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1965-11-25 第50回国会 参議院 日韓条約等特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十一月二十五日(木曜日)    午前十時三十分開会     —————————————    委員異動  十一月二十五日     辞任         補欠選任      高橋文五郎君     笹森 順造君      梶原 茂嘉君     八田 一朗君      山内 一郎君     和田 鶴一君      中村喜四郎君     船田  譲君      多田 省吾君     鈴木 一弘君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         寺尾  豊君     理 事                 大谷藤之助君                 久保 勘一君                 草葉 隆圓君                 長谷川 仁君                 松野 孝一君                 亀田 得治君                 藤田  進君                 森 元治郎君                 二宮 文造君     委 員                 井川 伊平君                 植木 光教君                 内田 俊朗君                 岡本  悟君                 木内 四郎君                 黒木 利克君                 近藤英一郎君                 笹森 順造君                 田村 賢作君                 土屋 義彦君                 任田 新治君                 八田 一朗君                 日高 広為君                 船田  譲君                 柳田桃太郎君                 和田 鶴一君                 伊藤 顕道君                 稲葉 誠一君                 岡田 宗司君                 小林  武君                 佐多 忠隆君                 中村 英男君                 羽生 三七君                 横川 正市君                 渡辺 勘吉君                 黒柳  明君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  石井光次郎君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        農 林 大 臣  坂田 英一君        運 輸 大 臣  中村 寅太君        国 務 大 臣  松野 頼三君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        法務省民事局長  新谷 正夫君        法務省入国管理        局長       八木 正男君        外務政務次官   正示啓次郎君        外務省アジア局        長        後宮 虎郎君        外務省北米局長  安川  壯君        外務省経済協力        局長       西山  昭君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        外務省国際連合        局長       星  文七君        農林大臣官房長  大口 駿一君        水産庁長官    丹羽雅次郎君        水産庁次長    石田  朗君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君        常任委員会専門        員        結城司郎次君        常任委員会専門        員        坂入長太郎君        常任委員会専門        員        渡辺  猛君        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君     —————————————   本日の会議に付した案件日本国大韓民国との間の基本関係に関する条  約等の締結について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○日本国大韓民国との間の漁業に関する協定の  実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域  の設定に関する法律案内閣提出衆議院送  付) ○財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済  協力に関する日本国大韓民国との間の協定第  二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する  措置に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び  待遇に関する日本国大韓民国との間の協定の  実施に伴う出入国管理特別法案内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) ただいまから日韓条約等特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日多田省吾君、高橋文五郎君、梶原茂嘉君、山内一郎君、中村喜四郎君が委員を辞任され、その補欠として鈴木一弘君、笹森順造君、八田一朗君、和田鶴一君、船田譲君が選任されました。     —————————————
  3. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約等締結について承認を求めるの件、日本国大韓民国との間の漁業に関する協定実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域設定に関する法律案財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する措置に関する法律案日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び待遇に関する日本国大韓民国との間の協定実施に伴う出入国管理特別法案、  以上四案件を一括して議題とし、質疑を行ないます。羽生三七君。
  4. 羽生三七

    羽生三七君 昨日、藤田亀田委員によって指摘されたような衆議院の混乱した事態のもとで参議院が日韓関係条約案件を審議するのはまことに私としては本意ではございません。しかし、審議をなお深める意味において質疑を行ないたいと思います。私はきょうは主として日韓条約背景となる国際問題を中心お尋ねをいたしたいと思います。詳細についてはいずれ同僚議員から後刻順次御質問があると思います。  実は、われわれは最初佐藤内閣は何もやらない内閣、何もやらぬではないか、こうしばしば批判をしてきたのでありますが、そうではない、大いにやっております。ただし——ただし書きをつけなければならない。それはわれわれの欲する方向ではなしに、平和と逆行するのではないかと思われる方向で大いに腕をふるっておられるのであります。そこで、たとえば日韓条約もその一例となると思いますが、もちろん私は佐藤総理も平和を拒否しているはずはないと思います。平和のための外交と言われておる。また戦争を欲しておるとも思いません。そんなことがあるはずはございません。結局問題は、平和を追求する手段方法が、はなはだ不幸なことであるけれども、われわれと全く違う、こういうことだろうと思います。結局、佐藤総理考え方あるいは自民党内閣考え方は、自由陣営結束を強めて、力の均衡拡大をして、それをてことして外交政策を推進する。われわれとの間のこの相違は、簡単に解消するものとは思われません。そこで、きょうはこの問題を中心にじっくりひとつ総理の所見をただしたいと思います。  さて、総理の言う平和外交とは一体どのようなものなのか。また、総理は今五十国会の施政方針演説において「私は、政権担当以来、国民諸君の強い願望を背景として、わが国の安全を確保し、アジアの平和を守るため、あらゆる努力を傾注してまいりました。」、こう述べられております。では、具体的にどのような努力を傾注されてきたのか、まずこの点からひとつ伺いたいと思います。アジアの平和のために最善の努力を傾注してきたと言われますが、具体的にどういう努力を続けられてきたのか、まず、この点を伺いたい。
  5. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 羽生君にお答えいたします。  私はかねてから平和に徹するということを申しております。ただいま、平和に徹する考えではあろうが、われわれとその手段方法が違うのだ、こういうことを言われました。これはどういう意味を言われるのか、私はよくわかりませんが、あるいはイデオロギー的に相違する、こういうことであろうかと思います。ただいまのうちにもありましたが、自由陣営結束を強固にする、これが佐藤外交基本だ、こういうふうに御指摘でございますから、あるいは自由陣営結束を強固にするのではない、別な方向社会党は考えていらっしゃる、まず、そういう点が国民としては明らかにしたいことだと思いますので、社会党からそういうお尋ねがあります場合に、自分のほうはこういうことで平和を遂行していこうとするのだ、この点は明確にされたほうがいいのではないかと私は思います。これはしかし、私の希望でありますし、私の個人的意見ですから、あえてこの席で私が羽生君に質問するわけではありません。  そこで、私ども日本の国のあり方として、これは自由主義陣営の一員だ、これはたびたび申し上げておるのであります。民主主義自由主義、そのもとでこの国をより繁栄さし、また国民生活を向上させよう、かように考えておるのであります。いわゆる社会主義理念ではございません。したがって、あるいは基本的にこういう意味では対立しておるのかもわかりません。  そこで、具体的にどういうことをいままでしたというお尋ねでありますが、日韓交渉の妥結もその一つであります。また、私ども東南アジア地域に対しまして、経済的な援助をいろいろ計画しておる。あるいは東南アジア地域経済開発を具体化しようとしておる。ただいま東南アジア開発銀行の構想も具体化されつつあります。また、諸地域に対しまして技術的な援助あるいは経済的な援助、これを積極的に推進しております。これがいわゆる私ども平和外交である。それぞれの国民生活が向上され、そして繁栄をもたらす、それこそ平和に徹する国柄にもなるのではないか、かように私は思いまして、わが国が果たし得る役割、これは経済協力である。また技術的援助、かように思って、それを推進しておるわけであります。
  6. 羽生三七

    羽生三七君 いま総理は、これはイデオロギーの違いではないかと言われましたが、それはイデオロギーにも違いがあります。あるが、外交は私はイデオロギーだけの問題ではないと思う。たとえば、佐藤内閣アメリカを好きであろうとあるいは自由主義を信奉しようと自由であります。私はそれを批判しておりません。共産主義者共産主義を信奉するのも自由であります。私はこれも批判いたしません。そういうイデオロギー関係なしに、現実に生起しておる諸問題にどう対処するかということが外交だと思います。私はそういう立場で問題を提起しております。これを御承知願いたい。  そこで、まあ日韓条約もその一つだとおっしゃいましたが、これは逐次触れていくし、社会党政策があるなら言ってくれということでありますが、これは順次私はこれから述べていきます。  問題は力の均衡——たとえば自由陣営を強化をして、力の均衡拡大をしていく、それが問題の解決になるのではなくて、むしろそれを縮小させる方向に沿ってこそ、平和の条件が確立できるのじゃないか。たとえば、日韓条約については善隣友好外交と言われる。あるいはアジア外交出発点とも言っておられる。そのことの批判は後に譲るといたしまして、ここではそれが、日韓条約アジア外交出発点、平和の始まり、そう言われた場合に、それが平和の推進なりあるいは平和外交にどうつながるのか、どういう関連性があるのか、たとえば、日韓条約を結び、友好関係を深めれば、それがどうしてアジア外交平和路線につながるのか、どういう関連性があるのか、それをひとつ明確にしていただきたいと思います。ということは、私も、外交というものは原則だけの問題ではないと思います。やはり、ある現実の姿というものを踏まえなければならぬ、これは当然だろうと思います。しかし同時に、現実だけに固着して、望ましい姿あるいはあるべき将来の姿、それを無視していくことは私は好ましいことではないと思います。したがいまして、現実をよく認識しながらも同時に望ましい方向へ発展さしていく、この調整がある意味においては外交だと言えると思います。現実と、あるいは希望すべき、理想とすべき姿との調整だろうと思います。さらにそれを発展さして、終局的には一番自分たちが目的とする方向へ持っていく、これが外交だと思います。したがって、日韓の問題もこれがアジア外交出発点というからには、また、施政方針総理が、先ほど私が述べましたような方針を堅持されるならば、アジア外交の始まりとしてのこの日韓が、平和外交とどうつながるのか、具体的にどういう関連性があるのか、このことをひとつ明らかにしていただきたい。
  7. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日韓平和外交にどうつながるかと、こういうことですが、たいへん卑近な例を申して恐縮ですが、たとえば、私どもが住んでおる一つの通り、町があると、その町が楽しく平和であるためには、隣のうちとやはりお互い朝夕あいさつをするぐらいの関係があってほしい、そうすると、初めてその町筋も明るくなり、お互い生活にも潤いを来たす、これがいわゆる平和であると、かように思います。最近の国際関係におきましては、お互い国際的にやはり孤立するというわけではなくて、国際交際を深めると申しますか、お互い繁栄があると、私はかように信じております。その観点から見ますると、隣の国同士と仲よくしていく、これこそが平和につながるものである、お互いの安全をも確保していくことにもなるわけであります。お互い隣同士の国がにらみ合っているような形ではよくない、にらみ合っているような状態じゃないにしろ、お互いにつき合いもしない、こういうことはたいへんさびしいことでもあり、いわゆる平和を愛好するものから見ましても、ほうってはおけないことだと、かように私は思うのでありまして、この点では、おそらく羽生さんも御理解をいただけるだろうと思います。ただ、隣の国、韓国だけではありません。ソ連もありますし、北鮮もありますし、中共もあります。こういう状態でありますから、私は、これはスタートラインだということを申し上げておるのであります。そうして、冒頭にお尋ねになりました力の均衡という、力の均衡は、いわゆる拡大均衡ばかりが均衡ではないのであります。羽生君の御指摘になるような縮小均衡もまた、均衡だといえると私は思います。したがいまして、いわゆる力の均衡によるバランスのとれたいまの平和の状態なんだと、こういうことは、これは情けないが、実際の現実の問題としては、そういう状態である。理想の形を考えるならば、力なんかというものを全然考えない、そうして仲よくできる、そういう世の中がほしいんだと思います。ただいま申し上げるような意味からは、理想目標としての行き方としては、縮小均衡方向努力されるのが当然だろうと、かように私は思います。
  8. 羽生三七

    羽生三七君 総理は、近隣の国とあいさつもできないような状態では困る、仲よくするのは当然だとおっしゃいますが、韓国とは日本はつき合っております。だれも韓国人を敵視しているものはない、それが普通のあいさつをかわす程度以上に進むととろに問題があるんで、私はそれを言ってるんで、韓国とつき合っちゃいかぬの、仲よくしちゃいかぬの、そんなことは日本社会党、私個人も毛頭考えておりません。それ以上に進むことが問題になる。そこで、たとえば、安保条約にいう極東の平和と安全というのがあります。これも平和とか安全ということばをうたっておる。ところが、今日の米軍行動は、全部ここから出発しておる。だから、平和ということばは、使いようではどうにもとれる複雑な内容を含んでおります。したがいまして、総理の言うこの平和外交というのが、この韓国や台湾、その他自由陣営に属する諸国との結束を強めて——いま、総理は縮少均衡もあると言われましたが、むしろ力均衡拡大して、それをてこにして、相手側の譲歩をかちとろうというんではないか、そういう外交じゃないですか、問題の所在はそこにあると思う。この点ひとつお聞かせください。
  9. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお尋ねになりました日韓交渉の問題に、直ちに米軍云々を引っぱってこられることは、私はやや迷惑でございます。だから、日韓交渉の問題には、これは軍事的な背景はない、また、軍事的な協力も、お互いに相談したわけではない、その書いた条文からも、そういうのは出てまいりません。したがって、米軍云々の問題は、これは日韓交渉の問題とは全然別個の問題であります。日本アメリカとの間に日米安保条約のあることは、私が説明するまでもなく、御承知のとおりであります。そうして、日本の安全は、この日米安保条約によって確保されておる、私はかように信じております。また国民も、そういう気持ちでいると思います。日韓交渉米軍日米安保条約は、関連のない問題であります。だから、しばらくそれは別の問題だとひとつ御理解をいただきたい。ただ、この機会に世界の大勢、それから申しましていわゆる縮小均衡方向、力による縮小均衡方向努力がされておる、これはいわゆる軍縮であります。また、片一方で、個々の国々が、その安全確保のために、それぞれ積極的に拡大もしている、これはいわゆる核保有というような事例で、これははっきりわかっておると思います。との二律背反の状態が、国際的にただいまの悩みじゃないか、かように私は思います。  そこで、先ほど申されるような、羽生君の御指摘のような、国際的にいわゆる真の平和を確保するためには、武力がないほうがいいのだ、それは、一足飛びにそういうことができないならば、やはり縮小均衡方向へいかざるを得ない、これがジュネーブにおける軍縮会議であり、また、核兵器の取り扱い方について、核保有国も、非核保有国も一緒になりまして、いろいろ意見を交換しているのが、いまの姿じゃないか、かように私は思います。しかし、申し上げておきますが、日韓交渉とこの問題は、全然別個の問題だと観念的に整理してお答えをしておるのでございます。
  10. 羽生三七

    羽生三七君 私は、安保条約にある国際の平和と安全ということばを使ったのは、日韓条約にそういうことがあるからと言っておるのじゃないのです。国際の平和と安全ということばの中から、たとえば、米軍行動なんというのは、これは安保条約の一番基本的なあれになっておるのでしょう。でありますから、事と次第によっては、平和というものがどういうふうにでもとられるということを言っただけで、日韓条約との関連を言っているのじゃない、これは後刻、また申し上げてみます。  ただ、それで私どもは、力の均衡拡大という場合、一挙に縮小しようというのじゃないのです。そんな極端な議論を吐きません。そんなことは現実の問題としてできるものではない、望ましい姿ではあるが、現実の問題としてできません。だから漸次縮小さしていく、それにはどうしたらいいかということを中心に、私はきょうの論議をしているのであります。これは、経済では、拡大均衡というものは、時と場合によって採用いたします。池田さんお好きであったし、私ども拡大均衡は、望ましい条件のもとにおいては、一番いい政策だと思う。しかし、外交では、あるいは防衛問題では、これはとるべき姿ではない。その一番いい例は、このベトナム戦争だろうと思う。きょうは先ほど申し上げたとおり、日韓条約中心アジア国際的背景を伺うのが私の任務でありますから、ベトナム問題を伺いますが、ベトナム問題におけるこのアメリカエスカレーションというものは、世界的な危機、このエスカレーションにならなければ幸いであると私は思っております。このことが心配であるかないかは、だんだんお尋ねしていきたいと思いますが、いまのこの現状では、たとえば日韓条約というものがどういう意味を持っておるか、いまのアジアにおける国際情勢のもとで、日韓条約がどういう意味を持っておるかといいますというと、一体、世界危機は、どういう地点に発生しておるか、これは総理も御存じのように、まずドイツ問題であります、まず中国問題であります、まずベトナム問題であります。それから、朝鮮問題であります。全部、同一国家が二分されて、分裂国家ができて、民族が二分されて、そこからいわゆる緊張あるいは危機が発生しておる、これが発火点になっておると思います。この二重政権の存在というものが、危機の実は出発点である、発火点である。そういう場合に、いままで私たちは、ドイツ問題あるいは中国問題、あるいはベトナム問題で、いやというほどその貴重な経験というものをくみ取ってきたはずであります。それなのに、また再び、将来非常な困難の予想される、南北朝鮮を二分するこの分裂国家——将来は統一しなければなりませんけれども、その片方とだけ交渉を持って、これが今後の問題、大きな困難を予想されるような事態に発展しないであろうか、杞憂であれば幸いでありますが、この心配あるがゆえに、私どもはいままでの世界における多くの分裂国家から発生する戦争への危険、これを防止する意味においても、日韓条約というものは望ましいものではない、こう判断をいたしております。総理の御見解を伺います。
  11. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま羽生君の御指摘のとおり、一民族が二国家、いわゆる分裂国家をつくっておる、こういうところに問題があるのだと、かように私も思います。これがただいま申し上げる韓国問題あるいは中国問題、ベトナム問題また日本自身も、これは見方ですが、どうも、人の、国民と直結はしないが、そういうような不幸な状態になっておるのじゃないかと思います。前戦争あと始末がただいまのような不幸な結果を招いておる、これを一体どうしたらいいのか、ここらに一つ悩みがあるのだと思います。まあ、日本の国の問題は、これは領土権の復帰の問題、昔の状態をここに招来する、これはわれわれが皆さま方とともども努力する目標でありますので、これは比較的にわかりいい問題であります。しかし、韓国の問題なりあるいは中国の問題なり、ベトナムの問題になると、そう簡単にはいきません。しかし、いまのお話のように、こういう状態があるから、その片方交渉するなと、こういうことは、戦後二十年たった今日、一切そういう交渉はできないと、先ほどの話で朝夕あいさつぐらいはできると、こういうお話でございましたが、それ以上進めてはいけないのか、問題はここにあると思います。私どもは、やはり現実を考えるなら、また現実の問題で考えた場合に、国際社会でどういうような受け入れ方をされておるか、多数の国はどういう見方をしておるか、あまり異を唱えないで、そういう多数の説に従っていくという、そういうのも一つの行き方だと、私は考えております。私は、そういう意味で、ただいま言われるように、二つの国、二つの権威がある、そういう場合の片一方だけとつき合うということは、これはいかんのだと、こう言われますが、それでは、今度は逆に、二つの国、その双方と交渉することは一体どうなるのか、これはいまの状態を恒久化するものだと、かように思います。一民族の一国家、これは悲願だと思うから、そういうものはできなくなる。そういうものをきめるのは、やはり国際社会の通念なんだと、多数の意見なんだと、これが、七十二カ国が南を承認し北を承認しておらない。二十三カ国が北を承認しておる。これは国際的な世論というものがここにきまりつつあるのではないか、きまっておるのではないか、かように考えますと、もう二十年もたった今日、私どもは積極的に南と交渉を持つ、これが当然のことのように思います。もういつまでも、こういうような状況で、その片一方だけと交渉するのはけしからんというようなことで遠慮していくことは、かえって民族の独立をはばむ、そういうことにもなるのじゃないか、かように思います。そのことは、ひいては平和へのつながりから見ましても、あまりけっこうなことじゃない、私はかように思うのであります。
  12. 羽生三七

    羽生三七君 私は韓国の現状において問題にしておるのです。これを無視するということじゃない。そんなことは当然のことであります。ただ、時期的に見て、この時期にあえて拙速の方向をとる必要はないということを申し上げておるのでありますが、たとえば、基本条約に引用する国連決議、これは成立してから久しいことであります。国連決議そのものが私は失敗だったと思う。それから長い年月がたっておる。その間に世界は激動しておる。その激動して長い年月を経た今日のこの客観的なアジア情勢を十分把握して、その時点から韓国問題というものを見るべきだと思う。これはあとから申し上げますが、要するに、一口に言えば、総理韓国という時点から出発された、韓国という部分から。私はそうじゃないと思う。アジア全体の平和の確立の中に韓国をどう位置づけるのか。つまり、アジア全体の平和の中の一部分としての韓国というものをよく判断をして、そこから出発するときにはおのずから違った結論が出てくる。たとえば、北ベトナムをもし日本承認しておったら、おそらくベトナム問題について有効な発言をする機会を持ったと思います、日本は。その資格を持ち得たでしょう。あるいは中国の片方だけ、台湾政権だけを、これは限定承認みたいなものでありますが、それにしても、そういうことをしなかったならば、今日の中国に対する日本の困難性というものは解消されておったはずです。同じコースをまた韓国において選ぼうとする、これを私は問題にしておる。しかし、私はこの問題はまたあとだんだん詳しく申し上げますから、いま総理の御答弁に対する反論として私は申し上げたわけで、この問題は重ねて御答弁は要りません。  きょうは、したがいまして、だんだんに韓国にも触れますけれども日韓問題にも。国際情勢全般でありますから、アジアの平和確立に最も重要な関連を持つと思われる中国問題についてお尋ねをいたします。  さきの国連総会において、日本は今回もまた中国問題を重要事項指定とする提案国となりました。私は前内閣時代にもしばしばこの問題について、このことの不当性を指摘したことがございます。これは中国問題が重要であること、これは当然われわれも知っております。おそらく世界的に見ても最重要問題の一つでありましょう、中国問題は。それほど重要問題であります。全然政府の考え方とこの点は違いはございません。違いはどこにあるかといえば、中国問題が重要であるということと、重要事項指定とすることとは本質的に違います。これはもう根本的に違うのです。重要事項である、単なる重要問題であるというならば、討議を幾らでも深めればよろしい。ところが、中国の国連加盟を阻止するための手段として重要事項指定というものを国連の場で使っておる、これはもう明白であります。これは政府自身もそのことを承知でおやりになっておると思う。問題は、このような場合に、私はしばしば前内閣にも警告を発しましたが、なぜ日本があえて共同提案国となる愚をおかすかということであります。ここに問題がある。これは、この問題の本質は複雑でありますから、簡単には言えませんが、しかし一言にして言うならば、重要事項である、重要であるということと重要事項指定とすることとは本質的に違う。しかも、一番隣国である日本、まだ二十年を経て戦後の処理もできてない中国、これとすみやかな国交回復を、たとえいろいろな国際事情があるにしても、最もすみやかにやらなければならない日本が、この国連加入を阻止する共同の提案国となっておる。ここに問題がある。これをどうお考えになりますか。
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへんむずかしい問題ですが、ただいま御指摘になりますとおり、簡明にお答えするという場合には、やっぱり重要事項である、そういう意味において、私どもはその隣の国であるこの日本が提案国になることもこれは当然ではないか、私はかように考えております。
  14. 羽生三七

    羽生三七君 話が、これは私の質問に対するお答えにならぬと思います。重要問題であることは、私は根本的に認識しております。当然であります、これは。それと重要事項指定として中国の国連加盟をはばむ、阻止するその共同提案国に日本があえてその先頭を切っておる、アメリカとともにです。この不当性を私は申し上げておる。
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いや、ただいま申し上げますように、重要事項だから日本がその提案国になった。これは隣にいる国である、これも御指摘のとおりであります。こういう大事な事柄について、日本自身が隣だというだけに、それだけに非常に鋭敏に感じているのだと、だから重要事項の提案国になる、これは当然のことだと、かように申し上げておるのであります。
  16. 羽生三七

    羽生三七君 それでは総理の先ほど来言われておるのと違うのですよ。韓国をお隣の国として仲よくする、漸次これを他の諸国に及ぼしていくというのでしょう。均衡は縮小するといわれる。ところが、これは均衡拡大につながるのじゃないですか。
  17. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 実は私は別に矛盾しているとは思いません。こういう重大な事項については、やっぱり国際的に慎重にきめられるのが当然だ。それは提案国にならぬでもいいじゃないか、かような点に集中していると思いますが、私は隣の国で重要問題だと、このことを考えておる以上、やっぱり提案国になるのはあたりまえじゃないか、これを隠しておくことこそおかしくないか、かように私は思います。
  18. 羽生三七

    羽生三七君 その辺は根本的な考え方の、先ほど来ずっと述べてきた根本的な考え方の違いがそこにある。私は全然イデオロギーを抜きにしております。たとえば、中国の政治体制あるいは政治姿勢、そういうこととか、アメリカのいまのとっている政策とか、そういうこととは、いまこの時点で御質問していることとは全然別個であります。全然別個に、客観的に見て、たとえば、これはあとからお尋ねしようと思っておりましたが、この機会に申し上げますけれども、台湾に対してはいろいろな恩義がある、終戦時に蒋総統からいろいろな便宜を与えてもらったという、そういう恩義もあるし、条約を結んでおるという一つの義務もある。しかし、迷惑をかけたのは中国本土におる七億の人民大衆であります。それが問題なんです。それとの国交回復も考えないで、考えないどころか、それを阻止するための重要事項指定の当事国となる、しかも提案国となる、それは愚かなる政策ではないかと私は申し上げておる。なぜそんなことをやらなければならないのか。やりたい国があるならば、それはやむを得ないでしょう。あえて日本がその役割りを果たすことはないのじゃないか、これを申し上げておるわけです。
  19. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま言われるように、日本は、なるべくこういう問題では外に立ったほうがいいではないか、こういうお話のようでありますが、私は、これは重要事項であることは、だれが見てもそうだ。こういうことならば、やはり重要事項として日本もこれを取り扱うのだ、取り扱うのだが、提案国になるのはよけいだと、こういうことは、隣の国であるだけに、提案国になるのは率直でいいんじゃないですか。日本の国としては、そういうような扱い方で、国際的の大多数の意見はどうなのか、多数の意見、三分の二以上の意見がどうなのか、こういうことは、ぜひ日本として知りたいことじゃないですか。ましてや、ただいま御指摘になりましたように、国民政府と北京政府との関係がなかなかむずかしい状態にある、私はしばしばこの席で申しますように、いずれもが中国代表権を主張している。中国は一つだ、これは発言のしかたによっては、二つの中国に賛成する日本と、かような非難まで受ける。ここでやっぱり理論的にこういうことははっきりさしておかないと、損得の問題で問題を考えるわけにいかない、基本的な態度だと、私はかように思います。だから提案国になること自身が、ただいま言われるように、あるいは損得から見まして、あるいは非常な誤解を受けるというようなことであるかもわかりませんけれども、私は、それこそやっぱり主張が徹底していて、はっきりしていていいんじゃないか、かように思います。
  20. 森元治郎

    ○森元治郎君 関連羽生さんの言うのは、こういうことが頭にあってお尋ねになっておると思うのです。それは衆議院の段階で椎名外務大臣が、この国連憲章による重要事項の指定というのは、簡単にいえば中国を入れないためだ、国連に加盟させないための条項であると、まことに明快に自民党の伝統的政策を明らかにしたと思うのです。どこに重要事項のポイントがあるかというと、三分の二という数の問題ですね。三分の二というものは、この重要事項の中でまた大事な問題です。憲章の中で大事なのは三分の二、三分の二の数でいくならば押えられる、ここが重点なんであります。そうして重要事項だから慎重に審議しなければならない、こう言います。そうならば、一体いかなることを審議をされたか、どの会合で、特別委員会ができて、そうして中国加盟問題を特に取り上げて慎重に検討したのですか。そういうことを国連でいつだれがやったことがあるのですか、従来は、ただこれは総会で否決をされてしまうと、それでほっとしているだけで、何もやっていない。すなわち、この条項は入れないためだと、こういうふうに解釈するのですが、大臣の御見解を伺います。
  21. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いま、私のかつての答弁に関連してお話がございましたわけですが、今回の中国問題について、ただ投票が行なわれただけで、一つも審議とか論議がかわされていないじゃないかというお話でございますが、これは第一委員会、いわゆる政治問題を取り扱う第一委員会というのがございますが、その委員会において非常に熱心にこの問題が討議されており、ただ総会においては投票行為があっただけだ、こういうことでございますから、どうぞ誤解のないように願います。  それから私は、重要事項指定方式は、結局それ自身に意味があるのではない。大多数の国際世論というものを背景にしてこの中国の問題を処理することが正しいやり方である。いわばこれを適用することによって、簡単に中共の代表権を認めるということをはばんでおる。簡単にやることを、三分の二の大多数の国際世論を背景にしてかような問題はきめられるべきものであるということを、私はそういう意味を含めて、そういう含蓄を持って私は述べたということを御了解願いたいと思います。
  22. 横川正市

