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1965-04-01 第48回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月一日(木曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長代理 理事 壽原 正一君    理事 有田 喜一君 理事 多賀谷真稔君    理事 滝井 義高君 理事 細田 治嘉君       小笠 公韶君    上林山榮吉君       倉成  正君    田中 六助君       中村 幸八君    西岡 武夫君       野見山清造君    廣瀬 正雄君       三原 朝雄君    井手以誠君       岡田 春夫君    中村 重光君       松井 政吉君    伊藤卯四郎君       玉置 一徳君  出席国務大臣         通商産業大臣  櫻内 義雄君  出席政府委員         通商産業政務次         官       岡崎 英城君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         労働政務次官  始関 伊平君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君  委員外出席者         通商産業技官         (石炭局計画課         長)      佐藤淳一郎君         参  考  人         石炭鉱業合理         化事業団理事  町田 幹夫君         参  考  人         九州鉱害復旧         事業団理事長         鉱害賠償基金理         事長      天日 光一君     ————————————— 四月一日  委員伊藤卯四郎辞任につき、その補欠として  玉置一徳君が議長指名委員に選任された。 同日  委員玉置一徳辞任につき、その補欠として伊  藤卯四郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第七〇号)      ————◇—————
  2. 壽原正一

    壽原委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のため、指名により私が委員長の職務を行ないます。  内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案を議題として、質疑を行ないます。  本日も参考人として、石炭鉱業合理化事業団理事町田幹夫君及び九州鉱害復旧事業団理事長鉱害賠償基金理事長天日光一君に御出席をいただいております。  質疑の通告がありますので、これを許します。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 先日決定いたしました昭和四十年度の石炭鉱業合理化計画について質問いたしたいと思うのですが、昨日、おそらく滝井委員質問をしたと思いますので、要点だけ質問をしていきたいと思います。   〔露原委員長代理退席中村(幸)委員長代理   着席〕  まず第一に、一カ月の生産能率目標を四十五トン、品位六千四百カロリー、この根拠、その見通し、これをお聞かせ願いたい。
  4. 井上亮

    井上政府委員 ただいま御質問の、四十二年度におきます生産能率四十五トンというふうに私ども考えておるわけでございますが、これは先生承知のように、全国平均能率でございますので、この積算といたしましては、北海道東部西部九州地区の山のそれぞれの実態を総平均いたしまして、四十二年度には四十五トンということにいたしたわけでございまして、北海道について見ますと、北海道生産能率平均は約五十トンでございます。それから東部につきましては三十四・九トン、西部は三十四・四トン、九州は四十三・二トンというような見通しを持っておるわけでございまして、全国的にこれを平均で見ますと、四十二年度には四十五トンということに相なるわけでございます。なお、そのときの全国生産量でございますが、全国生産量といたしましては、約五千三百万を想定しております。一応こういう見通しを持っておるわけでございます。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 労働者は幾らですか。
  6. 井上亮

    井上政府委員 労働者の数は九万八千人を想定しております。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 相当投資をして、採炭、掘進その他に自動化近代化を行なえば別として、いまの能率というのは、若干あがるかもしれませんけれども、頭打ちの傾向にあるのではないかという感じがするわけです。いままでのように、三十七年、三十八年、三十九年と飛躍的に能率があがった状態では考えられないじゃないか。まあ名前は申しませんけれども山別に見ますると、かなり高能率炭鉱でも、最盛期を過ぎたのではないかという炭鉱もあるわけですね、しかも戦後に開発された炭鉱で。こう考えてみると、北海道はかなり伸びるとしても、全国平均が四十五トンというのは少しもう無理ではないか、こういう感じを持っておるわけです。これも、私の感じですから、確実なことはわかりませんけれども相当の新鉱を開発すれば別として、四十二年までに新鉱開発出炭に入る率が非常に少ない現状においては、いまのような推移能率上昇というものは期待できないのじゃないか、こういうように考えるわけですが、どうですか。
  8. 井上亮

    井上政府委員 ただいま多賀谷先生から御指摘のように、今後の石炭生産能率は、ここ数年間におけるような飛躍的な能率上昇を期待することはなかなかむずかしいというふうに私も考えております。  御参考までに、三十八年から三十九年、四十年というような能率推移を見てみますと、三十八年度におきましては、生産能率は三十一トンであったわけです。これはさかのぼりまして三十六年ごろにはたしか二十四トン程度であったと思います。それから三十九年度は三十六・五トン、四十年度は四十トン、この辺までは相当高い能率上昇で参っておりますが、以後、四十一年度は大体四十二トン程度、四十二年は四十五トンそれから四十三年も大体それとあまり大差ないというような見通しでございまして、今後の能率伸びは、先生指摘のとおり、そう急激に上がることは、炭鉱自然条件等の事情からしましてなかなか困難だというふうに考えております。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 欧州に比べても、四十五トンという能率は非常に高い能率でしょう。現在の日本で、四十五トンの能率を四十二年までに期待するというのは無理じゃないですか。私は、新鉱開発で大規模炭鉱相当できれば別として、いまのままでもうマキシマムじゃないかという炭鉱相当多い、高能率をあげておっても、これがいつまで続くだろうかという感じがする。一つ労働力の問題にもなる。労働力老齢化の問題とからむ。ですから、この四十五トンを期待するというのは非常にむずかしいのではないか。たとえば、例示をしてあるいは御迷惑かもしれないけれども大島炭鉱という炭鉱があるですね。これはあれだけ非常に優秀炭鉱であるというのに、私の記憶が間違いなければ三十四トン程度だと思う。これは池島は新しい炭鉱ですから別として、なぜよそに比べてわりあいに能率が低いように見えるかというと、ほかの炭鉱は、臨時であるとか、あるいは別会社であるとか、こういう形で在籍鉱員をはずしておるのですね。ところが離島になると、購買会は別としても、別会社にされないわけです。それはやはり労働力確保がむずかしいからです。労働力確保がむずかしいということと関連して、在籍鉱員をはずすということが非常に困難になってくるわけです。ですから、数字の面からいっても操作がむずかしい、こういうように私は考えるのです。ですから、役所のほうであまり、能率四十五トンだと、こうやっておかれると、今度、何だ、えらい能率悪いじゃないか、計画どおり能率がいっておらぬじゃないか、こういうおそれが私は出てくるのじゃないかと思う。まあ、私たちは直接影響はありませんよ。しかし銀行筋から、なぜ平均水準に達しないのだ、こういうように企業としては言われる。あなた方は計算で、デスク・プランでおやりになるから、いくだろうと、こう言う。現実一つ一つの山をとってみたら、山は経理関係があるから、いくと言いますよ。計画書を出すときは四十五トンぐらいになると言うかもしれないけれども、それは実行できないのじやないかと思うのです。もう現在のような経営の悪条件のもとにおいて整理するものは整理し、そして本来ならば在籍として雇わなければならぬ者まではずしておるわけですね。ですから、これ以上の合理化はできない。しかも新鉱開発というのは実際遅々として進んでいない。そういうときに、いまの三十八トンを四十五トンに伸ばすというのは非常にむずかしい状態にあるのじゃないか、現実工数当たりで見ると一体どういうようになっておるのか、ひとつわかりましたら、外国と、ことに欧州と比べてみてお聞かせ願いたい。
  10. 井上亮

