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1965-03-30 第48回国会 参議院 大蔵委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月三十日(火曜日)    午後一時四十四分開会     —————————————    委員異動  三月二十九日     辞任         補欠選任      沢田 一精君     日高 広為君  三月三十日     辞任         補欠選任      日高 広為君     石谷 憲男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西田 信一君     理 事                 佐野  廣君                 西川甚五郎君                 成瀬 幡治君                 中尾 辰義君                 田畑 金光君     委 員                 大竹平八郎君                 岡崎 真一君                 栗原 祐幸君                 津島 壽一君                 堀  末治君                 村松 久義君                 木村禧八郎君                 佐野 芳雄君                 柴谷  要君                 鈴木 市藏君    政府委員        大蔵政務次官   鍋島 直紹君        大蔵省主計局次        長        鳩山威一郎君        大蔵省主税局長  泉 美之松君        大蔵省関税局長  佐々木庸一君        大蔵省理財局長  佐竹  浩君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○所得税法案内閣提出衆議院送付) ○法人税法案内閣提出衆議院送付) ○租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○所得税法及び法人税法施行に伴う関係法令の  整備等に関する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○物品税法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○国立学校特別会計法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○国際復興開発銀行等からの外資受入に関する  特別措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○酒税保全及び酒類業組合等に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○財政法の一部を改正する法律案内閣送付、予  備審査) ○交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改  正する法律案内閣送付予備審査) ○石油ガス税法案内閣送付予備審査)     —————————————
  2. 西田信一

    委員長西田信一君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十九日沢田一精君が辞任され、その補欠として日高広為君が選任されました。また、本日日高広為君が辞任され、その補欠として石谷憲男君が選任されました。     —————————————
  3. 西田信一

