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1967-06-22 第55回国会 参議院 農林水産委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十二日(木曜日)    午前十一時十二分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         野知 浩之君     理 事                 任田 新治君                 山崎  斉君                 川村 清一君                 中村 波男君                 宮崎 正義君     委 員                 青田源太郎君                 櫻井 志郎君                 園田 清充君                 田村 賢作君                 温水 三郎君                 森部 隆輔君                 八木 一郎君                 和田 鶴一君                 武内 五郎君                 達田 龍彦君                 鶴園 哲夫君                 村田 秀三君                 矢山 有作君                 渡辺 勘吉君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    政府委員        農林政務次官   久保 勘一君        農林省蚕糸局長  石田  朗君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 野知浩之

    委員長野知浩之君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案に対し質疑のある方は、順次御発言願います。
  3. 八木一郎

    八木一郎君 私は、蚕糸日本のために当面の重要問題だと思われることを一本にしぼって、政府所信をただしてみたいと思います。  蚕糸日本重要事項といえば、いろいろあります。総括的に言うならば、まず、日本は、世界蚕糸業の六割を生産する国でありながら、国際市場への輸出は極端に伸び悩みとなっておる。また、最近、絹は、年々国内需要が旺盛になりまして、相当の値段で活発な取引が行なわれておるにかかわらず、原料の繭はなかなか増産されない。さらには、外国産の生糸輸入国内蚕糸業相当の影響をもたらしている等々、問題は、蚕糸時局重大だという認識の上に依然として問題があるというのが私のものの見方でありまして、基本的には、繭生産増強をはかって供給を確保することが最も必要なことであると思うのであります。  そこで、問題を一本にしぼりますると、どうすれば繭増産ができるか、政府行政努力いかん、こういう観点から質問を試みたいと思うのであります。  ただいま議題となっております日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案につきましては、本院に送付するに先立って、衆議院段階相当熱心に審議が尽くされ、かつ、参考人意見聴取質疑応答もあり、私は一応その内容会議録を通じてよく吟味をさせていただいたのでありまするが、重要な繭増産に関する政府答弁が不十分であって、どうしても納得できない点があります。そこで、きょうは、許された時間の中で、この点を指摘して、問題点を一本にしぼり、若干の質問を進めてみたいと思うのであります。  まず、政府は、これからの蚕糸業は、国内産業として育成指導するのか、それとも、万難を排して徹底的に輸出産業——かつては輸出の大宗であったこの蚕糸を、輸出産業として発展させていくのか、二者択一、どちらをとるのかということを、私が、事業団法審議の際に、四十年の十二月二十七日ですが、この委員会質問いたしましたのに対し、政府は、輸出産業として育成するんだとはっきりした決意を述べておりまするのに、あれから一年半の生糸輸出足取り政府の資料に基づいて別紙のような表を見てまいりますると、今日では、日本は、輸出蚕糸国ではなく、生糸については輸出国の看板はおろさなければならぬのではないかというようなところまで来ております。輸入蚕糸国に変わり果ててしまっておるのではないかという足取りの示すところであります。  そこで、数字をさらに見ますると、四十一年は、三十一万俵の生産中、輸出は、わずかに三十分の一にも当たらない八千七百九十俵になってしまいました。もっとも、絹織物輸出二万四千俵余がありますが、これではほとんど生糸輸出の根は絶えてしまいそうな事態にあるときに、本年の四月十九日に、衆議院予算委員会第三分科会では、高田富之君が、蚕糸業というものを、農林大臣は、内需産業として位置づけるのか、それとも、輸出産業でもあるのだというふうに位置づけられますかという質問に対し、倉石大臣は、内需輸出両方並行してやっていったらどうかと思いますと答えておられます。さらに、重ねて高田委員のだめ押し的な発言で明らかになったことは、内需産業としての位置づけはこれを否定されまして、輸出産業として重要であると位置づけられたわけでございます。すなわち、政府農林省の当面の重要な蚕糸政策としては、国内需要海外市場、この両方を踏まえて日本蚕糸業の将来の道を求めてまいりたい。それには、まず、輸入を押え、輸出を増進するため、意欲的に繭増産運動を展開することであって、倉石大臣も言明しておられるように、蚕糸局仕事は、当分繭増産の一点にその力を振りしぼって繭増産運動に集中し、農民の期待するような政策努力を積み重ねることであろう、こういうふうに思われるのであります。  そこで、私の質問も、この一点に問題をしぼりまして行なうことにいたします。しかし、それには、農林省から地方に通達しているように、きめのこまかな実行具体策が技術的にも専門的にも個々の農民の手の届くところまで、いわゆるかゆいところに手の届いたあたたかき行政手段行政配慮がなければ、なかなかこの望みは達成できないと思うのであります。すなわち、養蚕労働生産性を向上させ、コストはこれをできるだけ引き下げ、労働収益はますます引き上げて、少なくともその労働賃金は、養蚕に従事する限り、出かせぎ労賃以上のものになって、農外収入の道を追うて出かせぎに出る必要がなくなるようにして、言いかえれば、他の産業並みに、あるいはそれ以上になるように仕向けるべきであって、この点が今後繭を増産させようとする政策のつぼであって急所であると思いますが、政府は、総括して、これらの蚕糸問題に対する点についてどのような所見を持っておられるか、まずお伺いをしてみたいと思うのであります。
  4. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) お答え申し上げます。  蚕糸業について、国内産業として育成するのか、あるいは輸出産業としてこれを考えていくのかという御趣旨の御質問だろうと思います。  衆議院委員会におきましても大臣より御答え申し上げておりますように、結論としては、両方を踏まえましてやっていくたてまえでございます。いずれにいたしましても、その根底になりますことは生産増強でございまして、御指摘のように、あらゆる手段を講じまして繭の増産対策については今後やはり積極的に前向きに努力をいたしてまいらなければならないと存ずるわけでございます。
  5. 八木一郎

    八木一郎君 総括的なことでちょっとこの機会に伺っておきたいんですが、繭増産を中心にした農林省地方への通達があるということを聞いておりますが、その内容一つ。  二つには、相当景気のいい相場の動きの中に、正常取引を叫ばれながら、いまちょうど出回り期、最盛期を迎えておるようですけれども、この春蚕の繭、それから年間収繭情勢見込み等のことを簡単に説明をいただきたい。  三番目には、蚕糸業振興審議会の建議された中に、輸入生糸の問題で法改正考えてくれというのが建議文の中にあるわけであります。オール蚕糸関係団体もこれを支持しておるわけなんです。これが今回は見送りになっておる事実、事由、これを簡単にひとつお聞かせいただきたい。  それからこれはまあ質疑に入ってからの内容ですけれども、出かせぎ労賃問題というか、養蚕を営んでおる近くの日雇い労賃というものの見方について、いろいろあると思いますけれども、私は、きのうの朝のNHKのテレビで、養蚕日本一山梨県に、リンゴ青森県弘前から二十人ほどの十八歳前後の娘さんが年々出かせぎにやってこられているトマト娘というふうなことを見まして、これが三食つきで一日千二百円、そして時間外に二百円つけて千四百円、八時から六時まで、まあテレビの知識で言うと一回一、二箱しかできない地元の者に対して、これらの青森リンゴの産地から来たトマト娘は五箱平均はやっている、一分間にですね。こう言っておるのです。私、いろいろな意味で関心深く見たんですけれども、こういう現実日雇い労賃を対象にして組み立てておる生産費については、もし昨日のこのテレビを見ておれば——まあ見ていないような顔をしていらっしゃるから、私から説明したのですけれども、これは非常に興味があるので、一つ問題点としておきたいと思うのであります。  以上、総括的な事情を簡潔に伺います。
  6. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) 政府委員よりお答え申し上げます。
  7. 石田朗

    政府委員石田朗君) ただいまの八木委員の御質問に対してお答えを申し上げます。  まず、最初に、繭の生産増強について通牒を出しておると、こういうお話でございます。本年の四月十四日に——実は、これにつきましては、従来から蚕糸業振興審議会その他でいろいろと繭の生産増強につきまして御論議をいただいており、かつまた、繭及び生糸長期見通しにつきましても一応見通しが次第についてまいっておりますので、これらを含めまして、今後現実蚕糸業生産対策を推進いたします一つ見通しを指示いたしますと同時に、また、養蚕連合会あるいは中央蚕糸協会におきまして繭の生産増強について自主的な運動が盛り上がってまいっており、この要綱が定まり、各系統団体を通じてこの運動が展開されておりまして、各地方農政局及び各県におきましても、このような自主的な運動の盛り上がりに即応して十分な協力指導を行なうべきことを、これを通牒をいたしたわけであります。通牒内容といたしましては、ただいま申し上げました全体の見通し、その自主的な運動に対する協力通牒指示いたしたという内容のものでございます。  それから第二に、本年度の収繭量の点についてお話がございました。この点については、現在までのところ、統計調査部春繭については第二次の予想がされております。年間につきましては、第一次の予想があるだけでございます。春繭につきましては、大まかに申しまして、最近におきまする、ただいま申し上げましたような、農村におきまする生産増強意欲及び本年の気象条件等によりまして、昨年の春繭に対し六%の増産が見込まれております。春繭については毎年かなり限度まで養蚕が行なわれておりますが、今後夏秋蚕におきましてはまだ伸びる余地があるかと思われますので、さらに増加を期待されるものと考えるわけでありまして、統計調査部の第一次予想収繭量によりますると、年間といたしましては昨年に比べまして八%の増産が見込まれておる、こういうような状況でございます。  それから第三に、農村における労賃動向はどうか、こういうお話でございますが、これにつきましては、私どももいろいろな事例等について話を聞くことも多いわけでございます。これを総括いたしますると、結局、統計調査部で出しております農業労賃動向、こういうもので現実には把握するほかないのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。この農業労賃につきましては、季節的に非常に変化が大きく、かつまた地域的にも差がございますので、それらの点を考え合わせて統計把握を進めることを考えてまいらなければならないかと思います。  それから実は御質問が前後いたしましたかと思いますが、いま一つ事業団輸入生糸の取り扱いをするという点について、今回の法案に盛り込めなかったのはなぜか、こういう御質問でございます。これにつきましては、先ほど先生からもお話がございましたように、最近、生糸輸入が次第に増加をいたしてまいっておりますことは、これは私どもも、まことに残念なことと思うわけでございます。すみやかに国内生産増強を達成いたしまして、このような輸入生糸なしで済ませるような体制に持ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。現実には、需給面におきまして、需要がきわめて強調であり、現在、輸入生糸は、割合にいたしますと、全体の需要の約三十万俵に対しまして一万八千俵といったようなことでございまして、全体のウエートは必ずしも大きいとは言えないわけでございます。このような輸入——これは自由化されておりますので、自然に入ってまいります——。ありましても、なおかつ価格強調に推移いたしておる、こういうふうな情勢でございまして、かつまた、今後、国際的にも生糸不足である、こういうような状況にございますので、今後輸入がむしろ増加することはないのではないかということも一面では言われております。これらの点はなおいろいろ問題がございますが、そのような生糸輸入現状及び将来の見通しにつきまして、現在まだなお検討を要する問題があり、かつまた、現在自由化されております生糸の扱いにつきまして、今後どう取り進めるかという点について、実は、輸入が量が少ないものであるだけに、非常に複雑な形をとっております。  このような実態を十分把握し、かつまた、今後の動勢を十分見きわめて措置をとるべきであろう、こういうことで、現在、輸出振興のために事業団法改正をいたしますことが差し迫った事情にございますので、今回の法律につきましては、まずこの点について法案改正をお願いいたす、輸入問題につきましては今後引き続きこれを検討をいたそう、こういうようにいたした次第であります。
  8. 八木一郎

    八木一郎君 総括的な情勢の中で簡単に問題をしぼった質疑を行なってみたいので、さっそくお尋ねをいたしたいのですが、お答えの中にもはっきり出ておりますように、増産政策実行というのが現段階蚕糸行政当局に課せられた重要な課題であることは何人もいなまない。したがって、基本問題は何かといえばこの点であるということを私なりに検討を加えて、何が重点であろうかということをあげてみたのでありますが、その一は、価格安定帯を適正化すること、その二は、需要の前途、特に海外市場への売れ行き不安を排除すること、その三は、生産対策を徹底的に実行すること、まあこういうふうに要約できると考えます。  以下、本件に関し、一つずつ当局のこれらの問題に対する決意と信念のほどをただしてみたいと思うのであります。  まず、第一点の価格安定帯問題で、政府が本年の五月二十四日に衆議院答弁をせられた記録によりますると、昨年は生産費の九四%、本年はほぼ一〇〇%の水準に当たりますところの五千五百円に基準糸価をきめたと、努力の御配慮の結果がここに至ったという、こういう御答弁のふうに受け取れるのでありまするが、私は御努力は多とします。生産費を一〇〇%カバーして基準価格をきめるんだ、こういうものの考え方には賛成であり、これを支持し、賛意を表します。だが、しかし、肝心な基礎となる数字やデータのこまかい点に立ち入って検討を重ねてみますると、満足する、納得するというわけにはいかない点があるわけであります。これでは、繭生産農家農民の気持ちに沿わない現実離れの数字になってしまっておると、こう思うのでありまして、政府委員は、私が思うようにはいまの時点でお考えになっておらないかどうか。この点に関して、いや、五千五百円は今後改めるという方向で検討する、こういう御意思があるか否か、はっきりとお答えをいただきたいのであります。他の農産物の場合もそうであります。いま麦価や米価が日程にのぼってきておりますけれども現実に見合うように、いわゆるある基礎的数字の上にある指数を掛けてこれを取り出して検討をするという見方からいきますと、五千五百円のこの問題は、今後これからさらに検討の上、適当な時期に修正するように努力する考えだという御明答が出れば、まあ私の質問は先へ進みます。この点は、蚕糸局長が、衆議院答弁の中で「基準糸価基準繭価」はいわば最低線であって、この「上に価格が動くことが常態であり、そういうことが政策目的としてあるわけでございます。」云々ということを五月二十四日に答弁されております。これは現にいま実行していることでありまして、私はこの現状を否とするものではないのであります。しかし、この考えを近き将来に改めないということになりますと、なるほど名儀は基準価格でありますが、実は最低保証価格であって、時価より——まあいまの時価だったら二割も差があるでしょう。千五百円も低いところにある。基準価格のありどころというのがこれでは、せっかく事業団がありながら、去年も、ことしも、あるいは来年も、開店休業していることがあたりまえだということになってしまうと思うのであります。現に、仕事は何にもしなくても、この法律があり、安定法があり、事業団法価格安定帯を管理していこうという考えがあるから、その役割りは十分果たしておるんだと言ってしまえばそれまででありますけれども、私はそこに実際政策があるのだと言うわけにはいかぬように思います。この辺は、蚕糸当局としてお考えになって、局長、矛盾をお感じになりませんかどうか。  事業団出資までしておりまする繭生産農家生糸製造業者らにとっては、こんなばかげた、実際価格と無縁かつ不当に低くきめられておることを何と言っておるか、御存じですか。あの三十三年の糸価暴落に当面するや、政府は、冷酷無比にも安定法基準価格を引き下げてしまった。実に三十三年はさんざんの年であった、政府は今でも羹にこりて膾を吹く愚を繰り返していこうとしているんだというように見ておるのでありますが、これはもっともだと思うのであります。ですから、百歩譲って、安定法の発動する価格は、これは異常暴落をささえるものですから、最低下値でささえるということであってがまんもできましょう。しかし、事業団法ができて、中間安定基準価格で買い取ると銘打っておきながら、事業団の業務としていつまでも動き出せないままにされておかれては、出資までした関係業者としては、これは検討してもらいたいと言うのは無理もないと思います。安定帯価格に対する政府所信をこの際率直に承りたいのであります。  きょうこのごろは、糸価は幾らになっておりますか。実勢価格帯は、おそらく腰だめで言っても、常識的な価格で六千五百円ないし七千円、この幅がずっと続いておると思います。私がけさ関係団体の最近一カ月の比例配分に用いる糸価基準平均を調べますと、七千三百三円にもなっております。そこで、私が、繭及び生糸生産原価主義増産可能の価格帯として適当な数値を求めてみました。衆議院段階で、山梨県の養蚕代表であり全国の養蚕代表である参考人横田さんのお話にも、百グラムをことしは百二十、二割増して増産にいそしんでおるという立場の声も、参考人意見としてよく吟味してみましたけれども、ちょうど過去一年の平均価格が六千九百十九円、ラウンドナンバーで七千円に一致しております。すなわち、これが時価平均であり、手ごろな価格安定帯は、基準は六千五百円、下限価格は六千円、上限が七千円、これが常識に合った適正な数値であると思いますが、当局はどのようにこの問題を見ておるのか。これでは現状にそぐわないと言われるかもしれませんけれども、しかし、これが世界生糸の六割を占めておる生産国日本生糸生産原価ですから、これを日本生糸基準価格として実際に内外取引が行なわれるような政策努力を一そう積み重ねていくことが当面必要だと、こういうふうに思いますが、蚕糸局長はどのようにお考えですか、この機会にお聞かせをいただきたい。こう思うのであります。
  9. 石田朗

