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1964-06-05 第46回国会 衆議院 文教委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月五日(金曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 上村千一郎君 理事 小澤佐重喜君    理事 坂田 道太君 理事 長谷川 峻君    理事 南  好雄君 理事 山中 吾郎君       大石 武一君    熊谷 義雄君       谷川 和穗君    床次 徳二君       橋本龍太郎君    松山千惠子君       川崎 寛治君    長谷川正三君       前田榮之助君    鈴木  一君  出席政府委員         文部政務次官  八木 徹雄君         文部事務官         (大臣官房長) 蒲生 芳郎君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         文部事務官         (社会教育局         長)      齋藤  正君         厚生事務官         (児童局長)  黒木 利克君  委員外出席者         検     事         (刑事局青少年         課長)     桂  正昭君         検     事         (保護局総務課         長)      常井  善君         専  門  員 田中  彰君     ————————————— 六月一日  委員山口喜久一郎君及び鈴木一辞任につき、  その補欠として重政誠之君及び中村時雄君が議  長の指名委員に選任された。 同月二日  委員石田博英君及び重政誠之辞任につき、そ  の補欠として谷川和穗君及び山口喜久一郎君が  議長指名委員に選任された。 同月五日  委員中村時雄辞任につき、その補欠として鈴  木一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月一日  司書教諭定数化に関する請願池田清志君紹  介)(第四〇九六号)  公立学校施設整備費国庫補助増額に関する請願  (池田清志紹介)(第四〇九七号)  公立義務教育学校事務職員定数基準改正等  に関する請願池田清志紹介)(第四〇九八  号)  同(山中貞則紹介)(第四一四七号)  日本学校安全会法の一部改正に関する請願(砂  田重民紹介)(第四一八六号)  幼稚園教員の確保に関する請願砂田重民君紹  介)(第四一八七号)  私立幼稚園園児父兄教育費二重負担解消に関  する請願砂田重民紹介)(第四一八八号)  高等学校建築費等国庫補助及び日本育英会貸与  金等に関する請願黒田寿男紹介)(第四一  八九号)  同(村山喜一紹介)(第四二一八号)  高等学校定時制教育改善等に関する請願(長  谷川峻紹介)(第四二〇三号)  私立学校振興会法の一部改正に関する請願(木  村俊夫紹介)(第四二三一号)  同外二件(久野忠治紹介)(第四二三二号)  同(田中伊三次君紹介)(第四二三三号)  同外二件(地崎宇三郎紹介)(第四二三四  号)  同(中曽根康弘紹介)(第四二三五号)  同外二十二件(野原覺紹介)(第四二五〇  号)  りんごの学童給食採用に関する請願(林百郎君  紹介)(第四二九六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件(青少年教育に  関する問題)      ————◇—————
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。山中吾郎君。
  3. 山中吾郎

    山中(吾)委員 前の委員会落合委員から質問があって、青少年問題についての質疑が途中で中絶しておるので、私引き続いて御質問をいたしたいと思います。  いろいろと文部省文部省、あるいは総理府総理府厚生省法務省、おのおの独自の立場青少年非行原因調査されて対策をお立てになっておるようでございますが、それについて、有効適切な原因に対する対策というものが立てられる、いわゆる総合的な実施のできるようなものがどこでどういうふうに行なわれるかということが、私わからないので、その点を見きわめておきたいと思うので、質問を申し上げるわけであります。  まず、おのおの別立場でお調べになっておるようでございますので、文部省法務省厚生省おのおの青少年非行について調査をされた結果の一番大きい原因はどこにあるかということを、いままで調査されたことをおのおの言っていただいて、そして各省立場においてどういう対策をとろうとされておるか、各省ごとに一応最も簡潔にそのおもな原因とおもなる対策を先に答弁をしていただきたい。
  4. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 青少年犯罪ないしは非行の問題につきまして、文部省自体で直接調査をいたしてはおりません。私どもはいろいろ警察あるいは法務、それから社会教育の集まりの中、あるいは学校教育等の問題、そういうようないろいろな事例というものから判断いたしまして、対策をどういう方向で立てたらいいかということを判断するわけでございます。まず社会教育の問題につきましては、やはり幼少のときからの親の家庭内における指導、あるいは家庭そのものあり方というものが青少年性格形成とか、あるいは精神の陶冶ということに非常に影響があるということは、これは明らかでございますので、両親子供教育に対する学習の場というものを拡大することを一つとっております。  それから社会教育の面におきましては、なお青少年の健全な団体活動を助成し、またそういう活動の場を与える必要があるということで、団体活動の助成あるいは青少年健全育成に関する施設の拡充ということをいたしております。また、いわゆる社会ないしは校外における補導あるいは指導という面では、児童育成組織というようなものを拡充する、それのリーダーたち養成ということを心がけておるわけであります。  学校教育の面につきましては、初中局長からお答え願います。
  5. 福田繁

    福田政府委員 現在の青少年犯罪なりあるいは非行というものは、単なる一つ原因ではなく、いろいろ原因があろうかと思います。したがいまして、それらの原因を探求しまして、それに必要な対策を立てるということはなかなか困難でございますけれども、少なくとも学校教育の場におきましては、非常に重要な問題が一、二あるのでございます。  一つは、私ども考えておりますのは、いわゆる多くの生徒児童の中にはいろいろやはり外の環境などにも影響されることが非常に多いのでございまして、特に都市におきましては、都市のいろいろな悪影響にさらされるというような場面が多うございます。そういった点から、やはり一人、二人の非常に悪いのが出ますと、それを中心にいわゆる非行グルーブというようなものができて、それがだんだん周囲の生徒児童を引っぱり込んでいくというようなことが多いようでございます。いわゆる非行集団化という問題でございます。そういう傾向が顕著でございます。そういうものについての対策、あるいはまたそういう生徒に限ってまた学業のほうはかなり怠ける、またできない、ついていけないというような関係からも、そういう傾向に走る者が多いわけであります。もちろん青少年の能力あるいは環境等に、あるいは家庭のしつけ、それからまた学校指導、そういうようなものがいろいろかみ合わされて欠陥が出てくるわけでございます。そういった面から、学校における生徒児童のいわゆる指導体制強化するというような問題は、学校教育の場において非常に大事でございます。そういった面から、私どもは昨年からこの問題を取り上げまして、もちろん生徒児童指導には学校全体をあげて全部の先生方がこれに対して当たるのが当然でありますけれども、最近のように非常に専門化したいろいろな事柄が多い中では、やはり専任のカウンセラーのような体制をつくっていくことが必要だ、こういう観点から、いわゆる指導者養成講習とかいうような種類のものを昨年から開催をして強化してまいっております。また、ことしはいわゆる生徒児童のための充て指導主事を約百名ばかり増員いたしまして、各必要な教育委員会にこれを配置いたしております。それからまた、そういう問題について特に深く研究し、その研究の結果を他の学校にも利用してもらうという意味におきまして、研究指定校を今年度から学校に設けて、そしていま研究の途上にあるわけでございます。  そういう対策を講じておりますが、もう一つ考えなければなりませんのは、最近の青少年非行一つの問題として、順法精神とか、いわゆる人間としての道徳的な考え方、あるいは行動といりものについての欠除という点が指摘されておるわけであります。したがってやはり根本には順法精神あるいは道徳教育というようなものを十分徹底して、生徒指導を行なう必要があろう、こういうような考え方から義務教育段階、あるいは高等学校段階におきまして、道徳教育充実強化をはかっておる次第でございます。
  6. 黒木利克

    黒木政府委員 厚生省非行少年の問題の根拠法規児童福祉法でございますが、この法律に基づきまして非行に走りました者は、御案内のように教護院でその矯正保護に当たっておるわけであります。この教護院に入所いたしました、つまり少年不良化した原因調査は、全国教護院児童失態調査というものをたびたびやっておりますが、最近は昭和三十六年に中央青少年問題協議会からの委託を受けまして、厚生省の国立の教護院及び都道府立教護院及び児童相談所の全機能をあげまして調査しました結果が、最も全国的な規模であり、かつ実証的なものだと思うのでありますが、それについての結果から申しますと、本人原因がある場合、これは本人精神薄弱とかあるいは性格異常とか、病的な原因があるという場合。それから家庭原因がある場合、これは家庭構成欠陥がある、あるいは家庭において両親が放任をしておるとか、溺愛しておるとか、その他家庭環境の貧困だとか、夫婦の間が不和だとかいうような家庭原因の問題、及び学校及び社会原因子供学校ぎらいである不良交遊あるいはスラム街に住んでおるとか、不良文化財影響というようなことで分類をした調査がございます。  これに対する対策でございますが、予防にしくはないわけでございますから、予防対策としては従来健全育成対策子供の健全な遊び場、あるいは遊びの指導というような面に重点を置きまして、その施設なりあるいは関係する職員の確保なり、訓練をいたしておったのでありますが、先ほど申しましたように家庭原因があるということが相当数を占めるというので、今回児童局児童家庭局に改組をいたしまして、児童相談室というようなものを整備をすることにいたしまして、実は福祉事務所家庭児童相談室というようなものをつくりまして、家庭の人人の児童非行化についてのいろいろな予防あるいは相談に当たりたい、かように考えておる次第でございます。
  7. 桂正昭

    桂説明員 法務省といたしましては、青少年非行根本的に防止するためには、科学的な研究によって根本的原因を究明して、それに基づいて対策を立てていくのが最も適当であろう、かように考えているわけでありますが、遺憾ながら現在のところこれが根本的な原因であるという形まで研究が行き届いていないわけでございます。現在までの研究によりますと、個人的一家庭的あるいは社会的といったいろいろな原因がそれぞれ複雑にからみ合って、それらが非行原因になっているということになっておるわけであります。かような観点からいたしますと、文教児童福祉その他各般の、行政全般の面で総合的な施策を立ててこれを推進すること、それから国民各位がこの問題について十分の認識と深い理解を持って御協力いただくこと、こういったことが問題になってくると思うわけであります。  そこで私ども法務省といたしましては、主として非行を犯した少年に対する対策を考えてまいるわけでありますが、それと同時に検察という面があるわけで、そういう角度で現在私どもが主として考えておりますのは、まず第一に少年非行温床となるような社会悪を除去していく。そういう観点から第一には暴力的事犯を根絶していくと申しますか、暴力団、ぐれん隊等によって青少年に対して悪い影響を与えている面が多々見られるかに存じますので、そうした暴力団暴力事犯の根絶という面、これが第一でございます。それから第二に、不良文化財の排除という問題があるわけであります。それが少年非行温床となるような社会悪の除去の問題であります。  第二に、最近青少年非行原因一つとして大きく取り上げられております精神障害者の問題があるわけでございまして、精神障害者に対する処遇充実強化ということを考えております。  それから第三点には非行を犯した少年の自立、更正をはかっていくという問題があります。この面におきまして少年院における職業訓練矯化活動充実強化が第一でありまして、第二に保護観察充実強化の問題があります。それから第三として現行法制下におけるところの少年の処理、処遇あり方がそれではたしていいかどうかいろいろ問題があるところで、将来の法制についての再検討を進めてまいっておるわけであります。  大体以上であります。
  8. 山中吾郎

