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1968-04-10 第58回国会 衆議院 農林水産委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月十日(水曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 足立 篤郎君    理事 鹿野 彦吉君 理事 草野一郎平君    理事 熊谷 義雄君 理事 坂村 吉正君    理事 森田重次郎君 理事 石田 宥全君    理事 角屋堅次郎君 理事 稲富 稜人君       小澤 太郎君    小山 長規君       佐々木秀世君    齋藤 邦吉君       田澤 吉郎君    田中 正巳君       丹羽 兵助君    長谷川四郎君       本名  武君   三ツ林弥太郎君       湊  徹郎君    粟山  秀君       赤路 友藏君    伊賀 定盛君       工藤 良平君    兒玉 末男君       佐々栄三郎君    柴田 健治君       美濃 政市君    森  義視君       神田 大作君    中村 時雄君       樋上 新一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 西村 直己君  出席政府委員         科学技術庁資源         局長      鈴木 春夫君         農林大臣官房長 檜垣徳太郎君         農林省農林経済         局長      大和田啓気君         農林省園芸局長 黒河内 修君  委員外出席者         林野庁林政部長 亀長 友義君         農林漁業金融公         庫総裁     大澤  融君         参  考  人         (東京大学農学         部教授)    加藤  讓君         参  考  人         (農林中央金庫         理事長)    片柳 眞吉君         参  考  人         (立正大学経済         学部教授)   佐伯 尚美君        専  門  員 松任谷健太郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林漁業金融公庫法及び農業信用保証保険法の  一部を改正する法律案内閣提出第七九号)      ――――◇―――――
  2. 足立篤郎

    足立委員長 これより会議を開きます。  農林漁業金融公庫法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案につきまして、参考人より意見を聴取することといたします。  本日御出席参考人は、東京大学農学部教授加藤讓君、農林中央金庫理事長片柳眞吉君、立正大学経済学部教授佐伯尚美君、以上三名の方々でございます。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。  ただいま本委員会におきましては、農林漁業金融公庫法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案を審査いたしておりますが、本案につきまして、参考人方々から忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  なお、はなはだかってではございますが、時間等の都合もありますので、参考人方々の御意見の開陳は、お一人おおむね二十分程度にお願いいたします。  議事の順序につきましては、まず参考人各位から御意見をお聞かせいただいた後、委員各位から参考人の御意見に対して質疑をしていただくことといたします。  まず、加藤参考人にお願いいたします。加藤参考人
  3. 加藤讓

    加藤参考人 ただいま御紹介にあずかりました加藤でございます。  本日は、総合資金制度という新しい制度が設けられることにつきまして意見を述べよ、こういうことでございますので、私がこの点について考えております意見を述べさせていただきます。  農業金融の問題でございますから、これは一体いかなる農業というものをねらってそういう農業金融制度をつくるのかということが最初の問題ではないかと思います。そして、どのような農業をねらってそういう制度をつくるのかということにつきましては、常識的なことかもしれませんけれども農業国民経済において果たしている役割りというようなところに焦点を置いて、そういう点から見てみたいと思うわけでございます。  私の考えでは、農業国民経済に持っておる役割りというのはいろいろありますけれども、基本的な役割りとしましては、第一には、国民の最も必需品であります食糧というものを妥当な価格で安定的に供給する、こういう役割りを持っておると思うわけです。妥当なと申しましたのは、国際価格に対してあまり高くないということが含まれておるわけでございます。この点から考えますと、そういうふうな安定的に妥当な価格、つまり、高い生産性をあげてできるだけ安い価格国民食糧を供給するということになりますと、当然、これに従事している農民が喜んで農業にいそしむということが必要であろうかと思うわけでございます。そしてそういう喜んで農業に従事するというからには、農業に従事することによってあげられる所得が、他の部門所得に比べて均衡しているということが重要な条件ではないかと思うのでございます。そのために、非常に困難であると思われますことは、御承知のとおり、わが国は現在世界第三の工業国といわれておりますように、工業が非常な勢い伸びておりまして、工業部門における生産性あるいは一人当たり所得伸びというものが、世界的に比較しましてもきわめて高い伸び率を示しておる。だから、こういう非農業部門の著しい伸びに負けないように、農業も急速なスピードで生産性を上げ、所得を上げなければならない。これがなかなか困難な問題ではないかと思うわけです。  そこで、わが国農業というのは、御承知のように非常な零細な経営でありまして、いろいろな統計を見ましてもそのことがわかるわけでございますが、それではそういう生産性の高い農業経営というのはどういう経営かと申しますと、これはどういう経営を営んでいるか、何をつくっているかによって一がいには申せませんけれども一般的に申しますと、現在、農林省統計なんかで見ます限りでは、大規模経営ほど高いということが出ているわけでございまして、そのためにできるだけそういう零細経営の桎梏というものから農業が脱却しまして、大規模経営というものに向かって伸びていかなければならないだろう、こう思うわけでございます。  昭和三十五年から四十年までというような五年間について見ますと、国民所得の一人当たり伸び率とほぼひとしいような家族従業員一人当たり農業所得伸び率を示しているような経営は、一町五反から二町、こういうような階層であります。その階層までは、経営規模が大きくなるほど一人当たり農業所得伸び率が高いというふうな数字が出ております。  そこで、今後ますます工業のほうでは、技術革新というものを採用しまして伸びていくわけでございますから、それにおくれないようにだんだん経営規模というものを――経営規模と申しますのは、必ずしもその土地の面積だけを基準に考える必要はございませんが、そういうような大規模経営に向かって農業経営というものを伸ばしていかなければならない、つまり農業の構造の改善を進めなければならないということが考えられるわけでございます。現在、農家経済調査などの資料で、ごく最近発表されました農業白書によりますと、約一〇%の経営が、都市勤労者と比べて遜色のないような農業所得水準をあげているということが出ております。そうしますと、この一〇%の農家というのは、全体の経営からしますとごく少数の、一部の経営であるというふうに見られるわけでございますけれども、しかし、こういう経営伸びている勢いというものをますます助長して伸ばすということが、やはり重要な問題ではないかと思うわけであります。  そうしますと、こういう一部のごく少数経営だけを伸ばすというようなことは、必ずしも穏当ではないのではないかというふうな考え方が出るわけでございますけれども経済の発展というものは、すべての経済主体というものが同じテンポで伸びていくものではなくて、一部の優秀な経営企業というものが率先して新しい技術を取り入れて、そして革新を行なう、それによって高い利潤ないし所得というものをあげる、そういう成果に着目することによって、その他の大多数の並みの企業なり経営というものが、それに追随して自分たち経営というものを合理化していくということで、全体の水準というものが上がっていくものだ、こういうふうに考えるわけでございます。したがって、そのような少数経営を相手とした資金制度というものを、何もつくらなくてもいいというふうには考えられないと思うわけでございます。その点を、やはりひとつ割り切らなければならないのではないかというのが、私のこの問題に関する基本的な見解でございます。  今日、世界の第三の工業国といわれますような工業が、明治初年以来目ざましく伸びてきたわけでございますけれども、これも御承知のように、一般市中銀行が非常な選別融資を行なった。少数の独占ないしは寡占といわれるような企業に対して潤沢な資金を供給して、そういう潤沢な資金というものを供給されて、新しい技術革新を導入したということが、わが国工業が飛躍的に伸びている重要な要因ではないかと思うわけでございます。ですから、農業におきましても、一般工業で行なわれておりますような選別融資というものが行なわれますならば、非常に困難な条件を持っておりますけれども農業におきましても、現在よりはもっとスピードアップされた伸びが期待されるのではないか、こういうように、考えるわけでございます。そのために、ここは農業金融の問題でございますから、そういう経営伸びるための金融的な条件を整備することが必要ではないかと思うわけでございます。もちろん、金融だけが独走してもこれはだめなんでありまして、金融以外のもろもろの、農地制度であるとか、あるいは労働力市場の問題とか、こういった農業金融以外の基礎的な他の関連的な諸施策が並行的にとられて、初めて金融金融として、生きた金融に期待される機能というものを十分に果たし得るのである、こういうふうに考えます。  いま、金融だけを問題にしておりますから金融だけについて申しますが、農業基本法が通りましてから制度金融というものが著しく伸びておりまして、これが農業部門における投資増大に大いに役立っていることは御承知のとおりでございますけれども、そのような制度金融制度資金というものにつきましては、御承知のようにいろいろな批判があるわけでございまして、たとえば物別融資している、個々の設備をばらばらに対象にして融資しておるとか、それからその融資に対していろいろな行政機構が関与しているとか、硬直的であって弾力的でないとか、いろいろなことがいわれておりますけれども、いずれにしましても、そういうふうな批判がありますにしても、制度資金というものが農業投資増大に非常に役に立っているということは言えるわけでございます。  しかしながら、先ほども触れましたように、そのようないままで創設されておりますもろもろ制度資金というものは、少数ではあるけれども、今後の農業中核体になるような自立経営、あるいはその自立経営が発展してなるであろう企業的な農業経営というものを育成することを目標にしぼって、そのための融資制度というものがいままでなかったわけでございまして、今回問題になっております総合資金制度というものは、まさにその目的に沿って設けられた資金制度であると考えます。私は、この総合資金制度というものは、そういう意味で非常に画期的でかつ重要である、こういうように考えるわけでございます。  先ほど、農業国民経済における機能という一つの点をあげましたけれども、第二の点は、農業というものが国民経済における安定的な役割りを果たしているという点があるかと思います。これはどういう点を申すかと申しますと、経済近代化というものは、雇う者と雇われる者という二つ階層に分化していく傾向を持っているわけでございます。そうすると自己雇用部門、つまり中小企業であるとか農業部門というものがだんだん分解されて、そして雇う者と雇われる者とに分解していくわけでございますから、そこで当然政治的にあるいは経済的に不安定要素というものが増大していくわけでありますが、農業はたまたま、これは各国を見ましても、特殊の国は別にしまして、資本主義国におきましては大体自己雇用部門でございまして、そのような意味におきましては安定的な要素になっていると思います。もしこのような総合資金制度というものが、そういう安定的な要素というものを破壊するのではないかというふうな懸念をお持ちになるかとも思いますが、私は、必ずしもそのようなことはないのではないかというように考えているわけでございます。  御承知のように、現在とうとうとして兼業化勢いというものが進行しておりまして、最近では農家のほぼ八割が兼業農家であるというようになっているわけであります。この勢いが一体どのように続くのかといいますと、予測の問題になりますから何ともはっきりしたことは言えないわけでありますけれども、たとえば、企画庁あたり計算によりますと、今後二十年後には、都市に大体人口の八〇%くらいが住むであろうというようなことをいっておりますから、この兼業化勢いというものは、もっとこれから進行していくのではないかと思います。  神谷教授マルコフ過程の議論を使いまして、将来の終局値というものを計算されておりますところによりますと、大体農家の約一割しか専業にはとどまらないであろうというふうな結論が出されておりまして、一割といいましても農家の総戸数が減るということになっておりますから、その計算によりますと、ほぼ十六、七万というのが専業農家として最後に落ちつくのではないか、そういうふうな計算も出ているわけでございます。  そういう計算の当否は別問題といたしまして、そのような傾向に向かって進行しつつあるということは、これは否定できないのではないかと思うわけでございます。ですから、そのような状態のもとにおきましては、少数ではあるけれども農業に生きがいを感じて、農業を担当して経営を積極的に伸ばすということによって、農業の高い生産性、高い所得というものをデモンストレーションしていき、それによって他の経営をリードしていくということが、非常に重要なことではないのかと思うわけでございます。  もちろん、そういうふうな少数経営を積極的に伸ばすといいましても、他の経営に対しても、その他のいままで設けられておりましたもろもろ制度資金がございますから、そのような経営がそれ自体として努力して伸びるということに対しては、全然資金融通制度がないというわけではないと思います。そういうふうな兼業農家が、第二種兼業農家のように農業所得よりも農外所得の比重が大きくなって、農業所得としては都市勤労者地帯に比べて遜色のないような所得水準をあげられなくても、都市化あるいは工業化が進むに従って、そちらの部門農外所得というものを得る機会が増大しますれば、そういう農外所得農業所得とを合わせた意味では、所得水準伸びるのではないかと思うわけでございます。同時にそれが、日本過密都市の対策ともなり得るのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  でございますから、要約して申しますと、そういう専業農家兼業農家というものが事実として存在しておって、ややもすれば専業農家がだんだん兼業化していき、専業農家がますます少なくなっていくのだ、こういう大きな傾向があるということを考えた上で、そうして農業政策としましては、そういう専業農家兼業農家というものの二つの否定できない階層があるということを割り切って、その上で金融の問題を考えなければならないであろう、こういうように思うわけでございます。  アメリカの例を申しますと、アメリカでは約一割の農業経営が、売り上げ高におきましては五〇%のシェアを占めておりますけれどもわが国自立経営農家といいますものは、一割でまだ三〇%足らずである。こういうような現状でございますので、その点に留意しなければならない、こういうように思うのであります。  これが一般的な考え方でございまして、総合資金制度の中身ということにつきまして、二、三の点を申し上げたいと思うわけでございます。  これは、当然ここで考えられておりますのは、公庫にそういう制度資金をつくるということでございまして、公庫から供給されますのは長期設備資金でございます。ところが、経営伸びていくためには、当然運転資金というものが十分なだけ与えられなければ、設備資金だけ与えても経営としては発展できないわけでございますから、そこで運転資金を供給する、今日ではその支配的な機能を果たしておりますものは系統金融機関でございますが、系統金融機関資金というものが非常に重要な意味を持ってくる。そこで、系統金融機関政府金融機関とが、どれだけ協調の実をあげられるかということが、この資金制度がその実をあげ得るかどうかということの重要なポイントであろう、こういうように考えます。それが第一の点でございます。  第二の点は、ここでは融資協議会というものが考えられておりますけれども、そこに幾つかの、中金とか公庫とかそれから信連とか、そういった関係金融機関が集まって協議をするということになっておりますけれども、しかし協議するということが、責任の所在をあいまいにするようなものであってはいけないのではないかということが、私の懸念一つでございます。そこで、やはり申し込みがあった場合に、それを受けて立ってどの金融機関中心になってやるか、つまり平たく言いますと、メーンバンクというようなことばがいいかと思いますけれども、そういうメーンバンクをどこが果たすかというようなことがきめられていなければ、資金貸しっぱなしではなくて、その後のいろいろな技術指導なりあるいは償還なり、そういったアフターケアというものを伴わなければ、こういった経営は伸ばせないわけでございますから、そういう中心になるような金融機関というものが必要ではないか、こう思うわけでございます。  それから第三の点としましては、ここでは融資コンサルタントというのが考えられておりますけれども、私はこのコンサルタントには、できるだけ実際家を活用していただいたらどうか、こう思うのです。もちろん実際家でございますから、たとえば都市でやっているような搾乳業者とか、そういうようなものでもかまいませんが、そういう人たちはもちろん専任のコンサルタントになるわけではありませんから、非常勤であってもよろしかろう。それから、実際農業経営でその地方でだれしも名を知っているような、農業経営として成功しているような経営者、こういう人たちが実際に自分たちがやっているセンスから見て、いま融資申し込みをしているような農家経営はどこがまずいか、どこを直せば経営伸びていくか、そういうふうな意見をお持ちだろうと思うのです。そういう意見を率直に反映させる必要があろうかと思うわけです。もちろんそういう忌憚のない、歯に衣を着せないような意見を言うからには、それにふさわしいだけの識見を持った人が必要だろうと思うのでありまして、できるだけ広い地域から選んで、そして地域的な関係というようなものを考慮して、遠慮してものを言うというような人は選ばないほうがいいのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  それから、これだけの大規模な金を貸し付けるわけでございますから、当然担保の問題が起きてくるかと思うわけでございまして、ここで考えられておりますような担保の点での改善ということはさておきまして、さらに農場抵当というような制度というものを今後研究しておく必要があるのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  それから、今年度かりに発足したとしましても、非常に少数の一千戸というようなことが考えられておりますけれども、こういうような画期的な制度をつくるわけでございますから、何もそう効果をあせって、そうして無理に需要がないところに押しつけて貸すというようなことをしないほうがいいのではないか、むしろ徐々にこの制度というものを定着させていく必要があるのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。従来、ややもしますと制度資金の場合は、その需要を、末端から積み上げて推計してきて、必ずしも借り入れ者である農民需要を反映していないというような問題があって、間に立った人は、無理にそれを分配して押しつけるというようなことがあったというふうなことを聞いておりますけれども、そのようなことはしないで、徐々に定着さしていく必要があるのではないかと思うわけでございます。そういう意味で、私はこの総合資金制度というものは非常に意味のある制度ではないか、こう考えます。  これでもって私の意見を終わります。(拍手)
  4. 足立篤郎

    足立委員長 ありがとうございました。  次に、片柳参考人にお願いいたします。片柳参考人
  5. 片柳眞吉

    片柳参考人 御要請に従いまして、私から主として総合資金制度に対する意見を申し上げたいと思います。  今回の改正案に出ておりまするように、従来、公庫から事業種類別縦割りに出ておりました資金を、自立経営農家育成対象として総合的に融資をして、金利も下げ、また長期にわたって融資の金額も拡大されるという方向につきましては、私ども賛成をいたしておるものでございます。  また、ただいま加藤先生からもお話がありましたように、このためには、私ども系統資金運転資金としてあわせて融資をいたしませんと効果がないわけでございまして、その運転資金融資につきまして、基金協会債務保証、またその保証に対する保険協会保険対象にするというようなことも、きわめてけっこうなことだと思うのでありまして、このことにつきましては異存はございません。  ただ、私ども農協陣営では、すでに御案内のことと存じまするが、自立経営農家育成については、これはもちろん賛成でございまして、これを強力に推進していただきたいと思っておりまするけれども、御案内のように、いろいろな土地流動化その他の政策を推進されましても、やはり当分の間は兼業農家というものが当然続くのではないかという認識でございまして、したがいまして、昨年の農協大会で全員の決議をいただきました「日本農業の課題と対応」の中におきましても、自立経営農家育成はけっこうでございまするけれども、現存する兼業農家を放任するわけにはいかぬわけでございますので、専業農家中核体にいたしまして、専業農家をも包摂いたしました集団生産方式、私どもの側では営農団地という呼称で呼んでおるわけでございますが、そういうような営農団地を、当分の間はやはりこれに重点を置いて育成すべきではないかという認識でございます。  そういうようなことから見てまいりまして、今回の自立経営農家につきましても、私ども系統金融としては、当然これは協力、助力をいたすべき筋合いでございまするし、また、ただいま申し上げました営農団地育成につきましても、ひとつ今後政府なり国会におきまして、特段の推進方の御配慮をお願いいたしたいという強い希望を、実は持っておるわけでございます。  御承知のように、公庫ができましたころと比べて現在の系統金融資金量というものは、格段の相違が出てきております。農協貯蓄が、昨年の暮れには三兆六千五百億円をこしておるような状況でございまするし、今明年にかけまして引き続いて強力な貯蓄運動を展開いたしまして、明年の末には農協貯蓄五兆円にいたしてまいりたい。これは過去の二〇%以上の伸び率から見てまいりますと、五兆円という目標は決して高い目標ではないと思うのでございまして、そういうふうに組合金融資金量というものは飛躍的に増大してきておりますので、今回の措置はもちろん異存はございませんけれども、われわれのこのような系統資金を、ひとつ極力自立経営農家育成なり、またわれわれが期待する営農団地のために活用されるような御配慮をいただきたいと思うわけでございます。  現在、農業近代化資金がございますが、これを拡充、総合化することになりますれば、あるいは本案自立経営農家に対しましても、金融面でも相当の協力ができると存じますし、また、営農団地育成も可能ではないかと思うのでございまして、公庫ができましたときと現在の私ども系統金融の力が非常に違っておるような実情は、とくと御承知と思いますが、今後の問題として、そういう規模でひとつ御考慮をいただきたいと思うわけでございます。  ややこまかい点になりますが、先ほど加藤先生からもお話がありましたように、今回の資金は、原則として各府県の信連を受託金融機関として対象農家に直貸しをするということでございまして、これは本来の私ども系統金融の三段階制からしますれば、一応現実にはそれでよろしいわけでございますが、ただ、対象農家もさしあたりは一千戸というようなきわめて数も少ないわけでございますし、また、金額も八百万円というような相当大きな金額でございますので、そういう趣旨から信連から直貸をするということも、これは現実にはそれでよろしいと思うわけでございますけれども、いま言ったような、単協を全然無視して運転資金を抱き合わせ融資するということにつきましては、やはり十分なる御配慮がいただきたいと思うのでございます。対象農家の選定につきましても、先ほど申し上げましたような営農団地の中核的な存在として、他に相当PRできるような農家を選んでいただきたいと存じますし、また、今後の融資いたしました資金の回収にいたしましても、あるいは営農のための肥料なり飼料なりその他の資材の供給、またできました農産物の販売は、当然地元の単協が受け入れて処理するわけでございますので、そういう点におきまして、信連の直貸はけっこうでございますけれども、その辺は、対象農家の入っております地元の単協と十分な連絡なり協調をしていただきたいということを、特に希望いたします。また、単協等も合併によりまして相当資金量増大しておりますから、場合によっては単協の資金を、信連の了解のもとに抱き合わせ融資するということも一つの方法ではないかと思うのでありますが、いずれにいたしましても、その辺は地元の農協と特別な連絡につきまして、ひとつ御考慮をいただきたいということでございます。  それから、私ども金融という立場になりますと、やはり債権の確保、回収という点を当然考えなければならぬわけでございまして、そういう意味で、共済保険制度あるいは価格支持政策等につきましても、まだ行き渡っておらぬ分野も相当あるようでございますので、そういう点につきましても、ひとつあわせて今後対策の拡充、改善をお願いいたしたいと思うわけでございます。  これは説明するまでもございませんけれども、畜産物につきましては、鶏肉につきましては全然価格の安定対策はないのでございまするし、鶏卵につきましては、系統が自主的につくりました価格安定基金がございますけれども、必ずしもその機能が十分でないといううらみがございます。また、加工乳については不足払いの制度がございますけれども、市乳につきましてはそういうような措置がないわけでございます。この辺もひとつ十分御検討をいただきたいと思う次第でございます。  また、共済制度につきましても、これも説明するまでもございませんが、大家畜につきましては共済の対象とされておりますけれども、鶏なり豚につきましては、ほとんど共済制度がないにひとしい状況でございまして、昨今のように大規模な養鶏なり養豚が進んでまいりますと、病害というものが一番危険なことになってきておりますので、これも、技術的にはいろいろむずかしい問題はあろうかと存じますけれども、そういうような共済制度の拡充につきましても、御考慮をいただきたいと思う次第でございます。  また、青果物につきましては、これはなかなかむずかしい問題があろうかと存じますけれども、青果物につきましては、現在、価格安定対策あるいは共済保険制度は、これもまたほとんどないにひとしい状況でございまして、果樹園芸のために相当の融資はされるのではないかと存じまするが、そういう向きにつきましても御配慮をいただきたいと思うのでございます。  要しまするに、金融農政の展開に私どもできるだけ協力をいたしますけれども、しかし、やはり貴重なお金を預かって運用しているわけでございますので、債権の確保、回収に不安のないような農作物等の価格安定対策あるいは共済保険制度につきまして、並行的に御配慮いただきたいと思うわけでございます。  大体、以上で内容についての意見を申し上げた次第でございまするが、これもすでに国会等におきましてもいろいろ御高配をいただいているかと存じまするが、もちろん、公庫とわれわれ系統の金融機関であります中金等は、おのおのその所を得まして、農業のために協調的な融資をいたすべき筋と考えておりまして、そういう趣旨から、先ほどの運転資金等につきましては、できるだけ条件等も勉強いたしまして御協力もいたしたいと考えておるわけでございます。一時やや整理されたかに見えました公庫と金庫との分野の関係も、多少ダブるというような向きも出てきておるようでございまして、先ほど言いましたように、系統資金の力も相当ついてきておりまして、公庫創立当時とは非常な違いがございますので、系統の資金を活用するという点に立ちまして、公庫とわれわれ金庫がしかるべき所を得て、農業のために一緒になって融資ができるような御配慮も、今後いただきたいと思う次第でございます。  それから、これもこまかいことでございましょうが、今回の公庫融資と私どもの系統融資を抱き合わせて所期の目的が進みますように、もちろん協力をいたす決意でございまするけれども、私ども地方へ参りまして、特に北海道あたりで見ました例は、ややもしますると制度資金のほうが償還の場合に優先されて、われわれの系統資金プロパーの資金のほうがどうもあとに回されるというような、しわを寄せられるというきらいがなきにしもあらずでございまして、もちろん保険制度もおつけになりまするから、最終的には心配ないとは存じまするけれども、やはりその辺は、制度融資と私ども運転資金融資とが並行して回収できまするような、運営上の御配慮もぜひひとつ御考慮をいただきたいと思う次第でございます。  それから最後に、これもお願いでございまするが、農政がどういうふうに変わっておりまするか、私もさやかに認識いたしかねる次第でございまするが、従来の補助金行政から金融農政に転換するという行き方も、もちろん大きな一つの方向だと私は思うのでございまして、それにこたえる意味で、私ども系統金融資金量の充実、あるいは農林中金といたしましても、農業生産性の向上なり、農業の地域開発のために、今後もできるだけ最善の努力をしていきたいとは考えておりまするけれども、しかし、御案内のように、金融面一本で農政が確立をするわけではないのでございまして、やはりこれに随伴いたしました各般の政策、あるいは土地流動化でございますとかその他  の政策を並行してやりませんと――もちろん私どもは、できるだけお申しつけに従いましてそういう向きに助力をいたしたいと思っておりまするが、それにはおのずから限度もあるやに存ぜられますので、そういうような別途の並行的な農政を整備をしていただきたいというような、抽象的でございますが、そういう要望を申し上げまして私の意見といたしたいと思います。(拍手)
  6. 足立篤郎

