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1966-08-24 第52回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年八月二十四日(水曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員    委員長代理 理事 吉田 重延君    理事 原田  憲君 理事 平林  剛君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       伊東 正義君    岩動 道行君       臼井 莊一君    鴨田 宗一君       木村 剛輔君    木村武千代君       砂田 重民君    藤井 勝志君       山本 勝市君    渡辺 栄一君       有馬 輝武君    板川 正吾君       小林  進君    佐藤觀次郎君       只松 祐治君    野口 忠夫君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         大蔵政務次官  小沢 辰男君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    結城 義人君         大蔵事務官         (主計局次長) 岩尾  一君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (証券局長)  加治木俊道君         大蔵事務官         (銀行局長)  澄田  智君         大蔵事務官         (国際金融局         長)      柏木 雄介君         国税庁長官   泉 美之松君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宣夫君         通商産業事務官         (重工業局次         長)      赤沢 璋一君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 七月二十七日  委員村山達雄辞任につき、その補欠として森  清君が議長指名委員に選任された。 八月一日  委員森清辞任につき、その補欠として臼井莊  一君が議長指名委員に選任された。 同月二日  委員金子一平君、田澤吉郎君及び谷川和穗君辞  任につき、その補欠として鴨田宗一君、伊東正  義君及び藤井勝志君が議長指名委員に選任  された。 同月八日  委員鴨田宗一辞任につき、その補欠として坂  田英一君が議長指名委員に選任された。 同月十日  委員坂田英一辞任につき、その補欠として鴨  田宗一君が議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員平岡忠次郎辞任につき、その補欠として  板川正吾君が議長指名委員に選任された。 同日  委員板川正吾辞任につき、その補欠として平  岡忠次郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 七月二十九日  一、国家公務員共済組合法及び公共企業体職員    等共済組合法の一部を改正する法律案(有    馬輝武君外十二名提出、第五十一回国会衆    法第六号)  二、勧業基金法案綱島正興君外三十八名提出、    第五十一回国会衆法第四七号)  三、国の会計に関する件  四、税制に関する件  五、関税に関する件  六、金融に関する件  七、証券取引に関する件  八、外国為替に関する件  九、国有財産に関する件  一〇、専売事業に関する件  一一、印刷事業に関する件  一二、造幣事業に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計税制金融証券取引及び外国為替  に関する件      ————◇—————
  2. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長が所用のため出席できませんので、指名によりまして、私が委員長の職務を行ないます。  この際、小沢大蔵政務次官及び柏木国際金融局長よりそれぞれ発言を求められております。これを許します。小沢大蔵政務次官
  3. 小沢辰男

    小沢説明員 このたび、はからずも大蔵政務次官を拝命いたしました小沢でございます。  御承知のように浅学非才の者でございますが、政務次官の職責は、皆さん方委員会の各位と役所との十分連絡をいたすことがその第一だと思いますので、今後とも御指導願いまして、私も一生懸命つとめたいと思います。よろしくひとつお願いいたします。(拍手
  4. 吉田重延

  5. 柏木雄介

    柏木説明員 このたび国際金融局長になりました柏木でございます。  何とぞよろしく御指導のほどお願いいたします。(拍手)     —————————————
  6. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 次に、国の会計税制金融証券取引及び外国為替に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  7. 堀昌雄

    堀委員 最近の新聞紙上をにぎわしております金融上の一つの問題として、長期金利引き下げという問題が非常にいろいろな角度から報道されておりますが、これについては、大蔵大臣再任早々にこの意向を表明しておいでになりますが、大蔵大臣のその長期金利引き下げについての目的といいますか、真意は一体どういうところにあるのか、最初にそれをお伺いしたい。
  8. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国経済は、わが国だけの立場においてこれを運営することはできない、世界の経済の一環としての日本経済であります。そういう性格を持つのみならず、現時点考えますときに、いよいよ国際貿易自由化、これが進められつつあり、また、例のケネディラウンド交渉も今日の見通しでは大体来年はこれが軌道に乗る、こういう段階にきたわけです。  そういう際に処して、わが国企業国際自由競争裏に大いに驥足を伸ばさなきゃならぬ。それには一体どうするか。  私は、一つは、わが国企業体質の問題があると思います。それからもう一つの問題は、金融面から見ましての金利問題があります。  わが国企業は、他の先進国と違いまして、その資金の八割までを借り入れ金に依存しておるという特殊な状態がある。金利の問題というのは、その特殊な性質のわが国企業にとっては非常に重要な問題だ、こういうふうに考えておりまして、これは長短金利両方にわたるのですが、何とかしてこの金利負担の軽減をはかりたい、こういうふうに考えておるわけであります。特に短期金利は、そう申しましても、そのときどきの経済情勢によって弾力的に運営いたさなければなりませんけれども、どちらかといえば、長期金利につきましては、これは不断に引き下げの努力をすべきものだ、そのためには金融機関近代化合理化、これに力を入れなきゃならぬ、こういうふうに考えておるわけなんでありまするが、さて、いま特殊な状態といたしまして海外における金利高傾向というものがあるわけであります。ヨーロッパにおいてもそうでありまするが、アメリカにおきましても最近とみに金利が上がってきておるという状態がある。そういう海外事情との関係も十分考えていかなきゃならぬ。それからもう一つの問題は、日本国内において今後の景気がどういう推移を示すか、国内経済見通しということも考えなきゃならぬ。  そういう長期的な見通し、つまり長期的な観点に立っての金利引き下げの願望、それから当面の内外の経済情勢、そういうことを総合的に判断いたしましてこの長期金利問題には対処したい、これが私の基本的な考え方であります。
  9. 堀昌雄

    堀委員 私は当委員会でずいぶん長い間論議をしておる中に、まず金融正常化という問題が一つあるわけでございます。  金融正常化というのは、長く題目としては言い古されてきておるけれども、実は実行が非常に行なわれていないというのが現在の実情だろうと私は思うのです。その金融正常化をもたらすための一つのてこは、何としても金利自由化ということが非常に重要な柱であろう、こう私は考えておるわけでありますが、まず一般論といいますか、原則論として、その金融正常化をはかるための金利自由化という問題を福田さんはどう考えておられるのか、伺いたい。
  10. 福田赳夫

    福田国務大臣 非常に大きな立場から言いまして、私は、金利自由化さるべきものである、つまり資金需要供給ですね、この原則をはずれて金利というものがきめられるということになりますと、これは金融が正常に動かないという大きな根源になる、こういうふうに考えております。したがいまして、そういう高い意味からの金利自由化、これは私は金融政策の大きな柱として堅持していかなければならぬ、こういうふうに思います。ただ、当面自由化と申しましても、そうこれを各機関ばらばらにやるということも、また金融の秩序の面からそういうことを許せない事情もあることは御承知のとおりで、そういうふうに思いますが、大きくはそういうかまえ方でやっていきたい、かような考えでおります。
  11. 堀昌雄

    堀委員 私もさっき大臣がお答えになったように、長期金利が低いほうが望ましいという点については同感でございます。ただ、いまお話のように、今度の問題提起長期金利引き下げる、こういうふうに問題が出ているわけです。しかし、経済見通しが不確定な状態で、ここである程度大幅な金利引き下げを行なうことが設備投資を呼び起こすということで過熱をするようなことになると困るわけです。三十六年四月に実はそういう例があったわけですが、ちょうどあのときは、ようやく経済が上向きかけて、かなりスピードがつきかけたところで金利引き下げということが行なわれたわけでありますから、この反省の上に立てば、慎重に考えなければいかぬということだと思うのです。  私は、それが金利引き下げというところに限られるところに問題があるのではないかと思う。いままでは金利引き下げるということについて、どうも金融界は必ずしも賛成でなかったものが多少変わってきたというのは、やはり需要供給によるところの、ある意味での自然な金利といいますか——金利は固定しているもの、その金利をよけて通ろうという動き起債市場なりあるいはその他のところに出てきておるところに、私は金融界としてもある程度協力しようということになってきたのだろうと思いますけれども、しかし、そのことは、金利がともかく固定的にだけ下がるということにすれば、またタイトになってきたときには非常にこれがじゃまになる問題でありますから、考え方としては、どうしてもこの際ある幅を限っての金利自由化ということであるならば、金利引き下げということはあまり景気に問題がないのではないか。  ある幅を限ってと申しますことは、主としてここで問題になりますのは、その資金供給の面からすれば、割引債であり、あるいは利付金融債であり、社債、地方債政府はあまり感心しないでしょうが、政保債、国債というものが一つ長期金利に関する体系の中にあるのですから、そういうものは、利回りその他はそのつどそのつど変えるというわけにはいきませんから、要するに、発行条件のほうにある程度の幅を認めて、そういう客観的な情勢に応じて、あるいは発行価格が上がるとか下がるとか、しかし、それを完全に自由化することは危険だから、ある範囲に限ってひとつ弾力性を認めるという形になれば、資金需要が緩慢になれば当然発行価格は上がるであろうし、それからタイトになれば下がるであろうし、そこに自律性金利機能というものが回復ができて、金利全体の面として金融正常化方向に役立つのではないのか。  社会党の私の立場からこういう言い方はおかしいわけですけれども、しかし、資本主義というのはやはりそうしておかないと、実は山と谷が大きくなり過ぎて、やはり自律作用でこれを多少ヘンメンしながらのぼるのを防ぐ、下がるのを防ぐという形にならないところに、私は日本経済の山、谷の高さ低さがあるのではないか、こういうふうに考えるわけですが、これは技術論は別として、ものの考え方としての議論でありますから、大蔵大臣、これについてはどうお考えになられますか。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 考え方としては全く私は同感ですね。これはやはり金利というものは資金需要供給、こういうことで動いていくべき問題で、また、私が今度長期金利引き下げを歓迎する——しかしそれは小幅のほうがよろしいとは言っておりますが、歓迎するという意見を申しておりますのは、まさにそういう背景、基盤というものがあるからなんです。今後ともそういう方向でやっていきたいと思います。
  13. 堀昌雄

    堀委員 藤山さんがおいでになりましたので、いまの金利だけではございません。私は金融政策一般をこれから議論したいのでありますが、やはりこれを論ずる場合には、現在の時点における経済現状と、まあ長期には問題がありましょうが、実は当分の間の経済見通しという問題をはっきりさせておきませんと金融政策というものは確立はできませんので、現状における日本経済状態とあわせて、あと四半期くらい、一クォーターくらいは大体どういうふうに動くだろうかというお考えをひとつ承りたい。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現状は、御承知のとおり、諸般事情等を見てまいりましても大体景気回復の徴候にございます。したがいまして、なだらかな上昇を現在は続けている、こういうことだと思います。ただ内部的に見ますと、たとえば資金需要のようなものも、大企業における設備投資という面における資金需要というようなものはあまりございません。どちらかというと、地方銀行その他で中小企業の面の資金需要が多い、こういうことになりつつある、こういうふうに考えられます。  そこで、今後の景気の動向でありますけれども、このままずっと参りますと、さらに順調な回復を、なだらかではございますけれども続けていくのではないか。ただ、国際情勢その他もいろいろございますから、いまにわかに断定的なことを申し上げかねるわけでありますけれども、そういう意味からいって、私はまあ来たるべき四半期においてそう問題が起ころうとは思いません。ただ、今日のような状況でございますから、これはやはりある意味からいえば、政府財政投資によりまして相当な刺激を与えてきておるのでございますから、それを受けて立つ感じ等によっても影響がございます。  よく言われておりますように、たとえば上半期に六五%の財政支出があったから下半期三五%程度しかない。そういうときに、何か政府財政支出が先細りになるのではないかという感じを心理的に持たれる方もあるかと思います。同時にまた、一方で申しますと、卸売り物価情勢その他から見まして、あるいは過熱的な方向にいくのではないかというような見方もできるわけです。  ですから、これからの経済政策としては、きめこまかにそういうところをながめながら、やはり財政投資を中心にして今日の景気回復したのでありますから、その時期その他を考えながら対処していくのが、なだらかな上昇を持続的にやってまいりますために必要ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  15. 堀昌雄

    堀委員 まあ、私どもが予想したよりは実は経済全般動きは少し早いように思っております。ですから、ここらで、例年経済見通しというものが出されておって、役に立たないくらいのところでまた多少の修正があるわけですが、私はひとつ提案をしたい。  かねてからもう藤山さんと私は議論をだいぶしてきていますからよく御理解いただいていることですが、何しろ経済統計が非常におそいために、あれは統計としては役に立つでしょうが、実際面にあまり役に立たないようになっておる。いま銀行局長で来ている澄田さんに、企画庁官房長当時、あなた、ひとつ官房長の間に何か経済統計スピードアップをやってくれないかと話しておきましたが、これはどうなっておるのか。非常にむずかしい。去年の予算委員会でも、私は総理大臣を含めて、これは福田さんも御承知だと思うのですが、経済統計スピードアップをお願いしたけれどもできない、こうなっておるわけですが、やはり皆さんとしても必要なのではないのか。ただ、鉱工業生産とか、出荷とか、在庫とか、稼働率とかいうようなものだけでなく、もう少しマクロであっても、実態に触れたものがあってもいいのではないか、こう思うのでありますけれども、そういう点を踏まえて考えてみると、約半年以上を経過して、経済見通しを立ててから、あの時点情勢と今日の情勢はだいぶ違うわけです。ですから私は、経済企画庁としては、ひとつここらで洗い直した四十一年度の経済見通しというものをお立てになって、物価にしても、あるいは鉱工業生産にしても、一応四、五、六、七、八月ぐらい、出ますれば九月まででもけっこうですから、そこらでそれを土台にした経済見通しをお出しになるお考えがないか。それができるほうが、財政なり金融政策の運営についても、あるいは企業の側のビヘービアについても非常に参考になるし、特に財政主導型の現在、私は政府としてそれだけのことをする責任があるのではないか、そう感じますけれども経済見通し修正についての長官の御見解を伺いたい。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私も大体お考え方について同感なんでして、経済諸般の資料というものは、総合的にながめます場合に、たいへんにおそいのです。ですから、同じ数字の上に立って考えるということは非常に困りますから、経済統計等についても、もっとスピードアップするようにやっていかなければならない。同時に、かねてから申し上げておりますように、できあがりました経済見通し等につきましても、やはりその中間においてある程度の見通し改定をやるということが必要だと思います。改定をやって、それが必ずしも所期の見通しどおりにいっていない、それは見通しがへただったんじゃないかというような御批判もあるかもしれませんが、それは政策の上でそういう必要があるのでやることですし、へたならへたで、そういう点は観測が違ったから少し甘かったのではないか、あるいは世間の情勢が違ったからだということの説明を加えて、私はやはり中間的に再検討すべきものだと思います。ちょうど八月で第二四半期も終わり、半年ぐらいの経過になりますから、私もそういうところで一ペん再検討してみたい、こういうふうに考えております。
  17. 堀昌雄

