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1965-08-11 第49回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年八月十一日(水曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 岡  良一君    理事 菅野和太郎君 理事 前田 正男君    理事 石野 久男君 理事 田中 武夫君    理事 原   茂君       秋田 大助君    池田正之輔君       大泉 寛三君    野呂 恭一君       三木 喜夫君    山内  広君       内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣 上原 正吉君  出席政府委員         科学技術政務次         官       田川 誠一君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   小林 貞雄君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局長)   村田  浩君  委員外出席者         原子力委員会委         員       有澤 廣巳君         総理府技官         (科学技術庁研         究調整局長)  高橋 正春君         総理府技官         (科学技術庁宇         宙開発推進本部         長)      高木  昇君         外務事務官         (国際連合局科         学課長)    大塚博比古君         文部事務官         (大学学術局審         議官)     岡野  澄君         通商産業事務官         (重工業局次         長)      赤沢 璋一君         特許庁長官   倉八  正君     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  科学技術振興対策に関する件(原子力行政及び  宇宙開発に関する問題)      ————◇—————
  2. 岡良一

    岡委員長 これより会議を開きます。  閉会審査申し出に関する件についておはかりいたします。  本特別委員会は、閉会中もなお科学技術振興対策に関する件について、議長閉会審査申し出をいたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 岡良一

    岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、委員派遣承認申請に関する件についておはかりいたします。  閉会審査案件が付託になり、実地調査の必要がある場合には委員派遣を行なうこととし、派遣委員の選定、期間及び派遣地並びに議長に対する承認申請手続等は、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 岡良一

    岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  また、現在設置されております科学技術の基本問題に関する小委員会及び動力炉開発に関する小委員会は、閉会中もなお存置することにいたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 岡良一

    岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、この場合、小委員及び小委員長の辞任に伴う補欠選任につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 岡良一

    岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、閉会審査のため、委員会または小委員会において参考人より意見を聴取する場合は、あらかじめ人選その他所要の手続につきましては委員長に御一任願っておきたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 岡良一

    岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  8. 岡良一

    岡委員長 次に、科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  宇宙開発に関する問題について質疑の通告がありますので、これを許します。田中武夫君。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 先日当委員会カッパー8型のインドネシア輸出の問題が取り上げられました。その質疑応答の中で、東大開発したところのカッパー8型が商品として経済ベースによって輸出せられた。そういう関係を明らかにする資料を要求いたしたわけでございます。そこで、きょう科学技術庁からロケットについての資料が出ましたが、私の要求いたしましたのとは全然異なっておりまして、その間の事情が明らかになっていないので、東大開発したところのカッパー8型が商品となった過程、これを何省でもけっこうです、相当の行政庁の方から御答弁願います。——だれもないというならば、まず文部省から順次お伺いします。
  10. 岡野澄

    岡野説明員 観測用ロケット開発につきましては東京大学生産技術研究所、現在、昭和三十九年度以降は宇宙航空研究所でございますが、これが中心となりまして、全国の宇宙科学関係者によって総合的に基礎研究が進められまして、それによって得た成果もとに、打ち上げに使用される観測用ロケット設計がまとめられまして、研究所は、これに基づいて各方面のメーカーにそれぞれ発注製作させたわけでございます。製作された観測用ロケットは、観測対象によってその性能は区々でございますが、いずれにせよその打ち上げによって必要な観測データを取得すれば国費を使用してのロケット観測目的は達せられ、その成果は、大学における学術研究本質に立脚し、観測用ロケット設計研究成果を含めて公表されております。このように、観測用ロケットは、宇宙空間における諸現象の観測研究のための手段として研究されたものでごございまして、大学としては、目的としては商品化することを目的としたものではございません。しかし前申し上げましたように、コスパー加盟国からわが国観測用ロケットを使用しての観測実施について協力を求められた場合には、わが国国際協力原則に従ってこれに協力する立場でございますが、インドネシアの場合においては、昭和三十八年夏インドネシア学術会議関係者研究所を訪れ、インドネシア宇宙科学計画に関し協力を求めてまいりましたので、研究所はこれに対し助言を与えるとともに、計画実施に必要な観測用ロケット及び地上施設についての協力を行なうこととなったのであります。これに基づいて商社通産省許可を得て一般商業ベース輸出されたのが経過であります。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 大学観測目的のためにロケット開発したのでしょう。そして大学研究本質にのっとってやったのでしょう。それが商品化した過程、だれが商品化することを許したのですか。
  12. 岡野澄

    岡野説明員 経過といたしましては、ペンシル型ロケット昭和三十年度の試作研究から始まって、逐次性能改善が行なわれて今日に至っておりますが、このロケットはどの一基一基も目的性能を異にして常に改良が施されておりまして、定型的なものがないわけであります。また観測用ロケット設計についても、大学における研究成果として、学問研究の自由の原則に従って一般に公開されておるわけでございます。このような事情でございますから、大学特許権申請を行なっていないのが実情でありますので、大学としては研究成果に基づいて観測用ロケット製作され、これによって宇宙空間に関する観測データが得られるならば、その目的が達せられると考えるわけでございます。要するに特許権申請——特許になじまないことでございますので、こういうものが商品化されたということについては、別段違法でもないと考えるわけでございます。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 なるほど特許申請をなしていない。そうするならかってにつくってもいい、こういうことになるのですか。特許さえなければ、かってにつくっていいんだ、そういうことなんですか。
  14. 岡野澄

    岡野説明員 東大といたしましては、東大設計書に基づいて発注いたしたわけです。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 発注者はだれです。
  16. 岡野澄

  17. 田中武夫

    田中(武)委員 そうするとでき上がったものの所有権発注者に帰すと思いますが、違いますか。
  18. 岡野澄

    岡野説明員 東大製作を委託したものについては、東大のものとして購入しておるわけです。物体として納入されるわけでございます。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 東大プリンス発注した。そうしますと、そのもの発注主に物として購入せられるというか、納入せられる。そうすると、そのあとでそれと同じものをかってにどんどんつくることは差しつかえない、こういう考え方なんですか。
  20. 岡野澄

    岡野説明員 許されておると思います。
  21. 田中武夫

    田中(武)委員 その設計図というものですね。注文するときに設計図東大が渡したのでしょう。そうしてそれによる試作ができた。そういたしますと、あとからつくる場合はその設計図を見てやるか、あるいはそうでなかったら設計図を盗用するということになりますね。そういうことは許されるのですか。
  22. 岡野澄

    岡野説明員 インドネシアの場合は、インドネシアから協力依頼がありまして、それにはカッパー8型というものが適当であろうという協力をしたわけでございますから、それに基づいてメーカー製作しても、精神においては大学としては差しつかえないと考えております。
  23. 田中武夫

    田中(武)委員 インドネシアから申し込みがあったのは国に対してでしょう。そして協力するというのは国が協力をするのじゃないですか。それを商社ベースにおいて出すということ、それはどうなんですか。インドネシアからそういう国としての申し入れがあった。そこで国が協力するというならば、なぜ政府間協定というかっこうをとらなかったか。伊藤忠商事という商社インドネシア宇宙開発なんとかというところと契約するというかっこうになっておるようですね。そうして伊藤忠からプリンスへ注文した、こういうかっこうでしょうね。一応輸出かっこうを見た場合は……。そうじゃないですか。そのインドネシアからの申し入れは国に対してなされたのでしょう。
  24. 岡野澄

    岡野説明員 インドネシア学術会議というステータスの方がお見えになったということで、それが東大宇宙航空研究所相談に見えた、こういうことでございまして、直接国対国という関係でもないかと思います。それでインドネシア側では、これは通産省のほうが事情が明るいかと思いますけれども、現地におきまして、東大指導と申しますか、考え方に基づいて日本ロケット並びにそれに付帯する施設インドネシア側で購入したい、こういうことになって商社ベースの取引になったということでございます。
  25. 田中武夫

    田中(武)委員 イードネシアから最初日本へ話があったのは、商品を購入する目的でもって話があったのですか。開発についての協力方依頼があったのですか、どちらです。
  26. 岡野澄

    岡野説明員 そういう開発のための計画についてアドバイスを求め、並びにそういうロケットの物品を購入したいということなんです。
  27. 田中武夫

    田中(武)委員 それはインドネシアのどこから日本のどこに対してなされ、そうして成文があるなら示してください。  なお、そういうことをするのが国連の科学委員会か何かの加盟国として当然協力すべきであるというなら、その根拠国際法を示してください。申し入れがあったら書類などを出してください。
  28. 高木昇

    高木説明員 コスパーのことについて申し上げますが、コスパーの中には相互援助というはっきりした法律はございません。それで加盟国で、たとえば新しい機械が出ると、お互いに知らせ合ったり、設計図をもらったりしておりますが、今回の場合にも向こう宇宙研究所ラパンインドネシアでいっておりましたが、そこの人が当時生産技術研究所の、われわれロケットをやっておるところへ来て、どういうロケットなりあるいは地上施設を整備しておるか、そういう相談を受けましたので、そういうものを整えれば、おたくの宇宙科学計画を遂行できるであろう、こういうふうに私は申したのであります。そこまでが助言の筋道でございます。
  29. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと、インドネシアのどういう機関から宇宙開発推進本部に対して、あなたのほうへ対して話があったのでしょう。
  30. 高木昇

    高木説明員 いいえ、東京大学——三十八年には推進本部はございません。この話がわれわれのところにまいりましたのは昭和三十八年でございます。それで当時まだ宇宙航空研究所もできていなかった……。
  31. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたの答弁すべき筋合いでない。一番最初どこからどこへきたのか、それを聞いているのです。最初インドネシアのどういう機関から日本のどういう機関にきたのですか。そのときは推進本部はなかったのです。受けたところです。
  32. 岡野澄

    岡野説明員 高木先生は当時生産技術研究所におられたわけでございますので、その立場でいま——詳しいことは一番御存じなわけなんです。
  33. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ生産技術研究所インドネシアから正式に話があったのですね。
  34. 高木昇

    高木説明員 そうでございます。
  35. 田中武夫

    田中(武)委員 そのときの何か文書でもありましたら……。
  36. 高木昇

    高木説明員 科学者お互いに行き来しながら、お互いに試験場はどういうふうにしようとか、そういうドローイングなんかを相談しながらきめたのでありまして、正式に向こう研究所とこちらの研究所文書はかわしておりません。コスパー政府のあれじゃございませんので、学術会議、ひいては政府になるかもわかりませんが、学術会議段階のものですから、学者同士でそうはっきりメモランダムにサインするということはやっていない慣習でございますので、私も援助できるものならということで、こちらで援助をしてやれる能力があればしてあげたい、こう思いました。
  37. 田中武夫

    田中(武)委員 いまのお話ですと、いわゆる学術会議というか、そこで純学術的に相談をし援助した、こういうことですね。それが三十八年。そうして、ことしまでの約二年の間にそれが現実の商品として経済ベース輸出せられたというところに問題がある、こういうことでしょう。その経過を私は聞いておるのです。
  38. 高木昇

    高木説明員 私どもは、いま御質問のとおり、相談した時点で、あとインドネシア側のあれにまかせたわけでございます。
  39. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、高木さんは学者ですし、学術会議の上に立って純学術的なことで協力し合った。それをわれわれは云々しておるのではないのです。それがどういう経過をたどって商業ベースに乗っての輸出になったかという経過を聞いているのです。したがって、それはあなたの範囲ではないでしょう。
  40. 赤沢璋一

    赤沢説明員 ただいまの御質問でございますが、通産省はこの輸出申請を受け付けたわけでございまするが、伊藤忠商事から聞いておりました。聞きました経緯をちょっと申し上げますと、三十八年の十一月にインドネシアに駐在しております伊藤忠商事駐在員に、インドネシアのミニストリー・オブ・ナショナル・リサーチから、現在日本を含めて各国のロケットに関する資料研究しておるが、特に日本ロケットに関心を持っておるので、日本ロケット並びに使用設備についての資料見積もりを出すようにとの引き合いを受けた。その後、伊藤忠商事はいろいろ研究をいたしました結果、これは国際協力の観点からも輸出することが適当であるという考えから、東大生産技術研究所発表資料等もとにして関係メーカー相談をし、そうして向こうラパンというインドネシア宇宙航空研究所に対しまして、三十九年一月、見積もり書並び関係書類を出した、かように聞いております。
  41. 田中武夫

    田中(武)委員 かように聞いておるというのは、それは通産省伊藤忠から聞いたわけでしょう。私の言っているのは——伊藤忠は貿易するのが商売でしょう。そうでなしに、東大が、言うならば国費でもって、国民税金でもって開発したのでしょう。それは伊藤忠なりプリンスをもうけさすためでなかったと思う。それは宇宙観測という高度な目標のためにやったのでしょう。それがいつの間に商品となって出ていったか。伊藤忠がそう認定したからやったのではないのです。国際協力関係から出すほうが適当である、いいことだと思ったのは伊藤忠のことなんです。伊藤忠がどう思うかは、ここでは問題じゃない。一体そういうものの管理をどこがやっておるのです。
  42. 岡野澄