    政府委員石田朗君) ただいま基準糸価等安定帯価格についての御質問がございました。現在の繭糸価格安定の制度は、御承知のとおり、まず、最高最低価格をきめますのに、生産費基準とし、諸種経済情勢を勘案してきめる、こういうことになっております。それから基準糸価は、事業団安定帯をきめます場合の基準になる価格であり、下ざさえをする、ここから上にささえようと、こういう価格でございます。この場合には、適正な水準価格を安定させるように定める、こういう事業団法の定めに相なっておるわけであります。このような規定に基づきまして、生産費動向及び諸種経済情勢考えて従来から糸価安定帯価格水準をきめてまいっておるわけでありますが、いま先生も言われましたように、最近の需給情勢等々からいたしまして、糸価繭価値上がり、特に昨年の年間における値上がり相当著しかったかと思います。そのような情勢及び生産費変化等々を勘案いたしまして、実は、本年三月におきまして、蚕糸業振興審議会価格安定部会を開催していただきまして、そこで御審議を願ったわけでございます。そのような御審議結論に基づきまして、基準糸価は五千五百円、それから事業団が繭のいわば支持をいたします最低基礎になります基準繭価は七百四十八円と、おのおのキログラム当たりでございますが、こういうふうに定めたわけでございます。これは、従来からの安定帯価格決定の種々のやり方、これらの方法をも十分に継承し、それらを考えまして、かつまた、最近の需給情勢等変化も織り込みまして、生産費の上昇は、計算によりますと、昨年から八%ばかり上がっておるわけであります。この全体の情勢考えまして、安定帯おのおの価格はほぼ昨年の一五%アップという水準決定をいたすこととなったわけであります。  このようにして、ただいまお話し申し上げました五千五百円の基準糸価というようなものは、本四十二年度に適用される基準糸価として決定されておるわけでありまして、このような従来からのやり方をいろいろ考え、かつ手続を経てきまりましたものでございます。これは本年三月において考えられ、やはりこの水準が適当であるということに相なってまいるというふうに私ども考えておるわけでございます。  なお、実勢価格との関係でございますが、実勢価格につきましては、これは当然に基準糸価よりは高いことが政策目的であるわけでございます。かつまた、これについては、かなりの変動もございます。これをできるだけ小幅にとどめたいというのが目的でございますが、現実にはかなり変動もございます。かつまた、最近の値上がりはきわめて急速でございまして、このような安定帯等々を考えます場合には、これらの問題を十分考えなければならないわけでございます。他面において、単に実勢に追随するということでもいけないわけでございまして、諸般の情勢考え審議会の御検討等を経て現在のようなことに相なっておるわけでございます。
  10. 八木一郎

    八木一郎君 事業団法の精神を生かして、そして蚕糸業の当面しておる壁を破って増産機運を盛り上げていこうというには、本年は、低いところできまっておりますが、実際は高値を動いていますから、問題にはなってこないかもしれませんけれども、この法律改正をすることによって、原価主義で仕入れて輸出をしていくというときには、どうしてもこれは原価主義といいますか、実勢価格、実価格というものが基本に考えられていくと思いまするので、それらの動きをもあわせて、安定価格帯は、いますぐ変えるということはいろいろな制約があるとしても、将来の問題、少なくも予算期が八月から始まるころからは、これは再検討をしていかなきゃならぬ課題であるというふうに思いませんか。これは、局長じゃ無理ですけれども、次官、どうですか。
  11. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) 御指摘のとおり、安定帯をどの線で設定するかということ、並びにそれに基づきまする基準繭価をどの線に設定するかということは、非常に重大な問題と存じます。先ほど局長より御説明申し上げましたような考え方で現在おるわけでございますが、繭の増産を今後強力に進めてまいりますという立場からと、さらには価格を安定させまして安定的な増産をしていくという両面から考えまして、今後、審議会等の意見も徴しまして、十分慎重に対処してまいりたいと存ずるわけでございます。
  12. 八木一郎

    八木一郎君 これはまた他の委員からも御審議いただける機会もあるかと思います。  私は、次の第二にあげておきました需給の拡大均衡を目ざす海外販路——海外には羽がはえて売れていく、心配はないんだというような明るい見通しができるのかどうなんだろうかという、こういう増産にいそしもうとする農家の立場に立って、以下の質問を申し上げてみたいのでありますが、——の拡張と海外国際市場の増大をはかる場合に問題点となりますことは、これは蚕糸局長が五月二十四日に衆議院農林水産委員会でお述べになっておるところを引用しますると、現在の場合は、需給の窮屈なときに海外市場を維持確保しておかなければならないという趣旨における特別措置により、いよいよ輸出振興をはかろうとするのだ云々と述べております。私もそのとおりだと思っておるのであります。しかし、そう言っておるだけでは、輸出産業としての蚕糸業の位置づけを守りながら海外輸出が可能な条件を出して、法律改正して大いに事業団に働いてもらって、その業務を開始したことによって輸出が伸びていくということを期待するには、もう少し検討しないと期待が持てないと思うのでございます。法律が通過成立を見ますると、すぐ始まる仕事は、製糸業者から買い入れた現物生糸を確保した上に、適当な輸出価格海外に売り出していく、こういうことが始まるわけであります。この場合、海外市場に対して、その期間は六カ月ないし一年、数量は年間三万俵程度、価格生産原価が基準、こういいますから、私は概算七千円前後と言わざるを得ぬ結果になっておると思います。そこで、七千円生産原価基準でいよいよ業務が始まることになるとしますると、このように承知していいのかどうかというところをだめを押さぬと、見通しについてお話し合いができないわけであります。一体、その時期は、法律が通過成立すればすぐ始まるわけですが、私どもの期待した新糸からというわけにはなかなかいきそうもないが、いつごろからを期待したらいいか、まずこの点を確認して質問を進めたいと思います。
  13. 石田朗

    政府委員石田朗君) いまお話がございましたように、今回の輸出対策は、この法案に盛り込まれておりますものは、事業団輸出生糸を取り扱いますことによって、一定期間一定の価格を動かさないで外国に売る体制をとる、そのようなことによりまして、従来よりも若干高い価格においても外国が買いついてくれるであろう、こういうような考え方に基づいておるわけであります。その場合に、このようなことだけでなしに、さらに宣伝活動その他において十分なるこれと相提携しました活動が必要なことはもちろんであろうかと思います。  この開始時期というお話でございます。これは、いまもお話がございましたが、実は国会の通過の早からんことを私ども願いまして、春繭の新繭による新糸、これからは直ちに適用いたせるようにいたしたいということで考え方を進めておったわけでございます。いまもお話しのように、この点は若干ずれるわけでございまして、この点、私ども、この対策には実は非常に苦慮をいたしております。これはまず急速に通過御決定を願えるかと思いますが、通過時期に一つはかかっております。これにからみまして、その点をいつからやり得るか、いま少しくこの点は十分それらの通過の時期とにらみ合わせて検討いたさなければならないのじゃないかと思います。私どもといたしましては、できるだけすみやかに、むしろ即刻でもこれができ得ないかということで、そのようなやり方について検討を進めている、こういう段階でございます。
  14. 八木一郎

    八木一郎君 それでは、海外生糸市場では、蚕糸日本輸出新体制といいますか、いままで国際取引の中に行なわれたことのない、ほかの農産物にはありますけれども生糸にはない、そういう一定価格、一定数量を輸出するたてまえをとって、これから、お買いになった機屋さんに御迷惑はかけません、小売りに注文をとってから半年の間値は変わりません、こういうようなことが言い切れるだけの、信頼を受けるような業務が始まるわけでありますが、このたてまえ、いわゆる輸出新体制ということばを使わせてもらうならば、こういうことを一体海外市場では歓迎していますか、海外の情報はどうかということでございます。私が調べたところでは、値ごろが少し高いけれども、ほんとうに——まあこれまで不信の事実があるからでしょうけれども海外需要者からの見通しがわからないわけであります。いずれ、政府は、生糸海外宣伝事業の中で、絹業協会などを通じて、相当の働きかけも行なわれているだろうと思うのですが、これは大いにしなきゃいかんと思うのですが、これらの点についてはどのような手が打たれておりますか、具体的にお答えをちょうだいいたしたい。  やはり、養蚕農家の方には、海外に一定価格、一定数量で売り込めば売れるであろうというのではなくて、向こうから買いの手がオファーがどんどん来てだいじょうぶですよという見通しがほしいわけでございます。これが心理的な増産意欲の動向に影響が大きいということを申し添えまして、実行の促進を期待しながら私の質問を要約いたしまするというと、これらのことは、繭増産にいそしむ養蚕農民生糸製造に携わる中小製糸業者等は、事業団がほんとうに引き取ってくれれば、清算取引所にヘッジするような気持ちで協力して出しますと、こういうことを言っている。これだけ熱意を持って、いわゆる生産原価基準輸出に一定価格、一定数量を出そうとまで言ってくれておる。こういう情勢下で、実際には月に二千五百俵、年間三万俵といいますと、これは需給に及ぼす影響が出てきて、すでに清算市場では買いの手が入ったなどと気の早いことを言われるようなこともありましょうけれども、そういうデリケートなことは乗り越えて、どうしても政府の強い意思でこれをやっていこうとするには、取引所の規制措置についても、きのう国会を通過しておりまする取引所法の改正等などからも、これから一体それらはどうなるだろうか。政府は、価格安定法事業団法、商品取引所法の三法の調和ある実効について、海外が安心してオファーをよこせるように、安心して売り出していけるように、周到な用意と手配が進んでおるかどうか。また、これとは逆に、そうではなくて、これから売れるであろうと見ておったけれども、案外売れない。事業団が現物で買い入れた輸出生糸をかかえ、国際市況の停滞によって滞貨になったままになってしまうというようなことで、今後年々継続的に海外市場を拡大して、拡大利用の手段として臨んでいこうとする政府農林省のねらったことと違った結果が出てくるのではないかという心配もあるわけであります。  こういうことから、私は、五十一国会以来、いろんな機会に国民の声として当局に激励と鞭撻を僣越でありますけれども申し上げてきたことは、これは海外のこういう仕事をする絹業協会の仕事を、輸出業務を始める事業団と合流させるというか、あるいは事実上の輸出下請的な業務を始めさせるとか、とにかく海外市場を通じてこちらに直接売り込みと注文がとれるようなこういう姿勢で——いや、事業団法の性格からは無理だとかなんとかいう事務的な事情はあっても、それは下請業務的なことでもあるし、方法は幾らでもあると思いまするから、これを積極的にかつ前向きに努力していかないといかぬのじゃないか。どんな努力をして、どういう足取りでいまあるか、これから実行を目ざして検討努力する具体的な心がまえというようなことが聞きたいのであります。  また、輸出用絹織物業界すなわち輸絹業界ですね、あるいは撚糸、玉糸、こういう方面は、生糸そのものよりは、取り扱いの助成については、もう少し違った角度から具体的には何か助成もあろうかというふうにも思うのであります。これらの点に触れまして、一定価格、一定期間、一定数量という一枚看板をあげて新しい事業団業務がすぐ始まるという前途について、どれだけの自信と確信の上に用意と心がまえを持っておるかを、ひとつ率直にお聞きいたしたいのであります。
  15. 石田朗