    井上政府委員 能率の点につきまして詳細な御質問があったわけでございますが、昭和四十二年度に全国平均能率が四十五トンということは、私の見解ではそう無理な生産能率とは考えておりません。ただしこれは全国平均であって、これを東部地区とか西部地区とか、あるいは一部の九州地区に当てはめて考えることは適当でない。そういう意味で私どもは、炭田の性質によりまして、妥当である平均能率、そういう見方をいたしておりますし、また平均をとりますときにも、そういった地域別配慮を加えておるわけでございます。確かに自然条件に差がありますので、この生産能率は一律には論じられません。私は四十五トンの能率はそうたいしてむずかしいことではなく、また労働者に過重なる労働をそう押しつけなくても可能じゃないかというふうに考えておるわけでございます。  私ども今後の炭鉱合理化計画をつくっておるわけでございますが、これは先生承知だと思いますけれども、ことし、来年は坑道掘進、これに相当主力を置いた合理化投資をしていきたい。これは近年の出炭の不振、この大きな原因がやはり炭鉱経営の悪化から生産出炭をあせるあまり、坑道掘進をおろそかにして、一時的な採炭面重点が置かれておるわけです。そのことが保安上の問題を起こしたりいろいろいたしましたので、ここ一、二年はむしろ掘進に重点を置くという考え方をとっておるわけです。  なおそれと並行いたしまして、各種の合理化投資計画を現在立てておるわけでございまして、たとえばこれは石炭鉱業大手でございますが、投資額は三十七年度で二百三十五億円程度でございます。なお三十八年度も二百二十五億というような程度推移してきたわけでございますが、四十年度は最高の三百十億円というような巨額の投資を考えておるわけでございます。これはただいま申しました坑道掘進という点に主力を置きながら、運搬系統の整備あるいは選炭、通気、排気その他の合理化工事を行なうための投資を予定いたしておるわけでございまして、こういった合理化工事を遂行することによりまして、まだまだ日本炭鉱といえども能率上昇余地はあるというふうに考えておるわけでございます。そういった意味で私は先生のおっしゃるほど、四十五トンは困難な問題ではないというふうに考えております。ただ自然条件の違いがありますから、特定の山について四十五トンは無理だというようなことはあろうと思いますけれども、概括的にはそのように考えております。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 現実にかなり能率があがっておる炭鉱に行って視察をしてみると、やはり災害がかなり多いですね。そうして組合幹部は、率直にいいますと、会社経理がわかっおるから見て見ぬふりをしている。労働基準法違反相当多いです。しかし、組合員はやはりそう考えない。ですからかなり高い能率炭鉱でも、非常に労働密度が高いために、出入りが非常に激しい。募集しても片っぱしから出ていくという状態にある。これはもう限界にきておるのです。ですから私は、組合幹部労働者一般から突き上げられる時期がくるのではないかということすら実は心配しておる。ですから四十五トンにまでいくということは、ちょっと普通の状態では考えられぬです。しかもいまから千二百五十万トンを千七百五十万トンに買い上げワクをふやされるわけです。もっともそのうち千二百万トン程度はほとんど終わっておるわけですから、この程度では実際はこれだけの能率はあがりませんよ。四十五トンの能率炭鉱というと、相当炭鉱ですね。ちょっとこれは無理じゃないですか。現実問題として、あなた方は自分自分の首を締めるようなことをやることになるのじゃないですか。現実は、この在籍鉱員のほかに組夫がおるでしょう。相当組夫がおる。臨時がおる。別会社にされるものはほとんど別会社にしておる。そうして見せかけ能率上昇をやってきたわけです。それから労働力密度を高くした。こうしてかろうじてやってきておるわけですからね。そうして悪い炭鉱をつぶした。しかしいまからの炭鉱で四十五トンの能率をあげるというと、非常に過重になるのじゃないかという気持ちがするのです。若い労働力が入ってこないのですからね。だんだん労働力老齢化するわけですから、能率の面だけいってもこれは非常に無理である。このことをなぜ私が言うかというと、経理その他あらゆる方面に影響するわけですから、四十五トンの能率をあげなければ、いままでの経理計画とかその他の計画が全部崩壊をしていく。ですからこれは非常に無理ではないですか、こう思うわけです。
  12. 井上亮

    井上政府委員 先生指摘のような点もあると思いますし、全然それは杞憂だというふうに私は考えませんけれども、しかし私どもは、ただいま申しました見通し計画につきましては、相当山別に詳細な検討を加えまして、むしろかために押えたぐらいな気持ち計画見通しをつくっております。きょうから四十年度になりましたが、特に四十年度の計画等につきましても、これは五千百六十万トンの出炭という計画を二、三日前の合理化部会で決定いたしたわけですが、この計画策定にあたりましても、各個別企業が実際には私どもに主張しております数字よりも、相当な査定を加えまして安全を見た。それから特に労働面にしわの寄らないような配慮保安面十分配慮をした生産体制というようなことを考えて生産計画を組んだつもりでございますし、そういった意味で、いたずらに能率の高きを誇らないというような考え方計画を組んだつもりでございます。四十二年度は、現実計画というよりも今後の見通しになりますから、若干議論をされる余地はあろうと思いますが、少なくとも四十年度におきましては、そういう見地計画を組み、それを基調に置きまして四十二年度の見通しを立てたものでございますから、先ほど申しました、いままでよりも相当多い合理化投資投資額の増、それによって相当施設改善等も予定いたしておりますので、そういうことを考えますれば、私は決して四十五トンの達成は困難ではないというふうに考えております。しかし先ほど来申しましたように、能率につきましては、いたずらに見せかけをよくするというようなことをしてはならないというような見地見通し計画を組んでおりますので、わりあいに四十年度以降の能率伸びは、従来に比べれば非常に鈍化しておるというような姿をとっておるのでございまして、マクロ的、全体的に見れば私は困難ではないと思う。ただ、先生指摘のように、たとえば非常に老朽というと語弊がありますが、いわゆる維持山等につきまして見ますと、それはなかなか四十五トンもむずかしい。これは自然条件制約等もあろうかと思いますけれども、全体的に見れば私は決して困難ではないというふうに考えておる次第であります。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 欧州能率は、工数をちょっと…
  14. 佐藤淳一郎

    佐藤説明員 技術的の問題でございますので、私からかわってお答え申し上げます。  まず、日本の将来の投入工数につきまして、実は第二次調査団でいろいろ個別に積み上げまして検討いたしたわけでございまして、特に作業の関係上、資料関係上、大手炭鉱を中心にしていろ分析いたしました数字を御披露申し上げます。新鉱群増強群維持群とその他群、いわゆる群別にいろいろ展開して検討いたしておりますが、たとえば増強群で申し上げますと、三十九年三月の百トン当たり投入工数が、これは実績でございまして、五八・八工数になっております。これを大体三十七年から千五百億くらいの投資をやりまして、そのうち増強群として一千億くらいの投資をやるわけです。そういうことによる投資効果を反映いたしまして、四十二年度末、すなわち四十三年三月におきましては四一・四工数になる。これはいろいろ部門別採炭切り羽、掘進、仕繰り、運搬、それから坑外と、詳しくデータが出ておりますけれども、要するに、トータルの百トン当たり投入工数としては四一・四工数を考えております。これは、何といってもビルド炭鉱でございますので、この程度工数は当然減少が見込まれますが、それに対して、いわゆる維持炭鉱群につきましては、現状は大体七三・三工数相当工数を持っております。これは、まあ自然条件その他からいってやむを得ないと思います。しかしながら、やはり維持炭鉱群といえども相当投資をやってまいりますので、四十二年度末までには五五・一工数。それから、いわゆるスクラップ炭鉱群はさすがに工数が多うございまして、三十九年三月が一〇三・三工数ということで、ビルド炭鉱の約倍くらいの工数を使っておるわけでございまして、将来もこれは合理化余地はございませんで、四十二年度までに生き残るその他群といたしましても、せいぜいまあ合理化して八〇工数くらいということでございまして、トータルで申し上げますと、結局三十九年三月の大手全体の投入工数六六・一工数というものが、四十二年度で四十七工数、こういうことで、部門別にいろいろ検討いたしまして、結局能率というのはこの投入工数の逆の数字になりまして、これが先ほど申し上げました全国平均四十五トンという中の大手炭鉱能率相当する分でございます。大体日本の将来計画としてはこう考えております。  ヨーロッパにつきましては、いまちょっと資料を持ってきておりませんけれども、やはり将来計画としては、ヨーロッパでも相当高い能率を考えているようでございますが、現状としては大体四十四、五トン程度。将来、フランスなんかは六十トン、七十トンというような、これは目標でございますけれども、何か長期展望資料なんかを見ますと、そういうことをうたっておりますが、日本の場合はなかなかそこまでいきにくい状況にあるではないかというふうに考えております。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 あまり能率の上がることを期待をすると、逆に出炭維持ができなくなる、こういうおそれがあると思います。  同じく、新鉱開発で、今後独立坑口の造成をする場合には、基本計画目標生産能率の一二〇%、労働者一人当たり一カ月五十四トンに達しないと許可しない、これはやはり目標がちょっと高過ぎるではないか、こういう感じを受けるわけです。これは一つは、独立坑口というのも、率直に言って、規模によって私は違うと思うのです。そういうあまり投資が入らない場合には、五十四トンというのは、これはいわば非常に重い能率ではないか。五十四トン以上でないと許可しないということになると、はたして五千三百万トン、将来の五千五百万トンを維持ができるかどうか、これらが全部関連をするわけですね。五十四トンというのは少し目標が高過ぎるではありませんか。
  16. 井上亮

