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1965-04-22 第48回国会 衆議院 予算委員会防衛図上研究問題等に関する予算小委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月二十二日(木曜日)    午前十時十分開議  出席小委員    小委員長 松野 頼三君       江崎 真澄君    大平 正芳君       小坂善太郎君    重政 誠之君       石橋 政嗣君    岡田 春夫君       高田 富之君    中井徳次郎君       永末 英一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 小泉 純也君  出席政府委員         国防会議事務局         長       北村  隆君         防衛庁参事官  麻生  茂君         防衛庁参事官         (長官官房長) 小幡 久男君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (教育局長)  島田  豊君         防衛庁参事官         (人事局長)  堀田 政孝君  小委員外出席者         国防会議事務局         参事官     石澤芳次郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛図上研究問題等に関する件      ————◇—————
  2. 松野頼三

    松野委員長 これより小委員会を開会いたします。  防衛図上研究等に関する件について調査を進めます。  前会に引き続き質疑を行ないます。永末英一君。
  3. 永末英一

    永末小委員 前回質問におきまして不分明なところをただしながらひとつ入っていきたいと存じます。  第一は、三矢研究統幕会議業務計画の中の一事項として行なわれた、しかし、それは三十七年度業務計画に最初載せられてある、しかも、それを訂正して三十八年度業務計画にも載せていた、このように私どもは承知をいたしております。そこで、この前は、これらの件について長官指示は行なわれなかったというのでありますが、変更するような場合に、長官が知らぬでも変更できるのか、伺いたい。
  4. 海原治

    海原政府委員 前回に御説明いたしましたように、いろいろな事項一つとしてこういう図上研究をやるということが項目としてあがっているわけでございますから、これらの変更につきましても、通常ほかの変更事項と同様、事項一つとして列挙して長官決裁を仰ぐというのがしきたりでございますので、三十七年度に終わるべきものが三十八年度にも持ち越されたことがわかる、こういうことでございます。
  5. 永末英一

    永末小委員 そうしますと、その業務計画変更して次年度に延長して行なうというのは、長官が知らずしてしょっちゅう行なわれる、そういう性質のものですか。
  6. 海原治

    海原政府委員 二年度にわたって業務が行なわれるということはまれでございます。ただし、たとえば船の建造であるとか、あるいは戦車の購入であるとか、こういうようなことにつきましては、単年度に終わるべきものが翌年度に持ち越されるというときには、当該年度業務計画修正を載せまして、新年度決裁、こういう形で行なっております。
  7. 永末英一

    永末小委員 いまのように物理的な条件で延びるもの、それは当然考えられると思います。ところがこのような一つのまとまった研究として最初設定されたもの、それを年度をわたってやるという場合には、もしそれを知っておる内局——そういうものがありとすれば、何か意味合いがある、何か違った事情があるということは容易に推察がつくはずだと私どもは思いますが、あなたのほうではそういうことはあまり意に介さない、こういうことですか。
  8. 海原治

    海原政府委員 前回にも御説明いたしましたが、三十七年度から三十八年度にわたりましてこの三矢事業研究が行なわれましたときには、当時いわゆるバッジの機種選定という大きな仕事がございまして、特に空幕及び内局関係部局はそのほうにも実は相当な力をさいておったわけでございます。かたがた三十八年度業務計画の検討等いろいろな事業が重なっておりましたので、当初予定しました三十七年度の二月くらいで終わるところがおくれておった、こういう事情でございますので、翌年度に繰り越すということも、それほど特に意味のあるものとしては私どもはとっておりません。
  9. 永末英一

    永末小委員 この前も何かそういうわけのわからぬうちに計画変更されて、しかも次年度に延びるというようなことについてだれが一体責任者であるか伺いましたら、はなはだあいまいもことしておってわからない。大体その計画を立てたものを変更するというのは、普通の立てる場合よりもむしろ責任者がはっきりしておらねばならぬと普通の官庁事務では考えられる。ところがこの前の御答弁では、統幕会議というものがあって、その議長やら事務局長やらあるいは各幕僚長、そういうものがあって、どこに責任の所在があるかはなはだ不分明である。この変更というのはだれが決裁したのですか。
  10. 海原治

    海原政府委員 業務計画変更は、結局大臣の御決裁を仰ぐわけでございますが、事務的にこれを補佐する内局部局としては防衛局長でございます。前回の御指摘にもございまして、いろいろ考えてみますと、結果論ではございますが、業務計画修正変更等につきましていま少しと申しますか、もっと注意して事項を検討すべきだった、こういうふうに私自身は反省いたしております。大臣も、従来しばしば今後のことにつきましては御所信を述べておられますので、今後はこのようなことのないことを私ども一同決心をいたしております。当時のことにつきましては、私大臣補佐する防衛局長という立場補佐責任が足りなかった、こういうことでございます。
  11. 永末英一

    永末小委員 日本人は、どうもあやまられると弱いものですから、そういうあやまっているところを追及して、お面を三本も四本もやりたいような気持ちは起こりませんよ。そんなことは実はこの会議の席上ではどうでもいいことであって、私どもが知りたいのは、一月九日にその変更が行なわれてきたというところに、いままでの審議過程からすれば、あるいはやはり意図があったのではないかというようなことが推測をせられているわけです。そこで、私どもシビリアンコントロールの観点からこれをながめますときに、補佐するのは内局防衛局長責任であるとあなたは言われました。原案をつくったのは統幕でしょう。その責任者はだれなのか、それを明らかにしていただきたい。
  12. 海原治

    海原政府委員 先ほどから責任者ということで御質疑がございますが、統幕におきましての責任というものはございません。と申しますことは、先般申しましたように、このような図上研究というものは、長官の御承認を得ましていろいろやっておるわけでございます。そこで、統裁官が命ぜられましてつくりました実施計画というものは、そのつど上司にも一応は報告しておるわけであります。演習の結果、当時におきまして関係者がいろいろな意図を持っておったのではないか、こういうようなお疑いのもとに御質問が行なわれておりますが、従来繰り返して申し上げておりますように、私どもはいわば当然なすべき日常研究事項をやったというような程度の感覚でございまして、したがいましてこれは事実でございます。この業務計画変更につきましても、あとでこのように、責任者はだれかというようなことの追及を受けるというようなことを考えては業務を行なっておりません。私どももそういういわば軽い気持ちでおったことは事実でございます。したがいまして、統幕会議において、だれが責任者かという御質問でございますが、そういう意味での責任者というものは私はないと思います。繰り返して申しますが、実施計画をつくりまして、上司報告してこれをやろう、そのことが予定された期間に終わらなかったというときには、当然に引き続いてやって差しつかえないと思います。したがいましてその報告を受けた者も、当然にそれは当初の目的に従って研究が終わるまでやるべし、こういうことになるのは、その筋を追っていきますと当然のことではないかと思います。
  13. 永末英一

    永末小委員 普通の官庁では、あることをやる、あるいはあることの計画を立てたあと変更するという場合に、最終的には大臣かもしれませんが、責任者があるはずですね。ところが統幕に限っては、この前からはなはだその点があいまい。私どもは非常におかしいと思う。つまりいまのおことばでは、統裁官が命じられた、だれが命じたのかとこの前伺いましたが、それがはっきりしない。やるべしというのでやっておる。だれが一体やるべしということをきめるのか。私どもはなぜこの点を質問しておるかと申しますと、あなた方のほうではシビリアンコントロールは確保しておる、こういうお話シビリアンコントロールを確保しておるのなら、統幕のこれらの事件に対してだれが責任を持つのかはっきりしなければ、一体長官のコントロールはどうして行なうのですか。それを補佐する内局調整をしようという場合に、だれに対してどうするのですか。何となく研究しておる事件じゃないでしよう。お答え願いたい。
  14. 海原治

    海原政府委員 この点は前回におきましても、また今日におきましても御指摘のことでございますが、先生のお立場と私ども考え方と多少事態についての認識がいささか違うのではないかという感じがいたします。この点は、私どもの御説明がそのとおり御了解いただけないのは非常に残念でございますが、たとえば一般演習等におきましても、非常に天候が悪くなったという場合に、延期するということがあるわけでございます。その間に何か不測の事故があった場合には、演習をそれが終わるまで延ばすということは当然のことだと思います。従来御説明しておりますように、これはあくまで幕僚勉強ということが主に行なわれた図上研究でございます。したがいまして、これが何らかの事情で延びた場合には、当然予定されたものが終わるまでやるということがあたりまえ、そのことについて一々、延びたのはなぜ延びたか、延びた場合にはそれをやめるかどうかということを判断する余地は、私どもとしてはないものということで処置をしておったことは事実でございます。しかし、いろいろと私どもが予期しておりませんでしたような考え方に立っての御指摘がございましたので、今後のことについては、十分これからどうしたらいいかということを検討してまいりたい、このように感じておる次第でございます。
  15. 永末英一

    永末小委員 あなたのほうの終始一貫している態度は、幕僚勉強なんだ、こういうことです。学生勉強しているのと違います、行政機関だから。あなたのほうの統幕という行政機関が、しかも各幕僚監部からたくさんの人を出して、長期にわたってやる。その作業が学生や学者の自発的な勉強だというのは、私はどう考えてもこれは納得がいかない。一月九日のその計画決裁をしておるのはだれですか、伺いたい。
  16. 海原治

