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1967-10-11 第56回国会 衆議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年十月十一日(水曜日)    午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 藏内 修治君 理事 佐々木義武君    理事 田中 正巳君 理事 橋本龍太郎君    理事 河野  正君 理事 田邊  誠君    理事 田畑 金光君       菅波  茂君    竹内 黎一君       中野 四郎君    中山 マサ君       箕輪  登君    粟山  秀君       淡谷 悠藏君    加藤 万吉君       後藤 俊男君    佐藤觀次郎君       島本 虎三君    西風  勲君       八木 一男君    山本 政弘君       本島百合子君    和田 耕作君       大橋 敏雄君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 坊  秀男君         労 働 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 増田甲子七君  委員外出席者         人事院事務総局         任用局長    岡田 勝二君         人事院事務総局         給与局長    尾崎 朝夷君         警察庁刑事局長 内海  倫君         警察庁警備局警         備課長     三井  脩君         防衛施設庁長官 小幡 久男君         科学技術庁計画         局長      梅澤 邦臣君         法務省人権擁護         局長      堀内 恒雄君         厚生大臣官房長 戸沢 政方君         厚生大臣官房人         事課長     翁 久次郎君         厚生省公衆衛生         局長      村中 俊明君         厚生省環境衛生         局長      松尾 正雄君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君         厚生省保険局長 梅本 純正君         社会保険庁医療         保険部長    加藤 威二君         運輸省港湾局長 宮崎 茂一君         運輸省鉄道監督         局長      増川 遼三君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 九月二十九日  委員三ツ林弥太郎辞任につき、その補欠とし  て西村直己君が議長指名委員に選任された。 十月九日  委員川崎寛治辞任につき、その補欠として兒  玉末男君が議長指名委員に選任された。 同日  委員兒玉末男辞任につき、その補欠として川  崎寛治君が議長指名委員に選任された。     ————————————— ○本日の会議に付した案件  厚生関係及び労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  厚生関係及び労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。西風勲君。
  3. 西風勲

    西風委員 九月の十五日に大阪港湾暴力の問題、全港湾労働組合分会長暴力団に殺されるという非常に不幸な事件が起こったわけであります。この事件の概要あるいは警察での取り調べ状況について、まず最初警察庁のほうから報告を願いたいと思います。
  4. 三井脩

    三井説明員 ただいま御質問関光汽船刺殺事件について申し上げます。  この事件は、大阪市にございます閃光汽船株式会社陸上トラック輸送部門を担当しております原田組が、荷役部門を担当しております全港湾労働組合閃光汽船分会との間にトラブルを起こしまして、九月の十五日に原田組長の指図を受けた組員三名が、同日の午前十時五十分ごろ、この関光汽船株式会社の倉庫内にございます作業員寄り場におきまして、分会長である脇田智男、この人を登山用のナイフ二丁をもちまして、胸部、腹部などを突き刺して殺害したものでございます。  大阪府警におきましては、この事件につきまして、現場におりました組員三名を殺人罪で現行犯逮捕いたしました。次いで組長原田を同じく殺人罪によりまして九月の十八日に通常逮捕いたしたものであります。いずれも事件大阪地方検察庁身柄つき送致をいたしております。  その後の捜査によりまして、事件前日の九月十四日に起こりました暴力行為事件につきましても、九月二十日に原田組員七名を逮捕し、また九月二十九日に原田組関係者一名を逮捕して、合計八名を九月十四日の事案については逮捕いたしておるわけであります。いずれも事件大阪地検身柄つき送致をいたしております。  なお、大阪地検におきましては、四名につきまして殺人罪で、また三名につきまして暴力行為等処罰に関する法律違反で起訴をいたしておる状況でございます。  捜査内容について御質問でございますが、現段階においては以上のとおりでありまして、原田組長が三名に対して殺害を指揮したかどうかという点については、供述等の食い違いもありまして明確ではありませんが、われわれのほうでは殺人罪として処理をいたしておるわけでございます。
  5. 西風勲

    西風委員 これからいろいろ質問するわけですけれども大阪現地から取り調べを受けた、あるいは調査に協力した組合員の話によりますと、この事件については警察側に非常な手落ちがあるわけですね、はっきりした具体的な手落ちがあるわけです。そういう手落ちをできるだけごまかすというと適当なことばではないかもしれませんが、そのために取り調べにあたって、誘導尋問的に警察に有利な調書ができるような圧力をかけている疑いがあります。警察に調べられますと、普通の市民の場合は、非常な恐怖感を持っておるわけですね。それも、特別なことでなければ、が多少創作した調書を示して、どうだ、これでいいだろうというように言われますと、それに署名したりする危険があるわけですね。だから、そういう点で、これから聞くわけですけれども、そういうふうな取り調べによってつくられた調書に基づいて答弁してもらっては困るわけですね。だから、そういう点でそういうことがあるかないかと聞いたって、ないと言うにきまっていますけれども、そういうことに基づいて答弁しないようにお願いしたいと思うのです。  そこで、まず最初に聞きたいのは、この事件はかなり以前から、原田組という暴力団殺人予告をやっておるわけですね。これは東映の映画ではあるまいしと思うのですけれども原田組要求を聞かなければ、おまえたちのうち五人程度指導者は必ず殺してやる、殺された脇田さんは、殺す場合の第一号であるということを事前予告しておるわけですね、ずっと以前から予告しているわけです。そういうふうな状況があったわけですから、警察としてはどの程度情報をつかんで、どういう警備体制をとったのか、まず明らかにしていただきたい。
  6. 三井脩

    三井説明員 ただいまの点につきまして、五名程度の者に対する殺人予告をしたということについては、私たち警察としては承知をいたしておりません。ただ、閃光汽船労働組合港湾荷役分会に対して、特にその脇田智男分会長原田組のほうでいやがらせをしておったということは、組合員からの通報もあり承知をいたしておるわけ  でございます。  なお、警察側警備措置等について問題があったのではないかということでございますが、この事件につきましては、まず八月の十日に全港湾労働組合沿岸支部長から電話通報によりまして、この関光汽船分会原田組との間にトラブルがあるという話を警察として承知したわけであります。さっそくその日のうちにこの沿岸支部の副支部長分会長から直接事情を聴取いたしたわけであります。ただ、この際は、警察といたしましてはこの間の事情を十分把握しておりませんので、このお二人の方から十分事情を聞こうといたしましたが、そしてまた警備措置をとらなければならない必要性もありますので、この点を要請をし、組合側原田組からいやがらせを受けておるその内容の具体的な点についてもお伺いをいたしましたけれども、それは必要があれば後日申し上げるということでありまして格別のお話を聞き出せなかったということであります。  しかし、警察といたしましてはさっそく翌日会社につきまして実態調査しまして、原田組実態調査、また分会に対する具体的な脅迫事実について、これを把握するため内偵捜査を進めておったわけでございます。  八月の二十二日になりまして、所轄港警察署に対して正式に警備要請するという書面が提出されたわけでございます。これから警察では、警備措置につきまして、原田組の行なっておる具体的な内容についてお伺いいたしました。そしてまたそれを調書にして、事前原田組事件として処理をするということが、事犯の続発を鎮圧するために一番適当な措置であると考えて、お聞きいたしましたが、調書にされるのは困るというような話でありまして、具体的な内容は聞き得るに至らなかったわけでございます。  しかし、警察におきましては、組合員住居地、また就労現場付近における重点警ら等を行ないまして、視察警戒に当たったわけでございます。組合員住居地につきましては関係数所につきまして重点警らを行なうということで、即日実施をいたしております。  さらに警察署にお見えになった組合代表者について、このような方法で当面対処をするということについても話し合いをいたしましたが、いまのところ、それでけっこうでございますというようなお話であったわけでございます。  もう少し具体的に申し上げますと、組合員の所在地は港署外警察署管轄区域にわたっておるわけでございまして、それぞれの警察署におきまして、受け持ち派出所員パトカーによって警戒に当たる、あるいは組合員居宅付近重点警らを実施するということでありました。また当面、直接の所轄警察署でございます港警察署におきましては、連日署幹部の指揮のもとに、受け持ち派出所勤務員十名、またパトカーは二台、警察官四名でございますが、これを編成いたしまして、組合員居宅付近就労現場付近重点警らを実施しておったわけでございます。  さらに九月十一日に入りまして、組合がストに突入した後におきましては、いままで申し上げました重点警ら警戒とは別に、この作業員寄り場に対する警備と、それから原田組事務所等に対する視察のために、警察官九名を常時配置をいたしまして、特別警戒を実施しておったわけでございます。
  7. 西風勲

    西風委員 この組合がやりましたストライキは、賃金を上げろとか、あるいは何らかの権利を認めろというようなストライキではなしに、職場暴力団がはびこって、生命の危険を感じるような事件がたびたび起こって、安心して仕事ができない、したがって、安心して職場仕事ができるようにしてもらうために、会社暴力団と手を切ってもらいたい、暴力団脅迫をやめさせろ、これがストライキのただ一つの要求なんですね。だから、戦後二十数年たった今日の日本で実際は考えられないような要求を掲げてストライキをせざるを得なかった、そういう内容ストライキだったわけですね。こういう点について港湾局長、この事件が起こるまでに何らかの情報を得ておりましたか。
  8. 宮崎茂一

    宮崎説明員 お答え申し上げます。現地近畿海運局長が所管でございますが、私どものほうは、まことに残念でございますが、事件が起こるまでその具体的内容について知悉していなかったということでございます。
  9. 西風勲

    西風委員 警察のほうが急いでいるようですから、警察のほうを先に、港湾局に対してはあとで若干質問させていただきたいと思いますけれども、一番最初に、いま三井警備課長報告されましたように、八月の二十三日でしたか、二十二日でしたかに、第一回の組合警備要請に対する申し入れが行なわれているわけですね。それ以後、引き続いて数回、警察に対して警備を強化する要請をやっているわけですね。特に問題なのは、事件前の三日間、九月十五日に事件が起こりました前の三日間ないし四日間、九月の十一日、九月十二日、九月十三日、九月十四日、特に九月十二日、十三日、十四日ですね、この三日間に、原田組がさまざまな脅迫をやっております。組合全員で押しかけて、チェーンその他暴力的な凶器を持参いたしまして、この三日間に集中的な脅迫をやっております。この脅迫事件について警察としては情報を得ていたかどうか、得ていたとしたら、どういうふうな対処をしていたかということをお伺いしたい。
  10. 三井脩

    三井説明員 事件の発生いたしました九月十五日前の三日間につきましては、先ほど申しました重点警ら及び十一日以降は特に現場警戒警備員を増強いたしまして配置をいたしておったわけでございます。  九月十四日の事件につきましては、いろいろうわさとしてはございますが、私たち取り調べをいたしましたところによりますと、チェーンその他は持っていなかったというふうに聞いておるわけでございますが、この当日急報によりまして警察官がかけつけまして、さらに警察官原田組にいきまして十分警告を発するとともに、今後の措置について暴力的な行動を起こさないように警告を発しましたが、原田組長以下、暴力的行為はやるつもりはないというふうに言っておりました。警察としてはそれをそのことばだけで信ずるわけにいきませんので、事件当日の十五日は、組合側定期大会が開かれるので、現場には集まらないといっておりましたけれども、万一を考慮いたしまして、警察官を早朝から配置をしておったわけであります。
  11. 西風勲

    西風委員 それでは課長、九月十三日にトラック二台に分乗して原田組組員全員が、そのトラックの中にチェーン、鉄棒、とび口というようなものを積んで、予備襲撃襲撃の準備ですね、に来たということは、情報は全然つかんでなかったわけですか。
  12. 三井脩

    三井説明員 ただいまのトラック中身、何を積んでおったかという点は承知いたしておりません。それを、九月十四日に押しかけたときに使ったという点については、捜査の結果、現場にまで持ち込まなかった、つまり分会員に対してそれを示して脅迫をしたというところについては、事実関係は出ておらないわけでございます。
  13. 西風勲

    西風委員 この原田組というものは、殺すということを公然と言っているわけですよ。いまのあなたの答弁では、そんなことは聞いてないという話ですけれども、殺すということを言っているし、また事実何回にもわたってそういう行動をやっているわけですね。そのために——労働組合警察警備要請するというようなことは、常識ではないのです。ないけれども原田組というものは、常識で考えられない暴力団であるために、労働組合常識からすれば、ふだんやらぬことだけれども、特に警察警備要請したわけですね。これは異例のことですよ、労働組合警察警備要請するというようなことは。しかも、警備要請したにもかかわらず、九月十三日に二台のトラックに分乗してきて、トラックの中にそういう凶器があったということは、一般組合員でも見ておるのですね。警備要請を受けた警察が、これを知らないというのはどういうわけですか。なぜそういうものを調べないのですか。
  14. 三井脩

    三井説明員 いままでの捜査の中でも、十三日にそういうものをトラックの中に持っておったという点については、承知いたしておりません。
  15. 西風勲

    西風委員 承知いたしておらないという答弁要求しておるのじゃないのです。承知しておらなかったことがけしからぬと言っておるのです。あなた方は、どういう警備をやっていたのか。トラック二台に白昼公然とこういう危険なものを積んできているのに、これに対して情報収集、あるいはトラックが二台現場に来たときに、それを見るとかいうような、具体的な警備をしたのかしなかったのかということを聞いておるのです。
  16. 三井脩

    三井説明員 警備は実施いたしましたが、ただいまのトラックに積んでおった中身については、私たち残念ながら承知しておらないわけでございます。
  17. 西風勲

    西風委員 では刑事局長、これはさっきからたびたび繰り返して言っておりますように、生命の危険があるために、労働組合はわざわざ、賃上げとか他の要求を掲げてやったのではなくて、生命の危険を守れというストライキをやったのです。身の危険を守るためにストライキをやったのです。しかも、危険があるからなおかつ警察警備要求したのです。その警備要求した警察が、不穏な動きが表面化した九月十三日に、トラック二台に分乗して——戦争以外でいえばこれは凶器です。武器です。そういうものを持ってきたときに、警察情報を知らなかった、見なかった、捜査もしなかったという点についてどう思いますか。
  18. 内海倫

    内海説明員 お答えを申し上げます。  捜査状況とかあるいは警備に関しまする点は、ただいま三井課長が申し上げたとおりでございますが、この点について一言申し上げておきたいことは、大阪府警察におきましては、この原田組の問題と閃光分会との関係につきましては、ただいま御質問がありましたように、そしてまた三井課長が答えましたように、すでに八月の中旬ごろからそういう情報があったわけでありますから、いろいろな方法をもって警備もし、また関光分会方たちに対してはどのような被害を受けておるか、その被害についての調書をとって証拠化して、もしそれがはっきり証拠化できるものであれば、これに対する捜査もやらなければならないということで、いろいろ協力を要請いたしておりますけれども大阪府警察からの私どもに対する報告によりますと、そういう点では、先ほど三井課長も申しましたように、はっきりとした証言が得られない、こういう点があったようであります。しかしながら、警察といたしましては、事柄について十分に警備体制は整えなければならないということで、措置をとってきたわけでございます。  なお、原田組というものにつきまして、先ほどから暴力団であるというお話でございますが、私も、今回の行動を見ます限り、これがいわゆる暴力的集団であるということについては異議を差しはさむ余地はないと思います。しかしながら、大阪府警察について調べてみますと、これ自身やはり関光汽船会社から陸送ということを請け負わされておるひとつの組であり、しかもそのことを仕事としておったようでございます。また、関光分会との間でも、そういう企業という内容においていろいろ関係も持っておったように報告を聞いております。したがいまして、いわば大阪府警察としては、この原田組というものを見るについて、十分警戒はしなければなりませんが、同時に、暴力を常習とし、また暴力ということをその組の主体的な仕事にしておるというものと同様に見るわけにはやはりいかない、そういう点で、個々の問題についてこれを見ていくというふうな態度で臨んでおったのではないか。それにしましても、私どもは今度の事件について、大阪府警察についていろいろ見ましたけれども、私どもから見る限りにおきましては、いろいろな点で、なおこうすればよかったという点はあるかもしれませんが、手としては、十分に策がとられておった、こういうふうに考えております。
  19. 西風勲

    西風委員 今度の事件がいままでの事件と違うところは、警察官現場におる前で十一カ所も刺されて、しかも最後にのど元にとどめの一刺しまでやられているというところに、今度の事件の特徴がある。警察のおらぬところで暴力団にやられたというのは、通常間々あるのです。ところが、今度の場合は、八月の二十三日から厳重な警備要請して、しかも組合ストライキに入らざるを得ないというような特殊な内容を持っていた争議で、しかも警察現場情報収集したり警備に当たっている中でこういう事件が行なわれたということですね。こういう点について、警察として道義的責任を感じなければなりませんし、また、いままで労働運動の中で殺された事件がたくさんありますけれども、これほど残忍な殺され方をした例はないわけですね。しかも、先ほどから言っておりますように、警察官がおる前で殺される、こういうことです。そういう点についてどういうふうに考えておられますか。
  20. 内海倫

    内海説明員 お答えを申し上げます。私ども警察官配置されておるその中で殺人罪が起こったということにつきましては、はなはだ遺憾に存じております。私もこの事件につきまして、大阪府警察本部長にいろいろ様子を聞きました。しかし、その結果は、大阪府警察においては、十分な措置はとったけれども、ただ、殺人罪が敢行されるというふうな状況であるという判断はいたしておらなかった。これは客観的にも、いろいろそういう状況判断において、そういう殺人罪がその時点において敢行されるというふうな状況ではなかったというふうに聞いております。なお、殺人は実際に瞬時の間に行なわれたものであって、警察官がその現場にかけつけたときには、すでにそういう措置はいかんともとりがたい状態にあった、直ちにこれを逮捕したということでございます。今後、全部の者を逮捕あるいは取り調べを行なっておりますので、それらの捜査の中から、どういうふうな状態であったかということは的確に浮き彫りにしてきて、そういうことについてははっきりさせたい、かように考えておりますが、そういうふうに申し上げておきたいと思います。
  21. 西風勲

    西風委員 まず、山口組というのは、あれは暴力団ですか、普通の企業会社経営者ですか。
  22. 内海倫

    内海説明員 山口組は、私どもは完全な暴力組織、いわゆる組織的暴力団体であると見ております。しかしながら、そういうふうな組織的暴力団体企業を持っておる、あるいは事業を営むということは、多くの例があるところでございます。
  23. 西風勲

    西風委員 あなたは先ほど原田組暴力団ではなくて企業をやっている、まあ運送業者とは言わなかったけれども、そういうものだということを言われたのですけれども警察リストに載っている一般的な暴力団というものとともに、リストには載っていないけれども、これからのし上がろうとする、チンピラが集まってつくる暴力団ですね、こういうものが最も事件を起こしやすいし、最も問題なんです。同時に、それまでは原田組の問題がわからなかったにしても、八月の二十三日以来、原田組の性格その他については、詳細にわたって警察報告しているわけです。そのために警備要求しているわけです。にもかかわらず、この事件が起こってから原田組暴力団だということはわかったけれども、それまではそう考えていませんでしたというのは、どういうわけですか。
  24. 内海倫

    内海説明員 お答えを申し上げます。私どもは、ここ数年来私どもの全力をあげて日本に底深く内在する暴力組織というものを掘り起こして、徹底的な措置を現在も取り続けております。そしてまた、単に頂上作戦であるとかいうふうなことがマスコミの上ではいわれておりますけれども、私ども組織をつぶす、さらに一般市児に実害を与える、そういうものを具体的にシラミつぶしにつぶしておる、こういう努力をいたしております。原田組というものが、そういう意味合いで、私どもリストアップしておる暴力団というものの中には入っておらない。しかしながら、これが暴力をふるうおそれがあるということは、すでに先ほども申しましたように、八月中旬以降の言動にあらわれておるわけでありますから、これに対しては三井課長がたびたび答弁いたしましたように、所要の警備体制をとっておったわけであります。  なお、今回のこういう行動を見ますと、私どもは今後においてはこれがさらに捜査の面で実態がはっきりすると思いますけれども、少なくとも、暴力的な集団であるということを考えて今後の対策をとっていかなければならない、かように考えております。  されば、暴力団とは一体何ぞやというふうなことになってまいりますと、特段の定義があるわけではございませんが、私どもは、暴力団であるというふうな認定をして仕事の対象にする場合におきましては、それ自体暴力組織的に行なう、あるいは反社会的な行為を公然とその組織の任務として行なっておるもの、こういうふうなものを対象にして取り上げておるわけでございます。こういった場合に、いまの原田組というものはもともとが三年前にこの大阪の港に来て、そして関光汽船から陸送の仕事を請負わされておるという一つの企業を営んでおるもの、こういうふうに認められておったものと私は考えております。
  25. 西風勲

    西風委員 それでは、いま組長を逮捕して取り調べをしておるわけですけれども取り調べの中で、原田勝明が九月十一日に脇田さんを殺すという大体の計画をきめておるということを自供したといわれておりますが、間違いないですか。
  26. 三井脩

    三井説明員 捜査内容に関しましては、現に捜査を継続中のものでございます。私どもとしては、いまここで、被疑者がどういうふうな供述をいたしておるかということについては申し上げかねます。
  27. 西風勲

    西風委員 これはもう広く伝えられておることですよ。この国会の質問に対して、この程度のことも言えませんか。九月十一日に謀議をやって、殺す分担その他をきめたということを自白したということが大体世間で知られているわけですよ。世間で知られていることを国会で質問をして、あなたは、秘密に属するということで答弁できないですか。
  28. 三井脩

    三井説明員 世間でどういうふうに伝えられておりましょうとも、私ども捜査を担当する者として、現に被疑者を取り調べておる段階におきまして、被疑者もまたいろいろなことを申すと思いますが、そういうものについて、われわれは捜査が完全に終了するまでは、外部に責任を持ってこういうふうなことを言っておるというふうなことを申し上げることは、捜査に重大な支障のあることでございますから、申し上げるわけにはまいりません。
  29. 西風勲

    西風委員 そんなもの新聞に出ておるじゃないですか。新聞に出ておるようなことを国会で質問したら、答えられないと言う。そんなことで押し問答しておってもしようがないですからいいですけれども……。  そこで、それなら具体的に聞きますけれども、九月十四日、先ほど言ったのは九月十三日ですね、九月十四日に、原田組全員が、またトラック組合員寄り場に押しかけてきて、あくまでおまえらが出て行けというなら出て行くけれども、このお礼は必ずするというので、チェーン、ピッケルで威嚇、脅迫しておる事実があるわけですね。殺された脇田さんと全港湾の亀崎書記長、この両名に対して、組合員寄り場にわざわざ来て、ピッケル、チェーンを使って脅迫しておるのですね、こういう事実を知っていますか。
  30. 三井脩

    三井説明員 九月十四日でございますが、当日の午後二時過ぎでございますか、二〇番で、労働関係のことで閃光汽船でけんかになっておるという急訴がございました。パトカー警備課員が現場に急行いたしまして、事案処理に当たったわけでございますが、現場に着きましたときには、原田組組員現場にはおりませんでした。労組の分会員から事情を聴取いたしました結果、原田組組員が十八名ぐらい乗用車一台とトラック三台に分乗して寄り場に来た。そのうちの、原田組の組長ら四、五名が内部に入って、脇田分会長や、他にも六十名ぐらい分会員がおったわけでありますが、これに対してこういうことを申し向けた。意味は、なぜ関光汽船をやめなければいかぬのか、張本人は脇田、おまえではないか、ただでは済まさんぞということを申し向けたことが判明いたしました。さっそく所轄警察署署長並びに課長現場を実況見分いたしますとともに、原田組の事務所に行きまして、組長に会いまして、不法行為については断固たる措置をとるという旨を厳重に警告いたしたのでございます。
  31. 西風勲

    西風委員 九月十四日の事件があったときに、まあこちらの側は約八十人ばかり人数がおったんですけれども、しかし、そういう凶器を持参してやってくるもんですから、また同時に、組合員のごく一部分の人々に、あんまりたびたび脅迫するもんですから、こちらも自衛体制をとる必要があるというような意見もありましたけれども、そういうことをすべきではありませんし、また警察が絶対にまかしてもらいたい、絶対に小さな衝突といえども起こしてもらっては困る、そのときには労働組合に対して警察がいろいろしなければなりませんよというようなことまで言って、警察が自信を持って言い切るもんですから、したがって、当然ですけれども警察にまかせたわけですね。  ところが、こういう事件が九月十四日に起こりましたから、ある組合員が、緊急のことですから二〇番で電話したのです。パトカーに来てもらいたい。そうしますと、その日の夜、港警察署から全港湾に電話がかかってきまして、港署を通さずに一一〇番に電話した、どういうわけだ、港署のメンツをつぶした、そういうふうなことをやるんなら云々といういやがらせの電話が港署からかかってきた。警察にはなわ一張りがあるのですか、そういう行為は正しいのかどうか、やっていいのかどうかということを聞きたい。
  32. 三井脩

    三井説明員 警察になわ張りがあるとか、それからまたメンツをつぶしたといったことを言った事実があるとは聞いておりませんが、八月の末以来正式の要請があり、現場警察官が活動もする、警戒にも当たる、こういうことでございますので、そういう事案について港署にも知らしてほしい、直接措置に当たっておる港署で知りたいというような気持ちであったかと思いますが、ただいま申されたような言い方はしておらないというように聞いております。
  33. 西風勲

    西風委員 まあ、表現の問題じゃなしに、いまテレビニュースで警察自身も宣伝しておるのは、何かあったら二〇番に電話せい。脅迫されておるときに、どこどこにやってもらっておるんだから、どこどこへと、とっさにそんな判断はつきませんよ。暴力団チェーンその他で脅されているのだから、そのとき二〇番へ電話するのはあたりまえじゃないですか。表現の問題じゃなしに、港警察がそういう内容のことをいってきたのは事実でしょう。そういうテープをとってなかったし、そんなことをする必要はないですからね。そういう行為に見られるようなことをしたことがいいか悪いかということを聞いておる。
  34. 三井脩

    三井説明員 御説のように、警察につきましては一一〇番が最も迅速な方法でございますので、そういう方法通報があったことに対して警察上してとやかくいうべき問題ではないというように考えます。現場所轄署の警察官がそう言ったのは、もしそういう意味であるといたしますと、たいへん不適当だと思いますが、警戒に当たっておる現場の担当者として、早くそういう事態を知りたいということ、そういう気持ちが働いたのではないかと思いますが、一一〇番が、警察署に対する通報よりも優先するということは、当然あっていいことであると考えております。
  35. 西風勲

    西風委員 港湾局長、あなた先ほど事件が起こるまで全然知らなかった、こういうことですね。——それで局長さん、もちろんあなた一人の責任じゃないですけれども港湾労働法ができて以来、港は変わっておりませんよ。変わってないどころか、前よりも巧妙な手配師組織というようなものができておりますし、港湾労働法第十六条のただし書き、これが逆用されて、あなたは何ならあす行ってこられたらわかりますけれども暴力団が、安定所の連絡員ですか、指導員ですか、何かそういうのを巻いて労務者を手配していますよ。これは港湾労働法十六条ただし書き、十九条その他の問題もありますけれども、そういう点で骨抜き状況になっているし、港湾労働法自身はあなたの責任じゃないですけれども、そういうことをめぐって、港湾の中では、暴力が昔と同じような形で、前より悪いのは、上で警察リストにのぼっているだけじゃなくて、やみに入ったやつが公然と仕事をしておるわけですね。  たとえば私、専門家じゃありませんから詳しいことは知りませんけれども、一つのハッチで十八人から二十一人くらいで仕事をするやつを、暴力団が名前を変えてある会社の班、一班、二班という班に所属していて、その班で十八人から二十一人、技術者を含めてやらなければならぬのを、十二人くらいで請け負って二十一人分の賃金をもらう。しかも、人数をごまかすだけではなしに、まだ個々に支払う場合にもかすりを取るというようなことが、神戸港、大阪港で公然と行なわれておりますけれども、こういう事実を御存じですか。
  36. 宮崎茂一

    宮崎説明員 私どもの所管の出先海運局がございますが、これは御承知のように港湾運送事業法によりまして、企業自体がどういうようなことをしているかということをチェックしておるわけでございまして、お尋ねの港湾労働法の問題は、労働省の所管でございます。私どものほうも、港湾の運送事業の秩序を維持するために努力はいたしておりますが、労働の問題は、労働省のほうからお願いをしたいと思います。
  37. 西風勲

    西風委員 港湾局長、今度の事件を見て、これからの港湾管理の問題について、どういう点を改善する必要があるとお考えですか。
  38. 宮崎茂一

    宮崎説明員 お答えいたします。港湾管理という問題は、非常に複雑な広範にわたる問題でございまして、港湾施設の問題あるいはまたその業を営む企業というものを監督する、あるいはいま問題になっております労働問題、それから暴力問題、いろいろとあるわけでございますが、私どもの理想としておりますのは非常に近代的な——だんだんと日本の国民生活も向上してまいりますれば、港湾労働自体、ああいう非常に激しい労働でございます。したがいまして、もっと機械化されました労働と申しますか、他面労働者の質もよくならなければならぬと思いますが、いわゆる機械化いたし、労働者の方々は、技能的な質の向上した労働というものが望ましい。また労働力も不足してまいりますので、そういったような方面から港湾の近代化と申しますか、そういうところに努力してまいりたいと思いますし、またそういうのが将来の日本港湾の姿じゃなかろうか、そういう方向に向かいまして労働者の生活も向上していく、またそのために資質も向上していく。労働者の不足がございますので、そういった面は機械によって近代化してまいる。そうして全体のそれに伴った施設をつくりまして、全体の港湾におきますところの運送というものが、迅速に、経済的に、合理的に、あるいは近代的に行なわれるようなことを期待をいたしているわけでございます。
  39. 西風勲

    西風委員 港湾局長は運輸委員会のほうに用があるようですから、最後に、大阪ではこの事件を契機にして港湾暴力をなくすために、大阪府、大阪市あるいは業者も含めた港湾関係団体、そういう団体が一緒になって港湾から暴力をなくする、港湾をもっと明るい、働いている人が安心して働けるような職場にするという連絡会議みたいなものができたのです。中央でも港湾局が中心になってそういうものをつくって、——これは大阪だけの問題と違います。神戸、東京、大阪の港にもずいぶんあるわけです。あらわれているかいないかは別にして、大なり小なりあるわけですから、そういう点について積極的なイニシアチブを発揮するという意思があるかどうか、最後にお聞きしたい。
  40. 宮崎茂一

    宮崎説明員 お答えいたします。大阪におきましては、近畿海運局が世話役になりまして、労働基準局あるいは警察、海上保安庁、陸運局、そういった官庁を集めまして、緊密に今後連絡をしていく、そしてこういった暴力を港からなくしていこうというような方向で会議を進めております。  中央におきましては、関係の事務次官の交渉会議をもちまして、労働次官、運輸次官、警察関係、海上保安庁の長官、こういったものをもちまして、申し合わせができましたので、私どもも御趣旨に沿うように努力いたします。  また大阪だけでございませんで、仰せのように神戸、横浜、名古屋、東京、関門、こういった六大港につきましては、今後港湾の近代化の問題をめぐりまして、港湾という場においていろいろな各省の行政が入っておりますから、御承知のように港湾から暴力を追放するように努力する覚悟でございます。前向きに努力をいたします。
  41. 西風勲

    西風委員 警察さんに聞きますけれども、九月十五日の状況をどういうように把握しておられたか、まず御報告いただきたい。
  42. 三井脩

    三井説明員 九月十五日につきましては、ちょうどその前日、十四日は、原田組会社から解約の申し渡しを受けておる。そのために会社及び組合に対して不穏な態度を示すことになろうということで、不法事案の発生について警察として警戒をいたしました。したがいまして、当日十五日は午前七時五十五分から警察官を編成し、現場配置をいたしたわけでございます。これはまず制服部隊一個分隊でございますが、これを現場から五百メートル離れました、ここを管轄しております弁天町派出所に配置をいたしまして、これを拠点として三名一組で現場周辺の重点警らを実施いたしました。他の私服員四名につきましては、寄り場の西側路上に一応配置をし、これを拠点とし、またさらにパトカー一台を現場付近、約三十メートル離れた路上に配置をいたしまして、警戒視察に当たらせたわけでございます。
  43. 西風勲

    西風委員 九月十五日に原田組状況偵察のために朝から自転車、自動車で周囲を回るとともに、ちょうど閃光汽船から——現場をごらんになった方はわかると思うのですけれども関光汽船から向かい側に弁天埠頭があるわけですね。天保山からかわった新しい埠頭であります。関光汽船の新しい発着所ですね。ここの二階から暴力団員が——双眼鏡で周囲をうかがうと見えるのです。双眼鏡を使わなくても目のいい人なら見えるくらいです。そういう至近距離にあるわけです。そこの二階から双眼鏡を使って、警察組合員の動向を原田組がキャッチするための情報活動をやっていたというような事実があるのですが、そういうことを知っていますか。
  44. 三井脩

    三井説明員 双眼鏡を使って見ておったという点は承知いたしておりませんが、至近距離にありまして、その二階からも現場はある程度見えるということについては承知いたしております。
  45. 西風勲

