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1968-05-09 第58回国会 衆議院 文教委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月九日(木曜日)    午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 臼井 莊一君 理事 久保田藤麿君    理事 谷川 和穗君 理事 西岡 武夫君    理事 小林 信一君 理事 長谷川正三君    理事 鈴木  一君       有田 喜一君    稻葉  修君       河野 洋平君    周東 英雄君       高橋 英吉君    中村庸一郎君       広川シズエ君    藤波 孝生君       毛利 松平君    山下 元利君       渡辺  肇君    大原  亨君       加藤 勘十君    加藤 清二君       唐橋  東君    川村 継義君       小松  幹君    斉藤 正男君       山中 吾郎君    受田 新吉君       有島 重武君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小川 平二君  出席政府委員         人事院総裁   佐藤 達夫君         文部政務次官  久保田円次君         文部省初等中等         教育局長    天城  勲君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君  委員外出席者         参  考  人         (全国連合小学         校長会会長)  遠藤 五郎君         参  考  人         (新教職員組合         連絡協議会副議         長)      佐伯  実君         参  考  人         (北海道美唄市         立東明中学校教         諭)      土岐 千之君         参  考  人         (都立品川聾学         校教諭)    平塚 信子君         参  考  人         (中央労働基準         審議会会長)  石井 照久君         専  門  員 田中  彰君     ————————————— 五月九日  委員床次徳二君、二階堂進君、加藤清二君及び  永江一夫辞任につき、その補欠として毛利松  平君、山下元利君、山中吾郎君及び受田新吉君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員毛利松平君、山下元利君、山中吾郎辞任  につき、その補欠として床次徳二君、二階堂進  君及び加藤清二君が議長指名委員に選任さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内  閣提出第六一号)      ————◇—————
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  教育公務員特例法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  本日は、本法律案審査のため、参考人として、全国連合小学校長会会長遠藤五郎君、新教職員組合連絡協議会議長佐伯実君、北海道美唄市立東明中学校教諭土岐千之君、都立品川ろう学校教諭平塚信子君、以上四名の方に御出席を願っております。  この際、委員会代表して、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、ありがとうございました。  目下当委員会におきましては、教育公務員特例法の一部を改正する法律案について審査を進めておりますが、参考人各位より御意見を承り、もって本案の審査参考といたしたいと存じますので、何とぞ忌憚のない御意見をお述べくださいますようお願い申し上げます。  なお、議事の都合上、まず御意見をお一人約十五分間程度で順次お述べいただき、その後委員各位からの質疑にお答えをお願いいたしたいと思いますので、以上お含みの上、よろしくお願いいたします。  それでは順次御意見をお述べいただきます。まず、遠藤参考人からお願いいたします。
  3. 遠藤五郎

    遠藤参考人 それでは申し上げます。  文部省では、いままで原則として教員に対して時間外の勤務を命じない、こういうたてまえで指導してきておりますが、文部省幾らそう言ってみましても、教員勤務にはクラブ活動とか遠足、運動会、教材の研究、それから家庭訪問といった一般勤労者とは異なった面がございまして、どうしても正規の勤務時間をこえて勤務しなければならない、そういう場合が事実起きておるのであります。これは文部省が四十一年度に行ないました勤務状況調査にも明らかなところでございます。  この時間外の勤務は、校長の指示によるもの、そういうのもございますし、教員教育的な熱情や良心による自発的なものもございますけれども、校長といたしましては、この時間外の勤務に対しまして、いままで何らの給与上の措置がなされないままにきておることを、相すまないことだ、こういうように考えてまいりました。  今回、当面の措置といたしまして、手当支給ということが提案されましたことは、まずよかった、こういうように考えております。しかし、この場合に、一時間につき幾らという時間を単位として額を算定する超過勤務手当であっては、これは困る。教員勤務一般公務員勤務者とは違った面がございまして、教職特殊性というものに応ずるものでなければと思っておったのでございますが、今回提案されているような一定率特別手当支給するということはまことに適切なものだ、こういうように私は考えております。  それは、教職というものは人間形成ということを任務とする専門職であって、その勤務実態成果は、時間的な量をもってははかられない質的な面が非常に大きい。ですから、同じ一時間の勤務でありましても、その成果に対する評価の判定ということはなかなかむずかしいのでございます。それからまた、教員勤務の態様も、その勤務の場所を画一的に制限をしたり、勤務時間を管理者のほうで一方的に指示する、こういうこともできない場合も出てまいりました。  なおまた、遠足であるとか、夏季施設であるとか、実地見学であるとか、校外での生活指導とか、家庭訪問にいたしましても、あるいはまた研修会への参加、こういうようなことにつきましても、学校外での勤務が少なくないわけでございまして、このような勤務につきましては、校長としてその勤務実態を的確にとらえるということも事実上きわめて困難でございます。それをもし一方的に指示したり制限をすると、私は満足な教育指導もできなくなるというように考えておるわけでございます。  こういうような教職特殊性考えますと、個人によってあるいはその時期によりまして、超勤の時間に違いはありますけれども、一定率による支給、これを望みたいと思っております。  そしてこの場合に、手当の額を、今回の案では本俸等の四%としておりますが、この額につきましては、超勤実態というものを勘案をしてみますときに、適当ではないか、こういうように思っております。  それからこの制度に移りました場合に、労基法の一部適用除外を行なうというために、どうも教員に対して無制限勤務をしているのではないかというような心配、批判も耳にいたすのでございますけれども、私はその心配はない、こういうように考えております。と申しますのは、校長としては、勤務時間が定められていれば、学校の運営上やむない場合を除いてその勤務時間の中で仕事を行なうようにするのが、これがたてまえでございますし、たとえ時間外の勤務について手当支給されるようになりましても、このたてまえが変わるわけはないと思う。今回の法律でも、なお公務のため臨時に必要であるとき時間外の勤務を命ずることになっておるわけでございまして、校長が気やすく、またいたずらに超過勤務を命ずることはあり得ない。こういうように考えております。  それにまた、校長学校の円滑な管理運営について責任を持っておるわけでございまして、このことは、教員の健康と福祉にも責任を持つということを含んでおると思うわけでございます。逆にいえば、教員の健康と福祉に留意してこそ円滑な学校運営もまた可能になってくるのだといえるわけでございまして、毎日夜おそくまで教員を引きとめ、働かせるということは、校長立場からは考えられません。  以上申し上げましたような考えから、私は、この際給与改善として年間百六十億のこの特別手当支給されるということは一歩前進であるとして喜びたいと思っておるわけでございます。特にこの手当教職というものの特殊性についてこれを認めた考え方に立っていることにつきましては、現場校長としてはもろ手をあげて賛意を表するわけでございます。  ただ、この際特に申し述べておきたいことがあるわけですが、教育——私の立場からは初等教育でございますが、ここに人材を招致することは、日本の将来にほんとうに大きな影響を持つ重要な問題と考えておるわけですが、今日御承知のように人材おろか人員の確保さえもきわめて困難だというのが実情なのでございまして、これを打開するためには、教員社会的地位の向上、なかんずく待遇改善根本策だと思うのです。四%の財源措置で時間外勤務に対処をいたすことにとどまっているようでは、教職に魅力を持たせて教育界人材を招くことは不可能だと思っておるわけです。したがいまして、この教職特別手当教員給与の抜本的な改善への一里塚として、一つのステップとして、また大きなてこの役目をになわせる、こういう意図を加えて賛成をするわけでございます。  これはひとり全国小学校長のみではなくして、全日本中学校長考えでもございまして、昨年の十二月の二十三日には、両団体の連名をもちましてこの趣旨を陳情をいたしておるのでございます。  今回の法律案に、「当分の間、」と、こううたっておりますところや、文部広報の解説の中にも、「基本的な教員給与改善については今後さらに積極的な研究を進める」と、こう述べておる。このことに私は大きな期待を寄せまして、重ねてこの特別手当賛意を表したいと思います。  以上でございます。(拍手
  4. 高見三郎

    高見委員長 ありがとうございました。  次に、佐伯参考人にお願いいたします。
  5. 佐伯実

    佐伯参考人 新教組議長佐伯でございます。  今回の教特法一部改正案につきましては、率直に申しまして現場立場から反対をせざるを得ません。と申しますのは、われわれが当初考えていたことと大きく違うと同時に、その期待をそこねるところ大である。このことがまた、現実現場に大きな不安をかもし出しているという事実を否定することができないからでございます。  私たちは従来から、教員待遇と、さらにまた勤務条件改善については、現実的な面からと理想的な面からと、この二つに立脚をいたしまして、着実な目標を掲げて主張をし続けてきたわけでございます。  まず待遇の面から申し上げますと、現行給与体系上におけるところの諸欠陥あるいは他の給料表との不均衡もさることながら、教職という専門性を加味した観点から申しましても、まことに不合理が多いし、かつまた、社会的から見ましても不十分なところが多いわけでございます。したがって、これについての抜本的な改善策を講じなければならないということはだれしも認め、かつまた、その作業というものがすでに進められつつあるということについて一つの希望と期待を持っているわけでございます。勤務条件改善につきましては、学校経営近代化という観点と、あわせて教員勤務条件合理的改善という観点に立ちまして、具体的には勤務時間、休日、休憩等をどのように明確に位置づけるか、当然これを考えていく段階におきましては、時間外勤務の問題を無視することはできないわけでございます。したがって、そういうことも含めて抜本的な改善策を講じなくちゃならない。このような二つの面からわれわれは考え、かつまた、主張を続けてきたわけでございます。  したがいまして、待遇改善勤務条件改善とはおのずと関連はあるにいたしましても、おのおのの性格が違う観点からいきまして、区別をして考えられなければならない。この方向というものを文部省自体が認め、一昨年の実態調査を踏まえて、昨年は超過勤務手当支給根拠とした予算要求もつくっているわけでございますが、その段階にありながら、いま提案をなされておりますような内容に変質をした点について、われわれはどうも納得がいかないわけでございます。当初の文部省考え方がどうしてこのように変わっていったのか、れの変わった原因はどこにあるか、こういう点がわれわれ現場の第一線におる者としては納得がいかないわけであります。  一例を法案内容にとってみまするならば、たとえば読みかえ規定として、公立学校関係では労基法の三十三条の三項が読みかえ規定によって適用されることになりました。具体的に申すならば、超過勤務を命ずる根拠がここに明らかになったわけでございます。しかるに一方においては三十七条が除外されておる。いわゆる時間単位におけるところの超勤手当支給除外をする。これは一つの矛盾ではないか。三十三条の三項というものは、明らかに労基法上でいうならば、やはり時間というものを考え根拠がそこに明らかになっておる。一方において三十七条を除外をするということになるならば、素朴な考え方からいくならば、無定量勤務というものをしいるものではないかというふうに考えられてもいたし方がない。  さらにまた、超勤の事実というものが明確に四十一年度の実態調査において明らかになっていながら、その超勤実態というものが把握できないというふうな表現がされておる。しかし、その時点において把握できたものが、その後の考え方によって変わるという、その根拠が明白でない。もちろんわれわれとしては教職特殊性から見て、非常にむずかしい問題がございます。他の職場と違う点も十二分に認識をしております。しかしながら、超勤実態があるというその現実に立って、まずこれを実践をしてみる。そうしてそこに問題点がいろいろと実践の過程からあがってきた段階において、教職にふさわしい超勤というものをどのように給与体系の中に位置づけていくかという、こういう考え方現実的であり、かつまた、現場教職員納得させるものではないか、このように判断をするわけでございます。  冒頭主張で申しましたように、教職員給与体系を抜本的に改善をしなければならない時期に来ておるということはだれしも認めることでございますが、それとの関連から申しましても、この問題になっておりますところの超勤手当云々の問題も、やはりそういう場において、しかも現場実態を踏まえての検討がなされるべきではないか、こう考えるわけでございます。教員待遇勤務条件とがからみ合い、混同し合っているところに、このたびの法案の不明確さというものがあるのではないか、こう判断をするわけでございます。われわれが超勤手当を認めるべきであるということは、ただ単に超勤手当支給せよということにとどまるわけではございません。勤務条件改善し、さらにまた、近代的な合理的な勤務体制を確立するためには、当面時間外勤務というものを前向きに考えなければどうにもならないのではないか。要するに、勤務条件を前向きに考えていくということの一端として超勤手当というものを位置づけて考えるべきではないか、こう判断をするわけでございます。  このような観点から申しまして、わが山口県におきましては、われわれが主張しておりましたところのいわゆる勤務時間条例等も、この問題が発生しました関係からいまもって制定されない状況でございます。三十七年来現場実態を踏まえた現場合理的な改善考え主張し続けた勤務時間条例等も、この問題がこのように混乱をしたがためにいまもって成立されておりません。文部省自体勤務条例というものは地教行法並び教特法、さらにはまた地公法に定められたる条項によって制定をしなければならないと主張し続けながら、地方においてはそれが制定できないような事態に追い込まれておる。こういうふうな混乱は、まことに現場に不安を与えるとともに、行政に筋が通らないことを露呈しているのではないか、このように考えるわけでございます。  以上のような観点に立ちまして、いま少しこの法案内容等につきましては、現実的な立場に立って、論理的な思考から前向きな審議がなされるべきではないかというふうな判断に立ちまして、反対をせざるを得ないわけでございます。  以上でございます。(拍手
  6. 高見三郎