    足立委員長 ありがとうございました。  次に、佐伯参考人にお願いいたします。佐伯参考人
  7. 佐伯尚美

    佐伯参考人 佐伯でございます。総合資金制度について簡単に私の考えを申し上げたいと思います。  総合資金制度というのは、これまでの農業金融の常識からいいますと、非常に型破りの金融であるというふうに考えられます。いろいろな意味で、これまでの農業関係制度金融のワクを大きく踏み出している。その点をやや整理して申し上げますと、この総合資金制度の形式的な特徴としては、大体次の三点にまとめられるのではないかというふうに考えます。  第一点は、融資対象の規制の方法が、これまでのように個々の物ごとの規制から、経営の総合的規制へと大きく変わったという点であります。つまり、個別的あるいは物的な融資規制から、総合的、経営融資規制へと融資規制が変わったという点であります。要するに、経営内容が一定の政策目的にかないさえすれば、そこでの資金は、使途のいかんを問わず、いわばまとめてめんどうを見る、そういう発想にこの制度は立っていると言っていいかと思います。こういった考え方は、これまで、たとえば近代化資金の中のセット融資方式であるとか、あるいは農業改良資金の中の後継者育成資金などにも部分的に見られたところでありますけれども、しかし、これだけ思い切って打ち出されたというのは、おそらくこれが最初であるというふうに考えております。そこに、まさに総合資金といわれるゆえんがあるのだろうと思います。  第二の特徴は、融資対象農家について、非常にきびしい選別を前提としているという点であります。融資を受ける農家は、この資金を使用することによって自立経営に到達し得る農家である。つまり、自立経営候補農家にきびしく限定するということを貫いているわけであります。将来この資金制度がどの程度拡大していくかということはよくわかりませんけれども、かなり大きな融資ワクを予定したといたしましても、こういった基準にたえ得る農家というのは、つまり自立経営候補農家というのは、おそらくごく一部の上層農家に限られるのではないかというふうに思います。このように、自立経営育成ということを制度の目的に掲げて選別融資を徹底させるというのは、おそらくこれが初めてであります。その意味でも、非常に画期的な制度金融であるというふうに考えられます。  第三の点は、融資限度がきわめて大幅に引き上げられたということであります。総合施設資金融資限度は、一応一農家当たりおおむね八百万円ということのようであります。しかし、これに近代化資金とか、あるいは系統資金などの形でセット融資される運転資金を含めますと、おそらく一千万、場合によってはそれをオーバーする巨額の融資が、この制度によって可能になるかと思います。現在、個人施設に対する公庫融資の一件当たり規模を見ますと、せいぜい五十万円程度にすぎない。あるいは近代化資金について見ますと、一農家当たりせいぜい三十万円前後にすぎない。そういうところから見ますと、この一千万という融資限度は、まさに日本農業金融の中では破天荒の大きさを持っているというふうに考えられます。  以上、要しますに、この制度の基本的特徴は、形式から見ますと総合資金であり、内容から見ますと自立経営育成資金であり、そうしたものとして大量の資金を集中的に融資する、そういうところに一応の特徴があると考えられます。これまでの制度金融に比べまして非常に思い切った、いわば異例の制度金融であり、それだけに、この制度が実現された場合に、それにまつわる問題点もいろいろあるというふうに考えられます。  そこで、以下問題点を大きく二つに分けまして、いわば内在的な問題点と外在的な問題点と、この二つについて若干の検討を行なってみたいというふうに考えます。その場合、内在的問題点というのは、いわば制度自体に即した問題点であります。かりにこの制度が現実に動き出したという場合に、一体その運用上の問題としてどういう点が生じてくるか、どういう点が予想されるかということを少し検討してみたい。それに続きまして、外在的問題点といたしまして、この制度日本農業の現状なりあるいは農業政策の現実なりという一般的な関連でとらえた場合にどのような評価が下せるか、あるいはどのような問題点があるかということを次に考えてみたい、そういう順序で私の意見を申し上げたいというふうに思います。  まず、第一に内在的問題点についてでありますが、これについても、こまかく言いますと幾つか問題がございますけれども、ごく大切と思われる点だけを拾い出しますと、第一点は、はたしてこの制度が実現された場合、うたい文句であります資金の総合性という点が、うまく確保できるかどうかという点であります。といいますのは、との資金制度の中には、公庫資金と系統資金あるいは近代化資金という、いわば全く異質の金融が含まれている。つまり、設備資金について公庫資金融資する、運転資金については近代化資金なりないし系統プロパー資金融資する、そういう二重構造をこの制度自身がかかえているわけであります。言ってみますと、現在の農業金融が持っております二元的な構造がそのままこの制度の中に持ち込まれ、その解決が、もっぱら融資機関の運営の問題という形にゆだねられていると言っていいわけであります。それに関連いたしまして、当然、はたしてその融資対象として施設資金運転資金がうまく一致して融資できるかどうか、あるいは融資農家の選定について、はたして両者の意見が一致するかというような、幾つかの調整問題が出てくる。それが一つの問題点であろうと思います。  それから第二の問題点は、対象の選別が、はたして政策目的にかなった形に実現できるかどうかという点であります。この点は、おそらくこの制度の最大の問題点かと思います。つまり、自立経営候補の農家とは一体何かという点であります。先ほどいただきました農林省のこの法案に対する説明によりますと、融資対象農業者としては大体四つの点をあげているようであります。  四つの点と申しますと、第一に、経営者が比較的若年であるということ、第二に、主体的な能力といいますか、意欲といいますか、農業経営の改良についての能力を持っているということ、第三に、十分な家族労働力を保有しているということ、最後に、将来自立経営に達し得ること、その四点をあげているようであります。しかし、おそらくこの程度の抽象的な規定をもってしては、現実に融資を実行する場合には、非常に困るのではないかという気がいたします。これは私の推測でありますが、この制度が実現されて実施過程になり、融資を行なうという段階になりますと、もう少し具体的な基準なりあるいは要綱なりといったものがつくられねば、おそらく実行はできないように思います。となりますと、その場合問題になりますことは、一つ農林省なりあるいは県なりによってつくられるであろう、そういった一定の営農類型なりあるいは一定の経営についての指標なりが、はたしてどこまで妥当なものとして通用するかどうかという点が、一つ問題であります。いま一つは、実際の審査に当たる関係者、たとえば信連であるとか、農協であるとか、中金であるとか、公庫であるとか、あるいは県、市町村、改良普及所、こういったところが入るわけであります。そういった介在する関係者の中で、どのような権限の分業関係を想定するのかという点であります。融資協議会をつくるということはまことにけっこうでありますけれども、この点は先ほども加藤先生も御指摘になったが、一体そういう協議会の中で、どのような相互の権限についての分業体制を想定するのか。へたをすれば、むしろ責任のすべてを全部が回避するということになりかねない。そういう点が問題になると思います。その、いま申し上げました二つの問題の扱い方いかんでは、これまでもしばしば指摘をされたような、行政による一方的な押しつけになる可能性が多分にあるのではないか、そういうおそれが多分にあるのではないかというふうに考えます。  それから第三点といたしましては、担保の問題についてであります。施設資金八百万円という非常に巨額の資金融資するという場合、当然これに見合う担保をどう考えるかという点が問題になってきます。その点に関連して言いますと、当初、いわばこの制度とセットに考えられていました農場抵当制度が見送られてしまった。わずかに農業動産信用法改正が実現されるという話でありますが、かりに農業動産信用法が改正されたといたしまして、この程度の改正をもってしては、とうてい所要の担保をまかない得ないのではないか。その点は、これまでの経験からいって火を見るよりも明らかだというふうに考えます。従来も公庫融資については、非常に形式的な担保主義を貫くという批判が強かったわけであります。担保がなければ公庫資金は貸さぬ、これはけしからぬではないかという考え方がかなりあった。これだけ巨額の資金をつぎ込むということになりますと、それだけリスクが大きく、窓口担当者はますますそうなる可能性があるのではないか。そうしますと担保の問題がネックになって、資金が流れないということも起こりかねないのではないかという感じをいたします。  それから第四点は、融資コンサルタントの問題であります。当初の構想では、この制度のメリットとして営農指導と融資の一体化という点が非常に強調されていたようであります。その一環として融資コンサルタント機能の活用がうたわれていたのであります。おそらくそういった発想は、自立経営育成資金のいわば模範でありますアメリカのFHA金融農家更生資金の模倣といいますか、それの発想を非常に強く受け継いだというふうに考えられます。  ところが、最終的に落ちついた案を見ますと、融資コンサルタントとしては公庫の本店にわずか三名の融資コンサルタントを置くということになったようであります。どう考えてもきわめて中途はんぱでありまして、この程度の規模のもので、はたして何をやろうとするのか。かりに一千戸程度の融資ということを考えましても、本店にいる三人でもってはたして何をするのかということが、非常に不明確であります。その点はもっと詰めていきますと、そもそも融資コンサルタントというようなものが、日本農業の中で必要なのかどうかという点にもつながるわけでありますが、ここに一つの問題があるというふうに考えます。  第五点といたしましては、この制度ができました場合に、はたして現在あります他の制度金融との区別がうまくつくのか、あるいは逆に言いますと、下部でかなり混乱が生ずるおそれがあるのではないかという点であります。この制度考え方としては、自立経営候補農家についてはすべてこの総合資金でめんどうを見る、他の資金は一切貸さないということになるようであります。しかし、はたして現実に農家をうまくそういうふうに峻別することができるかどうか。たとえば、土地改良資金融資するという場合どうするか、あるいは近代化資金融資する場合どうするか、こういうふうに考えていきますと、実際の農家段階においては、結局さまざまな資金ルートが錯綜して、無理にそれを押えると、かえって混乱が生ずるおそれがあるのではないかという感じがいたします。その点からいいましても、やや問題が起こる。  以上述べましたところが、いわば内在的な問題点であります。  次に、外在的な問題点といいますか、あるいは一般的な評価といいますか、それについて若干の点を指摘したいというふうに思います。  まず第一の点は、自立経営育成政策の推進という点から見て、この制度というのは手順が逆になっているのじゃないかという感じがいたします。西ドイツの場合にもそうですし、フランスの場合もそうですけれども、構造政策を展開する場合、まず目標とすべき経営内容あるいは経営類型を想定して、その上で施策を集中していくという形をとるのが構造政策の普通の手順であります。ところが、現在想定されている資金制度の場合逆になりまして、この制度ができたにかかわらず、国全体として目標とすべき農業経営なり自立経営をどのようなものとして設定するかということが、依然として不明確であります。まだ構造政策目標は、個別経営か協業経営か、あるいは個人的な農家を考えているかそれとも集団経営を考えるかというような、抽象的な議論が繰り返されているありさまであります。どうも、やや勘ぐって考えますと、やっていくうちに考えよう、あるいはどうにかなるだろう、やっていくうちにだんだん目標が固まるのではないか、そういったあいまいさでもって制度がつくられようとしているのではないか、それでは政策としてはやや無責任過ぎるのではないかという点が第一点であります。  第二点は、以上に関連いたしまして、政策全体の問題として、構造政策全体の中で、この制度の位置づけをどうするかという点が明らかでないということであります。構造政策が農地政策であり、あるいは後継者政策であり、あるいは技術政策であり、それらを含めた総合施策として展開されなければならないということは、すでに常識化しているわけですが、実際には他の政策が一向に進まないで、もっぱら金融独走の形を強めているというのが現状でございます。いわばこの総合資金制度というのは、孤立化した自立経営育成政策となる危険性が非常に強い、その点が第二の問題点であります。  第三の点は、これはさしあたりの問題ではございませんけれども長期的に見た場合に、制度金融の体系をどう考えていくのかということを、やはりこの際一ぺん振り返っておく必要があるのではないか。現在、さしあたり四十三年度については二十億円前後の融資規模でございますから、さしたる問題にならないといたしましても、将来この資金がかなりふえていく、場合によっては二百億なり三百億なりというふうにふえていくというふうに考えました場合に、一体制度金融全体のシステムといいますか、体系をどう考えるかという問題が、当然出てこざるを得ない。つまり、制度金融の中にはこういった総合資金のような、経営中心的な発想を持った資金――これまでの公庫資金の大部分、近代化資金もそうですけれども、物中心の発想を持った資金とこれが混在する、その二つを一体どういう形で統合していくか、あるいは位置づけていくかということが、将来の制度金融全体の問題として提起されるかと思います。以上、いろいろ問題点を指摘いたしましたが、結論として言えば、私はこういった方向には賛成であります。発想といたしましては、この制度はきわめて斬新であり、少なくも農業の将来、将来の農政の基本線に沿った形で打ち出されておる、その点については評価するのにやぶさかではないわけでございます。ただ、実際問題といたしまして、それを取り巻く現実の農業の状態であるとか、あるいは現在の農政の姿であるとか、あるいは農業金融の実態であるとか、そういった点に照らしてみますと、まわりの条件があまりにも弱体でありへこの制度をささえるだけの条件が熟していないのではないかという感じがいたします。その点でやや理論倒れといいますか、この制度は先走り過ぎている、そういう印象はいなめないわけであります。もしこの制度が当初の発想どおりに動かなかったとしたら――私はその公算はいまの条件のもとにおいてはかなり強いというふうに考えます。かりにそういうふうになったといたしますと、これはおそらくこの制度自身の問題というよりは、むしろそれを取り巻く農政全体のあり方のほうにより大きな責任があるのではないかというふうに考えております。  ごく簡単でありますが、以上で終わります。(拍手)
  8. 足立篤郎

    足立委員長 ありがとうございました。  これにて参考人の御意見の開陳は一応終わりました。     ―――――――――――――
  9. 足立篤郎

    足立委員長 これより参考人に対する質疑に入りますが、片柳参考人はやむを得ない所用のため、正午までに退席されたいとの申し出がございますので、まず片柳参考人に対し質疑をされたいと思います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。角屋堅次郎君。
  10. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 あと十五分のうちに片柳参考人に、私はもちろんですけれども、後ほどの人もしなければならぬわけですから、多くのことをお伺いするわけにいかない。まあ時間を節約する立場から、数点一括申し上げて、それに対してお答えをいただく、こういう形式をとりたいと思います。  今度出されました農林漁業金融公庫法の一部改正の三参考人の御意見では、市場関係融資の新設問題については、いずれもお話が特になかったかと思う。しかし、これは総合資金制度の問題と同時に一つの柱であります市場問題ですけれども、これについてここであらためてお伺いしようとは思いません。これは委員会の質疑を通じてやるということにいたします。後ほどそれぞれの人から、片柳さん去ったあとまたあると思いますけれども、私もその点、若干またあとのお二方には触れたいと思います。  片柳参考人からお触れになりました、そしてまた前々から問題になっております制度金融系統金融の交通整理問題、これは内容に入りますと相当ありますが、少なくとも、やはり公庫と中金が第一線の生産農家のための資金融通について、十分連携をとりながらやっていくということが、従来以上に必要になってきておると思うのです。そういう姿勢で、もちろん新しく中金理事長になられた片柳さんはやっておられると思いますけれども、かりに総合資金制度が発足するということになりますると、先ほど来それぞれの参考人からもお話しのように、いわゆる公庫からの施設資金が出る、それにタイアップして農業近代化資金なり、あるいは系統プロパーのものが運転資金その他の形でセットされるというふうな構想でありまするから、その面から見ても、従来以上に連携をとらないといけない必要があると思います。そういう点については、これからどういう考え方で行かれようとするのか、交通整理の基本問題ということについても、御意見があれば承りたいと思います。  それから、先ほども片柳参考人からお話しのように、いわゆる県信連の直貸方式というのをたてまえにしながら、農林経済局長との従来の質疑の過程の中では、単協の問題を全然ネグレクトして考えようとは必ずしも思っていませんということであった。ただ、第一線の農協段階の空気は、経済局長の判断でいくと、まだまだそういう態勢、あるいはそういう空気にもなっていないように思うということ等もありましたが、それは農協の合併が相当進んで大型化していく、資金の点についても、先ほど触れられたように、系統内部で大量の農家の預貯金を持つという段階等の中で、先ほどは簡単に触れられましたけれども農協等を含めて、県信連の直貸しをたてまえとしながらも今後総合的にそれをやる、単協もそれに動員をしていくという場合に、いま直ちにこの制度が発足した場合に、全体的な受け入れ態勢というものがあるかどうかという問題についても、さらに御意見を承りたいと思います。  それから、何といっても優等生農家あるいは優等生候補農家を選別しながらやっていく。先ほど営農団地問題に触れられましたけれども、その場合に、やはり金融ばかりではなしに、もちろん農政全般としては、価格とか流通とかいろいろ総合的な施策の問題がありますが、それ以外に、いわゆる融資対象農家に対する経営技術を含めた総合指導というものが当然必要になってくる。その場合に、系統団体あるいは中金としてはどういうタッチのしかたを考えておられるのか。公庫の場合に、例の三名のコンサルタントの問題が参考人から出ておりましたが、また議論にもなっておりますが、いわゆる中金というのは系統といわば一体の関係ですから、系統の関係も含めて、どういう姿勢で、いわば総合指導という面で考えておられるかという点をお伺いしたいと思います。  それから、絶えず農林中金問題を議論する場合に、従来でも国会で議論のありましたのは、御承知のとおり、生産農家の血と汗の結晶の預貯金というものが系統外に相当流れている。いわゆる農業関連産業という形において融資がされている。たまたま共和製糖グループというような問題が相当大きな政治問題に発展して、中金の責任を問われる、あるいは公庫の責任を問われるというふうな問題等も発生したわけであります。時間もありませんけれども、ああいう問題の発生を契機にして、いわゆる農業関連産業に対する融資に対して、公庫の場合もあるいは中金の場合も、従来どこに欠陥があり、どういうあやまちがあったのか、それをどういうふうに直していこうという姿勢で現在取り組んでいるのか、この点については若干項目的な内容に入って、えりを正して、そういうあやまちの再び起こらぬ体制を確立しておるのかどうかというふうな点について、率直にひとつお話を聞かしていただきたいと思います。  それから、これはいずれ他の参考人にもお伺いしようと思うのですが、佐伯参考人からもお話がありましたけれども、八百万、あるいは運転資金を含めて、場合によっては一千万をこえるということになりますと、担保問題というのがどうしても基本問題の中にはある。後ほど国際的な、いわゆる農地担保等の問題については他の参考人にお聞きをしたいと思いますけれども、そういう農地担保等の問題を含めて、担保力の強化問題ということについて、中金の立場から、今後の発展方向をどういうふうにお考えになっておられるかという点について、ひとつ御意見を承りたい。  たくさんありまするけれども、時間の関係もありますので、以上の程度にとどめます。
  11. 片柳眞吉

