はまた、固定してまいりますと確かに卸、小売りの間に非常に問題が起こるわけでございます。むしろ三十何年の、現在の食管法十八条の正当な事由なくしてはということは、またそういう反動が出てきた事態に対して、やはり正当な事由がなければ拒んではいけない、むしろ承認を与えるのが本筋である、こういうような考え方運用してきているわけでございますが、先ほど来いろいろ全国にもかなり案件が出ておるわけでございますので、今後におきましてはこの十八条の精神を旨としながら、積極的にやはりその辺の指導を強化してまいりたいというぐあいに考えておるわけであります。
  37. 武部文

    武部委員 この十八条四項なり六項なりを適切に運用しておればうまくいっておるはずだ。たとえば登録がえ等はあり得るはずです。ところが現実登録がえというものはほとんど行なわれていない。十八条四項というものは全く問題にならぬ規定だというふうにわれわれは理解するわけです。そこで、あなたのほうはあと運用問題だとおっしゃるが、運用問題でうまくいかないから裁判ざたになる。裁判ざたになれば、これは必ず卸売り業者負けなんですよ。だれが見たって明らかだ。正当な理由一つもない。人吉の例を見ても明らかなように、これは上部団体が圧力をかけておるわけです。卸売り業者の自主的な判断に対して、さらに県段階業者連合会から代表が乗り込んできて決定をくつがえさせる、こういう事例です。これを見ると明らかに、あなた方がおっしゃるような適切な運用などということは当然考えられない。したがって、裁判ざたになれば、さっきから言うように、これは完全に負けなんです。これは明らかです。したがってこの機会に、あなた方は、消費者小売りを自由に選択できるというならば、小売りも自由に卸売りを選択できるという、そういう一貫した方針をとらなければ、いつまでたっても既存卸売り業者の権益というものをあなた方自身が擁護しておる。その結果は消費者がまずい米を食わされる、ばかを見るのは消費者だ、こういう結果になるわけです。きょうはあなた方の見解を一応承りたいので、これ以上追及いたしませんが、あとは裁判の進行状況を見ればもう明らかに推定できるわけですから、抜本的な改革を食糧庁農林省としては考えるべきではないか。  次に、小売りの問題についてでありますが、現在の、既存小売り業者範囲を出ない、こういう方針に変わりありませんか。小売り既存業者にのみ限る、こういう点についてです。
  38. 田中勉

    田中説明員 今度の配給改善を目途といたしております中におきまして、段階的にいろいろ将来の問題も考えておきたいと思うわけでございます。先ほど先生御指摘ございました卸、小売り間の結びつきの問題におきましても、やはりこういう規定のもとにおいての運用の十分でないというようなことになります場合におきましては、やはり制度的な変更も将来としては考えていかなければならない。すべてやはり段階的にものごとを考えていかなければならないと思うわけでございます。  いまの小売り新規の問題の御質問でございますが、この場合におきましては、人口急増地帯におきまして、都道府県知事が特にその地域指定した場合においては新規参入ができる、こういうような仕組みを考えておるわけでございます。  もう一つ、それに関連してちょっと申し上げますが、今度の配給改善の中におきまして、やはり何といたしましても集中精米を拠点にした流通合理化をはかることが、消費者に対しての食管制度上の配給一つサービスであるというふうな観点からいたしまして、卸売り業者、あるいは小売りでも集中精米を共同経営する者ができた場合には、その小売りも特別な卸になれるというような道を開いているわけでございます。卸のほうで集中精米を経営している場合に、それがまた小袋詰め配給に結びついておる場合におきましては、特別卸という名称を与えながら、その特別卸がその限りにおいて小売りに進出ができるというような、相互乗り入れ的なものを考えておるわけでございます。小売り同士新規の問題につきましては、一応人口急増地帯で、都道府県知事がその地域指定を行なった場合におきましては、そこに新規のものの小売りが進出できるというたてまえをとっておるわけでございます。
  39. 武部文

    武部委員 米の卸売り業者は現在三百九十五社、小売りが五万六千八百店、これは消費人口関係なく十年間全然変更されていないということが報道されていますが、間違いございませんか。
  40. 田中勉

    田中説明員 卸売りの数は、最近統合を推進しておりますので、ここ二、三年若干減っておりまするけれども小売り業者のほうにおきましては、大体の小売り店舗の数というものは、先生おっしゃったようにあまり大きな変化がございません。ただ、小売りの中にも合併をする小売りができるような場合に若干の変動があるわけでございまして、ふえないで、むしろ若干減るというよらな状態であります。
  41. 武部文

    武部委員 当委員会でいつか問題にしたわけですが、たとえば神戸の灘生協の話が出たわけですが、灘生協あたりで米の小売りをやらしてもらいたい、こういう要望があっても、現実問題としてこれは実現していない。こうしたことについて、生協等小売り業者として指定をする意向があるかどうか、それをちょっと伺いたい。
  42. 田中勉

    田中説明員 いまの配給改善の第一歩を踏み出す段階においては、生協とか、そういうものまでも含めた形の小売り店新規参入ということは考えておりません。
  43. 武部文

    武部委員 それでは食糧庁のほうは長官が来てからとして、あとに譲ります。  畜産局長に伺います。  畜産物の価格安定等に関する法律第四十一条「指定食肉にあっては中央卸売市場において、売り渡すものとする。ただし、これらの方法によることが著しく不適当であると認められる場合においては、政令で定めるところにより、農林大臣の承認を受けて、随意契約その他の方法で売り渡すことができる。」この「著しく不適当である」というのはどういうことですか。
  44. 立川基

    ○立川説明員 ただいま御指摘にもございましたように、四十一条の、指定食肉につきまして、いまのように市場で売ることが原則であるということは、御案内のように市場というものが価格形式につきまして一般の基準になるということ、あるいはまたそういう市場取引によりますことが、公正でしかも効率的であるということをねらいまして、この本条が書いてあるということにわれわれは理解しておるわけであります。したがいまして、そういうような事態が著しく不適当であるというのはどういうふうな場合であるかと申しますと、たとえて申しますと、市場における販売が非常に数量が多くて、とても販売能力を越えておるというような場合でありますとか、あるいは市場だけで売ったのでは、国全体としての価格の低下といいますか、安定ということにつきましてまだ非常に問題がある、それでは不十分であるというふうな場合、あるいはさらに、売りますものの種類によりまして、特定の用途に向けることが必要だ、一般向けよりも特定の用途に向けることが適当である、そういうような場合には、本来の、市場で一般に売りますよりも、そうでない、ただし書きの規定を適用したほうが適当であるというふうに考えておるわけでございます。
  45. 武部文

    武部委員 畜産振興事業団のいまの経営について、このところ四十億とか五十億とか赤字を出して、大蔵省に泣きついたとか泣きつかぬとか、いろいろなことがいわれていますね。農林省はこの畜産振興事業団の経営についてどういうふうに理解しておりますか。
  46. 立川基

    ○立川説明員 畜産振興事業団は各種の勘定に分かれておりまして、ただいま御指摘がありました、たとえば豚肉その他の買い入れ、売り渡しをいたします勘定につきましては一般勘定になるわけでございますけれども、それにつきましては安定価格の下位価格で買いささえまして、それを売り出します場合には上位の安定価格で売り出すということに、たてまえ上、制度としてそういうふうになっておるわけでございまして、幾らでもとにかく安く買い入れて、幾らでも高く売るという性格のものでございませんので、現行の制度でいいますならば、与えられました三百二十円の価格で買い入れまして、それに金利なり倉敷なりをかけまして、これが一定の価格、三百九十円以上になりました場合に、初めて放出することができるというたてまえになっておるわけでございますので、通常の場合におきます会社なりその他の経営の場合と違いまして、当然、その制約の中でいかに採算ベースをよくしていくかというのがわれわれの努力の目標だというふうに考えております。
  47. 武部文

    武部委員 現在、豚の白の上はキロ幾らですか。
  48. 立川基

    ○立川説明員 これは日々によって非常に違っておりますけれども、昨日の東京の市場では、白の上にいたしまして卸値で五百一円でございます。
  49. 武部文

    武部委員 いま振興事業団には在庫はありますか、ありませんか。
  50. 立川基

    ○立川説明員 現在は全然ございません。
  51. 武部文

    武部委員 四千トンの輸入をするカナダ、オーストラリア、韓国、これはどうなっておりますか。
  52. 立川基

    ○立川説明員 先ほどからのお話のように、われわれといたしましては昨年までは非常に買い続けてまいったわけでございますけれども、昨年の夏場におきまして非常に価格が高騰したわけでございます。その場合におきまして、手持ちの豚肉を大いに放出しまして、幸いにして秋におきましては大体安定価格の範囲内におさめることができたわけでございます。ところが本年に至りまして、五、六月ごろから再び騰貴いたしまして、手持ちに持っておりますところの在庫を全部七月までに吐き出したわけでございます。しかしながら、それでは現在の騰勢を十分に抑圧することができませんので、一応緊急輸入といたしまして四千トンの輸入をするという公表をしたわけでございます。その四千トンのうちに現在まで成約いたしておりますのが、八月二十九日現在までで二千三十トンということになっておりまして、これは大体九月中には入関するはずになっております。
  53. 武部文

    武部委員 振興事業団が今日まで、ある程度価格の問題について役割りを果たしたことは認めますが、しかし現実いまの状態を見ますと、おっしゃるように昨日は五百一円。上限は三百九十円ですね。すでに百十一円も差がある。一向に下がらない、こういう状態です。一体これはどこに原因があるか。事業団の計画そのものに大きな問題がありはしないか。たとえば、三百二十円と三百九十円という上下限のこの限度にも問題がありはしないか。あるいはまた、三百二十円、三百九十円という上限、下限のワクを割ったときに放出をする、その放出の量。これは、われわれの承知するところでは、百トンないし二百トン程度のものが出ておる日が非常に多いように思う。こういうわずか百トンか二百トンのものを放出したところで全く焼け石に水という形になってしまう。したがって、大量の放出というものをやって値段の安定をはかるということに欠けておったのではないか。また、事業団の計画が長期計画ではないのじゃないか。こういう点についていろいろ見解を持つわけですが、農林省としてはいまの事業団の運営、さらには四十億ですかの赤字の出たこと、あるいは倉庫にしまっておる保管が非常に悪い、あるいは二千トンが、何ですか黄色く変わったとか、いろいろな問題が当委員会でも取り上げられまして、抜本的にこの事業団の内容について検討を加えるべきじゃないかという意見がありますが、これについてはどうでしょうか。
  54. 立川基

    ○立川説明員 最初の、現在の五百一円の価格の問題でございますけれども、現在の五百一円のきのうきょうの価格というのは、私たちはそう長く続いていくとは考えておりません。といいますのは、第一点は、最近御案内のように台風その他の災害の関係がございまして、入荷がかなり減じておるという事実がございまして、それを契機にいたしまして五百円台に上がった。これは数日のことでございます。数日前にはやはり四百円台であったわけでございます。そういう事実が第一点。それから第二点は、生産の状況でございますけれども、夏からだんだん回復してまいりまして、八月におきましては大体前年同期並みになっております。現在われわれが地方から得ております情報によりますと、来月になりますと前年対比の五%増、その次には七ないし八%、生産の増ということが、一応われわれの現場から出ている情報でございます。現在の状況は国内的に見ましてもそういう状況でございます。先ほど申し上げました緊急輸入につきましても、約半数につきましては九月には国内に到着する状況でございます。したがって現在の五百円ベースというのが恒常的に続くというふうには考えていないわけでございます。私たちの考えでいきますと、そう遠くない日に四百円台の半ば程度のところまでは下がるのではないかという見通しを持っているわけでございます。それが第一点でございます。  それから第二点でございますけれども、先ほどから申し上げますように、現在の豚価の安定につきましては、なるほど上位価格、下位価格について、あるいは高い、あるいは低いという問題もあるかとも思いますけれども、制度の仕組みといたしまして、何と申しますか、一定の下位価格のときに買いささえて、それで放出するときに、いつ出してもよろしいという制度にはなっておりませんので、それがある程度の価格にならないと放出できない。しかもその間、保管いたしますのに、生肉で保管するわけではございませんので、冷凍肉その他のような形でないと保管できません。そのこと自体は、制度の仕組みとして本来的に持っておる性格ではないかと私は思っておるわけでございます。しかし、いま御指摘のように、それじゃ全然改善する余地がないのかと言われますと、われわれとしてもあるいは価格の基準の問、題なりあるいは保管の状況の問題なり、あるいは放出のしかたの問題について十分検討する余地があると思いますので、そこらの辺については今後十分検討いたしたいというふうに考えております。
  55. 武部文

    武部委員 放出のしかたですね、問題は。いま相場の基準が芝浦相場だと言われておるんですがね。芝浦相場だということを言うんですよ、みんなが。問題は、放出の量と、芝浦において相場がきまってしまう、ここにも問題があるように思うのですが、放出のしかたについて何か考えておりませんか。
  56. 立川基

    ○立川説明員 放出のしかたについてもなかなかむずかしい問題がございまして、そのときにおける価格の騰貴の状況がどういう状況であるかということと、自分が持っておるたまがある程度限度があるものでございますから、その両方をにらみ合わせていろいろなことをやっておるわけでございます。いま御指摘にもありましたように、われわれが昨年来やりました放出にいたしましても、決して一日にちびちび出しておったということではございません。たとえていえば、昨年、四十二年の八月では約一万トン、それから九月では六千トン、それから十月では四千トン、それから十一月では三千トンというふうに、かなりの大量のものをそのときに集中的に出したわけでございます。私の考えでは、そのときには手持ちの材料がかなりございましたので、それだけある程度思い切って放出するということによりまして、初めて昨年の末における年末の物価対策としての、要するに安定価格の基準の中に落とし得ることができたのではないかというふうに考えておるわけでございます。本年におきましても、やはり六、七月におきましてはかなりまとまった数量を放出しておったわけでございますけれども、不幸にして手持ちが切れたものでございますので、その後は放出ができなくて、緊急輸入にたよっておるというのが実情でございます。
  57. 武部文

    武部委員 その問題は、いろいろ放出の内容については、また機会を見てやりたいと思いますが、問題は、現在手持ちが一つもない。そうして五百円、まあ五百円がかりに若干割っても四百円台、おそらく百円近く上限と違うと思うのです。輸入はいまのところわずかに二千三十トン、これでは全くどうにもならぬという気が、しろうと目にもするわけです。今後、一体事業団としてはどうしようとするのか、農林省としてはどうしようとするのか、その計画について承りたい。
  58. 立川基

    ○立川説明員 そこがわれわれの一番悩みとするところでございまして、御案内のように海外の価格はかなり高いものでございますので、恒常的に海外からの輸入に仰ぐということは考えるべきではないと思うわけでございます。したがいまして、これは結局国内における生産体制を強化するということによらざるを得ないのだろうと思います。ところが、御案内のように、豚肉の生産につきましては、いわゆるビッグサイクルがございまして、過大な生産をすると、すでに昨年までわれわれ経験したような長い買い入れ時代を経るわけでございますので、われわれといたしましてはなるべく計画的に、需要にマッチしたような形の指導を進めてまいりたいということで、できるだけ努力をしてまいるつもりでございますけれども、いかんせんわれわれまだ末端のところまで、的確にほんとうに計画生産というところまで実際に把握ができていないのが実情でございますけれども、御指摘のように、こういう状況を繰り返すということは必ずしも適当でございませんので、できる限り計画的に、需要にマッチしたような生産につとめてまいりたいというふうに考えております。
  59. 武部文

    武部委員 恒常的な輸入ということは、これは確かに問題があろうと思います。そこで当委員会では、かねがね問題になっておる中国からの輸入問題について、口蹄疫がどうだとかといういろんな問題があって今日を迎えておるわけであります。参議院の物価特別委員会で、事業団の田中理事長が中国を厳重に視察をして帰られ、その報告をされ、見解を述べられた、こういうことを私ども議事録で承知をしておるわけです。その限りにおいては、参議院の物価委員会においての田中理事長の見解は、だいじょうぶだという説明でありました。それで、これはちょっと政治的な問題がからむのですが、坂田農林大臣のときには、中国からの輸入問題についてはある程度の前向きな方向が出ておったわけです。ところが大臣が松野大臣にかわったとたんに、この問題については待ったがかかった、こういう流れがあるわけです。いまおっしゃるように、カナダやオーストラリアのほうから船賃をかけて、長い船旅で運んだって採算がとれぬ、高くつく、当然のことであります。中国からの輸入問題について、いま農林省は一体どういう考え方ですか。
  60. 立川基

    ○立川説明員 ただいまの御指摘の点は、豚肉の話と違いまして牛肉の話だと思うわけでございますが、牛肉につきまして私たちがお伺いしておるところでは、坂田大臣のときに――これはこの前、他の委員会でも私の前局長が御答弁申し上げたと思いますけれども――当時の牛肉の需給の関係からして、範囲をなるべく拡大したいという御趣旨の御意向はあったやにお伺いしておるわけでございますけれども、それでは正式に、中国からいかなる事情があっても輸入するのだ、輸入することをきめたのだというふうには必ずしも聞いていないわけでございます。中国の事情をよく調べました上で、輸入ができるものならしたらいいのじゃないかというようなお話があったというふうに私たちは聞いておるわけでございます。
  61. 武部文