    高見委員長 ありがとうございました。  次に、土岐参考人にお願いいたします。
  7. 土岐千之

    土岐参考人 参考人として御指名いただきました土岐でございます。  このたび国会に提案され、目下本委員会審議中の教育公務員特例法一部改正案につきまして、私は反対立場から以下若干の意見を申し述べてみたいと思います。  まず、第一の点といたしまして、本法案に示されております労働基準法三十七条の適用除外と三十三条三項の適用は、戦後確立されました公務員制度を根本的に否定しようとしていることを指摘したいと考えます。  私は、太平洋戦争のまっただ中、北海道におきまして当時の師範教育を受け、終戦の前年国民学校訓導としての辞令を受けた者でありますが、御存じのように、戦前の教員官吏待遇官吏としての身分を有し、官吏服務紀律適用のもと無定量勤務に服すべきものとされ、その分限あるいは懲戒、服務給与等身分上の事項は法律によらず勅令をもって定められ、その紀律のもとに服しておったのであります。したがって、俸給は日々の労働の対価ではなく、絶対的無定量の義務に対しまして恩恵的に支給されていたものであって、当時の教師は、権利はもとより、与えられた給与一言の不満も述べ得なかったのであります。  ところが、戦後、公務員は、御存じのように天皇の官吏から国民公務員へと一大転換をし、新憲法によりまして新しい公務員性格が鮮明にされました。つまり、法制的には公務員労使関係の一方の当事者とさせ、無定量勤務の法制を失効させまして、一定量勤務に対し一定給与支給される関係となり、やむを得ない超過勤務に対しましては労働基準法による割り増し賃金制度が確立され、今日に至っているのであります。  このような経緯を考えまして本法案を考察いたしますと、僅少な教職特別手当によって無定量勤務がしいられる法的根拠を持ち、さらに教員のみが労働基準法に基づく割り増し賃金制度が否定されようとしていることは、一部で教師聖職論が云々されているときだけに、二十三年以前の教師が想像されてならないのであります。教師の持つ労働者性法的裏づけの面から排除をしようとしていることは、何としても理解に苦しむところでありまして、基本的な問題として反対せざるを得ません。  特に、労働省解釈通達によりますと、三十三条三項適用者は、三十六条はもちろん、女子の休日労働を禁止しております六十一条をも適用除外とされていることに、最近漸増しております女子教員が重大な関心を寄せて反対していることを、あわせてこの機会に申し述べてみたいと思います。  さらに、健康と福祉を害してはならないとありますけれども、このような抽象的な表現では何ら歯どめの役割りを果たすものでないということも、関連して申し上げておきたいと思うのであります。  第二の点は、今日教育基本法に定められております教育の目的を達成するために緊急に解決しなければならない重要な課題は、何といっても教員賃金労働条件改善であると考えます。したがって、このことと逆行する制度はどうしても私は許すことができないと考えるのであります。  現在、ILO条約勧告に示す一週四十時間、週休二日制が世界の大勢といわれていますが、先進国の仲間入りをしたといわれております日本教師の現状は一体どうでありましょうか。  私は、先般、神奈川県逗子市立小坪小学校長小川宗一さんが書かれました「子どもらは犠牲になる」という本を熟読いたしました。この小川宗一さんが書かれました「子どもらは犠牲になる」という本の中で、小川さんは残酷ともいえるほどの教師の多忙な実態を克明に数字的に示しておるのであります。特にこの本の結びとして、これらの教師仕事を、普通の活字大の字一覧表にしてみたら、畳五畳敷の広さになったといっておられるのであります。  また、日本教職員組合が一九六五年に発表いたしました「教育白書」の中に、群馬県のある小学校教員の日記が掲載されておるのでありますが、これによりますとこの先生は十月のある日、午前八時に学校に着き午後六時帰宅した。午後八時半子供が就寝してから採点業務を行ない、午後十時半から一時間研修に費やし就寝をした一日の行動がつまびらかに記載されております。そのあとでこの先生の本日の反省として、一日のうち父親、家族としての時間があまりにも少ない。よき教師になるためにもよき父親になりたいということと、きょうは集金がなかった、珍しい。学校事務分担仕事なかった、珍しい等々が述べられておるのであります。  まさにこの先生は、八時間労働どころか、一日の生活時間の大部分を教師としての仕事に使っているのです。この白書に示されている教師勤務量文部省調査をはるかにこえ、毎週十二時間以上の超過勤務をしている実態が明らかにされています。また笑い話ではなく、ある県ではちょうちん学校という代名詞すらあるくらい夜おそくまで働かされている学校があります。  御承知のように、現行法上は超勤を命ずることができない定めになっていても、定員が十分配置されない、教師の本務が不明確で、もろもろ雑務が強要されているために教師は膨大な業務量をかかえて苦悩し、特に最近死亡者休職者が漸次ふえている傾向にあるとき、本法案が可決されれば、平均二千円の——一日についてわずか六十六円であります。平均二千円の特別手当を代償に法的に堂々と無定量勤務がしいられることになり、教師みずからの生命と生活に対する不安が一そう増大することになってくることは、火を見るよりも明らかであるといえるのであります。  このような措置よりも、教師賃金を高め、労働条件改善すること、特に定員をふやし、もろもろ雑務を排除して労働時間を短縮する方策を皆さん方によってぜひ至急講じていただくことが私は先決であると考えるのであります。  さらにこのことと関連いたしまして、特に付言いたしたいと思いますことは、現在世界各国政府は、教育が国家の進展の基礎をなし、世界人類の幸福を追求する原動力であるということから、教員不足原因を探究し、有能で有資格の教員をより多く教壇に導き入れるための解決策検討に乗り出し、そのためにILO、ユネスコから出されました教員地位に関する勧告国内実施を急いでいると伝えられていますが、ぜひ日本におきましてもこの勧告早期実施をこの際要望しておきたいと思います。  第三点として申し上げたいと思いますことは、教員超勤制度の問題が具体的日程にのぼって以来真剣な取り組みを行なってこられた文部省の態度の貌変についてであります。  昭和四十年十月十八日、当時の中村文部大臣日教組代表に対しまして、日教組要求に対して文部省として誠意をもって取り組む。そのため昭和四十一年度に全国実態調査を行ない、その結果を得てさらに日教組と話し合い、解決のための結論を出すことが回答されました。この回答を受けて、できるだけ超勤の事実を少なくしようとする文部省調査原案をめぐって種々議論がありましたが、最終的に全国教師はこれに協力をして、その結果、文部省より一定結論が発表されたのであります。当時、文部省事務当局は、調査結果に基づいて日教組代表に対し、調査結果に基づき超勤制度を確立する方針で、必要な法改正財源措置を講ずるということが明らかにされたのであります。ところが、閣議決定に至る間、どのような検討があったかは私はよく存じませんが、当時の文部省当局の言明とは大きく変質した内容になっていることに驚いている次第であります。  従来の裁判所の判決や全国二十三県にのぼる人事委員会判定で、起勤の事実に対して超勤手当支給すべきであると明確な判断を下している経緯の中で、本件は、法案に示されている内容による解決ではなく、超勤のない学校の体制を確立する。やむを得ない超勤に対しては、労働基準法に基づく超勤手当支給することでぜひ意思統一が本委員会で行なわれることを切望してやみません。  最後に一言申し上げます。ことしは一九四八年十二月十日、国連で世界人権宣言を採択して以来二十年目を迎えた国際人権年であります。政府におきましても諸行事を予定されているやに存じているわけでありますが、この輝かしい国際人権年の年にあたって、教師の権利を制約することは、今後重大な汚点を残すことになると思います。権利の主張、また権利に基づいて何らかの要求をすることを罪悪視されるとすれば、このことはまさに日本近代化、進歩を否定するものと考えます。  重ねて、戦後確立された現行制度を改悪することなく、私たちが従来から主張してまいりました教員超勤制度を今国会で確立されるよう議員各位に要望いたしまして、私の意見を終わりたいと思います。(拍手
  8. 高見三郎

    高見委員長 ありがとうございました。  次に平塚参考人にお願いいたします。
  9. 平塚信子

    平塚参考人 平塚でございます。  この法案についてのことは、 いままで三人の方々からいろいろお話がありましたので、私は、現在都立品川ろう学校勤務して三歳児、一番小さな幼稚部の子供たちを受け持っておりますそういう立場、それから教職に約二十年近くおりますので、いままでの経験を通して、この問題について皆さん方の何か参考になればと思って申し上げたいと思うわけです。  いまお話しありましたように、教育という仕事は事務系のお仕事と違って、きょうここまでやったという——もちろんプロセスによってやっていくわけですけれども、子供の実態とかそういうものから、きょうここまでやったということをはかりにかけていえるものではないと思うのです。そういう教育特殊性ということは皆さん方もよく御存じだと思います。そういう点から、もしもそのクラスがどうしても成績があがらないということになると、責任上やはりその先生は、超過勤務とかなんとかそういうことでなくして、実際にその子供の成績をあげるために、ちょっといえば二十四時間勤務と言いたいくらいにやっちゃうわけです。夢にまで子供のことを思ったり考えたりということがあるわけです。そういうことから考えてきますと、いまもお話しありましたように、超過勤務が何時間、そういうことはいえないと思うのです。それぞれのその先生の熱意とかそういうものによると思いますが、時間はきめられない。そういう点から考えると、私は、それを法律化して、そしてそれである程度職員の何かプラスになるというようなことばたいへん疑問点が多いわけです。  そして、現在私どもの職場でも校務分掌あるいは研究分掌というものがあるわけです。たとえば私もあまり数に強いほうでないので、給食のカロリー計算の係を年間担当してやれといわれたときに、家にまで持ち込む、あるいは手伝ってもらってということで、もちろん給食の部門ですから、子供の教育に大いに関係があるのですけれども、実際教育上の問題ではなくて、先生のいわゆるオーバーワークといいますか、そういう点が最近すごく多くなってきたわけです。ある教員が、ワークブックを市販のものを使わないで、その受け持ちの子供に適したプリントをしていた。そのために、ある学校校長のほうから出せといわれていた書類がおくれてしまったわけです。そのことでたいへん校長から叱責を買ったというような矛盾点が出てくるわけです。  ほんとうに子供と実際につき合うことが少なくなって、先生が事務上の仕事を多くする、そしてそれをわが家まで持ち込む、そういう時間外の仕事が最近ふえてきた。そういう点ももう少し改善して、教師というものはある程度子供と取っ組んでいく、そして将来日本の国を背負う次代の子供たちを成長させていく、そういう教育というものにもっともっと私たちは時間がほしい。これじゃもう事務屋なんだか教育者なんだかわからない、そういうような、私たちの実際の声があります。  それから週間のスケジュールを見ましても、ほんとうに教材の研究、そのクラスの子供たちのために、教材研究をするという時間が少なくて、各会合——職員会議とかそういうものは子供たちのために実際になっていくわけですけれども、だんだん長年つとめておりますと、いろいろな校務分掌とか研究分掌が中心になる。そうすると、そのためにどうしても子供をある程度犠牲にして書類を書いたりというような仕事があるわけです。  そういういろいろな実態から、要は私どもの仕事というものは、時間できちっとはかり得ないものがあるのだということを知っていただきたい。現行給与制度は、ある程度学歴とか経験年数とか、そういうことできめられているわけですけれども、やはりもう少し教員自身の研修、質の向上、こういう発展している社会にあって、新しい感覚を子供に与えていくというために、もう少し私どもは研修の時間がほしい。そのこともやはり交通費の予算だとか、それからやはり子供を捨てておいて研究会へ出ていかなくちゃならないとか、そういうことで出たくても出られないということもございます。そういうことから、もう少し教員自身の質の向上がはかれる、そしてそれによっての給与が与えられる、ほんとにいい先生が子供たちの前にあらわれる、そういうようなシステムにしていただくために、もつと現在の教員給与を上げていただいて、そしてそのことによって若い有能な先生、それから経験豊かな先生が新しい教育学を勉強して、そして子供の前に新鮮な姿であらわれてくる。もう少しそういう時間的な余裕といいますか、それから給与の上での改善、そういうことを、特にこういう文教委員先生方に、もっともっと実際を知っていただいて、そして安心して教員が子供たちと取っ組める、そういう姿にしていただきたいということを、ちょっとこの法案や何かとははずれるかもわかりませんけれども、現場の声としてそういうことをお願いしたいと思うわけです。  以上、ちょっとまとまりがつかなくなりましたけれども、私の気持ちの一端を申し上げました。  (拍手
  10. 高見三郎

    高見委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 高見三郎

    高見委員長 次に、参考人各位に対して質疑を行ないます。  質疑の通告めありますので、これを許します。臼井莊一君。
  12. 臼井莊一

    ○臼井委員 ただいまお四人の参考人の方々の現場の御体験を通じての貴重な御意見を伺わせていただきました。  そこで、教育は、何といってもその国の将来をになう青少年を育成する、人間をつくるという意味において非常に重大な仕事であるから、それを担当せられておる先生方によい先生を得るためには、待遇を十分により一そうやるべし、こういう共通の御意見につきましては私どももまことに同感でございまして、これはそのとおりであり、現在の先生方に対する待遇というものが決して十分だとは私どもも考えておりません。これは多々ますます弁ずと言えば限度がないことになりますが、いずれにしてもそういう点は私どもも同感でございます。  ただ、御意見を伺っている中に、二つの対立というか、違った意見があるように伺われるわけであります。要するに、先生方のお仕事を時間によってはかり得るのだから、したがって、給与についても超勤手当等についても働いた時間によって計算して支給しろ、こういう御意見、それから、いや教育仕事はそう時間ばかりでははかれないところがあるから、確かに時間外の仕事もやることは事実であるけれども、しかしそれは単に時間だけでははかれない、こういうような御意見と、二つあるようであります。従来私どもが常識的に承知しておりましたのも、先生方のお仕事は単に時間の長短をもってははかり得ない、かるがゆえに、従来は教職員給与については、当初、戦後二号俸アップであったのが、いつの間にかこれがくずれて、一号俸ぐらいは違っておるようでありますが、いずれにしてもその線がだいぶくずれてきたというところに一つの大きな問題がある。そこで、私ども率直に申し上げますと、時間外とかなんとかいうことでなく、基本給を十分上げて、そうしてその中において教育の全般をおやりいただくということがよかろうという考え方があるわけです。事実、先生方のお仕事に限らず、同じ働いているあれでも、他の、たとえば裁判官とか、われわれにいたしましても、ずいぶんなまけている者もあるが、一生懸命夜業をやっていても別に時間外手当がつくわけではない。仕事の性質によってこれは分かれるところであると思うのです。  そこで、佐伯さんと土岐さん、どちらでもよろしいのですがお伺いいたしたいのです。先生方のお仕事はやはり必ず時間ではかるべきである。時間ではかるべきであって、こうひっくるめて手当支給するのは不適当であるという御意見のように伺ったのですが、しかし、教職員のお仕事内容というものは時間ではかり得ないところがあるのかどうか、すべてこれ時間ではかれるかどうか、その点についてひとつどちらさんからでもけっこうですが、お伺いしたい。
  13. 土岐千之

    土岐参考人 それじゃ私からお答えをいたします。  これは教師の職務論と関係をしてくるわけでありますが、現在私たちに労働基準法の十五条、これが適用されております。この労働基準法の十五条によれば、使用者は、労働者に対して労働条件を明示しなければならない、こう規定されています。それからこれを受けまして、労働基準法の施行規則の第五条でございますが、この中に明示すべき事項が列挙されておるわけです。その一つの項として、従事すべき業務は何かということを明示しなければならないとあります。労働基準法です。一方、学校教育法の二十八条によれば、「教諭は、児童の教育を掌る。」ということは規定されておりますけれども、いま私が申し上げました従事すべき業務は一体何なのかということについては、細則を見てもあるいは各県条例を見ても、何ら規定されておらず、すべてこれが児童生徒の教育をつかさどることに関連する業務であるということで、PTAの会費集めとか、あるいはその学級のいろいろな雑務まで教員が背負わなければならない、これが現在の教師実態であります。ですから、私はいまの御質問にお答えする前に、諸外国に見られるように、一体教師の職務は何なのかということをぜひ明示しない限り、いまの状態が解決されない。このことをまず一つとして申し上げておきたいと思います。  それから、このことに関連をいたしまして、それでは時間によってはかり得るのかどうなのか、こういう御質問であったと思いますが、私は、これは具体的に申し上げまして、たとえば職員会議、それから校務委員会、運営委員会、あるいは修学旅行の付き添い、あるいは遠足の付き添い、あるいは文化祭、あるいは体育行事、さまざまな仕事教師が受け持っておるわけでありますが、これはどなたがどうおっしゃられようとも、私は時間によって明確に測定できる仕事だと思います。静岡やあるいは大阪の地域の判決でもこのことを明確に言われておりますし、さらにまた、各県の人事委員会でもこのことを明確に判定として出しておるわけです。さらにまた、御承知文部省調査によっても、これは明確にいろいろ捕捉できるかどうかという議論はありますけれども、時間として出ている。それは小学校は二時間三十分、中学校は三時間五十六分、高等学校は三時間五十九分、このように明確に時間で測定しておりますから、時間外の仕事はもうとにかく捕捉できないとか、あるいは明確ではないんだ、この御意見は当たらないのではないか、私はこのように考えております。  その他いろいろな業務がありますけれども、少なくともとにかく時間で測定できるかどうかということになれば、時間で測定できる仕事が数多くあるということをここで申し上げておきたいと思います。
  14. 臼井莊一

    ○臼井委員 まあ法律の問題につきましては、これは現在の規定でいけばいまお説のような例があるでしょうが、これは不合理な点はわれわれは幾らでも直せるわけです。  ただ、後段でお答えいただいたお答えを考えると、もちろん時間ではかり得る仕事もある、これは私もわかります。その中でも先ほど平塚さんのおっしゃったように、事務的な仕事先生方にやっていただくというのはこれはできるだけ避けて、専門の事務屋の方にお願いして直接教育そのものに専心願うというほうが願わしいことは、われわれもこれはわかるのですが、しかし一方、やはり時間ばかりではかり得ない特殊の専門のお仕事というものが教師の中にあるようにも私はいま伺ったのであります。  そこで、むしろ私どもとしてはどっちにウエートを置くかということでありまして、教育というものを従来からのさっき申し上げたようないきさつからわれわれ承知しておるのも、時間ばかりではかり得ないところにむしろ重大な問題を含んでいるように私思うのでございます。そういう意味において、さっき申し上げたように基本給においても、さらにまた、いまお話しのように時間ではかり得るところもあるが、しかし、どの先生はどれだけ勉強したから努力したから何時間分だけということでなく、やはりそれを——われわれにしても、だれそれは国会で何時間働いたから幾らやろうというのでなく、その自己の良心と責任において仕事をするというところに誇りもあるし価値があるものだとも考えるので、教育ということを考えるとそこを私ども考えまして、そこであらゆる問題を含んで総括しての今度の法案特別手当ということになったわけであります。しかし、もちろんこれが決定的、これでいいんだというのではなくて、なお一そう慎重に調査をして、そして不備な点は直そう、いわゆる暫定措置ということになっておりまするので、今後とも皆さん方の御意見を十分伺って私どももひとつ不備な点がわかれば直さなければならぬと思います。  ただ、先ほど佐伯さんからお話しの、いろいろ抽象的な、合理的にしろとか、現在は不合理だとか、あるいは前向きにしろとか、いろいろと形容詞的には伺ったのですが、私どもそれはそのとおりだと思うのです。ただ実際、現実にどういうところが不合理だ、こういうところをひとつ前向きにやってもらいたいとか、そういうことを伺いたい。きょうは時間がありませんから御無理もないと思いますが、ただそれじゃ時間ではかるということになると、暑中休暇やほかの休暇の場合にはよそでは大部分カットしているところもあるようですが、それでよろしいか、こういうことになるわけであります。私どもそういう点でどういうところが不合理だとかどうとか、もしあればその点を補足して伺えれば幸いだと思います。
  15. 佐伯実

