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1968-03-08 第58回国会 衆議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月八日(金曜日)    午前十時十五分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君    理事 高橋 英吉君 理事 濱野 清吾君    理事 神近 市子君       大坪 保雄君    瀬戸山三男君       中馬 辰猪君    中村 梅吉君       馬場 元治君    堂森 芳夫君       中谷 鉄也君    岡沢 完治君       山田 太郎君    林  百郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増田甲子七君  出席政府委員         警察庁刑事局長 内海  倫君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁人事局長 麻生  茂君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛施設庁施設         部長      鐘江 士郎君         法務政務次官  進藤 一馬君         法務省民事局長 新谷 正夫君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省人権擁護         局長      堀内 恒雄君         公安調査庁次長 長谷 多郎君  委員外出席者         警察庁警備局警         備課長     三井  脩君         法務省人権擁護         局調査課長   宮代  力君         文部省大学学術         局審議官    清水 成之君         専  門  員 福山 忠義君     ————————————— 三月八日  委員鍛冶良作君、岡田春夫君、西村榮一君及び  林百郎君辞任につき、その補欠として大坪保雄  君、中谷鉄也君、岡沢完治君及び谷口善太郎君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員大坪保雄君、中谷鉄也君及び岡沢完治君辞  任につき、その補欠として鍛冶良作君、岡田春  夫君及び西村榮一君が議長指名委員に選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件、検察行政に関する件及び人権擁護に関する件について、調査を進めます。  佐世保事件に関する問題等について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡沢完治君。
  3. 岡沢完治

    岡沢委員 私は、きょうは最初佐世保事件中心にした全学連関係の問題で約一時間、そして後半約三十分いただきまして、防衛庁関係質問をさせていただきたいと思います。  最初警察庁お尋ねをいたしたいわけでありますけれども、第一次、第二次羽田事件及び佐世保事件並びに成田事件等全学連中心にした事実の概要について、参加した学生の数、年齢、その学生装備しておりました内容、それに要しました警備側人員経費、またその結果生じました物損人損概要について、御説明いただきたいと思います。
  4. 三井脩

    三井説明員 第一次羽田事件におきましては、一般労組員を含めまして相当数動員がございましたが、いまお尋ね学生について申し上げますと、二千五百名でございます。これに対しまして警察官動員数は二千三百人、負傷者状況は、警察官が八百四十人、学生が五十一人、その他一般の方が五人となっております。一般市民のこうむった物損につきましては、民間の自動車ガラス破損ボデー破損等が五台、また民家ガラス破損が三十一枚などでございまして、件数では総計六十三件の物損がございます。  第二次の羽田事件におきましては、学生動員総数三千三百人でございます。これに対しまして警察官動員数七千人でございます。負傷者状況は、警察官が五百六十四人、学生が八十四人、一般人負傷は十四人でございます。また、地域一般市民のこうむりました被害は、民家窓ガラス、看板、自動車ガラス破損、それから屋根がわら螢光灯といったものの破損、それから学生角材を持ち去られた、ブロックべいをこわされてこれを持ち出されたというような損害が、合計で百四件に達しております。  佐世保事件におきましては、これは一月十七日から一月二十三日までの間でございますが、学生動員数は、延べで三千九百八十人になっております。警察官動員数は、最高時で五千五百人、日によって差がございますが、最高時五千五百人ということでございます。負傷者状況は、警察官が三百四十四人、学生が百四十人、それから公安官報道関係一般市民という人たち負傷が、総計で四十一名でございます。また一般市民等のこうむりました損害は、市民病院窓ガラス民家窓ガラス、あるいは角材学生に持ち去られた、屋根がわら等破損したというものを含めまして、計で四十二件でございます。  次に、二月二十六日の成田事件につきましては、学生が九百五十人の動員で、警察官は千七百人の動員でございます。負傷者は、警察官七百十八人、学生四十三人、一般人十一人。また一般損害は、窓ガラス自動車ガラスとかボデー破損等が、十七件に達しております。  なお、申し落としましたが、この警察官動員等に要しました警備上の費用につきましては、国費所要額が第一次、第三次羽田事件は、両方合わせまして四千五百万円、それから佐世保事件は、一月十七日から二十三日でございますが、これが約一億二百万。二月二十六日の成田事件につきましては、まだその額はまとまっておりません。また、ただいま申しました費用はもっぱら国費だけでありますから、地元の県が負担しました、現場で支出したものはこれに含まれておらないという数でございます。以上でございます。
  5. 岡沢完治

    岡沢委員 ただいまの御説明で、私のお尋ねしたうちで、学生装備の問題について全然お答えになっておりませんが、時間の関係で先に質問を進めますけれども、参加した学生大学別の大要がわかっておるかどうか、これは文部省でもけっこうであります。  それから、いま経費につきましては、国の負担した額だけをおっしゃいましたが、また確かに府県のことも触れられましたが、派遣警官相当数他府県からの応援があったと思いますが、概要どれくらいの府県負担があったか。伝えられますところによりますと、佐世保市長が国のほうに請求をした損害だけでも千六百万というふうに報ぜられておりますけれども、他にも当然に相当経費が考えられます。それから国費の中には、たとえば消防庁関係経費が含まれておるのかどうか、あるいはそれについてどれくらい人員が使われたのか、そういう点についてもお答えをいただきたい。  それから先ほどお触れになりました負傷者の中で、第一次羽田事件の五十一名の中には死亡者が一名あるはずでありますが、これは含まれておるのかどうか。それから報道関係の方々にも相当負傷なりあるいは物損があったはずでございますが、これについての調査はどうなっておるか、お答えをいただきたいと思います。
  6. 三井脩

    三井説明員 まず、第一次羽田事件学生五十一名の負傷と申しましたが、うち一名は例の山崎博昭、例の学生死亡が含まれております。  それから学生が用いました凶器につきましては、角材、それから投石というものが主たるものでございます。なお、投石を容易にするために、道路のアスファルトを割るための石割りハンマー、それから道路の側溝をこれによって割るというようなものをギターケース等に入れて持っていくというケースが、佐世保事件ではございました。そのほかにバリケードの鉄線を切るためのペンチといったようなものも持っていっておりますし、それからいかりをつけましたロープ、これも数個持っていっております。現場でも実況見分の結果押収いたしておりますが、こういうものがございます。それから、成田事件におきましては、竹やりを用意いたしました。これは現実には警察官とぶつかるところには持ってこないで終わりましたけれども、それがございます。それから成田事件では、相当数発煙筒を使いました。それから佐世保事件でも、同様発煙筒を使っております。それから成田事件では、農薬を使うということがございました。これが新たな点かと思います。それからまた佐世保事件では、アンモニア水をびんごと投げたというのがございます。中心はやはり投石角材、これを補助するための各種手段バリケードをこわすための手段、さらに農薬、こういったようなものが、凶器のおもなものではないかと考えております。  それから費用関係でございますが、佐世保事件成田事件、それぞれ長崎県、千葉県というようなところで負担をいたしております、それからまた、応援に参りました各県の警察官の場合に、各県で負担をするというのは人件費でございます。俸給、それから超過勤務俸給は県におっても出すわけでありますが、超過勤務は、たとえば佐世保へ行った、成田へ行ったという場合に、ほとんど徹夜で勤務するというような警備勤務の場合の超過勤務は、その警察官の属する県で負担をいたしますから、これは応援しない場合よりもその県の負担としてよけいかかっておるというふうに考えます。これはたてまえ上その警察官の属する県で負担するということでございますので、特に数字の上において私たちは把握をしておらないところでございます。  それから実施現場となりました長崎県、千葉県におきましては、国費として処理できるものは全部国費で見ておりますが、それ以外にやはり各種費用がございます。ただいま申しました警察官人件費超過勤務というのは当然いつもよりもふえるわけですが、それ以外に、宿舎の借り上げについてのいろいろな問題とか、あるいは事前打ち合わせとか、地元に対するPRをいたしますが、そのために各種の印刷物、会合というものをやります。そういうような会場の借り上げとか、そういう雑費と申しますか、そういうものについては地元県においても相当負担をしておるということでございますが、その金額については、国費対象でない関係もございまして、私たちのほうにおきまして数においては把握しておらないという状況でございます。  佐世保で約千六百万の損害等費用がかかったということは、われわれも十分承知いたしております。これは自治省において特別交付金によって処理をされたというように、私たちは承っておるわけでございます。  それから学生の各大学別動員状況等については、文部省のほうからお願いをいたしたいと思いますが、大体において申しますと、第一次羽田事件のときには、東京が約半数、その他の半数関西方面から参りました。百名以上の大学は、京都大学、立命館大学というふうに承知いたしております。それから第二次羽田事件のときも、大体同様なことでございます。佐世保事件のときには、東京以西学生が集まりました。成田の場合は、主として東京学生、これに若干関西学生が加わった、こういうふうに理解をいたしております。
  7. 清水成之

    清水説明員 ただいまの参加大学数でございますが、私どもがただいま持っております数字といたしましては、第一次羽田事件が五十四大学、第二次羽田事件が九十五大学佐世保事件が七十七大学、二月二十六日の成田空港が四十大学、こういう数字であります。
  8. 岡沢完治

    岡沢委員 学生年齢についての御答弁がなかったわけですが、私があとでお聞きする対策上も、ぜひ年齢について、大体どれくらいが平均年齢かということをお答えいただきたい。  それから警察当局には、損害の中で、地方公共団体損害についてはやはり当然お調べいただいて、きょう間に合わなくてもけっこうでございますから、成田市でもあるいは東京都でも相当負担があったはずでございますから、いずれは先ほどの話で特別交付金で国はめんどう見るということになれは、税金——いずれにしましても、地方公共団体負担いたしましても大部分税金がそれに使われるわけでございますから、ぜひ明らかにして資料として提出していただきたい。  それから先ほどお答えいただきました負傷者数を比較いたしますと、特に第一次羽田事件の場合に、警察官負傷が八百四十人、学生はわずかに五十一人、警察官が十七倍以上の負傷者を出したわけであります。第二次におきましても、警察官が五百六十四名に対して学生はわずかに八十四名である。この数字にはちょっと疑問を感ずるわけでございますが、何か負傷者数についてあまりにふつり合いでございますけれども、考えられる事情とか、あるいは数字について正確性に御疑問があるのであれば、お答えいただきたい。
  9. 三井脩

    三井説明員 警察官負傷数につきましては、もちろんわれわれのことでございますので、時間的な余裕があり次第正確にわかる。ただ現場においてまだ状況が続いておる段階でただいま現在何名かということになりますと、まだ部隊が動いておりますので、正確な集計ができません場合もございますし、あるいはやや通信等が混乱しております場合に、同じ部隊から受けた数字を集計するほうでダブって集計するというようなこともあり得るわけでありますが、今日におきましては、この数字は正確なものであるというふうに信じております。なお、学生負傷数につきましては、それぞれのそういう場合を予想いたしまして、その地域病院警察官を連絡に派遣をいたしまして、何名学生と思われる者が入院しておるか、治療を受けに参ったかということを病院側から聞いて調査をするというような手段をとっておりますので、病院側回答等が正しければこの数字に間違いがない、こう思います。ただ、学生の場合は、名前も言わない、学生であるという身分も秘匿するという場合が多いので、病院側であるいは明確でないものは、はっきり学生と本人が言わないものは、学生と言いませんでしたというようなことでもあります場合には学生の数が少なくなってくるというように、調査数字としてはそういう性質を持っておると思います。しかし、全般としてこの数字が正確につかまれた場合におきましても、負傷数警察のほうがはるかに多いというのは、これは事実でございます。つまり学生の側でただいま申しますように角材投石ということで警察官に攻撃をしかけてくるというような状態でございますので、どうしても警察官負傷が多くなったということでございます。  なお、ついででございますが、警察官負傷は、世間ではテレビその他で見ますと、いかにも角材でなぐってくるということを重視いたすわけでございますが、われわれもビデオその他で証拠写真をとっておりますが、これを見ますと、角材ではでに打ちかかってくるということだけで負傷者が生ずるという感じが、見た目にはするわけでございます。また、角材による殴打ということで、相当負傷がいたします。角材でなぐります場合には、大体百四十Gというような圧力がかかりますので——大体四十Gで致死、死にます、それをオーバーすること百Gぐらいの力がかかりますので、これはたいへん危険でございます。これにつきましては、警察官のほうで大だてをかまえるということでだいぶ訓練をいたしておりますので、全体の負傷者の中のおおむね一割が角材によるものでございますが、あとの九割は全部投石でございます。投石は、フィルム等を見ておりましても、石の飛んでくるのは映りません。この点でどうもはっきりいたしませんが、ただ、佐世保の十七日の平瀬橋の場合には、あの橋のたもとのコカコーラの店からコカコーラあきビンを投げておりました。このあきビンはわりあいに映るのでございますけれども、その他の石は映らないということで、見た目には角材だけというような感じがいたしております。警察官負傷が、まあそういう意味におきまして学生よりも多いというのは、投石によるものが非常に多い、こういうことで、いかなる場合におきましても、学生側負傷の数倍というようになっておる現状でございます。したがいまして、この投石に対する防護という点で現在最も頭を悩ましておるというような状況でございます。
  10. 岡沢完治

    岡沢委員 重ねて学生年齢についての御答弁がなかったのと、それから文部省のほうにお答えいただきたいのですが、先ほど大学数字お答えいただきましたが、国立私立に分けて、大体学生比率等についてもお答えをいただきたいと思います。  それから先ほど警察庁のほうでお答えいただいた国費の額は、たとえば先ほどお答えのように負傷者相当な数にのぼりますが、この負傷者治療費入院費あるいは補償費等が含まれておるのかどうか、お尋ねいたします。
  11. 清水成之

    清水説明員 ただいまの年齢の点でございますが、参加学生の大多数が、大学教養課程一、二年の段階が多いということでございます。したがいまして、二十歳前後が非常に多い、こういうことになります。  それから公私の比率でございますが、大学数にいたしまして、私どものほうでつかんでおりますのはあるいは警察と多少違うかもわかりませんけれども、第一次で国立が三十大学公立が五大学私立が十九大学の五十四、それから学生数でまいりますと、第一次が、国立私立が大体国立が五で私立が三くらいの比率になっております。それから第二次が、大学数にいたしまして国立が四十九、公立が十、私立が三十六の九十五大学であります。学生数が、国立私立の比が七対四、七が国立でございます。それから佐世保事件が、国立が四十四、公共六、私立二十七の七十七、それから学生数が、国立五に対しまして私立が約三、こういうような比率でございます。それから成田空港大学数でございますが、国立二十五、公立五、私立十二の四十二、学生数はちょっといま私どもよくつかんでおりませんので……。以上でございます。
  12. 三井脩

    三井説明員 ただいまの年齢の点でございますが、いまお話がございましたが、われわれが逮捕いたしました場合でも、相当数少年がございます。事件によって違いますが、二十歳未満のいわゆる法律上の少年というのは、三分の一は確実におると考えていいと思います。これは事件によっても違いますが、大体の感じでございます。  それから負傷者治療費の問題でございますが、警察官負傷の場合には、これは公務災害になります。先ほどもちょっと申し上げましたが、人件費県側負担、その警察官の属しておる県の負担ということになりますので、これはそれぞれの応援派遣をした警察とか、長崎県の警察なら長崎県ということでやっておりますので、国費では出さないたてまえになっております。したがいまして、先ほど申し上げました数字の中には、これは入っておらない、こういうことでございます。
  13. 岡沢完治

    岡沢委員 いま国の損害羽田事件の四千五百万、佐世保の一億二千万の中には、治療費入院費等は入らない、府県警の負担は入らないということをおっしゃいましたが、国の消防庁、特に羽田事件なんか、相当費用とか警備人数も要っておると思うのですが、これは含まれておりますか。
  14. 三井脩

    三井説明員 消防庁関係は、私が申し上げました数字の中には含まれておりません。
  15. 岡沢完治

    岡沢委員 それでは次に、これらの四つの事件、それぞれ違うとは思いますけれども学生のとりました行動態様、特に犯罪構成要件と関連をして、暴行とかあるいは公務執行妨害とか、いろいろ考えられると思いますが、その態様の主たるものをお答えいただきたいと思います。
  16. 三井脩

    三井説明員 それらの事件を通じまして特徴的な態様と申しますのは、先ほどもちょっと触れましたが、角材を用意するということでございます。これによって警察官部隊にぶつかる、羽田事件の場合には羽田空港に突入する、佐世保事件の場合には佐世保米軍基地に突入する、また成田事件の場合には公団に突入して実力行使をする、こういうような目標を掲げておりまして、その前に警察官部隊に突入をして、これで暴行、脅迫、傷害というものを加えた、こういうような内容でございますので、まずそういうような凶器準備いたしました段階は、いわゆる凶器準備集合罪に該当する行為が発生する。それでもってデモに移るわけです。デモの際には、少なくともそういう凶器となるようなものは条件によって所持することを許可されておらないのでありますから、これは公安条例違反というようになります。また、道交法によるデモ行進の成立の場合におきましても、これを禁ずる旨の条件をつけますので、道交法違反というような犯罪に該当するということであります。それから次に、警察官にぶつかるという段階で、集団による公務執行妨害という事態が発生をいたしております。この公務執行妨害段階で、さらに警察官傷害を加えるということになりますと傷害罪、こういうことになりますし、さらに米軍基地侵入をするという場合には、刑事特別法の二条に該当する。また、米軍野戦病院等もございますが、これが米軍施設に該当するということになりますと、やはり刑特法二条。また公団市役所等侵入をするということになりますと、刑法百三十条の建造物侵入、こういう事態に該当するというように思います。  最近の大体の態様は、以上のようなものが特徴的なものだと考えております。
  17. 岡沢完治

    岡沢委員 いまの凶器準備集合につきましてお尋ねいたしますが、先ほど装備についてのお答えの中で、角材、石が出てまいりました。新聞で報ぜられたところ、ヘルメットあるいは農薬その他ございますけれども、特に角材凶器準備集合と見られる根拠とか解釈の基準について、その他のものも含めてお答えいただきたいと思います。
  18. 三井脩

    三井説明員 いままで申し上げました事件について言いますと、事前会合におきまして警察官にぶつかり、警察官の壁を突破するということを言っておりまして、そういう段階角材等準備いたしております。その準備をして、少なくとも警察官の前にこれがあらわれるということになれば、凶器準備集合である点は明瞭であるというように考えております。この間の成田のときもそうでありますが、バスから角材プラカードの板を打ったものを持ってまいります。角材は一メートル半から二メートルありますが、プラカードは三十センチ、四十センチぐらいの小さなベニヤ板で、わずかにくぎ二本でとめてあります。全員がこのプラカードを持っておる。これはそれ自身たいへん異様だと思いますが、全員が手に手にこの種のプラカードを持っておりまして、警察官——この場合は市役所の前でございますが、警察官の前にいきますと、一斉にそのプラカードで地面をたたくわけです。そうすると、プラカードの板の部分が吹っ飛びます。それが吹っ飛んで角材くぎの二本ついたもの、これを振り上げて警察官に打ってかかる、こういうような事態でございますので、この結果から見ましても、明らかにこのプラカードを用意しておるというのは擬装ではないかというようにも考えられますし、直ちに凶器として使えるというようなプラカードというようなものは、事前会議における学生打ち合わせと引き比べまして、また現実行動というものと考え合わせまして、明らかに凶器準備したものと私たちは考えておるわけでございます。また二月二十七日には、三里塚で竹やりを約五十本用意をして、これは各人肩にかかえて歩く、集団行進をするということもありましたし、またバスに積み込んだというような事態もありました。これを警察官に向かって使用するために持って歩くというところでありますときには、やはり凶器準備して集合したものと私たちは考えざるを得ないと思っておる次第でございます。
  19. 岡沢完治

    岡沢委員 法務省刑事局長お尋ねいたしたいのですが、これらの学生運動関係で、すでに逮捕、勾留、起訴等の事実があったと思いますが、それらの逮捕事実の適用罪名、いま警備課長お答えになったのと大体一致しておるのか。たとえばほかに器物毀棄傷害その他もあるのか。お調べでおわかりの範囲内でお答えをいただきたいのと、あわせまして、あと文部省お尋ねすることとも関連いたしますので、お調べになった、また掌握しておる範囲内でけっこうでございますから、逮捕、勾留されたり捜査された学生の、こういう運動に参加する動機、犯罪の動機というのは、当然私はある程度お調べの対象になっておると思うのでございますが、それらについてもし把握しておられたら、お答えをいただきたいと思います。
  20. 川井英良