    武部委員 田中理事長はみずから調査団の団長として中国を訪問をして、専門家の立場で――この人は専門家ですから、専門家の立場で、彼は彼なりにそれを見て、そうして帰ってきておる。それを参議院の物価委員会説明をして、だいじょうぶだと言っておる。それを受けて農林大臣も、それじゃそういう方向でいこうじゃないか、こういうことを言ったとたんに、農林大臣がかわったらその計画は御破算になってしまった。われわれが承知するところでは、総理大臣が待ったをかけたとか、幹事長が待ったをかけたとかいうことさえ聞いておるのであります。少なくともいまのような――もちろん牛肉も高くて手は出せぬ、したがってこれが豚へくる、豚がなくなってしまった、これではどうにもならぬ、こういう状況でしょう。したがって、農林省としては、前々から問題になっておる中国産の肉について、すでに具体的なレポートも出ているはずなんですから、あなたのほうでまた中国へ行ってみるといったって、今度はもう入れませんよ。とてもじゃないがあなた方の視察を受け入れるかどうかわかりません。これから調査するなんということは必要はない。もうすでに専門家が見て帰ってきておるのですから……。一体農林省としてはこれに前向きにほんとうに取り組んでおるのかどうか、非常に疑わしいのですが、どうでしょうか。
  62. 立川基

    ○立川説明員 幸い牛肉につきましては、国内におきましてもいろいろ努力をいたしまして、いままで減退一方でありました肉用牛が、昨年あたりから反転してやや増加の傾向にまいっておるのは事実であります。しかしそれにしましてもなお当分の間、牛肉につきまして、やはり国内生産だけでは不足であろうということは御指摘のとおりだと思います。ただ問題は、先ほどからもお話がございますように、中国からの輸入につきましては、もっぱら防疫上の問題が依然として残っておるわけでございます。田中さんが調査団でおいでになりまして、従来よりも向こうの防疫体制が非常に整備されておるという御報告があったこともお伺いしておるわけでございます。その後におきまして、そういう報告をもとにいたしまして、各学会の方々にお集まり願いまして、しからばわれわれとして中国を、要するに口蹄疫の汚染国でないという形で理解して、自由にいまの牛肉を輸入してよろしいかどうかという御議論をした場合に、単なる視察なり制度の検討なりというほかに、それをきめるべきいろいろな技術的な調査の資料なり何なりが必要だ、そういうことで、その資料をいただいて、その資料のもとに立っていかにこれに対処するかということをきめたいというのが、この前の国会のとき以来われわれが申し述べておるところでございまして、現在のところまだ同様に、いま現在の段階で、田中さんの御報告で、それではすべてけっこうだ、いまこれを解除して差しつかえないという状況判断には立っていないわけであります。
  63. 武部文

    武部委員 豚肉問題、牛肉問題はまたあらためてやることにいたします。  企画庁長官が間もなくお見えになるようですから、消費者米価の問題について、あと同僚議員からもいろいろ質問もありますから、私は最初に国民生活局長に具体的な数字をひとつお伺いをいたしたい。  本年四月、五月、六月の消費者物価の動きはどのような動きを示しておりますか。
  64. 八塚陽介

    ○八塚説明員 四十三年度の第一・四半期、いまお話しになりました四月、五月、六月の消費者物価の動向でございますが、前年同月対比で申し上げますと、四月は五・一、五月は五・九、六月は五・六というふうに上昇いたしております。したがいまして、第一・四半期の平均は前年同月対比五・六%上昇ということでございます。なお、七月が最近発表されておりますが、五・七%という数字で、いずれも全国消費者物価指数で申し上げたわけでございます。
  65. 武部文

    武部委員 お聞きいたしますと、第一・四半期は平均五・六%。それでは昨年の第一・四半期は何%でしたか。
  66. 八塚陽介

    ○八塚説明員 四十二年の四、五、六でございますが、四月三・一、五月三・一、六月二・四でございますから、平均しますと――二・九でございます。
  67. 武部文

    武部委員 昨年の第一・四半期の物価の上昇は二・九なんです。いまあなたがおっしゃった本年の第一・四半期の消費者物価指数は五・六、約倍であります。こういう状況になっておるのであります。  かねがね当委員会でもいろいろこの指数の問題については論議をいたしておるところでありまして、総理府統計局のいうところの消費者物価指数、これには大きく疑問があります。現実にその数字が国民生活の実態をあらわしておるものとは思わない、こういう論議をするわけですが、一応総理府統計局の基準というものがあるわけですから――三百六十四の品目についてもいろいろ問題があるわけですけれども、一応それを基準として説明を伺っておるわけであります。  そこで、これは長官にもお伺いしなければいかぬわけですが、前段、上期でこれだけの消費者物価の値上がりがある。平年度の物価の値上がりをずっと統計的に見ると、本年はげたが三・二%ということになっておるわけですが、げたが出てきたということの根拠は、下期の値上がりが高いからげたが出ておるのだという説明があなた方のほうから始終ある。そうすると、本年度は昨年に比べて全く倍以上上がっておるということになれば、これからの推定によれば、いままでの歴年のパーセンテージの動きから見ると、とてもじゃないが五%や六%という数字にはならぬというふうに思えるわけですが、一体企画庁はどういうふうにお考えになっておりますか。
  68. 八塚陽介

    ○八塚説明員 いまお話しになりましたように、昨年の下半期以降特に騰勢を強めておるわけでございます。その勢いがげたになり、あるいはなかなかその勢いがおさまりませんで、いま申し上げました第一・四半期の相当高い水準ということになっておるわけでございます。ただ、逆に申しますと、ただいまも御指摘がありましたように、昨年の第一・四半期は、決して自慢にはなる水準じゃございませんけれども、最近においては比較的低い水準にあったわけでございます。そういう意味におきまして、私ども現在の段階で本年度を見通します場合に、昨年の低かった第一・四半期に対比して本年の第一・四半期が高いということをもって、すぐ四十三年度はこのままの勢いでいくのだというふうに判断するにはまだ早いのではないか。しかしながら、たとえば、きょうもお話しになると思います消費者米価の上昇の問題、いろいろございますから、なかなかむずかしい問題が今後あると思いますが、ただいまの段階では、必ず相当程度、第一・四半期のままの勢いでいくというふうに判断するのは若干早いのではないか。なお四・八という目標を掲げて、いろいろな点でできるだけ努力をしていくということは必要であろうというふうに考えておるのでございます。
  69. 武部文

    武部委員 いまの答弁は私は非常に甘いと思うのです。これは長官とひとつ論議をいたしましょう。  そこで、いろいろ巷間公共料金等の値上がりがうわさをされております。たとえば国鉄、私鉄大手十四社あるいは個人タクシー、あるいは大学授業料、こうしたものの値上がりがいろいろうわさされておりますが、本年これからどういうものが出てくるというふうに経済企画庁としては思っておりますか。
  70. 八塚陽介

    ○八塚説明員 ちょっと私、質問意味を取り違えておるかと思いますが、いま御指摘になりました国鉄、電話あるいは大学授業料等の問題は、現在の段階ではいずれも来年度予算に関連して、話として出ておるのだというふうに考えるわけでございます。したがいまして、そういう問題につきましては私ども、各省がそれぞれ予算の概算要求としてそういう構想をお持ちだということは、ある場合には事務的に伺っておりますし、ある場合には新聞等で承知をいたしておるという段階でございまして、今後そういうものを経済企画庁としてどういうふうに判断してまいるかという点につきましては、これはそれぞれのケースに対応いたしまして判断をしていくということになるわけでございます。いずれにいたしましても、予算に関連をいたしての問題でございますから、今後漸次各省からも御意見、事情を承りまして判断をしてまいりたいというふうに考えるわけでございます。したがいまして、今年度ということになりますと、最も具体的なのは消費者米価でございます。あとは、制度的に値上がりということを考えられるものは現在ないのではないかというふうに思います。
  71. 武部文

    武部委員 それでは、参考までにお伺いしておきますが、昨年の十月、一四・四%消費者米価が値上げになりました。その際に、これが消費者物価に与える影響は一体幾らかという質問をいたしました。そのときの答弁は、一四・四で直接的には初年度において〇・五ぐらいだ。最初は〇・三七ぐらいの数字を言っておったようでありますが、外食その他のこともあって〇・五。すると、平年度になると一・〇ということになりますね。問題はそのあと――一四・四上げて直接的には〇・五%の消費者物価についての波及だと言ったけれども、その月の一般物価の指数は一・二一上がっておる。そしてそのあと、二カ月後には三%はね上がっておる。こういう具体的な事実があります。ということは、消費者米価が上がればこのように、その直後の二カ月ぐらいあとから具体的に消費者物価の指数に影響が出てくるのだという証拠だと思うのです。これは明らかに便乗値上げがそれに関連するから、そういうふうな数字が物価指数の中にあらわれる、こういうふうに私どもは理解いたしますが、そのように企画庁も見ておりますか。
  72. 八塚陽介

    ○八塚説明員 米価が上がりますと消費者物価にどういう影響があるか。もちろん、先ほどお話しになりましたように、端的にそのものが上がる、あるいは非配給の米が、同じ程度であるかどうかは別にいたしまして、それに影響を受けて上がる。あるいはまた、昨年のように米というものを材料にいたします外食等が影響を受けて上がるという問題は、やはり今年も当然考えておかなければならないと存じます。ただ、たとえばいまの外食等の問題にいたしましても、コストだけから申しますとそれだけの値上がりになるかどうか。むしろそれを契機にして、ある程度のラウンドナンバーで上がっていくというようなところもございます。あるいはまた、ある品物について、米価が上がったから毎年同じぺースで上がっていくということではなくて、何年か待っておって、米価が上がることを契機にして上がるというようなものもあるわけでございます。それからまた、もちろん昨年の消費者米価の一四・四%値上がりを契機と申しますか、その時期を中心にして消費者物価指数が上がっておりますが、中には、たとえば野菜のように、九月ごろから相当騰勢を示して、そのまま下がらなかったというふうに、必ずしもいわゆる消費者米価との関連ないままに、昨年の秋の消費者物価の上昇に相当寄与したものもございますので、どこからどこまで消費者米価と他の一般の物価との関係があるか、一がいに分析しにくいわけでございます。しかし、いずれにいたしましても家計支出の中では相当なものでございますし、何といいましても、いわば何十年の歴史と申しますか、そういう面からいたしましても、米価というものの与える影響は大きいわけでございますから、そういうものの値上がりについては、それの波及というものは計算としてはある程度見なければいかぬ、あるいはできるだけ便乗がないようにお願いしなければいけないというふうに考えるのでございます。
  73. 武部文

    武部委員 参考までにただいま手元に「消費者米価に関する資料」「消費者米価の算定(案)」、こういうものをいただきました。これを見ますと、平均八%ということが大体推定できるのでありまして、ただいま米審にその諮問が別な会場で行なわれておる。そこで関連をしてお伺いをしておきますが、政府がいう八%という数字、これの具体的な根拠についてはあとで、これこそ具体的に質問をいたしますが、かりに八%上がった場合に、その八%が家計に与える影響はどの程度に見ておるのか、これをお伺いいたします。
  74. 田中勉

    田中説明員 消費者米価に関連することでございますので、私からお答え申し上げます。  「消費者米価の算定(案)」――本日、米価審議会を開催いたしまして、いま政府原案として諮問をいたしております資料をここにお配り申し上げておりますが、「消費者米価の算定(案)」という資料、その八ページをごらんいただきますと、「消費者米価改定の家計に及ぼす影響」というところがございます。そこをごらんいただきますと、昭和四十二年の十月から昭和四十三年六月までの期間における一世帯一カ月間の家計支出の状態を前提として、今回消費者米価が平均して八%上がるということになりますると――その下の欄のところをごらんいただきますると、全世帯の欄で、現状は米支出が実額で非配給を含めまして三千五百五十四円、その米支出の割合が五・八%になっておるわけでございます。今回消費者米価を値上げいたしました場合におきましては――このカッコの中が、これが配給でございます。配給としては百八十八円の一世帯当たりの増、それから非配給を含めますと――非配給の米も配給の米にある程度スライドして上昇することも予想されるわけです。それが二百五十六円ということになりまして、米支出に対しての増加割合は、配給の場合は〇・三%、非配給を含めますと〇・四%ということになるわけでございます。
  75. 武部文

    武部委員 企画庁長官お見えになったようですから、長官のほうにお伺いいたしますが、実は時間がだいぶずれまして、同僚議員の質問もございますから、私は根本的な問題について二つ三つ長官の考え方をお伺いをしておきたいと思います。  先ほど国民生活局長に、本年上期の消費者物価の上昇の割合、あるいは昨年同期、第一・四半期における消費者物価の値上がりのパーセンテージをお聞きをいたしました。昨年は第一・四半期二・九、本年は五・六%、こういう数字が出ておるのであります。長官はかねがね私ども委員会で四・八ということを主張しておられる。しかしこれもなかなかたいへんな数字だということの条件がついておるわけでありますが、われわれは、この数字の内容については異論はあるけれども、一応これを俎上にあげて検討した場合にも、このような数字はとても今年度の数字としては受け取るわけにいかぬということは何べんも申し上げたとおりであります。特に金融界が、本年度の消費者物価の値上がりについて金融界独自で調査をしておるということがすでに発表されております。一番高い数字を見通しておるのは日本勧業銀行、これは六・五%、北海道拓殖銀行は六%というように、大体銀行筋は五・五%以上六・五%という数字を発表しておるのでございます。その一世帯に与える支出は、年間八千五百九十円もの増加になってあらわれるだろうということも言っております。長官は、今回の消費者米価の値上がり等がこれから問題になるわけでありますが、この物価上昇を一体どのようにお考えになっておるのか、それを最初にお伺いしておきたい。
  76. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府の経済見通しの四・八%は、ただいま武部委員の言われましたように、一種の努力目標でもありますし、なかなか容易ではないということは前々から申し上げておるわけであります。しかもこの中には、消費者米価は一応上昇を前提に入れていないということも御承知のとおりでございますから、今回消費者米価が引き上げられるということになりますと、それだけこの四・八%の維持ということは、その部分だけむずかしくなるであろうということはもう明らかでございます。しかしながら、そもそも四・八%というものが、御承知のように積み上がった数字でございませんし、たまたま昨年は年度後半に相当大きな消費者物価の上昇がありまして、これはやはり十月の消費者米価の一四・四というものが相当こたえたわけでございますから、その点になりますと、今回の消費者米価の値上げは、政府諮問案のとおりといたしますと、昨年よりは多少値上げ率が低いわけでございますから、理屈で考えますと、年度後半になって対前年比の消費者物価上昇率は幾らか幅が狭まる。理屈でいえば私はそうなるはずだと思って見ておるわけであります。そのほかのいろいろな要因がどう働くかということがはっきり申せませんので、それを一応捨象して考えますとそういうことが考えられるはずでありますので、したがいまして、いま四・八%というものをこういうことに改めますとか、改定いたしますとかいうことを申し上げるつもりはございません。一応それを努力目標として考えていくという行政の態度には変わりがないというふうに御理解を願いたいと思います。
  77. 武部文

    武部委員 努力目標ということは何回も言われますが、現実にもう四・八というような数字を信ずる国民は私はいないと思うのです。もう宮澤長官自身も、とても四・八でおさまるということはお考えになっていないと思う。しかし、一応努力目標ということは最後までおそらく変えられぬと思うので、これはおそらく論争点のままで結果を待たざるを得ないと思うのです。ただ問題は、消費者米価の値上がりをこの四・八に入れていなかった、これはたいへん大きな問題だと思う。同時にその波及効果ということが非常に大きい。これはあなた方がおっしゃったように、国民生活白書の中にはっきりと記載してあるわけです。心理的にもそうだし、いろいろと波及があるということはちゃんと認めておられるわけです。  そこで、先を急ぐので内容からお伺いいたしますが、いま八%という数字を食糧庁が言われた。この御出根拠は家計米価方式にある、このようにとるわけですが、昭和二十九年以降家計米価方式をとっておる。そうすると、この家計米価方式から算出された八%の可処分所得の伸びというものは、一体何年何月から何年何月を基準時として、比較時をいつにとったか。基準時と比較時があってこの八%が出ておるわけですから、その基準時と比較時はいつですか。
  78. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは実はこういう沿革があったわけでございます。生産者米価の議論をいたしておりましたときに、一定の生産者米価の上昇を考える、その場合消費者米価はどの辺が上限であろうかというような議論をいたしておった段階で、一番最近のデータというものは、ことしの四月までの可処分所得の数字が出ておったわけでございます。そこでことしの四月からさかのぼりました一年、昨年消費者米価が決定になりました十月をさかのぼります一年、この二つを比較いたしまして、そこで可処分所得の上昇がほぼ八%である。したがって、本年生産者米価を決定いたします段階では、そのときに利用し得る最近のデータによれば、家計米価の上限は八%である、こういうことを申しておったわけであります。今日の段階になりますと、四月からさらに進みまして五月、六月くらいまでの家計の数字が出てきておる、可処分所得が出てきておるはずでございますので、その数字で改算をいたしますと、この八%というものはおそらく、五月、六月といいますと春闘あたりの結果が入ってまいりますから、八%よりやや高いものになる。一一%を幾らかこえるのではないかと考えておりますが、当時八%と申しましたのは、当時利用し得る一番最近のデータを使った数字であったわけでございます。
  79. 武部文