    海原政府委員 この図上研究についての実施のお伺いというのは、昭和三十七年の十二月の二十七日に出ております。決裁しましたのは、当時の統幕事務局長でございます。
  17. 永末英一

    永末小委員 三十八年一月九日の統幕会議にかかった場合、その変更決裁したのはだれですか。
  18. 海原治

    海原政府委員 一月の統幕会議では、この計画につきましての報告をいたしまして、前会申し上げましたように、統幕会議構成メンバーである統幕議長及び各幕僚長はこれを了承したということでございます。この時点におきましては、まだ延びることがきまっておりませんので、その後、三月の終わり近くと記憶しておりますが、引き継いでやるということがきまったわけでございます。
  19. 永末英一

    永末小委員 普通の官庁ですと、決裁印を押した者のところに責任がある。つまり判こというのは、責任があるということを示す。日本の官庁ではそうなっておると思います。そうしますと、三矢研究事件責任者統幕事務局長、こういうことですか。
  20. 海原治

    海原政府委員 一般官庁における執務手続き等を参照されましてのお尋ねでございますが、毎度申し上げておりますように、これはあくまで関係幕僚研究でございますから、図上研究を行なっておりますそのことが延びるということについて責任者云々ということは、私の判断では出てこない。しかし形式的に、計画が延びるということについて責任者はだれか、責任ということば意味は明瞭でございませんが、それをきめた者はだれだということになりますと、これは統幕事務局長になります。
  21. 永末英一

    永末小委員 防衛庁長官に伺いたいのですが、いまの質疑を通して、三矢研究に関する事務的な手続き上の一応の最終的な決定者としては統幕事務局長というのが出てまいった。その統幕事務局長統裁官となってやった研究、その中の内容において、私どもの見解では統幕として触れてはならないいわゆる国事事項を取り上げてやった。これが三矢研究内容だと思うのです。そこで、防衛庁長官としては、一体統幕事務局長責任者としてやっておるところで半年もかかってそれが行なわれる、それを防衛庁長官としては半年も知らずしていなくてはならぬという、これが事件の私は経過だと思います。そのことについて、制度としてどこに欠陥があると思われますか、また知らなくてもよかったと思われますか。
  22. 小泉純也

    小泉国務大臣 従来も申し上げておりますとおり、やはり長官は、そういう問題については細大漏らさず報告も受け、また事情を聴取いたしまして、十分慎重な指示をすることが好ましいことでございまして、そういうことをいままで長官が知らなかった、また細部にわたって報告もなかったということは、私は今後いいことではない、これを改めていくべきであるという意味のことはたびたび申し上げてきたとおりでございます。当時の事情は、いままで私が長官として執務をしてまいりました経験からいたしますると、統幕事務局長やその他この研究に従事した幕僚諸君も、おそらく年度年度に当然やっておることであるからというような、いわゆる慣行的な軽い気持ちであったのではないかというふうに考えておるわけでございまして、そこに特に意識して担当の防衛局長と緊密な打ち合わせをしなかったとか、また事務局長なり防衛局長細部にわたって長官報告をしなかったとかいうようなことではなくて、いわゆる慣行的な取り扱いとして、それがあたりまえのこととして過ごされてきたのではないかと推測いたしておるわけでございます。今後は、こういう問題について長官と各幕との間は十分密接に連絡して、長官もあらゆる問題について実態を把握して指示ができるようなことにならなければいかぬ。また長官も進んで事情を聴取をする場合もあるし、各幕、防衛局長等からも常に長官にこういうことが報告をされるというようなことに持っていかなければならないということを考えておるわけであります。
  23. 永末英一

    永末小委員 長官からもお気持ちを承りましたが、私は、こういう事態の発生したことには原因があると思う。その原因は何かといえば、現在の防衛庁は、内閣総理大臣防衛庁長官のもとに各自衛隊が直轄をされて、直接の指揮をとるような形になっておる。そうして内局もまた統幕幕僚監部防衛庁長官補佐をする、こういうことになっておる。ところが防衛庁の歴史の過程において、片方幕僚監部幕僚長は、それぞれ自分の幕に属する自衛隊に対する指揮権限長官の命によってやることが認められている。統幕議長もまた二幕以上に関する特別の部隊を編成する、その行動をどうするかというような問題については、長官の命を受けて指揮をする、こういうことが現在の法令上認められておるわけです。  そこで、昔の統帥権の独立ではございませんが、すべてあなたを補佐して行なわれなければならない業務であるのに、その指揮命令、すなわちスタッフとしての任務を与えられながら、徐々にそれがラインとして活動している、こういうことがあらわれてきていると私は思うのです。したがってラインに眼を転じて事務考えていくと、一々長官に相談しなくともいままでやっている、自分限りでやれるんだ、こういう雰囲気が出てきている。私はそこに根本的な原因があると思いますが、長官はどうお考えですか。
  24. 小泉純也

    小泉国務大臣 名簿等においては、やはりそういう法令上の面からも、またいわゆる多年の慣行としてやってきておるということは、いま永末委員が申されるとおりではないかと私も考えます。今後の問題については、従来しばしば申し上げておりますとおり、幕僚監部内局防衛庁長官というようなものがもっと緊密に、一体と申しまするか、細大漏らさず十分実態を把握してやっていく必要があるということは、全くただいま永末委員が申されるとおり私も同感でございます。
  25. 永末英一

    永末小委員 昭和三十八年の防衛庁訓令第三十八号、防衛庁における文書形式に関する訓令というのが出ております。それによって防衛庁は何種類の命令を出しておりますか、お伺いいたしましす。
  26. 麻生茂

    麻生政府委員 命令という御質問でございますので、命令という形式で出ておるものについて申し上げたいと思います。  一つ行動命令でございます。が、行動命令は、自衛隊法のいわゆる第六章で自衛隊行動のことを規定しておりますが、この行動行動に伴う業務に関しまして長官が出す命令行動命令と、こう申しております。  それからもう一つは、一般命令でございますが、一般命令は、行動命令をもって発する場合を除き、部隊機関の編成、配置、移動、派遣、あるいはそういう部隊機関に対する任務付与というようなもの、あるいは訓練または演習実施、検閲の実施というようなものにつきまして、一般命令という形式命令を出しておるわけでございます。  それからもう一つは、個別命令でございますが、この個別命令と申しますのは、個々の職員に関する人事発令以外の命令個別命令ということで出しております。  それから日常業務に関しましては、日々命令という形式命令を出しておるわけでございます。  大体命令という名前のつきますものはいま申し上げたようなもの、こういうふうに存じます。
  27. 永末英一

    永末小委員 いまお話がございました一般命令個別命令、日々命令はだれが出すかというお話がない、それをお答え願いたい。それと、そのほかに、この訓令第三十八号によって達し、指示指令というような行政行為も行なわれておりますね。これはだれが出すのですかお答え願いたい。
  28. 麻生茂

    麻生政府委員 行動命令はすべて長官決裁を得た文書でございます。したがって、命令としては、長官命令として出るわけでございます。  それから一般命令も、やはり長官命令でございますので、防衛庁としましては、長官命令として出るわけでございます。  ただ、あるいは先生の御質問では、長官の命により幕僚長たれがしというような文言で命令が出ておりますので、それは幕僚長限りで出しておるのじゃないかというお考えではないかと思うのでございますが、これは必ず長官決裁を得、その長官決裁を得る過程におきましては、内局関係、特に行動命令につきましては防衛局の合い議を得まして、その結果出ているものでございまして、あくまで長官の意思として出ておる命令であるわけでございます。  一般命令もやはり同様でございまして、すべて長官決裁を得て、長官命令として出ているわけでございます。  それから、先ほど個別命令とか日々命令とか、こう申しましたが、これは各部隊あるいは幕僚長程度が出しておる命令でございます。  それから長官指示と申しますのは、これは自衛隊に対する各般の方針、基本的な実施計画の作成その他自衛隊隊務を統轄するために必要と認める事項につきまして、長官が、各幕僚長なり付属機関なりあるいは施設庁長官等に対して、あるいは統幕会議というようなものに対して出す命令でございます。これを長官指示と申しております。  それから、先ほどお話のありました指令のことでございますが、長官部隊に対して命令を出しますと、基本的な重要なことはこの長官命令の中に示されるわけでございます。しかしその細部のことにつきましては、一々長官決裁を得るまでもなかろうというものにつきましては、長官幕僚長委任をいたしまして、細部のことについて指令をさせておるわけでございます。それを指令という形式で、陸上幕僚長指令とか、海上幕僚長指令とか、あるいは航空幕僚長指令とか、あるいは統合幕僚会議議長指令というような形式で出しておるわけでございます。いずれも基本的な——基本と申しますか、命令の大綱は長官が掌握いたしまして部隊等に対して出すわけでございまして、それの長官意図というものを体しまして、それを具体的にふえんして実施するために指令という形式で出すようになっております。
  29. 永末英一