    西風委員 残念ですね。肝心なことを何も知らぬわけですね。肝心なことはみなわからなかったというわけですね。先ほども、殺すようなことをするとは思わなかったという刑事局長答弁ですけれども、殺す危険がなかったら、棒で三つや四つなぐられるくらいの危険なら、だれが労働組合警察警備要求しますか。賃金を失うストライキをやってまで、暴力団の問題を扱いますか。殺すくらいの危険があるから、現に事実行為として職場でさまざまな暴力行為をやっている実績があるから、警察にそういうことを頼んだのです。それを、殺すとは思わなかったというようなことを言ったんでは——人間の命は地球より重いといわれているのです。たった一人だと思ったら大間違いであります。警察が見ておる前でこういう殺され方をするのは——私は逆に警察の権威を高めてほしいと思うのです。別府の事件ですね。「日本侠客伝・斬り込み」という題の映画のようなことをやったそうですけれども、刀の抜き合いをしたときに警察官が勇敢な措置がとれなかった。あるいは金沢では暴力団の組長を取り返された。あるいはピストルを使って心中したとか、警察にとって不名誉な事件がたびたび起こっているわけです。警察の信用を回復してもらいたいから言っているわけですけれども、肝心なことを何も知らぬわけですね、あなた方は。警備要請していたのに実際何していたのですか。そういうことを聞いているのですよ。双眼鏡で見ていた。自転車、自動車で俳回したのです。一度はその自動車を捕捉してパトカーが追っている。ところが見失って、そのとたんにわずかな時間で車が帰ってきて、その車に乗っていた三人が刺し殺しているのです。どうですか、そういうことを知らなかったのですか。
  46. 三井脩

    三井説明員 当日九時五分ごろ、原田組の自動車一台が寄り場の西側の道路上を南から進行してくるというのを現認しております。この車につきましては、北のほうに進んで寄り場の北側約三十メートルのところにあります閃光汽船の事務所の前においてuターンをして、原田組の組長が事務所の中に入ったということを現認いたしております。これは数分後にそこから引き揚げております。
  47. 西風勲

    西風委員 書いたものを読んでいるだけですから無理ないと思いますけれども、あなたやはりもっと本気で答弁してもらわなければ困ると思うのです。時間さえたてばいいというものじゃないですよ。そういう点で、あなた方は、ほんとうにこういう事件が起こらぬように警備したのかということを言うておるのです。そんな部分的な経過を並べてもらったって何にもならぬ。こんなことをやったって死んだ人は帰らぬわけですよ。われわれにとっては、家族のことを考えなければいかぬわけです。四人の子供が残されているのですね。やはりこういう事件が明らかになって死んだ人が十分に報いられるような、しかもこのことによって港湾暴力がなくなる、警察も誠意を尽くしてさまざまな処置をするということがなかったら、死んだ人は浮かばれませんよ。  そこで、九月十五日の問題をもう一回聞きますけれども、九月十五日に不穏な空気があったということは、いま報告があったわけです。不穏な空気が感じられた。会社から手を引いてもらいたいということを、原田組から通告があったので、不穏な空気が感じられた。感じられたからこそ九月十四日の日に、港署長が原田組に対して、もし刺したり暴力行為に及んだら、おまえらは全員逮捕するぞということを言っておるわけです。そのために署長が暴力団へわざわざ足を運んで——そういうことがいいのかどうか知りませんけれども暴力団の組まで行ってそういうことをやってはいかぬぞということを言っているわけですね。だから、不穏な空気があったことはもう警察も現認しておるので、そのための処置をとっておるのですね。にもかかわらず、二十人の暴力団に対して、現場に五人しかいなかったというのはどういうわけですか。
  48. 三井脩

    三井説明員 現場配置をいたしましたのは五名で、付近の弁天町派出所に一個分隊を配置いたしたわけでございます。この点につきまして、状況不穏であるという点を察知をし、相手方に、原田組警告を発したわけでありますが、当日起こり得る事態ということにつきましては、まさか殺人を敢行するという点について、わがほうでそこまでの予測ができるだけのものを持っていなかったということでございます。この点は、警察配置をいたしましたけれども現場の雰囲気といたしまして、そこまでのものを感じ取れなかったという点については、いろいろ反省をいたしておりますが、ただ警察官がそう思うのみならず、組合分会側でも必ずしもそこまでの急迫した事態である、雰囲気であるということを感じ取れなかったというような状況であったと思います。
  49. 西風勲

    西風委員 組合が、こん棒で三つや四つなぐられるくらいの脅威なら、警察警備要請しますか。二十数人もおる分会員が、二つや三つなぐられる脅威があるくらいで、警察に守ってくれということをいいますか。そんな刺されるということまで考えていなかった、——現に刺されたのですからね。警察に重大な手落ちがあったのですね、はっきりしてください。
  50. 三井脩

    三井説明員 先ほどお答え申し上げたわけでございますが、組合原田組からいやがらせを受けている。その内容等につきましては、調書にすることを組合側のほうで応じられなかったというようなこともありまして、実態の点についてそこまで認識を持たなかったという結果に相なっておるわけでございます。
  51. 西風勲

    西風委員 あなた方の今度の事件が起こった結果に対する道義的な態度、姿勢を聞いておるのですよ。だから、あなた方は刺されるとは思わなかった、それなら組合が、実際に事実はそうだったのかどうか別にして、事前調書を差し出さなかったから殺された、そういうことですか。あなたの言うのはそういうことになるが、そういうことか。
  52. 三井脩

    三井説明員 これはどういう事態が起こるかということに対する予測の問題でございますが、警察としてなるほどそこまで予測をしなかったということを結果から見てたいへん反省をいたします。ただこの場合に、もう一歩の協力が各方面からございましたら、もう少し的確に起こり得る事態というものについて判断が持ち得たのではないか。したがいまして、部隊の増強その他についても、さらに考慮することができたのではないかという点を残念に思っておるわけでございます。そういう状況の中で、警察官として、警察署として、できるだけのことはやったということでございますが、あのような結果になったことに対しましては、まことに残念であると考えておる次第でございます。
  53. 西風勲

    西風委員 各方面の協力があったらあんな事件は起こらなかった。——各方面の協力とは何ですか、具体的に。
  54. 三井脩

    三井説明員 まず第一点は、先ほど申し上げました現場において、原田組とともに仕事をしておられる分会のほうで調書にする、調書の中で具体的ないやがらせの事実等について申し述べていただくということが一番大きなものではないかというように考えております。
  55. 西風勲

    西風委員 それでは、組合警察に協力しなかったからこういう事件が起きたという論理になりますけれどもそういうことですか。
  56. 三井脩

    三井説明員 警察といたしましては、それだけで、それがないからできなかったともちろん言うべき立場ではございません。したがいまして、その点について現在において反省をいたしまして、そういう点があればもっと的確な措置がとれたのではないかという点を私たちは反省もし、残念に思う次第でございます。
  57. 西風勲

    西風委員 あなた、三百代言みたいなことを言うてもらったら困りますよ、死んだ人に対して。各方面の協力があったらこういう事件が起こらなかったと言うから、各方面とはどこだと言うたら、組合調書を出さなかったからだとあなたは言ったじゃないですか。刑事局長どうですか、そういうことですか。あなたは、はっきりそう言ったじゃないですか。
  58. 内海倫

    内海説明員 先ほどからお答え申し上げておりますように、こういうふうな殺人事件が起きた、貴重な犠牲が出たということにつきましては、少なくとも身体、生命、財産を保護しなければならない警察の任務から考えまして、そういう事件が起きたことは、はなはだ遺憾であります。また警察といたしまして、いやが上にも徹底した措置をとるべきであったと反省はいたしております。しかし、先ほども申しましたように、大阪府警察における情勢の判断は、非常に大きないさかいが起こることば十分予想しましたけれども、しかし、まさか殺人事件に、あるいは殺人を犯すという意図を持って臨んでおるというところまでは状況判断をしておらなかった。したがって、その点もし状況判断のあやまちが大阪府警察にあるとするなら、これは私ども大阪府警察の反省を十分要請しなければならないと思いますが、しかし、ただいま三井課長も申しましたように、情勢判断をするためには、ひとり警察だけでなく、組合の皆さんあるいは会社関係の皆さん、こういう方からあわせてせっぱ詰まった状況というものを具体的に協力して知らしてもらうということも必要であり、あるいはそういう点で、もし大阪府警察のほうがそういう点を十分聞く機会を得てないというふうなことであれば、はなはだ遺憾なことでございます。私どもは決して手を抜いたり、あるいは警備の体制において手を抜いておるというふうには考えませんが、しかし、より十分な、より徹底した措置をと、こういう結果から考えましても、われわれは反省を十分いたさなければならない。私は、もとより犠牲になられた方に対する衷心からの弔意を表するにやぶさかでございませんし、また私どもがそういう点についてさらに反省をするということについては、十分考えておるところでございます。
  59. 西風勲

    西風委員 私がさっきから聞いていることについて、三秒で答弁できるのですがね。私がまず第一に聞いているのは、組合が身に危険があるからというのは、単なる暴力でなくて、あの殺された本人が何べんも、私は殺されるということを言っていたんですよ。これは警察でもおそらく育ったと思うのですね。調書にすることは拒否したかどうか知りません。調書にするときには、労働組合の場合は、警察が悪用する場合が往々にしてありますからね。そういう点で、組合が自衛のために調査を拒否したわけでしょう。しかし、情報収集組合が協力しなかったということはありませんよ。あなた方のさっきからのあれを聞いておりますと、組合が協力しなかったからこういう事件が起こったのだという印象をつくり出すような答弁をしておられますが、調書をとらせなかったのは警察が悪用するからです。調書はとらせなかったけれども、協力はした、組合のほうが警備要請しているのですから。そういう点で組合のほうには手落ちがなかった。警察のほうは、まさか殺人が行なわれるとは予測しなかった。組合が、行なわれるということを予測したのですから、警察判断に誤りがあったと思うか、警察判断に誤りがあったかなかったか。それを聞いているのです。
  60. 三井脩

    三井説明員 判断をいたします場合には、いろいろの材料が必要でございます。その点について、結果から考えまして、もっと判断を正確にすることができなかったかということについては反省をいたしますが、その当時の状況においてはやむを得なかった判断であろうというように考えております。
  61. 西風勲

    西風委員 さっきから、あなた何を言うているのか、自分でわかっておりますか。あとで議事録を読んだらわかりますけれどもね。反省するけれども、あの程度状況ではしかたがなかったということは、ちっとも反省していないじゃないですか。よかったか悪かったかを聞いている。つべこべ言わずに——殺されるとは思わなかったのが殺されたのでしょう、そこに違いがあるじゃないですか。判断に誤りがなかったですか。あったのじゃないですか。判断に誤りがあったのかなかったのか。
  62. 三井脩

    三井説明員 単に判断の誤りの有無というような簡単なことばで片づけるには情勢が微妙でございまして、その辺のところは先ほど申し上げたようなことになると私は考えているわけでございます。
  63. 西風勲

    西風委員 あのね。判断に誤りがあったかどうかということで、殺されずに済んだか済まなかったかというような重大な問題ですよ。人間一人の命の問題ですよ。判断に誤りがあったから殺されたのではないですか。判断に誤りがあったのかなかったのか。刑事局長は初め判断に誤りがあったように言われたけれども、あとでまたなかったように言われた。警察としては、こういうときに大胆にあやまって、信頼を取り戻すのが警察の道ですよ。人間には誤りがあるのですよ。ましてや警察にもあるのです。そういう点で誤りがあったのではないかと聞いているのです。
  64. 内海倫

    内海説明員 たびたび申し上げておりますように、結果そういう事件が起きたことでございますから、私どもはそのことについてとやかくの弁解はいたしません。しかしながら、警備体制を整えるにつきましては、必要な情報も集め、情勢も判断いたして、その判断に基づいて警備体制の万全を期したわけであります。  しからば、その判断に誤りがあったかどうかという点でございますけれども、私どもは、大阪府警察から聞いている限り、誤りとは申し上げられない。やはりそこに不測の事故が起きた、こういうふうに考えざるを得ない、かように思います。
  65. 西風勲

    西風委員 不測って、何が不測な事態ですか。不測な事態というのは、何にもそういう経過がなしに、突発的に起きたのを不測の事態というのです。八月二十三日から組合が、暴力のおそれがあると、たびたび警察に申し入れ、警備要請して、そのために組合ストライキまでやっているのに、これがあれですか、このことによって起こった事件が、予測しなかった問題ですか。殺されるから助けてくれと言うておるのですよ、率直なことばを使えば。警察として何とかしてくれ、こう言うておるのです。これがあれですか、不測な事態ですか。
  66. 内海倫

    内海説明員 私ども大阪府警察本部から開いております限りにおきましては、警察としてはできる限りの措置はとった、ただその場合、そういうふうな殺人事件を犯す意図を持っておるということについて、そこまでは考えておらなかった。それは先ほどから言いますように、組合の側からもそういうせっぱ詰まった、実情があれば、もっとそういう状況が強く要請されたのではなかろうか、こういうふうに思います。
  67. 西風勲

    西風委員 これは委員長警察は——委員長に言いますよ。警察は殺されると思っていなかったと言うのです。殺されたのです。しかも組合は、殺されるから警備してくれということを警察要求した。その間に違いがあるわけですね。警察判断の誤りですよ。これは委員長、注意して、そういう答弁をさしてください。いままでの答弁ではっきりしておるじゃないですか。
  68. 川野芳滿

    川野委員長 内海局長、あなたの答弁は、これはちょっと矛盾したところがあるかのようにも委員長は認めますが、もう少し質問の真髄にこたえて御答弁になったらどうかと思うのです。
  69. 内海倫

    内海説明員 もう一度申し上げたいと思います。私ども先ほどから申し上げておりますように、事の結果につきまして、はなはだ遺憾に存じております。大阪府警察におきまして、この状態に対して警備措置をとるについていろいろ判断をいたしたわけでございますが、そこに殺人事件が起こるということについての判断の材料が十分でなかったという点は、私どもも認めざるを得ないと思います。さらに徹底した材料を集めて、そして組合あるいは警察の持ついろいろな資料、こういうものを徹底的に集めておけば、こういうふうなことは、あるいは起こらなかったかもしれない、そういう点におきまして、判断に材料が、殺人事件が起こるということについての判断する材料の十分でなかったという点は、はなはだ遺憾であると考えます。ただいまも申しましたように、結果がああいう事態になったわけでございますから、当然そういうふなうものが起きることを予測すべき材料は客観的にはあったものと思います。そういう面で、警察がそれを判断の中にとらえ得なかったということははなはだ遺憾でございます。しかしながら、また、しかしながらということを言えばおしかりを受けるかもしれませんが、組合のほうの方たちから、さらに積極的なせっぱ詰まった情報をいただいておるならば、もちろん、いろいろ情報はいただいておりますから、警察として判断すきべであったと思いますが、ほんとうにわしが殺されるのだということの強い要請があれば、当然警察としても、それを無視するというふうなことは、私はなかったのではないか。そういう意味で、警察がそれをさらに推察し得なかったという点につきましては、私どもは確かに大阪府警察判断不足であったということは申し上げて、おわびを申し上げたいと思います。
  70. 西風勲

    西風委員 まあ、いろいろ中身はありましたけれども警察判断に誤りがあったということを認められたわけですから、もう少し九月十五日の具体的な問題について、あと若干質問したいと思うのです。  九月十五日に脇田さんが刺されたときに、二十メートルぐらいですか、離れたところにパトカーがおったわけですね。組合員が大声で——かなり、数十人おったわけですから、大声でパトカーを呼んだけれどもパトカーがすぐ来なかった。若干の時間があった、ボンネットを上げたり下げたりして、来なかったというようなことがあるのですけれども、どうですか、その点どういうふうにつかんでおられますか。
  71. 三井脩

    三井説明員 ボンネトを上げたというのは、もっと前の段階であったというように聞いております。いま、警戒中早く来てくれというような大声が聞こえたそうですか、それは早く来てくれという意味のことばとして理解したわけじゃありませんが、大声が聞こえたので、パトカーから二名が飛び出して、飛んで行った。パトカー、車自身を回したのは、もちろん後ほどでございます。
  72. 西風勲

    西風委員 そのとき、私服が三人おったわけですが、その三人はどこへ行ったのですか。しかも、何していたのですか。それを明らかにしてもらいたい。
  73. 三井脩

    三井説明員 私服三名は寄り場付近で固定配置について警戒しておりましたが、単が来て会社側に入った、そこから人が出て行った、こういう状況ですので、会社側にどういう要件で人が来たのかを聞くために、この三名がたまたま会社事務所に入っておったときでございます。
  74. 西風勲

    西風委員 さっきの二つの問題について問題があるのですけれども、時間がありませんから触れられませんので、肝心なところについてお聞きしたいと思うのです。  ボンネットを上げたり下げたりして来なかったというふうに言われておりますし、またそれが事実なようであります。そのことはかりにおくとしましても、警察官二人が来たときに、脇田さんは刺されてから逃げたんですね。あとほかの組合員が三人の暴力団に組みついていったものですから、その瞬間に暴力団の手を離れて逃げたわけです。前のあき地から寄り場の入り口のほうまで逃げたわけです。逃げたところへ二人の暴力団が馬乗りになってこれをさらに突き刺したわけですね。先ほど言いましたように全部で十一カ所やられた。馬乗りになっていたときに、あるいは馬乗りになろうとしていたところに警察官が行った、われわれは現場におったわけですから。ところが来た警察官は中腰になって刺されているそのときに、やめろ、やめろ——何か八メートルくらい離れたところですか、事件の行なわれているそばへ行かずに、七、八メートル離れたところから、やめろ、やめろと言っただけで、最後に撃つぞと言ったときには、とどめを刺して、刀をほかして手をあげようとしたときに撃つぞと言っただけで、やめろ、やめろと言っただけなんです。これを飛び込んで制止するというのが警察官に与えられた任務だと思いますが、その点どうですか。
  75. 三井脩

    三井説明員 先ほど申しました、声に気づいて警察官パトカーから二名がかけ出した、そのときには被疑者三名のうち一名が血のついたナイフを持って手前におりましたので、これを直ちに逮捕した。もう一名の警察官が行きましたときにはすでに犯行といいますか刺して、二名がその横に立っておったという状況で、警察官が見て以後に、さらに突き刺したということはございません。
  76. 西風勲

    西風委員 おそらくそういう調書をつくろうとして努力中なんでしょうけれども、それは事実に反してますよ。馬乗りになってやられている最中です。やられている最中だからこそ、警察官がピストルをかまえて前に行かぬものだから、組合員がけつをぱっと押したわけです。早う前へ行けといって押したわけです。押したら、ひょろひょろとしたけれども、前へ行かず、またひょろひょろよろけたところでそのまま立って、やめぬか、やめぬか、これは事実です。すぐ飛び込んでいけない場合でも、警察はしょっちゅうつまらぬところでピストルを撃ったりしているのですから、よう新聞だねになっておりますが、なぜこのときに地面でも上でもいいから、ピストルを撃ってでもその犯行をやめさせなかったか。あなたの、凶行が終わっていたというのは、全くのでたらめであります。全くのうそであります。だから、そういう点でそういう事実があったのですから、これはあなた方がもしそういうふうなとらえ方をしているとすれば、府警はうその報告をしているのです。そういう事実はありませんから、そういう点についてもう一回、再確認のために答弁を求めたい。
  77. 三井脩

    三井説明員 警察官がかけつけましたときに、一名がやや手前におりましたので、これを逮捕いたしました。それから他の二名の被疑者につきましては、先ほど申しましたように他の一名の警察官現場に参りまして、直ちにこの二名に手錠をかけた、こういうふうに私たち報告を聞いております。
  78. 西風勲

    西風委員 時間の関係で、きょう一ぺんに解決できぬかわかりませんけれども、これは事実と全然違いますよ。現にきょう事件現場におった人もおりますけれども、あとで参考人なり証人なりで呼んでもらっていいのですけれども現場で二人がどうしてピストルをかまえるのですか、事件が終わったあとに。中腰になってピストルをかまえて、やめぬか、やめぬか。なぜ、やめぬかと言うのですか。やったあとで凶器をほかして、手をあげて出てきているのに、何でやめぬか。——何をやめるのですか。もっとやっつけいということですか。やめぬか、やめぬかという連呼は、やっているから言っているのじゃないですか。どうですか。
  79. 三井脩

    三井説明員 先ほど申し上げたように私たちは聞いておるわけであります。
  80. 西風勲

    西風委員 警察官が中腰になってやめぬか、やめぬかと言ったことは事実ですよ。こんな話はつくれる話と違います。事実なんですよ。だから、警察がそういう点について十分調査して、あらためて明らかにするということにしてください。
  81. 内海倫

    内海説明員 私ども大阪府警察から報告を受けておる点は、ただいま三井課長の申したとおりでございますが、現在各被疑者についても取り調べ中でございますし、もとより大阪府警察におきましても、そのときにおける実態をさらに明らかにするため、今後も調査を続けさせることになろうと思います。私どももきょうお話のありました点は、大阪府警察のほうによく伝えまして、事の真相を明らかにするようにいたしたいと思います。
  82. 西風勲

    西風委員 その次に、事件が終わってから原田組が大部分押しかけていて、周囲におる全港湾あるいは閃光汽船分会分会員を脅迫しているわけです。現職の警察官がおる前で暴力団脅迫が行なわれた。警察官は知らぬ顔をしているんです。たとえば事件が起こってすぐ、あき地のところで原田組長が短刀を抜くまねをして、亀崎という全港湾の書記長を突くまねをして、おまえもあれと同じようにやってやるということで、ほんとうにやりそうな——それはやられると思いますよ、やったすぐあとなんですから。短刀を抜くまねをして、おまえやってやるからというので、しりを追っかけ回しているわけです。ところが、相当時間現職の警察官がそのそばにおるんですよ、見ておるんですよ。見ていてそれに対して何ら処置をとらなかったという事実がありますが、この点どうですか。
  83. 三井脩

    三井説明員 事件原田組が押しかけ、組合側の数十名との間に対峙のような状態になったということは聞いておりますが、いまのような突くまねをしたという点については聞いておりません。
  84. 西風勲

    西風委員 きょうは、あなたのほうは、都合が悪いことはみな聞いていない、知らぬというものですから、日本警察はうそをつかぬので有名だと思っておりましたけれども……。  最後に、相当な時間が経過してから——これは、暴力団脅迫されているときは、一時間とか、二時間とかいう単位ではなく、一分でも二分でもずいぶん長い時間なんです。あなた方脅迫されたことがないですからね、輝かしい日本警察ですから。そういう点であれでしょうけれども脅迫されている本人にしたら相当長い時間ですよ。十分などという時間は、考えられないほど長い時間です。その時間がたってから私服の警官があわてて飛んできて、ぱっと中に割って入ってこの脅迫がとまっている。対峙関係って何ですか。組合員警察からの——一切武器を持ってはならぬし、暴力をやってはならぬという原則を守って、一切無防備ですよ。石一つ持っていた組合員はいないのですよ。現に刺した原田組の三人の暴力団に対して、組合員は何一つやっていないのです。草一本引き抜いて投げたという事実もないのですよ。ほんとうなら、組合員はこの三人に対して怒りで殺してやりたいぐらいの気持ちですよ。ところが、組織できちっと統制していますために何もしていない。対峙関係なんて冗談じゃない、対峙なんかしていませんよ。暴力団に亀崎書記長及び分会の役員は追いかけ回されている。現職の警察官がいるのに何もしていない。調書が出ているはずでしょう。そういう事実があったらどうしますか。
  85. 三井脩

    三井説明員 その点については私たち存じておりませんが、さらによく調査をいたします。
  86. 西風勲

    西風委員 調査って言うが、これは事実ですよ。終わってから、原田組長以下来たんですから。そういう点で、あなた方不十分だって言うんならしかたないけれども、この次責任者を呼んで聞くようにしたいと思いますが、そういう事実があったということをひとつ厳重に調べて、適当な機会にそういう事実があったかどうか報告してくれますか。
  87. 三井脩

    三井説明員 この事件は、目下捜査中でございますから、捜査の進行と見合わせまして、事実は十分調査をいたしたいと思います。
  88. 西風勲

    西風委員 原田組に対して——まだ逮捕されていない者がおります。おまけに、その逮捕されていない者の中に、死んだかどうか、現場へ確認に来た組員が逮捕されていないのです。死んだかどうか最後に見に来ているわけです。きちっと死んでいるということを見きわめていっているような危険な者がまだ逮捕されておりませんが、原田組に対して一体どうするのか。原田組と他の暴力団との関係はどうするのか、山口組関係があったといわれておるが、その点の処置の問題についてひとつお聞かせ願いたい。
  89. 三井脩

    三井説明員 原田組でまだ逮捕されておらない人間があるということでございますが、それはそのとおりでございますけれども、この殺人事件と、十四日の暴力行為の事犯ということについて、目下捜査をいたしておるわけであります。ただ、現場を確認に来た人間が、殺人罪とどのように証拠の上で結びつくかということは、捜査の結果によってきまるわけでございまして、いま直ちにどうこうということは言えない段階でございます。
  90. 西風勲

    西風委員 刑事局長原田組に対してどうするかということを質問しているわけですから、あなたから責任のある回答をいただきたい。
  91. 内海倫

    内海説明員 今回の犯罪に関連のある者は、だれ一人のがさず、全員検挙していきたい。またその方針で捜査も進めておるところであります。  それから、原田組そのものにつきましては、この捜査取り調べの線で万事はっきりするわけでございますが、私どもとしましては、先ほども申しましたように、こういうふうな暴力行為をあえて行なう、そういう組織というものにつきましては、今後いわゆる暴力的な集団という観点でこれをとらえていき、再びこういうふうな暴力行動に出るということのない措置を今後とっていきたい、かように考えております。  なお、現在までのいろいろな調査の過程では、この組が上部団体の暴力組織とつながっておるというふうな事実はないようでありますが、なお、今後もそういう点を十分解明いたしまして、いずれにいたしましても暴力的集団というものに対する措置をきびしくとっていきたいと考えております。
  92. 西風勲

    西風委員 原田組については、これは事件がありましたときにもおじ貴——やくざのことばでおじ貴というのは、兄貴分か何かに当たるそうですか、おじ貴というのが黒装束で来ていたそうです。これが山口組の何とかというふうにいわれております。そういう点で、上部とのつながりを的確に把握をすると同時に、原田組に対して徹底した解散そめ他の処置をとることをこの際要求しておきたいと思います。  次に、先ほど警察としては手落ちがあったということを認められた、こういう点で、この現場警備を担当した港署長、府警本部長というものに対して、一体どういうふうな形で責任を明らかにされるかお聞きしたいと思います。
  93. 内海倫

    内海説明員 先ほどお答えいたしましたように、状況判断に不足する点のあったことは認められますけれども、これについて責任の追及という問題になりますれば、おのずからいわゆるその状況判断の材料の収集ということに不足する点があったのか、あるいは手落ちがあったのか、こういうことになろうと思いますが、ただいままでの本部長の報告では、まだそういう点についての報告を聞いておりません。おそらく私どもとしては、今後もそういう点について、いろいろ検討はされると思います。しかしながら、いま責任を追及すべきそういう手落ちがあったというふうには報告はまだ何ら受けておりません。
  94. 西風勲

    西風委員 今度の殺人事件は、何といいましても警備上の手落ちによって行なわれた、警備上の手落ちのために脇田さんが死ななくてもいい命をなくした、こういうことですから、もう時間がありませんから押し問答できませんけれども、やはり港署長をはじめとした現場警備の責任者に対して、警察として世間に言いわけのできるようなはっきりした処置をしてもらいたいということをこの際要求しておきたいと思うのです。別に、個人的に憎んでいるわけじゃないけれども警備上の手落ちで人一人が死んだのですから、これについて警察が何ら社会的な処置をしない、社会におわびするような処置をしないというようなことは、警察の権威にとってゆゆしき問題ですから、警察の権威を高めるためにも、死んだ脇田さんに報いるためにも、そういう点をきちっとやっていただくように要求したいと思う。警察はそれで終わります。  次に、労働大臣にお伺いしたいと思います。  港湾労働法ができましてから、港湾はよくなった半面もありますけれども、逆にそのことによってもっと巧妙な形で暴力団、手配師、タコ部屋というようなものが温存されて、港湾の問題はまだなかなかむずかしい状況にあるということが今度の事件で明らかになったわけですけれども、その原因は、港湾労働法第十六条のただし書きの項目が、いまの状況の中では港湾労働法の完全実施を妨げるだけではなくて、港湾暴力を温存させるような内容になっているというふうに私どもは考えているし、世間でもそういわれておるわけですけれども、今度の事件に関する労働大臣の所感と、港湾労働法第十六条のただし書きを撤廃する意思がないかどうか、この二つの点についてお伺いしたい。
  95. 早川崇

    ○早川国務大臣 私の訪米中に、脇田さんが死亡されましたことを聞きまして、この席をかりまして衷心より哀悼の意を表する次第でございます。  暴力は、いかなる目的であろうとも、断固民主主義の敵として排除しなければなりません。そういう意味で、実は三年前、私、自治大臣、公安委員長をやっておりましたときに、組織暴力団というものを徹底的に壊滅するように指示をいたしました。以来三年にわたりまして、法律も改正いたしました。暴力行為等処罰に関する法律の改正をやりまして、組織的、継続的暴力に対しては刑罰を重くするという法律が国会で成立いたしましたが、自来、率直に申しまして、警察当局は組織暴力団の壊滅に非常に成果をあげてまいったことは私認めるのであります。しかしながら、まだまだ根強いこういった暴力組織というものが残っておりまして、今回のような事件を発生したということは、まことに遺憾に思っておる次第でございます。  御質問は、港湾労働法の条項の問題でございまするが、御承知のように、港湾労働力が非常に不足をいたしておる関係もございまして、あの法律のときに、ただし書きで直接雇用の道を残しておいたわけであります。しかし同時に、このただし書きは、あくまで例外的な措置として運用するように協議会にも強くその趣旨を徹底いたしてまいったのでありまして、特に手配師というのが非常にばっこして、暗い面をかもし出しておるということも聞いております。手配師の問題等につきましては、この事件を契機にして、このただし書きをいま直ちに廃止するということは、現在の港湾労働事情から申しまして困難かと思いますけれども、あくまでこれは最小限度の例外的な規定として運用するという趣旨をさらに徹底し、また手配師の問題等につきましては、労政当局といたしましても、真剣にひとっこれを契機として検討してまいりたいと思っております。
  96. 西風勲

    西風委員 品川労働大臣に、まず第一は、十六条のただし響きの撤廃についてひとつ真剣に検討していただきたいということをまず要請しておきたいと思う。  それから第二は、そのただし書きがあることによって、いま起こっている港のさまざまな事件ですね。私も現場を見てきましたけれども暴力団組員が、安定所の何か連絡員ですか、何とか員というのがありますが、これの腕章をはめて、昔、暴力手配師をやっていたのが、そのまま実際手配しておるわけです。これが前より悪質なんです。これがありますために、正式な職業安定所でカードを持った人を雇う。足らなくなったらそこへ行って、その賃金よりも二、三百円高い目で労働力を確保しようとするわけです。したがって、そのためにカードというようなものを持たずに、そういう形でやったほうが賃金がいいものですから、高く雇ってくれるもんですから、そういうことを契機にして、港湾労働法の安全実施がさらにおくれていくというような状況になっておりますから、そういう事実を十分調査されて、ただし書きが撤廃されぬまでも、ただし書きが悪用されないような厳重な措置をとられたいし、こういう点について現場で働いている全港湾をはじめとした労働組合の幹部からも意見その他を聞かれて、十分な処置をするように大臣にお願いしたい。  それから第三は、先ほど申し上げたんですけれども大阪ではこの暴力を契機にして、現に暴力がたくさん残っておるものですから、それに対する処置をするために、関係団体が集まって、暴力をなくする連絡会議というようなものをつくっているわけです。これは脇田さんの霊に報いる最大のものだと思いますけれども、そういう点で、労働省が運輸省の港湾局その他と連絡をとって、中央にもそういう暴力追放、港湾労働法の完全実施というようなものを目的とした連絡会議のようなものを、できましたら検討して設けていただきたい。  以上、三つについて労働大臣の所見を伺いたい。
  97. 早川崇

    ○早川国務大臣 御趣旨の点は、すでに関係次二百会議を設けまして、港の暴力追放、これはもちろん警察庁が責任者でありますけれども、連絡会議をすでに持って発足いたしておるようでございます。さらに閣僚としても、その次官会議の結果を聞きまして、脇田さんの死をむしろ生かして港湾労働というものを明るい港湾労働に持っていきたいという覚悟でございます。
  98. 西風勲

    西風委員 じゃ、終わります。
  99. 川野芳滿

    川野委員長 山本政弘君。
  100. 山本政弘

    ○山本(政)委員 大臣がお忙しいようですから、基準局長にお伺いします。仙台に仙台工作という会社があります。そこで最近労働争議が起こっているのですけれども、一応私はその点について経過をお話をいたしたほうがいいと思いますので、お話ししておきます。  六月の七日に経営上の理由から組合に解散を申し入れて、六月の二十三日に組合のほうでは退職金の仮差し押えを申請して、二十五日に手続をしておるというようなことで問題が起こってきたわけですけれども、まずお伺いいたしたいのは、基準局のほうでそういう報告というものは御承知かどうかということです。
  101. 有馬元治