    佐伯参考人 時間的な制約を受けまして、十二分に私の見解を述べることができなかった点おわびを申し上げたいと思います。  ただいま御指摘を受けました教員待遇改善の問題につきまして、先ほど御質疑の中で出ておりました号俸アップでありますが、われわれは号俸アップを否定をするものではないわけであります。したがいまして、号俸アップけっこうと思うわけでございますが、しかし、号俸アップのみによって教員給与というものが改善されるものではない。と申しますのは、われわれの現行給与体系というものが一般職の職員に準じてつくられておる関係から、しかも職務給的な色彩が入っているような入っていないような構成になっておる。具体的に申しますと、教員の学歴、それから免許資格、それから経験年数というものと、一般行政職(一)の給料表適用を受ける国家公務員並びに地方公務員とを比較してみた場合におきましては、十四、五年におきまして、はるかに一般職のほうが高い給与水準にあるという実態があるわけであります。このような点はわれわれははなはだ不合理であるということと同時に、教職専門性というものが加味されていないのではないか、こういう点を申し上げるわけであります。  それから第二点の、時間で測定をするということでありますが、私の見解といたしましては、勤務時間というものが勤務条件の中での重要な位置づけを占めておるのだ。いわゆる拘束時間というものが明確でなければ学校の管理体制というものはくずれてしまうのではないか。その勤務条件というものを具体的に決定する一つの方法が、勤務時間管理というものを明確にしておくということ。そしてその勤務時間管理が明確になれば必然的に時間外勤務というものは出てくる。もちろん時間外勤務というものが出ないような勤務体制というものが理想的であるし、望ましい状況でございますが、現行教職員の定数なり、あるいは先ほど来出ましたところの教職員の本務外の雑務の面から考えました場合には、一挙にこれを無視するわけにはいかないじゃないか。こういう前提に立ちまして、勤務条件決定の段階におけるところの重要な要素として拘束時間という時間を設定をする必要があるのではないか、こう判断をするわけであります。
  16. 臼井莊一

    ○臼井委員 最後に一つ。時間がありませんから、私ばかり質問してはあれですからこれでやめますか、先ほど佐伯さんのお話でも無定量——これは皆さんもお考えのようですが、無定量労働をしいられるから非常に不安がある、こういうような御意見でしたが、私ども、校長先生になるような方がそう無定量な、こうできたのだからこうだというような、私はそれこそ無定量でなくて無定見な労働をしいることになろうと思うので、そういうことはないと思うのです。この点は先ほど遠藤先生お話しでありますから、私はあえてお答えをいただかぬでもけっこうですが、なお何かお答えになるようなことがありましたら……。
  17. 土岐千之

    土岐参考人 いま無定量の問題で御指摘がありましたので、このことに関連して申し上げたいと思います。  これは冒頭申し上げましたように、今度の法案を見まして、きわめてこれは重大だと考えましたのは、三十七条に関連して三十六条ですね。それから先ほど申し上げました六十一条が労働省の見解によりますと適用除外になっておるわけですね。片方三十三条の三項が新しく適用ということになっておるわけです。  そこで、これは私がるる申し上げるまでもないと思いますが、いろいろ文献をひもといて見ますと、この労働基準法の三十六条というのは、これは法律用語かどうかはわかりませんが、明らかに免罰規定になっておるわけですね。つまり三六協定を結べば超勤を命じてもいいのですよ。これが三十六条の規定です。ですから本来的には、最低基準として一日八時間、一週四十八時間をこえてはならないのだ。これが労働基準法三十二条の労働時間の短縮です。しかし、三六協定を結べば超勤を命令し、超勤をさせても労働基準法に基づく罰則はありません。これが三十六条ですね。ですから、教員の場合は三六協定を結んでおりませんが、他の職種においては三六協定を結び、結ぶ場合もできるだけ超勤時間を短くするように三六協定を結んでいるわけですね。長くすればそれが労働者の健康に重大な支障を来たすということで、できるだけ短く超勤をするように三六協定を結んでおるわけです。ところが、今度の法案が通過をいたしますと、三十六条が排除されて堂々と超勤命令を出すことができるわけです。これは校長の良識その他という話がありますけれども、しかし少なくとも法的根拠が出るわけです。いまは学校に行ってみますと、五時になりました、先生方、超勤を命ずること私はできませんので、職員会議を中断いたしますかどうしますか、こういうように校長がはかるわけですね。まあ続けてやりましょうということになれば、そこで職員会議を続けるわけです。今度は、命令権はこれは校長にまかされるという話ですから、職員会議が九時まであるいは九時半まで、十時まで、私、先般ある県に行きましたら、十一時まで職員会議が続けられた学校があったわけです。今度は校長が必要があると判断すれば、堂々と命令を出すことができるわけです。それに従わないと言えば必ず——文部省の方がいらっしゃるかどうかわかりませんが、職務命令違反ということで処分されるのです、御承知のようにですね。ですから、これは現場先生にとってみればたまらぬ。いまでさえ超勤をやむなくやっているのに、今度は校長に堂々と職務命令だということを言われたのでは、違反したら処分だと、どうにもならぬということで、全国教師の大多数は非常な不安をここに持っている。しかも今度は四%出るのですから。現在四十四時間ですね。ですから四%、これは明らかに超勤の固定化です。これは労働基準法の立法の精神からいって私はきわめて多くの問題があるのではないかというふうに考えます。  ですから、いろいろなお考えがあると思いますけれども、少なくとも法律根拠をつくるということは私は何としても反対をいたしたい、こう考えます。
  18. 高見三郎

    高見委員長 よろしゅうございますか。——斉藤正男君。
  19. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 現場がたいへんお忙しいのに、参考人先生方御苦労さんでございます。私は参考人全員に御指名を申し上げて、二、三具体的な問題を伺いますので、お答えをいただきたいと思うわけであります。  まず、遠藤先生に伺いたいと思うわけでありますけれども、先生は、全国連合小学校長会の会長をおつとめで、一応全国学校校長先生代表して意見を述べたというようにとられます。したがって、きわめて重要な意見になるわけでございますが、まず一点伺いたい点は、先生現場校長先生でありますけれども、先生学校は児童数何人で学級数幾つで、先生は何人で、その男女比はどのようになっておられるでありましょうか。
  20. 遠藤五郎

    遠藤参考人 児童数は千三百四十ぐらいです。教員は三十四名でございます。男女比はまことに私のところは望ましい状況にありまして、男三、女二というような比率でございます。
  21. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 学級数は幾つですか。
  22. 遠藤五郎

    遠藤参考人 二十七でございます。
  23. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 比率はわかりましたけれども、実数からいきますと男の先生何人で女の先生何人ですか。
  24. 遠藤五郎

    遠藤参考人 二十三と十一です。
  25. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 先生のお答えにもありましたように、望ましい男女の先生方の比率だというおことばであります。まさに二十七学級に三十四人の先生で二十三対十一ということは望ましい姿と思うわけでありますけれども、全国的な傾向として、あるいは都内の傾向として、男女の先生方の比率がどういう傾向になりつつあるかという点に  ついてはいかがでございましょうか。
  26. 遠藤五郎

    遠藤参考人 御承知のように、全国的には婦人教師が年々漸増をしていき、いま五〇%をややこえたような段階ではないかと思います。東京都におきましても、同じような傾向を見せております。
  27. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 私は、教育という仕事、特に小学校の児童を担当するという仕事に婦人教師の進出は必ずしもまずいことではない、婦人教師がやって十分な効果があがるというように考えておるわけでございますけれども、それにいたしましても、男の先生のほうが漸減して婦人教師が漸増し、すでに五〇%を突破し、やがて七〇、八〇というような比率に婦人教師がなっていくだろうというように思うわけであります。  よしあしは別でありますけれども、なぜ一体そういう傾向になるのであろうかという点に疑問を持つわけでありますけれども、先生の経験からひとつ見解をいただきたい。
  28. 遠藤五郎

    遠藤参考人 その第一の問題は、私は教職というもの、教育ということに青年男子が魅力を持たないということではないと思うのであります。やはり教育の営みというものには、それに生涯をかけてやるべき意義を認めておる者が多いと思っておるわけであります。しかし、現実には教員養成大学に入ってくる男子が、特に優秀な者が少なくなっていくということは、教員社会的地位が重んぜられないということ、特に先ほど申しました待遇の点におきまして希望が達せられないという点に大きくかかっておると思っております。  それから、同じく教員養成大学を出てそして教職につこうとする者が、小学校に赴任をするよりは中学校、なお中学よりは高校へと行く傾向を現実に持っております。このことは小、中、高の給与がやはり合理的なものになっていないということが一つと、もう一つは小学校においては全科担任制といいますか、すべての教科を一人の教師が持つということも一つの要素であるように思いますし、事務職員等の配属が、小学校が薄くて中、高のほうが厚い。したがって、本務以外の仕事といいますか、教育そのものの仕事以外の事務的な仕事が多い。こういうようなことが重なって小学校教員へ男子が入ってこないという現状を呈していると思っております。
  29. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 先ほどの先生意見の中で、時間外勤務校長の指示によるものもある、教員の良心による自主的、自発的行動に出たものもある。しかし、こういうものに対し手当が出されていないということに対しては申しわけないと思っているというような率直な御意見があったわけでありますけれども、校長の指示による場合、たとえばどういうものがございましょうか。あるいは先生方が良心的、自主的、自発的におやりになる時間外勤務にはどういうものがあるのでございましょうか。
  30. 遠藤五郎

    遠藤参考人 具体的にこの七日火曜日の日に、私のところは子供の日を記念します運動会をいたしましたが、その運動会の当日、準備の必要上、職員に対しまして了解のもとに七時出勤、そして準備にかかる、こういうふうなことがございました。そういう特別な行事を進めるというようなときに、多く校長は時間外の勤務を命ずることがございます。  それから自主的な職員の勤務外の活動は、研究活動、教材の研究が中心になります。教材の研究、あるいは作文とかそのほかの成績物の処理、あるいは個性観察簿の記入であるとか、それから問題児の指導であるとか、遅進児の指導であるとか、それから家庭の訪問であるというようなことは、進んで自主的に行なわれている大きな領域でございます。
  31. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 たとえば教師が担任児童の家庭訪問をされる場合、距離に遠近がございますけれども、学校から遠く離れたお宅を訪問する際、その往復に使われる時間というのは、先生勤務時間であるとお考えになりますか。あるいはその目的のお宅に着いて訪問の仕事をする時間だけが勤務の時間とお考えでありますか、どちらでございましょう。
  32. 遠藤五郎

    遠藤参考人 往復の時間も含め、なおさらにその子供についての教育上の問題を談合をする以前の、いろいろのやりとりもすべてを含めて私は勤務だと考えております。
  33. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 昨年の十一月、全国中学校長会と連合して、教員勤務改善なり、あるいは給与条件改善なりを関係筋に要請をされたという御意見がございました。当時は、昨年の十一月でございますので、四十三年度の予算編成期に当たっておったわけでありますけれども、少なくも時間外勤務に対する待遇あるいは手当等についてどのようにお考えになり、また、その合同して要請された当時の内容はどのようになっておるだろうか、伺いたい。
  34. 遠藤五郎

    遠藤参考人 このような文面によりまして陳情をいたしましたので申し上げますと、「教職員待遇改善の一方途として、超過勤務手当支給が考慮されているやに聞きおよびますが、このことは、教育の本旨に照らし必ずしも最良の方策とは思われません。私たちは究極的には、教職専門性に鑑み、地方教育公務員については労働基準法第三十七条「時間外の割増賃金」の規定適用除外するとともに教職員特殊性にふさわしい特別の給与体系がすみやかに確立されることを期待しております。」こういう文章でございまして、 この時間による超過勤務は、このときからすでに望ましくないという態度でございました。
  35. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 文章を詳細に伺って、私がく然としたのであります。全国学校連合会なり中学校連合会の役員の先生方、構成はおそらく各都道府県代表で組織されておると思いますけれども、その各都道府県の小中学校長連合会は、やはり郡、市の校長会によって組織されているというような形だと思います。現場先生方がこの超過勤務に対する処遇をどういうようにしてもらいたいかということを、一体どれだけ全国連合小学校長会は検討をされたのか、現場先生方の意見を徴してやった結果なのか、あるいは学校管理者としての校長の一存でやった結果なのか、きわめて疑問である。私は、あらかたの先生方は、いま先生がお読みになったような文章での待遇改善は望んでいないというように思っておるわけでありますけれども、十分各学校なり各郡、市なり各県なりで、現場教師なりあるいはその代表なりと協議をした結果、現場教師意見もこうだということでそのような文章にされたのか、それとも学校管理者責任者として、校長の一存として、各学校校長がそう言っているからこうだということでやられたのか、手続上きわめて疑問に思うわけでありますけれども、その辺はどのような手続をお踏みになったのか、伺いたい。
  36. 遠藤五郎

    遠藤参考人 両面あると思います、それは。   〔加藤(清)委員「聞いたことありません」と呼ぶ〕
  37. 高見三郎

    高見委員長 不規則発言はやめてください。
  38. 遠藤五郎

    遠藤参考人 組織的に現場先生方の意見を徴したという事実はないかもしれません。しかし、校長会を構成している個々の校長が、あるいはその職員の個々についてその意見を徴しておる。現に昨日、私は自分の学校の職員に、この問題の意見を聞いてみました。これは私におもねって言っているのではないと私は思っておるのですが、時間による超勤規定はどうもぴったりせぬ、もしそういうようなことになると、超勤手当ほしさに居残っているということを勘ぐられるなんというのはしゃくだという気持ちも訴えておるわけであります。ここまで教材研究をすればこういう満足すべき成果があがる、しかし、もっと残っておれば何かそういう勘ぐりもあるかもしらぬということで、それを中断したような場合には、私は、教育の効果というものは全くあがってこないんではないかというように考えております。  そういうことで、個々の教師を組織的に調査はいたしておりませんけれども、そういうような構成員の、所属職員に対する質問、接触、そういうふうなものが集約されているということはいえると思います。
  39. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 教頭と校長先生には管理職手当支給をされておりますけれども、この教頭、校長に対する管理職手当はどういう法律根拠支給をされているか御存じでありますか。どの法律規定をされているか御存じでありますか。
  40. 遠藤五郎

    遠藤参考人 法律上のことはよく存じません。
  41. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 校長や教頭に対する管理職手当とは別な法律、すなわち、教育公務員特例法の一部改正で、今度教職特別手当が成立すれば支給をされることになるわけでありますけれども、この教職特別手当というものと校長の管理職手当というようなものは全然別個な性格のものであるということはおわかりだと思うわけであります。  一体先生は、管理職手当をおもらいになったときに、他の一般教員がそういうものはもらっていない。しかし、超過勤務手当も当時双方もらっていなかったという歴史的な事実があるわけでありますけれども、初め校長さんに管理職手当がついて、次いで教頭先生についたという事態において、どういうお気持ちで管理職手当をおもらいになりましたか。
  42. 遠藤五郎

    遠藤参考人 そのことにつきましては、校長会の機関でもたびたび論議がありまして、ぜひ一般先生方に対する超勤についての給与の処遇というものを校長会としても考えなければいけないということがたびたび出ておりました。そのうちこの論議が、時間刻みのものよりは、やはり給与の抜本的改善ということと結びつけてやるほうが教育の本質に合うというようなことに変わってきておりまして、一般先生方の時間外の勤務につきまして、校長がこれで手をこまねいておってよいという気持ちは毛頭持っておりませんでした。
  43. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 遠藤先生への質問は、以上で終わります。  佐伯先生に伺いたいと思うわけでありますが、きわめて理路整然たる意見の開陳で、拝聴いたしました。ただ先生の御意見の中で、今回の教特法の一部改正による特別手当支給措置現場に不安を与えている。さらに、当初考えていた方向とは大きな違いが出てきて全く納得できない。こういう御意見があったように思うわけであります。先生は、現在の学校の、あるいは先生方の問題点は、学校の運営の近代化と、教員勤務改善にあるのであって、これらが総合的に改善されなければ、教員待遇改善ということは言えない。私はもっともだと思うわけでありますけれども、当初考えていたこととたいへん違ってきた、したがって反対だ、こういう御意見があったわけでありますが、当初はどのようにお考えになっており、そうしてどこがどう違ったので反対だと言うのか。もう一度そこを具体的に開陳していただきたい。
  44. 佐伯実