    政府委員石田朗君) ただいまお話がございましたが、従来から、アメリカその他の消費面の絹業関係の有力者から、日本糸価の不安定なのは困る、これに対してむしろ建て値制に近いものがとれないか、こういうような点は非常に強い希望でございました。そうして、そのような希望、かつまた、したがいまして、日本生糸輸出関係者のいろいろな意見見解等を十分に聞き、これらを盛り込みまして今回の措置を考えたわけであります。  ただ、このような価格安定措置が輸出に対して非常にプラスに働くことは事実であると考えますが、この措置をとったならばただ手をつかねておっても輸出が出現するというふうには私どもも必ずしも考えておらないわけでございまして、この点につきましては、八木先生がかねてより繰り返し言っておられます宣伝活動の活発化という点については、さらに一段と力を入れてまいらなければならないかと思います。  海外生糸宣伝活動につきましては、従来から日本絹業協会がこの仕事を分担し、これを推進してまいっておるわけでございます。この絹業協会は、国際絹業協会との関連その他からいたしまして、やはりこの力を大いに活用してまいることが有効でもあり、適切でもあるかと思います。いまもお話がございましたが、今回の事業団の措置、それから絹業協会の宣伝活動等、不離一体の関係で運用するということは最も必要であろうかと思います。現在、絹業協会の海外宣伝活動につきましても、アメリカに特に重点を置きまして、あるいは宣伝を直接消費者に直結する宣伝に重点を置くとか、宣伝のやり方にも一そう改善を加える、こういうようなことをやってまいっておりますが、この事業団の新措置が実現いたしましたならば、たとえば事業団の買い取って保管しております生糸リストは、絹業協会の海外事務所を通じて海外業者に中継し、事業団と一体になって宣伝を行ない、かつ販売努力を行なう、こういうようなことをやってまいるということが必要ではないかと考えております。このような事業団輸出業務に対します輸出業者、絹業協会、事業団、あるいはその他の関係業界を含めての問題の推進検討は、現在これを盛んに推し進めておるわけであります。ただ、残念ながら、現在のところ、私どもといたしまして、外国に対しまして、公式にこのような措置をとるからやれというところまでは公式にはいまだ言えない段階であるということでございますので、すみやかにこの法案の御可決をいただきまして、従来からいろいろこのような側面につきまして連絡をとってまいりましたものを、公式の形で事業団の新体制と推進活動を積極的に取り進められるような段階に到達できますようにお願いいたしたいというふうに思うわけであります。
  16. 八木一郎

    八木一郎君 もっと具体的にもその問題に沿って申し上げたい点があるのですが、たとえば、海外のニューヨークのある商社は、ほんとうに一定価格で一年間入ってくるという約束を取りつけてくれるならば、千俵くらい単位に特定の用途に使う計画を立てていきたい、こういう信頼——国際会議に行っては、日本は、法律を出して国会をバックに国際商品生糸を安定します安定しますという宣伝のほうが行き渡って、実際はそうなっていない、こう言われておるのでありますから、この機を逸せずに、真に値段の高いことよりも安定がほしいんだ、安定しておれば注文を出しますという人がおるし、また、事業団の中には、そういうことになれば、私も生糸商で海外で飯を食った経験が豊かだから、生糸をしょって海外へ行って働きますよと、こういう熱意のある人さえあるのですから、これは注文しておきますけれども、値段、値ごろがちょっと高いからどうかなんということを心配せずに、これによう似た例がありますのは、トウモロコシを日本はタイ国と輸入商社でやっております、政府はうしろにおって。商社で買い付け契約をして、一年ぎめで八十万トンとかなんとか数量をきめております。これは月々はニューヨークのシカゴのトウモロコシ相場の平均基準にして一定基準がきまっている。そうして、月ごとの基準がきまって受け渡しが進んで、非常にスムーズな年率一〇%の増産が動いている、こういう事例があるわけです。こういう事例はほかにもありますが、こういうことになるはずです。なるはずだけれども仕事が商社の仕事でなく役所的な仕事事業団がやるというところに一まつの不安を持つわけですから、その不安は蚕糸局長行政努力で排除して、ぜひ実を結ばせていただきたい、実らせていただきたい、こういうふうに思います。そうして、農民生産者の不安がないように、海外には羽が生えてどんどん飛ぶように売れていくという時日が来るように期待をいたしまして、次の第三点にあげてあります生産対策を徹底的に実行する、これは口ではこう言えますけれども、この点についてお尋ねいたします。  これは専門家の皆さんの意見をいろいろ総合してみますると、また、資料によりましても、一つには、反収を、単位面積からのとり上げ高を倍増するというくらいの生産性を上げる可能性が出ております。まずそれは桑づくりからだ、こういうことになっておりまして、桑づくりのためには肥料の増投と病害虫防除の手段等が有力であって、これさえすれば生産性は倍増する、生産費は二割、三割の大幅な引き下げが可能になるということまでは出ておりますけれども、具体的な実行策が一向どうもぴんとこない。蚕糸局長は、この段階で、ひとつこの点に関して抜本的な予算的な手を打ってみようという考えはございませんか。  私はこのほど、農村を歩いておりますと、養鶏団地を中心に、その付近にある住宅団地、これが、養鶏から来るにおい、くさみで、養鶏団地を引っこすか住宅団地を引っこすかしてもらわなければ困るという農村公害の実態に触れまして、これはどちらかで解決しなければいかぬということでいろいろ検討を加えましたところが、過日、東海北陸ブロック蚕糸会議というのがありまして、そこに熱心な方から提案がございました。鶏ふんの処理を中心にして、静岡県、愛知県、岐阜県あたりの問題になっているいま私の言うようなことは、これは私が考えてみたのは、仕事は、蚕糸局仕事ではなくて、公害部を新設して厚生省にやらせようという、農民の生活を守りその環境をよくしていくという、いわゆる憲法二十五条ですかの責任を果たす行政官庁がまず手をつけなければいかぬ課題だと、こういうふうに思いますので、その関係者にも事情を聴取いたしましたところが、全国的にこの問題がある。そこで、手段方法として、たとえば市役所が清掃自動車を買い付けてそういうにおいのする根源を適当なところに持ち運んでいくという考え検討されておるということであります。その困り物の処分を桑園に持っていったらどうだということで、ただ、そのままではいかぬそうですが、これにチップつまり木材のかすなどを混ぜますると、これは得がたき肥料になって、従来行なわれてきた化学肥料のほかに有機質の肥料としてきわめて価値の高いものになるから、これは、公害対策を推進をして、その困り物の処分を蚕糸局で受け取って、そうして何とか手がありそうなものだという一つのヒントを得たわけであります。生産の一番有力な手段は一反歩の単位面積からの収量を上げていく、それには簡単にはそれだということですから、これはぜひ実行し予算化してもらいたい。こういうことがもしできるならば、東海北陸の会議にも提起されましたが、桑の植えつけ本数を千二百本詰めて密植にして短期に収益をあげていくという技術専門家の意見も出まして、なるほどいろいろとあると思うのですが、この急所のところをぜひひとつ真剣に実行の方向で御検討を願いたいと思いますが、御感想を聞きたい。  その二つには、さっき言ったトマト娘の例なんですね。いま、養蚕がふえております府県の実態を見ますと、三ちゃん農が一ちゃん農になって、副業養蚕が専業養蚕になる、そこがふえているということは明らかである。そうなりますと、これはやはり機械化助長政策を新予算でお取り上げになった蚕糸当局のお考えに一致するわけですけれども、また、技術革新を取り入れていくという考えにも合うわけですが、生産対策からいくと、とにかく生産費を積み上げてくる基礎が日雇い賃金並みというんでしょう。これは乳価の場合はかなり苦労して直した。乳価は、そういう機械的なことではいけない、技術を加味した部分だけでもスライド指数化方式で修正をしていこうということに生産費の積み上げが変わってきております。これは蚕糸局仕事でぜひ積み上げてもらいたい。  生産対策は、以上のようにあげてきますと、いろいろあります。しかし、結局は、政府蚕糸当局の熱意いかんにかかってくる問題だと、こう思うのであります。  それで、たとえば山村地帯に特に養蚕の普及をせよということを、本院としては第五十一回国会、衆議院では今回の第五十五回国会で附帯決議までやっておりますが蚕糸局当局としては本件をどう取り上げをしてきているのか、これからどうしようとしているのかということを聞きたい。  第二点は、やはり熱意いかんという問題で一番大きなバロメーターとしては、後継者の問題であります。後継者農家育成施策の中で養蚕青年農家づくりともいうべきものが見るべきものがないだろうかということで農村を歩いて、私の目に写ったところでは、どうも出てこない。これは、きのう局長に聞いてみたら、後継者は、おやじのやっている仕事をそのまま継いだのじゃ、例の無利息の五十万円融資の恩典、優遇措置が受けられないことになっている、そのせいじゃないかということを聞きましたが、何かしらんけれども、四十年度の資料でも、二千七百四十七戸のうちで、養蚕はわずか四十四戸、まことに養蚕青年農家づくりの見通しとしては、いわゆる成長農業といわれている畜産や園芸部門千三百十戸に比して、あまりに斜陽的なような感がいたしますが、これもやはり政府の熱意のたいへん要るところだと思いますが、どうでありますか、伺いたい。  こういう点が、行政調査会などで三年も前にきめた蚕糸業界の情勢は全く変わったけれども、またこれがむし返されて、蚕糸局縮小とか、事業団がどうとかこうとかというような悲観的消極的な見通しも伝えられているような事態になってしまってきていると思いますが、私は、本件については、はっきりと農林大臣の口から、五月二十七日の参議院の予算委員会で述べられておりますように、明快な御答弁の中に力強い信念的な態度で言っておりますように、将来は絹に対する潜在需要一つ世界的なムードとなってあらわれてくる可能性があるんだという明るい不動の見通しに立って、こう思って速記録を見ますと、同じような見方をしている同志が、衆議院委員会審議の中にも、参考人との質疑応答の中にも出ております。そこで、私は、こういう意味から、活発な蚕糸行政を、海外に向かって日本基準価格七千円はあたりまえだということにして、しかも、伸び行く蚕糸日本のそれは繭増産にありという割り切った政策に力をいたすんだ、このように理解し、このように確認いたしたいのでありますが、締めくくりとして御明答を期待して私の質問は終わらしてもらいますけれども、しっかりひとつ信念を持って、自信を持って内外に展開をしていただきたい、こう思うのであります。
  17. 石田朗

    政府委員石田朗君) ただいま、いろいろお話がございました。私どもも、現在の生糸需要増大の傾向、この傾向を見通しまして、これに即応した繭の生産増強を強力に推進してまいらなければならないというふうに考えているわけであります。この点につきましては、すでに従来から繭生産の合理化、この推進につきまして、十年間で労働力を四割節約する、こういうような成果をあげておるわけでございます。今後はさらに養蚕飼育の面まで機械化、自動化を進めてまいるというようなことで、本年からさらに一そうの推進をはかっておるわけであります。  さらにまた、ただいまお話がございましたように、土地生産力を上げますためには、施肥の増大、あるいは有機物の増投というようなことが必要でございまして、全養連等においてもこの運動を推進しておられますが、特に有機物投入等につきましては、地域によりいろいろ手段考え方法を考えて推進をはからなければならないわけでございまして、ただいまお話がございました鶏ふん等の活用、これは、たとえば東海のごとき養鶏地帯等においては、きわめて適切な仕事であろうと思います。その他、私どもといたしましても、有機物投入につきましては、各地帯に適応する類型、こういうようなものを指導指針として大いに活用し、普及し、農家の熱意と相まちましてこの推進をはかってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。また、山村地帯の養蚕でございますが、これにつきましては、最近におきまして、山村振興対策の特別事業及び開拓パイロット事業等におきまして養蚕が主幹作物として取り上げられますことがますます増加いたしておりまして、私どもといたしましては、これは各地域の実情を考え、かつ関係各部局とも連絡をとりましてこの推進をはかってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それと同時に、養蚕について後継者育成、この点について欠くるところなきやというお話がございました。私どもといたしましても、養蚕後継者あるいは養蚕青年の熱意、これに期待するところが多いわけでございまして、この意欲を一そうかき立てることに努力をいたしてまいらなければならないと存じますが、先ほどもお話がございましたように、改良資金の後継者育成資金は、その農家のやっております主幹作物以外のものを選んでやっていくわけでございます。したがって、稲、繭等はこれはあまりない、こういうようなことに相なっておるわけでございますが、最近、私どもは、たとえば養蚕青年の体験発表会等が毎年行なわれております。特に本年の体験発表会におきましては、従来よりも青年の中でさらに一そう若い層が進出し、かつまた、その熱意も一そう例年に加えまして強いものがあったという状態でございまして、したがって、私どもは、一そうこの育成指導をはかってまいらなければならないと思いますが、青年層の間にも、ただいまの新しい機械技術の導入等とも関連いたし、主産地における最近の養蚕経営の発展とも関連いたしまして、その意欲は次第に高まってくる情勢にあるということは申せるのではないかと思うわけであります。それらを総合いたしまして、従来から、本年度におきましても、さらに自動飼育装置等を導入する問題等をはじめ、新たにいろいろな事業を展開いたしておりますけれども、今後一歩突っ込んだ生産増強の対策を、明年以後、蚕糸業振興審議会等の御検討を得まして、一そうの推進をはかってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  18. 野知浩之

    委員長野知浩之君) これにて暫時休憩いたします。午後二時に再開いたします。    午後零時二十五分休憩      —————・—————    午後二時十四分開会
  19. 野知浩之

    委員長野知浩之君) ただいまから委員会を再開いたします。     —————————————
  20. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案審査のため、来たる二十七日、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 御異議ないと認めます。  なお、人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  23. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 再び日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案に対し質疑のある方は、順次御発言願います。
  24. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 まず、事業団と関連をいたしまして、蚕糸局糸価安定特別会計についてお尋ねをしたいわけですが、この糸価安定特別会計の四十二年度の予算——いやこれは決算がまだ出ていないわけですから、これからの問題ですから、四十一年度の糸価安定特別会計の予算ですね。これは、中は簡単なようですから、生糸を買うのに幾ら金を予定しておった、あるいは繭の保管のために幾らの金を予定しておった、予備費が幾らあって、全体の規模は幾らだという説明をまずいただきたいわけです。
  25. 石田朗

    政府委員石田朗君) ただいま御質問がございました糸価安定の特別会計でございますが、これは昭和四十一年度におきまして百七十二億の予算を計上してございます。まず、生糸の買い入れにつきましては、一万五千俵を買い入れる、こういうような予定にいたしまして三十六億の生糸買入費を予定いたしております。かつ、これに生糸の管理費等がございますが、そのほか大きなものといたしましては、繭保管の補助をやる場合がございますので、この関係におきまして補助予算のワクといたしまして二億を予定いたし、その他事務費四千七百万、こういうことでございまして、これによりましてただいま申し上げました百七十二億の予算が計上してございます。  これに対しまする歳入面でございますが、歳入面におきましては、これは売払代もございますが、主としては借入金等によってこれをまかなうと、こういうことでございまして、持っております基礎財源及びこれによる利子収入等を除きました分は借入金によってまかなう、こういうことにいたしておるわけでございます。
  26. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そこで、四十一年は過ぎたわけですから、これで実際買い入れた生糸あるいは保管した生糸等の点についてお尋ねいたします。
  27. 石田朗

    政府委員石田朗君) 糸価安定特別会計は、糸価最低価格以下に下がりましたときあるいは下がるおそれがあるときに発動するわけでございますが、四十一年度中においてはそのような事態はございませんでしたので、この買い入れは行なっておりません。
  28. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 四十一年の特別会計の予算を見ますというと、百七十二億の予算規模の中で、予備費が百三十二億あるわけですね。この予備費の百三十二億というのは、どういう意味ですか。予測しがたい事態が起こった場合に、これによって生糸を買い入れたり、あるいは繭を保管したり、そういう場合の予備費ですか。
  29. 石田朗

