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1964-06-24 第46回国会 衆議院 本会議 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月二十四日(水曜日)     —————————————  議事日程 第三十九号   昭和三十九年六月二十四日     午後二時開議  第一 池田内閣不信任決議案河上丈太郎君外   二名提出)(委員会審査省略要求案件)  第二 保険業法の一部を改正する法律案内閣   提出参議院送付)  第三 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を   改正する法律案内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  日程第一 池田内閣不信任決議案河上丈太郎  君外二名提出)    午後二時六分開議
  2. 船田中

    議長船田中君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 船田中

    議長船田中君) この際、御紹介申し上げます。  ただいま、オーストラリア下院議長ジッン・マックリー卿及び同夫人が貴賓席にお見えになりました。ここに、諸君とともに心から歓迎の意を表します。   〔拍手〕      ————◇—————  日程第一 池田内閣不信任決議案   (河上丈太郎君外二名提出)     (委員会審査省略要求案件
  4. 船田中

    議長船田中君) 日程第一は、提出者より委員会審査省略申し出があります。右申し出のとおり決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。  日程第一、池田内閣不信任決議案を議題といたします。     —————————————
  6. 船田中

    議長船田中君) 提出者趣旨弁明を許します。河上丈太郎君。   〔河上丈太郎登壇
  7. 河上丈太郎

    河上丈太郎君 私は、日本社会党代表いたしまして、池田内閣に対しまする不信任案提案趣旨説明をいたしたいと存じます。(拍手)  不信任案提案する理由の第一は、ILO条約第八十七号の批准並びに関連法案成立という多年の公約を果たさなかったことであります。(拍手)  ILO条約第八十七号の批准及びこれに伴う国内関連法規改正は、実に岸内閣以来の懸案であり、自民党政府が国の内外にわたってその実現を公約した案件でございます。特に国内関連法規改正の内容については、自民党倉石君とわが党の河野君とが、それぞれ党を代表して交渉をし、合意に達した文書が厳として存在しておるのであります。(拍手)そうして倉石君御自身が、本院のILO条約特別委員会の席上におきまして、もしこのいわゆる倉石河野修正案が実施されないならば、自民党政治的、道義的責任は免れない、と言明しておるのであります。(拍手)  ところが、池田内閣は、この自民、社会両党の間で取りかわされ、自民党代表者責任を持って実行することを再三にわたって天下に言明した公約を破棄したのでございます。(拍手)もしこういうことが許されるならば、民主政治の基礎をなす政党間の信義は、根底からくつがえされるでありましょう。(拍手)事ここに至っては、問題は、ある特定労働組合中央交渉の有無というふうな部分的な性質のものではなくなり、議会政治根本に触れる重大なものとなったのであります。(拍手)  池田総理は、口を開けば「私はうそを申しません」と言います。うそを言わないということは、言うたことは実行することであり、約束したことは守るということであると思うのであります。(拍手)ところが、現実はどうでありましたでしょうか。昨日、自民党代表者が、わが党に対し、両党間の公約であるILO批准案件は廃案にすると通告してまいったのであります。これでは、総理は、わが党のみならず国民をあざむいたことになるのではないかと思うのであります。(拍手総理大臣みずからが、言ったことは実行せず、約束したことは守らずにおいて、国民に向かって道義を説いてもだれが耳を傾けるでありましょうか。(拍手池田総理道義を人に説く資格はないと私は思うのであります。(拍手)  ILO条約批准に関し、私が特に指摘したいことは、この問題がわが国国際信用に及ぼす影響でございます。さきに私が指摘したごとくに、ILO条約第八十七号の批准は、自民党政府が年来ILOにおいて公約してきた案件でございます。ところが、その実行がおくれおくれて、ILOより十五回にわたってその批准の催促を受けておるのであります。(拍手最後においては、ILOの歴史始まって以来という実情調査調停委員会の派遣が決定され、その期日が近づいておる今日の段階で、自民党みずからの手で、ついに再び批准可能性が閉ざされてしまったのであります。「国際信義を守る」と池田総理が事あるごとに言われまするが、私は総理にお尋ねしたい。一体どこに国際信義は消え去ったのでありましょう。(拍手わが国国際信義はジュネーヴの湖の中に投げ捨てられたのではないでありましょうか。(拍手)  不信任案提出の第二の理由は、池田内閣経済政策失敗でございます。  昨年の総選挙にあたりまして、われわれは、池田内閣高度成長政策失敗都会農村との収入格差が大きくなったこと、大企業中小企業収入格差が大きくなったこと、金持ちと貧乏人の格差が大きくなったことを指摘した。ところが、池田総理は、「高度成長政策アフターケアとして農村救済をはかる、中小企業救済をはかる」と申されたのでございます。国民の大多数は、この池田君の発言を支持して総選挙池田政権を継続させたものだと私は思うのでございます。ところが、総選挙後半年にわたって、今日、池田君が国民に約束したアフターケアはどうなったでありましょうか。中小企業救済されたでありましょうか。農村救済されたでありましょうか。(拍手)  池田総理は、かつて吉田内閣閣僚として、「中小企業の一人や二人は死んでもしかたがない」と言明をしたので、それがためにこの衆議院の議場において不信任を決議され、閣僚のいすを去らなければならなかった過去を持っておるお方であります。(拍手)ところが、最近の中小企業の倒産は、ほとんど毎月その件数、金額とも史上最高の記録を更新し続けているありさまであります。