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1965-04-06 第48回国会 衆議院 法務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月六日(火曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 加藤 精三君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 坂本 泰良君 理事 細迫 兼光君       賀屋 興宣君    四宮 久吉君       千葉 三郎君    馬場 元治君       濱野 清吾君    早川  崇君       森下 元晴君    井伊 誠一君       神近 市子君    志賀 義雄君       田中織之進君  出席国務大臣         法務大臣    高橋  等君  出席政府委員         検     事         (刑事局長)  津田  實君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁交通局         交通企画課長) 宮崎 清文君         検     事         (刑事局刑事課         長)      伊藤 榮樹君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 本日の会議に付した案件  刑法の一部を改正する法律案内閣提出第一〇  二号)  経済関係罰則整備に関する法律廃止する法  律案内閣提出第一二八号)      ————◇—————
  2. 加藤精三

    加藤委員長 これより会議を開きます。刑法の一部を改正する法律案及び経済関係罰則整備に関する法律廃止する法律案の両案を一括議題といたします。
  3. 加藤精三

  4. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 刑法の一部を改正する法律案について、その趣旨説明いたします。  今次の刑法の一部を改正する法律案は、最近における交通事犯実情等にかんがみ、刑法第四十五条後段併合罪となる罪の範囲禁錮以上の刑に処する確定裁判があった罪とその裁判確定前に犯された罪とに限ることとするとともに、同法第二百十一条の罪の法定刑に五年以下の懲役刑を加え、かつ、その禁錮刑長期現行法の三年から五年に引き上げようとするものであります。  まず、刑法第四十五条後段改正についてでありますが、近時道路交通法違反事件は急激な増加を示しており、たとえば、昭和三十八年に全国第一審裁判所において有罪告知を受けた人員は約四百万人に及ぶのでありまして、その大部分は、道路交通法違反にかかる罪について即決または略式裁判罰金以下の刑の告知を受けたものであります。しかして、現行刑法のもとにおいては、これら道路交通法違反の罪により罰金以下の刑に処した確定裁判であっても同法第四十五条後段確定裁判に含まれますので、その前後に犯された二個以上の罪が右の確定裁判のあった後に審判される場合には、これら二個以上の罪の併合罪関係は右の確定裁判により遮断され、必ず二個以上の刑に処することとなるのであります。このために、裁判及び検察の手続段階においては、右のような確定裁判の存在の調査を的確に行なっており、これがための事務量はまた少なからぬ状況にあるのであります。  ところで、併合罪処断に関するわが刑法原則から考察いたしますと、刑法第四十五条後段規定により数個の罪の併合罪関係を遮断することは、これらの罪がいずれも禁錮以上の刑に処すべき罪である場合に最も実質的な意義を持つものであり、罰金以下の刑に処する裁判によってはこのような併合罪関係を遮断しなければならないものではなく、むしろ、罰金以下の刑に処する確定裁判によって併合罪関係を遮断することは、刑事審判手続において、また、刑の執行手続において複雑さを加え、犯人不利益となる場合も生ずることとなりますので、この際、同条後段確定裁判禁錮以上の刑に処するものに限るよう改正しようとするものであります。最近における道路交通法違反の罪により罰金刑に処せられる者が激増する傾向を考慮いたしますとき、早急に右のごとき改正を行なうことは、現下における刑事裁判の迅速円滑な運営をはかる上において緊要のことであると存ずる次第であります。  次に、刑法第二百十一条の改正についてでありますが、最近における交通事故とこれに伴う死傷者数増加の趨勢は、まことに著しいものがあり、政府におきましては、かねてからこのような事態を重視して交通対策の樹立とその推進につとめてまいったのでありますが、近時の自動車運転に基因する業務過失致死傷事件及び重過失致死傷事件実情を見まするに、数において激増しつつあるのみならず、質的にも高度の社会的非難に値する悪質重大事犯が続出し、法定刑最高限またはこれに近い刑が裁判において言い渡される例も次第に増加しつつあるのでありまして、この際、この種事犯中特に悪質重大なものに対してより厳正な処分を行ない得るものとするよう必要な法改正を行ないますことは、今日における国民道義的感情に合致するばかりでなく、国家の刑政から見ましても、きわめて緊要なことと考えられるのであります。  以上が刑法の一部を改正する法律案趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。  次に、経済関係罰則整備に関する法律廃止する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  この法律案は、最近の経済事情等にかんがみ、経済関係罰則整備に関する法律廃止しようとするものでありますが、これに伴い、同法に規定する団体のうち、その役職員にかかる贈収賄罪規定を存置すべきものと認められる日本航空株式会社電源開発株式会社及び商工組合中央金庫の三団体については、この法律案附則において、それぞれの関係法律改正して、所要の規定を設けようとするものであります。  まず、経済関係罰則整備に関する法律廃止についてでありますが、この法律は、昭和十九年二月各種経済団体役職員にかかる贈収賄等に関する統一的刑罰法規として制定されたものであります。しかし、その後、戦後における経済情勢及び社会情勢の激変に伴い、昭和二十二年十二月法律第二百四十二号をもってこれに大幅な改正を加え、自後、この法律の別表につき数次にわたる一部改正を経て今日に至ったものであります。しかして、この法律がその目的としたところは、制定当初においては、主として戦時経済統制の円滑な遂行に寄与することに、また、戦後においては、主としてわが国の再建に必要な経済秩序維持等に資することにあったのであります。この間、わが国経済は年々回復の歩みを重ね、特に最近におけるわが国経済情勢及び社会情勢は、戦時及び戦後におけるそれと全くその様相を一変するに至ったと申しても過言ではないのであります。このような事情から、現にこの法律中に規定されていた各種経済団体のうち、相当数のものがすでに消滅し、あるいは本法から削除されており、今日においては、もはや各種経済団体役職員にかかる贈収賄等罰則をこの法律によって統一的に規定する意義はほとんど失われたものと認められ、この法律は、おおむねその所期の使命を果たし終わったものと考えられますので、このたびこれを廃止しようとするものであります。  次に、この法律案附則規定した日本航空株式会社法電源開発促進法及び商工組合中央金庫法の各一部改正について御説明申し上げます。  前述のように、経済関係罰則整備に関する法律廃止することとするのでありますが、この法律中に規定されている日本航空株式会社電源開発株式会社及び商工組合中央金庫の三団体は、いずれも政府から相当額の出資を受けて重要な国の施策に関する業務を行なうものとして、高度の国家的または公益的性格を有するものであります。しかも、これらの三団体は、主としてこのような特殊的性格に基づいてこの法律中に規定されたものと考えられるのでありますが、他方、この三団体とその組織及び機能において類似すると認められる各種会社等については、現にこの法律とは別に、それぞれの関係法律中において、その役職員にかかる贈収賄罪規定を設けているのが通例であることにかんがみますれば、これら三団体については、経済関係罰則整備に関する法律廃止すると同時に、それぞれの関係法律改正して、これに右と同様の罰則を設けることとするのが相当と考えられるのであります。したがって、日本航空株式会社法電源開発促進法及び商工組合中央金庫法の各一部を改正し、これらの団体役職員に関する贈収賄罪規定を、それぞれ当該法律中に設けることといたしたのであります。  さらに、この法律案附則に、経済関係罰則整備に関する法律廃止前にした行為に対する罰則適用については、同法の廃止後もなお従前の例による旨の経過規定を設けることとしている点について御説明申し上げます。各種行政取り締まり法規に見られるようないわゆる行政罰則は、その制定または改廃が、通常経済情勢または社会情勢推移等に応じて行なわれるものであり、たとえ罰則廃止されても、その廃止前になされた違反行為の可罰性に関する評価そのものには何らの変更がないと考えられること等の理由により、その罰則廃止するに際しては、廃止前にした違反行為廃止後もなお処罰するものとするため、罰則に関する経過規定を設けることが通例となっているのでありまして、このたびの経済関係罰則整備に関する法律廃止につきましても、事情は全く同様と考えられますので、右のような経過規定を設けることといたしたのであります。  以上が、経済関係罰則整備に関する法律廃止する法律案趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  5. 加藤精三