    山中(吾)委員 警察庁からも聞きたいのですが、いま来ていないそうですからあとにいたします。  私まことに遺憾に思うのは文部省だけが調査をしていない。法務省厚生省も現在政治問題化しておる青少年問題については独自の立場調査をして、その結果こういう原因であり、そして少なくもこういう対策をという整然たる御答弁があった。文部省は何も調査していないということはどういうわけですか。
  9. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 私ども調査していないと申しますのは、全般的に青少年間順の不臭化ということで大きな調査をしていないということであります。ただ私たち行政で、たとえばテレビとかラジオとかそういうものが一体どういうふうに影響を与えるであろうかというようなことはそれぞれの分野で調査を進めております。ただ包括的に非行青少年がどうであるとかというような調査をしていないのであります。それは調査をしたほうがいいと思いまするけれども、なかなかその調査をどう利用するかという観点になりますと、文部省教育の場で使いますものはかなりこまかい部分的な調査というものの積み上げ方が必要でありまして、私どもはそういう包括的な調査が必要でないとは思いませんけれども、むしろ私たちが仕事をしていきますためにはそういう個々の問題をすっかり掘り下げていくということが必要であるというふうに考えておるわけであります。
  10. 山中吾郎

    山中(吾)委員 最近の青少年非行傾向というのは集団化あるいは年齢の低下あるいは狂暴化というふうなことが、法務省とかその他の調査の結果発表されておる。その中にいわゆる中学高等学校の在学生が非常にふえているというようなことが、新聞その他において相当クローズ・アップされているわけです。そうなると文部省は黙っていまのような態度でおるということは怠慢だと思うのです。現在青少年非行の一体何%が中学高等学校の在学生であるかお調べになっておりますか。それに対して小、中、高のいわゆる青少年非行化に対する教育方針について、その原因に対する対策を立てなければ、私は第六感的にそういうことで見ておられるというような答弁は無責任だと思う。むしろ厚生省とか法務省のほうが一生懸命じゃないですか。そういう調査をしない立場だとおっしゃっているけれども、その点については私は異議がある。文部次官、それでよろしいのでしょうか。
  11. 八木徹雄

    八木政府委員 先ほど局、長から答えましたように、文部省青少年不良化問題に対する実態調査について冷淡であるという意味ではないのであります。ただ御存じのとおり、内閣としては総理府のほうに総合調整責任を持ってそこでやっていることでございますから、文教の場においてやり得るいわゆる個別的調査と申しますか、専門的調査といいますか、そういうことは当然やっておることであります。  いま御質問のありましたいわゆる青少年不良化の問題で学生がどういうパーセンテージを占めておるかということについては、担当局長のほうから答えさせますけれども、そういうことは当然できておりますが、いわゆる総括的な調査ということは文部省はやっていない、こういうように社会局長は答えたと思うのであります。
  12. 山中吾郎

    山中(吾)委員 同じことを次官お答えになっているのです。盛んに資料が政府から出るのだが、法務省では犯罪白書としてちゃんと調査をして出している。警察庁は補導された少年実態というのを出している。法務省青少年非行防止保護対策総理府青少年問題の現状対策でこうして出ている。出していないのは文部省だけです。だから青少年非行問題が教育関係ないのかあるいは取り締まり対策でいいのかということが疑問になってくる。私はわからないのです、青少年非行対策がどうしたらいいかわからない。少なくとも文部省がそういうことについて調査をされていない。次官は、全体を見るのは総理府青少年問題協議会がある、それはまた出ている。しかしやはり中学高等学校在学生非行少年に対して全国的に調査をされる責任は少なくとも文部省が持たなければ、法務省とか厚生省は在学しているいないにかかわらず社会人としての青少年調査しているわけです。小、中学校の在学生あるいは高等学校生徒が理由なき殺人をどうしたとかいろいろなことが新聞などに載っているが、それを調査する必要はないのだ、それは受け取れないと思うのです。調査を事実していないようだからいろいろと弁解しなければならないと思うのですが、しかし小、中学校の在学生については調査をされる必要があるのではないか。大体日教組とけんかをしているから調査ができないのです。先生が協力しないからできなくなっているのです。これがもっと現場の教師文部省が協力して青少年問題の原因調査をして教育方針を立てるということならほんとうはできるのです。非常に悲しむべき日本教育界現状調査をしないという事実にあらわれてきていると思うのです。文部省日教組とは話を絶対しないとか、下から突き上げられて、そして教育をする教師と話をしないなんということをしているからこういうことになる。文部大臣教育をしているのではないのです、政務次官教育をしているのではないのです、教育をしているのは教壇に立っている教師なのです。これからのあり方について少なくとも調査をするぐらいのことは決心をしてやらないと、大体社会問題になっておる大部分は高、中学の在学生ですよ、それはいかがですか。
  13. 福田繁

    福田政府委員 少年犯罪の総数の中で三十七年の調査によりますと五三%が学生生徒で占めております。これは数年前に比べますと約倍になっておると考えております。特に中学生犯罪件数というものが非常に顕著に伸びていることは、私どもいろいろな統計で知っているわけであります。ただ文部省としましては、そういう犯罪件数が幾ら、あるいは犯罪を犯さない前のいわゆる非行というものが何人いるか、そういうことを私どもとしては、具体的に全国学校について調べる必要はないと考えております。と申しますのは、そういう傾向になっておりますが、具体的にそれでは一体どういう原因でそれが出てくるかというような調査は、絶えず教育委員会で、あるいは教育委員会と協力してやっておるわけでございますから、それによって学校指導なり教育のやり方というものを考えていくわけでございます。生徒の中で犯罪者何人、非行化した者何人という一つ一つの数を文部省調べないからといって、その対策を立てないということはないわけでございます。これは他の警察庁その他の統計を借りれば十分間に合う、そう考えております。
  14. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そんな無責任なことはないでしょう。小中学校に在学しておる者に五〇何%の非行青少年があるならば、学校教育立場において、その子供を取り扱っておる教師からそういうものは主としてどういう原因でなっているかということをあなた方が調査しなければ、厚生省には調査するものがないでしょう。かまわないという、そんなことはないでしょう。そんな答弁はないと思うのですよ。だから非行少年が発生しておる各学校に対して、どういう原因かということを全国的に調査をされて、それから法務省厚生省調査と合わして、学校教育あり方をどうするかということをしなければ、私はそれに基づいたいわゆる科学的な教育というものは出てこないと思うのです。局長が必要ないというのは、私はまことに遺憾に思うのです。次官はそれと同じ思想ですか。必要ないというのですか。
  15. 八木徹雄

    八木政府委員 いま局長が答えたのは、その数が何ぼあるかという調査文部省自体がやる必要はない、起こった犯罪あるいは不良化実態というものがどうであるか、またそのよって起こった原因は何であるかということの調査こそがわれわれの任務である、そのことによってこれからの教育指導方針というものを確立するようにしたい、こう言っておるのであって、何もその原因その他も調査する必要はないとは申していないつもりでございます。文部省はそういう見地に立って抜本的な解決をはかるための調査は十分にやり続けてきておる、このように確信をいたしておるわけでございます。
  16. 山中吾郎

    山中(吾)委員 局長次官と同じですか。
  17. 福田繁

    福田政府委員 政務時間からお答え申し上げたとおりでございます。
  18. 山中吾郎

    山中(吾)委員 どうもごまかした傾向があるが、とにかくほかの省と連絡協調して、そういう問題についてはやはりまず原因調査しなければ対策は立たないという方針だけは確立をしておかないと、指導主事を百人置いたから、それでいいのだということだけでは、本格的にこういう問題を教育の問題として取り上げたことにはならない、そう思うので、調査をしてもらいたいと思います。  そこで、私は各省ごとにお聞きをしていきたいと思うのですが、厚生省にお聞きいたしたいと思いますが、これは「政府の窓」の五月一日号で、この中に「家庭児童福祉対策のねらいといきさつ」ということで、黒木さんのトルコにおける国際児童福祉連合出席をされた報告をかねた意見が出ております。これはまことにごもっともな御意見であると思って、大いに敬意を表したのですが、この点について黒木局長の御意見をお聞きしておきたいと思うのですが、その国際児童福祉連合において話題になったことの一つとして、「経済成長人間福祉を増進させるはずであるが、かえって児童福祉を阻害しつつある。」それが工業化都市化など社会環境の悪化による青少年非行の激増という事例と、社会変動に伴う児童の不適応ということをあげて、こういう問題が世界の共通問題になったと報告されております。私はそのとおりだと思うのでありますが、戦後池田内閣所得倍増計画の中にも、やはり共通した問題があって、いわゆる精神病理学的な非行少年でなしに、こういう経済成長の中であらわれてきた青少年非行、その分が増加分だと思うのです。こういうことについて、厚生省においては具体的にどうすればよいのか、そういうことを御検討なさっておられるならば、ここでひとつお教え願いたい。
  19. 黒木利克