    武部委員 その点はわかりました。家計米価方式がとられてからずっと今日までの経過を調べてみると、そういう計数のとり方をされておることはわかりました。きょう私がここで申し上げたいのは――昭和四十年五月二十一日付で米審の小委員会報告なるものが提出されておるわけです。この中に家計費について四つの問題を提起をいたしておりますが、その一つに「生活水準の向上との関係」という一項目があります。これを検討してまいりますと、いま長官がおっしゃったような八%の可処分所得の伸び、これは手取り収入の伸びでありますが、そうではなくて実質額による――読んでみます。「名目額による家計の上昇ではなく、実質額による家計の向上によって家計米価を算定すべきであるとする考え方もあるが、」こういうことがこの米審の小委員会で出されておるわけであります。われわれはその意向に賛成なのであります。いま宮澤さんの答弁によれば、可処分所得で、手取り収入が去年に比べて八ないし一一%伸びておる、こういうことをおっしゃる。それは勤労者世帯を五分位階層別にとって第一階層から第四階層――第五階層ははねておりますから、四階層の平均をとった可処分所得の伸びだろうと思います。ところがその内容検討すると、経済企画庁が出されたこの五分位の可処分所得と消費支出との具体的な五つの段階の数字がここに載っておるわけですね。これを見ると、あなたがおっしゃったような八%に足らない階層が非常に多い。むしろ第一階層、一番低い所得の階層は月に約四千六百円の赤字支出であります。可処分所得よりも消費支出のほうが四千六百円も高いのであります。第一階層は毎月四千六百円ずつ借金をしながら生活をしているということがはっきりとこの経済企画庁の資料に出ております。ちなみに申しますならば、この可処分所得と消費支出との差は次のような数字になるのであります。第一階層は四千六百二円の赤字、第二階層は四千四百八十八円の黒字、第三階層も九千三百六十七円の黒字でありますが、ここに出された、私がいまいただきましたこの「消費者米価の算定」の、いまおっしゃった八ぺ-ジの平均消費支出六万一千百十二円という数字は、これは第三階層まではこれに達しないのであります。第四、第五の階層によってようやく平均よりも上回ったいまの消費支出を受けておるというのが、いまあなた方の政府の発表の数字によって出ておるのであります。だとするならば、平均支出、可処分所得がいかに伸びようとも、現実に物価の値上がりによって実質所得というものがぐんと下がっておる。先ほどから言うように、第一階層に至っては全く借金で生活しておる、こういう結果が出ておる。加えてそのエンゲル係数を調べてみると、第一階層は四三・六%というエンゲル係数になっておる。非常に高いのであります。第五階層は二七・九であります。収入の非常に高い第五階層は二七・九というエンゲル係数、収入の低い第一階層、借金をしておるのは四三・六%というエンゲル係数になっておる。このことは、食費の占めるところの割合がいかに低所得者層に多いかということを物語っておる数字だと私は思う。そうなってくると、いまの御説明のように可処分所得の伸びということだけをもって、それも平均の八%とか一一%とかいう数字でもって国民生活の伸びを判断し、それを家計米価の根拠にするのはいささかこれは現実離れをしているのではないか、こう思いますが、長官どう考えますか。
  80. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはもう御存じのことでございますけれども、速記録等もございますから誤解のないように申し上げておくことでございますが、一般に第一階層から第五階層まで、ことに問題は第一階層でございますけれども、第一階層という固定された人々がいるわけではございませんので、そのときの事情、たとえば失業等々、いろいろ人には起こり得ますので、そういうことによって五分位に分けますと、たまたま一番下の階層に立つという人が必ずあるわけで、それは常に固定した人々がそこにおるわけではございません。そのつど流動しておるということ、それは御承知のことでございますけれども、世の中でときどき誤解があるので申し上げておくわけでございますが、それを前提にいたしましていま言われましたこと、つまりエンゲル係数、生活の最低水準に必要なところの食費等々の経費のウエートが、階層の低いほど大きいであろうということはもう問題なく事実でございます。統計もそのとおりになっております。したがって、米価が一定率引き上げられました場合に、それが家計に及ぼす影響は、階層の低いほど大きいであろうことも、もうほとんど容易に推論のできることでありまして、そのとおりであろうと思います。でありますけれども、一般に食管法第四条でございますか、にいっておりますところの家計という場合に、必ずしもこれが最低の家計をいったものと解釈することは適当ではないであろう。やはり第五分位を抜いておりますのは、いま言われましたような一つの配慮であると思いますけれども、それ以外のものについては平均的なところをとるということが、考え方としては妥当なのではないか。ただ従来、御承知のように、実は第四条の規定はあまり問題になったことが最近ではございませんでした。と申しますのは、財政のほうが、食管会計に対する赤字補てんにある程度弾力性がありましたので、そこでかなり値上げ幅が吸収をされてしまって、いざ家計を突破するかどうかといったようなことがあまり議論になったことはなかったわけであります。ところが今回の場合には、補正予算を組まないという一つの壁を設けましたために、今度は最高は家計費であるというその天井が初めてものをいい出したということから、今回特にそれについての議論が多くなったものと思います。従来で申しますと、家計費の伸び一ぱいに消費者米価を上げたことはございませんで、二ポイントとか三ポイントとかいうものを大体残してきまっておりますが、今回もたまたまそういった意味では似たような結果になったわけでございます。
  81. 武部文

    武部委員 第一階層が固定したものでないということは私もよく承知しております。それはたまたま労働省の「賃金構造基本統計調査」というのがありますが、二万円以下の労働者が二一・九%、二万円台が一七・五、五万円台、したがって六万円以下の勤労者は八〇・六%という数字が労働省の調査によっても明らかであります。われわれが指摘をするのは、この労働省の基本的な賃金構造の統計、さらには五分位階層における赤字支出――平均支出よりも下回ったものが第三層よりも下におるのだ。そういう連中はエンゲル係数が高いのだ。それをただ単にこの家計米価の算出基準であるところの可処分所得の伸びだというようなことでやることには問題がありはしないか。今日のように異常に物価が上がるときには、そのものを差し引いていかなければならぬのじゃないか。実質所得こそ家計米価の基本になるべきではないかという意見を持っておるわけですが、ひとつ端的に、長官この考え方は誤りですか。
  82. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 誤りとは申し上げませんけれども、実質所得を計算する場合には、おそらく名目所得から物価の上昇分を引くことになるはずであります。その物価の上昇分の中には消費者米価の上昇といったようなものが入っておるということになりますから、そういたしますと、理屈の上で、米価は、むろんこれは名目価格であることには間違いございませんから、それを含んだところの係数で割り引いた実質所得というものを比べるということが、理論的にどういう意味を持つであろうかということには問題がありそうに思うのであります。もちろん、政策論としてそういう理論はともかくとして、家計の上限というものを名目所得でなくて実質所得でとるんだ、それを消費者米価の上昇の上限にするんだ、こういうことはやってやれないことはございませんし、やればそれなりの意味があるだろうということも否定いたしませんけれども、理論的に申しますと、名目的なものと実質的なものとを相関関係説明するということは、理屈の上ではいろいろ問題がありはしないかという感じがいたします。
  83. 武部文

    武部委員 これは意見が対立するわけでありますが、食管法の第四条の二項は申し上げるまでもないことであります。先日発表された経済企画庁の国民生活白書について私申し上げましたが、その中に経済企画庁は「諸物価の引上げの契機を与えるという社会的心理的波及効果も無視できない」、こういうことをはっきりと国民生活白書にあなた方のほうは記載をしておるわけでありますね。それだけ消費者米価というものの与える影響は大きいんだ、それ自身認めておられると思うのです。今回の八%の消費者米価の値上がりが一体家計にどのくらい影響を与えるのか、また心理的にもどういう波及効果を与えるのか、これがたいへん大事だと思うのです。去年の一四・四%のときに、米の値上げが一体どれだけ家計に影響を与えるのかというわれわれの質問に対して、〇・七%しか家計に影響を与えない、こういう答弁でありました。ところが現実消費者団体の皆さんが、一合の米は二円五十六銭上がった計算になるから、それによってずっと外食等の計算をすれば、政府の言っておるところの物価指数の消費支出の三倍になるということをおっしゃっておるわけです。具体的にそういう数字が出てくる。外食あたりは十円上がることは確実であります。こういう点を考えると、先ほど私は国民生活局長に申し上げましたが、一四・四%上がったときにそれは〇・五%しか消費者物価には影響を与えないといっても、そのときの物価の値上がりは一・二一%になっておった。二カ月後には三%上がっておるというふうに、その影響がみそ、しょうゆ、続いてせんべい、そういうものにずらっと波及して上がっておるんだ、こういうことを具体的な事実として申し上げたはずであります。ことしも同様である。パン、めん類の値上げが待っておる。また上がる。こういう波及的な効果をわれわれは懸念するがゆえに、消費者米価の値上げというものは断じてやめてもらわなければならぬ、このことをかねがね私どもとしては主張してきたところであります。おそらく素朴な国民の考え方としては、五・九%生産者米価を上げた、それなのに一体なんで八%消費者米価を上げるのか。残りの二・一%という差は一体何だ。これは言うまでもなく末端逆ざやの解消に使用しようとしていることは明らかでありますね。食糧庁、その点はどうですか。
  84. 田中勉

    田中説明員 先般生産者米価が対前年比五・九%上昇を見たことはそのとおりでございます。そこで食糧庁消費者米価改定にあたっての基本的な考え方は、いま御指摘のような点からいたしまして、やはり末端の逆ざやを極力解消するということが、食糧管理の運営を健全に運営していく場合の食糧庁方針であるわけでございます。今回の場合におきまして、八%が完全に末端の逆ざやを解消するかということになりますと、この点はそういうぐあいには必ずしもまいっていない。全国平均の配給価格においての逆ざや解消が実現できる程度ということになっておるのが今度の八%であります。
  85. 武部文

    武部委員 末端逆ざやが完全に解消されるには、それじゃ一体あなたのほうは何%上げたらいいというのですか。
  86. 田中勉

    田中説明員 末端逆ざやを完全に解消するという場合に、実はいろいろな見方があるわけでございますが、要するに、端的に申しますと、現在配給区分をいたしております甲地、乙地あるいは丙地、特地というよらなところがあるわけでございますが、今回これを大体三段階にしようということになっております。その場合におきまして一番配給価格の低い地域を今度は丙地ということで見ておる。いままで特地であったわけでございますが……。それで、この末端逆ざやを完全に解消するということになりますると、この金額が大体九・三%近くのものになるということでございます。
  87. 武部文

    武部委員 同僚委員の質問がありますので、私はこのくらいでやめますが、税金の自然増収が非常に多いだろうということは、当委員会でも何回か論議をされました。あるいは大蔵委員会あたりでもその追及がなされておる。税の自然増収ということはだれが見ても明らかだ。今回消費者米価の値上げを契機に、今日まで全然末端逆ざやの解消に手をつけていなかったが、今回に限って生産者米価の値上がりの上に末端逆ざやの解消のパーセンテージとして二・一%、こういう数字を乗せてきた。異常な物価の値上がりで国民が苦しんでおるときに、それに追い打ちをかけるように末端逆ざやをなぜ今年度に限って解消しようとしたのか、これは私どもとしては非常に疑問に思うわけですが、食糧庁どらですか。
  88. 田中勉

    田中説明員 ここ数年来、食糧庁の生産者米価、それから消費者米価関係を見てまいりますると、やはり生産者米価の値上がり率、また消費者米価の値上がり率等の結果を見ましても、現実問題として実現された生産者米価、それから実現された消費者米価との間におきましては逆ざやが常に存在しておったわけでございます。昨年の十月一日に一四・四%値上げいたしました際におきましては、これはその前の年の予算にこの一四・四%の値上げを、一応予算上の米価を組んだわけでございますが、その際におきましても、やはり全国平均の配給地域におきましての末端の逆ざやを解消するということで、当時一四・四%という数字を組んだわけであります。その際の生産者米価というものは、実際に実現された生産者米価は一万九千五百二十一円であったわけでございますが、昨年もそのような方針で、末端逆ざやを解消するというたてまえで一四・四%という消費者米価の値上げを行なったわけでございます。もちろん、この一四・四%の値上げの際におきましての家計の伸びは一六・八%という伸びがあったということが背景にあるわけであります。
  89. 武部文

    武部委員 では最後に長官に一つお伺いをいたします。  われわれは消費者米価の値上がりはやめるべきだと言う。ところがいま言うように、総合予算主義をとられておるために、生産者米価が上がるから消費者米価も上げなければならぬ、あるいは末端逆ざやもそのためには解消しなければならぬから、それを上のせするのだ。しかしこの年度だけで末端逆ざやが全部解消するわけではない。これは数字の上でももちろん明らかであります。一体政府は総合予算主義を守ることが第一なのか、物価の安定が第一なのか。われわれは、少なくとも政府が、総理もそうでありますが、物価の安定、物価の安定ということをしばしば言明されておる、その政府が総合予算主義というものにとらわれて、物価安定ということをないがしろにして、家計を苦しめるというような消費者米価の値上げをするということについて、断じて容認ができないのであります。自然増収がない、自然増収がないということを言われる。現実に私どもの聞くところにおいては、四十三年度の経済成長率の見通しは一二・一%、しかし、国民経済研究協会、日本経済研究センター、こういうところが出しておる経済成長見通しは一五・二%から一四・二%というような数字を聞くのでありますが、そうすると自然増収二千六百億から三千二百億というような数字が出るはずである。ところが政府はそれを、大蔵大臣じゃないけれども、国債のほうに振り向ける、こういうことを言われる。これでは政府の言われる、また宮澤さんがしばしば言っておられる、物価の安定を第一とするというあなた方の言明とたいへん違うのではないか。このことについてはどうです。
  90. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 というような考え方をいままで私どもも実はやって、繰り返してきたわけでございましたが、昨年ごろ実は私考えまして、食管制度というのは非常に長い間の制度でございますが、かりに、これはかりにでありますが、全く仮定の問題として、ある程度米について自由価格が形成されることができるとしたら、その価格はいまの価格よりも高いであろうか安いであろうかということを考えてみると、これは一様に断定できないいろいろな要素があるのではないかというふうに昨年考えたわけであります。しかしそうかといって、突然食管制度をどうするというようなことが言えるような環境ではございませんでしたから、ひとつ総合予算主義というものをとってみて、食管会計への一般会計からの繰り入れを一定のところで固定額に固定してしまう、そうして両米価とも一応据え置いた形で新年度を迎えて、そういう予算の中で両米価がどういうふうにきまるかということをひとつやってみたらどうかということで総合予算主義というものが行なわれたわけであります。結果としてどうなったかと申しますと、結果といたしましては、消費者は、豊作なのに消費者米価が上がるという非常に不合理な事態にぶつかることになりましたし、需給面では古米が相当ふえてきている。しかもおそらくは来年度もそうであろうというようなことも明らかになって、そこで食管制度についてはやはり改善をする必要があるというところに、いまほぼ世論も傾いてまいりましたし、政府としても来年度にはそういうことをしようというところにきかかっておるわけであります。これにはいろいろ問題があると思いますので、あまり単純化して申し上げることはいかがかと思いますけれども、そういうことになってきて、かりにある程度の自由価格というものが形成されるようになったときに、消費者としてそれが損であるか得であるか。品物についても選択ができるということになれば、私はおそらくは消費者として損な結果にはならない、こう考えますので、この一年やってまいりましたことは、問題をそういうふうに展開するための一つの道行きであった、経緯であったというふうに私は考えております。
  91. 武部文

    武部委員 いまのは見解の相違ですから、論争になりますからこれ以上のことは言いません。  時間が非常に経過いたしましたので、村山委員と交代いたします。  私の質問を終わります。
  92. 八百板正

    八百板委員長 村山喜一君。
  93. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 宮澤長官は御出席の時間が多少ずれましたので、十二時半までという初めの約束でしたが、まだ私もいまから質問するわけですから、ひとつお残りをいただきたいと思います。  初めに、閣僚協議会が、本日は非常にもめたのか知りませんが、だいぶ時間がかかったようでございます。これはやはり宮澤さんが政治生命をかけるという八%の問題をめぐってもめたのですか。そうでなくてほかのことで、今後のいわゆる米の総合的な需給体制というような問題や保管の問題等をめぐっていろいろと協議なさったものか、もし明らかにされることができるならばこの席で明らかにしていただきたいと思います。
  94. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今日出席がおくれまして御迷惑をおかけいたしましたが、これは閣僚協議会が延びたからではございませんで、閣議が時間がかかったからでございます。その案件は米の問題ではございませんで、全然別個の案件でございました。米につきましての閣僚協議会は、今朝はほぼ十五分ほどで終わっておりまして、実態的な議論は別段今朝ございません。実態的な議論は、昨日関係閣僚の間で三時間ほどいたしましたわけであります。そのときに私が要望いたしましたこととは、加重平均で八%ということは、家計から見てもやむを得ないであろうし、従来生産者米価がきまった経緯から見てもまずやむを得ないことであろう。ことに九百万トンくらいの米はおそらく政府が当然買わなければならないといたしますと、これは予算で見ておりましたのは八百五万トンでございますので、それだけの財源も要ることであろうということまで考えますと、末端逆ざやの点もございますし、やむを得ないが、しかし従来、先ほど食糧庁次長から御説明もございましたように、産地と消費地との消費者米価の差というものが三十五円でございますか、開いておりますが、これが開き過ぎではないのだろうか。やはり消費者の立場からいってもあるいは末端逆ざや解消という目的からいっても、この差はもう少し縮まってしかるべきではないかということを、実は昨日私として主張しておったわけでございますが、その結果、今回は区分を三段階にいたしまして、そうして両方の開きが従来の三十五円から二十円になった。その二十円になります過程で、いわゆる甲地、大消費地においては今回は十五円でなくて十円、乙地に比べて十円だけ格差をつけるということになりまして、その結果としては、大消費地における消費者米価の値上げの幅が八%よりはやや縮まった。これは末端逆ざや解消のためにも、また消費者の観点からも私はいいことだと考えましたので、そういう主張をいたしまして、関係閣僚それに合意をしたわけでございます。したがって、そのとおりのものが今朝関係閣僚の間で正式に決定され、また米価審議会に諮問をされる、そういう経緯でございました。
  95. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 その八%という数字が出されてまいりましたときには、やはり可処分所得の伸びは八%程度であろう。そういうようなところから、生産者米価の限度ワクを押えなくちゃならないという、きわめてシビアーな数字として出された。それが今日の段階においては、六月分まで取り入れましたら一一・四%の伸びだ、こういうようなことで、それはまあ夏期手当やその他が入ってまいりますから、可処分所得の限度額が引き上がった。だからその中においての論争をしていくならば、この際財政の上から考えていくと、末端逆ざやの解消の分を含めてこの際一挙に措置するためには、先ほど田中次長のほうから言われたように、九・三%というものを値上げをした場合には末端逆ざやの解消が生まれる。それは可処分所得の限度内にまだある。こういうようなことも理論的には成り立ってくる。しかしながら新米価格でこれを計算をしていくと、大消費地においては八・一五%、乙地においてはもっと高くなる。これを古米まで含めて計算をしたときに八%だ、こういうようなふうに私たちは受け取っているわけですが、そういうような形の操作の中で、八%に政治生命をかけるというて、その立場から宮澤さんが、物価安定という立場の上で問題を処理されようとしただろうと思います。そういうような立場から、いままで百五十キログラム当たり五百十五円の三%相当分の末端逆ざやの解消分がなお百五十円程度残るという勘定に、私は計算の方式からいった場合になると思うのですが、しかしこれを財政の上から考えてまいりますと、結局二百六十五万トンという古米が出る。その古米は昨年の価格で買ったわけですから、多少の保管料等は入っておりますけれども、それを今度は高い八%の価格上昇分で売るわけですから、これについては大体生産者米価の五・九%の伸びと、それに八百五万トンの買い入れ予定の分を修正をして九百万トンですか、それによって出される経費と、八%の古米の値上げ分等によりまして、財政的に一千百十億円ですか、そういうような数字で、その残りの七十億程度を食糧証券の振りかえ操作あるいは食糧庁の経費節約、こういうようなことでまかなうのだ。だからこれについては補正予算を組む必要はない、こういうような立場に立っておいでになるわけですか。
  96. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 概してそういう考え方でございます。
  97. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そういたしますと、食糧庁にお尋ねいたしますが、昨年は九百九十万トン買い入れましたね。そのときの生産の予想高は一千四百四十五万トンでした。ことしの作況からいうならば一千四百十余万トン生産の見込みです。これでまいりますと、私が計算をすると九百六十万トンくらいの政府買い入れということになるんじゃないかと思う。そういたしますと、六十万トンというものはトン当たり三万五千円くらいの赤字になるわけでしょう。そのようなよけいなといいますか、政府売り渡し数量がふえた場合には、この六十万トン分の赤字についてはどういうふうにされるつもりですか。
  98. 田中勉

