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工藤参考人 ただいま御紹介いただきました
都民銀行の
工藤でございます。
申し上げるまでもなく、
金融機構、
制度というものは、従来のいろいろの体験とかあるいは必要があってできたものでございますから、
情勢の
変化に従ってこれを改めていくということは、当然のことであろうと思います。この点につきましては、決して異論はございません。しかし、近ごろのように遠き将来の
イメージということがはやりのことばとして、実は
現状認識も正確にできていない、二、三日先のこともよくわからないような
状態で、その
イメージを
基礎としていろいろな計画を立てるということには、私は反対でございます。大きな
見通しを立てておいて、それに従ったいろいろの方策を講じていくのなら賛成でございますけれども、現在は何でも行き過ぎ
時代でありまして、
イメージ行き過ぎという
感じがあると思いますが、この点は
現状に即したような
状態になっていただきたいと思います。
金融制度なり組織を変更していく点につきましても、若干の
問題点がございます。
第一に、申し上げたいことは、
制度とか
機構とかいう問題は、これは外面的な形式的な問題でありまして、これによってすべてを改めていくということはなかなかむずかしいと思います。問題は、この
機構なり
制度なりを動かしております人の問題でございます。先刻も雑談にちょっと出ておりましたが、
選挙制度の問題にしましても、問題は、
議員さんがすっかり反省していただいて、りっぱな
議員さんになっていただけますと、
選挙資金規正の問題だとか、あるいは区割りの問題とか、そういう問題は自然に解決できる問題であって、これは
枝葉末節の問題であると
考えていいと思います。
金融機関につきましても、その点にやはり同じような問題をはらんでおるのでありまして、
金融機関の
使命と申しますか、責任ということになりますと、これは
公的性質が多いだけに、問題が広く大きいと思います。この点を
金融機関の
経営者が忘れがちになっておるところに大きな欠陥があるように思います。普通の
企業でございますと、主として利潤の追求に
主力を置くのでございますが、
金融機関になりますと、ことに
自由主義経済のもとにおきましては、
金融機関は
経済を健全に
運営していく
中核体になっておると私は
考えます。これによっていろいろの規制をして、それで
経済全体を健全にし、また
発展も健全な
発展にもっていくという大きな
使命が課せられておると思います。またもう
一つの
使命としては、
金融機関としては通貨の
価値維持という大きな
使命があります。そういう問題を忘れがちになっておるからいろいろの問題が起こってくると思います。したがって、
経営する人の心がまえなりあるいは人柄なりが問題になってまいりますから、外面的な形式的な
制度等の問題を一生懸命やりましても
効果はあがらないというような
感じがいたします。これが第一点でございます。
第二点としましては、
わが国の
経済の
現状が
一般にいわれておりますような
状態にあるのかどうか、正しく認識せられておるかどうかという問題でございます。いろいろ海外からもほめ上げられておりますけれども、これは実際とはだいぶ違った面もございます。
経済の
成長は早かったのでございますが、それだけに
内容が
充実していない、
資本の
蓄積も十分でない、そういう問題が並行して起こっておるのでありまして、現在が非常にいい
状態である、こう頭からきめてかかるのは間違いじゃないかと思います。したがって、それを
基礎として今後におきましても従来どおりの大きな
発展を遂げていくというふうにきめてかかることについては問題がある。国際的な問題がありますし、大体
日本の
経済基盤といいますか、よく浅いといわれておりますけれども、国土は狭いし、資源は貧弱であるし、人口は多いし、こういう基本的な問題を忘れがちになっておる。しょっちゅう言いながら忘れておりまして、自然に
生活等もはでになる、必要以上に
生活水準の引き上げということも起こってくる、こういう
状態になっておりますが、
現状についても過信をしてはいかぬと思うのです。思い上がりになってはいかぬと思う点が
一つありまして、
現状を
基礎にして
機構なり
制度なりをお
考えになる場合も、その点をよく分析、吟味せられていただいたほうがいいのじゃないかと思います。
それから、これは昔からそうでございますが、
経済界には急激な大きな