    委員長西田信一君) 所得税法案法人税法案租税特別措置法の一部を改正する法律案所得税法及び法人税法施行に伴う関係法令整備等に関する法律案物品税法の一部を改正する法律案国立学校特別会計法の一部を改正する法律案国際復興開発銀行等からの外資受入に関する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案酒税保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案関税定率法等の一部を改正する法律案財政法の一部を改正する法律案交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案石油ガス税法案、以上十二件の法案一括議題とし、質疑を続行いたします。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  4. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 関税定率に関しまして、そのうち最も税率の高い、すなわち七〇%を課せられているバナナの問題につきまして、ごく簡単にお尋ねいたしたいと思うのですが、きょうはまあ法案が山積いたしておりますから、ごくはしょって申し上げますが、これはまあ再度にわたって関税審議会答申をいたしたのは、自由化の初年度は暫定的に七〇%、それから次年度が五〇%、そうして四十年度からは三〇%の基本税率をきめると、こういうことを答申もしておるし、それから、まあ政府もたびたびこれを言明をいたしておるわけであります。それにもかかわらず、答申も再度にわたってこれが出ているにもかかわらず、再び七〇%の据え置きでそのままやっていくというような状況なんですが、まずこの際、ごくこれは要点だけで簡単でけっこうですが、昨年の関税審議会のこの問題に関しての経過ですね、ごく簡単でいいですから、経過と結果をひとつ御報告願いたい。
  5. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 昨年の末行なわれました関税率審議会におきましては、バナナ関税をどう答申されるか、非常に激しい論争の的になった次第でございます。バナナについては、御承知でありまするように、国産果、なかんずくリンゴとの関係におきまして、最近のバナナの急速な輸入増加国産リンゴ等価格に非常に影響するという議論がかねがねから、御承知のとおりございます。そこらの関係がほんとうに密接な関係を持つものであるか、密接な関係を持つという御意見の方と、それほど密接な関係はないんではないか、非常に高いバナナの現在の関税というものは、関税率の平均的な水準から見てもあまりみっともいいものではないし、あわせて後進国との貿易拡大問題はガット国連等でだんだんやかましくなっておる時期であるから、その面も考慮して、かねて定められておるとおり七〇、五〇、三〇というふうに下げる一歩を確実に踏むべきであるという御意見片方ございました。ところで、片方、最近のバナナ輸入状況は、三十八年度輸入自由化以前の三倍の量の輸入自由化後ございましたし、三十九年度におきましても、さらにそれを上回る輸入量増加が見られ、七〇%の高い関税率というものがバナナ貿易に対して障害とはどうもなっていない、抑止的な効力を及ぼしていないという見方、また、台湾との貿易わが国にとっても非常に重視すべきものでありますけれどもバナナの取引に関連する輸出輸入者関係というものは必ずしもうまくいっているとは見られない、場合によっては日本が引き回されているという傾向もある点から、高くてもいいという議論というのが非常に片方ございました。大局的な見地から、台湾貿易というものも考えまして、関税を下げるべきだという御意見消費物資大衆物資というものにあまり高い関税をかけるべきでないという御意見というものが最後のところ勝を制したように見受けるのでございます。  結論としては、審議会におきましてはバナナ関税は七〇%をまず六〇%の税率に下げ、次いで三〇%の基本税率に戻すべきであるという御意見のほうが多数であったわけでございます。したがって、答申もその多数の意見に従って行なわれた次第でございます。
  6. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 これは国内果実生産との関係が大きな政治問題になっていることは当然なんですが、しかし、これも戦前関係を見ましても、戦前バナナを含めての輸入果実が約二〇%くらい、三十八年度は大体七・二%、本年度あたりおそらく九・五%くらいになっているかと思うのです。それといま一つは、バナナ自体というものは、御承知のとおり、これはちょっとオーバーな言い方をすれば、これは日本民族果実なんであって、いまこそ外国になっていますけれども台湾というのは五十余年間日本の領土でもあって、そういう意味からいって大衆に全く密着して、あるいはミカンリンゴよりある意味においては先輩かもしれない。そういう意味において、私は非常に民族的なくだものだといい得るわけだ。それから、いま一つは、日本果実生産といっても、これはなかなか生産費の金もかかるし、それから日本のように暴風があったり天災の多いところというのは必ず所期の目的は達せられない。そういうものをカバーできていくものは、やはり私はバナナというような大衆的なものだけである。ところが、こういうような近代国家にないような膨大な課税をされていけば、どうしてもこれは大衆的な果実とは縁遠い状態になっているんですね。そういうようなものを緩和していくこと、この辺で私はもう踏み切っていくべきときじゃないか。  昨年の十一月二十六日ですか、御承知のとおり、低開発国からの第一次産品というものをできるだけ買い付けなければならないということは、これはもう世界の趨勢なんであります。それから、日本自身もその方針に従ってやっておるわけなんですね。こういうような状態で、この関税障害とかあるいは規定を緩和しなければならないということは、これはガットで昨年の十一月二十六日にきまっている。こういう点について政府はどう考えておられるか。
  7. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 御指摘ありますように、日本貿易を緩和しますには、後進国に対しては概して日本の出超の相手国が多いということを考えますと、後進国物資輸入促進について関税上もまたいろいろなくふうを講ずべきであると思うわけでございます。しかしながら、具体的なバナナについて見ますというと、自由化以来の輸入増加傾向というものは非常に急激でありますことは、先ほどお話し申し上げましたとおりでございます。七〇%の関税は高いことは高いのでございますけれども、その関税がいまのところ、バナナ輸入と申しますか、バナナガットやなんかでいいますフラットに近い輸入にこの増大というものを押えていくというほどの効果はないように思われる次第でございます。したがいまして、この急激な増加率は続いております。最近の期間におきましては、もう少し成り行きを慎重に見まして、影響の及ぶ範囲というものを見きわめました上に立ちまして、基本的には下ぐべきであり、基本的には、後進国からの物資輸入をふやすべきであるという方針にのっとりまして措置すべきものであろうかと考える次第でございます。
  8. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 御承知のとおり、政府物価の抑制ということを、ことに佐藤内閣になってから大きな看板としておるわけであります。したがって、公共料金値上げを抑制する問題であるとか、その他いろいろあるわけであります。ことに大衆消費物資であり、そうしてこれは栄養の点からいっても、もう乳幼児には昔と違って欠かすことのできないものである、こういうようなことだから、ひとつできるだけ早くにこの方針政府は立てられたい。そうでないというと、これはまたガットから勧告を受けたりなんかして、私は日本自体というものが収拾のつかないような非常なみっともないことをさらすような事態が来るのじゃないかと思うのです。その点を特にひとつ要望しておきたい。  それから、最後に、米国、それからイギリス、西独などは、これは無税ですね。それからフランスが二〇%、イタリアが三六%、EECが二八%、あなたのほうの調査によると、そういうことが出ておるのですが、ほかにもっと高く、五〇%以上かけておる外国がございますか。
  9. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) あまりよくわからないところがあるのでございますが、そう高いところはないように思われます。ただし、日本バナナ輸出しております台湾とかは、くだもの関税は一般に六〇%というかなり高率のように思われる次第でございます。
  10. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 ということは、結局、それは日本バナナのこういう法外なあれによって、向こうは当然そういう措置をとっておるのでしょうし、こちらが下げれば当然下げていくということになるし、まあ日台貿易のうちの多く、二億ドルのうちにおいては相当の大きなウエートを占めておるバナナ貿易であるから、早くにひとつこれの関税を引き下げて、そうして大衆のものにして、かつての夜店のたたき売りで大衆がどんどん一本十円くらいで食えるような時代を特に要望して、質問を終わります。
  11. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 その問題に関連して、資料として御提出を願った「果実について」ということで、二枚目に数量、価格というものがございます。これは単位は何ですね。
  12. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 先生にお渡ししました表の二枚目の単位はトンと百万円で、右のほうに書いてございます。カッコの中に入ってあります数字だけは千円でございます。
  13. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 わかりました。なかなか日本くだものは、世界を回った人の話を聞いてみますと、非常においしいものであるといわれておるわけですが、しかし、輸出関税を見ますと、かん詰め類が相当出ておるわけですが、たとえば桃とかカキというようなものはあまりないようですね。まあしかし、リンゴとかナシは出ておるといえば出ておるわけですが、もう少し輸出が伸びていいように思いますが、これは農林省関係の話になるかと存じますが、もう少し伸びてもいいのじゃないかと思いますが、何がネックになっておるか。生産が足らないのか、国内需要が多くてか、これはどういうふうなことでしょうか。
  14. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 私ども承知しておりますところでは、輸出に対しまして非常に手続上めんどくさいことになりますのは植物検疫関係という検疫関係でございます。くだものと一緒に害虫を持ってきやしないかという心配でございます。その植物検疫関係が非常にいままでわずらわしい障害になっておったと了解しておる次第でございます。いろいろそのほかにもございましょうが、保存方法——輸送期間の新鮮度が保てるような保存方法が十分でないとか、あるいは先生が御指摘になりました、国内で十分の値段で売れるものにつきましては、何もめんどくさい手続をとって輸出するほどのこともないというような気味もまたあるようでございます。一方また、リンゴのように非常に苦しんでおります業界は、目下、輸出につきましていろいろなくふうをしておるということを了解しておる次第でございます。
  15. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それから、四枚目の表に関税率の問題が出ておりますが、たとえばリンゴ等は、アメリカは一ポンドについて〇・二五セント、イギリス無税ですか、それからカナダは一ポンドについて四分の一セントということになっておるわけですが、問題は、台湾ミカンも六〇、リンゴも六〇、ナシも六〇、桃も六〇、かん詰めも六〇というふうな相当な高率な関税をかけておるのですが、これはバナナ関税関係があるというふうに見ていいものなのか、台湾自体保護貿易をやっておって、ガット等にも入っていないいろいろな関係がありますから、そこでやっておるものなのか、どういうふうに了解していいでしょうか。
  16. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 私ども日本バナナ関税に対する報復的なものだとは考えておりません。台湾のいまの経済状態に合わせますための向こう側で考えられた体系であると了解しておる次第でございます。
  17. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 主税局長に伺いますが、要求資料出していただいたのですけれども、これについて説明していただきたいのですが、まず、「基準生計費基礎となった食料費自衛隊員食料費の比較」、これと、「課税最低限食料費以外の部分の計算基礎」と、「利子課税の沿革と個人貯蓄動向の推移」と、それから「少額貯蓄非課税限度の引上げによる減収額」、「配当所得確定申告不要制度の創設による減収額」、これだけ出していただいたのですが、それについて一応説明していただきたいのです、これでは理解できがたい点がありますので。
  18. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) それでは、お手元に差し上げてあります資料につきまして御説明申し上げます。  まず第一は、私どもは、今回の所得税課税最低限の検討の際には、マーケット・バスケット方式によりまする食料費基礎として基準生計費を作成したわけでございますが、その食料費となったものと、それから自衛隊食料費とを対比したものでございます。  まず第一に申し上げたいことは、私どものほうで基準生計費基礎となった食料費、その成年男子の場合の一日の食料費が百六十七円四十八銭と申しますのは、三十九年の一月から三十九年の十二月までの間の物価基礎にしてはじいてある数字であるということです。それから、自衛隊のほうの百六十三円といいますのは、これは四十年度自衛隊食料費の予算の単価でございまして、したがって、自衛隊のほうの分にはこの一月一日に実施されました消費者米価値上げが織り込んであります。われわれのほうにはそれが単価としてはまだ織り込んでない、こういう姿で違っております。  まず、主食から申し上げますと、この主食には米と乾めんとが入っておるわけでございますが、基準生計費のほうになった場合には、この四百三十グラムのうち三百二十八グラムが米でございます。これは徳用米でなしに普通米になっております。このほかは百二グムラがめん類あるいはパン類になっているわけでございます。そうしてそれによる摂取カロリーが千四百五十九・七カロリー、その場合、これは主食は配給でございますから、その消費者小売り価格になっているわけですが……
  19. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまの三百八グラム、米は徳用米ですか。
  20. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) いや、普通米でございます。したがって、普通の消費者米価で算出してあるわけでございますので、それが四十四円五十五銭、それから自衛隊のほうは六百四十グラムになっておりまして、このほうは先ほど申し上げましたように、自衛隊は全体ですと摂取カロリーも高いわけでございますが、主食の割合が特に高くて、二千二百四十六カロリーを主食でとっております。その値段の六十六円四十四銭というのは、先ほど申し上げました一月一日に引き上げました消費者米価によっているわけでございます。  それから、副食のほうで申しますと……
  21. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと。そうすると、六百四十グラムは全部米ですか。
  22. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) これは徳用米が入っているわけでございます。自衛隊のほうで申しますと、六百四十グラムのうち、普通精米が四百八十グラム、それから徳用米が百二十グラム、それから精麦、これが四十グラム、合わせまして六百四十グラム、こうなっております。  それから、その次の獣肉類、これは牛肉、豚肉、鯨肉、卵、牛乳類を合わせましたものでございますが、これはごらんのように、基準生計費の場合は五十七グラムでわりあい少ないのでありますが、自衛隊のほうがこれがわりあい多くて二百十六グラムということになっております。それから、魚介類は、基準生計費のほうの基礎になったのは七十四グラム、自衛隊のほうは百十三グラムで、この差はそれほどではございません。野菜、果実は、三百九十二グラムと四百十グラムで、ほとんど差はございません。それから豆類、イモ類、その他、これは基準生計費のほうの基礎になったのが三百二十一グラムで、自衛隊の場合の二百三十五グラムよりかなり大目になっております。  それから、調味料など、これは砂糖、油、しょうゆ、食塩、ソース、酢、グルタミン酸ソーダ、香辛料、茶などでございますが、これは基準生計費のほうの基礎になったのが百十四グラムでございまして、自衛隊の場合の九十グラムよりかなり多目になっております。それから、自衛隊のほうには菓子類はございませんが、基準生計費のほうにおきましては、間食として菓子類を食べるということになっておりまして、それが十七グラムでございます。  なお、この主食以外の購入価格につきましては、基準生計費基礎になったものにつきましては、先ほど申し上げました三十九年一月から十二月までの小売り価格で算定してございますが、自衛隊の場合におきましては、自衛隊トラックで運ぶことになっておりますので、卸売り価格納入業者の多少のマージンを加えたところ、あとはトラックで運ぶということになっております。その結果、基準生計費の場合におきましては二千五百三十九・九カロリーで百六十七円四十八銭、自衛隊の場合は三千三百カロリーでございますけれども、そういった点で割り安に購入できるというところから百六十三、こういう数学が出ておるのでございます。  で、食料費以外の分の計算基礎はその次のページにございますが、これはわれわれの課税最低限を検討する場合におきましては、まず都市の勤労世帯につきまして総理府統計局家計調査がございますが、そこから世帯人員別モード世帯——一番この家計調査にたくさん出てくる世帯をこれをモードとして選びまして、その世帯構成人員年齢を明らかにいたしております。で、たとえば夫婦子共三人の標準世帯でございますと、夫が四十二歳、妻が三十八歳、子供が十三歳と十一歳と四歳、まあこういった出てきておるモード世帯基礎にいたしまして、そういう世帯構成を明らかにいたしました。  そして成年男子が健康を維持しつつ日々の活動を遂行していくのに必要な栄養二千五百カロリーを摂取するための献立表を、先ほど申し上げましたような内容で国立栄養研究所に依頼してつくっていただいて、そうして一カロリー当たりの食料費単価計算しまして、この単価に、モデル世帯年齢に応じて厚生省のほうで出ております年間所要カロリーというのがございますが、それを乗じまして、各世帯ごと年間所要食料費を算出しております。  そしてこの食料費基礎にいたしまして、総理府統計局家計調査からいま申し上げました世帯別エンゲル係数というのが出ております、そのエンゲル係数で除して消費支出金額を求めておるのでございます。したがって、食料費以外のものにつきましては、一々積み上げ計算をして、教育費が幾らかかるとか、衣類が幾らかかるとか、光熱費が幾らかかるといったような計算は一々はいたしておりません。エンゲル係数で割って出したものでございます。  そのエンゲル係数というのは、その次にございますように、世帯別に三十八年と三十九年とを対比いたしておりますが、まあこのエンゲル係数は年々下がっていく傾向にあること、これは御承知のとおりでございます。若干ずつ下がっております。で、このエンゲル係数で問題なのは、一人世帯、二人世帯くらいまでは問題でないんでございますが、五人世帯の辺になりますと、今度下がったといいましても四六・五六となり、エンゲル係数は高うございます。これは結局、こういう五人世帯にもなりますと、子供ももう相当の年齢に達しますので、食料費に圧迫されて、家計全体がかなり食料費の圧迫を受けているというふうに見受けられるのでございます。  それから、その次の数字は、これは三十八年と三十九年の対比でございます。これは申し上げるほどのことではございません。  それから、二番目の問題は、昭和二十五年というか、わが国では昭和十五年に税制の大改正が行なわれて以来、利子につきましては源泉選択制度がずっととられてきました。それが昭和二十五年にシャウプ勧告に基づく改正で、源泉徴収二〇%で総合課税、これがわが国税制史上初めて利子所得が総合された年でございます。これが一年限りで、その後は二十六年、二十七年と源泉選択五〇%が続きまして、それが二十八年に分離一〇%課税になり、二十九年には長期のものを五%に軽減する措置がとられ、三十年、三十一年には利子所得全額非課税という措置がとられまして、三十二年に短期のものについては一〇%課税をするということになり、長期のものは依然として非課税というのが続きまして、三十四年に短期長期もすべて一〇%課税ということになり、三十八年にそれがまた五%課税になった。今度四十年度に再び一〇%課税に引き上げるという提案をいたしておるわけでございます。  その間、それでは預貯金はどうなったかと申しますと、これはいろいろ取り方でございますが、二十八年のときには分離一〇%の課税になりまして、なるほど預貯金は一三三%と伸びました。しかし、国民所得の中における個人貯蓄は七五・六とむしろ全体としては伸びなかった。預貯金だけは伸びたけれども個人貯蓄全体としてはむしろ伸びなかったという数字になっております。ところが、非課税になりました三十年のときには、預貯金は一一七・五%の伸びでありますが、個人貯蓄は一五〇・一と、個人貯蓄の伸びは非常に大きかったという数字になっております。それから、三十四年に分離一〇%課税になったのでございますが、このときはむしろ課税がきつくなったにもかかわらず預貯金の伸びは一五七・五と非常に大きくなった。そして個人貯蓄のほうの伸び率は一三二・八とモデレートな数字であったということでございまして、どうもこの沿革と預貯金あるいは個人貯蓄数字から見ますと、税制によってなるほど預貯金はいろいろ動く。しかし、それは国民所得における個人貯蓄全体との関連から見ると、必ずしも税制とそれとがマッチしているとは見えないということ。そしてまた場合によっては、課税がきつくなっても預貯金はふえておるという実績がある。したがって、どうも利子に対する税制云々よりは、むしろ国民の可処分所得の増大のほうがより多く貯蓄との関連で相関性が認められるのではないかというふうに考えられるというわけでございます。  それから、三番目は、御要求のありました少額貯蓄非課税制度非課税限度が今度元本五十万円から百万円に引き上げられるわけでございます。これでどの程度減収になるかの計算をいたしたのでございます。計算はもっと複雑なことをやっておるのでございますが、ごく簡単にわかるようにいたしたつもりでございますが、総体で申し上げますと、個人分利子のうちで現行法によって課税されているのが三千五百九十億でございまして、そのうち五十万円から百万円に引き上げることによって非課税になるものを二千百五十四億円、これは利子額で見ておりますが、計算しておるわけでございます。そしてその源泉徴収税率が一〇%に上がった後の姿で見ておりますので、それで見ますと二百十五億の減収になる、こういうわけでございます。  その次は、配当所得確定申告不要制度の創設による減収額でございますが、そのうち配当につきましては、御承知のとおり全体のうちの五三%くらいが法人分の配当でございまして、個人分の配当が四七%でございます。その四七%のうち現行法によって納税申告されているものが、またその約半分くらいになっております。したがって、そこにございますように千六百九十二億円の配当が申告されておるわけでございます。そのうち確定申告不要制度、一銘柄年五万円以下の配当分について確定申告は要らないということにいたしますと、四六%がそういうことで申告不要になる。これは一割配当といたしますと、五万円ということは一万株になるわけでございます。したがって、これは株式の分布状況基礎にいたしまして、二万株くらい持っているところは名義分割によって確定申告不要のほうに持っていくのではないかというような推測を加えまして計算いたしますと、四六%が落ちる、七百七十八億円が落ちるという勘定になります。もしこれがいままでのように総合申告しますと、上積み税率は三九%、平均配当控除率は一四%——これはまあ本来は一五%でございますが、七・五%の分が若干ございますので、平均いたしますと一四%。そこで、差し引きの上積みの負担税率は二五%でございますが、源泉徴収一〇%だけで終わりますので、軽減になる減税率が二五%から一〇%引きました一五%、そこで七百七十八億円に一五%を乗じますと百十七億円ということになるわけでございます。これが確定申告不要によるところの減収額ということになって、これが予算の平年度数字として出ておるわけでございます。  そのほか源泉選択による分は予算に出ております五十三億ということでございます。
