運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1965-08-12 第49回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年八月十二日(木曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 岡  良一君    理事 菅野和太郎君 理事 前田 正男君    理事 石野 久男君 理事 田中 武夫君    理事 原   茂君       秋田 大助君    小沢 辰男君       大泉 寛三君    藤尾 正行君       河野  正君    三木 喜夫君       山内  広君  出席国務大臣         国 務 大 臣 上原 正吉君  委員外出席者         原子力委員会委         員       有澤 廣巳君         宇宙開発審議会         会長      兼重寛九郎君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   小林 貞雄君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局長)   村田  浩君         総理府技官         (科学技術庁研         究調整局長)  高橋 正春君         総理府技官         (科学技術庁宇         宙開発推進本部         長)      高木  昇君         文部事務官         (大学学術局審         議官)     岡野  澄君         参  考  人         (東京工業大学         教授)     岡本 哲史君         参  考  人         (朝日新聞社論         説委員)    奥田 教久君     ————————————— 八月十二日  一、科学技術振興対策に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(宇宙開発及び原  子力行政に関する問題)      ————◇—————
  2. 岡良一

    岡委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  本日、宇宙開発に関する問題調査のため、参考人として東京工業大学教授岡本哲史君及び朝日新聞社論説委員奥田教久君の御出席を願っております。  この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用のところ、特にまたきびしい暑さのところを本委員会に御出席をくださいましてまことにありがとうございました。どうかそれぞれのお立場において忌憚のない御意見を御開陳くださるようにお願いを申し上げます。  なお、参考人の御意見の開陳はお一人約十五分程度といたしまして、後ほどの委員の質疑の際には十分お答えをくださるようにお願いを申し上げます。  それでは岡本参考人からお願いをいたします。岡本哲史君。
  3. 岡本哲史

    岡本参考人 きようはどういうことをお話し申すべきかというような十分な連絡がこざいませんでしたので、簡単に順序もなく申し上げたいと思います。  科学技術庁にございます審議会で現在このような問題の体制なり開発方針というものを審議中でございますけれども、詳細を存じませんので、きょう申し上げますのも最近の情報に関するものは存じませんから若干ピントがはずれているのではないかというような点があるのではないかと思いますが、御質問がございましたらそのつど所見を申し上げるというふうにしたいと存じます。  開発初期段階といいますか、実際の開発実施面初期段階といいますのは、御承知のように高層大気あるいその上若干ですけれども、その観測というのが最初段階でありまして、第二段階に入りますと人工衛星、それから月、火星金星ロケットを打ち上げるというのが第二段階であるというように考えます。使用しますロケットも、初期段階観測ロケットと称せられまして、特色は全然誘導しないで打ち上げます。スピードも標準状況の音速三百四十メートル毎秒というのを基準にして申しますと、マッハ数が十以内というふうに考えられます。第二段階開発に使用するロケットマッハ数でいいますと人工衛星用ロケットについては二十三・五以上であります。それから月、火星金星ロケット用マッハ数は三十三以上というようになっておりまして、当然人工衛星以後の第二段階には誘導するというのが重要な特色になっております。そのように考えますのは、人工衛星を打ち上げようというロケットに対しまして誘導するというのがたてまえであります。誘導しないで上げるといいますのは正道ではない、そのように考えますと、人工衛星を打ち上げるロケットといいますのは、観測ロケットターミナルであるというふうに考えるべきではなくて、観測ロケット観測ロケット分野で完成されるべきグループであります。人工衛星のほうは全然別個に開発の第二期に当たりまする誘導する分野最初ロケットである、新規なロケットであるというふうに考えるべきであると思います。ですから、現在人工衛星を上げますロケット開発について、観測ロケットターミナルだというような考えが非常に多いのじゃないかと考えられますが、観測ロケットという分野とは切り離して新出発すべきじゃないかというように考えます。  それから人工衛星科学衛星を上げるというような計画がありますけれども、そういった非常に大きなロケットが完成されました後はどうするのか、通信衛星とか気象衛星のような実用衛星を上げる気があるのかどうかというような点に応じまして、ロケット開発の要領といいますか、設計方針のようなものも変わってくるのじゃないか。現在では大急ぎで科学衛星を上げたい、その後は知りませんというような状態ではないかというふうに考えられます。  それからまた開発機構といいますか、体制ですけれども、将来の人工衛星を上げます種類科学衛星以外の実用衛星を上げるというような種類がはっきりしないと、開発機構体制も整えられないのではないかというように考えられます。  きょう考えてまいりましたのはその程度でございますけれども、御質問がございましたらそのつど申し上げたい。全然準備をしてまいりませんでしたので、序論はその程度とさせていただきたいと思います。
  4. 岡良一