    堀委員 長官が私の提案賛成をしていただいたとしても、やはり問題は、流動的でありますから、その流動的な段階において一つずつトレースをしておくということは、今後の政策——これからの政策は非常にむずかしいところへきておると思いますから、ぜひひとつ第二四半期終了ぐらいの時点で出していただきたい。ただ、第二四半期終了といいますと、その経済統計が出てくるのはまた十一月ごろということになりまして、そこらに二ヵ月のタイムギャップが常にありますから、その点は多少推計でも何でもけっこうですから、お出しいただいてやっていただきたいと思います。  これまで関西電力鉱工業生産指数見通しについて発電炭電力量推計といったことをやっておりましたが、今度は関西電力はこれを電子計算機にかけてかなり精細なものを出すということで、七月にはかなり下がっておるが、八月はやや横ばいだということをこの間の新聞に出しておりました。  こういうふうに、やはりこれまでも通産省で使っておられますけれども、そういう可能な限りの材料を整備してもらって、できるだけすみやかに現在の状態を確認をしていくという方向は、私は非常に重要だし、現在の財政主導型というのは、責任政府にあるわけですから、その点をひとつ明確にしていただきたいと思います。  そういう時点に立って見ると、一つ問題が非常に出てくるのは、私は卸売り物価の問題だろうと思うのです。  これは特に申し上げるまでもなく、昨年以来の経過を見ますと、非常に大きな上昇ぶりでありまして、この八月の上旬でもまた〇・三%ほど上がっておりますし、最近は、私ども六月のしかきちんとしたのは手元にないのでありますけれども、それでも大体一月が一〇四・三という指数が、六月には一〇六・〇でありますから、全体として見て最近の値上がりの仕方というのは、消費者物価もさることながら、池田さんが、消費者物価は上がっても卸売り物価横ばいだからこれは心配ないのだとずいぶん言っておられたことがあったわけでありますが、今日では、卸売り物価がこれほど異常に上がっているというのは最近例を見ない状態です。これは単に物価問題——ちょっとあわせてあとでまた金利の問題に触れて申し上げたいのでありますけれども卸売り物価消費者物価が非常に上がってきているということは、これは短期的に処置できるのかどうか。消費者物価は、もう皆さんよくおっしゃっておりますから、短期的に処理ができないことは明らかでありますが、卸売り物価も同様な傾向になってくるのではないかというふうに私は感じているわけでありますが、企画庁長官、その点いかがでございましょうか。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 卸売り物価は、御指摘のように非常な勢いで高騰しております。昨年の四月から今年までは四・七%くらい上がっております。従来非鉄金属を除きまして六月くらいまでは一・八%くらいであったものが、七月になりまして二・三%くらい上がってきております。したがいまして、この騰勢をどういうふうに見ていくかということが一つの問題であろうかと思います。むろん、いま上がっておりますものをながめてみて、たとえば鉄のようなものについては、粗鋼の生産制限もしており、そして今日ではその情勢によって若干ゆるめまして、そうして出すようにはいたしておりますけれども、ここには一つの問題があると思います。ですから、いわゆる生産制限等につきましては、これは今後そういうことが続いていかない状態に持っていかなければならぬと私ども思います。  それから、上がっているものの中で木材が非常に上がっている。ただし、輸入外材はほとんど横ばいでございまして、内材ヒノキ材等が著しく高騰している。これは消費傾向から見て、ある程度そういう状況が起こっていると思いますけれども、しかし、ヒノキ材は上がったがほかのものが下がっているからいいとだけは言えないので、それは波及的な効果がないとは言えません。したがって、輸入外材等が今日まだ日本に来て、そうして滞貨にはなっておりますけれども、しかし、そういうものに飛び火してもいけませんから、一面、ヒノキ材についても若干短期的には押えていかなければならぬ、あるいは国有林の切り出しを若干よけいしていただいて、押えながら全体としての見通しをながめていかなければならない、それが他の木材に対する波及効果を押えるゆえんではないか、こういうように考えております。  繊維等につきましては、御承知のとおり景気回復に伴いまして非常な高騰——一時不景気のときに下がっておりましたので、これがある程度上がりますことは、従来の例から見まして著しく高騰したとは必ずしも言えない、もとの位置に戻りつつあるのだということは言えると思いますが、しかし、全体としてやはり卸売り物価がこういうような傾向になってまいりますと、何と申しますか、友を呼んでいくと申しますか、波及的に他の商品に対する思惑ということも出てまいりますので、その点は十分に警戒してまいらなければならぬと思います。  そこで、お話のような、これは短期的なそういう現象からきたのか、長期的な構造上の問題からきているのかと申し上げますと、現状ではまだ構造上の問題まではきていないのではないか。しかし、今後の情勢推移によっては、やはりそういう面も刺激して出てくる場合があるのではないか。回復の過程におきまして、回復状況が均一でないというような状況その他が起こりますと、従来の構造上の弱点というのはどこにあらわれるかという問題はわれわれも注意して見てまいらなければならぬと思うのでありまして、その辺については十分今後考え卸売り物価は見てまいらぬといかぬのじゃないか。消費者物価のほうは大体ある程度原因がつかめておりますので、それを解決していけば、まあ若干長期的にわたりますが、安定的な方向に持っていけると思いますけれども卸売り物価については、これからの問題でございますから、十分注意してまいりたい、こう思っております。
  19. 堀昌雄

    堀委員 実は私、先月の大蔵委員会で粗鋼減産の問題その他に触れて議論をいたしましたけれども、まさに八月上旬の資料で見ましても、鉄鋼は前旬比で二・三%上がっている。最近はようやく少し頭打ちになったといわれております。ところが、実際には、大体いま転炉がほとんどフルに動いていて、これ以上生産をふやそうとすると、もう平炉を使わなければならぬというところに来ているのではないかと思うのです。それにもかかわらず、現在は何か鉄鋼業界は生産調整というようなことを言っておるようでありまして、これは前回私が皆さんに申し上げたようなことで、卸売り物価上昇が〇・三%だけれども、その中で一番トップの二・三%というのは鉄鋼だというような状態があるときに生産調整を依然として続けるなどということはどういう考えであるのか、私どもはよくわかりませんけれども、これがやはり予算にはね返る面も、この間ちょっと調べさしていただきましたら、かなり大きなウエートを公共事業の中で占めておるということが明らかになってまいりましたから、この点は藤山さんの新聞発表等をあちこちの新聞でわれわれ見ておりますが、これは本来は通産大臣あるいは公正取引委員会の処置することでありましょうけれども、やはり企画庁というところは物価については責任のある官庁でありましょうから、そういう点では、粗鋼減産の問題については、とにかく一応はずしたあとでまた第二の策を考えるなら考えるということでないと、私筋道が通らないと思うのですが、その点、少しはっきりした御答弁をここで伺っておきたいと思います。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 当面はワクをふやしまして、そうして八月の二十日くらいから若干スポットの市場が鎮静していくのではないかといわれております。しかし、私ども鉄鋼会社の状況を見ておりまして、不況カルテルをやるような状態から脱却しつつあるのじゃないかというふうに見られます。ですから、生産をやはり勧告操短のような形で引き続きやってまいりますことは、私は適当だとは考えておりません。
  21. 堀昌雄

    堀委員 次に、ちょっと経済見通しに入って企画庁長官に伺っておきたいと思うわけでありますが、いまの金利の問題の中で、今度は大臣は、私がさっきちょっと触れました割引債、利付債、利付金融債、社債、地方債政保債、国債、あるいは信託生保の利回りの問題等が残るわけでございますが、どこまでおやりになるつもりですか。私は実はこれは関連があると思うのです。長期金利なんというものは、何か別々に区切って分かれておるものではなくて、国債なり政保債の利回りをきめられた根拠の中には、その時点におけるその他の長期金利の問題を勘案をしてやはりきまってきておるのじゃないか。金利というのは、いい悪いは別としても、ある一定のときにきまってしまうと、それなりの一つのバランスをとった体系みたいなものができておりますから、どこかをさわって、それを非常に小範囲にとどめておくと、たとえば今度金融債が政保債と逆になるというような問題が出てくるのだろうと思うのです。これは同じくらいになるのかよくわかりませんが。——率の問題はいいのですが、ものの考え方ですけれども、これは部分的にやると、どうしてもやはりどこかにそれがまたあとで問題が起きてくるということになる可能性のほうが論理的にはあるのじゃないか、こう考えるのですが、大臣、どこまで今度はさわられるつもりですか。
  22. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほど申し上げましたような考え方に基づきまして、今回の長期金利引き下げは小幅が望ましい、こういうことです。したがいまして、小幅に、貸し出し金利を中心に引き下げるということにいたしました場合に、その波及をどこまで持っていくかということになりますと、これを全面的にはしないで部分的にしたい、それが望ましい。この間、日銀総裁とも会っていろいろ話したのですけれども、やはり今日のこの時点で、現実の問題として考えると、小幅、部分的というところが適切じゃないかという意見の一致になったわけです。  長期金利改定は、これは申し上げるまでもありませんけれども政府が中心になってやるわけじゃないのです。日銀が中心になってやるわけでもないのであります。これはどうしても長期金融機関ですね、これが指導的、中心的な立場にあるわけであります。私どもといたしましては、そういう基本的な考え方を示しまして、関係金融機関の協力を期待する、こういう態度をとっているわけであります。関係金融機関におきましては寄り寄り相談中でありまして、大体小幅、部分的という線で話をまとめてみたいというふうな考え方を出しているようであります。興、長銀などの引き下げの幅が大体二厘くらいになるわけであります。そういう際でありまして、そのくらいの程度でありますれば、これはそう大きな波及を考える必要はないのじゃないか。もとより、国債あるいは政保債地方債、こういうものにつきましては、これをこの際連動して考え直すという必要はない。ただ、国債その他、今回連動して動かさないものに対しましては、その消化がやや改善される、こういう環境はできるわけであります。私は、それもたいへんけっこうなことだというふうに考えているわけであります。ただいま関係金融機関がどういう具体案を出してきますか、大体煮詰まってきているような情勢でありますが、まだまとまらない点もあるようであります。それを期待しているわけであります。
  23. 堀昌雄

    堀委員 いま、割引債だとか、利付金融債はなるほどまさに興、長銀の問題でございますけれども、社債となるとこれは何も興、長銀に限らないのであります。  地方債の利回りというものは、いろいろな発行条件というものはどこがきめるのですか。ちょっと政府、法律的に答えてください。
  24. 中尾博之

    ○中尾説明員 法律的には別にございませんけれども、それに関連いたしましては——というのは、やはり地方債も、地方公共団体とそれからそれを引き受けます側との取引においてきめるわけであります。ただ、そのきめる条件につきまして、地方公共団体の場合には地方議会が議決権を持っている、そういう構成になっております。実際には地方公共団体ごとにいろいろな条件できめる、ただし、実際問題といたしまして、公募地方債はその条件が統一されている、これは公募市場でありますから統一された条件できめるという状況であります。
  25. 堀昌雄

    堀委員 そうなると、地方債政保債政府が発行する、政府関係金融機関が出すにしても、やはり金融機関が国債を買うわけだし、そうすると、福田さん、この長期金利、国債の利回りというものは政府が決定するものだろうと思っているけれども、いまの感触からいくと金融機関が決定するという感じですね。そういうことでしょうか。
  26. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは、法的には最終的に政府が決定するわけでありますが、その決定の過程におきましては、これが受け入れられるものでなければならぬ。そういうようなことで、シンジケート団と相談をいたしましてこの条件をきめる。これは金利ばかりではございません。条件全体を通じての利回りというところが問題なんですが、それらをシンジケート団と相談をし、その契約によって最終的にはきまる、こういうことになろうと思います。
  27. 堀昌雄

    堀委員 私はどうもいまのそういうお話を聞いておりますときに、今度の金利問題のスタートと結果といいますか、その終わりごろとで非常に何かわれわれの受け取っておる感触が違ったわけです。初めの感触は、私が申し上げ、大臣同感だとおっしゃるような、かなり広い意味金利引き下げ、及び社債などは発行条件の部分的な自由化だということまで言われた時代があったのですが、だんだんしりつぼみになって、最終には非常に小幅になり、それから割引債金融債くらいに限られるということになると、結果としては長期信用銀行救済になったような感じがして、どうも私は、筋として何だか今度の長期金利引き下げ問題というのは筋が通ってこなかった、こういう感じがしてならないわけですけれども大臣、その点いかがでしょうか。
  28. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は金融政策一つのかなめとしまして、金利の低下、これは大事であるというので、長短金利にわたりましてこの一年間ずっと引き下げに努力をしてきておるわけです。  そういう私の考え方から申しますと、これは大幅で、しかも幅の広いということがいいのかもしれません。しかし、先ほども申し上げましたとおり、現時点においてどういうふうなことをするか、そういうことになりますと、これはそう簡単にいきません。私が前から言っておるようなことは、長期的に追っていくべき筋合いを申し上げておるわけであります。その筋をどういうふうに生かしていくか。それはその時点時点の環境でやっていかなければならぬ。ただいま申し上げましたような国際金利上昇傾向、それから国内景気動向をどういうふうに見るかというようなものをかみ合わせて考えるときに、これは小幅に、また部分的にしなければならぬ、こういうことにならざるを得なかったわけであります。  しかし、私の本来の考え方というものは、日本企業の経理の特殊性から見まして、資金コスト、これはなるべく下げるように行政運営をしていかなければならぬ、今後ともそういう考えでいかなければならぬ、そのためには金融機関近代化合理化、こういう問題は強く金融行政の基本として進めていかなければならぬ、この考え方には変わりはないのであります。
  29. 堀昌雄

    堀委員 最近、御承知のように、主として都市銀行は非常にいい決算を三月には出しておるわけでありますが、それは一つには外部負債についての金利が下がってきたということが非常に大きな原因になっておるわけですが、私は銀行が金をもうけることはちっともかまわないと思いますけれども、しかし、それならば、そういうふうに客観的情勢金融がゆるんだことによってメリットが出ておるのならば、その金融がゆるんだことによるメリットを全体に及ぼすことによって自分たちの収益が多少減っても、それが全体に波及するようにするというのが私は銀行なり金融機関の社会的責任のあり方ではないのか、実はこういう感じがしてならないのです。いまの今度の問題についても、これが大幅にしたから景気刺激になるという問題は、私は、またやり方の問題で、さっき申し上げたような自律性を与えておきさえすれば問題はないのじゃないか、ただ機械的にだけ下げるから、今度上げられないという問題があり、景気刺激に直接ストレートにつながるから、そういう処置を講ずることによって処置できるのではないかという感じがするのですが、残念ながら、どうも銀行協会あたりの発言を見ておると、それが全体の国家的利益というよりも、どうも銀行の利益が優先しておるという感じがしてならないのです。  ですから、それは今後の問題として考えておいていただきたいわけですが、それでは四十二年度には政府保証債なり国債のこういう利回り条件というものは動くのか動かないのか、これをちょっとあわせて伺っておきたいと思います。今度は動かないけれども……。
  30. 福田赳夫

    福田国務大臣 四十二年度における金利情勢金利の背景をなす資金の需給というものは一体どうなるか。あなたのおっしゃるように、金利は今日拘束された形で動いておりますけれども、しかし、これは大筋からいいまして、金の需要供給ということが基本でなければならないわけであります。その需要供給が一体どうなるかによりまして金利動きというものも変わってこざるを得ないと思います。ただ、当面私ども見通しておるところでは、金融情勢にはそう変化はない、その変化がない状態が来年度も続くというようなことになれば、金利については何らの影響はないわけであります。したがいまして、いまこれから年末までかけて、一体昭和四十二年度という年の経済はどういうふうに動くのだろうか、また、それにつれて金融はどういう状態になるか、つぶさに検討しなければならぬと思いますが、今日の時点では、私はさしたる変化はないのじゃないか、そういうふうに見ております。年末までかけて慎重にその金利の背景となる経済見通しを策定しなければならぬ、こういうように考えております。
  31. 堀昌雄

    堀委員 ちょっと伺っておきたいのは、最近、この年度が始まって今日までの間は、私は金融はフリーマーケットの状態で見ると、少しタイトになりつつあるという感じを持っておるのですが、緩慢ですね。もしこの程度の緩慢状態に四十二年度もあるとするならば、国債の利回り、その他政府保証債も含めてですけれども、国債の利回りは、これ以上緩慢にならない限りは動かさない、こういうことなんでしょうか、ちょっとそこのところをはっきりしておいてもらいたい。これは相当緩慢で、これ以上緩慢にする条件は日本経済であり得ないと思います。だから、いろいろな諸情勢から見て、これ以上に緩慢にならなければ動かさないということは、私はもう当分、数年間にわたって日本の国債金利はこれ以下にはならないんだ、年一兆円からの国債を来年出そうというときに、現在の国債の金利がこの状態でずっとあっていいのかどうかについては、私はやや疑問があるわけです。  そういう問題を解決するためには、やはり私は、金利自由化を含めながら、要するに公社債市場の育成をし、いろいろな角度から問題を提起していかなければまずいのじゃないかと思っておるから、ちょっとその点、理論的な質問みたいですけれども、要するに、これまでの金融緩慢ならこの程度——これ以上うんとゆるむということは、これは操作をすることにほかならぬと思うのです。私は現状でも日銀はだいぶ操作しておると思いますが、そういうことはあり得ないと思うのですけれども、その点いかがでしょう。
  32. 福田赳夫

    福田国務大臣 国債は国民から政府が金を借りるわけであります。しかしながら、一面においてその償還なり利払い、これはまた国民の負担である。したがいまして、この金利というものは適正にきめられなければならぬというふうに考えます。同時に、この適正なる金利でもって売られるところの国債が、国民から消化され、歓迎されるものでなければならない、こういう性格のものだというふうに理解しておるわけです。  そこで、いまの国債の利回りというものは、そういう国民の負担はなるべく少なくする、しかし、同時にこれが国民から消化の点において歓迎される、受け入れられる、こういうものでなければならぬという、その二つの要請のぎりぎりの一致点といいますか、妥協点といいますか、それを見定めまして決定したわけなんです。非常に慎重にこれをきめたというふうに考えておるわけでございますが、これは金利体系、その基本となる資金の需給について大きな変動がないというならば、これをしいて変更するという必要はないのじゃないか、そういうふうに考えておるわけであります。今日の時点で国債の条件を改定するという考えは持っておりませんことを御理解願いたいと思います。
  33. 堀昌雄