    佐伯参考人 私たちが当初考えていた基本的な考え方は、先ほど若干触れたと思いますが、文部省が昨年の六月段階において、今年度の予算要求を行なう内容から超勤手当支給せざるを得ない。もちろん暫定的ということばはあったと思いますが、そういうことに一応踏み切った。このことは、われわれとしては非常にその行政のあり方というものを支持する立場に立ったわけであります。と申しますのは、勤務条件近代化と申しましても、文部省が行政指導として大きく掲げておりました勤務時間の厳正、さらには明確化ということとあわせて、この時間外勤務の問題が解決をしなければ、文部省のいう勤務条件近代化につながらない、そのことに踏み切った点について大きな前進であるというふうに判断をしたわけでございます。  ところが、そそから実質的な予算の折衝段階に入りまして、やや雲行きがおかしくなってきた。詳細は、私その間のいきさつも存じませんが、新聞紙上等にあらわれた内容からいきますと、どうもうまくない。しかも現場においては、管理者の態度もまた変わってきた。これはたいへんだということで、私たちとしてはいろいろとその経緯なりあるいはよってくる問題点なりを検討している段階におきまして、この法案内容というものが明らかにされたわけでございます。ところが、その内容たるや、先ほど申し上げましたように、われわれが当初考えていた内容とは全く変質いたしまして、近代的な勤務体制というものを確立するということを考えていながらも、内容そのものは後退的なものになる。のみならず、現場において今後の勤務がどのような形において実践をされるかという点についても、不満が非常に大きく浮かび上がってきた。一方において、校長、教頭を中心とするところの管理体制というものは、いままではわれわれの主張に傾いていたのでございますが、これはまた変質をしてきた。それを追及すればするほど納得がいかないし、不安が出てきたという事実が多々あるわけでございます。  そういう面から申しまして、現場の声として、この法案の通過というものは非常に多くの問題をはらんでいるというふうに思うわけでございます。
  45. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 よく理解できました。  続いて土岐参考人に伺いたいと思うわけであります。本委員会審議を通じたびたび出ていることばでありますけれども、わが灘尾文部大臣は、学校教師は町工場の労働者とは違うんだというようなことを言ったとか言わないとか、あるいは書いたとか書かないとかいうことで問題になったわけでありますけれども、教師労働者性教師はやはり教育労働者であるというような点について、国際的には一体どういうことになっているのか。フランスはどうなのか、アメリカではどうなのか、あるいはイギリスではどうなのかというような点も含め、さらに、私は労働者であるという確信を持っておるわけでありますけれども、この労働者であるがために労働基準法適用も受けておるわけでありますけれども、そうした国際的な問題、あるいは憲法、労働基準法等々から、教師労働者性についてどのようにお考えになっているのか、伺いたい。
  46. 土岐千之

    土岐参考人 まず私は、法律上どう規定されているかという点について触れたいと思いますが、労働基準法第九条、「この法律労働者とは、職業の種類を問わず、前条の事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」これが労働基準法第九条の規定であります。その前条の第八条を見ますと、第十二号に「教育研究又は調査の事業」というのがありまして、労働省労働基準法解釈通達を見ますと、教員はこの十二号該当職種であるということが明らかになっているのであります。したがいまして、新聞で教師は聖職云々ということが報道されたことがございましたけれども、少なくとも法律上私たち教師労働者であるということが明確になっている、このように考えるのであります。  さらにまた、私は灘尾文部大臣がどういうことをおっしゃられたかよくわかりませんが、かりに、教員仕事は大事だ、重要だ、だから聖職なんだという意見があるとすれば、町工場に働く労働者も聖職であると言わなければならないと思います。職業の種類が違っても、どの職業が重要でどの職業が重要ではないんだという区別は、私はないと思うのです。ですから、そういう点で教師が聖職だといえば、町工場で働く人も聖職であり、国鉄労働者も聖職なんだ、こういうことになるのではないか、このように考えるのであります。  私は、法律教師は明確に労働者と規定されているということをここでまず明らかにしておきたいと思います。  それから、国際的な問題が出されましたけれども、これは私は世界各国を視察したわけでありませんので、詳しいことについてはよくわかりませんが、少なくとも私が調べた文献の中で明らかにされておりますのは、たとえばフランスの教員はもちろん労働者であるということでストライキ権が保障されているのであります。イタリアの教師しかりであります。イギリスの教師しかりであります。  私は、先般日教組の本部で、アメリカのコーネル大学教授のクックさんと、約一時間半にわたって話し合いをいたしました。クック教授は私に、日本教師労働条件についてしつこく聞かれました。ただ驚きの目をもって私の話を聞いておった模様であります。そこで最後に私は、アメリカの教師労働条件はどうなっていますかということを聞きましたところが、現在世界の大勢は週四十二時間です、ニューヨークの教師勤務時間は三十六時間五十分です、こういうことをクックさんが申され。さらにまた、法律教員のストライキ権というものは禁止されているけれども、事実上、教師賃金労働条件について団体交渉し、問題が解決しない場合はストライキをやっても、いままで処分されたことが一回もない、当然のことだということで政府も容認している、こういうことを私直接聞いたわけです。  先ほど触れましたILO、ユネスコ勧告の各条項を見ましても、教師賃金労働条件は団体交渉を通じてきめなければならない。あるいはまた、国の教育政策について教員団体は直接参加をする権利を有する、問題が解決しない場合は八十四項で教員たりともストライキ権を認めるべきである、こういうことが規定されたのであります。しかも私の聞いたところでは、ユネスコ総会においてこれに不満の意を表したのは、南ベトナム、ジャマイカ、エチオピア、もう一つ日本、この四カ国でありまして、他は満場一致このユネスコ勧告を支持したということを私は聞いております。  ですから、いかに日本状況というものが——冒頭陳述で申し上げましたように、口を開けば、日本の国は先進国の仲間入りをしたということを佐藤総理はおっしゃいますけれども、少なくとも労働政策、教育政策については非常な立ちおくれを示しているのではないか。一刻も早く、労働条件あるいは賃金の問題についても真剣に皆さん方の中で議論していただいて、先進国の仲間入りができるように、この機会をかりまして特にお願い申し上げておきたいと思います。  以上です。
  47. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 最後に平塚先生に、るる意見の開陳を承りまして、特に三歳児担当ということで御多忙のところをお出かけいただいて、いまも先生の脳裏には残してきた児童のことが頭にあると思いますけれども、先生意見開陳全体を通じて、教育公務員特例法改正に賛成なのか反対なのか、ちょっとばく然としてわからなかったわけでありますけれども、このような形で超過勤務手当にかわるものとして教職特別手当を与えるということになった場合に、賛成でございましょうか、反対でございましょうか。
  48. 平塚信子

    平塚参考人 皆さんといろいろ意見を話し合ってみたのですけれども、要は、現在の職員の給与が少ないから何とか少しでもレベルアップしよう、その気持ちはわかるのですけれども、この法令によってのことでは満足できない、こういうことじゃ困る、もっともっと教員給与はよくすべきである。そういうことになって、このことに対していまこちらの先生方がおっしゃられたような労働者というような大きな立場からじゃなくて、ともかく私たちとしては、これっぽっちではだめだということになったわけなんです。もっともっと考えていただいて、そうして私たちが安心して教育に携われるようにしていただきたい、そういう意味なんです。
  49. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 先生が先ほど意見を言ってくださいました中に、要するに教師というのは子供と一緒にいる、子供あっての教師であって、子供に関係のないいわゆる雑務というものが多過ぎて、子供と接触する時間が削られる、これが一番つらいのだ、主としてこういう実例をあげてのお話がございました。その打開のために、そうした本来の教師仕事に専念できるために、いま文教政策として、もちろん待遇改善もあるでありましょうけれども、何を一本要求されているのか。現場教師現実立場から一体要求するものは何なのかという点についてもう一度伺いたい。
  50. 平塚信子

    平塚参考人 先ほどワークブックのことで申し上げましたけれども、こういう意見が出たんです。というのは、もちろん問題を考えるのは担任の教師ですけれども、ガリを切ったりプリントして、それをある程度保存しておいて次の学年が上がってきたときにまたそれが活用できるというような場合には、教員でなくてもできる。ですから、昔でいったら給仕さんということばを使ったらいけないのかもしれませんけれども、中学なり高校なりを夜学でやって昼間は学校で働きたい、そういうようなお子さんですね、若い人たち、そういう人たちを使ってそういうほうをやってもらう、そういうことはどうだろうかというような、具体案ですけれども、そういう意見もわれわれの仲間から出てきたわけなんです。そうしたら少しは私たちの仕事の分量が減るんじゃないか、そういう一つの例ですが……。ですから要は、いまは私たちの仕事がオーバーである、一人に与えられる仕事がたいへん多いということです。
  51. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 了解。
  52. 高見三郎

    高見委員長 有島重武君。
  53. 有島重武

    ○有島委員 お忙しいところをたいへん御苦労さまでございます。私も四人の先生方に質問さしていただきます。  ただいま衆議院で問題になっております点は、おもに法律の上での問題、形式的な問題が多いわけでございますが、教員の質を向上して教育そのものを充実していくんだという、そういったことが一番の目的であると思うのでございます。それでそういった立場から、いま質の向上について一番応急に考えなければならないのは何であるか、それらを校長先生立場からどういうふうに考えていらっしゃるか、そのことを伺いたい。
  54. 遠藤五郎

    遠藤参考人 先年、東京におきまして、一般先生方に、いま何を一番要望するかという調査をしたことがございます。そのときに出てきた問題は、研修時間の不足であります。意欲があるのだけれども、その研修時間が持てないということになりまして、その研修時間を与えるといいますか、十分使ってもらうために校長としてもいろいろな努力を払っておるわけであります。先ほどの平塚先生のお話は、私も非常に共感を持って伺っておったわけでありまして、それでそのために私ども校長会はもう年々努力を重ねてきておるわけでございますけれども、一つには、現行教育課程の改定がいま行なわれているわけですが、時間数がやはりオーバーだ、もう少し授業時間数を軽減をして教師負担を軽くしてほしいという要望を強くしておりますし、教員定数をふやして、特に小学校の場合は専科教員というものを充実をしていって、教育の質も上げるし教師負担も軽くしていってほしいというようなこと、それから一学級の定員はやはり全国小学校長会としては四十人ぐらいが適当だと思う、そのことも教育能率を上げるし教師負担も軽くできる、こういうわけでございます。   〔委員長退席、久保田(藤)委員長代理着席〕  なお、学校に持ち込まれるところの雑務やら社会的な行事、教育にあまり密接な関連のないそういう持ち込み行事というようなものをやはり校長としては勇気を持って排除して、そうして先生方のオーバーを守っていかなければならぬ。しかもそれは直接教育の効果にもつながる問題である。  それから現在行なわれている少学校の給食というもの、この指導教師にかかってくる負担というのは非常に大きいわけでありまして、やはりそれは特定な施設、設備も整え、それに対する要員も確保してもらう。そうして先生方の負担を軽くしてほしいというような点をやってきておるわけでありまして、要は、やはり教師に時間を与えるということが質を高めていく研修の機会を持たせる最大の問題だ、現状はそういうように思います。
  55. 有島重武

    ○有島委員 そういたしますと、限られた予算の中で今度こういった措置をとろうという場合、定員数をふやして、そして職務分担も行なうことができるようにして時間をつくってあげる、そういうために使うほうがさらに能率的ではないか、そういうように考えられますか。
  56. 遠藤五郎

    遠藤参考人 行く行くはその点を強く要望をしたいと思います。いま申し上げたような点が解決されるならばそれにこしたことはないので、現在の時点において行なわれている時間外の勤務に早急に対処するためには、いま当面の措置として今回の提案はそれが実施に移されるということを希望するわけでございます。
  57. 有島重武

    ○有島委員 この委員会でもってたびたび問題になりましたけれども、当面の措置、これについては非常にばく然としておりましたけれども、校長のお立場として、いまおっしゃったそういった御意見をもとにして考えられた場合、その当面が十年も二十年も続いてはまずいと思うのでございますよ。大体それがどの範囲にやらなければこれはえらいことになってしまうという見当がつくのじゃないかと思うのですけれども、大体どのように考えていらっしゃいますか。
  58. 遠藤五郎

    遠藤参考人 教員の定数をきめます標準法の改正が本年と伺っておるわけですが、何とかして本年、標準法が私どもの希望するような方向において解決されることと、それから、さっきから申し上げておるところの教員に対する給与の根本的な改善ということができるそのめどを、事務当局、政府において早めていただいて、あの「当分の間、」をできるだけ縮めていただきたい。そこのところが勘案できるかなめではないかというふうに思います。
  59. 有島重武

    ○有島委員 ただいまのお答えで、できるだけというお話がございましたね。大体何年以内にやらないとまずいのではないかというような、はっきりした年限ということをお示しいただきたい。
  60. 遠藤五郎

    遠藤参考人 残念ながら、その具体的な数は申し上げる資料を持っておりません。
  61. 有島重武

    ○有島委員 佐伯先生に伺います。  先ほど斉藤委員のほうからも伺いましたけれども、当初どう考えていたのかというお話がございまして、文部省の原案1とまでいくかどうか知りませんが、考え方がございまして、その文部省考え方については支持をしていたとおっしゃいましたけれども、それがそのとおり御満足であったのかどうか、その点はちょっと私も疑問に思っておるわけなんでございますよ。それがさらに後退したという点について、さらに強い反対をしていらっしゃるということだと思うのでございますけれども、どういうふうに考えていらっしゃったのか、それをもう少し詳しく伺いたいと思います。
  62. 佐伯実

    佐伯参考人 四十一年の文部省が行ないました勤務量実態調査でございますが、これが根拠になって、先ほど申し上げましたような文部省の見解なり態度となったものと思います。その実態調査の結果の内容につきましては、私たちは決して満足をしておりません。先ほど他の参考人のほうから出ましたように、小学校一週二時間三十分、中学校四時間足らずの計数が出ておりますが、現場実態内容からいきますならば、なおかなりのこれを上回る超過実態が出ておるということを、われわれは具体的な資料でつかんでおるわけでございます。しかしながら、一応その資料をもとにして、暫定的ではあるが、時間外手当支給根拠として財源措置を講じなければならないという方向に、文部省の見解が一歩進んだという点について、われわれは今後の教職員勤務条件改善の足がかりができたということで支持をした、こういうことでございます。
  63. 有島重武

    ○有島委員 その際に、超過勤務適用をしたときに、多少の混乱が起こるのではないかということは論議されませんでしたでしょうか。   〔久保田(藤)委員長代理退席、委員長着席〕
  64. 佐伯実

    佐伯参考人 もちろん、これが実際職場の中で具体化をした場合においては、かなり複雑な問題がかもし出されるのではないかということは、現場の実感から受けとめておりました。しかしながら、法律上これを適用して進めていくということになるならば、その混乱を見越してでも実際にやってみるということが、具体的な困難性というものを立証する上において一番早道ではないか。もちろん、そのやること自体は、管理職であるところの校長なり教頭なりの態度、さらにまた経営上の手腕ということが大きく影響すると思いますが、そういうことが困難であるからできないような管理職なら、われわれはいま直ちに退いてもらいたい。困難、困難ということでいつまでも引き延ばしていたのでは前向きの姿勢ではないじゃないかという判断に立って、多少の困難はあっても踏み切るべきであるという主張をしていたわけでございます。
  65. 有島重武

    ○有島委員 私の申し上げたのは、混乱と申し上げたわけなんでございます。  それで、超過勤務手当を今度は実際に分配していくということになりますと、教師の中にも混乱を生ずるのではないかというようなことをお考えになったろうと思うのでございます。そういうことについて幾つか起こる混乱——こういうことも起こるだろう、そういったことを具体的に少し伺ってみたいと思います。
  66. 佐伯実

    佐伯参考人 混乱ということについての予測でございますが、先ほど御意見が出ていたと思いますが、たとえば児童生徒の家庭訪問をする、それからクラブ活動の限界、それから関係学校並びに関係行政当局への事務連絡というふうなものをどのように時間的に把握をするかということにつきましては、かなりこれは問題があるんじゃないか。しかし、われわれは、それによって混乱が起こるとは考えなかったわけでございます。たとえば、それぞれの学校には学校事務職員が配置されております。この学校事務職員は、標準法に基づくところのわれわれと同じような立場における状況で定数の中に含まれておる職員でございまして、ただ従事する職務が違うだけであります。この学校事務職員にはきちんとした超勤手当支給されておる。その支給されておる実態を見ますと、ある程度の幅と、それから校長の裁量というふうな判断に基づいて出されておる。したがって、これを見た場合において、多少の困難はあっても、混乱が起こることはないだろうというふうな判断に立っているわけでございます。
  67. 有島重武

    ○有島委員 それで一歩前進になるであろうということを期待していらした。ところが後退した、そういうことですね。  土岐先生のほうに伺いたいことは、大体お話は、全部非常に熱心な先生方を基準にしてお話があったわけでございますけれども、やはり先生の中にもいろいろあると思うのです。初めは非常に熱心であったのだけれども、いろいろな状況のもとにわりと退嬰的になっておられる方もあるわけでございますね。そういう方々に対しての問題というものも含めて考えていらっしゃるかどうか、そういう点を伺いたいと思います。
  68. 土岐千之