    岡委員長 次に、奥田参考人からお願いをいたします。
  5. 奥田教久

    奥田参考人 私は若干準備をしてまいりましたので、岡本先生の時間を多少いただきましてお話申し上げたいと思います。  現在私は宇宙開発、特にロケットやミサイルに関しまして全くのしろうとでございます。ただ納税者として、また一般国民としての立場から、わが国の宇宙開発現状につきまして日ごろから若干考えておるつもりでございます。  重要な科学研究技術開発につきまして国家が多額の研究費開発費を出して、重点的にこれを援助するということは、戦後、特に最近の世界各国に共通した傾向でございます。そのこと自体いまさらここで論ずる必要はないと思います。ただ、国民税金をさいて重点的に投入するにあたりましては、そこに十分慎重に練られた計画があって、かつ、その成果や進行の過程は、かけ引きなく国民に報告されるべきである、さらに技術的な諸問題に関しましては、できるだけ多くの専門家がその評価や検討に参加し得る体制が必要である、かように私は考えるものであります。  ところが、現在、日本宇宙開発につきまして、私はかなりの数の専門家からもいろいろと批判の声を聞いております。しかし、そのような批判意見自由濶達に表明される、発表することができないようなそういった雰囲気が現在あるように私は感じております。たとえば同じ東大の中の教授、あるいは同じ東大宇宙航空研究所の中の先生にいたしましても、個人的にはいろいろ批判の声があるにもかかわらず、それが単に陰でささやかれているといったような状態が感じられるのであります。このような異常な雰囲気がどこから出てきているかということにつきましてそれはまたしばらく別におきまして、私は率直に多くの人人が自由に話し合える雰囲気というものがつくられる必要がある、これが第一だというふうに考えます。はっきり申し上げまして、いまの東大グループのなさっていることに意見あるいは批判を差しはさむというとけがをしますよ、けがをしますよといったような表現の忠告さえ私は聞くことがあるのであります。私は糸川教授も親しく存じ上げておりますし、ここにお見え高木先生も実は私の大先輩でございます。しかし私は最初に申し上げたように、納税者国民の一人としてやはり申し上げるべきことは申し上げたい、あるいはそれがまた間違っているかもしれませんけれども、みんなが自由な雰囲気意見を述べ合うというようなことが必要ではないかと考えます。  私は、まず第一に、日本宇宙開発は一歩一歩地固めすることなく先を急ぎ過ぎているのではないか、そういうことを指摘したいと思います。去る六月二十日に日本学術会議宇宙空間研究特別委員会が開きました科学衛星シンポジウムというのがございますが、ここにお見えの、委員長兼重寛九郎先生が開会のあいさつでかように述べております。御本人を前にして申し上げるのはたいへんなんでございますが、「私がかねがね感じておりますことは、宇宙科学研究にはロケット開発以外にもしなければならぬことがたくさんあるということであります。一般大衆がそれを理解しないことは無理からぬことといたしましても、専門家の間でも最近までは十分関心が高かったとはいえないのではないかということでもあります。私はこういう立場にいる関係で、数年前から何回となく、アメリカNASAから将来打ち上げを予定されている科学衛星に対する観測希望申し出の勧誘を受け、そのつど関係者に取り次いできました。しかし残念ながら今日まで一度も応募の取り次ぎをすることができませんでした。こういうことは何年先にどうするという計画を立ててやるのではなく、平素からいろいろなところで自発的に研究が進められ、予備的な実験くらい済ませてあるようなオリジナルな構想があちこちにあるという状態になっていないとだめだろうと思います。」こういうふうに兼重先生は述べておられます。もしも兼重博士の言われるとおりであるとするならば、何も一年や二年を争って急いで科学衛星を打ち上げなければならないという必然性考えられないわけであります。また、航海衛星気象衛星通信衛星といったような実利性科学技術庁では大いに強調しておられますけれども、原子力などとは違って、これもそんなに大騒ぎしていますぐ急に推進しなければならないものであるかどうかという点につきましては、かなりまだ疑問があるかと思います。むしろ私はいま当事者たちが大いに宣伝し、人工衛星を一刻も早く打ち上げないと日本が滅亡するかもしれないといったようにおっしゃる陰には、いろいろな意味での非常に政治的な、あるいは大きな政治的な、あるいは小さなかけ引きといったような色彩の濃いものがあるのではないかと勘ぐらざるを得ないのであります。かりにも大学科学衛星ではなくして政治衛星をお打ち上げになる努力をしているというのであれば、これははなはだ残念なことだと私は思うのであります。  そこで日本現状を見ますと、兼重先生も言われておりますように、何が何でもロケットだと、ロケット開発だけで頭が一ぱいのように見受けられます。西欧諸国では、まず人工衛星をつくって、アメリカに頼んで打ち上げてもらっている、それと並行して自分の国の、あるいは各国が共同して人工衛星打ち上げ用のロケット開発を進めているというのが現状であります。日本では、アメリカに頼んで打ち上げてもらったのでは、ロケットに関する限り、あるいは人工衛星に関する限り、手続も非常にめんどうだし、金も時間も案外相当にかかる。しかも日本には技術が何も残らない、そういうような意見が大きな声で語られておりますけれども、考え方としては、とにかく人工衛星観測をするということが第一であります。打ち上げロケット開発は無理をしないで慎重に、しかも将来長く使えるというが、十全なものをつくるという線で、そういう線が当然まじめに検討されてしかるべきじゃないかと私は考えます。  次に、東大昭和二十九年ごろから開発に着手されてこられた一連のロケットについて意見を申し上げたいと思います。  糸川教授らが長さ二十三センチメートルの例のペンシルロケットから始められたロケット開発は、IGY国際地球観測年と結びつきましてカッパー6型、8型、さらにラムダミューといったような驚くべき進歩を遂げております。私は、この間に精力的に続けてこられた東大ロケットグループ方々、その方々開拓者精神、またそのたいへんな御努力に対しまして心からの敬意を表するものであります。  しかし、ここに二つの問題が起こると思うのです。第一は、東大観測ロケット世界一流完成品なのであるかということであります。第二は、これまでに開発してこられた観測ロケットをそのまま延長して人工衛星を打ち上げるという考え方は、一体技術的に見て妥当なのか、あるいはまた可能なのかという問題であります。  第一点の、東大はすでに観測ロケット実用化を終わったのかどうかという問題ですけれども、最近開かれた科学衛星シンポジウムでの御発表を見る限りでも、まだまだ改良を加えて定常的な観測ができるようにするための努力を行なうべき余地が多々あるのではないかと私は考えるのであります。過去のことをほじくるようではなはだ心苦しいのでありますが、IGY期間中に打ち上げられた東大観測ロケットは、いろいろな数の数え方があると思うのですが、例のシンポジウムで御発表のものでは十三発だそうであります。そのうち九発は、まあ観測はほとんど失敗でありまして、四発が成功をなさったと報告されております。しかし、その四発も例の発音弾法という方法によりまして温度、風向、風速が測定されたということになっておりますけれども、その発音弾発射の高さの正確な測定が困難であったためかどうか正確なことは存じませんけれども、学術的に信頼するに足るほどのデータはあげ得なかったのではないかと聞いております。その点はあるいは邪推かもしれませんけれども、しかしおしなべて国民は、東大ロケットは高度何キロメートルに打ち上がったということを聞くのみでありまして、その後のラムダに至る実験もすべて、ある人のことばを使えば、花火の打ち上げのように高度記録ばかりが強調されているのであります。それは新聞記者が悪いのだ、こういうふうにおっしゃるかもしれませんけれども、新聞記者というのはロケットやそういったものの専門家ではございません。ただ権威ある東大発表をうのみにして報道せざるを得ないのであります。  試みに、日本がはるかに引き離したと称するフランス観測ロケット、つまり日本フランス引き離したと日本で称されておりますところのフランス観測ロケット性能と比べてみましょう。カッパー8型と比べまして、高度並びに観測器搭載重量、これがほぼ同じもの、高度大体二百キロメートル、有効搭載重量が大体四十ないし五十キロというふうなものにフランスサントールという観測ロケットがございます。これはカッパー8型と大体同じで固体燃料の二段式でございます。カッパー8型は各エンジンの燃焼時間などがあまりはっきり公式には明示されておりませんので、いわゆるトータルインパルスとか全推力、トータルスラストといったような形で比較することは困難かと思いますが、昨日提出されましたカッパーの比推力という数字がございます。この比推力は、これによりますと二百二十ないし二百四十秒という数字が出ておりまして、これは岡本先生に伺えばわかると思うのでありますが、固体推進薬性能としては相当優秀なものだと言うことができると思います。サントールのほうは第一段エンジンが二百秒なんです。二段目は二百三秒にすぎません。こういったようなかなり優秀な数字はあちこちに発表されておりますが、ところができ上がったロケットというものを考えてみますと、カッパー8型の全重量、つまり発射時の重量というものは約千五百キログラムと発表されておりまして、サントールのほうの全重量は四百八十キログラムと出ております。つまりサントール東大カッパー8型の三分の一の目方でできておるわけであります。そして同じペイロード、同じ観測器を同じ高度に打ち上げることができる。寸法も直径、長さともほぼ半分でございます。そのからくりは一体どこにあるのか。これは私どもしろうとには全然わかりませんが、しかも、なお、フランス、イギリスをはるかに引き離したというふうに何度も御発表というか言われておるのはどういうことであろうかと私は思うのであります。  ついでながら申し上げますけれども、昭和二十九年の六月十四日に東大生産技術研究所ロケットグループが、つまりペンシルを始める前です。ちょうどその寸前にペンシル計画と申しますか、将来どういうことをやるかという計画を御発表になっております。これをAVS計画と言うのだそうでありますが、その計画によりますと、ことし昭和四十年には国内ロケット旅客機第一号が飛行していたはずでありまして、四十五年には太平洋横断二時間半のロケット旅客機第一号ができておる、昭和五十年には太平洋を二十五分で横断する超高空ロケット旅客機が完成するはずであったのであります。また、IGY期間中に、気球からロケット発射するロックーンという方式によれば、非常に安上がり観測ができるというふうに力説されまして、このロックーンが十三基作製されたと聞いております。そのシグマ2型ロケットはその後一体どうなったかと申しますと、二号機が地上で火を吹きまして、三号機以下はIGY用ロックーンとしては危険であるからということで中止されたようであります。また気球からロケットを打ち上げれば人工衛星軌道に乗せるのに非常に安上がりで済む、つまりサティルーンという計画も一時は盛んに宣伝されたわけでございますけれども、いつの間にか消えてなくなっております。卓抜なアイデアは大いに出していただきたいけれども、それを実施軌道に乗せるにあたっては、十分慎重に御検討お願いしたいというのが納税者としての感想でございます。  とにかく、ただいまフランスサントールというロケットとの比較を一例として申し上げたのでありますが、東大観測ロケットはそういった有効荷重対全重量比と申しますか、ペイロードレーションというものから考えてみただけでも、まだまだ改良余地が非常にある。高木先生が御自身でも認められておりますように、観測ロケット姿勢制御も行なうようにする必要性というものが最近特に高まっているというふうにいわれております。ですからまだまだ御研究になる、あるいは性能向上余地はたくさんあるのではないかというふうに考えるのであります。  次に、第二点の、観測ロケットの延長ではたして人工衛星打ち上げ用のロケット開発することが妥当であるか、また可能であるかという問題でありますが、この点につきましては岡本先生からすでに御指摘があったので簡単に申し上げます。東大ミューロケットによる人工衛星打ち上げの計画の最大の特徴は、誘導制御を行なわないで、単に終段ロケット姿勢制御だけで人工衛星水平方向発射するということであります。これは世界のどこでもやっていない実に独創的なアイデアだそうでありまして、それだけに、これは、専門家の常識からいって、きわめて大きな冒険だという批判の声が聞かれるのであります。この点につきましては、おそらく東大の御発表によりますと、最終速度十分余裕をとってあるからして、予定の水平方向よりも上下にプラス、マイナス五度くらいの範囲のズレならば左右に二十度ないし二十五度ぶれても人工衛星軌道に乗るということになっておりますが、私の解釈がもし誤っていないとすると、この人工衛星は相当な範囲、どこへ飛んで行くかわからないけれども、しかしとにかくまあ乗っかるのだ、人工衛星になるのだ、こういうような考えをあらわしているものではないかと思うのであります。もしも政治衛星ではなくして科学衛星であるというならばやはり打ち上げロケットはもっと精度の高いもの、たとえ失敗してもよろしいけれども、やはりもっと科学的なものであるべきじゃないかという考え方は、はたして私どもしろうとの暴論でございましょうか。まぐれでもいいから、とにかく軌道に乗ればいいというのならば別問題だと思います。  誘導制御という観点からいえば、これもしろうとが申しますとなんでございますけれども、当然液体ロケットというものも考慮すべきだと思うのであります。特に、将来を見通した場合に、そういった問題が起こってくる。固体ロケットをどうしてもやるとおっしゃるならば現在アメリカスカウトロケットと比較するのが一番当を得ておると私は考えます。スカウトと申しますのは、固体燃料の四段式のロケットでございます。スカウトロケットNASAの資料によりますと、標準の打ち上げ能力は五百五十キロメートルの高度に百九キログラムの衛星打ち上げが可能でございまして、現に一九六二年の十二月十六日には百キログラムのエクスプローラー16号を高度七百五十五キロから、つまり近地点七百五十五キロ、遠地点千百七十キロの軌道に打ち上げております。また重さ六十一キログラムの航海衛星トランシット5Aを約七百キロメートルのほぼ真円軌道、つまりまんまるな軌道に打ち上げたりいたしております。ですから東大が御計画ミューは五十ないし百キログラムの科学衛星を高度五百ないし千キロメートルに打ち上げるというのだそうでございますから、この両者は完全に同じ高度の軌道に同じ重量物を打ち上げるというふうに考えられる、つまり好敵手でございます。ところがスカウト発射のときの全重量がわずかに十七・五トンでございます。ミュー発射重量はよくわかりませんけれども、一段目のまわりに八ないし十本のカッパー8型のブースターをつけるというような御説明もあり、あるいは一説には四本だというような説もございます。その辺のところはよくわかりませんけれども、控え目に見ても総重量は少なくとも四十トン以上だと思うのであります。つまりミュー目方スカウトの少なくとも二倍以上でございます。この違いが一体どこからくるのか。これは私どもしろうと考えますと、おそらくスカウト一段から三段まで全部ジャイロで誘導制御ができるようになっております。したがって、そのところから出てくるのかと思うのでありますが、とにかく大きさや重量はしばらくおくといたしましても、スカウトは、たとえば航海衛星トランシットのごときほぼ真円軌道、まんまるな軌道にちゃんと人工衛星として打ち上げることができるのであります。  時間がございませんので、先を急ぎます。私は全くのしろうととして、このミューロケットによる人工衛星打ち上げ計画に非常な危惧の念を抱くとともに、そうまで無理をして、なぜ人工衛星の打ち上げを急がれるのかということをたいへんふしぎに思うものであります。別の言い方をしますと、ほんとうに関係者の衆知を集めて練られた計画であるかどうか、これは疑わざるを得ないのであります。失礼ではありますけれども、かつてのロックーン計画サティルーン計画などを若干思い出さずにいられません。しかも五年間に約二百十七億円の税金をお使いになるというのならば、これも必ず不足して、さらに追加して出してくれということが必要になってくると思うのでありますけれども、当事者だけではなくて、批判的な専門家方々も含めて徹底的に検討していただきたい。  こういったことを学界で自主的に検討する機関として、日本学術会議というものがあるはずであります。その宇宙空間研究特別委員会というものは当然そういう役目を果たすべきものでありましょう。しかし現実は、これは邪推かもしれませんけれども、学者同士なあなあ主義で、当事者意見なり計画なりが単に素通りしている。言いかえれば、単なるトンネル機関となっているのではないかとさえ私は推測するのであります。もし東大計画が現実にスタートして、にっちもさっちも行かなくなった場合には、大学の名誉を失墜するということだけではなくて、国家の威信というものも逆におとしめる結果となるでありましょう。  私は、原則として、大学というものは、将来につながるもっと基礎的な研究をおやりになるのが大学の本来の任務であり、メーカーや国の研究機関でもできる、あるいはメーカーのほうがもっと優秀であるような製作研究、あるいは衛星の追跡だとか保安だとか対外交渉といったような現業的な仕事はおやめになったほうがいいのではないかと考えます。それに、大学付置の研究所の、またその一部門だけが予算、人員、資材面で異常にふくれ上がるということは、機構的に申し上げてもおかしいし、現実にいろいろな障害を招くおそれがあるのであります。要するに、東大観測ロケット実用化でもってロケット製作の実際的研究に一線を画されて、人工衛星まではお進みにならないほうが賢明ではないかと私は考える次第でございます。  では日本人工衛星を打ち上げるといたしまして、どのような体制が必要かということでありますが、昨年二月の宇宙開発審議会の三号答申、これにはっきり書いてございます。この答申作成にはおそらく高木先生も糸川先生も御参画になったはずでございますが、それによりますと、ロケット人工衛星の試作、打上げの実施ならびにこれに直結する研究等を強力に推進するため、科学技術庁に新たに宇宙開発推進本部を設置すべきであると書いてあります。また「宇宙科学の探求のために観測ロケットを用いて行なう学術上の研究は、」「新たに大学の共同利用研究所として宇宙航空研究所を設置し、これを中心として研究を充実すべきである。」というように書いてございます。大学先生がメーカーとの折衝に当たったり、あるいはロケット輸出のセールスマンと間違えられたり、あるいは旗を振ったり、外国政府と交渉したり、そういうようなことをもしも無理やり大学先生に押しつけられるような事態が生ずるとするならば、それは大学先生方に対してはなはだ失礼であり、たいへんお気の毒な次第でございまして、国としては大学先生の頭脳を頭脳として大いに活用すべきである、私はこう考えます。  それでは、科学技術庁という役所は、東大に比べますと、ロケット開発の実績が幾らもない、スタッフもないじゃないかというような御意見が出ると思います。私は、科学技術庁を弁護するつもりも、また義務も義理も毛頭ありませんけれども、科学技術庁というのは、そもそも各省に属しないこういうような研究開発を推進するのが本来の重要な任務の一つであります。原子力とか宇宙開発とかいうのは、その設置法に照らしてみても、科学技術庁にやらせるのが当然であると考えます。必要ならば、大学研究者の御協力を求めればよいのであります。原子力につきましては、現に大学研究者が協力されているわけであります。科学技術庁に実績が乏しいのは当然でございまして、科学技術庁宇宙開発をやれということがきまったのはまだ五年前にすぎないからであります。どうしてもロケット人工衛星の打ち上げが好きで好きでたまらない方がおありになれば、進んで大学から科学技術庁に移っていただくのがよろしいかと思います。  最後に、いまの宇宙開発推進本部は、科学技術庁の一外局にすぎないではないか、内局の研究調整局長の区署を受ける、そんな弱体な機構ではだめだ、アメリカNASA、航空宇宙局にも匹敵するような機構をつくれというような御意見もございますけれども、私は、そんな大げさなことはいますぐやらなくともいいのではないか。いまの形で当分は十分にやっているのではないかというふうに考えます。現在の問題は、東大が自分のところで人工衛星を打ち上げるんだとおっしゃっているところにトラブルが——トラブルかどうか知りませんけれども、問題が起こっているのでありまして、その点話し合いさえつけば宇宙開発推進本部で十分だと私は思う次第でございま。将来それでもなお、うまくいかないというのならば、そのときにあらためて考えてみても決しておそくはないと考えます。それよりも、佐藤総理や愛知長官がかつて言明された、科学技術庁が打ち上げるという人工衛星計画の長期計画というものをなぜ早く公表しないのか。一刻も早く公表して多くの人の検討を受けるべきであると思うのであります。  以上、私が申し上げたことを要約いたしますと、第一に、宇宙開発、特に人工衛星の打ち上げは、無理をして急いでやるべきではない。周到なじみちな計画のもとにやるべきであるということであります。  第二に、東大は三号答申の線に沿いまして、観測ロケット実用化と基礎的研究にもっと力を注ぎ、人工衛星の打ち上げ実施まで進むのはやめるべきであるということであります。  第三に、人工衛星ロケットの試作、打ち上げの実施などは、やはり三号答申に従いまして、科学技術庁の宇宙開発推進本部が担当すべきであるということ。  第四に、以上のような分担さえはっきりいたしますならば、一元的な強力な機構の新設は当分の間必要がないのじゃないか。  以上、四点であります。
  6. 岡良一

