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1964-05-21 第46回国会 衆議院 農林水産委員会 第50号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十一日(木曜日)    午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君    理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 足鹿  覺君 理事 芳賀  貢君       伊東 隆治君    大坪 保雄君       加藤 精三君    吉川 久衛君       小枝 一雄君    坂村 吉正君       笹山茂太郎君    舘林三喜男君       寺島隆太郎君    内藤  隆君       野原 正勝君    八田 貞義君       藤田 義光君    亘  四郎君       角屋堅次郎君    東海林 稔君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       野口 忠夫君    松浦 定義君       湯山  勇君    稲富 稜人君       林  百郎君  出席政府委員         農林政務次官  丹羽 兵助君         農林事務官         (農林経済局         長)      松岡  亮君         通商産業事務官         (軽工業局長) 倉八  正君  委員外出席者         参  考  人         (全国農業協同         組合中央会常務         理事)     森川 武門君         参  考  人         (全国購買農業         協同組合連合会         常務理事)   真板 武夫君         参  考  人         (日本硫安工業         協会専務理事) 須賀 賢二君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  肥料価格安定等臨時措置法案内閣提出第一五  六号)      ————◇—————
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  肥料価格安定等臨時措置法案を議題といたします。  去る十五日の委員会の決定に基づき、参考人から御意見を聴取することにいたします。御出席参考人は、全国農業協同組合中央会常務理事森川武門君、全国購買農業協同組合連合会常務理事真板武夫君、日本硫安工業協会専務理事須賀賢二君、以上の三名の方々でございます。  参考人各位には御多用のところ本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。  それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。御意見開陳の時間は、お一人十五分程度とし、その順序は、かってながら委員長におまかせ願いたいと存じます。  なお、各参考人の御意見の御陳述の後、委員から質疑があろうと存じますから、あらかじめお含みおきを願いたいと存じます。  それでは森川参考人からお願いいたします。
  3. 森川武門

    森川参考人 全国農協中央会森川でございます。  現行肥料二法が本年の七月末で失効になるわけでございます。そのあとどうするかということにつきまして、われわれ農協の者といたしましても、いろいろ検討をいたしたのでありますが、現在の情勢下においては、いきなり無法状態になるということは、非常に危険を伴うおそれがあるのではないか、したがって、少なくとも肥料内需確保をはかるということ、またその価格農民の不利にならぬように適切な価格確保される、こういう二点をぜひひとつ貫いていく、そのためにそういうような点を内容とする新法が制定されることが望ましい、こういうように実は考えたのでございます。その後政府当局におかれましても、この問題につきましては、懇談会等をおつくりになって審議をされていたのでありますが、終局のところ、新法を制定するということで、それが今国会提案をされておるわけでございます。  それを見ますと、まず私ども考えておりました内需確保につきましては、政府のほうにおいて需給見通しを立てて、それに基づいて、肥料輸出については承認制にするというような点が盛り込まれております。それからまた、価格の点につきましても、当事者の間において交渉がまとまらない最悪の事態においては、政府が調停をする、そして適正な価格をきめるという点も織り込まれております。なおまた、そのもととなる生産者並び販売業者に対する事情聴取権、また調査権、そういうようなものも法律によって確保をされておる。そういうことのほかに、当事者折衝をする場合において、必要とあればその調査権に基づいてやられたところの資料等も提示される、こういうようなことも認められておるのでございまして、ほぼ私どもが必要であると考えておった点は満たされておる、こういうふうに実は考えておるのでございます。したがって、この程度のグラウンドがつくられますれば、その共通の場において、当事者におきまして十分折衝をいたしまして、農民肥料価格その他肥料の問題について農民利益を擁護する、こういうことが可能ではないか、こういうふうにわれわれとしては考えておるのでございます。  それで、本国会においてこの法律が制定されまして、二法失効後に無法状態にならないということを私ども念願をいたしておる次第でございます。
  4. 高見三郎

    高見委員長 次に、真板参考人お願いいたします。
  5. 真板武夫

    真板参考人 私、全購連常務理事をいたしております真板でございます。  私ども農協組織でございますので、常にこの新法の問題につきましては、日ごろから中央会と緊密な連絡の上に考え方をまとめておりますし、またそれに応じていろいろ運動もいたしてまいっておりますので、基本的な考え方、につきましては、森川常務のただいまの御意見と全く同じでございます。  ただ、多少私ども考えをここに整理してきた経過を少し申し上げますと、現在の二法がことしの七月に廃止になる。そして一般の情勢なり、それから世論あるいは政府の御当局あたりの御意見を判断いたしますと、なかなか二法の延長というものは困難ではないかというふうに私ども判断しておりました。それではその無法状態にしてよろしいかどうか。これは私どもといたしましては、自分たちが現在のところ共同計算というシステムで購買力を結集してメーカー折衝しておりますけれども、しかし、自分たち組織で守れないような段階もやはりありはせぬか、したがって、そういう段階にはやはり一本この法律的なかんぬきが入っておって、そして農民利益を守るようなことが必要ではないか、こういうような点につきまして、まだその当時は荷見会長も生きておりましたものですから、まあいろいろ相談して、そういう方向でひとつ考えをまとめよう、そのようなことがございましたものですから、政府東畑博士を首班とする懇談会を開かれまして、私ども参考意見を求められた際も、私どもとしては、やはり何らかの法的措置考えてほしいという意見を述べてまいりました。業界では完全フリーにしてもらいたい、しかし、農民立場ではそういうことでは責任が済まぬじゃないかということで、法律——そういう意見を申し上げました末に東畑懇談会としては意見をまとめて、その意見に基づいて、政府が一月の末に一つの新しい法案肥料の問題についての考え方をまとめたわけでございますけれども、そのときのまとめた考え方につきましては、私どもとしてはどうも承服できない。その承服できぬ点は、何点かあったわけでございますけれども、一番どうしても承服できぬという点は、その当時政府考え方といたしましては、需給見通しをつくるけれども、これは通知しないんた——交渉当事者になるものに需給がどうなるかという通知もないようなことでは、私どもとして責任が負えない。それから今後自主交渉をするにいたしましても、やはり交渉する土俵というものができなければならぬわけでございます。したがって、交渉に必要な土俵をつくってもらう意味で、やはり生産費調査その他というものを掲示してもらわなければいかぬ。これは行政指導だけでは私どもとしては安心できない。やはり法律にきちっと書いていただかなければいかぬ。こういうような点につきまして、私どもといたしましては、かなり意見が対立したわけでございます。その他、カルテルの範囲につきましても、極力制限してほしい。こういうような点について、何点か政府考え方意見が違っておりましたのでございますけれども、その後の経過におきまして、政府のほうでも農業団体の主張を組み入れ、それからメーカー筋のほうでも農業団体の主張する点にもっともな点があるというような同意も得られまして、そういうような点が組み入れられて、いまの新法法案ができたようなわけでございますから、私どもといたしましては、この新法法案については賛成立場をとっておるわけでございます。  まあ、この経過過程には、硫安のようなものは、かなり肥料全体消費の中で小さくなっておるのに、どうして硫安だけ農業団体がこういう法律を主張するかという点、常に私ども聞かれたわけでございますけれども、それは私どもといたしまして、肥料は、窒素燐酸カリという三要素がどうしても要るわけでございます。ところが、この燐酸カリにつきましては、これは私のほうがかなり外国から直接仕入れをしまして、原価がわかっております。日本カリ消費の七〇%というものは、全購連が直接外国から買っている。したがって、幾らで購入しておるから、農民幾らで渡せば農民に不当に高いものを渡しておらぬ、それから燐鉱石についても、現在三割五分というものは直接外国から買っておりますから、燐鉱石価格もわかります。したがって、過燐酸関係の品物も、ほぼこの程度で買えば不当に農家は高く買わされておらぬ、そういうめどが私どもつきます。ところが窒素工業につきましては、何といっても膨大な装置工業でございますから、これは農業団体が自力でもってその適正な価格というものを判断できません。したがいまして、どうしても窒素工業のような巨大な装置工業につきましては、一つ法律があり、その法律に基づく調査権というようなものがあって、農民がこの程度で買えばそう不当なものでないという一つのデータに基づいて価格を指示しなければ、私どもとしては責任が相済まぬじゃないか、こういうような気持ちで、硫安そのものとしては小さくなっておりますけれどもしかし、肥料全体のあの中に占める意義というものは大きいものでございますから、新法のような形で、国が一つ調査をして、その調査に基づいて私ども一つ土俵をつくって、そこで折衝し合う、そういうようなことでございますので、私どもとしては、新法原案について賛成立場であります。
  6. 高見三郎