    黒木政府委員 それはたまたま国際会議出席しましたときの報告の一部を援用したまででございますが、確かに世界的な傾向として経済成長児童福祉とが矛盾する点がある、それに早く気づきまして手を打つということが必要であるということが結論であったわけであります。そこで厚生省としましては、先ほど申しましたように、いろいろな調査をいたしまして、わが国における原因というものを究明したわけでありますが、これは先ほど文部省からお答えがありましたが、実はこの調査というのは、私のほうのも、法務省のほうのも、警察のほうのも、現に非行事犯を起こして検挙するなり、あるいは収容するなり、そういうような施設がございますから、そこの子供さんがどういうような原因非行になったかということを調査しているのにすぎないのでありまして、文部省にそういう調査を要求なさっても、それは無理かと思うのであります。われわれのほうでも、学校から福祉事務所に通報がある、そこでいろいろ調べまして、その原因がわかる、そしてそれが地方の教育委員会なり、あるいは中央でまとめましたものは文部省に連絡をいたしまして、政府が一体になって対策を講じておるのであります。特に先ほど申しました中央青少年問題協議会調査は、ここも手足がございませんから、厚生省福祉事務所なり教護院なり、あるいは警察なり、そういった末端の現実に非行少年を扱っている機関を総動員しまして、調査をいたしたのでありまして、もちろん調査には文部省関係も参加なすっておるのであります。従来から政府としては、非行少年の問題のこういう調査をやっておるのでありまして、それぞれやれる立場にあるところからやっているという実情でございます。  そこで先ほど申しましたいろいろ原因がわかったわけでございますが、根本的には、こういう経済成長の問題と、つまり都市化工業化の問題と、児童福祉との問題の矛盾をどうすればいいか、結局厚生省としては、社会計画と申しますか、単に経済計画、経済的視点からだけではなしに、社会福祉的な視点あるいは教育的な視点から、つまり社会全体の計画と申しますか、社会計画的な観点から問題を取り上げる必要があるということで、経済官庁にはそういうことを申し上げ、また児童福祉白書あるいは厚生白書等でそういうことを国民に訴えているような次第でございまして、単に各省だけでやれる問題ではなしに、各省ぐるみと申しますか、あるいは家庭ぐるみ、学校ぐるみ、地域ぐるみ、国民ぐるみで解決しなければこの問題は解決できない、かように考えている次第でございます。
  20. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私の質問答弁になっていないわけです。その前に文部省を弁護されたわけですが、そういうことは、私はわかっているのです。厚生省非行少年調査対象は、教護院にいる、あなたの管轄の施設の中のものを対象にして調査をされて、原因を出されている。法務省においては、少年院その他に入ったものについて調査をされて、原因を発表されている。したがって、文部省は小中高校生の問題を調査すべきではないかということを言っているのです。ところが文部省を弁護されるのはよけいですから、これはよけいな弁護をしないでけっこうです。ただ局長工業化という社会から生れてくる非行少年、これが国際会議に行かれて、そういう認識を持ってこられているし、また事実日本の場合には、増加分工業化分からきている非行少年だ、最初から世界のどこの国においても免れ得ないパーセンテージにある非行少年はある。これは明らかです。あるいは精神障害そのほかからくるものも明らかなんです。その残りの社会的な原因の中に出ておる非行少年をどうするかということが教育問題であり、福祉政策の問題だと思うので、最初からお聞きしておるわけです。その工業化に伴う問題の対策が出ない限りは、必然的に出ておるものについてかれこれ非難をしたり、家庭が悪いんだ、教師が悪いんだと非難して終わりになると思うので、その対策はないのかとお聞きしておるわけです。厚生行政としてはないのですか。
  21. 黒木利克

    黒木政府委員 これは簡単には申せません。いろいろ各種の対策をやっておるのでありますが、たとえば産業開発、地域開発のために新しい都市ができる、勤労青少年がだいぶ集まってくる。その場合に、勤労少年の余暇活用と申しますか、レクリエーションの場所なり、あるいはそういう機会なり、あるいはそういう世話をする人なり、そういうものが、同時にそういうような都市づくりに並行して行なわれませんと、勤労少年非行という問題が起きる。そこで、そういうふうに単に都市経済的に開発するだけでなしに、社会開発的な観点から、そういう子供のレクリエーションなりあるいは教育なり、そういうような施設も同時につくるべきである、そういうことで、関係経済各省に要求し、また地方庁にお願いをしておるということを申し上げたのでありまして、これは一例にすぎませんが、都市化なり工業化のときに、同時に児童福祉的な措置というものも並行して考えるべきだ、こういうことを厚生省としては考えておるわけでございます。
  22. 山中吾郎

    山中(吾)委員 工業化から出てくる青少年非行というのについては、共かせぎになって家庭欠陥が出るとか、あるいは工場が急に建って遊び場がなくなるとか、都市的な問題だと思うので、それについて具体的に、一方に新聞の投書その他を見ると、このごろは遊び場がなくて困る、交通事故ということばかりでなくて、子供性格形成についても大きい影響を与えるというふうなことがあるので、せっかくおいでになって、ここに書いておられるのですから、そういう工業化というのはどこに欠陥があって、そこで厚生行政としてはこういうことでいかなければいかぬというお話があると思ってお聞きしたわけです。それは、それならそれにして、遊び場という問題がおそらく大きい問題になっておると思うのですが、これについては厚生省では具体的に対策をお立てになっておられるのですか。
  23. 黒木利克

    黒木政府委員 幼児につきましては、例の児童館というような制度が児童福祉法でございまして、これは昨年度から、初めて、この運営につきまして補助金が出せるようになったのでございます。理想としては、各部落ごとに、あるいは各校区ごとに児童館というものをつくりまして、幼児あるいはいわゆる学童の遊びの問題を、厚生省側としては改善をしてまいりたい。その他児童遊園という制度が児童福祉法にございまして、これにつきましては、設備費の補助だけしか出ておりませんけれども児童委員というような制度がございますから、児童委員にお願いをして子供の遊びの相手をしてもらうというようなことで、児童遊園の整備計画を立てております。なお、子供の遊びにつきましては、建設省関係児童公園というのがございまして、厚生省と建設省と相談をいたしまして、小都市以上には児童公園というものを配置していくという計画を立てて、すでに着手をいたしておるような次第でございます。その他、そういうような建物の関係でなしに、遊び相手になる遊びの指導者と申しますか、これも主としてヴォランティアを予想しておるのでありますが、その登録制度、あるいはその活用ということで、町村単位に社会福祉協議会というものがございますから、ここで子供の遊び相手のヴォランティアの登録をいたしまして、子供の要望、またそのヴォランティアの特殊技能というものを結びつけまして、子供の遊びをさらに改善をしてまいりたい、かような計画を持っております。
  24. 山中吾郎

    山中(吾)委員 遊び場の問題については、日本の少し大きい屋敷の中の庭園というのは、おとなが観賞する庭園でして、子供の遊び場というものはつくらない。アメリカの進駐軍が入ってきたときに、高級将校がいなかの屋敷を接収した。その庭園というのは池があり木があって、子供が遊ぶと木を折ったりして、親に叱られる場所にしかならなかった。借りるとすぐそこをとって遊び場をつくる、ブランコをつくる、子供の遊び場に改修して入るのを見ておって、私どもほんとうに感心したことがあるのです。日本の大きい屋敷の中においてはおとなのための庭園だし、外には何もない。それで道路で遊んでいる。その中に不良グループができるということがある。したがってこの工業化社会という中の矛盾を解決する場合についても、少なくとも個人で五、六坪もあれば、一坪、二坪は遊び場にしてやるというような、日本の庭園をおとなの観賞庭園から子供の遊び場につくってやるというような運動も含んで、大都市におけるこういう問題を解決すべきだと私は思うし、もっと総合的にひとつ検討していただいて、こういう問題を、原因がそこにあるというのなら、明らかに取り締まり法規を拡張するというのでなしに、どこか運動としてこういう問題をもっと全面的に取り上げて、そして法務省厚生省文部省共通の立場で運動を起こしてもらいたいということで実は申し上げておるので、御検討を願いたいと思うわけであります。  なお黒木さんのまとめた中の二に、「今日の児童対策が心理学的、個別的観点に傾きすぎて、社会学的、社会医学的観点が軽視されているので、今後児童をとりまく家庭および社会環境に対する配慮を厚くする必要がある。」と書いてある。こういうことを認識されれば、やはりいまのような対策を具体的に検討していただく必要がある。そこで文部省厚生省法務省も、そういうことを局長級が寄って真剣に論議されておる形跡が見えないと思うのです。行ってきてこういうことを書いておるけれども、それはだいじ上うぶですか。
  25. 黒木利克

    黒木政府委員 実は私がその報告をいたしまして、さっそく、私のほうには厚生大臣の諮問機関として、中央児童福祉審議会というのがあるのでございますが、そこで子供の遊びについての特別部会というものをつくりまして、これは文部省、建設省その他関係各省局長さんなりあるいは専門の委員の方にお集まり願いまして諮問を申し上げました。その答申が昨年出たのでございますが、その答申に基づきましていろいろ計画を立てたのでございますが、その「政府の窓」には出しませんでしたけれども、世界で初めて国立の子供の国というようなものをつくることにいたしまして、現在その準備中でございます。これは三十万坪でありますが、これをモデルにして、各県ごとに県立なり公立の子供の国をつくってほしい。これは大規模なものでございます。  それから先ほど申しました都市公園の中の児童遊園というのは、子供の住居のもよりの地区にそういうものをつくっていくというようなことで一応の答申を受けました。答申に基づく計画はあって、各省とも協力してやっておるのでありまして、ただ残念ながらなかなか予算化がこちらの思うようにいかない、予算化が不十分だという段階でございますが、これは先生方の御協力を得て、この計画の実現に努力したいと思っております。
  26. 山中吾郎

    山中(吾)委員 各省局長十分に審議をされておるということの御答弁はなかったようでありますが、それはひとつ緊密にやってもらいたいと思う。  それからその次の三に、私はなるほどなるほどと思って読んだものですから、その中で何か青少年問題の対策が出るのではないかと思って読ましていただいているのです。三に「児童対策における予防施策が重要である。とくに妊婦・乳幼児の保健と児童の余暇活用が効果的である。」そういうふうに書かれております。それで一方に灘尾文部大臣の幼児教育の必要性ということが新聞に載っておる。そして、幼児教育の目標というものはいわゆる性格形成人間形成に最も大事なものである、非行少年原因は、むしろ幼児教育段階原因があるということも認識をして発表されておる。そういうことになると、いわゆる厚生省黒木局長報告の中における認識と、それから文部省の認識も、私は教育問題に戻ってくるのじゃないかと思う。そこで、十五、六歳、十七、八歳の非行少年対策として、法務省はその発生したものに対するアフターケアというか、そういう者の対象を中心とするし、厚生省においては、当面のそういう段階に達した者を対象とするし、文部省は幼児教育という点から、その前に教育的に処理するというふうなことが三拍子そろわないと、これは解決しないのだというふうに私は思ったわけです。幼児教育の問題についてそうならば、厚生省文部省の間でどうするかということを真剣に検討されてしかるべきじゃないか。  そこでお聞きしたいのです。いつも問題になるのは、幼稚園と保育所の問題です。幼稚園と保育所の問題は、やはり青少年問題の福祉政策であると同時に教育政策で、裏表一体のものにならざるを得ない。そこで、局長お二人並んでおるところで聞かなければならぬと思うのですが、どうしても根本的に矛盾を感ずるのは、満三歳、四歳、五歳という発達段階子供に対して、貧乏人の子供は保育所でいい、金持の子供は幼稚園で教育の主体にするんだ、対象にするんだということがどうしてもわからない。貧乏人の子供ならば、教育手当、保育手当を出して、父兄に負担をかけないようにすればいいのであって——一つの保育と教育を兼ねて文部大臣が言い、また厚生省でも言っておる性格形成の一番大事なところで、非行少年原因はむしろここにあるのだという認識に立つならば、同じ目標、同じ目的のもとにおける児童に対する取り扱いを前提とした施設で、貧乏人に対しては手当だけやればいいんじゃないか、あるいは手数料とか使用料を免除するということでいいのであって、施設を分けておくということについてはどうしてもわからない。そこで、福田初中局長黒木局長お二人に、そこだけひとつ交互にお答え願いたいと思うのですが、これは一つにすべきものじゃないのですか、どうですか。
  27. 福田繁