    岡委員長 以上で参考人からの御意見の聴取は終わりました。     —————————————
  7. 岡良一

    岡委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。石野久男君。
  8. 石野久男

    ○石野委員 参考人に一、二の点をお聞きしたいと思います。  私は、宇宙開発問題についてはまだ十分な勉強をしておりませんが、ただいま参考人奥田先生からのお話で、しばしば政治ロケット、科学ロケットということばが出ておりますが、先生が言われる政治ロケットという意味は、どういうような意味でございますか。それを先にひとつお伺いしたい。
  9. 奥田教久

    奥田参考人 その点につきましては、小さな意味の政治ロケットと大きな意味の政治ロケットといろいろございます。一つは、やはりこれまでやってきたのである、したがって、少なくとももっと先に進みたいというためのいろいろのかけ引きのようなことも政治ロケットの一つかと思うのでありますが、しかし、もっと大きな意味で、たとえば米ソを含めまして各国人工衛星を打ち上げるということは、これはかなり政治的な効果というものをねらっている面がございます。現に、わが国が宇宙開発をなぜ進めなくちゃいかぬかということについては、たしか二号答申だったかと思いますけれども、わが国の国際的な地位を高めなくちゃならぬということが書いてあったかと思います。そういうような意味で、最近ではたとえば中共が核実験を行ない、かつ人工衛星の打ち上げも近く行なうかもしれない、それに対処して、もしもいきなり中国が人工衛星などを打ち上げた場合に日本国民に与えるショックは非常に大きい。したがって、そういったショックを緩和するために、あるいはショックをなくすために、日本も一刻も早く、どんな衛星でもいいから人工衛星を打ち上げなくちゃならないという議論もあるやに聞いております。また、その議論はかなり考えるべき議論ではないかと私は思うのであります。そういったようなものも含めて、政治衛星というようなことを申し上げたつもりでございます。
  10. 石野久男

    ○石野委員 そうしますると、御趣旨は、なるべくそういうような意味での世界各国との競争心だけにあおり立てられないで、もっと基本的なものへの体制というものを、科学技術庁もそうだし、東大分野でも、またそういうようにいくべきだという御趣旨なのでございますか。
  11. 奥田教久

    奥田参考人 もちろんそういう意味も含めておりますが、世界の大勢に災いされないということだけではなくて、日本はそう金持ちの国ではございませんので、やはり乏しいお金で一番有効にそれを使っていくということが必要になってまいります。そのときに、こういう問題はやはり何となく国民的な景気をつけるということが必要かと存じますけれども、しかしその場合でも、やはりわれわれの税金を使ってやるのでありますから、かなり有効に、経済的に、しかも、じみちにおやりになっていただきたい、こういうふうに考えるのであります。
  12. 石野久男

    ○石野委員 たとえば東大ミューの打ち上げというのが、アメリカスカウトロケットと大体同じような規模のものを、非常に重量の大きなものでやるということは、まだその研究の過程においても十分整っていないのに、競争をあせるためにやっているのではないが、こういうような御趣旨と受け取ってよろしいわけですか。
  13. 奥田教久

    奥田参考人 競争をあせるということもございますけれども、非常によく申し上げますならば、世界の大勢におくれまいというような学者的なあせりといいますか、それもおありになることはそのとおりだと思います。それから非常に悪い言い方、悪い見方と申しますか、邪推して考えますと、やはり何か国内的な科学技術庁との対立ということで、そういったものが心理の底におありになるのではないかと私は心配するわけであります。ただ技術的に東大ミュー計画というのがほんとうに心配なのか心配でないのか、たいへんりっぱなものであるのかということは、私どもはしろうとでございますからわかりませんが、同じ重さの有効荷重を同じ高度に打ち上げるのに、そんなに大きなものをおつくりになると、どこかに無理があるのではないか、その無理が、世界で初めてやるたいへんりっぱなアイデアでなさるものだから、それくらいの重量は必要だということもいえますけれども、逆にいうと、何か相当な御無理をなさっているのではないかといったような懸念もされるわけであります。そういうことは専門家によく御検討お願いしたい。特に岡本先生のような方々の御意見も十分にくみ入れて計画を練っていただいたらどうかということを申し上げたわけであります。
  14. 石野久男

    ○石野委員 私はあまりこまかいことはわかりませんので、非常に幼稚な質問をすると思いますが、先生のおっしゃられる、宇宙開発についての今日の日本における現状からして心配だというのは、総力を一つのところに固めるということよりも、むしろたとえば東大なら東大科学技術庁なら科学技術庁というような、派閥といっては悪いかもしれませんが、そういうようなグループ別の争いごとといいますか、そういうものが非常に目立つのではないか。だからそれをもう少し体系立ててやる必要があるのではないかという御趣旨がきょうの先生のお話の本意であるというふうに聞き取ってよろしゅうございましょうか。
  15. 奥田教久

    奥田参考人 大体そのようなことでけっこうだと思います。ただ私は、東大の糸川先生はじめ、ロケット研究グループは、これまで非常に苦労をされて、それこそ多少の宣伝もまじえなければとても予算なども出していただけない。それが日本現状だと思うのでありますけれども、そういうことで、予算を獲得されるためにも非常な御努力をなさった。実際にもいろいろな御苦労をなさってここまでこられておるのであります。ですから、人工衛星まで打ち上げたいというお気持ちは、私は非常によくわかる気がいたします。ですから、もちろん東大のこれまでやられてきた方々技術というもの、学識というものはフルに活用しなくちゃいけないと思いますが、その際にこれもまた非常に忌憚なく申し上げますと、はたの者も悪かったと思うのでありますけれども、東大ロケット研究グループ方々は、かなり閉鎖的なかっこうでだんだんと事をお進めになられたんではないかと私は思うのであります。ですから、そこのところは、相手の科学技術庁が憎いといったように東大方々がお考えだと私毛頭考えておりません。ただ三号答申というものが昨年二月に出ておりまして、これは宇宙開発審議会がいろいろ衆知を集めて、しかも当事者も加わっておつくりになった線なんですから、その線はかなりあいまいな解釈もできるかもしれませんけれども、こういうものをうやむやにしたままお進めになるということは、今後、宇宙開発審議会とか、何とか委員会とか、そういったものの権威というものが完全に無視されるかっこうになるのですから、私はそういったところで出たもの——答申自体が悪いとおっしゃるならば、その答申をさらに変えてからなさるならけっこうですけれども、答申できめられた科学技術庁のほうの長期計画は一向に出てこない。しかも答申ではやることになっていない東大のほうのミュー計画がだんだんと声を大きくして出てくる。それは私はおかしいんじゃないかと思うのです。それならば宇宙開発審議会などはつぶしてしまえばいいと思います。
  16. 石野久男

    ○石野委員 もう一つだけお尋ねしたいと思います。宇宙開発について日本現状からして、たとえばきょうのお話には東大が出ておりますが、その他にもまだ大学なんかで研究しておるところがあるかと思いますが、そういうところと学術会議、それから科学技術庁、この関係宇宙開発の将来の見通しの立場からしてどういうふうに結合させていくのがいいか、現状ではそういう点でどういうような不備があるのかという点について、もし先生から御所見が承れればお聞かせ願いたいと思います。
  17. 奥田教久

    奥田参考人 たいへんむずかしい御質問でありまして、私といたしましては、郵政省あたりで宇宙通信の関係をやっておられる、あるいは運輸省とか建設省とかそれぞれいろいろおやりになっていますけれども、そういったようなものの研究調整をするのがまた科学技術庁の任務なわけでございます。研究調整とは何か。つまり交通巡査も非常な権力を持っておりますと、おいこらということを言えればたちまち調整がうまくいくわけであります。しかし交通巡査が非常に低姿勢で公僕、小使であるといった場合には、調整ということは言うべくして非常にむずかしいという危険があるかと思うのでありますけれども、ただ総合的な長期計画というか、総合計画というものを科学技術庁でお進めになれば、当然各省は御協力になると思うのであります。ところが、現在文部省とか東大ペンシルロケット以来のたいへんな実績をお持ちである。実績ということは予算的にも相当な実績をお持ちであるということで、科学技術庁の役人の言うことなどおかしくて聞けるかというような問題、事実、科学技術庁の設置法の中には、大学関係に属するものを除くという一項がございますから、法的にいっても、大学は必ずしも科学技術庁の規制は受けないというところに問題があると思うのであります。その場合に、ただ大学であっても——大学の基礎研究自体にこういう研究をしちゃいかぬとか悪いとかいうことをほかの省がつべこべ言うのは大学の自由を侵すものでありますけれども、この宇宙開発といったような総合的な、しかも現業的な非常な予算を伴うものについては、当然大学であっても国の政策の中に入ってこなくてはいかぬと思うのであります。その場合に、学術会議というのは、本来からいえば大学あるいは研究者全体の学問上の問題を自主的に検討し、また計画をきめるというのが学術会議でありますけれども、先ほどちょっと申し上げましたが、兼重先生がいらっしゃる前でたいへん失礼でございますけれども、やはりロケットなどというのは、おそらく実際にやっておる方が一番強いのだと思うのです。ですから、その利用者と申しますか、その上に何か観測器を積んでほしいというような方々、あるいは純粋な宇宙科学関係方々、そういったような方々が、そのロケットはおかしいんじゃないかというようことはなかなかおっしゃりにくいし、また自信をもって言えないと思うのであります。ですから、学術会議でそれを検討すると申しましても、かなり限度があるような気も実際にはいたすのであります。しかし、そこはやはり良識を持って皆さんが、大学先生でもやはり国民税金を使っているんだという意識が十分におありになれば、私はそういう線がかなり良識的に解決できるんじゃないかというふうに考えております。
  18. 石野久男