    加藤委員長 次に、両案について逐条説明を求めます。津田刑事局長
  6. 津田實

    津田政府委員 まず、刑法の一部を改正する法律案について逐条の御説明を申し上げます。  第一項は「第四十五条後段中「確定裁判」を「禁錮以上ノ刑ニ処スル確定裁判」に改める。」というものであります。  この改正は、刑法第四十五条後段併合罪となる罪の範囲を、禁錮以上の刑に処する確定裁判があった罪とその裁判確定前に犯された罪とに限るものとしようとするものであります。  元来、数個の罪について訴追された被告人に対しまして有罪裁判をする場合に、一罪につき一刑を科する原則をとりますならば、犯罪の数だけの有期自由刑を併科することとなって犯人に過酷な結果を来たし、また死刑死刑無期刑無期刑を併科することとなって、刑の執行を不能ならしめる等、不当な結果を生ずることとなるのでありまして、諸国の立法例におきましては、このような場合には、併科主義を緩和いたしまして、後記のいわゆる吸収または制限のある加重主義適用し、数個の罪の全体を評価して一刑を科することとしているのであります。  わが刑法におきましては、確定裁判を経ない数個の罪を同時に審判して有罪告知をする場合は、これを第四十五条前段の併合罪として、これに科すべき主刑につきまして次のような原則によっているのであります。  まず第一は、いわゆる吸収主義に関しまして、一罪について死刑に処すべきときは、他の刑を科さない。これが第四十六条第一項であります。また、一罪について無期懲役または禁錮に処すべきときは、罰金及び科料以外の他の刑を科さない。これが第四十六条第二項であります。第二に、いわゆる制限のある加重主義に関しましては、有期の懲役または禁錮に処すべき罪が二個以上ありますときは、その最も重い罪の法定刑一定限度で加重した刑期範囲内で一個の懲役または禁錮の刑を科するのであります。これが第四十七条であります。  また第三に、いわゆる併科主義に関しましては、第一、罰金については、死刑以外の他の刑とはこれを併科し、罰金に処すべき罪が二個以上ありますときは、その合算額範囲内で一個の罰金刑を科するのであります。これが第四十八条。第二に、拘留は、死刑及び無期懲役または禁錮以外の他の刑と、また科料は、死刑以外の他の刑と、いずれも併科し、拘留または科料に処すべき罪が二個以上ありますときも二個以上の拘留または科料をいずれも併科することになっております。これが第五十三条です。  すなわち、わが刑法は、原則といたしまして、禁錮以上の重い刑に処すべき罪が二個以上ある場合には、併科主義を緩和する吸収または制限のある加重主義をとっており、数個の罪のうちに罰金以下の刑に処すべき罪がある場合は、原則として併科主義によることとしているのであります。例外となります場合は、数個の罪のうち、一罪について処すべき刑が罰金以下、ただし拘留を除くのでありますが、罰金以下でありまして、他に死刑に処すべき罪が競合しているとき及び一罪について処すべき刑が拘留であって、他に死刑または無期懲役もしくは禁錮に処すべき罪が競合しているときでありまして、この場合には吸収主義をとっているのであります。  ところで、審判の対象となっている数罪の間にすでに確定裁判が存在する場合は、その確定裁判があるにもかかわらずさらに犯した罪とその裁判確定前に犯した罪とを併合して全体として評価し、いわゆる吸収または制限のある加重主義のもとに一個の刑を科するものとするときは、不当に犯人に利益となることがあるのでありまして、わが刑法は、第四十五条後段におきまして、右の併合罪範囲制限し、確定裁判にかかる罪とその裁判確定前に犯した罪とを併合罪とするものとし、右の確定裁判後に犯した罪につきましては、これを別個に評価して別に刑を科することとしているのであります。したがいまして、ある罪について確定裁判があった場合、その前後に犯された二個以上の罪が右の確定裁判のあった後に審判されるときは、これら二個以上の罪の併合罪関係は右の確定裁判によって遮断され、その犯人は常に二個以上の刑に処せられることとなるわけであります。  しかしながら、この場合、右の確定裁判の前後に犯された罪がいずれも禁錮以上の刑に処すべき罪であるときは、確定裁判後に犯された罪を別個に評価し、確定裁判前に犯された罪との間に吸収または制限ある加重主義を認めない点において、併合罪関係を遮断するかどうかに最も実質的な差異が生ずるわけでありますが、確定裁判の前後に犯された罪がいずれも罰金以下の刑に処すべき罪またはそのいずれかが罰金以下の刑に処すべき罪であるときは、その罪の処断が原則として併科主義によります以上、別個に評価するかどうかに実質的な差異はほとんどないわけであります。  したがいまして、かように数個の罪の併合罪関係をその間に確定裁判が存在することによって遮断することは、前後の罪がいずれも禁錮以上の刑に処すべきものであるときに最も実質的意義があるとすれば、このような併合罪関係禁錮以上の刑に処する確定裁判によって遮断することは別といたしまして、必ずしも罰金以下の刑に処する確定裁判によってまで遮断しなければならないというものではなく、かえって、罰金以下の刑に処する確定裁判によっても併合罪関係を遮断することとすることは、刑事審判手続及び刑の執行手続に複雑さを加えるものでありまして、また、犯人不利益を生ずる場合もありますので、この際、刑法第四十五条を改正して併合罪関係を遮断する確定裁判禁錮以上の刑に処するものに限ろうとするものであります。  近時、道路交通法違反事件は急激な増加を示しております。これに伴って、同法違反の罪によって即決または略式の裁判罰金以下の刑を告知される者の数も増加しているのでありますが、このような裁判も、それが確定すれば刑法第四十五条後段確定裁判に含まれるので、数個の罪で訴追されたすべての事件の裁判においてその調査を必要とするのであります。そのため、検察庁における捜査の段階においても、裁判所における審理の際にも、右のような確定裁判の存否について明確を期するため、その調査を行なっているのでありますが、元来、この調査には相当の時間と手数を必要とし、その事務量は少なからぬ実情にあるのであります。そこで、右のような実情にかんがみ、刑法第四十五条後段につき、早急に今回のような改正を加えることは、現下における刑事裁判手続の迅速円滑な運用をはかる上においてもきわめて有意義であると考えるのであります。  なお、すでに公表されている改正刑法準備草案は、第六十三条におきまして、今回の改正法律案と同趣旨規定を設けていることを付言いたす次第であります。  第二は、「第二百十一条中「三年以下ノ禁錮」を「五年以下ノ懲役クハ禁錮」に改める」この改正は、最近の自動車運転に基因する業務過失致死傷事件及び重過失致死傷事件実情にかんがみまして、その法定刑に新たに五年以下の懲役を加えるとともに、法定刑禁錮長期を五年に引き上げようとするものであります。  