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1967-05-23 第55回国会 衆議院 農林水産委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月二十三日(火曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長代理 理事 高見 三郎君    理事 仮谷 忠男君 理事 長谷川四郎君    理事 森田重次郎君 理事 石田 宥全君    理事 東海林 稔君 理事 玉置 一徳君       安倍晋太郎君    小沢佐重喜君       小澤 太郎君    大野 市郎君       鹿野 彦吉君    熊谷 義雄君       小坂善太郎君    小山 長規君       坂田 英一君    坂村 吉正君       田中 正巳君    丹羽 兵助君       野呂 恭一君    藤田 義光君      三ツ林弥太郎君    湊  徹郎君       粟山  秀君    伊賀 定盛君       佐々栄三郎君    實川 清之君       柴田 健治君    島口重次郎君       中澤 茂一君    森  義視君       神田 大作君    中村 時雄君       斎藤  実君    中野  明君  出席政府委員         農林政務次官  久保 勘一君         農林省蚕糸局長 石田  朗君         水産庁長官   久宗  高君  委員外出席者         参  考  人         (日本生糸輸出         組合理事長)  菅  英一君         参  考  人         (日本製糸協会         会長)     安田 義一君         参  考  人         (蚕糸業振興審         議会会長中央蚕         糸協会会長)  山添 利作君         参  考  人         (全国養蚕農業         協同組合連合会         会長)     横田  武君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 五月二十三日  委員金子岩三君及び赤路友藏辞任につき、そ  の補欠として三ツ林弥太郎君及び中澤茂一君が  議長の指名委員に選任された。 同日  委員三ツ林弥太郎君及び中澤茂一辞任につき、  その補欠として金子岩三君及び赤路友藏君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 五月十九日  果樹保険臨時措置法案内閣提出第一二一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五四号)  外国人漁業の規制に関する法律案内閣提出第  九六号)      ————◇—————
  2. 高見三郎

    高見委員長代理 これより会議を開きます。  委員長所用のため、委員長指名により、私がその職務を行ないます。  日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案について参考人から意見を聴取することにいたします。  本日御出席参考人方々を御紹介申し上げます。  ただいま御出席参考人は、日本生糸輸出組合理事長菅英一君、日本製糸協会会長安田義一君、蚕糸業振興審議会会長中央蚕糸協会会長山添利作君、全国養蚕農業協同組合連合会会長横田武君、以上四名の方々でございます。  参考人各位には、御多用中にもかかわらず、本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。  ただいま本委員会におきましては、日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案を審査いたしておりますが、本案について、参考人方々の忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  なお、はなはだかってでございますが、時間等の都合もございますので、御意見開陳の時間はお一人おおむね十五分程度にお願いいたしたいと存じます。議事の順序は、まず参考人各位から御意見をお述べいただいた後、委員各位から参考人の御意見に対して質疑をしていただくことといたします。  それでは、まず、山添参考人から御意見をお述べいただきたいと存じます。山添参考人
  3. 山添利作

    山添参考人 私は、ただいま御紹介にあずかりました山添でございます。  日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案につきまして、所見を申し上げまして、御参考に供したいと思います。  この法律案趣旨といたしますところは、私ども了解いたしておるところによりますと、最小限度生糸並びに絹織物輸出を現在の情勢のもとにおきましても続けていきたい、確保いたしていきたい、こういう趣旨にいずるものでございます。  御承知のとおりに、ここ三年来、生糸並びに絹織物輸出は年々激減をいたしております。このような状況で推移いたしますことは、本来輸出を最も重要な使命と考えております蚕糸業にとりまして、とうてい放置し得ないところでございますと同時に、現在は繭、生糸生産量が少ないために、輸出余力がまことに乏しいのでございますが、一面繭の増産にもつとめておりまするおりから、将来増産ができました場合に、海外における販路がまったく失なわれておるということでございましては、生糸需給情勢価格の調整ということにつきましてもまことに困難を来たしますことは、火を見るよりも明らかでございます。したがって、こういう困難な中におきましても最小限度輸出確保し、将来の海外における販路を細々ながらといえども種が絶えませんように持続をいたしておきたい、そうして養蚕振興、繭の増産ができ上がりましたときには、その販路に困らないように、また輸出が回復し得るように、かような希望を持っておる次第でございまして、そのための措置を講ずるのがこの法案承知をいたしておる次第でございます。  この案の成り立ちにつきましては、もう重々御審議なさいまして御存じでございましょうが、業界におきましてまず輸出確保ということにつきまして案を練りまして、その結果を政府のほうに実現していただきたいという陳情を申し上げました。政府におかれましては、蚕糸業振興審議会をお開きになりましてこの問題をお取り上げになりまして、私も振興審議会会長を仰せつかっておる次第でございますが、ここでまた十分練り上げまして、政府建議をいたしまして、その建議趣旨に沿いましてこれが立案をされておるのでございます。  御承知のように、生糸が非常に足りない。海外に振り向け得るものが少ない。そこで、繭が出回りますときに、あらかじめ製糸業者の方から、輸出に必要なる一定数量、これはときによって違うと思いますが、これを事業団に売ってもらう、事業団はそういう生糸を持ちまして、その原価で、一定期間安定した価格海外に供給をしたい、こういうのが骨子になっておりますこと、御承知のとおりでございます。そのために必要なる資金も、新しく十億円政府から出資をお願いする、こういうことも認められたような次第でございます。何しろ、こういう生糸需給の窮屈なときでございまするし、また価格相当高騰をいたしておりますから、かような施設をいたしましても、輸出に多くを期待するということはむずかしいことは、これは申すまでもございません。しかしながら、海外における絹業の種を残すといいますか、向こうの機屋が全くぶっつぶれてしまいますと、これは将来に非常な悪影響を来たすわけでございますから、細々ながら最小限度生糸輸出したい、また絹織物輸出のための材料の生糸確保してこれも続けていきたい、かように考えておるのでございまして、そのためには、こういう施設がぜひとも必要である、かように存じております。  なお、振興審議会建議をいたしました場合には、事業団におきまして輸入生糸をも取り扱い得るようにしていただきたい、こういう条項も入っておりましたが、本案にはそれが落ちております。理論から申しますと、一定数量確保し、一定価格で売る、このことは、生糸価格の安定ということがある程度可能であると申しまするか、そういう点が必要なわけでございます。そのためには、輸入生糸をも取り扱う、国内生産輸入物とあわせて、一つ事業団において価格安定をはかる措置をとるということが理論的には必要でございまするし、おそらく将来はそういう事情にもなってこようかと思っておるのでございます。しかし、現在のところは、輸入生糸国内価格に悪い影響を及ぼしているという次第でもございませんし、特別のこともございません。したがって、客観的にどうしてもそういうことをいまやらなければならぬということにつきましては、いろいろ立場のある方もございましょうが、そういう意味合いにおきまして、政府の中における話し合いも、完全にすらすらと一致するということもむずかしいようでございまして、これは現在の事態といたしましてはそういうこともわかるわけでございまして、これはやむを得ないことであると思っております。そのために本案が現在の状況におきまして差しつかえがあるとか、あるいはその目的を十分に達成し得ないとかいう心配はない、かように考えております。その問題につきましては、今後事態がそういうふうになりましたときに、客観的にみんながこれは必要だという了解にといいますか、認識に到達したときには、これはすみやかにまたそういうことの実現をはかっていただきたい、かように思っておりまして、現在といたしましては、この政府案におきまして、これが一日もすみやかに国会の御審議を経まして可決され、実施の運びに至りますことを希望いたしておるわけでございます。  だんだん春繭の出る時期も近寄ってまいりました。これを実施するにつきましては、また相当の準備も要する次第でございまして、われわれといたしましては、国会におきまして御審議の上、すみやかに可決されんことを希望しておる次第でございます。  なお、御質問がございますれば後にお答えをいたすといたしまして、ごく簡単に、私どもが心からこの法案のすみやかなる成立希望いたしておる、かようなことを申し上げまして、お願いをいたすと申しまするか、参考意見といたしたいと思います。(拍手
  4. 高見三郎

  5. 横田武

    横田参考人 私は全国養蚕連会長横田武でございます。  過ぐる昭和四十年の暮れに、蚕糸事業団法が諸先生のお力添えによりまして誕生いたし、さらに今回第一年目を経過したばかりで事業団法の一部改正を要するという点につきまして、一言申し上げてみたいと思うわけでございます。  実は、前回事業団法成立するときに、輸出問題等につきましてもしばしば検討をいたしてきたわけでございますが、一日も早く事業団をつくり、そうして養蚕農家が安心して増産意欲に燃えるような方途を講じていただきたい、かような考え方からいたしまして、とりあえず事業団をつくっていただき、その後におきまして、山添会長審議会会長でございますが、幾多業界におきましてこの問題を審議するとともに、一日も早く輸出振興できるような、つまり、事業団輸出管理ができるようにいたしたいということを、私ども養蚕関係者といたしましても、業界のそれぞれの団体と相協力いたしまして、そして——輸出が減ったでは将来の養蚕業はどうなるかというふうな養蚕農家の不安が、何となく底意にそういう問題があるだけに、増産をしてもよいだろうか、つまり、養蚕家が不安を持っておったわけでございます。そういう関係からいたしまして、今回事業団法の一部を改正いたしまして、輸出振興をはかる反面、輸入の問題につきましても事業団にある程度の管理ができるようにということで、しばしばそういう問題につきまして諸先生方あるいは政府お願いをしてまいりましたところ、幸い、今回事業団法の一部改正の問題につきまして、御審議過程におきまして、私ども参考人といたしまして意見を聴取していただく機会を与えられましたことは、養蚕農家にとりまして、増産意欲に非常に役立つであろう、かように考えておる次第でございます。  したがいまして、この法案輸入の問題を解決していただきたいという要望はあるわけでございますが、やはりことしの春蚕からこの法案が役立つような方法でなければ——せっかく農家増産意欲に燃えておるこのときにこの法案が通過することは、農民に対しまして不安感をなくするというふうな意味合いにおきまして、輸出の問題に限られておるようでございますけれども、この問題だけでもすみやかに今国会において成立することを私どもは御期待申し上げておる次第でございます。  なお、繭糸価格安定法の中に定められましたいわゆる価格安定の問題につきましては、現状の場合におきましては支障はないわけでございますけれども、この問題につきまして、現状にそぐわない価格が生まれておることは事実でございますが、それらの問題は別といたしまして、輸入の問題もこれまた別にいたしまして、いわゆる今度の輸出の問題を管理できるような方向へ、私ども農業団体の一員といたしまして、さらに全養蚕農民が安心して繭増産に励み得るような措置を重ねて申し上げるわけでございまして、一日もすみやかにこの法案を通していただくよう、私からも特にお願いを申し上げるわけでございます。山添会長が総括的に申し上げたわけでございますけれども農民立場から、農家が何の農業をやり、何の種目をやりましても、いま米以外には安定を欠いておるわけでございまして、私は、その次には繭を安定産業として養蚕農民のためにお役に立っていただくように、この事業団法改正を特に一日も早く成立さしていただくことをこいねがっておるわけでございます。  本問題につきましては、一昨年以来、事業団成立、さらにこの法案改正等につきましては、諸先生方には第一線の養蚕農民立場を御理解していただきまして、今日までまいりましたことを厚くお礼を申し上げるとともに、この改正法案が今度の春繭から間に合うように、ひとつ御配慮を特にお願いを申し上げまして、時間は短いわけでございまするけれども、特にお願いを申し上げる次第でございます。  なお、繭の生産費あるいは現状における事業団買い入れ価格等につきましても、なお一段と養蚕団体といたしますれば政府に御考慮をお願い申し上げる問題等もあるわけでございますが、参考人としましての意見は以上で打ち切るわけでございますが、これらの問題につきまして、諸先生から御質問がありますれば、私は私なりの御回答を申し上げまして、参考に供したい、かように存ずるわけでございます。  以上をもちまして私の意見といたしたいと思うわけでございます。(拍手
  6. 高見三郎

  7. 安田義一

    安田参考人 日本製糸協会安田でございます。  いま山添横田お二人の参考人お話でほとんど尽きておると申してもよろしいのでございますが、製糸業者立場から、そういう角度からお話をしてみたい、お聞き取りをいただきたいと存じます。  昨今非常に生糸需要が旺盛でございまして、国内におきまする生糸生産量だけでは間に合わなくて、一部外国の糸を輸入してまでもいわゆる内需に使っておるというのが現状でございます。私どもこの業に携わっておるものといたしまして、貴重なる外貨をそういうものに使うということはまことに残念しごくである。どうかひとつ、せめて国内需要をまかなうだけの国内における繭の生産増強お願いしたい。かねてから関係方面お願いをいたしておるわけでございます。  かようなおりから、輸出のことを申し上げますと、何か現状にそぐわないような印象をあるいはお与えするかと思うのでございますが、私ども生糸製造販売をいたしておりまするものの立場から申しますると、やはり需要というものは、内需一本ではたいへん心配なのでございます。申すまでもなく、昨今着物ブームというようなこと、並びにいわゆる国民の消費力が増加をいたしておりまして、かなり高価な衣料も買い取っていただける、かような状況ではございまするが、幾ら絹が非常によい衣料であると申しましても、絹の着物を着なければ命が続かないとか長生きしないとか、そういうものではないので、やはりぜいたく品であることは疑うべくもない、かように考えております。さような意味におきまして、再び不況が到来いたしますれば、やはりまっ先にこの影響を受けますのがこの生糸業界ではなかろうか。それに関連をいたしまして、われわれは、当然繭を生産いたします農家にも伝播して不況がまいる、かように考えますので、やはり事業といたしましてはもう一本輸出という柱がほしいのでございます。  実はただいまから四年ほど前に、スイスのチューリヒ国際生糸会議がございました。そのおりに、特にアメリカ業者の方の強い要望があるのでございますが、こう価格変動が常なく行なわれておるということでは、われわれは安心して生糸を使えないから、価格安定もしてもらいたいし、何か業界——向こうさんからいえば輸入になるわけでございますが、私どもから申しますと輸出の対策をひとつ考えてはどうかということで、たまたま私はチューリヒの帰りにニューヨークに参りまして、向こうで、ちょっと私個人の構想といたしまして、やはり一定量生糸輸出のために確保をいたし、できるだけその価格を動かさないということにしたいものだ。それがシルクバンクというふうに翻訳をされまして、一ころ盛んにあちらの新聞に出たのでございますが、私は、日本生糸輸出が非常にむずかしくなっているというその理由は、およそ二つだと考えるのでございます。  一つは、これは価格変動が非常に大きい。聞くところによりますと、アメリカあたりでは、織物製造業者が考案をいたしまして、新柄と申しますか、これは織物の組織と柄と両方でございますが、つくりまして、それを小売り商に見せまして、そうして注文を受けて製造をして、いよいよ具体的に小売り業者の手に渡る、その間およそ半年かかるそうでございます。そこで、さようならきょうの時点におきましてある織物を考案して、これは一メートル五ドルだ、こういうふうにきめましても、半年後に生糸価格がえらい暴騰をいたしますと、これは採算が合わない。また、逆に暴落をいたしますと、小売り業者が約束の値段では買ってくれない。こういうことで、われわれは生糸を使いたいけれども、あまりにも価格が動くので、ついつい敬遠をするんだ、何とかせめて半年間値段が初めと終わりとあまり変わらぬようにならぬものか、こういう切実なお話がございました。  もう一つは、価格が、外国と申しましても中国でございますとかあるいは南朝鮮、そういう方面に比べまして、わが方の生糸価格が非常に高いということでございます。つい最近、いわゆる広東フェアというものがございまして、中国生糸の売り出しがございました。私、直接取り扱ったわけではございませんが、聞くところによりますと、大体価格が六千円をちょっと切っておる。それから、華僑が一たん買い付けましたものを転売して日本が買いますものでも六千八百円ぐらい。おそらくきょう現在の生糸価格キロ当たり七千五百円でございます。したがいまして、いわゆる転売の間に途中に華僑等が入りましたものを買っても六千円台で入る。ダイレクトに買いますと六千円弱、正確には五千九百円ぐらいで買える。これには一割五分の関税がかかるわけではございますが、事ほどさように価格の差がございます。アメリカ御存じのように中国を承認いたしておりませんから、中共の糸は入りませんが、朝鮮その他の、特に南朝鮮の糸は非常にたくさん入るわけでございます。これは、先ほど横田参考人からお米の価格だけが安定しているんだというお話——日本農産物価格体系と申しますか、米を中心といたします価格体系というものが、日本の一般の農産物を高からしめている、これが輸出ができないという一つの問題である、私はかように考えますが、この問題はいわば宿命的な問題でございますので、これはさておきまして、せめて価格だけでも安定さしたい、かように考えまして、先般来蚕糸業振興審議会等におきましても、そこのディスカス過程を通じまして、一定価格一定期間売るということになりますれば、多少初めは出す値が高くても、やはりアメリカ等ではこの値段で買って織物を計画し、それを製造しますれば、価格的な影響は少なくしてそれが販売できるということになりますので、私は、わが国輸出振興の大きな一本の柱になる価格をできれば一年、せめて半年でも安定をして、その間変えないようにする、そういうことが願わしい。  御審議を願っております事業団法の一部改正は、そういう趣旨のように私承知をいたしておりますので、どうか皆さまのお力によりまして、この改正をひとつしていただきまして、輸出振興に処したい。そういたしまして、自分かってのようでございますが、私ども事業にも一本の柱というものを一日も早く立てたい。先ほど山添さんがおっしゃっておられるように、現時点におきましてはこの柱はきわめて細い柱かと存じますが、しかし、柱がなくなってしまっては困るのでございまして、まず細くとも一本の柱を立てましてできればだんだんそれを太くいたしてまいりたい、かように業界希望をいたしております。あとは前参考人の申し上げましたことで尽きておりますので、どうかひとつ、ただいまのことを御参考にしていただきたい、かように存じます。  どうもありがとうございました。(拍手
  8. 高見三郎

