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1964-06-09 第46回国会 参議院 内閣委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月九日(火曜日)    午前十時五十三分開会     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     三木與吉郎君    理事            石原幹市郎君            下村  定君            伊藤 顕道君            鶴園 哲夫君    委員            塩見 俊二君            林田 正治君            村山 道雄君            千葉  信君            鬼木 勝利君            向井 長年君   国務大臣    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    厚 生 大 臣 小林 武治君    労 働 大 臣 大橋 武夫君   政府委員    大蔵大臣官房長 谷村  裕君    大蔵大臣官房財    務調査官    松井 直行君    大蔵省関税局長 佐々木庸一君    大蔵省理財局長    事務代理    佐竹  浩君    厚生大臣官房長 梅本 純正君    厚生大臣官房国    立公園部長   今村  譲君    厚生省公衆衛生    局長      若松 栄一君    厚生省環境衛生    局長      舘林 宣夫君    厚生省児童局長 黒木 利克君    労働大臣官房長 和田 勝美君    労働省労政局長 三治 重信君    労働省労働基準    局長      村上 茂利君    労働省職業安定    局長      有馬 元治君    労働省職業訓練    局長      松永 正男君   事務局側    常任委員会専門    員       伊藤  清君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○厚生省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○大蔵省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) これより内閣委員会を開会いたします。  労働省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に続いて、これより質疑を行ないます。  政府側から大橋労働大臣和田官房長有馬職業安定局長が出席いたしております。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  3. 鬼木勝利

    鬼木勝利君 前回に引き続いてちょっとお尋ねしたいんですが、時間の関係で、いろいろお尋ねしたいことがありますけれども、その点は労働省事務当局の方にあらためて私いろいろお尋ねしたいということに譲りまして、一、二お尋ねしておきたいと思いますが、雇用促進事業団関係ですが、安定所のほうは、むろんこれはその法にきめてありますように、促進事業団安定所業務内容はおのずから異なっておると思いますが、離職者関係就労事務について、安定所促進事業団とどういう連携を保って今日までやってきておられるか、その点についてちょっとお尋ねしておきたい。
  4. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) この点は十二分に連絡をとれるような仕組みにいたしておりますが、詳細は政府委員から答弁いたさせます。
  5. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 安定所雇用促進事業団は全くうらはらの関係業務運営をやっておりますが、具体的な離職者対策につきましては、融資の面におきましても、また移転就職者用の住宅の建設、入所あっせん、こういった面におきましても、すべて安定所と緊密な連絡をとりながら、事業団業務運営をやっておるわけであります。
  6. 鬼木勝利

    鬼木勝利君 一応その点はわかるのですが、促進事業団のほうは、主として雇用促進あるいは援護というような点に私は重点が置いてあると思うのですが、この促進事業団は本年度時限立法として大体切れるのじゃないかと思いますが、その点はどういうふうになっておりますか。
  7. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 事業団は今年度時限立法として切れるということはございませんで、石炭離職者対策としては四十三年の三月末という一応の終期がございますから、それと関連して石炭関係離職者援護業務は、そういう時期になれば終息するというかっこうになりますが、事業団としては時限立法で期限が定められておるということは全然ないわけでございます。
  8. 鬼木勝利

    鬼木勝利君 その点について、福岡あたりでは、この事業団が切られるのじゃないか、一応援護事務が終わるのではないかというような不安がないでもないようですが、その点は関係はありませんね。
  9. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 労働省といたしましては、雇用促進事業団は単に石炭離職者に対する対策だけでなく、労働省失業対策の今後の推進に欠くべからざる協力機関であるという考えのもとに進んでおる次第でございまして、御承知のように、石炭離職者に対する対策につきましては、当初からの計画によりまして、先ほど局長から申し上げましたように、四十三年までに全部終わるという目途で進んでおります。そのほうの手があくにしたがいまして、本来の業務でございます一般失業者就職促進の方向へ事業重点が変わっていくということはございますが、この機構そのものについての廃止ということは、全然考えておらないところでございます。
  10. 鬼木勝利

    鬼木勝利君 わかりました。  それでは、これについて私いろいろお尋ねしたいことがありますが、それはあとに譲りまして、事務当局の方といろいろお話し申し上げたい点もありますので、促進事業団炭鉱離職者対象として設置されて——これは福岡炭鉱の場合です——今日まで安定所と緊密な連絡を保ってこられてどういう実績をあげられたか、年度別資料をひとつ作成していただきたい。それによって私またお話し申し上げますので、その点をひとつお願いしておきます。
  11. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 資料は提出いたします。もしあれでしたら、概要をここで簡単に御報告申し上げてもよろしいですが、どういたしましょうか。
  12. 鬼木勝利

    鬼木勝利君 それは抽象的なお話を聞いたって何だから、あと懇談をいたしたいと思います。  それから安定所あるいは労働基準監督署あたりの方が国家公務員であって、そして都道府県知事指揮下にある。これはこの法文にも載っておりますが、そういう点において実際問題として非常に不自由な場合がないでもない。私ら体験しておりますが、また、事実身分国家公務員であり、そして都道府県知事指揮下にあるというような点で、御本人たちもどちらかにはっきりしてもらいたいという希望がないでもないようですけれども、そういう点についてどういうふうにお考えであるか、その点ちょっと承りたいと思います。
  13. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 身分国家公務員であり、事務性質は、国の事務として府県知事機関委任をしておりまして、知事を通して業務指摘監督をしておるというような点で、身分上の指揮系統業務上の指揮系統が二本立てになっておるというふうな御非難もときどき受けるわけでございますが、また、職員の間にも、身分国家公務員であるため府県職員との均衡問題、いろいろ意見が出ていることは私も承知しておりまするが、現在の職安行政仕事性質からいいますと、現状のようなやり方で業務を遂行していくということが一番実情に合っているんではないか、かように考えて、地元の職員とのいろいろな不均衡の問題は具体的に漸次改善をしていきたい、かような考え方運営してまいっておるわけでございます。
  14. 鬼木勝利

    鬼木勝利君 これは給与関係なんかもあるんじゃないかと思うのですが、そういう点も私感じておるわけですが、かつて私も県会にもおりまして、事実身分国家公務員であると、そういう系統である。身分知事指揮下にある。どうもそういう点で現実問題として行政上ちょっと困る場合がないでもないです。あなた方、そういう点が一応抽象的にはおわかりであるかもしれぬけれども、具体的に問題に直面した場合に困る場合がある。これはかつて私のところにも身分を一本にしてくれということで陳情に見えたことがあるのですが、これは各全国都道府県が一致した意見統一意見によって持ってこられれば考えるけれども、単独でそういうことを言われたのじゃちょっとぐあいが悪いからと言って、私お断わりしたことがあるのですけれども、そういう声はあなた方直接お聞きになりませんか。ただそういう事実は知っておると、考えておるというだけで、そういうことはありませんでしたか。
  15. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 身分の一元化という問題は、従来から府県当局あるいは議会筋等からいろいろ御意見が出たことはございます。しかし、先ほど申しましたように、現在の事務性質から考えまして、いまのような国家公務員制度で執行していくということが一番実情に合っているのじゃないか、かように考えておるわけでございます。
  16. 鬼木勝利

    鬼木勝利君 事務性質ということは、どういう意味ですか。その事務性質ということについて、もう少し具体的にお話し願いたい。
  17. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 安定行政は、御承知のように、失業保険一般職業紹介と、こういった大きな柱を中心に運営されておりますが、この仕事府県行政区画というようなものにとらわれないで、全国一本の労働市場という観点で、全国的な規模で運営をしてやっておりますし、仕事性質府県行政区画とかかわりなく処理していくと、労働力の流動も府県区画とは関係なしに、産業発展状況あるいは交通、地理的な状況ということで動いておりますので、事務性質上、地方事務ということで性格づけるわけにはいかないので、国の事務として現在処理しておるわけでございます。
  18. 鬼木勝利

    鬼木勝利君 それはまた少し疑問になってくると思いますが、単に安定業務あるいは労働業務のみが国家的なものであると、それは少しどうかと思うのですがね。国家経済の問題であろうが、外交問題であろうが、農業政策であろうが、これは全部国家的のものであって、そういう一県を相手にすべきものじゃないということは、いずれの行政事務にも私は通ずると思う。その点が、仕事性質とおっしゃるけれども仕事性質は、全部これは一県を対象とするとか、あるいは一ブロックを対象にするとか、そういうものではないと思うのですがね。国家行政というものは、国家大局的見地に立って行政事務をやっていくのであって、その点私はちょっと納得できないのですがね。
  19. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 鬼木先生の御不審は、まことにごもっともに存ずる次第でございます。元来、わが国職業紹介制度は、戦前におきましては、自治団体にこれを経営させる、主として市町村に経営させておったのでございまするが、御承知のとおり、ILOの国際条約によりまするというと、職業紹介事業は国立でなければならないということに相なっておりまして、その点で、とにかく民間の紹介でなく、公共団体という公立の職業紹介事業であるから、条約に照らしてもまずまずよろしかろうというような考え方で進んでまいっておったのでございます。終戦後におきましては、職業安定事業は、やはり条約にはっきり書いてあるとおり、国の事業として運営すべきであるという考え方のもとに、現在の機構に改められたものと考えておるのであります。そこで、これに従事いたしまする職員国家公務員というたてまえにはいたしてございますが、しかし、終戦直後しばらくの間は、何と申しましても、職業紹介仕事現実に取り扱う求人、求職の紹介というものは、大体府県経済圏の範囲内での職業紹介がおもであったのでございまして、そういう意味で、これらの公務員は、身分国家公務員でございましても、その取り扱う仕事、すなわち府県内が主となっておるところの職業紹介仕事を扱うにあたっては、地方府県の利害という見地から府県知事がこれを指揮するということが実際的に必要でもあるし、適当でもある、こういう考え方に立ちまして、府県知事職務執行についての指揮監督権というものが容認されたものと思っておるのでございます。そういうわけでございまするから、この現在の制度というものが、理論と実際との双方の面を考えてできた一種の妥協的な機構であるというふうに批評することもできるかもしれないと思うのでございます。したがいまして、こうした点から、先ほど御指摘になりましたような給与、その他の面においても、地方公務員との関係上、実際にいろいろな問題が生ずるということは、これはやむを得ない点があるのでございます。これは、確かに現行制度一つ問題点に相なっておると存ずるのでございます。そこで、現在内閣に設置せられておりまする臨時行政調査会におきましても、この職業安定所機構及びその所員の身分、こういったものについてただいま再検討を行なっておられるのでございまして、労働省といたしましても、その再検討の結果、まとまった御意見が得られましたなら、これを貴重な参考といたしまして、将来の制度改正等についても真剣に考慮をいたしたいと考えておる次第でございます。
  20. 鬼木勝利

    鬼木勝利君 確かに、これはいま大臣のおっしゃったように、やむを得ない一つ措置だと思いますが、確かに問題点であるという大臣の御答弁に対して、私も了解いたします。確かにこれは問題点であると思うんです。  時間がございませんので、最後に要約して申し上げたいと思うんですが、前々からお話を承っておりますように、また、事実そうでありますが、年年失業者は激増しておる。これに対して完全雇用、完全に再就職を実現することができるかどうか、まずその点をお尋ねして、それから、職業訓練所等において再訓練をなさっておりますけれども、どうもまだ隔靴掻痒の感があるように私には思われる。はたして大量再訓練ができるかどうか。ことに産炭地などにおきましては、単純労務以外にはあまり適職もないと思われる節がないでもないのですが、大量失業者就職が、職業訓練を通じて再就職が可能であるかどうか。単に人員のみ増員して、そうして事足れりと、こういうお考えは少し安易ではないか。現地実態をもう少しよく調査把握されてこれに対処して、内容充実施設の拡充、もって実績をあげられるように私は要望しておきます。  なお、前々から私お尋ねいたしましたように、炭鉱合理化が進むと同時に、労務者も著しく減少していく。したがって強制労働をこれにしいる。こうした実情をよく御存じであるかどうか。もし御存じであるならば、一日も早く私は正常な姿に直していただきたい。その点についてもあとで私はよく当局者お話し申し上げたいと思っておりますが、労働基準法にも、御承知のとおり、はっきり明記してある。「労働者人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」、これが第一の労働条件なんです。これは御承知のとおり基本法第一条にある。しかも、「労働者使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」、それを一方的に使用者労働をしいる。これに対して何の報いもない。これでは、あまりにも実態がわれわれの考えておるより以上の惨状である。そういう点において、単に労働基準監督署人員をふやしても、実態の把握、実態調査というものができていない。この点を私は非常に遺憾に思う。そういう点を指摘してもらえば調査する、調べるというようなことでなくして、こういう点を、一日も早くこうした現地の目をおおうような惨状が事実あるのですから、塗炭の苦しみにあえいでおるところの炭鉱労務者のこうした現状を一日も早く払拭していただきたい。そうして正しく労務者が安定と生活を営むように、この点について大臣の明確な御答弁最後にお願いしたいと思います。
  21. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) まず第一に、失業者がだんだんふえておるが、完全雇用というものは、はたして達成することができるかどうかという点でございますが、完全雇用の達成は、申すまでもなく、経済成長が進むということが前提であるのでございます。経済成長が進むにしたがいまして、いろいろ新しい技術、あるいは新しい社会的、経済的事情発生によりまして、個別的な事業について見ますると、かえって経営が困難になるというようなものもございまするし、また、経済成長そのもの技術の進歩を前提といたしておりまするから、技術の前進に伴いまして労働力の節約ということも行なわれ、これらの事情から、産業の種類に応じて、あるいはまた、地方的に失業者が出てくるということも、ある程度避けられない事柄であると思うのでございます。もちろん、それにもかかわらず、雇用の総数は、産業発展にしたがいまして漸次増加をいたしておりまするから、全体的な雇用ということに相なりますると、逐次完全雇用に向かって進んでおるのではございます。しかし、地方的にあるいは産業的に、労働需給アンバランスに伴う失業発生ということは、考えていかなければならぬと思うのでございます。今日わが国職業安定機構が当面いたしておりまする問題は、まさに経済成長の過程における地区的な、あるいは産業別的なアンバランス、それから、日本の労働事情に根ざしました年齢別的なアンバランス、こういったものをいかにして解決するかということであるのでございまするが、これがためには、労働省といたしましても、中高年齢層の再就職ということに重点を置きまして、いろいろな就職援護措置を講ずる、また、職業安定機構効率化をはかる、職業訓練等によりまして失業労働者の新しい職場への適応性を増していく、こうした措置を並行して行なっておるような次第なのでございます。これらに伴いまして、さらに中高年齢者に対する現在の年功序列型賃金の取り扱いなど、ずいぶん、なお研究を要する問題がたくさんあると思います。職業安定の能力を増大いたしまするためには、これらの困難な問題と真正面から取り組み、一つ一つ解決をはかっていく必要があると思うのであります。  次に、再訓練を大量に行なうことができるかという問題でございますが、現在までの経験に徴しますると、再訓練を終了いたしました労働者就職の率というものは、きわめて成績良好であると考えられておるのでございます。ただ、中高年齢者等が再訓練所に入るということにつきましては、家庭上あるいは生活上困難なことを克服する必要がございまするので、これがためには、職業安定機関におきましても、雇用促進事業団等協力を得まして、できるだけの協力態勢をつくってやることが必要であると考えておるのでございます。したがって、この職業訓練に伴いまする政府失業者に対する協力態勢というものは、これはきわめて大切な事柄でございまして、私どもといたしましても、年々の経験をもとにいたしまして、欠けたるところを次々に補って、できるだけ再訓練を受けやすくするような環境をつくり上げていきたいと、かように努力いたしておる次第なのでございます。ただいま先生は、現地実態をよく調査把握して、これに基づいて制度改善施設改善等に最善の努力をはかるべきであるという御意見をお述べになりましたが、私どもも、この点は、まことにそのとおりであると考えるのでございます。今後といえども十分な努力を惜しまない考えでございます。  最後に、合理化に伴いまする労働力の不足を解決する手段として現実強制労働が行なわれつつあるという点でございまするが、私どもは、御指摘を待つまでもなく、現在の労働秩序から申しますと、強制労働というものは最も悪質なる破壊的行為でございまして、これは、労働基準法のいろいろな条項の取り締まりよりも、まず、優先的に力を入れるべき点であると考えておるのでございます。先般来、現在の労働基準監督行政が、こうした重大なる悪質な事犯の摘発について、きわめて不十分であるという点を明らかにせられたのでございます。私どももまことに申しわけない次第であると存じまして、この点についてはあらゆる努力をいたしまして、重点的に摘発をいたすようにつとめなければならぬと存じます。今後ともよろしく御指導、御鞭撻をお願い申し上げます。
  22. 鬼木勝利

