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1966-03-25 第51回国会 衆議院 法務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月二十五日(金曜日)    午前十時三十分開議  出席委員    委員長 大久保武雄君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 田村 良平君 理事 濱田 幸雄君    理事 井伊 誠一君 理事 細迫 兼光君       鍛冶 良作君    四宮 久吉君       田中伊三次君    神近 市子君       小林  進君    山口シヅエ君       横山 利秋君    志賀 義雄君       田中織之進君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      日原 正雄君         法務政務次官  山本 利壽君         検     事         (刑事局長)  津田  實君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁警備局         警備課長)   後藤 信義君         検     事         (人権擁護局総         務課長)    辻本 隆一君         文部事務官         (大学学術局大         学課長)    吉里 邦夫君         文部事務官         (管理局振興課         長)      犬丸  直君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      寺田 治郎君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 三月二十五日  委員賀屋興宣君及び山本幸一辞任につき、そ  の補欠として鍛冶良作君及び小林進君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員鍛冶良作君及び小林進辞任につき、その  補欠として賀屋興宣君及び山本幸一君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政に関する件  法務行政及び検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 大久保武雄

    ○大久保委員長 これより会議を開きます。  裁判所司法行政に関する件、並びに法務行政及び検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神近市子君。
  3. 神近市子

    神近委員 いろいろの都合で私は二日間この質問を続けておりますので、きょうは三日目になります。そちらの御都合でこうなったので、きょうはきのう大体触れたことを、次官おいでになっていなかったようですし、ちょっとあげますと、私、官僚組織というもの全体についての批判、そして特に法務官僚人権の問題、日本国民の安全、権利というようなものを引き受けておいでになるのですが、特に私がきのうからお伺いしているのは、この問題についていいあんばいに、さすがに石井法務大臣で、この間の次席検事の会同で、人間人権を知るということを最大目標にするような御講話をなさっていますから、私はその意味でひとつ国民保護人権保護ということに全力をあげていただきたい、こういう要旨でこの質問をやっているわけでございます。  官僚というものは組織的に権力を代表するグループだし、組織の中にいると、一番怠けておとなしくしているほうが、一番出世が早いという批評があるということ、これは私が言うのじゃないから、別に皆さん怒らないでいただきたいのですけれども、それは自分もその中に入って、いままで大学を出たりあるいはいろいろ研究して、私、部内からの批評だから、これはほんとうだろうと思うのですが、外から見ていてもそう見える。どこにも、大蔵官僚とか外務官僚とかいろいろありますけれども法務官僚というものは、何だか別世界のような、何だか権力を代表するという気持ちが、国民には非常に強いのです。その点で帝国憲法時代からの伝統もありますし、皆さんの心がまえのうちに、その帝国憲法時代のものが、特に私は検察庁に強いような感じがいたします。そういうことで御反省を願い、そして幸いに大臣がそういう感じを持っていらっしゃるなら、指揮監督というようなこともできるのではないかというのが、私の意図したところでございます。  きのう青梅事件判決がありまして、ちょっといろいろ出ていることがあります。新聞批評なんかを見ましても、検察庁黒星だというようなことを書いた新聞があるのです。そうなると、私きのうは検察行政あるいは法務行政の白星というのですか、勝ち星だと思ったのですけれども、きのうの新聞が、検察庁黒星だというふうなことを書いてあるのですけれども、あれはどういうことを意味するのか、だれか説明ができる方がありますか。検察庁はきのうの判決黒星だ。——どもはこの問題ではいろいろ材料を持っておりますから、幾らでも話ができると思うのですけれども、あの黒星というのは、検察庁がしくじったという意味なんですか、どういうことなんですか。だれか検察庁の方いらっしゃいますか。批評ですからこれは責任はないですよ。ただ私にはちょっとその気持ちがわからないから、それを伺いたいのです。
  4. 津田實

    津田政府委員 私もさような表題が出ておったことを、昨日見ましたわけでございます。その意味するところにつきましては、記事を書いた人の意見でありますから、私もはっきりは、それは申し上げることはできませんけれども検察官が罪責ありといたしまして公訴を提起いたしました事件につきまして、原判決が維持できなかったという意味において、検察庁に何らかの手落ちがあったのではないかという意味でないかと私どもは理解しております。しかしながら、検察官公訴を提起いたしました事件につきまして、有罪判決があるのが大部分でございますけれども、中には、わずかながらやはり無罪事件がございまして、その無罪事件につきましては、それぞれ理由があると思うので、その理由検察庁を納得せしめるものがあれば、無罪事件の確定をさせるということが、いままでの検察運営の通常でございます。したがいまして、そういう意味におきまして、検察官は一たん起訴したら何が何でも有罪でなければならないというふうに考えているわけではなく、正当な裁判にして納得せしめるものがあれば、検察官といえども無罪判決その他の判決に対して、不服を申し立てるというようなことはいたしておらぬわけであります。そういう運営には少しも変わりはないのでありますが、あるいは検察庁有罪として起訴したものが無罪になった、——青梅事件無罪になっているわけではございませんが、一応原判決が破棄されたという意味において、検察官考えていることが通らなかったのではないかということを考えて、あのような表題になっておるものかというふうに私どもは推測しておる次第でございます。
  5. 神近市子

    神近委員 それは刑事局長は第三者としておっしゃることなので、私は検察庁の方がどなたかいらっしゃるならば、検察庁自身がどういう感じをもってお受け取りになるか、——これは青梅事件だけじゃないのです。松川事件にも同じようなことが起こっているし、それを検察庁は、——いらっしゃらないのですか、きょうは。
  6. 津田實

    津田政府委員 検察庁法務省の中の機関でございますが、検察庁自身につきましては、これは政府委員を認めておりません。法務省刑事局検察庁管理全般をやっておりますので、検察庁考え方というものは、私どもにはわかっておるわけでございます。私どもがそれを管理しておるわけでございますから、その意味において私が御説明を申し上げるわけでございます。
  7. 神近市子

    神近委員 きのう私は読み上げたと思いますけれども訴追委員会のヒヤリングでも、それからここで小委員会が一度できていたことがありますが、そのときに日弁連の副委員長さんが見えまして、どうも検察庁再審を取り上げるということをしない、——ずいぶん出願していますよ。それがなかなかそれを取り上げない。そして、長らく引っぱっておいて、紙二枚ぐらいのことで却下する、これがいま非常にたくさん行なわれている、そういうことを言われていたようですけれども、その点で、それを扱うのはどこですか。その再審決定するのは、検事さんたちですか。(「高裁だ」と呼ぶ者あり)高等裁判所ですか。それが非常に多い。でも、実務をやる人は、だれですか。
  8. 津田實

    津田政府委員 再審につきましては、御承知のとおり、刑事訴訟法規定がございまして、再審請求のできる者は、有罪言い渡しを受けた人、それから検察官、その他有罪言い渡しを受けた人の法定代理人とかいうような人がありますが、一応有罪言い渡しを受けた御本人と、それから検察官再審請求をいたすわけであります。その再審請求をいたしますと、管轄の裁判所がその再審につきまして決定をする。再審請求理由があるときは再審開始決定をしなければならないということになっております。したがいまして、その請求を受けた裁判所再審を開始する場合にはその決定をする、こういうことになるわけであります。
  9. 神近市子

    神近委員 裁判所法の第三条の二項と三項につきましてお尋ねしますけれども、二項の「前項の規定は、行政機関が前審として審判することを妨げない。」こう書いてある。この行政機関というのは検察庁のことですか。
  10. 寺田治郎

    寺田最高裁判長官代理者 これは検察庁という趣旨ではございませんでして、現在の制度で申し上げますと、たとえば特許審議会というようなものがこれに当たろうかと考えます。あるいは海難審判というものもこういうものに当たると考えてよいかと思いますが、そういうようなものが考えられておるわけでございます。検察庁趣旨ではないということでございます。
  11. 神近市子

    神近委員 この三項に、「この法律規定は、刑事について、別に法律陪審制度を設けることを妨げない。」これは読んで字のとおりに解釈していいことですか。だれかわかる方がありますか。
  12. 津田實

    津田政府委員 これは現在の第三条におきまして、「裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。」こういうふうに第三条一項にあるわけであります。裁判所は、一切の争訟について裁判をするのが原則でございます。そういたしますと、今度は陪審と申しまして、陪審裁判をする場合に、陪審員裁判有罪無罪の認定をする。それに裁判所が拘束されるということが出てくるわけです。そこで、そういうものは一切の争訟裁判所がするということに矛盾するんではないか。したがって、この規定によりまして、陪審制度は認められないんではないかという疑いがあっては困りますので、そこで第三項で陪審制度を設けることを妨げるものではないということで、陪審制度は置けますということをこの規定でうたってある、こういう趣旨に私どもは解釈しておるわけであります。
  13. 神近市子

    神近委員 きのうから私が問題にしております。法務行政というものが一部の法務官僚の手に握られて、そしてずいぶんいろいろ——きのうの青梅事件みたいに、十二年も苦労するような人ができるというようなことを考えますと、私がいま陪審ということがちょっと頭にきているのは、そのほうが公平な裁判なり、あるいは国民の幸福を守るための裁判ができるんじゃないか。いま再審を頼んで、十年——吉田石松は五十年かかりましたけれども松川事件も十四、五年かかっているでしょう。青梅事件だって十二年ですか、青梅事件が十二年というふうになると、私は、どこに憲法趣旨が守られているかというようなことを疑うのです。それで、陪審制度というものの規定がこうやってあれば、何らかの形でこれは利用すべきじゃないか。そして権力に弱いという批判のある、そしてなまけたほうが、何もしないでじっとしていたほうが早く出世ができるというような官僚組織批判ができる裁判というか、そういうものができるんじゃないかというような考えを持たざるを得ないんですよ。あとでいろいろの問題を出しますけれども、それで私はいまこの問題にひっかかるのですけれども、これは次官でもけっこうです。陪審制度というものは耳に聞いたりあるいは何かいろいろありますけれども、テレビでもこの間、弁護士何とかというようなのをやっているようです。そういうふうなものをお考えになって、官僚裁判をやるのと国民裁判をやるのと、この性格が、ずいぶん変わるということをお考えになりますか。あなた方はこれを頭から反対していらっしゃるのか、それとも法律をつくることができるというようなことがあるところを見れば、この陪審制度をつくったほうが国民の利益になるんじゃないかというような意見に対して、次官はどういうふうにお考えになりますか。
  14. 津田實

    津田政府委員 最初に現状を御説明申し上げまして、あとまた次官のほうから御答弁願うことにいたします。  現在陪審制度につきましては、戦前に御承知陪審制度がございまして、それが現在停止になっておるわけです。しかしながら、新しい憲法のもと、新しい刑事訴訟法のもとにおきましては、戦前陪審制度がそのまま復活し得る形にはとうていならないというふうに私は考えております。しかしながら、ただいま御指摘のように、陪審制度は、たとえばアメリカにおきましては非常に発達したと申しますか、その制度をとらざるを得ないことになっておりますが、当然アメリカでは陪審制度をとっております。そこで、陪審制度の是非につきましては、アメリカにおきましてもいろいろ議論がございまして、是とする意見、あるいは陪審制度がないほうがいいという意見も、これはあるわけでございます。そこで、先般御承知臨時司法制度調査会において、将来の司法制度あり方として陪審制度の問題をどうするかということは、一応考えられたわけでありますけれども、まだ現在の日本におきましては、陪審制度をとることが適当であるというふうな結論を出すには至らないという意味におきまして、臨時司法制度調査会におきましては、陪審制度については深く議論がなされなかった。私は必ずしも直接の所管とは申しかねるわけでありますけれども、私どもも現在陪審制度の問題はやはり検討いたしております。でありますから、この問題は、考え方としては非常に適当な面もたくさんあると同時に、また欠点もあるわけです。そこで、日本の将来の司法あり方としてこういうものをとるかどうかという問題は、さらに十分の検討を要する問題であるというふうに考えておりますので、いま直ちに陪審制度の採用について案を考えるというふうには至っていないのでありますが、将来の検討問題としては十分考えるべきでございます。  ついでに、参審制度というのもございますが、日本では陪審制度をとるのか参審制度をとるのがいいかというような問題も、これはいろいろ考えられる余地がある問題であるというふうに考えておる次第でございます。
  15. 山本利壽

    山本(利)政府委員 一番肝心なことは、正しい裁判が行なわれることだと思うのでございます。罪でないものがうっかりしたことで過重な罪を受けることは一番いけないことでございますが、同時にまた、非常に罪を犯して社会の秩序を乱したようなものは、当然これは罰せられるということも、また民主主義の世の中においては必要なことでございますから、裁判というものはいろいろな方法をとりまして、そして十分に審理が行なわれ、正しい結論が出なければなりません。先ほど来御発言のございましたように、これは法務官僚権力をもてあそぶというようなことがあっては絶対相なりません。と同時に、陪審制度も一応日本でやってみたのに、いま刑事局長から説明いたしましたように、いまではそれが停止されておる現状でございますが、陪審制度を実行するのには、やはり国民全体に法というものに対する認識、また罰ということに対する認識も、分に徹底しておりまして、有能な方によってなされなければならぬということも常識的に考えられるわけでございますので、現状では、いま直ちに復活すべき段階でないようないまの結果になっておるのは、臨時司法制度調査会においても今回問題にならなかったという点で一応われわれ了承するわけでございますが、この点も単に司法官によって——司法官も厳正に、正しくさばこうという努力をしておることはもちろんでございますが、さらに誤りのないように、いまの陪審制度等についても十分に研究をいたしまして、その運用の結果、かえってあやまちの起こるというようなことのないようにしなければならぬ、かように考えるものでございます。
  16. 神近市子