  23. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいまの資料説明によりまして数字的に非常にはっきりしてきたんです、いろいろな問題が。予算委員会等で大蔵大臣にいろいろ質問しましても、全くしっかりした基礎のもとで答弁されていないんですよね。そのために私はこういう資料を要求いたしたのですが、特に第一番目の「基準生計費基礎となった食料費自衛隊員食料費の比較」、大体わかりましたが、予算委員会で、課税最低限の算定の基礎となった基準生計費のうちの食料費について、成年男子二千五百カロリーですね、一日百六十七円四十八銭は低過ぎるのじゃないかという質問をしたところが、大蔵大臣が、自衛隊は三千三百六十カロリーと言っておりましたが、三千三百カロリー程度で百六十三円で低くまかなえるのだから、決して百六十七円四十八銭は低い金額じゃないのだ、課税最低限のほうの基準生計費は二千五百カロリーで百六十七円四十八銭、自衛隊のほうは三千三百カロリーで百六十三円でやっていけるのだ、だから決して低くない、こういうふうに答弁された。しかも、それに佐藤総理大臣が、大蔵大臣のいまの説明によっても自衛隊は百六十三円でやっていけるのだ、百六十七円は決して低いものじゃない、こういう答弁を予算委員会で堂々とされておるのですよ。この自衛隊のことを持ち出さなければ、私はこんなくどく資料まで要求して追及しないのですけれども、あそこで百六十七円四十八銭が低過ぎないという論拠として自衛隊食料費を持ち出してきたから、私はどうしてもふに落ちない。そんなら一般の国民は三千三百カロリー、百六十三円で何でできないのかという疑問が出る。いま御説明を聞いたところが、全く比較すべからざるものを比較しておるのですね。いま伺いますと、片一方の自衛隊のほうは米価引き上げを含んでおって百六十三円ですよね。ところが、大蔵省の基準生計費のほうは米価引き上げを含まないで百六十七円四十八銭。  そこで、第一、食い違っておる点がありますよ。片一方は主食以外は小売り価格でやっておって、片一方は卸売り価格です。しかも、具体的に比較にならないほど違うわけですよ。たとえば魚介類が標準生計費のほうは七十四グラムで約二十円でしょう。自衛隊のほうは百十三グラムで二十円ですからね。こんな差が出てくるのですよね。これは主税局長に言っても意味がないし、責めるわけじゃないのですが、ですから、私はこの国会で責任ある答弁をされるときに、やはりもっと自衛隊食料費を云々するのならば——こうやって計算すればできるのですね。こうやって資料をいただけばそれによってはっきりするのですから、こういう資料をよく見れば、あそこで不用意に、この自衛隊と標準生計費の食料費の比較を持ち出してああいうような無責任な答弁をしないで済むと思うのです。そのことは非常にはっきりしたわけです。これは主税局長に質問したってしようがないのですから、これは大蔵大臣をとっちめる一つの——とっちめるといっても私は非難するのじゃなくて、最低課税限を計算する非常に重要な資料になりますから、国民の生活に関係がある問題でございますから。  ただ、主税局長に伺いたいのは、課税最低限をきめる場合の基準生計費のきめ方について、エンゲル係数だけでやられるというのはどうかと思うのですよね。この点は今後十分研究してもらいたい。百六十七円四十八銭、私は決してこれはもう適正であるとは見ないのです。これはやはり行き過ぎる。しかし、これは論争してもいたしかたございませんから、低過ぎるという私は意見を持っておるのですが、このごろ、日本の場合、特にエンゲル係数、エンゲルの法則の停止状態ということをよくいわれるのですよ。ですから、このエンゲル係数を使う場合には、これは非常に不用意に使えないと思うのですよ。もっと実態を把握してやりませんと、エンゲル係数が低いから生活内容がよくなってきているというエンゲルの法則どおり必ずしもいかないのです、このごろは。  特に、前にこれは質問のときにもちょっと申し上げたのですけれども、お茶の水大学の助教授の伊藤秋子さんが、昨年六月二十八日日本人口学会で、いまの勤労者の所得をもとにして栄養基準量を家族全部がとろうとすれば、二人家族の場合大体四九%くらいが食料費として必要だ。それから三人家族の場合は六〇%、五人家族の場合は八三%も食料費に必要だというのです。そうしなければ栄養基準量がとれないのに、最近は教育費のための貯蓄が非常に多いので、実際にはそれだけの食料費支出をしていないというのです。ですから、経済企画庁で伊藤秋子さんに何か聞いたそうですが、そういう発表があったのですから、大蔵省でも伊藤秋子さん——ぼくも会って聞きたいと思っているのですが、そういう発表があるのですよ。ですから、もっと詳しく、どういう計算をされたのか、一ぺん大蔵省もそういう調査をお調べになって、そして今後課税最低限基礎となる基準生計費を割り出す場合に、単にエンゲル係数だけでなく、もっとほかのいろんな要素を加味してやる必要があるのじゃないか。  それから、エンゲル係数だけですと、食料費以外のものがはっきりわからぬでしょう。このごろは特にそういう面が、たとえば水道料金が上がるとか、下水料金が上がるとか、特に学校の授業費が非常にウエートが大きくなっているのですよ。そういう点をもう少し今後こまかく配慮されて計算される必要があるのじゃないか、こう思うのです。この点について御意見を伺っておきたいと思います。
  24. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) お話のように、また私が御説明のとき申し上げましたように、わが国の場合におきましては世帯人員が多くなりますので、どうしてもエンゲル係数が相当高くなる程度に食料費をとらないと栄養基準を満たすわけにはいかない程度になっております。これはまあそういった世帯人員の多い世帯の共通の問題として、今後大いに検討しなければならぬ点だと思っておるわけです。ことにそういう世帯子供がまあ学校へ行く、ここのモードでは十三歳でございますからまだ中学に入ったばかり、これが高等学校に行き大学に行くということになりますと、非常にそういったための学費、学資金がかかってくる。そういうことになりますと、いよいよこの食料が圧迫されるということになりまして、なかなか問題の多いところだと思っております。  それから、伊藤秋子さんのお話、私も承っておりますので、いろいろこのエンゲル係数だけで食費以外の生計費を出すことには問題があることは十分承知いたしております。ただ、まあ御承知のとおり、家計費というものは、その家族構成なり、それからまたその置かれている環境の相違で、あるところでは教育費が多い、あるところでは水道料金が多い、あるところでは衣類の支出が多い、あるところでは住宅費が多い、必ずしも画一的でなくて、その項目ごとにかなり違いますので、この一つのモデル的なケースを出しますと、いや、どこそこが少ないという指摘を受ける。ところが、必ずしも世帯は共通して同じような費用でないものですから、そこら辺がなかなかむずかしい問題で、これはまあ今後総理府の統計局とも連絡をとりながら、課税最低限の検討の際、資料として十分検討を続けてまいりたいと、このように思っております。  それから、前の食料費につきまして、自衛隊基準生計費基礎にしたものとは、お話し申し上げましたように、だいぶ比較するには基礎が違っておりますので、それだけで単純に比較ということはできかねると存じます。
  25. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで、もう一つエンゲル係数について御質問しておきますのは、この提出していただいた資料によりますと、五人世帯の場合、エンゲル係数が三十九年で四六・五六、かなり高いのですよ。総理府等で発表しております日本標準世帯の平均のエンゲル係数は三七%くらいですね。
  26. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) あれは標準世帯でなしに全部の、一人世帯、二人世帯を突っ込んだやつです。
  27. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一人当たりですか。
  28. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 一人当たりじゃありませんけれども、算術平均です。一人世帯、二人世帯……
  29. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日本国民の平均エンゲル係数というのですか。
  30. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) そうもいえないのですが。
  31. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 とにかく三七%で、最近エンゲル係数が下がってきたと、大体欧米水準に近づいてきたと説明しているわけですよ。三七%くらい。五人世帯の場合、四六%というのは、これはエンゲルの法則からいえば貧困家庭ですよ。四六%というエンゲル係数は貧困家庭ですよ、大体五〇%に近いのですから、半分に近い。そうなると、課税最低限を、家族数が多い場合もう少し考える必要があるのじゃないかという気がするのですがね。独身の場合もこんなにエンゲル係数違うでしょう。さっき泉主税局長も言われましたように、子供が高校に行くことになりますと、これはそこでずいぶん苦しくなってくると思うのです。ことに私立高校なんかに入った場合、東京都でいえば都立に入る場合と私立に入る場合とうんと違いますし、大学も、きのう愛知文部大臣に聞いたのですが、東大に入るのと、私立大学に入るのと、ものすごく違っちゃうのです。東大だと一万二千円くらいでしょう。受験料が千五百円で、入学料が千円だというのですよ。ところが、私立大学へいくと、寄付だけでもう三万五千、入学金で五万、六万、授業料で二万も三万もかかる。この点どうですか。家族持ちの大体五人くらいが一番苦しいところだと思うのです。どうもそれにしては、私は五十四万四千円というのが低過ぎますし、これにはいろいろ、消費者米価値上げも含んでいないというのですからね。まあ消費者米価値上げも含んでいないのはいいとしまして、今後課税最低限をきめる場合、五人家族については、主税局長、もう少し、いまの生活実態から教育費等いろいろ勘案しまして、もう少し私は考慮する必要があるのじゃないか。われわれは八十万円と言っておりますけれども、一挙にそこまで実際問題として、それは大蔵当局として、すぐはそこまでなかなか実現できないでしょう。しかし、今後少なくとも子持ち五人世帯については相当私は、いままでの計算のしかたをもう少し変えて、その辺もう少し生活実態に合ったような計算をするように、この点もう少し何かくふうをこらす必要があるのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  32. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) お話のとおり、夫婦子供三人、つまり五人世帯のところではエンゲル係数が四六・五六になっております。勤労者世帯エンゲル係数は、先ほどお話しのとおり三七・幾らというのが現在の姿でございます。それは一人世帯、二人世帯なんか含んでおりますし、それがあるいは五人世帯なんかいろいろ含んでおりますものを算術平均すると三七になる。そしてここにありますように、一人世帯では三二、二人世帯では三六、こういった数字、これは総理府の統計局のデータから出してきた数字でございまして、こういうふうに世帯別エンゲル係数はかなり違っておるわけでございます。それだけに結局、これがまあ日本の現実の各世帯別の食料摂取内容と申のますか、そういうものになっていると思うのでございます。これが必ずしも理想の姿ではもちろんないわけでございまして、今後あるいは生活の向上発展をはかる場合におきましては、四六のエンゲル係数ではいけないのでもっと、欧米諸国におきましては五人世帯でもやはり三十数%くらいのところに下がっておりますから、そういうところまでいくのがほんとうであろうと思います。これは現実の日本のそういった世帯を前提とした場合の数字になっておるわけです。  したがって、今後課税最低限の検討の際におきましても、現実の姿とあるべき理想の姿、これをにらみ合わせながら、財政需要をも勘案しながら、改定につとめていくということであろうと存じます。特にこの五人世帯のところでは課税最低限との比較で、御承知のとおり今度改定いたします課税最低限の初年度と比較いたしまして、わずか八千五百円の差しかございません。しかし、四人世帯、三人世帯のところでは、課税最低限基準生計費との差が四万円くらい余裕があるのです。ところが、五人世帯になると急激にその差が縮まります。これはわれわれも、どうして、一人ふえただけで急激に四万円の差がわずかの差になってしまうのか、これを検討いたしておりますが、結局は食料——子供が十三歳、十一歳というぐあいに大きくなりますと、おとな並みの食料を摂取いたします。それが家計の相当な圧迫になっている、これにさらに今度は先ほど申し上げましたように高等学校へ行くような年齢になりますと、学費が加わってくる。公立高校へ行く場合と私立高校へ行く場合とでは非常に差があることは先ほどおっしゃったとおりでございます。そういったことを考えますと、この五人世帯のところの課税最低限については、もっと引き上げねばならないということがいえるわけでございます。そこで、まあ木村先生にはあるいは御意見があるかもしれませんけれども税制調査会のほうでは、そういうところからいたしますと、どうも家族が多くなるに従って窮屈になる、特に五人世帯のところで課税最低限との差が八千五百円しかないということは、これを税の面から見ると、そこで扶養控除をもっと上げなくちゃいけないのじゃないか。一般的に申し上げまして、わが国の扶養控除は基礎控除に比べますと諸外国に比べて割りが悪いわけでございます。その上にこういう多人数世帯になるほど窮屈になってくるということは、扶養控除が不足なんだ。したがって、扶養控除をもっと上げることを検討すべきだというのが税制調査会の意向でございます。そういった点もにらみ合わせながら、今後の課税最低限の検討にあたりましてはそういった多人数世帯、これは表に出ておりませんけれども、六人世帯というのはこのごろはわりあい少なくなりましたけれども、あり得ないわけではないわけでございます。そういった点を考えますと、そういった多人数世帯課税最低限の引き上げをもっと検討しなければならぬ、このように思っております。
  33. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは積極的にそういう点をもっと生活実態に即してやる必要があると思うのです。そういうふうに取り組まれるということでございますから、そういう姿勢でやっていただきたいと思うのです。  それで、大蔵省は、これは最低生活費ではない、基準生計費だ、標準生計費だと言われておるのですけれども、五人世帯の場合、エンゲル係数だけから見れば、四六・五六というのは貧困世帯ですよ。欧米と比べても貧困世帯ですよ。その家計費の半分を食料費に充てるというのは貧困世帯で、標準とはいえないと思うのですよ。だから、そういう面からいっても、いま主税局長はそういう点に関心を持たれておりますから、ことに税制調査会の扶養控除をもっと引き上げるべきだ、こういう答申もあることでございますから、その点は十分今後考慮をされたいと思うのです。  それから次に、利子課税と貯蓄動向との関係です。これもこの資料をいただいてはっきりしたわけですけれども、予算委員会で大蔵大臣と質疑応答いたしましても、大蔵大臣は私に、貯蓄増強あるいは資本蓄積に役立たせるために税制面でそういう特別措置をやるということを言われるわけです。あるいはまた、資本蓄積のために、特に開放経済体制に入って外国との競争力を強化する、資本蓄積に役立つように配当についても特別措置を行なうのだ。例のサルカニ減税論を言われたわけです。だから、そこで私は、それでは過去の経験によって実証されておるかどうか。税制調査会の答申では実証しがたいということが答申されておるのですよ。利子、配当に特別措置を行なって、その資産所得に対する減税措置をやって、はたしてそれが貯蓄増強に役立つかどうかは十分に実証しがたい。それよりもマイナス面、そのために、一部の非常に高額所得層に優遇措置を講ずることによって生ずる負担の不均衡、それによって納税モラルに悪影響を及ぼす、そのほうがマイナス面が大きいという答申になっておるのです。それが実際に資本蓄積に役立つならば、また積極的理由があると思うのです。そこで、それじゃ証拠があるということを実証できるかということを質問しても、そこのところはちっとも、あいまいで、まあまあというようなことで済まされておるのですよ。そこで、私はこの資料をいただいたわけです。先ほど主税局長が言われますように、非常にはっきりしました。過去の実績によりまして、ことに利子については、利子課税が多くなったときに逆に預金がふえ、また利子課税が少なくなってかりに預金がふえても、全体の国民所得の中における個人の貯蓄率は減っておる。そうすると、総合して、預金利子課税を減免した場合、預金がふえても今度はほかのほうの貯蓄が減る。そうすると、資金の移動が行なわれるということであって、日本の全体の貯蓄、蓄積がふえるということはこれでは実証しがたいわけですね、いままでの経験で。そういうこともかなりよくわかったわけです。それで主税局長も言われるように、可処分所得の増大が貯蓄の増加と一番大きな関連性があるということであったわけです。ですから、これまでのこういう実績から見まして、積極的にこの利子課税について租税特別措置を実施する私は理由はないと思うのです。  そこで、今後の扱いですがね、これから二年延長することになるのですけれども税制調査会の答申では、一挙にここで廃止することは周囲に影響が大きいから経過措置を講じてこれを廃止すべきだと言っているのですよね。そういう答申があるのですから、ここではっきり経過措置を講じて、もう二年延長するのですから、二年後においては、昭和四十二年にはこれを廃止すべきじゃないかと思うのです。山中試案、いわゆる山中試案では、四十二年にいまの所得税法三十七条による源泉二〇%で総合する、そこに戻す、戻すべきだという試案ですね。山中試案、自民党でさえそういう試案があるのですからね。どうですか、主税局長
  34. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) そのお答えの前に、先ほど、主税局は基準生計費と言うけれどもエンゲル係数四六というのでは貧困世帯に近いではないかというようなお話でございますが、御承知のとおり、最低生活費ということになりますと、かなり幅のある問題でございまして、いまでも予算上措置を講じられております生活保護費、これを見ますと、この基準生計費とはかなり差があるわけです。あれは最低生活費になるかもしれませんけれども、こちらのほうはあれよりも相当高いわけでありますが、まあ基準生計費と言っていいのではなかろうかというので基準生計費と申しておるのでございます。  それから、いまお話しの、この利子の特例の問題でございますが、二年先の話ということになりますとなかなか、非常に申し上げにくいのでございますが、お話のとおり、貯蓄の増加ということは一番国民の可処分所得の増加ということと密接に関連しておる。これは学者の方も言われておりますし、われわれの分析からも出てくるのでございます。したがって、利子とか配当というものに特別の措置を講ずることは国民貯蓄全体の中での流れを変えることになる。そういう意味では、それに異議があるという見方もあることはあろうかと思いますけれども、貯蓄全体としてはたいした意味は起きない。ただ、いままでのわが国の資本主義の発達段階におきまして、御承知のとおり利子がずっと優遇されてきて、それによって間接金融がわが国の企業の資金調達の非常に大きなウエートを占めてまいっております。この間接金融から最近は直接金融に移るべきだ、直接金融に移るには直接証券投資をさせる必要があるんだというようなことがいろいろいわれているわけでございます。そういう点では、いままで税制があまりにも利子の優遇に走って、そのために間接金融を税制の面からも助長しておったというふうな点があったことは私はいなめないと思うのでございます。それは率直に認めて、今後それではどういうふうにあるべきかという点から、この点を再検討する必要があるんじゃないか、こう思うわけでございます。  そういう点からいたしますと、この数字からもわかりますように、利子に優遇措置を講ずるということによって国民の個人貯蓄全体がふえるものでは決してないということからしますれば、この二年の期限が到来したならばすみやかに本則のほうに戻るのが筋である、これはもうだれしもそう思うわけだと思いますが、問題は何ぶん、先ほど申し上げましたように、昭和二十五年に一年だけ総合課税が行なわれた、わが国税制史上いまだかつて総合課税されたのは一年だけしかないという歴史から見ますと、一挙に総合というのはなかなかむずかしい点がありはしないか。税制調査会の言いますように、とりあえずは何十%かの源泉選択の道を開いて、それから総合に進むというのが筋道としては楽なやり方ではないか、このように思っております。
