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津田政府委員 この随筆という名前で出ておりますものにつきまして、どういう
お答えをすればいいかということは、実は私ははっきりした
お答えができないということになると考えるわけですが、要はこの
事件の
捜査におきまして、先ほど来問題になっております
捜査機関が
被疑者その他の者の
人権をそこなわない、できるだけ、
取り調べの
内容はもちろんでありますが、
取り調べたという事実を
外部に秘匿することが必要である、こういうことになるわけです。この点は、先ほど
警察庁刑事局長が申しましたように、
捜査の上においても非常に困る場合があるわけでありますので、
捜査機関側では主として特にこれは秘匿したいということになるわけであります。もしさようなことなくして、あるいは若干手柄顔といいますか、そういうことで行き過ぎがあるということがあってはならないことで、十分自戒すべき問題であるというふうに思うのであります。
しかしながら、一面かかる事項は、
刑法で申します公共の利害に関する事項だということに
刑法の名誉毀損罪ではなっております。そういたしますと、これを
報道することは、公共の利害に関する事項だということになってくる。そういたしますと、もっぱら公益をはかる目的があるということになれば
報道してもよろしいことであるということになるわけです。
報道してもよろしいことになるということは、だれそれが
取り調べを受けたとかいうようなことは、少なくともぎりぎりの線から言えば
報道されてもやむを得ないことになるということになってくると思うのであります。ただ事実がないのに、その事実を曲げて言えば、これは名誉毀損になる場合か出てくるということになってくるわけです。そこで、そういう
意味におきまして限界線を、
報道する場合、ものに書く場合に十分理解してもらう必要があると私は思うのであります。公共の犯罪に関する事項は、主として公共の利害に関する事項であることは
刑法の原則として認めておることでありますので、書くことはもちろんやむを得ないところだと思うのでありますが、その場合に、さりとて名誉を害してよろしいということにはならないのだ。しかも
刑法そのものが名誉毀損の最低限をきめておるにすぎませんので、それをさらに丁重に名誉を守るということは当然のことなんで、そういうところを十分理解をしていただかなければ、これは
捜査機関側だけの問題としては守り切れるものではないというふうに考えるわけでございます。
私はかつて、かよりな殺人等の
事件ではございませんで、いわば政治的に問題とされておる
事件につきまして、ある種のことが
新聞に出ておりましたので、なぜこれが出たかということを厳重に
調査いたしたことがございます。ところが、その場合、結局私
どもが得ました結論は、
検察庁では絶対漏れていない。要は
検察庁の
出入り、あるいは
出入りした者についての
取材というようなことから、次に何ぴとが
取り調べを受けるかということを推測して
記事が出されたという結論が出たわけであります。そういう
意味におきまして、そういうような将来の
捜査の予想というようなものが考えられるような
重要事件につきましては、私
どもといたしましては、
外部にさようなことを推測されないように十分つとめておる次第でございますけれ
ども、遺憾ながらそういうような事実が現にありまして、私
どもの部内
調査の限りにおいてはそう結論づけざるを得ないということになったことがございます。これはまあ御
参考のために申し上げるわけでありますが、そういうことがございますので、
捜査官自体の秘匿というのもおのずから限度があるということを御理解願いたいというわけでございます。
したがいまして、これは世間
一般がそういうことについての
配慮というものをもっと深く理解、自覚する必要がある問題であるわけでありますが、必ずしも私
ども捜査機関の
責任のがれをするわけではございません。
捜査機関においては十分注意すべきであり、また若干その注意が欠けていたということも私はあると思いますので、それは否定いたしませんが、しかし全体としてさようなことを防ごうとすれば、どうしても世間
一般、
捜査機関も
報道機関も、とも
どもに考えて事を行なうことが必要であるというふうに私は考える次第でございます。