(拍手)「中小企業の一人や二人は死んでもしかたがない」と言ったのであるけれども、現在は何千という中小企業が死んでいるではありませんか。「中小企業の一人や二人は死んでもしかたがない」と言って、閣僚の席を追われて、現実において何千という人の中小企業を死なしている今日においてなお総理の席におるということは、池田君の良心を私は疑いたいのであります。(拍手農村の面におきましても、御承知のとおりに、国際関係から貿易の自由化主張したために、日本の農産物の価格の不安定が極度になり、農民は苦しい生活を補うために続々として都会に出かせぎに出、農村には働き手が残らないために、わが国農業の将来は暗たんたるものがあるのであります。それでは都会はどうかというならば、人々は、物価値上がり通勤地獄、公害、交通事故などに脅かされ、また、犯罪その他の暗黒面が急速に拡大して、わが国の将来に暗い影を投じております。一言にして申しまするならば、経済成長はあったが、これをつくり出した人間は、ますます生活生命を脅かされているというのが実情であります。(拍手)これを最も端的に物語るものは、昨年来の鶴見、三池における事故をはじめとする絶え間ない労働災害事故の発生であります。人の命は地球よりも重いといわれまするが、そのとうとい生命が瞬時にして次から次に奪われているのが現状であります。これは金もうけ第一主義池田総理経済政策が、労働者労働強化合理化を押しつけた結果でなくて何でありましょうか。(拍手)  政治根本人間であります。総理は、しばしば人づくりを言われまするが、池田内閣現実に行なっていることは、まさに人間破壊以外の何ものでもありません。(拍手)およそ、国民にその生活と安全とを保障できない内閣は、存在の理由がないと思います。これが不信任案提出する第二の理由であります。  不信任案提出の第三の理由は、池田内閣内政面における反動性であります。  安保闘争の大波を受けて岸内閣が倒れたあと、池田内閣は、いわゆる低姿勢を一枚看板に発足しましたが、その四年間の実績を振り返ってみると、実は低姿勢看板に隠れて、着々と反動的な施策を進めておったのであります。(拍手)特に今国会においては、暴力行為処罰法祝祭日法案、旧地主補償法案防衛庁昇格法案など、逆コース、うしろ向き法案がメジロ押しに並んでおります。また近く、憲法調査会から憲法改悪基調とした報告書提出され、自民党は、これを契機として、憲法改悪宣伝を大々的に行なおうと準備を整えております。要するに池田内閣四年の施策は、一言にして申しまするならば、それは憲法空洞化をねらったものであります。(拍手)しかも、今後は公然と憲法改悪を打ち出そうとしているのであります。いまにしてこの池田内閣を打倒しなければ、憲法改悪が、池田内閣の手によってやがてはその危険な突破口が開かれることは、火を見るよりも明らかであります。(拍手)したがって、この内閣不信任案によって池田内閣を葬ることは、憲法を守ろうとする全国民の一致した要求となっております。(拍手)これは平和と民主主義を守ろうとする国民の願いにかなったものであります。これはまた、基本的人権生活の向上を願う勤労大衆要求に合致するものであります。不信任案提案する第三の理由はここにあります。  不信任案提出の第四の理由は、池田内閣外交面における失態であります。  池田内閣は、その発足以来、日本をして、アメリカ、西欧と並んで自由陣営の三本の柱たらしめると豪語してまいりました。ところが、沖繩問題一つ取り上げてみても、沖繩アメリカ軍の手によって核武装されていることを認めながら、これに対し一言抗議をしようとしておりません。自国の領土の一部が二十年近くにわたって外国軍隊占領下にあり、実質上の軍政のもとに八十万のわが同胞が苦しんでおる状態を放置しておいて、他方では幾ら大国だとからいばりしてみても、一体だれがまじめに耳を傾けるでありましょうか。(拍手)また、日ソ平和条約の締結、日中国交正常化についても、常にアメリカに気がねをして、自主的な態度は何一つとれないのが実情であります。他方日韓会談の促進、南ベトナムヘの援助を見ますると、民衆から浮き上がった軍部独裁政権相手に、国民の血税を投じて、お先まっ暗の大ばくちをやろうとしているのが池田内閣ではありませんか。(拍手さきにラオスの情勢が悪化して米軍わが国から出動した際に、池田内閣はこれに対し一言抗議も発しませんでしたが、いま再びインドシナ情勢が急迫を告げているこの際、池田内閣わが国に駐留するアメリカ軍の出動に対し断固としてこれを拒否することは全く期待できません。したがって、一度戦火が拡大した際には、わが国国民の全く知らぬうちに戦火の中に巻き込まれる危険にさらされておるのであります。(拍手)これでは、国民はその生命と安全とを一体だれの手によって保障してもらったらよいのでありましょう。国民は、少なくとも池田内閣にだけはたよれません。なぜならば、池田内閣日本国民生命と安全とを保障する意思を持たないことは、いま私があげた事実によって明らかだからであります。国民がその生命と安全とを政府に託し得なくなったら、その政府はいさぎよく退陣すべきであります。(拍手)これが民主主義政治ルールであります。これが不信任案の第四の理由であります。  以上、私は池田内閣不信任理由を明らかにいたしましたが、このことは、単に私並びに社会党だけの主張ではありません。現に池田内閣に対しては、その有力なる閣僚、また与党である自民党幹部自身が公然と批判しているではありませんか。(拍手)これらの人々は、池田内閣には行政があるが政治がない、あるいは大衆生活を顧慮していない、または外交政策はその日暮らしだと、口をきわめて攻撃しております。およそ歴代の内閣で、これほどみずからの陣営から激しく非難攻撃された例は、かつてないと私は思うのであります。(拍手与党内からこれほど痛烈に批判されている事実は、池田内閣がいかに国民から見放されておるか。最もよき証左であると私は思うのであります。(拍手)  私は、率直に総理に忠告を申し上げたい。池田総理にして一片の政治的良識があるならば、木不信任案の採決を待たず、直ちに退陣すべきであると思うのであります。(拍手)そのことが政治家としての池田総理が終わりを全うするただ一つの道であることを強調して、私の提案理由説明を終わります。(拍手)     —————————————
  8. 船田中