    ○川井政府委員 第一次、第二次の羽田事件におきましては、一番多いのが警察官に対する公務執行妨害罪でございます。それからその次には、傷害が罪名として非常に多く適用されております。その他道交法違反でありますとか、公安条例違反でありますとか、いうふうなものが適用に相なっております。罪名としてはいろいろたくさんのものがありますけれども、たとえば特殊なものとしましては、羽田の滑走路の中に入り込んだ航空法違反というような特別法も活用いたしまして起訴がなされております。それから、先般の飯田橋事件におきましては、公務執行妨害罪のほかに、凶器準備集合罪が適用されて起訴に相なっております。それから佐世保事件におきましては、ほぼ羽田事件と同じような罪名が適用になっております。  それから第二点の学生の動機でございますが、ほとんど大部分の者が黙秘権を行使しておりますので、的確な本心と申しますか、心からの動機を述べたという人は、報告によりますとわりあいに少ないのでございます。しかし、それらのものを勘案しましたり、それから物的証拠で、これらの行動を起こすに至りました過程でいろいろな文書が頒布されておりますが、その学生の団体が頒布したと思われる文書の内容等から勘案いたしますと、非常に過激なことばで書いてございまするけれども、私どもの捜査官の常識で判断いたしますと、やはり直接行動でもって——現在の状態が必ずしも学生の観点から見て理想的には動いていないんだ、こういうふうな理想的に動いていないところの世相というものに対して、問題があるごとにその問題をつかまえて、そして自分たちの実力でもってそれを大きく世間に宣伝高揚していくということによって、その自分たちの考え方に賛成ないしはその注目を引くということが、自分たちの当面におけるこれらの行動の直接の目的であるというふうなことが、たいへん抽象的でございますが、その辺のところが一般的なこの学生の動機としてつかまえることができるのではなかろうかという程度のことでございます。
  21. 岡沢完治

    岡沢委員 いまの動機と関連して、文部省からももしお答えできればお答えいただきたいのですが、刑事局長のほうでも、たとえば学生の法秩序に対する意識のあり方、あるいは国家に対してどういう概念を持っているか、この点について、もしデータあるいは先どほ御答弁の中にありました各種全学連関係から出ておる文書等から推測されるものがありましたら、お答えいただきたい。どういうふうにおとりになっておるか。  それからここで公安調査庁に、これらの一連の学生運動態様について公安調査庁としてはどういう調査をなさったか、それによってどういう結果を得られたか、各事件ごとでもけっこうでございますけれども、ことに破壊活動防止法と関連して、それに該当するような条件がそろっておるのかどうか、それらも含めてお答えいただきたいと思います。
  22. 清水成之

    清水説明員 ただいまのお尋ねでございますが、私ども直接調査したことはございませんけれども学生部長会議あるいは学生の実態調査をやっておる大学がございますが、そういう中で学生の意識調査というような任意のアンケート方式の調査をやっている大学がございますが、そういうものから総合いたしますと、全部の学生が全部そうだとは申せませんが、いま問題になっております、特に三派系の全学連学生につきましては、何と申しますか、法秩序を守っておったのでは政治的な意図が達成されない、実力をもって抵抗権を行使するのだ、こういうような意識があるのではないか、こういうことが大学学生部長会議あるいは実態調査等から見られる点でございます。  それから、これはいまお尋ねの直接のあれではございませんが、先ほど年齢との関連におきまして、中には入学試験が終わってほっとする、そして一般教養課程におきます何と申しますか、魅力のない一般教養課程の講義等に出くわしました場合に、そこに空虚感を持つわけでありまして、何らかの刺激を求める。そしてある者はこういう逸脱した行動に参加する、ある者はその空虚感を体育に求める、ある者はいろいろなレジャーのほうへ流れるというようなことが、実態調査の中の意識調査で出てまいっておるような状況でございます。
  23. 長谷多郎

    ○長谷政府委員 ただいまお尋ねの三派全学連羽田事件以降における行動について、公安調査庁はどのような調査をいたしておるか、その結果はどうであるかというお尋ねにつきまして、お答え申し上げます。  公安調査庁では、御承知のように、いわゆる三派全学連に対しまして、これを破防法にいう破壊活動団体の疑いをもちまして、破壊活動団体としてこれを規制すべきかどうかという観点から、昨年以来調査を進めてまいっております。羽田事件の第一、第二次にわたる行為及び今年の佐世保事件につきましては、わぼほが庁の調査は完了に近づいております。現段階では、この行動は破壊活動防止法の四条一項二号に該当するという疑いをもちまして、この三派全学連なるものに対しまして規制処分を加えるべきかどうか、加えるとすればどのような程度、どのような範囲にこれを行なうべきであるかという点等につきまして、さらに慎重な検討を重ねているところでございます。  なお、処分につきましては、最近迫っております時期にさらに三派全学連行動等も予想されるようでございますので、これらの動向、推移をよく見きわめまして、その処分の適正を期したい、かように考え、慎重な検討の最中でございます、終わります。
  24. 岡沢完治

    岡沢委員 それでは重ねて公安調査庁にお尋ねいたしますが、この調査に要された公安調査庁の人員経費、これについてお答えいただきたい。
  25. 長谷多郎

    ○長谷政府委員 本件の調査に要しました経費の点につきましては、実は最終の集計が年度途中でございますのでできておりません。現在までに集計できた確実なものだけを取りまとめまして、お手元に一応資料のメモを差し上げましたが、これは完了いたした計算ではございません。大筋を申し上げますと、第一次羽田以後佐世保成田事件の中間に至るまでの——最後のほうはだめでごございますが、中間に至るまでの現在までに集計できた現場調査だけに要した費用、これが約千五百万円でございます。今後ふえましても、おそらく現場調査だけに要しました費用は、それまでのところでも大体二千万円までにはならない、かように予想しております。そのほか、現場調査ではなく、本庁におきます整理、分析その他の関連調査費用は、急速にはちょっと算出いたしかねますので、さしあたりこの程度でお答えを許していただきたいと思います。  人員につきましては、それぞれの規模、日時によって違いますが、羽田につきましては百名をこえる人員が動いておりますし、佐世保は百名近い人員が動いております。先般の成田事件については、数が比較的第一次は少なかった。三十名前後の人員を投入いたしました。動き方がいろいろございますので、正確な人員数はまだ取りまとめておりませんけれども、概数はさようなところで御承知願えたらと思います。
  26. 岡沢完治

    岡沢委員 時間の関係で、なるべく簡潔にお答えいただきたいと思います。  いまの費用に関連して警察庁のほうに、先ほど警察庁のお出しになった費用は、この公安調査庁の約千五百万円が含まれているのかどうかという問題と、警備課長に、特にこの前の御答弁学生の思想傾向についてトロツキスト的なものだということをおっしゃいましたが、そのトロツキストというのはどのように解しておられるかということをお答えいただきたい。  それから公安調査庁のほうに、三派系全学連の、逆に向こうの関係学生たちの資金関係、その使った経費、その出所等について、いまのお答えですと、相当経費人員を使って調査しておるはずでございますから、お答えいただきたいと思います。
  27. 三井脩

    三井説明員 先ほど申し上げました費用警察関係だけでございますので、公安調査関係消防庁関係等は含まれておりません。  それからもう一点は、学生の思想動向といいますか、トロツキズム的な行動をやっておるということをこの前の警備局長お答え申した点についての御質問だと思いますが、これは共産党のほうからトロツキストといって呼ばれております。本人たちはそうではない、こう言っておりますが、まあ私たちが見ましても、これはたいへん暴力、激突主義といいますか、何か目的と手段を取り違えたといいますか、暴力をふるう、激突すること自体に何か意義を見出しておるのではないかという感じがいたしまして、トロッキズムと言われるのはもっともであるというように考えております。
  28. 長谷多郎

    ○長谷政府委員 お答え申します。三派全学連の資金関係についてお答え申し上げます。実は、この関係は前回も警備局長及び私から一応お答え申し上げましたように、実態の解明がまだできてない分野が多いのでございます。それにもかかわらず、現在わかり得ることを何かの形でお答えしろというような御要望でございましたので、そのような前提でお答えさしていただきます。  三派全学連の財政は、加盟各自治会からの上納会費と各種の寄付金をもってまかなわれております。しかし、その財政関係につきましては、全学連の側から一切これが発表を見ておりませんために、正確なところはわからないのが実情でございます。しかし、一応調査結果で認定できる資料もございますし、また推測可能な部分もございます。したがって、これらの資料を総合いたしまして、おおむね推定できるところをお答え申し上げます。  第一は、三派全学連の財政規模でございますが、彼らの財政収入の規模の概数は、年間約三千数百万円を実質的に数えるというふうに推定いたしております。その内訳は、まず全学連会費について申しますと、規約によりまして一人当たり年額四十円と定められております。したがいまして、三派全学連加盟の学生数を約十八万名といたしますと、年間七百二十万円の会費収入が集まるわけでございますが、実際にはそれだけは集まらず、五〇%、約三百六十万円程度の上納にとどまるものと考えております。これが会費収入でございます。そのほかに、三派全学連自体ではございませんが、三派全学連加盟のすべての自治会には、相当多額の自治会費が集まるものと推定されております。自治会費の額は各大学によって異なるのでありますが、平均すると、学生一人当たり年額五百円程度と見込まれます。三派系の学生約十八万名で、総額は約九千万と推定されるのでありますが、このうち、直接、間接に学生の運動資金に流れる部分は、三〇%くらいと認めております。したがって、約二千七百万円ぐらいが自治会の財政から実質的に三派全学連の活動に流れるであろうと推定いたしております。それからそのほかに特殊な資金源といたしまして、学生に管理運営がまかされておりますところの中央大学学生会館のように、その運営費が年間約七百万円、それが直接三派全学連に流用されるわけではございませんが、事実上学内の学生運動に役立てられる、三派全学連の活動に寄与しておる、こういった事例もございます。以上のうち、会費、自治会費の合計をいたしますと約三千万円、これが通常の財源でございます。このほか、臨時の財源といたしまして、学内外の資金カンパなどの各種の寄付金があり、その全容は把握しがたい点がございますが、少なくとも年額数百万円は下らない、かように推測してよいであろうかと考えております。これが財政収入の規模でございます。  先般来の羽田事件以来三派全学連が主要な闘争に要した費用、これを概算いたしてみますと、第一次羽田事件以降の主要な闘争につきましては、その闘争費用は、合計いたますと約千九百六十五万円を数えるのでございます。そのうち、第一次、第二次羽田事件がいずれも約六百万円、佐世保事件がそれに近く、成田事件はぐっと下がって百七十万円余りのようでございます。これらの四つの事件を通じまして闘争費の内訳を見ますと、動員費と称する交通費が約九百九十万円余り、全体の五一%を占めます。刑事事件となりました保釈金が約四百九十一万円、二五%を数えるのでございます。食費百六十七万円、武装費と申しまして、ヘルメットとか角材を買う費用、軍手を買う費用、これらが約百五十六万円、医療費が大体百十五万円、宿泊費約四十万円、かような内訳が推算をされるのでございます。  その次は闘争資金について御報告いたしたいのでございますが、第一次羽田事件から成田事件までの闘争資金は、その出所が、一部の新聞報道によりますと、ほとんど全額が一般学生市民、学者、文化人、労働者などのカンパという浄財によってまかなわれたというかのような報道がうかがわれるのでございます。しかし、これは私どもの情報上から見ますと、この全体については、三派全学連側から、外部の積極的な闘争支援を得ておるという印象を宣伝するために意識的に情報等を流しておる、かような点も疑われるのであります。したがって、私どものほうの調査でこのようなカンパの実情を大体推定いたしますと、総額はこの闘争費用の約一五%、二百九十三万円というものがカンパで集まったのではなかろうかと推定いたしております。それからまた、彼らの闘争参加費用は個人負担だとしばしば言われておりますが、その交通費等も、調査結果から見ますと、直接三派全学連自体から、本部が負担いたさない場合におきましても、派遣費等の名目で所属の自治会などから全額の支出ないしは大部分を補助するといった例も、かなり見受けられました。純然たる個人負担分はきわめて少ない、かように認めております。  なお、前記の闘争費用のうち約六百七十五万円くらいが、結局わが庁といたしましても出所不明の金と相なるわけでございます。これは、自治会支出分や、個人負担分、あるいは街頭カンパのわれわれにつかめない小口の募金等を考慮いたしましても、判然としない額でございます。情報によりますと、この点について、三派全学連には極秘の大口資金のルートがあって、闘争資金の大部分をこれに依存しておるといわれるようでございます。その一つとして共産圏とか友好商社関係などからの資金援助があげられており、第一次羽田事件以後公安調査庁で入手いたしました情報のその額を総計いたしますと、すでに四百万円以上に達しておりますが、この実情、実態につきましては、現在までの調査のところ、確実な証拠がございませんので、その裏づけがつきせんので、その情報の真偽を断定し得るというまでには至っておりません。  以上が、大体申し上げられる全学連財政関係のすべてでございます。
  29. 岡沢完治

    岡沢委員 文部省お尋ねをいたしたいのでございますけれども、これらの学生の特徴と申しますか、たとえばその修学状況、あるいは他の外国の学生運動との比較において特に特徴等がありましたら、お答えいただきたいと思います。
  30. 清水成之

    清水説明員 お尋ねの修学状況等の点からまず申し上げますと、私ども残念ながら全部が全部承知いたしておりませんけれども、最近数大学について調べましたところによりますと、出席率と申しますか、平素の授業の参加等の状況でございますが、一般学生に比較しまして概して悪いという報告をいただいております。それから数大学のうち、職業活動家はほとんど授業に出席をしていないというのが、二大学ございます。それから、特にいわゆる職業活動家についての状況でございますが、留年の状況を見ました場合に、教養課程につきまして、昨年の三月末現在で国立大学協会の教養課程の特別委員会が調査した結果が出ております。それによりますと、大体教養課程で落第する率が、四十二年三月末現在で、回答いたしました全国四十九大学の平均で、一〇%が留年をしておる。それから個別に見てまいりますと、これは工学とか理科とか工科系の留年率が高くなっておりますけれども、個々には三〇%とか、あるいは高い部門によりますと四十何%という留年率を示した部門もございます。いわゆる職業活動家の留年率が一般に比しまして高くなっておるということは、数大学調査からも出てまいっております。それからもう一つは、単に必然的に単位が悪かったということのみならず、一つの見方といたしまして、長く学内にとどまってそういうあれに参加をするという計画的、意図的に留年をしておる者が、ふえてきているのではないか、こういうような状況がございます。  それからいま国際的問題でございますが、目下私どもも、在外公館なり文部省から海外に出ております人間を通じまして問い合わせをしておるわけでございまして、細部はまだわかりませんけれども、まあ発展途上の国々におきます場合と、いわゆる先進国におきます学生運動の場合と、また態様が違うのではないか、しかし、行ってきた在外研究員、学者等の話を総合いたしまして、日本の学生運動、特に三派系の学生運動のように、暴力をもって絶えず繰り返しておるというようなことは、特色と申しますか、あるいは異常な点ではないか、こういう特徴が見られるわけでございます。以上のような次第でございます。
  31. 岡沢完治

    岡沢委員 防衛庁長官がお見えになりましたので、簡単に以下はお答えいただきたいと思いますけれども文部省のほうで、たとえば最近問題になっております高校の偏向教育、卒業式における答辞の問題等が新聞に報道されておりますが、そういう高校出身の学生全学連参加者が多いかどうかというような調査をされたことがあるか。いわゆる高校教育と全学連学生の思想傾向とに何らかの関連が見られるかどうかというような点について、具体的なデータとか、あるいは今後の方針等お持ちでありましたら、簡単にお答えいただきたい。
  32. 清水成之

    清水説明員 高校との関連でございますが、先ほど年齢段階を申し上げましたあれから見まして、単に大学教育自体の問題ではなかろう。高校以下の段階も含めまして、教育問題として考えなければならない問題があるのではないか。端的にいまお尋ねの点にお答えいたしますと、第一次羽田だったと思いますが、高等学校の生徒で検挙等をなされておる者が、たしか七名あったと思います。一部高校生の中にそういう政治的な運動が持ち込まれておるのではないか、こういう点は、そういう数字から見ましても立証できるわけでございます。  それからなお、私ども確認はいたしておりませんが、佐世保のときに、東京都内のどこからか、現地の高校のグループに対しまして、物材等の応援措置を求めたというような学生があるということがいわれておる次第でございます。
  33. 岡沢完治

    岡沢委員 警察庁お答えいただきたいのですけれども、明後日の十日には第二次の成田事件が予想されておりますし、その他米軍の野戦病院事件等も現在進行中でありますが、これらの見通しについて、あるいは予想される行動について、あるいは警備関係準備態勢について、簡単にお答えいただきたいと思います。
  34. 三井脩

    三井説明員 本日、北区の米軍病院に対する学生の反対行動がございます。これは三派系全学連各派がきそってこの闘争に参加する予定でございます。向こうの動員数相当数にのぼっておりますが、おそらく千五百名をこえるのではないか。警察では機動隊を十分配置をいたしまして備えるつもりでございますが、相当事態が発生するのではないかと懸念をいたしております。  三月十日は、きょうのこの闘争に参加した各派が、明九日から三里塚へ参りまして、中核派約千数百名は現地に民宿をいたします。翌日、三月十日には市民球場での集会をはじめとして行動するということに備えております。その他の各派は、東京から現地に直行するということでございまして、三月十日には四千名をこえる集会、デモがあるということになりまして、この大半を三派系学生において占めるということで、前回の二月二十六日を上回る、簡単に申しますと、あれの二倍の事態が発生するというふうに私どもは懸念をいたしておる次第でございます。したがいまして、大体二倍の態勢で臨むという方針で、目下準備を進めておる次第でございます。
  35. 岡沢完治

    岡沢委員 中高校生がこれに参加するといううわさがありますが、聞いておりますか。
  36. 三井脩

    三井説明員 いまのところ、その点は、そういう声はございますが、それはできるだけ押えるということで、そういう事態にならないのではないかというように思いますが、しかし、やはり少数の者はあるいは参加するかという点は予想されるところでございます。
  37. 岡沢完治

    岡沢委員 ここまで事実を明らかにしてまいりました段階で、公安調査庁に重ねてお尋ねをいたします。  第一次、第二次羽田事件佐世保事件成田事件、現に進行しようとしている第二次成田事件、あるいは米軍野戦病院事件等を見ました場合に、三派系全学連の諸君の行動が、いわゆる破防法第一条にいう「団体の活動として暴力主義的破壊活動を行った団体」に該当するということは間違いがないように私は考える。また、その思想傾向等についても、警察庁からの分析もございました法規範に対する対処のしかた、全くいわゆる実力主義から暴力主義に入っておると思うのでございますけれども、公安調査庁として相当経費を使い、人員を使って十分な調査をなさっておるはずでありますが、ことに、今後も行動が続くことが、いまの警察庁お答えでも明らかにされているわけでございます。公共の安全確保のための責任ある立場からして、これに対してどういうお考えを持っておられるのか。該当はするけれども、その適用についてはちゅうちょされておるとすれば、その理由はどこにあるのか、お答えいただきたい。
  38. 長谷多郎

    ○長谷政府委員 ただいまの三派全学連に対する破防法適用の問題につきましては、最初に御説明いたしましたとおりの事情でございまして、すでに第一次、第二次羽田事件及び佐世保事件について調査はほぼ完了いたしまして、これに対して団体規制の処分を加えるかどうか、加えるとすればどの範囲、どの程度にこれを行なうか、いつ行なうのが適切であるか、というような点の検討中でございまして、それらの処分について、また、この規制の処分は将来の危険性ということも一含みますので、来たるべき三派全学連の迫った闘争の実態等の推移を見きわめまして、御意見のほども十分考慮いたし、最終的に、慎重に適切な適用を考えるように努力をいたしたいと考えております。
  39. 岡沢完治

