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1965-09-30 第49回国会 衆議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年九月三十日(木曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 河本 敏夫君    理事 伊能繁次郎君 理事 辻  寛一君    理事 八田 貞義君 理事 田口 誠治君    理事 村山 喜一君 理事 山内  広君       臼井 莊一君    岡崎 英城君       加藤 高藏君    塚田  徹君       野呂 恭一君    藤尾 正行君       保科善四郎君    前田 正男君      茜ケ久保重光君    大出  俊君       中村 高一君    楢崎弥之助君       受田 新吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣 安井  謙君  委員外出席者         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務官         (給与局長)  瀧本 忠男君         大蔵事務官         (主計局次長) 武藤謙二郎君         自治政務次官  大西 正男君         専  門  員 茨木 純一君     ————————————— 八月十二日  委員纐纈彌三君及び高瀬傳辞任につき、その  補欠として正示啓次郎君及び藤井勝志君が議長  の指名委員に選任された。 同月十八日  委員大出俊辞任につき、その補欠として岡良  一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員岡良一辞任につき、その補欠として大出  俊君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 八月十一日  一、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正す   る法律案内閣提出、第四十八回国会閣法第   一〇一号)  二、行政機構並びにその運営に関する件  三、恩給及び法制一般に関する件  四、国の防衛に関する件  五、公務員制度及び給与に関する件  六、栄典及び旧勲章に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公務員給与に関する件(人事院勧告問題)      ————◇—————
  2. 河本敏夫

    河本委員長 これより会議を開きます。  公務員給与に関する件について調査を進めます。  去る八月十三日の一般職職員給与改正に関する人事院勧告につきまして、当局より説明を聴取いたします。佐藤人事院総裁
  3. 佐藤達夫

    佐藤説明員 何よりもまずお礼を申し上げたいと思いますが、閉会中にもかかわりませず、私ども説明を申し上げる機会をお与えくださいましたことを、心より感謝をいたしております。  いま委員長のおことばにありましたように、去る八月十三日に一般職国家公務員給与改定に関する勧告を申し上げた次第でございますが、最初にその勧告のごく概要を御説明申し上げさせていただきたいと存じます。  何よりもまず、勧告前提条件と申しますか、周囲の経済状況等を先に申し上げますが、御承知のように、一般消費者物価それから生計費、これが相当に、昨年に比べて上がっておったわけであります。物価は、たとえば四月で申しますと九%、その後も七%、八%というような上昇状況でございます。それから生計費は、全国で七・七%の上昇でございます。東京の場合につきまして特にこれが顕著でありまして、一二・五%生計費上昇が見られたわけであります。これらの環境のもとにおいてのわれわれの調査でございます。これは例年どおり四月現在の民間給与調査いたしまして、一方国家公務員給与と突き合わせましてその格差を求めたのでございますが、今年の場合におきましては、その官民格差が七・二%ということに相なります。  われわれの作業といたしましては、その格差の中での配分の操作を行なったわけでございますが、最も中心となりますのは、申し上げるまでもなく本俸関係、いわゆる基準内給与関係でございます。これが今回の場合では六・四%引き上げるということにいたしました。かつその俸給表改善あたりまして今回重点を置きましたところは、新聞等には上薄下厚というようなうたい文句で出ておりましたのですが、そういう形をとっております。これは、申すまでもありません、ただいま申しましたように、物価生計費等は異常な上昇をしておりますので、どうしても食うか食えないかというような、ことばは悪うございますけれども中位等級下位等級方々にどうしても力を入れざるを得ないということでかようにいたし、かたがた民間の場合もそういう傾向が見られたわけであります。すなわち、言えかえれば、大体行政職第(二)表、運転手さんやら用務員の方あるいは守衛の人々というような方面に重点を置きまして、なお行(一)等につきましても、大体係長以下の人々について重点を置きました。その結果、下位等級人々改善率は一〇%をこえるものも出ておる次第でございます。一方、上のほうの人々は、そういう状況にかんがみまして、この際は御遠慮をいただこうというわけで、事務次官あるいは大学学長などのいわゆる指定職俸給表甲に当たる人々については、これは完全に据え置きといたした次第でございます。  俸給表全体の改善率は、ただいま申しましたように総体で六・四%ということになるわけであります。そしてその重点は以上のとおりでございますが、なお初任給をとらえて申し上げますと、これも大体民間と突き合わせまして、かつまた御承知のように高校卒初任給につきましては、標準生計費というものをささえにしております関係もございますが、結果においてそれらの事情を勘案いたしまして、高校卒人々初任給は千六百円上げる、短大卒それから大学卒人々については千九百円を引き上げるということにいたしました。なお、学校の先生それから医者の方々初任給については、また特別の考慮を加えておるわけでございます。  一方、中だるみというような批判もちらちらございまして、そういう点に着目いたしまして、中位等級の三短を実施する、あるいは昇給間差額改善を行なうというようなことを行ないました。  以上が、俸給表関係でございます。  次に、手当関係につきまして、その第一はいわゆる特別給、すなわち期末手当、それは民間の場合においては〇・一月分強上がっております。それをとらえまして、わがほうとしましても、十二月の期末手当を〇・一月分引き上げるということにいたしました。  それから手当関係の第二は、通勤手当、これはかねがね職員方々から非常に要望が強かったのでございますが、民間実情調査しました結果、とうてい据え置きのままではいけないという結論が出まして、民間実態をとらえてみますと、支給限度額を押えておる行き方をとっておる民間企業、ここでは千百円を限界にしております。そこでわがほうにおきましても、従来の限度額引き上げまして、千百円に合わせました。と同時に、民間実情を見ますと、相当数企業が入るのですが、全額支給制をとっておるものもあるわけです。それも無視できない。しかしながら、全額支給に全部無条件に踏み切ることは、とうていわれわれとしては困難でございますので、そこを折衷的に取り入れまして、一応千百円という頭打ちをきめるとともに、千百円をこえる部分については二分の一だけ国で負担をしよう。しかし、これも無制限というわけにはまいりませんので、五百円を限界として支給をするということで、相当これは改善をいたしたつもりでおります。一方、自転車、スクーターについても、それに見合う改善をしておるわけです。  そのほかの手当としては、これもかねがね相当社会問題になってきておりますものに、夜間勤務看護婦勤務条件、これが非常に過酷になっておるということ、これは私どもといたしましても各病院について実態調査いたしまして、その事実が認められましたので、病棟にある夜間勤務看護婦については、夜間勤務の一回について百円の特殊勤務手当支給するということにいたしたわけです。  以上が要点でございますが、これらの改善をあわせますと、先ほど申しました七・二%の官民格差を埋めることになるというわけでございます。  そこで、勧告実施時期でございます。これはかねがねわれわれのとっておりました方針に従いまして、ことしも五月一日にさかのぼって実施していただきたいということをお願いしておるわけです。これは、申すまでもありません、四月調査の結果官民格差が出まして、民間が上回っておるということがはっきりいたしました以上は、その時期に追っかけて公務員のほうを上げてやらなければ筋が通らぬということであります。したがいまして、当然ことしもそのような勧告を申し上げておるわけでありますが、たびたびのことでございますけれども、遺憾ながらこの五月一日実施という時期につきましては、例年これが非常に切り下げられまして、大体十月というようなことに相なってきておるわけであります。昨年はたまたま九月に実施していただきまして、一カ月の繰り上げではございましたけれども、これは非常な前進を示していただいたものとして、私どもは喜んでおるわけであります。ことしは、ひとつそれを踏み台にしていただきまして、私ども勧告のとおりに実施時期を法律の上でおきめいただきたい、これは強い念願として申し上げておきたいと存じます。  以上、簡単でございますけれども、大体の御説明といたします。
  4. 河本敏夫