    永末小委員 それから達し。
  30. 麻生茂

    麻生政府委員 それから、先ほど命令ということでありましたので、命令ということについてだけお話をいたしたわけでございまするが、一般的、規範的な事項につきましては、長官訓令という形式で御決裁になりまして、長官名前でこれを告示しておるわけでございます。その中で各幕の少しこまかいことにわたりますことは、これは各幕僚長にそれぞれの訓令におきまして委任をいたしております。そうして各幕の具体的な事情に適したような細部的なことは、幕僚長委任をする形をしておりますが、これは各幕僚長が達という形式で出すことができるようになっております。これは、先ほど行動命令とはまた別な事項にかかるものであります。
  31. 永末英一

    永末小委員 行動命令一般命令について、これは長官決裁をしているが、その場合に内局補佐する、こういう御説明でございます。これら二つ命令については、甲命令乙命令二つ区別がございますね。その区別のあるところを言うてください。
  32. 麻生茂

    麻生政府委員 現在この行動命令につきましては、甲命令というのと乙命令というのがございます。甲命令と申しますのは、内局が直接起案をいたしまして補佐する命令でございまして、これは大臣名前で出される命令でございます。結局、内局が直接防衛庁設置法行動基本とかその他所掌しておりますので、その点について大臣が出す命令甲命令と、こう言っておるわけであります。  乙命令と申しますのは、この大臣の趣旨を受けまして、各幕僚長起案をいたしまして、各幕僚長関係内局の主務の局との協議を得た上において長官決裁を得て出すもの、これを乙命令とこう申しておるわけであります。
  33. 永末英一

    永末小委員 官庁業務の場合、起案権を持つか持たないかということは、その命令内容に非常に重要な影響を及ぼすと私どもは見ております。したがって、甲命令内局起案をする、乙命令は各幕で起案をしていわば内局調整をするのでしょう。その場合に、一体内局乙命令について訂正をするというようなことがございますか。
  34. 麻生茂

    麻生政府委員 先ほど申しましたように、甲命令では基本的なことがきまるわけでございます。したがって、その命令に従って各幕僚長乙命令を書かなくてはならぬことは、これは言うまでもないことであります。さらに、幕僚長起案をして内局協議をしてまいりました場合について、内局といたしましては、長官基本的な見地から補佐するという職責に基づきまして、意見を申し述べて直させる、あるいは意見が合わなければ長官のところで決裁を得て裁断を仰ぐということは、これは当然許されることであるというふうに理解しておるわけであります。
  35. 永末英一

    永末小委員 行動命令一般命令と分けまして、陸、海、空それぞれの三幕に分けて、一体防衛庁ができましてから甲命令では何件、乙命令では何件出されたかお答え願いたい。
  36. 麻生茂

    麻生政府委員 行動命令の項について申し上げますと、十三件でございます。
  37. 永末英一

    永末小委員 私の質問申し上げたのは、各幕に分けて、甲と乙と、それから一般命令行動命令と数えていただきたい。
  38. 麻生茂

    麻生政府委員 それではちょっと日付が先にのぼりまして恐縮でございますが、昨年の八月現在の数字で申し上げたいと思います。  陸につきましては、甲命令が五件出ております。それから乙命令が二十四件出ております。  それから海につきましては、甲命令が四件、乙命令が八件。  空につきましては、甲命令が四件、乙命令が十六件ということでございます。
  39. 永末英一

    永末小委員 一般命令はどうですか。
  40. 麻生茂

    麻生政府委員 これも八月でございますが、空幕につきまして、一般命令は二件出ております。
  41. 永末英一

    永末小委員 麻生参事官、ぼくの質問に包括的に答えてほしい。こま切れにやらないで、全部言っていただきたいと言っているのです。
  42. 麻生茂

    麻生政府委員 これも八月でございますが、私の持っている資料で申し上げますと、陸につきましては甲命令はございません。乙命令が七百二十一件。海につきましては、甲命令がゼロで、乙命令が三百八十一件。それから空につきましては、甲命令先ほど申しましたように、二件で、乙命令が二百二十一件でございます。これは去年の八月までの数字でございます。
  43. 永末英一

    永末小委員 防衛局長、あなたいまお聞きのとおり、甲命令というのは、乙命令に比してほとんど出されていない。一般命令のごときは、陸も海も甲命令はゼロである。ところが乙命令のほうは、陸については七百二十一件。海にいたしますと、三百八十一件、こういうことになっている。そうしますと、これは起案者はそれぞれの幕僚監部幕僚長である。そしてあなたのほうで調整をして、長官決裁する、こういうのでありますが、実際上あなたのほうはこれでコントロールができますか、そういう状態で。
  44. 海原治

    海原政府委員 先ほど麻生参事官がお答えしました行動命令一般命令等の件数は、いままでの総計でございますが、実は警察予備隊、保安隊、自衛隊、このように性格が変わってまいりますにつれて、たとえば災害派遣出動の派遣命令等が変わってきております。当初におきましては、たとえば行動命令の出し方でございますが、一番わかりやすい例で申し上げますと、一番初めに災害派遣ということを行ないましたときには、現在のようにそれぞれの駐屯地の部隊長が判断をする、あるいは師団長が判断をするということではございませんで、一々中央で判断したわけです。と申しますことは、当時部隊が災害派遣に出動すること自体も非常に慎重に行なわれねばならないということでございました。そういうときに、命令形式等が検討された次第でございます。甲命令と申しますのは、たとえば北海道に山火事が起こった。これに対して北海道の部隊は出動して消火に当たれということが甲命令でございます。乙命令で申しますと、その出動が何名程度、どの程度出すか、どの期間出すかということをきめますのが、いま申しました部隊がゼロということを受けまして、その任務を達成するためにはどの程度の隊員数、どの程度の期間が要るか、またどこの部隊を出せばいいか、こういうことの判断が出てまいります。こういうことの判断になりますると、これは当然に大臣を専門的な技術的の補助者としてお助けをする各幕僚長のほうの考え方、判断が当然に基礎になってしかるべし、こういうことが基本的な考え方としてあるわけでございます。先般の当委員会においても申し上げましたが、先ほど先生もおっしゃいましたようにへ防衛庁長官という単一の指揮官を補佐しますのに、文官のグループと制服のグループとあるわけでございます。内局と各幕、あるいは統幕がどのような範囲でどのような形でそれぞれに大臣補佐するかということは、このことは何ぶんにも日本にとっては非常に新しい組織でございます。いろいろと問題のあることは事実でございます。これが過去十数年の経過とまちまして、これが正しいだろうということで、先ほど大臣お話しになりましたような慣行の形できております。こういうことをひとつ前提にお考えいただきたいわけでございます。それで、先生の御質問が、各幕が起案をするものが幕僚長決裁をして大臣に上がってくる。それから内部部局一体どういうことでそれぞれの立場における意見が申し述べられるか、あるいは命令変更等もあり得るのか、こういうお尋ねでございます。これは実際の手続きとしましては、先ほど麻生参事官が申しましたように、その命令起案をされますときに、関係部局意見を十分調整すれば、各幕僚長決裁されまして大臣のところに上がってくるものはそのままの形で決裁される、これはすなおな筋道でございます。たまたま幕僚あるいは関係部局意見調整ができない場合には、それぞれの意見が理由を付されて大臣のところに上がってきて、大臣のところでもって調整されて、その調整されたところに従って決定され、命令が出される、こういうことでございますから、先生の御心配になりますように、起案権が各幕僚監部にあるから、したがって内部部局における補佐も十分にできないのではないかという御心配は、私防衛局長として勤務いたします前に防衛課長として勤務いたしておりましたその間の過程におきましても、御指摘のような心配を感じたことはございません。
  45. 永末英一

    永末小委員 いま防衛局長が言われましたところが実は問題なんで、あなたは統幕あるいは各幕僚長が何をするかということは、まだ歴史が浅いのではっきりきまっていない。したがって、慣行においてやっておる。防衛課長、防衛局長の経験をもってすれば、内局調整、コントロールに遺憾はなかった、こういうお話だ。しかし二・二六事件はどうして起こったか御存じですね。小隊長、連隊長が命令を発して、それがわからないから大隊長が命令を発した。それは部下はわからないわけだ。それが一体連隊長命令か師団長命令か、あるいはまた参謀本部命令かわからない。そこでそういうことが起こった。したがって、実力部隊というのは凶器を持っておるのですから、その凶器を持っておることについてはっきりシビリアンコントロールのできる体制、これをひとつ防衛庁で持っていただかなければ、私は国民としては、一体どういうことをもってシビリアンコントロールと言われておるかわからぬと思う。三矢研究が国民に疑われているのはまさしくこの点にあるわけです。  そこで、防衛庁長官に伺いたいが、こんなに膨大な、全部でいいますとここ十年間に一千件以上になんなんとする命令が出ておる。そのうちの数十件足らずがあなたの内局起案をして部隊行動をやらしておる、こういうものである。その他は起案するものは全部各幕でやっておる。これは全部あなたの命令を行なわれておるのです。ところが実際は、そういう意味合いでは内局補佐、つまりシビリアン側の補佐というものは十分に行なわれていないとみなされなくてはならぬ。こういう形がどんどん進んでいくことが一体シビリアンコントロールの見地から防衛庁長官は望ましいとお考えかどうか、お考えを伺いたい。
  46. 小泉純也