    鬼木勝利君 たいへんお忙しいところを私時間を取りまして恐縮でございましたが、時間の関係で、以上で私の質問を終わりまして、なお、こまかいことやいろいろな点につきましては、事務当局の方と親しく御懇談を申し上げたいと思いますので、これで私の質問は全部終わります、まことにありがとうございました。
  23. 向井長年

    向井長年君 私の質問は、主として労働大臣見解をお聞きしたい。七項目ほどの質問をしたいと存じますが、時間の関係もございますので、重点的に質問していきたいと思います。よろしくお願いいたします。  まず第一に、たびたび労働大臣にも個々にお会いいたしまして見解をただしておるわけでございますが、電気事業石炭鉱業の保安に対して、昭和二十八年の八月、突如として時限立法規制をいたしたわけですが、この問題については、憲法論と、また現実論と、二つに分かれるかと思います。したがって、まず憲法論からいえば、憲法の二十八条の、いわゆる「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」という憲法条項があるわけです。そういう一つ条項に基づいて、一般争議行為なりあるいは組合活動が保護されておるわけでありますが、特にこの問題については、こういう立場において、公益性の高い公益事業であるという立場から規制されたわけでございますが、特にこの問題について、法律上の見解としては、御承知のように、労働関係調整法という法律の中で、しかも三十七条の予告期間、あるいはまた三十五条の二の緊急調整、こういう項目があるわけです。したがって、あくまでも平和的にその期間解決をすべき条項として、そういう法律がつくられておるわけです。そういう意味から考えても、この規制というものは、憲法上、あるいはまた労働関係調整法から考えて、一日も早くこれはなくしなければならぬというのがこの法律の主眼であろうかと思うのです。なお、実際上事実上から考えまするならば、なるほど昭和二十七年、八年、この当時は確かに若干の行き過ぎ等も確かにあったことを私どもも認めるわけなんですが、そういう中でこういう法律時限立法としてしかれた。したがって、先ほど言った、憲法なり労働関係調整法等規制ができ得るから、いまこういう現実の事態があるからもう三年間ぐらいひとつこれを施行して様子を見よう、こういうところからしかれたのがあの時限立法——倉石労働大臣時代だったと思いますが、それが三年たって、恒久立法としていま現在存置しておる。全く、事実上の問題あるいは法律上の問題から考えても、どう考えても、われわれは疑惑を持つわけです。これに対して、労働大臣見解をまずお聞きしたい。両方に対する——二つ——事実と法律上の問題の見解をですね。
  24. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) いわゆる電気及び石炭についてのスト規制法でございます。この立法の経過は、先生のお述べになりましたとおりでございます。この法律昭和三十一年の国会の議決によりまして、現在は恒久立法に相なっておるわけでございます。もとより労働者ストライキ権憲法二十八条に規定された基本的な労働権でございまするが、この立法に際しての憲法上の説明は、申すまでもなく、公共の福祉を守るためにこれを制限することはやむを得ないという理由で説明をされておったものでございまして、申すまでもなく、電気事業石炭事業国民経済国民生活に対してきわめて重要であることは疑う余地のないところでございます。したがって、この二つ事業に対して、回復すべからざる打撃を与えるような行為は、これは争議行為としてでも許されないという考え方は、これは当然のことでありまして、憲法上の解釈においても疑う余地のないところであろうと考えるのでございます。したがって、政府といたしましては、現在直ちに本法を廃止するという考えは持っておらないのでございます。しかしながら、すべて労働法規というものは、そのときどきの労働実情、また経済実情というものを基礎にして考えていくべき問題であると存じまするので、労働省といたしましても、この法律は常に念頭に置いて検討を続けている次第なのでございます。ことに、ストライキを禁止するというような場合におきましては、これに対する保障の措置というようなもの、すなわち強制調停ということもやはり当然考えなければならぬ点であろうと思うのでございますが、こうした総合的な立場から、絶えずこの法律については今後とも検討を続けてまいりたいと存じます。
  25. 向井長年

    向井長年君 いま労働大臣から答弁されたことは、おそらく十年余り前の昭和二十七、八年当時に言えることであると思いますが、現状は、先ほど言ったように、一つ労働関係調整法で、突如として、急に争議行為——確かに、公益のいわゆる福祉に反するという立場から制限するとか、あるいは規制するということは、これは当然かもしれない。しかし、労働争議というものは、少なくとも十分話し合って、そうして理解を求め、その中から平和的解決をするというところに大きな主眼があると思うのです、労使とも。また、労働行政としても、政府はそういう指導をしていくべきである。そこで、御承知のように、労働関係調整法の三十七条は、突如としてやってはいけない、やはり公益事業に関する事件については、いわゆる労働委員会、あるいはまた都道府県、こういうところに事前に届け出て、十日間の余裕期間を持ってやる。この余裕期間は、決して突如としてよりも、その間に何らかの解決促進しようという一つ立法主眼がある。しかも、そういうことでありながら、もう一つは、これが重大な国家的、あるいは国民生活に影響を来たすということになれば、緊急調整という三十五条の二の条項もあるわけです。しかも緊急調整があれば、五十日間ストライキやってはいけない、こういう規制労働関係調整法にあることは、労働大臣承知だと思う。それであれば、絶対やっちゃいけないのだという形は、これは憲法二十八条の条項に触れてくるわけです。したがって、非常にただいま現実論として行き過ぎがある。したがって、何らかの措置を講じなきゃならぬというので、昭和二十七年、こういうことをやられた。しかも政府は、これを恒久立法にすることは、やはり憲法上の問題があるのじゃないかという、いろんな論議の中から、一応暫定的に時限立法にしようじゃないか、三年間にしようじゃないか、労使が正常に戻ればこれはなくしたい、こういうことを政府は当時明確に答弁をしている。しかも、そういう一つ法律論の中で、しからば現実はどうか。いまの電気産業なり、あるいは石炭関係においても、労使関係はどういう状況で動いているか。昭和二十七、八年当時の状況であるかどうか。労働大臣どう考えていますか。
  26. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 労使関係につきましては、少なくとも電気事業に関する限り、立法当時と今日とは全く変わっているということを私も確信いたしております。
  27. 向井長年

    向井長年君 したがって、私が先般本会議で質問をいたしました際に、池田総理に質問をしておらないにもかかわらず、池田総理は労働大臣への質問をとって、ただいま政府はそれをなくする、あるいはそれを廃止する考えは持っておりませんというような明確な答弁をされた。これは池田内閣ですから、当然そういうことを言われたと思いますけれども、しかし、先ほどから私が申し上げますように、当時この時限立法を行なったときに、当時はやはり自民党政府です。自民党政府の中で問題がやっぱりあったわけです。憲法上の問題もあった。労調法の問題もあった。したがって、現実の諸問題が、いわゆる労使関係が正常じゃない、したがって、この正常な——まあ二年あるいは三年かかれば何とか労使が協力して、正常な労使関係を結ぶであろう、労使慣行をつくるであろう、したがって、三年間の期限でひとつこれは緊急的な、あるいは暫定的な措置としてつくろうではないか、こういうことでつくられたのでしょう。しかも、そのとき出ました、それが、現状において問題点をはらんでおるし、あるいは、いま労働大臣答弁されたように、労使関係電気事業においてはそうではない、こういう答弁をされた。労使慣行は一応正常に戻っておる。こういう中でなぜ恒久立法にされなければならないか、この点いかがですか。
  28. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) この点は、先ほど来申し上げましたごとく、労働省といたしましては重大な問題でございますので、常に検討を続けておる次第でございます。ただいまのところ、まだ廃止をするという結論を出すまでに至っておりませんので、その旨を申し上げた次第でございます。
  29. 向井長年

    向井長年君 労働大臣検討されるということは本会議でも答弁されたと私も存じております。しかし、検討はけっこうでございますが、一つは私聞きたいことは、労調法の三十七条なり五条という精神はどういうところから出ているのですか。
  30. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは、公益事業のストライキというものが、一般公共に非常な迷惑を与える。できるだけその迷惑を最小限度に押えるために予防的措置一般に講じさせるということが一つ。また、これらの条項の発動によりまして、直ちに実力に訴えることなく、その間時間的の余裕を持たせるということによりまして、この与えられた時間内にさらに双方が隔意ない意見の交換によって妥結に到達する機会を多からしむる、こういう趣旨であると考えます。
  31. 向井長年

    向井長年君 したがって、最高六十日という期間があるわけですね、合わせますと。少なくとも二カ月ですね。いわゆるいろいろな労使問題は、そういうストライキ行為に入るまである程度の話し合いをして、なかなか話が進まぬというときの一つ労働者権利としてそういうことがあるわけです。しかし、使うにいたしましても、これが本旨でなく、あくまで平和的に諸問題の解決をはかろうという立場から進んでいることは事実なんですね。そういう二カ月という、最高六十日という期間があれば、しかも緊急調整、そういう形がとり得るという状況があるとするならば、実際的にも現実的にも、あるいはまたこの法規制からいっても、いまのいわゆるスト規制法というものは、特別立法というものはもう無用のものである。言うなれば、私はそういう考え方を一方において持つわけです。その点いかがですか。
  32. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 御意見として、私はそういう考え方も十分に考え得ることだと存じます。ただ、私どもといたしましては、現実法律の改正をするということに相なりますると、やはりその理論的な必要という問題とあわせまして、実際上そうした問題についての一般の理解、協力、したがって法律の改正がスムーズに行なわれるような状況にあるかどうか、それらの点をも検討する必要があろうと思うのでございます。もし理論的によろしいということになりましたなら、やはり労働省といたしましては、そうした新しい法律がスムーズに成立できるような事前的な準備、一般大衆の理解し得るための準備というようなことも考えなければならぬと思うのでございまして、この問題につきましては、そうした各方面の点を考えながら進む必要があると心得ております。
  33. 向井長年

    向井長年君 その理論的の問題ということは、理論上は、先ほどから言われるように、憲法の問題、労調法の問題でこれは明確なんですよ。出てきた問題は、理論上から出てきた問題ではなくて、現実のいわゆる労使慣行の悪条件の中から出たものです。そうですね。これは認められておる。悪条件の中から、しかも憲法なりその他の法律でそういう規制なりあるいは制限があるにもかかわらず、あるいは保障があるにもかかわらず、万やむなく労使慣行があまりにもうまくいかないので、行き過ぎもあったということからこういう法律が出たんだから、そういうことが改善せられて労使慣行が非常によくなりつつある、こういう中では必要でない法律になってくる。そうですね。これはおわかりだ。しかも、これは十年あまり前のいわゆる事態である。現状は、先ほど労働大臣も認められたように、そうではないと言っておられる。そうなれば、一般の理解と言うけれども、これは法律のやはりそれに対する番をしているのは政府であり労働大臣なんだから、特に、したがって、少なくとも一般の理解ということは現状から出ている問題ですから、なぜ、労働大臣が基本的にこの問題をもっと早くから検討して、そうして国会でなくするという方向をとるような努力をどうしてしなかったか。いま質問に応じて、先般来そういうことを言っておられますが、これは私は、おそらく一般の国民というよりも、やはり政府部内の中でまだまだ理解ができていないのじゃないか、こういう感じがするわけです。いかがですか。
  34. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 政府といいましても、労働省ばかりでもございませんし、御承知のように、所管の役所といたしまして特に関係の深いのは通産省その他でございます。政府部内としても、まだ意見が統一するという段階には至っておらないような状況でございます。私どもは、労働行政のあり方としていかにあるべきかということについては、ある程度考えておるつもりでございます。
  35. 向井長年

    向井長年君 労働大臣ばかりいじめておるわけじゃないのですが、池田総理は先般えらい明確に答弁されておりますが、池田総理に労働大臣からそういう問題について話し合ったことがございますか。
  36. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 具体的にこの問題を話し合ったことはございません。
  37. 向井長年

    向井長年君 そういうことであるから、世論とか一般の理解と言うけれども政府部内でやはりこういう問題を現状に照らし合わして、過去のいわゆるいきさつから、十分やっぱり検討を始めなければならぬのじゃないか。これは大きな観点からいうならば、ただいま問題になっているところのILO八十七号批准の結社の自由、これにも抵触するわけです、われわれ考えるならば、大きな形から考えるならば。そういうことを何ら政府部内では、恒久立法にしたからそれでいいのだ、十年たって時代は変わって、実情も変わっている、しかし規制していくことがかえって万全である、そういうものの考え方は、やっぱり間違っておるのじゃないか。現在そういうことで、おそらく労働組合側にいたしましても、ああいう昭和二十七、八年と違って相当ものの考え方も変わり、電気事業あるいは石炭鉱業というような、言うならば公益事業である事業に携わる労働者は、公衆の福祉、大衆の福祉、公益の重要性というものを認識して、生産向上のにない手としてみんな私はやっていると思う。そういう中で、いろんな労使問題を解決する場合に、そういうスト権が剥奪されておるならば、平和的に解決しようとしても、一方は強がりを言ってなかなか労使問題を解決できないという状況が、かえってこのことによって平和解決がおくれるという問題があるのです。必ずしも、今言った電源なり、あるいは発電所で電気をとめるとか、あるいは変電所で電気をとめるとか、そういうことをやろう、やるためにこの法律をなくせというのではなくて、平和的にものを解決するためには労使の均等な力というものが必要ですね。そういう意味から、一つの保護ということで、憲法でもあるいは労働法でも保障されている民間労働組合ですよ、公務員じゃないですよ。そういう点が、私は、かえってこういう法律があるために、今後労使問題がやはり平和的に円満に解決しなければならぬ諸問題も、均等の力を失うために逆になるのではないか。こういうことを私憂えておるわけなんです。労働大臣はどうお考えか。
  38. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) お説には多分に同感するところがございます。しかし、何分法令の改正と相なりますと、政府の各機関の意見が一致しなければなりません。また一般国民の協力的な考え方も確かめる必要があるわけでございます。いろいろな点でなお私どもといたしましては検討いたしておる段階であります。
  39. 向井長年

