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1968-05-16 第58回国会 参議院 法務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月十六日(木曜日)    午前十時三十分開会     —————————————    委員異動  五月十五日     辞任         補欠選任      近藤英一郎君     赤間 文三君      菅野 儀作君     鈴木 万平君      内田 芳郎君     中山 福藏君      青田源太郎君     重宗 雄三君      岡本  悟君     斎藤  昇君      松永 忠二君     西村 関一君      大和 与一君     大森 創造君      木村美智男君     野々山一三君  五月十六日     辞任         補欠選任      重宗 雄三君     青田源太郎君      鈴木 万平君     林田 正治君      中山 福藏君     木島 義夫君      山田 徹一君     辻  武寿君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         北條 雋八君     理 事                 青田源太郎君                 梶原 茂嘉君                 秋山 長造君     委 員                 木島 義夫君                 北畠 教真君                 紅露 みつ君                 斎藤  昇君                 林田 正治君                 山本茂一郎君                 亀田 得治君                 辻  武寿君                 山高しげり君    国務大臣        法 務 大 臣  赤間 文三君    政府委員        法務大臣官房司        法法制調査部長  川島 一郎君        法務省矯正局長  勝尾 鐐三君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局民事局長   菅野 啓藏君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君    説明員        内閣総理大臣官        房参事官     岸野 駿太君        警察庁保安局防        犯少年課長    本庄  務君        法務省刑事局青        少年課長     安田 道夫君        厚生省公衆衛生        局防疫課長    後藤 伍郎君        厚生省社会局生        活課長      山下 眞臣君        労働省労働基準        局監督課長    藤繩 正勝君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○旧執達吏規則に基づく恩給年額改定に関す  る法律の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付) ○検察及び裁判の運営等に関する調査  (売春防止対策に関する件)     —————————————
  2. 北條雋八

    委員長北條雋八君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨五月十五日、近藤英一郎君、内田芳郎君、菅野儀作君、大和与一君、松永忠二君、岡本悟君、木村美智男君が委員辞任され、その補欠として赤間文三君、中山福藏君、鈴木万平君、大森創造君、西村関一君、斎藤昇君、野々山一三君がそれぞれ委員に選任されました。     —————————————
  3. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 理事補欠互選についておはかりいたします。  昨五月十五日、青田理事が一たん委員辞任され、本日再び委員に選任されたのに伴い、理事が一名欠員となっておりますので、理事補欠互選を行ないたいと存じます。  互選は先例により委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 御異議ないと認めます。それでは、理事青田源太郎君を指名いたします。     —————————————
  5. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 旧執達吏規則に基づく恩給年額改定に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 亀田得治

    亀田得治君 若干御質問申し上げたいと思いますが、最初に、執行官というのですか、正式の名称はね。この性格ですね、そういう点についてその所見を承りたいのですが。といいますのは、これは公務員であることは間違いないわけですが、公務員でありながらきまった月給がないわけですね。そうして、依頼者から頼まれたり、あるいは国のほうからの頼まれごとがあるわけですが、そういうものから入る手数料を土台にして生活をしていく。もちろん、ある程度一定の水準の収入がない場合には、国がこれを補給するというふうなことにはなっておりますが、それはまあ、あまりはやらない、仕事がない、そういうところの者であって、東京なり大阪、こういうところの非常に忙しい諸君の収入というものは、いわゆる手数料であるわけなんですね。そういう点で、何か特殊な公務員という感じがするわけですが、これは以前にも一度何かそういう点をもっときちんとしたほうがいいんじゃないかと、普通の市役所にしても、あるいは府県庁にしても、いろいろなサービスはする、手数料は取る、しかしそれはみんなその団体の収入になるわけでして、そういう点を平素から私はなはだ何か割り切れないものを感じておる。そういう形態自身執行官のいろいろな不祥事件などにもやはり関係があるというふうにも感ずるわけなんですが、執行官というものについての性格、位置づけ、これについてひとつ御説明を願いたいと思います。
  7. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 現行法のもとにおける執行官身分と申しますか、位置づけと申しますか、それはただいま亀田委員のほうからお話がございましたような状況になっておるわけでございます。おっしゃったことの繰り返しになるかもしれませんが、現行法のもとにおける執行官地位法律上の地位ということについて申し上げますと、執行官裁判所職員であるということが裁判所法の六十二条で明らかになっておるわけでございますが、国家公務員としての性格といたしましては、国家公務員法の二条三項十三号によりまして、特別職国家公務員であるということに相なります。そこまでは他の一般裁判所職員と同様の地位にあるということが申せると思うのでございますが、ただ非常に執行官地位としての特色のある点は、ただいま御指摘のありましたように、俸給制公務員でない、いわゆる手数料によって俸給にかわるべきものを受けておるという点でございます。で、先般執行官法が制定せられましたのでございますが、これによりまして、従来のいわゆる執行吏というものが執行官というふうに名前が改められたわけでございます。これはただ単に執行吏という名前執行官に変わったというだけのものに実はとどまらないのでございまして、と申しましても、ただいま申しました手数料制というものは、従来の制度が新法のもとにおきましても維持されたのでございます。どこが旧法と変わった点かということは、すでに御承知とは存じますけれども、申し上げてみますと、執行吏裁判所職員であったという点、したがって公務員であったという点については、現在の執行官と変わらないのでございますが、しかしこの公務員性執行官法によって強化された。  どの点かと申しますというと、執行吏は、旧法のもとにおきましては、いわゆる執行吏役場というところで仕事をするということでありました。これはいわば独立採算制執行吏役場というところで勤務をする特殊の公務員であったわけでございます。これが執行官法のもとにおきましては、執行吏役場という制度が廃止されました。そうして執行官裁判所職員として裁判所で勤務する。執行吏役場というものがなくなりまして、執行宮室というものが裁判所の中に設けられなければならないという制度に改まった点におきまして、公務員性が強化されたということが言えると思います。その点がまず第一点でございます。  それから第二点といたしましては、執行吏役場がいわば企業のような形をとりまして、独立採算制でありましたものが、その会計事務を、金銭出納事務裁判所のほうで行なうという制度に変わったわけでございます。それによりまして、執行官のとかく会計の点で、いわゆる会計検査にはっきり載らないような形で行なわれておったのを、裁判所会計事務を扱うということになりました点におきまして、公務員性がその点においても強化されたということが申し上げられると思います。  それからもう一点は、先ほども指摘がありましたが、従来の執行吏というものは、改正前の旧制度における執行吏というものは、債権者委任を受けてその仕事をするという制度であったわけでございます。この点が国家公務員としてはとかく債権者との不明朗なつながりがあるという点もございましたので、これを改めまして、いわゆる申し立て制に改めたという点が執行官法一つの大きな改正点であったわけでございます。したがいまして、従来執行吏債権者との関係が、民法上の委任とは多少性格は異にするかもしれませんが、と申しますのは、いわば公法上の委任関係というふうに見られでおったのでございますが、いずれにしても債権者執行吏との間の委任というような法律関係でこれが運ばれておりましたのを改めまして、債権者裁判所執行を申し立てる、そういたしますと裁判所のほうでその所属の執行官にその事件を割り当てるというふうな制度に改められたのでございます。そういう点におきまして公務員性が強化されたということが申し上げられると思います。  でございますから、執行官というものは従来の執行吏に比べて公務員的な性格がさらに一そう強化されたということが申し上げられるわけでございますが、ただ手数料の点におきましては、従来の制度が維持せられておりまして、ここに執行官というものの他の公務員に比べましての非常に特異な点があるということが申し上げられるわけでございます。その点に、執行官というものの身分というものが一体どういうものであるかという点についてすっきりしないじゃないかという御指摘があるわけでございますが、これが執行官の行なう仕事というものの特殊性に基づいて、手数料制というものが執行官法制定の際いろいろ御議論があったのでございますけれども、現段階において直ちに俸給制に改めるということがとられなかったというのでございまして、これはやはり執行官というものの性格仕事特殊性という点があるということから、そういうふうになっておるものと思っております。
  8. 亀田得治

    亀田得治君 まあ前半の説明は非常にこう理解できるわけですが、一番最後部分がやはり納得がいかないのです。現在はまあそういう手数料制になっているから、その点について制度責任者から何か否定するような発言はしにくいから、何か執行官特殊性によってそうなっているんだというふうな簡単な御説明をされておるわけですが、それは執行官特殊性といいましても、ほかの公務員に比べてそれほど特殊性があるとは私は思わないのです。第一、事件のたくさんあるところは収入がある、そうでないところはぴいぴいする、そんな考え方をこの公務員の中に入れたら、これはずいぶん変なことになると思うのです。それは一般裁判所にしてもそうでしょう。非常に繁雑なところの忙しい裁判所裁判官収入が多い、ひまなところの裁判官は一人前の月給がもらえない、そういうことをしたら、弁護士と一緒になってしまう、それだったら。だから、日本執行官だけを手数料でまかなっていくという、これは私は早くやっぱり直さなければいかぬ問題だと思っているのです。前回執行官法ができて、相当執行官というものについての筋を通されたわけだが、あまり何もかにも一ぺんにやってもというところで、その収入の点についての部分を従来のような形で残されたと思うのですが、これはやはり中途はんぱです。そして、執行官法ができてもうすでに期間も相当たっておるから、執行官自体もいろいろなれてきておると思いますから、だからこれはもう早急に改革に着手していい時期じゃないかと私たち思うのです。そういうことをすると執行官のなり手があるとかないとか、現在まあ収入の非常に多い執行官は、あるいは若干問題が起こるかもしれぬが、しかしどうせこれはいつまでも続けることができる問題では私はないと思うんです。国の大事な判決執行を担当する人なんですからね。それはあなた、刑事であればみんな刑務所の皆さんがそのことを担当してやっているわけですから、本質的には少しも変わらない、もう共通だと思うんですよ。それは刑事民事関係では利益という観点から見ると若干違うかもしれぬが、しかしそういうことを言えば、行政官庁にはずいぶんそういう利益に結びつくような行政事務がたくさんあるわけですね。そういうところにしたって、忙しいところは収入が多い、そうでないところは少ない、また役所の機構としてそんなことできるものじゃない。忙しくないところでもちゃんと役所を置いておかなくちゃいかぬわけです。だから、これはもう議論余地が私はないと思うんですね、ない。だから、この際ひとつ、執行官制度というものをきちんと完成する意味で、この問題に手をつけられたらどうだろうかと思っておるんです。そういう点はいかがでしょうか。最高裁あたりではまだそこまでの論議になっておらぬのかどうか。局長個人の御意見も聞きたいし、最高裁などにおける全体の意見も聞きたいし、あるいは法務大臣としても、これはもう常識的に判断できる問題ですから、御意見をお聞かせ願えればけっこうだと思うんです。
  9. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 御指摘のとおり、執行官というものの公務員性を明らかにしたと、それならばさらに一歩進めて俸給制にしたらどうかという御趣旨でございます。私どもも、執行官俸給制公務員に切りかわって一般公務員と同じようになったならば事柄は非常にすっきりするという点は、さように思うわけでございますが、明治二十三年に執達吏規則というものができた当時から、この執行官執行吏——当時は執達吏と申しておったと思います、これを俸給制にするか手数料制にするかということはすでに議論されておったようでございます。それから執行官法による改正に至るまで七十年間の間たびたびその点がやはり問題になったということを、いろいろの記録の上で私ども承知しているわけでございます。さらに諸外国の実例を見ますと、これがやはり手数料制の一番純粋な形で残っておりますのはフランスであろうかと思うのでございますが、それから公務員制度俸給制が一番はっきりした形で出ておりますのがオーストリーであるとかスイスというような国であろうかと思うのでございます。その中間におきまして、たとえば西ドイツにおきましては俸給制——固定俸給制手数料制を加味するというような方法がとられておるというところもあるようでございます。しかも、西ドイツにおきましては、一時完全な俸給制に改めたのでありますが、どういういきさつでありましたのか、たぶん固定俸給制で必ずしもうまく運用がいかなかったという点が反省されたのでございましょうか、これに手数料制を加味するというような現在の制度になっておるというようなことでございまして、それから英米法におきましても、イギリスにおきましては固定俸給制——もっとも、執行官というようなそういうものではなくて、あるいはマーシャルであるとか、シェリフであるとか、そういうような役目で呼ばれておって、単なる民事執行だけを職務としておらない人たちでございますが、そういう人たち俸給制である。アメリカ等におきましても、これは各州によって制度がいろいろ違うわけでございますが、それを見ますというと、俸給制のところがあり、手数料制のところがあり、というようなぐあいでありまして、この執行官というものは俸給制にしたほうがいいか手数料制にしたほうがいいのかというようなことは、大げさに申しますというと、一つの永遠の問題であるような気もいたしておるわけでございます。思いますのに、やはりその国に応じた実情というものを踏まえた上で、民事執行官制度というものを、より合理的に、より妥当に行なわれる制度というものを社会の動きに応じまして考えていかなければならない問題ではなかろうかというふうに実は私ども考えておるわけでございます。  で、そういうことはなぜかと申しますと、先ほど申し上げましたとおり、ことばが足りませんでございましたのですが、やはり執行官仕事性格、非常に困難なむずかしい仕事である。だれも好んで——こう申しますと少し語弊がございますが、多くの人はこの仕事自体というものを好んでやってくれない仕事でございます。で、そういう仕事をやって、責任は重く、いろいろ世間からも疑惑の目をもって見られ、その中で執行官仕事というものは外へ出て一人で独自の判断に基づいてやらなければならないというような仕事、しかも、私人私人権利関係というものを、最後のぎりぎりの場で、非常に先鋭して対立しておる場においてそういう仕事をしなければならない。そういう仕事でございますので、その仕事を能率的にやっていくということを考えますというと、手数料制というものもやはりメリットというものがあるというふうに考えられる点がないわけではないというところに問題はありながら、昔から手数料制というものが行なわれてきた。しからば、将来はどういうふうに考えていったらいいかという点につきましては、やはりここに、なるほど手数料制メリットもあるかもしれないが、悪い点はあるのだから、完全な公務員制俸給制に踏み切るべきだという議論が一方にございます。同時にやはり、手数料制メリットというものは執行官については考えてもいいんじゃないかという議論もございまして、その辺のところがまだはっきりきまった形になっていないのだということを、裁判所の中の議論としましても固まっていないというふうにおっしゃるし、私自身といたしましても同様でございます。
  10. 亀田得治