  35. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 主税局長課税最低限について触れましたから、一応私の意見を述べておきたいと思うのですが、いま生活扶助を例に出すのはこれは間違いである。あれは生存水準さえ維持できないといわれているのです。ケースワーカーの人にお聞きになるといいですよ。あれで一ヵ月生活できないのです、生活が。生存も問題ですよ、生存さえ。ですから、あれは生存水準とかなにか直したほうがいいと思うのですね。犬やネコだって生存しているのですからね。人間生活になるとあれじゃできませんから、それを引き合いに出さないほうがいいと思うのですよ。  それから、可処分所得の増加と貯蓄との関連性が一番大きい、これははっきりしているというお話ですから、それならば、所得税を減税すれば勤労者の可処分所得がふえるのです。そのまま貯蓄に回るということになるのですね。そうなると、これは泉主税局長に言うのじゃないのです、大蔵大臣の論理がめちゃくちゃです、論理が逆にね。  それで、いままで銀行預金を優遇し過ぎた。——これは確かなんで、それで配当のほうよりも銀行預金を優遇し過ぎたから、間接金融にウエートが置かれて、直接金融のほうがウエートが低くなった。だから、証券業者のほうが自己資本比率を高めるために配当のほうも租税特別措置で預金利子と同じように優遇措置を講ずべきだというのが、配当分離課税の主張だったのですね。それなら、利子課税を廃止すればいい。むしろ廃止することによって平等にすべきですよね、利子と配当の問題。そうじゃなくて、今度は逆に利子課税分離課税はそのままにしておいて、そして配当の分離課税をするという方向に行ったわけです。税制調査会の答申は、一応預金利子については二〇%ですかね、源泉選択をとった。あれは一つの前向きだと思うのですよ。あれこそ経過措置だと思うのですよ。なぜそれを採用しなかったのですかね。その点は今後、税制調査会の答申もあるのですから、四十二年に二年の期限が来るのですから、そのときは両方廃止する、つまり所得税法の三十七条に戻る、こういう姿勢でいくべきだと思うのですよ。将来のこと、将来のことと言いますけれども、これは時限立法ですから、二年たったらどうするかということを当然きめなければならないと思うのですよ、時限立法ですから。その点がひとつ。税制調査会の答申と逆のほうに行くのだということは、私としてはおかしいと思うのですよ。どうして大蔵省、それがんばらなかったのですか。主税局、どうですか。
  36. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 大蔵省ががんばらなかったかと言われると、ちょっと大臣の話になりますので、主税局がなぜがんばらなかったかという点についてお答えいたします。主税局はがんばったのであります。がんばったのでありますが、いかんぜん今日の情勢で貯蓄の奨励ということが必要であって、そういう二〇%の源泉選択というようなものをもってくれば、総合課税に進むということから、国民の貯蓄心に及ぼす影響が大きいぞということ、それから最後はもう発言禁止になりまして、もうその辺で……。
  37. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 関連して。ぼくは局長に、この際取り消してもらいたいとは言いませんけれども、いま木村先生の御質問に対する発言の中で、生活保護を受けておる人々の生活基準を対象にして云々というようなことは、これはぼくは取り消してもらいたいと思うのです。取り消すことがもし困難ならば、やっぱり絶対に改めてもらいたい。そうしないと、これはやはり一生懸命日本生産に努力している勤労大衆を侮辱することになりますよ。だから、その点は、それは勇み足なら勇み足でよろしいから、やっぱり今後注意するということをやっぱりはっきりしてください。
  38. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 私が申し上げました意図は、決して勤労大衆をそういう意味で侮辱するつもりはございませんで、したがいまして、もしそれがそういうふうに誤解されるのでございますれば、私の発言は取り消させていただきます。
  39. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあ主税局の立場はようわかります。税制調査会が答申をしたのですし、その答申に基づいてきておるのですから、あの答申は一応私も目を通さしていただきましたが、中には賛成できない点もありますけれども、おおよそ筋が通っているように思うのです。ともかく国会でいろいろ質問して、そうして大蔵大臣が一応納得しても、それは実行しないとか、それから税制調査会の答申が出てきて、それをなぜ尊重しないかと言えば、尊重すると、こう言いながら、実際には尊重していない。まるで国会でわれわれ審議しても、ほんとうにどれだけそれが実になるか、非常に疑問を持ちだしたのです。特にそう言っちゃ悪いですけれども、池田大蔵大臣のときには、やっぱり税制に明るいだけに、反対なら反対、賛成なら賛成、はっきり意見は対立するんですよ。それならそれでいいですよ。ところが、賛成したようなしないような、何だかさっぱりわけがわからないんで、主税局長と論争するのが一番はっきりしているのですけれども、しかし、主税局長を責めても、いまお話しされたように、非常にレジスタンスしてみたのですけれども最後はどうもだいぶ苦しい立場になったようですから、じゃこれはこの程度にします。  もう一つ伺いたいのは、この資料で、「少額貯蓄非課税限度の引上げによる減収額」と、それから「配当所得確定申告不要制度の創設による減収額」の計算方法ですね。これは名義の分割というのがありますね。それを考えると、推定は非常に困難じゃないかというふうな気がするんですよ。ここに出ているよりは実際は少し多くなるのではないかと、実際は。百万円に引き上げた場合、名義を三つに分割すれば、そこで三百万円までは非課税になる。そうすると、いままで一千万円の人が今度はそういうふうに分割していくと、まあ五つに分割すれば五百万円までということになってくるんですよ。そういうのをどういうふうに押えるのか。  これは配当についてもそうです。増資があると、その増資が出てきて、それを今度銘柄を幾つかに分割する。そうなると、どういうふうに推定するのか。まあ非常に困難でしょうが、ここで推定されているよりは多いと見るべきじゃないかと、こう思うのですが、そう点どうなんですかね。
  40. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) お話のとおり、こういう制度が設けられますと、当然名義分割ということを考えなければなりません。そこで、私どもも名義分割をずっと預金の階層——いま定期預金の一口当たりの階層の数字が出ております。それを基礎にいたしまして、定期預金が五十万円以下、百万円以下、一千万円以下、一千万円超、こういうふうに階層別の数字、それの口数と預金総額が出ております。それに対する利子額が出ますので、その階層別に、まあ上のほうこそ分割が大きくできる。まあ下の百万円以下のところでは分割はしてもたいしたことはない。百万円から千万円のところでは、その上のほうの分割の何割くらいは、五割相当くらいの分割は行なわれるだろうというような計数をずっとはじきまして算出いたしました数字でございますので、したがって、なかなかこの名義分割ということを推測することは容易じゃございませんけれども、私どもとしてはかなりその分割があることを見まして数字をはじいておりますので、まあこの程度の減収で済むのではないかと思っております。しかし、私どもが予想した以上に分割がもっと激しく行なわれれば、これでは足らぬということになるかもしれません。これは今後国民がこの措置に対してどういうふうな反応を示すか、これがなかなか予測しがたいところでございますので、私どもの一応いままでの経験などからいたしました分割率というものを想定してやった数字でございます。
  41. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 原則として、いま五十万円まで非課税ですが、一口ということになっているのでしょう、原則は。それで前に、ずいぶん前でしたがね、分割問題がずいぶん問題になりまして、ひどい人はずいぶん幾つにも分割しているということが問題になってきた。これは法制上、法律上はどうなっているのですか。
  42. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 少額貯蓄制度が三十八年にとられまして以来は、一人一店舗、それから一種類の預貯金になっているわけです。そして非課税貯蓄の申し込み書を金融機関を通じて税務署長のところまで出していただくことになっています。したがって、同じ人の名前ではできないわけです。ただ、自分の家族がおりますと、その家族である妻に、子供に分割することはこれはできる。ただ、架空の名前で分割しますと、税務署へ出ました非課税貯蓄の申し込み書と住民登録を対比しますと、そういった名前の人はそこの家庭にいないということになりますと、これは間違いだからということで、金融機関のほうへ通知いたしまして、源泉徴収をしてもらうことになっています。したがって、そういう意味では、昔国民貯蓄組合当時に、同じ人が三十万円限度で何百口も持っておったというような事態は今日起こらないということになっております。したがって、そういう意味での分割はない。ただ、妻あるいは子供名義に分割することはあり得る、こういうことでございます。
  43. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵省のほうからやはり資料をいただいたのですが、非課税貯蓄について一人当たりの平均の貯蓄額は大体十五万円から十八万円くらいのところですね。非常に低いのですよね。ですから、いまの非課税五十万円で十分じゃないかと思うのです。  それから、これは日銀の預貯金者別統計ですね、あなたのほうの計算される基礎になっているやつですね、私はまあ調べてみたのです。ところが、全体の口数で五十万円未満が、これは昭和三十九年九月末の調査ですが、口数で、これは定期性預金だけで、三千二百九万口のうち五十万円未満が九五%占めているのですよ、口数で。それから、金額で三兆九千二百五十四億、これは全体で、総額のうち五十万円未満が六七%占めている。五十万円以上百万円までがこれがごくわずかですね。百九万口で、預金総額は六千二百九億となっているのですよ。そうなると、どうも口数で九五%までは五十万円未満なんですね。百万円まで上げることによってどれだけ積極的な意味があるのか。しかもそれが分割が容易になってきて、非常に非課税額が多くなるということなんでして、どうしてこれを倍に引き上げたのか、どうも理解がいかないのですがね。
  44. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) これは木村委員承知のとおり、非課税貯蓄の元本限度額というのは、前から郵便貯金の預入限度額とパラレルになって引き上げられてきておるわけであります。そして郵便貯金の限度額の引き上げの問題がここ数年来毎年騒がれまして、前年までは引き上げないで五十万円で据えてきたのでありますが、昨年に簡易生命保険のほうが百万円に引き上げられたわけであります。そこで、そのときの何か話で、郵便貯金はことしは必ず百万円に上げるということになっているそうでございまして、それとの関連から、郵便貯金が百万円に引き上げられるのであれば、銀行その他の金融機関の非課税貯蓄の限度額も引き上げる必要があるということでございまして、お話のように非課税貯蓄の一人当たりの金額からいたしますと、まあせいぜい十四万円から十七、八万円くらいでございます。まだ五十万円にはかなり余裕がある。ただ、その中でも五十万円の限度一ぱいにきております人もおりますし、全部の口数が二千五百万口というふうに非常に大数なものでございますから、その中に金額の比較的小さいものがおりますと全体としては非常に平均が下がってくるわけでございます。その中で五十万円に一ぱいの人もかなりおるわけであります。そういう点から、郵便貯金の預入限度と簡保の限度がすでに百万円に上がっているということ、それらの見地から今回百万円に引き上げられたということになったのでございます。
  45. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 委員長、関連して。そうしますと、局長、いまおっしゃっているのだと、百万円に上げたのは郵便貯金の関係であると、こういうことになりますと、一昨年に税制改正されたときに、いままでは二社でもよかったのですね。それから二店舗でもよかったわけです。それを一店舗一社にしたわけですね。したがって、預金者の立場からいうと、一ヵ所よりも二ヵ所に預けられるほうが、あるいは自分の好みの預金ができるほうが便利なわけなんです。たとえば定期預金に半分する、半分は普通預金にしていると、そして出し入れ自由にするということのほうが預金がしいいわけですよ。そうすると、この際、局長の御答弁によると、郵便貯金に見合って百万円にするなら、この際、一昨年までのように二行に割ってもよいと、あるいは二社にわたってもよろしいというように、預金者の立場からこれを便利がいいように考えたら、かえって預金の目的に沿うのじゃないかと、こういうように考えるのですが、いかがですか。
  46. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) おことばではございますが、少額貯蓄制度にするときに、なぜ少額貯蓄制度にしたかといいますと、先ほど申し上げましたように、国民貯蓄組合の制度でございますと、一人の人で何百口も限度までのものを持てることができるようになってくる。それでは困る。それをチェックするには、一人一店舗一種類ということでやらないとなかなかチェックができないということからいたしまして、少額貯蓄非課税制度に移るときに、一人で何口もというのは困るということで、こういう制度にしたわけなんです。預金者の都合からいえば、お話のように、もし百万円という限度の中で、幾つかの銀行にわたって預金して、それらの銀行の預金を合わせると百万円以下なんだ、そういうのを何とか非課税にしてもらいたいという、こういう御希望が預金者としておありになることは私も十分承知するのでございます。ただ、そういうふうにいたしますと、いまの税務署におきまして非課税預金の限度内であるかどうかということをチェックするに非常にめんどうになります。そうしますと、どうしても何口もやる人が出てくるとぐあいが悪いということで、いま一口に限っておるわけであります。
  47. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 そんなに何口も、十口にも分ける必要がないのですから、最大二口くらいにしてもいいと思うのですよ。あるいは店舗を二つにすることが困難なら、これも一口にしてもいいと思うのです。しかし、少なくとも少額貯金をするものを奨励していく、こういうものを保護したいのだということであるならば、一種類にきめることはこういう預金者の自由を牽制することになると、私はこの前にも申し上げたのです。したがって、おっしゃるように郵便貯金との関連において百万円としたいということであるならば、本質的な意見は木村先生おっしゃったようにそれはそれとして、私はやはり少額預金者の利益あるいは便利を守るためにこういう方法をこの際つくったらいいんじゃないか。そうしてたとえば四十万円までは、あるいは五十万円までは定額定期預金に積んでおる、あと五十万円になるまで普通預金でやっていくのだということで、出し入れ自由にするというような方法にしますれば私はいいと思う。そうすればやはり、少額預金者は預金をする意欲を持つことができる、こういうように思うのです。あなたの郵便貯金との関連においてのお答えが前提になるなら、私はぜひ訂正してもらいたいと思う。
  48. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) おことばでございますが、金融機関に対する預貯金という意味は、預貯金と信託と公社債と三種類あるわけでございますが、そのうち、預貯金ということでございますれば、一店舗で定期に幾ら、普通預金に幾らする、その両方合わせた限度、したがって普通預金につきましては取引の限度額というのをきめまして、たとえば今度新しく直しまして百万円とかかりにいたしますと、定期五十万円、普通預金で限度額五十万円の範囲内で出し入れをするというのでございますれば、これは少額貯蓄、定期と普通預金と合わせまして少額貯蓄の対象になれるのだ……。
  49. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 していない。
  50. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) そういたしております。現在そうなっております。ただ、銀行が違いますと、それは扱いができない。
  51. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 やっていれば問題はない。それは明らかにありません。それは銀行を分けるということは、たとえば定期預金の場合は遠方でも差しつかえないが、出し入れ自由のやつは近いところがいい。
  52. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) それをやると、先ほど申し上げましたように、金融機関が違ってまいりますと、ぐあいが悪いのです。同じ金融機関でございますと、定期と普通預金と分けて……
  53. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 そうすると、ただ、その点が性格が違いますから、絶えず出し入れのできるものは近いところがいい。しかし、定期預金の場合は多少離れても差しつかえないから、それはそんなにたいした手間がかかるのじゃないから、おっしゃるような郵便貯金が百万円になったからということが前提になるなら、ぜひこの際御一考願いたいと思うのです。
  54. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 先ほで申し上げましたように、百万円に限度が上がりましたときに、一つの店舗でございますと、その限度内で定期預金を幾らにする、普通預金を幾らにするということで、限度内にあるということの確認ができるわけでございますが、店舗が違ってきますと、片一方の定期預金が幾ら、これは正直に言わせるということを前提にすればできないことはないかもしれませんが、定期預金が幾らで普通預金が幾らという内容が違っておりますと、限度額が必ずしも守られないということになります。そういった預金者の御希望はあることかと存じますが、いまのところ、同じ金融機関の中でそういうふうにしていただきたいということにいたしておるのでございます。その点、現在の制度でどういうふうに実際やられておるかどうかにつきましては、さらに調査いたしてみたいと思いますが、現在の制度でまかなえているのじゃないかと存じております。
  55. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 ちょっと、この資料に関連して、泉さん、質問があるのです。それは、いま大蔵省から出された資料を見ますと、三十九年度基準生計費基礎となった食料費云々というのは、総額が百六十七円四十八銭、この中には調味料二十二円四十八銭、菓子類二円五十九銭を含んだものなんですね。これは間違いないですね。  そうすると、去年の大蔵委員会でのあなたの答弁の速記録があるのですが、どうも私記憶違いじゃないかと思って速記録を持ってきたが、こう書いてある。去年、昭和三十九年の三月二十五日の本委員会において、あなたはこういうことを答えておりますよ。「三十八年の場合を平均いたしますと、成年男子一日当たりの食料費としましては百五十円四銭、これはもちろん素材だけでございまして、光熱、調味料等は全然含んでおりませんが、」、こう言っている。いいかね。——いやいやって、速記録を読んでいるのだから。そうすると、あなたの去年のこれでいくと、調味料菓子類を含むと、ことしは百七十五円十一銭にならなければならないのだよ。あなたの計算でいっても、百七十五円十一銭にならなければならぬ。それが百六十七円四十八銭ということになると、去年よりも実際に七円六十三銭ことしの基準生計費計算のしかたが低いという結果になってくるのだ。これはどっちがほんとうなんですか。これは去年あなたが言ったことがほんとうなのか、どっちなんですか。非常に重大な税の算定のものにこういう間違ったことが言われているということは、どういうことですか。
  56. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 昨年私の申し上げましたのは間違っておりまして、光熱費は入っておらない。光熱費エンゲル係数のほうで見ておりますので、光熱費は入っておらないのでありますが、調味料のほうは基準生計費の中に入っております。それから、菓子類は昨年までございませんでした。今年新設をしたものでございます。したがって、菓子類は昨年は入っておりません。
  57. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 そうすると、大蔵委員会会議録第十九号というやつ、三月二十五日の私の質問にあなたの答えている「光熱、調味料等は全然含んでおりません」というのはどういうことなんです。これは私はおそらく、あなたがこの委員会で、そんなことは思い違いでございましたというようなわけにいかぬと思うのです。あなたはとにかく主税局長なんだから。去年もそうだ、ことしもそうだ。これだけの重大な課税最低限を出すための基準生計費が、調味料が含んでいる数字か含んでいない数字かということはわかり切っているはずですよ。私はどっちかがごまかしじゃないかと思う。おそらくことしのほうがごまかしじゃないかという気がする。これはほんとうに委員会の権威に関する問題です。取り消すと言ったって、去年のことなんだ。どうするのです。
  58. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) それは、私の昨年申しましたのが、注意を欠いておりましたので、光熱費は確かに入っておらないわけでございますが、光熱、調味料と申しましたら、その調味料はこちらのほうに入っておるわけでございまして、間違いでございます。
  59. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 これは私は、とても間違いというふうなわけで済まされる性質のものかどうか、事の持っている重さというものを考えてもらいたい。これは私は去年の四十六国会の速記録をもってちゃんと言っているのですからね、間違いないことなんだ。したがって、この計算は、私は昨年のほうがほんとうであるとすれば、ことし出された百六十七円四十八銭というこの数字は、これはもうでたらめだと言わざるを得ない。去年がほんとうならば、ことしはこの数字はでたらめだ。もしことしの数字がほんとうだったとするならば、去年はでたらめな数字課税最低限をきめたということになる。注意を欠いたから済みませんということとはわけが違う性質の問題だと思いますね。
  60. 西田信一