    田中説明員 前提をそのようなぐあいに置かれての御質問でございます。実は八月十五日の作況が一〇七%ということになっております。それによりましての試算収穫高は一千四百十二万トン程度になっております。その点からいたしますと、昨年が千四百四十五万トンでございますので、その結果買ったものが九百八十万ないし九十万ということでございます。それだけの生産の減が買い入れに響くということになりますれば、九百五、六十万トンという推定も成り立つわけでございます。ただ、昨年の作柄をずっとしさいに見ますと、八月十五日、九月十五日、十月十五日、それから推定実収が十二月に出てくるわけでございます。一年の作柄の最終決定は、そういうことでございます。三回の予想を経ていくわけでございます。その場合に、昨年は過去において例を見なかったところの一〇七から最後は一一一まで、しり上がりに上がっていったという年になっているわけでございます。したがいまして、ことしが一 ○七でございますから、今後昨年型をとるのか、あるいはここ数年来常にあるような型、むしろしりすぼみという作柄の推定も成り立たぬわけでもないわけであります。その点ちょっと、作柄推定論からいたしますと、私ども段階における買い入れ見込み量については、いずれともまだ予想が成り立ちかねるということでございます。ただ単にいまの八月十五日の推定生産高が一〇七であって、千四百十何万トンということになりますれば、かりに昨年の実収高と対比いたしますれば三十万トンから四十万トン程度下回るわけであります。その分だけが昨年の実績買い入れから差し引かれるというようなことは、現段階においてはそういう考え方も成り立つかと思います。
  99. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 やはりあなた方はもっとそういうような場合を予想をして考えておかなければならないのじゃないですか。いまの作況指数からいけば、台風その他冷害等が出てくれば別ですが、いまの状況でいくならば、昨年よりも五十万トンないし六十万トンは、政府が予定をするものよりも多く買い入れをしなければならないであろう、こういうふうに見込んで、これに対応する対策はこういうふうにいたしますという対策は、少なくとも閣僚協議会あたりできめておかれる必要があるのじゃないかと思うのですが、もしそういうような事態が出たら、それは予備費を取りくずして補正予算でも組んでやろうという決意でございますか。この点は宮澤さんからお答えしていただきたい。
  100. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お尋ねの御趣旨はよくわかりますが、ただいまとしてはこういうふうにお答えするしかないと思います。すなわち、出荷調整金というものを設けておりますので、売り渡しをされる側でこの出荷調整金のメリットを考えて、従来のように年度のうちに急いで政府に売り渡すばかりが必ずしも能ではない、むしろそうでない場合のほうが、勘定をすると得になる場合もあるということを考えられる向きもあるだろうと思います。そういたしますと、どれまでが年度の食管の米になるかということは、確かに作柄は御指摘のように決して悪くはないわけでございますから、九百万トンで売り渡しがとまるというふうに考えるわけにはいかないだろうと思いますが、その場合でも、政府に売り渡す時期について、それを生産者側は考えてくれる、そのために出荷調整金が働きをする、こういうことをいまとしては期待をしておる、こうお答えするのが、ただいまとしての私は一番正確なお答えであろうと考えます。
  101. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 ところが宮澤さん、農林省で出荷調整費の六十億の実施案を検討しているけれども、それが大体まとまった方針は、月六十五円で五カ月分の有効期間ということになっておるのです。ですから、あまりそれに期待をすることはできない。第一地区から第三地区まで分けまして、第三地区の場合に、翌年の一月から五月まで、こういうような程度のものしか期待ができないわけです。多少の調整は可能だろうと思いますが、しかし五十万トンなり六十万トンをそういうように余分に買い入れなければならないような状態が出たら、やはりそこには何らかの措置をとらざるを得ないと思うのです。それは買わないというわけにはいかぬのですから。そうなってまいりますと、予備費を補正予算で計上していくという形にならざるを得ない。したがって、この面においてはやはり総合予算主義というものがくずれる可能性があるんだということを指摘をしておきたい。  そこで古米の問題ですが、配給量にして二百六十五万トンという数字は四カ月分ですね。五カ月分ですか。全国民が食べるとするならば、これは二・五ないし三カ月分だと思いますが、この程度――もっと多いですか。かりに三カ月分だといたしますと、三カ月分の主食が余って騒いでいる国が世界のどこにございましょうか。二百六十五万トンの古米が出るというので大騒ぎをしなければならないような状態が日本の正常な姿なのか。私はそういうような状態から考えたときに、備蓄米制度という問題を真剣に考えなければならない段階を迎えているんじゃないかと思うのです。というのは、この前東大の川田教授のお話を聞きました。これによりますと、いまの稲作の技術の上から見た場合には、台風に対する技術上の克服策というものは講じ得られたけれども、そうしてまた、どんな大きな台風災害があっても三百万石程度に被害は押えられるが、一たん冷温による冷害が発生した場合には、東北から北海道にかけて一千万石の減収という事態もやはり予想ができる。いまの稲作の技術の上から見ると、天候に依存をする割合が六割、そして技術によって水準が上昇していくのが四割だ、こういうような話を承ったのでございます。そういうような立場から考えていくならば、戦前において、昭和九年から十年のころ政府が調整用として百万トン持っておった。それからその当時は軍隊組織がありました。軍隊は大体戦争を目的としておるわけですから一年ないし――私たちも太平洋戦争の末期においては戦争に参加しましたが、そのころは籠城作戦といいますか、分断されても戦えるような体制を整えるというので、二年間分の食糧をやはりたくわえておりました。そういうようなのから考えてまいりますと、今日においては災害が発生する、そしていろいろ、東京大震災などもまた同期的に起こり得るというようなことをいう人もあるような状態になってきているわけですから、そういうようなときに国民の主食を確保しておくことが、私はやはり国民の命を守る政府の責務ではなかろうか、こういうふうに考えるわけです。そういうようないわゆる備蓄制度という問題を考えてまいりますと、三百万トン程度の主食は政府として確保さしておくという措置をやはりこの段階において考えていくべきではなかろうかと思うのですが、これについては宮澤長官はどういう考え方をお持ちでございますか、その点をお答えいただきたい。
  102. 田中勉

    田中説明員 ちょっとその前に数字的なことを……。  二百六十五万トンが三カ月程度だということをおっしゃられたわけでございますが、私どもこれを配給していく立場に立ちますならば、やはり全配給量の五カ月分ということでございます。そういう意味で御認識いただきたいと思います。
  103. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 配給量じゃ五カ月分だけれども、全体に直したら四カ月分……。
  104. 田中勉

    田中説明員 国民全体の消費量は、五年くらい前に比べまして、千三百四十万トンであったのが、四十一会計年度では千二百五十万トンになっているわけでございます。その観点からいたしますならば、一カ月当たり百十万トン近くのものになるわけでございます。そういたしますと、この千二百五十万トンはこれは玄米トンでございますので、二百六十五万トンは三百万トンと計算する必要があるわけでございますから、約二カ月半から三カ月近くのものにナショナルベースではなる。配給ベースでは五カ月、こういうことでございます。
  105. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 だから、二・五カ月ないし三カ月分くらいの主食が余ったといって大騒ぎしている国が世界のどこにあるかということを食糧庁にお尋ねします。
  106. 田中勉

    田中説明員 同じ食糧といいましても、海外は、大部分の先進地域、先進国とかいろいろな地帯は小麦が主食ということになっております。米ということになりますと東南アジアとかその他の地帯であります。小麦等におきましては、過去においてアメリカ等におきましては半年分以上余った、あるいは一年分余ったということは実例があると思いますが、米が余って大騒ぎしているという国は、いま世界にはちょっと見当たらないわけであります。
  107. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 専門でございませんので、ごく大まかなことしか申し上げられませんけれども、村山委員の言われますことは、それは私は一つの理屈であろうと考えます。ある程度のものは政府が持っていたほうがいいではないかということはそのとおりだと思いますが、いまの体制で申しますと、御承知のように、つゆを越すということが困難な性格のものでございますし、またそれだけの備蓄をしておくための施設というものも整っておりません。これから行く行くある程度そういうことを考えることが、施策からもできるし財政的にもできるということになれば、それは持っておるに越したことはない。どれだけのものが適正かということは、私は専門でないのではっきり申し上げられませんけれども、それはそれに越したことはない。ただその場合に、途中で品物を入れかえましてもある程度品いたみが防げて、そして政府の責任である程度の品質で保管をし得る、また財政もそれにたえ得るというだけの準備は必要だと思うわけでございます。したがって、おそらく――いまあわてておると言われましたが、あわてておりますのは、それだけのものを品がいたまずにちゃんと持っていけるというだけの物的なあるいは財政的な余裕が、突然のことであったために十分になかったということなのではないかと思っております。
  108. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 これは、いま構造改善でやっておりますカントリーエレベーター方式で、もみのまま貯蔵して、しかもそれは常温に保っておけば、つゆを越しても味は悪くならないと思うのです。また昔はわれわれも古米を食っておったわけですから、そういうなにからいいますと、乾燥さえしておけばいいんで、玄米にして貯蔵しようというところに風味が落ちてくるわけです。ですから、そこは今日の近代的な科学の発達によって、やろうと思えばできるわけです。それを今日までやっていないところに私は問題があると思うのです。過去四年間に外国から米を二百六十五万四千トン買っているでしょう。もしそれを買わなければ、二百六十五万トンの米はことし余らなかったということになる。それから麦を一千万トンですか、これも四年間に購入しているわけです。ですから、そういうような立場からいいますと、急にことしになって米が余ってきたのではなくて、去年も余っておったわけです。だから、この問題は当面の問題を解決するというだけではなしに、米価政策という問題はそういうような立場からもやはり検討しておかなければ――かつては東京都内に一日分の配給米しかなかったこともあります。そういうようなことを発表した場合にはたいへんだというので、石田宥全さんの国会の質疑を中止したときもあるのです。ですから、そういうような事態もやはり考えて、総合的な食糧管理制度という問題を考えていただきたい。いまでは物価対策と財政対策、特に財政対策の上から問題を処理しようということを急ぎ過ぎているのが政府のとっている態度ではなかろうか、そういうような気がいたしますので、宮澤長官は経済合理主義者のチャンピオンですから、そういう立場からやはりもっと深く、いわゆる国民の命をささえる食糧なんですから、考えていただきたいと思うのです。  それから八%の問題は、先ほども話が出ましたのでもう触れませんが、私はここで、物価の問題について閣僚の中で最高の責任を持っていらっしゃる宮澤長宮に、一体四・八%という目標はもう宮澤さんもあきらめてしまったのか、一体どこまでいけば物価はおさまるのか、これについてお答えをいただきたいと思うのです。というのは、次々に公共料金の値上げの問題が新聞紙上をにぎわしております。まず第一にビールでしょう。百二十七円を百三十円にしないといって宮澤さん大いにがんばっていただいておるけれども、どうやらことしはビールの夏の消費があまりよくなかったので百三十円に上げるというわけです。これだって二百億の利潤がメーカーのほうに入るような形になります。そのほかに、もう九月になりますから私鉄の運賃値上げ、これはすでに運輸審議会のほうですか、値上げの申請がなされておると思うのです。最近においては、バス、タクシー、これもまた値上げ申請がなされております。そういうような問題をはじめ、また国鉄総裁も、これは総裁の一私見にすぎないということで、だいぶ問題になったようでありますけれども、明年の四月一日から一〇%上げるということもいろいろ計画をされている。これはいま国鉄の再建対策の宋議会ですか、あるいは政府の財政制度審議会のほうでいろいろ検討をされているようでございますが、これまた九百五十億の赤字が出ているのをどうするかという問題をかかえておりますから、やはり値上げをするか、あるいは一般会計からの繰り入れをするか、何らかの措置をとらなければおさまらない。やはり一〇%の値上げをして九百五十億の増収をはかろうというような案が出てくる可能性は強いと見なければならぬ。さらにまた電電公社の場合も、来年度の予算要求の中で、すでに自民党の部会の了承を得て、そして値上げの計画を大体通信部会としてはきめているわけです。そのほかに消費者米価の値上げに伴う便乗値上げの問題が、外食については一食やはり十円ぐらいは上がることは覚悟しておかなければならぬ。さらにまた水道料金の値上げ等に伴いまして、クリーニングとかあるいはその他床屋さんとか、とうふ製造とか、そういうようなところ等においても、これを一つのきっかけにして物価が上がっていく情勢が出てくると私は思うのです。そういうようなときに、昨年は四%ということで実績をあげられましたけれども、今度は四・八%にはとどまらないであろうということをみんな国民は不安に思っているわけです。これを、先ほどの説明を承っておりますと、一つの目標なんだ、こういうような形で、いかにも自信がなさそうな発言をされますから、すでに四・八がむずかしいとするならば、これはどこまででとめるのだという決意をやはり固めて、それで政策誘導なり指導を願わなければならないのではないかと思うのですが、その点から全体的な物価対策の決意のほどをここで承っておきたいと思います。
  109. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私が経済政策を考えていきます場合に、物価との関連においてもそうでありますけれども、やはり一つは自由競争の原理をできるだけ導入するということであると思っております。それからもう一つは、合理化というものを進めていくということであるというふうに考えております。従来、ただいま御指摘になりましたような公共料金関係で、納税者の負担においてある程度価格の上昇を防いでおるものはたくさんございますが、本来からいえば、私はその多くのものは受益者負担という原則に照らして考えるべきものであろう。一般納税者がばく然と負担をするということは、私は本来はあまりいいことでないというふうに考えておるわけでございます。それから、たとえば中には食管のように、従来の制度をそのままやっておる結果、納税者の負担にもなりますが、消費者としても、あるいはもし自由価格が形成されたらそのほうが消費者にとって有利であるかもしれないというような場合もあるわけで、これらもやはり自由化の方向に向かっていくべき一つの問題だというふうに考えております。それから政府系企業の中には、自由化と申しましても、事実上の独占企業が幾つかあるわけでございますから、これらについてはやはり合理化というものを進めていってもらう。その方法はいろいろあると思いますが、賃金水準が逐年上がっていくとすれば、やはりより少ない人員で能率的にやっていく方法いかんといったような、合理化を詰めていってもらいたい。そういうことを徹底してやっていきますと、これはある程度物価が上がるということは避けられないであろうというふうに考えますけれども、しかし受益者負担という原則からいけば、これは私はそうなってもやむを得ないのではないか。ただそれが一度に起こるということになれば、これはもう国民生活に現実に脅威を与えますから、そこは徐々に少しずつ問題を解きほぐしていく。私は自分で物価政策を担当しておりまして、そういう立場からいいますと、後退作戦の司令官のような気持ちがしておるわけでありまして、幾らかでも、少しずつ踏みとどまって、急激なショックを避けながら、なるべく自由競争、合理化の方向へ国全体の経済を持っていく方法いかん、こう考えておる次第でございます。  今年の四・八%でございますけれども、私がいま、とてもこれはもういけません、このくらいならばと申し上げることは、別段利益がない、むしろ害があるのではないかとすら私は考えますので、私としてはやはり四・八%という政策目標は何とか守って実現をしていきたい、こういうふうにただいま考えております。
  110. 戸叶里子