    神近委員 私もあなたと同じように、正しい裁判が迅速に行なわれるということを望んで、その要旨で御質問しているわけで、決してそれと違反することじゃないのです。ただ、いまの臨時司法制度調査会意見で一応問題をはねているということですけれど、これも結局官僚グループ主導権を握っている調査会でしょう。だから私はそれが絶対的にいいものだとは考えない。それから、陪審制度をやるには、国民がもっと法律に詳しくならなければならないということをおっしゃったけれども、この裁判所法とか検察庁法とか、私はものを理解する力はちょっとあると思うのですけれど、これを読んでみて頭が痛くなるくらいなものなんです。これが多数の国民が理解することができるという日は、私はそんなに近くは来ないと思う。私はよく冗談に言うのですけれど、高祖が天下をとったときの法律三つですよ。これならすぐ国民は一口で覚えてしまうと思うのです。第一は、殺した者は殺される、傷つけた者は罰せられる、欺いた者は罰せられる、これは子供でもわかることなんです。この六法全書をみんな頭に入れておいでになる頭というものは、さぞ苦しかろうと私はいつも考えているのです。こういうようなことを考えれば、いまおっしゃったような陪審制度まで育てるということは容易ならぬことじゃないかと思うのです。私がこのような考えのもとに——この陪審制度というものは、アメリカはかなりよくやっているとおっしゃったが、私もアメリカのことをいろいろ読んだり見たりして、この陪審制度のほうが少し公平にいくんじゃないかというのでこの話を持ち出したわけなんですが、二、三日前、百万長者が殺されて、その夫人と恋人と思われる者が無罪になったということで、たいへん国民は非難しているということがちょっと出ておりましたね。陪審制度のことを考えていたので、それが目にとまったのですけれど、私そのときにちょっと考えたのです。それによって有罪無罪になって放免されたということに対し国民が非難しているということ、特に女が非難しているということだったでしょう。だけれど、無罪の者が殺されるよりも、有罪の人が無罪になるという場合のほうがまだ許せるのじゃないかというような感じをもって見て、そうして陪審制度というものは必ずしも一〇〇%正しいと言うことができないということを私考えました。だけれど、無罪の者が有罪になるよりも、有罪の者が無罪になる、結局疑わしきは罰せずという原則が守られていくほうが正しいのじゃないかというように私は考えたわけでございます。  私がこの問題をいろいろ取り上げますのは、二十三日ですか、デモが二つありましたね。一つ青梅事件デモがどこからか、地元から出てきた。それから一つ数寄屋橋の公園で、福岡事件という事件をともかくしょって出ている古川泰龍ですか、お坊さんです、この人が、あそこで四、五人で、結局お経を読んだのじゃないかと思うのですけれど、デモをやって、そうして作家だの芸能人だのがビラまきを手伝っている。これは私は一つデモじゃないかと考えるのですけれど、その要旨は、この間私、予算委員会の第一分科会法務大臣にお尋ねしたのですけれど、あれは福岡で、ほんとうにこれは無罪だと思われる人が死刑の宣告を受けて十四年監禁されているということ、それから一つは中国人を殺したということで、やられると思って自分がやったのだけれど、計画的にやったということで二人が死刑になって、十四年間監獄に入っている。それを教誨師をしていて十年間扱っているうちに、もう十年間言うことが一つも違わない。それでこれが真実じゃないかということで、まあさっき調査の話を伺いましたけれど、この人は教誨師をやめて身銭を切って、もう監獄から出てきたものがたくさんいた、五人も出てきていた、それをすっかり訪問してテープに録音をとって、そうしてそのときの実態を全部調べ上げて、これは検察庁だの、警察だのとおっしゃるかもしれないけれど、私心なしに国家とそれから罪人、何というか被疑者の間を、公平な人間として調べてごらんになったのだから、私はこれは警察だの何かよりも、職業的なそういう人たちよりも、この人は無邪気なほんとう——きのうあなた方が大阪で、三つ子供の言ったこと、赤い自動車ということが用いられた、裁判で取り上げられた、——私は、この古川さんという人はお坊さんですよ、何も私心なしにただ人命に対する自分責任というか、そういうものを感じてこれをやっていらっしゃる。これはたくさんの人が協力しています。いまここには見えていないようですけれど、ここの委員坂本泰良、この人は顧問弁護士としてその運動の弁護をしているはずです。それから中島健蔵とか、塩尻公明だとか、あるいは広津和郎だとか、一昨日は原久一郎、大下宇陀児、こういう人々があのデモを手伝っていましたね。そういうことを考えると、これは一つ法律なしででき上がったところの陪審の形じゃないかと私は考えるのです。これは法律がないから、あなた方はこれは陪審というわけにいかぬとおっしゃる、これはそのとおりです。だけれども道徳的に、あるいは人間的に、あるいは日本の現在の憲法人権擁護趣旨からいけば、これは自発的に起こった一つ陪審の形になるのじゃないか。それならもう少し、たとえば再審をやってやるというようなことをお考えになるべきじゃないか。あれはあれでやっているんだから、どうせ好きでやっているんだから、法律にはどこにも抵触していないからその価値がないというような官僚的な考え方をなさっているのです。ほかにだれも適当な人がないようですから、刑事局長に聞いていただきたい。そして総務課長でもけっこうです、どちらがいいか私は皆さんの職分をよくわかりませんので、ともかく御意見を聞いておきたい。
  17. 津田實

    津田政府委員 ただいまお話しのような運動が行なわれていることは私ども承知いたしておりますし、昨日でございますか、新聞にも出ておりました、知っております。あの関係の事件につきましては、すでに再審請求が四回ありまして、いま一人につきましては五回目の再審請求が行なわれておるということになっております。そこで四回の再審請求につきましては、いずれも最高裁判所まで異議あるいは抗告ということが申し立てられましたけれども、これは棄却になっておるわけでございます。そこで、それでは再審にはいろいろ要件がございますが、一番問題になるのは何と申しましても間違っていたのではないか、つまり有罪言い渡しを受けた者に対しまして、無罪を言い渡すべき明らかな、新たな証拠が発見されたというような要件が必要でございます。そこで検察官といたしましても、もちろんその新しい、明らかな証拠が発見されますれば、それはそれで、しかもその者に対して無罪言い渡しをすべき場合であったということになれば、これは当然再審請求をすることは、これは法益の代表者である検察官として当然のことでございます。しかしながら、現在までのところさようなものが発見されないということにおきまして、あるいは本人が発見されたという趣旨再審請求をしておるものと私ども考えておりますが、それに対しましては裁判所当該再審を受けた裁判所、あるいはそれの上に裁判所が、やはりそういうことは認められないという趣旨再審を棄却しておるわけでございます。そこで、それでは一般にそういう運動が起こっておるのになぜ黙っておるかというお尋ねになると思いますけれども、やはり検察官といたしましては、もちろん法律に定めた要件がなければ再審請求をすることはできませんし、また御本人再審請求をしておるわけです。それに対して裁判所が十分審議した結果、やはりそれは認められない、こういうことになっておるので、したがいまして、これは法律制度の上におきましては、当然すでにできた裁判というものを認めざるを得ないということになるわけでございます。したがいまして、その無罪であるということの新たな証拠ができて、当然そうだということが出てまいればもちろん問題はないのでありますけれども、そうでなければ、すでになされた判決というものはすべての証拠を審査して、真実に合致するようになされたものと私ども考えておりますし、裁判官自体も実体的真実に合わない裁判をしておるということは全然考えていない。実体的真実はこれであるという自信を持って判決をしておるわけでございますから、その意味においてすでにできた確定判決を軽々しく動かすことは、これはできないことであります。一般の方々がごらんになっていろいろ推測をされたりいたしますけれども裁判というものは当該事件証拠を十分審査し、法廷において十分な審議を尽くさなければ、他の人がいかように言ってみても、それは裁判官の真実の中へ飛び込むことができないわけでございます。そういう意味において、これは裁判を絶対信頼するというたてまえでなければならないし、また裁判官もその心がまえでやっておると考えます。したがいまして、外部において疑わしいとかいろいろなことがいわれておりますけれども、それは実際の審理をなさっていない方々のいわれることなんで、これは私どもとしては、そういう方々のほうが間違っていないのじゃなくて、裁判官が間違っているというふうには私ども考えるわけにはまいらない次第であります。
  18. 神近市子

    神近委員 それはあなたのおっしゃることは、大体官僚の仲間の中で、代弁していらっしゃるのだから、私はあなたはりっぱな人だということは知っておりますけれども、それより以外のことはおっしゃれない。結局、松川事件の諏訪メモ、きのうの青梅事件の事故メモ、この紙切れが一枚あるかないかということの違いでしょう。その紙切れがないということ、たとえばあのときの私は裁判あり方を、これは反アメリカ主義とかなんとかいうことではないのだから、あのときの——権力に弱い、検察が権力に弱いということを持ち出すのは、やはりアメリカの駐留中のこれはできごとですから、アメリカの駐留軍の圧迫というか、つくったものに対して、松川事件だとか、あるいは白鳥事件だとか、あるいは青梅事件だとか、あるいは三鷹事件だとか、一連の事件が起こっているのですよ。それはいまアメリカが対中国にたいへん慎重であるように、対ソビエトにある時期非常に敵意を持って備えた時代があったのです。これは歴史を書きかえるということまでいま考えられるくらい顕著なことなんです。きょう法務大臣おいでになれば、日本の二十年、三十年の歴史にあなたは悪人として残るか、あるいはりっぱな人として残るかということを私は伺いたかった。きょうは、予算が通ったからおいでにならないので伝えていただきたいのですけれども、ともかく裁判官も日本人であるならば、駐留軍の駐留するときは、日本軍だって外国でやったから、中国でもやるし、朝鮮でもやるし、あるいはベトナムでも、あるいはシンガポールでも、さんざんやったのですから、駐留中の駐留軍の横暴な干渉、そして工作とかなんとかいっておりますよ。この間、日本に来て政治するのではない、工作するのだというようなことをいっていますよ。あれはちょっとことばを忘れたけれども、そのくらい自分たちは堂々とやっていた。それで裁判であれ、あるいは郵便であれ、電話であれ、あるいは水道であれ、電灯であれ、みな優先権は駐留軍にあったじゃありませんか。権力は向こうに集中していた。そのときの裁判で圧迫を受けたということは、私たちそれは率直に認めたほうがいいと思うのです。  福岡事件だってそうですよ。あのときの第一審、いまここにはおいでにならないけれども、前にここの調査室においでになった小木さん、これが第一判事で、第二判事が藤木さんですか、いま小倉で弁護士をやっていらっしゃる、この方が新聞社の人に率直に話をしていらっしゃいますけれども、あのときは駐留軍のほうから毎日裁判所に押しかけてきて、そして早く判決を出せということで圧力をかけられた。これは想像できますか、想像できないとおっしゃると思うのだけれども、率直に話していらっしゃいます。  それから、その前の取り調べのときには、もうこれは刑を受けて出てきて死にましたけれども松川事件青梅事件と同じように、十九になる青年です。これは、頭が少し弱くて、おっちょこちょいで、そして生活困難におちいっているその黒川という青年が、一番あとからつかまるのです。そうすると、刑事調査官の鈴木長治郎——これは仮名ですよ。みんな現存の人のためには仮名を使ってますから、私も仮名でいきますけれども、その鈴木長治郎というのが、十九の青年をだましたり、すかしたり、おどしたり、おまえは死刑になるぞというようなことでおどす。そして、もうほかの者は全部自分たちが謀議でやったのだというようなことを言っているぞと言って、これにべらべら——たばこを吸わせたり、お菓子を食べさせたり、弁当を食べさせたり、非常に都合のよいところをなでる。こういうようにして調べているということが一つ。  それからもう一つ、これはちょうどりっぱな判事さんだったろうと思うのですけれども、やみ物資を食わないで飢え死にした有名な人がありましたね。あの時代ですから、もう、警察官も検事さんもあるいは判事さんも食べ物や何かはずいぶん不自由しているときなんです。二十一年ですか。ですから、警察に行ってみると、そのときの戦勝国民であった中国人——台湾系だと思います、やみをずいぶん持ち込んで、警察の中にはそのやみの食べ物が大ざらに盛ってあって、中国料理がでかでかとずいぶん届けてあった。それから、警察刑事さんたちがチップももらっていますね。そういうようなことはみんなちゃんと見ているんですよ。これだけの事実があがっている以上、松川事件でも青梅事件でも、それから下山総裁事件、この三つはもう解決したようなもので、私はこの三つだけは認めていいと思うのですよ。あれを考えても、人が殺されたのがどういうわけで自殺のような形をとらなければならぬのか、そして、列車がとまったのがどうして脱線したのか、どうして日本人が——これは、いまここに志賀さんはいないけれども、おもに共産党の人ですけれども、共産党員をふやすような動きは、駐留軍が来たときに、ニューディーラーというのが、日本の古い軍部と官僚、こういうものを追っ払うためにたくさんつくったんじゃありませんか。そんなことがわかっていながら、わからないふりをして裁判をみんななさらなくちゃならないということに私は矛盾があるということを申し上げている。  それで、諏訪メモなりあるいは事故メモのようなものが、この福岡事件にはないじゃないかというのがいまの刑事局長のお話です。だけど、こういう背景がわかれば、それではもう一ぺん聞いてみてやろうか。ちゃんと調書が残っていますから、この調書ではっきりしています。第二審の裁判官のことをきのう伺いましたけれども、その第二審の人は、わりあいに警察の調書よりも——公判でもうほとんど自分ほんとうのことは言わせないのです。みんな虐待と言いますね。たとえばすわる足の下に材木をはさんですわらせたり、なぐったり、けったりは、しょっちゅうでしょう。そういうことをして自白させたものを公判廷に持ち出す。そしてそれを否定すると、取り上げないのです。まるで第一審というものは検察官が暴力で虐待して自白させたことを使ってしまっている。そして第二審でその島木さんという裁判長が多少訂正を認めようという動きがあると、今度はこの判決が出るすぐ前の日あたりに筒井という人にかわってどこかへ栄転したそうですけれども、そういうことが起こっているのですよ。私は、そういうことを考えると、六法全書を見て、これは何のためにあるのだというような感じがしますけれども、それを考えると、もっと素朴な考え方——法務官僚というものは、ほんとうにある有名な理学博士がおっしゃるように、なまけると一番上等の出世ができるということ、それから権力に弱いということ、そのときは駐留軍の権力というものに非常に弱かった。ところが駐留軍がいなくなると、今日は政府というもの。それで研修所の鈴木忠一という人が、私どもをずいぶん非難していらっしゃるでしょう。社会党みたいに三百代言みたいなことを言うというようなことを、ちゃんと講話に言っていらっしゃる。まあこういう人が出世するのですよ。おそらくこの人がまた最高裁に行くというようなことになるのでしょう。だから、私はちょっといまの状態を考えると、まだ片づけてあげなくちゃならない問題をたくさんかかえていらっしゃるのに、心がまえというと——あなた方は、私が反アメリカということでこういうことを言うとお考えになっちゃだめですよ。人間の戦争というものが持ってくるお荷物の一つとして、私たちが駐留軍のときにどういう裁判を受けたかということ、その実例として申し上げている。日本にいま黒い霧というようなことばがはやって、きのうも青梅事件の報道に黒い霧ということを認めなくてはならないかということを書いた新聞がありましたね。その黒い霧という認識は、皆さんきっとそんなものは認識しないとおっしゃると思うのですけれども刑事局長、黒い霧というのは何だか御存じですか。
  19. 津田實

