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1965-04-28 第48回国会 衆議院 大蔵委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月二十八日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 金子 一平君 理事 藤井 勝志君    理事 有馬 輝武君 理事 堀  昌雄君    理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       岩動 道行君    奥野 誠亮君       鴨田 宗一君    木村武千代君       小山 省二君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    地崎宇三郎君       西岡 武夫君    濱田 幸雄君       福田 繁芳君    毛利 松平君       渡辺 栄一君    渡辺美智雄君       小林  進君    佐藤觀次郎君       只松 祐治君    野口 忠夫君       日野 吉夫君    平岡忠次郎君       平林  剛君    藤田 高敏君       横山 利秋君    春日 一幸君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      秋吉 良雄君         日本専売公社総         裁       阪田 泰二君         参  考  人         (三菱銀行副頭         取)      中村 俊男君         参  考  人         (三和銀行頭         取)      上枝 一雄君         参  考  人         (大和銀行副頭         取)      寺田  清君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 四月二十八日  委員渡辺美智雄君及び岡良一辞任につき、そ  の補欠として丹羽喬四郎君及び小林進君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員丹羽喬四郎君及び小林進辞任につき、そ  の補欠として渡辺美智雄君及び岡良一君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  金融に関する件(銀行貸付業務に関する問  題)  専売事業に関する件      ————◇—————
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  本日は、お手元に配布いたしました名簿のとおり参考人方々が御出席になっております。  参考人各位には御多用中のところ、御出席をいただき、ありがとうございました。  銀行貸し付け業務に関する問題につきましては、本委員会におきまして従来から論議を重ねてまいったのでありますが、現下の金融情勢にかんがみ、各金融機関におかれましても一そうの慎重な御配慮をお願いいたしたいと存ずる次第でございます。  つきましては、今回、吹原産業株式会社に対する銀行融資につきまして種々問題が指摘されるに至りましたので、本日参考人各位の御出席を求めたのでありますが、参考人各位におかれましても、何とぞ率直な御意見の開陳をお願いいたします。  それではこれより質疑に入ります。  通告がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  3. 武藤山治

    武藤委員 きょうは三菱銀行大和銀行三和銀行首脳部方々に、皆さんの取り扱っておる銀行貸し付け業務形態あるいは事実、そういう問題について少しく質問をさせていただきたいと思います。御三人いらっしゃいますから、順次お尋ねをしたいと思いますが、最初大和銀行責任ある方にお尋ねをいたします。  あなたの銀行では、普通銀行振り出し小切手を振り出すときにはどういう方法、決済はだれが行ない、金額には支店の場合限度があるのかないのか、そういう通常の場合の銀行の振り出す小切手はどういう形態で行なわれておりますか。その点をまず最初にお伺いいたします。
  4. 寺田清

    寺田参考人 お答えいたします。  ただいま御質問内容は、いわゆる銀行保証小切手、すなわち自己あて小切手といっておりますけれども、それの振り出しについての手続だろうと承知いたします。銀行保証小切手、これは得意先現金または現金に準ずるものあるいは他券を持ってきた場合には、他券現金化した場合に支店長が発行するわけであります。したがいまして現金ないしは現金化した場合には、支店長限度なしに発行できるわけであります。本店とは関係ありません。
  5. 武藤山治

    武藤委員 そういたしますと、今回、吹原弘宣なる者に対して三十億円の小切手を十月三日の日に振り出しておりますが、その裏づけはどういうもので、幾ら裏づけをとって発行したものであるか。それはどうです。
  6. 寺田清

    寺田参考人 この問題につきましては、後ほど申し上げますけれども、非常に恥ずかしいことであります。先ほど申し上げましたように、銀行小切手を発行する場合には、現金裏づけがなければできないのでありますけれども、この場合には支店長吹原氏にだまされまして、吹原氏振り出し他行小切手、したがいまして現金と化しない小切手見返りにだまされて取られておる。支店長態度が非常に甘かったということは、まことに支店長としても申しわけないことだ、あるいはまたそういう甘いだまされるような支店長を任命したということについては、申しわけないことだと思っております。
  7. 武藤山治

    武藤委員 額がほんの少額のものならだまされるということも私たちは理解できるのでありますが、三十億円という大金を、しかも銀行振り出し小切手で書くということは、ただ単にだまされたでは済まされないような大事件だと思うのです。それはだまされたのではなくて、前々から大和銀行吹原産業取引状況から判断して、この程度の便宜をはかってやっても心配がないだろうという認識大和側ではあったのではないか。そういう認識支店長として全然していないのでしょうか。銀行員というものは、普通の一般の人たち注意よりも特に厳重な注意をし管理をしなければならないという責任があるはずであります。もし吹原他行小切手見返りに持ってきたなら、これはおそらく北拓銀行築地支店小切手だといわれておりますが、その場合もちろん直ちに北拓銀行築地支店電話をして、吹原取引状況がどうなっておるかということは確認すべきではないでしょうか。その辺の注意義務については支店長はどういう態度をとっておったのでしょうか、その点を伺いたいと思います。
  8. 寺田清

    寺田参考人 申されましたこと重々ごもっともであります。あくまでも支店長がだまされておったということは申しわけないことであります。もちろん私はきょうここに至って支店長を弁護するという気持ちはありません。弁護しても通らないことであります。ただし、多少御理解をいただきたいと思いますのは、いろいろお手元にも資料が集まっておいでのことと思いますけれども、吹原氏に社会経験なり何なりを非常に積まれた一流の方たちが相当だまされておるやに聞いております。したがいまして私は支店長——しかも三十億円を一番最初にあれしたのではないのであります。すでに十数回小さなものから、しかもそれが即時に返ってくるようなかっこうでだんだん大きなものにまであれする。幻惑されておったということだろうと思うのでありますけれども、まことにそれは非常に甘い、申しわけないということだと思います。しかしながら先ほど申し上げましたような事情もあります。それから支店長は、この点をごしんしゃくいただきたいのでありますけれども、被害者であります。支店長は、学校を出まして二十年近くつとめまして、最初にこの支店長になったのであります。しかも預金ほしさのためにだんだん深入りしてだまされておった。そのために二十年近くつとめましてようやくなった支店長の職を失いまして、おそらくはかへ行きます職も失ってしまうだろうと思うのであります。しかも支店長は全然私利もはかっておらないということ、これも私はその後の取り調べで確信しております。したがいまして支店長被害者である。ただし、銀行支店長として仰せのごとく非常に想像できないような甘さがあったということについては申しわけないと思っております。
  9. 武藤山治

    武藤委員 次に、大和銀行吹原産業に二十億円の融資をしておりますが、それほどの大金を借りられる吹原産業というのは、財務内容経営内容が堅実だったのですか。それは銀行はどう判定をしておりますか。
  10. 寺田清

    寺田参考人 いまとなりましては、いま御指摘の点はなはだもってごもっともであります。堅実とはいわれません。しかしながら、当初におきまして、その当時の計画その他種々客観情勢を合わせまして、信頼するに足りると考えておったという点を率直に申し上げます。
  11. 武藤山治

    武藤委員 この二十億円の融資はやはり支店長の独断でやったのか、それとも上層幹部の許可を受けて融資をしたのか、その点は事実どうなっておりますか。
  12. 寺田清

    寺田参考人 十五億円の融資、その後五億円加わりまして二十億円になっておりますけれども、これはもちろん支店長、特に区別していただきたいのは、京橋支店で扱ったのではないのでございます。十五億円については本店営業部で扱っております。本店信託部で扱っております。それから五億円については東京支店で扱っております。後ほどまた御質問があれば申し上げたいと思いますけれども、その当時の金融状況あるいは冷蔵庫を必要とする社会情勢にあったということは、後ほどまた御質問があれば申し上げたいと思いますけれども……。
  13. 武藤山治

    武藤委員 二十億もの大金を、その内容があまり堅実でないと思われた会社融資をし、担保には五反田ボーリング場土地を入れてある。ところが、この担保が第三抵当まで設定されておる、こういうような状況で一体この大額の融資は確実に債権保全できるのかどうか、あなたたちの見通しはいかがですか。
  14. 寺田清

    寺田参考人 先ほどの点につきまして、私の間違いがありましたので訂正させていただきたいと思います。先ほど十五億円と申し上げましたけれども、最初は四億五千万であります。四億五千万を土地造成資金として出しまして、その後数ヵ月を経まして十三億にまでいっておりますけれども、それは期限前に、三十八年七月全部決済しておるのであります。十五億円はその後に起こったことであります。
  15. 武藤山治

    武藤委員 債権保全……。
  16. 寺田清

    寺田参考人 債権のこのような結果になりましたことにつきましては非常に遺憾でありますけれども、債権保全その他につきまして後ほどまた御質問があれば申し上げますけれども、担保がついておりまして、まずもって返済の理由とするには差しつかえないと考えております。
  17. 武藤山治

    武藤委員 大和銀行吹原産業との取引開始のきっかけは、どういうことから取引が始まったわけですか。何年何月ごろからですか。
  18. 寺田清

    寺田参考人 お答えいたします。  取引開始は三十七年十一月であります。そしてこれは大和銀行大阪における取引先である、主として二社からの情報その他によりまして、吹原産業大阪において取引を始めたものであります。
  19. 武藤山治

    武藤委員 そういたしますと、それより一ヵ月前に日本殖産何がしという会社経営が困難になって、その敷地を大和銀行のきょうだい会社である大和不動産が買い受けて、その間には大阪の商社である六車武信さんという方が中に入って、大和不動産はこれを吹原に売るようになった。すなわち、日本殖産から大和不動産が買って、一ヵ月後に吹原産業土地を売っております。それは知っておりますね。そのときに、当時の現職の、かなり高位についておった大臣が大和頭取電話をして、吹原に売ってやってくれという話があったうわさがありますが、あなたはそれを承知しておりますか。
  20. 寺田清

    寺田参考人 お答えいたします。  大和不動産不動産の売買をしております。しだがいまして、調べました結果そういう事実はございますけれども、日本殖産なる、当時管財人の手にあったと聞いておりますけれども、そこから大和不動産が買いまして、それを一、二ヵ月後に吹原産業に転売したということは聞いておりますけれども、ほかの方から大和頭取のところへ電話があったということは聞いておりません。
  21. 武藤山治

    武藤委員 そのときの大和不動産が買ったのは一億六千万円であって、それを吹原に三億二千万円で一ヵ月以内に直ちにこれを転売した、こういう事実はある、しかし政治家なりだれかからそれをあっせんされた覚えはない、聞いていない、こういうことですね。大和吹原取引最初起こったのはすでにこのときではなかったでしょうか。その後わずか三年間で二十億の融資が行なわれ、三十億の銀行振り出し小切手が切られるに至っては、まさに大和銀行の監督怠慢、不行き届き、審査部は一体何をしていたのかという責任を追及された場合に、あなたたちはどういう態度になりますかね。いまどんな心境でおりますか、そういう事実の数々が指摘された場合に監督者として。
  22. 寺田清

    寺田参考人 御趣旨の点、結果におきましてはまことに申しわけないという一語に尽きます。しかしながら御賢察いただきたいと思いますのは、融資の大部分が少なくともその当初におきましては社会的にきわめて意義のある用途に使われるということを銀行は確信しておったのであります。後ほど資料を提供いたしますけれども、ここにその抜粋があるのであります。昭和三十八年四月、種々新聞に出ておるのでありますけれども、ちょっと二、三行読ましていただきたいと思います。昭和三十八年四月四日以来、数日の経済閣僚懇談会を開催し、七月八日の懇談会農林省案による生鮮食料品流通改善対策を了承した。七月九日の閣議で正式決定した。途中を省略いたしまして、これを要するに生鮮食料品対策としては、貯蔵庫をつくらなければいかぬ、しかもこれは生産地に限らず消費地にもつくる必要がある、昭和三十八年中に東京都にも貯蔵庫をつくることが必要であるというような、生鮮食料品対策としての冷蔵庫設置が社会的に緊急を要する問題であるという状態にあったのであります。その点を御賢察いただきまして——吹原氏が五反田、深川あるいは品川等におきまして生鮮食料品貯蔵庫をやるのだ、これが国策に合っているものだ、社会的要請の強いものであるということの客観性はその当時あったのであります。
  23. 武藤山治

    武藤委員 大和の問題で多く時間をとっておりますと、私はあと十分しか持ち時間がありませんから、大和はただ一つ注意しておきたいのは、あなたのほうの東郷隆次郎という京橋支店長は、昨年十月二日の日に転勤を発令されておる。その翌日三十億円の小切手が出ておる。そんなばかなことがありますか、転勤を発令されておる人が翌日三十億円の小切手を振り出すということは、どう考えてもよほどの、何か上からの頭取なりあるいは取締役からの指示でもなければ、これだけの小切手はちょっと出せないと考えるのが常識です。この点私はまことに奇々怪々だと思うのです。しかも話によると、その後新聞記者支店長に会って談話をとろうと思うと、この支店長がどこにおるかわからぬ、三菱のほうの当時の支店長もどこにおるかわからぬという、今日もっぱらのうわさであります。すなわち、事実を明らかにしたくないという銀行側態度はまことにけしからぬと思うのです。それは注意をしておきたい。  私、いま時間をちょっと勘違いしましたからもうちょっとお尋ねします。その当時の支店長、この人はいまの時点で役員にどういう報告をされておりますか。居場所もわかっておるのですか、それを明らかにしてください。
  24. 寺田清

    寺田参考人 先ほどお話がございました転勤命令の出た翌日ということについてであります。まことにあれだと思いますけれども、思うにこれは転勤してしまえば転勤発令数日後には引き継ぎをしまして任地に行くわけでありますけれども、そうしなければもう東郷をだますことができないと相手が考えたために、転勤はきまったけれどもまだ判はそのままである、引き継ぎが済むまでの間に、そこへしわが寄ってきたと私は考えます。  それから御質問の第二点であります転勤発令後、支店長に対して何か本部から指示なり命令なりがなければという御質問と思いますけれども、これは絶対にないのであります。しかもこれは検察当局におきましても現在お調べ中と聞いておりますから、それらを待ちまして潔白が証明されるのではないか、そう確信しておる次第であります。
  25. 吉田重延

    吉田委員長 関連質問を許します。有馬輝武君。
  26. 有馬輝武

    有馬委員 いま寺田さんの御答弁がありましたが、先ほどお話の中でもいまの点でも私合点がいかないのであります。と申しますのは、少なくとも銀行機構、特に人事の面におきましては長い間の歴史の中からささいな遅滞も誤りもないように配慮が加えられておるのが、これはどこの銀行でも常識であります。ですからたとえば転勤があってふなれであったというような御答弁でありましたけれども、ふなれな場合には当然そういった巨額な取引が行なわれる場合には上司相談するあるいは前支店長相談する、こういった配慮はもうどこでも考える筋です。それをやらなかったはずはないのでありまして、あなた方首脳部方々がこの問題について御相談を受けなかったということはどうしても私たち常識としては、また世間常識としては通らないのじゃないかと思うのであります。またそういったケースで特にそういった巨額のものが動くということであれば、やはり世間でいわれておりまするように、有力な筋の仲介があったとしか考えられないのでありますが、この点についていま一度上司方々は、首脳部方々はほんとに相談を受けられなかったのか、また有力な筋からの話はなかったのか、この点を明らかにしていただきたい。私どもはここで当委員会として問題にいたしておりまするのは、やはり融資あり方について問題にいたしておるのでありまするから、そういった角度から、いま検察当局の手で調べられておりまするのでというお話がありましたけれども、そのときにあのときにこう申し上げましたけれども実はこうでしたというようなことがないように、その点は念を押してお尋ねをいたしますので、お答えをいただきたいと存じます。
  27. 寺田清

    寺田参考人 お答えいたします。  上からの指示命令というのは絶対にございません。それが一つ。  それからなお、そうでなければ三十億がそういうことになるはずないじゃないか、何か相談すべきじゃなかったかということ、ごもっともの御質問でございます。したがいまして私は現に一週間前に全国の支店長会議の席におきまして、全支店長に対して、諸君は友だちはないのか、支店長同士相談することはないのか、あるいはまた支店長同士相談でわからなかったら本部の人に相談する考えがないのか、このような事件は横の支店長、同僚に二、三相談すればその間違いがいかに重大なものであるかということがわかるのである、自分のだまされておる催眠術が解けるのでありますけれども、そのことすらもしなかったことを、そういう人と人との関係あり方というものが非常に遺憾であるということを私は一週間前の支店長会議で言ったのであります。御理解いただきたいと思います。  それからなお本人は三十九年十二月七日に退職しておりまして、現在箕面市の自宅におりまして、ときに検察庁に呼び出されておるのであります。
  28. 有馬輝武

    有馬委員 あなたは催眠術とかふなれとかいうことをおっしゃるのでありまするけれども、少なくともあなたの銀行で二十年間つとめて、支店長として経験経倫がふさわしいということで任命されたに違いないのです。そういったしっかりした方がいまおっしゃるように催眠術にかかるはずはないのであります。おまけに私は、吹原氏をまるで頭脳の固まりみたいなふうにおっしゃったり、これはきのう、おとついも銀行局長もそんなことを言っておりましたけれども、とんでもない話でありまして、経緯を見ますと決して私は普通人以上に頭のいい男とは考えません。そういった方々にしっかりした機構を持ち、多年の経験を持つあなた方が簡単にだまされるはずはないのであります。やはりそこには考えられることは、上司相談したかあるいは有力な人のサゼスチョンがあったか、そのいずれかでなければ、また以前からの相当なつながりがなければそういったことが行なわれるはずはないのであります。その点でいま一度お答えをいただきたいと思います。
  29. 寺田清

    寺田参考人 繰り返して申し上げてはなはだ恐縮でありますけれども、その点は全然ないのであります。私はふだん東京におることが多いのでありますけれども、もちろん皆さんにはお目にかかっておりますけれども、吹原産業関係しておると新聞紙上その他でいわれておる方には、先方も私に面識がないはずであります。電話もかけたことがありません。それから催眠術なんというものはそんなに簡単にかかるものじゃないとおっしゃいますけれども、これは確かにそうであります。しかし、だまされたという場合には、あとから考えますと非常にこっけいなようなことが間々あるのであります。私はそういうことだからこの場合がいいというのではないのでありますけれども、おことばを返しますけれども、結果とすればそういうことを言われてもしょうがないのでありますけれども、どうかひとつその辺は御賢察いただきたいと思います。
  30. 吉田重延

    吉田委員長 関連質問を許します。平林剛君。
  31. 平林剛

    平林委員 いまのお話を聞いておりまして、なお私は納得できないのであります。それは、この支店長さんがふなれであって、そして初めて支店長になったから、いわば幻惑されてだまされた、こういうお話であります。しかしいま有馬さんも指摘のとおり、それだけでははっきりしない。そればかりでなくて、週刊朝日にこの問題が——きょう発行されておるのを読んでみますと、大和銀行取締役総務部長太田新一氏によると、「京橋支店がだした保証小切手については、前々からそういう例があった。自分小切手をだして、『交換にかけないから、銀行保証小切手を貸してほしい』といい、一日か二日借りて、約束どおり返していた。こんどの場合は、さいそくしても返してこない。オカシイとカンづき、東京重役会に申出た」こういうふうになっておるのであります。あなたの銀行総務部長が、こういう説明新聞記者諸君にしておるわけであります。前々から同じことをやっていたのです。なれないからやっていたのではなくて、なれているからやっていたのではないのですか。私は、なれないからやっていたのじゃなくて、なれ合いでやっていたと、かえって疑問を感ずるのであります。この点を、なれないからだというお話は、私は納得できない。おそらく多くの国民はこんなことは納得しないと思うのです。その点についてもう一度はっきりしてもらいたい。  それから、先ほど指摘がございましたように、二つの理由が考えられる。なれ合いか、あるいはある意味の政治的な圧力があって、そうしてこの仕事をした、あなたは、そういうことはないとここで断言できますか。いま検察当局その他で取り調べが進んでいます。この関係のかぎを握っている人も出てくるでしょう。そのときになって、いや、国会でああ言ったのはうそでした、こういうことを言ってもらっては困りますよ。やはりここで、それはそういうものはないとおっしゃるならば、断言して、あなたはこれについてはどういう責任をとるかということを明確にしていただかないと、この間も、三菱銀行でしたけれども、前の口にはそんなことはないと言いながら、翌日は取り消したような例もございますから、私は、最近の銀行経営者のこの問題に関する説明には信用が置けない点がございます。そういう点で、第二の問題についてもはっきりさしておいてもらいたい。
  32. 寺田清