    福田政府委員 現在幼稚園の目的は、学校教育法の中に掲げられてございまして、したがって、先ほど御指摘になりましたように、貧困な家庭子供は幼稚園に行くべきじゃないというような考えで幼稚園というものが運営されるべきものじゃないということはもちろんでございます。学校教育でございますから、家庭のいかんにかかわらず、教育をつけたいというものについては、できる限り収容していくというのが望ましいわけでございます。ただ、現実の問題といたしましては、この幼稚園の中で私立がかなり大きな比重を占めておりますが、私立の幼稚園の経営上の問題からして、授業料等が高いということはございますけれども、そういう根本的な考え方においては、家庭のいろいろな状況によって差があるべきものではないと思います。  ただ、幼稚園と保育所の問題になりますと、幼稚園は、いま申しましたように、学校教育の場でございますし、保育所のほうは、これは厚生省のほうからお答え願うわけでございますが、日々保育に欠ける幼児を扱うというのがたてまえでございます。したがいまして、その目的、性格というものは一応違うわけでございます。そういういわば二元的なものでございますが、しかしながら、幼児教育という観点から考えますと、これはやはり日本子供でございますから、したがって教育という場においては共通のものがあってよろしい、こういうふうに考えるのでございます。その施設を一元化するかどうかという問題は、これは別個の問題でありまして、子供教育という観点からはなるべく共通なものであってほしい、こういう考え方で私ども厚生省といろいろ相談をしてまいっておるわけでございます。
  28. 黒木利克

    黒木政府委員 幼稚園と保育所の一元化の問題であろうと思いますが、実は私のほうの説明が従来不十分で、いまだにそういう点の誤解と申しますか、保育所は何か貧困者の子弟だけを預かっておるような誤解がありますのはいかにも残念でございまして、児童福祉法ができまして、保育所というのは、「保育に欠ける」子供を日々保育をするということであります。「保育に欠ける」というのは、決して経済的な条件だけではないのであります。いわゆる共働きと称して、月収二十万円という相当収入の高い家庭でも、子供の保育に欠けておる家庭であれば、保育所で保育をしておるのであります。したがいまして、保育所がそういう保護、いわゆる救済的な施設から福祉的な施設に転換したというのが、実は児童福祉法の制定の根本的な考え方でありまして、十何年になりますのに、いまだにそういう誤解があるのはいかにも残念であります。これは世界各国を見まして、歴史的に見ると、保育所がそういう発達の過程を経ておるということは事実でありますが、わが国においては戦後保育所は決してそういう救貧施設でないということははっきり申し上げておきたいと思います。  それからもう一つの誤解は、保育所というのは零歳から預かっておるのでありまして、どの国だって就学前の、たとえば三歳、四歳、五歳は幼稚園で見る場合がありますが、零歳、一歳以上を幼稚園で見ておる国はないのであります。だから保育所というものは、年齢的に見ましても、幼稚園と区別があると私は思うのであります。ただ、おそらく先生の御意図は、幼児教育は少なくとも一元化すべきじゃないかということは、全く私も同意見でございまして、幼児教育の可能な年齢になりました場合、たとえば三才以上集団教育の必要があり、また価値があります場合には幼児教育をする必要がある、これは保育所においても同じであります。したがいまして、昨年私福田局長と連名で初めて通牒を出しまして、幼稚園、保育所においてそれぞれ機能は違うけれども、しかし幼児教育という面においては、同じ年齢層に対してはこれは一元化しかるべきである。だから保育所のそういう年齢の児童に対しましては、幼児教育要領に準じた教育をするようにということで、幼児教育の一元化の方向というものは、少なくとも先般の通牒で打ち出した次第でございますが、先ほど申しましたような機能の違いがございますから、これはあくまでもそれぞれの機能によってその使命を果たす以外にないのじゃないか。配置その他についてはお互い協力していこうというのがこの通牒の趣旨でございまして、現在文部省とは仲よくやっておると思います。
  29. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私はそれでも満足できないわけです。黒木局長のほうは、満三歳までは保育だ、これはまさにそのとおり、これは保育一本だろうと思う。四歳、五歳、六歳というのは同じ発達段階子供だから、したがって精神薄弱であるとか、特に保育を要する心身の条件を持つ子供は保育所に行く、素質その他がいいから教育を必要とする者は幼稚園ということならわかるのですよ。そうでなくして、同じ心身の発達した能力を持った子供を、一方は家庭の事情で保育所で保育を主とする施設に入れる。一方は教育を主とする幼稚園に入れるということは、これはどこからいっても不合理じゃないか。これは法のもとに不平等なんです。憲法違反なんです。だから共かせぎの夫婦であるとか、あるいは貧乏であるという場合に——幼稚園と言おうが保育幼稚園と言おうが保育所と言おうがそれはかまわぬと思うのです。とにかく一つの中で、同じ教育と保育を兼ねた取り扱いをすべきだというのですが、福田局長はそういう考えを少しも持たないで、当然幼稚園は教育を主とするものであるから保育所とは違うということならば、私は最初のその子供の発達段階を区別して——能力別とかそういうことじゃないのですよ、そうじゃなくて、経済事情あるいは親の条件によって、この子供教育する必要がない、保育だけすればいい。こっちは教育さえすればいい。そして満六歳になったら小学校で用意ドンで勉強せよというこの制度は、いま直ちには認められないのじゃないかというのです。福田局長のいまの思想ではぼくは満足できない。現行法はこうなっているという説明ならいいのですよ。局長の識見としては私は認めるわけにはいかぬと思う。その点いまおっしゃった意味はどういう意味なんですか。
  30. 福田繁

    福田政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、現行の法令を中心にして申し上げたのであります。おっしゃるように、家庭の条件、あるいは幼児の状態によりまして、保育所あるいは幼稚園というもので、保育所にも入る、また幼稚園にも入るということは、そういういわゆる運用の問題としても、両方の施設をうまく利用して教育していくという場合もあり得ると思います。そういった意味において、この保育にかける子供に対する保育と幼稚園教育というものを統一して、共通化してやるということは望ましいことだと私も考えますし、また実行上そういうこともあり得ると考えております。
  31. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうしなければならないという思想にならぬのですか。だからなわ張りということまで起こってきて、保育所を幼稚園にするためには文部省に移管しなければならない、保育所にすると厚生省に移管しなければならぬということだけが問題になるならば、これは政治家にまかすべきだと思うのです。それで少なくとも中身は平等な取り扱いをするということを制度上に実現をしなければいかぬのじゃないか。ヨーロッパのことはあまり知らないけれども、保育所に一本化しているか幼稚園に一本化しているか、少なくとも同じ取り扱いをしているように私は見ている。日本のように、貧乏人の子供、あるいはその他の条件のものは教育する必要がないという思想で保育所にと、法律的に現行法上にもある。一方学校教育法における幼稚園は、教育を兼ねて保育という思想の上に、明確に学校としておる。学校と第一条に書いてあります。その差別をこの新憲法下にそのまま認めて、将来そういうことはあり得るなんというゆうちょうな論議をすべき制度ではない。義務教育以前の子供は、全部厚生省の管轄にまかすならまかすとか、あるいは満四歳以上の保育教育関係文部省、あるいは満四歳以下が厚生省、そして満四歳以上の幼稚園に入れた子供で、貧しい家庭子供については児童手当、あるいは入園料その他を免除するとか、そういうことはときの制度だと思うのです。そういうことは両省間で統一した思想にはならないのですか。何か黒木さんのほうがだいぶ進んできておるように思うのです。
  32. 黒木利克

    黒木政府委員 もう一つ私は先生の御意見でちょっとふに落ちない点があるのでございますが、先生教育のベテランでございますから、お教え願いたいのですが、実は私外国の幼稚園なり保育町の制度もだいぶ見てまいりました。研究してまいりましたが、幼稚園の幼児教育というのは、できるだけ短時間がよろしいというのが先進国の進歩的な方向でございます。ところが保育所のほうは、これは親が二人とも働きに出ているのですから、八時間以上にならざるを得ないのです。そこで、幼児教育はもっと短くしなければならぬという施設と、十時間預からなくちゃならぬという施設の違いというものがある。それからもう一つ、保育と教育というものは切り離せない。たとえば朝から二時間だけは幼児教育、あとはほうっておくんだ、あるいは寝かしておくんだということでもだめなのであります。やはり保育所の幼児教育のカリキュラムは、保育所にいる八時間なら八時間の間に適当にあんばいしなければならぬというのが世界各国の共通のやり方であります。ただ場合によりましては、保育所は八時間収容する、そこで二時間だけもよりの幼稚園で教育して、また保育所に引き取るというようなやり方も考えられぬことはないと思います。現に大阪で大正時代に石井十次という先生がやったことがあるのですが、調べてみるとなかなかうまくいかなくて途中でやめたらしいのです。そこで私のほうでは単に現行法のたてまえがどうだからでなしに、保育所で預からなければならぬ子供は一日八時間以上だ。八時間の中で保育と幼児教育というものを切り離せないから、何とかうまく子供のためにやれないかというところにわれわれの苦心があるわけでございます。そこで今度の連名通知で、保育と教育とは保育所においてはなかなか切り離せないのだということを、かっこ書きで認めてもらって書いたいきさつもそこにあるのでございまして、保育所において幼児教育をどういうふうにして取り入れたらいいか、これは専門家の意見を聞いてきめなければなりませんけれども、現在でもそういうような考え方で運用しているのでございます。
  33. 山中吾郎

