○山花秀雄君 私は、
日本社会党を
代表して、
ただいま
提案になりました
池田内閣不信任案に対し、賛成の
討論を行なうものであります。(
拍手)
本年一月二十一日の本院本
会議場における
池田首相の施政
方針演説において、その
政策の大綱を明らかにし、その中で特に一段と声をはずみ、「
ILO第八十七
号条約についてはできる限り早期にその
批准を行なう基本
方針に変わりない」と述べておられたのであります。百五十日という通常
国会の会期を、さらに四十日という大幅延長を行ない、その最終日があと三日に近づいた昨日、その
成立のめどが全く立たず、ついに廃案の決定をして通告してきたのであります。
与党内からの反対論によって、
公党と
公党間の正式
機関が約束し、文書までも交換したものが、ことごとくじゅうりんされるという不信
行為が、
現実の
民主政治の中で起こっておるのであります。これは
公約違反の最たるものであるといわなければなりません。(
拍手)
河野・
倉石会談の内容は、単に両党
特別委員会の申し合わせにとどまっていないのであります。
池田首相をはじめ
自民党首脳部に逐一報告され、その了承を得ているということを、しばしば相互に確認してまいったところであります。(
拍手)わが党は、もちろんその約束を誠実に守る
方針のもとに今日まで
国会に臨んできたのでありますが、
池田内閣及び
自民党は、次第にそれに対する反対論を強め、しかも、
国会の本
会議場で
国民にも約束した
自民党総裁でもある
池田首相が、何らの約束を守るための積極的な
措置をとらずに放任してきたということは、本人の総裁として、首相としての能力を疑わないわけにはまいらないのであります。(
拍手)同時に、この不信
行為は、
民主政治の
立場からも、政党
政治の向上発展のためにも、断じて許すことのできないものであります。(
拍手)なぜならば、政党は何ら法的な根拠を持たず、いわば単なる任意の団体なのであります。しかし、何がゆえに政党が今日大きな力を発揮しているかといえば、それは
ただ一つ、
国民相互の信頼
関係に立っているというのが、唯一の政党存立の足場になっておるのであります。(
拍手)それが
ILO条約の
批准問題に見られますように、この
ただ一つの立脚点、約束と信頼
関係が全くじゅうりんされるということになれば、その政党の存在と価値判断が問題にされなくてはなりません。まして党利党略上の
理由から、いや、その政党の派閥の利害
関係から、
国民に対する大きな
公約が踏みにじられ、
公党間の約束が、自党の御都合
主義により一方的に破棄されるというに至っては、その政党の存在とそ
民主政治を毒し、その価値はゼロといわなくてはなりません。(
拍手)
池田首相は、その政党の党首たる
責任と首相として
公約した
責任と、二重の
責任によって当然退陣しなくてはならないのであります。(
拍手)その
責任すらわきまえず、てんとして恥じない
態度は、ひとり
池田総理の不信のみならず、政党不信、
政治不信につながるものであるといわなくてはなりません。無能
内閣とは、まさに
池田内閣の代名詞であります。(
拍手)これが
池田総理大臣
不信任案に賛成する
理由の第一であります。この
ILO第八十七号
条約批准にあたっての
自民党、
池田内閣の不信
行為は、ひとり国内における不信
行為にとどまらず、同時に国際的に非常なる不信を買ったことを
池田首相は自覚しなければなりません。(
拍手)
池田内閣不信任案に賛成する第二の
理由は、
池田内閣の
外交政策についてであります。
池田首相は、本
国会の施政
方針演説の中で、「
中国大陸が、
わが国と一衣帯水の地にあり、広大な国土に六億余の民を擁しておることは厳然たる事実であります」と述べ、「私は、これらの認識のもとに、
国民諸君とともに、
現実的な
政策を慎重に展開していきたい」と述べられたのであります。この認識からいくならば、当然
中国と正常な国交を回復し、
中国の国際的な権利を認めるという