    堀委員 いまのお話は、今日の時点でということでありますけれども金融情勢にさしたる変化がなければ変えないということは、私は当分——十年、二十年先は別ですが、福田さんが大蔵大臣でおられる間ぐらいはこれは動かない、私はそういう感じで受け取りますが、まあ御答弁はけっこうです。  そこで、延び延びになっておりました国債上場問題ですけれども、これは福田さん、いろいろなこういう情勢になってきて、おそらく金利引き下げ問題というのは十月ぐらいから行なわれることになると思いますが、これは十月ぐらいから上場されますか。
  34. 福田赳夫

    福田国務大臣 国債については、これはなるべく早い機会に上場するほうがいい、そういうふうに考えまして、すでに六月末からその場ならしというようなことで、気配の交換相場を発表するということもいたしておるわけなんであります。これは国債に限らず、そういう過程を踏みながら慎重に準備した上、上場ということをやっておりますが、国債につきましては、その後七月、八月と経過しようとしておるわけであります。先ほどからお話のあります長期金利改定というものがどうやら実現されそうな傾向であります。これは国債に対しましてはいい環境をつくることになると思います。  それから、いままでの国債の消化状況を見てみますと、非常にこれは良好でございます。何らの不安なしに消化をされておる。しかも、私どもが非常にいいと思っておりますのは、個人消化が思ったよりはいいのであります。そういう点から見まして、国債上場の機運は熟しつつある、こういう観測をいたしておるわけであります。長期金利引き下げの問題がいつになりますか、あるいは十月ごろからということになるかもわからぬ、上場の時期とすると、そういう時点をとらえてやるというのも一つ考え方ではあるまいか。慎重にいまその推移を見ておるということでございます。
  35. 堀昌雄

    堀委員 私どもは、国債を上場したわ、値下りをして売りにくくなったというのは困るということで、おそらく慎重にやっておられたと思うのですが、金融債、割引債のようなものが下がる、社債は発行されない。いまの状態ではなかなか社債も出てこないということになれば、これは比較的利回りのいいものということで、政府保証債なり国債なりというものがかなり評価されてくるのは当然だと思うので、やはりあまりもたもたしないで、こういうものはチャンスをとらえて措置をするというのが適切ではないのか、こう思います。  私、大蔵大臣にいろいろ質疑をやらしていただいておりますが、ちょっと福田さん、いつもより歯切れが悪いですよ。大体わかったような答弁みたいだけれどもあとでたいてい慎重に何とかをするとくっついているのですが、きょうは一つぐらい歯切れのいい答弁をしてもらいたいと思うのです。だから、そういう意味では、日にちを私はどうこう言いませんが、長期金利引き下げが行なわれたら、これと見合ってやりたいというふうに確認してよろしいでしょうか。
  36. 福田赳夫

    福田国務大臣 その辺が一つ考えどころじゃないか、そういう気持ちを持っております。
  37. 堀昌雄

    堀委員 私に与えられております時間が幾らもありませんから、ちょっと終わりのほうで少し伺っておきたいのですが、実は企画庁でお出しになっておりますところの、「国民所得統計年報」で見ますと、一九六四年のインプリシット・デフレーターが出されております。これは一九六四年までしかまだ出ておりません。いま六六年ですから、これもあまり早いほうではありませんけれども、この中で私一つ気がつきましたことは、要するに、政府の財貨サービス経常購入のデフレーターは一四七・三ということで、実はこのデフレーターの中の一番高いデフレーターであります。要するに、国民の費用で使っておるものが、さっき大臣もおっしゃった、国の支出というものは国民の負担でありますから、それが最も値上がりをしておる形で使われておる。これは私は非常に問題のある点だと思います。これが一点。  それから、今度民間と政府を比べてみますと、国内総資本形成の中の総固定資本形成で、民間全体で見ますと一一〇・八、政府全体で見ますと、これは大臣がよくおっしゃる資本勘定のほうですが、資本勘定の部分というものが、民間が一一〇・八に対して政府は一二五・八、企業設備で見ると、民間の企業設備のデフレーターは、スタンダードは一九六〇年ですが、一〇五・七、政府は一二五・七、政府というものは何か親方日の丸という思想か何かで、値段が高かろうが何しようが、言いなりで買っているということをあらわしておるのではないか。この差があまりに激し過ぎるのです。  大蔵大臣、要するに、これについて財政を幾ら伸ばしてみても、わずか三、四年の間のデフレターが一四七・三になるということは、これは個人消費が一二四・三くらいしかデフレーターが出てないわけですから、たいへんなものになっておるわけですけれども、これについて、政府及びその関係機関を含めてだろうと思うのですが、値段の問題について、もう少しきびしく考える必要があるのではないでしょうか。この点いかがでしょうか。
  38. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府の支出につきましては非常に注意をしているわけであります。民間に比べて政府が高く買っておるというようなことは、おそらくないのではないかと思います。  いまお話の数字は、全体的に見てみないとよく理解できませんが、私どもは、特に公共事業の執行に当たりましては、なるべく有利にこれを調達したい、こういうことであって、また、関係各省のお話を聞きましても、民間に比べて決して不利なことはやっておらぬ、こういうふうに言っておりますので、何かいまの国民所得統計ですか、それからの御結論にはどこかに行き違いがあるのではないかというような感じを持ちますが、なお、そんなことが現実にあってはならぬことでありますから、十分に注意してまいりたいと思います。
  39. 堀昌雄

    堀委員 これは企画庁長官、おたくの所管ですから、ちゃんとはっきり出ているんですが、これは何か企画庁側として弁明があればひとつお答えいただきたい。
  40. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 技術的な問題として御説明申し上げて差しつかえないことでしょうが、大体公務員の給与が六割くらい入っております。例年上がっております。これは大体国際慣行になっておると思います。  それから、公共投資のデフレーターは、建設労賃の動きを反映しているというようなことに了解しておりますけれども、こまかいことにつきましては、事務当局から答えさせます。
  41. 堀昌雄

    堀委員 財貨サービスの購入のほうは、いろいろファクターがあり過ぎて、比較がちょっとむずかしいんですけれども、要するに、民間の企業設備は一〇五・七、政府のほうは一二五・七、ここだけちょっと説明してください。公共投資であろうと、やっているのは、政府の役人がやっているわけではなく、民間の企業でやっているにすぎないことでしょうから、ここで二〇も差があるということはどういうことでしょうか。
  42. 澄田智

    澄田説明員 私は、前任の企画庁の当時のことで、手元に資料を持っておりませんので、御説明がやや不正確になりますが、申し上げますと、政府の公共投資のデフレーターの場合には、ただいま企画庁長官からもお話がありましたように、建設の労務費の上昇分を見ております。これに対しまして、民間の設備投資のデフレーターは主として資本財の物価指数をとっております。そういうところがかなり大きく違ってきているのじゃないかと思います。  それからもう一つ付言いたしますと、先ほどお話しの政府の財貨サービスの購入でございますが、これは国民所得統計が新推計を採用いたしましてから、従来の方式と変えまして、国連などでとっておる方式によりまして、人件費、物件費を分けまして、人件費のほうにつきましては、公務員の給与改定の給与の指数をとりまして、その改定の分をデフレーターの数字として使っておる、こういうことで、その分が従来のあれと違って入ってまいります。物件費のほうにつきましては、消費者物価卸売り物価と両方勘案して、たしか総合した指数を出してそれを使っているというふうに記憶いたしております。
  43. 堀昌雄

    堀委員 これはまた日をあらためて一ぺん統計議論をしなければならぬと思うのですが、もしそうであるなら、私はこの統計はおかしいと思うんですね。民間と政府があって、比較ができない、民間のほうは物件費だけで、政府のほうは人件費込みだというようなことでは、第一統計の用をなさないわけです。  それじゃもう一度澄田さんにお伺いいたしますが、民間の住宅と政府の住宅の場合は、同じように民間は物件費、政府のほうは人件費込みになっているのでしょうか。いまの話のようなら考え方は同じでしょうね。
  44. 澄田智

    澄田説明員 ちょっと私その点はあまりはっきり申し上げかねるのでございますが、まあ政府のほうの住宅の場合、住宅は大体いずれも民間の住宅建設のほうでやっておりまして、そちらのほうに計上される形になっておりますので、政府住宅というものも、公団等がつくりますものは、これは政府の投資に入りまして、それから住宅金融公庫等の貸し出しでもって民間が建てるものはすべて民間に入る、こういうことで、政府の住宅という項目は別に別掲されて出ておりますので、ちょっとそこのところはいまのお話のようなことにはならないで、政府の住宅も民間の住宅も同じ住宅建築費指数を使っております。ただ、木造とかコンクリートとか等の構造別のウエートをかけて出しておりますので若干数字が違うわけでございます。大体公共投資と同じやり方をしております。
  45. 堀昌雄

    堀委員 実は私がちょっとそれを聞きましたのは、民間の住宅のほうは一三二・七になっておるのですよ。民間の住宅は政府より高いんです。そして政府が一二八・二になっておる。ところが、公共投資は、これと同じバランスで住宅が一二八・二に対してその他が一二五・七、民間の企業設備は一〇五・七となっておるけれども政府に比して非常によくなっているわけです。ですから私は、全体ずらっとながめてみて、統計の使い方というものはいろいろ調べてみてからでなければなりませんけれども、デフレーターの面から見るだけでは、何か政府は民間に比べて高い費用を使った、デフレーターが大きくなっているということは、それだけ甘いあれをしているんじゃないかという感じがしてならないから、この点は大蔵大臣、ひとつ企画庁とよく御相談をしていただいて、原資料から一回洗ってみて、はたして一体どうなのか、もし所得統計に誤りがあるならそれでいいのですけれども、そうでなく、実際は少し——最近の入札方式その他でも九頭龍ダムみたいに一番高いやつに入札がいったりする例が政府のいろいろな公共事業の中にはあるんですから、そういう点は、田中彰治さんがいろいろ活躍されたことがあったからそうなったのかどうかわからないけれども、やはりきちんと処理してもらわなければ、これは国民の費用でありますから、この点は十分にひとつ御検討いただきたいと思います。  時間がありませんので、私はこれで終わります。
  46. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 只松祐治君。
  47. 只松祐治

    ○只松委員 お尋ねしますが、本年度の税収はどの程度現在まで伸びておるか。私が調べたところ、去年が二〇・九%といたしますと、二三%と二・一%伸びておる、こういう数字がありますけれども、このとおりであるかどうか。
  48. 結城義人

    ○結城説明員 六月末の一般会計でございますが、租税収入は七千三百十億円でございます。前年同期が六千三百八十九億円でございますので、本年度の税収予算額に対しましては収入歩合は二三%でございます。前年同期が二〇・九%でございまして、表面的には二・一%上回っておるということになっております。
  49. 只松祐治

    ○只松委員 これは必ずしも景気回復、したがって法人税の伸びだけではなくて、まあ所得税や何かの関係で、たとえばそば屋が東京、千葉、神奈川等で三十億円の修正申告を求められたりいろいろされております。それの嘆願なんか私のところにも来ておりますけれども、そういうこともうらはらになって伸びてきておる。それでは今後年度内に大体どの程度この調子でいけば伸びるだろうか。まあ九月期決算等の関係もあるだろうと思いますが、想定される伸びぐあいは。
  50. 結城義人

    ○結城説明員 ただいま本年度の六月末現在で、昨年に比べまして。パーセンテージがやや好調であると申し上げましたが、この原因は、第一には法人税の即納率が非常に向上しておるということでございます。  それから第二には、去年実はお酒の価格改定に伴いまして、思惑需要で異常出荷が二、三月にございました。それが年度当初になって出荷が少なくなったということに対しまして本年の率が上がっておるということでございます。この二つが大きな原因でございまして、この点を調整いたしますと、本年度の二三%という数字は二一・八%ぐらいになりますので、まあまあ従来の予算に対する収入の進捗状況の平均ぐらいまでいっております。したがいまして、本年度は予算は確保できるという見通しはございます。
  51. 只松祐治

    ○只松委員 まあ予算額を確保できる程度で、そうそれ以上に大きく上回るという見通しはなかなか出てきませんか、それとも相当伸びるということですか。
  52. 結城義人

    ○結城説明員 ただいまのところまだ第一四半期と三カ月が終わった程度でございまして、法人の九月決算ないしは秋のお酒、物品等の出荷状況等を見ませんと、いまのところ何とも申し上げかねる情勢でございます。
  53. 只松祐治

    ○只松委員 大臣、税収の伸びはお聞きのとおりでございますが、そういたしますと、本年度、いまから支出予想は、まあこれはこれから台風がどの程度来るかということによって変わってきますけれども、およそ千七、八百億円の補正予算額が必要ではないか、こういうことがいわれておりますが、そのトータルはこの程度のものであるかどうか。
  54. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま申し上げましたように、まだ税収の見通しが非常につかみにくいのであります。ことに税収の見通しのつきにくい要因としては、今日の収納率から見ると、昨年よりは一%くらい上だ、こういうことになっておりますが、減税の問題がある。大幅な減税をいたしましたその影響が今後出てくるわけでありますが、それが一体どういうふうな出方をしますか、それと見合って補正ということになってくるわけであります。その財源のいかんによって補正の考え方はいろいろ変えていかなければならぬ、そういう一つの問題点があるのです。  それから、財源のことは財源のこととして、今度歳出要因だけだ、こういう話になりますと、一つは、生産者米価の引き上げに伴う食管会計への繰り入れ、これは大体金額が七百億円をちょっと出るという程度のものであります。それからもう一つ大きな問題は、公務員の給与改定、これは何月実施というようなことは、まだ財源のほうに問題がありますものですからきめておりません。何月実施ということによって額は動いてくるわけでありますが、その要因が一つある。あとは義務的経費の補てんという問題が例年のようにあるわけですが、これは、ことしは当初の予算において相当手当てがしてありますので、そう大きな額ではございません。あとは災害要因だ、こういうことになるわけでありますが、災害費は、さあどういうふうになるか、これは今後の気象がどうなってくるか、これにもっぱらかかってくる問題であります。そういうことを考えますと、大ざっぱに言いまして千億円をどのくらい出ますか、私はそうたくさんは出ないのじゃないかというふうに思いますが、いまどのくらいの歳出補正要因があるかということは的確には申し上げにくい、こういう現状でございます。
  55. 只松祐治

    ○只松委員 いまのお答えから推測するならば、米の値段も来年になったら上げるので、七百億円も要らないで何とかおさまるのじゃないか、公務員給与も五月実施でなくて九月実施なりあるいはもっとおくらせたりしてそれほど要らぬじゃないか、したがって千億円そこそこじゃないか、こういうふうに受け取れるのですが、予備費が五百億円ありますけれども、生産者米価を上げないとすると七百億円をこしますし、公務員給与も五月実施だと五百億円をこします。どうしても米価を上げない、あるいは人事院の勧告をそのまま適用していく、いまから起こってくるだろう災害その他を合わせれば、これは一千億円ちょっとではなくて、一千七、八百億円くらいになる、こういうことになると思うのです。  そこで、大臣のいまのお答えからいたしますと、生産者米価はまた来年早々でも上げる、公務員給与は五月なんてとてもじゃない、九月実施しかできない、こういうお考えのようにも受け取れるのですが、いまの計算からすると、これは考えはどうにでもできますが、数字からはじくと大体そういうことになりますが、大臣のお考えはそういうところですか。
  56. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは今後の租税収入の推移にも関係のある問題でありますが、ただいまのところはこれを上げるという考えは持っておりませんが、年度内に上げない、絶対に上げないのかと言われますと、そうも私は言い切れないのであります。一に、今後の物価情勢と、それから財政状況、国民のふところぐあい、この三者をにらみ合わせて年末まで慎重に考えていきたい。いずれ昭和四十二年度の予算を編成するとき、その一環としてこの問題はとくと考えなければならぬ。今日はまだ何とも申し上げかねる段階であります。
  57. 只松祐治

    ○只松委員 最終的なことはそのとおりでございましょうが、いいほうばかり見ていけばいいわけですが、いまの税収の伸びの状況から見まして、多少は伸びるかもしれぬけれども、それほど大幅に伸びないかもしれないということです。そんなに大きく伸びないと仮定して、現状のような状況だということになりますれば、いま、物価上昇とそれから税収というようなことをおっしゃいました。物価は、こういうふうに赤字公債が出てまいりましてから、卸売り物価でさえも三・六%、消費者物価で六%と異常な上昇を来たしておるわけですが、多少の鈍化ということがあっても、年度内にもう八%を下るとか、そういうことはないわけです。これは一〇%前後になることは必至になってきておるわけです。したがって、大臣が想定される中でいいほうだけとっていきますと、大臣の気持ちにありますように、消費者米価は上げたくない、上げないでもいい、こういうおつもりかもしれませんけれども、逆に悪いほうをとっていって、税収もあまり伸びない、物価上昇もなかなかとまらない、卸売り物価もこんなに上がってきておるということになれば、当然、いま絶対に上げないとも言えない、こう言わざるを得ないように、また例年どおり正月早々米価を上げざるを得ない、こういうことにもなるかと思いますが、悪い場合にはやはりそうせざるを得ない、こういうふうに解してよろしゅうございますか。
  58. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまのところは、私は消費者米価は上げたくはないのです。上げたくはないのですが、財政状況もあるわけであります。これは年末にはどうしても昭和四十二年度予算をきめなければならぬわけであります。その時点において米の消費者価格をどうするか、これは総合的にきめなければならぬ問題でありまして、今日この時点でどうする、こういうことを申し上げるまでに至っていないので、御了承のほどを願います。
  59. 只松祐治