    亀田得治君 法務大臣どうですか。
  11. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 民事局長考えと大体同じような考えを持っております。
  12. 亀田得治

    亀田得治君 民事局長考えというのは、固まっておらぬということでございますね。
  13. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 民事局長考え方は、お述べになりましたように、まだ十分固まっておらぬので、今後日本実情に合うようなことでひとつ、まあ手数料制のいいところもあるし、それかといって俸給制に割り切ったほうがいいような点もあるし、あるいはまた手数料制俸給制とおのおの長所短所があるから、そこで加味するような制度をとっておる制度もあるものだから、なかなかいろいろな方法が、いずれが日本実情に適合しておるかということをいま割り切ってどうというわけにはいかない、考えがまだ固まっていないと、これと私の考え方が同じであるということです。
  14. 亀田得治

    亀田得治君 きまってないところが同じということですね。まあこれは、現在の制度責任者側としては、否定的な批判的なことを言うのはなかなかむずかしいのです。もう七、八分質問者意見と同じであっても、なかなか言えない。それは気持ちはよくわかるのですが。たとえば非常にいやがる仕事だとか、また判決執行最終段階ですから、なかなかむずかしい判断を要する問題も確かにある。だから手数料制がいいのだというふうには、ちょっと私はならぬと思うのですよ。むしろ、そういう状態だから、やはり俸給制にしなきゃいかぬというふうにもまた言えるわけなんですね。そうしませんと、最後執行段階で、やはり金をたくさん積んでいろいろ細工を弄する、そういう方面になびく、そういうことがあっちゃいかぬわけなんです、判決執行なんですから。ほんとう判決で命ぜられたとおり忠実に守らなきゃいかぬわけなんですね。だから、決して困難性があるとかそういうことから手数料ということには結びつかぬと私は思う。やはり俸給制でやって、そうして特殊な仕事一つか二つやったという場合には、俸給制の中でやはり特殊な手当をしていく、こういうふうにしませんと、不公平な措置などに結びつきやすいわけです。だからこれは理由にならぬ。それは、一番いやがる仕事といえば、刑事のほうも死刑執行など、これはだれだって一番いやがるんですよ。そんなもの外部に請け負わすとか、もちろんそんなこと言ったら人が笑うでしょうから。しかし、同じ判決なんですから、一緒なんですよ、それは。判決の内容によっては、死刑執行と同じような衝撃を受けるようなものがたくさんあるわけですからね。だから、特殊な職種に対する特別な手当という問題は、これは研究の余地があるとしても、やはり大原則は、こんな手数料によって収入をまかなっていくというのは全く古い考えですよ。これはひとつ研究してほしいのです、前向きで。さっきからいろいろな意見があって、結局どうとも言えないという意見をお二人とも出されているわけですが、不自然さぐらいは私は肯定してもらえると思うのですね。こんな不自然なことはないですよ。赤間さんは長い間知事や通産省におられたのですが、いろいろな手数料をよく持ってきますよね、みんな国に入るわけです。月給月給ですよ。手数料がよけい入るところの役所におるやつがよけいもらえるなんて、そんなことをしたら大問題になる。だから、これは筋が通らぬですよ、こんなことは。ただ、明治のころこういうことを始めたものだから、なかなかそれが習い性となっていて断ち切れないのですよ。だから、なかなかきめにくい問題と言うけれども、なにこんなものは俸給制に割り切ってしまえば簡単なことですよ。そんなに反対が起こるとは思われませんがね。収入の少ない執行官のおるところなどは、これは賛成だろうしね。そういう執行事務があってもなくてもいなければいかぬのですからね、あっちこっちに裁判所がある以上は。ちょうど自分のおるところは事件が少ない、だから収入が少ない。そんなことは、そこにおる人から見たらこれは不満ですよ。だから、そういうところには国がこれを補助をするのですね。だから、補助するということ自体がそれはおかしい、もう手数料制というものをこわしておるわけでしょう。ほんとう手数料制なら、おまえは注文があって働いただけしか収入がないのだと、これで割り切らなければいかぬ。そんなことでは役所形態をなさぬわけですよ、それは。それでちゃんと例外を設けて、収入の少ないところには国からちゃんと金を出している。これは人件費俸給でしょう、そうなれば。そこまで来ておるのですからね。今度の恩給だってそうでしょう。一般公務員恩給が上がる、それに準じて執行官恩給も上げるのだ。一々そんな一般公務員恩給が上がったときに法律出すのはめんどくさいから、今度はもうあっちが上がったら自然にこっちも上がるようにやってくれということは、これは自後の俸給ですね、それについてそういう執行官も同じ扱いを始めておるわけですよ。だから、不足分を国が負担する制度、あるいは今度の法の改正趣旨からいっても、本体の毎月の収入、これについて手数料制を維持するというようなことは、これは矛盾だと思うのです。だから、どうもこれは不自然だということくらいはお認めいただけると思うのですが、どうでしょうか。
  15. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 御指摘のような考え方というものが、実は私どもも同じように問題として考えておるところでございます。それで一口には、日本のいまの執行官制度というものは手数料制だというふうに言われておるわけでございますが、お話がありましたように、そうは言いながら、やはり補助金の制度というものがあるわけでございます。これは手数料制とは言いながら、やっている仕事はやはり国家の仕事で、その国家的な仕事をやっている者について最低の保障はしなければならぬという意味で出されているわけでございますが、これはまあ大げさに言えば俸給であって、あとは歩合的な手数料を取っておるのだというふうなことにもなろうかと思われます。そういう点で、手数料制とは言いながら、やはり俸給制的なものというものはいまの制度の中におきましても多少入っている。のみならず、このいわゆる代行書記官という制度があるわけでございます。これは執行官になり手がない、あるいはなってもらってもとうてい生活を維持していくだけの手数料というものが予見されない非常な僻地であるとかというようなところにおきましては、裁判所職員である書記官が執行官の職務を代行して行なうという制度でございまして、これがやはり執行官法にも認められておる制度でございます。これはもう完全な公務員執行官であると言うことができると思うわけでございます。したがいまして、現在の日本現行法のもとにおきましても、完全な俸給制公務員というものが執行をやっておるという部面があるわけでございまして、すべてが手数料制執行官によって仕事がなされておるというわけではないわけです。で、この現状というもの、それはお話がありましたように、昔からやっぱり執行吏という人があって、そうしてそれが全国に何百人かおる、そういう現状もございますし、それからその人たちの現実の収入というものがどうなっておるかというような現実もございますし、それから地方と都会においてのアンバランスという現状もございます。こういう現状を踏まえながら制度を維持し合理的に運営していくということを考えております私どもの立場といたしましては、あらゆる点を考えながら事を進めておるわけでございまして、あるところにおいては、たとえば手数料が非常に入らないというようなところにおきましては、代行書記官の制度でこれを補いつつ、そして非常に困難な仕事をしていってもらう執行官についてはやはり相当な報酬というものを考えなければならないという点を考慮しながら、そうしてそうでなければ優秀な執行官が得られないという現実の問題から、原則としては手数料制を保ちながら、その欠陥を俸給制の代行書記官というようなもので補っていくというような施策をやっておるわけでございまして、しかも方向といたしましては、この代行書記官の数というものをだんだんにふやしていく、そういうような方向からまず手をつけていくというようなことも考えるというわけでございます。
  16. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、まあ代行書記官の数をふやしていって、それが全部になってしまえばいつの間にか俸給制になってしまうわけです。だから、まあいまの御説明のこの中身から見ても、やはりこれは俸給制ということに向いておると、少なくともこの手数料制というものはどうも不自然な点があるというようなことは大体こう認められておるのじゃないかと私は思うのですがね。そういうふうに理解しておいていいですか。もう一つ前のお答えのときには、何か全く白紙のようなお答えだったのですが、ただいまのお答えではそうでもない。だいぶ現在のやはり制度についての欠陥というものはわかっていて、したがって、こういうふうに前向きに進んでおるというような面の御説明があったわけですが、その趣旨から言いますとね、ともかく手数料制明治時代から始まった、ああいうものは決していいものじゃないという前提だけは大体こうはっきりしているように思うのですが、どうでしょう。
  17. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) さあ、だんだん追い詰められたようなかっこうになってまいりましたけれども、正直に申しますればですね——いや初めから正直なつもりでございますが、執行官というものが俸給制になりまして、非常に高いところに格づけをされて、あるいはまあ格づけされなくても、先ほどお話がありましたような特別な手当というものが非常に高いものに認められれば、これはそのためにいい人も来てくれるでありましょうし、私どもとしては非常にけっこうなわけでございます。しかし、そういうことは、現実の問題といたしまして、いろいろ公務員の中における執行官の位置づけということを現実の問題として考えてまいりますときに、たとえば裁判官よりもとは言わないまでも、裁判官と同じぐらいな収入も、俸給をというようなことは、現実の問題として非常にむずかしい点がございますし、それから変なところに格づけになりまして、必ずしも執行について能率のあがらないような公務員ばかりふえてしまうというようなことでは、これはゆゆしい問題でございます。いろいろ現実の問題とにらみ合わせながら事をやっているわけでございます。で、手数料制がいい点があるということを申し上げましたのは、そういう現実の中において、法律的にも非常にエキスパートでなければならない人であるし、年齢的にもやはりこういう仕事というものは相当な社会経験を経た人でなければならないということ、人格的にも比較的すぐれたような人を現実の問題として集めていくという点におきまして、ただいますぐ手数料制をやめてしまうという点はやはりいささか問題があるというふうに考えておるわけでございます。
  18. 亀田得治

    亀田得治君 まあなかなかね、おっしゃることを一々こう反駁し合っていると先に進まぬから、まあ適当なところで打ち切りますが、俸給制にしたら人が得られないとか、そういう考えは、これもちょっと無理があると思うのですよ、そういう考えは。そんなことを言うたら、公務員は全部俸給制なんでね。大体むずかしい困難な仕事はそういうものじゃだめだということにもなってくるわけでね。だから、場合によっては、非常にむずかしい執行であれば、裁判官である人が出かけていって執行をするというふうなことがあってもいいわけです。それはおかしい、裁判官というものはそんなことをするものじゃないというふうにお考えになるかもしれぬが、それは自分のつくった判決最後のけじめですからね。そういうふうに制度をしたからといって、何もあなた差しつかえないことですし、あるいは書記官の中の非常な経験を経た人が重要な執行官室では責任者としてなっていくとかというふうなことだって考えられるわけだし、手数料で刺激するというそんな考えは全然これは成り立たぬですよ。いずれこれは改正になるですね。改正になったら、おそらく、昔はおもしろいことをやっておったものじゃと、これはいつも一つ話に引き合いに出されると思うのですね。そんなものは早くやめたほうがいい。だれそれの大臣のときにこれは廃止になったという、そういう歴史を残すぐらいにこれは早く取ってくださいよ。盲腸みたいなものですよ、実際のところ。あるものだから何か自然なような感じを受けておるけれども、直したらさっぱりする。これは要求しておきますわ。  それで、現在は執行官村名ですか、全国で。
  19. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) ただいま執行官の数は、四月一日現在で三百六十名。
  20. 亀田得治

    亀田得治君 それから、この収入状況というのはどんな程度ですか。
  21. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) これは四十二年度の手数料収入を平均してみますと、平均が一年間に百八十四万六千余円になっております。最高の人は年の収入が六百九十四万五千余円、これは北海道の小樽でございます。最低は長崎の壱岐で十万三千四百九十円というようなことになっております。ただここで申し上げておかなければなりませんのは、これはいわゆる手数料収入でございまして、先ほど執行官執行吏役場という制度が廃止になって裁判所執行官室で働く体制になったというふうに申し上げたのでございますけれども、現在なお自分が仕事をするために事務員を使って仕事をするという制度が認められておりますために、この手数料のただいま申しました収入というものが直ちにネットの収入になるわけでございませんで、その事務員のための人件費というようなものが多いところでは実際の収入の五〇%を占めるというふうなところもあるわけでございます。
  22. 亀田得治

    亀田得治君 この事務員というのは、身分公務員じゃないのですね。
  23. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) これは執行官とその事務員との間の私法上の雇用関係に立っておるものでございまして、公務員ではございません。
  24. 亀田得治