    井上政府委員 ただいま坑口開設につきまして、目標の一二〇%以上でないと坑口開設許可をしないのは、お説のように高い感じもいたします。しかし、本来の趣旨から申し上げますと、新たに坑口を開設して新鉱をやるという場合には、やはり今後相当期間出炭を続けるだけの炭量もあり、かつまた、今後の採炭等考えますと、相当高い能率を上げてやり得るというような山でありませんと、これは途中で挫折するというようなことにもなりますので、平均的なものより若干高目なもの、といいますのは、坑口開設にあたっては、たとえば四十二年は全国平均で四十五トンということですが、新たに坑口を開設いたしますと、今後十年、二十年と出炭を続けていかなければいけません。そういう場合に、やはりその程度出炭能率を上げ得る山でないと将来に問題が残るのではないかというような意味で、そういう方針をとっているわけでございます。  なお、坑口開設の一二〇%というのは、それは全国平均で見るわけではございませんで、それぞれ炭田実情によってきめられました平均能率に一二〇%をかけるという思想でございますので、北海道でしたら五十トンの一二〇%ということですし、九州でしたら四十三トンの一二〇%ということですから、私はその趣旨からしましてやむを得ないじゃないかというふうに考えております。ただ、個人的に考えまして、私も内部で議論しましたときにはこれはちょっと辛いではないかという議論をしたこともございます。もし実情に著しく合わないときは、この問題を再検討するにやぶさかではありません。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 坑口開設は、合理化法の五十四条の坑口開設の場合全部適用を受けるわけですか、代替坑口を除いて。
  18. 井上亮

    井上政府委員 代替坑もやはり同じくいまの適用を受けるわけであります。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この五十四トンというは……。
  20. 井上亮

    井上政府委員 この坑口開設につきまして、当然やはり適用の対象になります。
  21. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、新鉱開発として独立地区に、相当規模炭鉱の場合は、相当ばく大な投資をするわけですから、それは六十トンでもけっこうだと思うのです。ところが、坑口開設許可が要る場合に、この基準をあらゆる場合に当てはめるというと、問題があるのではないか。というのは、福利施設も要らない、社宅もある、坑外施設もある、選炭機も使う、こういうような場合に坑口をつくる、そうすると坑口開設許可にひっかかるわけです。その場合でも五十四トンという基準でいくのかどうか。こういう場合はあまり投資が要らないわけです。ですから、その条件が非常に違うと思うのです。その点、どうなんですか。
  22. 井上亮

    井上政府委員 代替坑につきましては、少し基準を低くいたしておるわけであります、新坑の場合に比べますと。ただ、やはり坑口開設を新たにやるというような場合には、先ほど言ったようなところもやはり配慮しなければいけません。なお、これをきめますのは、単に机上の空論でおよそ一二〇%くらい見たらいいだろうということだけできめたわけではございませんので、具体的に坑口開設についての各企業の希望、今後の計画、そういうものを見まして、大体この程度基準なら支障はないだろうというような検算的な配慮も加えておるわけでございます。ただ、先ほど申しましたように、このことが実情に合わせまして、私どもの当初の見通しといいますか、実態把握と違って著しく問題であれば、私はいつでも改定にやぶさかでないというふうに考えております。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 経理上から見ると、利子のつく金を使ったりすると、償却的に見ると五十四トンでないとやっていけぬのかもしれぬ。一方そういう要素があるわけであります。ところが、坑外施設はほとんど既往のものを使うという場合はまた別ですね。立地条件の点については若干、現実問題として炭鉱の悪い、いいということも関係あるでしょうけれども東部地区とか西部地区というのは、いわゆる生産能率基準というのは低いわけですからいいとしても、立地条件の点は若干考慮があるとしても、ほかの要素が全然考慮されていない。一律というのは非常に無理があるのではないか、こういうふうに思うわけです。要はかなり長期的に見て採算が取れるかどうか、こういうことだろうと思うのです。ですから、その点は弾力的にやるということですから考えていただきたいのですが、一律に扱うというのは非常に無理があるのではないか、こういうように考えるわけです。  そこで、それに関連して新鉱開発の問題についてお尋ねしたい。  先般総理が見えましたときにも私が質問をしたわけですが、とにかく昭和三十三年から三十九年までに千二百億の借り入れ残高の増というのは、一体どこに原因があるのか。一体これは返せるのかどうかという気持ちがするわけです。これは一体どういうように把握をされているか、お聞かせ願いたい。
  24. 井上亮

    井上政府委員 御指摘のように、ただいま石炭産業におきましては大きな借り入れ金をいたしておるわけでありまして、そのために利子負担等が相当過重な姿になっております。しかし私どもといたしましては、今後この利子の過重な負担に対しましては、本年度から新たに利子補給の制度も取り入れまして、できるだけ負担の軽減をしてあげたい。つまり借り入れ金が複利となっていよいよ増高するということのないような助成も配慮いたしておるわけでございます。今後、先ほど申しましたような生産能率上昇、あるいは近代化合理化工事の進捗に伴いまして、逐次採算面の改善される道もあると思いますので、そういった面から各社ともに今後長期の計画で、この借り入れ金を逐次返済するというような計画を立てている現状でございます。ただ率直に申しまして、大手の中におきましても二、三社につきましては五年や六年では返せない、あるいは十年以上かかるという山もあることは事実であります。しかしこういう山につきましても、綿密な計画を立てまして指導してまいりたいというように考えております。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大手十七社だけについて申し上げたいと思うのです。中小のほうは必ずしも正確な資料が出ていないのですから。この十七社で千八百七十億のほか未払い金というもの、あるいは鉱害賠償を含めて債務といわれるものが一体、ざっとどのくらいになるのですか。
  26. 井上亮

    井上政府委員 石炭企業の現在の借り入れ残高について申し上げますと、三十九年三月末現在で千五百六十四億円、そのうち財政資金関係が五百七十三億、一般の金融機関が二百九億、さらに事業団の整備資金が二百八十三億、そういうようなものがおもな内容になっております。政府関係全体としますと、同じく三十九年三月末で、これは大手、中小を入れておりますけれども、九百九十六億というような内訳になっております。これは政府関係借り入れ残高です。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 借り入れ残高でなくて、その他の債務未払いを入れて……。
  28. 井上亮

    井上政府委員 未払いの問題は、これはむしろ累積債務で申し上げますと、三十九年度で八百二十一億円、これは実質赤字が八百二十一億、これは大手でございます。その中で公表損益というか、損でございますが、三百二十八億、退手不足が二百五十億、償却不足、これは普通と特別とございますが、合わせまして三十五億、閉山、合理化関係の資金の繰り延べ、これは実質上の赤字になりますが、これが約二百億というようなおもな内容になっております。   〔中村(幸)委員長代理退席、評原委員長代理   着席〕
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、トン当たりどのくらいになっておるのですか。鉱害なんか入っていないのでしょう。
  30. 井上亮

    井上政府委員 鉱害は当然公表損益の中や何かに入っております。それから閉山、合理化の費用の繰り延べの中にも鉱害は一部入っております。
  31. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いまのは平均トータルの話です。これを各社別に見ると、いわゆるバルクラインで見ると、これは相当の巨額の借金になっておるわけです。率直にいってあるランク以下はもうやっていけないのじゃないですか、私企業として借金を返済するというのは、できないのじゃないですか、こういうように思うのです。ですから、一日延ばし二日延ばしで一年、二年と延ばしておられるけれども、役所としては、あるいは石炭鉱業審議会としては、もう少し長期的に見て、一体これをどうするかということを考える時期がきているのじゃないですか。第二答申がありましたが、引き続いて御存じのように審議会があるわけですから、審議会のほうで、いまの状態一つ一つ対症療養をやっておられるけれども、全体としてはどうにもならない。こういうことをはっきり国民に訴える時期がきつつあるのではないか、こういうように思うわけです。われわれもまた局長も、問題の起きた炭鉱について一つ一つ対症療養をしていっているわけですけれども、どうも追いつかぬという感じが率直にいってするわけです。ですから五千五百万トンを維持するというならば維持するように、どうしても維持がむずかしいということになればそれをどうするか、これは一朝一夕にしてはできないでしょうけれども、やはり恒久的な検討を進めていく必要があるのではないか、こういうように思うわけですが、どういうようにお考えですか。
  32. 井上亮