    津田政府委員 最近のことばで黒い霧ということばがいろいろいわれております。私はその的確な意味というものはまだよく把握いたしておりませんが、いろいろなことがあいまいであったということに結果的になるというようなことをある程度表現することばかもしれません。まあ違ったことばというふうに考えられる場合もありますが、それはそういうことだと思います。  ただいま、るるお話がございました占領下における裁判という問題につきましても、私は終戦後ずっとそういう関係のほうの中央におりましたわけで、その実態はよく承知いたしておりますが、御承知のように裁判を尊重するという観念がアメリカ人の間に非常に強うございます。これは日本人とは国民の意識としてはかなり違っておると私はいま考えておりますが、そういう意味におきまして、駐留軍の当時ありました軍政部というようなものにおきましても、日本裁判自体には全然干渉をいたしておりません。それは私よく承知いたしております。私自身がそういうことを日々問題にする地位にあったからでありますが、私はそれはよく承知いたしております。したがいまして私は、本件あるいはそういうような事件について、裁判にさような干渉があったとはいま考えませんし、またそういう徴候すら私は当時から見ることができなかったわけでございます。ただ本件につきましては、その後再審がなされておるのは、再審の最初は昭和三十一年、あるいは三十九年というようなことでありまして、もうすでに平和回復してから数年ないし十年以上経過したときの再審でございます。したがいましてこの再審につきましてまだそういう疑いがかりにあったということがあっても、そういうことがこの再審にまで尾を引いておるということはとうてい考えられない。すでに松川事件につきましても結末がついたわけでありますが、それにつきましてもやはり最高裁判所が最終的に正当な判断をしたというふうに理解すべきでありますが、本件につきましても、再審について最高裁判所がやはりすでに数回関与しておるわけであります。したがって、もしもさような疑いがあったということになれば、当然ここで問題にならなければならぬことであると私は考えております。その意味におきまして、占領下においてもさようなことはなかったと同時に、占領が過ぎて十数年たってからの裁判というものは、当然信頼しなければならないというふうに私は考えております。
  20. 神近市子

    神近委員 じゃ、黒い霧ということは何か暗やみのようなところがあるようなことをおっしゃるからちょっと申し上げますけれども、これは「日本の黒い霧」という松本清張の本から出ていることばで、これは何を意味するか。法務省に言わすと、あれはフィクションだとおっしゃる。ところが、これは自分あと書きにちゃんと書いておりますよ。フィクションじゃない、これはレポートだと言っております。このレポートを残しておきたいというのが自分の意図だ。日本の終戦前後の歴史が書かれるのは、二十年、三十年のあとであろう。その人たちに材料を提供するという意味で、これはレポートとして書くのだ。それは、そのあとの今日の作品は知りませんが、初期の作品は相当良心的で、いろいろな、なるほどなというふうに考えるものがあるのです。あなたは終戦直後からいろいろ関係してきて、アメリカ国民がりっぱな国民であり、裁判に公平だということを認めておいでになる。私は一般的にはそう言えると思うのです。だけれども、戦争ということと、それから次の戦争を予定してのアメリカの工作、たとえばG2とかCICとか、またいろいろの機関が四つくらいあるのです。そういうところがいろいろ策動していたということはわかるでしょう。青梅事件一つ考えてみても、あれが起こったのは二十六年ですか、朝鮮戦争のあと先ですね。ところが松川事件の起こった前年は二十三年、そのときは三千件からの列車妨害が起こっているのです。石を置いたりあるいは木材を置いたりした三千件からの事故が起こっているわけなんですが、そんな、幾ら共産党の人でも、そのときは生活があるのですから、石を積んだり、妨害的なことばかりやっていたわけではないと思う。だけれども、小さなもの、子供のいたずらのようなことまで加えてでも三千件起こっておるということは、それが作為的でないという証拠はないと私は思う。だから黒い霧というのはいまもまだわれわれの上に影を引いているのではないか。刑事局長、あなたの立場として、それは認められないとおっしゃるのはわかるのですけれども、私はこれは反アメリカのために言っているのではなく、戦争というものがこういうものを持ってくるという現実をお認めなさいと言っているのです。そしてひいては今日死刑を言い渡されている人々の、この特殊の場合を考えて、再審をやってやろうというほうに、いろいろ材料はとろうと思えばとれる。黒川という男こそ死んでいますけれども、このあと四人、監獄にたたき込まれたのはちゃんと刑期を済ませて出てきているのです。そして死刑囚が二人残っている。これをもっと正しく、やり直しの——それはあなた方が幾ら調査したと言ったって、良心的な宗教的信念でもってやっている人たちと、職業意識で、ちょっとなめさせたり、ちょっと一ばい飲ませたりしてやるという人の調査とでは、信実の点で違うのですよ。私はそういう意味で、大臣がおいでにならないからもうしょうがないのですけれども、ぜひ再審ということを考え——まだあと五年も十年もかかるということはかわいそうですよ。そういうふうならもうこういう人たちは戦争に行って死んだほうがずっと楽だったし、またしあわせだったろうと思うくらいなんです。終戦直後の混乱期でありますから、いろいろ考え違いだのあるでしょう。おまけに戦争に行ってきた人たちです。次官、これは何とか考えてあげる一この間石井法務大臣が、自分の地元に起こった事件なのに知らないとおっしゃったので、私はちゃんと本を二冊と、それから藤木さんですか、昔の判事さんの記録とを届けておいたのです。法務大臣は知らないとおっしゃるから、それであなたの地元のことじゃありませんかというので、二冊本を届けておいたのです。どうせ大臣は、自分がごらんになるひまはなかろうと思ったから、私はどなたかアシスタントがお読みになるだろうと思って、わざわざ二冊届けておいたのですけれども、どうなんです。だれもお読みになっていないですか。これは売るがための本ではなかったのです。二千枚の記録もありますよ。聞き取り書きから何から、全部あります。きのうの検察官調査の状態を伺うと、なるほどこれが検察官の苦労かなと思って真相調査書を読むのですけれども、私は一部どなたかから拝借しておりますから、これは提供できます。本は出ておりますけれども、これは読みよいことは読みよいですけれども、簡単です。私はそういう意味再審査というものをもう少し幅広く、そして国民一つ運動というものは、これは陪審のかわりだというふうに考えていただきたい。そしてこの間予算委員会の第一分科会で私が大臣にお願いしたのは、何か方法はないか。たとえば検察庁法第十四条を生かすとか何とかいうような方法はないか。指揮ができる。たとえばこういう法案を、陪審法を早くつくれとか、何とかというようなことはできないかとお願いしたわけなんですけれども、きょうは大臣がおいでにならないので、ともかく大臣を歴史的に悪名を流す人にするか、あるいは美名を残す人にするか、——きのう毎日の夕刊に原嘉道先生のことが出ていたでしょう。検察と裁判所を分けたということの功績について、前の高等裁判所の判事をしていらっしゃる方が書いていらっしゃるのですけれども、あなた方は石井さんに永久に悪名を残させるか、美名を残させるか、私はその点で、大臣と法務省のお役人方の関係がここではっきりすると思うので、私はぜひこの点をお願いしておきたいと思うのです。  私の質問は、これで終わります。
  21. 大久保武雄

    ○大久保委員長 志賀義雄君。
  22. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 この前文部省に対して私が質問いたしましたところ、実は知らなかった、さっそく検討してみると言われましたが、その検討をされたかどうか、その点お答えを願います。
  23. 吉里邦夫

    ○吉里説明員 先般、十一日に法務委員会で御答弁いたしました際に詳細を存じておりませんでして、その際いろいろな写真その他を御提示いただき、さっそく口頭で大学へその事実の有無あるいは詳細を報告してくれ、こういうことを申し上げました。ところが、その後何ら返事がないものでございますので、それからあと文教委員会で十八日にまた資料要求が正式にございました。したがいまして、私ども考えとしては、事理を重んじている大学に対しては、あるいは私立学校に対しまして、私学法を根拠に報告を求めるというのは非常に好ましくはないと実は思いましたけれども、二十四日付をもちまして報告を求める文書を差し上げてございます。まだ何ら返事はございませんが、そういう手当てはいたしております。
  24. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私は文部省に、大学に干渉しろということを要求しているのではないのです。現に私がそういう証拠の写真を提出したことについて資料を出さない、こういうことですが、先般、文教委員会で二宮委員請求された資料は、学校当局へ請求なさったかどうか。
  25. 吉里邦夫

    ○吉里説明員 ただいま申し上げましたように、正式の文書といたしまして報告を求めました。
  26. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 本日、法務委員会理事会におきましても国士館大学の法学部、文学部の設立趣意書——これを出して申請するわけですね。そのほか二宮委員請求しました資料をここにも提出していただくよう、大久保委員長のほうからすでに文部省に対してはその旨通達されたと思いますが、それを二十四日に出したが、まだ返事はないと言われますが、一体その見込みはあるのですか、どうですか。
  27. 吉里邦夫

    ○吉里説明員 いずれにしても、私学法に基づく報告を求めたわけでございますから、私どもは当然報告があるというふうに期待をいたしております。  なお、ただいま志賀先生からおっしゃられました中身につきましては、二宮先生から御請求がございました中身と同様でございますので、その報告がいただければ、それを私のほうで文教委員会から正式に御要求があれば、また考えさしていただきまして、こちらにも出さなければいかぬと思っております。
  28. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 どうしても出さない場合には何か方法がありますか。どういう方法をとられるか。
  29. 吉里邦夫

    ○吉里説明員 実は私立学校の対政府あるいは文部省との関係は、御存じのように私立学校法で規定をされております。ここで報告を求めまして、それがどうしても出ない場合の問題になりますと、私どもといたしましては、やはり善意の上に立った大学制度を前提としておりますので、そういうことはないというふうに確信をいたしておりますけれども、もしなかった場合ということになりますと、私学法の中で実は閉鎖命令はあるわけでございますけれども、その前提になります変更命令その他の規定がございません。いろいろなことで法律に違反した場合に、変更を命令するという規定が抜けております。そういうことで、多少私どもの行政的な配慮としてはむずかしいわけでございますが、それは別といたしまして、事実上大学との協力関係あるいは理解という面では、たとえば私どもで、先生がこの間御指摘になりましたように、視学委員とかいろいろなことで、先方との同意のもとにいろいろな指導をしたり、あるいは助言をしたりする行政のルールはあると思いますので、その面を活用いたしまして、大学当局あるいは学校当局等にも連絡をとってみたいと思っております。
  30. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私がそのことを伺うのは、あなたは閉鎖命令ということでありますが、これは最後の手段ですが、どうしてもそういうものを出されない場合には、大久保委員長もよくお聞きとり願いますが、当法務委員会へ参考人として出ていただくことも、館長に対して考えなければなるまいと思います。と申しますのは、去る三月十一日に私が質問をしまして、二宮委員と文部省当局の談話を合わせて載せて、国士館大学の記事が、三月十二日ですが、朝日新聞に出ましたね。これは政務次官もよく聞いておいていただきたいと思いますが、三月十三日横山館長代理、金子教授が朝日新聞社に行っております。本社に行ってこういうことを言っているようであります。学生は全員朝日新聞を攻撃すると言っている、四十八時間の猶予を与えるから、謝罪広告をあれと同じスペースのものを出せ、場合によっては、朝日新聞社にデモをかけて、夕刊の発行をもとめると学生が言っている、自分はいまそれを押えているけれども、とこういうことがあったようでありますが、これが事実であるかどうか、これをひとつ文部省のほうで確かめてください。権限外ですか。権限外と逃げられるようでは、あなた方これを何とかうやむやにするというふうに思われるかもしれませんが、こういうことを館長が出かけて行って言っているのですから、第一こういうことがいいことかどうか、その価値判断もひとつあわせて伺いたいと思います。
  31. 吉里邦夫