    議長船田中君) 討論の通告があります。順次これを許します。石田博英君。   〔石田博英登壇
  9. 石田博英

    石田博英君 私は、自由民主党代表いたしまして、ただいま上程されている社会党提出池田内閣不信任案に対し、反対の討論をなそうといたすものであります。  先ほどの、社会党河上委員長提案理由説明を伺っておりますと、その理由と動因は、主として政府提出ILO八十七号条約批准案件取り扱いに関するものでありまして、このほかに池田内閣外交内政及び経済に関する政策に対する非難もありますが、これはいわば第二次的なものであります。しかも、これらの問題に対しては、今次国会においてしばしば論議され、池田内閣主張立場は明らかにされてまいりました。したがって、私は、本日この非難に対する反論を詳しく述べる必要はないと存じます。(拍手ただ、重要な点については申しておかなければなりません。  いま、世界は、米英ソ国核実験部分停止協定成立契機としまして、東西の対立は緩和し、脅威と力の均衡による平和から相互理解基調とする平和共存方向に向かっております。とのとき、わが国最大の野党の代表者が、ことさらに特定国に対して非難と敵意を含んだ発言をすることが、はたしてこの共存による平和を達成するのに協力する態度といえるでありましょうか。(拍手)また、社会党諸君は、日ごろ自主外交主張されているにかかわらず、先般フランスの中共承認に動揺して、日本もまた直ちにこれに同調せよという議論をすることは、日ごろの言論と矛盾をいたしてはいないでしょうか。これこそ追随の最たるものであります。(拍手)さらに、近隣友好のゆえをもって中共との国交の早期正常化を説く人が、中国より、より近接し、歴史的にも経済的にも密接な関係にある韓国との修交に反対されるのは、いかなる理由に基づく使い分けでありましょうか。(拍手)  また、憲法調査会報告書は近く提出されるのでありますが、その報告書結論については、池田首相は、常に、これに対する国民理解を待って初めて態度を決することを繰り返して明らかにいたしてまいりました。憲法のごとく、長くわが国民を拘束し、その進路を決定する基本法に対しては、力づくや単純な多数決の方法をもって処理すべきでないというのが池田内閣方針であります。(拍手)これに対し、国会で正式に決定された憲法調査会に、割り当てられた委員も送らず、その討論にも参加せず、しかも、事実を曲げて誹謗することが、はたして現行憲法に忠実なる行為といえるでありましょうか。(拍手憲法調査会は、現在の憲法のワク内において設置された正式の機関であります。その機関を平然と無視しながら現行憲法の擁護を叫ぶことは、矛盾もはなはだしいのであります。むしろ、この憲法調査会の中にあって自己の信念と意見を堂々と吐露されることが、最も現行憲法に忠実な態度ではなかろうかと思うのであります。(拍手)  また、今次国会において成立した暴力行為等処罰法不信任案理由一つにあげております。今日、組織暴力の排除は全国民の熾烈な願望であります。民主主義暴力の否定の上にしか育ち得ぬことは言うまでもないことであります。とりわけ、凶器を持った暴行行為横行は、法治国家文明国家の恥辱であります。これを排除する立法は、政府の当然の責任であります。これに対し、この法律大衆運動労働運動に悪用されるとの理由をもって反対された社会党態度は、疑心暗鬼もはなはだしいといわなければなりません。(拍手)さらに、自己の利益を守るためには、他の社会悪横行を許容しようというのでありましょうか。  また、池田内閣高度成長政策によって、わが国経済国民生活がいかにも破綻に瀕しつつあるかのごとく述べられておりますが、経済政府施策国民努力とが有機的に結合して動くものであります。ときには行き過ぎたり、あるいは所期に反した結果を招くことがあるのもまたやむを得ないのであり、精密な計画と強力な権力をもって年次計画を推進する共産主義国においても、数年来、中共農業中心とする経済の困難な事態が起こり、また、昨年、ソ連は、農作物の不作によってその計画を変更せざるを得なくなっているのであります。要は、その生きて、いる経済の動きをそれぞれの時点において正しくとらえ、適切な処置をとることによって調整し、次の発展を導くことが大切であります。(拍手池田内閣成立以来、国民生活水準は明らかに上昇しつつあるのであります。物価の上昇、産業間及び地方と中央格差は、経済成長に伴う不幸なひずみであります。ひずみはそれ自体を正すことに努力すべきであろて、ひずみがあるゆえに成長政策のそのものまで否定することは、角をためて牛を殺す愚論といわなければならないのであります。(拍手)  さて、そこで、本不信任案中心論点でありまする八十七号条約批准案件に移りたいと存じます。  この問題の争点は、第一は、公務員人事管理に関するものであります。第二は、批准に伴う従来の労使慣行の是正であります。第三に、社会党が最も重点とされている点、すなわち、自由民主党社会党との代表者話し合いの結果である倉石修正案取り扱いが、公党同士信義を破ったかどうかという点でございます。  私は、この際、特に申し上げておきたいことがございます。私どもは、ILO八十七号条約批准案件が今日のごとき結末に終わったことを、きわめて残念にも、遺憾にも思うものでございます。と同時に、一年有余にわたって自民党社会党の共通の広場を求められた倉石忠雄君、河野密君を代表とする両党折衝員努力をきわめて多とするものであります。(拍手)そしてなお、八十七号条約批准するということに、今回の不幸な結果にもかかわらず、われわれはあくまで希望をつなぎ、努力を続けることを、熱意をもって明言いたすものであります。ただ、今回の、不幸な結果の背景をなしている幾つかの要素を、われわれは冷静に、かつ真剣に反省をして、この問題に関する将来の前進のいしずえとしなければならないと思うのであります。不幸にして、倉石修正案中心とする両党の話し合いがその一部分について調整点に達し得なかったからといって、直ちに条約批准という本体を捨て去り、しかもなお、池田内閣不信任案をもってこれに報いるというとは、両党が話し合いによって労使関係についての国際条約批准を行なおうという精神の上からいってもわきめて残念であり、ひいては、条約批准熱意のほども疑わざるを得ないのであります。(拍手)  まず、第一の点、すなわち、公務員の性格についての考え方であります。公務員被用者であるという立場において、明らかに労働法対象であります。