    山中(吾)委員 黒木局長のいまの御説明は、なるほど一つの条件の相違を明確にされていると思うのです。それも私はそのとおりだと思ってお聞きするのですが、そうすると少なくとも八時間なら八時間その子供を保護する意味があっても、幼稚園と同じ教育という環境を捨てるわけにいかぬ。その点は、幼稚園と保育所の教育部面は共通した一つ教育目標というものを、厚生大臣と文部大臣で合議をして出すべきじゃないか。それが別じゃないですか。文部省文部省の、何か答申に基づいてこの間幼稚園の基準を出しておりますね。厚生省関係はそれをつくるには参加をしていないでしょうし、タッチしていないでしょうし、それに基づくという義務は児童福祉法に基づく保育所には一つもない。その話を具体的にしなければ私に対する答弁は言行不一致だと思う。  それから次にもう一つ、そうなれば、幼稚園の先生は教員免許状を持っている。片方は持たなくてもいい。そうして教育をしてもいいという、この制度をどうするか。それが一つ。これは福田さんからお答え願いたい。  それから次に、現在参議院に議員立法で出ている学校教育法等の一部改正、これで、奨学資金をもらって短大を出て幼稚園の先生になった者は免除になっていない、小中学校は免除になっている、それは私は当然に免除すべきであると思うので、大体常識的に皆さんはそう考えておられるようであり、予算委員会のときも灘尾文部大臣はそれに対して肯定的な答弁をされた。ところが今度は厚生省のほうでは、同じ短大を出た者で保育所につとめている人と幼稚園につとめている人と差別されると、保育所にはくる人がないから、それはやらないでほしいというどこかに心理的牽制があると私は見ている。そういうことを含んで考えるものですから、保育所も幼稚園も少なくとも職員の身分は一つにするとか、そういう行政的措置があなた方のほうから出てこなければ、幼稚園と保育園の問題は一体化の方向に進んでいるとかいっても、その矛盾を解決するという行政的な皆さんの検討が熱心にされているとは、私は思わないのです。その点はいかがです。
  34. 福田繁

    福田政府委員 まことにつぼにはまった御質問をいただいたわけで、恐縮でございますが、私もそういう点につきまして、いろいろと検討いたしました。昨年ここにおられる厚生省児童局長と私の間で相当長期にわたっていろいろな問題を話し合った際に、御指摘のような点をいろいろと検討いたしたわけでございます。  そういう観点から、まず幼稚園と保育所の教育内容の問題でございますが、先ほど児童局長から御答弁になりましたように、保育の中での教育というものは切り離せないというような観点から、保育所で行ないます教育については、少なくとも幼児教育という観点から見ますと、幼稚園の教育と同じであるべきだ、こういうように私ども考えるわけでございます。したがって、両局におきましては、今後同じ教育内容を行なうように努力しようというような申し合わせをいたしまして、それにはまずちょうど幼稚園の教育内容の改定の時期に際しておりますので、その改定にあたりましては、厚生省側の児童福祉委員でございましたか、二、三の方に、十分この保育所関係意見もできれば取り入れるようにというような配慮から、実際上参加願いまして、そうして幼稚園の教育要領というものを制定しまして、この四月からこれを実施しているわけでございますが、その際に厚生省側としましても、それを審議会にかけまして、将来保育所の行なう教育の内容についてはこれに準じて実施する、こういうような含みでおられたのでございますが、現在厚生省も幼稚園の教育内容と同じものを大体御採用になるということを私どもは聞いております。そういうことによってこの教育内容のいわゆる一元化、共通化という問題は一応解決しようかと考えております。  そこで、問題は第二の問題でございますが、教員の問題であります。幼稚園の教員は、御承知のように短大卒で一応の資格を持っております。保育所のほうはそういう資格がございませんので、将来保育所の保母が幼稚園の教育と同じものを扱うといたしますれば、少なくとも幼稚園と同じ資格が要るわけであります。そういう点からいま直ちに資格をとれといっても無理でございますから、私ども幼稚園教員養成講習などには保育所の方も参加してもらって、その道を開いて、だんだんと資格を得てもらう、こういうことによって保育所と幼稚園との将来の交流ということも考えられますでしょうし、少なくとも教育内容を一元化した以上はその資格においても共通のものを持ってもらう、こういう対策を講じていこう、こういう話し合いをいたしたわけであります。したがって、その点につきましても、私どもの今後の講習会等には厚生省のそういう保育所の方もできる限り参加してもらうという話し合いを取りきめたわけでございます。したがって、そういうことによりまして、今後、一挙にはできませんけれども、漸進的に幼稚園と保育所との関係を従来よりもさらに緊密にして、幼児教育という観点から大いに充実していこう、こういう含みで昨年通達を出し、厚生省との話し合いをいろいろいたしたわけであります。  育英資金の問題もございましたが、私どもとしても、現在幼稚園の教員になりました者について返還免除がなされておりませんので、これについてはできる限り早い機会にそういう制度もつくってほしいという希望を持っております。これは所管が違いますから、私がここで申し上げるわけにはまいりませんけれども、できる限りそういうように努力をいたしたいと思っております。
  35. 黒木利克

    黒木政府委員 幼児教育の一元化は、先ほど申しましたように、連名通知でもその方向を打ち出しておりますが、これは実はなぜ早く打ち出さなかったかと申しますと、厚生省としては、この幼児教育の内容が知育偏重と申しますか、読み、書き、算数を主にするような幼児教育では少し保育所では困るのだというような態度でおったのでありますが、今度の幼児教育要領がそういう読み、書き、算数ではない、知育偏重でないということが明らかになりましたので、それなら保育所でも受け入れられる、踏み切れるということで、実は先般の連名通知になった次第でございます。  それから保母の資格の問題に関連しまして、全体の保母がまだ教諭の資格もございませんから、そこでやむを得ず幼児教育要領に準じた幼児教育をやるのだというような通知に相なったのでありますが、これはできるだけ早い機会に幼児教育そのものを取り入れたいと思います。目下保育要領というものを作成いたしておりますが、この委員の中には文部省のほうの教育課程審議会の先生方も参加していただきまして、幼児教育要領の内容を適当な年齢の児童にはそのまま取り入れるように、ただし、カリキュラムの組み方はもちろん違うわけでございますが、そういうことで解決をしたい。特に最近では、保母の中心が短期大学の卒業生にだんだんなりつつあるのでありまして、三十数校の短期大学をいま指定しまして保母の養成をいたしておるのでありますが、ここでは保母の資格と同時に幼稚園の教諭の資格が得られるようになっておりますから、これをますますふやしてまいりたい、かように考えております。  ただわれわれの悩みは、文部省も共通でございますが、こういうような教育一元化問題もそういう方向に努力しなければいけませんが、同時に、何よりもお互い数をふやすことが大切でございます。文部省のほうは存じませんが、保育所がまだ一つもない町村が九百五十町村もあるのでありまして、まずこれを解消することに全力をあげ、しかる後にこういうような一元化の問題というものに急ピッチを上げたい。重点はむしろお互い数をふやすことではないか。  それから職員の確保の問題でいろいろ問題がございますから、職員処遇の問題、資格の問題をできるだけ早い機会に解決して、問題は、そういうような不公平なことのないようにということにいま眼目を置いておる次第であります。
  36. 山中吾郎

    山中(吾)委員 次官、向こうで呼ばれて、衆議院軽視で参議院のほうへ行かれるようですが、それでお聞きしますが、いまの育英会の免除の点についてはなお次官から聞いておかなければならぬ。昭和三十六年十月二十七日の附帯決議に「大学及び大学院において学資の貸与をうけた後、学校教育法第一条に掲げる学校教育職に就いたすべての者に対し、政府は貸与金の返還を免除できるよう今後検討を加えること。」ということが書いてある。第一条に幼稚園も含んでおる。いまなおこの決議を無視して政府がそれをやらないのはまことに遺憾なので、速急にこれは責任を持って検討さるべきである。それだからこそ議員立法が出ておるわけですから、この国会で、衆議院で委員長提案でこれくらいやってもいいくらいに私は思うのです。そのくらいやらなければ委員長の名誉にかかわる。これは三十六年に出ておるのですから、それを検討願いたいことが一つ。  それから、黒木局長の言われたように数をふやすということは当然です。うんとふやさなければならぬ。  それから、福田局長は、いま答弁されたことで私は初めて満足したのです。そこで、この幼稚園教育要領、これはここに書いてあるとおりで正しいと思う。ただ相手の対象が同じですから、黒木局長のほうは保育所としてはこれこれ、こういうふうにおっしゃるけれども、受けるほうは同じ子供だということを忘れないようにしていただかないといかぬ。そういう発達段階では読み、書き、そろばんを持っていくのは早過ぎる、児童局長の言うのもやはり教育意見です。そして教育意見について一致したところで一つのこういう教育目標は出すべきである。そうして一方にまた保育の八時間の問題があると思うので、子供の素質に差異がないわけですから、その点は明確にして、ひとつ今後前進をしていただきたい。  そこで次官に、いまの育英会の問題と、保育所と幼稚園の、少なくとも内容的に同じ子供に対して差別をしない、通した方向に行政的にすみやかに検討するということについては、ここで明確に御答弁願っておきたいと思う。
  37. 八木徹雄

