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1964-03-25 第46回国会 参議院 予算委員会第一分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十五日(水曜日)    午前十時三十七分開会   ————————————— 昭和三十九年三月二十四日予算委員長 において、左のとおり本分科担当委員 を指名した。            井上 清一君            大谷藤之助君            木村篤太郎君            木暮武太夫君            後藤 義隆君            郡  祐一君            山本  杉君            加瀬  完君            亀田 得治君            米田  勲君   —————————————   委員の異動  三月二十五日   辞任      補欠選任    米田  勲君  瀬谷 英行君   —————————————  出席者は左のとおり。    主査      加瀬  完君    副主査     山本  杉君    委員            井上 清一君            大谷藤之助君            木村篤太郎君            木暮武太夫君            後藤 義隆君            郡  祐一君            亀田 得治君            瀬谷 英行君   国務大臣    法 務 大 臣 賀屋 興宣君   政府委員    内閣官房長官  黒金 泰美君    宮内庁次長   瓜生 順良君    皇室経済主管  小畑  忠君    法務大臣官房経    理部長     新谷 正夫君    法務大臣官房司    法法制調査部長 津田  實君    法務省刑事局長 竹内 壽平君   最高裁判所長官代理者    最高裁判所事務    総局事務総長  関根 小郷君    最高裁判所事務    総局総務局第一    課長      長井  澄君    最高裁判所事務    総局経理局長  岩野  徹君    最高裁判所事務    総局家庭局長  細江 秀雄君   説明員    会計検査院事務    総局事務総長  上村 照昌君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○主査及び副主査互選昭和三十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————   〔年長者木村篤太郎主査席に着く〕
  2. 木村篤太郎

    木村篤太郎君 それでは、ただいまから予算委員会第一分科会を開会いたします。  本院規則第七十五条によりまして、年長のゆえをもちまして、私が正副主査選挙管理を行ないます。  これより正副主査互選を行ないますが、互選は、投票によらず、選挙管理者にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 木村篤太郎

    木村篤太郎君 御異議ないと認めます。  それでは、主査には加瀬完君、副主査には山本杉君を指名いたします。よろしくお願いいたします。   —————————————   〔加瀬完主査席に着く〕
  4. 加瀬完

    主査加瀬完君) ただいま皆さま方の御推薦によりまして、私が主査をつとめることになりました。御協力をいただきまして、本分科会の運営を行ないたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  それでは、審査に入ります前に、議事の進め方についておはかりをいたします。  本分科会所管は、昭和三十九年度一般会計、同特別会計、同政府関係機関予算中、皇室費国会裁判所会計検査院内閣及び総理府のうち、防衛庁、経済企画庁、科学技術庁を除く部分、及び法務省並びに他の分科会所管に属しないものを審査することになっております。議事を進める都合上、主査といたしましては、本日午前、皇室費及び会計検査院、午後は法務省及び裁判所、明二十六日は午前に国会、午後は内閣及び総理府という順序で進めていきたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 加瀬完

    主査加瀬完君) 御異議ないと認めます。  なお、来たる二十七日午後、開会する委員会主査の報告を行なうことになっておりますので、御了承願いたいと存じます。  それでは、昭和三十九年度予算中、まず、皇室費議題とし、説明を聴取することにいたしたいと存じます。小畑皇室経済主管から御説明を願います。
  6. 小畑忠

    政府委員小畑忠君) 昭和三十九年度皇室費歳出予算について、その概要を御説明いたします。  本歳出予算に計上いたしました金額は、二十三億三千八百五十九万六千円でありまして、その内訳は、内廷費六千八百万円、宮廷費二十二億四千七百六十四万六千円、皇族費二千二百九十五万円であります。これを前年度予算に比較いたしますと、十四億二千四百二十三万六千円の増加となっております。  そのおもなものについて、事項別に申し述べますと、内廷費は、皇室経済法第四条の規定に基づき同法施行法第七条に規定する定額を計上いたすことになっておりますが、本年度は、前年度に比較いたしまして八百万円の増加となっております。これは、内廷費定額六千万円を本年度において六千八百万円に増額改定することを予定いたしていることによるものでありまして、これに伴う皇室経済法施行法の一部改正法律案は今次国会提出いたし、御審議を願うことになっております。  宮廷費は、内廷費以外の宮廷に必要な経費を計上いたしたものでありまして、その内容といたしましては、皇室の公的御活動に必要な経費四千八百五十二万円、本年度より本体工事に着手いたします宮殿の新営及びこれに関連する施設等に必要な経費十五億二千六百五十九万三千円、皇居東側地区整備に必要な経費一億五千二百六十五万六千円、皇后陛下還暦記念ホール建設に必要な経費九千二百十二万一千円、その他皇室用財産管理等に必要な経費四億二千七百七十五万六千円でありまして、前年度に比較いたしますと、約十四億一千四百万円の増加となっております。なお、宮殿の新営につきましては、別に国庫債務負担行為として十億五千四百二十四万五千円を計上いたしております。  皇族費は、皇室経済法第六条の規定に基づき、同法施行法第八条に規定する定額によって計算した額を計上いたすことになっておりますが、前年度より一百八十万円の増加となっております。これは、内廷費と同様に定額改定を予定いたしておりまして、年額算定基礎となる定額四百七十万円を、本年度から五百十万円に増額改定することによるものであります。これに伴う改正法律案は今次国会提出いたし、御審議願うことになっております。  以上をもちまして、昭和三十九年度皇室費歳出予算概要説明を終わります。よろしく御審議あらんことをお願いいたします。
  7. 加瀬完

    主査加瀬完君) それでは、ただいまの説明に対しまして質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  8. 山本杉

    山本杉君 ただいま御説明のございました内廷費六千八百万円で八百万円の増加ということでございますが、そういうこまかい内訳については、これは皇族費も同じでございますが、御説明はいただけないのでございますか。
  9. 小畑忠

    政府委員小畑忠君) 内廷費及び皇族費は、定額によりましておきめをいただくというふうなことに相なっておりますが、その基礎的な考え方につきまして御説明を申し上げますと、内廷費は、その内容といたしまして、内廷諸費と申しまして、内廷陛下をはじめ御方々の御交際、御服、お身回り等関係内廷諸費という部面と、それから御食事、御旅行等の物件的な御経費と、それから職員内廷の中におりますけれども、それの給与費相当する部面と、大体大きく三つにわかれておりますが、給与費につきましては、昨年度改定をいただきましたけれども、内廷費物件費につきましては、一昨年から改定をいたしておりませんので、内廷費物件費につきましては、その部分につきまして消費者物価指数値上がり等を勘案いたしまして金額を勘案いたしておりますし、給与費につきましては、一般公務員値上がり等と同様な考え方によりまして、六・七%程度値上がりを考えまして、この金額を出したということに相なっておる次第でございます。同様に、この皇族費につきましても、生活諸費的な人件費以外の日常の御経費部面と、やはり宮廷の宮家の雇い人に対します給与だとか、あるいは賄料その他の人件費的な部面がありますので、この人件費につきましては、一般公務員同様六・七%の増加を考えております。  生活諸費につきましては、これは昨年改定をお願いいたしましたので、昨年と今日との間の消費者物価指数値上がり等を勘案いたしまして基礎金額を考えました次第でございます。
  10. 山本杉

    山本杉君 ただいまの御説明でたいへんよくわかりましたが、この内廷費の中に職員給与というものがあるということを言われましたが、これは宮内庁のお役人とは違って特別なものなのでございますか。
  11. 小畑忠

    政府委員小畑忠君) この内廷費人件費部面でございますけれども、おもなものは神祇関係掌典、あるいは掌典と同じように神祇を司っております女子の内掌典という方々、それから御生研の関係のことをお手伝いしております職員というのが大体二十五名ばかりおりますので、その関係給与でございます。
  12. 山本杉

    山本杉君 今度義宮様が御結婚になるのでございますが、そういう費用はどこに入るのでございますか。
  13. 小畑忠

    政府委員小畑忠君) 義宮様の御婚儀関係でございますけれども、御婚儀のうちで純粋の御婚儀あるいは一般の御披露関係につきましては、義宮様の御地位の点もございまして、一部公事的な事柄といたしまして、規模等がきまりますれば、宮廷費で一部お願いすると、こういうふうに考えておりますし、純粋内廷的な部面につきましては内廷費でもってまかなう次第でございますけれども、これにつきましては、特に内廷費の増額というふうなことはただいまのところは考えておりませんですが、内廷費的な部面につきましては、内廷費で支弁いたすということに相なる次第でございます。
  14. 山本杉

    山本杉君 少し違う問題でありますけれども、この間私岡山にまいりまして、いろいろ話を聞かされてきたのでございますが、あの池田家に御降嫁になりました池田夫人入院していらっしゃるのに、初めは一人部屋でなかったような話をしておりましたが、まあ御降嫁になるときに相当なものをお持ちになったはずだが、これは宮内庁としてはもうかかわり知らないことであるとおっしゃるかもしれないと思いますけれども、使えないようになっているのだと言う人も、使ってしまったんだと言う人もございますが、こういうことについて少しお聞かせ願いたいと思います。
  15. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この池田様の御降嫁の際にある程度お持ちになったものについて、これはやはり全部お使いになっているようには聞いておりません。やはり相当蓄積もして運用されております。なお、まあああいうふうに御入院になりました際には、親御さんとして天皇陛下からもお見舞の点もいろいろ御心配になりまして、十分御療養になったことと拝察しております。
  16. 山本杉

    山本杉君 入院費であるとか、そういったものを県と市とでお見舞いとして差し上げなければならなかったように聞いてまいったのでありますが、そういうことございますか。
  17. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 県や市のほうでもお見舞いという意味である程度のことをお考えになったように聞いておりますけれども、親御さんの両陛下のほうからも相当なすっておりますので、ですから、皆さんのつまりお見舞いで十分御療養ができたというふうに思っております。
  18. 山本杉

    山本杉君 その程度のことを伺っておりましたのではよくわからないのですけれども、私どもの常識として、天皇のお姫さまでいらっしゃる方が御降嫁になって、民間常識から、いろいろ言われるというふうな状態でいらっしゃるということは、どういうものかなあと思うのですけれども、これに対していかがでございますか。
  19. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 両陛下とされましても、お子さんということでございますですから、いろいろ御心配になって、そういう場合のお見舞いとかいうのは内廷費の中でなさるわけで、いわゆる皇族でございますと皇族費とか、そういうのがございますけれども、皇族ではありませんので、いま内廷費の中でそういうお見舞いなんかをなさっておりますから、そう十分とは申し上げかねますけれども、相当のことはなすっておりますので、まあ皇族であられるほどは十分にはいきませんでも、そのあたりの御配慮は内廷費の面を通じてなさっておると思います。
  20. 山本杉

    山本杉君 御病気のお見舞いのことはよくわかりますけれども、日常の御生活に対してはどうなんですか。
  21. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 日常の御生活に対しましては、特にその内廷費をお出しになるというようなことではございません。これはまあ内廷費が、内廷におられる方の日常の諸経費というふうになっておりまして、したがって、天皇皇后陛下、皇太子、同妃殿下、義宮さん、浩宮さん、そういうような方の日常の諸経費ということになっておりまするから、したがってお子さまでも皇籍を離れられた方は、独立して、普通の民間人としての御生活をなさっておりまして、内廷費からその生活を見るというたてまえになっておりません。しかし、池田さんにつきましては、地元のほうでも後援会なんかもおつくりになって、いろいろ側面的には力をつけるようにしておられますので、御生活の実情は、そう高い御生活ではありませんけれども、まあそうお気の毒というような状態ではないとわれわれは聞いております。
  22. 加瀬完

    主査加瀬完君) ほかにございませんか。他に御質疑のおありの方はございませんか。——それでは以上をもちまして、皇室費に対する質疑は終了したものと認めます。   —————————————
  23. 加瀬完

    主査加瀬完君) 次に、会計検査院所管議題とし、まず説明を聴取することにいたします。上村事務総長
  24. 上村照昌

    説明員上村照昌君) 昭和三十九年度会計検査院所管歳出予算について御説明申し上げます。  昭和三十九年度会計検査院所管一般会計歳出予算要求額は十億八千七百十六万二千円でありまして、これは、会計検査院日本国憲法第九十条及び会計検査院法規定に基づいて会計検査を行なうために必要な経費であります。  いま、要求額のおもなものについて申し上げますと、職員千二百十二人分の俸給給与手当等として八億八千八十九万一千円を計上いたしましたが、これは総額の八一%に当たっております。職員を現地に派遣し実地について検査するための旅費として八千三百六十一万三千円を計上いたしましたが、このうちには沖繩援助費及び海外移住事業団実地検査を実施するための外国旅費二百三十四万一千円が含まれております。事務上必要な備品、消耗品通信運搬印刷製本光熱水料等庁費関係経費として五千九十三万一千円を計上いたしました。庁舎施設関係経費といたしまして、前年度に引き続き庁舎増築工事費を三千六百三十六万五千円計上したほか、庁舎外壁タイル張り改修工事費として三千十三万三千円を計上いたしました。  なお、検査を強化するため、参事官一人、上席調査官三人、調査官十六人の増員と、上席調査官二人の振りかえ設置を計上いたしました。  次に、ただいま申し上げました昭和三十九年度歳出予算要求額十億八千七百十六万二千円を前年度予算額九億七千八百三十四万四千円に比較いたしますと、一億八百八十一万八千円の増加となっておりますが、その内訳について申し上げますと、職員俸給給与手当等において七千四百七十七万八千円、実地検査旅費において二百二十一万二千円、庁費関係経費において五百九十万三千円、その他、庁舎増築等経費を合わせまして二千五百九十二万五千円となっております。  以上、はなはだ簡単でございますが、昭和三十九年度会計検査院所管一般会計歳出予算要求額概要の御説明を終わります。よろしく御審議のほどお願いいたします。
  25. 加瀬完