    亀田得治君 事務員はみなこれ俸給制でやっていますか、あるいは、執行官との約束で、事件が多かったら幾らか歩合を出すとか、そういうことをやっているのですか、どうなんです。
  25. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 大体が俸給制で、まれに多少歩合的なものが加味されているというようなところもあるように報告を受けております。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 この事務員は許可が要るのですか、あるいは届け出程度でいいのですか。どうなっていますか、制度上。
  27. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 執行官事務員を雇用いたしますにつきましては、許可と申しますか、承認——地方裁判所の承認のもとに事務員を雇い入れるということになっております。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、数はつかまれているわけでしょうが、全国で何人になっていますか、いま事務員と称する者が。
  29. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) これも本年の四月一日現在で、全国で三百名ということになっております。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 その収入の一番多い小樽の年間六百九十四万円というのは、これは事務員何人置いているのでしょうか。
  31. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 小樽は、臨時職務代行者——昔の執行代理が二名、それから事務員が三名、合計五名の人をかかえているわけでございます。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 その二名の執行吏代理というのは、公務員ですか、どっちなんですか。
  33. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) これは実は旧制度で認められておった制度でございまして、新法ではこの制度をやめたわけでございます。ただ経過措置としまして、しばらくの間はその人を認めるということになっておるわけでございます。旧法のもとにおきましての執行吏代理、ただいまの暫定的に認められております臨時職務代行者というものは、やはり執行官との間の私法上の契約に基づいて働いている人でありまして、公務員ではありません。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、まあ最高の六百九十万の収入のある小樽の執行官は五名の事務員を使ってこれだけの収入をあげている、こういうことになるわけですが、五名の俸給はどれぐらいでしょう。
  35. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 本日、この小樽につきましての具体的な職務代行者、それから事務員の俸給額の資料を持ってまいりませんでございましたけれども執行吏代理として、これも送達だけやっている代理と、それから執行の代理もやっている人とございまして、一様ではございませんけれども、まあ一番高い人で月収十万足らず、低い人で五方ぐらいというのが普通のようでございますし、それから事務員は低いところで三万ぐらいから六、七万というようなのが普通でございます。それから、この小樽が四十二年度まあ全国一の収入になりましたのは、たまたま何か大きな競売事件がありまして、この年に特に高かったということを聞いております。     —————————————
  36. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 質疑の途中でございますが、委員異動について御報告いたします。  本日、山田徹一君及び鈴木万平君が委員辞任され、その補欠として辻武寿君及び林田正治君が委員に選任されました。     —————————————
  37. 亀田得治

    亀田得治君 まあ六百九十万のうち六割ぐらいが執行吏代理並びに事務員のほうに人件費として払われたとしても、あと三百万は残るわけですね。一方では年十万にしかならぬと、こういうところはむろん事務員がいない、事務員が一人もいなくてやっていると思うのですが、月十万じゃなくて、年十万。これだけ見ても、これが同じような仕事を命ぜられている公務員、これは法務大臣、あなた行政官の立場から見たって、そんなことを司法関係でやっているのかと、この数字をお聞きになったら奇異に感じませんか、どうですか。
  38. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) まあそれだけ聞けばお説のような感じもいたしますが、たまたま小樽がそういうことで、毎年あるのではなくて、偶然にそういうことがあったんじゃないかというふうにまあ承知をしておるわけでありまして、まあこれはやはり手数料制度にすれば、仕事が多ければ手数料が入りますし、それがなければ入らないから国が補助するようなことになるのではないか。それかといって、ちょっと多いからそれをまた手数料の一部を幾らか取るというわけにもまいりませんし、手数料制度をとれば、そういうことが全国ときどき起こる可能性は十分ある、そういうふうに考えております。毎年毎年そういうふうなことが続くということはないのではないか、かように考えております。
  39. 亀田得治

    亀田得治君 二番目は幾らですか、小樽は特別な例外だとおっしゃるなら。
  40. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) おそらくこれが二番目だと思いますが、東京が六百六十四万五千円でございます。
  41. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、特殊な現象でもないわけですね。東京の場合を考えても、おそらくそうだろうと思います。小樽においては特殊かもしれぬ。しかし東京、大阪あたりは一番からいろいろずっと並んでおると思いますが、ともかくこれは不自然なことですよ。裁判所の権威のある判決執行する段階において、きちんとした俸給をもらっておらぬ人が執行をする。持ち込まれた事件が多ければ収入がふえる、こんな営利会社みたようなものは早うやめなければならぬ。なかんずく忙しいところでは、執行官のほかに執行官に雇われておる民間の人がそれに参加する。いまの説明ですと、そうですね。事務員は民間人。忙しい場合には、おそらく、執行官が現場に行かないで、その人だけで執行している場合があるんじゃないかと思うのですね。だけど、そういうこと自体がはなはだもってそれは筋が通らぬのですよ。これはだから、そうじゃなしに、裁判所のそういう執行部というものはきちんと確立して、そうして一切そこでやっていくんだと、忙しい場合には、ほかから事務員が手伝うということでなしに、役所の中の人がよけい行けばいいわけでしょう。私は当然のことだと思うのですがね。こういう大事な執行公務員でない者がタッチできるような制度になっておることが、これは大体手数料制度というのはルーズな考えに結びついておるわけですな、そのものが。だから、それはよくないと思うのですが、どうなんです。
  42. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 先ほど申し落としましたけれども執行宜法改正のもう一つの大きな点は、いわゆる執行吏代理の制度をやめたという点でございます。その点は、執行吏代理は、公務員でない者が執行吏の代理として単独で執行を行ない得る制度になっておった。これは非常におかしな制度であったと思うのでございますから、これは廃止いたしました。ただ暫定的に、しばらくの間こういう人たちが残っておるという形なのでございますけれども、新しい執行吏代理というものは今後認められないわけでございますので、間もなくこういう、私人と申しますか、公務員でない者が執行吏をするという形は消滅するであろうと思っております。現に、執行吏代理の数は二百数十名あったのでございますが、いまは二百名を割っておりますし、その百数十名のうちでいわゆる執行代理という者は数十名に過ぎない。あとの百名というものは送達だけをやっておるわけでございます。
  43. 亀田得治

    亀田得治君 いずれにしても、その執行官というものは、きちんとした裁判所の組織の中に取り入れられた公務員ですわね。その公務員が、自分が忙しいからというて、民間の人を役所へ連れてきて手伝わすと、その手伝った仕事は公的な効力を持っていくと、こんなことはちょっとおかしいですな。それは役所でも現場的な仕事のような場合には——まあ私はあまりそういうことは詳しくはないんですが、あり得ると思いますがね。だけど、そうじゃない執行というようなものについて、補助者、事務員、それが民間人だと、それがちゃんと裁判所執行宮室、そういうところにすわっている、こういう形態は、これはどうも一般に知らぬから黙っておるだけで、それはともかく早う改めてもらわなければだめですよ。
  44. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) その点も、御指摘のとおりだと思います。私どももそういう方向に向かって少しずつ策を実施しておるという点をお聞き取り願いたいと思うのでございます。その一つが、やはりこれは事務員を減らすというだけの目的ではございませんで、むしろ金銭の出納の明朗化という点に重点があるわけでございますけれども、そういう仕事裁判所のほうに取り入れまして、そしてそういうところで執行吏事務員を雇わなければならなかったという、そういう負担をはずしていくというようなことも考えておりまするし、これも裁判所のほうの定員の増加ということを見合いながら、たとえば現実の申し立ての受け付けの仕事裁判所のほうでやっていくと、そういうようなふうに増員要求、予算要求というようなことも続けてまいりまして、事務員というようなものが執行官室からなくなっていく、なくしていくというふうなことを少しずつ段階的に実施しつつあるということでございます。
  45. 亀田得治

    亀田得治君 現在ですね、執行官国庫補助基準額令、これに基づいて、現在は幾らになっていますかね——七十万三千円ですね。この適用を受けて補助金を受けているのは何名くらいいらっしゃるのですか、三百六十名の執行宮中。
  46. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 現実に補助金を受けている数はというお尋ねでございますか。
  47. 亀田得治

    亀田得治君 はい。
  48. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 四十二年度におきまして八名でございます。金額にいたしまして百十万くらいになっております。
  49. 亀田得治

    亀田得治君 この七十万三千円というのは、改定の必要を認めておるのですか、どうなんでしょうか。
  50. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 一応の格づけといたしましては、従来七等級という格づけであったものが四等級というふうに格づけされて、そうなりますと年間の俸給額というものが一応七十万幾らということになりますので、現在の執行官の格づけといたしましては一応いいのではないかというふうに考えております。
  51. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、一般俸給改定等があると、これは逐次変えていくということになるわけですか。
  52. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) これはべースアップによりましてほとんど毎年改定されております。現に、執行官法制定当時は六十万幾らであったものが、本年七十万三千円にベースアップになっておるわけであります。
  53. 亀田得治

    亀田得治君 それから、この手数料と費用に関する最高裁の規則ですね、ここに具体的に金額が書いてあるわけですが、これはどうでしょうか、改定の必要な時期に来ておるのですか、どうですか。
  54. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) この手数料につきましては、実は根本的な改正が必要になる時期が来るであろうと思うのであります。その時期はどういう時期かと申しますと、いまは、先ほど申しましたように、事務員を自分で雇いながら仕事をやっていくことも考えながら手数料というものを考えてできた規則でありますので、そういう点が、補助的な事務裁判所のほうで全部肩がわりしてやっていくというようなときに、ものの考え方というものは基本的に改めていかなければならない時期が来るであろうと思います。さしあたりは執行官法改正の時期、したがいまして手数料規則を改正いたしました時期におきましては、ことさらにその時期におきまして従前の手数料を特に目立って改めたという点はございません。多少手直しすべき点があったのでございますけれども、大体において同じような手数料にしたわけでございます。と申しますのは、四十年におきまして物価の値上がり等を勘案いたしまして約三〇%余りの手数料の値上げが実施されておりましたことについて、四十二年度の改正のときには手をつけないでございましたけれども、やはりこれは物価等の諸状況と見合わせながら基本的な改正に至るまではそういう手当てをしながらやっていかなければならないというふうには考えております。
  55. 亀田得治

    亀田得治君 それから、現在の執行官の三百六十名いらっしゃる出身といいますか、書記官であった人で執行官になっておると、こういう人は相当あるんですか。
  56. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 書記官であった人がなった例があるかというお尋ねでございますが、実例といたしましては、大部分裁判所書記官の経歴を持っておる人が執行官になっております。実例で申し上げますと、執行官法制定以後新しい四等級の資格で任命された者が三十一名ございますが、そのうち二十六名が裁判所書記官の経歴を持っておる人、一名が家庭裁判所調査官の経歴を持っておる人、それから検察事務官の経歴を持っている人が一名、警察の職員が一名、その他公共団体等の地方公務員であったような人が二名おります。
  57. 亀田得治

    亀田得治君 代行書記官というのはどれぐらいおりますか、いま。
  58. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 二十六名でございます。
  59. 亀田得治

    亀田得治君 いまのお答えのようなことから見ましても、裁判所仕事の一部、そして裁判所の普通の仕事をしておられた方が大部分だというふうにこれは承るわけでありまして、そういう実際上の面からいっても、私が申し上げておるように完全に公のものにしてしまうということを当然これはすべきだと思うんです。そうしたからといって国の負担はこれはたいしてふえませんよ、国の負担は。私はもっと収入がふえるんじゃないかと思うんです。逆にいろんな手数料などが全部国庫に入るわけですから、決してそれによって国の負担はふえない。しかも、判決執行段階におけるいろんな秩序というものはきちっと私はなるというふうに考えるわけです。研究してください。これは、書記官などはなかなかなり手がない、ほかの者が実際はなっているという実情であれば、これはまた別ですが、書記官の方がなっているのだったら、同じ裁判所の機構の中で異動できるじゃないですか。だから、これは何としてでも検討して改めてもらいたいと思います。  あとあまり時間がありませんので、最後に監督権のことについて若干お尋ねしておきます。  この執行吏について、いろいろな不始末がときどき新聞に載るわけですね。ことしに入ってからも、東京地裁の執行宮室事件というようなものが新聞で非常に大々的に報道されていたわけですが、東京の地裁の事件ですね、この全貌をちょっとまず御説明願いたいと思います。
  60. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 御指摘のように、執行官の不正事件がときどき新聞紙等に出まして、執行官法改正の当面の目的、眼目というものが、執行官の不正事件を防ぐというところにもあったわけでございますので、私どもといたしましてはこの点は非常に遺憾に思っておる点でございます。  東京にも、最近二件ほど事件がございました。  その一つは、須田執行官事件でございますが、ただいま起訴せられまして公判中でございますが、この起訴事実によりますと、昭和四十二年七月一日ごろ以降数回にわたって強制執行に際して便宜な取り扱いを受けた謝礼という意味で合計五万円を受け取ったという収賄の事件でございます。ただいま東京地裁に係属しておるわけでございます。  それからもう一件は、寺田浩執行官事件でございますが、四十二年の二月十三日、五月十日、八月十二日の家屋明け渡しの執行にあたって、やはり便宜を受けたという謝礼で、つまり収賄の趣旨で現金一万二千円を収受した、それからもう一つ、その前の四十年の十二月九日の執行に際しても、やはり同様な趣旨で一万円を収受した、合計二万二千円を収受したという嫌疑のもとに起訴せられ、東京地方裁判所に係属しておる事件でございます。     —————————————
  61. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 質疑の途中でございますが、委員異動について御報告いたします。  本日、中山福藏君が委員辞任され、その補欠として木馬義夫君が委員に選任されました。     —————————————
  62. 亀田得治

    亀田得治君 贈賄者側はどういう人ですか。
  63. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) いずれも執行の手続の面では執行債権者でございますが、起訴状に出ておるところを見ますと、いわゆる競売ブローカーと言われる人が大部分のようでございます。
  64. 亀田得治

    亀田得治君 大体ああいう競売などの場合ですね、新しい人がその場所へ行けない、もういわゆる競売ブローカーというような者が幅をきかしていて寄りつけないというふうな状況があるように聞くわけですが、だいぶそういうような点は改まっておるのですね、どうなんです。
  65. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) まあ競売にも不動産競売と動産競売が御承知のとおりございますが、いずれにいたしましても、そこに出入りする人が、いわゆるブローカーであるとか道具屋であるとかというような人が多数おるという現状は認めざるを得ませんし、この点が執行官法制定以後大いに変わったかということをお尋ねを受けますれば、遺憾ながらそう変わっていないというふうに申し上げるよりしかたがないと思います。
  66. 亀田得治