    ○有馬説明員 いま基準局長を呼んでおりますので……。
  102. 山本政弘

    ○山本(政)委員 基準局長は昼からというので、この関係はあとに回したいと思います。  それでは、人事院の給与のほうを先にやらしていただきたいと思います。  八月十五日に、一般の国家公務員に対する給与勧告を行ないました。その中で、私どもが考えましてもたいへん不満足な点が多うございます。たとえばこの賃上げ率が、民間の賃上、げに比べて、率からいって非常に格差がある。あるいは賃金体系の配分にいたしましても、引き上げ額では上のほうに厚くて下のほうに薄い、あるいは初任給について、たいへん民間に比べましても——人事院のほうで客観的にどういうふうおに考えになっているのか、私どもから考えれば、少し考え方が変わってきつつあるのではないか、こういうような感じがするわけです。あるいは住宅手当にいたしましても、これは都市手当というものにすりかえられておる、こういうような感じがするわけですが、これは後ほど河野委員のほうから詳しくお話があると思うので、私は最近私の手元に播いた文書の中から二、三質問をいたしてみたいと思います。  というのは、昨年の八月三十一日に科学技術会議で、科学技術振興の総合的基本方策に関する意見というものが出ております。それからことしの、四十二年六月十六日に研究公務員の処遇改善、そして七月六日には学術会議からも総理あて意見書が出ておるわけですけれども、その中で学術会議あたりでは、科学技術の発展を確保する上に必須の条件である、あるいは職務の特殊性の十分な考慮を払ってもらいたい、ほぼ同じような趣旨でそういうものが出ておりますが、その勧告の中でお伺いいたしたいのは、俸給表の改善の中で、「各俸給表の改定にあたっては、官民校差の特に大きい医師について、昨年に引き続き格段の引上げを行なう」、そのあとに引き続きまして、「研究職、教育職、看護婦等についても特に配慮した。」こうありますが、お伺いいたしたいのは、たとえば研究職について一体どのように配慮したのか、その点について具体的にひとつ、この点をこういうふうにしたというふうに説明をいただきたいと思います。
  103. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 お答えいたします。本年の給与勧告におきましては、民間における賃金を調査いたしまして、その格差七・九%を埋めるように勧告申し上げているわけでございますが、その配分にあたりまして、いま御指摘のところは、各俸給表のうちに、研究職俸給表についてどのように改善をしたかということだろうと思いますが、研究職につきましては、これも官民格差を考慮いたしまして、この改善につきましては、一つの重点事項というふうに考えたわけでございます。  研究職の関係といたしましては、従前現在の等級区分そのものが一つの職務段階に即しまして、ほかの行政職の職務段階とは違いまして、いわば幅の広い等級区分になっているわけでございますし、かつその場合の等級の格づけ、つまり昇格という関係につきましても、等級別定数等について配慮を払ってきておるわけでございますけれども、あるいは他の行政職の等級表、それから教育職の俸給表、特に科学技術庁のお話もございまして、最も研究効果を高める必要がございます室長と研究員につきまして特に配慮をするということで、その場合に関連がございますのは、大学の講師、それから助教授の給与との関連でございますけれども、従前大学の講師との関連を見てまいっておったのでございますけれども、今回、助教授との関連も考慮をいたしまして、したがって、そこの関係につきましては、つまり大学を卒業しましてから十数年たって、室長に上がっていくというところにつきましては、特に改善をはかりたいということで考えたわけでございまして、行政職俸給表に対しまして、実質的に申しまして二百円ないし四百円高の引き上げになっておるわけでございますが、そういうことで、特に若手研究員というところが今回の科学技術庁の御要望でもございましたし、われわれといたしましても、そういうところに重点を置いて改定をしたということでございます。
  104. 山本政弘

    ○山本(政)委員 これは公衛局長に聞いたほうがいいと思うのですけれども、国立予防衛生研究所の業務内容といいますか、これについてちょっと説明をしていただきたいと思います。
  105. 村中俊明

    ○村中説明員 国立予防衛生研究所につきましては、厚生省の設置法で定められておりまして、その業務内容といたしましては、伝染病その他特殊の疾病についての研究調査、及び食品衛生に関係する研究、検定、検査、こういったことをおもな業務といたしております。
  106. 山本政弘

    ○山本(政)委員 これは人事院にお伺いしてもいいと思うのですが、医科学研究所、これは文部省の所管ですね。ここの職員は研究職ですか、あるいは医療職ですか。それとも教育職ですか。
  107. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 いわゆる東大の伝研の御指摘だと思いますが、この伝研の職員は、東京大学の職員でございまして、その内容につきましては、その職務につきましては研究が主眼でございますけれども、大学の付置研究所につきましては、その職員間のバランス、昇進コース、そういうことを考慮いたしまして、俸給表としては教育職俸給表の適用を行なっております。
  108. 山本政弘

    ○山本(政)委員 これは国立予防衛生研究所ですけれども、私がこの業務内容を見た範囲では、血清、ワクチン類の検定業務、伝染病その他病原の検索並びに予防、治療に関する学理及びその応用の研究、こうなっております。そして医科学研究所は感染症、ガンその他の特定疾患に関する学理及び応用の研究となっている。私はしろうとですからよくわかりませんけれども、業務内容をともかくも見てみますと、しろうと目にはこれは伝染病と感染症の違いもよくわかりませんけれども内容的には非常に似通っておるし、それから旧伝研から予防研究所が分離をされたいきさつからいっても、この両方はさい然と区別する業務内容ではないと思うのです。しかし実際には、片一方は教育職で、片一方は研究職である。そしてそれによって給与内容が違っておる。これは私たいへん疑問を感ずるわけですけれども、その点について御説明いただきたいと思います。
  109. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 俸給表の適用でございますけれども、現在国家公務員にはいろいろな官職がございまして、それを職務と責任、その他職員の昇進の経路だとか、その職場のあり方、そういった関係を考慮しまして俸給表の適用を行なっているわけでございます。  なお、俸給表につきましては、いわゆる職階制が実施されますときには、まさに職務と責任のみで俸給表をこまかくつくりまして、それを職務と責任だけで適用するという関係があるわけでございますけれども、現在の俸給表は、いわばその前段階でございまして、いま申し上げましたように、昇進経路とかあるいは職場のあり方とか、そういう関係も、適用のしやすいという点も考慮いたしましてつくっておるわけでございます。なるべくそういう俸給表の数は少なくいたしまして適用をしたほうが実務上便宜だという点もあるわけでございますが、現在、いま御指摘のように、全く同じ仕事でございますれば、それは一つのそれ自体として同様な俸給表を適用するということが適当かとも存ずるのでございますけれども、やはり研究職の中には、広く申しまして行政機関付置の研究職がいろいろございます。そういう研究機関に対しましては現在研究職俸給表を適用しているわけでございますが、そういうところにおきましては、教育との交流だけでございませんで——もちろんそれもございますけれども、行政職との交流というものも相当あるわけでございます。むしろそのほうを主としているところもございます。したがいまして、いまの研究職が適用されております研究機関の交流態様というものは、必ずしも斉一でないわけでございますが、行政機関の付置研という関係を一括とらえまして研究職俸給表を適用し、片方におきましては、大学付置の研究所につきましては、やはり大学構内という関係、人事関係もそういうことになっておりますので、それは一括して教育職俸給表を適用するという形で現在俸給表を適用しているわけでございます。
  110. 山本政弘

    ○山本(政)委員 私は予防衛生研究所の事業の概要を見ました。その中で見ますと、ここにはあなたのおっしゃるように行政機関として考えられるような——私もよくわかりませんけれども、行政機関としてあなたがおっしゃるような部門というか、そういう業務ではどうもなさそうな気がするわけです。というのは予防衛生研究所から概要を書いたパンフレットが出ておりますけれども、そこには研究部ということがはっきりうたわれております。そしてこれは総務部は別ですけれども、細菌第一部、細菌第二部、ウイルスリケッチア部あるいは腸内ウイルス部、結核部、抗生物質部、寄生虫部、御生昆虫部、食品御生部、こうあります。同時に旧伝研の医科学研究所についても、細菌、それからウイルス、ウイルス感染、寄生虫、ガンというふうに、しろうと口の私には、両方とも、分野は違っておっても、たとえばウイルス一つをとってみても、ウイルスの研究の分野はあるいは違うかもわからん。違うかもわからぬけれども、少なくとも研究ということについては、私は両方とも別に変わりがないような気がする。あなたのおっしゃる行政機関としてという意味が理解ができないのですが、その点もう一度御説明いただきたいと思います。
  111. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 行政機関に付置されております研究所は、やはりその行政目的に沿うように研究目的を設定をいたしまして、そしてそれを遂行するということになろうかと考えますが、その点大学の付置研の場合、そのほうは、むしろ基礎的な研究という関係で、やや趣を異にしているのではなかろうかというふうに思うのですけれども、その場合の行政機関の付置研究所におきましては、その構成がやはり、それは言うまでもなく大学との交流ということがございます。それからそれ自体として採用している職員もございます。それからまた、行政部内の職員と交流して入ってくる、そういう職員もあるわけでございます。そのいわば構成と申しますか、そういう関係は、必ずしも行政機関付置研究所によって斉一ではないわけでございまして、いろいろなパターンがございます。比較的に大学のほうに近い、大学に交流が多いというところもございますれば、比校的通常の行政機関内部との交流の多いところもございます。しかしたがら、俸給表といたしましては、そういう関係をやはり一括して適用をしているという点がございます。  なお、研究職俸給表につきましては、やはり職務の面におきましては、先ほど申し上げましたように、研究職における職務段階に従って俸給表をつくるわけでございますが、大学の場合には、大学の職務段階に従ってつくるということになりまして、その点が違ってくるわけでございますが、相互の交流が相田あるということを考慮いたしまして、俸給表の形が違いますし、また手当のしかたも若干異なりますけれども、その間の交流があるということをできるだけ考慮いたしまして、俸給表の設定、給与の設定をしていっているわけでございます。
  112. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それでは極端なことをいえば、大学とは交流の機会がきわめて多いということから、行政機関と区別をする、そういうことになりますか。その辺をちょっとはっきりお聞かせを願いたいと思います。
  113. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 当面の問題は研究職でございまして、一般のいわゆる行政職というものとはやはり職務内容が異なると思います。そういう研究という職務内容を重点に置きまして、やはりその場合には当然に大学との関連もございますし、また一方において行政目的という点がございますので、行政機関の内部機関との関連もあるわけでございますけれども、大学との関連も、人的にもいろいろな面で強いという点もあるわけでございますから、そういう点の配慮を払いつつ、処遇の関係を考えていく必要があるというふうに思っておるわけであります。
  114. 山本政弘

    ○山本(政)委員 医科学研究所の場合には、研究という面が強い。そして大学との交流の関係も強い。だから、あなたの論理からいえば、教育職になるのだということになれば、私は非常に論理的につじつまが合わないような気がするわけです。研究というものを主にしておるのならば、なぜ研究職ということにならないのか。その辺、私はあなたのおっしゃることについて、たいへんつじつまが合わないような気がするわけです。片一方は行政機関と云々、こう言われておる。そうすると、まさにあなたの論理を発展させていけば、研究職というものは逆になるはずだと思うのです。あなたの説明から判断をすれば、いまの教育職の方々は研究職であるべきはずなんです。しかし、現実には教育職である。その点どうも私は納得いかないのですけれども、たとえば予防衛生研究所にも大学の関係の人がおります。たとえば食品衛生学で、ここの部長をなさっておる宮木高明さん、この方はたしか千葉かどこかの薬学の教授をやっておられて、そしていまはここに来ておられる。だから、そういう意味では予防衛生研究所においても、医科学研究所においても、そういう交流があると思うのですよ。そういう交流がより大学に近いということでそれが区分されるならば、それはたいへん不合理だと思う。  何べんも繰り返しますけれども、事業概要から考えても、予防衛生研究所の場合でも、これは研究業務ということが冒頭にはっきりうたわれておるわけですね。同じように医科学研究所の場合には、研究部門の内容として細菌とか、細菌感染とか免疫という部門があるわけですね。そうするとこの両者はさい然と区別できないにしても、両方とも研究に従事するもの、こう認めて差しつかえないのです。ただ職種によって、つまり所管によって教育職であるとか、あるいは研究職であるとかいう区分けをするのならば、私は給与上からいって、たいへん不合理ではないかと思うのです。その点についてひとつお考えをお伺いしたいと思う。
  115. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 俸給表の適用につきまして、まさに御指摘のように所管によって適用するということは適当でないと思います。私どもが片一方で教育職俸給表を考えまして、片一方で研究職俸給表を考えるという関係につきましては、研究職を考えておりますのは、やはり研究というところが最も中心的な要素として、そういう職務内容という関係を主眼にして研究職俸給表を考えておりまして、その適用の範囲は、行政機関の付置研究所に対する適用ということをやっておるわけでございます。  他方におきまして教育職俸給表関係の俸給表でございますが、教育職俸給表は一般的にはいわゆる大学における教授、助教授と申しますか、つまり教育をし、かつ研究をするという、そういう二つの任務が大学にはございます。その両方をとらえまして現在の大学の教育制度はあるわけでございますが、その関係をとらえまして、教授、助教授という関係を教育職俸給表の第一俸給表としてとらえるという形でとらえております。ともにその関係は、研究職のほうの行政機関の付置研究所の場合の職務段階とは違うわけでございます。  なお、御指摘のところは、いわばその中間的なところでございまして、いわゆる学部等において教育かつ研究をするという二つの任務を持つ教官と、それから付置研究所につきましては、教育という関係がどうかという問題になるわけでございますが、これは私どもよりは文部省のほうから答えていただいたほうが適当でございますけれども、やはり大学の構内、大学の研究所でございまして、やはり大学の研究所は、普通の行政機関の研究所とは若干異なるのじゃないか、基礎研究をするという点がやはり若干異なるのではないかと思いますけれども、研究は研究といたしまして、大学の中において広い意味の教育に携わるという点がやはりあるのではなかろうかというふうに思います。その関係は、いわばちょうど中間的な問題でございますが、やはり昇進経路とか、そういう意味におきまして、やはりこれは教育職俸給表でとらえたほうが適当だというふうに考えまして、現在適用しておるわけでございます。
  116. 山本政弘

    ○山本(政)委員 私は確かに、旧伝研というのは、大正三年ですか、当時の東京帝国大学の附属伝染病研究所になったということは承知いたしております。しかし明治二十五年に大日本私立衛生会の附属伝染病研究所から発足をして、そしてその中の経過を見ていくと、これはやはりどう考えても研究部門だ。あなたのおっしゃるように、予防研究所と医科学研究所というものについて、おっしゃるような若干のニュアンスの違いはあると思います。あると思いますけれども、やはり同じような研究部旧である。ただあなたのおっしゃることをお伺いしておりますと、何か大学の付属の研究所だから、どうしてもこれは教育職でなければならぬ、こういうふうな考え方が私はあるような気がするわけで、そういうことに別にこだわる必要はないのではないか、つまり研究部門に携わるものであるならば、研究部門としていいのではないか。もちろん、そのことによって給与が下がるのであれば、これは下がらないように配慮をすればいいのであって、お伺いいたしたいことは、医療職、教育職、そして研究職と三つある中で、研究職というのが非常に給与の面からいって均衡を失しておるのではないか、私はこういう感じがするものでありますから、ことさらに両者の比較についてお伺いをしたわけなんです。  具体的に申し上げますと、昭和二十七年に大学の医学部を出まして、そしていま研究職であります。現在は二等級の十一号。ですからこの表に従えば五万七千四百円ですかね。同じように大学を卒業されて、そうして、医療職のほうにかりに行くとしたらこれは二等級の六号俸もしくは三等級の十号、そうしますと、二等級の六号の場合には七万一千二百円、三等級の十号の場合には六万八千六百円ですか、そうすると、前者の場合には一万三千八百円、そうして後者の場合には一万一千二百円高いということになる。同じ学校の同じ医学部を出て同じ勤務年限であって、ほぼ同じような研究活動をやっておる場合に、それだけの差がなぜ出るんだろうか、私はそういう意味合いで、人事院は一体どうこの点についてお考えになっておるのか、これをお伺いしたいわけです。
  117. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 先生のいままでのお話は、やはり仕事が同じならば同じ俸給表、同じ給与を適用したらよろしいのではないかという御指摘であったかと思いますが、ただいまの御指摘は、研究所の場合と、それから医療職の場合との比較でございます。先ほど来の関係といたしましては、教育職とそれから研究職の関係につきましては、人事交流その他におきまして、いろいろ給与関係につきまして配慮を払っておるということを申し上げてきたわけでございますか、その関係は、両方とも医療職との関係が、ほぼ同様な関係にあると思っておるわけでございます。医療職につきましては、これはいわば診療機関に従事する職員でございまして、研究ではないわけでございます。したも現在の医療、特に医師の給与は私ども非常に心配しておるわけでございますけれども、非常に特典な制度になってきつつございまして、これはやはり私、個人的に考えますと、需給関係がそうさせておるのではなかろうかというように思うわけでございます。ほかの給与と違いまして、特に地方に大学あるいは基幹病院のあるところは、医師の場合にはよろしいわけでございまして、比較的に人が行きたがるわけでありますけれども、地方での医師の採用というものは非常に困難な状況でございまして、地方に行くほど給与が高くなるという形で、普通の一般の給与とは非常に性格を異にしておるわけでございます。したがいまして、そういう関係に配慮をするということのために、ことしも民間の医師との格差を調べてみますと、ほぼ五割程度の差が出ているわけでございまして、これは超過勤務手当、夜間診療に対する手当としまして、若干の手当が国立の場合には出ておるわけでございますけれども、それを考えましても相当な格差がございます。したがいまして、従前の一医療、研究、教育というのはいわば大学を出まして同じような——同じようなといいますか、それぞれ分野が違ってくるという関係がございましたので、私どもとしましてはその間の配慮をいろいろ気を使ってきたのでございますけれども、やはり現在のような官民格差というのがございますと、どうしても医療職につきましては相当な改善をしませんと、現実に国立病院、診療所に医師がとれないという関係になってきております。そういう関係が現在出てきておるという状況でございます。
  118. 山本政弘

    ○山本(政)委員 医療職の場合のことについてはよくわかります。  それではお伺いいたしますけれども、教育職は、私が申し上げた研究職の二等級の十一号の場合に何等の何号に該当いたしますか、それをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  119. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 ただいま御指摘の昭和二十七年ごろに医学部を卒業しまして研究にいった職員が、研究二等級の十一号俸で五万七千四百円にありといたしますと、それと同様に考えておりますのは助教授——今度は助教授を考慮して引き上げるということにしたわけでございますが、いままでは講師関係を考慮しておったわけでございますけれども、助教授関係といたしますと、二等級九号俸で六万五千二百円ということに相なるわけでございます。その間八千円ほどの格差がございます。ございますが、これは研究員につきましては、いわゆる特別調整額というのが支給されておりまして、室長給につきましては一六%ないし一二%の特別調整額が支給されておることによって相互バランスがとれているというように考えております。
  120. 山本政弘

    ○山本(政)委員 調整額についてはあとからお伺いいたしますけれども、医療職に比べてもはるかに低い、それから研究職に比べても八千円ほどとおっしゃいましたが、八千八百円、むしろ九千円と言ったほうがいいですね。それだけの差がある。同じ大学を出て、同じ医学部を出て、同じ年限をつとめておってこれだけの差がなぜできるのか、そのことに対して、私は先ほどからくどいように両方の研究所のことについてお伺いしたのはそのためなんです。同じ研究部門であって、ただ単に片一方はあなたのおっしゃるように行政機関であるとか、あるいはより大学に近いとかいうようなことで、職種が違うというのか、所管が違うというのか、そういうことのためにこれだけの違いが出てきておる。同時に研究職というのは、研究に従事している人は、これは本も読まなければなりません。自分で自分の研究をするのですから。私どもでも若干の本は買わなければならぬ。しかし、その人たちはより以上本を買う必要もあるだろうし、研究する資料というものが要るだろうと私は思うのですけれども、結局それだけの格差が出てきておるということに対して一体人事院はどういうふうにお考えになっておるか。これはどなたにお伺いしたらいいのでしょうか、やはり給与局長さんですか、あるいは任用局長さんですか、人事院としてそれだけの格差についてどうお考えになっておるのか、あるいは今後どのようになさるおつもりがあるのか、もしもあるとすればどのようにするのかということをはっきりお聞かせを願いたいと思います。
  121. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 教育職の俸給表につきましては、従前からいわゆる勤務時間が長いと申しますか、そういう関係で一種の優遇措置がなされてきたわけでございますけれども、それが現在いわゆる超過勤務手当支給問題という形になっていることは御承知のとおりでございます。それに対しまして、つまり教育職の場合には俸給一本でございますが、研究職の場合には俸給と諸手当という関係になっているわけでございまして、特にいま申し上げましたとおり、特別調整額がプラスして支給されるという関係がございまして、その間に一応バランスを考えておるということであります。
  122. 山本政弘

    ○山本(政)委員 特別調整額というのは要するに毎月八千八百円ですね。これは研究職と教育職と比べた場合に八千八百円違うのだけれども、毎月八千八百円違うものまであなたのおっしゃるように特別調整で補えるのかどうか、もう一ぺんお伺いしたいのです。
  123. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 研究の二等級室長の場合と教育における助教授とが同じ職務内容であるかどうかという関係につきましては問題がございます。それで私どもとしましては、室長の待遇につきましては、先ほど申し上げましたように、大学における講師及び今回助教授という関係と相互関係を考慮いたしまして、俸給を若干助教授に近づけるという措置を講じたわけでございますが、実際に相互の異動につきましても、そのような両方にまたがる異動がございます。ただいま御指摘でございましたけれども、同じ年次でそれぞれのところにいきました場合に、同一給与まで支給される必要があるかどうかという点につきましては、やはりそこは職務内容その他によって考慮する必要があるわけでございまして、いまの場合でも助教授にいった場合、それから講師にいった場合という関係がそれぞれ対応があるわけでございます。したがいまして、それぞれにつきましても、どちらに対応させるかという点については意見のあるところでございますけれども、研究職におきまして一六%ないし一二%の特別調整額を支給しておるという点につきまして総体としてバランスがとれているというふうに考えたのでございます。
  124. 山本政弘

    ○山本(政)委員 私の質問に対して、問題を逃げられては困ると思うのです。大学の教授あるいは大学の講師というのは、これは私は何もそのことだけ否定しているのではない。しかし、やはり研究所にいる研究員というのは別でしょう。少なくとも大学の助教授ではないはずです。研究員ですよ。それから医学的研究所の人も研究員です。その場合にやはり違うでしょう。給料の差があるでしょう。この、研究員を助教授だからあるいは講師だからと言って、あなたのおっしゃるように、これだけのものがつくのだ。調整額が一六%から一二%あるというので逃げられては、私は問題の本質というものはなくなってしまうと思うのです。旧伝研の研究員、そしてこちらのほうは予防研究所の研究員ということで私は対比した場合に、依然としてあなたのおっしゃるような八千八百円という差額というものは縮まらぬではないか、私はこう聞いておるのです。それを大学の助教授、講師ということで逃げられては実は問題の本質がはずれてくるのではないかと思うのですが、いかがですか。   〔委員長退席、田中(正)委員長代理着席〕
  125. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 御趣旨につきましては、医科学研究所が研究であるということで、研究職ではないかというところから御出発になっておるわけでございますけれども先ほど申し上げましたように、医科学研究所は大学の中における施設でございまして、大学は研究と教育という関係をやっているわけでございまして、そういう関係で教育職俸給表を適用しているということでございまして、医科学研究所の大学付置研の場合には、いわばその中間的な関係になるわけでございますけれども、やはりそこは広い意味の教育、やはり大学院の関係に対する便宜を供与するとか、あるいは学生に対する広い意味の教育という関係も行なっているわけでございますので、教育職俸給表を適用しているということでございます。したがいまして、いま私どもが申し上げておりますように教授、助教授あるいは講師、そういう片方における職務段階と、片方における部長、室長という関係の対応が、必ずしも一対一の対応ではございませんので、一義的にどちらという関係にはならないわけでございまして、相互に異動関係、講師と助教授と両方ございますので、両方の関係を考慮しつつ特別調整額を含めましてバランスを考えていくというふうに思っておるのでございます。
  126. 山本政弘

    ○山本(政)委員 どうも十分納得いきませんけれども、しかし、私が申し上げた趣旨というのはおわかりになったと思うのです。同じ大学の同じ医学部を出て、同じ勤務年限で違うということについて、単にそれが職場が違うというのですか、あるいは極端な言い方をすれば大学に付属している、あなたのことばで言えば教育の場を与えるとか、そういうことで違うんだというのですけれども、私はその点どうも納得がいかないのですが、そういう問題について、一体人事院はこのままのあり方でいいのかどうか、改善すべきであるかどうか。それだけをひとつ最後にお伺いしたいと思います。
  127. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 行政機関の付置研究所に対して、現在適用しております研究職俸給表につきましては、やはりその内容が一方におきましては行政機関の内部部局との関係が考えられまして現在俸給表がつくられておりまして、その上に特別調整額を乗っけるという制度になっておるわけでございます。  他方におきまして、実質的な運用といたしましては、大学との関係もございますので、相互の異動関係も考慮して俸給表の作定をしていくということになっているわけでございます。したがって、この関係は、いわば中間的な性格という関係で、ややそういう点の御指摘のような問題を私ども意識しているわけでございます。  そういう点につきまして、なお今後どのように持っていったらいいかという点につきましては、科学技術庁とも十分連絡をとってこの問題に対処していきたいというふうに考えております。
  128. 山本政弘

    ○山本(政)委員 計画局長おいでですか。——その点についてお答えをお願いしたいと思います。
  129. 梅澤邦臣

    ○梅澤説明員 研究職は、実は国立の研究所が現在は七十八以上ございますが、それが前には一般職でございました。しかし、研究を進める場合とすれば、大学に似通った方向のほうが近いから、これを研究職にしてもらいたいということで、終戦後、人事院でしていただいたわけでございます。そのときつくりましてから、確かにそのころは民間との差も二割五分以上あったり何かして、研究職のほうを上げてはもらいましたが、教育職のほうもまだ下がってて上がっておりませんでした。しかし今度の改正におきましては、ある程度研究職のほうに少し分のいいところを——ことに中だるみとわれわれ言っておりますが、卒業してから十二年以降のところに低いところがございます。したがって、大学との交流にいささか困るところがあるということで、その改良をしていただいてはおりますが、われわれのほうもこれから先、人事院と共同でいま調査その他もやっておりまして、なるべく俸給表は違いましても人事交流ができやすく、しかも待遇も同じようにしていただくという方向で進めていきたい、そう思っております。
  130. 山本政弘

    ○山本(政)委員 なぜ私が申し上げるかというと、これは医療職の場合は確かにそういう条件がよく世間にわかっておる。だから、あなたのおっしゃるような需給関係というようなことから今回は格段に上げられた、こういう話があるわけですが、そういう意味からいえば、研究職なんというものは数からいっても非常に少ないし、医療職のようにそういう声が、まあ全国的という言い方は何ですけれども、あまり大きな声となって出てこない。出てこないから私は研究職というのはそのままでいいというふうには思えないわけです。ということは、私にそういう文書をくれた人は、前段は別としても、こういうことを書いております。それはともかくとして、「われわれの職場は国家として必要で、最小限でも人材を確保しなければならないにもかかわらず、これでは現在人員を集め得ているだけでもふしぎな感じがいたします。」こう書いているのですよ。ですから、そういう声が大きければ状況というものが変わり得る、しかし声が小さければ変わらないのだ、いつまでたっても同じだでは、私は実は困ると思うのです。いま計画局長のほうから中だるみの是正をすることにつとめておる、こういうお話がありました。私はそういうことをぜひひとつやっていただきたいと思うのです。特にこれは、一般職のほうはもっと中だるみが大きいと思います。そういう意味でも、この中だるみの問題については、研究職を問わず、一般職も含めてひとつぜひ考えていただきたい、こうお願いいたしまして、次の質問に入りたいと思います。  これも一つの事例を申し上げます。東北大学を出た人で、これは生物学の専攻で、四十年に卒業して四十二年に入ってきた人です。研究職ですから、四等級の一号で一万九千五百円ですか、そうすると、高校の卒業生というのが民間の初任給は一万七千五百五十九円、片っ方はまあこれは人事院のあれですけれども、研究職で大学を出て生物学を専攻しておって一万九千五百円。私は学歴がどうだとかこうだとかいうことであれをするつもりは決してありませんけれども、この点でもやはり非常に低いという感じがするわけです。そしてこれについては何か救済規定といったらおかしいのですけれども、採用のときに、研究能力とかあるいは研究業績というのですか、そういうことについて等級かあるいは号俸を上げるというふうになっていると聞いているのですけれども、当人は実は上がっておらないわけです。これが教育職の場合には、この人は四等級一号ということに相当すると思うのですけれども、そうすると二万四千八百円もらえるわけですね。教育職であれば二万四千八百円もらえるものが、研究職で、大学を出て、生物学を専攻しておって一万九千五百円しかもらえない。そうすると、ここの間には四号くらいの違いがあると思うのです。これも私は給与のあり方としてはたいへん不合理なような気がするのですけれども、その点についてひとつ給与局長から御説明をお願いしたいと思います。
  131. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 大学卒で上級試験を通ってきました者につきましては、上級乙の場合には三等級一号俸、上級甲の場合には三等級二号俸で採用することになっております。
  132. 山本政弘

    ○山本(政)委員 三等級一号俸ですね。一号俸ないし二号俸、そうすると、二万二千五百円か二万三千九百円ですね。そうですね、間違いありませんか。
  133. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 間違いございません。
  134. 山本政弘

    ○山本(政)委員 私は、あなたにいまの予防研究所の方のおとりになっている給与の明細をあとでお見せしてもようございますが、現実にその方は一万九千五百円しかもらっておりません。これはぜひ調査していただきたいと思います。  なお、私は先ほど民間の初任給と、こう申し上げましたけれども、昭和四十二年の民間の研究補助員は高校率で一万九千三百四十七円です。高校と大学で百五十三円しか違わない。こういう不合理なことが現実には行なわれているわけです。その点について、もしもあなたのおっしゃるのが正しければ、やはりこの本人の給与についてはしかるべき是正をしていただきたいと私は思うのです。
  135. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 試験採用につきましては、ただいま申し上げましたとおり三等級一号俸ないし二号俸で採用しているわけでございます。  なお、御指摘の場合には試験でなく入ってきている職員かと存じます。その関係は通常の場合ではございませんので、研究職あるいは行政職の場合には試験で採用することを原則としております。したがいまして、そういういわゆる選考採用の場合につきましては、実情をよく調べまして適当な措置を講じたい、そういうふうに思います。
  136. 山本政弘

    ○山本(政)委員 試験というのは国家試験のことですね。つまり公務員試験のことですか。
  137. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 そのとおりでございます。
  138. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それじゃ、生物学というのは公務員試験の科目の中に入っておりますか。
  139. 岡田勝二

    ○岡田説明員 現在人事院で行なっております大学卒程度の学力を調べます上級試験、これの区分は二十六ございますが、その二十六の中には生物という区分はございません。
  140. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そうすると、生物学を研究しながら、かりに予防研究所のようなところに行く場合には、つまり自分の専攻以外の科目、これを結局受けなければならないということですね。研究職につこうと思っても、生物学を研究しておるから、これは公務員の上級試験にないということになれば、なくても、おまえはほかに科目があるのだから、それを受ければいいではないか、こういう結果になりますね。つまり私が申し上げたいのは、公務員の上級試験というのは私はよく知りませんけれども、科目はたくさんあると思うのですよ。しかしその中に入っておらないからということで、本人は結局そういう研究業務に従事し得る資格がありながら、結局はいま申し上げたように民間の研究補助員と同じような待遇で働かなければならぬ。この点が私はやはり少しばかりしゃくし定木に官庁はとらわれておるような気がするのですが、この点についてお考えをお聞かせいただきたい。
  141. 岡田勝二

    ○岡田説明員 生物が現在の上級の試験区分にないことはいま申し上げたとおりでございます。そこで生物を大学で専攻した人が公務員になる場合に、むろんほかの区分をお受けになることも間々ございますが、専攻からいいましてほかの区分を、あるいは農学系統をお受けになるのは、必ずしも皆さん全部向いているとは思いません。そこで二十六の区分に入ってないいろいろな大学の学科区分がございます。そういう人が公務に入る場合どうするかということでございます。その前に申し上げますのは、やはり私どもで区分を設けます趣旨といたしましては、各省庁を通じまして、たとえば生物なら生物というものが、相当数の年々採用者がある、コンスタントな需要があるということがありますと、私ども試験区分をふやしまして入れていくわけでございます。現在のところ生物という関係につきましては、それほど各省庁を通じましての年間の人の需要というものがございませんので、それにもかかわらず試験をやりますことは、試験経済の面から言いまして無理と言いますか、むだと言いますかございますので、やっておりません。じゃ、そのかわりそういう人が国の機関に入る場合にはどうするのだということになりますれば、一番端的な場合は選考ということでございますが、そのほかにある程度人員数が、採用予定人員がまとまり、かつまた大学の設置区分によりまして、相当数受験者もあるということが見込まれるようなものにつきましては、その採用省庁単独で、あるいは合同で、私ども準ずる試験を言っておりますが、選考の高度なものでございます。ある程度人事院が関与いたしまして具体的に筆記試験、面接試験等を課しまして、準ずる試験というものを行なって、それで普通の上級甲なり乙なりと同様の資格を付与するというものがございます。それも現在は、生物については行なわれてはおらないわけでございます。さて、そうするとあとどういう道があるかということになりますと、お話の予研で、生物の人を採りたいというふうな場合に、個別に選考いたしまして、そしてその人について、この人は上級甲の程度あるいは乙の程度あるいはそれ以外というふうな認定をいたしまして、特例的にいわば穴をあけると申しますか、という道を講じておるのが現在の状況でございます。
  142. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それじゃひとつお願いいたしておきたいと思いますが、ひとつあなたのおっしゃるような意味での特例的な穴をあけてやってほしいと思います。  最後にお伺いいたしたいのは、医科学研究所につとめられておる研究員の方は、危険手当というのがつきますか、これは人事院のほうにお伺いしたほうがいいと思うのですけれども………。
  143. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 医科学研究所の職員で、細菌培養等の業務に従事する者につきましては、その危険性等に基づきまして、教育職以外の者につきまして四%の本俸の調整をいたしておるわけでございます。
  144. 山本政弘