    岡野説明員 大学側としましては、先ほどから申しますように、国費を使ってやりました観測用ロケット成果をおさめたということで、そこで一つ役割りは済んだというふうに考えておるわけです。ただいまのなぜそれが商品になったかという御質問ですが、これはインドネシア側商品として輸入したいというところから始まったようにしか考えられません。
  43. 田中武夫

    田中(武)委員 東大目標を達して、一応目標を完成した。これは国民税金国費でやった。その段階において、これは特許申請していないから特許権じゃない。しかし、研究したというその研究一つアイデアというか設計図というか、これは一体だれのものなんです。
  44. 岡野澄

    岡野説明員 東大のものでございます。
  45. 田中武夫

    田中(武)委員 その東大のものを黙って第三者が商品化できますか。
  46. 岡野澄

    岡野説明員 東大アイデアもとにいたしまして製作を命じて納入させたということでございます。
  47. 田中武夫

    田中(武)委員 東大アイデアもとにしてというけれども、そのアイデアそのもの東大のものでしょう。言うならば国のものなんです。それをかってに使えるというようなことになっておるのですか。現在の法律はそういうことなんですか。
  48. 岡野澄

    岡野説明員 先ほど来申し上げたように、東大学問研究本質にのっとりましてその設計成果公表しております。
  49. 田中武夫

    田中(武)委員 その報告をどこへして、どこが承認したか。そしてそのアイデアなるもの、研究成果なるものの所有東大すなわち国にあると思うのです。そうじゃないのですか。
  50. 岡野澄

    岡野説明員 アイデアの帰属というのは非常にむずかしいと思うのでございますが、それは公表しているわけでございます。一般に周知されておるということでございます。それが国のものと申しましても、そういう公開し、公示することによって学問進歩に役立つということでございます。
  51. 田中武夫

    田中(武)委員 公表することは学問進歩のためでしょう。一商社をもうけさすためじゃないですね。それを商品化するときに、黙ってそのままやっていいのですか。現在ではそういうようなシステムになっておるのですか。かりにこれがそれじゃ国でなしに個人とした場合、どうでしょう。損害賠償なりそれらの対象にならぬですか。
  52. 岡野澄

    岡野説明員 設計の詳細は公表されておりますから、それをどこが御利用になってもけっこうだというふうに考えます。
  53. 田中武夫

    田中(武)委員 研究したそれを公表すると、そこから先はどこが何に使おうとかまわない。じゃその公表を許したのはどこが許したのですか。それからそういう結果は公表してそういうようになるということは、何かそういう官制なり組織法なり、あるいはその他の法律あるいは規則、政令、何かにそういう根拠がありますか。
  54. 岡野澄

    岡野説明員 一般に、学問分野において研究成果公表するということは常識でございます。別に法規はございませんが、それが学界の常識だというふうに考えます。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 公表することは常識である。しかしそれを使うほうは、それじゃそれで金もうけしようと思って幾らでもしていいようになっているのですね。そういう組織なんですか。そうならば、東大はもちろん純粋な宇宙観測という高度な目的のためにやられた。ここは純粋なんだ。しかし、それを結果的に見た場合は、東大は一商社をもうけさすためにやったということになるのですが、それでいいのですか。君ではいかぬ。国務大臣はここでは一人だけですが、上原さん、そんな制度でいいのですか。国の費用で開発して研究をさしたということで公表する。そうするとそれはだれが使ってもいいのだ。学問分野においてはいいですよ。しかし、それを商品化するために使うということについてどこの許可も要らない。そんなのでいいのですか。
  56. 上原正吉

    上原国務大臣 私あまり全般の法律に精通いたしておりませんけれども、学問分野学問成果公表する。公表するからにはそれをだれが利用するかわからないというたてまえで公表をしていると思うのです。だから、それを制限し得るような法律があるかどうかはつまびらかにいたしませんが、制限する法律がなければいたし方ないんじゃないかと思われるわけでございます。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 私もその学問公表ということについてのあれはわからぬですがね。現在ないとすればいたし方ないでいいんですか。それをチェックする必要はないですか。立法論でいきましょう。
  58. 上原正吉

    上原国務大臣 それがためにたいへんな弊害があるとなれば、結局チェックするようなことを考えなければならないかもしれませんけれども、それをチェックするためには法律案をつくって国会に出して御協賛を得る必要がある、こう思います。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 それを公表して使う場合、それじゃ研究をした側、これに何の連絡もなしにやりますか。現に新聞の報ずるところでは、インドネシア東大糸川英夫教授ですか、行っておりますね。これはどんな資格で何の目的で行ったんです。
  60. 岡野澄

    岡野説明員 糸川教授は、コスパーのテクニカルコミティー・オブ・サウンディング・ロケット・レーンジという委員会がございますが、そのコミティーのチェアマンに一九六三年に選ばれております。観測ロケット発射場を建設するコスパーのメンバー、特に後進国はこのコミティーのガイダンスが得られるので、最近ではインドインドネシアのそれぞれのコスパー委員会招聘糸川教授は招かれて、指導コスパーへの連絡に当たっておるわけでございます。最近糸川教授海外出張は六月の二十九日から七月の四日、インドのアーメダバッドのフィジカルリサーチ・ラボラトリー及びツンバの赤道観測ロケット発射場で、宇宙工学についての調査研究を行なう目的で出張いたしました。また、七月十七日から七月二十二日、インドネシア国バンドン工科大学で、宇宙工学調査研究を行なう目的で、いずれもインド国またはインドネシア国政府渡航費滞在費全額負担によって招聘に応じて出張いたしておるわけでございます。
  61. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、カッパー8型の輸出とは関係ない、こういうことですね。糸川教授東大宇宙研究についてはどういう役割りをしておられましたか。
  62. 高木昇

    高木説明員 ロケット並びに宇宙科学をやっておるグループで、糸川教授ロケットの全体設計を受け持っておられます。
  63. 田中武夫

    田中(武)委員 いま何とか何とかいうむずかしい、舌をかむような名前を言うておったんですが、そういう資格で行ったというが、いまお聞きのように、全体のロケット設計者なんでしょう。それが偶然か何か知らないが、カッパー8型を輸出したのと相前後してインドネシアへ行っているということは、私はちょっとやはり疑問がある。と同時に、研究成果公表するというが、その研究成果はどんなものでも公表するのですか。たとえば秘密に属するものとか、そういうものがあるんじゃないですか。それはどういうことになっておるんですか。研究したことはすべて公表するのですか。
  64. 高木昇

    高木説明員 研究成果でございますが、われわれのほうは、工学のほうも、それから化学のほうも公開をしております。それで、ここに持ってまいりましたロケットの図面とか、どういうところの厚さとかいうものも、われわれの設計したものは公表して、単に一社ばかりでなく、ほかの方方が全部日本産業としてお使いになれるように努力しております。それから宇宙科学成果は、国内ではなるほど発表が少のうございますが、ことしコスパー発表したのをごらんに入れますが、それには、やはりどういうロケットを使って、どういうふうにしておるということが出ておりますので、これで外国に周知されることになると考えております。原則として発表しております。
  65. 田中武夫

    田中(武)委員 なるほど学術科学研究のためにはお互いが助け合う、科学には国境はない、それもぼくはいいと思うのです。しかしそれを発表し、そしてこちらが苦心をしてやったアイデア、しかもそれは国費によってやられたもの、それを商品化する場合に、どこにおいてもチェックできないというようなことは、これはどうなんです。たとえば科学技術庁は、科学の総合的調整をもってその任務とする行政庁なんですね。そこが科学開発に対して、それを商品化する間において、何らものが言えないというか、知らないうちにやられてしまったということ、それでいいのですか。
  66. 上原正吉

    上原国務大臣 現行の法制のもとではそれはやむを得ないと思うのです。現行の法制はよくわかっておりませんから断言はできませんけれども、現行の法制下ではやむを得ない。学問はその研究成果公表するということがたてまえであり、それが貫かれておる以上、これをチェックするためには特別の手段が要る。こう思っておるわけでございます。
  67. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、現在ではチェックできないというならば、そのままにしておいていいか、こう聞いておるのです。
  68. 上原正吉

    上原国務大臣 御承知のように、わが国には国の秘密というものがないわけです。ですから、国の秘密を守るためにチェックするということも、現在では不可能だと思いますし、それからまた、それをチェックするためには、特許法という法律があるわけです。特許法は発明者の希望、意思に従って特許をするので、本来学問技術の成果というものは公表さるべきものであるというたてまえで、それをチェックするために特許法という特別な法律ができておって、発明者の利益、権利を保護する、こうなっておると思うのであります。ですから特許申請しない、したがって持たない、こういうものはいま高木先生が言うように、わざわざ手数をかけてデータを発表して、公表しておる。そういうものをだれが利用しようともこれは押えようがないのではないかと思います。そしてこれをチェックする必要があるかないかは、国に秘密があるかないかということにもかかわると思いますし、それからまた、何よりも研究開発した人の、その機関の意思が一番大事なことになる、こう思うのでございます。
  69. 田中武夫

    田中(武)委員 特許制度のことはわかっております。それは別として、なるほど日本にはいま国防上の秘密というものはないのですね。しかしそれだけでチェックできない。どうも私すっきりしないのは、学問の府が国費を使って研究開発をした、それが一商社によって商品化せられたということ。そこで大学等でそういうものを開発したり研究したときには、特許を取らないのですか。特許を取った例はありますか。
  70. 高木昇

    高木説明員 このロケットの外形寸法とかいうことになりますと、これは別に特許にはなりませんし、われわれはマスプロを対象にしておりませんので、外形的あるいは内部の部品についての特許を取るということは非常に困難でございます。
  71. 田中武夫

    田中(武)委員 設計図自体は新案特許にならないのですか、何かそういうものにならぬですか。
  72. 高木昇

    高木説明員 私はどうもならないと思っておりますし、一段目と二段目を太さをどうするとか長さをどうするとかいうことは、これは特許にならないと思います。なぜかというと、そこから一センチ違ったものは特許から逃げられてしまいます。また寸法特許というのは特許にはならない。それから、カッパー8は重心が先端から何%のところにあるか、これもちょっと特許にはなりません。それから、尾翼の面積をこれだけにするとちょうどいいだろう、それも別にちょっと変えられてもしようがないですから、したがって、またそういうことから特許はとっておりません。
  73. 田中武夫

    田中(武)委員 研究成果の公開ということは純学問的な問題でしょう。純学問的に公開をする。それを商業ベースとして商売に利用するということについて、ちょっとぼくは納得がいかぬのですがね、それをどこでもチェックできないということが。それから、なるほど型についてはできないと高木さんはおっしゃいましたが、アイデアというもの自体は新案特許になるのじゃないのですか。特許庁長官も見えておりますから、アイデアそのものは私は特許対象になると思うし、それからなお、大学等で発明をし、開発したものは、いままで特許ということは、性格にもよると思いますが、やっておるのかやっていないのか。もし特許として登録した場合はその権利の所属、それは一体どこにあるのか。
  74. 倉八正

    ○倉八説明員 特許庁の立場から申しますと、ロケットは発明の対象になります。特許対象になります。現に三十数件出ておりますから、特許対象になります。  それから、職務発明の御質問だろうと思いますが、職務発明規程を大学が持っておれば、その帰属というのは大学になりますが、職務発明の規程がなければその本人に対して特許権が帰属する、こういうことになります。東大からも特許申請がいままで数件ございます。
  75. 田中武夫

    田中(武)委員 特許庁長官はやはり新案特許対象になるとおっしゃる。それをならないとあなたは先ほど解釈せられたが、それは特許庁と相談なされるのがよかったと私は思うのですが、それはそれとして、大学開発したものも過去においてはなっておった。それをやらなかったことはどういうわけなのかということが一つと、それから、なるほど学問の自由とか、学術の公開、こういうことになると、われわれは弱いのですが、しかしそれをそのまま純学問的に、お互いに各国がその上にまた研究を重ねていくということはいいと思います。が、しかし、それを商品化するということ、それがややもすれば武器になる可能性があるというときに、それはそれでいいのだろうか。カッパー8型は直ちに武器であるかどうかは問題があるとしても、なり得る可能性がある。そうするならば、そういうものをつくること自体、憲法との関係等も論じなければならないことになると思うのですが、それはそれとして、高木先生は先ほどなりませんと言われたが、特許庁ではなるという見解を持っていますね。そこで、どうも伊藤忠なりプリンスがこれを利用して輸出をした。しかも前の委員会で、これは概算ですが、四、五億円もうけたのじゃないか、こういうような推測もなされるのですね。一体だれの金で開発をして——もうけたのは伊藤忠なりプリンスであった。おそらくプリンスもそうもうけてない。伊藤忠がもうけたと思うのですよ。大学を利用して金もうけをした。これはそんなことがいままでもしょっちゅう行なわれておるのですか。そうするならば、一体大学というのはだれのためにあるのです。そんなことでいいのかね。現在それをチェックする方法がないとか、学術の結果を公表することになっておるのが常識だということで済まされますか。これをはっきりとしてくれなかったら、大学商社をもうけさせるためにあるということを公言しますよ。いいですね。
  76. 高木昇