    土岐参考人 ただいまの御質問は、最初の参考人の方に質問されました教員の質の向上の問題と関係された御質問じゃないかと思いますので、そのように理解をいたしましてお答を申し上げたいと思います。  現在、日本教師の絶対多数は日本教職員組合に結集をしておるわけであります。日教組といたしまして、毎年教員の意識調査を行なっておるわけです。昨年一万人調査をやりましたが、この調査の中で明らかになったことは、教師はいま何を一番望んでいるかということは、二つあるのです。  一つは、もう少し賃金を上げてもらいたい。その要求と、もう一つは非常に忙しい職場だ、したがって労働条件を早急に改善してもらいたい。これが圧倒的な要求として出てまいります。私は当然だと思います。文部省はかつて一時間の授業をするのに一時間の準備時間が必要であるということを通達として出されましたけれども、現在中学校教員平均授業時間は二十八時間であります。一時間の授業に一時間の準備時間ということになれば、これだけで五十六時間ということになるわけですね。四十四時間はもとより、四十八時間をはるかにオーバーする、こういう問題が出てくるわけです。ですから賃金を引き上げる。それから労働条件改善してほんとうに魅力のある職業にしていくことが日本教育の質を向上し、充実することにつながるきわめて基本的な問題ではないか、このように考えます。  これはもう諸外国の例はもとより、日本におきましても年々女教師の数がふえまして、先ほどお話がありましたが、すでに全国平均は小学校で女教師の数が半数を上回っているというふうに私は聞いております。さらにまた、東京近県は、東京を含めて毎年欠員が出て、なかなか教員が埋まらない、こういう問題。さらに、現在の各県の教育大学の状況を見ても、教員養成の教育学部においては、男より女のほうが多いところがずいぶん出てきている。これは全部調べたわけではありませんが、そういう話も私は聞いておるわけなんです。  ですから、これは遠い将来の問題ではなくて、当面緊急にこの二つの課題を解決しなければ、先ほど申し上げました教育基本法に示す教育の目的を達成することができないのではないか。このように考えまして、重ねてこの点を私から強調いたしたいと思います。
  69. 有島重武

    ○有島委員 その点はわかりました。  それで、校長とそれから教員の方々との間に、これは非常に円滑にいっているところと、それから対立的なところとございます。それでこの超過勤務をもし実施した場合に、これはますます校長に対しての疑惑を複雑化して深めるようなことが起こってくるのじゃないか。また、ほかの学校と比べましたときに、条件は違う、違うのにもらっておるものはこうである。そういったようなことも、教師の方の横のつながりにおいて、あるいは御夫婦でもって教員として別々な学校につとめていらっしゃる方もあると思うのです。そういった不公平感というものを助長するということは考えられないかどうか、そういった点はどうでしょう。
  70. 土岐千之

    土岐参考人 冒頭に申し上げましたように、私は昭和十九年から教職の経験を持っておるわけでありますが、今日までの全国の職場の実態考えた場合に、いろいろな変遷があったことは事実だと思います。ここにもいらっしゃいますけれども、校長教育委員会の職員ではありませんので、同じ学校教師集団の仲間であるというふうに私たちはとらえておるわけですね。同じ教育仕事に携まっておる教員としての先輩である。ですから、後輩がいろいろ足らないところがあれば、校長としていろいろ助言をしてくれる。こういう仲間だという考え方で、私たちは戦後約十二年間くらいはそういう状態できたわけです。苦しみを乗り越えてお互いに助け合ってまいりました。ところが、昭和三十三年ごろからと記憶しておりますが、校長は管理職である。管理職手当支給する。これは校長学校の中にあって教育委員会の下部機関といったかどうかはわかりませんが、そういう立場に逐次追い込められたわけですね。  私たちの考えは先ほど申し上げたとおりでありまして、現在でも私はときどき各県の学校を視察することがありますが、実に円滑に、共通の悩みを出し合って、どうしたらいいかということで夜おそくまで議論をしておられる校長さんもいらっしゃいます。ところが、校長先生は仲間としての校長先生であるのか、教育委員会の派遣職員であるのかわからないような学校が中にはあるわけですね、ここはやはり校長もわれわれの仲間なんだということで、対立をしているかどうかまで私にはよくわかりませんが、相当校長との間で激論を戦わし、ときには対立をしている状態も出てくることは否定しません。  ですから、一つは、これは校長の姿勢の問題であり、もう一つは、あまり学校内部の問題に文部省教育委員会かどちらかはよくわかりませんが、直接干渉なさらないような方策を講ずることが、校長教員が職場において一体的にその学校教育効果を高めるための努力を今後さらに続けることになるのではないか、このように考えます。  それからもう一つの御質問は、超勤手当を出すことによって問題が起きないかということでありますが、これは皆さん方も御承知と思いますが、文部省は昨年の七月段階までは超勤手当支給する。そのために市町村立学校職員給与負担法の第一条を改正する。それからもう一つは、各県の教育委員会に対して三六協定の締結を指導するということを明らかにしておりました。ですから、超勤手当支給するとすれば、三六協定締結の問題が、これは具体的な問題として出てくるわけですね。ですから、基本的には超勤のない職場体制をつくるのですけれども、現状のところ、定員が足りない、その他の関係で、どうしてもやむを得ない超勤が出てくる。どういう場合超勤とみなして手当支給するかということば、この労使協定、三六協定の中で超勤項目を特定して、何でもかんでも超勤だということでなくて、こういう場合、こういう場合は超勤だ、そしてその超勤については何時間まで認める、手当はどうするということを教育委員会と私たちが話し合いをした中で内容規制をしていくわけですね。ですから、学校間のアンバランスあるいは市町村間のアンバランスというものは、絶対にないことは私は断言いたしませんけれども、その協定を結ぶ中において、こちらがたいへんなことになるんだというような問題点はまずまず起こらないであろうということを私たちは考えておる次第であります。
  71. 有島重武

    ○有島委員 もう少し伺いたいのですが、大体超過勤務にすれば予算はきまってしまうわけでございますね。そういたしますと、非常に要領よくまとめていく校長さんの学校は、これはなくなるわけですね。なるべくたくさんもらいたいということになれば、やはりそれ一ぱいのことをする。そういったような何か能率のいいところが下がって、悪いところは上がる。そういったようなことが起こるのではないかということが予想されませんでしょうか。
  72. 土岐千之

    土岐参考人 おことばを返すようでまことに失礼でございますけれども、私たちは超勤手当をたくさんよこせという要求は一回もしたことはないのです。先ほど申し上げましたように、労働基準法できめられておる最低基準に基づいて、現在条例では四十四時間ときめられておるわけでありますが、現在世界の大勢は一週四十時間でありますから、教員の職務を明らかにして、できるだけ時間短縮をする方向にぜひ持っていきたいということで、現在まで運動しております。しかしながら、そうはいってもなかなか解決をしないので、やむを得ず超勤をしなければならない場合は、これはやはり労働基準法に基づくところの超勤制度というものはどうしても確立しなければならない、そのことがひいては超勤をなくすることにも通ずることになるんだ、こういう考え方で私たちはこの超勤制度の確立の問題を一貫して文部省に対して要求してきたところであります。  ですから、なくなる学校とたくさんもらいたい学校といういま御指摘がございましたけれども、なくなる学校を私たち望んでいるわけですね。ですから、そういう手当の問題については、手当をどうこうということよりも、むしろ基本給を教員にふさわしく大幅に上げてもらいたい、この要求が基本要求です。しかし、先ほど申し上げましたように、どうしてもやむを得ず超勤の事実が発生しておるのですから、これに対しては超勤手当支給すべきだ。こういう関連でありますから、その説明が十分でないかと思いますけれども、私たちの意のあるところを御理解を願いたい、こう思います。
  73. 有島重武

    ○有島委員 そういたしますと、なくなる方向を望んでおる、そういうことになりますね。それに対して今度は校長側は、疑惑を持つ場合もございますね。先ほど校長さんのほうでは、三十六条の解除ですか、そういったことによりまして無制限なことがあり得るなんといっても、そういうことはないようにする、こういうことでございますよ。いまのことは、少ない方向にするというのはいいんですけれども、現実にみんな家庭を持っておるわけでありますから、家庭のほうではちょっとでも多くもらいたいわけですね。そういたしますと、両方に引力と申しますか、がある。それがお互いに信頼し合える状態であればいいけれども、信頼し合えない状態のもとでは、両方ともやはり危惧の念が存する。それに対してはお互いに何か歯どめを打っておかなければならないことになるのではないか、そういうように思うわけでございます。
  74. 土岐千之

    土岐参考人 どういう事実からいまの問題が出てくるか、よく私、理解できないんですが、これは私たちとしても初めての問題でありますから、超勤手当支給される場合、三六協定の締結の問題とか、あるいはまた超勤項目の問題とか、これは組織的に十分話し合いをしておるわけです。それはその学校だけの問題ではなくて、私たちの組織は各市町村にまでありますから、市町村段階で、さらにまた県段階でいろいろ問題点を持ち寄り、全国段階検討する、こういう中で、そういういま御指摘されたような問題点については極力防ぐことができるんではないか、私たちは、何といっても先生方はばらばらになっておったんではまずい、お互いにお互いを信頼し、みんなが力を合わせてひとつがんばろうではないかということで努力をしておりますので、そういう疑問については組織的に今後とも配慮をしていきたい、このように考えます。
  75. 有島重武

    ○有島委員 では、時間がなくなりますので、最後に平塚先生のほうに伺います。  平塚先生のおっしゃった、ほんとうに子供に接していい先生になっていきたい、それだけを願っておる、そういうお話でございましたけれども、それと給与の結びつきなんでございますが、現場先生としては自分たちの仕事をどのように評価してもらいたいのか。人知れぬいろいろな御苦労があると思いますけれども、それを正当に評価してもらうにはこういうふうにしたらいいのじゃないかというようなことがおありになったらば、話していただきたいと思います。
  76. 平塚信子

    平塚参考人 やはり教師としては、たとえば子供の成績があがった、それから卒業してもその先生を慕って来る、そういういわゆる人間関係といいますか、そういうものが密接にでき上がっていくこと、そのことにいま私たちはみんな喜びを感じていて、そしてそれをただ、たとえば学歴とか、経験年数とか、資格とか、そういうものだけで判断されるということは、ちょっと不合理な点があるのだと思うのです。ですから、できましたら現行の中に、試験制度といっては語弊があるのですけれども、ある程度先生教職に対するいろいろな実力を評価できるようなものができて、そしてその上に立って、一年とかあるいは何年に一ぺんとか、そういうふうにして先生の実力をためしていただくということはちょっとおかしいようですけれども、そういうものがあって安心して自分自身も勉強に励める、そして子供にもいいものを与えられる、そういうものがあればたいへんしあわせだと思います。現行のように、ただ年数さえいればといったらちょっと語弊がありますけれども、年数さえいれば毎年上がっていっちゃうというようなことになりますと、たいへん困ったこともあると思うわけなんです。できるだけそういう客観性を帯びたシステムがあって、そして先生の実力向上ということができればということも考えているわけです。お答えになったかどうかわかりませんけれども……。
  77. 有島重武

    ○有島委員 そうすると、簡単に言ってしまいますと、実力テストのようなものを教員にも課するということについて、これは反対もあると思うのでございますけれども、平塚先生や何かのお立場だと、それをやってもらうのも大いにけっこうだ、そういうような御意見でしょうか。
  78. 平塚信子

    平塚参考人 そういうことがあって、たとえばそれがまた今度は、自分の成績を上げるために子供をおっぽり出して勉強したなんということがあっては、これは大いにおとなとして恥ずかしいことですし、実質からいって、やはり先生の研さんしているということが認められるような、そういう一つの客観性を持ったものがほしい。いまわりあい校長先生の主観といいますか、何かそういうものて——勤評問題もそういうところにあったのだと思いますが、そういうことで評価されやすいということがあるわけです。そういうことでは私たちとしてもたいへん不満足なので、やはりそこに大きな客観性というものがあって、そして確かにあの先生はりっぱである、そういうものが評価されるような一つのシステムがほしいということを私としては思いますし、わりあい仲間の中でも、そうやってお互いに、とにかく目に見えないけれども努力はしていかなくちゃいけないといって研さんをしている先生たちが多いわけです。そういうことに対してもっと認めていただきたいということを申し上げたわけです。
  79. 有島重武

    ○有島委員 大体わかりました。  平塚先生日教組には入っていらっしゃらないというようなお話でございますけれども、かつては入っていらっしゃったのでしょうか、そういった経緯をお話しいただきたいと思います。
  80. 平塚信子

    平塚参考人 私ももちろん最初の段階としては入っておりました。そしていま思えば、高田なほ子先生や何かと一緒に、ろう教育の婦人部もつくらなくちゃいけないということで努力してつくった覚えがございます。ところが、先ほどの昭和三十三年度あたりからですか、たいへん考え方が一方的になってきて、私が念願しているような組織団体でなくなったということを痛切に感じましたので、一番早く脱退しちゃったほうなんです。わがままな立場ですけれども、保障ということはともかく、あくまでも自分が教職というものに若いときに希望して入った以上は、時が来れば必ず自分の立場も認められるときがくるだろう。政治的に、授業を放棄してまでも組合活動ということがあまり激しかったので、それだけでは困るという個人の意見から私は脱退したわけです。いまはもうほんとうに一つの大きな目的に向かって教育というものが行なわれてきていることも、自分の思想上全部納得できておりますので、現在では何の組織にも入らずにやっております。それで、現在うちの学校としては、五十七名中九名の方が日教組の分会に入っていらして、ほとんどが抜けて、そして一つの目的に向かってろう教育というものを推進していこう、そういう大きな組織をつくって研究会を持っているわけです。そういうような実態になっております。
  81. 有島重武

    ○有島委員 どうもありがとうございました。では時間が参りましたから……。
  82. 高見三郎

  83. 受田新吉

    ○受田委員 四先生参考意見を拝聴いたしまして、お四人ともそれぞれのお立場ですぐれた御意見を開陳していただき、たいへんありがたく感謝いたします。私、ごく簡単に四人の方に、同時にあるいは個々にお答えを願う質問をさしていただきます。  今度の特別手当制度というものをめぐって世論はいろいろと渦巻いておるのでございますけれども、もともと超勤制度というものは、戦後は管理職の立場の人もみんな同じ立場で処理されていた。それが職務の内容責任の度を重視する職階給が誕生するようになりまして、通し号俸が各種の俸給表の中に等級で示されるようになってきた。そこで、管理監督の地位にある特別の指定された皆さんは、管理職手当というものに超勤手当が変形をしたのです。だから超勤手当というものが、管理職の人も昔同じ率でもらっておったものが、管理職手当になって、中央は二五、次が一八、一二というパーセンテージで高額の管理職手当支給され、それをもらう者は超過勤務手当をもらわない。最初は、先生の場合も管理職手当というものはもらわれなかった。それが文部省の強い要求で、まず校長が管理職手当の対象になり、引き続き教頭が対象になり、いま支給されておる。その他の先生はその制度がない。実際あっても、労基法で認められておっても、それが支給されていない。これが現状なんです。  ところが、この俸給の四%の特別手当というもので超勤を代理することになっておるのでございますが、これは校長先生でいらっしゃる遠藤先生にまずお尋ねしたいのでございますが、この超勤手当というものは各学校——先生は大きな学校におられる、しかし小さな学校におられる先生との間でどうなってくるか、ちょっと伺いたいのです。たとえば十八学級以上の学校には事務職員というものが置かれておる。小さな学校にはそれがない。学校の事務処理をするのに、大きな学校先生は、学校の報告書等を出すのに、事務職員が担当して、それによって処理をしていただくから助かるが、小さな学校では普通の先生が、一般教科の担当の先生が、学級担当の先生が、そういう校務の処理をされなければならぬということになりますと、いま佐伯先生が指摘されたような勤務時間というものが勤務条件の主体であるというお話、非常に傾聴したのでございますけれども、余分の仕事、小さな学校では大きな学校より、そういう事務処理上の仕事がありはしないか、それを先生はどうお考えになるかをお答え願いたいのです。
  84. 遠藤五郎

    遠藤参考人 お話しのとおりで、小規模学校は事務職員が置かれないために教師にその負担がかかりまして、そのために小規模学校の運営というものが困難をしておるということは、都内においても現実にございまして、私どもとしては、これは規模の大小にかかわらず事務職員というものを配属すべきだということの要望を続けてきておりまして、困難性を同僚としても考えておるわけであります。
  85. 受田新吉

    ○受田委員 そこで、勤務量というものが相違を来たしておるわけです。したがって、小さな学校では先生自身が超過勤務をして事実上その処理をしておるという現状が私はあると思うのです。事務職員を置かない、あるいは養護教育もいない、あるいは警備員もいないというようなところの一般先生の負担は、勤務量において大きな学校よりも増大をしているという答えが出るかどうか、お答えを願いたい。
  86. 遠藤五郎

    遠藤参考人 小さい学校のほうが増大しているということがいえます。
  87. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、ここに特別手当制度一つの基本的な問題が起こってくると思うのです。勤務量に応じた手当、それがもし超過勤務の形態を示すならば、超過勤務として小さな学校には何らかの形で処遇をするという別途の方法がいいのではないか、先生そうお考えになりませんか。
  88. 遠藤五郎