    ○吉里説明員 その問題は、うわさとしては実は聞いております。ただ私学法に基づいた資料要求といたしました中には入れておりません。これは私学法の問題とは離れた問題ではないかと実は思っております。ただその報告が出てまいりました場合に、周囲のいろいろな事情の聴取ということはやる必要もあろうと思いますが、その際にこの問題を場合によっては聞いてみたいと思っております。
  32. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 先日申しましたように、この学校は、国で定めた祭日には休まなくても、陸海軍の記念日なんかは休んでいるのです。天皇誕生日、四月二十九日、この記念祝典を日比谷公会堂で開く予定だそうです。学校の中では、これを朝日新聞膺懲大会にするというふうにもつばら公然とうわさが流れているようでありますが、学生が夕刊の発行をもとめると言っているときに、こういうことに対してどういうふうになされるつもりであるか。
  33. 後藤信義

    ○後藤説明員 ただいま朝日新聞に対します、おそらくは先生のお話ですと、あるいは脅迫ということになるかもわかりませんが、私のほうでその実情を十分に調べまして、容疑があれば捜査に着手いたしたいと考えております。
  34. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 もしそういうことをやれば、夕刊の発行も停止するということになれば、これは大きい社会問題になりまして、この国士館大学の問題もかえって根本的に解決をするためによろしいかとも思いますけれども、しかし、とにかく当日についてこういううわさが流れていることに対しては、警察としてはいろいろと手段は講じられるわけですか。
  35. 後藤信義

    ○後藤説明員 私、ただいまお伺いするまで、朝日新聞の記事は承知いたしておりましたが、これに対しまして、大学当局と申しますか、そちらのほうから朝日新聞に何らかの圧力をかけたということは、ただいまこの席で承知いたしましたのであるいは部内においてはそういうことを知っておる者もあったかもわかりませんが、私はそのことを知りませんでしたので、さっそく帰りまして、しかるべく処置いたしたいと考えております。
  36. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私は、別に警察に対して一般の学校のこと、あるいは学生の行動のことを取り締まるように催促しているのじゃないのです。そんなことはやめたほうがいい。しかしこうなりますと、これは脅迫ですね、また脅迫に基づく暴行、こういうことにもなるのであります。実際、三月十九日二時から三時過ぎまで、国士館大学政経学部の緊急教授会が招集されて、鹿島教授の解雇を認め、朝日新聞排撃の運動に同意するよう署名を各教授に要求しております。席上二人の教授が、そんなことはできないと、反対すると、柴田館長は、二人の教授に対しすぐに辞表を出せと威嚇しております。まあ、こういう学校ですね。これはもう学校だか何だかわからない。  どんなにひどいことをしているかという一例を申し上げましょう。「請願書」というはがき、あて名は「内閣総理大臣佐藤栄作殿」、こういうふうにちゃんとプリントになっている。三月十日に学生監が、学生の出席の点検の交換条件の形で、つまりこれを買った者は出席の点検をしなくて、つまりこれがかわりになる。これを三枚ずつ全学生に強制的に買わせている。その中に「請願書、終戦以来二十一年、独立後十四年、永い日蝕で神国日本は百鬼夜行、国家の前途、真に憂慮にたえません。速かに天皇元首御復位、輝く太陽を仰ぎ、」云々と述べ、最後に「何卒非常のご尽瘁を賜りたく、血涙を以て請願します。」これは憲法にも政治的見解その他、信条の自由は認められております。だからだれがどういう見解を持とうとそれは自由でありますが、学校でこういうはがきを強制的に学生に三枚ずつ買わせて、これを出席点検のかわりにとるという、これはどうです。文部省、いかがですか。あなたは、もしそういう仮定があればと言われますが、もう仮定は許しませんよ。
  37. 吉里邦夫

    ○吉里説明員 正直に言いまして、私もただいまそれを拝見したばかりであります。(志賀(義)委員「いつもただいま拝見だ」と呼ぶ)その点もあわせて今度の報告書をいただく際にやはり聞いてみたいと思っております。
  38. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そこで刑事局長に伺います。暴行を受けた佐藤英夫さんですか、あれの告訴ですが、これが六カ月もおくれたからと言われておりますが、その後、検察庁としては、佐藤さんにも事情はお聞きになりましたか。
  39. 津田實

    津田政府委員 前回申し上げましたかと思いますが、すでに八人の取り調べをいたしております。その中に、もちろん告訴人である佐藤氏も入っております。それで、現在はどうなっておるかと申しますと、現在まださらに告訴人の取り調べ、それから、この診断書を作成した人がいるわけです。それについてもすでに事情を聴取をいたしておりますけれども、それについてさらに取り調べを要する事項があるようであります。そのほか目撃者等につきまして、さらに取り調べをするような段階にいまなっておりまして、まだ数人の取り調べを要する予定になっております。
  40. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私のお尋ねしたことにお答えになっていない。なぜおくれたかという事情を、検察庁は佐藤さんにお聞きになりましたか。それを伺っておるのです。
  41. 津田實

    津田政府委員 そういう御趣旨のお尋ねとちょっと理解しませんでしたが、それは聞いておるはずです。つまり、本件の事実発生の日時から告訴までの日時が、六ヵ月近くかかっておるわけです。その理由についてのお尋ねであろうと思います。それは当然検察庁において取り調べをいたしておるはずであります。私は内容は聞いておりません。
  42. 神近市子

    神近委員 関連。その点で検察庁のほうにお願いしましたかと思うのですけれど、八人取り調べをやったということを刑事局長がおっしゃったので、その人名を出していただきたいということをきのうお願いしておいたのですけれど、その人名は出ておりますか。
  43. 津田實

    津田政府委員 八人という数を申し上げ、いまの告訴人、被告訴人が含まれておることは申し上げましたわけでございますが、個々の何びとを取り調べたかということにつきましては、ただいまの段階では申し上げることを差し控えさせていただきたい。これは本件のあるいは再取り調べを要する参考人もいるわけでございますので、本件につきまして真相を把握するためには、何びとが取り調べられたかということが一般に知られることは好ましいことではございませんので、そういう意味におきましてその点を公にすることは差し控えたいと思います。
  44. 神近市子

    神近委員 それは国会の委員会でも、たとえば秘密にするという約束でも漏らすことはできないとおっしゃるのですか。そういうような秘密主義の取り調べをなさっておるというわけですか。
  45. 津田實

    津田政府委員 刑事訴訟法におきまして捜査の内容は外部に出すことは認められておりません。ただ国会が御調査の際には、相当の範囲まで申し上げておりますけれども、外部にはただいま申し上げたようなことも一切申しておらぬはずであります。それは従来の当委員会におきまする御調査に対しましても、私どもはそういうことで申し上げておるわけであります。
  46. 神近市子

    神近委員 なぜ私どもが人名を問題にするかというと、あそこの学校というものは、さっき読み上げたように、ともかく暴力をもっても天皇制を復活しようというような、革命ということばがしょっちゅう使われている。だから、いろいろ中の人員の構成だって、非常にゆがんだものなんです。私どもはそういう意味で、これは文部省でも御調査になるときに、その頭を入れて、——この学校の経営面における人的要素はほとんど官庁のロボットで、独立した良心なんかは絶対にそこには存在することができないような状態なんです。だから、私はその調査の範囲を伺いたいと言ったのは、そういう意味でございます。
  47. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 刑事局長に伺いますが、あるいは佐藤さんもまだ検察庁の取り調べに対して、事情調査に対して口外しておられないかもしれませんが、佐藤教授に対して自分にもこういう理由があるから、あなたが告訴することを控えてくれと言った人があるはずであります。それで非常に苦しんで、六カ月もかかった、こういう事情があるようであります。すでに、ここにあります、最近出ましたアサヒ芸能、この中に国士館大学の風紀というので館長のことが出ております。法務委員会の権威にかけて私はこれを引用することは差し控えます。あなたは検察庁のほうで、外部には公表しなくても、どうして告訴がおくれたかという理由をお調べになりますか。佐藤教授に対して、どうかそれを刑事問題にしないでくれと言った人がありますが、それがだれであるかをお調べになったら、検察庁でもこれはびっくりなさることがあります。そういうことがありますから、その点で、なぜ六カ月も告訴がおくれたか、あなたが先日言われたところでは、告訴がおくれたから、今日まで検察庁のこの告訴に対する活動がおくれたのもやむを得ないというようなことを言われましたが、その間の事情をお調べください。私はいまあえてそのことを申しませんけれども検察庁としてはそこまでお調べにならなければ、国士館大学の柴田館長という人間が、どういう人物であるかということはよくわかりません。  なお、そのことについては文部省のほうも、検察庁でお調べになった結果、どういうことがあったということを検察庁に連絡して聞き取っておいてください。そうすれば、あなた方もこれはということになるだろうと思いますから。いかがですか、刑事局長、その点検察庁に伝えていただけますか。
  48. 津田實

    津田政府委員 当委員会で申し上げましたかどうか記憶いたしませんが、あるいは予算委員会分科会で申し上げたかと思いますが、この事件について告訴がおくれておるということは、内部にいろいろ問題があるようであるから、これはかなりその点が複雑であるという前提のもとに取り調べを進めなければならぬという趣旨のことを私申し上げたような記憶があるわけであります。そういう意味で、やはり相当時間がかかる問題であるというふうに申し上げたと思うのでございます。検察庁といたしましては、当然さようなことを取り調べをいたしておると私は思いますが、なお、当委員会でそのことが問題になりましたことは検察庁に知らされるわけでありますから、十分その点を考えて、もし不十分であれば取り調べをするというふうに私は考えております。
  49. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 先ほど資料請求をいたしましたが、文学部、法学部ですか、文法学部ですか、この設立許可に関する申請書ですね、帰ってきて、教授会で柴田館長はこういうことを言っておりますね。政府、私は名前は言うのは控えましょう。一番有力な人のところへ——初めに文部省はこれは一度不許可にされたのですね。その点から伺いましょう。どうですか。そうして二度目に許可されたのですね。そういう事実があったかどうか。
  50. 吉里邦夫

    ○吉里説明員 大学の設置申請、それから審議の過程は、私ども事務官がタッチをしませんで、りっぱな先生方を御委嘱申し上げて、これは審議会という名称でやっておりますが、その審議会が審議をいたしております。そこで初め不許可にしたかという御質問でございますが、これは最終的には許可をいたしております。その段階で不許可という取り扱いは、もし許可したものについて不許可という取り扱いは、その過程ではあり得ないはずでございます。
  51. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ところが、柴田館長がこう言っているのですね。内閣の最も有力な人の手紙を持って文部省へ行って、これでも不許可にするかと言ったら、今度は許可したということを放言しているようであります。あなたは一度不許可になったものは許可するはずがないと言われました。本人がそういうことを言っているようでありますから、事実どういう経過で大学設置審査委員会ですね、これがどうであったか、これを調べて、この次ここへ御報告願います。ただ、いまあなたとしてはどうかと思うことを言われました。大学設置審査委員会というものは、その審査の結果を文部省に報告するのでしょう。それに基づいて文部省が不許可あるいは許可を決定するのですね。もしあなたがそれを答弁できないのなら、なぜ答弁できる人が出席してくださらないか、また大学設置審査委員会の結果は文部省に報告されるものならば、いまのあなたのような答弁はできないはずです。文部省に帰って、もしあなたではこれはどうも法務委員会というものは苦手だ、われわれの手に負えないということなら、もうちっと——これはあなたが別にどうこうというわけじゃないが、あなた方もたいへんでしょう、ここでは攻められるわ、上に行ってはそんなことを答弁したかで、サンドイッチで、あなた方の苦境はよくわかりますが、きょうは上に責任を返して、あなた方出てくださいと言ったらどうです。私がそう言ったと、帰ってえらい人に言っておいてくださいね。
  52. 吉里邦夫

    ○吉里説明員 先ほど、多少ことばが足りなかったと思いますが、先生のおっしゃるように、審議会で審査をした結果を大臣にいただきます。私どものいままでの慣習といたしましては、その審議会の御答申を尊重いたしまして、そのとおり大臣が認可をしておる。したがって、認可権者は大臣であることは間違いございません。それから不許可になったものが許可になるはずはないというのは、裏返した言い方でございまして、許可になっておりますので、その過程においていろいろな書類、あるいは審査の過程で保留という形で一応なっておったというふうに思います。
  53. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 保留になったときに、そういうことがあったというのですがね、その事実もひとつ調べてくださいな。本人が学校に帰ってえらそうにそう言っているんだ。内閣の一番えらい人の手紙を持っていったら——そういうことを言った、こういうふうに言っているのですから、これは文部省としても聞き捨てならぬことでしょう。私が伺うのは、設立許可を申請するにあたっては、教授の俸給予定額ですね、これなんかも出しますね。実は文部省に設立許可を申請したものと、実際に給与する額が、一万一千円の教授さえあるのですからね、この学校には。いまどき、いなかから就職に来る子供だって一万一千円じゃ来ませんよ。とんでもないことを書いているおそれがあるので、そういう点も今度資料を提出されるときにはお調べになった上で御答弁願いたいと思う。ようございますか。
  54. 吉里邦夫