    向井長年君 同じ公益事業で、私鉄も同じ性格を持っておる。若干もちろん違うにしても公益事業である。したがって、私鉄はやはりいま言った労調法のこれが適用されるわけですね。しかし、私鉄に対してはそういう規制はないわけです。スト規制なんという規制はない。まあ私鉄も円満に労使慣行をつくりつつある、こう私ども考えておりますが、いま時代は変わっております。昔の、戦後の労働組合が、非常に、何と申しますか、当時は確かに私たちも行き過ぎがあったということを認めるわけですが、私たちが行き過ぎというよりも、一部のあやまった指導者が行き過ぎであったということは私も認めるのですが、しかし、現状ではそうではなくて、本来の事業というものを考えつつ労使問題を円満に解決しようという意欲に燃えている。こういう中で、なかなか一般の理解を得られない。理解を得られるための、労働省として、あるいは労働大臣として、ただ政府だけでなくて、そういう理解を求めるための方策をとったかどうか。あるいは私鉄との関係はどうなんですか。ちょっと労働大臣、その点。
  40. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) まあ、いろいろ労働省としても考えてはおるのでございます。しかし、まあいろいろな事情もございまするので、いまここで具体的に、これこれのことをやっておるということを申し上げるわけにもまいりません。その辺はひとつ御推察をいただきたいと思います。  それから、私鉄との関係でございまするが、何ぶんにも電気事業というのは、これは地区的に単一経営に相なっておりますので、むしろそういう点では私鉄と比較するのが適当か、あるいは社会的な影響力という点では国鉄に比較するのが適当か、その辺の問題もあろうかと存じます。
  41. 向井長年

    向井長年君 まあ過去の問題は別にしまして、これから労働大臣は、私が質問をする内容も御存じだし、あるいは趣旨も御存じだと思いますが、これから一般の理解あるいは政府部内の意思統一、あるいは自民党内の意思統一、そういう問題もあわせて努力されると思いますが、この点いかがでしょうか。
  42. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) それらの点を検討いたしておる段階でございます。
  43. 向井長年

    向井長年君 その検討ということは、労働省内部の検討ですか。
  44. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 労働省内部でも検討をいたし、また政府部内でも検討をいたそうと思います。
  45. 向井長年

    向井長年君 その検討の趣旨というものは、検討をするという趣旨は、先ほど私が質問いたしましたように、現実的には情勢が変わっておるし、あるいはまた、いま言った法律上の問題もいろいろな問題がある。こういう中から、言うならば、前向きのこういう法律はもうなくしてもいい、こういう一つの気持ちに立って検討を始める、こういうことなんですね。
  46. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) そういう問題として検討をするわけでございます。
  47. 向井長年

    向井長年君 その問題は終わります。  時間がございませんから、もう一点だけ質問しておきますが、もう一点は、労働省として直接の問題ではございませんけれども、将来の指導の問題でございますし、あるいはまた労働力の問題でございますが、特にいま民間におきましてはいわゆる定年制という問題がしかれておるわけなんです。現在五十五歳が大体民間の定年になっておるわけなんですが、現状においてですね、五十五歳で定年で会社をやめられても、実際は健康上から見ても、あるいはまた生活上から見ても、どうしても働いていかなければならぬ、いわゆる二度のつとめをしなければならぬという情勢下に現在あると思うのです。これは認められると思うのです。したがって、労働力の問題等いろいろの諸問題がありますけれども、少なくともこの二つの理由から考えて定年を延長すべきであるという意見もちまたに出ておるわけです。少なくとも六十歳程度までは定年を延長しても健康上あるいは能力上働いていかれる。また、生活上から考えれば、五十五歳ぐらいではまだ子供さんが学校を卒業するかしないか、こういう人たちも多数おるわけなんですね。したがって、どうしても働かなければならぬ、こういう実情であるわけなんですが、労働省としてはそういう定年延長についてどう考えられますか。現状がまあいまのところいいと考えられるか、ある程度延長しなければならぬか、どういう考え方を持っておられるか。もちろん、これは指導方針の問題なんですが。
  48. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 定年制につきましては、労働力現状から見まして、この点は労働行政として特に研究すべき問題だと存じまして、本年になりましてからいろいろ研究を進めておる状況でございます。まず、生理的に老人の能力を検定する、それから、老人の適当な職場等についての研究をする、それから、高年齢者の給与をいかに取り扱うことが適当か、また退職金の取り扱い等がいかにあるべきか、こういった給与面の問題も研究をいたしております。で、この研究の目的は、大体日本におきまする定年制は五十五歳が実状大部分でございまして、しかも、五百人以上の事業所では八割ぐらいが、こうした定年制を採用いたしておりまするし、百人以上のところでは七割、百人未満のところでも五割というように、五十五歳の定年制というものは非常な普及状況でございます。ところが御指摘のように、最近においては平均の寿命も延びてまいりましたし、また、ちょうど定年後の子弟の教育の問題もございまするし、実際上は自分で職をさがしたり、あるいはいままでの会社のあっせんなどによって再就職をいたしておるのでございますが、現在の労働力需給の逼迫という状況から見まして、これについては再検討をする必要があるというのが労働省考えでございます。現にアメリカでは定年は大体六十五歳、英国におきましては男子六十五歳、女子六十歳というようなのが大多数の実情でございますので、今後の日本の労働事情から考えましても、この点は当然検討を必要とする。労働科学、労働需給、賃金制度その他あらゆる角度から検討を進め、また、特に欧米の新制度等につきましても資料を収集いたしておるわけでございます。
  49. 向井長年

    向井長年君 非常にそれでけっこうだと思うんですが、特にいま民間の八割程度が五十五歳だと、こういうことですが、これはいま始まったことじゃなくて、二十年、三十年前から、もう以前から五十五歳がとられておるわけです。現在の国民全般の健康上の問題から考えても、非常に寿命が延び、労働するところの力を持っておる。あるいはまた、生活上、子弟の教育、いろんな面から考えましても、いま言われたいろいろな諸問題から考えましても、やはり延長すべきだと、こういうことが言えると思うんです。したがって、ひとつ十分検討を早く進められて一応の一つの結論を出し、指導をしていただきたい、そういう方向に導いていただきたい、そういうことを一つこの問題については要望しておきたいと思います。  もう一点は、これは公共企業体等労働委員会の改選の問題ですが、これは現在改選期が非常に延長されておくれておるのだと思うのですが、この実情はどうなっているのですか。
  50. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 御承知のとおり、労働側の委員の人選に問題がございまするために、全体の改選を進めることが適当でないような事情から、今日まで改選が延び延びに相なっておるのでございます。労働委員の人選につきましては、御承知のとおりの状況でございまするので、この間関係者でよく御相談をいただいて、できればその話し合いに基づいて措置したいというのが労働省考え方でございますが、いろいろのいきさつがございましたが、最近その状況を伺いまするというと、どうやらある考え方が打ち出されそうな模様であると聞いておりまするので、それがまとまりましたならば、その線に沿うて一般委員と同時に処理をいたしたい、できるだけ早く新しい体制をつくりたい、こう思っております。
  51. 向井長年

    向井長年君 労働関係労働側で話がまとまらぬで意見があるということは、確かに私もよく承知しておりますが、円満に労働側で話し合うということも一つの法ですけれども、しかし、そういうことのみに依存しているために、一年、二年と、何年たっても改選できないということになる。やはり労働省としても、少なくとも現在の実情、あるいは労働者のあるいは労働組合の実態、こういうものを把握されて、そういう中からやはり労働省としてもこうあるべきだという考え方を基礎にして話し合うということが必要であって、ただ単に、あなたのほうで、話して来い、うまくいけばそれを任命するのだと、こういうことは労働省としてもあるいは労働大臣としても無責任なあり方じゃないか。この点については、やはり一つの現在の実態の上に立って私はものを判断すべきだと思う。この点いかがですか。
  52. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 労働省として責任ある所管官庁であります以上、当然お述べになりましたような趣旨で処理すべきものであると考えます。もちろん、私どもも話し合いがどうしてもまとまらないということがはっきりいたしましたならば、その段階において労働省として考えをきめなければならぬ性質事柄だ、こう思っております。
  53. 向井長年

    向井長年君 まあ、そういうことで、その問題については早急に労働省としても一つ実態を見きわめて選定をし、理解をしてもらうように努力していただきたいと思います。これはひとつ最後に要望いたしておきます。  その他ございますけれども、時間もないようですから、これで私の質問は終わりたいと思います。
  54. 千葉信

    ○千葉信君 私は労働大臣質問をいたします。鬼木委員も、それから向井委員も、大臣が他の委員会等の関係でお忙しいということを考慮されて質問されたようですが、私はその点については考慮いたしませんから、あらかじめ御了承願います。それは大臣答弁のいかんによるということを前もって申し上げておきます。  私のお尋ねしたい点は、いま労働問題懇話会という形で運営され、前には労働問題懇談会という名称で運営され、かつ、現在では地方にも同様の機関が設けられている。私は労働省の正規の府属機関でもないこの機関が、労働問題の解決なり、ないしは労働行政上若干の寄与をしているということは率直に認めております。ただしかし、何と言いましても、これは前々国会から当委員会でもしばしば問題になった問題でありますし、かつ、他の各省にも同様の法律に抵触をする疑いのある機関として存在いたしましたが、いまでは大体きれいに掃除をされております。と、残っているのは、労働問題懇話会あるいは厚生省に若干のものがあるようです。さらに内閣では人つくり懇談会、国つくり懇談会という、これまた法律に抵触する疑いのある存在があるようでございます。労働省の場合には、先ほど私が率直に申し上げたように、問題の解決等についてはかなり貢献もしているということを認めながらもですね、しかし、法律に抵触する疑いのあるものをそのまま存置するわけにはいかない。一説によりますと、何かこれがはっきり法制化もしくは立法事項として規制されると、その懇談会に出てしゃべりづらいから、いまのままのほうがいいという意見の者もあったりして、労働省は苦慮をしているということを私承っております。しかし、私はそういう態度は法治国家としては絶対に許すべきではないというものの考え方をしております。法律で懇話会がかりに規制されても、それによって発言の内容が変わるような発言ならば、権威のない発言だし、それをやはりうやむやの存在にしておいてくれなどと言うことは、これは私はそんなことを言う者は、だれであろうと許すべきではないという見解の上に立って、私はこの際、国の行政組織法上明らかに法律に抵触する疑いのあるこの機関については、労働省としてもこの際はっきりした態度をとる必要があるという見解に立っている。労働大臣、従来の国会のいきさつもあり、どう措置されるおつもりか、この際御答弁を承っておきたい。
  55. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ただいま御指摘になりました労働問題懇話会の件は、昨年の通常国会におきましても、当委員会において御指摘のあった事柄でございます。当時私といたしましては、最近の機会にはっきりしたけじめをつけるように善処したいというお答えを申し上げておった次第でございます。また、ただいまお述べになりました御意見につきましては、まことにごもっともであると存ずるのでございます。労働省といたしましては、きわめて近い機会に、あるいは廃止するか、あるいは明確な法制化の措置をとるなりいたしまして、けじめをつけたいという考えでございます。実は今年もさようなつもりでおりましたところが、行政管理庁が行政組織全体についての受け持ちの役所でございまするので、そちらともいろいろ打ち合わせをいたしておりまするし、部内の行き違いによりまして、昨年のお約束が今日まで実現しておらないことは、まことに申しわけない次第であると考えるのでございます。この問題は重ねて御指摘がございましたので、きわめて近い機会に廃止するか、法制化するか、どちらかをはっきりいたしまして、この取り扱いの最終的な措置につきましては、行政管理庁とも相談の上必ず善処いたしたいと考えまするので、どうぞ御了承を賜わりたいと存じます。
  56. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 他に御質疑はございませんか。——他に御発言がなければ、本案の質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に、御発言がなければ、討論は終局したものと認め、これより採決に入ります。  労働省設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  57. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、先例により委員長に御一任願います。  午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時十四分休憩      —————・—————    午後一時四十三分開会
  58. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) これより内閣委員会を再開いたします。  厚生省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。本案につきましては、すでに提案理由の説明を聴取をいたしておりますので、これより質疑に入ります。  なお、本案はお手元に配付いたしましたように、衆議院において若干修正されておりますので、御了承願います。  政府側からは、小林厚生大臣、梅本官房長、今村国立公園部長、若松公衆衛生局長舘林環境衛生局長、黒木児童局長が出席されております。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  59. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 本法案に関連して二、三お伺いしますが、まずこの提案理由の説明を前に承りましたので、この順序に従って最初お伺いしたいと思います。  最初に、国立公園部を廃止し、国立公園局を新設する、こういう御説明がございますので、このほうからお伺いしたいと思いますが、その新設する理由として、ここに理由が掲げられておりますけれども、要約すれば、レクリエーションなどの面を推進するため事務量が非常にふえてきておる、こういうことで国立公園局を新設したいと、こういうことでございますが、それにしては、局の新設の面としては、ちょっと理由がどうもあまり豊富でない、その理由に乏しいと思うわけです。この点をひとつ明らかにしていただきたい。
  60. 今村譲