    高見委員長代理 次に、菅参考人お願いいたします。菅参考人
  9. 菅英一

    菅参考人 私、日本生糸輸出組合理事長をつとめております菅と申します。いままでの御三人の参考人お話で、私申し上げることがほとんどないくらいに言い尽くされておるわけでございまして、また重複するきらいもあるとは存じますが、一言申し上げたいと思います。  まず第一に、このたびの政府案は、われわれ蚕糸業界の全団体が全体を考量して考えましたことが基調になっておりまして、これはあに輸出組合のみならず、この輸出振興策をとるということが、わが国蚕糸業の将来のために欠くべからざることであり、また必要だ、こういう根底の思想に立っております。  思いますのに、往年わが国輸出大宗品でありました生糸が、合繊の発達によりまして激減した。したがいまして、合繊のますます伸びている今日、往年のような生糸輸出というものはとうてい考えられないことではございますけれども、なお外国におきましては隠然とした生糸に対する需要がございまして、われわれの措置がうまくいけば、今日のような少ない輸出ではなくて、なおある程度の輸出はできるのではないだろうかというふうに考えております。  思いますのに、ここ数年来の輸出の減退というものは、何と申しましても、日本国内における内需が非常に増大いたしまして、どうしても輸出のほうに回ってこない。  それから、先ほどお話がありましたように、価格が若干不安定に過ぎる。ぜひひとつある期間安定価格を維持できれば、ある程度の輸出はできるというのがわれわれの考えでございます。したがいまして、基本的には繭の増産ということになりまして、拡大均衡に持っていくということが望ましいわけでございますが、その繭の増産というものについては、またあらゆる角度から御推進していただいているわけでございますが、それまでの措置といいましょうか、すべてを内需のほうに回さないで、若干でも輸出向けに玉を確保する。したがいまして、また、価格の面もある期間安定させるということによって、いままでの生糸海外における地盤を壊滅させないようにしたいというのがわれわれの願いでございます。  どんな価格ならば輸出できるかということがまた非常に問題になると思いますけれども、これは安ければそれに越したことはございませんけれども、われわれあえて安売りして輸出する必要はないという見解に立っておりまして、大体この安定価格というものも、生産者生産費というものを基準にするというような構想でございますので、したがいまして、それがもし現状においては海外でも高いという認識を持ちましても、海外需要者はその高い原料を使って高い二次製品をつくるというような方向に進んでおりますので、何はともあれ、玉の確保ということと、一定した、安定した価格輸出するということが最も望ましいと思う次第でございます。したがいまして、この法案が通りましたら、われわれ輸出組合の会員の輸出商も全面的に協力しまして、そういう方向に進みたいと存じております。  このたびの政府案には、輸入に関しては漏れているように伺っておりますが、これはいろいろの御事情もあると思いますが、われわれとしましては、この輸入というものによってある程度の日本生糸ブームというものを調節できるのではないかという考えも持っております。ただ、本年中国からの輸入が若干いままでより大幅にふえるようなことはございませんで、むしろ逆にことしは減りそうな傾向にございますから、輸入に関してはそう緊急にそういう措置をとるということもないかもしれませんけれども、いずれは輸入の問題も取り上げておくほうが、将来の日本蚕糸業に非常に役立つのじゃないかと思っておる次第でございまして、もしできたら、これも御審議願いたいと思っております。  したがいまして、このたびの政府案に関しましても、できるだけ一日も早く、海外のわれわれの過去の地盤を失わないようにという見地から、御審議の上、早目にひとつ御通過を願いたいというのが希望でございます。(拍手
  10. 高見三郎

    高見委員長代理 これにて参考人意見の開陳は一応終わりました。     —————————————
  11. 高見三郎

    高見委員長代理 これより参考人に対する質疑に入ります。大野市郎君。
  12. 大野市郎

    ○大野(市)委員 二、三御質疑をいたしたいのでありますが、各参考人方々の、輸出確保しておくことが将来の足場を確立するためにぜひ必要であるという御意見は、われわれ十分了承しておるのであります。ただ、二点伺いたいのでありますが、一点は、内需が非常に強い。そのために中共の生糸などが輸入されておる。これは生産増強のためにも、外国生糸の品質というものの分析、認識というものが非常に必要だろうと思いますが、その品質は、内地産に比較してどういう点で優劣があるか。それから価格形成の点で、中共が国家貿易であるので、その点で自由価格でないと思いますので、そういう価格操作の点での相違点を御説明をいただきたい。これは製糸協会の会長さんに、需要者の御使用なさる立場でございましょうから、御研究があるのじゃないかと思うので、伺いたいと思います。  それから第二点は、内需圧迫になりはしないかという懸念が参考人の御意見にもございましたが、この点に対して、生糸の形の輸出がいいものか、それとも加工のメリットを国内で保有して、国内で享受して、絹織物の形で輸出するほうが、何か国内に手取りが残るような気がしますので、そういう点に対しての見通しはどういうものでありますか。これは輸出組合理事長さんにお伺いすべきか、山添さんにお聞きすべきか、私もよくわかりませんが、お答えがいただけたらしあわせだと思います。  そして、同じくその問題に関連して、内需圧迫のために値上がりがもし国内で起きた場合に、養蚕農家の手取りが増加するということで、再生産の意欲をかりたてられることであれば、私は一つ価格形成においては筋が立つと思いますが、この点製糸業界との力関係——従来いろいろいさかいを私ども見たことがございましたが、そういう点での力関係の圧迫などがあってはたいへんだと思うのであります。その点に対する予防策、協調策は御用意がございますかどうか。あるいは値の上がりという形勢を見込まれて——承知のように、相場は先行き見越しで相場を立てるに違いございませんので、これは上がるぞということで、輸出品のたな上げが行なわれるから、国内流通生糸量は少なくなるということの思惑が起こりはしないか。その思惑の中で、流通関係の何というのか、私もしろうとでわからぬのですけれども、問屋というのでしょうか、そういう中間の人が、いうなれば一勝負というようなことで、さらに買い占めなどというものが行なわれたら暴騰する、生産農家には関係ないところで投機行為が行なわれる、そういう心配がないかどうか。あるいは絹織物業者が、やはりそういう意味で買い急いで高いものをつかんだために、養蚕農家は何も利益がこないのに、ぜいたく品であるかもしれませんが、絹織物国内の人たちが着たいというときに、当を得ない高い価格で買わされるおそれがないか。まあ、いわば価格の問題に対して、内需圧迫という見地からいろいろの問題が出ると思いますが、こういう問題も、私どもしろうとでわからぬのでありますが、ごく簡単に二点、輸入の品質、価格の性格、それから製品輸出ができないかどうか、内需圧迫に対する諸影響はどうか、こんなことをどなたに伺っていいか、見当をつけかねるのでございますが、委員長、お許しをいただけたら、適宜おはかり願いたいと思います。
  13. 安田義一

    安田参考人 中国系の品質問題についてお答えいたします。  中国産の生糸全体の品質につきましては、私どもも可能な範囲においていろいろ調査をいたしております。比較的よろしくて、いいグレードのものは、わが国生糸と遜色がないというのが事実でございます。特徴といたしましては、練り減りが少ない。練り減りが少ないということは、機屋さんが織物にいたしまして、精練をして製品にいたしましたときの歩どまりがよろしいということで、機屋の希望する点でございます。そういう点は、中国の糸はいい、かように使用者側から聞いております。ただし、わが国に入ってまいります生糸は、非常にすそものが入るのでございます。中国全体の生糸の品質はいいにもかかわらず、日本に入ってきますものは、品質の非常に下のものが入ってまいります。したがいまして、機屋さんでは、やはり現物の顔を見ないと、その使用をするのに、どういうところへ使用していいか安心ができないというように申しております。ことに国内におきます生糸の取引でございますと、AならAという会社の製品をCという機屋さんが一年間継続して買うというような形で、いつでも同じものが入ってくる。ところが、中国生糸は、輸入商もいろいろな方が輸入なさいます。お売りになるほうは、向こうは国家貿易ではございますが、そのうしろにおりますいろいろなメーカー、大メーカーもありますが、小さなメーカーもありまして、率直に申しまして、どこどこの会社の製品というような、いわゆる銘柄と申しますか、そういうものが必ずしも入ってこない。どこの糸かわからないものが入ってくるというようなことで、いわば行き当たりばったりに使うということがきょうまでの現状でございます。したがいまして、日本に入ってまいります中国糸の品質ということになりますと、非常に粗悪で一定しておらなくて、内地の主たる消費の流れというものの外にあるものだというふうにお考えいただいていいのではないか、こういうふうに思うわけでございます。したがいまして、現状におきましては、外国の糸というものは、不足を補う、それもお安いものですから、機屋の創意くふうによって何とか不足を補うように使っておる。こういうのが私は現状だというふうに考えております。
  14. 大野市郎

    ○大野(市)委員 そういたしますと、いまのあなたの御意見では、中共生糸はいいものもあるんだが、品質がそろってないので、将来内地を撹乱するような主流に変わることはなかろうということでございますか。
  15. 安田義一

    安田参考人 これは将来の予想ですから、あまり断定的にも申し上げかねますが、現在のような取引形態では、おそらく容易にわが国の主たる消費の流れに食い込んでくるということはむずかしいと私は考えております。
  16. 大野市郎

    ○大野(市)委員 しかしながら、それでもそれを使う需要者があるわけですから、それに右へならえはおかしいのですが、内地の養蚕家のつくりますのもいろいろな等級がございましょうから、たとえばくず繭のようなものも、あのネクタイの結び目につけたようなものでイタリアがえらく売り出したとかいう話を聞きまして、内地の値段の安いものもそういう使い道に開拓路を見つけていけば、相当幅広い生産の増強ができると思いますので、実需家の、そういう品質が悪くても値段が安ければ使えるのだといういわゆる実需分析ですね、そういうものを製糸協会としては御用意がございますか。
  17. 安田義一

    安田参考人 私ども生糸を販売する側でございますので、これは先ほどお話が出ておりますように、繭をふやしていただくより対抗する手段がないのでございます。現在の養蚕の方法として、農林省あたりでもいわゆる省力養蚕ということをいろいろ奨励していただいております。何がしかの効果も出ておりますけれども、やはり限度がございまして、これ以上品質を悪くしてふやすということもどうか、かように考えまして、やはり飼育方法をもっと手軽にいたしますとか、桑園の拡張、増大をはかるというような角度、あるいは肥料の投入ということによりまして、土地の生産性を向上して増産をしていただくということ以外に対抗するすべもない、かように私は考えております。したがいまして、中国の糸も脅威ではございますが、これはどこの社会でも安もので済むという場面はございますので、そういうところは、現状ではそういうものにおまかせするよりやむを得ないというところではなかろうか、かように考えております。
  18. 大野市郎

    ○大野(市)委員 なるほどそのとおりで、いまの需要分布から見まして、粗悪なものを使っているから、粗悪なものでもいいから一ぱいつくれというのは自殺になるかもしれませんから、そういうようなものでいいものは、一部輸入してでも間に合わせざるを得ないというような現時点の御解釈のようであります。これは生産の方法論でございますので、議論がありますけれども、その点で一応承っておきます。
  19. 安田義一

    安田参考人 ちょっと重ねて申し上げますが、そういう意味におきまして、輸入糸のコントロールということはやはり必要な問題ではなかろうか。これは主体が事業団であらねばならぬかどうか、そこまで私は固執はいたしません。しかし、輸入糸のコントロールということは、やはりちょっと看過できない問題ではなかろうか。ちょっとそれをつけ加えさしていただきます。
  20. 山添利作

    山添参考人 先ほどの御質問にお答えいたします。  実は最近、短期間でございましたが、中共を視察してまいりました。御出席横田さん外六名で参ったのであります。  価格がどういうふうにしてきめられるかということでございますが、国家貿易であるから、そこは競争力というのは無限とは言いませんけれども、いろいろあるのじゃなかろうか、こういうお話でございます。確かにそういうこともあろうと思いますが、それにいたしましても、国家貿易であろうと何であろうと、一般にいわゆるコストというものはあるはずでございますね。そのコストたるや、大体農産物はずっと低位にしてございますが、現在のところ、中国の米価は日本の米の値段の約三分の一にしてございます。十数年中国では農産物価格を変えていないようであります。米対繭、これは日本とほぼ同じような割合できめてございます。そのように低くきめてある。それが農民にとって過酷の値段かというと、それはそうではないわけなんであります。価格制度といたしましては、農産物は民生安定のために低くきめてある。繊維品その他は日本の物価並みであります。くつ一足四千円とかね。私は半そでのシャツを買いましたが、千八百円くらいでありました。そういうようなきめ方でございます。そういうふうに鉱産物と農産物との価格の開きというのが、ことばの使いようですが、税と言ってもいいし、要するに国家の投資の費用ということに相なるわけでありまして、これはソ連における消費税などと同工異曲のものであると思います。  まあ、給与といいますか、これも上海あたりで、相当の能力がある労働者が一人月に七十円くらいであります。向こうの一円は日本の百五十円か百六十円というふうに考えればいいわけですから、一万円前後だと思います。そういうことでありまして、農村に参りますと、食糧は人民公社からもらいます。食糧以外に使う金といたしましては、一戸あたり月六十円くらいであります。そういう価格体系が成り立っておるわけであります。そういう点で、生産費の比較というのをやりましても、これはちょっと比べものにならない。むろん、向こうでは繭が、日本のあれに直しましてせいぜい十二、三貫しかとれないとか、多くとれても十五貫こすことがないとか、糸目は、日本で春ならば十七、八匁あるのが、向こうでは十三匁であるとか、製糸工場はうんと人がおりまして、日本の倍くらいいますから、人は問題ないわけでありますが、そういう生産費の違いがあるということ、補正というか、ディスカウントというか、そういう一方の要素はございますが、いずれにしましても、生産費の比較ということは、この際あまり意味がないだろう。向こうでは農産物一般に非常に増産が進んでおりますが、繭につきましても増産されております。今後も増産されると思います。しかし、一方から見ますと、現在は、中国国内における生糸は辺境民族の需要に充てておるのが主であります。七億の民があるわけでありますから、国内の潜在的需要というものから見ますと、これはちょっとはかることもできないような量があるわけでございます。それを海外に幾ら出し、国内に幾ら向けるかということは、全く政府の計画によるわけでございまして、海外が買わないのに無理にねじ込んで安い値段で出そうか、こういうような考えは、中国の人はりこうですから、そんなことはやるまいと思います。  私は、今回参りました機会に、日本価格安定制度を説明いたしまして、相場はいろいろ変化するけれども日本事業団によるところの価格最低値ということは、これは信頼していいんだ、高く売りなさいということはできませんけれども、そういうことは十分御参考になすったらいいだろう、こういう見解を述べてきたわけでございます。  そういうことで増産はできますけれども、当面中国の考え方といたしましては、どうも日本にたくさん出したいという考えは目下の政治情勢ではないようにも思います。したがって、近い将来に日本の市場における中国生糸がたいへんなことになるんじゃなかろうかということは、いまのところ予想する必要はないのではなかろうか。将来ともだんだん中国とは、少なくとも蚕糸に関する限りは具体的な話し合いはむずかしいと思いますけれども、了解を進めつつやっていきたい、かように考えておるようなわけであります。  絹織物で出したらいいか、生糸で出したらいいかという点でございますが、私どもこれは両建て論でございます。御承知のように、生糸がうんと減りましたが、絹織物はそれほど減っていない。といいますのは、加工をいたしますだけに、価格が高いとか変動とかいうことは吸収力があるわけです。そういう意味があろうと思います。しかしまた、付加価値が高いのは、これは加工製品にきまっておりますが、それだけでいいかということになりますと、これは、やはり着物なんというものは流行というようなことがあるわけで、向こうの機屋が織って、そして向こうの趣味に合ったものをつくっていく。これはやはり絹に対する需要を持続する意味において必要でもありますし、また向こうの機屋さんが一生懸命シルクの宣伝をするわけですから、その宣伝価値という意味から申しましても、シルクの輸出をばったりやめてしまうということになると、これはまた絹製品の輸出にも、少なくとも長い目で見れば、大いに影響を来たす。まあ両建て論、両方進める。しかし、いままでの日本輸出といたしましては、まだ絹製品でいったほうがいいんじゃないかということは、諸般の状況からも考えられますから、この方面にも大いに力を入れていただきたい、かような希望を持っております。
  21. 大野市郎