立場をとらなければならないはずであります。ところが、今日、依然として、いうところの
現実的な
政策をとらず、
アメリカと台湾に気がねしながら、政経分離などという綱渡り
外交に終始し、
根本的な解決を怠って、フランスの
中国承認に見られるような、世界の新しい展望には全く目をふさいでおるのがあなたであります。(
拍手)このような
政治的
態度は、
日韓会談にも、南ベトナムの
アメリカの
援助要請にもあらわれておるのであります。
日韓会談については、
日本の
国民大衆と韓国の
国民大衆の強い反対にもかかわらず、これを強行する
方針を改めていないのでありますが、このような
政治的
態度は、
国民世論を尊重するという
民主政治の最低の
原則をもじゅうりんする
態度であるといわなくてはなりません。(
拍手)しかも、韓国
政府に対する
池田首相の認識は、民主的に自由
選挙により
成立したりっぱな民主的
政府であるとたびたび言明されて、われわれの認識と見解を異にして論争してまいりましたが、今日、世界の常識は、現韓国の政体を、
池田首相のように民主国家であるなどと言う愚か者は、指で数えるほどしかないのであります。(
拍手)
日韓会談は完全に
失敗したのであります。その
責任や、まさに重大といわなくてはなりません。
特に最近の
池田内閣の
外交面の中で、反動的、軍事的色彩がきわめて濃くなってきたことについて、われわれは重視しなくてはなりません。原子力潜水艦の寄港問題、FO戦闘機の持ち込みはその具体的な例でありますが、さらに最近、南ベトナムに対する
アメリカの
援助要請に対し、積極的にこれに応ずる
姿勢を示していることは、
日本国民にとっても、またアジアの平和確立の上からも、きわめて危険な
態度といわなくてはなりません。(
拍手)これは
アメリカの極東軍事体制に対する積極的な協力を意味し、安保体制の具体的な発動を意味するものであって、アジアの危機を増大するものであります。
これら
政府の
態度は、明らかに
日本国
憲法の基本精神の違反であります。
池田内閣の
外交がことごとに
アメリカの鼻息や顔色ばかりをうかがう自主性のないやり方に対し、多くの
国民はあいそをつかしておるということをあなたは知らなくてはなりません。(
拍手)
さらに、最近の国連貿易開発
会議にあらわれた
態度は、先進国からも後進国からもひんしゅくを買い、世界の孤児的な扱いを受け、出先の
外交官すらいたたまれなくなって東京に逃げ帰るという醜態を演じたのであります。(
拍手)現在の
日本の
外交は、ちょうど
池田首相そのものの今日の
立場であります。野党は言うに及ばず、
与党自民党の内部からも痛烈な
政治批判がなされておることは、
池田首相のよく知るところであります。すなわち、
日本の
外交は
近隣友好を最も密にしなければならない。しかるに、アジア諸国から総スカンを食っているごとく、あなたも同様の岐路に立っているのであります。
さきに申し述べましたように、
ただただアメリカ依存の無節操
外交を信任せよというほうが万々無理であるということを私は申し上げたいのであります。(
拍手)
次に、
池田内閣不信任案に賛成する第三の
理由は、その国内
政策、なかんずく、
池田内閣が最も得意としておる
経済政策についてであります。
池田内閣の
最大の
看板は所得倍増
政策、高度
経済成長政策であったのでありますが、との
計画は、早くも実施した翌年からくずれかかっておるのであります。現にくずれておるのであります。今日、
池田内閣は、所得倍増
計画の
アフターケアなどと言っておりますが、
アフターケアというのは病人に使う医学用のことばであります。この意味で、
日本経済の健康をそこなわせておるということを明らかにみずから物語っておるのであります。(
拍手)
池田内閣の所得倍増
計画は何をもたらしたでございましょうか。
物価高と
中小企業の倒産と
農村の荒廃をもたらした以外、何ものもございません。消費者
物価が、最近の例を見ても、三十七年度は六・八%、三十八年度は七・六%と加速度的に上昇して、
