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1965-03-23 第48回国会 衆議院 内閣委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二十三日(火曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員    委員長 河本 敏夫君    理事 伊能繁次郎君 理事 佐々木義武君    理事 辻  寛一君 理事 永山 忠則君    理事 八田 貞義君 理事 田口 誠治君    理事 村山 喜一君 理事 山内  広君       井原 岸高君    岩動 道行君       加藤 高藏君    高瀬  傳君       綱島 正興君    福田  一君       藤尾 正行君    前田 正男君      茜ケ久保重光君    稻村 隆一君       大出  俊君    角屋堅次郎君       中村 高一君    受田 新吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         総理府事務官         (行政管理庁行         政管理局長)  井原 敏之君         外務政務次官  永田 亮一君         外務事務官         (大臣官房長) 高野 藤吉君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     谷  盛規君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安川  壯君         外務事務官         (欧亜局中近東         アフリカ部長) 力石健次郎君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (移住局長心         得)      山下 重明君         農林事務官         (大臣官房長) 中西 一郎君         労働事務官         (大臣官房長) 和田 勝美君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君  委員外出席者         専  門  員 加藤 重喜君     ————————————— 三月二十二日  平和の日制定に関する請願菅野和太郎君紹  介)(第一七九四号)  同(佐々木義武紹介)(第一七九五号)  同(福田繁芳紹介)(第一八二七号)  同(有馬輝武紹介)(第一八三六号)  同(中垣國男紹介)(第一八五三号)  同(渡辺栄一紹介)(第一八五四号)  同(草野一郎平紹介)(第一九八九号)  同(始関伊平紹介)(第一九九〇号)  同(玉置一徳紹介)(第一九九一号)  同(西村英一紹介)(第一九九二号)  同(星島二郎紹介)(第一九九三号)  同(竹本孫一紹介)(第二〇一三号)  同(坊秀男紹介)(第二〇一四号)  恩給年金増額に関する請願前田正男君紹  介)(第一七九六号)  旧軍人等恩給に関する請願池田清志君紹  介)(第一七九七号)  同(池田清志紹介)(第一八二六号)  同(池田清志紹介)(第一八五一号)  同(綾部健太郎紹介)(第一九八五号)  同(池田清志紹介)(第一九八六号)  同外一件(西村英一紹介)(第一九八七号)  同(池田清志紹介)(第二〇一六号)  恩給共済年金)の格差是正に関する請願外七  件(大出俊紹介)(第一八〇六号)  元南満州鉄道株式会社職員であった公務員等の  恩給等通算に関する請願外三件(西村直己君紹  介)(第一八二五号)  同外四件(勝澤芳雄紹介)(第一八三七号)  公務員退職条件改善等に関する請願五島虎  雄君紹介)(第一八三八号)  同(前田榮之助君紹介)(第一八五五号)  同(五島虎雄紹介)(第一九九四号)  同(五島虎雄紹介)(第二〇一五号)  国立大学教官待遇改善に関する請願大平正  芳君紹介)(第一八四七号)  同(櫻内義雄紹介)(第一八四八号)  同(椎熊三郎紹介)(第一八四九号)  同(細田吉藏紹介)(第一八五〇号)  金鵄勲章受章者の処遇に関する請願(上林山榮  吉君紹介)(第一八五二号)  農林省蚕糸局機構縮小反対に関する請願(唐  澤俊樹紹介)(第一九八八号)  同(吉川久衛紹介)(第二〇一一号)  同外二件(渡辺栄一紹介)(第二〇一二号)  航空自衛隊岐阜基地滑走路延長計画反対に関す  る請願外四件(田口誠治紹介)(第一九九五  号)  同外四件(山本幸一紹介)(第一九九六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二五号)  外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一七号)  在外公館名称及び位置を定める法律及び在外  公館に勤務する外務公務員給与に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第一八号)  労働省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二七号)      ————◇—————
  2. 河本敏夫

    河本委員長 これより会議を開きます。  農林省設置法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  質疑に入ります。質疑申し出がありますので、これを許します。佐々木義武君。
  3. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 今度の農林省設置法一部改正法律案提案理由を勉強してみますと、問題は非常に簡略な改正でありまして、そのもの自体も別に大きい問題はないように考えられますが、二、三質問してみたいと思います。  私、サトウキビの問題はあまり詳しく知りませんのでわかりませんが、原々種圃をつくるのはたしか種子島だったと聞いておりますが、いかがでしょうか。
  4. 中西一郎

    中西政府委員 種子島の島内につくるということはきめておりますが、まだ具体的な所在についてははっきりいたしておりません。
  5. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 原々種圃の主たるねらいというのは、優秀な種苗採取というのが主たる目的なのか、あるいは病虫害駆除と申しますか、矮化病、これに対する対策等を考慮しましての農場になるのでしょうか。
  6. 中西一郎

    中西政府委員 品種全体としては、最近那覇あるいは台湾等から相当優良な品種が入っております。その優良品種お話し矮化病という病菌が発生しておるので、その結果反収が非常に少ないということもございます。したがって、矮化病を駆除していきたい、そのために病気のない原々種を栽培しまして、それを生産して配布する、そういう業務をさせるわけでございます。
  7. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 これは従来から農林省としては全然手をつけていなかった問題でございましょうか。
  8. 中西一郎

    中西政府委員 お話しのとおり、いままで手がついておりません。
  9. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 そういたしますと、これを研究するのに、研究者養成といったような問題は、どういうふうになっていますか。
  10. 中西一郎

    中西政府委員 試験研究機関としましては、矮化病病菌の発見、それに対する対策等については、研究は進んでおります。基礎研究は進んでおりますので、今度原々種農場ができますれば、そこで具体的な駆除対策に乗り出すわけでございます。
  11. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 大体どのくらいの人数で発足するのでございますか。
  12. 中西一郎

    中西政府委員 場長以下五人の配置を考えております。
  13. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 第一点は大体わかりました。  第二番目の研修所でございますけれども、農林省には、人員養成あるいは教育機関というものがたくさんあるような気がするのですが、これは農民そのものでなくて、職員等研修がおもなねらいでございますか。
  14. 中西一郎

    中西政府委員 お話しのとおり、農林省職員対象にした研修でございます。定員おおむね十人少しこえる程度でありますし、いままでも別個の、制度的な研修所ということでない、いわば準備段階研修はやっておったのでございますが、それを体系化して、農林省全体としての施設もつくりまして、各省でやっておられるのにならって内容充実してまいりたい、こういう配慮でございます。
  15. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 この研修所のいろいろな学科と申しますか、どういうものをやるというような対象科目がおありだと思いますが……。
  16. 中西一郎

    中西政府委員 大きく分けますと四つになりますが、一つは新しく採用しました上級職中級職、あるいは初級職職員研修新任者研修が一一つでございます。それから第二は、事務職員一般的な事務能率向上のための研修、これが第二であります。第三は、監督者研修、さらに農林省関係では、一般的な行政のほかに事業をやっております。その事業関係を主にしました業務研修四つに分けて、それぞれ特別な科目を設定してまいるという予定でおります。
  17. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 そういたしますと、ねらいは主として行政官養成ということで、いわば行政法その他法律的な面を研修するとか、あるいは一般技術、そういう問題に対する研修をするとかいったような問題であって、農業そのものをどうするかという問題ではないのですか。技術的な問題を主としての研修じゃないのですか。
  18. 中西一郎

    中西政府委員 お話の前者に該当するわけでして、農業の営農その他についての研修ということは、これは別途農民対象にしまして、それぞれ予算措置を講じてやっておりますが、ここで御提案しておりますものは、農林省職員対象にした研修でございます。
  19. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 また一つ注文ですが、たとえば茨城のガンマフィールドなんというものは、いなかの青年を連れていきまして見せますと、たいへん喜ぶのです。ところが、農林省の役人の方自体が知っておるかというと、必ずしも知っている人がおらぬような感じ、見た人もいないような感じですけれども、ああいう実地を少し見せて、新しいというとあれですけれども、進んだ農業技術というか、そういうものをひとつ研修の項目にしたらいいのじゃないかというふうに感ずるのでございますが、どういうものでございますか。
  20. 中西一郎

    中西政府委員 お話しのとおりだと思うのです。農林省が、非常に大きな組織で、いろいろ分かれております。他の局でもどういうことをやっておるかということを知らないというのも、職員として資質の点で十分でないというふうに思われます。そういう意味で、研修の過程で国内農林省施設その他を見学させるということについても、十分な配慮をいたしたいと思います。お話しのとおり、ガンマフィールド等については、ある程度のPR省外さらに省内それぞれやっておるわけでございますが、最近は見学するのもあれだというので、十六ミリの映画をつくりまして、省内PRにもつとめておる次第でございます。
  21. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 いまのPR映画というのは、種類がたくさんございますのですか。
  22. 中西一郎

    中西政府委員 ガンマフィールドについては、一種類でございます。そのほかの施設についてはいろいろございます。
  23. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 どうぞひとつそういう組織のりっぱなものをつくって、しっかり教育をしてやっていただきたいと思います。  三つ目は、種畜牧場の移転の件でございますが、白河を選びましたのは、どういう理由からでございますか。
  24. 中西一郎

    中西政府委員 これはかねてから適地を探しておったのでございますが、結果としては白河市の十三原で敷地が百六万町歩という適地をきめたわけでございます。現在大宮にございますが、いろいろ市街化の影響もございまして、公害等の心配もございますし、移転させることにしたのですが、現状では、大宮は二十町歩しかございません。そこでいろいろな地点を探したのでございますけれども、卵用の鶏の育種という環境に最も適したものとして十三原を選んだわけでございます。
  25. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 いままでの大宮は場所が狭いというのが欠点で、ほかに何か欠点がございますですか。
  26. 中西一郎