    ○横川正市君 まず私は総理の答弁の態度です。あなたはそのイデオロギーにとらわれない、あるいはイデオロギーにとらわれているのは社会党社会党がこの質問する態度としてイデオロギーにとらわれ過ぎているような、もののとらえ方で答弁されているということは、私は逆じゃないかと思う。あなたの答弁のほうがきわめてイデオロギー的で、それにとらわれ過ぎて答弁されておるんじゃないかと思う。これが一点目としてお聞きしたい。  二点目は、池田さんが、日本は大国だというふうにたびたび発言されている。ところが副総理の川島さんは、日本はみずから守る手段もない弱小国で、国際紛争に介入するだけの力がない、そういう思い上がったことはできないと、たびたび発言されている。一体総理としては、日本の今日のアジアにおける地位をどう考えておられるのか。  それから第三点目は、今度の条約の中にも、南朝鮮とは、多数の朝鮮人が居住をしている地域と、これと友好関係を結ぶという基本があるようです。少数の北朝鮮と多数の韓国との人口比は、二千三百万、あるいはこれはちょっと違うかもわかりませんが、北鮮は千二、三百万という数です。ところが、実際に今日問題になっております中国は七億の人口をかかえて、台湾は二千万といわれている。一体いずれとどういう形で友好関係を結ぶかということは、そのとっている、いわゆるケース・バス・ケースといいますか、によってきわめてイデオロギー的にものを判断しているんじゃないかと私は思うのでありますけれども、この三点について関連して質問をいたします。
  23. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は私の所信をまじめにお答えしているだけであります。ただいまお話がありますように、イデオロギー論争に終始しているつもりはございません。これだけは誤解のないようにお願いいたします。まじめに私はお答えをしているわけでございます。  その次に、日本は大国なのか小国なのか、こういうお話でございますが、これはいろいろ見方もありましょうし、また発言内容によりまして、いろいろの言い方があろうと思いますが、私は、今日言えることは、経済的あるいは技術的に東南アジア地域に対しまして援助する、また積極的に後援する、そういうことはやり得る、それだけの力を持っておる、かように思います。また、日本が、工業先進国の五つあるその一つであることも、このことは私から多くを言うまでもないところであります。したがいまして、人によりまして、あるいは大国だという表現も適当だろうし、またその他の表現も、それぞれの立場でやはり表現されるんだ、かように思います。国民に対して十分の自信を持たす、また前進さす、こういう意味におきましてのいわゆる大国的な態度というものは、これもわかり得る、かように私は思っております。  次に、中国の問題について、人口の問題でいろいろ韓国と比較してお話しになっております。中国を承認するのが当然ではないか、数の多いほうで韓国——南朝鮮を承認するその考え方ならば、中国の問題もそれと同じように処理すべきではないか、この御議論でございますが、この御議論は、私は、中国問題が今日そう簡単に人口だけで割り切れるものならば、しごく簡単でけっこうでありますが、国連もそういうような決議をし得ないところにこの中国問題の悩みがある、かように私は思います。
  24. 羽生三七

    羽生三七君 問題は、中華民国台湾と条約関係にあるということが困難な事実になっておる、これはわれわれ承知しております。しかし、それからもう十数年の年月が経過している。ちょうど韓国における国連決議の引用が、十数年たって今日失敗とわかったと同様であります。したがって今日、日本が台湾との関係よりも、より高い比重——これはアジア全体の平和という立場からこの位置づけをしていかないと、より高い比重をアジア全体の平和に置かないと、問題の解決にならぬではないか。義理人情もわからぬわけじゃございません。きのう亀田君から情理——情と理の問題のお話がありましたが、同じことだろうと思う。要するにこのアジア情勢の中で、どうしてこの中国——アジアの平和を確保するという立場で、どうしてこれを実現するかという場合に、中国問題が一番大きな問題になってくる。特に中国本土であります。したがって、そういう高い次元でこの問題を把握しないと、台湾という部分だけ、問題がある、確かに。あるが、それにもかかわらず、より高い次元で中国そのものを見直す。韓国だって私は同様だと思います。韓国という部分から出発すべきではなく、アジア全体の平和の確保という中で朝鮮全体を見るという、そういう立場の把握をしないと、断じて問題の解決にはならぬ、こう考えるので、その意味でいろいろなむずかしい条件があることは、私も万々承知しておりますけれども、しかしここらで踏み切って、中国国連加入問題等、一連の問題に決着をつける時期が来ておるのではないか。おそ過ぎると思いますけれども、いまからでもおそくはない——来ておるのではないか、こう考えるんですが、いかがですか。
  25. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 朝鮮問題と中国問題とを関連されてお話が出ておりますが、これはできるだけ分離する形でお答えしておると御了承いただきたいと思います。  私は、まず中国の場合に、ただいま言われる国府との関係におきまして条約的な権利義務がある、これもわかっておると言われるし、また国府自身が国連の安保常任理事国であるということも御承知だと思いますが、たいへんむずかしい問題が幾つもあるわけです。そういう場合に、こういうふうな問題を克服して、そうして中共の問題が解決されると、こういうことは、何よりも第一に中共自身が各国に祝福されて、そうして交際を持つ、こういうような態度が一番望ましいのではないか、かように私は思います。こういう事柄も結局申し上げないと、はっきりしないんだと思いますが、たとえば隣国ソ連、これは平和共存をはっきり言っております。いわゆる東西対立の緩和の方向努力をしておる。しかし、最近の中共、これはきわめて最近は別でありますが、公式的な発表は、ただいま申し上げるような点におきまして、いわゆる平和共存路線をたどっておらない。こういうところも、私は別に非難するわけじゃありませんが、ただいまのような国際世論が、中共を祝福して国連に加盟さす、こういうところの状態まで持ち上がっておらない。かように私は思うのであります。これは隣国のためにたいへん残念に私は思っております。
  26. 羽生三七

    羽生三七君 実は前池田内閣も、あれは大平外相だと思いますが、やはり国連で、祝福された状態のもとにおいて中国が国連で承認されるならば、日本も喜んでこれを迎えると、こう言われたこともあります。いまもほぼそれに近いことを総理も言われました。問題は、確かに中国の最近の政治姿勢も私よく承知しております。それから、国連加入の場合には、将来明確なひとつ何といいますか、問題点を指摘して、それを要求しておる。しかし、それは別の問題であります。むしろそういう高姿勢だから云々でなしに、それが平和共存の路線になるためにも、むしろ国際社会の一員に迎えたほうがいいのではないか。このことを言うので、これはまたあとから申し上げますが、その立場で、根本的にかなり違いがあるように思いますけれども、それはとにかく、そうすると、この前の大平さんのときにもあれしたのですが、祝福された条件というのはどういうことでしょう。
  27. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、いわゆる祝福、まあみんなが喜んで迎える、こういうことだと思います。私はそういう意味で最近の問題を、とにかく中共政府自身も、彼らみずからもやっぱり積極的に加入するような方向努力されるということが必要じゃないかと、かように私は思います。
  28. 羽生三七

    羽生三七君 それではまあ来年のことを言うのは早過ぎますが、たとえば来年の国連総会では、日本はどういうふうに臨んだらいいと思いになりますか。早過ぎると、今国連総会も終わった際に、いま来年のことをかれこれ言えないと思いますが、もう賛否ほぼ同数に近くなっておる。大勢はだんだんきまりかけてきておる。そうすると、日本の政治は、外交国際情勢待ち、世界の情勢がきまったら、あとからくっついていきましょう。こういうことじゃないのですか。日本の意思というものは、たとえば来年のことにしても、今後は世界の大勢がほぼ、漸次決着点に近づきつつある。この時点において、日本外交はいかなる姿勢をとろうとするのか、お伺いいたします。
  29. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 羽生君はたいへん理解のあるお話で、来年のことだと、いま、ことしがようやく済んだばかりだと、そのときに聞くのはやや早いかもわからぬと言われることは、国際の問題は確かに早い、一般の世事でも、来年のことを言うと鬼が笑うと言いますけれども、とにかくいま動きつつあるアジア、そういう観点に立って、またその力でもある日本と、これを動かす、あるいは動く中のその一つだと、こういう立場でございますから、ただいまから云々することはいかがかと思います。しかし、私はいまのような状態がいつまでも続くことも、これはいい状態ではないと思います。これはできるだけお互いがつき合いもできるように、仲よくできるような中で解決されたいと思うと、私はいつの時代でも申し上げておりますが、どの国とも仲よくしていきたいのだということを申し上げております。しかし、それにはお互いに独立を尊重され、内政に不干渉だということが、もう絶対に必要だと、かように申しております。しかし、この場合は、なお、非常に問題なのは、この国府の関係と、それから北京政府との関係、それが簡単に国連から国府を追い出して、そうして、代表権を北京政府に与えろ、こういう考え方もありますし、また、その代表権は別の処置で、そうして、これは二つの国があってもいいじゃないのか、こういうのも国連の中に意見があるようでございます。こういう点が、いまだ国府と北京政府と相互の間に解決されておらない問題だ、かように思います。こういう事柄も含めてすべてを、その動向を、動きつつあるアジアのそれが、ただいま申し上げたように、われわれが希望するような平和な形においてすべてのものが解決していく、こういうことが望ましいのではないか。こういうことになれば、いわゆることばは非常に抽象的で、わかったようなわからないようなことばですが、国際的に祝福されて中共北京政府が迎えられる、こういう事態になるんじゃないか、かように私は思うのであります。
  30. 羽生三七

    羽生三七君 官房長官に関係のあることでお伺いしようと思いますが、何か退席されるようでありますけれども、これは総理からお答えいただいてけっこうであります。その次になりますから、ちょっと暫時はよろしいです。その次になりますから……。  総理は十月二十五日の外人記者クラブにおける演説で、日韓国交の正常化こそ、将来朝鮮民族の平和的統一の基礎となると確信していると、こう述べられております。これはつまり北鮮とも国交を回復して、南北朝鮮が統一するその基礎づくりのために、とりあえずまず韓国から手をつける、こういうことを意味しているのですか。
  31. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはたびたび引用しておりますが、国連決議の問題でございます。で、国連決議は当時の状況、調査団の状況などは重ねて申し上げませんが、この国連決議がなされて、そしてその後も国連におきまして毎年同様の決議がなされておる、昨年がなされなかった、こういうような状態ですが、とにかくこれは確認されておる、再確認されておる、こういう状況でありますので、これを引用したわけでありますし、また、ただいま御指摘になりますように、私はどこまでも一民族国家、これが民族の悲願だ、かように思いますので、それの実現に協力する、こういう考え方でございます。
  32. 羽生三七

    羽生三七君 そのことは、時期がくれば北鮮とも国交を持つ、こういうことでありますか。国連決議の引用はよろしゅうございます。そうでなしに、佐藤総理自身の心境としてどうでありますか。
  33. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま申しましたように、一民族国家、これは民族の悲願だと私は思います。そういう考え方でものごとを見てまいりまして、いまの分裂国家の姿のままで二つ交渉を持つということはこれは適当でないだろうと思います。したがいまして、こういうような場合に各国とも態度がはっきりしておりまして、二つの国と同時には交渉を持たない、この考え方で一民族の一国家形成にじゃまにならないように、妨げないように協力しておると思います。御承知のように、七十二カ国が韓国承認しておる。これは北鮮承認しておらない、二十三カ国が北鮮承認しておる、これは南鮮を承認しておらない、これでもおわかりだと思います。
  34. 羽生三七

    羽生三七君 それは私もよく承知しております。ですから、問題は、総理の表現が非常に抽象的だけれども、私はこの際申し上げておきたいことは、この場における答弁が、日韓条約審議の過程で韓国を刺激してはいかぬという配慮からそういうことを言っておられるのか、あるいはその場のがれのことを言っておられるのか。ほんとうにもしそういうお考えがあるなら、そんな韓国に遠慮することはないから堂々と所信を披瀝していただきたい。北鮮と国交を回復する、それは時期の問題ですか、どうですか。
  35. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお答えいたしましたように、国際慣例がこうなっておると、日本もその国際慣例を尊重していきますと、はっきり申し上げておる。したがって、北鮮承認するとか、こういう事態は起こらないという考え方でございます。
  36. 羽生三七

    羽生三七君 それはおかしな話ですね。それはもう全然先ほど来の御答弁と違いますよ。それは韓国はお隣だからまず手始めにここで国交を結んで、漸次北鮮、ソ連、中国に及ぶと先ほど申されたでしょう、最初の国際情勢全般の私の質問のときに。それといまの違うじゃないですか。それはおかしいと思う。
  37. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 北と、あるいは中国とそれぞれ実際的問題としては処理しております。このことを全部、人的交流もあるいは文化的交流も経済的交流もはばむ、こういうような態度ではございません。このことは私がしばしば申し上げましたように、具体的な事例についてそのつどそれぞれ適切なる処置をしておると、これで御承知だと思います。
  38. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、北鮮ともしそういう条件ができるときはどういう条件のときですか。北鮮と国交を持つような条件ができるときと言えばどういう条件ができたときにそういうことになりますか。
  39. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま、ちょっときのうもこの席で問題になりましたが、韓国の憲法、同時に北鮮の憲法、これあたりもお互いにぶつかり合っておると、こういうことは勉強家の羽生君は御承知のことだと思いますが、ソウルを北鮮も首都にしていると、こういうことのようですし、また、韓国は鴨緑江以南、こういうことを言っているようでございますから、この憲法問題でそれぞれがぶつかるように、ただいまのところは一民族がいわゆる分裂国家を形成しておる、こういう状態だと、私どもお互いに注意をして、この分裂国家を助長するようなことはやりたくない。このこともしばしば申し上げてまいりました。そうして私どもは、最も常識的な、国際的な常識、そういう処置をしたいというので、多数の国が承認しておる韓国承認する、こういう状況でおります。この分裂国家状態が未来永劫続くのだ、かようには私は考えておりませんので、ただいま申し上げるような、韓国交渉を持って、そうして締結をして、北鮮とはただいま条約的な関係は結ばない、かように考えておるのであります。
  40. 羽生三七

    羽生三七君 それは非常に矛盾しておると思う。分裂国家というものをとらない、欲しないと言いながら、片方分裂国家交渉を持つでしょう。非常に矛盾しておると思いますが、この点で関連があるそうですから、どうぞ。
  41. 亀田得治

    亀田得治君 総理は先ほど北との関係等について、そのつど適切な処置をしてきたと、こういうふうにきわめて概括的に言われました。まあその点について抽象的な問いを私は申し上げることは控えまして、具体的に一つ聞きたいのは、これは当時すでに非常に問題になったことですが、ことしの十月に、御承知のIEC——国際電気標準会議の開催が日本でありまして、これに対して北朝鮮の代表が入国の申請をしておりまして、政府はこれを結局は認めなかった。そのつど適切な処置をしてまいりましたと先ほど総理は白々しくおっしゃるわけでありまするが、あの入国を認めなかった措置というものは、どのように評価をしても、あれが適切であったということはおそらくだれも考えないであろうと思うのであります。国際電気標準会議では日本政府のそういうかたくなな態度に対しまして総会をわざわざ開きまして、その総会にはアメリカの代表も出席をして、アメリカの代表ですら、どうも日本政府の態度はかた過ぎるということで、この招請を許可すべしという、そういう態度に賛成をしました。日本だけですよ。アメリカ日本はほとんどいろんな問題について同一歩調をとっておりますが、そのアメリカですら日本の態度にあきれて、そうして反対の意思表示をその総会でやっておるではありませんか。それでもなおかつ日本政府がこの受け入れを承認しなかった。どっから見ても、これを、私は、適切に処理したと、そういう抽象的なことばでごまかすことは間違いだと思う。言うこととなすことが違うと、昨日も政治姿勢で藤田君からもずいぶん御指摘のあったことですが、こういう具体的な大事な問題についても違っておるじゃありませんか、われわれはあの当時政府に再々いろんな角度で要請をいたしましたが、それも聞かれませんでした。ああいうことも一体適切な処置ということに入るという解釈であれば、私はそれは信用ならぬと思う。ああいうものは適切では実はなかったんだということなら、総理が言う適切な処置というのは今後多少の期待も持てるわけですが、ああいうものをも含めて適切だということになれば、これはむちゃくちゃと言わなければならぬわけであります。どうなんですか。済んだことでありますが、今後の尺度、標準としては非常に大事なことだと思う。
  42. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 社会党の方はあれは入れろと、こういうお話でございましたが、私は入れなかったことが適切な処置であったと、かように思っております。いまだに思っております。この点で議論をいたしましても、これは行政的な権限だし、また、考え方の相違もございますから、私は適切な処置だ、かように思っております。
  43. 亀田得治

    亀田得治君 いや、その適切である、不適切である理由をはっきり申してもらわなければならない。私は理由を若干申し上げて質問しておるつもりなんだ。全く技術的なそういう会に、それは共産圏であろうが自由主義圏であろうが、技術的な問題について世界の規格が統一されておらなければ困るわけなんだ。そうでしょう。みんなが困るわけだ。そういう問題についてそういう政治的な立場というものを入れてくる。これは間違い。私はそこまで言わぬでもわかると思って言いませんでした。ただ、むしろはっきりわかりやすいと思いまして、アメリカの態度を一つ引用したわけであります。適切であったというならば、どういう理由で総理が適切だとあくまでもおっしゃるのか、そのことを明らかにしてもらいたいと思う。ついでに私申し上げておきますが、われわれは、あの当時書記長と一緒に外務大臣にお会いして、何とかこれはやはり政治の立場を離れて処理すべじゃないかと申し上げた。やはり理由というものは明確に申されません。結局は、韓国政府から、待ってくれ、困る、理由といえばそれだけなんだ。それは何も筋の通った合理的な理由じゃないのでありまして、物理的にそういう現象があったというにすぎないわけであります。そういう立場から見まして、納得のいく説明をして適切であったかどうかということを明らかにしてほしいと思う。
  44. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはあのときの実情、事情から申しまして、時期的な事情から申しまして、また、環境等から申しまして、これは政府がとったことが適切だ、かように私は感じております。また、アメリカの話を引き合いに出されましたが、こういうところにも日本政府が自主的にきめたということははっきりしておると思います。そういう点はアメリカを引き合いに出されるのは、私はかえってやぶへびな感じがいたしました。これはアメリカの言うことをいつも聞くじゃないかということでアメリカを出されましたが、日本がやはり自主的にきめている、こういうことを御了承いただきたいと思います。
  45. 亀田得治

    亀田得治君 私、関連ですからそれほどしつこくとは思ってやないわけですが、あまりにも説明のしかたがなっておらない。アメリカのことを持ち出されまして、これがつまり自主的な立場なんだ、こう言われます。しかし、そうではない。今日おそらく羽生さんの質疑の中で基礎的に問題になっておると思いますが、世界外交の中できわめてかたくなな、かたい態度をとっておるのがアメリカ外交なんです。もう少し幅を持ってやったらどうかというのが、これはアメリカの内部でも多々ある議論じゃありませんか。そのアメリカすらがこのIECにつきましては、日本の態度を批判したということを私は申し上げている。そういう意味アメリカを引いたわけなんだ。そのアメリカよりももっとかたくなにいこうというのがあなたのお考えなのじゃありませんか、それならば。自主的ということはけっこうでありましても、常識的な筋の通った正しい意味での自主的でなければなりません。逆の筋の通らない方向で自主性などを発揮してもらうということはまっぴらでございます。アメリカの問題を引き合いに出されまして自主的というのはおかしいじゃありませんか。
  46. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど申したとおりですが、私がアメリカを引き合いに出したのは、あなたが引き合いに出された、かように私は思うからお答えしたのであります。アメリカの言うことを何でも聞く日本政府が、こういう場合にアメリカはこう言っておる、アメリカの言うことを聞かないじゃないかと言われるからこういうことは自主的にきめた、こう言うんです。いわゆる適切なりやいなやということは、それぞれの立場によってきめることであります。政府を非難されることはこれは御自由です。これは適切でなかったとあなた方おっしゃることはいい、しかし、政府はこれは適切だとかように思ったからきめたのであります。そのとおり言っておる。
  47. 亀田得治

    亀田得治君 総理はそうむきになられますが、それじゃアメリカの問題はもう抜きにしましょう。適切であったということについての具体的な説明は何もないじゃありませんか。アメリカの問題は抜きにしましょう。
  48. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま申し上げましたように、適切ということは政府が認定している。政府はこれを適切だと思ってやったんだ、そのことを申し上げた。だから皆さん方がそれを批判して、これは適切じゃないじゃないかとおっしゃるのはこれは御自由だ、私はかように申しておる。先ほど私が申しましたように、当時の事情としてはこれは適切な処置だったとかように私は申し上げております。
  49. 亀田得治

    亀田得治君 こういうことはもっと論議を深めてください。
  50. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 羽生君どうです。羽生君の意見を聞きましょう。
  51. 羽生三七

    羽生三七君 これが終わってから……。
  52. 亀田得治

    亀田得治君 これは第三者が聞かれましても、あの当時の事情からして適切と思った、それでは説明になっておらぬじゃありませんか。適切ということに少しことばを加えただけにすぎないじゃありませんか。なぜ具体的にもっと説明できないのですか。私のほうは一つ二つアメリカ問題は抜きにしまして申し上げておるわけです。私の主張が間違いなら間違い、政府はこういう立場から具体的な理由を持っておるんだ、それをはっきり示してください。あくまでも先ほどのようなことで突っぱられるなら何も理由がないということと一緒ですよ。
  53. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 何度も申し上げますが、私はこういうことは行政的な認定の問題だと思います。だから認定したその当時の事情というものがあるのでございます。この実情から見まして今回は入れないほうがいい、これが適切な処置だ、かように思っております。また、その次に今度は鍼灸、はりのほうでこちらへ来たい、これは入れてもよろしい、こういうことを言いましたが、それは断わられて入ってこなかった、それぞれのそのときの事情によりましてそれぞれ適切な処置をとるのであります。だからこれは一切外国から、北鮮から来るものは一切入れない、こういうものではございません。また、いま気まぐれだと言われますが、気まぐれというものじゃない。これは具体的な処置をそのときにきめるんです。そういう事情のもとに適正な方法をとる、こういうことです。
  54. 羽生三七

    羽生三七君 その問題は先ほど申し上げたように、私のはきょうは総論でありますので、いずれこの問題については同僚議員からまた機会を見てお尋ねすると思いますから、次の問題に移ります。  総理は十月二十日スチュアート・イギリス外相との会見の際に、核を持たない東南アジア諸国は核兵器に対する大きな不安を持っている、核拡散防止条約は核を持たない国の安全保障のことも考慮すべきである、こう発言されておりますが、真意を伺います。
  55. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、日本は御承知のように、唯一の被爆国、こういう意味で核武装を絶対にしない、また、持ち込みも一切禁止した、こういうことで、これはもう国民とともに誓っておりますので、非常にはっきりしておる。こういう国でありますから、こういう国のより非核武装国の安全確保ということについても核保有国が十分意を尽くしてくれなければ、こういう国の安全は確保できない、非常にわれわれは心配なんだ、こういう点でどういうように思うのかと、こういう話をし合ったのでございます。私は、おそらく羽生君もその前段についても、問題としては同様の憂いをしておられると、かように思います。しかし、ただいまの状況では、核保有国の間に核の拡散防止についての会議を持つとかあるいは使用についての制限をするとか、こういうような動きもございますので、それをぜひ実らしたいものだと、かように私は思っておる次第でございます。
  56. 羽生三七

    羽生三七君 核を持たない国の安全保障、これは核を持っている国の保護下に入るということとは違うんですか。日本は持たないし、持ち込みも許さない。しかし、安全を保障してもらいたいと言う、それはどういうことなんですか、具体的に言うと。
  57. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これがいわゆる平和に徹した考え方だ。いわゆる片一方できらっておられる拡大均衡というものはいやだと、だから、この核競争はもうやめてくれというのが一方で言われている。しかしながら、お互いがその国の安全を確保するという意味ではやはり優秀な防備がしたいと、そういう意味から次々に核兵器を持つ国が出ているんだ。こういう際に国際的な平和が一体どうなるのか。かような観点に立って、これはどうもわれわれは非保有国だから何ら言う資格はないんだ、核保有国自身が十分、これも戦争を希望しておるんじゃないだろうから、お互いに話し合ったらどうだ、そういう場合に非核保有国安全確保、そういうことについて自分の国ばかりの安全じゃなしに、こういう国々の立場も十分理解してくれると、こう言うのはあたりまえだと思う。私は、そのことを言って初めて国際的な平和が確保されるんだ、かように思います。
  58. 羽生三七

    羽生三七君 それはもうあたりまえの話で、問題は核を持たない国の安全保障を核保有国がどうしてするかということと具体的な関連性がないと、ただお茶飲み話にちょっとしてみたいということで、何も私平和につながるような意思というものは出ていないと思います。それはとにかくとして、日本は核も持たない、アメリカの核兵器の持ち込みも許さない、もしそうであるならば、どうして日本国政府が世界に向かって非核武装宣言をしないのでありますか。これは、しばしば歴代の内閣にわれわれは申し上げてきた。今度は佐藤総理に、初めてでありますが、持たないと言う、持ち込みを許さないと言う、それでなおかつ非核武装宣言を渋っているという理由はどういうことなんですか。それをやれば、やれば初めてたとえば中国の核実験等に抗議をする場合にも、自分は絶対に持たないということを世界に宣言して理屈を言うならばわかりますが、それでなければ、これは非常に迫力の弱いものだ、筋も通らない、また、世界に向かって言う場合に、日本世界唯一の被爆国である、日本がです。そういう宣言を世界に発して、日本の立場を明らかにしながら核問題について討議をするならば、これはまた非常に効果的なものになる。そういうことがわかっておるにもかかわらず、なぜ自民党内閣はそのつど非核武装宣言をかくも渋られるのか、お伺いいたします。
  59. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、こういうことは一国だけがそうやったからといって、国際的に協調できない限り、同一の歩みを進めない限り、核の脅威というものがなくならないんです。日本だけは核武装しない、こういうことを宣言しただけで私たちが核の脅威から免れる、かようには私は思わないんです。そういうところに問題の、実際の現実の問題が一つあるんじゃないか、かように私は思います。そういう意味で、これは非核武装宣言をしないから主張が弱いとか、こういうようなお話もございますが、主張が強くっても、私どもがその安全に脅威を感ずる、こういうようなことでは解決するものではない、かように思います。お互いが安全を確保していく、そうして平和に徹する、それにはどういう方法が一番いいのかということで進む、いま核保有国を交えての軍縮会議が開かれるとか、あるいは核拡散防止協定を結ぼう、会議を結ぼう、これなどは、ただいま私の提案でというわけでもありませんが、こういう事柄がやはり各国ともみな考えている、悩んでいるとか、こういうところからやはりそういう空気が醸成されている、かように私は思うのであります。
  60. 羽生三七

    羽生三七君 核拡散防止や世界軍縮会議の問題は、これはあとで触れますが、一国だけが宣言をしてみても無意味だと言われますが、これは国際的な協議は必要としない。ある一国家の単独の意思できまる問題です。しかも、それが強いとか、弱いとかいうことじゃないと言われましたが、私は大きな影響を持つと思う。日本の意思を世界に宣明する上に重要な意味を持つ。しかも社会党がこれだけそのつど政府に要求しておって、それでさしつかえないことなら、弊害のないことなら政府が同調したっていいじゃないですか。何も害悪はありませんよ。むしろ有益でこそあれ害はない。害のないことならたくさんの問題の中で一つぐらい野党の意見を取り入れたらどうですか。
  61. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 耳を傾けるべき説ならば、野党であろうがもちろん私は聞きます。そういう値打ちのある説は耳を傾ける、かように申しているわけであります。必ずそういうことは聞きます。しかし、ただいま申し上げますのは、核の保有云々よりも、私ども一番心配なのは、どうしたら日本の国が安全になるか、この安全の確保は一体どこなんだ、これに私は非常な心配を感じております。社会党の方は、ただいま非核武装宣言と非常に簡単に言われますが、安保条約にも反対された社会党が、日本の安全を確保する道は一体何なのか。何もなくする、そうして中立に徹底するのだ、この考え方では、私はただいまの国際情勢に合致した考え方だとは思わない。だからその点は、私は問題が食い違っているゆえんだと、かように思います。
  62. 羽生三七