国民大衆の
生活を苦しめておるのであります。元来、国内消費
物価が五%以上高騰いたしますと、それは
経済政策の
失敗ということが世界
政治の常識論になっておるのであります。(
拍手)なかんずく、中小零細
企業は、現在
池田内閣で最も苦しめられている
人々であります。大
企業、大資本本位の
経済政策を行なうために、輸入の増大で国際収支は悪化した。これを防ぐ手段として、先ごろ公定歩合二厘引き上げを断行した結果、その圧力が窓口規制、選別融資となってまともに
中小企業におおいかぶさり、ばたばたと倒産が続いているのであります。
経済雑誌を見ましても、史上
最大の
中小企業の倒産ということばが今日流行のようになっておることはよく御存じのとおりであります。(
拍手)これは、かつて
池田総理の、先ほど河上
委員長からも述べました通産大臣時代、「貧乏人は麦を食え、
中小企業の一人や二人倒産しても」といった血も涙もない
政治のあらわれが、いま
現実に
中小企業者の上に襲いかかっているというのが
日本の国内
経済の
実情であります。(
拍手)
政治なき
政府ということは、まさにそのとおりであります。
農村はどうでございましょう。これも
中小企業と全く同じであります。かつて
池田総理は、農民六割首切り
政策を発表して
国民の総反撃を浴びたことがありますが、
池田内閣のその後の
農業政策は、まさにこの農民首切り
政策の具体化であります。今日の
農村は、年寄りと子供と婦人だけの、まことにさびしい
社会となっておるのであります。それどころか、
農村には嫁の来てもありません。
池田内閣の
政策の結果、
農村の年寄りと婦人は酷使され、孫と遊ぶ楽しみを奪われて、農夫病という過労からくる病気におかされておるというのが、お気の毒な
農村の実態であります。(
拍手)大都市、工業地帯が、大
企業の
産業で盛んに煙を上げている反面、
農村はいまや荒廃の一途をたどっておるのみであります。
だれが一体
中小企業を倒しているのか、だれが一体
農村を荒廃に導いているのか、言うまでもなくそれは
池田内閣であり、その首班たる
池田勇人君その人であります。(
拍手)
池田総理は、よく
政治の
姿勢ということを言ってきました。
政治の
姿勢とは一体何を言っているのでございましょうか。
池田内閣の
経過を見ますと、まず、ことばありきで、その真の意味を知らないのではないかと疑わざるを得ないのであります。
政治の
姿勢の
最大の要諦は、その出処進退を誤らないということであると思うのであります。みずから一枚
看板として掲げた
政策が
失敗したとなれば、いさぎよく
責任を負って退陣しなければなりません。これが
政治家たる者の出処進退であり、
政治の本来の
姿勢であります。
政治家としてこの最も基本の理念をわきまえず、
ただ低
姿勢だ、高
姿勢だという場当たりのテクニックが
政治だと考えておる人物を首相としていることは、
国民の大なる不幸であるばかりでなく、国家として
最大の損失といわなくてはならないのであります。(
拍手)
その上、
池田総理は、
日本の将来に最も憂慮すべき状態をもたらすであろう
憲法改悪を推し進めようとしていることであります。違憲の存在である
憲法調査会は、最終報告を近く
提出しようとし、大がかりな改憲行動をとろうとしております。事実、
さきの
自民党大会で決定した運動
方針には、
憲法調査会の報告が出たら、
国会に
憲法調査のための
特別委員会を設置し、党としても大々的にこれがための
宣伝活動を行なうことを明記しておるのであります。戦力不保持の
憲法のもとで、堂々と国防省設置案が出されたり、行政
措置で叙勲制度を実施したりという一連の反動
政策は、この
憲法改悪の
方向とまさに関連づけて進められていることは明らかであります。われわれは、国家百年の計を誤らせないためにも、もはや一日も
池田内閣の存命を許しておくことはできません。
以上、申し述べました
理由により、
池田内閣不信任案に賛成をするものであります。(
拍手)