    高見委員長 次に、須賀参考人お願いいたします。
  7. 須賀賢二

    須賀参考人 私は、生産業界立場から、ただいま御審議をいただいております肥料法案に対しまして、考え方を申し上げたいと思います。  最初に、この法案に対します業界といたしましての考え方を総括的に申し上げますと、御承知のように、肥料二法が本年の七月で切れますので、それに続きます当分の間の肥料対策の裏づけとなります法制といたしましては、政府といたされましても、諸般の見地から十分に御検討を重ねられまして、今回提案をいたしておられるものでございますので、この法案に盛られております諸般措置が適正に運用をいたされますならば、生産業界といたしましても、本法案考え方に全面的に協力をいたしてまいる考えでございます。  肥料二法は本年の七月で満十年の施行期間を終わるわけでございます。われわれといたしまては、現行肥料二法を制定いたしました当時と、需給事情等も根本的に変わってまいっておりまするので、現行法は本年七月の期間満了をもちまして完全にその使命を果たした、終わったものと考えておる次第でございます。  それで、肥料二法に続きまする二法失効後の問題といたしまして考えられます問題は、これを大きく分けて考えてみますと、三点ばかりあるのではないかと考えますが、それにつきまして概略私ども意見を申し上げますと、第一は、内需確保の問題でございます。この法案におきましても、この点につきましては、いろいろ対策をとられておりまして、あるいは輸出承認制でありますとか、それぞれ政府として必要と考えられる措置をとっておられるわけでございます。しかしながら、われわれといたしましては、これらの措置を待つまでもなく、もはや今日の需給事情のもとにおきましては、内需確保という問題については、いささかも御迷惑をかけるというような事態は全然考えておりません。最近窒素肥料の国外からの需要が非常に旺盛でございますが、このような事態におきましても、現在内需確保につきましては、われわれ万全の手配をいたしておるという事実をごらんいただきましても、その点につきましては御理解いただけることと存ずる次第でございます。  次に、価格の問題でございますが、国内価格は、あらためて私から申し上げるまでもなく、肥料二法のもとにおきましては、政府においてこれを公定してまいったわけであります。新法では、これを生産者及び販売業者自主交渉によって取りきめるという体制をとっておられるわけでございます。われわれとしましては、今日の段階になりますと、それぞれ当事者間の自主交渉によりましては十分適正な価格を取りきめることができるというふうに確信をいたしておるわけでございます。少なくとも生産業者考え方としましては、この法案考えておられますような構想に基づきまして、自主交渉によって国内価格を取りきめるという線を進めてまいりたいというように考えておるわけでございます。したがいまして、政府におかれましても、価格の取りきめにつきましては、今回の新法案の実際の運用等にあたりまして、それらの点に十分御留意の上、御指導に当たられるようにお願いをいたしたいと思っておるわけでございます。  次に、この法案一つの柱をなしておりまする輸出体制整備の問題でございますが、この点につきましては、引き続き硫安輸出会社を一本の窓口といたしまして、日本から輸出をいたしまする硫安につきましては、一元的に扱ってまいるような体制になっております。最近のわが国からの窒素肥料輸出の状況を見ますると、大口需要者であります中共、韓国、台湾、さらにインド、インドネシア、これらの諸国におきましては、いずれも政府みずからあるいは政府機関において、一元的に買い付け交渉をいたしております。そういう形で交渉をいたしておりますものが、現在輸出いたしております肥料の八割以上を占めておるような実情でございます。したがいまして、わが国からの輸出体制につきましても、これを従来に引き続き一元的に調整をしてまいる必要がございますので、この法案に盛られております輸出体制整備考え方は、私どもとしても強く希望をいたしておるところでございます。  以上、主要な点について申し上げましたが、これを要約いたしますと、肥料二法のあとに続きますものといたしまして、今回提案されております肥料新法は、その法案内容をこまかく検討いたしますと、部分的には運用のしかたによって問題のあるところもあるかと考えますが、それらの点につきましては、当事者みずから適正な運用をいたしますように努力をいたすことはもちろんであります。国会政府におかれましても、それらの点について、今後の運用等につき十分御配慮をいただきますように希望いたす次第でございます。  以上、簡単でございますが、私の意見陳述を終わります。
  8. 高見三郎

    高見委員長 以上で参考人の御意見開陳は終わりました。     —————————————
  9. 高見三郎

    高見委員長 これより質疑に入ります。芳賀貴君。
  10. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは森川参考人にお尋ねしますが、私も農協単協の役員ですが、あなたの配下というか、系統の中に一応入っておるのです。  そこで、率直にお尋ねしますが、最近、これは二月以降ですけれども全国農協連合会あるいは単協から、肥料新法提案してもらってありがたかった、すみやかにこれを成立さしてもらいたいというような文書ないしは電報が、これは関係議員全部でございましょうが、きておるわけです。そうすると、その意思は、政府が現在国会提案して、われわれが審議しておる、いわゆる肥料新法なるものを無条件で早く通してくれ、こういう意味ではないかと思うわけです。これらは全く方向を同じくしておるわけですからして、たとえば全国中央会あるいは三連会長会議等においてそういう指示をされて、一斉に政府原案を早く通せというような要請、陳情運動が、農協の陣営においてやられておるのですが、その点についてちょっとお伺いします。
  11. 森川武門

    森川参考人 私どもは、新法ができなくて、現行の二法の失効無法状態になるということを非常におそれておるわけであります。そういう意味で、ぜひひとつ本国会で通していただきたいということに力点を置いて、先生方お願いをしたということじゃないかというふうに思っております。
  12. 芳賀貢

    芳賀委員 これは私が言うまでもありませんが、現在の法律期限は七月三十一日ということになっておるので、これは時限法ですね。法律が制定されてかち十年に及ぶわけですが、その間に一度現行法延長をやったこともあるのです。ですから、どうしても現在ある肥料二法というものは、期限が切れればなくなるという性格のものではない。肥料政策上、いまの肥料二法なるものが、たとえば農民立場から見ても、あるいは肥料製造業者立場から見ても、この二法というものは必要であるということであれば、その意思国会に反映して、さらに期限延長するという措置は、これは立法府においてできるわけですね。そういうことは皆さん御存じのわけです。ですから、無条件新法を通せということは、現行法は必要でないというような思想の上に立って、新たなる法律を現在の時限において早く通すべきであるという考え方の上に立っておられるのじゃないかというふうにわれわれは判断しておるわけです。どうも私たちは、現在ある肥料二法といま審議中の新法なるものと比較した場合に、これが必ずしも農民利益に合致する、あるいは現在の経済事情化学肥料工業の実態に合致するものであるということには考えられないわけです。そうであるならば、どうして現在の制度よりも改悪される新法無条件に早く通してくれということを——農民を代表する全国中央会、あるいは農民経済行為を代表する全購連において、無批判に早く通してくれという運動が行なわれておるということは、まことにこれは理解しがたい点なのです。とにかく、製造業者がこの新法賛成である、通してくれということは、製造業者は、現行二法にかわるこの新法のほうが、利害の上から見れば有利であるという判断に立っておることは明らかであります。ところが、農民側から見た場合、これを無条件で通せということは、結果的に肥料値段が高くなってもかまわないから、肥料新法を通してくれということと、これは同一の結論になると思うのですね。これは率直な質問になるわけですが、これらの点について、単にこれは肥料問題だけじゃないわけです。米価の問題についても、農産物の問題についても、あるいは畜産関係問題等についても、実際に農民利益というものが擁護されない、保証されないというような制度が、改悪の形あるいは法律時限が切れたという形で、次の制度と交代するようなことがあってはならないと思うのです。全購連の場合には、これは経済事業ですからして、全中の場合とはちょっと感覚が違うわけですね。森川さんのほうは、これは農政活動を重点にしてやられるわけですからして、何もかも全購連全中意見が一致するというわけにはならぬと思うのです。ですから、この際、肥料値段が高くなってもかまわぬから新法を通してくれという考え方というものは、これは非常に重大な点だと思うのです。したがって、率直な質問になりますが、これらの点について、森川さん、真板さんからできるだけ事態を明らかにしていただきたいと思います。
  13. 森川武門