    岡沢委員 いままで明らかにいたしましたように、すでに三回、四回とああいう破壊活動が行なわれて、警察庁だけの負担でも二億円をこえる数字、これに地方公共団体その他の消防庁——あるいは現実に人命の損傷もある、はかり知れない被害が、国民の税負担も含めまして、ございます。その他、数字にあらわれない市民の不安、物損、私は、大きく公安が害されておるとすなおに見るのが事実ではないか。この段階においてなお慎重に、しかも成田事件の経緯を見てなんということは、私はどうしても納得できない。何のための公安調査庁であり、何のための破壊活動防止法であるかということを考えるのであります。これは責任を果たしておらないのではないかという感じがいたします。もちろん破防法第二条には拡張解釈を厳に戒めておりますし、慎重であることはわかりますけれども、慎重過ぎてせっかくの法の適用をおろそかにされるならば、むしろ背任行為ではないかという感じすらするのでありますが、重ねて御意見を承りたい。
  40. 長谷多郎

    ○長谷政府委員 御趣旨の点はよくわかりました。御趣旨の点も含みまして、善処させていただきたいと思います。しかし、いま直ちにこれをきょうあすに行なうというような点については、まだきまっておりません。
  41. 永田亮一

    永田委員長 濱野清吾君。
  42. 濱野清吾

    ○濱野委員 関連して。ただいま公安調査庁の御答弁があったのでありますが、われわれに敏感に、痛烈に響いてくるのは、この期において慎重とは一体何事か。あなたの答弁中に、範囲とか程度とかいうことをおっしゃっているが、一体範囲、程度というものはどこできめるのか。組織やその責任分担をしている責任者というものは、ちゃんときまっているはずなんですよ。まだつかめないというのですか。したがって、範囲というものを現在慎重に調査中というのでありますか、具体的なお答えをちょっといただければありがたいと思います。
  43. 長谷多郎

    ○長谷政府委員 ただいままでに、規制をするとすれば、どの範囲、どの程度という表現をいたしました。この一番中心をなす内容は、破防法の規定上、規制、処分の内容に二種類ございます。部分的な規制についてはさらに分かれて、三種類の形がございます。そのどれをいつやるかというような点を主として含んだお答えでございます。
  44. 濱野清吾

    ○濱野委員 そのどれを規制するかという前に、どれが破防法に該当するか、どういう形が破防法に該当するか、該当する組織、したがって責任というようなものが、この段階で具体的にあらわれなければならぬのだ。大体公安調査庁というものは、相当の金をお使いになっているはずなんです。たとえば警察庁やその他の諸君のような、そういうような金ばかりではなしに、われわれが目に見えない活動というものをあなた方はおやりになっておって、それも国家のために必要ならやむを得ぬけれども、そのために相当の予算というものが組まれているはずであります。しかも第一次羽田事件、第二次羽田事件、そうして佐世保事件米軍病院事件、近く、今晩あたりもやるのでありますが、私の住まっておる町で実はやっておる。ですから、私はよく知っておりますが、あなたは一体自分たちの責任ということをお考えくださらぬというと、とんでもないところに良民を苦しめていく結果が毎日出てきますよ。どう思いますか。慎重だの、調査だの、範囲だのといって、具体的なことをひとつお答え願えませんか。一体組織が完全にあなたのほうで調査ができたのか。それからその責任体系というものを、三派全学連のうちで、それぞれ根を洗い尽くしているのかどうか。今日に及んでまだ洗えないというならば、それはあなた方の怠慢であると私は思うのです。この点どうですか。
  45. 長谷多郎

    ○長谷政府委員 実は事が調査内容の本体に入りますので、近く処分がきまるまで、内容の詳細についてのお答えはお許し願いたいと思いますが、御質問の趣旨はよくわかります。その点を含みまして、ほんとうの意味で適切な慎重処理をやらしていただきたいと思います。
  46. 岡沢完治

    岡沢委員 重ねて公安調査庁にお答えいただきたいのですけれども、破防法第十一条による公安調査庁長官の請求の条件は、そろっておるのかどうか、お答えいただきたい。
  47. 長谷多郎

    ○長谷政府委員 先ほど申し上げましたように、従来の調査結果から申しまして、規制処分を行なうに足る事務的な準備は一応整った、かように考えております。
  48. 岡沢完治

    岡沢委員 それじゃ破防法第二条による公共の安全の確保のために、法の適用が必要であるということはお認めになりますか。
  49. 長谷多郎

    ○長谷政府委員 お答えいたします。法の趣旨に従いました慎重かつ適切な適用を考えたい、かように考えております。
  50. 岡沢完治

    岡沢委員 時間がないので残念でございますが、もう一点、これらの三派系全学連の組織が継続または反復して将来さらに団体の活動として暴力主義的破壊活動を行なう明らかな条件があると思いますけれども、それについてはどういうお考えをお持ちですか。
  51. 長谷多郎

    ○長谷政府委員 お答え申しましたように、その点を含めて事務的な調査はほぼ済んでおります。しかし、将来のことが問題に関連いたしますので、さしあたり当面近く展開される事態などは、なおこれを調査いたしまして、見きわめて参考にすることも決してむだではない、かように考えております。
  52. 岡沢完治

    岡沢委員 破防法の請求は公安調査庁長官独自でされるのが当然だと思いますが、何かこれに政治的な圧力でもあるんですか。どこに制約があるんですか。
  53. 長谷多郎

    ○長谷政府委員 お説のように、破防法に基づきます団体規制の請求は、破防法十一条に基づきまして公安調査庁長官だけがその名義でこれを行なうわけでございます。しかしながら、事が御承知のように重大な問題でございますので、もとよりこの措置をとります前には大臣の御判断も求めるのが当然でございまして、現在その中間報告を続けており、近く判断が出るんじゃなかろうか、かように思っておりますが、この場合について、決しておっしゃるような政治的な圧力がわれわれに加わっている、かようなことはございません。もっぱら適正な法の適用、慎重な適用、そのほんとにいいところがどこにあろうかという点を検討中でございますので、御了承賜わりたいと思います。
  54. 岡沢完治

    岡沢委員 先ほど来繰り返しておりますように、現に野戦病院事件があり、明後日には成田事件が予想される。しかも第一次に倍する双方の動員、事故もまた予想される。経費も予想される。死傷者も予想される。私はちゅうちょする時間的な余裕がない事件ではないかと思いますので、責任ある行動を切にお願いいたします。また、私から申し上げるまでもなしに、犯罪者をつくるのが目的ではなしに、犯罪予防という点からいたしましても、私は、もちろん拡張解釈は困りますけれども、この正しい運用についてすみやかな善処を重ねてお願いする。  あわせまして文部省に、先ほど来事実を明らかにしてまいりましたが、こういう学生を育て上げた背景等につきましてもお尋ねをいたしました。私自身もかつて陸軍士官学校を出まして、ちょうど全学連の方々と同じような二十歳前後の年齢——先ほどお聞きいたしますと、教養学部の人たちが主であり、未成年者も三分の一からおられるということを考えますと、この人たちの判断には独善があり、偏向はありますけれども、善意である。また、先ほど御指摘申し上げましたような方向における偏向教育といったようなものも大きな影響を与えておるということを考えますと、文部省としてもこれについての対策はあろうかと思いますが、どういうふうにお考えでございますか。
  55. 清水成之

    清水説明員 繰り返しこういう事件が起きておりますということは、学外におきます事件とは言い条、私どもも非常に残念に思っておる次第でございます。  ところで、大学段階の問題といたしまして、御承知のように、学生指導に関する文部省の立場というものが、これまた大学自治との関係であるわけでございまして、直接手を触れるということはできませんが、指導、助言の立場からいたしまして、全職員があげてその当該大学の指導方針に沿って学生に接触をしていただくということが、まず第一ではなかろうかと思うのでございます。そういう点からいたしまして、大学自体におきます指導方針体制の確立、それから特に教官の教育者精神——新制大学におきましては、研究だけではなしに、教育面が重視をされておりますので、教育者精神を持って全学あげて事に当たっていただくということが、まず第一ではなかろうかと思うのでございます。  それから第二点といたしまして、やはり繰り返しこういうことになってまいりますので、大学といたしましてけじめある措置を勇気を持ってとっていただきたい。それも教育的配慮ではないか。こういう観点から、大学当局に各種会議あるいはまた個別会談等を通じて指導、助言の立場からお話し合いをしておるのでございまして、そういう点を今後も推進をしてまいりたい。  長期的な問題といたしましては、先ほど来御指摘もありお答えもいたしましたように、教養課程の問題が非常に大きな問題ではないか。それと高校との連係の問題ということになってまいりますと、一つは教育上の問題といたしまして、大学入試選抜方法の問題が、非常に大きな教育上の問題ではないか。こういう点の改善は、文部省として大学とともども改善をしていく必要がある。こういう立場で事に当たってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  56. 岡沢完治

    岡沢委員 おっしゃることもよくわかります。ただ私は、文部省としてぜひ考えていただきたい一つの問題に、日本の大学制度の問題もあろうかと思います。たとえば入学をすると、ほとんど無条件に卒業できる。実際に出席しなくとも、学力がなくとも、卒業は許されるというような制度的な背景もあるという点を、ぜひ指摘しておきたい。  それから私は、先ほどの公安調査庁の御答弁とも関連してぜひここで申し上げておきたいのは、これは私見でございますけれども、こういう三派系全学連行動が今後も継続されるということについては、せちろん警官も大きな迷惑でございましょう、あるいはまた国民も大きな迷惑でありまして、経済的にもたいへんな負担でありますけれども、最も不幸なのは学生自身ではないか。一時のヒロイズムにあおられまして、結局最も大事な学生の本分である勉強をしない。そのこと自体、本人は将来一生を誤り、不幸な過程をたどるのは学生自体であり、場合によると犯罪者に仕立て上げられる。そういう点から見ましても、一日も早くこういう学生たちにみずからの誤りをさとらしめるという教育と、やはり法的な規制が必要ではないかということを指摘いたしまして、三派系全学連関係質問を終わらしていただきまして、引き続きまして、防衛庁長官がお見えでございますので、山口空将補の自殺と関連いたしまして、防衛庁のあり方についてお尋ねをいたします。  最初に、時間が制約されておりましてまことに恐縮でございますけれども、現在捜査中の青木元三佐の問題と川崎健吉一等空佐の捜査の状態について、お答えできる範囲で御答弁いただきたいと思います。これは防衛庁長官でなくてけっこうです。
  57. 川井英良

    ○川井政府委員 雑誌「航空情報」に掲載された事件は、防衛庁のほうから警視庁のほうに被害の申告がなされたようでございまして、目下警察段階で取り調べ中でございます。したがいまして、検察庁のほうには事件はまだ送られてきておりません。  それからあとのほうの事件は、先般三月二日だったと思いますが、警務隊が身柄を逮捕いたしまして、警務隊は御承知のとおり司法警察権を持っておりますので、警務隊のほうから検察庁のほうに事件送致がございました。あわせてまた厳重に取り調べをしてほしいという趣旨の告発も受理されております。したがいまして、あと事件は目下東京地検において身柄勾留の上で取り調べ中でございます。
  58. 岡沢完治

    岡沢委員 それでは特に川崎一佐関係についてお尋ねをいたしますけれども。すでに五日に勾留状が出されておるようでありますが、この勾留状の勾留事実はどういうふうになっていますか。
  59. 川井英良

    ○川井政府委員 防衛庁関係のいろいろ秘匿を要する書類を保管ないしは所管をしておる方でございますが、したがいまして、それらのものにつきましては正当な理由なくして外部に出すことは禁じられているものでありますが、そういうふうな内容のものをほしいままに外部に漏らした。したがいまして、自衛隊法にいうところの職務上知り得た秘密を漏泄した、こういう容疑で事件が送致され、また同じ容疑でもって勾留請求がなされております。
  60. 岡沢完治

    岡沢委員 自殺されました山口空将補は、自殺の前日に取り調べ当局からの呼び出しがあったようでございますが、これは参考人でございますか、被疑者でございますか、あるいはその他何か関係人というのか、お答えいただきたいと思います。
  61. 川井英良

    ○川井政府委員 地検の報告によりますれば、近く参考人として事情を聴取する予定になっておった方だそうでございます。
  62. 岡沢完治

    岡沢委員 この山口空将補並びに川崎一佐と関係の深いといわれます、ジョー・沖本氏は、現在ロスアンゼルスにおられるというふうに聞いておりますけれども、当然この人をお調べにならなければ犯罪の成立がむずかしいと思いますが、この捜査について、もしお見通し等がございましたら、過去の例もありますので、お答えいただきたいと思います。
  63. 川井英良

    ○川井政府委員 具体的な捜査のやり方でございますので、そこまでまだ詳しく地検のほうに対して私説明を求めておりませんが、事実は、ただいまあげられた人に秘密を漏洩したというふうな犯罪容疑になっておりまするので、これは欠くことのできない重要な証人だと思いますから、何らかの方法においてその人に事情を聞くということは、当然のことだろうと思います。ただ、具体的に日本の捜査権の及ばない土地に現住しておられますので、どういうふうな方法によってこれを確認するかということは、目下地検において検討中だと聞いております。
  64. 岡沢完治

    岡沢委員 防衛庁長官にできればお答えいただきたいのですが、防衛庁におきましては、さきに森田氏の自殺があり、また性質は違うと思いますけれども、防衛庁の一つの看板でありました円谷氏の自殺もございました。今度また山口空将補の自殺と、相次いだわけでございますが、その三者の自殺の原因についてはそれぞれ違うこととは思いますけれども、何かやはり共通面がないとは言えないものがあるような感じを、私も国民も持っておると思います。森田氏、円谷氏、山口氏について、明らかにされた範囲でけっこうでございますから、自殺の原因等についてお答えいただきたい。
  65. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 お答え申し上げます。まず森田君の死でございますが、森田君は伝えられておるようなホークの発注関係にからんで死を選んだわけではないのでございまして、ホークをどういうふうに発注するかということは、私自身が十一月に取りきめました。森田君の死というのは十月でございます。そこで、どういうようなことで死んだか、私ども各種調べもいたしました。結局、ホークを国内生産するわけでございますが、国内生産する場合に、アメリカ政府が研究開発に非常な費用を使った。そこで三十六億円アメリカ政府に払ってほしい。その上今度は、向こうの開発にかかるものでございますから、ライセンス料は払うわけでございます。ライセンス料とは別個に、アメリカ政府が突如として研究開発費を払ってほしい——これは国防省でございます。そういう関係で、国防省からそれぞれの役人が参りまして交渉いたしておりました。私自身は、日米友好関係にかんがみまして、十年前の研究開発費なんかは払わないで、会社のほうから買ってくるノーハウ、ライセンス、それだけの料金を払って国内生産に踏み切ったらいいじゃないかということで、出すことは初め絶対反対でございまして、大蔵省よりも強かったのでございます。しかし、そういうことを言っておったのでは国内生産に踏み切り得ないから、結局アメリカ政府の要望であるRアンドD、リサーチ・アンド・デベロップメント、研究開発費でございます、このRアンドDをある程度払うのはしようがないだろう。その金額は単位を少し間違えておるようだから、三十六億円という要求は二十九億円以内にしたらよかろう。あとのことは森田君、君にまかせる、こういうことで大蔵省、それから森田装備局長、それから国防省のほうから出張してきた役人と交渉いたしておったわけでございます。その交渉過程におきまして、約二十日間ほとんど不眠不休でございまして、私の要望した線よりももっと安い線でアメリカ政府はよろしいということになりました。結果的には二十七億円払ってもらえばよろしいということになりまして、結局ライセンス生産に踏み切るわけでございますが、ライセンス生産の前提である政府にRアンドDの費用を払え、研究用開発費を払え、こういうことになりまして、三次防の半ばごろから現品を発注するときに払えばよろしい、こういうことに取りきまりはなりました。なったその晩でございまするが、疲労こんぱいの極ノイローゼになりまして、そして死を選んだものである、こう考えておる次第でございます。これに対する不当勢力というものは、全然ございません。私は、将来は通産省の事務次官になる男を選んでくれ、こういうことを当時の椎名通産大臣に頼んだわけでございます。なぜそういう将来性のある人を頼んだかというと、将来性のある人は悪いことをしませんから、わいろなんかによって動かされませんから、そこでどうしても将来性のある人をよこしてくれ。行く行くは通産省に帰りまして通産事務次官になる人、こういう条件で、その人もまたなるのだそうでございますが、本人もせっかく一生懸命勉強しておりましたが、あまり無我夢中で勉強しまして、徹夜が続きまして、その結果ノイローゼになって死を選んだ。非常に哀悼にたえない次第でございます。また私としては申しわけないと思っております。  それからその次の円谷君の死でございますが、円谷君はアキレス腱を切りまして、そしてほんとうはマラソンなんかには出られない立場に立ったのですが、本年くにに帰りましたところがぜひメキシコでは勝ってくれということで郷土の皆さまに励まされまして、体育学校の校長の意図するところとは反しまして非常に苦に病んでおったそうでございまして、どうしてもこれはアキレス腱ではだめだけれども、やはりメキシコに出ようかというような、そういう本人自身の悩みがございました。校長のほうでは、アキレス腱を切ってもとどおりに手術をしてなったけれども、一ぺん切ったものはマラソンの途中でまたアキレス腱が切れるかもしれません。だから、君は先生になれというわけで、学生のコースから先生のコースに移したわけでございますが、途中また学生というコースにちょっとなりまして、それからまた先生のコースにするつもりで、教官以外はいけないということで——マラソンの教官でございますか、そういうことで指導しておりましたが、本人が日本国民全体から円谷、円谷ということで期待もされておりますし、郷土に帰ったところが、ぜび今度は前以上の成績をあげてくれといったような非常な歓送ぶりだったそうでございます。その歓送を受けまして帰ってきまして、二、三日にして自決した、こういうことでございまして、事態は、森田君のときとは違うわけでございます。そして私は、円谷君のときには校長を呼びまして、自衛隊の体育学校というものは自衛隊員の体位を向上させるためにあるのであるから、オリンピックで金メダルを取るばかりが能ではない、金メダル主義はやめたまえというふうに、私は体育学校の校長を指導しております。二度も呼びまして、巖重に私の考えを申しました。また皆さんにお考えがございましたならば、体育学校の指導方針について再検討してもよろしゅうございまするが、自衛隊体育学校の七十五名の者は、オリンピックのためにあるのではない、私はこういうふうに考えて指導しておるつもりでございます。  それから第三でございまするが、山口二三空将補を死なせたことは、まことに遺憾でございます。また、本人は非常にりっぱな、正しい制服組でございまして、これを失ったということは非常に遺憾でございまするが、本人のことを私が想像いたしましたり、周辺の者から聞きましたり、いろいろ今日まで調査した結果を申し上げますと、川崎健吉一等空佐という者が——これはいま刑事局長のおっしゃったとおり、自衛隊にも警務隊というもの、つまり自衛隊の警察隊というのがございまして、これは俗称で申すわけでございますが、そこで逮捕されまして、二日間勾留の後に検事勾留に移ったわけでございます。この容疑というものは、去年の十月ごろからでありまして、私は、積極的に自衛隊、防衛庁の綱紀の粛正をしようという立場で臨んでおるわけでございます。二十五万の自衛隊員は、大部分は非常にりっぱでございまして、月給だけで、ある場合には、有事には命も捨てよう、健康も国家、国民のために捨てようという覚悟で働いておるのだから、士気を振興するためにも、一部の者が——ごく一部でございまするが、悪いことをするというようなことがあれば許されない、こういう立場で臨んでおりまして、規律ということは、自衛隊をきわめて愛すると同時に、きびしいわけでございます。そこで、物資調達関係、ないしはナイキとか、ホークとか、FXとか、そういうような数千億にのぼるようなものから、連隊とか艦隊の米を買うとか、くつを買うとかいう数百万、数十万の調達に至るまで、一銭一厘の不正があっても許されない、また機密漏洩があっても許されない、こういう立場で、私は監察の立場で、自衛隊を引き締めていかなければ国民の皆さまに申しわけございませんから、見ておりましたが、少し怪しいという感じがいたしたのが去年の十月からでございます。自衛隊の警察隊員をしてあらかじめ捜査をさせました。そしてことしの二月ごろほぼわかってきたわけでございまして、川崎一等空佐の逮捕に踏み切ったわけでございます。この一等空佐の強制収容ないし検事勾留にからみまして、本人に参考人として検察庁に出頭せよという通達があったらしゅうございますが、本人はそれを知らずに他界いたしたわけでございますが、本人は非常にりっぱな正しい男でございまして、ただ自分が川崎一等空佐の直接の上司でございまして、数年同じ部屋で勤務したという関係もございます。でございまするから、川崎一等空佐という被疑者を出したことについての道義的責任を負って自決をしたもの、こういうふうに考えて、哀悼にたえない次第でございまするし、国民の皆さまには申しわけないと思っている次第でございます。
  66. 岡沢完治