    主査加瀬完君) それではただいまの説明に対しまして、御質疑のおありの方は順次御発言を願います。   〔主査退席、副主査着席
  26. 加瀬完

    加瀬完君 会計検査院にお伺いいたしますが、これは直接会計検査院のおやりになったことについてということではございませんが、大蔵省所管で、たとえば旧軍用地の買収をいたしまして、当然その金の支払いをしてあるわけでございますから、これは国有地になっておるわけですね。そこへ戦後引き揚げや何かの方が、国有地だということで土地を借りて家を建てたわけですね。それでまあ二十年近くたちますので、払い下げ申請をいたしたわけです。払い下げ申請をいたしますと、当然国有地だと思いましたから、出先払い下げの内諾を与えたわけです。ところが、登記が完了しておらなかったわけですね。それで係争になりまして、結局所有権もと地主に戻ったわけです。こういうケース相当あると思うのです。これは周囲の人は、あの人たちが金を受け取ったということはある程度公然の事実なんです。ところが、係争ということになれば、法廷に行って、お前は確かに金を受け取ったのじゃないかという証言をするということになりますと、おっくうになりますから、つい証言も確実にしないと、こういうことで、金を払った国有地がまたもと地主逆戻りをする、こういうケース相当多いと思うのです。これは会計検査院の直接監査の対象になるかどうかは存じませんが、こういう点で何か御監査をなさったことはございませんか。
  27. 上村照昌

    説明員上村照昌君) 私、直接そういう点は承知いたしておりませんが、国有地で買収したというものがもと所有者に返ると。これは所有権がほんとうに移転しておったか、あるいは当時の事情その他に基づきまして、もと所有者に返るというようなことは聞いたことがございますが、ただいまの点につきましては、十分承知いたしておりませんが、係争になりますれば、われわれとしましては、やはり裁判所の手を経て片づけていくほうが至当じゃなかろうかというふうに考えておりますが、事態を十分承知いたしておりませんので、詳細お答えすることができません。
  28. 加瀬完

    加瀬完君 戦争の終期にそういったような売買契約が行なわれて、その書類終戦後の軍隊のいろいろの処理のときに、正規な移転登記が行なわれない以前の、その事前のといいますか、移転登記以前の書類というものを軍隊出先が焼いてしまっているのですね。ですから、実際に証拠書類というものが国の側にはないわけですね。ですから、係争になりますと、どうも法廷では不利になりまして、旧地主のほうに、無条件でもございませんが、返されるというケース相当ございます。これは大きな国の損失でございますね。ただ国有地をくれてやるようなものですからね、事実関係は。こういう検査をもっと厳格にしていただかなければならない問題だと思うのです。  それから、係争中になっている問題でも、旧軍隊の物資を特定の個人並びに法人に払い下げて、その額が数億にのぼる。どういう理由でその対価を、相当金額というものを受け取らないで、無償でこれを払い下げをしてしまったか。そういう理由に苦しむ問題がありまして、これは係争になっている問題もございます。こういう点にはどうも会計検査院検査も行き届いておらないように思われますけれども、いかがですか。
  29. 上村照昌

    説明員上村照昌君) 前のほうのような問題でありますと、これはわれわれのほうの検査でも、私十分承知しておりませんけれども、検査としては当然見ておるはずだと思います。そういう場合に、まあ金を出した、出したけれども登記がないからもとに返えるという場合に、われわれがそれをどう判断していくかという場合に、金を出した、あるいはどうだというような事実関係の認定というのがいまのお話のように非常にむずかしいわけであります。したがいまして、われわれのほうとして、これがこうだというような断定を下すことは実際問題としてなかなか困難でございます、というような場合が非常に多かったというふうに考えております。
  30. 加瀬完

    加瀬完君 問題は、その十年なり十五年の間事務整理をしなかったというところに問題があろうかと思うのですね。で、初めから、終戦直後から、これは軍に提供したのだけれども、金をもらわないからおれのものだと主張しておったのならまだ理由の幾ばくかは認めることができる。その土地が別の者の払い下げ申請許可をされようとしたときに、突如としてあらわれて、こういう主張をして、それが法的に成立するとすれば、十年なり十五年の間のその間は、大蔵省管財局でも国有地と思っておったんです。おったから別の者に払い下げ許可をしようとした。ところが、国有地でないということで係争になって結局負けた。十年か十五年の間国有地と認めておったが、国有地としての法的な根拠が成立しているかどうかということは、当然これは管財局として確かめておかなければならない問題でしょう。それが怠られておるということは、やはり同じようなケースのものがあろうかと思いますので、今後会計検査院行政指導なりあるいは十二分な勧告なりというものをしていただかなければならない問題ではないかと思いますが、いかがでしょう。
  31. 上村照昌

    説明員上村照昌君) 私のほうでもある程度調べておると思いますが、ただいまお話しの点がございましたので、なお帰りまして、そういう点は今後の検査に十分見ていくことにしたいと思いますが、ただ事実関係がわからぬという場合にどうするかということになると、これは非常にむずかしい問題があるということだけ御承知願いたいと思います。
  32. 加瀬完

    加瀬完君 事実関係がわからないのをどう対処するかという問題はございましょうが、そうではなくて、その前に事実関係がわからなければならないはずなのに、わからないままに、帳簿の上でわからないままにその帳簿を見過ごして、まるで私有地国有地というふうな形で形式の上ではきたというところに管理手落ちというものはございませんか。これは会計検査院手落ちということでなくて、管財局手落ちじゃございませんか。当然国有地として管理しておったものが、ふたをあけてみたら、国有地として主張する何ら法的な形式が整っておらなかったとすれば、くどいようですが、十年なり十五年なり管財局は一体何をしていたかということになりませんか。
  33. 上村照昌

    説明員上村照昌君) 管財局の点は、離れましても、われわれのほうで検査する場合に、国有地として使用しておられる場合に、われわれは国有地だという考え方で見ておったという点が、裁判の結果においてそれは国有地でなくなったということから見ますれば、結果的にはわれわれの検査もそこまで行き届かなかったということになろうかと思いますが、何分にも当時のことで、本来から言いますと、国有地になった場合に金を支払いました証拠書類というものはわれわれのほうに対して出てくるわけでございますが、当時そういうものが出てきておったかどうか、これもちょっとわかりませんが、本来から言えば、われわれのほうで金が払われたかどうかということは、これは確認できるわけでございますが、現在におきましてはそういうふうな関係書類は一定の年限がたちますと焼却いたしますし、われわれのほうでそういうところも見てなければいけないわけでございますが、そこらの関係でそういうことがあっただろうと思いますが、そういう点も結果から見ますれば、われわれの検査のほうにも多少手落ちがあったということになろうかと思いますが、今後十分気をつけてまいりたいと思います。
  34. 加瀬完

    加瀬完君 その国有地でないところから管財局地代をとっておったわけですね、十数年にわたって。地代をとるからには、地代をとり得る法的な根拠というものが当然整っていなければならないわけでしょう。それで逆に私有地主張をされて私有地逆戻りをしていったということでは、これは私は国有財産に関する管理ということで粗漏であったということを認めざるを得ないと思う。こういうケースがまだまだ整理されないで、軍隊の多かった地域には相当あると思う。そういう点、ひとつ御留意をいただきたいと思います。
  35. 後藤義隆

    後藤義隆君 ちょっとお尋ねしますが、職員の中に参事官あるいはまた調査官上席調査官というふうな数はそれぞれ何人くらいあるものですか。   〔副主査退席主査着席
  36. 上村照昌

    説明員上村照昌君) 全体の私のほうの数は、三十九年度は千二百十二人になるわけでございますが、その内訳を申し上げますと、検査官が三人、それに秘書官一人で特別職が計四人、そのほかに事務総長、次長が一人、局長が五人、それから参事官が七名、そのうち一名三十九年度に増員になりますのでそれで七名、それから課長が三十三名、上席調査官が十名、これは三十九年度で増員の分が二名、振りかえの分が三名の五名でございます、もとは五名であったのが十名になる。それから厚生管理官というのが一名、それから審議調査官というのが四人おります。それから検定調査官というものが九人、それから副長が十三名、それから調査官、これが五等級と四等級になりますが五百五十九名、係長が三十名、そのほかに主任とか一般職員でございますが、大体そういう状況でございます。
  37. 井上清一

    井上清一君 ちょっと伺いますが、会計検査院のほうの出張旅費というものは大体一人当たりどの程度になっているんですか。いま見ると、俸給の一割くらい計上してあるようですが、実際に動く方は全部が全部動くわけじゃないんで、出張する人は大体年間どのくらい平均使っておるのですか。
  38. 上村照昌

    説明員上村照昌君) 出張人員が大体八百名近くくらい——これは長く何回も出張するという人等いろいろございますが、八百名ございまして、一人当たりにいたしますと大体十万円くらいであります。
  39. 井上清一

    井上清一君 一人当たり十万円……これは一般公務員の出張旅費と同じ額でございますか、また特別に見てやるのか、あるいはまた手当等はついておるのですか。
  40. 上村照昌

    説明員上村照昌君) 正確にほかの役所と比較はいたしておりませんが、ほかの役所でも出張の多いところはございますと思いますが、一般の役所と比べれば私のほうは出張旅費検査の仕事でございますので、相当認めてもらっておるわけでございます。
  41. 井上清一

    井上清一君 私は単価のことを聞きたいのです。
  42. 上村照昌

    説明員上村照昌君) 単価と申しますと、一人当たりの単価でございましょうか。
  43. 井上清一

    井上清一君 一日の日当とか、それからそのほかにあるいは雑費というようなものを支給しているかどうか。
  44. 上村照昌

    説明員上村照昌君) その点は旅費の規則が一般に通用するようなことになっておりまして、一般の他の官庁と同じような形の汽車賃だとか、日当、宿泊料、ほかに雑費というものは支給しておりません。旅費規則で認められた範囲の金額を支給いたしております。
  45. 井上清一

    井上清一君 特別なものはないわけですね。
  46. 上村照昌

    説明員上村照昌君) はあ。
  47. 井上清一

    井上清一君 私は会計検査院に関しては特別なやはり検査雑費みたいものを考えたほうが私はいいと思うのですよ。これは将来十分御研究願いたいと思う。と申しますのは、どうも会計検査院検査があると申しますと、各官庁あるいは官庁の出先、地方公共団体は非常なサービスをするわけです、実際の話が。単なる便宜供与くらいのことは当然いいと思うのだが、いろいろな点で会計検査院の方が出張しますと、各官庁あるいは出先、地方公共団体等の何というか、費用の支出がこれに伴って出てくるわけなんですよ。ですから、そういうものを受けないで、会計検査院検査相当思い切ってできるということのためにはある程度の費用を、雑費とかいろいろかかるのだから、そういうものを検査する検査官に認めてやるというようなことは、私は検査を公正厳格にやる上において非常にいいんじゃないかという感じがするんです。もちろん会計検査院の方が出張した場合に、いろいろ供応とか接待を受けるというようなことについては厳に戒めておられるとは思いますけれども、事実はやはり会計検査院検査ということになりますと、相当気を使っていろいろなもてなしもする、それは検査のための便宜供与をするというくらいなことは当然だと思いますけれども、そこにいろいろな問題が出てくる場合がなきにしもあらずだと思いますし、このごろは聞かないけれども、従来会計検査院検査官が出張して、地方においてめちゃくちゃなことをやったというような事例も前にはあったことも、私は聞いております。ですから検査を厳格にやるという意味において、出張した者があまりみじめな旅行をするということじゃなしに、ある程度やはりゆとりを持った、ほかの官庁とは違うんだから、職務を厳正に執行するためにそういうものをある程度考えてやることが私は必要じゃないかという感じがするんですが、御見解を承りたい。
  48. 上村照昌