まず法定刑に新たに懲役刑選択刑として加える点でありますが、近時における自動車運転に伴う業務過失致死傷及び重過失致死傷事犯中には、傷害、傷害致死等のいわゆる故意犯とほとんど同程度社会的非難に値するものが相当数見受けられるに至っているのであります。たとえば相当量の飲酒をした上での酒酔い運転運転技量の未熟な者の無免許運転、はなはだしい高速度運転等のいわゆる無謀な運転に基因する事犯中には、きわめて軽度の注意を払えば人の死傷等の結果を容易に予見し、その発生を防止することができたのにかかわらず、これをさえ怠ったために重大な結果を発生せしめたような事案が見受けられるのであります。これらの事案は、故意犯に属するいわゆる未必の故意の事案と紙一重の事案であり、このように人命を無視するような態度で自動車運転した結果人を死傷にいたした場合も、単に故意犯でないとの理由で禁錮刑ないし罰金刑によって処罰せざるを得ないことは、国民の道義的感覚からいってむしろ不自然に感ぜざるを得ないというべきであります。この種事犯中、きわめて悪質重大なものに対しては懲役刑を科し得るものとすることが相当であると考えられるのであります。  次に、法定刑のうち、禁錮刑と新たに加えるべき懲役刑長期をそれぞれ五年とする点でありますが、近時における自動車交通の発達に伴い、主として自道車運転に基因する業務過失致死傷及び重過失致死傷事案は、一般的にその過失の態様、程度のみならず、その行為の結果において重大なものが増加しつつあることにかんがみますとき、犯情の最も重大なものに対しても、現行の禁錮刑について定められた三年をもって責任を評価することはいささか軽きに失すると考えられるのでありまして、諸外国のこの種の事犯に関する立法例等をも参酌しますれば、法定刑の上限をこの程度に引き上げることが望ましいと考えられ、これにより過失の態様、程度及び行為の結果に応じ具体的事案に即したより適切妥当な刑の量定をなし得ることとなるのであります。  なお、すでに公表されている改正刑法準備草案は、第二百八十四条において、業務過失致死傷及び重過失致死傷の罪に対する自由刑として、今回の改正法律案と同様「五年以下の懲役もしくは禁錮」を規定していることを付言いたしておきます。  次に、附則一項は「この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。」これは、改正法施行期日を定める規定であります。  附則二項は「この法律による改正後の刑法第四十五条の規定は、数罪中のある罪につき罰金以下の刑に処し、又は刑を免除する裁判がこの法律施行前に確定した場合における当該数罪についても、適用する。ただし、当該数罪のすべてがこの法律施行前に犯されたものであり、かつ、改正後の同条の規定適用することが改正前の同条の規定適用するよりも犯人不利益となるときは、当該数罪については、改正前の同条の規定適用する。」これにつきましては、この項の前の項によりますれば、改正法施行後に罰金以下の刑に処し、または刑を免除する確定裁判、以下確定裁判と申しますが、があった場合におけるその罪とその確定裁判の前及び後に犯された罪について、改正法による改正後の刑法第四十五条の規定、以下新法と申しますが、の適用があることは明らかであります。しかしながら、改正法施行前に確定裁判があった場合におけるその罪と、その確定裁判の前及び後に犯された罪について、新法適用があるかどうかは必ずしも明らかではないので、この項は、その本文におきまして、これらの罪についても新法適用することを明らかにしたのであります。したがって、改正法施行前に確定裁判があれば、上記の罪のうち、確定裁判の後に犯した罪が改正法施行前にあろうと施行後にあろうと、すべて新法適用されることとなります。これは確定裁判の前と後に犯された数罪併合罪としない現行法に比し、新法併合罪とすることによって一般的に犯人に有利な取り扱いとなり、また、新法取り扱いによれば刑事裁判の迅速円滑な運用をはかり得ることとなるので、このような取り扱いを認めることといたしたものであります。ただ、特定の場合には、新法適用することが改正法による改正前の刑法第四十五条の規定、すなわち、旧法を適用するよりも犯人にとって不利益と一なることがありますので、刑法第六条の趣旨をくみまして、この項ただし書きで、対象となっている数罪がすべて改正法施行前に犯されたものである場合において、犯人に右のような不利益が生ずるときは、例外的に旧法によることとしたのであります。  第三項は、「前項規定は、この法律施行前に確定した裁判執行につき従前の例によることを妨げるものではない。」ということであります。この項は、前項規定が、数罪中のある罪につき罰金以下の刑に処し、または刑を免除する裁判改正法施行前に確定し、その他の罪の全部または一部につき改正法施行のときまでにまだ確定裁判がない場合に関する規定でありますので、その他の罪の全部または一部につき改正法施行前に禁錮以上の刑に処する確定裁判があった場合におけるその刑の執行については、すべて従前の例によるべきものであることを念のために明らかにしたものであります。  以上が刑法の一部を改正する法律案逐条説明であります。  次に、経済関係罰則整備に関する法律廃止する法律案逐条説明を申し上げます。  第一項は「経済関係罰則整備に関する法律昭和十九年法律第四号)は、廃止する。」というのであります。これは、最近の経済事情にかんがみまして、経済関係罰則整備に関する法律廃止しようとするものであります。  次に、附則の一項は「この法律は、公布の日から施行する。」ということになっておりますが、この項は、この法律施行期日を定めた規定であります。  第二項「この法律施行前にした行為に対する罰則適用については、なお従前の例による。」という規定であります。この項は、罰則に関する経済規定であり、この法律による経済関係罰則整備に関する法律廃止及び附則第六項による罰金等臨時措置法改正前にした行為については、その後においても、廃止前の旧経済関係罰則整備に関する法律及び改正前の旧罰金等臨時措置法をそれぞれ適用することを明らかにしたものであり、一般行政罰則を改廃する場合の例にならい設けられた規定であります。  第三項「日本航空株式会社法昭和二十八年法律第百五十四号)の一部を次のように改正する。第十八条の前の見出しを削り、第二十条を第二十二条とし、第十九条を第二十一条とし、第十八条を第二十条とし、第十七条の次に次の見出し及び二条を加える。」これは新たに、第十八条及び第十九条を設けたために、条文の整理を行なったものであります。  「第十八条 会社の取締役、監査役又は職員が、その職務に関して、わいろを収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、三年以下の懲役に処する。