    寺田参考人 はなはだあれでございます。ぜひともこれは御信用していただきたいと思うのでありますけれども、他からの話あるいは圧力といったようなものは絶対ありません。これはお誓いをいたします。  それから総務部長が言っておりますことばは、ことばが足りないのであるか、あるいはまた前が省略されておるのであります。三十億円ものものが突然出たとすれば、それは何らか本部からの指示命令がなければならないはずだということに対する答えになっておるのであります。最初は三十億円じゃなしにちっちゃなものを出してすぐ返すというようなことを反復しておって、だんだん大きくしていって、最後にごそっとやったということであります。その辺は御賢察いただきたい。週刊朝日総務部長の話というのは、その前のほうの、三十億が一度に出るはずないじゃないかというものに対するお答えだろうと思うのであります。
  33. 武藤山治

    武藤委員 それは昨日参議院の法務委員会におきましても、稻葉議員から、これは共謀の疑いがあるのじゃないかという指摘があって、もし質問のような内容の状態ならば、大和銀行もあるいは共謀になるかもしれぬということを刑事局長は答えている。どうもそこらが、ただ単にだまされたということでは済まされぬような私の判断です。  次に、一体吹原関係する預金残高というのは大和はどのくらい持っておるのですか、吹原の預金残高……。
  34. 寺田清

    寺田参考人 ただいまの御質問吹原全体の大和銀行全体に対するものだと思いますけれども、小切手関係します京橋支店の場合には、時に二、三億、四、五億の預金は短期間あったことがありますけれども、大した預金はないのであります。四千万とかあるいは一億程度の預金、ないしは時に通知預金として三億程度の預金があったことはありますけれども、当座預金はなかったのであります。
  35. 武藤山治

    武藤委員 当座預金がなかったとしたら、なおさらこれはもう書くべき、振り出すべき小切手ではない。  もう一つ事実を明らかにしておきたいのは、吹原関係しておった会社は、北海林産興業株式会社、これは大平さんも株主になっておるようでありますが、それから吹原産業株式会社、東洋木材防腐工業株式会社、大曜製紙株式会社吹原冷蔵株式会社、以上五つが吹原某の実権によって運営されている会社でありますが、これらの五社に対して大和は総額幾らの融資をしておりますか、現在の残額……。
  36. 寺田清

    寺田参考人 現在ありますのは、吹原産業に対する十五億、吹原冷蔵に対する五億、東洋木材防腐に対する二千三百万であります。
  37. 有馬輝武

    有馬委員 関連して。先ほどの預金の関連ですが、当座で額の一番大きかったもので何ヵ月くらい置いておりましたか、それを明らかにしていただきたいと思います。通知預金と額の一番大きかったもの、そして一番長期に置いておったもの……。
  38. 寺田清

    寺田参考人 いずれ調べましてお答えいたしたいと思いますけれども、ここにありますのは、京橋支店の場合でありますけれども、京橋支店のが、支店長がこの預金に幻惑されてということに一番関係がありますために、ここに持っておるのでありますけれども、昭和三十八年三月中に通知預金として一億円、期間は数日を出ないと思いますけれども一億円ございました。三十八年三月中に一週間くらいの間一億円ございました。これは通知預金であります。それから同じく七月中に五億円、やはり数日の間あったわけであります。かような五億から七億くらいのが数日の間あったことは三十九年にも二、三回ございます。
  39. 有馬輝武

    有馬委員 先ほどから武藤委員お尋ねしておるのは、一億あるいは最大で五億がわずか数日しか置かれてないところにその三十億の融資をする、その関連が明瞭でないので、明らかにしていただきたいということをお尋ねしておるわけです。ですからそこら辺に焦点を合わせて、これは銀行マンの良識としてどのような判断をされたのか。当然、三十八年のことであれば首脳部方々もこういった支店あり方に対して何らかの関心を示さなければならないはずなんです。それについて何らおかしいとも普通でないとも感じられなかったのか、その点をあわせてお聞かせをいただきたいと思います。
  40. 寺田清

    寺田参考人 いまさっき申し上げましたのは、これは京橋支店でありまして、京橋支店長としましては、せいぜい店の預金が三、四十億の店でございますから、その一億ないしは三億程度の預金が数日ありましてもこれは非常にありがたいわけであります。したがいまして、それに引っぱられた。これが本店その他大店でございますと、その程度の預金ではそれほどありがたくないのでありますけれども、京橋支店のような店では、支店長としては非常にありがたかったということが感じられるのであります。なお吹原産業本店における取引を申し上げますと、三十七年当時は非常に少ないのでありますけれども、三十八年になりますと、平均しまして大体一億一千六百万程度の平均残があるのであります。それからその他年間を通じては多少の変動はございますけれども、大体一億程度の平均残があるのであります。
  41. 武藤山治

    武藤委員 二十億円の融資について本店が十五億円決済をした。本店は預金の状況取引状況を全然わからぬのに十五億という膨大な金を融資をする。これも私はちょっと軽率だと思うのですよ。責任はただ単に京橋支店長一人の問題ではない。本店がそういう膨大なものを出しているそのことがさらに吹原に信用をどんどん与えて、多くの無関係な、藤山愛一郎さんや間組や東洋精糖や朝日土地、リコー、こういうような人たちをだます一つの信用の裏づけになっている。これは一体保証人はおるのですか、その十五億の融資に対して。あなたはさっき政治家などは全然関係がない、口をきいたこともないと言うが、一体保証人などはどの程度きちっとしておるのか。それから二十億円の貸し付け期限は何年間で返済になっておるのですか。ペイできるのですか、いまの企業は。この三つのことを明らかにしていただきたいと思います。
  42. 寺田清

    寺田参考人 保証人は吹原社長個人であります。担保はまずもって充足するだけ取っておるのであります。先ほど来申し上げましたように、生鮮食料品の貯蔵が社会的、経済的な意味があると考えましたのが一番出発点でありまして、その後結果において変わってきておるのでありますかう遺憾ではありますけれども、動機その他におきまして外部からの指示なり圧力なりというようなものは絶対ないのでありますから、その点御了解いただきたいと思います。
  43. 武藤山治

    武藤委員 一体返済期限が何年で、どういう返済条件になっておるのか、月々返済するのか、まとめて返すのか、そういう返済方法、それから担保はどうなっておるのですか。
  44. 寺田清

    寺田参考人 返済はこの一月あるいはこの三月というところに返済期限がありまして、このような事件が起きましてから厳重督促を重ねております。したがいまして、こういう事件が発展いかんにかかわりませず、抵当権は実行するつもりでおります。
  45. 有馬輝武

    有馬委員 いま質疑応答を委員長お聞きになっておりまして、武藤委員質問に対してお答えがない場合には、私たちからぎゃあぎゃあ声を上げますと参考人に対して失礼にあたろうと思いますので、委員長のほうで答弁が的を得てない場合には、限られた時間でありますから、事の真相を明らかにするために時間はできるだけ節約する、そうして失礼にわたらないように委員長のほうから、その御答弁はちょっと違っておりますので、まともに答えてくださいというような注意を与えていただきたいと思います。
  46. 吉田重延

    吉田委員長 承知しました。
  47. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 関連ですから、なるたけ簡単にお聞きします。  結局、吹原事件は単なる詐欺事件か、それとも疑獄に発展する可能性のあるものか。すなわち経済違反か政治問題かということが論議の焦点になると思っております。政府は内心じくじたるものがあると見えまして、首相をはじめ、いままでの各委員会におきまする御答弁を見ますと、政治の大もとを正さなければならぬというふうに道義的責任は云々しながらも、経済問題だとの主張を貫かんとしておるわけであります。しかし広く世間の納得し得るところではないのであります。きょう関係の三銀行頭取の方においでを願ったのは、該事件をめぐる一連の銀行取引が商業ベースの常道か、政治のからむ邪道であるか、そのいずれであるかを弁別し整理してみたいという大蔵委員会の立場からきょうの御出頭を願ったわけであります。ですから誠実に答えていただきたいのであります。  そこで、ただいま問題になっておりまする質問についてでございますが、昨日大蔵大臣がどういうふうな貸し出し関係になっておるかということについて答えましたのは、先ほどあなたからも触れられましたが、大和の分といたしましては吹原産業に十五億円、それから冷蔵のほうに五億円、それからいまおっしゃった二千三百万とかいう小さなものがありますが、大体大和銀行の貸し出し金として正式に大蔵大臣が言われたのはその二十億なんですね。ですからそれの貸し出しのための内容、条件をおっしゃっていただきたいのです。それから貸し出しのレート、返済方法、担保、これを明確にお答えを願いたい。
  48. 寺田清

    寺田参考人 レートは二銭六厘でございます。それから担保は、銀座の吹原ビルの土地百七十二坪四億八千万円、建物延べ千七百坪四億一千万円、水上の土地約十二万坪六億円見当、それから深川の土地約四千五百坪、それに極度五億円。  それから期限は、先ほど申し上げましたようにこの三月末で大体両方とも貸し出し期限がきております。
  49. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 期限がきているというのですが、いつお貸しになったんですか。
  50. 寺田清

    寺田参考人 先ほど申し上げましたように回収の見込みはありますけれども、これはいま申し上げました担保品処分のほかはないと思うのであります。担保品の処分は、いま集計しますと、おそらく十五億、二十億欠けるだろうと思いますけれども、これは私どもが相当抵当権実行を強行した場合に、処分価格として見込んでおるのでありますから、実際にはあるものはこれよりも多くなってくるのではないかと推測しております。
  51. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 私はこの貸し出しもそれほど古い話じゃないと思うのですよ。普通ですと大体商業銀行ですから五ヵ年間くらい、一年の据え置き、四ヵ年に分割していくとか、そういうことであろうと思います。案外これは十年とか二十年とかという長期の期限がついているんじゃないかという私の憶測があるからそれを聞いている。あなたは三月末で大体期限が切れておるということだけおっしゃるけれども、その契約の内容を正確におっしゃっていただきたい。
  52. 寺田清

    寺田参考人 そのような長期な五年以上あるいは十年というようなものではなかったのであります。したがいまして、このような事件のあるなしにかかわりませず、期限がきますならば督促をいたしまして、抵当権を実施する心組みでおります。
  53. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 何年の期限でしたか。
  54. 寺田清

    寺田参考人 それが先ほど申し上げましたように、ことしの三月までで全部期限がきております。
  55. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 だからいつから始まったんですか。
  56. 寺田清

    寺田参考人 貸し付けは昭和三十……。十五億円については三月末が期限になっております。
  57. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 貸したのはいつ……。
  58. 寺田清

    寺田参考人 貸したのは三十八年七月五日に五億円、三十八年七月九日に十億円出しております。
  59. 武藤山治

    武藤委員 ただいまの質問で明らかのように、金融機関としてあるまじき行為、あるまじき態度、これはもう国民すべての人から指弾をされると思うのです。しかもいま長短金融の問題で特に大和銀行は、大蔵省の指導方針はけしからぬと言って、だいぶ頭取は大蔵省をなじっているようであります。そういう銀行が、特に行政指導をはねのけようとする態度をとる銀行が、こういうふしだらな経営のしかたでは、私たちはますます行政指導の必要を痛感します。今後一そう都市銀行に対する大蔵省の監督指導というものを十分する必要があると思いますが、あなたは責任者としてどうお感じになりますか。
  60. 寺田清

    寺田参考人 結果におきましてこのようなことになりましたのは、原因のいかんにかかわらずはなはだ遺憾なことであります。したがいまして今後このようなことの絶無を期したいと思います。御了承をいただきたいと思います。
  61. 只松祐治

    ○只松委員 関連して……。大和銀行の場合には、いま武藤委員からいろいろ質問がありましたいわゆる融資のルーズさ、膨大な融資、これが一点と、それから三十億円の自己あて小切手という問題と、大きく分けて二つに分かれると思うが、ここでちょっとお尋ねしておきたいのは、この吹原問題の一つの中心がやはり三十億円のおたくの自己あて小切手が問題点になって、あとの、いまから質問に入られるだろう三菱銀行との関連が出てくる。いわばこの小切手のたらい回し、この問題が本吹原事件の一つの問題点になると思う。したがってここいらに多くの疑惑点、政治的な圧力があったのではないかというようないろいろな問題点とも関連してくるわけであります。その三十億円の自己あて小切手、いわゆる俗称保証小切手、これをお出しになった原因その他経過については、検察庁の調べだが始まっておりますから、私はここではそれ以上追及いたしませんけれども、その責任と申しますか、こういうふうに非常に大きな疑惑を起こし、問題を起こしたその小切手を発行した、たとえばこの森脇メモを見ましても、十九日に吹原ビルに行って吹原氏からこの小切手をもらっておる。ところが十九日あなたのほうに返っておる。これらを一つ見ましても、このからくり、トリックというものが浮かんでくるのでありますが、そういう点についてどういうふうに責任をお感じになっておるか。そういう原因が全然なく、ただあなたのほうの自己あて小切手だけで問題が済んでおる、こういうふうにお思いになっておりますか。
  62. 寺田清

    寺田参考人 御質問の趣旨は、一つは三十億円の自己あて小切手の出入りの日時その他から見て、ほかのものと非常に関連があるという点、それからもう一つは、こういうようなことを起こした責任いかんということに集約されると思うのでありますけれども、前の問題につきましては、先ほど来申し上げましたように、支店長がだんだんだまされてこういうふうになってきた。したがいましてだまし取った側がそれを悪用したということが事実のようであります。したがいまして支店長としましても非常に甘いのでありまして、これは申しわけないことであります。それからあと責任という点でありますけれども、これはまことに世の中に対しても恥ずかしい、あるいは申しわけないということで一ぱいでありますけれども、繰り返しますけれども、まことに恥ずかしく思っ  ている次第であります。
  63. 武藤山治

    武藤委員 時間に際限がありますから、次に三菱銀行の中村俊男さんにひとつお尋ねをしておきたいと思います。  実は本日の参考人においでいただくまでの経過には非常に重要な経過がございます。私たちは本問題は、日本の経済のかなめを握る金融機関のあるべき姿としていろいろな角度からこれは明らかにして、今後再び繰り返さないためにも、この際徹底的に真相を明らかにする必要がある。そのためには銀行方々にも最高責任者である頭取に出頭を願い、同時に証人としてやろうではないかという強い議論が行なわれたわけであります。きょうは参考人ということで呼んであるのでありますが、ひとり証人になったつもりで真実を語っていただきたいと思います。  まず最初に、三菱銀行が通常通知預金証書を作成する場合には、どんな手続でどんな方法で通知預金証書というものは作成いたしますか。これをまず先にお尋ねいたします。
  64. 中村俊男

    ○中村参考人 通知預金証書の作成に当たりましては、現金あるいはこれに準じます日銀小切手銀行保証小切手というようなものを預金として預かりまして、それと引きかえに通知預金証書を発行するのが通例でございます。
  65. 武藤山治

    武藤委員 今回のあなたの銀行で、昨年十月十九日発行した通知預金証書は、そういう裏づけが確実にありましたか。
  66. 中村俊男

    ○中村参考人 遺憾ながらございませんでした。それはその間の事情を少し申し上げますと、後刻、後刻というのは、その日の営業時間締め切り三時までの意味でありますが、後刻日銀小切手または銀行小切手を持ってくるから、ちょっとその間を待ってくれということを信用して渡してしまったという意味で、そういうことがなかったと申し上げるのでございます。
  67. 武藤山治

    武藤委員 そうすると、後刻三時ごろまでに確実な現金なり小切手なりが届くものなりと実は思った。この取引は、預金証書を渡したのは、森脇の新聞記者会見の発表によると、吹原ビルの中で行なわれたと言っております。一体長原支店で渡たされたのか、吹原ビルの中で取引をしたのか、事実はどっちでございましょうか。
  68. 中村俊男

    ○中村参考人 それは吹原産業ビルの中の事務室で引き渡しを行ないました。
  69. 武藤山治

    武藤委員 大体三十億の通知預金証書をつくるのに、わざわざ銀行吹原ビルまで持っていってやるというような例はいままでございますか。通知預金証書をわざわざ借り手の事務所まで行って、その事務所で作成をして渡すなどという前例はございますか。
  70. 中村俊男

    ○中村参考人 預金取引は営業店で行なうことが通常でございます。しかしこの場合には金額も大きいので、支店長といたしましては、この預金に非常に魅力を感じておったことは事実でございます。したがいまして、小切手と引きかえに渡すから、ひとつ証書を準備して持ってきてくれと言われまして、持って出たのでございまして、一がいには申せませんが、そのときの事情によりましては、こういうこともあり得るのでございます。
  71. 武藤山治

    武藤委員 そういたしますと、その三十億の二枚の証書を渡したときに、裏づけとして一体吹原から預かったものは何ですか。
  72. 中村俊男

    ○中村参考人 一応裏づけと申しますと、自己振り出しの三十億の小切手を、これは後刻、先ほど申しましたような手形を渡すまでのいわば預かりというような意味合いで、これをちょっと預かっておいてくれという意味で裏づけと申せるかとも思いますが、三十億の吹原個人振り出し小切手を預かっております。
  73. 武藤山治

    武藤委員 その吹原小切手北拓銀行築地支店払いの小切手だと言われておりますが、間違いないかどうか。
  74. 中村俊男

    ○中村参考人 さようでございます。
  75. 武藤山治

    武藤委員 だとしたら、北拓銀行築地支店に当然支店長としては電話をかけ、吹原の当座は一体どういう状況になっておるか。吹原は一体どういう人物であるかということは当然確認をしなければ注意義務を怠ったことになる。その点はいかがでしょう。注意義務を怠っておりませんか。
  76. 中村俊男

    ○中村参考人 その通知預金の作成にあたりまして、いま預かりました自己あて振り出し小切手が預金の対価として入るものでありますならば、それを手形交換に回しまして、預金残高として落ちるかどうかを確かめるのが通例でございまするけれども、それはいわば後刻、先ほど申しましたような小切手が入るまでの預かり証のような意味だということで受け取っておったものでありますから、それについての照会等はいたしておりません。
  77. 武藤山治

    武藤委員 人の金を預かる銀行が、預金者の保護というものに最善の注意をしなければならない銀行が、そういう預金証書、早く言えば預金の通帳と同じものですよ。そういうものを何も裏金もない、保証もないのを預かり証で書いた例というのは、一体三菱銀行はたくさんあるのですか。いままで三菱銀行の業務の取り扱いというのはそういうことをやっておるのでしょうか、どうでしょうか。
  78. 中村俊男

    ○中村参考人 さようなことはいままでにございません。
  79. 武藤山治

    武藤委員 いままで三菱銀行は絶対にさようなことはないのに、該事件だけどうしてこういうことが起こったとあなたは副頭取の地位にあってお考えですか。なぜそんなに吹原を信用しなければならないほど支店長の頭はいかれておったのですか。これひとつあなたどうお考えになりますか。支店長を任命したのはあなたたちですよ。
  80. 中村俊男

    ○中村参考人 この事件は昨年の十月に長原支店長の更送を行ないましたときに、たまたま新旧支店長引き継ぎ中に起きた事件でございます。前支店長は、吹原弘宣氏が住宅が支店の近所にありますので、個人預金者としては相当大口な預金者でありましたので、大事な取引先として扱っておったことは事実のようであります。しかも吹原氏の子息と前支店長の子息が学校が同じであって、PTAの役員も一緒にしており、またそういうことで顔を合わせておりまして、別に親しい取引先ではありませんけれども、それなりにまた清明学園という学校でありますが、そこには吹原氏は個人的に多額の立てかえもいたしておるというふうに、なかなか教育にも熱心である。非常に子煩悩であるというようなことを支店長は感じておりまして、吹原氏に対しては、あんな人柄であるというふうには毛頭感じておらず、むしろどちらかといえば信用しておったということがあったのであります。そういうようなことからまず発端が起きておるということも御了承願いたいと思います。
  81. 武藤山治

    武藤委員 世にこれほどおめでたい話はありません。自分の近所に住んでいるから、あるいは子供が学校で一緒だから、学校に寄付金を多額にしたからその人を信用するなどという銀行マンでは、これは人の金を預かる、預金業務をあずかる銀行マンとしてはもう全く資格のない人であります。そういう人を任命した、当時の銀行頭取責任もこれは重大ですよ。こういう無責任な預金を集めようとすることは、もしこれが正式なものとしたら導入預金ですね。一種の導入預金。あなたのいまの説明を裏返して考えると、預金を集めるための過当競争のために、真相も事実も確かめないで、預金さえくればいいという銀行同士の競争のあり方にも問題がありますね。それはどうでしょう。
  82. 中村俊男