    森川参考人 先ほど意見を申し上げたのでありますが、そのときにもわれわれといたしましては、内需の優先、それから価格がいま芳賀先生から御指摘のように高くなるというようなことでは困るから、そういうことのないように、ひとつ法律においてはっきりしていただくということを申し上げてきたのでありまして、その他、なお細部について、われわれとしても意見は持っておったわけです。そういう点が政府との折衝におきましてもいれられてきておるのでございまして、そうして現在提案されておる。こういうような事情にもありますので、私どもといたしましては、これにおいて、農民肥料問題についての利益擁護は、われわれが努力をすれば可能ではないか、こういうように実は考えておるのでございまして、何が何でもこれを通せ、こういうふうには言っておらないのでございます。少なくとも私どもといたしましては、これだけのことを内容とする新法をつくって、こういう土俵をつくっていただくのですから、その土俵の中でひとつ十分これは農民利益擁護のためにやれるんだ、私どもはそういう考えです。したがって、その点については、何といいましても、御指摘のとおり、これを実際取り扱うのは全購連でありますからして、私どもばかりでなく、全購連あるいは県の連合会、そういうところにも問題をおろしまして、十分実際の取り扱い面等も含めまして検討をいたしました結果、長い間の肥料法下におけるところの肥料取り扱いというような経験あるいはまた系統の力、こういうような点等考えまして、そういう点は可能ではないか、農民利益擁護は可能ではないか、こういうように考えておるのであります。したがって、そういうように考えますものですからして、失効された後において、ぜひひとつ無法にならぬように、この新法が制定されて、無法状態にならぬようにということの念願が強く出てきておるものですから、先生方にそういう点を非常に強調しておるということで、御指摘のような感じを抱かれたかもしれませんけれども、真意はそこにありますので、その点ひとつ御了承いただきたいと思います。
  14. 真板武夫

    真板参考人 先生の御指摘の中で、一体値段が高くなるようではしょうがないじゃないか、これは私どもといたしましては、硫安につきましては、現行価格より高くはならぬようにもう最善の努力をいたしたい、私どもはこういうふうに考えておるのでございますけれども、現在の価格はいままでのバルク方式で計算してできた結果でございますけれども、昨年ですか、硫安工業体質改善あるいは輸出赤字の補てんの意味で二百数億の資金が出ております。したがって、そうしたものの合理化メリットというものは、本年度のあれには出ておらないにしても、来年のコストの中にはそういうものは何らかの形で出てくるはずだ。また、最近輸出が旺盛ですから、各肥料工場稼働率も上がっております。装置工業ですから、稼働率が上がれば、それだけコストも下がるわけですから、したがって、私どもとしては、現行価格よりもさらに下がっていくという方向でなければいかぬし、またそれを私ども交渉過程において戦い取っていかなければいかぬ。それで、自主交渉ということになりますので、結局自分たち交渉を背後にいる農民がどれだけ支持するかどうかということが、私ども一番大きな問題でございますので、したがって、この新法法案審議される過程に、私どもとしては、みずからの組織ももっと強化しましてメーカー交渉に当たるということで、いま新しい運動を実は起こそうとしております。したがって、この価格が上がるようでは、私どもとしては責任が相済まぬ、こういうような気持ちでおります。
  15. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、法案内容に関連して、重要な点だけの御意見を聞いておきたたいと思いますが、第一の点は、現行法に比較した場合に、相違点と申しますか、その一つは、現行法の場合は、国が肥料年度の開始前に肥料審議会意見を聞いて、その年度肥料需給計画を策定して、公表しなければならぬということになっておるわけです。今回の場合は、その毎年度における肥料需給計画というものは策定されないわけですね。ただ、肥料需給見通しというものを政府が一応つくることになっておるが、それは内需あるいは輸出の生産全体に及ぶ具体的な計画性のある需給計画とは違って、単に輸出に対して政府が承認あるいは規制する意味において、硫安輸出会社硫安の譲り受け計画というものを立てて、それを政府に出して承認を求める場合には、政府はあらかじめ用意した肥料需給見通しに基づいて、認定を与えるということになっておるわけであります。昨日の農林大臣答弁によりますと、需給計画が需給見通しに変わっても、内容的にはそれほどの変化はないというような答弁でありましたが、これは質的にも変わってくるわけですね。ですから、当然、十年間法律を根拠にして毎年厳密に需給計画というものを検討し、策定して、それに基づいて、その肥料年度内需が、ア系肥料においてはそれぞれどのくらいの必要があるか、あるいはその年度における化学肥料の生産の一年間の実態を検討した場合において、どのくらいの総生産があるか、内需を満たした残りの数量はどのくらい輸出に向けなければならぬかということが、明らかにされて公表されるわけです。しかし、どうしても公表することが妥当でないという場合には、行政的に公表を避けて、関係者に対して、文書をもって需給計画内容を通達することができるということになっておるわけです。ですから、この点は重要な点であって、われわれといたしましても、新たなる法律をつくる場合は、やはり基本になるのは需給計画である。内需優先にこれを確保するという場合においても、需要と生産の計画というものが明らかにされない限り、なかなか内需優先とか、内需の優先確保というようなことは至難でないかと思う。需給計画というものが重大な支障を与えたということはないのです。ただ、輸出の面において、現在の肥料の国際競争というのは、輸出ダンピングのような様相を呈していることは御存じのとおりであります。そのことは、各国においても国内の肥料価格が高値で、輸出価格が安いという特色を持っておるわけですね。大体国内価格はトン当たり五十ドルとか、イタリアの場合には四十八ドルくらいですか、輸出価格はほとんど三十ドル台ということになっておるわけです。これは共通の特徴点で、これは何といっても輸出ダンピングの形で国際競争が行なわれておる。こういう点から見て、どの程度その肥料年度において輸出能力があるかということが、計画等を通じて明らかになることが——これは競争上差しさわりがあるとすれば、公表を避ける道も実はあるわけです。十年関の需給計画というものをことさらこれを抹殺して、根拠の薄い需給見通しなるもので、政府が内部的に処理するということは、大きな後退である。この点については、硫安協会の須賀さんにおいても、農林省の幹部職員として長年努力された経験を持っているわけでありますから、需給計画はつくるべきではないとか、必要はないという御意見ではないと思うのです。ですから、この点では、やはり農協団体においても強力に主張すべき点であると思うわけであります。これらの点についてはどのようなお考えを持っておられるか、聞かしてもらいたいと思います。
  16. 真板武夫