    八木政府委員 児童の体位の向上あるいに知能の発達という見地から考えて、いわゆる幼児教育の拡充ということが必要であるということは、言うまでもないことであります。大臣が就任早々に幼児教育の重要性を強調して、主管局長に、幼児教育充実のための方策を早急に立案せよということを命じたのも、その意味から出ておるわけでございます。  そこで、先ほど来両局長からお話がありましたように、幼児教育充実強化させていくという場合に、一つは幼児教育の義務化という問題があろうかと思うのであります。あるいは小学校の就学年齢を早めるということもあろうかと思うのであります。そういうことがありますが、現実的にはそういう根本的なところにいきなり入り得ないわけでございますので、そこで現在行なわれております幼稚園あるいは保育所というものの調整をどのようにやるか、そうして一定の進度が進んで後に義務化の問題といったものに取り組むことにならざるを得ないのではないかということで、御案内のとおり取り急ぎ六〇%の幼稚園教育が行なわれるような環境整備をやっていこうということで、いま着々と準備をいたしておるところであります。  その過程において一番問題になりますのは、保育所との調整であり、あるいは同じ幼稚園内部におきましても、私学との調整の問題であろうと思います。とりあえずこの保育所との調整の問題につきましては、保育所の中で幼児教育の対象になるべき年齢、すなわち四歳、五歳といった年齢のところには、保育所であっても幼児教育観点に立って保育をしていただけるように両省の間で話し合いを進めて、現在それが進められておるのは、先ほどお答え申し上げたとおりでございます。なお、しかし六〇%の幼稚園というものを充実していく過程においては、私学との調整の問題が当然ありますし、現在の幼稚園の大半というものが私学によって打ち立てられておるというような環境もございますので、これらとの調整をはかりながら、山中委員のおっしゃられるとおり、できるだけすみやかに期待の彼岸に到達できるようにしむけてまいりたい、こういうことでなお調整をし、準備をしておるところでございます。  御熱意のあるところは十分われわれも理解できるわけでございますので、これから後も一そう努力をいたし、早急に成案を得て、皆さんにこのようにやりたいということを御報告できるようにいたしたいものだ、こういうように考えております。  なお、その一環といたしまして、幼稚園教育を六〇%進めるということになりますならば、当然幼稚園の先生に対する処遇という問題は、ただ単に育英会の免除ということだけにとどまらないで、その給与措置等も含めて考えていかなければならぬ課題だと思います。特に本院におきましては、附帯決議をつけて、免除規定については少し検討せいということの御命令もいただいておるわけでございますから、われわれもその気持ちにおいては、いささかも皆さんとかわるところはございません。今後六〇%ということになれば、当然自動的にでき得る課題だと思いますけれども、一日もすみやかにそれができるように努力をいたしたい。またそのことについて国会が力強く御推進くださることについては、われわれは十分に満足すべきことであるし、歓迎すべきことでございますので、これから後もその意図を体して努力をいたしてまいりたい、こう考えております。
  38. 山中吾郎

    山中(吾)委員 いま一度八木次官の御答弁に念を押しておきたいと思うのですが、灘尾文部大臣は、満六歳を五歳に切り上げて、就学年齢の義務化ということを新聞に発表しておる。そういうようなことを含んで、いまの保育所と幼稚園の関係がおくれるというようなことは私はいけないと思うので申し上げたいのですが、かりに就学年齢を一年早くして義務化するということは、小学校教育に繰り入れるのでなくて、幼稚園教育そのものとして国の義務にするという思想の上に立つべきであって、満六歳を五歳にしたことが、小学校に繰り入れて小学校を七年にするというのでは、これは子供の発達段階に合わないわけですから、幼稚園そのものを義務化するという思想に立たないと、それを一年早く義務化ということで小学校に繰り入れると、これは混乱してここの問題が解決しない、またそれは教育的でないと思うので、そこは誤解のないようにひとつ切り離してもらいたいと思います。義務化するということは、幼稚園教育そのもので義務化する、保育そのもので義務化するという思想で、小学校教育を多くするという思想ではない。子供は一年早く発達が始まるわけではないのですね。それが一つ。  それから私学の関係で、また一方の方向がおくれるのでは困るので、日本の伝統的な私学の実績を認めて、国がもし義務化しても、その幼児教育は私学に委託するという委託制度なども検討して、実績を認めて、どんどん六〇%を進めないと、そうでなければ、また新聞に灘尾文相が発表してそれで終わり。そういう障害が出たというので終わりになると思う。そういうことも含めて御理解を願って、いまの問題はいまの問題として、それにからんでおくらすことのないように要望しておきたいと思うのです。  青少年問題を含んでの幼児保育の関係については、私は大体満足をするような御答弁をいただいたと思うので、この点はこれで終わりにします。
  39. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 関連。いま両局長の御答弁でおよその方向はよくわかるわけであります。そこでお尋ねしたいのは、いまの山中委員の前半の御質問を私聞いていませんでしたので、あるいはダブるのかもしれませんが、一元化の問題について、保育所の教育の際にこれをもっと専門家のほうにも問い合わせてみたい、こういうことでありましたが、専門家というのはどういうものであるかということが一つ。  それからもう一つは、一元化を連名通達でやっておられるわけであります。ところが今日の幼稚園教育と幼児教育という問題は、ただ単に両機関の連名通達で片づくような事態でないと思う。ということは、日本社会構造の大きな変化の中で、この幼稚園教育と幼児教育という問題は非常に大きなウエートを占めてきておるわけであります。そういたしますと、ただ、いままでのセクションでそれぞれが通達をやって片づくようななまやさしい段階ではないと思うのです。特に日本のいろいろの行政を見てみますと、その点で一番の欠陥は、なるほどいろいろな問題についてそれぞれがやっておるが、それを総合調整をする機関がないということです。  そこでいまの山中委員が追及し質問をいたしてまいりました、そういう各般の問題について、これを総合調整をして、現在の社会構造の大きな変化というものに対応していける、しかも継ぎはぎをしてその場その場をしのいでいくという、あるいは後手後手というものになるのではなくて、もっとビジョンのある前向きの形のものというもの、当然に総合調整される機関というものが政府の中に置かれて検討され、そうして幼児の心理状態、生理状態、さらには社会環境、そうした全般的なものは常設の機関でやっていくことがきわめて大事な問題ではないかと思うのでありますが、そういう点については現在どのように行なわれておるか、この点をお尋ねしたいと思います。
  40. 黒木利克

    黒木政府委員 御質問の専門家は、幼稚園あるいは保育所の養育なり保育の経験者という専門家、大学の教育学者あるいは児童心理学者、そういうようなものを考えておるわけでございまして、それは現実に中央児童福祉審議会にそういう専門家を委嘱しておりますので、文部省関係のそういう審議機関の専門家と重複をして、それぞれ協力をしながら御審議に参加してもらっておるのでありますが、そういうやり方を今後も踏襲してまいりたいと思います。  それから、児童行政の一元化の問題につきましては、児童福祉行政に関する限りは児童省をつくったらどうかというような御意見がございまして、厚生省もそういうことでいろいろ検討いたしておるのでありますが、しかし教育はまた教育の一元化というような大きな問題もございますから、その辺は単にわれわれ局長の限界でお答えするにしては問題があまりにも大き過ぎます。
  41. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 ただいまの問題は、これは次官も出られましたし、保留しておきたいと思います。  次には初中局長のほうにお尋ねしたいと思うのでありますが、ただいまの都会の幼稚園教育、幼稚園というものを見ていますと、たいへんこれは試験地獄という中で非常に憂うべき状態にあるのではないかと思います。そのことは、ある有名な大学に入るためにはその前の有名な高等学校に入らなければいかぬ、そのためには有名な中学校でなくてはならぬ、こういうことで、先の先まで計算をして、そしてそのためには有名な幼稚園に入れなくてはならぬ、その有名な幼稚園に入れるためには今度はそれのための予備校に入れなくてはならぬ。こういうことがきわめて当然のこととしていま行なわれております。これはただ単に東京であるとか大阪であるとかいう大都会だけではなくて、地方の都市にまでそういうものが及んでいっておる現状であるわけでありまして、これは本来のあるべき幼児教育、しかも伸び伸びとした子供を育てあげていくという面から見ますならば、たいへん憂うべき問題であると思いますけれども、この点について御見解を述べていただきたいと思います。
  42. 福田繁

    福田政府委員 最近までの幼稚園の傾向、特に大都市におきます幼稚園などにおきまして、御指摘のような傾向が残念ながら一部にあったことは事実でございます。私どもといたしましても、幼稚園教育そのものは、いわゆる三歳から五歳までの非常に可塑性に冨んだ幼児でございますから、したがって小学校教育というようなものに類似した教育であってはならない、幼稚園教育というものは全く幼稚園独自の教育でなければならないという考え方を持っていたわけでございます。こういう点につきましては、昨年あるいは一昨年から教育課程審議会におきましてもいろいろ検討いたしまして、特に御指摘になりましたような傾向の出ておりますことを心配して、いわゆる幼稚園教育の独自性というものを強くこの際教育課程の改正を行なうに際して明確にすべきではないかというのが、改定の一つの大きな柱になっているわけでございます。  たとえば、一例をあげますと、いたずらに数を幾つまで覚えさせるとか、ことばをどの範囲まで覚えさせるとか、そういういわゆる知育のみに偏した、そういう知識教育だけに幼稚園が終わってしまいますと、それは小学校に入る一つの予備門みたいな形になってしまいますので、そういった点からいいますと、幼稚園教育の弊害というものが出てこようと思います。そういうことでなく、先ほど申し上げましたように、そういう数詞だとかあるいはまたことばといったようなものについては、小学校に入るためにこの範囲を教えなければならぬというような、そういうやり方であってはならないという点を強く教育課程審議会では打ち出したわけでございます。したがって、幼児の発達の段階に応じまして、四歳、五歳の時期においては人格形成の基礎と申しますか、芽ばえをつちかうというような観点から幼稚園教育の特別なあり方というものを与えてこれを実施していくべきである、こういう観点に立ちまして教育課程の改正を行なったわけでございます。したがいまして、一部の、特に私立の幼稚園などにもそういう傾向の強い幼稚園がございましたが、そういうものは今後漸次改めていってもらいたい、こういう趣旨でございます。
  43. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 非常に憂うべき現象については、お認めになり、方針を打ち出された、こういうことでありますが、たいへん自信がないようでありますけれども、そこでまずお尋ねしたいことは、今日のそういう憂うべき現象はなぜ生じたか、この原因についてお尋ねしたいと思います。
  44. 福田繁

    福田政府委員 これはいろいろの原因があろうかと思いますけれども、有名な小学校に入るためにはやはりそこに最も都合のいい幼稚園を選ぶという傾向があるわけでございます。特に父兄側の理解を願わなければならない点でございますが、幼稚園の選択について、子供の能力とか発達の状態を考えないで、いたずらにそういう観点からのみ父兄が幼稚園を選ぶという傾向があったと思います。そういう点が、私、主たる原因ではなかろうかと考えております。もちろん子供自体はそういうことを考えておるわけではないと思うのですが、父兄が十分理解をして、適当な幼稚園を選択していくということであれば、そういう弊害は起きないであろうと思います。
  45. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 池田内閣の一度成長政策の中で、いわゆるマン・パワー・ポリシーということで、ハイ・タレントの養成、こういうことが出されてまいっております。そういう点で、能力主役だとか、いろいろな面で格づけをされていく。だから有名な学校に入ることが人生の関門のパスをとることだ、こういうことになってまいる今日の社会体制の中で生まれてまいる根本的な問題であると思います。それにつきましては、今日の幼稚園教育そのものの問題については、少し次元が離れてまいりますので、あらためてこれは制度その他の問題の際に御質問したい、こういうことで、残しておきたいと思いますけれども、お認めのように今日のこういう誤った幼稚園教育というものが現実にある。そのことは、簡単な通達では直らない、改めることのできない実態であろうと思います。ですから、その点については、よほど総合された全体的な政策が確立されない限りこの問題は解決いたしてまいらない、こう思う次第でありますので、ひとつ今後も強力な指導をされますことを希望いたしまして終わりたいと思います。
  46. 山中吾郎