    井上政府委員 ただいま御指摘のとおり、石炭鉱業経理関係は、現状においては相当悪化いたしております。政府といたしましてはこういった実態に対処しまして、第二次石炭鉱業調査団の答申を尊重いたしまして、本年度から新たに炭価の引き上げあるいは利子補給、あるいは鉱害賠償についての国の補助率の引き上げ、その他無利子の融資、設備投資についての助成、あるいは特に極端に現状において会社経理が悪化している企業につきましては、経理審査会の審査によりまして再建資金を出すというような措置を講じてやっておるわけでございますが、これによりまして今後の会社経理は私は相当改善されるというように考えておりますし、四十二年度ごろには少なくとも大手炭鉱の中で三分の二くらいの山は一応ほぼ安定するような姿を——これは労使が相当努力しなければいけませんが、そういう前提で考えますれば、その見込みはある。しかし四十二年になっても、そういう政府の相当大幅な助成にもかかわらず、やはり大手炭鉱の中で三分の一程度は依然として赤字の状態を脱却しきれないというような姿があることは、御指摘のとおりでございまして、これらについてなお今後に問題は残っているというふうに私も考えております。しかしながら、そういう努力をすることによりまして、一応小康が保てるというように考えているわけであります。ただ遺憾ながら、御指摘の借り入れ金残高はあまり減る見通しはございません。先ほどは三十八年度末、三十九年三月の数字で申しましたが、さらに四十年度末の借り入れ残高の見込みは二千億をこえます。二千五十一億くらいになろうかと思います。さらに四十二年度には二千二百億くらいの借り入れ残高になるのではないかという見通しを持っておりますので、御指摘のように私も決して楽観はいたしません。いたしませんが、先ほど来申しましたような政府の施策、さらにこれは単に四十年度だけでなしに、四十一年度にもさらに政府の助成策は当然加わっていくべきだと思いますし、そういうことを考えますれば、こういう実態にもかかわらず、まあ労使がしっかり努力してくれれば相当な安定は期待できるというふうにも考えております。
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 三十九年度から四十二年度までに調査団答申によれば、千三百億の設備投資をする、こういうのです。一体この金利はどうなるのですか。既往の債務については三%の利子補給ということが政府関係の金融機関については行なわれるわけです。この今後の資金についてはどういう状態になるか。
  34. 井上亮

    井上政府委員 ただいま政府がとっております利子補給は、御指摘のように政府関係金融機関からの借り入れ残高、そういう旧債に対して適用するということでございまして、今後の分につきましては、目下のところ利子補給の政策はないわけでございます。したがいまして、それは当然企業努力によりまして吸収し改善していくという以外に、いまのところ手段がないわけでございます。
  35. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 最初から利子を負担するという金の部分ですね、制度があれば別として。これはまたあとからお聞きいたしますが、既往の分については利子補給をしてやる、しかしいままででも二千億、いまから千三百億ほど要るのだ、これについては利子補給は考えておりません、こういうことでは政策は後手後手といっているではないですか。政務次官、どういうようにお考えですか。これは政策が後手後手といって、全く見通しのない、しりぬぐいのような政策ばかりしている。だからスクラップ対策は何とかいっているわけですがビルド対策はさっぱりいってない。こういう状態ですよ。新鉱開発といいましてもあまり成功していませんね。この前も私は総理に質問をしたのですけれども、ある企業で新鉱開発が失敗しますと、その企業体全体があぶなくなるのです。現実に新鉱開発をして二十億とか三十億投じて、それが全然失敗に終わっておる、ですからその企業体が経営が非常に苦しくなった、こういう例は相当あるんですよ。しかるに、将来のことは利子補給を考えていない、既往の分については何とか考えてやる、こういう政策では私は見通しのある政策とは思えぬわけですが、一体どういうようにお考えですか。
  36. 岡崎英城

    ○岡崎政府委員 ただいまの先生の御意見、われわれといたしましては大いに考慮いたしていかなければならない問題かと思いますが、このたびの措置法等の改正によりまして、新しい炭鉱を大いに奨励し、全般の問題についても大いに深甚な考慮を払いまして、全般的にバランスのとれた力強いものになってまいりますように努力いたしたいと存じておる次第であります。  利子補給その他の点につきましては局長からお答えさせますが、われわれの気持ちといたしましては、この措置法の改正を基礎にいたしまして、将来も希望のある体制に持っていこうと鋭意努力いたしておる気持ちを御了承いただきたいと存じておる次第でございます。
  37. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しからば今度法律で出ております新鉱開発の資金、従来からある近代化資金、それらをあわせて一体どのくらいの利子になるのですか。市中銀行、自己資金——自己資金といいましても市中銀行から借りることを考えると、新鉱開発でどのくらいの金利になって行なわれればペイをするとお考えですか。
  38. 井上亮

    井上政府委員 先ほどもお答えをいたしましたが、三十八年度末で千五百億、それから四十年度末になりますと、これは四十一年三月になりますが、二千五十一億、二千億の大台をこえる借り入れ金をいたすことに相なるわけでございます。この設備投資につきましては、私ただいま計算しておりませんが、おそらく七割は政府関係資金であろうと思います。三割が自己資金なり市中金融機関からの借り入れということになると思いまして、利子の計算につきましては、政府関係の資金につきましては、合理化事業団の近代化資金は御承知のように無利子でございますけれども、開銀資金は六分五厘、市中は九分台ということになろうと思います。これを今度の新しい四十年度以降の姿で申しますと、大体平均金利といたしましては四・三%、これは無利子があるものですから非常に低くなっております。(多賀谷委員「新鉱開発の場合ですよ」と呼ぶ)新鉱開発につきましては、私ども大体合理化事業団の資金を主体にして考えておりますから、大体四・三%くらいの金利になろうと思います。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その四・三%の金利でやっていけますか。炭鉱が新鉱開発できますか。昔のような方式で斜坑をくって、そうして深部になれば資源を捨てるという方式ならできるのです。しかし近代的にその資源を比較的むだなく採掘するという方式を考えるならば、最初からばく大な投資が要る。ですから国が資源を保護するという見地から考えるならば、これは最初ばく大な投資が要って、その元本並びに金利、償却に相当かかるわけです。これについて一体どういうように考えるのか、トン当りいまの価格でどのくらいが償却と金利のマキシマムと考えるのか、やはりそういう指針を出してやらないと、私企業はやっていけませんよ。とても手を出そうとしない。しかもリスクがあるでしょう。それは成功した場合の話です。アラビア石油のように成功すればこれはいいかもしれぬけれども、成功しない場合がある。成功しない場合には、先ほど申しましたように、企業全体が非常な危機に見舞われる。しかし成功した場合にしても、はたして金利と償却でトン当たりどのくらいまでの限度で押えれば採算がとれるか、能率はどのくらいと考えたらいいか、どこの山なんて言いませんから、ひとつあなたのほうでいまからの新鉱開発の大体青写真をモデル的に示してもらいたい。
  40. 井上亮

    井上政府委員 なかなかむずかしい質問でございますが、私どもといたしましては、昭和四十年度から原料炭を中心といたしまして相当規模な開発を始めたいという考えでおりまして、本年度の予算につきましても、初年度でございますから金額はわずかでございますが、二十年年賦償還というような非常に有利な合理化資金を投下する道を開こうといたしておるわけでございまして、新鉱開発についてのモデルの勉強もいたしております。  私がいま考えております新鉱開発につきましては、少なくとも年間生産量六十万トン以上の山を想定いたしております。これは具体的な個別の山をさすわけではありません、モデルとしての試算でございますけれども、年間六十万トンの出炭という場合に、能率といたしましては大体七十六トン程度を考えております。これは北海道のある山でございます。北海道のある山で、原料炭の山でございますが、七十六トン程度というふうに考えております。このときの山元原価は三千五百四十六円程度、それに本社費が二百四十六円、金利は、これは高いのですが、三百二十六円というような考え方です。出炭の総原価としますと四千百十八円というようなことで、トン当たり大体百五十円程度の利益があるのではないか……(多賀谷委員「償却はどのくらい見るか」と呼ぶ)償却の詳細な資料はいま手元に用意いたしておりませんが、三千五百円と申しました山元原価の中に含めて考えておるわけでございます。支払い金利で申し上げますとトン当たり三百二十六円……。
  41. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 償却と金利がトン当たりどのくらいであれば、まあまあ経営ができるのか。
  42. 井上亮

    井上政府委員 ただいま申しましたような年間六十万トンの山で、能率七十六トンという想定でいきまして、金利は大体三百二十六円という、これは具体的に一つのモデルに当たっているわけでございますが、それでいきますと、山元手取りとの関係がありますので、私どもの想定では、この山元手取りは今度の炭価アップを織り込んでおりますが、そういたしました場合に損益勘定といたしましては、トン当たり百五十円程度の黒になるのではないかという想定が一つあるわけでございます。ただしかし、この場合に設備投資相当政府がめんどうを見なければいかぬ。私ども近代化資金を大体四二%、開銀が三八%、その他二〇%という程度の政府資金の投入を前提にして、ただいま申しましたような計算を一応いたしてみたわけでございます。
  43. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、いまのモデルでトン当たり何万円くらいになるのですか。投資は一万何千円になるのですか。
  44. 井上亮