    河本委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。村山喜一君。
  5. 村山喜一

    村山(喜)委員 初めに、人事院総裁からただいま御説明をいただきましたこの給与勧告につきまして、内容的に幾らかの問題点をただしてまいりたいと思うのであります。今回は、官民比較をとりながら七・二%の差を埋めていく、こういうようなことで、いわゆる春闘の結果四月以降において締結をされた相場が、五月あるいは六月ごろに妥結をしたものが四月にさかのぼって引き上げ改定がなされた民間給与実態を取り入れておいでになるわけでありますが、これは非常に前進をした措置だと私たちは思うのであります。しかしながら、大体この民間春闘における賃金引き上げ額というのは一二・四%、もちろんその中には定昇分が入っておりますから、定昇分政府公務員給与ベースに換算をいたしまして四・四%ぐらい、こういうふうに簡単に計算をいたしました場合においては、春闘の結果民間の場合に引き上がりましたベース改定分というものは、大体八%だというふうに、われわれは常識的に見たらそういうふうに押えるのであります。しかしながら、今度この遡及改定による影響度というものを一・六%ということで押えられておる。その計算基礎というものがどういうような形でなされたものか、この点について説明を承わりますと同時に、昨年度はそういうような影響度がどういうようなものであったのか。これが全体の今後における給与を決定する要素としてどれだけのファクターを持っているものかということについて、過去の実例にかんがみまして説明を願っておきたいと思うのであります。  それから物価が九%上がる、生計費が七・七%上がる、この点から考えてまいりまするならば、七・二%のいわゆる民間格差の是正、あるいは六・四%の基準内賃金引き上げ、こういうような形では物価上昇にも追いつけない、そういう給与体系である、このことが言えるのではなかろうかと思うのでありますが、いわゆる昇給原資等を含めた場合には、一〇・二%、こういうふうに言われております。物価上昇率がその後においてなお引き続いているわけでありますが、それらの点から考えてまいりまするならば、実質的に給与手取り額というものがどれだけ改善をされる結果になるということを期待をしておられるか。この点について一〇・二%、定期昇給分まで含めましてそれだけの改善が行なわれた。たしか三千九百二十円だったと思うのでありますが、そのうちから物価上昇分が九・九%、その後における物価上昇分等を引いてまいりまするならば、給与実質手取り額というものは、かえって昨年の同期よりもマイナスになりつつあるのではないか、こういうようなことを考えるのでありますが、その点についての説明物価の点から、その上における公務員の事実上の生計動きというものについて御説明を願っておきたいのであります。  それから第三点といたしまして、この公務員給与あり方の問題であります。基本的には官民比較をとりまして、それに基づいた勧告が出されているのでありますが、公務員には公務員としての職務内容というものがやはりあるべきである、そういうようなことから、単に官民比較によってこの職になぞらえる者は民間の職種のこういうようなものであるというような、そういう形ではなくて——それもやはり一つの大きな要素にはなり得るわけですが、やはり公務員としてこれだけの給与というものがなければならないのだ、こういうような一つの理論的な体系というものが、人事院なりあるいは新設を見ました人事局あたりにおいて考えられてしかるべきではないか、私たちはそういうように考えているのでありますが、一向にそういうようなものが生まれてこない。ややもすれば、そういうようなものをつくり出す背景の中には、かえって公務員給与を実質的に職階制によって切り下げていくというような動きさえもある、こういうような事情から、人事院あたりといたしましては、もちろん底上げという必要がありますが、それらの問題について、給与あり方の問題をどういうふうに今後とらえていこうとしておられるか。この問題はやはり人事院総裁あたりからお答えを願うと同時に、総理府の人事局長あたりからも御答弁を願っておきたいのであります。  それから最後に、人事院総裁にお尋ねをする中で一番重要な問題は、あなたが勧告をされる、その勧告は、法律の上においても仲裁裁定みたいに当事者を拘束をするものでもないわけでありますが、そのような意味もありまして、非常に政府財源に左右をされて、公務員の場合にはこれがなおざりにされる。今度のドライヤー勧告内容を見てみましても、そういうようなことを政府は言っておるようであります。これも国家公務員については直接対象になるとは考えない、こういうようなことで逃げようといたしております。ところが、同じ公共企業体で働く国家公務員国家公務員法の適用を受ける公共企業体職員というのは、公労法によりまして仲裁裁定によって、財源があろうがなかろうが、その仲裁裁定どおりに、最近においては、ここ六年くらいの間、実現をされているわけです。一方国家公務員なり地方公務員といういわゆる非現業公務員の場合には、人事院勧告というものがもとになって給与改善が行なわれるのだけれども、この人事院勧告が完全に守られた例がない。このことは、やはり同じ国なり地方公共団体の公務に従事する職員との間において、均衡の上から考えましてもきわめておかしなかっこうに相なっておると私は思うのであります。そういうような意味においては、当然ドライヤー勧告の中にも示してありまするように、第三者機関勧告をした、ストライキの代償措置としてそのような措置がとられてくる場合には、政府はこれに対して尊重しなければならないし、それを実施する義務がある、こういうようなのが、もう国際的な労働慣習のたてまえであると私たちは思うのであります。そういうような立場から、人事院総裁としましても、勧告はしたが一向にそれが実現を見ない、こういうようなことでは、人事院としての存在の価値というものもなお労働者のほうからは疑われている。人事院そのものが、第三者機関として公正な機関としての機能を果たさないということになろうかと思うのであります。したがって、これには人事院総裁をはじめ人事院皆さん方が、全力をあげて政府にそれぞれ交渉をし、話し合いを進めていただいているものだと思うのでありますが、どの程度まであなた方がこれをおやりになっているのか、いわゆる完全実施への方向を先ほど表明されましたが、これに対してあなた方が今日まで努力をしておいでになったその内容について、説明を承りたいのであります。それと、人事院総裁の決意のほどをこの際承っておきたいと思います。
  6. 佐藤達夫

    佐藤説明員 技術的な点は給与局長から御説明いたさせますが、総論的なことを私からお答え申し上げます。  第一点の春闘の積み残しの問題でございます。この積み残しの問題は、昨年あたりから特に表面に出てまいりまして、当委員会等においてもいろいろ御指摘があったと思いますが、私どもが基本的な立場としてとっておりますところは、御承知のように、一年一回の調査で一年一回の勧告というたてまえでまいっております関係上、若干の調査時期をはずれた事態変化というものは、どうしてもこれは残ってしまう。それは来年回しになる。これは宿命としてある程度はやむを得ないことだ。したがいまして、すべて積み残しを洗いざらいお調べをしてそれを取り入れましょうということは、われわれのたてまえから申しますと、そういうわけにはいかないということでございます。ただし、あまりに顕著な情勢変化があった、これをみすみすそのまま無視してしまうということは、大きな意味でのいわば正義公平の原則からいってどうだろうというような考え方で臨んでまいりました。したがいまして、積み残しが出たからといって、直ちにそれは見るという立場には立っておらないということを申し上げてきたわけです。ところが、ことしの場合は、この勧告報告書にも述べましたように、相当積み残しが顕著であります。基礎の四月中に現実に支払われた給与をとらえての格差が五・六%——これは非常に正直に何もかにも申しますけれども、五・六%というのはちょっと予想外に低い、私どもはそう思った。ということは、一方においてわれわれが付帯的な調査として、いわゆる積み残しに相当するようなものを調べておるわけです。これは便宜調べておる。すなわちわれわれが調査に行きましたときに、もうすでに団交が成立して四月にさかのぼって払うことがはっきりしているものというものをとらえまして、これを参考資料的にとってきておるわけですが、それを見ると、これは報告書にも述べておりますように、去年に比べてそういう積み残しを持ち込んだ、われわれのとらえた限りにおける事業所は約倍になっているというようなことで、これは相当顕著な事態だ、無視し得ない事態だろうというふうに考えまして、したがって、それをも勘案した結果、七・二という数字を出しました。したがいまして、これはいま申しましたような顕著な事象がとらえられたこと、あるいは最初に申しましたように、あらゆる経済情勢生計上に非常に大きな圧力を加えているというような事情も総合勘案しました結果、ことしはそれを取り入れたということでございます。それのパーセンテージの根拠の出し方などは、給与局長から御説明いたさせます。これも年々春闘がおくれる、これが常態になってまいりますと、むしろわれわれとして調査時期のほうがずれているのではないか、そっちのほうの反省になるわけです。したがって、今後いかなる場合においても積み残しを入れますということは、われわれとしてはむしろ自己矛盾になるわけです。何度も春闘の積み残しが出るようならば、春闘のほうを繰り上げていただかない限りにおいては、われわれのほうは調査時期をずらさなければならぬ、調査時期のきめ方が悪いという反省のほうにつながるわけです。したがっで、手放しで春闘は今後全部積み込みますというお約束は、できない性質のものであるということを申し上げておきたいと思います。  それから次に、物価生計費、これも全く御指摘のとおり、去年の場合の上がり方よりもことしの場合はまた相当上がっているということで、われわれとして特にこの据え置かれたようなグループの人たち、上げ方のパーセンテージの少ない人たちをながめてみますと、これは現実のところ、いままでよりも相当がまんしていただかなければならぬということは申し上げざるを得ないと思います。しかし、それもわれわれとしては、とにかく民間給与をとらえての基礎になっております。民間給与がこうなっている、民間もそれで何とかがまんしておられるということで、理屈としてはそういうことになると思います。もちろん御承知のように、標準生計費は別に算出いたします。それをささえにしてはおりますけれども標準生計費が一二%上がったからこっちも一二%上がったということは、これは申し上げる筋ではないわけです。基本的にはそういう情勢のもとにおける七二であるということを、御理解いただかなければならないと思います。  それから第三点として、これは非常に大きな問題、すなわち給与あり方の問題であります。ことに官民比較というようなこそくな方法についての御批判があったと思います。私ども——どもと申しますか、私個人の経験でございますけれども明治憲法時代、戦前から公務員給与勅令などを見まして、非常に伸び伸びとした形で給与の額を盛りつけておった、公務員としてまあこれくらいあれば体面が保てるだろう、仕事も忙しいからというようなこと、そしてそれが何年も据え置かれて改正というようなこともない、その時代を、非常に復古調でございますけれども、いまから思いますと、なつかしく思うのでありますけれども、しかし、やはり時代を考えてみますと、大げさな、えらそうなことを申し上げて恐縮でございますけれども、やはり今日における国家全体、国民全体の賃金情勢経済情勢というようなものからまいりまして、役人だけの特権的というようなひが目で見られるような形の行き方をとるのはどうだろうかというおそらく反省があって、今日の制度ができているのだと思います。すなわち、民間の大多数の水準をとらえて、せめて民間並みには役人給与上の待遇をしなければならぬということで、官民比較方式というものが生まれてきたのだろうと思うのであります。私は、過去に対するそういう夢はいまだに抱いております。いつかはそういう時期がきてほしいものだと思いますけれども、今日の情勢のもとにおいては、遺憾ながら現在の方式というものが、やはり公務員の側にも、全国民の側にも、一応納得していただける方式ではないかということで、従来の方式を踏襲しているわけです。たまたまヨーロッパあたり給与決定情勢を見ますと、最近民間給与追随主義というものが、相当露骨になってまいりました。西ドイツあたり憲法裁判所でも、公務員給与については特に民間給与水準に劣らない形でやれというようなことを、裁判所は打ち出しております。イギリスあたりでも、民間給与を調べて、それを基礎にしているというような行き方もぼちぼち出てまいっております。その行き方がいいか悪いかは別といたしまして、少なくともわが国におきましては、現在のところ、従来の方式を踏襲するのが一番無難な形ではないかということで考えておるわけであります。  それから最後に、勧告仲裁裁定関係でございます。これは私が最も声を大にして申し上げたいと思っておるところを、村山委員が大体は非常に筋の通った形でお述べいただきまして、その前提としているお考えの方向は、私どもと全く同じでございます。したがって、さきのおことばにもございましたように、公労委の仲裁裁定のもとにある三公社五現業職員というものは、大体われわれのおあずかりしております一般職職員のきょうだい分であります。ことに現業関係方々は、まさに一般職職員そのものなんであります。それらの方々給与は、仲裁裁定によってきまりました場合には、はっきりとここ十年近く、四月にさかのぼって完全に実施されてきておる。私ども一般職公務員をおあずかりしておる、そしてその給与勧告しております責任を持っております立場の者から申しますと、実はその辺のアンバランスについては、いても立ってもおられない気持ちを持っておるわけであります。したがいまして、くどくどしたことは申し上げませんけれども、そういう点をもお考えいただいて、やはりどうしても勧告どおり実施していただかないと筋が通らないのではなかろうかという気持ちを持って、これまで方々関係方々に強く主張してきておるわけであります。また、幸いにして昨年の本委員会におきまして、給与法案の決定の際でありましたか、附帯決議をいただきまして、予算上の措置を十分考慮するようにという強い委員会の御決議をいただきまして、私どもこれを有力なうしろだてとしてまいっておるわけであります。ことしも、ただいまのおことばにありましたように、これはもうあたりまえのことでありまして、勧告はぜひ完全に実施していただきたいということを、もちろん総理にも——ことしはわりあいにゆっくりと総理とお話しする機会があって非常に幸いだったと思いますが、十分お願いをしてまいりました。その他の関係大臣シラミつぶしに回って御説明申し上げ、要望申し上げております。なお、今後ともそれを続けてまいるつもりでございます。国会におかれましても、ぜひひとつ私ども立場あるいは筋とするところをお考えいただきまして、ぜひこの勧告勧告どおりに成立するようにお力をいただきたいと、この席から深く頭を下げてお願いを申し上げる次第であります。
  7. 瀧本忠男