    岡沢委員 時間の関係であまり触れられないのが残念でございますけれども、過日の予算委員会の大出委員質問に対して長官は、山口空将補の自殺と自衛隊の士気あるいは綱紀の紊乱とは関係がないという意味のことをおっしゃいました。私は、それはどうも納得できない。私から先輩の防衛庁長官に申し上げるのはおこがましい次第でございますけれども、昔の日本軍隊には作戦要務令というのがございました。その第四に「軍紀ハ軍隊ノ命脈ナリ」「其ノ弛張ハ実ニ軍ノ運命ヲ左右スルモノナリ」という規定がありました。またその第十には「指揮官ハ軍隊指揮ノ中枢ニシテ又団結ノ核心ナリ故ニ常時熾烈ナル責任観念及鞏固ナル意志ヲ以テ其ノ職責ヲ遂行スルト共ニ高邁ナル徳性ヲ備ヘ部下ト苦楽ヲ倶ニシ率先躬行軍隊ノ儀表トシテ其ノ尊信ヲ受ケ剣電弾雨ノ間ニ立チ勇猛沈著部下ヲシテ仰ギテ富嶽ノ重キヲ感ゼシメザルベカラズ」という規定がございました。軍隊と自衛隊と同列に論ずることは、いささか行き過ぎだとは思います。しかし、国民のこれに期待する度合いは同じだと思います。また、自衛隊に本来の目的を達成してもらうためにも、士気の重要性、あるいは指揮官の地位というのは、ここにうたわれているのと全く変わっていないと私は信じます。また自衛隊は、今後五年間に二兆三千億というような大きな国費を使っていただく。国民もまた大きな負担、これは子供から老人に至るまで全員を含めて一年間に五千円に近い負担を持つ組織でございます。もちろん私たちは、自衛隊そのものを否定したりするわけではございませんで、むしろこれに対する期待が大きいだけに、私は愛される、また信頼される自衛隊になっていただくということが防衛の基礎ではないかというふうに感じますだけに、今度の事件は非常に遺憾でございますし、単にこれを軍隊の士気と関係がないと言い切ってしまわれるのは、私は以上のような点から言ってどうかと思うわけでございます。これについて、特に今回の場合は、山口空将補の自殺に限りますけれども、自殺者を出したこの自殺の背景、巷間伝えられますように、業者あるいは商社につとめる自分の先輩との板ばさみということがいわれておりますけれども、きのうも総理から御答弁がございましたけれども、私も資料をいただいておりますが、自衛隊の高官の方々、特に一佐以上の方々の関係商社への就職が目立ち過ぎるようであります。これについていかがお考えであるか。その実態等は参議院で亀田議員の質問に答えられたとおりであるのか、私のここにいただいている資料が正しいのか、そういう点についてもお触れいただきたいと思います。
  67. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 山口空将補の死というのは、私は、あくまで部下に被疑者を出したということについての道義的責任感が原因である、こう感ずる次第でございます。そこで、一般自衛隊の士気ということと無関係であるということを言ったかどうか、私はその点はっきりいたしせまんが、自衛隊員二十五万は、ほとんど大部分の者が正しく清潔で、月給だけいただきまして、そうして頼もしい存在になる、国家国民の皆さまから見まして、有事には一億国民の生命、身体、財産、平和、人権、安全というものをお守り申す頼もしい存在になるために、一生懸命訓練に励んでいると私は確信いたしております。そのためにも士気を落としてはいけませんから、一部の調達関係の者にいやしくも一銭一厘の不正があってはいけないということで、私自身率先躬行しているつもりでございます。また、相当の上級幹部には、しばしば訓示をいたしております。一等空佐まではあまり訓示は及んでおりませんが、課長以上局長、幕僚長あるいは副長等には、いつも呼びまして、諸君もひとつしっかりやってくれということで、いまのところ自衛隊員は非常にりっぱにやっている、私は幹部もそう考えている次第でございます。これから後も、規律の関係は、昔のことばでいえば軍紀でございますが、規律を乱すとか、機密漏洩とか、わいろを取るとかということは、とんでもない、許されないことでございまして、積極的に粛正の実をはかっていくのが私の責任である、こう考えておる次第でございます。  そこで、業者のことでございまするが、業者と在職中関係があるなんということはもちろん許されませんが、業者の中に元自衛隊の幹部がおるということは、ある程度おります。ただ、意思決定の立場にあるのは、長官が許可をいたしまして、私になりましてから一人おりますが、あとは意思決定の立場にない者でございまして、それから営業部というようなことにはいないようにいたしております。顧問、嘱託等で登録会社に——まあ国防産業関係の登録会社、これに将補以上の者で就職している者は、お手元にある数字で二百数十名に及んでおります。これが防衛庁に対してどういう影響があるか。これは本人自身に聞けば、そんなに影響はないと言っていると思いますけれども、将来の問題といたしまして、これらの人々がまずもって防衛庁の調達関係なんかに悪影響を与えてもらっては困るということは外部の民間の人にはなってはおりますが、しばしば私は注文いたしております。  それから将来は、国防産業なんかに退職後直接就職するということはまずいという考えでございまして、昨日吉田さんに総理大臣がお答えしたのと全然私は同感でございまして、もし自衛隊法に不備の点があるならば、再検討いたしたい、そうして、きびしく粛正の実をあげてまいりたい、こう考えておるのでございまして、なるべく国防産業と関係のないほうへ、将補以上で、私の責任であるならば、就職のあっせんをいたしたい、こういうことを亀田さんにも参議院でお答えいたしましたが、岡沢さんに対するお答えも、同じでございます。
  68. 岡沢完治

    岡沢委員 それで、時間が十二時十分には必ず終わると約束いたしましたので、しぼってお尋ねいたしますけれども、こういう犠牲者を出さない——山口空将補につきましてはなくなりましたから、あえて避けますけれども、少なくとも川崎一等空佐については容疑事実がはっきりしているわけでございます。こうしたことをどうしたら防止できるかという点について、たとえば、昔の軍隊のように、武器は軍自身の兵器廠あるいは航空廠あたりでつくるということは考えられないか。そうでないと、どうしても秘密は漏れるのが当然でございまして、製造自体を自衛隊以外のところでやるということになりますと、これは利益追求機関が主であるだけに、大きな問題が生じますし、軍需産業のための三次防とか自衛隊という見方すらもできかねないという点もございます。あるいはまた、先ほどお触れになりました、自衛隊の法規の上での不備等も考えられます。特に隊員は秘密については職務を離れた後も守るということは当然だと思いますけれども先ほど説明がありましたように、最高クラスの人が関係商社に二百数十名も就職する。その場合には、やはりその会社に職務上忠実であろうとすれば、過去の秘密をある程度提供するということは、人情上避けられないのではないかと私は思う。私は、そういう点で、いわゆる構造上、運営上の誘惑的な要素もあるのではないかというふうに考えます。あるいは人の問題、この機密の防衛は、単に川崎空佐だけの問題ではなしに、自衛隊における教育のあり方、あるいは給与体系、退職金、あるいは年金のあり方等とも結びつくのではないかというふうな感じがいたします。ことに退職年齢、いわゆる停年が非常に早いというようなこととも結びつけて私たちは考えなければならない。そういたしますると、法規上あるいは運用上、あるいは人の問題等から、これらの機密保持について、あるいは犯罪予防について考えていただかなければならない点が相当考えられるわけでございますが、ことに自衛隊法五十九条、六十二条の関係等について、これは機密保持の関係でございますから、御意見があれば重ねて承りとうございます。ことに、先ほどお答えの中の顧問、相談役、これはいわゆる俗にいう役員ではございませんけれども、こういうあいまいな名称の就職の場合には、この五十九条、六十二条の適用があるのかないのか。むしろこういう場合にこそ、特別の職務を与えられていないだけに、かえって自衛隊勤務時代の秘密あるいはコネを活用するという目的で会社側も採用するでしょうし、本人も自分が採用された理由はそこにあるというような変な使命感を感ずるというようなことも考えられるのでございますが、顧問、相談役あるいは嘱託というような形での就職の場合の適用関係等についても、お答えいただきたいと思います。
  69. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 自衛隊につきまして御理解のある御質問をいただきまして、感謝にたえないのであります。そこで、まず、スキャンダルをなくすために兵器廠をつくってはどうかというお話でございますが、兵器廠につきましては、なかなか膨大なる施設を要するわけでございまして、結局、旧軍時代も護衛艦——いまのことばで護衛艦、昔では駆逐艦とかいうものでございまするが、これは民間会社につくってもらっているわけでございます。そういうわけでございまして、戦艦等、それから航空機、それから戦車、それから砲、それから護衛艦、そういうものを一切まかなう兵器廠というものは、なかなかできにくいのではないか。現状においてはできにくいのでございます。また、兵器廠をつくりましても、たとえばその材料を買うというような立場におって、もし悪いことをしようと思えば——鉄を買ってきてあと大砲にするというような場合に、悪いことをしようと思うやつはなかなか防げないわけでございまして、結局、その根性なり、修養なり、こちらのほうの綱紀ということの関係で締めていくよりしようがないと、私は思います。兵器廠の関係は、現在のところ考えておりません。  それから犯罪予防について各般の措置を講じろ。まず退職金が低くはないか。また、退役年齢が低い。退職年齢が非常に若いというのは、自衛隊が精強なる部隊としてあるためには平均年齢がどうしても高くあってはいけないのでございまして、低く、現在どおりにいたします。したがいまして、相当若いのに退職するのでございまするから、その退職した場合に、退職金も低いし、恩給も停止になったり、制限されたり——六十歳ぐらいまでは制限されたりいたしまするから、その場合には、ほかに就職するということは現状においてはやむを得ないわけでございます。ただ、その就職する場合に、なるべく国防産業に関係のないように、国防産業に関係のある職につきましても、営業とかその他意思決定に参画するような立場は避けるようにつとめてまいります。岡澤さんの御指摘の顧問、嘱託等は、いまのところ就職できるわけでございますが、その顧問、嘱託等で、かえって後輩の自衛官に対して強制力を及ぼしはせぬかという御疑念はごもっともでございまして、後輩の現職の自衛官に対して不当勢力を先輩が及ぼさないように、自衛隊ないし防衛庁を清らかなる、すがすがしい姿にしてもらうために、先輩の国防産業の方面に顧問、相談役、嘱託になった人も協力してほしいということを、しばしば私は申し伝えてございます。防衛庁なんかの、あの辺に出入するというようなことも困るということを言っておりますので、なお、弊害を完全にやめるというわけにはいかないと思いますが、またお知恵を拝借いたしまして、この機密防止ないしわいろがないようにということにつきましては一生懸命働いてまいりまするから、どうぞ御教示のほどをお願いいたしておきます。
  70. 岡沢完治

    岡沢委員 時間の関係がございますので、これで質問を終わります。
  71. 永田亮一

    永田委員長 林百郎君。
  72. 林百郎

    ○林委員 私は、防衛庁長官をはじめとして法務省に対し、二点について質問をしたいと思います。  いま岡澤委員からも質問がありました最近ますます根の深いことを露呈してきました防衛庁の汚職、これにからむ増田長官自身の責任をどうするのか、政府自身の責任はどうとるのかという問題、それとあわせて機密保護法の問題、先ほども長官は機密防止のために適切な措置をとるというようなことを言っていますが、これはわれわれにとって重大な関心事でありますが、その点と、もう一つは、最近神奈川県等で非常に重大な問題になっておりますアメリカの基地の電波障害制限地域の住民の民主的な諸権利が非常な制限をされ、・植民地的な屈辱的な状態にあるという問題がありますので、この二点についてお尋ねしたいと思うのです。  まず、防衛庁長官お尋ねしますが、川崎健吉一佐の逮捕と上司である防衛庁の空幕防衛部長山口空将補の自殺でありますけれども、これは機密の漏洩というよりは、自衛隊の装備の国産化をめぐって兵器産業界と防衛庁の高級幹部、さらに政界も一体となって、防衛庁の非常に根の深い汚職の一端がここに露呈をされている、こういうようにわれわれは考えざるを得ないのでありますが、この点についてまず長官の所見をただしたい、こう思うわけです。
  73. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 林さんにお答え申し上げます。私は赴任以来、防衛庁が清らかな、すがすがしい、ただ力強いという感じだけでなくて、そういう団結体になるようにということで積極的に、率直に申しまして粛正の線に向かいまして努力をしてまいりました。そこで、昨年十月ごろから容疑の点がぽつぽつわかってまいりましたから、これに対して相当の措置を本年になりましてから自衛隊の警務隊をしてとらしめておるわけでございまして、私のイニシアチブで今回の一件の関係のことはやらしておる次第でございます。また、検察当局にも御協力を願っておるわけでございまして、これ自身の線はいずれわかりましょうから、私自身の責任ということにつきましては、林さんのお尋ねに対する御答弁といたしましては、自衛隊の悪い部面、これはごく少ない部面でございまして、自衛隊全体を入れていわれることは非常に困るのでございまして、ごく一部分のものでございます、その一部分のものを積極的に清掃し、粛正をしていく積極的責任をとらしていただきたい、こう感ずるところで、これが私のまず第一の長官自身の責任に対する御回答でございます。  第二の、いま岡澤さんに対して機密保護の点について厳重に注意するということを申しましたが、秘密保護法ということは申しておりません。自衛隊法第五十九条についての取り締まりをしっかりやっていく、これだけのことでございまして、将来軍機保護法とかあるいは防衛秘密保護法とか、そういうようなことは一切考えていないのでございまして、ただ社会の間におきましていまや日本国は機密はないのだというお話もございまするが、これはあるのでございまして、国家公務員法にもございまするし、自衛隊法にも五十九条というものがございまして、公務員あるいは自衛隊員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない、それに対する処罰規定もございます。その範囲における国家機密というものは守られてあるということを、この機会において林さんの御質問に対する御回答を通じまして、国民の皆さまに申し上げておく必要があると私は感ずる次第でございまして、申し上げる次第でございます。これ以上のことは考えておりません。  次に、山口空将補の死というものは、根の深い自衛隊ないし防衛庁の汚職から発しておるのではないかという御質問でございまするが、私はそういうふうには考えていないのでございまして、山口空将補の死というものは、機密を漏洩したという被疑を持つ被疑者を出したということに対して道徳的責任を果たすために自決した、こういうふうに考えている次第でございます。
  74. 林百郎

    ○林委員 私が根の深いということを申し上げましたのは、これは単に日本の兵器メーカーと防衛庁、自衛隊とのつながりというばかりでなくて、アメリカの軍部、アメリカの兵器メーカーもこれに関係している、こういう国際的な根の深さを持っておるという点も、根の深いという一つの中に含まれているのであります。  そこで、長官にお聞きしますが、すでに逮捕されております川崎一佐が伊藤忠商事と提携しておるアメリカの兵器メーカーのヒューズ社の極東担当部員にも防衛庁の情報を提供していた事実が明らかになり、このことは公然と報道されております。このようにアメリカの軍部、アメリカの兵器商人に結びついている、こういう事実をあなたはお認めになりますか。川崎一佐がアメリカの兵器メーカーのヒューズ社の極東担当部員にも防衛庁の情報を提供している、これはゆゆしい問題だと思うのです。こういうことをあなたは知っておりますか。
  75. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 その点が、昨年十月以来、私がどうも怪しいぞということで自衛隊の警務隊をして取り調べを命じました内容でございます。そこで告発の内容は、アメリカのヒューズ社のジョー・沖本なる者に川崎健吉が防衛庁の機密を漏洩した疑いがあるからということで逮捕に踏み切り、さらに検事勾留を願っているのでございまして、それ以上どこの商社でどういうふうにするとか、あるいは自衛隊がどういうふうにあとは出るとかということは、検察当局の厳正なる取り調べにゆだねているわけでございまして、いま捜査中のことをかれこれ申し上げることはできないわけであります。ただ、御指摘の線は告発書に書いてあるわけでございます。
  76. 林百郎

    ○林委員 そうすると、捜査中の案件でありますが、長官の答弁の範囲内では、川崎一佐の告発の内容は、アメリカの兵器メーカー、ヒューズ社の極東担当部員に防衛庁の情報を提供した、こういう事実が告発書の中にある、こういうように理解していいですね。
  77. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 こちらの自衛隊の警務隊から送検をしたときの文書は、川崎健吉なる者が第三者に機密を漏洩したという文書になっておるそうであります。しかしながら、参議院の決算委員会において亀田委員答弁申し上げたときには、ジョー・沖本なる者に機密を漏洩したかどによりということは申しておりまするから、これは私はあなたのおっしゃるとおり認めるわけでございます。つまり告発書なり送検書の内容だけは、そのとおりでございます。
  78. 林百郎

    ○林委員 川崎健吉一佐の逮捕が、二兆三千億の三次防の装備受注をできるだけ多くとろうという日本の兵器メーカーの売り込みと、そしてさらには三次防に次ぐ四次防の装備受注の際も有利な地位を獲得しよう、こういう日本の兵器メーカー、兵器の国産化という名のもとに行なわれる防衛庁の膨大な兵器受注をとろうとする日本の兵器メーカーの売り込みと、そしてさらにはその背後にあるアメリカの兵器メーカー、こういうものの売り込み、こういう深い根の中からこの川崎一佐の問題が起きている。だから、これは単なる機密漏洩ということでなくて、非常に根の深い防衛庁の汚職から出ているのだ、こういう点を長官認められるかどうか。そしてあなたも言われたヒューズ社の極東担当部員に情報を提供したというのですが、その提供、どういう情報を提供したのですか。
  79. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 私が申し上げ得ることは、これだけでございます。すなわち「一等空佐川崎健吉が防衛庁航空幕僚監部防衛部に勤務中昭和四十年十一月下旬頃東京都千代田区平河町の北野アームス内でジョー・沖本に」——別にヒューズ社とも何とも言っておりませんから、これは訂正いたします。「ジョー・沖本にその保管していた秘密文書である「三次防地上通信電子計画概要(案)」という題名の文書をほしいままに交付し、職務上知ることのできた秘密を洩らしたというものである。」、これだけのことを——これが送検の理由でございますから、これ以上のことも、これ以下のことも申されませんわけでございます。
  80. 林百郎

    ○林委員 そうすると、一つだけ聞いておきますが、そのジョー・沖本というのは、これはヒューズ社の極東担当部員と、こう理解されていいのですね。この点だけはあなた先ほど言われたのですから、ヒューズ社に情報を提供されたというのですから、このヒューズ社に情報を提供したというのは、このジョー・沖本を通じて提供した、こう聞いておいていいですね。
  81. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 ジョー・沖本なる者の地位はわかりませんが、ヒューズ社の社員であるということは認めます。
  82. 林百郎