    羽生三七君 私はいまその問題に触れるつもりはなかったけれども、たまたま総理がむしろ私のほうへ質問されましたので、私の意見を申し上げます。たとえば安保条約がどうして日本の平和、安全を守るか。私ども社会党は無責任な、国家の安全保障を考えない政党ではありません。国家の安全に対しては同様に、自民党以上に心配をいたしております。その考え方、その手段——よくお聞きなさい。手段方法が問題なんだ。これが問題なんですよ。たとえばこういうことをまず考えていただきたい。予見し得る近い将来に、他国が日本に攻撃侵略をしかけてくる、そういう杞憂があるかどうか。現在ですよ。現在予見し得る近い将来に他国から日本に攻撃侵略を加えてくる心配があるかどうか。私はまずないと思う。まずないということばです。絶対とは言いません。まずない。しかし、それよりもアメリカに軍事基地を提供して、いま事前協議の問題があって、いろいろかれこれ言っておりますけれども、もし事前協議の拡大解釈等をして、日本の基地から米軍機が飛び立って、ベトナムその他でもし戦争が起こる、その場合日本は報復爆撃を受けるでしょう。その危険のほうがより度合いが多い。とある日突然外国が日本に攻撃をしかけてくることは、近い将来、予見し得る近い将来はまずないと思う。これはあとでずっと論証していきます。しかし、それよりもなおかつ安保条約によって日本が外国に軍事基地を提供して、そのことによって起こる危険性のほうがより危険のウエートが多い。それをわれわれは言っておるのです。そういう立場から問題を考えないと、このいまの総理の言うようなことでは全然この問題の解決にはなりません。社会党がいますぐこれを、自衛隊をゼロにする、何もしないと、そういうんじゃないんです。  もう一つ重要なことは、防衛における外交の位置づけが重要だということであります。外交をどうお考えになりますか。だからすべて軍事力に防衛のすべてを託するんだ、ここに問題がある。すべてとは言いませんよ。しかし、総理あるいは自民党内閣のお考え方は軍事力に非常な大きなウエートをかけておる。そうではなしに、たとえていうならば、中国と国交を回復する、不可侵条約を結びなさい、ソ連と平和条約を結ぶ、不可侵条約を結びなさい。あるんです、問題は。そういうことは何一つやらないで、全部自由陣営に属するそれらの国々とだけ提携をして、その他の陣営を反対側に追いやる、それを防衛するために軍事力をさらに増強せんならぬ。そこに防衛庁長官おられますが、第三次防衛計画あるいは国防省昇格の問題等はあとからお尋ねしたい。ですから、社会党が防衛について無責任だなんて言うのはとんでもない話であります。むしろわれわれの立場こそ、日本の安全を保障する道では自由党よりも安全の度合いが多い、そういう立場である。(「何を言うか」と呼ぶ者あり)何を言うかではない。あるなら反論してください。反論してください、幾らでも。幾らでも私はここでお答えします。重大な問題です。関連質問幾らでもやってください。
  63. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日韓条約の問題とはややはずれるようでありますが。しかし、やっぱりそれもどこかに関連があると、こういうように思いますのでお答えをいたしますが、社会党は、いままでわが国の国防をなくするというような考え方ではなかった、予算審議等の場合でもそういう意味で予算を見られた、むしろここでそういうようなものはやめてしまって、社会保障のほうに回せということのしばしばの御提案を見た。しかし、ただいまのを聞くと、いや、日本の防衛についてはおれは保守党よりも熱心だ、こういうことですから、その点では安心いたしますが、安心をいたしますが、ただいままでの形は、どうも国民から誤解を受けておられる、社会党のために私は惜しみますので申し上げますが、これはもう社会党は軍備絶対反対、これは自衛隊もなくする。そうして防災の隊ならばこれは認めるけれども、一切そういうものは要らないのだ、そうしてこういうことが、わが国もいわゆる中立主義ならばこれで安心なんだ、こういうことを言われるのであります。また、いま不可侵条約を結べばいいじゃないか、こういうことを言われると、しかし、一片の条約がたよりにならなかったことは前戦争で私どもは経験をなめたところであります。これは軍部がどうあろうと、よかろうが悪かろうがそういうこととは違う、両国間にりっぱな約束があったけれども、それはほごになる、これはもう経験しておる、いまさらそういうものはたよりにならないこともおわかりだろうと思う。また、いわゆる中立国だといわれる諸国におきましても、欧州の諸国におきましても、これは地の利が違うと、こういう意味で、日本は絶対に侵略されることはないと、かようには言わないけれども、予見される状態で、ただいまは侵略を受けるようなことはない、この際絶対に侵略を受けることがないと、こういうことでないと社会党の言い分は通らないのじゃないか、わが国の。だから、いわゆる羽生君も言われるように、絶対に侵略されることがないと、かようには言わないが、予見される情勢から見たらさようではないか、心配はないのじゃないか、こういうことを言われる。こういう点で、いわゆる条約だとか、あるいはあまり心配はないじゃないか、こういうふうに甘い考え方、一体わが国安全確保ということは、これは万全を期したと言えるでしょうか。私はいわゆる政府といたしまして、また総理といたしまして、ほんとうに心配なのは、ほんとうにこの国の安全はどうしたらいいか、しかも、国民の負担をかけないような方法、そういう方法があるのか、ほんとうに私は心配なんであります。そういう意味で、私どもは、いまの防衛計画を立てておる。御承知のように、私どもは国力、国情に相応した防衛力は持つ、これが世界に対しましてもいえることで、新しい憲法で、われわれは力によって国際紛争を解決しない、それによって私どもの安全も確保される。いま羽生君の言われることは、新憲法ではっきりその精神が出ている、そのように私は思います。こういう立場でこのことをやっていく。そうして、それぞれの国際的には軍備競争、これは拡大競争をやられておる。しかも、隣の国でそういうことをやっておる、それでは、わが国の安全は何ら脅かされない、これが軍事基地をアメリカに提供しなかったらわれわれはほんとうに安心なんだ、こういうことが言えますか。ことにソ連のように、平和共存を言っている国なら別だ、しかし、ただいままでの公式な発言、中共自身は平和共存を訴えておらない、平和共存ではないと言っている、はっきり言っている、こういう言動のもとにおいてわが国の安全をほんとうに確保できるのですか。私は総理の責任として詰められると、たいへん心配なんです。私は率直に申し上げまして、ただいまのような中立論争は私は賛成をしない。
  64. 羽生三七

    羽生三七君 実は、私は、ほんとうはこれはきょうの質問の中にはたいして予定してなかったのです。しかし、そう言われると、社会党も黙っておるわけにはまいらぬ、はっきりしたいと思う。私どもは、自衛隊を即時全廃する、いますぐ全廃するなどと言っておりません。漸減をして建設隊に切りかえると言っておりますが、全廃すると言っておらない。それが速度が進むのは、客観情勢と関連があるわけです。だから、今日の客観情勢下に自衛隊を全廃するなどというむちゃな議論を社会党はやっておるわけではありません。そういう、たとえば、国防の強化を必要としないような客観情勢をどうしてつくるか、それが国防と重大な関係があるということを少しも考えなしに、ただ軍隊をふやせば日本の安全が守れるという、そのことを私は批判しておる。たとえて言うならば、本年三月当参議院の予算委員会の分科会で、当時の小泉防衛庁長官は、私の質問にこう答えておる。大体において通常兵器による局地戦的なことは、その程度のことは現在の防衛力において可能であるという考え方を持っております。局地戦的なことは現在の防衛力で可能である、それにはただし書きがついておる。ただし、大規模な戦争が起こった場合、ただし書きがついておる。大規模な戦争ということは、どういうことが予想されるのでしょうか、そこで総理お尋ねいたします。総理は米中対決を予想されますか。
  65. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 米中対決を予想するかというお尋ねでありますが、私は対決を予想はしない、ただいま対立しておること、これは認めざるを得ない。私どもがあらゆる努力をいたしまして、その対決の場は、これは起こらないようにいたしたいものだと、かように私は考えます。
  66. 羽生三七

    羽生三七君 それは、たとえば、ベトナム戦争が、これはあとからお伺いする問題ですが、ベトナム戦争拡大発展していけば、米中戦争も起こりかねない客観情勢にある、いまや世界最大の外交防衛の比重は、この問題であろうと思う。その拡大を阻止するために、世界の、あるいはアジア地域にあるわが日本国家としても、民族としても、最善の努力を払ってこ世界戦争への拡大を阻止しなければならぬ。もしそれが阻止できるとするならば、まず問題はない。ソ連とはどうですか。いよいよ親善関係を深めて、平和条約も場合によったら結びたいと言っておられる。それで局地戦争は、これに対応できるだけの自衛力は現在程度でほぼできた、では、どこの国を予想されますか、おそらく中国を予想されていると思う。この中国は、いま申し上げたとおり、ベトナム戦争拡大発展していって、米中対決の場が起こった場合に、そういうことが起こる、そのとき日本の一番の危機というものが訪れる、それを防ぐことが、若干の軍隊をふやすよりもより重大な日本の防衛の欠くべからざる要件ではないでしょうか。だから、防衛問題における外交の比重というものをあまりにも低く考えて、ベトナム問題は成り行きにまかせ、あるいは自由陣営片方とだけ国交を結ぶ、他の国とは積極的な敵対ではないにしても、これははるかかなたに追いやっておる、そして軍事力だけふやしておる、どうしてこれで私が先ほど申し上げた問題の解決になりますか。だから、外交のウエートをもっと重要に見て、防衛力を際限なしに第三次防衛計画は三兆円、第四次、第五次はどこまでいくでしょうか。きょうは私は時間があれば、憲法上許される自衛力の限界はどの程度かということもお伺いしてみようと思いましたが、そのことはさておいて、際限がないでしょう、これでは。しかも、均衡は、こちらがこれだけ伸ばせば、こっちもこれだけと、際限がない拡大均衡でしょう、だから縮小していかなければならぬ、お互いに。ところが、いまの政府のお考えは、縮小ではない、防衛力を無制限にふやすだけです。祖国を守ることにおいては私たちも重大な関心を持っております。だが、守り方が違う。もっと外交や防衛という問題に対して、単に軍事力をふやすだけでなしに、そういう積極的な、不可侵条約を結び、あるいはベトナム戦争解決し、あるいは他の陣営に属する国家とも国交を結ぶという、そういう姿勢をアジア全域に確立する中で日本に真の平和というものを求めなければならぬ、これが総理と私どもとの違いです。何も自衛隊は全廃して寝ころんでへ理屈言っておると、そんなことじゃありません。具体的なものだ。
  67. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまだんだんお話が先に進みまして、予算の審議をやっておるような気がしておりますが、まだ予算の審議はやっておらないのであります。したがいまして、防衛費を拡大して防衛力をふやしておる、こういって批判されますが、これは予算が出ました際に、どういうような計画になっておるか、その辺で十分御審議を願いたいと思います。とにかく社会党の方も同じようにわが国安全確保について御協力願えるということ、私もたいへん安心でございますが、片一方、片棒かついでもらう、これまでの気持ちにもなりませんが、私は、国民として国の安全を確保する、こういうことにやっぱりみんな協力することが最も大事だと、そういう意味で私はお答えしておる。
  68. 藤田進

    藤田進君 先刻の総理の御発言は、国内のみならず、国際的に非常な深刻な影響を私は与えると思うので、このまま次に進むわけにはまいりません。これを要するに、総理の所信というものは、一片の条約が何のたよりにもならないということが一つ日韓条約もしかりでしょう。条約に依存して平和を求めようとする考えは、これはもう全くむだだ、過去そういう苦い事例、経験があるではないか、こうおっしゃいました。この見地に立つということになれば、これは国際関係において二国間、多国間の条約を結ぶ場合に、この信念を貫かれるということであるとするならば——そう私は受けとめた——これは重大な問題ではありませんか。お互い国際間の信頼というものを高め得る、また、その条約が保障し得るという見地から結ぶのでなければならぬ。それじゃ、そんなものは当てにならぬのだ、自力の防衛をこれを打ち立てる以外にはないのだ、こう結ばれております。  第二の点は、日本に防衛力を増強していかなければならないとおっしゃいますが、小泉長官のみならず、毎国会、佐藤総理になってからも、中国の日本に対する脅威はどうか、脅威は全然ないと、脅威はないと。この国会ではどうおっしゃいますかね。しかし、総理のこの御発言をずっと発展させますと、結局は核兵器を持って対抗せざるを得ないということにもなり得るでしょう。あるいは、わがほうが持たないとしても、核兵器を持つ他国に依存しなければならぬという結論にもなりましょう。しかし、現在、世界の平和を好む、これは万人好むでしょうが、その考え方というものは、核戦争はもう人類の破滅だと、ここに核兵器の製造とか、貯蔵とか、これが使用とか、ひいては実験に至るまで、何とかとめようということで、日本国国会もこのことについては決議もいたしました。こういう重要な発言でありますから、私は、徹底的に日本の一国の総理の所信というものがその辺にあるということになれば、これは重大な問題だと思う。質問者羽生委員指摘するように、平和外交を中核として進めていく。わが社会党はそうである。自由民主党は、平和外交なり条約というものは一片の紙にすぎないのだと、総理の言明はそうであります。これでよいのかどうか、私は大きな疑問を持つわけであります。重ねてお伺いをいたしたい。
  69. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、過去の条約がどういう働きをしたかということは、私どもが苦い経験をしたのだ、その苦い経験を重ねてしないように、こういう意味から申し上げておるのであります。条約は一切信用ならぬ、かように私は申しておるわけじゃありません。それは、もしそういうようにとられるならば、私はそういうように申しておるわけじゃありませんから、その点は訂正していただきたい。少なくとも、私どもは、ソ連との間において戦争が起こるようなことではなかった、条約締結していた、しかしながら戦争現実に起こった、その事実を申し上げておる。これは、日本が悪かったか、あるいはソ連にそういう責任があるのか、そういうことを私は云々しておるわけじゃありません。わが国の安全を確保するという意味で、そういう意味でたいへん心配なんです。だから、一片の条約があるからいいじゃないか、こういうことで安心はできないということを申し上げておる。だから、この点は十分各人が御理解をいただく。私は、もう条約は一切信用できぬから条約は結ばぬ、かように申しておるわけじゃない。条約を結んでもなおかつこうなんだということが言いたいんです。だから、そういう点も十分御理解をいただきたいと思います。  また、次に、核武装についてのお話でございますが、これは、私どもは、日本の国が核武装するというようなことについて心配する筋は毛頭ないと思います。そうして、わが国が決議までしたと言われる。そのとおりで、国会で決議までした。しかしながら、国会で決議をしたが、外国はその決議どおりに、核は保有しないとか、核実験もやらないとか、かように考えると、なかなかそうでもない。現実は、私どものこれだけの、核は一切持たないのだ、製造も保管も輸送もこれはもう厳禁だ、かように言った、その決議までしたが、やはり隣の国では核爆発をやっておるではないか。この事実を私どもはやはり現実の問題として認めざるを得ない。このことを私は申し上げておる。私はそれで中共自身がけしからんと言っているわけじゃない。おそらく中共には中共の言い分があるでしょう。しかし、私は、その言い分を聞こうとするわけじゃない。しかし、おそらく、国会の衆参両院で決議されたとき、どんな理由があろうともこれはいかないのだ、これに反対する、こういうことを言ったはずです、どんな理由があろうとも。だから、これはもう弁解の余地もない問題だ。だから、私どもの決議がこういう意味では踏みにじられたということも私どもは考えなければならぬ。
  70. 藤田進

    藤田進君 いや、何かのことばの端にそういう簡単にものを言われたということであれば、そのようにこれは長い審議の過程ですから、総理といえどもつい勇み足とかいう場合もあり得るでしょう。しかし、社会党外交あるいは防衛関係方針に対して論駁をされ、羽生委員から、不可侵条約を結び、党の平和外交善隣友好という意味のここに所論に対して、あなたがさらに答弁の形で論駁をされた。その中に、不可侵条約だ何だおっしゃるけれども、そういうものは過去何ら役に立たなかったという趣旨のあなたの信念が吐露されたわけであります。これは、私は、速記録が反訳はすぐできますから、ここであいまいもことして次に進むということは、これはきわめて問題が問題だけに、そう簡単にまいりません。総理の言われたことが、はたして私が受けとめたことよりは意味の違うことであったかどうか、これは速記が証明する以外にありません。これは、反訳して、そして十分その真意を確かめて進みたいと思います。これは簡単な問題じゃない。単なる訂正とかなんとか、そういう問題じゃない。(「防衛庁長官関係ない」「求めてない」と呼ぶ者あり)
  71. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 先ほどの羽生さんの防衛力の限界——小泉長官の答弁について、なおあらためて私のほうから補足説明いたします。  防衛力というのは相対的なものですから、小泉長官が答えた当時、その状況においてはこれでやれると言ったことであって、その後において永遠にそれでいいという趣旨では、もちろんそういう御理解ではなかろうと思います。やはり防衛力は相対的なものだと私は思います。なお、いろいろな軍事同盟が世界じゅうにございます。しかし、軍事同盟があるから、じゃどこの国も防衛力が軽減されたかというと、さにあらずして、軍事同盟は軍事同盟、防衛力は防衛力という二つの歩みを今日世界で歩くんでおります。防衛力によって軍事同盟をしたから、それじゃ軍事同盟があるからこれで防衛力が軽減されるという国はまだなかなかない。この二つの問題が、先ほどに関連して審議の今後の発展に重要だと私は思いますので、私のほうから補足説明をいたします。
  72. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 羽生君の質疑の途中ではございますが、午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時から再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時十二分休憩      —————・—————    午後一時三十三分開会
  73. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) これより特別委員会を再開いたします。  日韓基本関係条約等承認を求めるの案件及び関係国内法案の四案件を一括して議題とし、午前に引き続き質疑を行ないます。  羽生三七君。
  74. 羽生三七

    羽生三七君 先ほど理事諸君の要求した速記の関係もありますが、間もなくできてくるそうでありますから、質問を続行いたします。  先ほどのスチュアート外相と総理との会談における核問題と関連をして、やはりハンフリー・アメリカ副大統領が十一月一日新聞記者との会見の際、「いまや米国にとって核戦力と核政策の中に友好諸国を含めるべきときが来たと思う。それは核兵器をこれらの国に譲り渡すことを意味するものではないが、日本も大国としてこの討議に加わるべきであると思う。」とこう語っております。また、十一月五日ラスク国務長官は記者会見の際に、「核問題についての話し合いに日本をも参加させることは米政府の方針であり、米国はすでに日本をも含めた同盟諸国とそれらの国々と関係のある問題について協議を行なっている。その中には核戦略に関する話し合いも含まれており、協議は引き続き行なわれることになろう。」とこう語っております。これに対して、橋本官房長官は記者会見で、「日本が米国から核問題に関する協議に招かれれば、核拡散防止、非核保有国の安全保障について積極的に意見を述べるであろう。しかし、いわゆる核戦略については日本は関知しない。」とこう述べております。核戦略のことはとにかくとして、このような会議に招かれるならば、官房長官の言うように、日本も積極的にこれに参加して意見を述べるのかどうか。その場合、橋本官房長官も談話の中で、「非核保有国の安全保障についても積極的に意見を述べるつもりである、」こう言っております。先ほどの問題にもちょっと関連して戻るわけですが、核を持たない国の安全保障、これはスチュアート外相が提起されたわけです。それからまた、ここでも橋本官房長官も、「核戦略はとにかく、積極的に討議に参加しよう」と、こういう談話を発表されておる。具体的にどうもその辺のことが私にはよくわからない。まず第一番に、ラスク国務長官なりアメリカの副大統領の言われたような核戦略は別として、核問題に関する討議に日本も積極的に参加するという、そうして積極的に意見を述べる、この橋本官房長官の見解と、総理は同意見でございましょうか。
  75. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も、招かれたらこちらから出かけて、そうして意見を述べたい、そのように思いますが、ただいま外務大臣にも聞いたのは、招かれたかどうか、そういう事実があるかどうかということですが、ただいままでそういうことはないようでございます。いまの記事の程度だと、かようにお考えいただきたい。
  76. 羽生三七

    羽生三七君 いや、正式に招請がまだあったわけでないですから、意思として、招かれれば参加するということを承れば、それでけっこうです。ただ問題は、その場合に、先ほどのところに戻ることをお許しいただきたいと思いますが、核を持たない国の安全保障を核を持っている国が考慮すべきである、この総理の提言ですね、具体的にどういうことなのか。どうも先ほどの御答弁ではよくわからないわけです。具体的にどうしたならばその核を持たない国の安全を核保有国が守れるのか、それをお聞かせ願いたい。
  77. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは私は、戦力が相違しているということだけでなしに、やはり人類を破滅に導く武器だ、かような意味で、核保有国も、核を使用するというようなことについて、反省するというか、自粛するというか、そういう事柄がほしいと思うのです。したがいまして、核保有国非核保有国の安全というか、核保有国非核保有国だから安全を確保してあげるのだ、こういうことでなくて、人類の共同の敵というか、そういう意味で核兵器というものについて特殊な考慮が払われてしかるべきじゃないか。ことにわれわれは、核は一切持たないのだ、どんな理由があろうとも持たないのだ、こういうことで、核を持たないのだ、核兵器を持たないのだ、そういう立場にある非核保有国の安全——平和に徹しているその姿が受け入れられなければならない。そういうことを核保有国も十分受け入れて、そうして人類の平和のために協力すべきだ、こういうことが実際言いたい、かように申し上げておるのでございます。
  78. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、一言にして言えば、結局、核を持たない国の安全保障を核保有国がするということは、核を全廃することが核を持たない国の安全保障になると、そう理解してよろしゅうございますか。
  79. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 非核保有国の安全を確保しろということを言うというのはいかにもことばが不十分ですから、核兵器以外なら何をしてもいい、こういうものでもないので、とにかく安全確保にはお互い協力するということが望ましいのです。特にそのうちでも核兵器の使用、これは私ども絶対に反対だ、こういう点を十分理解してほしいということであります。
  80. 羽生三七

    羽生三七君 それは当然なことで、いま総理も答弁され、私も申し上げた、核を使わないような条件をつくることが核を持たない国の安全を守る、これは当然なことだと思いますが、そこでもしアメリカに招かれて、かりに招請があって招かれて核問題の討議に日本が参加する場合、この場合には、そういう方針を最後まで貫かれますか。何らか討議の過程に、総理がしばしば言明されているようなことがあるにしても、何らかさらにそれを進めたような要請を受けるようなことはないと思いますが、これはあとから私が詳しく述べますが、この際はこの程度にしますけれども、そういう場合でも総理の先ほどの御答弁を貫き通されますか。
  81. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのは、核についての国際会議が開かれる、こういうことだと思います。場所はどこで開かれるということではない、きまっておるわけでもない、だからそういう国際会議日本は招かれれば出席する、こういうように御了承いただきたい。アメリカ日本だけでその相談という意味ではございません。それが一つ。  もう一つは、私どもの憲法、また国民の全体と誓った核武装のことにつきましては、私の考え方は変わりはございません。
  82. 羽生三七

    羽生三七君 これはアメリカだけではありません。核拡散防止の世界会議の準備国として——これは外務省ですが、準備国として日本は積極的に参加するという意思表示を外務省としてはやっておるわけですね。ですから、それにはそれなりのいわゆる成案というものを持って、積極的に参加して意見を述べる準備国となるという、そういう意思表示をしておるんですから、その場合に私の心配しておることは、そうは言っても何らかの形でいままで言われたことと違った意味の深みにはまる危険があるんではないか、いまおっしゃったような御答弁を最後まで貫き通せるかどうかということをお尋ねしたわけでありますが、間違いなければそれでよろしゅうございます。間違いないですね。  そこで、この問題ではあとに他の委員から御質問があるようでありますが、周知のごとく、中国は再三にわたって核実験をやっておるわけです。で、佐藤総理の核を持たない国の安全保障ということは、中国を意識して言っておるわけではないですか。別にそういうことではない、一般論ですか。
  83. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 一般論であることはもちろんですし、さらに国際的視野に立ってこのことを申し上げております。
  84. 森元治郎

    ○森元治郎君 私は中国問題についての関連をやるはずですが、いまの核についても、中国が核を持っているということは脅威だと思うかどうか、一つ関連であります、羽生さんの関連。  それから、国際的視野において核を持たない国の安全についての会議には出たい——その会議の性格は、自由主義国家群だけの会議になるんじゃないか。核の脅威というのは、東西の親分の米ソが中心で持っているから、片方だけの会議に参加するというようなことはすべきじゃないんじゃないか。  それからもう一つは、この核の保護を受けたいというようなことを日本が最近積極的に言いだした裏は、もし保護ができないという場合にはどうするか。ポテンシャルはあるんですから、核を自分で持とうとする伏線ではないかと私は勘ぐるのでありますが、そうでなければ幸いであります。ちょっとこれをひとまず伺います。
  85. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 関連質問で二つ、三つ一緒にお問いになりますから、まだあるようですが、ただいま重要な問題ですからお答えしておきます。  中国が——北京政府が核爆発を次々にやっておる、これが日本は脅威に感じておるのじゃないか、こういうお話であります。私は、核兵器そのものよりも、こういうことに脅威を感ずるか感じないかはその国のとっておる政策だと思います。私は、ソ連が核兵器を持っておりましても、ただいまの状態で、そう脅威を感じておるという状態ではございません。平和共存の路線がはっきり確認され、そういう意味において政策が遂行されておる限り、こういうことは私どもはあまり心配しなくてもいい、かように思います。御承知のように、ただいま私中共政府を非難するわけじゃありませんが、最近述べられた公式発言なるものは、この点におきましてたいへん心配であります。この点は、核兵器を持たなくても、こういう政策をとっておられる限りにおいては、これは心配なのが当然ではないか、かように私は思います。だから、これは核兵器そのものがいまとられておる政策だと、かように御理解をいただきたい。ましてや、核兵器を持っておる北京政府とすれば、これが脅威を感じないというのはどうかしておる。私は感ずる。  その次に、そういう事柄は、保護を受けたいから、核武装しておる国から保護を受ける、そういう保護を受けることができないならばみずからで考えるような考え方ではないかと、こういうお尋ねでありますが、私は国民とともに誓った核武装についてははっきりした態度をとっております。ただいままでこの点では何らの疑問はないと私は思っております。また、今日までとってきた政策を変更するというような立場でもないと、これも御理解をいただける、かように思います。  第三の点は、国際会議が開かれるというが、それは東西双方でなくて、自由主義陣営だけではないのかと、こういう疑問を投げかけられました。もしもそういうことであるならば、それは確かに意味をなさない、こういうことにもなります。これは私ども一番心配しておるいわゆる軍備の拡大均衡方向へ歩むことになりますので、私どもの望むところでない。ただいままで言われておりますのは、ソ連等いわゆる核保有国——東西の核保有国会議を持とうということであるし、中共——北京政府自身は国連には加盟まだしておりませんけれども軍縮会議には、持っておるという意味においてやはり参加をみんな希望しておるという状況であります。このみんなが話し合おうというのはそういう方向だと、しかしそれは必ずできると私はただいま申し上げておるわけでもない、とにかくこういう事柄は、お互いの国が、国際平和を願い、また人類の幸福を求める、こういう立場に立って、共同のこれが広場だ、かように思いますので、その点で相談をしていくことがよほど有意義だ、かように思いますので、ただいま言われたような結果から見れば、あるいは自由主義陣営だけで会議するようになるのかもわからない。これは共産主義諸国のほうからこれに参加するという積極的なまだ意思表示をしてないのですから、そういう心配はあろうかと思いますが、そういうことではこれは効果はあげないのだ、御指摘のとおりでございます。
  86. 森元治郎

    ○森元治郎君 やめてもらいたいことは、事情のはっきりしない今日、しかも核兵器というのは東西が話し合って初めて効果のあるもので、片方のかさの中に入ることは決して安全でもないし、平和にも役立たないと思うから、この交渉には乗らないことが大事だと思う。それより先に日本がやることは、この間の世界軍縮会議——九十一カ国が賛成し、フランスが棄権をして、反対ゼロという、あの方針を大いに力添えをして得ていく、こういうこと、それから核の地下実験協定がまだ部分核停で残っておりますから、これを促進をしていくこと、国連の内外を問わず、軍縮、核の広がりを押えていく、こういう根本方針が大事でありまして、この点はあくまでも貫く、一方的のかさに入っても安全は保持できない、相手があることでありますから、大きな方針ではそういうふうに行ってもらいたい。  それから、中国は、結局総理も気違いが刃物を持ったような表現でありましたが、政策がおもしろくない、しかも核兵器を持つというのでは脅威であるとおっしゃっております。この脅威を取り除くために自由陣営のかさに入るということは、結局、戦いを予想する、核の戦争戦争になった場合に生き延びるということは容易でないのは、だれも知っているので、そういうことをするべきじゃないと思うから、もう一点だけ伺って次に入ります。
  87. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 一方のかさに入る、こういう意味でないことは、先ほど説明をいたしました。また、森君の御意見にもありますが、私も確かに一方に片寄るということは、これはたいへんなことだ、かように思いますので、そういう点では十分慎重にやるべきだと、かように私も思っております。  私が念願するところのものは、わが国の安全はいかにして確保するか、これに徹底するというか終始するのでございますから、そういう意味でどうか御了承いただきたいと思います。  また、軍縮会議における決議その他も、わが国軍縮会議のメンバーでないというか、そういう意味で、軍縮会議に直接出かけて意見を述べることは不可能でございますが、今後この種の国際会議がひんぱんに行なわれるだろうと思いますし、われわれも、そういう国際会議の場を通じて、わが国基本的な態度を説明したいと思います。また、国連の内外を通じて平和に徹しろというお考え、私も賛成でございます。
  88. 森元治郎