    中西政府委員 その周辺が工場化してまいりました。市街地もございますし、やはり鶏を大量にそこで飼養しておりますと、いろいろ付近の住民の方がお困りになるようなことが起こってまいりまして、そういうことのないようにという配慮があるわけでございます。
  27. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 わかりました。  最後に、定員関係でありますけれども、植物防疫業務強化等に伴う定員増というのがありますが、これはいままでどうなっておるのでございますか。
  28. 中西一郎

    中西政府委員 植物防疫関係は、かねてから輸入量がだんだんふえてくるということに関連しまして、いろいろな地方出張所をこしらえてほしい、定員充実をしてほしいという要望がございます。特に北洋材がふえる、あるいは飼料関係輸入がふえる等の関係で、日本の北から南まで各地にわたって要望がございます。とりあえずの措置としましては、来年度十六名の定員増をはかりましたのですが、それに伴って出張所も設置しまして、充実をはかってまいりたい。なお、出張所ができないような港もございますので、当面は近辺の植物防疫所から応援検査をするということで対処しまして、逐年輸入実情に応じて拡充してまいりたい、かように考えるわけであります。
  29. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 それは各地で非常に人数が少くて、一つ防疫所の人を方々へ派遣しては間に合わしているような実情のように承っておりまして、私の県などでも非常に困っていますが、今度の業務強化でそういう点はどのくらい大体解消する見込みでございますか。
  30. 中西一郎

    中西政府委員 先ほど申し上げました出張所増設でございますが、宮城県、東京都、神奈川県、和歌山県、兵庫県、福岡県、鹿児島県、七カ所の新設を来年度は考えております。今後の問題としましては、さらに運用の実態に応じまして増設をはかってまいりたい、かように考えます。
  31. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 次に、国際関係事務強化という項があるのですけれども、これは海外へ回ってみますと、アタッシュの中では農林省関係アタッシュが非常に少ないような感じを受けるのですが、現在どういうふうになっておりますか。
  32. 中西一郎

    中西政府委員 正確でございませんおそれがあるのですが、農林省関係では十六、七名アタッシュを出しておるはずでございます。最近の様子をいろいろ調べてみますと、業務量が非常にふえてきております。一人配置が多うございますので、何とかそれぞれそこへ補助的な職員配置も考えてまいりたいと思っております。まだ四十年度予算では前年度に変わっておりません。それで四十一年度以降についてよく検討してまいりたい、かように考えております。
  33. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 漁業取り締まり船新造に伴う増というのは、どういうことであって、内容等はどういうふうになっておりましょうか。
  34. 中西一郎

    中西政府委員 漁業取り締まり船新造ですが、白龍丸という四百三十トンの船の就航が四十年度から予想されます。その関係の船員でございますが、二十名が乗り込むことに相なります。若干の一般職員からの振りかえを考えておりますが、なお新規増員がどうしても必要であるということで、定員の増加をお願いしておるものでございます。白龍丸取り締まり予定でございますが、北海道の周辺の海域から千島列島、樺太、カムチャッカ、オホーツク海等の漁業取り締まり指導を行なうというようなことで用意をいたしておるわけでございます。
  35. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 私これで終わります。      ————◇—————
  36. 河本敏夫

    河本委員長 外務省設置法の一部を改正する法律案及び在外公館名称及び位置を定める法律及び在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑を行ないます。質疑申し出がありますので、これを許します。村山喜一君。
  37. 村山喜一

    村山(喜)委員 大臣もたいへんお忙しいようでございますし、時間も限られておりますから、今回提案をされております設置法改正の中身の問題について、大臣に基本的な見解からお尋ねをしてみたいのであります。  第一点は、外務大臣お尋ねをいたしますが、椎名外相になりましてから、前の大平外相の時代と、外交方針といいますか、あるいは外務省の基本的な考え方というものは食い違いがあるかどうか、この点についてはどういうようにお考えになっておるかをまずお尋ねをしたいのであります。
  38. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どういう問題でございますか知りませんが、外交方針については、私は従来の大方針に従ってやっておるつもりでございます。
  39. 村山喜一

    村山(喜)委員 外務省機構上の問題についてお尋ねをしたいのであります。  やはり基本的な方針というものは変わらないものだという前提の上に立って私は質問をするわけでありますが、第四十三国会外務委員会議事録第二十三号によりますと、三十八年の六月七日海外移住事業団法の審議が行なわれました。西村関一議員がサービス行政としての移住行政の問題を取り上げ、なお移住局の問題について触れ、在外機構専決事項の問題やあるいは現地中心主義考え方強化すべきであるという質問をいたしているのでありますが、それに対しまして、大平国務大臣が次のように答弁をしているわけです。役所の指導、干渉、監督、これらのものをできるだけ整理して、事業団に自主的な責任を持たすとなれば、移住局のように大きな機構は要らぬと思うのです。外務省に、監理官と申しますか、そういうものを官房にでも若干のスタッフを持って、各省から一人か二人来ていただければ、それでたくさんではないかと思っているわけでございます。そして、移住局はやめて監理官室にするのだ、外務省がそういう姿勢をとることが、各省にいろいろものを言える、御信用を得るゆえんだろうと思うのでございます。決意に対して御信頼をいただきたい。こういう答弁大平国務大臣はいたしているのでございます。なお、その前にも二回ほどにわたりまして、移住局などというものはほんとうは要らないのだ。こういうものが大きくかまえておりますると、逆にそういう官僚機構自体生存本能を持ちますから、できるだけ簡素化することが正しいと思います。こういう答弁をいたしているのであります。  いまお伺いをいたしますと、椎名外相考え方と前大平外相考え方とは基本的に同じであるというふうに承ったのでありますが、やはりそういうような考え方のもとに事業団が生まれたとするならば、その考え方を継承して、行政機構の問題については取り組んでいかれるのが正しいのではないかと思うのでありますが、この点いかがでありますか。
  40. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 移住局に対する重大な発言があったようでございますが、大体見当はそのとおりだと思います。しかし、ただいまでは、事業団の前身である海外移住振興株式会社及び旧海外協会連合会、そういうものの残務が残っておりまして、これを整理しなければならぬという段階にあるのであります。それから移住あっせん所事業団の移管であるとか、中央、地方及び在外機構整理等がまだ残っておる、新体制への移行がまだ完全に行なわれておらない、こういうようなことから、なお二、三年の間この残務整理のために従来の仕事がなくならない、こういう状況でございますので、この暫定期間を経過いたしますれば、大体大平大臣発言のように、漸次この従来の機構というものは薄れてまいる、かように考えておる次第でございます。
  41. 村山喜一

    村山(喜)委員 大体大平外務大臣考え方で進めていくのだ、残務整理があるから、残務整理が済むまでの間、移住局というものが必要だ、こういうふうに受け取るわけでありますが、それが済んだら移住局というのは要らないのだ、こういうふうに受け取って差のつかえございませんか。
  42. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 だんだん従来の移住局仕事というものがずっと少なくなる——全部要らなくなるかどうか、それはいまからお約束できませんけれども、少なくとも従来の存在はずっと不要になる、かように考えております。
  43. 村山喜一

    村山(喜)委員 奥歯にもののはさまったような言い方でなくて、大平外務大臣は、もう二年前から要らないと言っている。そして監理官のようなものを置いて、その下に若干のスタッフを置きさえすればそれでけっこうだ。そして海外移住事業団というものを大きくしていくのだ——現在、海外移住事業団には何名おりますか、移住局長
  44. 山下重明

    山下政府委員 現在、移住事業団には、本部在外支部とそれから地方支部全部合わせて約五百名おります。
  45. 村山喜一

    村山(喜)委員 五百名、間違いありませんか。三百五十七名じゃないですか。
  46. 山下重明

    山下政府委員 それは本部の人がその数字で、そのほかに在外支部地方事務所を含めると、五百数十名になります。
  47. 村山喜一

    村山(喜)委員 今度の予算の中でも二名ほどふやすように出ておりますね。そうすると、五百数十名というばく然たる数字ではなくて、何名になるのですか。その内訳は、本部が何人、地方が何人、海外支部が何人、あとでよろしいから、正確な数字をお出し願いたい。  これは、現在資本金は幾らですか。時間がありませんので、これも後ほど書類を調べてお答え願いたいのですが、私は大臣にさらにお尋ねをしておきたいのであります。  その残務整理がある、振興株式会社等残務整理がまだ済んでいない。一体事業団ができましてから、すでにもう二年たっているわけです。三十八年の七月の十五日には海外移住事業団が設立をされたわけです。そうしますと、今日まで二年間に、まだ事業団に一本化されないのですか。もうすでに事業団に一本化されて、機構的にも、スタッフの上からも、そういうふうになっていると思うのだが、その点は移住局長、いかがですか。
  48. 山下重明

    山下政府委員 実際に移住事業団に実務をどんどん委譲しておりますけれども、なお最近御指摘のように数が減ってきているということと同時に、移住内容自身が変わってきている。そして最近カナダ移住というようなものが大きくクローズアップされてまいりました。こういう新しい移住というものは、カナダなんかの場合には、相手国政府のほうで直接やっておりまして、それと交渉するときは、どうしてもやはり外務省自身が交渉しなければならない。また、最近アメリカに三年短期で農業関係の人が行っておられますけれども、これについても、カリフォルニア地方国内労働事情によってこれを縮小しようということが起こりまして、これについても、やはり外務省自身相当仕事をして折衝しなければならないといういろいろな面がありまして、まだ必ずしも全部を事業団に渡すというところにいっていない状況であります。
  49. 村山喜一