変動は禁物でございます。非常にきらいます。というのは、それによって無用の動揺が起こるわけであります。そのために、プラスの面と
マイナスの面と比較してまいりますと、
マイナスの面が大きい問題が従来の
経験においてもずいぶん出ておるわけでありまして、その点から申しますと、
金融制度なりあるいは
機構を改めるにしましても、そういう
弊害の起こらないようにやっていただくことが必要であるように思います。
いま簡単に申し上げましたような点を考慮の上で、今後の
金融制度なり
機構の
あり方を進めていただきたい、こういうふうに思います。
ただ、申し上げられますことは、
金融機関の数でございますが、特に
中小企業については多過ぎるような
感じがしております。これでは
金融機関面でも十分な活動ができませんし、そのために起こってくるほうの
弊害が多い。特に地方の
自治体等におまかせして設立されております
組合等が数が非常に多いものですから、
内容に不健全な面も多いし、また動かしておる人に信頼を置けないような人も出てくると思いますし、そういう点についてある程度の
整理統合が必要になってくると思います。また、
自由主義経済で
自由競争をしているわけですから、大きな失敗、つまずきがありますと、当然淘汰せられていくのが本来でございますが、
日本にはそういうものがございません。したがって、数はだんだんふえる一方であります。
アメリカあたりの
金融機関では、
経済情勢の
変化あるいは
経営のいかんによりましてずいぶん
銀行がつぶれております。
一般に与える
影響が大きいということだけにとらわれましてこういう点を見のがしていく。何とか救済して細々でも
経営ができるようにしたい、こういう
方針でありますから、数が非常に多くなり過ぎておるという点であります。
政府機関、
長期信用銀行あるいは
信託銀行等が問題になっておりますけれども、こういう
長期の
融資をする
機関は、
わが国の
現状におきましては私はまだ必要だと思っております。したがって、これを極端に数を減らす必要もないのであって、まだそれほど
日本経済は質的に
発展していないと思います。これからまだそういう
機関の手助けが要ると思います。
この
委員会の
参考人の発言の中に、
質的均斉といいますか、
均質化の問題が出ておりますが、これはしいて
均質化にもっていく必要はないと私は
考えております。おのおの分業的にやっていけばいいのでありまして、
信託銀行さんは
信託銀行さん、
長期信用銀行は
長期信用銀行、こうしてまいりませんと、十分な
効果はあがらぬと思うのです。
例の問題になりました
山陽特殊鋼の問題でも、あれは
主力になっておるところがもう少し事業の審査その他に
長期的にあらかじめ
見通しが立つような
金融機関でありましたら、ああいう不始末はさらさなかったろうと思います。現在でも
短期の
資金を使いまして
長期の
融資をやっておるところも多いのですが、
山陽特殊鋼の場合はそれが多かったのですが、ああいうことのないように、やはり
長期信用を与える
特殊銀行が必要だろうと思います。
明治維新以来、
金融制度につきましては
特殊銀行というものがありまして、
わが国の
産業発展を側面から助成してきたのでありますが、戦後におきましては、
特殊銀行の
性格は失いましたが、やはりこれにかわる
政府機関というものが必要になっておりまして、そして、そういうものの設立が認められ、これまで
開発銀行なり輸出入
銀行なり、あるいは
中小金融のそういう
機関ができておるわけでございまして、これをいますぐに変更する必要はございません。
また、
長期信用銀行が
債券を
発行しておりますが、
長期に貸し出す場合には、やはり
資金の
性質を変えていく必要があると思います。
債券によって
資金の
性質を変えておるのである。そして
長期に運用しておる。もしこれがなければ、
金融機関に
変動が起こった場合に、非常に危険な
状態が生じてまいります。
金融債券に適当な金額を振り向けまして、それによって
長期の
融資をやっていくというほうのたてまえが私はいいと思います。ただこの場合に、
金融債券の流通について
政府、
日本銀行がもっと突っ込んだ措置をとられる必要がある。その際に日銀に持ち込めばすぐ
資金化するのですから、そのほうが、われわれの先輩が
金融の知恵と申しますか、そういうものでつくられたものでありますから、これをそっくり改めてしまって、そして各
銀行が一様に何でも
仕事ができるような
方向に持っていく必要はないと私は
考えております。
長くなりますからこの辺で、
あとは御
質問にお答えいたします。