    ○林委員 そこで、私があなたに質問をしている本旨は、あなたはこれは秘密の漏洩、秘密の漏洩というところで限界をつくろう、つくろうとしていますけれども、これはヒューズ社にしても、それから伊藤忠商事にしても、そういうものが関連している秘密漏洩というものが、これは実際は三次防の二兆三千億のこの受注を、売り込もうという汚職だということですね、この本質は。そこをあなたがよく理解しなければ、みずからの責任もまた明らかになってこないと、こう思うわけです。その点が一つと、そしてこれはあなたは機密漏洩、機密漏洩ということで、報道陣なんかも動員してやっているわけですね。こういう中から、私はあなたが機密保護法を考えているんじゃないかということを非常な大きな疑惑を持っているわけです。言うまでもなく、これはあなたの答弁にもありましたけれども、憲法の九条で、これは私があなたに説明するまでもなくあなたは御承知だと思いますが、憲法の九条には、日本は武力による威嚇または武力の行使はしない、国際紛争解決の手段としては戦争の手段に訴えない、陸海空は置かないとありますから、国民の前に秘密にしなければならない軍の機密というものはないはずなんですね。だから、軍の機密を防衛するための秘密保護法のようなものは、あるいは機密保護法のようなものは、当然これは現行憲法の上からいってもつくることはできないたてまえだ、こういうようにわれわれは理解していますが、先ほどあなたの答弁がありましたけれども、念のためにその点もう少し——このたびの事態は、防衛庁の根の深い汚職に端を発しているという問題、それを人民の民主的な権利を抑圧し、制限するような機密保護法というようなものの制定にすりかえることは、絶対できないということ。なぜこれは私があなたに申すかというと、実はアメリカの軍部が機密保護法をつくるようにということを、日本政府に言ってきているわけですね。だから、私は念のためにもう一度、いまの二点をあなたにお聞きしたいと思うわけです。
  83. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 第一点につきましては、いま検察庁においてせっかくお取り調べを願っているわけでございまして、もとより自衛隊の警務隊もその補助者として検事の御指揮のもとに働きます。しかしながら、その内容等は、これからの問題でございまして、申し上げ得ないわけでございまして、いませっかく捜査中でございます。現在捜査を願っておるわけでございます。  それから憲法九条の問題でございますが、これは立場の違いもございましょうが、私どもは、憲法九条は日本の固有の自衛権を否定するものにあらずという解釈が、まず公の解釈になっておる、こう考えております。憲法九条第二項というものは世界特有の条項でございまして、憲法九条第一項は、ケロッグの不戦条約から始まりまして、諸国の憲法にも規定があるわけでございます。そこで、防衛関係において外国の脅威にならないある程度の実力部隊を持ってもよろしい、こういう解釈になっておりますから、憲法を厚く順守する立場において自衛隊は置かれておる、こう考えております。そこで五十九条というものがございます。五十九条の範囲を私どもは守らないものがあるならば、これを処罰してもらうように、それぞれ司直の手をわずらわしてでも遂行してまいります。それ以外のことは毛頭考えていないのでございます。また、軍の機密と言いますか、いま軍というものはないのですから、自衛隊という実力部隊はございまするが、憲法第九条第二項にいわゆる戦力を持った陸海空軍というものはないわけでございますから、したがって、軍の機密ということばは林さんもお使いにならないほうがいいんじゃないか。軍の機密のための特別保護法というものは考えておりません。それから五十九条は守ってもらいたい、守らなくてはいけないということで、自衛隊員には督励をいたしておる次第でございます。
  84. 林百郎

    ○林委員 そうすると、あなたの口からはっきりお答えをしてもらいたいことは、機密保護法というようなものを制定する意思はない、これははっきりそう聞いておいていいですね。
  85. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 林さんも法曹家でございますからよく御存じのとおり、アメリカ軍から供与を受けた関係の特別機密保護法、それはございますよ。供与を受けた武器に関しては、これは現行法でございますから……。その他現行法といえば、いわゆる五十九条、あるいは国家公務員であります。それ以上のものをつくろうとは考えておりません。
  86. 林百郎

    ○林委員 そこで最後にこの問題の結論として、あなたは部下の責任については非常にことばの上ではきびしいことを言いますけれども、しかし、このような根の深い防衛庁の汚職問題について、あなた自身やはり何らかの責任を明らかにすべきじゃないのか。そのことによって佐藤内閣のみずからの責任を明確にすべきじゃないのか、こういうように私は考えるのであります。これは非常に根が深い。国民の大事な税金の何兆何千億という金をめぐって、外国の商社まで加わって非常な汚職がはびこっている。そのために犠牲者まで出ているというときに、あなたが単に機密の漏洩という部下の責任だけで、あなたがみずからの責任を糊塗することはできないというように私は考えるのですけれども、あなた自身の所信をお聞きしたいと思います。
  87. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 これは、いま私が一生懸命に綱紀粛正をしようとして積極的に努力した結果、あらわれた事件なんです。これでくさいものにふたをしておったら出やしません、率直に申して。これは林さんの常識にも訴えますが……。そうやって一生懸命やりまして、六カ月後にようやく出てきた事件でございます。それで、あらゆる不正やうみは爬羅剔抉して積極的に責任を負うというのが、私の態度でなくてはいけないと思っております。また、事国防産業に関しましては、私は自分自身相当の態度をとっております。その態度を、どういうふうな態度をとっているかということは具体的には申し上げかねますけれども、国防産業の連中に聞いてみればわかります、増田の姿勢とはどういうものであるか。その姿勢がまた部下の姿勢になるようにしておるわけでございまして、一銭一厘の不正も許さぬ、こういう態度をとっておるわけでございます。  それからあと、あなたも法曹家ですから申し上げますが、十人の被疑者を走らすとも一人の無事をつくるなかれ、こういうようなわけで、現在被疑者段階でございますから、川崎一等空佐といえどもまた被疑者でございまして、被疑者は最後の審決があるまでは白というふうに見るというのが、米法関係の、個人の人格や人権を絶対とする思想でございます。私がいま一生懸命粛正をしておる過程においてかれこれ言われることは困るのでございまして、積極的に責任を果たすために、どうぞ御協力を願いたい、こう考えておる次第でございます。
  88. 林百郎

    ○林委員 時間の関係がありますから、これを徹底的にあなたと論争する余裕がないわけですけれども、しかし、あなたの言われた一銭一厘も事兵器産業の問題についてはおろそかにしない、そういうことを言っているあなた、あなたがそれに対して政治的な責任を持っているならば、あなたの在任中に起きているじゃないですか。しかもあなたは、十人の被疑者を出そうとも一人の無事を出すなというようなことを言った。しかし、それを、一人の無事だと言おうとしている一人を、防衛庁は告発しているじゃないですか。自分で告発をしておきながら、無事の者を罪に落としちゃいかぬ、そんな二律背反のことばがありますか。だから、あなたはことばではきれいなことを言っているけれども、実際この事態に対するあなた自身の政治家としての厳粛な責任を国民の前に感じておらない、こういうように私は考えるわけです。この点は次の質問とからんで答弁していただきたいと思います。  そこで、次の問題に移りたいと思うわけですけれども、いま世間で非常に大きな問題にされております神奈川県の上瀬谷をはじめ神奈川県での——自民党系の知事ですけれども、この知事や市長までが先頭に立って、市民があげて反対しておる上瀬谷あるいは相模原市などの在日米軍基地周辺の電波障害制限地域の問題が非常に問題になっている。ここは法務委員会ですから、私は主として法律的な観点からこの問題を聞きたいと思いますが、政治的な問題になりましたら、防衛庁長官お尋ねします。具体的な問題については、防衛施設庁の関係者にお尋ねしたいと思うのです。  まず、長官にお聞きしますが、非常な厳重な電波障害制限地域としておる一例として申しますと上瀬谷の基地、ここでは一体何をしているのですか。どういう報告をあなたは受けているわけですか。そしてなぜこんなに厳重な制限をしなければならないのか。これをひとつ説明していただきたいと思います。これは地域の住民にとっては非常に重大な問題であります。何のために自分たちがそんな権利の制限を受けて上瀬谷の電波の障害除去に強制的に協力させられるのかということは、重大な関心事でありますので、まずその点防補庁の長官にお尋ねしたい。さっきあなたの政治責任の問題とあわせて、まずこの点をあなたにお聞き・したい。
  89. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 上瀬谷におきましては、米海軍、それから海上における艦船との通信をいたしておるわけでございます。
  90. 林百郎

    ○林委員 それで特にこういう厳重な電波障害除去の措置をしなければならないということは、どういうことですか。たとえば、もう少し具体的にお聞きしますが、艦船との連絡あるいはその地域外との電波電絡というのは、具体的にはどういう内容なんですか。
  91. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 政府委員をして答弁させます。
  92. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 上瀬谷の通信施設は、先ほど長官からも申し上げましたとおり、艦船との通信等を行なっておるわけでございますが、その近くに電波障害を起こすような電波雑音と、われわれは申しておりますが、そういう雑音が発することによってその機能が阻害される、障害が起きるということで、一定の区域にそういう電波雑音の生じない地域を設定したい、これがアメリカ側の要望でございます。
  93. 林百郎

    ○林委員 だから、どういう電波をそれじゃ発信しているのですか、受信しているのですか、それをまずお聞きしましょう。もし発信なり受信なりしているとすれば、どういう機能を発揮するための電波の受信をしているのですか、あるいは発信をしているのですか。
  94. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 上瀬谷通信施設におきましては、受信しているということを聞いております。
  95. 林百郎

    ○林委員 あなた小出しにだんだん出してくるけれども、どこの電波をどういうふうに受信するのですか。
  96. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 これは先ほど申し上げましたとおり、艦船との通信ということで、受信の機能をやっておるわけでございます。
  97. 林百郎

    ○林委員 それじゃ、防衛庁長官用事があるようですから、一つだけお聞きしておきますが、長官、こういうことを知っていますか。プエブロ号の乗り組み員のハモンド海兵隊軍曹の自白書に、自分は「陸軍語学学校を卒業した後、日本・上瀬谷アメリカ海軍安全団で無線盗聴手として勤務するようになった。上瀬谷アメリカ海軍安全団にいる無線盗聴手たちの任務は、ソ連と朝鮮民主主義人民共和国の海軍についての情報とこの両国政府の外交活動についての情報を集めることである。上瀬谷アメリカ海軍安全団は、その機構が非常に大きく、そこで働く人だけでも約三千人もいる。」そして、さらにプエブロ号の艦長の自白の調書によりますと、米日条約によって日本がアメリカ海軍に対して提供している横浜や佐世保のような基地がなくては、私たちが遂行したそうした形態の作戦を遂行することはできない。要するにスパイ行動をした、領海を侵犯したということで逮捕されているんですけれども、この横浜や佐世保基地がなくてはこういうことはできないんだ、こう言っているわけですね。そして、この上瀬谷基地では、計画的に社会主義国からのいろいろの情報を聴取し、そしてスパイの訓練をし、そしてプエブロ号の朝鮮民主主義人民共和国への領海侵犯というような事態が起きている。さっき言った受信というのは、こういう役割りを果たしているんですか。要するに、プエブロ号みたようなスパイ船乗り組み員を訓練をし、社会主義諸国の電波をここで聴取し、そこでこの情報を直接本国へ流す、こういう作業をするための電波の受信なんですか。そういうことは長官知っていますか。
  98. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 いま御指摘の線は知らないのでございます。
  99. 林百郎

    ○林委員 そこで、長官、用事があるのですか。やむを得ません。また適当な機会に長官に……。  そこで施設庁にお聞きしますが、こういうもう国際的に公然たる事実をあなた方は知らない。事実知らないとすれば、そういう何事も知らない、保護されるべき受信電波の内容について何にも知らない。それだのに、どういう電波が来るかわからない、どういう電波を受信しているか防衛庁の長官自体も知らないというのに、そういう電波を保護するために地域住民の妨害排除の契約を施設庁がするということは、どういうことなんですか。契約の実体的な内容を知らないのに契約が結ばれるのですか。
  100. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 上瀬谷通信施設におきましては、昭和三十七年の一月に日米合同委員会におきまして規制基準というものを双方合意したわけでございまして、その基準の内容によりますと、建物の構築物、あるいはそういったものの建てる高さは各第一ゾーン、第二ゾーン、第三ゾーン、第四ゾーン、それぞれに分けまして、これこれの高さを、あるいは工場についてはこういうような工場は差しつかえない、あるいは使用電気器具についてはこうこうであるというような、各四ゾーンごとの規制の内容を、規制基準なるものを取りきめたわけでございまして、それに基づきまして、当時施設庁は自由意思によるところの民事契約に基づきまして、各所有者の皆さまと契約を結んで、そして現在に至っておる、かような状況でございます。
  101. 林百郎

    ○林委員 受信する電波の内容がわからないのに、その電波の妨害を除去するための契約の当事者にあなたがなることはできないじゃないですか。責任果たされますか。結局アメリカの言いなりになる、契約は結んでいるけれども、アメリカの、米軍の言いなりに、これは妨害になる、ああそうですが、これは除去する、ああそうですが、これは契約違反だ、ああそうですが、こういうことになるのですか。要するに、アメリカの言いなりになるのだ。施設庁としてはその内容は全然知らない。どういう制限を米軍が言ってくるかわからぬ。それはそうでしょう。受信する電波のことを何も聞いていない。防衛庁官だって知らないと言っているのだから、基地が何をやっているのだか。そんなことでありながら、契約の当事者になって、坪年に五十円か何かの補償金か何かやって、子供の勉強部屋もつくってはいかぬ、ラジオ、テレビのチャンネルをやたらに動かしてはいかぬ、自動車も乗り込ましてはいかぬ、そんな重大な、地域住民の権利を制限する、その契約の当事者にあなたなっているのですよ。そのあなたが、何のためにそういうことをやるか私はよくわかりません、そんな契約の当事者がどこにいますか。そういう意味からいっても、この契約は無効と私は言っても差しつかえないと思いますが、どうですか。
  102. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 お断わりしておかなければなりませんのは、契約の当事者は横浜防衛施設局長でございます。  施設庁としましては、たとえば第二ゾーンにつきましては、木造建物については、十二メートル以下の建物というものが一応制限の内容になっておるわけでございます。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕 横浜の防衛施設局長は、そういう意味の不作為の契約を行なっておるわけでございます。したがいまして、その不作為の契約を行なっている地区に、十二メートル以上の建物がかりに建った、あるいは建ちつつあるということがわかりますと、当然施設局長は上瀬谷通信施設部隊長のところに行きまして、何とかこれはひとつ認めてくれないものだろうかということを交渉いたします。それから一方契約の相手方には、契約ではこういうことはいけないことになっておるのだから、ひとつとりやめてもらえないかということを、一方では契約の相手方にお願いするということでございまして、この制限の内容に違反するということは、常に横浜局としましては見ておるわけでございまして、そういう内容に違反するような建物あるいは工作物が建つ、あるいは建とうとしているといった場合には、それぞれそのときにチェックできるわけであります。したがいまして、運用上もそういうふうにやっておるというのが現状でございます。
  103. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 ちょっと関連して。質問答弁とちぐはぐなようですが、私聞いておって。施設庁はとにかく受信の内容について知る権利があるのか、義務があるのか、日本側が。あなた方はそういう権利があるのか。その内容の機密ということを聞かれておるのだから、米軍のそういうふうな機密を日本が、受信の内容まで知る義務があるのか、権利があるのか、そこを答弁しなければいけません。さっきから林さんがそれを質問しているのですよ。
  104. 林百郎

    ○林委員 関連質問が高橋さんからあったのですが、受信する電波の内容については、知る権利が全然ないのですか、知らない知らないと言っているのですが。私は、契約の内容なんかあなたに聞いているわけじゃない。それは漸次聞いていきます。最初にあなたは、契約の当事者は横浜施設局長だと言うけれども、国ですよ。あなたそんなことも知らなくてはどうにもしようがありません。国であって、そうして支出負担行為担当官が横浜防衛施設局長の藤本幹となっているのです。あたなはその直接の担当者じゃありませんか。そのあなたが何にも知らない。何にも知らない内容の電波の妨害をどう除去するのですか。そんな契約をどうして国がやれるのですか。そこを聞いているのですよ。だから、高橋さんも関連質問したのです。そういうことを知る権利は何もないのだ、それはもうアメリカの言いなりになるよりしかたがないというなら、ないと言ったらいい。妙な三百理屈みたいなことを言わないで……。
  105. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 電波の内容につきましては、これは先生御承知のとおり、ほかにも十二施設の通信施設の要求が出てまいっております。したがいまして、この通信施設の障害の内容ということは、今後とも十二施設地区につきまして、技術的専門家をまじえまして解明していきたいというふうに思っております。もちろん上瀬谷通信施設の電波の内容についても、当時技術屋が行きまして、一応解明はいたしております。
  106. 林百郎

    ○林委員 解明をしたら、その説明をしたらいいじゃないですか。私は聞いているのですよ、どういう性質の電波だと。国際的には、これはソビエトや中国や朝鮮民主主義人民共和国の発している電波を受け取って、それを分析したりいろいろして、そして情報を本国のほうに提供している、国際的にはこう言っているのです。だから、あなたはそれを知っているかどうか。また、そういうことのために、そこで専門的にそういう社会主義国へのスパイの訓練をして、そしてそこからスパイ船が乗り出している、こういう作用も果たしている、こういう内容を知っているのか、そういう電波をそこで受けておるということを知っているのかいないのか。また知る権利がないならないでいいのですよ。  そこで、時間の関係もありますのでお尋ねしますが、この地位協定の第三条二項によれば「日本国政府は、合衆国軍隊が必要とする電気通信用電子装置に対する妨害を防止し又は除去するためのすべての合理的な措置を関係法令の範囲内で執るものとする。」とあるでしょう。これはもうあなた知っていますね、この前いつかの委員会で答弁していますから。「関係法令の範囲内で執るものとする。」地位協定によってもこう書いてあるわけでしょう。だから、地位協定によっても、関係法令がなければ、憲法で保障されている財産権を制限することはできないと書いてあるのですよ。ところが、それにもかかわらず、自由契約というような名のもとに、かってにあなた財産権を実際はもう非常な強制的な方法で制限することができますか。そんなことできぬじゃないですか。それはどうお考えになります。
  107. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 この合理的に措置するということで、電波法の改正とか電波特例法の改正、そういういろいろの法的措置も一応検討はいたしておりますが、上瀬谷につきましては、その法的措置ということにつきましていろいろ技術的な疑問がございましたので、上瀬谷の措置につきましては、あくまでも自由意思に基づくところの契約によって、土地所有者の御協力によってこの措置を実行していこうということでございます。したがいまして、今後十二の施設につきましては、私どものほうとしましては、まずその十二の施設についての制限区域を設けることの必要性、妥当性というものを検討いたしまして、どうしてもある施設についてそういう措置をする必要があるといった場合には、やはり民事契約によって目的を遂行したい、かように考えております。
  108. 林百郎

    ○林委員 あなたはちっとも私の聞くことに答えないので、そういう民事的な契約で私権を制限するような措置、行政的な措置は許されないじゃないか。地位協定によっても、この当該関係法令の範囲内で合理的な措置をとるときまっておるのを、この内容のものを契約というような形でやることは許されないのじゃないかと、こう聞いているのですよ。あなたちっとも私の言うことをまともに聞いて答えてくれなければ、時間ばかりたってしょうがないわけですよ。  そこで、私は残念ながら時間が制限されていますので、もうあなたが契約だと言ったから、契約という観点で一間一答をあなたとしていきたいと思いますから、簡潔に答えてください。いま地域の住民が非常な大きな関心を持っている点について、お聞きしますから……。  そうすると、この契約は一種、二種ありますけれども、この契約の期限は一体いつまでですか。
  109. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 施設の電波障害防止措置を必要とする間は、継続的に更新することに合意を見ておりますので、今後ともこれは引き続いて御協力願えるというふうに考えております。
  110. 林百郎

    ○林委員 そうすると、期限の定めがない。アメリカの基地がそこにある限りは、そしてアメリカが必要とする限りはずっと続く、こう聞いていいですね。
  111. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 そのとおりでございます。
  112. 林百郎

    ○林委員 これは覚え書きは「安保条約の有効期間中」とあるわけですね。地域住民は、今度一九七〇年に安保条約が切れる、切れたらこの契約を解約しよう。次の安保条約がどういう形で継続になるか知らぬけれども、その際はもうこの契約を切ろうと言っておるのです。一九七〇年が安保条約の一応の期限ですね。自民党はこれをどうするかわかりません。このときに、この契約の解約権が当事者には発生しない、こうあなたは言うのですか。それとも一九七〇年の一応の区切りに、私はこの契約は解約いたします、こういう権限はあるのですかないのですか。
  113. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 引き続き契約は継続されるというふうに解釈しております。
  114. 林百郎

    ○林委員 地域の住民は、せめて安保条約が切れる一九七〇年にはこのような契約は解約しようと思っておるのに——この契約の有効、無効は別ですよ。私は、こういう契約は無効だと思っております。かりに、形式的にできておりますから、そういう願望も達成されない、アメリカの基地があり、アメリカが必要とする限りはもうずっと続くのだ、こういうふうにそれでは聞いておきます。  そこで、御承知のとおり、Aゾーンが自動車五台、一時間にこれしか乗り入れできない。この一時間に自動車が五台しか入れないというのですが、これはだれがどうやって監視するのですか。
  115. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 一応こうなっておりますが、現在自動車には雑音防止器がついておりますので、現在この五台については制限をしておりません。
  116. 林百郎