    村山(喜)委員 大臣説明は、従来あったいわゆる海外移住振興株式会社あるいは日本海外協会連合会、こういうようなもの等の事業団に対する事務委譲がまだ十分になされていない。だから、しばらく待ってもらいたいという。いまあなたのお話しを聞くと、それとは別に、海外移住事業団と本省のやる行政的な事務との間にまだ委譲関係が済んでいない、こういうことですね。どっちなんですか。
  50. 山下重明

    山下政府委員 移住事業団自身の古い会社と協会残務整理というものも残っておりまして、これは現実には移住地を引き継ぎましたけれども、その評価とかいろいろな仕事、それから実際には移住地自身がよくなってないところを再建するというような問題で、事業団自身でできる場合もありますけれども、実際には事業団自身でできない場合がありまして、外務省がやって、企画庁なり関係方面が助力するという仕事が残っております。先ほど私が申し上げましたのは、それ以外の新しい仕事面をちょっと御説明したわけでございます。
  51. 村山喜一

    村山(喜)委員 どうもあなた方は、きのう私のところに国会班連絡員の人が来て、先生どいううことを質問するかと言うから、きょうはこういうようなことについて質問をすると、ちゃんと連絡はしてあるのです。それについて議事録も読んでおってもらいたいと言うて、丁寧にも私のほうがちゃんと連絡をして教えている。少しは勉強してきてもらわないと、何名か、そういうようなものを説明ができないような状況では、議事の進行上きわめてぐあいが悪い。もう少し勉強してもらわないと困る。  そこで、次に行管お尋ねをいたします。今度きわめてへんちくりんな局ができる。中南米・移住局、こういうようなものはわれわれもいままでかつてお目にかかったことがない局であります。そこで行管お尋ねをするのは、この中身を調べてみますと、いままで移住局があった。移住局のところに中南米課を持ってくるというわけです。中南米課の職員九名を持ってきて、そして中南米アンド移住局ですか、こういう形にする、こういうことであります。私はいままで課から直ちに——しかも課長以下九名、それが今度は部にも昇格しないで、一足飛びに局に昇格をする、そういうような事例がいままであったのか。さらに中南米・移住局ということですから、中身を調べてみると、課は、中南米課というのが一つしかできないことになる。一課をもって一局とするというような事例が、いままであったのか。さらに中南米・移住局ということになりますと、いまも移住局長お話しになりましたように、いま移住行政の問題は単に中南米のみでなくて、カナダの移民の問題が大きく取り上げられてくるようになった、こういう説明であります。あるいは北米におけるところの農業派遣者の問題等も、いま説明がされました。これは単に中南米という地域的な事項にかかわる問題ではございません。日本移住行政の方向というものが、単に中南米のみならず、北米にも、あるいは今後においては東南アジア等においても考えられる事項が出てくるに違いない。とするならば、この分類をいたしてみますと、地域的な分類と機能的な分類、いわゆる事項的な分類とのものが一つに重なっているわけです。そこで中南米・移住局のように、地域的な分類と事項的な分類とを一つに結びつけて局というものをつくった事例があるかどうか、その点について、過去の事例について御説明を願いたいのであります。
  52. 井原敏之

    井原政府委員 実は私、村山委員お尋ねでお呼び出しがありましたが、事前にいろいろ御質疑の中身を存ぜずに参りまして、たいへん不用意でございました。  一課から一局ができた例があるかというお尋ねでありますが、これは私の承知しておる範囲では、今日まで寡聞にしてないと思います。ただし、現行で一局一課という組織は、防衛庁に二つばかりございます。  それから中南米・移住局の問題でございますが、これはざっくばらんのお話を申し上げますと、私どもも、当初はあまり感心した名称でも看板でもないというふうに考えたわけであります。と申しますのは、外務省につきましては、地域局と機能局との関係がたいへん錯綜しておるというような印象がございまして、これは中央省庁の再編をしていただく——これは各省にこれからお願いしようと思っておりますが、その際に全般的にひとつお考え直しをいただきたいという気持ちを持っておったやさきであります。実は外務省でも、非公式に伺っておるところでは、地域局と機能局との再編ということはたいへん勉強なさっておるそうでありまして、いずれ遠からず結論が出るのじゃないかというふうに考えておるわけでありますが、移住問題がむろん中南米だけの問題でないことは、御指摘のとおりであります。ただ、中南米の政務といいますか、外交問題で移住問題に非常に大きなウエートを置いておるようでありますので、この際、アメリカ局の中南米課と移住局を一緒にした——御指摘のように確かに機能的、地域的なミックスでありますけれども、この段階としては非常に重要な問題でありますので、やむを得なかったというふうに考えております。ただ、こういう地域と機能をミックスした機構がほかに例があるかとおっしゃいますと、私の承知しておる範囲ではないと思います。
  53. 村山喜一

    村山(喜)委員 だから、行政機構のあり方として、いま行管が再検討の段階にある、しかもかつてこういうような事例があったことがない、このような妙なものがこのたび出されてきた。したがって、この問題については私は慎重に検討しなければならない問題だ、こういうように思うのであります。私は、いままで国会において外務大臣が一回や二回だけではなくて三回も発言をして、必要性がない局であるということを明言をした以上は、当局が提案をする以上は、やはりそれの精神に沿うた機構改革というものが、出されてこなければならないはずであります。それをいま外務大臣にお伺いすると、まだその準備ができない。その問題についてはやがては廃止をするのだという方向を示されておる。やがて廃止するような機構のものをこの委員会提案すること自体がおかしいと私は思うのであります。だから、これらについては、こういうような地域的分類と機能的分類とをミックスしたような局を新設するということは、これは臨時行政調査会の答申の方向からも合点がいかない方向でございますし、かつ、こういうような事例がここで認められるということになりますると、ほかの省庁において同じような局の新設という問題等が出てくる可能性がある。国政をあずかる私たちといたしましては、立法府のわれわれとしては、こういうような膨大化していく機構というものについて、国民的な立場からこれをチェックしていく責任があります。そういう立場でいまの問題を取り上げたわけでございますが、大臣答弁等によりますると、どうも提案の趣旨説明が十分でないという印象を受けますので、この点につきましては、保留をさせておいていただきたいのであります。  そこで次に移りますが、今回中近東アフリカ局を新設をする。これはいまは部長以下二十二名おるようであります。今度局にされますと、何名にされますか。
  54. 高野藤吉

    ○高野政府委員 現在は二十三名で、局になりましてもやはり二十三名でございます。
  55. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、対象国は四十七国、局にしても現在の部と同じようなスタッフでいくのだとするならば、局にする積極的な理由というのは、中近東なりアフリカの民族主義的な考え方というものにこたえる。ほかに、行政的な効果を期待するという意味においては、それ以外にはないということに受け取ってよろしいのですか。
  56. 高野藤吉

    ○高野政府委員 局にいたしましたのは、御指摘のとおり、中近東、アフリカの新興国の各大使等が部で扱われるのは、ちょっと軽く扱われるという感じを与えますので、局にいたしたわけであります。かたがたわがほうの中近東に行っておる大使等も、部で扱われるというのは隔靴掻痒の感がある、めんどうを本省で見てくれない、そういう実質的な意味もございます。  それから定員がふえないのはどうかというお説でございますが、これは内輪の話でございますが、外務省といたしましては定員増を要求いたしました。しかし、政府並びに行管方針といたしまして、本省定員はできるだけ認めない、在外をふやすということで、外務省といたしましてはとりあえず局にいたしまして、今後運営において定員の足りないほうはカバーして補っていく。将来仕事がふえるに従いまして、これの定員のほうも考えていきたい。とりあえず局にいたしまして、逐次実績をあげていきたい。こういう考えでございます。
  57. 村山喜一

    村山(喜)委員 いろいろ承っておりますと、外務官僚のための部の昇格であるように承るのであります。どうも国民的な必要性というものに対する力説が十分になされぬ。とりあえず局にして、中近東課、アフリカ課という二課で発足をするわけでしょう。局長という権限事項の中から、二課程度の数で課の調整的な機能の役割りを果たす、これはあまりにも権限事項から見た場合に少な過ぎるんじゃないか。私はここで行管お尋ねをいたしますが、先ほど防衛庁の問題を言われました。なるほど防衛庁は一つの庁である。しかし、行政長官としての権限というものは、国家行政組織法上の立場からいった場合に、当然内閣総理大臣が長としての機関として存在をしている。そういうような意味においては、府とか省に匹敵をする行政機構上の権限においては、下位に立つものだと私たちは受け取っているのです。したがって、そういうような総理府の中にあります庁あたりについての機構というものは、これは府並びに省の機構的な問題を論議する場合には、少し除外して考えなければ筋が通らないだろうと思う。そこで、私は各府なり省の局で、二課以下の課で、五十名以下の局というのを調べてみました。調べてみると、法務省の人権擁護局、それから自治省の選挙局、現業官庁であります郵政省の監察局、これは六十名おりますが、一課、管理課で、あとは上席監察局か何かおる部屋ができておるようでありますが、これは課になるのかどうかはっきりわかりませんけれども、それくらいなものであります。そこで、今回中南米局は中南米課という一課の上に局ができる、中近東アフリカ局は二課の上に局長がおる、こういうかっこうになりますし、北米局になりますと、中南米課をとりますから、北米課と安全保障課という二課になる。このような形の中で、局なり部なり課というもののいわゆる機構的な姿というものを考えてまいりますと、やはり二課あるいは三課ぐらいを機能的に掌握をしていくために部というものがある。膨大な機構になったら、部長が管理する能力がないので、勢い別な局をつくる。こういうのは当然私は出てきてしかるべきだと思うのであります。しかしながら、現在残っております自治省の選挙局にいたしましても、こういうような三十一人ぐらいの小さな局についてはこれを廃止しまして、選挙の問題は重要な問題でありますから、内閣の調査会あたりに事務局として設置をするというような方式をとるとか、あるいは法務省の人権擁護局というようなものは、現在あります大臣官房の資材建設というような現業的なものを官房から切り離して、本来のスタッフ的な機能として官房というものを生かしていくというような方向をとると同時に、人権擁護局とか保護局というようなものを一つにして、さらにこれを拡充していく方向をとるとか、郵政省のような現業官庁の場合には、もっと機構的に考えなくてはなりませんが、そういうような一体的なとらえ方の中において問題を考えていかなければならない段階が、現在の各行政機構のあり方ではなかろうかと思うのであります。それにもかかわらず、中近東アフリカ局という二課二十三名の局をお認めになった理由。そして北米局というのができると、これも二課になる。そういうような二課程度の局というものが、はたして日本行政管理機構の中において正しいかどうか、これは基本的な問題でありますので、行管が査定をされましたその基本的なものの考え方についての方針を伺っておきたいのです。
  58. 井原敏之