    亀田得治君 やはりだからそういう点をもう少し改めるように努力をしてもらわぬと私はいかぬと思うんです。それは全くブローカーの仲間同士の競売ということになってしまうわけでね。
  67. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) その点は全く御指摘のとおりでございまして、執行制度の改革につきましては、執行官法制度の面の改正考えなければならない点があるのはもちろんでございますが、ブローカーであるとか道具屋であるとかという問題になりますと、ただ組織法的な面だけではどうしても不十分でございますので、手続法の改正ということにつきましても法務省のほうにお願いをいたしまして、すでにそのほうにつきましては法制審議会の執行制度部会におきまして審議が進められておるというふうに聞いておるわけでございます。私どもといたしましては、すみやかにそういう手続の改正というものが結論が出まして、競売手続というものの今日における弊害というものが除かれるようになることを強く熱望しておるわけでございます。
  68. 亀田得治

    亀田得治君 まあそういう点の改革をやるためにも、最初申し上げたようなこの執行官というものを法的なものとしてきちんと名実ともにはっきりしていくということが非常に必要だと思うんですね。それで、この競売ブローカーなどで何か事故があったと、不正事件があったといったような者も、すぐ次また刑務所から出てくるとそこの場所へ来てやっているというのが実情のようですね。せんだっても、これは新聞で見たわけですが、保釈になって出てきて直後にまた競売場に来て、自分の妻の名義で家屋を落札しておるというふうなことをやっているんですね。元松葉会の幹部というふうに新聞では書いておる。そういうことは何とかできないんですか。普通の建設業者にしても、何か事故があれば、しばらくは役所の出入り禁止、こういうことをやっているわけですね。こういう場合には、そういうことは権利の侵害になるのですか、どうなんです。
  69. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) ただいまお話がありましたような競売に関する恐喝容疑で逮捕せられた者が、釈放になった直後また競売場で他人名義で機械でありましたかを競落したという事実があったようでございます。現行法のもとでは、ある刑事犯の容疑者として逮捕せられた者であっても、競売場に行って競落をする資格がないというふうに解釈することは無理であろうかと思いますが、しかし、こういうものを手続の上で排除するということが法律上あるいは憲法上——むずかしく言えば憲法上不可能というふうにも考えませんので、やはりいま法制審議会で、先ほど申し上げました審議の段階でこういうことも問題になる、そういうもの等につきましては、これを競落人としての資格を持たせないような規定をつくるということが問題とされ、討議されておるように聞いております。
  70. 亀田得治

    亀田得治君 まあ至急、できるだけ早く成案を得るように要求しておきます。  最後にもう一つ聞きますが、この執行官の監督に関する事務を行なう裁判官、これが各地方裁判所で指名されるわけですが、どういうクラスの方がこれは指名されておるわけでしょう。
  71. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) お話しの監督者と申します者は、地方裁判所裁判官会議で指名を受けました監督官でございますが、普通は所長が監督官になっております。場所によりましては、民事の上席であるとか執行部長、まあ東京なんかでは民事の所長代行者というような方が監督官になっております。
  72. 亀田得治

    亀田得治君 いまお聞きしたような方は、これなかなかたくさんの裁判所事務行政事務などあって、なかなか忙しそうな人ですね。したがって、そういうことだけでは実際の監督というものはこう行き届かぬのと違いますか。
  73. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) その辺のところも、実は執行官法制定の際、執行官規則等で提案をいたしまして、従来は監督関係では査察官という、これはまあやはりいまの監督官と似ておる裁判官でございますが、それにまあ補佐官をつけ得るというような制度であったのでございますが、ただいまは、監督官には先ほど申し上げましたような人がなっておりますが、これに制度上監督補佐官という制度をつくりまして、これが、地裁の事務局長であるとか、首席書記官であるとか、あるいは会計課長、総務課長というような人になってもらいまして、そうして従来よりも具体的な監督ができ得るような制度にしたわけでございます。
  74. 亀田得治

    亀田得治君 その補佐官をつけられたことはいいと思うんですが、補佐官にしても、事務局長とか首席書記官とかいうようなことになると、これまたなかなか、所長などと同じように、所長が忙しいと同じように、その諸君も忙しいわけです。だから、私の申し上げるのは、何か執行関係に浩詣の深い裁判官、たくさんの中から——それは裁判所によっていろいろ事情が違うでしょうが、そういう方が、あまり若くてもいかぬかもしれぬが、適当な経験を経られて執行関係なんかで詳しいというような人に特にお願いをして、その部分の監督を頼むとか、あるいは書記官の中でそういう方面をよく知っている人がこれはあるわけですから、そういう方に頼んで、一年間はひとつ責任持ってもらう、そういうふうにしませんと、結局偉い人だけが形式的にこうやっておるということでは、実質的な監督にならぬと思うんですね。所長などは、これは特に任命されなくったって、これは機構そのものとして監督の権限を持っているわけですから、必要なときには発言もできるし、指示もできるわけですから、特に何ですな、監督官あるいはその補佐官を置くということであれば、実際にそういう方面に明るい、中堅的な、そしてほかのいろんな仕事などはあまり持っておらぬ者に一年間なりこれは取り組んでもらうとか、そういう人を見つけて任命するようにすべきじゃないかと思うんですが、どうですか。そういう方はどうせ——私言うのは、所長とか事務局長というのは、そのほかのことでもいろいろ仰せつかっているんじゃないかと思うんですよ。結局は形式的になってしまう。
  75. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 監督の面からのお話でございますが、実はこれはやはり執行官制度の本質そのものに立ち戻るわけでございまして、監督というものを——ほんとうの意味の監督ということになりますと、やはり一つ一つ事件を通じて、業務を通じて、具体的にものを見ていくということが、一番完全な監督の体制でありまして、いわゆる監察的な、外部から監督するというような制度というものは、監督の面とすれば完全なものでないというふうに申し上げることができるかと思います。したがいまして、監督の問題といたしましても、執行官制度のあり方の本質に触れてまいるわけでございまして、この点につきましては、先ほどもお話がございましたし、私どももいま考えている点を申し上げるわけでございますけれども、そういう点をも含めまして、根本的に将来の執行官制度のあり方というものにつきまして絶えず検討はしておるつもりでございます。
  76. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ私はこの程度で……。
  77. 秋山長造

    ○秋山長造君 亀田質問に関連して二、三点簡単にお尋ねしますから、簡単にお答えいただきたい。  執行官の数が全国で三百六十人というお話だったのですが、これはやはり一般公務員と同じように定員がきまっているのですか。
  78. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 執行官には定員はございません。いわゆる定員法によって制限されているという意味での定員はございません。これは予算定員として、俸給制でございませんので、そういう関係から定員がきまっていないというふうに申し上げるわけでございます。
  79. 秋山長造

    ○秋山長造君 定員がないということになると、あれですか、どれだけの執行官が要るとか、どれだけ執行官が足らぬとかというようなことは、どこでだれがきめるのですか。
  80. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 予算的な意味での定員をきめていくという必要はあるいはないかもしれませんが、おっしゃいますように、事務量との関係におきましてどこにどれだけの人数が要るかということは、これはきめていかなければならないことでございます。それで、これはそういう意味での定員でございまするから、裁判所の規則でもきめられることであろうと思っております。で、将来ははっきり規則あるいは規定でそういうものをつくることを考えているわけでございますが、そのために実情を目下調査中でございます。しかし、暫定的には、私ども民事局におきまして、どこにおいてはさしあたりこれだけの執行官が必要であるという通達めいたものを出しておりまして、そしてこれだけの人は常にためておけということを地裁に通知しておるわけでございます。
  81. 秋山長造

    ○秋山長造君 どうも私らもこういうお話は初めて聞くわけですけれども、さっきの亀田君との質疑応答を聞いておりまして、ちょっとどうもぴんとこぬのですが、いまどきこういうようなことがあるんかいなと思うて私は聞いておるのですが、そうすると、何ですか、どれだけ必要か必要でないかというようなことは、もう出先の裁判所に事実上まかしてあるわけですか。それで、ついでにお尋ねしますがね。三百六十人という数字で、大体これで必要数は確保されているということなんですか。それとも、先ほどのお話では、何かなかなかなり手がなくて困るようなお話をしておられたようですが、もしなり手がない、必要なものであるにもかかわらずなり手がないというようなことになれば、この必要数を確保していくためにどういうようなことを考えておられるのかというようなこともひとつあわせて伺いたい。
  82. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 各地裁にまかせっぱなしということはございません。私どもは全国的に事件の数というものの統計を取っております。そして、その事務量と、それから必要人員の関係というものも調査しております。それから、この執行官は外へ出て働く仕事でありますので、地理的な状況というものも考慮に入れなければならない一つの要件でございます。そういう点をいろいろ勘案いたしまして、各庁についての必要な人員というものを割り出して、各地裁に先ほど申しましたような通知を出しておるわけでございますが、はっきりした定員というものを規則なり規定の上でまだきめておらないというのは、実は先ほど亀田委員からの御質問の中でお答えいたしましたが、暫定的に臨時職務代行者というものが現在いる。これを将来なくしていくという施策をとっている。で、そういう実情考えながら、どこの土地にはどれだけの人が必要であろうということをはっきりきめてまいるつもりでおりますが、終局的には、ただいま三百六十名でございますが、執行吏代理というものが百数十名ある。もっとも、その中で執行代理は七十数名というような現状で、本執行官が三百六十名という実情でございますが、代行者がなくなった場合においては、全国的に見て、四百数十名の人は定員として必要であろうというような算出をしているわけでございます。
  83. 秋山長造

    ○秋山長造君 この裁判所の書記官をもっても執行官の職務をやれることになっておりますわね。で、そういうことになると、一体この執行官というものはどうしても要るものですか、ぜひ必要なものですかどうですか。定員もきまってないし、それから俸給でもないし、何か歩合給のような、タクシーの歩合給のような感じですね。手数料一本でやっている。何かこう、ぜひ必要なものなのか、それとも、昔から、執達吏時代からあるものの惰性でずっとやっているのか。おらなければおらぬで、裁判所君記官でやれるというもののようですがね、どうも私ども、ぜひ必要なものならば、何かやはり定員の関係だとか、それから予算とは関係ないとおっしゃったけれども、やはり国庫補助金というものが出るわけでしょう。補助金を出す以上は、やはりどれだけのものにどれだけの補助金を出すということになってくるのでしょうから、やはり予算のワクというものがおのずからきまってくることになるのじゃないかというようにも思うのですけれども、そこらどうなんですかね。
  84. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 代行書記官がいれば執行官は要らないじゃないかという御意見がございましたが、まさにそのとおりでございまして、代行書記官というものが全国に及ぶということになりますれば、これは俸給制執行官でございますので、いわゆる手数料制執行官は要らないというか、影がなくなるということで、これは結局、先ほど来お話がございました執行官手数料制にするか、俸給制にするかという基本問題なわけでございます。現状、原則としては手数料制執行官を置きながら、代行書記官というのを場所によっては補充的に用いているといいますのは、現行制度手数料制ということを一口には言われておりますけれども、しかし、その足らないところをいわゆる俸給制のもので補ってこの事態を動かしているということなわけでございます。  それから補助金の問題でございますが、手数料の額が一定の額に達しなかった者について補助金を出すという制度でございますので、どの執行官にも固定給としてある程度の金を出すというものではございません。したがいまして、予算の関係といたしましては、人数がふえればふえただけ必要だという関係ではございませんで、むしろ、その中で一定の手数料の額に達しない者が何名出てくるであろうかと、そして、その額が幾らであろうかということが予算の上で考えなければならない点でございまして、その辺の点につきましては、毎年見込みを立てて予算の要求をしておるということでございまして、執行官の数とは直接関係がない、間接的にはあるいは関係してくることになるかもしれません。
  85. 秋山長造

    ○秋山長造君 そういたしますと、裁判所書記官なんかを定年までつとめてやめた人に対するこれは養老事業の意味がありますか、この執達吏は、結局は。
  86. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 現実の姿といたしまして、執行官がかなり老齢の人が多いということは事実でございます。その点も、執行官法制定のときに最も問題になりました点の一つでございます。そのためには、若い人に来てもらう、そのためには待遇をよくする。その一つ方法といたしまして、補助基準額というものを三倍にしたと。三倍にしたと申しましても、やはり七十万そこそこでございますので、非常にいい待遇というわけにもまいらないのではございますけれども、しかし、そういう効果が多少出ているということは、執行官の平均年齢というものが五、六年は下がってきておる、五十七、八歳が平均になってきておるというところに出ておるかと思うわけであります。私どもの理想といたしましては、先ほど亀田委員からのお話もございましたように、非常にむずかしい仕事でございますので、あまり若年の人には向かない仕事であろうかと、それでまあ四十歳代から五十歳代くらいの人にこういう仕事をやってもらいたいというふうに思っておるわけでございます。その理想からいいますと、やや年齢が高い人がまざっておるということは言い得ると思いますけれども、そこで、裁判所の書記官からどういう人に来てもらいたいかと申しますと、やはり格づけが四等級ということになっておりますし、その時分がやはり四十歳から四十四、五歳という年齢のときでありますので、四等級になったような四十四、五歳の人に来てもらいたい。そういう人を多く勧誘し——これは、多く勧誘しというのは、手数料の少ないところでございまして、東京とか大阪というところには、かなり私ども考えておるような年齢の人で希望者も多いようでございます。
  87. 秋山長造

    ○秋山長造君 国家公務員特別職ですね、それは裁判所職員ですね、そういう身分を持った人で、年間収入が一定額に満たない場合、その満たない部分を国が補助金で出すというような、そういうものほかにありますか、この執行吏以外に。
  88. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) おそらくこれが唯一の例であろうかと思います。
  89. 秋山長造