    遠藤参考人 私は、それを事務職員の企面配置という方向へいって、超過勤務の形でそれの差をつけて処理するということは望ましいことではないと思っております。
  89. 受田新吉

    ○受田委員 その制度ができていない現実において、特別手当が出るということが是か非かというお答えを願いたいのです。
  90. 遠藤五郎

    遠藤参考人 その場合におきましても、学校のただ大小という問題だけをいまお話しになりましたけれども、規模の大小以外にも、新設校の場合におきましては、また別な負担がかかってくるとか、いろいろな条件がございまして、単に規模の大小をもってそこを論ずるというのは、角度としてはもう少し多面的な考察が必要になってくると思います。
  91. 受田新吉

    ○受田委員 多面的というおことばでございますが、そのとおり。私一つの例を引いたわけでございますが、現実にそうした勤務量の相違を解決する道を講じない形でこの処理がされるということが問題ではないかと私は提案しているわけなんです。特に教員の場合は、校長はすでに一二%の管理職手当をもらっておる、教頭は八%、一般の人は四%これ非常に大きな差で、公務員の場合は、一般の方は六%という一つ超過勤務手当の量が一応平均して確立されてある、教員はそれが四%しか今度もらわれないわけです、それに当たる部分が。これは校長、教頭は管理職として一応の数字に達したけれども、教員はせめて六%の超過勤務手当が配分されなければならない。こういう原則については、校長先生としてどうお考えになりますか。
  92. 遠藤五郎

    遠藤参考人 教員に対しても、六%でも、さらにそれを上回ったものでも措置されるということはたいへん望ましいことだと思いますけれども、一般公務員勤務教員勤務と比べてみた場合に、教員の場合は夏休みであるとかあるいは冬休み、あるいは春の休みといったような長期の休みがありまして、このときには自宅研修が認められておる。かなり自由の勤務があり、その間において給与を完全に受けておるという現状も、この四%というきまりの中に同時に含まれて解釈をされておるのではないかというように考えておりますが、さらに上回ることはたいへん望ましいと思っております。
  93. 受田新吉

    ○受田委員 これはいろいろ問題が派生してくるけでございますが、教員の俸給表を見ると、昇給間差が非常に圧縮されている。初任給で二号程度一般公務員より高いけれども、それが十年ぐらいたつと一般公務員と同じ、十五年ぐらいたつと一号俸下がる。特別昇給制度というものは一般公務員は十人に一人の割合で予算をとっておるが、教員の場合には特別昇給制度というものがありますか。
  94. 遠藤五郎

    遠藤参考人 あります。
  95. 受田新吉

    ○受田委員 事実それが実施されておりますか、御答弁願います。
  96. 遠藤五郎

    遠藤参考人 実施されております。
  97. 受田新吉

    ○受田委員 先生の場合は一校でどのくらい特別昇給をやっておりますか。
  98. 遠藤五郎

    遠藤参考人 年間四名ぐらいです。
  99. 受田新吉

    ○受田委員 何人の学校でいらっしゃいますか。
  100. 遠藤五郎

    遠藤参考人 三十四名です。
  101. 受田新吉

    ○受田委員 それでは佐伯先生土岐先生にそれぞれ、特別昇給がどうなされているか、御調査の結果を御報告願いたい。
  102. 佐伯実

    佐伯参考人 制度としての位置づけは、条例上、人事委員会規則上はっきりと示されております。しかし、これが具体的に実施されているかどうかという点になりますと、われわれの調査によりますと、わずかの府県しか実施されていないのが現状であります。われわれの考え方といたしましては、特別昇給という形を今後給与上にどう生かしていくかということを前向きに考えていく必要があるのではないか。この財源というものは一応給与総額の一割以内というふうに示されておりますが、その根拠があるにもかかわらず放てきをされておるということにつきましては、どうもわれわれとしては納得いかないというところから、この特昇財源を教員の実質的な給与改善という方向で合理的な活用ができないものであろうかということをいま検討中でございます。
  103. 土岐千之

    土岐参考人 現在、各県の条例を見ますと、いま御指摘になりました特別昇給制度がきめられております。しかしながら、現実にこの特別昇給制度を具体的に実施しているという県は、いま話がございましたが、きわめてわずかな県にとどまっていると私も考えております。  そこで、私たちの基本的な態度は、本俸を大幅に引き上げる、このことが何といっても基本だと思うのです。特に最近の特別昇給の問題については、勤務評定の結果に基づく特別昇給という問題が出ております。特に最近群馬でその動きが出たことがありまして、最終的には僻地教員に対する一斉特昇という形でこの問題を処理したという経緯があります。勤務評定を実施して、この者は成績がいいから特別昇給だ、こういうやり方は私たちとしてあくまで反対をしてまいりたい、このように考えておるわけであります。
  104. 受田新吉

    ○受田委員 山口県においては、佐伯先生御存じのように僻地勤務教員に対して、三年以上勤務した場合に一号俸昇給するという条件がついている。そのほかの学校は高等学校、中、小学校ともに特別昇給をやっていない、これが現実です。したがって、いま遠藤先生のようなめぐまれた学校というのは、おそらく天下にりょうりょうたるものであろうと思うのです。  委員長、この機会に委員長を通じて文部省に資料要求をお願いしたい。  それは、全国で特別昇給制度を採用している県とその対象人員を、府県別に全部調査ができておるはずです。これを明日私が質問するまでにお出しを願いたい。  それから、各県の教職員給与の水準は、地方公務員法二十五条で、国家公務員に準じた給与条例をおつくりになっている。それに伴う給与実態は、国家公務員に比較してどういうかっこうにいまなっているか、府県別の給与水準というものを文部省要求をしまして、明日質問させていただくまでに、いまの二つの資料をお出しいただきたい。  それは非常に大事な問題でございまするので、いまから資料要求委員長においてお取り計らい願いたい。
  105. 高見三郎

    高見委員長 さよう取り計らいます。
  106. 受田新吉

    ○受田委員 それではもうちょっと。これは時間がございませんので、参考意見だけお聞きしますが、教員給与というものは、校長と、一般教諭と、助教諭の段階に当たる分の三本立てになっている。これによって、昇給間差というものは、ほんとうに機械的に、全く階段を正確に上がるような上がり方、二千円程度。ところが、一般公務員になってくると、たとえば主任課長補佐に当たるところの三等級——課長か二等級ですか、三等級というものは三千五百円のワクで中間号俸は上がっておる。一般課長補佐四等級は三千円、五等級の係長は二千五百円から八百円というワクで広がって上がっている。したがって、十年、二十年やったときの教員の俸給というものは、スタートから見るというと、一般公務員の特別昇給を含んだ段階からいうと、二十年やった場合に少なくとも二号俸くらい逆に下がっているわけです。これは専門的にあしたお尋ねしてみますが、あなた方のほうで見られて、私のいま指摘したことをうなずかれるかどうか、お答え願いたいのです。
  107. 佐伯実

    佐伯参考人 全く御指摘のとおりでございまして、現行教職員給与体系の最大の欠陥がここにあると私は考えるわけでございます。したがいまして、この欠陥をどのような形において是正をし、かつまた、改善を加えていくかということにつきましては、より現実的に、しかも早急に取りかかるべき問題であって、現在出ておりますところのこの教職特別手当以上の大きな問題ではないか、こう考えるわけでございます。
  108. 遠藤五郎

    遠藤参考人 私も、たいへんよい点を御指摘いただきまして、感謝をしております。校長会も全組織をあげてその点を指摘をし、是正方を要望しておるわけでございまして、お力添えを願いたいと思っております。  なお、先ほどの特昇の問題につきましては、私どもは、僻地等に均てんするというような考え方はとっておりません。それは僻地のほうはまた別個の処遇の方法があるべきであって、特昇は、都市部におろうと、農村部におろうと、どこにおろうと、その勤務の実績の顕著なる者に対してこれを与える。これが平塚さんのおっしゃっておったような給与面においてその努力を認めていくという方向であって、特昇の性格というものをやはり正しく運用しなければならぬ、こういうように考えております。
  109. 土岐千之

    土岐参考人 いま御指摘されました、校長、教諭、助教諭、この三等級の問題とあわせて、私たちが特に問題として出しておりますのは、いわゆる給与の三本立ての問題です。同じに大学を出ても、高等学校勤務した教員と小中学校勤務した教員との間に差が出ておるという、こういう問題もあるわけです。したがいまして、現行給与体系については、きわめて多くの問題点を含んでいるものと私たちはまず考えております。  そこで、今後どうしていくか、こういう問題でありますけれども、何といっても初任給が非常に低いという問題がまずあるわけです。カーブがこういうカーブになっているわけですね。ですから、初任給を大幅に上げて、そして全体を高めていく。このことがやはり当面私たちとしてきわめて大きな問題ではないのか、こういう面もあわせて考えておる次第でございます。
  110. 受田新吉

    ○受田委員 平塚先生は、あとから一つだけ合わせてお尋ねしますから……。  いまが私お尋ねしているのは、現行給与のいわゆる中、小学校の俸給表、高等学校の俸給表で間差が非常に圧縮されているという問題点が指摘されておりますが、土岐先生お説の給与三本立てというのは、いま高等専門学校が入っておりますから、いまは四本立てと称しておりますから、御理解を願いたい。給与の現在の四本立てが問題なんです。これも私たちは同一学歴、同一勤務というものを基準にして、むしろ小学校、中学校に優秀な先生を迎えるためには、これを一本にして、そして小学校先生——いまわれわれの脳裏に恩師としてひらめくのは、小学校時代の恩師が一番脳裏にひらめく。その先生を、いまのように優秀な先生がなかなか得られない。地方の教育学部は、成績のいい者は女子の学生が上からずらっと並んで、男子の学生はずっとしりのほうについておるというこの奇現象は、よい教師を迎えるのに適当であるかどうか、これについてお答え願いたい。校長先生だけひとつお答え願います。
  111. 遠藤五郎

    遠藤参考人 企くその点も私どが心配をしておるところでございまして、必ずしも私どもは女子教員の漸増していくことを否定的にだけは考えておりませんけれども、男子教員の優秀なる者が教育界に志さないという点について、ほんとうに初等教育を憂えておるわけでございます。なお、せっかく入った者が、冒頭申しましたように中、高のほうへ流れていくという現象もそこにあると思っておりまして……。
  112. 受田新吉

    ○受田委員 わかりました。時間がないから私、非常に大事なところだけいまお尋ねしておる。私の意見にみんな賛成しておられるわけです。  そうしますと、この特別手当制度をつくる前の仕事がある。それは教員の処遇を基準的に引き上げる政策のほうを先にやるべきであって、超過勤務部分を特別手当として、いかにも特別手当をしたように見えるような、こういうカムフラージュのいき方というものは本質的なものではない。これは、文部省もそういうことを一応言うておられるのだが、本質的なものでないものを先にやるよりも、本質的なものをやるほうが筋が通る。この点では先生も賛成しておられる、そういうことでひとつ御理解願いたい。  最後に平塚先生、特殊教育学校勤務には教育と世話という二つが要るはずです。世話をするほうの側の勤務量に対する手当というものが、教育の部門だけの分で片づけられておる。それから特殊教育のところは、盲学校でも肢体不自由児の学校でも、養護学校でも一応四十八時間という勤務時間が制約されておるが、六時間、一時間ずつの休憩を中へ入れて五十四時間までやっていいという規定があるのを御存じですか。
  113. 平塚信子

    平塚参考人 存じませんでした。
  114. 受田新吉

    ○受田委員 そういうように特殊教育のところは非常に負担が大きいのです。その点は世話という部分がはずれている。そういう部分も考えるところひとつ先生方お含み願って、教育を大事にし、教師を大事にするという意気込みを高めるためには、やはり基本的な問題の解決を先にやるべきだという点で、大体いま四人とも御共鳴いただきましたので、質問を終わります。  どうも御苦労さまでした。
  115. 高見三郎

  116. 山中吾郎

    山中(吾)委員 時間がありませんので簡潔に、私にとっては重要な問題でありますので、お聞きしたいと思うのですが、四方の参考人先生方のこの法案に対する評価は、校長先生をされておる遠藤先生は肯定、高く評価をされておる。ほかの最も現場に近い三人の方々の評価は低いのです、聞いておりますと。同じ教育界におる四方が、校長さんがこの法案を非常に高く評価をして、現場で肉体的に実感を持っている先生方が、この法案に対して非常に低く評価をし否定しておるということは、日本教育界にはまことに遺憾だ。どこに一体その原因があるかということを、皆さんのお話を聞いて私も私なりに考えてみたのですが、遠藤先生考え方の中に、最初の考えに分析が足らない間違いがあるんじゃないかと思うのでお聞きしたいと思うのです。  それは、たとえば平塚先生が非常に純粋な教育立場で、現在の労働過重からほんとうの教育研修ばできないのだということを訴えられておる。そのほか佐伯先生土岐先生もその点同じように言われておる。これを解決するのは定員増以外にないのだ、私の考えは。超勤とか手当を出しても出さなくても、現在の教員が少ないために事務その他をやらされることについては、事務職員を多くする、定員を多くする以外にないのだ、この法案では少しも解決できない、これが一つあると思うのです。  それから待遇改善ということば、これは号俸引き上げしかない。いわゆる裁判官その他と同じように、全体の生活安定のために専門職において高めるためには号俸を上げる。そうでなければ現行法で義務づけられておる研修手当を上げる、質を向上し専門職を上げるならば、これ以外に解決の方法はない。超勤というのは一体何だ。超過勤務手当というのはそういう待遇改善でなくて、いわゆる公平の原則に基づいて、多く仕事をしてもらっておる先生には、現在の近代的な労働基準法の思想に基づいてその人に報いなければならないというので、その人にそれだけのことをするという思想から、いわゆる公平の原則に基づいてこの制度が出ておること、それからむやみにそういう労働過重にしてはいけないというので、超勤を命じた限りについては、それだけの賃金を出さねばならぬ、割り増しせねばならぬ、これだけの制度なんです。したがって、この制度は職員会議あるいは職場においても、あの先生ばかり仕事をさせておる、あの人はそうでないのに、ということから職場が暗くなる。私はそういう意味において超勤という制度はいつまでも必要だと思うのです。教師の主体的な条件には関係ないのです。先生は教壇に立って、おれの月給何ぼだと言って教える人はだれもない。これは教師という性格からきているのでしょう。  そこで、校長先生のいまの法案の評価には、その点間違いを持っているんじゃないか。労働過重のためには定員増、それから専門職を上げるのは号俸の引き上げ、超勤というのは永久に不公平の感覚、不公平の重圧感をなくしていくという中で職場を明るくするところのものなんだ。それをいま待遇改善のイメージでこういう法案を持ってきている。法律的には、土岐参考人言われたように、支離滅裂なところがあるのです。これは国会議員として論議せねばならぬので、いま皆さんは教育立場に立っておる政策論ですから、教育の向上という意味から御質問するのですが、校長先生、その辺間違いはないですか。
  117. 遠藤五郎

    遠藤参考人 私の申し上げておるのは、現在の勤務条件改善をするということのために定員増をはかるということ、これば声を大きくして私はたびたび繰り返し申し上げたところでありまして、その点につきまして、ほかの方々の御主張にもまさる気持ちを持っておるわけであります。ただ今回の教職特別手当が、教職というものの特殊性というものをはっきり認めた立場に立っておる。この点は私は今後の待遇改善給与改善につながる大きな足がかりとしての意味を考えるからなんであります。  私が申し上げるまでもなく、教職は高度な知識、技能を必要とする職業であり、なお免許法という特定の法律によって認められた職業であるし、社会に対しても非常に重い責任を持っておるし、しかもその教師自身には自立性とか自主性というようなものが要求をされるし、しかも個人的な利得よりもむしろ公共性を強く持った職業であって、こういう教員特殊性というもの、これに見合った給与というものが先ほどのお話のようにない。これを突破するのには教職特殊性というものをここに樹立しなければならない。その第一歩としてこの教職特別手当が、時間のこま切れによって時間給を給するということでなくして、一括して一律一定率によって支給するということはその特殊性に立っておる、こういうように認識すればこそこれを支持するわけであります。やはり一方におきましては、定員増というものを強く推していく気持ちにいささかも変わりはないのでございます。
  118. 山中吾郎

    山中(吾)委員 校長先生、そこが少し認識をお間違えになっておるのじゃないか。というのは、専門性を高め、したがって研修につとめて質を向上するということは、これは教員の本質的なものであります。これは号俸の引き上げしかないのである。この超過勤務手当というのは、待遇改善関係なく、特にある先生に特別の仕事校長さんが頼んだときには、公平の原則で、頼まない人よりも頼んだ人に報いなければならないという制度なんですね。公平の制度に基づいたものなんです。したがって、専門性関係ないのですよ。現在の法案は、超勤の変形としてこの法案が出ておるのであって、その点は、専門性を高めて、号俸を五号高くしても、あとに不公平をどうするかという給与の技術の問題は残るのです。そこを校長先生特殊性というものに基づいてこの法案が何かからんでおるように考えるというのは、お間違いなんでしょう。私の言うことわかりますか。もう一度説明してください。
  119. 遠藤五郎