    委員長西田信一君) 局長から、昨年の答弁は注意を欠いて誤りであったという答弁でございましたので……。
  61. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 それはそんなことでこの際ごまかされてはいけない。これほど重大な問題ないでしょう。
  62. 西田信一

    委員長西田信一君) 委員長からお尋ねいたしますが、局長、ただいまの答弁、ことしの答弁には誤りがない、昨年の答弁が誤りだったということでございますね。
  63. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) さようでございます。昨年私が申し上げましたのが、光熱費を含まないということを申し上げたのは正しいのでございますが、その次に調味料というのが入っておりますと、それは間違いでございます。光熱費は入っておりませんけれども調味料は、この百五十円の中に入っているわけでございます。
  64. 西田信一

    委員長西田信一君) したがいまして、ことしのあなたの説明には誤りがないというわけでございますね。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 委員長、ちょっと関連して。昨年もこういう資料を出されたのじゃないですか。
  66. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 昨年はこういう分析をした資料でなしに、献立表だけ出したわけでございます。献立表には素材のあれしか書いてなかったものでございますから。そのときにもちろん調味料が入っているわけでございます。金額の計算には調味料は入って計算しておったのですが、献立表には調味料が書いてなかった、そういうことでございます。
  67. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 これは委員長、そういうふうにとりなしても、事柄の問題から考えて見て、ちょっと……。善後措置を講じてください。
  68. 西田信一

    委員長西田信一君) ちょっと速記をとめてください。   〔午後三時二十七分速記中止〕   〔午後四時九分速記開始〕
  69. 西田信一

    委員長西田信一君) 速記をつけてください。  委員長から確認をいたしますが、昭和三十九年三月二十五日の本委員会におきまして、所得税法関係の議案審議中、鈴木市藏君の質問に対しまする主税局長泉美之松君の答弁の中に、「成年男子一日当たりの食料費としましては百五十円四銭、これはもちろん素材だけでございまして、光熱、調味料等は全然含んでおりません」との答弁がございましたが、このうち調味料を含んでおらないというのは答弁の間違いであるという先ほど釈明がございましたが、この点は間違いありませんか。一応確認をいたします。
  70. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 私が昨年鈴木委員の御質問に御答弁いたしました中で、基準生計費基礎となった食料費の百五十円四銭の中に、光熱費調味料が入っておらないと発言申し上げましたのは間違いでございました。光熱費は入っておりませんが、調味料は入っておるのでございます。間違った発言をいたしましてたいへん御迷惑をかけました件、まことに申しわけなく、おわびいたします。
  71. 西田信一

    委員長西田信一君) 委員長からも申し上げておきますが、法案審議の重要な答弁でございますので、十分御慎重を期していただくようにお願いいたします。
  72. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ、引き続いてさらに資料についてお尋ねいたします。この配当につきまして、一銘柄について五万円までは確定申告しなくてもいいと。そうすると、分割しますと、十銘柄なら五十万円、二十銘柄ですと百万円、かりに百万円確定申告しなくていいということになると、これはかりに六分の配当としますと、千六百万円くらいの資産になると思うんですね、元本が、配当六分とかりにしますと。そうすると、非常な多額の資産というものが課税からのがれるということになるんじゃないのですか。
  73. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) お話のように、配当所得につきまして一銘柄年五万円まで確定申告を要しないということになりますと、まあ名義分割等を行なうことによりまして相当多額の資産を持っておられる方の配当所得につきまして源泉徴収の一〇%だけで課税が済んでしまうということになるわけでございます。ただ、その場合は、御承知のとおり配当所得につきましては配当控除がございます。所得税税率で見ますと、源泉徴収の一〇%と、したがってそれと配当控除率の一五%を合わせまして二五%が上積み税率になりますので、したがって所得税の上積み税率が二五%をこえる階層で得になるわけでございまして、それ以下の階層では、まあ二五%の階層では全然変わりなく、二〇%以下のところではむしろ確定申告をしたほうが得である、こういうことになるわけです。そこで、税率で、御承知のとおり所得税課税所得八十万円から百二十万円までが二五%になる。したがって、八十万円から百二十万円までの課税所得の場合、普通にはそのほかに基礎控除、配偶者控除、扶養控除などございますから、もっと上に実際の所得はなるわけでございますが、課税所得で八十万円ないし百二十万円のところでは損得なく、百二十万円をこえるときは得になる、こういうことでございます。したがって、課税所得百二十万円をこえる階層で配当所得を持っておられる方は、それによってかなり負担が軽減される。ただ、まあ二五%は一応取ったことになりますので、それと上積み税率の差額だけが納めなくて済むということによる得になるわけでございます。
  74. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一銘柄について五万円まで確定申告をしなくていいということになると、かりに五万円までの場合ですと、確定申告しなくていいということになると、実際はどういうことになるのですか。いま現在とどういうふうに違ってくるのですか。
  75. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 昭和三十九年度分の配当所得につきましては、御承知のとおり支払い調書の提出が、年三万円までは支払い調書を提出しなくてもいいということになっております。したがって、税務署のほうでこの申告書で適正な申告がなされているかどうかを調べます際には、支払い調書は年三万円、半期一万五千円までは出てこないわけであります。したがって、税務署のほうで追及することができないような仕組みになっているわけでございます。それが四十年分の配当からは、一銘柄年にいまの三万円が五万円になり、したがって、半期一万五千円までだったのが半期二万五千円までは申告を要しない。ただ、いままでは税法に規定がなくて、ただ支払い調書が出ないというだけでございますが、もし判明いたしますれば、税法上はそれを申告して課税を受けなければならないものであったわけであります。ただ、今度は租税特別措置法改正いたしまして、申告を要しないということにいたしますので、そうなりますと今度は法律上も、申告の出た後それを更正決定する場合には、いまの一銘柄五万円以下のものについては更正決定をしない、こういうことになるわけであります。
  76. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、一銘柄について五万円までは、所得税も地方税もかからない、こういうことになりますか。
  77. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 地方の府県民税及び市町村民税、住民税もかからないことになります。
  78. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、十銘柄に銘柄を分けた場合、二十銘柄に分けた場合ですよ、とにかく百万円までは国税も地方税もかからないということにならないですか、銘柄を分割した場合。
  79. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) お話のように、名義を、まあ会社が同じではだめですけれども、会社を違えまして株を分散して持ちますと、お話のように年五万円、まあその利回りを五分といたしますと百万円の株価でございます。そのものを何銘柄か持つ、それによって配当所得のほうは免れるということになります。
  80. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 しかし、申告しなくて済むのですから、配当所得は免れると言ったって、総合しようったってできないでしょう。ですから、こういう法律にすれば、当然二十銘柄百万円、六分とすると千六百万円くらいですね。千六百六十六万円ですか、そうなるでしょう。非常に大きな資産というものが、そこで課税対象からのがれるのですよ。それも不労所得、資産所得です。これはどの程度までそういう課税範囲以外になるかは、さっきの計算で一応減収額が出ておりますけれども、しかし、これはこういう法律改正やれば、ずいぶん私は減収額というものは大きくなるのじゃないか。また、預金利子につきましても、五十万円を百万円に上げると、これを分割すればまたそこでもずいぶん非課税利子所得が出てくるわけです。  こういうことにしますと、これは少し大げさにいえば、これは憲法違反の疑いがあると言う人さえあるのですよ。憲法十四条ですね、社会的にも政治的にも経済的にも差別を受けないということになっているわけです。ところが、そういう資産所得を、資産を持っている人に非常に優遇措置が講ぜられる。しかし、それは政策的にいって資本の蓄積に役立つから、あるいは開放経済体制のもとで海外との競争力をつけるために必要だと、こういう理由になっているわけですよ。しかし、この点はどうですかね。勤労所得との均衡を考えた場合、あまりにこれはそこに差別がひど過ぎるのじゃないか。  しかも、資本蓄積に積極的に——積極的にということは、ただ資金が移動するだけであって、実質的に資本蓄積が増加するということはこれは疑わしいと、まあその実証はされていないのですからね。ことに利子については大体資金が移動する程度であって、実質的に資本蓄積がふえるということはなかなか実証しがたい状態ですからね。そうなると、マイナス面のほうが非常に大きいのじゃないかという気がするわけです。  この点はずいぶん私は真剣に論議されなければならない点だと思うのですが、税制調査会でも、ですから、そういう点から、配当の分離課税については答申していないのですよね。分離課税については答申していませんよ。税制調査会はいままでどおりですね。現行どおりの答申で、ただ源泉五%を一〇%に引き上げるという程度であって、分離課税を認めていませんし、それからいまの支払い調書三万円までですね、それを五万円に上げるという答申もしていないわけですよね。だから、ずいぶん税制調査会の答申政府の今度の改正案との間には、この利子、配当課税については違いがある。違いがあるというよりは、むしろ逆の方向へ行っちゃっているのですよね。  その点、今後、さっき質問したのですけれども、まだはっきりしていませんが、大体大蔵省の考えとしては、この二年たったあとを、やはりこれは両方ともこういう租税特別措置は廃止すると、そういう方向で今後は——時限立法ですからね、これはやはり今後の、済んだあとのことをやはり明らかにしてもらわないと、賛成していいかあるいは反対すべきか、これは賛成反対の一つの条件になると思うのです。この点、ひとつはっきり答弁してもらいたいと思います。
  81. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) お話のように、税制調査会の答申におきましては、配当についてはいまの源泉徴収税率の五%を一〇%に引き上げる、それから、先ほど申し上げましたように、いままで支払い調書が年三万円以下については提出されなかった、その点について、そういうことを知らないで申告する人とそうでない人との間に不公平が起きるから、それならば一銘柄年三万円までの配当については確定申告を要しない旨を法定するのが公平になる、こういうのが税制調査会の答申でございました。それと今回の政府案とは非常に違っておりますことは、お話のとおりでございます。  で、二年たった後のことでございますが、大蔵省全体として私が御答弁申し上げるのは適当でないと思います。ほかに証券局、銀行局などの部局がございまして、大蔵省全体としての御答弁とは申し上げかねるのでございますが、主税局といたしましては、少なくともこの期限が到来いたしました事態におきましては、こういう税負担の公平という点から見れば非常に問題のある制度は是正をしていただきたいものと、このように考えております。
  82. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから、自然増収の問題なんですけれども、今度の税制改正にあたって大蔵委員会で学者を呼んで意見を徴したのですが、従来は当分の間国民所得の大体二〇%程度前後、そういう答申だったのですね。税調の答申は、国民所得をもとにして、減税の総ワクですか、これをきめる基準にしたと。今度は、税制調査会の答申は、自然増収の大体初年度が二〇%、平年度が二五%ですね。これについて、自然増収が非常に不確定だ、はっきりしていないから、自然増収をもとにするのは適当じゃないんじゃないか、やはり国民所得をもとにすべきだと。もっとも、減税の総ワクが幾らかということよりも、その内容が問題なんだという御意見だったのですけれども、しかし総ワクをきめる場合には、やはり自然増収より国民所得のほうがはっきりしているんじゃないかと。自然増収については、これは物価が上がったときの名目的な増収もありますし、実質的な増収もありますし、あるいは徴税強化による増収というものもあり得るのですよ。理論的にはあり得るのですよ。実際にもあると思うのですけれどもね。ですから、どうですかね、そこでひとつ問題だと思うのですが、この点は大蔵当局としてはどういう考えでおられるのですか。
  83. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) お話のように、国民所得に対する二〇%程度の租税負担ということで減税を行なうべきだというのは、税制調査会が昭和三十五年に答申したものでございます。ところが、御承知のとおり、その後国民所得が急激にふえましたために、毎年減税はいたしておりますけれども国民所得に対する租税負担率は三十九年に二二・二まで上がっていったわけでございまして、そのために二〇%というラインからだんだん離れていく。それから、今後も経済成長率は落ちるとは思われますけれども、しかし、まだそれに対しても七%余りの経済成長を続けていくということになりますと、やはり自然増収は、年々弾性値も若干落ちてまいりますけれども、まだまだ相当自然増収もあるというふうに考えられます。そういたしますと、歳出需要が相当旺盛でございますので、国民所得に対する租税負担率を二〇%程度と、かりに二二・二%なら二二・二%でずっと据え置いていこうとしますには、相当減税を行なわないといけない。ところが、社会保障あるいは公共投資のほうの財政需要も相当強いわけでございますので、そういった点から見ますと、どうも税収の弾性値を考えますと、財政の配分におきまして、減税と社会保障あるいは公共投資などに配分する際に、いままでのような租税負担率を一定に押えるということは、実際の財政の運営はむずかしくなりはしないか、むしろ国民所得がだんだんふえていきますれば、実質的に担税力もふえると考えられるのが普通でありますので、そういう点からいたしますと、国民所得に対する租税負担率を一定の限度に押え込もうとするのには、政治的にはともかくとして、理論的には困難ではないか。年々若干ずつではありますが、国民所得に対する租税負担率は上がっていく傾向にならざるを得ない。ただ、それが急激に一時に上がることは好ましくないのであります。上がるとしてもできるだけゆっくりしたテンポで上がっていかないと、国民に対する負担が強くなる。そこで、国民所得に対する二〇%という基準は理論的にはなかなか維持しがたい。  そこで、新しい基準として何をとるかということで、いろいろ税制調査会で議論があったのであります。過去十年くらいの財政運営を考えてみますと、その間自然増収も相当ございましたが、やはり社会保障の充実、公共投資の拡充ということで相当財政のそういった面の支出は伸び、しかも毎年毎年減税も相当やってきておるという観点から見まして、過去のそういう実績から見ると、自然増収の二〇%を減税に充てていけば、そういったいままでと同じような財政効果が期待できはしないか。それによって試算してみると、現在の二二・二という国民所得に対する租税負担率が中期経済計画の終了する年度では二二・四くらいに上がる程度で済みそうだ、こういうことから、新しい減税政策の基準として、自然増収の二〇%というものを税制調査会で答申されたわけであります。  税制調査会でそういう答申をされました過程におきましては、いろいろ論議がございました。従来どおり、国民所得に対する租税負担率二〇%という線を打ち出したのだから、それをにわかにくずすべきではないではないかという説もありますれば、二〇%といっておっても、二二・二がそんなに二〇%までに下がる見通しはないではないか。そうすれば二〇%ということを固執しておってもいたし方がないではないか。むしろ、すなおに、現実に国民所得に対する負担率が上がっているという現状を見て、今後この新しい減税基準を立てるべきではないか、こういった点からいろいろ論議のあげく、あのような答申がなされたのでございます。  お説のように、自然増収の二〇%ということになりますと、自然増収の見積もり方いかんによって基準が違ってきはしないかという批判もおありのことと思います。しかし、経済成長に応じて自然増収がどの程度生ずるかということは、最近だんだん分析が進みまして、ほぼ間違いのないような自然増収の見積もりができるようになっておりますので、これも一つの基準としてやっていけるのではないかというふうに私ども思っております。国民所得に対する何%の負担率ということになりますと、現実的には実は経済企画庁が国民所得数字をはじきますのが私どもの減税計画を立案するよりあとになっているものですから、実際問題として減税の計画を立てるときにはまだ国民所得がはじかれていないために非常に困るという点もございまして、私どもとしては、自分のほうでやっている自然増収の二〇%というほうが減税の企画、立案の際にはベターであるというふうな感じを持っております。
  84. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはいまの二〇%、二五%という、いまの基準になる自然増収は、国及び地方自治体を合わせてですね。  それで、それに関連しまして、物価調整のことなんですけれども、自然増収を基礎にしてやる場合、物価との関係を特に私は計算してみたいんだけれども、なかなかできないのは、国税のほうで物価調整分、本年度六百八億計算して出されたんですね。これはもう要求しておったのでだんだんそうなってきて、非常にけっこうだと思うのですが、ただ、地方税の場合はどうなるかですね。これは基礎控除を全然上げていませんね。そうなると、バランスはどうも計算できないわけですよ。地方税のほうはどれだけ物価調整で考えてやるのか。どうも私の感じでは、かりに四十年度八百二億所得減税する、六百八億物価調整をやると、実質減税は百九十四億、その百九十四億は、この地方税のほうの物価調整を考えたらどうも相殺されてしまうんじゃないか、あるいはまたそれ以上に実質に増税になってしまうんじゃないかという感じがするんですよ。地方税のほう、ずっと基礎控除は据え置きですが、減税の場合は国税、地方税総合してやはり考えなければならぬと思う。大蔵省でそういうのは作業しておられますですか。
  85. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) お話のように、住民税のほうは昨年から二年計画で、いまのただし書き方式を本文方式に統合するというのをやっております。今年はその二年目として減税が住民税にあるわけですが、これはいままでただし書き方式をとっておった地域の住民の負担の軽減にはなりますけれども、東京その他大都市のようにいままで本文方式をすでにとっているところでは軽減にならないわけです。したがって、そういう地域の住民につきましては、国税のほうで負担調整はいたしましても、住民税のほうでの物価調整はできておらないということになります。したがって、これはなかなか、計数的に非常につかみにくいのでございます。いままで本文方式をとっておったところでどういう姿になるか、こういう分析はまだいたしておりませんけれども、それを分析いたしますと、国税のほうで物価調整による六百八億の減税が行なわれて実質百九十四億の実質減税だと申しましても、これがさらに住民税のほうの、物価と申しますか、名目所得の増加物価の上昇によるところの負担の調整がまだできない面が相当出てくる。まあ百九十四億までには及ばぬと思いますけれども、これはその地域の住民の所得の額と、そのいまの物価調整に要する額とを出してみないとわかりませんけれども、しかし、百九十四億というものが相当減殺されるということは確かであろうと思います。
  86. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いますぐでなくていいんですけれども、本文方式をとっておるところの、基礎控除だけでなくほかの控除もみんな据え置きのようですから、機会があったらそういう計算をして、資料として出してもらえませんかね。いますぐというのは無理ですけれども。これは三十九年度でもいいんですよ、四十年度予想でも。一ぺんそういう試算ではっきりさしたいんですよ。見当つけてみたいんです。三十九年度でもいいですから、ひとつ資料として出していただけるでしょうか。
  87. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) この試算は相当時間を要する本文方式をとっておる団体とその住民の数及び所得を出さないと出ませんので、ちょっと時間かかると思いますが、時間がかかってもよろしければ資料としてお出しします。
  88. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 自治省あたりやってないでしょうかね。少し時間とってもいいですから、忘れないでひとつお願いします。  それから、税制調査会では、中堅所得の税率改正答申したんですけれども、これは私は適切だと思うんですけれども、今度政府税制改正ではやらなかったですね。今後どうなんですか。これは私はぜひやるべきだと思うんですけれどもね。
  89. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) これは先般お答え申し上げた点でもございますが、今度税制調査会で中堅所得層の税率緩和ということに相当の重点を置いて答申がなされたわけでございます。ただ、政府案をつくります段階でいろいろ、まあ与党である自由民主党の税制調査会におきましても、いろいろ審議されたわけでございますが、その際の検討におきまして、税制調査会の答申では課税所得三百万以上の税率を緩和すると同時に、最低税率の八%を一〇%に上げることになっております。実は税率緩和によっては平年度四百六十億の減収になるわけでございますが、それを最低税率の八%を一〇%にすることによって四百億の減収を取り戻しまして、差し引き六十億円の平年度減収で済む、こういうふうな案になっておったわけでございます。と申しますのは、最低税率の八%はすべての人が適用を受けるわけでございますので、非常に金額が大きいわけでございます。  そこで、その税率を引き上げるということになりますと、給与所得者の場合は、ほかに給与所得控除の引き上げがありますので問題はないのでありますが、基礎控除以外に引き上げの控除のない独身の事業所得者、まあこれは数からいたしますとごくわずかなのでございますが、その独身の事業所得者の年所得三十万円くらいのところでは、税率の引き上げと基礎控除の二万円の引き上げとがちょうど相殺されまして、全然負担が軽減にならない、こういう階層が出ることになっております。これが政治的に好ましくないのではないか、みな国民の相当数の人が減税の恩典を受けるときに、たとえわずかでもそういう階層が生ずることは好ましくないということと、それから、いま一つは、この際所得税の減税において緊急なのは何かというと、政治的に見て、課税最低限度の引き上げではないか。税率の緩和ということも望ましいかもわからぬけれども、いま必ずこれだけはやらなくてはならぬというほどの緊急性は乏しいのではないかというこの二つの理由から、税率の緩和は見送られたわけでございます。  しかし、大蔵大臣が新聞でも、また今国会でも申し上げておるところでございますが、この次に、まあ来年はたして減税財源がどの程度確保できますか、いまから予測しがたいところでございますけれども、この次に所得税改正をいたします場合におきましては、税率の緩和をはかるようにしたい、こう言っておられます。ただ、その際には、いま申し上げましたように、最低税率の引き上げということを伴いますといろいろ問題がありますので、そういたしますと、先般の税制調査会の答申ほど課税所得三百万円まで調整できるかどうかということはちょっと問題になるかと思います。減収額が相当大きくなりますので、そこでまあそういった点はさらに税制調査会におはかりいたしまして、どういう姿の税率緩和にするか、十分検討いたさなければならぬと思いますが、いずれにしても、従来の所得税の減税額、課税最低限の引き上げに重点が置かれ過ぎて、いわゆる中堅所得層と目される人たちの減税が必ずしも十分でなかったというふうに認められます点がありますので、その点はある程度税率を緩和することによって実現をすべきではないかというふうに、私どもも事務的に考えております。
  90. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この税率緩和をする場合、利子とか配当の源泉課税率は一〇%になるというわけですね。その場合、この所得税の最低課税率を一〇%に上げるということは、これは私は不適当じゃないかと思うのですよ。資産所得と勤労所得との——ですから、私は最低税率八%は上げないように、そのかわり三百万円まで調整できるかどうかという問題が起こってくると思うのですけれども、最低税率はもし上げるなら、利子とか配当のほうを、あれは非常に不均衡になってくると思うのですね。ですから、そのときはやはり最低税率は上げないように考慮すべきじゃないかと思うのですがね、どうですか。
  91. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) お話のとおり、最低税率一〇%ということになりますと、利子分離課税税率が一〇%でございますから、その点からはいろいろ問題があるということは御指摘のとおりでございます。ただ、八%という数字がいかにも中途はんぱな数字なものでございますから、現在あるいはすぐにはともかくといたしまして、いつかの日には何かきっちりした数字に直さなければ計算上もめんどうでございますので、そういう必要があるんじゃないかと思っております。
  92. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから、給与所得控除についてはいろいろ意見があるのですけれども、まあ今回引き上げられましたが、まだ不十分な気がするのですけれども、どうですか、主税局長としては、ほかの所得との均衡の関係からいって……。
  93. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 給与所得控除につきましては、給与所得についての経費の概算的控除であるという点と、それから他の所得に対して担税力が弱いということ、あるいはこれは税制の理論としては若干おかしいかもしれませんけれども、他の所得に比較して正確に把握され課税が適正に行なわれておるといったような状況から、給与所得控除で他の所得とのバランスをとるというような意味で設けられておるわけでございます。  その点からいたしますと、必要経費の概算的控除をするとすれば、今度引き上げましても、給与の収入金額七十三万円のところで控除が頭打ちするわけであります。そうなると、いまの給与の収入金額七十三万円というのはあまりたいした所得者ではないわけでございます。そういう点からいたしますと、それ以上のところではもう必要経費はないのだというふうに考えるのは酷ではないか。したがって、経費の概算的控除という性格を考えれば、もう少し上まで給与所得控除を上げていく必要がありはしないかということが考えられるわけでございます。  それとともに、まあ他の所得とのバランス、それからまた、いま学校を卒業して就職して間もない人が給与所得税を収めなければならぬということになっている点からいたしますと、基礎控除の引き上げだけでなしに、そういう人の所得の定額控除を引き上げて、学校を出て間もない人がそういった所得税の負担をすることをできるだけ避けたいと、こういうことになりますと、やはり給与所得控除は定額の点とそれからさらに上の頭打ちになっているところ、これはもっと引き上げる必要が出てくるのではないか、このように思っております。
  94. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私の質問は一応これで終わります。
  95. 田畑金光