    高木説明員 ちょっと特許のことで申し上げます。  われわれのやっておるロケットでいう寸法の特許とかいうことについては、私はならないと思います。ですが、そこに使っている材料で、たとえば高張力鋼がございます。この高張力鋼は、東大の冶金の先生が大ぜい協力して開発してくださっておりますので、そういう分については特許は材料についてはあると思います。それから、中の部品なんかについては、たとえばあるものについてはある先生の特許を使ってというようなことが起こるかとも思っております。このロケットそのものは、かっこうは簡単でございますが、部品数が非常に多いし、何万点とありますので、それぞれの御専門の方が研究しておられる分野において特許というものは、調査しておりませんが、あるのではないかと思いますが、そういうものを結局最後は総合して東大発注してまとめている、こういうことになっております。  それから、いま御説明があった、学問の公開の原則でどんどん出してまう、そういうことでございますが、やはりわれわれ外国の文献もよく読んでおりまして、そういうものにもいろいろの設計関係の論文が出ておって、私たちがそれを参考にして自分の性能向上もやっておりますし、逆に今度は、私たちが向こうより一歩出たものを詳しく出せば、またそれに対して向こうからも、今度はもっといいものをおれはつくったぞというようなことは教えてもくれますし、やはりこれは文献、情報の交換というのはどうしてもギブ・アンド・テークになる関係上、なるたけ公開して、技術的なディテールの分までもお互いに交換し合うと、それだけ進歩が早いものですから、ついわれわれとしては全部公開、そのかわり向こうからもいろいろ情報をください、こういうふうにやっておりますので、この点ひとつ御理解願いたいと思います。
  77. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、高木さんのおっしゃる純学問的なことでわからないことはないのですよ。現に、こちらもどこかのものの基礎の上に立ってそれを積み重ねている。また、どこかも、こちらのものを研究して積み重ねていって科学水準なりそういうものを上げていくんだ、これは私はわからぬことはない。現に、インドネシアは七日の午前七時半ですかにロケットを打ち上げておるんですね、それはカッパー8型の改良型である、こういうふうにいわれておるのですね。そうするならば、日本のこれを改良したものだ、こういうことで、それはいいです。これは純学問的にはいいのです。あなたに伺っているのは、その限りにおいていいのです。私は、政治論として、そういう学術の上に立って商売をやる、しかも、それが純粋の商業ベースで行なわれて、相手方に対して、その使用について何ら制限もなさらない。たとえば日本がアメリカから原子炉を買い入れる、これは政府間協定である。そうしてそれには灰の処理までいろいろときめてあるでしょう。なぜこういうものを商業ベースでやったのかということなんですよ。今後こういうものは政府間協定でやる。同時に、これが一つ間違えばいわゆる兵器化する、そういう場合には、日本はあくまでも兵器でないという上に立ってやっていくべきなんです。もしそうだとするなら、大きな問題です。その使用目的等について制限を加えるところの契約がなされてしかるべきだと思うのです。それを野放しでやっている。政府は、現在の法律ではやむを得ませんからしかたがないですと手放しでいいんですか。もし現在の法律でそれがチェックできないとするならば、チェックの方法を考えることをしたらどうなんです。私はこの種のものは商業ベースで行なうべきでない、政府間協定で行なうべきであり、同時に通産省が、届けが出たからといってそれをただ机の上で書類だけを見て認可を与えたというのはどうかと思うのです。赤沢さんに聞いたってそれ以上の答弁はないと思う。先日の委員会では外務省は非公式だとか公式でないとかなんとか言っておったようですが、そういう話は若干あったように思うが、一体外務省としてはどう考えておるのか。インドネシアというところは軍の発言権が強い国なんです。おそらくこの契約についても軍部の了解がなくしては行なわれていないというのが推測なんです。それをそのまま商社から通産省に持っていった書類審査だけでやってすぐ出ていったということでは納得しませんよ。国民もそれで承知すると思いますか。通産省にはその書類をさかのぼってやるところの権限があるかないかわからない。しかしそんなものに対して、書類だけを審査してけっこうだという許可を与えるということには問題があると思うのです。外務省もそのまま、非公式に話があったけれどもということでほっておくのにも問題があると思うのです。私はそういう事務処理の問題を言っておるんじゃありません。したがって、外務省の責任者である大臣、通産省の大臣、それから科学技術庁長官、三人合わせて、ここでそういうおかしな問題について徹底的に糾問しなければ私は了解できません。現に、これは新聞ですから、あなたが言われたかどうかは知りませんが、東京新聞ですが、その報ずるところでは、「ロケット輸出は軍事目的に転用される恐れがある。これをチェックできない現在の輸出制度は好ましくない。制度や法令を再検討する必要があるのではないか」と上原長官が言ったと新聞に出ておるのですが、それは言われたのですか。言われたのなら、この発言に従って今後どのような処置をとられるかお伺いします。
  78. 上原正吉

    上原国務大臣 それは私が述べたこととニュアンスが少し違います。私は現在ではこれをチェックする方法がないと考えております。そこでチェックする必要があるかないか。もちろん私は、武器をつくって輸出するということになれば、これはチェックする必要があると思います。それが現在チェックする方法がないのかというとそうではないので、ココムの約束などに従いまして、日本輸出品につきましては通商産業省が専管となってこれを管理いたしております。そこで私はいまのところはそれで十分ではないか、こう思っているわけでございます。
  79. 田中武夫

    田中(武)委員 いや十分ではない。こういう問題が起きておるから言っておるんですよ。私が言っているように、いまのところ十分でないんでしょう。研究成果公表する、これは学問的に純粋なものである、こう言っておる。まあそこまではいいとしましょう。しかし東大は、これは国立なんです。いわば国の機関なんです。そこが国費でもって開発をしたその研究成果公表した。それを商品として転用していった。一体だれのために何の目的をもって開発したのかわからなくなってしまうのです。それからこれも新聞によるのですが、文部省筋は、絶対カッパーは武器にはならないのに無理解だと、こういうことを言っておるそうですが、絶対ならないという証明がありますか。これは文部省に言ッておるんだけれども、文部省の審議官に言うのではなくて、文部大臣を呼んでもらおう。そうでなかったらこんな複雑怪奇なことは審議できません。上原長官は現在でいいと言うが、現在すでに問題が起こっておるのですよ。今後法律的に、あるは法律でなくてもいいかもしれませんが、それをチェックする方法を考えるべきであるということが一つ。  さらに、こういう問題については、自後民間貿易ではなくて国家間の協定でやるべきである。今後日本が原子力を開発していった結果輸出するようなこともあるだろうと思う。そういうものは輸出商社でやるのではなくて、あくまでも政府間協定で行なうべきである、こう考えるのですが、そのことについての考え方を伺います。
  80. 上原正吉

    上原国務大臣 お話の中には、国の費用で開発した大学研究成果を民間人が自由に使用していいかどうか、こういう点もあるように思う。私は大学研究というものは、それでいいのではないかと思っております。しかし私は大学の専管大臣ではございませんから、これは私の私見だけでございますけれども、それで差しつかえがあるようにも思っていないというのでございます。  それからまた武器に転用されるおそれのある商品を自由に輸出していいかどうか、こういうお尋ねが含まれておると思いますけれども、現在では武器に転用されるかあるいは武器であるかどうかということはチェックされて輸出されておる、こう考えておりますから、これもこのままでいいのではないかと思っておるわけでございます。先ほど申し上げましたと同じことを申し上げますけれども、無制限に何らチェックすることなく、武器に転用されるおそれのあるものあるいは武器が製造されてどんどんと輸出されておるということではないと思っておりますから、これは制度としてはこのままでいいのではないか、法律としても制度としてもこのままでいいのではないか。ただそのチェックがどの程度に厳重にされておるかどうかということについては、これは検討する必要が生ずるかもしれませんけれども、制度としてはこれでいいのではないかと思っております。
  81. 田中武夫

    田中(武)委員 この前の委員会からきょうまでいろいろ勉強もせられたようだ。この前の委員会では、現実に科学技術庁はあわてたと思うのです。これはチェックなんてするところがないから知らない間にやられたのははっきりしているんですよ。それから四、五日の間にいろいろ入れ知恵をあなたはされたと思う。しかし私はこの種のものについて民間の輸出にまかしておいていいとは考えられない。政府間協定でなすべきものではなかろうか。それからさらに、大学研究はそのままどこで利用されてもいいのだ。これは学問的にはそうです。しかしそれを商売に利用するということについては何だか納得がいかない。チェックするところがなくてはいかぬと思うのですよ。それでなかったら大学は民間をもうけさすために、伊藤忠をもうけさすためにやっておるのかということですよ。現にこれで四億か五億もうけておるんでしょう。もうけていないのですか。伊藤忠が出血輸出をしているとは思わない。それで大臣が、いやもうそれでけっこうでございますと、これを繰り返しておったらこれ以上らちがあきません。しかし科学技術庁は、科学の中枢である、これをコントロールするところの行政庁だといいながら、科学成果輸出することについて、しかもそれが国費において国の機関においてやられたときに、何にもわからなかったということでいいのですか。それでいいのだろうか、こういう疑問をあなたは持ちませんか。大体文部省というところは頭がかたくて、学問の自由だけに閉じこもって答弁を逃げようとしておるのです。ところが、かってなときには学問の自由は侵しておるわけです。それでは納得できません。通産省のやり方についても了解できない。外務省もできない。一体どうしてくれますか。
  82. 上原正吉

    上原国務大臣 どうしてくれるとお尋ねがあっても、何ともお答えできないけれども、とにかくチェックする機関はあるのでございますから。そうしてこのチェックは、やはり厳重な関門でチェックする。関門が幾つもあるということはどうかと思いまするから、現在のところではやはり通産省が専管でこれをチェックなさるというのが一番適切だ、私はこう考えております。科学技術庁科学研究開発進歩発達に貢献する仕事をするので、貿易に関与するなどというのはちょっと行き過ぎではないかと思うのでございまして、これはどこまでも通商産業省の所管であるべきだ、こう思っておる次第でございます。
  83. 田中武夫

    田中(武)委員 科学技術庁関係宇宙開発推進本部ですね、東大は文部省、そこで開発したのを利用してといいますか、それを使って外国へ出すときに、商社から届け出が出たときに貿易の問題になると思うのです。そこへ行くまでにチェックする方法はないか。通産省がチェックするというのは、貿易の上に立ってのチェックですよ。しかし私が言っているのは、その通産省へ行くまでの間ですよ。これがどうも納得がいかない。だからといって、通産省が今回とった態度を直ちに私は承認できません。この種のものだから、もっといろいろな関係方面の意見を聞くとか、そういうことはやるべきだった。ところが文部省へ電話くらいかけたかどうか知らぬが、非公式に聞いたというくらいなんだ。そういうことについても軽率であったと思う。しかし、ただ単に、これは貿易の問題だから通産省でけっこうだということには、私は納得がいかない。私の主張はあくまでも、こういうような国の機関開発をし、未知の世界へ入っていく、それが一つ間違えば大量に人を殺戮するところの武器として転用せられる可能性がある、こういうものについては——今後日本も原子力その他でいろいろそういうものが出てくると思うのです。それをただ単に貿易ベース、通商ベースだけで考えていいのかということを私は言っているわけです。だから、通産省がチェックするのが一番いいというのは貿易の問題です。その以前に科学技術庁なり、東大の問題にしても、文部省なり大学当局がもっと何らかの方法をとるべきじゃないか。現にそういうことについて法律がないからできないということだけでは済まないと思う。あなた方がやっていることは、すべて法律がなければできないかというと、そうじゃないのです。ことに通産省のごときは法律を乗り越えての行政指導をたくさんやっているのです。こういう場合になると、法律の陰に立てこもるんですよ。ないからといって通してもいいということはないと思うのです。  そこで委員長、私と上原さんとがいつまでやっておっても、いやけっこうでございます、それは気にいらないと言っておってもらちがあかないと思いますから、きょうはこれで終わりにしますが、これで終えたのじゃありません。外務大臣、通産大臣、文部大臣に、閉会中ならゆっくりと大臣に来てもらえる機会もあると思いますから……。法律の問題でお答えになったのですから、次には私も徹頭徹尾法律研究しておきます。それでもう一度勝負することを宣言いたしまして、きょうはこの程度で終わります。
  84. 石野久男