    政府委員石田朗君) この予備費は、いまお話がございましたように、当初立てておりました計画以外に出てまいりますものを扱う予算ワクでございますが、四十一年度におきましてこれが特に大きく出ておりますのは、四十一年度は、いまの事業団設立までの間におきまして事業団法がすでに国会に出ておりましたので、その場合、従来は保管会社から、あるいは新法成立以後は事業団から買い入れます九条の二に基づく買い入れ、これに関します部分がこの買い入れ経費に計上してございません。したがいまして、その分がこの予備費の中に入っている、こういうことでこの予備費がさらに大きくなっている、こういう形になっております。  四十二年度におきましては、九条の二の買い入れは約六十億を予定いたしております。
  30. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いま、事業団の過渡期であったから予備費が大きくなっている、こういうお話なんですが、四十二年度の予算におきましても、予備費が五十億ほど組んでありますね。  そこで、大臣にお尋ねをいたしますが、糸価安定特別会計が、四十一年は、生糸を三万七千二百俵買うという予定で予算が組まれている。それから乾繭三千七百五十トン保管するための予算が組んである。そのほかに、万一の場合を想定して予備費として百三十二億というものを組んである。それで、実際は何もしなかったんですね。実際は何も買わなかった。こういう特別会計について、大臣はどういうふうに考えられておりますか。少なくとも四十一年の予算を組むときには、生糸がどのくらいのものになり、繭がどうなるということは、はっきり想定がついているはずです。つかないということなら、また伺います。ですが、そういうものにかかわらず、こういう予算が組まれるということは、これは一体どういうことなのか、まず大臣にお尋ねします。
  31. 倉石忠雄

    ○国務大臣倉石忠雄君) 従来、御存じのように、生糸関係は相場の変動が激しいわけでございまして、そこで、政府といたしましては、なるほど化学繊維などの発達によって輸出は低下いたしましたけれども、今日の諸外国における絹に対する需要が、国内用もそうでありますが、著しい勢いで伸びてまいりました。私どもは、蚕糸業に対して、原則的には、やはりわが国独特のものでもあるし、この天然の絹糸に対する人々の関心というものは必ずややがて回復するものだと思っておったわけでありますが、はたして今日はそういう傾向になりましたが、輸出関係を見ておりますというと、ことにニューヨーク市場あたりにおける相場の変動が著しいということが、日本の絹糸の輸出を疎外化しております大きな原因でございます。  そこで、過去の歴史を見ましても、繭、生糸等に対してそれぞれその価格を安定させる方途を講じてまいった過去の実績がございますが、今日におきましても、やはり、どうもとかく相場の変動が激しいときに出動をいたして買いささえるということを蚕糸政策全体としてはいままで考えてまいったわけであります。したがって、そういうときに一定のワクを持っておりませんというと、にわかに出動いたすことに非常な困難性がございますので、そこで、いまここでお話が出ておりますように会計に予算を盛っている、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  32. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、大臣に私はそういうことを伺っているのじゃないんです。そういうことはもう承知をいたしております。四十年も組んだから、あるいは三十九年度もそういうものを組んだから、四十一年度も組んだんだと、あるいは四十二年度も組むんだというお考えなのか、そこら辺をちょっと伺いたいわけですよ。それで、いま、組んだけれども、何も買かなかったと。しかも、予備費は、何せ全体の予算の中の八割に及ぶような、万一の場合ということで百三十二億というような予備費を組んであるわけですよ。その程度の見通しがつかないわけはない。ですから、私は、そこら辺を伺っているわけなんです。一体、どういうわけなのか。去年も組んだ、ことしも組んだ、来年も組むんだ、再来年も組んでいく。そうして、これは、実際いま全然力を発揮できないんですね。買おうと思っても、余っているんだけれども、安定のためには何も尽くせない。四十二年度の状況からこれから先の状況を見ましても、私はそういう事態にはならないのじゃないかという気がしているのですがね。いま、大臣は、非常に変動があるというお話でございますけれども、これは戦後から三十四、五年までの蚕糸業状況というものと、三十五年以降の蚕糸業事情というものは、私は条件が非常に違っているというように思うのですが、それはまああとでひとつ論議いたすとしまして、それを伺っているわけですがね、どういうわけなのか。
  33. 石田朗

    政府委員石田朗君) 基本方針は、大臣お話しになったとおりでございますが、その点で御理解をいただきたいのは、この特別会計の予算でございますが、これは、百何十億というのをきめまして、これだけの金が現実に年度初めに投入されるというものではないわけでございます。結局、特別会計は、国の会計でございまして、予算に基づかない支出というものはできないわけでございますので、実際に買い入れに出動するという場合は、予算がなければ全然動けない。片方、その収入は、先ほども申し上げましたように、借り入れによっておるわけでございます。したがって、現実に特別会計に予算が組まれたら投げ込まれるわけではないわけでございまして、借入金のワクを設定し、ここまでは買い入れできると、こういう両方の歳入歳出のワクを設定しておく、それでそれによっていかなる事態が起こっても動き得ると、こういう体制になっておるということでございますので、この点を御理解いただきたいと思います。
  34. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いまの局長答弁ですが、いかなる事態にも即応するという体制だというのですけれども、実際はそのいかなる事態にも即応できないのじゃないですか。いま即応しておりますか。即応できないでしょう。これからも即応できるのですか。四十二年度に、一体、買いに出られますか。また、売り出せますか。ですから、私は、何か空虚なものに感ずるわけなんです、この特別会計を。買おうという予定にしておったものも全然動かないし、それ以外にたいへんな予備費も組んであるけれども、それも動かない。いま蚕糸局長のおっしゃったこの事業会計はわかりますよ。そういうことを聞いているのじゃなくて、これくらいの見通しも立たぬような、何か空虚なものに感ずるわけです。その点についての大臣——これは改正する必要があるのじゃないかという気もしますし、どうされるのだろうと、こう思っているのですがね。
  35. 倉石忠雄

    ○国務大臣倉石忠雄君) ただいまの状況は、先ほどお話のございましたように、需要相当活発でございますからして、そういう心配はないわけでありますが、一朝大きな変動がありまして市場にがたが来たようなときには、やはり買いささえるということに急遽出動するためには、そのワクを持っておらなければ出動ができませんので、そういうために用意をいたしておく、こういうわけでございます。
  36. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは特別会計の性格にも関係してくるのかもしれませんけれども蚕糸局長にしましても、一般の人にしましても、四十一年度の予算を組むときに、この特別会計が動くなんていうことは全然考えないと思うんです。にかかわらず、この特別会計があるわけですね。四十二年度においてもそうじゃないでしょうか。四十二年度においてこの特別会計が発動するということは考えられぬ。三年においてもそうじゃないか。大臣は、いま、不測の事態もあり、過去において養蚕値段が非常に動揺したことがあるからというお話でございますけれども、その点は、戦後以来の養蚕の経緯というものを見た場合に、はっきり条件は違う。三十五年以降というものとその前は違うという点を考えなければならぬのではないかと思うのですが、若干あとの質問にも触れますけれども蚕糸局が想定いたしております五十一年度までの生産の見込みとかいうものをつくっております。これは農政審議会の繭の小委員会でも出ておりますが、それなんかを見ましても、これは全然想定できないです。  昭和二十一年に、御承知のとおり、養蚕の振興五カ年計画を立てられて動いてきたわけですが、それは戦前の状態に復帰する過去のルートに乗った発展が行なわれたわけですね。ですから、繭で言いますと、二十一年から三十三年くらいまでの間に、約四倍にふえているんですね、繭の生産量というものが。これから五十一年まで一体蚕糸局は幾らふえていくというように推定しているのか。せいぜい五割か六割くらいのものでしょう。四倍にふえているんです。それは、さっき言ったように、戦前の養蚕業に急速に復帰するという過程です。ですが、三十五年からは違うんです。そこのところを考えてこの特別会計というものは再検討する時期に来ているのじゃないかというふうに思うんですよ。そうでなければ、毎年々々これを組んでいくわけですが、理解に苦しむですね。全然理解できないです。一体、何だ。これは動かない。ことしも動かない。四十年も動かないんですよ、全然。三十九年はちょびっと動いておりますが、その前も動いていない。三十五年以降というのは動いていないと言っていいんです。これから動く見込みは私はないと思う、いまの特別会計の状況では。そういう場合に、一体、大臣はどういうふうに考えられるのか、お尋ねします。
  37. 倉石忠雄

    ○国務大臣倉石忠雄君) いろいろな農産物の中で、鶴園さんすでに御存じのとおりに、従来、繭、生糸、こういうものに対しては、しばしば大きな価格変動がありましたので、そういうときの用意にいろいろな法的な措置を講じて、下限を維持して買い上げるという制度が何べんか繰り返されてまいったことは、御存じのとおりでありますが、私ども日本蚕糸業というものを、非常に有望な傾向にありますので、さらにこれを助成いたしてまいりたい、こういう考えを持っておるわけでございます。したがって、そういうものが、取引関係等においても、過当な投機の対象に昔からなりやすかった。大きな投機の目標物であったことも、これは御存知のとおりであります。したがって、いかなる事態が起きても、いかなる事態で急激な変化が起こっても、やはり特別会計においてこれを買いささえる安定感がありますれば、いま申しましたような大きな投機的なことによって相場を狂わせるというふうなこと、そういう考えを未然に防止することができるのではないか。私どもといたしましては、ただいまの現状では、需要を順調に伸ばし得ると思ってはおりますけれども、やはり、しばらくの間は、どういう事態がありましても買いささえのできるような用意をしておくということは、過去の経験から見ましてやはり必要な措置ではないだろうか、こういうように蚕糸関係いたしておる者は考えております。政府も、やはりそういうことの諸般の用意をいたしておることが必要であるというこういう点に立ちまして、予算のワクをとっておる、こういうわけであります。
  38. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 ちょっと事務的な問題について聞きたいのですけれども、いま私が言っておるのは、戦後の二十一年から始まった養蚕五カ年計画、引き続いてのまた計画が行なわれまして、三十二年までに繭の生産高が四倍くらいにふえてきた。生糸生産が四倍にふえたわけです。しかし、これからはそうじゃないんじゃないか。ああいう異常な状態といいますか、繭の生産が十年くらいの間に四倍、生糸の数量が四倍にふえていくというようなことは、蚕糸局としては考えておられないでしょう。   〔委員長退席、理事任田新治君着席〕  五十一年までの間にせいぜい六割か七割ということを考えた場合に、こういったようなものがこのままでよろしいというのかということを聞いておるんですよ、大臣。ところが、大臣は、そこのところをどうも御理解なさらないように思うんです。これはまあこまかい問題のようですが、しかし、ぼくは、非常に重要な問題だと思うんですよ。ですから、一ぺん局長から答弁してください。
  39. 石田朗

    政府委員石田朗君) 先ほど、鶴園先生は、三十五年あたりを境にして事態が変わったのではないかと。どのようなことを意味しておいでかわかりませんが、私どもも、三十五年ごろから蚕糸の独自の需要がはっきりしてまいった、需要の増勢が明確になってきた、こういうことは言えると思います。その意味では、変わってまいったというふうに考えてもよろしいかと存じます。ただ、ただいま言われましたように、しからば、かつてのような糸価変動のおそれがなくなったであろうか、こういうふうに言えるかと申しますと、私どもは、それはそう考えることはむずかしいのではないか。糸価が自然のままに放置しても安定的に推移するであろうということがほんとうでありますれば、まことにけっこうなことかと存じますが、私どもは、必ずしもそうは言えないのではないかというふうに思います。三十九年から四十年にかけまして、特別会計が、買い入れ、売り渡しをやっております。その他、三十八年の暴騰、暴落といったようなこと、これはいろいろな事情に基づくものでございまして、これ自身、このようなことを繰り返すことは好ましいことではありませんけれども、しかしながら、このような事態もあるわけでございまして、われわれとしましては、先ほど言われました需要の増勢の新しい事態というものに対応すると同時に、やはり糸価変動に対しては十分なる安定措置をもって臨まなければならないのではないかというふうに考える次第であります。  なお、生産増強につきまして、三十年ごろまでの増加が、これが戦前への復元過程であると。これはそれなりにそういうようなふうに考えられると思います。したがって、今後の見通しとしましては、やはり内需その他需要動向にかんがみまして、これに十分対応した生産増加でなければならないと思います。これが約十年間で六割の需要の増大が見込まれまして、これに即応した生産増強が必要である、この方向に向かって努力をいたさなければならないものだというふうに私ども考えております。
  40. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、局長、三十五年ころを境にして、日本蚕糸業というものが変わってきたという点は、これは単に需要の問題ではなくて、生産条件が基本的に変わるわけでしょう。労働力が払底をするという異常な状況になってくるわけでしょう。その前の状況とは違うんですよ。ですから、私が言っているように、これはもう少し具体的に答えてもらいたい。それは、先ほどから私が申し上げておるように、二十一年から三十三年までの間、つまり十年ちょっとの間ですが、その間に、繭の生産量というもの、生糸生産量というものは、四倍にふえた。しかし、農林省は、これから五十一年までの間に生糸生産量が幾らふえると見ておるかといえば、六割か七割でしょう。あのときは、ちょうど、繭の非常な増産生糸の非常な増産の最絶頂と、日本の不況というものが一緒になるわけですね。あそこで異常な状態を生ずるわけです。今度のこれからの見通しの場合に、そういうことが考えられるか。どだい生産量すら六割か七割の増産でしょう、見通しは、五十一年までの間に。四倍という見通しじゃないですよ。いたずらにこういうものをつくって、生糸というものはいつ不安定になるかわからない、どのような不安定な実情になるかわからないというような空気をまき散らしているにすぎない、私はそういう気持ちすらするんです。そこらを踏まえて御答弁をいただかなければならないと思うんですがね。おたくでつくった案でしょう。われわれの手元へ来ているんですよ。これからの見通しは、六割から七割ですよ。四倍になるなんという考えはないですよ。また、そんなことになりっこないしね。   〔理事任田新治君退席、委員長着席〕
  41. 石田朗