    ○秋山長造君 まあ、この恩給というものはその金額を何を基礎にはじき出すかということになってきますわね。そうすると、公務員の場合だったら、最終俸給額だとか、あるいは勤務年数とかいうものを積算するわけです。俸給はない、手数料は歩合給みたいなものだ、それに対して恩給だけは公務員並みに出すというようなことになると、まあ機械的に基準額というものをいきなり出して、そうして、それを根拠にして算出しておられるようですけれども、人事院規則なんかの適用はこれは受けるのですか、受けないのですか。人事院なんか、こういう執達吏なんかの身分、給与なんかについて関与しているんですか、これはたてまえが違うのですか。
  90. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) 裁判所職員であるという点におきましては、国家公務員法の適用を受ける人であるということは申せましょうが、しかし、給与関係につきましては、全く国家公務員法の適用の外にあるということになるわけでございまして、それから裁判所職員であるという点からの格づけ等につきましては、これは人事院とは無関係でございます。
  91. 秋山長造

    ○秋山長造君 俸給制度に切りかえることについて、何か大きい障害があるのですか、難点がありますか。
  92. 菅野啓藏

    最高裁判所長官代理者菅野啓藏君) やはり先ほど申し上げましたように、具体的に申しますれば、非常に高いところに格づけされるということであれば、俸給制を実施していくということも可能でありましょうけれども、現実の問題としての執行官の全公務員の中における格づけという問題は、非常に困難な問題を含んでおると思います。
  93. 秋山長造

    ○秋山長造君 せっかく、四十一年ですからね、執行官法に切りかえたのはついこの間ですから、こういう時期にそういう定員だとか、給与だとか、身分上のことだとか、いろいろこういうことを一挙に、この新しい執行官法をつくるときに解決しておったらよかったんだろうと思うのですがね。やっぱりそういうことはそう簡単にいかぬものですかね。簡単にいくような感じがするんですけれども裁判所仕事というのは、失礼ですけれども、大福帳的な要素があるんですね。やっぱりそういう感じだ。  もう一点で終わりますが、提案されている法律名前ですがね。執達吏規則というのは廃止されているわけですね。廃止されているものは、ないわけでしょう。廃止されたら執達吏規則というものはないと思うが、その存在しないものに基づく恩給年額改定に関する法律というのは、どういうものでしょうか、法律のていさいとして。
  94. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 仰せのとおり、執達吏規則は、昭和四十一年に執行官法が制定されましたときに、その附則で廃止されたわけでございます。ただ、執行吏に対する恩給につきましては、執行官法の附則の第十四条におきまして、「この法律の施行前に給与事由の生じた旧執達吏規則に基づく恩給については、なお従前の例による。」、こういう規定がありますので、この限度において、なお旧執達吏規則に基づく恩給というものが現存するわけでございます。それで、この法律の題名にもその名称をそのまま用いたわけでございます。
  95. 秋山長造

    ○秋山長造君 新しい法律をつくる場合には、どうせ附則に経過規定のようなものが何カ条か加わるのは普通の例ですけれども、この恩給のことなんかも新しい執行官法の附則の中で、附則の第何条かでこれをうたうというわけにはいかぬですか。わざわざ別な法律、存在しない、消えてなくなっておるものに基づく法律というものがまたわざわざ別個の法律として存在するというのは、どうもおかしいような気がするのです。経過規定ですから、むしろ、執行官法の附則の中にうたうということのほうがいいんじゃないですか、どうですか。
  96. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 理論的には、先生のおっしゃるとおりであると思います。ただ、事柄がやや具体的になりまして、これを執行官法の附則に入れると少しごたごたいたしますので、特に別の法律にしたわけであります。
  97. 秋山長造

    ○秋山長造君 ごたごたすると言ったって、この簡単な法律で附則が二十八カ条もあるんですよ。これこそごたごたしておるという感じがする。その中の一項目か二項目かを附則に入れるぐらいのことは、これよりはまだていさいもいいし、おのずからところを得るのじゃないですか。まあ、けっこうです。
  98. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 御異議ないと認め、それではこれより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  旧執達吏規則に基づく恩給年額改定に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。  〔賛成者挙手〕
  101. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  102. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後一時四十分再開することといたし、これにて休憩いたします。   午後零時三十九分休憩      —————・—————   午後一時五十分開会
  103. 北條雋八

    委員長北條雋八君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたし、売春防止対策に関する件について調査を行ないます。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  104. 山高しげり

    ○山高しげり君 先日、四月十五日の予算委員会で私が総理大臣に、三悪追放についてお尋ねをいたしました。私はいわゆる三悪の中でどれに一番力を入れておいでになるのですかというようなことをお聞きいたしたのですけれど、結局、総理は、三悪の問題はもっと声を大にし、各界の協力のもとにこれを根絶するように積極的な施策をすることが必要と思いますと、こう答えておられるわけでございます。格別新しい御答弁でもございませんけれども、とにもかくにも、積極的に施策をすることが必要だと、総理がそう答えておられるのでございまして、私はきょう、その三悪の中の売春の問題につきまして、いささか関係各当局にお伺いをしたいと思います。  先日、衆議院の法務委員会でも、神近市子委員がこの問題で質問をなさったようでございますが、そのときに当局からのお返事の中に、四十二年一カ年間の売春関係事犯の総検挙件数が一万二千二百四件と、こういう数字をお出しになっておられまずけれど、その内容を少し承りたいと思います。警察庁から数字をお出しになったように思います。
  105. 本庄務

    説明員(本庄務君) 四十二年一カ年間の売春の総取り締まり件数一万二千二百四件の内容について申し上げます。  御承知のように、現在の売春防止法では、いろんな形態の違反がございまして、大別いたしまして、勧誘と、それから売春助長事犯、こういうふうに分けております。一万二千二百四件のうち、勧誘が六千百三十八件でございます。それから売春助長事犯が六千六十六件、合計一万二千二百四件、こういうことになっております。さらに、売春助長事犯の中でも、いわゆる周旋と、それ以外の売春助長事犯とに分けられるわけでございますが、周旋が二千二百三十二件、周旋を除きました売春助長事犯が三千八百三十四件、こういう内訳になっております。
  106. 山高しげり

    ○山高しげり君 すわっていて失礼します。  その中で、結局起訴なさいました件数。
  107. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 昭和四十二年における売春防止法違反事件の起訴人員の合計は、五千八十六名でございまして、その内訳は、いわゆる五条違反の勧誘等の事件につきましては、二千六百九人でございます。それから、その他の助長事犯につきましては、二千四百七十七人ということになっております。パーセントで申しますと、勧誘等の五条違反につきましては五一・三%、その全体の中の五一・三%が勧誘等の事件でございます。
  108. 山高しげり

    ○山高しげり君 もう一つ承りますが、その中で、外人相手の女の検挙件数とか起訴数とか、おわかりでございましょうか。外人相手と申しましても、もう少し具体的に取り上げれば、ベトナムから帰ってきているアメリカ兵とか、そういったようなものを対象にした女の売春事犯が相当にあるようでございますけれど。
  109. 本庄務

    説明員(本庄務君) 外人を相手にした女性の売防法違反何件かという御質問だったと思いますが、実は外人を相手にした女性が処罰される場合ももちろんでありますが、そうでなくして、いわゆる管理売春ということになりますと、いわゆる売春婦ではなくして、その上に立つ悪質売春業者が処罰される場合が多いのであります。そういったものがむしろ私たちの重点になってはおるわけでございます。外人と申しましても、結局、横須賀、佐世保、岩国等の、いわゆる米軍基地の周辺が中心になっておるわけでございます。そういったものにつきましては、横須賀が七十一件、佐世保が三十二件、岩国が五十二件、こういう数になっております。これは必ずしも御質問の外人を相手にした女性そのものの検挙とは少し違っておりますけれども、いまのところ、その程度のお答えしかできないわけでございます。
  110. 山高しげり

    ○山高しげり君 それは検挙件数ですか、起訴ですか。
  111. 本庄務

    説明員(本庄務君) 警察で検挙いたしました件数でございます。
  112. 山高しげり

    ○山高しげり君 そうすると、その中の起訴件数はいかがでございますか。
  113. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 四十二年における横須賀の管内の起訴人員は四十八名、それから岩国は二十一名、佐世保は十四名、三地区合わせまして合計八十三名の起訴になっております。
  114. 山高しげり

    ○山高しげり君 それは女でございますね。業者ですか。
  115. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) これは女の場合も、それから業者も含まれておりまして、その内訳につきましては、ちょっとただいまわかりません。
  116. 山高しげり

    ○山高しげり君 それでは、現在、売春防止法がございまして、それでそれぞれ取り締まりその他が行なわれているわけでございますが、現行法では、いろいろ問題点もあるかと思います。ことに、現行法では、相手方の処罰ということには触れておりませんのでございますが、先日の衆議院法務委員会における神近委員の御質問に対しまして、法務大臣は、両罰論賛成といったような意思表示をなさっておられるようでございますが、もう一ぺんその点をお伺いしたいと思います。
  117. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 私の神近議員に対する答弁の趣旨は、男女が売春防止法の適用において不平等に取り扱われてはならぬ、同様に処罰せられるべきものであると、こういう私、基本的な観念を持っておるので、それを申したような次第でございます。男女同義務であるべきはずのものである。現行法のたてまえを検討いたしますと、この点については、男も女も大体同様に取り扱うこととしておるように、私は現行法を解釈をいたしておるのであります。まあ、たとえて言うならば、このいわゆる単純売春というものは、女も処罰をされないことにされておりますし、また、第五条の違反は男女を問わないことになっておると解釈をいたしておる次第でございます。私は、こういう事犯については、男女同権ではなくて、男女同義務の精神を貫いていくことが正しいのじゃないか、かように考えている次第でございます。
  118. 山高しげり

    ○山高しげり君 まあ衆議院の法務委員会の御意見は、たいへん素朴に、男も女も同じように処罰することが売春防止の目的を達するのには必要じゃないかと、こういうふうに考えておるとおっしゃっておられますので、もう少しこまかに伺いたいと思ったのですけれども、いまのようなお話でございますと、ここで大臣と議論をしてもしかたがないと思います。それで、大臣お急ぎのようでもございますし、いま大臣が御説明になったような内容が、いわゆる、この問題について男女同等に扱うという考え方に当てはまるのかどうか、これはまあ意見もいろいろ分かれてくると思いまするので、これ以上は伺わないことに今回はいたします。ありがとうございました。  それで、ほかの次の問題に入ってまいりたいと思います。関係方面でそれぞれ御答弁を願いたいと思いますけれども現行法におきまして、業者の処罰というものがどうも結果的に甘いのではないかと、これは警察側ではそうおっしゃる方がよくございます。どうも執行猶予が多い。実刑を業者に科さない場合が多い、こういうふうに見ている傾向があるのでございますが、このことにつきまして、責任の当局からひとつ御返事を願いたいと思います。
  119. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 業者の関係では、主として売春の助長事犯の関係になると思いますが、起訴率を見てみますと、昭和四十二年におきましては、五条違反については起訴率が五六・三%でございます。助長事犯につきましては、これをはるかに上回った七六・二%を検察庁では起訴しております。一方、参考までに刑法犯の起訴率をながめてみますと、いわゆる業務上の過失という特別の過失犯を除いた一般の刑法犯につきましては、その五四・八%を起訴しております。これに比べますと、助長事犯の起訴率が七六・二%ということで、きわめて検察庁においては厳格な処分をしておるということがが言えると考えます。なお、これに対する裁判所の裁判の模様でございますが、裁判所も売春の助長事犯については厳格な態度をもって臨んでおります。最近いわゆる実刑を言い渡す率が高まってまいりました。ちなみに、ここ二、三年の分を申し上げますと、売春の助長事犯につきましては、執行猶予といたします率が、昭和三十九年におきまして七五・一%になっておりましたが、それが四十二年におきましては七四・五%ということで、執行猶予率がやや滅っております。で、これは、昭和三十三年当時の執行猶予率が助長事犯について八一・七%にのぼっておったことと対比してみますと、いわゆる実刑率が逆に非常に強くなってきておるということが言えるわけでございまして、裁判所もそのように悪質な助長事犯に対しては厳格な態度をもって臨み、これに反して、いわゆる勧誘等の売春婦につきましては、刑罰よりはむしろ補導的な保護更生の措置を講ずるという現行法のいわゆる廃娼主義の基本的なたてまえを、各機関がそれぞれの分野において忠実に励行しておるものと考えております。
  120. 山高しげり

    ○山高しげり君 まあ、いまの数字を伺いますと、なるほどというふうにもうなずけるわけでございますけれども、取り締まりの第一線にいらっしゃる警察の方々の受け取っていらっしゃるお気持ちは、せっかくあげても上のほうで甘く処理をするというようなお気持ちがどうも強いようでございます。それは上のほうでそれをよく御存じであるのかないのかわかりませんし、また、感情はともあれ、数字がものをいうわけでございますから、それはそれでけっこうでございますが、ついでに伺っておきたいと思いますのは、最近における事例の中で、このようなのが悪質であるという何か代表的な事犯がございましょうか。格別ございませんか。——新聞などを見ますと、ずいぶんあくどいものがあるようでございますけれども、それでは、時間もございませんので、その次の問題を伺いたいと思います。  いわゆるひもの問題でございますが、私どもは、現行法をもし改正をする機会があれば、ぜひこのひもの処罰ということが一つの重要な点と考えてまいりたい考えでございますけれども現行法でも、ひもの処罰が全然できないこともないというお考えもあるようでございますが、現行法では無理だとお考えでございましょうか。こんなふうにしてやっておるというお答えをいただけるものでございましょうか。やはりこれは安田さんにお答え願いたいと思います。
  121. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 悪質なひもや、それから、いろいろまた管理売春の形態も変わってきておりますが、それらの新しい管理売春の形態につきまして、現行法のもとにおいても、私どもといたしましては、十分その取り締まりが可能であるというふうに考えております。新しい形態の管理売春、すなわち、いろいろなガイドクラブだとか、あるいはセット制とか、ドリンク制とか、いろいろな形態がありますが、これらにつきましても、現在の売春防止法十二条の適用を裁判所は判例上もかなり広く認めておりまして、十二条の運用によって、それらのものの取り締まりは法律的には十分できる体制になっております。また、ひもにつきましては、やはり現行法に掲げられておりますところの条件を満たすものでありますれば、それで悪質なものについて十分取り締まれるものと考えておるわけでございます。ただ問題は、法律のたてまえがどうなっておるかという法規上の問題じゃなくして、これを運用していく現実の取り締まりの問題でございまして、この点では、最近の形態がそのようにきわめて巧妙になってきておりますし、また、その手段も複雑に潜在化するというような形になってまいっておりますので、証拠の収集あるいは立証という面で相当な苦労、困難を伴うことになっております。で、要は、この取り締まりを実効あらしめるかどうかということは、まあ担当官の熱意と運用のいかんにかかっておると考えられますので、法制度としての面では、現行法でいいのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  122. 山高しげり