    ○石野委員 関連して。大臣にひとつお尋ねしますが、ただいまのお話を聞いておりまして、学術の交流という問題は、もう世界各国でやっていることだから問題はないのじゃないかと思いますけれども、それが商品に転化する過程の中で問題があることも一つだし、もう一つは、この種の問題はまかり間違えば兵器になるというおそれがある。特にロケットというのは核兵器との関係が強いとわれわれは理解しているわけです。そういう意味で、ロケット開発というものが商品化していって、それが核兵器に転化する過程をどういうふうに押えるかという問題が一つ出てくるのじゃなかろうかと思います。こういう問題について科学技術庁並びに通産省とかあるいは文部省あたり、特に政府はこのままにしておいていいのかどうか。原子力開発についてわれわれは平和利用のための三原則を持っておりますが、それと同じようにロケット開発を核兵器との関連の中で同時的に把握するという必要があるのじゃなかろうかというような感じがいたします。政府考え方はどうであるかということをこの際ひとつお聞きしておきたいと思います。
  85. 上原正吉

    上原国務大臣 政府考え方を私がお答えする位置にございませんし、まだ政府としての考え方が固まっておりませんからその点はお答えできませんけれども……。(田中(武)委員「閣僚じゃないか、閣僚が政府のお答えができなくちゃ困るな」と呼ぶ)私は、田中さん、それからまたただいまの御質問の中で、国が費用を出して研究開発した成果が業者にそのまま無償で利用されることはいかぬじゃないか、こういうふうに伺ったのですけれども、私は、国が研究開発したもので特許のとれるものはとっておるという事実もたくさん拝見しております。そしてその特許権は国に帰属しておる、したがって国はこの特許権の使用については制限できる、こういう事実もたくさん知っております。しかしそう申し上げると申しわけないのですが、われわれが考えて、これは特許確かになると思って出願しても、いろいろな理由でならないというのもたくさんあるので、自分でこれは研究開発成果である、発明者である、こう考えても、それがそのまま特許になるとはなかなか限らないのでございまして、高木先生が先ほどおっしゃったこれは特許になりませんというのも、専門家の意見として拝聴する価値があるのではないかと思うわけなのです。この点は後段とは別でございますけれども。  ただ問題は、兵器に転用されるおそれがある、あるいは改造されるおそれがあるというものが無制限に輸出されては困るではないか、こういうことだと思うのでございます、論点の中心は。(田中(武)委員「それとやはり商品化の問題ですよ」と呼ぶ)つまり輸出されるということは商品化するということだと思うのでございます。  そこで、この点は将来十分研究してまいらなければならない、かように考えております。私は台閣に列してまだわずかでございまするから、その点を閣僚諸公と論議する機会がございません。またいかなる経緯で今日まで推移してきたかもわかりませんからお答えはできませんけれども、十分検討してみる必要があると思うのでございます。そうしてこれを正確にチェックし得る方法か手段があるかどうかということも検討してみる必要があろう、かように考えております。
  86. 石野久男

    ○石野委員 研究するということですから、一応研究していただきたいと思うのですが、特に、私がここで政府にお願いしておきたいことは、ロケットが核兵器に関連性を持っておる部門について、その危険を防ぐために、あらかじめ、原子力開発について行なわれているような規制措置というものをこの際考えなければならぬじゃないかというのが私の政府に対する質問です。だから政府はその点についてやはり考えていただきたい。ひとつ意見をまとめていただく必要がある。これは委員会としても考えなければならぬ問題だと思いますが、そういう点を私はお尋ねしたので、いま一度その点についての大臣の御答弁を聞いておきたいと思います。
  87. 上原正吉

    上原国務大臣 ロケットというものを軍事目的に転用されないようにつくるということが可能かどうかということになってきますと、私どもしろうとには実は判断がつかないわけでございまして、これは学問的な技術的な検討も必要じゃないかと思うのでございます。そこで十分論議し検討してからでないと結論が出ないのではないかといま考えておりまするが、十分議論し検討する必要があるとは考えております。
  88. 石野久男

    ○石野委員 ついでに、有澤先生がおいでになりますので、これは原子力の問題そのものではございませんけれども、原子力開発の問題は平和利用の間ではそれはあまり問題はないかと思いますが、平和利用と関係をいたしますが、特に原子力の規制の問題と関連してロケットの問題も関連性があるように、われわれがただいま疑問を提起したような点があるわけですし、そういう意味でロケットの核兵器に併用される危険を防止するための規制措置というものを考えなければならぬのじゃないかという疑問を持っておるものですが、先生のお考えはどうですか。ひとつこの際お聞かせいただきたい。
  89. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 私はあまりロケットのことは存じませんけれども、原子力につきましては規制法がございまして、御承知のとおり炉ばかりではありませんで、部品の輸出につきましても、この部品が平和利用に限られるという条件のもとにしか輸出が行なわれない、こういうふうになっておりまして、ずっと前ですけれども、インドで炉をつくる場合、日本の部品を要求されましたが、その場合におきましてもそういう条件をつけてこれは認められたことがあります。この原子力は使い方によりましては爆弾にもなりますし、また他方面においては広く平和利用ができることが明らかであります。それがために、日本といたしましては、原子力については平和利用に限るという命題を掲げて、国内の開発ばかりでなく、輸出につきましても、つまり商品化につきましても平和に限定して許可する、こういうことになっております。ロケットは私はよく存じませんけれども、ロケットそのものがすぐ兵器になるということは必ずしも言えないかと思いますけれども、いま御指摘になりましたように、これが兵器と何らかの関係がかなり深いものであるというようには考えられます。したがって、先ほど来の御質問の点から考えますと、全くの平和商品の場合とはちょっと違うように考えられますので、このロケット開発は今後ますます日本においても盛んになりましょうし、先ほど田中委員の御質問にありましたような商品化という問題も起こってくると思いますので、この問題につきましては、幸いに上原大臣が今後十分検討するとおっしゃっておりますので、十分研究に値するものだと考える次第であります。
  90. 岡良一

    岡委員長 原茂君。
  91. 原茂

    ○原(茂)委員 上着を脱いだままで失礼いたしますから、大臣も暑かったらお脱ぎください。  きょうは特許庁の長官が来ておられるようですから、二、三質問をしますが、大臣それをちょっと聞いておいてもらいたいと思います。たとえば公務員が発明の結果特許をとるということになりますと、特許権というものは発明者個人が持つことになるというふうに理解しますが、それでよろしいですか。
  92. 倉八正

    ○倉八説明員 法律のたてまえはそうでございますが、その場合に、国の公務員、あるいは地方公務員、あるいは教育公務員も含むわけでございますが、そういう場合にその職域におきまして職務発明規程というのを設けておれば、それは国に帰属いたします。
  93. 原茂

    ○原(茂)委員 さっき大臣から、特許というものは公務員の場合には国が特許権所有するというように石野委員にお答えがあったのですが、そうじゃないのですか。原則としては発明者個人に特許権というものは属するわけです。ただし特許権を持った個人と国との間に、いま言ったように契約がなされますと、これはそうではなくなるということですから、そこでお伺いしたいのは、特許権を公務員がとった場合に、いわゆる公務員の場合には国が自動的に通常実施権というものを持つことになるだろうと思うのです。その通常実施権を持っている国、ところが特許権を持っている個人、公務員ですが、これがたとえば他の民間の会社なら会社に専用実施権を与えることは自由なんですね、法律のたてまえからいくと、与えてはいけないという法律がどこにもないようなんです。私の調査不十分かどうかわかりませんけれども、実にふしぎだと思うので、きょう長官にこの点をお伺いをしたかったわけです。もし特許権者、いわゆる公務員個人が国家機関における開発、発明の成果としての特許を持ち、その代価といいますか、自動的に国が通常実権を持つことになっているのですが、しかし専用実施権というものをその特許権者が民間の企業に与えますと、国の通常実施権も自然消滅したと同じような効果をもたらしてしまう。なぜかというと、何条か知りませんけれども、特許法の何条かにたぶんあると思うのですが、専用実施権を与えられますと、その民間の会社がまた独自の立場で他に通常実施権を与えることができることとなっているのですね。ということは公務員が発明をした、特許権を獲得した、同時に国は通常実施権を持っているやに見えるのですが、次に私が申し上げた専用実施権を特許権者が、公務員個人が自由にどこにでも与えることができるというところに非常に大きな問題があると思うのですが、この点どうでしょう。
  94. 倉八正

