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島上委員 現実に即すとおっしゃられますけれ
ども、腐った
現実に即されてはかなわぬです。新聞でもそれを大きく取り上げております。あなたは
理想とおっしゃいますけれ
ども、あなたの
理想はどういう
理想か知りませんが、これは時間がありませんからあまり長々としゃべられては困りますが、あなたの党で、いまから五年前ですよ、五年前に
三木武夫現
外務大臣が
組織調査会の会長をしておったときです。五年前の三十八年十月にこういう
答申をしていますよ。いろいろありますけれ
ども、「本来党の
経常費は党員の納入する
党費によってまかなわれることが
理想であるが、」五年前に言っているのですよ。そうして今度の
答申は、これから
法律がかりに成立しても、おおむね五
年間にその
理想を達成するようにということを言っているのです。あなたの党で
答申してから、通算すると十年になるのですよ。しかもその十
年間に、この案はその間に
理想に達しようとする案ではないのですよ。私は、いまの段階で、もう抽象的な
ことばでは満足しませんから、具体的に伺いましょう。
この
答申の骨というのは、大骨、
中骨とでも申しましょうか、骨は、第一に
会社、
法人その他の
献金の
限度を二千万円に押えたこと。
個人の場合一千万円。第二は、この
ワクの中で、過渡的ではありまするけれ
ども、派閥と
個人への
献金をそれぞれ五十万円にとどめたこと。第三には、
公開の原則を貫くために
会費も
寄付と認めて
届け出るということ。第四には、
減税措置は
個人からの場合に限る。第五には、五年をめどに
寄付はすべて
個人にするように、それまで党の
組織化、
近代化をはかり、党の
運営費や
選挙費用など、すべて
党費と
個人の
浄財献金によるようにするということです。
このほかに、こまかい点、いわゆる
小骨もありまするけれ
ども、一体
総理大臣、今回の
法案は、この五本の骨が全部抜き去られていることを
御存じでしょう。全部、ことごとく……。二千万円、これは無
制限ですよ。あなたは、これで骨が一本でも残っているとお思いになりますか。
しかも驚くべきことには、あなたは
政治資金規正法だとおっしゃいますけれ
ども、私は、これは
政治献金奨励法だと思う。さらに言うならば、
政治献金督促法だと思う。
督促法ですよ。
ここに
昭和四十年と四十一年度の
会社の
献金のベストテンがあります。資料があります。それはこまごまと申しますと時間がかかりますから申しませんが、たとえば川崎製鉄というのがある。これは
昭和四十年に……(「時間だよ」と呼ぶ者あり)いや
最初のスタートが七分おくれていましたから。千二百七十四万円
献金しておる。今度の
法律によりますると一億一千五百二十万円
献金できる。何と十一倍です。もっとひどいのがあるのです。もっとひどいのがありますよ。
日本鋼管、これは
昭和四十一年、
献金は一千万円。ところが、今度の
法律によりますと一億二千六百万円
献金できる。十二・八倍の
献金ができる。そうしてこれが無税ですから、
政治献金奨励法であるばかりではなく、
督促法なんですよ。あなたは、お忙しくていらしゃいますけれ
ども、大新聞には一通り目を通していらっしゃると思う。私が
民主政治は
世論の
政治だということを強調したら、そのとおりだとおっしゃいました。この
政府案に対して、ここに切り抜きもたくさん持ってきていますけれ
ども、新聞は、それこそ筆をそろえて
政府案の骨抜きを非難し、やみ
献金奨励法であるとか、あらゆる酷評を与えております。私はいままで、この問題に関していろいろな新聞その他に目を通して見ましたが、
自民党の機関紙以外には、
政府案を、
総理大臣が言うように一歩前進だなどといって、消極的にもせよ支持している新聞は一つもありません。あったら御指摘願いたい。まさにごうごうたる四面楚歌ともいうべき非難であります。
総理大臣、あなたつんぼじゃないでしょう。この声があなたの耳に聞こえないはずはないと思う。
世論を尊重するならば、ここらでもう一ぺん
答申案を読み直して、静かに胸に手を当てて
世論に聞いて
考え直す、この案を引っ込めて出し直しをする、このくらいのそれこそ勇断があってしかるべきではないかと思うのだ。いかがですか。