    片柳参考人 お答えをいたします。  まず最初の、公庫と私どもの、まあ交通整理ということばが使われたわけでございますが、その問題は、先ほど抽象的に申し上げまして、おのおのそのところを得せしめて協調していきたいというような表現をいたしたわけでございます。それではなかなか御了解がむずかしいかと思いますが、一つには、先ほど言ったように、公庫ができましたときと、現状のわれわれの系統の資金量は非常に違っておりますから、そういう客観情勢の変化というものを、やはり私どもは正しく認識をしていただきたいということと、それから、私の記憶によりますると、当初の公庫資金というのは、財政資金公庫を通じて出るという分野が相当多かったと存じまするが、現在では、もっぱら国の利子補給で公庫資金をやっているというところも、当初と違ってきておるのではないか。私どもの系統のほうには、先ほど言ったように、相当の資金量がございまするので、同じ利子補給ということでございますれば、やはりわれわれの系統のほうにも利子補給をして、せっかくの五兆円の貯金というものが、有効に農業に還元融資をされるということを、私どもは考えてよろしいのではないかというふうに考えておるわけでございます。もちろん、相当の定期預金なり農林債券発行等いたしておりまするから、資金の性格からも、ある程度長期融資はできる筋合いだと思います。  ただ、公庫と比べて、同じ程度の長期融資ができ得る資金の裏打ちがあるかといいますると、多少その辺にはハンディはあるのではないかということでございますが、そういうような客観情勢の変化と見合って、はなはだ抽象的でございますが、両者の分野調整というものも、私どもも考えていきたいということでございまして、やや抽象的でございますが、御了承いただきたいと思います。  それから、単協を無視して、今回の公庫資金なり私ども運転資金融資は、それはいけないことだということは先ほど申し上げたとおりでございます。したがって、具体的には、単協の意見をどういうふうに反映さしたらいいかということは、今後農林省なり公庫ともいろいろ御連絡をいたしたいと思っておりますが、いまここで考えつきましたことは、各府県の協議会等でいろいろ協議をされる場合には、対象農家関係する組合長等は、当然その会議に参画をして十分意見を聞くというようなことも、一つの方法ではないかとも思いまするし、要するに、単協を無視してはいかぬということは、先ほど申し上げたとおりでございます。  それから、対象農家を信連が直接、これの総合指導はなかなかむずかしい。(角屋委員「農業団体も含めて、両方含めてちょっと意見を聞きたい」と呼ぶ)ああ、そうですか。総合指導の点でございまするが、私どもではいまテストケースでございまするけれども、岩手県と宮崎県には、農業金融センターとか農業経営相談室というのを設けまして、信連と一体となりまして、酪農なり果樹等の営農指導をやりながら、それに即した金融をやっておるというような状況でありまして、各県の御要望なり準備ができてまいりますれば、そういう行き方を漸次拡充をしてまいりたいということが一つ考え方でありますし、それから、各支所に全部これを配置することは困難だろうと存じますけれども、たとえば、九州の博多の私のほうの支所のように、酪農なり果樹なりあるいは林業等の専門家を各連絡所には配置をいたしまして、それが管内のそういう向きにそれぞれの指導に回るというようなことも、一つの方法ではないかと思っておるのであります。  しかし、やはり結論は、単協があくまで営農指導の責任は持つべきではないかと思いまして、そういう意味の関連で、今回の融資については、単協の意見を事前にとくとお聞きをするということが根本ではないか、こういうふうに考えております。  その次の、中金の関連産業融資等についての御指摘でございますが、これは私も一昨年の暮れに参りまして、ともかくああいうような問題の善後処置、具体的に申し上げますれば、融資はすでにされてしまったあとでございますので、この債権の回収管理にともかく全力を尽くすということ、それから、今後再びさようなことが起きないように機構の整備と、われわれの心の持ち方についてできるだけの努力をいたしておるつもりでございます。  大体問題の点につきましては、いろいろその後努力をいたしまして、大体の見通しもつきつつあるような状況でございますが、私の行きましたときの感じは、お話のございましたように、農山漁村の血とあぶらの結晶である零細な、貴重な金を預っておるという意識が、どうも欠けておるのではないかということを痛感いたしております。具体的に言いますれば協同組合精神、私どもが農山漁家に奉仕をするという意識が、どうも希薄な感じがいたしましたので、私は、就任当初も強くこれを部内に訴えた次第でございますし、また全職員に対しまして、そういう向きを望むという、このくらいのパンフレットをつくりまして、これを配付をいたしまして、東京の職員には直接私らも、要するに、バックボーンとして協同組合の精神を常に持っておれば、そういうようなことは起こらぬであろうという趣旨を強く申し上げているわけであります。  また、具体的な内部機構といたしましても、中金法の法律の問題にも若干、これは今後触れていくことだと思いますが、法律上は理事長ワンマンというような体制にもなっておるようでございます。しかし、それではならぬわけでございますので、もちろん、最終責任は私に帰属するわけでございますが、たくさんの理事なり、部長なり、課長なり、支所長なりがあるわけでありますから、それに権限を正式に委譲いたしまして、その範囲内で責任をもって仕事をやってもらうという、そういう権限の明確化をはかったということが第一点でございます。  それから、関連産業融資も五千億というような相当大きな融資でございまして、一般金融機関に匹敵するような融資の実態でございますので、したがいまして、まず関連産業融資部門を拡充いたしたわけであります。従来、農業関係は相当の関連産業がございますが、これが一つの部でやっておりましたものを二つの部に分けまして、融資分量の適正化をはかったということが第一点でございます。それからもう一つは、審査機能を特に強化をした点でございます。どの金融機関におきましても、融資の部とこれをチェックする審査部がありまして、両方の意見が合わぬ限りは融資ができないということでございますが、従来、その審査機能が非常にウイークな感じがいたしたのでございまして、したがって、融資部でいいと言いましても、審査部でノーと言う場合には絶対貸し付けはできないという意味のダブルチェックのシステムを確立いたしました。また企業の将来、しかも、こういうような国際経済の影響を受ける企業の将来でございますので、そういう企業の将来の見通しなり判断等についても、専門的な知識なり勉強をいたしたい意味の、そういう課も設けたような次第でございます。要するに、機能のそういうような全体の知識経験を活用して、誤っておること、間違ったことが防止できるような内部体制を整備いたしていく。それから、何としてもやはり心の持ち方ではないかと思うのでございまして、農山漁家に奉仕するといいましても、単協、信連の上にある中金でございますから、ややもしますると、そういう意識が希薄になりがちでございますので、そういう点は引き続き、要するにバックボーンとしては常に農山漁家に奉仕をするという意識を忘れないということは、今後常に堅持してまいりたいと思うわけでございまして、今後はそういうことは絶対に起きないように最善の措置を講じまして、責任をとりたいと思います。  それから、担保問題につきましては、現在まだできておりません農産物の価格安定政策なり、あるいは共済保険対象の拡充ということで申し上げたわけでございまするけれども、概して私のほうの運転資金につきましては、やはり系統販売というような、農産物がその農協を通じて共販されるというような、やはり農協本来の機能をリンクしていくことが、一番担保としては有効ではないかと思うのでありますが、しかし、先ほど言ったような自然を相手の農業でございますので、共済保険なり価格の安定の面につきましても、今後ひとつ御高配をいただきたいということでございます。
  12. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 あとに質問を残します。
  13. 足立篤郎

    足立委員長 神田大作君。
  14. 神田大作

    ○神田(大)委員 もう時間がないようですから、簡単に御質問申し上げます。  実は、この農村金融については相当問題がありまして、十分や二十分ではどうしてもこれは無理なことだから、委員長、ゆっくりやはりこの問題を掘り下げる機会を今度つくってもらいたいと思う。十二時に帰りますと言われたのでは、こっちも悪いような気がするからやれませんので、ひとつそういう機会をつくっていただきたい。
  15. 足立篤郎

    足立委員長 まことに恐縮ですが、きょうはひとつポイントだけをお願いいたします。   〔委員長退席、鹿野委員長代理着席〕
  16. 神田大作

    ○神田(大)委員 片柳さんは遠慮深く申されましたが、公庫金融組合金融とが、最近では、公庫金融のほうが農村金融の大宗をなして、組合金融が押しやられているようなかっこうになってきつつあって、だから膨大な資金を持って、結局、ほかのほうの融資にあせっていくからああいう間違いが起こるのであって、それだけの資金量を持っているのだから、これを政府は、先ほども申されましたように、利子補給金なりを出して、これを十分に活用する方法をとるべきだと思うのです。これは政府においてもよくお考えを願いたいと思うのですが、この点について、農林中金としては、非常にそういう点で公庫との関係において困っている点があるだろうと思いますが、その点、ひとつ率直に御答弁願います。
  17. 片柳眞吉

    片柳参考人 いま神田先生の御指摘の線で、できるだけ今後も勘案してまいりたいと思っておりますが、具体的に申し上げれば、いま問題になっておりますこの公庫資金と系統の近代化資金とは、全部ではございませんが、相当重複をしておる点があるわけでございまして、運用面でそれは適当な調整はしておりまするけれども、この辺も本来からすれば、権限が重複してもいけませんし、また空白ができても困るということでございますので、この辺は、ひとつ組合金融の実力に応じて、率直に申し上げれば、逐次近代化資金というものを拡充してよろしいのではないかという私、個人の考えであります。
  18. 神田大作

    ○神田(大)委員 それから今度の総合融資でもって、単協を一応書類上は通るか通らぬかわからぬが、信連が貸し付けの責任者になるようでありますが、これも先ほど片柳さんが遠慮深く申されましたが、私は、これは大きな間違いだと思う。系統金融、たとえば農業協同組合の育成強化の面からいっても、単協をないがしろにして、二段階の信連を通してやるというようなことは、これは単協の経営面から申しましても、またその機能から申しましても、これはいままでかってないことですね。いままでの金融でもって、単協を通さずして信連でやるということはない。単協が直接の機能がないという場合には、信連がかわってこれを行なうということはありましたけれども、初めから信連を通して、単協はただ書類だけ、申し込みだけをとるというような、こういう制度組合金融をそこなうことになりますし、農協運動をそこなうということにもなります。農協運動というものは、単協が強くなって初めて農協の力というものが出てくるのですね。単協を弱めるようなそういう金融のやり方は、われわれは絶対に承服できない。その点について、系統機関の重大な責任者である片柳さんも、これからの農協運動の立場に立って、正しいあり方を指摘してこれは調整してもらいたい、こういうふうに考えるのですが、重ねて御説明を願います。
  19. 片柳眞吉

    片柳参考人 この辺は、先ほども申し上げたのでございますが、単協あっての信連であり、私どもの金庫でございまするから、基盤である単協を無視するわけにはいかぬわけでございますので、今後の運用のしかたは、とくと農林省なり公庫と打ち合わせをしていきたいと思っておりますが、あるいは妥協的なところがあるかもしれませんが、信連から単協にさらに委託をする。これは私ども、単協が相当の資金量があって、単協の資金運転資金として活用できる場合には、それを優先的に活用していいのではないか。その辺は、ひとつ信連と単協でよく話し合いをいたしまして、やはり単協の機能をできるだけ活用できるようなときには、農林省なり公庫と今後も、具体的な要綱等の問題でございますので、全部御趣旨に沿うかどうかわかりませんが、考え方としては、単協あっての信連、中金であるという意識は同感でございますので、そういう線で、今後できるだけ折衝していきたいと思います。
  20. 神田大作

    ○神田(大)委員 時間がありませんから、これでけっこうです。
  21. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員長代理 片柳参考人は用事があるそうですから……。どうも御苦労さまでした。  それでは引き続きお二人の参考人に質問を続けることにいたします。中村時雄君。
  22. 中村時雄

    ○中村(時)委員 加藤先生佐伯先生には、実は貴重な時間をいただき、また御高説を拝聴し、ありがとうございました。私も、この金融制度そのものは、これは一つの大きな意義を持つものだ、こういうふうに考えておるわけなんです。しかし、実際問題として、いままでの農業政策の上から見ますと、へたをするとこの金融制度そのものが孤立をしていくようなかっこう、そういう傾向が出てきはしないか。あるいはその結果として地方において、金があるからというので、在来行なわれているような強制的な姿になって運用されてくるおそれすら出はしないか、こういうことを危惧するわけなんです。  御承知のように、農業基本法ができて以来構造改善、その後進んで構造改善事業、それから今般の構造政策、こういうふうに三段階に分かれて、そのつどそのつど失敗の結果がこういう生まれ方をしてきておる。そして今度の構造政策の中においては、やっと土地問題に手を入れてみようとか、あるいは酪農振興を中心に考えてみようとかというような姿の中から、その一つの別ワクとして、ワンセットとしてこういう金融制度をつくってみようじゃないか、こういう方向に生まれてきたものだろうというふうに推定できるわけなんです。  そこで考えられるのは、少なくとも農業というものは、土地と資本と労働、こう考えられてきた場合に、資本という金融制度だけは前向いた。ところが、それに伴うところの土地条件というものは、依然として放任主義のようなかっこうになっておる。かりに今度の土地制度ができたとしても、おそらく流動化されていく、わずかな数量のものがその対象になるのではないかと思われる。そうすると、土地制度への根本的なメスは入っていないと見るべきではないか。片方ではそういう条件があって、もう一方のほうではいま言った構造改善事業をやってきた。実際は専業農家をつくろうと思ってやってきた。その一つの例が農地管理事業団である。戦艦大和が前向いたけれども、付帯的なものが何もないから撃沈してしまう。そういう形になって、何一つとしてその効果は生まれてこなかった。そうすると、労働のほうも専業農家をつくろうといいながら、実際兼業農家のほうがぐんぐん前向いてしまっておる。にもかかわらず、この制度をまた取り上げようとする。おそらくいまのような考え方でいくと、やはりある特定の連中が中心になってしまって、そして実際の兼業農家ではなくて、専業農家中心にものを考えていかざるを得ないという立場からこれが生まれてくるのではないか、こういうふうに考えられてくるのです。  私が、どうしてそういうことを危惧するかというと、先ほど佐伯先生もおっしゃられたように、これに対する条件ですね。この条件が、若い層、あるいは能力のある者、あるいは家族労働がちゃんとできている者、将来農業として自立ができる者、そういう条件が基本的になってきておる。そうすると、いまの土地条件を当てはめてみた場合に、実際に一家族五人の労働量を最高に見ても、自分だけの力によって完全燃焼の労働はできないと思うのです。そうすると、労働の生産性の向上というものは、何らか別の角度で取り上げなければならぬという基本的な課題が出てくると思う。その基本的な問題との関連なくして、この金融制度だけを前向かしてしまったならば、先ほど言った孤立するかっこうになって生まれてきはしないか。孤立すると、せっかく制度をつくったものですから、どうしてもこれは何とかしなけならぬということになると、強制的な姿がまた生まれてくる、こういうふうに私は考えられるおそれがあるわけです。このおそれが、ただおそれだけで済めばけっこうです。ところが、過去の農林省における農業政策の基本というものが、関連性が総合的にできていないから、やはり依然としてそういう危惧を私は生むわけなんです。そういう立場で両先生の、これが危惧で終わるかどうか、ひとつ推察を御答弁願いたいと思うのです。
  23. 加藤讓

    加藤参考人 お説のとおりだと思う点は十分あると思うのです。しかし、私が申しましたように、現在全部が兼業化するような動きを示しておりますけれども、ごく少数農家は、非常にやる気を持っているのではないか。それから、農地の流動化は非常に大きな問題ですけれども、これもだんだん流動化しつつあるという傾向もある。たとえば、北海道は内地に比べて流動化の率が高いとか、それから東北あたりでは、最近ブルドーザーとか、水を揚げるポンプアップの技術というものが進みまして、かなりの平たい土地で何百町歩もあるようなところが、どんどん開田が進んでいるというようなことがあるのではないか。さしあたっては、初年度は一千戸というようなことですから、県で割ってみますと一県あたり二十戸というようなことになるわけですから、そういうふうな農家がないわけではない。  それから、少数であるからといってこの制度が必要ではないという理由はないということを私が申しましたのは、経済の発展というのはみんな並行的に、同時に同じテンポで動くのではなくて、まず進んだ農家が動いて、それがサンプルになって波及していくのだ。実際の経済の発展というのはそういうものではないか。そういう意味で私が御紹介しました、たとえば神谷教授計算結果で見ますと、農家の戸数が百二十万戸というように減ってきて、そうして専業農家というは十六万戸ぐらいですか、そうしてそれの一戸当たりが、もし第一種兼業農家、第二種兼業農家というものの農家経営規模が現在程度であるとして、そうして耕地を全部利用するとすると、そういう専業農家は、一戸当たり三十何町歩というような大農家になってくるというような計算になっておる。現在の動きというものを単純に引き伸ばしていくと、すでにそういう大きな潮流があるということです。そういうときがきたときに、あわてて新しい制度をつくってもうまくはいかないので、いまからやはりそういう情勢に備えて、そのときの日本食糧の自給体制というようなものを考えた上で、こういう制度というものはやはり重要な意味があるのではないかということを、私は申しておるわけであります。
  24. 佐伯尚美

    佐伯参考人 ただいまの御意見のとおりでありまして、私は危惧があるというよりも、むしろもっと強く、そういう可能性がかなりあるのではないかというふうに考えます。お答えはそれだけで済むのかと思いますけれども、それに関連して若干の私の意見、感想を述べてみたいと思います。  一つは、総合資金制度に限りませんけれども、最近の政府制度金融のいじり方が、ややショートタームに過ぎるのではないかという感じがいたします。金融というのは、おそらくその一つ制度ができました場合に、その功罪というのは、十年ないし二十年をたってみなければわからぬのではないか、そういう性格のものであると思います。ところが、最近のように金融農政が非常に突っ走りまして、ほとんど毎年のごとく制度金融が少しずつ変わっていくというのでは、どうも金融として一つ制度の功罪が定まらないうちに新しい制度ができて、全体としての体系なり政策的なねらいがますます混乱していく、そういう形におちいっていくのではないかという印象が強いわけです。  もう一つの点は、おそらくいまの御質問に関連したことになると思いますけれども日本の場合に、構造政策というのをどう考えたらいいかという問題に関連するわけです。といいますのは、私の率直な印象を申し上げますと、どうも日本で構造政策とかあるいは構造改善といった場合、これまでのところは、あまりにも西欧模倣的なイメージで言われ過ぎているのではないか。つまり、西ドイツなりフランスなり三十ヘクタールの経営ができるとなるとそこにしぼっていく、そういうイメージを直ちに日本農業に押しつけて、日本の構造政策はそういった自立経営育成である、自立経営というのは十町歩である、そういうイメージを考えられ過ぎているのではないかという気がいたします。しかし、現実からいいますと、そう簡単に日本の場合十町歩なり二十町歩という経営が、個別農家としてできる可能性はない。おそらく十年たってもできないのではないかと思います。  したがいまして、かなり具体的に言いますが、農業の類型別にあるいは地域別に、たとえば畜産の場合ですと、個別経営規模拡大ということで自立経営の発展ができる。しかし水稲の場合には、おそらくそういった形で自立経営ができるという可能性はいまのところない。むしろ個別経営規模拡大もけっこうですけれども、それと同時に新しい協業組織といいますか、社会的な資本、そういったものが基本的な政策だけをバックアップしていく、そういう二重構造の中で自立経営的なものをつくっていく、そういうふうに考えなければいけないと思います。もちろん、いろいろな作物によって違いますけれども、そういう形でもって日本の現実に即した自立経営目標を設定しないと、どうも抽象的な議論倒れになってしまう可能性があるような印象を持っております。  それからもう一つの点は、自立経営育成政策とか構造政策というのは、いわば総合政策でありますから、総合政策としての各政策のバランスがなければいけないのだと思うのです。ところが、いまの状態で考えますと、総合資金制度が非常に思い切った形でもって突っ走ろうとしておる。ところが農地制度なりあるいは労働力政策なり、あるいは技術政策というものが、むしろかなりおくれているという、そういうアンバランスが非常に大きいのではないか。構造政策を進めることは賛成ですけれども、そういったいろいろな手順なり目標なりを具体的に考えなければ、どうもうまくいかないのではないかという印象を持っております。
  25. 中村時雄