    ○田畑金光君 関税局長にまずお尋ねしますが、関税の還付というのがありますね。それで、還付を受けておるのはどういう場合なのか。特に関税暫定措置法第七条の五、「電力業等用の重油に係る関税の還付」、この条文についてちょっと説明してくれませんか。
  96. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 関税暫定措置法第七条の五の「電力業等用の重油に係る関税の還付」とありますものにつきましては、実は昭和三十七年であったと思いますが、設けられました制度でございまして、そのとき関税は従来の従量税ほぼ六%程度のものを一〇%に原油関税が上げられました際に、その負担を基幹産業である電力業及び鉄鋼業等に負担させますことは、基本的な資材ないしはエネルギーにつきましてコストが上がるということになるもんでありますから、これはそういうような基幹産業について負担さすべきでないという考えから、原油に新たにかかりましただけの関税を、重油を使います、それは重油の形で使いますそれらの産業につきまして、重油にかかっていると認められる、原油にかけられた関税のうちの重油負担分というものを返そうというのでございます。
  97. 田畑金光

    ○田畑金光君 この第七条の五の「電力業、鉄鋼製造業又は国産石炭の購入実績等を勘案して政令で定める事業を営む者のうち政令で定めるもの」、これは政令を見ればわかると思うのですが、「又は国産石炭の購入実績等を勘案して政令で定める事業を営む者」、これはどんなあれですか。
  98. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 政令で、関税暫定措置施行令の第二十一条の八に、事業者の指定というものを行なっている次第でございます。その具体的内容は、「電力業を営む者については、電気に関する臨時措置に関する法律の規定によりその例によるものとされる旧公益事業令第二条第四号に規定する電気事業者」が第一でございます。次が、「鉱鋼製造業を憎む者については、高炉により鉄鉱を石炭コークス等で還元して銑鉄を製造する者」となっております。  これを具体的に申し上げますというと、電力につきましては北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、御承知の地域別の電力会社のうちではたしか北陸電力が抜けておる程度でございます。それから、あと常磐共同火力、住友共同火力、電源開発、西日本共同火力というのが大蔵大臣の指定を受けております電力業者でございます。鉄鋼業者のほうは日本鋼管、富士製鉄、八幡製鉄、尼崎製鉄、大阪製鋼、中山製鋼所、住友金属、神戸製鋼、川崎製鉄、矢作製鉄、日新製鋼、こういうのがございます。
  99. 田畑金光

    ○田畑金光君 その場合、これは還付というのは何%還付しておるわけですか。この七条の五に基づく還付ですね。
  100. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) これは関税がただいまのところ一二%かかっておる計算になっておりますが、そのうちの概算申し上げますれば四%ということになっております。現実の数字は、三十九年度におきましては、電力につきましては百三十円、鉄鋼につきましては九十円となっております。
  101. 田畑金光

    ○田畑金光君 百三十億と九十億ですか。
  102. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 百三十円と九十円でございます。
  103. 田畑金光

    ○田畑金光君 そうしますと、これは金額にして幾らになりますか、電力、鉄鋼というのは三十九年が。
  104. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 七条の五の一般還付で電力に払っております金額は、三十八年度は九億六千百万円でございます。三十九年度の見込みは十一億二千百万円でございます。それから、鉄鋼につきましては、三十八年度の実績は二億二千五百万円でございます。三十九年度の見込みは三億円でございます。
  105. 田畑金光

    ○田畑金光君 次に、第七条の六の「電力業等用の重油に係る関税の特別還付」、これについて説明してくれませんか。
  106. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 荒筋を申し上げますとこういうことでございます。電力につきましては、通常商業ベースで引き取り得ます以上に石炭の長期引き取り契約を行なう電力会社につきまして、その増加引き取り量に基づき、石炭を増加して引き取りますことに基づきまして生じますコストの増大、負担の増加する部分を、重油にかかっていると考えられます関税の中から返していこうというものでございます。石炭を使いますことによる負担増と申しますのは、発電のためには重油も石炭も使い得る施設がかなりあるわけでございますが、重油を使います場合に比べまして、石炭を使いますことによります負担増ということになるわけでございますが、一番基本になるものはカロリー当たりの単価の違いでございます。カロリー当たり単価は石炭のほうが高くつくということに基づきます負担増、さらには、石炭は重油と違いまして運搬費によけいにコストがかかります。このために所内動力費等がかさむわけでございます。また、灰捨てのための費用というものがかさむわけでございます。これらのものを計算いたしまして、負担増金額を返して、石炭の引き取りを電力会社が促進できるようにしようとするものでございます。鉄鋼につきましても、輸入炭を使いますならば安くできるはずのところを、国内炭を引き取りますことによって生ずるコスト高を還付していこうとするものでございます。
  107. 田畑金光

    ○田畑金光君 いま第二次石炭調査団の答申に基づいて、重油関税の特別還付制度を二年間延長しようというようなことになって、関係業界と政府のほうで、通産省のほうで話し合いを進めておりますね。この石炭調査団の答申に基づく石炭政策の一助としての関税還付というのは、この第七条六に基づいてやっているわけですか。
  108. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) そのとおりでございます。
  109. 田畑金光