    説明員上村照昌君) 私のほうの役所の仕事が相当厳格にやっていかなければいかぬというようなことで、われわれも気を使っておるわけでございますが、その点につきまして、御同情のあるお言葉をいただきましてありがとうございました。そういう点につきましては、かつては、たとえば自動車賃くらいをひとつ何とかするようなことを考えようじゃないかということを考えたこともございますけれども、現在において要求いたしておりません。ただ、ただいまおっしゃいますように、雑費という形で出すということになりますと、これはちょっと予算的に多少問題があろうかと思いますが、いろいろ御意見もございますので、十分今後検討してやっていきたいというふうに考えております。
  49. 井上清一

    井上清一君 私の希望は、検査を受けるところからいろいろめんどうみてもらわないでも、堂々とひとつ国の検査がやれるという仕組みにもっていってもらいたいということを希望するわけなんです。  それからもう一つついでに伺いたいと思いますが、検査のやり方ですね、いろいろやり方があるわけです。書面検査もあれば実地について検査をする方法もあるだろうし、それから中央官庁、出先においての検査、いろいろあると思うんですが、各予算の款項目をたどってずっと上から下まで検査をするという検査をおやりになったことがございますか。一例を申しますと、たとえば農林省の食糧増産費なら増産費というものについて特別に取り上げて、末端まで款項目をたどってずっと検査をするというようなやり方ですね、末端までおやりになるというやり方をおやりになったかどうか。
  50. 上村照昌

    説明員上村照昌君) 検査のやり方はいろいろございますが、ただいまお話のように款項目をたどって検査をやるかとおっしゃいます意味はちょっとわかりかねますが、もちろん検査としては款項目を基準にして検査をいたしておりますが、本省を中心にしまして、末端にその仕事の内容が徹底しているかどうかということで、一連の形で見ておるのがございます。同時に、われわれの見方といたしまして、本省を見て地方を見る場合もございますし、場合によれば地方末端を見に行って、そうしてひるがえってそういうふうな関係は本省でどういうふうになっているかというような見方をいたしておりますが、全部が全部そういうふうになっているというわけにはもちろんまいりませんが、重要なものについてはそういうような考え方でやっておるわけでございます。
  51. 井上清一

    井上清一君 それから集中検査と申しますか、一つの役所のある項目に限って集中的に検査をするというやり方もおやりになっておるんですか。
  52. 上村照昌

    説明員上村照昌君) 集中検査といいますか、われわれのほうの人数と検査の能力、あるいは検査を受けるものの対象というようなもののいろいろな関係がございますから、その間にある程度の選択ということはもちろんやるわけです。そうして去年はAというものを見た、ことしはBのほうに主力を注ごうとか、あるいはいろいろの仕事の中で、ことしはこういうものを主力を注いでみようというようなやり方はもちろんやっております。
  53. 井上清一

    井上清一君 それから、投書とか何とかいうようなものについて検査をおやりになることがあるのですか。
  54. 上村照昌

    説明員上村照昌君) 投書も相当われわれのほうへまいっております。これはまあ事柄の内容をよく調べた上で、われわれのほうで実地検査に行くなり何かの方法でそれを調べてまいっております。その結果、全部が全部じゃございませんが、投書のような事態のある場合もございます。
  55. 井上清一

    井上清一君 それから予算の流用とかいうようなものについて、特に検査を厳重にやっているとか何とかいうことがあるのですか。
  56. 上村照昌

    説明員上村照昌君) 予算の流用につきましては、おもなものにつきましては大蔵省で承認されるという形になっておりますが、特に流用について重きを置いてやっておるということは最近はちょっと私記憶しておりませんが、それは流用とおっしゃいます意味が、科目の流用じゃなくて、Aという科目があって、本来ならAというものに使わなければならぬものが、正式の流用の形をとらないでBという科目に使っておるとかいうような問題ならば、これは検査の段階においてもちろん見ておるわけであります。
  57. 井上清一

    井上清一君 もちろんそうでしょうね。
  58. 山本杉

    山本杉君 ちょっと伺いますが、沖繩援助費及び海外移住事業団実地検査を実施するための外国旅費二百三十四万一千円ということでございますが、沖繩へ行って何人の人がその援助費の行くえを調べたり、また外国のどこへ行く旅費なんでございますか、これは。
  59. 上村照昌

    説明員上村照昌君) このうち沖繩の関係が三十三万八千円でございまして、それから外国のほうが二百万三千円になっております。沖繩のほうの関係は、沖繩の援助費の検査にまいるわけでございますが、外国のほうは、昨年南米の移住会社を主として見たわけでございますが、その結果、多少経理的にも問題がございますので、本年もさらにもう一回見たいということで、南米の移住関係のほうを主として見たいという関係のための旅費でございます。
  60. 山本杉

    山本杉君 この旅費は一人の旅費なんですか。
  61. 上村照昌

    説明員上村照昌君) 南米のほうは二人でございます。二人で四十日でございます。それから沖繩のほうは三人で十日間が計上してございます。
  62. 山本杉

    山本杉君 さっき井上先生のお話の中にもありましたけれども、やはり会計検査院からお出かけになるということになれば、相当のあれが必要だと思いますので、ちょっとそのことを伺って見ました。
  63. 加瀬完

    主査加瀬完君) 他に御質疑のおありの方はございませんか。——御質疑もないようでございますので、会計検査院所管に対する質疑は終了したものと認めます。  午後は一時に再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。    午前十一時二十五分休憩    ————・————    午後一時二十五分開会
  64. 加瀬完

    主査加瀬完君) これより予算委員会第一分科会を再開いたします。  ただいま、委員の変更がございました。米田勲君が辞任され、その補欠として瀬谷英行君が選任されました。   —————————————
  65. 加瀬完

    主査加瀬完君) まず法務省所管議題とし、説明を聴取することにいたしたいと存じます。賀屋法務大臣。
  66. 賀屋興宣

    ○国務大臣(賀屋興宣君) 昭和三十九年度法務省所管予算内容につきまして、大要を御説明申し上げます。  昭和三十九年度の予定経費要求額は四百九十四億一千二百九十万四千円であります。このほかに官庁営繕費として建設省所管予算中に、法務本省第二新館新営工事費六千六百九十九万六千円が計上されております。前年度当初予算額四百二十二億二千六百二十四万円に比して、法務省所管分は七十一億八千六百六十六万四千円の増額となっております。なお、前年度の補正後予算額四百三十五億七千三百八十三万六千円に比較して五十八億三千九百六万八千円の増額となっております。増額分の内訳を大別して御説明いたしますと、第一に、人件費関係の四十二億一千二百八十二万五千円であります。これは、昨年十月から実施されました公務員給与ベースの改訂に伴う増額分及び昇給等原資としての職員俸給等の増額分がおもなものでありますが、そのほかに検事・副検事・検察事務官・登記関係職員・入団審査官・公安調査官等六百十名の増員(別に大村入国者収容所の収容人員減に伴う関係職員二十四名の減員があります。)に伴う所要人件費が含まれております。  第二に、営繕施設費の十九億四千五百七十万六千円であります。これには、名古屋・福岡両刑務所の国庫債務負担行為契約に基づいて名古屋市及び福岡市の建設した施設を取得する経費が計上されたことによる増額分が含まれております。  第三に、その他一般事務費としての十億二千八百十三万三千円であります。これは、事務量の増加に対応して増額されたもののほか、積算単価の是正及び事務能率器具その他の備品の整備等、事務の改善に伴う増額分等でありますが、そのおもな事項について申し上げますと、  一、法秩序の確立のためのものとしまして、暴力・公安検察・麻薬犯罪取り締まりの強化をはかるための検察体制の拡充強化経費、刑法改正作業の迅速をはるための経費、不法出入国者取り締まりのための違反調査経費及び破壊活動調査機能の充実のための団体調査経費の増額分として一億五千七百二十九万九千円があります。  二、非行青少年対策としまして、青少年検察・少年院の教化活動・少年鑑別・保護観察・少年非行予防対策の研究等の充実強化をはかるための経費の増額分として一億四千五百二十二万六千円があります。  三、道路交通法違反、業務上過失致死傷事件等の交通事件に関する検察取り締まりの充実をはかるための経費の増額分として四千二百四十六万四千円があります。  四、矯正関係収容者の処遇改善のため収容者に支給する作業償与金、菜代、生活用品・薬品の単価の増額等に伴う増額分として一億六千七百五十七万二千円があります。  五、刑務所における刑務作業を充実するため、紙細工等の低格作業を出所後の更生に役立つ有用作業に切りかえることに要する機械器具の整備及び原材料購入に要する経費の増額分として一億五千九百五十一万一千円があります。  六、基本的人権擁護の伸長をはかるために行なわれております扶助の充実を期するのに要する経費等の増額分として四千六百二十三万三千円があります。  さらに、昭和三十九年度新たに予算に計上された事項経費として、  第一に、本年十月東京において開催を予定されているオリンピック大会に伴う出入国者の審査を迅速、適正に行なう必要がありますので、これに要する経費として五百六十七万一千円が計上されております。  第二に、商業登記法に基づく商業及び法人登記事務を改善する必要がありますので、これに要する経費として一千二百二十一万四千円が計上されております。  次に、増員六百十名の内容としましては、一、破壊活動調査機能を充実するため公安調査官二百名、二、公判審理を迅速に処理するため検事五名、検察事務官五名計十名、三、交通事件の事務処理機能を充実強化するため副検事十名、検察事務官七十一名、鑑別技官十名、計九十一名、四、非行青少年対策を強化するため七十二名、1、少年院教化活動の充実、教官五十名、2、保護観察所機能の充実、保護観察官二十二名、五、登記台帳事件の増加に対処して、その事務処理を円滑、適正化するため、法務事務官二百名、六、羽田入国管理事務所における出入国者の増加に対処して、その出入国審査業務を適正、迅速化するため、入国審査官十二名、七、その他の入国管理事務所出張所新設に対処して入国審査官三名、入国警備官二名、計五名、八、出入国、在留資格等審査業務の増加に対処して、その事務処理を適正、迅速化するため、入国審査官六名、入国警備官六名、計十二名、九、国を当事者とする民事及び行政事件の訴訟事務増加に処して、その事務処理を適正、迅速化するため法務事務官三名、十、法務本省の健康管理要員として(医療職員)薬剤士一名、看護婦四名、計五名となっております。(なお別に、前述いたしましたが、大村入国者収容所の収容人員の減少に伴ない、入国警備官十一名、事務員四名、用人九名計二十四名の減員があります。)  次に、おもなる事項の経費について、概略を御説明申し上げます。  第一に、外国人登録法に基づき、在日外国人の登録事務を処理するために要する経費として一億二千九百三十三万八千円、  第二に、法務局、地方法務局において登記・台帳・供託・戸籍等の事務を処理するために要する経費として七億一千七百九十二万九千円、  第三に、検察庁において処理する一般刑事事件その他各種犯罪事件についての直接検察活動に要する経費として六億一千九百二十四万一千円、  第四に、拘置所、刑務所、少年刑務所、少年院、少年鑑別所及び婦人補導院の一日平均収容予定人員の合計七万九千七百人の衣食、医療及び就労等に要する経費として、五十九億三千七百七十三万二千円、  第五に、犯罪者予防更生法、更生緊急保護法及び執行猶予者保護観察法に基づき、刑余者及び執行猶予者を補導監督し、これを更生せしめるための補導援護に要する経費として七億五百九十一万五千円、  第六に、出入国管理令に基づき、退去を強制される者の護送、収容、送還に必要な衣食、医療等に要する経費として五千六百五十七万八千円、  第七に、公安調査庁において処理する破壊活動防止のための調査活動等に要する経費として八億五千六百四十八万五千円、  第八に、検察庁、法務局等の庁舎及び刑務所、少年院等収容施設の新営、整備、移転に要する経費として四十二億五千二百三十四万一千円が、それぞれ計上されております。  以上が、法務省所管歳出予算予定経費要求の大要であります。  最後に、当省主管歳入予算について一言御説明申し上げます。  昭和三十九年度法務省主管歳入予算額は百九十四億一千九百九十一万二千円でありまして、前年度予算額百二十億二千四百七十六万三千円に比し、七十三億九千五百十四万九千円の増額となっております。  これは、過去の実績等を基礎として算出したものでありまして、増額となったおもなものは、罰金及び科料と刑務作業収入であります。  以上、法務省所管昭和三十九年度予算について、その概要を御説明申し上げました。何とぞよろしく御審議を賜わりますようお願い申し上げます。
  67. 加瀬完