それは、労働条件その他については他の産業に従事する者と同機の取り扱いをしなければならないものであります。しかし、同時に、公務員は、公共の福祉に奉仕する義務を負い、その雇い主である国民全体に対して特殊な義務責任と地位を持っているのであります。ILO団体交渉に関する条約においても公務員は除外されており、各国においては公務員に特殊な扱いをいたしておる例も多いのでございます。その公務員被用者としての権利を守る措置としましては、政府は人事院の勧告を尊重するとともに、今回の条約批准もまたそこに発しております。と同時に、国民に対して公僕たる公務員人事管理責任を持っている政府は、これに対し所要の措置をとることは当然であります。(拍手)  第二は、管理職の範囲、あるいは専従職員取り扱い、あるいはチェックオフ廃止等をとらえて、これを労働運動に対する弾圧であるとして論議の課題といたしております。八十七号条約は、団結の自由に関する条約と呼ばれておりますが、それは同時に、労使介入原則をたてまえといたしております。労働組合がその活動を行なうための専従者の委嘱、あるいは組合員組合費の徴収は、あくまで組合が自分で行なうべきものであって、使用者介入援助も受けてはならないのであります。(拍手労働組合が、ときにその利害が対立し、組合員のために争わなければ一、ばらない当の相手である使用者専従者の給与と身分を保障されたり、その活動の財源である組合費使用者の協力によって徴収するチェックオフの制度は、条約原則に反し、国によっては、この事実は、御用組合であるとの認定の根拠にもなっているのであります。(拍手)しかし、倉石修正案では、わが国労働運動の歴史と経緯にかんがみ、これに対し経過措置を認めております。私どもは、これをやむを得ないものと了承するのでありますが、しかし、八十七号条約の示す労使介入原則に対しては、やはり例外的、便宜的処置でございます。また、労使交渉に関する手続をきめたことが非難対象となっているようでありますけれども、これは最も奇怪とするところであります。交渉は平静な環境のもとに、秩序と人間同士の礼節を守って、納得と理解によって進められてこそ、よき成果が得られるのであります。(拍手労使関係は、ひっきょうするところ、人間関係である以上、これが最も大切であり、民主主義の大原則でもあります。混乱と怒号と威力の脅威のもとによき人間関係は生まれません。(拍手国会審議のために国会法があるごとく、裁判に訴訟法があるごとく、労使交渉にも当然ルールの設定が必要であります。  そこで、最後問題点であり、しかも、今回の不信任案最大理由とする公党信義の点について申し上げたいと存じます。  政府は、八十七号条約批准について、繰り返しその方針を明らかにするとともに、わが自由民主党は、国会における審議を円滑に進めるため、倉石忠雄君を代表者として、社会党との意見調整に当たった事実は認めるものであります。そして、その結論についてこれを尊重し、その方向努力をすることを、たびたび幹事長書記長会談を開いて確認してまいりました。すなわち、両党間の公約は、この努力をするということにあるのであります。(拍手)事実、わが党の執行部は、その方針に基づいて誠心誠意努力を傾注してきたのであります。しかし、倉石河野会談は、問題を円滑に処理すべき事前の話し合いであります。最終的には国会において結論を生み出さなければならない問題であります。(拍手国会審議にのぼった以上、その審議に参加した他の国会議員意見もまた尊重しなければならないのであります。(拍手)もし、社会党諸君の言われるごとく、倉石河野両君話し合いの一字一句も相違してはならないというのなら、国会における特別委員会の設置、その中における審議は、何のために行なうものでありましょうか。(拍手)また、かくのごとき公約はわが党はいたしておらず、話し合い結論もまた一字一句まで厳格に定めたものでないのは当然であります。(拍手倉石河野会談は、問題点の摘出であり、その調整点の発見であります。その意味において多くの効果をおさめたのであります。しかし、その中の一部の点が国会審議段階において一致を見なかったからといって、公党信義に反するというのは、会談経過についての事実を曲げるばかりでなく、国会審議権を無視したものといわなければならないと存じます。(拍手)特に、この間にあって、いわゆる密約と称するものがあったかのごとき宣伝は、常に公正、公明なガラス張りの政治を口にせられる社会党議論とは思われないのであります。(拍手)密約を行なうということとガラス張りとは全く相反することなのであります。(拍手)  しかし、繰り返して申しますが、私は、批准案件の結末をきわめて遺憾に思うものであります。しかも、それは、究極すれば、両党及びその背後にある相互の不信感に基づくものであるだけに、いよいよ残念な気持ちを深めざるを得ません。労働問題を治安問題の対象としか考えないことは大きな時代錯誤であります。そのことは言うまでもないことでありますが、それと同時に、労働運動社会運動の方法、革命の手段と考えることは、労働者諸君経済的条件の向上とその本来の使命とに相反するものであります。(拍手)この相互不信と労働運動に対するわが国各層の大きな認識の隔たりは、遺憾ながら事実であります。これはわが国労働運動及び労働政策の歴史の中に原因がありますが、われわれは、この関係の改善について、さらに忍耐と努力を長い期間にわたって傾注しなければならぬものと考えます。  相互不信の解消には二つのことが必要であります。一つ理解一つは自重であります。われわれは、この歴史的経過に民族的な責任を感じつつ、相手立場を積極的に理解し、たとえわずかでも改善が行なわれれば、すなおにこれを認めて、その傾向を助長するとともに、性急な、矯激な、あるいは観念的な行動、あるいは言論が、決してよりよき結果をもたらすものでないことを自覚していくことが大切であります。そして労働組合は、近代社会の構成員たるの責任を自覚し、法秩序を守ることが、社会の信頼を獲得し、その目的を達する最大の要件であることを強調したいのであります。この相互不信の解消が、ILO条約批准促進の基礎であるばかりでなく、わが国労使関係の改善の前提であることを強調したいのであります。(拍手)  両党の話し合いが多くの点において合意を見たにかかわらず、そのうち、わずかな点が不一致であったからといって、内閣不信任案をもって報いるという感情的、非実質的態度こそ、この相互不信解消の最も大きな障害であることを申し上げまして、池田内閣不信任案に対する反対討論といたします。(拍手
  10. 船田中