    ○石野委員 きょう参考人の御意見も伺って、参考人に御質問をしている間、ちょうど大臣もおいでになりますので一つだけお聞きしておきたいのですが、参考人意見は、特に奥田先生の御意見はいまのようでございまして、研究者という立場での大学とかあるいは科学技術庁の取り扱うこの問題に対する対処のしかたというようなことで、日本の現在の宇宙開発の姿というものは少し背伸びした形にあるんじゃないかというような御意見でございました。いま奥田参考人からお話しの非常に御心配なさっておるような点が、現実には昨日の本委員会でも問題になっているカッパー8型というような問題、まあいろいろな社会的な問題になりかけているような内容のものも出ているわけであります。で、私は宇宙開発の問題についての政府の考え方、特に現実の日本の力関係からしてどういう方向へ宇宙開発の視点を向けていくのが一番いいのかというようなことについてはきわめて重要な時期にあるんじゃないかというような気がいたします。奥田参考人は、主としてロケット開発もさることながらというような御意見でございました。これらについての大臣のお考えがもしありましたら、ちょっとお聞かせいただきたい。
  19. 上原正吉

    ○上原国務大臣 私、就任したばかりで、まだはっきり考えが固まっておりませんけれども、宇宙開発が、大学もその他の機関もよく協調してできるように審議会をつくって検討を加えて、少ない費用で早く宇宙開発がされることを審議の対象として努力をしておる最中なのであります。いまの姿ではこれがいいのではないか、かように考えておる次第でございます。
  20. 石野久男

    ○石野委員 参考人からのお話によりますと、審議会が答申している線の効果はあまり出さないで、審議会の答申外のことでいろいろと実績をあげているような、あるいはそういう努力が重ねられているような傾向が顕著であるというような御意見がございました。参考人は、やはりそういう審議会があるのなら、なるべく審議会の線に沿うような方向にいくのが、税金を使う立場からする研究としては姿がすなおなのじゃないかという意見だと私は受け取ります。そういう意見は私は正しいと思うのです。にもかかわらず、審議会から出ておる答申の路線に沿いつつある努力はあるのでしょうけれども、それ以外の方向で成果が出ているということは、指導上からいいましても、政府の指揮、監督の上からいいましてもちょっと問題があるのじゃないか、こう思います。それらの点が事実であるとすれば、これは科学技術庁なりあるいは長官のほうで一応考えなくちゃならない問題だろう、こう思うのですが、大臣は、それについてはどういうふうにお考えになりますか。
  21. 上原正吉

    ○上原国務大臣 政府の考えとか、政府の監督とか指導とかということになってまいると思いますけれども、その点は科学技術庁も政府でございますし、文部省も政府でございますので、結局、審議会の答申に従って事を行なってまいるかまいらないかは、担当している各省庁の考えが大きく働くと思うのであります。しかし究極的にはどこに予算がつくかということで、自然と結論が出てまいる、こういうことになるのではないかと考えておる次第でございます。
  22. 石野久男

    ○石野委員 その点について、たとえば審議会の答申が行なわれたときには、宇宙開発についての審議会答申というものが出てまいりますれば、政府としては、それは文部省であろうと、あるいは科学技術庁であろうと、郵政省であろうと、どこであろうと、とにかくその答申の方向に沿うように宇宙開発の予算の組み入れを行なうのが順序だろうと思うし、また、それでなければ、参考人が心配なさっているような税金を使うという方向での乱れが出てくるのじゃないか、こう思います。現状参考人のお話のようであるとするならば、その趣旨とは非常に違った方向に開発の指向というものが出ているのじゃないか、こういうふうに思います。もしそうだとするなら、これはやはり正さなくちゃいけない、こう考えますが、将来審議会の答申が出た方向に予算をつけるような努力を、少なくとも科学技術庁長官というものはやらなくちゃいけないのじゃないだろうか。それでなければ、それこそ参考人の言うように審議会なんかなくたっていいのだ、こういうことになるのですが、この点でははっきりひとつ長官の御意見をここで聞いておかなくちゃいけないと思うのです。
  23. 上原正吉

    ○上原国務大臣 実情がどうであるかは別といたしまして、もし奥田参考人のおっしゃるようなことであるとすればごもっともなお話でございますし、ただいまの御意見もごもっともな話でございまするから、私といたしましては最善の努力をしなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  24. 石野久男

    ○石野委員 質問を終わります。
  25. 岡良一

    岡委員長 山内広君。
  26. 山内広

    ○山内委員 お二人の先生にちょっとお聞きしたい。  奥田先生の、異常な雰囲気があるという抽象的なお話なんですが、これは実はこの間、この委員会カッパー8型の輸出の問題で各省の方がお見えになっておって、非常にばらばらな意見でもあるし、どうも異常な雰囲気を私も感じたのです。これからその悪い雰囲気を私どもの手で払いのけられるかどうかわかりませんが、その方向で努力したいと思うのですが、露骨にお聞きしてはなはだ失礼なんですけれども、こういう異常な雰囲気が何となく自由濶達な発言を妨げておる。その原因が一体個人にあるのか、それから機構のこともだいぶお話がありましたので、若干私どもはヒントを得ておりますけれども、一体機構が悪いのか、そういう点について、先ほどざっくばらんなお話が出ましたから、もう少し詳しくお話しいただきたいと思います。
  27. 奥田教久

    奥田参考人 いろいろとセクショナリズムとか、あるいは官僚主義だとか、あるいはそういったようなものは、日本の社会には、どこの社会にもあるものでございまして、必ずしもロケットあるいは宇宙開発関係だけにそれがはなはだしいのだというふうには私は考えないのであります。ですから、これは人が悪いとか、あるいは機構が悪いとか、そういう問題ではなくして、最初日本ロケット開発の初めからかいつまんで申し上げましたけれども、歴史的な必然というか、そういうことでだんだんとそういう異常な雰囲気が出てきた。それはもちろんあるところでもっと皆さんがよく話し合いをすれば、もっとフランクな気持ちになっておやりになれば、そんな異常な雰囲気などということを、かりそめにも申し上げる必要はなかったと思うのですが、そこはあらゆる社会にあることとほとんど変わりはございませんで、何となくそういうことになってしまったのだというふうに私は考えます。
  28. 山内広

    ○山内委員 遠慮されてものを言われておるようですが、それはそれくらいにして、私どもの力でその原因は究明していきたいと思います。  技術的なことになりますので、岡本先生にちょっとお聞きしたいのですが、このロケット観測用ということで平和のために役立つということであるが、これが武器に転用されるおそれがあるのではないか。こういうことで私ども知識がないものですから、その限界について非常に心配しておるのです。そこで純粋の平和のための観測用のロケットとそれから弾頭をかえればすぐ武器に転用できるという限界、あるいは大きさとか目方とか、そういうようなことで何か技術的にはっきりここまでいけばこれはもうすぐ武器になるのだ、そういう御説明をいただければ幸いでございます。
  29. 岡本哲史

    岡本参考人 ロケット技術が中心でして、技術の軍事利用と平和利用というような問題になるのじゃないかと思います。で、現在でき上がっております観測ロケットは、そのままでは軍用にはならないというふうに考えられるのですが、使用しております推進剤、固体燃料ですが、それから構造の設計というような技術は、軍用に利用しようというような場合には、非常に有効に利用されるというふうに考えられます。といいますのは、技術的の製品ですから、東大観測ロケットといいましても、東大内に工場があるというようなわけではございませんでして、製造会社で製造するというようなわけで、技術は全部製造会社のレベルアップというようなことになっておりまして、そういうメーカーに防衛庁が注文を出すということになれば、非常に優秀な軍用のロケットが製作されるというふうに考えられます。それから推進剤の性能向上というのが非常に重要ですけれども、現在の推進剤の性能向上は、東京大学のみの研究の成果ではなくて、数年来防衛庁の技術研究本部がメーカーと協力しまして、ずっと三年間くらいではないかと存じまするけれども、系統的に研究した成果というのが、ずいぶん貢献しておるのではないかというふうに考えます。
  30. 山内広

    ○山内委員 ちょっと声が低いので聞き漏らしましたけれども、現在もうできておるものはあまり心配ない。しかしいまのミュー4型ですか、あれは大型で兵器になるおそれがある、こういうお話ですか。
  31. 岡本哲史

    岡本参考人 ミュー自体を軍用にするというのは困難じゃないかと思います。軍用ですと、ミューぐらいの大きさですと、誘導というのがくっついておりますが、誘導の全然くっついていないミューでは、そのままではだめであるというふうに考えます。あの兵器は、大部分は誘導兵器ですから、誘導しやすいような構造にする、あるいは言いかえますと、かじの装置とかいうようなのが観測用のとちょっと違ってまいります。誘導というのを重点に置いて構造全体を考えるというようになると同時に、生産をしやすいような構造にする。量産しないと軍用にはなりませんので、量産しやすいような構造にするというような点で、ミューがそのまま軍用になるというようには考えられません。
  32. 山内広

    ○山内委員 もう一点だけお聞きしたいと思うのですが、これは、お二人への質問が終われば、政府の説明員の回答を求めたいと思うその基礎になるのですが、実はカッパー8型を輸出しましたインドネシアですね。あそこの科学技術ロケットの発達というものはどの程度なのか。最近新聞で御承知と思いますけれども、打ち上げたあれは、日本からいったものを改良して上げたとか、いろいろな説があるのですけれども、先生のお考えでは、どういうふうにお考えになっておりますか、ちょっと参考までに。
  33. 岡本哲史

    岡本参考人 インドネシアの現地に行っていませんので、詳細には存じませんけれども、留学生等を通じまして察知する状態では、ロケット技術というのはゼロではないかというように考えます。
  34. 山内広

    ○山内委員 わかりました。  お二人の方にはお気の毒ですが、ちょっと政府の説明員に聞いておきたいことがありますので、お聞きしたいと思います。  この前の話のはんぱの点ですけれども、今度、カッパー8型十基をインドネシアへ商業ベースで伊藤忠が扱って輸出した。ところが、前のユーゴにやった場合には、これは政府間協定かどうかわかりませんけれども、商業ベースに乗らない学術文化の交流ということでいった、そう承知しておるわけであります。その商業ベースに今度乗せなければならなかった理由は何か、この点の御説明をいただきたい。
  35. 岡野澄

    ○岡野説明員 先日の委員会で御質問がありました際に、ユーゴとは政府間ベースであるか、そんな御質問がございまして、われわれ十分御答弁ができなくて申しわけなかったのですが、その後調べましたところが、ユーゴにつきましてもやはり商業ベースでございまして、昭和三十五年に三井物産が取り扱って輸出したものでございます。
  36. 山内広

    ○山内委員 そうしますと、カッパー8型というものの所有権は文部省にあったのですか、それともプリンス自動車工業にあったのですか、どっちですか。
  37. 岡野澄

    ○岡野説明員 昨日もその点でいろいろ御質問がありまして、お答えしたわけでございますが、東大といたしましては、観測ロケットについて基礎研究が進められておりまして、その設計が各方面の学者によって総合され、それに基づいてメーカーにそれぞれ発注、製作を行なわせたわけであります。いずれにしましても、観測ロケットは、その観測対象によっていろいろ区々でございまして、定型的なものはないわけでございます。それで、大学としましては、必要な観測データを取得いたしますれば、国費を使用しても、ロケット観測の目的は達せられて、その成果は大学における学問研究の本質に立脚いたしまして、観測ロケットの設計、研究成果を含めて公表されているわけであります。したがって、大学としましては、商品化することを目的としてやったわけではないわけでございます。  これがなぜ商品になったかという御質問に対しましては、やはりインドネシアあるいは先ほどのユーゴ等において、それを商品として買いたいというところで商品になったとお答えする以外にないのではないかと思います。
  38. 山内広