    井上政府委員 これは初年度から二年度、三年度ずっといろいろ投資計画を考えておりますが、大体七年間くらい相当投資があるという前提でございます。まず初年度は概数で申しますと四億、二年度が三億、三年度が三億、四年度目が二十五億、五年度目が二十二億、六年度目が十八億、七年度目が十七億、全体で九十一億くらいの投資を予定いたしております。これは六十万トンの出炭をいたします場合です。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それで金利は幾らになるのですか。平均四・三%ですか。
  46. 井上亮

    井上政府委員 先ほど言いましたような設備投資投資の割合、つまり近代化資金、開銀その他、その割合でいきまして、平均金利が四.三%というふうに考えております。
  47. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 トン当たりざっと一万五千円ですね。それで四・三%の金利でやっていかれますか。まあ一応やっていけると計算を立てておられるけれども、これはリスクがないときですね。危険がない、工事も順調である、こういうとき、大体六十万トンの炭鉱で三千五百円ですからちょうど二十一億ですね。九十一億投資いたしまして年間二十一億の売り上げ金しかないのですよ。どうですか、通産政務次官。九十一億、約百億近くも投資して、年間の売り上げが二十一億しかない、こういう企業が一体採算ベースに乗るでしょうか。もうあとはしろうとが考えてもわかるでしょう。百億近い投資をして二十一億しかないのですね。半期十億。私の計算は違いますか。
  48. 岡崎英城

    ○岡崎政府委員 少し専門的な点でございますので、石炭局長からお答えを申し上げます。
  49. 井上亮

    井上政府委員 私の説明が舌足らずであったわけでありますが、先ほどお答えいたしましたトン当たり百五十円の利益が出るというモデルの計算は、これは六十万トンの計画が達成した以後の計算でございまして、それまで到達いたしますのにまず七年はかかるという想定でございますので、その間はやはり収益というものはあがらないわけでございます。しかし、もちろん五、六年目ごろから大体年間二十五万トンないし三十万トンの出炭は出始めると思いますが、少なくとも五年間は先ほど申しましたような設備投資は寝かせることになりますので、企業といたしましては、それは先生指摘のように容易ならぬ決意をもってしなければできないという実態であろうと思います。
  50. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 とにかく常識で考えてごらんなさい。百億投資をして半期に十億しか売り上げがないのでしょう。そんな企業は成り立たないですよ、だれが考えてみても。そうして炭鉱が終わったあと、他の企業のように施設が売れればいいですよ。幾ら金を投じても、坑道に投じたのでは何にもならないでしょう。それから、これを九州でやれば離島ですね。離島なんかに幾ら鉄筋のアパートをつくっても、閉山したときには全く使いものにならぬですよ。これは刑務所にしても費用がかかるし、それから精神病院にしても、とても孤独感に襲われてだれも住まい手がない。こういう企業に銀行が金を貸すわけがないですよ。もとのように斜坑でいって投資を少なくして、資源を捨てればいいというんですよ。そういう採算に合わなくなれば捨てるという覚悟でいけば、炭鉱企業というものは成り立つと思います。ところがいまのように立て坑方式でやって、後退式で払っていくという方式というものは、そのこと自体が企業ベースではないというように考えるわけです。ですから、やはり役所でもやれるのだ、やれるのだと言わないで、金を借りてやる以上はやれないのだ、金のある人が自己資金でやれば別だということをはっきり出せばよい。  それから私の言うように、新鉱開発事業団なら事業団をつくって、そうして成功したらその鉱区の鉱業権者に立て坑と主要坑道だけ貸してやり、そうして益金の中から償却をする、こういう方式をとらないと、幾ら新鉱開発という文書を書いてみても、条文をいじってみても、やれっこないですよ。これはやれないことになっておる。少なくともいまの炭鉱企業ではやれない。どこかでものすごくもうけて、税金で納めるよりも投資してやれという企業があれば別ですが、いまの炭鉱企業でこれだけ自分で借金を負うて、どうしてやれますか。ですからもう少し目先を糊塗しないで、抜本的なものを出すべきですよ。やれっこないですよ。現実にやっておらぬじゃないですか。各企業が積極的に新鉱開発をしておるとは考えられないですよ。今度の北炭の災害だってそうです。北炭ともあろうものが坑道が小さいから大きくせいというような勧告を受けるなんということは、恥ずかしいことですよ。全体として投資が少ないということを意味しておる。いままでの炭鉱は別として、いまからの新鉱開発だけはとてもやれっこない。これはひとつ大臣に質問したいと思いますが、やはり局長は、役所としてやっていけるのだということを言わないで、もうやっていけないのだとはっきり言ったほうがいいと思いますよ。これは全部成功したときの話でしょう。水が出たり災害があったらできないのですから、これが完全に成功したときにやっと七年目くらいからぽつぽつ償却できるのじゃないか、こういうのです。百億投資して半期に十億しか売り上げ代金がない。そのうち一割の益金があっても一億でしょう。百億投資して半期に一億しか益金がないような企業というものは、完全に成り立っていかないでしょう。ですからこれは、やはり現状にとらわれないでもう少し積極的な前向きの方向として検討を加える必要があるのではないか、こういうふうに考えるわけです。これはひとつ大臣が見えましたら答弁を願いたいと思います。  次に、条文にちょっと入っていきたいのですが、今度改正される点についてちょっとお聞きしておきたいと思います。  今度の新鉱開発の貸し付け金のことですが、先ほどお話がありました無利子の金と開発銀行の資金とそれから市中銀行との資金は、割合はどうなりますか。
  51. 井上亮

    井上政府委員 新鉱開発の市中と政府との割合は、先ほどもちょっと申しましたが、制度といたしましては近代化資金を五〇%、半額出そう。それからその他二〇%、残りを開銀というふうに考えております。
  52. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に、「経営の改善に必要な資金の借入れに係る債務の保証」、これは年産五十万トンをこえない規模のものについて、こういうことですが、従来ありました鉱害、退職金の債務保証というのはどの程度行なわれておるか。
  53. 井上亮

    井上政府委員 三十六条の十三にうたっております債務保証でございますが、鉱害関係は従来これは見ておりません。実際の運用といたしましては、整備資金関係のみ運用いたしております。
  54. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 幾らですか。
  55. 井上亮

    井上政府委員 いままで債務保証いたしましたのは、ただいま申しました整備資金関係でございまして、全体としましては四十億七千万円ほど債務保証いたしております。
  56. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 中小は幾らですか。
  57. 井上亮

    井上政府委員 中小については、整備資金の関係についての運用は、ほとんどないのではないかと思います。したがいまして今回の法改正によりまして、今回は中小炭鉱主体に考えたいという意味の改正をお願いいたしておるわけでございます。
  58. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 中小の場合は整備資金が必要ないのじゃなくて、必要があるのだけれども銀行が貸さないのです。合理化事業団が保証してやるといっても貸さないでしょう。ですから今度新しく債務保証を中小企業にやろうといいましても、幾ら実効があるか、実効性を私は疑うのです。いままでも整備資金は中小に貸すことができたのでしょう。中小だって整備資金が要りますよ。退職金だって要りますよ。ところが借りられないのですよ。現実合理化事業団が債務保証をしてやろうといっても借りられない。借りられないのに、ここに中小炭鉱のために債務保証をしてやります、これは整備資金以外のものです、こういってもはたして借りられますか。こう聞いている。
  59. 井上亮

    井上政府委員 これは、従来の債務保証につきましては、いろいろ保証条件等わりあいにシビアな面もあったわけでございまして、私ども今回の法改正によりまして、中小炭鉱について債務保証いたすわけでございますが、その際の条件につきましては、従来と違いまして、相当緩和した姿にいたしたい。したがいまして、先生指摘のように、中小炭鉱が借りにくい、あるいは保証がされにくいというような姿を、大幅に改善して運用してまいりたいというふうに考えております。
  60. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは業務方法書の問題ですか。法律の問題じゃないではありませんか、いまの話は。
  61. 井上亮

    井上政府委員 これは法律の問題としましては、通商産業省令で定める基準に該当するものは、というような問題になりますし、この点はもちろんでございますが、それから業務方法書の問題も当然出てまいります。
  62. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 従来は借りられなかったけれども今度は借りられるというのは、どうも私わからぬわけです。整備資金の場合は中小も借りられたのに、中小はほとんど運用しておらぬという。中小だって金が要るのですよ、しかし現実には、これは中小については発動されなかった条文です。ところが今度の債務保証の分については十分効果があるという、その点がどうもわかりにくいのですがね。
  63. 井上亮