    ○倉八説明員 職務発明につきましては、いま先生御指摘のように非常に問題がありまして、いまの通常実施権というのは、これは、職務規程をたとえば大学なら大学が持たなくても、当該研究にかかるものについては通常実施権を国が持つわけでございますが、たとえば個人で公務員が出したその場合には実は個人が専用実施権も人に譲れるわけで、それでロイアルティーも取れるということで、いま御指摘のような問題が出たわけでございますが、この問題につきましては非常にむずかしくて、国によってもちょっと違うようなことでございますから、私のほうとしましては、いま工業所有権制度改正審議会でこの問題を検討させておりますから、しばらくその結論を待たしていただきたいと思います。
  95. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、長官も私と同じようにこの点はどうもおかしいというふうにお思いになっているのだと解釈します。そうでないと、実にふかしぎなことが起こるわけなんです。多くを申し上げませんが、これはぜひ、特許法の中に専用実施権を公務員たる特許権者が個人で自由にどこにでも与えることができると解釈できるようになっておることは、全く大きな法の不備だというふうに私は認識しますので、この点を十分ひとつ御討議いただいて、審議会が持たれているのでしたら、急速にその穴をふさぐような、成果があがるようにひとつ誘導をお願いしなければいけない。これは民間の会社においても重要な問題が発生してくると思う。大きな盲点だと思いますので、いまの御答弁で私と同じように協力が願える、そういうつもりでこの点はおきます。  そこで、カッパーに直接いまの問題は関係なかったわけなんですが、大臣にお考えいただきたいのは、公務員個人が特許申請をして特許権を持ちますと、その個人は国、あるいは民間における場合には会社でいいですが、そこと専用実施権を与えるという契約を結んで、いわゆる特許権の使用料というものを取る約束、ルールがそこに一つできているわけですね。いま問題になっておりますカッパーのこの問題に関しましては、私は整理をする意味であえて申し上げるのですが、たまたまこれは特許に類するものはほとんどない。確かにそうだろうと私も思うのです。それから兵器の危険、武器に転用の危険等もいま非常に論議をされまして、私はあえてまた水ぶっかけるわけじゃないのですが、たとえば絹糸だって綿布だって、輸出したその先でこれがパラシュートに使われてみたり、何かに使われてみたり、米だって兵隊の食う食糧に使われたという意味では武器転用であるといえるかもしれませんが、そこまでチェックすることは不可能だし、私のほうはしろうとですから、高木先生など、あるいは前回の委員会において四つの理由をあげてこれは兵器に転用できないのだといわれると、おぼろげながら、しろうとなりに、なるほどそんな小さなものでは火薬を積むのが精一ぱい、これはちょっと武器にならないじゃないか、小さ過ぎるというような感じを率直に受けました。しかしこれがもうちょっと大きなものになると、その半面、私ども武器転用の危険をしろうとなりに感ずるということも事実なんです。このカッパー8型に対しては、私のようなしろうとは、その武器転用の問題はないのじゃないかという感じがいたしました。したがって、私個人は、もっと大きなものが輸出される段階になるとたいへんだから、いま各委員が言われたようなことの検討を、真剣に長官にもしていただくということが必要だと思います。そこで、いまのロケットそのもの宇宙観測用その他の設備一式は特許なり実用新案には確かにならないだろうと思います。これは国際的に完全に通用している何か理論的な土台を中心にして開発研究を進めてお互いの国がやっているのだろうと思いますから、その意味では——ただこれは一つの仮定なんですけれども、特許というものをとるというある段階で、たとえ一〇〇という段階でくるとしますと、何か開発研究を国の機関でやっているうちに九九%まできた。あとで結果的にはわかるのですが、あと一%何か研究をされて乗っかると、たいへんな発明になる、特許になるというような性質のものが、結果論ですが、九九%まで開発をされている。それがその九九%という段階でいわゆる公務員である者が何か他動的、自動的な動き、アクションを起こされて、それによって民間の会社に使われる。国家の費用を使って九九%まで開発されて、あと一%おやりになると国際的な特許になると思われるものが、九九%の段階で知らずに民間に使われているということも、これはなきにしもあらずじゃないかという気がするわけです。それが一つ。  それから特許というものには全然関係のない今度のカッパーの問題で、とにかくインドネシア日本輸出してくれと頼んでくるほどいわゆる技術なりあるいは製造過程においてすぐれた日本の技術というものを買いたいといわれるような、発明その他には相当しなくても、あの国ではいまやろうとしてもそれだけの技術段階を持っていない。ユーゴスラビア、インドネシアでは……。しかし日本は、その意味では、これをつくる技術段階に到達しているという意味では、特許には関係ないのですが、この開発研究のいわゆる東大の例でいいますと、東大のこの種のカッパー開発研究成果というものは、準ずるということばがあるなら、特許権を中心に、かようなものに準じて考えていいほどの重要性があるだろうというように思う。ここに今度の問題があると思うのですが、その重要性がある、それを知らない間に、というのは、先ほどからの答弁、前回の答弁を聞きましても、いわゆる国家機関の一部である東大研究をして一つ成果が出てきた。その成果が民間会社にとにかく提供をされて使われた。これは学会誌に毎月出しているのだから自動的に全部の業者が見ていることはわかります。当然そうなっているだろうと思います。それでいいと思うのです。学界の研究というものは、それでなくても大学成果成果といいますが、大学成果ばかりでなく、大学に行って学問をし、習ってきた社会人がいわゆる大学研究成果を個人的にいろいろ枝葉をつけて発明したり開発したりしているわけですから、そういう意味では私は矛盾はないと思うのです。そのとおりでいいと思いますが、ただ世間の常識からいいますと、何か技術的な成果というものが商業ベースといいますか、採算上のベースに乗りまして売買の対象になろうとするときには、そこに価値を生ずるわけです。その価値が生じたときに、利潤が生まれたときに、その利潤の一部は、いままで東大なら東大開発研究されたその部分が利潤の一部になっているんだという、これは世間の常識で、そういう解釈が当然成り立つ。にもかかわらず、東大という国家機関に利潤の一部もペイされていない、返ってきてないというところに、どうも世間一般常識からいって、通常行なわれている商業の常識からいって納得できないというところの第一の問題点があると思うのです。したがって、私はあまり時間をとってがたがたとわざわざ聞いたりするのもいやですからあえて続けるのですが、この種の疑いといいますか、世間の通常の常識からいっておかしいのではないかというようなことを、おかしくないものにしてやることのほうが、今後この種の大学なり学術上の成果というものがもっと広く堂々と使おうとし開発しようとするところに使われていくようになる。変な疑いを持たれないようにしてやることのほうがいまの段階では私は必要じゃないだろうかというふうに、逆の立場で考えているわけなんです。そういうことがもしそうだとするならば、変な疑いを持たれるような世間の常識からいっておかしいじゃないか、そういうところを除いてやればいい。その点は一つしかない。民間では上原さんも会社をおやりになっておりますが、どこかの特許あるいは特許になっていないが優秀な技術開発というものを自分の会社で使おうというときには、必ず考えた人間に、技術者に何らかの支払いをしている。代価を払う。同じように今度のカッパー8型にしても、東大研究成果というものは間違いなくプリンスその他二十一社に及んでいるそうですが、伊藤忠を中心にその二十一社もそれを使って何らかの利益を得たことは間違いないのだ。その利益を得た場合には、特許じゃないんだけれども国家機関研究機関によって開発研究されたものを使った場合には、最低何%から最高何%の範囲で国に利益の一部を納めるべきであるということをきめてやったほうが親切じゃないかと思うのです。堂々ととっていい。今度インドネシア輸出したのもそういうきめがあれば、百七十一万ドルですか輸出をしようとしたときに、これは東大という国家機関研究したその成果が土台になっているんだ、広く公表されたものであるけれども、間違いなく東大研究機関というものが発表した、それがもとになっているんだ。また必要に応じては東大の先生方のところへメーカーはおそらく聞きに行ったと思う。この点どうも紙の上だけではわからない、一体こまかくはどうなんでしょうといって指導を受けているはずであります。ただ学会の誌上に出たというだけで製品が、いわゆるアイディアを生んだ人のとおりにできるなんということは絶対にありませんから、その研究をされた先生方に指導を受けているに違いない。これも世間の常識なんです。とすれば当然国家機関によって、特許にはならない一歩手前なんだが、開発された技術というものがどこかで商業ベースに乗って使われたとき、その利潤の一部は国に納付するんだということをきめてしかるべきじゃないか。そのきめる範囲内容は問題ですが、そういうところを、できるところから一つ一つルールに乗せて折り目を正していくと、この種の私たちの持つ疑問というものはなくなってくると思う。その疑問の裏に、もっと深くいやなことを言いますと、疑惑がある。東大研究室の教授なんというものは、自分ではメーカーからふんだんに金をもらっている。そうして助手あるいはその下にいる学生なんかが一生懸命やったのに、たとえば自分のところに一千万円きた中から、おまえは御苦労だったから三万円、助手には五万円というふうにして出したものが五十万円、残りの九百五十万円は自分のふところに入れているというような悪口を言われるくらい、変な疑惑というものが巷間実は伝わっている。そういう面のあることは間違いない。そんなことはあり得ないと思います。東大の先生におこられてしまいますから、あり得ないと思いますけれども、そういうようなうわさすら飛ぶという原因もそこにある。もっと私は明確にすべきだと思う。そうしてまた、そうでなくて事実問題として大蔵省のいろいろ予算の査定等もありますから、文部省もずいぶんお骨折りになっておるのでしょうが、大学研究費をこれだけほしいといっても予算をたっぷりくれてはいないでしょう、日本全体のいまの予算の分布から見ますと。そうすると、私はどうしても合法的な手段でできる限り研究につぎ込める金を、国以外のところからもし合法的に入るならほしいという気持ちすら、私は研究者の立場で当然あるのじゃないだろうか、あって当然だと思います。研究に対する情熱が深ければ深いほど、その意味の費用というものを何とか充足したいと考えるだろうということを考えますと、先生方のためにも、業者のためにも、あるいは日本の国全体の立場からいって、この種の技術がもっと広く国家的なものにどんどん発達するためにも、私は何かそこに一つルールをきめていいんじゃないだろうか。さっきから言われているように、特許権ができたときに、特許権を中心に何かが行なわれるのだというばかりでなくて、特許の一歩手前の、あるいは特許関係ないようないわゆる生産技術の面における技術開発研究であろうとも、その種のものが国家機関成果をあげたとだれが見ても認定されるものに関しては、これを利用したと明瞭にわかったときには、範囲と内容は別ですけれども、何かの規定をつくって返してやる、国に納付させるということを何かのルールに乗せてやることのほうが私は正しいんじゃないかということを一点考えるわけです。この点大臣の、お互いに整理をするという意味で御答弁いただきたいのですが、ああ言うと何か言われはしないか——絶対に言いませんから、何でもかまいませんから、私は前向きにほんとうにこうしたらどうかということを申し上げているだけですから、それが一点。  二つには、先ほどからも言われているのですが、少なくとも国家機関で何らかの研究成果があがったというものを、今度の場合には科学技術庁宇宙開発推進本部ですか、これも一つ関係があり、それから東大研究所関係がある。二つのことが考えられる。そのほかに政府そのものもある。そうしたら一体どこか——私に言わせると、どこでもいいのですが、どこかが一元的に統一して、この種の宇宙開発中心の研究成果あるいは開発された技術というものを一カ所で、これはもう大学研究から外部のいわゆる利用にまかしてよろしい、あるいはまだ早い、危険がある、まだ未熟だ、この研究は進めるべきであるというような判定をすると同時に、いま疑惑を生んでいるようなだれが一体——ロケットプリンスです。あるいは推進力は何とか化成かもしれません。そういうようなところへその技術を使わした——使わしたんじゃない。学術研究書を見るとわかるわけです。実際にはそれを見て業者はよしこれをやろうというわけでやっていくんだろうと思うのです。思うのですが、しかしほんとうのもとは、あるところでけじめをつけまして、この研究はもう外部に発表をしこれを使わしてよろしいという決定の機関が一カ所統一されてありさえすれば、私はこの種の問題はそこで責任を負えばいいと思うのです。毎月のマンスリーに発表する、その一歩手前のところで、発表していい、発表してはいけないという決定でもけっこうです。公開して発表した以上は、どこのメーカーが使おうとこれは自由にきまっています。しかし、その公開していいかどうか、あるいはある程度全部がまとまるまで、コンクリートするまで全然学会の誌上にも出さなかったというようなものがもしあった場合には、それを一ぺんに発表していいとか悪いとか、部分的に発表していいとか悪いとかいうことを、どこか一カ所総合的に相談して発表していいとか悪いとかの決定をする機関というものを国の立場でお持ちになることのほうが、今度のような問題の疑問というものがうんと少なくなるし、問題の解決にいいんじゃないかと思うのです。どうも前回の委員会でもそうなんですが、今度のこの問題に関する限りは、集約するとその二つに尽きるように思います。武器その他の問題は、これはもう後日の研究に待たなければいけませんし、研究していただきたいと思うのですが、究極するところ、変な疑惑を一掃するために、あるいは技術がもっとフリーにおおらかに国全体で利用され、開発されていくために、あるいは宇宙観測というものが、国際的にもっと日本の技術が協力できるためにというふうなことを考えてきますと、いまの二つに集約されてくるのじゃないかというふうに思いますので、これは大臣の立場でその点の見解を、もし差しつかえなければはっきりとひとつおっしゃっていただいて、これで終わりたいと思います。
  96. 上原正吉

    上原国務大臣 承っておりますと、たいへんけっこうなお考えだと思います。ただ、それを実際に実現するのには、なかなかむずかしいところが少しあるように思いますので、よく検討いたしてみたいと思います。しかしどうもその可能性がありそうに思います。たとえば、国家機関研究開発したものを、きょう問題になったことのように、相談を受けて助言を与えたというふうなことになれば、当然だれが何を使っておるということがその国家機関にわかるわけですから、国家機関開発したものを使うものから、残らず、たとえばロイアルティーをとるというふうなことはこれはむずかしいかもしれませんけれども、国家機関研究開発の結果を、あるいはそのプロセスを、教えを受けて実践したという業者があれば、当然わかるわけですから、そういう場合には適当な機関でロイアルティーみたいなものを徴収するということが可能になってくるのではないかとも思われますし、また、あとのほうも同じようなことで、同じような方法が考えられまするので、可能性があるような気がしますので、十分検討いたしてみたいと思います。
  97. 原茂

    ○原(茂)委員 最後に、高木先生にちょっとお伺いするのですが、東大でミュー4型というのですか、今度はその開発に着手するのだという発表があったように聞いています。これは、その大きさなんですが、私みたいなしろうとにはよくわかりませんが、たとえばアメリカの気象衛星等と比べまして、ずいぶん日本のやつはばかでかいもので、しかも上げるものは非常に小さい。何かしろうとの私には、むだが非常に多いのじゃないか、なぜこんなむだをするのだろう、国費を使うにしても、もうちょっと思い切って、せっかくアメリカにあるのだから、いまのように宇宙開発の技術の交流というものが非常に進んでいるのですし、そういう意味で、アメリカのタイロスというのですか、ああいったものを、もうちょっと事前に技術的な討議がされて、交流を行なって、もっと小さなものであれ以上の大きな成果をあげるようなことに研究できる技術の段階にもきているのじゃないかと思いますし、ばかげた、ばかでかいものをああやってつくっていくということはどうかなという感じがするのですが、これは簡単でけっこうですから、方針だけをお伺いしたいと思います。
  98. 高木昇

    高木説明員 ある新聞に出ていたことでそういった御質問があるいは起こったのかと思うのでございますが、ミューは直径が一・四メートルで、あそこにあがっておりましたスカウトは一メートルでございます。これはアメリカのはオール固体の四段式のものでございます。そうして、スカウトでは、気象衛星はいままで上げておりません。あそこに出ておりますタイロスというものは上げておりませんで、やはり科学的な小さなものを上げておりまして、気象衛星のような実用衛星、タイロスのような重い百五十キログラムぐらいの人工衛星というものは、ソー、デルタという液体燃料のロケットで上げております。なぜミューをスカウトよりも大きいものにしたか。実はラムダは直径七十五センチで、スカウトが、アメリカのは、一メートルでございます。そこで、ラムダでは人工衛星を上げる能力がない。あるいは外側のバンアレン帯まで到達しない。スカウトは一メートルで、前例があり、これは小さな人工衛星。将来のことを考えて、もし実用衛星などを上げようとすることを考えると、まず一・四メートル、あるいはもうちょっと、二メートルぐらいのものがほしくなるかもわかりませんが、スカウトが一メートルでしたから、それと同じものにしようという気も私たちはなくて、むしろアメリカと変わった方式にしたい。それからあそこのトン数でございますが、推力に秒時をかけないと、何秒燃えるかということをいわないと、ほんとうの力の表現ができません。それで確かに一見重く、大馬力のようにあすこには書かれておりますが、やはり最初スカウトのごときはもう三十基も四十基も上げておりますし、経験を積んで一基一基軽く軽くしておりますので能率が上がっておりますが、私たちが国費を使ってやる場合には、やはり成功するということを目標にすると、少し安全率を高めてなるべく失敗しない、まただんだんと改良してアメリカくらいにまでいけばその域に達するだろう、安全サイドを見ましたので、まだ一号機も飛んでおりませんが、現時点ではかなり重いロケットで小さい人工衛星しか上がらないような計算になっております。まだ三年も四年も先でございますので、もう少し進めさせていただきたいと思います。
  99. 岡良一