    ○山内委員 そうしますと、これは東大と伊藤忠との間に何か取引についての契約とか、そういうものはあるわけですか。
  39. 岡野澄

    ○岡野説明員 ございません。
  40. 山内広

    ○山内委員 その契約内容は公表できますね。委員会に提出願えますか。
  41. 岡野澄

    ○岡野説明員 これは直接東大の問題ではないので、通産省の所管と思いますが、伊藤忠と向こうとの契約内容は、商業上の秘密があるかないかわかりませんが、ある程度わかると思います。
  42. 山内広

    ○山内委員 それの御提出をお願いしておきます。  この輸出に関しての契約を向こうの商社と伊藤忠との間に結んだ。それが一番大事だと思うのですが、そのほか、大学とかプリンスとの間にあったら、それらもあわせて御提出いただきたいと思います。  その次にお尋ねしたいのは、これは高木さんの御回答になると思いますけれども、この前は、コスパーの加盟国としてその責任を果たすために、Bランクにおる日本がCクラスのインドネシアにいろいろ知識を提供する。そういう意味でこのカッパーを輸出した、たしかこういう御回答であったと思います。これが、最近新聞報道によりますと、そういう学術的な目的を離れて、軍事的な、政治的な意図で使用されている。いま岡本先生のお話でも、向こうの技術というものはゼロだというおことばでしたが、問題にならぬ。そうすると、当然考えられるのは、日本から行ったカッパーを打ち上げたものと考えられますけれども、この点についてどういうふうにお考えでございますか。
  43. 高木昇

    高木説明員 私、現地の様子を知りませんのと、新聞でだけしか承知しておりませんので、何とお答えしていいかちょっとわからないのでございますが、ロケットは一号一号観測器がついておりまして、多分コスパーにそれが報告されると私は確信しておるのでございますが、それだけしか、私何と思し上げていいかわかりません。
  44. 山内広

    ○山内委員 実はきのう田中さんの御質問がありまして、私もおりたかったのですが、よその委員会と重複しまして、聞き漏らしたので、重複した点がありましたら、これは回答がなくとも、きのう答えたと答えていただければ会議録で承知をしたいと思います。  それで、実はこちらから先に意見を申し上げたいのですけれども、きのう委員長の要求によって資料が提出されました。そしてプリンスにはだいぶ防衛庁でも委託費をいままでずっと数年間続けて出しておるわけです。そういうことになりますと、防衛庁の委託研究と、それから文部省のいままでのお話のいろいろな政策の結びつきから、防衛庁は武器を考えておるのですから、これは非常につながりがあってできたものだと考えられるわけです。そういうことで、今度インドネシアで打ち上げたのが日本から行ったものかものでないか、あなた方はどういうふうに判断されておるのか、その点を、これは判断でけっこうです。ひとつずばり言ってください。
  45. 高木昇

    高木説明員 インドネシア国産で上げたといっておりますけれども——新聞のことでございます。それがカッパーかどうかという御質問だと思いますが、私もこれはわかりませんので、ただ新聞に書いてあるとおりだと、こうお答えするよりしようがないのです。  それから、ただいま、プリンスに軍用のものがいってというお話でございましたが、これは防衛庁の方がお答えしたほうがほんとうじゃないかと思いますけれども、推薬が軍用のはダブルベースで非常に燃焼が早いはずでございます。早く初速度を得る。私たちのは、昨日資料を差し上げましたようにコンポジット型でございまして、燃焼速度も比較的おそいし、ロケットの初速度がおそくなっておりますので、その技術は全然別だと考えております。防衛庁のことは私が言う筋合いでもございませんけれども、教科書にもちゃんとコンポジットとダブルベースというのは書いてございまして、われわれはコンポジットのおそいのを使っております。
  46. 岡良一

    岡委員長 原茂君。
  47. 原茂

    ○原(茂)委員 お急ぎでしょうから、参考人先生方にちょっと二、三点お聞きをしてみたいと思います。  最初に、先ほど岡本先生の御発言で、東大研究に関して、現在のロケット段階で一応東大における研究というものはやめて、人工衛星という段階になっていくときは、いわゆる新出発ということばを使われたわけなんです。その意味と、あとでお述べになりました奥田先生の言う、東大はもうすでに現段階で終わるべきである、人工衛星に関する限りは東大研究すべきではない、こうおっしゃった御意見と同じニュアンスでおっしゃったのでしょうか。その点ひとつ岡本先生から。
  48. 岡本哲史

    岡本参考人 新出発と申しましたのは、ロケット開発方針といいますが、それが観測ロケットの方針ではだめなので、新出的を要するという意味でございます。体制とは全然別個でございます。  それからついでに、ロケットの推進剤といいますか、推薬で、防衛庁はダブルベースで、東大はコンポジットであるというように高木先生は申されましたけれども、防衛庁でもコンポジットでございます。ダブルベースといいますのは、ずっと前の状態でございまして、三、四年前くらいから全部コンポジットになっております。
  49. 原茂

    ○原(茂)委員 それで高木先生にお伺いしたいのですが、先ほど奥田先生のおっしゃった、いわゆる人工衛星という段階になるときにはもう東大研究段階は終わったと見る、そういう御意見があったのですが、先生どうお考えになりますか。
  50. 高木昇

    高木説明員 人工衛星段階になりますと東大だけでやれるものではなくて、奥田さんもおっしゃったと思いますが、当然電波追跡とか、いろいろ世界中の観測網を日本独自でつくるかつくらないか、あるいは外国と共同してやるかとか、その間世界中の通信をどうするか、あるいはそれの計算センターをどうするかというようなことを考えまして、先ほど東大独自でやるようにあるいは誤解されたかもわかりませんが、科学衛星のたまは、東大が学問上科学的な部面はぜひそれぞれの研究者がやりたいと言っております。自分がやって乗っけたいものだ、ロケットはいまのミュー改良するなりしていくのではないか、こういう希望を持っております。それから、ほかのものは、やはり全部各省庁が——当然科学技術庁の分担するところも出てくると思います。  それから東大科学衛星計画というものは、いま三年先を立案して宇宙空間特別委員会などに発表いたしまして、これからは学術会議の四部会とか五部会とか総会でいろいろ討論批判を皆さま方から広く受けることになりますので、それによってそういうことを進めるかどうかは、また宇宙開発審議会でも御審議いただく段階で、もうあしたすぐ打つとかそういうものじゃございません。  そこで、奥田先生からもいろいろと御叱正がございまして、私たち閉鎖的だという御批判も聞きますが、十分広く御検討いただき、科学、工学あわせて御検討いただくつもりでございます。もちろん、科学技術庁関係でも長期計画をいま一生懸命やっておりますけれども、東大の成果を利用し、そしてほんとうに実用衛星日本が必要ならば、その時期にそれをすっかり転用なり改良なりして上げていきたい、こういうような気持ちで、現状では、こういうものは時間がかかるのでございますが、人と人との折り合いを一生懸命正しながら、ようやくだんだん融けこんできているのではないかと私は思っております。
  51. 原茂

    ○原(茂)委員 重ねて先生にまたもう一つ。先ほど言われたようなそういう広い多くの意見を取り入れて研究をやるといって、各分野は違いますから、専門的な分野も協力を仰ぐという御意見なんですが、奥田先生が言われたような、あえて言うならば批判的な立場にいる人方までこの種の研究ディスカッスに参加せしめるというようなことを積極的にやらない限り、やはり専門的な統一的機関というものは必要になるだろう。そういうことさえやってもらえば、そういう統一した機関というものはあえてつくらなくてもいいじゃないだろうかというような御意見もあったのですが、いまのお答えの中の、うんと広く分野を広げていくという意味で、批判的な考えを持った方々までこの研究なり討議に参加させるというようなことまで何かの方法でおやりになることはできますか。
  52. 高木昇

    高木説明員 先ほど私の研究所のことまでちょっと具体的に言われましたので、所長としてまことに不徳のいたすところだと思います。ロケットをやっておりました生産技術研究所と旧航空研究所——御承知のように東大教授というものはなかなかみな鼻っ柱が強いものですから、その間でいろいろ——結局は誤解だと思いますが、意思の疎通を欠いておりまして、それをようやく一緒にいたしまして、私、一年間一生懸命その融合について努力いたしました。やはりまだ二、三の方は、いろいろと納得できないような方もおいででございますが、大半はようやく全所をあげてこういう宇宙開発のほうに少しでも力を尽くすようになっております。それから宇宙科学のほうも広くそれぞれの学会に呼びかけまして、漏れておる人がないようにという努力は続けておりますけれども、やはりそれは号令をかける人の徳によると思いますが結局反対者はオミットされるとかいうこともおそらくあるかと思いますが、私は、つとめてそういうことのないように、反対の御意見の方をぜひ入れてディスカッションしてくださいと頼んではおりますが、各分野分野について、あるいはまた、そういう御批判が出てくるかもわかりません。私自体としては、学会はぜひ御協力をお願いするし、また科学技術庁関係にも腹蔵なくやるということで、どうやら航空宇宙技術研究所の連中とは非常に話がうまくいくようになったようだ、こう考えております。
  53. 原茂

    ○原(茂)委員 奥田先生、どうでしょう。いまのお二人の先生の御意見聞いておりまして、先ほどわれわれにお話いただきましたその御意見に合わせまして、まあ満足不満足という言い方はおかしいのですが、まあまあというように考えるのか、大体そういう方向でいけばいいと思う、先ほどの御意見に大体近づいていくだろう、こう御期待になりますかどうか、ちょっと……。
  54. 奥田教久

    奥田参考人 現在、高木先生東大宇宙航空研究所長と科学技術庁の宇宙開発推進本部長というものを兼任されまして、両者を融合させるということについてたいへん御努力をなさっておることには、私もたいへん敬意を払っておりますし、いろいろな協議会とか実際の会議なども、両方の人がなるべく一緒に出てお互いに討議をする、話し合うという場をつくっていらっしゃるやに承っております。また、それはそれなりに非常に成果をあげつつあるように聞いております。こういうだいぶこじれてきている問題でもございますので、そう一朝一夕にすかっとする良薬がある、名案があるということではございませんけれども、そういった地道な努力をお重ねになることが非常に大事だ。ただ問題は、今度のミュー計画というものがございます。これが特に、ことしの初めから東大では、詳しく申し上げれば幾らもございますけれども、ミューでもって人工衛星を打ち上げるんだということを非常に既定の事実としてPRなさっておる。それで確かにミューは大きなロケットでもありますし、それで人工衛星が打ち上がるかもしれないけれども、その点については、やはりもっと慎重に御検討なさってはいかがだろうか。私の個人の考えを言わしていただくならば、東大人工衛星を打ち上げることのイニシアティブまでとるのは少し行き過ぎじゃないかという私見でございます。ただ、それではこれはどこかに譲り渡してもいいというような気持ちになるまでには、やはり納得づくで話し合わなくちゃいかぬと思います。そういう点では、やはり高木先生が現在お続けになっているような御努力というものをもっと推し進めていただくということと、それから、たとえば私のように非常にかってなことを、あるいは見当違いな意見も多々あるかと思うのでありますけれども、まあ、もうちょっとまともな人の意見も、批判的な、あるいはかなりかってなことを言う方の意見も、特に専門家意見もなるべく聞くような態勢というか、態度というか、それを特に意識的に広げていただきたい、こう思うわけでございます。
  55. 原茂