    戸叶委員 関連。物価が上がりますと一番影響を与えられるのは家庭の主婦だと思うのです。そういう意味できょう私はいろいろ質問したいと思いましたけれども武部委員なり他の委員から伺いましたからもう聞きませんが、いまの問題ですけれども、四・八%の数字の問題ですが、どう考えてみてもその程度の上目引率では私はとても――幾ら悲壮な決意を持ってそれを努力目標にするとおっしゃってみても、心からはそれをおっしゃっていらっしゃらないだろうと思う。それならばやはり正直に、米が上がればやはりほかのものも上がってまいりますから、そうすると四・八%は努力目標でしたけれども、あるいはもう少し上がって御家庭の皆さんに御迷惑をかけることになるかもしれません、ぐらいのことはおっしゃったほうがいいのじゃないかと思うのです。それをおっしゃいということは酷かもしれませんけれども、やはり国会というところは私は正直におっしゃったほうがいいのじゃないかと思うのです。この点をもう一度念のために、主婦の立場から私は伺いたい、いかがでありましょう。  それからもう一つ、時間がないそうでございますからついでに伺っておきたいのですが、この物価の委員会がそろって消費者基本法というものを通したわけでございますが、それによって各官庁で消費者を保護するという積極的な姿勢をとって、地方へ行ってみましても非常に評判がいいわけです。各官庁で、今度はどうしよう、こうしようというふうに、消費者を保護しようという立場をとっていらっしゃるというので、たいへん評判がいいのですけれども消費者保護ということの中には、やはり物価の安定ということがもっともっと根底になっていかなければならない。そういうふうなお考えのもとに、やはり宮澤長官、もう少し物価の安定ということで努力をしていただきたい。そう考えてまいりますと、今度の消費者米価の値上げというものは国民にとっては非常に影響が大きいし、それによって出てくるいろんな問題があるわけでございますが、それは申し上げません。せめて、努力目標はこうだけれども、やはりそれに伴っていろいろ上がってくるとなかなかむずかしい、まあせいぜいこの程度でとどまるんだろうぐらいのお考えをお持ちになっていらっしゃるんじゃないか、こういうふうに思いますけれども、この点のことをちょっとお聞かせを願いたいと思います。
  111. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは先ほども申し上げたことでございますが、昨年十月に消費者米価が一四・四%上がったわけでございますが、そういたしますと、今年は政府諮問案どおりでございますと八%でございますから、したがって両方が同じだけ波及効果を昨年もことしも持っておったと考えていきますと、その段階になりますと、昨年上がっておりますだけに、今年の上げ幅が小さいことと対比しますと、対前年比では数字が小さくなってこなければいけないはずだと思うのでございます。その他のいろんな要因を捨象しなければなりませんけれども、捨象して考えればそうなるはずであって、そうであるとすれば、ただいま御指摘のように前年対比が五・何%という開きでございますけれども、今度は逆にその開きが縮まってくる段階があると期待しても、理屈の上では無理でないはずでございます。それでございますから、私がもう腹の中ではあきらめているんだろうというお話でございましたが、そうではございませんで、そうなってもおかしくはないではないかという気持ちが実は私にございますので、それで四・八%というのを何も放棄することはないと考えておるわけでございます。それから、それはどうも正直ではないではないかと言われることにつきましては、私が、ことしは四・八はもうとうていむずかしいので、あらためてこのくらいということを申し上げましたら、その結果は、どうもやっぱりあいつもああ言っているから、うちもこのくらいはいいんじゃないかということになりそうでございまして、これは御家庭の奥さま方のためにもここはひとつ四・八%でがんばらしていただくということでやっていきたいと思っております。
  112. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一問だけ。実際問題といたしましてそれがくずれているのです。おそらくここにいらっしゃる方はあまり御存じないと思いますけれども、キャベツなんかいまこのくらいのが一個五十円です。大根が八十円から百円に上がりました。もう少し安かったのです。ところが米価が上がるということを見越してこの二、三日別から上がってきているわけですね。去年は九月からずっと野菜が上がっていきっぱなしだと、さっき食糧庁が正直におっしゃいましたけれども、それと同じことがもう出てきているのですね。ですから、それでは長官に伺いますが、いまの四・八%を維持するという中には、せんべい、うどん、パン、そういうものは全然上がらない、野菜も上がらない、ただ消費者米価が八%上がった、これはしかたがない、この程度ならまあ四・八%が維持できる、ほかのものは入れないでその程度ならできる、そういうお見通しですか。そうじゃなくて、ほかのものが上がってもまあまあこの程度は維持できるというお考えですか。たいへんお答えにくいかもしれませんが、ちょっと私たち知っておきたいことでございますからお聞かせ願いたいと思います。
  113. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、消費者米価がかりに八%上がりますと、やはり統計的にはそれだけで〇・三二%でございますか、あるわけでございますけれども、おそらく従来の経験から申しますと、これは〇・三二ということではなくて、その倍くらいの波及効果は、何ということははっきり申し上げられないですけれども、何やかやであるということは覚悟をしておかなければならないだろうと思っております。それは、私の申しますことは、十月、十一月あたりが、その前月、前々月対比でこうなっていくであろうということでございます。ところで、四・八%というものは対前年比を言っておるわけでございますから、昨年の十月というのは一四・四%を中心にもっと大きく踏み上げたわけでございます。そこで、昨年の対比では、前月対比はともかく、前年対比ではそんなに大きくならないはずではないかと、どうしても自分の頭で考えますとそう思われます。それでそう申し上げておるのでございます。
  114. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 長官も時間がないでしょうから、私はちょっと指摘しておきたいのですが、八%にとどめたのはもうせい一ぱいだったという御感覚ですか。もっとこの際、逆ざや、地域の格差を縮小をしていくことは私も賛成です。それは配給制度という制度をとっている以上はそうあるべきだと思うのですが、しかし、現実にある百五十キログラム当たり五百十五円という格差ですね。これを、逆ざやの分を不統制だということも言いますが、農家が売ってまた買ったほうが安いんだ、そういうような事実があるのかということを調べてみると、それはない。だから結局、理論的にそういうような不統制は出てくるのであって、事実問題としては、政府に売っておいて、政府から買ったほうが安いからそうしょうという実例はないのですね。ですから、ことしに限って逆ざや解消の問題を強く取り上げなければならないというのが、やはり総合予算主義だ。そういう立場を押していけば、やはり米価を相当引き上げなければならない。それでもまだ、完全解消は九・三%ですから、あと一・三%分くらい残っておるという田中食糧庁次長の話ですが、しかし、逆ざや解消の分はことし一年で、あるいは来年で完成するというような年次計画を持っておるのかどうか知りませんけれども、こういうように物価が上昇ぎみに移っていくときには、そういうような問題はやはりもっと長期的な解決方策で処理していくべきじゃないか。だから、生産者米価が上がった分だけ国の財政で持てという理屈もありますが、それは言わないとしましても、逆ざや解消をこのときにやっちまうんだというような、そういうようなかまえでは、やはり物価というものは、四・八%の上に波及効果は〇・三だとおっしゃるけれども、事実問題としてはそれの倍以上のものが物価指数の上にあらわれてくることは明らかなんですから、そういうような点から考えた場合には、私はどうもやはり総合予算主義にこだわって、物価上昇に対する抑制策を政府としては第二義的に考えているのではないかという印象があるのですが、八%というのは宮澤さんがもうぎりぎりにがんばって、最後の数字だというふうに理解せざるを得ないのですが、その点をお聞かせ願いたい。
  115. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 やはり問題は、生産者価格が五・九%引き上げられたところから出発しておると思います。この点につきましては、当委員会ではそうではございませんでしたが、農林水産委員会などでは超党派で、生産者価格はより高いほうがいいという御主張でございまして、結局五・九というところで落ちついたわけで、これについてはいろんな問題が実はございました。それを前提にして考えますと、八%というのは、微力ではありましたけれども、私としてはどうもやむを得ない結果であったと思っております。それは理由は二つございまして、一つは御指摘のように逆ざや解消でございますが、その逆ざや解消が、当然、御承知のように財源対策になっておるわけであって、そうしておきませんと九百万トンという米が買えないということになるわけでございます。それはしかし、総合予算主義をくずせば両方とも問題が片づくではないかと言われますれば、私どもの考えておりますことは、こういう形で問題を提出することによって、来年、この長い間の制度についての改善をはかりたいと思っておるわけでございます。その改善をはかりました結果、これはよくわかりませんが、ある程度制度なりやり方が変わってくれば、その結果消費者にとってそれが損になるであろうか、得になるであろうかということですが、私は価格の面、品質の面で消費者がある程度いろんな選択ができるということから考えますと、消費者のために決して不利にはならないという、私はそういう見通しに基づきましてこの問題を提起しておるわけでございます。
  116. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 生活局長にお尋ねいたしますが、総理府の家計調査によって、家計米価方式の可処分所得の伸び率がどうだということを積算をしておいでになるわけですね。これは、調査対象は戸数として幾つとっているということを御承知ですか。
  117. 八塚陽介

    ○八塚説明員 きっちりした数字はちょっとあれですが、約八千戸というふうに聞いております。
  118. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 八千二十八というのが正式の数字だというふうに聞きます。その中で約五千世帯が勤労者世帯、こういうようなことで、全国の百十六の市、五十四町村にわたって抽出調査をやっているわけですね。だから、第一から第五にかけましての階層分類は実態に基づいて分類をするということですが、この調査対象を、かりに一分類の人あるいは五分類に該当する人――これは、調査対象を、全面的な悉皆調査になれば全体が把握されるわけですけれども、それを抽出調査でやってまいりますると、その調査のやり方によっては正確さを欠く統計の資料が出てくると思うのです。したがいまして、調査対象を一分類に入る人とか、そういうようなのは調査の初めから予測はしないでしょうが、一分類なりあるいは五分類に入る人は大体想定をしまして抽出調査をした結果は、実態とかけ離れたような数値が生まれてくるということも理論上はあり得るわけですね。ですから、八千二十八世帯で、この総理府の家計調査報告というものがはたして実態に即応しているものだと国民生活局のほうでは見ていらっしゃるのですか。その分析をされたことがありますか。
  119. 八塚陽介

    ○八塚説明員 私も統計についてはあまり造詣が深くないのでございますから、いま先生のお話しになりましたことに対して的確にお答えいたしておるかどうかは問題でございますが、第一点の問題であろうと思いますが、全体として約八千戸というサンプルが一体全国民の世帯を適当に代表し得るかどうかいう問題につきましては、もちろんこの調査が、たとえばいろいろな特定の世帯を除いたりいたしておりますから、その全国民の世帯ということをどう考えるかということにもなりますが、やはり大体信頼していい抽出方法あるいはサンプル数であろうというふうに考えております。  それから、そのうちの各分位の代表性の問題でございますが、この各分位の中で、あらかじめこの人は第一分位に入るであろう、この人は第二分位に入るであろうということで抽出しておるのではもちろんなくて、全体をやりましたあとで、五つに収入別で分けておるわけでございますから、これは先ほど私どもの長官も申し上げましたように、逆に、毎回同じ人が同じ分位の中に入っていくということではないわけでございます。そういう意味におきまして、私その点的確にお答えしておるか、ちょっとおそれますが、特に分位の中での代表性というのが問題になるというふうにもちょっと考えられないのでございます。
  120. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 私がそれをちょっと疑問に思ったのは、とにかくなだらかなカーブ、正常曲線を描かなければならないものだと私は思うのですよ。というのは、第一分位と第五分位が少なくてまん中の第三分位に該当するものが多くなるような、そういうような状態が国民の階層分布ではなかろうかと思うのです。ところが第三分位というものはパーセンテージが非常に低いですね。一七%ぐらいだったと私は思うのですが、そういう点から見ますときに、はたしてこの抽出調査の結果あらわれてくるものが正しい数値として認められるかどうかという問題、これは総理府の統計局を呼ばなければ論争になりませんが、そういうような疑問を率直に持ちますから、それで、国民生活局のほうでひとつ、正常曲線を描くような分類になるのが実態ではなかろうかと私は思うのだが、もう少しそこら辺を検討してみていただきたい。これはそういうことでよろしいですか。
  121. 八塚陽介

    ○八塚説明員 検討はいたしたいと存じますが、いま念のために、これはあるいは速記をとめていただいてお聞きしたほうがいいかと思いますが……
  122. 八百板正

    八百板委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  123. 八百板正

    八百板委員長 速記をつけて。
  124. 八塚陽介

    ○八塚説明員 私どもの伺っておりますのでは、たとえば八千世帯ことし対象を選んだ。といたしますと、八千世帯からそれぞれ個票をもらう。その個票の中の収入の順序でそれを並べる。そうして、五分位ということをやる場合には、その順番に並べたものを五つに戸数で等分していくということでございます。そうしますと、大体常識的には、高額所得者がそう急に下へ落ちることはないわけでございますけれども、それにしても収入の年による変動がございますから、人によっては前後、上へ行ったり下へ行ったりするということで、必ずしも特定の個人にとってはいつも第一分位に入っておる、第二分位に入っておるということはないわけでございますが、全体の中での五分の一の数というのはまさに等分の五分の一ずつということになってまいります。
  125. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そうすると戸数の上では等分比になっていく、実態の上ではそれはウエートがちょっと違ってくるというかっこうになりますね。
  126. 八塚陽介

    ○八塚説明員 いまのウエートとおっしゃいますのは、たとえば第一分位の所得の伸びが高くて、あるいは第五分位の所得の伸びがかりに低いといたしますと、ことしの第一分位のいわば総金額は昨年に比べて全体の中で占めるウエートは大きくなる。そういう所得の伸び方のそれぞれの特徴がございますから、毎年その曲線はあるいは変わってくるかもわかりませんが、戸数というものを通常ウエートと考えますと、それは毎年同じ五分の一ずつということになるわけであります。
  127. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 あらかじめ調査をした結果二〇%ずつに五段階に分けていく。その中で第一分位に属する基礎的な数値をそのままに固定しておったら、これは第二がふえていくし第三がふえていくことになる。だからこれを上げていくわけですね。ことしはこの段階からこの段階は第一分位だというふうに上げていくのですか。そういう操作をとるのですか。
  128. 八塚陽介

    ○八塚説明員 平均しましてたとえば前年より所得が一〇%ふえる、そうしてかりに各階層同じようにふえるとすれば、個々の個人の入り組みは別でございますけれども、全く同じように水準が上がってくるだけでございます。たとえばことし一万円の所得の方が第一分位にいる。そして来年その人がかりに一万一千円の所得になる。ところが全体は同じように一〇%上がっておれば、たぶんその人はその次の年に一万一千円になっても第一分位の分類の中に入ってしまうわけです。かりにある年に一万一千円というのは第二分位の方であった、そうして全体が水準として上がらない場合に、その個人はその年はかの人と違った所得の伸びがあるために第三分位に移るとかいうことはあり得ると思うのです。
  129. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 勤労所得者であっても、たとえば田んぼを持っている場合がある。これは一反歩以上持っている者はオミットするとかなんとかで、そういうようななにをやるし、専業の農家であるとかあるいは漁業家であるとか林業家であるとかいうのは除いて計算をしているわけです。そうなってきますと、可処分所得の計算をしていく場合にナショナルベースでとらえていく立場から見ますと、それは都市勤労者の場合には大体の傾向値は出てくると思うのですが、全体的な国民の立場でその指標を見た場合には問題があるのじゃないのですか。
  130. 八塚陽介

    ○八塚説明員 家計調査を、全体をながめる場合にどの程度使えるかということは、いま御指摘になりましたようにこの家計調査の対象の方の性格に相当よるわけでございます。したがいまして、五分位を議論するときには、一応従来総理府が勤労者世帯のみをやっております。それは五千戸でございます。それからその他に、全世帯ということでその他は含んでおります。そういうものを使っていいような場合にはそれを使うということで、使い方につきましては相当慎重でなければならぬ。ただ労働省あるいは厚生省等にもいわば家計を問題にするために調査がございますが、やはり総理府でやっております調査が一応普遍的で、一番汎用性を持っておるのではなかろうかというふうに考えられるわけでございます。
  131. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 指標の出し方は専門的な形になっていきますので、もう時間もありませんし、また私のほうでも研究してみたいと思うのですが、いまの数値の上からいいまして、はたしてそれが、八千二十八全国でとってサンプル調査をやって、それで階層別に区分をしてやっておりますと、そういう正確さというものがどの程度あるのだろうかというふうに私たちは疑問を持つ点があるんですよ。特に固定して考えないわけですけれども、第一分位の階層に属する人たちなどは赤字が非常にふえておるという実態が出ている中で、今度徳用米も上げるわけですから、そういうような家計に及ぼす影響度というものは、マクロ的に考えたら、物価全体からは〇・三しか影響度はないといってみても、そういう第一分位に属する人たちの場合にはこれが五%にも六%にも影響を与えるという事態が生まれるわけですね。ですから私は、それぞれの階層ごとに影響度合いというものを出して、その上から低所得者層に対してはこういうような政策でいくのだということで臨まなければならないと思うのです。その場合に徳用上米を五%台にするとかなんとかいうのも、そのような尺度から、家計のいわゆる可処分所得の上昇を見ながらこういうふうにしたのだという説明でもあれば別ですが、そういうようなのは今度の米価算定の基礎にあたってはどの程度考慮されているのですか。
  132. 八塚陽介