    ○中村(時)委員 いま加藤先生のおっしゃった、たとえば土地の流動化の問題、そういうことはよくわかるのです。あるいは経済におけるところのそういう専業的な一つの取り上げ方、それもわかる。ところが、先生のお話を聞いておりますと、要するに兼業農家専業農家というものとどちらにファクターを置いてきっちりと当てはめようという考え方を持っていらっしゃるかどうか。  それからもう一点は、農業というものは一つの周期があるわけです。ある時期からある時期まではとれない。その間というものは、やはり資本利子というものは寝かさなければならない。そういう周期がある上に持ってきて、自然を対象にしているから非常に危険性を伴っているわけです。だから、その危険性の伴っている農業に対して八百万円なら八百万円の投下をしていくわけですから、そうすると、それに伴ってのいまの担保物件の問題、先ほど角屋君もちょっとおっしゃいましたけれども、そういう問題が非常に大きな問題として出てくると私は思うのです。そういう立場をとると、やはり特定の人たち中心になるようなおそれすら生まれてくるのではないかというふうに考えられるのです。  そこで、たとえば土地の流動化といいましても、これは東北、北海道が中心であって、ほかの地域というものは微々たるものなんです。そういうような観点から、集団農場的な一つの構想を先生は持っていらっしゃるのじゃないか、いまのお話の中から私はこういうふうに受け取ったのです。そういうふうな面もからんで、政府のほうの考え方としては、一応専業農家をつくっていきたいという基本条件を持っているに違いない。ところが、実際片一方のほうで兼業農家を認めるという行き方をとるなれば、当然それは集団農場の方式の形態が生まれてくるであろう、こういうふうに考えられるわけなんです。集団農場をやろうとして、今度は一つの、何といいますか、組み立てによってやってみようという制度ですか、そうした場合に、いま言ったように、一つの周期、自然を対象にする危険性、そういう立場において考えていくと、どうしてもその中には特定のものがやはり中心にならざるを得ないのじゃないかというふうな第二点の疑問が生まれてくるわけなんですが、これに対してどういうお考えでしょうか。
  26. 加藤讓

    加藤参考人 第一の点なんですけれども専業農家兼業農家というものと、はっきり二つ階層が分かれておりまして、そして土地は別としまして、農業に雇用されている労働にしましても、資本にしましても、生産性は大規模専業農家のほうが高い。そういうわけですから、もし農業における資源の流動化が進みまして、そして専業農家のほうにそれが集中するならば、与えられた資源においての生産というものはますます増大するわけです。これはやはり食糧価格の問題あるいは需給の問題からすると望ましいわけです。  それでは兼業のほうはどうするのかといいますと、私が最初に申しましたように、道路をよくしまして、そして兼業農家が家庭での食糧の自家飯米とかあるいは家庭菜園程度のものはやる、しかし所得の大半は農外所得として、都市に通勤することによって得るというふうな機会をつくれば、そういう土地持ち労働者としての社会的な安定性というものは、農業の持っている重要な機能でございますが、それは十分保持されるのじゃないか、こう思うわけでございます。そういう意味で、やはりこの制度は、特定の農家層をねらったものであるということをはっきりしておく必要があるのじゃないか、こう思うわけであります。  これは事実問題として、現在の農業労働者の動きというものを引き伸ばしていきますと、将来そういう事態がくるということを考えた上で、いまからそれに備えなければならないだろうと言っておるわけでございます。たとえば、農林省の生産費調査なんか見ましても、あるいは乳牛なんかにしましても、一頭、二頭、三頭というように、最初は五頭どまりで、五頭以上ふやすと、一体どの辺で生産費が下がっていって、どこでまた再び上がるのかどうかというような見通しは全然なかったわけでございます。わが国の畜産というものの歴史が浅いからです。それから同時に、いままでは産業としての農業として考えられなかった、もっぱら就業としての農業、雇用の場として考えられたということから、あまり大規模経営ということに念頭を置いてないために、そういう調査統計費料というものも不整備であった。しかし、今後の経済の過程で、そういう大規模経営によって生産費を安くしなければならないというような立場に立って、そして五頭以上という一括してやっているのをブレークダウンしまして、それでいきますと、またあと十何頭くらいですか、さらにそこら辺が生産費が下がっていくというふうなことがわかったわけでございます。そういうふうに、わが国はおしなべて現在零細経営なんですけれども、一体日本農民の能力、つまり優秀な能力を持っている農民、その中でも、特にすぐれてやる気のある若い後継者のあるところが、一体どのくらいの規模まで拡張し得るかすらわかっていない。それは、一つ制度が整備されていないという点にもあるのではないかという意味で、非常に長い視点に立って考えるという、政策というものはやはりそういう要素を持たなければならないと思うのです。  ところが現在は、第二点になりますけれども、圧倒的多数が兼業農家でございまして、現在の物価騰貴の情勢のもとでは、インフレヘッジとしてやはり農地を手放さないということがありまして、そして兼業農家も、やはり農地を手放さないで保有しておるわけであります。そして農地を委託に出す場合でも、オペレーターなどの技術を持っている人たちに対する支払いは非常に渋くて、そして地代に対する要求が非常に高いという状態でございます。ところが、第二種兼業農家の中でも、若いときから出ておって、そしてそこでかなり長期の期間にわたって農業以外の会社に働いている場合には、だんだんそこで、やはり年功序列で給与水準が上がってきますと、そのうちに農業に帰ってくる意欲がなくなる。帰れるだけの体力がなくなる。同時に、そこにおける所得水準が上がるわけですから、地代に対して期待する報酬というものも、現在のように、それほど高いものでなくなるであろう。そういうふうになった場合に初めて、それらの人から委託された土地を引き受けてやっている人たちが、満足できるような高い報酬でもってやっていけるのではないか。だから現在は過渡的に、そういう意味で協業経営というものはありますけれども、しかし、それは将来はやはりまた分化していくのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。
  27. 中村時雄

    ○中村(時)委員 どうもありがとうございました。実はいまのお話は非常に重要な問題なんで、おそらくそこまでいけば、投下労働賃金の問題であるとかいろいろな問題が基本的に出てくると私は思うのです。それが解決しない限りは、日本農業政策の転換はでき得ないというふうにまで極論していいのではないかと私は思う。  そこで、ひとつ最後にお願いしておきたいのは、いま言ったような方法を考えますと、たとえば、自給率の問題あるいはそれに伴ういろいろのファクターの問題が出てくると思うのです。そういう問題は、また何かの機会に十分いろいろお話を伺いたい、こう思っております。きょうはほんとうにありがとうございました。
  28. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員長代理 角屋君。
  29. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 だいぶ時間も過ぎておりますので、簡潔に両参考人にお伺いをいたしたいと思います。  先ほど片柳参考人のときにも申し上げたのですけれども、今度の農林漁業金融公庫法の一部改正は、総合融資制度に関する問題が一つの柱、市場近代化に関連した新しい融資の道をつくるという問題と、二つの柱があるわけです。もし御意見がありますれば、市場近代化のほうの点について、簡単に両参考人から御意見を承っておきたいと思います。
  30. 佐伯尚美

    佐伯参考人 私、全然知りませんので、ほんの抽象的なことしかお答えできないのですが、どうも流通改善ということが一般にかなり重要な柱としていわれているわりに、進んでいないという印象が強いわけです。どうも一番の問題は、流通改善をやる場合のビジョンといいますか、基本的な方向づけができてないのではないか。その上、しかもかなりばらばらにそれぞれ孤立的な政策が行なわれていることが、流通政策全体として非常にテンポをおくらしているのではないか、そういう印象を持っております。非常に抽象的なことで申しわけございません。
  31. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 わかりました。御質問申し上げる点は、御説明いただく段になりますと、相当時間がかるような問題に触れるわけですけれども、簡潔でけっこうでございます。  次に、農林金融の問題では、いわゆる制度金融系統金融の交通整理問題があります。内容には深く触れませんけれども、しばしばそういうことが議論される。同時に系統金融の場合も、いまの三段階制問題というのが議論になったわけですが、お二人とも学者でございますので、農林金融、特に系統と制度金融との交通整理、あるいは相当資金量を持ってきた系統の三段階制というものを、どういうふうに意見として持っておられるか、両参考人にお伺いしたい。
  32. 加藤讓

    加藤参考人 政府金融機関でございますから、民間の金融機関を補完するというのがたてまえでございます。ですから、できるならばそういう交通整理というものは行なったほうがいいと思うわけです。しかし、農業の場合は、御存じのように一般的に非競争的な要素というのが非常に強いわけでございまして、若干の競争というものはあってもいいんじゃないか、こういうように私は考えております。  それから同時に、政府金融機関あるいは民間金融機関ということ以外に、政府金融機関の場合は長期金融機関でございますし、民間の金融機関は、農業に関する限りで申しますと、中期ないし短期の金融機関でございますから、おのずからその中におきましては、分野というものの分化というものが当然ある、こういうように考えております。  それから三段階制でございますが、これは私の書生論なんですけれども、ああいう制度ができましたのは、要するに明治、大正の期における日本経済の発展情勢なりあるいは交通事情なりに基づいているわけでございまして、今日、それが必ずしも適正な制度であると私は思ってないわけでございまして、その点は、やはり合理化してコストを下げるということが非常に必要なんじゃないか、こう思っております。
  33. 佐伯尚美

    佐伯参考人 あまりたいしたことは言えないんですけれども、おそらく交通整理問題の発端には、公庫資金と系統資金の変質という問題がある。系統のほうからいいますと、先ほど片柳理事長もおっしゃいましたけれども資金量が豊富になって近代化資金ができ、中期融資までできるという情勢ができた。他方公庫からいいますと、政策が積極化して、いわば当初の公共的な資金だけではなくて、かなり政策に密着した長期、中期の政策資金まで供給する、そういうふうに変わってきた。その二つの基本的な変化の上に交通整理問題が激化しているのだろうと思います。おそらくその問題は、近代化資金をどう位置づけるかという問題として、それの限界なりあるいはそれの一定の役割りなりをこまかに追及すれば、おのずから大体の見当はつくのではないか、私はそういう感じを持っております。  それから系統三段制については、おそらくいまの段階で、一挙に二段制にしたほうが合理的だという議論はできないだろうと思いますし、いまの三段制がそのまま全部合理的だということもできないだろうと思います。少なくともいま程度の行政組織なり、あるいは農民層の分解なり、あるいは農協合併、単協合併の推進状況を前提にした場合に、ある場合においては、事業の運用として二段制的に運用するというのが、かなり合理的だという面も指摘できるわけですが、そういったものは、いわゆるケース・バイ・ケース的に処理していく、いわば機能論として合理化していく、しかし、さしあたりの措置としては三段制的に運用していく、そういう形で調和をはかる以外にないのではないかという感じがしております。
  34. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 日本農業金融を考える場合には、前にもこの国会で議論したことがございますが、欧米各国の先進国のこの種金融制度の現状、あるいはそこから何を日本条件において引き出すか、こういうことで、主要国の若干のデータをなにしたんですが、特にそういう点で、諸外国の農業金融の中で、日本農業金融のこれからの政策裏づけについて、こういう点はやはり学んで取り入れてはどうかということがあれば、それをお伺いしたいと思うのです。   〔鹿野委員長代理退席、委員長着席〕  同時に、先ほど来問題になっております八百万融資、あるいは運転資金を含めれば一千万円をこえるかもしれないことが出てくるだろうという場合に、担保問題というのが現実にやはり問題になってくる。たとえば、アメリカの場合でいえば、佐伯参考人のほうからもお話しのように、農家更生管理局、FHAの融資制度というのがございまするし、また農地の担保問題に関連して、たとえば、イギリスの場合には農業抵当公社、AMC、これは建物もありますけれども、農地を担保物件の中に導入するというような形、あるいはフランスにおいては、フランス不動産抵当銀行の中では、土地というものを抵当として貸し付けを行なうというように、各国でも農地担保問題がそれぞれ取り上げられているわけです。日本条件で、担保対象として諸外国でも取り入れられているようなものが現実に可能であり、またやるべきであるという御意見なのか、あるいはこういう前提条件を整備しなければなかなか困難であるという御意見なのか、承りたい。  もう一回申し上げますが、諸外国の農林金融の中から、日本の教訓としてこれを導入して採用してはどうかという点があれば、その点お伺いしたいと思いますし、また担保力の強化という面で、農地の問題等を含めて、日本条件においてどういうふうに考えておるか、この点ひとつお伺いしたいと思います。
  35. 加藤讓

    加藤参考人 諸外国と申しましても、私は実はあまり外国のことは知らないわけでありまして、私が見聞しているのはアメリカぐらいなものでありますが、アメリカの場合に、私が一番日本に参考になるかと思いましたのは、先ほど佐伯さんから御紹介がありましたFHAでありますが、しかし、FHAの場合は、貸し付けの委員会というのが末端に、カウンティー、郡にありまして、そこで三人の委員が審議するわけでございます。主任は役人でございますが、あとの二人はその地方の名望のある大農場主でございまして、その大農場主が、自分が現に経営しているわけでございますから、やはり研究機関なんかにいたり、あるいは役所にいるような目で見ているのとは違ったセンスがありますから、その点から、非常に忌憚のない意見を借り入れ申し込み者に対してずけずけ言って、たとえば、トラクターを買いたいというような場合でも、トラクターも必要かもしれないけれども、むしろそれ以上に、土地規模がこの地方における営農類型からいえば適正規模以下であると考えた場合には、むしろ土地を買いなさい、そのかわりに土地の買い付けの資金を出しましょう。それから、農家はどうしても家庭と企業とが密接に結びついているわけでございますから、たとえば台所の設備なんかが悪くて、こういうふうな状態では、農業にも十分勤労の能率をあげることができないというふうに判断した場合は、そういう生活改善資金をむしろすすめて貸し付ける。こういうふうに一体になって、ちょうど総合資金制度の場合がそういうものであろうと思いますけれども、むしろ農家を伸ばすように、農家資金需要を、遠慮して言わないのをむしろ発掘してやるとか、あるいは自分の目でそういう問題点を見出して解決してやる、こういうような考え方をとっているわけでございまして、その点が参考になるのではないか、私はこういうふうに考えるわけでございます。  それから、かなり巨額な金になるものですから、当然担保の問題がありますが、やはりそれだけの金を投じますと、それによって農家の手に入ったものが当然担保になるのではないかと思いますし、それから、当然農家としましてはそういう返済の可能性というものを考えて自分の計画を立てているわけでございますから、その点は融資コンサルタントなり、あるいは融資協議会で十分検討すれば、全然解決のできない問題ではないのではなかろうか。日本の場合は、外国のように農場としてまとまったものがないということが確かに大きな問題でございますけれども、たとえば、北海道の場合でございますとか東北なんかで最近出ているものは、五町歩だとか四町歩だとかいうものがかなり一カ所にまとまったものが出てきているわけですから、そういう点から、むしろそういう制度というものを育てるべきではないかと思うわけであります。  それから、これは単なる思いつきなのでございますが、融資保険の問題がここに出ておりましたけれども、確かに政府資金を貸す場合ですから、それにまた保険をかけるというのはどうかという問題があると思うのですけれども、しかし、現在の公庫資金の源泉を考えてみますと、むしろ出資金よりも借り入れ金が多くて、借り入れ金というものは、要するに郵便貯金というものを源泉にしているわけでありまして、これはやはり任意貯蓄でありますから、こういうものに対しては、相当保険をかけるということも考えられるのじゃないか。これはやはり法律の問題にもなりますし、他の金融制度とのバランスということもありますから、この資金についてだけどうということじゃないけれども、やはり研究の余地があるのではないかというふうに考えております。
  36. 佐伯尚美

    佐伯参考人 諸外国との比較という点について、非常に大ざっぱな印象を申し上げますと、いまの日本農業金融の段階では、もはや諸外国に学ぶべき何ものもないのじゃないかというふうに私は考えております。といいますのは、確かにイギリスの場合は農業抵当公社がありますし、あるいはドイツにおいても、いろいろな政策的な不動産銀行があり、あるいは農業レンテン銀行があります。アメリカについても政策的な金融が展開されております。しかし、農業金融全体に占める地位という点から見ますと、イギリスでは一〇%足らず、ドイツでは、正確にはわかりませんけれども、おそらく三割か四割程度、アメリカに至っても三割程度ということで、それ以外はまだ依然として個人的金融なりあるいは商業銀行による金融なりというものが行なわれている。これに対して日本の場合には、八割ないし九割がすでに系統金融あるいは制度金融というものが行なわれている。そこまで日本農業金融というものは発展したのです。その点から見ますと、世界で最も進歩しているのが日本金融制度だというふうに思っております。逆にまた後進国の場合ですと、依然として高利貸し金融が盛んで、制度金融がなかなか入らぬということで、そういう点から見ましても、日本農業金融制度というものは、いわば国家まるがかえに近いような進歩した金融であって、ほかの国から特に学ぶべきものは何もないんじゃないかというふうに私は考えております。  それから、第二の抵当についてでありますけれども、いい考えというものはありませんけれども、おそらく一つは農地の問題だろうと思います。いまの農地制度のもとでは、農地担保で貸す場合に、農地の評価が時価に比べて非常に低くならざるを得ない。なかなかうまくいかない。それをいかに公正な評価をするかというのが、一つの方法かと思います。しかし、かりにそれをやりましても、いま考えられておりますような八百万あるいは一千万というのは、とうてい不可能だろうと思います。結局詰めていきますと、いま加藤さんがおっしゃいましたような、国家資金を出した場合国家が保険する、そういうことがかりに可能だとすれば、一つの方法だと思います。それ無理だということになりますれば、結局担保の方式をやめるということ以外にないのではないか。やめるというか、担保が足りなかったら融資できないということ、その規制をゆるめる。いわば国家自身が国家の金を貸すわけですから、金融の形式としてはやや不適格であってもやむを得ず貸すのだ、それは国家の責任だ、それで割り切る以外に、最終的な解決はつけようがないという気が、私個人としてはしております。
  37. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 以上で私の参考人に対する質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  38. 足立篤郎

    足立委員長 以上で、参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ長時間にわたり貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。  午後二時に再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時四十五分休憩      ――――◇―――――    午後二時十七分開議
  39. 足立篤郎

    足立委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き質疑を行ないます。樋上新一君。
  40. 樋上新一

    ○樋上委員 私は、中央卸売市場制度の問題につきまして、いろいろたくさんございますけれども、特に大臣にお伺いしたいところを抜粋しまして、与えられた二十分間にまとめたいと思います。  物価安定のために流通機構の合理化、近代化が必要であると政府はいっておりますが、生鮮食料品その他の値上がりの趨勢にある今日、具体的にはどういう対策をお持ちになっておりますか。
  41. 西村直己

    ○西村国務大臣 生鮮食料品の流通の近代化、これをやることによって価格安定をはかりたいということで、政府といたしましても、予算面あるいは融資面で毎年この拡充につとめておりますが、四十三年度におきましてもこの安定をはかりたい、そういう意味で、生鮮食料品の集配の拠点でございます卸売市場につきましては、中央卸売市場の計画的な開設、整備、国の補助金の大幅な増額で、御存じのとおり四十三年度十三億五千六百万円というふうに増額をいたしております。もう一つは、地方卸売市場の整備、これも計画的な整備をする。そこで拠点的な公設市場、これに対しましては国の補助を六千万円でありますか、それから地方市場の大部分が民営でございますので、それにつきましては近代化資金としての長期低利資金を回したい、こういうことでございます。  さらに、生鮮食料品の流通全般にわたって一貫してその近代化を促進するために、生鮮食料品流通近代化資金制度、卸売市場の施設整備、卸売り業者の経営近代化に必要な資金について公庫資金を確保する。それから食料品関係、小売り業者の経営近代化に必要な資金につきまして、先般来御論議願っておりますように、国民金融公庫から特利の別ワクと申しますか、百三十億円を長期低利資金融資を行なう、こういうようなことと、あと少しこまかいことでございますが、主要都市におきます公設小売市場の設置について補助、それからテレビその他を通じまして――テレビでございますか、これを通じて、家庭の消費者向けに生鮮食料品の市況等の情報提供、こういうようなことを予算面あるいは法制上御審議を願って推進してまいりたい、こういうことでございます。
  42. 樋上新一

    ○樋上委員 これまでの予算額はほんとうに微々たるものである。補助金が三分の一とか五分の一とか、地方自治体の財政難にもかかわらずきわめて低い補助率であり、これでは自治体としてもやりようがないではないか。たとえば、大阪市の東部市場は着工から完成までに十年もかかった。これは大都市における市場整備がいかに財政負担になり困難であるかを、この例は端的に示しているのですが、政府はこのようなテンポで計画が行なわれていってもいいと考えるのか。それはいろいろなものがありますけれども、こういうテンポで行なわれているということは、いかに地方財政が逼迫しているかという問題なんですが、大臣、どうなんでしょうか。
  43. 西村直己

    ○西村国務大臣 もちろん私どもとしては、市場というものが生産者はもちろん消費者、国民大衆にとって大事なものである、そういったことは十分認識しております。特に私どもといたしましても、流通経済の面で相当なウエートが置かれるべく念願しておったのでありますが、今回の農林省の機構改正にあたりましても、流通部を新しく設置する法案を皆さまに御審議を願っておるような状況でございます。したがいまして、今後こういった市場を中心にした、いわゆる生産者と消費者の中間に立って公共的使命を十分果たしてもらうように、さらに今後とも力を注いでまいりたいと思っております。
  44. 樋上新一

    ○樋上委員 補助率をもっと上げるというお考えはございませんでしょうか。三分の二くらいにするということで、業者もそういうことを願っておるのですが、この点はどうでしょう。
  45. 西村直己

    ○西村国務大臣 その点につきましては、他の関係もいろいろありますので局長からお答え申し上げ、さらに私からも、いずれは御答弁申し上げたいと思います。
  46. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 御指摘のように、中央卸売市場の新設及び施設整備の補助金が三分の一でその他が五分の一という状況でございますが、私どもここ数年、たとえば補助対象の施設の拡大をはかりましたり、あるいは単価のアップをいたしましたり相当な手を加えておりますので、ここ数年、実質的な補助の割合はふえたというふうにお考えいただいてよろしかろうと思います。  いま御指摘のような高い補助率にいたしますことは、公営企業にもあまり例がないことでございますから、なかなかむずかしいと思いますが、五分の一あるいは三分の一で、これで絶対今後も押していくというつもりも私どもございませんで、今後中央卸売市場法の改正等を契機にいたしまして、なお一段とくふう、検討をいたしたいと考えております。
  47. 樋上新一