    ○只松委員 気持ちとしては上げたくないということは私も了承します、こう言っておるのです。しかし、いわゆる税収の伸びがない、あなたがいま一つ言われた消費者物価等の状況も、あなたたちの思うとおりいかなかった、こういう場合には、上げたくはないけれども上げざるを得ない、こういうことが、気持ちの問題ではなくて、財政上から、予算編成上、補正予算の問題から出てこざるを得ないのじゃないか、私はこう言っておるわけです。その場合、やはり上げざるを得ないというか、私が言っておるとおりだ、こういうことになりますか。
  60. 福田赳夫

    福田国務大臣 歳出の補正要因というものが、あなたの御指摘のように千億円以上あるわけです。それに対する財源措置を一体どうするか。これは米だけじゃありませんから、広く税の収入もある、その他のいろいろな収入もあります。いろいろなものを検討しまして、どうしても才覚がつかぬという場合にどうするか、こういう問題で、ひとり米の問題に集中してこの補正を論ずるわけにはまいらない。いろいろ考えまして、総合的に結論を出す、こういうふうに御了承願います。
  61. 只松祐治

    ○只松委員 国民がやはり一つのバロメーターとして心配をしておるのは米の値段ということでありますから、それで、私も米だけを論じておるわけではありませんが、米の値段をまず聞いておる。同時に、いま一つ私たち労働陣営の中で一つの大きな問題になっておるのは、人事院勧告が完全実施されるかどうか、こういうことになるわけであります。これも、財源の問題と関連して今日の段階で何とも言えないと言われればそれまででありますが、これも私たちとしては上げてもらいたいといいますか、完全実施すべきである、こういうことです。これを完全実施すればどうしても相当大幅な補正予算を組まざるを得ない、こういうことになってくるわけです。  したがって、これは次の質問になってくるわけですが、どうしてもなければ、よほどの苛斂誅求をやるか、それをやらないとなると、また赤字公債を出さなければならぬ。大臣は絶対出さないとおっしゃっておりますが、補正予算がどうしても組めなければ赤字公債をまた出していくかどうかということにも追い詰められてくると思うのですよ。消費者米価を上げない、人事院の勧告を完全に実施するということになると、これは赤字公債以外に手はない。また消費者米価を上げて予算額を少なくする、人事院の勧告も完全実施しないということならば、あなたのおっしゃるようになるかもしれません。そこらはそう大臣の御希望どおりにはいきかねる。そういうことで、まず米価の問題を聞いておる。米価と公務員の問題と合わせてでもいいですから、再度お答えをいただきたい。
  62. 福田赳夫

    福田国務大臣 公務員の給与の問題につきましても、いませっかく検討中です。検討の態度は、公務員給与に関する人事院の勧告はこれを尊重する、こういう態度でございます。しかし、現実の問題としてどういうふうな尊重のしかたをするか。これは、これから財政状況、また物価状況、そういうことを総合的に検討してまいらなければならぬ。いずれ結論が出るのは、九月期の決算に基づきまして財源の見通し等を立てる、その後になるというふうに思いますが、目下検討中で、ここでどの程度の尊重をするかということは、お答えができないのであります。それから、第二の御質問である赤字公債を出すのか、こういうお話でありますが、補正予算を編成することはあり得ましても、その財源として赤字公債——あなたのおっしゃる赤字公債、私どもの言う歳入補てん公債ですね、これを発行する考え方というものは全然ありません。
  63. 只松祐治

    ○只松委員 いまのように税収がそんなに伸びなければ、人事院勧告は尊重する——尊重するというのは、完全実施するのが尊重で、完全実施しなければ尊重ではなくして割引ですから、尊重にはならない。だから、少なくとも完全実施に近い線を出すのが尊重です。  それから、気持ちとして消費者米価を引き上げたくない、こういうお気持ちならば、当然財源が不足してきますから赤字公債を出さざるを得ない。赤字公債を絶対に出さない、こうおっしゃるならば、いまの税収と見合って、当然人事院勧告も尊重でなくして大幅に値切られる、消費者米価もやはり上げていく。これはお気持ちはどうあろうとも、予算の財源を見てみると、どっちかにならざるを得ないわけですね。そのまん中程度をとるということもありましょう。  したがって、私は重ねて言いますけれども、赤字公債を絶対に出さない。これは去年も赤字公債というものは去年限りだということで、大みえといっては何ですけれども、絶対にしないということを大臣はおっしゃっているわけです。赤字公債を出すことは、おそらく私はないだろうと思う。そっちのほうを私はより信用したい。そういうことになれば、人事院勧告の完全実施も容易でなくなってくるし、消費者米価の引き上げということも予測されてくる、こういうふうに私は見る。これが当然だろうと思います。どっちをとるかという二者択一を迫るような形になりますけれども、私は、いま申しました人事院勧告もだいぶ値切られてくるし、消費者米価も上げざるを得ない、こういう予算の編成方針にならざるを得ないのではないか、こういうふうに理解しますが、違いますか。
  64. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ補正をどういうふうに組んでいくかということは全然考えていないのです。その中の大きな要因は、あなたのお話のような人事院勧告の扱いをどうするかというようなことで、これにつきましても今後の検討問題ということになるわけであります。補正は、総合的に四十一年度の予算を検討いたしまして、そうしてやるわけです。  これはもとより、場合によれば歳出面にも問題が波及するようなことがあるかもしれないわけであります。これは、たとえば米の生産者価格の引き上げに伴う不足を消費者価格の引き上げ、これだけに見合いをとって論ずるという考え方をいたしておるわけではない。総合的に国の財政全体をながめまして、どういうふうないわゆる補正をするか、積み上げばかりではない、補正をするかということを考えるわけであります。いま、全体を考える前に一つ一つを取り上げて議論をするというわけにはまいらない性質のものであることを御理解願いたいのであります。
  65. 只松祐治

    ○只松委員 次に、大臣が今回の認証式の直後に記者会見で、明年度予算で建設勘定と行政勘定に分けて、建設勘定を資本勘定にする、それから行政勘定を経常勘定、こういう形にして、建設勘定は国債でまかなっていくようにしていきたい、こういうふうにおっしゃったと発表しておりますが、間違いございませんか。
  66. 福田赳夫

    福田国務大臣 大体間違いはございません。
  67. 只松祐治

    ○只松委員 そうすると、これに伴って財政法も明年度は相当大幅にお変えになる、こういうお考えですか。それとも、財政法は変えないで、いまの財政法の範囲内でこういうことができるというふうにお考えになっておるのですか。
  68. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはなお御説明を要すると思うのですが、予算書を変えるとか財政法を改正するとか、そういう考え方じゃないのです。これから景気経済動き、そういう変動に対して財政金融も即応していくかまえをとらなければならぬ。  いまのお話財政の問題でありまするが、財政といたしましては、会社経理のように、ものの考え方として資本勘定と損益勘定、こういうふうに区分して事を考えていきたい、こういうふうに思っております。その資本的支出に対しましては、これは大かたを公債財源による、それから会社でいえば損益勘定、つまり政府でいえば行政勘定ですね、このほうは財源といたしまして租税収入その他の一般歳入をもって充てる、これを限度とする、こういう考え方でやっていきたい。予算がことしは四兆三千億円、これを一体として見ないで、そういうふうに区分して、その財源措置までも含めて事を考えていきたい、こういうふうなことを考えたわけであります。形式論としての予算書の変更をするとかあるいは財政法を改正するとか、そういうことを言っておるわけではないのであります。
  69. 只松祐治

    ○只松委員 これも形式上は変えない、精神的かあるいは実質的に変えるといいますか、そういうお答えのようですが、これだけのいわば精神的あるいは実質的な変更というのは、現在までの予算編成からいうと、相当大幅な変更ではないか。単に精神的な面にとどまらない。私はきょうは時間もございませんし、財政法の問題を論ずる時間もございませんが、その問題に当然触れざるを得ない、こういうふうに思います。  たとえば、建設勘定といい、あるいは資本勘定といっても、どこまでが建設勘定あるいは資本勘定であるか。学校の校舎、あるいは校舎の部分の教室なりどこかの部分を恒久的な鉄筋なりそういうものにするのを建設勘定とするのか、あるいは、ちょっとしたバラックみたいなものも資本的なものにするのか、これは予算の執行になりますとなかなか容易でない面が出てくると思います。  したがって、建設とは一体何だ。この問題は、この前の公債発行のときも多少は論議いたしましたけれども、なかなか白黒がつかないまま今日に来ておりますけれども、建設公債、赤字公債といい、建設勘定あるいは資本勘定といっても、何が建設勘定であるか、耐用年数何年までをそう見ていくか、同じ建物にしてもいろいろ問題が出てくると思います。だから、これをただ単に分けて、しかも、分けるだけならいいけれども、建設勘定は公債でまかなう、こういう形になってまいりますと、これは財政法上当然に私は問題が出てくると思う。きょうは時間がありませんからあれですけれども、まあ大体大まかにいって、どういうふうなことを建設とか資本勘定というふうにお考えか、その点だけを、時間がございませんから、ひとつ答弁も簡単に……。
  70. 福田赳夫

    福田国務大臣 建設費とは、政府が支出を行なうことによりまして、あとに国民の財産として残る、こういうような効果を生ずる経費ですね、そういうものを建設費と、こういうふうに申し上げたいのであります。それから経常費と申しますか、あるいは行政費と申しますか、そういうものは、一般の行政を執行するに必要な経費、かように理解をしておるのであります。
  71. 只松祐治

    ○只松委員 あとに財産を残すといったって、それは一年残すか三年残すか、五年残すか十年残すか、これはいろいろそれによって問題が出てくると思います。それは三年ぐらいは結局消費と見る、あとに残る財産とはならない、こういうふうな見方になってくれば、あなたのほうで建設と見ても、われわれのほうからはこれは建設ではない、消費だ、こういうふうになるかと思う。そこいらはなかなかむずかしい点がある。時間がございませんから、きょうはそれでやめておきますが、ひとつ明確にしていただきたいことを要望しておきます。  ついでに、いままでの予算あるいは国家のいろいろな財政を見ておりますと、予算だけ、たとえばことしは四兆三千億円、それで七千億円の公債というようなことでいろいろ論議しておりますが、日本財政を見ますと、財政投融資から始まって、国鉄だとか、電信電話だとか、いろいろな部面にこう分かれているわけですね。しかし、日本国民としては、全体のそういう財政は直接間接に国民生活に影響があるわけですから、単に表面上で出ておる国家予算なりあるいは地方予算だけでは、これはやはり本来の国民に対する親切な財政の提示のしかた、予算の提示のしかたではないと思う。たとえば、ここに国鉄の四十年度の予算、負債ついに一億円をこす、こういうぐあいに国鉄だけで一億円をこしておる。こういうのを全部合わせますと、負債額、赤字額は相当膨大なものになるわけです。諸外国でもそういうことをしておるところがたくさんあるようでございますが、日本でも総合的なわが国経済の面、特に国家関係のそういう予算の一覧表とでも申しますか、総合収支決算とでも申しますか、そういうものを、しかも、あまり複雑多岐にわたるものではなくて、国会にも国民にもわかりよくお出しになる必要、むしろ義務があると思うのです。ひとつそれをお願いいたしたいと思うのですが、いかがですか。
  72. 福田赳夫

    福田国務大臣 財政の運営の状況ですね、これは国民にもほんとうに知ってもらいたい。国会の主たる任務の一つは、やはり財政をどういうふうにするか、つまり、国民の供出というと語弊があるかもしらぬけれども、拠出するところの税が一体どういうふうに使われていくのだろうかというような点を考えますと、その税の使われる先々まで国民がよく理解し、そして使われ方について関心を持つ、こういうことなんかも非常に私は大事なことじゃないかと思います。それにはやはり財政が国民が見て理解できるような形であるべきである。先ほど私は申し上げましたが、予算書の形までは考えておりませんけれども財政の仕組みが、一般会計が一本の数字で出てくるというこの考え方、これに対して、建設勘定、行政勘定というよろな考え方を取り入れるべきだというふうに考えておりますが、これもそういう考え方の一端であります。しかし、政府会計は非常に複雑多岐でございまするから、これを一目で理解するという手段はなかなかむずかしい。せめてその中軸をなす一般会計と地方財政というぐらいなことはよくわかってもらわなければならぬというので、今日まで純計というようなことをやっておるわけですが、御説ごもっともでありますので、この上とも、国民に理解をされるための措置をどういうふうにするか、これにつきましては、また検討を重ねていきたい、かように考えております。
  73. 只松祐治

    ○只松委員 検討を重ねるだけじゃなくて、国会ぐらいにはぜひ出してください。それでないと、皆さん方は、日本経済全般がどういうふうになっているか、まあ財政指導ということを福田さんよくおっしゃるが、少なくとも半官半民みたいな、あるいは公共団体でどれだけどういうふうに使っているかということが十分把握できないで指導できないので、それは国会にひとつお出しいただきたいと思う。  それから税金で、所得税、法人税についてきょうはゆっくりお尋ねしようと思ったのですが、午後まであまりやらないというようなことで、たいていでやめてくれというお話ですから、時間がございませんので簡単に伺います。  その一つは、所得税の問題では、課税最低限がいま標準世帯が五人にとっておられまして、五人で六十三万一千円ですか。いまは四人になっておりますから、四人になりますと実際上は五十万四千円、この程度が本年度の課税最低限ということになる。表面上は五人家族で六十三万円、ところが、実際上この統計によりましても、これは同じく皆さん方の厚生省が出しておる統計ですが、現在推定でいきますと、昭和四十一年度ではすでにおそらく四人を割っておるという状態です。したがって、実際上ない五人の家計を使って統計をつくっている。あるいはそういうもので課税最低限の基礎をつくるということは、これはインチキと申しますか、大きな誤りだと思うのです。架空のものでそういうものをするということは、これは国民を欺くものだ。やはり現実に国民の家族構成が四人なら四人になっていれば、四人のものでこれはするのが当然です。皆さん方が一般政策として国民を欺瞞する場合にはそれでいいかもしれませんが、泉さんは泉さん、福田さんは福田さんで、自分のうちの家族は四人しかいない、四人しかいないのに五人の統計で六十三万円までといったって、実際上四人ですから五十万四千円までしか課税最低限が適用されないわけです。皆さん方はあまり月給なんか気にしていないほうでしょうからぴんとこないかもしれませんが、現実に家族構成がやがて三人家族かと、こういう時代になれば三人にせざるを得ないのです。少なくともいま四人ならば、これは課税最低限の基礎を四人にして計算をしていく、私はこういうことが正しいことだ、当然だと思うのですが、大臣どう思いますか。
  74. 結城義人

    ○結城説明員 所得税の課税最低限を公表する場合に、例示的に夫婦子供三人という五人世帯を例に引いておりますが、これは従来の家計調査報告や国勢調査によりまして、その当時の平均世帯人員を参考にして調べたものであります。最近の調査によりまして、平均世帯人員が四人に近い数字にだんだん落ちてきたということは承知いたしております。ただ、五人世帯で課税最低限が幾らであるかというふうに発表しておりますのは、課税最低限を判断する場合の一つ例示として用いているのでありますから、実際が四人になりましたからというので直ちに修正しますと、実は従来とのつながりが悪くなるのではないかということも一つ考え方でありまして、五人ということにいたしております。しかし、たとえば国会へ提出しております租税及び印紙収入予算の説明書等をごらんになりますとおわかりになりますように、一人の場合はどう、二人の場合はとう、三人の場合はどうと、ちゃんといろいろな例で計算いたしましてお示ししているわけでございますので、それらをごらん願えれば、課税最低限の比較検討に差しつかえはないかと存じます。ただ、標準世帯の人数が変わっていくということでありますれば、従来とのつながりが十分判断できるように考慮しながら、将来は適当な機会に変えていくということもあるいは検討してみたい、かように考えております。
  75. 只松祐治