    井原政府委員 たいへん重要な問題の御指摘でございます。実は中央省庁の部局の編成の単位といいますか、基準というものは、私、自分のことを申し上げて恐縮でありますけれども、管理局長になりまして三カ月目でございますが、まだはっきりしたものがないのであります。現在までいろいろと既存の成り行き、経過、沿革等がございまして、これをなるべく広げまい、大きくすまいというような配慮はやってきたわけでありますけれども、どういう程度のものが局であり、どういう程度のものが部であるという客観的な基準というものは、実ははなはだお恥ずかしいのでありますが、ないに近いわけであります。しかも、現業の部門につきましては、課がどのぐらい、掌握人員がどのぐらいというようなことで、基準が立ちます。しかし、企画、管理、調整というような、いわゆる中央省庁の本来的な機能の部分につきましては、どういう範囲のものを局にするとかいう問題は、たいへんむずかしいわけであります。特に重要な政策を遂行する場合には、そのために局が設けられるというような傾向は、今日までたびたびあったわけでありますし、そのことが無意味だとも思っておらぬわけです。ただ、臨調がああいうように企画と実施の分離という大きな方向を出しております。新政策を行なうたびに局がふえ、部がふえるということは適当でない、こういう指摘がありますので、私どもは、それを中心に各省庁のあり方の再検討の作業をしておる最中でございます。御指摘のような問題は十分考えに入れまして、今後のあり方をすっきりさせたい。新政策を打ち出すたびに局がふえる、部がふえるといういまのあり方は、全くどうかと思っておるわけであります。ただ、中近東アフリカ局の問題につきましても、非常に重要な政治的な配慮の要る問題でございまして、これはいまの段階として私ども当然ではなかろうか、ただ課が少ないとか人が少ないとかいう問題だけでちょっとかれこれ言えない要素があるというふうに見て、これは承認したわけでございます。
  59. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、この問題は政治的な判断を要する重大な問題であるということでありますので、外務大臣から、中近東アフリカ部というものを局にしなければならないその政治的な重大な内容というものを、御説明を願っておきたい。
  60. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国内理由というのはむしろなくて、重点は対外的な問題にあるのでありまして、御承知のとおり、ほとんど新興国が大半であって、これからほんとうの国づくりを始めようという国ばかりでございます。これらを相手にしていろいろな外交施策を行なっていく上におきまして、部というよりも、やはり一つの独立した局というものがお相手をするということが、まずこれらの新興国のいわゆる対外的な体面と申しますか、そういうような点にも触れた問題でございまして、これがおもなる理由でございます。そして部長ということでなしに、他の地域局と同じようにりっぱな局長を置きまして、これらの新興国に対する外交施策を力強く行なってまいりたい、これがおもなるねらいでございます。
  61. 村山喜一

    村山(喜)委員 だから、私は、行政的な機構だけが先行をして、実質的な内容が伴わなければ意味はないと思うのです。そういうような意味において、先般経済協力の問題について、大臣に私はお尋ねをした。ところが、経済協力基金の問題等については、これは実績において前年度よりもはるかに下回っている。大臣が要求をしたものが通らない。したがって、実質的な内容のものは、これは後退をしているような姿の中で、行政機構だけが先行をするというのは、これは大臣説明の対外的な重要性というものを裏づける理由がないと思うのでありますが、その点はいかがでございますか。
  62. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 協力基金の問題は、多少金額の点においていろいろ波がございますが、しかし、今日の日本外交の基調の一つとして、どうしても経済協力を打ち出していかなければならぬ。その有力なよりどころはこの協力基金にある、かような考え方で、従来この協力基金はあまりたいした力を発揮していないから、これを輸銀に合併して、これをもうなくしてしまったほうがいいのじゃないかというような大蔵省あたりの意見がございましたが、われわれは強くこれに反対をいたしまして、そして今後の国際情勢から見て、日本はこの協力基金というものを拡充強化いたしまして、そして対外的な外交施策の重大なる基調の一つにしたい、こういう主張をいたしまして、とにかく曲がりなりにも予算で十億、それから預金部資金のほうから十億ということになりまして、そして将来この協力基金というものを新しい角度からこれを強化していくという第一歩が、踏み出されたような次第ございます。これを輸銀と性格をあくまで違えて、そしてより政治的な意味においてこの協力基金を活用してまいりたい、こういう第一歩を踏み出したわけでございます。新しい中近東アフリカ局も、結局はこういったような借款その他の経済協力というものによって、四十数カ国の国といろいろな折衝を行なってまいることと思うのであります。決して実質は裸になって形だけを強化したというようなことではございません。
  63. 村山喜一

    村山(喜)委員 具体的な数字が、そのことを物語っているのですよ。いま大臣説明されたことは、この前説明を聞いたとおりであります。同じことですが、その内容は、いわゆる経済援助総額にしても、一億ドルも減っておる。しかも臨時行政調査会のほうから指摘をされているように、経済協力基金にしても活用されていない。そういう実情が、現美の日本外交内容です。そして局だけはつくっていく、行政的にはそういうような姿をただとろう、これでは、内容、外形ともに一体的な姿として日本外交の政策というものが明らかでないじゃないですか。私はそういうふうに数字の面から受け取る。大臣はそういうように説明をされますけれども、それはきわめて苦しい答弁です。  それじゃ予定の時間に参りましたので、内容的な詳細な移住行政の問題、それから今日なお問題になっております。きょう触れませんでした具体的な問題につきましては、他日に質問を保留いたしまして、私の質問は、本日はこれで終わります。      ————◇—————
  64. 河本敏夫

    河本委員長 労働省設置法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  質疑に入ります。質疑申し出がありますので、これを許します。田口誠治君。
  65. 田口誠治

    田口(誠)委員 労働省設置法改正案の内容を見まして、私どもがいつも強く要請をいたしておりまする定員の不足の点については、不十分ではあるけれども、今年も定員が増加されております。その中でも、特に労働災害を防止する対策を充実するために労働基準監督官を増員してもらいたいということは、毎国会で強い要望をいたしておるところでございますが、今年の増員数を見ますると、私どもの考えておりました数字と比較いたしますると、少な過ぎるので、非常に遺憾に思っております。したがって、そうではあるけれども、この定員増の内訳が、本省としての分が、ここにプリントで配られておりまして、その内容を見ますると、やはり重要な点については人数が多くとられておりまするので、労働省としては、この点に相当気を使っておられ、また努力されておるというあとは、この内訳の内容から言って了解できるわけでございます。  そこで、いろいろとお伺いをいたしたいのでございますが、第一に、労働災害というものとは変わった災害でございまするが、御承知のとおり、先般倒産をいたしました山陽特殊製鋼の問題は、新聞、ラジオ、テレビ等で相当内容を発表されたわけでございます。その中で驚きましたことは、労働者から預金をさしておる社内貯金が、一億五千万円も支払うことができない状態にある、こういう実態であるというので、驚いたわけでございます。したがって、私は、昨年の事業所の倒産数と、それから倒産した事業所の社内貯金が支払いのできなかった数を調べてみたわけなんですが、倒産数といたしましては、四千二百余事業所になっておりまするけれども、それだけ倒産した中で、十六事業所が社内貯金を支払う能力がなかったということで、これは今後の問題として十分検討しなくてはならないと思うわけでございます。したがって、ここでお聞きをいたしたいと思いますることは、今日現在か、昨年末か、一番近い期間でよろしゅうございますけれども、いわゆる社内貯金というのが総額どの程度に現在なっておるか。それからお答えをいただきたいと思います。
  66. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 社内貯金の額及び加入労働者の数は時々刻々動いておるわけでございますが、労働省としてまとまった調査をいたしましたのは、三十八年でございます。その際の調査金額が、約四千七百億円でございます。しかし、その後の状況から見まして、増加しておるということは大体疑いないところでございます。広範な調査はかなりの日数を要しますので、その後の明確な数字は、まだ把握いたしておりません。
  67. 田口誠治

    田口(誠)委員 そこで私は、山陽特殊製鋼のような相当多額の金額が支払いができないというようなことになりますると、そこに働いておった労働者が苦しい中から預金をしたその預金が保証されないということになりまして、これはたいへんであろうと思いますので、こういう問題について、今後解決するために、労働省の考え方を順次お聞きしておきたいと思うのです。  そこで、金融機関というのはいろいろございますが、社内貯金というのも、これは一つの金融機関というような解釈をしてもいいものかどうか、まずこれを承りたいと思います。
  68. 石田博英