    ○中村参考人 この問題は、過当競争の結果という御判断をなされておるようでありますが、実際問題といたしましては、預金を集めるということは、銀行営業場所の重大な業務の一つとなっておりまして、少なくともこの預金につきましては、支店長は非常に成績を上げてみようという気持ちにもかられ、魅力を感じておって、その虚をつかれて、いま申しましたようなことから信用もいたしておったという前提もありまして、そこをつかれてだまし取られたのでございます。それが実情でございます。
  83. 武藤山治

    武藤委員 そういたしますと、三菱銀行というものは、吹原関係している五つの会社には、かって貸し出しをしたことはないのですか。あるとすれば最高貸し出しをした時期、金額はどのくらいですか。
  84. 中村俊男

    ○中村参考人 そう詳しい資料を持っておりませんが、お答えできると思います。まず北海林産興業に対しましては、三十八年六月から貸し出し取引が行なわれておりまして、最高の貸し出し残高は四千万円くらいでございました。商手割引を含めました運転資金でございます。最近のところは二千七、八百万円の貸し出しがありましたが、現在はゼロで、ございません。吹原産業株式会社に対しては全然貸し出しをいたした事実はございません。いま申しました二つは、取引は当行の銀座支店にございます。それから吹原弘宣氏個人の取引は、住宅の関係で長原支店にあるのでございますが、貸し出し取引は二千万円、同氏の宅地並びに家屋を担保に取りまして貸し出しいたしたことがございます。三十九年四月でございます。しかしこれはすでに返済になっておりまして、ただいまのところ貸し出し取引はございません。
  85. 武藤山治

    武藤委員 昨年十月十九日に三十億円、二枚の通知預金証書を作成をし、これがだまされたのだということがわかったのは一体いつで、あなたのほうの加藤常務ですか、審査関係責任者が知ったのは一体いつですか。
  86. 中村俊男

    ○中村参考人 だまされたと支店長が感づいたのは、それからあとどのくらいでございますか、十月の十九日にその事件がありましたが、十一月の初めごろには少しおかしいな、これはだまされたなというふうに支店長は感じたということも言っております。自来その預金証書の取り返し——念のために申し上げますが、この預金証書というのは預金取引契約のない証書でございますので、法律上無効の証書でございます。したがいましてそれを取り返すように折衝いたしましたのがその後でございます。それで支店長限りで本店にも報告をいたさずして、だまされたとわかってからは、何としてもその証書を取り戻さなければならないということで鋭意吹原と折衝しておりまして、それがついに五ヵ月続いたわけでございまして、本店の耳に入りましたのが三月十七日でございます。
  87. 武藤山治

    武藤委員 日本の第一級の大銀行が、しかも優秀な銀行で国民の信頼を受けている三菱銀行が、昨年十月十九日に起こったこの問題を、本年の三月十七日に本店でわかったというのは、一体どこに欠陥があるのですか。あなたの銀行のどこに欠陥があるとお考えですか。まさに銀行の中が命令系統が乱れておって、統制がきかなくて、上と下とのパイプが切れている。どういうところに原因があって、こんな長い期間通知預金証書のイカサマがわからなかったのですか、おかしいじゃないですか。
  88. 中村俊男

    ○中村参考人 常日ごろ私どもは営業店に対しましては、何か異例なこと、何か事故があったならば、必ず一刻も早く本部に連絡するよう指図をいたしております。これは繰り返しいたしております。したがいまして本件もいよいよ手形が入らなくなった、無効の預金証書であるということで、取り返さなければならないということが支店長にわかりましたならば、さっそく本部に連絡いたすべきなのであります。しかしながら支店長はやはり自分だけでこれをもみ消してしまいたいという意欲が先に立ちました結果、初めはそのうち預金がくるであろう、くるであろうと思っておったが、そのうちこなくなってきた。それで本店に何とか言わなければならないが、言いそびれてしまった。そうなってこの預金証書を取り返してしまえばもういいのだからということで、取り返すことに専心いたしましたが、それを伏せておったのであります。そのために本店ではわからなかったというのが実情であります。
  89. 武藤山治

    武藤委員 とにかく三十億という膨大な金、これは中小企業の方々が聞いたら憤慨をいたしますよ。そういう膨大な金が簡単に預金証書がつくられ、あれはだまされたのだと気がついて、本店に取れないと報告してわかったのが三月十七日、約五ヵ月間もここに期間がある。その間一体支店長としてはどんな手を打ったのですか。内容証明をぶつけたのですか、森脇の家に行ったのですか。一体どんな手を打ってこれを取り返そうとしたのですか。具体的なその取り戻すための日程のメモがございますか。
  90. 中村俊男

    ○中村参考人 そのメモは手元にありません。しかしこの間あるときは連日、二、三日後に返すと言えば、返すと言われた日には必ず出向き、しょっちゅう連絡をとって督促しておったことは事実でございます。仰せのことはまことにごもっともでございまして、私どももまことに遺憾であり、はたの方々がお聞きになりますと何とも解せないとお感じになることはごもっともと思うのでございますが、事実は支店長限りで何とかこの事件を解決してしまいたい、そういう気持ちから行なわれておったことが真相でございます。   〔発言する者多し〕
  91. 吉田重延

    吉田委員長 御静粛に願います。
  92. 武藤山治

    武藤委員 三菱銀行がこの預金証書は無効だと——一体無効だという法的根拠はあるのですか。あなたたちが発行した預金証書は、この所持者が正当な者ならば、これは当然払い戻しをしなければならないのじゃないですか。これはどうして無効なんですか。
  93. 中村俊男

    ○中村参考人 顧問弁護士の意見に従いますと、預金契約というのは要物契約であって、現金その他これに準ずる手形など対価を受け取って初めて預金契約が成立する。それが成立しておらないのでありますからして、この証書は無効なものである。しかも通知預金証書には譲渡、質入れの禁止条項がありますので、第三者の方に担保に入れるとか譲渡するというようなことは禁止されておりますので、その点も御了承願います。したがいまして法律上は無効の証書であるということにいたしております。
  94. 武藤山治

    武藤委員 これはいまうしろのほうで弁護士の畑君が言うように、それはまさにこじつけであります。まずそれでは一つ聞きますが、一体、譲渡したものであるか、他人の手に渡ったものであるか、この通知預金証書は架空の名義ですから吹原のものじゃないんでしょう。したがっていまの第三者に譲渡したり移った場合には支払い義務がないということは、この権威ある書物でも書いてあります。しかし問題は、これは譲渡されたのかどうかということも、架空の人間なんですから、ここらはどういうふうに解釈しておりますか。
  95. 中村俊男

    ○中村参考人 話は、吹原弘宣との話でございまして、その預金の名義はこういう名義にしてほしいという名義になっておりまして、話はあくまで吹原弘宣との話であります。第三者の話ではございません。   〔発言する者あり〕
  96. 吉田重延

    吉田委員長 御静粛に願います。
  97. 武藤山治

    武藤委員 それではあなたの銀行の発行する通知預金規定と申しますか、裏書きの条件といいますか、記載条項というのは、一体、そういう場合にこれが無効だとできる裏書きの記載があるのですか。あなたの発行しているその通知預金証書はどうなんですか。
  98. 中村俊男

    ○中村参考人 そのような場合に無効ということは書いてございませんが、通知預金証書は法律的に有効に成立した預金契約を前提にそういう約款が書いてございます。法律的に全然成立しておらない無効の預金証書というものについては、それは全然無効なのでございます。
  99. 武藤山治

    武藤委員 預金というのは寄託契約でございまして、両者の意思が一致しなければ預金証書は発行されないはずなんですよ。そうでしょう。確かに指名債権でありますから、譲渡したり、質入れした場合には無効になる、それは明らかに民法上の規定にもありますよ。しかし両方が正式に話し合って初めてあなた方も信じてそれを渡したんですから、銀行側は、渡すときにこれははっきり契約を結んでおるんですよ。契約が成立しないのに、預金証書を渡すはずがないじゃありませんか。そうじゃありませんか。それはどうでしょう。
  100. 中村俊男

    ○中村参考人 繰り返して申し上げておりますように、現金またはこれに準ずる手形が入りまして預金契約が成立するのでございまして、入れると言っておいて入らなかったのでありまするからして、この預金契約は成立しておりません。したがいまして入ると思ってだまされて渡した証書は法律上無効の証書でございます。さように顧問弁護士の意見を聞いております。
  101. 武藤山治

    武藤委員 それじゃ本人が、これは無効だという念書を入れたと新聞は報道しておりますが、これは無効だと吹原が申し出たのは一体いつで、その文書はどういう文書で出してあるのですか。
  102. 中村俊男

    ○中村参考人 先ほど申しましたように、後刻、日銀小切手、また現金に準ずる小切手を渡すから、それまでの間、かりにこれでもって預かっておいてくれという自己振り出し小切手を預かったことは、先ほど申し上げたとおりでございます。その後そういう現金ないしこれに準ずる手形はきょうは間に合わなくなったから、あしたにでも入るであろうから、きょうは待ってくれということに対しまして、支店といたしましては、それじゃお預かりの小切手を交換に回しますよということを申しましたところ、それは先ほども申したように、預かりの意味で渡したものなんだから、手形交換に回すことはやめてくれ、それでは当然お渡しした預金証書は無効ですよと言ったら、もちろんそうだ、それならば念のために、これは念書でありまして、念書を入れたから無効になったのではないのであります。当然無効なものを念のために念書を入れるということで、その日の午後に吹原から念のための念書を、この預金証書は無効であるという書面をとっております。
  103. 武藤山治

    武藤委員 それはいつですか。
  104. 中村俊男

    ○中村参考人 十月十九日であります。
  105. 武藤山治

    武藤委員 十月十九日、ほんとうですか、それは。十九日に吹原ビルまでわざわざ支店長、次長、預金係長の三人が御丁寧に行って、そこで証書を渡し、その日にこれは無効だという念書を取ったとすれば、処理に五ヵ月間もかかるはずはないじゃありませんか。もっと早く、大銀行ともあろうものが打つ手がないはずがない。それはどうも真相を答えているとは受け取れませんが、どうですか、同じ日ですか。
  106. 中村俊男

    ○中村参考人 おっしゃいますように三十億という証書はたいへんな金額でありますので、どうしても長原支店といたしましては、いま申しました事情であるならば、その日のうちに、何時になってもそのぐらいなことはやろうという心がまえでおったわけでございます。その後一ぺん吹原のところに渡りましてからは、言を左右にして、ほんとうらしいことを申し述べて返してくれない。これは先ほど申しましたように、それからあと三月半ばまで支店長自分の力で何とかそれを解決していきたいという気持ちにはやられたので、わからなかったのでございまして、その念書と五ヵ月という問題は関係がないように考えます。
  107. 吉田重延

    吉田委員長 関連質問を許します。横山利秋君。
  108. 横山利秋

    ○横山委員 あなたの話によれば三月十七日に本店の耳に入った、十月十九日から三月十七日まで長原支店は鋭意努力したと御説明があった。本店は、さらに三月十七日から——四月十二日十億円の回収があったというのですが、それまでも鋭意努力をされたと思われるという説明だった。その鋭意努力をしたいきさつをもう少し聞きたい。第一に鋭意あなた方が努力をしたときに、吹原はどういう説明をしたか。第二番目に森脇はどういう説明をし、どういう主張をしたか。第三番目に四月十二日に十億円が回収されたときの経緯はどうであったか。第四番目に、おそらく吹原ないしは森脇の説明の中にあったと思われるいわゆる黒金文書、この黒金文書によれば、十一月二十日付で、「三菱銀行長原支店に預金した通知預金を本日引き出すとのことだが、十一月二十六日までのばしていただきたい。再度お願いすることはありません。」こういう文書が出ておることは新聞ですでに全員承知のはずだ。このような念書というものが森脇なり吹原との折衝の過程において話がなかったとは信じられない。その点について、逐一四項目を御説明願いたい。
  109. 中村俊男

    ○中村参考人 証書を取り返します経緯につきましては、五ヵ月の間いまここに詳しい——その間回数にすれば何回会っておりますか、おそらくたいへんな回数支店長吹原氏と会っておる。あるいは電話で、あるいは使いをも出しているというようなことでございまして、そのつど吹原が申したことは、とてもメモにもなっておりません。しかしそのつど言いわけめいたことを申し、ありそうなことを申し、そして引き延ばしてまいったのであります。最後の段階におきましては支店長もこれはうそであるというようなことを悟ったのでございますけれども、自分の力で何とかこの証書を取り戻したいということで、努力をしておったというのが実情でございます。それから森協氏とは、三月二十日に森脇氏から二十億円の通知預金証書の支払いの呈示があったのであります。しかしこれに対しましては、先ほど申しましたように弁護士の意見も聞きまして、預金契約が無効なのであるから、これについてのお支払いはできないということで、明瞭にお断わりいたした次第でございます。それから黒金氏のメモというものは、銀行は全然関知しておるところではございません。銀行にはそういうものも入っておりません。
  110. 横山利秋

    ○横山委員 答弁が全然問題にならぬ。私の聞いているのはあなたの意見を聞いているわけじゃない。吹原は何と言ったか。あなたはありそうなことだと言ったと言うが、ありそうなこととはどういうことを吹原は逐次説明をしておったか、森脇は請求したが、とにかくあなたのほうが断わったと言うが、そのときの森脇の主張はどうであったか、黒金念書があなたのところに入っているとは思わない、しかし黒金念書が話の中に出たはずだ、出ないとは言わせない、私はこういうことを言っているのです。四月十二日に十億円の証書が入ってきた経緯を聞いているのだ。あなたの意見を聞いているのじゃない。
  111. 中村俊男

    ○中村参考人 四月の十二日に十億円の通知預金証書が戻ってまいりました。これは三月の十七日本店がその事情を知りましてからは、問題を支店の手から離してしまいまして、本店でもって吹原と折衝いたしておりました。検査部長をしてこれに当たらしめたわけでございます。鋭意また回収に努力いたしまして、結局四月の十二日には吹原産業の経理部長が使いとして持ってきただけでございます。返すと言って持ってきただけでございます。
  112. 横山利秋

    ○横山委員 吹原が、ありそうなこととはどういうことを言ったか。それから黒金念書を見たことがない、聞いたこともないというのか、全然知らないというのか、交渉過程でわかっておるはずだ。
  113. 中村俊男

    ○中村参考人 吹原がいろいろなことを申しましたように、非常な回数いろいろなことを申しておるのでありまして、私はいまここにメモを持っておりませんし、とてもそれはいま申し上げることはできません。森脇メモにつきましては、そういうメモが入っていることは私どもは承知いたしておりません。支店長は森脇将光氏とは全然折衝しておりません。折衝しておりますのは吹原弘宣氏だけでございます。
  114. 横山利秋

    ○横山委員 どうもその辺があなたの先ほどからの明瞭な回答に比べて非常にあいまい千万です。黒金メモは、これは本人が書いたかどうかはあとでまた議論するにしても、三菱銀行長原支店に預金した通知預金は十一月二十六日まで引き出さないということを保証しているわけです。それはおそらく一生懸命にだれかが頼んだ。長原支店が頼んだか、本店が頼んだか、あるいはだれかが頼んだ。だからあなた方が請求に行けば、こういうものがあるのだからひとつ了解してくれという話が当然あったはずだ。本人が書こうが書くまいが有力なこれは黒金念書として入っているものであるから当然だれかが見たはずだ。あなた方が五ヵ月もかかって電話でやった。ありそうなことだ、そのありそうなことだとは何だと私は聞いている。ただ、払いません、だめですかと言って引っ込んでおったか、努力したというならどういうふうにやったか、向こうは何と答えたか、これがどうしてうまくいかなかったか、そこのところの経緯を具体的にわれわれが納得するように言えとこう言っている。
  115. 中村俊男

    ○中村参考人 ただいま申しましたように支店長が鋭意努力いたしまして、その間に本店の耳に入って、もうおまえはやめろ、本店でこれを扱うからということで本店の検査部長が吹原との返還の折衝に当たったわけでありますが、吹原もっともらしいことを申しまして一日延ばし二日延ばしておったわけでありますけれども、これではすでに支店長吹原はうそだということを確信を得ましたので、これは司直の手によって取り戻さなければとてもわれわれの力では及ばないということになりまして、四月三日付で告訴いたした次第であります。そのあと吹原自分手元にあるものについて告訴の事実があることを知ったかどうか知りませんが、これは想像でありますけれども、相当な決意で三菱銀行は返還を請求しているなということを感じ取ったのではないかと思いますが、いままで延ばし延ばししてきたのを四月十二日に一通だけは戻ったのであります。したがいまして、四月十二日に一通だけは戻ったのでございます。
  116. 横山利秋

    ○横山委員 それでははっきり聞いておきます。黒金メモを見たことはない、長原支店も見たことはない、一切知らない、こういうことですね。いいのですね。
  117. 中村俊男

    ○中村参考人 伺います黒金メモというものは銀行に対して書いたものではございませんので、私のほうはそれは関知することではございません。私は承知いたしておりません。
  118. 横山利秋

    ○横山委員 聞いたこともないというのですね。
  119. 武藤山治

    武藤委員 割り当ての時間でありますから、最後に、どの銀行でもけっこうでありますからそういう事実を知っておったら明らかにしてもらいたいのでありますが、黒金さんが野村証券社長さんの邸宅を買った。奥村綱雄さんから六千万円とかで買った。そのときの支払いの中に吹原産業小切手を五百万円黒金さんがどこかの銀行にもらいに行ったといううわさがある。本人は行かないかもしれないが、その名前で引き出したという事実を知っておる銀行はありますか。なければないでいい。あったら知っているでしょう。
  120. 吉田重延

    吉田委員長 お答えがないようでありますが……。
  121. 武藤山治

    武藤委員 知らなければ知らないと答えてください。
  122. 中村俊男

    ○中村参考人 全然知りません。
  123. 寺田清

    寺田参考人 全然知りません。
  124. 上枝一雄

    ○上枝参考人 知りません。
  125. 武藤山治

    武藤委員 もう一つは、北海林産興業株式会社、これは吹原ビルの中にあるのですが、この会社の株を前外務大臣の大平さんが持っておって一割の配当をずっともらっておった。その配当は一体どこの銀行が一応委託を受けて払い出しをしておるのか。それの記憶があったら報告を受けておったら、事実を明らかにしてもらいたい。
  126. 中村俊男

    ○中村参考人 ありません。
  127. 上枝一雄

    ○上枝参考人 ありません。
  128. 寺田清

    寺田参考人 ありません。
  129. 武藤山治

    武藤委員 私の持ち時間はこれで終わりましたが、銀行のあるべき姿として指摘しなければならぬ点がたくさんございます。きょうの質疑応答を通じて、おそらく責任者の皆さんも、今日の都市銀行あり方、貸し付けのしかた、商業ベースからはずれたやり方、こういう点の指弾を受けたわけでありますから、今後十分お互いが自戒自粛をし、国民に信頼される銀行になることを強く要望して質問を終わります。
  130. 平林剛

    平林委員 関連。いま武藤さんがお尋ねをしておりました念書の問題について、どうも私わからないから重ねてお尋ねをしておきたいと思います。  先ほど、預金の裏づけのない通知預金の証書を渡したのが十月十九日吹原ビルにおいて渡した、念書をとったのも同じ十月十九日というふうに私聞いたのですが、間違いありませんか。
  131. 中村俊男

    ○中村参考人 さようでございます。
  132. 平林剛

    平林委員 そうすると、預金の裏づけのない通知預金証書を渡し、これは間違っておった、おかしい、これは違うということでそれは無効だというような念書をその同じ日に重ねてとった。同じ日ならばなぜその誤って渡した通知預金証書というのを取り返さなかったのですか。念書なんかを念を入れてとるよりも、もともとの間違いの証書を取り返したほうが早いんじゃないですか。なぜそれを取らなかったんですか。私、どうもそこが納得できない。だからそれは何か、まだきょうお話しにならぬ裏の裏の話があるから、そういう念書でもって一応片づけておいた、こういうふうにしか一般は理解しないと思うのです。なぜそのときにそういう預金の間違いのやつならば、それをすぐ取り返さなかったのですか。念書なんかとるより前に、それを取ったほうが早いでしょう。それを取り返さなかった理由は何か。それから、これは重大なことをしたにちがいないとおそらく支店長——あなたは支店長責任だ、支店長責任だとこう言っておるから、かりにあなたのことばを真に受けて支店長だということにしましても、支店長は、ああこれはたいへんなことをした、念書をとらなければいかぬ、こういうことになったときには自己判断で念書をとるのか、そのとき三菱銀行頭取あるいは首脳部の人に相談をして、それなら念書をとれというふうなことになったのか。そこら辺のいきさつがちっともわからないんですね。私はそこが解明されませんと、あなたのお話、どうも信用できないわけでありまして、この二つの点いかがでしょうか。
  133. 中村俊男