    ○山高しげり君 まあ理屈から言えば、いまの法律でもやれる、やれないことはない。けれども、実効をあげるのには、まあ担当官の熱意とおっしゃるのですが、まあ私どもも、数はたくさん触れたわけでもありませんけれども、取り締まりの第一線活動をしていらっしゃる方々に聞きますと、いまの三倍くらい自分たちのような人たちがいないと取り締まりらしい取り締まりもできないということをよくおっしゃるのですが、その辺いかがでございますか。
  123. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 確かに先生のおっしゃいますように、実際の捜査の活動面では非常な困難と苦労が伴うわけでございまして、その点、現在の取り締まりの体制というものがはたして十分であるかどうかというような実際上の問題であるとか、いろいろ検討すべき余地があろうかと思います。そういう面で、私ども関係当局としましては、その取り締まり体制の充実強化という点に人的あるいはまた財政的な面で十分な裏づけを実現しようということで努力をしておるような次第でございます。
  124. 山高しげり

    ○山高しげり君 それでは伺いますけれども、いまのその取り締まりの中で一番の大きな問題点として、トルコぶろのことがあげられてくるのじゃないかと思いますけれども、現状ではトルコぶろにおける売春の取り締まりというものは非常に困難だということをよく承るのですが、いかがなものでしょうか。
  125. 本庄務

    説明員(本庄務君) トルコぶろにつきましては、全国各地にございますが、そのトルコぶろの中で、売春の容疑のあるものと、そうでない純然たるトルコぶろと、いろいろあるようでございまして、これはまた県によってもかなり違うようでございます。東京が一番トルコぶろについて問題があるようでございます。このトルコぶろにおいて行なわれておる売春の取り締まりにつきましては、非常に苦労をいたしております。これは何もトルコぶろに限らないで、売春全般について捜査技術の面でたいへんむずかしいところがございます。特に最近ますます相手方の手段が巧妙になってまいりまして、立証することがきわめてむずかしい。と申しますのは、一般的な話といたしまして、やはり売春の相手方、つまり、男性が参考人として供述をしてくれなければ、捜査に入れないわけでございます。ところが、たとえばトルコぶろでその売春の相手方になったと思われる男性を参考人として警察でいろいろ事情を聞く、それを調書にしょうといたしましても、あまり名誉なことではございませんから、すらすらと自分の行為について供述をしていただくということは期待できないわけでございまして、ある捜査官の体験から申しますと、大体そういった参考人を百人ぐらい調べて調書化しようと思いましても、まずよくてせいぜい二、三人の調書がとれれば上できである。こういう意味におきまして、まず捜査の取っかかりの面におきまして非常に苦労するわけでございます。それからもう一つは、女性のほう、いわゆる売春婦のほうも、私たちとしては被害女性というように言っておるわけでございますが、被害者意識というものがほとんどない。むしろ、その売春行為をやることによって相当の収入があるということで、ある程度満足をしておる、そういう気持ちがございますので、その売春婦についても調べようとしてもなかなか進まない。要するに、男も女も、関係者いずれを調べましても、調べが進まないということで、なかなか一つ事件を立証するのに相当の日にち、あるいは警察官の人数というものを要するわけでございまして、こまかい点はまだいろいろございますが、非常に苦労しておるという点だけを一つ申し上げておきます。
  126. 山高しげり

    ○山高しげり君 トルコぶろは、問題があれば、事件があれば中に入ってもお調べになれるわけでしょうけれども一般的な所管は厚生省の公衆衛生局かと思いますけれども、保健所というところも非常に人手が不足していらっしゃるようですが、保健所としてこの風俗営業の取り締まりの上からのトルコぶろの問題について、厚生省から承りたいと思います。おいでになりますか。
  127. 後藤伍郎

    説明員(後藤伍郎君) 保健所課長がちょうどだだいま外国出張しておりますので、私からひとつ申し上げます。  保健所のほうでは、やはり警察とか、そちらからの要望、あるいはそういう関係ができた場合は参りますけれども、主として保健所でやる業務は、環境衛生的な面の指導にしぼられておりますので、その辺の事情は十分私からも答えられないんですが。
  128. 山高しげり

    ○山高しげり君 いや、ほんとうは防疫課長さんお出ましいただいたこと、たいへんけっこうなんで、防疫課長さんもお願いをしておったつもりですけれども、名簿に落ちておったんですが、結局、まあ厚生省の防疫のお仕事からは性病の問題があって、性病の問題と売春はたいへんに近い。これは佐藤総理も具体的にそう言っておられるわけですけれども、ですから、保健所のほう、おいでにならなければ、また防疫課長さんに承りたいこともございますから、お願いをしたいと思います。  そこで、この間も衆議院の法務委員会で本庄さんが、四十一年に風俗営業取締法が改正になりまして、トルコぶろの規制が行なわれたわけですが、その後、各府県の条例等でも、かなりトルコぶろの中の個室というものをなるべくなくするというか、そういう努力を各府県でもかなりやっていらっしゃるということを述べておいでになったようですが、その辺承りたいと思います。
  129. 本庄務

    説明員(本庄務君) 先ほども申し上げましたように、トルコぶろは全国にございますが、県によって、かなり事情が違うようでございまして、と申しますのは、もう少し実は詳しく申し上げたほうがいいかと思いますが、と申しますのは、売春というものがいかなる形態のもとに行なわれるかと言いますと、売春を売春として公然と業として行なう人間は、もちろん、ばかでもない限りいないわけでございまして、トルコぶろという隠れみので行なうか、あるいは風俗営業という隠れみののもとで、要するに、擬装風俗営業と申しますか、売春を行なうか、あるいは単なる飲食店、そういう飲食店名義のもとに隠れて売春を行なうか、いずれにいたしましても、何らかの隠れみのを使って行なうわけでございます。したがいまして、地域によりまして、擬装風俗営業というような場合には、その地域のトルコぶろというのは、大体ほんとうのと申しますか、本来のトルコぶろでありまして、売春とはまずほとんど関係がない。そういう意味におきまして、私は、先ほど申しましたように、現在トルコぶろにつきましては、東京が問題である。もちろん、他の府県においても問題があるところはございますが、一番やはり数からいいましても東京が問題だと思っております。それらにつきまして完全なる個室でないように、透視できるような窓を設けるとか、そういったような構造の面で規制をいたしておりますので、四十一年の改正以後はかなりよくなっておると。なお、その衆議院の法務委員会のときに、現状ではたしていいかどうかという御質問がございましたので、四十一年の改正以来かなりよくなっておりますが、なお現状でも悪いとすれば、将来はそういう点についてもさらに検討をする必要があると思いますというお答えをしたと記憶いたしております。
  130. 山高しげり

    ○山高しげり君 そのとおりに私は記録を拝見したのでございますが、私どもとしては、東京が一番悪いということは認められるように思いますが、ほかも決していいとも思えない。東京に続くものは大阪ではないかと思いますけれども、大阪では、万国博が近づきますにつれて、ホテルの新増建築、それに伴ってトルコぶろ形態のいろいろな設備が、外人客を対象として相当計画的に進められているのじゃないかというので、京阪神地方の売春対策にお骨を折っております民間の団体等では、非常に心配をしておるのでございます。それにつきまして、当局として何かお耳に入ったこと、あるいは運動のような動き等、御存じございませんでしょうか。
  131. 本庄務

    説明員(本庄務君) 昭和四十五年の万博をめぐるそういった事案につきまして、いろいろホテルの建築、旅館の増設あるいは遊び場所の新築、そういうような計画があるということは聞いておりますが、現実にどこでどういうものができた、あるいはどの程度できておるという詳細については、いまのところ承知いたしておりません。なお、万博の開設日が迫るにつれまして、そういったいかがわしいものができるおそれもないことはないと思いますので、十分そういった方面、今後気をつけて注意をしてまいりたいと考えております。
  132. 山高しげり

    ○山高しげり君 開催地の大阪府並びにその近県でも、それぞれお考えもあるかと思いますけれど、いまお話がございましたように、ひとつ当局としても、できてしまってからはどうにもなりませんから、早く手を打っていただかないと、実はもう、少しおそいのではないかと心配をしておるのでございますが、よろしくお願いをいたします。  それでは、その次に、さっきもちょっと出ましたけれども、ベトナムの問題も大きな転換を見せようとはいたしておりまずけれど、いままでにいわゆるベトナム帰休兵なるものが相当日本の国土に入ってきて、幾日か休んでまた前線に行かれる、そういったような事実がございまして、それらの人を相手の日本の女の売春行為というものが相当あるようでございます。昨年も朝日ジャーナル誌に、ベトナム帰休兵の五泊六日の休日ですか、そういうような記事が出まして、関心をそそったわけでございますが、米軍のほうから、たとえば東京に米兵が来たときに、日本の婦人と関係があって性病をうつされたといったような事例に対して、米軍の基地のほうから性病調査カードというようなものを東京都の衛生局に送付をしてこられて、調査を依頼してこられたというような事実を私ども聞いておるのでございますが、これは防疫課長さんに伺うべきでございましょうか、どなたかお答えを願いたいわけです。
  133. 後藤伍郎

    説明員(後藤伍郎君) ただいま御指摘のような、向こうの側からこちらの東京都あるいは管轄の保健所所長のところへ、いわゆる向こうのコンタクトトレーシングとしてそういうカードがまいることがございます。しかし、現実に、それによってこちらが動くほどの陣容も予算も十分じゃございませんので、それがはたしてどの辺まで日本側として実行されているかということは、私いま正確な数字を持っておりませんで、まあ私の考えでは、ほとんどやっておらないのではないかと思います。
  134. 山高しげり

    ○山高しげり君 たいへん正直なお答えかと思いますけれども、このことは、先般来私どもがしばしば国会でも問題にしてまいりました佐世保保健所の外人バーホステスに対する健康カードの問題にも関係があると思いますので、お尋ねをするわけでございます。東京都におきましては、衛生局の防疫課分室にその調査カードがございまして、それを見た者が、やはりそのカードには、どこで性交を行なったかという日時とか場所とか相手方の氏名までしるしてあって、それで米兵が病毒を感染したと、だから調べてもらいたいと、こういう依頼のようでございますけれども、まあ、それだけの人手もないし、金もない。だから、ほとんど何をやっておるか知らないと、まあ防疫課長さんはおっしゃるのですけれども、衛生局では何かやはり返事はしているようでございます。そして向こうも、場所としては東京都内のちゃんとホテルも指定しておりますので、私どものほうからは、そのホテルへも行って、ホテルの当局の人とも話し合いをしているわけでございますけれども、要するに、アメリカ側は、やはり自分のほうの兵隊さんたちの保健上、健康管理上、やはり性病の問題はなかなかきびしい態度をとっておるように思うのです。そのことが、佐世保における健康カードの問題にもなった。健康カードのことはさかのぼっていまいろいろ詳しく申しているのは時間が惜しいわけでございますけれども、それは課長さんよく御存じのように、すでに二十八年にそんなふうなものはもう禁じていると厚生省はおっしゃるにもかかわらず、四十三年の今日まで、佐世保保健所では、外人バーの組合に対して、そういう健康カードを——まあカードそのものはバーの業者組合で発行するわけですけれども、そのカードにこの女が病気があるかないかという記入は保健所がやっていらしたと、この事実はたまたまエンタープライズの入港で浮かび上がったことでございまして、それに対して、新聞等に出ましたので、急に厚生省が手をお打ちになり、また、保健所も米軍のほうにお申し入れになって、米軍もそれを受け入れたようでございますから、問題は片づいたみたいでございますけれども、これをさらに私どもが観察をいたしますと、アメリカ兵と日本の婦人の間の売春の問題について、売春行為そのものは別といたしまして、売春によって病毒を感染するといったことに対しては、健康管理上アメリカ側のほうがよほどきびしい、日本側はそれに対して何もやっていない、こういうふうに見えるのでございますが、何もやっていないと認めてよろしゅうございますか。
  135. 後藤伍郎

    説明員(後藤伍郎君) 私たち、性病予防法によりまして、そういう売春常習容疑者に対しましては強制健康診断、これはおもに第十一条、強制健康診断をやる。ただ、先ほどからのお話のように、立ち入りとかあるいは検挙という、保健所の権能ではなかなかむずかしい点がございまして、たとえば昨年、売春常習容疑者、これは昭和四十一年度でございますが、約七千名について健康診断しております。ですから、全然何もしてないということはないと思います。そのほか、一般の性病対策もそれと並行してやっております。
  136. 山高しげり

    ○山高しげり君 ただいまの七千名というのは、売春の常習容疑者ですね。
  137. 後藤伍郎

    説明員(後藤伍郎君) そういうことでございます。
  138. 山高しげり

    ○山高しげり君 そうすると、これは地域的には相当散在しているわけでございますか。七千名という数字は大体全国的におまとめになった数字でございますか。
  139. 後藤伍郎