    ○樋上委員 この補助率を上げるということは、法改正をすればできるのではないかと思うのですけれども都市が広がって広域都市圏を形成しているときに、なぜ市のみに開設さしておくのか。たとえば阪神あたりでは、大阪を中心とした多くの都市が隣接して一大消費経済圏をつくっているが、これらの都市群に対する市場の立地、開設主体について、これは大正時代のセンスそのままであるということは、おおよそナンセンスであると思うのですが、この点はどうでしょう。
  48. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 御指摘のように、確かに行政圏とそれから市場圏と申しますか、流通圏と申しますか、これが相当な隔たりがありますことは、東京は都がやっておりますからそれほどでございませんが、大阪の関係では、大阪市、大阪府で若干の問題があることは御指摘のとおりでございます。いまの法律でも、実は市町村ばかりでなしに県も開設者たり得るような法律になっておるわけでございますから、府なり県なりが市場の開設をすることができるわけでございますが、どうも商売といいますか、関係業者の把握という点では、県なり府より市のほうが実態的にまさっていることが、普通の場合はいわれるだろうと思います。したがいまして、最近の例といたしましては、中心の市が開設をするけれども、回りの市町村を含めて中央卸売市場の指定地域といたしまして、そこで協議し、またできるならば財政負担をともにするような形で、現実的に解決が行なわれようとしているわけであります。
  49. 樋上新一

    ○樋上委員 また、京都市のつくった市場で取引されるものが、周辺都市の消費者の口に入る。東京の築地、神田等も神奈川や千葉、埼玉に行く。このように集散市場という傾向が出ているのに、これらの機能を果たす市場施設をなぜ京都市や都が負担してつくらなければならないのか、こう私は思うのです。またこれらの住民の負担においてつくらせるのではないか、こういうぐあいに思うのです。また、広域化した流通消費経済にマッチした市場を急速に整備するためには、現在のような市だけに開設させるという運用のあり方は古いのではないか。たとえば、府・県営中央卸売市場、これは現行法のままでもできるわけですが、これを認める考えがあるかどうか。さしあたって京都府下の場合などは緊急な問題でありますが、そのお考えを聞かしていただきたいと思うのです。
  50. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 関西で、大阪及び京都で御指摘のような問題があろうかと思います。むしろ御指摘の京都よりも大阪の新市場の開設をめぐって、府と市とそれぞれのお立場の問題が現在あるようでございます。私は、法律のたてまえから申しましても、かりに府が市場を開設するといたしますれば、それは困るということを農林省として言わなくてもいいということでございます。府がやるか市がやるか、どっちがやることが市場行政としてうまくやれるかということについて、私どもなりの意見は述べますし、また御指導もいたすつもりでございますが、府では開設者として適当ではないというふうに言わないつもりでございます。
  51. 樋上新一

    ○樋上委員 きのうも話が出たのですけれども、国営の問題ですね。これを国営にするかどうかという問題ですけれども、私は、国営がぐあいが悪ければ公団、事業団とかまた国有県営とか、くふうをすれば種々の考えがある、こう思うのです。現在のように大宮とか藤沢、小田原のようなベッドタウンの財政力のない市が、中途はんぱな市場をばらばらにつくる、そういうのでは、国費や公費のむだづかいになるであろう。市場行政がマンネリズム化している現状を放置しておくのは、政府の重大な責任問題であると思いますが、これは大臣、どうお考えになりますか。
  52. 西村直己

    ○西村国務大臣 昨日も出た御議論にも近いと思いますが、確かに市場だけでございませんで、広域行政圏としてあるいは住民が、東京で昼間働いてベッドタウンで消費をするとか、いろいろなそういう社会環境が変わってまいってきておる。また、出荷その他の関係もかなり変わってきておる。それから需要内容も変わってきておる。いろいろな意味で市場行政というものに対して大きな変化が出ておるということは、われわれそれを十分心得て、今後とも市場行政というものを基本的にやっていきたいと思っております。したがって、そのためには中央卸売市場法という古い法律に対しても、今後とも不断に検討を加え、結論を得れば、改正ということを国会にもお願いをしなければならぬ。それから同時に、中央卸売市場につきましても、現在の条例だけではたしていいのかというような問題をしょっておるわけであります。  そこで、国営論というお考えも一つ出るわけでございます。ただ、この市場というものは、すでに皆さん御存じのとおり、一つ経済行為が適所適量なもの、そうして適正な値段をここで形成して流通をしていくという一つ経済行為の中心でもあるわけでありますから、できるだけその経済行為がスムーズに、円滑に動くということも大事だろう。こういう点で、国という立場から握っていくのがいいのかというと、いまの段階は、私どもの立場としては、むしろできるだけ住民に近いところ、なじみやすいところを中心に、しかし広域経済でありますから、まわりの市町村その他と十分連携を保てるような方法を絶えずくふうしていただきながら情勢に合わせていくのが、市場行政としての運営の方向ではないか、こういうふうに考えるわけです。
  53. 樋上新一

    ○樋上委員 時間の関係上、話題を変えまして、卸売り業者の手数料について、現行制度の概要と、手数料率の算定の根拠はどこにあるのか。
  54. 西村直己

    ○西村国務大臣 局長からお答えいたさせます。
  55. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 現在の卸売り人の手数料は、昭和三十八年九月に改定をいたしたものでございますが、蔬菜が八分五厘、果実が七分、水産物は五分五厘というような定率手数料でございます。  この算定の根拠は、卸売り会社それぞれについて私ども経理等の監査をいたし、また報告をとっておるわけでございますから、卸売り会社が集荷するための費用、あるいは出荷者に対する奨励金の交付、あるいは買参人に対する交付金、せり行為の費用、あるいは人件費等々を勘案いたしまして、卸売りの経営が不当に利益をむさぼることのないよう、また同時に、あまり卸売り人の経営を締めつけて経営を悪化させて、出荷者に対して代金の支払い等について不測の事態が生じないようにという、そういうたてまえで計算をいたしておるわけでございます。
  56. 樋上新一

    ○樋上委員 卸売り業者の経理面から算定されたものですか。何をもとにしてはじいた料率か。問屋機能をほとんど果たしていない市場卸売り人に、このような高率の手数料は必要ではないのではないか。松野前農林大臣も、手数料が高いと指摘したが、この問題はその後どうなったのか。うわさによれば業界がもみ消しに働いた、それでさたやみになっているというが、現行料率が妥当というならば、その根拠を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  57. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 先ほど申し上げました、三十八年の九月に手数料を改定いたしましたとき、その当時における経理状況を検討いたしまして、手数料の引き下げを実施したわけでございます。また現在の段階におきまして、私ども手数料がはたして適正であるかどうかということにつきましては、絶えずそれを念頭に置いて、卸売り会社の経理についても検討いたしておるわけでございますが、ただいまの段階における経理状況において手数料の引き下げを行ないますことは、卸売り人にとって相当過酷に過ぎるのではないかという見解を持っております。  ただ、卸売り人といたしましては、荷物を引き、またこれを商う立場から、生産者に対する出荷奨励金なりあるいは買参人に対する買参交付金をそれぞれ交付いたしておるわけでございますが、その実態をながめてみまして、出荷者に対する奨励金の点において、多少これを増加することができるのではないかという感じを持っておるわけで、現在、生産者に対する出荷奨励金の増額、これはただ生産者に対して歩戻しをするということだけではございませんで、荷主が大型化し、また規格が整然とできるようにという、そういう配慮、また主要生産地を育成するという配慮で出荷奨励金を出すわけでございますが、そういうものの増額について、現在検討中でございます。
  58. 樋上新一

    ○樋上委員 次にお伺いしますが、生鮮食料品の規格の標準化を推進することによって、見本取引、情報取引が可能になると私は思うのです。これは現在アメリカ等で現にそうやっておるのですが、農林省はこういう点についてどのような努力をされておるか。また、四十三年度予算には、この施策がどのようなところまで盛られていますか。すべての現物を一カ所に持ち込んで、一つ一つせり方式で取引させるという非近代的なやり方では、市場機能は麻痺するのじゃないか。取引方法について、抜本的な改革をしなければならぬ時代に来たのではないだろうか。たとえば、冷凍魚やコールドチェーン化した青果や食肉を、常温の市場でさらして取引させるということは、全くナンセンスではないだろうか。市場規則では、当日入荷したものはいかに大量でも、全部即日売り切ることをたてまえとしているが、出荷の調整が完全にできていない今日、入荷したものを何でも全部完全に売るためにせりにかけることは、経済の原則を無視した考え方であると私は思う。冷蔵設備もできた今日、大体の需要量に見合った数量を上場するとかの措置があってよいのではなかろうか。こういうことについて、大臣はいかが考えられますか。
  59. 西村直己

    ○西村国務大臣 先ほども申し上げましたように、社会環境あるいは経済環境、特にただいまのは経済環境でございましょう、変わってまいっておることは事実でございます。冷凍あるいはコールドチェーンその他が発達してまいりまして、したがって見本取引といったものにつきましては、できるだけわれわれは入れてまいるべきだ。ただ、情報取引等につきまして、いわゆる生鮮食料品にはたしてそういうものがぴたっとマッチするかどうか、こういう点については、まだ大いに検討しなければならぬ点があると思います。  さらに細部は局長のほうから、現状の進め方の説明をいたさせます。
  60. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 大臣の御答弁で尽きると思いますが、見本取引は、私どももでき得る限り進める方針で指導もいたしておるわけでございます。ただ、いま御指摘がございましたが、せり取引は、私は必ずしもそれが非近代的というふうには考えておりません。これこそおそらくある意味日本の市場に特有の、独特の技術でございまして、これだけ大量の荷物を一挙に商う技術として、私はせりというのは相当評価してしかるべきであろうと思います。  ただ、御指摘にもございましたが、規格化されておりますものについてまでも全部せりでやるという必要はございませんから、せりでやれるものはせりでやり、見本取引でやれるものは見本取引でやるというふうに割り切って、今後も指導を進めてまいりたいと思います。
  61. 樋上新一

    ○樋上委員 せりの功罪はいろいろあると思うのですけれども、現在はコンピューター時代ですね。やはりそういう記録をがっちり残して迅速をはかるというこの機械化を、なかなか各所でまだやっておりません。政府は推進しておるか存じませんけれども、まだ使っておるところはない。昔ながらのせりが早いというのでやっておるのです。  私はここでちょっとお伺いしたいのですが、産地買い付けがいま行なわれている。そのときに、産地買い付け価格がせり価格より高い場合は卸売り業に悪影響を及ぼし、低い場合には二重利益となると私は思う。この産地買い付け制についてどういうお考えか、その御意見を承りたい。
  62. 西村直己

    ○西村国務大臣 局長からお答えさせます。
  63. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私ども産地買い付けば、普通の蔬菜等につきましてはできるだけやらないように指導をいたしております。ただ、蔬菜の品目によりましては、比較的貯蔵性もあるので、また規格も相当できているというものにつきましては、これは買い付けでやりましても、そう市場価格に対して悪影響はございませんから、そういうものはある程度まで、一定のルールのもとに許してけっこうだと思いますけれども一般のものにつきましては、産地買い付けば、野菜についてはできるだけやらないように指導をいたしておるわけでございます。
  64. 樋上新一

    ○樋上委員 時間がまいりましたので、最後にひとつ大臣に申し上げたいと思います。いろいろお聞きしたいことがたくさんあるのですけれども、最後に結論として、中央卸売市場の取り扱い地域の広域化、卸売り業者、仲買い業者、買い出し人の業務の範囲の明確化、また転送問題等、中央卸売市場においても種々の問題が起きているし、地方卸売市場と中央卸売市場との機能が類似してきている現状におきまして、中央卸売市場と地方卸売市場を含めた一貫した一元的な行政を確立する必要があると私は思うのですが、全卸売市場等を網羅した卸売市場法というようなものを制定される考えはないか、こういうことについて大臣のお答えを伺いたいと思います。
  65. 西村直己

    ○西村国務大臣 卸売市場全体としまして、国民の生活にとっては非常に大事なものであります。それから、正しい意味の生産向上にも寄与するものでございます。したがって、この公益的な使命を達成させるためには、われわれとしても責任を持ってこれからも指導、助長をしてまいらなければならぬ。  そこで一元的な指導、これはそのとおりでございまして、中央と地方との関連というものは、広域行政のもとにおきまして複雑な面も出てまいります。したがってこれらは、われわれとしては一元的に運用してまいるように十分心してまいるつもりでございます。
  66. 足立篤郎

    足立委員長 柴田健治君。
  67. 柴田健治

    ○柴田委員 委員長に先にお願いしておきたいのですが、きょうは大臣は時間が非常に制約されておるようですから、関係の皆さんにお尋ねしたいのですけれども、大臣だけに焦点をしぼってひとつお尋ねしたいと思います。時間がありませんので、簡潔にお尋ね申し上げたいと思います。  まず今度の、農林漁業金融公庫法の一部改正についての制度金融の改正ですが、この制度金融の改正は、要するに政策的な金融だとわれわれは解釈しておりますし、全くそのとおりだと思うのですが、政策的な金融を改正し、要するに整備拡充をしようとするならば、もっと基本的な政策が明確にならなければならぬのではないか、こういうように私たちは思っておるわけです。  大臣に率直にお尋ね申し上げるのですが、今度の公庫法の改正について、発想の起点というのはやはり農業基本法が基礎になっておるのではないか。農業基本法が基礎になっておるとするならば、いままで農業基本法が制定されて以来相当年月を要しておるわけですが、その間、いままでの制度金融は区切り金融制度です。われわれは区切りだと言っているのです。個々ばらばらの政策金融である区切り金融政策で、農業基本法ができて以来、農村の実態を見た場合に、ほんとうによくなったかどうかという一つの疑問があるわけです。この総合資金制度融資制度ができるということは、もっと早くやらなければいけなかったのではないかという考え方を持っておるのですが、その点の見解をまずお尋ねしたいのです。
  68. 西村直己

    ○西村国務大臣 農業金融のあり方につきましての御質問でございますが、実は、戦後食糧の傾斜増産をやった時代におきましては、御存じのとおり、どちらかというと補助だけで、金融のほうが非常におくれておった時期がありました。その後に農林漁業金融公庫の公庫金融ができまして、その辺から体系づけて、同時に施策金融と申しますか、制度金融というものも、施策事業と申しますか、助成事業と申しますか、補助事業と申しますか、それと並行して今日にまいっておるのであります。ただ、事業別にかなり進んでまいってきております今日の農業の中で、さらに中核的な事業に対しまして、できれば総合制と申しますか、包括金融と申しますか、そういう制度をさらに発展的に入れてまいるというのが今回の総合資金制度でありまして、金融でございますから、その時代に合わせて運んでまいる、こういう考えで今回こういう考え方を出してまいったのでありまして、ある意味からいえば、おっしゃるように、おそいといえばおそい面もあるかもしれませんけれども、しかし、またこれを将来伸ばしていくことによって、十分その使命も達成できるのではないかと思っておるのでございます。
  69. 柴田健治

    ○柴田委員 政策金融として取り上げて構想を練る場合、いままでの制度金融の中で、貸し付け額も伸びておるし事業も伸びておるように、統計的にはとらえられるのですが、実際問題として末端で、農村の農家戸数はあんまり減少率は示さないけれども農家の就労人口というものがだんだん減ってきておることはもう事実なんです。この農村の人口がどんどん減るということは、要するに農業があまり伸びてないということも言えると思うのです。ただ、人口がたくさんおればおるだけ農業が発展をするとは言えないけれども、やはり農村の所得が非常に低いということですね。その所得の低いところに政策金融をする場合に、やはり金利が問題になってくるのではないか。貸し付けるほうから考えると、八百万円なら八百万円を三カ年で貸す。貸した場合に、効率を求め、またそれだけの利潤が上がり、農家が安定して、金を借りてもだいじょうぶだという自信がそこに生まれないと、借るほうも借れないが、また貸せるほうも、やはり償還というものを考えなくて貸し付ける者はないと思うので、やはり低所得地帯という農村地帯における貸し付けの心がまえというものが問題になってくると思うのです。そうすると、低利長期融資ということが常にいわれるわけですが、その低利長期融資は特に山村ほど必要ではないか、こう思うわけです。だから、金利の差をつけたらどうかという気がわれわれはするわけです。そういうことから、一律に据え置きを四分五厘にして、償還期限になると五分だということでなくて、一律に考えずして、その地方地方の実情に合わして金利の差をつけたらどうか。こういう制度金融政策金融とするならば、そういう考え方を持ってしかるべきではないかという気がするわけです。  そういう点について、大臣、参考に申し上げますと、いま四十六都道府県の中で、市町村を含めると三千三百七十二団体の地方公共団体があるわけです。その三千三百七十二団体の中で、都道府県別に見ると、その人口がどんどん増加している都道府県は二十一、減少しているのが二十一、残りがあまり変化のない府県であるということが言える。それから、市町村が三千三百二十六団体ある中で、人口が減少しておるのが二千五百四十四。市のほうはふえておるほうが多いのですが、減少しておるのが二千五百四十四市町村ということになるわけです。その中で、極端に減っているのは山村地帯です。こういう融資制度をつくるにしても、どんどん減る地帯における貸し付けの対象について、市場関係は別にしても、一般農業で家畜、果樹というものを中心において考える、こういうことが今度の総合融資の基本的な考え方になっておるようですが、果樹と畜産にしても、日本列島を考えた場合に、もう少しビジョンがなければならぬのではないかという気がする。  たとえば、日本列島の地理的条件というものが、平たん地があり、また沿岸地帯があり、高冷地帯があり、準高冷地帯があるということで、それぞれの地帯における畜産にしても果樹にしてもビジョンがない。そのビジョンのないところに、融資をして金を貸してやるからやれといったって、これは借りるほうからいうと一つの夢が描かれない。こういう気もいたすわけでありますので、そうしたビジョンも必要ではないか。同時にまた、そうした町村別の実態を見ますと、やはり金利を下げてやるということをまずわれわれは考えてほしい、政策的に考えてもらいたい、こう思うのですが、その点についてお考えがあれば聞かしてもらいたい。
  70. 西村直己

    ○西村国務大臣 まあビジョンの点はもちろん大事な点でありますが、それはおきまして、金利の問題でありますけれども、お説は山村なら山村、同じ一つの県でも人口が減っている山村に対して、特別な金利体系のものを考えたらどうかというようなお考えであります。受ける面から申しますとそういうことも考えられますが、全体の考え方としましては、たとえば地域につきまして、すでに御審議いただき御賛成願いました北海道であるとか、南九州の畑作地であるとか、こういった包括的な地域につきまして特殊な、いわゆる政策金融あるいは助成というものをやっている。また山村につきましても、山村振興法というような特別な立場からの融資なりあるいは助成なりを長期にわたってやっている。こういうような考え方で、これを府県別にあるいは地域の小さいと申しますか、細分化した部分についてやっていくについては、いまの農業金融の金利体系その他を考えますと少し困難ではないかと思うのでございます。
  71. 柴田健治

    ○柴田委員 戦後の日本農政は、補助から融資に転換してきたのですが、いままでのいろいろな資金なり補助によって事業をやったところは、ほとんど平たん地です。採択基準が、農林省のほうが高いということで、町村のほうがやろうとしても、採択基準があまり高いのでなかなかそれに適合しないというので、もう放置しておる。あきらめておる。それで、採択基準がいい地帯というものに相当大幅に投資をしてきたわけです。たとえば、干拓にしても土地改良にしてもいろいろな面について投資をしてきたが、その地帯はいまや農地としての利用ではなしに、農地転用という形の中で公共用地なり、宅地なり、工場用地に転用されてしまって、投資したその効果というものが農業にあまりプラスのない方向に、そういう地帯に大きく投資したということがわれわれの目にとまるわけであります。好むと好まざるとにかかわらず、農業しかやれない地帯の農村についてはあまり投資がされていない、こういう結果をわれわれは知っておるわけです。  だから、要するにこれからどうしても農業しかやれない農村については、こうした政策金融制度金融を改正するにあたって金利の引き下げが必要ではないか。その基準は、たとえば財政指数を考えていくとか――いまその財政指数で見ると、一〇〇%以上持っておる公共団体が百六十五団体ある。全体の五%です。こんなところは農家としても裕福であるし、町村の財政からいっても裕福なんだから、思い切っていまの地方自治法の精神にのっとってやれると思うのですよ。それから五〇形以下の財政指数を持っておる地方公共団体が二千五百六十六団体ある。その中で、財政指数が三〇%以下の町村が千三百五十七団体。この千三百五十七団体が、ほんとうに農村として生きるよりほかに方法がない地帯です。全国で三千三百二十六団体の市町村の中で千三百五十七団体、この町村は、工場が来るわけではなし、宅地ができるわけではなし、何にもできないのですよ。ほんとうはこの千三百五十七団体がもっと農業投資をしなければならぬ。財政指数三〇%以下の地域については、系統金融であろうと、制度金融であろうと、利子を下げるような方向でもっと投資を考えるべきじゃないか。現行の関係法規の中で、もっと抜本的に法の改正をして、そういう地帯に重点的に投資をすべきではないか、こういう考え方を持つわけです。ただ優等生方式で模範的なモデル農家だけを育成するのではなくて、もっとそういう方向に、こういう制度金融を改正する場合には目を向けるべきではないか、こう考えられるのですが、農林大臣いかがですか。
  72. 西村直己

    ○西村国務大臣 今回の総合資金はワクが二十億、これは将来多少ワクが広がってまいりますが、全体の制度資金から見れば、これ自体は小さいものでございます。したがって、一般制度資金というものは、かなり手広く農業中心に御活用願っておるというように私は考えるのでございます。ただ、お説のような山村、特に人口の減っていくような地域で山村にかかっているようなところにつきましては、地域指定によりまして、山村振興という特別な立場から法律も持ち、またその中で、制度金融なりあるいは助成策なりをとっていく。数字的に御説明は、私いま別にここに持っておりませんけれども制度金融の大部分というものは、やはり農村を中心にしてこれは流れておる。それから金利の高い安いの問題になりますと、他の金融から見ますれば、皆さんの非常な御尽力にもよりまして、かなり農業金融というものは低利であり、かつ長期の方向に近づきつつあるということだけは、事実だと思うのでございます。
  73. 柴田健治