    ○原(茂)委員 二つ目に、これが最後ですが、私どもが人工衛星というものの米ソの打ち上げ競争を見ていますと、何となく純粋学問、あるいは宇宙観測オンリーというふうな感じで実は受け取っていない。これは社会党だから特にそんな目で見るというふうな考えじゃなくて、私ども国民一般は、何となく米ソの軍事力をあの衛星船の競争の度合いによって自然評価していくような感じをどうしても持たされるわけですね。もちろんあれがそのまま軍事目的に使われることも知っています。そういう間接的な軍事目的を達成でき得る利用のしかたというものは非常に広範囲にあることを、いろいろな方面から聞いています。ですが、私たちは、できる限りああいうものをそういう目で見たくないと考えているのですが、先ほど奥田先生のおっしゃった政治衛星ということばの中に、いま国民の多くのものが受け取っている、私が申し上げたその感じというようなものにつながるような印象を、ちょっと私はそういうことを考えているものですから受けたわけなんです。そうすると、現在やっておりますロケット、あるいは今度の新しいミュー計画にしましても、何かこう日本の軍事的なつながり、単なる、国際競争に負けるなという純学術上の考え方ではなくて、先生にはそんな気はないかもしれませんが、これを取り巻いております——技術庁長官にはおそらくそんな気はないかもしれませんが、政府全体といいますか、国のあるところの意思がこういうものを刺激し、強力に推進せしめるということによって、いわれるところの軍事的な、いわゆる国家的威力というものは日本も劣ってはいないんだ、あるいは必要があれば米ソにある程度近づいたいわゆる戦力を持つことができるんだというようなことを誇示する意味での、背伸びをした競争といいますか、そういった、奥田先生の心配するような、なぜあわてるんだというようなことは、そういう理由であわてているという面があるんじゃないだろうかという、政治衛星という新語を聞いて私にはぴんときたのですが、奥田先生、そんなようなことをお考えになりますか。それが一つです。  それから二つ目に、先どほも先生がおっしゃったわけなんですが、大学先生方が少し背伸びをし過ぎて、その先へその先へと研究をやっていきたいという気持ちはわかるんだが、どうも少し行き過ぎじゃないか、もう少しじっくり、一歩一歩積み上げていく研究が必要だ、あるところまできたら大学研究というものはリミットをきめて、それ以上はもう他にまかせろ、こういうような御意見があったわけなんです。私はその点に関しては少しく違った意見をちょっと持つのです。およそ、人間がある種の研究に没頭してまいりますと、その人自身はまわりの冷静な批判にかかわらず、先生のような御意見を持ったり、同じような目で見る人がたくさんあっても、研究者自体というのは行き着くところを知らずに、伸びていけるところがあったらどこまでも伸ばしてしまう。国家的な見地からいって、研究を推進するという立場からいうなら、むしろその種の制限は加えないほうがいいんじゃないか、思い切って、どこへ行ってしまうかわかりませんが、野方図もなく、行けるところまで、行ってみろという研究をさせるのが、国家的機関の研究者に与えられた一つの幅であっていいのじゃないか。これが私的な企業でございますと、やはり営利という一つの目的がありますから、採算というものからいって逆に幅がきめられてきます。第一に、私がいまお伺いしましたような政治衛星といったようなことからする軍事目的に通ずるというような、間違った考えかもしれませんが、米ソのあの競争を見ていて感ずるそのニュアンスと同じようなニュアンスから、何かこういまの大学先生方に、先生自身はそう思っていないんだが、その面で利用される危険があるというような御心配とからませると、私は何かそこにちょっと足踏みをさせたほうがいいんじゃないかという感じがするのですが、純粋に国家機関による研究というものを考えたときには、逆にどこに行ってしまうかわからない、リンゴの研究をしているうちにジャガイモに行ってみたり、ジャガイモからネギに行ってよろしいというくらいの野方図もない研究を、金にあかせて思い切ってやらせたほうが、ほんとうに国家機関による研究者に与えられたレールでいいんじゃないかという感じもするのですが、この二つをひとつからめてお教えいただきたい。
  56. 奥田教久

    奥田参考人 まず第一点でありますけれども、宇宙開発の目的と申しますか、動機と申しますか、これをかなり割り切って申し上げますと大体六つあると思います。  一つは、人類の好奇心あるいは未知なる自然に対する征服欲といったようなものを満足させること。第二は、学術的な探究心、いわゆる科学研究を発展させること。第三は、気象、通信、航海、測地など実技的な応用。第四が、関連する科学技術、ひいては工業水準の飛躍的な向上。第五には、軍事面への応用の可能性。第六には、先ほど申し上げました国家威信の高揚あるいは国民の士気を高めたり、国際的地位をも高めるという、この六つのファクターが考えられると思います。  現在、日本では、この第二の学術的な研究ということと、科学技術庁の強調されておるのは第三の気象、通信、航海、測地など、これによって民生を向上するとか産業をどうするということであります。それから第四の、関連する科学技術水準を非常に引き上げて、飛躍的な向上あるいは新技術の発展をもたらすということをいっております。それから、第六番目の、国際的な地位を高めるということも、現在日本宇宙開発の必要なゆえんであるというふうに例の宇宙開発審議会の答申などはいっているわけであります。ところが、この軍事面への応用ということにつきましては、これは特にどこの国でも軍事面と両方、紙の両面、もろ刃の剣ということでやっておりまして、日本の場合には平和利用に限るということも、やはりこれは日本宇宙開発の基本原則として実ははっきりとうたっているのであります。でありますから、これは諮問第一号、三十七年五月十一日、宇宙開発推進の基本方策というところで、わが国の宇宙開発は、平和の目的に限り、次の基本原則のもとに行なうものとする。自主性を尊重する、公開を原則とする、国際協力を重視する、この三つをうたっております。したがって、現在、特に大学に限らず、防衛庁以外のところでやっておられる宇宙開発あるいはロケット開発ということは、軍事に対する応用ということは全然お考えになっていらっしゃらないと私は思うのであります。そしてまた、それは当然のことでありまして、ただ、問題は、それが何となく軍事ロケット開発に応用されたらどうだ、こういう御心配があるかと思うのであります。それは実はいたし方ないことでありまして、防衛庁がロケット開発とかは一切やってはいかぬ、 ロケットを持ってはいかぬということをきめれば別でありますけれども、この点は、現状は私も詳しくは存じませんけれども、非常な初期には、つまり東大から受けた委託研究費のお金で、富士精密、プリンス自動車工業が研究された技術が、あるいは防衛庁のほうの、昭和三十年ごろであります、TMAとかいったような試験ミサイルに東大のベビーロケット技術がプラスになったかというふうに考えられる点もございます。しかし、その後はむしろ逆に防衛庁のほうの技術、つまり軍事技術というかそちらのほうの技術が、かえって宇宙開発に役立っておるというようなのがほんとうじゃないかと私思うのでございます。そこら辺は、下に隠れておりますので、何ともわかりません。岡本先生の先ほどのお話でも、おそらく東大先生がやっておられる研究が向こうにプラスになるという面は少ないのじゃないかと思うのであります。ただ、これが海外に輸出されて、自由に出ていくとなりますと、これは多少問題があるのではないか。たしかけさの新聞だと思いますが、インドネシアの政府は、あれはインドネシアの国産ではない、日本から輸入したものだということをいっております。あれは軍事研究とは関係ないのだということを、またさらにいっておったと思います。しかし、それがどのようにあちらの軍事ロケット研究に利用されるかは、これは保証の限りではないのであります。ただ、せめて、売る場合には、そういう国と国との約束とか、はっきりした約束でそういうことをやらない限りは、その先はどうなるかわからない。たとえ国と国とが約束してもどうなるかわからないことが多いのですから、それをやらなければもっとうやむやになる。そういう意味でも、どこか大学ではなくて、やはりそういうことについては一カ所で、必ずそこを通るというか、そこがちゃんと知っておるというところが国の中でなければならないと思います。  それからもう一点は、政治衛星という新語を私が申し上げたので、だいぶ引用されたかっこうでありますが、国家のメンツ、威信を高めるとか、国民の士気を高める、国際的な地位を向上させるということは決して悪いことではないと思います。現在、一国の国力を測定するには、従来は軍事力をもって測定しておった。軍備の大きさ、あるいは兵隊さんの強さでもって測定しておった。ところが最近の傾向として、科学技術の水準をもって一国の国力を測定するというような傾向が世界的にあらわれておるわけであります。そういう意味で、人工衛星なんというものは非常につまらないものだと言ってしまえば身もふたもないのでありまして、そういうようなことで案外国力に自信を持ち国民に自信を持たせ、また国際的にも、たとえばインドネシアあたりは、やはり日本はすごいなあ、東大ロケットを見てみろというようなことで、非常に象徴的に国家的な威信を高め得る面があるわけであります。ですから、その面は決して無視できないのでありますが、ただ、あまりそれにばかり気をとられて、片一方ではそれこそ三度三度のめしも食えないというような状態で、片一方では人工衛星を打ち上げるあるいは打ち上げられないというようなことに非常にお金を使うということになりますと、そこにあまりにもアンバランスがありますと、これは国家の科学技術政策としても非常に考えるべきではないか。たとえばソビエトが例のスプートニク外交というものを展開したことがあります。一九五七年から六〇年、六一年ごろ、フルシチョフ全盛の時代でありますが、そのときには実際に宇宙外交と申しますか、スプートニクに非常な力を入れまして、それによってアメリカをさんざん引き離した。それでその分だけ実は軍事費を削減した。実際にICBMなどを並べないで宇宙ロケットのほうに力を入れまして、それで人間衛星などを先に飛ばすということで月の表面、裏側の写真までとるようなソビエトのロケット技術であるならば、ニューヨークなりワシントンのピンポイント爆撃もできるではないかというような印象を実際に世界に与えたわけであります。そういうようなことで軍事をやめて平和のように見え宇宙開発に非常に力を注いだ。これもやはり宇宙開発の政治的なあるいは心理的な効果だと思います。日本の場合には、先ほどから申し上げておりますように、当面考えられるのは、中国が核実験をして、人工衛星を打ち上げるのではないか、ミサイルがなければ核兵器だけを持ってもしようがない、ミサイルを持った持ったと幾ら宣伝するよりも、人工衛星を打ち上げればそれで世界の連中が見てくれる、知ってくれるということになるので、中国はおそらく非常な努力人工衛星打ち上げのためにやっておるのじゃないかという想像もできるわけであります。これは単なる想像であります。そういうことに対処して、ある程度日本も、相当な工業国、科学国であるのだから、人工衛星くらいは打ち上げておいたほうがよいというお考えはもっともだと思うのでありますが、ただ、それだけで、もうあり合わせのロケットか何かで無理をして打ち上げる、どっちに飛ぶかわからなくてもよいから、とにかく人工衛星を打ち上げるというようなあまりのあわて過ぎはやめたほうがいいのじゃないか。やはりじみちにゆっくり急げということになりますか、そういうようなことが必要じゃないかと私は思います。
  57. 岡本哲史

    岡本参考人 学術研究の点についてちょっと申し上げます。  ロケットの学術研究を進めます面といいますと、まず構造を十分に研究して重量を軽減すること、現段階でも観測ロケット重量軽減に努力すること、それから信頼性を高めること、取り扱いが容易であるようにすること、そんなような面がずいぶん多いのですけれども、それを全然しないでどんどん進んでおるというような感じであります。それから学者に出します研究費ももうちょっと広範囲に、大学の小さいグループに出しませんで、全国的な他の大学にも広範囲研究費を出して進めるべきじゃないか。工業大学の例でいいますと、ロケット研究費はゼロでございます。
  58. 山内広