    主査加瀬完君) 次に、裁判所所管議題とし、説明を聴取することにいたします。
  68. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者(関根小郷君) 昭和三十九年度裁判所所管予定経費要求額につきまして御説明申し上げます。  昭和三十九年度裁判所所管予定経費要求額の総額は二百三十九億五千九百七十四万二千円でありまして、これを前年度予算額二百十九億二百十三万三千円に比較いたしますと、差し引き二十億五千七百六十万九千円の増加になっております。  この増加額の内訳を大別して申し上げますと、人件費におきまして十六億一千六十二万七千円、営繕費におきまして二億五千百十九万三千円裁判費におきまして一億二千五百六十一万七千円、その他一般司法行政事務を行なうために必要な旅費、庁費等におきまして七千十七万二千円であります。  次に、昭和三十九年度予定経費要求額のうち、おもな事項について御説明申し上げます。  第一に、交通事件処理の円滑化に必要な経費でございますが、激増する交通事件を迅速に処理いたしますため、昭和三十八年から特に事件の多い地域におきまして交通切符制による即日処理を実施いたしておりますが、事件の増加はその後も著しく、これを円滑に処理いたしますために必要な経費といたしまして、簡易裁判所の交通事件処理につきまして簡易裁判所判事五人、裁判所書記官十九人、裁判所事務官三十四人の増員に要する人件費といたしまして一千六百二十万七千円、家庭裁判所の少年の交通事件処理につきまして家庭裁判所調査官四十人、裁判所書記官九人、裁判所事務官十三人の増員に要する人件費といたしまして一千八百九十八万五千円、事務能率器具の購入費といたしまして百五十万円、合計三千六百六十九万二千円が計上されました。  第二といたしまして、訴訟の迅速、適正な処理に必要な経費でございますが、近時、事件の増加と複雑化の著しい東京・大阪等八大都市地方裁判所の裁判の適正と迅速化をはかるための裁判官等の増員と、裁判事務処理の能率向上のための機械化に要する経費といたしまして判事五人、判事補五人、裁判所書記官二十人の増員に要する人件費一千六百四十五万七千円、裁判事務処理の機械化に要する経費といたしまして七千九百十二万八千円、合計九千五百五十八万五千円が計上されました。  第三といたしまして、補助機構の整備充実に必要な経費でございますが、裁判所書記官の事務量の増加に伴いまして、現在裁判所書記官の事務を恒常的に取り扱っております裁判所書記官補の定員を、裁判所書記官の定員に組みかえ、裁判官の補助機構を合理的に再編成するために必要な経費といたしまして、裁判所書記官補の定員六百九十四人を裁判所書記官の定員へ組みかえに要する人件費三千九百二十一万九千円が計上されました。  第四といたしまして、執務環境の整備に要する経費でございますが、下級裁判所庁舎の整備に必要な経費として、下級裁判所庁舎の継続工事二十五庁、新規工事二十四庁の新営工事費といたしまして二十億四百九十二万七千円、その他法廷の増築、庁舎の補修等の施設整備費といたしまして二億六千万円、庁舎新営に伴なう敷地買収のための不動産購入費といたしまして四千九百十四万五千円、営繕事務費といたしまして四千四百六十一万五千円、計二十二億五千八百六十八万七千円、事務用器具の整備に必要な経費として執務環境を改善し事務能率の向上をはかるため、事務用器具を整備するに必要な経費として一千七百九十万円がそれぞれ計上されました。  第五として、最高裁判所庁舎の新営に必要な経費でございますが、最高裁判所現庁舎は、終戦後旧大審院の建物を改修したもので、かなり老朽の度を加えており、かつ、狭隘で、最高裁判所庁舎として必ずしも適当ではございませんので、これが新営は多年の懸案でございましたが、このたび、三宅坂のパレスハイツあとに新庁舎が建設されることとなり、その準備のための経費として敷地の調査整備費等五百万円が計上されました。  第六として、裁判費でございますが、これは裁判に直接必要な経費でありまして、国選弁護人の報酬、証人及び調停委員等の旅費、日当その他裁判に直接必要な旅費、庁費等として十八億三千八百七十九万一千円が計上されました。  第七として、国選弁護人、調停委員等の待遇改善に必要な経費でございますが、国選弁護人の報酬の現行基準は、たとえば地裁一件につきまして六千二百円を約一〇%増額、たとえて申し上げれば地方裁判所一件六千八百円にするに必要な経費といたしまして一千九百四十六円五千円、調停委員等の日当増額でございますが、調停委員、司法委員及び参与員等の日当を、現行七百円から八百円に増額するに必要な経費といたしまして六千百四十四万五千円がそれぞれ計上されました。  最後に刑事補償金の増額に必要な経費でございますが、刑事補償金は、昭和二十五年刑事補償法が制定されまして以来据え置かれておりますが、その後の物価の変動、賃金の上昇等の事情に照らしまして増額する必要がありますので、現行一日二百円以上四百円以下とありますのを、四百円以上千円以下に改訂するため必要な経費といたしまして六百十五万六千円が計上されました。  以上が昭和三十九年度裁判所所管予定経費要求額の大要でございます。何とぞよろしくお願い申し上げます。
  69. 加瀬完

    主査加瀬完君) それでは議題を進めてまいります便宜上、法務省及び裁判所所管を一括して質疑を行なうことにいたします。  ただいま御出席の方々は、説明を終わりました賀屋法務大臣及び最高裁事務総長、さらに、法務省より竹内刑事局長、新谷経理部長、最高裁より岩野経理局長が出席されております。  質疑がおありの方は順次御発言を願います。
  70. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 昨日ライシャワー大使を襲撃をしたという事件がございましたけれども、これがたまたま十九歳の少年ということで、名前がはっきり新聞にも出ておりません。私は、最近の犯罪あるいは交通事犯、これらの当事者としてよく未成年者が出てくるのでありますが、十八、九ぐらいになれば、思慮分別が、もう子供とは言いがたいと思うのであります。しかし、昨日のライシャワー大使襲撃のような大それたことをやる。あるいは、かつて社会党の浅沼委員長を刺殺をした、これもいわゆる少年の部類に入っております。はたして少年として特別の保護取り扱いをするということの意義があるのかどうか、少年法等につきましてもいろいろ検討をされておるということでございますが、以上の点について法務大臣の見解を承りたいと思います。
  71. 賀屋興宣

    ○国務大臣(賀屋興宣君) ただいまの御質問につきましては、私どもも同様な感想を持ちまして、いわゆる刑事責任の年齢という問題につきまして、いろいろ考えさられるわけであります。暴力事犯等におきましても、肉体的には、いわゆる少年期の終わりにおきましては、おとなとほとんど変わらないような状態で、その不法な行為で起こります結果は、少年といえども非常な社会的に悪い結果を起こす次第でございます。また、暴力等に関しません場合におきましても、近ごろ非常に頻発いたします交通事犯におきましても、一方におきましては責任能力と申しますか、とにかく自動車の運転の資格としましては少年期の上のほうの部分は、自動車の種類にもよりますが、許されております。そういうものの一つの行為の能力と、それに対する責任につきましても、合わない面があるのではないか、こういうふうな責任能力でいろいろ問題がありますことは、いまお話がありましたとおりにわれわれも感ずるのであります。しかし、この刑事上の責任能力ということは、法制上非常な重大な問題でございまして、多年の沿革、検討を経て現行法が定まっているわけでございまして、これが改正変更につきましては、これは十分なる審議、討議を経なければならぬと、一面また観察する次第でございます。また、現在におきましても、責任年齢を低下すべし——それもその起こります行為目体によって区別を設けるかどうか、一般的にされるかという考え方にも、必ずしもまだ定説というものが出ていない状況じゃないかと思います。それからまた、責任年齢を上げる下げるというほかに、一つの中間的年齢地帯を設けると申しますか、判定によりまして、裁判官あるいは適当な機関の判定によって、刑事責任を負わせる場合、そうでない保護観察処分的なことによってやるか、どちらにするか、その事態によりまして弾力性のある処置がとれるような年齢層を設ける、こういうような考え方もあるようでございまして、いまだその結論を得るところにいっておりません。事柄が非常に重大なことでございますから、法律制度の基本的な問題でございますので、慎重に検討いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  72. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私は、非行を働くような者は、ある程度現行法を研究をして、未成年というような事実に対して甘えているという点があるのではないか、こういう気がするわけです。かつて詐欺やどろぼうを働いたことのある人間と私話したことがあるのですが、彼らは、もう前科何犯ということになってくると、自分たちがやってきたことに対する罪悪感ということがなくなってくる者が多い。そういう連中は、法律というものを非常によく知っている。これだけのことをやれば同じ刑を食うにしても何年で済むと。刑法に相当詳しいわけです。その刑法の裏表をよく承知をした上で悪事を働くということをやっているわけなんです。そうすると、なまはんかに未成年なるがゆえにある程度の法律上の保護があるといった認識があると、そのためにかえって悪いことをやるといった面も出てくるのではないかと思う。そういう問題に対しては、やはり現実の問題として対処していく以外に方法はないのではないかという気がいたしますが、現行法と現実の犯罪との間に、はたしてズレがないかどうか、これらの点については、毎日毎日いろいろな実例が出てきているわけでありますから、すでに十分検討されてしかるべきであるというふうに私は思うのであります。どの程度に検討され、どのような法改正の準備が行なわれようとしているのか、その点について大臣にお伺いしたいと思います。
  73. 賀屋興宣

    ○国務大臣(賀屋興宣君) まことに御質問の点についてわれわれは同じような感想を日々持つわけでございます。この心身の発達、成熟、知能は、個人差が相当にあるわけでありますから、もう十五、六でも二十以上の十分な分別を持っている者もある、また、いまお示しのように、その知能の発達の方面が非常な、ごく簡単にいえば、悪知恵が普通のおとな以上に伸びている人も相当に多いと思うのであります。それですから個人個人に、ケース・バイ・ケースでいきますと、いまの刑法などは非常にしゃくし定木であるという感じが起こりまして、もっとその個人個人の心身の発達その他の状況に合うようにやったらいいじゃないか、それはそういう感じが起こるのであります。しかし、法律制度といたしましては、やはり一つの年齢で切らなければならぬ、国民なら国民全部に適用する法律としまして、やはりそこに一つの最大公約数というか、最小公倍数というか、ある年齢で考えなければならない。これは教育とかいろんなほかの制度でも、そこまでやはり画一的の必要な要素がある。それを個々の状態の判別にゆだねるということは、適切ではありますが、また、そこにおきましては一面非常な弊害や欠陥も生じ得る場合がありますので、現在は、個人的にそういう差別を一々認めたいという感想はずいぶん起こりますが、そういう制度をいまとるということにつきましては、これは非常な検討を経るべき必要があるのではないか、こういうふうな大体考え方をいたしております。
  74. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 立法の精神そのものが、現実の事態とはズレてきたということになれば、私は、それなりに対策を考えるのが適当ではないかという気がするわけであります。昨日のライシャワー大使襲撃の犯人が精神異常であるかどうか、これはよくわれわれにはまだわかりませんけれども、しかし、もしもあれが連鎖反応を起こして、類似の行為がいわゆる少年の間にはびこってくるようなことがあったとしたら、これは重大問題だと思う。未成年者なるがゆえに特別に保護をされるという甘えた気持ちでもって非常識なことをやる人間がもしも出てくるとすると、これは検討を続けておって、現行法について手を加えなかったほうの為政者の責任ということになってくるの、ではないか、こういう気がするわけであります。あのような現実の事例がございましたから、私は昨日のような事件と連鎖反応のおそれがあるかどうかという問題を考えた場合に、担当者として、大臣はどのような対策を講じておられるのか、あるいは講じようとされておられるのか、その見解を承りたいと思います。
  75. 賀屋興宣