    山中(吾)委員 時間がないので文部省社会局長にはまた機会がたくさんあるから保留しておきますが、ただ、最近社会教育というのは、終戦直後運動としての社会教育というのがあったのですけれども、地方の生活改善であるとか余暇の善用であるとか、そういうものが最近なくなってきたというのです。事務的な社会教育じゃなくて、何かこういうときに運動としての社会教育の血をもう少し検討して、社会教育部面から青少年環境問題をあらゆる人々の協力体制の中で進めるようなくふうをされないと解決しないのじゃないかと思うので、ひとつ御検討を願って、会期中にまたいろいろと御意見を聞きたいと思うのです。  それから、せっかくおいでを願っておるので、法務省は前にも来ていただいて質問がそのままになっておったので、私お聞きします。全般的な問題については省略いたします。法務省ではいろいろと調査をされて、法務省の発表されたいろいろの白書並びにそういうものを私読んでおりますので、その点については省略をいたします。ただ、法務省のほうで発表になっておる調査を見ると、やはり家庭欠陥が非常に多いというふうな調査のようでありますが、そこで、私疑問に思うのですが、アフターケアとして、あるいは少年院とか何かから出た者を家庭に復帰さすという青少年行政が常識になっておるので、家庭の欠点から不良化したものを欠点のある家庭に帰して、不良化は直らないのじゃないか。ただ、どこか違った角度において、関係各省とも相談をされて、その欠陥の多い家庭に帰さないで、国がかわりに家庭機能を果たしてやるというような行政を相当進めないと、せっかくの御調査が、対策としては前進しないように思うのですが、その点のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  47. 常井善

    ○常井説明員 ただいま少年院の退院者のアフターケアに関して家庭の問題が非常に重要である、したがいまして、何か合理的な施策を国で考えておるかという御趣旨と承りましたが、少年院の退院者でございますが、これはちょうど刑務所の対象の場合と同じでございまして、入院後六月を過ぎますと、仮退院の資格がつくわけでございます。大体全在院者の七〇形から八〇%は、仮退院の措置によりまして社会に出てまいります。この社会に出ました少年でございますが、これは社会に出ていいという前提といたしまして、刑務所のほうから、帰るべき家庭環境その他の調査を依頼した者が回ってまいりまして、全国四十九ございます保護観察所で家庭に当たりまして、帰しても受け入れ状態ができる、あるいは受け入れが困難な場合には、その受け入れ状況を調整いたしまして、その上で仮退院になるのが例でございます。なお、そういたしました場合におきましても家庭環境が悪いというような場合には、実は更生保護会と申します施設が本局の所管でございまして、活動中のものが全国に約百五十ございますが、ここへ収容してめんどうを見ております。
  48. 山中吾郎

    山中(吾)委員 実際は、親を呼んで、引き取るかどうかといって、無理無理引き取らすようなこともやっているのじゃないかという感じがしたのですが、それが事実ならけっこうですけれども、何かそういう方面をもう少し強化をされて、有志に委託をするとか何か家庭から離すという対策が必要じゃないか。逆に、どうにもならない子供が帰ってくるので、親がびくびくして、いつ殺されるかわからぬという、そういう家庭さえ私はあると思うので、それは別な問題として検討する必要がある。  それで一つだけ——私、岩手県の県のBBSの会長をしておるのです。青少年の諸問題のことで、ほかの名誉職はみな捨ててしまったのですが、これだけは捨てていないのです。それで青年諸君が、少年院から帰った者は、保護司その他の指導を受けながら、一生懸命にやっておる。予算が何もないのです。私はずいぶん寄付をするわけですが、そういう点から考えて、いわゆる個別指導——そういう家庭責任を負わすというのではなくて、そういういい人間関係の中に入れる。そういうことで、一番大事なもとは、そういういい人間関係をつくる、いわゆるBBS運動などがもっと強化された中に、法務省のこういう問題についての解決というものが、相当建設的に進むのじゃないか。ところがどうもBBS運動なんというものについてはほとんど力を入れていない。それに対する財政援助はほとんどないというので、法務省はどこに重点を置いているのか不明確なために、実は疑問を持っておるわけです。もう少しそういう方面のアフターケアの中で、家庭に帰して家庭責任を持たす。欠点のある家庭責任を持たしても、また再犯が出る。法務省の目的は、再犯を犯させないということが目的だろうと思うのですから、その点そういうふうなよい人間関係をつくる団体、あるいは委託保護というのですか、そういうものに対する方向に予算措置その他においても重点的にやるべきだ。それについて、いままでの予算要求の方針とか、あるいは来年度の方針についてお聞きして、われわれも側面的に協力をしたいと思うので、いままでの経緯と法務省のいまの考え方をお聞きしておきたいと思います。
  49. 常井善

    ○常井説明員 BBS運動を重視せよという御趣旨でございますが、私どもまことに同感で、そのつもりでやっております。ことに私ども実際に、おっしゃいます保護観察の川当者と申しますのが、あるいは年齢の多い保護司さんの方もございますので、青少年の対象者につきましては、年齢差の少ない、いわゆる友だち活動を十分なし得ますBBSの方にお願いするというようなことにいたしまして、活用につとめるようにしばしば指示、通達も出しておるのでございます。この援助面でございますが、これは確かにお話しのように、決して十分なものとは思えないので、なお一そう努力するつもりでございますが、やっておることがどのくらいかということでございますので簡単に申し上げますと、法務大臣から、まず一生懸命やっていただいた方を表彰する、記念品を差し上げるということが一つございます。それから日本BBS連盟が、全国組織でございますが、ここに対しまして、これは法務省日本更生保護協会と申します連絡、助成の団体でございますが、これを合計で申し上げますと、ここ三年間年額平均いたしますと百万円の援助をしております。それからなおBBS連盟で、昨年度からでございますが、全国指導者を百名近く集めまして、三日間にわたる研修を開始いたしました。相当間度の研修でございますが、これに約八十万円を援助してございます。来年度におきましては、協会にお一きまして百二十名ぐらいの人数にいたしまして、八十万円をさらに百万円の補助にしたいというふうに聞いております。なお御趣旨を体しまして、本年度の予算のワクにも何か方策を考えるようにいたしたいと思います。
  50. 山中吾郎

    山中(吾)委員 全国的にBBS運動をしておるということは、本省もおわかりだと思うのです。たった全国に百万円というのでは、二兆円の予算の中では、百万じゃ青少年問題の解決にはならない。もっと大胆に予算要求をして、削られれば削られてもけっこうですから、思い切って大胆に出してみられたらどうですか。削られたときに問題が残ると思うのです。それで研修も旅費は全部おやり願っているかと思うのですけれども、その辺はもう少し力を入れて、そしてその青年諸君自身の人間形成まで兼ねて、非常にいいものができておるわけですから、大いに来年度飛躍的に前進するように努力願いたい。それを責任者のほうにお伝えください。  もうこれでやめますが、最後に、法務省では十ぱ一からげで青少年対策と言っておるのですが、少年と青年を十ぱ一からげにしてやる対策というものはどうも効果がないのではないか、もっときめのこまかい対策が必要でないかと私は思うのです。たとえば、刑法上いわゆる責任能力がないといわれている満十三歳以下の者は、ずっと見ると、例のはしかのように流行している、いわゆる罪の意識のない、過失のような窃盗、万引きみたいなことをやる。これに対しては周囲の保護とか何かのことで救ってやるということによって、子供はずんずん伸びて、一般の社会人間になるのだが、満十五、六歳ごろの者は凶暴犯、暴力犯に移っていく。これは単に少年時代、児童というか、そういう時代に対する対策でなくて、本人の意思の訓練を含んだ、本人の自覚と訓練を主とした行き方が必要だ。保護政策でなくて、何か別なものがあるはずだ。青少年問題を、法務省では十ぱ一からげに対策をお立てになっているのじゃないかと思う。これは全然質が違うのではないか。満十三歳以下の少年対策と、満十四歳以上の、新制中学卒業以上のいわゆる青年全部を含んでの青年対策は、別個の対策をアフターケアとしても出すべきだ。その点を文部省厚生省もお互いに分析をしていただいて、もう少しきめのこまかい、十ぱ一からげの政策でない行き方をおとり願うように、その線に沿った予算編成、予算要求をされることを希望したいと思うのです。  お聞きしたいことが実はたくさんあるわけですが、もう十二時半になりましたし、関連質問もあるようですから、こういう席上でなくても、もう少し別な角度から検討していただいて、関係者の意見も聞いて、現代の社会において社会的な原因で生まれている青少年問題の解決に、具体的な対策を立てていただくことを要望したいと思います。きょうは総理府青少年問題の局長がいないものですから、申し上げたいことを保留せざるを得ないのですが、そういう要望をしておきます。
  51. 上村千一郎