    ○大野(市)委員 養蚕農家立場でひとつ……。
  22. 横田武

    横田参考人 輸出振興し、また中共から生糸が入ったために、養蚕農家にどういう影響を及ぼすかという御質問だと思いますが、私は、現在事業団法改正されたものとかりに解釈いたしまして、第一次年度におきましては、数字は申し上げていいかどうかわかりませんが、現状ではローシルクとして九千何百俵輸出をされております。一躍輸出確保するということは困難だろう、かように考えまして、業界全体の意向としては、二、三万俵くらい第一次年度から順次輸出振興さしていこう、それから数字はまだ外にも出ませんし、各団体の間で相談しつつあるわけでございますが、当初年度はそのくらいのところからやっていったらどうか。それからまた反面、ただいま山添会長から話もありましたように、中共の生糸は計画経済で、日本へ去年一万九千何がしか入ってきております。しかし、本年度はそれほど私は入るとは考えておりません。  そこで、養蚕農家にどのように影響するかという問題につきまして、農林省もようやく現在の局長さんになりまして以来、繭を大いに増産しようということになるとともに、全養連では繭増産推進協議会という連絡協議会を各末端の市町村につくり、郡につくり、県につくり、全国養蚕連が元締めといたしまして、今後大いに繭増産をして、そうして順次輸出数量もある程度確保していきたい、こういうねらいで繭の増産運動をやっております。  ただし、過去の例からいたしまして、農産物にありがちな、増産すれば安くなる、これが原則でございます。しかし、蚕糸の場合につきましては、今後十年間に約十万俵ふやそうというふうな計画もあるわけでございますが、先ほど関係でという御質問もありましたが、現状におきましては、養蚕の場合は売り手市場でございます。したがって、現在でも繭の取引を公正にしようということを言っておりますけれども、四千円以上いたしておる。これは例外でございますが、群馬県では日本一高い繭が売られておる。こういう事態等から考えまして、ここ当分繭を増産いたしましても、力関係養蚕がいじめられるとか、養蚕が不利な立場になるとか——少なくとも数年の間は大増産をしても、なおかつ売り手市場である。こういうときに輸出確保しておかなければ——私は各府県あるいは養蚕農家に直接会っておりますけれども輸出がなければ繭を増産しても困るでしょう、こういう不安が一部にあるわけです。したがって、その不安を除去するためには、この輸出確保という問題につきまして、一次製品を合わせてどのくらいの数量にするかということになりますけれども、これは織物業者との関係もありますので、私どもは、生糸として輸出する分野を二、三万俵以上に、どんなにアメリカがいろいろ考えましても、この数量確保していきたい。  この法案を通していただきまして、春繭から輸出用の、つまり、販売用の繭を製糸に確保していただきまして、六カ月くらいになると思いますが、一定期間一定値段輸出確保ができるように、それぞれ話し合いを進めております。したがって、私の立場としては、繭を増産し、輸出をし、輸入もする、それで、養蚕農家が圧迫を受けないようなことにするには、この事業団法成立し、事業団がある程度の原価で、製糸から原価主義で買い取って、そうして半年間同じ価格輸出をしていこうということでございますから、この機関ができれば、養蚕家を圧迫するということがなくして、輸出振興ができる、こう私は考えておるわけでございまして、地方養蚕家に参りましても、そういうお話をいたしますと、それではわれわれは安心だ、こういうことで、現段階としては繭増産一本やりにしぼっておる。こういう状況でございますので、特に先生方は大衆農民立場を考えていただいておりますことは、よく私にもわかります。したがって、全養連はその配慮におこたえできるような措置を講じてまいりたい、かように考えておりますとともに、この法案春繭から間に合わしていただきたい。ただいま全養連では集団桑園を奨励しております。新しい未開墾地、つまり、平地林等を開墾いたしまして、何町歩、何十町歩という平地林を集団桑園に変えまして、そこから出る繭をできるだけ輸出用に向けていきたい、そして密度の高い高度の養蚕地帯からはそういう繭なり糸を吸い上げるようにいたしまして、新分野を開拓して、そしてその繭を輸出向けにいたしたい、そうすれば、あまり養蚕農家にも影響を与えないのではないか、かように考えながら、業界との均衡をとり、さらに養蚕農家が不利益にならないような方向をとるには、この事業団法改正によって輸出振興してまいりたい、こう存じております。
  23. 大野市郎

    ○大野(市)委員 いまの輸出織物関係その他の問題で、参考人の方で御発言があったら承りたいのですが……。
  24. 安田義一

    安田参考人 生糸のローシルクで出すよりも織物で出したほうがいいのではないか、これは先生のおっしゃるとおりで、われわれとしましても、できるだけ付加価値の高いものを出したい。現にわれわれ繊維業界におきましては、絹織物、絹撚糸並びに絹の二次製品でございまして、こういうものを生糸に換算いたしますと、なま糸の三倍か四倍かはすでに出ておるわけでございます。したがいまして、今度の事業団の買い入れ措置につきましても、これらの製品に使う生糸も含まれておるわけでございます。そういうことでございまして、しからば、なま糸、ローシルクはやめたらどうかというようなお考えもあるかもしれませんが、これは先ほどお話にありましたとおり海外の機屋さんでございますね、これがやはり自分の手で織りたい、また自分の機械で創意くふうをつくりたい、こういう希望が非常に強うございまして、両建てでいったほうが得策と思います。現状においては、すでになま糸よりもそういうふうな製品で出ておる量が多いという状況でございます。
  25. 大野市郎

    ○大野(市)委員 大体各参考人方々の御意見よくわかりました。  それで、最後に、この運営に対しまして意見があるのですが、従来輸出振興というときの目標で輸出をやりますときは、いわゆる外資の獲得がほしいというのが目的の一つ、あるいは業界全体の大量生産のメリットを享受したいために、外国向けは赤字出血であっても外貨を握りながら大量生産のメリットを受けたいという二つが、輸出振興の目標であったろうと思うのです。このたびのこの法改正によりまして、事業団が運営をされるときにあたっては、外貨の獲得という趣旨では合致するようなんですが、大量生産によるメリットの享受ということには当たらないので、それだけに、かつてカラーテレビの問題で大衆消費者から問題が出たわけなんですが、そういうような意味で、国内でもせっかくとれた絹を着てみたいという要望が大きくなっておりますだけに、ふところが次第に豊かになるとやはり着てみたいというのが相当大きい声で出ておりますので、そのときに、輸出価格が、ただ外資がほしい、あるいはお得意先をつなぎたいというだけで、内需の売り値と差がつき過ぎますと、そういう面から異論が出てきはしないかという素朴な心配、疑問が私などにはまだあるのです、政府の提案でございますが。国民の立場から見て、この点よほど運営にあたっては考えていただかなければならぬなというふうに、実は私見でございますが、思います。参考人方々はそろって、これで一つ増産のてこ入れができるのだという意気込みはうかがえましたので、私どもとしても、そういう疑念をお互い勉強し合いまして、運営をはかっていったらしあわせではないかと思います。  私の質疑を終わります。
  26. 高見三郎

  27. 中澤茂一

    中澤委員 山添参考人にお伺いします。例の審議会ですね。私も長い間蚕糸業振興審議会委員として会議に参加して、たまたま政府を呼び出してごてて、山添会長運営に困ったようなこともありましたが、審議会から国会議員を学識経験者としてはずした審議会というものは、非常に空疎な議論になっておるということを聞いておるのです。畜産振興審議会国会議員をはずしたところが、まるで役所側のほうでは課長程度しか出てこない。そういうことでは、ほんとうに民間業者を加えて審議をして、基本方針を出して政府参考にするのには、審議会の価値というものが非常に低下したのではないか、こういうふうに私は考えておる。いま米価審議会をどうするかが大きな政治問題になっておるわけです。そういう点から、会長として審議を運営してみて、国会議員といううるさいやろうどもはいないほうがいいというお考えですか。それとも、やはりおらなければうまくないなとお考えですか。その点、ひとつ会長としての御見解をまず承りたい。
  28. 山添利作

    山添参考人 新しい蚕糸業振興審議会、すなわち、国会議員の方がお加わりになっていない審議会は、この間価格の点をちょっと審議いたしましたが、しかし、その価格につきましては、もともと国会の方は加わっておられなかった。そういう経験を通じまして、いまのところ何とも感想は申し上げられません。
  29. 中澤茂一

    中澤委員 ところが、われわれも長い間振興審議会委員をやっておりましたけれども業者の皆さんはみな利害関係があるから、非常に役人さんがおっかないんですね。私ら振興審議会で聞いていると、大体業者の発言というものは我田引水論が多い。大局的に蚕糸業をどうするかというのももちろんお考えになっておるが、自分のほうの業界をどうするかという発言が多いのです。そういう点においても、発言を聞いておると、非常に控え目なわけですね。これ以上言ったらあの局長へそを曲げてこの次に何かしはしないかという、非常に控え目な発言が多いんですよ。私は、やはり利害関係にとらわれない学識経験者の議員が審議会に入っておるほうが、審議会というものは活況があるし、大局的な立場から問題の把握ができるのではないか、こういうふうにいまでも考えておるのです。山添会長、それに対して入れたほうがいいとも言えないだろうし、もう少しやってみなければわからぬというところがいまの答弁の落ちだと思いますが、これはその程度にいたしておきます。  それから、次の問題として、山添さん、親方で中国へ行っていらっしゃった。私は前に振興審議会でも議論したように、やはり希少商品ですね。中国日本と朝鮮、ほとんど希少商品ですから、私は、中国とのマーケット協定というものをやるべきだという主張を前にもしたことがあるわけです。中国だって一銭でも外貨がほしいのですから、ひとつマーケット協定をやろうじゃないか、じゃ欧州市場はここの国とここの国は日本にして、南米市場はこうしようじゃないか、東南アジア市場はこうしようじゃないか、価格は大体この程度ということで、輸出市場をマーケット協定をやったらどうか。こういうことはほんとうは政府がやればいいのですが、御承知のように、いま国交が回復してないという非正常な状態にあるわけです。LT貿易を通じるなり何らかの方法で中国とのマーケット協定というものは、いま政府に正常な外交ルートがない以上は、私はやはり業界が真剣に取り組むべきじゃないかという議論をさんざんしたことがあるのです。そういう点について、今度おいでになって、マーケット協定についての中国側の考え方というものを若干なりとも打診になったでしょうか。もし打診されたとすれば、中国側の意向というものはどの程度看取できたでしょうか、その点山添会長からお伺いしたい。
  30. 山添利作

    山添参考人 ただいまお話の点は、そういうことができればまことに望ましいことであります。しかし、ただいまの状況としては、日本国内的消費が多いがために、輸出余力がなくなったという実態でございます。したがって、御承知のように、ヨーロッパにおきましては、日本の糸は全部とは申しませんが、大体全部なくなって、中国生糸が行っておる。アメリカは原産地証明ですか、ああいうことで中国の糸が行かない。ですから、これは協定ではなくて、政治上の関係でそういう結果を来たしておるわけなんですが、今度私どもが参りまして、具体的な問題を話すつもりはないというふうに初めから断わりました。ということは、実際問題として、とてもいま具体的な話でどうしようというようなことではございません。そこで、私ども向こうに申しましたことは、二大生産国は協調していくべきものである、さしあたりの問題としては、海外需要を伸ばすことが必要なんだから、中国はいろいろ御事情もあって世界絹業協会に入られることはむずかしいかもしらぬが、会があるたびにオブザーバーという資格で人を出されて、そうしてできることはひとつ需要増進のために協力していくようにしたいものだ、特にオブザーバーとしてしょっちゅう出られるようにしたらどうか、これが一点です。その次は、価格中国においては一定価格で、ずっと安定した価格でやっておられる、これはいわゆる海外における需要増進のためにまことにけっこうである、そこで、しかし日本ではずいぶん相場が動くけれども日本価格安定制度はこういうことになっておるという話で、特に事業団においては本年はキロ五千五百円というのを最低にしておる、これは実際の相場はいま七千円以上だが、こういう最低価格の棒入れをして、市場は絶対にこれより下がることはない、したがって、今後中国において輸出価格をおきめになるときには、日本価格支持制度というものを十分御考慮になっておきめになったほうがいいと思う、これは参考のために申し上げる、こういう程度であります。しかし、向こう側は、私どもは初めての訪問でもありますし、立場も違いますし、たいへん歓迎は受けたし、厚遇は受けましたけれども意見交換というところまではいきません。向こうとしましては、まあ承っておく、こういう程度でございます。私どもが行きます条件は、同じ条件、同じ人数、同じ期間でまた向こうの人に来てもらう、こういうことになっておりますから、ことしは文化大革命でたいへんめんどうかと思いますが、おそらく来年は向こうの人が来ると思います。だんだん実質的な了解といいますか、親善といいますか、気分をほごしていって、将来必要があれば話ができるようにいたしたい、かように考えておるわけであります。将来話が必要になるというのは、要するに、国際協定というものは両方が困らなければだめなんで、一方だけが困ったという状況ではなかなか話は進まないと思いますが、世界的な生糸の需給関係が変わってくれば、そのときはまたそれに即した話をするといいますか、まあそういうことになるかならぬかは知りませんが、そういう話が持ち出し得るようなムードはつくっていきたい、かように考えておるわけでございます。
  31. 中澤茂一

    中澤委員 それはどこまでも進めて、こういう希少商品ですから、私は、積極的にこっちが進めていけば、確かに文化大革命というようなあらしの中にいまあるから、いまは不可能だと思うけれども、これが一段落落ちついてくれば、世界じゅうで生産国は日本と中共が主力なんですから、これは可能だと思うのです。中国だっても、何も日本と競争して安売りしたいという腹は私はないと思うのです。一銭だって経済建設に外貨を働かせたいと思うのです。だから、それはどこまでも今後も緊密な連携をこれを契機にとっていって、やがてはマーケット協定まで持ち込む、そこまでいけば、私は、中国も安定してくるし、日本蚕糸業というものも安定してくると思う。このまま中国増産政策をどんどんやって、しかも日本の多条製糸機なんか入れて、技術も非常に向上してきておる。そうなってくると、日本が将来非常に不利な立場に置かれる可能性というものは非常に強い。だから、むしろあまり向こうの技術が最高度に進み、合理化が最高度に進まないうちに、やはり政治的な話し合いを積極的に推し進めるべきじゃないか。向こうも来るそうですから、なるべく早く来てもらって、政府が国交回復していれば、政府間でこれは話し合いをする問題なんですが、業界がこの問題だけはあげて一本で、中国とのマーケット協定まで最後は持っていくんだ、マーケット協定から価格協定まで持ち込めれば、私は、これはもう日本蚕糸業というものは安定してしまうと思うのです。そういう点について今後ともひとつ御努力を願いたい。  それから、横田さんにちょっとお伺いするけれども先ほど十万俵増産計画だ、四十五万俵ぐらいに農林省はしたい、一体これは可能なのかどうかです。非常に疑問を持っているのです。横田さんどうお考えですか。
  32. 横田武