    ○国務大臣(賀屋興宣君) ここに起こりました事件、それをもとに法制化しまして一般的に適用する、あるいは特殊の場合につきましても、相当な社会全体の状況を見渡して法制化するという点につきましては、その調和は、非常に慎重を要すると思うのでございます。それで、昨日起こりました事件は、そのときの法によって取り扱うよりほかいたし方がない。これは何としてもそれ以外に方法はないわけでございます。問題は、今後どういうふうな行政的手段をとるか、さらに進んで立法的手段をとるか、こういうことにあるだろうと思うのでございます。それで、昨日問題を起こしました少年は十九歳、ほとんど二十歳に近い十九歳十カ月か、十一カ月でございますか、こういう点でございますが、それによってすぐ将来責任年齢を変えるという結論を出すのには、まだ十分検討の余地があると思います。これは十分な検討を経なければ申し上げられないことでございますが、すぐ必要がありそうだと思いますのは、彼がほんとうに精神的な障害がある者か、しかもその程度が精神病者といっていいものか、精神病者ではないが、ある程度の精神障害がある、あるいは変質者と申すべき者か、こういうことがまだ取り調べ中でございまして、そうらしいと、いま想像されますけれども、まだこれを確定するのは早いと思います。早いと思いますが、社会一般に、そういうような精神状態が完全でない者が相当多数にある。あるいは精神病者の次の変質者というような者が二十万あるとか三十万あるとかいわれますが、これが相当多数にあるということは十分想像されるわけでございます。そういう者が、いまのような公の不安を起こすような傷害事件、普通人ならばいろいろ犯罪になるようなことを犯す傾向が多いことに対して、どう処置をするか。隔離するか、あるいは治癒し得るならば、治癒するような方法を講ずるとか、いろいろのそういう問題について、今回の問題は、研究すべき、そうして何らか処置すべき問題を提供するのではないか、こういうふうに考えている次第でございまして、現在の処置としましては、現行法に基づいて処置しまして、取り調べは、推測や軽々の断定によらず、十分に徹底的に精神状態あるいは背後関係——背後関係はなさそうでありますが、これもまた背後関係があるかどうか十分糾明し、事態を徹底的に明らかにして、現行法に従って厳格に処断をしていく、こういうように考えている次第でございます。
  76. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 最近の未成年者の犯罪あるいは非行少年の年齢というようなものは、おそらく統計的にもあらわれているのじゃないかと思うのでありますが、それらのトータル等から検討してみますと、何歳ぐらいの者が多いかということはおわかりになっているでありましょうか。わかっておったならば、事務当局関係者でよろしいですから、教えていただきたいと思います。
  77. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 少年犯罪の傾向をあらまし申し上げたいのでございますが、少年犯罪は全般的に見ますると、逐年増加の傾向にあると申していいかと思うのでございます。特に少年による道路交通事件というのは非常に多くなってきておりまして、昭和三十七年について見ますと、四十六万をこえる数字でございます。これが全体の約九七%に近いのでありまして、その他の犯罪がいわゆる刑法犯といわれるものでございます。刑法犯の数は昭三十七年を見ますると、これは新しく検察庁が受理した人員でございますが、十六万五千百四十五人というふうになっております。こういうふうに数字を見てまいりますと、この刑法犯を中心として、少年の非行という問題を検討するのに役立つわけでございますが、この罪名を見ますると、必ずしもふえておるものばかりではないので、減っておるものもあるのでございます。昭和三十三年の状況と、三十六年ないし七年をとって増減を見ますると、増加の傾向を続けております事犯は、やはり窃盗とか恐喝とか、贓物罪であります。増加の傾向にありましたが、三十七年になって減少したというのが放火とか殺人、傷害であります。増加の傾向にあったが、三十六年から減少しているというのに強盗がございます。減少の傾向を続けていると見られるものが詐欺、横領の事犯。増加と減少を繰り返しておりますのが強制わいせつとか強姦とか、性犯罪であります。そこで、これらの犯罪がどういう年齢層によって犯されておるだろうかという点でありますが、あらましを申し上げますと、犯罪が初めは高年齢層と申しますか、ハイティーンといわれる十八歳から二十歳未満のところに多かったのでございますが、逐次その傾向が低年齢層のほうに移向しておる。つまり十五、十六、十七、十八歳未満というこのところにだんだん数が多くなってきておるというのが特徴でございます。かりに少年犯罪の傾向を見てまいりまして、数字のみをもって少年犯罪の動向をぴったりと確実に把握したというふうに申し上げることは困難でございまして、検挙になっていないものがございますので、その実体はさらに数字的には多いものがあるのではないかというふうに思うのでございます。ただ、こちらで御注意を喚起申し上げたいのは、特に本年になりましてから、きわめて凶悪な犯罪が少年によって犯されているということでございますし、その犯人が、しばしば学校に籍を持っておる高等学校の生徒とか、あるいは中学校の生徒とか、現に学校にいる者によって犯されている。しかも非常に貧困階級の子供だけでなくて、中流とか、あるいは上流とも称していいような家庭の子弟によっても犯されておる、こういうようなところが私は非常に注目しなければならぬ現象だと思うのでございまして、こういうものに対して、世論と申しますか、一般人たちがややこの種の犯罪に対して麻痺状態になっておるのじゃないかということさえも私は感ぜられるのでございまして、この問題に関係しております者として、非常に遺憾に存じておるのでございます。これらの対策につきましては、先ほど大臣からお述べになりましたようなことでございます。  概況を申し上げますと、以上のようなことでございます。
  78. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 特に交通違反等については、全体の九七%というような数字をお聞きしまして、非常に驚くわけであります。もしこれらの交通違反を犯しても、少年だからだいじょうぶだといったような、甘えた気持ちがこの違反に拍車をかけるというようなことになっておったとすれば、法の不備が交通戦争の一翼をになっておるということになってしまうわけです。非常に私は重大な問題だと思います。  それから凶悪犯等が下層階級だけじゃなくて、上流、中流等にも生じておるというようなことは、これはもう社会的環境等に大いに責任があることではないかというふうにも考えられます。法律だけで何とかできるものではないかと思いますけれども、しかし、それにいたしましても、このように凶悪事犯等をも含めまして、少年犯罪が多くなってきているという以上は、やはりもう法的にも考えなければならない面が多々あるというふうに思われます。でありますから、これらの法律上の検討というものは、そうゆっくりしていていいというふうには考えられません。早急にやはり立法の精神が現実との間にズレを生じないようにするということに踏み切るべき段階ではないかという気がいたしますけれども、相当時日をかけなければならないというふうにお考えになっておるのか、しかるべき時期を見て、各種の法律上の改変等について御考慮があるのかどうか、以上の点について大臣の見解を承りたいと思います。
  79. 賀屋興宣

    ○国務大臣(賀屋興宣君) 先ほど来申し上げましたように、また御意見を伺っておりますように、いまの御意見に同感の気持ちが非常に多いわけでございます。早急に結論を得たいと考えております。ただ問題は、どういう犯罪について責任の年齢をどう考えるか、おとなと同じ刑事上の扱いをするかしないかということにつきましては、前に申し上げましたように、この刑事法上の基礎的な問題となりますので、非常に急ぎますけれども、きわめて短い何十日とか何カ月とかいう間に結論を得られるかというと、これは事実困難だと思いまするが、いまの社会状態が、お話のように、前に予想しておりましたのと非常に変わっておるという事実に基づきまして、慎重でありますが、非常に急いで何らかの結論を見出したい、そういう努力をいたしたいという考え方をいたしております。
  80. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 次に、これもやはり最近の問題でありますけれども、たとえば昨年の秋に三池の炭鉱の大爆発と鶴見事故という二つの大きな事故が、ほとんど同時に起こりました。これらに対しまして、刑事責任の追及がどういうふうに行なわれているかということで、多少どうも片手落ちの感がした問題があります。それは、三池炭鉱の事故等については、先般の予算委員会等でも意見が出ましたけれども、明らかに会社側の保安上の責任であるというのにもかかわらず、経営者に対する刑事上の責任追及というのは非常に緩慢である、ほとんどまあ形式的であって、その責任追及というものは行なわれないと同様であるということが報告されておりますが、ところが一方において鶴見事故等では、現場の関係者に対して非常なきびしい取り調べが行なわれており、被疑者同様の扱いを受けて追及をされるという点を私は聞いておるわけであります。国鉄の事故等についても、まごまごすると死んでしまった運転士に一切の責任をかぶしてしまおうというような動きすら見えるわけであります。ところが、言うならば弱い者いじめがここに行なわれているというふうな感じがするわけであります。ああいう交通事故の場合には、特に急いで逮捕して勾留をしなくとも、本人は逃げ隠れすればこれは首がつながらないわけでありますから、逃げ隠れをするおそれもないわけなんでありますけれども、とかくこういう交通事故等では、必要以上にきびしい取り扱いが行なわれるような感じがするのでありますが、その点でどうもつりあいがとれない、経営者の刑事責任の追及と比較すると、つりあいがとれないという感じがするのであります。そういうような片手落ちがはたしてないかどうか。もしそのような片手落ちが認められるならば、改めるという方向をとられるかどうか、以上の点について大臣の見解を承りたいと思います。
  81. 賀屋興宣

    ○国務大臣(賀屋興宣君) 鶴見の鉄道の事故また三池炭鉱の大爆発の事故でございますが、これらはいずれも各種の法規に対する違反、特に刑事責任としまして過失による致死問題、大きな問題でございます。ことに三池炭鉱のごときは死傷者千二百にも余るようなことで、いずれも重大問題でございまして、その取り扱いにつきまして差別をして、一方はゆるくする、一方はきびしくするというふうな考えは全然ないのみならず、きわめて厳正公平に扱っておる次第でございます。ただ三池の場合には、こういう事情がございます。大体あの事故は炭じんの爆発によって起こったということが一般的に考えられておるのでございますが、それではどうしてそれが爆発するに至ったか、どうして引火するに至ったかという問題になりますと、きわめて専門的の問題でございます。それで、警察当局におきましても、科学的、技術的にほんとうに調べなければその点何ぴとにどういう責任があるかということはわかりにくいわけでありまして、検察当局も協力いたしまして、鋭意その調査をいたしておるわけでございます。鉱山保安局でございますか、通産省の当局も鋭意それに従事いたしておりまして、なかなかそれがはっきりつかめませんために、事実延びておるような次第でございまして、決してこの重大な事故に対して捜査組織その他を寛大、緩慢にしておるという考え方は少しも持っていない次第でございます。鉄道の問題にしますと、あるいは逮捕が多過ぎる、逮捕をしても、ほんとうにそれは何もなかった、不起訴になる者が多い、いろいろ考えられますが、事実はさようでないわけでございまして、鶴見事件でもまだ逮捕者が一人も出ていないわけでございまして、調べは厳重にいたしますが、まだ逮捕者は出ておりません次第でございます。それで、逮捕するような場合には、逮捕したから必ずしも起訴するとは限りませんが、大体現状では、被疑者が少なくて起訴される者が多いし、起訴されました者は、また有罪になるほうの場合が多いのでございまして、これはつまり、不当に、無理に、みだりに逮捕したということでないということを、事実があらわしておるものと考える次第でございます。全くその点につきましては区別を設けず、厳正、公平にいたしておるという次第でございます。
  82. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 鶴見事故の場合は、直接の現場責任者というものを求めても求め得られないので逮捕者が出なかったんだと思うのであります。それならば三河島事故の場合に、一ぺんに九人もの現場職員が、それぞれの別々の担当個所において、同時に競合するような過失を犯したなどということは、これはもう考えられないことなんであります。信号誤認をした、最初の事故のきっかけをつくった者については、確かにこれは過失責任があったかもしれない。しかし、それ以外の者については、これはわかりやすく言えば、もっと機転をきかしていればよかったじゃないかというだけのことで、これを過失というふうにきめつけて逮捕しているわけであります。こういうことは、政治上の責任を何とかしてぼかして、現場の人になすりつけてしまうという作為的なものが多分に私は感じられるわけです。こういう面で、どうも行き過ぎがありはしないかという気がするわけであります。それらの行き過ぎというのは、結局は弱い者いじめの思想に通じてしまうのではないかという気がするのでありますが、これは三河島事故等については、大臣もよく詳しくは御存じないかもしれませんが、それらの行き過ぎというようなことに対しては、やはり十分に留意をしてもらわなければならぬと、こういう気がするわけであります。それで、特にああいう鉄道事故あるいは飛行機の墜落事故といったようなことは、世間の耳目を引きやすい。世間の耳目を引きやすい問題については、手っとり早いところ逮捕者を出して、一切の責任はそこにあるかのように思わしてしまう、それで片がつけられるというようなことがあっては、私はよくない、こういう気がいたします。それらの問題についての、やはり監督大臣としての見解というものを明らかにしておいていただきたいと思います。
  83. 賀屋興宣

    ○国務大臣(賀屋興宣君) 行き過ぎがあるかないか、その場合に検察当局は判断を誤ることがあるかないかということにつきましては、率直に申し上げまして、そういうことが全然ないとは申し上げられません。多数の事件のうちに、結果論からしましたら行き過ぎであったとか、判断を誤った、これはあり得ることと思いますが、しかし、そういうことがないように、ほんとうに厳正公平に扱わなければならぬという方針は確立し、検察内部におきましても始終そのことを大切に考えてやっておる次第でございます。場合によりまして、早く逮捕者が出たり、いつまでも出なかったり、これなども考えようによりましては非常にまじめにやっておりますためで、早く逮捕者が出ることを、何となく世間が望んでおる場合と、そうでない場合とあります、現に飛行機事故等につきましても、事故の件数から見れば、むしろ逮捕や起訴は少ない。これは実際は、おもなその容疑者になるような人は、飛行機の場合はすでにもう死亡しておるという場合が多い。そういうときに、無理に生きている者から容疑者をつくるというようなことは絶対にいたさない。ほんとうにまじめに考えてまいります次第ですから、そういう結果も出ているようなことでございまして、厳重に、行き過ぎないように、不当に人権の侵害をしないようにという点につきましては、検察当局も常に留意をいたしております。ともかく私どもも始終その点について十分な法意を払うように指示をいたしている次第でございます。
  84. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 行き過ぎがなかったかどうかという点について疑問のある点は、実例としては、たとえば日暮里事件というのがありました。これは四名の現場職員が起訴されて、約七年かかって、結論的には無罪になったわけです。われわれが見ても、とうてい刑事責任を追及すべき性質のものではないというふうに考えられる者までが起訴をされて、中には、そのために、裁判が終わらないうちに脳溢血で廃人同様になるという人まで出てくる。一般の人間は、起訴をされて、裁判所で被告席にすわるというだけで精神的に非常に大きなショックを受けるわけであります。これはもう常人の考える以上のものがあります。それで四十何回も公判を経てやっと無罪になる。無罪になってもともとなんです。その間の精神的な打撃というものは非常に大きいと思います。一生ぬぐい去ることのできないショックを私は与えていると思うのであります。これなんかは、私はまさに検察当局の行き過ぎの一つの実例だと思うのです。こういう行き過ぎが、これから交通事故が多くなるにつれてひんぱんに出てくるようであってはならぬというふうに考えますから、大臣が、もしそれらの弱いものいじめ的な行き過ぎ逮捕といったようなことについては、厳に注意をするということであれば、その方針はいまのお約束とおりに十分に守っていただきたいということを、私のほうから要望をいたしまして質問を終わります。
  85. 山本杉