    ○柴田委員 要するに大臣、千三百七十五団体の一番貧弱な農村というものが、いまや正直言うて手をあげておるのです。町村の財政指数が低いために、町村としては所得が低い地帯ですから、生産資金を回すだけの力も単協にないし、また、農業委員会がどんな農業振興計画を立ててもそれが十分でない。だから金利をそういう地帯には特に配慮してやるという一つの方法、それからもう一つは、これは大臣折衝でやってもらいたいと思うことは、地方財政計画の中で、基準財政需要額の中で、産業経済費、農業経済費ということで算定基礎を組んでおるわけです。   〔委員長退席、鹿野委員長代理着席〕 そういう財政指数の低いところは、これは国家の基準財政需要額の算定基礎を変えさしていくという、これは大臣折衝で、大蔵大臣なり、自治大臣なり、農林大臣の中で政策的に変えていくという方法をとってもらいたいと私は思うんです。一方ではそういうことを考慮しながら、一方ではそうした貧弱な所得の低い地帯の町村に対しては、金利を下げていくという方法をとってもらう。この二つの面で抜本的な思い切った対策を立てない限りは、それはもうあなたは農村に、この総合融資制度を利用しなさい、こう言って現段階でどんなにハッパをかけたって、その地帯はなかなか借りてくれないし、また借りようとしても、諸条件が悪いために貸してくれない、こういう矛盾が出てくると思うのです。この基準財政需要額の変更ということについて努力される意思がありますかどうか。
  74. 西村直己

    ○西村国務大臣 おそらくお説は、山村に近い、あるいは山村としての過疎地帯を中心のお話だと思うのであります。一つは、地方財政のあり方自体の問題でもあろうと思います。人口が何と申しましても、たとえば日本の中央部でありますれば、メガロ地帯にずっと集まっていく、山村に近いところほど過疎地帯ができていく、したがって、それだけ地方財政も弱っていく、この基本的な問題も一つあろうと思います。したがって私どものほうとしては、山村対策は山村対策として考えていかなければならないと同時に、農業中心にしました地域につきましては、単に金融あるいは助成だけでなくて、ただいま国会に出して御審議を願おうとしております農業振興の地域を指定いたしまして、市町村というものと平仄を合わせながら総合的に農村地域の整備、その中における農業の振興をしてまいりたい、こういう考え方であります。  したがって、単に金利を安くしてそこへ金をつぎ込むというだけの方法で山村振興ができるというよりは、むしろ山村振興としてやはり地方財政と組み、あるいは全体のいろいろな助成その他の面から山村振興法というものができておりますから、そういう面から、やはりわれわれとしてはそこの地域の経済を考えていく。同時に地方財政と申しますか、あるいは広域行政というものを考えつつ、その中で、過疎現象等によってくる地方財政のあり方をどう住民の利益のために考えていくか、そういう面からわれわれも、当然山村をお世話しておる一つ農林省としても、自治省とよく話し合いはすべきだと思うのでございます。
  75. 柴田健治

    ○柴田委員 大臣だけに対する質問ですから、簡単に問題点をしぼって申し上げますが、今度の融資制度で私、一つ疑問を持つのですが、県信連、県段階だけの機関を利用して、末端の単協は使わない、これについて私はどうもおかしいと思うのです。いままでの戦後の日本の農村の農業政策を進める中で、その歴史を振り向いてみると、農地調整法に基づく農地委員会制度があり、農業改良助長法に基づく農業改良委員会制度があり、また食糧確保臨時措置法に基づく農業調整委員会があって、この二つ制度を発展的解消して農業委員会というものをつくった。そのときの経過から見て、農業委員会役割り、それから農業委員会で、選挙によらずして選任の委員を選出する方法が法律的に明記されて、農業共済組合から代表一名、農業協同組合の代表一名ということで、農業委員会の正式委員としてこれは法的に選出される。そうした農業振興に関して農業基本法なり、それが基盤となって農業構造政策農林省が打ち出して、その構造政策の一環としてこの総合融資制度をやっていこうという、農業を発展さしていこうという、そういう心組みの制度金融であるとするならば、そうした末端の機関をなぜ利用しないのか。まるで中央集権にしてしまっている。こういう点は、ぼくは政策的に大臣の考え方を聞いておきたいと思うのです。  またもう一つ聞きたいことは、いままで農民の皆さんに貯蓄をしなさい、貯金をしなさいと言ってきた。私も農協の組合長をしてきて相当奨励してやってまいりましたが、その貯蓄推進の表現は、農業資本を守るのだ、と同時にまた自分の力で自分の農業を発展させていこうという、そういう前提に立って貯金をして、その金で自分たち農業を発展させていこうじゃないか、再生産に必要な施設なり機材、機具の資金にするのだ、こういう考え方貯蓄を推進してきた。それが単協を通じ、県信連なり農林中金に入る。それが系統金融です。系統機関です。この系統資金があるにもかかわらず、政府金融だけに重点を置いているが、農林中金の金の使い方をもっと総合的に考えたらどうか。さすれば農民に対する貯蓄の精神、貯蓄運動ももっと形を変えて発展をするのではないか。農林中金に入っている系統資金は君たちはかってに使いなさい、政府のは政府資金で別の公庫のほうでやります、こういう形では、われわれは何か金融政策のみによって今度のこの制度金融の改正というものが行なわれるのではないかと思う。ただ金融本位であって、農業全体を発展させていこうという考え方に欠けておるのではないか、こういう気もするわけです。この二つの点を大臣ひとつお答え願いたいと思います。
  76. 西村直己

    ○西村国務大臣 あとの問題から先にお話しいたしますが、系統金融をもっと活用したらいいではないかというお説だと思います。私もその点は全く同感であります。しかし系統資金につきましては、金利その他の問題もございますので、御存じのとおり近代化資金等で利子補給をいたしまして、相当大きな金が活用されておるのであります。と同時に、先ほど単協を使わないで総合資金をやっていくのはまずいじゃないか、中央集権的だということでありますが、単協の窓口は通していく、それからもう一つは、単協でやりたい場合にはやれるような方法もあるというふうに私は聞いておるのであります。
  77. 柴田健治

    ○柴田委員 単協を利用するということはこの際はやらない、すなわち県信連、県段階でやるのだ、こういうことを強く聞きましたので、これは政策金融であるから一応大臣のお考えを聞いておきたい、こう思ったのですが、何としても末端での市町村の農業委員会なり単協というものが、それぞれの市町村の行政区域内における農業振興計画というものを立てるのでありますから、土壌の問題なりまた水利関係から全部考えて農業の振興計画を立てるのでありますから、そうした単協の機関を使うとか農業委員会を使うとかいうことを考えなければ、できた制度、できた機関というものが無視されるということになると、これまたたいへんなことになる、誤解を生じ摩擦を起こす、こういう心配をいたしましたからお尋ねを申し上げたのでありまして、その点は十分お考えを願っておきたい、こう思うわけです。
  78. 西村直己

    ○西村国務大臣 ちょっとその点につきましては、私の説明もまだ十分でないかもしれませんから、局長からさらに補足をさせていただきたいと思います。
  79. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私がすでに何回も申し上げておりますことは、決して単協を無視するものではございません。単協を無視するのではなくて、単協の性格からいって、何といっても協同組合あるいは協同的な村の機関でございますから、総合資金がねらっておりますような多額の貸し付けを一農家にするということは、なかなか単協の事情が許さない場合が私は多いと思うわけです。したがいまして、たとえば構造改善事業推進資金を単協転賃でやっておりますような形でやりますと、むしろ単協がお困りになるといいますか、この制度の運用が十分いかないということをおそれて、原則として信連ということを申し上げておるわけでございます。信連を融資機関といたします場合でも、当然単協を窓口といいますか、実際単協が農家のことを一番よく知っておるわけでありますから、どういう農家を選ぶかということについて、単協の意見も聞きますし、それから事後の指導につきましても、単協にすぐれた営農指導員がおればそのお世話になるわけでございまして、単協を排除する意図は毛頭ございません。また、この間も申し上げたのですが、組合の合併等によりまして単協は相当大きく強くなって、この単協ならば十分貸し付け機関としてやっていけるということであれば、私はその単協を大いに活用することに、決してやぶさかではございません。
  80. 柴田健治

    ○柴田委員 大臣にもう二、三お尋ねしたいのですが、この融資の中で地方公共団体の役割りというものを明確にというか、もう少し責任を持たしたらどうか、こういう気持ちがするわけです。いずれ融資対象のきめのこまかいことについては、園芸局長なり経済局長に質問することを留保しておきますから、またあらためて質問申し上げますが、ただこの総合資金制度の中で、たとえば幹線道路は土地改良区でやる、それから用水施設も幹線水路までは土地改良区でやれる、これは現行法の制度でやれるわけです。ところがそこから先、農道でも枝線を引く場合には、五百メートルか千メートル自己資金でやらなければならぬ。それはその総合融資を借りる。そうすると、五百メートルは一人ではだめで、三人なり四人なり共同で道路をつけるだけつけて、それぞれの栽培は個人個人の経営になるのでしょうけれども、そういう半ば公共的な施設についての融資については、地方公共団体は利子補給をしてやるべきだ。用水施設で土地改良事業でやれるところまでは土地改良事業でやらせる、そこから先の、個人負担でやって融資を借りる場合の、その資金の金利については、地方公共団体は利子補給をしてやる、そのくらいのことは、地方公共団体が責任を持ってもいいのじゃないか。何もかもまるまる個人負担でやらなければならぬということはおかしい。その点について、地方公共団体はもう少し責任を感じたらどうかという気がするのですが、大臣、この点についてはどうでしょうか。
  81. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 地域振興あるいは村の振興という立場から、市町村が補助をするということは、私はきわめてけっこうだと思いますけれども農林省が、それを必ずしてくれという指導をすることは、これはなかなかむずかしいところだろうと思います。それで、個人が総合資金を借り受けて、農家が単独で土地改良をやる場合は総合資金の中に入りますし、それから単独でなくて、数名の者が共同で農道等を施設するといたしますれば、四分五厘あるいは三分五厘の土地改良資金を、公庫から別に借り受けることが、当然できるわけでございます。その低利資金で処置されるというのが、私は普通の状態であろうと思います。
  82. 柴田健治

    ○柴田委員 局長の答弁を求めておるのではないので、局長のほうは留保しておきますから、いずれまたこまかいことについて論争したいと思うのです。大臣の考え方を聞きたいのですが、いまの人口の流動化というものは非常にひどいということです。ことしの新制中学の卒業者は、大臣御承知のように百三十万からの卒業者がある。それで進学を除いて中学生が就職をする、農村に残って農家のあと取りとして農業に従事する、それの数字は、大臣も農林大臣だからよく把握しておられると思いますが、三十万近くの中学卒業だけで職業戦線に立つその数字の中で、農村に何%残っておるか。いずれこういう融資制度について、年齢がある程度押えられてくると思うのですが、二十七、八万の職業戦線に立ったその中で、農漁村、山村地帯にもうほとんど残っていない。ほとんどといっていい。ある町村においては、中学卒業者が二百人おる、その二百人の中でたった一人残ったという町村がある。一人か二人です。このままの姿で進んでいくと、農村は老人クラブの地帯になってしまうという、極端な表現がいま出てきておるわけです。そういう事態にあるときに、この総合融資制度をつくって金を貸してやろう、年齢もある程度若いのでなければいかぬというのです。それは二十歳台で押えるのか、三十歳台で基準を切るのかわかりません。いずれあとで論争になると思いますけれども、いま五年、十年先の考え方に立った場合、どうなるのかという一つの不安と心配が出てくるのですね。そうした山村には山村振興法があるではないか、それでもってやればいいではないかと言うが、それも十分活用されない。離島振興法もあるではないか。いろいろな法律制度はありますけれども、十分生かされていない。したがってそういう現象が出てきておる、私はそう解釈しておる。いまどういう方法でこの農村の人口流動化を食いとめるか。全部これを食いとめるわけにはいかぬ。それは日本全体の産業構造の発展、その他の労働力の配分というものを考えた場合に、全部農村に残すわけにいかないですけれども、将来の展望に立って、いま五百万農家なら五百万農家日本にあるが、その五百万農家に対して、個人の自立経営のできる農家は何戸に押えるのだ、あとは集団化、共同化、協業化にしてどれだけの法人組織にするのだ、これだけの夢がなければいかぬ。要するに、大臣はこまかい事務的なそろばんをはじく電子計算機ではなく、政策の総元締めですから、それだけの夢を持つべきではないかと私は思うのです。またそういうものを示すべきではないか。そういう考え方に立っての大臣の考え方を聞いておきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  83. 西村直己

    ○西村国務大臣 非常に大きな問題であり、かつまた大事な問題であるし、また同時にむずかしい問題であります。日本も単に日本の中だけで立っているのでございませんで、世界経済の中の日本であります。そこで、国際環境の中において日本経済近代化してまいらなければならぬし、当然近代化の過程におきまして、成長経済を遂げていかなければ、国民所得というものは上がらない。ただ、その上がり方が急角度に上がった場合には非常にひずみができる。そこで、どういう形で成長経済を続けるかというのが、大きな論争点だろうと思います。できるだけ安定した中で成長をやっていく。しかし、近代化してまいりますればどうしても農村あるいは山村から、一次産業から他の二次あるいは三次への人口移動というものは、これは一つの必然の方向ではないか。といって、ただ食いとめるという策だけではもちろんいけないわけでございまして、それがなだらかな形で動いていくということは、これはやむを得ないこととして、私らはすなおに受け取っていかなければならない。  御存じのとおり、経済社会発展計画におきましても、現在、就業人口の中の二〇%くらいが農業就業人口というふうになっておるのでありますが、これが昭和四十六年度くらいには、めどを一五、六%に置いておる。すなわち、これを裏からいえば、人口のある程度の流出というものは予測されておる。四十一年度では、中高卒業の就業率が全国平均で五%くらい、正確には四・六%という計算になっておるわけであります。そこで、そういうような前提の中で、農業中心にどういうふうな方向づけをするかというのでございますが、ただ、日本は不幸にしまして、御存じのとおり自然条件が他の国とは非常に違っておる。また日本の特殊性もございます。またもう一つは、残念ながら戦後の施策おくれもあったのでありましょう、地価の高騰というようなものも出てきておる。したがって土地というものが、財産的な考え方に非常に走ってきておるということから、戸数は減らないで人間の数だけが減って、その就業の数が減っていくという特異現象がそこにあらわれておる。  そこで私どもとしては、少なくとも構造改善の前提となる、たとえば農村振興地域の整備というような法律をつくって、地域全体としてひとつ農村を豊かにしていくというような基盤をつくる、これが大事だろうと思います。その中で、今度は構造改善というものをやっていく。もちろん、その中には総合資金だけではございませんで、その他農地の流動化等によって、自前農家というものをひとつ中核体につくりつつ、同時に、兼業というものも今日相当ふえており、また現実に存在しこれからも存在するのでありますから、兼業の能率化をはかっていく、同時に兼業の所得の増高をはかってまいるというようなことによって、農村というものを安定した形で、労働力もそれにふさわしい労働力を確保し、生産性を高め所得を向上していくような形で持っていけたらいいのではないか、こんなのが、いま私どもが農政を推進しておる基本的な姿勢でございます。
  84. 柴田健治

    ○柴田委員 あまり時間がありませんからなんですが、農村の所得を向上させるという大義名分といいますか、そういう表現はよくわかるのですけれども、農村の労働賃金の押え方、見方というものは、あいまいだという解釈をわれわれはいま持っておりますし、それから農産物価格のその問題の押え方、また流通機構の問題、言えば切りがないのですが、矛盾がある。それだけに農政というものはむずかしいということが言えると思うのですが、むずかしいからほっておくというのではなくて、みずから飛び込んで解決するという姿勢がほしいと思うのです。みな関連性を持っておるのです。今日、大臣もよく御承知だろうと思うのですが、それぞれ県の実態を見ますと、所得が非常に高い地帯と所得の低い地帯があるわけですね。はなはだしいのは、月に四万五千円くらいの平均になっている市町村もある。月に一万九千円から二万円にしかならない市町村もある。そういうふうに所得が倍も違う。同じ地方公共団体の中で、隣とこちらとはたいへんな違いがある。そういう実態を一つも把握をし分析もせずして、どんなに農業所得政策をとるのだといいながらも、所得政策はとっていないということになるのです。そういう点を大臣はもっと研究願いたい、そういうことを強くつけ加えて終わりたいと思うのです。  ほかの、貸し付けの対象についての局長クラスへの質問は留保して、いずれあらためてやります。
  85. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員長代理 森義視君。
  86. 森義視

    ○森(義)委員 先日来同僚議員によりまして、今度の総合施設資金並びに卸売市場近代化資金の内容につきましては、いろいろな角度からかなり突っ込んだ質問が行なわれているわけで、私はそういう意味では重複を避けまして、農林金融の基本問題に触れながら二、三お尋ねをしたいと思うわけです。  まず最初に、大臣も御承知のように、わが国の農政は昭和三十年ごろを契機といたしまして、いわゆる従来の補助農政から融資農政へ傾斜を強めていき、特に三十六年に農業基本法ができましてからそのスピードを増しているわけですが、そういう状態の中で、今日よくいわれるのは、日本の農政は金融農政である、農政の支柱が金融である、こういうふうにいわれております。私は、今日の日本農業の状況をながめてみますときに、このような金融農政に入って、いわゆる収益性を上げて自立経営農家に転換をしていく層と、よく三ちゃん農業という表現でいわれるいわゆる兼業農家の層と、大きく二つに分かれていると思うわけです。その分化がますます画然としてきておる。しかも、後者のいわゆる兼業農家というのが、数的に圧倒的な数字を示しつつある、ますます増大傾向にある、これは農業白書でも明らかにしているところでもあります。  そこで、農政の支柱が金融にあり、その金融に入り得る農家というのは数が少ない。大多数の農家がそういう制度に直接関係せずに、いわゆる飯米農家としての兼業農家に転落しつつある。そこで、農政という立場で考える場合に、このようないわゆる兼業農家についてどういう政策を持っておられるのか。これは、いま若干柴田君も触れましたので重複するかもわかりませんが、もう一回大臣から、いわゆる兼業農家に対する日本の農政のあり方、それについてお答えを願いたい。
  87. 西村直己

    ○西村国務大臣 日本の最近の傾向は、兼業農家はふえつつあるということであります。しかし、同時にわれわれとしては体質の強い農家というものもふやしていかなければならない。この点から考えまして、われわれとしては中核体としては自立経営農家農業でめしの食える農家というものの育成もはかってまいりますが、同時に、現実にふえつつある兼業農家に対しても十分な目は注いでいく、こういう考えでございます。したがって、これらはいろいろな協業の方法というものを考えて、そこで生産効率を高めてまいる。それから同時に、兼業でも農業でなくてどうしても就労の機会のほしい方も、家族構成の中には一部あると思います。われわれとしては、そういう家族に対しまする就労という方法もあわせて考えていかなければならない、そして兼業農家所得をやはりふやしてまいる、こういうような考え方を持っておるわけであります。
  88. 森義視

    ○森(義)委員 それでは政策的に、兼業農家都市の労働者等々と均衡する生活水準を営んでいくためには、どういうふうな政策というものを考えておられますか。――もう一回申し上げますと、農業基本法にいわれておる精神は、いわゆる都市労働者との均衡のとれた生活を営める、そういう農村のあり方ということを基本にうたっているわけです。兼業農家に対しては、そういう角度からいうならばどういう政策を持っておられますか。
  89. 西村直己

    ○西村国務大臣 農業の面から申しますと、兼業であっても大事なわれわれのいわゆる食糧の基盤でありますし、同時に農業としての所得を上げなければならない。そこで、それに対しては、私どもは協業というようないろいろな助成なりあるいは融資なりの方法によりまして生産性を高める、効率をあげていただく、こういう方法によって所得水準を上げる。同時にまた兼業農家全体としての所得も上がるように、地域開発なりその他の面から、われわれとしては就労あるいはそれからくる所得というものもあわせて農家に入るような方法を考えていく、それによって兼業農家所得水準というものも上がる方向へ努力していかなければならない、こういう考えであります。
  90. 森義視

    ○森(義)委員 いろいろおっしゃいますけれども、私はこういうふうに考えるのです。現在の兼業農家は、いま農林省の考えておられる金融的な措置によっていわゆる自立経営農家をつくり上げていく。その反面、現状においては、兼業農家というものを土地政策上なかなか整理することはできない。したがって、兼業農家はそのまま残していく。この兼業農家というのは、資本に対する労働力の提供の場として、常にクッションとしての役割りを果たさせていく、こういう役割り兼業農家に負わせていくという、資本の要求なり目的があるのではないか。というのは、現実に今度の制度なんかは、エリート中のエリートを育てようという農政あり、金融制度なんです。そういうワクにはまらない兼業農家に対しては、これはそのまま認めておく。温存しておく。そして、いわゆる資本の要請にも応ずるところの労働力の供給源としての役割りを今後もになわしていく。たとえば不況が来た場合に、その兼業農家は失業者の吸収場所になり得る。これはかつてそういう形で日本の農村は、資本主義の発展の過程の中で、常に資本主義の温存と発展に対する貢献的な役割りをになわされてきたわけですが、今日考えておられる日本の農政の中で、要するに零細農に対する対策というものはほとんどない。したがって、そういう兼業に走らざるを得ない。零細農に対してはそういう角度から、従来のようないわゆる経済の変動に応じて、常に低賃金労働者の供給源でありあるいは失業者の吸収源である、そういう立場をになわしている、こういう考え方を持っておられるようにしかうかがえないわけですが、いかがでございますか。
  91. 西村直己