    ○只松委員 四人だろうが五人だろうが、家賃なり光熱費なり何なり、家庭の世帯の基礎になるそういうものはほとんど変わらないのですよ。だから、あなたたちはそんなことを言っているけれども、一家の家庭の課税最低限が幾らであるか、四人であるか五人であるかということは、国民にとってはたいへん違ってくるのです。例示として五十万四千円であるか六十三万一千円であるか、そんなことを簡単に考えられたらたいへんな迷惑です。たとえば、配当所得は二百十四万円まで非課税、この課税最低限が二百十四万円というのは、これは一人に対して二百十四万円でしょう。それと同じように、課税最低限というのは、所得者の、一個の家庭の基礎をなすというは六十三万円まで税金がかからないのかという印象を国民に与えているいわゆる課税最低限なのです。あなたたちが言う四人なら幾ら、三人なら幾ら、そういう数字だけのものではないのです。したがって、課税最低限というものは、いろいろ所得税の問題の論議の場合の一番中心になって、われわれもずっと国会での論議の焦点にしているわけです。だから、簡単に、いや一人一人のをこうやってしておりますというのでなくて、算定の基礎を四人にすべきである、こういうことを言っておるわけです。  だから、ものの考え方を取り違えないで、ただ数字の例示としてやっておるということでなくて、今後そういうふうに課税最低限というものを、例示ということに限ってみても、あなたたちがする場合には、すべて四人にすべきである。三人になった場合には三人にする。昭和四十一年度の厚生省の推計によっても、四・〇三ですから事実上四人です。そういうふうにして計算をしていかないと、何かわれわれには——たとえば福田さんがいろいろ、課税最低限は五年後は百万円にする、こういうことをおっしゃっているでしょう。百万円だって、これは五人で百万円なら四人ならば八十万円ですからね。課税最低限はそういうふうに五人をとって百万円、こういうことを言っておるのです。そういうぺてんになるようなことをしないで、みずからの政府機関が四人と言うなら四人で数字をとって、あなたたちは例示が何とかかんとか、関連があるとかおっしゃるけれども、それはちゃんとすべきである。  むしろこういう問題は政治的な発表ですから、大臣どうですか、事務官のそういう答弁だけではなくて、大臣としてこういうものを扱う場合は——われわれも、所得税の六十万円か八十万円か百万円かというのは、政治スローガンとしてやっているわけですから、あなたたちも今後四人にする、こういうことをひとつここでお約束をいただきたい。
  76. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま五人家族、夫婦子三人の場合に幾らということを申し上げておるのですが、これは、一人の場合、二人の場合、三人の場合、四人の場合、五人の場合、六人の場合、課税最低限というものがこれに連動してきまっていくわけでありますが、その代表として夫婦子三人という家庭の場合の最低限ということを申し上げておる。これは戦前から夫婦子三人というのが一つの家庭だったのです。そこで、それとの比較対照上便利であろうというので、今日なお夫婦子三人の家庭をとって申し上げておるわけでございまするが、じゃ二人の家庭は一体どうなるかというと、最低限は相当低くならざるを得ないのであります。かりに四人家族の場合の最低限を代表して採用するという場合につきましても、二人、三人の人は、どうも最低限幾らというか、そこまでいっていないなというような感じを持たれる。これはどうしてもやむを得ないことなんです。しかし、平均がだんだんと四人に近づくという状態でありますれば、平均というところをとるのが穏やかではないかというような感じもします。しかし、それをとった場合に、前からの比較対照というようなことになりますと、まあ、ちょっとバランスがとれないというようなことになりますが、これはよく考えてみます。どっちがいいのか、別に他意があるわけではございません。欺瞞するとかいうようなことを言われますが、さような考えは毛頭ありませんことをよく御理解願いたいのであります。
  77. 只松祐治

    ○只松委員 欺瞞する意思がなければ、日本国じゅうが四人ならば、その実態に基づいて政治を行なうべきであって、実態のないところの数字を持ってきて論議するというのは誤りですよ、政治上からも行政上からも。実態のないものを持ってきて、あなたたち昔のことをいろいろ言うけれども、われわれが昔のことを言えば、昔のことだとあなた方は言うでしょう。実態のないものを持ってきて国会で論議するというのは、大きな誤りですよ。われわれ国会議員としても無責任きわまる話で、国民の実態、家族構成がそうならば、四人なら四人の家族構成に基づいて税制を論議すべきであって、実態のない論議をするというような、そういう無責任な政治があっていいものか。「(五人でいいんだよ」と呼ぶ者あり)いま自民党さんのほうから、五人だ五人だとおっしゃっておりますけれども、そんなことはない。基礎が違うから、家族のあれが違ってくるわけだから。だからといって、支出のそういう最低基礎になるもの、家賃とかそういうものは減るわけではないのですから、諸外国でも四人なり三人なり、そういうものに計算の基礎を置いておるわけですから変わるのが当然である。なぜ自民党の人が反発するか。それは下げなければならないからですよ。五人ならば、これからいくと七十八万幾らか、約八十万円にしなければ昔のものに追いつかない、昔と対比して論議する場合は。ぼくは時間がございませんから結論だけ言っておるわけですが、この五人ということに基礎を置いて現実の六十三万円までするならば、七十八万八千円にしないことには五人家族の六十三万円というものにはなってこないのです。その基礎が違ってくるわけです。新聞では上げ底というような皮肉な論評をいたしておりますよ。やはりわれわれがこの国会で論議する場合には、国民生活の実態に基づいて、国民の家族構成の実態に基づいて論議をして、それに基づいて所得税の最低限を言うべきであって、それのない所得税の論議というのはナンセンスですよ。  私は、時間がありませんから、きょうはそれ以上突っ込みませんけれども、またあらためてやりますが、ぜひひとつお考えをいただいて、論議する場合には、やはり国民生活のそういうすべての実態に基づいたものでひとつお考えをいただきたい。このことを要望いたします。  最後に、法人税の問題といたしまして、これもこの前から言っておりますが、欠損会社が三十九年度の発表を見ましても三一・一%、中でも工業は四八・九%、金融が三九・一%、こういうふうに非常に欠損会社が多いわけなんです。これと関連いたしまして、また金融機関の都市銀行の非常に大幅な利潤の増大、こういう日本経済の中でたいへんに矛盾した側面が税制上からも出ている。また、この金融機関が、公表で二百八十五億円ですが、税務署申告では六百六十五億円というように、その差三百七十億円というような過大粉飾と申しますか、そういうものが出されておるわけです。こういうものに対する適正なる税制上あるいは大蔵省の財政上からの指導ということも、中小企業に非常にきびしくなさっておるならば、もっとこういう点にも私はなさるべきだと思う。しかも、この欠損会社の三一%の中で七・六%というものが、前年の欠損がさらに増大していくというふうに、これは皆さん方の大蔵省の統計ですが、二年、三年と欠損が続いていって会社が存続している。こういうことはたいへんにふしぎな事実だと私は思う。こういう点の実態について論議をしようと思ったのですが、きょうは時間がございませんので私は意見を述べるだけにとどめますけれども、ひとつ皆さん方のほうとしては、ぜひこういう問題についてきびしいメスを入れて、適正なる指導をしていただきたい、このことを要望いたします。
  78. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 武藤山治君。
  79. 武藤山治

    ○武藤委員 福田さんが大蔵大臣になられてすでに一年を経過いたしまして、福田財政というものをあなた自身がたいへん手放しで自画自賛をしているような印象を、実は新聞で、ときどきの談話やあなたの意見発表から感じておるわけであります。しかし、あなたの新聞発表などでときどき聞くのは、自分は不況を切り抜けると同時に、物価問題もうまくコントロールをしている、あるいは福田財政の画期的といわれる国債発行を通じて、財政の指導により日本経済というものをリードしておるとか、貯蓄の伸びが期待できるとか、国民が、なるほど福田さんというのはそうやっておるのかなというふうに新聞を読んだときには感ずるのでありますが、現状日本財政経済というものに深くメスを入れると、どうもさほど福田財政が自画自賛できるような状態にはないのではないか、こういう印象を実は受けるのであります。  そこで、まず、四十分しか時間がありませんから、ほんとうの要点だけちょっと首を突っ込むぐらいしかできないのでありますが、いま景気が予想以上早く立ち直りつつある。福田さんの低圧経済論で、三年ぐらいはなかなか物価問題も景気問題も落ちつかぬだろうという再三の話でありましたけれども、かなり予想よりも上向きが早い。これは先ほどの堀先輩の質問のときにも明らかにされたわけでありますが、私は、景気を予想より早く上昇させた要因の中に、何といってもベトナム戦争の特需の影響というものがかなりのウエートを占めるのではないだろうか、こういう感じがするわけであります。  まず最初に、大蔵省の試算では、ベトナム戦争による輸出増加あるいは直接ベトナム戦争に使用される日本製品、そういうようなものを分類した金額というものは一体どのくらいになると計算をされておるのか、数字を明らかにしていただきたいと思います。
  80. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府委員説明いたさせます。
  81. 柏木雄介

    柏木説明員 昨年度の米軍関係のいわゆる特需でありますが、昨年度は三億七千五百万ドルございました。これは一昨年に比べますと約五千百万ドルの増加になっております。この増加した分の幾らがベトナムによるのかということは推測の域を出ませんが、ずっと年々少しずつ減っておりましたのが昨年から増加に転じておりますということは、ベトナムの影響が多かったかと思います。それから、ことしの四月から六月までの特需収入は一億一千七百万ドルであります。これを年率に換算いたしますと四億七、八千万ドルになりますが、そういたしますと、四十一年度の特需収入は、もし四−六の数字が続くとすれば、大体昨年度に比べますと一億ドル近い増加になるのじゃなかろうかと思います。
  82. 武藤山治

    ○武藤委員 大蔵省が把握している数字の根拠というか、積算の基礎というか、それはどういうところでどう調査したものを一応発表されたわけでございますか。
  83. 柏木雄介

    柏木説明員 これはIMF統計方式によりまして発表いたしております国際収支統計によったものでございます。
  84. 武藤山治

    ○武藤委員 しかし、実際には日本国内で生産された品物がアメリカにベトナム戦争関係の資材として売られている、あるいは台湾、韓国、こういう手を通じてベトナム戦争に加担する品物が売られている、こういう統計を正確に出すならば、いまの大蔵省の発表よりは数段高い数字になるのではないかと思いますが、いかがでございますか。
  85. 柏木雄介

    柏木説明員 ただいま数字をもって御説明いたしましたのが、直接米軍に売り込まれたものの数字でございます。いま御指摘のように、間接にベトナムに行っていると思われる輸出とかいうものがもちろんあろうかと思います。特に最近、ベトナム周辺地区の国では外貨収入がふえておって、その関係で日本からの輸出もふえておりますが、そのうちのどれだけがいわゆるベトナム関係のものか、ベトナム特需に類するものかという点になりますと、統計的に把握する法がないわけでございます。
  86. 武藤山治

    ○武藤委員 大蔵大臣、いまお聞きのとおり、アメリカ軍が直接日本から買ったその統計数字だけが、大蔵省発表の四−六月で一億一千万ドル、年間に延ばすと約四億七千万ドル、しかし、間接的にベトナム戦争に使用される製品をつくって日本から輸出されている金額というのは、学者や評論家の数字を聞くと、これは大体昨年一年間でも最低十億ドルはあるだろう、本年はおそらく二十億ドルに達するのではないか、すなわち、政府の輸出見通しの百億ドルの約二割、二十億ドル程度がこのベトナム戦争の影響による輸出増ではないだろうか、こういう判断がかなり印刷物で出されておるわけでありますが、そういう見方について、大臣はどうこれを論拠をもって否定されますか、いかがでございますか。間接的なベトナム戦争に参加する品物……。
  87. 福田赳夫

    福田国務大臣 こういうカテゴリーになるのじゃないかと思うのです。  まず第一は特需ですね。いま局長から申し上げたような性質のもの、それから第三国を通じて向こうへ流れていくもの、それから第三のカテゴリーは間接的影響とでも申しますか、たとえばアメリカのテレビ工場が軍需品を製造するのに忙しい、わが日本からテレビを購入するというようなカテゴリーのもの、そういう三種類に分かれるのではないかと思うのです。  第二種類、第三種類につきましては、これは非常に捕捉が困難でございます。私も、どんな程度のそういうものがあるんだろうかということを、商社の人なんかにも推計はできぬかということを聞いてみるのですが、商社のほうでもなかなか困難ですというふうに申しております。しかし、あなたがいまおっしゃるように、十億ドルとかなんとか申す人はありません。一億ドルありますか、一億五千万ドルですか、二億ドルになりますかというような程度の数字を、大きな商社のところで推算をして申しておりますが、そう大きなものではない。いま日本の輸出が非常に伸びつつある、特に対米輸出が伸びつつある。これはアメリカの経済全体の成長率が高い、そういうところにあると思うのです。その成長率がベトナム戦争による戦費支出、これに幾ばく影響されているかということでございますが、いま六%の成長、ことしはそのくらいになるだろう、こういうふうにいわれておる。しかし、ケネディ以来、景気成長政策をとって今日まで六十四ヵ月目になりますか、ずっとのぼり続けてきておりまして、この成長六十三ヵ月の水準というものはかなり高いものでございますから、そこでベトナム戦争の結果、それがどのくらいの高さまで押し上げられたであろうかというと、そう大きな幅でもないようにも思うわけであります。私もこの点は非常に関心を持っておる問題ですが、ただいまあなたがおっしゃるような大きなものじゃないような印象でございます。
  88. 武藤山治

    ○武藤委員 これは数字がないから水かけ論になりますが、とにかく、直接米軍に売るものだけでも年間約四億七千万ドル、五億ドル近い特需がある。さらに韓国、台湾、フィリピン、ベトナム戦争に参加している国との取引数字などを見るならば、十億ドルというのはややうなずける。なるほど、日銀、大蔵省の担当官が新聞にちらっとちらつかせた、実際に間接的なものを入れたら十億ドルから十五億ドルあるのではないか、こういうことも新聞報道に出ておりますが、私は、間接的なものを入れたらそれはあると思うのです。しかし、あるかないかは、証拠の出しようがありませんから論議はいたしませんが、あなたがわざわざテレビに、あるいは報道陣に、ベトナム戦争が終わっても、和平が成立しても日本経済には影響ないんだと、一国の大臣として言わざるを得ないというその気持ちの中には、やはりベトナムの戦争の問題がかなり日本経済上昇に向かわしている要因になっている、こういう判断をあなたのテレビの写真を見ながら感じたわけであります。あに、われ一人のみならんやだと思うのであります。  ですから、日本政府がそういう死の商人の肩持ちをして、日本経済の局面を打開しようという考えの片りんすら大臣の心の中にあったとしたら、これはゆゆしい重大な問題だと私は思うのであります。われわれは、やはりあくまで平和憲法の精神に徹してベトナム和平の一日も早からんことを期待しているのが日本国民でありますから、そういう特需にささえられたベトナム戦争があたかも天佑であるかのごとき感覚を心の中に持つこと自体が、大蔵大臣としての大きなあやまちの意識である、こう感ずるのであります。この点については、ベトナム戦争を和平に導くために、閣僚の一員として日本経済がベトナム戦争という天佑によって救われるんだというような意識をやめて、もしそういうものが片りんでもあるとするならば、閣議において堂々と和平の条件をあれこれと追求して、日本立場というものをしっかりと守ってもらいたい、こういう強い要望をしておきます。  時間の制限がありますから、次に進みます。  次に、財政原則は、私ども大学の当時は、いずるをはかって入るを制するという、私経済と公経済の基本的な違いはそこにある。私経済は、入ってきた自分の収入を基礎に何を買うかということをきめるのであります。公財政の場合には、出るものをまず押えて、出るものをきちんとはかって、入ってくるものはできるだけ国民に少なくしてやる、これを制限してやる、収入をできるだけ減らしていく、こういう原則が公経済原則であるとわれわれは教わったわけであります。それには強力な政治力で歳出というものをコントロールできる力がなければだめであります。  そこで、私は大臣にまずお尋ねするのでありますが、いま新聞やテレビでときどきにぎわしておる第三次防衛計画の問題であります。  防衛庁は、二兆七千億円という五カ年の防衛費予算を、すでに新聞その他によっても何回も報道されております。これに対して大蔵大臣として、いまの日本財政事情から見てどうコントロールしたらいいか。まず、公経済は歳出の優先的なもの、重点的なものから拾い上げるわけでありますが、この第三次防衛計画の二兆七千億円に対して、大臣として現在どういうお考えをお持ちでありますか。
  89. 福田赳夫