    横田参考人 将来の見通しにつきましては、現在の農業事情のあり方では、私は相当困難な問題とは存じております。しかし、現在内需が約三十万近くなるし、織物を合わせますと三万二、三千俵、現状でも輸出確保しておる。これは中共から入ってきますものでバランスはとっておりますけれども、この経済成長の中にあって、いいものを着たいというのは人情の常でございます。したがって、私は、国内需要もさらにここ四、五年の間に相当量ふえていく、つまり、年一万俵以上ずつもふえていくのではないかと思います。そうするには、繭増産運動を起こして、順次桑を増植したりしまして、少なくとも五十万俵近くにいたしたいという、これは構想でございますが、そういたしましても、私は価格の面にはあまり響かないという構想を持っておるわけでございます。農林省でもそういう数字を発表いたしておりますが、私ども養蚕団体といたしまして、現状価格がほぼ維持できるであろうということを想定しておるし、それから、地方を歩きましても、養蚕戸数はなるほど減ります。養蚕戸数は減るけれども、規模を拡大しております。過去の養蚕農家が三十グラムのものが一躍五十グラムになるとか、五十が七十になるとかいうことで、日本全体の養蚕戸数は五十何万戸に減りましたけれども、繭の生産量というものは非常に拡大されておる。日本農業が非常に変貌しておるという事実を証明しておるわけでございます。ほかの農業とは違いまして、よく三ちゃん農業といっておりますけれども、蚕の場合につきましては、三ちゃん農業でも、子供でもばあさんでもみんな使えるというところに、養蚕業に対する労働力の供給は非常に窮屈にはなっておりますけれども、他の農業部門に比べまして、非常に合理的に蚕がやれる、こういう点等から考えまして、私は増産可能であるという結論を出しておるわけでございます。その結論の実現に向かいまして私どもは努力をいたしたい。ただし、これには大きなてこ入れも必要であると思うわけでございます。政府がもう少し繭増産に必要なあらゆる援助も必要であろうし、それから畜産を奨励しても、あるいはそのほかのものを奨励いたしましても、価格の面でみんな壁に当たっておりますが、現状の蚕糸の場合につきましては、輸出問題が片づけば壁はないわけであります。したがって、大いに繭増産運動をやって、絹の消費も反面においてふやしてまいりたい、そういう考えでおりますから、見通しということは、なかなかむずかしいわけでありますが、私も養蚕農家でございまして、去年百グラムのものをことし百二十グラム、私のうちでも約一割増し掃き立てをいたしております。これは価格だけでなく、兼業農家が専業的に変更しつつあるということ、いままでは豚も飼い、鶏も飼い、米麦もつくり、養蚕もやりましたが、今度は農家は手間がないから、兼業的な農業経営から専業的な規模拡大をやっておるというところに、私どもは大いにこの農村のあり方を検討いたしまして、養蚕業の規模拡大ができ、増産ができるという見通しをつかんでおるわけでございます。それ以上と言いますと、なかなかむずかしいわけでございますので、お許しを願います。
  33. 中澤茂一

    中澤委員 それはいまは増産意欲に燃えておるですよ。私もよくわかっています。七千円、七千五百円、これは私は投機的異常価格だと見ておるのですよ。しからば、政府の安定帯である五千五百円で農民増産意欲がいまのように盛り上がるか。これはそのときになったら、またやめるべえということになってくるわけですよ。そこに問題があるのですよ、価格問題は。それは輸出問題とからんで非常に問題がありますけれども農民増産意欲を上げるというならば、七千円を割ったら、またもうやめるべえということになってくると思うのです。だから、五千五百円という価格が、これは輸出中心に問題を考えているのでしょうが、私は増産意欲になる価格ではないと見ておる。増産意欲を持って農民がいまのまま毎年一割増産をやっていけば、三年で十万俵ふえるわけです。一割までいかなくても、五分ずつ増産していく意欲を持たせるためには、少なくともいまの六千五百円から七千円、この価格というものが維持できないと——農民は結局ほかの農産物と比較しておるわけですよ。一反歩で、畑作、たばこよりも若干いいのじゃないか、それなら、繭も苦労だけれども、繭のほうにいこうじゃないか、これが農民心理なんです。葉たばこの価格も年々上昇しておる。いまでは福島あたり生産価格で一反歩で十三、四万円あげておる。たばこと比率をとっておるわけだ。これならいけるじゃないか、こういう考え方なんですよ。ホップがこれも年々価格が上昇しておる。これは特殊地帯ですが……。この価格比較というものを農民がいつもやっておるわけですよ。だから、いまの価格の中では、確かに増産意欲はありますよ。横田さんのところでも、おれのうちも二十グラムふやしたと言いましたけれども、確かにそういう心理でふやしていますよ。しかし、これがはたしてそういう価格維持というものが可能であるかどうかというところに、私は問題があると思うのです。それならば、政府が本腰を入れて、そうして五千五百円などというような管理価格を、年来私が主張しておるように、農民が意欲を持てる価格までなぜ引き上げないのか。そうして最低価格は保証しておる、こうなれば、農民は本気になりますよ。かつて政府の反対さえやればいいと言われたのは繭の問題ですよ。農民政府の反対さえやっておればもうかる。そうでしょう。あの大暴落のとき、私は忘れもしませんよ。大蔵大臣がいまの総理の佐藤氏で、百五十億買い込んだ。あと五十億買い込めば完全に底値がささえられたのに、その五十億を出し渋ったために、千円まで大暴落した。そこで、政府側は、これは斜陽産業だからやめろ、桑を抜けば補助金を出す。そこで、農民は、政府の言うことはうそじゃあるめえといって一生懸命桑を抜いてしまった。ところが、桑を抜いたとたんに、二千円、二千三百円というふうにどんどん上がってきたわけです。だから、政府の反対さえやればもうかるというのは、繭の問題で農民が言い出したわけです。だから、いま言ったそういう愚を二度と繰り返さないために、政府は下限価格というものを完全に保証する体制で、もっと上げるべきだ。そうなれば増産意欲は続いていく、私はそう判断しておる。  そこで、忌憚なく事業団問題を言いますけれども、これは一つの過渡的な、おそらく将来になったら、あんなことをやっておったっけかなという話になる問題だと私は見ておる。忌憚なく言えば、将来の見通しとしては、むしろ、やはり加工輸出というものに技術的に——これは政府ですが、皆さん業界も御協力を願わなければならないが、政府が加工輸出という方向へ技術的な高度をどう上げていくかというところに、私は問題があると思うのです。そういう方向へ自然流れていきます。皆さん腹の中ではちゃんとそう思っておる。これはやがて加工輸出になる。実際はこれは無理だなということは腹の中で皆さん考えておると思うのです。だから、それなら、イタリアが日本生糸をあれだけ買っては輸出し、そうしてイタリアの生糸織物というものは、世界の銘柄品で通るような体制まで加工輸出というものを——業界も金を出し、政府も金を出して、技術体制の向上を加工輸出に対してどう持っていくかということを、真剣に業界政府も考えなければならない問題だと思う。そうしてイタリアの絹織物のように、日本絹織物が世界の銘柄で通るようになったら、これはもう万々歳だと思うのです。だから、そういう点について、先ほど大野さんがほかの面に疑義があると言ったが、法案そのものもこういうちゃちな、と言っては政府におこられるかしれないけれども、私に言わせれば少しちゃちな法案です。しかし、これでも皆さんが一本になって政府とともに蚕糸政策を進めていこうというのですから、一時期において、過渡的段階としてこの法案も幾分かの役には立つだろう。しかし、将来の方向としては、これが問題を解決するものではないということだけは、私ははっきり申し上げられるのじゃないかと思う。  そういう点について、一つ私が申し上げたいのは、中国とのマーケット協定、国交回復がないですから、業界も今後これに対して、山添会長がおられるのですから、ひとつどんどんと積極的に進めていただきたいということをお願いしておくことと、それから加工輸出の面について、いま一度技術的な問題を日本は再検討する必要があると存じます。業界もあげて、技術革新の世の中ですから、技術をどうして銘柄品をつくるかということに集中して問題を考えるべきではないか、私はこのように考える。  たいへん私見を参考人の皆さんに申し述べて恐縮でございましたけれども、以上申し上げまして、質疑にかえます。
  34. 高見三郎

    高見委員長代理 東海林稔君。
  35. 東海林稔

    ○東海林委員 私、群馬県出身でございまして、養蚕関係に非常に関心を持っておるわけです。先ほどお話がありましたように、審議会から国会議員が追い出されたような形になりまして、皆さんの御意見を聞くような機会があまりないのですが、きょうは非常にいい機会でございますので、そんな関係で、私、質問がいろいろございますが、お昼近くなりましたけれども、もうしばらくひとつごしんぼうをお願いしたいと思います。  まず、山添さんにお伺いしたいのですが、今回の法案先ほどお話がありましたように、業界意見が総合され、さらに審議会審議を経て、その建議に基づいて農林省が法案化した、こういうようなことでございますが、いま中澤さんから御意見がありましたが、これは過渡的なちゃちなものではないかという御見解もあったわけですが、法案を見ますと、なるほど蚕糸事業団の附則の中に、しかも「当分の間」というような書き方になっておるのですね。私は、中澤さんと必ずしも同じ見解でないのでございまして、いまの日本蚕糸業界の実情からいえば、相当長期間にわたって、このような事業団事業実施が必要じゃないかというような考えもあるのでございますが、そこで、審議会の御意見と、この法案に「当分の間」というような暫定的な形で附則に出てきておることについて、どのようにお考えであるかという点をまずひとつお伺いしたいのであります。  それから、同じく山添さんに第二点としてお尋ねしたいのは、現状から申しますと、どうしても事業団の買い入れ価格というものは、事業団の安定帯をこえるばかりでなく、この価格安定法による最高価格もこえたような形で買い入れをしなければならないのじゃないか、こういうように思われるわけです。そういたしますと、この繭糸価格安定法なり事業団法の精神から見て、どうもおかしいのじゃないか。特に事業団について見ますと、一番大事なのは、安定帯に価格を安定させるというのが主目的でございますから、付随的に当分の間やるような、こういう輸出振興のための事業によって、その本旨が見失われるというような形は、事業団自身の自己矛盾を生ずるのではないかというような気がするわけでございます。その点、どのようにお考えでございますか。  まず、この二点についてお尋ねを申し上げたいと思います。
  36. 山添利作

    山添参考人 当分の間といいますのは、現在非常にこの需給事情が窮屈で、したがって、出すものが自然のままにしておきますると、ないか、もしくはかりにあるとしても、価格面で非常な変動を来たす。こういう事態における対策としての法案でございます。したがって、これを大々的に将来の恒久制度とは考えておらないのであります。しかし、東海林先生御存じのように、経済政策というものは、時に応じてだんだん経験を積んで、いろいろできていくものでございまして、当分といったからといったって、それじゃ二年、三年でもうやめてもいいような事態になるかといいますと、それはむろんそうは思っておりません。当分のうちというので、ずいぶん長く続いておる立法例は、御承知のようにたくさんありますわけで、ですから、これは思想として当分のうち、実行問題としてはこれは必ずしもはっきりしない、こういう法案のように考えております。  それから安定法にいたしましても、事業団法にいたしましても、下値の維持はできるけれども、上値が何ともなっていないじゃないか、こういうことでございます。したがって、輸出確保のために事業団一定量生糸を買いますのは、どうしても原価が基準になりますから、たとえばことしの春のごときは、当然高いものになるわけでございまして、したがって、これは事業団法によるところの上の価格というようなものとははずれております。これは実は前々から安定法についてそういうことになっておるものでありまして、中には上のほうの価格を禁止価格にしたらどうか、こういう意見もございます。これは現に法律にはそういうことができるように書いてございます。そういたしましても、これはしかし実際実効のほどは危ぶまれると申しますか、おそらく別の逆現象が出てくるという結果に終わると思いますので、そういう政策はとるべきでない。いま足らぬときにおきましては、しばらくの間は、政府事業団が調節用の糸を持つということも困難かと思いますので、上のほうは心持ちとしてはあるけれども、実行方法としては、それを確保するといいますか、そこで糸価を押えるということはこれは方法がない、かように考えております。
  37. 東海林稔

    ○東海林委員 そこで、その第二点のところですね。事業団は申すまでもなく安定帯の中に価格を安定さすというのが第一の目的なんですね。その事業団自身が今度はそれを無視したような買い上げをするということは、私は事業団の非常な矛盾じゃないかという感じがするわけですが、その点はどのように理解したらよいのでございましょうか。
  38. 山添利作

    山添参考人 そういうふうにきまっておるものよりも高い値段で買うのは、それ自身論理的な矛盾、自殺的矛盾と申しますか、それはおっしゃるとおりだと思います。しかしながら、それは実は過去の安定法における場合でも、いつでもそうなんですが、ともかく上値というのは、需給状況を改善するか、手持ちのものを持つかというような、実力的なことを伴わない限り、これはもう何ともしかたがないわけでございまして、望ましいとは言わないけれども、しかし、望ましくないことでも、やらぬよりやったほうがいいということは世の中にたくさんあるわけでありまして、この際、輸出確保するということは緊急の必要でありますから、その緊急の用を達するために緊急の措置をとる、かように考えておるわけでございます。
  39. 東海林稔

    ○東海林委員 いまの問題はその程度にして、これは政府に大いに聞かなければならぬ問題だと思うのですが、理屈からいえば、事業団がそういうふうに価格の安定ということを第一の目的とするならば、輸出については何か別な機関でやるということも、一つの考え方だと思いますけれども、それは非常に複雑だということで、いろいろの議論はあると思いますが、私はこれは非常に矛盾だという意味で、疑問を持っておるわけです。  その点に関連して、今度は横田参考人安田参考人にお伺いしたいのですが、実はいまの安定帯なりあるいは最低、最高価格の基準になる基準糸価、基準繭価の問題ですね。この算定のしかたの問題です。御承知のように、いま生産費から出た数字そのままのような形できまっておるようでありますが、法律では経済事情も参酌するし、外国の市況も参酌するというようなことになっておりますが、そういう点は参酌されない形で出ておるということが一つの問題であります。  それからもう一つは、生産費自身の算定に非常に不合理があるのではないか、私はこういう感じがいたします。たとえば労力の問題ですが、米価の場合は御承知のように都市における製造業に従事する者の労賃。それから牛乳につきましては、昨年畜産物価格審議会並びに本委員会でも、これは非常にやかましく議論されたのでありますが、昨年まではやはり主要加工乳地帯における日雇い労賃でもって自家労賃を換算しておったのでありますが、今年からはそれが改善されまして、飼料を生産するための畑仕事等につきましては日雇い労賃で計算するが、技術を要する搾乳その他の工賃については、これは加工乳地帯における製造業労働者の労賃というふうに改善されたわけです。ところが、この養蚕については、依然として養蚕地帯における日雇い労賃そのままで自家労賃が計算されておるというような問題があります。それから、固定資産の評価等につきましても、実情に合わぬやり方をやっている。また、千二百の調査農家の中で、この基準繭価の算定に採用する対象農家といいますか、これなんかについても、少しでも災害を受けた農家をオミットするというようなことで、何か、私どもから見れば、故意に基準糸価を安くしておる。法律の精神と違うような算定をしておるところに問題があるのじゃないか。だから、実情から見ても、また法律の精神から見ても、合わないような算定のしかたをしているから、基準繭価、糸価が下がり、したがって、安定帯なり、最高価格というものも低くなっておって、私は、特に現在の実勢価格が短期間に最高価格をオーバーしておる、あるいは事業団の売り渡し価格をオーバーしているというのなら、これはしかたがないと思いますが、御承知のように、四十年の後半からずっと引き続きそれを超過しておる。こういうような点は、要するに、繭糸価格のきめ方、基準価格、したがって、それに基づく事業団売り渡し価格とかあるいは最高価格のきめ方が妥当でないというところにも一つの大きな理由があるんじゃないか、こういうふうに私は大きな疑問を持つわけです。明日、政府にもその点を私はお聞きしたいと考えておるわけでありますが、直接の関係者であります横田安田参考人のその点に対する御意見をまずお伺いしたいと思います。
  40. 横田武