    ○中村参考人 支店長といたしましては、預金証書を返してもらうということが第一でありまして、返してもらうことを強く要求したのでありますけれども、それは結局返さない。どうしても返してくれない。いずれ預金になるのだからということでつられたわけでございます。しかしそれはいずれ預金になるにいたしましても、それではひとつ念のためにということで、まだそのときは支店長としては、その預金はきょうはだめでもあしたはできるんではなかろうかというような気持ちを持っておったために、一応念のためにとっておこう、それが後日ものを言うということではなくして、後日のため念のためにとっておこうというのでありまして、そういうことでとったのでございます。
  134. 堀昌雄

    ○堀委員 最初に、三和銀行さんに御出席をいただいておりますので、三和銀行のほうにお尋ねをいたしますが、三和銀行は六億円吹原産業のほうに融資をしておる。この経過を、時間もございませんので、ひとつ簡単にお答えをいただきたい。
  135. 上枝一雄

    ○上枝参考人 それでは簡単に御説明いたします。吹原産業さんには三十八年の九月ころからお取引ができたようでございます。そして本件、いま問題になっておりまする六億円の融資というのは昨年の二月に三億円、三月に三億円、この二同にわたって融資をいたしております。この話はもう少し前からあったんだそうでございますが、当初申し出があったときは、生鮮食料品の流通機構の改善施策の一端として、五反田冷蔵庫をつくるからひとつ六億円融資してくれ、こういうことから出発したらしいのであります。ところでこれには私のほうの有力な得意先の紹介もございまして、口添えといいますか、そういうものがございまして、初めに聞いたときは金額は大きいし、なかなかこれは採算が合わぬじゃないかということで、一応お断わりはしておったそうでございます。なかなか熱心な御要請があるし、申し出の主体がそういうところから出てきたわけです。そして話をしておるうちに、まあそれではひとつ半分の三億円くらいはどうか、担保は実測約千二百坪の五反田土地だ、こういうことでそれに第一順位の抵当権をつけまして始まったわけであります。さらにこれはどうも採算が合わぬのじゃないか、銀行は金を貸す以上は、預金者の金ですから、どうしても回収が大事です。採算がよくないと、あとでトラブルが起こってもいかぬからというので、再三何か交渉があったようでありますけれども、そこでこの担保担保として残しておいて、建てた建物については、将来優先的に第一順位を完成したときにはつけましょうという一札もとりまして、それから採算のほうは合わないからというので、いろいろ話をしておるうちに、上にボーリングをつける、こういうことになった。それででき上がったのは昨年の末らしゅうございますが、そこで担保の話になりまして、すぐつけようといたしましたところ、ほかに債権者もあったわけです。そしてその債権者との話し合いで、売買予約の仮登記をした、こういうことであります。御承知のように、一番担保といたしましたならば強いわけです。それで土地に対する一番抵当権のほかに、売買予約の仮登記をいたしましてやったわけです。それが昨年の三月の追加三億に対する担保、こういうことです。私はいま御両行のお話を聞いておりまして、もとよりこれは最近の金融環境、そういうものから見まして、こういう貸し出しは実際はやるべきでなかったと思います。しかしこれは私のほうの全部下部機構から上がってきて、上層部の承認もあったということを私は見ておりますから、そういう意味から見て、これは銀行としたらやむを得ず貸したんだ、こういうように私自身は考えております。  そこで、それじゃ貸したならばあとどういうようにやるということでございますが、私どもは商売人でございますから、貸した以上は回収しなければならぬ。そういうことで毎月の収入を近隣の支店から集金さしております。そして返済の条件とか何とかこまかいことは別といたしまして、一番ポイントになる点は、確かに毎日それだけの金が上がっておるかどうか、こういうことが一番大事。それから主目的であった生鮮食料品の流通機構の改善に役立っておるのかどうか、こういうことじゃないか。そういうこともわれわれよく見まして、実績としたら最近では八十万円くらい上がっておる。これは私のほうの支店で毎日集金しておるわけです。これはよくわかっておる。それから返済ですが、御承知のように設備資金というものはなかなかそんなにすぐ返るものじゃございません。そこで当初は四十三年の十二月に返そう、こういう約束になっておる。それで半期にしますとそれが約七千五百万ほどになりますが、いまの様子でいきますと、少しそれは無理かとも思います。しかしこれは預金者の金ですから、私どもはどうしても確実に取っていかなくてはならぬ。この問題が起こって、初めて実は私はこの吹原なる名前を拝見いたしました。これで、これはしまったことをしたというようなことで、ずいぶん部下もしかったのでありますけれども、やったあとですからこれはあと回収する以外にないというので、いま鋭意そのほうをやっておるわけでございます。
  136. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの融資の問題は二、三問題があると思います。今度の問題は二つありまして、一つは銀行の実際にお貸しになっておる融資の問題、一つは銀行自己あて小切手なり通知預金証書の問題でございます。三和銀行については、ただ融資だけでございますから、先にこの点だけしぼって申し上げておきますが、大和銀行からもお話がありましたが、生鮮食料品冷蔵庫をつくること、たいへんけっこうでありますけれども、あの五反田の目抜きの場所に冷蔵庫をつくって一体ペイするかどうかということ、これは日ごろそろばんにかたい銀行としてはまことに不十分な調査であったのではないか。坪当たり四、五十万円もするような土地に冷蔵倉庫をつくる必要はないのでありまして、これは東京の都内であっても坪十万円くらいのところで成り立つものを、そういうところにおつくりになったという点については、私は第一点として調査が非常に不十分である。  第二点は、この吹原なる人物が過去にいろいろと事件を起こしておるということを調査されていなかったという点も、私は貸し出し態度としてはきわめて不十分な問題であると思います。これはいまさらここで申してどうにもなるものではありませんけれども、私どもは当委員会金融の問題についてはしばしば論議をいたしてまいっておりますが、この点だけは、私、先般の山陽特殊製鋼等の問題を見ましても、銀行融資態度の中には、私どもがこれまで考えていたより以上に問題点があるということが明らかになったと思うわけであります。この点についてはひとつ三和銀行におかれても十分今後は注意をしていただかなければならぬ、かように思いますが、それについてのお考えをちょっと……。
  137. 上枝一雄

    ○上枝参考人 先生の御意見、私はまことにごもっともだと思います。実は私も腹の底ではおっしゃるとおりに思っておるのです。しかし御承知のように戦後の経済、特にここ数年間の非常に大きく伸びた経済の中で、また社会のいろいろな面を見まして、これはなかなか一朝一夕に直るものではないと思うのです。  それから銀行の問題——私はほんとうは自分をむちうっているのです。ほんとうにこれは直さなければならぬ、そういう意味で先生のお考えは、とりもなおさず私の考えと同じだということを申し上げまして、ひとつ御趣旨に沿うようにやっていきたいと思います。
  138. 吉田重延

    吉田委員長 関連質問を許します。平岡忠次郎君。
  139. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 三和銀行さんは頭取さんがお出かけくださいましたので、当委員会に対しまして非常に誠意があると考えております。  いま融資ルールというようなことが問題になっているのですが、現在は融資準則というものはなくなっていますけれども、その精神は体していかなければならぬわけであります。法律的に言うならば、融資準則がないのですから、これはトルコぷろに融資してもボーリング場融資しても文句を言う筋ではない。しかし心がまえとしては、やはり融資準則の精神は生かしていただかなけれげならぬという点で、御三方に、特に三和さんにそういうところまで徹底していただきたい、こういうことをお願いしたいのであります。  もう一つ、実は五反田の千二百坪六億円と聞いておりますが、そうすると坪五十万円ですね。その程度は——行って見なければわかりませんけれども、大体あり得るだろう。ただし私が懸念しておったのは、上ものが乗った場合にこれだけの評価がいいのかということでした。そうしたら、実は同時に建物それ自体のほうの問題も片づけておるので、このかけ目の点をなお考慮しなければならぬということもないということで、やや九五%くらい氷解しまして、あなたの立場だけは、まさに商業ベースの問題として十分納得し得るというように判断をいたしておるわけであります。おそらく同僚諸君もそうであろうと思うのです。  そういうわけで、私の言わんとすることは、結局融資準則がなくなったけれども、融資準則の精神は、この際においてこそ今後銀行としてはぜひ生かしていただかなければならぬということを強調しておきたいのです。  関連しての私の意見はこれをもって終わります。
  140. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで三和銀行にお伺いをいたしますが、実は先ほどからのお話三菱銀行に三十億円の通知預金をするから通知預金証書を持ってきなさい、こういう話があったわけですね。三和銀行でこれまで非常な大企業が、たとえば三菱であるとか富士鉄であるとか八幡であるとか、こういう天下周知の大企業ならともかくも、少なくとも資本金が一億ぐらいのところで、それを個人がするのか会社がするのかもわからないような形で三十億円もの通知預金というものがそうたびたびあるものかどうか。一ぺんにですよ。これをちょっとお伺いしたいのです。
  141. 上枝一雄

    ○上枝参考人 金額で三十億円という金額がないとは申せません。しかし問題は、そういうものを獲得したならばおそらく支店長は黙っていないと思いますね。これは何も悪い意味じゃないのです、ほめてもらおうと思って本店に来ると思います。しかし先ほどお話はちょっと違うのは、すぐに換金できないようなものでございましたから、これは私がいま申し上げる例にはならないと思います。しかし普通そのような大きな預金が、もし現金化できる、また現金で通知預金をいただいたならば、おそらく支店長本店に飛んでくるでしょうね。そういうふうに私は思います。しかしこの場合は別ですよ。
  142. 堀昌雄

    ○堀委員 私実は三十億円の預金を一ぺんにする例というのはめったにないことではないのかと思うのです。よほどの企業でも、十億やそこらはあるかもしれませんが、一度に三十億という例は……。三和銀行でそういう例が一年間に——例ですから。あるとすればどのくらいあるでしょうか。なければないとおっしゃっていただいていい。
  143. 上枝一雄

    ○上枝参考人 まあめったにないことです。
  144. 堀昌雄

    ○堀委員 大和銀行にお伺いをいたしますが、あなたのほうも三十億円の預金が一ぺんにありたというような例がたびたびありましょうか。
  145. 寺田清

    寺田参考人 絶無とは言えないでしょうけれども、個人ないしは普通の民間企業からはまあないと思います。
  146. 堀昌雄

    ○堀委員 いまお聞きのように、三菱銀行の長原支店で三十億円の預金があるということは、第一点として、銀行としてはたしてそういうことが常識で考えられるかどうか。いま三和銀行大和銀行とも、絶無とは言わないけれどもまあないということなのですから。三菱銀行はしょっちゅうあるのでしょうか、最初にちょっとそれをお伺いしておきたい。
  147. 中村俊男

    ○中村参考人 先ほど申し上げましたように、そうしょっちゅうあることではございませんが、絶無であるということはないと思います。
  148. 堀昌雄

    ○堀委員 過去一年間ぐらいに何回ぐらいございましたでしょうか。
  149. 中村俊男

    ○中村参考人 その例は私はいま聞いておりません。
  150. 堀昌雄

    ○堀委員 私は三十億の預金が一ぺんに入ったら、少なくとも銀行の幹部は御承知の問題だろうと思うのです。だからあなたが一年間にその例を聞いていないとおっしゃることは、三菱銀行においても最近はなかったということだと私は理解をいたします。  そこで、そのようなないことが起こるわけですから、その銀行支店長としては当然これはいろいろな予測をしてかからなければならない問題だと思うのです。  第二点は、あなたの御答弁の中に、日銀の小切手または銀行小切手あとから持ってくる、こういう話だという御答弁がありましたね。これが私おかしいのです。日銀の小切手なら当然日銀小切手を持ってきますと言う。準備がないわけですから——準備があるのなら、いま日銀の小切手をとりに行っていますから待ってください、その聞こうしますと言うなら話がわかる。あるいは銀行小切手そのいずれかということは、確実にめどが立っていないということなのですね。それをはっきりと吹原が言っておるにもかかわらず、それをそのままにして本人の振り出し小切手をとったということは、これはもう正常な状態ではないのではないか。だから三十億の預金という以上はこれは非常に重要な問題である。第二点として不正確な支払い条件になっておることがあるわけです。その点は、もしあなたが支店長であるとしたならばどうお考えになりますか。この二つのどれかで納めますということはあいまいな支払い方法だというふうに私は理解いたします。
  151. 中村俊男

    ○中村参考人 この点はまさしくおっしゃるとおりでございまして、あとでいろいろ振り返って支店長に尋ねてみました。支店長もまことにそうであるということを認めて深く遺憾の意を表しておりますけれども、実際問題としてはそう申したことは事実なのでございます。
  152. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでその次には、通知預金証書の問題でありますが、さっき少し触れられておりますけれども、大体通知預金証書は取引関係からすれば、まずおたくの店へ行って、そうして通知預金をいたします。そうすると判を押さなければなりませんね。おたくの場合には、お名前、御住所というところに名前と住所を書くようになっておりますね。そうして印鑑を押して、それに基づいてこの通知預金約定の書いたものをいただくことになりますね。ここにはこういうふうに書いてございます。「この証書及びこの預金に使用された印影を、かねてお届出の印鑑と照合し、相違ないと認めてお取扱いいたしました上は、印章の盗用その他どのような事故がありましても当行は一切その責を負いません。」その前に、「この預金の引出し又は証書のお書換を御請求のときは、元利金受取欄に御記名調印の上お差出下さい。」こういうふうにありまして、おたくでは、これを出した以上は、これを出した受け取り人が判を持ってくればこれは支払うということになっておりますね。ちょっとお答えいただきたいと思います。
  153. 中村俊男

    ○中村参考人 さようでございます。
  154. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで伺いたいのは、森脇さんがあなたのところに二十億のこの通知預金証書を持っていって払ってくれといったときは、森脇さんがおそらくここへ裏書きをして判を押さなければおたくでいただけませんから、その印鑑は届け出印鑑と同じだったのでしょうかどうでしょうか。
  155. 中村俊男

    ○中村参考人 そのときに届け出印鑑まで示して請求したかどうかははっきりいたしておりませんが、私のほうとしては、その前にこの預金証書は成立しておらない預金契約に関係する証書なんで、全然無効の証書でございますので、お支払いいたしかねますというふうに答えたということで、印鑑相違でございますからとか、印鑑は合っておりますがお支払いできませんとか、そういうふうには回答いたしておりませんので、その点はちょっとはっきりお答えできません。
  156. 堀昌雄

    ○堀委員 通知預金を出してくれという以上は、おそらくそのときに押した印鑑を持っていかなければだめなことは約定どおりですから、無効、有効の問題もこれが契約条件の一つになっておりますから、おそらくその届けた印鑑を持っていっただろう。実は私非常にこれで問題が起こると思いますのは、架空名義の通知預金の相手方というものは一体何なのかということなんです。なぜここに皆さんのほうは住所と名前を書かせるのかということですね。なぜ住所と名前をここへ書かせるのでしょうね。架空のものならば、書いたってそれ自体が意味がないのじゃないかと思うのですが、その点いかがなんでしょう。これは実在なんでしょうか、架空なんでしょうか。
  157. 中村俊男

    ○中村参考人 預金取引は預金をしていただく方との話し合いで成立いたしますので、預金者のそのお方が、その話の相手の方がこういう名義にしてほしいという場合には、そういうふうに御要望を受けることが間々ございますので、その点われわれはそこにそういう住所氏名を書いてもらう、こういうことになるわけでございます。
  158. 堀昌雄

    ○堀委員 そうするとその住所氏名は何であっても預金者が希望すればいい。この預金者というものが——よろしゅうございますか。かりに私が秘書を使いに出しまして、そうして私がかりに架空名義の通知預金証書をつくってもらうように命じますね。そうすると秘書がおたくの銀行に行きまして、架空名義でひとつお願いをいたします。こうなりますね。そのときにあなたのほうは、それでは私の秘書が預金者になるのですか、私が預金者になるのですか。架空の名義となりますと、その架空の名義の関係を立証するものは、届け出が印鑑以外にはその相手方を確認することは困難になるのではないか、私はこう思うのですが、あなたのほうではどうお考えになっておりますか。
  159. 中村俊男

    ○中村参考人 ちょっとその御質問の趣旨がはっきりわかりかねますが、私の理解したように申し上げますと、先生の秘書というのが、先生から秘書を差し向けるからというようなお話でございますと、明らかに先生とのお話し合いでございます。先生と預金ができる、こういうことになるわけでございます。ただ先生の秘書が参ったというのでは秘書御個人が、その方が預金の話し合いになる、こういうことになるわけでございます。そのお方の申し出を聞いてそのようにする。要するに話し合いの相手方が先生なのか秘書なのかというのは、先生のお話ではちょっとわからないので、そう申し上げておきます。
  160. 堀昌雄

    ○堀委員 その場合に、いま銀行側がそういう例をやったわけではありませんからわかりませんが、相手のことばで聞いておるだけですね、その支店長なり何かが。そうするとそこでもし論争が起きてきた場合には、私の秘書は先生の預金ですと申しました。それは聞きませんでした。あなたの預金ですというようなことになったら、印鑑の所在いかんで問題がきまる以外には紛争が必ず起きますね。銀行というものはそれほど通知預金その他について不確定な問題の処理がされるということは、われわれは今後こういう問題の処理を、法律的検討をさらに進めてまいりますけれども、そういうお話を聞いておりますと、きわめて不確定な取り扱い方になるのではないか、不安がいたしてしかたがないわけです。もし銀行支店長が秘書さんのあれだと言いました、こう言われたらもう私は何もない。たとい私が印鑑を持っておっても、これは私が効力がないなんていうことになれば、何らかの文書による挙証責任があなたのほうにあって、それはこうでしたということにならない限り、架空名義の住所氏名であったら、何ら銀行側は挙証責任ができないのではないですか。銀行支店長の一存でどっちにでもきまってしまうという可能性があるのです。文書やテープレコーダーにとってあれば別ですが、たいへん不安定なものになると思うのですが、その点は一般論ですけれどもいかがでしょう。
  161. 中村俊男

    ○中村参考人 いまお話の例で、まことに不安定だとおっしゃいますが、その例は具体的にやはり吟味してみませんと申し上げられないので、それで一般的にまことに銀行に預金をするのに不安定だというふうにおっしゃられるのは、私は少し納得いたさないと思いますが、一般論としてそこまでお広げいただくことは、私としてもどうかと思います。
  162. 有馬輝武

    有馬委員 関連してお伺いしたいのですが、確かにいま吹原に渡ったときの経緯だけはお話がございました。  私、この際お伺いしておきたいと思いますのは、これが現金引き出しができないとしても、善意の第三者に渡ったときの効力はどうなるのか、あなた方の顧問弁護士の方々はこれに対してどのような見解を持っておられるか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  163. 中村俊男

    ○中村参考人 顧問弁護士の意見を徴しましたところ、預金契約は指名債権であるし、ことに通知預金証書には譲渡質入れ禁止の条項が載っておりますので、もともとこの預金は成立しておらない、無効の証書であるからして、善意の第三者というものはなかなか起こりにくいのじゃないかという意見を申し述べております。
  164. 有馬輝武

    有馬委員 起こりにくいかもしれないけれども、今度の場合には善意の第三者がこれに介入しておるわけです。そういうことは、これは当然あらゆるケースを予想して私は預金証書の扱いというものはなされなければならないと思うのですが、そういう点について、これはもう無効だということだけで済まされるお考えですか。
  165. 中村俊男

    ○中村参考人 ただいま善意の第三者があるというお話でございましたが、どういうことをおっしゃっているのか私にはわかりかねますが、証書に質入れないし譲渡禁止が書いてございますので、それをごらんになれば銀行に確かめていただくということがあるのではないかと思います。金額も大きいことですし、したがいまして、顧問弁護士の意見では、そういう第三者というものはほとんどないだろうというような意見を申し述べられております。
  166. 堀昌雄

    ○堀委員 さっき武藤君も触れておりましたが、もし三十億円入っておったとしますと導入預金になると思うのですね。いろいろの経過を見ておりますと、入っていないから導入預金にはならないと思いますが、もし入っておれば導入預金というかっこうになると思いますが、三菱銀行はどういうふうに考えておりますか。
  167. 中村俊男