    ○森元治郎君 そこで重大な問題を発見したのでありますが、どうも不確実であったので、速記録を取り寄せて、そうして確信を得たから御質問を申し上げます。  問題は、羽生委員の、中共が祝福されて国連に入るのはどういうことか、というお尋ねに対する総理の御答弁の中であります。この前は略します。「この国民政府の関係と、それから北京政府との関係、それが簡単に国連から国民政府を追い出して、そうして、代表権を北京に与えろ、こういう考えもありますし、また、その代表権は別の処置で、そうして、これは二つの国があってもいいじゃないか、こういうのも国連の中に意見があるようでございます。」——これはそのとおりですね。ここからです。「こういう点が、いまだ国民政府と北京政府と相互の間に解決されておらない問題だ、」——ここであります。「いまだこういう点が国府と北京政府と相互の間に解決されておらない問題だ、かように思います。……ただいま申し上げたように、われわれが希望するような平和な形においてすべてのものが解決していく、こういうことが望ましいのではないか。こういうことになれば、いわゆることばは非常に抽象的で、わかったようなわからないようなことばですが、国際的に祝福されて中共北京政府が迎えられる、こういう事態になるんじゃないか、かように私は思うのであります。」。それが総理の御答弁で、いままでもさんざんこの中国代表権の問題は、北京を正当とし、国民政府を正当として争われてきょうまできた。これが解決方法については、重要事項指定方式だというので、日本はこれの共同提案国になってこの間の国連でもやった。しかし問題は、こういうふうに北京と台湾が一つの中国だと言っているのだから、まず、その仲間で一つ二つ話し合ってもらえないか、こうすれば穏やかに入ってくるのじゃないか、入れるのじゃないか、こういうふうに私は全く新しい角度から日本政府が中国問題を取り上げたと思う。いままでは、北京のあることは承知しているけれども、台湾とは条約があるので動きがつかないというような御答弁であったが、これは大きな転換だと思う。これをちょろっと羽生さんの祝福の中に織り込んでいったのがこれがスタートだと思う。ちょっと伺います。
  89. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、まあ話し合いとまでは申し上げておりません、ただいまの速記でも、国民政府と北京政府で話し合うというところまでは触れてないと思います。とにかく二つ関係があるような現実であります。そうして、そのいずれもが一つの中国を主張しておる、そういうもとにおいては、これはなかなか解決しないのだということを私は申し上げたいのであります。ただいま読まれたこと、これにいろいろ解釈されるというが、誤解がないように私は申し上げておきますが、北京政府にしても、国民政府にしても、一つの中国を主張している、もしも、これを二つの中国というような、カナダあたりのような考え方だと、これは二つの中国を唱えるものだ、こういって非難されておる、こういうことを実は申し上げておるのであります、端的に申し上げますと。これがいわゆる抽象的ではありましょうが、抽象的でもしかたないので、とにかく平和的に解決されることが望ましい、こういうことを申し上げたのであります。
  90. 森元治郎

    ○森元治郎君 こういうことを言った底意は、いまの御答弁の下地があると思うのです。それは、私、新聞で読んだのでありますが、去る十七日の国連総会で、重要事項指定の決議案は、賛成五十六、反対四十九、十二カ国決議案のほうは、四十七対四十七、こういう票の結果が出た。意外な結果であったので、松井国連代表は意味深いことを言っている。松井代表は、十票差——重要事項指定の再確認のほうですが、少なくも十票の差、多ければ十五、六と読んでいたのに、七票差に終わった、こういうこと、これは非常に驚きであるという意味でありまして、ただし、この七票差の壁は固い、これはもう譲らないだろう、だから将来も何とかいくのだろうという含みでありましょう。そのあとが、これが大事なんであります。大国間の話し合いが必要だ、票の差だけでは判断すべきではないとの意見が一部の国にある、来年の見通しは困難だ、という談話があります。これは小さく出ておりますからわかりませんが、私の勘でいけば、この重要事項の決議案に参加した国の中にも、とてもこれは票読みその他ではだめだ、大国の間の話し合い——大国というのはどの国とはメンションしておりませんが、国民政府と北京であるかもしらぬし、あるいは関係国であるかもしらぬが、こういうことが松井代表から政府に報告があって、そうして総理はおっしゃったというふうに私は思う。何となれば、総理もなかなか頭が忙しいし、中国問題をこんなふうに転換するだけの余裕もないのが、突然の、たいへんビッグストライクで前に出たのですね、これは、そういう報告に基づき、現地の情勢が変わってきているということに基づいて、こっそり政策転換の頭をちょろっと出したというふうにまず理解するのですが、どうですか。
  91. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の話ししたのは、ただいまのように政策転換、変更しておる、それが変更とまでは言わないが、頭をちょっと出しておる、こういうようにとられておるようでありますが、私が申し上げているのは、一般情勢のその一端の批判をしただけだ、私自身の考え方は、在来の考え方と変わりはございません。それだけははっきり申し上げておきますが、また、松井大使がどういう表現をいたしましょうが、それと私の発言とに全然関係はありません。別に松井君からの情報を得て、それで私が申し上げたと、こういうものでもありません。あるいは、こういう点についてなお外務大臣——新しい材料でも持っておられれば外務大臣からもお答えさしたいと思います。
  92. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいま森さんが言われたような、後段の松井大使談というものにつきまして、私は承知しておりません。
  93. 森元治郎

    ○森元治郎君 じゃ、もう一問伺いますが、これはたいへん新しい政策展開への風船をあげたと私は理解する、こういうふうに展開してくるのだろうと思うが、ところで、政府は国民政府を勧奨して、こういうふうな働きかけをするおつもりかどうか。祝福されて入るということは一つなんだと、幸いあんたも一つだと言っておるんだ。どうだひとつ二つが話し合って落ちつくところへ落ちつくように、こういう話をするつもりかどうか。それと同時にもう一つ、なかなか味のあるあなたの御答弁は、盛んに長い能書きを言ったあとに、こうやって中共政府が入ってくるという事態は祝福されるべきだと、その際は北京であるということがアンダースタンド——読み込まれておるのです。この二点を伺っておきたい。
  94. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私、重ねて申しますが、いろいろ森君は頭のいいところで、私の発言をいろいああろだろうか、こうだろうかということで、もじっていらっしゃるようですが、私は重ねて申しますが、ただいままでの中共政府に対する私の態度、国民政府に対する態度、これに何らの変更を与えるものでないと、このことだけ重ねて申し上げてお答えといたします。
  95. 羽生三七

    羽生三七君 いまの問題は、いずれ、いろいろな機会に論議されると思いますが、そこで問題は、この世界平和、ひいてはアジアの平和のことに関連するんですが、そういう際に、いまの核問題あるいは中国問題、これを考える場合に、国連で、たとえ台湾のことがあるにしても、再三にわたって中国の加盟を除外しておる。ところが、世界軍縮会議には、いま森君の指摘したように、賛成九十一、反対ゼロ、棄権一で決定をして、これに中国が参加するかしないか、これは別ですよ。しかし、この会議の最大のねらいは中国の参加であります。そうすると、中国を国連で除外して幸いに参加すればいいが、中国がですね。国連で除外して、国連の加盟国でない中国がいかなる決定にも服さないと言えば、それっきりでしょう。どんなに核問題の協議をしようとも、あるいは、どんなに軍縮会議を進めようとしても、世界最大の軍事力を持つ——最大ではありませんが、最大の、まあ最も高いレベルにある中国、最大とは言えないでしょうが、最も高い水準にある中国、それを除外して、完全な核禁止あるいは完全軍縮が行なわれるはずはない。幸いに、世界軍縮会議に中国が参加して、世界と歩調を合わせて、ともにそれじゃ中国も核兵器の実験を今後もしないし、やめましょうと、そのかわり、アメリカもソ連もやめろと、世界じゅう全部やめろと、そういうことになればよろしいが、もし参加しない場合には、どんなに軍縮会議やったって、これは全然問題にならない。しかも、国連の中には、これを迎えない。どうして解決ができますか。だから問題は、中国の脅威があるかどうか知りませんが、そのことを論ずる前に、中国を国際社会の一員に加えて、その中で中国を含む核兵器の製造、使用、実験の禁止等すべてを取りきめて、それから完全軍縮をもあわせて行なう、これが筋道だと思う。そういう意味で、いろいろな事情があるにしても、私はいまの国連なり、国連の一部なり、あるいは日本政府の考え方は間違っておると思う。それは世界の大勢がまだはっきりしないからと言いますが、そうでなしに、いま私の言ったことに御異論があるとは私は思わない。そういう方向でこそ、日本が核拡散防止の会議に出ようとも、あるいは世界軍縮会議に出ようとも、そういう意見を貫いてこそ、初めてアジアの平和というものが確保できるのではないか、こう思いますが、いかがでございますか。
  96. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私もこの核兵器についての国際会議というような、核保有国、しかもそれが東西両陳営の核保有国、そういうものが集まって会議をしない限り意味がないということを先ほどお答えいたしました。ソ連がこういう会議に参加されるなら、そこで最後に、その意向を明確にしていない中共の問題がある。中共が入らない限り意味がない、これもお説のとおりだと思います。私はただいまのような、ほんとうに心から世界の平和、人類の幸福を念願する、こういう話し合いに参加するのだ、こういうことが望ましいのではないか、こういう事柄がやはり権威を高からしめるゆえんじゃないか、かように思います。羽生君のお説と大同小異だと、かように私は考えておりますが、ぜひそうあってほしいものだと、かように考えます。
  97. 羽生三七

    羽生三七君 次の問題は、日本は国連の安保理事国に立候補しようとしております。事実また日本は当選すると思う。もしそうなった場合に、私は日本の責任はいよいよ重くなると思います。この場合は必ず、責任のある地位に日本がつくという場合には、安保理事国に立候補するにあたって、それなりの外交方針なり外交姿勢があってしかるべきだと思います。私は、これは安保理事国に当選をして、常任理事国ではありませんが、安保理事国に当選をして、これはあとからも申し上げますけれども、必ず相手国から言われることは、理屈だけ言っておってそれで済むかという指摘を受けるのじゃないかと思う。したがって、よほどの心がまえがなくて、ただ今度日本が安保理事国になってみよう、そんなことじゃ相ならぬと思う。これは外務大臣でもいいですが、どういう心がまえで国連安保理事国に立候補しようとするのか、私は、当選は決定的だと思いますから、この点伺います。
  98. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 一口に申しますと、やはり世界の平和機構としての国連の機能を一そか強化するという一言に尽きると思うのであります。その方法につきましては、いろいろございますが、ともかく、常任理事国のたとえ一国でも拒否権を行使すれば、ほとんどその機能がどうにもならない、発揮ができない、これに対する補完の方法としては、総会の決議によるとか、いろいろ考えられており、また従来もとられていた手段でありますが、一そう平和維持機能を何らかの方法によって強化する、その方法を発見し、これを推進して、これを実現するという方向につとむべきであると、かように考えております。
  99. 羽生三七

    羽生三七君 総理はちょっと中座されておりますから、それじゃ外務大臣に伺いますが、単にそういう拒否権問題等、これは技術的と言えるかどうかわかりませんが、そういうことだけが目標で、世界なりアメリカの平和についての具体的な、たとえばベトナム問題にどう対処するとか、中国問題をどう扱うのか、あるいはまた、そのほか朝鮮問題もあります。そういうことに対する具体的な平和構想というものを持つことなく、ただ単純に国連の機構そのものの手直し、それが今度の立候補の目的ですか。
  100. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただそういう空漠な、機構を強化するというようなことでは、どこの国も相手にしてくれないだろうと思うのであります。やっぱり世界に相生起する具体的な事実に即して平和維持機能というものをほんとうに現実的に強めていく、こういうことでございますから、やはりベトナム問題でありますとか、あるいは印パ紛争問題であるとか、いろいろな具体的な問題、そこに当面せざるを得ない。こういう問題に当面して、どうこれに対して判断し主張するかということになっていくと、こう私は考えます。
  101. 羽生三七

    羽生三七君 先ほども申し上げましたように、国連安保理事国に当選した場合には、必ず自由国家群あるいはその他からも出るかもしれませんが、その地位に相応する責任分担、義務の履行を求められることは私は確実だと思います。何も問題のない平和の国際環境のときはよろしゅうございます。あるいはどこかで問題が起こっても、遠い地域である場合には、これもさしたる問題はないかもしれません。しかしアジア周辺に何らかの事態が発生したときに、安保理事国のような地位にある場合には、それなりの責任履行を求められるのではないか。この杞憂は私必ずしも単なる推測ではない。必ずそういう道筋をたどるのではないかと思いますので、その点はどうお考えになるのか。
  102. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの羽生君のお尋ねは、この安保理事会の理事国になれば、必ず責任も重大じゃないか。この重大な責任を果たしていく決意ありゃ、こういうことだと思いますが、私どもも安保理事会の理事に立候補するということは、私どもの責任を果たしていくというか、世界の平和に寄与するというその立場で立候補するのでありまして、ただいま言われるように、もちろん重大な責任を果たしていく。そういうことで最善を尽くしてまいるつもりであります。ただいま、そうなるとたいへん心配だというような言い方をされましたが、私は、わが国が平和に徹しておるこの姿から申しまして、こういう事柄に最も適当している国じゃないか。国際紛争を、武力に訴えない、こういうことをきめておる。世界においてもほんとうの先頭を切っておる国だ、かように思いますので、そういう意味で私ども責任を果たしていきたい。かように思います。
  103. 羽生三七

    羽生三七君 これに関連することでありますが、たとえば日韓条約の軍事的側面については、政府は今日まで十四年の交渉の過程にそのようなことは一度も討議されたことはない、こう言われておる。あるいは確かに条約そのものの上には軍事条項は何ら見当たりません。その限りにおいてはそうかと思います。それでまた私は、ここではいわゆる東北アジア軍事同盟の問題も云々はいたしません。これはいずれ同僚議員が後の機会に詳しくこれに触れるはずでありますから、私はここではこの問題には触れません。ただこの際言えることは、日本と米国とは日米安保条約を結んでおる。米国と韓国、台湾とは軍事同盟を結んでおります。米、韓、台、この三国は問題はない。これは直接的なつながりを持っておる。日本はそれから日米の安保は結んでおりますけれども、この四カ国を結ぶ同盟には直接なっておりません。これは政府の答弁のとおりだと思います。この場合、一番の問題は何が残されておるか。残されているものは日本の意思であります。おわかりになることと思います。表面上の軍事同盟機構は何一つ存在しておらない。そういうものにどういう形をとるかは、日本の意思であります。日本の意思がなければそれに加わらないわけです。  もう一つは、それをはばんでおるものは憲法上の制約であります。だから実際にはそういう布石がずっとしかれておるけれども、それは日本の意思がどういうところにあるかは、これから申し上げてみたいと思いますけれども、これをはばんでおるものは憲法上の制約であります。現段階はこういうものだと思います。  さて、そこでお尋ねしたいことは、アメリカベトナム問題等に関連して最近しきりと日本の対米協力のあり方について論評を加えております。どういう論評かといいますというと、この自由陣営の防衛のためにアメリカベトナムで死闘を展開しているときに、日本は何のかんのと言って少しも積極的な協力をしない。こういう形での不平、不満あるいはいらだちであります。これは現にアメリカにある。今後、こういう形での対日圧力が一そう強力になってくる場合、しかも、安保理事国に当選するような条件が出てきたとき、日本が今日まで、ただいまも総理がしばしば言われた、御答弁なすったような平和に徹する、あるいは戦争に絶対に巻き込まれない、この姿勢を最後の最後まで貫き通されることができますか。私はここで吉田・アチソン交換公文等に示されておる問題、あるいは国連決議の問題これらの内容には触れません。これは他の同僚議員がやってくれるはずであります。ただ政治姿勢として、いま申し上げたように、アメリカからいよいよこの日本外交姿勢というものに批判が一そう加わる。安保理事国にも当選したではないか、しかも、理屈だけ言っておる、こういうようなことを言われてきたときに、はたして、総理がいままでのような姿勢を最後まで貫き通される確信があるかどうか、これを伺います。
  104. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この日韓条約その他の協定が、これは軍事同盟ではないか、また、そういう軍事同盟の規定もないか。これは羽生君が言われるまでもなく、軍事同盟を背景にしないもので、したがいまして、秘密条約などは全然ございません。このことを重ねて申し上げます。また、このことは日本政府ばかりではなく、韓国政府もはっきり申しております。だから、軍事同盟でたい、これだけは、はっきりしております。  まず第一はそれでよろしいのですが、第二の問題になりますと、日米安保条約があるではないか、その米国はやっぱり米韓軍事同盟を結んでおる。米台軍事同盟を結んでおる。こういうことで国は、相手は違うが同一人がそれぞれ顔を出している。そういう意味で何だか政府の説明が不十今だ、やはり、いざとなると頭をもたげてくるのじゃないか、軍事同盟への考え方が頭をもたげてくるのじゃないのか。その頭をもたげてくるものとしてもたげてきた場合に、日本の意思というものがどういう決定をされるのか、この意思が、なかなか自由に意思を決定しようとしても、憲法の制約があって戦争はできないのだ、だから、日本の意思が戦争へ何か向いているようなちょっと印象を与えるのですが、そういうような言い方のお話がございました。しかし、私は、この憲法の規定というものは、いわゆる民意——国民自身がきめたものだ、かように私は思います。いわゆる、政府、時の政府がこの憲法をきめたものじゃないのだ。これは民意によってきまっている。したがいまして、この憲法がある限りにおいて、日本の意思決定の方向は、もう、はっきりしている。国際紛争を武力解決しない、これが日本国民の意思であり、民意であり、この日本の意思である。したがって、これは政府が——時の政府がどうあろうと、はっきりしている。もう変わらない考え方なんだと、かように私は考えておるのであります。この考え方から、ただいまのような問題がどう出てくるか。対米協力が今度は変わった方向でいくのじゃないのか、こういう御疑念であります。ことにベトナム問題からアメリカは対米協力について、日本の出方についてのいろいろな批判もしている。これは必ず、安保理事会でも問題になってくるだろうし、そうしたときにどうするのか、こういうお話でございますけれども、この点が私は、国民とともにきめた問題でありますので、御心配は要らないのだ、米国自身がいかようなことをいたしましょうと、わが国の憲法、これを無視はできないのであります。この点は私が一月にジョンソン大統領と会いましたときに、日本の憲法はアメリカ政府もはっきり知っておるということであります。また、そういう意味で憲法違反の事柄を日本に要求しようとは思わない、これははっきり申しておるわけであります。だから、この点では実際御心配は要らないと思います。  私はこの機会に、ちょうどお尋ねがありましたから申し上げたいのは、こういう事柄は、日米協力の体制は政府対政府の問題じゃないのだ。国民国民の問題だ。いわゆる民意、それがどういう方向に動いていくか、これにたいへんなアメリカも関心を持っているのだ、このことを私は申し上げたい。アジアの平和のためにベトナムで血を流し、そうして多額の金を使っておるアメリカ、そういうアメリカ努力を全然理解してくれない。こういう事柄はたいへんアメリカとしても私は不満であろうと思う。私はそういう意味で、今日までベトナム問題に対しての国内世論なり、あるいはまた一部の方々の見方等につきましても、いままで批判を下してまいりました。少なくともベトナムの問題は、これはアメリカだけを責めるわけにいかない。もう私どもが下世話に申しますように、一文銭は鳴らない、かように申したものです。必ず相手がある。その相手と双方の責任においてこういう問題が起きている。だから北爆もよろしくないが、いわゆる南への浸透、これをやめることが先決だ、こういうものをやめていくならば北爆もあり得ない、こういうことをしばしば申し上げたのであります。私は世界平和、人類の幸福のために世界の平和を維持する、こういうことでそれぞれの国がそれぞれの努力をしている、それを正当に評価すること、これが私は一番大事なことではないだろうかと思います。今日までのところ、ベトナム問題につきましても、私は一方だけを非難するのは当たらないということをしばしば申し上げましたが、ただいま申し上げるような観点に立っておるのであります。私は日米安保条約により日本の安全が確保されていることは、これは国民もはっきり知っている。日本の安全が確保されているがゆえに私ども経済発展は今日なし遂げることができた。そういう意味では日米安保条約を高く私ども評価しております。国民がそういう意味で高く評価するならば、必ず日米間の問題につきましても、考え方が今日よりは変わっていくんじゃないか。そのことを、アメリカ政府とすれば、またアメリカ国民としても、私ども日本国民に対していろいろ要求がましくそういう批判が出てくる、これはやむを得ないのじゃないだろうかと、私はかように申しておるのであります。
  105. 羽生三七

    羽生三七君 総理は先走ってベトナム問題のことに触れられましたが、これは私は順次お尋ねするつもりでありましたけれども、この問題はちょっと後刻にしまして、そうすると、いまの日韓問題は——いまの意思というものですね、いかなる軍事同盟にも参加をしない、したがって憲法上の制約があるから従来言ったことと少しも変わりはない、そういう理解をしてよろしゅうございますね。
  106. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおりでありまして、これはもしもそれと変わったかっこうをしたならば、これは社会党はもちろんでありますが、われわれ自由民主党にも政府はその責任を問われると、かように私は思っております。
  107. 羽生三七

    羽生三七君 この機会にぜひお尋ねしておきたいことは、先ほど来私が申し上げた米国の圧力——ジョンソン大統領はある程度の理解をしておられると言われましたが、しかしなかなか強い圧力があると思う。それとともに与党、自民党の内部からも同様なつき上げが出てくるんじゃないかと思う。実は私は他党の内政に触れることは本意ではないのです。本意ではないが、これは事のついでにどうしても触れておきたいと思う。要するに、内政干渉というお話がございましたが、政府与党の中には、積極的な憲法改正論者があるわけですね。特に日韓条約を推進された方のグループが、最もその顕著な例だろうと思います。その憲法改正、特に第九条の改定を中心日本の役割りを果たそう、これは評論家がこれを対決派と呼んでおります。はなはだ勇ましい名前でありまするが、とにかくそういう勢力が台頭していることは事実であります。アメリカからはそういう圧力が加わってくる。安保理事国に当選して各国もそういう要求をしてくる。自民党は、与党の内部からも同様のつき上げが起こってくる。だから、現実的にはそういう方向へ発展しそうな傾向を示している。それを佐藤総理がどうさばくかは別の問題でありますが、そういうことが存在しておることは、これは総理も御否定なさらぬでしょう。そういう党内の圧力がさらに一そう強くなってきた場合にも、総理はいま言明されたことを最後まで貫き通される確信がございます。
  108. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 自由民主党の内部の事柄について御心配をいただいてたいへん恐縮でございます。  御承知のように、私、総裁をしておりますので、総裁として責任を持って自由民主党の意見をまとめております。御承知のように、社会党も同じだろうと思いますが、自由民主党もなかなか民主的な政党でありますので、個人的な意見は自由でございますから、なかなか活発な意見が出ております。しかし、党としての党議をきめる、最後の意見をまとめる、こういう際は、総裁のもと一本にぴしっとできておりますので、どうぞ御心配にならないように願います。
  109. 羽生三七

    羽生三七君 これと関連して、これは質問というよりもむしろ警告のようなことになるのですが、何か問題の起こった場合に憲法の拡大解釈、それから安保による事前協議の解釈のしかたで問題を処理していく、そういうことが起こらないという保障はどこにもない。これはあとから私時間によって御質問したいと思いますが、現行憲法で軍備は禁止し、第九条で戦力を放棄しておるにもかかわらず、自衛の名のもとに軍備は際限がないでしょう。どこまでも行く。これは、私どもに言わせれば、憲法の拡大解釈である。これがいい悪いの問題は別であります。防衛力が必要かどうかという問題は、これは先ほどの論争に戻りますからまたここで繰り返しませんが、とにかくこれは憲法の拡大解釈である。安保による事前協議でも、いまのような政府の解釈は、たとえば日本の基地を発進してベトナムに行く場合にも、沖繩に一たん着陸すれば、これは全然事前協議の対象にならぬというふうに、幾らでもこれは逃げ道をつくっておる。こういう形で問題を処理するならば、憲法はあってなきがごとし、あるいは事前協議も単に条項に示されておるだけで実際的には効用を果たさない、こういう非常な危険な道が一つありますが、これは一種の警告であります。  そこで問題は、このベトナム戦争がさらに拡大をして米中対決のような事態が起こった場合に、そんなことは起こらないように努力したいと思いますが、かりにそんなことがもし万一起これば、おそらく私は朝鮮半島にもこれに呼応する重大な動きが起こると思う。したがって、いまわれわれが、あるいは総理が私に対して御答弁なさったようなことは、すべて吹っ飛んでしまうような危険な客観情勢が生まれかねないと思う。したがって、私は、そういう意味でこのベトナム問題の、これはあとから触れますけれども、この解決、それから今度の日韓問題の処理あるいは中国問題、いかにこれら一連のアジアの重要な国際案件というものの処理のしかたがむずかしいかということを申し上げたい。どんなに総理の決意がかたくとも、そのような情勢が起こった場合には、総理の決意なんか吹っ飛ぶようなすさまじい客観情勢が出てくるのではないか。それを阻止する道はベトナム戦争拡大を阻止することであります。これはあとで触れます。したがって、この機会に伺っておきたいことは、吹っ飛ぶような情勢をつくらないということが第一でありますけれども、これはさらに深めてお尋ねをいたしますけれども、これは総理は国会の外ではしばしば言われておりますし、あるいは衆議院でお答えがあったかもしれませんけれども、私は自民党内にどんな議論が出ようとも、現行憲法、特に第九条を中心とする改定というものは絶対にやらないという保証をここでなさいますかどうか、これをお尋ねいたします。
  110. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまたいへん重大な御発言があったと思います。米中戦争があったらどうなるか。したがって、このことは自分も絶対に起こらないように最善の努力をしていこう、こういうお話がございました。私も米中対決というようなことは、これはどんなことをしても避けなければならない、かように思っておりますので、羽生君とともに絶対にこういうことが引き起こらないような事態をつくりたい、努力したいと、かように思います。ただいまは、しかしながら、そう言われるもとにおきまして、やはり起きたらどうなるか、こういうお話でございますが、私は微力ではありますが、まだ起きたらどうなるかということを実は考えないのであります。いま積極的に起こらない、そういう方面に努力をしておる最中であるということであります。ぜひそうありたい。ただいまの、将来の問題についてのこれはほんとうに仮定の問題だと思いますが、それには私お答えはできませんが、ただいま、こういう事態についても大事なことは、憲法の精神を守り抜こう、憲法の精神を守り抜く。この改正についてどう考えるかと、こういうのが最後の締めくくりのお尋ねだと思います。私は他の機会にも申し上げましたが、この憲法の精神を守り抜くということは、これは申し上げております。私は平和に徹するそういう意味の憲法の精神を貫く、このととでは人後に落ちないつもりでございます。ただいま私が総理あるいは総裁をしておるこの関係におきまして、私は最善の努力をいたします。この憲法の精神を守り抜く、これに徹してまいるつもりでございます。
  111. 羽生三七

    羽生三七君 くどいようですがね、憲法の精神を守るということと、第九条を中心に改定をしないということとは、ちょっとニュアンスが違いますので、その点明白にひとつお答えをいただきたいと思います。
  112. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はこの憲法改正をするとも改正しないともただいまは言うておりませんが、しかし、憲法改正論者ではないかというお尋ねだと思いますが、この憲法の問題は、ただいままでの調査会のちょうどいま調査の結果を整理しておる最中でございます。私自身がただいま何も考えていないと、その改正あるいは改正しない、こういう結論を出していないということだけでお答えとさしていただきます。
  113. 森元治郎