    真板参考人 先生の御指摘の点、ごもっともな点でございまして、私どもも当初、需給見通しを立てて、それを行政指導として関係者に通知はするけれど、法律上そういうものは書けぬというような点がありまして、私ども非常にこれは問題にいたした点でございます。ところが、実際に法案を私ども見まして、少し考え方を改めたのでございますけれども、それは、今度の需給見通しというものは、通産大臣及び農林大臣が責任を持ってつくるということはきちっと明記されておる点、それから需給見通しと申しても、実質は需給計画なんだ、ただ、今度の法律の立て方ということからして、需給見通しというふうに書いたんだというふうに私ども了解いたしまして、私どもが当初主張しておりました需給計画というのをおりたわけなんでございます。それから、現実に内需確保の点につきまして、私どもといたしましては、全体的な需給のバランスは合っておっても、地区的なポケット地帯ができて農民を困らせることがありはせぬか、この点につきまして私どもかなり懸念して、それを今回法律に明記してもらえぬかというような点があったのでございますけれども、これは私どもこの二法下で十年間やっておりましたが、もうここ五、六年というものは、実はこの二法の調整発動というものを待たずに、メーカーと私どものほうの自主交渉によりまして、ストック・ポイントを持つようなことをやっております。したがって、この地域的な調整の問題も、これは法律を待たずにもここ五、六年の経過がございますので、今後もそういう話を続ければ、ポケット地帯の解消ということは可能じゃないかというふうに判断いたしましたことと、それから政府の御意見といたしましては、今後かなりメーカーの在庫というものを立ち入り検査というふうな形にして、常に全国的な在庫の状況とにらみ合わせて、内需の不安がないように一そう努力すというふうな行政指導の御方針も承っております。したがって、この点は、私どもといたしましては、見通しということばでも、実質は需給計画である。それから内需確保の点につきましては、メーカーとの従来の話し合い、さらに政府の在庫検査を一そう厳密にするというような行政的な配慮を加えますと、内需確保の点につきましては、何とかいくのではないか、こういうように考えております。
  17. 芳賀貢

    芳賀委員 須賀さん、どうですか。
  18. 須賀賢二

    須賀参考人 私は、生産業界の関係者としての意見を申し上げますが、今回の法案では、ただいま御指摘のように需給給見通しという表現になっております。これは私ども立場から見ますると、これがどういうふうに表現をされましても、それほど実質的には大きな問題があるというふうには考えておりません。と申しますのは、こういう物資でございますから、年間需給というものは、これはもう常に先の見通しを考えながら、また実績をトレースしながら、仕事を進めておるわけでございまして、現実にメーカーメーカー立場、または需要者であります全購連は全購連立場、また政府政府立場からそれぞれ作業いたしまして、それらを突き合わせをいたしまして、一年間の見通しを作成していくというような実際の経過をとるのではないかと思っておるわけであります。われわれのほうでも、転出の面につきましては、これはもう常時私どものほうで現実に売買いたしておりますから、資料はわれわれのほうが多く持っておるかと思いますが、内需の動向等につきましては、農林省あたりでそれぞれ専門的に検討されましたものを使いまして、全体を組み立てておるというようなことをいたすわけであります。それで、今回は従来と変わりまして、従来の現行二法におきましては、需給計画というものと、それをもとにして、政府が原価計算をはじいてマル公をきめるということとが、一体になっておりましたので、ああいうきめ方になっておると思いますが、今回の場合は、先ほども申し上げましたように、価格自主交渉でありますし、それらの前提といたしまして、内需確保、またわれわれのほうから言いますと、内需輸出全体を通じまして、どういうふうな生産のプログラムを組むかというようなことも、仕事の資料になるわけであります。需給見通しという今回の考え方のほうが、むしろ実態によく合った表現なり考え方になっておるのではないかというふうに私は考えております。
  19. 芳賀貢

    芳賀委員 参考人の皆さんに議論を吹っかけるわけではないが、たとえばこれは森川さんも真板さんも御承知のとおり、飼料需給安定法というのがある。これは毎年一年間に消費する家畜のえさである飼料について、法律に基づいて需給計画を立て、特に政府責任において充当すべきものについては、食管特別会計を通じてことしからえさ勘定というものが独立したわけですけれども、これらはやはり明確な飼料の需給計画というものを審議会の議を経て政府が策定して、それに基づいて、国内の飼料の需給の安定あるいは価格の安定に資するということをやっておるわけです。やはり全購連としても、その飼料の流通の一半というものは分担しておるわけです。その商売上の立場から見れば、計画であっても見通しであってもかまわぬかもしれないが、政策上の見地からいうと、需給計画と需給見通しとは大きく質的に相違しておることは、常識的にもおわかりになる点だと思います。特に肥料の場合は、必要生産ということになると思います、年間国内における肥料の、たとえば種類別にしてどのくらいの需要があるかということ、これは過去の実績とか農業の動向、あるいはその変遷を判断すれば、おおよそ的確にわかるわけですから、その需要の計画に基づいて、メーカー側においてはそれにこたえる計画的な生産をやはりしてもらわなければならない。しかし、現在の企業規模からいうと、相当内需を満たしてまだ余りがあるわけですから、これは当然輸出しなければならないということになるのですが、これは農業の生産よりも、計画生産は化学工業の場合には可能なわけですね。ですから、十年間の経験を積み上げて需給計画というものを確立して、この農業の部面あるいは輸出部面についても、一方においては、合理化法に基づいて化学肥料工業というものが発展をしておるというのを、いまさら抽象的な需給の見通し、こういうもので十分であるというようなことは、これはいささかおかしいと思うのです。商売上、差しつかえないというだけのものではないと思います。参考人の御意見は、昨日の農林大臣並びに経済局長、軽工業局長の答弁と全く同じですからして、それは政府案に全面賛成立場で言われておるので、別に追求するなんという筋合いのものではありませんが、これは重大な点であるということだけは、一つ認識しておいてもらいたいと思うわけです。  それからその次にお尋ねしたい点は、需要者団体側におかれては、一番気にしておることは、価格交渉をやって、自主的にきめるのであるが、いわゆる従来いわれた輸出赤字なるものを国内の肥料価格に転嫁されてはかなわぬ、いわゆる輸出赤字非転嫁の原則というものは、今後も貫かなければならぬ、制度上それを十分保護するようにしてもらいたいという意見は、相当強かったと思うわけです。まあ、これらは、いまの生産者需要者の関係というものは昨日も申したのでありますが、平面的に見れば、これは買い手市場であるからして、いわゆる需要者側が不利益になるような交渉というものは行なわれないことは当然であります。ただ問題は、国内価格輸出価格が十何ドルも相違があるという点、これはやはり肥料メーカー立場から見れば、これを明らかに区分してコスト計算をするということは、今度はしないと思うのですよ。いいですか、その場合、やはり需要者側の立つべき根拠というものは、やはり従来は法律に基づいて国が調査権を持っておる。あるいはメーカー、さらに需要者から、政令に基づいた必要な報告というものを義務を負わして、報告を徴しておる。これを基礎にして、政府は毎年の原価計算というものをできるだけ適正に行なって、それを材料にして肥料の最高販売価格というものを決定したことは、御存じのとおりなんです。そこで、われわれは、昨日も、この調査権あるいは報告事項等については、今度は自主交渉の場合においても、政府のほうから資料を提示する、あるいは当事者が要請した場合においては、必要な資料というものを政府が提示するということにはなっておりますが、調査並びに報告の内容というものが、現行法の場合のその内容と、今度の新法調査、報告の内容というものは、質的にどう違うか、あるいは同じかということをただしたわけでございますが、どうも昨日の説明からいうと、今度の新法でいうところの調査権、あるいは報告の内容というものは、現行法よりも非常に内容が薄弱なものになるということが予測されるわけです。そうすると、十年間に及ぶこの価格論議の中においても、一番基礎になるのは、これは政府の原価計算における資料というものが重要な素材になっておる。これが内容が貧弱なものになった場合、皆さん方が交渉される場合に非常にやりづらくなると思うのですよ。ですから、われわれは国の調査権の発動、あるいは両当事者から報告を徴する場合においても、これは内容的には現行法と同様の内容のものでなければならぬ、こういうことを指摘しておるわけです。この点に対しては皆さん方はどうお考えですか。何でも政府がやってくれるものであれば足しになるというようなお考えであるのかどうか。  それから輸出赤字非転嫁というものを、どういう理論的根拠の上に立って、交渉をおやりになる場合には展開される確信があるか、その点をこの際お尋ねしたいと思います。
  20. 森川武門