    瀧本説明員 先ほど総裁のお話のございました中で、本年四月の格差が五・六、それが七、二ということを目途に今回改善をいたしておるのでありますが、その際の残りの一・六というものの数字的説明というものを申し上げたいと思います。  村山委員から御指摘がございました、本年の春闘は一二・四ではないかということで、かりに四・四の定期昇給を引いても八%というものになる。人事院の七・二というのは低過ぎるのではないかという御指摘でございます。そこで、この春闘が幾らであったか。これは立場によりましていろいろ御報告がございます。労働省の報告によりますと、ことしの春闘は一〇・二と、こういうふうな御報告になっておりますし、総評のほうでは一二・五%だ、こういうことをおっしゃっております。日経連では九・七、こういういろいろの数字が出ております。そこで、そういういろいろの数字を基礎に御議論がなされるわけでありますけれども、わがほうといたしましては、先ほど総裁が申し上げました民間給与調査の付帯調査といたしまして、実は本年の春闘に非常に関係のあります。われわれの調査時点においては、支払いは完了していなかったけれども、妥結しておるものの平均のアップ率というものは幾らであるかということを調べてみました結果、それは一一・三%であるということがわかったのであります。その一一・三%という平均引き上げ率があったのでありますが、どれだけの事業場が実際に給与の支払いがおくれておったかと申しますと、事業場の中の二三・四%、約四分の一の事業場が給与の支払いがおくれておった。したがって、われわれの調査いたしました四月分の給与というものの中には、その春闘の結果が反映していない、こういうことがわかったのでございます。そこで、この一一・三という平均アップ率の中には、先ほどもお話がございましたように、当然昇給分もあることでありますから、公務員の昇給分の四・三%というものをそれから差し引きまして、そうしてその残りを全部の事業場にどれだけの影響があるかというものを計算いたしてみますと、一・六%、こういう数字になるのでございます。われわれは、この一・六%というものを、春闘のおくれの影響というものはその程度であるというふうに判断をいたしまして、五・六に一・六を加えた七・二を改善の目途とした、こういうことでございます。  ちなみに申し上げますと、その計算方法は、本年の三公社五現業仲裁裁定あたりまして公労委が判断をいたし、計算をいたしました方法と、全く同様の方法でございます。昨年はどういうことであったかと申しますと、この一一・三%に相当いたしますものが、実は昨年は一三・二%、こういうことであったのでございます。それで、昇給の影響等を考えませんで、これを全部の事業場に直してみますと、一・九%、こういうことになります。しかし、先ほど総裁が申されましたように、われわれはやはり調査時点で押えるということがたてまえであります。春闘のおくれた影響を還元して考えるのだというような考え方は、原則的にはとらない。むしろ春闘がおくれるならば調査時点をおくらすというような問題に、本質的にはなる筋のものであります。そこで、しかし、そうは言っても、そういう影響を全然度外視するわけにはいかない、何らかの形において考えなければいけないというので、去年はどういうことを考えたかと申しますと、実は調査事業場の規模を、企業規模五十人から百人に上げたのであります。その結果、この一・九%を当然カバーする程度の格差に相なったのでございます。そういう方法によって間接的にそのことを見てきた、こういう状況になっております。今年は、それとは違いまして、ただいま御説明申し上げましたような状況で一・六%というものを算定いたし、これを加算いたしたのでありますけれども、これが今後の前例を開いたものということにはならないという考え方を持っております。  なお、実質賃金がどうなるかというお話でございますが、われわれは、先ほども総裁が申し上げましたように、民間給与との格差を埋めていくということが原則でございます。消費者物価あるいは生計費等についても注意いたしてはおります。その端的なあらわれは、われわれは十八歳単身男子の標準生計費というものを算定いたしまして、高校卒初任給とその数字を合わしておる、持ち上げておるということをいたしておりますが、さらに俸給表の具体的数字等を勘案いたします際、また、手当等の引き上げないしは新設等の際に、そういうことを勘案いたしてやっておるという状況であります。そこで、本年の四月は、昨年の四月に比べまして、消費者物価は、全都市におきまして九・九%の上がりであった。先ほどのお話のとおりであります。ところが、五月は八・八、六月は八・七、七月は八・一——これは全都市の数字でございます。それから、東京についていえば、四月は九・六、五月は七・六、六月はちょっと上がりまして八・〇、七月は七一二と、むしろ消費者物価はその後漸増しておるのではない、こういう事実をこの機会に報告させていただきたいというふうに思います。  ちなみに、われわれは、この消費者物価を端的に給与引き上げの際のパーセントとして用いてはおりません。しかし、長期的に見ればどういう感じになっておるかということでございますが、たとえば、昭和三十五年を一〇〇にとりまして、全都市の消費者物価は三十九年で一二五・六、こういうことになっております。それに対して、毎月勤労統計の数字は、同じく三十五年を一〇〇にとりますと、三十九年は一五〇、こういうことになっております。公務員給与のほうはどういうふうな改善が行なわれてきたかと申しますと、昭和三十五年を一〇〇にとりますと一五一・三、こういうことになっておりまして、全体的にながめてみますと、大体民間の賃金の上がり方と公務員の賃金の上がり方というものは、同様の傾向を示しておりますし、消費者物価との関係におきましても、必ずしも消費者物価を下回っておるという感じにはなっていないということを、あわせて報告させていただきたいと思います。
  8. 村山喜一