これによって不正の行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、五年以下の懲役に処する。 2 前項の場合において、収受したわいろは、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。」この条は、日本航空株式会社の取締役、監査役または職員についての収賄罪の規定であります。すなわち、第一項は、これらの者がその職務に関してわいろを収受する等の収賄を行なったときは、三年以下の懲役に処し、さらに、右の収賄によって不正の行為をし、または相当の行為をしなかったときは、その刑を加重して五年以下の懲役に処する旨の規定であります。第二項は、収受したわいろについては、その没収または追徴を必要的なものとする趣旨規定であります。なお、この条は、経済関係罰則整備に関する法律の第二条及び第四条に相当する規定でありますが、同法第二条によれば、収賄し、よって不正の行為をし、または相当の行為をしなかった場合の刑の最高限懲役七年と定められているのを、懲役五年と改めているほか、同法第三条に規定されているいわゆる事前収賄及び事後収賄の各規定を削除することとしているのであります。これは、最近設立されましたこの会社と類似の組織と機能を持つ各特殊会社等についての同種の罰則の構成要件及び法定刑との均衡を考慮し、その例にならったものであります。  「第十九条 前条第一項のわいろを供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。 2前項の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。」この条は、日本航空株式会社の取締役、監査役または職員に対する贈賄罪の規定であります。すなわち、第一項は、前記第十八条第一項のわいろを供与する等の贈賄を行なった者は三年以下の懲役または三十万円以下の罰金に処する旨の規定であり、第二項は、 贈賄者が自首した場合においては、裁判所の裁量により、その刑を減軽し、または免除することができることを定めた規定であります。なお、この条は、経済関係罰則整備に関する法律第五条に相当する規定であり、その法定刑も、懲役刑については、これと全く同じでありますが、罰金刑最高限については、経済関係罰則整備に関する法律においては五千円であり、罰金等臨時措置法第三条第一項第三号により二十五万円以下の罰金とされているのを、この条におきましては罰金刑最高限を三十万円に改めることとしているのであります。これは最近設立されたこの会社と類似の組織と機能を持つ各特殊会社等についての同種の罰則においてこれと同様の罰金刑最高限を定めていることとの均衡を考慮した結果によるものであります。  次に第四項、「電源開発促進法昭和二十七年法律第二百八十三号)の一部を次のように改正する。 目次中「第四十一条」を「第四十三条」に改める。 第四十一条を第四十三条とし、第三十七条から第四十条までを二条ずつ繰り下げ、第三十六条中「前条」を「第三十五条」に改め、同条を第三十八条とし、同条の前に次の二条を加える。」これは第三十六条中「前条」を「第三十五条」に改めたのは、昭和三十一年の電源開発促進法の一部改正によって第三十五条の二が新設されたので、第三十六条中「前条」とあるのも、右の改正に伴って「第三十五条」と改めるべきであったと考えるので、この法律改正する機会に、この改正を行なうものであります。その他は、新たに第三十六条及び第三十七条を設けたために、条文の整理を行なったものであります。  「第三十六条 会社の役員又は職員が、その職務に関して、わいろを収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、三年以下の懲役に処する。これによつて不正の行為をし、又は相当の行為をしなかつたときは、五年以下の懲役に処する。 2 前項の場合において、収受したわいろは、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。」この条は、電源開発株式会社の役員または職員についての収賄罪の規定であります。その内容等は、前述の日本航空株式会社法の新第十八条と同じであります。  「第三十七条 前条第一項のわいろを供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。2 前項の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。」この条は、電源開発株式会社の役員または職員に対する贈賄罪の規定であります。その内容等は、前述の日本航空株式会社法の新第十九条と同じであります。  次に第五項「商工組合中央金庫法昭和十一年法律第十四号)の一部を次のように改正する。第五十条を第五十条ノ三とし、第七章中同条の前に次の二条を加える。」新たに、第五十条及び第五十条ノニを設けたために、条文の整理を行なったものであります。  「第五十条 商工組合中央金庫理事長、理事、監事又ハ職員其ノ職務ニ関シ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキハ三年以下ノ懲役ニ処ス因テ不正ノ行為ヲ為シ又ハ相当ノ行為ヲ為サザルトキハ五年以下ノ懲役ニ処ス 前項ノ場合ニ於テ収受シタル賄賂ハ之ヲ没収ス其ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハザルトキハ其ノ価額ヲ追徴ス」この条は、商工組合中央金庫理事長、理事、監事または職員についての収賄罪の規定であります。その内容等は、前述の日本航空株式会社法の新第十八条と同じであります。  「第五十条ノ二 前条第一項ノ賄賂ヲ供与シ又ハ其ノ申込若ハ約束ヲ為シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三十万円以下ノ罰金ニ処ス前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減軽シ又ハ免除スルコトヲ得」この条は、商工組合中央金庫理事長、理事、監事または職員に対する贈賄罪の規定であります。その内容等は、前述の日本航空株式会社法の新第十九条と同じであります。  第六項「罰金等臨時措置法昭和二十三年法律第二百五十一号)の一部を次のように改正する。第三条第一項第三号を削る。」経済関係罰則整備に関する法律違反の罪につき定められた罰金について、その多額の五十倍に相当する額をもってその多額とする旨を規定した罰金等臨時措置法第三条第一項第三号は、経済関係罰則整備に関する法律廃止により不要となるので、これを削除するものであります。  以上であります。
  7. 加藤精三