    説明員(後藤伍郎君) そういうことでございます。
  140. 山高しげり

    ○山高しげり君 この中には、先ほどあがりました基地といったようなもの、あるいはそれ以外のものもみんな含めておるわけでございますか。
  141. 後藤伍郎

    説明員(後藤伍郎君) これは保健所と、それから保健所だけでは非常に体制が弱いので、都道府県、それから政令市、そういうところに性病病院あるいは性病診療所がございます、これは十六条の施設でございますが、両方で約半分くらいずつの、保健所関係が三千名、十六条施設が約三千五百名くらいの数字が出ております。
  142. 山高しげり

    ○山高しげり君 これの資料をいただけますか。
  143. 後藤伍郎

    説明員(後藤伍郎君) はい。
  144. 山高しげり

    ○山高しげり君 では、あとからいただかしていただきます。  結局、お骨の折れることもよくわかりますけれども、私どもから考えますと、日本に売春防止法というものもあるのに、アメリカ側はアメリカの兵隊の健康を守るために、たいへん積極的であるけれども日本の政府自身は、日本に売春防止法という法律があるということすらもどこにも表示をしていない。しかも、佐世保などは、A級という店の表示を向こうが要求をしたり、カードを持たせることも要求をして、そういう注文をこちらはいれている。そして、こららからは、何にも現存する法律についても一言も述べていない、こういう態度は、私どもは非常にもの足りないのでございますが、売春防止法、この法律責任をとっておられる政府の当局として、どうしてそんなにやすいことが行なわれなかったかという事実に対するお考えを伺っておきたいように思います。これは法務省からお聞きするのがほんとうじゃないかと思いますが。
  145. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) わが国に売春防止法が施行されておるということにつきましては、日本に駐留するアメリカの将兵も十分その点は承知しておるものと考えておりますが、その点につきましては、関係機関が接触いたします際に、機会あるごとに、アメリカ側にもわが国の法律制度についての啓蒙ないし認識を深める措置を講じておるものと考えております。
  146. 山高しげり

    ○山高しげり君 たいへん残念でございますが、その事実なしのようでございます。と申しますのは、私のほうも間違っているかもしれませんけれども、米軍基地の代表者にもお目にかかり、米国大使館の関係当局ともお話し合いをいたしまして、それは知らなかった、これからはそれを知らせるように努力をするといった御返事をいただいておるのです。ことに、座間のキャンプに参りましたときに、あちらの司令官はお留守で、副官でございましたけれども、ベトナムから兵隊さんが帰ってまいりますと、日本に数日間滞在をする間にいろいろこれだけは知っていなければならないというパンフレットを渡すようでございますが、その中には驚くほどこまかく、日本にはこういう刑法があるとか、いろいろな日本法律に対しての啓蒙にページがずいぶん費やされているのですが、どこをさがしても売防法はございませんでした。そして、そのことを米軍側は認め、そしてまた、私どもが将来版を新たにするような場合には、その条項をぜひ入れてほしいと強く要望いたしましたが、それは研究はしようと、しかし、どうもボーイズはあんまりこういうことはよく読まないのでねと言われたときは、私どもは、それはそうでしょうと笑って別れたのですけれども、いま安田さんがそんなにはっきりおっしゃると、上のほうではそう思っていらっしゃるけれども、下のほうには届いていないという、たいへん残念な実情があるように思いますけれども、いかがなものでしょう。ほんとうにちゃんとやってきたとおっしゃれるのでございましょうか。
  147. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 先生の御指摘もいただきましたので、さっそく調査いたしまして、もしその措置において欠けるところがあるようでございましたならば、直ちに十分に効果があがるように適切な措置を講ずる所存でございます。
  148. 山高しげり

    ○山高しげり君 これからのお約束をいただきましたから、もうその問題はそれにいたします。  そこで、佐世保はもうヘルスカードというものは取りやめになったのですけれども、佐世保で伺いますと、もう横須賀だって、岩国だって、そんなことはやっていないと、そんなことに保健所が介入なんかはしていない、もちろん、そういった健康管理については、業者とそれから基地の当局との間でいろいろ紳士的に話し合って双方の健康管理はやっているんだと、こういうようなお話をたびたび聞いたわけでございますが、横須賀、岩国、佐世保のようなことなしにうまくやっていると承っておりますけれども、いかがなものでございましょうか。これは結局は、保健所関係ではなくて、取り締まりの当局からごらんになって、その基地の売春という問題になるかと思いますけれども、基地売春も一般売春の中へ入るわけでございましょうが、日本における基地というものはまだそう簡単に近い将来になくならないでございましょうから、続いて問題が残ると思いますので、一言承っておきたいと思います。
  149. 本庄務

    説明員(本庄務君) この保健所の問題じゃなくて、基地売春の取り締まり一般についての御質問というふうに承りましたので、そういう趣旨でお答えさしていただきます。  売春につきましては、先ほども申しましたように、米兵を相手とする基地売春であろうと、日本人を相手とする一般の売春であろうと、いずれも厳重に取り締まるという方針で、ずっと第一線の各府県の警察はやってきております。その中でも、特に重点といたしましていわゆる管理売春、それから暴力団がからむ事案、それからもう一つは、被害婦女子が未成年者である事案、この三つを重点といたして取り締まりをやってきておるわけでございまして、その結果といたしまして、先ほど先生からも御指摘のありましたような数字が出ておるわけでございます。さらに、その中の米兵を相手といたします基地売春の取り締まりにつきましても、先ほど申し上げましたような取り締まり件数が出ておるわけでございます。ただ、ここで米兵を相手とする基地売春につきましては、先ほど一般の売春取り締まりについて非常な困難性がある、捜査技術上むずかしい点があるということを申し上げましたが、特に基地売春については、その点がさらに著しいのでございまして、と申しますのは、米兵が相手客でございます。ところが、その米兵の捜査に対する協力というものはほとんど期待できません。また、これは軍の作戦上しょっちゅう移動いたしまして、定住をいたしておりません。それから、いわゆる売春婦そのものも、これも必ずしも定住をいたしておりません。大きな空母等が入ったときに、どこからともなくこつ然と大ぜいの女が集まってくる、また二、三日するとどこかへ消えてしまうというふうな状態でございます。また、その営業形態がいずれもバー、キャバレー、そういった接客業を営んでおるわけでございまして、バーのホステス、実際また、大部分がホステスの実態でございます。その中に一部売春をやる者があるということでございまして、それらの者につきましても、必ずしも正確には数が把握できないというふうな面もございまして、非常にまあ苦労をしておるわけでございますが、その苦労を克服しながらも取り締まりを続けておると、こういう点につきまして、ひとつ御了解をお願いいたしたいと思います。
  150. 山高しげり

    ○山高しげり君 ありがとうございました。まあ大体私どもが調べているのと同じようなお話でございますので、お骨は折れましょうけど、ひとつ今後ともお骨折りを願いたいと思います。  その基地で働いております売春の常習の者でございますけれども、たとえば佐世保で私どもが会って話してみた女たちは、非常に年が若いんでございます。明らかに未成年というのがたくさんおりました。そうして、まあ、いろいろ聞いてみますと、アメリカさんほどいい男はいないと、若くって金離れがよくて女を大事にするからねと、まあ、ちょっと日本の殿方にはたいへんお気の毒でございますけれども、まあ、たいへん率直に明るい顔をしてみんなその娘たちが言うわけでございます。佐世保で私ども、労働基準監督署にも参りまして、いろいろとお話も伺ったんでございまするが、若い女がああいうところで働いているということにつきましては、労働省の御所管の中でも、お考えを願わなければならないことがあり、また、御苦労をしていただいている点もあるんじゃないかと思いますので、監督課長さんにひとつお伺いをしたいと思います。佐世保で監督署長さんに伺いましたら、正直いままであまり——あまりじゃなくて、何もやっていなかったみたいにおっしゃって、まあ来年度からはやることに上のほうでもなったらしいからこれからやりますよというような、たいへん率直なお話を聞いたんでございますが、現実というものはなかなか日の当たらない谷間が少々多過ぎるかと、いつでも思いますけれども
  151. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 佐世保の問題につきましては、現地で先生方御調査をなさいました際に、いまお話がありましたように、佐世保の監督署にもおいでをいただきまして、いろいろ御注意を賜わったわけでございます。その後、まず実情を申し上げますと、最近私どものほうで、こういった関係の組合の指導者を呼びまして調べました結果、現状では、関係の事業場が百二十一、労働者数七百五十七、そのうち女子が五百九十でありまして、年少者は七つの事業場で十三名発見されております。御指摘のように、年少者がこういう事業場に雇用されておりまして、特殊の遊興的接客業と言われますこういうバー、キャバレーに働いているといたしますれば、これは労働基準法六十三条二項に基づきます女子年少者労働基準規則に違反をするわけでございます。私どもとしては厳重に取り締まってまいりたいというふうに思います。ただいまもお話がございましたように、従来必ずしもこういった面に十分には手が届かなかったのでありますが、それでも、ここ一、二年、たとえばトルコぶろ、あるいはバー、キャバレー、ボーリング、深夜喫茶あるいはプロ野球のグラウンドボーイ、パチンコ等々、それぞれの時期に、出ました問題につきましては、関係局で監督を相当やらしております。ただ、何ぶんにも、先生御承知のように、労働基準法は全産業、全業種をカバーいたしておりますので、現在、二百四十万の事業場、二千九百万人の労働者を二千六百人の監督官で仕事をいたしております関係で、どうしても重点を工業的業種、つまり、製造業でありますとか、建設業あるいは運輸でありますとか、鉱業でありますとか、そういう工場なり鉱山なり、あるいは建設現場なり、労働災害防止を中心といたします監督に重点的に投入しております結果、病院、診療所、あるいは旅館、商店、あるいはいま御指摘のような、こういった風俗営業関係、私どもでは非工業的業種と言っておりますが、この非工業的業種にどうしても手が回りかねるという実態がございましたことは仰せのとおりであります。しかしながら、最近における大都市、あるいはいま御指摘のような、こういう特殊な地域における特殊な問題につきましては、そう言っておれませんので、非工業につきましても、重点をしぼりまして取り上げてまいりまして、特に年少労働者の問題については積極的に取り上げてまいろうという方針を打ち出しておりまして、現地署長が申し上げましたのもそういうことなのでございます。問題が起こりましたところは厳重な監督をやってまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  152. 山高しげり

    ○山高しげり君 ありがとうございました。おっしゃるとおり、ずいぶんお広いお仕事ですから、お骨折れますことよくわかっておりますけれども、そのことにつきまして、特に婦人の問題として、婦人少年局長からも、未然防止等お考えと思いますので、また、売防法につきましては、所管のお仕事もあるわけでございますので、この際、承っておきたいと思います。
  153. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) いま先生の御指摘のございました若い女子の売春行為と申しましょうか、そのような業態に従事している状態につきましては、私どもも特にそれを対象といたしました全国的な調査あるいは資料等はございませんのですが、たとえばミストルコにつきましての調査を行なうとか、あるいは各婦人少年室等で情報として把握して本省に寄せますものの中から、かなり憂うべき状態があるように考えております。そして諸種の調査等の示すところによりますと、これらの若い女子の転落した者につきましては、たとえば集団就職をして一たん工場等に就職した者が、その後の労働生活の中で、いわば安易な離転職等を繰り返してまいりますうちに、次第に転落していくというような一つのパターンも見られるかのようでございます。それで、私どもは、これは関係各省とも御一緒でございますが、特に本年の売春をなくす運動におきましては、年少婦女の転落防止のための施策を特に強調して取り上げておりまして、私どもの出先であります婦人少年室の各般の業務の中に、年少婦女の転落防止を重点的に取り上げるようにいたしております。具体的に申しますと、事業場の付属寄宿舎等におきまして、女子年少労働者の生活指導というようなことを通じて、健全な職業観をつちかうように努力いたしましたり、あるいはまた、特に中小企業等で福利厚生の施設等に欠けますその女子年少者が、ややもすればほかに享楽を求めるということもございますので、これらの者に健全な余暇活動を提供する意味合いにおきまして、勤労青少年ホームというものを国の補助で全国の商工都市に漸次増設してまいる計画も進めているのでございます。その他、中小企業に特に年少労働者の福祉を守るための任務をお願いする民間の協力者として、年少労働者福祉員という方をお願いいたしましたり、あるいは全国各地に婦人少年室協助員を配置いたしましたりしまして、売春関係の問題の相談に当たらせております。また、何よりもこれらの問題は基本的に婦人を尊重するというような機運に欠けているような点にも大きな原因がございましょうし、あるいはその他一般的に、物質本位の風潮が高まるとか、社会的文化的背景がございますので、婦人週間その他の啓蒙活動を通じまして、日本の文化的風土と申しますか、それの向上にもつとめているところでございます。
  154. 山高しげり

    ○山高しげり君 ありがとうございました。まあ、いろいろやっていらっしゃるわけでございますけれども、おそらくは、なかなかこれもお金や人手の問題もありまして、徹底させるということにはほど遠くおいでになるのじゃないかと思います。  問題を少し変えまして、現行法において婦人相談員の制度とか、あるいはまた、婦人の保護施設とか、そういうようなものがございますので、そのほうに少し話を移してまいりたいと思います。  過日も予算委員会で市川房枝委員が、婦人保護施設に非常に入寮者が少ないではないかといったような点に触れて質問を申し上げたようでございますけれども、少ないから予算が少なくてもいいというふうに私ども考えてはおりませんので、せっかくの設備がなぜ生かされていないだろうかという点に、考えてみなければならない点があると思って取り上げられたように思うのでございますけれども、その婦人の保護更生施設につきまして、現況につきまして一言、厚生省から伺いたいと思います。
  155. 山下眞臣