    山本杉君 法務省裁判所が御一緒でございますので、一つだけ、先ほどあちらの委員から出ました非行青少年問題について伺いたいと思います。と申しますのは、非行青少年の数がふえて、また、いろいろことしは特別な傾向があらわれておるという御説明でございました。私はこの間、練馬の鑑別所へ視察に参ったのでございますが、ああいう所はさぞ一ぱいだろうと思ったら、案に相違して非常に人員が減っているわけでございます。これは家裁のほうでお回しにならないからだろうという御説明でした、その質問を私がいたしましたときに。家裁のほうでは、そういう所へやったのでは、かえって悪くしてしまうからというようなことで、お回しにならないのだろうということでございましたけれども、青少年の非行問題もこんなふうになってまいりますと、もう少し真剣にいろいろな面で考えていただかなければならぬと思うのですけれども、こうして予算相当に増額になっておりますが、その辺がどういうことになりましょうか、一応伺わせていただきたいと思います。
  86. 賀屋興宣

    ○国務大臣(賀屋興宣君) この非行少年問題は実に重大な問題でございまして、次の世代をになう日本人全体にわたる問題——次の世代じゃない、現在すでにいろいろな犯罪が起こりまして非常に困った問題でございます。しかし、これは皆さんのお説のように一つの方法で直るという問題じゃなく、学校教育、家庭教育、社会教育、また、教育と申すことは当たりませんが、非常に人心に、知的にも、気持ちの上にも影響しますテレビ、映画、そういうふうないわゆるマスコミと申しますか、いろいろな問題がみんなからんでくるような問題でございまして、重点は、むしろそういう社会全体の環境と申しますか、こういった面に重点が置かれると思います。で、最近非常に主張されるようになりましたが、病理学的と申しますか、科学的と申しますか、こういう方面、先ほどの犯罪について御質問がありましたように、みんなが健全な精神状態を持っておってああいうことをするとかしないとかいう問題ではなくて、精神的異常の障害者、精薄者、こういう者がありますために、そういうふうな科学的なメスを入れなくちゃならぬ、病理学的の研究をしなければならぬ、こういう面が非常にクローズアップされなければならぬと思います。そういう方面が、いまの非行青少年問題の一環をになう少年裁判とか少年院とかいうところに、少年鑑別所というものも入ってくるのだと思います。こういう方面はもっと充実したいと思いますが、予算上の制約もございますし、また一方、こういう方面の技術者と申しますか、専門家はそうどんどんとは得がたい点もございまして、われわれもまだ鑑別所の充実が不十分だと思う次第でございます。  それから、これはなお政府委員より御答弁申し上げるほうが適当でございますが、いろんな考え方のうちに、犯罪者であるとか犯罪者に近い者が行くような施設に回されるというと、回された者が、もう自分は悪いことをしたというらく印を押されたように、自分の気分がそうなってしまうと、かえってよくないのだというような考え方が、社会一般に非常にあると思います。ある程度はそれは真理だと思うのであります。そういう意味からして、いろいろな犯罪の出てくることは、またやむを得ないと思う次第でございまして、現在の施設は、まだわれわれが考えても非常に不十分だと思うのでございまして、これを十分に利用するという考え方はみんな持っておりますが、そのときの場所、いろいろなことでお示しのようなことも起こるのじゃないかと思いますが、私どもはそういう方面を非常に充実していきたい、古い頭の改過遷善ということだけで決して直らない、もっともっとその人の精神の状態そのほかに科学的のメスを加えて、どういう方法が適正か、必要かというような面につきまして、さらに進んで、鑑別所やそういうものはもっともっと利用されていいんじゃなかろうか、大体こういう考え方をいたしておる次第でございます。
  87. 山本杉

    山本杉君 きのうの事件なんかにつきましても、いろいろ言いますところは、精神異常者を野放しにしているということなんでございますが、その鑑別所というのは病院みたいなもので、そこへ行って調べてもらえば一番いいんだということはわかっているのですが、どうして裁判所のほうはそこへお回しにならないようになさるのか、事務総長ですからどうかと思いますけれども、一言その点を伺いたいと思います。
  88. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者(関根小郷君) 少年事件につきまして、いまいろいろお話しの鑑別所がございますので、家庭裁判所へ回ってまいりました少年事件について、やはり相当の件数については鑑別所に回されて、しかもそこで調査をされました上、家庭裁判所の裁判官が具体的のケースごとに審判をするわけです。ですから、山本委員がおいでになりました鑑別所の件数が少ないということ——全体的に申しますと、われわれのほうの考えでは、かなりの事件が鑑別所にまいっていると思うのですが……。
  89. 山本杉

    山本杉君 そこの御説明では、犯罪者の数がふえているにもかかわらず、鑑別所に回ってくるのが少ないということだったのです。そのことを伺ったのです。
  90. 関根小郷

    ○最高裁判所属官代理者(関根小郷君) 数字的のことを申し上げますと、三十七年度、一昨年になりますが、一般事件で鑑別所に送致されました件数が三万件に達しております。でありますから、全体的に申しますと、かなりの件数がまいっております。
  91. 山本杉

    山本杉君 いまのお答えは、私の伺ったことにちっとも触れていないのでございますが、それはそれといたしまして、この保護観察の状態でございますが、私、地方へ参りまして、保護司の人が観察をしている様子を見ると、それは非常にまじめに生活をしている人にお願いをしておることでございますから、当然生活の面でゆとりがない中で一生懸命それをやってきてくださるのですが、そういう面に対する手当が非常に少ないように思いますが、その他をひとつお答えを願いたいと思います。
  92. 賀屋興宣

    ○国務大臣(賀屋興宣君) いまの点は、私も非常に心配いたしておるところでございます。御質問のほかになりますが、私は保護司と同じく民生委員というものを、いまの日本の社会で非常に重要だと考えております。ところが、いままでは、とかく慈善事業とかああいうものは、篤志家が片手間にやるのだという、ずいぶん明治のころの思想がまだ残っている。そこに財政問題がからみまして、ほんとうに社会奉仕的に犠牲を払ってやってもらうというような考え方が非常に多い。むろん物質上非常な犠牲を払わなければならないという状態に置くことは、これはよくないのじゃないかと思うのでございます。そういう意味でそういう実費の弁償と申しましょうか、手当と申しますか、具体的に言えば車代ということにつきましては十分なことをいたしたいと思いまして、非常に熱心ではございますが、なかなか財政上の事情、また同じ意味ではございませんが、いろいろなそういうやや類似の民間の方にいろいろな方面で尽力を願っている委員という方の数も多く、そのバランスもあるので、事務当的もなかなか困っております。本年も、はなはだ少額ですがある程度の増額を主張しまして実現をしたという実情でございますが、それにしても、まだまだ不十分であります。今後もこの増額の実現を続けていきたいと思っている次第でございます。
  93. 山本杉

    山本杉君 別の話になりますけれども婦人補導員でございますが、これが非常に待遇が悪くて、県によっては思うように仕事ができないようなところもあるようでございますが、そういう人々に対する身分保障それからまた常勤でございますか、それに対して、もう少し手当をよくしていただくようなことはお考えになっておりませんでしょうか。
  94. 賀屋興宣

    ○国務大臣(賀屋興宣君) 婦人補導員そのほかいろいろ更生施設などに勤務しておる方の給与というものは、非常に前から問題でございました。とかくおくれがちで、ほかが済みますと、それにつれて上がる。上がるのも、ほかの上がっただけおくれても上がればいいが、ほかが上がったごく一部しか上がらない。私は共通した悩みをよく知っております。微力ながら、先般、政府にいなくても努力した経験があるのでありまして、婦人補導員のような方につきましても十分に感想を持っております。ほんとうはこういう方々が有能に、しかも熱心に働いてもらわなければ、ああいうところは効果が上がらないのでございます。現在も非常に不十分でございます。今後もこの点に留意して増額の努力を続けたいと思います。
  95. 井上清一

    井上清一君 裁判所に伺いたいと思うのですが、来年度経費要求額のおもな事項の第二の項目といたしまして、訴訟の迅速、適正化に必要なる経費として約一億円の御要求があるわけです。現在、民事事件がことにそうなんですが、刑事事件といわず裁判が非常に時間がかかる。非常な時間がかかって、その結果、国民の権利を擁護するというような点から、私は非常に遺憾な事件が多いと思うのです。こんな経費でもって、私は訴訟の迅速な処理に必要な経費として銘打つにしては、あまりにお粗末な要求ではないかというような感じがするわけです。そこで、もちろん経費の点も考えなければならぬ、人員の点も考えなければならぬ、しかし、私は裁判のやり方に考えなければならぬ点が多々あると思うのです。そういう面で、根本的な訴訟の迅速化ということについて、どういうふうなお考えを持っておいでになるのか。そうしてまた、そういうことについて、あるいは何か調査なり研究なり、あるいは審議会なりへ御諮問になって、いろいろお取りまとめになっているというようなことも私は聞いておりますが、基本的な考え方を、どうやったらいいのかということを承りたいと思うのです。
  96. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者(関根小郷君) いまお問いの裁判の適正、迅速——非常にむずかしい問題でございまして、適正ならんとすればどうしても迅速にやることと逆行化してくるということがございますのですが、しかし、何といいましても早くしなければ、裁判を受ける身にとってみますると、裁判なきにひとしいとさえ言われるわけでございますので、できる限りの努力を重ねているわけでございます。いまお話しの点は、具体的には、現在、政府に臨時司法制度調査会が設けられまして、本年の八月までに答申が出るという段階になっております。それで、できる限り裁判官を増員して、一人当たりの裁判官が持っております事件数を減らすことにするか、それとも多数の事件のうち重要事件と簡単な事件とに分けまして、簡単な事件については、なるべく下のほうの裁判所と申しますと語弊があるかと思いますが、簡易裁判所のほうに回す。そうして重要な事件については地方裁判所に残して、しかも、有能な裁判官にそれをやってもらう。そういった根本方針を立てるかどうか。これはこれからの臨時司法制度調査会で検討するわけでございますが、まあおおまかに申し上げますと、裁判の合理的運営ということになろうかと思います。あわせまして、民事にいたしましても刑事にいたしましても、当再考側の弁護士さん側の御協力を得なければならぬ。裁判所のほうで忙しい忙しいと申しましても、当事者を代理しておられる弁護士さんのほうで延ばせ延ばせというふうなことになりますと、これはなかなかうまくいかない。やはり当事者側と裁判所側とが一緒になって、協力態勢でやっていただかなければならぬということで、弁護士会のほうにも協力方をお願いしておるわけでございます。
  97. 井上清一

    井上清一君 それで、今度相当の人員の増加をおはかりになっていると思いますが、ここに計画されておりますわけでございますが、非常に事件が、所によってはふくそうしまして、何と申しますか、一つの事件に手をつけると、ほかの事件がなおざりになって、それがだんだん積もり積もって、いろいろな事件が山積している裁判所があるし、またそうでない所もある。そういう所の人員の適正配置というふうな点についても、これは相当お考えにならなければならないじゃないか。ひまな裁判所はこんなことを言ってはなんですが、裁判官は非常にひまで、まあ魚を釣ってのんきにやっているというふうな裁判所もあると聞いておりますし、それから所によっては忙しくてたいへんだというふうな裁判所もある。しかし、裁判所がある以上は判事を置いておかなければならぬというふうなことで、どうもその配置が相当むらになっている点があるのではないかと私は思うのです。そういう点で相当思い切った措置をされる必要があるのではないかと私は思うのです。そういう点についてはいかがでしょうか。
  98. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者(関根小郷君) いまのお話も非常にごもっともな点でございまして、裁判所の配置の問題といたしまして、地方裁判所の支部あるいは簡易裁判所がかなりいなかのほうにございますけれども、いまお話のように、裁判所が設置されますと、支部にいたしましても簡易裁判所にいたしましても、事件が少なくても裁判官をどうしても配置せざるを得ない。そうしますと、事件が少ない、わりに裁判官がひまになるという所がないとは言えないわけでございます。でありますから、抜本的な方策を考えますれば、事件の少ない裁判所の支部を廃止するか、簡易裁判所もなくしていいのじゃないかという議論が出るわけでございますけれども、一面、その土地の住民と申しますか、そこにお住みになっている方から見ますと、権利保護のために裁判所が一たんあったものをなくすことは非常に困難になる。かなり政治的な問題が出ますので、そこらが非常にむずかしい問題であります。それでありますから、事件が少なくて裁判官一人置く必要のないような所には、裁判官の配置の機動性と申しますか、結局巡回制と申しますか、あるいは事件があるときに限って本庁から出張する、これは裁判官の代行と申しまして、回って行なうという制度を活用いたしまして、そういった方向でやらざるを得ないのじゃないか。これもやはり臨時司法制度調査会の答申を待ちまして、支部の廃止あるいは簡易裁判所の統合の問題等をいたしたいと存じている次第でございます。
  99. 井上清一