    井上政府委員 いままで保証いたしますときには、当然やはり保証者の立場で、相手方に対して無条件で保証するわけではございません。一定のやはり保証に伴う条件を業務方法書等において明確にうたいましてやっておるわけでございまして、中小炭鉱の場合にはこういった条件を緩和する。さらに付言いたしますと、保証料率の問題につきましても、従来は日歩三厘二毛くらいに相なっております。この保証料率についても、今回中小炭鉱についての保証をいたしますに際しましては、これは引き下げて、大体いまのところ私ども気持ちといたしましては二厘程度——現在三厘二毛でございますが、これを二厘程度に引き下げたいというような改正もいたしたいというふうに考えております。そういったあれこれの緩和措置をとりまして、できるだけ中小炭鉱のこういった経営改善に必要な、これは運転資金でございますが、これにつきまして十分借りられるように指導してまいりたいというふうに考えております。
  64. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私はこの制度が実効あるように運用してもらいたいと思うのです。せっかく制度があっても実行されないという制度では意味がないわけですから、実効あるように運用してもらいたい、こういうように考えるわけです。  そこで次に鉱区の調整です。鉱区の調整について条件が書いてあるわけですが、この程度条件では、新鉱開発をする場合に少し足らないのではないですか。従来よりも、鉱区の調整の面からいえば、いわば前進をした条文になっている。しかしこの程度の条文の改正では、これも実効をあげないのではないか、こういうように感ずるわけです。なぜかといいますと、隣接鉱区であることは、これは当然ですから申し上げませんが、「鉱区の位置形状が鉱床の位置形状と相違するため、若しくは鉱区相互の間の境界が複雑であるため、その鉱床の完全な開発若しくは鉱業の円滑な実施ができないと認められる場合又は鉱床の状態その他の自然条件からみて、その鉱床を一体として開発することが著しく合理的であると認められる場合」こういうことがいわれておるわけです。  そこでお尋ねをしたいのですが、「又は鉱床の状態その他の自然条件からみて、その鉱床を一体として開発することが著しく合理的であると認められる場合」という、これだけの条件でいいですか。私が申しましたこれだけの条件でいいですか。
  65. 井上亮

    井上政府委員 そのとおりでございます。
  66. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはいま申したように、「鉱床の状態その他の自然条件からみて、その鉱床を一体として開発することが著しく合理的であると認められる場合」、これは隣接鉱区であるというのは条件に入るかどうか。当然入るでしょう。それから「鉱区の位置形状が鉱床の位置形状と相違するため、」というのは、これはあとのほうの条件には入らなくてもいいわけですね。
  67. 井上亮

    井上政府委員 お説のとおりであります。
  68. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、結局、要するに自然条件から見て、鉱床のいかんにかかわらず一体として開発することが望ましい、こう考えた場合には該当する、こう見ていいのですか。
  69. 井上亮

    井上政府委員 鉱区調整の問題は、これはいろいろ書いてございますが、要は実行の問題でございまして、これはわりあいに広範に方針をうたっておるわけでございまして、問題はむしろこの条文に照らしまして柔軟性をもって鉱区調整をするというところにあろうかと思います。解釈としては、先生お考えになっていることと違いないと思います。問題は、ややこしく書いてございますが、要するに資源の合理的活用というような見地から見て、鉱区調整したほうが、国全体の資源利用から見ても、また当該企業経営上の改善のためにもいいという場合に鉱区調整をやっていくという趣旨でございます。
  70. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 「ため、」「ため、」というのが出てくるのですね。「鉱区の位置形状が鉱床の位置形状と相違するため、」というのは、「鉱床の状態その他の自然条件からみて、」という点には全然関係ないのでしょう。これは続かないのでしょう。それだけはっきりしてもらいたい。
  71. 井上亮

    井上政府委員 かかりません。
  72. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、現実の問題としては、「鉱床の状態その他の自然条件からみて、その鉱床を一体として開発することが著しく合理的である」という、この「場合」も非常に多いのです。いろいろ書いてありますけれども、技術の問題でなくて、経営として、いま総合開発したほうがいいかどうかのほうが、現実の問題として多いわけです。もう鉱床が入り乱れたりしておるとかなんとかいうような状態でない、経営として一体としてできるかどうかということが一番ポイントですから、そういうふうに書いてあるということならば、そういう意味で運用をしてもらいたい、こういうように思います。  次に、大臣が見えましたが、ちょっと労働省に先にお尋ねいたしたいと思います。  最近、炭鉱離職者の訓練所においても、訓練生がもう老齢化したわけですね。ですから最近は、初期の段階のように訓練生が就職できないのです。こういう問題が起こってきている。若い者を訓練しておったうちは訓練所も非常に成績がよかったわけですが、最近、訓練生が修了する時期になっても就職が非常に困難である、こういう状態になってきた。一体中高年齢者の就職促進の問題とからんでこれらをどうされるつもりであるか、これをお聞きいたしたい。
  73. 有馬元治

    ○有馬政府委員 炭鉱離職者の年齢構成が年々高まっておりますことは事実でございます。したがって、訓練所に現在二千八百名ほど当期の訓練生が、三月末で若干卒業する者もございますけれども、入所しておりますが、これも従来よりも年齢が高くなってきておるのも事実でございます。しかし、訓練修了者の再就職につきまして、多少の困難はありますけれども、就職がうまくいかないというふうな事態はそう私聞いていないのでございます。従来よりやや就職しにくいというふうなことは聞いておりますけれども、最終的には就職できるというふうに判断をいたしております。もし具体的に非常にむずかしいケースがありましたら私どももさらに努力をしたいと思いますが、現在のところはそういうふうな状態になっておるというふうに理解しております。
  74. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ちょっと資料をほかのほうへ置いてきているのですが、炭鉱離職者の総合訓練所の訓練生の年齢構成が非常に高くなっているというので、ごく最近修了する者についてはもうほとんど半数近く見通しがつかない、こういう状態になっているのです。わずかな間に五歳ないし七歳くらい、前の期の生徒よりも年齢構成が高いという状態になってきておる。もう一つ条件は、かなり年齢が高いと遠くに県外就職できない、広域紹介に乗らないという面が一つはある。それは訓練生側の条件にもある。ですから、どうしても地場産業、地元産業の振興というものも考えなければならぬ。若い者はかなり広域職業紹介に乗るわけですが、いろいろな条件で遠くに就職できないという条件が訓練生側にある。単に事業主側が年齢が高いから採らないというだけではない。両方の条件があって、それが非常に就職を困難にしておる、こういう実情のようです。ですから、これらの問題について従来はうまくいったから今度もだいじょうぶだということでなくて、これらに対してどういうようにするか。新しい対策を考え直す必要があるのではないか、こういうように考えるのです。
  75. 有馬元治

    ○有馬政府委員 ご指摘のような事態がおそらく筑豊の総合訓練所に出ておるのではないかと思いますが、私も詳細まだ報告を受けておりませんので先ほど申し上げましたようなことしか御答弁できませんけれども、さらに調査をいたしまして、訓練生のみならず、一般の離職者、滞留離職者が高年齢化しておりますので、御指摘のような広域紹介が一般的に非常に困難になりつつある、そういう事態に対処いたしまして、さらにことしは一段と再就職の促進を従来以上にはかっていかなければならぬ、こういうふうに考えております。   〔壽原委員長代理退席、有田委員長代理着席〕
  76. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 要するに訓練生の老齢化によって、たとえば飯塚の総合訓練所でも、訓練生が昨年は四十歳、ことしは四十六歳になっている。たとえばブロック建築でも三十一人の平均が五十一歳。塗装で五十歳。これは平均ですよ。こういう状態になってきておるわけです。ですから、もう就職が非常にむずかしい。現実に今度卒業するのが百十名も就職できない、もう修了するというのに。こういう状態ですから、これは制度としても考えるというのは非常にむずかしいんですけれども、いまの制度の中では積極的に就職先を見つけてやるということが必要ではないか、こういうように考えるわけです。  そこで今後スクラップ計画を、千二百五十万トンを千七百五十万トンに引き上げるわけですが、労働省のほうは雇用対策というのはだいじょうぶですか。
  77. 有馬元治