    ○田畑金光君 この七条の六というのは、一定の数量、まあ各電力会社なら電力会社について、幾ら幾らを石炭を引き取ってくれ、そういう基準量を示された。その基準量を超過した分について特別還付する、こういう趣旨ですね、第七条の六は。
  110. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 概略御指摘のような趣旨でございます。基準量と目標量とを定めまして、目標量まで買ってくれた場合につきましては、基準量と目標量との差額の分につきまして負担増となった金額を返そうとするものでございます。その分だけ商業ベースをこえてよけい引き取ってくれた負担増の分というものだけを返していこうとするものでございます。
  111. 田畑金光

    ○田畑金光君 そうしますと、この第七条の五で、国産石炭購入実績のある電気事業等については、石炭を使った分については先ほどお話があった四%の還付をする。さっきいろいろのものをあげましたね、政令であげました。そこに石炭を使った、それを基準にして関税の還付をやっていると、こういうことですね。
  112. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 御指摘のとおりでございまして、七条の五は、これは使われました石炭が引き取られる会社につきまして、重油に関税をかけた分を上げるのは無理だから、その分を差し引いていこうということでございます。これは実は石炭の量と関係をいたしておりません。むしろ引き取られる重油の量と関係するわけでございます。つまり重油の関税を上げないでいこうということでございます、七条の五のほうは。つまり原油に関税がかかってくるわけでございますから、それが転嫁されて重油にかかっているわけでございます。しかし、基幹産業にそういういままでよりも重い関税をかけるのは全般に影響するところが大きいから、かけるのはやめようという趣旨になるわけでございます。七条の六の特別還付のほうは、石炭をよけい引き取った場合においては、よけい取ることによって負担も多かろうから、そのマイナスになる分を消しておきましょうという考えでございます。
  113. 田畑金光

    ○田畑金光君 特別還付ですね、これは今度第二次調査団の答申に基づいて、特にいま電力会社と、先ほど私お話ししたように通産省との間で、電力事業界と話し合っておりますね。この特別還付になる金額というものはどの程度予想されておるわけですか、ことしの予算で。  もうちょっとわかりやすく申しますと、今度の答申に基づいて、電力会社にまあ二千万トンなら二千万トン引き取ってくれ、こういうことにいま話を進めておりますね。そうして、御承知のように、一般炭については三百円の値上げ、原料炭については二百円の値上げ、こういうことで、その三百円の値上げを一般炭を取っておる電力会社にひとつ引き受けてくれ、こういうふうになっているわけです。ですから、要するに、電力会社としては結局従前よりも六十億の負担増になってくるわけですね。その負担増に対して、この特別還付で予定されておる調整費というか、還元する還元額というものは何ぼになっているわけですか。
  114. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 石炭第二次調査団の答申書では、七条の五の一般還付と七条の六の特別還付を含めて、継続していってもらいたいという御要望でございました。したがいまして、この還付制度は三十九年度制度のまま四十年度も残していただきたいということをいまお願いしている次第でございます。  そこで、そこに入っております一般還付及び特別還付につきましていろいろこまかい点で問題があるわけでありますが、先生もすぐお気づきになりますように、原油にかけたものを重油に幾らかけるかということを計算する問題がございます。そこらで違いがあるものでございますから、若干の計算上の具体的な数字は三十九年度と四十年度と違う点が出てまいりますが、それは一般還付の場合も特別還付の場合も違い得るわけでございます。原油にかかったものが重油に幾らかかるかという——重油の生産がどういうふうに伸びるか、ほかのガソリンや軽油なんかに比べて重油の生産がウエートとしてどれくらい違ってくるか、それからまた、実際に売り値というものがどう違ってくるかによりまして、御想像願いますように違ってくるわけであります。その点を調整いたしまして、四十年度といたしましては一般還付を十六億、特別還付を二十六億、計四十二億というものを還付財源として考えておる次第でございます。
  115. 田畑金光

    ○田畑金光君 大体その点はわかりましたが、特に石炭対策費を石油関税の引き上げに求めておるわけですね。また、石油というのがいまエネルギーのほんとうに中心になっておる。こういうようなわが国の産業政策において一番大事なエネルギー源である重油に対して関税をかけて、それが石炭政策の要するに財源になっておるというようなこと等についていろいろ意見がありますね。こういう点については、大蔵省としてはどのように考えておられるわけですか。
  116. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 先日、鈴木委員からそれについての御指摘がありましたところでございますが、一般にエネルギー源というものは、全国民経済的に見た場合に、関税をかけることによってコストを上げるべきものでないという意見が非常に強いわけでございます。私どもももっともな点だろうと思います。ところが、片一方、石炭につきましては、一般財源よりかなりの支出をしておりましても、なお関税還付というような方法でもって助けてやらなければ企業が存立しないという状態にあるわけでございます。関税還付が電力については四十二億くらいの話をいま申し上げた次第でございますが、一般会計といたしましては、そのほかに利子補給でございますとか、鉱害復旧の費用の負担でございますとか、いろいろな負担をいたしておるわけでございますが、それが負担し切れないような場合には、関税還付をしていくとわれわれは思っておるのでございます。エネルギー・コストを長期的に見ました場合に、これを関税なんかによって上げないように配慮すべきものであるということは、いままでいろいろな方々が御指摘になったとおりでございますが、過渡的には、ほかの財源のないところでもございますので、原重油に対する関税をある程度かけることによりまして、石炭と同じ競合エネルギーとしての重油に対する競争力を若干つけたい。これによって得ました財源というものをまた石炭対策のために返していくということは、当面やむを得ないところであろうかと思うわけでございます。しかし、長期的には、たびたびここでも御指摘ありましたように、漸次こういうことがなくなる方向で考えるべきものではなかろうかと考えている次第でございます。
  117. 田畑金光

    ○田畑金光君 いまあなたのお話の中にありましたように、原重油に関税をかけるというのは、一つ国内石炭との競争関係というか、競合関係にあるという面から、価格の調整という性格はあろうと、こう思いますですね。やはり今日のように、あるいはまた将来の見通しを立てれば、ますます石油がわが国の産業エネルギーの一番大事な要件になってくるとすれば、できるだけ石油関税を安くする、あるいは無税にするということが望ましいことかもしれませんが、しかし、反面においては、国内資源である石炭をどうするかという重要な問題が政策的に出てくるわけですね。この間のエネルギーの調査団、石炭調査団の中でも、重油の消費税を考えたらどうか。財源措置一つとして、また同時に価格競争の調整という面から。こういう点もありましたですね。現実にいまわれわれの聞くところによりますと、西独等においては重油消費税が現実に制度としてあって、それがやはり価格競争の重要な一つの調整役を果たしておる、こういうようなこと等もあるわけですね。そういうような点を考えたとき、この問題については、まあ何と申しますか、現在の時点においては、総合エネルギー政策というものの中でどうこの問題を解決するかということは、今後の問題として残るとしても、この石油、石炭の関係を考えてみると、過渡的な措置としてやむを得ざる面があるというようにこれは見ざるを得ないものがあろうと私は思うのですが、この点どうですか。
  118. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 田畑さんお話しのとおりであると考えている次第でございます。重油につきまして、重油内国消費税を取ったらいいという考えも、総合エネルギー供給の関係から、石炭をある程度競争し得る価格にするために確かにあったわけでございますが、御指摘のように、重油にかけますことによる国内的な影響は非常なものでございますし、いろいろな場合にその税を免除しなければならぬという手続も生じてこようかと思います。イギリスどもかなりの税をやっておるようでございまして、結局なかなかむずかしい問題でございますから、現実問題としては、いま御指摘のように、現行の制度を不完全ながらまずは踏襲していくということになろうかと考えておる次第でございます。
  119. 田畑金光

    ○田畑金光君 大きくいうと、これはまた別の角度から、今後の関税政策というものをどのように進めていこうというのか。特に開放経済体制とか貿易自由化とかいろいろいわれておりますが、ばく然とした質問では困りますが、特に国内物価の安定という面から見た場合に、その関税政策上顧慮すべきいろいろな問題があると思うのです。これは先ほどすでに出たバナナの問題もそうでしょうし、砂糖の問題もそうでしょうし、いろいろありますが、ただ、われわれとして心配することは、特にわが国農産物の将来ということを考えたときに、たとえばEEC諸国において農産物の統一価格政策が実現した、こういうような問題等も出ておるわけですね。あるいはまた、一九六七年七月ですか、EEC諸国においては共通の関税政策がとられるというようなこと等を考えたとき、こういう面から特にまあ関税政策の保護を受けておるわが国の農業生産物、これをどのように向けていこうとするのか、こういう問題等については非常に大きな問題だと、こう思うのですがね。まあこれはあるいは大臣のもっと政策的な立場に立つ答弁になってくると、こう思うのですが、いま政府として、あるいは大蔵省としては、こういう問題等についてどういう角度からどういう研究がなされておるのか、これをひとつお尋ねしておきたいと思います。
  120. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 関税がその大きな目的として何をねらっておるのかという問題があるわけでございますが、現在の関税制度に関します国際的なものの考え方と申しますと、これは財政収入をあげるというよりも、国内産業の保護のために設けられたものであるという考えが一般になっておるように思われます。もっとも、イギリスにおきましては財政関税というようなものがありまして、財政目的のために取っておるものもあるわけでございますけれども、おしなべていいますというと、国内産業保護のために関税が課せられておるということに考えられておるわけでございます。この点から物価との関連を考えますというと、保護がきつければ国内物価は下がらないということになるわけでございましょうか。したがいまして、それがまた輸出競争力に対しても賃金に対しても至大な関係を持つことになるわけでございます。しかしながら、これをあまりに下げますというと、国内産業というものの存立の基盤が脅かされるという問題になろうかと思われます。  いま私ども関係で国際的に関税議論されておりますところを見ますというと、場所が二つあるわけでございます。一つガットにおきますケネディ・ラウンド、御承知のように関税というものが各国の国内産業を保護しておるためになかなか貿易は広がらない。そこで、関税を思い切って下げることによって各国間の貿易を広げようという動きが一つございます。この大きな提案の中でアメリカは、その農業がかかえております余剰物資のはけ口をまたよそに求めておるということがあるわけでございます。  さらに、もう一つの国際的な関税を論議されておる場面といたしましては、国連におきまして貿易開発会議、後進国問題というのがございます。後進国はその建設計画のために懸命にやっておるわけでございますけれども、現在までのところの援助だけでは十分な建設のための資金を調達しがたい。援助もふやさなければならないにしましても、貿易によって外貨の獲得し得るような環境をまたつくらなければならぬという考え方でございます。そうして、この後進国のためには、いままでの最恵国待遇と申しますか、いずれの国に対しても同じような待遇を与えるという国際的な平等主義、また、ある国から入ってきますものにかけておる関税をまけるときには向こう側もまた同じように措置をしなければならないという相互主義、お互いにまけ合うというふうなそのような従来の国際慣習を捨てまして、先進国は後進国のために代償を得ずして関税を下げてやらなければいかぬのではないかという議論が広く行なわれておるわけでございます。先進国側に入っております日本といたしましては、ケネディ・ラウンドにおいて大幅な関税引き下げというものに参加をする態度を示しております。後進国に対しては先進国としてのある程度の負担を負わなければならぬという立場になっておるわけでございます。  現在のところ、これらの議論はまだ非常に基礎的なところで討論をされておる段階でございますので、現実の関税率の変更等として当委員会等にお願いするところまでにはまいっていない次第でございますけれども、おおむねの雰囲気といたしましては、関税というものの高さ、いまの水準を下げることによって、国際貿易を促進する、国際信用を復起することが関係諸国についてのすべてに利益になることであるという考えでおるわけでございます。  非常に抽象的に、また大きく申しますと、そのことはおそらくそうであると言わざるを得ないと思うのでありますけれども、具体的にこまかく見てみますというと、日本におきましては自然の資源の分布状況が非常に不利であります。鉱業でありますとか、農業はまだ零細農業の域から脱しておりませんで、農業改善の基本的ないろいろな構想が述べられておりましても、現実の問題としては構造変化の緒についたばかりで、まだその過程にあるというような状況のもとに国際的な競争をまともに受けましたのでは、これはなかなか構造改善も達成しがたいという面もあるわけでございます。特別に弱い、今後大いに改善を要する点につきましては、それに見合う十分な保護をいままで申し上げましたような国際的な環境の中でやはり確保しなければならぬと考えておるのでございます。基本的には、日本輸出をふやしますことがただいまのところ最も緊要な課題であります。輸出をふやしますためには、いろいろ日本に対する差別、制限などというものの撤廃も要求しなければならぬ面も確かにあるのでございますけれども、それを進めるといたしましても、関税はなおお互い下げ合うという形で下げていくことは緊要ではないかと考えておる次第でございます。
  121. 田畑金光

    ○田畑金光君 たいへん大きな立場から大きな問題についていろいろ議論されましたが、ケネディ・ラウンドに基づく一括引き下げ交渉というのが、お話のようにガットを中心に進められておる、また一方においては、国連の貿易開発会議を中心に南北問題が論じられておると、こういうような情勢のもとにおいて、たとえば日韓問題の話し合いを見ても、やはり貿易の均衡のためには特に農水産物をたくさん買ってくれと、こういう話がすぐ目の前にきておると、こういうようなことも見たときに、あなたのお話の中にあったように、アメリカの余剰農産物をどう処理するかという問題もあるし、特に東南アジアとこれから経済的に密接な関係を持っていかねばならぬ日本の立場として、向こうの第一次産品をもっと輸入しなくちゃならぬ。それは特恵関税というのか、特別の何か関税なしに入れなくちゃならぬということ等も、だんだん考慮しなくちゃならぬと思うのですがね。  それで、考えさせられることは、やはり日本のおくれた競争力に弱いものは何かと、関税国内産業保護ということが第一義的にあるけれども、その場合に、一番今後日本が産業政策とか経済面において重点を置かねばならぬのは何かと、こういうことになってきようと思うのです。そういう点から見た場合に、一体、たとえば本年度の予算等を見たら、そういう面からの配慮が一体農業なら農業等においてなされているのかどうか、こういうことを深く疑問に感ずるわけですがね、どうですか。
  122. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 現在の諸施策というものは、かなりのところ、いま先生仰せられましたような問題点に立って、目標を定めながらやられておると考えておる次第でございますが、これは早急な考え方からしますれば、金額が不十分である、不徹底であるというふうな見方もあるかもしれませんけれども、現実の問題といたしましては、現在の考えている施策というものは、このような国際環境に対しまして効果を発揮するものと期待しているわけでございます。
  123. 田畑金光