    遠藤参考人 おっしゃることはよくわかりますが、この法案が一時間幾らというような、労基法にいうところの超勤手当であるならば私は不賛成なんです。そうではなくして、教師は二時間の教材研究をしても、三時間の教材研究をしても、それは要するにあとにくるところの一時間の授業をどう有効にするかということであって、一時間の教材研究をした教師労働の価値が低いということはないのであります。そうではない。子供の指導をする場合においても、二十分指導をした者が一時間指導をした者よりも価値が低いとは考えられないわけで、時間によってこれを測定するということはできないと思うのです。
  120. 山中吾郎

    山中(吾)委員 だから、それは号俸を上げて全体の給与、そういう全体の教員特殊性に基づいたものは号俸というもので初めて解決できるのである。そうではなくて、われわれ——私も教員をしたことがあり、徹夜をして教材研究をしたことがあるのでよくわかる。それと関係ないのですよ。校長先生がどこの研究会でやれとか、それから特にこれを特定の先生に頼むぞということでできておる制度なんです、超勤というのは。したがって、幾ら待遇改善しても、公平の原則に基づいた制度は別の問題でなければならぬ。そのときにどう支給をするかという論議は別だ。そうでしょう。だから私の言うのは、いままで日本が終戦後に専門性というものに基づいて、その職務の重要性ということで二号俸高くした。そこで制度としては公平というものを残さなければならないから超勤制度は残しておるけれども、二号俸上げることによって、事実上校長さんは超勤を命じないできただけの話なんです。したがって、超勤を命じた場合についても、受ける先生方は時間というものによらないでも、われわれはお互い教職であるから、いわゆる事実上のお互いの同士愛的な、教師愛的な考えで、そうしないでも、平等に分けてもけっこうだという自主的な職場の中の話できめるならいい。法制的に、いわゆるある特定の者に命じておいて、こういう定額で渡すということは、ここで待遇改善と錯覚を起こし、不公平の原則はいつまでも残る。だからこの法案は、教職専門性の向上からいってもどこからいってもマイナスしか残らない。これが教壇に立っておるあなた、どうも校長さん、だんだんわからなくなってくるのですが、どうですか。いま一度何かあれば……。
  121. 遠藤五郎

    遠藤参考人 現場教師の場合、そういう時間でもって分割された手当を受けたときの気持ちを考えました場合に、むしろそのほうが本人の教育意欲をそいで教育力を低下させるし、学校運営から考えましても、教師間の反目というような要素にもなりかねない、私はこう思うのです。
  122. 山中吾郎

    山中(吾)委員 わかりました。心理学的にはわかるのです。  ある人に何時間も特別のことをやらしておいて、平等にと法律できめる制度は、これはマイナスだけだ。そうでなくて、先生同士、校長さんと先生が職場の中で、この点はどういうふうにしようかということを、法制的にきめないで、自発的に含んで解決するように残してきたのがいままでの制度なんです。そうでしょう。だから、全体一律になるなら号俸を上げて、専門性というものの立場においては、そういう公平の原則に基づいた制度を転化するようなことをしないでやらなければいかぬ。そうでなければ職場は明るくならないでしょう。時間を区切るからといって、先生が教壇へ立ったときに、この一時間は何円だと意識して教える先生が一体どこにありますか。一方において時間講師という制度があるじゃないですか。なぜそういう錯覚をお起こしになるのですか。一番大事なのは、労働過剰の場合、女の先生の言われたように定員増しかない。そして専門性を高めるならば号俸を上げる。研修手当法案なら私は賛成します。研修手当という意識を持てば、先生は酒なんか飲めないという気になるでしょう。こんなことしたら酒飲みます。これでは働いても働かなくても同じだ。だから教育精神の高揚その他のあれは、現在の労働基準制度からいってマイナスだけの法案でしかない。だから、校長さんが長年初等教育を経験されて教育実態を知り、待遇が非常に低いことを知り、教師性格を知っておってなぜこれを高く評価されるか、どうもあなたの言うことがわからない。
  123. 遠藤五郎

    遠藤参考人 実態を知れば知るほど現場教員の方々の心情にこのほうが合うのですよ。労基法によるところの超勤手当の場合は教員の心情に適合しないというように思うのです。
  124. 山中吾郎

    山中(吾)委員 現場先生がみな低く評価しておる。校長さんのあなただけが、一番経験しておるのに一番高く評価するから、どういうわけかと言うのです。私も先生をしておるのですよ。全部知っておる。待遇改善と結びつけて、この法案がちょっとでもプラスになるという考えをあなたに最初に言われておる。非常に間違いだと思う。号俸全体を定額上げるならば、全体の教職専門性に基づいて全部上がるのだから、号俸を上げるしかない。それか研修手当を出すしかない。超勤というものは、先ほど言った公平の原則に基づいた給与支給の技術の制度です。そうでしょう。だから、これは待遇改善と思って一歩前進だとお思いになるところに間違いがある。支給のしかたにおいては、二十人、三十人の職場における校長さんと先生の間で甲という人は特別のこういう仕事をしたが、乙という人は病気で特別のなにもなかなかできない、しかしお互い教育者であるから事実上同じようにしようじゃないかという話し合いのもとにするならわかる。法律的にこういう制度をつくって、何の公平の原則か。解決するものはなく、マイナスだけ残るのだと私は思う。  それで、あなたが待遇改善、それから専門性、それと公平の原則、全部ごっちゃにして、何か先入主を与えられたようなことをお考えになることは非常な間違いですよ。政治家というものは、ほんとうの教育を長期的にどう発展せしめるか、教師の精神衛生上どうするかということについて十分検討しないでこういう法案が出るからいろいろ問題が出るので、私たちは非常に心配しているわけだ。そこで、少なくともここにいる四人全部現場の経験を持っておる。いま一番なまなましく実感を持っておる三人の先生の方は、この法案はマイナスだ、校長さんだけがプラスだと言うところに、どうして教育界がこうなるかということを私は非常に心配するわけです。校長さん、あなたは教育者なんで行政官じゃないのですよ。行政官じゃないのだから、もう少し教育者の立場に立って、待遇改善と公平の原則をどうするという制度と、それから専門性を高めるということとはきっちりと分析されてあなたはひとつのものを見ないと、たいへんな間違いを起こして、マイナスのほう——これはくぎづけになってしまうのです。そうして、一方に調査制度を置いて根本解決をするというなら、それまでいまの制度を待てばいい。(「そんなことは文部大臣とやれ」と呼ぶ者あり)委員長、文部大臣とやれと言うから、私はあとで質問通告しますが、許してもらえますか。——とうです。
  125. 遠藤五郎

    遠藤参考人 私は、物をつくる仕事一般勤労者とやはり教育、人間の魂をつくる者とは違う。したがって、その一般勤労者超勤考え方教育へ持ってくるという意図は、むしろこれがそういうことになれば教育を破壊していく、私はそういうように考えておるのです。
  126. 山中吾郎

    山中(吾)委員 超勤というものについては、教師——私はそういうことは賛成ですよ。少しも変わりはない。だから、これは教師特殊性ということについては号俸改善になっておる。   〔発言する者あり〕
  127. 高見三郎

    高見委員長 御静粛に願います。
  128. 山中吾郎

    山中(吾)委員 公平の原則というものはどんな社会だって要る。そこを待遇改善というものとか、専門職の場合についての論議と、このいまの論議は違うのじゃないですかということを私は言っている。そうでしょう。その点はひとつお互いに先生方ですから四人でよく話をされて——そんな間違いを起こされたらたいへんだ、これだけ私申し上げておきます。  一番大事なことを言うと、この人らが騒ぐものだから一応この辺で質問は終わりますけれども、とにかく長い間に、法案が最初出発したときと終着駅がわけがわからなくなって、中身は、法律論を言ったら支離滅裂ですが、いま政策論ですから教育のことだけ申し上げたので、もう少し長期的に、政治的に左右されないで、教育立場で皆さんも一つの権力に抵抗力を持ってお互いに日本教育のために協力してくださるよう要望して、質問を終わりたいと思います。
  129. 唐橋東

    ○唐橋委員 関連して。時間がありませんので遠藤先生一言だけ関連して質問させていただきたいのですけれども、いま校長先生立場でいろいろ御意見をいただきました。私も教職十八年。いま福島県のいなかで校長先生をしておられる方々と懇意にしております。いまの校長さん方が非常に心配されていることは、この手当ができたときに、先生が非常に希望しておられる人材が集まってくるのか、むしろ人材が敬遠するのか、このことを校長さん方は非常に心配しています。ほかのほう、たとえば工場やその他にどんどん行くことによって、教育界には人材が集まってこないのですよ。いま他のほうはいわゆる待遇もよければ、超過勤務やその他自分が働いた分はそれ相応に入ってくる。そういう職場に人材は流れやすい。そこに人材教育界に集まらないという基本があるし、あとは基本的な、いままで議論されたような直接専門職的なものに見合う給与というものが不足しておる。こういう基本的な問題はありますが、要は先生のお考えで、これを通していった場合に現場教師の方々が——これは何も日教組とか何とかいう色なしに、非常に不安にあるということをお認めになられますかどうか。これが一点。  もう一つは、このようないわゆる専門職手当ということでなくて、ほんとうに時間を区切って、いま山中先生がいわれたような専門職手当とそれから時間外の手当というものをごっちゃにしたようなことのために、そこに非常な不安感があって、むしろ人材教育界を敬遠する。たとえば私たちのほうは非常な過疎地帯です。そういう過疎地帯で、やはり教師というものの人材がむしろ不足している。こういうところがあるのですが、全国校長さん方は、先生がいま専門職を非常に強調されるが、むしろその点を非常に心配されておる。こういう点も会長さんとしてひとつお考えいただいたほうがいいのではなかろうかという感じがあったのです。  前の点とあとの点について、もし御意見がありましたらお聞きしたい。
  130. 遠藤五郎

    遠藤参考人 この法案が通りましたときに、現場で不安を持つというような見方でありますけれども、私はそういうものはいままでのところ聞き知ってはおりません。それからこの手当が出ることによってむしろ教職への魅力が失われるといいますか、れうも考えません。ただ、私どもはこれが、前から申しておりますように、教職特殊性を認めた立場から、近き将来に大きく飛躍するというその意味において、むしろ魅力を増してくるものだ、こういうように思っております。認識がだいぶ違うかもしれません。
  131. 高見三郎

    高見委員長 これにて参考人に対する質疑を終わります。  参考人の皆さんには、お忙しいところ長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、本案審査のためたいへん参考になりました。まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。(拍手)  本会議散会後委員会を再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後一時五十九分休憩      ————◇—————    午後三時四十七分開議
  132. 高見三郎

    高見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  教育公務員特例法の一部を改正する法律案について、参考人として中央労働基準審議会会長石井照久君の出席を願っております。  石井参考人には、本日格別御多用のところを御出席いただきまして、まことにありがとうござい一まず。  参考人の御意見は、委員からの質疑に対するお答えでお述べいただくよういたしたいと存じますので、さよう御了承いただきます。  質疑の通告がありますので、これを許します。大原亨君。
  133. 大原亨

    ○大原委員 石井会長に若干の問題について質問をいたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。もちろん会長は、この基準審議会の選挙によって選出をされた方ですから、審議会の全体の意向を無視してはお答えいただくわけにはいかないだろうと思いますが、委員長から御紹介があったように、参考人として御出席をいただいたのですから、基準法や労働法の権威者として、ひとつ率直な御見解を表明していただきたいと存じます。  最初に、この基準法の性格ということですが、やはり大勢といたしましては、最近国際的な最低賃金制その他の問題が大きくなりましたので、やや尊重される度合いというものが若干違ってきたようですが、全体といたしましては、立法当時から比較をいたしまして、労働三法特に労働基準法に対する評価あるいは政府の位置づけ、そういうものがだんだんと軽視されるといいますか、そういう傾向にあると思うのであります。そこでこの際、本法案関係をいたしまして、労働条件規定いたしております基準法の問題等の審議を通じまして、ひとつこの正当な位置づけについてお互いに目を開いていきたい、まあこういうことであります。  そこで、基準法の性格なんですが、御承知のように、私の手元に「労働基準法解説」といって、労働省労働基準局の監督課長を当時しておられました寺本広作氏が——いま熊本県知事ですが、書いておられる文章の中に、労働基準法の提案の理由や提案の説明がついておるのです。その中には幾つかの項目があるわけでありますが、私がこれをひもといてみまして、非常に関心を払いましたのは、あなたの先輩に当たられる末弘先生が当時会長として答申をされておるのがございますが、本来ならば憲法で決定すべき問題を基準法の第一章を中心にきめたのだ。したがって、言うなれば労働基準法労働憲章ともいうべきものであって、労働条件の最低基準に関する憲法なんだ、こういう御趣旨の説明を引用いたしまして、政府は提案をいたしております。したがって私は、最近の労働基準法に対する扱いについて、これの重要性に対して関心を持つ者としてはたくさんの問題があるのではないか。これに関連いたしまして、一般法対特別法という単純な関係ではありませんが、そういう国家公務員法や地方公務員法、あるいは本特例法案等との関係、特に労働基準法労働憲章ともいうべき位置づけにおいて労働条件の最低基準をきめておる、こういう観点から考えまして、そういう基準法の位置づけという問題について、言うなれば基準法の番人でもあるわけでありますが、基準審議会の会長である先生から、この際ひとつ御見解を聞かせていただきたいと存じます。
  134. 石井照久

    ○石井参考人 ただいまお話がありまして、一般的なようでもございますが、基準法が労働者の労働条件を守る最低基準としての憲法的な役割りをしておるということについては、疑いをいれないわけでございます。  御質問の意味がはっきりしないところもありますけれども、たとえば他の法令との関係というようなことについて申し上げれば、基準法の精神あるいは基準法の規定というものは、いま申し上げたような意味の労働憲章的なものですから、他の法令で、法律によるとはいいながら軽々にこれを変更すべきものではない、そういう性質のものであることは明らかでございます。  なお御質問によりましてお答えいたします。
  135. 大原亨

    ○大原委員 提案理由説明の第三点として、こういう問題を指摘しております。「第三点は、一九一九年以来の国際労働会議で最低基準として採択され、今日広くわが国においても理解されておる八時間労働制、週休制、年次有給休暇制のごとき、基本的な制度を一応の基準として、この法律の最低労働条件を定めたことであります。戦前」云々ということで、これらに関係いたしまして述べております。これはきのう質疑応答をしておりまして、ILO条約の第一号、四十八時間制は、基準局長も言っておりましたが、これは批准をしていない、したがって直接われわれは拘束を受けないというふうなことなんです。しかし、戦後いち早く平和国家として再出発をするというときに、憲法に引き続いて並行して基準法の議論があったときに、そういう国際条約の背景というものを立法の趣旨に織り込んでおるようであります。これらの国際的な四十八時間労働制その他のそういう問題との関係について、ひとつ先生の御所見があれば明らかにしてもらいたいと思います。
  136. 石井照久

    ○石井参考人 御存じのように、労働条件に関する条約も幾つかございます。いまおっしゃった労働時間に関するものも現在われわれの審議会でそれを採択することができるかどうか、採択するとなると、どういう条件と時期にやるべきかというようなことで、いま日本労働時間関係実態などを洗って検討しておるのでありまして、できるものならできるだけ早く採択するというような形で検討を続けております。
  137. 大原亨

    ○大原委員 基準審議会の性格についてですが、これは御承知労働基準法の九十八条を基礎といたしましてつくられておると存じますが、その九十八条の中に「この法律の施行及び改正に関する事項を審議するため、」云々と、こういうふうにございます。「この法律の施行及び改正に関する事項」という中で「施行」ということは、法律の運営その他を含むものであるかどうか。「改正に関する」というのは、改正に至るまでのその原案に対する事項を審議の対象としておる、こういうふうに考えてよろしいかどうか。
  138. 石井照久

    ○石井参考人 よろしいと思います。
  139. 大原亨

    ○大原委員 それから、労働基準審議委員は、私も承知いたしておりますが、労使、公益、三者で七名ずつの構成になっておるわけであります。これはやはり労働基準法の第二条に、労働条件についての決定は労使対等ということの原則を掲げておるわけです。それらの問題は憲法問題を引き継いだものであると私どもは思っておるわけですが、労働基準審議会に匹敵するような、そういう拘束性のある、自主性のある、権限のある審議機関というものが他に何かございましょうか。他にそういう機関があるというふうに御承知になっておりますか、どうでしょう。
  140. 石井照久