    横田参考人 ただいまの御意見のとおりでございます。そう申し上げますのは、本年度の繭の生産費の調査につきましては、われわれが政府に陳情してまいりました、つまり、生産費補償方式の価格がどうやら芽を出し始めていただいたわけでございますが、先生のおっしゃられるように、農林統計調査部の調査等におきましても、災害なりあるいは凍霜害なり大水害があった、あるいは大集団的な違作を生じたというようなものは考慮のうちに入っていない。それから、統計上の調査対象区域が、非常に条件に恵まれた、何といいますか、故意に選ぶのではないかと思うけれども、税務署が一定水準以上の高いところを基礎にして税金の対象にすると同じように、最も低い条件にしたようなところを基礎にして統計的な数字が出されてくる。私は、これは不合理で、確かに先生と同意見でございます。  したがって、養蚕の労働賃金でございますが、一日当たりの労働報酬は、計算されておりますのは、男が九百十三円、女が七百四十三円ですか、平均いたしまして八百二十八円でございます。これは、いまではニコヨンということばを使ってはいけませんけれども、その他市町村で失業救済事業に使ういわゆる季節的な労務者並みの労働報酬ではないか。これを基礎にしていろいろな生産費が出てくるということにつきましては、現在の農業人口が減少するおりから、こういう程度のものを基礎にしてつくるところに、繭糸価格安定法価格の生まれる矛盾さがあるわけでございます。これは、本年度は多少直っておりますけれども、計算の基礎になるものが、そういうような低いところから行なわれてきておる。それは養蚕農家が三十日間働いて、ちょうど二万四千円の月給になるわけでございます。そういう計算ではいまの農村は生きていけない。それから、全産業の平均労働賃金は四万三千円をちょっとこすと思うわけでありますが、そういうふうな開きのあるものを基礎にして、いわゆる繭糸価格安定法の基礎が出てくる。私は、ここに矛盾があるのではないか、多少組みかえをやっているというような感じがいたしてなりません。  したがって、これらの問題につきましては、来年度につきましては、十分先生のお力を借りるとともに、政府自身にも反省をしていただきまして、価格の保証方式が生まれた以上は、一定水準に引き上げることが妥当ではないかと思うわけでございます。そういうふうにいたしまして、今回三十三万五千五百円にきめられた。その五千五百円の九五%が事業団の買い入れ価格になっておるわけでございます。この事業団法の制定当時あるいは春繭価格の決定当時は、現在のような価格にしておりませんでしたけれども、その後の実情によりまして価格変動が激しいわけでありますが、少なくとも事業団の運営が、まあ、見ているほうがいいわけでありますけれども、しばしば活動をして、事業団の本来の使命を達成するには、少なくとも実情に即した労働賃金、養蚕農家の労働賃金が四万三千円見当になるような数字が生まれてくるではないか、かように私は考えているわけでありますが、本年度はやむを得ないことといたしまして、昭和四十二年度末に決定をする場合には、大いに先生の御意見等も拝聴いたしまして、政府にも要望いたしまして、ある程度の価格を保持してまいりたいと思うわけであります。そうしなければ、養蚕農家の意欲というふうなものが、これは直ちに生産につながる問題でございますだけに——先ほど中澤先生から増産が可能かと言われましたけれども増産を可能ならしめるためには、こういう基本的な問題も解決していかなければならないと思うわけであります。  以上、お答えいたします。
  41. 安田義一

    安田参考人 お答えいたします。  生糸の加工販売費につきましては、農林省におきまして、各製糸工場、正確な数字はちょっとわかりませんが、百三工場ではなかったかと思いますが、実績を調査いたしまして、加工販売費をきめております。したがいまして、一応私どもとしては、当たらずとも遠からずの数字が出ておる、かように考えております。ただ、欲を言いますと、それは前年度の実績でありまして、今日のように、夜が明ければ物価が上がる、ベースアップは毎年毎年だ、こういうときに、実際の製糸会社の経営は、そういった値上がりを追っかけて、どうやら追いついたと思うと、またその翌年になる、こういうのが実態かと思います。  なお、安定帯が妥当かどうかという問題につきましては、私ども審議会委員といたしまして、会議の場におきましては、常にもっと上げてくださいということを主張し続けておるというのが実際と思います。いろいろ特に財政当局との折衝等がなかなかむずかしいんだというふうに伺っておりますので、私どももあきらめておるのですが、ただいまのところは、御存じのように、それを飛び離れた価格をいたしております。したがいまして、あまり気にならないというのが実際であろうかと思います。ただ、先ほど来出ております繭増産の問題でございますが、私どもは直接養蚕家にお目にかかることは比較的少ないと申しますか、いわゆる指導者の層の方にお目にかかることが多いのでございますが、ただいまの価格ではアピールしない、こんな価格農家に訴えても相手にしてくれないのだ、増産についてはいろいろ方法があるだろうけれども、やはり増産意欲を出すような価格を出すことが一番ですよということを私どもは常に言われております。  そういう意味におきましては、私は委員の一人として、はなはだ申しわけないのですが、私どもも努力をいたし、また農林省当局にも努力をしていただきまして、やはりアピールするような価格に早く持っていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  42. 東海林稔

    ○東海林委員 次に、今後の需給の見通しの問題なんですが、先ほどほかの方からもお尋ねがあったのですが、農林省が今度の法案審議参考資料として私どもに配付した資料によりますと、十年後の五十一年は五十万三千俵、純内需が三十八万九千俵、輸出が十一万四千俵、こういう数字が出ておるわけです。私も中澤委員のお考えと同じように、非常にこれは容易ならぬ数字だというような気がするのです。特に需要の点につきましては、いままで本委員会政府の説明等を聞きますと、ある程度考えられる面もあるのですが、生産面では非常に困難ではないか。特に過去のこういう実績がいろいろ数字的に出ているわけですが、そういうところから考えても、容易じゃないじゃないかという感じがするわけです。  横田参考人にお伺いしたいのですが、推進協議会等もつくって、増産体制も整えておるし、また価格相当値段だということでございますが、価格の点が非常に大事だということは私も同感でありますが、それ以外に、増産対策として、政府にこういうことをやってほしいのだという具体的な要望があったらお聞かせを願いたい。私が申すまでもないのですが、これまでの養蚕業の停滞というのは、政府に一貫した方針がなかった。常に価格変動を追っかけて、高くなるとあわてて増産を言うが、安くなると今度は桑を引き抜く。先ほど中澤さんからお話がありましたが、私も具体的な例にぶつかっておるのです。私の懇意にしている養蚕農家で、ちょうど三十四年、五年で政府が減産を奨励した際に、その際三反歩しか桑畑を持っておりませんでした。三十四年でしたか、私が行ったら、東海林さん、今度安心して私、桑を植えますよというわけで、八反歩その方は植えました。昨年は年間三百五十貫とって、やはりおれのほうが政府の反対をやってよかった、こういう実例を知っております。そういう一貫性がなかったことが非常に問題だったと思うのです。そこで、私は、長期にわたるはっきりした需給見通しというものを立てて、あまり期待数字というようなことで大きく出して、そのときいかぬと、これはまたというようなことで、消極的な政策になっては困る。  三十六年の農業基本法の際に、私が質問したら、養蚕現状維持なんだ、奨励もしないが、減産もしない、しばらく模様見だ、こういうようなことも言っておりました。ようやく昭和四十年度から、今度は積極的に増産するんだ、こういうことなんですが、そういう意味で、長期の見通しが非常に大事である。しっかりしたところの見通しを立ててもらって、そこで、一貫した政府の対策が必要なんだということを痛感しておるわけです。いずれにしましても、いま内需も非常に旺盛だし、外需も期待できるという形ですから、増産をしなければならぬということは私も同感でありますが、そこで、価格だけで一体増産ができるかどうかという点も、これは問題だと思うので、特に横田さんのほうでそういう点について御見解があると思うのだけれども、なかなか政府に遠慮しておっしゃらない場合もあると思うのですが、きょうはそういうことでなしに、価格問題以外で、政府の施策として、具体的にこういうことをやってほしいという点がありますれば、養蚕業界の立場として出していただきたい。
  43. 横田武

    横田参考人 ただいまは非常に私どもを御指導願える御質問でございますが、繭の増産の問題につきましては、現状における農村の実態から申しまして、確かに困難でございます。私どもの経験から申し上げまして、九州の先生方もおいでになると思いますが、鹿児島なり宮崎等におきましては、カンショ地帯が養蚕農家に転向しつつある。それからまた、四国地方におきましても、集団桑園をつくり、蚕に転向しておる地帯もあるわけでございまして、いままで見向きもしなかった農家自体が、蚕糸業に大規模的な経営で転向しつつあるということでございます。  ただ、この際、てこ入れをしていただきたいということは、先年私どもが韓国へ参りましたときに、桑苗一本二円ずつ補助をいたしておりました。これは金額が違いますから、桑苗一本二円といえば全額のようでございますが、全額韓国政府が補助をして、日本から一度買ったことがありますが、その船積み運賃、それからまた陸揚げをして、現地にまで政府が運んで桑を植えさした。こういうふうなところに意欲的なものが自然に農民に生まれてくるということでございますが、何しろ、日本蚕糸業は古い歴史があるだけに、業界が何とかしてやっていくだろうという考え方も、私は政府にないとも言えないと思われる。これは言い過ぎになるかもしれませんけれども、私の感覚では、古い蚕糸業だけに、非常にしきたりが多くて、それからまたある人の言うには、農業団体というものは、政府に全部反対しなければ農民運動ではないと言いますけれども、私どもは何でも反対するということはしないわけでございますが、いずれにいたしましても、抜本的な、つまり、十年という繭増産推進計画を立てた以上、生糸生産量を打ち出した以上は、政府は今度は増収の助成なり、後継者育成のための施設を講ずるなり、あるいは蚕業研修所等において蚕業青年を育成する等、思い切った角度でやっていただきたい。  蚕糸業の予算を私ども調べてみましても、局の予算は農業方面では一番少ない。これはどこに原因があるかと申しますと、先ほど申し上げましたように、古い蚕糸業で大だんなが多いわけであります。この大だんな根性を捨てて、そして私ども政府を鞭撻するとともに、諸先生のお力添えを得まして、来たるべき昭和四十三年度の予算の中に、大いに繭増産推進の活路を見出すことができるような予算を計上していただくよう、私は政府要望申し上げるとともに、われわれ自体が実は輸出振興にも金を宣伝費から出しているわけです。養蚕農民がキロあたり一円ずつ出して、そしてその宣伝費の一部を輸出振興にも充当していこうというふうな、皆さんからごらんになりますれば笑われるような行為をいたしてでも、私ども輸出振興をしたい、こういうことですから、ましてや繭増産の問題につきましても、やはり国内産業拡充ということで、ある程度自分自身が金を出し合って、自分の分野を守るというふうな立場では繭増産ができないということもよく承知をいたしておりますので、今後この法案の御通過を願うとともに、これを契機にいたしまして、私どもはまず第一に、全養連自体が先頭に立って繭増産拡充運動をやると同時に、政府にも大いに韓国や中共で行なっておるようないわゆる支持——繭を増産しろというからには、やはり裏付けもしていただくというふうな運動を展開したいと思っておるわけでございます。  はなはだ簡単でございますが、どうも立場上なかなかむずかしい点がありますから、お許し願いたいと思います。
  44. 東海林稔

    ○東海林委員 今度の法案は、業界の一致した要望なり御意見が基礎になってできておるのですから、関係業界の御協力は当然期待できるものとは思うのでありますが、私は、せっかくのいい機会でありますので、確認の意味でお尋ねしたいのですが、現在のような実勢価格状況のもとで、政府の説明によると、今年度は三万俵程度買い上げたいのだ、こういうことでありますと、これはよほど関係業界の協力がなければ困難じゃないかと思うのです。それで、これは安田参考人にお伺いするのでありますが、まず、政府の買い入れについて、製糸業界としてはどのような決意でもって協力するような体制を進めておられるか、その点をひとつお尋ね申し上げたいと思います。
  45. 安田義一

    安田参考人 私どもはこの問題が取り上げられます前に、もう一つ輸出振興策というものを業界のほうでいろいろと思案をいたしまして考えたのでございます。それは少し時価より安くなければなかなか買ってくれないという当時の事情でございます。生糸輸出組合さんのほうの前理事長でございますが、肥田さんという方が理事長をされておって、私はよくひざ詰め談判をして、どうして安く売らなければいけないのですかといって、ちょっとなじったこともあるのですが、しかし、実際問題として、いつでもその生糸相場より売り値は安い。そこで、そのカバーを清算取引等でカバーをして何とかつじつまを合わせていくというのが、二、三年前までの生糸輸出の実態であったと私はかように考えます。そこで、何とか少し安く売ることにして、時価との差額をみんなで出し合って、うまくいくような方法はないだろうかということで、先ほど先生からお話がありました出血輸出ということなんですが、当時といたしましては、若干の出血輸出をいたしましても、国内でそれの取り返しがつくというような状況でございましたので、いろいろ各方面に呼びかけたのでございますが、何と申しましても、安売りのしりぬぐいができないということから、だんだんに考えを直しまして、たまたま石田蚕糸局長からも、ひとつ時価主義で、ただし一定期間価格を変えないという魅力でひとつやってみたらどうだろうか、それに対して製糸業者協力する意思ありや、こういう御質問をいただきました。考えてみますと、こういう法律の一部改正の予備的なサウンドとしてそういうお話があったのだと思うわけでございますが、私ども業界のおも立った者と協議をいたしまして、先ほど申しておりますように、輸出を何とかつないでいかなければならぬ。それには業界としてできるだけのことはせねばならぬだろう。ただし、この輸出不振ということが製糸業者だけの責任でもないようだ、いろいろ価格の問題とか。そこで、できるならば繭生産者のほうにも多少なりと片棒をかついでいただきたい、こういうことが、率直に申しまして、製糸業界の一部の声でございます。しかし、非常に数の多い個々の養蚕家の方にそういうことを訴えても、理屈としてはおわかりになっても、形をつけて何らかの御協力をいただくということはなかなか容易なことでない。先ほど横田参考人から、新しい集団桑園をつくってそこから出る繭は、これは将来の問題でありましょうが、できるだけ輸出のほうに回したいというお話がございましたが、私どももそういう御協力を、これは将来の問題として期待をいたしております。しかし、現時点では、私どもが損してまでこの機関に供出するということはなかなかむずかしいが、原価で供出をするということであるならば、いわゆる得べかりし利益——これは相場が安ければ利益ではないのですが、得べかりし利益を失う、そういうことであるならばひとつ協力しようじゃありませんかということで、私どもの考えといたしましては、原価でこの機関に供給をする。ただいま三万俵というお話が出ましたが、この数量につきましては、私は非常に運用上問題があろうかと思います。  昨今生糸相場が急騰をいたしております。これはいろいろな事情がございますが、聞くところによりますと、こういう機関ができて吸い上げれば、それだけ内地に回る糸が少なくなるからだということで高くもなっておる、こういうちまたの声も聞いております。これは相場師というものは、あらゆる材料をいろいろ使い分けをするわけですから、これがほんとうの姿であるかどうかはわかりませんが、三万俵と申しますと、大体年産の一割でございます。したがって、これがそんなに大きな数字とは私は思われませんが、しかし、言い方によれば、かなり相場に影響を与える。そこで、これはやはり予算を組んで十億のお金が要るという、そういう計算の上では三万俵だ、しかし、運用の場合にはやはり市価の動向というものを見定めて、そうして数量を適正にきめていただくような、そういう運営がよいのではないか、私はかように考えております。そういうわけで、製糸といたしましては、原価でひとつ供出をいたしましょう。これは原価というものも、実際は繭の価格協定が各府県によって違います。東のほうと九州、西のほうと、繭の出回り期も違いますので、価格協定も違います。また、各会社会社によって若干の生産費の相違もございます。したがって、平均的な原価、そういうものをとらざるを得ないのかと思いますが、私ども製糸が事業を継続して経営いたしてまいりますには、常に清算市場にヘッジいたしております。たくさんの春繭を一ぺんに買います。これを半年なら半年に売るわけでございますから、危険回避の意味で、一部を清算市場に売りつないでおります。そういうかわりに事業団に売りつなげばと思ってここに出せば、いわゆる繭価協定できまりました価格に加工賃を加えたものというもので、この一割くらいをここにヘッジをするということは、実際問題としてはそれほど苦痛ではないのです。理屈で言うといろいろございましょう。私ども団体もなかなか議論の多い団体でございますので、取りまとめていきますにはなかなか骨だと思いますが、おも立ったものはもう承知をいたしております。したがいまして、この機関ができましたら、そこに原価で供出をするということは、大体意見の一致を見ております。まあ、そんなことでございます。
  46. 東海林稔

    ○東海林委員 次に、菅参考人にお伺いしたいのですが、事業団の買い入れにつきましては、ただいまの御意見のように、製糸業界の非常な御協力が必要だと思うのですが、一方今度は事業団が売り渡して、これを輸出にということを条件つけて売ることになっているのです。そこで、これがほんとうに所期の目的を達するように輸出されるには、これは輸出業界の非常な御協力が必要なんじゃないか、このように思うわけです。特にさしあたってはあまり懸念がないかもしれませんが、事業団では、御承知のように少なくとも半年くらいの一定期間は価格は動かさない、こういうことでございますが、実勢糸価がそれより下がったというような場合に、原価をもとにして買って、事業団が保管料をつけ加えてこれを売り渡すことになると思うのですが、それに対して実勢糸価が下がったというような場合に、これは相当むずかしい問題が起きるのじゃないかということを心配するわけです。一昨年事業団法を本委員会審議した際も、いまのところ中国生糸が直接アメリカに出ておらぬという問題はありますが、しかし、将来としてはそういう面では競合も考えられるから、輸出機構の整備ということについてはぜひ早急に整備してもらいたいというような付帯意見もつけた経過もあるわけです。私は、前からそういうことを何回も申しておったわけです。いずれにしましても、事業団以外から買い取って輸出に充てる部面も、理屈としては出てきますし、将来そういうことも考えられるわけです。そういうものを事業団から買い入れて、輸出されるものとの調整といいますか、特に値段が下がった場合に、どのようにしてこれを調整されるかという点が私は非常にむずかしい点だと思いますので、そういうような点について御意見を拝聴したいと思います。
  47. 菅英一