    ○山本(政)委員 ちょっと確認しておきたいのですが、らいの患者あるいはその研究に携わっている方々は、危険手当はついておりますね。それからもう一つは、結核の方もついておりますね。ペストの菌というのは、私はたいへん危険だと思うのですけれども、結核というのは今日では、一般的にいえばそうおそろしいものではないと思うのです。これはむしろ底辺層の方々が結核にかかればおそろしいと思うのですけれども、そういう意味で、病気そのものとしては、いまではそうおそろしいものではなくなってきている。しかし、これには危険手当がついておる。だがペストを取り扱っている研究者には危険手当がついておらない。この点について私は、何だかたいへん旧態依然とした考え方でおられるような感じがするのですよ。ペストの菌はたいへん危険なものだ。私はしろうとですからよくわかりませんが、そう思うのですけれども、そのほうについては危険手当がなぜないのか、これをひとつお伺いしたいと思います。
  145. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 御指摘のように、結核につきましては従前の関係で調整措置が講ぜられているわけでございますけれども、その関係が、危険度その他につきまして、従前より幾らか軽減されてきたような方向にあるということは、私どもも考えるわけでございます。そういう関係につきましてはなお検討を要するわけでございますが、御指摘の、非常に危険な細菌等に関連をいたしております関係につきましては、その実際の従事している危険度に応じましてやはり諸手当をする必要があると思っておるわけでございますが、そういう関係で、現在法科学研究所に対しまして調整をしておるということでございます。
  146. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それは、ことばを返すようですけれども答弁にならないのではないか。私は予防研究所に実際に行ってまいりました。行ってみて、夏でしたけれども、上着をちょっと置いたら、それは置いたところがたまたま不用意だったのですけれども、危険だから、感染のおそれがあるのですからということで注意をされましてね。それくらいのところがあるのですよ。結核の患者のところに行って、上着を脱いでも感染するということは言われませんよ。ぜひ私は予防研究所に一ぺん給与局長さんも行かれて、危険度というのをごらんになって、そうしてやはり出すべき手当は出していただきたいと思うのです。もう一ぺん私は各研究部門に携わっている方々について詳細に検討していただいて、これはつけるべきだというものについてはやはりつけるべきだと思うので、その点についてぜひお考えをお願いしたいと思います。  それから最後に、前後になりますけれども、厚生省のほうから出ておる文書で、採用試験ということについて、医学、歯学、獣医学、生物学等については公務員試験は行なわず選考により採用することになっておるという項目があります。これは厚生省のほうからいただいた文書ですから間違いがないと思うのですが、間違いありませんね。
  147. 翁久次郎

    ○翁説明員 間違いございません。
  148. 山本政弘

    ○山本(政)委員 ですからこういうこともひとつお考えを願って、先ほど申し上げたような気の毒な人には、ぜひ給与の面についてもあらためてお考えを願いたいということを要望として申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  149. 田中正巳

    ○田中(正)委員長代理 後藤俊男君。
  150. 後藤俊男

    ○後藤委員 実は最近最終的な段階にきておる、特に滋賀県の地元におきましても問題になっております江若鉄道の廃止、国鉄の買収、この問題についてお尋ねをいたしたいと思うわけでございます。  私が申し上げるまでもなく、江若で働いておられる人は鉄道部門だけで三百五四名おいでになる。この人がたが、今度国鉄に買収されると一体おれらはどうなるのだろうか、失業することになるのか、どうなるのだ、国鉄で使ってくれるのか、一体どうなんだ、こういうような心配で江若の職場におきましてはかなり不安な気持ちがみなぎっておると思うわけでございます。この問題は申し上げるまでもなくいま突然起きた問題ではなしに、去年からずっと引き続いてきておる問題でありますし、さらに情勢としましては、十月ないし十一月ごろにはこの買収問題につきましても最終的な結着をつけぬことには工事の関係も間に合わぬのではないかというような情勢に今日きておると思うわけでございます。これに関連される国鉄なりあるいは建設公団なり、これを監督されるところの運輸省なりでは、今日この問題につきましては大いに話し合いが進められておる、こういうふうに考えておる次第でございますけれども、特に運輸省としましては、かなりこの問題が進んでおります今日、どういうところまでこの話が進んでおるのか、その点を第一番に詳細に御説明をお願いいたしたいと思う次第でございます。
  151. 増川遼三

    ○増川説明員 国鉄の湖西線につきましては、国鉄の第三次長期計画と関連いたします大都市交通線でございまして、昭和四十六年度完成を目途に目下日本鉄道建設公団におきまして鋭意工事の進捗につとめておる次第でございますが、湖西線の建設にあたりましては、江若鉄道の買収が問題となっておるのでございまして、この点につきましては、この江若線を買収するか、または別線を建設するかというようなことは、非常に大きな問題でございます。結論といたしましては、江若鉄道を買収したほうがすべての点で有利であるということで、現在当該鉄道と建設公団との間で交渉を進めておるのでございます。江若鉄道といたしましては、並行線の国鉄ができますと断然非常なる痛手をこうむるということもございますし、現在の経営内容からいたしましても、これを国鉄側に譲りたい、こういう考えを持って申し入れを国鉄側にしたわけでございまして、その際の打者鉄道の要求の第一といたしましては、鉄道の廃止に伴います。切の損失の補償ということであったのでございますが、鉄道建設公団といたしましては、潮西線の建設に必要な物件の買収という基本的な考え方を持ちまして交渉に当たったのでございますが、その結果、最近におきましては、土地につきまして両者合意の上で鑑定評価を行なう、その他相互にある程度の歩み寄りを見ておるのでございますが、その他の条件あるいは金額等につきましては、まだかなりの懸隔があるようでございます。目下さらに両者間で解決の方向で折衝を継続しておるところでございます。この点につきまして、当方といたしましても、最も妥当なる線で解決がはかられることを期待し、両者にそれぞれ勧告をしておるところでございます。  江若鉄道の要求の第二点が、先ほどお話の従業員の問題でございますが、これを国鉄に相当数の継承をしてもらいたいという申し入れがあるわけでございます。御承知のとおり、鉄道部門といたしましては、現在三百五十四名の人員が勤務をしておるのでございまして、この中で自然退職者及び社内転換の可能な者を除いて、あと残りを国鉄に引き継いでもらいたい、こういう趣旨で申し入れがなされたのでございます。国鉄の事情が許しますならば、従業員を全面的に引き継ぐということは、われわれといたしましてまことに望ましいことだと考えておるのでございますが、現在におきます国鉄の財政事情とか要員の事情からしまして、なかなかその点国鉄自体としては容易でないという模様でございます。しかしながら、実際に具体的な人員の問題になりました際に、国鉄としても年々自然退職というものがございまして、それの要員補充という機会がございますので、そういう機会に、江若からの転職希望者に対しまして、要すれば好意的に考えてもらいたい、こういうふうにわれわれは考えておるのでございます。その点につきまして今後は具体的に問題を取り上げていきたいというふうに感じておる次第でございます。  なお、運輸省といたしましては、事態を円満に解決するために、これらの従業員の再就職につきましては、関係方面に広くあっせん依頼をしておるのでございまして、目下鉄道建設公団におきましては、できるだけの範囲で採用するということに腹をきめております。また、公団自体じゃなしに、公団の関係いたします事業者等へもあっせんを準備をしている趣でございます。この問題につきましては、今後ともさらに十分な検討を加えまして、最後の買収折衝の完了する前にこの問題も円満に処理をはかっていきたい、こういうふうに考えているものでございます。
  152. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、いま言われました三百五十四名の職員が江若におる、買収した場合にこれらの人を一体どうするか、働いておられる人としてはこれがまず第一番の問題だと思います。いまの説明によりますと、国鉄のほうは今日非常にきびしい情勢である、きびしい情勢であるけれども、毎年毎年自然退職等があるから、それらとにらみ合わせて、江若で働いておられる人を国鉄のほうへもある程度は採用するように考えているのだ、そういうふうに確認をいたしましてよろしゅうございますか。
  153. 増川遼三

    ○増川説明員 国有鉄道自体ではっきりとそういうふうに決意をしているということはまだ聞いておりませんけれども、運輸省といたしましては、そのように指導をいたしたいというふうに考えているものでございます。
  154. 後藤俊男

    ○後藤委員 国鉄自体としていま言われたようなことを考えておるかおらぬかは別問題として、運輸省としては国鉄にも、やはりこの三月には退職の時期であるから、そういう時期を考えて現在江若で働いている人をある程度は採用すべきである、こういうふうな考え方だ、こういうことはよろしいですね。
  155. 増川遼三

    ○増川説明員 江若鉄道の廃止の時期とも関連するものでございますけれども、建設公団といたしましては、この江若線にかかわります部分の着工を四十三年度中というふうにいたしておりますので、その間におきまして話ができますように、われわれといたしましては進めたいと考えております。
  156. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうすると、いまあなたが説明されましたように、昭和四十三年度早々には着工せねば間に合わぬ、こういうことだと思うのです。それまでに具体的な問題を解決しようとするのだ、そればはっきりわかるわけです。しかしながら、先ほどあなたが言われましたように、国鉄のほうも全然採らぬということではなしに、国鉄自体にも毎年退職者があるのだから、その退職者のことも考えて、現在江若で働いていらっしゃる人をある程度は考えるべきである、これは運輸省としてそういう考え方をしている、これはさっきあなたが言われたわけなんです。そうしますと、国鉄側の退職というのは、大体三月三十一日が退職時になろうと思います。そうですね。いまあなたが言われたのは、昭和四十三年早々には何とか着工するのだ、来年三月三十一日一ぱいには、人間の問題もお金の問題も、いま問題になっている点を全部解決をして、少なくとも四月一日には着工できる方向へ進めたいのだ、こういうふうな説明だと私は聞いているわけなんです。そうなりますと、話がちょうど合いまして、国鉄のほうは、大体三月の末には退職するこれらの人の人員は減っていく、その際に江若で働いておられる人を、どれだけの数になるかわからぬけれども考えなければいけないぞということは、運輸省としては今日きちっとした考え方を持っておる、そういうふうに解釈して間違いないと思うわけでございますけれども、もし私が言いましたことに間違いがありましたら、もう一ぺん御回答をいただきたいと思います。そのとおりならそれでけっこうでございます。
  157. 増川遼三

    ○増川説明員 公団が江若の部分に関しまして工事に着工いたしますのは四十三年度中ということで、西十三年度末ぐらいになるのではないかと考えておりますので、したがいまして、人員の点につきましても、当該江若緑がそれまでは存続するわけでございますので、四十三年度末というめどでその点も考えておきたい、そういうふうに考えております。
  158. 後藤俊男

    ○後藤委員 わかりました。  いま運輸省の責任のある人が言われましたように、鉄道のほうとしても、いま言ったような方向でひとつ人間の問題については努力をするんだ。これは今後国鉄との折衝の関係もあろうと思いますけれども、それはいいと思いますが、そこで、とにかくこれは滋賀県における琵琶湖の西にあります湖西線でございますので、いわば湖西における働く職場の唯一なる江若鉄道でいままであったわけでございます。あの方面における人はたいして会社もなし、三百五十数名というのは、その付近のじげの人が非常に職員としては多かった。それが今回国鉄の買収によりましてすっかり門戸を閉ざされてしまう、こういうふうなかっこうになってはたいへんだ、いままで働いておられる人を、大阪とか名古屋とか、そういう遠い方面に持っていくというのではなしに、いままでの職場職場として確保できる方向へとにかく頼む、こういうふうな強い気持ちが今日あるわけでございます。  さらに、あの沿線の市町村ではほとんどの人が、あなた方今度国鉄へ買収になるそうだ、に買収になる以上は、そこで働いておった職員の人も全部一緒に行くのでしょう、今度は国鉄へ行くのだから非常によろしいですね、こういうふうな見方をしておる。沿線の責任者、市町村長あたりも、ほとんどそういう考え方に今日立っておるようなわけでございますので、ぜひひとつ、いま運輸省のあなたが言われましたように、鉄道へまず第一番に移籍をしていただく、これが三百五十四名の強い要望でございます。全部になるかどうかということは、具体的な問題のときに話が進んでいくだろうと思いますけれども、現在いろいろ話を聞きますと、国鉄関係におきましても、私のところは五万人の合理化でもう一ばいだ、よその人を一名も採るわけにもまいらぬのだ、こういうふうな原則的なものの言い方しかされておらないわけでございますけれども、幸いいま、われわれ地元のほうから考え、江若で働いておられる人の立場から考えますと、運輸省としては、当然国鉄としても考えるべきだ、こういうふうなありがたい方針を出していただきまして、これが実現するかせぬかはこれからの問題でございましょうけれども、強くそのいま言われたことを推進をしていただきたいというふうに考えておる次第でございます。  それから、工事認可等の問題でございますけれども、いま御説明がありましたように、いろいろと具体的な問題はたくさん出ております。お金の問題についてもまだまだ話ができておらぬ、さらに土地の評価の問題は今日やっておるのだ、さらに人間の問題は一体どうなるのだ、こういうような問題が話がきちっとつかなければ、工事認可等は運輸省としては認めないのか、認めるのか、お金の話だけついてしまったら、もうそれでよろしいからやりなさい、こういうふうなことになるのか、あるいはいま申し上げましたように、人間の面その他具体的な問題がきちっと話がついたときに、いま申した認可を運輸省として認められるのかどうか、その点をひとつ明確にお答えをいただきたいと思います。
  159. 増川遼三

    ○増川説明員 買収の交渉が成立しませんければ、現実に公団といたしましては、買収の上でその間の建設をやろうということでございますから、したがいまして、条件が整わない限り、われわれのほうといたしましては着工の認可はできないものと考えております。したがいまして、着工認可の申請が出ます前に、公団及び江若鉄道といたしまして、所要の措置が全部円満に解決されておるものというふうにわれわれは考えております。  なお、江若といたしましては、会社自体で、社内の配置転換あるいは自然退職等につきまして、ある程度のめどがややついておるようでございます。また、この鉄道を廃止したあと、当該会社が従来鉄道でまかなっておりました輸送需要をバスで代行輸送しよう、こういう考えを持っております。このほうにも従来以上のバス輸送力を投入する必要があるわけでございまして、このほうへも社内で要員を相当配置転換をしなければなるまい、そういうふうに考えております。   〔田中(正)委員長代理退席、委員長着席〕  また、当該会社が非常に資金的にも弱いし、会社の経営の内容もよろしくないということでございまして、その点われわれは心配いたしておりますが、当該会社の親会社あるいは系列会社というものも、民間企業としては、この江若に対して当然相当の配慮をなさるべきものと考えておりまして、親会社である京阪電鉄に対しましてわれわれも強力に指導をしておるわけでございます。  さらに、国鉄と一がいに言いますけれども、実際に国鉄の線路となりまして営業を開始されるのは、四十六年度に完成いたしましてこれを国鉄へ貸与するという際でございますので、それまでは、鉄道建設公団といういわば国鉄の分身でございますこれが買収をし、工事をする、こういう関係に相なっておりますので、国鉄といいましても、鉄道建設公団を含めまして、われわれは人の引き継ぎということも考えるわけでございまして、先ほども申しましたように、公団自体としてもある程度の採用予定を考えておりますし、また、公団の工事をやるに際しましての関係の事業者という方面におきましても要員が必要なわけでございますので、そのほうへの再就職のあっせんということも公団をして努力をさせておるわけでございます。そういう場合におきまして、工事が完了いたしまして国鉄へいよいよ引き継ぐという際におきましては、その鉄道自体にくっついていけるということは当然予想されるのでございまして、その点が、どのくらいの人数になるかということは、これから具体的に進めていかなければならぬと考えております。  そのほかに、それをもちましてもなお相当数の人員というものの再就職の問題が残るかと思います。これらにつきましては、国鉄自体の再考慮も払ってもらうようにということで、われわれとしましては指導いたしたいと考えておるわけでございます。
  160. 後藤俊男

    ○後藤委員 大体いま言われましたような方向で、方向だけはわかるわけでございますけれども、いまの説明の中にも少し心配な点があるような気がしますから、重ね重ね同じようなことを言ってまことに失礼でございますけれども、ひとつお願いしたいと思うのですが、昭和四十六年にこの鉄道が完成をする。その間にも職員の再就職あっせん等については心配をしていかなければいけないだろう、こういうようなことばがあったと思います。先ほどあなたが回答されましたが、しかも私たちが非常に心配をいたしておりますのは、公団がこの江若鉄道を買収する。しかしながら、法律的に言うと、そこで働いておる職員というのは何ら責任を持つ必要がないんだ、これは職業安定所かそういうところを通じて再就職の心配をすればいいんだ、こういうふうな考え方もないことはないと思うわけなんです。そこで、いままさに買収が決定しようとする、最終的に金額が妥結をした、いよいよ着工だ、ところが人間の面だけはちょっとも解決をしておらぬ、あるいは半分くらいしか解決しておらぬ、けれども金額のほうはきちっと妥結をしてしまって話はついた、そうなった場合にも運輸省としては、そこで働いておる三百五十四名の者に対して、再就職なり国鉄への移管なりその他の話がきちっとつかない以上は工事認可をおろさない、そういうことなのですかということをさっき御質問申し上げたのです。そうしましたらあなたは、もちろんそのとおりでございます。そういう御回答だったと私お聞きしたように思うのでございますが、その点いかがでございましょうか。えらく何回も同じようなことを言って申しわけないと思うけれども、この辺に一つ重大なめどがあるように思いますので、お尋ねをするわけでございます。
  161. 増川遼三

    ○増川説明員 ただいまの点につきましては会社の態度一つだと思います。会長自体が、人員の問題を解決しないでもともかく買収交渉に応じて、自分の会社はバスだけにしてしまうのだ、こういうことであるならば、これは交渉対象であります公団としては、買収を完了させていよいよ着工の準備ということに踏み切るかと存じますが、その点につきまして江若としては、やはりそのようなことで会社自体としてはおそらく解決になるまい。交渉の妥結までには、従来から交渉してまいりましたその買収の金額という問題と人員の問題とこの二点でござますから、この二点が解決をしなければ交渉の妥結というところまではおそらくいくまいというふうに考えております。会社自体がなかなか困難であるならば、この交渉の妥結もあるいは長引くのじゃないかというふうに考えております。したがって、われわれといたしましては、四十三年度末をめどに着工という段取りにしませんければ、国鉄の線のスケジュールが狂いますので、できるだけそれまでの間に今後交渉を重ねまして、円満に妥結できるように、われわれとしましても希望し、かつそれに沿った指導の措置をとってまいる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  162. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、いま言われましたように、運輸省のほうとしては、そういうお金の問題やら人間の問題、すべてをきちっと円満に解決したところで着工の認可ですか、これをおろす、そういうふうな考え方でおるけれども会社のほうが人間のことはよろしいというようなことで出てきた場合には、そういう問題はあとに残して認可をする場合もあり得る、だから会社の出方一つでございますと言われたのがいまのあなたの御回答でございますか。そういうことでよろしゅうございますね。
  163. 増川遼三

    ○増川説明員 いまのようなこともあろうかと存じますけれども会社としてはおそらくそういうことで解決ということには相なるまい、したがって金の問題と人の問題と合わせて解決した暁に公団と江若との交渉が妥結するであろう、その上でわれわれのほうとしては申請の受付をすることになろう、こういう趣旨でございます。
  164. 後藤俊男

    ○後藤委員 それからその次は、先ほどあなたちょっと漏らされましたが、工事が大体四カ年ぐらいかかると思うわけなのですが、その間における代行輸送の問題でございます。この代行輸送につきましては、二、三のバス会社から、やらしてもらえるんだろうか、こういう申請が出ておるやに私聞いておるわけなのです。これはわかりませんけれども。いつの運輸委員会でございましたか、この江若鉄道が問題になりましたときには、これは江若鉄道の路線を買収するんだから、代行輸送につきましては、江若は能力がある限りにおいては当然江若でやってもらう、これがごく常識的なことだ、こういうふうな説明を運輸委員会かどこかの議事録で私読んだことがあるわけなのであります。そのことについては、今日でも運輸省として考え方は全然変わっておらずに、先ほどちょっと言われましたように、江若としては、四十何台のバスをつくって代行輸送に万全を期そう、そういうことをやっておるんだから、もちろん江若に代行輸送は全部やってもらうんだ、こういうふうに思っておりまして間違いがないかどうか、その点もひとつ御回答いただきたいと思うのです。
  165. 増川遼三

    ○増川説明員 御趣旨のとおり、現在もわれわれはさように考えております。
  166. 後藤俊男

    ○後藤委員 それでは、大体大筋だけは聞かせていただいたわけでございますが、先ほど説明されましたように、公団の関係、国鉄の関係、いろいろな関係がございますので、人間の問題もかかえてなかなかむずかしい問題でございますが、三百五十四名の人が国鉄へ買収されると同時に失業してしまう、こういうことになりましてはたいへんだと思いますし、労働省としても、そういうふうなかっこうでこの問題が処理されるといたしますと黙っておれないようなことになろうと思います。先ほどから会社における配置転換の問題もあるんだと言われました。あるいはその他いろいろな考え方もあるだろうと言われましたが、特にあなたが言われましたように、三百五十四名の中には国鉄への移籍というのを職員の人たちは強く考えておられるわけなんです。ところが、国鉄のほうは非常に今日財政的にも合理化にもきびしい情勢である。それは原則的には採らないんだ、こういうふうな態度をとっておられるのが今日の国鉄当局の態度だと思いますが、先ほど申し上げましたように、滋賀県の琵琶湖の西のほうでございまして、唯一の職場がとられてしまう、こういう形になりますと生活権にも及ぼす影響がございますから、先ほどあなたが言われましたように、鉄道もきびしい情勢にはあろうけれども、退職その他いろいろな点を考えまして、できるだけ国鉄のほうへも移籍できるような方向へ、運輸省としてもひとつそういう方針で進めていただきますように特にお願いをいたしたいと思う次第でございます。  現在、先ほども申し上げましたが、滋賀県で江若問題が三日にあげず新聞記事に今日出ておるような情勢でございます。公団の大阪支社におきましても、とにかく一生懸命になってやっておられる姿に対しましては、私たち感謝いたしておるような次第ですけれども先ほど申しました国鉄へ移籍の問題がどうしても明確にならない。その点が一番ガンになっておるようなわけでございますから、ぜひひとつこの点につきましても、今後とも強く先ほど申し上げました方向へ進めていただきますようにお願いをいたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  167. 川野芳滿

    川野委員長 河野正君。
  168. 河野正

    ○河野(正)委員 数件にわたってきょう提議をする予定でございますが、それぞれ政府当局の御都合等もございますので、それらの事情等も勘案しまして、逐次ひとつ質問を展開してまいりたい、かように考えるのでございます。  そこで、まず第一番目には基地関係労働者の退職金増額問題についての問題点を御指摘申し上げたい、こういうふうに考えておるのでございます。  御承知のように、基地労働者は、政府が雇用いたしまして、そしてその労務を未草に提供しているわけでございますから、そういう意味では、国の要請に基づく雇用労働者であり、公務員的な性格を持っておりますことは、今日までしばしば論議されたところでございます。ところが、そういうような公務員的性格を持っておりますけれども、米軍のドル防衛政策あるいは部隊の移動、基地の閉鎖、そういったいろいろな一方的な理由によりまして、今日まで多くの首切りと申しますか、整理者を出してまいりましたことは御承知のとおりでございます。昭和二十五年、朝鮮戦争当時は二十九万といわれ、昭和二十七年、講和条約の発効当時は二十万といわれてまいったのでございますけれども、現在は大体五万前後というふうに、非常に多くの整理者と申しますか、犠牲者を出してまいりましたことも御承知のとおりでございます。そういう長い間の経過から、今日基地に働きます労働者というものが、その雇用に対して、またその前途に対して非常に大きな不安を持っておりますことは、御案内のとおりでございます。しかも、毎年、整理はしないと言われながら、実際には二千人から三千人の首切りが行なわれておる。あるいは雇用が非常に不安定でございますから、そこで見切りをつけて自己退職するという労働者も非常に多い。したがって、年々歳々整理はないと言われながらも、実際には大体五千人から六千人の整理を見ておりますことは、これまた御承知のとおりでございます。したがって、今日アメリカの基地に働いております労働者というものは、その雇用に対して非常に大きな不安を持っておりますことは、これはもう非常に深刻なものがあるわけでございます。  そこで退職金増額問題に話を展開するわけでございますけれども、まずここでひとつ施設庁の長官にお尋ねをしておきたいと思います点は、こういう米軍基地におきまする雇用情勢というものに対しまする展望と申しますか、これはやはり今日基地で働いております労働者が非常に大きな深刻な関心を持っておるわけでございますので、そういう意味での展望をひとつ明らかにしていただきたい、かように考えます。
  169. 小幡久男

    ○小幡説明員 お答え申し上げます。基地の労務者の将来の展望というふうな御質問でございましたが、ここ数年来の状況を見ておりますと、先ほど河野先生からも御指摘がありましたように、年年五、六千名の者があるいは整理あるいは自己退職で入れかわっておりまして、大体当座におきましては五万程度を維持して今日に及んでおるわけでございますが、ここ数年の展望と申しますと、われわれが接触しております範囲におきましては、ここ二、三年のような姿が続くのではないかという見通しですが、それ以外に特にここで申し上げるような著しい変化がある点が現在ございませんので、ここ二、三年の実績からそのような推定を現段階ではしておる次第でございます。
  170. 河野正

    ○河野(正)委員 いま施設庁長官からもお答えいただきましたように、自己退職者を含んで五、六千という数字は、実は基地労働者の一〇%に相当する非常に高い数字でございます。しかも、今後どうなるかわかりませんけれども、空軍におきましては定員オーバーという議論もございます。そういうことで、絶えず米軍基地に働いております労働者というものが不安定な状況に置かれておるわけでございまして、そういう意味で私どもは、いま長官からお答えになったように、大きな変動はなさそうだと言っても、これはもちろん雇用が不安定だという理由で自己退職者を含んでの五、六千でございます。これは数字的には一〇%ということでございますから、かなり深刻な情勢にあるわけでございます。そこで、一体そういうきびしい情勢に対処する政府の姿勢というものがどんなものであろうか、どういう姿勢で対処願うのか、この辺は基地労働当事者にとっては非常に重大な点でございますから、ひとつそういうきびしい情勢に対処する政府の姿勢というものについても一言明らかにしていただきたい。
  171. 小幡久男

    ○小幡説明員 先ほどお話もございましたとおり、たとえ五、六千でありましても、五かというものにとりましてその比重は相当大きいことは事実でございます。それから何にも増して基地の労務者が一番不安を抱いておりますのは、整理というのが経済界の好不況に関係なく存在するということで、これは間違いないところでございます。したがいまして、われわれとしましても、そこの一般の民間企業と非常に違う職種の不安ということにつきまして、何らかひとつの不安をやわらげる施策はないかといろいろ検討しております。  これは先生も御指摘のように、あるいは臨時措置法等の改正によって離退職に対してある種の改善が行なわれております。また退職金につきましても、これは従来ある程度の退職金改定問題を提案いたしましたが、いずれもこれは米本国の管掌事項でもございます。また、例年のベースアップと違いまして、次元の異なる基本的な問題でございますので、なかなか折衝がはかばかしくいっておらない経過がございます。しかしながら、先ほど来申しておりますように、何といっても整理が労務者の最大の関心事であり、不安でもあるという一点は間違いないところでございますので、われわれとしましても、何とかその整理退職に対しましての退職金における改定の方法はないものかというところを現在検討し、折衝をしておる最中でございます。
  172. 河野正

    ○河野(正)委員 いまの答弁では私まことに残念に思うわけですが、この退職手当増額要求、このために十月六日には第一波の実力行使が行なわれたことは御承知のとおりであります。これも基地労働者の退職手当増額要求に対する一つの決意のあらわれだと思うわけでございますが、この基地労働者の歴史というものは、戦後のことでございますけれども、約二十年間にわたりまする経過というものがあるわけでございます。そのために、この基地労働者の平均年齢というものが現在四十四歳ということでございますが、非常に高年齢層にわたっておるということ。基地の雇用というものが非常に不安定である。それから、もし整理されたならば、いま申し上げますように、平均年齢が四十四歳というふうに非常に高年齢層であるという悪条件をかかえておる。したがって画就職の機会というものが非常に狭められておる。そういう不安が二重に重なっておるというところに非常に大きな深刻さがあると私は思うのであります。しかも、一九七〇年におきましては、安保の再検討が行なわれるという情勢もございます。それからまた、ベトナムの情勢というものがどうなるかというふうな新しい情勢もございます。そういうことで、主体的にも客観的にも、基地労働者にとっては非常に深刻な条件というものが重なっておるわけですね。そういう意味で基地労働者というものが、私は好ましいこととは思わぬけれども、やはり実力行使を実施しなければならぬということに追い込まれておると思うのです。そこで、そういう不安を解決するためにも、現在対軍交渉というものが一体どういう状態に瞳かれておるのかという点について、ひとつ御報告を願いたいと思います。
  173. 小幡久男

    ○小幡説明員 お答え申します。本年の六月に、私が駐留軍労働組合要求書をそのまま携えまして、向こうの参謀長に会いまして、まず最初に、これがほんとうの現在の労組のなまのままの要求である、こういう問題が日米両国政府の間にいま提案されておる、これにつきましては相当大きな問題で、組合もじっくりかまえて闘争をするということを聞いておる、したがって私のほうもこれを慎重に検討するから、米側においても慎重に検討してくれという旨の会談を六月に行ないました。その後七月に入りまして、この組合要求の中に、たとえば韓国の退職手当の問題等が引用されておりましたので、われわれも責任上、この韓国の実態を調べたいというふうに考えまして、私の庁の労務部長をソウルに派遣しまして、韓国の手当制度も一応検討して調査してまいりまして、そういった内外の資料を基礎にいたしまして、先月の二十八日に私再び参謀長と会いまして、近く政府側の意見を提案する、そういう前提のもとに、その提案の基礎となるような事項について参謀長と話し合いまして、その席で政府側の提案が具体的になされた場合には、ひとつ真剣にこの前の約束に従って検討してほしいという旨を申し入れましたが、向こうもその点は了といたしまして、日本政府の提案が出れば検討は真剣に行なうということを言ってくれておる、こういう段階でございます。
  174. 河野正

    ○河野(正)委員 いま長官のお答えを承りますと、全く不見識きわまりないと思うのです。と申し上げますのは、この六月、組合要求するところを掲げて参謀長にいろいろ折衝されたことはけっこうですけれども、退職金の増額要求というものは、きのうきょう始まった問題ではないわけですね。長い十年来の懸案の問題なんです。それにもかかわらず、政府としての具体案というものが示されずに、単に組合がこういう要求をしておるのだ、これはなまの要求でございますというようなことは、それは組合要求をそのまま政府が確認願って、それを政府のものとして参謀長に提案されるのはけっこうでございますけれども、これは組合のなまの要求でございます。政府の具体案は十月にとにかくつくって出すんでございます。これは全く政府として不見識もはなはだしいと私は思うのですよ。だから、組合要求をそのままなまの要求だといってお出しになるなら、そのことを完全に認めて、即政府の要求だということでお出しになるならいいけれども、政府の具体案というものは十月につくって出します。そのときはよろしく、これでは全く政府として権威のない交渉であり、全く不見識な態度だというふうに指摘せざるを得ぬと思うのです。むしろこの退職金の増額要求というものは十年来の懸案の案件ですから、きのうきょう始まった問題でないのですから、なぜ十月でなければできぬのか、私どもは非常に残念に思うのです。この点はいかがですか。
  175. 小幡久男

    ○小幡説明員 先ほどの、まず最初組合の案を紹介して、後ほど政府の案をつくってどうこうという点について御指摘がございましたが、私の考えでは、やはり組合のなまのままの案をまず両方が知る、その上で検討して持ち寄るということのほうが、最初から組合の案を政府が考えて持っていくよりは段階としていいのではないかという判断をしたわけでございまして、この点若干河野先生と見解は違いますけれども、私はそういう意味で出したわけでございます。  それから、十年来あるいは数年来退職金の問題は出ておりますけれども、たとえば三十八年度の要求と今度の要求とは、内容は全然違っております。したがいまして、米軍としても、数年前の要求とは全然違った要求なものでありますから、やはりこれは相当な検討をし合って、納得ずくで持っていかぬと、これは相当幅も広く、次元も高い問題でございますから、そういうスケールの問題はそれだけの時間をかけて、迫力を持って交渉したいというふうに考えております。現在は、先ほど申しましたとおり、大体政府の方針も煮詰まってまいりましたので、近く労務部長が具体案をさげて正式に提案をしたいというふうに考えております。
  176. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで私は、不見識だという私の気持ちは変わりません。当然、政府が対外的な交渉をする場で政府の具体案を出さぬで、組合だけの要求を出すということは、政府のやるべき態度じゃない。組合要求というものが正しければ、それは即政府の態度として明らかにすべきであって、これは組合要求です。政府の考え方は後ほど出します。こんな責任回避もはなはだしいような態度というものは、許さるべきではないと私は思っておる。  そこで私は、せっかく労働大臣も御出席でございますので、ひとつ労働大臣のほうにお尋ねを申し上げたいと思うわけでございます。  と申しますのは、この退職手当増額問題というものは、すでに過去において国防省の決定として在日米軍が拒否してきたという経緯があるわけですね。国防省のほうがどうにもなりませんということで、在日米軍のほうがこの問題を拒否してきたという経緯があるわけです。今度労働大臣が日米貿易経済会議で訪米をされた。そこで私のほうからも、政府委員室を通じて、ぜひひとつこの日米貿易経済会議の席上において労働大臣からもこの問題を提起していただきたいという要望を行なってまいったところでございます。これらについて、労働大臣のほうからも提議をされたというふうに私ども仄聞をいたしておるわけでございますが、その間の事情をひとつ労働大臣から御報告をいただきたい、かように思います。
  177. 早川崇