    ○森元治郎君 関連。いまの羽生さんの質問に対する総理のお答えですが、答申が出てから考えるのですか。憲法の精神は守っていく。一方では憲法制度調査会のまだはっきりしたものが総理の手元までに出てこないから、改正するともしないとも言えない。何かその憲法はあくまでも守っていくのだというふうに、この精神を尊重するというのは、憲法を守っていく、いまのままでいくのだというふうに理解するのですが、一方では調査会の答申があるまでは、するともしないとも申し上げかねるというのは矛盾をしておるのじゃないか。これは皆さん聞いておる人が全部関連質問をしたい一致した質問だと思うのです。はっきりしてください。
  114. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、憲法調査会は結論を出しております。それを、ただいま申し上げるように、整理しておる段階だと、かように申したのでございます。これを整理しているのは、いま法制局でやっておることで、ただいま問題になりましたいわゆる憲法の規定しておる平和主義に徹しておるこの考え方、この条章をどうするかというお尋ねのように聞き取ったのでございますが、この条項は、もうすでに憲法実施いたしまして二十年近くなっております。そういう意味で、もう国民の血となり肉となっておる。これはもう基本的な主張だと、かように私思います。どういう人が出ましても、国民の意思を無視していいかげんな扱い方はできないだろうと、かように思いますが、ことに大事なことは、国民の意思によってこの憲法問題は扱っていくと。これはかねてから前総理以来自民党の引き継いでの党の考え方でございます。この考え方から見まして、いわゆる平和主義というもの、これを簡単に変えるというような暴挙はするつもりは毛頭ございません。
  115. 森元治郎

    ○森元治郎君 その総理のおっしゃるただいま整理中であるというと、何か法制局長官あたりがそういう条章をいじくり回しているような感じを受けるのですが、私たちの質問は、現憲法でいくのだと総理は断言するのか、しないのか。その整理は何を整理しているか伺うことが一つと、整理次第によっては、考えることが、改正することもあり得るのか、国民の意思を聞かなければとおっしゃいますが、それは憲法に対して政府がある手を加える、直す、前に進める、もっと縮小する、そういうことをきめてから国民投票に聞くと、こういう意味に私は受け取れるのですが、重ねて整理しますと、整理しているとは何事か。現憲法であくまでいくのだと総理は断言できるのか、整理次第ではこの問題を改正することがあり得ると、その結果は国民主権であるから国民に聞けばいいんだと、こういうことかどうか、はっきりしませんので伺います。
  116. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 憲法調査会が答申を出した。ところが、これは多数の意見、あるいは少数の意見、また問題がただいま言う第九条ばかりではなく、各方面にあるわけであります。したがって、ただいま申し上げるのは、憲法、憲法と言って一口に言いますけれども、一切そういうものにさわらないでいまのままでいくのか、これがまあ改正しないという御議論だと思います。しかし、こういうような事柄は、関係するところが非常に多いので、ただいま申し上げるような九条の問題もありますが、その他の条章が全部あると、そういう事柄を国民が最終的に意思決定をすると、こういうことでありますので、私が先走った話をしなかった。で、政府自身、これを改正するともしないとも、そういうことはまだきめておりませんということを申しましたのは、ただいま申し上げましたような事態背景があるからでございます。その点はおそらく森君も御承知だろうと思います。私はその第九条の平和主義の精神、これはどこまでも守り抜く。しかし、その他の条項の問題について、この際まだそういう点をはっきりする段階になっていないということを申し上げる。また、国民の意思そのものもそういう点についてははっきりしておらないということでありますので、重ねてお答えいたしておきます。
  117. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 関連。非常に重要な問題なもんですから関連をさしてもらいたいと思うのです。実はこの問題については、私の質問のときに十分やるつもりだったんですが、党内の干渉と言われると非常に恐縮ですけれども、自由民主党の総裁である佐藤総理が、自由民主党のいわゆる党の綱領というものがあるわけ。これは国連の加盟前につくったものであるから古いものである、こういう御意見もありまするけれども、まだ改正されておらない段階においては、自由民主党の綱領があるわけです。それは言うまでもなく、昭和三十年の十一月十五日ですか、自由党と民主党が統合したときにできたもんですが、日はちょっと忘れちゃったかもわかりませんが、いまの憲法は異常な状態のもとにつくられたんだと、だから自主的に改正すると、こういうのが自由民主党の党是であるわけ。これはあなたも私のいつかの質問のときに、憲法を改正するということは自民党の党是なんだということを認められておるわけです。ただ、その改正をいつ、どのような方法でやるかということは、これは別の問題だけれども、自主的改正をはかること自身は自由民主党の党是である。そのことは、私は間違いないんじゃないかと思うんですね。だから自主的改正をはかると、それは自由民主党としての党是だと、そのとおりやるんだと、ただ、いついかなる方法でやるかということはまた別の問題なんだと、これが自由民主党としての正しい憲法に対する考え方ではないのですか。そうなりますと、いまの答弁と非常に違ってくるのではないですか、その点をひとつお尋ねしたいと思います。
  118. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。ただいまお話しの、御意見のとおりであります。私は自由民主党の党議というものが、これははっきりしているということをしばしば申しました。しかし、その時期なりその方法なり、これは明確にしておりませんから、私の時代にそれが変わるとかどうとかは申すわけではございません。ただ第九条の問題については、この平和主義、それについては国民の意思も非常にはっきりしている、それとともに、わが自由民主党も第九条の意思は、平和主義は変えないんだと、これだけははっきり申し上げ得るのであります。その他の問題については、これは先ほども申しますように、数多くの問題を持っておるんだと、こういうことでございますが、これもしかし国民の意思によって決定されるものだと、かように私は思います。
  119. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 お話を聞いておりましてですね、非常に疑問に思う点が出てまいります。これは、あなたの言われるのは、そうすると、自由民主党は憲法を改正をするんだと、いいですか、これはさまっておると、それ一つありますね、これはまず間違いございませんか。
  120. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 自由民主党の政綱といいますか、それとしてははっきりしておると、この憲法をあの占領当時に早々の間につくったこと、これはぜひとも改正さるべきだと、こういう考え方に徹しておる。しかし、自由民主党だけでこれを改正するとかいう問題じゃございませんから、ただいまは、自由民主党はそういう政綱を掲げておりますが、国民の支持がない限りそんなことができるわけじゃない。ましてや憲法問題は国民の意思によってきめるんだということを申しておりますので、この点は誤解はないと思います。自由民主党がかってに憲法を改正するんだと、こういうことではございません。誤解のないように願います。
  121. 森元治郎

    ○森元治郎君 いや、たいへんな大問題だね、これは。この国会、きょうの委員会は大問題のこれは連続になりますね。総理お話は、第九条はこのまま皆さんの御意見が一致しているようだから残すと。これは残す。九条は残す。その他の問題は自由民主党としては何ともできないんで、国民に聞かなきゃならぬというところを見ると、憲法は改正する、いつか、どうかは次のこと、憲法の草案というものは、これは内閣のほうでつくっていく、しかし自分でつくったからといって憲法が施行されるものではなくて、憲法に従って国民投票によるんだと、こう了解してよろしゅうございますか。
  122. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) とんでもないお話のようです。私はその憲法……(「だがら聞かなくちゃならないんだ。」と呼ぶ者あり)憲法問題について先ほどから申しますように、第九条の平和主義、これを貫くということは申しました。だけれども、第九条をそのまま云々というような誤解を受けるような表現はしておらない、この点がまず第一。  それからその次に、政府が草案をつくるのかというお話でございますが、ただいまそんな先走った考え方はしておりません。その点は誤解のないようにお願いしたい。
  123. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連佐藤総理はこの前の予算委員会でも憲法改正はしないというような、こういう答弁をしておる。ただいまの答弁を見ましても、そこが非常にあいまいになっています。しかし、これは立党以来の方針であることは確実である。そうして、しかも一方では、そういう言明をしながら、実質的には憲法担任の国務大臣を置くとか、あるいはまた現に小選挙区制を推進しようとしてえいえいとかけ声をかけてやっているじゃないか。ことに小選挙区制の問題は憲法改悪の問題とはこれは根本的につながっていると思う。御承知のように、最近の選挙のたびごとに自民党の票が滅っている。今度の参議院選挙を見ましても、この前の、三年前の選挙のときには四七%、今度は四四%に低下をしている。このような退勢を挽回して三分の二を取ると、そういうねらいからいえば、小選挙区制というあの非常に非民主的な方法を強行する、そういうねらいが一方にちゃんとなされている、準備が進められていると思う。私はこれは非常に重大な問題だと思うんです。現に最近田中幹事長は記者団に対しまして、談話の中でこういうことを言っている。選挙制度審議会の答申はおくれ、来年五、六月ごろになるのではないか。その後国会に提案すれば日韓案件のように一気にやらねばならない。これは重大な挑戦だと考える。このようなやり方をですね、あなたの番頭の幹事長が小選挙区制の構想について明らかにしておるということは、この日韓会談の審議と合わせ考えて、私は最近の佐藤自民党内閣の反動的な姿を露骨に出しておるとれはやり方じゃないかと言わざるを得ないと思うんです。今度の日韓衆議院における強行採決のやり方も、実はこのような事態というものをあらかじめ予想して、このようなファシズム的なやり方をやることを前提として私は行なわれた一連のいわば逆算方式だと考えてもよろしいとさえ思うんです。これは憲法改正がそのねらいであることは言うまでもないことだ。こういう事態に対しまして総理はどういうふうに考えるか。私は、かような事態は絶対国民は許さないと思いますので、この点からこの場を通じて明らかにしておいてほしいと思うのであります。
  124. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 岩間君にお答えいたします。たいへんこじつけといいますか、こじつけられた議論のように思いますので、私もほんとうにまじめにこれにお答えする勇気がございません。ただいま、御承知のように、選挙制度審議会は始まっておりまして、そこで民主的に議論が交換されて、そうしてこれが答申を出してくるのであります。答申が出た上で、政府がどういうふうにするかという態度をきめる。いままでは答申尊重ということでそういう態度でございます。まだ何も出ておらない。ただいま言われるような小選挙区制度なるものがそんなに具体化しておると私は思いません。もしも具体化しておるというならばこれは岩間君のひとり合点だと、かように私は思います。この点はぜひ明確にしておきたいと思います。  また、先ほど来から申しますように、憲法問題はなるほど大事な問題です。重大な問題です。これは、もう国民が許さない、かように言われますが、もしも変なことをすればそれは国民が許さない。これは共産党の方が使われる国民、人民というだけではございません。これは必ず私どもの信頼する国民もそういう事態を許さない。このことを私はかたく思いますし、また国民の意思できまるのだ、国民がきめるのだということを申し上げておるのも先ほど来からもう口がすっぱくなるほど申しておりますので、誤解がないと思います。どうか、憲法問題につきましてあまりこじつけた議論をなさらないようにお願いしたいと思います。
  125. 羽生三七

    羽生三七君 やはり、憲法に関連するんですが、すでにこれは言い古された問題でありますけれども佐藤総理には、総理になられてから私初めてでありますからお伺いしたいと思います。  先ほどちょっと触れた防衛庁の第三次計画三兆円、これは防衛庁の構想で、別に政府がまだ決定したわけでもないし、あるいは国防省昇格も防衛庁の考えではあっても、これは政府の決定がどうかまた疑問でありますから、そのことにはまたあとから時間があれば承りますけれども、問題は一体どこまで防衛力をふやせば憲法の限界になるのか、この問題は久しく論議されておらない。その限界というものはどこにあるのですか。ほとんど無制限なのではないか。制約というものは、単に予算上の制約があるというようなそんなことでは問題になりません。どこまででもこれはつまり先ほどごたごたしておるときに防衛庁長官にちょっとここへ来られて相対的な問題だと言われた。だから結局相手が強くなればこちらもふやすし、際限がないですよ。だから現行憲法で許される範囲の自衛力の限界というものは、いまのところ私は限界を越えていると思いますが、それはとにかく、その限界はどこにあるのか。その問題をはっきりしていただかないと、あとの議論ができませんので、はっきりお願いします。
  126. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへんむずかしいお尋ねでございます。これはおそらくそんな抽象的じゃだめだと言われるかと思いますが、これは申すまでもなく、自衛のために必要な防衛力ということでございます。さらにこれが国力、国情に適した防衛力、装備をする、こういうような考え方でございますから、条件が次々に加わってきております。したがいまして、どういうものかというものを、具体的に示すことは非常にむずかしい。しかして、ただいま言われるように、相手方もあることだからどんどんふやしていくというのは、これは無制限じゃないか、こういう御疑念もあります。しかしそういうことにつきましては、これは羽生君もいままで御指摘になっているように、今後は軍備というものが縮小傾向のほうにいく、そういうような努力もして、いわゆる環境の整備をするということにわれわれは努力していかなければならないと、かように思います。ただいま申し上げ得ることは、抽象的なことでたいへんお気の毒に思いますけれども、これより以上お答えは……
  127. 羽生三七

    羽生三七君 いや、別にそんなに謙遜して持って回らなくてもいいですが、そうすると無制限ということですね、そう理解していいのですか、無制限であると。
  128. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 詳しくは防衛庁長官にお願いしたいと思いますが、ただいま申し上げましたように、無制限だと言うが、国力、国情に相応したというものを条件としてついておりますので、無制限というわけでもございません。
  129. 羽生三七

    羽生三七君 それはこれを国力といって予算の何%なんということは、これは問題にならぬと思うのです。国情といえば周囲の客観情勢これを見なければならない。それにしても、そういう条件があれば幾らでも伸ばせるということになるわけですね。だからほんとうにこれが限界だというものがなかったならば、歯どめがなかったならば、公債発行論じゃないけれども、これはもうほんとうにどこまでもいけるんじゃないですか。ただ、いまの日本経済力からいってGNPの二%まではちょっとむずかしいとか議論がありますけれども、そういうことが制約要件、根本的にはほとんど限界はないという考え方に通ずる御答弁じゃないかと思うのですが、いかがですか。
  130. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 羽生委員も当委員会において先般お尋ねになった経験もございますし、当委員会で四回ばかりこの問題ではいままで質疑が行なわれております、やはり限界について。その当時の限界というのは相対的なものであることが日本からいえば第一義、第二義的には相手方から見るならば、日本が脅威を与えるような戦力を持つこと、これは相手方であろうかと私は思います。国内的には相対的に日本の自衛が完全に守れるという限界、相手方でいうならば日本が侵略する能力とか侵略する兵器とかいうものをそろえ得ないという限界、これが自衛権というものの限界であろうと私は思います。予算の金額というものはこれは問題になっておりません。しかし今日議論する前に、日本の防衛力というものがまだこの限界に達するほど膨大なものではないということも、これはすでに議論が尽きております。したがって予算が二%ならどうだ、三%ならどうだという議論ではないと私は思います。要するに、日本としては日本の自衛をする限界である。相手方に脅威を与えない限界である。それは何だと言えば、日本の国からいうならば、相対的に日本が防衛できる性能とその戦力を持つという限界、これ以外に限界という議論は、いままでも今後も出てこないんじゃないかと私は思います。
  131. 羽生三七

    羽生三七君 きょうはこういう議論にあまり時間をとりたくないから簡単にしておきますけれども、長官はいまそう言われましたが、しかしこの前私が前長官にお伺いした際には、この陸海空三軍をアジアの諸国と比較した場合、中国本土——北京政府は別として、たとえば地上部隊では韓国が多い、しかし空海では圧倒的に日本が優位であるということを言われておるわけです。地上部隊の問題がありますけれども、とにかくアジアの近隣諸国、中国を除いては、韓国の地上部隊を別としてはそんなに見劣りのする力ではない。そうすると、問題は中国でしょう。これはベトナム戦争との関連一つの問題点が出てきますから、これはあとにお尋ねいたしますが、さてそこで、世界軍縮会議、これが開かれて国際的に軍備縮小というようなときには、日本の自衛隊はどういうことになるのか、その関連はどういうことになるのですか。
  132. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) そのような提案は、まだ私どものほうにございませんし、私のほうは戦力という意味で今日自衛隊というものを持っておるわけじゃございません。したがって、戦力としての軍隊というものでなしに、日本の防衛力。私はまだそういう会議の提案も何にも聞いたことがないのですが。
  133. 羽生三七

    羽生三七君 提案のあるとかないとかいう問題じゃないのですね。私の言いたいことは、いまのお尋ねのことが別に私の中心問題じゃないのです。だから先ほどの、ちょっと午前中の議論にもなったように、すべて国の安全ということに、防衛力だけにウエートをかけておる。外交がないとは言いませんよ、絶無とは言いませんよ、しかもその外交が必ずしも緊急緩和の方向に私どもは沿っておるとは思わない。それは見解の違いかもしれませんよ。平和外交の認識のしかたでこれはかなり相違が出てきます。そこでそういう防衛力に非常なウエートをかける政府の外交方針は危険である。そこで国際緊張緩和という手段を、つまり日本を取り巻くアジアの諸情勢の中で防衛力の増強を必要としないような国際環境をどうしてつくっていくか、そのことをもっと真剣に考えないで防衛問題を論議しておっても、全然意味がない。特に先ほどもどなたかが指摘されたように、核兵器の戦争なんというのは、めった起こるとは思いません。起こればこれは人類共滅である。したがって、小泉前防衛庁長官が言われたように、局地戦程度は維持できる能力を、現に自衛隊は持っておる。これは松野長官に言わせれば相対的なもので、ことしの三月の時点だと言われますけれども、それはとにかくとして、そういう議論から私は次にベトナム問題を考えてみたい。  さてそこで、このベトナムの問題でありますけれども、これはことしの臨時国会のとき以来、総理のお考えを伺っていないわけです。したがいまして、その後日本政府はベトナム問題についてアメリカその他の国と何らかの交渉を持っておるのかどうか、まずこの点をお伺いいたします。
  134. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) その後交渉を持っておりません。
  135. 羽生三七

    羽生三七君 それは非常におかしいのでありまして、私はベトナム問題一本にしぼって質問いたしました、この前の臨時国会で。その二時間にわたる質問の中の総理の御答弁の大要は、ベトナム問題について日本アメリカとも話し合いをしておるし、他の友好諸国ともそれぞれの機関を通じて積極的に話し合いをしておる、そういう答弁をなさっておるわけですね、何にもやっておらぬのですか。
  136. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) その後の変化があるかということでございまして、その後の変化はない、かように申し上げたのでございます。
  137. 羽生三七

    羽生三七君 その後何らの交渉も持たぬ、いまベトナム情勢の変化じゃないですよ。日本外交方針としての問題であります。これは外務大臣でもいいです。その後何らの交渉がないのか、他国と。アメリカあるいはその他の国と。
  138. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 情勢についての意見交換はないことはございませんが、特に目立ったものはない、こういう状況であります。
  139. 羽生三七

    羽生三七君 これは外務大臣でよろしいのですが、ベトナム戦争の見通しはいかがでありますか。
  140. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはまあ聞いたり見たりした話であります。(笑声)大体の情勢は、米軍の兵力増強が御承知のとおり非常な膨張を来たしております。それでむしろ南越の政府軍とその数においてかなりまあ適応しておるのではないかという状況でございまして、したがって、ベトコンに対する戦局はかなり有利に展開しておる、こういう状況でございます。
  141. 羽生三七

    羽生三七君 米軍に有利にベトナム戦争が展開しておるという、こういうお話でありますが、外交方針というものが一体日本に存在するのかどうかということを、私は実は疑いたくなるのです。それだから、このベトナム戦争について、特に北爆ですね、北爆だけが問題じゃありませんが、北爆については、いまアメリカの立場を黙認する態度を日本はとっておられるわけですか。
  142. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 従来の方針と変わりございません。ただいま申し上げたのは、南越地帯における対ベトコンの戦況は、有利に展開しておるということであります。もちろんその南ベトナム軍の中には、アメリカからの投入された軍隊も含めての話であります、地上兵力を増強いたしまして、従来よりも戦勢は有利に展開しておるというふうに受け取っております。
  143. 羽生三七

    羽生三七君 これは漸次聞いていきますが、それで、たとえばこのベトナム戦争は、最近の、いま外務大臣の答弁にもあらわれておったように、米軍のこの強気に押されて、日本はこれを黙認しておる、こういう態度だろうと思います。たとえば総理が先ほど言われたように、北からの侵透がある以上はやむを得ないというような、こういう立場で実質上アメリカの北爆等はやむを得ざるものとして認められておるのではないか、これは日本外交態度でしょう。ところがこの最近の情勢を見ると、そういう一方的な判断にもかかわらず、ベトナム戦争は際限のないどろ沼に入っていきます。いよいよそれは深いどろ沼です。たとえばニューヨークタイムズは二十一日の社説で、北爆の停止を再び呼びかけるとともに、さらに南爆、南ベトナムの爆撃についても述べておるようであります。すなわち、こういっております。「このように空爆の激化に伴って、南ベトナムの村落や部落民に大きな犠牲をしいる結果、タイなどの、共産主義の脅威に当面している隣接国などは、米国に〃防衛〃してもらうよりも共産主義者の支配を受けたほうが犠牲は少ないのではないか、といった疑問さえ出はじめている。」こう伝えております。また南ベトナムの脱走兵はすでに八万をとえているといわれております。しかもアメリカはこの戦闘をやめる意思は毛頭ないという、時期が来れば、何かこれを続けておれば話し合いに相手が応ずるのではないか、こういう期待を持っておる。確かにいろいろな動きがあります。あるが、依然としてやはり北ベトナムも強い態度をとっておるし、ベトコンもまた同様な態度であります。ほとんど際限がない。しかし、このまま発展していくならば一体どこまでいくのか、先ほど申し上げたようなその結果、さらに中国の介入というようなことでも起こるならば、これはたいへんな事態に発展していく。そうであるならば、やはりこれは最小限の条件ですが、長期にわたる北爆停止等をアメリカに呼びかけて、そうして反応を見る。私は前に申し上げましたように、人のほおを片手でなぐって右手で握手を求めても、握手に応ずる者はないでしょうと、こう言いましたが、確かにわずか数日間の北爆停止をやりました、反応はなかった。しかし、これほど重大な問題を討議するのに、五日や六日で態度がきまるはずはございません。ただ一つ考えられる道は、長期にわたって北爆を停止して、そうしてその中で正当な民族自決という方向を確認しながら話し合いの基礎を、この糸口を見つけよう、こういうことでなければならぬと思う。ところが、いまの総理にしても外務大臣、ことに外務大臣の御答弁では、まるで米国の政策を正当化して、それでしかも戦争拡大していくことについて何らのこれを阻止する、ただ北爆のむしろ強化、それのみが唯一の解決手段のように受け取られる。このように見てくると、これはもう先ほどの中国問題といい、それから韓国・朝鮮問題といい、あるいはこれらのベトナム問題、一方の陣営にだけ組して、そうしてさらにこの問題を拡大していく。自由陣営結束だけが唯一至上の日本外交の命題になっておるのではないかという、そういう疑いを持たざるを得ない。この時点においても、日本はやはり依然としてアメリカに対して同じ方針をとられるのか、あるいは何らかの呼びかけをする、その資格が日本にどれだけあるかは別でありますが、そういう意思を持っておられるかどうか。これはひとつ総理でもよろしい、外務大臣でもよろしい、お伺いいたします。
  144. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただこの問題を、表面上、戦争、軍事行動だけで判断はできない。やはり、何がゆえにこの戦争が起こったのであるか、その戦争目的というものから掘り下げて考えなければならないと思うのであります。そういう意味におきまして、われわれはやはり自由陣営の自由と独立を守る、そういう目標のためにその軍事行動をやむを得ずやっておるものと、戦争拡大いかんにかかわらず、あるいは不拡大とか、そういう問題ではない、戦争が熾烈になるとかあるいは下火になるかというような問題でこの問題は判断すべきものじゃない、そういう戦争目的というものから割り出して考える必要があると思うのであります。こういう意味において、従来日本政府としては、アメリカの軍事行動というものに対して考えておる方針考え方、これは不変でございます。
  145. 羽生三七

    羽生三七君 はなはだ残念な御答弁でして、これほどの不幸な事態のもとで、しかもこれが拡大すればどういう事態にもなりかねない。先ほど私が申し上げたように、総理がどんな決意をされても、その決意も吹き飛んでしまうほどのすさまじい客観情勢にもなりかねないのです。そういう事態の際に、戦争目的のためにはやむを得ぬというような、そんなことで一体外交ができるのでしょうか。結局、自由陣営のことだけがその結束、その団結、その行動、これを支持することだけが日本の唯一の外交方針と言われても、これはしかたがないでしょう。心胆をくだいてベトナム問題の終結の方途を探るべきである、その熱意すらないのですか。
  146. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この問題については、たびたび総理からも御回答申し上げておるところでありますが、とにかく一日も早く終熄することは非常に望ましい。日本といたしましても東南アジアの静穏であるということ、これは近接な日本の利害につながっているのでございますから、あらゆる機会においてその方法を、もし日本としてその立場において探し出すことができる、その努力をもちろんすべきであり、また怠っておるわけでもございません。ございませんけれども、とにかくそういった問題は吹聴しながらやれるものじゃない、あらゆる機会にそういうチャンスをわれわれは見詰めておるわけであります。遺憾ながらこれは相手のある問題であって、あくまでこの侵略行為を向こうがやめない、南ベトナムの独立と平和というものが唯一の目標でありますから、その問題から割り出して、今日の状況に変化していく、こういうふうに了解をしておる次第であります。
  147. 羽生三七

    羽生三七君 そういう御答弁をなさると、また論争の種が出てくるのですね。あの状態を平和のためにはやむを得ないと言う、自由のためにはやむを得ないと言う。そうすると平和とは何ぞや、自由とは何ぞや、こうまた反論したくなるわけですね。アメリカはあのやり方が自由陣営の防衛だと言うし、片方から言えば民族自決の自由を欲しておるわけですね。ですから私は、私のイデオロギーで言っておるのではない。きょうは総理も先ほどイデオロギー社会党は言われるなと言われるけれども、きょうの政府の議論を聞いておっていただけばわかりますように、一貫して政府のほうがイデオロギッシュでしょう、私はそう思う。そんなことで問題の解決にはならない。特にくどくなりますけれども日本の現在の自衛隊の力で、ほぼ局地戦程度はささえることができる。あるいは近隣諸国も、韓国の地上部隊を別にすれば、近隣諸国に比べてもひけをとらない程度の空海の力を持っている。そうすると中国になる。この中国はベトナム戦争拡大を阻止して、これが参加するような条件さえなければ、これは日本としてもいまの防衛力の問題のみならず、この日本の安全については非常ないい条件ができてくるわけです。そういう努力を何ら払わんで、総理施政方針演説で、平和のために国民努力背景に積極的な努力を傾けておる。何をおやりになっておるのか。一番冒頭にそれを承ったが、それは経済援助も確かに平和の道には違いないでしょう、援助のしかたもありますけれども、それにしてもこれでは日本外交というものがあまりにもなさけないではないんですか。特に先ほどの椎名外務大臣の御答弁のように、戦争目的のためにはやむを得ぬというような、そんな考え方でこのいまの激動するアジアの情勢の中で外交ができると思いますか。いかがでありますか。
  148. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) だんだんこの世界の世論も変ってきておりますし、しかし戦争片一方でやっておるわけではない。とにかく無条件アメリカが南ベトナムから出ていくというわけには、これはどうしてもまいらない。南ベトナムの大多数の人民に基づく政府の要請によって、北越の侵略から独立と平和を守ると、そのためには手をかしてくれということで、アメリカがこの問題に介入したわけであります。私はこの収拾のいいチャンスというものは、いずれくると思いますが、ただいまのところはすべて手詰まりである、そういう状況で推移していると思います。   〔委員長退席、理事草葉隆圓君着席〕
  149. 羽生三七