    議長船田中君) 山花秀雄君。   〔山花秀雄君登壇
  11. 山花秀雄

    ○山花秀雄君 私は、日本社会党代表して、ただいま提案になりました池田内閣不信任案に対し、賛成の討論を行なうものであります。(拍手)  本年一月二十一日の本院本会議場における池田首相の施政方針演説において、その政策の大綱を明らかにし、その中で特に一段と声をはずみ、「ILO第八十七号条約についてはできる限り早期にその批准を行なう基本方針に変わりない」と述べておられたのであります。百五十日という通常国会の会期を、さらに四十日という大幅延長を行ない、その最終日があと三日に近づいた昨日、その成立のめどが全く立たず、ついに廃案の決定をして通告してきたのであります。与党内からの反対論によって、公党公党間の正式機関が約束し、文書までも交換したものが、ことごとくじゅうりんされるという不信行為が、現実民主政治の中で起こっておるのであります。これは公約違反の最たるものであるといわなければなりません。(拍手河野倉石会談の内容は、単に両党特別委員会の申し合わせにとどまっていないのであります。池田首相をはじめ自民党首脳部に逐一報告され、その了承を得ているということを、しばしば相互に確認してまいったところであります。(拍手)わが党は、もちろんその約束を誠実に守る方針のもとに今日まで国会に臨んできたのでありますが、池田内閣及び自民党は、次第にそれに対する反対論を強め、しかも、国会の本会議場で国民にも約束した自民党総裁でもある池田首相が、何らの約束を守るための積極的な措置をとらずに放任してきたということは、本人の総裁として、首相としての能力を疑わないわけにはまいらないのであります。(拍手)同時に、この不信行為は、民主政治立場からも、政党政治の向上発展のためにも、断じて許すことのできないものであります。(拍手)なぜならば、政党は何ら法的な根拠を持たず、いわば単なる任意の団体なのであります。しかし、何がゆえに政党が今日大きな力を発揮しているかといえば、それはただ一つ国民相互の信頼関係に立っているというのが、唯一の政党存立の足場になっておるのであります。(拍手)それがILO条約批准問題に見られますように、このただ一つの立脚点、約束と信頼関係が全くじゅうりんされるということになれば、その政党の存在と価値判断が問題にされなくてはなりません。まして党利党略上の理由から、いや、その政党の派閥の利害関係から、国民に対する大きな公約が踏みにじられ、公党間の約束が、自党の御都合主義により一方的に破棄されるというに至っては、その政党の存在とそ民主政治を毒し、その価値はゼロといわなくてはなりません。(拍手池田首相は、その政党の党首たる責任と首相として公約した責任と、二重の責任によって当然退陣しなくてはならないのであります。(拍手)その責任すらわきまえず、てんとして恥じない態度は、ひとり池田総理の不信のみならず、政党不信、政治不信につながるものであるといわなくてはなりません。無能内閣とは、まさに池田内閣の代名詞であります。(拍手)これが池田総理大臣不信任案に賛成する理由の第一であります。このILO第八十七号条約批准にあたっての自民党池田内閣の不信行為は、ひとり国内における不信行為にとどまらず、同時に国際的に非常なる不信を買ったことを池田首相は自覚しなければなりません。(拍手)  池田内閣不信任案に賛成する第二の理由は、池田内閣外交政策についてであります。  池田首相は、本国会の施政方針演説の中で、「中国大陸が、わが国と一衣帯水の地にあり、広大な国土に六億余の民を擁しておることは厳然たる事実であります」と述べ、「私は、これらの認識のもとに、国民諸君とともに、現実的な政策を慎重に展開していきたい」と述べられたのであります。この認識からいくならば、当然中国と正常な国交を回復し、中国の国際的な権利を認めるという立場をとらなければならないはずであります。ところが、今日、依然として、いうところの現実的な政策をとらず、アメリカと台湾に気がねしながら、政経分離などという綱渡り外交に終始し、根本的な解決を怠って、フランスの中国承認に見られるような、世界の新しい展望には全く目をふさいでおるのがあなたであります。(拍手)このような政治態度は、日韓会談にも、南ベトナムのアメリカ援助要請にもあらわれておるのであります。  日韓会談については、日本国民大衆と韓国の国民大衆の強い反対にもかかわらず、これを強行する方針を改めていないのでありますが、このような政治態度は、国民世論を尊重するという民主政治の最低の原則をもじゅうりんする態度であるといわなくてはなりません。(拍手)しかも、韓国政府に対する池田首相の認識は、民主的に自由選挙により成立したりっぱな民主的政府であるとたびたび言明されて、われわれの認識と見解を異にして論争してまいりましたが、今日、世界の常識は、現韓国の政体を、池田首相のように民主国家であるなどと言う愚か者は、指で数えるほどしかないのであります。(拍手日韓会談は完全に失敗したのであります。その責任や、まさに重大といわなくてはなりません。  特に最近の池田内閣外交面の中で、反動的、軍事的色彩がきわめて濃くなってきたことについて、われわれは重視しなくてはなりません。原子力潜水艦の寄港問題、FO戦闘機の持ち込みはその具体的な例でありますが、さらに最近、南ベトナムに対するアメリカ援助要請に対し、積極的にこれに応ずる姿勢を示していることは、日本国民にとっても、またアジアの平和確立の上からも、きわめて危険な態度といわなくてはなりません。(拍手)これはアメリカの極東軍事体制に対する積極的な協力を意味し、安保体制の具体的な発動を意味するものであって、アジアの危機を増大するものであります。  