    ○吉里説明員 先ほど御説明申し上げたように、文書においての報告をお願いした中身として、俸給の支給の月額その他の事項も入れておりますので、それがわかり次第、資料として文教委員会のほうに出したいと思っております。
  55. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 小林さんがあと質問なさる予定ですから、私はまだたくさんありますが、これはひとつ持久戦でいきますから、きょうはもう少し……。  三上弘之教授から文部省管理局長あてに昭和四十年十一月十九日付で国士館大学の「暴行、解雇、政治結社事件並びに文学部、法学部の申請に関する問題について」と、こういうことが出ておりますが、これは検討されたのでしょうか、文部省で。
  56. 犬丸直

    ○犬丸説明員 詳しい日付等ははっきり記憶しておりませんけれども、そういった種類の投書があったことは覚えております。たしか、これは、いまのお話ですと……
  57. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ちょっと途中ですが、投書と言われましたが、何ですか。
  58. 犬丸直

    ○犬丸説明員 投書と私、申し上げましたけれども、そういうものではございませんか、いまおっしゃったのは。
  59. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 投書ですか。
  60. 犬丸直

    ○犬丸説明員 私、はっきり日付等を記憶しておりませんが、そのようなものが私のところに参ったことをうろ覚えに覚えております。正確なことでしたら、もう一ぺん帰りましてよく調べてみたいと思いますが……。
  61. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 うろ覚えといわれると、何らこれに対する対策ですね、これがどうかということ、調査なさったかどうか、そういうことがありますか。
  62. 犬丸直

    ○犬丸説明員 ただいま伺いましたところによりますと、館長の暴行事件その他に関しての内容のものであったと思いますけれども、そういった問題につきまして、当時いろいろ問題にいたしたことはございます。
  63. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 横山館長代理が、いま申しました三上教授あるいは鹿島教授に、こういう告訴をなさる、あるいは問題を大きくなさると、あなただけでなくあなたの御子孫にも迷惑がかかりますよと、こういうまことに念の入った脅迫をされているようですが、三上、鹿島両教授から、その間の事情、人権擁護局のほう、お聞きいただけますかどうか。
  64. 辻本隆一

    ○辻本説明員 昨年の十二月二十日に東京法務局に申告がございまして、自来申告者を数回にわたって法務局に来ていただいて調べております。調査のつどいろいろと内容が若干は変わり、広がっていくということで、申告内容の中身を整理するという段階ですが、数日内に一応申告内容の事実は確定できるというわけでございます。ただいま御指摘の内容が、その申告内容に入っておらなければ、一応あわせてそれも含めてさらに調査してみたいと思います。
  65. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 人権擁護局は初めなかなか取り上げられずに、ここで問題になったようなことが係官の方にあったようでございます。鈴木局長に二度ほどここで申し上げました。局長うんざりしような顔をしておられましたが、最近は人権擁護局の係の方の態度は非常に改善されたそうであります。その改善の実績に基づいて、そういう点もお調べ願いたいと思います。鈴木さんによくその点おっしゃっておいてください。  次に、これはなお人権擁護局長に伺いましたが、去る二月十二日、早稲田大学へ国士館のほうからトラック四台に分乗して、小熊学生監が連れていった云々のことは、まだこれは出ておりませんから、どういう人が引率していったか、その点を次にここに御報告なさるようにお願いします。  なお、参考のために、この早稲田大学の問題について申しますと、二月十二日の午前、国士館学園高校の小川教諭が各寄宿舎——寮ですね、に電話をし、館長命令だといって学生を校庭に集め、攻城法を教えるといって、スクラムのくずし方、バリケードのくずし方を訓練しているようであります。この攻城法の「城」というのは、早稲田大学の建物のことであろうと思いますが、なお、二月十六日、国士館稲門会——早稲田大学出身の教職員の会であります。その席上、柴田館長は大浜総長の要請によって学生を出したと言っておりますが、こういう点もあわせてお調べ願います。  なお、二月下旬、大学の教職員の館長朝令の際、これは朝命令を下す意味ですか、柴田館長は、もし四月ごろまでに早稲田大学事件が解決しないようであれば、国士館が全面的に乗り出して解決するという趣旨の発言をしておりますから、これは文部省のほうでもそういう点もよくお調べいただきたいと思います。その点はよろしゅうございますか。
  66. 辻本隆一

    ○辻本説明員 御指摘のうちで小熊学生監の問題でございますが、これは先般志賀先生からも御指摘がございましたので、私のほうで調査いたしました。もちろん完全な調査ではございません。まだ引き続いて詳細な調査を続けねばならないかと思っておりますが、小熊学生監について直接調査したところでは、同学生監は、学生監として学生らのアルバイトのあっせんなども行なっておりましたところ、問題の当日、つまり二月十二日でございますが、その当日、ある学生が早稲田大学で備品のあと片づけの大口アルバイトがあるからというので、午後から約百三十名ほどの学生とともに早稲田大学へ行ったという事実を供述しております。ところが、ある学生とはということになりますと、御本人の口からはどうしても得られなかったのでございますし、百三十名ということ自体も、いろいろな情報と総合しますと、まだその真偽のほどはわかりませんし、時刻についても真偽のほどが確定しないので、引き続いて調査中でござます。
  67. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 備品のあと片づけですね。それのアルバイトということと、攻城法を教えてやるということは、どうにもこれは人間の常識では考えがたいことです。その点もう少し——そういうふうに言ったら、そういうことだろうということでおさめないでください。文部省の方のそういう点の調査を願っておきます。  それから、最後の選挙権銀行倶楽部のことであります。文部省では、昨年四月の愛知文部大臣の国会での答弁で、学校の中に選挙権銀行倶楽部というような政治結社として届け出のあるものを置くのはいけないからというので、それを学校の構外に移したと言われます。いま学校の中には、選挙権銀行倶楽部というような看板を掲げたものはございませんか。ありますか。
  68. 犬丸直

    ○犬丸説明員 この問題につきましては、先回の委員会で先生が御指摘になりましたその後の状況については、先生のお話によりますと疑わしいというようなこともございましたので、いま調査を進めております。先ほど大学課長からお答え申し上げたと思いますけれども、その後の状況につきましては、文書をもって照会しております。そういう段階でございます。私ども現状についてはいまのところはっきり把握しておりません。
  69. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 困りますね。文書でやってあるという。これがその国士館大学の一部の建物です。これは、大民新聞社というのがありますが、そこの新聞。この建物のここに掲げられている看板ですが、いいですか、選挙権銀行倶楽部東京支部、選挙権銀行倶楽部世田谷支部、学校の中のこの建物にありますね。あなた方、文書で照会する前に、ひとつ行って調べられたらどうです。
  70. 犬丸直

    ○犬丸説明員 こういう点も含めまして、よく調べてみたいと思います。
  71. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 こういう写真の証拠がありますが、文部大臣の言われたこともへっちゃらだということになっていますね。これはいいことかどうか。現にこういう学校の建物にこういうことが出ている。
  72. 犬丸直

    ○犬丸説明員 もし、御指摘のとおり、文部大臣から申し伝えましたにかかわらず、なお選挙権銀行倶楽部と学校の運営を混同しておるということでありますれば、望ましくないことであろうと思います。
  73. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それで、あなた方、文書を二十四日に出して、まだこないこないと言っている間に、きょうこれが問題になると、一時看板はずしますよ。しかし、ちゃんとこれが証拠なんだから。文部省はそういうときに、ここで問題になった、これはたいへんだというので、文書照会だけで——実情を見に行かれるほどの元気はおありなんですか。どうですか。
  74. 犬丸直

    ○犬丸説明員 これは学校側の報告の結果いかんだと思います。報告において十分納得できればそれでいいと思いますし、かりにそうでなければまたその次ということも考えられますが、いまの段階で、いつ実地視察をするかしないかということは、報告を待ちませんと申し上げかねます。
  75. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それじゃ、あなた方報告を待っている間に不満足の答弁がきた、それじゃいよいよ学校に乗り込むといったその日は、看板をはずしていますよ。だから、あなた方文書で照会してまだこないというのは、国会でうるさいから早いところ何とかおまえさんのほうで片づけてくれ、文部省はかかわり合いたくない、こういうことだ。私は文部省がいろいろな問題で大学に口を出すことは反対です。しかし、文部省は私学に関しても一定の法律上きめられたことがありますね。学生や教授その他にも迷惑が及ばないように、それから国の憲法のたてまえにもとっていないかどうか、教育基本法から見てどうか、こういう問題がありますね。あなたは、いまの答弁じゃ、早いところ学校が看板でもはずしてくれ、そういうことを願っておられるのかどうか。もう一つ聞きます。どうしても見に行くのをいやだと言われるかどうか。それならそれでその次また質問のしようがあります。
  76. 犬丸直

    ○犬丸説明員 やはり相手方が大学でございますし、私立大学ということでございますから、その自主性は最高に尊重したやり方で調査を進めたいと思っております。それから現行の法制におきましても調査、報告を求めるという制度はございますが、たとえば施設に立ち入り検査するということは認められておりませんので、その点は法令の規定あるいは大学の性格というものにもとらない方法で調査を進めてまいりたいと思っております。
  77. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 元来学校に対しては警察なんかあまり関係がないほうですが、この間なんか警察がどんどん入っていかれる。あれも法律に基づいておられる。あなた方は、こういうことを調査なさる、それができないはずがないでしょう。よしんば看板をはずしたって、ちゃんと「大民」という新聞にも出ておるのですから、これは動かない証拠です。どうもあなた方はこの国士館大学の問題については何だか歯切れが悪い。いまだに返答がきていない。これについてもし返答がこなければどうなさるつもりか、それを伺いましょう。
  78. 犬丸直

    ○犬丸説明員 返答がこなければどうするつもりかという御質問でございますが、いまのところ私どもは必ず返事がくると思っております。かりにそれがこなかったらということでございましょうけれども、これは強制権というものはございませんので、さらに学校の良識を促して報告を出してもらうようにつとめるほかはないかと思います。
  79. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 こういう調子でありますから、私どもとしてもこれからもこの問題をもっと取り上げていかなければならぬと思います。天長節の集会で、朝日新聞を膺懲するとかなんとかというようなこともやるようであります。こういう点がありますので、この問題は重要でありますので、いずれまた法務委員会理事会で、柴田館長を参考人として呼ぶことも、これは理事会で決定さるべきことですが、そういう点も十分御配慮いただきたい。  まだまだ問題は山ほどありますけれども、きょうは小林委員からも質問がありますから、一応これで打ち切っておきます。
  80. 大久保武雄

    ○大久保委員長 小林君。
  81. 小林進

    小林委員 それではお許しをいただきまして、委員を差しかえていただきまして、きょう一日の法務委員といたしまして、法務当局に、新潟県知事の公職選挙法違反問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  この問題の内容につきましては、この委員会はもちろん、予算委員会あるいは参議院等においても繰り返しもう質問をせられた問題であります。同時に、社会党といたしましても、成田書記長を先頭にいたしまして、最高検察庁あるいは高検等にも数度申し込みをいたした問題でございまするので、私は時間の関係上あまり詳しくこの問題を申し上げることは省略をいたしたいと思いまするけれども、一体十二月末に起訴、不起訴を決定するという地元側の検察庁の非公式の話し合いが行なわれたにもかかわらず、その十二月末というのがあるいは一月中には何とか決定したい、こういう話に変わってきた。今度は二月中、その二月も過ぎて、まさに三月ももはや終わりを告げて、桜の花も散ろうという時期になっているけれども、依然としてその問題に対する態度を表明せられない。申し上げるまでもなく、塚田さんはかつては自民党の大幹部、郵政大臣、自治大臣その他の大臣をつとめられて当選八回、そういう方がいま中央政界を去って新潟県知事をやられておる。そうでありまするから、世人は言わなくても、これは大きな政治力の圧力で、どうもわが日本のいわゆる検察陣の態度が明確を欠いているのではないか、こういうふうに考えているわけであります。一体これは考えるほうが無理か、考えさせるような、まあじんぜんとは申し上げませんけれども、期日を延ばしているほうに無理があるのか、まずそこら辺から私は刑事局長としての所見をひとつ承っていきたいと思うのであります。
  82. 津田實

    津田政府委員 ただいまお尋ねの塚田知事に関する事件は、昨年十月二十一日及び二十五日の二回にわたりまして、公職選挙法違反事件としての告発があったものであります。そこで、その後鋭意県庁知事室、知事の事務室の捜査、差し押え等を実行いたしまして取り調べを進めておりますし、塚田知事につきましても数回の取り調べをいたしておるわけであります。ただこの事件は、いろいろ新聞等においても報道されております内容にわたることでありまするけれども、取り調べを要するところの関係者の数は非常に多数にのぼるわけでございますし、それから御承知のとおり、選挙違反事件というものはなかなか事実認定のむずかしいものでありますので、従来の例から申しましても、十月の下句に告発のあった事件につきまして、なお捜査中であるという期間の点だけを考えましても、それほど私は延引しているというふうには考えられないと思っております。そこで一応あらかたの捜査を終わりまして、中央、と申しましても東京高検で、いろいろ協議をいたしまして、さらに補充捜査を要すべきもの、その他取り調べを要すべきものにつきまして現在検討をいたしておるわけでありまして、その意味におきましてその取り調べ並びに検討が終了いたしましたら、当然処分はされるものというふうに考えております。その時期につきましては、私は遠からざる時期というふうに現在諸般の事情から判断をいたしておりますが、具体的にいつの日までということは、ただいままだ私として申し上げるだけの材料を持っていないわけでございます。
  83. 小林進