    村山(喜)委員 春闘の積み残しがある、ないというのは、調査時点のとらえ方によって違うことは、私どもよくわかります。民間給与実態に即応してやるというのであれば、調査時点を四月の段階でなくて、六月なら六月、こういうふうに繰り下げたら、全部の賃金が捕捉をされることは間違いない。しかし、それでは勧告はなおおくれる、こういうようなこと等の事情があるということは、よくわかります。しかしながら、私がここで申し上げたいのは、こういうような個々の技術的な操作に類するような問題ではなくて、一応こういうように人事院勧告が出された、それをどういうふうにして実現をしていくかということが、一番大事なことである。それが完全に実現がされるかいなかということが、人事院の権威の問題にもつながってくる。先ほどから総裁はわれわれ国会のほうに対してひとつよろしく頼むということですが、それは国会は国会として議決権は持っておりますが、その前に政府がどういう態度をきめるかというのにあたりましては、やはりそこまでは人事院総裁がおやりを願わなければならない、そういう立場で今後なお御努力を願っておきたいのであります。  そこで、長官もお見えになりましたし、それから大蔵省並びに自治省からもお見えになっていますので、私、ここで給与の問題の政策についてお尋ねをしてまいりたいと思うのであります。  まず、大臣にお尋ねをいたしますが、政府に五人委員会が設けられた。先般私、大臣に連絡を申し上げましたところ、大臣一生懸命やっていただいているようなお答えをいただいたわけです。しかしながら、大蔵省並びに自治省がどうも足を引っぱっている、まあ政府の態度の決定は十月も二十日ごろになるのではなかろうか、こういうような話をお伺いをいたしました。そこで給与担当の大臣として、結局人事院から一つのこういうような勧告が出た、国際労働法の上から見ても、また労使関係の正常化の上から見ても、あるいは公共企業体労働者との対比の上から見ても、当然人事院勧告というものは尊重すべきであり、そして勧告のとおり実現をすべきものである、この基本線は、給与担当大臣の安井さんはやはり堅持しておられるものだと私は思うのでありますが、大臣のその決意のほどといいますか、その考え方の基礎というものを私たち説明を願っておきたいのであります。  それから財源難という問題が一番のネックになっているようであります。そこでいろいろ財政状況というものを、国税関係ではおよそ二千億円の歳入欠陥があるのではなかろうか、こういうことがよく言われておる。それに伴いまして地方税にはね返るいわゆる交付税関係で四百ないし四百五十億、あるいは法人税その他関係で、地方の自主財源の分が約六百億程度、こういうように算定をされているということが、新聞等に出るわけであります。もちろん九月の決算の状況を見なければ、法人関係の税収、税源のとらえ方は明確に出てこないとは思いますが、大体現在のところ、政府は不況から脱出するための経済政策といいますか、一つの財政政策というようなものも決定をされ、そういうようなところから、いろいろ今後の国の経済政策あるいは財政政策の上において、その効果がどのようにあらわれてくるかということについてもいろいろ問題があるところでありますが、大体見通しとして財源の問題をどのように考えておられるのか、この点について、大蔵省の見通し並びに自治省のこの数字の押え方というものを説明を願っておきたいのであります。  それと同時に、すでに地方公務員の場合には、御承知のように交付税の配分の全体計画が閣議において決定をされている、こういうような点から考えていきまするならば、少なくとも交付税については、これは地方財政の上において国税の三税関係の収入減に伴うはね返りが出てこないように措置をしなければならないというように、われわれも考えるものでありますが、これについては、大蔵省としてどういうような態度を今日決定をしているのか。いろいろ聞きますところによりますと、国が赤字の分については公債政策で臨む、とするならば、地方としても国と同じように地方債の増発かあるいは借り入れ金でまかなうべきではないかという主張もあるようでありますが、やはり地方交付税の不足分は国の一般会計の中から地方交付税特別会計に繰り入れるための措置が、特別立法として今度の臨時国会に出されなければならないと、私たちは基本的には考えるわけです。そういうような考え方に対しまして、自治省並びに大蔵省の見解を承っておきたいのであります。  その次の質問は、答弁をいただきましてから申し上げたいと思います。
  9. 安井謙

    ○安井国務大臣 ただいまお話がありました人事院勧告に対して、政府はどう考えておるか、おまえのところへ電話をしたならば、総務長官は一生懸命考えておるが、自治省や大蔵省が渋いという返事であったというお話でございますが、私があのとき申し上げましたように、人事院勧告につきましては、政府は、全体のたてまえとしてこれを尊重するという態度は、くずしておらぬと思います。ただ問題は、いつも財源の問題でございます。したがいまして、いままででも、ここ数年前に比べれば多少よくなっておりまするが、十分な完全措置というわけにはまいらなかった事情でもございます。しかし、私どもは、常にこれは、ことに最近の公共企業体等の実例に比べましても、人事院勧告というものは全面実施をするのがたてまえであるということは、ますます強く感じておるわけでありまして、この努力は依然としていたしたいと思っておる次第であります。ただ、おりあしくと申しますか、ことしの財政事情例年よりさらに悪いという一般的な見通しをとられております。そのために相当厚い壁があることも、これは一面事実である、こういうふうに思っております。私どもといたしましては、全面実施に対してでき得る限りの努力をいたしたいと考えており、せっかく五人委員会でもその検討を始めておるようなわけでございます。
  10. 大西正男

    ○大西説明員 お答えいたします。  地方公務員給与の改定につきましては、御承知のとおり、国家公務員のそれに準ずることに相なっておるわけでございます。したがいまして、自治省といたしましては、その額あるいは実施時期につきましても、いずれも国のそれに準じて従来も行なってまいりましたし、これからもそういうようにいたしたいというふうに考えておる次第でございます。  それから本年度の財政状態についてでございますが、いま先生が御指摘になりましたように、九月決算は十一月になりませんと判明をいたしませんので、いまにわかに見込み額を申し上げるわけにはまいりませんけれども、大体いま御指摘のように、地方の独自の財源と申しますか、それにつきましては、大体法人税の減収を千三百億ぐらいと見まして、六百億程度になるのではないだろうか。それから三税の減収に伴いまして、交付税の面では、これまた御指摘のとおりに四百ないし四百五十億の減収となるのではないだろうか、こういう予想は一応いたしておる次第でございます。さようなわけでございまして、いまも御指摘のありましたように、地方の交付税の面における減収等につきましては、何らかの国の処置を自治省といたしましても願いたい、このように存じておる次第でございます。
  11. 武藤謙二郎

    ○武藤説明員 ことしの財政状況がどういう見通しかというお話を申し上げますと、率直に申しまして、御承知のように、ことし財源難になりましたのは、景気が悪くて税収が減ったということでございます。それで、減収がどのくらいになるかということは正直言ってなかなかわかりませんので、最近のところがちょっと動きますとまた影響するということですが、いまのところは二千五百億くらいの減収になるのじゃなかろうか、こう考えております。  それから歳出の増加要因ですが、これのほうはなかなかわかりません。それの一番大きな項目の一つは、公務員給与改定であります。それからさらに米価の関係で、食糧管理特別会計にどのくらい赤字が出るか、これもまだきまっておりません。  そこで、そういう歳入の減と歳出の増と、いろいろなこまかいことがございますが、どうしてもことしはつじつまが合わない、従来のような税収あるいは経常収入で一般会計はまかなっていくという原則は、ことしからくずさざるを得ない、こういう見通しでございます。そこで、その分は大蔵省としても公債によるか、借り入れによるか、いずれにしろそういうことで処理するということを考えておりますが、いままで長いこと続けてまいりました均衡財政と申しますか、経常収入で一般会計はまかなっていくという原則をことしはくずさざるを得ない、こういう苦しい状況になっております。
  12. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、これは大蔵大臣の答弁事項になると思うのですが、くずさざるを得ないということになりますと、国債発行かあるいは借り入れ金か、あるいはこの二つをミックスしたものか、そういうようなものによってやっていく、こういうようなことだろうと思うのですが、地方のいわゆる財源措置については、まだ態度が決定をしていないようであります。といいますのは、先ほども言いましたように、特別交付金をそういうふうに三税関係の減に伴う措置として一般会計の中から繰り入れなければ、交付税の赤字分を埋め合わせることはできない。特にその中で一番大きいのは、法人税に見合う分だろうと思うのでありますが、そういうような措置ができない。国はいわゆる不況対策として、有効需要の喚起策としては、現在の国の予算規模というものを維持すると同時に、財政投融資についてはこれを拡大する、こういうような方針をとられた。それで、前に閣議で決定をしておりました一割留保のいわゆる公共事業についても、約一千億のうち八百五十億はこれを取りくずした。そしてやった結果は、地方のほうはもうさかさに振っても金がないというような状態になってきている。その場合に、また国税の収入の減に伴って交付税が減収になるということになれば、ますます地方の場合には法人事業税等の伸び悩みに関連をいたしまして金がない、こういうようなものに対して、どういうような措置を講じようということでお考えになっているのか。先ほど考え方の中に、いわゆる借り入れ金でやるとか、あるいは地方債の発行で臨むとか、そういうような考え方もあるやに聞くのでありますが、その点はどういうようなお考えをお持ちになっているのか、あなたで御答弁ができるならば答弁を願いたい。
  13. 武藤謙二郎