これら政府態度は、明らかに日本憲法の基本精神の違反であります。池田内閣外交がことごとにアメリカの鼻息や顔色ばかりをうかがう自主性のないやり方に対し、多くの国民はあいそをつかしておるということをあなたは知らなくてはなりません。(拍手)  さらに、最近の国連貿易開発会議にあらわれた態度は、先進国からも後進国からもひんしゅくを買い、世界の孤児的な扱いを受け、出先の外交官すらいたたまれなくなって東京に逃げ帰るという醜態を演じたのであります。(拍手)現在の日本外交は、ちょうど池田首相そのものの今日の立場であります。野党は言うに及ばず、与党自民党の内部からも痛烈な政治批判がなされておることは、池田首相のよく知るところであります。すなわち、日本外交近隣友好を最も密にしなければならない。しかるに、アジア諸国から総スカンを食っているごとく、あなたも同様の岐路に立っているのであります。さきに申し述べましたように、ただただアメリカ依存の無節操外交を信任せよというほうが万々無理であるということを私は申し上げたいのであります。(拍手)  次に、池田内閣不信任案に賛成する第三の理由は、その国内政策、なかんずく、池田内閣が最も得意としておる経済政策についてであります。  池田内閣最大看板は所得倍増政策、高度経済成長政策であったのでありますが、との計画は、早くも実施した翌年からくずれかかっておるのであります。現にくずれておるのであります。今日、池田内閣は、所得倍増計画アフターケアなどと言っておりますが、アフターケアというのは病人に使う医学用のことばであります。この意味で、日本経済の健康をそこなわせておるということを明らかにみずから物語っておるのであります。(拍手池田内閣の所得倍増計画は何をもたらしたでございましょうか。物価高と中小企業の倒産と農村の荒廃をもたらした以外、何ものもございません。消費者物価が、最近の例を見ても、三十七年度は六・八%、三十八年度は七・六%と加速度的に上昇して、国民大衆生活を苦しめておるのであります。元来、国内消費物価が五%以上高騰いたしますと、それは経済政策失敗ということが世界政治の常識論になっておるのであります。(拍手)なかんずく、中小零細企業は、現在池田内閣で最も苦しめられている人々であります。大企業、大資本本位の経済政策を行なうために、輸入の増大で国際収支は悪化した。これを防ぐ手段として、先ごろ公定歩合二厘引き上げを断行した結果、その圧力が窓口規制、選別融資となってまともに中小企業におおいかぶさり、ばたばたと倒産が続いているのであります。経済雑誌を見ましても、史上最大中小企業の倒産ということばが今日流行のようになっておることはよく御存じのとおりであります。(拍手)これは、かつて池田総理の、先ほど河上委員長からも述べました通産大臣時代、「貧乏人は麦を食え、中小企業の一人や二人倒産しても」といった血も涙もない政治のあらわれが、いま現実中小企業者の上に襲いかかっているというのが日本の国内経済実情であります。(拍手政治なき政府ということは、まさにそのとおりであります。  農村はどうでございましょう。これも中小企業と全く同じであります。かつて池田総理は、農民六割首切り政策を発表して国民の総反撃を浴びたことがありますが、池田内閣のその後の農業政策は、まさにこの農民首切り政策の具体化であります。今日の農村は、年寄りと子供と婦人だけの、まことにさびしい社会となっておるのであります。それどころか、農村には嫁の来てもありません。池田内閣政策の結果、農村の年寄りと婦人は酷使され、孫と遊ぶ楽しみを奪われて、農夫病という過労からくる病気におかされておるというのが、お気の毒な農村の実態であります。(拍手)大都市、工業地帯が、大企業産業で盛んに煙を上げている反面、農村はいまや荒廃の一途をたどっておるのみであります。  だれが一体中小企業を倒しているのか、だれが一体農村を荒廃に導いているのか、言うまでもなくそれは池田内閣であり、その首班たる池田勇人君その人であります。(拍手)  池田総理は、よく政治姿勢ということを言ってきました。政治姿勢とは一体何を言っているのでございましょうか。池田内閣経過を見ますと、まず、ことばありきで、その真の意味を知らないのではないかと疑わざるを得ないのであります。政治姿勢最大の要諦は、その出処進退を誤らないということであると思うのであります。みずから一枚看板として掲げた政策失敗したとなれば、いさぎよく責任を負って退陣しなければなりません。これが政治家たる者の出処進退であり、政治の本来の姿勢であります。政治家としてこの最も基本の理念をわきまえず、ただ姿勢だ、高姿勢だという場当たりのテクニックが政治だと考えておる人物を首相としていることは、国民の大なる不幸であるばかりでなく、国家として最大の損失といわなくてはならないのであります。(拍手)  その上、池田総理は、日本の将来に最も憂慮すべき状態をもたらすであろう憲法改悪を推し進めようとしていることであります。違憲の存在である憲法調査会は、最終報告を近く提出しようとし、大がかりな改憲行動をとろうとしております。事実、さき自民党大会で決定した運動方針には、憲法調査会の報告が出たら、国会憲法調査のための特別委員会を設置し、党としても大々的にこれがための宣伝活動を行なうことを明記しておるのであります。戦力不保持の憲法のもとで、堂々と国防省設置案が出されたり、行政措置で叙勲制度を実施したりという一連の反動政策は、この憲法改悪方向とまさに関連づけて進められていることは明らかであります。われわれは、国家百年の計を誤らせないためにも、もはや一日も池田内閣の存命を許しておくことはできません。  以上、申し述べました理由により、池田内閣不信任案に賛成をするものであります。(拍手
  12. 船田中