    ○早川国務大臣 駐留軍の労働者は特殊な地位に置かれておりまして、たいへんお気の毒な立場におられますので、さきに離職者の臨時措置法の改正をいたしましたと同時に、河野先生を通じ、また駐留軍の労働組合を通じ、さらに防衛庁が主管でございますので、施設庁の長官の意見も聞きまして、日米合同会議に際しまして御意思を体したのでございますが、その経過を率直に申しますと——国防長官はメンバーでございません。そこで日米合同会議の個別会談におきまして、向こうの労働長官のワーツ長官との会談にあたりまして、この駐留軍の退職金のかさ上げにつきまして率直に要請をいたしました。その結果、労働長官の命令によりまして、労働次官補のウィーバーという人が担当になりまして、本国政府から向こうの国防省に要請があった節は、向こうの労働省としても、このいわゆる退職金値上げにつきまして御趣旨をお伝えして協力しよう、こういうことになったわけであります。そこで私は、会談が終わりまして離米するにあたりまして、日本の大使館のほうは、その会談に沢木公使が立ち会っておりましたので、沢木公使と防衛庁のアタッシェの清水君という人がおりまして、ひとつこの問題の処理に尽力するように申しておいた次第でございます。帰りまして防衛庁長官並びに施設本部長にお伝えをいたしました。その結果、現在在日米軍と防衛庁とがこの退職金値上げにつきまして折衝しておる、こういう段階になっておることを御報告申し上げます。
  178. 河野正

    ○河野(正)委員 労働大臣の訪米の目的は違いますから、私はそれ以上いろいろ申し上げようと思いませんけれども、ただ、ここで特に指摘をしておきたいと思いまする点は、せっかく労働大臣がこの問題を、間接的といいながら提議をするにもかかわらず、日本側の具体的な案がないということは、やはりこの問題の前進に私はかなりマイナスになっていると思うのです。  というのは、率直に申し上げて、私もワシントンでこの基地労働者の退職金問題について交渉をした経緯があるわけです。私自身が実はワシントンで、国防省でやってきたんです。ところがアメリカ側の退職金に対する認識と私どもの退職金に対します認識というものが非常に隔たっておるわけですよ。ですから、それは日本で、私どもの環境で退職金の増額をしてほしいという感覚で言っても、アメリカには通じないのですね。というのは、退職金に対する認識が根本的に違うのですから。それはいろいろ考え方の相違ですからやむを得ぬとしても。そういうことですから、単にアメリカ側に対して、ひとつ増額をしてほしいという要求をして解決するようななまやさしい事情にないということですね。これは実は、ワシントンの国防省に行きまして次官補に会って——マクナマラ長官に会いたいと言いましたけれども、たまたまベトナムに行っているというので会えませんでしたけれども、ワシントンに行って会いまして、退職金に対する認識のしかたに根本的な相違があることを発見して帰ってきたわけです。ですから、こういうようなせっかくの労働大臣が訪米をして提議をするという機会に恵まれても、日本側の具体案がないような状態では、私は多くの期待を寄せることはできなかったと思うのです。その点、非常に残念に思います。そういうことで、この退職金の増額問題というものがなかなかきびしい情勢にある。これは政府と在日米軍との間できめられる問題ではないわけですね。これはアメリカ本国の国防省の意思を無視してきめるわけにはまいらぬような事情にあるわけですから、そういう意味で私はやはり政府がすみやかに具体案を示してほしかったと思うのです。これはもう過ぎ去ったことですから、いまさらここでとやかく申し上げても、もうどうにもならないことでございますけれども、そういう意味で、さっき長官がお答えになった、具体案は十月だという意見、その間においては労働組合のなまの声だということを提案なさった点が非常に不見識だ。ことばは長くなりましたけれども、そういう観点から私が取り上げたということを十分理解を願わなければならぬと思うのです。そういう意味で私は特にここで指摘しておきたいと思います点は、いま申し上げるように、退職金に対する考え方というものが根本的に違うわけですから、これは尋常一様の事務折衝等で解決するというようななまやさしいことではなかろうと思うのです。しかし一方、基地労働者のほうは雇用が非常に不安定ですから、それはもちちん労働大臣のほうの所管でございますけれども、臨時措置法等で離職対策を強力に推進することもけっこうですけれども、それでも十分でない。やはり何といっても、日本人の長い国民性というか、から言いますと、老後の保障というものが退職金によって充当されておるケースが非常に多いことは御案内のとおりです。そういう意味で非常にむずかしい問題であるけれども、基地労働者にとっては非常に重大な関心のある問題であると思うのです。こういう問題は、単に事務折衝で解決するような問題じゃないわけですから、やはり高い次元での政治折衝というものが私は当然必要だろうと思うのです。そういう意味で、きょうは防衛庁長官の出席を要求しており、二時に入るということでございますけれども、二時までにお入りにならない。それは防衛庁長官にもいろいろ御事情はあろうと思うけれども、やはり五万の基地労働者が将来の生活設計の上において非常に不安を感じておるという深刻な問題でございますから、事務折衝ではなかなか解決するようななまやさしい問題ではない。高い次元での政治折衝というものが必要だという問題であればあるだけ、これはもちろん施設庁長官が非常に御努力を願っておる点については非常に私ども敬意を表します。感謝もいたします。ですけれども、やはり防衛庁長官もこの問題については強い関心というものを持っていただかなければならぬと思うのです。そういう意味で防衛庁長官が依然として御出席願わぬことを非常に残念に思います。ひとつこの点、どういう御事情で二時に至るも御出席にならぬのか、委員長のほうから明らかにしていただきたいと思うのです。
  179. 川野芳滿

    川野委員長 防衛庁長官は二時半に見える予定です。
  180. 河野正

    ○河野(正)委員 私のほうには二時に入れますという申し入れがあっておるわけです。ですから私ども二時をねらってこの点をしぼって質問を申し上げておるわけですね。政府委員室のほうからの申し入れに基づいて、私は冒頭で断わっておるように質問をいたしておるわけです。ところが、かってに自分の都合で、そうして二時が二時半だというようなことでは、これは委員会の運営にも非常に支障を来たすと思うのです。そういうことでは納得できません。
  181. 川野芳滿

    川野委員長 たいへんすみませんが、二時の出席を強く要望したのですが、何か通産省との問題がございまして、二時半にしてもらいたい、こういう申し入れだそうでございます。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  182. 川野芳滿

    川野委員長 速記を始めて。
  183. 河野正

    ○河野(正)委員 長官、いま御出席でございますから、若干経過について御説明申し上げて、の御見解を承りたい、こういうように思います。  長官御承知のように、アメリカの基地で働く労働者の退職金を増額してほしいという要求、この問題はなかなか解決の困難な事情の問題でございます。というのは、政府と在日米軍と直接交渉をして解決するという問題でないことは、過去においてアメリカの国防省がこの退職金増額について拒否の回答をしてきたという経緯等もあって、事務折衝というようななまじっかの交渉で解決するような問題でないことは、私どもは、十二分に承知をしておるわけです。そこで、この問題を解決するためには、どうしても高い次元での政治折衝というものが必要であろう。今度労働大臣が訪米されて、日米貿易経済会議でも提案をされたわけですけれども、やはり高い次元での政治折衝というものが必要であろう。そういう意味では、施設庁長官もいろいろ努力されようけれども、最高責任者である防衛庁長官の格段の努力というものが必要ではなかろうか。そういう意味で、私は長官に多くをお尋ねしようとは思いません、非常にお疲れだというお話ですから。ですから、そういうむずかしい問題に対するためには、長官の重大な決意というものが必要ではなかろうか。そういう意味での長官の決意のほどをひとつお伺いしたい、これが長官にお尋ねをしたい私の質問点でございます。
  184. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 お答え申し上げます。この問題は河野さんのおっしゃるとおり重要問題でございます。そこで、最終の決意といたしましては、私自身が駐日米軍司令官と交渉いたす決意と覚悟を持っておるということを申し上げます。これは結論でございますが、その前提として、あるいは労働大臣あるいは施設庁長官からお答えしたと思いまするが、労働大臣が先般の日米経済閣僚会議に臨むにあたりまして、防衛庁長官といたしましては、ぜひともワーツ労働長官にこのことを話していただきまして、そして早川さんから御了解を得るように御尽力を願いたい、こういうお願いを委託したわけでございます。早川労働大臣におかれましても、もとより労務条件の維持改善ないし退職手当の増額等につきましては全く同感であるということで、ワーツ労働長官にさしで会っていただきまして、そして交渉していただいたということでございます。その結論は、しかるべき筋から申し出があった場合におきましては、自分は労働長官として国助長官に対して一本側の立場に立って応援をするつもりであるということでございます。これは早川労働大臣から私がはっきり聞いた内容でございまして、早川労働大臣の御努力に対しても感謝をいたしております。  そこで、早川労働大臣の御報告を受けまして、直ちに小幡施設庁長官に命令をいたしまして、それぞれ折衝を開始せよ、そしてその折衝のある段階において私は駐日軍総司令官マッキー中将とは会見をいたしまして、朝鮮並みの退職手当をぜひ出すように配慮せられたいということを強硬に望む決意でございます。最初申し上げた結論に、ちょうどいま中間報告を申し上げたその結びが合うわけでございまして、私はそういう決意を持っていることを河野さんにお答えをいたしておきます。
  185. 河野正

    ○河野(正)委員 長官、ぜひひとつ御理解をいただきたいと思う点は、これは長官御出席の前まで、いろいろここで私からも指摘をしたわけですけれども、この退職金に対する私ども日本人としての理解のしかたと、アメリカ側としての退職金に対する理解のしかたというものが、根本的に違うわけですね。これは、実は私も三年前にアメリカに行って、ワシントンでマクナマラに会いたいと言ったけれども、ちょうどベトナムへ行っておりまして、その次官補に会ってこの退職金増額の交渉をした経験があるわけです。その際明らかになったわけですけれども、私どもの退職金に対する考え方と、アメリカ側の退職金に対する考え方というものが、根本的に違っておることを、実は発見をしたわけです。そこで、単に日本流の概念で退職金をふやしてくださいよと言ったって、なかなかふえるような情勢にないということですね。この点はぜひひとつ長官も御理解願っておかぬと、日本人的な退職金のような理解で話されても、なかなかアメリカ側と歯車がかまないということなんです。  そこで私は、できれば早川労働大臣が訪米されるまでに日本側の具体案というものが示されておれば非常によかったと思うけれども、その点は今日もう過ぎ去ったことですからいたし方ございません。ですが、ぜひひとつ長官にお願いしたいまは、この退職金問題に対する理解のしかたですね。というのは、退職金に対する理解のしかたというものは、アメリカ側と日本側では根本的に違うのですよ。もう少しわかりやすく言いますと、結局アメリカ側に言わせると、現在払っている賃金の中に退職金に見合うものが入っているというのです。だから、極端に言いますと、退職金をふやしてもらいたいなら、現在の賃金が減ってもよろしいかという、こういう極論が出てくるわけです。交渉の過程の中で。私どもは、退職金というものは一つの離職、退職後の保障という概念に立っているわけですね。ですから、どこまでも退職金というものは退職後の保障というたてまえに立っておるわけですけれども、アメリカ側は必ずしもそういうたてまえに立っていないわけです。そこで、そういう根本的な考え方の相違があるということを頭に入れて交渉していただかないと、私はなかなか話が思うようにいかないと思うのです。それが一つ。  それからもう一つは、いまたまたま長官からも、韓国の基地労働者の退職金よりも日本のほうが低いという事例が今度はっきりしたわけですね。ですから、そういう点についてはいま長官からも触れられたわけですけれども、すみやかに日本側の具体案というものをおつくりになって、いま十月という話ですけれども、これはもう中身の問題は別としても、退職金をふやしてもらいたいという要求は十神来の懸案ですから、中身の具体的問題については、長官がおっしゃったようにいろいろあるとしても、改善をしてもらいたいという要求は十年来の懸案ですから、したがって、きょうあすに始まった問題でないわけですから、やはりすみやかにこの具体案というものを提示を願いたいというふうに思います。この点についてひとつ長官の決意を承っておきたいと思います。
  186. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 河野さんがせっかく御努力くださいまして向こうへ当たられまして所懐を披瀝されましたが、非常に有益に拝聴いたしました。向こうとこちらとが考え方が根本的に違うということも、御指摘のとおり、用心して、心を配って交渉いたす所存でございます。これが第一の、しっかり注意して交渉せよという御訓示的の御質問に対するお答えでございます。  それから第二は、十年来の懸案であるからこれをすみやかに処理しなくてはいけない、このことも承りました。実は九月二十八日に労働大臣が御帰朝になった後に、直ちに具体案は向こうに示しております。こちらの交渉原案は。いま開陳申し上げる段階になっておりませんけれども。その線でまいりますと、用心しろというおことばはよく服用して対処いたしますが、韓国においてすでにわが国の駐留軍労務者の労働組合の諸君の期待する線が出ておるわけですから、その線までは出してほしいということを強硬に主張いたす所存でございます。
  187. 河野正

    ○河野(正)委員 内閣委員会では、九月二十八日は参謀長と交渉されたわけでしょうけれども、具体案は十月中に取りまとめて提案したいというお答えがあっておるので、いまお答えが多少食い違いがあるようですね。何か九月二十八日に具体案を提案したというお話ですけれども、その点は内閣委員会と多少食い違うと思うのですよ。ひとつそれは訂正してもらわないと、内閣委員会での発言と若干違いますから。
  188. 小幡久男

    ○小幡説明員 私からお答えします。ただいま大臣が具体案とおっしゃいましたのは、きちんとした正式の具体案は後日出ますが、その具体案はこういうことになるであろうという意味の形を向こうに想起させるために、十分な具体的な事実は向こうにすでに話しております。そういうのを大臣はただいま具体的なことを話してある、こうおっしゃったというふうに了解しております。
  189. 河野正

    ○河野(正)委員 そうすると、正式の具体案というものは、十月中に提案なさる御決意でございますね。
  190. 小幡久男

    ○小幡説明員 つまり、何を何%というふうにきわめて明確な案は、十月中に出したいと思います。
  191. 河野正

    ○河野(正)委員 そこでお尋ねをしたいと思います点は、基地労働者の特殊な事情からいろいろな問題点があると思うのです。それは臨時措置法の問題その他あります。ありますが、やはりこの十年来の懸案でございますから、この際ひとつ退職金増額の要求については重点的に取り組んでいただきたいという気持ちがするのです。この点についてひとつ防衛庁長官から決意のほどを伺っておきたいと思います。
  192. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 河野さんの御指摘の線は、この問題は防衛庁として重点的に扱えという御質疑のようでございます。私どもは最重要事項と心得えて対処いたします。
  193. 河野正

    ○河野(正)委員 防衛庁長官もいろいろ所用があるそうですから、あと一点だけ御決意のほどを伺ってひとつ退席を願いたいと思います。  それは、基地労働者の置かれておりまする立場というものが、非常に不安定な雇用でいつ整理されるかわからぬ。しかも、整理された後の生活保障というもの、特に離職対策等は、平均年齢が四十四歳というようなことで再就職が困難だという問題もあって、この退職金問題というものが非常り重大な関心になっておるわけですから、したがって、今度退職金増額要求のための実力行使ですね、これが、十月六日第一波、また十一月には長期のものが予定されておるわけですが、私どもそういう実力行使が好ましいものと思いません。ですから、できればそういう実力行使というものが回避されることが望ましいわけですから、そういう意味では、いま防衛庁長官からも、この退職金増額問題は重点的に取り上げるという御決意を承りまして、私どもも敬意を表するところでございます。と同時に、ひとつこの解決がそういう長期にわたる実力行使が回避できるような時期に——具体的に申し上げますならば、十一月中には解決できるようにひとつぜひ御努力を願いたい。その点の御決意を承ってこの問題に対する質問を終わりたいと思いますので、ぜひひとつ前向きの御答弁を願いたいと思います。
  194. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 河野さん御指摘のうちで、その実力行使という問題につきましては、駐留軍労務者は非常に健全な労働組合でございまして、従来からもいきなり実力行使に出るということはないわけでございまして、私は駐留軍労務者の委員長その他幹部各位にも強く要望いたしておりまするが、ぜひとも実力行使等には出ないように河野さんからも御指導願いたい。私からも話し合いをいたしたいと思いまするが、これはお願いいたしておきます。それから、十分誠意を持ちまして、なるべく早い時期に解決いたしたい、これが私のお答えでございます。
  195. 河野正

    ○河野(正)委員 最後だったわけですけれども、ちょっとついでにもう一つ決意のほどを伺っておきたいと思うのでございますが、それはもちろん実力行使というものは好ましいわけではないわけですから、私どもはぜひ回避させたいと思っています。そのためには、その以前に解決するような努力というものが行なわれなければ、ただ実力行使だけやめなさいと言ったって無理な話ですから、私が申し上げておるのは、そういうことは好ましいことではないわけですから、その以前に十一月までにはひとつ解決するように御努力願いたい、そして回避したい、こういうことですから、ひとつそういう実力行使が行なわれる前に解決するように最大の努力をしていただきたい、その決意をひとつここで披瀝していただきたい、こういいうことです。
  196. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 十一月を目途といたしまして誠意ある解決をいたしまして、組合の諸君にも納得を願い、そして、実力行使のような遺憾のないことを期したい。私どもの目標は、御指摘のとおり十一月を目標として誠意ある解決をすべく一生懸命努力中でございます。
  197. 河野正

    ○河野(正)委員 けっこうでございます。時間もございませんから 基地労働者の退職金問題については今後の防衛庁の努力をお願いするということにいたしておきたいと思います。  次に取り上げてまいりたいと思います点は、高度成長経済政策、あるいは貿易の自由化、資本の国際化、こういう情勢を背景として企業の合理化というものが強力に推進されていく。そういう際におきまする労使間の紛争というものがやはりいろいろとあらわれてまいっておりますことは、御承知のとおりだと思います。そこで私は、きょうは、そういうふうな企業の合理化を中心として起こってまいりつつある労使間の紛争の点について、一、二お尋ねをいたしたいと思うわけでございますが、まずここで第一にお尋ねをしておきたい点は、いま私が指摘いたしましたような貿易の自由化、あるいは資本の自由化、そういったものを背景として、企業の合理化の中で今日行なわれております労使間の紛争の一つの趨勢と申しますか、傾向と申しますか、そういうものについてひとつ労働省の御見解を承っておきたい、かように思います。
  198. 松永正男

    ○松永説明員 ただいま御指摘になりましたように、特に最近は、資本の自由化というものを控えまして、日本の各企業が、競争力を強化するということから、あるいは合併であるとか、あるいは技術堤携であるとか、あるいは系列化であるとかいうような動きがございますことは、御指摘のとおりでございます。従来、そういう傾向に伴いまして、労使間におきましてもいろいろな問題が生じておるのでございますが、合併等の場合に、労便の間で話し合いが円満にいきまして、そして整然とこれが実行できた例もございますが、特に、たとえば労働団体の上部団体が違ったような場合におきましては、合併等に際してトラブルが起こった例もございます。それからまた、従来同じ系統でありましたけれども組合が分裂をいたしましてその間にトラブルが起こったというような例もございます。やはり一番問題としましては、労働組合の系統が違うというような場合、たとえば日産自動車とプリンス自動車の合併というような際には、問題が深刻化するというような事態が見られております。
  199. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、時間もございませんから、具体的な例についていろいろ御見解を承りたい、こういうように思うわけですが、その例は三菱の三重工が合併いたしましたのは昭和三十九年の六月一日のことであったわけでございます。ところが、いま私は一般的な趨勢についてお尋ねをしたわけですけれども、特に三菱の場合は、いま労政局長から御報告になったような事態というものが非常に露骨になってあらわれてきておる。具体的には長崎、横浜、福岡というような職場であらわれてまいっておるわけですが、私どももこういう企業の合併とか系列化とかいう問題を背景として起こってまいった労使間の紛争というものについて、ある程度経験があるわけですけれども、いろいろ私どもが仄聞するところによりますると、非常に露骨な形になってあらわれてまいっているような感じがいたします。このような三菱三重工を中心としての露骨な会社側の組織介入であるとか、あるいは組織分断であるとか、こういう点について労働省は事情を御承知であるのかどうか、まずその点についてお答えをいただきたい。
  200. 松永正男

    ○松永説明員 ただいま御指摘になりました三菱重工関係につきましては、御指摘のごとく、四十年の末におきまして三菱重工関係の四つの労働組合が連合体を結成するというような動きと関連をいたしまして、造船関係で、従来全造船に加盟をいたしておりました、いま御指摘の横浜、それから下関、福岡、長崎といったようなところで、これとの関連におきまして組合の分裂がありまして、その第一組合、第二組合ができました結果、その間でそれぞれ対立が起こり、そしてまた第二組合の活動に際しまして、会社がこれに援助を与えたというようなことで、第一組合のほうから地労委に不当労働行為事件として提訴をするというような事件が、下関、福岡、長崎等において起こりまして、その提訴されました事件について、あるものについては、労働委員会の審査の結果すでに決定が出され、それに対して会社が地裁に提訴をするというようなものもありますし、それからまた、決定が出されたものについて、それに対しては争わないというようなことになったケースもございます。それからまた地労委で現在審査中という事案もございます。そのような三菱重工労連の結成に伴いましてトラブルが起こっておるということは承知をいたしております。
  201. 河野正

    ○河野(正)委員 いまも若干労政局長お答えをいただいたわけですけれども、この三菱の場合、組合が分裂いたしまして以来、第一組合員なるがゆえに賃金、奨励金あるいはその他の労働条件に不当な差別が行なわれておる。それは一部ではもうすでに地労委の決定も行なわれておるということは、いま御報告願ったとおりでございます。この点は地労委でも決定したところでもありますが、いずれにいたしましても労組法七条の不当労働行為に該当するということは、これは当然だと思うのです。そういう第一組合員なるがゆえに賃金、奨励金あるいはその他の労働条件に不当な差別を行なうような事態があることが好ましくないということは、これは労組法七条違反でもあることだし、当然なことと思うわけですけれども、これらに対して労働省としてはどういうふうにお考えになっているのか、その間の見解をひとつ承らしていただきたい。
  202. 松永正男

    ○松永説明員 ただいま御指摘になりましたように、労組法七条におきまして四種類の不当労働行為をあげまして、これに対しまして違反した場合には、労働委員会におきます救済手続が定められております。またさらに、それに不服な者は裁判所に提訴できる、また別個にいきなり裁判所に提訴してもいいというような法のたてまえになっておりますが、河野先生おっしゃいましたように、不当労働行為制度は、労使間において労使が対等の立場で交渉をし、そして自主的に賃金その他の労働条件を決定をしていくという目的のために、労働組合活動の自主性、自由を保障するという目的で定められておるわけでございます。労働省におきましては、このような法の趣旨を常々労働教育を行ないまして徹底をいたしておるわけでございますが、労組法施行以来二十年以上になるわけでございますけれども、まだこのような事件が起こるということは、たいへん遺憾なことだと思うわけでございます。  具体的ないま御指摘になりました事件につきましては、労働委員会なりあるいは裁判所で審理中でございますので、具体的にどうこうという意見を、行政当局である私どもから申し上げるのは不適当かとも思うのでございますけれども、たてまえといたしましては、やはり経済情勢の変動に対処いたしますとともに、勢使間の関係が安定した状態で、労使の意思の疎通が行なわれつつ事態に対処するというたてまえを、今後ともできるだけ達成をするという方向に向かいまして、私どもも、協力なり援助なり、あるいは常々の労働教育というものに努力をしてまいりたいと考えておる次第であります。
  203. 河野正

    ○河野(正)委員 いま一つの例を取り上げて御指摘を申し上げたわけですけれども、そういうような労組法第七条に該当するような事例というものが非常に多いのが、この三菱におきます一つの特色だと思うのです。  そこで私は、さらにその極端な例を二、三具体的にあげて、この際、労働省の見解なり、またさらには法務省の見解を承っておきたいと思うわけです。たとえばこれは広島の造船での事例でございますが、第一組合員ということを一つの対象として、腰痛症という医師の診断書があるにもかかわらず、業務命令で強制的に配置転換を行なったという事例がございます。これは本人が腰を痛めてお医者さんにかかっておるわけです。したがって医師の診断書が来ておるわけですけれども、たまたまその労働者が第一組合員である。そこで配置転換を強制しよう。ところが本人は、現在の仕事は腰痛でもできるけれども、配転していく先の職場というものが中腰で仕事をしなければならぬ。そうすると、腰痛でお医者さんにかかっておるわけですから、中腰でやることは現在の健康状態が許さぬ。ですからひとつ配転はやめてほしいというような希望を強く申し出たにもかかわらず、その健康上許せない職場に業務命令で配置転換をさせておる。これは単に本人が腰が痛いとかなんとかということでなくて、医師の診断書が出ておるわけですから、そういう意味では、これはむしろ不当労働行為というよりも人道上の問題だと私は思うのです。ですからこの点は、労働省から見解を承るよりも、法務省の人権擁護局長から御見解を承ったほうがよろしいと思うけれども、こういう極端な企業側の組合に対します抑圧が行なわれておりますような事例について、法務省としてどういう御見解でございますか、この際ひとつ率直に御見解を承らしていただきたい、かように思います。
  204. 堀内恒雄

    ○掘内説明員 お答えいたします。ただいまお尋ねになりました具体的な例につきまして、私どもの法務局といたしまして、いままで申告がなかったらしくて、本省のほうにも報告を受けておりません。ですから、具体的な事件については何も申し上げられませんけれども一般的に申しまして、第一組合員であるという理由だけで配置転換をするということでありますると、差別をしたということになるだろうと思います。あと具体的な配置転換の理由というものもさらに詳細に承知いたしませんと、そのほかの点は何とも申せませんけれども、ただ第一組合員であるという理由だけで配転したという問題になれば、人権の上でも差別という点で問題になると考えております。
  205. 河野正

    ○河野(正)委員 局長にお尋ねをしたいのは、第一組合員なるがゆえに差別的に配転をさせたということだけではなくて、その理由が人道上の問題にわたっておるわけですね。というのは、配転されるその行き先が、中腰で仕事をしなきゃならぬ、しかも、腰痛症という医師の診断書を出して医者にかかって治療を受けているわけです。そういう理由で配転は困るのだという申し入れをしておるにもかかわらず、業務命令ということで配転をさせておる。もちろん第一組合員ということだけで配転をさせることについても差別でしょう。同時に、いま申し上げるように、配転先のその職場での仕事は中腰でやらなければならぬ、いまのところはそうではないので、腰痛があってもしんぼうしてやれるけれども、次の職場仕事は、作業の内容から腰痛症で健康上許さない、こういう理由で言ったにもかかわらず業務命令で配転をさせたということは、単に第一組合員なるがゆえにやったということに、さらにかてて加えて、いま申し上げますように、健康上の条件を全く無視しておるという点、私は、これはむしろ人道的な問題ではなかろうかというふうに考えて、御見解を承ったわけです。そういう条件の上に立っての御見解をひとつお聞かせいただきたい。
  206. 堀内恒雄

    ○掘内説明員 一般的な問題といたしまして、お説のように、健康上ほんとうに不適な職場配置転換をするということが人道上も問題だという考え方があり得る場合もあると思いますが、ただいまの具体的な事例で申しますと、やはり同じように、配置転換の事情とか、あるいはおっしゃった腰痛の程度とか、その他職場の具体的な事情などを考察しないと何とも言えないかと思います。
  207. 河野正

    ○河野(正)委員 局長も、具体的な事例だから、非常に遠慮されてお答えになっておると思うけれども、第一組合員なるがゆえに配転をさせたということは差別だ、こういうふうに御見解を述べられているわけですね。それだけでもけっこうだと思いますが、それにかてて加えて健康上の理由があるわけです。ですから、なおこれは差別だというふうに私どもは理解せざるを得ぬと思うのです。そう別にこの事例がどうだと私どもは断定願うわけではないけれども、いまのような事情のもとにおいて、法務省はどういう見解をお持ちになるのか、これをひとつ率直にお聞かせいただきたいと思うのです。
  208. 堀内恒雄

    ○掘内説明員 抽象的に申し上げることは非常にむずかしいのでありますが、御質問のような場合に、各種の事情を照合しまして、お説のように人権の問題だとして考えられる場合があると思います。
  209. 河野正

    ○河野(正)委員 いま局長から人権の問題だというお答えをいただいたわけですが、さらにそれを一層認識を深めていただく意味においてもう一つの例を取り上げてみたいと思うのです。  それは、たとえば工場内で工場のレクリエーションを実施いたします。その際に、第一組合員なるがゆえに、おまえは参加することはならぬといって、レクリエーションの行事から除外をしておる。ところが実際には、それぞれレクリエーションをするための会費を徴収しておるわけです。それには第一組合員であろうと第二組合員であろうと会費を徴収しておる。ところが、その行事におまえたちが参加するとチームワークが乱れるということで、管理者側が参加することを拒否する。これは全く世間でいう村八分だと思うのです。しかも、そのレクリエーションのための会費というものは、第一組合員であろうが第二組合員であろうが平等に徴収をしておるわけですが、参加させない。なぜ参加させないかというと、を乱すという理由でレクリエーションからも除外をしておる。これは全く世間でいわれる村八分と同じことだと私は思う。  そこで、時間がございませんから、私はここで重ねて申し上げておきますが、たとえば野球の試合をする。いままでその人は十年間も野球部に籍を置いてキャプテンまでつとめた。ところが、今度第一組合に残ったから、その次からおまえは参加させない——あるいは、おまえは技術かすぐれておらぬから参加をさせないというような議論も成り立つかもわかりませんから、私はあえて申し上げたわけですけれども、ちゃんと十年間もやっておって、しかもそれがキャプテンまでつとめておった。ところが、第一組合に残ったからその次から参加させない、こういう極端な例なんです。これに明らかに村八分と申しますか、差別もこれほど極端な例はなかろうと思うのですが、こういうふうな例についてはいかがでございますか。
  210. 堀内恒雄

    ○掘内説明員 ただいまおっしゃったような例の場合は、お説のように、明らかに村八分に類する差別に当たると思います。
  211. 河野正

    ○河野(正)委員 そういうような非常に極端な事例というのがこの三菱資本では非常に多いというのが特色だと思うのです。それはいろいろな企業の中にも、国際資本に対抗するために合理化が行なわれておりますけれども、私どももいろいろこういう問題に携わってまいりましたけれども、その中で最たるものだろうと思うのです。  そこで、こういう例もあげてひとつ労働省の見解を承っておきたいと思うわけですが、たとえば、これは福岡の例でございますけれども、福岡におきましては、昭和四十一年六月十三日からでございますから約一年三ヵ月に及ぶわけでございますが、この一年三ヵ月というものは今日まで一年三ヵ月という意味でございますが、第一組合員に対しては、第一組合員なるがゆえに残業をさせない。この残業を拒否されますと、私ども調査した範囲におきましては、大体月に一万三千円から一万八千円くらいの減収になるそうであります。こういうように、第一組合員なるがゆえにいまのような労働条件に差別をつけるというようなことも、これは当然不当労働行為であり、また一方におきましては、人権の侵害事案だと思うわけでございます。この問題は、昭和四十二年九月十四日、地労委が残業差別をしてはならぬという命令書を出しておるそうでありますから、大体地労委の結論は出ておるわけです。ですから、ここで単にいやがらせで申し上げるのではなくて、すでに地労委でもそういう決定を行なっておるということです。ところが、残業を拒否してできるだけ収入を減らして第一組合員を圧迫しようという考え方は、もう地労委も見解を出しておるわけですから、その点はあらためてここで見解を承ろうと思いません。ところが、この第一組合にしてみれば、一万三千円から一万八千円の残業ができないための収入の減があるわけですから、生活を維持するためにはやはり何とか収入の道を講じなければならぬ。そこで、家族がアルバイトを見つけたり、また退社後組合員がアルバイトをして収入をはかって、何とか生活の維持をはかろうとする。そういたしますると、今度は、そういう組合員を保安係員というのが会社の幹部と一緒になって一室に長時間かん詰めにして、そしていろいろな調査を行なう。私ども承知しておる事例を見ましても、たとえば一日のうちの午前九時から十二時まで約三時間、それから八時三十分から十時二十五分、それからさらに休憩をおいて一時三十分から四時十分まで、こういうように長時間一室に閉じ込めて根掘り葉掘りいやがらせをやる、こういう事例が出てまいっております。時間がございませんから多く申し上げませんが、その保安係というのが、その間警察手帳を見せるようなかっこうで手帳を出して、そしておれの調査というものは警察調査と同じだというようなことを言っておどしたり、あるいはすかしたりというようなことで、いろいろ根掘り葉掘り調査をいたしておる。それで、調査をしてもなかなか思うような回答が出てこぬと、覚えておれというような捨てセリフをはいて追い帰す。そういう事例がしばしば出てまいっておることを私どもは仄聞いたしておるわけです。そういう中身については、時間もございませんからここで多くを申し上げようと思いません。ところが、ときには一室に閉じ込めて、そして、一体おまえのところは夫婦仲はどうじゃ、奥さんとうまくいっているかというようなプライバシーにわたるようなことまで根掘り葉掘り聴取しておる。答えなければ答えないでよろしい、これは警察調査と同じことだというようなおどかしをして、そして根掘り葉掘りプライバシーにわたるようなことまでも聴取をするという、こういう事態が生まれてまいっておる。これは提訴された案件でございませんから、ずばりお答えはむずかしいかと思いますけれども、そういう事例があった場合は、これは一体どういうことになるのか。これは労働省からと人権擁護局長から、それぞれお答えをいただきたい、かように考えます。
  212. 松永正男