    政府委員石田朗君) 先ほどお話がございましたように、終戦時の荒廃した状態から見ますと、三十年当時は非常にふえてまいった、こういうことが言えるかと思います。全体といたしまして、生糸生産量は、二十二年において約十一万九千俵でございます。それが三十年において二十八万九千俵になっております。これは、率のこまかい点は別といたしまして、非常に増大いたしていることは事実でございます。事実でございますが、そのような事態であれば糸価安定制度が要るが、今後十年間に六割ふえるというのでは要らないという先生お話は、これは残念ながらどうも私ども了解にいささか苦しむ点があるわけでございますけれども、この点は現在の養蚕をやっております農家及び蚕糸関係者、これらの安定的な発展、こういうことを考えますならば、繭糸価格についてできるだけ安定した価格をもたらし不安をなくしまして、そうしてこの生産が順当に伸びていくということをはかってまいるべきではなかろうかというふうに私ども考えておるわけであります。
  42. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 局長は、私の言うことを誤解しちゃ困るですよ。私は、これは要らないと言っているのじゃないですよ。条件が非常に変わってきたんじゃないか。これからの見通しだって、はっきりしているんです。おたくの見通しだって、こんなにならないでしょう。六割、七割もふえるということは考えられませんよ。しかし、一応出ているわけです。条件が違うから、この糸価安定特別会計というものはここで検討する時期に来ているのではないかということを言っているのであって、要らないということを言っているのではないんですよ。  これくらいにして、次に、日本蚕糸事業団について伺います。  日本蚕糸事業団は、これは昨年の四月一日に発足をしたわけですが、昨年の予算は、生糸売買勘定と乾繭の勘定と二つに分かれておりますね。そして、どのような予算規模になっているのか、これをお尋ねいたします。
  43. 石田朗

    政府委員石田朗君) 蚕糸事業団の予算は、非常にこまかく分かれておりまして、総勘定、管理勘定、生糸売買勘定等に分かれておるわけでございますが、総勘定、管理勘定は、これはいわば事務的な経費でございますので、生糸売買勘定といたしまして約九十六億、これを考えております。これは生糸約三万俵を取り扱う経費でございます。それから乾繭の勘定でございますが、これは五十三億七千五百万でございまして、乾繭千五百トンを扱う予定にしております。そのほか、短期保管勘定が五十三億ございまして、これは、買い入れ、売り戻し、短期保管をいたしますもの一万八千俵を予定いたしております。
  44. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いまお話しのように、生糸の売買の勘定が九十六億、三万俵買い入れる、それから受託の乾繭の勘定が五十三億、乾繭を千五百トン、その結果、昨年はどうだったのですか。
  45. 石田朗

    政府委員石田朗君) 昨年におきましては、短期保管の実績が出ております。生糸及び乾繭の買い入れ、売り渡しはございません。
  46. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この前身は、生糸の保管株式会社になっておるわけですね。それは、発足以来、どうですか、生糸の売買あるいは乾繭の保管について活動いたしておりますか。
  47. 石田朗

    政府委員石田朗君) ただいまお話がありましたが、蚕糸事業団は昨年の国会の御可決によりましてできました日本蚕糸事業団法に基づいて新たに発足いたしたものでございまして、その前に保管会社というものはございますが、これは若干性格を異にいたしております。ただ、日本蚕糸事業団ができました際に、保管会社の業務も新たなる立場で編成をいたしまして、蚕糸事業団仕事としてこれをやっておるわけであります。この場合につきましては、三十年から三十四年にかけて及び三十八年から四十年にかけまして、おのおのある程度の買い入れ、売り渡しを行なっているわけでございます。
  48. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そこで、いま話のありました日本蚕糸事業団は、昨年の四月一日に発足したわけですが、これは若干金融的な面も取り扱っておりますけれども、本来の主要な任務についてはやっていなかったわけですが、その前身の一つとなりました保管株式会社、保管会社ですね、これは三十年から三十四年の間、これは先ほど私がたびたび言っているように、異常な状態であったわけで、そのときに動いたことはわかっておりますが、その後については動いていない。主要な任務については動いていない。金融みたいな面については動いていますがね。  そうしますと、大臣にひとつお尋ねをしたいのですが、いまお聞きのとおりでありまして、三十五年以降というものは、私は蚕糸業の条件というものは非常に変わっているというふうに見ておるわけですが、そういう中で糸価安定特別会計というものはほとんど動かなかったんです。動いていないと言っていい。それからもう一つ蚕糸事業団ですね、これも動いていないんです。そこで、一つ伺いたい点は、蚕糸局糸価安定特別会計というものがあって、さらにもう一つ全く似たような仕事をするこの事業団というのがあるわけですね。どっちも生糸を買い入れる、どっちも売る、どっちも乾繭を保管する、二つもこの機関があるわけですが、これは一体別個のものなのか、全く別個な全く異質なものなのか、そこを大臣にお尋ねをしておきたいと思います。
  49. 倉石忠雄

    ○国務大臣倉石忠雄君) 日本蚕糸事業団は、ただいまお話のございましたように、先般の国会で成立いたしました。そこで、事業団目的は、申すまでもなく、繭それから生糸価格の適正な水準における安定をはかる、そういうことを目的といたしておるわけでありますが、繭や生糸は、先ほど来ここでお話し合いがございましたように、異常な変動が従来はございました。そういう異常な変動に対処して買い出動ができるように用意をいたしておりますのが特別会計でありますが、蚕糸事業団は、このたびも御審議を願っておりますように、これはもともとできております。構成は、政府が十億、それから民間が七億出資をいたして運営いたしておりますが、日本蚕糸事業団は、今度、最近の状況を見まして、わが国は内需に対してこたえるばかりでなくて、輸出によって、かつて持っておったようなわが国のシェアをひとつ回復していくことも必要であるというこういう見地に立ちまして、新たな出資を得て、そしてそういうことのために輸出をいたすために事業団が買い入れをすることができるというようにいたしたい、こういうことでございます。  特別会計は、先ほど申しましたように、異常な変動のときにこれを買いささえるために用意をいたしておくものでありますが、蚕糸事業団のほうは、いま申し上げましたようなほかの機能的目的を持っておるわけでございます。したがって、事業団方式によります安定をはかりますことは蚕糸事業団目的であり、また、輸出に出動いたしますためにそのための生糸を買い入れることもできるというそういう機能を日本蚕糸事業団は持っておりますが、特別会計のほうは、先ほど来のお話のように、異常な変動に対処する用意のために設けておる、こういうふうに両者の機能の目的がおのずから別である、こういうふうに私ども考えておるわけであります。
  50. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大臣、私は、るる伺っておること、あるいはいろいろとお話し合いをしておることは、大臣が判断ができるように伺っているわけなんです。ですから、私の質問からずれたようなお答えをいただいてはこれは進まない。私は、これからの蚕糸事業団のことを聞いておるのではなくて、いままでの蚕糸事業団のことを聞いておるわけです。これからのことは、この法案の中に、これから輸出生糸を買うということ、それを聞いているのじゃないのです。これはまだあとの話です。いままでの話し合いの中で結論として私が伺っているのは、蚕糸局にあります糸価安定特別会計も買い入れる、売る、乾繭を保管する、そのための特別会計だ、蚕糸事業団も、いま、その主たる仕事というものは、いま申し上げたように、買う、そうしてまた生糸を売る、それから保管するという仕事をやっておるじゃないか、これは異質なものなのか同じようなものなのかという判断を大臣に伺っておる。それ以外のことは伺っていないんです。
  51. 倉石忠雄

    ○国務大臣倉石忠雄君) 私がお尋ねを理解いたしておりましたのは、蚕糸事業団と特別会計とはどのように機能が別であるかというお尋ねだと思ってお答えをいたしておったのでありますが、先ほど私が申し上げましたように、特別会計は、先ほど来お話しのように、異常な変動のあったときの用意にこういう用意をしておくことが必要であるということでございます。蚕糸事業団は、常時価格の安定に対して対処する目的もございますけれども、主としてやはり機能的には特別会計とは若干違った意味を持っておるものであると、こういうふうに理解をいたしておるわけでございます。
  52. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 若干違うというお話なんですが、そのとおりだと思います。若干違っております。私もそう理解します。糸価安定特別会計は異常な事態に備えるんだ。蚕糸事業団というのは、もう少し小幅の変動ですね、大幅の変動と申しますより小幅の変動ですね、それに備えるというお話なんです。  そこで、お尋ねをいたしますが、日本の農産物の中で、こういう二重の価格安定をしているものがほかにありますか。これは局長に伺いますが、一つこうあって、もうちょっと外側にもう一つこういう価格安定をしている作物がほかにあるかどうかという点を伺いたいわけです。
  53. 石田朗

    政府委員石田朗君) 現在の農産物におきまする価格安定方式は、おのおのの農産物の特性によりましていろいろな形をとっておるわけでございまして、たとえば畜産事業団は、豚肉の取扱いをしてやってまいる、こういう形をとっておるわけでございます。蚕糸関係につきましては、他のものと異なりまして、最近まで、特別会計によりまする最高・最低価格の設定及び買い入れ、受け渡しということで、異常変動を防止するという方式をもって取り進めてまいったわけでございますが、さらに、この間において、小幅の、ただいまお話ございましたように小幅の中間安定帯を設け、これを民間出資をも入れて実情に応じて最も有効に動かしてまいるということが必要ではないか、こういうような関係各業界の強い要望がございまして、いろいろ検討いたしまして、これが最も適当であろうということで、いまの特別会計に加えこの蚕糸事業団による中間安定措置を昨年から実施いたしておるわけでございます。
  54. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 局長は、私の言っていることに対して正確に答えていない。そこで、私は蚕糸局あるいは蚕糸業はいまもう転換期に来ようとしているというふうな感じを強く受けるわけなんですが、その一つとして日本蚕糸事業団法の一部改正というものも出てきたと思うんですが、もう少し根本的に言いまして、日本養蚕業というものが、かつて最盛期に二百二十万という農家がこれをやっておった。米と並んでの二大産物であり、日本輸出総額に占める割合が四六%だったと言われた時代ですね、その昔の夢を戦後またということでやったわけなんですが、いま御承知のとおりに四十七万戸くらいなもので、それもまだどんどん減るという状況です。生産額も、農産物の価格の中ではわずかに二・五%くらい、輸出額の中に占める生糸の地位というものは一%割ってしまうという状況なんですが、そういう条件が非常に変った中で、こういう二つの制度ですね、蚕糸事業団というものと安定特別会計というものを二重に、しかも、どれもこれも全然発動しないというやつを一体どういうふうに考えておられるか、私は理解に苦しむのです。  そこで、大臣にお伺いいたしますが、蚕糸事業団のいまの仕事、つまり生糸を買ったり売ったり、それで大幅な生糸価格変動を防止しよう、それから乾繭を保管したり、糸価安定特別会計も同じようなことをやっておるのですが、これは糸価安定特別会計の中に蚕糸事業団仕事を一本にしたらどうか、簡素なものにしたらどうかという意見があるのですが、大臣はどのように考えておられますか。二つの虚器を依然として温存しておかれようというつもりですか。
  55. 倉石忠雄

    ○国務大臣倉石忠雄君) 蚕糸業現状は、ただいまお話しのようなことでありましたけれども生糸に関する内需は非常にふえてきておりますことは、御承知のとおりでございます。いまは、もう外国からも輸入をいたしておる状態です。しかも、今日、私どものような長野県の養蚕業のまん中で生まれておりまする者から見まして、なるほど化学繊維等の発達によって沈滞はいたしてまいりましたけれども、ただいま畑作物の中で養蚕というものは非常に実入りのいい、所得の多い仕事になってまいりましたので、最近はことさらにやはり桑畑がふえてまいりました。しかも、これは、努力のしようによっては、外貨獲得のりっぱな手段にもなってまいるのであります。ことに、ただいまやっております養蚕家及び製糸家、あるいはそういうことに重大な関心を持っておられます政治家の方々でも、御存じのように、外国市場日本生糸がとかく疎外されてまいりました大きな理由は、価格変動が激しすぎるということでございます。もう一つは、品質を優良なものにしてもらいたい。この二つの要望がかなえられるならば、まだまだ国外における市場というものは十分開拓の余地があるんだということで、一般の養蚕に関心を持っておる者の要望もさることながら、農林省もやはり同じような立場に立ちまして、そして先ほど来ここでお話のございましたような特別会計は持続いたすばかりではなくて、日本蚕糸事業団というものは、鶴園さん御存じのように、昔わが国の輸出貿易の大宗を占めておりました時代からいろいろな形で繭を買い上げ、あるいはまた生糸を買い上げ等をして価格変動を防止する幾多の会社が、立っては変化され、立っては変化され、ただいまは政府出資と民間との出資の合同によりまして蚕糸事業団というものが国会の御賛成を得て成立して、先ほど鶴園さんがお話しのような使命を帯びて、現在存在いたしておるわけであります。  ことに、ここで御審議を願います蚕糸事業団法の一部改正によりましては、さらに蚕糸事業団がこれから新しい任務をもって活動しようとする、こういうことはやはり民間と協力いたしましてやってまいることが蚕糸業発展のためには有利ではないか、私どもはこう判断いたしておりますので、糸価の特別会計の持っております機能及び目的とは若干の違いがございますので、私はやはり現行のような姿でやらしていただくのがいいではないか、こういうふうに思っておるわけであります。
  56. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大臣のその考え方につきましては、後刻繭の増産あるいは養蚕業の考え方、そういうところでひとつ論議をしたいと思いますが、確かに、長野、群馬は、日本養蚕業の中でも両横綱であります。両方とも七万ヘクタールをこしておる。それがまた下って四万ヘクタールになってしまった。ですから、私は全国区ですから、長野もよく行くわけですが、大臣のほうの第一区というところは、ほとんどみなリンゴ畑になりましたですね、桑畑が。ぼくは三十四年と四十年に回ったが、みなリンゴ畑になってしまった。養蚕業というものも、農山村から山村へと山へだんだん追い上げられているわけですが、それらはあとでひとつやることにいたしまして、どうもいまの大臣答弁は歯切れが悪い。はなはだしく悪い。先ごろ発表になりました糸価安定法による最高売り渡し価格六千三百円、事業団の売り渡し価格六千百円、これは二百円の差です。もう一緒ですよ。何が大幅で、何が小幅か。何が異常な事態か。最低価格を見ますというと、安定法の買い入れ最低価格は四千七百円、事業団の買い入れが五千三百円、その差が六百円、一〇%ですね。最高価格は三%という差があるわけですよ。こういうこまかい差で、大幅だ、小幅だ、異常な状態だ、平常な状態だと、安定のいまの状況の中で、これからの蚕糸業見通しの中で、二つ置かなきゃならない理由は私はないと思うんです。一本にしたらよろしい、こういう感じを私は持つんですが、大臣は御承知かと思いますが、養蚕増産に対しては九千万ちょっとの金ですよ。あとは、みな人件費の補助です。昨年は四千万円くらいでした。ことしは九千三百万円くらいです。  でっかい金を動かしていくわけですからね。今度は十億出資されるわけですが、その前に十億出資されたですから、二十億、利子補給をやっただけでもたいへんな養蚕業の仕事ができると思うんです。  それは別にいたしまして、最高・最低価格が、安定法のやっと事業団のやっとは、はなはだ接近しているんですよ。何が異常で何が平常かと言いたいわけですが、そういう点を考えましても、現実の姿はこういうように変わってきているんだから、養蚕業の実情も私が先ほど申し上げたとおり、そういう中で、この二つの問題について、事業団と特別会計について、率直に検討する必要があるというように思いますが、重ねて大臣答弁を聞いておきます。
  57. 倉石忠雄