    ○八塚説明員 第一分位のほうの六月なりの、あるいは最近の調査でマイナスが出ておるということ自体は、これはいろいろな原因と申しますか、構造的な問題、あるいはそのマイナスがボーナス等の場合にどの程度消えるか、そのようなことがございますが、いずれにしろ家計でマイナスが出ておるということは問題でございます。ただその問題は、一般的な商品である米価のときに、そのマイナスを米価で何らかカバーするという性質のものではなくて、それはそれでいわゆる別の低所得対策というものがなければならないと思うのです。そこで、その問題は別にいたしまして、可処分所得の家計米価を検討いたします際に、お話しのとおりにいわば平均のところ、総合のところで議論をいたしておるわけでございますが、なお分位別に、たとえば一応同じような考え方で試算をいたしてみますと、実はいまくどく申し上げました絶対水準の低さは別の問題といたしますならば、最近の経済の動向では、第一分位の方のほうが可処分所得の伸びが大きいわけでございます。絶対水準の問題をかりに捨象いたしますならば、実は総合でものごとを考えているほうが一応シビアーな態度になるということになろうかと思います。
  133. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 その問題はそれでおきます。  田中食糧庁次長にお尋ねしますが、いまの配給状態を見ておりますと、買い入れについては統制、販売は自由のような形になってきておる。しからばやみ米というものが一体どういうふうになっているのかというのを、これは農林省の統計資料を調べてみますと、四十二年産米で政府以外のところに販売をした数量というのは五・五%の七十九万トンという資料を見たのであります。ところが消費者の実態を調べてみますと、東京あたりで三〇%、それから大阪あたりでは七〇%の、私はやみ米を買っておりますという数字が、消費者の上からは出てくるわけですよ。一体消費者はどういうような取り方、ものの考え方をしているかというと、配給米を持ってきてくれと言えばまずい米を持ってくる、だからいい米を持ってきてくれということで米屋さんに頼む。頼んだら結局米屋さんは、これはやみ米でございますから、高い米でございますからということで、うまい米だからということで、そういうようなことで配給をしてくれる。だから事実上は、政府の登録業者がそういうような形で横流しをしているという状態が今日の配給機構の中における実情ではなかろうか。そういうように考えますと、一体食糧庁は、そういうような配給制度の乱れに対しまして、今日までどのような取り締まりをやっておいでになったのか。この問題はやはり政府の責任だと思うのですが、そういうような点についてどういうふうにこれから対処していかれるつもりかをお聞かせを願いたい。  それからもう一つは、うまい米を食わしてくれというのが消費者要望ですね。うまくて安ければいいわけです。うまい米というときには、これはいろいろの米のつくり方にも関係があると思うのです。いまのやり方を考えてみますと、有機質の肥料はほとんどもう畜産がふるいませんからやらない。だから化学肥料、特に窒素系の肥料をやって、そして追肥をやりながら稲を育てておる。そうすると虫がつきますから農薬をどっさりかけて、まあ生産費は農林省調査でも二五%くらいの、二五・四ですか、生産費がかかるようになっている。上昇をしているという数字が出てきておる。そういうようなつくり方をしておったら、これはまずい米しか食えない。しかし、そんなに肥料が売れる、あるいは農薬が売れるということは、それだけそういうような会社はもうかるわけですから、そういう体制下の米づくりがいま農民の上におおいかぶさってきておるのではないか。だから大衆というのはまずい米を食べるようなそういう体制の中にあるんじゃないかと私は思うのですが、消費者にうまい米を食わしてやることが食糧庁としてできますか、この点をお尋ねしておきたいと思うのです。  そこで品種の上からいいましても、コシヒカリとかササニシキとか、ササシグレとか旭とかというのはうまい米だ。ところが旭などというのは、どの程度政府に売っているのかというようなことを調べてみると、ほとんどこれは売っていませんね。コシヒカリとササニシキは上位のところで政府に、生産をして売っているようですが、そういう立場から考えてまいりますと、一体消費者食糧庁としてはうまい米を食わしてやることが将来においてできるのかどうか、この点を二点だけお尋ねしておきたいと思います。
  134. 田中勉

    田中説明員 食糧庁配給いたしております米の現状についていろいろ例示的に御指摘をいただいたわけでありますが、確かにやみ米がどの程度かということはいろいろ先ほど先生御指摘いただいた数字で私ども発表をいたしております。あれは、生産高から、現実に農家が実際に消費したであろうという数字を一応算定いたしまして、それを差し引いたものの中で政府に売ったものが幾ら、したがってあとはやみ販売と称するか、そういう形になっているということで推定したのが七十万トンということでございます。最近四、五年の傾向を見ますとこの数量は非常に減ってきていることは事実でございます。結局政府売り渡しの比率が高まってまいりまして、政府に売ることが農家としては一番確実であり、しかも安定的であるという傾向が今日出ておるわけであります。  それから、お米屋段階においてのやみ米と称する配給が行なわれているという御指摘でございますが、総理府の家計調査を見ますると、これは全国でございまするけれども、大体ここ数年三〇%程度が非配給ということになっておるわけであります。この非配給というものの内容を分析いたしますると、先ほどの七十万トン近くの農家の手から放れるやみ米があるいは一部入っているものもございましょうけれども、御指摘のございましたやはりお米屋段階において、この米は自由米ですよ、やみ米ですよ、こういうような売られ方をしているものが非配給になっているという面が多々あると思います。大阪等の実例でだいぶ高い数字をおっしゃいましたのですが、根拠は私よくわかりませんけれども、そう高い数字が必ずしも出ているとは思いません。いずれにいたしましても家計調査等から見ましても三割程度のものはあるようでございます。  そこで、配給関係に対する食糧庁指導なり今後の販売業者に対する指導体制ということについて、どういう観点からこの問題について考えていくかということでございますが、何といたしましても配給業者がそれぞれ配給品目について、やはり消費者に対して一つの自党を持つということが何よりの一つの柱であろう、こういうぐあいに思っているわけでございます。また消費者の側におきましても、最近の傾向からいたしまして、配給品目について、それぞれ大都市等におきましては配給精米の批判会とか、あるいは配給改善委員会とか、随時県庁を主宰としたそういう場も設けられておりますから、そういう場へいろいろ家庭のほうからの苦情が持ち込まれて、それによってお米屋の反省を求めるという体制も実はとっているわけでございます。しかし、そうはいいましても、消費者の側におきましても、うまい米は高くてもいいから持ってきてほしいというようなことになりますと、勢いお米屋さんのほうで少し白度を加えてくるとか、いろいろな手を加えた形において売り込むという傾向は、これは否定できないと思います。こういう問題につきましては、配給制度全体をどうするかという改善の一環としてもメスを入れていかなければならぬ、そういうぐあいに思いますので、先ほど武部先生からもいろいろ御指摘がございましたのですが、今後の配給制度改善にあたりましては、消費者がお米屋さんを同一市町村内ならばどこでも選べるというふうな一つの仕組みも用意しながら、この問題について十分配給統制の意義が末端まで理解を深められるという形に持っていきたいと思うわけでございます。なお、目に余る販売業者のいろんな悪質な行為等につきましては、それぞれ都道府県知事責任範囲内におきまして是正措置なり矯正措置をとってまいるということを考えておるわけでございます。  それから第二点の、うまい米を現在の食管の制度の中でどういうぐあいに取り入れていけるかどうか、将来の見通しというようなことがございました。端的に申し上げますると、やはり配給統制というものはどちらかというと画一的になりやすいものでございます。そういう点におきまして、うまい米を現在のような完全な直接統制の中に相当勇気をもって取り入れるということになりますと、うまい米は高くすることはよろしいのですが、まずい米はそれじゃ生産者価格を一体どうするのだというような問題にもくるわけでございまして、この問題についてはやはり統制のあり方とも関連しながら今後検討を進めていかなければならぬというぐあいに考えております。先般農林大臣からも、新農政の推進、その中におきまして、米の管理のあり方というようなものとも関連をいたすわけでありますが、やはりうまい米を消費者にできるだけ配給をするのだというような考え方も出ているわけでございますが、それらはやはり管理のあり方とも関連してこういう問題に対して取り組んでまいりたい。  ただ、一つここで申し上げておきたいと思いまするのは、現在直接統制下におきましても、やはり府県の奨励品種はかなり限定をされてきております。その府県の奨励品種も、やはり奨励する一つの目標といたしましては、量も質も大体兼備したものというのが現在大多数を占めていると私は思うわけでございます。もちろん量のみに片寄り過ぎた傾向もあるわけでございますが、奨励品種の現在の普及状況から見ますと、従来質も量もかなり兼備しているというぐあいに私どもは考えております。その中におきまして、御指摘のたとえばコシヒカリ、ササニシキ、こういう、いわばその地帯におきましては確かにりっぱな品種があるわけでございます。これらもその産地を離れて、たとえばコシヒカリなんかはいま宮崎県までいっておるわけでありますが、そういう極度な地帯に参りますと、本来の味が必ずしも十分発揮されておらない、こういうことも考えていかなければならぬと思うわけでございます。
  135. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 もう時間がなくなりましたので、あとは各省庁から来ていただいておりますから、お答えをいただかないでそのままお帰りいただくのも気の毒だと思いますから、一言だけずつお答えを願いたいと思うのです。  まず郵政省ですが、きょうは柏木監理官がお見えになっていらっしゃるようですが、電話料金は来年十月から、予算要求で、一二・五%上げることを自由民主党の通信部会で大体決定をされておるようですが、これは四十四年度の予算要求との関係がありますから、そういうような立場で予算要求をなさったんだと思いますが、それが事実かどうか。それは今後ずっと推移していかなければならぬわけですが、四十二年度は大体七十一億程度の黒字になるという見込みであったものが二百三十七億も黒字になったのです。だから、四十三年度の計画では六十一億の赤字見込みだということなんですが、これもやってみなければわからないのじゃないか。国民大衆がそういうふうに考えているのじゃないか。そういうような点から、黒字なのに一二・五%も上げる必要が一体あるのだろうかということを国民は考えているのですけれども、それを予算要求をされた事実があるのかないのか。  それから国鉄の場合は、これは運輸省のほうですが、総裁の発言というのはあれは個人発言だということで、国鉄財政再建推進会議と大蔵省の財政制度審議会でそれぞれ検討して、十月の中下旬にそれぞれ意見が出る、こういうことですが、一体利用者負担という立場からこの問題を考えていこうとしておられるのかどうなのか。特に私鉄、バス、タクシー、こういうような問題はどうされるか。上げるのか上げないのか、その方向だけでけっこうです。  そのほか、消費者物価の上昇の寄与率を調べてみると、食品関係が五〇%をこえているのです。主食だけじゃありません。ほかのものも関係があるわけなんだが、そういうようなものを総合的に農政も展開をするということを言われているのだけれども、一体そういうようなのが実行性がどの程度期待できるのか。四十二年度の寄与率をずっと調べてみましたが、何が幾らというような数字が出ておりますけれども、国民は野菜とか肉とかそういうようなものに対して期待ができるか。これは一括してお答えください。それは今後においてはだいじょうぶだということであれば安心しますから……。それができないということであれば何をか言わんやということであります。  あと戸叶先生が控えていますので、大蔵省のほうに消費者金融の問題で質問をする予定でございましたが、これはもう時間がありませんから省きたいと思います。それと通産省にも出てきていただいておりましたけれども、これも省略をいたしますが、いまの物価の問題に関連する分だけお答え願いたい。
  136. 柏木輝彦

    ○柏木説明員 郵政省からお答えいたします。  ただいままず御質問がございました事実の関係につきまして御説明をいたします。  電電公社のほうでは、明四十四年度の予算を概計といたしまして、つい最近私のほうに書類で提出されました。この中では明年の十月から料金の中身をいじりまして、結局これは上げるもの下げるものいろいろございますが、収入の総額といたしまして、大体現在の年間収入を基礎にいたしますと一二・五%という計算になります予算概計を提出してございます。これは今後私のほうで物価関係省庁並びに大蔵省当局と、予算案といたしましてこれを調整協議いたしまして、いずれ政府の物価対策あるいは予算編成、財政の問題等勘案いたしました姿におきまして今後詰めていかなければならぬかと思っております。  それで収入の現在の状況は、四十二年度の決算におきましても、また四十三年度、これはまだ年度途中でございますので的確な予想はしかねますが、御指摘がありましたように、四十二年度の予算に比べまして、決算といたしましては二百四十何億かの収支差額が出ております。これは主といたしまして収入の見込みに問題が多少あるわけでございますが、そのほかに年間におきましてどれだけ定められた工程を手順よくやるか、つまり借家を建てて収入がそれだけ早く上がるというような努力は公社といたしましてもいつもしていただいておるわけでございますが、そういう要素もございます。また景気の見通しにつきまして若干の差があったという点もございますが、結果といたしましては、先ほど申しましたような収支差額の増が出ているわけでございます。また四十三年度、本年度につきましても、まだ年度途中でございますが、現在のところまである程度の収入が、予算として見込みましたものよりも出ております。これが年間通じましてどういう姿になるかというところに御関心がおありかと存じますが、大体こういうラフないままでの状況を延ばした形で見ますと、数十億ばかりの増収というものが出てくるかと思います。しかし一方支出のほうを考えてみますと、こういう増収をするための販売なりあるいは電話架設ということに伴う経費も当然出ておりますし、もともと大きい要素といたしましては、人件費におきます仲裁裁定の実施の問題が毎年あるわけでございます。これは現在の予算の制度といたしましては、年度当初からこれを予算に入れておくということはいたしておりませんで、年度の経過におきまして節約なりあるいは予備費とか、その他増収等を全部洗いざらい入れましてこれに充てていくというものでございまして、これは毎年二百億前後のものを見込まなければならぬというものもございますので、そういう要素を勘案いたしますと、本年度は増収として予算よりも若干多く出る形になることは一応予想されましても、結果的には赤字になるのじゃないか、公社のほうでも私のほうでもいまそういう見方をしておるわけでございます。
  137. 町田直

    ○町田説明員 まず、国鉄の例について申し上げます。  来年度から上げるのか上げないのかというお話でございますが、その点につきましては、先生もおっしゃっていただいておりますが、国鉄財政再建推進会議というものをやっておりまして、その結論を見て決定いたしたいということでございますので、現在の段階では何とも申し上げられません。ただ、いま国鉄財政再建推進会議検討しておりますのは来年度のことだけではございませんで、現在の非常に最悪な事態になっております国鉄財政を、かなり長期にわたりましてどうやって再建するかということを検討いたしておりますので、その中に運賃の要素も当然含めて検討するということになっております。そういう経過で、あらゆる方面から根本的な解決策を考えたいという検討をいたしております。そういう経過だけを申し上げておきます。  それから、私鉄につきましては、先ほど御指摘の大手十四私鉄の定期運賃の改定につきまして、ことしの四月一日に定期運賃の改定申請が出ております。これにつきましては、公共料金抑制という趣旨を十分尊重いたしまして、かつその各私鉄の収支状況あるいは輸送力の増強工事等を検討いたしまして、慎重に処理いたしたいというふうに考えております。方向としては公共料金抑制という面で検討いたしたいというふうに考えております。(村山(喜)委員「上げないのか」と呼ぶ)検討中でございます。  それから、その他中小私鉄の問題もございますが、御承知のように中小私鉄につきましては、これはそれぞれの私鉄が非常に経営が悪化しておりまして、もう廃止したいというようなところが続出しておるわけでございます。しかし地方の住民の福祉の問題もございまして、直ちに廃止するということも非常に問題がございますので、これらにつきましてはできるだけ合理化をして存続させるということで考えておりますが、その一環といたしまして運賃の問題も取り上げております。合理化をした上で、さらに運賃値上げが必要な中小私鉄につきましては、それぞれの場合に経済企画庁とも御相談いたしまして、個々の場合に考えていきたいという考えでございます。
  138. 菅川薫

    ○菅川説明員 自動車局の旅客課長でございますが、タクシーの運賃改定の問題につきましては、東京あるいは大阪というような大都市の場合には、現在旅客サービス上のいろいろな問題があるものですから、そういう運賃改定という問題に入る前に、旅客サービス改善とか、そういう方向のことを考えるべきではないかというような考え方を現在いたしております。ただ、その他の地方部におきましては、非常に経営状況が悪いとかあるいは周辺との運賃面でのアンバランスがあるというような場合には、逐次経済企画庁と協議いたしまして検討していきたい、そういうぐあいに考えております。  それから、バスの問題につきましては、御承知のように現在地方においては人口流出の問題とかあるいは自家用車の普及とかで、バスの輸送量というものが減ってきまして、経営上いろいろの問題が起こっております。そういう面で特に経営上の問題があり、輸送の確保という点からも問題のあるような地域については、これも経済企画庁と協議をしながらその問題について検討していきたい、そういうふうに考えております。
  139. 八塚陽介

    ○八塚説明員 食糧価格の高騰が消費者物価指数に非常に寄与しておるという御指摘はまさにそのとおりでございまして、私どもといたしましても農林省に、いわば需要の伸びる農林水産物について生産の面あるいは流通の面から一そうの御努力をお願いしたいということをかねがね申し上げておるわけでございます。おそらく農林省のほうでもやる気は十分あるのだと思いますが、何ぶん第一次産業はそう急に合理化をすることはむずかしいというようなこともあって、企画庁のほうから見ますならばやや歯がゆい状態でございますが、ただいまの段階では、総合農政というようなことを農林省のほうでもいわれて、従来よりも一そう御努力になるようでございます。いまさらできないといってもらっては何のための農林省かというようなこともありますから、おそらくおやりになるということを期待いたしておるのでございます。
  140. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 これで終わりますが、いま検討中、検討中の課題が非常に多いわけですが、中身を聞いておると、まことにやむを得ざる立場にありますので値上げを認めますという中身であります。だから、そういうような点から考えていった場合には、物価の歯どめというものはいまの経済体制の中においてできないような情勢に立ち至っているということを私たちは考えなくてはならない。そういう意味において自己防衛の運動というものをやらざるを得ないわけですが、今度八%の消費者米価の値上がりというのが物価値上げの一つの突破口として、これからどんどんそれをつくり上げていく材料になっていくということを考えますと、まことに残念でたまりません。そういう意味において、これは政府が決定権を持っておるわけですけれども消費者物価の値上がりの傾向に拍車をかけるものとして、私たちとしては反対であるということを申し上げて終わりたいと思います。
  141. 八百板正