    福田国務大臣 ひとり防衛計画ばかりではないのですね。最近は、道路にいたしましても、住宅にいたしましても、港湾にいたしましても長期計画ばやりなんです。私はこの傾向というものは悪くない。やはり国政は長期的展望に立って進めなければならぬというふうに考えておるわけでありまするが、しかし、同時にその財源を一体どういうふうに調達し、そういう長期計画を執行することが国民経済にどういう影響を及ぼしていくかということも、これは特に考えなければならぬ。そういうようなことから、長期計画は長期計画としてよろしいが、その実施の段階におきましては、その時点経済全体の中における財政だという考え方のもとに、弾力的にこれはやっていかなければならぬというふうに考えておるわけであります。  たとえば、景気の側面から言いますれば、不況であるという際に公共投資が拡大される、私は、これはそういう気持ちでやっていいと思うのです。しかし、好景気設備投資が盛り上がってきたという際に、公共投資が長期計画であるがゆえにこれが過大になる、国民経済動きに比べて過大であるということになると、これはまた相当の弊害を及ぼしてくるであろう、こういうふうに考えておるわけであります。防衛計画につきましてもそういう考え方、つまり一つの展望を持つことはよろしい、ただ、これを固定的なものにして何か予算の先取りをするのだというような形であってはならない、これが基本的な考えであります。
  90. 武藤山治

    ○武藤委員 予算の先取りをするような軍部の力というものは、政治家に非常に強く反映するというのが歴史の教訓でありますから、こういう先取り的な圧力が加わってくると、大蔵省もへなへなといかざるを得ないのではないかという心配を私はいたしておるわけであります。  そこで、一体第三次防衛計画二兆七千億円をどうしても装備上必要と大蔵省は認識しておるのか、それとも、この際はアメリカ側と強い政治折衝をしても、こういう日本財政経済自体のときには、そんな膨大な、前回の第二次防衛計画の倍に匹敵するような、一挙にはね上がった計画は認められぬと、き然とした態度で他との均衡、振り合いというものを十分考慮して最後までがんばれる自信が大蔵大臣おありですか、いかがでございましよう。
  91. 福田赳夫

    福田国務大臣 基本的な考え方は、先ほど申し上げたとおりでございます。  防衛計画につきましては、いま防衛庁の説明を聞いておるという段階でございまするが、私は、防衛計画は国力に相応しながら逐次これを進めていくべきものであるというふうに考えておりますので、そういう考え方に従いまして、五年間の展望を一体どうするか、五年後の国力というものを想定して、その際の防衛計画というものはどこまで伸ばしていくべきか、伸ばし得るかというようなことをよく考えてみたいと思うのです。私のその基本的な考え方は、これは貫き通すつもりであります。  ただいま、何か非常に抵抗というか、圧力がかかって抵抗し切れないのじゃないかというようなお話でございますが、これは筋は必ず通す、かように御了承願います。
  92. 武藤山治

    ○武藤委員 私が非常に心配をしておるのは、おそらく大臣もそのことばを御存じだと思いますが、軍人で政治家だったアメリカのアイゼンハワー大統領が退官をしたときに、大統領を去るにあたってのことばが、軍部と軍需生産会社が完全に密着をしたときにアメリカの運命は左右される。アメリカの運命はそのときに危機に瀕するだろう、そういうことばをホワイトハウスに残して彼はやめたのであります。私は、このことばを、アメリカの軍人上がりの政治家の大統領としての経験からにじみ出る、非常に含蓄のあることばだといまでも感じております。  日本の場合、この第三次防衛計画予算が通るか通らぬかということによって、私は日本の運命を大きく動かすような事態にだんだん発展をしていく危険を感ずるわけであります。でありますから、この第三次防衛計画については、どういう日本の自己装備を必要とするためにこういう予算が必要なのか、私どもには理解できないのであります。平和憲法の精神からいうならば、こういう形で大きな自己装備というものをすべきでないという立場をわれわれはとっておる。憲法違反である。あなたは、国力、生産力、そういうものの上昇に見合って防衛力もどんどん増強しなければならぬと言うけれども、そういう考え方を無限に延ばしていきますと、非常に危険な最終点に私は帰着すると思うのであります。どうかそういう点も十分考慮して、入るをはかり、いずるを制するの財政原則というものを忘れないように、ひとつ大蔵大臣としてがんばっていただきたいことを強く要望しておきます。  時間がありませんので、次に第三の問題を簡単にお尋ねいたします。  昭和四十一年度の産投会計の予算というものが非常に苦しい状態に追い込まれた。その端的な具体的事実は、すでに外債の七千五百万ドル発行の予定が、本年中見通しが立たない。欧米諸国の高金利のために、どうも日本の外債は売れないというどたんばに追い込まれているような気がするわけであります。しかし、産投会計から出す金の用意は、もうすでに年末の中小企業金融対策の金も出さなければならない、インドネシアの三千万ドルの応急借款の金も産投会計から輸出入銀行に出さなければならない。歳出要因はすでに政府としては態度をきめている。また年々、年末の中小企業対策もやってきたのでありますから、これもやらぬわけにはいかぬと思うのであります。そこで、原資はどこから一体持ってくるのか。大蔵大臣は、わしが大蔵大臣になってから、貯金の伸びもいいし、蓄積ある会社、預貯金ある家計という私のキャッチフレーズは着々と進んでいると言わんばかりの談話を常に発表しておりますが、どうも郵便貯金の伸びを見ると、大蔵省が当初見積もった予定額よりも——増加額はわずか二百億円か三百億円程度ではなかろうかとすでに大蔵省は心配をしている。そこで、一体本年度の産投会計の原資、さらに歳出要因とにらみ合わせて、どういう処置をなされるのか、なかなか私は大きな問題だと思うのでありますが、大蔵大臣いかがでございますか。
  93. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話のように、なかなか財政投融資計画の実行は窮屈です。これは財政投融資のお話であると思うのでございますが、支出要因というものは幾らかふえる。それに対して、財源とも申すべき原資はどうかというと、その大宗である郵便貯金が予定よりそう大幅にふえる傾向ではない、そういうようなことから、なかなか窮屈に思っておるのですが、これはやらなければならぬことはやらなければならぬ、こういうことでございまするから、原資の状況なんか、今後の推移を見ますが、足らないところは、あるいは一部は予定のものを減らすというようなこともあるかもしれませんが、しかし、必要なものは充足するというたてまえのもとにその財源対策は講じていかなければならない。これはもう少し推移を見てからきめたい、こういうふうに思っておるわけでございます。いまの段階ではなかなか苦しい、そういうことを申し上げておきます。
  94. 武藤山治

    ○武藤委員 理財局長、そこで、この原資を調達し得る可能性の追求について、どういうことと、どういうことと、どういうことが一応想定できるか。あなたのほうは事務当局として、こういう方法ならその原資は調達できるんだ、見通しはあるんだという想定し得る問題はどのくらいありますか。
  95. 中尾博之

    ○中尾説明員 まだとにかく三カ月たったばかりでございまして、お話のようなことで実は考え方を整理いたしまして検討いたしましたことはまだないのであります。ただ、ただいま大臣からも御答弁がございましたように、どうもことしは見通しとしては相当苦しい年になるということは考えております。しかし、投融資の関係は、積極的に施策をもって財源を調達するというていのものではございません。もともと集まりました金の運用をはかるというのがたてまえでございますので、おのずからそういうところに限界がございます。したがいまして、今後、外債というお話もございましたけれども、なお状況推移を見まして、努力できるチャンスがあればこれをのがさないように努力するということであろうと思います。それから、あるいは仕事のほうにつきましても、それに対応して見通しがつけば、繰り延べるということも考えておるわけでございます。あと新しいいろいろな需要というものもございまして、これは当初の計画に比べましても、それに劣らない大事なものもあるわけでございます。  一方、これはそういう限られたワクの中でやるわけでございますので、そうなりますと、できるだけ念査を加えまして、資金を効率的に使うということで済ますことであろうと思います。  なお、郵便貯金等につきましても、郵政省にいろいろお願いをいたしまして、これはどうせ貯蓄に通ずるところでございますので、今後できるだけ状況に応じて努力をいたすということは怠ってはいかぬことであると考えております。
  96. 武藤山治

    ○武藤委員 いまの質問を掘り下げていきますと、結局、最終的にはまた政保債を発行して、金融機関に話し合って買ってもらおうか、こんなような準国債の発行に踏み切らざるを得ないようなことでは、財政投融資原資面もどうも赤信号がいま出ておるような状態だと思うのであります。  いずれにしても、福田財政というものは、この一年間どうやらまだひずみが出ない、片ちんばが出てこない、アンバランスが出てこない。国債発行に入ったばかりであるから、大臣も自画自讃できるのでありますが、どうも予算編成をいろいろ考えてみると、福田財政まさに壁に突き当たるという状態のようであります。いずれにいたしましても、政保債の発行ということになれば、また国債の発行や地方債の圧迫や、あるいは都市銀行と地方銀行の資金の偏在の問題や、いろいろな問題に逢着せざるを得ないと思います。私は資本主義経済の運営がすでに失敗をしたと価値判断をせざるを得ません。しかし、これをここで論争しても、四十分の時間では不可能でありますから、この問題はやめますが、どうか大蔵大臣として、中小企業の年末融資まで原資が足らぬから、これはストップじゃということのないように、繰り延べなどという理財局長のいまの判断のような考え方を持たないように、ひとつ御努力を要望いたしておきたいと思います。  第四に、接収貴金属のダイヤモンドや金の指輪、ダイヤが中心でありますが、これをデパートで販売さしておりますね。あるいは貴金属商組合に売らせておる。この接収貴金属の売り上げ状況は、大臣どう報告を聞かれておりますか。どんなぐあいですか。
  97. 福田赳夫

    福田国務大臣 報告をまだ受けておりませんが、まだ売り始めていないんじゃないでしょうかと思います。しかし、前景気はなかなかいいように思います。
  98. 武藤山治

    ○武藤委員 そこで、その売り上げ金をどう使用するかということについて、国会で決議なされていることを大臣承知でございますね。
  99. 福田赳夫

    福田国務大臣 承知しております。
  100. 武藤山治

    ○武藤委員 そうしますと、その売り上げ金は何に使用するという計画を現在お立てでありますか。
  101. 福田赳夫

    福田国務大臣 それはああいう性質のものでありますので、社会保障の財源として費消する、ただし、これは特定の財源という考え方は持っておりません。予算編成上、そういう心持ちをもちまして運用する、こういうことでございます。
  102. 武藤山治

    ○武藤委員 大臣、三十四年三月十日の国会の附帯決議で、「貴金属等の処分収入については、戦争犠牲者に対する援護等の経費に充てるよう政府において措置すること。右決議する。」こうなっておりますから、十分この趣旨を生かして、その売り上げ金の使途については考慮してほしい、強く要望いたしておきます。  それから最後に、これは地元の福田さんの所属する群馬県の問題で、私ども栃木県との県境でたいへんな混乱がいま起こっておりまして、いよいよ流血の惨事を見るのではないかという大騒ぎをしておる問題がございます。大臣もおそらく聞いておると思いますが、群馬県邑楽村千原田という場所に、し尿消化槽をつくろう、総予算は一億二千万円の予算であります。ところが、これが栃木県との県境五十メートルのところにできるために、栃木県側は、五十メートル離れたところに小学校、中学校があり、さらに間に水道の水源池が、三十メートルばかり離れたすぐそばにある。そこにうんこを処理する施設ができるということでありますから、これは困ったものだというので、一年半以来、自民党の坂村群馬県出身代議士と栃木県の森下國雄代議士との間で交渉が進められ、過般、鈴木善幸厚生大臣が足利へおいでになったときに、わしが厚生大臣をやっておる限り、両者の円満な話がつかない限りこれは認めない、起債も認めないし、国の補助金も認めないようにするから、白紙還元をさせるから安心をせいと言って、私の地元から立候補する衆議院候補——二、三千人集まったところでやったわけであります。これは私は、一国の大臣が円満話し合いがつくまでやらせぬと約束をしたのでありますから、当然閣議でもあるいは補助金や起債を査定する大蔵省としても耳に入っていると思うのでありますが、大蔵大臣、いかがでございますか。
  103. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ、私の耳まで来ておりません。
  104. 武藤山治

    ○武藤委員 主計局おりますね。主計局のほうでは、この一億二千万円の工事設計内容、補助金、さらに起債、どういう内容で、大蔵省の方針はどういうことになって、いつごろどうされるか、それをひとつお聞かせ願いたい。
  105. 岩尾一

    ○岩尾説明員 し尿消化槽の問題でございますが、私もこれは大臣がおっしゃいましたように、詳しくは聞いておりませんが、四十年度につけました九百万円の補助金が、いまのような紛争のために使えなくて、四十一年度に繰り越されておるというふうに聞いております。  それから四十一年度の予算につきましては、先ほど先生のおっしゃいましたように、全体の事業費、大体二年計画であったかと思いますが、その分についての措置をするというふうな含みをもちまして、これは実施計画の問題でございますから、全体のし尿消化槽の補助金予算がついているわけです。そこで、四十年度につきました九百万円というのが繰り越されて、しかも紛争のために使えない、こういう状況になっておるわけでございますが、われわれ主計局のほうの立場から申しますと、繰り越された予算について実際上実施ができなければ、これは流していただくよりしょうがない。それから四十一年度の予算につきましては、私のほうは総体の予算というものを厚生省と協定いたしまして、実際の実施計画について相談にあずかるわけでございますが、まだ詳しい実施計画の相談にあずかっておりませんので、どういうふうに措置されるかは承知いたしておりません。
  106. 武藤山治

    ○武藤委員 厚生省の局長にお尋ねします。厚生省も、いま前段で申し上げたように、大臣がわざわざ来足をしてくださって地元民に安心をさせたのでありますが、厚生省としていまどういう指導をされておって、これをあそこに着工させるのか。あの予定地は、最終的には行政指導として違う場所に変更させるのか。厚生省の指導はどうなっているのですか。
  107. 舘林宣夫

    舘林説明員 お尋ねの西邑楽衛生組合のし尿処理施設につきましては、昨年度九百万円の、二カ年計画の初年度分の補助金の交付をいたしたわけでございますが、地元で紛争が起きまして工事にかかれないということで全額繰り越しになっておるわけでございまして、この予算の補助裏の起債は千二百万円も引き揚げいたしているわけでございます。したがいまして、本年度に着工しますればやはり初年度になるわけでございまして、したがって本年度予算から第二年度分の予算を設定するという予定はございません。  なお、本年度予算のすでに交付いたした部分の着工につきましては、地元の紛争が解決しない限り着工しないようにという指導をいたしております。
  108. 武藤山治

    ○武藤委員 そうすると、局長、すでに交付済み額というのは幾らあるのですか。
  109. 舘林宣夫

    舘林説明員 ただいま御説明いたしましたように、九百万円交付いたしておりますが、繰り越しになっております。
  110. 武藤山治

    ○武藤委員 そうすると、厚生大臣が両県側で話が円満に解決するまで着工させない、それでどうしても話がつかぬ場合には白紙還元する、そういう声明を大臣がしているのですけれども、あなたはそれは御存じですか。知っておったとしたら、そういう方向で指導が可能かどうか。
  111. 舘林宣夫

    舘林説明員 七月中旬に大臣が足利市に参りましてお尋ねのような発言をしておることを私は承知いたしております。地元の紛争が解決つかない限りこの予算の執行は行なわないようにというのが私どもの方針でございまして、この方針に従って県を強く指導をいたしております。
  112. 武藤山治

    ○武藤委員 そういう指導に対して、県はそれはだめじゃ、もう予定地を確保したのだから、この予定地に何が何でもつくるんだという態度でございますか。それとも、厚生省の指導がなければ困るから、それでは皆さんの指導どおりに変更しましょうというニュアンスはあるのですか。どういう態度でございますか。
  113. 舘林宣夫

    舘林説明員 現段階においてこの設置場所を変更するかしないか、あるいは地元と円満解決をはかって話し合いで進めていくかということは、まだ結論が得られておりませんが、話し合いが終わらない間に着工することのないようにという当省の指導には県は従うものと、かように思っております。
  114. 武藤山治

    ○武藤委員 群馬県選出の、現在最も偉大なる政治家の一人である福田さんですから、いま厚生省の態度をお聞きになっておわかりだと思いますが、どうですか、隣の県と地続きですから、ほんの五十メートルのところにそういうし尿処理場を——学校の生徒もPTAも消防団も住民も全部、困るから何とかもっと離してくれ、学校はそばじゃ、水道の水源池はそばじゃという反対でもめている、話が円満につかないでいる、そういう県境の紛争問題については、当然これは両県の話し合いがつくまでは着工させない、こういう考え方は私は当然だと思いますが、福田さんいかがでございましょうか。そういう態度で御指導はできないものかどうか、いかがでしょうか。
  115. 福田赳夫