    ○国務大臣倉石忠雄君) 先ほど来お話しのように、機能が若干分かれております。片一方は民間と政府との共同で事業を営んでおる。しかも、一方は、輸出のために全体の一割を買い入れて、それを輸出のために放出するというそういう機能を、いわば、何といいますか、民間会社にふさわしいような機能を持っておるわけでありまして、私はむしろこういうことが発動されずに済むならばかえって蚕糸業というものは安定してうまくいっている時代だと思うのでありますが、いかなる事態が起きましてもこういう機能をいつでも発動し得るという体制に持っていっておくことが、先ほどお話を申し上げました過度の投機的な傾向を生まないで済む、逆に申せば価格を安定するささえになっている、こういうところにこういうものの妙味があると存じます。そこで、もちろん、たとえば異常な価格変動等がありましたときには、両者が調整をしてそれぞれの持っておる機能を働かせてやることは必要でありますけれども、私ども現在の段階においては、やはりこの二つが両々相まってやっていくことが蚕糸業界の期待に沿うゆえんではないかと思いますし、それからわれわれの所期の目的を達成いたしますにもいい方法ではないか、このように考えておるわけでございます。
  58. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは少しくどくなりまして恐縮ですから、あとでもう一ぺん振り返りまして、その問題に立ち返って論議することにします。  次にお尋ねをいたしたい点は、社団法人の日本絹業協会ですね、これは四億三千万円か五千万円程度の予算で海外需要を喚起するために設けてある。政府は、これに対しまして、大体半分ぐらいの出資をしている、二億ちょっとの。農林省はことしでいいますと一億六千万円程度、通産省はこれにプラスして出資しまして——補助金ですね。出資ではなくて、補助金です。補助金を出しましてこの社団法人日本絹業協会というのをやっているのですが、ほとんど九割ぐらいは海外で宣伝に従事しているわけです。これが非常にマンネリズム化していて評判が悪いのですけれども大臣はどう見ておられますか。
  59. 倉石忠雄

    ○国務大臣倉石忠雄君) 私が大臣としてこういうことを言っていいかどうか別問題でありますが、私ども率直に見まして、やはりこういう機関、それからジェトロでもそうでございますが、いろいろな官庁的制約があるとみえまして、民間人の期待いたしておるほど一〇〇%活発に効果をあげておると言えるかどうかは、見る人によっていろいろ批判があると思います。私ども、そういう御批判には謙虚に耳を傾けて、政府関係いたしておりますこういう海外宣伝機関等については、さらに民間のシャープな頭で商売している人たちの期待に沿うようにつとめるべきであると原則的には思っておりますが、絹業協会につきましては、先ほど私がちょっと申し上げましたように、せっかく昔わが国は生糸市場を持っておったわけでありますから、そういう市場を確保するということはどうしても必要だ。しかも、政府は、繭の増産をはかって、さらに生糸輸出を増進しようという考え方で対処いたしてまいりますためには、絹業協会がさらにその目的達成のために海外におけるわが国のシェアを確保すると同時に、われわれの輸出が活発にできますように前線基地において働いてもらう、そういう機能を持っているわけでありますので、これはひとつ必要である。ただ、それの活動においてもっと活発に行なわれるようにさらにわれわれは期待をいたし、そのために検討もいたしたいと思っております。
  60. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、蚕糸局の予算を見まして、初めて見たわけですが、見ますというと、蚕糸局の予算というのがおもしろいのですね。初め第一番目に本省の人件費が出てきまして、その次に審議会の経費が出てきます。三番目にこれが出てくるわけですね。生糸需要の増進ということで、中にありますのは、一億六千万円という日本絹業協会に対する補助金ですよ。いかにも蚕糸局の性格をきわめて象徴しているというふうに痛感しました。よけいな話になりますので……。  私は、特にこういうような機関が、いままでも、また、これから以降要るのかどうかという点について、疑問があるわけなんです。生糸と似ている真珠も、この七、八年来、西日本におきましては至るところでやられるようになっているわけです。いまこの輸出額は非常にふえてまいりまして、漁業白書によりますというと、いま二百八十億ぐらいになっているのじゃないですか、年間輸出額というものが。それで、生糸は、御承知のように、九十億、ことしは五十億くらいになっているのじゃないでしょうか、輸出は。一体、生糸と真珠というのはどうして要るのだと聞いてみましたら、真珠はどこにもそういう政府が二億以上出してつくっているような海外宣伝機関はないというんです。どこがやっているんだと言いましたら、ジェトロがやっているという。それじゃ、農産物の中でそういう取り扱いをしているものがあるのかと聞いたら、どうもないようですね。ジェトロがやっているようですね。真珠にしましても、マグロにしても、あるいはミカンのかん詰めにいたしましても、ジェトロがやっているんですね。どうも、これも、かつての黄金時代のなごりがだいぶ残っているという気が非常に強くするわけですがね。これからの状況等を考えました場合に、政府がつくりましたジェトロ、これは完全に政府出資でやっているわけですが、いま四十六億の出資ですよ。そして、アメリカにも五カ所くらいの大きな事務所を持っております。西欧には、ロンドン、パリをはじめといたしまして、世界で十四カ所大きな事務所を持って、小さな事務所を四十三持っている。日本絹業協会というのは、先ほど私が申し上げたように、政府が二億数千万円の補助金を出して、四億五千万円の金で、パリとニューヨーク、二カ所に事務所を持っています。これは、どうなんですか、ジェトロと日本絹業協会との関係はどうなっておりますか。
  61. 石田朗

    政府委員石田朗君) ただいまお話しの関係というのがどうもわからないのでございますが、日本絹業協会につきましては、生糸、絹織物全体の国際的な需要増進、需要拡大の役割りを持ちます国際絹業協会というのがございまして、主要なる需要国、生産国に、おのおの各国別の絹業協会があるわけでございます。日本もその国際絹業協会の有力なるメンバーとして日本関係者がおるわけでございます。そのような国際絹業協会との関連、したがいまして、これによって日本絹業協会が活動するだけでなく、国際絹業協会をも動かして需要拡大に当たるというような点からいたしまして、日本絹業協会が、民間の金を集め、かつ国の補助をも受けまして、主として海外需要拡大に当たっておるわけでございます。  したがいまして、生糸につきましては、このような事情がございますので、日本絹業協会をもって海外需要拡大をやらせることがやはり適当なのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  62. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それは、局長としては、わかるんだから、いまみたいな答弁もせざるを得ないと思いますけれどもね。しかし、これはやはりまた別の角度からも判断をしなければならないのであって、私はそういう意味で大臣答弁を求めたいわけです。真珠は、先ほど申し上げましたように、四十年の輸出額は二百三十億です、年々非常にふえてきましてね。四十一年度は若干減っているようですがね。これはいろいろ事情があるようですけれども、若干減っているようですけれども、四十年は二百三十億です。絹並びに織物、そういうものを合わせまして四十年が九十八億ですね。ちょっと三分の一ぐらい——もっと二分の一ぐらいになるんですが、さらに本年はもっと低まっているんですが、これからの見通し考えましても、私は、いま局長の言った答弁は、それは従来はそうであったですが、いまですね、ニューヨーク、パリに何人おるんですか。これに書いてありますがね。これで絹のシェアがどうじゃ、マーケットの確保がどうじゃというものではないと思うんですがね。ジェトロにやらせるということは考えられませんですか。何しろ政府の投資した機関として出てきたわけです。非常な力を持って出てきたジェトロは、どこに行ったって有名ですよ。どこを歩いたって、ジェトロといったら、これはりっぱなものだ。絹業協会なんて今度初めて知ったですよ。さびしい話なんだけれども。だから、こういう四十六億の金を政府は出して、世界各国にこういうふうな大きな事務所を十四持って、小さい事務所を四十三持っている。そういうところにやらしたほうが、世界生糸生産状況というものは十分把握もできるし、PRもできるのじゃないか、こういうように思うのですけれども大臣はこれを検討される気持ちがあるかどうか。ここでどうだというわけにはいきますまいけれども、ぜひぜひ検討してもらいたいですね。これもいかがですか。
  63. 倉石忠雄

    ○国務大臣倉石忠雄君) さっき私ちょっと申し上げましたように、ジェトロの活動等についても、民間からはとかくの批判があるわけでございます。絹につきましては、先ほど申し上げましたように、国際絹業協会が世界の各国にございまして、輸出関係等について絹業のことについてはずっと前からこういう協会が国際的にございますので、そこがわれわれのほうとの連絡機関をやっておるのでございますし、そういう意味でそれの一部として日本の絹業協会が活動いたしておるわけでありますから、こういうものを基礎にしてひとつ輸出をますます増大活発にいたしてまいりたい。輸出量がふえてくれば、補助金がちっとは出ておっても、だんだんそれは負担量は少なくなるわけでありますから、そういう意味でこれを活発にしたいと思いますが、しかし、ただいまお話しのように、輸出関係のことにつきまして、私どもが一民間人として諸外国を見ますときに、よその国でやっておりますのは、たとえば大使館なぞにおける館員の数名がそういうことについてもっぱらやっておる国すらあるのでありますから、もちろん時代の推移に従って私ども輸出のためにいろいろな日本の機関の間をどのように調整しどのように協力し得るかというふうなことは、継続して研究はいたしてまいるつもりであります。
  64. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 次に、財団法人輸出生糸信用保証基金協会というのがあるんですが、これは全部政府出資ですか、三千万円・三千万円、これで動いているというものですかね。六千万円ですね、これは。財団法人輸出生糸信用保証基金協会というのは、横浜と神戸にあるのですが、これは別個の法人ですか。
  65. 石田朗

    政府委員石田朗君) 別個の法人でございます。
  66. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そこで、これは非常に予算がこまかいんですね、六百万円ぐらいの予算になっています、両方ともですね。神戸の財団法人も、それから横浜の財団法人も、六百万円ぐらいの予算なんですが、仕事は四十一年はどういうことになっていますか。保証件数なり保証金額なり、手数料があまりにも小さいものだから聞いてみたいんです。どういうような形ですか。
  67. 石田朗

    政府委員石田朗君) いまお話がございました輸出生糸の信用保証協会ですが、これは横浜信用保証協会と神戸の信用保証協会とございます。いまお話がございましたが、これは全部政府出資というものではございません。三十七年に三千万を政府が出しまして、それと同時に民間及び県市からも出資がございまして、全体で七千万の基金で動いております。  これは、実際にやります仕事は、問屋の生糸購入資金の債務保証でございまして、この実績は、四十一年度におきまして、横浜の例を見ますと、九千九百三十俵、三十億円の保証をいたしております。
  68. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私、蚕糸業をあっちこっち書類を引っくり返して調べてみましてびっくりしたのは、団体が非常に多いということですね。つまり、蚕糸業関係の団体が非常に多いということですね。つまり、蚕糸業関係の団体が非常に多い。一つの作物に対して非常に多いという感じですね。もっとも、戦前なりあるいは戦後の養蚕業のたいへんな振興というよき時代は別にしまして、とにかく今後のあるいは今日の状況から見ました場合に、私は団体が非常に多いということにびっくりしました。しかも、三十五年以降、変わった状況の中からまた新しい団体がつくられていく。いまの財団法人もそうだろうと思うんです、横浜と神戸にあるやつですね。もっとも、これは、生産農民がおりますし、生糸業者がおりますし、輸出業者がおりますし、さらにまた、その他の業者もおりましょうから、そういう意味で団体が多いということも言えるのでしょうが、はなはだ団体が多過ぎる。古いものがそのまま残って、新しいものがつけ加わっていく。二年くらい前に臨時行政調査会からの答申もあって、審議会が二つが一本になったとかいうこともありますし、それから蚕糸事業団が新しく二つを統合して発足をしたというようなこともありましたが、非常に多いという感じを受けるんですね。生産に密着している養蚕農協は非常に減ってきているわけですね。昭和の二十二、三年に約一万あったわけですが、養蚕農協というものは今日半分以下に減りまして、四千五、六百のものになっている。つまり、生産に密着した養蚕農協というものは時代に応じて非常に変わってきているわけですけれども、それ以外の中央のほうははなはだしく多い。こういうものについて、大臣はどういう感じを持っておられますか。
  69. 倉石忠雄

    ○国務大臣倉石忠雄君) 蚕糸業につきましては、わが国に古い歴史を持っておりますので、その間にいろいろな団体ができ、御承知のように、その団体がだいぶいろいろ模様がえがされて今日に至っておるわけでございますが、これは政府がやっていただいておる団体というわけではありませんで、ほとんど民間の業界の方々がそれぞれのお立場でやっていらっしゃるものでありまして、それからまた、農協につきましては、これはもう御承知のように、町村合併が行なわれ、農協の自然的併合が行なわれたりして減ってきているものもありますし、それからまた、養蚕業は、だんだんと他に転換されて、ほかの作物によってほかの農協に吸収されているという傾向もございますが、そういうことで、団体につきましては、いま私が申し上げましたような経過で数多くのものがあるのだろうと、こう思っております。
  70. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 だからどうだということです。これでいいというお感じですか。それを承っておるわけです。
  71. 倉石忠雄

    ○国務大臣倉石忠雄君) 私どものほうで、民間の方々が自主的にそれぞれの立場でつくられます団体については、あまり容喙しないほうがいいのではないか、こう考えておるわけでございます。
  72. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 次に、先ほど問題になっております輸出の問題とそれから養蚕業の増産の問題について承りたいのですが、輸出状況を見ますというと、これは、何といいましても、やはり価格が安ければどんどん出る。先ほどは安定がどうだというお話がありましたですが、価格が最大の問題だというように思うんですがね。たとえば、非常に不幸なことだったのですが、これは政府政策の結果なんですけれども、先ほど申し上げました終戦以来、非常な増産が行なわれて、それが、たいへんな、製糸量としては四倍近くなるんですが、そういう中で、三十二年、三十三年と生糸価格が大暴落する。ちょうどたまたま日本の景気ともこれが重なって大暴落するということになるわけですが、その際に輸出というものが非常に伸びているわけです。飛躍的に伸びているわけですね。さらに、日本生糸価格が落ちたときに、輸出が非常に伸びるんですね。価格が上がってくるというと、輸出はどんどん停滞するということになっているのですが、この点はどうですか。これは当然のことだろうと思うんですが、いかがですか。
  73. 倉石忠雄