    小泉国務大臣 いま永末委員の申されておるように、各幕でほとんど起案されて、それがそのまま長官のもとにくるということであれば、永末委員が危惧されるようなことがないとは言えないのでございまするが、いままでの長い間の慣行においても、また私が長官就任以来承知いたしておりますことについても、起案は各幕でいたしておりましても、その起案からその起案の決定までの途中において内局と十分連絡をして、そうしてこれが上がってきておるということを承知いたしておりまするので、そのような御心配はないのではないかと私は考えております。しかしながら、これで完全無欠であるということは私も申し上げられません。でき得べくばなお一そう緊密な連絡をいたし、シビルコントロールの完全なる機能発揮ということについては今後とも研究もしていき、お互い努力もしていかなければならないと存じておるわけであります。
  47. 永末英一

    永末小委員 太平の御代で通常業務だけが行なわれるときは、それは長官、それでいいかもしれません。しかし国民が一番心配しておるのは、先ほど申し上げましたように兵は凶器だ。したがって、これがどんな形で一旦緩急というようなことになるかもしれない。百年兵を養うというのはある一つの重要な時期にどうなるかということでやっておるんだろうと思うのです。そうであれば、あなたはシビリアンの代表者なんだから、一体制服のほうが動いていくその動き方について、絶えず太平の時代にいまのようにあなたに無関係なところで起案をされ、形式上はあなたの決裁になっている。しかし実態上はそうではない形で行なわれていることについて、完全無欠ではないかもしれぬけれども大体いいんだというようなことで一体あなたが胸を張ってシビリアンコントロールは確保されております、こんなことが通りますか。もう一度伺いたい。
  48. 小泉純也

    小泉国務大臣 先ほども申し上げ、また政府委員からも申し上げておりますとおり、形の上においては各幕が大部分その起案をして、長官決裁を受けているということになっていますけれども、その起案の途上、決定までの間においては各幕と内局との間には十分連絡調整、意思の疎通というものが行なわれて上がってきておるのでございまするから、私は、そうそう心配をすることはない。今後さらに一そうそういう点の緊密な調整連絡というものに注意をすることは必要であると申し上げておるわけであります。
  49. 永末英一

    永末小委員 いまは命令で話を進めたのでありますが、たとえば三矢研究、これでそういう形が行なわれていなかったでしょう。そこでぼくはこれを問題にしておる。少し角度を変えましょう。甲命令の場合、内局起案いたしますが、防衛庁長官はだれに命令しますか。
  50. 麻生茂

    麻生政府委員 命令部隊長あてになるわけであります。
  51. 永末英一

    永末小委員 部隊長あてに命令した場合に、それがそのまま行なわれますか、再び、もう一ぺん命令部隊長のところで、あるいは幕僚長のところで書かれますか。
  52. 麻生茂

    麻生政府委員 先ほど申しましたように、甲命令と申しますのは内局補佐して出す命令でございまするから、非常に基本的なことに限られるわけでございます。ところが、出先の部隊として行動を起こしまする場合には、その基本的な命令だけではとうてい動けないわけでございます。さらにそれを達成するために必要な細部の、上からの命令がおります。それからその部隊が動くにあたりましてほかの機関が協力をするという面もあるわけでございまして、そういう非常に実務的なこまかい点につきましては、もう各幕僚長限りに長官が御委任になりまして、先ほど申しましたように指令というような形で出るという場合があるということでございます。しかし、あくまで部隊の運用についての大綱というものは甲命令なりあるいは乙命令で、長官が完全に掌握をされまして出されるわけでございまして、その非常に細部的な、長官意図を体しました細部的なことを幕僚長委任になるということでございます。
  53. 永末英一

    永末小委員 いま長官の発する甲命令は直接部隊長に行くということが原則、しかし幕僚長委任をして、幕僚長経由で行っておる面もある、こういうお話であります。実際はどうなんですか。幕僚長をほとんど経由しておるんじゃございませんか。
  54. 麻生茂

    麻生政府委員 先生、これは御承知だと思いますが、自衛隊法の第八条におきましては——ちょっと読んでみますと、「長官は、内閣総理大臣指揮監督を受け、自衛隊隊務を統括する。ただし、陸上幕僚長、海上幕僚長又は航空幕僚長の監督を受ける部隊及び機関に対する長官指揮監督は、それぞれと当該幕僚長を通じて行うものとする。」ということになっているわけでございます。したがいまして、この長官命令を伝達する仕事を幕僚長はやるわけでございます。それから、先ほど申しましたように、甲命令よりもさらに専門的な意見を加えて幕僚長が出先の部隊長に命令を出す必要がある場合には、乙命令という形でさらに幕僚長起案をいたしまして、長官の御決裁を得て出す、こういうことになっているわけでありまして、甲命令からすぐ指令ということに必ずしもならないということをちょっとつけ加えさせていただきます。
  55. 永末英一

    永末小委員 いま麻生参事官が小声で申した最後のところが問題です。つまり内局起案する甲命令といえども自衛隊法第八条によって、長官命令幕僚長を経由してでなければ部隊長に届かないわけです。そこで幕僚長としては、その甲命令を受けて、自分がもう一ぺん乙命令起案してあなたのところに上げてくるわけです。一言一句変わらないものでも、そうしなければ実際に部隊は動かない、これはお認めになりますか。
  56. 海原治

    海原政府委員 実際の例で御説明申し上げますと、先ほど私が北海道の例を出しました。北海道で山火事が起こった、これに対して部隊が出動すべしというときには、先ほど申しましたように、所要の部隊を派遣して消火に当たれということが内局起案する甲命令、それを受けまして何名をどの程度出すということになるのが乙命令、しかし、もう出した部隊に対しての、たとえば宿営、給与はどうするか、この費用はどうするかということになりますと、これは幕僚長指示ということになるわけであります。その三本が同時に行くわけであります。甲命令内局起案いたしますが、先ほど麻生参事官が申しましたように、法律の定めるところによりまして、幕僚長を通じて執行するということになっておりますので、たとえば北部方面総監あてでございますが、これには幕僚長に交付ということが注として書かれるわけです。それを幕僚長に渡す。したがって先生が御指摘のように、甲命令が出て、これを受けてまた乙命令起案されて、それを受けてまた幕僚長指示を出すという形でいく場合もございますし、三本が同時に長官の御決裁を得るという形でいく場合がある。これはそのときどきの状況、内容によって違っております。
  57. 永末英一

    永末小委員 長官、いまお聞き及びのとおりで、あなたの命令は行ったり来たりするわけだ。しかも太平の時代には起こらないかもしれませんが、あなたがこうしたいということを考えて、そうして幕僚長甲命令を出す。ところが幕僚長が待ったをかけた場合には、あなたはどうすることができますか。そんなやつはけしからぬと懲戒免職するということはあるかもしれませんが、いまの命令形式、いま防衛庁でやっておられる——部隊をあなたは直轄しているというけれども命令のつくられ方、そうしてそれによって部隊が動くについては、はなはだ強く幕僚長の意思というものが加わってくるわけです。この制度についてあなたはどうお考えになりますか、伺いたい。
  58. 小泉純也

    小泉国務大臣 幕僚長の意思が強く働いて部隊の運用がされているということはそのとおりでございますし、また幕僚長はその部隊のいわゆる最高の専門家でありますから、私はそれでよろしいのだと考えております。いま、長官命令幕僚長によってそのままいわゆる実行に移されない、あるいは阻止されるとか、あるいは変更さるるとかいう場合にどうするか、そういう場合もあり得るではないかというような意味永末委員のお尋ねであると思いますが、従来もそうでございましたし、また私、長官就任以来各幕僚長の人物等もよく承知いたしておりまして、これはもう絶対信頼でき得る各幕の最高の人材が幕僚長に選任をさるるわけでございまして、さような長官命令幕僚長がかってに変更するとか、さようなことはもう全然私どもは毛頭考えられないことでございます。
  59. 永末英一

    永末小委員 私はいまの幕僚長を疑っておるとか、そんなことを言っているのじゃありませんよ。私は、あなたがシビリアンコントロールと言うから、それが制度としてどのようにコントロールできているかということを明らかにしたい、こういう意味合いで言っているのですから、いまの幕僚長は信頼しております、人材でございます、そんなことはいまの場合私は関係のない御答弁だと思う。ともかく、いま申し上げましたように、あなたが直接に命令できるのは幕僚長どまり——法律では部隊まで直轄すると書いてあるわけだ。ところが、いまの自衛隊の慣行でやっておられる指揮命令の姿というものは、実はすべてあなたが直接に指揮ができないような形になっている、こういう姿をいいと思われるかどうかを聞いているわけです。
  60. 麻生茂