    ○中村参考人 入っておりましたら導入預金というお話でございますけれども、この預金は吹原との話においては預金だけのことで、それ以外のことは何にも触れておりませんので、入っておったとしたら導入預金になるという御質問はちょっと理解に苦しみます。預金の話だけでございました。
  168. 堀昌雄

    ○堀委員 私はいまの点はもう時間もございませんから、たって伺いませんが、三十億円という例のない通知預金が入るについて、いろいろといわれておるように何らかのことが約束されておったのではないかと思いますが、これは仮定のことでありますからこれ以上触れません。  それでもう一つ、実は田實頭取新聞で四月二十三日の午後お話しになっております。首脳部責任問題は、当時は宇佐美頭取が外部、副頭取の私が内部を受け持つたてまえになっていたので、監督不行き届きの面があれば当然私が受けるものだ、事件の調査が進み、めどが立てば片づけなければならない問題だ、こういうふうな発言があったわけです。私はきょうは田實さんがお見えになると思ってメモしておいたのですが、これはどうだったのでしょうか。
  169. 中村俊男

    ○中村参考人 まことに本件は遺憾なことであり、頭取を含めて私どもは非常に恐縮いたしておりますが、その責任のことにつきましては、先ほども申し上げましたように、私どものほうで四月三日に告訴をいたしておりまして、事件はただいま捜査中でございますので、それが一応の決着がつきましたところで十分に考えさしていただきたい、こういうところが頭取の真意でもあろうかと思います。
  170. 堀昌雄

    ○堀委員 中村さんは二十二日に毎日新聞の方に、銀行内部の問題だが、十月半ばに事件があったのを本部が知ったのは三月半ばだ、当時の首脳部は宇佐美日銀総裁を含めて全く知らなかった、こういうふうに毎日新聞に報道されております。そこで宇佐美日銀総裁を含めて全く知らなかったということは、問題になってからあなたが宇佐美さんにお尋ねになったでしょうか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  171. 中村俊男

    ○中村参考人 宇佐美総裁には私からは連絡いたしませんでした。三月末のころだと頭取は申しておりますが、頭取から電話でこういうことがあったということを報告いたしました。そのときに十分その筋を通してこの問題は処置したほうがいいだろうというような御意見も出たほどでありまして、そのとき総裁は知らなかったということを頭取に言ったというふうに私は聞いておりますので、さような発言をいたしました。しかし、私は新聞記者の会見で、宇佐美総裁ということばは一度も出しておりませんので、その点は誤報かと思います。
  172. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでおたくの定款を拝見いたしますと、第二十三条に、「頭取は業務を統括する 副頭取頭取を佐け業務を執行し頭取事故あるときはその職務を代行する」とあります。私はもしこの問題でいまの検察当局の調べが終わって——やはり依然として銀行側にも手落ちがあることは明らかだと思いますが、田實さんは何か頭取は外側、副頭取は内部をやっておったとおっしゃいますけれども、定款の定めるところによれば、やはりそれらの責任というものは当時の頭取が負うのが至当ではないかと私は思いますけれども、その点についての三菱銀行側の御見解を承っておきたいと思います。
  173. 中村俊男

    ○中村参考人 責任の問題につきましては、ただいま申し上げましたように、何ぶんにも目下捜査中でございますので、それが決着を見ましてから十分ひとつ考えることにさせていただきたいと思います。
  174. 有馬輝武

    有馬委員 関連して。中村さんは責任という点についてどのような立場からお話しになっておるのかわかりませんが、いま堀委員からお伺いしておりますことは、先ほどから長時間をかけて論議をいたしております銀行の信用に関する責任ということに対して、当時の頭取の宇佐美さんは、検察当局の結論が出るまでは責任があるかないかは別だというような立場にはおありでないのじゃないか、やはり日本のすべての銀行が負うべき責任の一端を当時の宇佐美さんも持っていらっしゃるのじゃないか、このように私は考えるのですが、検祭当局の結論が出ない間はそんなことは存じませんというふうに中村さんはお考えですか。
  175. 中村俊男

    ○中村参考人 私は検察当局の一応の決着が出るまでは考えない、つまり責任の問題は事がはっきりしてから十分に考えるというのであって、責任をとらないとかとるとかいうようなことは、いま申す段階ではないということを申し上げておるのであります。何ぶんにも司直の手に渡っておりますので、その一応の決着を私どもは早く知りたい、その間は責任の問題は、考慮いたすというか、申し上げる段階ではないということを申し上げておるのであります。
  176. 有馬輝武

    有馬委員 私たちがここで論議をいたしております焦点は、銀行融資あり方であります。その点について当時の頭取であり、現在では中央銀行の総裁として、すべての銀行に対して模範的な立場に立たれなければならない方が、この問題に対して検察当局の結論が出るまでは何らの態度も示さない、そこに一番大きな問題があろうと思います。  私はこの際おはかりを願いたいと思うのでありますが、当時の頭取の宇佐美さんが本委員会に出てこられまして、こういう融資態度についての所見を承る機会をぜひつくっていただきたい、このように考えるわけです。
  177. 吉田重延

    吉田委員長 ただいまの有馬委員の御要求に対しましては、理事会でさらに御相談を申し上げることにいたします。
  178. 中村俊男

    ○中村参考人 ただいまの融資態度についてのお話でございますが、本事件に関しましては、融資関係先ほど申し上げましたような金額でもございまして、現在は融資関係はゼロでありますので、そのことを念のため申し上げておきます。
  179. 堀昌雄

    ○堀委員 ですから、いまのこの問題は最初に二つありまして、融資の問題が一つあります。もう一つは、軽率なる銀行の預金なり小切手の取り扱いの問題がある。しかし、融資の問題も重要でありますけれども、都市銀行が三十億円の通知預金証書を出したということは、何と言ってもこれは厳たる事実なんですね。これが日本の上位銀行から一千万円や五百万円のものが出たというならば、私どもは当委員会皆さんにお越し願うほどのことは考えておりませんけれども、先ほどからお話がありましたように、三十億円のそういう通知預金が一ぺんに出るようなことは絶無ではないけれども、まあないというようなことが、こういう安易な形で行なわれて、おまけに五ヵ月間もそれがそのまま放置をされていた。大和銀行の問題につきましては十月の三日に出て、これはものが違いますけれども、十九日に手元に返っている。こういうことで、少なくとも大和銀行はその点については告発等をするという姿勢でこの問題の取り返しをしておられます。あなたのほうは五ヵ月間もそれが放置をされていて、ようやく私どもが当委員会で取り上げてこれが明るみに出たというようなことでは、日本の都市銀行、特に上位銀行である銀行の少なくとも道義的な責任を含めて私ども非常に重大な問題である。こう考えておるわけであります。ですから、単に融資の問題ではないからというような御答弁は私はいかがであろうかという感じがいたします。ですから、私は、この問題については、本日つまびらかになっていない点もありますから、さらに後日ひとつ田實頭取が御健康を回復されましたならば、重ねて田實頭取の御出席をお願いいたしますけれども、私は、この問題は単にそういう刑事事件であるとかなんとかという以前の、日本の最も重要な公的な金融機関がそのような安易な態度で金銭に対して措置をしておられる点については、やはり当委員会としてはきわめて重大な問題である、こういう理解をいたしておりますので、そういう本質的な立場に立ってやはりものをお考えをいただきたい、こう思うわけであります。ですから、それは決して融資の問題ではないということではなく、場合によっては融資の問題以上に国民の疑惑を招く問題だ、私はこう考えますので、その点はいかがなお考えかをお答え願って、私の質問は終わります。
  180. 中村俊男

    ○中村参考人 堀先生のおっしゃることまことにごもっともでございまして、私どもといたしましてはこのような事件が起きましたことはまことに遺憾千万であり、恐縮いたしておるのでございます。  融資関係ということをちょっと申し上げましたのは、非常に融資関係を強調されたようにおっしゃいましたので、ちょっと申し上げただけでございまするが、全体として事実は私が申し上げましたとおりでございます。しかしながら、こういう詐欺のような事件は、あとから振り返っていろいろ吟味してみますと、まことに間の抜けたと申しますか、だらしのないといいますか、そういうようなことになるのでございまするけれども、事実はただいま申しましたようなことで、しかし、総じてこういうことの二度と起きませんように、私どもとしてはさっそくいろいろと対策を講じておるところでございます。先生のおっしゃることまことにごもっともでございます。その点は私どもの気持ちも十分御了承願いますようにお願いいたしとうございます。
  181. 堀昌雄

    ○堀委員 私ども銀行のいろいろな問題についてこれまで当委員会で議論してまいりました。特に現在の銀行法は、単に預金者保護の問題だけに限られて、さらに現在の公的な、社会的な責任の問題についてやや欠けるところがあるわけであります。これらについては補完をしたいということでしばしば議論をしておるのでありますから、どうかひとつ本日お越しになりました単に三行の責任者ということではなくて、これを契機として、こういうような問題題が起きることがいかにそういう社会的責任を全うしていないかという点につながるかと思いますので、十分にひとつ御戒心をいただきたいと思います。
  182. 吉田重延

    吉田委員長 関連質問を許します。小林進君。
  183. 小林進

    小林委員 私はわが党の専門家の諸君質問を聞いておりまして、私は専門家ではございませんけれども、しろうととしてどうしてもふに落ちない点がありまするので、その点を一問だけ三菱銀行の副頭取お尋ねをいたしたいと思うのであります。  それは問題の起きた十月十九日一日のあなた方のおやりになった仕事なんです。いま一回申し上げますが、午後の三時までに吹原のほうで三十億円を長原支店に払い込みますからということで、そこで預金証書を持って長原の支店長その他関係者が吹原産業の本社に行かれた。それは何時であるか知りません、午前中であるか知りませんが、森脇君はまた別室に置いて、そこで吹原といま申し上げました長原支店長と話をして、そして預金証書を手渡された。そのときに交換に三十億円の北拓の小切手をおとりになった。三時までに三十億を払い込むというものを、なぜ一体そのつなぎに三十億円の小切手をおとりになったか、その日一日の仕事でありますが、これが私の第一の疑問である。そこでまた、三時になれば払い込みがあるかないか明確になるのにかかわらず、同じその日に一たん北拓の小切手をとっておきながら、あわせていま手渡した証書は無効であるという念書を吹原からおとりになっている。これが一体その日の午前中から午後の三時に至る——三時になったら三十億払い込むからというその時間内に、こういう手の込んだ仕事が行なわれている。念書を渡した。交換に小切手をとった。こうしてとっておきながら、今度その証書は無効であるという念書をとっている。それがみんな一日の間だ。しかも数時間の間にこれほどの作業が行なわれている。事実とすれば一体こんなばかなことがあなたありますか。これは支店長や次長であろうとも——こういうような理屈をいま副頭取が言っておられるけれども、いかに国会議員のわれわれがしろうとであろうとも、しろうとをだますにしてもへたな理屈のつけ方じゃないか、あまりへた過ぎるのじゃないかと私はいわざるを得ない。この点はひとつだますにしてもいま少しじょうずなだまし方をしていただきたいということが一点。  それからこれも天下周知の事実だ。吹原の本社で念書の交換をしようとする前に、最初はその三十億円の預金と交換に証書の交換を三菱銀行本店でやろうじゃないかという計画であった。それを途中から、本店のほうから長原支店へ連絡があって、取引の場所は本店のほうは変更にして吹原の本社でやろう、こういうふうに変更されたという。これは天下周知の事実です。これが一体どうなっているのですか。これが一つ。あなたはきょうは参考人ですからわれわれ言いませんけれども、今度あらためて証人にお願いしまして、偽証非でわれわれはお訴えをしなければならない、こういうような立場にあるのでございます。きょうはその心配はありません。きょうは参考人でありますから、それは御安心していいけれども、それにしてもわれわれ良識の府へ来て、そういうわれわれの納得いかないようなことを答弁されてはいけません。  それから、私は関連質問でありまして、赤日一幸先生もお待ちのようでありますから、いま一点だけ聞いて終わります。いま一点は、その日のうちに長原支店長が念書をとって、その証書は無効であるということを確認をしているとあなたはさっき証言せられた。ところが、その事実はうそであるということは、翌年の三月二十日に森脇将光が長原支店へ行って、その二十億円の金の支払いを要求して、そのときに長原の支店長は、一体この二十億円は現金でお持ちになるのですか、どうですかという質問をしている。現金でそれを払い出しをするのであると言ったら、支店長はびっくりして本店電話をしている、それはそうでしょう。せいぜい総額五億もないような吹けば飛ぶような長原の銀行へ、一時に二十億円も払い出しに来られたら、支店長はびっくりする。もしその当日、十月の十九日にこれは無効でございますという念書を吹原から取っているということが事実であるならば、翌日の三月二十日に、二十億円の払い出しに来られてびっくりして本店電話して大騒ぎをする必要はない。全部あなたのおっしゃることは、前後話のつじつまが合わないじゃありませんか。そうあんまり人をだますようなことはいけません。私は関連ですからこれで終わりまするが、その点ひとつ明快に御答弁をいただきたいと思うのであります。
  184. 中村俊男

    ○中村参考人 先ほどお話の午後三時までに、現金ないしは小切手の振り込みをという御表現を強調されておりますが、三時までということは一応の営業時間でございまするから、そういうことに一応の時間があるわけでございますが、少しくらいおくれましても振り込みでなく手形をもって銀行保証小切手というようなものを持ってきてくれれば、これは必ずしも振り込みを三時にという点を強調したという事実はないのでございまして、後刻、そういう現金に準ずる手形を持っていくからそれまでちょっと待ってくれ、こういうふうにあれいたしております。  それからこれは本店でやるんだけれども、長原にやれといったような御趣旨の、そういう御発言はわれわれは全然承知いたしておりません。  それから最後のほうは何でございましたでしょうか。
  185. 小林進

    小林委員 三月二十日に金をおろしに行っていますけれども……。
  186. 中村俊男

    ○中村参考人 行ったときに支店長は、正直いって、これはだまし取られたものなんでお支払いできないということを申しておるというふうに報告を受けております。
  187. 小林進

    小林委員 関連ですからこれで終わりますが、いま一日のうちに三時が若干おくれても手形なり日銀の小切手なり、何でもいいが、裏づけするものがその日のうちに入るからというその前提のもとに、あなた方は預金証書をお持ちになっていったでしょう。その日のうちで解決できる問題なのに、なぜ一体つなぎの時間、時間的つなぎのために北拓の保証小切手の三十億円を取ったか、また取っておいて、なおかつその保証証書か念書を取って、これは無効である。いわゆる預金証書は無効であるという、なぜそういう手の込んだことをやらなければならなかったかということなんですよ。いいですか。午後三時が五時でもいいですよ。五時が六時でもいいですよ。その、時間的に解決する問題がある。その間に小切手を取ったり、念書を入れたり、なぜこまかい芸をしなければならなかったか。その間の理屈を私は聞いておる。そういう理屈が合わないじゃありませんかということを言っておる。これを明確に答えてください。  それから最初銀行取引する予定であったけれども、本社からの指令で、途中吹原産業の本社にきめたということと、三月二十日に支店長現金を持っていかれようとしてあわてたということは、これは私ども証拠を持っています。これは後日あなたとひとつ面会をいたしまして論議をいたしたいと思いますけれども、最初の一点だけはひとつ答えていただきたいと思います。
  188. 中村俊男

    ○中村参考人 先ほどお話しいたしましたように、後刻そういうもので引きかえるから、とりあえず預かりの意味でこの小切手を持っていてくれというのが午前のお話であったように聞いております。それから墨田の問題は、それが小切手も回せないということであれば、何としてもこの預金は無効なんだからして、その念書を取らないでも無効であることは法律的には明らかなのでございますけれども、しかし念書を取っておこう、実際問題として念書を取っておこうということで、それはおそらく夜分おそくなって取ったのではないか、これはここでは申し上げませんが、時間的にはそういうふうなことになる。支店としてはその日のうちに何時になってもそのぐらいなことはしておきたい、こういう気持ちでやったと思っております。
  189. 吉田重延

    吉田委員長 春日一幸君。
  190. 春日一幸

    ○春日委員 ただいま小林君がみずから謙虚に、しろうとだから御答弁では真相がつかめないと言われておりますが、われわれは、金融問題については本委員会ですでに十数年間継続して論じておるのでございまして、ベテラン中の大ベテランだと存じておるのでございますが、われわれをもってしてもあなた方の御答弁ではあいまいもことして捕捉するところがない。それも真相を述べられていないからではないかと思うのでございます。比較的率直に述べられた上枝さんが、問わず語りに答えられたところによると、私たちは商売人だから、担保があれば貸すんだというような意味のことも言っておられる。あなた方の職責に対する認識というものは一体どのようなものであるのか、私は疑わざるを得ない。たとえば銀行というものの業務は、法律によって預金者の安全の保護、それから信用秩序の維持、信用調整という、このような大きな公共的使命をになわれておる。単なる商売人ということがありますか。さればこそ十条においては、業務報告書を通じて監督権がある。二十一条を通じて検査権がある。監督と検査の中において国家的使命をになわれておる商売なんだ。わしらは単なる商売人だというような気持ちでやっておればこそ、本日ここにあのような系列融資、本件のような情実融資、偏向融資、昨年来論じておるような歩積み、両建て、悪事の限りを尽くしておるといっても過言でない。大体そういうような事実認識の上に立って率直に述べられたい。なおわれわれ国会は、三権分立の立場に立って、いかに検察庁において調査中であるといえども、われわれが国政調査の必要があれば、どのような問題だって、検事総長だってここに呼ぶことはできる。あなた方は事実を述べることによって国政審議に協力を願わなければならぬ、そういう意味で真相を述べてもらいたい。  まず第一番に、私は大和寺田さんに伺いたいと思うのだが、いま武藤君からも御質問がありましたけれども、なお私にわかりません。それは、この三十億の銀行小切手をどのような吹原の要請があって吹原に渡したものであるのか、この事実関係をつまびらかにいたされたいと思います。
  191. 寺田清

    寺田参考人 お答えいたします。  当時の京橋支店長は、その以前に少額のものをだまされて、すぐそれが戻るというようなことが重なっておりましたために、渡してもすぐ戻る、本来渡すべきものではないのですけれども、渡してもすぐ戻るというような、いわば錯覚におちいって、そして三十億というような巨額なものをだまされて渡したもの、私はそう確信しておるのであります。
  192. 春日一幸

    ○春日委員 私が伺っておるのは、吹原からいかなる要請があって、またどのような事情を述べられてこの東郷支店長は三十億の銀行小切手を渡したのであるか、当然銀行首脳部において、その後支店長から事情を聴取されておると思うが、その聴取されておる事情をこの際つまびらかにされたい、これを言っているのです。
  193. 寺田清

    寺田参考人 そのような誤りを犯した動機は、先ほど申し上げましたように、少額ではありますけれども、ときどき通知預金その他をくれる、そしてそのような違法措置ではありますけれども便宜をはからうと、また通知預金をくれるというような誘惑にかられてやったというのが実情だと私は信じております。
  194. 春日一幸

    ○春日委員 いま平岡君が提示してくれた資料によると、こういうことが書いてありますけれども、これは森脇君の供述になるものでありますが、「昨年十月はじめ、森脇氏はかねて吹原に貸していた金の返済分として、大和銀行京橋支店振出しの三十億円の小切手を受取った。これは支店長支店支払いで振出すもので、別名、保証小切手とよばれる。」こういうことが述べられておるのです。ですから、これはもしあなたのところに回収されなければ、他行へ回れば支払いの義務を持つものであると思うがどうか。
  195. 寺田清

    寺田参考人 その点については、大体先生のおっしゃるとおりだろうと思います。法律的にもそういう善意の第三者に渡った場合には、その保証小切手というものは支払い義務が生じるものだと思っております。
  196. 春日一幸

    ○春日委員 それでは事実関係をまず伺いたいと思いますが、それがこの大和銀行に返還された日時はいつでありますか。
  197. 寺田清

    寺田参考人 十月十九日午後だったと記憶しております。
  198. 春日一幸

    ○春日委員 午後の何時です。
  199. 寺田清

    寺田参考人 後ほど確かめて申し上げます。実は私は十月十日にその事実を知りましてから十九日までの九日間、もちろん非常に心配しておったのであります。したがいまして、その間睡眠不足にもなっておりましたし、午後の何時であったかがちょっと記憶がないのでありますけれども、よく調べて御報告申し上げます。
  200. 春日一幸