    ○林委員 そうすると、防音装置ですか、それをしない自動車はどうなるのです。またそういう認定はだれがどこにいてやっておるのです。
  117. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 具体的に、周辺を相当自動車が通っております。それに対して何ら制限を行なってはおらないというのが、実情でございます。
  118. 林百郎

    ○林委員 Aゾーンで一時間に五台という制限があるけれども、事実上は制限をしておらない、こう聞いていいですね。
  119. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 そのとおりでございます。
  120. 林百郎

    ○林委員 それからこの契約をする場合、この契約には別紙ということばがあるのですけれども、この別紙とあなたが楢崎委員に出した地域制限内容というものとは全然違いますが、これは契約をするときに、この上瀬谷電波障害制限地域内容というものをくっつけて、こういうものですよということでやったのですか。それとも契約を締結するときには、この別紙という非常に抽象的なものだけで契約を結んだのですか。どっちですか。
  121. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 この別紙の具体的な内容といたしましては、送信空中線及び受信空中線、それから電力用、通信用等の架空線及び架空ケーブル、鉄づくりに、石づくり及び木……。
  122. 林百郎

    ○林委員 それはわかっておるから、あなたが国会へ提出された——時間がないから、私は要領よく答えてもらいたいと思う。あなたの国会に出した電波障害制限地域制限内容、この内容と契約の当事者に示した別紙というものは別じゃないか。だから、契約当事者は、国会に資料としてあなたが出しておるこの制限内容というものは、契約の当時には知らなかったのじゃないか、こういうことを聞いておるのですよ。これをちゃんと添付してやったのですか。四地域があって、Aゾーンがこうで、第二はどうというようなことを、ちゃんと契約書に添付してあったんですか。私の手元にある契約書には、そんなものは添付してないですよ。どうなんですか。そこを聞いているんです。
  123. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 当時契約を締結いたします際に、地元の代表者あるいは県、市の当局、そういう人たちを含めました現地連絡協議会を開きまして、そしてそのとき説明会を行ないまして契約を締結しているというのが、実情でございます。
  124. 林百郎

    ○林委員 契約というのは、最終的にはそれぞれみんな自分で契約するんですから、その契約書には、あなたが国会へ提出されたこの制限内容というものは添付されていたのかどうか。代表の人に対する説明だけで、個々の契約書にはこういうものは添付されておらないのだ、こう聞いていいんですか。私のほうは、あなたが答弁しいいように聞いているのに、あなたが横へそれちゃうものだから、ちっともかみ合っていかないですよ。
  125. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 当時、図面は添付しておりません。
  126. 林百郎

    ○林委員 団面ばかりでなくて、制限内容も聞いているわけですけれども、では、そういうものは添付しないと聞いておきます。  そこで、この契約書の中にある、電波の障害になるような建物を建てた場合に、これは除去させる。契約の当事者が除去しなければ、国が行って除去する。そうすると、この電波障害になる建造物という認定は、だれがやるのか。そうしてその除去するという手続は、だれがどのようにしてやるのですか。施設庁が行ってかってに家をこわしちゃうのですか。これは除去になる建物ですよということを一方的に言うんですか。それとも契約の当事者の間で、そういうことはお互いに了解を得るのですか、得ないのですか。
  127. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 まず、認定は契約の当事者でありますところの横浜防衛施設局長が行ないます。  それから第二の、契約に違反した建造物を建てた場合、あるいは建てつつある場合、それは先ほど申しましたとおり、まず米軍とも交渉いたしまして、やはりどうしてもこれは少し行き過ぎだというときには、こちらのほうからその土地の所有者、建築しようとしている人、その人に申し入れまして、ぜひ取りこわしていただきたいということでお願いするということでございます。
  128. 林百郎

    ○林委員 そうしますと、あなたの言うように、各契約当事者には、国会へ提出されておる制限内容、具体的な内容は添付されておらなかったというから、契約の当事者の地域住民のほうが、私はこの建物は最初の別紙に示された制限には違反しないと思う、アメリカの人がどうおっしゃろうと、子供が年ごろになって勉強しなければならないのだから、どうしても勉強部屋を建てなければならない、これは最初の契約には違反しません、アメリカの兵隊が何と言おうと、私はこの家はこわしませんと言ったら、あなたはどうするんですか。   〔「対抗できないと言いなさい」と呼ぶ者あり〕
  129. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 現行法制上から、たとえ契約によりましても、相手方の意思に反しまして強制的に自力執行するということまでは考えておりません。また、そういう事態になったという事例も、いままで一件もございません。
  130. 林百郎

    ○林委員 それからこれはいまも中谷さんから話がありましたが、第三者に対する対抗要件の問題ですね。第三者が善意でその土地を譲り受け、建物や土地の賃借権を譲り受けた、そしてこういう契約のあることを知らないで建築物をつくった、こういう場合に、その善意の第三者をこの契約で拘束できますか。
  131. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 損害賠償請求を行なうだけでありまして、第三者に強制執行することはできません。
  132. 林百郎

    ○林委員 それからこれは民事的な自由契約だということですから、契約の効力自体については私とあなたと見解の相違がありますから、形式的に、できている契約として私はお聞きするのですけれども、これはもちろん民法で規定されている、たとえば強制力で結ばれた契約あるいは欺罔的な方法で結ばれた契約という事由があった、あるいは要素に錯誤があったというような場合、こういう場合には民法で規定されている解約権は当然発生すると思いますが、それはそうでしょうね。
  133. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 ちょっと先生のおっしゃること……。
  134. 林百郎

    ○林委員 これは国と地域住民との間の任意契約、自由契約、あなたは自由契約ということばを使った。だから、当事者のほうは、契約の内容について要素に重大な錯誤があった。たとえば一例を申し上げますと、これは一九七〇年には当然解約権が発生する、覚え書きにも「安保条約の有効期間中継続的に締結する」とあるから、当事者としては、これは一応一九七〇年がめどだ、一九七〇年がくればこの契約は解約権が発生すると思っていた。ところが、実はそうじゃなくて、もうアメリカの基地がある限り永劫にこういう制約を受けるということになると、これは契約の要素に、少なくとも期限の問題について、当事者に重大な錯誤があったわけですね。そういう事例、あるいは心理的に強制的に拘束せざるを得ないような強制的なものがかりにあったとする。あなたがしたとかしないとかいうことは別問題として、かりにあったとする。あるいは欺罔的なこういう内容ですといっておいて、実はもっと厳密な制限があって、あるいは直接アメリカの兵隊が乗り込んできて、これは違反ですよ、これは取り除きなさい——たとえは私のほうの調査や報道によりますと、上瀬谷で日本金属工業が工場を建設しようとした。ところが、米軍が来て、そんなものは建ててはいかぬ。米軍が直接来て建てさせない。それから農民が物置き小屋を立てた。トタンぶきにしたら、トタンじゃいかぬ、スレートぶきにしろと言った。それから上瀬谷の小学校を立てるのに、二階はいかぬ、鉄筋コンクリートで平家建ての校舎にしろ、これは米軍が直接来て指示するわけですね。それから厚木飛行場の西南に隣接する地域では、綾瀬、海老名、座間の三町の共同し尿処理場を建設しようとしたら、米軍が来て、これはいかぬと言った。これは契約の形は日本国と地域の住民との契約ですが、実際は米軍が直接来ていかぬ、いかぬといってやれなくなる。これは明らかに契約の要素に錯誤なり、あるいは強制されるなり、あるいは欺罔的な方法があると、契約の一方の当事者は言うと思うのです。最終的な判断がどうなるかは別として、かりにそういう事態があったとすれば、要素の錯誤だとか、強制、強迫だとか、あるいは欺罔だとか、そういう場合には、当然民法で規定されている契約の解約権が地域住民には発生する、こう考えますが、そうですかと聞いておる。何なら民事局長人権擁護局長——まず施設庁のあなたから……。
  135. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 米軍が直接現地に来まして、これは建ててはいけないとかなんとかいう指示がかりに過去にあったかもしれませんが、現在はそういうことは絶対に行なっておりません。まず、契約当事者である局長のところに行きまして、そして局長から契約の相手方に対して注意を促すということでございます。  それから契約を強制する云々という問題がございますが、これも先ほどお話し申し上げましたとおり、地元の所有者の代表者をまじえましたところの現地協議会におきまして、よく事態説明し、御納得の上で契約に調印していただいておりますものですから、そういうことはあり得ないというふうに考えます。  それから契約書には、この電波障害防止措置を必要とする間はこの契約を締結する、というふうにございますので、錯誤の余地はないと存じます。
  136. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 電波障害の防止のための契約は、民法上の一種の無名契約であると思います。したがいまして、もしもこの契約を締結いたしました際に、取り消し原因があるとかあるいは無効原因がありますれば、取り消し権の発生あるいは無効となることは当然でございます。ただ、いま林委員が仰せのような事実が直ちに要素の錯誤になるかどうかということは、それぞれの事案について検討しなければ、ここで結論を申し上げるわけにはまいりません。また、米軍の指示とおっしゃいましたけれども、これは指示なのか、あるいは要望なのか、そういった点も実は十分きわめた上でないと、そういう事実があったから直ちに要素の錯誤になるとは、一がいに言い切れないのではないかと思います。
  137. 林百郎

    ○林委員 あなた、そんななまやさしいものじゃないですよ。これは週刊誌にも出ておりますけれども、あの基地の中に火事があった。日本の消防隊が消しに行ったら、カービン銃を突きつけられて、入ってはいかぬ、こういうところなんですよ。そして燃えた灰が地域住民の家の庭に舞ってきたら、その灰を、これは機密に属するものだからといってみんな持っていった。こういうきびしいことで、あなたが言うように、米軍が、お願いいたします、いかがでしょうなんという、そんななまやさしいものじゃないのですよ。だから、みんなこれはえらい目にあっておる。とんだことになったということを、みんな考えておるのですよ。だから、そういう場合、地域住民の解約権というものを十分考慮してやる必要があるのじゃないか。事は外国の軍事力が介入してきておる契約ですからね、あなたみたいにそんななまやさしいものではない。私の期待する答弁が出なかったからといってあなたに当たるわけじゃありませんけれども、もっと事態の本質を理解していただきたい。単なる法理論をあなたとやっておるわけではない。  そこで、施設庁の政府委員に聞きますが、契約書にはそんなことは書いてありません。契約書には、「前項の……本契約による……本契約の期間は」、何年何月から何年何月までというブランクになっておるわけですね。そして「電波障害を防止する措置を必要とする間は……、一年間自動的に更新する。」ということがあって、この電波障害を防止する必要がある限りは永続的になるなんということは、書いてありませんよ。私の手元に持っておる契約ですよ。「本契約の期間は、昭和  年 月 日から昭利 年 月日までとする。」これはブランクになっておるわけですね。「ただし、乙において上瀬谷通信施設が被る電波障害を防止する措置を必要とする間は、契約期間の満了日の翌日から一年間自動的に更新する。」とあるだけじゃないですか。永久的に続くなんて契約してありませんよ。どうなんですか。
  138. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 この契約は、昭和三十七年の四月一日から昭和三十八年の三月三十一日までというふうになっております。先生が持っていらっしゃるものはひな形でございまして、実際は昭和三十七年の四月一日から昭和三十八年の三月三十一日、そういうことになっております。したがいまして、その契約期間の満了日の翌日から一年間の自動更新、また翌年は自動更新ということでございます。
  139. 林百郎

    ○林委員 あなたそんなことを言うけれども、契約の当事者、お百姓さんや善良な市民から言えば——三十何年ですって、終了期限は、一応。
  140. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 三十七年の四月一日から三十八年の三月……。
  141. 林百郎

    ○林委員 そうでしょう。そして契約は一年更新だと言うのですけれども、そうすれば、その期限の切れたときには、もう契約を解約するとか、あるいは更新の拒絶の権利がある、こう思っているのですよ。そして地域住民からのいろいろな情報を見ますと、もう最大限度でも安保が切れたときには再契約はしないんだと言っているときに、あなたが、これは一年更新で、必要がある限り幾らでも続くんだ、ということは、少なくとも当事者を納得さした手段でない。私は欺罔的な手段と思います。  そこで、もう一点聞きたいと思いますが、この上瀬谷方式をずっと十二地域へ広げる、こういうように私たち聞いておりますが、それはそのとおりですか。
  142. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 このことは先ほど申し上げましたとおり、十二施設につきまして、それぞれの施設につきまして、その必要性、米側の要求している妥当性なるものをまず検討いたしまして、極力米側の要求に対してこの要求を認めてもらう、ある施設ならある施設が、どうしても米側がそういう制限措置をとらなければならないということが結論が出た場合には、今度はその制限の内容、そういったものを極力緩和すべく今後折衝していくというふうに考えております。   〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕
  143. 林百郎

    ○林委員 そういうように十二カ所の基地に上瀬谷方式を広げていくということですけれども、それは内容については緩和する努力はすると言っていました、本質的には。そうすると、これは言うまでもなく自由契約ですから、住民は自分の自由意思によって、もうそういう契約はいたしません、締結いたしません、こう言うて契約締結の自由は保障されていると思いますが、これはどうか。非常に地域住民全体が——これは相模原市なんて市長まであげて反対しているのですから。とてもえらいことで、これはわれわれは承知するわけにはいかないと言って住民が拒否した場合には、こう言って地域住民全部が反対しておりますので、この制限はできないということをあなた言いますかどうか。  また、民事局と人権擁護局の方、せっかくおいでくださってさっきから質問がありませんが、もちろんこういう契約は、こういう前例から見てわれわれは締結するわけにはいきませんという、契約締結を拒絶する権限は当然あると思いますが、民事局と人権擁護関係の方にも、念のために聞いておきたいと思います。
  144. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 かりにある施設につきまして、どうしてもこの規制措置を設けなければならぬという施設があった場合には、土地の所有者によく事情をお話し申し上げまして、理解と協力の上に契約を締結していただくようにお願いしたい、かように思っております。
  145. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 あくまでもこれは契約でございますので、当事者に契約を締結する意思がなければ、契約が成立する余地はございません。
  146. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 ただいま民事局長からお答えしたとおりであります。
  147. 林百郎

    ○林委員 鐘江さん、いま法律専門家はそう言っているわけですね。あなたは一生懸命でやるつもりだと言っているけれども、いやですと、みんながそう言った場合は、どうするのですか。それで事実上電波障害を除去できないような状態の場合には、あなたは断わるべきでしょう。あなた、日本人ですか、どうですか。
  148. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 ある地区についてどうしても契約に応じていただけないという場合には、あらためてその状況をもとにしまして米側とさらに折衝を続ける、かように考えております。
  149. 林百郎

    ○林委員 結論を申しますが、私がこの質問をいたしましたのは、これは政府委員の皆さんによくのみ込んでいただきたいと思うのですけれども、いまこれが典型的に行なわれている上瀬谷の基地は、かつてはU2、アメリカのスパイ飛行のこれは通信基地であった。またこのたび拿捕されたスパイ艦のプエブロの通信及び訓練の基地であったことは、これはもう乗り組み員がみんなそういうことを自白している。艦長自体もそう言っている。念のために艦長のことばを申しますと、こう言っているのですね。司会の人が「通信などをみると、日本の首相佐藤や外相三木は「プエブロ」号が領海でだ捕されたのではなく、公海上でだ捕されたといっている。これは、きっと当事者のあなた方がよく知っているはずだが、それについてあなた方はどう思っているか。」こういう記者の質問に答えてブッチャー艦長は「それは全くでたらめなことだ。私たちの艦船には確かに日本の佐藤首相や三木外相は乗っていなかったのだが……全く理解のできないことである。もし乗っていたならば、今頃私たちと共に朝鮮民主主義人民共和国にだ捕され、抑留されているはずではないか。すでに私が指摘したように、私たちはこのたびの航行期間多くの水域で朝鮮民主主義人民共和国の領海を侵した。「プエブロ」号は、艦の任務の特性と関連して佐世保をたったのち、だ捕されるまで送信しないことになっていた。私たちのスパイの結果はもとより、艦船の航行の位置については、私たちが帰って報告する前は日本駐屯アメリカ海軍司令官もわからないようになっている。だから、日本の佐藤首相や三木外相が私たちの船の位置を知るはずがない。」こういうことを言っているわけです。これはまことに、だれが聞いても、もっともな自白だと思います。こういうことをここでやっているのですよ。そしこまた、プエブロが拿捕されたら、次のスパイ船がまたここへ来ているということですよね。こういうふうに、上瀬谷の基地はアジアの社会主義国の発進電波を受信し、計画的にアメリカのスパイの訓練を行なうなど、ここの基地がスパイと戦争挑発の基地になっているわけですね。しかもプエブロの拿捕に端を発して、エンタープライズをはじめアメリカの第七艦隊が続々と日本海に出動した。またこのためには、沖繩にB52が進駐してきた。北九州の航空自衛隊は緊急発進体制をとったとまで、西日本新聞ですけれども、伝えている。こうして日本の本土の海と空が戦争触発の状態におとしいれられている。これは若干緊張が緩和された様相は呈していますけれども、実質的には変わらない。この基地が上瀬谷の基地なんですね。このようなおそるべき米軍の上瀬谷基地の電波受信作業を、日本の国民が保護しなければならないという義務はないじゃないでしょうか。冬、子供のヒーターすら使えない、テレビのチャンネルすら回すことができない、農民は農業用の小屋すら建てることができない、学校は鉄筋コンクリートでも二階建てにすることができないというような、こういうことまでして、どうしてアメリカのアジアにおける侵略戦争の基地を日本人民が守らなければならないでしょうか。また、どうしてあなたはそういうことを人民に強制することができましょうか。したがって、こういう米軍のこのスパイ活動と戦争の挑発、危険な戦争の挑発を保護することを内容とした防衛施設庁と日本国民との間のどんな契約も、私は憲法に違反して、これは無効である。そしてまた、日本の国民が上瀬谷の基地のこの役割を知った限り、このような憲法違反の契約を一方的に破棄を宣言することができる。こう私は確信しております。また、これは当然の日本の国民の義務だと思います、国の安全を守るためには。これに対して防衛施設庁と法務省の民事局と人権擁護局の政府側の委員の皆さん方の答弁を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  150. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 私どもとしましては、安保条約が存続する限り、地位協定に基づくこれらの米軍施設の維持運営、そういうものについて協力しなければならないというふうに思っております。いま先生のおっしゃいましたように、テレビのチャンネルを動かせないとか、ヒーターがどうだこうだということをおっしゃいましたけれども、あくまでも制限の規制ということは既存の家屋構造物には何ら触れていないわけでございまして、新規に建物等をつくる際において制限を行なっておるわけでございまして、その点は誤解のないように願いたいと思います。
  151. 林百郎

    ○林委員 あなた、それは違いますよ。既存の建物でも、それに付属の建物をした場合には、それが電波障害になれば除去する義務があるわけですよ。これは第一種契約である。そういう内容じゃないですか。新しいものばかりではありません。既存の建物に付属し、既存の建物に施設する場合は適用されるわけです。そうでしょう、そう言ってください。
  152. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 既存の建物にさらに建て増しするといった場合に、その建て増しする部屋なら部屋の中でそういうヒーターを使っては困るというような条件が出た例はございます。
  153. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 この契約は、法令の許す範囲内における自由意思に基づく契約でございます。特段の事情がない限り、憲法違反の問題は生じないと思います。
  154. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 ただいま民事局長が答えたとおりでございます。
  155. 林百郎