    森川参考人 あるいは全購連のほうが適当かもわかりませんが、一応私から申し上げます。  確かに重大な点でございまして、それゆえに、私ども当初から、法律の中にコスト調査権というようなものをはっきり明記せられたいということを強く要望してきたのでございます。それは事情報告聴取権、あるいはまた検査権ということで、その中にも入れられておるわけでございますが、ただ、御指摘のどういう内容かということでございますが、私といたしましては、とにかく生産のコストが明確にわかるものであるというふうに理解をしておるのでありまして、そういう点をもとにしてひとつ価格交渉をやる。なお、もう一つ、言えることは、長い経験を持って、現在までのところ硫安メーカーコストがどういうふうになっておるかということも、大体全購連のほうでは、工場別に承知をいたしておるわけであります。したがってまた、今後の見通しにつきましても、硫安工業の合理化、あるいはまたその生産の状況というところを勘案すれば、そういう調査されたコストに基づいて、なお有利な価格折衝をぜひひとつやりたい、またそれはやり得るのではないか。というのは、なお、われわれといたしましては、この機会に、系統肥料購買についての共同計算方式といいますか、そういうのはもう一つこの段階において再検討し、この新法下におけるところにマッチした積み上げ方式をやっていきたいということで、系統の総力を結集するということをバックにして、強力な折衝をやっていきたい、こういうふうに考えておりますので、これはやってみなければわからぬわけですけれども、いまの状況においては、そういうことをやっていけば、まあとにかく農民の期待にこたえていけるのではないか、こういうようなことを考えておるわけでございます。
  21. 芳賀貢

    芳賀委員 肥料製造業者としても、消費者である需要者側においても、これは利害が全く違うというものではない。これはやはり総合的に生産者消費者というものがあって、初めて有機的な一つの形成がされるわけですから、それは話し合いで解決するということはできないという問題ではない。  ただ、ここでお尋ねしておきたいのは、政府の説明によると、需要者側を代表するものは全購連であるという、こういう前提認識の上に立っておられる。そこで、われわれとしても、われわれ農協の陣営にありますが、一体全購連なるものは、需要者である農民意思を最も代弁する機関であるかどうかという点なんです。いろいろ農業関係の立法によっても、生産者である農民を代表する生産者団体なるものが、耕作農民が直接参加しておる。まず農業協同組合、単協、あるいは都道府県の連合会、あるいは全国連合会のいずれかということになっているわけです。この法律には、どの農協団体でなければならぬとか、生産者農民を代表するものは何であるかという規定は全然ない。ただ、肥料の生産あるいは需要の両部面においてそれぞれ五〇%以上を取り扱うもの、それが交渉の相互の一方を代表する資格者ということになるらしいのです。ですから、この場合、全購連だけが農民を代表して交渉するのが妥当であるか、あるいは全国的にいえば、森川さんのほうの全国農協中央会も、やはり農民利益を代表する資格者として交渉の任に当たるべきであるか。これは同じ内輪だから、だれでもいいといえばそれまでですが、やはり中央会と全購連の場合には、同じ農協法に基づいてつくってある連合会であっても、その目的とか性格上にはやはり相違があると思うのですよ。こういう点についてはどうお考えですか。やはり全購連でなければならぬというふうに考えておられるか。
  22. 森川武門

    森川参考人 従来の全中と全購連の関係から申し上げましても、なお肥料取り扱い実態からいいましても、この折衝は、系統としては全購連というふうに私ども考えております。
  23. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、これは法律上に問題があるのですが、農業協同組合の団体交渉というのは、農協法自体の中で独禁法を排除しておるわけですね。そうでしょう。農業協同組合あるいは連合会としての共同行為は、農協を中心にしてやれるわけですからね。ところが、メーカー側が共同行為をやるという場合においては、その行為の幅を限定して、そうしてこれを独禁法から排除するということにしなければ、この相互の価格交渉というのはできないことになるわけですね。そういうことを考えた場合、どうしても全購連でなければならぬという根拠はないのです。全購連肥料を五〇%以上扱っておるから、これ以外は資格者はないということにはならぬという判断の上にわれわれは立っております。これは全国中央会でもいいと思うのです。ほんとうに農民利益を代弁して、相手方と十分折衝して成果をあげるという質的な内容を備えておれば、商売人の全購連でなければならぬというものでもないですね。これは今後法律運用上の問題ですが、これは単純に全購連がいいというわけにいかぬのじゃないですか。森川さん、どうですか。
  24. 森川武門

    森川参考人 それは、私ども考えておることは、折衝をするという場合に、ただいま言いましたように、系統の総力を結集したものをバックとして抗縛する、従来からもそうでありますが、そうすると、肥料の流通の実情、それから各地におけるところの価格というものも、実際こまかい問題はありますが、そういう実情を十分承知しておる、細部について承知しておるところの、肥料の実際の取り扱い団体が当たるのが一番いいのではないか、こういうふうに実は考えておるわけであります。そういう点からいきまして、系統では全購連、こういうふうに考えております。
  25. 芳賀貢

    芳賀委員 これは商売の経験があるからいいといえばそれまでですが、これはやはり農業協同組合法に基づいた農協の行為としてどうあるべきかということから判断した場合、全購連しかないのだ、これが当然だという、そういう軽薄な論というのは、やはり相当慎重を要するのじゃないかというふうに考えるわけです。これは問題点になると思います。  次に、この法律には、当事者価格交渉をやって、なかなか価格交渉の結論が出ない、いわゆる妥結しない場合があり得るのですね。その場合には、政府が助言とか、いろいろそれが妥結するように側面的な努力はすることになっておるが、それでも成立しない場合には、政府が調停に当たるということになっておる。それも調停に当たるということであって、最終的には調停案を示して政府が裁定するということにはなっていないのです。きょうの参考人の皆さんの御意見でも、どっちも話し合えばきまるのだからいいということですが、しかし、きまらない場合もあるのですね。まじめに交渉をして、メーカー側の主張が不当である、絶対譲れぬぞということでがんばる場合には、これは成立しない場合があり得るのですよ、まあまあということでいけば簡単にきまりますが、両方の正当な主張が対立してきまらぬという場合に、調停という段階に入るわけですが、それが裁定をするという性格は持っていないわけです。ここに大きな不備があるのです。これは政府案をつくるときに、農林省並びに農林大臣は、やはり裁定までいかなければだめだ、きめ手を持たなければ法律意味がないということを主張しましたが、通産省のほうは、いやそこまではやってもらっては困る、それには反対であるということで、なかなか調整できなかったわけです。それで、中途はんぱで、調停をやるということは法律にうたってあるが、裁定はしないのですね。こういう点はやはり大きな盲点になるわけです。これは森川さんも御存じのとおり、ことしの春以来、乳価交渉で都道府県のあっせん調停ができなくて、中央調停に持ち込んだ。ところが、現在の酪振法の規定においては、農林大臣が任命した中央生乳取引調停審議会にこれをかけて、そこで、調停あっせんの作業をしてもらうわけですが、これもやはり裁定をするというところまでいっていないのです。それで、わずかなところで数カ月努力をして、これも中途はんぱの結論が出たことで終わっているのですが、すべて両方の利害を代表する交渉というものは、それ自体がどうしても円満に妥結できない場合があり得るのですよ。その場合には、やはり政府が有権的に介入して、そして政府の行政的な立場あるいは国民的な立場から裁定を下すということにならなければ、当事者における交渉というものは十分に行なうことはできないと思うのです。こういう点はやはり重大な点だと思うのですが、やはり政府案どおりのまあまあ主義でいいものであるかどうか、この点に対しても御意見を聞いておきたいと思うわけです。
  26. 真板武夫