    菅参考人 いまお尋ねの、事業団が買い上げる価格、これが実勢が下がった場合、これは私どもとしまして非常にむずかしい問題でございます。ただ、一定期間というのを半年というふうに考えれば、次の半年をきめる場合に十分に考慮に入れられる、運営によっていろいろ創意くふうをこらすよりしかたがないと思うわけでございますが、さしあたりいまのところ、一定期間というのは、半年くらいの期間を予定されておるようでございますが、そういう事態が発生しましたら、その一定期間を三カ月くらいにするとか、これは私の私見でございますが、いろいろそういう創意くふうをしなければいかぬ。またそれとともに、われわれ輸出関係の者としましては、輸出業者全員の協力を求めまして、たとえばフロアプライスを考えるとか、そういうことで対処したいと思う次第でございまして、現状においてはたしてそういう事態が起こるかはちょっと考えにくいようでもございますけれども、そういうことについてはわれわれとしてできる限りのことをやって、一定期間、一定価格という方針を守りたい、こういう気持ちでおります。
  48. 東海林稔

    ○東海林委員 最後にもう一度山添先生にお伺いしたいのですが、御承知のように、安定法の中にも、やはり国が輸出振興について努力するというような規定があるわけなんですが、輸出振興の責任とでもいいましょうか、これを今後は事業団にある程度肩がわりしたような形で、法律の形としては安定法にも出ておるし、事業団法にも出ておるというので、私は、これは立法技術の問題もあったのかと思いますけれども、法律体系としても一貫していないような気がしますし、実際問題としても、一体国の責なのか、事業団が主として責任を持つのか、そういうような点がちょっと不明確な気がするわけなんです。皮肉な見方では、どうもこのごろ事業団の整理というようなことがいろいろと論議されておるから、衣がえして延命策を講ずるというような、きわめて皮肉な批判も出ているわけなんですが、そういう輸出振興についての基本的なことは、私はやはり国が相当責任を持つべきではないかという感じがしておるわけですが、そういう点はいかがでございましょうか。
  49. 山添利作

    山添参考人 実例を申せば一番わかりやすいと思いますが、安定法の中にも、輸出確保のために特別会計で生糸を買い入れるという制度がございます。しかし、これは実際の運用といたしましては、いままで相場が下がりましたときに買いささえをするという形で運用されましたが、先ほど東海林先生が例を出されましたね。最高価格より高いときに買えるか、自己矛盾じゃないか。安定法じゃ絶対できません、そういうことは。事業団はそういうところに妙味があるといいますか、いろいろ法制上の議論をすればやれぬこともないと思いますが、事業団でありますれば、そういう点は先生のようなむずかしい議論を起こさぬでもやれる、こういうわけでございます。
  50. 東海林稔

    ○東海林委員 どうもいろいろありがとうございました。
  51. 高見三郎

    高見委員長代理 中村時雄君。
  52. 中村時雄

    ○中村(時)委員 きょうは参考人方々にほんとうにお忙しい中を来ていただきまして、御苦労さまでございます。  私、先ほどから皆さん方の御意見を聞いておりますと、事業団法が四十年にできて以来、今度の改正をするわけなんですが、皆さん方の御意見は、輸出を中心として、その確保価格において増産を行ないたい、こういうふうに言っていらっしゃる。輸出価格のみであるならば、いまいらっしゃる四つの団体だけで十分話し合いによって解決し得るものではないかというふうに考えるわけなんです。そういうふうに考えた場合に、私はこの事業団というものをもう一度振り返ってみたい。事業団というものは、輸出価格も重大なことですけれども、その本質的なものは何かといえば、生産者をどのように擁護するかということがその本質としてあると思うのです。これがあるからこそ、私は事業団というものが必要である、こういうふうに考えているのですが、皆さんのお話を聞いておりますと、どうしても生産者というよりも、自分たちの事業が主体になって考えられるようなお話し合いのほうが多いのじゃないか、こういうふうに受け取ったのですが、いかがなものでしょうか。御答弁は皆さん方御相談の上でどなたでもけっこうです。
  53. 横田武

    横田参考人 何か、この問題につきましては、生産者側には不利ではないか、不利でなくても、生産増強趣旨が血が通っておるかという意味でございますが、実はこの事業団法の制定につきましては、全養連が中心になりまして、自来約七年くらいこの法案を通していただくのにがかったわけでございます。それは繭糸価格安定法に定められました最高、最低価格が九万円からも開きがあって、養蚕農家の中間安定保証というものが全然なされていない。つまり、九万円も開きがあるようでは、いよいよ二十四万何千円に下がらなければ政府が保証して買い上げないということでは、いまの養蚕というものは成り立たない。そこで、事業団法というのは、私ども全養連が五億円、日製協が五億円、当初は全養連だけで十億円出そうということを考えましたが、生産者と消費者と輸出その他等も入らなければ業界が円満にいかないというふうなことで、最終的には両団体が五億円当て出し、政府のいままでの蚕繭事業団の十億円を引き継ぐということで、大衆養蚕農民に九万円の開きのあるその中間で安定さして、その中間より下がった場合には事業団が引き取る。最終段階になりますと、約五万から七万俵まではこの事業団が買い受け、操作ができるように法律ではなっておりますけれども、その事業団法をつくる主役は全養連でございました。つまり、養蚕農家が、ことしの場合は三十三万円の九五%保証といえば三十一万幾らになりますか——五千二百五十円を五千二百八十円に直したわけでございますが、いずれにいたしましても、ことしは異常的な上昇をしておりますけれども、平年時におきまして、ある程度下がった場合には事業団がその中間安定帯で保証をするというので、養蚕家に安心を与えて繭を増産していただこうということになってこの事業団をつくったわけでございます。  ただ、本日いろいろな問題になっておりますのは、輸出振興の問題でございますが、事業団の本来の使命は、養蚕農家を中間でこれ以下には繭をさせない。させないと同時に、製糸は、今度きめられました中間安定の中には、五千二百八十円というものは、生糸はなるほど三万俵事業団が買い上げるわけでございますが、生産数量の全額を製糸が繭代を保証するということがきめられておるわけでございます。つまり、そこまで下がった場合には、三万俵だけは買うけれども、ほかのものが全然保証しないということではいけないということで、養蚕家生産量十一万トン、十万五千トンになりますか、その繭全体をその価格で保証するという制度になっておるわけでございますから、決してこの事業団が製糸のものとか輸出組合のものだとか、そういうものではなくて、基本的には養蚕農家のためになるような構想でこの事業団をつくられたわけでございます。  ただ、現状におきましては、異常価格といいますか、価格変動が多くて、そういう事態はことしはこないと思いますけれども、将来さらに中間を引き上げて、そしてその中間を引き上げたところで、養蚕農家に安心をして繭を増産していただくように私どもは考えております。そういう意味において、養蚕家も金を出し合って合弁会社のようなものを実はつくったわけでございますから、その点に全養蚕農家が関心を持って安心して増産ができるということでございます。
  54. 中村時雄

    ○中村(時)委員 理屈はもっともなのですが、たとえば安定帯価格ができたから、下限あるいは上限の一つの基本線ができたからといって、実際に生産者が安定できるかということになれば、幾らでも実例はあるのです。事業団がいままで一体何をしたか、これも反省しなければならぬ問題の一つ。たとえば砂糖事業団をつくってみた。上限価格あるいは下限価格をきめてみた。現在どうですか。同じように、ただ価格の問題だけで上限あるいは下限によるところの安定価格ができたからといって、私は、蚕糸業者の安定度というものが、プラスにはなりますけれども、全体的なものではない、こら考えております。そういう立場からいまお尋ねをしたわけですが、たとえばあなたがいま非常に異常な状態で高騰しておる、こういうふうにおっしゃった。ならば、現在、いま幾らしていますか。おそらく一俵四十五、六万円しておりますか、それに伴ってそれが生産者農家にどのような方法で、どのような機構を通じて、実際にどれだけのプラスを与えられておるかという現実の問題にぶつかってくるわけですが、そういう問題でどのような生産者のプラスになっておるか、おわかりであったらお知らせを願いたい。
  55. 横田武

    横田参考人 昨年の春以来ずっと糸価が急激でなくとも徐々に上がってきたわけでございますが、これは生産量が少ないからでございますけれども、現在四十四、五万円しておる。それをどうするかという問題、養蚕家に潤っておるかということのようでございます。それで、いま引いておるのは昨年の繭でございますが、私ども団体では、繭の購入当時よりも糸価がその後において急激なる上昇をした場合には、製糸が当然もうけるわけでございますから、その買い入れ当時の平均糸価から上がった分につきましては、ある一定の基準を設けて養蚕農家に、制度的とまでは言いませんけれども、再生産に必要な還元をすべきである、こういう提案を実はいたしております。したがって、いまの製糸のほうでもそういう意味合いはよくわかる。それで現在、昨年は貫当たり、と言ったほらが私にはわかりやすいわけですのでお許しを願いたいと思いますが、四、五百円ずつ各地において配分金を実は出しております。そういうものを制度化して、今後は制糸経営の安定とともに原料繭が十分に確保できるようにするには、配分金を出さなければ原料繭が入らないような状況でございますから、製糸もその配分金を出していく。それでは、繭がことしの春はもちろん高いと思いますけれども、高く仕入れて急激に安くなった場合には、製糸はどうしてくれる、これが非常に問題なものですから、そういうことを文書なり制度化して、上がった場合には返すということは、下がった場合にどうしてくれるかという、また逆な質問もあるわけでございまして、この点が私どもの非常に困難する場所でございますが、しかし、去年は非常に製糸ももうけておる。もうけておるかいないか知らないけれども、ある程度利潤が浮いた場合には、適正な規模において還元をするように、これは了承しております。したがって、この事業団の活動というふうなものは、いろいろ文書に書いていけばむずかしいわけでございますが、本来の使命としては、事業団は開店休業でもまあよろしいではないか。こういう意味は、年じゅう暴騰暴落して、蚕繭事業団の時代には一度も発動しませんでしたけれども、今度の事業団のは輸出の問題を取り扱い、さらに本年はきまりましたけれども、来年度はさらに中間の価格を引き上げまして、そうしてすれすれまで持っていって、事業団がいつでも活動できるように機能を与えるということを私どもは考えておるわけでございます。したがって、事業団がいままで活動しなかったということは、活動する場面がなかったということでございまして、今度の改正によりまして、事業団がいつでも輸出確保なり輸出振興のためにいろいろ働き得る場面も、つまり骨をつくりましたので、今度はよく肉をつけてまいりたいという意味合いから、決して業界が結託したということではなくて、業界全体のためを考えて、その中で繭増産のできるような仕組みにして運営をしてまいりたい、こういう考えでございます。
  56. 中村時雄

    ○中村(時)委員 いや、あなたのおことばはよくわかるのです。いまの時点において、今度新しい改正をしたから、今後やれるのだ。そうすると、いままでは何もやらなかったという反面も出てくる。いままでやらなかったということは、やらさなかったということにも通ずるわけですが、一体事業団としてこういうものをつくっていった責任はだれがとるのか。もちろん、あなた方とは申しません。これはいずれ政府のほうに明確にさせていきたい。何もやらぬような事業団を過去何年間というもの温存させておく。そうすると、官僚のうば捨て山と同じじゃないですか。人件費も要る。そういうような事柄をなぜやったか。その当時においては、いろいろな事業団ができた前後というものを考えてみますと、まあ価格の暴落が非常に激しい、何とかこれを救済しよう、このたびはもう高騰になってきた、そこであわてて、あなたのおっしゃるように、今後は実質的な一つの手段なり方法を講じてみようではないか、こういうことになってきた。だがしかし、政府並びにこの業界に長期にわたるそのことの原因は、先ほど社会党の委員からもおっしゃいましたように、一つの蚕糸政策——政策ですよ、私の言うのは。蚕糸政策としての基本の路線が明確さを欠いておったから、こういうような変動がくるごとに何らかの方式をとらぬならぬ。その責任は、私は政府は絶対逃げられないと思うのです。いままでの過去の実績から照らしてみれば、特に蚕糸政策というものは非常に弱い、私はそういう路線を持っておったと思うのですが、皆さま方はどうお考えになっていますか。
  57. 山添利作

    山添参考人 御承知のように、昭和三十三年に政府が九万俵も糸を買うことになりました。それが二、三年で需給状況は回復をいたしました。ところが、あつものにこりてなますを吹くということばがございますが、それからずっと最近に至るまで政府当局はそういう態度でございました。どうもあまり感心はしておりません。最近はよくおわかりになっておるようでございます。
  58. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それからもう一つは、安定帯価格自身に私は問題があろうと思うのです。これがまず第一点。  それから、先ほど言ったように、このような暴騰になった場合に、生産者に対してある程度適当なる配分をしていくというお話もありましたが、私の質問は、現実にそれが配当されたかどうか、そういう問題をお尋ねしたわけなんです。もしそうでないとするなれば、この価格変動の激しさが、生産者として増産をほんとうにやろうという意欲が不安定な状態になってしまう。その価格変動のたびにひどいところは倒れていく。いいときにはそれはもうかるでしょう、ある程度は。しかし、そのもうけ方も、生産業者と比べると非常に格差が出るのではないか。それを皆さん方がどうするか、あるいは事業団がどうするか、そういう基本的な問題が生まれてくるし、これをどのように制度化するか、また制度化しようとする意欲を持っていらっしゃるかどうか、その点もお聞きしておきたいと思います。
  59. 山添利作

    山添参考人 安定帯のことにつきましての御質問でございますが、いまは時価が非常に高うございます。したがって、安定帯とずいぶん離れておるようでございますが、私ども業界といたしまして一番重要視いたしておりますのは、いわゆる事業団の買ったり売ったりする価格を定めるところの基準価格でございます。この基準価格は、ことしは生産費一ぱいをとりました。それが政府の原案でございまして、私どももそれに賛成をいたしました。どうも事業団は半額は政府出資でございまするから、全く民間で独自にやるというわけにはまいりません。やはり政府系機関であるという性格は持っております。そういう機関でございますから、生産費以上に基準価格をきめる——基準価格というのは、それから五%引きのところで生糸を買おうということになります。最低価格を保証することになる。そして先ほど横田さんからおっしゃったように、繭はその基準価格一ぱいで保証するわけなんです。したがって、ことしは繭の生産費を一ぱい保証しておる、こういう制度になっております。時価が高いからといったって、どうも理論的に申しましても、生産費以上というわけにはこれはまいらない。ただし、その生産費の中身いかんということになりますと若干問題がございますから、これは先ほど横田さんからお話がございましたとおり委員会の中でも小委員会を設けることにいたしておりまして、技術的な点につきましては、秋ごろになりまして、だんだんそういうことを考えるべき時期になりましたら、小委員会で検討いたしたい、こういうつもりでございます。  それから、相場がよくなった場合に、生産者すなわち養蚕者に利益を還元するという問題でございますが、これは組合製糸の方式でございますと問題はないわけでありますが、営業製糸でございますと、春ならば春、秋ならば秋のそのときの取引所の相場を基準にいたしまして繭値がきまるわけでございまして、その後の変化ということは、上がる場合もあり、下がる場合もある。ところが、昨年あたりは春よりも秋になると糸が非常に高騰いたしました。したがって、そういう場合における繭の値段というのは、秋における相場を基準にするというよりも、それプラス幾らということで、事実上これは製糸家のほうでは大いに不満があるところでございますけれども、事実上そういうふうなことになるわけで、そこで、農林省の当局といたされましては、そういうふうに生糸が値上がりをした場合には、何とかそこに一つの規則立った方法で還元をするようなことを考えたらどうか、こういう御指導がございます。しかし、相場というものは、なかなかこれは端促すべからざる性格を持っておりますことは、いままでの経験がそうでございます。かつ、昨年における晩秋繭の取引というのは、製糸家から申しますれば相当高いものを買わされたというようなこともございまして、あるいは追い払いをするというようなこともございまして、なかなかこの辺は問題があると思います。しかし、両団体だんだんと頭を冷やして話し合いを進めておる、こういうところでございます。大勢的に申しますれば、要するに、生糸の需給が窮屈で、ずっと趨勢的に上がっていく、あるいはベースアップと申しますか、いわゆる経済成長に伴って上がっていくという趨勢のもとにおきましては、確かに御指摘になるようなことが起こりやすいわけでありまして、おのずからそういうそれに対する対策も必要ではあろう、こういうことに常識論として業界でも感知をいたしておる。これを契約のような形にする、あるいは全国一本の規則にするということは、まだちょっとそこまでいくのには大いに距離がある、こういう段階でございます。
  60. 中村時雄