    ○武藤説明員 大臣も、給与の問題に関して、国家公務員と、あるいはそれより以上に財政の問題では地方財政のほうもむずかしいということで苦慮しておられるわけですが、地方財政のほうをどういうふうに処理するかということは、まだ申し上げられる段階になっておりません。
  14. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで安井長官にお尋ねをいたしますが、これはやはり閣議で決定をされる国の政策的な問題であろうと思いますので、大臣として御出席をいただいているのはあなただけしかおいでにならないから申し上げるわけでございますが、今度の人事院勧告によりまして、国家公務員一般職給与の改定に要する財源関係というものが二百七十億ですか、二百二十三億円、こういうように見込まれておる。それから地方公務員関係では、九月から実施をしたら大体四百九十億円くらい、これを完全に実施したら大体七百億円くらいの金が必要ではなかろうか、こういうふうに言われている。かれこれ合計をいたしますと一千億円近い金が——八百五十億ですか、そういうような財源措置を必要とする。これのいわゆる経済的な効果というものがどういうふうに今後において出てくるかという問題であります。といいますのは、御承知のように、最近政府が行ないましたいわゆる不況対策として、新聞等でも取り上げられておりますように、財政投融資の追加投資分の二千百億円というものは、現在のところほとんど有効需要を喚起していない。これは政府説明によると、約一兆円近いところの有効需要の喚起が行なわれる予定であるけれども、それが現在においては不況対策としての奏功がないという新聞の発表等もなされておる。日本の経済不況対策をめぐりまして、経済企画庁やあるいは勧業銀行等の考え方というものが新聞にも出ておりますが、通産省あたりの見方というものは、やはり相当な不況が今後も続くんじゃないかという見方をしているわけであります。そういうような場合に、この給与という問題が、最近の実情から、国民の総生産に占める有効需要の割合が減退をしてきた。しかもその中において、消費者購買力というものが、七月から九月までの段階は横ばいの状態であったけれども、さらに最近においてはそれがますます減少の傾向に移ってきている。こういうような形の中で、国全体の経済の規模が縮小均衡の方向に発展をしつつある、ここに一つの経済上の不況の原因、大きなメスを入れなければならない原因があるということが言われているわけです。私たちはやはり人事院勧告を当然実現をしなければならないという考え方は、その制度の上から、あるいは他との均衡の上から考えていく場合と、やはりこの場合において公務員の生活という問題を経済政策の中においてどういうふうにとらえていくか。特にこのように消費性向というものが減少をたどっていくような経済環境の中にあって、どういうふうにしたら有効需要というものを拡大をしていくことができるか。これはやはり、われわれは産業面における、たとえば民間の設備投資が少なくなったために経済が沈滞をしてきた、こういうとらえ方だけでなくて、世界で一番と言われるほど貯蓄性が高い、こういうことは一体どこに原因があるのか、そういうような問題まで考えながら、不況の声を聞けばそれだけ消費力というものが減少をしていくという実態の上から見て、公務員給与の経済政策の中における位置づけというものをやはり考えていくべき段階ではないか。私たちそういうふうに考えるものでありますが、これにつきまして安井長官はどういうようなお考えをお持ちであるのか、この際、お聞かせを願っておきたいと同時に、あなた方の閣議におけるいわゆるこの経済不況の中における公務員の賃金の引き上げの問題、これは単なる財源だけで考えるべき問題ではないと私は思うのでありますが、それに対処する方針というようなものがあれば、お答えを願いたいと思います。
  15. 安井謙

    ○安井国務大臣 村山委員から、たいへん広範にわたった経済政策を加味した公務員給与というものについて、どう考えるかという御質問でございます。必ずしも私が御答弁するのが適切かどうか、いろいろあろうかと思います。ただ、私どもといたしましては、いま国の公務員地方公務員を通じまして民間の一定の物価水準、あるいは給与水準と著しく差のないようこれを追っかけて、大体ならせていくという方針のもとに、この公務員給与はきめていきたいと思っておるようなわけでございまして、私ども、この給与が景気回復にどういうふうに影響するか——民間給与というもの自身がやはり必要な有効需要のために大きな作用を及ぼすということははっきり言えると思いますが、これを分析いたしまして、いまどういう程度の数字であるというふうに考えるかにつきましては、ちょっと私もいままだ即断いたしかねるというような次第でございます。五月実施につきましては、一般会計は二百七十億程度であろう、こういうお話でございましたが、これは一般職員の場合にそういうことでございまして、これに対しまして義務教育費の負担の分でありますとか、防衛庁の負担といったようなものを含めますと、やはり五百六十億程度に相なるわけであります。なお特別会計の分その他合わせますと、六百六十五億というふうに国のほうの会計で一応予想ができるわけであります。なお、地方団体につきましても七百四十億程度、こういうことになりますと、合わせまして一千四百五億程度のばく大な国の財政に影響があることは、事実でございます。また、そのものがしたがって民間に対する需要源としてそのとおり実施されれば支給されることにもなり、これがある程度経済界に対して影響を与えることも、これは事実であろうと考えております。
  16. 村山喜一

    村山(喜)委員 最近の経済の足取りを見てみますと、先ほども申し上げますように、個人支出が七月から九月の段階において横ばいになった。ところが、最近においては企業の中に人減らし、いわゆる人員整理というかけ声が起こってきた。これによりまして、ますますこの個人消費の支出割合が減少の方向に移ってきた。そういうような立場から考えてまいりますならば、これは明らかに経済が縮小再生産の方向動きつつある状態というものが、私たちには考えられるわけであります。そういうような中において、もちろん財源は足りないでありましょう。しかし、それをどういうふうにして乗り切るかということも、一つの経済政策の中における問題点としても御検討を願っておきたいと思うのであります。  最後に、私大臣にお尋ねをしたいのは、このドライヤー勧告に対する態度の中で、政府側が統一的な見解としてお述べになった内容の中から、どうもはっきりしない点がございますので、お尋ねをしておきたいのは、給与に関する問題だけでございますが、地方公務員給与に関する人事委員会勧告について敏速かつ完全に実施する必要があると考える。国家公務員に関する人事院勧告については、政府側はドライヤー報告書の対象外と解釈している。地方公務員については、地方の人事委員会が従来から人事院勧告に準じて勧告をしておることは、御承知のところでございます。ところが、このドライヤー報告書に対する政府の統一見解というものを見てみますと、地方公務員に関する人事委員会勧告については、敏速かつ完全に実施をするのが当然である、こういうふうな解釈をお出しになったのを新聞で見た。とするならば、所によってはほんのわずか違うところがありますけれども、都道府県の人事委員会あたりが知事やあるいは議会に対しまして勧告をいたしますその内容は、人事院政府に対して、あるいは国会に対して勧告、報告をいたします内容とほとんど同じであります。地方の場合には完全に守るべきである、こういう見解が出される。国家公務員の場合には、これはドライヤー勧告内容とは別問題だ。こういうとらえ方の内容の記事を見たのでありますが、これに対しまして、そういうような考え方がどこから生まれてきたのか。やはりこの点につきましては、給与政策をめぐる問題としてきわめて重要な問題でございますので、担当はこれは労働省になろうかと思いますが、特に給与担当の大臣でございますから、お答えを願います。
  17. 安井謙

    ○安井国務大臣 ドライヤー勧告の中に、公務員関係についてはスト権あるいは団交権が認められてないのだから、第三者機関勧告を十分に尊重すべきものである、こういう趣旨のことはうたわれておるようでございます。ただ給与だけを取り上げて、端的にこうしろああしろといった点はなかろうと私は思います。さらにもう一つ勧告の中でいわれておりますことばの中には、地方における第三者機関、人事委員会あるいは公平委員会というものが必ずしも十分に円滑に遂行されていないのじゃなかろうか、そういう点についてもっと考慮すべき必要が今後あるのじゃないか、こういう指摘をされておるように思いました。そういう点につきましては、今後われわれはその勧告自体に縛られるとかそういうようなことでなくても、十分に考えていかなければならぬ問題はたくさんあろうと存じております。
  18. 村山喜一