    井上清一君 私の体験なんでございますが、ついせんだって私がある民事事件の証人に来てくれということで行ったわけです。それで私がいろいろ証言をいたしまして、あとでその記録なるものを見たわけです。その記録というのは、裁判所の書記が——事務官ですか、ペンでもって雑記帳や何かに要点を書いているわけです。それをあとで文書に整えてやったものだと私は思いますが、この国会のように速記をとっているわけじゃないのです。あとから見てみますと、大体大要においては変わりませんが、中のことばの言い回し方とかニュアンスというようなものも、まるっきり違うわけなんです。そういう点で、私はちょっと中途半ぱじゃないかというような感じがした。また、ああいうものを書記がペンでもって書くというようなやり方は、非常に原始的なやり方なんで、このごろはテープ・レコーダーもあるのだから、そういうものをどんどん活用しておやりになったほうが仕事がいろいろ省けるし、非常に迅速に裁判ができるのじゃないかという感じを受けたのですが、今度はそういう経費かどうか知りませんが、これは登記所か何かの機械化の経費じゃないかと思いますが、そういうものにいたしましても、登記原簿を写すときには簡単な複写でやるとか……。何か裁判事務全体が非常に私は近代的じゃないというような感じがするのです。ですからこれをひとつ根本的に改めて、裁判の迅速ということを、ひとつ裁判所が最重点事項に取り上げられて、予算の面においても、また仕事の面においても、ひとつやっていただくことが現在大事なことじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  100. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者(関根小郷君) いまのお話の点もまことにごもっとで、私どものほうといたしましては、やはり書記官が証人の証言を速記いたしませんが、いまは要領筆記ということでやっておりますけれども、しかし、大都市の地方裁判所には原則として、速記官を配置してございます。これは事件全部について速記官がつくというほどやっておりませんけれども、全国で九百三十五人の速記官を入れまして、いわゆるステノタイプという方式の速記官でございますけれども、たまたま先生がおいでの所では、その速記官がいなかったので残念な結果になったわけでありますけれども、また、あわせて、いまお話のテープ・レコーダー、これもかなり予算要求いたしましていただいておるわけであります。
  101. 加瀬完

    主査加瀬完君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  102. 加瀬完

    主査加瀬完君) 速記を起こして。  私のほうから一点伺いたいのでありますが、この御説明の中に、法務省関係でございますが、七十三億九千五百十四万九千円という前年度予算に対しまして歳入の増加が認められておりますね。その内容は、罰金及び科料並びに刑務所作業収入ということになっております。で、まあ刑務作業の収入というものは、そう変化がないと思いますので、罰金と科料というものは一体前年度に比べましてどのくらいふえておるんですか。
  103. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 罰金、科料の歳入でございますが、三十九年度予定いたしております予算額が百四十六億四百六十二万五千円、前年度予算額が七十九億七千九百万円でございまして、この予算額だけの比較をいたしますと、六十六億二千五百万円ばかり来年度多くなる。まあこのような結果になっております。
  104. 加瀬完

    主査加瀬完君) 約倍近い増額ですね。予算書を年々見ておりますと、この罰金、科料の収入というものも毎年相当額ふやしてあるわけですね。で、先ほどの御質問の中にもいろいろ出ましたように、例の交通関係の罰金、科料、こういうものがウナギ登りにのぼりまして、まるで予算のほうをふくらましておいて取り締まりをすると——まあ極端にいえばそういう見方も私は成り立たないわけではないと思うんです。それはいずれの機会かにまたお尋ねするといたしまして、いまの交通関係の取り締まりで、司法処分と警察の行政処分というものの間に、相当アンバランスがあるんじゃないかと思うんです。たとえば、司法処分で三千円の罰金ということになりますね。ところが行政処分では六十日の営業停止と、こういうことが往々にしてあります。この関係は、法務省としては何か御見解はないでしょうか。
  105. 賀屋興宣

    ○国務大臣(賀屋興宣君) 私はまあ法務省へ参りまして、しろうとでございますが、すぐ気がつきますことは、罰金とか科料について、暫定的に前の五十倍にするというのが出ておりますけれども、いまの貨幣価値に比較してバランスがとれていないんじゃないかと思うんです。それでこのほかの何と申しますか、身体の罰と罰金罰には、相当バランスが失われているという例が多いんじゃないかと思います。これは是正しなければならぬことでございまして、いま研究しております。まあ率直に申し上げますと、この議会にも間に合わしたいくらいに思っておりますが、ただ現状は、毎年毎年つくっていた法律で相当上がっているのもございますし、そうでないのもあるから、一律に何倍にしたらいいと片づけるわけにもなかなかいかぬ点がございます。そういう点がございますが、金の価値からバランスがくずれ、それがあるいは禁錮とか懲役とかというふうな身体に加えられるものとのバランスがくずれているものも相当あると思いまして、これは是正したいと考えております。
  106. 加瀬完

    主査加瀬完君) これは警察関係にお伺いしなければならない問題ですが、たとえば道路の中央に白線がありますね、それをちょっと越えたという場合でも、六十日くらいの停止を食わせておる場合もございます。行政指導で注意をすれば事足りるような場合でも六十日という、運転手だとすれば二カ月収入がないということになりますかね。司法処分というのははるかに軽い、行政罰は非常に重い。野放図に行政罰なら何をやってもいいというやり方では、司法体系というものが私は非常にゆがんでくると思うのです。それは逆に、法に対する不信ということにもなりかねない状態に——まあ違反をした者は違反をしたから悪いわけではございますけれども、選挙違反のようなもので、見つかった者だけが罰せられるという感じを運転手は受けておりますから、どうも法の信頼というものが、司法処分が軽くて行政罰を野放図に拡大をするということで失われてくるきらいがあるのじゃないかと心配されるわけでございますが、刑事局長、どうでしょう、この点。
  107. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 全く急所を突かれた感じでございまして、恐縮するのでございますが、仰せのように、行政罰と刑罰との関係にバランスがとれていないと、行政罰も効果がありませんし、また刑罰も権威を失うわけでございます。ただ、戦後の法律、この道交法に限りませず、一般に戦後の法律は、すべて刑罰をもって、司法罰をもって担保するという立法形式をとっておりますために、道交法一つ取り上げてみましても、八十に余る犯罪類型が規定されておるわけでございます。そのために、取り締まりを強化して自動車事故を防ぐという努力をいたしますと、このあがってくるものが非常に多くなる。また罰金額も、大臣がいま御指摘になりましたが、道交法に関しましては、近年の改正によりまして、物価体系といいますか、そういったものにやや近い罰金額になっておりますので、近年非常にこの罰金額の徴収もふえておるのでございますが、いまの点につきましても、何らかの方法を講じたいというので、今回たしか道交法の改正案が警察当局から国会に出されると思うのでございますが、その中で行政罰についての考え方をある程度体系化したものを出されると聞いております。それからなお一部の犯罪につきましても、質に重点を置きまして、たとえば酔っぱらって運転するという場合の罰を引き上げるとか、あるいは救護義務のある者が置き去りにしてしまうといったような罪をかなり重くするというふうに私も承知しておるのでございますが、その辺のアンバランスを是正していくという努力も現になされつつあります。なお、将来の問題といたしまして、はたして戦後とっております、このように一切を司法罰で担保していくという立法政策が当を得たものであるかどうかということにつきましても、私自身ある程度の疑問を持っておりまして、特に道交法の最近の傾向にかんがみまして、この点につきましては、警察当局とも、また、事は裁判所にも関係のあることでございますので、関係方面と慎重にこの問題を考えてみたいというふうに思っておるのでございます。
  108. 加瀬完

    主査加瀬完君) ちょっと速記をやめて。   〔速記中止〕
  109. 加瀬完

    主査加瀬完君) 速記をつけて。
  110. 亀田得治

    亀田得治君 臨時司法制度調査会で、いま将来の裁判制度をどうすべきかということで、非常に熱心に討議が続いているわけですが、この夏一ぱいで結論を出し、予定どおり内閣に答申をする、そういう方向で作業をやっております。だんだんこの問題が具体化してきておるわけでありまして、それに関連して若干大臣と最高裁当局と並びに官房長官から御意見を聞いておきたいと思います。  最初に法務大臣のほうから、法曹一元化制度に関する大臣の考え方ですね。大まかでけっこうですが、お聞きしたいわけです。もちろん、法曹一元化といいましても、いろんな中身があるわけでして、そういう制度をとっておる各国の制度をみても、これはいろいろ違っておるわけです。だからそういうこまかいことではなしに、ともかく大まかにみて、在野法曹の経験を経て、そうして裁判官をつくり上げていく、こういうふうに考えてもらっていいと思うのですが、そういう問題が調査会の中では非常に熱心な討議の対象になっておるわけです。理論的には大体是認されておるように私はみておるわけです。だが、実現のやり方等については、これは相当意見が分かれておりますが、考え方そのものを否定されるような意見は、全委員を通じまして、あるいは若干あるかもしれませんが、私の理解ではほとんどないのではないかというふうに、だんだん意見が煮詰まってきておるわけです。そこで、法務大臣のこういう問題に対する考え方をひとつこの際御参考までにお聞きをしたいと思います。
  111. 賀屋興宣

    ○国務大臣(賀屋興宣君) 率直に申し上げまして、私はしろうとでよくわからないのでございます。率直な言い方で申し上げております。法曹一元化という意味をひとあたり伺いまして、裁判が正しく行なわれて、事実の把握、認定、法の適用、その情状等によりまして適正に行なわれる、こういう面からみますと、同じ法律問題に関係しましても、弁護士、場合によれば検察官、こういうふうな、判事より違った立場から法をながめ、裁判というものをながめて、十分な経験を持った人が裁判をするということは、非常に願わしいことであると思うのです。なかなか世の中はむずかしいものでございますが、私は徴税官吏には、小売り商なんかの経験をもった者がなったらおもしろいではないか。世の中は思うようになりませんが、裁判というものは、民主国としてきわめて重大なものでございますから、ほかのものは思うようにいかんでも、裁判ということについては、いま申し上げましたような事実の把握、認定、法の適用、また、これが実情に合うようにという意味から、多角的な豊富な経験を持った人が、専門知識はもちろんでございますが、なるということを私は聞きまして、きわめてそのとおりであると感ずるのでございます。ところが、私どもよけいな心配かもしれませんが、その実現性はどうかということにすぐ頭がぶつかります。いまのようにキャリアでずっと下の判事から上がって上の判事になる、俗なことばでございますが、というようなことを急に変えることは、一体事実上どういう影響を及ぼすか、また、いまのような十分な経験を持っている人をすべて判事にするということで、裁判所、最高裁、高裁、あるいは地方裁判所、簡易裁判所、すべてそういうりっぱな人ばかりで充実するということが、これはいいことだけれども、いろいろな観点から、そう急速に行なわれ得るかどうか、これは給与にしましても、現状のようなことではできないと思いますが、これは財政上、また、ほかの国家公務員等、いろいろな振り合いからしてどういうことであろうか、いろいろ疑問も浮かんでおります。そういうことに関しまして、前に申し上げましたように、全体的にこの問題を結論づけるために、あまりに私はこの問題にはしろうとでございまして、そのゆえに、いまからも関係の人々の話をよく聞き、また、いよいよ司法制度調査会で答申が出ましたならば、その答申をよく拝見し、また、そういう答申が出るに至りました理由につきましても十分に研究してから自分の考えというものをきめたいと、かように思っている次第であります。
  112. 亀田得治

    亀田得治君 非常に名答弁をいただきまして、どうも感謝します。ことに、中小企業者と徴税官吏との関係などは、きわめて適切だと、さすがやはり大蔵省関係のずっと経験も積まれた大臣だけあるというふうに感じたわけですが、結局法曹一元の問題というのは、社会の常識に反しない裁判ということであろうと思うわけで、これはもうむしろしろうとの方々常識的に判断してもらっていい問題だと根本的には思うわけです。結局そういたしますと、そういう制度を日本においてつくり上げるのは、これはなかなか過渡的段階においてはいろいろなやらなければならぬことがたくさんあろうと思うのです。なかなか一どきにできるものではないというふうに私も感じますが、理想としては、法曹一元という考え方には賛成だ、それではあすからやれ、そういう責任は別に負ってもらわぬでもいいのです。大きな理想からいって賛成だというふうに理解して差しつかえありませんね。
  113. 賀屋興宣