    加藤委員長 これにて両案に対する説明は終わりました。  これより質疑に入ります。坂本泰良君。
  8. 坂本泰良

    ○坂本委員 私は、ただいま議題となりました経済関係罰則整備に関する法律廃止する法律案に対しまして、本日は資料の要求だけをいたしておきます。  経済関係罰則整備に関する法律違反関係統計資料というのが出ておりますが、それの一番最後の「3昭和三十五年一月一日から同三十九年十二月三十一日までの間に起訴された事件裁判結果等」とあります。この(1)の起訴人員七十四人になっておりますこの起訴状。それから(2)、(3)の関係でありますが、起訴人員のうち裁判確定人員が三十四名、有罪確定人員が三十三名になっておりますが、これの判決。  それから4の「昭和三十九年十二月三十一日現在における裁判係属状況」のうち、表の一番下の総計が、第一審係属中、これが三十二件になっております。これの起訴状。次の第二審係属中、これが十名になっております。これは起訴状と一審判決。第三審係属中、これは十名になっておりますが、これは起訴状、第一審判決、第二審判決、これをお願いします。  それから第二に、この統計表の一枚目でございますが、「違反事件の受理及び処理状況」、この処理の中の起訴は、求公判それから求略式、計とありますが、求公判のほうは、さっき申し述べました起訴の中に入りますから、求略式略式命令。それから不起訴、これは起訴猶予、その他、になっておりますが、その起訴猶予、その他、あわせてその理由、以上を請求しておきます。  なお、刑法の一部を改正する法律案の資料は要求するものがあると思いますが、これは次会に要求することにして留保しておきます。  以上、委員長によろしくお願いいたします。
  9. 加藤精三

    加藤委員長 坂本委員に申し上げます。非常に膨大な資料要求になると思うのでありますが、いま法務省のほうとちょっと打ち合わせをしてお答えさせますから……。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  10. 加藤精三

    加藤委員長 速記を始めて。  大竹太郎君。
  11. 大竹太郎

    ○大竹委員 私は、刑法の一部改正に関する法律案について御質問したいと思うわけでありますが、この一部改正の中で一番問題になりますのは、業務過失致死傷害罪の刑を引き上げるという問題だろうと思うわけでありますが、申し上げるまでもなく、これは主として自動車によるいわゆる自動車事故を引き起こした者に対する責任を問うということになるわけでございまして、ことにこの事案過失によるものであることからいたしまして特にそう考えるのでありますが、これはただ単にいわゆる刑を重くしてこの種の事案を少しでも少なくしようというものの考え方はわかるわけでありますけれども、むしろこの自動車事故を減少させるということは、政府におかれましても、ほかの施策と相まって初めてほんとうの効果があがるものだと考えるわけであります。もちろん、政府におかれましてもいろいろ手は打っておられるように思うわけでございますけれども、幸い、きょうは大臣も出ておられますので、この問題に関して、政府におかれてこの刑法改正と相まってどういう施策を今後とっていかれるかということを御説明願いたいと思うわけでありますが、もちろんこれは非常に広範な範囲にわたる問題だと思いますので、きょうは大臣からは大綱をお話しいただいて、これは資料ということになりますか、やはり資料でございますが、国としてとっておられる——これは各省にわたる問題だと思うのでございますので、何か表のようなものにでもしてひとつ出していただきたいと思うわけであります。
  12. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 交通事故の防止は、広い視野に立った総合的な交通対策を樹立してこれを実施に移していくことが肝要である。しかもこれは法務省だけの問題でなしに、警察はもちろんでございますが、建設省の問題もございます。あるいは教育の問題もございます。非常に広範な総合的施策を立ててまいらねばならない。そこで政府といたしましては、かねてから交通関係閣僚懇談会、交通対策本部というものを設けて、必要な施策の樹立と実施に実はつとめてまいったのでございますが、ごく最近に至りまして交通安全国民会議というものを、これはまだ一回しかやっておりませんが、発足させて、民間の関係者の方々に集まってもらいまして、それぞれの献策を述べていただく。また、各都道府県にもそれぞれこうした性格のものを置き、市町村にもこうしたものを置いて、そしてこの交通安全に対しまする施策の一端に資しますとともに、国民のといいますか、自動車運転する人々の自覚を増していくというためにやってまいっております。法務省としましても、全力をあげてこうしたものと協力をしてやっておりますとともに、このたびの刑法の一部改正が、そのまま交通事故を防止する妙薬であるとは決して考えておらないのでありますが、その一環としてこうした法案の御審議もお願いいたしておる、こういうわけでございます。御要求がございますれば、資料等については提出をさせたいと思います。
  13. 大竹太郎

    ○大竹委員 いま大臣のほうからお話がございましたが、やはりこの改正法律案審議を進める上からいたしましても、各般にわたっていろいろやっていらっしゃるということを知ることがやはり必要だと思いますので、いまお話がありました警察はもちろん、教育、建設その他にわたりましての資料といいますか、材料といいますか、そういうものを一覧表のようなものでけっこうでございますので、ひとつお出しをいただきたいと存じます。
  14. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 承知いたしました。
  15. 大竹太郎

    ○大竹委員 次に、この法律に直接関係のあることをお尋ねいたします前に、警察庁のほうからきょうお見えになっておりますので、前提となりますことを二、三警察庁のほうへお聞きをいたしておきたいと思います。  悪質な自動車事故というものが起きまする原因とでも申しますか、そういうものはもちろんこの運転者個人あるいはその雇い主、そういうものの責任もあるわけでありますけれども、基本は、やはり現在の日本の制度からすれば、運転免許証を与えて、そしてその人間が運転をするという制度になっておるわけでありますので、この運転免許証を与えるやり方とでも申しますか、そういうところに何がしかの欠陥があるのじゃないかということが考えられるわけであります。現在この運転免許証を与える制度の内容でありますが、大体いまは通称自動車学校と称しておる、そこで免許証をとる人、それからいま一つは一般の都道府県が施行しております試験ですか、それによって免許証をとる、二つがあるようであります。こまかいことでわからない点もあるのでありますが、その二つの制度について概要をまず御説明いただきたい。
  16. 宮崎清文