    議長船田中君) 西村榮一君。   〔西村榮一君登壇
  13. 西村榮一

    ○西村榮一君 私は、民主社会党代表いたしまして、池田内閣不信任案に対し、賛成の意を表するものでございます。(拍手)  私が、池田首相を信任せずという第一の理由は、池田首相が現在に至るまで取り来たった政治姿勢であります。  池田内閣の低姿勢と称する政治の基本的姿勢の実体は、無方針と無責任一言に尽きるのであります。(拍手池田首相は、今国会冒頭の施政方針演説において、国の内外に諸懸案が山積している事実を認め、これら重要問題の解決にあたっては勇断をもって事に当たるという方針を明らかにいたしましたが、この決意は、今日まで現実政治の中には何一つ実行されておらないのであります。(拍手)その責任池田首相が負わねばならないものでありまして、私ども池田内閣不信任案に対する賛成の基本的立場がここに存するのでございます。(拍手)  およそ、政府与党がその責任におきまして重要なる法律案提出いたし、それが通過しなかった場合においては、内閣総理大臣のとるべき道は二つしかありません。一つは解散であります。一つは総辞職であります。すなわち、反対の勢力が多数を占めておりますがゆえにその法律案が通過をはばまれましたときに、国会を解散して民意に問う、これが一つであります。次には、みずから率いる政府与党国会において多数の議席を占めておるのにかかわらず、その法律案が通過しない場合におきましては、内閣総理大臣は、閣内不統一である、あるいはみずからの党に対する総理、総裁としての統御力の欠除である、あるいはリーダーシップの欠除といい、みずから省みて、力の不足でこれが通らぬといたしますならば、そのときには、内閣総理大臣のとるべき道は辞職以外にはないのであります。(拍手)これは明治二十三年、日本において国会始まって以来の前例でございます。  ILO問題をめぐる過去のいきさつからいたしまして、本案件の今国会での成立は、池田内閣にとりましても、また国会にとりましても、重要な案件であります。しかるに、その批准案が今日通りません。これはわれわれきわめて残念であるとともに、国際信用を失墜せしむること大なるものがあるといわねばなりません。  そこで、これを憂えましたわが党といたしましては、過ぐる十七日、西尾委員長が池田総理に会見を求めまして、ILO八十七号条約批准三案は、自民党社会党も民社党も、これは三党賛成しておるのでありますから、まず第一にこれを通過せしめて、しかる後に、残る関連案はこれを継続審議として、とりあえず国際信用を守るために三案だけは可決しようじゃないかと提案いたしたのであります。私は、この問題がなぜ通らないのであるか。自民党が賛成し、社会党が賛成し、民社が賛成しておる三案が通らないということは、それは通らないにあらずして、通す意思と誠意が池田内閣に欠けておるからであると思うのであります。(拍手)  私は、この重要法案が通らないときに、内閣総理大臣のとるべき態度は、民主主義政治の常道に従って、常識上総辞職をすべきものであると考えるのであります。いまだそのことがなされないことは遺憾でありますがゆえに、不信任案に対し、賛成の意を表するものであります。  第二の理由は、経済政策であります。  池田内閣経済政策失敗は、単に世人が認め、かつ非難しておるだけではなしに、政府与党の中においてもいまやごうごうたる批判と反省の声が巻き起こっておることは、自民党諸君といえどもよもやこれは否定できますまい。所得倍増政策失敗は、第一に、国際収支の不安定、第二に、経済の跛行性と格差の拡大、とどまるところを知らざる物価高と、そこからくる国民生活上の不安と動揺は、ついに社会不安を増大しつつあるのであります。私、ここで重ねて申すまでもなく、国民が耳にたこがいくほど聞いて知っておるのは、池田さんの「経済は私にまかしてくれ」という、その一言に過去の姿勢は尽きておったのであります。しかるに、それをおまかせした結果が、今日かくのごとき状態に相なっておるのでありまするから、まかされた上から、当然その失敗責任をおとりになるべきである。これが政治道義であります。(拍手)  第三は、先ほど山花君もお述べになり、河上先生もお述べになりましたが、外交政策であります。  私は、結論から申しますと、今日、アジアの情勢はきわめて険悪であります。現下世界の動乱はアジアに焦点を移しつつあるのであります。世界の関心はラオスであり、ベトナムであり、朝鮮半島であります。さらに注目すべきことは、これことごとく中共と境を接する地域でありまして、かくて、いまやアジア全域は火をふき、風雲まさに急を告げようといたしておるのであります。しかるに、これに対して日本政府は何らの外交対策を示しておらない。このアジアの情勢池田首相は対岸の火災視しておりますが、あすはわが日本を襲う業火であります。かかる観点に立って、あすのアジア政策をいかにするかということは、アジアの一員としての日本にとって重要な関心事であり、かつ国家の運命に関する重要問題であるにかかわらず、池田首相はこれらの諸情勢を洞察するの識見なく、方策を立てずして拱手傍観しておるのが現下の政治の姿であります。(拍手国民に多くの不安を与えるとともに、世界外交の軽侮の的になっておるのが無為無策の池田内閣外交なりといわざるを得ないのであります。(拍手)  私は、今日、日本中共との国交回復について極力努力すべきであると考えております。すなわち、将来において日中国交回復の問題はとうてい避けらるべきものではございません。中国共産主義国家であるか、民主主義国家であるか、その政治体制のいかんにかかわらず、日中両国民が手を握り、ともに国交回復するということは、日本が置かれた宿命であります。しからば、これに取り組むにあたって、日本としてはいかなる対策を持たねばならぬか。問題は、日中国交は回復しなければならない。さりながら、中共が今日抱いているアジア政策、世界政策、これに深い認識と洞察を持たねばならぬのであります。さらに、六千年の歴史と戦国春秋の数百年の試練を経て、権謀術数において世界に冠たる漢民族とわが国が取り組む上からは、それだけの覚悟と体制を整えるべきであるのでありますが、私は、これに対して現下の政治が何らの準備をしていないということは、きわめて遺憾なりと存じます。かくのごとき中共と国交を回復するにあたっては、何らの準備なく、時の流れに押されて、漫然としてこれに臨まんとすることは、危険千万だといわねばなりません。もちろん、国交を回復するにあたって、相互が内政干渉を排すということを条約上きめることは当然でありますが、このことは、単に一片の条約において保障されるものではありません。問題は、中国をして日本内政に干渉を許さざるだけの国家体制の確立が先決であります。私の言わんとするところは、日中国交回復とは真剣に取り組むべし、されど、それを取り組む上からには、日本政治経済社会の三面にわたって国家体制を整えるべしというのが私の抱く外交の基本方針であります。しかるに、現内閣はそれに対して何らの準備なく、その日暮らしの追従あるのみであります。池田内閣には、この重大な民族的課題に対して、国家百年の大計はおろか、何らの展望も識見もないのでありまして、まさに現下の日本には行政あって政治なしと断言してはばからないのであります。かくのごとき怠慢は、もはや許すわけにはまいりません。今日、わが党は少数にしてこれを許さざるを得ないことは、断腸の思いがいたしますけれども、後世の歴史は断じてこれを許さないでありましょう。国の災いここに発生すると申しても過言ではありません。ここに、私は、外交の問題を一つとっても、国政を池田さんにまかせることはできない。  以上の諸点に従いまして、池田内閣総理大臣ほすみやかにその職を辞し、もって政治道義と人心の一新をはかるべし。  これをもちまして、私の池田内閣不信任案に対する賛成討論といたします。(拍手
  14. 船田中