    ○国務大臣(賀屋興宣君) 大体そうでございます。ただ、理想の実現の理想という意味が、比較的近く実現し得るかというと、いまの私の感じでは、そう近くはなかなか完全には実現できないのじゃないかという感じを持っております。これは、なお十分よく研究しなければわかりませんです。
  114. 亀田得治

    亀田得治君 その過渡的な期間がどの程度かかるかということは、やはり今後のいろいろな努力によると思うのです。しかし、初めから理想がないことには問題が始まらないわけですから、きょうはその点だけを実は確かめたかったわけです。これがどれだけ早く進行するかどうかは、これはむしろ内閣全体の責任であるわけでして、そういう意味で官房長官に総理大臣の代理でひとつお越し願ったわけですが、一番あとに聞きます。  それで次に、最高裁のほうにお聞きするわけですが、どうも最高裁当局の態度は、少しこの問題について消極的でなかろうかというふうに実は感じているわけです。どうも法曹一元という問題が出てくることが現在のキャリア裁判官というものが批判されているというふうな、多少感情的なものも入っているのかもしれませんが、理由はいずれにいたしましても、多少消極的な感じを率直にいって私たち受けております。そうして、ともかくむしろそういうむずかしいことをいわないで、もう少し裁判官の月給などを上げてくれれば事態は少しよくなるのだ、むしろそのほうが先じゃないか、ざっくばらんに言えば。何かそういうふうな感じが強く出過ぎておるように思うわけですが、これはどうせ最高裁当局としても内部においていろいろな論議をされておると思いますが、ざっくばらんにひとつそこら辺の事情をお聞かせ願いたいと思います。
  115. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者(関根小郷君) いま亀田委員のお問い、法曹一元という制度に対する賛成かどうかという、あるいは理想としてとるべきかどうかというお問いだと思いますが、現在の段階におきましては、御承知のように内閣に臨時司法制度調査会ができまして、亀田委員もその委員として活躍されているわけでありますが、最高裁判所側では最高裁判所の裁判官がお一人、あと高等裁判所、地方裁判所から一人ずつ出て委員として発言をされているわけでありますが、まだ最高裁判所全体としての法曹一元に対する態度をきめたわけではございません。ただ各裁判官にはそれぞれの意見があるかと思いますけれども、まだその段階までにいっておりません。結局臨時司法制度調査会で答申が出ますれば、それに対してある程度の批判その他はございますかと思いますけれども、ただいまお話しのように、最高裁判所側で法曹一元に対する消極的態度をとっているということはございません。また積極的態度をとっているという段階でもないわけでございます。
  116. 亀田得治

    亀田得治君 積極的でも消極的でもないというお答えでありますが、しかし裁判所以外は、ほとんど筋としてはこれは認めるべき議論だと、多少自分たちに不利な点があっても筋は筋として認めるような態度が多いわけですが、どうも裁判所関係だけがいまおっしゃったような賛成とも反対ともいわぬような状態が実は見られるわけですね。だからどうもその辺に割り切れないものがある。反対なら反対ということでおっしゃるなら、これはまた一つの見解ですよ。見方ですが、しかしこの重要な司法制度の将来、しかも現状は皆さんがあずかっておるその当事者が賛成でも反対でもないというのでは、これはちょっとほんとに——それならそれも一つの見識かもしれませんが、そういうふうには普通は感じないわけですね。だからそういう点がどうも割り切れない気持で、実は私たち委員会においても感じておるわけです。私再度お尋ねする点は、了解してもらえると思うのですが、皆さんがいま制度の責任者なんだから、それに対して問題が出ているわけなんだから、しかも、出ておる理由は十分にあるわけです。先ほども多少御審議があったように、裁判のおくれとかいろいろな問題があって、そうすれば、それに対して意見が出ないと、賛成とも反対とも出ないというふうな意見の出方というものは私はなかろうと思います。だからもう少し何かあるに違いないわけでして、もう少し打ち割ってひとつ最高裁の中の意見というものを御参考に聞かしてほしいわけです。意見が一致しておらないならおらないでもいいです。こういう意見とこういう意見というようなことであっても参考になるわけです。どうぞもう一度。
  117. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者(関根小郷君) 私のほうも率直に申し上げまして、もし最高裁判所全体の意見をお問いいただくとしますと、御承知のように裁判官会議を経て、そうしてその意見に基づいて申し上げなくちゃならぬわけでございます。いまの段階では臨時司法制度調査会に裁判官の方が最高裁判所からは一人出ておられて、その方が意見を述べられておられるわけです。まだ最高裁判所全体としてどうかという政府からのお問いもないわけでございまして、したがって、正式に最高裁判所側は法曹一元に対する意見はどうかということをまだお聞きいただいていない。ですから、ただいまの状態では、臨時司法制度調査会の答申があるいは出そうになったというときは、最高裁判所の意見はどうかということが、あるいは臨時司法制度調査会からお問いがあれば、それにお答えせざるを得ない。あるいはお問いがなくても、もし最高裁判所側の意見が違うということになっては困るという段階になれば、最高裁判所の裁判官会議でその批判を加えさしていただいて、いい答申をしていただくという段階がこようかと思いますが、いまお問いの点につきましては、率直に申し上げまして、正式に裁判官会議を経ておりません状態でございますので、それ以上申し上げるわけにいかない状態でございます。
  118. 亀田得治

    亀田得治君 まあ正式の裁判官会議等においてきまっておらないことでもいいわけなんです。そうしてまた、調査会から最高裁に対する質問が出ておらぬことはそのとおりでしょうが、出ておらなくても、これは重大問題なんだから、いろいろ意見が討議されておることは当然のことだと思うのです。だからそういう点についてお話をいただければけっこうなんです。
  119. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者(関根小郷君) これも率直に申し上げまして、まだ裁判官会議の議題に、法曹一元化かいなやという議題にまでのせておりません。われわれ事務当局といたしましては、いろいろ議論しております。しかし裁判所側としてどうかというお問いになりますと、まだ率直に申し上げまして、そういう議題にのせておりませんので、いずれはいまお話のように、裁判官会議の議題にのせまして、方向をきめざるを得ない時期がまいろうかと思います。もう遠からざる時期にそういう段階にくると思いますが、ただいまのところではまだいたしておりません。いまのところでは先ほど申し上げました最高裁判所の裁判官お一人が、臨時司法制度調査会におきまして御意見を述べられておるという段階でございます。
  120. 亀田得治

    亀田得治君 裁判所側から三名調査会の委員が出ておられるわけですが、まあ大体偶然の一致かもしれませんが、同じような御意見になっておるのです。あれは偶然の一致と見ていいわけでしょうか。そうでなしに、やはり裁判所側として多少検討されて、そうしてただ幾らかの色づけば各人にまかすというふうなことになっておるのじゃないでしょうか。そういうことなら、大体それで多少私としても理解ができるわけですが、どうなんでしょうか。
  121. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者(関根小郷君) 亀田委員裁判所の実情も御承知かと思いますので、私ども何も隠すとか、そういうことはございませんですが、率直に申し上げまして、裁判所側から先ほど申し上げましたように、三人の裁判官が出ておられますが、われわれ事務当局といたしまして、臨時司法制度調査会に出られる前に事務当局に相談する機会はございます。でありますけれども、各委員の意見を制肘するということはないわけでございます。でありますから、最高裁判所裁判官のお一人が出ておられても、どうも自分の意見と最高裁判所全体の意見と違うと困るから、こういう問題について早く裁判官会議をやってくれというお問いがあることがあります。そういったお問いがだんだん強くなってきておるので、われわれのほうとしても裁判官会議の議題にもう近い機会にのせて、きめていただきたいと考えておる次第でございます。
  122. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、この程度に一応いたしておきますが、ただまあ受ける印象は、最高裁なり裁判所側としての空気が法曹一元に積極的な姿勢を持っておれば、まだきまっておらぬでも、事務総長がこれは私の意見ですがというようなことでお答えになると思うのですね。そういうお答えが出てこぬところに、やはり案外裁判所のいまの空気というものが出ておるんじゃないかと思って先ほどから聞いておるわけですが、まあその程度にしておきましょう。  そこで最後に官房長官にお尋ねいたしますが、いずれにしてもこの答申が近く出るわけで、どんな答申になりましても、多少中身は今後の扱い方で変化があるでしょうが、相当予算のかかる中身の答申に私はなろうと思うのです。これはもう大まかに言って相当大きな問題じゃないかと思っております。そうしなきゃこの調査会を設けたそもそもの理由なり、そういうものは全く無意味だったということになるわけで、そういう場合における内閣の扱いですね。どうされるか。これは八月に出れば来年の予算編成のちょうど準備に入る時期にもなるわけですが、この調査会を置かれたときの当初の総理大臣のあいさつですね、調査会に来てなされたあいさつから言いましても、積極的に取り組んでもらうというふうにわれわれは考えていま勉強しているわけですよ。その辺はどういう心がまえでおられるのかという点なんですが、大まかなところを聞きたいわけです。
  123. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) いま亀田さんからお話ありましたように、あれを設立しまして以来、私どもりっぱな結論が出ることに大いに期待をしておりますし、我妻会長以下おそらくはかの調査会に例がないくらいに非常に御熱心に、わりあいに短い時間の間で非常な成果をあげていただきつつあるようであります。非常にこの結論には期待をいたしております。したがいまして、発会の際に総理が申し上げましたとおりに、その結論は尊重いたしまして、ぜひでき得る限り早く実現をいたしたい。いま亀田さんいみじくもおっしゃいましたように、相当お金がかかるようでございます。したがいまして、財政当局ともよく打ち合わせなければなりませんから、なるべく早くその目標に達成できるようにぜひ努力いたしたいと考えます。
  124. 亀田得治

    亀田得治君 まあ内閣直属の調査会というのは、憲法調査会とこの臨時司法制度調査会二つだけなんですね。特に内閣に置かれておるわけなんです。その重要性からきたのだと思うのですね。一体この二つを比較してどちらを重要だと官房長官ごらんになっておりますか、いろいろな条件を考えてすでよ。
  125. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) 非常にむずかしい御質問でございますが、やはり両方とも大事であると考えております。
  126. 亀田得治

    亀田得治君 両方大事かもしれませんが、そんの中でも特にと、こういう意味で聞いたわけですが、しかもいろいろな条件ということを申し上げたのは、憲法調査会の場合には、やはりなかなかこれは御承知のような賛成、反対、大体調査会自身がいびつなんですね。でき工合がちょっと満足にできておらぬわけなんです。ところが、世間的にはそっちのほうがずっと関心が高まっているわけですね。臨時司法のほうは重要な問題であるにもかかわらず、一般のマスコミなんかにのりにくい地味な性格をやっぱり持っているわけですね。しかし実際は、これを五年、十年日本の司法制度というものを放っておいてごらんなさい。これは崩壊しますよ。だれも裁判所なんかに書類を持っていかないですよ。暴力団がはびこるのは、一つはそういうところにあるのですよ。だから実はこれは非常な問題でして、憲法調査会なんか、あんなものは放っておいたって日本の国はどうにもなりませんよ。憲法九条にしたって、政府のほうでは適当な有権解釈をされて、最高裁もちゃんとそれを認めて、それでやっているわけでしょう。それから憲法学者の意見を聞いたって、まあいわゆる護憲論という立場でない人でも、ああ無理して憲法なんかいじらぬでもいいじゃないか。そういう意見もずいぶん出ているわけですからね。会長の高柳さん自身がそうなんです。だからああいうものは答申が出たって放っておいたらいいのですよ、しばらく。自然の成り行きに任せておいたほうがいい。それに比較したらこっちのほうは全然違う、条件自体というものが。その点は官房長官認めてくれると思うのですが、どうですか。
  127. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) まあだんだんの御意見承っておりますが、憲法調査会の結論につきましては、総理もしばしば申し上げておりますように、この答申が出ましたらば慎重に十分に検討いたしたい、こう申し上げている。それからいま私がお答え申し上げたのは、尊重いたしまして、金もかかることでありますから、財政当局とも打ち合わせてできるだけ早く実現するようにいたしたい、こう申し上げておりますので、おのずからそこは御了解願えると思いますが。
  128. 亀田得治

    亀田得治君 了解しました。こっちのほうがやはりちゃんと上だというふうに了解をいたしまして、まあ質問はこれで終わります。
  129. 加瀬完

    主査加瀬完君) 他に御質疑のおありの方はございませんか。  では、以上をもちまして、法務省及び裁判所所管に関する質疑は終了したものと認めます。  本日はこの程度にいたしまして、明二十六日午前十時に開会をいたします。  これにて散会いたします。    午後三時四十分散会