    小林委員 選挙違反の問題は非常に複雑怪奇であり時間を要するという刑事局長の御答弁には、私は承服することができないのです。なぜかならば、私自身が一番その経験者だからです。私自身の選挙違反の事実をあなたはおひまならひとつ調べていただきたい。私は二回やられている。一つは私が自分の親戚の者を集めて親の法事をやったついでに選挙の話をした、それが事前運動だと言ってきた。それを全部あげていって、みんな罰金刑を食わしておる。いま一つ事件は、私も、百数十名引っぱられた。何だと言ったら、たった五百円の労務費を持っていく人がいないからといって郵便局から送ったというその事実のために六年間、それはすぐ起訴されましたよ。三十日間も四十日間も、三十五年の十月選挙でありまするけれども、年の暮れまでみんな拘置所に入れられて、そうして六年間も裁判をやって、やれ四カ月だの六カ月だの、執行猶予三年だの四年だの、その中には市会議員を失格したり、あるいは公務員の地位を失ったり、悲惨な事実を行なっておる。しかし私は自分の繰り言を言おうというのじゃない。かくのごとく峻厳にして、しかも検察庁は一体何と言われたか。しばしば、すべての犯罪に先んじて選挙違反の問題は可及的すみやかにこれを起訴せい、あなた方は、その大方針をきめられて、選挙違反は何よりも先に迅速にこれを処置するという指令がいつも発せられていなかったですか。そういう指令を発せられたことがございませんでしたか。その方針を変えられましたか、お聞かせ願いたい。
  84. 津田實

    津田政府委員 選挙違反に限らず、すべての事件につきまして迅速に処理すべきことは当然でありますが、選挙違反事件、ことに特定の選挙期日で全国的に行なわれるような違反につきましては、これを他の事件の順序に従って行なっておりますと非常に処理がおくれる。そのことは当該関係者の身分の安定ということにも影響があるわけでございますから、そういう意味におきまして、選挙違反を迅速に処理をすべきことは、しばしばこれは通達をしておるところでございます。
  85. 小林進

    小林委員 それじゃ、われわれのような一般的な選挙をやるものは、身分の安定という理由で他の事件に先がけて早急にやりなさい、けれども新潟県知事のようなものは、新潟県だけに行なわれて、一般的、全国的な選挙事件ではないからこれは急ぐ必要はない、こういう御趣旨でございますか。身分の安定問題、いかがでございましょう。特に新潟県民にいたしましても、これは二百四十万県民が、一日として安定していられるものじゃございません。しかも知事一人じゃない。それにつながる数十名の県会議員がみんな金をもらったりしているのだ。これがみんな不安定なんだ。そこにつながる県民自身が不安、動揺の中にいる問題を、一体あなたのおっしゃる身分の安定、不安定の問題から見て、早急に処置しなければならない問題じゃないかとおっしゃるのでありますか、いかがでございますか。
  86. 津田實

    津田政府委員 もちろんこの選挙違反も、一地方の選挙違反ではありまするけれども、それはいま仰せられましたような趣旨は当然あるわけでございまして、この選挙違反事件についてはゆっくりやってよろしいということは私ども申しておるわけでございませんし、また特定の県知事の選挙その他について、どうしろということを特に申しておるわけではありません。一般の選挙違反については、先ほど申し上げましたような趣旨で進めるということは、これは検察庁全般に通達されておるところであります。ただ、御承知のように、事件につきましてはそれぞれの特殊性があるわけでありますので、そこで関係者がおり、選挙内容が複雑であり、証拠検討等に時間を要するという問題につきましては、これはいかに迅速をモットーといたしましても、やはり真実を発見することを第一にしなければならぬ性質の刑事司法でございますから、その意味におきまして時間がかかる場合もこれはやむを得ない。しかしながらそれを放置しておるということでは全然ないわけで、できる限りのテンポによって行なっておるわけでございますので、そういう意味において御了解を願いたいと思うのであります。
  87. 小林進

    小林委員 私は第一番目に、あなたがおっしゃった、選挙違反は、いわゆる身分あるいは人心の安定のために急速にこれを処理する必要があるという、そういう検察庁のしばしばの通達あるいは指示、その問題に対して、塚田さんの問題だけをこうやって、もはや半年近くも不安定のままに放任せられているその理由としては、あなたの御回答では私は了承することができないのです。そういうようなことであなたは私を説得しようと思われるだろうけれども、大衆は納得しません。そういうところに大きな政治的な圧力が加えられて、これを不問に付すという、そういう高度の政治的取引が行なわれているんじゃないかという疑いが出てくる。その疑いをあなたのいまの御説明の中では、これは了承するわけにはいきません。  それから、いま一つ次に申し上げます。あなたは、この問題は内容が非常に複雑怪奇だ、そして選挙違反というものは、個々によってみんな性格が違う、特質がある、だから、遊んでいるわけじゃないけれども、問題はあるが、しかし、まだ結論を出すには至っていないというような御説明があった。私も法律の学者です。法学を学んできた者です。そして私自身も選挙違反の経験がある。私の法律の解釈や私の経験からいって、この問題は私は決して複雑怪奇だとは思わない。どこで一体あなたは複雑怪奇とおっしゃるのか。私が簡単に申し上げたってそのとおりでありましょう。昨年の十一月に選挙が行なわれた。その事前運動として、昨年の七月の二十日前後から八月にかけて、塚田県知事が、六十数名の県会議員の中で、自民党の県会議員四十数名に、二十万円からあるいは五十万円、人によって七十万円、百万円という金を渡したというこれだけの事件です。渡したことに対しては、知事自身は否定しません。私、渡しましたと言っておる。その四十数名の県会議員も確かにもらいましたと言っている。金額の中に差があるかもしれませんけれども、くれたという人がおり、もらったという人がある。そのもらったという四十数名の県会議員の中で、これはいやしくも不浄の金じゃないか、不正の金じゃないか、選挙違反の事前運動のためにおまえやってくれという意味で渡された金だろうから、李下に冠を正さず、われわれも県会議員としてこんな怪しげな金をもらったのでは、自分自身が手をうしろに回されて、これは検察庁のお世話にならぬとも限らぬ、そんな危険な金はもらいませんといって、十数名の方々はその金を返した。だから問題は、ちゃんとくれたという事実が明白であれば、もらった中で、もらってネコババきめた者と、お返しいたした者とその差別があるだけの問題ではございませんか。しかも、いいですか、その四十数名のもらった中に、自民党の議員にもかかわらず、たった二人だけもらわない者がいる。その二人のうちの一人は何かといったら、これはたまたま七月、そのころに病気になって入院していた。入院して、どうも選挙運動には全快しても間に合わない、間に合わないぐらいに入院をしておるという自民党の県会議員に対しては、塚田は二十万円はやらない。ただお見舞いでございますといって、病院にくだものかごを一つやった。この人は二十万円もらわなかった。いま一人は何か、いま一人は二カ月、三カ月の間に、お互いにすれ違って行き違ってなかなか知事と面会する機会がなかった。渡されたり渡してもらったりするようなチャンスがなくて、不幸にしてもらわなかったというこの人が一人いる。もらわないのは二人いるだけです。  一体この問題はどこから発生したかといえば、御承知のとおり、その四十数名の県会議員の中でたった一人二十万円の包み金じゃなくて、十万円しかもらわなかった県会議員がいた。それも、巷間伝えるところによれば、二十万円やるつもりだったのだけれども、途中に入った塚田さんの秘書の使いの者が、あいつは常日ごろ、自民党だけれども、知事に対しては攻撃が激しいし、知事にあまり好感を持っていないから、こいつに対してはちょっといただいたがよかろうといって、途中に入った使いの者がそのうち十万円だけ抜いて、十万円にして渡した。その十万円渡された県会議員が、おい君、幾らもらった、われわれはこの札の重みによって知事に協力しなければならぬがと言ったら、いや、みな二十万円からそれぞれのランクがあるという。十万円はたった一人だけだ。知事のやろう、ひどい、おれだけ一人十万円とは何事だ、これはおれに対する侮辱だということで、これがわめき散らすということから、この問題がようやく明らかになったということなんでございましょう。こういう経緯なんでございましょう。もらった者があり、やった者があり、これは選挙運動、いわゆる不浄の金だからといって返した者があるという、これが一体どこにあなたのおっしゃる問題の複雑性があるのでありますか。どこに一体問題の解明の困難性があるのでございますか。お聞かせを願いたい。
  88. 津田實

    津田政府委員 本件の事件の内容につきましては、もちろんいま捜査中でございます。私どもは、事件の内容につきまして、報告は聴取いたしておりますが、その内容の検討は私どもはいたさない。これは、そのいたさない理由といたしましては、御承知のように、検察権の行使は検察庁をもって行ない、法務省がこれに深くタッチいたしますと、いろいろ影響力を与えるということになってはならないという前提から、私どもは、報告は受けておりますが、内容につきましてとやかく究明は、いまいたしておりません。しかしながら、そういう事態でありますが、事件の内容そのものについては、捜査中でございますから、この際内容にわたってお答えすることは差し控えさせていただきたいわけでありますが、一般的に申しまして、この選挙違反につきましていろいろ公判で問題になり、明々白々であったという前提でやったものが無罪になるというケースがあることは、御承知のとおりでございます。そこで、やはり内容自体にわたりまして十分の証拠に基づく真相を究明する必要があるわけであります。ただ外見的に明らかであるとかいうことだけでは、私どもとしてはこれを捜査をいたしたということにはならない。また、公判において弁護人その他の攻撃に耐え得るところの証拠をもってこれを立証しなければならないということになる。そういう意味におきまして、捜査に手数がかかるということは、従来申し上げておるとおりであります。そういう意味の捜査の固めをして、真相を明らかにした上で処分をするという考え方検察庁は立っておるものであるということを私は承知いたしておるわけであります。そういうことを申し上げまして、ただいまの御質問に対するお答えとして御了解をいただきたいと思います。
  89. 小林進