    ○石井参考人 いまおっしゃった意味ですけれども、三者構成で、ある程度のそういう問題をきめる審議会といいますか委員会は、ないわけではないので、私が知っておりますものでも、たとえば職安関係とかあるいは港湾労働関係につきまして、一応、名前は審議会といわなくても、同じような性格のものがございます。そのほかは政府の関係の方が御存じかもしれません。
  141. 大原亨

    ○大原委員 私が申し上げましたのは、労働基準法内容で定めております労働条件の最低基準に関する問題で、労働基準審議会に匹敵するといいますか、ここの審議を経ないで、こちらの審議を経たならばという、そういう問題について審議できる機関があるだろうか。そのことは、憲法に引き続いて労働憲章的にきめられた基準法ですから、ひとしく国民は法のともに平等であるということは憲法の精神からも当然ですが、あるいは法律の公平を期するという面からも、あるいは言うなれば新しい憲法、近代法の精神である基本的な精神面、主権在民という精神からも、そういう労働基準の問題に関しましてそういう審議会、この審議会にかけておけば基準審議会にかける必要ない、こういうふうな機関が他にございましょうか。
  142. 石井照久

    ○石井参考人 さっきちょっと誤解いたしましたけれども、いまおっしゃった意味、労働基準の変更機関ということにつきましては、基準審議会が唯一の機関になっておる、ほかにはないと思います。ですから、基準法の改正について、ほかのところで審議したから基準審議会で審議しないでいいというふうな性格のものはないだろうという意味で申し上げました。
  143. 大原亨

    ○大原委員 労働基準法の九十八条の「この法律の施行及び改正に関する事項を」云々のことにつきましての御見解につきましては、はっきりお述べをいただきました。  それで、今日まだ審議の途中ですが、教育公務員特例法改正の問題に関係をいたしまして、教職員労働条件にかかわる問題についての法律案が御承知のように出ておるわけでございます。それは御承知のように、日本全国の各地方裁判所の判決やあるいは各都道府県の人事委員会、二十二にわたっておりますが、それらの裁定といいますか、そういうものを基礎といたしまして、教職員超過勤務についてのいろいろな意見が出ておるわけであります。これは、先生教職員勤務実態については大学の教授という立場では御承知でしょうが、実際については御承知ない点があると思います。この教職員勤務の態様ということが一つの問題となってこういうような実情になっておるのです。きょう午前中も参考人の方々がそれぞれの方面から御出席になってそういう御意見があったのですが、確かに教職員勤務というのは特殊な態様を持っておるとは思います。しかし、教職員勤務について時間を拘束しないで自由に、小、中、高等学校、幼稚園あるいは私立の各教師にいたしましても、時間を拘束しないで、拘束されない時間で自由にやっているというわけではないと私は思うわけであります。したがって、勤務時間を超過する勤務について評定できるものと、評定をするのに、二十四時間勤務的な、そういう精神的な負担等の問題を含め、研修等の問題も含めて自主的なものがあると思います。そういうことはあると思うのですが、しかし、測定できる勤務について超勤手当を支払わない。あるいは立ち入った議論になることを私は避けたいと思うのですが、労働基準法教員勤労者個人個人の請求権を保障いたしました法律体系、あるいは労働条件の最低基準、そういうものから考えてみまして、これをよりよい形で解決するのなら別にいたしまして、この問題で適用除外をすることによって、労働条件の最低が保障される、そういう歯どめがない、こういうことになれば重要な問題であると私は思うわけです。したがって、教職員勤務態様あるいは超過勤務の問題について、先生は学者といたしましてどのような御所見を持っておられるか。これは私はしいて申し上げるのではありませんが、ひとつ参考になる御意見を聞かせていただきたいと思うところであります。
  144. 石井照久

    ○石井参考人 その点につきましては、私個人としての、学者としての意見は持っております。ただ、御存じのように、現在基準審議会に審議がかかっておりますものですから、それの会長という立場にありますので、先走って自主的な意見を申し上げることは適当かどうかちょっと考えておるわけであります。  ただ、問題点だけは一般的にいえるわけでありまして、いまお話があった中で一般教師がいわゆる労働者であるか、現業の労働者であるか、そういう基本的な問題があると思うのです。そして、そのいずれかがきまることとの関連においていまお話しのようなものもきまってくると思います。私などは基本的にはあまり超過勤務がないほうが本筋だと思うので、やはり研究なんかの時間を十分持つべきであります。ただしかし、そういってみても現実に超過する労働があったらそれをどういうふうにするかということは、これは政策的に十分考えなければならないものではないかというふうに思っておりますが、あまり立ち入って申し上げますことは、現在審議中でありますし、私の意見はいろいろ審議会におけるお役所関係の政府委員などに対する説明の中でかなり言っておりますので、審議の前に私自身があまり自分の意見を言うことは、本日学者としてだけ来ましたら思い切って申しますけれども、おそらく審議会の会長として呼ばれたのではないかと思いますので、若干控えさせていただきたいと思います。
  145. 大原亨

    ○大原委員 その点は了解いたします。  この問題に限ってということでなしに、一般論として今回の改正案問題点に対する所見を伺わせていただきたい、こういう気持ちはあるわけです。昨日も委員長に協力いたしまして、午後十一時ごろまでいろいろ審議いたしましたが、その中で明らかになっておるのですが、たとえば基準法の三十三条の三項で、公務、臨時という条件教職員超勤を命ずることができる。そして一律四%、これは法律できめてあるわけで、人事院の勧告事項にも将来入れるというのですが、そういう一律四%の教職特別手当を御承知のように出すということです。そういたしますと、いろいろこれは議論になったところですが、三十二条の四十八時間制というものは実質上骨抜きになるのではないか。ということは、罰則の適用も、四十八時間以内にとどめる——実際四十一時間の条例等がございますが、そういうことに対する規制措置というものは、これは一つの歯どめがなくなる大きな問題ではないか。それはないというふうに政府も答弁いたしております。四十八時間の罰則は適用にならぬ。個人個人の四%をこえる超過勤務に対しまする支払い義務もないわけです。個人個人のそういう超勤に対する請求権もなくなるということであります。その他たくさんの問題があるわけであります。  私が希望いたしますことは、こういう重要な問題につきましては、言うなれば労働憲章といわれる労働基準法の帝人でもある公・労・使三者構成の唯一の審議機関であるところの基準審議会において適切な御意見を出していただくべきではないだろうか。たとえば地方公務員法のときにいたしましても、労働基準審議会は、きのうも資料を要求いたしましたが、二回にわたって建議をいたしております。もちろん建議、諮問、いろいろ問題があるでしょうが、建議をいたしております。したがって、その三者構成の権威ある機関において十分審議をされましたことを踏まえて権威のある法律をつくっていく。日本労働条件を引き上げて、基準法、憲法の精神を貫いていく。そういう公平な行政を全体的に引き上げていく。たとえば四十八時間を四十四時間、四十時間にしていくというのが大きな目標ですから、特別法をどんどんつくっていって、基準法から全部抜いて、そして基準法を全く骨抜きにするとか軽視するとかいうふうな考え方については、私は、こういう機会に会長としてはっきりとした御所見を表明していただくことが適切ではないかと思います。その点につきまして御所見を伺いたい。
  146. 石井照久

    ○石井参考人 ただいまお話がありましたが、いままでの審議の中におきましても、労働基準法が基準法以外の他の法律を直すという形を通して変更を受けることは、しかもそれが基準審議会の議を経ないで変更を受けることは絶対に認むべきでないということは、公・労・使一致した認識を持っておると思います。ただ、それを今度の具体的な問題についてどういうふうな態度で処理をするかということは、先ほど申し上げましたように現在審議中であります。しかし、基本的な点において、今後一切認むべきでないという点は確認して議論をいたしております。
  147. 大原亨

    ○大原委員 会長の御意見はきわめてはっきりしていると思うのですが、もちろんこれは基準審議会の総意を代表して、あるいは決議に基づいて所見を発表されるわけではないわけです。ですから、一般論としてお話しをいただく。つまり、基準法からどんどん特別法を抜き出して、鉄道も郵便も、あるいは新聞も、私立学校も、その他もずっとそういうことでやっていくならば、憲法を基礎とする法律体系あるいは労働憲章といわれる労働基準法、最低の労働基準を確保するという問題そういう問題が全く百鬼夜行の状況になれば、これは実質的に日本の近代社会は形成されない、こういうことになると私どもは思います。その点は非常にはっきりした所見であると思います。  そこで、いろいろ新旧委員の交代等があったそうですか、今日までこの問題についてどのような扱いをされたか、こういうことにつきましては労働省出席をいたしておるのでしょうから、答弁がありましたら、ひとつ簡潔に、現在の段階について会長からお答えをいただきたいと思います。
  148. 石井照久

    ○石井参考人 この点につきましては、まず最初に、日にちの点はよろしゅうございますね。間違うといけませんからあれですが、第一回に文部省関係者に来てもらいまして、そしていろいろ伺いました。しかしこの場合、そのときは非常に時期が差し迫っていたり、急に会合を開きましたために十分審議ができないという状態でございましたが、そのあとでかなり時間をかけて審議したのでありますが、先ほどお話が出ましたように、非常に運の悪いことに委員の改選の時期にぶつかってしまいました。そして委員が若干名かわりました。そこで、改選前の最後の審議会におきまして、この問題は引き続き審議するということを確認したわけであります。しかし御存じのように、労働大臣からは御諮問はなかったわけであります。したがって、結局われわれは、委員の人からその問題について発言がありまして、そこで私どもは、たとえ労働大臣から御諮問がなくても、事労働条件の変更にかかわるような重要な問題について、委員のうちからそれを議論すべきであるという発言があった以上、これはともかく取り上げるべきである。その結論がどういうふうになるか、あるいはどういう処理をするかということはあとの問題として、ともかくこの問題を審議すべきであるということで審議を続けてきております。この次は二十四日でございましたか、任期の交代などいたしましたので、含めてちょうど国会の審議との関係がこういうふうになっておりますが、一応二十四日にまた引き続き審議をすることになっております。
  149. 大原亨

    ○大原委員 昨日労働大臣からはこういう答弁があったわけであります。いまのように権限に基づいて建議事項として審議に入っておる。したがって、その審議労働大臣が干渉するというわけにいかないので、審議を見守っていく。それから国会における議論についてはできるだけ会長のほうにお伝えする、こういうことでありました。それを正直に伝えてあるだろうと私は確信をいたしておりますが、そのことの議論はいたしません。  そこで、労働大臣の答弁の中に、きょう御出席になっておりますが、こういう御答弁がありました。中央労働基準審議会の議がまとまり、意見がまとまり議決がある。こういう議決が出たならば、関係各大臣に対してそれを提示していろいろと協議をしたい、話し合いをしたい、相談をしたい、こういうことでございました。  そこで私は、石井会長が、この具体的な本問題については国会が最高の機関だ、こういう議論もあるわけですから、ここで議論されている政治問題直接についてとやかく議論を言われる立場にはないとも思いますし、その点は、私はその問題に関する限りは問題の性質は了解しておるわけです。ただ、国会は最高の議決機関でございましても、これは与野党を通じて良識ある人たちは理解をされていると思うのですが、最高の機関であればあるほど憲法や現行労働基準法労働憲章的な基準法において定められたそういう機関の意見を聞き、討論を参考にしながら審議をするということは、私は、このような重要な法律を権威あらしめる、こういう立場の上からいってきわめて重要な問題であると思うわけです。したがって、労働大臣も審議会の議がまとまる、議決があるならば十分これを各省に言われる、こう言うのです。しかし、これは御承知のように、昨日ずっと議論があったところですが、この法律が提示をされました推移、経過というものが非常に押し詰まった形や時間のない形で出ております。したがって、法案を得る過程において、私どもの立場でいうならば、この問題を提示いたしまして、そして問題提起をし議論をする、そういう余地ないようなことになっておるという点を、私どもは議論を通じ、日にちの検討等を通じまして了解をしていたわけであります。  そこで、昨日も私は労働大臣と一問一答をいたしましたが、労働基準監督機関令という御承知のように法律に基づいた政令がございます。二十四日に次期総会をお開きになるということでございましたならば、私どもは、この問題は、野党の立場ですからゆっくりやってもらうことがいい、こういうことではありますよ。ありますが、しかし、そうはいってもこういうふうな段階ですから、基準審議会が権威を持って意見をまとめていただく、それを討議に反映したり審議に反映をさすべきだ、こういう気持ちにおいては党の立場以上に私どもは重視しなければならぬと思いますから、できるだけすみやかに開く方法はないものか、こういうことをいろいろ心配をし、議論をいたしたわけでございます。申し上げました労働基準監督機関令によりますと、それらに関係をいたしまして二十八条第三項等に規定があるようでございます。もちろん労・使・公益の三者構成ですから、それぞれの都合もあることですから、招集については一定の限界があるし、突然きょう招集いたしましてあした会議を開くというわけにはもちろんいかないでしょうし、そういうふうに唐突にやられて議を尽くせないということになりましたならば、これは問題の重要性から問題があるでありましょう。しかしながら、そういう政令に基づく可及的すみやかな、「一週間以内」というふうになっておりますが、そういう方法をとっていただいて、そしてそれらの意見が、現在進められておる建議案件がすみやかに進捗してりっぱな結論が出ることを期待をいたすわけですが、その点、ひとつ定例日を御変更になりまして、労働大臣からも意思表示があったと思うのですが、これを開催をしていただく、そういうことにつきましての会長としての御所見があればひとつ明らかにしていただきたい。
  150. 石井照久

    ○石井参考人 ただいまの点、率直に申し上げまして、審議会の委員が公・労・使三者構成でして、春闘などがありましていろいろ問題があると思います。しかし、きょうこういうお話を伺いましたので、私一存で必ずそう開くということはきょうお約束できませんけれども、直ちに労・使・公益の三代表の人を呼びまして、この経過を述べて、十分善処してみたいと思います。
  151. 大原亨

    ○大原委員 いま御答弁いただきました意味は、私がせんさくすることではないのですが、会長として権限をお持ちになっているわけです。ですから、いまの御答弁は、それぞれ事情はあるでしょうが、そういう連絡事項等を含めまして、たとえば今明中と、こういうふうに招集についての公・労・使三者に対しましての連絡調整方をすみやかにやられて、一週間以内ということもございますが、すみやかにお開きになる、くどいようですが、こういうふうに理解をいたしましてよろしゅうございましょうか。
  152. 石井照久

    ○石井参考人 多少あいまいなような表現をとりましたが、御存じのように定足数その他がございますものですから、はっきり開くと言って、開けないということもあるといけないと思って、注意いたしておりますが、きょうでもさっそく関係者を呼びまして——ということは、いろいろ都合がございまして、出席できるという大体の見通しをつけませんと、開くと言ってみても、実際は御存じのように出席の最低の要件がございます。そういうことを考えて申し上げておるというふうにおとりいただきたい。
  153. 大原亨

    ○大原委員 これで質問も終わりですが、労働大臣、私は実は、労働省労働大臣はけしからぬと、こう言いたいところであります。というのは、けしかるところもあるのですが、そういう建議案件が議決をされて出てきたならば、労働大臣は各省に対してこのことをよく伝えますと、こういうことなんですが、定例総会は五月二十四日です。そういうことになれば、委員長はそれまで採決されぬという——委員長は自民党の機関ではありませんから、そういう良識を持っておられることを私は確信はしますよ。しますけれども、時間的に見て、労働大臣としてはこれはおかしいじゃないか、こういうふうに追及したいところです。したいのですが、しかし、いろいろな事情があることも私は承知しております。いままでの立案過程において、いろいろな聖職論というようなやっちもない議論が出ました。ともかく意見は自由ですから言ってもいいんですけれども、しかし労働大臣は、少なくとも設置法にあるように労働基準法その他の重要な労働法の所管大臣でありますから、そういう点については、いろいろと議論を通じまして、先ほど申し上げたことは会長に意思表示をしていただいて、私どもも率直に意見を述べる、こういうことでいいわけであります。したがって、私は委員長にもお願いをしたいし、こういう質疑応答の事情でございますので、ひとつすみやかに民主的なそういう処置の手続をとっていただいて、国会のこの重要法案に対する審議に反映できるように、いままでの労働基準法軽視あるいは労働基準審議会軽視、こういうことがないように、お話しのように唯一の機関でありますから、そういう点でひとつすみやかに事を運んでいただきまして、そうしてりっぱな法律ができ上がりますように御尽力をいただくことを衷心からお願いをいたしまして、——何も引き延ばすためにやっておるわけではないのですから、その点を御了解いただきまして、善処していただくようにお願いいたしたいと思います。
  154. 石井照久

    ○石井参考人 いまのお話、よくわかりました。
  155. 高見三郎

    高見委員長 石井参考人に対する御質疑は、ほかにございませんか。——参考人には、お忙しいところ長時間御出席をいただきまして、まことにありがとう存じました。厚く御礼を申し上げます。  文化財保護に関する小委員会散会後再開することといたし、暫時休憩いたします。    午後四時二十五分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