    政府委員(今村譲君) それでは申し上げます。いま先生が仰せられましたように、最近の国立公園の関係の利用者、これは国定公園も含めてでございますけれども、非常に最近生活事情なり、あるいは都市生活からの緊張緩和ということで、自然の中に飛び込んでいくというのが多くなっております。たとえば昭和二十八年あたりが約四千万というのが、三十五年で九千万、三十七年では一億二千五百万、三十八年では一億五千万ぐらい国立公園に殺到するのではないかというふうな感じでございます。それに国定公園も二十五カ所ほどありますが、約七千万人ぐらい、合わせますと本年度におきましても二億人を十分こすと、こういうふうな非常な急ピッチな関係一つでございます。  それにつきまして第一点は、公園部の業務量の問題でございますが、二十七、八年——三十年ぐらいまでは観光開発というのはあまりそれほどの投資額もなくて、ほとんど国立公園内のホテル建築とか、あるいはいろんな工作物の建築というのが許認可件数、年間で五百五十件、これは二十七年の統計でございますが、そういうふうなものが、三十七年では千九百五十件、約二千件、しかも一件のものが八億なり十億なりの非常に大きなものが出ておる。その辺の、自然保護と国民の需要としての利用関係というもの、施設の整備との調整というのが、非常に大きくなってきておるというのが第一点でございます。  それから予算の面につきましても、たとえば昭和三十年を例にとりますと、国立公園、国定公園全部ひっくるめまして、国家予算というのは三千九百八十二万円、大体四千万円ぐらいというのが、三十九年度におきましては四億八千余万円ということで、大体十二倍くらいにふえておるというようなかっこうでございまして、予算の増加それから業務量の増加というふうな問題が、いまの公園部の力で何とかかんとか、まあ夜間残業というようなかっこうで処理しておるのでありますが、非常にふえてきておるということが一つでございます。  それから第三点の、人の関係でありますが、これは昭和二十三年の二月に厚生省で公園部として発足したのであります。その当時は四十四名、これが現在におきましては二百五名というふうなかっこうになっておりまして、人員関係でも五倍ぐらいになっておる、こういうふうな計数的な情勢でございます。最近、経企庁の国民消費動向調査、いろんなものをとりましても、非常に今後こういうレクリェーションというふうな問題がふえてくる、したがって、それを受け入れるべき民間の観光事業者あるいはいろんな施設というものが非常にふえる、しかもそれに伴う公共投資というふうなものは、国家予算の制約とかなんとかで、相当努力をしないと公共投資と民間投資とのアンバランスが出てくる、旅館はできたが休憩所も駐車場もないというふうなかっこう、あるいは清掃施設がなくて荒れほうだいというふうなかっこうになる、その辺も問題がございますし、昨年観光基本法ができましたときに、これは国際観光、外資獲得というような問題が相当ウエートを占めておりますが、同じように国民大衆の低廉で清潔な旅行、これに対しても政府は一生懸命にやれと、何も外人観光ばかりではないというような規定もございまして、しかるべき時期に必ずこれは独立部隊にして、何といいますか、官房の一部というかっこうじゃなしに、行政の姿勢としても一つの局を設けるべきだ。実はこれは私どもの悲願であったのでございますが、過去数年いろいやっておりましたが、ようやくこういう情勢に応じて一つの独立の局をつくって、この問題に関する国の行政の姿勢というようなものをはっきり打ち出したらどうか、こういうかっこうで新設をお願いすることになったわけでございます。  それからもう一つ、現在厚生省の官房の中に国立公園部がございますけれども、やはり官房は人事、総務あるいは会計というような総括的なもの、あるいは統計調査というふうに、全体のいわゆるスタッフ業務というものでありますが、公園部だけは実際の業務をやっておる。したがって、官房の機能強化という意味からにおきましても、やはりこれは一つの実際行政をやっておる行政単位というかっこうにして独立さしたらどうだというような話を、いろいろ詰めておりまして、行政管理庁なり関係方面と打ち合わせの上で、新しい姿勢を打ち出すという意味で新局を設置するということにしたらどうか、こういうふうなことでお願いしておるわけでございます。
  61. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この部局の新設ということになるわけですが、この行政機構のあり方については、御承知のように、いま臨時行政調査会でせっかく検討中であるわけです。で、おそくもこの九月ごろにはその結論を出そうとしております。それなのに、あえてここで局の新設ということを行なおうとしておる。それにはそれだけの理由がなければならぬと思うが、その点はどうですか。
  62. 梅本純正

    政府委員(梅本純正君) 国立公園部の局昇格の問題の内容につきまして、ただいま御説明申し上げましたが、この問題につきましては、厚生省といたしましては相当前から計画をいたしまして、できるだけ早い時期に実現をしたいということを悲願といたしておったわけでございます。今年度の予算の折衝の際からも話をいたしまして、予算的には一応、あるいは行政管理庁との関係におきましては話をやっとつけたわけでございます。まあ臨時行政調査会との関係におきましては、その後におきまして局の問題につきましていわゆる太田メモと言われております中で、この問題についても御指摘がございまして、しかし、われわれといたしましては、まあ従来からのお願いをぜひ早く実現をしていただきたいという立場でお願いをしたわけでございます。ひるがえりまして、どうしてこの局昇格がそんなに急ぐのかという問題でございますけれども、まあ厚生行政といたしましては、戦後御承知のように、敗戦後の混乱時代に貧困者、病人あるいは引揚者、戦災者、そういう関係の救済にここ十数年、二十年近く努力をしてまいったわけでございまして、したがいまして、厚生行政としましては、現在皆保険、皆年金というふうに言われる段階にまで至りましたけれども、やはり機構といたしましては非常にばらばらな点もございますし、それから今後の問題としましては、いままで早急にやる必要があるということでやり得なかった問題も相当まだ残っておるわけでございます。今後の厚生行政の問題としまして数年前からわれわれのほうで考えておりますのは、たとえば病人に対しては、治療ということで精一ぱいでございました。それから貧困者に対しましては、その貧困者を何とか最低限の生活を維持できるというふうに、これを救済していくということで手が一ぱいであったわけでございますが、やはり治療と救済ということだけをとってみましても、それに専念をするほかにやはり衛生の面につきましては治療だけでなしに予防の観点にもっと積極策を進むべきじゃないか。それから貧困者の救済につきましては、やはり防貧といいますか、そういう面に重点をおくべきじゃないかというふうな観点で施策の方向を検討しておったわけでございますが、そういう観点から見まして、この国立公園部ということにつきましては、ここ数年来、一方所得倍増計画という計画が進められ、御承知のように、国民経済は高度の成長を遂げてきたわけでありますが、したがって、この社会的、経済的な現象としましては非常なスピードをもちまして都市化、工業化という現象があらわれてまいったわけであります。で、非常に高度の成長がございましたが、われわれ厚生省から見ました場合に、一応生活面の圧迫という点も各地に問題として出てまいったわけであります。そういうふうな観点からしまして、この情勢に即応して一般国民、市民につきましては日常生活における精神的な緊張、それからまた、身体的な面におきましてはやはりその健康の増進、単に治療じゃなしに健康の増進ということを早急に施策すべきであり、そういうことをすることによって治療あるいは貧困ということについての費用も軽減できるし、解消もできるのではないか。こういうふうな観点からいたしまして最近の経済成長のスピードに即応して、早急に行政の姿勢として官房の一角の部でやっておるよりも、はっきり堂々と局という形にしまして、関係各省に対しましてもやはり言うべきところを局という立場で言って、いろいろの施策について考慮をお願いする。いわゆる国民の心身の緊張緩和と健康増進という意味におきましてやる必要がありますし、まあそういう観点からしまして厚生省といたしましては、早急にこういう行政の姿勢を正し、先生承知のように、こういう機構を整えることによりまして、残念ながらわが国行政につきましては予算も伸びますが、施策もできるというのが、ちょっと言いにくい問題でございますが、御存じのとおりでございまして、そういう関係から早急に局に昇格したいというのがわれわれの考えでございます。
  63. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 たいへん懇切御丁寧な御答弁があったわけですけれども、私のお伺いしているのは、行政機構のあり方についてずいぶん内容を聞くと、お急ぎのようでございますが、この臨時行政調査会検討も目下非常に進んでおって、予定では九月ごろ答申があるはずです。これがいまの国会を通ったとしても、ほんの二カ月ほどの差しかないわけですね。なぜ二カ月ぐらい待てなかったかということお伺いしておるわけで、この内容についての説明は、意味はよくわかります。ただ臨時行政調査会が近く結論を出そうとしているのに、それに先立ってあえて行政機構を変えようということが行き過ぎではないか。こういう角度からお伺いしておるわけです。なおこの行政機構のあり方については衆参の内閣委員会では、従来から部局の新設は認めがたい、これは与野党一致した基本的な考え方で通してきておるわけであります。現に、衆議院の内閣委員会でも、本国会、この国会で、やはりこういう部局の新設は認めがたいということを確認の上に立って審議を進めてきておるわけであります。したがって、具体的に総理府設置法の中に局の新設が二つほどあるわけです。これはもう認めないということで、政府もこれを撤回せざるを得なかったわけです。こういう具体的な事例もあるわけです。  そこでお伺いしたいのは、そういうたてまえから言うと、この国立公園局の新設は、当参議院の内閣委員会でも認めるわけにいかぬわけです、そういう基本的な考え方から。先日大臣から提案理由の説明を伺ったわけですが、「改正の第一点は、大臣官房国立公園部を廃止し、国立公園局を新設することであります。」大臣みずからこういう提案理由の説明を承ったわけです。したがって、これは公園局を新設するということになると、これは先ほど来の与野党の一致した内閣委員会考え方から認めるわけにいかぬということになるわけです。この点は基本的な問題であるので、ひとつ大臣からお答えいただきたい。
  64. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) まあ扱いの経過からいけば、一応部をなくして局をと、こういうことになりますが、実質的には部というのを局に直す、こういうことでありまして、予算的にもあるいは定員的にも変化がない、こういうことで、実質的にはただ名前を直していただく、こういうふうなことでございます。どうも名前を直すくらいそんなに急がぬでもよいじゃないかというお話もありますが、やはり役所の組織としては、いろいろの対外問題にしましても、部よりも局のほうが通りがいいと申しまするか、いろいろの折衝に便宜がある。また、同じような仕事をしておるのに、運輸省に観光局というのがありますが、これも過去において観光部であったのが観光局と、こういうふうに名前を変えられて、そのため仕事の能率もよくなったと、積極的になったと、こういうふうないきさつもありまして、内容から申せば全く同じような種類の仕事をしておると思うのです。私は国立公園部というのは、いままで官房の一部であったために、どちらかと申すと、非常に消極的でありまして、まあ悪口を言う人は、あそこの部は文句ばかり言うて何もしてくれない。ただ景観の保護という、こういうような消極面に非常に限られておって、積極的にこの時勢になってきて、この自然の活用という、こういう方面に非常に欠けておるのでありまして、やはり局にして、そして、堂々とこういう時勢に合うような国立公園の運用をしてもらったらどうか、こういうことでありまして、私どもも役人をした経験がありますが、いろいろの対外折衝その他において、これはいかにも率直に申し上げて恐縮ですが、部というよりか局といったほうが通りもいいし、それからまた、いろいろの折衝上の便宜もある。こういうことで、私は実質的にもこの際国立公園の運用についてのひとつ姿勢を変えたい、こういうふうな大きい理想を持っておるのでありまして、それには官房の部などという小さい名前と申しますか、せせこましい立場でなくて、独立の局としてやるほうが行政運営上非常に私は効果的である。  それで、なぜ二月待てないかと、こういうお話でございますが、これはまあ厚生省としては二月の問題でなくて、長い間実は希望をしてきておったが、それがまあできなかったということで、ことし、まあ二月といえば二月でありますが、一月でも早くという長年の希望をこの際かなえてほしいと、こういうふうなことであります。私いかにも率直に申し上げてたいへん恐縮でございますが、まあ実情はさようなものでありまして、局の新設というか、部が局に変わるのだと、こういうふうな、たとえば大蔵省で賞勲部が賞勲局になるというふうなものでございまして、またあとからきっと参ると思いますが、賞勲部が賞勲局になるのだと、要するに部局の新設でなくて、それの変わった、ただ名前が変わってくると、こういうふうにひとつおとりを願えないかと私は考えるのであります。
  65. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 どうも大臣の御答弁は的はずれなんですがね。いま名前を変えるのだとおっしゃいますけれども、これはまだお伺いしていませんけれども、この次に出てくる児童局を児童家庭局に改める、これはほんとうに大臣が言われた名前を変えるということに通ずるわけですね。これは、国立公園局の場合は、これは大臣読まれたでしょう。提案理由の説明でね。ここにはっきり出ておるですよ。「大臣官房国立公園部を廃止し、」廃止してしまって、「国立公園局を新設することであります。」明確に出ておるのです。それは名前を変えるのだといういまの大臣の御説明は、「児童局の名称を児童家庭局に改める、」この次の質問したときいまの御答弁があればどうなずけるわけです。まだその答弁早過ぎるわけです。まだそのことをお伺いしておるわけではなく、「国立公園局を新設する、」と、そこでですね、部局の新設については先ほど御説明申し上げたように、衆参の内閣委員会で、しかも与野党一致した基本的な見解であるわけです。だから認めるわけには相ならぬと、この提案理由の説明どおりに認めるわけに相ならぬ、こういうことなんです。現にこの国会でですよ、衆議院の内閣委員会でも部局の新設については認めがたいということで、総理府設置法の、先ほど申し上げたとおり、二つの局の新設はもうついに撤回しておるわけです、内閣で。で、大臣もこの法律を、名前を変えるとかなんとかという当たらない御答弁でなく、この国立公園部を国立公園局に昇格させるのだと、かくかくしかじかの理由で、と言えば筋も通る。それならわれわれも部局の昇格については大体よろしかろうということになっておるわけです。与野党の一貫した意見の一致がそうだ。ところが、平地に乱を起こすようなこういう提案理由をされたのでは、これは見のがすわけには相ならぬ。この提案理由を訂正しない限り。これはりっぱに出ておるわけですね。これは議事録にも残っておるわけです。昇格じゃないのです、これは。公園部を廃止して公園局を新設でしょう。局の新設になるわけですね。したがって名前をどうのこうのという名前を変えるという問題じゃない。名前を変えるというのは、児童局が児童家庭局に、これが名前を変えるということになるわけですね。したがって、私は何もここで問題をむずかしくしようとしておるわけじゃないのです。これじゃこの提案理由を尊重するならば了解できないということなんです。したがって、この提案理由の説明は間違いであって、この国立公園部を国立公園局に、新設でなく昇格させるのだと、その理由はかくかくしかじかで、レクリエーション云々を推進する等業務量の増加に伴ってと、こういうことにつながれば理解ができるわけです。ただこのまま、これはまあ議事録にもりっぱに残っておるし、大臣がみずから御説明なさったわけですから、簡単には取り消しもできないでしょう。取り消しができないとすると、こちらは新設は認めるわけには相ならぬと、こういうことになるわけです。大臣このところをどうなさいますか。二者択一、どちらでもお選びください。
  66. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) これはもう実質的に昇格でございまして、ですからもしそういう私の説明が非常に差しさわりがあれば——まああると思いますが、これは場合によって直さなければならない。これはやっぱりわれわれは昇格と、こういうふうに考えておりますので、いまのようなことはよくひとつ相談してみます。
  67. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  68. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 速記をつけてください。
  69. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) 私は、先般厚生省設置法の一部を改正する法律案の提案理由の中で、「改正の第一点は、大臣官房国立公園部を廃止し、」と、こういうふうに申し上げたのでありますが、この点を訂正いたしまして、「大臣官房国立公園部を昇格して国立公園局としようとするものであります。」こういうことにひとつ訂正いたしたいと思います。御了承願います。
  70. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこでその問題は了解できましたから次にいきますが、この公園部を公園局に昇格するにあたって定員増あるいは内部の機構については別に説明は具体的にないわけですが、この点をひとつこの機会にお伺いしておきたいと思います。
  71. 今村譲

    政府委員(今村譲君) それではお答え申し上げます。  実は毎年大蔵省なり政府部内の予算の時期において局の問題をやりますときに、先ほど申し上げましたように、非常に業務量がふえておる。したがって、増員要求をいたす。それから課は現在管理課、計画課、それから休養施設——これは国民宿舎などをやっておりますけれども、この三課でございますが、いろんな新事態に対処するためにさらに課を一つふやしてもらいたいというふうな要求と同時に、局のいわゆる昇格をお願いしておったわけであります。これは本年、三十九年度の予算時期におきましてもいろいろ議論があったのでありますけれども、結論におきましては、課をふやしてくれ、人をふやしてくれ、しかも部を局に昇格してくれというふうな全面的なお願いということが部内におきましてはなかなかむずかしいというふうなことになりまして、最後には、官房から独立した一つの局に昇格さしていただく、その間現在の課の増加あるいは増員というものは要求しない、最後のところはそういうふうな形で現在お願いしておるわけでございます。したがいまして、二百五名、それから三課というふうなものは、この昇格に伴いまして直接にこれをどうふやすというかっこうにはなっておらないわけでございます。ただ、将来の問題といたしまして、申し上げましたように、業務量の増に伴う増員あるいは仕事の新規開発に伴う増加というふうな問題につきましては、今後またあらためてお願いするということになるものと考えております。
  72. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、自然公園には国立公園、国定公園、都道府県立公園、こういう種類があるようですが、これらの区別の基準は一体どの辺にあるのか、その基準について概要御説明いただきたい。
  73. 今村譲