    ○中村(時)委員 だから言っているのです。私が一番最初に、生産者を擁護するたてまえをとるということが基本路線としてあるんだと。そのとおりだとおっしゃった。さすれば、高騰していった、もうけていく、その姿の中から農民のほうにどのように還元するか、それをどう制度化することができるかどうか、する意欲があるかどうか、また、これが逆に暴落をしていった場合、その暴落に対してどのようにてこ入れができるか、それが生産者を守る唯一の道であります。私はそう思っておる。そこで、そのような処置を考えていった場合、生産費は限度一ぱいとっておるならば、もう一歩突っ込んで所得補償方式、そこまで持ちこたえることができるかどうか。もちろん、生産費そのものの中にも労働の価値論が出てまいります。その価値をどのような取り上げ方をするか、日数も出てまいりましょう。あらゆるものが含まれてきますが、その問題は、皆さま方専門家によって小委員会でやられるというお話ですから、それはそれとして、いま言ったように、所得補償方式までもう一歩突っ込んで取り入れて、その安定度をもう一歩深く出していきますか、こういうことが考えられるかどうか、その点ひとつ、もう一点お聞きしておきたい。
  61. 山添利作

    山添参考人 業界立場としては、ただいま中村委員のおっしゃるようなことを希望いたしておるのでありますし、そういう声が強いわけです。政府全般としてのお考えはまた別であろうと思います。
  62. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それから次に、現在の騰貴というものをもう一ちょう分析してみたいと思います。  現在の騰貴というものは、主として内需が中心になって騰貴を呼んでいる。特に着物というものが非常に流行になって、卒業なんかするときには、生糸を使った着物が非常に大流行になっている。そのために、娘三人持ったらおやじがつぶれやせぬかというくらいまでおそれをなしている。そういうふうに、要するに、国際的な問題よりも、内需が非常に先行しておる。そういう不健全な一つのあり方、そういう姿の中で生糸が暴騰してきている。もしかりにこれが逆の現象になってきた場合、不況というものが起こってきた場合に、おそらくそういう問題が——先ほどどなたかもぜいたく品だということをおっしゃったが、おそらくそういう問題がくればイの一番に打撃をこうむるのはこの生糸業界じゃないか、あるいは生産者じゃないか、そういうふうに考えられるのですが、もしかりに——なければけっこうです。あるという想定ができた場合に、一体それに対する手だてなり、あるいはそれに対する救済なり、そういう問題を取り上げてお考えになったことがありますかどうか。
  63. 山添利作

    山添参考人 そういうことのために——上がることばかりがいまの様想でありますけれども、過去における蚕糸の価格対策というものは、要するに、恐慌の場合にいかにしてささえをするか、こういう歴史でありまして、安定法においてもしかりであります。ただ、その価格水準が満足すべきかどうかということは、またおのずから別でございますけれども、制度としては、恐慌の場合においてもこれを防ぎとめる、こういう趣旨から成り立っておるわけであります。
  64. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、まず安定帯価格ということがそこですぐ問題になってくるわけですが、いまの現状の安定帯価格で実際の恐慌というものを防ぎとめることができるかどうか。これは深く入っていくといろんな問題が出てきますから、常識的に見ての御判断だけでけっこうです。
  65. 山添利作

    山添参考人 そういう、現在恐慌が起こったというような場合を仮定いたしますと、事業団は買い入れ限度が三万俵に限られております。したがって、例をお設けになった場合におきましては、それを突破して政府が買わなければならぬ、こういう事態を想像いたしますね。そういたしますと、ただいま安定法によりますところの政府がささえます価格は、生産費の九〇%にきめられております。そういう九〇%という数字そのものは、これははなはだしく不当であるというふうには言えない数字であると思うのです。おそらく生糸だけが恐慌になるということでもございますまい、ものごとは。そういうときにはまたそういうときの考え方をしなければならぬと思いますが、抽象的に申しまして、九〇%は、恐慌の場合に農家経済を全く崩壊のままに放置するものだと、こういうふうには言えないだろうと私は思っておりますけれども……。
  66. 中村時雄

    ○中村(時)委員 だろうと思うと、ばく然たるお答えになってしまったのですが、私は、これはいずれ政府のほうにきちっと問題を投げかけてみたいと思っております。  先ほど中澤委員も言っていましたが、中共の一つの問題が生糸を中心にして出てきている。質の問題、技術の問題、量の問題、いろいろ問題はございますけれども、御承知のとおりに、政府の中において、現在中共と一つの国家の承認をやっておりませんので、そこで民間貿易ということが主体になっておる。もちろん、現在の文化革命がどういうふうな結果となってあらわれてくるか、この事態の推移も非常に大きな影響が出てまいります。その結果、これが平常の立場において考えられることは、おそらく中共の生糸は今後伸びてくるんじゃないか、私はこういうふうに考えていいんじゃないかと思います。この中共の一つの基本的な問題に関して、皆さん方と議論をしようとは思いません。お互いの観念のいろんな問題がありますから。ただ、そういうような場合におそらく自由競争という形が出てくる。そうすると、日本のように、要するに、労働の価値の上からいきますと、自由にやっている。一方は一つの支配権を持っての方向の打ち出し方をしてやっておる。そうすると、その労働の価値の取り上げ方というものは、非常な大きな相違を来たしてきます。その中での競争ということになってまいりますと、おそらく日本のほうが非常に苦しい立場に追い込まれてくるんじゃないか。向こうは損得を度外視してでも、一つの目標に向かっては推し進められる可能性があるでしょう。そういう場合に、現在政府間におけるところの問題の取り上げ方ができない。そうなってくると、民間における皆さん方が一番最先端となって、この問題の解決に入らなくてはならない、そういう立場になってくると思うのです。そこで、中共あるいは南朝鮮——ということばを使われましたが、南朝鮮、これらに対してどういう考え方を持ち、今後業界としてはどういう形の上に立ってこれと均衡を保っていこうとなさるか、何か具体的な一つの考え方がありましたらお聞かせ願いたい、こう思っております。
  67. 山添利作

    山添参考人 これは文化大革命下におきましても、中国農業生産は進んでおります。今後ともに繭の生産生糸生産も進んでまいると思いますが、これにつきましては、直ちにまた中国のそれだけの増産分が輸出にのみ振り向けられるとは考えておりません。しかし、行く行くは、いまいつと言うことはできませんけれども、将来は先生のおっしゃったような事態になるであろうということを私どもも推測をいたしております。そこで、どこまでも競争するというよりも、むしろお互いに提携をしていくというたてまえで、了解しながらやっていくというたてまえでいきたい。そのために、まず日本自体としては、生産費を切り下げる、生産を能率化する、このことが必要なことは申すまでもございませんが、しかし、それだけで問題が片づくほどやさしいこととも思っておりません。必要な事態には、実際はむずかしいと思いますが、具体的な話し合いをしなければならぬ。それには、現在から、ともかく相互にと申しますか、少なくともこちら側からも人が行き、向こう側からも来て、だんだん理解を深めるといいますか、一種のシンパシーの関係をつくっていかなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
  68. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私がなぜそのことを言ったかというと、現在国を承認されていない。しかし、外交路線という線の上に皆さん方の実質がプラスされていくなれば、やはり前進をされる形態になるだろう、こういうことで、もう一歩大きな姿でこの問題との取り組み方をしていただきたい、こういう希望を添えておきます。  時間の関係もありますので、あと二点ぐらいにしぼっていきます。  次は、価格の問題として、今般の法案を見ますと、皆さん方もおっしゃっているように、一定の期間、一定価格を形づくって、そして緊急の処置をとりたい、こういうふうにおっしゃっていらっしゃる。それじゃもう一歩突っ込んで、なぜ長期にわたってそのようなことを考えられないか。安定帯価格にしてもそうです。輸出ばかりを中心にすることによって、安定帯価格というものができるとは思っていない。もちろん、基本的な条件はたくさんありますけれども、それだったら、ついでに、そういう長期の問題だって起こってくるのですから、この際、なぜ輸入の問題をその中に入れなかったのか、どうして入らなかったのか、そこらのところがどうしても私は納得がいかない。ほんとうに輸入輸出が両方相まって、その上に立った安定帯価格となり、その安定帯価格そのものには問題があるとしても、そのことによって、農家のほうは将来の見通しまで立ってくるわけです。そういう姿の上に立ってはじめて、私は、一つの安堵感というものが生まれてくるのじゃないか、こういうふうに考えられるわけです。なぜこの中に輸入の問題が取り上げられなかったか、あるいはそういう問題が取り上げられたのか、そこらのいきさつがさっぱりわからないのですが、この問題に関して、山添さんのわかっておる実情の範囲中でけっこうですから、御説明願いたい。
  69. 山添利作

    山添参考人 振興審議会政府建議をいたしました中におきましても、輸入生糸につきましても、事業団がある程度関与することによって、全体の事業団によるところの価格安定の機能を強化いたしたい、こういうことがうたってございます。しかし、中国から糸を入れるのは、現在の状況といたしましては、相場が暴騰するといいますか、そのうちにおける清涼剤とまでいきませんけれども、若干そういうものの中に入って需給緩和ということの一つの要因をなしておるわけでございますが、これを買う人の立場から申しますれば、いろいろお考えがあるわけでございます。おそらく、簡単にいえば、中共の糸を入れて、そしてそれを織物にして外国へ出す、あるいは外国でなくても、もし国内で売るというような立場の人があるとすれば、あまり事業団なんぞがそういうところに関与するのは反対、こういうことは常識的に考えられ得るわけでございます。私は、政府部内の折衝の経過ということはよく承知しておりませんが、民間の業者の方でも、立場によっていろいろお考え方があるであろう、そのことは、政府折衝の中でも当然想像されるわけでございますから、いまのところ、話が詰まらなかったということではなかろうかというふうに考えております。と同時に、現状は、理論的には、おっしゃるように、輸入生糸も含めて事業団管理をすることによって価格安定の強化を期するということが必要ではありますが、現実の問題としては、いま輸入生糸国内価格に悪影響を与えているという状況でもございませんので、いま直ちにそれをやらなければならぬとか、あるいは輸出振興措置をとるのにあたってそれが必須の要件であるということではないわけでありまして、もしおっしゃるように、そういう輸入生糸状況が非常にふえるとか、あるいは世界的に生糸の需給がゆるんでまいりまして、量のいかんを問わず、輸入ということがやはり国内価格対策としても問題である——これは仮定の問題ですけれども、ということになれば、当然これは皆さんのいろいろ立場を異にする業界の人といえども国内生産者保護と申しますか、必要な価格安定ということが必要でありますから、そういうことになれば、意見はおのずから一致をいたすであろうと思います。そういうときになりましたならば、すみやかにこれは輸入の取り扱いをもする。そしてそれを含めて、事業団によるところの価格安定の効果を期したい。そのときには、生糸需要者、織物屋ですが、そういう人もむろん輸入を扱うことに反対するわけではないというふうに思うのでありまして、そういうおそれが見えるという時期になりましたならば、機を失せずそういう立法をしていただきたい、これは政府にも国会にも十分お願いをいたしておきたいことでございます。
  70. 中村時雄

    ○中村(時)委員 御意見はよくわかるのですけれども、そういうおそれ、徴候が見えたときにはすでにおそい。しかも、いま言ったように、輸入輸出と、その数量のいかんによって、日本生産量を幾らぐらいにしていくかという、次年度への一つの目標なり、長期にわたるところの目標というものがその上から初めて立ってくるものだ。私はそれが基本路線だと思っております。ところが、一方をはずして云々していくと、もしもという不安は常につきまとってくるものだと思うのです。そういうつきまといをさせぬということがほんとうの姿であろう、こういうふうに私は思っておりますが、それを一々あなたに迫っておっても始まらない。これは政府の問題になってきますが、あなた自身のお考えでも、私に近いようなものの考え方をしていらっしゃる。もちろん、そのことは基本でありますが、そういうふうになれば、政府のほうにも、あなた方自身にも、そういう政策は強硬にやっていってもらいたい、こういうふうに思っておりますが、業界方々も、輸入輸出、その上に立っての数量、あるいはその上に立っての日本増産体制のあり方、そういう問題は、やはり明確に打ち出す必要があろうと思うが、今後とも十分政府との関連性をとってやっていただきたいと思うが、どうでしょうか。
  71. 山添利作

    山添参考人 感じといたしまして、まことに同感でございますが、しかし、ともかくあまりむずかしい議論をしているよりも、現在は輸入ということが別段の影響を与えているわけでもございませんし、輸出振興のための現在の形における法案を早く通していただきたい、こういうわけでございます。
  72. 中村時雄

    ○中村(時)委員 その気持ちはわかりますが、現在影響がないといって、近い将来すぐにくる。そういうことをあなた自身もお答えになっている。そこで問題は、輸出だけの問題を取り上げるのではなくて、事業団というこれだけのことを政府がやろうとするならば、当然輸入という問題と関連さして、その数量のいかんによって、日本生産量というものの限定が出てくると私は思う。そこで、その問題もひっくるめて、何もむずかしい問題ではない。そういう問題をいまなぜ解決しないかという問題を……。(「そんなこと政府に聞かなければだめだ」と呼ぶ者あり)だから政府に聞くと言っているじゃないか。はたでとやかく言う必要はないじゃないか。(「時間がない、約束の時間でやれと言っているのだ」と呼ぶ者あり)約束どおりといっても、三時までじゃないか。何時までだ。(「時間がない、もうできぬよ」と呼ぶ者あり)いや、できぬことはない。あと一点だけだ。  委員長、人がいましゃべっているのに、横から……発言をとめてくれ。(「ぼくは雑音を入れているだけだ」と呼ぶ者あり)だから、雑音を入れるのはやめてくれというのだ。  そこで、最後に一点。私はそういうふうに思っております。事実、輸入輸出の問題に関しては、その問題は真剣に明確に考えていかなければならぬ。そのことによって日本数量の制限、あるいは数量を多くしていって増産をして、ほんとうの国際競争の中で安値の方向をとっていくのか、あるいは技術的に生産量というものを少なくして農家の安定をはかるのか、いろんな問題がその中から出てくるのです。それほど輸入輸出というものは切り離し得ない問題だろうと私は思う。ただ、農家自身が一つの考え方を持った場合、増産せい、増産せいと言っても——もうかるんだったら、ほっといたって増産しますよ。そこで、その増産をするような方向をいまそういう安定帯価格の中から見出していっていただきたいということをお願いし、私の質問を終わらしていただく次第です。
  73. 高見三郎

    高見委員長代理 中野明君。
  74. 中野明

    ○中野(明)委員 たいへん長時間恐縮でございますが、一、二点ちょっとお尋ねしておきたいと思います。  事業団の問題については、最近とかくのことがいわれているわけですが、この蚕糸事業団が現在もし廃止されればどういう実害が出てくるだろうか、そのことをどのようにお考えになっているか、お尋ねしたいのでございます。もし事業団が廃止されたらどういう実害がいま直ちに出るか。
  75. 山添利作

    山添参考人 御承知のように、蚕糸価格の安定制度は、政府の特別会計と、それから政府の特別会計の安定帯の中における事業団によるところのさらに一そうの安定帯だ、こういうことになっております。そういうことになりまして、事業団を廃止いたしますと、下値の支持価格ですね、これがたちまち一割下がってしまうことになります。すなわち、安定帯になりますから……。そういうことがまず一番考えられるのでありまして、要するに、政府の特別会計によるところの価格安定制度は、これはまた政府の性格ということもございまして、はなはだ不十分であり、また機動性を欠く、そこで、事業団というような半官半民のものによりまして、業界意見もいれていただいて、適切な円滑な運営をはかりたい、こういうことでございますから、それがだめになる、こういうことでございます。
  76. 中野明

    ○中野(明)委員 現在非常に高値を呼んでおりますので、現時点では直ちに実害はない、しかし、将来値が暴落してきたときに実害がある、そのように一応考えていいわけですね。
  77. 山添利作

    山添参考人 ただいまの事業団の安定します繭価を保証します価格は、繭の生産費及び生糸生産費を加えたものによっております。したがって、生産費を割るということになりますと、たちまち影響を来たすわけでありまして、生産費を割るということは——あえて暴落とは申しません。要するに、相当程度動けばたちまち困る、こういうことです。
  78. 中野明