    岡委員長 本委員会といたしましてロケットインドネシアへの輸出に関していろいろ論議がありましたが、委員会といたしましては、国民的行事である人工衛星の打ち上げについて、あるいは文部省また科学技術庁、いずれの側にも偏する立場はとっておりません。ただ双方お互いに折り目の正しい姿勢で協力をしていただきたいという念願から各委員の御熱心な御討議があったことを御了承願いたいと思います。     —————————————
  100. 岡良一

    岡委員長 次に、原子力船開発に関する問題について質疑の通告がありますので、これを許します。内海清君。
  101. 内海清

    ○内海(清)委員 時間がよほど経過いたしましたので、なるべく簡単に御質問申し上げたいと思います。  原子力商船の第一船の開発につきましては、すでに御承知のように三十八年に日本原子力船開発事業団法ができまして、それに基づいて事業団が設立された。そうして三十九年度の予算においてこれが計上されまして、これが建造に着手したわけでありますが、すでに御承知のような経過によってこの契約が成立しないで、これが遅延するもやむを得ないという形に相なった。そこで少なくともこの建造が二年くらいおくれてくるのではなかろうか、こういう事態に立ち至っておるわけであります。その遅延する問題につきましては、先般「原子力第一船の建造契約について」と、さらに原子力委員会から原子力第一船建造についてというふうなものも出されておるわけであります。私どもこれらを拝見いたしまして、多少この際御質問申し上げて明らかにしておくほうがいいのじゃなかろうか、かように思う点がございますので、できる限り簡単にいたしますが、できるだけまた御答弁も簡明率直にお願い申し上げたいと思うのであります。  わが国の原子力商船の開発が非常な問題になって、事業団までできてこれを開発しなければならぬ、こういうことにつきましては、結局わが国が世界の第一位に位するような造船国である、したがって将来のわが国輸出面に関連いたしまして、この際一日でも早くわが国で原子力商船を開発して、そして建造あるいは運転あるいは乗員の教育訓練あるいは国産技術の開発等というようなものの実績を確立しておくことが、将来わが国のこの種の産業の発展に最も緊急を要するものではないか、このことが基本的な問題だと私は考えるのであります。ところがその後、御承知のように、ドイツにおきまして昨年すでにこれが進水いたしまして艤装の段階に入っておると思うのであります。わが国のこの原子力商船は世界の第四番目の原子力船として誕生することであったのでありますが、これがかようにおくれたことについてはまことに遺憾でございます。ことにこれが議会ですでに議決されて、予算も計上された上、これが実施段階に至って挫折するということにつきましては、これはどうも交渉がうまくいかなかったからやむを得ないということだけでそう簡単に済まされるものかどうかという点もあると思うのです。これが不能になったところの責任の所在ということも、これはまた論議される必要もあるのじゃないかと思うのでありますが、そういう点はきょうは別にいたしまして、私がまず第一にお尋ねいたしたいのは、わが国の原子力船建造に対する基本的な考え方について、この段階でなお変わりはないか、あるいは二年もおくれを来たすようなことになったが、何かその間についての考え方に変わりがあるのかどうか、この点をまず最初にお伺いいたしたいと思います。
  102. 上原正吉

    上原国務大臣 原子力船の建造は、おっしゃるようにわが国にとりましてまことに大事なことでございまして、一日も早く実現しなければならぬということは、私どもの考え方といたしましても変わりございませんが、国の事情といたしましても変わりない、かように思うわけでございます。したがいまして、おっしゃるような事情でおくれましたのはまことに残念でございます、申しわけもございませんが、極力努力をいたしまして、一日も早く国力で原子力船を建造する、これを実現したいと熱心に努力を続けておる次第でございます。
  103. 内海清

    ○内海(清)委員 原子力が舶用動力として将来大きく伸びるであろう、このことは大体予想されるわけであります。ことにその特徴としてはいろいろな面があげられておりますけれども、これらの問題は、抜きにいたしましょう。しかし、御承知のように、今日まだ開発段階にありますから、したがってこの原子力船も満足するようなものではない、特に経済的にはなかなか引き合わぬのが現在の実情なのであります。これはすべて新しいものが開発されるときにはそういう苦しみをやはり経てこなければならぬ。将来に大きい一つ目標を持って、そのためにはそういうことをすべて克服していかなければこれは解決できぬと思う。ただ目先の問題だけを考えておっては解決できない。したがって、こういう開発については国としてもそれらの点をはっきり考えていただかなければならぬのじゃないか、こういうふうに思うのです。しかも、そういう経済的には今日なお引き合わない原子力船をなぜ早く開発しなければならないのかということでありますが、これは申し上げるまでもないと思うのです。近い将来に必ず在来船と太刀打ちできるときがくる。さらに、御承知のように、これにつきましては重油が石炭にかわり、ジェット機がプロペラ機を駆逐したと同じような時代が来ると私は思う。それを目ざして、私どもは、いまいろいろな障害があろうけれども、これを克服して開発していかなければ、将来そういう原子力船が在来船にかわるときが来たときに、世界一の造船国であるわが国がこれができないという場合、国家の損失はどうであるか、この点を考えなければならぬと思うのであります。ことに、御承知のように、三十二年以来造船に関しては世界のトップであります。これらについては詳しいことを申し上げる時間がございませんが、いずれにいたしましても、このことは十分私どもは考えなければならぬ。最近造船では年間四百万総トン以上わが国でやっており、これは世界の四割以上であります。しかも、日本の造船界の総売り上げ高はおそらく七千億以上になる。ところが造船というのは半分は建造費などにかかりますので、造船による売り上げ高はその半分の三千五百億程度だと思うのでありますけれども、しかも、それが輸出比率は七割でございますから、約二千五百億程度はこれによって外貨をかせいでおるということであります。ことに船が鉄鋼と並んで、いま日本の全産業中の輸出品目の最右翼にあることは御承知のとおりであります。むしろ造船におきましては、現在持っておる市場を確保する必要はあっても、これ以上市場を拡大する余地がないほど世界市場に日本が占有率を誇っておるわけであります。日本が原子力船に力を入れなければ、この市場を失う日が来ると私どもは思うのであります。ことに、先ほど申しましたが、造船で申しますと、日本の最大の強敵でありますドイツでは、すでに最新式の原子力船が建造されつつあるということであります。したがって、この市場が荒される日が、よほどわが国で考えなければ、あまり遠くない時期に来るのではないか、その可能性が十分裏書きされているとすでに私は考えておるのであります。こういう点につきまして、私はそういうふうに考えておりますが、大臣はどういうふうにお考えになりますか。これは基本的な考え方につながると思います。
  104. 上原正吉

    上原国務大臣 私も、おっしゃるように、日本が世界に誇る造船力といいますか、この地位を失うことは日本にとって取り返しのつかない損失だと思いますので、いまの採算などをとやかく論議しておるときではないと思うのであります。そしてまた、こういう議論は閣内でもたくさんございます。ですから、直ちに採算上引き合うかどうかということは問題にしないで、とにかくりっぱな役に立つ原子力船をまず日本が自力でつくってみる、そのことのために最大の努力を傾くべきだと考えまして、それを続ける覚悟でございます。
  105. 内海清

    ○内海(清)委員 大臣の御答弁をいただきまして、たいへん力強く感じるわけであります。ところが実際この間出されましたものを読みますと、多少私どもその辺にどうかと思う点があるわけであります。それらについて、それでは簡単にお尋ねいたしたいと思うのでありますが、三の「メーカー見積額増大の理由」というところの(1)であります。これは「予算要求の根拠となった第一船設計と入札見積りを求めた基本設計との間に差異があり船価に当然の値上りが見込まれること。」こういうことであります。ところが、こういうふうに書かれてありますが、このことは、その辺の事情は私よくわかりませんけれども、予算を要求なさる前にここに書いてあるようなことはすでにわかっておったと思うのであります。それと予算要求の関係、そういうことを十分見込んで考えて予算要求をやられたのかどうか、その辺をまずひとつお伺いいたしたいと思います。
  106. 村田浩

    ○村田政府委員 御指摘の、予算船価三十六億円に対しまして、事業団が行ないました基本設計そのものが若干の値上がり要素を含んでおった、こういう点についてどういうことか、こういう御質問と考えますが、まず最初に、三十六億円の予算船価を見積もりましたのは、その基礎となりました、当時原子力船研究協会というのがございまして、ここに政府から委託いたしまして、原子力第一船の概念設計をやっていただいたわけでございます。そのときの概念設計で出てまいりました海洋観測船、たしか総トン数で六千三百五十トン、軸出力で一万馬力、こういうものでございますが、その海洋観測船の概念設計をベースといたしまして、関係業者等の専門家からなります部会で検討いたしていただきました。出てきた船価が三十億七千万円ないしは三十四億七千万円ということでございます。この価格をさらにもとにしまして、原子力船事業団ができました後に再検討されまして、その間における物価の上昇等を織り込んで三十八億円と見積もられたわけであります。昭和三十九年度予算の折衝におきまして、つまり昭和三十八年の十二月でございますが、大蔵との折衝の結果これが三十六億円という査定になりました。政府並びに事業団においても、その線で了承いたした次第であります。  その後、事業団におきましては、この三十六億円という予算船価をベースといたしつつ、概念設計をさらに発展させまして、基本設計をつくったわけでありますが、基本設計の結果、御承知のとおりたとえば総トン数におきまして約一割増加する結果が出てきておるわけであります。つまり、原子力船事業団のつくりました基本設計では、総トン数が六千三百五十トンではなくて、六千九百トンに増加いたしております。また、さらに申し上げますと、その後の勉強の結果を取り入れまして、この原子力船内で発電いたします電力の出力要請も、概念設計の際よりも二割方大きなものをつくるように改善いたしております。こういったような要素が積み上がりまして、その面から船価をやや高める線が出てきておるわけであります。  それからもう一つ大きな要点は、概念設計をやりました時分にはなかったわけでありますが、前国会において御承認いただきました核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部改正の根拠になりました一九六〇年の海上人命安全条約、いわゆるSOLAS条約がことしの五月発効することが、昨年の基本設計をやっております段階で明らかになっております。したがいまして、SOLAS条約できめられております船舶としての安全上の基準、これを今度つくります船には取り入れなくちゃならぬ。概念設計のときにはその要素はなかったわけでございますが、基本設計をやる段階でそういう要素が出てまいりました。この新しい国際条約による安全基準を取り入れるように設計をいたしました結果、この面でも若干の船価値上げの要因が出ておる、こういう趣旨でございます。では、そういうような船価の値上がりをどのくらい見込んでおったかということでございますが、事業団のほうの推算によりますと、ただいま申し上げましたような要素を勘案いたしましてはじき出した船価は、大体四十二億九千万円程度である、こういう一応の推定をいたしておったわけでございます。その点をただいま先生御指摘の資料で、メーカー見積もり額増大の理由の一つとしまして掲げたわけでございます。
  107. 内海清

    ○内海(清)委員 船価決定につきましては、いろいろ経過もあるようでありますが、三十七年六月、これはいまお話のような総トン数で六千三百五十トンということ、軸馬力が一万馬力であります。このときの基礎になった数字というものは、確かにその当時におきましては、まだサバンナ号の建造に対する詳細な資料もないであろうし、ましてドイツにおきまする原子力船建造についてはわかっていないときであります。したがって、どういうふうなものを基礎にして積算されてきたかということなんですが、私はサバンナ号の完成に至るまでの経過あるいは船価の増大、これらを考え、さらに今日ドイツにおける原子力船の状況等の様子がだんだん入ってきておりますが、そういうふうなものを見たときに、はたしてその基礎になるものが正しかったかどうか。それが基礎になっていろいろな仕様が変わった、設計が変わったということで、これも増額をされておりましょうが、その基礎になる数字が、いまから考えてみて、新しく開発していくのだという観点に立ったときに、はたしてそれでよかったかどうか、この点が私は一番問題だったと思います。その点について、いま御反省になって率直に御答弁いただいていいと思いますが、その点はどういうふうにお考えになっておりますか。
  108. 村田浩

    ○村田政府委員 前の国会においても御答弁申し上げたと思うのでございますが、確かにただいま内海先生のお話にございましたように、三十六年ころ予算船価のベースになりましたものをはじきました際には、サバンナ号の建造費等についてのこまかいデータ等はわかっておりませんでした。また、ドイツのオット・ハーン号の建造につきましてのこまかい船価等についてのデータはわかっておらなかったと思います。しかしながら、わが国で原子力船をつくりましょう、こういう考え方関係業界をはじめとして政府部内にも起こりまして、専門部会というものをつくり、多くの専門家を集めて検討いたました段階では、入手できますあらゆる資料を駆使いたしまして、その当時としては最も客観的に妥当と思われる船価をはじいたものと私は考えております。今日の段階で、いろいろその後出てきた材料から、それがはたして適切であったかどうかということは批判できると思いますが、その当時としては一応ベストを尽くしてはじいてみたものというふうに私ども受け取りまして、その線で予算の計上をはかるように努力いたしたわけでございます。
  109. 内海清