    羽生三七君 この自由の防衛のためにやむを得ぬと言われますけれども、先ほど申し上げたように、ニューヨーク・タイムズすらが、共産侵略があるかどうか知りませんけれども共産主義の脅威に当面しておるタイ国すら、これほどのたいへんな犠牲が出るならば——ベトナムですね。それならむしろ共産側に支配を受けたほうがかえって犠牲が少ないという議論さえ出始めておる。政府に再び警告を発しているわけですね。ニューヨーク・タイムズのこれは二十一日です。ですからパラドックスになりますけれども、逆説的に言えば、むしろそういう勢力を助けておるのはいまのアメリカ政策であるし、自由陣営の一部における動きだとそういう極論すらはくことも不可能ではない。ですから、これはいまやそういうこの世界の緊張緩和、あるいはひいてはアジアの平和を確立する道が、いまの日本のこの外交ではそれを実現することは非常に困難である。それを私はきょうは申し上げたかったわけです。そういう立場で、たとえば日韓条約を見なければ、ただ韓国という一部分を抽出して、これがアジア外交の始まりであり、平和の出発点だという、いまずっときょうの一日の議論を通じて、どこに平和とつながるところがありますか。いろいろな意味で危険というものを内包しておる。  私は、きょうは個々の問題には触れませんでした。これは同僚議員が適切な指摘を後日なさると思います。私の言いたいことは、今日の事態において必要なことは、日韓案件のように国論を二分するような重大な案件、あるいは北鮮はもとより北ベトナム、中国、あるいはソ連、これは激しくこの日韓条約批判をしておる。そのような条件の中で、きのうは北ベトナム批判をやりましたが、かなりきびしい批判であります。そういう条件の中で、しかも衆議院におけるああいう強行採決というようなことまでして、この善隣友好平和外交というものがはたして実現できるのかどうか、この憂いを持つのはひとり私だけ、社会党だけではないと思います。でありますから、もしこれがアジア平和外交の始まり、アジア外交の始まり、あるいはそのスタートであるとするならば、たとえば北鮮についてはどうする、中国についてはどうする、ベトナムにはどう対処する、あるいはソ連とも平和条約を実現する、そういう問題があるでしょう。またそういう緊張緩和の努力をしてこそ、初めて沖繩返還の条件が出てきます。北方領土も返ってきます。私はソ連へ行って最高指導者と長時間の会談をいたしました。それで領土問題なんかも平和ということが非常に重要な条件であるということを、長時間にわたる、約六、七時間にわたる会談でこれをくみとることができました。もちろんその時期がこなければ——われわれは沖繩問題についてだまっておるというわけではない。不断に要求は続けます。しかしそれにもかかわらず、もっとも早い沖繩返還、あるいは北方領土返還の道は極東にそういう脅威が、戦争という危険がなくなる、安全というものが訪れる、これが必要な条件ではないでしょうか。そういう一連の外交努力を払うことが重要な当面する課題であるにもかかわらず、なおかつ今日の一部御答弁に見られたようなこの強い姿勢で臨まれておる、はなはだ遺憾であります。そういう意味で私ども日韓問題、その内容個々については項目別に同僚議員があとからお尋ねいたします。私のきょう与えられた課題は総論でありますので、きょうはこれに関連をする背景をなす国際情勢お尋ねしたわけであります。いかがでありますか。
  150. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) あえてお答えいたしますが、あえてというのは、ただいまは御意見を伺ったように思います。その中でお話しにありましたように、極東に安全が訪れる、このことが最も私大事なことだと思います。この極東に安全が訪れる、そうすれば北方領土も沖繩問題も解決するだろう、確かにそのとおりだと私は思います。この極東に安全が訪れる、またわが国の安全もそれによって確保される、こういうことが望ましい姿だと思います。私どもがただいままで申しておる平和に徹する、あるいは日本の国の安全をまず第一に考える、かように申しましても、これは空虚であるかもわからない、これが御指摘でもあります。しかし私はこれがただいまわが国の置かれておる命運だ、かように考えます。幾ら直ちにその効果が出てこないにしても、私どもは平和に徹しておる、この態度はぜひとも堅持したいし、またそういう意味アジアの平和あるいは国際的な平和、それに寄与すべきだ、かように私は思います。ただ日韓交渉そのものが国論を二分しておる、かような言い方でございますが、これは確かに国論が、日韓交渉に賛成の者、反対の者もあります。しかし二分しておられるというのはどういう意味なのか。もしもフィフティ・フィフティで国論が対立しておる、かようにお考えならば、私はさようには認めない、世論調査等も二、三の新聞でやられました。そのいずれもが四五%がこれを支持しておる。一二、三%が反対だ、こういう状態である。かようなことを考えますと、これはいわゆる国論が二分しておる、こういう形ではない。私はその姿は、その大多数の姿ではないように思います。大多数の国民はそれを希望しております。心から願っております。このことは最も大切だと、かように私は思いますが、この国内の世論の動向というものは政治家として絶えず注意しておるわけでありますが、不幸にいたしまして、社会党の諸君は、私どもの見るところとはだいぶ違っていると思います。どうか社会党の諸君も、この国論のあり方、あるいは世論の動向、これを正しく認識していただいて、私どもと結論が同一になれば、ただいま承認を求めております案件等につきましても、在来のような考え方にこだわられないで、いわゆる国民とともに政治をする、こういう態度になられることだろう、かように思います。
  151. 羽生三七

    羽生三七君 これで終わりますが、その国論二分の考え方は、私たちは、野党最大の社会党、あるいは参議院では公明党、もちろん共産党もありますが、そういう少なくとも国民の審判を受けて出てきた者が、こうして議会の中で二つに分かれて論議していることを言っているわけで、国民投票をやったわけではありませんから、それはフィフティー・フィフティーであるかどうかわかりません。それはよろしいのです。しかし、これは最後に、質問ではない、私の考え方を申し上げますけれども、くどく申し上げますように、総理がこれほど平和に徹すると言われながらも、その裏づけとなる具体的な事実を、私は、アジア日本を取り巻く近隣の外交について何ら具体的事実を見受けることができない、これをあえて私は今日指摘したわけであります。  なお、このほか、先ほどお尋ねした防衛庁の国防省昇格問題、あるいは予算に関する問題等もありますけれども、だいぶ時間もたちましたので、本日はこの程度にしておきたいと思います。(拍手)     —————————————
  152. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) 木内四郎君。(拍手)
  153. 木内四郎

    ○木内四郎君 私は、過去十四年間の長きにわたって懸案でありましたこの日韓条約その他の案件が今日妥結を見まして、ここにわれわれの承認を要求されておる、ここまでの段階になってまいりましたこの間における総理、閣僚また外務当局の方々の非常な御労苦と御努力に対しましては、衷心敬意を表し、かつ、感謝を申し上げたいと思うのでございます。  この条約の審議につきましては、いろいろな経過を経てまいりましたが、期間はそう長くありませんでしたけれども衆議院におきましても相当審議をされました。また、本院におきましても、本会議の審議、また、当委員会の審議におきまして、いろいろ質疑応答が繰り返されましたし、ことに衆議院におきましては、わが党の小坂代議士、田口代議士、また、本院におきましては、本会議におきまして草葉委員から詳細な質疑がありまして、これに対しまして総理はじめ閣僚、政府委員の方々から懇切丁寧な御答弁がありまして、条約案件関係の大筋につきましては、大体これを解明することができたと思うのでございます。私は、そういう意味におきまして、また私が再三質疑を延ばされましたが、いろいろな議事の都合であまり長い時間もさかれておりませんので、この際数点につきましてのみ、ひとつ総理はじめ閣僚の方々の御意見、あるいはまた政府委員の御説明をお願いいたしたいと思うのでございます。  ところで、それに入ります前に、この本案件の審議をめぐりまして、衆議院におきましては相当波乱がありまして、これに対しましては国民も非常な関心を持ち、かつ、非常な心配をしております。また社会党の諸君も、きのうからの御質疑にありましたように、いろいろ御心配になっておりますし、私どもも非常に心配をいたしております。また、総理は一そう深く心を悩ましておられるように拝見するのでありますが、この点につきまして、議会民主主義という見地から総理に対しましてひとつお伺いをしてみたいと思うのでございます。  実は私は、先日大学の先生方、これは法律、経済を研究しておるような、政治を研究しておる人々じゃございません。科学の研究をしておる学者の方々と会いまして、そこで議会民主主義などを話しましたところが、これは私の言うことでありません。この科学者の先生方の私に言われることですけれども、あなたはいろいろこの議会民主主義のことについて言われたけれども、どうも今度の国会の審議の状態を見て、初めから、もう召集の当初からどうも議会民主主義の土俵の外へ出ているのではないか。自分たちは専門ではないし、政治のことはよくわからぬけれども、科学者としてものごとの自体、本体を把握するということは、自分たちは常にそれを任務としておるから、今度のこの問題についても、自分たちの考えをもってすれば、初めからもう民主主義の土俵の外へ踏み出しておる。自民党のほうは、政府のほうにおいて多数の国民の支持を得て政治、外交、行政の責任を持っておるその政府が、責任を持って韓国締結した条約を国会に提出しておる。そうしてこれはすでに参議院の選挙の洗礼も受けておる。しかも国民の多数の——絶対反対しておるものは、きわめて少ないように、新聞社の世論調査などによるときわめて少ない反対しかない。大多数の者の支持を受けておるこの案件に対して、絶対反対、しかも、三分の一しか議席を持っていない者が絶対反対、絶対阻止、粉砕、しかも実力をもって阻止しよう、力が足りなければ院外の勢力まで動員してこれを粉砕しようということは、すでにもう議会民主主義の土俵の外へ出ている話だ。国会召集の当初からこの国会はすでに土俵の外へ踏み出しておる。議会民主主義否定の態度であり、これを極端に言えば、議会民主主義に対する否定の宣言である。それに対して、国民の支持を得て政治と外交と行政を担当している自由民主党は、一方はあくまで阻止する、これが野党ならば拱手傍観できるかもしらぬけれども、政治と外交と行政の責任を持っている、これは突破しなければならぬ、そういう結論に当然なってくる、われわれはそう事態を見ておる。われわれは科学者で、人工衛星の軌道などについても、これは測定することができる。この議会民主主義否定の宣言、これの弾道については、別に計算機を用いなくても結論はわかっておる。どこへ落ちるかわかっておる。自分たちだけじゃない、国民もわかっておる。ところで、衆議院において一たび強行突破があると、それに対して、議会は審議を尽くせというようなことを言う。それならなぜ二十日間も二十数日間も審議を怠っておるときに、これらの人々は審議を尽くせと言わないか。ことに参議院においても、聞くところによれば、このごろ予備審査といって、衆議院に出せば、参議院も委員会に付託をして審査をしなければならないと聞いておるが、一カ月余りもその付託もしないで、審議もしないでおる。それじゃいかぬ。ことに強行突破をして衆議院から参議院に送ってこられる段階になると、新聞でもラジオでもテレビでも、どうしたら議会民主主義を守ることができるかということで座談会をやったり、いろいろなことをして、記事に出たり放送されたりしておる。これはとんでもない間違いだ。初めからないものを守るといっても、守りようがない。むしろ、これから議会民主主義をどうしたら築いていくことができるか、こういうことならわかる。ないものを守ろう。これは非常な間違いだと思う。政治家の諸君もひとつしっかりしてくれなければ困るということを、私は科学者たちの集まりで聞きました。ところで、最近また、ある私はことばはよくわからない人ですけれども、野党の委員長の方が私の郷里に来て、駅の前で議会民主主義を守るという演説をされました。おひざ元の善光寺さんの仏さんにまで訴えたという話、御本人は非常にまあ気持ちよく話をしておられたらしいけれども、聞いた人は何と言ったか。野党第一党の委員長が、自分たちが議会民主主義破壊の種をまいておきながら、反省することなしに他人の非だけ責めておるようじゃ、まあ日本の議会政治もどうにもよくならないだろうということを言ったという報告を受けています。私は民の声は神の声だということを聞いておりますけれども、仏さんの声でもあると思う。そこで、私自身もこの問題に対しては、社会党の諸君などと同様、あるいはそれ以上に心配しておりまして、いろいろな人に意見を聞いてみました。自由民主党が強行突破したことに対しては非難する人もありますが、相当多くの人は、あれはやむを得なかったのだという人が相当ある。がしかし、長い問、二十日間余りも審議に入らないというこの国会の態度に対しては、ほとんどすべての人は、口をそろえて強く非難しています。そこで私は、こういう状態であるならば、国民の国会に対する信頼というものは地を払う。私は非常にこれは残念なことだと思う。そこで私は、二十日間も審議に入らなかったということは、これはやはりまあ野党の責任だと思うのですが、しかし同時に、長きにわたって審議に入らせなかった、そのままにしておいたという点においては、やはり与党においても責任はないとは私は言えないと思う。と同時に、自民党が強行突破をした。これも好ましいことではない。これに対しましても、やはり野党の諸君の責任がないとは私は言えない。そこで、与党においても野党においても、この際は深く反省をして、そうして何とかしてこの議会民主主義を守るということでなければ、どうしてひとつ築き上げていくかということに心を砕かなければならない、こういうように私は考えております。ところで、それは双方とも深く反省をしなければならぬと私は思っております。そこで私は前から、これは笑い話みたいなものですが、政治物理学ということを言っております。物事は極端に行けば極端に返る、機械になるだろうということを考えておるのですが、この機械は私はぜひ悪いほうからいいほうへひとつ転換するように努力しなければならぬじゃないかと思う。お互い努力しなければならぬじゃないかと思っております。そこで、総理もいろいろこの点については本会議などでも御答弁になりましたし、心持ちはよくわかっておるのですが、私は何としても、先例はどうあろうとも、法規はどうあろうとも、少数の人が賛成しなければ議運もまたほかの委員会の理事会も開けないとか、本会議委員会も開けないとか、あるいは日程もきめられないとか、あるいは議案もきめられないというような状態では私はうまくいかないのじゃないか。もちろんこの少数会派の意見は十分に聞く。これは必要ですけれども、これには時間的にも制限がある。そこで、まとまらない際にはひとつ議運においても理事会においても決をとってそれできめる。ひとたびきまったら反対した人もこれに従うということでなければ、私は国会の運営、議運理事会、また本会議委員会、この運営はうまくいかないだろうと思う。三人アウトになってもチェンジにならない、あくまで自分が打つのだというようなことを言っておったんじゃ私は始まらない。やはり三振したらアウト、やはりルールを守るということでなければ私はいかぬと思う。そこで、そういう意味におきまして私は深くお互いに反省し、そして国民の信をつなぐことができるようにしなければならないということを考えておるのですが、もちろん総理も御異議があるはずはないと思いますが、こういう点に対しまして、今回の日韓案件の審議に関連しまして総理のお考えをひとつ承っておきたいと思います。
  154. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 過日も衆議院の議事の運び方につきまして、社会党の諸君のお尋ねに私が答えたつもりでございますが、ただいままた大体同じような意味お尋ねがございました。また同時に、反省のある、さすがに参議院は良識の府だ、それを代表されての御意見だと、かように実は敬意を表して伺ったのであります。で、私は法規典例によるという、まあ先例も大事だということを申しましたが、悪い先例は先例でないのだ、こういうことで前進をしてもらいたいと思います。申すまでもなく、これは権威は認めていかなきゃならない。またルールは守らなきゃならない。ただいまたいへんかいぎゃくに富んだ野球の例を引用されて御説明になりましたが、これがルールを守ることだ、かように思います。そのために最終的にはやはり決をとる、これが必要だろうと、かように思います。同時にまた、権威を尊重するということでなきゃならぬ。権威を尊重するといううちには、議長あるいは委員長等が議事の進行について発言することがありますが、多くの場合にこれが聞かれておらない。早く早目に投票してくださいと申しましてもなかなか投票しない。いわゆる牛歩戦術はけっこうでありますが、足踏みをしないで前に進んでくださいと言っても、足踏みをしなければ前に進めないというような議論まで出て、とにかくあとずさりはなさらないが、その道をふさぐ、こういうふうなことがやられておる。これなどは私は議長の発言、それによって議事の運営をしていく、これが大事なことだと思う。こういうところの権威が認められない。そういうことがどうしても議場が混乱するゆえんだと思います。私は議長の指示を受けて本会議が運営されるならば、いままでのような混乱状態は引き起こらない。そこにいかにこのルールあるいは法規を守るということが大事かということがよくわかる。この点はこれはもう衆参両院の議員の諸君でありますから、さような点を私が指摘するまでもなく百も御承知なんです。百も御承知なんだが、やはりこれを絶対に成立をはばむ、阻止だ、こういうような立場に立ちますと、いま申し上げるような事柄が遠慮会釈なく行なわれる。これが国会の混乱を来たしたゆえんでもある、そういう意味で多数党の与党が全責任を負うべきものだ、かような言い方をされますけれども、いわゆる全責任は負えない。しかしながら、多数党が会議をリードしていく、そういう立場にあることも多数党は考えなきゃならない。しかし、少数党ももちろん運営については協力していかなきゃならない、このことは申すまでもないのであります。私はかようなことをいろいろ考えてまいりまして、どうも日本の国には民主主義の議会制度なるものが合わないんじゃないのか、これがいわゆる国民としての不信であります、議会制度に対する不信であります。このことはたいへん私は心配にたえない。したがいまして、ただいまのお話にもありましたが、われわれは戦後の新しい制度として民主主義に徹する、議会制度に徹する、議会制度を守り抜く、この形で日本の国は立ち上がったはずであります。だが、ぜひともこれは日本におきましてもりっぱに育つんだ、りっぱにこのルールが守られ、そうして国民とともに政治ができるんだ、こういういい手本を示さなければならない問題だ。ところが、不幸にしてただいま申し上げるような衆議院の結果になった。今度は大いに反省、自粛して、そうして悪い先例は先例にしない、こういうことで今度は新しい行き方といいますか、そうしてお互い協力して、そして民主政治を守る。国民からともすれば批判を受ける、あるいは不信を招くような、そういう状態はもう二度とやらない、こういう意味で決意を固めたいと思います。これはいわゆる一億総ざんげ、戦時中の悪い意味のことを思い起こすようなこととは違います。社会党の諸君から、それは一億総ざんげに通じるものではないかと言われましたが、私はそうじゃない、私ども民主主義、これを守り抜くという、その立場に立てば悪い先例は、これは採用しない、そうして新しくよりいいものをどうしてつくるか、そこに努力がいり、また反省がいる、かように私は思います。そうしてそれは与野党とも、ともどもにその責任を分かって、そうしてりっぱな政治をして、そうして国民の負託にこたえる、これが私どものなすべきことでなければならない、かように思います。ただいまお話のうちにもありましたが、国会は申すまでもなく言論の府だ、かように思っております。こういうところは絶対に実力の府ではないはずだ、だから実力——院内外の実力を動員してというようなことは、(「それは形容詞だ」と呼ぶ者あり)これは形容詞にいたしましても慎むべき事柄だ、形容詞にいたしましても使うことばと使わないことばがあります。どうかそういう点は、社会党の諸君も絶対阻止、破壊だ、かようなことを言われる、これは形容詞であろうかと思いますけれども、しかしいわゆる院内外の実力を動員して——これは私はたいへん惜しむのであります。そういう意味におきまして、お互いに反省し、お互い協力してりっぱな議会制度をつくる、そして民主政治の完成、その方向への前進をはかる、こういうことであってほしいと思います。
  155. 木内四郎

    ○木内四郎君 ありがとうございました。ところで、先ほど私が法規、先例にかまわないということを申しましたが、これは総理からただいまお話がありましたように、もちろん悪い先例、もしまた法規で悪用されるようなものがあったら、これは勇気をもってひとつカットしていくということが必要だという趣旨で申し上げたのでありますから、そういうふうに御了解を願いたいと思うのでございます。  ところで、私は、アジア外交に対する基本的の姿勢、こういうことについて実は伺いたいと思っておったのでございまするけれども、本会議において、草葉委員の御質問に対して総理から詳細にお述べになりました。また、本日は午前から午後にかけまして詳細に質疑応答が繰り返されましたので、私は時間もありませんから、これは省略いたしたいと思うのであります。  これに関連してただ一言申し上げたり伺ったりしておきたいと思いますのは、アジアの諸国は、ほとんど大部分は新興国であります。これから国を興そうとしております。そうしてこれらの諸国はいずれも政情の安定を得るために非常に悩んでおる。また、経済の面におきましても経済の発展のために非常に苦心をしておる。ところが日本は先進国と言っちゃどうかと思うのですが、先にスタートした国としてこういう経験をすでに経ている。また、幸いに国民努力によりまして非常な繁栄を来たしておるのであります。私はただ日本繁栄しておる、繁栄してきておるということだけでは、このアジアの諸国の尊敬、信頼あるいは共感を得ることは困難じゃないかと思います。このアジアの諸国の悩みあるいは困難、これはわれわれがかつてすでに経験してきた悩みであり、困難である。これに対して深い理解をもって、そうしてこれを自分悩みであり、困難であると感じるようにならなければならぬと同時に、自分たち繁栄をそれらの諸国に分かつのだという心がまえがなければ私はならぬものだと思うのであります。総理も、善隣友好、仲よくするということだけでなしに、経済援助経済協力ということを常常おっしゃっております。そういう御趣旨だろうと思うのでありますが、   〔理事草葉隆圓君退席、委員長着席〕 この日韓条約の扱い方につきまして、日韓条約は多年の懸案で非常に困難だ。したがって、これに伴って互譲——お互いに譲り合ったり、あるいは妥協もある、したがって、これに対しては、あるいは少し譲り過ぎたのじゃないか、あるいは払う金額などについても少し多過ぎやしないかと、こういうような議論もあると思うのでありますが、これは私がいま申しましたような、われわれの繁栄をともに分かつのだというような心がまえをもってこれに臨んでまいらなければならぬと思うのですが、こういう点につきまして、総理から御所信を承わりたいと思います。
  156. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はお互い繁栄し、そうして生活が向上していく、ここにほんとうの平和があり、そういうところに楽土ができるのだ、これを念願しております。そういう意味で、東南アジア等の開発途上にある国に対しましては、日本がなし得る意味におきまして、経済的あるいは技術的援助をして、そうしてその生活を向上さす、同時に、国自身として繁栄していくような道をとる、こういうことを実は考えておるのであります。そういう意味から、けさほどからいろいろお話し、御説明いたしましたように、東南アジア開発銀行の構想があったり、そうしてこれはもう具体化されようとしておる。あるいはアジア・ハイウエーの構想がある。これなどもたいへんな雄大な構想で、これから私どもが取り組むべき事柄だと思います。あるいはユニセフの問題にいたしましても、また衛生上の問題にいたしましても、同時に私どもが力をかすべきその分野が非常にあるわけであります。その今回の日韓交渉の問題にいたしましても、隣の国と仲よくするというばかりじゃなく、隣の国が繁栄すること、そこに安定があり、その生活の向上があれば必ず隣の国はしあわせになる、そういうしあわせの国と日本隣同士であるということは、これはもう申すまでもなく日本のしあわせなんである。かような意味で、日本はできるだけのことをしたり、同時に日本国民の負担にもかかることでありますから、国民の負担も十分考えて、ただ情理だとか、あるいは順法的な立場だけで、そういうものできめるわけにいかないことはもちろんであります。しかし、今回の交渉の経過を見ますと、十四年の長きにわたった国際的にも最もむずかしい交渉だと言われておりますその日韓交渉ができたのであります。そういう意味で相互に互譲、妥協した、そういう点はこれはいなめないことであります。したがいまして、わが国におきましても、どうも日韓条約は少し譲り過ぎではないか、法的地位の問題についても、もう少しはっきりした主張をしないと国益に反するのではないか、あるいは経済協力も少し出し過ぎているのじゃないか、漁業の問題についても、どうも譲り過ぎだ。したがって、漁獲量も在来のようにはないのじゃないかと、いろいろ不満があるようであります。しかし、このことはわが国内にもあるのでありますが、韓国側にもあるのであります。韓国政府に対する反対は、韓国民の一部から、どうも日韓交渉は少し譲り過ぎた、どうして韓国韓国らしく日本交渉しなかったか、ことに不幸なる過去を思い出せばもっと日本に要求してしかるべきだと、こういうような話が次々と出ておる。これは確かに両方に不満があるということ、同時に、そのことは逆の言い方をすれば、双方が互譲の精神によって妥結させたものだと、かようにも解釈できるのであります。問題は、将来の日韓間が一体どうなるのだ、この互譲の精神で妥結したこの条約を基礎にすれば将来については十分希望が持てる、十分親善友好の関係を樹立することができる、また同時に、そういう意味でわれわれは努力しようと、こういうことになりまして初めてこ条約についての理解もできるのであります。  しからば、この条約がそういう意味におきまして、一部もちろん理論的でないものもあるかもしれない、これは妥協の所産であるという意味におきまして、また一部、法的地位のごとく、日本に雑居し日本人であったと、こういうような立場から、やや他の外国人に対するものとは特殊な待遇をしておる、こういうようなこともあります。ありますが、これらあたりは理論ではない。しかし、おそらくこれらの実情につきまして日本国民もよく実情を理解してくれておると、かように私は思うのであります。したがいまして、今日のこの妥結について調印をいたしましたことについては、国民の大多数は賛成をしてくださる、かように期待をいたしておるのであります。同時にまた、この条約締結いたしました政府といたしましては、いままでの経験から申しまして、たいへんむずかしい事柄だがこれより以上のものもなかなかできないじゃないか、これをつくったこと、これはもう、まず私は最善とは申しませんが、その両者歩み寄ったその所産としては、これ以上のものは考えられないじゃないか、かように私は思う次第でございまして、これらの点も十分御理解をいただきたいと、かように思います。
  157. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで、次には政府委員に伺いたいと思うのですが、この日韓条約案件は、わが国におきましては、いま総理からお話がありましたように、またいろいろな新聞などの世論の調査などから見ましても、絶対反対を表明している人はきわめて少ない。これに対して支持を与えておるほうは、与野党の比率よりもはるかに多い比率で支持が与えられておるし、しからば韓国においてはこれをどう見ておるか。韓国全体としてはもちろんですが、各界はどんなふうにこれを見ておるか、反響、世論というようなことを、外務省において御調査があると思いますが、ひとつ政府委員から御説明を願いたいと思います。(「朴政権の世論調査を出したらどうか」と呼ぶ者あり)と同時に、補いますが、反対の者があったら、その反対の理由につきましてもお述べを願いたいと思います。
  158. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) お答え申し上げます。  まず、韓国内における全般の賛成、反対の色分けでございますが、向こうで三月に世論調査をいたしましたところでは、正常化賛成が大体六九・八%、反対が九・七%という結果が出ております。(「どこが調査し、だれが集約したか」と呼ぶ者あり)
  159. 木内四郎

    ○木内四郎君 質問は私がやっております。
  160. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) それで、賛成をしておりますおもな団体といたしましては、経済団体、その中でも特に漁業対策委員会とか、韓国水産協同組合等、一番この日韓交渉に至大な関心を持っておる団体も賛成しておるわけであります。それからさらに、一部伝えられておりました予備役将官十一名の反対論に対しましては、賛成の将官連の決議が百三名参加しているというような状況でございます。それから、一部伝えられておりましたキリスト教徒関係四十三名は、これがやはり賛成論の発表をやっております。  なお、一般の新聞論調等を見ましても、最も野党系の色彩の強いといわれておりました韓国日報等でも、いまやすでに条約締結された以上は、韓国政府が主体性を維持してこ条約の活用に当たれば、この国の復興に寄与することができるだろうという社説を出しております。同じく東亜日報等も、ふだんは相当野党的な色彩の濃い新聞でございますが、やはり現在となってはこの条約の活用をはかることが大切であると。こういうふうにみな前向きの姿勢を出しているのが現状であります。
  161. 木内四郎

    ○木内四郎君 多少、九%ばかり反対があるということでありますが、その反対している人たちの反対の理由はどういうところにありますか。
  162. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) これは国交正常化自体に対する反対ということではなしに、内容の点で、やはり譲り過ぎた、漁業の問題等が特にその尤たるものだと彼らは言っているわけでありますが、要するに、屈辱外交をやったというのが反対の論拠になっております。
  163. 木内四郎