    ○春日委員 それでは三菱銀行に伺います。  長原支店がだまされて指定預金三十億円を吹原に詐取されたと称するその時点は十月十九日、間違いございませんね。
  201. 中村俊男

    ○中村参考人 間違いございません。
  202. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、これは正直に述べていただかないとわれわれの調査も進まないのでありますが、この京橋支店発行の三十億円の銀行小切手なるものは、長原支店から三十億円のこの通知預金証書を詐取された後に返済されたと見るべきである。だといたしますれば、われわれの常識的な判断ではこの銀行小切手の三十億円があるんだ、だからこれは現金化できるものである。だからこの三十億円の指定預金を、預金するんだから発行してくれ。私はこういう話がなされたものと見るべきであると思う。たとえばこの大和銀行責任においていま御答弁のように支払い義務があるところの三十億円の金を提示して、長原支店長にこれが現金である、日本銀行券もしくは現金にかわる確実なる決済手段、こういうものを提示することによって長原支店長に指定預金証書を書かしたものと見るが、調査の事実関係はどうなっておりますか。これはありのままのことを述べていただきたいと思います。
  203. 中村俊男

    ○中村参考人 長原支店長が預金証書受け渡しのときには、繰り返し申しておりますように、預かりましたものは北海道拓殖銀行築地支店の自己振り出し小切手である。それを預かりましただけで、後刻日銀小切手または銀行保証小切手を渡すからといっただけでございまして、大和銀行ということは一切出ておりません。そういうふうに報告を受けております。
  204. 春日一幸

    ○春日委員 それではその大和銀行保証小切手、こういうものを見せられたこともないのですか。たとえばその時点があまりにはっきりするじゃありませんか。十月十九日まで大和が返せ、戻せとやいのやいのと催促しても戻さない。それで十九日にこれを長原支店の指定預金証書に切りかえてその後返しておる。すなわち、この用事が終わったという形でこれを返しておる。だから私は長原支店長にあるいは次長にこれを提示しておるに相違ないと思うが、そのような事実関係はないのでございますか。
  205. 中村俊男

    ○中村参考人 そのような事実関係はないと聞いております。
  206. 春日一幸

    ○春日委員 それでは私は伺いますが、大和銀行東郷支店長、それから三菱長原支店長、これはその後の処分はどうなっており、現住所はどこでありますか。
  207. 寺田清

    寺田参考人 いま日時を申し上げますけれども、先ほど申し上げましたように、十月二日付で静岡支店長になっておりますけれども、その後こういう事件を起こしましたから、別に静岡支店長を任命いたしまして、ほんのちょっとの間、この調査のために調査役という、平役につけておりましたけれども、一応事情聴取その他も済みましたものですから、諭旨退職と申しますか退職させております。それから現在は大阪の箕面に自宅がありまして、そこにおるわけであります。
  208. 春日一幸

    ○春日委員 明確に言ってください、所番地を。
  209. 寺田清

    寺田参考人 箕面の現住所は後ほどお届けいたしたいと思います。
  210. 春日一幸

    ○春日委員 三菱銀行は。
  211. 中村俊男

    ○中村参考人 支店長本部在勤ということにして支店長を解いてしまいました。本部に引き揚げております。何ら定職をいま与えておりません。
  212. 春日一幸

    ○春日委員 住所番地は。
  213. 中村俊男

    ○中村参考人 横浜市高島台十二と聞いております。何も仕事は与えておりません。謹慎させておるわけであります。
  214. 春日一幸

    ○春日委員 委員長、お聞き取りのとおり、いま副頭取両所の御答弁によりますと、ものごとの実態がつまびらかになりません。たとえばだまされたというけれども、三十億円というばく大な金額です。しかも銀行小切手ですね。銀行小切手となれば、大和の信用をもってすればこれは現金と同じことですね。これだけのものを渡す以上、単なるだまされたと聞いておりますというような答弁で、ああそうですかと言って、われわれがそのように処理することはできないと思います。それからまた、三菱の長原支店長が三十億円の指定預金証書を発行するについて、私は少なくともその銀行支店長、しかも二十数年の経歴を持つ大銀行三菱の支店長なる者が単なるそんな小切手をもって、たとえば北拓の築地支店の自己発行の小切手、そんなものは一片の紙きれでございます。そんなものはわれわれだってわかるんだ。いわんや銀行支店長たる者がその辺の判断力に欠けるということは常識上そんなことはあり得ない。したがって、通知預金三十億円の証書発行に踏み切るまでには、当然私の推測をもってすれば、大和銀行小切手というものが一個の心理的担保になっておると思う。それについて何らかの話があって、私は三十億の通知預金証書が発行されたと思うが、いま副頭取の御答弁によりますると、そんなことは聞いておりませんと言う。われわれは、国政調査する上において、これでは真相を把握することができない。だから、後日、証人でも参考人でもけっこうでございまするから、すなわち、東郷支店長並びに長原支店長を本委員会に御喚問をいただいて、そうして真相をつまびらかにするように、これはひとつ善処願いたい。これはまたいずれ理事会におはかりでありましょうけれども、このことを要望したいと思います。  次に、私はお司いをしたいのでありますが、当然融資については資産表でございますとか貸借対照表というものがあろうと思います。したがって、本日六億の貸し出しをされております三和銀行においても、二十億の貸し出しを行なっておる大和銀行においても、この吹原産業が、関連産業を通じてどのような貸借関係になっておるか、資産内容はつまびらかになっておると思うのでございます。したがって、この際お司いをいたしたいことは、まず吹原関係吹原産業はもとより、その関係企業が金融機関から借り受けております借り受け残高、それから金融機関以外の森脇将光君など、要するに金融業者から借りているものもあるでございましょう。あるいはその他の企業体から融資を受けておるものもあるかもしれませんが、これはどういうぐあいになっておりますか。いま負債総額はどういう状態に相なっておりますか。当然二十億、六億というような膨大な貸し出しをなされている以上、そのような対象企業の資産内容はつまびらかにされておるだろうが、これをこの際述べてください。
  215. 上枝一雄

    ○上枝参考人 昭和三十年九月三十日のバランスでございまするが、いま御質問の負債勘定でございまするが、支払い手形が十二億六千万、短期借り入れ金が二億一千二百万、これは以下ちょっと省略さしていただきます。それから社長借り入れ金が二十八億九百万、未払い金が七百万、未払い費用百万、前受け金千九百万、預かり金千八百万というような数字になっております。それから固定負債のほうでは、預かり保証金が五億六千五百万、長期借り入れ金が二十六億ということになっております。この内訳がちょっと不明でございまするが、わかりましたら、後ほど御報告をいたさしていただきます。
  216. 寺田清

    寺田参考人 昭和三十九年九月末の借り入れ金の合計は二十六億となっております。いまになって思いますれば、借り入れ金が非常に隠されていると言わざるを得ないと思います。
  217. 春日一幸

    ○春日委員 隠されていると思わざるを得ないという御判断のもとになるもの——当然あなたのほうは二十億の回収をはからなければならぬから、対象企業の資産内容については、その後調査をされていると思うが、隠されているとおぼしきものはどのくらいございますか。
  218. 寺田清

    寺田参考人 これは、いまのところでは、こういうところでは、はっきりした資料がなければ、申し上げかねますから、わからないと申し上げる以外にないと思います。
  219. 春日一幸

    ○春日委員 隠されていると思うと言った以上、言わなければだめじゃないか。三十億隠されているとか二十億隠されているとか、思う基礎があるだろう。
  220. 寺田清

    寺田参考人 お答えいたしますけれども、融資をいたしました当時は、昭和三十八年でございまして、先ほど申し上げましたような社会的な要請もあり、なおまたこの一年あるいは一年半は金融の引き締めの時期にはなくて、むしろ金融緩和の状態にあったわけでありますから、くれぐれも……。
  221. 春日一幸

    ○春日委員 それでは伺います。ちょっと問題を変えまして、五反田のポーリング場の開場式のときに、三和銀行からはどなたが行かれましたか。それから大和銀行からはどなた、三菱銀行からはどなたが行かれたか。氏名を伺います。
  222. 寺田清

    寺田参考人 五反田の開場のときには、役員は全然行っておりません。はっきりしませんけれども、あるいは一、二の支店長が行ったかもしれないと思っております。いずれ調べましてから……。
  223. 上枝一雄

    ○上枝参考人 出席したのは、私のほうの猪原専務と森本貸付課長でございます。  それから、先ほどの二十六億の内訳は、私のほうが六億、大和銀行さんが二十億だそうでございます。
  224. 春日一幸

    ○春日委員 私は実に許しがたき事柄であると思うのであります。というのは、あなた方は社会的要請があって、二十億融資した、六億融資したと言っておられる。社会的要請は、言うなれば、その冷蔵庫の建設のことにあるといわれておる。少なくとも建設資金というものは、前金で建設会社に渡すものではない。建設の竣工の度合いに従って逐次これが支払われていくものである。ところが冷蔵庫をつくるといって、あなたのほうに融資申請を行ない、かりにあなた方が、そのような社会的要請を妥当なりとみなして、融資の決定を行なったとしても、その途中において、これが冷蔵庫ではなくして、ボーリング場になっていくということがわかったならば、これは資金使途が申請の条件と違うではないかということで、当然何らかの交渉があってしかるべきであると思う。のみならず、竣工したら、もはやボーリング場であるから、したがってこれは冷蔵庫ではないということが歴然たる事実であるとすれば、あなたのほうとしては資金の返還を求めるべきであって、そのようなところにしかも支店長がお祝いに行くということはどういうことか。でたらめではないか。明らかにボーリング場であるということがわかっていて、融資したのではないか。(「中小企業には貸さないで」と呼ぶ者あり)いま加藤君から述べられているように、中小企業が破産、倒産、関連倒産が相次いで、四苦八苦の企業の困難な状態の中で、特に金融梗塞が相次いでいるこのようなときに、ここに二十億だ、六億だというような金を貸して、しかもぬけぬけとこれが社会的な要請に基づいてこれに応諾したものであると述べられておる。少なくともボーリング場になるのか、あるいはまたこれが冷蔵庫になるのか、建設の過程において逐次外部的にあらわれてくる。あらわれてきたときに、これは申請項目と違うのだからといって、中小企業金融公庫だって、その他政府関係政策金融機関は、みんな資金使途が違っておったなら、資金の回収を強行しているのですよ。あなたたちの金だって、みんな日本銀行から借りた国家の金じゃないか。そういうようなものが社会的要請と、申請と違ったように使われておるということがわかったら、回収を要求すべきじゃないか。少なくとも、できてしまったところに専務をお祝いに出すとは何事か、答弁しなさい。
  225. 上枝一雄

    ○上枝参考人 先ほど堀先生にお答えしたときに申し上げましたように、このボーリング問題というのは、実は当初は計画には聞いていなかったようでございまするが、先ほども申し上げましたように、なかなか冷蔵庫だけでは採算に合わないのでございます。そしてそのために融資の交渉が、昨年の初頭から二月の貸し出しに至るまで続いておったというように聞いております。したがいまして、なかなかそういうように採算が合わぬということで、交渉が行き詰まりますると、考えてきたのが、おそらくボーリングの問題でなかったかと思うのです。したがいまして、第二回目に出したときには、ボーリングの案が入った計画になっておったと思うのです。先般、先ほども申し上げまするように、このボーリングに貸したということのよしあしは、むろんこれはもう先生から御指摘があるまでもなく、われわれといたしましたならば、こういう金融環境でございまするから、御辞退申すのが当然でございましょう。しかしすでにもう三億というのが先に出ておるから、また採算というものから見ましたならば、どうやらこれの計算をいたしますると採算に合うというようなことから、これは全くうかつにやったことと思いまするので、この点は私は非常に遺憾に思っております。
  226. 春日一幸

    ○春日委員 大和銀行はどういうわけで支店長がお祝いに行ったんだ。
  227. 寺田清

    寺田参考人 その間のあれはこういう事情だと信じております。いやしくも貸し出し先のことでありますし、いかになっておるかを見る必要もあるために、祝いというのじゃなしに、見る必要のために……。
  228. 春日一幸

    ○春日委員 私はここは国権の最高の機関である主権者国民にかわって真相をつまびらかにすることのために、国政調査が行なわれておる。お祝いの日に祝辞を述べに行って、見るために行ったとは何事か。見るために行くんだったら、しょっちゅう行けるじゃないか。
  229. 寺田清

    寺田参考人 祝辞を述べたことは全然ないように思います。
  230. 春日一幸

    ○春日委員 そんなときに、開場式のときに、そこに支店長何がしが行けば、それは大和銀行を代表してお祝いに、これは祝意を表するためにそこに参列したと見るべきじゃないか。ボーリング場であるのか、冷蔵庫であるのか、招かれた日に見に行っただなんて、そんなばかなことが通りますか。国権の最高機関である国会を侮辱するものはなはだしい御答弁である。君たち頭取だ副頭取だといって大きな顔をしているけれども、君らは預金者の金を預かって、足らざるところは日本銀行から借りた金で銀行法という法律に基づいて国民の信託によって銀行業を行なっておる。そういう公共的使命を痛感するならば、そんなばかな答弁が許されますか。頭取だって副頭取だってそうじゃないか。貸した金は、これはすなわち国家的政策の要請に基づいて、冷蔵庫建設資金という申請であったからこたえたと述べられた。その後に建設の過程において変化があったならば、当然融資をとめるとか回収をはかる、そのような措置があってしかるべきである。いわんやでき上がったときにボーリング場銀行の代表者を出して、おめでとう、祝いの意を表するなんということが許されますか。みんなぐるになっちゃっているんじゃないか。その結果から判断すれば、ボーリング場だということはわかっておるけれども、形式上は冷蔵庫にしましょうや、うん、よろしいよろしい、これじゃないですか。このような情実融資、偏向融資、君たちが貸したければ貸したいところにどこへでも貸せるのだという銀行無政府状態、こんな状態が許されてはならぬからこそ、われわれはこの問題についてかくのごとく論じておる。何らの反省の実はないじゃないか。きみらは社会的な責任を何も感じていないじゃないか。日ごろ頭取だとか副頭取だとかいばって産業に君臨しておる。君たちは産業に奉仕すべきじゃないか。それなのにいろいろなところに役員を送り込んで系列化する。産業の上に君臨して、そうしてこのようなでたらめな融資を行なっておる。許されはならぬことじゃないか。上枝さん、代表して銀行家としての反省を述べられたい。
  231. 上枝一雄

    ○上枝参考人 春日先生非常に金融関係につきましては詳しいお方でございますし、私からこれについていろいろ申し述べることは差し控えたいと思いますが、いろいろな事情がありまして、現在のこういう情勢になっておるということも、私ども何もエクスキューズを申し上げるわけではございませんが、とにかくこれは日本国民の全体の問題と同時に、その上に立っておる金融機関責任である、と私は日ごろ痛感いたしております。ただ力が足らずにこういうことがときどき起こるということに対しましては、私はほんとうに心からおわびをしなくちゃいけないと思います。
  232. 春日一幸

    ○春日委員 時間が経過したようでございます。質問はなお尽きないのでありまするが、ただ私は申し上げておきたいことは、歩積み、両建ての問題だって、ここで深く論じられた。金を値りたい人から金をせしめ取って、安い日歩でそれを預かって、高い日歩でこれを貸し出される。残忍酷薄の所業であるといってよい。これを禁止しなければならぬというので結論に達して、あなた方はことしの六月までにこれをなくするようなさまざまなことがここで論じられなければ問題の処理ができないという、そのようなあなた方の責任感。いまあなたが問わず語りに、わしらは商売人だというようなことを言っておられたが、実際の話が商売人じゃない。銀行法に基づいて公的使命、企業の大いなる社会的国家的経済的機能を果たさなければならない重責をになわれておる、そういうことを痛感されるならば、これを契機にして、とにかく銀行法を直すなり何らかの形で、現在のあなた方の金融天皇、天をも人をもおそれざる所業、これを改めなければならぬ。みずから進んで銀行法改正のために努力されんことを強く望みまして、私の質問を終わります。
  233. 吉田重延

    吉田委員長 参考人に対する質疑はこれにて終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ長時間にわたり御出席いただき、ありがとうございました。  午後二時五十分より委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時四十九分休憩      ————◇—————    午後三時十三分開議
  234. 吉田重延

    吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  専売事業に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  235. 堀昌雄

    ○堀委員 春ともなりますと、全体の気候は非常によくて、四季のうちで草木いずれも伸び伸びとする時期でありますが、どうも国会と、それからもう一つは労働者の賃上げが春は非常に問題になるわけであります。御承知のように本日は私鉄のストライキがありました。これは私鉄の諸君も何もストライキがしたくてしているわけではありませんけれども、いかようにも物価の上昇その他の状態の中で、経営者側の賃金の値上げに対する回答が不十分な状態であるというので、もうやむを得ずしてこのような措置がとられておるということは、われわれ十分考えてみる必要がある問題ではないかと思うのであります。特にいま私ども当委員会関係をいたしておりますところの専売公社、いわゆる労働組合の側で言いますと公労協の関係の部分につきましては、ここのところ毎年実は問題が非常に多いわけであります。昨年は御承知のように、大きなストライキに発展をするという直前に、池田総理と太田総評議長との話し合いによりまして、ともかく六項目の確認ということで一応はおさまったわけでありますけれども、依然としてこの問題は本質的には解決をされていないというのが現在の状態だと思うのであります。そこでまず専売公社側に、今次の賃上げに際して専売公社が今日までとってこられた態度といいますか、回答等を含めてひとつお答えをいただきたいと思います。
  236. 阪田泰二

    ○阪田説明員 専売公社の労働組合から公社に対します要求といいますか、これは多数項目にわたっておりまして、現在も交渉しておるわけでありますが、お尋ねの御趣旨はおそらくベースアップの要求に関することだと思います。これにつきましては、昨年末に要求書の提出がございました。その後、公社、組合の間でもって非常に何回にもわたりまして交渉を持ちました結果、結局話がつきませんので、三月一日でございましたか、調停委員会のほうに調停をお願いする、こういうことになって調停に現在もかかっているわけでございます。なおその間公社といたしましては、二度にわたりまして公社側の提案をいたしました。最初に提案いたしましたのは、大体におきまして初任給を千円引き上げる。これを含みまして、それに準じて初任給以外の給与も引き上げる。平均いたしましてどの程度になりますか、これは引き上げ方にもよるわけでありますが、大体四百円から五百円の間くらいになるような案の提示をいたしてございます。それでその後これはごく最近でありますが、昨日さらに第二次の提案といたしまして出しましたのが、全体として現行ベースの六・五%引き上げ、ただしこれは先ほど申し上げました第一次の提案いたしましたもの、それから定期昇給によるベースの上がる分、その両方を含めまして現行ベースの六・五%だけ上がる、そういったような形の給与改善をする、こういった提案をいたしてございます。そういう状況で、現在は調停委員会の調停をお願いしてその結果を待っておる、こういう状態になっておるわけでございます。
  237. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと私お話がよくわからない点がありますのは、最初に回答を二回お出しになって、最初のは平均すると四百円ないし五百円、初任給は千円上げるということでございますね。今度のは六・五%になって、この中には、定期昇給と、いまの四百円ないし五百円の分と、あとその他があるように思うのですが、三つになるのでしょうか。今度の六・五%引き上げという中には、四百円ないし五百円という第一回の回答の上に積み上げたものがあるのだろうと思うのです。それでなければ回答になりませんからね。そこのところをよくわかる方からつまびらかにお答えいただきたいと思います。
  238. 阪田泰二

    ○阪田説明員 御指摘のように、分けて考えれば三つになると思います。当初四百円ないし五百円程度の提案いたしましたものがすでにあるわけでありますが、今度の提案は定期昇給というものを含んでおりますので、それがもう一つございます。それと現行ベースの六・五%引き上げ、こういう総額と先ほど申しました二つとの差額というものがもう一つあるわけであります。それがおそらく今回の新提案によりまして新たにふえる分、こういうことになると思います。
  239. 堀昌雄

    ○堀委員 一体今度の新規提案のほんとうの中身、いまの最後の差し引きをした中身というのは、一体幾らなんですか。それは率でもけっこうですし、金額でもけっこうです。
  240. 阪田泰二