    政府委員(今村譲君) それでは御説明申し上げます。いまお話の国立公園、国定公園、それから都道府県立自然公園、現在三つをまとめて自然公園法というのがございます。  それで先に現状を申し上げますと、国立公園は現在二十三、それで百九十三万ヘクタール、国土面積の五・二三%。それから国定公園につきましては、現在二十五カ所ございまして、六十二万一千ヘクタール、それで国土面積の一・六八%。したがいまして、国立と国定と合わせますと、全国土面積の六・九一%、まあ約七%弱と、こういうことに相なります。それから県立公園は二百四十一カ所現在ございまして、これは県の条例で規定いたしますが、これは二百三万ヘクタールというので、国土面積の五・二九%、国立公園よりも少し広いということでございます。  それで、この実質区分の前に、法的な決定のしかたを申し上げますと、国立公園は、非常に日本を代表するような大きな景観、たとえば南アルプスとか中部山岳とか阿蘇とかというふうなものでありますが、これは、厚生大臣が案をつくりまして、自然公園審議会にかけまして、意見を聞いて厚生大臣がきめるわけでございます。こういう仕組みでございます。それから国定公園につきましては、これは厚生省が自発的に動くわけにはまいりません。現行法におきましては、都道府県知事の申請があった場合に、厚生大臣は、自然公園審議会の意見を聞いて地域その他を決定する、こういうふうにして、国定公園は大体都道府県の発動に基づいて指定がなされる。それから都道府県立の公園につきましては、これは県知事さんの独自の立場におきまして、県内部で条例その他の手続をもってきめられる、こういう三つの手続上の区分がございます。  それから、内容区分といたしましては、国立公園法、昭和六年に制定されて、すぐに最初は十二カ所ほどから出発したのでありますけれども、これはいろいろな選定基準というふうなものが内規的にはございますが、日本を代表するようないわゆる大景観というものが中心でございます。ただその場合でも、アルプスのような大きな山岳公園と、それから瀬戸内海のように、まあ女性的と言っちゃおかしいですけれども、非常に温和なそういう海洋公園と、それから陸中海岸のように、これも国立公園でありますが、同じ海洋公園でありながら断崖絶壁の非常に荒々しいというふうなもの、それから阿蘇のように火山を中心とした公園と、いずれをとっても日本の代表になるような大景観というものでございます。で国立公園法ができました昭和六年当時から終戦後二十四年までは、国立公園一点ばりでございました。ただ、その選に漏れたり、あるいは国立公園ほどの雄大な大景観でなくともそれに準ずるようなものを、何か方法を講じて指定できないかというふうな要望が地方から非常に多うございますし、それで全国的な立地条件なんかも考えまして、二十五年に、国立公園に準ずるものというふうな制度が設けられ、昭和三十二年に国立公園法の全面改正のときに、国定公園という名称が出たわけでございます。この選定の区分は、国立公園ほどではないが、それぞれ非常にりっぱな特色を持っており、しかも地域の住民の相当程度が利用できる。いわゆる到達性もある、収容施設も付近にあるということで、そこで楽しく遊んで帰れるというふうなものに限定をすると、こういう区分でございます。したがって、景観でございますから、計算尺できちっと、ここからここまでは国立公園というふうなわけにはなかなかまいりませんが、まあやはり外国の規模なり景観なりというものと比較しまして、それぞれおのずから国立公園と、準国立公園という意味における国定公園と、二つに分かれておる、こういうことでございます。  それから県立自然公園二百四十一あると申しましたが、これはやはり景勝の地でございますが、国立公園、国定公園のように大規模な広い地域で、非常にすぐれた景観というもの——必ずしもそうでないものも含まれている。これは県民のためのいろいろな施策の便宜上つくられるというふうなものでございます。まあ区分としては、法制的な区分、景観上の区分、それから制度的な沿革、そういうふうなことを申し上げました。
  74. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私がお伺いしたのは、自然公園の中に国立、国定、都道府県立とあると、こういう三つに区別してある、区別する根拠は那辺にございますかと、こういうことをお伺いしたわけです。したがって、終わりに近づいて御説明のあった部分で足りるわけです。その坪数とか、種類というのは、今後お伺いするかもしらぬが、したがって、お伺いしたことだけお答えいただければいいわけで、あんまりこう詳しく知っているので、何でもかんでも一ぺんに出されてしまうと、あとでお困りになるので、お伺いした点だけお答えいただければ十分です。  そこでその点についてお伺いしますが、いまの自然公園の数とか、その公園の面積、それから国土面積に対する比率とか——それから公園の利用者数ですね、この概数、こういうことはまだ御説明なかったのですが、そういうこと、それが一点ですね。  それから、ここに五月二十九日の毎日新聞の記事がございますが、これを見ても、南アなど、いろいろ国定が国立になったもの、いろいろ御説明されると思いますが、こういう問題ですね、近い将来に国定から国立に格上げになるようなものがあれば——現にあろうかと思うのです。そういうものについて御説明いただきたい点、これが第二点。  それから、この自然公園の種類別ですね、種類別、名称、所在地、面積、利用者数、こういう詳細については、ここでお答えにくいと思いますから、これはこの際、こういう面を知りたいと思うので、これは資料として次回までに御提出いただけばいいと思うのです。  したがって、一点、二点についてお答えいただいて、三点については資料として次回までに御提出いただきたい。
  75. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 第一点の国立公園、国定公園、県立自然公園の面積、こういう問題でありますが、これは先ほども申し上げましたように、国立公園が全部で二十三、現在まで二十三カ所、百九十三万ヘクタール、それから国定公園は二十五カ所で六十二万一千ヘクタール、それから県立公園は二百四十一カ所でありまして二百三万ヘクタール、おのおの若干の端数はつきますけれども、そういうふうな状況でございます。  それで、各公園ごとにおきます面積なり、あるいは施設の内容なり、利用者数なりというものは、これはこの次まで、至急詳細なものをつくって提出いたしたいと思います。  それから国立公園、たとえば国定公園から国立公園に昇格とか、あるいは新規に国定公園にするものとかというふうなものの状況はどうかというお尋ねでございますが、実は昭和三十六年の十二月、暮れに、国立公園は一体どのくらいまでふやしたらいいか、あるいはどういうふうなところを選ぶべきかというふうな厚生省の諮問がございまして、それで答申が三十六年の十二月の末に出ておりますが、それに基づきますと、たとえば国定公園の中で白山だとか、あるいは山陰海岸の国定公園というふうなものは、これは景観が相当すぐれているから、ゆえに国立公園にしたらいいんじゃないか、あるいは知床とか、南アルプスとかは、いまは何にもなっていないが、国立公園に、景観がすぐれているから、上げたらいいんじゃないかというふうな審議会の答申をいただきまして、その上で現在までのところ、四つの新規の国立公園が生まれている。それから国定公園につきましては、県立自然公園のうち、あるいは新規のところというものから全部で——これは三十七年の四月に答申がございましたが、県の申請の中から、審議会でいろいろ議論をしまして、その上で厚生省で決裁をいただきまして、現在までに八カ所、たとえばニセコ積丹とか、飛弾木曽川とかというような地域の国定公園の増加が八つでございます。それから三十七年の四月の、そのほかにも答申がありましたが、具体的にまだ林野庁あるいは通産省と事務折衝のまとまっておらないものというのが、現在三つございます。したがいまして、この三つの国立公園はこれで全部二十三がそろったわけでありますけれども、国定公園につきましては、現在のところ二十五で、国定公園に指定したほうがいいじゃないかという候補地の答申をいただきまして、まだ仕上がっておらないのは三つございますから、最終的にはいまの段階としましては二十八になる、これは事務折衝で秋くらいまでに何とかけりをつけたい、こういうような方向で考えております。
  76. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この自然公園のいわゆる施設とか整備、こういう問題については、ロープウエーとか民間の有料道路、ホテル、こういう主として民間投資がいま急速に伸びておるようですが、これに比較していわゆる公共投資の面がだいぶ立ちおくれておると思うのですね。したがって、そのことから自然の保護とか、あるいはそれに調和した利用開発、こういう問題が現時点における重要な課題ではなかろうかと思うのですが、この点についてはどういうような御方針で臨まれておるのか、この点についてお伺いしたい。
  77. 今村譲

    政府委員(今村譲君) お答え申し上げます。最近の旅行ブームに基づきましてホテルの増築とか、あるいはケーブルカーとか、非常な件数で出てきております。先ほど申しましたように、三十七年だけで約千九百五十件というふうな数字でありまして、三十八年、三十九年等これが二千件あるいははるかにこすと。しかも一件々々が昔のように中小ホテル、旅館の増改築という点だけじゃございません、一カ所二十億とかあるいは十五億というものすごいものが出てくる、こういう情勢でございます。したがって、先ほど大臣の仰せられましたように、国民の国立公園などに対するレクリエーションに集まる人の数がふえれば、それに伴う利用施設の整備、たとえばホテルでも旅館でもこれは当然のことでございます。ただそれが一番よく例にあるのでありますが、景色の一番いいまん中に木をひっくり返して、そこへ十階建てあるいは十二階建てというふうなものをつくり上げるというふうな申請も間々出てまいります。その辺は自然公園のほうとしましては、利用施設の整備はどうしても自然景観の破壊になる、いわばみやげ屋さんの問題でありますが、その辺はできるだけの知恵をしぼりまして、レクリエーションの人方の収容も十分でき、しかも自然景観の破壊ということを最小限度にとどめるような方向がないかということで、技術論的には非常にいま腐心をいたしております。  それから民間の投資でありますが、これはたとえば、国立公園内部だけのホテル建築あるいはロープウエーの建設というふうなもので、厚生省の認可申請に出ましたものの金額だけをやりますと、三十七年度で大体二百億近く、そのほかに小さな増改築、内部改造というふうなものは全然入っておりませんので、それを入れますと四、五百億円になるのではないか。ところが、そういう民間投資のいわゆる急激な進行に伴いまして、公共施設はどうかということになりますと、これも先ほど御説明申し上げましたように、国立公園につきましては、大体国庫補助金として三十九年度四億二千万。それから国定公園につきましては五千万、まあ大体四億七千万くらい。それは都道府県なり地元なりの自己負担分が入りますので、合わせましても総事業量としては大体十億前後。したがって、数百億の民間資本の投入に対し、国なり公共団体なりの投資というのが十億円前後ということにおきましては非常にバランスがとれておらないというので、何とか民間のテンポに合わせたように道路なり駐車場なり公衆便所なりじんあいの焼却施設なりというふうなものの予算をふやして追いついていきたい、こういうふうなのが現在の私どもの念願でございます。
  78. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この提案理由を見ても健全なレクリエーションを推進することが特に最近の必要度を高めておる、こういうことでけっこうなんですが、経済企画庁の統計を見ますると、消費者動向の予測調査というこの調査を見ても当然なことだと思いますが、所得が高い者ほど消費は多い。で、低所得者ほど低くなっておる、それは当然の帰結だと思うのですが、そこでお伺いしたいのは、この低所得階層を含めて国民のすべてがこのレクリエーションを十分楽しめるような条件をつくることが、いわゆる公園行政として大事な一つのポイントではなかろうかと思うのですね。こういうような点についてはどのような努力をされておるのか、こういう点をお聞きしたい。
  79. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 私どもも経企庁の例の調査はよく調べておりますが、端的に申し上げますと、最近の旅館ブーム、ホテルブームというのはやはり一泊三千円、五千円というふうに非常に高いものが多い。経営となると自然そうなると思いますけれども、それで厚生省といたしましては、中所得者あるいは低所得者階層のレクリエーションという意味では、まあ少なくとも七、八百円くらいで泊まれて、非常に清潔な気持ちのいい宿舎というふうなものをつくっていかなければいかぬじゃないかというので、三十二年からでございますか、国民年金それから厚生年金還元融資というもので、都道府県あるいは市町村に対しまして、昭和三十八年度までで合計三十五億というものを融資いたしております。これはまだ全国で百二十七でございますけれども、大体料金が八百円前後ということでございまして、実際のところは低廉な受け入れ体制をつくらなければならぬというので、まだ百三十に満たないのでありますけれども、これは実績は非常に若い人方なり家族連れの人方に好評でありますし、今後とも還元融資の投入ということを積極的にやらざるを得ないのじゃないか、こういうふうに考えております。それから国民休暇村と申しまして、これは三十六年から発足したのでありますが、宿舎とりっぱなテニスコートあるいは運動場、ベンチというふうなものを現在全国で十六カ所で手をつけて進めております。これも厚生年金、国民年金の還元融資でまかなっておるわけでありますが、現在すでに十カ所ほど店を開いております。これもやはり三けたの数字で泊まっていただけるというふうなかっこうで、今後とも大いにピッチを上げたい、こういうふうに考えております。
  80. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 このレクリエーションを推進するため行政として、すぐれた自然を保護しながら、一方、より多くの国民が利用し得るという自然公園の体系のいわゆる体系的整備といいますかね、この体系的整備を促進することはきわめて大事ではなかろうかと思うのですが、これらの観点から昭和三十六年九月ですか、当時の古井厚生大臣が自然公園審議会に二点を諮問されておるわけですね。一つは、国立公園の体系整備について、一つは国定公園候補地の選定について、こういう諮問をされて、それぞれ答申がなされておるわけです。この答申に基づいて厚生省としてはいろいろと行政を進めてこられたと思いますが、この体系的整備については具体的にどういうふうに進められておるのか、その概要だけを簡単に御説明いただきたい。
  81. 今村譲