    ○宮崎説明員 ただいまの御質問の運転免許制度の概要でございますが、運転免許につきましては、ただいま御指摘のように免許試験制度がございまして、免許試験に合格した者に対して運転免許を与える仕組みになっております。もう一つは免許試験を受ける前に欠格事由というのがございまして、たとえば年齢が一定の車であれば十八歳以上であるとか、あるいは精神病、あるいはアルコール中毒者、そういう者は試験を受けられない、こういう欠格事由がございます。この欠格事由に該当しません者について運転免許試験を行ないまして、これに合格した者に対して免許証を与えております。この場合に、先ほど先生の御指摘になりましたように、指定自動車教習所という制度がございまして、ここで一定の教習を受けまして卒業いたしました者につきましては、運転免許試験のうちの実技試験を免除しております。学科試験と適性検査だけをいたしております。それ以外の一般に都道府県の公安委員会の試験を直接受けます者は、身体上の適性検査と学科試験と、それから実技試験と自動車の構造に関する試験、この四つをやっております。以上が運転免許制度の概要でございます。
  17. 大竹太郎

    ○大竹委員 それで、いまちょっとそれに触れられたようでありますが、アルコール中毒者あるいは精神障害者ですか、そういう者にやらないというお話がありましたが、いまおっしゃったのは何といいますか、非常に顕著なそういう障害のある人でありまして、普通、運転免許をもらってしまってから、非常に大きな事故を起こして、そしていろいろ調べられている過程において、精神的な欠陥があるとかいうようなことがわかって、どうするというような事案もあるやに聞いておるわけでございますが、現在この免許を与える場合において、どの程度の、いわゆる何といいますか、精神的な面その他について調査しておられるか、その点をひとつ。
  18. 加藤精三

    加藤委員長 委員長からも付帯して警察庁のほうに御質問したいのでありますが、あまり安易に運転免許証を与えて、免許証の与え方が不当に甘かったり、でたらめだったりしたために、運転免許証を受けるほど運転に習熟してない者に与えたために死傷させた、そういうようなことが顕著だった実例で、あれは自動車学校というのは各種学校もありましょうし、それから運輸省の許可のものもあるだろうと思いますけれども、そういうものを取り消されたような例はないものでありますか、その点もあわせてひとつ。
  19. 宮崎清文

    ○宮崎説明員 大竹先生の御質問の点でございますが、一応制度上は、先ほど申しましたように精神病者であるとかアルコール中毒者というものは欠格事由になっております。ただ、これを試験の段階で発見する方法でございますが、率直に申しますと、外見上明らかにわかる場合は排除できます。しかしながら、その境目にある者につきましては、たいへん遺憾ながら、現在のところこれを確実かつ簡単に発見する方法がまだ確立されておりません。したがいまして、境目にある者が往々にして免許を取得いたしまして、後に事故を起こすという例が絶無ではありません。この点につきまして、もちろん私たちもこのままでいいとは決して思っておりませんので、医学の先生とか心理学の先生等にお願いいたしまして、簡単でしかも確実にそういう不適格者を発見できる方法を目下鋭意研究開発をしている最中であります。一例を申しますと、てんかんでありますが、てんかんにつきましては、脳波テストをいたしますと、八割くらいはほとんど確実にわかる、こういうことが医学的に証明されております。しかしながら、この脳波テストをいたしますには、一人につき約四十分かかるというのが現状でございます。したがいまして、年間八百万の受験者がございまして、警視庁あたりでは一日に三千人の受験者がございます。それらの受験者に一々脳波テストをいたしておりますと、非常な時間がかかる。そういうところで、私たちも御指摘のように免許を与えます際に不適格者を排除するのに全力を注ぎたいと思っておりますが、何ぶん繰り返しますように、簡単で確実な方法が確立されておりませんので、もうしばらく時間をかしていただきたい、かように思っております。  なお、一応免許を与えましたあとに、どうも事故を起こしやすい、あるいは非常に悪質な事故を起こす、こういう運転手が間々ございます。それらの運転手につきましては、そのつど臨時適性検査をいたしまして、先ほど申し上げましたような方法を講じまして、そういう者につきましては、これが教育でなおる場合には再教育いたします。もしどうしても教育でもなおらないという場合には免許不適格者として排除しよう、こういう方策をいま強力に推し進めておるところであります。  なお委員長の御指摘の指定自動車教習所でございますが、これは従来一、二そういう例もございましたが、昨年の秋ごろから政令を改正いたしまして、教習所の資格要件その他を非常に厳重にいたしまして、監督も十分行なっているはずでございます。したがいまして、率直に申しまして、過去に一、二そういう事例もございましたが、今後はそういうことはなくなるのじゃないか、かように思っております。
  20. 神近市子

    ○神近委員 関連して。いまの教習所の問題ですけれども、ここ一週間くらい前に東京都と埼玉県の境のようなところの教習所で非常にテレビで広告をやっていたのです。それが、教習所がここにありますというような標識くらいならちょっともふしぎに思わないのですけれども、テレビで非常にはでなPRをするということは、たくさん教習生を収容しようというようなあせりのようなものを感じられて、私どもはおかしいなと感ずるのですが、そういうところに制限はないのですか。PRを非常にはでにしたということ、何かその動機が私どもにはふしぎに感じられるのです。どんなお考えですか。
  21. 宮崎清文

    ○宮崎説明員 ただいまの段階では、内容さえよければ私のほうは特に問題がございませんので、それ以上の点について規制をする考えは持っておりません。  また、御指摘の点に関連いたしますが、おそらく神近先生の御質問は、教習所が乱立されて過当競争になって、そのために客引きのために非常に誇大な宣伝をしているのではないか、こういう御質問の趣旨かと思いますが、私どもは、現在の時点におきましては、まだ指定教習所が乱立されまして過当競争におちいっておるとは判断いたしておりません。
  22. 神近市子

    ○神近委員 もう一問。ごく悪質の教習所だと思うのですけれども、技術的な修習をしていないのに免許証を渡したという事案が、これも新聞記事ですけれど、何件かあったと思うのです。そういう場合、その最終的な試験には役人が立ち会うとかあるいはその技術を見きわめるというようなことは、していらっしゃるのですか、いらっしゃらないのですか。
  23. 宮崎清文

    ○宮崎説明員 指定教習所の監督は各都道府県の警察に一応まかせておるので、最終的な立ち会い検査をやっておりますところと必ずしもやっていないところとあるかと思いますが、しかし、大体におきまして最終検査の基準というものがきまっておりまして、その基準どおり検定を行なう、またそれを行なっているかどうかにつきましては平生から監督をいたしております。実際の最終の検査と申しますか、いわゆる卒業試験でございますが、卒業試験に必ずすべて立ち会っているかどうかということにつきましては、私ちょっといま資料がございませんのでここで申しかねますが、大部分は立ち会っていると思っております。
  24. 加藤精三

    加藤委員長 神近先生、この自動車学校、自動車教習所の問題は、われわれも非常に関心を持っております。ただいまのような形式的な御答弁ではどうも満足し得ないようですから、あらためてまた問題にしたいと思いますので、この程度でひとつ進行させていただきたい。
  25. 大竹太郎