    ○阪田説明員 最初に提案いたしましたときの、私どものほうの提案のしかたが必ずしもきちんとしたベースアップが出るという形の提案ではございませんでしたので、切りかえのしかたによって四百円ないし五百円くらいのアップになる、こういう提案のしかたでございました。そういうことでありますので、かりに今回のふえます分を計算いたします場合に、最初の提案をたとえば四百五十円というようなことにして考えますと、大体百七十円くらいという計算になると思います。
  241. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのお話で結局専売公社の場合には、そういたしますと六・五%というのは、金額としてはいま平均でお話が出ておりますから四百五十円、それからさっきの百七十円出ておりますね。ですから六・五%というのは幾らになって、定期昇給というのは幾らになるのか、金額でちょっと伺いたいのです。
  242. 阪田泰二

    ○阪田説明員 現在の基準内給与、これの見方がことしの一月一日現在で計算してみますと、三万八十六円という、大体こういう数字になっておるわけですが、これの六・五%でございますから千九百五十六円、専売の場合はこういう金額に一応なるわけでございます。こまかく計算すると、いろいろ違ってくるかと思いますけれども、大体こういう額です。大体ざっと二千円という額でございますが、そのうち最初の提案の分をかりに四百五十円といたしますと、そのほかに定期昇給分が千三百三十五円ございます。それを差し引きまして大体百七十円くらいが今度の提案分になる、こういうことになっております。
  243. 堀昌雄

    ○堀委員 そういたしますと、いまのお話で少しわかってきましたけれども、六・五%の賃上げを認めたということになっておりますけれども、千三百三十五円というのは何もしなくても上がるんですね。本来定期昇給というのは当然上がるものなんでしょう。だから、定期昇給というものを引いて残りは、結果としては六百二十円、今度はひとつ賃金を上げましょうという回答をしたのにひとしい、こういうことに理解してよろしいわけですか。
  244. 阪田泰二

    ○阪田説明員 定期昇給は何もしなくても上がるという御趣旨の御意見ですが、それはいずれにしましてもベースとしては上がってくるわけでございます。民間等で給与改善をいたします場合にも、見方はいろいろございますが、定期昇給等によって上がっていく分も含めて考えております場合、あるいはそれを除外してベースアップだけで見ます場合、あるいは定期昇給によるアップというものがないといったような企業もございます。そういったいろいろの見方があるわけでございますが、今回は全体を含めて六・五%という見方をした、こういうことでございます。したがいまして、御趣旨のようなことで定期昇給を差し引きますれば、残りの分がそういう意味のベースアップになる、これは当然そういうことになるわけでございます。
  245. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、いまお聞きのようなことです。そこで、私はこの問題は非常に政治的な問題でありますから大臣にお伺いをしたいのです。  いま大体三万円の給与のある人の前提でいまの話が出ておるわけですね。三万円の給与のある人でいまの千三百三十五円というのは、これは日本の一種の年功加算賃金体系といいますか、これはお役人であろうと一般の会社の方であろうと、長くつとめておればそれだけ給与がふえるという日本全体の賃金体系があるわけですね。ですから、つとめておればだんだんと公務員でも号俸が上がる、こういうことになる分が一つありますね。この問題は、言うなれば制度全体として本来あるものですから、物価が上がろうが下がろうが、大体この定期昇給というものは周囲の経済的諸条件と比較的関係のない状態の一つの制度になっておるわけです。そうすると、これを逆算をしていただきたいのですが、この六百二十円というのは三万八十六円に対して何%の実質的なベースアップになっておるのかということです。これを先に事務当局から、そのほうがはっきりしますからお答えいただきたいのです。
  246. 阪田泰二

    ○阪田説明員 約二%弱になっております。
  247. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、経済的な現在の日本の諸条件に見合って、今度公労協の皆さん、私は専売公社を象徴的に中心として伺っておるわけですが、その人たちに認められたベースアップは二%弱である、こういうことになりますね。大臣、どうでしょうか。
  248. 田中角榮

    ○田中国務大臣 定昇を含めて二千円弱上げた、こういうことになります。
  249. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、私はちゃんと区切って伺ったのですよ。大臣は非常に頭脳聡明で、私はかねがね敬意を表しておるのですが、いまの御答弁は知っていて知らぬふりをしたという感じになるので、田中さんらしくないとちょっと思うので、もう一ぺんくどいようですが申します。三万円の人が千九百五十六円上がった中には千三百三十五円という定期昇給というものがあります。定期昇給というのは物価が上がろうと下がろうと、いまの日本の給与体系の中ではおおむね上がるような制度の問題として片方にあるわけですね。ですからそういう問題を除いて、要するに経済的諸条件の変動に伴なって動いた給与の動き方というのは二%弱ですね、こう言ったわけです。私の言った意味がおわかりでしょうか。
  250. 田中角榮

    ○田中国務大臣 二%弱ですね、こう言われなくとも、数字は出ておるわけでありますから、何でお聞きになるのか。六・五%のうち四・五五はこの間御審議をいただいた予算の中に組んである定昇分であります。合わせて六・五でありますから、六・五から四・五五を引けば二%弱、こういうことになるわけです。
  251. 堀昌雄

    ○堀委員 私が伺ったのはその二%、引き算ですから出るのですが、経済的諸条件の変動に見合って動いた部分は二%ですね、こう言ったわけです。定期昇給というのは、要するに賃上げ要求があってもなくても、おおむね現在のルールでは上がる部分なんですよ。そうでしょう。だからいろいろな問題がなくとも、ほっておいても上がるのですよ、四・五%というのは。なぜ公共企業体の皆さんが賃金を上げてくれと言っておるかというと、御承知のようにネギが一本五十円もしたり、玉ネギが一個三十円もして、ふろ代もいよいよ今度三十二円になろうとしておるときに、三万円の給料では食えないから何とかしてくれということです。政府の統計によりますと、現在私ちょっと今月のは記憶がありませんが、消費者物価は四・二%くらい上がっておるのですよ。そうすると、その四・二%の上がりに見合って上がっておる分は二%しかない。物価の半分しか追いつけていかない。これはおかしいじゃないか、こういう議論を私はしておるのです。どうでしょうか。
  252. 田中角榮

    ○田中国務大臣 堀さんのような考え方、そういう理論づけをする人もおります。しかし、普通の考え方からいきますと、定昇四・五五きめるときも、今度の追加の分をきめてあとは労使できめるわけでありますから、賃金収入そのものがふえておるということで計算をしていくというのがわれわれの考え方であります。また昨年の仲裁裁定におきましても、定昇を含めて幾らという裁定が出ておりますから、そういうわれわれの考えと同じような考え方もあるわけです。あなたは、定昇分というのはいつでも上がるのだから、それは引いて、定昇の上にプラスされる分だけが経済に見合うものだ、こういうふうな見方でございますが、理論づけをすればそういうつけ方もあると思いますけれども、われわれは定昇という四・五五をきめるものも物価上昇等を考えながら労使の間できめるのでありますから、やはり含めて収入が上がるということで考えるべきだと思います。
  253. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、ちょっと私あまりこの問題つまびらかでありませんからお伺いをしたいのですが、この四・五五というものがきまる土台はどういうルールによるのでしょうか。公務員になって、五年たっても十年たっても初任給と同じ給料というのは、これはおかしいわけで、やはり熟練をしてくれば上がるのは普通です。一番おかしいのは国会議員のわれわれみたいなもので、何年やっておっても給料同じというのもあります。ありますけれども、しかしこれは例外であって、普通は専売公社におつとめの皆さんもおそらく何年かたてばだんだん給料が上がるというのが日本の仕組みですからね。ですから、いま大臣は、経済の状態をにらんだとおっしゃったので、いまちょっと政府側のあなた方の見解に立って、それじゃこの四・五五の中で本来そういう制度として上がる分と物価をにらんだ分というのは何%と何%になるのか。これは非常に技術的なことですから、大臣が無理なら主計局でけっこうです。
  254. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 定昇を賃金引き上げに入れる入れないは非常に議論のあるところであります。確かに熟練度の向上ということで差し引くべきであるという議論もございます。この点につきましてはやはり賃金全体の収入といたしましては上がるわけでございまして、この前例といたしましては昨年の仲裁裁定がございます。昨年の公労委の仲裁裁定といたしましては、春闘相場を見まして、そのうち公労委としては公共企業体の定期昇給は一体幾らぐらいあるだろうかということを想定いたしまして、定期昇給を引けば大体このぐらいの引き上げでいいだろうというような仲裁裁定が出た、それが昨年でございます。そういう直近の前年の例もございまして、しかも仲裁裁定で出されたものでございますから、そういう仲裁裁定の御意見につきましては政府は当然踏襲して考えた、そういうことでございます。
  255. 堀昌雄

    ○堀委員 私の質問お答えになっていないのですよ。仲裁裁定がどうかということは別として、いま四・五五というのは定時昇給だというふうにお答えになったのですね。しかし定時昇給といえども経済の諸情勢をにらんでやるのだという大臣からの御答弁があったわけです。これをいま少し分析していきますと、日本には年功加算賃金という一つの制度があるのだから、要するに物価がもし下がったとしても公務員の給料はすぐ下がらないと思うのですよ。給与は、五年いる者が六年になり七年になれば物価がひとつも上がらなくても本来上がるものであるはずですね。だから、そういうふうに物価がかりに固定をしたとして、この定時昇給の中では一体幾ら上がって——そういう経済条件の変動に伴ってそれじゃあなた方は定時昇給の中に一体幾ら見ているのか、それを聞いているわけですからね。大臣、私の言っていることがおわかりですか。
  256. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私は率直に感じたところを申し上げますと、少し意地悪く質問すると、そういう質問が出てこようと思います。いまの給与体系はノーマルな状態ではないわけであります。ですから、この給与体系に対して民間の給与との間を見てバランスをとれということがいまの賃金をきめるもとになっておるわけです。ですから、労使がいつも春闘に対してはこうしてやるわけでありますから、政府が予算を組むときに、また政府関係機関が予算を組むときには民間の上がり方というものを十分考えて来年度はその企業の収入の状態、伸びというような実績も見ましてきめるわけであります。これは公務員のように一律、法律に基づいて全部きめるという給与体系になっておらぬわけであります。御承知のように労使が話し合いをしてきめるということになっておるわけであります。だから現在交渉もし、公労委にも審査をお願いしておる、こういうことですから、政府が当初組むということになれば、来年度、その企業の前年度における実績というものを十分考えて、そして民間との間は大体この程度になるだろう、こういう考え方で四・五五というものを定昇に組んであるわけであります。ですから定昇は四・五五ということで、法律をもってもういつでも四・五五、こういう考えではないわけでありますから、そういう過去の実例、また現在の三公社五現業の給与体系、給与のきめ方、こういうものを考えていただければ、政府が四・五五をきめたとき、各企業体で、平均でありますから、中に高いものもあるし低いものもある、こういうことで、平均して四・五五になる、平均して四・五五の中に幾ら物価差を見たのか、こういうことを言われると、これは積算のしかたが非常にむずかしいし、そんなにこまかく積算をしてやったわけではないわけです。これはこういう物価差というよりも、その企業体の経営の実態、そういうものから幾ら給与に払えるか、そしてまた成績がよければ特別な給与を出すことができるような制度になっておるわけですから、いまの四・五五の中に一律に幾らあるのか、こういう御質問をいただいてもこれは答えられないわけです。答えられないものに対しての御質問ですからあまり——こう申し上げたわけであります。
  257. 吉田重延

    吉田委員長 関連質問を許します。有馬輝武君。
  258. 有馬輝武

    有馬委員 大臣にお伺いしたいと思うのですが、いま堀委員質問に答えて現在の賃金体系のあり方に問題がある、このことは大臣もお認めになったわけです。その問題のある賃金体系を基礎にして毎年予算の際には考慮される、ぼくはその考慮のしかたに問題があるのじゃないかと思う。ここでお伺いしたいと思いますが、これは政府の政策の中でも物価問題に取り組む際にきわめてイージー、たやすいところからというようなことで、私鉄等についてはわりと筋を通す。私鉄の経営者側に言わせると非常に苦しいということを言う。値上げもできないと言う。その苦しい私鉄が昼一〇%出した。公労協は公労協だ、民間は民間だというお考えなのかどうか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  259. 田中角榮

    ○田中国務大臣 民間は民間、公労協は公労協というような情のない考え方をしておりません。これは当然民間の給与ベースというものを見ながら、それとあまり差があってはならないということでわれわれも考えておるわけでございます。しかし民間といっても全部の民間の平均に確実にスライドするというような制度になっておりませんから、労使の間で——過去国鉄が非常にいいときには国鉄は別に賞与ももらえたわけでありますが、国家公務員は予算で縛られますし、画一一律的に近い給与体系でありますけれども、三公社五現業は企業性を持っておるということで、各業態別に給与体系はみな違うわけであります。違うだけに、その企業の経理内容、業績の状態、こういうものも十分勘案しながら、しかもできるだけ民間ベースに近寄せるように、こういう配慮があることは当然だと思います。
  260. 有馬輝武

    有馬委員 ここではっきりさせておきたいと存じますことは、とにかく昨年の太田・池田会談で確認されたように当事者能力を認める、このことと、いま一つは各企業体の実績によって民間給与に最大限近づける、そのことを大蔵大臣は縛る考えはない、この二点よろしいですか。
  261. 田中角榮

    ○田中国務大臣 当事者能力につきましては、現在公務員制度調査会で検討しようということになっておりますから、ここで公務員及び三公社五現業等の一切のものに対しては検討していただく、その結論を待ちたい、こういう考え方でございます。  それから第二は、縛る考えはないか。縛る考えはありません。ありませんが、しかし国会の審議権というものがあるのです、これは政府関係機関でございますから。国会の審議権との調和をどうするか、こういう問題がございます。それから国の機関でありますから公務員との関連、こういうものが、ございまして、公共企業体がみな赤字になって、一般会計、国民の税金でもって補てんするというわけにもまいりませんから、そういうところ、大蔵大臣が縛るというのではなくて、御相談にあずかる分野はどの程度かというようなものも、みなこれを機会にひとつ検討したい。私も、去年はどうも理屈の上では、いま当事者能力があると大いに言っていてもないじゃないか、こういうことに対してはどこかはっきりしなければいかぬ。お互いに理屈の上で割り切れない感情で、その場押しつけの理屈で通しておるというような考えではいかぬので、この問題に対しては労使双方ともひとつ前向きで検討すべきだ、こういう発言をして、それがきっかけになって今日検討しておるわけでありますから、毎年毎年同じように三月が来れば桜も見れない、こういうことではよろしくない、こう私は考えております。しかも三月三十一日に予算を通していただいて、そして四月から予算を修正するような問題があるわけです。予算の組み方というものはもっと検討しなければならぬのか、そういう広範囲の問題をもっと積極的に検討すべきだ、こういう考え方であります。
  262. 有馬輝武

    有馬委員 だから私が言っておるのです。大臣の言われるように、これは国会の審議、非常に大事です。その大事な審議——これはあげ足をとるわけじゃないのですけれども、今は与党より野党委員出席が多いような状態で、大臣にすっかりまかせたようなかっこうなんで、ここで論議されることが、少なくともいま堀君なり私から言っておることが筋が通っておれば、その線でもって進めていってもよろしいというぐあいに私は確認したいのです。よろしいですね。とにかく、いま見れば与党委員より野党委員の方が多いんです。すっかりまかせてあるということなんです。だからさっきから繰り返していますように、民間給与に近づける、しかも一番苦しい私鉄が一〇%を出したのですから、常識的にそれに近づけていくということが筋だろうと思いますが、私の言っておることが誤りかどうか、お聞かせいただきたい。
  263. 田中角榮

    ○田中国務大臣 専売公社法の第二十一条には、「公社の職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない。」「公社の職員の給与は、生計費並びに国家公務員及び民間事業の従業者の給与その他の事情を考慮して定めなければならない。」私が先ほどからるる申し上げておることと大体同じであります。
  264. 有馬輝武

    有馬委員 そのとおりやってもらいたい。
  265. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、大臣いまお読みになったように、法律になっているのですけれども、中身がなっているかどうかということです。私は専売公社の職員の皆さんのことはちょっとまだつまびらかにしませんが、たまたまことしの春に、私は電電公社の家族の皆さんを、現在総裁になった電電公社の米澤さんですか、副総裁のところへ御案内したのです。そうしてその家族のお話をずっと聞いていまして、実は涙が流れてしかたがなかったのです。ほんとうに切実な訴えなんですね。私は兵庫県ですが、兵庫県の但馬のほうの一職員で、電電公社の職員として二十年ぐらいおつとめになっておるらしいのです。その人が、おとうさんとおかあさんがもう七十歳をこえていて、何とか楽をしてもらいたいと思うけれども、私たちの家計では、老人夫婦がどうしてもまだ働かなければ家計が保てません。そうして子供があるけれども、私も働かないと家計が保てないので、子供を預けて私も働いております。しかしうちの主人は電電公社の職員として、誇りを持って働いております。風が吹いたり雪が降れば、必ずそういう危険な状態でも飛んで行って、線路の状態を調べに行く、誇りを持って働いておる。電電公社の職員の家族が、どうしてこんなにひどい目にあわなければならないのかということを切々として訴えられておりました。私も涙が出てしかたがなかったが、同僚の森君という代議士を一緒に連れて行きましたが、彼はハンカチを持っていないので、一生懸命手で目をこすっておりましたけれども、私はそのいろいろな話を聞きながら、実はほんとうにこの公共企業体の職員の中には、その企業のために非常に真剣に働いておるにもかかわらず、そのいまの生計に見合う給与が与えられない人が実はあまりに多過ぎると思うのです。さらにそのときに私は非常に意外に思ったのは、電電公社の職員の側から、しかしどこか東北のほうの共済の状態を見ておると、テレビや冷蔵庫も売れていますよという、まるで見当違いの発言がされておるのです。そうしたらおかあさんたちが何と答えたか、主人の給料でテレビや冷蔵庫が買えますか、みんな私たちが内職をして、何とかしてそうやって買っておるので、主人の給料で買えると思いますか、まさに私はそのとおりだと思うのです。実に日本の公共企業体の職員というものが、相当によく勤勉にその企業体のために努力をしておりながら、いまの法律の定めたようなその仕事に見合い、生計に見合った給与が与えられていないということは、これは非常に大きな問題点だと思うのです。これは私どもの地方でずっと見ておりますと、いろいろな企業の状態から比べて、企業体の者はいま賃金が非常に低いです。勤続年数その他を比べてみますと、もう明らかに低いのです。これは大臣も一ぺんそういう家族の皆さんにお会いになって、その人たちがほんとうに日常どんなに苦労をして、苦しみながら、しかしその企業体の誇りを守ろうとしておるけなげな気持ちをお考えおきを願わなければいかぬのではないかと思うのです。この人たちの発言の中で、家計簿の欄に赤字の欄がないという話を聞きました。私もこれは初耳であります。なるほど日本の家計簿には赤字をつける欄がないのです。しかし主人の給料でやっていたらどうしても赤字、子供を学校にやり、ともかく現在のことですから、そうぼろをまとわせて学校にやるわけにはいかないというのです。やはりそれなりの被服を与え、それなりに健康を維持するためのものを与え、そうして教育をしていこうということになれば、まことにいまの公共企業体の職員の生活というものはきびしいものがあるわけです。だから赤字の欄がないために、家計簿をつけるのにどうしようかと迷うというこのおかあさん方の声というものも、いまの日本の多数の庶民の声を正しく反映をしておると私は思うのです。だから私はひとつ大臣に——なるほど法律は正しい指摘をしておりますけれども、それらの生活の実態との触れ合いの中で、はたしてどこまでその法律がその人たちの立場に立っておるかという点については、きわめて不十分であると私は思う。さっき私が申し上げたように子供がいない家族から、子供が小学校へ行き、中学校へ行き、高等学校へ行き、大学へ行くとするならば、これは当然その人たちの家計費がふえなければ大学にも行けないわけですね。日本が現在の生産力を世界に比して非常に充実をしてきたのは一体何か。日本の教育水準が高いからではないですか。その教育水準をささえておるのは何か。これらの家庭の父兄が、母親が内職をしながら子供を学校にやっておるから、日本の生産力は諸外国に比ベて著しい生産の発展をしているのではないか。その土台は、これらの母親の犠牲の上に成り立っておるというようなことで、はたして公社の当局も政府としても、そのような安易なことで日本の発展が考えられるかどうか、非常に私は重大な問題だと思うのです。だからそれらの点について、それは教育費は公費で全部負担してくれるというのならまた私は何をか言わんやでありますけれども、現在の日本の教育は、あげて父兄の負担を要求しておるという現状でありますから、そういう段階に立って考えるならば、これらの家族が子供たちを教育をしておるのは、単に自分の子供であるからということではなくて、日本における国家全体にやはり奉仕をしておるということになっておるわけでありますから、それに見合う国家的責任というもの、公共企業体としてこれらの従業員がいま生産をあずかっておるがゆえに日本の現存の生産水準が維持されるという点を顧みるならば、私はもっとこれらの働く人の立場に立った給与の問題というものが真剣に考えられていいのではないかと思うのでありますが、大臣の見解をひとつ承りたい。
  266. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私も給与というものが必ずしも高いというようには考えておりません。考えておりませんが、私も若いとき三十五円の月給をもらったときがあります。五十五円の月給、八十五円の月給、また百円になったときの生活、短い間でありましたがそういう経験があります。そういう時代から考えてみて、百円といえば四百九十五倍くらいでありますから、五百倍にして五万円、当時工業高校を出て初任給八十円くらいであります。八十円ということは五、八の四万円であります。だからそういうものと比べてみて必ずしも高いとは私は考えておりません。もっと給与の内容は充実しなければならない、こう考えております。考えておりますが、国の予算とか事業の状態とかこういうのを見ますと、予算の中でも給与で出るものが非常に大きい。特に地方公共団体などになりますと、わずかなものでまあ私自身も理想的なものだと思わないベースアップを平年度化すると、今年度の地方財政の中で千八百億という非常に大きな支出になるわけであります。人間が多くなったのか、働いておる人が多くなったということよりも、機械は近代化されていますし、人間も能力が非常によくなっておるから、私は働いておるのだと思うのです。結局どうも洋服を着て管理をしておるような連中が多過ぎるのではないか、私は特にこのごろそういうことをまじめに考えておるのです。公務員の制度の中でこれで一体いいのか、私は去年の予算を組むときに、いまのベースを倍にする場合、人間は幾らになればいいのか、こう考えたとき、これは行政整理とかそういうものは非常にむずかしい、むずかしいから結局経済の高度な成長でそういう人たちが吸収できるような状態、そういうものをつくらなければならない、私は池田前総理にも話をしましたら、わしはそういう意味で高度成長をやったのだ、こういう答弁がございました。ですから、国民全体としてただその面においてだけ給与を急激に直すということも、これは不可能でありますから、日本の経済全体の中でどういうふうな状態にならなければいけないのか、こういうことまで抜本的に考えていけば、給与問題は毎年毎年同じようなことをしておってお互いにあまり信用もしないし、お互いあまり喜ばない。出したら相手は喜ぶような出し方でなければいかぬし、とにかく各公社でも思い切って今度は出したのです、こう言うのです。もらった人はあまり感謝もしない、こういう事態を全般的に考えて制度の上でどうするのか、こういうことに踏み切らないで、いまの状態でこの給与問題を解決することは非常にむずかしいのではないか、私もあなたと同じような立場で研究をしておりますし、私も身近に月給生活者、公務員、三公社五現業に行っておる親戚もおります。だからそういう人の給与の実態、生活の実態等つまびらかにいたしておりますが、現実面だけで解決できない問題でありますので、根本的な問題にひとつ取り組みたい、また野党といえどもひとつ御協力を切に賜わりたい、こう思います。
  267. 堀昌雄