    麻生政府委員 ちょっと大臣がお答えになる前に補足的に御説明しておきたいと思いますが、それには、現在どうしてこういう規定ができておるか、先ほど申しましたように、自衛隊法の八条のような規定ができておるか、あるいは自衛隊法の九条におきまして「幕僚長は、それぞれ部隊等に対する長官命令を執行する。」という規定があるわけでございますが、これは、先ほど申しました第八条のただし書きのそれぞれの幕僚長を通じて行なうものとするというものと、いわばうらはらをなすような規定であるわけでございますが、要するに、部隊指揮運用というものにつきましては、やはり部隊指揮について専門技術的な観点から十分信頼が得られるような人の補佐を得てこの命令が出ているということが、部隊を統率していく上において一番肝心なことであると思うのでございます。したがいまして、長官命令を、その専門的な助言の補佐を得て、そしてその長官命令として出先の第一線の部隊に伝達されていくという形式部隊の統率ということから適当なことではないかというふうに考えておりますので、そういう趣旨からこの八条とかあるいは九条という規定が設けられたわけでございますので、この点御理解願いたいと思うのでございます。なお、あくまで甲命令とか乙命令長官命令を伝達するわけでございまして、乙命令幕僚長が適当に改変して出す、そういうようなことはとうてい考えられないわけでございます。  それから、先ほどお話が出ました指令というのは、あくまで長官命令をふえんするような細目的なことでございまして、何も長官命令を実質的に変更するような命令の権能というようなものを幕僚長に与えているわけではありませんので、この点も誤解のないようにひとつお願いいたしたいと思います。
  61. 永末英一

    永末小委員 繰り返して申しますが、太平の御世ならそれでいいのだよ。答弁はそのとおりです。そういうふうにつくったつもりだ。しかし文民側、シビリアン側がわからない、できないようなある一つの固定範囲というものを与えた場合には、そのことが不測の災いを来たすおそれがある、私はそう思うのです。何べんも言いますけれども三矢研究はその点を疑われているのですよ。したがって、私が申し上げたいのは、どこに一体混淆があるのか。すなわち幕僚監部というのは長官補佐機関であるということをきめておきながら、しかも指揮権を与えておる。したがって、乙命令というのは指揮に関するところの命令だということであれば、それをいまのような姿でどんどん進めていけば、指揮の実権というのは長官にあるのではなくて幕僚監部にある、こういうことになる。企画立案をし補佐をするのが正規の幕僚監部の役割りであるのに、それがみずからの意見において——いまの法制ではありませんよ、ありませんけれども、みずからの意思において指揮をするというようなことをどうしてチェックするか。ここのところをあなたのほうでお考え願わなければ、シビリアンコントロールなんというものははっきりしないと思う。一体いまのような幕僚監部のあり方、つまり企画補佐の役割りと指揮の役割りとを一本にして与えておる、そうして、しかもその命令の発し方が長官として二手に分かれている、こういう形がシビリアンコントロールを貫くために望ましい形だとあなたはお考えか、長官の御答弁を伺いたい。
  62. 小泉純也

    小泉国務大臣 長官幕僚長命令をし、指示をいたし、幕僚長を通じてまたそれが下の各部隊にいく、幕僚長を通じないで長官が組織を飛び越えてやるということは、これはできないことでありまして、やはりあくまでも幕僚長を信頼して、幕僚長を通じてだんだんと下部組織に命令が伝達をされていくということは、これはもう当然の成り行きであろうと思うのであります。また、各役所等においても同じではないか。次官、局長というものを通じて下部のほうへ大臣の意思というものが伝達をされていくのでございまして、この方法以外にはないと考えておるわけでございます。私どもは、問題はやはり相互信頼であると思う。幕僚長というものを信頼をできなければ、初めから疑ってかかれば、これはもう何事もできない。やはりこの統率というものは、あくまでも相互信頼を基礎として行なっていくのでございますから、私は、いままでもこれでりっぱにやってきておるし、これ以外にそういう制度をばどういうふうに改めたらいいというような考え方は、いまのところ持っておらないわけでございます。今後十分に、従来申し上げておるとおり、緊密な連絡をして、各幕、内局、そして長官との間でますます緊密に連絡し、実態を把握し、そしてお互いが相互信頼をばますます強めていく方向に万全の努力をすれば、私は十分事足りると考えておる次第でございます。
  63. 永末英一

    永末小委員 私の質問を少しお取り違えになったようだと思いますが、私の申し上げておるのは、現在の統幕なり幕僚監部というのは、本質は企画部門である。しかし、それを現在の法制上実施機関としての役割りを与えておる。ところが、そういうことであるから、その企画をする場合の範囲というものが、実は片一方からかっちりと範囲を明確にしておるならばいざ知らず、防衛局長が言うたように、その辺がまだはっきりきまっておりません、こういうことなんです。そこで、自分で企画をして自分実施をするというようなことを、みな長官の命でやるのですよ。しかし、長官の命というのが、いま私が明らかにいたしましたように、はなはだもって内局側あるいは事務次官を筆頭とするところのシビリアン側の調整行為というのが、シビリアン側からはっきり出ていくような体制にいまなっていないわけです。そこで、いまのような制服側が企画と実施と一手に持っておるということなんです。そこで仕事をやるならば、シビリアンコントロールはわれわれはくずれると思う。それをあなたははっきりと限界をつけて、補佐補佐実施実施、こういうぐあいにすることが必要であるとはお考えにならぬか、この点を伺います。
  64. 海原治

    海原政府委員 私の先ほどの御説明が不十分でございまして、先先は、私が各幕僚監部と内部部局との間の事務分掌の当然あるべき姿がいまだに不分明である、きまっていない、こういうふうにおとりになったかと思いますが、私が申しましたのは、こういう組織というものが日本に初めていわゆるシビリアンコントロールというものを防衛庁の組織内において確立するための機関としてきたときに、これをどういうふうに運営していくかということは非常にむずかしかったわけであります。そこで、いろいろ勉強いたしまして、慣行として、現在のところがまずわれわれの判断としては最適のものであるということになっておるわけであります。その点私のことばが足りなかったと思いますが、幕僚監部と内部部局とがどういうふうにそれぞれの責任範囲、分担をもちまして仕事をするかということを微に入り細をうがって規定をすることは、実はこれは不可能でございます。  一例を申しますと、たとえば防衛局というものと統幕事務局というものとの関係を見ますと、防衛局行動基本という責任がございます。と同時に、統幕事務局というものは、統合幕僚会議補佐するたてまえにおきまして、先ほど大臣からも御説明がございましたように、専門の立場においての最高のものでございます。そこにもやはり基本的なものがあるわけでございます。したがって、制服といわゆる内部部局との間の事務分掌をどうするかということは、繰り返して恐縮でございますが、実際にいろいろな仕事をやってみて、そこにおのずから常識的な一つの線が生み出されるであろうということで、この組織は発足したわけでありまして、今日までそれで来ておるということを申し上げた次第でございますので、ひとつその点はぜひそのように御了解願いたいと思います。  なお、伺っておりますと、内部部局のほうにすべて起案権を持たしたならばシビリアンコントロールが確立するというふうに考えられますようなおことばもございますが、内部部局というものは単にせびろを着ておるということだけで、いわゆるシビリアンコントロールのためにいろいろ考え、事柄を立てていくだけの能力を持っておるというものでもございません。おのずからそこに勤務します者の経歴であるとか素質であるとかということを考えてまいりますと、当然に各部隊におきますいろいろな経験を持った者、持たない者、そこにはおのずからそれぞれの責任範囲が分かれてくる、また分かれてきてそれぞれの立場の違うところで単一の大臣補佐する、そこにいまの防衛庁の組織の意味があるということを私ども当時立法者からも伺っております。またアメリカその他の国々におきましても、そのような立場で事柄が処理されている次第でございますから、各幕僚監部起案権があるからシビリアンコントロールが侵される危険がある、それをかりに内部部局に持ってくればそういう危険がなくなるというものではないと私ども考えております。この点はぜひそのようにお考えの点を、もう一度、いまの幕僚監部と内部部局とのそれぞれの守備範囲、責任範囲の分担の問題でございますから、私の申しましたような点もお考えいただきましてひとつ御検討いただきたい、このように考えておる次第であります。
  65. 永末英一

    永末小委員 私は企画作業というものを内局だけでやったらいい、そんなことを言っているのじゃございません。私の問題にしておるのは、シビリアンのほうは事務次官を頂点として内局があるわけです。ところが統幕幕僚監部のほうは、同時に企画と実施とをやっておる。ここに問題がある。制服部門において、内局が行なうべき企画と同等のものをやる権能を与えておいて、しかも実施権をもまた持たしておる。そういうところに問題があるということを申し上げておるのであります。したがって、実施なら実施、企画なら企画と、制服の中でも分けられるコースが当然考えられるべきであると私は思う。諸外国でもそうやっている例がございましょう。そのことがはっきりしないから、三矢研究の中で国事事項に対して現に統幕なり幕僚監部の参加員がやったじゃありませんか。そのことがはっきりしていないからやったのです。かってに研究し思いつきでやったのじゃありません。その辺の限界がはっきりしていないからそれが行なわれた。そこで私が申し上げておるのです。  長官、いま私が申し上げておることをお聞きになってどうですか。統幕あるいはまた幕僚監部、それが企画と実施とをいまの形で持っていることがシビリアンコトロールを全うする上に妥当だとお考えか、伺いたい。
  66. 小泉純也