    ○西村国務大臣 私どもはそういうふうには考えておらないのでございますが、いろいろな御意見の立場から、そういう立論もあるいは立つかもしれませんが、われわれとしては、現実にそこに兼業というものが相当ある。同時に、日本農業が全体としてまだ生産性が低い。したがって、農業専業でめしが食える自立農家というものを、さらに全体の経済が上がる中においてレベルアップをしていくことは当然だと思います。かたわら兼業というものが現実にあり、これがまた大事な食糧生産の基盤でもありますから、その兼業部門農業につきましても、いわゆる一般融資としての中でもって協業なりあるいは助長政策なりをとってまいる。同時に、兼業農家専業農家と違って農業だけの収入も少ない面に対しては、われわれは地域開発なりその他の方法によって所得を向上していく。そして全体としての農業の就業人口の傾向というものは、近代国家における一つのあり方としては、就業人口が減っていくという方向へ持っていく中で、いわゆる職業転換をやられていくということは、円滑な形でその職業転換が行なわれることはいい。それから、一方におきましては農地法というようなものを私たちは改正して、したがって農地を拡大して、専業的に農地を大きく拡大していきたいという方に対しては、そういう方向へわれわれが法制上の道を開いてやったらどうだろうかというので、今回、そういう面からも法案の御審議を願っておるわけであります。
  92. 森義視

    ○森(義)委員 私が先ほど申しましたのは、どうも最近の労働市場は、御承知のように人手不足であります。そういう中で日本農業政策というのが、いわゆる中規模以上の農業育成するという方向に重点が向いておる。兼業農家というものをこのまま温存して、その中からいわゆる労働力の供給を要請し、あるいは不況になった場合においては、そこへ失業者を吸収するというような、そういう緩衝地帯を残そうというような意図が、資本の要請でもあると同時に、農林省も手のつけられない兼業農家の問題については、そういう意図を持っておられるように思えてしかたがないわけです。この点いまの大臣の答弁では、そういうことは考えておらない、いわゆる兼業農家兼業農家として大事な食糧の供給源としてできるだけのことはやっていきたい、その中から生まれてくるいわゆる転業というものについては、これはスムーズな形で生まれてくるものは労働市場へ吸収していく、こういう考え方に立っておるのであって、決して兼業農家というものをそういうような資本の要請によって、常にそのしわ寄せで犠牲にされるというような考え方兼業農家を見ておるのじゃないという答弁です。こういう御答弁は、そのまままっすぐに受ければそうなんですけれども農林省として、いや兼業農家というのは、これはもう日本食糧需給にたいして貢献するものじゃないのだ、いわゆる飯米農家食糧自家調弁できる、このことによって低賃金の一つのささえになるというふうに考えておるというような言い方は、これは農林省としては、農林大臣としてはできないと私は思うわけです。しかし事実上は、どうも日本農業が、いまの農政、いわゆる金融中心の農政から考えていくならば、そういう方向へ-金を借りてそれを返済する能力のあるところは、その金を借りることによって資本の収益性をあげていく、こういう農業だけに重点が向けられておるという現状から分析していくならば、ゆがんだ分析のしかたかもしれませんが、私はそういうふうに疑わざるを得ないわけなんです。その点について大臣にもう一回、日本農業というものについて、そういう兼業農家についても十分な手当てをしていきたいということについて御答弁いただきたいわけです。  その前に、私はなぜそういうことを考えるかと申しますと、けさの参考人加藤さんでしたか、東大の教授が、一〇%の日本のいわゆる大規模農家が、生産市場において三〇%のシェアを占めておる、アメリカでは五〇%だ、こういうわけですね。一〇%が、日本の農産物の生産市場において三〇%のシェアを占めるまでにエリート農業が拡大しつつあるわけです。そうなりますと将来は、兼業農家なんかは一般の市場に対する食糧の安定的な提供という点においては、ほとんど役割りをになっていないのじゃないか、こういうふうに私は思うわけです。そうすると、農業という政策の面から見るならば、もうすでに兼業農家というのは自分たちの農政の対象のワクとして考えられておらない、そういうふうに考えられる。結局、兼業農家を認めていくのだという今日の政策の中では、さきに私が申しましたような、労働力の提供と失業者の吸収という、そういうクッション的な任務と価値だけしか認めておらぬのじゃないか、こう考えますために私はお尋ねしているわけなのです。
  93. 西村直己

    ○西村国務大臣 いま、確かに自立経営農家は一〇%足らずでございます。それが生産シェアの中ではたしか二七%くらい、きょうの参考人の方は三〇%と言われますが、われわれの持っている資料では二七%、こういうふうに出ております。そこで、繰り返して同じことを申し上げるようでありますが、私ども日本農業の体質から見ますと、もちろん日本農業、あるいはそこに住んでおられる農民、あるいは住民、これの福祉向上をはかるのが私の仕事でございまして、したがって、自立農業さえよければあとは犠牲になって飛び出していってくれ、こんなようなことを言っておるなら、日本の農林大臣ではないと私は思うのであります。やはりそのためには自立農業は自立農業なりに、同時に兼業の方々についても、所得の向上あるいは生産基盤としての生産性を向上させる。ただ何と申しても、国際環境をごらんいただきますと、日本農業は近代国家としてはまだ生産効率が悪いということは事実でございます。これをまた効率を高めていくという道は、もっともっとこれからわれわれとしても、助成なり金融なりあるいは農民方々の御努力によって、意欲的にこれを推進してまいらなければならぬと思うのであります。  それからもう一つは、最近はいわゆる補助というか助成行政のほうはなくて、金融で金を貸す、力のある者に金を貸していくためにしわ寄せになっているのじゃないかということですが、私の手元にあります数字でも、農林省関係予算六千五百四十二億円のうち、二千七百十六億円というのは補助金でございます。昨年の四十二年度の補助金に比べましても、現在御審議願っておる予算が三百億円ばかりふえておるくらいでございます。補助金としてはやはり毎年こうやって相当量ふやして、そして一般農政の助成に充てている実情を御了承いただきたいと思います。
  94. 森義視

    ○森(義)委員 それでは次の問題に入りますが、いまの大臣の御答弁で、金融農政といわれるけれども、補助金がかなりのウェートを占めておるということは、これは数字であらわれておることですから私も理解できます。しかし、少なくとも三十年以前の日本の農政のあり方と、いまの金融へ傾斜していく農政のあり方とは、ずいぶん変わっておると思うわけでございます。私は、この補助金農政といわれた日本の農政から金融農政へ切りかえられていったその経緯というものは、政策的な転換じゃなくして、御承知のように昭和二十八年六月に朝鮮戦争が終わって、いわゆる特需で潤っておった日本経済が国際収支の赤字を来たして、いわゆる緊縮財政を余儀なくされて、一兆円予算の中で、特に加えてMSA協定による日本の軍事予算が膨張してくる、片方で支出が多くなる、片方で総ワクでしぼられるという状態の中で、各省が軒並みに大なたをふるわれた。それまでは農林予算というのは、総予算の中で一二ないし一三%を占めておったわけですが、一挙に八%に昭和二十九年に削られた。そういう中で、結局安上がりの金融農政に切りかえざるを得なくなってきたというところに、私は、政策として金融農政へ変わっていったのじゃなくして、財政的な要請から、いわゆる安上がり金融農政に変わっていったんじゃないか、こう思うのです。昭和三十六年に入って基本法農政が出てきて、それから、財政的にも大体いま一〇%を上回わるところまで総予算の中でウエートを占めてきたけれども、そのような、言うならば日本経済の緊縮財政のしわ寄せとして生まれてきた金融農政が、今日ではもうそれをどんどんと度外視して上回っていって、いわゆる金融農政中心になっているというのが、いろいろな学者の説を読んでみましても、大体そういう表現をしておられるわけです。私は、確かにまだ補助的な面がかなりのウエートを占めておることは認めますけれども、農林水産委員会政策的な面が出てまいりますと、常に新しい資金制度である。これでもかあれでもかという形で毎年毎年、いわゆる金融農政といわれるにふさわしいなと思うほど、資金制度がふえてきておるわけですね。そういうものを見ておりますと、金融農政というふうに今日の事態を端的に表現されるならば、そういう表現で当たっているのじゃないか、そういうふうに思うわけなんです。その点について、いやそうじゃないのだ、いわゆる金融へ傾斜していったのは大きな政策的転換なんだということならば、その点についてひとつ御説明をいただきたい。
  95. 西村直己

    ○西村国務大臣 私からお答えする前に、官房長から先にちょっとお答えして、なお私から申し上げます。
  96. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 昭和三十年前後を契機にいたしまして、日本農業金融制度が急速に整備をされたことは、御指摘のとおりでございます。金融制度の整備が進められました原因といいますか、そういうものの一つに、当時の国の財政事情からする財政資金の効率化という問題で、一部補助行政が金融に切りかえられたものがあることも認めざるを得ないと思います。ただ私どもは、このような大きな政策的な流れがあったというふうに理解いたしておるのでありまして、終戦直後二十年代の農政の主たる重点は、戦中戦後の農業の環境の荒廃というものの復旧ということに非常に力を入れた。したがって、これは公共的性格の強い事業が非常に多かったということで、いわゆる補助金行政という性格を確かに持っておったと思うのでございますが、三十年ごろを契機といたしまして、個別経営経営内容の近代化ということが必要とされる段階に入った。したがって、個別経営のための資本投資という問題は、むしろ補助になじまない性格のものであるということを一般的に言えるのではないかと思うのです。そういう観点から、私は、たとえば昭和二十八年の農林漁業金融公庫の設立、三十一年の改良資金制度の創設、あるいは三十六年の農業近代化資金制度の創設、それらが相契機して制度化されていったというふうに理解いたしておるのでございます。
  97. 西村直己

    ○西村国務大臣 私もずっと国会議員として、その当時から関係をしました環境を振り返ってみましても、日本が、御存じのとおり敗戦という立場に立ちまして、非常に食糧問題の危機にあった、同時に農村あるいはその他が、戦時中に公共事業等が一切手がつけられていない、その荒廃を復旧し、食糧危機を切り抜けていくというようなたてまえから、公共事業的な面がぐっと伸びてきたことは事実でございます。それに対しまして日本の農政というものが、金融面においてはあまり系統立ったものがない。それに対して農林漁業金融公庫というような公庫制度というものができて、制度金融が入って、そこから、むしろ日本農業経営近代化の基盤がかなりできてきたのではないか。いわゆる経済とそれからおくれた農業を取り戻す、いわゆる助長、それから公益性のある面を国家が背負うというこの三本立てと申しますか、そういうような面で歯車が回り出していっているのではないかと思うのでございまして、私は、現在の金融だけが先走ってしまって、助長行政と申しますか、保護農政と申しますか、そういった面がどんどん後退している、そういうふうには感じていないつもりでございます。バランスをとりながら、政策でやるべきもの、金融でやるべきもの、しかもその金融はできるだけ農業の性格に合った、低利でありかつ長期であるというような方針は、今後も堅持されていかなければならぬのじゃないかと思うのでございます。
  98. 森義視

    ○森(義)委員 いま官房長と大臣の両方から御答弁をいただいたわけですが、特に個別経営に対する政策として、官房長の答弁では、個人経営は補助金政策になじまない、そういうところから融資制度に切りかえた、こういうふうないまの説明であったわけですが、これは私にちょっと理解ができないわけです。補助金政策というのは日本の古い農政の中の基本的な姿勢であったわけで、それになじまないという新しい制度ではないわけですね。それが今度は新しい金を借る金融政策に変わっていくというのは、むしろそのほうがなじまないのじゃないか。だから、そういう形のためになじまないから云々ということばは、ちょっと私は賛成しかねます。ただし、いまの大臣の答弁のような形で変遷をしていった経過については理解ができるわけでございますが、その点いかがですか。
  99. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 私、先ほど申し上げましたのは、ことばが不十分であったかと思いますが、一般的に申し上げてということを言ったつもりでございます。個別経営投資の中にもいろいろな性格のものがございまして、すでに一般化された技術水準のものであるとか、あるいはすでに一般的普及の段階に入ったとかいうものにつきまして、いわばその資本形成は個人の財産的な資本形成になるようなものがあるわけでございまして、私は、個人的見解にわたるかもしれませんが、そういうものについてはどうも補助政策にはなじまないのではないか。ただ、新しい技術の導入であるとか、新しい経営タイプの開発であるとかいう問題につきましては、私は必ずしも補助事業になじまないというふうなものではないと考えておるのでございまして、多少ことばが足りなかったと思いますが、そういう趣旨でございます。
  100. 森義視

    ○森(義)委員 私が先ほども申しましたように、いままた石田議員からも安上がりだからという話ですが、安上がり農政のために――補助農政では、毎年補助金を組んでいかなければならないわけで、どんどんふえていく。だが金融農政ですと、一回組んでおけばあとは元金に金利がついて返ってくる。もちろんそのワクがふえてまいりますから、借り入れ金も必要でありましょう。しかし、このいただきました資料の中にも明らかなように、借り入れ金よりも貸し付け残高のほうが残っておるという形で、一たん千六百億の公庫資金を組んだら、あとは借り入れ金で何とか補っていける、こういう形でほんとうに安上がりなんです。  そこで、補助農政か金融農政かについて一応私の考え方を、基本的な問題について申し述べて御見解を承りたいと思うわけですが、日本農業は戦前戦後を通じまして、いわゆる資本主義の発展、温存に貢献さすという役割りを果たしてきたわけです。その結果生じたのが、今日の都市産業と農村の格差の拡大、ひずみだと思うわけです。したがいまして、そういう観点から申し上げますならば、資本主義が高度な発展を遂げれば遂げるほどその格差が拡大をしていく。したがって、ある段階において、資本主義の発展の犠牲になった農山村というものを、資本の責任においてレベルアップする義務があるのじゃないか。  この点については、これは単に日本におけるところの農山村と一般工業との格差の問題だけでなくて、国際的にも、先進国と後進国との関係でそういう問題がいわれているわけです。一九六一年の国連総会でケネディが、一九六〇年代はいわゆる開発の年である、これを受けて一九六四年の国連の貿易開発会議で、プレビッシュが有名な声明を出しておりますが、今日先進国が先進国としての地位を保つには、その犠牲になったところの後進国というものに対する救済の義務がある、そういうふうな言い方をしているわけです。したがって、そういう見地から考えるならば、後進国と先進国との国際的な関係、あるいは国内における一般産業と後進的な農業との関係、そういう関係はやはりものの考え方としては同じような見方をすべきじゃないか、こう思うわけです。  そういうととから考えるならば、資本の責任において、おくれている産業の引き上げというものを考えるのが、私は今日の時点における国際的なものの見方じゃないか、こう思います。そういう点からいうならば、おくれておる農業に対して、金融的な措置でこれを考えるんじゃなくて、もっと抜本的な、言うならば補助金政策と、それの足らざる部面をいわゆる系統金融によって補っていく。系統金融の場合において、もちろんこれは利子補給しないと、近代化資金のような形をとらざれば、いまの状態では金利の問題がむずかしいと思いますが、そういう方法を講じて、日本農業というものを基本法の精神にのっとった、いわゆる格差の是正、都市との均衡のとれた農業にしていくという方向へ進んでいく必要があるのじゃないか、こういうふうに実は考えるわけなんです。  したがって、いま金融が先行していろいろな問題を惹起いたしておりますが、きょう、午前中の参考人片柳さんでしたか、価格政策と共済制度が完全に確立しない限り、金融の面ではいろいろな不安があるというような問題も述べておられました。価格政策土地政策あるいは労働政策、社会保障政策あるいは補助金制度や公共投資、いろいろの諸政策というものが出て、それに関連をして金融というものが出てくるというのが、私は順序であるべきだと思うわけです。そういう観点から申し上げまして、戦前の補助金農政に直ちに返れという言い方をしませんが、基本的なものの考え方、いわゆる後進性を持った農業都市工業と均衡のとれた形に持っていくためには、資本自体の責任においてそういうものを出す必要が、今日の段階で、国際的にも国内的にもあるのじゃないか。そういうかまえというものが農政の担当者の中に基本的になければ、今日の複雑化していく金融農政が、そのままとてつもないところへはまり込んでいくのではないか。農民は安易に金融農政に依存していって、気がついたときには借金でがんじがらめになっておって、日本農業というものは、そこからまた新しい荒廃が生まれるのじゃないかという気がいたしますので、やはり構造改善やあるいは近代化という基盤的な問題については、補助行政のほうに重点を置いた形で処理するのが正しいのじゃないか、こういうふうに思うのです。そういう考え方について、大臣の見解を承りたいと思います。
  101. 西村直己

    ○西村国務大臣 私は、おっしゃることもわかります。しかし同時に、資本主義の高度化によるというような一種のお立場だけで受け取るわけにも私としてはまいらない。なぜ日本農業が後進的であり、非生産的であるかというと、資本主義の高度化によってひずみができたというだけでなくて、やはり土地とか自然条件の制約であるとかというようなものが一つございます。土地というものが非常に制約を受けている。特に日本におきましては、土地の制約というものは非常に強いものだ、これは御存じのとおりでございます。これを私どもとしてはどう考え直すかということで苦労もし、皆さん方にも御心配をかけている問題でございます。  それからもう一つは、農業中心は何といっても国民食糧の確保という大きな使命がある。こういう面から、国としてあげてこれを安定向上させなければならぬというふうな大きな使命感をわれわれはになっておる。単に資本主義の高度化でこう押されてくるから、その責任が資本主義にあるから埋めろ、こういうような立場ではなくして、そういうような面から日本の農政というものを安定向上していく、こういう意味で国も負担しなければならぬ。こういうことは、当然助長行政として大事である。その意味で、ただいま申し上げましたように、補助金としても相当なものを今後続けていかなければならぬし、価格におきましても、あるいは割り当て制におきましても、国際関係の間において国内農業との調整に配慮しつつ、あるいは価格支持制をとるとか、輸入割り当て制をとるというような、いろいろな問題を取り上げております。税の面でも、農業に対するいろいろな方法をとっておるわけであります。  もう一つ金融の問題で、金融だけが先走って――確かに農業も漸次経済性を持たなくちゃいかぬ。そこに近代性ということばの裏打ちとしては、採算のとれる農業とか自立できる農業ということばが出てくるのは当然だと思うのでありまして、そこでやはり経済性というものが出てくる。そうすると、やはり金融というものはある程度入っていかなければならぬ。ただそれには、やはり低利であり長期であり量も相当なければいかぬ。その意味で、お説の系統資金などをもっとわれわれとしては努力して活用していくという方法は、今後もくふうしていかなければならぬのじゃないか。あわせまして、いまの金融あるいは助長といいますか補助と申しますか、それは組み合わせをうまくしていきたいというのが、われわれの考えでございます。
  102. 森義視

    ○森(義)委員 アジア開発銀行に対する日本の出資は、私はやはりブレビッシュ声明という精神を受けた後進国援助のあれだと思うのです。だからそういう思想というものは、これは国際間だけじゃなくして、国内においても基本的に私はあってもいいのではないかと思う。戦後の日本の高度経済成長政策、これはやはり原始的蓄積といわれるようなものがあったからああいう成長を遂げたわけですが、その原始的蓄積の最大のものは、農山村の低賃金労働力です。それに高度な技術国民の教育水準の高かったこと、こういう原始的な蓄積があって、日本経済があの敗戦の焦土瓦れきから飛躍的な発展を遂げたと私は思うわけです。農村は原始的蓄積に使われるけれども、自分みずからは持っていないわけです。したがって原始的蓄積に利用されて、日本の高度経済成長政策の一翼を下からになう役割りを果たされた農村に対しては、当然高度成長を遂げた今日の時点においては、先ほど申しました精神からいうならば、やはり資本の側の責任といえばちょっと言い過ぎますけれども、そういうものの考え方、発想のしかたというものが基準になっていかなくちゃならないのではないか。そういう点からいうならば、金融農政のやり方というものはそういう見地に立っておらない。私はやはり補助農政という形に重点を置きながら、それを金融でカバーしていくという姿勢が正しいのではないか、こういうように思いますが、大臣いま一度御答弁願います。
  103. 西村直己

    ○西村国務大臣 もちろん私はお気持ちわかります。しかし同時に、いまアジア開銀の例をお取り上げいただきましたが、これも低利、長期融資であることは間違いない。それから、われわれはもちろん助長行政と申しますか保護農政という線は持ってまいりますが、同時に、金融というものをやはり並行的に入れてまいります。私は、経済というものには創意というものが大事だと思う。やはり自分の力、自助自立、これには経済性が人間というものを前進させてくれます。その意味金融というものが果たす役割りもある。ただし、金融というものが非常な圧力にならぬように、低利でありかつ長期であり、その量というものも不断にわれわれは気をつけてまいりたい、こういうような努力をしてまいりたい、こういう考えでございます。
  104. 森義視

    ○森(義)委員 今度の公庫法の総合資金制度が出てまいりましたのは、農業金融に関する懇談会の答申ですね、これにそのまままる写ししたような形で出てきておるわけですから、おそらくこの懇談会答申に依拠して法案の作成が考えられた、こういうように思うわけです。そこで、この答申にこういうことが書かれてあるわけですね。「農業関係制度金融は、農業という収益性の低い産業に基盤を置き、しかも特定の政策に基づいて実施されるものであるから、今後の農業金融施策を推進するにあたっては、農業の動向と農政の展開に即応してその機能効果的に発揮しうるよう考慮すべきである。」いわゆる農業の動向と農政の展開に即応して金融機能効果的に発揮するようなことを考慮すべきである、こういう文章が答申の中にあるわけですが、これをどういうふうに理解しておられますか。
  105. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 この農業金融の研究会は、東畑四郎さんを座長として一年有余十分検討していただいたわけでございますが、ただいま御指摘の個所の意味は、やはり農業金融一つ政策手段でございますから、農業金融だけが飛び出していって何かをしようとすることは無理ではないか、農政全体の施策の中で農業金融が正しく位置づけられるべきではないかということを含意しておるというふうに、私ども理解しておるわけでございます。
  106. 森義視