    ○内海(清)委員 もちろんその当時その基礎になる数字についてもあらゆる面から検討せられてやられた、これはうなずけるわけです。しかし、それが基礎になって今度の予算も組まれたわけです。それにだんだん積み重ねていったわけです。それが現実の問題としては契約の過程において大きな開きができたということではないのですか。ここらが私どもとしては、なおその際に新しいものを開発するのであるから、ある程度の余裕を持った見積りがされるべきではなかったか。そのことがいま非常に障害になっておる、こう思うのです。しかし、そのときにそれで十分開発できるという確信があったと思うけれども、その辺にこういうものを開発する場合の心がまえというものが非常に必要なことではないか。もちろんわが国の財政法によりますと、一たん予算をきめますれば、なかなか変更できないことになっておる。そういう点は、これはアメリカあたりのものとかなり違っておる。そういう点を十分勘案されてやってあれば、今回のようなことはなかったと私は考えるわけです。しかし、それはその当時としては一応の自信を持った数字でやったのが、それが今日ではこういう開きになったということで、これは過去のことでやむを得ませんけれども、こういう新しいものを開発するというときには、そういう基本的な考え方に非常に大きな影響が出てくるんじゃないかと私は思うのです。国家的に見ても非常に重大なものであるならば、最善のものを開発する以上は、幾ら出てもよろしい、これだけの心がまえくらいはないと、りっぱなものは開発できないのではないか、こう私は思うのです。  それでは、時間がないから次に移りますが、この書類を見ますと、次に、いろいろあげてあります。船体が一〇%ほど大きくなった。あるいは発電機の容量が二〇%大きくなった。その他いろいろあげてありますが、これらについて、もちろんそれが値上がりの原因でしょう。しかし、こういうふうなものによって大幅な値上がりが生まれるということよりも、もっと重要なことは、新しくものを開発するということと、さらにそれに対するいろんな付帯の設備の問題、あるいは付帯工事の問題が出てくると思うのです。そういうことのほうがむしろ大きいのではなかろうか、こういうふうに私は考えるのです。小さくなったから、あるいは炉が新型になったからといって、それほどの大きな船価に対する影響は出てこないのじゃないか、こういうふうに思うわけです。これは御承知のように、炉においても新型の炉を入れようというドイツのオットー・ハーン号ですか、この原子力船の状況を見ましてもわかるわけであります。そういう点につきましては、どういうふうにお考えになっておるか。ただ、こういうものであれだけの船価があがったということであるのかどうかということ、これは交渉の過程でよくおわかりになっておると思う。その点ひとつ……。
  110. 村田浩

    ○村田政府委員 初めに、三十六億円の船価から出発して考えておる点でございますが、私ども、一応運輸省のほうともいろいろ御相談しまして検討いたしましたところでは、かつ、また、当時の三十六億円をきめたときの事情等をいろいろ調べましたところでは、当時原子力第一船、これは海洋観測船ということできめておりましたけれども、その船級、グレードにつきましては大体高速貨物船、高速ライナー、計画造船におきます高速ライナーを基準としておったようでございます。高速ライナーにつきましては、現在では新しいものでトン当たり十万円程度でできるそうでございますが、当時大体十五万円程度と考えておったようでございます。これに対しまして原子力船であるために非常に船価が高くなるであろう、これは初めから考えておったわけでございますが、どのくらい高くなるかという点の判断、これはそのときの資料で判断するしかなかったわけでありまして、私の聞いておりますのでは、同じくらいの規模の海洋観測船をたとえば普通の船のようにディーゼル機関で建造いたしますと幾らかかるか、大体十八億円ぐらいであろうという推定であったと聞いております。そのうち十七億が船でございまして、約一億余りがエンジンである、こういう推定であったと聞いております。これに対しまして、この船は原子炉を積みますので、炉の部分だけの開発要素を含め高くなるであろうということから三十六億となっておるわけでございまして、トン当たりにいたしますとこのぐらいの大きさの海洋観測船を十八億といたしますと、約三十万、高速ライナーに比べてもう倍くらい高い船価になっております。それは小型であり、あるいは海洋観測船であって貨物船でない、そういう理由から上がることはやむを得ないと思われます。他方、原子炉を積みますということから、原子炉それ自体が高いということも含め、御指摘のような開発要素がございますのでさらに高い船価を考える。その考え方のおおよその目安としましては、通常船で、この大きさの船をつくったときの倍くらい、つまりトン当り六十万円くらいというものが当時考えられたわけでありまして、おおよそ三十六億円という船価はそういった点から見ましてべらぼうにおかしな数字とは思われないという判断をいたしてまいっておったわけであります。  その後、この原子力船事業団ができまして、いろいろ基本設計をやってみました段階で問題になりましたことの中には、ただいま内海先生のお話にもございましたように、わが国で初めての経験である舶用炉、船に載せます原子炉を全部国産でいくか、あるいはまた部分的な輸入でいくか、あるいはすべて輸入でいくか、ここのところにつきましては、原子力委員会あるいは科学技術庁、運輸省と事業団との間にいろいろの意見の交換があったわけでございますが、事業団法をつくりましたときの国会における御審議等を通じましても、できるだけ国産、国内技術を使ってやるべきである、こういう一般の御意向あるいは御関心も深くございましたので、そういうことも含め国内技術でやっていこう、こういう線から基本設計をつくり、その面でドイツのごとく最新式の炉を入れてやろうという考え方を一応捨てたわけでございます。ドイツにおきましては、ただいまお話もございましたとおり、船に使います原子炉としては、現在開発されておる段階からいいまして、最も新しいと思われます型の一つであるCSNGIII型を積むようにいたしております。この原子炉は、たとえば私どもの考えております同じ出力のものをこのCSNGIII型でやるといたしますと、かなり型が小さく、したがいましてそれを搭載する船自身も小さくできる。それが船価にはね返ってくる、こういう要素はあろうかと思います。一つの例を申し上げますと、舶用炉を船に積みまして、一番の問題になります遮蔽、これが非常に重量をとるわけでありますが、ただいま国産で考えております厚子炉でいいますと、その遮蔽だけで千六百トンくらいの重量がございます。これに対しまして同じ出力のCNSGIII型でございますと、これはもちろんドイツ等の資料、あるいはバブコック・アンド・ウイルコックス社からの資料に基づくだけでありますが、大体必要な遮蔽は八百トンくらいで済むだろう、こういう情報は得ております。したがいまして、そういった点からしましても、遮蔽の重さが三分の一くらいに減ることになる、こういうような点が、新しい型の炉を使うか、それともやや型は古いかもしれないが、オール国産でいくかという点で出てまいるわけであります。このような点は、実は三十六億という船価に基づいて、事業団ができて基本設計を行ないますときには、一応検討はいたしましたが、結局国産技術でやろうということで今日までのけて考えてきておる、こういうことでございます。
  111. 内海清

    ○内海(清)委員 いろいろ経過もあり、考え方もそれぞれあると思うのであります。いずれにいたしましても、少々船が小さくなったから、あるいは新しい炉というものを考えたから、そこに大きく船価に響くものよりも、いま開発段階である、この不安に対するいろいろな業者の心配というものがむしろ船価を上げる大きい原因になるのではないかということを私は考えるわけであります。先ほど申しましたように、三十六年当時の原子力船専門部会、ここらの見積もりにまず第一に問題があった。さらにその当時においては、先ほども申しましたが、サバンナ号にいたしましても建造の詳細はまだわからぬ。船価についてもその後の状況を見ていって、一そう不安を増してきた。ところが時間がたつに従ってこれらが明らかになってきたので、なかなか契約に応ぜられないという業者の一つの心配というものが出てきたのではないかと思うのであります。このことは、何といっても国家的な仕事であり、この企業の社会性が強調ぜられて、損してもこの際契約に応ずべきではないかというふうなこともございましょう。しかし、これは民間企業としてはなかなか容易に踏み切れない段階だ。この(2)のところにも、「造船業界及び原子力産業界における原子力船建造の意欲が減退したこと。」いろいろ書いてありますが、最後に「その後海運業界の再編成、造船業界の輸出船受注量の増大、原子力産業界の不況等の悪条件が重なり、」云々。こうあるわけであります。ところが、私ここで考えるのは、今日造船業界にいたしましても多量の仕事を持っておる。このことは事実であります。しかしながら、やはりこの経済不況の渦の中にあって経営に非常に苦しんでおる、ことに資金不足に悩んでおる造船業界の現状から見ますと、なおさら不安なものに手がつけにくい、こういう状態は当然出てくると思うのであります。ところが、私、最近聞きますと、原子力委員会あるいは大蔵省等の一部に、業者が資金を出す、あるいは、直接損をしてまでも建造するところがないということ、このことからして、これらの業者が気変わりがして、あるいはまた、そういうことならいまさら建造の必要性がないのじゃないか、こういうふうに見ておる向きもあるように聞くわけでありますが、この点は私はいかがかと思うのであります。そういうやり方とかあるいはそういう見方というものには、この原子力船建造の基本的な考え方からいけば、そういう声が一部にしてもあることはいかがであろうか、こう思うのでありますが、そういうような事実が実際ありますか。
  112. 村田浩

    ○村田政府委員 大蔵省内の意見は私、よく存じませんが、原子力委員会におきましては、お手元にあると思いますが、原子力第一船建造についての原子力委員会の七月二十九日の決定並びに同日発表いたしました委員長談話にございますように、残念ながら、当初予定されましたスケジュールどおりの原子力船の着工は若干延期いたしますが、さらに今後検討を進めて、できるだけ早くこの計画を軌道に乗せるようにしたい、こういう趣旨で検討を行なうのであるということは明白であろうかと思います。また私、事務局といたしまして、原子力委員会での御検討に立ち会っておるわけでございますが、各委員とも、原子力船をつくることがこの際意味がないとか、やめるべきだとか、そういう意見はございません。どのように検討していくか、どういった点が一番問題だから十分検討すべきか、そういった点での御議論は種々ございます。そこで、原子力委員会の七月二十九日の決定にございますように、開発の基本計画実施上の問題点を検討しよう。つまり、原子力委員会としては、去る三十八年の七月に基本計画を決定しておられるわけでございますが、その基本計画そのものを白紙還元してやる、こういうわけではなくて、基本計画実施する上にその後いろいろ、当時としては判断のつかなかった新しい要素等も出てきております。そういったことを十分検討して、その結果、もし万一基本計画にはね返るようなことがありましたら、あるいは基本計画を練り直すということもあるかもしれませんが、取りかかり方としては、基本計画から考え直すというのではなくて、基本計画は基本計画としまして、去る三十八年きめました線で考えていく。ただ、実施上の問題点で、できるだけ着実に、かつ、安心のいく原子力船をつくるためにはどういうやり方が一番いいかという点をこの際、若干の時間をかけて検討し、できるだけ早く軌道に乗せよう、こういう趣旨でございますので、その点はよろしく御了承願いたいと思います。
  113. 内海清

    ○内海(清)委員 そういう事実がなければけっこうです。しかし私どもの耳には、そういうふうなことがあったのではないか、多少入ってくるわけです。もしこれが事実とすれば、これは非常に大きな問題だと思うのです。ことに、わが国の原子力の平和利用は、原子力発電と、そしてこの原子力商船の建造がまずいま二本の柱です。それに対してかような議論がもしあったとするならば、これは問題じゃないか、私はこう思うのです。もしそういう議論があったとすれば、これは私、たとえば道路の建設に例をとってみますと、建設の費用すべてを国や都道府県が支出せずに、その大部分を住民負担とする。そうすると、住民がそれに反対したからといって、住民が道路をよくしようということを思っていないのじゃないかというふうに結論づけるのと同じである。住民はあくまで道路はよくしてほしい、しかし、できるだけ地元負担は少なくして、国や都道府県の力でやってほしい、これが切なる願いだと思うのです。私はこれと同様だと思うのです。日本輸出産業の重要な役割りを果たしております造船業の将来を考え、造船界がもしいろいろな事情で意欲が以前よりも減退したとしても、これは国の責任において十分これを引っぱっていかなければならぬ。国家の将来を思うならばどうしてもそれをやっていかなければならぬ、この点は考えていただきたいと思うのであります。ことに、たびたび申しますけれども、新しいものを開発する段階においては一そうそうであると思うので、これはもちろん民間も負担するようになっておりますけれども、国においてできるだけの負担をしてもこれをやっていこうということに決意してやっていただかなければ、今後なお多くの問題を残すと思うのであります。国にそれだけの意気込みがあるならば、業界におきましてもまた意欲は出てくる、私はかように考えておるのであります。  それからさらに、こういうことも聞くわけであります。米国は、サバンナ号をつくったが、それ以後原子力商船の建造はやらぬじゃないか。だから、原子力商船については米国あたりもすでにこれの建造意欲を失っておるのじゃないかというふうな見方もあるようでございます。この点は私どもの見るところでは、いかがかと思うのであります。御承知のように、米国というのは、もともと、これは造船国じゃありません。造船業というものは米国の重要産業ではないのでありまして、したがって、輸出マーケットを持っておりません。そういう国と日本とを比較して論ずること自体がどうかというふうに私は考えるのであります。しかし米国におきましても、この前も私、論議いたしましたが、すでに原子力を動力としますところの高速船を太平洋に四隻入れよう、こういうことで、米国商船法が改正されるかどうかという段階にいまきておるわけでございます。そういうときでありますので、こういう点はわが国の将来を考えられて十分ひとつ、そういう議論があるならば、少なくとも科学技術庁が中心になって、これにはっきりした結論を与えていただきたい、こう私は思うのであります。そういうことがいろいろ口にされることこそ、いまなお未開発であるだけにいろいろな問題を起こしてくると思うのであります。これらの点につきまして、そういうふうな議論が今日まであったかないか、この点もひとつお伺いしておきたいと思います。
  114. 村田浩