    ○木内四郎君 いま伺いますというと、わが国においては、世論調査賛成四十数%、反対一、二%に対して、韓国においては、反対九%に対して賛成六九%、圧倒的な支持を国民がしていると思うのです。そうしますというと、ある一部の人々は、まだ日本韓国の情勢は熟さないから、これに対して賛成しかねるというような人がありますけれども、そういう論拠は全く成り立たないと私は思うのですが、それは別に政府委員の答弁は必要といたしません。  それからさらに、反対の理由を伺うというと、日本に対して譲り過ぎた、屈辱外交だと彼らの側から見ている。それがどうして日本のほうで、これは日本のほうでこの条約に反対する理由に引用できることでありましょうか。私は全く、韓国の反対ということは、いまの理由から聞くというと、当方においては、まあ総理その他交渉に当たられた方は、成功とまで言ってもいいくらいのものじゃないかと、これは思うのです。反対の理由にあげることはできないと思うのです。  それはそれとして、さらにアジアの諸国、それから自由主義陣営の諸国、また共産国における論調についても、ひとつ御説明をお願いいたしたいと思います。
  164. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) まず、韓国と対抗的立場に立っております北鮮でございますが、北鮮政府は、このたび衆議院の通過に際しましては、この条約が東北アジア軍事同盟を結成するものだということ、これを反対の最大の論拠といたしまして、このできました韓日条約は無効であるという声明を出しております。さらにさかのぼりまして、北鮮政府は、この六月の調印のときにやはり特別の声明を出しまして、この条約はNEATOの結成に通ずる、それから韓国の分割を永久化するアメリカ帝国主義の企ての一環を構成するものだというようなことを言っております。もう一つ特色のある言い方といたしましては、大東亜共栄圏の古い夢を実現する目的であろうというようなことを言っております。  それから、中共は、このたびの衆議院の採決にあたりまして、やはりこの日本の軍国主義復活を早めるものであるということを言っております。さらに、この日韓条約は侵略的な軍事条約であるということを言っておるのでございますが、特に先般の六月の調印のときの政府特別声明では、やはり朝鮮の分裂を永久化するものだということと、それから日本と朴政権とをアメリカの侵略政策に奉仕させるものだ、そういう趣旨の論評をいたしております。  それから、ソ連邦でありますが、ソ連は、最近、十一月十四日タスが特に声明を出しまして、これがプラウダに出ておるのでございますが、やはりこの朝鮮の分裂を深めて、南北の統一を阻害するものである。それからさらに、韓国日本とをアメリカの侵略計画に引き入れるためのものだ。それから、もう一つの言い方としましては、米国の対韓援助の負担を一部日本に転嫁さすための協定である。  まあ大体共産圏では、こういう趣旨の論調をいたしております。  で、一方米英等につきましては、アメリカはまだこのたびは、この批准前は政府として公式の反響は遠慮すると言っておりますが、大体アメリカの新聞等におきましては、この成立を歓迎するとともに、やはりこの日韓間の国民の真に友好的な心理が、心がまえが生じてくるまでには、相当な時間を必要とするであろうと、そうして相互の信頼によってのみ、これが日韓間の真の和協というものが開かれていくのだという論調を出しております。  なお、イギリスは、やはりまだ批准——今般は反響は出ておりませんが、調印のときには、これがやはりアジアの安定と繁栄に大きな前進となることであろうと、歓迎を述べております。  また、ドイツは、やはり調印の際に、世界の自由諸国民の相互理解への寄与になる、そうして国際協力を大いに増進するものであろうと、こういうコメントをしております。
  165. 木内四郎

    ○木内四郎君 そうしますというと、大体共産圏を除いては、まあ非常にこれを歓迎しておるように私は聞いたのですが、共産圏諸国の言っているところを見ますと、大体こちらの野党の諸君の言っていることと同じようなことを言っております。ことばをかえれば、共産圏はまあ社会党の出張員みたいなものじゃないかとまあ思うのですが、それはそれといたしまして、私はさらに次の問題について伺いたいと思うのです。  この今回の条約基本的の性格、これにつきましては、総理からいろいろな場合にたびたび御説明になっております。これは軍事同盟に通じるようなものじゃない、あるいは、反共体制の強化、そんなことは毛頭考えておらない。あるいは、これは日本戦争に巻き込むおそれがない、おそれがあるものじゃないということも言っておられます。また、南北の統一阻害、これによって阻害するということは毛頭ないのだというようなことを言っておられまするが、一部の諸君は、この総理その他の懇切なる御説明にもかかわらず、これに耳をかしませんで、あるいは耳をおおって、依然としていま申しましたような論を唱えておる者があると思いますが、しかし、これについてはもう再三再四総理から御説明になっておりまするので、私は時間のないこの際に重ねてお伺いすることを避けたいと思うのであります。  これに関連しまして、ただ一つ、これは政府委員でいいのですが、条約の前文で、国際の平和と安全を維持するために、国連憲章の原則に準拠して緊密に協力するというような趣旨の規定があります。一体これは、総理その他からも御説明がありましたように、ソ連との関係、ポーランドとの関係、あるいはチェコとの関係などによりましても、すでに入っておるということではありまするけれども、一体この条約の前文にこういうことを書き入れるということが、今日の一つの慣行と言っちゃあれだけれども一つの例になっておるのかどうか。国連というものは厳として存在しておって、国連の条約、協約というものがあって、そのうちに書いてある。あるいは決議というようなものを、国際間においてはちゃんと約束されておる。にもかかわらず、こういう字句、このためにどうもとかくの、やれ軍事同盟につながるとか、いろいろなことを言われるようなこういう字句を入れないでもよかったんじゃないか。しかし、これはソ連その他のように、すでに入っておるのです。別にたいしたあれではありませんけれども、これは最近の条約締結する際の、ほかでもこれは例になっておることですか。そういう点について、ひとつ御意見を伺いたいと思います。
  166. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) いま御指摘のような条文は、日本が戦後結びました西欧諸国との平和条約及び東欧諸国と結びました外交関係を新たに始めるための交換公文なり協定なり、すべて同種の条項がございます。それと趣旨において変わりはございませんが、まあ韓国の場合に特別に意義があるということは、一つは、大韓民国はこれらの国と違いまして、自身が国連加盟国ではございませんので、国連憲章の原則に適合して協力するというようなことをこの条約に入れるということは、それだけの特別の意味があるわけでございまして、換言すれば、ほかの加盟国の場合にはまあ全くつけたりの、国連憲章上負っている義務の繰り返しにすぎませんけれども韓国の場合は、国連加盟国でございませんので、この条約に入れる意味はそれだけよけいにあるということでございます。
  167. 木内四郎

    ○木内四郎君 その点は、まあ大体それで了解しましたが、北鮮承認しておるものは二十三カ国、韓国承認しているものは七十数カ国、これは圧倒的な数字の差でありますが、これらの諸国は一体いつごろこれを承認したのでしょうか。日本は非常におくれておるように思うのですが、これらの諸国の韓国承認した時期は一体いつごろですか。
  168. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 大部分の国は、一九四九年の初頭でございます。つまり国連の第三総会の決議第百九十五号ができたあと、数週間あるいは数カ月以内に承認しておる、かように承知いたしております。
  169. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで、もう一つ伺っておきたいのは、これは政府委員ではちょっとぐあいが——悪くないが、政府委員でもいいのですが、この南北の統一が、国連の努力にもかかわらず、ことに国連は朝鮮事変以前から努力してくれておると思うのですが、にもかかわらず、今日までその統一ができない理由につきまして、御説明をお願いします。
  170. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘のとおり、朝鮮事変以前から国連が、南北朝鮮の統一について、特別の委員会を設置をいたしまして、この実現に努力したのでございますが、御承知のとおり、最後には、ソウルにおけるイギリス、ソ連の合同会議、これが全然基本的に意見が食い違って、とうとう決裂をしたと。それで、国連といたしましては、このまま事態を放置することができないので、いわゆる第三総会においてあの百九十五号なる決議をいたしたのでありますが、その以前にこの臨時朝鮮委員会なるものを組織して、朝鮮の現地にこれを派遣して、そうして南北が国連の監視下において自由な選挙をやらせる、そしてその選挙に基づいて統一政府をつくると、こういうことを仕向けたのでありますが、南朝鮮はこれを受け入れ、北朝鮮は一歩もそのいわゆる領域内に踏み入ることを固く拒否した。だから、もう入ることすらできない。いわんや、その国連の政策を実行するなんというようなことはとうていできない。そういうことでそのまま帰って、そして南朝鮮における状況だけを報告をした。それに基づいて百九十五号の決議が生まれたわけであります。すなわち、朝鮮の人民の大部分が居住している一部に有効な支配と管轄権を及ぼす政府ができた。これはその地域における住民の自由意思に基づく選挙に基づいたものである。そして最後には、これが朝鮮半島におけるこの種の唯一の合法政権であるというようなことが決議に書かれておるのでございます。そういうようなことで韓国というものは誕生したのでございまして、今日でも、国連の総会のたびごとに朝鮮の問題に対してこの決議を再確認をしております。そして、とにかく朝鮮の南北統一という問題について、あくまでこれを追求するというかまえを示しております。こういう状況でございます。
  171. 木内四郎

    ○木内四郎君 いままでの経過はわかりましたけれども、最近聞くところによりますと、北鮮の金日成氏が、何か朝鮮の統一について方針みたいなことを言ったというようなことを聞いておるのですが、それはいかがでしょうか。朝鮮統一に対する北鮮考え方ですね、政府委員でもいいんですが。
  172. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それはどこかの演説で述べておるのがわれわれの耳にも伝わっておりますが、結局いわゆる南に対する侵略、力でとにかく南鮮というものを併呑しよう、そういう非常に壮烈なる抱負を述べておる。その詳細については後宮アジア局長から。
  173. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 御承知のとおり、北鮮側は、一時、国連方式による統一方式に反対いたしまして、北鮮独自の統一案として連邦案というのを主張したことがあるのでございますが、ことしになりましてからそれが変わってまいりまして、いま大臣の申されましたごとく、一番最初は、四月十四日ジャカルタでのバンドン会議記念式典のときの金日成首相の演説、続いて十月十日の朝鮮労働党創建二十周年慶祝大会における金日成の報告におきましては、連邦制の問題には触れませず、北朝鮮の革命基地を強固にして南朝鮮の革命闘争を支援し、国際革命勢力の連帯強化によって南北統一はなさるべきである、こういう趣旨の演説をしている。このことを大臣が申されたんだと思います。
  174. 木内四郎

    ○木内四郎君 そうしますというと、韓国のほうは国連の方式を承知した、受け入れたにもかかわらず、北鮮のほうはいまのようにマルクス・レーニン主義で結束して、それによって統一しようと、こういうようなことを言っていることが、この南北統一を阻害しておる理由の最も大きなものだと、かように解して差しつかえありませんでしょうか。
  175. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘のとおりでございます。
  176. 木内四郎

    ○木内四郎君 そうしますというと、総理も一民族国家、一民族二つに分かれておることは非常に悲しいことだ、これは何とかしてひとつ南北統一するようにしたいものだという希望を述べておられましたが、いま聞きましたような理由で統一ができないのだとすると、なかなかこれは容易なことではないと思うのですが、また、日本としてはこれに対してどうするという余地もないように思うんですが、何かなさるつもりか。また、おそらくできまいと思うのですが、そういう点について総理のお考えをお聞きしたい。
  177. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 朝鮮半島の南北の関係はただいままでただされたとおりで、これは御理解いただいたと思います。この同一民族の単一国家をはばんでおるもの、これは直接の原因としては、国連の決議勧告を尊重するというか、受け入れた大韓民国と、受け入れない北との関係だと、こういう説明をいたしておりますが、同時に、このことは、直接の問題よりも、背景がそれぞれ違うのでありまして、いまの国際情勢のもとにおきまして、いわゆる東西の対立がある、この東西の対立がただいまのような二国を形成さした、こうも言えるだろう。ことに朝鮮事変以来、双国の摩擦は、非常に対立が激化しておりますので、また、それも時日がたちましても朝鮮事変の対立はいえないといいますか、そういう状況のもとにある。したがって、単一国家が実現する、これにはしばらく時間がかかる問題ではないか、かように思います。しかし、すでにソ連は平和共存の道をたどっておりますし、また、中共におきましてもどういうようになりますか、ただいま動いておる最中でありますから、これらのことも勘案して、しかる上で結論を出すべきことだと、かように思います。いずれにいたしましても、いまのような状態は不幸な状態であることには間違いがないというか、すべての人が見るところ同一の見解だと、かように思います。これをいかにして解決するか、これが私どもにも問題があるわけであります。けさほどからいろいろのお話がありましたが、やはりその議論は、結局東西対立というか、この中の韓国、また、北鮮というものがどういうようになるか、また、わが国がそういう場合にどういうような働きをすべきか、ここにその問題があるようでございます。これはいわゆるイデオロギーの論争とばかりは片づけられない、つまり現実の問題がただいま申し上げるような状態でございます。ここに一つアジア悩みがある、かように私は思います。
  178. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで、いま外務大臣からお話になりました第三回国連決議百九十五号、これを今回の条約の第三条に引用されまして、韓国政府の性格をそれによって示し、また、さらに間接に管轄権の問題にも触れているのじゃないかと思うのですが、韓国のほうの議会に出した説明書によりますというと、韓国の領土は憲法第三条で鴨緑江まであるのであります。ただ、いま不逞のやからが北部を占拠しているから、実際上そこへ力が及ばない。結論においては同じようなことですけれども、そういうことを言っていますが、そこで、私は、これは政府委員でけっこうなんですが、第三条で韓国政府の性格というようなものを示す必要はどうしてあるんだろうか。この条約のときに韓国の性格だけ示して、日本の性格は示しておらない。第三条で韓国の性質を、これを引用して示しておるというのは一体どういう意味だろうか。なくてもいいんじゃないか。韓国政府というのは厳として存在しているんだから、日本国政府と大韓民国政府との間に云々と書けばそれで済んだのではないかと思うのですが、こういうことは一つの例にあるのでしょうか。どういうわけでしょうか。
  179. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 純粋な法律論といたしましては、ただいま御指摘のように、大韓民国政府というものがどういうものであるかということは国際的に疑問の余地のないところでございます。必要ないじゃないかとおっしゃればそのとおりだと申し上げるほかないわけでございます。ただ、日本大韓民国承認いたしましたときは平和条約発効のときでございますが、このときには、前々から御説明いたしておりますように、黙示の承認ということで、はっきり承認の意思表示をした文書というようなものはないわけであります。ほかにそういうような明示の承認をした国はたくさんあるわけでございますが、それらの国の場合にはこの百九十五号を引用しまして、その趣旨に従って大韓民国政府を承認するというように言っておるわけでございます。前にはっきりいたしておりませんので、この四関係条約をつくるにあたりましては、その欠を補うと申しますか、将来疑問の余地をいささかも残さないように、さっき御指摘の憲法規定の関係もございます。そういう念を押すような意味の規定として入れたわけでございます。
  180. 木内四郎

    ○木内四郎君 そうすると、いまの政府委員の御答弁だというと、こちらからそれを入れたことになるのですか。入れることを要求したことですか。黙示の承認にかえて、これによって事態をこの機会に明らかにすると、こういうことですか。
  181. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) この条文も、ほかの多数の条文と同じように、両方の要求するところが突き合わしてああいう形になったわけでございまして、一方からの要求だけということじゃございません。
  182. 木内四郎

    ○木内四郎君 それでは、その次に伺いたいと思うのですが、第二条と思うのですが、旧条約はもはや無効だという、ちょっとあまり例のない表現をされているのですが、韓国の議会に対する説明書によりますというと、時期について明示がなければ初めからナル・アンド・ボイド、初めから無効なんだと、こういうことを言っているように思うのですが、この旧条約の無効の時点というのはどういうふろに考えておられるのでしょうか。
  183. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 英語のナル・アンド・ボイドであると、当然に当初から無効であるという考え方はあるようでございますが、それは私どもは必ずしもそうじゃないと考えております。特に、もはやとかすでにとか、そういう字がついておりますというと、かつては有効であったということがはっきりいたしておるわけでございまして、初めから無効なものならば、もはや無効であるということは言い得ないはずであると、かように考えております。それで、無効になった時点の問題でございますが、日韓併合条約大韓民国独立のときである一九四八年の八月十五日に失効し、併合以前の諸条約協定は、それぞれの有効期限の満了により、あるいは併合まで存続しておったものは併合時に失効した、かように考えております。
  184. 木内四郎

    ○木内四郎君 こまかなことですけれども、いま一九四八年八月十五日とおっしゃったのですが、法的には平和条約発効の日と解するのが適当なんじゃないでしょうか。
  185. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 御指摘のとおり、日本が朝鮮の独立を承認したのは平和条約によってでございますから、平和条約の発効の際にそういうことが確定したわけでございます。ただ、その承認されている朝鮮の独立、その中には大韓民国の独立が当然含まれるわけでございます。これが事実の発生したのが一九四八年八月十五日である、かように考えるわけでございます。領土の最終的な処分が確定するのは平和条約によってであるけれども、その事実は平和条約発効時以前に発生している、こういうことであります。
  186. 木内四郎

    ○木内四郎君 御説明はわかりましたけれども、私の伺っているのは、法的に効力を発生したのは平和条約発効の日じゃないか、こういうことを伺ったのですが、平和条約第二条(a)には朝鮮の独立を承認しておる、そのときに朝鮮というのは独立したのだ、法的には。そうして、それに伴って旧条約は法的に効力を消滅した、かように解するのが適当じゃないかと思うのですが、御説明はわからぬことはないですが、一九四八年八月十五日に独立という事実が発生した、こう見られるわけですね。
  187. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) さようでございます。先ほど申し上げました趣旨がはっきりいたさなかったようでございますが、朝鮮の独立を承認したのは平和条約によってである。しかし、朝鮮の独立はそれよりも前に起こっているんだ、たとえば昔の日本の委任統治諸島は、その平和条約以前に信託統治に切りかえられておったわけでございますが、それもそういうような処分が前になされておって、それを平和条約のときに認めたという形になっておるわけでございます。したがいまして、平和条約によって領土の処分は行なわれるというのが原則でございますが、それはそれによって最終的に確定するということであって、独立のとか何とかいう時点をそこにとらなくちゃならないということまではないということでございます。
  188. 木内四郎

    ○木内四郎君 この点はこれ以上伺いませんけれども、平和条約第二条(a)で朝鮮の独立を承認したと書いてある。この朝鮮というのは一体どういうことをいうのですか。
  189. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 一般に朝鮮といわれておる地域全体をさすものと考えております。
  190. 木内四郎

    ○木内四郎君 韓国ということではないですか。そのときは韓国はすでにありましたね。韓国という意味を含んでおるんじゃないですか。
  191. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) その地域の一部に大韓民国政府が支配を及ぼしておったわけでありますが、その地域も含めまして、朝鮮半島全体の独立を承認したものである、かように考えております。
  192. 木内四郎

    ○木内四郎君 一部の人の間に、旧条約というものは日韓両国対等の立場で交渉したものでない、そういうことを一つ洗って、日本が力関係でそれをさしたのだということを言う人がありますが、私は、今日の段階になって過去のことを繰り返して、そして韓国民の感情を刺激するようなことはむしろ適当じゃないのじゃないか、かように考えているんですが、そういう点について外務大臣いかがですか。
  193. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御質問の点、もう一ぺん。
  194. 木内四郎

    ○木内四郎君 わが国の一部におきましては、前の日韓のいろいろな条約というものは平等の立場で締結されたものじゃない、力関係締結されたものである。日本はそれをざんげするといいますか、反省するという意味で、そのいきさつをこまかに洗ったらどうかというようなことを言う人があるのですが、いまさらこの段階になって古いものを掘り出して、そして韓国の感情を害するような結果を生ずることはおもしろくないのじゃないか、かように考えておるのですが、そういう点について外務大臣の御見解を伺いたい。
  195. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その併合以前には保護国という関係がございましたので、そういう事柄から平等の立場で併合条約というものが締結されたんじゃないということを説く人がありますけれども、法律的に解釈すれば、あくまで平等の立場で併合条約が行なわれた、こういうふうに解釈をしております。
  196. 木内四郎

    ○木内四郎君 私の伺いますのは、いまさらこれを過去にさかのぼってそういうことを言ったり、ほじくり返したり、こね回すということは両国の関係であまり思わしくないじゃないかというまあ私の考えですけれども、外務大臣はどういうふうにお感じておられるか。
  197. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それは御同感でございます。ただ、しいてその問題を問われれば、やはり平等の立場でやったということになるわけであります。あまりその問題には触れたくないと思います。
  198. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで、他の問題について伺いたいと思うのですが、時間の関係がありますので簡単に伺いたいと思いますが、請求権の問題を経済協力という形で解決された。これは私は非常な妙案であったと思っておるわけであります。初めは積み上げ方式でいこうといっておりましたのが、だんだん変わってまいりまして、そのいきさつ、あるいは金額などに対しても多少変わってきまして、金額の高についてどうこうということではないのですが、そういういきさつをひとつ簡単に、事務当局からでけっこうですから、御説明願いたいと思います。
  199. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 御承知のとおり、請求権問題につきましては、当初はサンフランシスコ条約に規定されておりますとおり、新たに分裂国家ができましたときに、その旧領土との問のお互いの問の請求権請求権問題として解決する。ですから、法律的根拠もはっきりし、さらに証拠書類等もはっきりしているものについてお互いに弁済をする、そういうたてまえで交渉が大体第六次会談まで続いてきたわけでございますが、話している間に、この法律的の根拠という問題につきましても、両方の間に非常に見解の相違がある、また証拠書類等につきましても、朝鮮動乱等の問題も、期間もはさまりましたために、これが滅してしまって、立証がなかなか容易でない。そういうところから、このいわゆる積み上げ方式、各クレームの請求権の一々の項目を金額ごとに積み上げましてこれが決済をするという方式は実際的でないという結論になりまして、一定の経済協力を提供いたしまして、それと同時に請求権問題はこれは全部解決する、請求権の弁済処理ということではなく、請求権問題が全部同時に解消する、こういう方式で解決をしようということになりまして、おととし、当時の中央情報部長の金氏が朴大統領の特使として参りましたときに、当時の大平前外相とその方式による交渉が進められまして、そうして、このいわゆる三億、二億の有償、無償の経済協力を提供する、当時の請求権問題は全部解決する。そういう解決方式の大綱について合意に達しましたわけでございます。
  200. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで、それに関する条文ですけれども協定の第二条1で、平和条約第四条aに規定されたものを含めて「完全かつ最終的に」云云と書いてあります。「含めて」とあるのですが、そのほかに一体どういうものがあるんでしょうか。
  201. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 平和条約締結当時と現在の大韓民国の管轄区域に変動がございまして、東のほうの部分で管轄区域が北に延びていっておるわけでございます。休戦ラインが三十八度線よりもずれて引かれたためのことでございます。その部分は、まず第一に、平和条約第四条aではカバーされておらないわけでございます。それからもう一つは、平和条約第四条は、あのときにそれぞれの管轄区域内にあった財産請求権の問題の処理に関する規定でございますが、平和条約後にいろいろ拿捕漁船の問題とかそういうものが起こっておりますが、そういう請求権もあわせてこの際主張しないということにいたしましたので、そういうものが平和条約第四条からはみ出しますので、ああいうふうな表現をいたしたわけでございます。
  202. 木内四郎

    ○木内四郎君 次に伺いたいのは、軍令第三十三号、これはもうたびたび聞かれていると思うのですが、軍令第三十三号による私有財産の没収の問題ですけれども、これとへーグの陸戦条約との関係をひとつ伺いたいと思います。  それから、さらにこれによって没収された財産に対して、憲法二十九条との関係、これも説明されたことあると思うのですが、念のために法制局長官からひとつ伺います。
  203. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 軍令第三十三号は、要するに在南鮮の日本人の財産を没収するということでございますが、これは陸戦法規の占領軍の権限の範囲を逸脱したものである、こういうことでございます、これはそのとおりであると思うのでございますが、ただ、平和条約日本はそういう処理の効力を認めまして、それでまあ国際法に反するような処理が行なわれたことにつきましても、同じく平和条約の第十九条で、これはもう戦争中あるいは講和前に連合国側でとった処置については、賠償を請求したりするようなことはしないということを言っておりますので、その問題は平和条約で処理済みであるわけでございます。
  204. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 軍令三十三号に関連しまして、憲法二十九条との関係はどうかというお話でございます。いままでもたびたびその議論が出ておりますが、いままでこの点につきましては、平和条約締結以来、政府といいますか、法制局といいますか、まあ一貫して考えておりますのは、憲法二十九条三項は御承知のとおりに、公共のために財産を用いるという場合には補償が要るという場合でございまして、これはまあ通常文字のとおりに解すれば、日本の国権あるいはその他の公権力の作用によって私有財産を用いた、そういう場合には公共の福祉のために用いることができるが、同時にこれに対しては補償しなければいかぬ、こういうのがその本質でございますので、平和条約にありますような軍令三十三号による処分、すなわち日本の公権力によらない処分によってそれが用いられた場合について、日本国が法律上の憲法上の義務としてこれを補償する義務があるということにはならぬだろうという考え方できておるわけであります。しかし、それはぎりぎり一ぱいの法律論でございまして、また政治論としてはいろいろあろうと思いますが、憲法上の議論としてはそういうことではあるまいかということで、終始一貫してそういう考え方をとってまいっております。
  205. 木内四郎

    ○木内四郎君 少しむずかしい説明ですけれども、一応了承しておきます。  ところで、わがほうの在韓財産に対する、請求権に対する解釈、これは相当変転しておると思いますが、変転の事情を、簡単でけっこうですからひとつ政府委員から御答弁願いたいと思います。  また、これに関連しまして、米国大使の口上書に、平和条約第四条(a)に定められた取りきめを考慮するにあたって関連あるものとするという文句があるのですが、この関連あるという点を考慮されたことがあるのかどうか。この点についてひとつ御説明願いたいと思います。
  206. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 政府が韓国交渉をするにあたりまして、請求権の問題につきましては、四条(b)の規定は必ずしも日本請求権まで殺すものじゃない。財産はかりに売却処分をしたかもしれないが、その対価に対する請求権はあるはずだというような法律論を展開いたしました。それを昭和三十二年の暮れに変えまして、結局請求権もないのだということにいたしたわけでございます。これは元来、日本政府が平和条約を国会の御審議をお願いしたときには、現在とっておりますように請求権はないというふうに申しておったのでございますが、韓国との交渉技術上の考慮もありまして、そういうふうな意見をある期間とっておったわけでございます。いまアメリカ解釈でお読み上げになりました部分は、法律上の請求権としては残っていない。しかしながら、日本のそれだけの財産を取り上げたという事実はあるのだから、その点は韓国側が日本に対して請求を出す場合に考慮に入れられるべきことだ、関連ある事実として考慮されるべきことだという点でございます。ただ、結局先ほどアジア局長からも御説明申し上げましたように、平和条約第四条(a)項で考えられておるような形で、いわゆる積み上げ方式で財産請求権一つ一つ洗い出して処理するというやり方がとられなかったわけでございますので、関連があるものとして考慮するという場もなくなってしまったわけでございます。ただ、私どもといたしましては、しかし、そのアメリカ解釈に従っても、それは考慮において関連あるものとするということがあったということは念頭において交渉してまいった、こういうことでございます。
  207. 木内四郎

    ○木内四郎君 アメリカ大使の口上書には、取りきめを考慮するにあたっては関連あるものとするということでありましたけれども、積み上げ方式から経済協力に変わったと、その段階で自然にこれはまあ役に立たなくなったと、こういうふうに了解いたします。  そこでもう一つ伺いたいのは、軍令三十三号、これは先ほどちょっと例外的な場所をお示しになりましたけれども、大体北鮮には適用されない、かように解釈するのですが、そうしますというと、わが国北鮮に対する請求権というものはどうなるものでしょうか。依然存在しておると思って差しつかえないのでしょうか。ことに、北鮮に対する請求権日本のほうが多くて、差し引きすればこちらが受け取り勘定になるのじゃないか、そういうような事情にあるのじゃないかと思うのですが、この点はいかがでしょう。
  208. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 軍令三十三号が適用ありましたのはアメリカ軍の占領区域だけでございますので、北鮮の部分については、お示しのとおり、日本財産請求権はそのまま法律上残っておるわけでございます。その金額等の詳細につきましては私も存じませんが、大体いまおっしゃったようなふうに私どもも承知いたしております。
  209. 木内四郎

    ○木内四郎君 協定の、もちろん財産請求権に対する協定ですが、第二条3ですか、3の規定、それから国内法との関係から見て、北鮮系の朝鮮人に対する関係はどういうふうになるのでしょうか。
  210. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 北鮮系の者につきましては従来どおりでございまして、この際、何ら新たな措置をとることは考えておりません。
  211. 木内四郎

    ○木内四郎君 その点は了承しますが、次に伺いたいのは、日本経済協力の金額、これをきめるにあたりまして、韓国には経済開発新五カ年計画ですか、何かそういうものがあろうと思いますが、そういうものとの関連において、日本韓国経済開発協力するという意味で金額をきめたのでしょうか。それとも単なる一応の目安でつかみ金できめたのでしょうか。そういう点についておわかりになっておったらひとつ御答弁願いたいと思います。
  212. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 韓国におきましては、御承知のように、一九六二年を起点とします第一次五カ年計画がございます。これに対する外貨の所要額は約二十二億ドルでございますが、日本が三億ドルの無償供与及び二億ドルの有償貸し付けを決定いたしました際には、韓国経済開発に寄与するという観点から検討いたしましたが、具体的に関係経済開発に寄与する諸国と相談してきめたというような具体的な手続はとっておりません。日本といたしましては年間五千万ドル、十年間の均等の供与でございますので、年間五千万ドルでございますが、これは日本の財政能力及び先ほど申し上げました韓国経済開発計画及び戦後各国に対しまして、独立しました国に対しまして宗主国が非常に多額の経済援助を与えておりますが、そういう点も考慮しまして三億、二億を決定した次第でございます。
  213. 木内四郎