    小林委員 それは行政官庁といたしまして、検察庁の独立の捜査に対してつとめて干渉をしないというあなたのその基本的な態度を、私は否定しようというものではない。しかし、私ども国民の代表としてここで御質問をするのでありますから、やはり指令、命令の系統がある限り、ある程度の内容は、あなたも報告を受けるなり、あるいはその真実を知って、できるだけのことはここで報告をしていただかなければならぬと私は思う。その責任はあなた方にはある。  そこで私は申し上げるのですが、この問題に対して一点の疑点は何か。これは検察庁も、最高検も高検も、とにかく授受はあったのだという。ただ、そのやった金の目的が、いわゆる事前運動の資金としてやったのか、あるいは知事側が言っているように、四年間、正確に言えば三年単でございましょうが、いわゆる県会議員として知事に協力を願った、その協力に対する感謝の気持ちで金一封をやったのだということでありますが、もしそういうような感謝の気持ちで選挙を目前にした事前にその金を渡すことが選挙違反でないということを、もしあなた方が明白におっしゃるならば、今後われわれはもはや事前運動なんというものは、すべてにおいて私は成立しないと言わなければならない。特に、新しい事実ではないけれども、これは私は感謝でないという明白な事実を、いま速記録にかけて、明白に申し上げます。いいですか、明白に申し上げますよ。これは新しい事実でも何でもないが、申し上げましたように、塚田さんが金を渡したのは、昨年の七月の二十日前後から八月にかけて渡したのです。ところが、そのときの県会における知事選の状況は一体どうであったか、これを私は申し上げます。  六月の下旬までは、新潟県においては塚田さんというものはほとんど独走体制、対抗馬としては、ただ共産党の候補者が一人立候補を宣言しているだけで、野党第一党で、いつも激しい知事選を戦う社会党の側には、まだ候補者というものがなかったのです。そのときには知事は非常に高い姿勢で、もはや独走体制をしいてゆうゆうとしておられた。ところが、七月の初めに入って様子がくるっと変わったのです。どういうふうに変わったかというと、——私はあなたにそこまで申し上げるのですよ。私は、検察庁に証人に来いといったら、いつでも証人に行って立証いたしますけれども、そのときには内閣の改造が五月にありまして、河野一郎さんが閣僚から去られたのです。それから河野さんの動きも関連いたしまして、新潟県の中では河野派の直系であります、現在の自民党の代議士直四郎氏を新潟県知事に出そうではないかという動きが、与党、野党の間に出てきた。それは何かといえば、与党自民党の中でも、塚田さんがあまりにも汚職が過ぎる。知事の権力をほしいままにして、あまりにも乱脈な県政をやり過ぎる。公的生活においても、私的生活においても、県民を土足にかけたやり方だ。これではもはや政党政派を超越して、県民の一員としてこれは見るにたえない。この際はひとつ、何とか新潟県を粛清するために、適当な候補者を選ばなければならない。そのためには河野さんにもこの問題をよく考えていただいて、河野さんの直系である亘四郎氏に出てもらおうじゃないか、こういう話があって、この間非公式に河野さんに打診が行なわれた。そのときに——私はなくなった人に対してうそを言っては、死者の霊魂を軽からしめることになりますから、うそは言いません。河野さんは、よろしい、それでは亘君にやらせようじゃないか。おれも、日魯漁業その他を通じて、亘君とは特別の関係があるんだ。その亘君の選挙資金はおれが出そうじゃないか、こういう話し合いになっていった。そこで問題が非常に具体化してきた。これは七月の初めの話ですよ。ところが、いま一つ、この問題に関係する重大なポイントがあるのは七月の五日です。ちょうど参議院の選挙の投票が七月三日に終わりました。もはや地方区の開票は済んだ。ちょうど全国区の開票が行なわれている七月の五日の日です。見てごらんなさい。新潟日報という新潟県だけの、唯一の新聞の朝の記事に、副知事であります吉浦浄真氏が副知事を首になって、そうして自治省に赴任をしていかれるという記事が載ったのです。われわれはその前にも、塚田さんと吉浦副知事の間には、参議院の立候補等もからんで、両者の間にみぞができた、非常に冷たい関係ができあがったという情報をキャッチいたしました。しかし、知事の選挙を前にして、まさか副知事を首にするようなことはなかろうとみんなが考えたにもかかわらず、七月五日の朝の新聞に、その吉浦氏が塚田さんから追い出されて、自治省へ参事官として帰るという記事を見た。そこで、心あるものは吉浦氏のところへ行った。事情は一体どうなんだ。詳しいことは言わぬが、この際君もひとつ長年、新潟県で七、八年めしを食った、新潟県が第二の君の故郷だ。この際知事選に立候補する意思は一体ないか、こういうことを打診をした。しかし、彼はそのときには黙して語らずであります。申し入れば非常に好意的に受けますけれども、唐突にそのことを言われても、私はこの問題を受けるわけにはいかない、こういうことでありますけれども、しかし、気は十分と判断する者は判断した。その問題を中央に持ち寄って、そうして自民党、社会党ともに、新潟県の腐敗堕落を憂うる諸君が集まって協議をしたときに、そのときのまとまりは、一応これならば河野さんのバックもあるから、亘君をひとつ知事に出して、そして吉浦君を何とか自治省からまたもってきて、これを副知事にして新潟県を再建しようじゃないかと、大かたの話がまとまりかけた。いいですか、刑事局長、そういたしますと、その話がまとまりかけているときに、はからざりき、七月七日ですよ。河野さんが脳溢血で倒られるという問題がここに起きた。そうして七月八日に河野さんがなくなられたのです。これは新聞を見てください。そうすると、河野さんのバックで出る亘君の立候補というものが非常に影が薄くなった。河野さんがいない亘君というものは、独立の知事というものは力がないのではないか。そこで、その空気がくるっと変わってこうなった。むしろ吉浦君を知事にしよう、彼を対抗馬にしようじゃないかという話になった。そうしていよいよ七月十日には、この運動はもはや——有力なる自民党の幹部、自民党のいわゆる反塚田、反主流の幹部と、社会党の有志の中にもその話が出てまいりまして、いよいよ七月十日には一切の段取りにがかった。それで吉浦君にもその問題を打診をして、吉浦氏のそのときの回答は、私は、まことに申し出感謝感激にたえぬけれども、まだ副知事の地位にある、塚田さんに使われる身の上でございますから、ここでイエス・ノーの返事はできません。一応七月二十日には、新潟を去って自治省に赴任していきます。その赴任のあとにその問題は再び慎重に考慮さしていただきまして、そして八月十日前後に私の回答を皆さん方に寄せることにしていただきたい、こういう返事があったわけです。しかし、その返事に基づいて、それに関係している者は、——私も関係者の一人です。関係している者は、もはや吉浦氏の気十分なり、こういうことで、この運動は実に迅速に、その具体的な準備運動を開始した。もちろんその話は塚田君の耳に筒抜けです。社会党だとか他党の者だけならいいです。自民党の諸君も入っているから筒抜けです。そこで塚田君が驚愕したわけです。驚いたわけです。これはたいへんだ。彼は非常に冷酷な男であります。人間が非常に計数的であります。したがって、その前から、三年間も知事をつとめておりましたけれども、県会議員に対しては、自分の好きな者ときらいな者を区別した。同じ自民党の議員の中でも区別をいたしまして、きらいな県会議員にははなもひっかけない。しかもけちんぼうでありますから、好きな者でも、それまでは、盆暮れでも菓子折り一つか、二千円税度の感謝のしるししか県会議員にやっていなかったのでありますから、その副知事だ。したがって、県民の中で非常に人気がありました、自民党の議員諸君の中でも非常に人気がありました副知事が、いよいよ立候補するらしい、彼自身はまだ内諾を与えていないらしいけれども、もはや既成事実ができ上がったということになると、自分のほうの県会議員も副知事のほうへ行ってしまって、自分は孤立してしまう、これはたいへんだということで、そこで彼はあわ食って早急に、七月二十日ごろからばらんばらんと、まいたことのない、最低二十万円の金をまき出したのです。こういう事実、そういう時間の経過が織りなすごとくきちっときまって、二十万円事件というものが発生しておる。これが一体県知事をやった感謝のしるしでございますか。御礼の金一封でございますなんというようなことが言われますか。しかも塚田さんは、私は知事に立候補いたしますというようなことは、もう六月中旬に意思を発表して、どんどん新聞に書いているのです。こういうような明らかな事実があるのを、まだ検察陣が、これは謝礼金でございます。その性格は不明確であるというような理屈で、県民や私どもを愚弄なさるなどということは、私は天をおそれず、人をおそれず、あまりにも権力をほしいままにしているやり方ではないか、こんなことで一体日本の民主政治の土台が築かれていきますか。選挙法が正しく行なわれていくようになりますか。私の言うことにうそがあるとおっしゃるなら、うそだと言ってください。刑事局長、これに対して所見を述べてください。
  90. 津田實

    津田政府委員 ただいまお述べになりました事実につきましては、もちろん、どういう経緯になっておるかということは、検察庁で、本件の重要なポイントにもなるわけでありますので捜査をいたしておると思っております。私はその内容を詳細にわたっておるわけでございませんから、そういうようなことは報告を受けておりませんけれども、そういう点につきましては十分捜査を遂げておるというふうに私は考えております。したがいまして、そういう事実を踏まえた上でいろいろな証拠関係を検討し、問題点を検討して結論を出す、こういうことになることは当然でございます。したがいまして、そういう時点において私は適正な判断がされるというふうに考えておるわけでございます。
  91. 小林進

    小林委員 あなたはあくまでも内容は知らないとおっしゃるならば、私がいま言いましたことだけでもどうかひとつあなたの責任においてお調べになって、関係の検察庁にひとつこの問題をいってやってください。これはあなたを通じてお願いをいたします。そのために私が特にその傍証を固めるために証人として必要であるというなら、私はいつでも新潟地検、高検へ出頭いたします。私は速記録にかけて、この公の席で決してうそを言っているわけではありません。しかし、こういうような事実があるのにもかかわらず、なおかつそれが謝礼金であるというようなことでこの問題が不起訴になるということになるならば、これは重大問題であって、私どもは了承できません。これははっきり言っておきまするけれども、党の国会対策委員会等においても重夫なる決意をいたしました。これは単に新潟県だけの問題ではない。民主政治の土台を築く、民主政治の基礎をつくりあげるものは選挙です。その選挙によって初めて民主政治というものが正しく運営できるのです。その土台をつくる選挙にこういうような大きなことが公々然と行なわれているにもかかわらず、それをなお検察陣があなたのおっしゃるように、複雑怪奇である、あるいは問題が特殊であって困難であるというようなことでごまかしていかれるということならば、どこに一体われわれは良心ある選挙運動をすればいいのです。どこに一体われわれは信頼を置けばいいのですか。  なお申し上げましょう。この事前運動だけではありません。あなた方は、おっしゃったとおり知事の控え室も全部捜査をされた。自民党の県連本部もお手入れになった。そのときにはあらゆる要せられたその費用の資料というものを多数入手をせられた。そのときに使われている金が——公職選挙法に基づく火事の選挙費用というものは五百万円足らずでございますよ。そのときに使われている金がどんなに膨大なものであるかということの資料もせっかく全部入手をせられたはずだ。だから、問題は事前運動だけじゃない。二十万円のことだけじゃない。公職選挙法の費用超過に基づく違反事件も明々白々として生まれています。そういう問題を一つも手にされようとしておらないのは一体どういう理由——私は時間の関係上、皆さん方に迷惑をかけては悪いから結論を急ぎますけれども、実はこの問題を社会党が大きく取り上げて、いま参議院にもこの問題が取り上げられておりましょう。いまもまた同僚諸君が最高検察庁や高検にもこの問題を引っ下げて、あるいは御意見を承りに伺っているはずであります。なぜこういうことをお伺いしたいか、委員会に取り上げているかといいまするというと、実は三月二十二日、きょうは二十五日でございまするから、今日を去る三日、二十二日、自民党の某議員であります。有力なる自民党の某議員が、自民党内部における某会合であります。私はあえて某会合と言いましょう。あなたが御必要があればあとであなた個人にささやいてもよろしゅうございますが、公の席上でありますから、敬意を表して某会合でと申しておきましょう。その朝の某会合で大勢の中で、塚田知事のこの選挙違反問題も、いよいよ塚田知事が、県会において四十一年度の新潟県の予算が成立したのを待って、そうして知事を退陣するという声明をしたことを多といたしまして、最高検察陣と、これも私はその人の名誉のために名前を申し上げぬでおきましょう。最高検察官と自民党の最高の幹部との話し合いで話がきまりました、いよいよ不起訴にすることが確定をいたしましたからこれを御報告をいたします、こういうことを言われた。ところが、そこにいられた同じ自民党の、これも某代議士であります。君、そんなことを言っていいのかね。——二十二日のことでありましたからその前日の二十一日、昨日の決算委員会において、——あなたに二十一日の決算委員会に出られたはずだ、二十一日の決算委員会において、某代議士と刑事局長とのこの問題に対する質問応答の様子をながめていると、君が言うようにそういう単純なものじゃないぞ、君の発言は少し軽率じゃないか、ということを注意したら、彼は直ちにことばを返して、そんなことはない、私もこの公の席上でこうやって言明をするからには根拠のないことを言うわけはない、絶対にこれが不起訴になることは間違いないんだ、だから私は言うたんだ、こういうことできめつけて再発言をせられたので、それをたしなめた某代議士もその真実あることばの前に口をつぐんだ、こういうことが伝わってきた。これは単なる風評ではございません。実在の人物と実在の期日と実在の場所と実在の時間が明白になっているのでありますから、私は単なる風評をもってあなたに言うわけじゃない、こういうようなことがるるこの世界から他に流れていっているのでありますから、これを聞いた関係者はいま全部色をなして驚いております。驚くべきことだと驚いておる。そういうような取引が行なわれているというならば、もはや日本はやみじゃないか、こういうことでみなが驚いているのでございます。どうですか、このあなたに対する私の質問に対して、どうお答えになるか、御返答をいただきたいと思います。
  92. 津田實

    津田政府委員 先ほどお答えを申し上げておりますように、本件につきましては補充捜査その他検討を要することを新潟地検においていまいたしておるわけであります。その結果が終わりません前にさような結論が出ているということは、私は信ずることはできません。私ども法務大臣のスタッフといたしまして、もちろん検察行政に関与いたしておりますけれども、個々の事件の取り調べ、その処分につきましては検事総長にまかされておるわけです。そこでそれに対してとやかく影響を与えるようなことは、これはいわゆる指揮権の問題に関係する。適切な指揮権は常に行なっておりますけれども、個々の事件の内容にわたって起訴、不起訴について指揮権を発動するということは、これは従来からなされていないことでございます。もちろんそれは特定の事件につきましては、大臣に稟請をして、起訴をあるいは不起訴にするということはございますけれども検事総長と法務大臣との意見の食い違いのあるままに法務大臣が指揮をいたすということは絶対にいたしておりません。これは過去において問題になったことによっても御承知いただけると思うのであります。そういう意味検事総長以下の検察庁であります。ただいま仰せられたようなことが、まだ結論的な資料が整わないうちにおいて結論が出ておるということは私は信じられないことであります。したがいまして、私としてはさようなことはもちろん聞いておるわけでもございませんし、またさようなことは信ずることができないと申し上げるほかはないと思うのでございます。
  93. 小林進

    小林委員 あなたはなかなかりっぱな人でございますから、あなたの専門家としての良識から考えて、そういうことがあるとは信じられないというこの御答弁は、そのとおりでけっこうでございます。しかし、そうすると、いま私が申し上げましたような具体的事実に基づいて行なわれているということはないとあなたはおっしゃるのでありますか。そうすると、私がうそを言っておるとおっしゃることになります。私は申し上げますけれども、いま法務大臣が指揮権の発動をされて、そういうことを不起訴に決定をされた、こう具体的に申し上げておるのではございません。法務大臣決定されておるか、あるいは最高検察庁の総長がおきめになったのか、あるいは高検の検事長が不起訴にすることを決定されたのかという、個個の人の名前については、私は先ほどから名前をあげておりませんが、まずまずその申し上げました三人あたりは最高スタッフであることは間違いありません。そういう方々の中でその話がきめられたということです。これは複数であります。複数のほうが私はこういう公の席ではいいと思いますから申し上げておるのでありますが、その複数の方々との話し合いの中で、自民党の最高幹部、最高幹部も一人ではありません。最高幹部もたくさんいらっしゃいますが、その中の一人とそういう話ができ上がった。絶対に間違いないと一方では言明しておられるのであります。信ずる信じないは、あなたの良心に基づいて言われるのは別だけれども、あなたはないと言明できるのですか。ないとおっしゃるのですか。これを聞いておきたい。もしあなたがないとおっしゃるなら、私どもはあらためてこの問題を党に持ち帰りまして、別の方法で再確認する手段も講じますし、あなたがこの問題を確かめて、自分では信ぜられないが、ないとも言えないかもしれないから、これは確かめて後刻返事をするというなら、私はこの問題をこれ以上追及することはやめて、一応あなたの御返事を待つことにいたします。
  94. 津田實