    説明員(山下眞臣君) 現在、婦人保護施設は、これは四十一年末の数字でございますが、全国で六十四カ所ございます。その収容定員は二千三百三十二名ということになっておりまして、平均いたしました収容の人員は、千二百八十二人ということでございます。率にいたしまして五五%という収容率を見せております。これを振り返って見ますと、昭和三十二年に、売春防止法が施行されました翌年でございますか、その時点におきましては、定員千八百八十五人に対しまして収容人員千四百十四人ということで、七五%でございましたが、すぐその次の年から収容率が四四・五%というぐあいに三十三年に下がりまして、それから徐々に幾らかずつ上がってまいりまして、四十一年度は、四十年度が五二・六%でありますのに対しまして、四十一年度は五五%まで収容率が上がったという状況になっております。  なお、現在の婦人保護施設の収容者の内容の特徴的な傾向を申し上げますと、まず第一は、売春のおそれがあるというふうな見地で収容されておる、端的に申しますと、売春歴があるかないかという点での数字でございますが、大体四十一年度の平均で、売春歴のある者が約三〇・五%、それから売春歴のない着が六九・五%ということで、年を追うに従いまして、売春歴のない者の比重が多くなってきておる傾向があるということが第一点でございます。  それから第二の特徴は、収容者の知能程度の低い者の占める割合が年を追うごとに高まってきておるということでございます。具体的に数字で申し上げますと、IQが七〇未満という者の占める割合でございますが、最近五カ年間で見ますと、三十七年度が三四・八%でございましたのが、年々上がってまいりまして、四十一年度においては四五・三%というふうな数字を示すに至っております。  それから第三の傾向といたしましては、施設収容者の中における比較的高年齢層の占める割合が高くなってきております。一例を申し上げますと、四十歳以上の御婦人の方が占めております割合が、三十六年当時におきましては約一六%でございました。四十一年度におきましては、それが約三〇%程度は四十歳以上の方が収容されておる。全般的に収容率が向上いたしてきておりますことと、それから内容的な特徴を若干申し上げて、御説明にかえさせていただきたいと存じます。
  156. 山高しげり

    ○山高しげり君 けっこうです。売春そのものもずいぶん変わってきておりますので、また、こういう施設に収容する人にもいろいろな移り変わりがあるというのは当然だと思います。ことに、世間ではこういう収容施設には売春歴のある人を入れるものであるというような考え方がありますけれども、ほうっておけば売春に落ちていくかもしれないような人を未然防止的に収容するような傾向が出てくることも、施設としては私どもは当然じゃないか、それくらい幅を見ていかないとこの仕事はできないとは思いますけれども、しかし、売春そのものにも非常に地域差のある現象でございますのに、法はわりあいに画一的であるというような点にも問題はまだたくさん残されておると思います。ただ収容者の人数とか、そういったような現状だけで軽々に結論が出ることを、むしろ私どもは慎みたいと思っているわけでございます。  婦人相談員についてもひとつ伺いたいと思います。婦人相談員の処遇の問題とか常勤化の問題とか、いろいろございますが、それは本日おきまして、婦人相談員の中に非常に多数の人たちが、自分たちの働き方について一つの要望を持っております。そのことは所管の当局としてはたぶん御存じだと思いますけれども、現在、売春事犯であげられまして婦人補導院等に入っておりますような女の人たちに対しまして、あるいはそれ以外の、補導院に入りませんでも、そういった保護更生の問題について、五条違反の女に対して刑事処分になさいました場合に、母子相談員が何にも仕事の上でタッチできないということをしばしば申しますけれども、その点につきまして、法務省としてどんなふうにお考えでございましょうか。
  157. 勝尾鐐三

    政府委員(勝尾鐐三君) 主として五条違反で補導処分に付せられて婦人補導院に収容中の女性に対する相談員の働きかけの問題でございますか。
  158. 山高しげり

    ○山高しげり君 はい、まずそれがございます。
  159. 勝尾鐐三

    政府委員(勝尾鐐三君) 婦人相談員に限定をするわけではございませんが、私のほうといたしましては、婦人補導院の機能を十分に発揮するためには、できるだけ外部の方々の御協力を得るということがぜひ必要であろう、このように考えておりまして、今月の二十七日、二十八日、二十九日に、婦人補導院長も含めました第一線の所長の会同を催すことになっておりますが、その際の議題の中に、関係機関との緊密な連絡、これを強化する方策というものを本年度の会同の議題に取り上げておりますので、不十分な点あるいは御要望の点は、おそらく上京してくる婦人補導院長も承知してくるかと思いますが、私のほうとしては、これは積極的に協力を求めていく、こういう考え方でおります。
  160. 山高しげり

    ○山高しげり君 実は、私どもも随時、補導院も拝見したり、関係の方々ともお話をしておりますが、その点につきましては、補導院に相当な格差がございますね。それから現在、東京を中心として地検の中の相談室とか、そういうようなところへ婦人相談員が地域的に協力をしていらっしゃる、そういうふうにすでになっておるところが相当あるようでございますけれども、これはみんなそうするときめるというわけにもいかないんですね。
  161. 勝尾鐐三

    政府委員(勝尾鐐三君) 婦人相談員が常駐をすると申しますと、婦人補導員に絶えず……
  162. 山高しげり

    ○山高しげり君 いや、これは補導院でございませんで、地検の中に。
  163. 勝尾鐐三

    政府委員(勝尾鐐三君) 承知いたしました。  地検のほうに婦人相談員に常駐を願うということは、検察庁としてもこの種の事犯を適正に処理するのに、東京の例をとってみましても、有効に効果があるというように私承知いたしております。したがいまして、大阪あるいは福岡等につきましても、いろいろ部屋の問題とか何かそういう問題はあろうかと思いますが、その辺の問題は事務的に片づくことでございますので、東京同様に婦人相談員の方がお見えいただくということは必要なことでもあり、そのようにしたほうがよろしい、このように考えております。
  164. 山高しげり

    ○山高しげり君 同じように、保護観察所の中に入ると申しますか、その関係はどうでございましょうか。
  165. 勝尾鐐三

    政府委員(勝尾鐐三君) 保護観察所、あるいは婦人補導院、あるいは女子刑務所等にそういう外部の機関の方々に来ていただく、その場合にいろいろ仕事の役割りと申しますか、連絡のしかた等についていろいろ問題があるように私は聞いておりますが、その辺は十分両者が話し合いまして、協力体制を緊密にしていくという意味では、私はこれは前向きで、積極的に進むべきものである、このように考えておりまして、私、保護等の関係者にお会いする際にも、目的その他についていろいろ問題があるということは承知いたしておりますが、十分その辺は話し合いをして、協力体制を一歩でも二歩でも進めるという意味において、いまの問題も処理すべきであろうという意見を絶えず持っております。
  166. 山高しげり

    ○山高しげり君 それでは最後に、総理府にお伺いをしたいと思いますのは、総理府の中に売春対策審議会をお持ちでございますが、これはこのごろはたいへん下火ではないかというふうにも思われますけれども、それでもない、懸案の売春白書も近いうちに出しますといったようなお話も漏れ聞いてはおるのでございますが、ひとつ売春対策審議会の近況等をお聞かせを願いたいと思います。
  167. 岸野駿太

    説明員(岸野駿太君) 総理府に置かれております売春対策審議会は、御承知のように、三十一年に発足いたしまして、そこにおきます審議答申の結果、現行の売春防止法ができたわけでございます。当時に比べますと、最近の現状が不活発ではないかという先生の御指摘でございますが、ちなみに、四十一年度に審議会を三回開きました。それ以外に小委員会というのを御承知のように五回開いております。この結果、四十年の十月の三十日に小委員会の報告というのがなされたのです。そこにおきましては、先ほど御指摘がございましたようなひもの問題であるとか、あるいは相手方処罰の問題であるとかいうような問題につきまして、関係省庁あるいは各委員の中で活発な討議がなされたわけでございます。その結論は、先ほど法務省のほうからも御意見がございましたように、現段階におきまして審議会が一致して何らかの結論を出すというわけには必ずしもいかないで、審議の過去の現状だけを報告するにとどまったわけでございます。しかし、この問題につきましては、引き続き十分またお互いに討議をしようということで、一応法制的な面につきましては、そこでもってストップになっているというのが現状でございます。それで、四十二年におきましては、五回開かれました。主として四十二年におきます審議の対象は、性病の問題が過去の年次に比べまして大きく審議の爼上にのぼされたようでございます。それとともに、四十二年におきましては、新しいといいますか、海外におきますいろいろな実情につきましても調査をするという必要性を財政当局に認めてもらいまして、四十二年度におきましては、外国の調査を行ないました。その報告もございましたので、いずれ、性病等の関係を含めまして、外国における事情等をしんしゃくいたしまして、これからのわが国におきます売春対策の方向につきまして引き続き討議をしようということにしております。それから四十三年度は、つい五月の初めに四十三年度の第一回の総会を開きました。これは先ほど労働省の局長さんからお話がございましたように、この二十四日が売春防止法制定の、制定といいますか、公布の日でございますから、その日を中心に毎年売春をなくす運動を進めておりますので、その運動の進め方につきまして、これを中心に御討議をいただき、この期間中におきまして、審議会委員が現地に出ていって実情調査するとか、あるいは啓蒙活動に従事するとかということを現在やっておるわけでございます。引き続いて不活発だというそしりのないように、委員さんにも十分連絡いたしまして、事務局といたしましては、この会議の運営が円滑に活発に行なわれるようにしたい、こう思っております。
  168. 山高しげり

    ○山高しげり君 あの審議会には、前は国会議員の諸先生も入っておいでだったのですが、現在はおいでにならないのでしょうか。
  169. 岸野駿太

    説明員(岸野駿太君) これは御承知のように、四十一年の十一月の改選の際に、各種審議会におきます国会議員の参加の問題というのが、御承知のように、米価審議会の問題が当時ございまして、とりあえず、そのときにおきましては、国会議員の発令は見送って、現在、私どもも民間委員の発令を行なって現在に至っておるのが実情でございます。
  170. 山高しげり

    ○山高しげり君 それからもう一つ伺いたいのは、さっきちょっと私が言及をいたしました白書の問題ですが、これは四十一年に売防法制定実施十周年事業として、当局では予算も見込んで実行に手をお染めになったはずでございますけれども、いろいろな事情があって、そのことがまだ実現をしていないようでございますが、本年に入りましてから、私が審議会の事務局にお尋ねしましたら、三月一ぱいにできます、こういうお話でございましたが、それはいかがでしょうか。
  171. 岸野駿太

    説明員(岸野駿太君) 御指摘のように、昨年のいまごろにはできているというつもりでもって、各省とお打ち合わせをいたしまして、資料の準備に取りかかったというのは事実でございます。しかし、各省からの御提出の資料、あるいはまた、総理府におきます整理等に時間がかかりまして、つい、昨年のいまごろ出るのを出ずじまいになったわけでございます。それで、昨年の暮れあるいはことしの初めという考え方もあったのでございますけれども、出すのも一つの時期を選ぼうということで、この五月の記念日、運動の日に間に合わすように出そう、一年おくらさざるを得ないということになって、これは三月までには出したいということでいろいろ進めたわけでございます。近くこれは大蔵省の印刷局政府刊行物の販売所において店頭に出るというぐあいに私ども思っております。
  172. 山高しげり

    ○山高しげり君 やってはおいでになるし、近いうちにお目にかかれるようでけっこうでございますけれども、率直に申し上げて、何もかもスローモーだなという感想を押えることができないわけでございます。現在、売春対策審議会の重要な位置にいらっしゃる委員の方々ですらも、政府はやる気がないんだよという放言を常になさる。そこで私が総理に伺ってみたら、大いにやらなければならぬ、こうおっしゃるわけでございますから、やっぱりやらなければならないものはやらなければならないのじゃないか。現行法ではやりにくいのかと伺うと、やろうと思えばやれるんだというお答えも、その筋からまたはね返ってくるわけで、しかし、やはり現状は、人手が足りないとか、予算が不足だとかいったような、いわば堂々めぐりをしているような、どの辺から切り破って前向きに走り出すかということについては、きょうこれだけの時間をかけてお忙しい皆さまのお話を聞きましても、まだ私としては、総理のお答えを裏書きするだけの安心を持てないわけでございます。しかし、時間にも限りがございますので、まだ承りたいことはないわけではございませんけれども、この程度できょうの私の質問終わりたいと思いますが、大臣ももうすでに御退席になられましたが、大臣のもののおっしゃり方も、衆議院でおっしゃったのとはきょうはまた別な味があると申せば味があるような、はなはだつかみどころがなくなったというような気持ちがしないでもございません。まあ私どもも、これはやはり日本の民族の将来にかかわる問題でございますから、三悪のどれ一つとは言えないと総理がおっしゃったとおり、その相関関係におきまして、それぞれの御関係の筋で、なおこの後とも御検討をいただきたいし、私どももまた、国民の立場から、しばしば総理が各界の協力協力ということをおっしゃるんでございますけれども、私ども協力しない意思もございませんけれども、当局としても、先ほど課長さんおっしゃいましたように、できるような協力をしながらみんなでやっていきませんと、どこだけが力んでもやれるという問題でもどうもなさそうに思いますので、審議会というような機能は、各界各層のりっぱな方々を寄せていらっしゃるわけでございますけれども、私どもは少し審議会というものに期待をかけ過ぎるのかなと思わないわけにまいらない点を、総理府ももう一ぺん聞いてお帰りくださいまして、さらに一そう国民の期待を裏切らない審議会であっていただきたいと、このことをお願いを申し上げまして、本日の質問をこれで終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  173. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 他に御発言もなければ、本件の質疑はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十三分散会