    ○木内四郎君 その点はその程度にしておきたいと思うのですが、いま三億ドルと二億ドル、これは十年間払うのですが、いま払ういまの価値に五分の利子か何かで還元したら一体幾らぐらいになりますか。
  214. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 三億の無償供与を、かりに金利五%といたしまして、十年先に総額三億ドルを韓国に供与いたしますのを、金利五%としまして逆算いたしますと、一億八千四百二十万ドルになります。
  215. 木内四郎

    ○木内四郎君 三億円がね。
  216. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 三億ドルが。
  217. 木内四郎

    ○木内四郎君 三億ドルが……。二億ドルは。
  218. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 二億ドルのほうは計算いたしておりませんが、三億ドルについては一億八千四百二十万ドル。金利三分五厘として計算いたしますと、二億一千二百七十万ドルになります。
  219. 木内四郎

    ○木内四郎君 こまかな計算はわかりませんけれども、大体のことはわかりましたから、その程度にしたいと思うのですが、今度の経済協力と、ベトナムの賠償を見ますと、ベトナムの場合には、全領域に対しての賠償だ。今度は韓国に対してだけの賠償だと、これを変えた理由についてはわからないことはありませんが、韓国の憲法で、全領域に、鴨緑江から南の全部の領域に及んでおるというなら、それによって全部に対したものだというふうにこじつければこじつけられないこともないのじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。ベトナムの賠償との差、違い、また、いまのような解釈の可否、それができるかできぬかというようなことはどうですか。
  220. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) まず最初に、賠償と請求権の問題は、これは法律的に全く性質の違う問題でございまして、賠償というのは、平和条約に基づきまして、戦敗国として戦勝国に払わされるわけでございますが、請求権のほうは、お互い財産請求権関係の整理という意味があるわけでございます。  次に、賠償供与と経済協力の違いというような点の御質問だったかと思いますけれども、賠償で供与する場合でも、べトナムの場合は、賠償はベトナム国全体に対する賠償でございますが、それに基づいて行なわれる供与は、実際の問題といたしまして、現にベトナム政府が支配しておる地域にしか及び得ないわけでございます。韓国の場合にはもともと経済協力、この経済協力も全くその点では同様でございまして、大韓民国が元来支配しておる地域にしか及び得ないわけでございます。
  221. 木内四郎

    ○木内四郎君 それはその程度にいたしたいと思うのです。  次に、請求権協定の中に入っておりますけれども、これは漁業関係でありまするので、農林大臣あるいは政府委員から伺いたいと思うのですが、請求権協定の第二条の3、合意議事録によりまして、拿捕漁船の問題はないことになる、そういうようなことになっておるのですが、それに対する補償の問題は、どんなふうに取り運ばれたのですか。大体のことは承知しておりますが、御説明をお願いできればしあわせだと思います。   〔委員長退席、理事草葉隆圓君着席〕
  222. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 拿捕漁船の補償の問題については、結局請求をしないということになりましたので、国内でこれを処理しようということで、大体支給金として四十億、それに低利資金、低利長期で十億と、大体五十億になるかと思います。それで乗り組み員及び船主、それらに対して損害を補償する、支給していこう、こういうことでございます。なお以前においては、大体特殊保険等によって、合計十五億四千三百万円ぐらいは支払っておるわけですから、合計しますと大体六十幾らになりますか、計算はいまなにですが、そういうことでございます。
  223. 木内四郎

    ○木内四郎君 もちろんそれで国内のほうの処理は全部済んだと、かように了解してよろしゅうございますか。
  224. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) それで全部済むことになると思います。
  225. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで、先ほど韓国の世論、反響というようなことを外務省の事務当局から伺いましたが、特に関係のある漁業協定に対する韓国漁民の態度、それからまたわが国の業界の意見、こういうものは一体どんなふうでしょうか。
  226. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) これについては、先ほど大体のお話があったと思いますが、韓国では、全国水産業協同組合中央会というのがございます。それからこの漁業協同組合の組合長でもって組織しておりまする漁業対策委員会というのがございます。これらの意見は大体漁業者を代表しておるのでありますが、まずよかろう。それから中には、非常によろしいという、いろいろのなにがありますけれども、悪いというのはほとんどございません。で、個人的な問題になるとどうか知りませんが、全体として、さようなことであって、過去の感情を捨て、大局的にやるべきだというので、これはたいへん、この調印後、そういう声明を出しておりますから、全体としてはさようであろう。国内のほうは大体御存じでございましょうが、まあ全体の世論としては、もう少し何とかできなかったかというのが若干ございます。しかし、大部分はまあよかった、非常によかった、こう言うのとございまするわけでございますので、特に李ラインの苦しみをずっと受けておりました漁民としてはたいへん喜んでおるような次第でございます。
  227. 木内四郎

    ○木内四郎君 農林大臣から、韓国においても、ことにまたわが国においても、漁業界が非常に、農林大臣の御説明によれば、満足しておるということを伺いまして、私もたいへん喜んでおるのでございますが、そうすると、この漁業協定のねらいというものは大体貫き得た、かように了解していいのですか。その漁業協定のねらいはどこにあったか。そのねらいは大体これを貫き得たと、かように了解したいと思うのですが、いかがでしょうか。
  228. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) お答えいたします。大体そういうことになろうかと思うのですが、まず、李ラインは実質的にこれは解消されまして、それからいろいろの共同規制水域における規制の隻数、船の出漁隻数等の制限にいたしましても、これもまず満足すべき状態であります。それからなおあわせて漁業資源を確保するという問題も解決に近づいておるというわけでございます。大体よかろうと思います。
  229. 木内四郎

    ○木内四郎君 まあ一番大事な李ラインの問題、これが解決して、そうして安全操業が確保された、これは非常に大きなことだと思うのですけれども、これに対しましても、韓国の法律、ことに漁業資源保護法との関係もありまするし、また韓国のほうでは、李ラインはなお健在だというようなことを言っている一部の説明などもありますので、それに伴って多少不安を持つ向きもあると思うのですが、そういう不安については、農林大臣におかれましても、また総理その他におかれましても、十分にひとつ解消するように御努力を願いたいと思うのですが、それについて農林大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  230. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) お答えしますが、この点についてはしばしば外務大臣からも、総理からもそれぞれお答え申しておるわけでございます。結局これは一番心配しておるのは、拿捕の問題あるいは臨検、不法不当のことが行なわれなくなったことでございます。これは結局、もっと詳細に申しまするならば、漁業水域を十二海里まで認める、その外側は共同規制水域として、これは全体として公海になるわけでございます。こういうのでございまして、その取り締まりその他については、その漁船の属するいわゆる国がそれを取り締まり、あるいは裁判権を行使するのでありますから、いわゆる旗国主義によっておるわけでございます。ですから、完全にといっていいくらいもう完全です、これは。完全に解消しておるということでございますから、御安心を願いたいと思います。
  231. 木内四郎

    ○木内四郎君 農林大臣の非常に力強い御説明によりまして、私ども安心しておるわけですが、どうか漁民のほうも十分に安心できるようにお願いしたいと思います。この共同規制水域に対する規制、これは隻数その他でやっておられます。いまお話の旗国主義によってやられるのですが、これについては、済州島付近、あの漁場の入り組んでおる済州島付近を含んで将来紛争を起こすようなおそれがないだろうか、これに対してはどういう配慮をしておられるかということを伺いたいし、それからさらに附属書一項(e)によりまして、日韓漁船の漁獲能力の格差を考慮し調整すると、こういうことがあるのですが、これは一体どういうことでしょうか、漁獲能力の格差を考慮して調整するという規定があるのですが、これについてもひとつあわせて御説明願いたい。
  232. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 隻数の規制につきましては、いろいろこの附属書に全部出ておるわけでございます。隻数、それに網目、それから船の大きさ、それから光力といったようなものでずっとできておるわけでございます。これらの規制等につきましては、いろいろやはり国内ではこの何を順守するようにしていかなきゃなりませんから、非常にいろいろと準備しております。大体やはり漁業法によるところの調整に要するいろいろの省令を設けるとか、いろいろなことでやっております。  それからなお取り締まりに対する体制を立てていくという点についても準備しております。  それからなお一番大事なのは、漁業者自身がこれは一番よく納得する必要がありまするので、それらに対する内容のいろいろな説明、打ち合わせ、そういう点にもやっておるわけでございまするが、さらに民間の代表団、今度は大日本水産会が中心になりまして、そうしていま韓国協定するわけになるわけでありますが、いわゆる民間によるところの操業の安全と、それから操業の秩序維持といったような問題について民間的に話をしようということにまあ準備をしております。いつでも出かけられるように体制が整っておるわけです。これらは単に民間のそういうことの協定をやるというだけでなしに、そういう安全と、それから規則順守といったような問題について民間同士が十分に有効にこれを完成していこうということで努力をしているようなわけであります。それから最後の漁獲量に関する問題だと思いますが、これは協定によるところの義務ではございません。協定によるものは、これは出漁の隻数によってやっておるわけでございまするが、それをチェックする意味で漁獲数量というものの話し合いができておるわけでございます。これは別に協定ではないのでありまして、行政指導で、自主的に行政指導をやっていこうと、こういうことで裏打ちをしていこうということでやっておるようなわけであります。
  233. 木内四郎

    ○木内四郎君 いまの大体わかりましたけれども、最後の点はちょっとはっきりしないんですが、協定の義務じゃないとおっしゃるけれども、附属書1の(e)に、日韓両国の漁船の漁獲能力の格差を考慮して調整すると、こういうことありますね。
  234. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) お答えしますが、ちょっと御質問の趣旨を間違えておりまして、全体の漁獲数量のこととの関連を申し上げたんでありますが、いま調整の問題は、韓国漁業というものは、非常にいまのところ貧弱なんですね、そういう関係がありまするので、必要に応じてその点を調整していこうと、こういうことでございます。
  235. 木内四郎

    ○木内四郎君 隻数ですか。
  236. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 隻数等についても。
  237. 木内四郎

    ○木内四郎君 次に、たびたび問題になっているようですが、専管水域、アウターシックスの入漁権のほう、それと同時に、十二海里の専管水域というものを設ける、こういうようなことが今後他国との関係において問題になることはないでしょうか。
  238. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 十二海里の漁業水域を両国、日本韓国の両国が合意でこういうものをつくったことを御了承であろうと思います。で、十二海里の問題にいたしましては、もちろん世界の趨勢としてはそういうことが多くなってくる傾向であることは言うまでもございませんが、しかし、日本としては、これはいつでもこういうことをやろうというつもりではございません。したがいまして、この点はやはり日本漁業の直接及び間接のいろいろの関係を見て、それをひとつケース・バイ・ケースでやっていこうと、こういう考え方を持っておるわけでございます。それからいわゆる入漁権の問題ですね、これも同じような考えでいっておるわけでございます。
  239. 木内四郎

    ○木内四郎君 大体わかりましたが、大体はわかったんですが、この入漁権の放棄ということが、他の国との協定その他を考慮する際に問題になりはしないだろうかと、こういうこと、それからまあ中国とは国と国との間でないらしいけど、民間には何かあるらしいんですが、そういう入漁権などに対しても影響を及ぼすことがないだろうか、そういう点をひとつ伺っておきたいと思います。
  240. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 中共との日中民間漁業協定というのがございます。これは今年の十二月二十二日かと思いますが、ちょうどそのときに契約が切れるわけでございます。そこでこの契約を、いま民間でまた再び継続しようということで、もう代表団は出発しております。これは、この何はちょうど華東ラインというやつでございまして、沿岸から十二海里よりもずっとはるかに沖のほうにきておるのでございまして、その間における問題でございまするので、この問題は別に関係は起こらないと思っております。
  241. 木内四郎

    ○木内四郎君 いまお話のずっと広いところですが、その間に入漁権というものはないんですか。
  242. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたします。  中国との民間協定の問題でございますが、これは中国沿岸には広い地域にわたって底引き禁止区域が定められております。その地域に対しては日本も入らない。その範囲は、いま農林大臣が説明いたしました十二海里どころでなく、非常に広い範囲を中国自身も禁止しておる。その地域に入らない。その外側に六カ所ばかりの地区をきめまして、両国で入り会うというのが日中の民間協定でございます。したがいまして、沿岸から十二海里の範囲よりもはるかに広い範囲が底引きの禁止区域として設定されておりますので、先生御指摘の十二海里との関連は出てまいらない、こういうことでございます。
  243. 木内四郎

    ○木内四郎君 入漁権……。
  244. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 入漁権は、一定の海区を定めまして日本と中国の船が民間で話し合いまして同数ずつ入るということで、さきに三十年からきめられた協定でございます。
  245. 木内四郎

    ○木内四郎君 いまの点は、これは将来への影響の問題ですからこの程度にいたしたいと思いますが、この漁業の図面を見ますというと、休戦ライン以北にもこの共同規制水域の線が延びておりますね。これを延ばした実際上の効果というものはどういうことでしょうか。あるんでしょうか。ただ、これは地図の上で引いたというだけで、実際的の意味あるいは効果がないものかどうか、この点をひとつ伺っておきたい。  それから、同時に、北鮮のほうにおきましては領海はどのくらいの幅にしておるか。そうして、その領海から専管水域——のほうは専管水域を越して、その線までの間が共同規制水域になるというふうに考えられるのか、どうなんでしょうか。その共同規制水域の線を引いたけれども、その線の意味ですね。政府委員の方でけっこうです。
  246. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたします。  沿岸の周囲に専管水域、いわゆる漁業に関する水域を引きまして、その外側に、公海といたしまして操業するのに、資源保護の立場からお互いに規制をしようということを日本国韓国ときめたわけでございます。したがいまして、公海上におきますところの規制の対策とする海域は、朝鮮半島周辺全部に日本国韓国との間で取りきめたわけであります。したがいまして、その範囲は朝鮮半島を取り巻きまして北にまで及んでおるわけでございます。それは日本大韓民国とがその共同規制水域においては漁業の規制をやろう、こういう場合でございますので、南鮮のまわりだけ引いても——船は公海上で魚をとりますので、朝鮮半島周辺全部に引いた次第でございます。
  247. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで、政府委員にまた伺いたいのですが、その意味はわかっておるんですけれども、しかし、北のほうには専管水域というものはないから、その専管水域を飛び越えて共同規制のラインの間が共同規制水域になるんじゃないか。そうすると、それはどこから勘定するのか。領海の三海里から勘定するのか、どこから勘定するのか、そういう問題を伺っておきたい。
  248. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 協定の第二条で、共同規制水域の線を定めておりまして、それと領海及び大韓民国漁業に関する水域との間が共同規制水域。したがいまして、領海というのは、大韓民国の領海だけを意味いたしませんで、北鮮の領海も含めておるわけでございまして、北鮮の領海と、この協定の二条に定められます共同規制水域の線との間が、共同規制水域と相なります。
  249. 木内四郎

    ○木内四郎君 領海の幅……。
  250. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) したがいまして、朝鮮半島の北の部分に関しましては、北鮮の領海の幅が問題になるわけでございます。これにつきましては、私どもは三海里と了解をいたしております。
  251. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで、先ほど農林大臣から、韓国漁業の実態——非常にまあ程度が低いというお話がありましたが、日韓両国の漁業の実態、ことに韓国漁業の実態を、もう少し何かお話を願えないでしょうか。政府委員でもけっこうです。
  252. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたします。  韓国漁業の実態は、今回の日韓交渉を機会といたしまして、韓国で発表いたしました韓日会談白書によりまして、一応取りまとめられておるわけでございます。それで、漁船の隻数は四万七千隻でございますが、そのうち動力船はわずかに六千隻しかございません。そこで日本の船に対しましては、船数で一二%、動力船の数では三%、こういう実態でございます。それから、それをトン数で見ますと、十五万九千トンということでございますので、日本の漁船総トン数との比較におきましては八%。漁獲高につきましては四十五万一千トンの水揚げでございますので、日本のそれと比較をいたしますと七%。それから、以上は養殖関係を除いたものでございますが、養殖のノリとか、その他の養殖関係について申しますと、一万八千トンでございますから、日本の現勢力に対しまして四%。漁民一人当たりの所得を、日本の沿岸漁民——十トン未満の漁民の所得と比較いたしますと、五%、年間一万三千百六十円という、きわめて……
  253. 木内四郎

    ○木内四郎君 年間ですか。
  254. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) ええ、年間一万三千百六十円というふうに、韓国の白書では発表されており、きわめて零細かつ貧困な現状にある、かように考えます。
  255. 木内四郎

    ○木内四郎君 私は、さっき総理にも伺いましたように、その際にも申し上げましたように、韓国のほうは、非常に漁民その他がレベルが低いなら、ひとつわが国ではまあ相当な犠牲を払っても、これは大いに上げるべきだと、こういう主張を持っておるのですが、それはそれとして、いまの比率などを伺いますと、非常に低いレベルだと思うのです。そうしますと日本が非常に協力をする、その結果、韓国漁業が非常に伸びてきて日本漁業と競合するだろう、水産物の輸入が日本を圧迫するだろうというようなことを、一部においてはいわれております。私どもも、そんなことがあるんじゃないかと思っておったのですが、いまの計数を伺うと、大したことはないように思うのですが、そういう点についていかがでしょう。農林大臣、どうお考えになるか。
  256. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) ただいまの問題でありますが、いま申しましたように、非常に日本と比較して小さな、また貧弱な状態でありますので、    〔理事草葉降圓君退席、委員長着席〕  われわれとしては、どうしてもこれの振興をはかっていきたい。これはやはり友好、親善の意味において極力、漁業——農業以外にやはり韓国にはそう大きな産業がありませんから、こういう方面に力を注いでいきたいということを念願しておるわけであります。ただ、現在何してみますというと、やはり総生産量が非常にふえるということは相当将来のことでありますけれども、やはりこの水産物の輸入というのが最近非常にふえております。それは相当ふえております。これらについても、われわれはでき得る限り、やはり輸入を許容していく必要があるわけでございますけれども、そのために、日本もやはり非常に小さな漁業者でございまするから、これらに対して非常に悪い影響を及ぼすような結果になっては、これはたいへん問題でございまするので、この点については十分注意していきたいという意味からして、われわれといたしましては、その輸入するものについてある程度は制限を加える、それから輸入割り当て量の問題を、需給関係をよく見て、あるいは価格関係を見て、そういう調整もしていく必要が起こってくるということでございます。それからなお国内態勢を十分整えておいて、悪影響の及ばない形において向こうから輸入を受ける。また、日本でも輸入をしなきゃならぬものも相当ありまするから、そういう態勢を整えていきたいということでございます。こういう意味で、沿岸漁業等振興審議会というのがございまして、近く、これらの問題を根本的に——最近すぐという問題ではないけれども、いまお話のようなことがやはり十分考えなければならぬ点でございまするので、共存共栄の意味において、日本の零細漁民も困らないように、そういう意味で、その対策を諮問しようということになっておるのでございます。
  257. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで、時間もありませんので、法的地位の問題について簡単にお伺いいたしたいと思います。  永住権の問題につきましては、永住権を認める範囲、また、永住権を認められた者に対する待遇の内容等について、相当譲歩し過ぎたのじゃないかという意見もあるのです。これはまあ、非常な御苦心の結果ここに到達したものと思うのですが、この永住権の問題を処理するにあたってのお考えになった根本の点、基本方針を、簡単でけっこうですから、お伺いできれば、まことにしあわせだと思います。
  258. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 永住権を与えました根本の方針考え方は、この協定の前文に書いてありまする、日本に長くおった人たち日本人との接触のところ——そういう人たち日本の秩序ある社会で安定した生活ができるようにしていくにはどうしたらいいかというようなこと等を考えて、これにいい処置をすれば、やがて両国の関係とか両国民の間が非常にいい状態になるであろうということでこの協定を結んだと書いておりまするが、これが根本方針でございます。こういうことで考えた永住権でございますが、永住権をどの範囲にするかという問題が、おそらくこの法的地位の問題の一番大きな問題であったと思うのでございます。これにつきましては、長い間の折衝中には、いろいろな話がその間に出まして、韓国のほうでは、日本におりまする人たちの子々孫々に至るまで全部ひとつ永住権をもらいたい、日本側では、そういうわけにはいかないというようなことの、両極端と申しますか、両方からだんだん歩み寄った結果が、いまのような協定の第一条できまった範囲になったわけでございます。しかし、これとても、ある人たちから見れば少し甘過ぎるのじゃないかという点はあるのではないかと思うのでございますが、これは、そういうふうにしてわれわれが永住権を与えなくちゃならない状態になった朝鮮の人たち、特に今度の関係韓国の人たちが、日本人であった者がどうして日本人から切り離されなければならなかったかということ、いままでのいろんな沿革、歴史等を考えますると、これはとうていやむを得ぬことではなかったかというような考えで私どもは処置してきておるような次第でございます。
  259. 木内四郎

    ○木内四郎君 非常に困難な問題で、御苦心の結果ここに到達されたもので、いろいろな要望はありまするけれども、やむを得なかったものだろうと思うのでありますが、韓国人で永住権の申請をして認められた者、また認められない者及び北鮮系の朝鮮人、この間の待遇の差異は、これは政府委員からでけっこうですから、わかりやすくひとつ御説明を願いたいと思うのです。同時に、これに関連して、この間には少し格差があってもいいんじゃないかという説を言う人がある。この条約ができた以上は、永住権を認められた者とそうでない者と、そういう者の間にもう少し格差があってもいいのじゃないか、こういう説をなす者もあるのですが、それに関連して、この百二十六号ですか、法律第百二十六号の内容についても再検討してみてもいいんじゃないか、あるいは再検討することが必要じゃないかというようなことを言う人もあるのですが、まず第一に、この格差の説明をひとつ政府委員の方からお願いしたいと思います。
  260. 八木正男

    政府委員(八木正男君) お答えいたします。  第一の点は、この協定が成立した結果、永住を認められた韓国人とそれ以外の朝鮮人との間の待遇の差がどういうことになるかという点でございますが、具体的には、この協定にある第三条の退去強制という点、この点が一番大きな相違になります。と申しますのは、一般の在日朝鮮人も、在日外国人であるという点では、ほかの外国人と変わりがありませんので、日本からの退去を強制される理由は、出入国管理令の二十四条に詳細に列挙してあります事由によって退去を強制されるわけでございますが、この協定によって永住を認められた韓国人は、この第三条に規定された四つの場合に当たらない限りは退去させられないというのがその内容でございます。そういう退去強制事由がしぼられたということは、こういう特殊の人たちに対して、先ほどから大臣が説明しましたように、その生活を安定させるという趣旨から、なるべく退去強制事由をしぼるということの結果でございます。  それから第二番目の御質問でございますが、これは実は一番むずかしい問題で、いろいろ論議もあることだろうと思います。しかし、私ども交渉に当たった人間が常に考えておったことは、この協定の対象になる人と、ならない人とを問わず、とにかく、かつては日本人であり、終戦前から引き続いて日本に住んでおった人たち、そして自分の意思にかかわりなく外国人とされたといったような点を考えますと、韓国の国籍を取得している者と、そうでない者との間のいろいろな社会的な待遇というような点があまりにかけ離れるということは、決していいことではないと、われわれは考えております。ただ、長年の交渉の結果、退去強制事由がここまでしぼられまして、いま申し上げたような四点というような差ができたということは問題の余地がありませんけれども、それ以外の一般的な処遇の問題については、ほとんど大きな差はございません。ただ、この協定には、処遇の点について妥当な考慮を払うという約束を日本がしておる。約束した限りにおいては、それは、われわれとしては一種の義務を認めたものであります。したがって、その対象になる人にとっては、そういう処遇を与えられる権利を日本において認められたわけでありますが、ほかの朝鮮の人は、単なる日本政府の一方的な行為といいますか、恩恵というか、そういうものによって、そういう同じような待遇が得られるというだけの差でございます。それは、差であるといえば差でありますし、その受ける内容については、あまり大きな差はないように思います。   で、まあ最後の点、その百二十六号の問題でございますが、これは非常に技術的なことでございまして、くどいようでございますが、一応御説明いたしますと、日本の入国管理の基本原則というのは、日本に在留する外国人というのは、常に何らかの在留資格という資格を持っていない限りは在留ができないというたてまえでございます。その趣旨から言いますと、一般の外国人は、本来、外から入ってくるのが外国人ですから、入ってくるときに出先の在外公館から査証をもらってくる。それによって、日本に在留する場合の資格というのをあらかじめ取って入ってまいっております。それが一般の外国人のたてまえでございます。ところが、朝鮮人、台湾人の場合は、平和条約の発効と同時に自動的に外国人となった、日本の国籍を失ったという理由のために、外から資格を取って入ってくるということができなかったものですから、それをカバーするために、法律百二十六号というのが設定されまして、これは、将来別に法律が制定されるまでの間、特別の資格なくして在留することができるという法律でございます。で、問題は、その将来法律ができるときというのはいつかということがよくいわれます。しかし、この今度の協定が成立しますと、この協定の対象になる韓国人は自動的に百二十六号の対象からはずれますけれども、この永住をとらない朝鮮の人がたくさんおるわけでありますし、また別に元台湾人もおります。そこで、百二十六号というのは当分これは廃止するわけにはいきませんので、引き続き存続するものと考えております。
  261. 木内四郎

    ○木内四郎君 時間もありませんので、あと一つ二つ簡単に伺いたいと思うのですが、文部大臣おられませんから、外務大臣にちょっと伺いたいのですが、この民間の文化財の引き渡しに対して報償の規定はありませんですね。報償を与えるということはありませんですね。これは報償を与えないでもうまくいくでしょうか、どうでしょうか。これに対して、将来報償ということを考えられるということがあるでしょうか、どうでしょうか。
  262. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) さしあたり今度韓国政府に引き渡すものは日本の政府の管理下にあるものでございまして、韓国の文化事業に協力するという意味において、これを引き渡すというふうにしたのであります。民間の持っておるものにつきましては、また特殊の考慮を加える必要があろうかと思いますが、今回の場合はそれがございません。ただ、収集しておる人で特殊の篤志家がある。それで、ぜひ提供したいというような向きもございますので、まあ大部分は無償だと思いますけれども、あるいは若干の補償を払ってやるというような必要が起こってくるかもしれません。それは今後の問題であります。
  263. 木内四郎

    ○木内四郎君 それはそれとしまして、あと一言、竹島問題でありますが、竹島問題は紛争である、あの交換公文によって処理されるという、そういう手続が規定されたことはもうきわめて明らかであります。その適用を受けることは明らかであると思うのですが、解決のめどがついたと——ちょっとことばが多少何かオーバーなような感じがするのですが、そういう点はいかがでしょうか。
  264. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 向こうに腹一ぱいのことを言わせれば、これはもう絶対に韓国のものであって、もう将来何らこれに対して日本から文句を言われる筋はないと、こういうことを、言わしておけば言う。しかし、われわれとしては、これは従来から、もう明らかに日本の一部であるということを主張しておりまして、それが二十回、三十回以上、終戦後に抗議文書を突きつけているというようなことで、明らかに両国の紛争問題であることは間違いない。そういうことを十分に念頭に置きつつ、あの紛争処理の交換公文というのはできたのでございます。ただ、国内に向かって説明する場合には、非常に強いことを言っておられますけれども、この問題が最大の紛争問題であるということを考慮しつつ、あの交換公文というのはできたのでありまして、相当両国の友好的な雰囲気ができた、醸成された場合において、この問題をできるだけ詰めていきたい、こういうことで、まあ、それだけの気持ちで書きおろされたのが、あの交換公文になっておりますので、決してオーバーなことは私はないと考えております。
  265. 木内四郎

    ○木内四郎君 御説明の趣旨はよくわかりました。どうかひとつ、解決のめどをつけて、なるべくすみやかに有利に解決されるように御努力をお願いしたいと思います。  なお、そのほかにいろいろこまかな点で御質問申し上げたい点があるのでありますが、理事会のほうから大体指定されました時間もきましたので、私の質疑は、この程度にいたしておきたいと思います。(拍手)
  266. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 木内四郎君の質疑は終了いたしました。  本日の質疑はこの程度とし、明日午前十時から委員会を開き、質疑を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十七分散会