    ○山内委員 もう時間もだいぶ過ぎておりますから、また次の機会に詳しくお聞きしたいと思うのですが、たださっき話のはんぱになりましただけけじめをつけておきたい。  いまのお話では、インドネシアの打ち上げは日本からのロケットだ、こういうことがけさの新聞に出たというのですが、私まだ見ておらぬけれども、もうこれで問題ははっきりしたと思うのです。こっちではいかにあなた方が文化交流だといっても、向こうは政治的に利用して、独立記念日の十七日ですかに打ち上げるということまでいっておる。そういうのに意識しないにしても協力したことになる。これはたいへんなことなんです。ですから、これからよほど気をつけて、機構の上においても、この間答弁のあったような、通産省は自分の書類だけでいいんだでは済まされないことになる。お役人さんはその一事だけでいいかもしれませんけれども、私ども政治屋とすれば、世界の平和を守る、多少でもそういう危険をおかすところはどうしてもチェックしなければいかぬ。そういうことで、この問題はぜひ徹底的に究明して真相を明らかにしていただきたいと思うのです。いずれそのうち、また委員会で問題になると思いますから、どういう事情なのか——実は私も、向こうの発表を新聞で見たときに、性能がいいからこれは自力でやったのだろう、カッパー改良ではないのじゃないかという気がしました。ところが、そうじゃないとすれば、私ひとつこれは思い出したのですけれども、あの当時通産省は梱包の中を見なかった。ところが実際中身は、防衛庁から出された空対空のミサイルが中に入っておったのだ、そういううわさも実は耳にしておるわけです。そうすれば、行ってぽんと上げたのはそれかもしれない、そういうことで問題はたくさんこの中にあると思うのです。ひとつ十分にそういう点を研究されて、そういう平和目的を逸脱しないように、これから私もいろいろ機構上においてもできないような道を考えたいと思っております。  きょうはこれで終わります。
  59. 岡良一

    岡委員長 以上で参考人からの御意見の聴取は終わり、また質疑も終わりました。  この際、参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。  ほんとうに長時間にわたり、暑いおりから貴重な、しかも忌憚のない御意見をお述べいただきまして、私ども委員会としましても、本問題の調査のためまことに参考になりました。ここに委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。      ————◇—————
  60. 岡良一