    ○国務大臣倉石忠雄君) これは私は一がいにはなかなか申し上げられないと思いますけれども、私どもがたとえばニューヨークの一番大手であるジャーリーなどに会っていろいろ相談をいたしましても、彼らがわがほうに希望いたしますことは、いかに化学繊維が発達してきても、天然絹糸に対する婦人たちの嗜好というものはぬぐいがたい強いものがある、数年前からこの一番の大手である彼らはそういうことを言っているわけでありまして、大体において、先ほど来私が申し上げましたように、日本生糸がとかく警戒されるのは、せっかく将来半年なら半年の計画をわれわれ需要者が立てようとすると、その計画に合うように価格を騰貴させてやってくる。こういうことでは安心して取引ができない。日本価格をある程度安定させてもらって、これは必ずしも安いというのではありません、価格変動を少なからしめて、そうして糸の糸質を改善することにつとめてさえくれれば——これは数年来彼らが言っていることでありますが、いまの日本生産している分ぐらいはわがほうで当然消化して十分足りないと、いまでもそういうことを言っている者がたくさんおります。日本の繭糸価につきましては、将来発展させていくためには、価格というものを、決して低位に保持するということでなくして、ある程度安定した価格輸出ができるように努力をすべきではないか。これは蚕糸業界の人たちもひとしく承認いたしているところでございます。  しかも、ただいまのところ、ことしの夏蚕、秋蚕にかけまして、畑作農の中で繭の相場というものを見ますというと、わが国の農業の中ではかなり上位に位する価格でございますからして、私はこれの将来性は相当見込みがある、こう思っているのでございますし、ことしはたぶんある程度の増産が見込めるのではないかと思いますが、私は、そういう意味で、必ずしも輸出を心がけるために日本生糸が低位であることが大事な条件ではなくて、価格を安定させるということが必要ではないか。そのためには、先日もここで商品取引所の法案を御審議願いましたときにアズキの投資についていろいろお話がございましたが、生糸というようなものについて取引所を悪用していたずらに過度の投機をやるようなことを慎むようにすると同時に、価格を安定することに政府も業界も努力すべきではないだろうか。そうすることによって輸出はかなり期待できるのではないか、私はこういうふうに考えております。
  74. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大臣、いまのやつは、これはバイヤーの言う話ですから、バイヤーの話として承っておきますが、私は局長に伺ったんですが、ずっと価格の安定と輸出関係を見てみますと、やはり三十四年に非常に伸びているわけですね。輸出が十万俵であったものが、十六万俵というふうに伸びておるわけですね。六割ふえて、これが最高なんですね、十六万俵というのが。それから年々減退をしてきて、三十八年、このときにまた生糸が暴騰するわけですね。ある意味で暴騰するわけですが、そこで、輸出が八万俵に落ちちゃう。それ以降、ついに回復できないわけです。そうして、いま三万俵という形になってしまっているわけですね。ですから、この関係を見ましても、輸出に最も大切なことは、バイヤーはバイヤーとしての意見がありましょうが、価格の問題だと思うんですね。これをはっきりしてもらわなければ、この増産の問題というのははっきりしない。いま、大臣のような考え方しておりますというと、何か養蚕農民のことじゃなくて、バイヤーのことを考えているような気がする。そうじゃなくて、基本は、輸出先行の考え方でなくて、もっと養蚕農家、養蚕農民、繭の生産農民ですね、この立場をはっきりさせなきゃいけないですね。予算の組み方も、まっ先に需要の増進が出てくるようじゃ、答申も出たけれども増産のほうはあと回しだ。生糸輸出の問題だけは先に出てきて、増産のほうは、来年間に合うか、再来年間に合うかという状態です。これもどうもそこのところをはっきりしなきゃいかぬと思うのですが、局長、これはどういうふうに考えておられますか。
  75. 石田朗

    政府委員石田朗君) ただいまお話がございました価格輸出との関係でございますが、いまお話がありました三十四年の輸出の増大というのは、これは特別会計から特に輸出用に売り渡しを行ないましたということが大きく影響しておるかと思います。現在の輸出減退、これの契機になりましたものは、三十八年の事態でございます。この三十八年におきまして、これはまことに遺憾であったのでございますが、生糸が暴騰し、引き続き暴落をいたしたわけであります。このことが、実は、海外における生糸関係者に、日本生糸に対する不信感を植えつけることとなりました。したがいまして、ここから現在の輸出減退が始まってまいっておるように思うのであります。この生糸価格が、生糸価格変動の問題と水準の問題と二つがございますが、このいずれに重点を置いて施策を講ずるかといううことで、実は、蚕糸業振興審議会においてもいろいろと御議論をいただいたわけでございます。もちろん、糸価水準ということもこれをネグレクトするわけにはまいらないのであります。しかし、何よりもまず最初に手をつけていくべきものが価格の安定である、これが蚕糸業振興審議会における結論でございました。この価格安定のために今回の特別措置を講ずる、こういうことに相なったわけでございます。  かつ、また、よく御承知のように、最近内需が非常に増勢でございますので、このために価格が上がってきておる面がございます。わが国の需要世界の半分以上を占めておりますので、わが国の需要が最近のように五年間に五割もふえるというようなことになりますと、世界的にも需要が二割以上ふえている勘定になるわけであります。したがいまして、国際的にも糸価は強気に推移するということが考えられるわけでありまして、それら国際糸価動き等ともにらみ合わせて、安定的価格をもって輸出の振興をはかってまいるということが必要であり、そのために今回の措置が非常に有効ではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  76. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 まあ、局長、あなたは法案を出しておる事務当局のほうだから、それは別にしますよ。それは自画自賛です。もっと深刻に考えなきゃだめですよ。それは価格の安定は確かに一つの原因であることはだれも否定しないのです。しかし、それでは、三十三年から三十四年、三十五年の経過はどうだということも言わなきゃならないし。ですから、基本は、やはり生糸価格、これをどのように安いものにできるかというそれだと思うんですよ。  そこで、大臣に伺いますが、養蚕業の政策ほど動揺したものはないんですね。これくらい動揺した政策というものはないのですが、よく、農民から、政府の言うことの反対をやればよろしいというような不名誉なことばが出たのも、根は養蚕政策ですよ。まず戦争中にうんと掘り起こして食糧をつくった。そして、戦争が終わったら、盛んに桑を植えろということを言う。三十三年になったら、今度は二割減反だということで、また引き抜けと言う。こういうように、蚕糸政策といいますか、養蚕政策といいますか、こういうものが動揺する原因ですね、どこにそういうものがあるのか。さらに、三十五年以降も、非常に動揺しているといいますか、低迷しているといいますか、迷ってしまっていて、何とも動きがとれないという実情のように思うんです。蚕糸業そのものが地位が低くなった、輸出産業としても取るに足らぬものになってしまったということから、一般的に関心が薄くなったということから来ておるのか、どこに原因があるのか。あまりにも動揺し過ぎる。その点について、大臣は、どういうふうに考えておられますか。
  77. 倉石忠雄

    ○国務大臣倉石忠雄君) 過去の事実を見ますというと、お説のように、桑畑を転換しろというふうなことを言われて、私どもの知っておる範囲でも他に転換いたしました。そういうことがございましたことは事実でありまして、そういうことによって迷惑を受けるのは、やはり農業従事者であります。  そこで、私どもは、ただいまの蚕糸業というものを見てまいりますというと、これはもう私どもは統制経済をやろうというわけではございませんからして、それぞれ養蚕業をおやりになる方も果実をおやりになる方も、御自分の見解において御自分の責任においておやりになることでありますが、政府としては、そういう方に間違いのない情報を提供し、そうして大体の方向はこういうことであろうと、そのためには政府はこれだけのお手伝いをいたしましょうということで、その自由な企業を伸ばしていただくようにつとめるのが政府役割りと思っておりますが、養蚕並びに製糸業に関する限りは、私どもの見るところによりますと、今日の養蚕業を土台にして将来逐次その需要は伸ばし得るものである、そういう前提に立って、同時にまた、輸出も可能である。少なくとも先ほどお話しのように、内需が活発になっております。でありますからして、そういうものを輸入にまたないでも済むようにいたしたい、こういうことを前提に考えますというと、やっぱり、価格の安定、品質の改良、そのためには、変動が起きた場合にはそれぞれの措置をして対策を講じていく、まあこういう考え養蚕並びに製糸業に対処していくのがいいではないかと、こういう考え方で蚕糸業に対処いたしてまいりたいと思っておるわけであります。
  78. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、そういう話もけっこうなんですが、これは局長に伺いますけれども、いまのお話を聞いておりますというと、どうも金の卵を生む鶏は——まあ金の卵じゃもうないのですけれどもね。ですが、どうも卵のほうを盛んにかわいがっているようですね。鶏のほうは一体どうなのか。これは非常な不況におちいっているのじゃないか。これをまっ先に目をつけないというと、イタリーの二の舞いになると思うんですよ。卵ばっかり見ている。どうも、大臣考えもそうですし、蚕糸局長もそのようですね。鶏についてこれを根本的に考えないというと、とんでもない、非常な不況におちいっているでしょう。国内だって、中国糸と競争しなきゃならないでしょう。養蚕業というのは、この発展の中ではっきりわかっているように、労働力が過剰で余っている、豊富で低廉でというところで発達してきて、それが工業の発展とともに衰退をしてきているわけですね。イタリーにしても、フランスにしても、しかり。いま、韓国、中国がのし上がってきている。インドがのし上がってきている。日本がいま追い詰められているわけですよ。卵を盛んに言ってみたって、話にならない。鶏をもっと蚕糸局考えないといけないと私は思うんですよ。鶏のほうが黙っておるのかもしれませんね。卵のほうはひとりで動いてものを言っているのかもしれない。  そこで、私は、大臣にもう一ぺん重ねて伺いますが、最近の例をとりまして、最近といいましても、養蚕業というのは長く停滞しているものですから、少し前にさかのぼらないといけませんが、三十四年の五月に農業基本問題調査会が答申を出しました、昔のことで恐縮ですが。これから尾を引っぱっているわけですが、三十四年の五月に基本問題調査会が答申を出しました。その中において養蚕の地位というものを明らかにした。翌年ですか、三十六年の一月に、大臣の諮問機関であります蚕糸業振興審議会、これが農林大臣に対して答申をやっております。それから三十七年に、農業基本法に基づきまして、農産物の需要長期見通しというものを出しておる。飛んでの四十一年九月に、中央蚕糸協会、これが大臣に対して要請をいたしておりますね。どうも非常に動揺しているですね。食い違っているですね。これは一体どういうことなのかと私は思うんですけれどもね。これは、蚕糸局がはっきりしないのか、農林大臣がはっきりしないのか。そこでいつもぐらぐらして、しかもそのぐらぐらが長く続いているという状況なのかですね。いかがですか、いまあげたように、食い違っているし、非常な差がありますね。これはどうですか。——局長でいいですよ。
  79. 石田朗

    政府委員石田朗君) ただいまお話がございました点、二点であろうかと思います。最後に言われました基本問題に始まったいろいろな考え方がどうなっておるか。それから卵と鶏というのは、生産対策養蚕農民対策についてどう考えるかということであろうと思うのであります。  まず、基本問題調査会以来の基本的な考え方は、一つは、需要に即応した生産をいたさねばならない、それから生産の合理化を行ないまして、その生産性を上げ、競争力を高めなければならない、基本的な点はその二つであろうかと思います。そのような考え方に基づきまして従来ともこの推進をいたしてまいった。それが、三十四年当時には、三十五年以降の国内需要等の新たなる事態、これが明らかになっておりませんので、その点、需要増大について明確なる見通しを持ち得ていなかったという時代がございます。それが三十五年以降の新たなる国内需要の増大というような事態が次第に明らかとなってまいりました。最近におきましては、そのような事態に対応した需要に即応した生産増強の対策を講じなければならないということがはっきりいたしてまいったというのが実際の動きであろうかと思います。  生産対策につきましても、ただいまのような基本的な観点に基づきまして、養蚕農民の方々の御努力にまち、かつまた、蚕糸業における普及体制の活用、あるいは各種の生産対策によりまして、あるいは年間条桑育、あるいは稚蚕共同飼育、各種の新技術が非常に急速に普及をいたしてまいっておるわけであります。そのために、十年前に比べますと、繭当たりの労働投下量は四割の節約を見ておるわけでありまして、このような生産性の向上は各作目の中でも他に劣らない成果であろう。これは、養蚕農民の方々の御努力にもより、また、関係者の非常な努力の結晶でございますが、そのような成果があがっておるわけであります。  このような、従来の実績の上に立ちまして、さらに今後の生産対策を推進してまいり、そして需要に即応し、かつまた、合理的で生産性の高い養蚕経営をつくり上げていくということが今日課題となっておるのでありまして、現に、各地域の先進地域、先進農家におきまして、そのような萌芽が幾多あらわれておると考えます。私どもも、これを一そう推進してまいりたいというふうに考えておるわけであります。
  80. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 陽気な話ですね。太平楽だ、これは。のんきな話だな。そんな陽気なことを言っていていいんですか。農業基本法が出たときのあの前後の答申というのは、そんなのんきなことを言っていないでしょう。先ほど、需要にマッチしてということですね、それから生産性を高めるということですね、ということをおっしゃったのですが、これは一般的な話であって、養蚕についてはそんなことを言っていないでしょう。もっと深刻ですよ、養蚕については。斜陽産業と言われたのはこのときでしょう。そこら辺を飛ばしているものだからいけないですね。養蚕というのは、このときの見通しとしては、停滞だ、横ばいだ。だから、これは、生産性を高めると同時に、畜産なりあるいは果樹等に転換していくということを考えなければいけない。それによって農家の所得を引き上げることを考えていくということを言っているわけでしょう、答申の中では。局長は、局長になってレクチャーを受けるときに、それをはずして言われたのじゃないかな。深刻ですよ。まあ、いずれにしても、そういうものは抜けちゃっているんですね。それから自立の主業とした養蚕農家をつくる、あるいは自立した養蚕農家をつくるというのも出しているでしょう、三十六年の一月の蚕糸業振興審議会の答申は。そういういうものはもうなくなったんですか。いま聞いているというと、結局、そういうものはなくなっちまって、要は、三十七年の長期見通しのもとに立って、需要がこれから伸びていくという立場に立って、省力集団桑園等々のそこが唯一の養蚕増産政策だと。それで、おっしゃるように、四割の、四割と言ったかな、労働力がえらい低下したというお話なんですよね。ですから、そういうことで私は片づく問題じゃないと思うんですね。養蚕の労働力というのは、超労働力ですよ。これぐらい労働力を食うのは、タバコと養蚕が二大双壁じゃないですかね。この労働力はたいへんなものですよ。それを思い切って軽減できる、そういう技術的な見通しがあるんですか。限界に来ておるんじゃないでしょうか。そういう見通しがありますか。手労働を主体にしたいまの養蚕業というものを、思い切って前進させていくそういう技術的な見通しなり、ありますか。
  81. 石田朗