    ○上村委員 一点だけ。ちょうど法務省の方が見えておられますから、山中委員の御質問に関連しましてお尋ねをするとともに、御要望をして湊、いと思います。  この青少年の問題、法務省関係では満二十歳以下は少年犯でございましょうから、少年という線で取り扱われていると思いますが、青少年犯罪が非常にふえてきている。あるいは非行少年が非常にふえておるという実態、これは憂うべきことである。それで少年関係については少年法の適用を持ち、また一般青年の犯罪に対する処置とは違った指道守教育面を重視しておる。そうしますと、先ほど山中委員がおっしゃった点に関連をするのだが、家庭環境が悪くて犯罪を行なう、あるいは非行をするというものが相当量ふえておることは、もう厳然たる事実である。それが一定の期間を過ぎまして、これを社会へ送り出す際に、その拠点としてまた家庭に帰すということになる。そして、家庭がその一定期間内によい家庭に急変するというようなことはまれであると見なければならぬ。しかるに、国の処置としては、できるだけ家庭に帰そうといたしておることは事実であります。けれども、これでは十分なる処置は講じ得られない。だからこそ、いま青少年犯罪というものはますますふえてきておる。これに対する国家措置としては、更生保護会があることは事実である。私も、更生保護会の常任役員をいたしておりますので、その実態をよく存じておりますが、いま御答弁になられたように、それほど簡単にいっておるかどうかと申しますと、更生保護会に収容されている少年の数というものは、私は最近はそうふえていないと思うのです。ふえておることはふえておるかもわからぬけれども、しかし、少年犯の激増の割合と更生保護会の少年寮に収容をいたしていく数との比較というものを検討した場合、これは私は非常に考えなければならぬ問題があると思う。と申しますのは、更生保護会に対して、最近は国家の債務としまして予算措置をし、これのめんどうを見られ、指導をしておることは確かです。けれども、これは、以前は篤志事業として、要するに篤志家がやる事業として発達した制度である。この観念というものはまだ抜け切っていないのではないか。それが証拠には、そういう篤志家のいわゆる犠牲、奉仕というものにたより過ざておって、思い切った国の予算措置あるいは助成その他のことが行き届いていないのではないか。これが結局その部面において十分なる機能を発揮していないうらみがある、こういうふうに私は思うのです。いい機会でございますので、お帰りになりましたら保護局長なりあるいは大臣なりによくお伝えくださって、そうして四十年度の予算措置には、そろそろ作業にお入りになる時期でございましょうから、こういうものについては抜本的に考え方を変えて、国が全体の責務を負担するのだという意味で、私は思い切った助成措置をなさるほうがいいのではなかろうかと思うのでございます。その点につきましての御意見を承っておきたいと思います。
  52. 桂正昭

    桂説明員 具体的なことは保護局の総務課長から答えてもらうことにいたしまして、一般的なことにつきましてお答え申し上げます。  お二人からまことに御理解のある御発言をいただきましてわれわれ感謝しておりますし、その趣旨を上司に伝えるつもりでおります。問題は、少年院の仕事、あるいは保護観察の仕事、更生保護会の仕事と申しますものは、きわめてじみな仕事でございますので、目に見えたものとしてなかなか出てこないものであります。さような趣旨で世間の御理解をいただくのもなかなか困難であるわけであります。そういう点で先生方の御理解のある御発言、非常に感謝しておる次第でございますので、何とぞ今後ともよろしくお願いいたしたいと思います。
  53. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 ちょっと資料だけ。法務省のほうにお願いをしたいのでありますけれども山中、上村両委員のほうからいろいろ御質問があったわけであります。そこで、年限は五年なら五年でけっこうですが、一番新しいところを切っていただいて、国立、公立、あるいは私立でもあるかとも思いますが、そういう保護関係の機関に収容された少年の数、これはわかっておると思うのです。そこを出所しましたあとまた問題を起こす、つまり先ほどから御質問の点の具体的な統計資料になると思うのでありますが、そうした保護を受けて出所した少年たちが、その後また問題を起こすという事例が多いと思いますので、その具体的な統計資料を出していただきたいと思います。そういう追跡調査をやられておると思いますから、お願いします。
  54. 常井善

    ○常井説明員 ただいま更生保護会につきましてお話をいただいたのでございますが、私が申し上げるより経験者でいらっしゃいますので、どうかということでございますが、これは国営の問題等でございますが、私どもいろいろ検討する過程におきまして、国営の問題あるいは分類処分の問題、いろいろな説が出ておるのでございますが、また一方におきまして、国の刑務所から出てきて、また国の施設に入るというのが対象者の立場で、何か心理的にひっかかりがあるというような意見もございまして、またきょうのお話を持ち帰りまして、なお検討させていただきたいと思います。
  55. 上村千一郎

    ○上村委員 ぼくは国の施設でやれというような意見を吐いたことはない。更生保護会というようなものがアフターケアとしていまの民間のほうが血がかよっていいと思う。しかも実態はお調べだと思うけれども、更生保護会の役員やその他のものは職業関係について保証人になり、そして間違いを起こせば全額の補償をしながら、しっかりと、血のかよった施設をやっておる。それをぼくは国でやれということを何も要望するわけではないし、またむしろその施設は国でやらぬほうがいいかもしれない。ただ、国でやれということを言うのではなくて、現在の施設でいいから、もっと要するに社会事業というものは、その道の理解者が犠牲と奉仕でやればいいんだというような考えで、国が臨むものじゃないんだ。国の仕事をかわってやってくれるんだから、十分な予算措置なり、——いまでもやっておりますと言っておるけれども、その割合は少ない。だからそれに対する委託費のほうも最近は上がっておることは事実ですが、十分その点を見る。それから施設の問題、あるいは待遇の問題その他について、あたたかくやるという意味であって、国が更生保護会なりその他の施設をやるということが必要だということを私が言っておるのではありません。むしろ、いまの民間にやらして、そして十分なるバックアップを国がしたほうが、あたたかい、血がかよって社会に復帰する一つ段階としては現在のほうがよかろうという見解でありますので、その点誤解があってはいけませんから、述べた次第でございます。
  56. 山中吾郎

    山中(吾)委員 最後に一つ、抜けておるので追加質問しますが、これは文部省法務省がおらないと困るので、質問いたしますが、少年院で教育をした場合に、義務教育を終えたというので免状を与えて、少年院に在院中の青少年に対して義務教育を受ける機会を与えておる制度、これはありますね。それはどこで小学校中学の卒業の免状を与えておるのか、どこの学校の免状になるのか、そしてそれは一つの保護機関であり、準警察機関であり、同時に教育機関であるという少年院のあり方の中で、文部省との関係がうまくいって、そして子供に希望を持たすための教育が行なわれておるのか、何か聞くところによると、その卒業免状というんで、卒業してもどこの学校の卒業生だかわからないので、少年院を出た者は同窓会がないんだ。これも一つ家庭欠陥がある場合は別なんです。人間関係の中にはめるほうがいいのですが、そこから無籍者の卒業生があるというふうなことで、一つの欠点があるように聞いたのですが、その点はどうですか。
  57. 桂正昭

    桂説明員 私直接の担当でないのでございますが、私が聞いておりますところによりますと、非常にうまくいっているところでは、当該地の小学校の分校といいますか、そういうような形で当該小学校の免状を出す、卒業証書を出すといいますか、そういう方法もとられておるそうでございます。
  58. 山中吾郎

    山中(吾)委員 文部省はどうです。どの程度タッチしているか……。
  59. 福田繁

    福田政府委員 私いま全般についての何は持ち合わせておりませんけれども、いま法務省からお答えになりましたように、大体分校という形式をとっておるのが多いと思います。あるいは分校でなく、何と申しますか、クラスのようなかっこうをとっておるところもあるかもわかりませんが、大体当該学校の校長の卒業免状を出しておる、こういうことであります。
  60. 山中吾郎

    山中(吾)委員 制度的に少年院においては義務課程は終えることができるという制度になっているのでしょうね。そうすると少年院の教官というのは、教員免許状を持っている場合と持っていない場合があるだろうと思う。ある学校の分校にして分室にすると、そこの学校先生が出張して、少年院におもむいて教えているのであろうと思うのです。そうすると、どっかの学校の、そこの一番もよりの小学校中学校先生が行って教えるから、そこの小学校の卒業生ということになって、そこで子供人間関係その他よけものにならないような考慮がうまく払われているはずですが、そうではないのではないか。そこでまだ十分実態を御存じないと思いますが、よくお調べ願って、そうして少年院の運営方針全国的に統一していないで、あるところは教育をして、あるところはしていない。あるところは分室であって、あるところはわけのわからぬやり方をしておるとかいうことが実態のように思うので、それはあくまでも義務教育を終える機会を全面的にやるべきだ、どこの学校の分校だということを明確にして、そうして、少年を善導する制度をもう少し文部省と連絡をしておきめを願いたい。局長もその点は十分御存じないようでありますが、一歩進んで少年院の教官というよりも、全部教員の免許状を持った者でなければならない、そして少年院の教官は司法大臣のもとにあると同時に、免許関係においては文部大臣指導を受けて、教育課程その他も正規の中に十分やるような制度までいくのがほんとうではないかというような感じもするので、御検討を願っておきたいと思います。
  61. 桂正昭

    桂説明員 ちょっと私の説明がまずかったかと思うのでありますが、少年法によりますと、第五条で「少年院の長は、在院者に対する矯正教育のうち教科に関する事項については、文部大臣の勧告に従わなければならない。」こうございまして、「少年院の長は、前条各号に掲げる教科を修了した者に対し、修了の事実を証する証明書を発行することができる。」この証明書は、「各学校と対応する教科課程について、各学校の長が授与する卒業証書その他の証書と同一の効力を有する。」こういうようになっておるわけでございます。そして少年院には教員免状を持った教官がかなりおるわけでございまして、その少年院におるそれぞれの教員免状を持った教官がいろいろ教えておるわけでございまして、私が先ほど申し上げました問題は、この少年院の中でそういう教育が一応徹底しておるわけでございますが、卒業証書を社会に持っていって使います場合に、それが少年院を出たんだということが直ちにわかる形がとられた場合に、いろいろ支障があるわけでございまして、そういう場合に少年院の卒業生だということが直ちにわかる形でなくて、その近所の学校を出たんだといいますか、そういうふうな形をとるという意味で申し上げた趣旨でございます。
  62. 山中吾郎

    山中(吾)委員 わかりました。そこで少年院長の免状では、それが義務教育課程を出たというのでは、その子供は見せられないのです。だからもよりの分校にして、必ずそこのもよりの学校長の卒業証書を与えるように、これはどうしても制度を変えなければならぬと思うのです。これは聞きながらわかったのです。ひとつ文部省相談をされて——それでなければ同窓会にもならないし、これは絶対に見せないですよ。そうすると履歴書にも——履歴書はどう書くのか知らないのですが、下に授与者の名前を書くとすれば、少年院長じゃとてもだめだ。この制度は悪制ですね。直すように努力してください。
  63. 桂正昭

    桂説明員 制度はいま申し上げたとおりでございまして、いま御指摘のような問題がないようにするために文部当局といろいろお話し合いをして、その近所の学校の卒業生という形をとるように、いろいろ現地でお話し合いをして努力している、こういう趣旨でございます。
  64. 久野忠治

    久野委員長 次会は来たる十日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十一分散会