    政府委員(今村譲君) その諮問に基づきまして審議会から答申をいただきましたのが、国立公園の体系整備につきましては三十六年の十二月の暮れでございまして、それから国定公園のほうにつきましては三十七年、翌年でございますが、三十七年の四月に答申をもらっております。それは先ほどちょっと申し上げましたように、国立公園はその当時は十九ございましたか、とにかく数は非常に少ない日本全国の配置状況考えて、景色のいいところに国立公園をもっとふやしなさいというような勧告がございまして、そこで検討の結果、二十三までそれじゃ持っていこうというので四つふやそう、それで現在までのところ新規に四つふやした。そのほかにたとえば霧島をもっと広げるとかあるいは陸中海岸をもっと広げるとかというふうに、国立公園の区域の変更がございます。新規は四つ。それから国定公園につきましては、全国で十一新規にふやしたらいいではないか、こういうふうな御答申をいただいております。厚生省としましては、その線に基づいて詳細に図面で公園計画をつくり、関係各省の了承を得る。それはへたにきめますと、電源開発とかなんとかいろいろぶつかりますので、各省と協議をやりまして、いままでのところ国立公園の新設につきましては、三十六年の暮れから作業を始めまして、本年の六月で全部けりがついた、新設につきましては。それから国定公園につきましては、十一ふやせということでございましたが、そのうちですでに八つは正式の告示、厚生大臣の指定がすんでおります。残っておりますのは三つということで、いま、事務的な仕上げを急いでおる状況でございます。
  82. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なおその際、答申が上げられた際に、国立公園にはこれこれ、国定公園にはこれこれという意味の答申がなされたはずですが、これは答申どおりに国立、国定にそれぞれ指定されたのかどうか、この点もあわせてお伺いしたい。
  83. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 大体審議会の答申どおりに進んでおります。ただ審議会はこういう広い所を一括して指定したほうが、今後自然景観の保護やら何やらで都合がいいじゃないかというふうな御意伺でございますが、実際その山林の持ち主とか、へたに指定されますと、木一本切れないというふうなかっこうになりますので、県なり相当の地主さんなりというものと具体的に全部詰めますので、若干の出入りはございます。大体はその線に沿って現在のところは進んできております。
  84. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 先ほど来お伺いしておるレクリエーションの利用がだんだんふえてくるわけですが、そこでこの自然公園に一歩これ前進させて、景色、景観はさほどではないけれども、レクリエーションとしては非常に好適だ、こういう所を休養地として、国民一般のいわゆるレクリエーションの候補地としてこれに施設を加えていくこと、これはまあきわめて大事な一つの問題だと思うのです。この点について厚生省はどういう取りきめをなさっておられるか、こういう点をひとつお伺いしたい。
  85. 今村譲

    政府委員(今村譲君) これはたとえば東京なり横浜なりから一時間か一時間半というような近い所で、家族連れでゆっくり楽しんで日帰りでも帰れる、あるいは一泊もできるというふうな所、そうしてしかも、相当低廉な費用で遊べるというような所を何とかつくらなければならないということで、一昨年ぐらいからいろいろ検討をやっております。それで、できれば、国定公園あるいは都道府県立自然公園の中で特にこの辺が必要であるというふうなものにつきましては、国庫補助を新規に——たとえば都道府県立自然公園については国庫補助の制度はございませんけれども、東京近傍の都道府県立の自然公園の中で、しかるべきものについては国庫補助を流せ、したがって、あるいは県のほうには起債でも流す、相当の整備をしてもらう、こういうふうなことを、もう三十八年度の予算編成のときに持ち出していろいろ議論を進めたのでありますけれども、結局昨年度におきましては妥結を見なかったという問題でございますが、これは現実に大都市周辺、それから今後の新産都市のどんどん膨張する人口のレクリエーションの場、その辺も含めまして、都道府県立自然公園あるいは国定公園に対する補助なり融資なりをするというふうな道を早急に考えたいと思いまして、いま検討をしている最中でございます。
  86. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 近ごろの大都市並びにその周辺の公園に対する利用者は非常にふえてきておる。これはたいへんけっこうな傾向なんですが、むしろこれは過密利用の弊害が非常に出ておるのではなかろうかと思うのです。このままではせっかく公園を利用する人に対してむしろ弊害が出てくる、こういう状態なんですが、その点については、どのような考えを持っておられるか。
  87. 今村譲

    政府委員(今村譲君) これははなはだ申しわけございませんが、具体的にここは過密である、したがって、これをあっちのほうに振り向けるといったふうな直接的なきめ手がございませんので、非常な過密地域で足場の便利ないいところにそういうものが一カ所しかなければ、その附近に、できれば二カ所、三カ所というふうにふやして分散をしていくというふうな方向しかない。したがって、新規にそういうようなものをつくり上げていく。そのためには何か国の補助なり融資なりというようなてこ入れをしなければならない、こういうふうに考えております。
  88. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 経済企画庁の、先ほど話した消費者動向予測調査、これを調べてみると、近ごろ家族連れの日帰り旅行者数が圧倒的にふえておる。これは旅行シーズンともなると、駅その他の交通機関が非常に混乱しておるということからもうなずけると思うのです。これに対して日帰り旅行コースの開発が非常におくれておると思うのです。その点が十分ならばかような混雑は来たさないと思うのですが、こういう点についてはどういうふうな手を考えておられますか。
  89. 今村譲

    政府委員(今村譲君) それはたとえば五月の連休とか、あるいは土、日とかというふうに、一般の勤め人といいますか、一般の方の利用というのは、日が非常にきめられてくる。将来これが労働時間の短縮とかいろいろな問題がありましてもう少し時間的に楽になれば、そういう時点的には過密利用が分散されるということはあり得ると思いますけれども、いまの段階におきましては、行楽客が行って帰ってもうへとへとになってしまうという程度の交通機関の混雑ぶり、こういうことがございます。したがって、いろいろ考えておりますが、たとえばどの地区はどっちに行きなさい、どの地区はどっちに行きなさいというようなところまでは行政として手が伸びない。できるだけそういうような施設をふやしておのずから分散できるようなかっこうにしたい、こういうふうなところまでしか、申しわけございませんが、いまのところは手が出ないのではないか、こういうふうに考えております。
  90. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 近ごろレクリエーションの一環として温泉の利用が相当ふえておる。これに対応するために業者が無届けの試掘をやる、いわゆる乱掘ですね。これが相当あっちこっちで起きておるわけです。私のほうのいなか——水上ですが、あそこにもそういう問題があるのです。これは当然温泉試掘許可という合法的な手続によってやるべきであるのに、そういうものを無届けでどんどんやる。こういう傾向が全国的に見られるわけです。これは厚生省の所管であろうと思うのですが、こういうことに対してどういうような手を打っておられるのか。なお、水上の一つの例がございますが、そういう問題はどう解決しようとなさるのか、そういう問題についてひとつ……。
  91. 今村譲

    政府委員(今村譲君) お答えいたします。実は水上の、許可も何にも得ないでかってに掘ってしまった、そうして地元で大きな問題になったということは私よく存じております。それで、公園部も温泉を主管いたしておりますので、県といろいろかけ合いまして、ことしの初めでありますか、完全にそれは封鎖いたして事態は落着いたしております。ただ仰せられますように、各地で無届けでかってに掘るというのは、私ども県とも密接な連絡をとっておりますが、あまり聞かないのでございます。それでほとんどないのじゃないかと思います。ということは、地元の温泉業者なり地元の関係業者なりが相当やかましくお互いに、監視といってはおかしいのですが、見ておりますので、全然温泉法の第四条に基づく都道府県知事の許可、こういうようなものもなしに掘ったというふうなのはほとんどないんじゃないかと思います。ただ問題は、鉱山とかあるいは隧道を掘るとか、あるいは井戸を掘るとか、それでたまたま掘ってみたら湯が出てきた、さあそれをどうするかというふうな問題がございます。ことに抗道を掘ったときに出てくるというふうなものをめぐって温泉権の問題が相当もめるということはございます。ただ、そういう意味におきましては、温泉法第四条の許認可というふうなものの運用のしかたがいろいろ問題になるかと思いますけれども、とりあえず先生仰せられましたような事態は、たまには出てまいりますけれども、全面的にそういうふうなものが流行しておるということではないんじゃないかと、こういうふうに認識しております。
  92. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 厚生省としては、国立公園とかあるいは国定公園の管理あるいは国民宿舎の建設、こういう面を担当しておると思うのです。また、文部省は青年の家をつくったり、あるいは文化財を保護する、これは文部省の所管です。あるいは運輸省、農林省、建設省ですか、これらの観光面で担当分野はそれぞれ各省に所属しておるわけです。こういうふうにこれらの行政運営が非常に錯綜しておるわけですけれども、これはスムーズに横の連携が十分にとられてやっておるのか。それがなくてはこういうものはとうてい解決しない問題なんですが、これは行政の基本的な問題なので大臣のお考えをこの際お聞きしておきたいと思います。
  93. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) ただいまのお尋ねの件は、総理府に観光審議会、こういうものがありまして、その幹事等に各省次官が当たっておると、こういうことでお互いの連絡をとって調整に当たっているということでございます。
  94. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なるほど総理府にそういうものがありますけれども、それだけじゃなかなか各省庁間の横の連携はとれないと思うんですがね。同じことを繰り返すようですが、厚生省としては国立、国定公園の管理をやったり、あるいは国民宿舎は厚生省でしょう。文部省は青年の家をつくっておる。それで文化財は文部省所管。その他観光面で建設とか、農林、運輸、みんなそれぞれ独自の面を担当しておるわけです。こういうのが総理府の観光云々で解決するとは思われない。観光以外の面もありますから、そういうことでは納得できないのですがね。これは具体的な問題でなく、厚生行政の大綱であるわけです。したがって、当然大臣のお考えが述べられてしかるべきだと思うのです。
  95. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) これはお話のように、いま運輸省にはユース・ホステルとか、厚生省には国民宿舎あるいは休暇村、あるいは文部省には青年の家、いろいろのものがありますが、そういうことの連絡調整は一応話し合いできめられておると、こういうことになっておりますが、何としても施設全体がまだ少ない。そして、外から見ればばらばらに見えますが、とにかくそういうものがまだ非常に足りないと思うのです。どこでもひとついまのそれぞれの所管に従ってつくっていく必要がまだ多いのでありまして、ただ場所的には重複することのないようにそれぞれ相談はいたしておりますが、実際問題としては各省が事務的に打ち合わせてやっておると、こういうことでございます。
  96. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 どうもあまり納得しがたいのですが、結局具体的にこういう関係省が寄って定期的に連絡会議を開いて事務運営をはかるとか、そういうことは定期的にやっているのですか。そういうことなら一つの具体的な問題が出てくるわけです。そういうことさえも、連絡会議のようなものさえ持たれないとすると、各省がかってな行政をどんどん独行しているということにとどまって、ときどき話し合った程度ではなかなか成果は期しがたいと思うのです。これらはみんな横の関係はあるわけですね。したがって、そういう関係の省が集まって定期的に連絡会議でも——まあ思い当たりでない、定期的にそういう会合が持たれてどんどんこういう問題を審議していく、反省しながら成果をあげていく、こういう態度でなければならぬと思うのですが、ただそういうような、どうもいまの大臣の御答弁では、積極的にそういうことがやられているようには受けとめがたいのですが、もしそうだとすれば、今後そういう方面を積極的にやってしかるべきだと思うのですが、その点いかがですか。
  97. 今村譲