    ○松永説明員 ただいまの事案でございますが、私どものほうでは、そのように詳細に具体的な調査をいたしておりませんので、地労委提訴等の事案につきましては承知をいたしておりますが、おっしゃいましたような件がありますかどうですか、つかんでおりません。ただ、御指摘のようなことであるとすれば、これは正当な労使関係の域をはるかに逸脱をしたものでございますし、さらにまた人道上の問題にも関係する、適当でない不当な事柄ではないかというふうに私どもも考えます。
  213. 堀内恒雄

    ○掘内説明員 ただいまお尋ねのような、保安係が社員を一室に閉じ込めたような態様で、しかも長時間にわたって調査をするというその調査の態様は、私どもの立場から見ましても、人権の立場という点から見ましても、非常に好ましくないように思います。また、夫婦生活の機微にまでわたるような質問に及ぶということも、これもプライバシーを侵害するものとして好ましくないと考えております。
  214. 河野正

    ○河野(正)委員 そういうような、単に労組法で定められた範疇の問題のみでなく、人権まではなはだしく侵害するような形で第一組合員なるがゆえに弾圧を受けておる、こういう事例というものは、私は日本の労使間の問題としても非常に希有なケースではなかろうかと思うのです。そのほか、会社側の政策を批判したら、それは就業規則違反だということで減給されたり出勤停止を食ったりいろいろな事例がございます。ここで列挙いたしますると枚挙にいとまがないというのが、率直に申し上げてこの三菱資本におきます労使関係実態だと思うのです。私は、三菱資本の中でこういうふうな数々の不当労働行為あるいはまた人権を侵害するような行為が白日のもと横行せられるような事態というものについては、全く承服ができないと思います。したがって、こういう労使関係については、さらに労働省としても強力な指導、監督というものが行なわれなければならぬと思うのです。  いま申し上げますように、不当労働行為よりも、むしろ三菱の場合は人権侵害のケースのほうが多いと思うのです。ですから、そういう労使慣行というものがこの民主主義のもとで許されるべきではないと思うので、これらについては労働省としても強力な措置というものが行なわれなければならぬと私は思うのです。そういう意味で、この点は、最後に労働大臣からひとつこれらに対する御意見解を承っておきたいと思います。
  215. 早川崇

    ○早川国務大臣 私の労働行政は、使用者はいわゆる雇用者に対しては、自分の子供を雇っておるという気持ちで指導しろ。私自身もそういう気持ちで広く労働者に対する福祉の向上につとめておるわけであります。会社におきましても、大小を問わず、自分の雇っておる労働者は自分の身内、子供だというぐらいの気持ちで接していくならば、労使関係というものは非常によくなってくるのではないか、かように思っております。また同時に、労働者側にしましても、会社の発展は労働者の福祉につながるわけでありますから、会社の使用者はもちろんのこと、労働者の側でもそういった気持ちになってもらわなければなかなかうまくいかない。私は三菱にそういう事件があるというのは初めて聞きました。よく三菱の経営者にも話しまして、労使関係の正常化につとめるように指導してまいりたいと思っております。
  216. 河野正

    ○河野(正)委員 いま御指摘申し上げましたのは、三菱資本下におきます極端な労使関係の何点かであったわけですけれども、いま大臣からも労働行政の最高の責任者としての御見解を承りましたので、ぜひひとつそういう労使慣行というものが改善されるように御配慮を願いたいということを申し添えて、この三菱関係につきます質疑は終わりたいと思います。  それから、さらにもう一点お尋ねをしたいと思います点は、例の三井三池の一酸化炭素中毒についての問題でございます。  御承知のように、第五十五特別国会において一酸化炭素中旬特別措置法というものが成立を見たのでございます。ところがその後、その施行に基づきます作業というものがだんだん進展をいたしておるわけでございますけれども、この立法の趣旨が尊重されず、何か一方的に処理されつつあるかのような状況にあることを私どもは仄聞をいたしておるわけでございます。その後この一酸化炭素中毒問題はどのような形で作業をされておるものか、その概況についてひとつお答えをいただきたい。
  217. 村上茂利

    ○村上説明員 去る特別国会で通過いたしました炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法につきましては、その施行期日が、法律として公布されましてから九十日以内に政令で定める日から施行する、こういうたてまえになっておりますので、労働省といたしましてはこの施行のための準備を進めてまいりましたが、そのおもなるものはこの特別法の施行規則の作成であったわけであります。この特別法におきましては、健康診断であるとか、アフターケアであるとか、その他医学的な観点からその基準を設定する必要があるものが数多くございますので、労働省といたしましては、専門家会議を持ちまして、八月から九月にかけまして専門家の意見を聞く等、施行規則案の作成につきまして作業を進めてまいりましたが、これを取りまとめまして関係審議会に諮問をいたしたわけでございます。関係審議会は、この一酸化炭素中毒症に関する特別法の内容によりますけれども、中央労働基準審議会と労災保険審議会、この二つの審議会にまたがるわけでございます。労働省といたしましては、この二つの審議会に諮問をいたしたわけでございます。労災保険審議会は、十月の二日に諮問いたしまして、その後審議を続け、いままで二回審議をいたしております。中央労働基準審議会は、五日に諮問いたしまして、本日午前からただいまにかけまして二回目の審議をいたしておるわけでございます。  ただいま先生から立法の趣旨云々というおことばがございましたが、この特別措置法の施行規則の内容となるべき事項は労働省令の定めるところによる云々というように、省令として定めるべき事項が法律の中に指定されておるわけであります。したがいまして、審議会に諮問をいたしました規則案の内容も、大部分が法律で委任されました労働省令で定め得る事項につきましたものが内容になっておるわけでありまして、法律の定めるところに従いまして規則案をつくっておるわけでございます。  なお、両審議会とも二回審議をいたしておりますが、さらに今後も審議を継続する予定になっております。現段階におきましては、労働側代表から主として意見が出ておりますが、まだ十分出尽くしておりませんので、使用者側あるいは公益委員側の意見が開陳されるという段階までにはなっておりません。  概況は以上の通りでございます。
  218. 河野正

    ○河野(正)委員 立法の趣旨が尊重されておるかおらぬかという問題は、いまそれぞれ審議会で施行規則をつくる作業の中で決定をするわけですが、私どもいろいろお尋ねしたいことがたくさんございますが、時間の制約等もございます。きょうはたくさんの案件を持ち込みましたので、その制約等もございます。そこで、私はきょうは二、三の点にしぼってひとつお尋ねをして御見解を承っておきたいと思うのです。  その第一は健康診断についてでございます。これは御承知のように、炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法施行規則案要綱によりますと、一年に一回の健康診断というような方向のようでございます。しかし、私ども現地でいろいろな罹災者に接してもわかることでございますけれども、健康状態に非常に消長が激しいというのが一つの特徴のようでございます。したがって、健康診断というものを機械的に年に一回というような規定じゃなくて、できれば多いほうがけっこうでしょうが、やはり現地で言われておるように、三回なら三回というような健康診断の実施というものを行なうことが適切じゃなかろうかというような感じを持つわけですが、この点についてはいかが御見解を持っておられるのか、ひとつ御見解をお聞かせいただきたい。
  219. 村上茂利

    ○村上説明員 規則案の内容でございますから、私からお答えさせていただきます。  法律で予定しております健康診断は、大きく分けて二種類、こまかく分けますと三種類あるわけでございます。  その第一は、災害が起きました直後遅滞なく行ないます健康診断でございます。これは回数がなくても、災害がありましたらすみやかに健康診断を行なうというものでございます。  それから、いま御指摘の年一回行ないます健康診断と申しますのは、災害直後の健康診断をやったが、その後、一酸化炭素中海症にかかっていないと思われる者であっても、炭鉱災害が起こった日から起算して二年を経過するまでの間は健康診断をやれというのが一つございます。  それから第二は、一酸化炭素中毒症にかかったが、いわゆる治癒の状態になったので、なおったと認められた。いわばなおってから二年という健康診断があるわけでございます。先生御指摘の、CO中毒患者の状態から見て健康診断の回数は三回ぐらい必要ではないかという問題のケースは、おそらくCO中海にかかりましてなおったかどうかの過程にある者がまず第一にあるわけですが、その人たちは労災保険法の適用を受けまして療養中でございます。療養中の者については、絶えず国師の診断を受けておるわけでありますから、法の特別の健康診断からははずれまして、第五条の使用者の健康診断義務が療養補償中の者については適用がないわけであります。その者については問題ない。なおってからの問題であります。これを年一回にするかどうかについては、専門医の御意見を聞きましていろいろ検討したのでありますが、いわゆるなおった者につきましては、医学的に平衡状態に達したと認められる、このような者であって、医学的な立場からは年一回健康診断をすれば足るのではないか。この健康診断は使用者の法律上の義務でございますから、これに違反した場合には罰則の適用がございます。そういった使用者の義務として課する健康診断の回数は何回がよいかということを慎重に検討された結果一回になった。しからば、CO中毒症にかかった者が、なおったと申しましても、頭が痛いとかそういった現象が起こるのではないか、それは使用者の健康診断の義務ということで扱うのかどうかという問題でありますが、それは法律ではアフターケアとして特別法の第九条で「診察等の措置」というのがございます。このアフターケアないし健康管理の措置として「診療その他労働省令で定める措置を行なう。」こういうことになっておりますので、このほうの診断は年一回とかそういう制限は全くないのでありまして、診察等の措置を欲するときには指定医等の診察を受け得る、こういうことになるわけでありますから、そのほうで措置をしたらどうか、特別法のたてまえはこういうことになっておるというふうに私どもは考えまして、年一回の健康診断義務でよいという医学的な所見をももとにいたしまして規則案を制定したという事情でございます。
  220. 河野正

    ○河野(正)委員 ただ、現地でそういう要求がございますのは、先ほど申し上げましたように、なおったと言いながらも健康状態に非常に消長があるというのが、この一酸化炭素中毒患者の特徴だと思うのです。これはよくなっておっても、翌日は頭痛がするとか、頭重がするとか、あるいは手足の震顫が起こってくるとか、いろいろあると思うのです。そういう一種の不安にさらされておるというのが、私は一酸化炭素中毒にかかった人々の特殊な事情ではなかろうかと思うのです。そういう意味で私は、やはり年に何回かの健康診断をやることを義務づける、こういう要求になってあらわれてまいったろうと思うのです。  そこで、その点については、いま局長お答えになった九条の「診察等の措置」でやるべきだという意見もありますが、やれるなら、別に年に一回ということを規定せぬでも、三回でもいいのであって、何もそこにこだわる必要はないと思うのです。そこにこだわるところに、やはり罹災者なら罹災者が不安を持つ一つの原因があると思うのです。やれるなら、何も一回を三回にしてほしいという要求をする必要はない。だからやはりその辺を罹災者が納得のいく形で解決してもらわぬと困るのではなかろうか、こういうように思うのですが、その点いかがですか。
  221. 村上茂利

    ○村上説明員 その健康診断の内容いかんにもよりますが、先生も御承知かと思いますが、ヘモグロビンの検査だとか、あるいは全身状態検査、意識状態の検査、自覚症状の有無、神経症状の検査、その他の思考障害等の精神症状の検査、尿の検査、血液検査、視野検査、脳波検査、心電図検査、胸部エックス線写真撮影といったように、現在の医学の水準では一応考えられますものを検査項目としてあげておるわけであります。かなり精密な検査であるというふうに専門家も申しております。このような精密な健康診断がどの程度必要なのかということになりますと、私どもとしては専門医師の方々の御意見を聞かざるを得ない。その判断によりまして、なおったあとの、いわば平衡状態に達したあとの症状というものはそう動くわけではないから、この程度の精密な健康診断であるならば年一回で足るのではないか、こういう医学的判断があるわけです。  ところが、一方におきましては、CO中毒にかかった患者は非常に不安だ、頭が痛くなる、どうしたらいいのだろうか、こういう問題を、使用者の健康診断の義務という形で処理したらいいのかどうか。アフターケアは必要だ。かかった方には労災保険で療養補償をするわけでございます。なおったという状態になりまして、一応療養補償は行ないませんが、その後のアフターケアの問題としてどう考えるかという問題もありますので、そういった問題はアフターケアの問題として受けとめるのが適当ではないのか。そのためにこういう制度があるのではなかろうかというふうな理解も持てるわけであります。そういう意味で、現在はこの法律が動いておりませんから不安もあろうかと思いますが、アフターケアの今後の実施状況等も考えまして総合的に判断すべきじゃないか。罰則づきの義務規定として多々ますます弁ずというのはなかなかとりがたいので、専門医の方々のほとんどの意見がこれでいいということであれば、一応それに従わざるを得ないというのが現状でございます。しかし、なお審議会でいま検討中のことでございますから、私がこれ以上申し上げるのはいかがかと思いますので、その間の事情を御了察いただきたいと思います。
  222. 河野正

    ○河野(正)委員 審議中のことですから、私どもの要望というか、希望というものを強く申し上げておきたいと思うわけです。  いま局長がおっしゃったアフターケアの範疇でいいのかどうか。それは被災者は病気かもわからぬと言っておるわけですから、そういう立場からいえば、それをアフターケアという形で処理するということについては問題があると思うのです。これはアフターケアの解釈の問題ですよ。私どもは少なくともアフターケアというものはそういう理解ではないわけです。申し上げますならば、要するに社会に復帰するまでの一つの訓練的な形をとるのがアフターケアだ、こういう理解に私どもは立っておる。ところが、いま局長がおっしゃったように、健康診断をアフターケアの中でということになると、それは被災者というものはなかなか納得できぬと思うのです。というのは、片一方は病気かもわからぬと言っておるのですからね。そういう心配があるから健康診断をしてくれと言っているのですから、それをアフターケアで処理しようということになると、私は当然問題が出てくると思うのです。しかし、それはまだ検討中ということでございますから、私はいまアフターケアで処理されるという方針についてはやや納得しがたいということを申し上げておきます。  それから、いま一つお尋ねをしておきたいと思いまする点は、これは五十五国会の最終段階でいろいろ問題となった点でございますが、被災労働者の能力というものが低下をするだろう。そうしてその能力が低下するために配置転換が行なわれる。その際、能力が低下するために配置転換が行なわれるわけですから、あるいは軽作業に向けられるということになれば当然賃金のダウンというものが考えられる。そこで、当時の国会論議でもあったわけですけれども、いわゆる前職の賃金というものを保障してもらわなければならぬという議論があったと思うのです。その際に、障害補償七級以上で認定されれば、年金でございますから、したがって、賃金が多少下がってもそれに見合うものが出てくる、こういうような議論がなされておったと思うのであります。ところが先ほど、この立法の趣旨というものがだんだんゆがめられておるのじゃないかということで、私も特にお尋ねをするわけですけれども、どうも新しい基準が設けられて、七級以下の格づけが出てくるのじゃないかというような議論があるということを私どもは仄聞をいたしておるわけでございます。そうしますと、結局前職の賃金というものが確保できない。要するに被災者なるがゆえに賃金収入が減少していくということになるわけですから、それでは困るのだという議論があったと思うのです。これらの点について、その後どういう状況にあるのか、ひとつ御見解をお聞かせいただきたい。
  223. 村上茂利

    ○村上説明員 ただいまの問題につきましては、後日問題になりませんように、この問題につきましては早川労働大臣からもお答えになっておるわけでありますが、当時参議院の最終段階で大臣からお答え申し上げましたのは、減った分の補償についてはどのような措置をなされるかという質問がございましたけれども、いわゆる減収補償なり前収補償をどうするかという直接的なお答えは、大臣はなさっておらぬのでありまして、障害補償の問題は、それによって喪失した労働能力に対する補償の問題でございます。これは医学的判断に基づいてなされる、このように申されまして、さらに重ねての質問がありまして、障害等級の何級くらいで減収補償されるかという質問がございましたが、「一酸化炭素中毒症により精神に障害を残し、あるいは神経に著しい障害を残し、そのために軽易な労務にしか従事できない者もあると考えられます。こういう人々に対しましては、健康診断の結果、このような中程度の障害のために軽易な労務に配置転換を余儀なくされる者につきましては、第七級の障害補償が支給されることといたしたいと考えております。」こういう御答弁をなさっておられます。ところが、同日の質疑応答の中に、最終のころでありますけれども、「七級に適合しない人たちの扱いはどうなりますか。」という質問がまた別にございました。これにつきまして、「七級から十二、十三というように飛ぶわけであります。その中間的な症状の人もあるわけでありまして、目下専門家会議でその穴埋めといいますか、ボーダーラインの人たちに対する補償の措置というものを検討中でございます。」こういうお答えを当時大臣がなされたわけであります。  ところで、この問題については、ただいまの大臣の御答弁にもございましたように、障害等級専門家会議ですでに論議されております。そこで、障害等級の七級から一ぺんに十二級に飛ぶという点については、前から若干問題があったわけであります。その問題は、昭和四十年の労災保険法の改正のときに、従来八級でありましたものを七級に合わせまして、厚生年金の障害等級の大体バランスをとったわけであります。厚生年金の年金支給の障害に該当するものとしたいというので、労災のほうで八級でありましたものを七級にしたわけであります。終身軽易な労務にしか服せない者を七級にしたわけであります。その結果、七級から十二級に飛ぶという形になりまして、厚生年金の障害一時金との関係を見ますと、労災保険のほうはブランクが生じた、こういう問題もございます。そこで、精神医学界関係の専門家たちにいろいろお考えを伺ったのでありますが、これは医学的に見ても、七級から十二級に飛ぶというのは必ずしも適当でない。やはり、その中間的な症状の人がおるので、いわば九級の障害等級を新たに設定することが医学的に見ても適当である、こういう御見解をいただきました。障害等級専門家会議にもはかりまして第九級を設定したい、かように考えた次第でございます。これは労働基準法施行規則及び労災保険法施行規則の改正になりますので、それぞれの審議会に規則改正案を諮問いたしまして、目下検討していただいておるものでございます。
  224. 河野正

    ○河野(正)委員 この労災補償のたてまえというのは、公務に基づく障害に対する補償ですから、したがって減給を補償するというのがたてまえでなければならぬと思うのです。公務で負傷しながら収入が減ってしまうということは、私はこれは当を得ない処置ではないと思うのです。そういうことから、この被災労働者が能力が低下して配置転換された場合に、障害補償の七級以上に格づけされれば、前職賃金の補償じゃないけれども、大体それに見合うものが出てくるというところから、そういう議論が出てきたと思うのです。ですから、七級が九級になろうと、要するに前職賃金に見合うものが出てくればいいのですけれども、ただ、いまの現状のままでは、この前職賃金というものが大きくダウンするという結果になると思うのです。たとえば七級が九級ということになれば、労災の趣旨からいえば当然現在の生活を保障するというたてまえでなければならぬわけですから、そういう意味では、先ほど八級を七級に格上げをしてという話もあったが、九級はできるけれども、九級というものが大体七級に相当するものにある程度なれば、これは問題ないけれども、現状のままではダウンすることは火を見るより明らかです。ですから、この労災の精神に基づいて、そういう合理的な解決をやると同時に、やはり補償の点についてもこの考慮というものが払われていかないと、七級から十二級はちょっとひどすぎる。その中間もありますよというようなことでやられても、一酸化炭素中毒の場合は、収入というものが大幅に減収することになるわけですから、あの当時論議されておったように、やはり前職賃金に見合う形での補償というものが当然行なわれなければならぬ、こういう意味で私ども申し上げておるし、その点がややもすると立法の精神をゆがめておるのではないかという議論になっておると思うのです。その辺についてどういう御見解であるのか、ひとつ被災者が安心するような御回答をいただきたいと思う。
  225. 村上茂利

    ○村上説明員 誤解があるといけませんが、法文では特別措置法には全然触れていないわけです。障害等級の認定をどうするかということと関連をするわけです。  そこで、労災補償制度の精神云々というおことばがございましたが、労災補償では、失われた労働能力ないしは稼得能力、アーニング・キャパシティを、その労働能力の損失程度に応じて補てんするというのが一般原則でございます。しこうして、一〇〇%全部補償するたてまえになっているかどうかと申しますと、御存じのように、一級の最も手厚いものにつきましても、一〇〇%補償ではございません。これは国際的な水準から見ましても、一級等につきましては低くない率であります。そこで、労災補償であるから全額、一〇〇%補償するかどうかということになりますと、これはいろいろ制度の基本に関することでありまして、議論があろうと思います。それよりも、失われた労働の能力、その部分に見合う、アーニング・キャパシティの損失に見合う部分の補てんをどうするかという問題であろうかと存じます。それを医学的な観点から能力欠損を認定していただくわけでございます。ところが、認定するについて七級から十二級に飛ぶような、そういった障害の程度というのは、医学的に見ても飛び過ぎる。ざまざまな障害を医学的に判断すれば、もう一つ中間段階を設ける必要がある、こういう趣旨から設けるわけであります。そこで、七級に該当するものを九級に引き下げるとか、そういった趣旨ではないのでありまして、いまのままでほうっておきますと、むしろ十二級に該当するものが大部分だ、こういう医学的な判断になる可能性があるわけであります。それは中間項がないからであります。そういう医学的な判断の問題が重要な要素になっておりますので、ブランクは避けたい、満たしたい、こういう考え方であります。あと認定をどうするかというこの問題は、規則の問題ではございませんで、行政措置としていたす問題でございますから、審議会の場におきましても、それをどうするかということは諮問いたしております。規則の問題とは別ですということを私ども申し上げておるような次第でございます。
  226. 河野正

    ○河野(正)委員 何等級に該当するかということは医学的に判断するわけですから、それは医学的判断を待たざるを得ぬと思うのです。ただ、今度制定された一酸化炭素中毒法の制定にまつわる非常に政治的な要素があることは、これはもう大臣も局長も御承知のとおりだろうと思うのです。これは非常に政治的な要求からこの問題が制定されたということは、御承知のとおりだと思うのです。そういう意味でわれわれは、やはりこの減級に見合う補償というものが当然なされなければならぬという議論が、そこから出てきておると思うのです。それは七級であろうが、九級であろうが、十二級であろうが、たとえば九級ができたとしても、それは純医学的にきめることですよ。ただ、今度一酸化炭素中毒法が制定されたことについては、非常に政治的な要素が多かったということは御承知のとおりだと思うのです。そういう意味で、どうすればその被災者が収入減にならぬかというふうな配慮で解決しなければならぬかということは、今度法が制定された精神からも当然考慮さるべき問題だったと私は思うのです。そういう意味で、おそらく当時の質問要、項にはそういう意味はあるのですが、それには障害補償七級以上で認定されるものと理解してよいかというような条項があったのです。これはとうとう時間の関係質問できなかったわけですけれども、それが現実にいまいろいろな要求になって出てきておると思うのです。ですから、そういう立法の精神と申しますか、非常に政治的な配慮を加えられた立法の精神ですね、そういうものが当然尊重せらるべきものと私どもは考えておるわけですから、ひとつその点を十分尊重してほしいと思うのです。時間がございませんから特に私は要望いたしておきます。  それからいま一つは、この七条の福利厚生施設の供与の問題ですね。これはやはり当時の質問要項にもあったと思うのですけれども、これも、衆議院段階では大詰めの段階になりましたから、結局日の目を見ることがなかったわけですけれども、この一酸化炭素中毒患者が一般の定年退職者等と違うのは、一般の定年退職者は、定年退職後この福利厚生施設の供与を受けないということであっても、再就職をするとかあるいは新しく生業を持つとかいうことで社宅から出ることは可能ですけれども、この被災者の場合は、再就職がなかなか困難だという問題もあるし、それからあらためて生業を持つということも非常に困難だ、こういう非常に悪条件があるわけですね。したがって、この被災者については、福利厚生施設の供与については特別な配慮をしてもらいたいというのは当然の要求だと思うのです。この点は当時いろいろお尋ねをしたかったわけでございますけれども、お尋ねすることができなかった。それが今日ではやはり一般の定年退職者と同じような処置を受けようとするというようなふうにも仄聞をいたしておるわけでございます。しかしその点は、一般の定年退職者と罹災者というものが非常に本質的に違っておる、こういう点は当然考慮さるべきだというふうに私どもは考えるわけですが、その点はいかがでありますか、ひとつ御見解を承っておきたいと思います。
  227. 村上茂利

    ○村上説明員 御指摘の福利厚生施設の供与につきましては国会修正で入った文言でございます。率直に申しまして、使用者にこのようないわば所有権の制限を課すような供与義務の規定を設けるというのは、立法例としても非常に珍しい例でございますが、CO患者の特殊性にかんがみまして、こういう条文が国会修正で入ったものと私ども理解いたしております。  そこで、その利用につきまして、所有権のいわば特殊な制限でございますので、供与期間というものは明確にしなければならないという要請がございますが、どの程度の期間であればよいかという判断のメルクマールがなかなかないわけでございます。しこうしてこの七条の第二項には、一般の労働者に対する福利厚生施設の供与との均衡を失わないようにしなければならないという条項が入っておるわけであります。そこで、CO中毒患者であった者の特殊性と一般労働者の施設利用の状態とのバランスを考えて、どのような内容の施設をどのような期間使用さすか、非常にむずかしい問題でございます。そこで、いろいろ調査をいたしたのでありますが、CO中毒患者に比してもまさるとも劣らぬような気の毒な業務上の患者がございます。たとえば脊損患者、それからじん肺患者等の福利厚生施設の利用につきまして、労使間でどのような協定なり慣行があるかということを調べてみましたが、六カ月、一年、二年等がありますけれども、二年が一番最高の期間であるということで、二年という利用期間を規則案に定めたわけであります。しかしこの点につきましては、審議会でまだこの条項の議論がなされておらぬわけでありまして、さらに審議会における議論も拝聴いたしまして私ども考えたいと存じております。
  228. 河野正

    ○河野(正)委員 その点は均衡の問題はありますけれども、やはり今度の法律が制定をされた経緯なりというものは当然あるわけですから、そういう立法の趣旨というものを十分尊重されて御検討願いたいと思うのです。  そこで、時間もございませんから、大臣に最後に締めくくりをお願いしたいと思うわけですけれども、いま私は、数々の中から二つ三つの具体例にしぼってあらためて御見解をお願いをしたわけですけれども、いずれにいたしましても、この五十五特別国会において制定された一酸化炭素中毒特別措置法の実際の運用というものは、やはり立法の精神というものを十分尊重されるという形で行なわれなければならぬと思うのです。ぜひひとつ、そういう立法の精神というものが尊重される形で運用が行なわれるための大臣の善処を、この際お願いいたしておきたいと思いますので、それに対する御見解を最後にひとつ承っておきたいと思います。
  229. 早川崇

    ○早川国務大臣 CO立法につきましては、衆議院で質疑応答がなかったのは残念でしたが、院におきましては、あの修正案の採決にあたりまして締めくくりの質疑応答をいたしました。その趣旨は十分生かして、単に法文上にあらわれているだけでなくて、あの趣旨に沿いまして施行規則もつくってまいりたい、その点はお約束できるかと存じます。
  230. 坊秀男

    ○坊国務大臣 去る九月八日の当院本委員会におきまして、河野委員からクロレラヤクルトにマンガンが含有しておるじゃないか、もしマンガンを入れておるというようなことであるならばこれは大問題である、これに対する厚生大臣、厚生省の所見及びこれに対する措置いかん、こういう趣旨の御質問があったわけでございますが、これに対しまして、私は早急にその実態調査いたしまして、そうしてしかるべき措置をとりたい、なお調査の結果につきましては当委員会に御報告を申し上げる、こういう御答弁を申し上げておったわけでございますので、本委員会の席をかりまして、その実態調査の経過及び結果について御答弁を申し上げます。  ただいま申し上げましたとおり、去る九月八日衆議院社会労働委員会におきまして、河野委員から乳酸菌飲料ヤクルトにマンガンが多量含まれているのではないかとの質問がありまして、私から、実態調査いたします。なおその結果は御報告を申し上げます。こういう御答弁を申し上げたわけでございますが、すでにこれよりさき九月七日に、厚生省といたしましては、河野委員からの御質問もあるやに承りましたので、これは慎重を期してさっそく調査しなければならないというので、九月七日にヤクルト検液工場所在の十二都道府県に調査方を電話で指示をいたしておったわけでございますが、そこで河野委員からの御質問もありましたし、九月十二日に、去る九月七日の調査方指示に対して、さらに調査結果報告を急ぐようにと重ねて指示をいたしたわけでございます。そこで、同九月十四日、厚生省係官をさらに日本クロレラ株式会社に派遣いたしまして現地調査を行なった、こういうわけでございます。  以上のような調査の結果判明いたしましたことは、まず第一点といたしまして、日本クロレラ株式会社において、クロレラの培養のため、栄養素として微量のマンガン、鉄、銅、カルシウム等を使用していたことが判明いたしました。クロレラ培養に際してこういったようなものを使っていったということが判明しました。  第二点として、ヤクルト原液製造工場ではマンガンを添加していないことを調査の時点において確認いたしました。  第三点は、マンガンの検査結果は別記のとおりでございますけれども、製品クロレラヤクルトについてのマンガンの含有量は、水道法による水道水の許容量〇・三PPMでございますが、この水道水の許容量以下であって、衛生上危険がないということが認められたのでございます。  第四点といたしまして、過去にマンガンを添加物として使用していたかどうかにつきましては、調査の範囲内ではその事実を確認することができなかったのでございます。なお厚生省当局といたしましては、司法権を持たないので、過去にさかのぼってその真偽を追及して確認することはできなかったわけでございます。  そこで、九月十九日でございますが、当時の舘林環境衛生局長がこの結果を、委員会が開かれておりませんので、とりあえず質問者たる河野委員に御報告いたすべく議員会館に参上いたしましたのでございますが、河野委員御旅行中でありましたので、私から環境衛生局長にとりあえず旅行先に御報告を申し上げるように指示をいたしまして、指示をさせたような次第でございます。  以上がヤクルトに対する厚生省調査の経過及び結果でございます。  なお、第二点といたしましては……(本島委員委員全体が心配しているこういう与野党的な問題について、そんなことはおかしい」と呼ぶ)あとで御答弁申し上げます。第二点でございますが、今後の処理をどうしていくかということでございますが、いま申し上げましたとおり、過去においてマンガンを製造工程中に使用していたかいなかについては確認できなかったのでございますが、製造工程中にマンガン等の有毒な物質を添加物として使用することは、これは食品衛生法第六条違反でございますので、このようなことのないよう十分指導するとともに、乳酸菌飲料業界に対し随時立ち入り検査をするなど監督を強化してまいりたい、かように考えております。  また、過去において製造工程中に使用したかいなかの件につきましては、これ以上の調査はできませんが、関係の都道府県に対し、食品衛生監視員をして原液製造工場に立ち入り検査をでき得る限り行なうよう指示するつもりでございます。  なお、河野委員にだけというお話でございますが、私が御答弁申し上げたのは、調査の結果委員会に御報告申し上げる、こういうことを申し上げたのでございましたが、とにもかくにも御質問の河野委員には、詳細は別といたしましてごあいさつは申し上げなければならない、こういうことを指示いたしまして、当時の環境衛生局長を議員会館に参らしたというような次第でございますので、御了承願いたいと思います。
  231. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま大臣からしさいにクロレラヤクルト製造工程における問題点の御報告があったわけですが、大体要約いたしますると三つに区分できると思います。一つは調査した時点における結果であり、いま一つは過去における見解であり、いま一つは今後の厚生省としての業界に対する姿勢と申しますか、処理方針であったと思うのです。まあこういうように大体三つの部分に分けられると思うのでございます。  第一の調査時点におきまする調査結果の報告は、これは私が九月七日に厚生省に通告をいたしたわけで、その後厚生省がヤクルト原液工場所在の十二都道府県に調査方の指示をしたわけです。したがって、その時点における立ち入り検査の結果マンガンが検出されるということについては、おそらくないであろうという予測は、これはもうどなたもおありになったと思うのです。ですから、この私どもが指摘をいたしました以後行なわれた立ち入り検査の結果については、私はある意味においては当然だったと思うのです。そこで問題は、その私どもが指摘をいたしまする以前においてどういう状態にあったかということが、私は一つの焦点になると思います。そういう意味では、今度の厚生大臣の御報告を承っても、必ずしも過去の疑念が晴れたということじゃないと思うのです。そのことは厚生省も、司法権がなかったので、警察権がなかったので、過去にさかのぼってその真偽を確認することができなかった、こういう報告をされておるように、必ずしも過去における疑惑というものがこれで晴れたということではないと私は思います。  そこでこの際、この乳酸菌飲料の消費者、乳酸菌飲料の人口というものが七百万にも及ぶわけですから、やはりこの業界の姿勢も正してもらわなければならぬし、それからさらにまた、国民に対する疑惑というものもやはり明確にしてもらわなければならぬし、それからまたさらには、いろいろ今日まで私どもが取り上げまするまでにも何度かこういう問題が提起されたというふうに私ども仄聞をいたしております。したがって厚生省の行政監督について適切であったかどうか。私は今日まで、四十年の八月あるいは四十一年の三月段階でこの問題がいろいろ世間でいわれたということでありますが、そういう時点で厚生省がきちっと行政指導をしておれば、今日のような騒ぎはなかったのではなかろうかという感じを持ちます。そういう意味では厚生省としての姿勢というものもきちっと正してもらわなければならぬ、こういうように考えるところでございます。  そこで、いま申し上げまするように、厚生省の姿勢の問題、あるいは業界の今後の姿勢の問題、それから国民にやはり納得してもらわなければならぬ、そういう問題等のために、若干ここでお尋ねをしていまの三点についての見解を承ってまいりたい、こういうふうに考えるものでございます。  そこで、まず第一にお尋ねをいたしたいと思いまするのは、クロレラの会社において、クロレラの培養のためにその栄養素としてマンガン、鉄、銅、カルシウム等を使用しておったことが明らかになった。こういうような食品衛生法上禁止されたものであっても、間接的に使用した場合は食品衛生法に触れないのかどうか。ですから、乳酸菌をふやすために直接マンガンを加えた、ストレートに有毒物質でございまするマンガンを加えたということはさておいて、要するに、厚生省が報告されておるように、クロレラの栄養素としてマンガンなり鉄なり銅なりカルシウムを使っておったということになるわけですから、そういうことになりますると、間接的にこのマンガン等の有毒物質を加えても添加と言えないのかどうか、この点はぜひ明らかにしておきたいと思うわけでございます。
  232. 松尾正雄