    福田国務大臣 私はいまそういう争いがあるということを初めて伺うわけで、その両者の言い分がどこにあるかも全然承知いたしておりません。また相談がありますれば、よく伺いまして、円満にいくように協力いたしたい、かように考えます。
  116. 武藤山治

    ○武藤委員 私は一国の閣僚の一人である厚生大臣が、円満解決、話し合いがつくまではという留保をしたというのでありますから、それをいまあしたからブルドーザーで地ならしを始めようというのでいま不穏な空気に地元がなっている。大蔵省もここで補助金を出し、起債を認可するのでありますから、大蔵大臣として、私はやはり当事者のような気持ちで、至急こういう事態について厚生大臣と話し合ってもらう。厚生省と大蔵省で県に対して、なるほどそういう方針で行政指導をしてきたのであるならば、この問題は話し合いがつくまでは補助金も起債も大蔵省としては認めるわけにいかぬかもしらぬ、そういう態度をとることはできませんか。いかがでございましょう。
  117. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうも両県当局で何か紛議がある、これはまことに遺憾なことです。私は群馬県ですから片棒のほうになる。そういうことが円満におさまるように協力いたします。
  118. 武藤山治

    ○武藤委員 環境衛生局長、いま大臣の腹の中は大体わかったと思います。  そこで、とにかく流血の惨事になったのではたいへんだ。いずれにしても、この紛争を早急に解決するために、大蔵省側と鈴木厚生大臣責任において早く話し合いをする、協議をする。そして、いまの起債や補助金の問題とからんで、この事業をどう指導したらいいかということを大蔵省当局とも早急に話し合いをしてもらいたいということを厚生大臣にあなた直ちに進言をしてもらいたいと思いますが、いかがでございますか。
  119. 舘林宣夫

    舘林説明員 この事例につきましては、厚生大臣みずから現地に行きまして、円満解決という方針を打ち出しておるわけでございまして、その円満解決の線に沿って局長以下努力するようにというのが大臣の強い御意思でございますので、御意思を体してやっておるわけでございまして、あくまでも地元の十分な話し合いという基本線は大臣は強くお持ちでございます。
  120. 武藤山治

    ○武藤委員 群馬県出身の福田さんから、さっそくこの場で、しかも大蔵委員会の席上で、群馬県側はそれをつくるのはまずいからストップじゃということばは出ないと思います。ただ私は、県境ならば何をつくってもいいというような——同じ日本人なんですから、しかも農村地帯で広いところなんですから、私はほかに場所もあると思うし、山林も一ぱいあるところですから、村なんですから——この中ですでにもう邑楽村はその組合から脱退をしてしまったんですね。局長、これは聞いていますね。三カ村でまとまった組合をつくって処理場をつくろうというのに、一カ村の土地を提供する村は、おれはいやだとやめてしまったのですよ。それにもかかわらず強引にやろうというのでブルドーザーを持ってきたものだから、地元は大騒ぎだ。同じ日本人なんだ。三十メートルやそこらの近くに学校がある、水源地があるということになったら、常識で考えても別な場所を見つけるべきだ。わずか九百万円の補助金がほしいために、あるいはすでにきまってしまったから、強引にやらないことにはあの補助金はもらえない、二度目はほかの場所をきめても大蔵省は補助金を出さぬだろう、認可にならぬだろうという地元の小さな心配をこの際はさせないように、やはり厚生省や大蔵省から親切に、もしこれがだめでほかになった場合も、一回ついた予算は優先的につけますからひとつ十分円満な話し合いをしなさい、こういう話を補助金と起債の担当官からやれば話は簡単におさまると思う。ところが、村会議員は、決議をしたことだから、九百万円がふいになってしまったのでは、われわれが国からもらえるものを返上してしまった、損をしたと村民からあとからたたかれはしないかというけちな考えからこれを強引に進めようとしておるのであります。隣の県なら迷惑かけてもかまわぬというやり方については、行政指導上問題があると思いますので、十分大蔵省主計局においても厚生省と話し合って、この問題が流血の惨事にならぬように、あすがそういう時点ということで心配をしておりますから、早急に打ち合わせをし、県側からも情勢を聴取して、すみやかなる、最も適切なる行政指導を心から期待をいたし、お願いをいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  121. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 平林剛君。
  122. 平林剛

    ○平林委員 私は、きょうはまず最初に大蔵大臣景気見通しについてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  去年の九月、私が景気見通しを尋ねましたら、福田さんは、つま先上がりでよくなるという文学的表現をされまして、以来つま先上がりで景気がよくなるということばがはやったのですけれども、ことしようやく一年たって新しい財政時代、公債発行、いろいろなことをおやりになってまいりました。この時期においては、一体どういう表現で日本経済をあらわしたらいいか、何か文学的表現がございますか。もし文学的表現がなければ簡単でよろしゅうございますから、大綱についてこの機会にお話をいただきたいと思うのであります。
  123. 福田赳夫

    福田国務大臣 今日までの経済動きは大体順調と見ております。  その要点は、景気が大体回復基調に乗ってきた、それから、景気回復政策をとると物価に悪い影響を及ぼしがちだというふうなおそれがあるわけでございますが、そういう不況対策をとるにもかかわらず物価のほうにそう大きな影響を及ぼしておらぬ、この二つの点をとらえて、私は大体順調である、こういうふうに見ておるわけでございますが、こういう状態が今後も続くように、これがこれからの課題になってくるわけですから、景気のなだらかな、しかも持続的な上昇、これはどうしても財政金融政策のかじのとり方、これが大きく響いてくる、こういうふうに見ておりますので、これからの動き、そういうものを見詰めましてかじのとり方に誤りなきを期したい、これが私のただいまの課題である、かように考えております。
  124. 平林剛

    ○平林委員 きょうは遺憾ながら文学的表現で経済の解説をお願いできなかったのですが、私に言わせると、福田大蔵大臣の今後の景気見通しの中に夏型気圧配置の乱気流が幾つかあらわれてきた、こういう見方をしておるわけであります。  そこで、きょう堀さんはじめ各委員からいろいろな角度からお尋ねいたしたわけでありますが、私は夏型気圧配置の乱気流の一つの事象としてお尋ねをしたいのですけれども、最近銀行の貸し出しが急増しておる。都市銀行の七月の貸し出しを見てみますと、昨年同期の五割くらいふえておる。地方銀行の貸し出し増加は昨年同期の二倍、そういう意味から福田大蔵大臣の低圧経済は二年ないし三年続くだろうという経済見通しが、むしろ意外に早いテンポで金融緩和基調についても変化してくるきざしがあるという見方が行なわれておると思うのであります。これについて、なぜこう貸し出しが高水準になってきたかという点は、大蔵大臣はどう観測なさっておりますか。
  125. 福田赳夫

    福田国務大臣 今日までの経済動きを見ますと、鉱工業生産が相当伸びてきております。ことしの一月からの上半期の鉱工業生産の伸びを見ますと、昨年に比べて、年率に直しまして一三%くらいになりますか、そのくらいの伸びになっておるわけです。そこで事業活動はかなり活発でございます。したがいまして、事業所要資金需要というものが起こる、これは当然でありまして、これが銀行その他の金融機関の融資に反映してくる。ただ、この融資の量がふえますが、これを分析してみると、設備投資の所要資金というものはほとんどまだ動かない状態であります。ただ、中小企業に対する融資が一部設備投資に回っておるというものも見られて、まず設備投資意欲が中小企業の方面から始まっておるというような観測もできるかと思うのでありますが、機械の受注、そういうようなことから見まして、ぼつぼつ設備投資への動きも今後始まるのではないか、そういうような観測もできるのでございまするが、今日はまだ、鉱工業生産、またそれに伴う出荷、そういうようなことから事業活動資金が動いておる、こういうふうに見ておるわけであります。
  126. 平林剛

    ○平林委員 こういう貸し出し増が異常に高い水準になっておるという一つの理由はいまお話あったとおりでありますが、政府の希望的観測でいけば、かなり景気回復テンポが早くなってきておる。こういう情勢の中で長期金利引き下げるという理由は一体どこにあるか。私はそこの点が少し矛盾を感ずるのですけれども、先ほど掘さんからお尋ねがありまして、この長期金利引き下げというものは一部銀行筋を手助けするためのものではないかというような観測の質問がございましたけれども、逆に言うと、もう一つの見方としては、現在の地方銀行や都市銀行の貸し出し増加の傾向からながめてみまして、金融がある程度今度は足らなくなってくるという状態になってくる、こういう観測があるわけでありますけれども、これと長期金利引き下げるというような理由、根拠というか、そういう理由は一体どこにあるのでしょうか。その説明が私にはどうも納得できないのですけれども
  127. 福田赳夫

    福田国務大臣 長期金利ですね、この関係するところの長期信用銀行系統の貸し出し、これはもう非常に低調なんです。むしろ、設備投資をしようという人は、そういう長期信用機関に行かないで市中に行って、そして市中からの短期借り入れをころがしているというような傾向が見られるような状態であります。つまり、それは長期金利短期金利との間の開きが大きくなってきておる、こういうことであります。  私は、前々から申し上げておるとおり、日本金利水準は諸外国に比べて高い、これは国際競争場裏において日本の産業を不利な立場にさせる、これはどうしても是正しなければならぬ、特に長期金利がそういうふうに短期金利動きと離れておるというような状態については是正する必要がある、こういうふうに考えるのでございまするが、しかし、そういう筋ばかりでなくて、当面の内外の情勢考えてみる、こういうことになると、いろいろ問題もあります。ありますから、引き下げるということは考えるが、しかし、その幅は、国内景気に影響せず、また国際収支にも影響せざる範囲内にとどむべきである、つまり小幅でいくべきである、こういうふうに考えた次第でございます。私は、今後といえとも日本金利水準——いまのような特殊な事情から海外金利も高い。高いが、私はそう高い水準が続くとは思いません。やがてはこれがある程度是正される時期もあるだろう。そういう際に日本の産業の国際競争力というようなことを考えると非常に不利な立場になる、今後とも金利水準の低下ということについては関心を持っていかなければならぬことである、こういうふうに考えます。
  128. 平林剛

    ○平林委員 金利水準の一般的な低下という問題については、金利は低いにこしたことはないという定義のあれではありませんけれども、そんなにそういう問題については原則的には議論はないと私は思うのでありますが、ただ、いまの景気見通しの中から長期金利をこの際いじっていくということは、これからの経済の中で異常な早いテンポで、あるいは景気が動いてくるというような観測も幾つか行なわれておるときに、あるいはいろいろな理由があったにしても、市中銀行、地方銀行の貸し出し増加が高いというような時期において、一体今後の経済に与える影響はどうなんだろうか。政府でも、来年度の予算編成にあたってはかなり景気の行き過ぎというものも警戒しながら、なるべく中立的な、あるいはある一定限度に押えていくような考え方がぼつぼつあらわれてきておるのですが、今度長期金利をいじるということは、福田大蔵大臣の言われておるそういう安定成長のワクを越えてしまうというような心配はございませんか。
  129. 福田赳夫

    福田国務大臣 それはありません。平林さんが、かりに二厘下がったからうんと金を使って事業活動をやろうという気持ちになるかどうか。私はそんな影響はないと思います。つまり、設備投資が起こってくるかどうか。これは、今日非常に過剰設備を持っており、その過剰設備を大体において稼働できるというところへきて、そうして、さらに今後の経済の伸びがあった場合に、その設備では足らぬという際に新たなる設備拡張という意欲になるけれども、この経済動きのほうがこの設備投資をきめるのであって、金利が大幅に変わってくれば格別ですが、しかし、二厘程度変わって、あなた自身が一体二厘下がったから金を借りるという意欲になってくるかどうか。私はそういうことはないじゃないかと思いますが、そういうこともそんたくいたしながら、これを大幅のものとしないで二厘、そうしてこの金利政策の大きな水準から長い期間でやらなければならぬけれども、この時点で二厘という小幅の利下げをする、これが適切だ、こういう判断をいたしたわけであります。
  130. 平林剛

    ○平林委員 長期金利引き下げ幅が大きければ、ある意味では経済的な政策として議論できるが、小幅であるというと、そこにいろいろな推測が成り立ちまして、私は、非常に矛盾があるし、疑問に感じておるのでありますが、これはきょうはこの程度にしておきます。  ただ、先ほど経済見通しについてお話があったときに、今日、一年間やってきて、景気政策そのものが物価にあまり影響を与えておらないという理由をあげまして御説明があったわけでありますが、この点については、きょうも質問がございましたように、卸売り物価上昇というものをそれならどういうふうに見ていくか。六月の卸売り物価指数で申しますと、五月を〇・六%上回って、昨年の六月に比べると四・四%の上昇になっており、ことし前半でも二・八%上昇しておる。三十年当時から四十年までは比較的安定していたものが、ここ一年の間に相当大幅な上昇が見られておるということは、やはり警戒すべき傾向ではないだろうか。  この上昇の理由も、この間まで政府がいろいろ御説明になっておったように、はがねの高値などのような国際的要因だとか、食料品などの季節的な原因、こういうようなものを越えて、他の問題についても上昇傾向が見られてきましたが、これは一体どう考えたらいいのか、今後一体どういうふうに見通したらいいのかという点について、福田大蔵大臣はどうお考えになっていますか。
  131. 福田赳夫

    福田国務大臣 経済運営をやっていく上において、国際収支と物価、これはもう基本的な条件として踏まえていかなければならぬ要点だというふうに考えているわけです。そういうようなところから、常にこの二つの問題には注意を集中しておるわけですが、お話のように、卸売り物価、これは少し上がりぎみになってきておる。ただ、上がりぎみになっておると申しますが、これは国際的な価格の要因というようなものもはね返ってくる。諸外国でも、ある程度の上がりがあるわけです。そういうようなことを捨象して考えますと、いまさっき藤山さんがおっしゃったように、二%とか、そういうような程度だということでございますから。それにしても、卸売り物価が上がるということは、これはもう重大な関心事です。今後この卸売り物価の動向というものには十分気をつけながら経済政策の運営をやっていく、また同時に、国際収支、これも細心の注意を払いながらやっていく、こういうことであります。努力はしていくということを申し上げます。
  132. 平林剛

    ○平林委員 この間の新聞記者会見で佐藤総理大臣がインフレはそよ風のようなものだと言われたが、そういうような考え方でいるから卸売り物価のほうについてもこういうような状態が出てくるのじゃないか、国民はそう感じているのです。特に、この卸売り物価上昇が、一時的な理由によらず一般の方面でも上がってくるというようなことになってまいりますと、一体消費者物価にどういうふうにはね返ってくるだろうかという点も非常に心配なんであります。  この点については、私どもきょうは十分その問題について議論をする時間がございませんから、いま福田大蔵大臣が言われたように、きめこまかく、これをそよ風のようなものだなんというような感覚でものをながめないで、十分注意を払っていってもらいたいと考えるのであります。そうでないと、やはり乱気流は次にあらしを呼ぶかもわからぬわけでありますから、注文をしておきたいと思います。  そこで、次に私お尋ねしたいのは、今月の二日ですか、閣議で、日銀券の発行限度額をまた引き上げましたですね。たしか今年度も三千億円か、その発行限度額を引き上げて、現在その限度額は二兆四千五百億円ということになったと聞いておるわけであります。  この発行限度額の引き上げの状況をずっとながめてみますと、昔——昔といいましても、いまから十二、三年前、昭和二十七年当時一度発行限度額がいじられて、それからいじられたのは昭和三十一年十二月、まあ三年か四年そのまま限度額を据え置いた。ところが、昭和三十四年からは毎年引き上げられて、三十四年、三十五年、三十六年、三十七年と、大体千五百億円ベースぐらいで引き上げられてきた。昭和三十八年からは三千億円のベースで引き上げられて、またことしも三千億円引き上げられた。こういうふうに発行限度額を毎年毎年引き上げておるという理由は一体どこにあるのでしょう。私は、今日までの日本経済の中における日銀券の発行限度額と物価、あるいは、極端なことばでいえば、インフレ的傾向というものはきわめて密接な関係があると見ておるわけであります。いま景気は順調だと、こう言われますけれども、その間において日本銀行券の発行限度額をまた引き上げた。これは一体どういうところに政府のお考えがあるのでしょうか。
  133. 福田赳夫

    福田国務大臣 ことしは三千億円ふやしまして二兆四千五百億円、こういうふうにきめたのであります。昨年も三千億円ふえた。昨年と今日と経済の実勢というものを比べますと、昨年と同額より以上にふえても別に支障はないわけでありまするが、まあ昨年と同額ぐらいにしておこうということから、まあその数字をとったわけでございまするが、私は、いまの発券制度のもとにおいて、やはり通貨の発行量というものを一応予定してその限度を守る、限外発行はなるべくこれをしない、こういうたてまえで金融政策一つの目標を持って運営するということがいいと思うのです。わが日本は、諸外国に比べまして非常に高い成長をしておるわけです。その成長通貨というものは必要なわけであります。これは長期にわたって見通してというと、そのときどきの金融政策の基軸となる通貨量の目標がぼやけてくる、こういうふうに考えるのであります。この数年間連続して毎年毎年改定する主義をとっておる。これは私はそれでいいんじゃないか、そういうふうに考えております。
  134. 平林剛