    八百板委員長 戸叶里子君。
  142. 戸叶里子

    戸叶委員 時間がないようですから簡単に二つの問題だけを伺いたいと思います。  まずその一つは古米の問題でございますが、いま多くの人たちが古米の値上げと申しますか、新米と同じ扱いをすることに対して反対をしていることは御存じですか、そしてお上げになるおつもりですか、この点をまず伺いたいと思います。そしてまた、もし上げるとするならば、どうしても上げなければならない理由を述べていただきたい。
  143. 田中勉

    田中説明員 今回の消費者米価改定にあたりまして、現在持っておりますものを古米というのは、まだ新米が出ておりませんからいささかおかしいのでありますが、要するに昨年産の繰り越し米と、この秋とれます新米を同一に上げてまいりたいという考えを持っておるわけでございます。消費者その他の面から見まして、古米の処理については相当いろいろな苦情が出ていることも承知はいたしておるわけでございます。  それから、私どもが前年産の繰り越し米を、いまの管理制度の中におきましてやはり当面新米と同一に取り扱うというたてまえの根拠といたしましては、米穀年度、たとえば十一月一日を過ぎますと、従来の取り扱い方は、私のほうは一応古米であり新米であるというようないろいろ配給操作上の考え方をとっておるわけでございまして、実際問題として十一月一日を越したものが直ちに新米に比べて非常に遜色があるというような考え方はとっておりません。むしろ本来の古米が品質的にもいろいろ扱いにくくなる時期はやはり二度目のつゆ越し、たとえば去年の米でございますれば来年のつゆ越しということが一つの古米の品質認定上の問題になろうか、こう思っているわけでございますので、その点におきましては、両者の差別を設けて扱うという考え方は、いまの管理を行なっている以上これは適当じゃないのじゃないか。と申しまするのは、もう一つは、昨年の米を九百九十万トン買ったわけでございますが、食糧管理法の規定に従って配給するために、この米というものは昨年いわば政府が買ったわけでございますので、これをやはり配給操作に乗せていくという考え方をとっておるわけでございます。  それから、なお財政上の問題が一つあるわけでございます。総合予算主義がとられていることは先ほど企画庁長官からいろいろ申されたわけでございますが、今回の生産者米価の値上がり、また、その生産者米価の値上がりに伴いまして数量が、八百五万トンの予算ベースが九百万トン近くに買い入れが伸びるであろう、こういうことからいたしまして、総合予算主義ということも一応念頭に置きますと、この際新古米同じような値上げによって対処していくことが適当ではないか、こういう考え方をとっておるのであります。
  144. 戸叶里子

    戸叶委員 いまのお考えについて私議論をしたいんですが、ちょっと時間がないのでいたしませんが、こういうことはどうなんですか、何か国税庁の酒税課のほうで、国民の主食に古米を押しつけておいて、嗜好品の酒造用だけは新米というわけにもいかないし、しかし、採算の点からは、古米を市場に回すときには値引きも考えなければならない、こういうようなことを言っていられるということをどこかで私は新聞で読んだのですけれども、お酒をつくるほうに古米を回すときにこれは値引きをする、そういうふうなことも考えていらっしゃるのですか。これはおかしいじゃないかと思いますが、そういうことをお考えになっているかどうか、お伺いいたします。
  145. 田中勉

    田中説明員 これだけの膨大な繰り越し米があるわけでございますので、やはり前年産の繰り越し米につきましては、酒造用のものにつきましてもひとつ活用を願いたいということで、国税庁当局に検討をしてもらっている段階でございます。その際、いま何かお読みになったものに、去年からのものについては値引きをするというような記事が出ておったようでございますが、これは酒米の価格の建て方と、それから主食配給の価格の建て方が全然違っておるわけでございます。酒米につきましては、従来伝統的に政府買い入れ価格、生産者から買った政府買い入れ価格、それに食糧管理のためのコストを加算いたしまして、いわば政府は損も得もしないという形において、ああいう酒米の価格をきめて今日まいっておるわけでございます。したがいまして、おそらく値引きというようなことばが出た背景には、昨年産米でございますが、昨年産米につきましては、昨年の売り渡し価格が酒米についてはきまっているわけでございます。また、ことしとれた米につきましては、ことしの生産者米価二万六百七十二円を基礎といたしまして、それに政府のコストを加えた価格で酒米価格を決定してまいるわけでございます。したがって、酒米の価格につきましては年産ごとに価格が違うということでございます。しかし、その価格算定のたてまえを貫いておりまするのは、その年の米の生産者買い入れ価格と、それに加えまするところの食糧管理の諸経費を全部加算いたしまして、何ら政府は損をしないという考え方で対処しているのが酒米の価格の決定の経緯でございます。
  146. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、具体的にいいまして、酒米の価格は大体どのくらい違うわけですか、消費者へ渡す場合と。
  147. 田中勉

    田中説明員 いまの消費者価格の売り渡し価格は、大体トン当たり十一万五千円くらいで卸業者に販売しているわけでございますが、酒米になりますと、大体トン当たりの十四万円くらいで売っているわけでございます。酒米価格は、それだけの差額が昨年産米についてあるわけであります。
  148. 戸叶里子

    戸叶委員 結果的にいいますと、酒米の価格も、その年にとれて、そのときにきめるわけでしょう、値段を。そうすると、そのときに一四・四%昨年度は上がってその価格がきまったわけですね。そうじやなかったですか。そういうきめ方じゃないわけですか。
  149. 田中勉

    田中説明員 酒米の価格につきましては、消費者米価がどのようにきまろうと生産者米価が基本になっている、生産者米価がどうきまるかということが基本になっている、こういうことでございます。
  150. 戸叶里子

    戸叶委員 それからもう一点伺いたいのは、先ごろ新聞によりますと、韓国からお米の要請があったというようなことの記事を読んだのですけれども、それは貸してくれというのですか、売ってくれというのでしょうか。貸してくれといったときはどういう処置をとるのですか。それからまた、お金に換算をしたときに、物々交換方式にするとか、それからどういう形をとるとか、そのときの金額、値段というようないろいろな問題が出てくると思いますし、それから、時間がありませんから続けて申しますと、たとえば米の国際価格というものがあるわけですね、タイのお米を中心にしてあるわけですけれども、その価格で向こうが要求するようなことがないかどうか、そういうふうにされた場合にはどうするか、こういうような点を、時間がないものですからたいへんに縮めて伺って恐縮ですけれども説明していただきたい。
  151. 田中勉

    田中説明員 むしろ端的にお答えしたほうがよろしゅうございますが、先般の日韓経済閣僚会議に農林大臣が参られましたところの応答を申し上げたほうがむしろ端的だと実は思うわけでございます。私ども大臣から承っているのは、向こうのほうの責任者から、韓国もことしは非常に干ばつであった、したがって、この干ばつ対策についてアメリカその他従来の輸入国からもいろいろ手当てをいたしておりますけれども、なお状況によっては今後日本にいろいろお願いすることがあるかもしれません、その節はよろしく、こういうような何か頼まれ方だったそうでございます。それ以上の段階の話は大臣からも承っておりませんし、おそらくそういうことで大体閣僚会議のお話が出たのだろうと思っております。  ただ、いろいろ何か伝えられておることがあるわけでございます。それにつきましては、貸してくれ、日本は米が余っているのだからそのまま現物を貸してもらいたい、それから、その現物を貸してもらったものにつきましては、将来何カ年間で、韓国の作柄が好転した場合にはこれを大体現物で返すというような考え方も、非公式な考え方として、日韓経済閣僚会議の前にわれわれもそういう話を非公式なルートから聞いたことがございますが、正式には、今度の日韓経済閣僚会議では、農林大臣が向こうの責任者からお聞きしたところにおいては、だいぶ干ばつがひどいから、いまはともかくとして、将来そういうぐあいに日本からいろいろ応援を願うということがあるかもしれませんので、その節にはよろしく、という程度の会談で終わったというようなことを開いております。
  152. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、まだ決定してないということがわかったのが一つと、それからもう一つは、そういうふうな申し入れがあれば貸してやる、貸してやるかわりにそれは大体お米で返されるのだということですね。そうすると、どのくらいのお米を向こうが話し出したかということをおわかりになっていらっしゃいますか。
  153. 田中勉

    田中説明員 最終的には、大臣とのときには数量も何も出ておらないわけでございます。ただ、韓国のほうではことし干ばつで三十万トン、四十万トン不足だというようなことから、アメリカからどの程度買うか、あるいは日本から場合によると、相当な繰り越しがあるならそれを貸してもらおうかというようなことが、何か非公式な形でその前に伝わってきたことがあるわけでございます。数量の問題等については、確たるものは私ども聞いておりません。
  154. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一点だけ伺いますが、食糧庁としては、何トンくらいまでの申し入れに対して何カ年くらいまで貸してやれるというその見通しをお持ちでございますか。と申しますのは、先ほどわが党の委員が質問されましたように、お米が余って困るなんと言っている国はどこにもなくて、やはり備蓄ということがこれから必要じゃないかというようなことが言われているときでございますし、私も、備えあれば憂いなしというような、そういう考え方でなければいけないじゃないかという気持ちを持っておりますものですから、この点を伺いたいと思ったわけであります。
  155. 田中勉

    田中説明員 どの程度の数量の申し入れがあればそれに応ずるかというようなことについて、どういう考えがあるかというお尋ねでございますが、その点につきまして私どもお答えがなかなかできにくいわけでございますが、いずれにいたしましても、現在持っております米は、食糧管理のために食糧を確保するということから出て私ども確保いたしておるわけでございますので、その食糧管理法の目的に支障のない範囲においてそういうものを検討するということは、将来の問題としてあり得ると思いますけれども、数量がどの程度かというようなことにつきましては、どの程度の申し入れがあるのかよくわかりませんが、向こう側におきましても、やはり相当海外から多量のものを入れるということになると、国内価格に対して非常な影響を与える、いろいろ国内事情もずいぶんあるようでございますので、そういう御質問に対しては、ちょっとその数量問題については抽象的で非常に恐縮でございますが、やはりあくまでも食糧管理の目的のために政府が米を買っておるわけでございますので、食糧管理を円滑に操作していくというふうな観点から、備蓄とかいろいろな問題が国内にあるわけでございますから、そういうものを十分配慮した上でそういう問題に対処していきたいというふうに考えております。
  156. 八百板正

    八百板委員長 有島重武君。
  157. 有島重武

    ○有島委員 先ほどから古米の話が出ておりましたけれども卸売り業者のほうからの申し入れによりますと、政府の目標量を処理することができない、これは九月二日でございましたか、そのように言っておるようでございますけれども、今後古米の処理についてどのようにお考えになっておるか、このことを伺いたい。
  158. 田中勉

    田中説明員 私は食糧管理の立場にありますので、あまり古米古米とは言わない、つとめて繰り越し米という言い方をさしていただきたいと思います。繰り越し米が二百六十五万トンくらい十一月一日に繰り越されるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、やはり繰り越し米につきましては、二度のつゆをなるべく越さないようにこれを管理していくことが適当ではないか、こういう考え方で今後の配給計画を進めてまいりたいと思っておるわけでございます。この点につきましては、先ほど御指摘ございましたように、米の販売業者等におきましては、消化できる限度は大体この程度であるというようなことで、政府は初めからもうそういう繰り越し米のたな上げを覚悟してやれというようないろいろな意見も出ておるわけでございますが、現段階におきましては、やはり私どもは、これだけの繰り越し米は配給するために政府が確保した米でもございますので、品質の見劣りが極度にしない、二度のつゆを越さない前において何とかこれをひとつ配給に乗せて、消費者なりお米屋さんの理解を得て、そういうことで進めたいという考え方でございます。もちろん、これにつきましてはいろいろ今後問題があろうかと思うわけでございますが、それらの問題につきましては、たとえば味は変わらなくても歩どまりは低下していく傾向は、過去のいろいろな資料その他から見ましてもいなめない事実もあるわけでございまして、そういう点についてのやはりきめこまかい配慮はしつつ、この問題は対処していきたいというふうに考えております。
  159. 有島重武

    ○有島委員 私が伺っておりますのは、いまの二度つゆを越さないようにするとか、配給計画を少しきめこまかくするとか、そういうようなことではいままでと何にも変わりはない、そういうお答えになりますね。何かここでもって一つの考えを具体化するかどうか、具体化するという計画はいま何一つないのか、無策であるのか、そのことをはっきり伺っておきたい。
  160. 田中勉

    田中説明員 無策と言われますと、いかにもほんとうに策がないようでありますが、やはり食糧管理をやっていく立場からいたしますならば、ある年においては繰り越し米が非常に多い、ある年においては若干この点が変わってくるというようなことが当然なければ、繰り越し米が相当量なければ、三、四年前のこの委員会でも御指摘を村山先生からいただきましたが、あまり先でないときに、四年間にわたって二百六十万トン輸入したというような、実績があるわけでございます。したがいまして、国内の繰り越し米が潤沢にあることがやはり望ましいと考えておるわけでございますが、それも度を越してまいりますと、味とかいろいろな問題について苦情が出ることも予想されるわけでございますが、何とかひとつ、前言を繰り返すようでございますけれども、いまの状態からいたしますならば、新米古米をあわせ配給することによって、新米の特色を生かし、また古米の特色も生かし、なるたけつゆ越し前に何とかしてまいりたいということでございます。
  161. 有島重武

    ○有島委員 いまのところは結局は具体的な策がない、そういう結論でございますね。
  162. 田中勉

    田中説明員 先ほど申し上げる以上のことはありません。
  163. 有島重武

    ○有島委員 これはまずいと思うんですね。それで、来年の見通しということもむずかしいでしょうけれども、最悪の場合にはこうなるであろう、最悪と言っていいのかどうかわかりませんけれども、その場合にはこうしよう、そういったことをやはり国民の前に示しておかないと、またその用意を明らかにしておかなければ、先ほどからもるる質問がありましたから省略しますけれども、非常に不安感を持って、思惑によって諸物価も上がっていくということがあるわけでございますね。これはぜひともあいまいなことでなしに、具体的な検討を開始されて発表されるように要望しておきます。  それから、これはもう結論的なことだけいま伺いますけれども、米の値上がりがどのくらい物価に波及していくかというようなこと、これを数値的に測定しておられるかどうかですね。これは生活局のほうに伺いたいのでございますけれども、先ほどの宮澤長官のお話ですと、これは退却していく軍隊の司令官をしておるようなものであるというようなことも言われましたですけれども、国民の側から見ますと、まるでこれは物価値上げのほうの大将をしておるのじゃないか、政府主導型の物価値上げであるということがしばしばいわれておりますね。そのことについてはっきりした釈明、お答えをしてもらいたいと思うのでございますが……。
  164. 八塚陽介

    ○八塚説明員 長官のかわりに釈明するというのはいささか任が重いわけでございますが、まず、消費者米価の値上げの波及をどう考えるかということは、これはもちろん配給米に当然計算されるわけでございますが、さらに、従来でございますと、あるいは今後も予想されるいわゆる非配給、これに影響してくる。さらに、米を原料あるいは材料とするものに何がしかの影響があり得る。ただ、そういうふうに二次、三次の段階で米が使われますと、その他のものと合成されたところで初めて影響してくるのでありますから、場合場合によってこれはなかなかむずかしいと思います。従来の経験でございますと、ある程度の見当はもちろんつくわけでございます。それからさらに、先ほど長官も申し上げましたが、昨年あるいは過去の経験でございますと、米価値上げを中心にいたしまして対前月のいわば物価上昇というのが、その率が大体倍ぐらいになってきておるということでございますが、これもしかし、計算というよりもいわば一種の過去の経験値をそう見ておるということでございますから、特に対前年対比ということになりますとどういうふうになりますか、これもなかなか計算がむずかしいわけでございます。しかしいずれにしましても、何らかの影響があることは否定することはできないわけでございますから、当然気をつけていかなければならないことだと思います。  それから、先ほど長官が、後退作戦の軍司令官のようだと言われたのは、いわば受益者負担というものとの関連で言われたわけでございます。公共企業体あるいは政府が管理いたします商品、特に米等につきましても、それ自体が経済の一般的な構造とは全然別個に議論するわけにいかないというような点を考えますと、やはり受益者負担というようなことからある程度の値上がりということを考えるとすれば、それをできるだけ少なくするというのが一つの物価対策の側面であるという意味で言われたのでございます。もちろんわれわれの終局的な目的は、値上げを少なくするというようなところにとどまるべきではなくて、むしろ安定させる、あるいは一歩踏み込んで下げていくということが、当然終局的な政策目標でなければならないと思います。現在の段階において、長官はそういうふうにし申されたのだというふうに思うわけでございます。
  165. 有島重武

    ○有島委員 初めの点でございますが、米の値上がりが、米に非常に近い関連を示している製品に関して影響を与える。これはむずかしいかもしれませんが、測定はほとんどできるのじゃないかと思うのです。それから、それ以外の諸物価に影響を与えておる――先ほどもキャベツの話も出ました。大根の話も出ましたね。それで、これが何らかの影響を与えていることは否定できないというようなあいまいなことを言っている段階ではないのじゃないか。これは国民としても非常に関心の集まっているところでございますから、それについて数値的な一つの測定、結論を出すような方法を考慮していかなければならないときがきているのじゃないか、そういうふうに思うわけです。これは今後気をつけてまいりますというお話でございましたけれども、そんなあいまいなことを言っていてもいいものかどうか。先ほども政府主導型だということを言われておりますけれども、その中の大きな一つの要素である米の値上げによって、どのくらいの影響をあちこちにいままではこのように与えた、それから見ると今度はこのくらい与えるだろう、これは国民はばく然と感じておるわけであります。そのことについてもう少しはっきりと、数値的な指標なり何なりを考えなければならぬのじゃないか、そう思うわけであります。  それからもう一つ、長官の代弁をするのはむずかしいとおっしゃいましたけれども、将来さらに進んで安定ないしは値下げのほうに持っていくのが理想である、そのことをもっともっとはっきりさせないと、値上げの司令官であるというような印象をこれは払拭できないと思うのです。それじゃどのような見通しを持って――五年計画なら五年計画、物価安定のためにそういった一つの長期構想を持って、そのためにことしはここまでこうやるのだと、そういうようなことがもっと明らかにならなければいけないと思います。先ほどから四・八%の話がずいぶん出ておりましたけれども、もしその四・八%をオーバーするような事態が万が一にも起こったら、それじゃだれが責任をとるのか、そういう問題も残されているのじゃないかと思うわけでございます。
  166. 八塚陽介