    村山(喜)委員 だから、法的に拘束をすべきものではない、こういうような見解を出すと同時に、政府がそのドライヤー報告に対する統一見解の内容として出されたものの中に、地方公務員関係の場合においては地方の人事委員会が出したものが完全に敏速に実現されるべきである、これも考え方にはわれわれ賛成なんだ、こういう態度をお出しになっておる。とするならば、国家公務員に対しまして人事院勧告をした、これは当然にそれと同じような意味において守られ、完全に実現されるべきだと、こういうふうにわれわれは統一的に解釈をするのが当然だと思うのです。それが地方公務員だけをなぜここに取り上げてそういうような態度をお示しになったのか、その理由がはっきりいたしませんのでお尋ねをしたのですが、後日調査の上お答えを願ってもけっこうでございますけれども、いずれにいたしましても、人事院勧告というものが今日まで完全にと言ってもいいくらい無視されてきた。というのは、実施の期日をめぐりまして、これは一回も守られたことがない。昨年は九月から、一カ月ほど繰り上げて従来よりも前進をした立場でやっていただいた。しかし、それでも過去においてずっと人事院勧告の当然五月から実施をされる分が公務員給与の上にどれだけはね返ってきたかということを、マイナスになった部分を計算をしてまいりますと、何千億円という金が実現をされていないということを公務員の諸君は言うわけです。というのは、われわれのストライキ権が制約をされておる、そういうような上において第三者機関が出したものは、これは代償措置として完全に国は実現をしてもらわなければならない。これはやはり大臣がお考えになっているように、完全実施という線でやってもらいたい、またやるべき筋合いのものだ、こういうようなふうに考えておりますから、そういうような主張が当然に出てくるだろうと思います。で、この問題については、イギリスの場合なども、ホイットレー方式の場合等は、その争いが出ました時点にさかのぼって支給するという方式がとられておる。こういうような立場から、今日においては大臣も御承知のように、国家公務員あるいは地方公務員の諸君が、人事院勧告完全実施を要求して、それぞれ組合の決定に基づいて行動をしようという段階にあります。私たちは、そういうような時点に組合を追い込んでいく政府の責任というものを追及せざるを得ない。で、すみやかに人事院勧告どおりにあなた方はやるということを閣議において決定をされるならば、そういうようなことは当然問題が解消するわけです。そういうような不幸な事態にお互いが直面をしないで済むような方向で、政府は、特に給与担当大臣である安井さんが全力をあげてこの問題の解決に努力をされてしかるべきだし、そういうような責任があなたにはあるのじゃないかと私は思うのでございますが、大臣の決意を再度お承りいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  19. 安井謙

    ○安井国務大臣 最初も申し上げましたように、この人事院勧告につきましては、私はむろんのこと、政府全体といたしましても、全面的に尊重するというたてまえと精神は変えておらないと思う次第であります。ただ残念ながら、ことしの財政状況、国、地方を通じまして例年にもない非常に困難な状況にある様子でございまして、この間をいかに縫って調整をしていくかという非常に大きな問題、壁があるということも、これは事実でございます。私どもはしかし、これが人事院というものの勧告ができておりますたてまえから、でき得る限り全面尊重いたす努力を今後も続けていきたいと思っておる次第でございます。
  20. 村山喜一

    村山(喜)委員 ぜひその実施は義務的な問題としてひとつとらえていただきたいと思うのです。それは債権、債務の関係という形でとらえなさいという意味じゃないけれども政府はやはりそれだけの責任がある、こういうことをぜひ強く考えていただいて処置していただきたいと思うのですが、最近は、新聞に報ずるところじゃどうも消極的で、きわめて悲観的で、希望が持てないというような状況だけが出てまいります。これではますます公務に安んじて仕事をしていくことにはむずかしい情勢であろうと私は思うので、大臣のその誠意は十分に私も信ずるのでありますが、今後やはり政府として、これは当然の義務なんだという考え方で、財源問題その他はありましょうけれども、善処されることを要望いたしまして終わります。
  21. 河本敏夫

    河本委員長 田口誠治君。
  22. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 ただいま村山委員のほうから総体的に、抽象的ではございましたけれども、御質問を申し上げたのですが、具体的な面については本格的な審議のときに譲るといたしまして、現在政府のやっていただかなくてはならない点について質問をいたしたいと思います。  その前に、私は整理をして質問に入りたいと思いまするが、御存じのとおり、民間企業労働者はストライキ権という、こういう有利な武器を持って団体交渉をし、団体交渉で賃金の引き上げを決定をする。そこで決定をされたものは、非常に困難性があっても経営者はそれを完全に実施をする。実施をする過程においてなお困難な点があった場合には、労働者もでき得る限りの協力をして完全に実施をさせることが、今日までなされてきておる実態である。これが民間企業の賃上げの実態でございます。ところが、国家公務員労働者関係は、特に地方公務員も同じことでございまするが、ただいま村山委員のほうからも触れておりましたように、途中で、公務員労働者国民の善良な奉仕者であるから、この労働者にストライキ権や団体交渉権を与えることは妥当でない、したがって、まずこれは取り上げるんだといって取り上げたわけでございます。そのかわり、公務員労働者の生存権というものは、第三者の人事院がこれを守ってやる、こういうことで、今日まで人事院政府あるいは国会に対して毎年勧告をし、そしてその勧告に基づいて公務員労働者の給料の引き上げがなされてきておるというのが、実態であるわけなんです。  そこで問題になっておりますることは、昨年で五年間引き続きだと思いまするが、完全実施がなされておらない。すなわち、五月から実施をするというのが十月実施、ようやく昨年九月実施ということになっております。したがって、人事院勧告を尊重するといわれても、これは六〇%ぐらいしか尊重されていないというのが実態であるわけなんです。こういうようなことから考えまして、公務員労働者は、毎年完全実施をやらないのはけしからぬのではないか。われわれのストライキ権や団体交渉権を剥奪しておいて、手も足ももぎって、そうして第三者の人事院から出された勧告すら実施されないということは、これはわれわれとしては納得ができないんだというので、闘争が巻き起こる。この闘争は、時間内に職場大会をやるとか、あるいはそうでなしに、休憩中に職場大会等を行なって、大会が経過をしておるうちに時間内に食い込んだような場合には、その責任者が処分をされる。これが現在の実態であるわけなんです。  したがって、私はここでわからないのは、政府完全実施をしなけばならない責任があるのに完全実施をしないので、したがって、公務員労働者がそのことについて労働組合としての組織的な行動を許された範囲内にしようとして行動することでたまたま時間内に食い込んだときに、すぐ大量な処分がある、こういうことは、私は、憲法で認められたところの労働基本権を政府は一方的に無視しておるものではないか、かように考えておりまするので、そういうことを頭の中に十分に置いていただいて、これからの質問にお答えをいただきたいと思います。  昨年までこういう問題が出てまいりましたために、昨年の人事院勧告の問題を国会で議決をいたしまするときに、与野党が共同提案で附帯決議をつけました。その附帯決議は、御存じだと思いまするが、その全文を読み上げますると、「公務員給与については、政府は、人事院勧告尊重の趣旨を体し、今後これを完全に実施し得るよう予算措置を講ずることに最善を尽すべきである。右決議する。」という、この附帯決議がつけられておるわけです。もしことし完全実施がしてもらえぬということになると、国会の議決を無視する、院議を無視するということになるわけなんですが、この辺のところからお聞きをしていたきいと思いますが、どうお考えでございますか。
  23. 安井謙

    ○安井国務大臣 人事院勧告について政府完全実施をやらないかもしれない、あるいはやらない実例があるから、やむを得ず公務員のほうでもストライキあるいはサボタージュをやらざるを得ない場合があるというお話でございます。私ども人事院勧告を尊重するという精神は、政府全体として持っておることはもう間違いないところでございますが、これは必ずしも法的には拘束をされるものではないことも、御承知のとおりでございます。しかし、私どもは、法的に拘束される、されないにかかわらず、これをできるだけ尊重して実現をしていきたいという努力は、いたすつもりであります。したがって、公務員の方が、スト権を奪われておるが、人事院勧告が十分にできないから、当然ストライキに類した行ないをやってよろしいのだという結論にはなるまい。公務員自身の性格は、単に民間労働者の方と同じような形で見るわけにはまいるまい、そういうたてまえからも、このスト権、団交権についての制限があるわけであろうと思います。これはやはり切り離して——その気持ちはよくわかりますが、違法行為というものに対しては切り離して私どもは考えたい。しかし、合法的な範囲内で御要望なさったりあるいは陳情なさるという点につきましては、私どもこれをどうしようというようなつもりは毛頭ないつもりでございます。
  24. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 その点については、別段私の意見と相違はないわけなんです。人事院勧告どおり政府実施をしなかったから、それでストライキをやってもいいとか不法な行為をやってもいいとかいうことはないと思うのです。しかしながら、政府がスト権なり団体交渉権を奪い取っておいて、その代償として人事院を設置して、第三者である人事院勧告を尊重するということをたてまえにスト権なり交渉権を取ったのだから、したがって、人事院勧告というものは必然的に完全実施をしなければならない、こういうことになるわけなんです。だから、それをやらないからいろいろ好ましくない問題が出てきておるので、したがって、そういうことがあってはならないから、昨年附帯決議をつけたわけなんです。国会で議決をしたわけなんです。来年の場合には完全実施をしなさい、予算措置をとりなさいという議決をしたわけなんです。だから、今年完全実施をしないということになると、院議を無視する、国会の議決を無視する、国会審議を軽視するということになるのだが、その点はどう考えているかということをお聞きしておるのです。
  25. 安井謙