    ○石田国務大臣 それは、金融機関とは解釈いたしておりません。
  69. 田口誠治

    田口(誠)委員 すると、どういうものですか。
  70. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 いわゆる社内預金といわれておりますが、法律上は労働基準法十八条の規定を根拠にいたしまして、労働者が、その過半数を占める代表者または労働組合がございますときには、労働組合の代表者と使用者が書面による協定をいたした場合に成立する特殊の貯蓄金管理契約でございます。したがって、その貯金は、いわゆる金融機関というような不特定多数を目的にいたしましてお金を出し入れするといったような性格のものではなく、むしろ労働基準法によるところの特殊の貯蓄金制度である、こういうふうに労働省は解しておりますし、他の金融立法におきましても、そういった特別扱いをされておる制度である、こういうふうに理解いたしておるような次第でございます。
  71. 田口誠治

    田口(誠)委員 十八条の強制貯金の禁止条項に基づいて、一つの手続、方法をとれば社内貯金を行なうことができるというこの規定をつくったことは、どうしてこういう規定をつくったのですか。
  72. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 御承知のように、過去におきまして使用者が貯蓄金を強制的に管理するということは、そういった面から労働者を事業所にくぎづけにする一種の封建的な拘束をさらに助長するという見地から、十八条の第一項では、強制貯金は禁止しておるわけであります。しかしながら、過去の実績等にかんがみまして、労働者が集団的な力を背景にいたしまして書面協定をいたした場合においては、それなりの担保力と申しますか、そういうものが考えられ得ますので、そういった場合には、その原則を例外的に解除する。一方においては、中止命令を出し得るようにするとか、あるいは罰則を課するとかいった手だてを講じまして、例外的にこれを認めるということにいたしたのであります。しかしながら、法の制定当時は、この契約は認可制をとっておりましたが、昭和二十七年に法改正がなされまして、行政事務の簡素化、合理化という観点から、従来の認可制を届け出制に改めた。三者構成の労働基準審議会におきまして、全会一致でそのような答申がなされましたので、届け出制に改めた、こういういきさつでございます。
  73. 田口誠治

    田口(誠)委員 私が申し上げるまでもなく、御承知のとおり、この社内貯金というものの今日に至る歴史的な経緯を申し上げますれば、あの戦時中に、戦争目的のために資金を集めなければならない、資金調達をしなければならないというので、各町内では町内預金をさせ、職場においては職場貯金をさせ、いろいろな形で貯金の奨励を行なって資金集めを行なったわけです。したがって、戦後におきましても、会社が資金融通を金融機関から受けようといたしましても、なかなかめんどうでもあり、思うような資金融通もできないというようなことから、そこにつとめておる労働者から金を預かって、それに利子をつけて、そしてそうした預かり金によって会社の資金運営を行なうという、こういうことから結局戦後も継続されてきておるわけなんです。ただ、途中で、戦後の不安定な経済情勢の中でございましたので、中小企業が非常に倒産をいたしまして、倒産をしたその会社が、先般ありましたような山陽特殊製鋼のように、会社が破産をしたために社内預金を支払うことができないということから、労働者に迷惑をかけたり、そうしてまた労働者は相当強制的な預金をさせられておって、そして自分が金の必要なときに、預金をおろそうと思いましても、なかなかおろしてくれない、こういうことから、非常に労働者には不利な預金であり、また全く保証のない預金であるということから、それではいけないというので、労働省としては、労働基準法の十八条に一つの規定を設けて、そうして労使間が協定をし、あるいは過半数の労働者の同意を得た場合に届け出を行なって、そしてもとは認可であり、現在は届け出をして行なっておるというのが、今日までの経過であるわけなんです。  そういう経過を踏んでおりますけれども、昨年のように、十六事業所も支払い不可能な事業所ができ、しかも先般の特殊製鋼のごときは一億五千万円も支払いすることができないというようなことで、労働者といたしましても、現在行なっておる社内貯金に対しまして非常に不安定な考えを多くの人たちが持つようになっておるわけなんです。そこで、労働者に迷惑をかけてもいけませんし、また、不安定な状態をこのまま続けさせることもいけないと思いますので、私は突っ込んでお聞きするのですが、いまの答弁からいきますと、社内貯金は金融機関とは違っておるのだ。ただ労使間が話し合いをしてそういう預け、預かりを行なうことができるように法的に措置をとっておるのであって、その法的な措置によって行なっておるのだから、これは金融機関でないと言われますけれども、どうも内容からいきますと、事業所がこの金によって事業所の資金運営を行なうということにもなっておりまするし、そうして預金のしかたも他の金融機関と何ら変わっておりませんし、利子の場合には、労働者を保護する意味で、年六分を下回ってはならないという規定を十八条で規定しておるわけなんでございまして、これが全く金融機関とかけ離れたものだということには考えられないわけなんで、そういうことから、私は、この点に非常に疑問を持つわけなんでございます。そこで、戦後はこれに類似したようないわゆる金融機関というものが、相当あったわけです。それで、それが実際に金融機関かといえば、これは完全な金融機関とも言えないような金融機関があったわけなんです。そこで、昭和何年でございましたか、保全経済会が非常に不始末を起こしまして、そうして相当多数の国民に迷惑をかけた。このことから、この金融の取り締まりを法的に行なわなければならないというのでつくりましたのが、これが、昭和二十九年の六月二十三日でございますか、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律で、この法律はやみ金融の取り締まりの法案であるわけです。それで、このやみ金融取り締まり法律案内容を見ますると、いかなるものといえども、別に法律で規定されておらないものは、これは金を預かったり預けたりすることができない、こういうことになっておるわけなんです。そうなっておるにもかかわらず、このやみ金融取り締まり法のできる前にできた労働基準法の十八条の適用をして貯金をさせておるところに問題があろうと思うので、このやみ金融取り締まり法の法律との関連をどのように労働省としては考えておられるか、この点をまず承っておきたいと思います。
  74. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 いま御指摘の出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律は、昭和二十九年に制定されました。この法律は、御承知のとおり、保全経済会等の問題を契機にいたしましてつくられた法律であります。この法律が制定されました際にも、いわゆる社内預金はどうなるのかということが問題意識として考えられたのでありますが、労働省及びこの法律を所管いたしまする大蔵省におきましても、この法律の第二条により「業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定のある者を除く外、」というふうに、他の法律に特別の規定のある場合は除外されておりますが、いわゆる社内預金は、労働基準法十八条に基づく特別のものであるというふうに解されまして、この法律の適用から除外されるという解釈を、二十九年当時から今日まで一貫してとってきたという次第でございます。もっとも、社内預金の運用につきましても、すべてが会社の運転資金等に利用するという性質のものばかりではなくして、たとえば土地や住宅を従業員に取得可能ならしめるために、いわゆる住宅貯金といったような性格の貯金もいたさせまして、労働者の福利厚生の面に寄与しておるというような実績も、かなりあるように見られるわけであります。しかし、御指摘のような点がございまするので、今後におきましては十分検討いたしまして善処しなければならないというふうに考えておる次第であります。
  75. 田口誠治

    田口(誠)委員 ただいま出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律の第二条の預り金の禁止の項を読み上げて御回答があったのですが、確かに「業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定のある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない。」こう明記されておるのでございまするが、これはやみ金融の取り締まり法律であって、その他の法律にない者は業としては何人もやってはならないということになっておりまするから、やみ金融の場合は、保全経済会がその対象になったとか、またその他のものも相当あったということになりまするが、そういう金融機関が、やはりほかに特別の法律で定めのない者はいかなる者といえどもやってはいけない、こういうことであって、特にこの「業として」の解釈は、反復継続式のものである、こうなされておるのです。反復継続式のものであるということになれば、社内貯金というのは、今月も来月も再来月も、そうして同じ金額を、また違う金額を反復継続式に行なっておるのであって、この者は「業」というこの解釈からいきましても、このやみ金融の取り締まり法に違反をするものであるというように私は考えるわけなんです。  もう一つ、ほかの法律に定めのない場合はやってはいけないのだ、こういうことなのですが、ほかの法律とは、金融機関をさして言うんですよ。金融機関というのは、質屋の質屋営業法とか、そういう法律をさしているのであって、便宜的に労働者と経営者が金を預かったりあるいは預けたりする、こういうものはやはりやみ金融の中に入れるべきものであって、これを認めて今日まで来たところに今日のような不祥事態をかもし出しておるわけなのですから、この点につきまして反論があれば、ひとつ反論をしてもらいたいと思う。
  76. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 反論などという気持ちはございませんが、実は御指摘の法律の解釈につきましては、立法当初におきましてもいろいろ御意見がございまして、確かに先生が御指摘のような問題も論ぜられたようでございます。しかるにかかわらず、先ほど申し上げましたような解釈に一致して今日まで来ておるような次第でございます。
  77. 田口誠治