    真板参考人 私ども、今度の法案は、自主交渉というようなものを一つ価格決定の骨筋にしておりますので、私どもとしては、自主交渉をすればある程度話がまとまる、またまとまらぬ場合には、政府の助言があればそこでまとまるのじゃないか、さらにそこでもまとまらぬ場合には、調停でそこまでいけばまとまるのじゃないか。それがまとまらぬということを前提としたのでは、今度の新法案の意義が全然なくなるのじゃないかと思っております。実は自主交渉をしてきめておりますのは、硫安以外は全部自主交渉してきめております。したがって、そういう経験から徴しまして、私どもは、双方が自主交渉をしてきめられるんじゃないか、実はそういう気持ちでやっております。それじゃいいかげんにやるかというと、決してそういうわけではございません。私どもとしては、全農家の代表として、いまの価格を基準にして、将来の合理化メリットをどこまで農民が戦い取っていくかという問題でございますから、決して安易なものではないけれども、しかし、とことんまで話し合えばきまっていくんじゃないか、こういうような気持ちでおるわけです。それで、どうしてもそれできまらぬ場合には、これは私どもとしては、輸出関係の承認を政府が調整していただけばきまるのじゃないか。
  27. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、現行法によると、最高販売価格を決定される肥料硫安だけに限っておるわけですね。それから需給計画の対象になるのは、ア系肥料全体が対象になっている。そこで、いま真板さんが言われた、硫安以外は自主交渉でやるということは、硫安がまず第一に審議会の議論を経て、ここで最高販売価格がきまる、それ以外のア系肥料は、国が公定したいわゆる最高販売価格というものが基礎になって、あとは尿素であってもそれ以外の肥料であっても、いわゆる成分価から割り出していけば、大体右へならえで、これはきまるわけですね。今度は中心になる硫安が、政府がきめてくれないわけですから、これも自主交渉に入るということになるわけです。そこで、法律によると、政府は政令をもって特定肥料というものの内容を定めるわけです。特定肥料はあえて硫安だけに限らぬわけです。主としてこれはア系肥料になるとしても、政府が政令で定める。だから自主交渉というシステムになれば、単に硫安だけを法律に基づく交渉をするというのでなくて、少なくとも政府が政令をもって定める特定肥料については、硫安と同様に、これは法律を背景にして交渉によってきめるべきではないか、こういうことをわれわれは政府指摘してやらせる方針でおるわけです。この点についてはどうお考えですか。硫安だけを法律に基づいてやって、あとは従来どおりの話し合いのほうがいいとお考えになるか、これは須賀さんと両方から。
  28. 真板武夫

    真板参考人 私ども自主交渉できめておりますのは、ア系ばかりじゃなしに、過燐酸とか石灰窒素も自主的にきめております。それから硫安だけでなく、もっと広げたらどうかという御指摘でございますけれども、これは私当初陳述のときに申し上げましたように、カリ燐酸につきましては、全購連が海外にすでにその購入の手を伸ばして、ほんとうの原価というものをつかんでおります。ただ、どうしても私ども農業団体として手のつかないのは窒素でございますので、窒素については、ぜひ政府コスト調査したものをもって適正価格をきめてまいりたい。それで、そのほかの肥料と申しますと、今後大きいものと申しますと、化成肥料でございます。今後おそらく肥料の主流になるのじゃないかと思いますけれども、現在化成はまだ一つの普及段階でございまして、いろんな銘柄がございまして、おそらく全国何千種類という形がございます。したがって、こういうものは政府が云々といっても、成分がみんな違い、多少化学的な構造も関係ございますものですから、これは窒素燐酸カリというものの土台が一つできますと、そういうものをもとにしてまた自主交渉一つのあれができますものですから、私どもといたしましては、硫安をここで自主交渉できめるという形にいたしますと、これで大体ほかのものもいくのじゃなかろうか、こんなふうに考えております。
  29. 須賀賢二

    須賀参考人 新法価格交渉の対象にいたします肥料は、私どもとしましても、従来から肥料法下において、硫安を対象としてまいったわけでございますから、今後も、さしあたりはやはり硫安を中心として価格交渉をしていく。あと実際には、尿素を幾らで売買するか、あるいはまたいまの化成肥料幾らで売買するかということは、これはもう現実にきめなければならぬと思います。それは、いままで硫安をきめました場合、尿素をどういうふうにきめるか、化成はどういう、ふうにきめるかということは、おのずから経験的に一つのルールができておるわけです。そういうやり方で、硫安交渉の主体にいたしまして、あとは従来のやり方をおおむね踏襲していくということで当座はやっていくというのが、一番いいやり方ではないかと考えております。
  30. 芳賀貢

    芳賀委員 これは新法にも、特に特定肥料として硫安だけに限定してないのですね。たとえば協同組合の立場から見ても、特に農業資材等については、農業協同組合が農民を代表する団体として、製造業者等に対する団体交渉を経て、相当有利な適正な価格で取引をするということは一番必要なことなんです。こういう道が開けてないのです。それにもかかわらず、わざわざ特定肥料というものを政令で、何品目になるかまだ未定ですが、掲げるということになっても、なお硫安だけでよろしゅうございますというのは、ちょっとそれは変だと思うのです。それ以外は自主交渉でやっているというのではなくて、これは買い取り計画を行なっているのでしょう。交渉というのは——メーカー側の共同行為というものは、現在の独禁法から見ると抵触するのですね。ですから、法律でそれを排除して、こっちは農協の見地に立つから一々排除する必要はないが、メーカーを相手にしてやれるというところに、いわゆる交渉の価値や特質がある。従来やっておったといっても、そんなことはやってないと思うのです。だからこれは、やはり解釈がちょっとおかしいと思うのです。こうやりなさいとかいうのではないのですよ。認識の程度がわかればそれでいいのですが、少なくとも農民利益を代表するという場合は、できるだけ制度上の根拠というものを固めて、そうして独占化されておる資本に対して、協同組合の立場から十分対等に交渉するとか、そういう場というものを拡大する必要はあると思うのですよ。そうでないと、何か自由経済や商業主義のペースに巻き込まれちゃって、おれだけが知っているという、そういう安易感の上に立つやり方というものは、これは厳重に反省してもらわなければいかぬと思うのです。商売のことは商売人でなければわからぬということは、ややもすると相手のペースに巻き込まれて、そこでなれ合いの行為をやるということになりかねぬと思うのです。あなたは全購連の役員であり、経営者であるからして、そういうことは万般ないとしても、全国的にそういう弊害というものはあちこちにあらわれておるわけです。協同組合自体の収支のバランスさえとれれば、それに参加しておる農民個々の経営とか生活というものは、どうなってもかまわぬとはいっておらぬが、ややもすると貧農切り捨て論等が表面に出てくるということは、かなり思想的にそういう点が底流をなしておるのじゃないかということもいえると思うのです。これは老婆心ながら申しておくわけです。  それからもう一つ、これは須賀さんにお尋ねしますが、今度の肥料新法は、肥料工業に対しては特に政府が助長配慮するという条項は全然ないですね。従来の合理化法においては、肥料工業の近代化とかあるいは設備改善についても政府が助言勧告をして、そうして設備の近代化をやる、それに必要な資金等については、国が資金の融通、あっせん等をやるということで、この十年間合理化法に基づいて化学工業の合理化、近代化というものは進められてきたわけです。今度の法律にはそれが全くないわけですね。だからこの点については、自力でやってもらわなければならぬということに当然なると思うのです。ただ問題は、十年間における政府の保護、援助の成果というものは、やはり今後硫安あるいは尿素等製品の面にあらわれてくると思うわけです。いままであまりあらわれてなくても、合理化の成果というものは、これからだんだん表面に出てくると思うわけです。そういう点、合理化メリットに対する配分論等については、やはり相互折衝の場合、需要者側から指摘する点だと思うのです。ですから、そういう点については、今後硫安工業を中心とした化学肥料工業の分野において、メーカー自身が前向きに進む、そういう方針とか見通しというものは当然あるべきだと考えるわけですが、そういう点について須賀さんの見解を聞かしていただきたいと思うわけです。
  31. 須賀賢二