    ○大竹委員 それではさきのお答えについて、もう一度くどいようですけれどもお聞きしたいのであります。  先ほどの御答弁によりますと、どうも試験を受ける者がたくさんあって、一々表面に出ていないものの精神鑑定まではなかなかできないというお話があると同時に、また、現に運転手になっておって悪質の事故を起こす人間については、精神鑑定をして、そういう人間を排除するというお話でありましたが、これはもちろん数の多いことでありますので、予算の面その他からいいましてなかなかできない。ことに自動車学校は民間の施設、民間の資本でやっておる関係もあって、なかなかそこまで手が及ばないのでありましょうが、少なくとも事故を起こしてしまってから精神鑑定するという順序は、私は逆だろうと思うのでありまして、そういうような面から見て、何とかこの免許をやるときに、試験を受ける中で、これはちょっとあやしいというようなものだけでも選び出して精密検査をして、その後に免許証をやるというような制度を法制化できないものですか。そういう点どうですか。
  26. 宮崎清文

    ○宮崎説明員 制度上の問題といたしましては、先ほどもお答え申し上げましたように、一応そういう者は不適格者として受験できないことになっておりますので、あとは実際にそれを実行するかどうかということになろうかと思います。まことにくどいようで恐縮でございますが、目下簡単で確実な方法を鋭意研究しておりまして、医学者、心理学者の諸先生にもお願いして、なるべく近い将来にそういう方法を確立いたしまして、その段階で排除するようにいたしたいと思っております。
  27. 大竹太郎

    ○大竹委員 少し戻りますが、この免許には、学校で実技をやってその結果免許をやる、これは一応わかっておりますが、一般都道府県でやっておられる免許試験がある。これは試験を受けにいく以上は、それで通るつもりで行くわけでありますので、ある程度運転技術ができる人間でなければ私は行かぬと思うのでありますが、現在のこの実情から考えまして、ことに地方にいけばそういうところもないわけじゃないのでありますけれども、東京あたりの実情からして、試験を受けにいくだけの自動車の操作を一体どこで覚えるのだろう、私はこれを平素から非常に疑問に思っておるので、結局ああいう制度があるから無免許運転なんというものがはやるのではないか。私は何も自動車学校の肩を持つわけではないのでありますけれども、少なくとも自動車の技術というものを相当習得しなければそういう試験に行かれないとか、行くまでにはどこかで習得しているということになるのでありますが、一体それならどこで習得して、どういうことで覚えて試験を受けに行くのか、私は制度そのものに何か大きな欠陥があるように思うのでありますが、その点はどういうお考えですか。
  28. 宮崎清文

    ○宮崎説明員 直接公安委員会の試験を受けに参ります者が、どこで実技を覚えたかということでございますが、私のほうもそこまで調査はいたしておりませんが、道路交通法に申します道路以外のところでございますと、自動車運転いたしましても無免許運転になりませんので、そういうところで練習していると私たちは推定いたしております。
  29. 加藤精三

    加藤委員長 警察庁のほうに申し上げますが、どうもほんとうの形式的な御答弁じゃなしに、少し御調査になっていただきたいのですけれども、委員長から御忠告申し上げます。
  30. 大竹太郎

    ○大竹委員 それで技術習得の経歴書まで出させるわけにはいかぬでしょうから、あれでありましょうが、やはり大いにこの点についてはお考えになる必要が私はあるだろうと思います。  それからいま一つ、それに関連してお聞きしたいのでありますが、たしか仮免許の制度というのがあるのですね。これは私の聞いておるところでは、道路で運転をしてもよろしいが、何か乗る自動車に標識をつけるということと、それからそばに先生とでも申しますか、指導者がついておってやるという制限がついておるそうであります。私はもちろん自動車の免許がない人間だから、よくわからぬのでありますが、東京あたりで、幾らそばに相当熟練しておる人がついておっても、全然実技に対して経験のない人間がハンドルを持つということは、私は非常に危険だと思うのでありますが、この制度についてどうお考えですか。
  31. 宮崎清文

    ○宮崎説明員 ただいまの御指摘の仮免許でございますが、実はこれも全然しろうとにすぐ与えるものではございませんで、やはり試験をいたしております。一定の技能試験と適正検査をいたしまして、それに合格いたしました者に対して仮免許を与えておりますので、仮免許を持っております者は、少なくとも必要最小限度の運転技能は持っているものと思っております。
  32. 大竹太郎

    ○大竹委員 それと関連してでありますが、私も自動車学校は始終行ってみたこともあるのでありますが、ああいうところで技術を習得して免許をとるわけであります。それはいまのようなそれまでに仮免許でもとって、道路でも練習をするというようなことを相当やった上で免許をもらい、正式に今度は一人で道路に出ていくということはわかっているわけでありますが、実情は試験さえ通れば一人立ちということになって、どこにでも出るわけでありますが、ああいう狭いところでそろそろやって習得した人間が、一人立ちになって、たとえばいなかあたりはそうじゃないですが、東京あたりで一人で乗りこなすということに対してのお考えはどうですか。私はこれは非常にあぶないものだと思うのですが、この点はどうですか。
  33. 宮崎清文

    ○宮崎説明員 たいへん申しわけございませんが、いまのは免許をとってからの……。
  34. 大竹太郎

    ○大竹委員 そうじゃないのです。一般の免許、ただ学校で限られたコースの中でだけやっておって、そうして免許をとれるわけでしょう。それですぐふくそうした道路へ出て、それで事故を起こさないでやれるかどうかという問題です。
  35. 宮崎清文

    ○宮崎説明員 ただいま御指摘の点でございますが、指定自動車教習所の教習におきましては、最後の段階では、なるべく実際に近い状態で訓練をいたしております。また学校によりましては、最終段階で一応仮免許をとらせまして、実際に路上で訓練を、もちろん指導員がついておりますが、その訓練をされている学校もございます。そうしたわけでございまして、ただいまのところ、指定教習所を卒業した者が免許をとりまして、一般の市内で運転することが非常に危険であるとは考えておりません。
  36. 大竹太郎

    ○大竹委員 次に、公安委員会が現在行なっておりますいわゆる道交法違反に対する処分の問題についてちょっとお聞きいたしたいのでありますが、まず第一にお聞きしたいのは、これはもちろん普通就業停止といっておるようで、たしか最高は免許の取り消しがあるわけです。免許の取り消しは一年間の停止で、またあらためて試験を受ければよろしい。あとは停止期間はたしか六カ月かと思うのであります。こういう公安委員会の処分でありますが、これは公安委員会で御処分になるのもこれまたけっこうでありますが、これといわゆるいまの業務過失致死傷の問題の裁判との関係は一体どうやっていらっしゃるのか。いわゆる裁判所による処分がきまったあとで行政処分をしていらっしゃるのか、あるいは公安委員会独自の立場で処分していられるのか、その点をまずお聞きいたしたいと思います。
  37. 宮崎清文