    小泉国務大臣 永末委員からシビリアンコントロールの問題についていろいろと御心配をいただき、また建設的な御意見をお述べいただいていることに対しましては、私傾聴をし、大いにわれわれとしても考えなければならないというふうに先ほどから承っておるわけであります。  いまの統幕、各幕というものが企画も実施も両方やることはどうかというような面について、掘り下げての御研究でございますが、私のほうからも官房に対しまして、こういう面について十分研究調査をするように指示しておりまして、今後いままでのあり方で十分であり万全であるとは私どもも決して考えておらないのでございます。いろいろ三矢事件を契機として各委員から述べられました貴重な御意見を参考とし、今後われわれとしても十分検討をしなければならない。企画と実施というようなものについての限界その他いろいろな面に、あるいは各幕の企画について内局が参加してやるべき場合もありましょうし、そういう面についていろいろ具体的な研究調査をしたらどうかということを私は指示いたしまして、いま研究いたしておるわけでございます。できるだけ永末委員が御心配になったような点をなからしめるよう、私ども今後努力をしていきたいと考えております。
  67. 永末英一

    永末小委員 防衛庁長官は時間をお急ぎのようでございますから、防衛庁長官には一言だけ伺いたい。  先ほど明らかになりましたように、防衛庁訓令第三十八号によって、七種数ものいろいろな命令ないし命令類似のものが行なわれておる。これは、自分命令権があると言われたところでは独自の創意を発揮して命令するでしょう。しかし防衛庁全体として、われわれ一般国民にはわからぬようないろいろな形の形式があるということは、はなはだどうも雑然としていて、どこかでやはりシビリアンコントロールを逸脱するおそれがあるのではないか、こういう疑いを持たせるのです。そこで、そういう命令をもっと筋の通ったように整理する、こういう御必要はお感じになりませんか。
  68. 小泉純也

    小泉国務大臣 もちろんどういう事務でも簡明と申しますか、簡素なことが一番望ましいことでございまして、できるだけ数を少なくして簡素にすることを希望いたしますが、現在の段階においては、いろいろ実際にやってきた結果、またいろいろな面から考えて、この程度以上整理して数を少なくするというようなことは、実際の任務完遂の上において支障があるというようなことも聞いておりまして、現在の段階においては、いまのような多数の命令があることもやむを得ない。またこれでやっていく以外に、特別これを無理してこれ以上数を少なくするということは、かえって支障ができるというふうに私は聞き及んでおるわけでございまして、もちろん今後そういうような努力と研究は続けていかなければならぬのでございますが、いまの段階において直ちにこの数を減らそう、あるいはまた減らし得るというふうには思っておりません。
  69. 永末英一

    永末小委員 防衛庁長官はけっこうです。  内局長官補佐するについて、いろいろ国事事項のことを考えられるだろう。しかし、内局としては、他省にわたるものについては希望はできるかもしれませんが、それをきめることはできない。そういう問題については、内局はどこできめるべきだと考えておりますか。
  70. 小幡久男

    ○小幡政府委員 その問題の内容にもよると思っております。たとえば装備関係でございますと、装備局が原局になりまして、そこで起案いたしまして、各幕の要求を消化いたしまして長官決裁を経て関係省に送付する、そういう段取りになりまして、問題の性質によりまして装備、人事、経理みな分かれておりますから、その仕分けによってやりますが、取り扱う場所は内局というふうに考えております。
  71. 永末英一

    永末小委員 私の伺っておるのは、自衛隊の中の装備なんということを聞いておるわけじゃないのです。三矢研究で明らかになったように、たとえば経済に関する統制であるとか、あるいはまた要員の確保に関する問題であるとか、小さくは灯火管制というような問題であるとか、船の運航問題、飛行場の使用の問題、その統制の問題、こういう問題については他省に関係のあることだ。それを一体内局起案をしてやり得るものかどうか、この点の考えを伺いたい。
  72. 小幡久男

    ○小幡政府委員 そういう事項内局でも研究はいたしますが、それらにつきましては、やはり国防会議事務局長に連絡するということになっております。
  73. 永末英一

    永末小委員 国防会議事務局長がお見えでございますが、いま官房長が申しましたように、防衛庁としては内局でいろいろなことを考える、しかし、そういう防衛庁以外の省に関係のある問題、こういうことになりますと、これは国防会議の所掌事務だと防衛庁の官房長は考えておるわけです。  そこで、ひとつ事務局長に伺いたいのでありますが、国防会議三矢研究事件をごらんになって、つまり私どもからいえばああいうことは、国会に関することなんかやってもらう必要はございませんが、国防会議のほうが実は考えておったのではないかと思うのですが、国防会議はあの事件をごこらんになって、一体自分の所掌事務としてやるべきこととお考えか。どうお考えですか。
  74. 北村隆

    ○北村政府委員 お答えいたします。  三矢で問題になった問題は、一応想定として承知しておるのでございますが、不幸にして有事の処置をとらなければならぬというような段階の問題は、もちろん国防会議で政治的レベルで判定する問題だというように考えております。
  75. 永末英一

    永末小委員 昭和三十八年に防衛庁の中の統幕でそういうことを研究したんですが、国防会議研究されたことはありますか。
  76. 北村隆

    ○北村政府委員 その必要は感じておりますが、現段階ではまだ基礎的な研究の段階を出ておりません。
  77. 永末英一

    永末小委員 統幕会議事務局は、有事の場合に自衛隊がどういうような体制のもとで動けるだろうか、それがきまっていないから三矢研究の必要を感じてやった、こういうことをこの委員会でも御答弁があったわけです。ところが、われわれの見るところによりますと、そんなものは統幕会議でやるべきことだと思わない。ところで、いまの事務局長お話では、必要は感じておるがやっていない。それでは、国防会議というのは、一体有事の場合というようなことは何も研究せぬでよい、こういうことでやっておられるのですか。
  78. 北村隆

    ○北村政府委員 さいぜんもお話ししましたとおり、研究は原則として必要であろうと思っております。ただいまの問題は想定でございまするから、その想定の範囲と同一というわけではございませんが、有事の場合の研究は必要であろうと存じております。
  79. 永末英一

    永末小委員 昨年の七月九日付の朝日新聞によりますと、三十八年の十二月二十五日に国防会議議員懇談会で次のようなことを取り上げた。「国防会議を国防全般に関する唯一の政策機関とすべきだ」こんなものは一体三十八年の末に至って初めて懇談会できめるような問題ですか、伺いたい。
  80. 北村隆

    ○北村政府委員 一昨年の十二月二十五日、この新聞を私いまタイプして持っておりますが、これで、国防会議はなお一そう広範な問題について長期の見通しのもとによく研究し、勉強しなければならぬじゃないかというような御意見が出たのは事実でございます。それまでは、国防会議というものは、大体一つの問題を決定する場合、たとえば二次防というような場合には一月、二月の間に六回も七回もお開きになるというような問題もございまするが、平時におきましてはそれほど開かれておりません。しかし、平時においても、国防の重要性にかんがみまして、十分検討しておこうじゃないか、こういうような御議論が出たことは事実でございます。
  81. 永末英一

    永末小委員 私は、国防会議は、先ほど事務局長が申されたように、一たん有事の場合に一体政府としてはどんな体制をとることが望ましいか、こういうことを御研究になっておるべきはずだと考えておる。ところが、いまのお話によりますと、必要は感じておるがやってない、議員懇談会では国防についてひとつ総合的にやろうじゃないかという話が出たというのでありますが、具体的に国防の基本政策であるとか、あるいはまた第二次防衛計画であるとか、これは国防会議の決定事項ですからやらなくちゃなりませんでしょう。しかし、現在の自衛隊が動こうとする場合に、法律上は防衛出動や治安出動がきめてあるけれども、それに動こうとする場合にはもっと埋めてもらわなければ動けない、こういう欠陥に実は政府側が気づいて三矢研究をやったと私は思うのです。それならば、国防会議が同じ問題をもっと切実に考え研究すべきだと私は思う。どうしてそれをやられなかったか。どこかやられない原因がありますか。
  82. 北村隆

    ○北村政府委員 有事の際に処して一番大事なのは、やはり防衛実力の増勢及びこれを支援する体制だと思いますが、現段階におきましては、まだ二次防の中途でございまして、防衛実力を増勢するというところに重点があり、また四十二年からはそれに引き続く長期の計画も出てくることと思います。そういう基本的な諸問題につきまして、基礎になるようなものをまず検討することが結局現在中心になっております。第二の問題につきましては、侵略の様相、規模等によりまして支援体制の必要限度も区々に分かれるというような問題もございまして、なかなかちょっと着手しにくいというような問題もございます。そういう観点で、現在のところはむしろ増勢途上における基本的な問題が主として取り上げられておりまして、この有事の場合の処置という問題については、ごく基礎的な研究にとどまっておるというような段階でございます。
  83. 石澤芳次郎