    田口(誠)委員 あまり答弁にはなりませんがね。それだけこれはあなたのほうからしては答弁のできないものですよ。できないということは、労働基準法の十八条の規定が、いわゆるやみ金融の取り締まり法律ができたあとに認められたものなら、これはあなたの答弁のようなことも了解することができると思いまするけれども、先ほど私が申しましたように、社内預金というものの歴史的な経緯からいきますと、戦時中戦争目的のために資金を調達する一つの手段として、会社で社内貯金をやり、町内貯金をやり、そうしてその他の団体貯金をやり、こういうものが戦後まで引き続いてなされてきたけれども、労働者が、金利が他の金融機関よりも高いということに魅力を持って、無理をしてその会社に預けていても、出したいときに払い出しを受けることができなかったり、倒産をして預けた金を戻してもらうことができなかったり、こういう事件が起きたので、それではいけないから、もう少しこれには完全なる規定をしてやらなければならないというので、当然労働者を保護するところの保護立法であるこの労働基準法の十八条の中に、ただいま規定されておる内容のものが入っておるわけなのです。そうしてずっと継続されておりましたけれども、昭和二十八年に保全経済会がああいう不始末を行ないまして、これでは金融の取り締まりを行なわなければならないというので、昭和二十九年六月二十三日の出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律、すなわちやみ金融の取り締まり法律ができたわけなのです。この法律ができると同時に、労働基準法の十八条は、この時点で検討をしなければならなかったわけです。だから、私は、このやみ金融の取り締まり法ができてからは、労働基準法の十八条は再検討をして、そして社内貯金というものを認めないとか、万が一認めるとするなれば、その他、直接に労働省とは関係はございませんけれども、通産省の会社更生法等の内容等も含めて検討をしなければならなかったという問題ではないかと思うのです。私は、こういう問題が起きたやさきでございまするから、これはいままでの論理とは違って、真剣に検討してもらわなければならないと思うのですが、その点について大臣、いままでの経過を聞いていただいて、どうお考えになるのですか。
  78. 石田博英

    ○石田国務大臣 法律並びに法律運営上違法であったとは考えておりません。また、労働者保護という立場から、社内預金の実施運用につきましては、厳重に監督をいたして、できる限りの努力をいたしてまいったつもりでございます。たとえば昨年度十六件一億六千万円ばかり事故を生じましたが、それはその後の行政指導によってかなり改善を見ております。今回も山陽特殊製鋼で一億五千万ばかり出ました。たいへん遺憾なことでございますが、法律上、これは会社更生法におきましても共益債権と認められておりまするので、勤労者の利益を守るようにさらに努力をいたしてまいりたいと思っております。ただ、御指摘のように性格にあいまいな点がたくさんございます。勤労者の金を預かっておって、預金準備金もない、そのほかいろいろな制度上の欠点もございます。また、この制度そのものを存続さすべきかどうかという議論も、方々から出てまいりました。そこで労働省といたしましては、一昨日中央労働基準審議会にこの制度の存否について御検討を願うように諮問をいたしました。直接の労使の御意見を承りまして、善処をいたしたいと考えておる第次でございます。
  79. 田口誠治

    田口(誠)委員 それで、今後これは十八条に示されておる法律を再検討されるのか。ただいま大臣からお話のありましたように、法律の条文からいっては違法とは考えておらないということは、これは労働基準法の十八条のことを言われた。
  80. 石田博英

    ○石田国務大臣 はい。
  81. 田口誠治

    田口(誠)委員 ところが、十八条ができて労働者を保護しようとしておったけれども、今度はあとからできたやみ金融の取り締まり法では、業としては何人もやってはいけないんだ、すなわち業というものは反復継続式なものだ、こういうことですから、ぴったりとこの社内預金というものはその中に当てはまるわけです。
  82. 石田博英

    ○石田国務大臣 それは、別の法律に規定を設けてあるものを除いてはということになっておりますので、これは労働基準法の十八条の例外規定として基準法上に認めておりますから、したがって、出資の受け入れとかなんとかいう法律に直接違反するものとは思っておりません。
  83. 田口誠治

    田口(誠)委員 それは議論になりますし、現段階では労働省は労働省の立場でいろいろ答弁をされておられると思いますけれども、完全にこのやみ金融の取り締まり法の法律案をずっと読んでみますと、労働基準法の十八条で示されておるものは、これは先ほど来繰り返し申しておりましたように、社内預金によって労働者が不利益をこうむる、これを何とか手を打たなければならないというので、労働基準法に十八条で例外規定というものがなされておるわけです。なされておるのだが、こういうものもあり、その他のものもあって、そうして今度取り締まり法の中にきちんと明確に書いたのは、業として預り金をするものにつき云々、こういうことですから、そうすれば「業として」とは何だといえば、反復継続式のものだ、こうなれば、社内貯金とぴったりいくわけです。だから、このやみ金融取り締まり法に違反をするものであって、やめなければいけないのだし、その他の法律というのは、金融の法律なんですよ。先ほど申しましたように、質屋には質屋営業法、そういう法律はありますが、そういうような法律を除いたものは一切だめなんだ、こういうことなんです、いろいろな理屈をつけてみたって。どうですか。
  84. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 法律の解釈の問題でございますから、「業として預り金をする」、これは社内預金もこれに該当する可能性があるわけでございます。したがって、この法律の適用を受けるのか、はずされるのかということが問題になるわけでございます。おことばでございますから、ややふえんして申し上げますが、除外されるものについて、特定者からの受け入れの預金か、そうでなくて、特別の法律がある場合に許されるものであるか、こういう二つの点からの見方があったわけでありますが、解釈としては、特別の法律がある場合に許されるその場合に該当するという点したがって、この法律の適用を除外される。そういう解釈で通ってきておるわけでございまして、いまこの法律に違反するものであるというふうには、政府部内はもちろん、一般——その後も約十年以上の期間何人も適法として考えられ、運営されておるのでございますから、おことばでございますけれども、この法律に違反してということでございますならば、もうこの出資金等取り締まり法ができてから十何年たっておるのでございまして、当然これは否定せらるべきものであったはずだと思うのでございます。しかし、これはこの預り金等取り締まり法に関する問題でございまして、運用上いろいろな問題があるということについては御指摘のとおりでございまして、また、別に国民貯蓄組合法との関連において問題がひとつからみ合ってきたというようないきさつもございます。したがいまして、実は社会預金という制度が基準法制定当時例外的に認められてまいりましたけれども、その後金融情勢の変化に応じまして、また税法上特別な取り扱いをするといったような問題もからみ合いまして、昨今予想外に普及してきた。そのことの結果としまして、いろいろ世上指摘されておるような問題を惹起しておるわけでございます。したがいまして、先ほど大臣から御答弁ございましたように、先週の金曜日でございますが、労働基準審議会に諮問をいたしまして、御検討を願っておるような次第でございます。
  85. 田口誠治

    田口(誠)委員 幸い労働基準審議会のほうへあずけてあるから、きょうの答弁は楽だと思いますが、これは何と言われても、いままで通ってきたじゃないかということは、無理に通してきたということだけなんですよ。この法律をつくって通してきたということだけで、それを労働者なりあるいはその他の金融機関が納得し、是認したものではないわけです。これはずっと問題になってきたわけです。ただ、政府のほうが、この問題ではなかなか強腰であったので、内容改正もされずに今日まできておるのであって、スムーズにこれが今日まで通ってきたというものではない。
  86. 石田博英

    ○石田国務大臣 これはここで幾ら繰り返してもあれだと思いますが、はっきりいたしておきたいと思いますことは、先ほどの出資の頂かり金云々の法律が通過をいたしましたときに、特別の、法律の規定ある場合を除きと書いてあるのです。その特別な法律というのは、いわゆる社内預金については何かといえば、それは労働基準法である、こういう解釈のもとに出資の受入、預り金云々の法律の適用外のものだ、そういう解釈で今日まで来ました。しかし、その今日まで来た間に、むろん社内預金という制度についてはいろいろ議論がございました。それはその出資の預かり金云々の法律に該当するかどうかという議論ではなくて、金融政策上の議論、あるいは管理運営上の議論、そういう点でずっと議論があったことは事実でございますけれども、法律に違反する制度であるという議論は、今回初めてそういうことをいま伺ったようなわけで、いままではそういう法律に違反するという議論ではなくて、こういう制度が金融政策上あるいは管理運営上に問題がある。特に、昨年以来いろいろの具体的な支払い不能事故ということが起こってまいりましたために、さらにそれが大きくなってまいりました。そこで、われわれとしては、この際この制度それ自体の存否の問題につきまして、労働基準審議会で御検討をいただくというのは、そういう議論が一般的に非常に起こってまいりましたが、契約当事者である労働組合代表あるいは経営代表というところからの議論は、その当事者自身からの議論というものは、現在たくさん——先ほど申しました四千七百億円、もっとあったのですが、そういう現在存在しておる当事者の中からの議論というものはあまり聞けませんものですから、そういうことも聞くと同時に、それから実際の運営が、運転資金に使われているのか、あるいは社員の厚生施設、あるいは住宅、老後の保障、不時の支出ということの準備のために行なわれているのか、そういうような運営の実態等の資料も、あわせてひとつこの際根本的に御検討いただこう、こういうことでございます。したがって、現在あの社内預金という制度については、私どもは問題が所在しておることは認めております。したがって、問題の所在をこれから突き詰めて、ひとつそれぞれの立場から材料をそろえて御検討いただこう、こういうことでございます。
  87. 田口誠治

    田口(誠)委員 この問題について検討をされておるという事実と、それから大きな関心を寄せられておるという事実は明確になっておりますが、大臣は頭がいいから、ぼくらの質疑応答を聞いておって、そうしていまのような答弁をずっとされましたけれども、それは幾ら頭がようても、一から十まで全部世の中のことを頭に入れておるんじゃないから、それは違っておりますよ。違っておるということは、先ほど言われたように、やみ金融の取り締まり法等の法律というものは、これはやみ金融機関の取り締まり法であって——そうでしょう。
  88. 石田博英