    ○宮崎説明員 一応たてまえといたしましては、行政処分と司法処分は別個であるという考え方で、別個に処分をいたしております。したがいまして、司法処分の、裁判所の判決があるとないとにかかわらず、公安委員会といたしましては、必要な調査をいたしまして、必要な処分をいたしております。
  38. 大竹太郎

    ○大竹委員 それではお聞きしたいのでありますが、たとえば相当これは運転者に責任があるということで免許の停止、あるいは取り消しというような処分をされて、その後裁判所におきまして、これが全然罪にならなかったというような場合はどうされるのでありますか。
  39. 宮崎清文

    ○宮崎説明員 これは非常にむずかしい問題でございますが、結局、公安委員会の判断と申しますか、事実認定が誤っていたかいないかに帰着するだろうと思います。したがいまして、裁判所で無罪の判決があったからといって、直ちに公安委員会の事実認定、判断が間違っていたとも一がいには申せないのではないかと思われますが、その点は私たちは現実に二、三の例もございましたので、ケース・バイ・ケースで県の警察当局によく検討するように指示をいたしております。
  40. 大竹太郎

    ○大竹委員 いまの問題でありますが、ケース・バイ・ケースで処置される、それは当然なことであります。もちろん、処罰するものは片方は裁判所であり、片方は公安委員会でありますので、一つの事案について違った結果が出るということはあり得ることであります。ことに申し上げるまでもなく、裁判でも一審と二審と違う場合があるわけでありますから、それもしかたがないのでありますけれども、いまのお話だと、違った結果が出たときにはケース・バイ・ケースで適当にやるというような、何かあいまいなお答えであったように私は聞くわけであります。それでいまの場合、判決が出た、そして全然無罪なら無罪となった、公安委員会は相当重い処分をしたというような場合には、それの補償とでも申しますか、回復措置とでも申しますか、そういうものは一体具体的にはどうやっていらっしゃるのでありますか。
  41. 宮崎清文

    ○宮崎説明員 一般的に申しますと、相手方の人はおそらく行政事件訴訟なりあるいは不服審査の申し立てをされるだろうと思います。そういう不服審査の申し立てあるいは行政訴訟がありました場合に、公安委員会といたしましてよく事案の検討をいたしまして、これはやはり公安委員会のほうが事実認定が間違っていたということで前の処分を取り消すか、あるいは裁判所の判決はそうであるが、公安委員会としてはその人には過失があると認定いたしまして、原処分を維持することにするか、どちらかになろうかと思います。
  42. 加藤精三

    加藤委員長 大竹先生、この関係はもう一回ぐらい警察庁のほうの幹部に来てもらって、少し慎重にやらなければいかぬのじゃないですか。
  43. 大竹太郎

    ○大竹委員 いま公安委員会のほうからそういうお話があったのでありますが、私はこれはもちろん国家賠償の問題にもなるかと思いますが、どうも私の聞いている範囲では、その点が非常にうやむやであります。ことにいまのお話だと、独自のあれでやはり過失があったと認めれば、どこまでも公安委員会としてがんばるんだという御説明でありますが、私ども多少法律をやっている者からすれば、処罰の主体が違うのだから、そういうこともあり得るというようにも考えられるわけでありますけれども、処罰を受ける者の立場からすれば、同じ国がやるのに、一つの行為に、そういう二つのものの考え方といいますか、片一方は全然責任がないといっているのに、片一方はいや責任があるんだ、裁判所の考えとこっちは違うんだということで処理できるかどうか、そういうことでいわゆる処罰の目的が達せられるかどうかということにもなるわけでありますが、これについて刑事局長はどうお考えになりますか。
  44. 津田實

    津田政府委員 理論的に申しますれば、ただいま警察庁からお答え申し上げたようなことになると思うのですけれども、裁判所の事実認定にいたしましても、諸般の事情から上訴をしなかったというような事態もあるわけでございまして、そこいらあたりを、やはり行政処分をしたところで個別に内容を十分検討して、形式的ではありませんが、しかるべく実質的にその中身をもう一度見てみるというようなことが一応妥当な行き方ではないかと思うのであります。したがいまして、そういうことがはたして数の上で一々できるかどうか、あるいはその結果を一々判断して行政処分に影響せしめることが実質上できるかどうかというような問題はもちろんあると思いますが、少なくとも当該処分を受けた者から何らかの申告等があれば、やはりそれについては一応、公式の検討ではなくて、事実上検討するというようなことがよろしいのではないかと思いますけれども、これは実際行政当局にまかされたことなので、私どもとしては何らとやかく申すわけにはいかぬと思います。
  45. 大竹太郎

    ○大竹委員 これは私はやはり刑法のこの条項をことに重くするというような場合には考えなければならないと思うわけであります。ハンドルを持って生活をしている運転手の立場からすれば、たとえば一年も取り消しをされるということは、二万円や三万円の罰金を取られるよりもよほど刑罰としては重い刑罰になるわけであります。そういうようなことから、いまのような問題について何とか賠償する道を講じてやらなければならぬと同時に、両方の処罰というものが、多少違うのはいいけれども、全然白と黒になったというようなことがあっては国家の威信にもかかわりますし、それからまた処罰の目的を達成する面から見ても不都合だと私は思うわけであります。それを法制の上において何かそこに連絡があるようにすることはお考えになれませんか、どうですか。その点もう一度伺いたい。
  46. 宮崎清文

    ○宮崎説明員 先ほど私が申し上げましたことは、制度としてそうなっているという事実を申し上げましたので、先ほど刑事局長からも御答弁がありましたように、実際には、裁判所で無罪の判決が出ますと、公安委員会は相当その点を考慮いたしておると思っております。なお、制度につきましては、免許に関する処分を根本的に立て直す場合は別でございますが、現行の制度でございますと、私の承知しております限りでは、やはり二本立てとならざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  47. 大竹太郎

    ○大竹委員 先ほど理事会でお話しになりました時間も過ぎておりますので、この程度で次回に続けさしていただきたいと思いますが、先ほど委員長のほうからもお話がありましたように、どうもこの点すっきりしない点があるようにも思われますので、次回には答弁者その他もしかるべき人をひとつ……。
  48. 加藤精三

    加藤委員長 準備いたさせます。  本日の議事はこの程度にとどめます。  次会は来たる八日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時八分散会