    ○森(義)委員 ところが現状は、金融が飛び出しておるという現実を踏まえてこの警告が発せられておる、私はそういうふうに理解しておるのですが、そういうふうに理解しておられませんか。
  107. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 この総合資金だけについて申し上げますれば、大体この研究会の結論といいますか、論議の過程を十分踏まえての施策でございますから、総合資金は、もちろん総合資金だけが出るのではなくて、農地法の改正その他構造政策の一環として出されておるわけでございます。そういう意味で、首尾は決して一貫しないということではございません。ただ私ども、それでは農地法その他の構造政策がかりにないとして、この総合資金的なものが意味がないかといいますと、私は必ずしもそうではないというふうに考えておるわけでございます。これはなぜかと申しますと、私ども総合資金制度として考えておりますのは、この間も申し上げました、いわば中堅農家といいますか、何か特別なエリート的な農家をつくるという趣旨では毛頭ございませんで、農業で生活できる農家、常識的なことばに直せば、おそらく中堅農家ということばが適当ではないかと思いますが、そういうものをつくることでございまして、しかも、そういう農家の芽というのは農村各地に現実にあるわけでございますから、そうして、そういう経営を伸ばそうとする人たちが、現在の公庫資金制度では窮屈であって、何か別の経営全体を対象として相当多額の融資ができるような制度があるまいかということを相当希望しておるわけでございます。私どもいろいろな形で農村の人たちと接しております限り、そういうことが十分言えるわけでございますから、構造政策の一環としてこの総合資金をつかまえることはそのとおりでございますけれども、それはそれなりにまた独立しても意味があると私は考えておるわけでございます。
  108. 森義視

    ○森(義)委員 局長のこれの理解のしかたは、私は、今度の総合資金制度をさしているのではなくて、従来の金融のあり方全体をさしておると思うのです。というのは、いわゆる金融それ自体が先行してしまって、政策というものがそれにうまくマッチしないために、金融政策自体がいろいろとんざをしておるということを意味しておる。たとえば構造改善の場合のように、いわゆるパイロット的な投資をやっていく方向へ今度ずっと移ってきておるわけですね。そうすると、非常に危険性が伴うわけですね。そういうふうな試験的な、あるいは模索的な、あるいはパイロット的な形のほうに金融がずんずんといま進みつつある。そういうことに対して、政策というものがしつかりあって、それの裏づけ手段としての金融というものが常に頭の中に描かれておらないと、パイロット的な金融が先に行なわれることに対する警告だ、私は実はこういうふうに理解しておるわけです。そうでなければ、総合資金制度それ自体の問題について――これはいわゆる総合資金制度の答申じゃないわけです。農業金融全体に対するところの懇談会の答申なんですね。その中で、当面それでは総合資金制度はこういうものをやったらどうかということをいっておるわけです。したがって、この文章の読み方は、総合資金制度云々という読み方でなくして、従来の金融制度の中に、いわゆる政策の裏づけのない、裏づけのないというよりも、政策よりも先に飛び出していった危険性があるから、そういうものは厳に慎んだほうがいいのじゃないかということを意味しているのじゃないか、私はそう思うのですが、これは間違いですか。
  109. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 いま御指摘の数行の部分は、これは当然全体のいわば総論的な部分でございますが、単に総合資金だけのことではなくて、農業金融全体のことに触れておるわけでございます。ただ、農業金融全体のことに触れておる部分でありますけれども、その中で総合資金について申し上げますれば、私が申し上げたとおりだということを申し上げたいわけであります。これは全体にかかる問題でございます。
  110. 森義視

    ○森(義)委員 時間がありませんので、いま一つ、せっかく林野庁が来ておりますので聞きたいことがあるのですが、実は今度の卸売市場の近代化資金、それは農林漁業金融公庫といわれる以上は林業も入っておるわけですね。ところが、林業の市場に関しては生鮮食料品とずいぶん違うわけですね。今日林業の流通面というものはたいへんな混乱をして、昨年度は林業関係の倒産が、中小企業倒産の約四割くらいを占めておる。卸売市場から商店から全部含んで、大体四割くらいを占めておる。そういうような流通に関して、今度新しく公庫が流通の問題に乗り出したわけです。その機会に林野庁として、林業流通についてこの中に入っておらないのは、入ろうとしたが入れてくれなかったのか、性格が違うから、あるいは林野庁として別個に林業流通については考えておるのか、おるというなら、その構想をお聞かせ願いたい。
  111. 亀長友義

    亀長説明員 今回の市場の近代化資金につきましては、主として生鮮食料品という考え方で原案ができております。木材は生鮮食料品ほど緊急な処理を要しないというたてまえで、私どもとしてこれは今後の研究課題として考えておるわけです。ただ、今年度から林業の流通関係の基本調査というものを、特別に予算を獲得しまして実施するということに予定しております。大体二カ年の予定でやる計画にしております。現在は、御承知のように流通の形態が非常に複雑でございまして、さらに木材センターというような新しい形が生まれつつあるのでありまして、供給面からも、外材の流入等でかなり製材業の立地編成等も変わるような形がございます。そういう点も二カ年間に見きわめました上で林業流通の点について考えていきたい、かように考えております。
  112. 森義視

    ○森(義)委員 時間がありませんので、林業流通の問題については、また機会をあらためて質問することにして終わります。
  113. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員長代理 兒玉末男君。
  114. 兒玉末男

    ○兒玉委員 最初は経済局のほうにお伺いしたいと思うのですが、これは昨日石田委員もある程度質問されて、重複する点もあろうかと思いますが、特に今日の流通対策の中におきまして、市場における転送というととが、価格形成並びに市場の狭隘化、また市場を非常にふくそうさしておる。こういうことについて、現在農林省としてはどういうふうな指導なり規制を行なっておるのか、転送に関する点について、まずお伺いしたいと存じます。
  115. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 転送の問題は、水産物について現在相当問題になっておるわけでございます。これは最近の市場の情勢あるいは生鮮食料品の流通の事情から申しまして、産地のほうから大量の荷物を一ぺんに特定の市場に持ってくるという問題もございますし、それから大都市周辺の地方市場で、なかなか自分の力では荷物が集まらない。したがって、大市場から荷物を分けてもらう必要もあるわけでございます。私は、経済的にいってある程度合理的な面もあろうかと思いますけれども、卸に当てられた荷物が、かりに卸の裁量によってかってにどこかへ回されるという事態は、価格を公正に決定するという立場からいいましても、決して望ましいことではございませんから、私は、結局仲買い人の力が強くなればそういう問題はよほど少なくなって、仲買い人が自分で荷物をせり落として、これを地方市場へ送るということも可能でしょうし、また地方市場が強くなりますれば、自分で荷物を引く力が強くなるわけでございますから、これでも転送の問題はよほど少なくなると思いますが、いわば過渡期の対策といたしましては、とにかく一定のルールをもって、無制限に卸がやれないようにしたいということを、現在指導しておるわけでございます。  東京都その他においてなお検討中のところもございますし、たとえば名古屋のように、卸、仲買いその他の関係業者が集まりまして協議会をつくりまして、そこで、普通の水産物でありますれば、市場へ入りましたものの一五%以内で転送を認める、そういうルールをつくってやっておるところがあるわけでございます。これは卸、仲買いの実は商売にも関係することでございますから、卸、仲買い、これは当然含めて関係者で協議会をつくって、そこで納得できるような解決を出して、ある荷物のある割合について転送が行なえる、そういう公正なといいますか、あるいはオープンになった形といいますか、そういうものによって転送が行なわれ得るように今後も指導を強化してまいりたい、こういうふうに考えております。
  116. 兒玉末男

    ○兒玉委員 大臣に時間の制限がございますので、はしょっていきたいと思います。  次に、これは先般参考人を呼んだときにも一応要望したわけですけれども、特に芝浦屠場にしても、あるいは他の築地なりその他の生鮮食料品を扱うところで、非常に非衛生的な状態に置かれておるところが多いと思うのですが、これはもう少し環境整備といいますか、特に衛生的な面からの強力な指導を行なうべきではないかと思うのですが、このことについて御見解を承りたいと思います。
  117. 西村直己

    ○西村国務大臣 これは国民の口へ入ります大事な食料品でございますから、当然のこととしてわれわれは今後とも十分留意をしてまいります。
  118. 兒玉末男

    ○兒玉委員 この際、ひとつ大臣も現地の状況を十分視察をいただいて、徹底的な御指導をお願いしたいと思います。  次に、この点も石田委員がお触れになったのですが、せっかく大臣がお見えになりましたので、現在、東京の中央卸売市場を中心としまして、特に卸売り人の利権化等を通じまして、非常に不明朗な状態がかもし出されておる。特に最近の市場というものは、非常に国民大衆に直結する重大な役割りを果たすところでありますし、この市場行政の公正化ということが強く叫ばれておるし、特に農林省としましても、関係機関に再三にわたり警告も出されておりますが、こういう状態が依然としてあとを断たないということは、いま一段と私は農林省の適確な指導というものが強く必要とされるのではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、この市場行政の公正化ということについて、この際、特に大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  119. 西村直己

    ○西村国務大臣 卸売市場、特に中央卸売市場というものは、生鮮食料品の流通においても中核的な地位にある。そこで生産者と消費者の双方の間にあって、あるいは卸売り、あるいは仲買い、あるいは買い出し人、こういうものがそれぞれ入ってきて、そこで公正な取引、妥当な価格の形成をやるわけであります。したがって、これに対しても内部的にも公正な立場をとってもらう。あるいは先ほど局長から話がありましたが、その中での合理的な取引のルールというものを、絶えず確立してもらうようにわれわれは指導していきたい。それからもう一つは能率の向上、この二点に留意しまして、県民なり都民なり市民なりの生活のほんとうの中心の、もとをなすものであるということで、私ども不断に明朗化、公正化というものに努力してまいりたい、こういう決意でございます。
  120. 兒玉末男

    ○兒玉委員 次に、やはり流通関係で、コールドチェーンに関係する問題でございますが、先般の予算委員会における分科会の私の質問に対しまして、科学技術庁長官は、すでに実験の段階は終わって、これからは農林省と具体的なことについての打ち合わせをする段階までいっているということでございましたが、特に本日科学技術庁もおいでになっておりますので、実験の過程なり将来の見通し、こういう点は大体どういうふうな経過と構想をお持ちなのか、科学技術庁にまずお伺いしたいと思います。
  121. 鈴木春夫

    ○鈴木(春)政府委員 科学技術庁で行なっておりますコールドチェーンの経過を概略申し上げますと、この二年間で主として技術的な側面を実験したわけであります。この技術的な側面と申しますのは、将来コールドチェーンのでき上がる際に、その間にいろいろ技術的な問題が起きてくるはずでございます。そういった問題はどこに起きるか、その問題をどういうふうに解決していったならばコールドチェーンが成り立つか、そういった点を解明いたしまして、それをこういうふうにやっていけば実用上乗り越えることができるといったような、そういった技術面の確認をやったわけでございます。いろいろ問題になる点を最初洗い出しまして、この二カ年にわたって大かたの事項につきましては実験が終了したわけであります。なおまだ二、三の点で追加して試験すべき事項が残っておりますので、これは本年度引き続き実行する予定にしております。そういうような関係で、一応技術的な観点での調査は終わった。したがいまして、これを実用面に移していくことができるというふうに、この間科学技術庁の長官から御答弁申し上げたわけでございます。  しかしながら、実際これが技術的な実験だけではよかったのでございますが、これが経済面と組み合ってきますと、いろいろまだ問題はあるかと思いますが、何といいましてもこの問題は、経済的に成り立たなければいかなる技術も価値がないのでございます。そういった経済的な面で 今度は農林省のほうで取り扱っていただくことになっております。その間にもしそういった技術面が出てくれば、なおわれわれのほうもいろいろバックアップしなければならぬ、こういうふうに考えております。
  122. 兒玉末男

    ○兒玉委員 この際、農林省のほうにお伺いしますけれども、特に私の住んでおる南九州は、阪神なり東京等の豊富な生鮮食料品の供給基地になっておりますけれども、輸送手段が非常におくれているために、せっかくの供給基地としての役割りを十分達成できないというので、科学技術庁のほうで、過去再三にわたりいろいろと御協力をいただいておりますが、何といいましてもこれからの問題としては、農林省が積極的にこれにどう取り組むかということが、私は非常に必要な問題ではないかと思う。しかも、先般の南九州畑作営農関係の臨時措置にしましても、やはり生産と供給、輸送というものが密接な関係を持つわけでございまして、これについてどういうふうな構想なり今後の施策を行なっていこうとするのか、この点お聞かせをいただきたいと思います。
  123. 黒河内修

    ○黒河内(修)政府委員 いまお尋ねの、私どもの本年度からコールドチェーンの実験事業をしようとしておりますのは、先ほどお話がございましたように、科学技術庁のいろいろな技術的な考え、二年間のいろいろの成果を踏まえまして、これの経済的側面で、たとえば産地出荷の予冷と申しますか、そういう問題、それから包装の問題だとか、それから輸送途中の問題だとか、それから荷受け地における処理の問題、それから小売り店におきますストッカーと申しますか、大型冷蔵庫の問題、そういうものが、普通の食料品の常温取引の場合と違いまして、各段階におきまして余分に経費がかかる。それらを今後実用化していく上において、経費はどの程度、どういう段階でどういうふうにかかるというような、経済的側面を主として検討していきたい。  そこで現在のところは、ただいま全敗等関係団体、それから関係府県の方々といろいろ御相談をして、まだどの県でどういうふうなものをやるというふうに具体的な決定はしておりませんけれども、各府県なり生産者団体の御意見を聞きましてこの具体的実施方法をきめたい、いまこういう段階でございます。
  124. 兒玉末男

    ○兒玉委員 この際、大臣にも特にお聞きしたいのでございますけれども、いま御答弁のありましたとおり、海上輸送の場合には、輸送量に適応するだけの生産供給体制をつくることがまず私は大事だと思う。同時に陸上における、現在国鉄が開発をしております冷凍車、冷凍コンテナ、こういうことについても相当国鉄も力を入れておるわけですが、こういう陸上、海上と両面における輸送体制というものを積極的に進めていく必要があるんじゃないか。こういうことでもって、私は生産地と消費地を直結するコールドチェーンの全体的な効果を期待することができるのじゃないかと思うのですが、この辺の総体的な問題について、この際大臣の御所見を承りたいと思います。
  125. 西村直己

    ○西村国務大臣 コールドチェーンは、二年前に科学技術庁でお取り上げいただきまして、試験研究の段階を経てわれわれのほうの役所でこれを具体化していく段階へ入ってまいっております。そこで、これが全体としては漸次発展してまいるということはもう事実でございまして、 コールドチェーンについては、消費が高度化するとか、資源の高度利用、こういうような面から開発、実用化、これはもう漸次進んでまいるし、われわれも推進してまいらなければならぬと思います。ただ、品物によってそれぞれいろいろあれは違うと思いますが、いまおっしゃった輸送、まあ経済性の問題が一つ大きな問題であると思うのであります。したがって、それにはその輸送の設備、費用あるいは産地なり着地なりの冷蔵庫の問題等があると思います。これらは十分われわれも勉強いたします。同時に輸送のほうは運輸省の関係がありますから、これとも十分連携をとってまいりたいと思っておるところでございます。
  126. 兒玉末男

    ○兒玉委員 次に、経済局長にお聞きしたいのでございますが、今回のこの公庫法の改正によりまして、いわゆる卸売市場の設備近代化ということに重点を置いておるわけですけれども、この中で、特に貸し付け限度というのが明らかにされていないように受け取れるわけでございますが、これはどういうことを意味しておるのか。無制限というわけにはいかないと思うし、資金のワクもあると思うのですが、今後の運用面においては一体どういうふうな取り扱いをするお考えなのか、この点お聞かせをいただきたいと思います。
  127. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 卸売り市場の近代化資金の内容は、一つは地方市場であります。この地方市場につきましては、まさに実態に即して事業を認めるつもりであります。県が中心になって整備計画を立てるわけでございますから、適正と思われるものについては、金額の限度なしに貸し付けをいたすつもりでございます。  それから卸、仲買いにつきましては、当然と言うとおかしいですが、資金の限度は設けます。ただ、まだ最終的な結論に至っておりませんので、詳細申し上げられないわけでございますが、かりに卸三千万とか、仲買い千万とかいうことにいたしまして、それ以外に卸、仲買い人が冷蔵庫等々を備える場合はそれに相当上積みをするつもりでございますし、また、仲買い人が大型化をするために営業権の譲渡を受けるような場合は、仲買い人の施設の譲渡を当然伴うわけでございますから、施設の譲渡に伴ってのれんを譲り受ける場合には、それに相当プラスをして、大型化の推進に支障のないようにいたすつもりでおります。
  128. 兒玉末男

    ○兒玉委員 それから、今回のこの資金融通制度によって、いわゆるいままでの旧態依然とした市場形態というものを改革していくわけですけれども、それでは今後の市場の整備計画あるいは目標なり基準なり、総体的な地方市場の改善の方向といいますか、農林省が考えている施策の基本的な問題というのは、大体どういうふうな構想を持っているのか、この点お伺いしたいと思います。
  129. 西村直己

    ○西村国務大臣 地方市場の施設整備につきましては、統合による大型化によって集荷能力を十分確立といいますか、確保したいということ、それからもう一つは、都市計画に即した立地の適正化、これは御存じのとおりいま都心あるいは狭い場所によくあるのが例でありますが、都市計画等によくのっとった立地を考えていただく。それから用地規模を十分とる。これは荷さばきというものの機能を働かせなければいけない。こういうものが非常に能率が悪いということは、流通はもちろんのこと、価格その他にも影響してまいりますので、こういったことをやって、これらを中心関係の施設を整備する。そうして公設市場につきましては、御存じのとおり国庫の補助、それから民営の市場は、これが大多数でございますが、近代化資金のただいまお話のあるような融資で、予算が成立しますれば、四十三年度からこれを実行に移してまいるつもりであります。もちろん、これは国が都道府県を指導して整備計画をつくらせるわけであります。これに基づきまして、各県におきまする人口の動態、交通条件、あるいは経済圏と申しますか、そういうようなものに対応した流通圏ごとに市場の適正配置、計画的整備を推進してまいる、こういう考えでおります。
  130. 兒玉末男

    ○兒玉委員 いま大臣からも御答弁がありましたが、これからの市場の形態というものは、やはり大規模な卸売市場という形態が採用されてくる。そういたしますと、当然このような公設市場につきましては、中央卸売市場に準じた財政的な措置というものを国がとるべきじゃないか、こういう要請も強いように聞いておりますが、これらの点についてはどういうふうな方針をお持ちなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  131. 西村直己

    ○西村国務大臣 ことし、三カ所でございますか、六千万円近く、地方の公設市場に対して財政的な用意をいたしております。それから、民営に対しましてある程度のワクを用意しておるわけであります。将来民営のものに対して、いわゆる財政資金をそのまま入れるかということになりますと、これは営利事業をやっておられるものでございますから、そこまではいかないで、いわゆる融資でいきたい、こういう考えであります。
  132. 兒玉末男

    ○兒玉委員 経済局長にお伺いしたいのでございますけれども、今後の特に生鮮食料品関係の流通対策というととは、地方の公共団体におきましても非常に重要な課題でございますが、全体的な市場の監督というのは地方公共団体が主体になるわけでありますけれども、やはり政府から出資をする以上は、国との関係をどういうふうに調整をとっていくのか、この問題は特に今後たくさん提起されようかと思いますので、この際局長の御答弁をお願いいたします。
  133. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 地方市場につきましては、現在相当多数の県で条例をつくって、規制あるいは指導をいたしておりますけれども、その条例のいわば根拠になるような法律はないわけでございます。私は、現在とにかく千九百をこえるような地方市場で、種々雑多でございまして、これが多少数が減るように整備されるといたしましても、やっぱり相当数の多い、複雑な内容を持ったものでございますから、中央卸売市場法のように法律でこまかく規制することは、まず無理ではないか。したがいまして、規制の主体は条例で、その条例の根拠を法律でつくるという程度の法律の制定は、今後必要になろうと思います。
  134. 兒玉末男

    ○兒玉委員 最後に一問お伺いしますけれども、特に今回の市場整備というのが、その敷地内にあるところのいわゆる付設集団市場といいますか、関連の店舗等もこの対象になっておるようでありますが、この点は通産省所管の中小企業振興事業団でございますか、これから貸し出されるところの、いわゆる店舗集団化事業等に対しては二分二厘という低利で貸し出されておる。今回のこの金利は六分五厘でございますから、そういたしますと非常に金利の格差があるということで、今後のこのようないわゆる付設の集団市場等の整備の際に、かなり問題が提起されるのじゃないか。この辺の調整なり対策はどういうふうに進めていこうとするのか、この点お聞かせをいただきたい。
  135. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 中小企業振興事業団関係の貸し付けの対象は、きわめて限定的でございます。たとえば、そこで団地をつくれば、大多数の商店はそこに移転しなければならないという条件その他きつい条件がございます。私ども農林漁業金融公庫の対象になるものは、そういうむずかしい条件はついておらないし、運営につきましては中小企業庁と今後十分連絡をして、違背のないようにいたしたいと思います。しかし私は、最終的にはどちらからでも借りられるというようなものに小部分のものがなりましても、それぞれ資金のワクもあるわけでございますから、そう業界が混乱することはまずないというふうに思います。
  136. 兒玉末男

    ○兒玉委員 終わります。
  137. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員長代理 次回は、来る十六日開会いたすことにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十二分散会