    ○石田国務大臣 そうです。
  89. 田口誠治

    田口(誠)委員 だから、結局先ほどお話のありました社内預金は、金融機関からはずしての解釈をしておる、こういうことでしたが、そこで私がいままでそのことに関連をしてずっと話してきました中で、これは労働者にも、あるいはその他の金融機関でも、相当問題になっておるということを言いましたけれども、あまり問題になっておらぬと言われるけれども、六年春七年も前から問題にもなっており、国会でも四年も前からこれは具体的に問題になっておるわけなんです。そこらのところは知ってみえなくても私は追及はしませんけれども、問題になっておらぬということはないわけなんで……。
  90. 石田博英

    ○石田国務大臣 いや、そういうことは言うておりません。私は問題になってきておるという事実は、先ほども認めておるのであります。ただ、問題になっておる問題の所在が、先ほどの法律に違反するか違反していないかということが問題になったのは、たしか前に大橋君のときに田口さんが御質問になったと承っておりますが、そのときに法律論として出てまいりました。しかし、それ以外にも、これは議会の問題だけじゃなく、政府部内でもしょっちゅう問題になっておりまして、はっきり申しますと、金融機関をあずかっておる大蔵省方面から、いろいろ議論はございました。その金融政策上、あるいは管理運営上、そういうような議論がずっとあったことは、私も認めております。そのとおりでございます。そこで。この際、抜本的に検討してみようじゃないかということでございます。
  91. 田口誠治

    田口(誠)委員 これ以上やりとりをしておりましても同じことになろうと思いまするが、現在労働者が社内預金によって相当大きな被害をこうむっておるという事実を認められて、抜本的に検討をされるという意思でございますので、それに期待をかけて、この問題はこの辺で終わって、次へ移りたいと思います。  次は、労働基準局の、特に産業安全研究関係のことですが、これは現在何カ所あって、そしてどの程度の職員が、どういう仕事をやって、どう成果をあげておるかということをまずお聞きをいたしたいと思います。
  92. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 産業安全研究所は、昭和三十九年度における現状を申し上げますと、職員数は四十四人、その中に占めます研究員の数は三十三人でございます。しかしながら、最近の労働災害の発生状況から見まして、さらにこういう施設充実をはかるべきであるという要望が強うございますので、昭和四十年度におきましては、わずかではございますが、研究員をさらに四人増員いたしまして、四十八人をもってこの安全研究所を運営するということにいたしております。  研究所は、東京田町に近いところにございますけれども、これの分館という形をとりましたものが、大阪に一カ所ございます。  それから定員だけ申し上げましたが、安全研究所の機構は、現在二部八課からなっております。しかしながら、四十年度は四名の増員もございますので、できましたならば、爆発防止に関します研究を行なう防爆課といったような課を新設いたしたいと考えておるような次第でございます。
  93. 田口誠治

    田口(誠)委員 そこでもう少しその仕事内容を話してもらって、その仕事が今日までどう目的を達成してきたかという点を、この際お聞きいたしたいと思います。
  94. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 安全研究所におきます試験研究状況でございますが、非常に広範な事項にわたっております。たとえば作業用の防具等の研究、ボイラー、クレーン等の特殊設備の構造、材料等の改良に関する試験、研究、それから機械装置の安全対策に関する試験、研究、それから作業行動に関する研究、それから爆発防止対策に関する試験、研究といったような、非常に広範な領域にわたっております。来年度予算におきましても、こういった研究項目をさらに追加いたしまして、研究充実をはかってまいりたいというふうに考えております。  どういう効果があがっているかということでございますが、たとえば墜落防止のための金網等について、金属以外にいろいろな化学物質がこのごろできてまいりましたが、さらにより安全確実になし得るような防止施設はどういうものであるかというような観点から試験、研究を行ない、かなり一般に利用されている。あるいはたとえば東京タワーが建築される前に、一体どの程度の状態であればだいじょうぶであるかどうかといったような保全度の研究、かりに倒壊するとすれば、どの周辺まで影響があるかといったような特殊なものにつきましても、それぞれの個別のケースとして依頼を受けて調査、研究をするといったような活動もいたしているような次第でございます。
  95. 田口誠治

    田口(誠)委員 その点はわかりました。  そこで次にお聞きをいたしたいと思いますことは、職業安定所関係についてでございまするが、今日私どもが耳にしておりますることは、労働省のほうから相当強い指示があって、失業した人が給付金をもらうために安定所へそれぞれ参りまするが、そのときに、どちらかといえば非常にきびしい審査をなされるということ——もちろん、ただ失業保険目的にぶらぶらしておってもらってはそれは困るわけで、その点は私は行政一つのけじめをつけてもらわなければならないと思うのですが、あまり常識外に労働省のほうから指示がきたからといってきめつけをしてもらうと、せっかく失業保険の制度があって、だれ一人好みもしないのに失業しなければならないという状態になったときに、次の職業を見出すまでに失業手当をもらって食いつなぎをしようとする者が、毎週行ってひまどりをして、そしていろいろときびしい、本人にしてはつらいことを耳にするということになりますと、もう安定所へ行って失業保険をもらうこと自体がおそろしいということになりまして、これでは自分たちが掛け金をして、そして失業のときに生活を何とかやりくりをつけていかなければならない、こういう考え方から制度もでき、掛け金をしておっても、いまのようなきびしいやり方では困るのだというのが、一般の失業した人たちの合いことばになっておる。したがって、私がお聞きをいたしたいことは、どういうきびしい指示をしてやったのか。そして指示がなかったら、現場のほうで自主的にそうしたきびしい調査とか、また聞くにたえないようなことを言われるようなことはないと思うので、その点をひとつ明確にしてもらいたい。
  96. 和田勝美

    ○和田(勝)政府委員 私からお答えを申し上げます。  失業保険の受給の問題でございますが、失業保険の受給者は、三十六年以降、年々増加をしてまいりまして、休職者の中に占めます割合も、三十五年が三三・一%でございましたものが、三十八年には四六・一%、こういうように休職者全体の中に占める割合もふえてきております。それと、一方におきまして、いわゆる需給関係が非常に売り手市場になってまいりまして、人手不足が叫ばれておるのに、安定所に非常に多くの失業保険受給者が目立ち過ぎるのではないか、こういうような意味合いの世評も、一方にはあるわけでございます。だいぶ前でございますと、安定所が努力をいたしましても、なかなか就職口がないという実情でありましたものが、最近は非常に求人が多くなった。それなのに受給者が非常に多くおるということとのつり合いをどうするかということでございます。もちろん失業保険受給者は、失業保険金をかけられておった人でございますので、むやみやたらに強制的に安定所が就職のお世話をするという筋合いのものではございませんが、しかし、これは単に掛け金だけではなくて、一般国費からも相当の額の支出がなされておるものでございますので、失業保険が、いわゆる乱給的な様相を呈することは厳に戒めなければならぬことは、ただいま先生から御指摘があったとおりでございます。しかし、職業選択の自由ということも、もちろんあるわけでございますので、安定所としては、いま申しましたような二、三の条件のもとに、本人の納得を得つつ、早くその人にふさわしい職場についてもらいますよう受給者と十分意思の疎通をはかっておるような次第でございまして、強制的にどこかの就職口にはめ込むというような意思は、毛頭ないわけでございます。最近特にそういう指示をしたのではないかという御指摘でございましたが、これは実はもう二十六年ごろからやっておりましたものを、事務上のいろいろの事務の整理の問題等で立ち消えになっておったようなものをもう一つ明らかにしたということでございまして、特にきびしく扱え、こういう趣旨の指示をしたものではないことについては、御了解をいただきたいと存じます。
  97. 田口誠治

    田口(誠)委員 いま御答弁のありましたお話の中で、強制的云々ということがございましたが、そういうことは現場ではありません。強制的にどうこうということはございませんがいままでよりきびしいということなんです。きびしいと一口に言ってもわかりませんけれども、いままでは、ちょっと給料が安過ぎるから、その職場では私のからだに耐えられないから、こう言えば、そうか、じゃ次のやつを、こういうことになっておりましたね。ところが最近では、それを、もうその年になってから、そんな金を取ろうといったって、それはだめだから、だからこの辺で何をやりなさいとか、一つの例を言えば、そういう式で強く出てこられるということでございます。非常におどおどして失業保険をもらいにいかなければならないというのが、現在の実態であるわけであります。したがって、私どもは、巷間伝えられるところであるから、その内容が事実かどうかということはわかりませんけれども、一応労働省のほうとしては、失業保険の給付額を総額今年はこのぐらいでおさめよという目標をつくって、そしてそれを現場のほうへ指示しておられる、指導しておられる、こういうように聞いておるのですが、そういうことは、事実ありますか。
  98. 石田博英