    須賀参考人 ただいま御指摘の点につきましては、現在の硫安工業の実態から申し上げますと、四、五年前の事態に比較をいたしますれば、かなり事態が変わっております。と申しますのは、合理化の中心でありましたガス源転換等の問題もほぼ一巡をいたしまして、もうあとは残っております工事が若干完成を待っておるという程度であります。したがいまして、今年度あたりの肥料メーカーの増資計画等を見ますると、肥料形態の転換に伴いまして、化成肥料の部門を拡充するといったような仕事の比重が非常に高くなってまいっております。したがって、合理化効果の今後のあらわれ方でございますが、これはまあ、過去に増資をいたしましたものの効果が今後引き続き出てくるということは当然でありますけれども、今後新規に増資をいたしますもので、従来のように大きく合理化効果を期待できるといったようなものは、従前に比較いたしますと、非常に少なくなっております。しかしながら、過去のもの、今後合理化投資をいたしますものを総合いたしまして、現実に出てまいります合理化効果は、今後の価格に何がしかの形において反映してまいる。これは今後の価格折衝の中で具体的に論議される問題だと思います。基本的には私はやはりそういうことであろうというふうに考えております。
  32. 芳賀貢

    芳賀委員 もう一点。これは硫安輸出会社は存続することになるわけですが、たとえば、新法がもしかりに成立した場合、輸出会社が輸出向けの硫安を譲り受けを予想して、政府の承認を得て一定数量買い取ることになるわけですね。その譲り受けをする場合、輸出会社が買い取る価格というものは、何を基準にして買い取るようにするか。従来はこれは国内の最高販売価格を基礎にして、そして輸出会社が委託を受けて輸出した。そういう経緯を持っておるわけですが、今度は内需価格は全く自主的な交渉によってきまる。したがって、輸出会社が輸出向けの硫安を買い入れる場合、その価格等については何を根拠にしてやるかということです。
  33. 須賀賢二

    須賀参考人 硫安輸出会社メーカーから買い入れます価格でございますが、これは一昨年の暮れに政府硫安基本対策を立てました際に、扱い方が基本的に変わりまして、去年の一月から買い取り価格を従来と変更いたしております。と申しますのは、一昨年までは例の国内価格で買い取りまして、現実に輸出をいたします価格との差損は、輸出会社に実績価格として積み立てをいたしたわけであります。その方式は去年の一月からやめまして、現在やっておりますのは、大体四半期ごとに、その四半期に現実に輸出会社が輸出をいたします品物の価格をもとにいたしまして、一つの見積りを立てまして、その値段で買っております。したがいまして、具体的に申し上げますと、かりにことしの四月から七月までの四カ月間の輸出硫安輸出価格平均が四十ドルといたしますと、四十ドルから輸出会社のチャージを引きましたものをメーカーから買い入れる価格にいたしまして、大体通り抜け勘定で、輸出会社としては損得なしという勘定でやっております。ただ、これは見積もりでありまして、実際に販売いたしました価格は実績価格としてやはり出てまいります。これは年度間を通じまして精算をするというような形で、現在のやり方では輸出会社は通り抜け勘定でありまして、輸出会社には差損も差益も出ないというような形であります。
  34. 芳賀貢

    芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、最近の硫安の生産事情を見ると、全体の生産量のうち、いわゆる合成硫安が六五%、回収硫安が二五%、副生が一〇%、こういう割合、それがさらに進んでおると思いますが、統計等によりますと、そういうことになっておるわけであります。そうしますと、現行法によると、合成硫安だけが最高販売価格決定の対象になっておったわけですが、回収硫安であっても副生硫安であっても、肥料としての価値、効果には変わりがないわけですね。そうなると、たとえば回収硫安だけでも五十万トンに及んでおる。それ以上にもなっておる。副生硫安にしても二十万トンをこえておるということになれば、これでは今後法律に基づいて交渉をやる場合、一体どういうような扱いをするかということになるわけですね。たとえば製鉄部門から生産される回収硫安等は、富士製鉄であるとか、八幡製鉄であるとか、これらは決して肥料メーカーではないわけです。ですから、共同行為を行なうカルテルの結成を行なった場合に、それらの会社はカルテルの結成に参加するのかしないのか、あるいは需要者代表である農協は、それらのものに対して、それを交渉相手として価格折衝を進める考えをいまから持っておるものであるかどうか、そういう点については、硫安協会としてもあるいは農協側としても、事前のお考えがあると思いますが、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  35. 須賀賢二

    須賀参考人 回収、副産、特に回収が年々増加をしてまいりますことによって、硫安の中の構成が変わってくる。それで、今後価格折衝はどういうふうにやっていくのかというお尋ねだと思いますが、やはり価格交渉の主体になりますものは、引き続き合成硫安交渉いたしまして、そこできまりますものを基準にして、回収、副産等については一定の格差をきめていこうというようなやり方で、私ども交渉に臨みたいという考えを持っております。したがいまして、合成と回収は現在のところ同じメーカーでございまして、同じメーカーが合成もつくっており、回収もつくっておる。大体そういう実態でございますから、その場合、合成硫安生産者が中心になって価格交渉をすれば、それをカバーする。副産の場合は、八幡とか富士とか、ああいう製鉄会社が副産的につくっておるものが主体でありますが、これはおそらく各社交渉ということであれば、その各社交渉の部面において、別に交渉するというようなことになろうかと思います。
  36. 真板武夫

    真板参考人 ただいま須賀さんのほうからお答えいたしましたように、私のほうも一応合成硫安価格を土台にいたしまして、回収なり副産の一つの格差を考えてまいりたい。しかし、その際、私どもは基準価格というものを一応団体交渉するわけでありますけれども、実際の契約は各社とそれぞれいたします。したがっって、カルテル内の会社については、一応その基準価格を土台にした月々の価格というようなことで交渉になりますけれども、カルテル外につきましては、私のほうが直接その会社とその実態に合わせて交渉する、こういうような形に考えております。
  37. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、たとえばメーカー側が共同行為をやる場合は、いわゆる予定される内需量の五〇%に達するだけのメーカーが参加しないと、これは交渉の資格を持たないということになっておるわけです。その場合、メーカー側だけで五〇%以上に達する共同行為の参加者を形成するということも当然できるわけです。ただ問題は、従来のバルクライン方式に徴しても、やはりコストの高い会社と低い会社では、相当大きな幅がいまでもあるわけです。ですから、その場合、いわゆる需要者側において相手側の選定権というものがあるのじゃないかということを実は昨日も議論したわけです。なるたけコストの低い会社というものを——これはこちらでわかるわけですから、内需に必要なだけの数量が集まればいいわけです。たとえば北海道においては、東洋高圧の砂川工場で年間十五万トンくらいの硫安を生産しておるわけです。北海道全体において一年間に十三万トンくらいの硫安があれば間に合うわけですから、需要と供給との間にそういう地域性もあるわけです。ですから、何でも相手さんが五〇%以上集まってくれば、それで御相談いたしましょうというものではないわけです。カルテルに対する参加、不参加はメーカー自身の判断であって、これは強制すべきものでないということは、法律にも書いてあるわけですから、その場合に、特に副生硫安等は、それが目的で生産されているわけではないのですが、それを最初から除外するという考えは間違いですよ。肥料を生産する業者というものは、カルテルに参加できるということになるわけだし、脱退もできるということになるのです。これは、あなたのところは副生硫安だから参加させませんなんというようなことはできないと思います。そうじゃないですか。そうすると、需要者側においてそのメーカーの相手を選択する権限というものが確立できるということにもなるわけです。これは非常に大事な点ですから、簡単にそれを相手にせぬとか、アウトサイダーとして扱うということに断定することは、ちょっと問題があると思います。
  38. 真板武夫

    真板参考人 その交渉相手としてのメーカー指定の問題につきましては、実はまだそこまで詰めて考えておりませんが、先生の御指摘は非常に大切なことでありますので、なおよく研究いたしたいと思います。
  39. 林百郎