    政府委員石田朗君) ただいまお話がございましたが、いま鶴園先生が言われました、あるいは自立養蚕農家をつくれ、あるいは生産性をもっと格段と上げなければいけないと。これは、いずれも、私ども、そのようなことであろうと思っております。私ども、現在の養蚕業の動きに将来への発展の萌芽が見えると申しましたが、これがさらに前進をしていくには、やはり非常な努力を要することはもちろんであり、これはまた関係農家の方も非常に御努力をされるかと思います。  ただいまの生産性の点について申し上げますと、先ほど申し上げましたように、最近の養蚕業は、おそらく、戦前等を考えますと、面目を一新したような合理化が進んでおります。しかしながら、これがなお労力を多く要する作目であることは事実でございます。したがって、これを一そう労力を軽減する、こういうことを考えてまいらなければならないと思います。たとえば、この点につきましては、年間条桑育等は、従来からさらにこれを推進いたしてまいらなければなりませんが、これらはかなり普及をいたしてまいりました。今後は、さらに、蚕を飼います飼育面の自動化、機械化、あるいは条桑刈り取りの機械化、そういうような面に次第に技術が進展してまいるかと思います。本年度予算でも、今後の発展を期待いたしまして、それの端緒となるものは組んでございますが、自動飼育装置等を導入して合理化をはかるということを考えておるわけでございまして、これが予想どおり進みますと、労働力はいわば半減をいたすかと思います。これがさらに全部の農家にこのような問題が——これは農家の実情に応じいろいろな技術が入ってまいりますので、今後さらにいろいろな普及指導の努力が必要だと思いますけれども、今後さらに格段と生産力が上がってまいる可能性はあろうかと思います。さらに、大規模な自立農家というべき養蚕農家も次第に出てまいって、かつ、数が増しておりまして、養蚕農家の中でも経営規模の大きな農家が漸増傾向にあるというような形を示しており、それらの農家では、労働生産力、土地生産力とも一そう進んだ形を示しているというようなことがあらわれておるわけでございまして、かれこれ考え合わせまして、実情に応じた形で合理的な生産を行ない、かつ需要に即応した生産を行なってもらいますように推進が必要であるというふうに思います。
  82. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いやいや、朗らかな話だ。驚いたね。まあそれでなければ蚕糸局長はつとまらぬでしょうけれども、しかし、通常の蚕糸局長はそれでつとまるかもしれませんがね。朗らかだな、とっても。だれがそういう朗らかな情報を入れるのかしれぬが、あなた、なんですね、えらい大経営がだんだん伸びておるというようなことを言うですね。どこからそういうことを言うんですかね。主要五県の数字を見てみても、そんな数字は出ていませんですよ。一般農業は、確かに一・五ヘクタールから二ヘクタールというものはふえておる。あるいは二ヘクタールという以上のものがふえておる。これは目につきますよ、はっきり。養蚕農家の場合においては減っているじゃないですか。何を言っているんですか。大幅に減っていますよ。限界があるからです。労働力をとてつもなく食う産業ですよ、これは。労働力はだんだんなくなっているんですよ。そこで、だんだん平場から農山村に入って山村に入っているわけですよ、養蚕は。これはまた労働力がなかなか動けないから、都会に出て動けないから、あるいはそのため雇用労働という機会が少ないから、入っているわけでしょう。とてつもない話ですね。ふえているというふうには見えないですよ。減っていますよ。これは主要五県、群馬、長野、埼玉、山梨、福島、それから全養蚕農家をとった場合にも、一・五ヘクタールから二ヘクタールというのは一八%、大幅に減少しているんですよ。二町以上という経営は二三%も減少していますよ。一般農家はふえていますよ、全農家で見た場合には。だから、それは局長が見に行ったところはそういうところがあったかもしれないですけれどね。そういう点についてはどうですか。  それからいま言っているように、全体として養蚕業が、都会周辺から、あるいは平場の農村地帯から、農山村に、そして山村にという傾向を強めておるわけなんですが、そういう中で段々畑になっちゃっているでしょう、だんだん。桑園というものは、平場ももちろんありますよ。おっしゃるようなことを確かに予算の面で組んであるから、そういう面はあるんでしょう。幾らかあるんでしょう。しかし、まだ試験的には全く実験的なものですよ。養蚕のそれじゃ増産というのは、どれだけの金を投じているのですか。二十七億の今度の予算の中で、九千三百万円でしょう。あとは嘱託の蚕業普及員に対する七億、横浜、神戸の生糸検査所その他県の検定所、それに対して約八億、そうするとないでしょう、金が。十億の今度の出資、それにジェトロにかわる評判の悪い日本絹業協会に対する一億六千万、どういうふうに考えておるんですか。鶏なんていうのはほったらかしてあるんじゃないですか。その点はどうですか。根本的なぼくは反省が要ると思うんです。ですから、政策的に金を投じていくところのそういう政策はないのか、あるいは、機械化をし、あるいは省力栽培をしていく、あるいはそういう手労働を機械にかえていく、そういう技術がまだないんだというなら、それをはっきりしてもらいたい。
  83. 石田朗

    政府委員石田朗君) いまの養蚕農家のいわば構造と申しますか、これをどういうふうに把握するか、これは私ども検討を重ねておるところでございますし、先生もいろいろ御検討があったかと思います。なお、この点についてもさらに突っ込んだ検討が必要かと思います。  養蚕農家につきましては、その経営規模を考えます場合に、掃立卵量を中心に区分をいたすのが最も適当であろうかと考えております。これについて見ますと、これはここ十年ばかりの間、あるいは最近五年をとってみてもそうでございますが、小さい規模の養蚕農家は減っておりますが、十箱以上あるいは二十箱以上といったような農家はふえておるわけでございまして、これらの点から、養蚕経営につきましても大きな経営への移り行きというのが見られるではないかと思います。しかしながら、これをもって、あるいはその自然の成り行きだけをもっていろいろ論ずることはいかがか。私どもとしましても、それら構造について一そう深刻な分析をいたしまして対策を考えていかなければならないと思いますが、全体の動きとしてはさようであるかというふうに考えておるわけでございます。  さらに、生産対策として何をやっておるか、こういうことでございますが、いまいろいろお話がございましたが、養蚕につきましては独自の普及体制を持っておりまして、この指導が非常に効果をあげておるわけであります。したがいまして、いまの普及員の予算等のお話がございましたこれらの効果は、非常に大きく考えてよろしいのではないかというふうに考えております。  そのほか、農林省としてやっております施策として、農家の畑地基盤整備、これにつきましては、やはり相当の資金を投下いたしており、また、構造改善事業等の中では、いまの集団桑園の造成、あるいは稚蚕共同飼育所、あるいは壮蚕共同飼育所の設置等の仕事が前進をいたしておるわけであります。それらの国家資金の投資と合わせまして、さらに農業改良資金あるいは近代化資金の活用等々を考え合わせますと、私ども、従来のいろいろな予算のワクの中におきましては、できるだけ有効に養蚕部門に資金を投下し、努力をいたしてまいったと思います。しかしながら、これをもって私ども足れりといたしておるわけではございません。今後そういう生産部面に対しまする努力は一そう推進いたしてまいらなければならないと思います。  なお、技術的な面におきましては、従来からの技術に加えまして、先ほど申し上げましたような条桑刈り取りから壮蚕の飼育に至る機械化の一つの体系ができ上がりつつあるわけでございます。これらに加えて、さらに、今度、上蔟の面、その他ピークになっております面の技術的な解明ができてまいりますならば、これは今後一段と進んだ形の生産性の高い養蚕経営ができ上がっていく可能性があると思います。それで、現在、実施可能なものから逐次これを推進し普及指導をはかっておるわけでございます。
  84. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そういう話はわかりました。で、九千万円というわけですか。だから、考え方がさか立ちしているんですね。本末転倒ですよ。ことばだけは非常に長かったですよ。それで、日本絹業協会に対する一億六千万円は一分で済んでしまった。養蚕は長々と、そして九千万。一方のほうには一億六千万円、それに通産省が足して二億数千万円という金をわずかに九十億か百億の輸出のために金を使おう。さらに今度十億の金を使おう。だいぶさか立ちしていますよ。本末転倒だ。局長なり大臣は、この予算をつくったんだから、これを弁解せざるを得ないし、そういう主張をするでしょう。まあこれで足れりとしておるわけではないというつけたりがありましたけれども、これは常套語であって、そういうことを真に受けるわけにはいかない。ですから、こういう点について根本的に反省しなければいけない。  大臣に尋ねますが、私は先ほどから言っているように、労働力が足りなくなってくる。農業は特にそうなってきている。養蚕業はさらに一そうそうなってきている。しかも、これは異常に労働力を食う産業なんです。ですから、後進国がどんどん伸びていく。中国にいたしましても、韓国にしても、インドにしても、どんどん伸びていく。それが一五%の関税をかけても、日本国内にどんどん入ってくる。欧州の市場はこれによって席巻されるということになるわけですから、このままにほうっておきますと、日本養蚕業というのはイタリーの養蚕業と同じようになる。イタリーは、ほんの十年の間に三分の一になってしまった。ほとんど衰滅と言っていいくらいです。思い切ったここで増産対策というものを考えないとだめだ。卵のことばかり言っていたんじゃだめだ、鶏のことをもっとはっきり考えなきゃいけないということをさっきから言っているわけです。九千万円、去年は四千万円、その前の年は二千万円だから、二倍にふえてきているといいますけれども、まことにささやかなものだ。卵のことばかり言わないで、鶏のことについて根本的に考える。今度の予算を見て、大臣ごらんになりましたか、びっくりするんですよ。もちろん輸出という問題もありますよ。ですが、輸出なんて小さなものになっているんです。一割くらいのものでしょう、生産高の。だから、そういう意味で、もう少し根本的にいまの養蚕業というものについてはっきりした考えを持ってもらいたいと思うですね。蚕糸業には、十億円の金を投じて、三万俵を買って、そうして何か維持しようというような考え方ですが、そんな不自然な考え方をとる必要は私はないと思います。鶏のほうをもっとはっきりさせなさいよ。大臣、どうですか。来年の話でもいいですよ、ことしはこうなっているから。もっとほんとうに考えてくれないと、これは私は衰退の方向にいくと思う。養蚕業の歴史を見たら明らかなんです。いま転機に来ていると私は思う。ようやく三十六年以来の停滞状況からいま何か抜け出そうという芽ばえが出てきているわけですね、蚕糸業政策としても。その一つが、いままっ先に出てきたのが輸出政策ですよ。増産対策は来年だろうと思うのです。あるいは再来年になるかもしれませんですが、いずれにしましても、もっと根本的に大臣のお考えはどうですか、そういう点について。
  85. 倉石忠雄

    ○国務大臣倉石忠雄君) 蚕糸業についてたいへん御理解のあるお話を承って、私ども喜んでおるわけであります。先ほど蚕糸局長も申し上げましたが、これからの養蚕業については、ただいま、農林省ばかりでありませんで、新聞社等がいろいろ地方の営農で成功しておられる一般の農家の人たちなど表彰したり、そのやり方を出版したりしておりまして、ああいう家族の人たちに会ってみましても、養蚕業などでも、もう私ども子供のころから見ますというと、隔世の感のあるほど機械力を使っております。先般、テレビなどでも、長時間それを一般に解説しておりました。われわれとしては、ああいうふうにやっぱりやっていかなくちゃいけないと思います。協業なぞ、非常にじょうずにやっております。  労働力のことにつきましては、鶴園さんすでにそういう点について御専門の方でありますから、たぶん私どもと同じお考えだと思いますけれども、大体、低開発国、おくれて出発していく国というのは、初めは低賃金で、労働力が余っておるわけでありますから、たとえばイギリスの紡績業の歴史なぞを見ましても、わが国にだんだん圧倒されてまいりました経路を見ておりますと、わが国がその当時の英国になりはせぬかということについてお互いに非常に頭を痛めるわけであります。トランジスターラジオみたいなものでも、香港や台湾に部分品を持って行って、あそこで日本の一流のメーカーのレッテルを貼って、海外のマーケットに活躍をしておる。それが何であるかというと、労働賃金であります。私はそういうことを考えてみますというと、やはり高度に発展してまいりましたわが国のような経済状態の国では、どうやって低開発国の労働力の余っている低賃金の国と競争し得るか、こういうことについては日本人全体として真剣に考えなければならぬ問題だと存じております。  したがって、そういう根本的なことは、またいろいろ御懇談を願いたいと思いますが、蚕糸業につきましては、私は、いままでお話しになりました大部分は、私ども考えておりますような憂いを同じく持っていていただけるのだと思います。そこで、どうしてもこれは基本的には国内需要もふえてきておるし、外国のマーケットも非常に有望である。それに対処して、せっかく養蚕業を持っておる日本でありますから、この国際競争力を維持してそして蚕糸業としてのシェアを確保するためには、やはりどうしても経営の近代化をやりまして、養蚕業を営んでおる人々の所得の増大をはかって家計の安定をはかっていくということが大事ではないだろうか。そういう意味では、省力に対する政府側の援助、それからまた、これに対する指導、そういうことについては将来ともひとつ御協力を得まして、国会の御協力も得て政府はできるだけのことをいたしたい、こういうことで、前途に向かってはそういう方向で努力を傾注してまいりたいと思っておるわけであります。
  86. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 ちょっと最後に要望しておきます。  大臣、私は、先ほど以来繰り返して申しておりますが、インドなりあるいは中国なりあるいは韓国というものと競争しなきゃならぬことになってきた。しかも、日本養蚕業というのは、非常にとことんまで来ていると思うんです。決していま言われたように朗らかな話じゃないんです。ここで抜本的に、それこそ世界における養蚕業の行き詰まった技術段階というものを脱皮する、それだけの努力日本が払わなければ、日本養蚕業というものは衰滅するという考え方を持っているわけなんです。それについては、九千万円という金じゃお話にならない。何としても納得できない。まことにスズメの涙みたいなもので、お恥ずかしい限りだと思うのです。そういう点について、本年はこういうふうになっているからしようがないとしても、これから以降について大臣の格段の御努力を願い、蚕糸局を激励してもらいたいということを要望しておきます。
  87. 武内五郎

    ○武内五郎君 資料要求をいたします。  第一は、蚕糸業振興審議会価格部会が標準糸価決定する際採用している資料の全部。  第二は、繭、生糸生産費についての資料、これは全国平均でけっこうです。  第三は、中央蚕糸協会に所属している団体の名称、設立年月日、役員、それからその資産内容。  以上です。
  88. 石田朗

    政府委員石田朗君) お話がありました資料につきまして、できる限り御要望に沿えるように努力いたしたいと思います。
  89. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 本案につきましては、本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時二十八分散会