    議長船田中君) これにて討論は終局いたしました。  池田内閣不信任決議案につき採決いたします。  この採決は記名投票をもって行ないます。本決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。——閉鎖。   〔議場閉鎖〕
  15. 船田中

    議長船田中君) 氏名点呼を命じます。   〔参事氏名を点呼〕   〔各員投票〕
  16. 船田中

    議長船田中君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。——開鎖。   議場開鎖
  17. 船田中

    議長船田中君) 投票を計算いたさせます。   〔参事投票を計算〕
  18. 船田中

    議長船田中君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。   〔事務総長報告〕  投票総数 四百三十四   可とする者(白票)  百六十四   〔拍手〕   否とする者(青票)  二百七十   〔拍手
  19. 船田中

    議長船田中君) 右の結果、池田内閣不信任決議案は否決されました。(拍手)     —————————————  河上丈太郎君外二名提出池田内閣不信任決議案を可とする議員の氏名       赤路 友藏君    赤松  勇君       茜ケ久保重光君    秋山 徳雄君       足鹿  覺君    有馬 輝武君       淡谷 悠藏君    安宅 常彦君       井岡 大治君    井谷 正吉君       井手 以誠君    伊藤よし子君       石田 宥全君    石野 久男君       石橋 政嗣君    板川 正吾君       稻村 隆一君    江田 三郎君       大出  俊君    大柴 滋夫君       大原  亨君    大村 邦夫君       岡  良一君    岡本 隆一君       落合 寛茂君    加賀田 進君       加藤 清二君    片島  港君       勝澤 芳雄君    勝間田清一君       角屋堅次郎君    金丸 徳重君       神近 市子君    川崎 寛治君       川俣 清音君    川村 継義君       河上丈太郎君    河野  正君       久保 三郎君    久保田鶴松君       久保田 豊君    栗原 俊夫君       栗林 三郎君    黒田 寿男君       小林  進君    小松  幹君       兒玉 末男君    五島 虎雄君       河野  密君    佐々木更三君       佐藤觀次郎君    佐野 憲治君       坂本 泰良君    阪上安太郎君       桜井 茂尚君    沢田 政治君       重盛 壽治君    實川 清之君       島上善五郎君    島口重次郎君       下平 正一君    東海林 稔君       鈴木茂三郎君    田口 誠治君       田中織之進君    田中 武夫君       田原 春次君    多賀谷真稔君       高田 富之君    滝井 義高君       楯 兼次郎君    只松 祐治君       千葉 七郎君    辻原 弘市君       戸叶 里子君    堂森 芳夫君       泊谷 裕夫君    中井徳次郎君       中澤 茂一君    中嶋 英夫君       中村 重光君    中村 高一君       永井勝次郎君    楢崎弥之助君       成田 知巳君    二宮 武夫君       西宮  弘君    西村 関一君       野口 忠夫君    野原  覺君       野間千代三君    芳賀  貢君       長谷川正三君    長谷川 保君       畑   和君    華山 親義君       原   茂君    原   彪君       日野 吉夫君    肥田 次郎君       平林  剛君    藤田 高敏君       帆足  計君    穗積 七郎君       細迫 兼光君    細谷 治嘉君       堀  昌雄君    前田榮之助君       松井 政吉君    松井  誠君       松浦 定義君    松平 忠久君       松原喜之次君    松本 七郎君       三木 喜夫君    武藤 山治君       村山 喜一君    森  義視君       森本  靖君    八木 一男君       八木  昇君    矢尾喜三郎君       安井 吉典君    柳田 秀一君       山内  広君    山口シヅエ君       山口丈太郎君    山崎 始男君       山田 長司君    山田 耻目君       山中 吾郎君    山中日露史君       山花 秀雄君    湯山  勇君       米内山義一郎君    横路 節雄君       横山 利秋君    和田 博雄君       麻生 良方君    伊藤卯四郎君       今澄  勇君    受田 新吉君       内海  清君    春日 一幸君       栗山 礼行君    小平  忠君       佐々木良作君    鈴木  一君       竹本 孫一君    竹谷源太郎君       玉置 一徳君    中村 時雄君       永末 英一君    西尾 末廣君       西村 榮一君    門司  亮君       本島百合子君    山下 榮二君       吉川 兼光君    加藤  進君       川上 貫一君    谷口善太郎君       林  百郎君    志賀 義雄君  否とする議員の氏名       相川 勝六君    逢澤  寛君       愛知 揆一君    青木  正君       赤城 宗徳君    赤澤 正道君       秋田 大助君    天野 公義君       天野 光晴君    綾部健太郎君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       有田 喜一君    安藤  覺君       井出一太郎君    井原 岸高君       井村 重雄君    伊東 正義君       伊東 隆治君    伊能繁次郎君       岩動 道行君    池田 清志君       池田 勇人君    池田正之輔君       石井光次郎君    石田 博英君       一萬田尚登君    稻葉  修君       稻村佐近四郎君    今松 治郎君       宇野 宗佑君    上村千一郎君       植木庚子郎君    臼井 莊一君       内田 常雄君    浦野 幸男君       江崎 真澄君    遠藤 三郎君       小笠 公韶君    小川 半次君       小川 平二君    小沢 辰男君       小澤佐重喜君    小渕 恵三君       大石 八治君    大石 武一君       大泉 寛三君    大久保武雄君       大倉 三郎君    大竹 太郎君       大坪 保雄君    大西 正男君       大橋 武夫君    大平 正芳君       岡崎 英城君    奥野 誠亮君       押谷 富三君    加藤 精三君       加藤 高藏君    加藤常太郎君       賀屋 興宣君    鍛冶 良作君       海部 俊樹君    金子 一平君       金子 岩三君    金丸  信君       神田  博君    亀岡 高夫君       亀山 孝一君    鴨田 宗一君       唐澤 俊樹君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    川島正次郎君       川野 芳滿君    菅野和太郎君       木部 佳昭君    木村 剛輔君       木村武千代君    木村 俊夫君       菊池 義郎君    岸  信介君       吉川 久衛君    久野 忠治君       久保田円次君    草野一郎平君       鯨岡 兵輔君    熊谷 義雄君       倉石 忠雄君    倉成  正君       黒金 泰美君    小泉 純也君       小枝 一雄君    小金 義照君       小坂善太郎君    小島 徹三君       小平 久雄君    小宮山重四郎君       小山 長規君    小山 省二君       河野 一郎君    河本 敏夫君       纐纈 彌三君    佐伯 宗義君       佐々木秀世君    佐々木義武君       佐藤 榮作君    佐藤 孝行君       佐藤洋之助君    齋藤 邦吉君       坂田 英一君    坂田 道太君       坂村 吉正君    櫻内 義雄君       笹山茂太郎君    四宮 久吉君       志賀健次郎君    始関 伊平君       椎熊 三郎君    椎名悦三郎君       重政 誠之君    篠田 弘作君       澁谷 直藏君    島村 一郎君       正示啓次郎君    白浜 仁吉君       周東 英雄君    壽原 正一君       鈴木 善幸君    砂田 重民君       砂原  格君    瀬戸山三男君       關谷 勝利君    園田  直君       田川 誠一君    田口長治郎君       田澤 吉郎君    田中伊三次君       田中 榮一君    田中 角榮君       田中 龍夫君    田中 正巳君       田中 六助君    田村  元君       田村 良平君    高瀬  傳君       高橋清一郎君    高橋 禎一君       高橋  等君    高見 三郎君       竹内 黎一君    竹下  登君       竹山祐太郎君    武市 恭信君       舘林三喜男君    谷垣 專一君       谷川 和穗君    千葉 三郎君       中馬 辰猪君    塚田  徹君       塚原 俊郎君    辻  寛一君       綱島 正興君    坪川 信三君       寺島隆太郎君    渡海元三郎君       登坂重次郎君    徳安 實藏君       床次 徳二君    内藤  隆君       中垣 國男君    中川 一郎君       中島 茂喜君    中曽根康弘君       中野 四郎君    中村 梅吉君       中村 幸八君    中村 寅太君       中村庸一郎君    中山 榮一君       永田 亮一君    永山 忠則君       灘尾 弘吉君    南條 徳男君       丹羽喬四郎君    丹羽 兵助君       西岡 武夫君    西村 英一君       西村 直己君    根本龍太郎君       野田 卯一君    野田 武夫君       野原 正勝君    野見山清造君       野呂 恭一君    羽田武嗣郎君       馬場 元治君    橋本登美三郎君       橋本龍太郎君    長谷川四郎君       長谷川 峻君    服部 安司君       濱田 幸雄君    濱地 文平君       濱野 清吾君    早川  崇君       原 健三郎君    原田  憲君       廣瀬 正雄君    福井  勇君       福田 赳夫君    福田 篤泰君       福田  一君    福永 一臣君       福永 健司君    藤井 勝志君       藤枝 泉介君    藤尾 正行君       藤田 義光君    藤本 孝雄君       藤山愛一郎君    古井 喜實君       古川 丈吉君    保科善四郎君       坊  秀男君    星島 二郎君       細田 吉藏君    堀内 一雄君       堀川 恭平君    本名  武君       前尾繁三郎君    前田 正男君       益谷 秀次君    増田甲子七君       松浦周太郎君    松澤 雄藏君       松田竹千代君    松野 頼三君       松村 謙三君    松山千惠子君       三木 武夫君    三田村武夫君       三原 朝雄君    水田三喜男君       湊  徹郎君    村上  勇君       村山 達雄君    毛利 松平君       森   清君    森下 國雄君       森下 元晴君    森田重次郎君       森山 欽司君    八木 徹雄君       山口喜久一郎君    山崎  巖君       山田 彌一君    山手 滿男君       山中 貞則君    山村新治郎君       山本 勝市君    山本 幸雄君       吉田 重延君    和爾俊二郎君       早稻田柳右エ門君    渡辺 栄一君       渡辺美智雄君    渡邊 良夫君       亘  四郎君    清瀬 一郎君      ————◇—————
  20. 小沢辰男

    ○小沢辰男君 残余の日程は延期し、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  21. 船田中

    議長船田中君) 小沢辰男君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  本日は、これにて散会いたします。    午後三時三十五分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 賀屋 興宣君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 瀬尾 弘吉君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 古池 信三君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 赤澤 正道君         国 務 大 臣 佐藤 榮作君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 山村新治郎君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         総理府総務長官 野田 武夫君      ————◇—————