    ○石澤説明員 ただいまの局長の説明に対して若干補足説明いたします。  永末先生の御指摘で、国防会議において、あるいは国防会議事務局において三矢研究における想定のような問題、経済統制とか労務統制とか船舶統制とか、そういう問題についてやっておれば三矢研究においてああいうふうに取り上げられなかったのじゃないかという御指摘でございますが、防衛庁内部でやっております図上演習の想定という問題と国防会議で決定すること、あるいは国防会議事務局研究するというようなことは若干性格が異なるので、その御説明を申し上げたいと思うのですが、国防会議で経済統制とかあるいは労務統制とか、そういうような統制的なことを立法措置として取り上げなければならないという場合は、内閣レベルにおきましてそういうことが諸般の事情を総合的に判断して必要であるという認識に立って、しかも内閣レベルにおいて日本の実態に即して具体的にこれを決定するというのが国防会議の決定であり、またその以前における国防会議事務局研究でありますので、三矢研究における想定というものとは、大げさに言えば本質上違うということを御理解願いたい、こう思います。
  84. 永末英一

    永末小委員 私は、三矢研究の想定などというものは、そこに問題があるのではなくて、おそらく研究をやった人々は、自分たちが動く場合に一体現在の法制上何が足らぬかということを研究したいと思ったと思うのです。私どもは、あの想定にあらわれたようなことはシビリアンの側からいいますとよけいなことであって、あんなこととは別問題に、有事の際に自衛隊が動けるか動けないかということは国防会議として研究すべき問題だと思うのです。事務局長は、いま実力の造成が最大の課題だと言われますが、実力なんというものは相対的なものであって、どの程度の実力があれば十分だ、そんなことはないと思います。あるいはどんどん少なくしていってもいいかもしれない。あくまでこれは相対的なものである。国防会議としては、防衛庁ではできないこと、各省にわたること、こういうことが一体どこに問題点があるか、それぐらいのことは国防会議でやっていただかなければ国防会議の存在意義はないと思うのです。ところがいまのお話ですと、それは内閣のレベルできめていかなければできないんだ、こういうことだと思うのです。事務局としては自分で発想して自分でやることはできない仕組みになっておりますね。
  85. 北村隆

    ○北村政府委員 いや、たてまえ上やれないたてまえになっておるわけではございません。当然研究をする必要があると存じております。ただ、国防会議の全般としましては、非常に幅が広い問題で、各省にわたる問題であり、事務局自身としても当然研究をいたします。しかし、その支援体制は各省にもわたる相当大がかりな問題にもなろうかと思います。その基礎的な研究を現在考えておる程度でございまして、各省提携して——各省といいましても、現段階におきまして、有事だけにつきましては各省についてまだお話し合いをしておるというような段階ではございません。
  86. 永末英一

    永末小委員 国民が心配しておりますのは、アメリカが現在北ベトナム爆撃を、いままでのあらゆる国際慣行を無視してどんどんやっておる。こういうものはわが国に波及するのではないか。いまの内閣はアメリカの北爆に対して、何にも言わずに傍観しておる。しかも、わが国はそのアメリカと安保条約によって結ばれておる。軍事基地を貸しておる。こういうことを非常に心配しておるわけです。ところが、防衛庁の制服のほうは、視点は違うけれども、そんなことを考えながら三矢研究をやってしまった。国防会議はそういう必要を感じながら何もしない、こういうことですか。
  87. 北村隆

    ○北村政府委員 国際情勢の変転及びそれが国内に与える世論の動向というものは、終戦以来各高低がございます。あるいは雪解けムードとか平和ムードとか、あるいはキューバ問題のような緊張の問題とかいうもので、いろいろ国内の一般背景なり世論が左右されています。最近の情勢は、一応は西方陣営、ヨーロッパ面が落ちついてきまして、むしろ緊張状態が極東に移ってきたということは一昨年以来の情勢でございましたが、しかし、われわれが今日のような非常事態について行政をすぐ用意するというような背景なり段階には立ってなかったように存じておる次第でございます。
  88. 永末英一

    永末小委員 私は事務局長から国際情勢の判断を伺っておるのじゃなくて、私の伺いたいのは、防衛庁の制服側は制服側なりに必要なことをやったわけです。しかも二年前にやったわけですね。ところが、国防会議事務局長は、はなはだ高邁なる国際情勢の判断をやっておられますが、一体自衛隊がどうやって動くのかということは、防衛庁自体の問題でもあると同時に各省にわたる問題があると思う。そういう問題を統幕会議の中でやっているところに問題がある。あるいはそれをやらした現在の機構に問題がある。防衛庁設置法の第六十二条に国防会議のことが書いてございますが、その六十二条の三項に「国防会議は、国防に関する重要事項につき、必要に応じ、内閣総理大臣に対し、意見を述べることができる。」必要に応じの必要を感ずる人はだれですか。
  89. 北村隆

    ○北村政府委員 人はだれかといわれますと、議長としての内閣総理大臣の判断が中心となると思います。
  90. 永末英一

    永末小委員 いままでの御答弁を伺っておりますと、事務局長としては有事の場合のことを研究する、そういう必要があると考えておったけれども、実際は発動していない。しかもこの必要を感ずるのは内閣総理大臣、こういうことになりますと、いままでの内閣総理大臣はそういうことを一つも必要と感じなかったから、国防会議をしてそういう研究をせしめなかった。せしめないことがはっきりしているので、防衛庁の制服がかってにやってはならぬところまで研究をやった、こういうことが三矢研究だと思われるが、事務局長はどうお考えか。
  91. 北村隆

    ○北村政府委員 現在まで御諮問がなかった理由につきまして、私が推測してとやかく申し上げることはちょっとできぬと思います。ただ事務局といたしましては、先先御存じのとおり、さしあたりの侵略の現地的な措置が現在の自衛隊法で一応できることになっておりますが、しかし、その侵略の規模程度によりまして国家の支援体制も異なるのでございます。そういうことで、その点につきまして、どういうような侵略の程度であれば今日の経済情勢からして行政的措置で済むか、あるいは立法を必要とするかというようなことは、まず防衛庁からの要望をもとに、また経済実情等も勘案して対策を研究していかなければならぬ、こういうような段階になろうと思います。そういう点につきまして、先生の御意見はまことにごもっともでございますので、その侵略の様相に応じて将来内局におかれてはどの程度の要求が出されるか、これをわれわれも承って、将来密接に防衛庁と提携して研究していきたい、こう考えております。
  92. 永末英一

    永末小委員 内局三矢研究報告書をもらいましたね。もらったときにおそらくその内容を見られたと思うのです。報告書は配付されたはずです。それを聞きましょう。配付されましたね。だからだいぶ前にそれを見ましたね。
  93. 海原治

    海原政府委員 報告書というものはございません。先般来申し上げておりますのは、研究の問題、これに対する答案、その答案をつくるに至った、答案を作成した者の考え方意見、そういうものが取り合わされたものはございます。これに第一部、第二部とある。第一部のほうは要約であり、第二部がそのすべてであるということを参議院の予算委員会の段階におきまして御説明してございます。そこで、私どもの手元にもらいましたのは、従来御説明しておりますように、幕僚研究が主たる目的でございますので、その結果どういうことであったかということを要約いたしました第一部のほうをもらっております。
  94. 永末英一

    永末小委員 この三矢研究昭和三十八年の十二月九日に全部の研究取りまとめを完成しました、そうですね、防衛局長
  95. 海原治

    海原政府委員 日付の点はたぶんその日付であったと思いますが、その日はいわゆる全部を要約したものが作成された日付でございます。
  96. 永末英一

    永末小委員 あなたが第一部をもらったというのは、五分冊のうちの第一分冊をもらった、こういう意味ですか。
  97. 海原治

    海原政府委員 これは、第一部が全部の要約でございます。第二部がそのすべてでございまして、第二部が四分冊になっております。私どものほうにもらいましたのは第一部の要約版でございます。
  98. 永末英一

    永末小委員 第二部以下のところでは幕僚のいわゆる答案が書いてある。第一部は大多数の人々の意見の合致しているところであるから、取りまとめて編集をした、こういうものですね。
  99. 海原治

    海原政府委員 この点はそういうものではございません。第一部というものは、こういうふうなことで研究を行なったということを——取りまとめというおことばでございますが、これを要約したものでございまして、関係者意見が合致したもの、大部分の意見が合致したものというのではございません。こうこうこういうような研究を行なった、こういうような問題があった、これについてはこういうふうな考え方が述べられた、こういう形の要約のものです。
  100. 永末英一

    永末小委員 要約というのは、いろいろな答案が出てきた、しかし三矢研究としては大体こういうことが研究の成果であった、そういうことが書いてあるのがわれわれの感覚としては要約だと思う。それは何ページですか。
  101. 海原治