    ○松尾説明員 お答えいたします。食品に添加物を加えますことは、御承知のとおり一般的には禁止されております。人体に害のない場合に限り厚生大臣が認める、こういう例外的な取り扱いで、きわめてきびしい態度をとっておるわけであります。  その場合に、ただいま御指摘のような問題は、いわば食品の製造過程というふうにとれるかどうかの問題でございますが、ただいままでのところでは、一応製造の過程とはみなさないという解釈を従来からとってきたわけでございます。ただ、御指摘の意味はよくわかりますが、農薬等の問題その他も出ておるような状況でございますので、今後の問題としては十分検討したいと思いますが、ただいままでの法律的な解釈といたしましては、製造工程中に添加するものではないという一応の解釈をとっております。
  233. 河野正

    ○河野(正)委員 製造工程中にマンガンを使ったものではない、その点はわれわれわかるのですが、私が御指摘を申し上げておるのは、クロレラの培養のためにマンガンを使っておったということがこの報告書に出ておるわけですからね。そういうように間接的には使ってよろしいのかどうかですね。また、間接的に使ってよろしいということになれば、ここで一つ疑惑がわきますのは、一体どの時点で使ったのかということについてはなかなか現認ができませんね。そこで一つの疑惑が出てくると思うのです。それは、旨い分としては間接的に使ったということでしょうけれども、間接的に使ったのか、あるいはストレートに直接使ったのかということについては、なかなか現認はできないと思うのです。ですからそういう疑わしいことが許されていいのかどうかですね。そういう点を私どもは強く感ずるわけです。ですから間接的には使ってもそれは添加物とみなさないのかどうかですね。その点私はここではっきりしておいたほうが将来にもいろいろな疑問を抱かせずに済む。これは建設的に申し上げておるのです。ですからそういう意味でひとつ率直にお答えいただきたいと思います。
  234. 松尾正雄

    ○松尾説明員 間接的に使いましたときのものは添加物かどうかという問題でございますが、例があるいは間違えておるのかもわかりませんけれども、米という植物の栽培をいたしますときにいろいろな肥料を使います。その米を使ってある食品、別のものを加工するという問題のときに想像する問題に似ているかと存じます。米に肥料をやりますこと自体については、植物の栽培として必要であれば、従来はずっと認めてきております。ただ。その米を使って他の製品をつくりますときに、何ものかを入れる、添加することは非常にきびしく制限をしなければならない、こういう解釈でいままではやっておるということでございます。
  235. 河野正

    ○河野(正)委員 これもたいへんなことで、これは私ども委員会でもかつて例の農薬の散布の際問題になったのです。要するに、人体に有害な農薬を使うことは、米を通して有毒物質が人体に入ってくるということで水銀農薬が禁止になった。これは国会でも騒がれまして禁止になった。そういう事例があるわけです。たまたまそういう事例をやられると、水銀農薬を使ってもよろしいという結果になるのですよ。これはたいへんなことで、私ども委員会のいままでの審議の状況から見ても、全く委員会の審議から逆行する答弁だと思うのです。これはそうなったらたいへんですよ。
  236. 松尾正雄

    ○松尾説明員 添加物として認めるかという御解釈でございましたので、ああいうお答えを申し上げたわけでございまして、食品全体として一番上安全な方法をとる道としてそういうものをどうだという御質問であれば、私はやはりそのもとから許すべきではない、こういう姿勢でございます。ただ、添加物として認めるかどうかという法律上の解釈という御質問でございましたので、従来の見解を申し述べたような次第でございます。
  237. 河野正

    ○河野(正)委員 ことばを慎んでもらわぬと、いまのような例をあげて御答弁されると、委員会の論議と全く逆行する御説明をなさったことになるわけです。たまたま米の問題がこの委員会で問題になったわけです。それが結果的には水銀農薬を禁止するという結果になったのですね。ですから、間接的に使うことが人体に及ぼす影響というものが非常に大きなものがあるということは、この委員会では米の問題が明らかになっておるわけです。ですから、添加物として認めるか認めぬかということは別として、いま局長が御答弁なさったことは非常に重大なことなんです。それと同様に、有害物を間接的に使ってもやはりそのことが人体に悪影響を及ぼすことがあるということは、これは水銀農薬が示しておるわけですね。いみじくもあなたが御答弁なさったように、水銀農薬が示しておるわけですね。そういう意味で、間接的に使うことは添加物でないという判断に立たれても、その有害物を間接的に使うことが非常に害毒を及ぼす危険性があるということを水銀農薬が物語っておるわけですからね。そういう意味で私は、そういう間接的に使うことがいいかどうかということの見解をここであらためて承っておるわけですから、もう少しわかりやすく答えてください。話が少しわき道にそれましたから。
  238. 松尾正雄

    ○松尾説明員 例にあげましたことがたいへん穏当を欠きましたことはおわび申し上げたいと思いますが、後段に申し上げましたように、間接的であろうと食品の中に混入するおそれがあるようなものをもとで使うということは、これはできるだけ避けるような方向で対処すべきだと感じております。
  239. 河野正

    ○河野(正)委員 私は、間接的であっても、いま局長が避けるべきだという御見解を述べられたように、間接的に添加をしても、混入をしても、水銀農薬じゃございませんけれども、それが人体に悪影響を及ぼすという事例があるわけですから、そういう意味でひとつこの問題については対処していただきたい、こういうように考えます。  それから、ヤクルト原液製造工場ではマンガンを添加してないことを調査の時点において確認をしたということですね。過去についての見解は四項目で御報告のとおりでございますが、それは確認できなかった。どういう意味で確認できなかったかということは、司法権、警察権がなかったから確認できなかったというふうに理解していいわけですね。
  240. 松尾正雄

    ○松尾説明員 調査の時点において確認できなかったということの問題は、一つは、御承知のとおり、ヤクルトのような製品というものは、つくられましてきわめて短時間のうちに消費されてしまう、こういうものでございまして、あとに証拠というものをつかまえることができないという問題がございます。それからもう一つは、食品御生法等でいろいろ質問をいたしましたり帳簿等を点検するということは可能でございますが、それをやりました範囲でも確認できなかった、こういう二つの点でございます。
  241. 河野正

    ○河野(正)委員 まあ製品が直ちに消費される、そこでなかなか追及ができない。あるいはその他調査されたでございましょうけれども、厚生省の権限の範囲ではなかなか調査しにくい面もございましょう。その点が四項目にいわれておる、司法権、警察権というものがないので十分な調査ができなかった、そういうことも手伝って確認できなかったというふうに私どもは考えておるわけですが、その点についてはいま触れられなかったようでございますが、その点についてはいかがでございますか。
  242. 松尾正雄

    ○松尾説明員 お説のとおり、与えられた権限内ではできません。さらに真偽のほどというものは私たちの権限の外だというようなことで申し上げたわけであります。
  243. 河野正

    ○河野(正)委員 それから、これはまあいろいろ私どもにお尋ねになる向きが多いから申し上げるわけでございますけれども、この結果報告の三項目目に、「製品クロレラヤクルトについてのマンガンの含有量は、水道法による水道水の許容量以下であって、衛生上危険はないと認められた。」なるほど専門的に申し上げるとそういう表現もあると思うけれども、この点が非常に誤解を受ける原因になっておると私は思うのです。と申し上げますのは、なぜ水道水の許容量以下というふうな表現が用いられたか。というのは、乳酸菌飲料の中身の大部分はこれは水分ですよ。九〇%以上水ですよ。ですから水道を使っておれば、当然水道程度のマンガンというのは含有量があるはずですね。ですから、この水道法による水道水の許容量以下で衛生上危険がないという表現のしかたというものは、いかがなものであろうかと思うのです。そこで、新聞報道を見てみると、水道よりもマンガン量が少なかったという、前局長でございますけれども、舘林局長の寸足らずの談話が出ておる。そこで、水分が九〇%以上あるのに何で水以下の含有量だろうか、こういう点がかなりやはり一般の国民に疑惑を与える原因になっておると思う。ですから、専門的には許容量ということでしょうけれども、しかし、そういうことは国民一般には理解しにくいだろうから、そういう表現のしかたについても一考を要する問題があるのじゃないかというように感じます。それは御忠告を申し上げておきます。  それから、広い意味での保健飲料、これは乳酸菌のみならず、たとえば牛乳においても言えると思うのですが、こういう問題がやはり世間が関心を持った——私はある意味においては、この私どもの発言については議論のあるところですけれども、やはり一日に七百万に及ぶ乳酸菌飲料人口というものがあるわけですから、そういう意味では乳酸菌の国民の健康に及ぼす影響というものは非常に甚大なものがあるわけです。そういう意味で国民がこの乳酸菌飲料問題について関心を持ったという点については、一つの成果だったと思うわけです。  それからまた、業界もいろいろ疑惑を招いて、非常にお困りになった業界もあるかもわかりません。ですけれども、正しいことは正しいわけですから、そういう意味では、疑惑が晴れれば、今後国民が正しく認識するという意味においては、私はやはり一つの進歩だったと思うのです。そういう意味で私は、必ずしも今度の——雑誌等によると爆弾発言なんということばが使われておりますけれども、そういう意味ではなくて、国民に一つの関心を持たせ、また業界に対しては一つの警告を与えるという意味においては、ある意味の効果というものは確かにあったというふうに私どもは評価をいたしております。  と同時に、そういう評価もあったでしょう、最近私のところに、牛乳業界においてもかなり問題がある、それは牛乳に植物性の油脂が混入されておるといううわさがある。これは時間もございませんから多くを申し上げることはできませんけれども、たとえば、さきに筑波乳業、守山乳業が、バターをつくって、そのバターに植物性の油脂が入っておったというようなことで、不当表示ということで摘発されたという事例もございます。そういう事例もあったと思いまするけれども、牛乳においても、乳のあぶらじゃなくて植物性の油脂が入っておる、こういう心配をされておる向きがございますので、その点について厚生省は、今日までそういう分離検査あるいは立ち入り検査等をおやりになったことがあるのかどうか、この点についてひとつ御見解を承っておきたいと思います。
  244. 松尾正雄

    ○松尾説明員 ただいま御指摘の、牛乳等に植物性の油脂を入れるという問題につきましては、東京においても過去にすでに摘発をされて処分をされたような事例もございます。特に牛乳関係につきまして、乳製品関係につきましては、食品衛生面でも非常に重視をして、常時検査をしているわけでございまして、もちろん規格基準というようなものが、先ほど御指摘のように、非常に大事な食品であるという観点からきめられておりますので、そういうものを混入するとすれば、明らかに食品衛生法の規格基準を設定した条項に違反をするということで、きびしい態度で摘発するような態度を続けております。
  245. 河野正

    ○河野(正)委員 実は牛乳には油脂が三・二%入っておるのが基準だそうですね。ところが、この生産量が少ないものですから、メーカーで牛乳を確保するために非常にあの手この手で努力をやっておる、こういうことのようです。そこで、ある程度の牛乳を確保するためには、価格を高くして買い入れるか何か、やはり特別の条件を出さなければならぬ。そうすることが結果的には高く仕入れておるわけですから、そこでできるだけ生産コストを下げなければならぬというところから、植物性油脂を混入する。大体〇・一%油脂を減らしますと八十銭安くなるそうですね。生産量が少ないものですから、牛乳メーカーがあっちからこっちから取り合いをする。その際高く買い込む。そうすると今度は、消費者に売る場合には、高く売るわけにはまいりませんから、そこで質を落とす。質を落とすには、いま申し上げたように、油脂を減らすのが一番手っとり早い、こういうことが植物性油脂を混入したであろうといううわさが出てくる根源になっておるようですね。そこで、この点はいま局長からも厳重に検査をするというようなことでございますから、ぜひひとつ国民の健康を守るために厳重に規格が守られるように善処をしてもらいたいと思うのです。保健飲料に関連をしてぜひその点をお願いしておきたいと思います。  それから業界もこの際姿勢を正してもらわなければならぬ。それから厚生省もやはり姿勢を正す必要があるというふうに私ども思います。特に厚生省の元児童局長が乳酸菌飲料の重要なポストにおられる事例もございますし、それからさらに今度ヤクルト問題がいろいろ騒がれた。そういう騒がれた最中におやめになった乳肉衛生課長もおられるわけで、そういうことがやはり厚生省の姿勢というものはいかがなものだろうということで疑惑を招いた一因になっておると私は思うのです。特にこの乳肉衛生課長が唐突としてこの十九日におやめになったということは、やはり一そう疑惑を招く結果になっておると思う。この点は特に国家公務員法の規定もあるわけでございますが、そういう当事者でございます乳肉衛生課長辞任という問題のごときも、やはり厚生省の姿勢を正す意味において当然大臣も御検討せらるべき筋だと私は思うのです。こういう厚生省の姿勢を正すという点について、ひとつこの点は大臣から御見解を承っておきたいと思います。
  246. 坊秀男

    ○坊国務大臣 国会でのいろいろの御意見というものは、これはもう自由に御意見を戦わしていただいて、私どももそれを率直に承るというのが国会の土俵場の性質だと思います。さような意味におきまして、河野委員から前回の委員会におきまして御発言があったというこのヤクルトの問題というものも、これは私どもといたしましては、ヤクルトのみの問題ということではなしに、一般の厚生行政に対する非常にきびしい警告をいただいたものだ、かように解釈をいたしまして、今後とも食品衛生といったようなものについてはさらに気をつけてまいりたい、ただ、御警告がないからルーズにする、さようなつもりは毛頭ございませんけれども、なお一そうこれはきびしくやっていく、警告をいただいたものと拝承してまいりたいと考えております。  それから、こういったような矢先に厚生省の特定のポストにおった人間が今度やめたということには、なにかこの問題と関係があるのじゃないか、こういうお話でございますが、これは責任を持ちまして、私は全然今度の問題とは関係がありませんということを申し上げたい。唐突とおっしゃいますけれども、この特定の方はずいぶん長く厚生省におられまして、一つのポストにも長くおられたというようなことでございまして、前々から、そろそろポストをかえるなり勇退なりをしてもらおうか、こういうようなことでございまして、唐突というようなことではございませんことを、ひとつ御理解をお願いしたいと思います。  なお、そういったようなことが世間に対して疑惑の的になるじゃないか、こういう御意見でございますが、さような点につきましては私は今後とも十分気をつけてまいりたい、かように考えます。
  247. 河野正

    ○河野(正)委員 私は唐突ということばを使いましたが、それは、こういう乳酸菌飲料が物議をかもすさなかにおやめになり、しかも、転身をされる先はやはり乳業界であるということが決定をいたしておるわけですね。いま御病気で御入院中だ、加療中だということでございますから、それはそれで私どもも御同情申し上げるわけですけれども、健康が回復して、その上に立って再就職ということなら話はわかるけれども、病気加療中のために厚生省で任務を遂行することはその任にたえぬといいながら、一方においてはすでに乳業界のほうに転身なさるということが決定をしておる。こういうことが結果的には非常に世間に疑惑を抱かせる結果になっておるわけですから、私が唐突ということばをあえて使ったのはそういう経緯があるわけでございます。しかし私はその問題をここでいろいろ言うのが目的じゃございません。ただ、せっかくこのヤクルトに限らず乳酸菌飲料問題がこれほど国民に関心を持たれたわけですから、この際、国民の健康保持のため、あるいは増進のためにも、ひとつお互いに姿勢を正してやっていこうじゃないか、そういう意味で私は建設的に申し上げているわけですから、これ以上に追及しようと思いません。それはいろいろ言おうと思えばまだ言いたいことはあります。この問題についてもあります。ありますけれども、それを申し上げるのが目的でございませんので、これ以上申し上げません。申し上げませんが、要は、厚生省もやはりこういう国民の健康を守る問題については、ぜひ国民から疑惑を招かないようにやってほしいということを強く要望をしておきたいと思います。いろいろ申し上げましたが、この現状において有毒マンガンが入っておらぬということについては、それは率直に厚生省の方針どおり私ども容認するにやおさかでございません。ただ、過去においての疑惑というものが必ずしも払拭されたわけではございませんし、厚生省も警察権がないので十分な調査ができなかった、そのために確認できなかったという御発表ですから、私どももそういうふうに理解をいたします。そこで問題は、禍を転じて福となすということばも使われておるようでございますが、要は、今後このような国民の健康を阻害するような疑惑を持たれるような事態というものが起こってこぬように、業界におきまする指導、監督というものをぜひひとつ強化をしてほしいと思うし、再びこのような問題が起こらぬような善処というものをぜひお願いを申し上げておきたいと思います。そういう意味で大臣からの御見解と御決意を最後に承っておきたいと思います。
  248. 坊秀男

    ○坊国務大臣 食品衛生というものは、これは国民の健康を保持していく上におきましては最も大事な問題でございます。先ほどからだんだんと河野委員から御意見がございましたが、私どももその御意見の筋においては全く同感でございます。でき得る限り今後食品衛生上の問題が生じないように、私は十分の指導、取り締まり、監督をやってまいるつもりでございます。
  249. 河野正

    ○河野(正)委員 最後にぜひ大臣にお願いをしておきたいと思いますのは、厚生省もいま大臣が率直に今後の決意、方針というものを述べられたわけですが、やはり業界に対しても、やはりこれを契機として姿勢を正すような警告と申しますか、あるいは指導と申しますか、そういうものをぜひやっていただいて、そうしてそのために国民が今後安心するという問題もありましょうし、そういう意味での指導をぜひひとつやってもらいたいと思いますが、その点についてはいかがですか。
  250. 坊秀男

    ○坊国務大臣 近来商品としての食品のバラエティーがますます複雑多岐をきわめてまいっております。そういったようなときに、価格の問題、表示の問題、それから中の成分の問題といったようなものについては、私は、複雑であればあるほどいろいろな問題が生ずる可能性——必ずしも生ずるとは申しませんけれども、そういったような環境が醸成されてくるであろうと考えますので、そういったような点につきましても、今後いろいろな措置を考えまして、万全の対策をとってまいりたい、かように考えます。
  251. 川野芳滿

    川野委員長 ヤクルト問題について田畑委員から関連質問がしたいとの申し出がありましたので、これを許します。田畑金光君。
  252. 田畑金光

    ○田畑委員 厚生大臣並びに局長に関連でお尋ねしますが、私は河野議員のように専門家でないので、したがって、科学的なこまかな点にわたっての質問はできないのでありますが、実は、たまたま本日けさほど、私はもとヤクルト工場におられたという武智芳郎医学博士の訪問を受けて話を承ったわけです。そこでこの際、先ほど来の大臣の答弁をお聞きし、またこの間この委員会で河野議員が質問された速記録を読んで、私なりにいろいろただしてみたいという点が出てきましたので、二、三ひとつこの際明瞭にしていただきたい、こう思っております。先ほど大臣の答弁によりますと、日本クロレラ株式会社を九月の十四日に現地調査をされた。その結果、クロレラ培養のために微量マンガンを使用したことが判明した。第二は、しかしヤクルト工場ではマンガンを使用した形跡を認めなかった、こういう御答弁がございました。それで、第一に私がお尋ねしたいのは、局長答弁の中にありましたが、直接の製造過程ではマンガンを使用しなかったかもしれぬが、一番大事なクロレラ抽出液そのものにはマンガンを使用したということは、厚生省の調査の結果認めておいでになるわけです。しからば食品衛生法第四条ないし第六条の精神というのは、私たちがすなおにこの条文を読めば、製造過程に使わなかったから差しつかえないというものではなくして、その一番大事なクロレラの抽出液そのものにマンガンを入れて使っていた。それで、乳酸菌の発酵が非常に短い時間で、しかも多量にできるというコスト面も手伝ったのであろうが、それをクロレラヤクルトの会社で使っていたということは、明らかに食品衛生法違反であると私は考えるのだが、その点をもう一度明確にしていただきたいと思うのです。
  253. 松尾正雄

    ○松尾説明員 お答えいたします。食品衛生法の第二条の中に「この法律で添加物とは、食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用する物をいう。」という定義がございまして、その定義を使いまして一応先ほどのような法律上の解釈になっておりますということを申し上げたわけでございます。ただ、そのもとの問題について、それでいいのかという問題については、先ほど河野委員に対しましてお答え申し上げました姿勢であるということでございます。
  254. 田畑金光

    ○田畑委員 私は率直に答えていただきたいと思うのですが、回りくどい答え方ではのみ込めない。クロレラ抽出液にマンガンを使って、それをヤクルト工場で使用してきたということは、食品衛生法第六条の化学的合成品等の販売等の禁止の条文に明らかに触れるものだ、こう私たちは理解するが、その点をはっきり答えていただきたい。
  255. 松尾正雄

    ○松尾説明員 クロレラというものを培養する過程における添加物といいますか、それを加えたということでございまして、先ほど来申し上げておりますように、食品の製造過程における添加物という考えはとっていなかった、こういうことでございます。
  256. 田畑金光

    ○田畑委員 そうすると、局長のいまの答えは、最終の製造工程で使ってないということだが、マンガンをストレートで使うことをしなければ差しつかえないのかどうか。クロレラ抽出液にマンガンを入れて、それによって乳酸菌の発酵を増進して、短い時間に多量につくる、そしてコストを安くする、そういう方法を取り入れたということは、食品衛生法のたてまえから見て許されることなのかどうか、それをはっきり答えてもらいたい。
  257. 松尾正雄

    ○松尾説明員 クロレラの抽出液を乳酸菌に作用させる際にマンガンを入れたということであれば、これは違反でございます。クロレラの抽出液に入れることは絶対に認めていないわけでございます。
  258. 田畑金光

    ○田畑委員 先ほどのあなた方厚生省の調査の結果の報告ですが、ヤクルト製造会社、ヤクルトの本社ですか、それからヤクルト製造工場、あるいはいまお話しの日本クロレラ株式会社というのがあるわけですね。日本クロレラ株式会社ではマンガンを使用しておることが判明した、ヤクルト工場ではマンガンを使用していない、こういうことですね。一体ヤクルト本社と日本クロレラ株式会社との関係はどんな関係なんですか。これは御存じでしょう。
  259. 松尾正雄

    ○松尾説明員 クロレラを培養しております日本クロレラ株式会社とヤクルトを製造しておりますのは別会社と聞いております。ただそのクロレラをヤクルトの乳酸菌発酵の際に使うという関係にあることは十分承知しております。
  260. 田畑金光

    ○田畑委員 あなた方が知らぬはずはないでしょう。私の調査によれば、日本クロレラ株式会社という会社の株式は一〇〇%ヤクルトの本社が持って、役員の顔ぶれ、それから技術者等もすべてヤクルト本社関係者が兼ねておる。言うならば、ヤクルト本社直営の一原料工場にすぎない、そういう性格なものだと私は調査の結果聞いておるのだが、これはどうなんです。あなた方がそれはいままで知らぬ存ぜぬなんという答えをすること自体が、先ほど河野議員から質問を受けたように、疑わしい気持ちを与えるのじゃないですか。そんなことを知らぬはずないでしょう。率直に答えなさい。
  261. 松尾正雄

    ○松尾説明員 私自身はつまびらかに存じないのでございますが、非常に近い関係にあるということは承知しておった模様でございます。
  262. 田畑金光

    ○田畑委員 私がいま言ったことが事実に反するかどうか、すみやかにひとつ調査の上、資料をこの委員会に出してください。これはいいですね、委員長
  263. 川野芳滿

    川野委員長 どうですか、いまの資料。
  264. 松尾正雄

    ○松尾説明員 けっこうでございます。
  265. 川野芳滿

    川野委員長 出すそうですから。
  266. 田畑金光

    ○田畑委員 そういうような日本ヤクルト会社であるのですが、それはさておいて、先ほどの大臣の答弁を聞いておると、とにかくほかから購入した原料であるが、その原料でこの食品衛生法上禁止されておるマンガンを使っていても一向差しつかえない、こういうのがいまの食品衛生法のたてまえなのかどうか、この点もう一度ひとつ明確に答弁してください。
  267. 松尾正雄

    ○松尾説明員 食品衛生法上のたてまえで言いますと、たとえば残留しておるというような問題の場合、その残留しているものが人体に有害であるというときに大もとをとめていく、こういう精神でございます。
  268. 田畑金光

    ○田畑委員 局長、私は冒頭断わったように、こういう問題についてよく科学的な知識がないので、事こまかなことはあなたを追及することもできぬけれども、しかしマンガンは、先ほど来聞いておると、人体にも、自然の水の中にもある、あるいは野菜にもある、こういうわけですね。しかし、その自然の水にあるマンガンじゃなくして、その原料にマンガンをとにかく使って、それが製品として出てくるわけだが、その製品の段階では、なるほど多量の製品の中で、したがってマンガンの含有量も、あるいは人体に直接影響を及ぼすほどの量でないかもしれぬが、元来この種の有毒物質というのは、だんだん長く飲んでおれば人体に影響を及ぼすというように私たちは理解しておるわけなんです。ところが、あなたの答えを聞いておると、その最終製品段階で人体に及ぼすほどの有毒童がないとすれば一向差しつかえないのだ、こういうような答弁だが、しかし、そういうような考え方でこの食品衛生法というのはできていないと私は解釈しておるのだが、それはさらに後ほどお尋ねすることにします。  次に、あなたのほうのお話では、過去にマンガンを添加したことが確証できなかったというような御答弁がございましたが、昭和四十二年十月一日の新名古屋新聞の紙上に、各地区保健所を通じて収去され分析されたと思われるヤクルト、ヤクルト原液、希釈用水、クロレラ抽出液等中に含まれているマンガン検出量について一覧表が掲載されておる。一般には製品となったヤクルト中のマンガン含有量のみが注目されているようであるが、本件のかぎともいわれるようなクロレラ抽出液の中のマンガン含有量について何ら考えられることなく見過ごされる傾向がある。というのは、いまの局長答弁はそのままですね。この十月一日の新名古園新聞に掲載されたこの資料によれば、北海道で昭和四十年十月七日検出した結果は二四PPMのマンガンが出たということがはっきり出ているわけです。これはあなた方は知らぬなどと言える資料じゃないわけですね。このことは、私の聞いたところによれば、厚生省の国立衛生試験所分析担当技官、国立栄養研究所等々でも、調査の結果ヤクルトにマンガンを使っているということを明確に明言しているということを私は聞いておるわけです。   〔委員長退席、橋本(龍)委員長代理着席〕 いずれにしても、あなた方は、先ほど過去のことを調べてみたがなかなかわからぬでとうまく体をかわされたけれども、北海道のいまあげました昭和四十年十月七日のこの資料は御存じですか、御存じないのですか。
  269. 松尾正雄

    ○松尾説明員 四十年十月に北海道で行なわれたデータについては承知いたしております。
  270. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員長代理 田畑委員に申し上げますが、関連質問ですのでできるだけ簡潔にお願いをいたします。
  271. 田畑金光

    ○田畑委員 承知していたということはあなたは明確にお話しなさったが、先ほどの、過去については調査しても資料がない、把握の方法もない、こういうような答弁と食い違っておるじゃありませんか。過去においてすでにこのような分析結果が出ておるということは、あなたはお認めになったとすれば、その時点において皆さんは何をなされたのか、それをお答えを願いたい。
  272. 松尾正雄

    ○松尾説明員 当時そういう分析結果をわが局でも承知をしておったようでございますが、そのときの最終のマンガンの量がたしか〇・二八PPM等であったと思います。したがいまして、その程度であればいわゆる製品としての危険性はない、こういう判断をその当時下しておった。そういう意味ではその資料を承知しておったということでございます。
  273. 田畑金光

    ○田畑委員 そうしますと、これは私の取り上げた資料は正確でないとあなたはお話しになるのですか。さらに先ほどの大臣の答弁とまた食い違ってくることは、昭和四十二年九月十四日神奈川県でやった調査の結果は一二・一PPMが出ておる。あるいは一三・PPMが出ておる。佐賀県のごときは昭和四十二年九月十六日に五八PPMが出てきたということがすでに明らかになっておる。これはどうなんですか。
  274. 松尾正雄

    ○松尾説明員 九月の月に調査されましたような資料は、先ほどの当方からいろいろな指示によりまして行なわれたものでございまして、非常に傷いものが出ておりますものはいわばクロレラの抽出液であり、あるいはクロレラの原液であり、こういう状態のものは相当おっしゃったとおり高いのでございます。それをさらに使ってまいりまして、希釈して乳酸菌に使う、その薄めていった最後の段階がどうであったかということでいえば先ほど大臣が申し上げたようにその点は安心であった、こういうことでございます。ただいまの御指摘のその日付の資料は大臣が申し上げたときの基礎になっておる資料でございます。
  275. 田畑金光

    ○田畑委員 あなた方の答弁を聞いておりますと、もうちょっとこれはいろいろな角度から掘り下げてさらに質問をしなければならぬと思うのですがね。  さらに、もう一つお尋ねしておきたいことは、答弁の中で、司法権を持たないので過去にさかのぼっては調査できなかったというようなことですが、この点は、食品衛生法違反の問題として、過去においても現在においても刑事問題としてこれが取り上げられたことがない、こういうことなんですか。
  276. 松尾正雄

    ○松尾説明員 いまあるいは過去においてそれがそういうふうな、取り上げられたのか、こういう意味でそれをお書き申し上げたわけではございませんで、私どものほうの権限がそこへ及びませんのでという意味の釈明と申しますか、そういう意味で私自身申し上げておるわけでございます。
  277. 田畑金光

    ○田畑委員 厚生省の権限の限界ということはそれはありましょう。それば当然われわれとしても認めるにやぶさかではない。だがしかし、この食品衛生法第六条の違反問題として、ヤクルト会社に検察庁がすでに動き出しておる、この事実は御存じですか。
  278. 松尾正雄

    ○松尾説明員 その問題については承知いたしておりません。
  279. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員長代理 田畑委員に申し上げますが、もう時間として、公害対策の特別委員会に先刻から実は厚生大臣の出席要求がきております。関連ですので、あと一問程度で終了をしていただきたいと思います。
  280. 田畑金光

    ○田畑委員 あなた、まだそれを聞いてないというのですか、厚生省がその問題を聞いていないというのですか、そんなことないでしょう。私の知る限りにおいては、食品衛生法六条違反問題としてヤクルト本社ほか二名がすでに検察庁で取り調べを受けておるということを確かに私は聞いておるし、また参考人として、証人としての呼び出し状などについても私はこの目で見ておりますが、厚生省としては御存じないわけですか。
  281. 松尾正雄

    ○松尾説明員 先ほども申し上げたとおり、存じておりません。
  282. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員長代理 これ一問で終了していただきます。
  283. 田畑金光

    ○田畑委員 委員長、私は河野議員の質問のあとに、厚生大臣に質問することを通告しておるわけです。いいですか。したがって、産業公害特別委員会に呼ばれようと、河野議員の質問のあと私は当然時間を設定して質問するということは、先ほど来了承されておるわけです。
  284. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員長代理 関連質問でございますから……。
  285. 田畑金光

    ○田畑委員 ただ私の質問は、せっかく河野議員がこの問題を取り上げたからこの際は関連という形で質問をしておいたほうがよかろう、こう判断したからやっておるわけで、したがって、そういう意味でやっておりまするから御了承願いたいということです。
  286. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員長代理 田畑委員に申し上げますが、私の申し上げておりますのは、これは田畑委員の正規の御質問であれば、それこそ時間のあります限りおやりいただいても私から何ら御注意申し上げるという点はありません。ただし、河野委員の関連質問ですから、関連の範囲にとどめていただきます。
  287. 田畑金光

    ○田畑委員 わかりました。まあそんなこと雑談してもしょうがない……。  それで、この点はあなたは知らない知らないというお話のようだから、これは委員長にひとつ次の機会に法務大臣に御出席を願って、食品衛生法六条違反問題としていま検察庁が捜査しているということを私は聞いておりますので、それがあるかないかということを私は次の機会に法務大臣の御出席を求めてお尋ねしたいと思いますから、委員長において、次の委員会にはぜひひとつそのことを御配慮いただきたい、こう考えておるわけです。  私は関連質問だから早急にやめてくれというふうな委員長からの希望もありますからこれ以上追及するのはどうかとも思いますが、冒頭申し上げたように、私けさほど、武智芳郎博士の訪問を受けて、実は「厚生大臣坊秀雄殿、株式会社ヤクルト本社マンガン事件に関する件」五月二十九日と十月六日、大臣あてに送られた文書、これを見たのでございますが、もっともこれは私一方的に話を聞いておるということであるかもしれぬし、あるいは他方からまた話を聞けばまた別の主張が出るかもしれぬ。したがって、これについて私も時間をかけてもっと調査したいと、こう考えておりますが、この書類については厚生大臣のほうにじかにいっておるわけですから御存じでないはずはないと思うのです。御存じでないはずはない。だから、先ほど来の御答弁を承っておりますと、問題の核心に触れないで、とにかく最終の製造段階で使っていないから、これは食品衛生法違反でないんだというような形で逃げておられますが、これはどうも私はお粗末じゃないかと思うんですね。国民の健康と生命を守る重要な職責をになう厚生大臣としては、もっとこういう問題については客観的にも何が問題かということを掘り下げて検討願って、もし間違っておるのならばそれを正すくらいの勇気を持ってもらわぬと国民は安心して厚生行政をおまかせするということはできない、こう私は心配するからあえて関連質問で申し上げたわけです。今後またさらに私自身も調査をして、次の機会に先ほど来の問題を十分お尋ねしたい、こう考えております。願わくば先ほど申し上げた資料についてはなるべく早い機会に提出を願いたいと考えます。
  288. 河野正