    ○有馬政府委員 石炭産業の全体の合理化に即応いたしまして、私どものほうにおきましても、離職者の再就職計画に万全を期していくという考え方で対処してまいりたいと思います。
  78. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 最近における高松炭鉱の施業案をめぐっての問題、あるいは三菱美唄の閉山という問題、これは閉山するかどうかはわかりませんが、労働省に対しては一体どういう連絡があったのか。この合理化法の一部改正をした場合も、あるいは炭労の政転闘争においても、要するに労働省下の再就職計画というものが樹立しない以上は解雇してはならぬという問題をめぐって、国会の中でも非常に論議をされたわけです。その結果、合理化計画を立てる場合には、労働省のほうも再就職計画を立てていくんだ、こういうことになっておる。どうもあなたのほうはつんぼさじきに置かれておるんじゃないかという感じがするんですが、どうですか。
  79. 井上亮

    井上政府委員 ただいま御指摘の三菱美唄の問題につきましては、新聞には一応閉山かというような記事が出ておりましたが、実際はまだ三菱鉱業自体におきまして閉山という決意をいたしておりません。目下、三菱鉱業といたしまして、非常に赤字の多い三菱美唄の山にどのように対処していくかということで検討中でございます。  ただ、もう一つ指摘のありました日炭高松の問題につきましては、これはまだ円城寺調査団の答申も出ないわけでございますので、日炭側といたしましても、まだ具体的に自己の再建計画と申しますか、今後の方針について最終態度をきめておりません。むしろこの調査団の答申を待って、そういった上に判断を加えていきたいという態度でございまして、具体的にどうするということを政府としても検討はいたしておりますけれども、まだ見通しは立たない現状でございます。ただ相当な問題でございますので、労働省とも、私どもは本件につきまして十分実情についての調査、打ち合わせばいたしております。円城寺調査団が行かれましたときにも、労働省にも御協力をいただき、その後におきましても打ち合わせをいただいております。しかしまだはっきりした方針が打ち出されたわけでございませんので、具体的な再就職計画案というようなことは、まだ時期が早いんではないかというような見解でおるわけでございます。
  80. 有馬元治

    ○有馬政府委員 先生指摘のような御心配は、いままでのところあまりないと思います。いろいろ合理化計画が修正されたり、あるいは、たとえば日炭高松の問題が起こりつつあるときには緊密な連絡をいただいておりますし、それに基づいてわれわれの立場で通産省にもいろいろ要求をいたして、そこで調整された結果が円城寺調査団の報告等にもなってくるわけでございますので、連絡が不十分だ、緊密でないというような御指摘がございましたけれども、決してそうではないというふうに私ども考えております。
  81. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 われわれとしても、その企業実態から見ればやむを得ない、他に方法がないという場合もありますし、それかと思うと、企業からいえば少しぜいたくじゃないか、こういう場合もある。もう少し労働者のことを考え、再就職計画を十分立てた後に解雇をしても、その企業全体としてはやっていけるんじゃないか。どうも企業家は社会的責任を十分感じていないんじゃないかという気持ちのする場合もあります。いろいろなケースによって違うわけですから、後者のような場合に、労働省としてはき然とした再就職計画がないわけですから、場合によっては順次解雇をするとか、いろいろ方法を考えて、そういう法律が考えておりました趣旨に沿って運用していただきたい、こういうようにお願いをしておきます。  それから最後に事務的な問題ですが、現実に請負夫、組夫を入坑さす、あるいは鉱山において使うことは、災害の多い鉱山においてはむしろ禁止すべきであるとわれわれは主張をしてまいったのです。現実組夫が一般の常用者に比べて二倍からの災害率を示しておる。大体組夫の災害が起こるというのがふしぎなんです。組夫は大体そういう災害の起こる個所に行くようになっていない。本来、組夫採炭個所におったりすること自体おかしいのです。それは開発しておった場合に、たまたまガス爆発等があって、その影響を受けて死んだという場合もありましょうけれども採炭個所で落盤で組夫が死んだということは、組夫を本来禁止されておるところに使っておるという証拠なんです。現実には組夫については十分な教育も行なわれていない。そして安い賃金で使うということだけで、十分教育もしない組夫を使うというのはぜひ禁止したい、こういうように考えるわけです。しかし現実には組夫がおるわけです。——現在組夫は、合理化法による閉山をした場合に、何ら恩恵を受けないのです。一般労働者は離職金を受ける。その離職金は基準法の定める平均賃金の三十日分と退職加算金があるわけです。ところが、組夫はそのようなものは全然もらわない。役所の取り扱いとしては雇用関係がないということだけで、少し形式的過ぎるんじゃないか。と申しますのは、労働省のほうは黒い手帳を発行して炭鉱離職者として扱っておるでしょう。通産省のほうは、それは採掘権者あるいは租鉱権者が直接雇用していないということで、これはいわば炭鉱労働者でないということで離職金を出さない。これはたびたび質問をしておるわけですが、依然として解決をしない。ことに終山近くになるほど組夫が多い。これは従来の労働者の雇用を維持するために、逆に組夫によって補てんをしておるという状態ですから、山が終山近くなるに従って組夫が多いという形になっておる。ですから筑豊の老朽山等においては相当組夫がいる。これは筑豊だけでなく、全国的に組夫がふえておるわけです。通産省としては、組夫については、少なくとも一般の労務者並みに離職金だけはおやりになったらどうかと思うのです。これは国が出すわけです。雇用主が出すわけではない。従来炭鉱の作業に従事してきたものですから、これは当然一般労働者並みに扱うべきである。かように考えるのですが、ひとつ所見を承りたい。
  82. 井上亮