    ○八塚説明員 消費者米価値上げの影響の測定の問題でございますが、たとえばキャベツというものに消費者米価がどういう影響があるかということでございますが、私はこれは、消費者米価を政府がかりに上げようとした、したがって農民がキャベツの値段も高く売っていいのだということには実はならないと思うのです。むしろ問題がありとすれば、まず消費者米価が値上がりをする、その他諸物価が値上がりをすることによって賃金が上がる、賃金が上がることによって農民もやはりそれなりの賃金部分の評価をしてもらいたい、そうしてさらに、そのためにキャベツというものが引き合うか引き合わないかという計算をしたところで、初めて消費者米価とキャベツとの関連が出てくるわけでございます。ただ、キャベツならキャベツというような、いわば自由に作付をされ自由に売られておる商品については、特定のものを政府が主導して上げたからということによってそれなりに価格をつけて売るということは、いまのところどうもできないだろう。キャベツにつきましては、むしろキャベツの需給事情から値段はきまっておるというふうに考えるわけでございます。  同様に、たとえば米とパンとの関係でございますが、かりに米が上がればある程度パンは上げてもいいじゃないかという議論も十分あり得るわけでございますが、一方パンはパンの需給関係で、先ほど来の御議論ではパンも当然上がるであろうというお話がございましたが、たとえば比較的合理化をされて、製粉会社等に相当強いバーゲンの力を持っておるところが、この際ひとつ。ハンの値段を上げないでがんばろうというビヘービアを示しました場合には、必ずしもパンの値段は上がらないということは十分考えられるわけでございます。逆に、米の値段が上がるということによって、あれも上がったんだからひとつ上げようじゃないかということによって上げる場合もあるわけでございますから、実は単純に一つの原材料としてのコスト計算から価格がきまってくるだけではなくて、それはもちろん大きなファクターでございますけれども、やはりそのときのいわば吸収の力であるとか、需要の強さであるとか、あるいは供給の圧力、いろんなものによって波及が変わってくるわけでございます。しかもその状況が経済条件の変化と申しますか、年々構造が変わっておりますから、一がいにこの前こうだったからということもなかなか言えない場合もあるかと思います。そこで、先ほど申し上げましたようにやや一般論として、過去の経験値ではこういうことになりそうだ、したがって、そういう範囲で考えていって姿勢としてはいいのではないかということを申し上げたわけでございます。  いずれにいたしましても、企画庁の長官の立場といたしましては、物価値上げが好ましいというようなことはもちろんないわけでございます。いろんな関係から、現在の状況ではできるだけそれを少なくするということに勇力いたすということが必要だということを申し上げたわけでございます。
  167. 有島重武

    ○有島委員 初めの話でございますけれども、単純な理論ではならないということの問題ですね。それがとても大切なことだと思うのです。いまも、米が上がったから労働賃金も上がった、それだからそれが原価にはね返るのだろう、そういうようなことではない要素があまりにも多過ぎる。むしろ心理的な要素ということも十分ある。それから、それは需給関係のこともあります。そういったものをもっとしっかり見通さないと、一つの値上げが今度はいろいろ波及するであろう。そのときははっきりと一つの手を打つ。手を打ってそれを食いとめていく、そういう操作が的確にできないのじゃないか。しかたがないみたいな……。それで、そういうことに波及しないことも理論上は考えられるなんということをいまおっしゃっていました。上げないでいられることも考えられるんだと。宮澤長官もさっき、四・八%に食いとめることも考えられるんだ。そんなことを幾ら考えられても、現実にはどんどん違っているわけでありますからね。国民の側としては、そういうようなことは納得できない。ただ、こういったおそれがある、こういったおそれがある、これに対してはこういう処置をするんだと、そういうようなことを積極的にさらに踏み込んでいかれることを要望したい、こう思うわけでございます。これはお答えは要りません。  これで終わります。
  168. 八百板正

    八百板委員長 木原実君。
  169. 木原実

    ○木原(実)委員 時間がありませんので、問題一つだけ通産省の下山次長にお伺いしたいと思うのです。  御案内のように、消費者基本法が成立をいたしまして、消費者関係の法案等の洗い直しが行なわれているのは御案内のとおりです。ところが、消費者にとって非常に大きな問題が一つ抜けておるというふうに考えるわけであります。それは広告という問題です。広告は消費者にとりましてはたいへん影響の大きい問題でございますし、それからまた、物価政策という面からいきましてもこれは抜くことのできない問題であろう、こういうふうに考えるわけで、当委員会でも私が何回か指摘をしてきたところでございます。  そこでお伺いをいたしたいわけでありますけれども、直接広告関係の担当機関として、この春以来いろいろと広告業界の方々との懇談その他が行なわれてきた、こういうふうにも承っておりますので、ひとつこの段階で、消費者保護という立場、あるいはこの立場から離れますけれども、現在広告業界の近代化、いろいろな問題をかかえていると思うのですが、行政的に見て広告の問題にタッチをする何かめどがお立ちになりましたかどうか、問題の概況をひとつ御報告をいただきたい、このように思うわけです。
  170. 下山佳雄

    ○下山説明員 広告の問題につきましては、たしか昨年だったと思いますが、先生から広告の問題を少し掘り下げて検討しろというお話もございました。私どもといたしましても、資本の自由化ということを控えておりますので、昨年来、特にことしの二月から関係団体あるいは関係業者の代表等といろいろと懇談会を発足させまして、今日まで十回近く会合をもったわけでございます。今日までの過程におきましては、一応御承知のとおり、広告の取引というものは一般の商品の取引とは相当違った形をとっております。したがって、まず広告取引の現状の的確な把握、これが一番肝要であるということで、いろいろその取引の現状について検討してまいったわけでございます。なかなか私どももまだわかりにくい点も幾つかございますが、その過程におきまして、先ほどお触れになりました広告取引の近代化、その一番重点の問題といたしまして契約の文書化の問題、これについてもいろいろ論議したわけでございますが、こういう会合を通じまして、とにかく近代化を進めなければならないという業界の中の意識が高まってまいりました。これは今日までとにかく、その全部とは申しませんが、大部分の場合におきまして契約の文書化ができていない。できていなくても現実の問題としてはそれほど大きなトラブルはなかったからということで過ごしてまいったわけでございますけれども、やはり会社の経営がそれぞれ近代化されてまいりますと、当然大きな広告取引について何ら契約書がないということは、そういう業務管理の面から見ても好ましいことではないという、特に広告主側からの要請もございまして、これについては着々いろいろ議論がこまかく進んでいるようであります。ただ、まだ幾つかの非常にむずかしい点もございまして、完全に成立に至っておりませんけれども、近くこれはおそらく妥結に到達するものと考えております。  そのはか、いろいろ興味のある問題は幾つかございます。特に先ほど申しましたように、広告というのは一般と違っておりまして、一体その代理店が広告主の代理店なのか、それとも媒体の代理店なのかというような問題もございまして、これは直ちに手数料の問題とかいろいろな問題について響いてまいります。しかし、この問題は一応捨象いたしまして、特に消費者保護との観点から見ますと、質的問題と量的な問題と二つあろうかと思います。特に質的な点につきまして、誇大広告、虚偽広告につきましては、御承知のとおり不当景品類及び不当表示防止法、これは公正取引委員会が判定いたしておりますが、ここで厳正な運用が行なわれております。着々、いろいろその公正競争規約もできております。公正取引委員会の告示等も進んでおります。  このほかに、さらにまた広告の媒体を中心といたしまして、それぞれの広告の倫理綱領などもできていますし、それから各業界それぞれ、たとえば自動車あるいは電気器具あるいは医薬品等、それぞれの各業界におきまして自主規制を実施いたしております。やはり質的な面につきましては、公正取引委員会の法律に乗りますものにつきましては、極力それでもってやるべきでありますし、またそれに乗らない、つまり不当表示とまではっきり言えない面につきましては、こういう自主規制によって広告の内容の質的な向上をはかっていくことが必要かと考えております。われわれといたしましては、こういう問題は、あまり中に立ち入りまして、ああせい、こうせいということはいささか問題があろうかと思いますので、むしろわれわれの立場といたしましては、こういう質的な問題については特別に自主規制をさらに強めていただきたい、こういうようなお願いをいたしているようなわけでございます。  全体の量的な問題につきまして、これは広告の量が過大ではないか、こういう御意見もまたあるようでございます。国民所得に対する割合といたしましては、日本は欧米諸国と比較いたしましてもまだまだ低い段階でございます。やはり何と申しましても日本の経済が世界の第二位、しかも自由経済ということを標榜しております以上、やはり量的に広告が伸びていくということは、これはある程度是認さるべき問題であろうと思います。問題は、むしろ質的な面にあるのではないか、かように考えておりまして、現在まだ検討段階でございますが、現在までの段階はかような点でございます。
  171. 木原実

    ○木原(実)委員 時間がありませんので、細目のことは別の機会にいたしたいと思うのですが、問題は、二つにお分けになって御報告をいただきましたけれども、前段の取引の現状把握、その中から出てきた問題として、近代化の問題で文書契約の問題があるというのは私も承知をいたしているわけですが、これは当然の措置なんですね。もうすでに年間五千億というような売り上げのある大産業の中で、しかも社会的に非常に影響の大きいものを持つ広告業界の中が、われわれもしろうとですけれども、立ち入ってみればみるほど、もう企業としてもわけのわからないというような側面がある。そこからいろいろなリベート問題その他商業道徳の上から言っても見のがすことのできないような問題が起こっておる。これは御存じのとおりなんで、これは文書の契約というだけにとどまらず、やはり行政上の措置としましては、ある部分については、たとえば非常に零細な代理店の存在というような問題があります。そういう側面に対して何らかの保護育成といいますか、そういうてこ入れも必要なのではないのか。そういう存在がかえっていろんな悪習慣を生んでいる根源にもなっておる、こういう感じがするのですが、この代理店と称するものについての、何かそういう一つの行政上の保護育成というとことばが大きくなりますけれども、何か措置をお考えになるというような段階ではございませんか。
  172. 下山佳雄

    ○下山説明員 実は、この点につきましては、まだ私どものほうの勉強も十分ではございません。私の認識しておりますことがあるいは誤っておるかもしれませんが、今日まで代理店というのは、どちらかと申しますと媒体の代理店という形で発展してきたように了解しております。特に媒体、新聞あるいはテレビ等のスペース、タイムをとるというような仕事が代理店の主たる仕事であるというようなことであったのでございますけれども、最近におきましては特に企業のマーケティング活動が非常に盛んになってきております。アメリカ等におきましては、各企業のこういうマーケティングのエージェンシー、そういうものと各企業体というものは一体となってマーケティング活動を行なうというのが実態のようでございます。そうなりますと、当然こういうマーケティング・エージェンシーというものは競争企業のエージェンシーにはならない。つまり二つの競争企業のエージェントを同時にやることはしないということから、ある程度細分化されるというような面も若干出てくる面もあろうかと思います。ただ、まだこれが今後どういう形になりますか、いろいろ大きな、たとえば御承知の電通などにつきましてもそういう問題がございますので、特に部局を完全に分けてそういう弊害の起きないような形にしておるようでございます。結局その辺から今後のおよその代理店のあり方というものが出てくると思いますが、まだ結論を出すのは早いのじゃないかと思います。この辺はもう少し――これは今後の資本の自由化の問題とも実はからみ合う問題でございます。私どもにとりましては非常に関心のある問題でございますけれども、十分研究してまいりたいと思います。
  173. 木原実

    ○木原(実)委員 その問題はまた後日に譲りたいと思いますが、後段の消費者保護の立場から見た広告のあり方ですが、質的な問題については御指摘のとおりだと思うのです。質的な問題について自主規制にまかせる部分が多い、こういうわけなんで、私どももその点は賛成なんですけれども、これは一体どこまで自主規制ができるのか、これまた何らのメルクマールもない、こういう状態だと思うのです。そこでやはりそれと関連して量の問題が出るわけです。全体の量は、こういう時代ですから五千億の売り上げが七千億、八千億になっていても、これはふしぎではないと思うのです。ただ、特に物価とか政策その他の面から見まして、一つの企業の中で一つの商品にかける広告の量というものは、これはたいへんな問題になる場合が多いと思うのです。この前も私は酒の問題を一例として取り上げましたけれども、たとえば、例をあげれば切りがないが、化粧品、これは再販の問題でよく問題になるわけですけれども、化粧品なんかの場合でも、かなりな部分が広告宣伝費、こういうことが指摘できるわけなんです。なかなかこの化粧品メーカーの立ち入った原価構成その他が掌握できないのですけれども、私どもの党の関係でやっておりますものを調べてみますと、大体市販で五百円ないし六百円くらいで売っているクリーム類、そういうようなものは大体五十五、六円で生産ができる、こういうデータもあるわけなんです。それがそういう値段で一般には売られる。しかも立ち入ってみますと、その大半が広い意味での広告宣伝費に食われる面が多い、こういう状態が、一例ですけれどもあるわけなんです。そうしますと、質の規制の問題と、それから量の規制の問題と、いろいろあると思うのですが、やはり物価安定という観点から見て、そういう面からの広告の量的な規制というとことばが強いわけですけれども、何らかの行政的なアプローチが、特にメーカーとも接触の多い通産省の段階で私はほしいと思うのですが、そういう面での配慮はまだございませんか。
  174. 下山佳雄

    ○下山説明員 実はまだ私どもの勉強がその点不十分でございまして、個々の商品についてどうなっておるかということまで十分当たっておりません。これは私ども勉強していきたいと思いますが、やはり現在の立場は、先ほど申しましたように、あるいは個々の商品については問題があるかもしれませんが、それはむしろその質的な面をあるいは強化するという形で、なるべく量的な問題にはあまり触れたくないというのが率直なところであります。なお検討したいと思います。
  175. 木原実

    ○木原(実)委員 量的な面には触れたくないとおっしゃるのですが、やはり質的な問題とうらはらの関係がございまして、しかも私どもの主張としましては、なかなかチェックはできないから、それならば広告に対しての課税というアプローチも――これはやや問題の性質が違いますけれども、必要ではないだろうか。そうしませんと、まあ広告ということについてはいろいろ考え方がございますけれども、しかし結局広告を大量に行なう企業が、場合によれば品物が悪くても広告を大量に行なうことによって何か市場を占有をしていく力をつける。その反面、かなりいい品物をつくっていても、広告をやる力がないために脱落をしていくような企業も現にあるわけですから、そういうようなこと等をも勘案いたしまして、何らかの形で質とともに量の側面にアプローチを試みないと、広告自体が消費者によって疑われる側面も出てまいりますし、それからまた消費者という立場から見ますと、広告についての選択はないわけですから、不当に広告によって操作をされっぱなしになる、そういう危険もあるわけです。そういたしますと、そういう関係にある広告と消費者との関係の中に、行政的に何らのアプローチをしていく側面がないとなると、消費者としてははなはだ心もとない、こういうことにもなるわけなんですが、いかがでしょうか。
  176. 下山佳雄

    ○下山説明員 確かに広告の問題につきましては、それが物価上昇の原因の一つをなしておるのではなかろうか、あるいはまた、それが商品に対する消費者の選考に悪影響を及ぼしているのではなかろうかというような意見があることは、私どももよく承知いたしております。ただこの問題は、現在の経済体制に対しまして、一つの非常に大きな問題を投げかけるものでもございます。十分ひとつ慎重に検討をさせていただきたいと思います。
  177. 木原実

    ○木原(実)委員 もう時間がありませんので、別の機会に、少し私どものほうもデータをそろえまして、御意見を申し上げたいと思いますので、これでやめますけれども、何といいますか、やはり広告の量的な面についてのアプローチを、行政的にタッチをしていく場合に、何か広告について規制を行なうのが言論の自由にかかわる、こういうような議論もあるわけですが、これはやはり少し考え方が硬直をしておるのではないかと思うのです。やはり言論の自由というような問題とは質的に違うので、消費者を保護していくという立場ならばその立場で、やはり行政的にタッチをしていくということは他の分野でもあり得るわけでございますから、その点はよく言われることですけれども、ひとつ当局としても考え方をきちんとしていただきたい、そういうことです。  それからもう一つは、これは要望になるわけですけれども、通産省がタッチをする場合ですと、どうしても業界の立場ということが優先をするやにわれわれとしては見受けるわけなんです。しかしながら、広告のように、消費者あっての広告でございますから、これはうらはらの関係でございますから、そしてまたこれに直接タッチできるところは、行政的には公正取引委員会と通産省の担当部局でございますから、そうなりますと、通産省も従来の立場をさらに進めて、消費者を広告から守っていくんだ、消費者にとって一番有益な広告を歓迎するんだ、こういう立場で、冒頭申し上げましたように、保護基本法というものもできた段階ですから、そういう観点から広告行政というもののあり方についてもさらにひとつ部内で御検討をいただきたい、こういうことでございます。  細目につきましては別の機会に譲りまして、これで終わりたいと思います。
  178. 八百板正

    八百板委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後二時五十一分散会