    ○河野(正)委員 保健飲料についてはひとつ国民の健康を守るという立場からぜひ業界、それから関係官庁の善処を願っておきたいと思います。  それから、時間が非常に進んでまいりましたし、公害対策のほうからもぜひ厚生大臣というような御意向もございますから、あとは端的にお尋ねしますので、厚生大臣も率直明快にお答えをいただきたいと思います。  そこで、第一にお尋ねをいたしますが、それはいよいよ中医協の建議によりまして医療費が上がるということでございますが、これは十二月に上がりますか、一月に上がりますか。
  289. 坊秀男

    ○坊国務大臣 中医協の診療報酬体系の改正でございますが、これは一月ということになっておりますが、私といたしましてはできるだけ早くこれを実施したい、かように考えております。
  290. 河野正

    ○河野(正)委員 時間がございませんから、私も率直にお尋ねしますので、厚生大臣も率直にひとつお答えいただきたいと思う。なるべく早くといっても、何も十月に上げるわけにいかぬわけですから、もう十二月か一月にしぼられたと思うのです。ですから十二月にお上げになるのか一月か、どっちか一つ答えてください。
  291. 坊秀男

    ○坊国務大臣 目下のところは、私はできるだけすみやかにということを申し上げたいと思います。
  292. 河野正

    ○河野(正)委員 そういう抽象的な議論になると時間がかかりますから、私も端的にお尋ねするから端的にお答え願いたいと言っておるわけです。薬価基準は十月から無理やりにお下げになっておるわけですね。これは官報が二転三転して、保険局長によると前の局長が全くでたらめであった。保険局長がいみじくも言っておるように、全くむちゃくちゃな形で薬価基準の引き下げが行なわれておる。ですから、医療費の引き上げについても大胆の決断があれば、十二月なら十二月からと言えるわけです。なるべく早くといっても十月というわけにいかぬでしょう。だから十二月か一月か言ってくださいよ。時間の節約……。
  293. 坊秀男

    ○坊国務大臣 時間の節約でございますが、ただいまの段階におきましてはこれは一月か十二月かと聞かれましても、一月ということになっておりますけれども、できるだけそれを繰り上げて私はやりたい、かように考えておるということを申し上げます。
  294. 河野正

    ○河野(正)委員 そうすると、十二月ということで努力したいということですね。
  295. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私はできるだけ十二月にやるべく努力をしたい、かように思います。
  296. 河野正

    ○河野(正)委員 十二月に医療費が上げられると仮定いたしますね。一方薬価基準は十月に引き下げられる。そうしますと、大体薬価基準の引き下げを医療費に地ならしいたしますると三・八%くらい、こう言われておりますね。そうしますと七・六八医療費が上げられても、そのうちの三・八は前もってマイナスになるわけですね。私は現在の医療費の中に、薬でもうけるとかもうけぬとかいう議論がございますが、そういう議論はさておいて、やはり現状の上に立って医業所得というものを増さなければならぬ。それは一般の公務員だって同じことだと思うのですよ。たとえば暫定手当とかいわゆる地域給とか、いろいろな矛盾があると思う。ですけれども、それはそのままにして、やはり何%かの給与というものが上がっておると思うのです。一つの既得権みたいになっておると思うのです。ところが、医療費は上がるが、その前に薬価基準が下げられるということはどういうことでしょうか。
  297. 坊秀男

    ○坊国務大臣 医療費と薬価基準というものは、確かに実質的には非常に密接なる結びつきを持っております。そういった面から見れば、そういう結びつきがある。もう一つの面から見ますと薬価基準でございますが、この薬価基準というものは、薬価の実勢というものと隔たりがあってはいけない、こういうことがあろうと思います。そこで、この薬価につきましては、早く薬価を実勢に近づいた基準でもってきめていかなければならぬということは、これはもう当然厚生大臣に要請されることであったわけであります。それで私は就任以来この薬価基準につきまして、御承知のとおりだいぶおくれておりましたが、それを早く実勢価格に持っていきたい、こういうことで実はことしの二月の薬価というものを調べまして、しかもそれが販売サイドと申しますか、そういったようなところで調べて——そうしなければなかなか調べられぬ理由は十分御存じのことでございますが、そこで調べまして、できるだけすみやかに薬価基準を実勢で登載しよう。ところが、これは国会でも御指摘いただいたように非常に問題がございまして、そうしてできるだけすみやかにやろうと思っておった。すみやかということは、二月の薬価を調べまして七、八月のころにこれを登載しよう、こういうことを考えておったわけでございますが、それが例の私どもとしては思いも寄らぬような御指摘のような国会の事態がございまして、そのためこれが延び延びとなってまいったというようなことでございます。それにいたしましても、この薬価基準というものはできるだけすみやかに実勢の価格というものに近づけて、それに開きのないようなところに持っていくということが、特に今日の経済の、物価が上がるとか消費者物価がだんだん上がっていくというようなおりから、少なくとも薬価というものを、薬価基準に実勢価格というものを反映せしめていくということが、たとえ一ヵ月でも二ヵ月でも早くできればやっていこうということが、さような面から見ますれば、一つの政治であり、一つの行政であるというようなことで、今度の新しい薬価基準というものを十月から実施する、こういうことに相なった次第でございます。
  298. 河野正

    ○河野(正)委員 いろいろ追及する時間がないので——向こうで待っておる人がおりますので、残念ですが、ひとつ端的に申し上げます。  医療費の引き上げで医業収入というものがふえるわけですけれども、薬価基準の引き下げに見合って医業所得というものがどれだけふえることになりますか。十二月か一月かは別にして。
  299. 梅本純正

    ○梅本説明員 お答え申し上げます。  医療費の引き上げによりまして、現在のところまだ新点数を設定しますとか、あるいは入院料につきましてはおおむね八〇%——おおむねがついておりまして、作業いたしておりますが、最初に試算しましたところ、七・六八%の引き上げになります。薬価基準につきましては、さっき先生がおっしゃいましたように大体総医療費に見まして四%でございます。その差が引き上げになるということになります。
  300. 河野正

    ○河野(正)委員 大体その差が金額に直してどの程度になるのか。  それから、もう時間がございませんからもう一つ、その程度の医療費の引き上げで現在の経済情勢に見合っておるというふうにお考えか、この二点
  301. 梅本純正

    ○梅本説明員 詳しい計算は持っておりませんが、現在の総医療費が一兆四千億でございますので、一%は百四十億ということになります。現在の経済との関係でございますが、中央医療協議会で正式には四十九回の御審議を願いまして、公益委員の中には経済学者も含まれておりまして、その点も審議の過程においては十分お考えの上、ああいう建議が出たものというふうに考えております。
  302. 河野正

    ○河野(正)委員 公務員については人事院勧告が、何月かわからぬけれども実施されますね。われわれ完全実施と言っておるけれども。そういう公務員の給与の引き上げ率、それと民間における医療従事者の給与の引き上げというものが、いまのようなかっこうでバランスがとれるのかどうか。公務員を上げて民間の医療従事者はどうでもよろしいというようなお考えであるのかどうかですね。
  303. 梅本純正

    ○梅本説明員 今回の引き上げにつきましては、先生も御承知のように、やはり問題は従来からいわれておりました根本的な資料に欠けております。そういう意味で、医療側の御要望としては緊急是正というふうな御要望から出発したのでございますが、建議の内容をごらん願いますとおわかりになりますように、中央医療協議会の会長意見要旨というものにあらわれました中医協全体の考え方といたしましては、一歩でも二歩でも診療報酬の合理化の線に近づいていきたいというふうなお考えが、今回の建議に、御専門家であられます先生ごらんになられましたらあらわれていると思います。ただいまの御質問の点につきましては、やっと軌道に乗りましたいわゆる経営調査、そういう点はこの六日から中央医療協議会において行なう、厚生省じゃなくて中医協が行なうという形で、公益委員、それから医療側委員、それから支払い側委員、各委員が各ブロックに立ち会いで出ておられますが、その調査が順調に現在のところ進行いたしております。この調査の結果を待ちまして、現在先生のおっしゃいました点等につきましては抜本的に、診療報酬の適正化について検討を進めていただくということになっております。
  304. 河野正

    ○河野(正)委員 抜本的けっこうですけれども、やはり医療従事者といえども、これは公的医療機関であろうと民間の私的医療機関であろうと、同じ医療従事者ですよ。そういう同じ医療従事者の処遇を考えてみる場合に、今回の四%程度の医療費引き上げというものが適当な額であるかどうか。正直言って、いま民間医療従事者は医療費が上がったら、ぜひひとつ国家公務員並みに賃金を是正してもらいたいという非常に強い要望があるわけですね。そういう要望等もあるので、私どもはいま申し上げるようなお尋ねをしておるわけです。ですから、抜本改正もけっこうですけれども、当面をしてやっぱり民間の医療従事者の処遇改善をしなければならぬわけですから、そういう処遇の改善をするに値する医療費の引き上げというものは、当然はかってもらわなければならぬわけですね。そういう点がどうも、大臣、ちぐはぐの感じがするのです。それは厚生大臣としては、公務員であろうと、私的医療機関であろうと、医療従事者の処遇という問題については当然考えてもらわなければならぬ問題ですからね。そういう意味で今回の四%前後の医療費の改善というものが適切であるかどうか。適切であるかないか、それだけでけっこうです。時間がないから。
  305. 坊秀男

    ○坊国務大臣 先ほど局長お答え申し上げましたとおり、今度の建議の緊急是正でございますが、これは中医協の方々に長い間御審議を願いまして、緊急是正として建議をいただいておるのでございまして、私といたしましてはこれを尊重してまいる、こういう考えでございます。
  306. 河野正

    ○河野(正)委員 質問は端的に言っているわけだから、端的に答えてもらわぬと、的をはずすようなお答えになると、時間が長引きまして、公害対策委員会が大臣を待っておるわけです。私どもそういう公害対策委員会の議事運営に協力しようということで端的にお尋ねしているわけですから、厚生大臣もそういう私どもの気持ちに沿うていただきたいと思うのです。  そういう意味で、今回の医療費の引き上げというものが、緊急であろうとなかろうと、適切であったかどうか、はっきりひとつ端的に答えてください。
  307. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私は緊急是正としては、この程度のものであろうと思います。
  308. 河野正

    ○河野(正)委員 適当と……
  309. 坊秀男

    ○坊国務大臣 この程度のものと思います。
  310. 河野正

    ○河野(正)委員 これで厚生大臣いかに医療行政に対して誠意がないかということが明らかになりました。そこで、医療行政に対して厚生大臣が誠意がないことをここに明らかにいたしておいて、もう時間もございませんから、次の問題に移りたいと思います。  それは、今度、御承知のように特例法が制定をされて、そして、法律的にいうと長たらしいことばですが、健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律第二条第四項及び第五条第四項の規定による証明書というのが発行されておるわけですね。これはこの一部負担にも関連する問題でもございますし、当然公文書に該当する証明書であろうというふうに私ども理解するわけですが、その点はそのような理解でよろしゅうございますか。
  311. 加藤威二

    加藤説明員 先生御指摘のとおり公文書であろうと考えます。
  312. 河野正

    ○河野(正)委員 そうしますと、これの記載がたとえば不当な記載をされるということになれば、もちろん詐欺行為というものが当然発生いたしますね。  そこで、お尋ねいたしますが、この健康保険法及び船員保険法の特例法に基づきまする証明書というものが、公文書であるにもかかわらず、事業主にかってに白紙で配付されておる実情は、一体どういうことでございますか。
  313. 加藤威二

    加藤説明員 この証明書の配付につきまして、確かに先生御指摘のような例があったかとも思いますが、これは、あるいは御説明にはならぬかもしれませんけれども、私どもといたしましては、十月一日からできるだけ被保険者がこれを利用することができるように事務的に間に合わせたい、それを第一義的に考えたわけでございます。それで、御承知のように法律が通りましたのが時期的に、必ずしも事務的に十分に間に合うような時期でもなかったわけでございます。一ヵ月も余裕がなかったかと思いますが、そのために、十月一日に間に合わせるように、できるだけ多くの被保険者の該当者にこの証明書を手元にお渡しするということのためには、あるいは事業主の御協力を得るというような場合が生じたことがあろうかとも思いますが、確かに、公文書でございますので、そういう取り扱い方が法律的に申しまして非常に適切であるかどうかということになりますと、これは必ずしも適切であるとは申せないと思いますが、そういうような気持ちで、まあ白紙で渡せというようなことは私どもは指示いたしませんでしたけれども、できるだけ事業主の協力を得て、すみやかに該当の被保険者の手元に渡るようにという指示をいたしたわけでございます。
  314. 河野正

    ○河野(正)委員 大臣にお尋ねをいたしますが、そういう公文書に値するものを単に時間が足りないということで民間にまかせ切りにまかせていいものですか。たとえば税務署が令書を発行する場合に、時間がないから適当に事業主お書きなさい、こういうことが許せますか。私が申し上げたいのは、もう時間もございませんからはしょって申し上げますが、たとえばここで薬価基準が改定をされる、そうして医療担当者が誤って徴収した場合には行政処分があり得るというようなことを、保険局長は新聞で発表しているじゃないですか。民間についてはそういうようにきびしくやりながら、政府側、厚生省側は公文書をかってに事業主に渡して、適当にお書きなさい、こういうことが許せますか。大里、どうですか。
  315. 坊秀男

    ○坊国務大臣 証明書の用紙を渡して、これにかってに書き入れなさいというようなことは私はよろしくないと思います。しかるべき指示をいたしまして、正しくその指示に従って書いてもらいたいということなら——いま税金のお話がありましたが、これも私ははっきりと調べたわけではございません、たとえば、会社は税金の、源泉徴収をやっております。源泉徴収をやっておる際に、何の何がしは所得が幾らあって、それに対して源泉を幾らやっておるということ、これは私は単なる私文書じゃなかろうと思いますけれども、それが徴税当局の指示に従って正しく書いておるということで円満にいっておるのじゃなかろうか、かように考えます。
  316. 河野正

    ○河野(正)委員 そういうごまかしの答弁をしてはいかぬですよ。税金の令書を出す場合に、あなたは何万円納めなさいという令書をかってに民間に書かせますか。そうじゃないでしょう。今度の場合、この特例法に基づく証明書をかってに事業主に渡して、ひとつ事業主で記載しなさい、こういうことで公文書を渡しているじゃないですか。公文書の作成をかってに民間に委託していいのですか。そういうむちゃなことをやりながら、一方においては、薬価基準を間違えて医者が徴収した場合には行政処分もあり得るなんという、そういう一方的な談話を発表されておる。全くこれは政府としてつじつまが合わないですよ。こういう公文書に相当する書類を民間にかってに適当に書きなさいというようなことで渡すことが許されるかどうかという問題ですよ。大臣、どうですか。
  317. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私は、河野委員が税金の例をお引きになりましたから——だから令書のことを私は申し上げておるのではない。税金の令書というものは、これは明らかに当局がやる。ところが、源泉徴収を委託をしておるわけです。だから証明をかってに書けというようなことでやったら、これは私はよろしくないと思います。しかし、厚生省はさようなことを考えてはおりません。書くべきところをこういうふうに書いてもらいたい、こういうふうに指示をしておるということでございまするから、もし、あえてその指示に従わないで保険者が虚偽を書くということになれば、これはその保険者が責任を問われるということになろう、私はさように解釈いたします。
  318. 河野正

    ○河野(正)委員 それは当然政府がやるべきであって、民間にかってに書きなさいとやらせて、それで虚偽のことを書いたら処罰なんて、そんなばかなことないでしょう。当然政府が書いて渡すべきでしょう。社会保険事務所が書いて渡すべきでしょう。それを白紙を渡しておいて、それで間違ったら、それは結局処罰に値するなんて、そんなばかなことありますか。そうでしょう。当然、これは公文書ですから、社会保険事務所が書いて渡すべき性格のものでしょう。そうじゃないですか。それを結局かってに白紙で渡しておいて、そうしてそこで間違ったならば処分するなんて、そんなばかなことありますか。
  319. 加藤威二

    加藤説明員 先生御指摘のとおり、適切なる処置だったとは私も思わないわけでございます。まことに申しわけないと思っておりますが、ただ書かせる内容は、要するにそういう薬の一部負担の免除を受ける該当者というものはきまっておるわけでございます。標準報酬二万四千円以下あるいは家族一人について六千円というものを積み上げまして、月給幾らの人、それで家族何人の人、これは免除されるというのが客観的にきまっておるわけでございます。問題は、その人たちに名前を書き込んだ証明書を手渡せばいい。その名前を書き込む等の事務が社会保険事務所では——当然これは先生御指摘のとおりに、社会保険事務所でやるべき筋のものでございますが、それだと十月一日に間に合わないおそれがあるということで、何も金額とかそういうことを書き込ませるわけじゃなくて、ただ名前だけを書き込ませるということでございましたので、そういう作業を事業主にお願いをしたという向きもあると思いますが、非常に適切ではないということは私ども承知いたしておりまして、その点はまことに申しわけないというぐあいに考えております。
  320. 河野正

    ○河野(正)委員 私はそういうことを言うのではなくて、時間が足りなければかってに国のやらなければならぬことを民間に委託していいかと言っているのですよ。現実にやっているでしょう。だから、そういうことはいかぬならいかぬとおっしゃったらいい。そうしたら大臣は解放しますよ。だから大臣、あなたそういうああだこうだじゃなくて、そういう当然国がやらなければならぬことを、民間にかってにやらせるということは、適当でないなら適当でないとおっしゃったらいいのですよ。私は了解しますよ。それをいろいろ弁解されるから話が長くなって公害特別委員会からやかましく言ってくる。だから、はっきり言えばあとは渡しますから……。
  321. 坊秀男

    ○坊国務大臣 できるだけ間に合わそうという趣旨でやったことでありますが、この点は先ほどから部長がお答え申し上げておるとおりです。適切なものであろうと私は考えておりません。その点は遺憾であったと考えます。
  322. 河野正

    ○河野(正)委員 大臣、公害へ行ってください。  私どもが御指摘を申し上げたいと思うのは、一方では六百種類も官報の誤りをおかしながら、もしそれについて医療担当者の窓口で誤ったならば行政処分辞せないというふうな発表をしながら、一方においては当然国がやらなければならぬことを民間にかってに委託さしておる。これ実は私のところに白紙できておるわけだ。だから私は非常に強く言うわけですよ。それで私、あっちこっち調べてみた。そうしたらどこの人にも白紙できているわけだ、適当に書いてください……。だから、そういうこともあったかもわからぬなんておっしゃったら、私はいつでもそれをここで論破しようと思って手ぐすね引いて待っておるわけですけれども、それはお互いのことですから、これから言おうとは思いません。要するに一方ではそういうきびしい態度で臨みながら、厚生省自身はいまのような全く不当な処置をなさっておるというところに、私どもがものを言いたい論拠があるということなんです。ですから、もう時間もございませんからこれ以上多くを申し上げようと思いませんけれども、今回の薬価基準の改正に基づきます官報の誤り、これは参議院の委員会でも取り上げたということでございますから、私ども多くをここで申し上げようと思いません。思いませんが、どういう理由でそういう六百種類、薬品でも百何十種類かの価格の誤りがあったということでございますが、そういうことが出てきたのか、その理由をひとつ率直にお聞かせいただきたいと思います。
  323. 梅本純正

    ○梅本説明員 先ほど大臣がお答え申し上げましたように、今回の薬価基準の改正は、二月調査に基づきましてできるだけ薬価基準と実勢価格の乖離を直そうということで、前局長も山本先生の御質問答弁いたしておりますように、大体七月、八月ごろ実施をしたいということでございました。前保険局長は八月と答えておりましたが、先ほど大臣も申しましたように、この調査につきましていろいろ御指摘も受けましたので、調査の結果を吟味に吟味を重ねておったわけでありますが、せっかく二月の調査でございますので、やはり早急にやりたいということで、大臣のお考えも早急にやれということでございました。ところが、調査結果の吟味でおくれましたので、早急にやらなければならないということで、やはり十月一日に実施をしますためには、十五日以前に官報を出したいということが一つの問題でございました。それと今回は従来の薬価基準の登載方法を改めまして、先生御承知のように統一品目で従来は価格を書いておりましたが、これを商品名を全部あわせて登載するというようなことをいたしました。それから調査の結果に基づきましたものと調査の結果判明しなかったものを第一表、第二表に分けるというような点、あるいは配合剤ということで一本で価格を登載いたしておりましたのを、これもまた商品名で登載するということで、従来の薬価基準の改正につきましては大体四千項目ぐらいの改正になっておりましたが、今回の官報告示の項目は一万一千件にのぼったわけでございます。  そういう点でございまして、やはり特に混乱をいたしましたのは、統一品目、配合剤、それを商品名を抜き出して書くというような点もありましたのと、先ほど申しました非常にあれが急がれたというふうな点で、事務上の混乱が生じたというふうにわれわれ考えております。この点は全く事務上のミスでございまして、われわれといたしましては何とも申しわけないというふうに考えております。  ついででございますが、その事後の措置でございますが、官報を十三日に出しまして、その後御指摘のように六百品目、六百カ所ばかりの誤りを発見いたしました。この六百品目を正誤するということにつきましては、また印刷その他の関係で相当おくれますので、六百品目は濁点の誤り、あるいはマル、ポツの誤りというふうなものも含んでおりますので、この官報告示を実施するについて支障のないもの三百六十九品目を選び出しまして、それをとりあえず二十三日に原稿にいたしまして、二十七日正式に官報告示をいたしたわけでございます。それで、二十三日にそれの原稿を作成いたしまして、これを印刷局に持っていくと同時に、われわれのほうとしましては事務的に医師会のほうに六百カ所について連絡をいたしました。それで三百六十九品目を官報に載せる。この点は、内簡をもちまして各都道府県にも連絡をいたしたわけでございます。それから正式に二十七日の官報に登載しまして、それから各都道府県に正式の公文書をもちまして各末端の医療機関に周知徹底方をお願いし、ただ文書だけではなしに、電話をして連絡をとりつつ、正誤に関しましては各都道府県の保険課において印刷をしまして、各末端の医療機関に速達をもって発送をいたしたわけでございます。これは月内に一応発送を終わるように全国の都道府県に指令をしまして督励をいたしたわけでございまして、私といたしましては、十月一日実施に必要な官報の告示につきましては、全力をあげて各末端機関に到達するように努力したつもりでございます。
  324. 河野正

    ○河野(正)委員 時間がございませんからまとめて申し上げますから、ひとつまとめて端的にお答えをいただきたいと思います。  六百品種について誤りがあったということですが、そのうち点が落ちたりコンマが落ちたり、そういうことは私どもは深く追及しません。ただ価格が違っておるのが百何十種目かあるわけですね。こういうことは、私は単なる事務上の手落ちだというふうに申し上げるわけにはまいらぬと思うのです。そこで、その百何十種類も価格が違っておった点、これはもちろん若干上がっておるほうが多いわけです。その点についてはむしろ製薬メーカーからの突き上げで上げたり変更したのじゃないかというような議論もございますけれども、時間がございませんからそれは追及いたしません。しかし、いずれにしても単なる事務上の手落ちでなかったということは——点が落ちたりコンマが落ちたり、そういうことは私は問いませんよ。少なくとも価格が百何十種類も違っておった、訂正をされたということは、単なる事務上の手落ちというふうに理解をするわけにいかぬということが一つ。  それから二十七日に訂正をされたが、なおまた二品目価格が違っておる。そこで三十日に再訂正をされた官報が出されておる。それで十月一日に実施しようといったって、九月三十日の官報で最終的な、要するに薬価基準表がまとめられておるわけですから、それは実際に山間僻地に行ったら、いつ官報が手に入るか。いままでは余裕がございましたから、ある程度医師会がそれを印刷して回すとか、いろいろな処置をしておった。ところが官報を手に入れなければならぬということにたると、実は地方に行くとどこで官報を売っていろのかわからぬというのが、実態ですよ。ですけれども、いままでは余裕があったから、医師会が印刷したり何かして渡すから事欠かなかった。今度は一番手っとり早くやる道は、官報を手に入れる以外にないのですね。ところが、いなかのほうでは、どこで官報を売っているかわからぬということですから、十月一日にできるはずがないのです。しかも、結局間違えば行政処分もあり得るのだというあなたの勇ましい新聞談話が出ておるけれども、自分たちのミステークはたなに上げておいて、一方的にいまのような処置をとられたということは、私ども全く納得のいかない点でございます。  そこで、時間がございませんから、私はこれ以上申し上げようと思いませんけれども、いずれにしても今度の薬価基準の引き上げについては、どの点から見ても全く納得のいかない処置だったということははっきり言えると思うのです。この点についてひとつ最後に局長から見解を述べてもらいたい。いろいろ言いたいことがあるけれども、あとまだ労働関係質問が残っておるので、ひとつ明快なお答えをいただきたい。
  325. 梅本純正

    ○梅本説明員 第一点につきましては、価格の改定もやっております。上がっておるものもありますし、下がっておるものもございます。これは全く事務上のミスでございまして、官報告示後に先生御指摘のようなことは一切ございません。  それから第二点の周知徹底の点でございますが、先ほど申しましたように、これは役所の関係で申しますと、やはり官報に告示すれば足りるというのが従来の制度でございます。そういう制度でございますが、正誤につきましては、われわれとしましては全力をあげてその官報も印刷をして、末端機関に速達でお送り申し上げたということでございます。この点全力をあげましたので、ひとつ御了承を願いたいと思いますが、ただ将来の問題としまして、先生御指摘のように、こういう薬価基準の改定は、従来からの観念の、官報にだけ出しておけば法律効果が出るというふうな問題を離れまして、末端のお医者さんのいろいろな不便というふうなことを考えました場合には、やはりもっと十分の余裕を持ちまして告示をするとか、その点については十分配慮をしてまいりたいというふうに考えております。
  326. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員長代理 山本君。
  327. 山本政弘

    ○山本(政)委員 午前中に基準局長がおられなかったものですから保留をしたのですけれども、同時に、いまから全国の基準局長会議があるそうですから、簡単にそして端的にお伺いをしたいと思います。  宮城県の仙台工作株式会社というのがあります。これは資本金四百二十万円。この会社が六月七日に組合に解散を申し入れ、そして七月の一日に解雇予告が出ました。八月の五日に解雇、こういうことになっていま法廷で争われておると思うのですけれども、この点につきまして簡単でございますから経過だけちょっとお伺いしたいと思います。
  328. 村上茂利

    ○村上説明員 御指摘の事業場における事案につきましては、いま先生御指摘のような経過をたどっておるようでありますが、労働基準法第二十四条の賃金不払いの問題を中心にいたしまして現地の労働基準監督署では調査をいたし、さらに違反があるという点にかんがみまして、七月二十日までに六月分の賃金を支払うように勧告をいたしたわけでありますが、その後八月十日に労働者側から告訴及び告発がございまして、これを受けまして労働基準監督署としましては従業員二百十五名分の六月分賃金未払いという内容で、労働基準法第二十四条違反に関する問題として検察当局に事案を送致いたしたわけであります。  そこで、賃金不払いの問題についてはそういう形をとっておりますが、それとは別に解雇問題にからみまして解雇予告をして八月五日に解雇の効力が発生する、こういう解雇手続をとったようでございます。この手続そのものについては基準法上問題がないようでありますが、ただその間に裁判所が労働側の申し立てに基づきまして仮差し押えを執行した。その結果、物件や原材料についての仮差し押えをなされましたので、解雇発生までの間労働することができない、こういう問題がございまして、解雇の効力の発生するまでの期間における賃金を賃金不払いとして扱うか、休業手当の問題として扱うか、労使間に争いがあるようでございます。実はこの事案につきましてけさ私承知いたしたわけでございまして、この問題についてさらに事実を調査いたしました上でなければ明確な判断はできませんが、いずれにいたしましても解雇の予告をしたあと解雇の効力発生までの間の賃金につきまして労使間に争いがある、こういう事態でございますので、さらに正確に調査いたしましてこの事案が二十四条違反かあるいは二十六条違反になるのかといったような問題についての考え方を明らかにしたい、かように存じております。
  329. 山本政弘

    ○山本(政)委員 組合に解散を申し入れたのが六月七日、それ以降退職金、予告手当、夏季の一時金合わせて二千七日九十八万円ほどのものがあります。それ以外に六月分の賃金として六百五十万円、そしていま基準局長からお話のあったように、解雇予告から解雇までの期間の問題があるということで、これはやはり二百三十三名の組合員にとってはたいへん大きな問題であると思うのですけれども、本年の七月二十八日に宮城の地労委で、地労委の立ち合いのもとで団体交渉をやったときに、会社のほうから三億円ぐらいの金を使ってでも総評の全国金属のこの仙台工作をつぶすのだ、こう言っておる。これは私はやはり基準法の二十四条に対する違反であると思うのですけれども、その点についてどうお考えなのか。
  330. 村上茂利

    ○村上説明員 先ほど申しましたように賃金未払いの分につきましては二十四条が構成するわけであります。団体交渉の過程においていろいろやりとりがあったようでございますけれども、私どもがいま事実を確認する必要があるものとして、退職金の金額、夏季一時金等について金額が実際は幾らほどであるか、そしてそれが内容的には労働基準法二十四条の賃金不払いとして扱うべきか、二十三条の退職時の金品の返還問題として扱うべきかという点については、金額の調査とあわせまして目下調査中でございます。
  331. 山本政弘

    ○山本(政)委員 この仙台工作株式会社の資本金四百二十万円というのは全額川岸工業というのが出資しておって、仙台工作株式会社の代表取締役である工藤憲男という人は、川岸工業の専務取締役であると聞いております。会社側の主張によりますと、機械それから建物、土地、これは全部川津工業の持ちものであって仙台工作のものではない、したがって、仙台工作という会社は、そういうふうなことになると、単なる人入れをする会社にすぎないというようなことも聞いておるのですけれども、そういうことになると、私は法律的な問題はよくわかりませんけれども、当然川岸工業とそれから仙台工作というものは、これはまあ親会社と子会社、こう言っていいのか、あるいは一体と言っていいのか、よく表現できませんけれども、仙台工作が、そういう点について仙台工作のほうは組合員に対して全然責任がないというふうに言っておりますけれども、その点について基準局のほうの見解は一体どういうふうにお考えになっているか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  332. 村上茂利

    ○村上説明員 先生いま御指摘のように、川岸工業と仙台工作株式会社との関係は、非常に密接な関係にあるようでございます。ただ裁判の手続などを見ますると、簡法上の解散を決定して、解散登記を完了した云々といったような手続が進行しているわけであります。賃金不払いの事案につきましても、この仙台工作社との間に労働関係ありとして賃金不払い問題を扱う、こういうような筋道でやってきているようでありますが、その間の親会社と子会社との一体性、はたして実質的に分離して考えられ得るものかどうか、そこら辺には問題があるというふうに私ども聞いております。しかし、解散手続その他は、これはもう法人として客観的な存在であるので、所定の手続を進めておる、こういうふうにも解されますので、そういった点、実態判断に問題があるようでございます。何ぶんにもけさ私承知した案件でございますので、そこまでの判断を明確にする材料を持ち合わせておりませんので、御指摘のような実態関係にあるということは承知いたしております。
  333. 山本政弘

    ○山本(政)委員 時間がないようですから、それじゃそういう点についてひとつ基準局のほうでは行政指導について、これは私の記憶が誤りかもわかりませんけれども、先年でしたか九月ごろに基準局長お話で三万件くらいそういう問題がある、金額にして十億円ぐらいなものが中小企業にあるというお話もあったそうで、聞いておりますけれども、いまですとまた金額の面においてもあるいは件数においても多くなっておるのではないかという気もいたします。そういう意味でこれに似たケースというものが数多くあるのではないかという気がするわけですけれども、そういう点について基準局のほうで今後、たとえば仙台工作の問題とあるいは川津工業というのは非常に一体性があるようにも私は考えられるわけですけれども、そういう面についてのひとつ行政指導というものもきちんとやっていただきたいと思うが、その点についてのひとつ御意見を……
  334. 村上茂利

    ○村上説明員 今回のこの事案の金額は、相当な額でございまして、賃金不払い事件としても相当な事件でございます。申すまでもなく、賃金は労働者の生活の唯一の資源でございますから、行政としてもこの問題、重視しておるわけでございます。実態関係をまだ明確に把握しておりませんので、この点、現段階の答弁として御不満かとも存じますけれども、問題の性質にかんがみまして行政指導を適切に行ないたいと考えております。  ただ労使関係の紛争がございましたときに、双方のいずれにでも有利になるような結果にならないように、労働基準監督官の職務執行につきましては、その点厳に配慮をいたしておるような次第でございまして、その点だけは私ども配慮いたしますが、問題は厳正にただしていきたい、かように存じております。
  335. 山本政弘

    ○山本(政)委員 時間が六時までだそうですから、最後に私は、問題をあとに留保さしていただいて、この次にこの件に関して十分なる調査をして、そうして報告をしていただきたいと思うのです。なおその上で私はあらためて質問をさしていただきたいと思います。
  336. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員長代理 本日はこれにて散会をいたします。    午後六時二分散会