    ○田畑金光君 それで、もう一つお尋ねしますが、あなたの先ほどのおことばの中に、関税というのは国内産業を保護するためだ、こういうお話がありましたね。もちろん、第一義的にはそうでしょうけれども、しかし、最近の方向としては、関税の一括引き下げ交渉の過程の中では、財政関税の思想というものが相当入ってきておる。さっきのあなたのお話の中にも、イギリスなどがそれだ、こういうようなことを言われましたが、日本の場合でもこの関税収入というのは相当な額ですね。こうなってきますと、やはり、単に関税というものが国内産業保護という面からのみ見ておるのか、もうすでに日本も財政関税という形でこの関税というものが見直されておる面も多分にあるのじゃないか、こういうことを私たちは感ずるわけですが、この点はどうなんですか。  ことに、国内的には一般財源としての比重が非常にふえてきた。三十九年度の石油関係の収入実績見込みでも四百五十億とかバナナについても百六十億とか、こういうような財源が見込まれておりますね。これ資料もらっておりますがね。こうなってきますと、単に国内産業を保護するだけではなくて、国の収入をこれに求めようという傾向も出ていると思うのですが、それはどうですか。また、そういう考え方というものは一体、関税政策のあり方から見ていいのかどうか。特にこれはわが国の利益を中心にものを考えていくならば、いろいろ経済情勢の発展や国際的な推移から見て、関税についても考え方はいろいろ出てきてもいいと思うのです。あるいは従前の考え方が発展してもよろしいと、こう思うのですが、どうですか。
  124. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 最近の大きな関税率の定め方の点から申し上げますというと、現行の日本関税定率法にはいまだ財政関税的な配慮は盛られていないように思うのであります。これは先生の御指摘になりましたように、関税額、関税収入といいますか、財政収入の中でかなりウエートを占めるようになっております。専売益金よりも多いとは思っておりますが、しかしながら、現実の問題といたしまして、関税率をきめますときに、税負担力があるから税を取ろうという考え方よりも、国内品と輸入品との価格差というものを見て、どの程度関税を取ったならば国内品と輸入品とが競争し得るところまでくるかということを基準に置いて考えておる次第でございます。結果としては、財政収入というような結果をもたらすことは大事でございますけれども、個々の税率の盛り方の上におきましては、国内産業保護ということが中心になっておるのが現状でございます。
  125. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 ちょっと関連の問題について一、二お尋ねして、税金のほうを聞きたいのですが、税金のほうは関税の問題とまたちょっと関連がありますけれども、私は日本とアメリカとの関税の格差はどうしたら解消することができるかというのが、これがやっぱり日本関税の自主性を回復する上で非常に重要な問題じゃないかと思うんです。それで、アメリカ側から見てあれでしょう、関税収入は日本が一番多いんでしょう。御存じですか。
  126. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) あまりはっきりいたしませんが、日本からの輸入品についての関税率が、アメリカの取っておりますいろいろな国からの輸入品についての関税率と比べた場合に、日本がアメリカ品に対して取っておるよりも高い率だったかと記憶しております。
  127. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 関税収入の面では、日本輸出品はアメリカでは第一位なんだ、関税収入という点から見た場合。日本貿易自体がカナダあたりに次いで二位ないし三位というような状態であるにもかかわらず、関税収入はアメリカは日本から一番よけい取っているわけだ、日本輸出品からね。  そこで、この問題に関連して、ちょっと同じ品物でないので対比するのは無理かという気もしますけれども、昨年の両国の主要取引品目の比較を見てみますと、たとえばアメリカから日本へ入ってくる場合の化学品に対する関税ですね、化学品、これたぶん一六%だったと思うんですね。ところが、日本から今度アメリカへ輸出していく繊維に対するアメリカ側のかけている関税というのは二八・二%と、非常に高率なんですね。私の資料ではそうなっておる、あなたのほうではどうか知らぬけれども。それからまた、アメリカから日本に入ってくる機械類については、日本でかけている税率は一二・六%だが、日本から出ていく雑貨なんかの製品に対してはアメリカは二六・二%という高率の関税をかけている。こういうものすごい格差があるんです、アメリカと日本との間に。これをやはり関税政策として是正していくということが先決の問題にならないで、ケネディ・ラウンドの一括五〇%引き下げというものにすぐに交渉に応じていくという態度は、私は関税政策におけるところの自主性の問題に深い関係があることではないか、こういうふうに考える。だから、これは関連質問だから私深くこの点について追及はしませんけれども、日米間における関税の格差を根本的に是正するということなしにケネディ・ラウンドの五〇%引き下げ交渉に入るということは正しくないという見解を持っていますが、この点いかがですか。
  128. 佐々木庸一

    政府委員佐々木庸一君) 関税は、現実の制度としましては歴史的な制度でございますから、その国の歴史によりまして高さがいろいろ違うことは御指摘のとおりでございます。鈴木先生が申されましたように、同じように工業化が行なわれている国においては同じような関税税率を定めるべきではないかという議論はヨーロッパから実は起こってまいったのでございます。つまり、同じような工業国であるんだから、原料はみんな零にしちまおうじゃないか、半製品は五%にしようではないか、非常に大ざっぱな例でございますが、完製品は一〇%ということで、みんな同じ税率にしようではないかという考え方がございます。  しかしながら、関税交渉と申しますものは、過去の関税率の上に立って行なわれております関係上、関税の分布のしかたそのものから申しますと、いろいろな違いがあるわけでございます。たとえばEECの関税と申しますのは、大体は二〇%以下でございます。二〇%以上のところには四%強くらいのものしか残っておりません。税率数にしまして四%強くらいのものしか残っておりません。日本の場合におきましては、その部面に一二%くらいのものが残っております。アメリカもやはり二七、八%くらい二〇%をこえる税率を持っているわけでございます。一九三〇年代の非常に保護主義のころから関税交渉によって少しずつ下げてきた歴史的な経緯がありますので、高いものを残しておるわけでございます。その高いのをみんな同じ税率にしてしまえというのがEECを中心にするフランス的な考え方でございます。  しかしながら、この考え方によりますというと、EECの水準に合わすためには、日本もまたかなり下げなければならぬという具体的な問題を含んでおります。アメリカもまた下げなければいけないでありましょうけれども日本もまた相当下げなければならないという問題がございます。  さらに、関税交渉の先進国間における交渉のしかたと申しますものは、与えるものと受け取るものが同じでなければならないという原則でいままでやってまいりました。ある一つ税率に各国がく合わせていくとしますと、EECはおそらく下げ方が少しで済むでありましょう。米国、日本というのはかなり強く下げなければならぬという問題が出てくるわけでございます。EECに下げてもらう程度と日本が下げなければならぬ程度というのはかなり違ってまいります点で、均衡がとれないという問題が出てくるわけでございます。  それらの点を考えまして、税率の格差の解消という問題は、それが基本的には考えられなければならぬ問題であることは認識せられたにしましても、現実の問題としましては、歴史的な制度である関税の現在のある水準と、与えるものと受け取るものとが同じになるように、ひとしくなるように交渉を進めなければならぬという原則とから、現実問題としては後者のほうが強くなりまして、格差是正のほうはやや後退をしたという実際の経緯を見ておるのでございます。
  129. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 ぼくはあと答弁は要らないですよ。私の言っていることは、関税引き下げの問題におけるいわゆるアメリカ方式とEEC方式というものくらいの差はわかりますよ。そうじゃやないのです。つまり、関税一括引き下げ問題に当たる前に、日本政府としては、日米間におけるところの関税の格差というものは、戦後アメリカに全面的な占領支配をされていたときの状態がそのまま積み重ねられてきておるために非常に不利な条件に置かれている。この格差の解消をアメリカに強く要求をして、その上に立ってケネディ・ラウンドの一括引き下げの交渉に入るべきだ、こういう態度でなければ、関税政策における自主性の確立という方向はとれないという見解なんですよ。これは答弁は要りません。  税金の問題で質問したいのですけれども、昨年、マーケット・バスケット方式は、もっとやはり実情に合うようなものがあるならば、これを変えることもやぶさかではないというあなたの発言があるわけなんだ。やはり今年も同じようにマーケット・バスケット方式によるところの算定のしかたをやられておりますけれども、このマーケット・バスケット方式というのは、これは去年もいろいろあなたともやり合ったのですけれども、これはやはり日本の実情から見て正しくない。これはどういう点で正しくないかという点はかんで含めるように去年もあなたに言ったから、あなたもよく御存じだと思うけれども、一番いけないのは、マーケットに行って安い品物を買ってきて、そして料理をするに至るまでの家庭の主婦の労働力というものが一銭も見積もられていないという点なんですよ。これは不合理だと思いませんか、どうです。
  130. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) お話のように、主婦が品物をマーケットで買って食ぜんに供するまでの間のサービス料、これはなかなか評価しにくいのでありますけれども、確かにサービスがあることはおっしゃるとおりであります。ただ、御承知のとおり、国民所得でも、そういった意味での主婦のサービスというのは国民所得の上に計算されておらないわけであります。それからまた、それにサービスとしてそれでは夫から対価を払うかというと、対価を払うという形にもなっておりません。そういうことで、確かに主婦のサービスというものは相当の対価に値するものだと私は思いますけれども、しかし、それを評価して、それじゃ所得税課税の上においてどうするかということになりますと、まあいまの配偶者控除という形で評価する以外にちょっと評価のしようはないのじゃないか、こう思っております。
  131. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 あまり長くは続けません。  それは、泉さん、あなたは理論的に混乱しているよ。主婦の配偶者控除によって、いまの俗なことばでいえば色をつけているというけれども、扶養家族の場合はどうなる。扶養家族の場合はそういう理論は成り立たないでしょう。つまり、家事労働というものは、これはやはり一種の明らかなる労働力なんです。この労働力をゼロと見るというところから初めてバスケット方式というのが成り立っているということなんですよ。これが私はけしからぬと言っているのだ。この不合理性は、あなた、つじつま合わないですよ。それは配偶者控除の中で見ているなんて、そんなこと言ったってつじつまが合うものじゃない。しかし、この議論は去年もやったから、私はこれ以上追及しない。これは明らかに不合理なんです。  もう一つ聞きたいことは、これはおととい、大蔵大臣ですかから、気持ちとしては百万円から百二十万円まで免税したいのだと言っている、大蔵大臣が。しかし、大蔵大臣がそういうこと言うということは、単なる場当たりの発言というようにとってはいけないと思うのですよ。そこで、いますぐにはなかなか無理な点もあることはわかりますけれども、たとえば標準家族で百万円まで免税にした場合どのくらいの減税額になるか、額を計算してちょっと知らせてください。いまできませんか。そうすれば、大臣が百万円だ、百二十万円だと言っているのは、全く思いつきで、何ら計算基礎を持たない発言だととれますね。どうなんですか。
  132. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) お話のように、私どものほうには階級別表がございますから、作業といたしまして標準世帯で百万円。ただ、その場合に基礎控除を幾らにし、配偶者控除は幾らにし、扶養控除は幾らにするかという前提が固まりませんと、計算しようがございませんが、その百万円の内容である基礎控除がおそらく、そういう場合でございますといまの二倍以上、おそらく三十万をこえる基礎控除にならぬと百万円になかなかならぬと思いますが、そういった前提をお与えくださいますれば、計算はいたします、いまこの場でというわけにはちょっとまいりかねますけれども
  133. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 それじゃ、この場でなくてもけっこうですけれども、あらかためのことでも出たら出していただきたい。おそらくこの租税特別措置法、また今度は拡大をして既得権化して、利子、配当等に特例を設けるというような、おそらく私はそういうものを整理したら、免税点百万円までの財源は必ず出るのじゃないかという、私にもめのこあるわけですから、これ一ぺん数字をつき合わせてみて、どっちが一体国民のほんとうの支持を得るかやってみる必要があることだと思うのですが、大蔵大臣がそう言っているから、ですから、その辺のところ、あなたもぜひひとつ数字を出してください。
  134. 西田信一

    委員長西田信一君) それでは、委員会は瞬時休憩し、午後六時半より再開いたします。  これにて休憩いたします。    午後五時四十四分休憩      —————・—————    午後八時二十三分開会
  135. 西田信一

    委員長西田信一君) これより委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、十二件の法案を議題といたします。  国立学校特別会計法の一部を改正する法律案国際復興開発銀行等からの外資受入に関する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案酒税保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案、以上三件の法案につきましては、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 西田信一

    委員長西田信一君) 御異議ないと認めます。よって、質疑は終了いたしました。  まず、国立学校特別会計法の一部を改正する法律案につきまして討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。国立学校特別会計法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛否の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  137. 西田信一

    委員長西田信一君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。  次に、国際復興開発銀行等からの外資受入に関する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  138. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 私は、国際復興開発銀行等からの外資受入に関する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に反対をします。  この改正案のねらっていることは、国際収支の改善をはかるために外債によるドルかせぎがその中心ではないかと思っておりますが、今日まで国際収支の改善のため輸出振興に特別の措置をとってきたのでありますが、常に不安定を免れなかったのであります。ところが、最近、政府は、日韓会談を妥結させ、朴一派に有償、無償合わせて五億ドル、民間借款三億ドル以上、漁業協力の名目で九千万ドルの借款を与えようとしております。また、台湾に対しては一億五千万ドルの借款を供与するなど、新しい植民地主義的なやり方を強めております。これでは国際収支の悪化を引き起こし、それが円の通貨危機にまで発展するおそれを十分に持っているのであります。アメリカのドル危機、イギリスのポンド危機の原因が、その長年にわたるところの冷戦政策の直接的な結果であったことは今日世界周知の事実であります。そのことを考えるならば、以上のような方向を強めることはきわめて危険なことが明らかであります。  政府は、一方ではそういうことをやっておきながら、他方では借金による外貨取得をはかろうとしております。しかし、その可能性はますます狭まって、きびしい状態になっているのであります。アメリカの銀行独占体の機関紙であるマガジン・オブ・ウォールストリートは「来たるべき一九六五年」、すなわちことしでありまするが、「一九六五年には国際通貨体制の状態ほど爆発をはらみ、資本主義世界を脅かすような経済分野はほかにはない」と指摘しております。また、イギリスのエコノミストは「フランスは一九六五年にさらに五億ドルにのぼる金をアメリカから引き出すつもりでおり、他の多くの国々もそれにならおうとしている。アメリカからの金の流出は、ことしは少なくとも十億ドルをこえるだろう」と述べております。こういう事実はドル危機の新たな激化をもたらしたものであります。もはや銘柄をもって外貨債を募集するということがますますむずかしい状態に置かれているのであります。したがって、アメリカを中心として約一億三千万ドルの外貨債を消化することはきわめて困難であり、勢い短期債務に依存せざるを得なくなるのは理の当然であります。昨年、ユーロダラー債の政府保証債は四千五百万ドルでありましたが、今年はさらにその依存度を増さざるを得なくなりましょう。それは国際収支の改善には基本的には役立たない一時的なものとなり、将来国際収支の一そうの悪化を促す一要因となる危険性を増大させるものであると言わなければなりません。  以上のような事実とあわせ考えて、国際通貨の現状から見るとき、ドルへの従属からの脱却をはからなければならないときに来ていると考えます。わが国が国際収支の改善をはかろうとすれば、その方向は平和共存政策を基本として、社会主義諸国との貿易の拡大、新興諸国との平等互恵の貿易の発展に努力すべきであります。その方向でのみ達成されるのでありまして、したがって、本改正案のねらっているような方向は全く小手先だけのものであり、問題の解決には何ら役立たないと考えます。  以上が反対の理由であります。
  139. 西田信一

    委員長西田信一君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。国際復興開発銀行等からの外資受入に関する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  140. 西田信一

    委員長西田信一君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  次に、酒税保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。酒税保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  141. 西田信一

    委員長西田信一君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、ただいま可決されましたこれらの法案について、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  142. 西田信一

    委員長西田信一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後八時三十一分散会