    政府委員(今村譲君) お答え申し上げます。実は具体的な問題、たとえば文化財保護との関係は国立公園の中にも史跡、名勝、天然記念物というような指定があったり、その辺の開発につきましては文部省と私のほうで緊密な連絡をとる。それからユース・ホステルなり青年の家というふうな問題につきましても、国立公園、国定公園、大体そういうところが選ばれるのでございますが、そういう場合には個々の問題としては事務的に十分話し合いをした上で、この辺の位置がいい、あるいは立地条件としてはおかしいというような場合とか、これは十分やっているのでございます。  それから先ほど大臣からお話がありました観光政策審議会、それの何といいますか、幹事会といいますか、各省次官会議、これは相当観光基本法がつくられましてからひんぱんにやられておりまして、これは運輸省の観光政策の問題、あるいは文化財の問題、厚生省の問題とかいうような忌憚のない意見が相当かわされている。たとえば国会に必ず出さなければならないのでありますが、観光の状況等に関する年次報告、これはすでに国会に提出されてございますけれども、こういうふうなものも内閣の審議室が中心となりまして、各省の主管の部長なり課長なりみな集めまして、どういうものを国会に提出するか、まとめるにつきましては今後の計画なりあるいは従来の批判なりというものを議論し調整する、そういうような機会が相当ございます。ですから、個々の問題として若干食い違ったりということはございますけれども、大体の方向としてはいま御質問されましたような方向に政府部内としては大いに努力しているということは言えるのじゃないかというふうに思います。
  98. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 公園局に関係の面については大体厚生省のお考えはわかりましたので、次に児童家庭局のことについて若干お伺いしたいと思いますが、これはさっき大臣からも御答弁があったように、名称を変えるのだということで、これは当てはまると思うのです。「児童局」の名称を「児童家庭局」に名前を変える。児童といえば家庭というのがすぐ結びつくことばなんです。これを児童家庭局に名前を変えようとするその理由ですね、理由は那辺にあるのか、まずその点からお伺いしておきたいと思います。
  99. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 直接の動機は非行少年対策でございます。私のほうで非行少年を収容している施設として矯護院があるのでございますが、ここの在園児五千名の調査をいたしましたところ、非行の原因、入所の原因の八〇%までが、本人の側よりも、むしろ家庭の側にあるということがわかりました。そこで、もっと家庭の人たちに対する児童の相談、助言のサービスというものをやる必要があるということであります。それから次に、従来は児童局は、要保護児童だけ、問題になりました児童あるいは精薄児、肢体不自由児というような要保護児童の対策と、家庭外の対策、児童遊園というような家庭外の遊び場所で、子供の余暇の活用をはかるというようなことをやっておったのでありますが、御承知のように、弱年人口と言いますか、児童の人口が激減してまいるというような日本の人口構造の変化がございますから、せっかく生まれた子供をよく育てる、資質の向上ということが喫緊の要務になってまいりました。そのためには、単に問題児童だけではなしに、一般の家庭の児童の健全育成対策、資質向上をやらなければならぬというような必要に迫られたのでございますが、たまたま中央児童福祉審議会でも家庭対策を重視すべきだというような御答申もありましたので、今回児童局を児童家庭局に衣がえをするというようにいたそうと思ったのであります。
  100. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうすると、児童局を児童家庭局に変更をして、それと同時に所掌事務の整備を行ない、そして特殊な要保護児童、こういう対象にしておったのを、一般家庭のすべての児童にも幅を広げる、そうすることによって、児童の非行を防止したり、家庭対策を確定させようと、こういうところにねらいがあろうかと思うのですが、そのことは家庭福祉に本格的にひとつ取り組んでみたい、こういうことから児童家庭局ということの名称の変更はよくわかるのですが、それではそれらの具体的な方策についてはどういうふうに考えるか、概要だけを。
  101. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 先ほど申し上げました中央児童福祉審議会が家庭対策を答申してまいりましたから、それに基づいて予算化をいたしておるのでありますが、第一は、家庭児童相談機構の整備でございます。これは五カ年計画で、現在の福祉事務所に家庭児童相談室というものを置きまして、家庭からの相談、助言に応ずる組織網をつくってまいるということが第一点。それから、従来は公立の児童相談所がありまして、問題児童のいろいろ保護に当たっておったのでありますが、一般家庭の人たちの相談助言にさらに当たるために、民間の家庭相談機関というものを助長していく、奨励をしていくというような施策を考えております。それからもう一つは、子供の家庭におけるしつけと相まちまして、いわゆる集団的な教育をする必要があるということから、新しく児童館に対します国庫補助の道を開いたのでございます。それから従来の保育所あるいは児童遊園というような施策もさらに強化をしてまいるということでありますが、それともう一つは、こういうような問題につきまして、まだ研究が足りませんから、児童問題の総合研究所というものをつくりまして、ここで家庭児童問題についての研究をする、同時に家庭児童の社会調査をする必要があるというので、昨年から家庭児童調査というものを実施しておるのであります。  以上申しましたようなことを基礎にして、児童家庭局ができた暁におきましては、逐次家庭児童対策を強化してまいりたい。  なお、全体の予算を申し上げますと、児童福祉施設、家庭児童福祉の面では二億円計上してございますが、このほかに従来とも母子の保健衛生の問題で当然そういう一般家庭の児童あるいは妊産婦の対策をやっておるのでありますが、これが同額二億円程度でありますけれども、さらにこれを強化してまいりまして、児童の福祉あるいは保健福祉という両面から家庭児童対策を強化してまいるというような方針でございます。
  102. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで現在の青少年問題を進めている機構として、厚生省にはもちろんありますが、文部省、労働省、法務省にも青少年問題のいろいろ行政機構があって、それぞれの立場から研究調査を進めておると思うのですが、これの先ほどお話ししたような意味合いから、それぞれの立場でやっておるのですが、みな独走しているわけです。これの連繋はどのようにとられておりますか。
  103. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) これは御承知のように、総理府に中央青少年問題協議会というのがございまして、今回も総理府に青少年局を設置するというような計画があるようでございますが、ここで各官庁のやっております児童行政、青少年行政の総会調整あるいは基本計画というようなもので各省が独走しないようにやっておるという仕組みがあります。
  104. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま衆議院の内閣委員会で審議されておるいわゆる総理府設置法、これは通るか通らぬかわからぬわけですが、まだこちらにきませんから。結局中央青少年問題協議会を改組してこれは青少年局にしたいのだということであるのですが、こういう問題があるわけですね。ところが一方、既設の青少年関係機構としては、いま言ったように、文部省にもあるし、労働省にも、厚生省にも、法務省にもある、こういうことでどこかで統合的にこれはやらないと、各個ばらばらになろうと思うのです。こういう配慮はどのようにしてなされておるのか、各省でみな関係の問題を処理することはわかりますが、ただそれを野放しにしておいたのでは成果は期しがたいと思います。やはりどこかでまとめていかなければならぬと思います。この点はどういうふうにいままでなっておるのか。今後はどういう構想を持っておるのか、こういう点をひとつお伺いしたい。
  105. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 先ほども申しましたが、各省の仕事は児童に関するあるいは青少年に関する実務行政でございます。しかし、それぞれ競合いたしましたり、あるいは矛盾いたしましたりする危険がございますから、総合調整あるいは基本計画というようなものをどこかでまとめる必要があるということで、従来は総理府の青少協の事務局でやっておったのでありますが、ただいまお話に出ましたが、今回は青少年局というものをつくって、ここで総合調整なり基本計画をやる。もちろん関係省庁と協議して行なうわけでございますが、そういうことで基本計画の策定あるいは各省がやっている実務行政の総合調整を青少年局でやる、現在は事務局でやるということに相なっておるのでございます。
  106. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 三十七年の七月に出た中央児童福祉審議会が答申をしているわけです。その一節に、児童の健全育成と能力開発によってその資質の向上をはかる積極的対策に関する意見、こういうのがあるわけですね。その一こまとして、家庭対策あるいは事故防止対策、家庭で保育できない児童に対する保育あるいは要保護児童対策、それから地域活動の強化あるいは社会環境の整備と向上、こういうような項目があげられて、この点の善処方を要求しておるわけですが、これらの意見についてそれぞれ厚生省としても関係の面についての施策は進められておるとは思いますが、具体的にそれぞれみな進められておるのか、この中でどういうものが重点的に取り上げられておるのか、こういう点についてお聞かせいただきたい。
  107. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) ただいま御指摘になりました中央児童福祉審議会の答申あるいは意見の具申についてでございますが、児童行政の全般にわたりますので、児童行政の全般の行政にこの答申なり意見を採用しておるのでございます。答申が出ましてこの三カ年の間に、児童局の予算が約倍額に予算の総額において増加をいたしております。特に先ほど申し上げました家庭児童対策一つの中心を置きまして、先ほど申しましたように、この中で二億円余りをこの家庭児童対策に費やしておるわけでありますが、その他資質の向上のもう一つは、保健衛生面でございますが、これも児童の保健行政の面で、先ほど申しましたように、二億円の予算化をいたしておる。それから事故防止につきましては、この審議会に特別の部会をつくりまして、さらに専門的な答申を受けたのでありますが、これに基づきまして、特に交通事故に基づくものが多いものですから、交通安全規則というようなものの研究をいたしまして、一応の成案を得ましたので、これがいま普及につとめておるところでございます。その他保育に欠ける子供につきましては、従来の保育所をさらに強化してまいる。設置のピッチも従来は百五十カ所程度のを百七十カ所ぐらいの年間の設置の補助金、それに都道府県で独自でやっておりますのが百カ所ぐらいございますから、二百七十カ所ぐらいのピッチで保育所の増設をやっております。なお、保育の内容あるいは保母の確保なり待遇改善についても、それぞれの所要の措置をとっておるのでございます。その他健全育成の関係では、先ほども申しましたが、児童館、児童遊園あるいは健全育成の事業費というものに対する助成を行ないまして、その資質の向上をはかっておるような次第でございます。
  108. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは、いま福祉審議会の答申についてお伺いしたわけですが、もし厚生省にこれらの答申に対する厚生省としてとられたその後の措置についての資料があれば御提出いただきたいということをお願いして、時間の関係もございますから、本日の私の質問は終わります。
  109. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  110. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 速記をつけてください。  他に御質疑はございませんか。——別に御発言もなければ、本案の質疑は、本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  111. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 大蔵省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。本案につきしては、すでに提案理由の説明を聴取いたしておりますが、衆議院において修正議決されておりますので、まず衆議院における修正点について、便宜政府から説明を聴取いたします。
  112. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 衆議院におきます修正の要旨は、お手元に配付してございますとおりで、附則の、法律の施行期日の点でございます。原案では、法律は三十九年四月一日から施行ということになっておりましたが、すでに時日を経過いたしましたので、公布の日から施行するということに修正されたわけでございます。ただし設置法四十九条一項の表の改正規定等々、いわゆる定員に関する規定は、これは四月一日から適用すると、かようなことに相なっておる次第でございます。
  113. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) それではこれより質疑に入ります。政府側より田中大蔵大臣、谷村官房長、佐々木関税局長、佐竹理財局次長、喜多村国税庁次長が出席いたしております。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  114. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 本法案に関連して二、三お伺いしますが、この提案理由の説明を拝見しますと、理財局にある証券部をやめてしまって、そして新たに証券局を設けたい、こういう意味でありますが、ここでまずお伺いしたいのは、理財局ですがね。これはなかなか理財局といっても、国民にはわかりにくいと思うのです。で、辞書を引っぱると、貨財を有利に取り計らうこと、というような意味があって、どうも意味もうまいとしていてわからない、われわれには。名前がわからぬから理財局そのものもどういうことをやるのであろう、昔私ども学生時代に、慶応大学に理財科というのがあったですね。それで何をやるかとだいぶ頭をひねったことが学生時代にあったのです。いま御承知のように、経済学部となっていますから、よくわかるのですけれども、まあそういうことで、これはたいした問題じゃないようですが、やはり政府の官庁ですから、いわゆる国民によくわかるような名称を、ここでどうということじゃございませんけれども、将来検討する必要があるんではなかろうか。なるべく、名前を見ればすぐ内容がわかるような名前がよろしかろうと思います。この点をまずお伺いしたい。
  115. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 御指摘のとおり、理財局という名前は、大蔵省官制では非常に古い名前でございますが、何を一体あらわしているのかということは、衆議院においても御質問がございました。まあ適当な表現は慶応理財科が例にとられるぐらいでございまして、理財局の名前を何かに変えられないかという御質問もございました。私もこの法律案を提案しますときに、財政投融資局というようなふうに明らかにしたほうがいいんじゃないかというように考えたわけでございますが、そうなりますと、現在証券部を証券局に昇格してもらうということもお願いしておるわけでございますが、そのほかに、国庫業務とか、それから外債の発行業務とか、御承知の通貨の発行に関する業務とか、また、前に長官を置いておりました預金部の業務、こういうものが全部理財局に入っておりまして、理財局をもう少し分離をしたほうが、国民のためにもなるという議論はたくさんございました。専門家の御意見もあったわけでございますが、まあ大蔵省はほかの省の予算をチェックしておる立場で、なるべく自分の局を分離したり昇格したりということは慎まなきゃいかぬということで、今日まできたわけでございまして、この問題は各方面から時期を見て必要なものであるならば、分離整理するとか、総合するとかいうことを、これは理財局という大蔵省の昔からの名前だということにとらわれないで、もう少し官制上わかりやすくしたほうがいいのではないかという議論もございますが、今回の改正までには結論が出ませんで、また将来検討いたしてまいりたいというふうに考えております。
  116. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 衆議院の内閣委員会での本法案の審議の状況を会議録によって拝見しますと、むろん中心は証券局の設置に伴う質問が多いわけですが、そこで、参議院のほうでも、衆議院で相当詳しく証券局についていろいろ伺っておるようでありますので、同じことをここでまた繰り返すのも意味ないことでもあるので、なるべく重複を避けてお伺いしたいと思います。  そこで、まずお伺いしたいのは、この理財局の証券部をやめてしまって、ここに証券局を設けるということでありますが、これは一昨年の第四十国会の設置法の改正の際も、当時三課の構成で設置されたと思うのですが、これがまた二年経過して、今日二年でまた局に変わるわけですが、これは開放経済に、非常にやかましく言われておる移行の時代である、それから証券市場の整備拡充が強く要望されておる、こういうことからではあろうと思いますが、この際、局としなければならない理由は那辺にあるのか、その概要について御説明をいただきます。
  117. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) いま御指摘にございましたように、証券部でございましたが、何でも入っている理財局の中の部ということでございまし。理財局の中の証券に関するいろんなものを織り込んでおりますので、理財局そのものも整理をしなければなりませんし、また、先ほど御指摘のございましたように、OECDの加盟、IMF八条国の移行、そういうような立場から考えましても、資本行政というものが、いままで銀行局というような、銀行行政は非常に古いころ確立されておりましたが、この前に証券部を設けていただいて、今度理財局から分離していただいて、証券局にしていただくということによって、行政の責任の所在も明らかにしたい、これから証券局で新しい立場における日本の資本市場の育成、大衆資本の参加も、非常に零細な方々の資本参加も行なわれておることでございますので、また同時に、戦前六一%でありました自己資本比率は、二四%を割っておるというふうな時代にかんがみまして、政府といたしましても、局に昇格をしていただいて、ひとつ資本行政に対する責任体制を確立いたしたい、こういう考え方でお願いをいたしておるわけでございます。
  118. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 二月の十一日に、大臣から本委員会で提案理由をお聞きしたのですが、その際は、理財局に置かれている証券部を分離独立して、証券局を設けるという提案理由の説明があったわけですが、いままで証券局というものはなかったのですね、そこに新たに証券局というものができるわけですが、これは局を新たに設けるという解釈でいいのでしょう。
  119. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) そうおとりになっていただいても差しつかえはございませんが、大蔵省としましては、理財局の中に証券部がございますので、これを発展的に解消して新しいものをつくるというよりも、証券部というものは、失ほど申し上げましたとおり、理財局の中にたくさんいろんなものがございまして、実際国会においても御質問いただきましても理財局長そのものがお答えするより、証券部長がお答えすると、こういうことになっておりますので、証券部を分離して、そのまま昇格をせしめてもらいたい、こういうことでございます。で、ありますから、まあ証券部、官制上は理財局の中にあったのでございますから、これを分離ということはありませんので、これを理財局の証券部を廃止してというふうにおとりになってもけっこうですが、これはいま理財局の中にある証券部がこれでは弱体だから新しい時代に対処してこれを局に分離して昇格せしめたい、こういうことでございます。