    岡委員長 次に、昨年十月、わが国の動力炉開発のあり方について再検討するため、原子力委員会に動力炉開発懇談会が設けられたのでありますが、この際、その懇談会の意見の取りまとめ等について、有澤原子力委員長代理より説明を聴取することといたします。
  61. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 動力炉開発懇談会がある中間的な報告を取りまとめるところにまでまいりましたので、それにつきまして御報告申し上げたいと思います。  もうお手元のほうに「動力炉開発の進め方について−中間段階における−」七月六日付の資料をお配りしてあると思いますので、詳しいことは大体それに書いてありますので、きょうお話し申し上げるのは、この中の要約したものをお話し申し上げまして、多少この書類に取りまとめられたときの雰囲気とでも申しましょうか、それをお伝えすることにいたしたいと思います。  動力炉の研究開発につきましては、長期の計画の中にもすでにその考え方、方針が示されております。したがって、委員会といたしましては、従来その方針に従いまして研究開発を進めてまいったわけでございますが、御承知のように、世界的に申しまして、総合燃料政策という問題がたいへん大きな問題になってまいりましたし、その総合エネルギー政策の中において原子力発電の占める地位が一そうきわ立って高く評価されるようになってまいりました。ことに、わが国におきましては、その観点から申しまして、この原子力発電の問題がきわめて緊急かつ重大なものがあるというふうに考えられます。そのことはもう先般お話を申し上げたところでございます。ことに、それは、皆さんも御承知のように、昨年の第三回の原子力平和国際会議におきまして、各国原子力発電に非常に強い、またたくましい意欲をもってその開発を進めておるということが明らかにされたわけであります。他方、わが国におきましては、この動力炉開発につきましては、原研を中心にして推進をしてまいっておりましたけれども、いよいよ開発の具体化ということになりますと、いろいろの問題があらわれてまいりまして、原研の研究開発もなかなか思うようには進まないような事情にありました。そこで、原子力委員会におきましては、昨年の十月にわが国における動力炉開発の進め方をどうするか、どうしたらよいかということを中心にいたしまして検討してもらうために、動力炉開発懇談会というものを設けまして、自来十二回の会合を続けてまいりました。ようやく、この七月に、中間的な段階でありますけれども、一応の結論に達したわけであります。要するに、この懇談会を設けまして検討をわれわれがいたそうと考えましたのは、わが国における動力炉開発の、言ってみますれば、この際国としてプロジェクトをつくり上げなければならない、それでありますから、長期計画に示された方針をここに具体化する、こういう趣旨の考え方に立っておるわけであります。それで、懇談会におきましてはたいへん議論が活発に行なわれまして、最初はもう少し早く、少なくとも中間段階における取りまとめはできるかと思っておりましたが、私どもの予想よりもたいへん時間をとりまして、ようやくこの七月に取りまとめが行なわれることになったわけであります。  動力炉といたしましては、一つは在来型の動力炉、それから新型転換炉とでも申しましょうか、改良型、新型転換炉、それから高速増殖炉と、三つがもうすでに世界的に研究を進められております。この三つの研究を進められ、在来型炉なんかはもうすでにどんどん実用化されておりますので、この三つの炉につきましてわれわれは考えたわけであります。その三つの型の動力炉を開発することにつきまして、われわれの中心になった考え方は、最初に申し上げましたように、総合エネルギー政策の観点から考えまして、どうしても核燃料の国内におけるサイクルを確立するということが一つの柱でなければならない、こういうふうに考えたわけであります。在来型炉の開発にいたしましても、あるいは新型転換炉、高速増殖炉の研究開発にいたしましても、ここに一つの観点を置いて取り上げるべきである、こういう趣旨がとられております。  そこで、在来型の動力炉の開発研究——研究はもうすでに各国でやられておりますが、これも日本で自主的に研究開発するということも考えられますけれども、何と申しましても、われわれはずっと将来を見通して研究開発計画を立てなければなりませんので、在来型の動力炉は、これはもうすでにプルーブンされた実証済みの炉である。むろんここに改良を加えたりする必要がある点も多々あります。したがって、その点では研究開発余地がないわけではありませんけれども、しかし基本的な点におきましては、すでに実証済みの炉になっておる。この実証済みの炉になっている在来型につきましては、これはむろん日本において開発を進める必要がありますけれども、これは主として民間によってやってもらう。結局はこれは在来型の炉の国産化という問題になります。その国産化につきましては、早期国産化をはかるということが必要でありますが、その推進といいましょうか、主体になって早期国産化をはかるものは民間である、こういうふうな考え方をとったわけであります。しかし、それにいたしましても燃料の問題、それから安全性の問題、これにつきましては民間にのみまかせるというわけにはまいりませんので、国といたしまして、燃料の国産化あるいはプルトニウムの在来型炉への利用、そういうふうな問題につきましては、先ほどの核燃料サイクルの確立という見地から、これは国が協力的に国産化ができ、また、ファストブリーダーができてプルトニウムが本格的に使われるにはまだずいぶん時間がかかるから、その前にもこれを在来型炉に利用するような研究開発を国として強力に進める、こういう方針を打ち出してあります。もっとも在来型の炉の国産化と申しましても、国産化をするにつきましてはメーカーが国産化をしますけれども、そのメーカーのする国産化の炉は、ユーザーに利用してもらわなければなりません。ところが、ユーザーのほうから見ますと、たいへん慎重といいましょうかチミッドでありまして、なかなか確信を持てない炉は使えないというような点もありまして、早期国産化という問題も、ことばの上では簡単に言うことができますけれども、実際の経過といたしましてはなかなかいろいろの問題が残されております。その点におきまして、全部が全部その問題についてわれわれの考えをきめるといいましょうか決定することはできませんでしたけれども、しかし、おもな点といたしましては、メーカーとユーザーが話し合いをして、今度は在来型のこういう炉を日本で国産化し、それをユーザーが使うという話がある程度進んでいる場合には、国としてこれに極力助成する、こういう方針でございますが、これは現に西ドイツが行なっておる考え方であります。西ドイツも、こまかいことになりますから省略いたしますけれども、簡単にいえば、西ドイツは原子炉メーカーと電力会社とが協力いたしまして、国産で原子力発電所を建設している。それに対して政府が、融資の面はむろんのこと、場合によりましては経営上の若干の赤字、一定の限度までの赤字を補給するというふうな方法を講じております。そういう方法はともかくといたしまして、在来型炉の早期国産化についての国の助成の方針といたしましては、いまのような方針を採用することにいたしました。また、そのほかに、かりに在来型の炉を輸入してユーザーがこれを使うという場合にも、初期の段階におきましては、たとえば低金利の融資をするとか融資のあっせんをするとか、あるいは場合によりましては税制上の措置を考えるというふうなことはいたしますが、しかし、これは国産化というわけじゃないので、原子力発電が日本で早く行なわれるということを促進するという意味を持っておるわけであります。  燃料につきましては、先ほどもちょっと触れましたが、燃料の加工は、これは民間で加工産業が起こることが重要だと思いますが、再処理につきましては、むろん国が当分の間は行なう。燃料につきましては、核燃料の民有化が問題になりまして、アメリカのほうも御承知のようにもう民有化法案が通過しております。日本もやがてこの問題を処理しなければならないという時期に来ると思いますが、民有化につきましても、日本の核燃料のサイクルが確立するという、つまり原子力発電に関する燃料政策が確立するといいましょうか、きちんとした体制を整えることができたときには、むろん民有化にして、国の経費というものはもっぱら研究開発にこれを投入するという方向に進むほうがいいだろうというふうにわれわれは考えております。在来型の炉につきましては、以上申し上げましたとおりでございまして、これは早期の国産化というところに問題があります。これを早期に国産化するにはどうしたらいいかという諸点につきましては、いずれ通産省のほうとも十分お話し合いをしたい、こういうふうに考えております。  それから、次が新型転換炉と高速増殖炉の、将来の動力炉の研究開発でございまして、これが本来動力炉開発懇談会の主題になっておるところでございます。ところが、この問題につきましては、委員といいましょうか、懇談会の参加者の方々の間になかなか意見の一致が見られない状況であります。新型転換炉は、むろん各国がすでにそれぞれいろいろな型のものを考えまして、その研究開発に着手しております。比較的早く、たとえばCANDUのようなものはここ二、三年後には運転状況に入るというふうにいわれておるものもありますし、またそうでなく、もっとハイテンペラチュアの炉のごときものは、もっと十年も後でなければ開発ができなかろうという炉もあります。そこで、われわれといたしましては、もう大体ここ二、三年のうちあるいは四、五年のうちには実用化に近づくというふうな炉は、いまわれわれがここから研究開発を出発させるというのでは、もう時間的におそいだろう。ですから、もっと将来といいましょうか、十年もかかるような新型転換炉、そのような炉はおそらく経済性も非常に高いということが予想されますし、核燃料の有利性といいましょうか、効率的な利用という観点から申しましても、非常に進んだものであるだろうし、それから燃料の分散化という点から申しましても、燃料の多様化という点から申しましてもすぐれておるだろう、そういう型のサーマルの炉、あるいはサーマルブリーダーに近い炉をここで考えたらどうか、こういうのが新型転換炉の主張者の意見であります。  ところが、他方におきましては、この意見によれば、高速増殖炉の実用化の時期がかなりおそいと考えられておるだろう。まあ八〇年代あるいは八〇年代の終わり、場合によってはいよいよ実用化の時代というのは一九九〇年代であろう、こういうふうにおそらく考えておるけれども、しかしそれは今日の高速増殖炉の研究の発展を見誤っておるものである。高速増殖炉の実用化の時期はもっと早い。もう七五年ごろにはすでに第一号炉ができ上がる。だからそのように早く高速増殖炉ができるということでありますれば、そしてまた、われわれのだれから申しましても、原子力発電の本命はこの高速増殖炉であり、核燃料政策の上から申しましても、高速増殖炉ができることが何よりも最終のねらいであります。といたしますならば、そうしてわりあいにその実用化が近いというのであれば、いまさら新型転換炉のようなものを考えて、それに相当のマンパワー、資金、研究費、それから時間というものをかけてやるよりも、むしろ高速増殖炉にマンパワーと資金を全部傾注してこれを一刻も早く実用化に持っていくような研究開発を進めるべきである。こういう意見でございました。  何ぶんにもこれは根本的な考え方の上の相違でありますが、その相違点が、一つは外国においてどういうふうな研究開発の発展状況になっておるか、私には実際は技術的な点にもよくわからぬ点がありますけれども、委員方々技術家たちの御意見自身がこのように分かれるわけでございますので、そうしてそれは、一つは何と申しましても、海外の研究開発の状況が今日どういうふうになっているか。高速増殖炉につきましても、また新型転換炉につきましても、どういうふうになっているかという実情を十分見きわめなければならないのであります。そうして高速増殖炉につきましては、なかなか燃料の点でまだ決定的な解決を得ていない。しかも、これがしょっちゅう、と言いますと少し言い過ぎかもしれませんが、ある時期においてはぐらぐら変わっている。こういうふうな段階では、まだまだ実用化段階を論ずるにはほど遠いのだという人もおるわけでございます。そういう意味から申しますと、技術的な問題点の究明というふうなこともまだ残されておるように思われます。しかし、私自身は、たとえばアメリカ原子力委員長のシーボルグの談話あるいは委員会委員の談話というものを見てみますと、どうもファーストブリーダーの実用化の時期は、最初アメリカ原子力委員会考えていたときよりも、もっと今日ではおくれておるように考えられます。したがってアメリカ原子力委員会は、高速増殖炉の実用化段階までの間に、もし新型転換炉の開発がなくて、いまの軽水炉の在来型によって原子力発電がどんどん普及するということになりますと、今度は低コストのウランの枯渇、低コストのウラニウムの不足の時期がくる。その時期を埋めるためには、あるいはそういう低コスト・ウランの不足という事態をなからしめるためには、その前にファーストブリーダーよりも技術的にはもっと開発の容易である新型転換炉の研究開発を進めなければならない、こういうふうに申しておるわけであります。それと同様、と言っては少し言い過ぎかもしれませんが、大体同様の考え方が、やはり西ドイツの研究開発計画の中にあらわれております。しかし、そうは申しましても、専門家技術家には、高速増殖炉の実用化はもっと早いんだという御主張もあるのでありますから、その反対の技術家もおりますが、私自身にはとても軍配をどちらに上げていいかはわかりません。委員会自身としましても、なかなかこれは上げかねる問題だと思いますので、いずれにいたしましても、最終的に原子力委員会がこの問題を決定するまでの間に、これもいつか申し上げましたように、海外に調査団を派遣いたしまして、問題を十分究明してもらうことにいたしたいと思います。  なお、新型転換炉にいたしましても、高速増殖炉にいたしましても、日本がその両方をそれぞれやるにいたしましても、国際協力ということがどうしても必要になります。国際協力は、これもギブ・アンド・テイクと申しましょうか、少なくとも外国のどこかで行なっておるプロジェクト、研究開発計画日本が参加する、入れてもらうという形で国際協力を願わなければなりませんが、そのときには、むろん日本としてはその研究プロジェクトのどこか一部を引き受けて、それでそれの研究開発を担当しなければならないと思います。ですから、国際協力も、ただ国際協力をするというわけにはまいりませんので、こういう問題について、どこの研究所あるいはどこのプロジェクト本部で国際協力ができるものかどうか、そういう国際協力の可能性につきましても、海外調査団で十分調査をしてもらわなければならない点だと思っております。ですから、いまの高速増殖炉や新型転換炉の研究開発の状況がどういうふうになっておって、そして問題点がどういうところにあるか、また国際協力ということがどれほど可能であり、どういうところでどういう方法で可能になるか、そういう点を海外調査団で十分究明してもらいまして、その上で委員会としては最終の決定をいたしたいと思います。いまのところ、この中間の段階におきましては、考え方といたしましてはそういう二つの非常に対立した見解がありますけれども、シーボルグや西ドイツの考え方がとにかく発表されておりますので、私どもは一つの論拠となる点だと考えますので、いまのところ私どもは二つの、新型転換炉もやる、それから高速増殖炉の研究開発もむろんやる。そしてどちらかといえば、前半におきましては新型転換炉のほうに力を入れてその研究開発を進める。新型転換炉につきましても、いずれ炉型をきめて、そしてその開発研究のためのスケジュールというものを組まなくちゃなりませんが、その場合におきましては、むろん高速増殖炉の研究開発も一方にやるのでございますから、今後の動力炉の開発の進め方といたしましては、前半には新型転換炉のほうにより多くの力を入れる。一方はむろん高速増殖炉もやっておりますが、ある段階から後は今度は高速増殖炉のほうにより多くの力を入れていく、こういう形になろうかと思います。が、しかし、いずれにいたしましても、新型転換炉にいたしましても、あるいは高速増殖炉にいたしましても、たいへん多くのマンパワーとそれから資金とを要するのでございます。しかも十年とか十五年とかいうふうなかなり長期にわたってマンパワーの投入と資金の投入を必要とするわけでございます。それですから、二つを同時に同じ力をもってやるということは、日本の力ではとうていできないだろうと思いますので、どういうふうに力を配分していくか。先ほどの高速増殖炉一本やりの委員意見は、それだからこそ高速増殖炉にマンパワーと資金との全部をあげて投入しろ、こういう一つの論拠に立っておるわけでございます。他方から申しますと、この高速増殖炉一本やりの議論というのは、何と申しましても、高速増殖炉の実用段階というものは二十年後とかいうずっと後のことでございますので、どうも批評家から言わしめますと、とにかくいま高速増殖炉の研究開発をやるということであればこれは冒険でない、リスキーでない、ところが新型転換炉をやるということになるとこれはあるリスクをおかすことである、冒険をおかすことである、その冒険をおかすのをおそれておるからだという批判家も出てくるわけであります。おそらく主張者には必ずしもそういうお考えはないかと思いますけれども、しかし第三者の批評家、私はある場所でこういうふうな問題がいま日本原子力開発の上で最も大きな問題だということを御紹介いたしましたところ、それを聞きました、これは評論家ですけれども、その評論家は、それはリスクをおそれておるのだ、こういうふうに申しました。そういう見方もあるものかと実は感心した次第でございますが、いずれにいたしかしても、リスクを踏まぬかということはともかくといたしまして、マンパワーと資金を要することは間違いがないことでございます。ですから、その点からまた、新型転換炉と高速増殖炉開発をどういう関係において進めるかという問題が出てくるわけでございますが、それは重要な問題として十分考慮しながらこの動力炉開発のプロジェクトを立てていかなければならない点だと思っております。  それから最後には、そういうふうな問題が非常に多岐にわたって存在しておる上に、総合的にこの研究を取りまとめて推進をしていかなければ、新型転換炉にいたしましても、高速増殖炉にいたしましても、その研究開発を推進するということはなかなかむずかしい。つまり動力開発のための体制というものがここに必要であろう。確かに、わが国から申しましても、あるいはどこの国でもそうかと思いますけれども、特にわが国におきましては、マンパワー一つ考えてみましても、マンパワー研究所、大学ばかりではなく、個々の企業にも散在しております。そういうあちこちに散らばっておるマンパワーを結集して、そしてプロジェクトの推進をはかっていかなければならない。それがためには、ここに強力な推進本部というかどうかはわかりませんけれども、推進体制が整えられなければならないだろうということが問題になりました。これも、だからいままでのように原研だけで、原研がその主体になってやるということではとてもいかないだろう。むろん原研がその場合その体制において主要な役割りを演ずることは間違いないのですけれども、原研だけが主体になってほかのものを動員しながらやっていくというわけにはいかないだろうという御議論もかなり強く出ました。この問題につきましても、まだ私どもは決定的な案をつくり出してはおりません。が、いずれこういう問題もきちんとした構想を持たなければならないだろうと考えております。  そういうわけでございまして、まだ中間段階でございますから、一応の考え方はできましたが、これからあとの問題を展開するにつきましては、どうしても新型転換炉なら新型転換炉、高速増殖炉なら高速増殖炉についてもっと詳細な研究プロジェクトといったようなものを少し検討してみなければならないじゃないかというふうに考えられます。先ほど申し上げました海外調査団の派遣につきましても、やはり高速増殖炉または新型転換炉についての研究開発のプロジェクトを立てて、そこからどういう問題が浮かび上がってくるか、そういう問題点を十分見きわめておかなければならないように考えられます。そういうこともありまして、したがって、新型転換炉と高速増殖炉のそれぞれにワンキング・グループを設けてもらいまして、そこでそのワーキング・グループが十分新型転換炉及び高速増殖炉について、その研究開発のプロジェクトを具体的にひとつ考えていく、こういうことに相なりました。いまワーキング・グループは、それぞれ一つずつ新型転換炉につき、また高速増殖炉につき、ワーキング・グループができ上がりまして、もうすでにこの夏、七月の初めごろからその研究を開始しております。それから推進のための体制につきましては、新型転換炉と高速増殖炉の研究開発のプロジェクトがもう少し固まってまいりました暁におきましてこの体制問題を取り上げまして、これを早く結論を出したい、こういうふうに考えておる次第でございます。  そういうわけでございますので、まだ中間段階でございまして、一応の考え方の方向というものはきまってまいりましたが、まだその中身がどういうふうになるかということは、それぞれワーキング・グループでもって十分御検討を願った上で、さらに動力炉開発懇談会で十分審議して、それから海外調査団の報告も受けまして、まあ年末近くに原子力委員会で最終的な決定を下したい、こういうふうに考えております。動力炉開発の進め方というものは、開発方針ということでございますけれども、これが一ぺんきまりますと、相当長期にわたってこの方針でずっと進んでいかなければならないと思うのであります。むろんその間に技術の発達進歩というふうなものもありましょうし、そういう点においての手直しはあり得ると思いますけれども、しかし、その方針におきましては、これがぐらつくということがあってはならないと思います。したがって、その点では長期的な方針になってくると思いますので、それを、将来にわたってのことでなかなかアンノーン・ファクターがたくさんある中できめなければならぬわけでございますので、十分慎重にやっていかなければならないと思います。たいへんおくれておりますけれども、そういう次第で、私どもはこの動力炉開発研究開発計画を立てようと考えております。  以上で大体の御説明を申し上げた次第でございます。
  62. 岡良一

    岡委員長 以上有澤原子力委員が動力炉開発懇談会の座長として各階層のそれぞれの意見の取りまとめのためになみなみならぬ御苦心を払われた経過を聴取いたしました。  質疑は次の適当な機会に譲ることとし、本日はこの程度で散会をいたします。    午後一時五分散会