    ○平林委員 日本銀行券の発行限度額をきめるというのは、主務大臣福田さん、大蔵大臣がきめることですから、あなたがそれはそれでいいだろうということになれば、話はおしまいであります。しかし、私いろいろな資料で見ますと、昭和三十一年十二月当時の引き上げをする前の限度額が五千百億円であった。今回二兆四千五百億円に最高限度額が定められるといたしますと、三十一年当時から比べて四・八倍、五倍に近い。これは国民の総支出の伸びと比べますと、国民の総生産の伸び率のほうは三倍ぐらいでありますから、四・八倍というのはそれをこえておる。昭和三十七年七月の改定限度額が一兆二千五百億円でありましたが、今回二兆四千五百億円でありますから、三十七年と比べても一・九六倍、この時期における国民総生産の伸びは一・四倍でありますから、一・九六倍というのははるかにこれをこえておるわけであります。私は、日本銀行券の発行限度額というものの基準をどこに置くかというのはいろいろ議論があると思うのでありますけれども、少なくとも、国民総生産の伸び率をはるかにこえて発行限度額を定めていくというやり方は、従来の経済の動向、推移から見て、やはりインフレ的傾向を促進するものになるのではないかという感じがしてならぬのであります。あなたはこれでいいのだとおっしゃるけれども、こういう心配は全くございませんか。
  135. 福田赳夫

    福田国務大臣 それじゃ、十年間を見通して先をきめておいて、それで第一年度に大幅にふえてしまったというようなことになったら、一体どうするか。それよりは、私は、毎年毎年その年の経済の成長——これはあなたのおっしゃるとおり成長が基軸です。それから資金の需給、つまり貯蓄が一体どうなるかというようなことも大きく響いてくるわけであります。そういうようなことを見通しまして、この程度の節度を守ろう、それを毎年毎年やっていく、このほうがやはりよほど合理的で、また効果的である、こういうことを申し上げておるわけであります。しかし、らちを越えてはならない。ことしは三千億円、去年も三千億円。これは理屈からいえばもっとふやしてもいい理屈なんですが、私どもは、節度をもって金融政策をやっていきたいという気持ちをあらわしまして、ことしも三千億円にこれをとどめる、こういうふうにしたわけであります。
  136. 平林剛

    ○平林委員 合理的であり、効果的であり、節度をもって金融の調整をするという、それはことばはいい。しかし、こう毎年毎年そのときの経済情勢に応じて発行限度額を直していくというやり方が、はたして大臣のことばどおりにいくかどうか。そうして、単年度、一年一年ずつに変えていくほうが合理的、効果的だ、こうおっしゃるけれども、昭和二十七年あるいは三十一年にいじった以外は、昔はそうこの問題についてはいじらなかった。これをかってにいじるころからインフレ的な傾向というものが増加しておるということから考えると、いかにこの発行制度の法規が、主務大臣が閣議できめることができるということになっておりましても、私は問題があるのじゃないかと思う。  そこで、国債の発行だとか、あるいは最近の経済、私のことばで言えば、夏型気圧配置の乱気流が発生しそうな状態においては、こうした問題についてもっと厳格でなければならぬ、インフレに対する警戒という面ももっと慎重でなければならぬということから、われわれはふだんから日本銀行法の改正という問題を政府に何度か迫っておるわけです。ことしですか、昨年ですか、日本銀行法の改正の問題について大蔵大臣にただしました。目下慎重に検討中というお答えがありましたけれども、慎重に検討することよりも、あなたのこれからの長期経済の展望に立てば、この問題については当然触れていかなければならぬ時期にきている。むしろおそい。近く総選挙があるといううわさもあるけれども、総選挙と経済とは別に考えていかなければならぬわけでありますから、次の通常国会にはこの日銀法改正は至急に提出すべき段階にきていると私は思います。次の国会に提出する用意があるかどうか、日銀法改正について大蔵大臣からお聞かせいただきたい。
  137. 福田赳夫

    福田国務大臣 日銀法の改正案は一昨年でありまして、これが国会提案には至らなかった。これは御承知のとおりですが、そのままの法案でいいのかどうか、私もいま考えておるわけですが、少なくともその後財政法の改正というような問題が——財政法というか、公債発行というような新しい事態が起きている、こういうようなことに伴いまして、どうも多少の手直しが要るのじゃないかというような感じを持っておるのでございます。ただ、そういうようなことから、どうしても日銀法というものは、多少の手直しをした上で、いずれは全面改正をしなければならぬ、そういうふうには考えておりますが、さて、そのタイミングを一体どうするかですね。日銀法の全面改正というと一種の金融基本法の改正というような性格のものですから、これは国会の審議というようなこともよほどよく考えなければならぬ。大蔵委員会がそれに没頭して、他の議案のほうをおろそかにされるというような傾向がありましても、これは困る事態になりはしないかということも、一応一つ考えなければならぬ点と私ども思っておるのです。  そこで、これが提案されたら、またたなざらしで継続審査というようなことでも、これもぐあいが悪いだろうし、提案される以上は一挙にこれを御審議願い、決定していただく、こういうことにしていただきたい、こういう気持ちでございます。こういうことで、次の国会にこれを提案するかしないか、これはいま少し慎重に考えて結論を出したい、こういうふうに思っております。まだ日銀法の改正案の骨子につきまして、その第一段階として検討しておる、こういう最中でございますので、これを提案するかしないかはここでまだお答えいたしかねる、こういうことで御了承願います。
  138. 平林剛

    ○平林委員 私は、最近の経済から考えてみまして、この問題について慎重に検討しておるというようなことだけで時期を過ごすことが適当であるかどうか考えなければならぬと思う。きょうの理事会でも、大蔵委員会にひとつ財政制度に関する小委員でも設けて、そうして今日の財政問題に関する全般のことをもう少し専門的に進めたらどうかという提案があったわけであります。与党のほうでも、これは非常に重要な問題であるから検討しようじゃないか、こういう議論がありました。(発言する者あり)はっきりした返事があったわけではございませんけれども。ところが、そういうふうに、ただ自分の頭で、さっきの日銀券の発行限度額の問題でも、唯我独尊で、私は適当だと思うとか、効果的であるとか、何だかんだと言っておられますが、御自分の御判断だけでやる問題とは違って、これはやはり相当大きな問題であろうと思うのであります。これは国会内の問題で、政府に意見をただすのはおかしいけれども、そういう野党としての考え方もあるのですが、あなたの御見解はいかがですか。
  139. 福田赳夫

    福田国務大臣 野党、与党を通じまして、国会においてはでき得る限りの御検討を願うことが望ましい、それはそういうふうに考えております。
  140. 平林剛

    ○平林委員 そのことばが具体的な態度として示されるということが必要なんでありまして、きょうの御答弁、私は実際に具体化せられることを期待をしてお聞きをしておきたいと思うのであります。  そこで、最後に、もう時間がございませんが、実は卸売り物価の高騰の問題に関連をいたしまして、いろいろ考えなければならぬ点があるのではないかと私思いますし、大蔵大臣も、この問題についてはいろいろな角度から慎重に検討するというお話がございました。いまの情勢から見ますと、一般の産業あるいは企業において、経費の節約だとか、あるいは設備投資の節約をするとか、企業間信用を減らすとか、いろいろな企業努力をやりましても、企業内容を改善する効果があまり出てこない。そこで、次第にこういう不況を脱するためには卸売り物価を今後上昇させていくのではないか。いままでは下がるべき卸売り価格が下がらなかったということが私たちの議論の対象でありました。そこで、管理価格にもう少しメスを入れる必要があるとか、いろいろな議論がされてきたと思うのですが、私は、ここまで十年間にわたって安定をしてきた卸売り価格というものは、最近の実情から見ると、かえって企業の側から積極的にこれを引き上げていく要因が生まれてきたのではないか、そうなると、今後の物価景気という点について国民生活という面から相当注意を払わなければならぬと実は考えておる。そこへ持ってきて、この間の閣議で、藤山企画庁長官でしたか、あるいは三木通産大臣でありましたか、いろいろな製品の国内価格と輸出価格の違いについて指摘があったという記事を私見たわけであります。  具体的に言うと、カラーテレビ十九インチがおおよそ十九万円しているものを、海外に売り出すときには六万円か何かで売り出されておる、これは非常に今後の物価あるいは国民生活に与える影響から見て検討しなければならぬ問題だというような指摘があったと聞いておるわけなんです。きょうはこの問題について大蔵大臣にも注意を喚起してもらいたいという意味から若干お尋ねをしたいと思うのであります。  通産省来ておりますか。——このカラーテレビがこんなに違うのはどういう理由なんでしょう。
  141. 赤沢璋一

    ○赤沢説明員 ただいま御指摘のカラーテレビでございますが、お話のように、十九インチで国内の小売り正価は、物によって若干違いますが、十九万八千円前後だと思います。私どものほうで調査したところによりますと、このテレビがメーカーから卸売り業者に売り渡されております価格、卸に出しております価格は約十五万円前後であります。それから、輸出の価格、輸出FOBの価格は、御指摘のように、これまたいろいろの種類がございますので一がいには申し上げられませんが、平均をとってみますと、大体六万五千円程度というふうに調査の結果相なっております。この違いがどういうふうになっておるか、いまの約十四万五千円、この卸に出しておる価格、それから輸出FOBの平均が六万五千円ですから、八万円強違っておるわけであります。  この違いを調べてみますると、第一の要因は、物品税の問題であります。これは輸出のものには物品税がついておりませんので、当然それだけ安くなってまいります。それから、第二は、輸出ものと国内ものと相当規格が違っております。たとえて言いますと、キャビネットその他、こういつたものは、国内のものはカラーであるということで非常にぜいたくなしろものになっております。そういう点の違い。それから、第三には、宣伝広告費あるいはアフターサービス費といったような、いわゆる広義の販売経費、これが輸出の場合には、いわゆる売りっぱなしでございまして、あとございませんので、そういった関係の費用が違っておるというふうに私どもの調査の結果判明をいたしております。  以上のような点が大体違いでございますが、何ぶんにも、カラーテレビは現在まだ四十万台程度、白黒のテレビが御存じのように四百万台つくっておりまして、約一割程度でございますので、これからいよいよ本格的に増産をいたしまして売っていこうというわけでございますので、漸次生産コストも下がってくるのじゃないか、かように考えておるわけであります。
  142. 平林剛

    ○平林委員 この問題を三木通産大臣が指摘されてから、新聞に伝えられておるところによると、いまのお話の価格から、十九インチのカラーテレビでまた一万五、六千円ですか安くするというようなことを発表しておるようですね。私は、あの閣議で大臣がこういう発言をされたということでカラーテレビが一万円も安くなるということなら、大蔵委員会で平林剛が発言すれば、ほかの価格についてもかなり違いが出やせぬか、これは国民にも喜ばれることだから、この際大いにこの問題について福田大蔵大臣考えをわずらわしておきたい、こう思ったのです。  実は、去年私の調べたところによると、きょうは一部の製品に限って申しますと、噴流式の電気洗たく機が、国内販売価格大体二万円から二万三千円ぐらい、輸出価格は六千五百円くらいに私の調査ではなっておるわけであります。それから、家庭の電気がま、これなどは輸出価格がわずかの九百五十円くらいであるというふうに承知しておるわけであります。この間、少し柄は大きくなるけれども、自動車のブルーバードの国内販売価格六十万円に対して輸出価格は三十六万円、こういうようなことがございましたけれども、まだちょっと一般の家庭では自動車まで手が届きますまいから、家庭電気製品ですね、扇風機にしても、あるいは電気洗たく機にしても、それから電気がまにしても、そういうものの国内販売価格と輸出価格というものは大体どのくらいになっていますか。あなたのほうは最近調査を始めたというから、家庭に一番影響を与えそうな品目を選んで御説明いただきたいと思います。
  143. 赤沢璋一

    ○赤沢説明員 ただいまちょっと例に出ました電気洗たく機でありまするが、確かに輸出価格のほうが安いことは事実でございます。ただ、いまお示しのような価格のものについて私どもの調べたところですと、旧型の在庫品、これを一括して輸出したというときの値段ではないかというふうに考えております。電気洗たく機とかそういった家庭電気製品は、御存じのように、年々新型が出てまいりまして、型がどんどん変わっております。これは同じ値段でも内容がよくなっているということでございますが、したがって、旧型のもののストックが相当国内ではたまってまいる。そういったものも海外では向け先によっては売れるということで、出す場合に、いわゆる普通のわれわれがある程度適当じゃないかと思われるような輸出価格よりも安値で出るというケースが間々見られるわけでございます。これは大体の目安でございまして、はっきりいたしませんが、メーカーが卸に出す価格、さらにそれから国内小売り価格というものがございますが、私どもの調べているところですと、卸売り業者の平均のマージン、こういったものが約一割程度、それにさらに小売り商のマージン、これは実はものによって相当違っております。違っておりますが、耐久消費財関係でも非常に売れがいいものと悪いものといろいろございますが、大体見てみますると、二割から三割まで、このくらいのところが大体小売り商のマージンだというふうに見ております。そういったものを除きまして、単純にメーカーが卸に売るところの卸売り価格、それと輸出のFOB、これの差額をとってみると、大体約二倍弱ぐらい、こういったのがどうも一般の輸出のときの価格のようであります。これはものによって非常に違います。先ほどのテレビの例で見ますると、FOBが六万五千円、卸の価格が十四万五千円でございますから、二倍よりもちょっと高いのでありますけれども、大体大ざっぱな目安で言いますと、その程度の開きがある。この開きは、先ほども申し上げましたように、主として営業経費、販売経費、これが輸出の場合には売りっぱなしでございまして、向こうで宣伝もする必要がないし、それから、あとのアフターサービス、こういったものも必要でない。あるいは在庫するための金利の問題、こういう問題もないということで、大体その辺のところが大ざっぱな輸出FOB価格とメーカーの卸商への価格の目安ではないか、かように考えております。
  144. 平林剛

    ○平林委員 いま具体的な物品についての具体的な数字のお答えがありませんでしたが、きょうはようございます。しかし、この問題については、大臣の指示もあって、あなたのほうでは各物品ごとに調査を進めておる。これは商工委員会の管轄かもしれませんが、われわれは、国民経済全般から見て、こうした問題については重要視しておる。  そこで、資料をできましたら委員会にも提出をしてもらいたいと思います。  それから、いまいろいろな御説明がありましたけれども、それは確かに新型がどんどん毎年のように発売されておるのは私たちも承知しています。しかし、私たちから見ると、そんなに型を変えてもらわなくてもいいわけです。電気洗たく機に三十何種類も種類があるなんということは必要はないのですよ。これはうちの女房に聞いてもそう言っていますよ。ですから私は、こういう経済のもとにおいて、やはり国民生活を安定させていく上においては、通産行政の中でも、何も型ばかり変えていく必要はない。それは、自由主義の時代ですから、ある程度好みに合わしたものはいいでしょうが、たとえば電気洗たく機に三十六種類もあるなんという必要は私は全くないと思うのです。それから、いま旧型のストックがどんどんたまって売り出されて安くなるというお話ですが、それなら、国民は旧型でもいいですから安いものを買いたい。カラーテレビとまで言わなくても、普通のテレビでも、五、六万円のものが、輸出価格は私の計算では一万四千円から五、六千円で売り出されておる。古いものでもいいですよ。買いたくって困っている人がいるのですから、そういうものを売り出すようにはかったらどうですか、こう言いたいのです。私は、これは国民感情だと思うのです。  そこで、大蔵大臣、こういう問題が閣議で問題になっているときでございますから、あなたも経済閣僚の一人として、国民生活の安定ということを考えるならば、これには十分メスをふるってもらいたいし、この点について十分な関心を払って、閣議でも発言をしてもらいたい。大蔵大臣の言うているゆとりある家計をやるためには、やはりここから始まったっていいのですよ。ぜひこれをやってもらいたいということを希望するのでありますが、お返事をいただいて、私の質問を終わります。  それで、資料を提出をしていただきましたら、またあとでこの問題について私はいろいろ取り上げたいと思いますから、よろしくお願いいたします。
  145. 福田赳夫

    福田国務大臣 十分気をつけてまいりたいと存じます。
  146. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 本日は、これにて散会いたします。    午後一時五十九分散会