    ○林委員 もうこれで最後です。民事局長お尋ねしますが、特段の事情といっても、こういうアメリカがここを基地として、そうして社会主義諸国のスパイ行動をしているわけでしょう。たとえばプエブロ号が領海に入っていったとか、その訓練をここでしているわけでしょう。そういうことのために、これは日本の国の安全の保障にならぬじゃないですか。日本の国を一そう危険な方向に導くことになるでしょう。そういうことを米軍がしているのに、どうして日本人民は、さっき鐘江さんも言うように、新しく子供の強勉部屋を建てる自由もない。その勉強部屋の中でヒーターもやるわけにいかないという犠性を、どうして甘んじて受けなければならないのでしょうか。それをあなたはわからないのでしょうか。そういう内容だとすれば、そういう契約は、戦争を放棄し、軍事力を持たないという日本の憲法九条の内容と反しておると思いませんか。あなた、それで民事局長つとまるのですか。私は、重大な問題だと思いますよ。内容を考えてください。何の電波をそこで守るのですか。そんなアメリカのアジア社会主義諸国へ戦争を挑発し、スパイをするその電波を、日本人民が何で犠牲を払って守らなければならないのですか。そんな契約が有効ですか。答弁を私はもう求めないけれども、いいですよ、よく考えてください。
  156. 永田亮一

  157. 中谷鉄也

    中谷委員 本日、私は壬申戸籍の問題と、いま一つは本通常国会の中で継続をして取り上げさしていただくことをお願いいたしております、いわゆる佐世保事件を一つの対象としての警備警察のあり方の問題、いま一つはいわゆる前科者のリストの問題として報ぜられている、前科があるとされている人の人権擁護の問題、この三つを簡単にお尋ねをいたしたいと思います。民事局長御出席になっておられますし、人権擁護局長さんたいへんお忙しいようでございまますので、最初に壬申戸籍の問題をお尋ねをいたします。  昭和四十年の八月十一日、同和対策審議会は総理に対して答申をいたしました。その答申の一節、これは同和問題について関心と、同和問題についてそれが推進されなければならないと考えている者においては常に引用される文言でありますけれども。「政府においては、本答申の報告を尊重し、有効適切な施策を実施して、問題を抜本的に解決し、恥ずべき社会悪を払拭して、あるべからざる差別の長き歴史の終止符が一日もすみやかに実現されるよう万全の処置をとられることを要望し期待するものである。」こういうふうに答申は冒頭記載をしているわけですが、最近いわゆる壬申戸籍なるものが、大きく差別の戸籍であるということで取り上げられました。  そこで、端的にお尋ねをいたしますが、昭和四十三年一月十一日に法務省民事局長通達が出されております。「明治五年のいわゆる壬申戸籍の閲覧について」という表題の通達であるというふうに拝見をいたしますが、その後、いわゆる生きていた差別の戸籍などという非常に危険で残念なこのような問題について、民事局においては新しい措置をお考えになったかどうか。この点についてお尋ねをいたします。
  158. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 昨年末以来、壬申戸籍の問題が新聞にも掲載をされまして、私どももその対策に腐心してまいったわけであります。これは政府といたしましても、大正時代からすでに打つべき手は打ってまいったのでございますけれども、遺憾ながら今回のような報道すなされるに至ったわけであります。これに対処していかにすべきかということでございますが、壬申戸籍は御承知のように明治の初年にできたものでございます。そうかといって、これが現在全く不要であるかどうかということにつきましては十分検討を要するのでございまして、現在もなお相読関係を証明すること等のために、壬申戸籍が必要とされておるのでございます。したがいまして、その利用状況とか保管の状況、こういったものを十分調べまして、その対策を慎重に考えようと思いまして、とりあえずの暫定的な措置といたしまして、本年の一月十一日に、一般の閲覧を差しとめまして、必要なものは謄抄本あるいは戸籍の記載事項の証明によって間に合わせ得るのでございますので、その措置を一応講じたわけでございます。その後、法務局を通じまして各市町村の実情を調べまして、完全に全市町村の実態が把握できたわけでございませんが、大体のところは見当がついたのございます。そこで、先月の末に法務省の諮問機関でございま民事行政審議会の戸籍部会を開きまして、専門の方々の御意見も拝聴いたしまして、その対策を練ったわけでございます。引き続きまして局内におきましても会議を開きまして、去る四日の日にあらためて通達を発しまして、壬申戸籍に記載されておる事項で現在の戸籍法によって記載すべきものとされておる事項に限りまして、謄本、抄本の交付あるいはその記載事項の証明をすることにいたしまして、これを一般的に何人にも閲覧を許すということは禁止する措置を講じたわけでございます。これが現在の状況でございます。
  159. 中谷鉄也

    中谷委員 したがいまして、一月十一日の通達によりますと、「戸籍法第十条第一項ただし書の規定に従って当該戸籍に記載されている者の親族以外の者の閲覧の請求には応じない取扱いとする」という通達の記載になっております。逆に言いますと、一月十一日の通達は、記載されている親族については閲覧し得るというふうにこの通達を読んだわけでございますが、先ほど答弁になりました三月四日の通達によりまして、戸籍法ただし書き規定のいわゆる親族についても閲覧は全面的に禁止されたというふうに理解させていただいてよろしゅうございますか。
  160. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 そのとおりでございます。
  161. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、同和問題との関連において、一月十一日の通達を一歩進められて、三月四日、親族に関しても閲覧の請求には応じないという御処置をおとりになった民事局、法務省のお立場、お考え、そのような通達の背景となる考え方、これについて御答弁をいただきたいと思います。
  162. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 当該壬申戸籍に記載されておる人の親族といたしましては、相続関係を証明いたしますためにこれを利用しなければならないという要請があることは、当然でございます。しかしながら、その親族の方々がかりに閲覧を求めまして、壬申戸籍の中に記載すべからざるものがかりにあった場合、戸籍役場でこれを拒否されますと、そこにあからさまに差別待遇という問題が表に出てまいる危険性があるわけでございます。そういう意識がなくて閲覧を求める場合にも、そういう事態が発生する可能性もございます。したがいまして、親族に限って許すという措置もさらに反省いたしまして、これは一般的に閲覧は許さないことにし、一般の人々の不便を生じさせないためには、別途謄抄本あるいは記載事項の証明の方法によって十分間に合いますので、そういう趣旨で今回の通達を出した次第でございます。私どもは、あくまでも差別待遇というふうなことが起きないように十分配慮すべきであるという観点に立って、今回の措置に踏み切った次第でございます。
  163. 中谷鉄也

    中谷委員 冒頭に引用いたしました同対審の答申の中には、恥ずべき社会悪を払拭して、あるべからざる差別の長き歴史の終止符が一日もすみやかに打たれねばならない、こういう趣旨の記載がございます。そこで一歩進めて、民事局のその御措置について念のために一点だけただしておきたいと思いますが、先ほど局長のほうから御答弁がありましたとおり、いわゆる壬申戸籍の問題については、大正年間からいろいろな趣旨の通達がなされております。そこで、新措置についても、閲覧をさせないというこの通達の周知徹底、これをどのような形ではかられるか、この点についてはいかがでございましょうか。
  164. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 これは先ほど申し上げました民事行政審議会の審議の過程におきましても、各市町村の専門家の意見といたしましても、一般の閲覧に供することは適当でないという意見がほとんど全員の意見でございます。直接市町村の事務をとっていない方は、必ずしもそういう積極的な意見はお述べになりませんでしたけれども、その立場にある方は、すべてそれは禁止するのが相当である、こういう御意見でございます。したがいまして、私どもも、この通達によりまして地方法務局長にその趣旨の徹底をはかり、市町村長にも間違いのないように措置するようにということを通達にうたってございます。なお、重ねてこの次に法務局関係の会同も開催されますし、また地方の戸籍事務協議会等も各地で開かれるわけでございます。そういう機会を極力利用いたしまして、差別待遇の生じないように、この通達の周知徹底方を一そうはかってまいりたいと考えております。
  165. 中谷鉄也

    中谷委員 念のためにお尋ねをいたしますが、差別というのは、本来あるべからざることがある。しかも、意識の上においても、実態の面においても、非常に残念なことではあるけれども存在をしておる、こういうふうに同和問題については認識され、分析されているわけでございます。したがって、一点だけさらにお尋ねをいたしますが、かりにそのような通達の趣旨に反して戸籍関係の職員がそのような戸籍を閲覧させたというふうな問題が生じた場合には、その戸籍関係の職員についてはどのような責任が生ずるか、この機会にひとつ明確にしておいていただきたいと思います。
  166. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 通達によりまして、法務局を通じて各市町村長に一般の閲覧を禁止するという指示をいたしたのでございますから、市町村長といたしましても、関係の職員にもその周知徹底をはかられることは当然であろうと考えます。もしもこの通達の趣旨に反して職務上知り得たこの差別問題についてこれを他に漏洩するというふうなことがございますれば、これは通達の趣旨にも反しますので、職務上の命令に違反するということになろかと考えます。  また、お尋ねの趣旨は、おそらくこれが刑法上の秘密漏洩になるかならないかというところにあるのではないかと推察するのでございますが、これはまだ刑事局のほうとも十分打ち合わせをいたしておりません。しかし、今回この壬申戸籍を外部に、一般に閲覧に供するような公開主義をやめるということになります以上は、そういう特殊な事項を秘密として守るということが当然考えられるのではないかというふうに、私個人としては考えておるわけであります。これがはたして刑法上の秘密漏洩になるかどうかということにつきましては、刑事局とも十分相談いたしまして、はっきりしたところを定めてみたいというふうに考えております。
  167. 中谷鉄也

    中谷委員 一点だけお尋ねをさらにいたします。本件壬申戸籍については、適当な、たとえば役場等ではない場所に保管すべきであるとか、あるいは極端な場合には破棄すべきであるというふうな意見も一部では出されているようでございますけれども先ほど冒頭の民事局長の御答弁の中で、壬申戸籍についての、いわゆる現在どのように利用されているか——相続関係等のことの関係においてのお話がありましたが、それらの見解については、どういうふうにお考えになるのか、お答えいただきたいと思います。
  168. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 私ども調べましたところでは、まだ正確な数字として申し上げることは若干疑問がございますけれども、全国の三千三百八十六市町村がございます。そのうちの二千六百四十五市町村におきまして、約二万五千冊の壬申戸籍を保存いたしております。これは明治四年の太政官布告が根拠になってでき上がりました壬申戸籍でございますが、まだこれを廃棄しないでそのまま残しておるわけでございます。そのことは、一般の国民の方々がなおいろいろ自分の祖先の係累等を相続の関係等におきまして調べる必要性が残っておるので、市町村としてもいまこれを焼いてしまうとか破ってしまうというような措置に出ることは、ちゅうちょしておると思います。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕 多くの国民にとりましては、直ちにこれを不要であると言い切れるかどうか、まだまだ相当実情を検討した上でないと、何とも申し上げかねるのでございます。少なくとも現段階において直ちにこれを焼いてしまうというふうな措置は、必ずしも当を得ないのではないだろうかということが考えられるわけでございます。もしもこれをたとえば公共団体の資料館等に保存したらどうかというふうな要望が出ました場合にどうするかということにもなろうかと思いますが、万一これを廃棄いたしまして、壬申戸籍でない、戸籍法上のものではない一種の古文書としてこれを保存するということであれば、そういうことも一つの方法であろうかと思います。しかし、そうなれば、これはもう戸籍法上のものではございませんので、自分の祖先とのつながりを証明するという手段にこれを使うことは不可能になる危険性もあるのであります。そういうこともありますので、さらに一般の実情をきわめました上で、今後の措置を慎重に検討してまいりたいというように考えておる次第でございます。
  169. 中谷鉄也

    中谷委員 人権擁護局長さんにお尋ねをいたします。局長さんに対する質問はこれ一点だけでございます。要するに、壬申戸籍の問題としては、和歌山県の田辺市内などで興信所の職員がこの壬申戸籍を閲覧に来て、そうして戸籍係の職員が、そのようなものがおそらく就職であるとか結婚等に利用されるだろう、悪用されるだろうということで、閲覧を断わった。こういうようなことが報ぜられているわけでございますが、人権擁護局として、壬申戸籍に関する人権侵害事実、別のことばで申しますと、同和問題に関する差別事象については、どの程度お調べになっておられるでしょうか。なお、人権擁護局で、今日までいわゆるこの種同和問題に関する人権侵犯事件というのはかなり多いわけですけれども。同和関係について人権擁護局の調査課の調査によりますと、同和関係についての人権侵犯事件の受理件教が、昭和三十八年で十二件、昭和三十九年八件、昭和四十年十三件、昭和四十一年十五件、昭和四十二年二十六件ということになっているわけです。ここでこのように同対審の答申がなされて、同和対策の完全実施ということが呼ばれているにかかわらず、例年むしろ同和関係の人権侵犯申し立て受理件数がふえてきている。このような事実を人権擁護局としてどのように分析されるか。なお、この機会に、そのような同和関係の差別事象というのはどのような類型を持ったものか、ひとつまとめてお答えをいただきたいと思います。これで、私の民事局長さんに対する質問と、人権擁護局長さんからの御答弁をいただきましたらば、壬申戸籍に関する質問は終わりでございます。
  170. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 同和問題は、同和対策審議会の答申が指摘いたしますとおりに、深刻でかつ重大な社会問題でございます。憲法によって保障されている基本的人権に関係のある課題でございます。その対策といたしまして、政府の各担当機関におきまして、総合的な対策を積極的に推進する必要があるとしまして、現在関係各省ともこの問題につきましていろいろな施策を準備中なのでございますが、法務省におきましては、従来から同和問題を人権擁護局の担当にいたしておりまして、私ども各種の啓発活動また侵犯事件調査などの立場から、この問題に関係をいたしておるわけであります。すなわち、人権擁護機関の同和問題に対する今後の私どもの努力の目標でありますが、人権擁護機関の同和問題に対する理解と認識を深めさせるために、研修とか講習などの強化をはかっていく。そして差別事件が起こりました場合に、調査救済活動を積極的にはかろう。それから人権相談並びに啓発活動を活発にしまして、差別というものが許しがたい社会悪であるということを周知させるように努力したい、こう考えておるわけでございます。  お尋ねの私どもの人権機関が取り扱いました件数につきましては、先ほど中谷委員がお述べになったとおりでありますが、これらの差別がどういう場合に起こるかと申しますと、結婚に関係をいたしたもの、それから就職に関係したもの、あるいは職場あるいは近隣との交際に関係したもの、こういうような類型に分かれるのでございます。最近五カ年におきます年間の平均受理件数が、十五件であります。そして実際に社会におきます同和関係の差別事件というものがもっと実際は多いのだろうということが、私どもの最近の調査においても判明いたしておりますし、また、同和対策審議会の答申からもうかがわれるところでございます。これは私どものまだ宣伝が足りませんで、人権擁護機関の存在あるいは人権擁護委員制度というものがまだ周知されていない面が若干ありまして、そのほか差別をされましても泣き寝入りをするという場合がわりあいあるということなどから、このように多数の事件がありながら、私どもの前にまだ事件としてあらわれてこないのではないか、こんなふうに考えているわけです。今後とも、私どもといたしまして、この問題に多くの力を尽くしたいと思います。
  171. 中谷鉄也

    中谷委員 質問を別の問題に移します。人権擁護局長さん、たいへんお忙しいようでございますので、調査課長さんにこの問題をお尋ねをいたしますから、次の問題はひとつそういうことで委員長のほうでお取り計らいをいただきたいと思います。  私がお尋ねをいたしたいのは、これまた新聞の報道によるわけですが、愛知県警の、前科を有する人、特にその中で三犯ないし四犯といった重犯者の方をリストアップして、釈放されてから一年間、その人についてのいわゆる調査というふうなものを行なうという、そういう措置についてでございます。この点については、その問題について大阪市立大学の刑事訴訟法専攻の高田教授が、そういうことは県警察の感覚を疑う、犯罪者予防更生法、執行猶予者保護観察法などの法律がある中で、そういうふうなことが行なわれているということは信じられないことだ、人権感覚の上から、人権擁護の点から見ても、非常に疑義があるという談話を発表しておられるようでございます。ただ、これに対して梅田という愛知県警の捜査三課長さんの談話が同じく掲載されておりますが、その談話によりますと、今後の刑事警察は、犯罪者をつかまえるより、むしろ犯罪を予防する方向に進むべきで、その意味で内部的に問題はあったが実施に踏み切ったとあります。そこで、私は端的に申しまして高田教授と同じように、本件のような、私がいま指摘したようなことが行なわれているとすれば、人権擁護の観点から、人権感覚上の問題として非常な疑義を私自身も提起せざるを得ないわけですが、事実関係が必ずしも明確でありませんので、ひとついわゆる愛知県警の前科を有する、ことに三犯ないし四犯の重犯者のリストアップをして、それについていわゆるその人のつとめ先だとか、あるいは生活状態などを調査するというふうなことを、どのような形で具体的に行なおうとしておられるのか。この点をまず最初に事実関係を明確にしていただきたいと思います。
  172. 内海倫

    ○内海政府委員 お答えを申し上げます。実は私も、大阪のある新聞にただいまお話のありましたような記事が出ましたので、たいへん驚きまして、即刻愛知県警察のほうに実情を聞いたわけでございますが、その結果は、新聞に記載されてあるような事実は現在も存在しておりませんし、かつまた新聞に記載されてあるような事実をこれから行なおうとする意思もございませんでした。そこで私も安心をいたしたのですけれども、また愛知県警察におきましても、そういうふうな記事につきまして、当該新聞のほうに、記事に非常に相違があるということで訂正を申し入れたような次第でございます。  されば、なぜそういうふうな記事が出るに至ったのか、全く何もないところでそういうふうな記事が出るはずもなかろうということで、私どものほうでこれをさらに問い詰めましたところ、いまお話のありました談話を書かれておる課長が、たまたま新聞記者の人と盗犯という問題についていろいろ話をしたわけです。その際に、現在の日本における刑法犯の中で占める盗犯というものの数は、非常に多いわけであります。とりわけ一般市民の安全な生活を脅かす最も身近な犯罪でございますから、何としてもこれは警察としてはできることならば一件でも減少させていきたい、こういうふうなことからいろいろ話をして、結局、現在われわれが推進しております手口制度というふうなもの、これは要するに窃盗犯等で指紋があるとかあるいは足跡があるとかというものが非常に乏しく、非常に巧妙な犯罪がふえておりますので、いわゆる犯罪の手口というものをカード化いたしまして整理いたしておるわけでございます。そうしてその後、そういうふうな手口の似た犯罪が起きた場合に、これを照合して犯人を割り出していく、こういうことを話をしたようでありますが、そういうことがどういうふうに間違ったのか、いまお話がありましたようなことで新聞に掲載された、こういうふうに私どもば報告を聞いておるわけでございます。  以上が、新聞に出ましたことについての私の愛知県警察について報告を求めた結果であり、また事実につきましては、いま申し上げましたように、愛知県警察においてこれを行なっておる、もしくは行なおうとしておるというふうなことはございません。
  173. 中谷鉄也

    中谷委員 警察庁の御答弁はいまお伺いいたしましたけれども先ほど私が引用いたしました三課長の談話、その意味で内部的に問題はあったが実施に踏み切った、こういう談話に相なっておる。とすると、どのようなことが行なわれようとし、措置されようとしたかについて、私も冒頭に事実関係を明確にしていただきたいということを申し上げたけれども、従前他県警において行なわれていないこと、あるいは行なわれている制度についてもその措置実施についてはより強力にというふうなことがないならば、内部的に問題はあったが実施に踏み切ったという談話は出てこないと思うけれども、まずこの点はいかですか。
  174. 内海倫

    ○内海政府委員 その答弁につきましても、特にそういう形の答弁をしておるわけでなくて、いま申しましたように、盗犯という問題についていろいろ話をした、そういうことでございますので、ここの新聞にありますように、いろいろ内部で問題があったけれども実施に踏み切るというふうな、そういうもとのものが特にこういう新聞に出たような形のものであったというふうなことは、事実何もないようでございます。ただ、申し上げていいことは、特に私最近刑事警察の大きな基本的な方向といたしまして、犯罪の多発という実情、あるいは犯罪の非常にむずかしくなっておる実情にかんがみて、できる限り一般国民の皆さんの協力を得て、悪質な犯罪というふうなものが一刻も早くなくなっていくようにということを強調いたしております。各県においても、特に市民生活に非常に身近な盗犯というふうなものについては、どういうふうにして国民の皆さんに話しかけていき、あるいはどういうふうにして警察側が一般の国民の皆さんに協力し、また国民の皆さんから協力を得るかというふうなことをいろいろ検討いたしておりますので、そういうふうなことについて、いろいろな対策というものはもちろん各県においては検討しておると思いますが、その内容というものは、決していま新聞に出ておったような、人権を侵害してはばからないというふうなものであってはならないし、その点は十分徹底させておりますので、そういう点はいささかもない、かように申し上げておきたいと思います。
  175. 中谷鉄也