  120. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 これは部を廃止して局を新たに設けるとなると、これは大臣御存じだからあえて申し上げませんが、これは簡単な問題でなくなるわけですがね。衆議院の内閣委員会でも与野党一致して局の新設は認めないということになっておるわけです。で、いま大臣の御説明は、その中間ぐらいをいっておるので、別に廃止して新たに設けるという意味でもなし、そうかといって昇格ということばはあまり使われていない。われわれ昇格なら理解できるのです。これはあまり賛成じゃないけれども、まあ真にやむを得ぬであろうという当内閣委員会に、行政機構のあり方について基本的に与野党ともにそういう基本線をもってきめたわけです、部局の新設は認めないということで。ただ、いまの御説明ではちょっとあいまいなんですが、結局昇格とはっきりおっしゃっていただけば、部局の昇格については遺憾ながら認めようという基本線なんです。これは野党だけでなく、与野党一致した見解であるわけです。したがって、ここで証券部を証券局に昇格するんだと、はっきり言っていただけば、一切行政機構の問題には触れないわけです。やはり廃止して新たに設けるというふうに解釈してよろしいんだという大臣のおことばではございますけれども、そういう解釈をするとちょっと引っかかりができるわけです。
  121. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) いや、事実も、私の考え方も、理財局にあります証券部を分離をいたしまして昇格をしてもらう、こういうことでございますので、そう御理解いただきたいと思います。私が大蔵省設置法の提案理由の説明の中で、分離設置ということを申したことがあるとすれば、それは分離をして昇格充実をせしむるということでございますので、改めてもよろしゅうございます。
  122. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで、その点わかりましたから、次にお伺いしますが、現在三課あるわけですね。それを局にするについては、五課に改めようとしておるわけです。ただ、ここで問題なのは、業務量がどうかということであれば、三課の機構では無理だとおっしゃれば、五課にすれば三課でできなかったことをあと二課追加することによって強化できると思うのです。ただ量の問題であるならば。その辺はどうなんですか。やはりほかにも理由があるわけですか。業務量の増加ということであるならば、三課を五課にしただけで、大体解決はできるんじゃなかろうかと一応考えられるのですがね。
  123. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 先ほど申し上げましたように、証券部がいま属しております理財局そのものさえも分離をしなければならないような状態にあることは、先ほど御説明申し上げました。そういう理由が一つございます。  それから業務量が三課から五課にして済むという問題だけではないわけでございます。それは先ほど申し上げましたように、国会におきましても、やはりいろいろな業務をたくさん持っておる理財局長答弁はいたします。いたしますけれども、国会においては証券に関してはやはり証券部長がいつでも具体的に御説明を申さなければならないというようなことでありまして、資本行政に対しましては理財局から分離をする。そして局に昇格をさしていただくということに対しては行政責任を明らかにするということだけではなく、政府が銀行金融に対して銀行局というものをつくりまして、その行政をしっかりやろうといった気持ちと同じように、これからの新しい態勢におきましては、資本、金融というものが二大支柱であるというような考え方で、政府自体の責任体制を確立をし、行政が完全にできますように態勢整備をいたしたいという考えでございます。
  124. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この提案理由の説明によりますと、開放経済の移行に伴って証券市場の一そうの拡充整備を行なう必要がある。したがって、総合的また合理的ないわゆる証券行政を推進しなければならない、こういう点があげられておるわけです。そこでお伺いしますが、ここでいう総合的、合理的ないわゆる証券行政、こういうのは、一体一口に言ってどういうものか、その点を概要だけ御説明いただきたい。
  125. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) いままで熱心にやっておらなかったということではございませんが、いまの資本金の総額で、上場会社の株式だけでも三兆八千億、時価にいたしまして七兆四千億ということでございます。そういう状態でございますので、いままでのように資本市場の問題だけとか、それから証券業者の問題だけとか、そういう考え方ではなく、日本の産業資本の市場それから国民大多数がこれから資本参加をする状態、それから金融と資本との関係調整、また外国からの資本流入の問題もございます。外国人が相当大幅に株を持つ。それで、まだ問題がありますのは、いわゆる資本参加というような問題もございます。そういうような非常に新しい事態が起きておりますので、理財局の一部ということよりも、局にこれを昇格していただきまして、内容を充実するとともに、高い立場で自己資本比率を上げていかなければならぬ。先ほど申し上げましたが、OECDに加盟をしながら資本自由化の方向にある態勢でありながら、戦前の六一%の自己資本比率が二四%を割っておって、まだ下降の一途をたどっておる。こういうような株式の市場でありながら株が多いということで、どうしても整備しなければならぬというようなことも一部あるわけでありますから、銀行行政にまっ正面から取り組みましたように、資本問題に対して、政府も真正面から取り組んでいかなければならない。それには技術的な問題だけではなく、より高い立場から総合的に——通産省の問題もございますし、それから銀行との問題もございますし、また、他の公社債の問題もございますし、そういうものを総合的に調整をしながらよりよき資本行政の拡充をはかってまいりたいという考え方でございます。
  126. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 最近の傾向としては、国際市場とか、あるいは国内市場の問題があると、一般的に課を部にしたり、あるいは部を局にしたり、こういう傾向は一般的に言えると思うのです。ところが、この証券部は一昨年まで課であったのですね。それで、二年前に部となり、さらに部になって二年にしてさらに局になる。そこで、お伺いするわけですが、一般論からいうと、証券界にも何か一大変化があったのかどうかという点ですね。そういう点、先ほどの御説明では、証券局としていわゆる総合的な合理的な証券行政を推進したいと、こういう御説明であったわけですが、部制のままではどうにも都合が悪いことの理由としていま少し説明をいただきたい。
  127. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 私は課であった当時、やはり部がほしかった。もっと早く局制のように充実せしめておかなければならなかったのではないかということをも考えられます。また、証券行政に対しましては、金融行政と二大支柱のような状態で、できるだけ早い機会に整備をしなければならないと識者はつとに指摘されておったわけであります。しかし、当時の状態からいいますと、これは国会で絶えず問題になっておることでございますが、国内資本の充実もさることながら、戦争でもって何もなくして、無資本の状態になった日本がやはり景気がよくなってくる、経済成長率が高目になってくるということになれば、まず家もほしい、着なければならない、食わなければならないということで、環境整備にどうしても重点がいきますので、国内資本調達にウエートをかけておるわけにはいかないということで、御指摘を受けながらも外資にたよっておったりしていたわけでございます。国内におきましてもオーバー・ローンの解消というようなことが言われながらも、結局借入金のほうが安いから借入金でまかなうということで、今日まできたわけでございますが、今度は利子平衡税の問題もございますし、貿易収支の赤字を解消しなければならないということで、世論いや国論というぐらい重要な問題になっているわけでございます。いつまでも外資にたよってはおれない。西ドイツなどは、われわれが外資にたよって今日を築いた間に、民族資本で今日の西ドイツを築いたということも常に比較されているわけでございます。そういう意味から、対外的にはやはりいつまでも外資だけにウエートを置くよりも、国内資本の充実をはからなければ将来の国際競争場裏における対抗はむずかしいという大きい問題が一つ出てきたわけであります。もう一つは国内における、先ほども申し上げましたとおりオーバー・ローン、オーバー・ボローイングの解消ということで、自己資本の確保という問題がつとに重要になってまいったわけでございます。こういう状態に対処しますときに大蔵省といたしましても政府自体といたしましても、証券行政というよりも資本行政という問題に対して本腰を入れなければならないことは当然のことでございます。また、昨年来から証券市場が不振でありまして、一般大衆、特に奥さん方といったような国民大衆が証券市場に興味を非常に持っておるような状態、こういうことを考えますと、やはり政府としても機構をより充実せしめて国民の要請に答えなければいかぬ、こういう考え方を基本にいたしておるわけでございます。
  128. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この提案理由の説明の一節に、企業資本の充実を通じて企業のいわゆる体質改善をはかること、こういう説明があるわけですが、そこでお伺いしたいのですが、この企業資本の構成については現在非常に悪いのではないか。われわれしろうとでよくわかりませんが、しかも現在悪いし、また、年々低下の一途をたどっておるように見受けられるわけです。そこで試みに戦前の自己資本を調べてみますと、大体概要で六一%ぐらいあったものが、今は二四・五%ぐらいしかない。これは概算ですが、それではなぜ企業資本の充実が困難なのか。いま非常に低下している。これに対して大蔵省としては抜本的な対策を講じておられると思いますが、それは具体的にどういう手をお打ちになっておられるか。
  129. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 先ほどオーバー・ローンの解消、オーバー・ボローイングの解消ということを申し上げながら、現実的に資本の総額が約四兆円弱である。これを時価相場にいたしましても七兆四千億円ないし八兆円、こういうことでございます。そこで国民の預金が一体どのくらいあるのかと言いますと、政府関係を除きまして二十四兆六千億円ばかりあるわけでございます。これは昭和三十九年二月の数字でございまして、三十八年ですと二十四兆一千億ということです。これに政府関係機関、農協や、系統金融機関等も全部入れますと、現在三十兆円であります。三十兆円の預金総額に対しまして資本が三兆八千億、時価相場にしても七兆四千億、上場が七兆四千億でございますから、大体上場以外を入れて八兆円、この程度でございますから、金融にウエートがかかっているということは数字の上で歴然としているわけであります。でありますから、これが戦前の六一%ということになりますと、少なくとも、いまよりも一五〇%増さなければならぬわけでございます。でありますから、そういう状態までもっていくということはたいへんなことであるといたしましても、少なくとも年年二五%、二四・五%を割っていく、二四%を割っていくというような状態では、これは困るわけであります。しかし、遺憾ながら市場は昨年来不況状態でございまして、大衆もなかなか証券市場に出てこないという事情であることは御承知のとおりであります。こういう問題に正面から取り組んで、自己資本比率を上げなければいかぬ、こういうことでございます。具体的にそれじゃ自己資本比率を上げるにはどうするかということになると相当議論があります。でありますから、証券局に昇格さしていたださましたら、じっくりとひとつ検討してまいりたいということでございます。いままでなぜこの三十兆円も預金がありながら、資本が三兆八千億どまりであったのかと、こういいますと、税制上の問題を一つだけ仮定として取り上げてみますと、金利が高い高いといいながら、国際金利の倍くらいの高さであっても、金利は政府関係機関で八分七厘というところでございます。開発銀行その他。それから輸銀等からいいますと四分——四分五厘、こういうことでございます。一般の民間の金利でも、最高でも三銭というところでございます。一割を割るということでございます。そうしますと、資本金に対して、一割の配当をするということになりますと、地方税全部入れて五〇%に近い税金がかかる、こういうことでございます。どうしても数字をはじいてみますと、借りたほうが安い。こういうところに、国際金利よりも高い金利でありながら、金利を下げるよりも量を増す、こういう風潮があることは御承知のとおりでありまして、こういう問題にじっくり取り組まなければならぬわけでございます。でありますから、これが税制上あるいは財政上資本蓄積、自己資本比率を上げるためにこうしますということをいま申し上げられる段階ではございませんが、現実的にこのような状態では、将来とも困るわけでございますので、また、こういう状態だからこそちょっとした外資が入ってきて、中小企業でも何でも、いい企業は全部取られてしまうではないか、民族資本の擁護、民族産業の擁護ということも多多あるわけであります。そういうことを考えますと、何をするか、具体的にはどうするかということはむずかしい問題でございますし、慎重にやらなければならぬ問題ですが、証券局に昇格をさしていただいたならば、私どもまっこうから取り組んで、具体的にやってまいりたい、こう申し上げたいわけであります。
  130. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いろいろお伺いしたい中で、自己資本の面が年々低下している、こういうことについては、証券市場においても、増資後のいわゆる配当の持続がなかなか困難である。一たん増資をしたときはいいが、増資すれば配当をやらなければならぬ、こういうところにも一つの問題があるということで、結局先ほど御説明のあったような企業減税とも結びつく問題、いろいろ問題があるわけだと思うんですが、結局増資して配当を続けるよりも、金利は世界的に高いのだけれども、金を借りてやったほうがむしろ増資よりやりいい、そういう面も考えられるわけですがね。これは場合々々によって多少違いましょうけれども、どちらをとるかということになると、どういう問題になりますか。
  131. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 数字の上で確かに金利のほうが安いということになるわけでございます。しかし、金利のほうは他人の資本を借りてやるわけであります。そうして大きく伸びるために大量の資金を借りるということになれば、銀行もなかなか自主的な経営上許さない。やはり資金確保のために文句も言うし、いろいろなことで人も出す、戦前は銀行から借りると、戦前は非常に安い金利でございましたが、銀行から借りるよりもやはり自己資本ということで信用をつけなければならぬということでありました。ところが、戦後は全く無資本からでございますし、こう大きく資本金がなりますと、自分だけで安定株主になるというわけにいきません。安定株主というものは、もう国民大衆が大多数、多数の株主ができることが安定株主だというふうに、戦前と戦後は全く事情が変わってきたわけでございます。でありますので、結局信用の問題とかを長いこと考えないで、金利が安い、負担が非常に軽いという経済面だけでもって借り入れ金依存度が高くなってきたわけでございます。しかし、これはIMFのように、また、世銀のように、国際的な方法をやりますと、金を借りるときには自己資本の比率を上げなければ金を貸さぬ、こういう状態が戦後先進国では全部行なわれております。日本航空に対して金を貸す、飛行機を買うためにアメリカの銀行から金を出したわけでありますが、その場合には、当然自己資本比率を一年間でここまで上げなければ貸せません、こういうふうにだんだんなってくる。いまでも非常に無軌道ともいうべき証券界に事故がございます。また、いまの中小企業の倒産の状況などを見ておりますと、自己資本比率が低いなどというよりも、全く経営者自身のなぜこんなことをしておったのかというぐらいな状況がございます。自己資本比率が非常に少ないので、増資を何回もしておって、それが自分の思うとおりにならないときには会社を投げ出してしまう、せいぜい投げ出しても自分の負担は一億円しかない。現在の中小企業などの倒産の状況をずっと見ておりますと、中には五百万円の資本金を大正時代からそのままずっと昭和にかけてやってきた。だから五百万円といっても、いまの五百万円とは違うといいながら、五百万円の資本金で年間に三億ぐらいやっておって、倒産したときの負債が五億、六億ある、こういう全く自分の資本金、自分の責任ということよりも、やはりただ安くさえあればいいというようなことをだんだんと露呈してきているわけでございますから、これは国際的に各国と比べてみて合理的な正常な状態であろうはずはないわけであります。でありますから、やはり金利が安いということばかりではなく、企業というものに対する自己資本と外部資本との比率はやはり国際的にこうあるべきだというようにだんだんなってくると思います。同時に、私たちが大口信用の規制とか、また、オーバー・ローンの解消とか、こういうことをだんだんと政策的に進めていかなければならない状態がきますと、やはり自己資本比率はおのずから上がらなければならぬ、上げなければならないわけであります。でありますから、金利差、金利というものが低いのと、配当する場合には、一億の配当をするときには少なくとも一億七、八千万円の利益を計上しなければ一億の配当はできない、こういうようなことはできるものではない。当然社会的な要請として、自己資本比率を上げなければならない、こういう問題も生じてくるわけであります。
  132. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この自己資本の比率が上がらない最大の原因として、大蔵大臣は、国民的無資本ということを言っておられると思いますが、これはどういう意味なのか、それと、なおまた、資本家とか企業家が自己資本比率の引き上げの努力をしてこなかったということもあるわけですが、こういう面とあわせてひとつお答えを願いたいと思います。
  133. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 昭和二十年から十八、九年間見ておりますと、戦争が終わった直後は、ほとんど無資本の状態であったことは御承知のとおりでございます。それがだんだんと経済成長が進んでまいりまして、今日を築いたわけでございますが、今日を築く過程におきまして、私は先ほど申し上げたとおり、政府自体も自己資本比率を上げるということを、あまり声を大きくいたしておりませんでした。おりませんのは、どういうことかといいますと、やはり、まず衣食住、食うことが先だ、昭和二十三、四年までは食うことだけが政治の焦点でありました。それから三十年、二十九年からは戦後のほんとうに再建の状態になるわけでございますが、ここらでもって衣料の問題も片づいてきた。今日一番大きな問題は、住宅の問題であります。こういう問題で、無資本の状態から国民はまず環境を整備しなければならない、こういうことでありまして、私たちも、どう考えてみてもやはりこの乏しい国民の中から勤倹貯蓄をしなければならないというようなことは、なかなら政治的にも言いがたい、また、事実そのことが不可能であったと思います。しかし、私は、先ほど申し上げたとおり、やはり政府というものも、もう少し国民に設備投資が行き過ぎるというような前に、資本蓄積をしてもらいたいというようなことを私は政策としてやはり勇気を持って言うべきであったと思います。しかし、大体社会にも、国会の中にも、可処分所得をあげていくということによって初めて資本参加もできるのだ、こういうことにウエートが置かれて議論がずっときましたので、私たちもなるべくやっと食っているような国民に、資本蓄積をしなさいということは言えなかったわけでございます。ところが、ふたをあけてみて、よく検討してみますと、なるほど消費も堅調なはずだ、設備投資も相当なはずだ、これはオーバー・ローンの問題だけではなく、国民自体がすでに三十兆円の預金を持っている、こういう事実を考えますときには、やはりここらでどこの国とも同じく、自己資本比率を上げて、日本の産業自体の基礎を固めなければならないときだ、おそまきながら、これは全く申しわけない話でありますが、そういう考え方を持ってきたわけでございますから、私は昭和二十年代、二十九年までの状態と比べまして、その後は非常に高い成長率を続けております。戦前は四%ないし四・五%の成長率でございますが、二十九年から十年間は七%ないし七・五%でございます。そういう状態であって、しかも、租税負担も戦前よりも高い、こういうことでありますから、ここらでやはり自己資本比率を上げるということに真剣に取り組まないと、悔が相当残るぞ、こういう事実問題にぶつかっているわけでございますので、私は、これから政策よろしきを得れば、また、各般の政策を行なえば、自己資本比率を上げていける、こういう見通しを立てているわけでございます。
  134. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは時間の関係もございますので、最後に、最近十カ年間の自己資本の推移を知りたいと思うので、次回まででけっこうですから、ひとつ資料として当委員会に御提出いただきたいということをお願いして、本日のところは終わります。
  135. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 他に御質疑はございませんか。別に御発言もなければ、本案の質疑は、本日はこの程度にとどめます。  これにて本日は散会いたします。    午後四時八分散会      —————・—————