    津田政府委員 御承知のとおり、検察の捜査あるいは捜査の結果につきましては、これを公表すべき時期までは公表することはできないことは、これは刑事訴訟法の命ずるところでございます。したがいまして、検察庁内部においていろいろ問題点について検討したり、あるいは法律問題を論議したりするということは、これはしばしばあることでございまして、その意味におきまして、検察庁は全国組織になっておるわけでございますから、中央におきまして、地方の事件についていろいろ検討をいたしましたり、報告に基づいてあるいは指示をいたしたりするということは、これはございます。したがって、そういう御指摘のような会合があったかどうか、私は知りませんが、会合があることは、それはあり得るということは、想像にかたくないことであります。しかし、その問題で会合されたことがあったかどうか、それは私は知りません。しかしながら、そこで結論が出て、その結論検察庁以外——どもは監督機関でありますが、私どもに報告をするということはあり得るかもしれません。しかしながら、さようなことが外部に出るということは、私は想像もつかないことであります。現に、私どもはあの事件につきまして結論が出たということを、私は聞いておりません。私は法務大臣のスタッフといたしまして、常に検察庁と接触を保っておりまして、検察庁に関する報告事項は、私の手を通じて法務大臣にいたしておるわけです。ですから、法務大臣に私はさようなことを申し上げたことももちろんありませんし、検察庁からさようなことを聞いたことはありません。その意味で、私はさようなことがないと信ずるというふうに申し上げたのであります。ただ、検察内部の議論の経過というものが外部に出るということは、私は信ずることはできないわけでありまして、さように申し上げるわけでございます。
  95. 小林進

    小林委員 あなたは会議の内容が外へ出るということは考えられないというおことばで、事前にもはや不起訴にしますなどという話が秘密裏に約束されたということを、あなたは否定はされない。ないということをおっしゃらない。ね、ないということはおっしゃらない。私どもはあなたの答弁を聞きながらさらに疑いを深めざるを得ない。  そこで刑事局長、今朝も問題になりましたが、なおわれわれの疑いを深める事実といたしましてこういうことがある。それはやはり関係の自民党の議員であります。その議員が補充尋問の形でほんの最近やはり新潟地検に呼ばれたとき、最も硬骨をもって鳴るその検察官の一人に、どうだ、もうここまで世論をわかし追及してきたのであるから、しかも塚田知事ももうやめるということであれば、不起訴になってももはやそれ以上追及することもなかろう、どうだね、というふうな心境を聞かれて、この人はがく然として驚いた。いままでそういうことを口にされていない、あの高潔な検事が、不起訴になってももうあきらめてもいいだろうということを言われた。これは少なくとも不起訴にするということを、いわゆる上部機関から弾圧をされてそこまで言ってきたのではないかということを考えて、実にさびしい気持ちになった、こういうことを報告してきているのであります。これも私どもの、問題の真相を追及する重大なポイントになったことは事実であります。  それからいま一つ、これも今朝問題になりましたが、あなたの二十一日の決算委員会における答弁の一部であります。それは、どういうことになりましょうとも、検察審査会というものがあるのですから、そういうことでまたおやりになったらいかがですか、という意味の御発言があったということであります。検察審査会などというものについても、法改正をしてもっと権威のあるものにしなくちゃならぬ。抽出的に選び出して——人間の職業を別につべこべ言うわけでありませんけれども、あるいはそば屋のお父さんやらあるいは何とかの方々が出てきて、これは起訴にするとかしないとか、あるいは不起訴にするのは不当であるとか何とかということでは、検察審査会としては権威がない。そういうものに藉口してあなたが、それもあることですからなどと言われる、その陰には、やはりこの塚田知事問題はもはや不起訴にするという、大まかな線がきまっての上の発言ではないかと、こういうことを推測してわれわれは議論の対象にしたわけであります。それぐらい、われわれを含めて、世人はこの問題に対して敏感である。あなたの答弁の一つ一つまでも、神経を針のごとくいら立たせているということを私は考えていただきたいと思う。これに対する御答弁いかがですか。
  96. 津田實

    津田政府委員 前回の決算委員会におきまして、私は検察庁の処分の適正の問題についての御質問にお答えいたしたのでありますが、それにつきましては、検察官の処分が独自にこれをして、何らかの批判を受けないということではない。もちろん一般の世論の批判なりあるいは国会の御調査ということによる批判はございましょうが、それは別といたしまして、正式の考え方としては、起訴したものについては裁判所で公に論ぜられることである。それから不起訴になったものにつきましては検察審査会において審査の対象になり得る。したがって、検察官が独善的に処分をいたすということはあり得ないことでございます。という趣旨のことを私は申し上げたのであります。起訴の場合はこう、不起訴の場合はこうということを申し上げて、一般論として申し上げた次第でございますので、この事件を予想してさようなことを申したことではございません。  なお、先ほど、中央におきまして検察首脳部の会合があったことを私が否定しないというふうに御理解をいただいたということでございますが、私はすべての検察庁の動きを知っているわけでございません。先ほども申し上げましたように、具体的事件につきまして検察首脳部が、全国の地方の事件について相談するということはしばしばあるということでありまして、その意味において、あの新潟の事件議論したか、あるいはほかの事件議論したか、それは私はわかりませんが、それは会合することはあり得る。しかしながら、新潟のこの事件につきましては、先ほど来申し上げておりますように、指示されて補充捜査をいたしておる。また新潟地検自身も独自の捜査をいたしておるわけです。その資料が完全に集まらないうちに結論を出してしまうということは、私どもの経験としては絶無のことであるということを申し上げて、その意味において、したがって、私は、さような結論をすでに出され、結論を外部に漏らされるということはあり得ないことだというふうに判断して申し上げた次第であります。
  97. 小林進

    小林委員 私は、最後にそれでは一点お伺いしておきますが、日本の良心は裁判官と検察陣、しかし最近は、検察陣はやはり政府に所属する行政機関一つでございまして、それがだんだんどうも政治的に動かされていくということで、国民は非常に落胆をしたり、不安におちいっている。特に選挙法の違反問題などはだれもが一応経験している。だれもがおそれていることであります。これはほかの事犯と違って、人心に直ちにすなおに是非、善悪のわかる問題であります。あの小林章君のたばこ屋の選挙違反、あれを不起訴にされたことがどれだけ日本国民の良心を麻痺せしめたか、これははかり知れないものがある。そういうこともこの際、検察陣はよくえりを正して考えてもらわなくちゃいけない。同じ人間でありますから、私は決して神のごとくきれいな気持ちでいなさい、私的生活もきれいでいらっしゃいとは申し上げませんけれども、やはり検察陣などという、人をさばいたり人を罪にいれようという者に対しては、その私的生活についても国民は非常に敏感です。おやりになったかどうか知りませんけれども、マージャン賭博などというものは検察陣はおやめになったほうがよかろうと私は考えております。  そこで、最後に一つお伺いしたいのだが、この塚田知事の問題であります。この人はいま選挙違反にかかって起訴猶予でございましょう。これは刑事局長御存じでございましょうな。何も二年も三年も前の話じゃない。去年のことです。塚田さんが金を二十万ずつ配ったのは、そのときからまだ二カ月もたたないときで、去年の五月です。これも参議院の選挙が六月十日でしたかね、始まったと思いますけれども、その参議院の選挙が行なわれる直前です。いわゆる事前運動あるいは自分の地位を利用して、参議院選挙運動をやられた。これはいま当選されておりますが、全国区の鹿島守之助——かつて塚田さんが鹿島組の監査役をやっていられたという関係、それから鹿島さんの平泉何と言ったか、おむこさん、二人鹿島組から参議院選挙に立候補せられた。自分とは特殊な関係があるからこの人の運動は徹底的にやらなければならないということで、新潟県知事であると同時に新潟県消防協会の会長であるという地位を利用せられて、消防関係者を全部呼び寄せておいて、そこへ鹿島さんのおむこさんを連れてきて、そこでこの七月の参議院選挙には立候補しますから皆さんよろしくというふうなあいさつをして、飲食を提供せられた。あるいは十一月にはおれは知事選挙に出るからおれのことも頼む、そういう運動をされた、あるいは車を連ねてその候補者を先頭にして新潟県じゅうパレードをされたという問題がありまして、これは知事も告訴をされた。その問題に対して一体検察陣は何という結論をお出しになりましたか。起訴猶予された。事前運動の事実がある、事前連動の事実があるが軽微だから起訴をするに至らないから起訴猶予にいたしました。決して白紙ではないのです、われわれに言わせれば言いわけみたいなものでありますけれども、そういう解説づきで起訴猶予にせられているのであります。そうでございましょう。これまた違いますか。
  98. 津田實

    津田政府委員 ただいまお尋ねの件は、手元に資料を持っておりませんが、大体いまお尋ねのように私は記憶いたしております。そういうようになっておると記憶いたしております。
  99. 小林進

    小林委員 大体のところお認めいただけましたから、それ以上この問題を具体的に申しませんが、いまお認めいただいたとおりです。これも地位を利用したこういう事前運動はいかぬということで、非常に新潟県民からひんしゅくせられて排斥せられて、県民は憤りを持ってこの問題にぶつかっておる。それに対しても、単なる起訴猶予だけでは、だれも罪が軽過ぎると言って県民が了承しなかったのでありますけれども検察庁のおやりになることだから、一応この問題はこれでひとつおさめていこうということであった。それが起きて二カ月もたたないうちにまたこういう二十万円事件が起きたのであります。当然前の問題も勘案をせられてこれは起訴せられるのがあたりまえでありまして、むしろ厳罰をもって臨まなければならない立場にある人なんです。検察陣はそういう前の問題もどのようにお考えになっておるのか。たとえて言えば、われわれがそういう起訴猶予を受けてから二カ月も三カ月もたたないうちにもし同じような疑わしい事件を起こしたといえば、あなた方検察陣は何をおやりになるかわからない。われわれならば徹底的におやりになる。ましてや庶民階級の権力もない、地位もない者にはどんなことをもってお臨みになるかはかり知れないものがある。そういうことを彼我対照してみた場合に、どの角度から押したところでこれが不起訴になるなどということは、もはや人間の常識では考えられない。いかがでございますか。この起訴猶予の事実と、今日またいま繰り返して捜査を願っております二十万円事件、それからまた県連本部その他の捜査を全部願っておる、選挙費用を超過した、この多額の金を使った選挙違反の問題、これを考えて私どもは当然厳罰に処せらるべきものと判断をいたしますが、あなたの専門的知識からお考えいただきまして、過去の起訴猶予がこの際どういうふうに影響、作用するものであるか、お聞かせを願いたい。
  100. 津田實

    津田政府委員 一般論として申し上げまして、前の起訴猶予の次にまた犯罪を犯したということになれば、その前の起訴猶予もしんしゃくをしてその次の処分をきめることは当然でございます。
  101. 小林進

    小林委員 どうも、お昼の時間もおつき合いいただきまして、長い時間この問題で質問させていただきましたことを感謝いたします。  ひとつ法務省といたしましては、国民の大きな疑惑かからりと晴れて——新潟県民はまた近く塚田氏の退陣を待って再度知事選挙をやらなければならない立場にも置かれておるのであります。もはや県民も疲れております。各政党も疲れております。今度こそは過去の醜い姿を払拭いたしまして、みんなひとつきれいな明るい新潟県政をつくり上げようじゃないか。金も使わない、あるいはつまらない人身攻撃もやらない、そして県民がほんとうに了承するようなきれいなモデル的な新潟県を建設しよう、こういうような気持ちで、立場で立ち上がっておるときでございます。そのさなかに、検察陣がもしも大きな政治的取引に惑わされて、だれもが了承できないような非常識な結論をお出しになりますと、そういうきれいなかまえでいる県民の心がまた一転をいたしまして、非常に不安定な、しかも中央検察庁や行政に対する不信感を高めて、またこれが波を打ってどういう不祥な事件やあるいは好ましからざる事態を惹起することなきにしもあらずということをわれわれはおそれておるのであります。この点を十分御勘案をいただきまして、われわれの納得する結論を早急に——いま選挙もきておるのであります、早急に出していただくことをどうかひとつ法務大臣を通じてしかるべく関係官に御指示賜わりますように刑事局長から具申をしていただきたいと思うのであります。  きょうは、法務大臣おいでにならないのは非常に残念でありますが、あなたからひとつ法務大臣によくお話しをいただきまして、私の申しました趣旨をよろしくお伝えくださいますようにお願いをいたしまして、私の質問を終わることにいたしたいと思います。  委員長、どうも長い時間たいへん失礼いたしました。
  102. 大久保武雄

    ○大久保委員長 次会は、公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十一分散会