    中谷委員 警察官が、定期的であろうが、不定期的であろうが、あるいは一回限りであろうが、前科のある人あるいは特に重犯者というふうな人の家をたずねて、あるいはまた付近の人や家族などから生活状態や勤務ぶりなどを聞くということは、特定の容疑がないのに警察の権限として行なうべきことではないと思うけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  176. 内海倫

    ○内海政府委員 同感でございまして、たとえ前科がありましょうとも、一たびそれが社会生活に復帰しておる限りにおいて、それが正常な生活を行なっておる限り、私どもは、他のいかなる人とも区別すべき理由は何もございませんで、そういう人についていまお話のあったような措置をとるということも、決して警察としてはやることではない。ただ、ここで申し上げておかなければいけないことは、まあわかりやすく言いますと、職業的などろぼう、職業的なすりというものが、相当たくさんおるわけであります。こういう者が、現状におきましては、全国をまたにかけて動いておる。そういうものの実態というものは、警察としてはとらえ得る限りしっかりとらえておくということが必要でございます。しかしながら、その実態のとらえ方というものが、いま言われたような形でとらえるものであれば、これはもう問題にならないわけであります。そういうふうな個人の人権という問題に触れることがなくて、しかも警察として職業的なそういうすりあるいは窃盗犯というふうなものの実情というのは掌握しておく必要はある、私はかように考えております。
  177. 中谷鉄也

    中谷委員 この問題については、一応打ち切りをいたしたいと思いますが、では、こういうふうにお尋ねをいたします。  職業的な犯罪者について、そのような犯罪者を野放しにしないということは、社会予防の観点から大事なことだということは、私自身も十分にわかります。そこで、私が先ほど引用したようなことについては、人権擁護の観点から警察権限の規制があるということのお答えはありました。そうすると、ただ警察としては、先ほど引用したようなことはできない。そうすると、いずれにしても職業的な犯罪者についてそれをとらえておくということはしなければならない。しかし、この二つはどこかで相交錯し、相矛盾し、お互いの限界を示し合わなければならない問題に相なるだろうと思うのです。としますと、社会防衛、犯罪予防という観点と、人権保障あるいは前科者の更生などという、そのような目的と、どこに限界線を具体的に引くのか。県警の、あるいは警察官としては、どこまでの行為ができるのか。どこまでの行為をすることを許容され、あるいはまた職務としてそのことがむしろ要請されるのかというような問題について、具体的な御答弁——ひとつどこに基準があるのか。人権を侵害しない限りにおいてというような御答弁ではなしに、ひとつそのような御答弁を私はいただきたいと思います。  なお、この機会に人権擁護局の調査課長さんのほうから、この問題について——というのは、愛知県警のこの問題について、人権擁護調査課として、独自の御調査をどの程度されたか。ただいま刑事局長答弁がありましたけれども人権擁護局としての御調査はいかようになっておるか。  なお、いま私が最後に提起をした問題について、社会防衛と人権保障との限界線を明確に人権擁護局としてもお引きいただいておかなければ、今後この問題を離れても人権侵害の事実は出てくるだろうし、あるいは人権侵害ということについて非常に神経質になり過ぎた場合には、むしろかえって社会防衛の観点が阻害されるだろう。非常にむずかしい問題だと思いますが、ひとつお答えいただきたいと思います。
  178. 内海倫

    ○内海政府委員 まず、抽象的なお答え最初にいたしたいと思いますが、繰り返し申し上げておりますように、たとえ警察の職務執行でありましても、人権の侵害というが許されるものではございません。したがって、人権の尊重ということは、私ども警察公務におけるやはり鉄則でなければならない。しかしながら、一方において非常に悪質な、そして先ほども言いましたようないわゆる職業的なすり、どろぼうというふうな存在のあることも事実である。そうしますと、社会防衛という観点からも、警察としてはできることならばそういうふうなものを常時的確に把握しておるということが必要でありますけれども、もしそれを常時的確に漏れなくやろうとすれば、先ほどの問題が出てまいります。特に新聞でいろいろ書かれましたような、前科のある者を無差別に調査をするというふうな結果になれば、これはたいへんな問題であります。  しかしながら、ここから具体的な問題に入りますが、具体的ないろいろな問題が出てくる場合、たとえばそういうふうないわゆる職業的なすり、特に集団的なすり、あるいは職業的などろぼうというふうなものがよく立ち回ると思われる、いわゆる多発地域というふうなものがあるわけでありますから、そうすると、そういうふうな地域において絶えず実態を見きわめていく、あるいはそういう職業的な者が行なったと思われるような手口の犯罪が相次いでおる、あるいは盗んだと思われるものが出回った、その経路をつくことによって、そういうふうなものがあやしいんじゃないかということになれば、たとえそこに直ちに犯罪の容疑がなくても、そういうふうなことを前提としながら内偵を進めなければならない。その内偵というものは、多くの場合犯罪に結びつくと思いますが、以上申し上げたような手口なり、あるいはそういうふうな地域において犯罪が多発するというふうな事実を前提として、そういうふうなものの動向を内偵していくということは、当然しなければならないことであろう、私はこういうふうに考えられます。だから、前もって何の何がしが常にどうなっておる、それを場合によれば、先ほどおっしゃるように付近に行って聞き込み、あるいは尋ねていくというふうなことを無差別にやるというふうなことは、私どもは考える余地のないところでございます。
  179. 宮代力

    ○宮代説明員 お尋ねのありました第一の、独自の調査人権擁護局としてしたかどうかということでございますが、これは私どもそういう新聞報道を知らなかった事情もありまして、これを具体的な事件として取り上げるということはいたしておりません。  なお、この問題は、一つの制度的なものとしてそういう方向に実施したいという趣旨の報道のようであります。そういう場合には、私どもは具体的な被害者がまだ出ていないという状況でありますので、いわゆる私どものいう人権侵犯事件としての調査というものはいたしておりません。一般的に申しましてしていないのでありますが、ただ、一つの制度が人権上問題がある場合には、人権保護の観点から十分検討して、もしそれが人権擁護上いけない、遺憾だ、好ましくないというような点がありますれば、これはそういう制度を行なう関係の官庁に対しまして何らかの意思表示をするということが、通常になっております。そういう点におきまして、私ども知らなかったために検討しておりません。現地におきまして検討したかどうか、実はまだ報告を受けておりませんが、まだしていないとすれば、現地の指導が十分でなかったということでありまして、この点、十分反省いたしたいというふうに考えております。  それからなお、二番目の社会防衛と人権侵害との関係、限界と申しますか、これをどう考えるかということでございますがこれは私ども非常にむずかしい問題と考えておりまして、具体的な問題が発生いたしませんと、なかなか抽象的にきめることはできないと思いますが、とりあえずあの新聞記事等によりまして私ども考えましたのは、犯罪捜査のために必要であれば、これはもちろん本人の——たとえばすり犯罪が発生した場合には、そのすりと同じような手口の者がどこにいて、どういう動静をしているかというようなことを調査すること、内偵することは、先ほど警察庁刑事局長が申し上げましたように、できるであろうというふうに考えております。一般的に私が考えましたのは、犯罪捜査のためであれば内偵調査というものは許されるけれども、そういう犯罪捜査と給びつかない、単に新聞に報道されましたような、単なる抽象的なと申しますか、犯罪予防という、そういう観点だけのために正常な生活を送っている者についての身辺調査というものをすることは、人権擁護の観点からは好ましくないのではないかというふうに一応考えております。しかしなお、これはいろいろむずかしい問題がございますので、私どもといたしましても、なお将来の問題といたしまして十分に検討いたしたいというふうに考えます。
  180. 中谷鉄也

    中谷委員 警察刑事局長さんと人権擁護局の調査課長さんに対する質問は終わりなんです。ただ若干、刑事局長さんの答弁調査課長さんの答弁との間には、ニュアンスの違いと同時に、やはり私は若干の分析上の食い違いがあろうかと思う。これらの問題については、今後ともこの種の問題は起こる可能性がある問題ですので、それぞれの立場において御検討をいただきたいと思います。  次に、三つ目の問題、佐世保事件を一つの対象としての、広い意味での警備警察の問題について、一、二点だけ本日はお尋ねをしておきます。  前回も質問の際に申し上げましたけれども警備警察、あるいは公安調査庁の職務執行、あるいは検察庁の公安検事、あるいは公安検察などという名前で呼ばれているそのような仕事というものは、非常に端的に申しまして、右傾化してきている。このような状況について、非常に憂慮いたします。そのような意味で、この通常国会を通じまして、警備警察中心として問題を提起し、分析をしていくというのが、私どうしてもやりたい仕事の一つなんです。そこで、本日それらの問題について資料の要求をいたす予定をいたしておりましたが、十分に整備ができませんでしたので、若干の資料要求を最初にいたしたいと思いますが、これはお願いをする資料要求の全く一部でございます。次のようなことを警察庁警備課長さんに資料要求という形でお尋ねをいたします。  前回、ガス取扱規程は存在する、しかしこれは公表ができないという御答弁がありました。そこで規制さるべきものは、私は、単に三派系の全学連だけではない、警察の強力な権限、実体、それが国民の権利や自由に対する侵害の作用を及ぼさないという点において、警察、なかんづく警備警察も国民の立場から規制されなければならないという立場をとっています。そこで、警察法あるいは警職法その他治安立法といわれているものは、治安政策、治安行政、警備警察の非常に膨大な機能にもかかわらず、根拠法令ははなはだ私は少ないと思うのですけれども警察庁が、災害を除く警備警察に関して規定しておられるところの規程、規則あるいは通達、訓令等で、外部に明確にできないもの、別のことばでいいますならば、国民の立場からは黒いベールをかぶっている部分、たとえばガス取扱規程のごときもの、これらが一体どの程度あるのか。外部に公表できない。いま申し上げましたような規程以下のものについて、その件名を明確にしていただきたい。これが資料要求の第一点であります。国民の目に触れないところの規程あるいは訓令等によって警備警察が巨大なる権限をふるうということは、納得ができないという観点から資料要求をいたします。  同じく公安調査庁につきまして、同趣旨の資料要求をさせていただきます。要するに、公安調査庁の基本法であるところの調査庁に関するところの法律、あるいは破壊活動防止法の実際の職務を執行されるわけでありますけれども、その破壊活動防止法に基づくところの、明らかにされていない事務取り扱い等に関する規程、訓令あるいは通達というふうなものがあるのかどうか。あるいは公安調査庁の調査活動についてそのような趣旨のものがあるとするならば、どのようなものがあり、警察庁及び公官調査庁に対して同様でありまするけれども、明らかにすることができないとするならば、その明らかにすることができない理由というものを明確にしていただきたい。これはひとつ御準備をいただいて御答弁をいただきたいということでございます。  それから警察庁に対して資料要求をいたしたいのは、警察が、所持、準備、保持、いろいろなことばがあろうかと思いますけれども、現に持っておる武器、これはどんなものがあるのか。その武器の性能、数等について明確にしていただきたい。  さらに、前回催涙ガスは武器でないというところの答弁がありました。そうすると、実力規制のために用いる装備の実情を明確にしていただきたい。その性能、機能等でございます。もうそれだけ申し上げれば当然御答弁いただけると思いますけれども、たとえば午前中、角棒について、あれは百四十Gの圧力を持つものだというふうなところの詳細な御答弁がありました。とするならば、いわゆる警棒、これは一体どのくらいの圧力を持つものなのか、あるいは警棒の材質のかたさはどのようなものとして警察のほうにおいては警棒を規定しておられるかというふうなことをも含むわけでございます。  なお、警察庁について次に三つ目の資料要求をいたしておきたいと思いまするけれども、いわゆる高等文官試験行政科試験に合格をした有資格者、さらにまた警察官上級試験合格者などについて、現在どれだけの実人員がどのようなポストに配置されているか。これらもひとつ資料にしていただきたい。  なお、資料要求がずいぶん百近くあるわけですけれども、早急に御用意いただきたいものとして、次の点をお願いいたします。  各警察学校、特に警察大学校における警備に関する教科の内容、用いられている教科書、さらに講義内容等が明確にできない部分があるならば、その有無とその理由等についても、明確にしていただきたいと思います。  要するに、あとの資料要求等については、委員会での発言を通じて、あるいは別途に公安調査庁あるいは法務省あるいは警察庁に資料要求を私のほうからさしていただきますが、重ねて申し上げますけれども、単に規制の必要がある、ない、この点が論点ではありまするけれども、規制されるのは単に三派系全学連だけじゃないのじゃないか。巨大な成長を遂げたところの警備警察自体も、国民の自由と権利を守るという立場から規制をしなければ、非常に国民の権利と自由が侵害される。このような前提において、多く国民の目に触れないような部分について、でき得る限り掘り下げていく、これが今日からの私の質問の前提であるし、立場だということを申し上げまして、本日はこの程度の資料要求をお願いいたしたいと思うのです。  なお、次に一点だけ質問をいたしておきますが、先ほど破壊活動防止法の適用の問題について公安調査庁のほうからの御答弁がありましたけれども、破壊活動防止法の四十条「(政治目的のための騒擾の罪の予備等)」、要するに、特にその三号の問題などについて、警察庁等においてはどの程度捜査しておられるか。法務省、検察庁においては、いかがであろうか。公安調査庁においては、警察との間において情報交換をする規定がありますけれども、公安調査庁においてはどういうことに相なっておるのか。これをそれぞれの立場から御答弁をいただきたいと思います。
  181. 三井脩

    三井説明員 まず第一点は、初めの資料要求に関する点について申し上げます。たいへん広範な御要求でございますので、各局とも関係いたしますので、持ち帰りまして十分相談の上できるだけ御趣旨に沿いたいと思います。  ただ一点、警備警察が黒いベールに包まれておるというような容疑をお持ちのようでございますが、この点はそうでありません。そういう点は毛頭ございません。したがって、かりにガス使用規程のように、ただいま部外秘として扱っておるというようなものにつきましても、そういう意味においていわゆる部外秘にしておるというものではないことを申し上げておきます。  第二の破防法四十条の点につきましては、たび重なる三派系全学連の違法行為がございます。これについては捜査をいたしております。捜査の進展状況につきましては、いずれそのうちに明らかになる点でございまして、ただいま申し上げる段階ではございません。
  182. 川井英良

    ○川井政府委員 いま三井さんのほうからお答えになったとおりだと実際問題は思いますが、この四十条は、御案内のように、純然たる特殊な目的を持った予備、陰謀の段階の行為を独立犯として処罰する、こういう規定でございますので、たとえばかような目的を持って行なわれた予備行為がありましても、その予備行為が実行の着手になりまして、他の犯罪、たとえば公務執行妨害等の犯罪が成立した場合には、おそらくこの破防法の四十条と刑法の九十五条との関係は、罪質の関係で刑法のほうの公務執行妨害だけが成立するものではないかというふうに私ども解釈いたしておりますので、純然たる黒幕的な存在がありまして、現場には臨んでおりませんけれども、ここに掲げてありますような大きな犯罪を行なうことについて事前にここに掲げてありますような予備、陰謀的な行為を行なったその者は、その行為の現場には行っていなかったというような事態を想定しました場合に、それらのいわゆる黒幕的な人にこの四十条の適用がある場合が多いのではないか、こういうふうに考えております。具体的な適用の場面といたしましては、対象の関係において適用の場面は案外狭いのではないか、こういうふうに思っております。しかし、いままで世上に伝えられましたようないろいろな事件につきまして、この四十条の適用については、検察庁においてもいろいろ検討中でございます。
  183. 長谷多郎

    ○長谷政府委員 公安調査庁におきましては、先ほど説明申し上げましたように、破防法の適用について調査はいたしておりますが、その該当条文は四十条ではございませんで、四条の一項二号のリに当たる行為につきまして、対象団体が破壊活動を行なったかどうかという観点から、規制の要否のために調査を行なうわけでございます。四十条の個人的な犯罪につきましては、これは当庁が直接調査の対象としていることではございません。先ほど警察並びに刑事局長からの御答弁で、御了承願いたいと思います。  そのほか、情報交換等につきましては、これは平素から緊密にいたすたてまえでございまして、係官同士が実際しばしば口頭でも連絡、打ち合わせを続けておるというような現状でございます。
  184. 中谷鉄也

    中谷委員 私がおそれるのは、次のような点でございます。たとえば四十条について、この四十条が、破壊活動防止法が提案されたときに、教唆だとか扇動などというふうなところの概念が、構成要件として非常にあいまいな、限界のないものではないかということで論議されたことは、すでに会議録によって明らかであります。ただ問題は、警察庁にしろ検察庁にしろ、四十条について立件して捜査をしているというふうなことについては、新聞報道等を見ましても、聞くところではないわけなんです。要するに、四十条については何らそのような捜査が行なわれているということはない。逆に言うと、四十条が適用できるような事案ではないというふうに私は考えておる。また逆に、四十条を適用してかりに裁判所に公訴を提起したとしても、公訴の維持ができないであろうと私は考えておる。そのような状況の中で、いわゆる公安調査庁の、五条あるいは四条のリなどと称して、その団体規制をすべきか、すべきとすれば、どの程度の規制を処置すべきかどうかというふうなところの団体規制に関する調査だけが先行しているというふうに私は考える。この点で、現在の公安調査庁のあり方が、政治的な圧力を受けたものではないとおっしゃるけれども、たとえば閣議でそのことが問題になり、数次にわたる官房長官の談話があり、法務大臣の指示がありというふうな経過を見ると、私はこの破防法自体の持っている性格からいって、団体規制というものについては、非常な疑問と、そうして憂慮を感ずる、こういうふに私は言わざるを得ない。  それで、次長にお答えをいただきたいと思いますけれども、もちろんこの四十条というのは、あなたのところの問題じゃありません。ありませんけれども、逆に言うと、四十条の刑事事件が立件もされないような状態において、四十条についての捜査も証拠も集まらないような状態の中において、団体規制だけが先行し、万が一にも団体規制をするのだなどというふうなところの決定をする、公安調査庁長官がそのような請求をされるということが、国民の人権を守るという立場から見て、はたしていかがなものだろうか、四十条との関係においては一体どうなんだということを、四十条はあなたのほうの直接のお仕事ではないけれども、重ねて私はお尋ねをしたいのです。
  185. 長谷多郎

    ○長谷政府委員 四十条は私どものほうの所管でございませんで、その点は御了承願いまして、現在わが庁がいたしておりますのは、規制のための処分をするかしないか、やるとすればどの程度かという問題を検討しておる最中でございますので、御趣旨の点もあわせ含みまして、検討に意を用いたいと思っております。
  186. 中谷鉄也

    中谷委員 では、最後に一点だけ。今後資料を御提出いただくという立場から、警察庁に次のようなことを申し上げまして、本日の質問を終わりたいと思います。  たとえば、警備警察なんというのは、決して黒い霧に包まれているものではないのだ、黒いベールをかぶっていないのだとおっしゃる。また、公安調査庁もそういうことをおっしゃりたいのだろうと思います。しかし、かつて私自身も経験した、たとえば公安調査庁の職員の人が来て、そうして妹さんの結婚の問題に関係があるというふうなことで、特定政党の情報を収集されようとしてお金を置いていったというふうな問題。そうすると、警備警察の情報収集のための費用、どのようなものにそれが使われているか、あるいは公安調査庁についても同様、それなどについても、これはあとう限り明確にしていただきたい。従来から警察に二つの顔があるといわれております。一つは汗みどろになって凶悪犯人を逮捕しようとする刑事警察の刑事さんの立場、いま一つは、せびろの服をちゃんと着込んで情報収集をし、あるいは大衆団体の状態について、社会党の人の名前までリストにあげるような、公安調査庁や警備警察のやり方、こういう隠微な面と、私は二つあると思うのですが、そういうふうな点についても一切明らかにしていただける、その段階において、はたして警備警察が黒い幕をかぶっていなかったかどうかということが明確になると私は思うので、警備課長さんのほうで黒い幕はかぶっておりませんというお答えは、この通常国会に十回ばかり国政調査があるので、まだまだ私はそのような御答弁は早いのだということだけを申し上げて、本日は終わりたいと思います。
  187. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後二時四十分散会