    ○中野(明)委員 それから、建議の中で、たびたび先ほどから議論が出ておりますが、輸入のことも確かにおっしゃっております。今回輸入がはずされた、そして輸出のみに法案がなっておるわけですが、これに対して先ほどからの皆さん方のお話では、とりあえず輸出だけを先やってもらいたい。確かに言われることは私もよくわかるわけですけれども、あわせてここで輸入も一緒に事業団が取り扱うようにしてもらいたいという意見建議の中に出ておりますが、そのようになったほうがなおよい、そういうお考えをいまなおお持ちでございますかどうか、それを聞きたいのであります。
  79. 山添利作

    山添参考人 そういうことになりますれば、もちろんなおけっこうでございます。
  80. 中野明

    ○中野(明)委員 けっこうです。
  81. 高見三郎

  82. 森田重次郎

    ○森田委員 だいぶ時間がたちましたので恐縮ですが、皆さま方でなければちょっとお伺いしにくい問題だと思いますので、一点だけお伺いいたしておきたいと思います。  先ほど山添参考人からのお話に、あつものにこりてなますを吹くというおことばがございました。まさに蚕糸業というものは、一つの冒険が常に伴う投機性を相当強く持つものでありまして、特に国際経済の変化に適応するにはなかなかそう簡単ではないというところに問題があったのだと思う。したがいまして、こういう事業団を設けてこれでそれを調節していこうという行き方は、一つの妥当な政策だと私は考えるものであります。ところが、いままでの国際経済の変化というものは、戦争等を常に媒介にいたしておりますので、非常に急激な変化があったこと、したがって、景気、不景気というものが、御存じのとおり資本主義的な欠陥として出ていた、それの適応が困難だというところに問題があったのだと、私はこう見ておるのであります。  そこで、私特にお伺いいたしたいことは、これからは大きい意味の戦争はない。ベトナムぐらいのことは若干あるかもしれませんが、これ以上の大きな世界戦争というものはあり得ないのだという見解を私は実は持っているものなんです。したがって、将来の世界の経済界というものは、各国とも大体において競争はあるが、しかし順調に発展していく可能性を持っておると見通していいのではあるまいかというのが私の見解なのであります。そこで、考えたいことは、絹というものに対する世界の人心の動向というものをどう見るべきかというところに、蚕糸業の大きな考えるポイントがあるように私は考えるのであります。たとえば最近シルクロードというものが思想界にまで取り上げられている。絹に対する郷愁のあらわれだ、私はこう見るのであります。それから女子大学の謝恩会で着ているものというものは、ほんとうの意味の純絹でなければ見劣りするというので、一つの絹に対するあこがれというものの価値的のあらわれではないか、こう私は見る。非常に部分的な現象を私二つ実例にあげましたけれども、しかし、これは決して小さい現象にあらわれたことだけだと見るべきではなくて、やはり世界人類全体に共通する一つの流れと見ていいのではあるまいか。でありますから、将来絹に対する要求というものが一つの世界的ムードとしてあらわれる可能性ありというのが、私のしろうとから見た見方なのであります。ところが、きょう皆さん方の公述を聞いておりますと、非常に細々とした、かろうじて現状を維持していけばいいのだというようなことの御答弁が多かったように私聞いたのでありますが、これは、この法律でも何とか通したいという気持ちになりますれば、最低の線でお答えくださるのも意味なしとはしないと思いますけれども、私がいま申しました世界的な絹需要のムードが出て、しかもそれは相当恒久性を持つものではあるまいか、こう見るのです。もしそういうふうな見通しならば、農林省における蚕糸政策というものに根本的な改定を試みなければならないし、また、この事業団の活動もそういう面を目ざすものならば、もっと積極性を持った運用の面等が出てきていいのではあるまいか、こう私は考えたわけであります。  私、蚕糸業に対しては全然しろうとでございます。そういうことから、今後の絹の需要に対して専門家のあなた方から見て、一体どういうような見通しをお持ちになるだろうかということであります。非常に抽象的な質問ではありますけれども、しかし、政治家はあまり事務的になってもしようがないと私は平素考えておりますものですから、こういう大きい見通しに一つの安定感があるならば、やはり何か大きい手を打っていいのではあるまいかと、直感的に皆さんの供述から感得いたしたものでありますから、これ一点だけ、代表的でなく、お一人ずつぜひひとつお伺いをしておきたいと思うのであります。どうかよろしくお願いいたします。
  83. 安田義一

    安田参考人 ただいまたいへん景気のいいお話を伺いまして、大いに意を強くいたしております。  先ほども私、景気の影響を受けやすい繊維だということを申し上げましたが、最近の日本経済は一種のコントロールされた経済だ、いわゆる万年好況経済で、多少の波はありますが、そういうふうにコントロールが皆さんお上手になった。これはひとり日本だけじゃなくて、ドイツあたりも非常に上手に景気をコントロールしておる。そういう意味におきましては、絹が非常に売れなくなるようなドラスチックな不況というものは、まず考えなくてもいいのではないか、私はかように考えております。  それから、絹の需要でございますが、先ほど来いろいろお話が出ておりますインターナショナル・シルク・アソシエーション、世界絹業協会と申しますか、そこで年率一割くらいの割りで絹の需要はふえるだろうということを、モレル会長が大会のたびに宣言をしております。したがいまして、世界におきます絹の生産というものが、中国はよくわかりませんが、日本中国、南北朝鮮、それから中近東等を含めまして、かりに大ざっぱに五十万俵と仮定いたしましても、五万俵ぐらいずつ、品物があるならば、そうして方法がよろしければ、その需要はふえるのだ、こういうふうにモレル会長は見ておられる。私も先ほど先生お話を伺いまして、たいへん敬意を表しております。これはおせじではございません。私どもその仕事の中に没頭いたしておりますと、とかく悪い面をどうも重視して見たがる。しろうとというおことばをお使いになりましたが、そういう方が大所高所からすらっとごらんになるのが、実はほんとうの姿ではなかろうか。将棋にも岡目八目ということばがございます。余談のようでございますが、さような意味におきまして、世界における絹の需要というものはかなり有望だ。しかし、それが日本養蚕業日本の製糸業に直結するかというところに、私は問題があるんじゃなかろうかと思います。  繭の生産のほうでございますが、先ほど中澤さんあたりからも、ほんとうにそんなにふえるのかという御質問がございました。日本の産業構造の変化、いわゆる農業国から工業国に変わっていく過程におきまして、繭の増産をそういうふうに楽観をして、ふえるのだというふうに考えるということは、私は残念ながらなかなかできかねるのでございます。これは日本の産業構造の変化という宿命だと思います。かりに増産したら非常に高いものになってしまう。これは国際的に競争できないような高いものになるおそれが相当あるのではなかろうか。  また、日本の製糸業でございますが、繭が常に売り手市場でございまして、設備と原料がアンバランスである。これは私ども業界としては、何とか企業整備をいたしまして、設備と原料のバランスの回復をいたしたいと念願をいたしておりますが、それぞれ親子何代続いている事業だというようなものをカットすることはなかなか容易でないのでございます。それはさておきまして、原料が不足で、かつ高くなるような傾向を帯びているわが国の製糸業というものは、基本的にはなかなか成立が困難であろう。そういう意味におきまして、私は、この世界の絹需要日本が追従して、少なくとも世界の絹の需要と同じ程度にわが国養蚕業、したがって製糸業というものが発展をしていくには、なみなみならぬ私どもの努力と、非常に他力本願のようでございますが、国家の庇護というものもちょうだいをいたしたい、かように考えております。
  84. 菅英一

    菅参考人 いま先生からお話がありましたとおり生糸需要は、われわれ輸出業者としてはむしろ需要の先行きをきめなくちゃならぬわけでございます。これは日本国民の生活の向上というようなものも大きな役割りを果たしていると思いますが、それに伴いまして、復古調と申しますか、私の狭い見解から申しますと、往年絹が一部の人に使われておったのが非常に大衆化したのじゃないかという気がいたします。したがって、日本の女性がこのように絹を好むということは、世界の先進国も同様だろうと思いまして、先行きは非常に希望を持っておる次第でございます。  大体、世界的な絹の生産は、数字的にはちょっとここに資料を持っておりませんけれども、〇・〇一%くらいになっていると思います。非常に少ない数字でございます。同じ天然繊維でも、羊毛、これも合繊の発達で非常に食われたようなかっこうになりますけれども、大体九%から一〇%というものをこの数年間維持しております。生糸またしかり、この数年間その消費量を維持しております。ところが、世界全体の繊維の生産量はどのぐらいかといいますと、四、五年前まではラフにいいまして一千万トンだったのが、去年ぐらいは一千五百万トンということになっております。だから、パーセンテージでは大体同じ水準を維持しておりますが、その絶対量は非常にふえておると言えるわけで、ただ、合繊と比較して伸びが小さいというだけの問題だと思います。  先ほど来、生糸が非常に不況になったときはそれじゃどうするんだという、われわれのために非常に心配していただくような御発言もありました。まことにそのとおりで、そういうきざしが見えてからではおそいので、いまこういう対策を考えておいていただきたいというのが私の気持ちでございます。  簡単でございますが、これでよろしゅうございますか。
  85. 森田重次郎

    ○森田委員 けっこうでございます。  しろうと観を申し述べまして、たいへん恐縮でございました。どうかひとつお元気で、業界のために御活躍をお祈りしまして、私の質問を終わります。
  86. 高見三郎

    高見委員長代理 以上をもちまして参考人の御意見に対する質疑は終わりました。  参考人方々に申し上げます。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  87. 高見三郎

    高見委員長代理 次に、外国人漁業の規制に関する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。久保農林政務次官
  88. 久保勘一

    ○久保政府委員 外国人漁業の規制に関する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  最近において、外国漁船がわが国近海における操業に進出する機運が見られるとともに、わが国の港への寄港等によりその操業活動を増大させようとする動きも認められるのでありますが、これをこのままに放置すれば、一定の秩序ある規制のもとに行なわれているわが国漁業に及ぼす影響はきわめて憂慮すべきものがあると考えられるのであります。また、わが国は、アメリカ、ソ連等の諸国との間において漁獲規制等に関する条約を締結し、これを順守すべき義務を分かち合っているのでありますが、わが国近海においてこれら条約のワク外にある外国人漁業の操業活動を放任、助長することは、国際条約順守の観点からするわが国の国際的立場をも著しく困難とするおそれなしとしないのであります。  このような事態に対処して、政府は、昨年九月、外国人漁業の操業活動を規制する旨の閣議決定を行ない、以来その趣旨に沿って行政措置により外国人が行なう漁業活動及び漁獲物等の外国漁船からの陸揚げにつき必要な規制を行なってまいったのでありますが、なお十分とはいいがたい状況にあります。このため、今回、これらの規制を含めまして、外国人が漁業に関してするわが国の港その他の水域の使用につき必要な規制措置を講ずることにより、わが国漁業の正常な秩序の維持に支障を生ずるおそれがある事態に対処することとし、本法律案を提出した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  まず第一に、外国人及び外国法人は、農林大臣の指定するものを除き、本邦の水域において漁業を行なってはならないことといたしております。  第二に、外国漁船の船長は、海難を避け、または航行もしくは人命の安全を保持するため必要な行為のみをしようとする場合、外国から積み出された旨の証明のある漁獲物等の陸揚げのみをしようとする場合等を除き、外国漁船を本邦の港に寄港させようとするときは、農林大臣の許可を受けなければならないことといたしております。また、許可を受けて寄港すべき場合において、許可を受けずに寄港している外国漁船については、農林大臣は、その船長に対し、当該外国漁船を本邦の港から退去させるべきことを命ずることができることといたしております。  第三に、一定の場合を除き、外国漁船の船長は、港以外の本邦の水域において漁獲物等を転載し、または積み込んではならないこととするとともに、日本船舶等の船長は、外国漁船から転載を受けた漁獲物等を本邦に陸揚げしてはならないこと等といたしまして、これらの転載等により外国人の漁業活動が助長されることを防止することとし、外国漁船に対する寄港許可制度とあわせて、わが国漁業の秩序の維持に万全を期することといたしております。  第四に、本法律案に規定する事項に関して条約に別段の定めがありますときは、その規定によることとするほか、権限の委任及び罰則につき所要の規定を設けております。  以上が本法律案の提案理由及びその主要な内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  89. 高見三郎

    高見委員長代理 次に、本案について補足説明を聴取いたします。久宗水産庁長官
  90. 久宗高

    ○久宗政府委員 外国人漁業の規制に関する法律案の提案理由につきまして、補足的に御説明申し上げます。  この法律案は、提案理由で御説明申し上げましたとおり外国人がわが国の港その他の水域を使用して行なう漁業活動の増大により、わが国漁業の正常な秩序の維持に支障を生ずるおそれがある事態に対処いたしまして、外国人が漁業に関してする当該水域の使用につきまして必要な規制措置を定めようとするものでありまして、法律案の内容といたしましては、第一には、本邦の水域において外国人等の行なう漁業の禁止、第二には、外国漁船が本邦の港に寄港しようとする場合についての農林大臣の許可に関する事項、第三には、外国から積み出された旨の証明のない漁獲物等の転載等の禁止、第四には、権限の委任、条約の効力等についての所要の措置につき規定いたしております。  以下、その細目につき若干補足させていただきます。  第一に、外国人等の漁業の禁止についてでありますが、これは第三条に規定いたしております。すなわち、日本の国籍を有しない者または外国法に基づいて設立された法人その他の団体もしくは外国に本店もしくは主たる事務所を有する法人その他の団体は、農林大臣の指定するものを除き、本邦の水域において漁業を行なってはならないことといたしております。なお、この場合の漁業とは、水産動植物の採捕または養殖の事業をいうことといたしております。  第二に、外国漁船が本邦の港に寄港しようとする場合についての農林大臣の許可に関する事項についてでありますが、これは第四条及び第五条に規定いたしております。まず、外国漁船の船長または船長にかわってその職務を行なう者は、当該外国漁船を本邦の港に寄港させようとする場合には、海難を避け、もしくは航行や人命の安全を保持するため必要な行為のみをしようとするとき、外国から積み出された旨の証明のある漁獲物等の陸揚げのみをしようとするとき、または外国から積み出された旨の証明のない漁獲物等の陸揚げであってもわが国漁業の正常な秩序の維持に支障を生じることとはならないものを除き、農林大臣の許可を受けなければならないことといたしております。農林大臣は、この寄港の許可の申請があった場合には、当該寄港によって外国漁船による漁業活動が助長され、わが国漁業の正常な秩序の維持に支障を生ずるおそれがあると認められるときを除き、その許可をしなければならないこととするとともに、農林大臣は、外国漁船が寄港の許可を受けるべき場合においてその許可を受けないで寄港していると認めるときは、その船長に対し、当該外国漁船を本邦の港から退去すべきことを命ずることができることといたしております。  なお、外国漁船とは、日本船舶以外の船舶であって、漁労設備を有するものまたは漁業の用に供され、もしくは漁場から漁獲物等を運搬しているものとし、また、本邦の港とは、港湾法上の港湾区域の定めのある港湾及び漁港法上の漁港といたしております。  第三に、外国から積み出された旨の証明のない漁獲物等の転載等の禁止についてでありますが、これは第六条に規定いたしております。この規定は、本邦の港以外の水域におけるその証明のない漁獲物等についてその転載等の行為を規制することにより、外国漁船に対する寄港許可制度とあわせてわが国漁業の秩序の維持に万全を期そうとするものであります。すなわち、外国漁船の船長は、外国から積み出された旨の証明のない漁獲物等を、港以外の本邦の水域において、他の船舶に転載し、または他の外国漁船から積み込んではならないことといたしております。また、外国漁船以外の船舶の船長は、港以外の本邦の水域において、外国から積み出された旨の証明のない漁獲物等を外国漁船から積み込んではならないこととするとともに、本邦の水域以外の水域において外国漁船から積み込んだこれら漁獲物等を、本邦の港において、陸揚げし、または他の船舶に転載してはならないこととしております。なお、これらの転載等の禁止は、わが国漁業の正常な秩序の維持に支障を生ずることとならないと認められる場合には、適用しないこととしております。  第四に、その他の所要の措置についてでありますが、これは第七条から第十条までに規定いたしております。その一は、権限の委任についてでありまして、寄港の許可及び退去命令についての農林大臣の権限は、その一部を都道府県知事に委任することができることといたしております。その二は、条約の効力についてでありまして、本法律案に規定する事項に関し条約に別段の定めがあるときは、その規定によることといたしております。その三は、罰則について所要の規定を整備いたしております。  以上をもちまして本法律案についての提案理由補足説明を終わります。
  91. 高見三郎

    高見委員長代理 以上で補足説明は終わりました。  なお、質疑は後日に譲ることといたします。  次会は、明二十四日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時十一分散会