    ○安井国務大臣 少し理屈になって恐縮でございますが、これは私ども公務員というものの性格から考えて、いわゆるスト権というものについてはこれを禁止をいたしておる。人事院があるからそれの代償としてスト権を禁止しておるということでなくて、公務員自体の性格から見て、ストライキというようなものは国民に対する奉仕者の立場としてはやるべきものではないということで禁止をいたしておるわけでございます。しかしながら、公務員の身分上の問題、給与上の問題というものを守る手段がなければならぬからということで、これは一方人事院というものを置いて、その第三者の勧告政府としても十分尊重いたしたいというたてまえで、これにはどの限度まで尊重しなければいかぬというものは、給与等については御承知のとおり法的な規制はございませんが、政府としてはあらゆる努力をしてこれを尊重しよう、こういうたてまえでまいったのでございますが、いままででも財政上の都合からどうもやむを得ぬで若干月が切れるというような事情があって、これは私どもたいへん遺憾だと思っております。今後も、この点につきましては十分に全面的に実施できるような努力を続けていきたいと思います。そういうようなことで、四十七回国会でも衆議院でも御決議をいただいております。今後も全面実施ができるように予算措置を講ずることに最善を尽くすべきである、こういうお話がございました。これは人事院等とも相談いたしまして、勧告の時期その他がいまの年度途中に出てまいりますと、どうしても予算上措置に困るというようなことから、この時期をどうすればいいかというような点についてもいろいろ検討いたしておるのでございますが、何ぶんにもこの四月の相場を中心に公務員の賃上げといいますか、ベースアップをきめるという問題でございますから、時期的にその年度に入ってしまう。そこでこれをずらして、十月とか十一月にやりましても、これは翌年度の予算の関係には間に合いますが、その年には間に合わない。といって、四月以前にさかのぼってきめるということもなかなかできないというような実情がありまして、これは人事院自身でも御研究になっておると思います。また、私どももこの点につきまして今後の予算措置上の問題としてもいろいろな検討をいたしておりますが、まだにわかにいい結論が出てこないということで、今後も、しかし、この決議の精神に沿いまして、予算上の措置をどういうふうにしたらいいかということにつきましても、鋭意くふうはいたしていきたいと思っておる次第であります。
  26. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 いま御答弁のありました中で、メモを前に置いておいでになりますから、政府の見解と違ったことを言われたわけではないと思いますけれども、勢い余ってちょっと脱線された面があると思いますので、前段のほうを私の知っておる範囲で訂正しておきますが、給与担当大臣が公務員の性格からスト権を剥奪した云々の経過をいまお話しになったことは、あれは違っておるわけでございます。終戦後労働組合ができたときには、公務員労働者にもスト権も団体交渉権もあったわけなんです。そこで、公務員労働者という性格からいって、ことばを変えていえば、国民の善良なる奉仕者であるという性格からいって、この労働組合にはスト権やら団体交渉権を与えておくことはやはり好ましくないと見解から、剥奪をするということになったわけです。ところが、そうすれば、だれが公務員労働者の生存権を守れるかということなんです。そこで第三者である人事院を設置して、そして人事院が最も人事院としては公平な立場において公務員給与をどれだけアップすべきであるという点を政府と国会に勧告をされるのであって、その理屈からいきますると、人事院勧告というものは完全に実施してもらわなければ、公務員の生存権が守られないということになるのです。そうでしょう。いま村山委員のほうからもお話しになりましたように、これは五カ年間、五月実施を十月にしたり、昨年は九月実施になったんですが、実際からいきますると、これは人事院勧告が六〇%くらいしか守られておらないといえるわけなんです。そういうことだから、公務員は非常に、その生活の状態からいきますると、善良な公務員としての能率を発揮することに支障を来たしておるというのが、現在の実態であるわけなんです。こういう点を、これはわれわれとしても解消しなければならないし、政府としてもそういうお考えがあろうと思いまするので、そこで完全実施を毎年、予算の面から何ともならないからと今日まで言ってこられたけれども、毎年の実態を見ますると、そうでもないわけなんです。税増収の面が、一月になってみたら、相当見込み違いの多い年もあったわけなんです。だから、これは完全に公務員労働者の賃金を人事院勧告どおり実施をしなければならないというこの精神が、ことばでは言っておるけれども、真実欠けておるのではないかと私は思うわけなんです。これでは、国家公務員人たちは非常に困るわけです。だから、せめても——これはこまかいことを言いますると、いまの民間企業労働者公務員労働者の賃金の格差を出された、この出し方についてまだまだ私は異論はございまするが、その異論は本格的審議のときにまたいろいろと申し上げて御答弁も聞き、来年度の参考にしていただきたいと思いまするが、まあそれは別といたしましても、人事院として今年出されておるのだから、これは完全実施をしてもらわなければならぬけれども、現在の答弁の中では、努力はするけれども財源の面で非常にむずかしいという答弁が、終始繰り返されておるわけなんです。だから、きょうは自治大臣も大蔵省の主計局長もおいでになっておりませんが、自治省は次官がおいでになってみえますが、現在の自治大臣の永山さんは、この点を主張されたのですよ。完全実施をしなければならない。完全実施をせずにおいて、そうして公務員労働者が闘争だ、闘争だといってごたごたしてあとで処分をしなければならないような状態ができることを憂えられて、これは永山さんだけではない、自民党の委員の方も、民社党の委員の方も、そういう点を憂えられて、昨年この附帯決議を満場一致で可決されたわけです。したがって、そういうことからいきますると、今日完全実施をしにくいという原因は、地方自治体の財政状況が大きな一つのかぎになっているようにもいわれておるわけですが、これは、次官おいでになってみえますが、ただいま私が申し上げましたように、ことしは完全実施をしてもらわなければならぬので、そういうやりくりをどうやりくりされるかということについては村山委員に先ほど少しく答弁されましたけれども、もう完全実施をするのだという頭の上に立ってどうするのかということについて、ひとつお伺いをしておきたいと思うのです。そうでなかったら、五人委員会を何回開いていただいても、これはもう時期的にこれ以上延ばせぬというところまできて、そしてある程度の結論が出されるということになるのだから、これはもう五人委員会に所属しておられる委員の担当大臣、あるいは官房長官等は、ことしは完全実施をやるのだという考え方からいろいろお考えをいただかないと、また昨年のような状態になろうと思いまするので、その点で自治省にもお伺いをしておきたいと思います。要望もしておきたいと思います。
  27. 大西正男

    ○大西説明員 お答えいたします。  先ど村山委員の御質問にお答えをいたしましたように、今年度の地方財政の状態は、地方税の減収の見込み額から申しまして六百ないし六百五十億になるかもわかりません。それから交付税の関係におきましては、三税の減があると思われるわけでございますから、それが四百五十億くらいになりますか、しかし、これは公務員給与改定に対する財源とは別個の問題でございまして、改定に応ずるということになれば、それがさらに財政に対する消極的要素として加わってくるわけだと思うわけでございます。  そこで、先ほど来お話のございましたように、五月から実施をするというふうになりますならば、一般財源の面におきましては七百四十億、それからかりに九月実施というふうに考えますと四百九十二億、こういったものが地方の給与に対する所要のものとなってくるわけでございます。ところが、先ほど申し上げましたように、財政状態が非常に悪くて、そうして減収が予想されるわけでございますが、地方団体ももちろん従来の積み立て金の取りくずしとか、あるいは所有財産の買却処分とか、あるいは経費の節減とかいうことをやらなければならぬでしょうが、それらはもっぱら減収によるところの穴埋めに向けられて終わってしまうのではないか、それに消えてしまうのではないかと思われるわけでございます。したがって、給与改定に伴う財源は地方には全くないのだというふうに申し上げても過言ではないというふうに思われるわけでございます。したがって、これに対する所要の財源については、自治省としては、どうしても国のほうにおいて所要のものを補てんしていただくということでなければ、問題は解決をされない、かように思うのでございます。  ところで、従来は、三十五年、六年、七年、八年までは幸いにいたしましてむしろ税収その他の自然増がございましたので、これによって給与改定に伴う所要財源についてはまあ一応スムーズに処理されてまいったわけでございます。ところが、昨年度におきましては、御承知のように、給与改定に伴う地方公共団体の所要額は六百億円であったわけでございます。これに対しまして、昨年度は地方税の自然増が百十億くらいございました。それから交付税の補正増が百五十九億くらいあったわけでございます。それから既定経費の節減が百八十一億くらいあったわけでございます。したがって、それらが給与改定のほうに回されたわけでございますが、それでもなおかつ百五十億の不足額を生じたわけでございます。そこで、これに対しましては、もうすでに皆さん御承知のとおりに、特別の措置をとりまして、交付税特別会計において借り入れ金を行ないまして、これによって措置をしてまいっておる次第でございます。ところが、四十年度におきましては、先ほど申し上げましたように、こういう自然増とかいうものが期待をされないのみならず、逆に減収になる見込みなのでございまして、そういう次第でございますので、地方自治体におきましては、とうてい給与改定に振り向けるべき財源を期待することは、困難というよりも、むしろ不可能であろう、このように考えられる次第でございます。したがって、これに対しまする措置の方法などは、従来の例をももちろん参考といたしまして方法は考えなければなりませんけれども、根本的に国のこれに対する財源措置をしていただかなければ、とうてい地方はこの改定に応ずることはできない状態である、こういうことなのでございます。
  28. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 地方自治体の財政状況とこれに対する要望の点は、いまの答弁でわかりましたが、いずれにいたしましても、昨年まではあれやこれやと手を尽くして、百五十億円程度の不足で交付税でまかないをいたしましたけれども、ことしの場合は完全実施ということになると七百四十億、去年のように九月からということになっても四百九十二億円くらいという見込みを立てておられるが、この金は地方ではとうていまかなえぬので、借り入れなりいろいろな方法があるでしょうけれども、国のほうにすがらなければならない、こういうことでございます。この点は、大蔵省のほうへもただしたりお願いをしたりしなければならぬと思います。  そこで、これも大蔵省か法制局でないとわからぬのだが、おわかりになりますれば、大臣からでも次官からでも局長のほうからでも答弁していただけばよいのですが、安全実施をする、五月から実施をするけれども、いろいろまかなっても財源が九月までくらいしかない、こういう場合があると想定したときに、十月から三月までの六カ月分足らぬわけになりますね。この六カ月分は、完全実施ということをきめたのだから、これはまだ労働者にいつかは払わなければならぬ借金になるんだが、これを四十一年度の予算の中で出すというこのやり方は、財政法上何も疑義がないかどうか、この点をおわかりになる方で御答弁をいただきたいと思います。
  29. 安井謙