    海原政府委員 これも従来からそのつど申し上げておりますが、その研究意味についての考え方が、きわめて遺憾なことでございますが、私どもの御説明しておりますところと先生方の解釈しておるところとは違っております。したがって、いまの問題につきましてもまた別の考え方が出てくるわけです。私どもが従来から申し上げておりますように、これはあくまでいろいろな事態というものを想定しました幕僚としての研究に主たる意味があるわけです。成果というおことばもございましたけれども、その結果はやがて逐次何らかの形で取り入れられていくものである。しかしながら、直ちにその図上演習の結果が年度の統合計画その他に反映するものではないということを一貫して御説明しております。これはそういうものであるということにお考えをいただきますと、いまのような御質問は出てこないと思います。年度計画に影響があるとかなんとかいう前提のもとの御質問でございますと、私ども従来から申し上げておりますことをお答えする以外にすべはないわけでございます。ひとつその辺の事情を御了承願いたいと思います。
  102. 永末英一

    永末小委員 私は青森のことを聞いておったらあなたは長崎のことを答えておる。そんなことは答弁じゃないのです。私の伺っておるのは、第一部というのはあなたは要約だと言われた。要約だというのなら——いままでの御答弁は、岡田委員が資料として提出されたものは答案であって、一幕僚の個人的な見解だ、これで突っぱねておられるわけです。しかし私どもは、いまあなたの御答弁のように、第一部第一分冊というのはこの三矢研究の要約だ、こういうことであるから、それは三矢研究に参加した者が、大体こんなものだ、こういう考えだということをまとめたものだと思わざるを得ない。そんなものでなかったら要約とは言えないと思う。したがって、それは何ページであったかということを聞いておるのであって、お答え願いたい。ほかのことは要りません。
  103. 海原治

    海原政府委員 ページ数をお答えいたします前に、要約ということばを使いましたので、しかもその内容が違っておりますので、念のために申し上げます。  私どもはあくまで先生のおっしゃるような意味で要約ということばは使っておりません。  ページ数は、第一部のほうは一四一ページでございます。
  104. 永末英一

    永末小委員 その一四一ページの中には、元来問題となっておったような国事事項に関する報告は載っておりませんか。
  105. 海原治

    海原政府委員 おことばを返すようでございますが、第二部のほうにも国事事項に関する報告という形のものはございません。したがって、それを要約した第一部にもございません。
  106. 永末英一

    永末小委員 私は題目のことを言うているのじゃないのです。内容について統幕がいろいろ研究した、だから第二分冊以後でいろいろな研究をやった、その一部分に、あなたが認めたように一幕僚の見解かどうか知りませんけれども国事事項に関する研究の答案があったわけです。そういうものが一切第一部には盛られていなかったとは私どもには思えないわけです。そこで、第一部の中に、項目はどうでもいいのですが、その内容があったかどうかということを聞いておるのです。
  107. 海原治

    海原政府委員 私の記憶が正しければ、第一部には、先般来私が御説明しておりますように、自衛隊の出動のためには所要の法制の整備が必要であるという形の希望意見が表明されていることは事実でございます。
  108. 永末英一

    永末小委員 委員長にお願いしたいのですが、そいつはひとつ見せていただきたいですね。この委員会は資料提出云々、こうあったのだけれども、つまり第一部というのは、三矢研究の何であるかを知るためにはなはだ重要な資料だと私は思う。一幕僚研究、これはいろいろ差しさわりがあるから困る、こう言うかもしれませんが、第一部については三矢研究をやった当事者が、大体これが全体の概要である、要約である、百四十数ページのものをまとめて内局に渡しておる、こういうものは、委員長見せてもらえませんかな。
  109. 松野頼三

    松野委員長 よく相談してみます。
  110. 永末英一

    永末小委員 私はこれは強く——国民の前にこれは見せるべきだ。いままでは一幕僚研究だと逃げておった。しかしこれはそうではない。三十八年の十二月に完成したということで、三矢研究記事という名前をつけてあなたのところにいったのですね。
  111. 海原治

    海原政府委員 題目は私は記憶しておりませんが、先ほど来の先生のおことばを承っておりますと、第一部というのは、あたかも統合幕僚会議というものが、あるいはその事務局というものが公式版を編さんして配ったようにお考えになっておられるかもしれませんが、これはそういうものではございません。繰り返し申し上げておりますが、演習の登載部は、こういう演習をやりましたという第二部は、各幕僚のつくりました答案の取りまとめ並びに参考記事でございますが、それをさらにまた要点だけをつまみ出したものでございますから、第一部はそういう表に出して差しつかえないものである、要約したものである、エッセンスである、こういうふうにお考えいただくことはきわめて実態とは違います。ひとつこの点は御了承願いたいと思います。
  112. 永末英一

    永末小委員 あなたは先ほど自衛隊行動するについての法令上の足らざるところ、そういうことを研究した、こういうことだ、そういうものは第一部にある、こう言われた。私は見たいですね。委員長、これはぜひ見たいですね。私は一人一人の幕僚の答案なんかはその意味ではどうでもいいと思う。しかし、これだけはひとつ見せていただきたい。見せていただかなければ私は三矢研究はわからぬと思う。これは強く要求しておきます。与党にも相談に乗っていただいてやっていただきたい。そこでこれは要求しておきます。  ひとつ防衛局長に伺いたいのは、そういうことが第一部に書いてあるということをあなた見て、こんなことを言っておるが、国防会議としては研究してみたらどうか、こういう御相談を国防会議にされましたか。
  113. 海原治

    海原政府委員 国防会議のほうに御相談はいたしておりません。
  114. 永末英一

    永末小委員 なぜ相談しなかったのですか。
  115. 海原治

    海原政府委員 従来繰り返して申し上げておりますが、あくまで関係幕僚図上研究の結果でございまして、そういうものは直ちに防衛庁の施策として取り上げるものではないということを従来から御説明しておりますが、そういうものでございますので、私としては、防衛局長としまして取り上げる必要のないものである、当時において、したがいまして国防会議に連絡する必要のないものである、こう判断したわけであります。このことをもちましても、私が従来から申し上げておりますように、直ちに年度計画に反映するようなものではない、あくまで幕僚研究が主であるということがおわかりいただけると思います。
  116. 永末英一

    永末小委員 幕僚研究とあなたはあくまで言われるけれども、第1動から第7動まであげて、克明に時々刻々の移り変わりを考えながら研究したことは事実です。しかも、そのいわば結論的なものを受け取られ、国防会議に相談する必要がないというあなたの判断、私はそのあなたの判断はおかしいと思う。国防会議事務局長に伺いたいのだが、そういうことを防衛庁内局が知っておっても全然知らせてこないというようないまの機構が、国防政策の大本を立てるということでつくられておる事務局の長としてあなたは妥当だとお考えか、伺いたい。
  117. 北村隆

    ○北村政府委員 現在の問題が単に想定の報告であると承知しております。それにつきましては、あえて私報告を受ける必要はないと思っております。
  118. 永末英一

    永末小委員 事務局長、私が申し上げておるのは、ある想定の研究をやったとあなたは御了解になっておるが、そうじゃないんです。何か図上演習ですから、想定がなくては考えられない。想定は立てたでしょう。しかしあくまで目的は、自衛隊が有事の場合に動くについて、現行法令上不備な点がある。これをどうしようかというのが、私はその部門に関する研究の焦点であったと思う。それだけじゃないと思いますよ。したがって、そういう問題というものは、一体どこでやるのか。おそらく海原防衛局長は、自衛隊の中でやっちゃいかぬのだと思ったかどうか知らないが、あなたのところに言わなかったということを言っておるわけだ。しかしあなたのほうとしては、各省にわたる法令、しかも国会事項にかかわるようなもの、こういうものを統幕でやっておる。そういう彼らが必要と感じておるのは、あなたも必要と感じられておるはずだと私は思う。そうでしょう。それにもかかわらずあなたのほうが発動しなかったというのは、総理大臣が諮問しなかったからだ、総理大臣が必要と考えなかったからだ、こういう御答弁であるなら、国防会議のやらなくちゃならない仕事について、国防会議議長である総理大臣ははなはだ怠慢だと私は言わざるを得ないと思う。  委員長、国防会議の運営について、私は総理大臣の出席を要求したい。
  119. 松野頼三

    松野委員長 委員長からお答えいたします。いま突然の御要求ですから、直ちに私がここで御返事するわけにまいりませんので、ただいまの御要求は拝聴して、後刻御相談いたします。
  120. 永末英一

    永末小委員 私はシビリアンコントロールというところに焦点をしぼりながら、三矢研究実態について質問してまいりました。しかしきょうの質問の結果、一つには、三矢研究班が一応取りまとめた要約、その第一部というものは委員会としてぜひこれを見る必要があると考えまして、これを委員長に要求をいたします。第二に、シビリアンコントロールの大もとは、私は国防会議においてその原則を立てるべき問題だと思う。ところがこの問題について、内閣総理大臣ははなはだ怠慢である。したがって、一体国防会議というものに対して内閣総理大臣がどういうような姿勢で何を考えているかは、この委員会でぜひとも聞く必要があると思って、内閣総理大臣の出席を要求いたしました。との二点について委員長はしかるべきお取り計らいを願って、その後に私はまたこれについて質問したいと思います。本日の質問はこの程度で留保しておきます。
  121. 松野頼三

    松野委員長 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午前十一時五十四分散会