    ○石田国務大臣 そういう指示はございません。ただ、これは皆さんもともに考えていただきたい問題なんです。人手が余っておって、働こうと思っても職のないときに、失業保険会計が苦しくなる、これはあたりまえです。世界各国どこへ行ってもあたりまえのことで、やむを得ない。現に昭和二十八年に朝鮮事変が終わりましたときに、一ぺんに十億円ほど年度の赤字を出しました。しかし、いままで年度の赤字を出したのは、そのときだけなんです。いま人手が片一方において不足で、職がたくさんあるわけなんです。そういう時代に失業保険会計が悪化をするというのは、これは何としてもおかしなことなんです。全体から見まして、非常におかしなことであります。それから、たとえば中央、地方を問わず、これは出かせぎということは別にいたしまして、地方でも、こちらで公共事業や何かがあって人を求めておる。ところが、同じ地域において、こちらで昼間からパチンコ屋が繁盛しておる、これはやはり非常におかしなことであります。  それからもう一つ考えていただかなければならぬことは、三カ月の失業保険金を受け取る。それを労使双方で何年かかって納めればその受け取る金額になるかというと、十二年かかるのです。十二年かかってようやく三カ月分に該当するわけなんです。したがって、そういう種類の受給者がふえてくるということは、そういうことが顕在化されれば、一般的にどっかほかの地域の、あるいはほかの業種の保険にかかっている人の犠牲において行なわれているともいえるわけです。むろん二百九十億ばかりの政府出資もございますけれども、それ以外にそういうことがあるわけです。ですから、特に問題にしなければならないのは、地域的にも業種的にも片寄っておるそういうことを是正していかなければならないということは、これは大局的に御了解いただきたい。  それからもう一つは、失業した人の生活の安定をはかる最大の道は、かわりの仕事を探してやることであって、機械的に失業保険金を払うことではないのだ、そういう精神を徹底さしてはおります。しかし、いま言ったようなことはいたしておりません。
  99. 田口誠治

    田口(誠)委員 大臣お話しになる前段、後段を通じて、そのお話し内容は私もよくわかりますし、まあ社会保障といってみたとて相互扶助のようなものであって、失業者が十年勤続するのが平均になっておるか、十二年が平均になっておるか知りませんけれども、つとめる者は二十五年も三十年もつとめて、そしてこの保険ができてから一回も失業保険をもらったことのない者も、たくさんあるわけです。そういうことから相互扶助という精神に基づいてなされておるのであるから、あまり手放しな、失業保険目的に遊び歩いて、それを使い果たせばそれから職を求めるというような、そういう心意気ではいけませんし、またそういうことに対する監視というものはしていただかなくてはなりませんが、私が先ほど来申し上げておることは、これはハッパをかけておるのでも何でもございませんが、特に一昨年の暮れあたりからは、失業した者に対して職業をあっせんするあっせんの方法、ことばの内容、こういうようなものが、非常に耳の痛いことを聞くということになっており、そのことは、ひいては労働省の一つの給付金の計画的な予算を立てられて、そしてこの程度でとどめるべきであるという考え方が徹底をしておるのであって——これはそうであるという答弁はないと思いますけれども、そういうことになっておるんです。だから、その点のところはだれも好きこのんで失業したものはないんだし、それからなるべくいい職業について、自分の労働の耐えられる職につきたいというのは共通した念願であるから、その人たちにいろいろ職業をあっせんしていただく場合には、その心持ちを十分にくんでいただいて、政府は政府としての一つ方針はあろうと思いまするけれども、そういう心持ちをくんでいただいて、こういう問題の処理なり、あっせん方を特にお願いをしておきたいと思います。この点につきましては、これ以上の答弁は要りません。その点をひとつ私から強い要望としてお願いをしておきたいと思います。  次に一問お伺いをしたいと思いますが、最近の労働災害の実態を見ますると、同じような災害が起きるわけなんで、これは私は、炭鉱をさしておるわけじゃありません。これはその他の災害も同じようなことが繰り返されておる。それで同じようなことが繰り返されておるということは、何かこれには防止する配慮というものがなければならないと思うので、その点を労働省のほうとしては十分に把握されておって、そしてどういうような行政指導を行なっておられるか、ひとつ承りたいと思います。
  100. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 御指摘の点につきまして、大きく分けて、私どもが見ますると、二つの見方があると思うのでございます。一つは、業種別に災害多発業種が例年同じような傾向をたどっておるということ、それからもう一つは、災害発生原因別に見ますると、墜落とか落盤とか、そういった災害発生原因が一つの傾向を示しておるということでございます。この点につきましては、業種別に災害の多いのは、先ほど御指摘の鉱業、建設業、林業、陸上貨物取り扱い事業、港湾貨物取り扱い事業、こういった事業に災害が多発しておるわけであります。そういう観点から、行政上の監督は、最もこういう災害多発業種に対して行なっておるわけでございますが、一方においては、事業主の理解と自主的な安全活動に欠くるところがあるという観点から、昨年七月、労働災害防止団体等に関する法律の制定施行を見ましたので、あの法律に基づきまして、いま申し上げました鉱業、林業、建設業、陸上貨物、海上貨物、いわゆる港湾荷役でございますが、その五業種につきましては、業種別労働災害防止協会を設立させまして、目下、自主的な災害防止活動の展開を促進さしておるということでございます。また一方、災害発生を原因別に見ました傾向も、統計上明らかになっておりますので、それらの災害発生原因別対策につきましては、ただいま申しました災害多発業種とのからみ合いもございますので、行政上の監督とあわせまして、そういった原因別災害防止対策についての対策を取りまとめて下におろす、こういう形でやっております。この問題は、単に一時的なものとしてでなくして、労働災害防止計画をつくりまして、業種別災害、原因別災害の対策を明確にするということにいたしております。昭和四十年の対策につきましては、すでに労働基準審議会に諮問いたしまして、目下その全体計画についての承認を得る手続をとっております。これが審議会の承認を得ますれば、労働災害防止計画として一般に公示するという処置を考えておる次第でございまして、計画的な災害防止をいたしたいと考えております。
  101. 田口誠治

    田口(誠)委員 いろいろその点には気を使って、法律をつくったり指導をなされておるということはわかりますが、その実効がまだ乏しいのか、成果があがっておらないという点を、私は指摘をしておるわけであります。それで、まあ端的に申し上げますなれば、同じような事故がどうして同じ職場で何回も起きるかということになりますれば、それはやはりよく検討してみますと、Aという起きた原因があるのに、BやCやDのほうにぐっと金をかけて力を入れてやっても、Aというものを見のがしておりますから、同じような災害が防止できないということなのです。だから、これは簡単といえば簡単なのですよ。労働基準審議会のほうでいろいろ検討するとかどうとかということは、現場の実情を見ておってやるのではなくて、審議会の場合なんかは、どちらかといえば、中央の労働基準審議会は、まあ法的な面とかそういうような面についていろいろ検討されるのであって、地方の労働基準審議会のほうがこういう問題を具体的に取り上げてやらなければなりませんけれども、予算がない。それから実際問題として、地方の労働基準審議会というのは、極端なことばで言えば、法律でつくるようになっておるからつくっておって委員を任命しておるだけであって、全国一律的には言いませんけれども、大半のものはあってものうてもそんなに影響がないということなんです。一年に一回か二回か三回開いて、そこで審議されることはどういうことかというと、何か審議しなくてはいかぬので、災害の事件の件数とか内容とか、いろいろなものをプリントして、そして委員がおいでになったときにその場で配って、そして課長さんなり担当者なりがその説明をする。説明を聞いて、どうですか、こう言われてみたとて、その場でプリントをもらって説明を受けたとて、直接一つの問題に関係をしておった人なら建設的な意見が出ますけれども、なかなか意見の出るものではないのです。そして、それでは御苦労さまでした、異議なしでプリントをもらって帰るというのが事実なんですよ。だから、実際に労働災害を防ぐために、労働災害の審議会のほうは、これはまた別に具体的にいろいろ問題を取り上げてやっておりますけれども、基準審議会のほうは、性格的にも違いますけれども、いまのところではもう少しここに活躍の場を与えてもらわなくてはならないと思うのです。これは建議をすることができるということだけのことなんですね。建議をして、その建議が中央でどう取り上げられるかということはわかりませんけれども、その程度のものなんです。一つ法律をつくって、頭をつくれば下部もつくらなくちゃならないといって形式的につくっておるのであって、労働省はそういうような実際の運営の面の把握が足らないと思うのです。十分に把握されておるとするなれば、七年も八年も前と今日とは相当進歩した内容でなければならないけれども、どちらかといえば、ところによっては、できた当時はまじめに会も開いておったけれども、予算関係等もにらみ合わしてでしょうけれども、委員が二人以上連名をして、こういう問題があるから審議会を開いてほしいと請願を出しても、なかなか腰が立たないというのが事実であるわけです。ぼくらが地方で審議会の委員をやっておるときは、全繊から出ておる委員といつも連名で書いてはぶっつけて、そして審議会を開いてもらってやりましたけれども、やってみても、なかなか労働省が考えておられるような考え方に寄与することが、現在の審議会の委員としてできないというのが機構の実態であるわけなんで、こういう点は検討してもらわなくちゃいかぬと思う。そういう機構があり、有効に運営をして、そして目的が達成できるようにしてもらわなければ、ただ機構だけつくっておいたとて何にもならないと思いますので、そういう点につきましても、今後検討をしていただくということで強い要望を申し上げて、いまちょっとお聞きしましたら、大臣は社労のほうへ行かれるそうですから、ずいぶんたくさんありますけれども、きょうはこの辺で終わらしていただきます。
  102. 石田博英

    ○石田国務大臣 いま御指摘の点につきまして、災害の実態をつかむことは、基準監督署等を通じましてつかんでおるつもりでございますけれども、なお、地方実情、あるいはその災害の実態、あるいはその災害に対するそれぞれの業態における特殊な対策というようなことは、今度できました労働災害防止団体等に関する法律の運用その他を通じまして、御趣旨のとおりやってまいりたいと思っております。同時に、労働基準審議会の運営は、確かに御指摘のとおりであります。これは今後活発にその機能を発揮できるようにいたしたいと思います。特に、本年度は審議会の中に労働災害防止部会というのを設けまして、ひんぱんにやるような予算措置もいたしてございます。
  103. 河本敏夫

    河本委員長 次会は、明後二十五日、木曜日、午前十時から理事会、理事会散会後委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十四分散会