    ○安井国務大臣 これは専門家がお答えしたほうが的確だと思いますが、年度内に起こった出費につきましては年度内に片づけるというのがたてまえになっております。おそらくこれを見送って四十一年度でその不足分を補充するということは、非常に困難な問題であろうと私どもは考えております。
  30. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 法制局長官に聞いて法の改正をどうしたらできるとかできぬとかいうことをちょっとたださなければわからぬと思いますけれども、いまちょっと、どこの国だったか、資料を置いてきましたので頭に浮かびませんけれども、外国ではそういうような措置をとっておるところがあるように思うわけなんです。これはイギリスだったかどこでしたか——首を振ってみえますけれども、これはおそらく大体御存じだと思いますが、だからこういうことも、最悪の場合は五人委員会の中で検討の中に入れて、そして検討をしてもらわなければならない場合もあろうと思いまするので、私は一応質問を申し上げたわけです。  そこでなお、これは大蔵省がいないとまことに困るのだが、自治省のほうは、いまのところでは何といっても国のほうへおすがりをしなければならない、こういうことなんです。その方法として、たとえば七百四十億要るんだが、この財源を確保するには国のほうから借り入れでどれだけやってくれとか、公債でどれだけやってくれとか、何かこういうようなことを具体的にお話しにならないと、話し合いをされるときに弱いと思うのですが、こういうことについては、一応省内の話し合いはされておられるかどうか、この点をお伺いをいたしたいと思います。
  31. 大西正男

    ○大西説明員 方法につきましては、ただいま申し上げましたようにいろいろ考えられると思うのでございます。結局地方公共団体におきまして、改定に即応する財源がないのでございますから、根本的に国においてこれが措置をしてもらうよりほかに方法はない。したがって、わが省の大臣におかれましては、この問題についてはもう前々から肝胆をお砕きになっておりまして、大蔵大臣その他当局と随時交渉をされている、このように承っております。
  32. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 金が足りないから何とか大蔵省のほうでくめんをしてくれという、そういう交渉はおそらくされていると思いますが、その内容については聞いておられませんですか、次官としては。
  33. 大西正男

    ○大西説明員 詳細は承っておりません。
  34. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 少しは聞いておられますか。
  35. 大西正男

    ○大西説明員 いまの段階では、先ほどいろいろ数字を申し上げたわけでございますが、しかし、九月末の決算は十一月になりませんとその詳細は判明をしないわけでございます。そうして国家公務員に対する措置というものの方途が判明いたしませんと、地方のほうもそれに従うわけでございますから、まだ不確定的な要素が多分にあるわけでございます。したがって、具体的な方法ということについては、いま確定的にこの方法によってというふうなことを申し上げる時期ではないのではないかと思うのでございます。しかし、いろいろの方法を考えつつあるということは申し上げてけっこうだと思うのでございます。そういうことで、根本的な問題について大臣は全力をあげて大蔵大臣その他と折衝をされている、このように承っております。
  36. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 五人委員会があるのだから、五人で相談をしなければなりませんので、大臣に聞いて五人の意向をぴたりと答弁していただけるかどうかわかりませんけれども、いまの自治省の次官の答弁からいきますと、十月にならないと、税収入とかその他そうした関係を明確に数字的につかむことができないというお話もありましたが、大体この人事院勧告をどうするのかということを五人委員会で決定をして国会に提案をされる時期は、まだ全く不明であるか、大体めどをどの程度に置いて努力されているというような点があるのか、この点もひとつお伺いいたしたいと思います。
  37. 安井謙

    ○安井国務大臣 五人委員会の第一回目の会議におきましては、いま自治省の政務次官のお話もありましたように、まず九月の決算の大めどをつけることが第一の仕事である。それにはちょっと九月中には間に合わない。また大蔵大臣が外国に行かれるというような事情もありまして、まだ具体的な結論を出す時期に至っておりませんし、また具体的な検討にまだ入っていないことも、事実でございます。したがって、九月の決算をある程度めどにするという要素は、この次に出てくるわけでございますが、それではいつごろに大体見当をつけるのだろうかというお話でございますが、私どもは、これは国会その他の関係で的確には申し上げられませんが、例年に準じた時期にはひとつ結論を出すように努力をしたい、こういう目途で進めております。
  38. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 例年に準じたということは、常識的に出さなければやかましくなるからということもあろうと思いますが、そこで公務員共闘会議のほうは、早期に結論を出してもらいたい、また完全実施をしてもらいたいということを強く要望もし、そうして組織の行動としてやはりいろいろなスケジュールを持っておるわけでございます。それぞれの単位組合としては、そうした大まかな目標に向かって大会等でこの賃金闘争に対する態度をきめつつあるというのが、実態であるわけなのです。したがって、私どもは、一番最初に私のほうから申し上げ、また大臣のほうからもきわめて常識的にこうあらなければならないという点をお話しになりましたように、できるなれば公務員共闘会議がいろいろとがたがたし、そうしてその勢いでまた処分を受けるようなそういう行動をしなくとも、これは政府のほうで早急に結論を出されて、国会に提案されることが、最も重要であろうと思います。私は、公務員労働者のみならず、日本の労働組合、日本の労働者が、いつも賃上げやら合理化の段階でがたがたすることを好むものではないわけです。そういうことはしなくてもいい社会にしなくてはならないし、また政治の面で打つ手は打たなければならないと思うので、そういうような点でこういう公務員動きというものを大臣のほうでは現在十分に把握されておるかどうかということも、ここでひとつ念を押しておかなければ、その時点でまた私のほうからいろいろとお願いをしたり、抗議をしたりする場合もあろう、こう思うので、ひとつお聞きをしておきたいと思います。
  39. 安井謙

    ○安井国務大臣 公務員共闘の代表の方とも二度ばかりお目にかかりまして、いろいろお話をしております。大体当委員会で御答弁申し上げたような趣旨のことをお答えしておるわけであります。そこで、そういう意味政府も極力努力はいたします。公務員の方のお気持ちもできるだけ尊重してやりたいということで、その話し合いはいたしておるわけであります。
  40. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 給与担当大臣は、この問題は特に自分の問題としてお考えになっておられるから、公務員共闘会議等からいろいろ話し合いをしたいという申し入れのあった場合には、万障を繰り合わしてお会いになって、公務員労働者の集約した意見を聞き、そして話し合いに応ぜられると思いますけれども、これは給与担当大臣だけでなしに、自治大臣もあり、それから特に大蔵省に強い交渉もしなければならない内容が内面にあろうと思いますので、こういうことを考えてみますると、これからの政府の取り組む態度というものは、これはほんとうに問題を解決するという態度で応じていただかなければ、いやきょうもせわしいのだ、あすもせわしいのだという口実をもって話し合いの申し入れを拒否されてきますと、ますます労働組合のほうでは硬化してまいりまするので、そういう点につきましては、いまおいでになるのは自治省と給与担当大臣でございますけれども、大蔵省も含めて私はひとつ積極的に解決のために話し合いの相手になっていただきたいと思うわけですが、その点は御異論ございませんでしょうな。これは自治省のほうにもお伺いをするわけなんです。
  41. 安井謙

    ○安井国務大臣 先ほど申し上げましたように、私ども公務員共闘の代表の方とはお話し合いをするにやぶさかじゃないわけであります。ただむやみにのべつまくなしにお会いしましても、結論の成果を得るものでもございませんので、時期や方法はできるだけ有効にやりたいと思っておる次第でございます。
  42. 大西正男

    ○大西説明員 御趣旨の点は大臣にもお伝えをいたしまして、善処いたしたいと思います。
  43. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 大蔵省のほうの出席が大体延びておりますし、また次長でなしに、これはぜひとも最低局長には出ていただきたいと思いますし、また自治大臣のスケジュールがどうなっておりますか、自治大臣に対しての要求もこれからしておきたいと思いますが、そういうことできようは人事院のほうに具体的に質問をすれば幾らでもありますけれども、それはまた正規に審議する時期に譲りまして、きょうは、残念ですけれどもこれで質問を終わりたいと思います。
  44. 河本敏夫

    河本委員長 次会は明十月一日午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十八分散会