    井上政府委員 組夫の問題につきましては、私どもも、これを通常組夫を使うべき工事以外の個所において組夫を使用することは、やはり石炭政策上から見て非常に問題があるというような趣旨からいたしまして、二年ほど前に、先生承知のように、合理化法を改正いたしまして、請負夫を使用いたしますときには通産大臣の承認を必要とするというような措置を講じたわけでございまして、以来私どもはこの線に沿いまして、組夫使用の制限を実施してまいっております。今後ともそのようにやってまいりたい。  それからお尋ねの第二の点につきまして、山が閉山いたしましたときに、常用、在籍労務者については離職金の恩典がある、あるいは加算離職金の恩典がある。組夫についてはそれがない。これは実情から見ていかにも片手落ちではないか、また気の毒ではないかというようなお説でございますが、私どもも一応御趣旨はよく理解いたします。ただ、先生も御承知のように、請負夫、組夫はなかなかその実態が千差万別でございます。先生のおっしゃっている意味は、おそらく一身専属的に在籍労務者と同じような形態の組夫についておっしゃっておられるのだろうと思いますが、いわゆる請負夫の中には、やはり建設会社に所属する組夫もございます。したがいまして山が閉山いたしましても直ちに失業ということにはなりません。これはただ、もしその山が仕事がなくなれば他の山で仕事をするとか、あるいは他の土木工事をやるというような形態の請負夫、組夫もあるわけでございまして、一がいにこれを定義づけることはなかなか困難だというような意味合いで、現行法におきましては、在籍労務者という解釈で運用をいたしておるわけでございます。ただお説のような点につきましては、私ども今後十分検討して、非常に不公平だというそしりを免れないような措置を考究し、かつ善処してまいりたいというふうに考えております。
  83. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは実は法律的に申しましても、ちょっと矛盾した面があるわけです。現実とわれわれの希望と違うわけですね。建設関係に従事しておるような者、そうしてその仕事が終わったら次の仕事につく、こういうものを言っておるわけじゃないのですよ。山と運命をともにする、いまおっしゃいました一身専属的なものを言っておるわけです。ところが、法が規制をしておりますところに組夫が入るのですね。法では使ってはならぬという個所に組夫現実におるのです。そこであなたのほうで届け出を出せ、こう言いまして、出さないかもしれませんよ。そこに使うことになっていないのですから。そこで私は、質問をしておっても矛盾を感ずるのです。しかし現実には労働者がいるわけですね。そうしてそれが閉山とともにほうり出されるわけです。労働省のほうは、これは炭鉱に従事したのだというので炭鉱労働者として扱ってもらえる。ですからそれは離職者になる。労働省のほうはその点さすが労働省だと思うのですが、一緒に扱ってくれるのですが、通産省のほうは、国が出す金をなぜ常用並びに在籍鉱員だけに限るのかということが非常に疑問なんですね。自分の政策の悪いことが暴露されるから防いでおるような感じもするんですよ。実際を言うと、そこは使うことになっていないのですね。それがおるわけですから、矛盾をさらに重ねるという気持ちもあるかもしれませんけれども、しかし条文で申しますと、申請の日前三カ月以上引き続き従事した鉱山労働者ということになっておる。ですから、国の立場から見れば、組夫であろうと在籍鉱員であろうと、引き続き炭鉱の仕事に従事した労働者には変わりないのです。ですから法律の改正は要らないと思うのです。運用でいいと思うのです。したがって国の立場から見れば、組夫であろうと直接雇用の者であろうと同じように扱っていくのが至当ではないか、こういうように考えるわけですが、ひとつ大臣から御答弁を願いたい。
  84. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいまお話を聞いておりまして、離職をした場合に労働省のほうは離職者手帳の交付をする。そういう点から論拠が始まっておるように承りました。私も詳しい事情はわからないのでありますが、一身専属的に当該鉱山に従事をして、そして離職者手帳の交付を受けた、こういうような者については在籍労務者と同様の取り扱いを行なうように当然検討すべきじゃないか、こう私は思いますから、一ぺん研究させていただきます。
  85. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういうようにいたしますと、移動等についても激しくなくなるし、この組夫自体が安定をする、こういうように思います。そして逆の面から言えば、それが規制になる、かように考えるので、ぜひお願いをしておきたいと思うのです。  最後にビルドについて、大臣から所見を承りたいのですが、先ほど石炭局長質問をいたしまして、一体役所で考えるビルド山というものは、どのくらい新鉱開発に経費が要るのかということを聞きましたところが、確実にどこの山という指摘はなかりたわけですけれども、それはもちろん役所ですから、ある山を想定しておられると思いますけれども、モデルとしてたとえば六十万トンの炭鉱をつくるため九十一億要る。それは七年間大体投資をして、七年後にやっと軌道に乗る。そうしてそれが三千五百円程度の山元の価格になる。近代化資金あるいは開発銀行の資金、市中銀行その他合わせて大体金利は四分三厘になる。これで何とかいくんじゃないかという話があったわけです。しかし九十一億投資をして、六十万トンですから、大臣、ざっと計算されて年間二十一億でしょう。そうすると半期に十億ですね。これで一体、九十一億も七年間投資をして、その七年間の間に利子がかさむのですよ。利子がかさんで、売り上げ金が半期にたった十億しか出ないような炭鉱企業というものが、一体成り立つかというのです。昔は炭鉱は斜坑をうがって、手っとり早いところから掘って深部に入っていった。ですから深部を、もう採算が合わなくなれば資源を捨てるのだという考え方であるならば、いまでもできるでしょう。いまの炭鉱方式でも私はできると思う。しかし、立て坑を打って、主要坑道をつくって、かなり資源を掘り尽くそうとするならば、最初から投資が要る。いわゆる近代的な炭鉱にするには最初投資が要る。そうすると金利と償却で相当のものですね。しかも、これは完全にうまくいったときの話ですよ。ところが、先ほども私が申し上げましたし、また総理大臣のときにもちょっと質問をしたわけですが、戦後開発された炭鉱で、相当失敗をしておる炭鉱がある。総理大臣が通産大臣のときにみずから筑豊において、この炭鉱だけは残るといって入った田川の伊加利坑も、これはスクラップです。あるいは住友炭鉱がやった秋吉炭鉱というのも、これも十数億金をかけたのですけれども、三十八年に竣工して、三十九年には閉山ですよ。それから明治がやりました庶路炭鉱も、二十二億も金をかけて、そうして三十二年から開発をして三十七年に終わって三十九年に閉山、それから香焼炭鉱も、十四億も投資をして、そうして三十二年に開発を始めて、三十七年に竣工して、三十八年に閉山。とにかく、こういうように、炭鉱企業というのは非常に危険性がある。ですから新鉱開発をやろうと思っても、その新鉱開発で失敗をしたら、本体まであぶなくなるのです。現実にあぶなくなってきておるのです。ですから、これで一体私企業でやれるかというのですよ。幾ら条文を変えて新鉱開発をするといって調査団が書きましても、こんなあぶない仕事をだれもやりませんよ。こういう状態になっておる。しかも、先ほど申しましたように、約百億の投資をして、半期に十億しか売り上げ金がない。益金じゃないのですよ。ですから少なくともいまのような方式ではできないんじゃないですか。ですから私は、通産省としては一体将来やっていけるかどうかということを十分考えて、そしてやるとするならばどういう方式でやらなきゃならぬか、こういうものを出すべきではないか。新鉱開発でいまの炭鉱がやれるんだというような認識は私は誤りではないか、こういうように思うのです。ですからひとつ通産大臣としては、いますぐとは言いません、これは長い間の懸案ですから、やはり根本的な問題を考えられる必要があるのではないか、こういうように考えるわけですが、ひとつ御所見を承っておきます。
  86. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいま多賀谷委員がお示しのような事例で考えていきますと、私もすんなりとその御意見は承らなきゃならぬと思います。  ところで、この新鉱開発に対して今後開発資金を出すという場合に、具体的には南大夕張であるとか日鉄有明とか、そういう場合がございますね。そのほかにも、私も詳しくは聞いたことがないのですが、ここにA、B、C、D、E、F、GH、Iというようなふうに事例があがっておって、そして開発資金を出す場合はこうなるというような一応の表があるのです。それで、その表の上から考えていく場合には、見当はつくじゃないか、こういうように、私はこの法案を出す場合には、あまり知識がないほうでございますが、そういうものじゃないかというような一応の見地で御審議をわずらわしておるのでありますが、特にこの際所見を申し上げれば、原料炭の新鉱開発、こういうことになれば、申し上げるまでもなく、鉄鋼やガス業界の需要も相当活発でございますし、また国外から相当購入をしておるという事実もございます。したがって、これは相当国が犠牲を払ってもやるべきではないか、こういうふうに考えるのであります。  ところで、将来の経営のやり方はどうか。これはいま多賀谷委員もおっしゃるように、よく研究せいと言われることで、にわかに即断できかねるわけでございますが、しかし従来二回にわたり有沢調査団が、四十二年度を目標にしての自主経営ということで、五千五百万トンという目標を立て、また最近では、今回五千百何十万トンとかいう計画が出ましたけれども、五千二百万トン見当で四十年度はいくべきだというようなことが答申にも出ておったわけであります。しかしこれらのことは、いずれも四十二年を目標にして自主経営のできるように持っていこうという、そういう理想図に向かっておると思うのであります。しかし、これが最近のようにいろんな事情から、はたしてそのとおりいけるかどうか、おまえ確信があるか、こう言われれば、私としては、ベストを尽くすということで、はたしてその答申どおりにいけるかどうかというところにはやはり若干の疑問があろうかと思います。
  87. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 日本は全体として金利が高いでしょう。そして自然条件もそうよくないですね。ですから私は政府はもう少し考えるべきじゃないかと思うのです。ほんとうに意欲を燃やして炭鉱を開発しようという会社がどのくらいありますか。手を引きたいという会社のほうが、どっちかといえば多いのですよ。いま申しましたように、だれが常識的に考えても、いま投資をしてそんな売り上げの少ない——益金は別としても売り上げ自体が少ない、しかも投資まで懐妊期間が長いでしょう。七年も八年も軌道に乗らないような工場はありません。ですから、そういった全体的に見て、もうベースに乗らないんじゃないかという気持ちがあるのです。ですから経営を私企業でするというなら、私はむしろ新鉱開発事業団か何かにして、そうしてそれが成功した場合には、鉱区の鉱業権者にその経営をやらすという方式でもいい。しかしいまのままで幾ら金を少しつけてやりますよといっても、いまお話があったように、幾ら政府が見てやってもやはり四分三厘という利子になる。ですからこれはほんとうに政府は考えなければ、とても口では言ってもビルドというのは不可能ではないか、こういうように考えるわけです。これは政府が考えなければ、企業家は考えません。ですから全体的なエネルギー政策として根本的に考えてみる必要がある。しかも、この前も話しましたように、開発が軌道に乗るのは十年ないし二十年かかるわけです。ですから政府としてもひとつ十分検討をして、すみやかに方向を出してやるということが必要である、かように思うわけです。最後の所見を承って質問を終わりたいと思います。
  88. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 多賀谷委員の御意見はしばしば承っておるところでございます。したがって、適切に疑問点をおつきになっておられることもよく承知しておりまして、今回炭価の引き上げ、利子補給制度をとりましたが、この利子補給につきましても、過去のものから今後借りるものについても考えなければならぬ状況が出てくるんじゃないかというようなことも私の頭にございます。したがって、多賀谷委員の御意見を尊重いたしまして、十分検討させていただきたいと思います。
  89. 有田喜一

    ○有田委員長代理 これにて本案に対する質疑を終局するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 有田喜一

    ○有田委員長代理 御異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  91. 有田喜一

    ○有田委員長代理 これより討論に入るのでありますが、別に討論の通告もありませんので、直ちに採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  92. 有田喜一

    ○有田委員長代理 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 有田喜一

    ○有田委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  94. 有田喜一

    ○有田委員長代理 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十九分散会