    ○村田政府委員 アメリカの情勢につきましては、私どもが聞いておりますのも、大体ただいま内海先生のお話しのとおりでございまして、具体的には、アメリカン・エクスポート・イスプランセンと申します船会社はサバンナ号の委託運航をやっておる会社でございますが、サバンナ号を一昨年以来約二年間運航いたしました経験等から、原子力貨物船を早急に建造しまして、特に太平洋の航路でこれを使いたい、こういう計画政府に提出したようでございます。一方、これを受けとめました海事局のほうは、大体その線で了承しておるようでございますが、原子力開発利用のほうを担当いたしますアメカリの原子局委員会のほうでは、現在ございますたとえばサバンナ号に積みました軽水型原子炉、そういったものをすぐ積んで貨物船をつくるというよりは、むしろもっと先のことを考えて、より安い、より信頼できる船舶用の原子炉の研究開発をこの際一生懸命やるべきだ、こういう意見を強く主張しておられまして、最近の報道によりますと、総額七千九百万ドルの研究開発費を政府に要請しておるようであります。ただいまの段階では炉の開発を先行さすべきだという原子力委員会の意見と、現在の技術で十分できる、原子力船を早く運航し、実績を積んでいくべきだ、こういう海事局並びに船会社との考え方がいわばまだ二つ調整されないままである状況である、このように了解しております。
  115. 内海清

    ○内海(清)委員 いまのお話、よくわかりましたが、もしこれが実現するとすれば、建造においても普通商船と原子力船の建造の差額、あるいは運航においても普通商船と原子力船の運航の差額、こういうふうなものはみな国が補助しよう、こういうふうなところまでいっておるようであります。したがって、もしこれが実現するとすれば、これはわが国の海運界にとってもきわめてゆゆしい問題であると私は考えておる。だから、わが国の原子力船の建造というものもああいう事情でやむを得なくなりましたが、極力これを促進する必要がある、こういうことを私は考えておるのであります。この点につきましては、ひとつその責任の地位にあります科学技術庁においては、特にこれの促進についてはお考えいただかなければならぬと思う。さらにこの建造を急がなければならぬ一つの理由として、私は、これがだんだんと延びると、いままでかなりそれぞれ原子力関係の専門家というものを養成し、研究させてきたのがだんだんこれは意欲を失うということがあります。すでに私ども聞くところによると、原子力の技術者が浮き足立っておる。こういう状態で、日本の原子力船はいつできるか、したがってこの部門にわれわれは働いておってはたしてわが国で将来性があるのかどうか、こういう心配も一部には出ておるようであります。これはきわめて重大なことだと思うのです。こういう点からも政府の態度をこの際はっきりと鮮明されて、そうしてこの建造はできるだけ急がなければならぬ、こう思うのであります。これに対しましては、ひとつ大臣の御所見を伺いたい。
  116. 上原正吉

    上原国務大臣 たいへんごもっともな御意見でございまして、私どもも同感でございます。原子力船は業者の犠牲において建造するなどという性質のものではなかろうと思いますから、国が相当な決心を持って予算を組んで、使い道のあるりっぱな船をつくり出すということが何より先決問題だと思いまする。まあ人によっては、船を小さくしたらもっと安くできるんじゃないかとか、あるいはさっきお話のあった、船の厚みを薄くしたらもっと安くあがるんじゃないかというようなお話を聞きましたけれども、そんなことをすべきものではない。国がやるからには、さっき内海先生のおっしゃったように、費用を惜しまずりっぱなものをつくる。そういう覚悟でやらなければならぬ。だから六十一億円が適当かどうか、それは六十一億円かけてりっぱな観測船ができるかどうかということが問題なので、六十一億円という金額が問題なのじゃないかということをある筋に申し上げたことがあるのでございます。  それから、また日本は石炭も乏しいし、石油もほとんどないし、これから先の動力源は原子力によらなければならない。またおそらく近い将来、動力源はみな原子力になるだろうというのが、これは世界じゅうの常識でございますから、その場合に世界一の造船国である日本の船がその地位を失うということになっては、これこそ取り返しのつかないことになるから、原子力船の建造をあきらめるなどということはとんでもない話だ、こう閣内でも主張している次第でございます。どうかひとつ内海先生の御声援のほどをお願い申し上げまして、お答えにかえさしていただきます。
  117. 内海清

    ○内海(清)委員 ひとつ大臣もその決意でこの面につきましては推進の力になって進めていただきたいと思うのでありますが、さっき申しましたように、いろいろな事情政府の態度というものをこの際早急に鮮明する必要がある、こういうふうに私は考えておりますので、その点も強くひとつ要望申し上げておきます。  それから、なお、いろいろ資料によりましても、ドイツのオットー・ハーン号は再来年、つまり一九六七年に一応完成するようなことになっておりますが、あるいはこれが契約期間が延長されて、あるいは予算も増額されるような資料も入っておりますが、いずれにいたしましても、すでにドイツはその船員の教育訓練を始めておるようであります。これは私は確たるものではありませんが、船員の訓練にも三年くらいかかるといわれておるのであります。でありますから、こういう面から考えましても、特にわが国の造船関係からいえば最大の強敵であるドイツ、これに先を越されることが一番致命傷だと思うのであります。そういう点からこの船員の教育訓練につきましても、同時並行的に立案されて、これを進められることが必要じゃなかろうか、こういうふうにも考えるわけであります。  それから、なお、この問題はあるいはお考えになっておるかどうか。いままだその段階でないかもしれませんが、これがだんだん進んでいくならば、この運航者の意見というものを取り入れる必要があるのじゃなかろうか、こういうふうに思うのですが、進んでいく段階においてそういうことも考えておられるかどうか、この点ひとつお伺いしておきたい。
  118. 村田浩

    ○村田政府委員 原子力船乗員の訓練が第一船の建造と相並んで非常に重要な問題であることは、御高承のとおりでございまして、第一船の建造計画におきましても、その点をはっきり打ち出しております。ただ今日まだ行なっておりませんのは、事業団が発足しまして大体三年目、順調にまいりました場合の第三年目から三年計画でやりたい、こういう計画でありまして、その三年目がちょうどことしに当たっておるわけでございますので、予算上の措置としましては、乗員訓練関係の担当の人、中心になる人を三名ばかり定員としてももらってある、そういう準備は着々進めておるわけでございます。ただ、残念ながら、この建造着手が若干延期されましたので、この訓練の計画も若干延期されることにはなると思いますが、しかし約三年間程度の訓練を必要とするということは仰せのとおりでございまして、初期段階においては原研の原子炉研修所その他放射線医学総合研究所の放射線防護訓練コース、そういったところにも将来乗組員となる人を派遣しまして、基礎的な原子力の勉強をいたしました上で、原子力船が進水しましてからは、そちらに乗りまして慣熟運転等で訓練をいたす、こういうふうに計画いたしております。
  119. 内海清

    ○内海(清)委員 このくらいでやめたいと思いますが、ひとつこの際お伺いしておきたいのは、大体先般からいわれておるのは一応白紙還元ということであります。白紙還元は、これはあくまでも進むための白紙還元だと思いますけれども、これで停滞や後退があってはならぬわけです。でありますが、この白紙還元の意味ですね。つまり基本設計から始めて、すべてこれを一応検討するということ、同時に現在これの建造についての契約交渉が行なわれておった相手があるわけです。これも白紙還元にするのかどうか、すべてをいわゆる白紙に戻して再出発するのかどうか、その点を一ぺんお聞きしておきたいと思います。
  120. 村田浩

    ○村田政府委員 再検討を行なうというところまで委員会で御決定になったわけでございますが、どのような形で、どういう方向で再検討するかということは、現在なお御検討中で、近々にその方向を御決定の予定でございます。いま考えられておりますのは、動力炉の開発につきまして、委員会で懇談会をおつくりになりましたが、それと相対応するような形で原子力船の開発につきましての懇談会を原子力委員会に置きまして、関係方面、学識経験者等を入れました懇談会のメンバーと原子力委員との間で、ただいまの点も含めまして十分審議を尽くされて、なるべく早く結論を出すようにしていきたい、こういうような考え方で現在原子力委員会で御検討中でございます。
  121. 内海清

    ○内海(清)委員 まだその点は今後検討されるようでありますが、私の要望としては、これを一応すべてを白紙に返す、そういうところで再出発するんだ、新しい気持ちと新しい構想で再出発するんだ、このことが私は一番いいのではないか、いままでのいろいろ交渉の過程においても、問題もあったのでありますが、このまま進められることはやはりいろんな疑惑が生まれましたり、問題も起こるのではなかろうか、こういう気がいたしますので、すべてを白紙に返して再出発する、このことを私は要望しておきたいと思います。  これでやめますが、最後に特に要望しておきたいと思いますのは、いま原子力船の開発では、わが国にいろんな条件から一番近いのはやはりドイツだと思います。したがって、これはぜひ実現さしてもらいたいと思うのでありますが、調査員をドイツに派遣して、そうして原子力船の開発について、ひとつ十分調査する必要があるのじゃないか、こういうことであります。ただ向こうから次次に出てまいります資料などでこれを検討していく、参考にしていくということでなしに、実際に権威ある人が行って調査して、そういうものを基礎にして、ここで再出発するという、これが必要なんじゃなかろうか、こう思うのであります。先ほど来いろいろ申しましたように、たとえば船価にしても、三十六年ごろのものが基礎になっていったために、ここでやはり問題を起こしておる、私はこう考える。だから再出発にあたっては、そういうドイツの状況などを十分ひとつ調査して、そうしてこれを参考資料として確固たる基礎をつくって進んでいただきたい、こういうことを強く要望いたしたいと思います。これに対する大臣の御所見を……。
  122. 上原正吉

    上原国務大臣 調査員を派遣いたしますということは必要なことだとは考えるのでございますけれども、これは一応前もって、先ほど来お話があったように、先方が調査をさしてくれるかどうかということをあらましでもいいから確かめてからでないと、国費の浪費になるようなことがあってはならぬと思いますが、そうしたいと思います。そうして十分向こう協力して調査をさせてくれるということであればぜひそうしたいと考えております。
  123. 内海清

    ○内海(清)委員 終わります。
  124. 岡良一

    岡委員長 なお、この機会に委員会の総意を代表して、上原国務大臣並びに原子力委員長としての上原さんに強く要望しておきたいと思います。  ちょうど九月二十一日から国際原子力機関の総会が東京において開催されることになりました。この総会が初めてウィーンから東京で開催されるに至りました経緯については御承知のとおり、当時の佐藤科学技術庁長官の発想に基づくものでございます。こういう意味合いからいたしましても、東京総会を意義あらしめるために、アジア各国における原子力の平和利用のための研究開発、利用等に関する協力体制の強化、緊密化について、政府として積極的な措置をとっていただきたいことでございます。アジア諸国における原子力の事情は、各国の水準の不均衡あるいはまた現在のアジア各国における確執の実情、あるいはまた中には原子力の軍事利用へ走らんとする国もあるようでございますが、それだけにこの総会において、アジアにおける平和利用のための協力体制の強化を日本が積極的に提唱をし、その実現のために適切な措置をとることはきわめてかっこうの問題であると存じますので、国務大臣として、また原子力委員長として、本委員会の総意については、責任を持って御善処いただくようにこの機会を通じて強く要望いたします。
  125. 上原正吉

    上原国務大臣 アジアにおける原子力の平和利用についてイニシアチブを取って強力に働きかけろということでございます。強力に働くだけは誓いを申し上げますけれども、アジアにおけるという制限をつけることが——世界的な原子力機関の参加者としての日本がアジアにおけるという制限をつけることが適当かどうかということには多少の問題があるのではないかと考えますので、この点はよく検討した上で、そういうことになればいたしますということをつけ加えることをお許しをいただきたいと思います。
  126. 岡良一

    岡委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十二日木曜日午前十時理事会、同十時三十分より委員会を開くこととし、これにて散会をいたします。    午後一時十八分散会