    ○堀委員 実はまた三十日に公労協ではいろいろな問題が考えられておるわけです。私はそういういろいろな闘争が行なわれることによって延伸なりいろいろなことが起きて、その人たち自身の給与にも非常にはね返ってきますので、そういうことのないように私は政府側としてももう少し配慮があってしかるべきだ、こう思いますので、その点は大臣もおわかりのことであるようでありますから、ひとつ十分われわれの意のあるところをお考えいただいて、やはり働く公共企業体の職員の立場になって給与問題についてはさらに真剣な御配慮をいただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  268. 吉田重延

    吉田委員長 関連質問を許します。有馬輝武君。
  269. 有馬輝武

    有馬委員 いまの大臣の御答弁、きわめて真摯な御答弁で敬意を表するわけでありますが、私たちが国会においてもまたその他あらゆる機会において真剣に論議を重ねてまいりましたのは、いま大臣の指摘の点なんです。私たちが高度成長を論ずる際に、常に物価との関連を取り上げてきたのも、そこにあるわけです。物価の関連なしに高度成長を論じられるということに大きな問題があることと、いま一つはこれまた大臣が触れられたことでありますけれども、現在の公務員の仕事、三公社五現業の仕事の内容について検討されなければならぬということなんです。現在公務員があるいは三公社五現業の人員が多い。これはけっこうであります。なぜ現在のように人員を多くしなければならなかったか。これは毎年定員法の改正が行なわれまして、各省各庁の定員について真剣な論議が内閣委員会においてかわされております。少なくとも私のささやかな体験の中でも、すなわち戦後の農林省の実態を見まして、その後の経緯を見ますと、仕事の量というものは一人当たり二倍ないし三倍になっております。もちろん各局各課によってある程度のニュアンスの差はあるかもしれませんけれども、とにかく家へ書類を持って帰ってやらなければならないような多くの仕事をかかえておるわけです。それに追っつけないくらいの定員の増しが毎年行なわれておりません。その実態については、予算を握っておられる大臣が一番御承知のはずであります。その大臣が現在の定員の問題を考えるときに行政整理をやるわけにもいくまいしというような発言をすぐされること自体に問題があるのです。私どもは賃金の問題を論議いたしますときに二百円だ、三百円だ、五百円だという論議をしておるわけじゃないのです。先ほどお読み上げになりました生計費にふさわしい賃金を、これが労働者の要求であります。ですから先ほどの高度成長と物価、これに方向を与えるのが政府の責任じゃありませんか。それに解決を与えないでおいて労働者にそのしわ寄せをする。いま堀委員から切々と述べられたような状態に追い込んでおる。この点について私は政府自体が大綱について真剣に取り組む機会があってほしいと思うのです。それが毎年春闘を繰り返させない唯一の手だてだと思うのです。そういうものなしにわずかな金額をどうのこうの、こういう論議が繰り返されておる限り、春闘は毎年繰り返さたければいかぬ。私はせめて三十日を前にして政府がそういった真剣な態度を出してほしいと思うのです。先ほど大臣の御答弁がありましたので、これはむだなことかもしれませんけれども、関連質問というよりも意見として、あえて申し上げるわけです。
  270. 吉田重延

    吉田委員長 只松祐治君。
  271. 只松祐治

    ○只松委員 去年の四・一七闘争を前にして太田・池田会談が行なわれました。当事者能力を持たせるというような取りきめがなされたことを覚えておりますけれども、本年のこの春闘を迎えまして、具体的に何か当事者能力にして変わったこと、あるいは大幅に前進した、こういうようなことが、政府なりあるいはちょうど専売公社の方もお見えでありますけれども、何かありましたら、ひとつお教えをいただきたいと思います。
  272. 田中角榮

    ○田中国務大臣 当事者能力につきましては事務次官会議等で十分検討をして公務員制度調査会で引き続き検討していただこう、こういうことを考えたわけであります。  それから去年と違うこと、これはいままでは調停の段階でもって当事者能力があるとは言っておりましたが、実際有額回答という例がなかったわけです。なかったのですが、今度は少なくとも第一回出し、第二回は出さないだろう、こういうことも私は耳にいたしました。しかし労働組合の諸君は、どうしても第二回の有額回答を出させる、そうでなかったら仲裁にいかぬ——たちも友だちがありますから、そういうことも言っておりましたが、まあこれは三十日までぎりぎり待って、そういうことをやるべきじゃない、とにかくもう最高のものを考えるべきだ、これだけのものを有額回答をやる、最終回答であってもやるということになると、これは一体予算はどうしますか、こういうことを国会でつつかれたら一体どうするのですか、こういう議論がありますが、そんな議論をいまやっておるからいままで有額回答しなかったのだから、とにかく私が去年、財政当局者としては言ったことのないようなことを言って、まあ二年目でありますから、最高の努力をしようということで、われわれがきめることではありませんが、国会との関係もありますので、関係三閣僚が会って閣議にも報告をして第二次の回答をしたわけであります。ですから、これは去年の池田・太田会談の結果、少なくとも政府はとにかく相当思い切った前進体制をとっている。まあ普通からいえば、与党の方々は黙っていますけれども、一体政府はそういう有額回答をしてどうするのだ、われわれが議決をして通した予算の中で、一体政府関係機関はどうするのだ、こういう御質問がないからわれわれもほっとしておりますけれども、在来に比べると非常に誠意を披瀝しておるということは池田・太田会談のやはり成果だ、こう考えていただいていいと思うのです。
  273. 只松祐治

    ○只松委員 そこで専売公社のほうにお尋ねをいたしますが、私の試算に誤りがあればまた直しますし、御指摘いただいてけっこうでございますけれども、専売公社の本年度の政府関係予算の表を見ましてちょっと計算してみたのですが、これを見ますと役員給で二七・七%、職員給で一五%のアップ予算が組んであるわけです。計算のしかたに違いがあればあれですが、私はこうやってみたんですが、去年とのアップ高は大体そのくらいの予算になっているようですね。このほか、ずっと見ますと、中小企業金融公庫で役員が二二・六%、職員で一九・五%、ずっと私はいろいろ計算してまいりましたけれども、相当大幅に役員のアップ、職員のアップというものが組まれておるわけです。専売公社の独自のお考えならばこういうことにしたい、こういうお考えでございますか。また、専売公社としてはどの程度上げたい、こういうことで本年度予算をお組みになっておりますか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  274. 阪田泰二

    ○阪田説明員 ただいま御指摘になりました前年度予算と今年度予算を対比しました給与のアップ率の問題でございますが、そのお示しのパーセンテージは、私、すぐにちょっとつまびらかにできませんが、大体、前年度とことしと対比しましてふえております分は、前年度の予算は、実は昨年度仲裁裁定を受けましてベースアップいたしましたもの、これは予算のきまったあとでありますので組んでおりません。したがいまして、本年度の予算にはその分が増加になって入っておるわけであります。それに対しまして、さらに、先ほど来いろいろお話の出ました定期昇給によるアップ、こういうものが加算されまして本年度の予算のベースになっているわけでございます。大体、お示しの増加額の数字というものの内容はそういうような形になっておるわけでございます。
  275. 只松祐治

    ○只松委員 それにいたしましても相当大幅なアップの内容の予算が組まれてある。初めは専売公社としてはこういうふうに大幅に上げたい、こういう要望であったのですが、それを大蔵省側等の圧力で、実際ほかの関係でいまの八・五%程度にとどめる、こういうことになったんですか、それとも、これは大体やみくもと言ってはなんだけれども、大体このぐらい上げなければならない、こういうことでおきめになったんですか。どうでしょう。
  276. 阪田泰二

    ○阪田説明員 やみくもではありませんので、ただいま御説明いたしましたように、昨年の予算は昨年のベースアップ以前の見積もりによる予算で、昨年度仲裁裁定のおりる以前の予算でありますから、昨年仲裁裁定によりまして上がった分は入っていないわけです。本年度の予算はそういう上がりましたベースで、しかも今年度はどういうふうに推移していくか、こういうことを見込んで組んだ予算でありますから、先ほどから申しましたように、昨年度のベースアップが今年度入ってきている、さらに今年度の定期昇給による増額分が入ってきている、こういうことになっているわけです。それ以外に多少人員の増減その他による増減はございますが、内容といたしましてはそういうことでございまして、本年度ベースアップということを見越して特別の見積もり計上いたしたということはございません。
  277. 只松祐治

    ○只松委員 昨年のはちょっと私計算したのですが、ちょっとここに持ってきておりませんけれども、昨年のはこんなになかったですね。多分一〇%ぐらいの賃上げを昨年もやっているわけです。同じような形で前年の分が組まれてきていると思うのですが、昨年はそんなにアップの予算ではなく、ことしは専売公社の場合、相当大幅なアップの予算が組まれている。いまの専売公社の答弁はまさか大臣の前だからといって遠慮しいしいの答弁ではないと思いますが、この予算の組み方と、いまの答弁とはたいへん矛盾した面がある、こういうふうに思います。だから予算を組む場合には、そういうことも十分お考えになって組んでいただきたいと思うのです。そして組まれた予算は、実は私はこの問題は、国会のあり方として大蔵委員会で予算を審議しないで予算委員会で審議されておりますので、実は大蔵委員会でもこういう問題についても多少論議をしたい、こういうことを思っておったのですが、今日までその機会がなかった。それでまあ若干関連してお聞きしておきたいと思うのですが、たとえば医療金融公庫の場合に、役員で三九・二%、約四〇%、職員で二七・一%、こういうふうに非常に大幅に値上げが組まれております。また各金融公庫、あるいは公社、こういうもののアップのパーセンテージというのは非常に違っております。政府関係としてはこうやって政府関係一覧表として出されてあるわけでございますから、これは政府として当然やはりそういう役員給あるいは職員給あるいは全般の予算のパーセンテージの伸び、こういうものはあまり差がないようにすべきだろうと思うわけでございます。そういう観点から、この政府関係機関の予算の組み方、これは一体どういうふうになっているか。こまかいことですから大臣からできなければ、秋吉給与課長からでもけっこうです。
  278. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 公庫の御指摘でございますが、先ほど公社の総裁から御答弁がございましたように、年度当初におきましては、幾ら上がるかという予測はつかないわけでございます。したがいまして、そういう予測の上積み原資は組んでおりません。ただ組みます場合に昇給原資は組みます。昇給原資を組みまして、しかも新陳代謝をいたしますから、したがって年とった方のベースが落ちて若い方のベースが入ってまいります。したがってそういう面からいたします原資の減少、そういったものを相殺いたしますと、公社にいたしまして大体約三・五%の昇給原資が要る、こういうことに相なるわけであります。それから公庫につきましては、これは非常に若うございます。したがいまして新陳代謝がそう期待できない。そこで新陳代謝の要素が非常に低いもんでございますから、一般的に申しまして公社よりは昇給原資がよけいかかり。大体四%ぐらいの数字になります。そういった原資を組むわけでございますが、ただ年度途中におきまして、公社におきましては仲裁裁定が出まして、ベースアップを行ない、あるいは公庫、公団等につきましては、これは人事院勧告にならいまして給与改定が行なわれるわけでございまして、公庫、公団につきましては、原則といたしまして国家公務員の給与改定に準じまして改定を現在まで逐次行なってきておるわけでございます。したがって、年度当初におきましては、そういう予算は組んでおりませんが、年度間におきまして、そういった諸情勢の変化に応じまして、予算内のいろいろの節減等のやりくりをいたしまして、給与改定に当てます。それを、翌年度の予算を組む場合にははっきりいたしますから、はっきりと給与予算として組むわけでございます。したがいまして表面づらからいたしますと、大体前年と比較いたしますと、相当ふえておりますけれども、実行上においてばそれほどふえてない。予算といたしましては、昇給原資の増だ、こういうことになるわけでございます。
  279. 只松祐治

    ○只松委員 大臣が時間がないようでございますから、大臣に一、二点お伺いしておきますが、いまのようなお話もございますが、とにかく政府関係機関の幾つかのものをとってみましても、非常にアンバランスが各機関あるいは庁、役所の間にあります。あるいは職員と役員の給与アップの開きというものは非常に大きなものがあるわけであります。こういう点に関しては、もう少し予算編成の段階において、政府当局は、政府関係の直属のものだけでなかなかたいへんだと思うので、あの忙しい中でこういうところまでなかなか目が通らないところがあるのだろうと思いますけれども、もう少しこういう点、厳格に大蔵省のほうで査定をするなり、一律のアップ状態にする、こういうことをされる必要があるんじゃないか。そうじゃないと、逆の面からいいますと、一見して各省庁の予算の組み方が非常にずさんである、こういうふうにいわれても、このアンバランスをもとにしてだけこの予算の組み方を見ていきますと、そういうものが出てまいると思うのです。ひとつそういう点について十分な御留意をいただくとともに、ここに出てきております、本質的に役員だけが現在も非常に高いわけです。高給者はますます高くなっていく、一般職員はなかなか上がっていかない。こういう実態もこのパーセンテージの中から出てきておるわけです。こういう点については、先ほどから堀委員からいろいろ御指摘がありましたので、私は本質的には触れていきませんけれども、ぜひそういう点の是正もあわせてお考えをいただきたいと思うわけでございます。  なお、最後に重ねて大臣にお願いしておきますが、こういうものを見ても、私は各省庁間には、自分のお手盛りもさることながら、職員にも最低一四・二二%というくらい、開発銀行ですか、大幅なアップを見込んだ給与改定というものが見込まれておるわけでございますから、当事者能力というものを一そう持たせるように、ひとつ御尽力方をお願いし、三十日前にこういう問題がぜひ円満に解決するように御尽力方を大臣にはお願いしておきたい。あとこまかいことは、大臣帰られてからでけっこうですから……。
  280. 吉田重延

    吉田委員長 関連質問を許します。有馬輝武君。
  281. 有馬輝武

    有馬委員 あと十五分まで二分間くらいあるようでありますから、大臣にお伺いしておきたいと思いますが、この前の回答は、大体、鉄鋼のアップを基準にして六・五というものが出たように受け取れるわけです。ところが先ほども私申し上げましたように、きょう私鉄が三千円近く、約一〇%のものを出しておるわけです。社会労働委員会におきまして、労働大臣は当然この一〇%というものを考慮しなきゃならない。繰り返して申し上げますが、先ほどの大臣のお読みになったのでも、そういうことを政府はやらなきゃならぬ、公社はやらなきゃならぬということになっておるわけでありまするから、この私鉄のアップというものも重要なファクターとして考慮される意思がおありだろうと思いますが、その点間違いございませんか。
  282. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いや、これは私のほうでは、先ほど申し上げましたとおり、有額回答を二回やったわけです。現在の状態では、これが最終回答、こういうつもりで私は三人の関係閣僚会議では念を押してございますが、これから労使の間でどういう話になるか、とにかく何か出たらまた考えるというようなことではなく、いま労使の間で話し合いが進んでおりますし、調停も行なわれておるわけでありますし、また調停後の合理的な制度もちゃんとあるわけでありますから、これはひとつ制度の中でうまく解決せられることが望ましい。私もこういう問題に対しては、一日延ばしではなく、できるだけ早い機会に円満に妥結をするということが望ましいという考え方でございます。
  283. 有馬輝武

    有馬委員 肝心かなめのところをよそに転嫁しないで、労働大臣とよく三人で話し合う意思がおありかどうか、これを重ねてお伺いします。
  284. 田中角榮

    ○田中国務大臣 御意思は十分承知いたしておきます。これは、私がこの間三大臣との話し合いのときに、これが最後だよ、こういうことを言ってございますから、先ほども申し上げたとおり、あなたの御発言というものは私もいま承知をいたしましたから、これでひとつ、まあどうぞひとつ……。
  285. 只松祐治

    ○只松委員 もう少しこまかく聞こうかと思いましたが、大臣もお帰りになりましたから、最後に一つだけ、いま専売の方に聞いておきたいと思います。  いま大臣も答えられたわけです。お帰りになりましたから今度はひとつゆっくりとお答えいただきたいと思うのですが、私がさっきあげましたように、あなたのほうはベースアップを見込んだ予算を相当お持ちになっておるわけです。大蔵大臣が言うように当事者能力というのをできるだけ強めていく、こういう方向に努力をする、こういうことも言っておられるわけですから、ほんとうは三公社五現業その他に来ていただいて、全部にそういうお話をすれば一番話が早いわけですが、いまは専売公社だけしかお見えになっておりませんから……。この予算の範囲内においても十二分にベースアップがいまできる、こういうふうに私は確信いたしております。そういう当事者能力を強めて、独自の立場に立ってベースアップを行なっていく、こういうことをここでお約束していただきたいと思います。
  286. 阪田泰二

    ○阪田説明員 ただいまの問題につきましては、先ほど来、いろいろ御説明申し上げましたように、本年度の予算は昨年度末のベースの上に本年度の定期昇給によって上がっていきます分を見込んで組んだ予算であります。それ以上に特別に上げる余裕というものは、ほとんど現実にはないわけであります。そういったような意味におきまして、御指摘のような余裕が十分にあるからひとつ当事者能力を発揮してやれ、こういうようなことは、そういうような意味ではないわけでありますが、ただ先ほど来御説明申し上げましたように、本年度といたしましては、大臣からもお話がありましたように、二回にわたりましてベースアッブの提案をいたす等、いろいろとこういった予算を背景としまして、できる限りのことは努力いたしておる、こういうことでございます。
  287. 吉田重延

    吉田委員長 次会は、来たる五月七日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午前四時十九分散会