    ○林委員 芳賀委員質問に関連して、森川参考人に一間だけ質問をさせていただきたいと思います。  御承知のとおり、きょうの参考人の方々は、現行法の空白をただいま審議しておる政府提出の措置法で埋めることがよろしいという方が三人そろっていらっしゃるわけです。しかし、肥料に関係する各方面の方々には、必ずしも皆さんと同じ意見の方ばかりではない。ことに生産農民である日農の側は、これについては反対しておるわけです。まあ比較的そういう人の立場も理解できる方というと、この三人の中で森川さんくらいしかないので、はなはだ失礼でありますけれども、あなたに質問するわけです。  あなたは、空白になるより、いま審議しておる政府提出の措置法がよろしいのだという御意見なんですが、そこをもう少し詳しくお聞きしたい。私はあなたと別に意見の戦わせをするつもりはないのであって、参考人ですから、われわれの法案審議の参考に供したいと思って、詳しくお聞きするわけであります。  言うまでもなく、現行二法ですと、最高価格について政府は決定権を持っておるわけです。今度は御承知のとおり、関係者のカルテル方式をとられるわけですが、この場合に、全購連メーカー側とどちらが価格決定について力を持つかということは、私自身としては結論を持っております。これは全購連がどういうことを言っても、最終的な決定権のウエートはメーカー側が持つことは当然じゃないかと思います。ことに調停は、先ほどの芳賀委員の御意見にもありますように、何ら強制力のない調停であります。一たんきまった価格も、その後の合理化によるコストダウンとか固定資産の償却によって、当然価格は下がらなければならないのが、調停ができなければ、そういう合理化のメリットが依然として独占され、継続されるということになりますから、これはもうメーカー側が有利になるのは、私は当然だと思います。そういう状態の中で、じゃ今度はあなたのおっしゃるように空白よりは新法がいいのだと言うが、空白のままで自由な取引にまかされた場合に、はたして過当競争で値段を高くするということが考えられるかどうかということですね。カルテル方式でするほうが、メーカーとしては、合理化のメリットを独占して高い値段をずっと維持できるという利益があるのじゃないだろうか。むしろ、各単協メーカーとの間の競争にまかしたほうが、農協やあるいは生産農民の側に立てば有利な条件がかち得るのじゃないかという面もわれわれ考えられるわけです。したがって、あなたの言われます、空白よりはましだということが、私わからないので、そこをひとつ納得できるように、現行二法では、こういう点が問題だ、空白になるとそれがどうなって新法が何で空白よりましかということを聞かしていただきたいと思います。そういう点です。
  40. 森川武門

    森川参考人 現行法のことにつきましての問題点ということでございますが、それは御承知のとおりですから、省略さしていただきまして、私どもは空白を避ければ何でもいいのだということは決して言っていないのでありまして、先ほど当初にも申し上げましたように、最低の保障といいますか、まず内需確保、農家が肥料を使用するのにその量、時期、そういうようなものに差しつかえのないように、これは必ず保障する。それからもう一つ価格でございます。これも不当に高くなるとか、あるいは不安定になるとかいうことではなくして、とにかく適正な価格確保する、こういう二点、これはどうしてもひとつ法律の中にはっきり規定して守っていく、これだけのかんぬきは入れるということにおいて法律をつくってもらわなければならぬ。こういうことにおいてひとつ空白は避ける、こういうことを実は申し上げてきておるわけでございます。それだけのことをやっていただければ、われわれといたしましては、農協の力を結集いたしましてメーカー側と交渉して、農民利益を擁護するということが可能じゃないかこういうように考えておるわけでございます。それで、空白になってもいいじゃないか、メーカーも数も多いし、量も相当あるから、そう高くはならぬじゃないか、むしろ過当競争で安く買える、こういうことがあるじゃないかというお話でありますけれども、これはやってみなければわかりませんけれども、確かに一時的にそういうことも現象としては部分的にあり得ると思いますけれども、少なくとも農業資材中に占める肥料の性格なりそのウエートを考えた場合に、それからまた、これはあまり長期ということもいきませんけれども、少なくとも中期的ですね、現在この法案は五年以内ということをいっておりますけれども、中期の見通しというようなものに立った場合におきましては、そういうような無法状態で、ただ自由競争にまかしておくということが、必ずしも農民利益にはならぬ、一時部分的にそういうことがあっても、終局的にはそういうことにならぬというふうに実はわれわれ考えるわけです。したがって、この段階におきましては、少なくともいまの二つの点をひとつ明確に法律で保証していただくということで、この空白を避けたい、こういうことでございます。そういう点におきまして、私どもの主張する二つの主眼点は大体貫かれる、主張が通るような法案内容になっておりますので、私どもは、これでひとつ二法失効後の空白を避けたい、ぜひ避けることが可能なようにお願いを申し上げたい、こういうふうに言っておるわけであります。
  41. 林百郎

    ○林委員 これはあなたが一番生産農民の側に近い立場にあるということから、特に私は、質問をかねてこれは要請しておくわけですが、あなたは、本法案が国内需要を確保するために必要だと申されますけれども、問題は、本法案の本質は、やはり何と言っても輸出に対する赤字を国内で埋めるという本質は、私は変わりはないと思うのです。ということは、業界のどなたもお考えになっていると思う。今日の輸出の好況がそんなに長期に続くはずはない。これはもう三、四年といわれておる。それに備えて、むしろこのときに輸出による赤字を国内で埋める、これは西ドイツ方式といわれておりますけれども、固定部分を国内の価格で全部埋める、比例部分だけを輸出で埋めればいいのだという方式は、メーカーのほうは腹の底では持っておられると思うのです。国内の需要確保できないのが心配だとあなたは言いますけれどもメーカーのほんとうの腹は、国内で再生産の保障をとりたいという腹ですから、国内を犠牲にして国外に出すというようなことはあり得ないことなんです。かりに国外に出すとしても、各国みなダンピングしております。日本メーカーが国外に出してもうかるような値段で出せるような甘い情勢ではない。アメリカも出てくる、西ドイツも三十ドルくらいで出しております。そういうことを考えていただいて、あなたのおっしゃるような点で、この法案賛成しているのは、実は将来の見通しを誤ってあなたが意見を述べられたということのないように、十分な警告を発しまして、何と言ったってメーカーは国内需要を中心にし、国内需要の利潤にウエートを置いて、国外は合理化で増産したものの一部を需要があれば売っていくが、それはむしろ比例部分だけをそこでとればよいので、固定部分の償却は国内でとる、こういう形を考えているのじゃないかと思いますので、その点を十分考えていただきたいということで、私の意見かつ質問を終わります。
  42. 森川武門

    森川参考人 いまのは非常に重要な点でございまして、この点につきましても、申し上げましたとおり、私どもは大いに農民利益擁護でがんばらなければならぬ。ついては、そういうために、ぜひひとつコスト調査というものをやっていただいて、それを知らしていただく。なお、何回も言いますように、新しいわれわれの系統農協肥料共同計算方式を積み上げまして、農民意思を結集して、それをパックにひとつ肥料交渉価格交渉をやる、こういうことにおいて、輸出赤字が転嫁されるあるいは不当に価格が高くされるということは、絶対防ぎたい、こういうつもりでおりますので、その点もひとつ御了承いただきたいと思います。
  43. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、真板さんにお尋ねいたしますが、現行法でちょうど十年間、毎年硫安の最高販売価格がきめられて、取引が行なわれたのですが、十年間毎年全購連が主体になった取引価格は、最高販売価格だけで終始しておったのですか。それ以上に売ってはならぬという法律で、安いのは幾ら安くてもかまわぬということですが、実続に徴してどういうふうになりますか。毎年度価格ですね。法律は最高販売価格しかきめていないのだから、それ以上高くはメーカーは売れないが、それより幾ら安くとも法律に抵触しないわけでしょう。だから需要者側の農協としても、何か最高価格でなければ取引できないわけではないのですから、過去の実績はどういう推移をたどってきたか。
  44. 真板武夫

    真板参考人 年次別にこまかく分けた資料はここにございませんけれども、大体政府のきめられたものに対して、年によっては二円、年によっては三円、あるいはメーカーによっては五円というような形に——どもとしては大量購入をする立場でございますので、そういうふうにやってまいっております。それから尿素につきましては、硫安価格を基準にしまして、尿素は尿素の一つの合理的なメリットがあるわけですから、したがって、硫安換算しまして尿素化することによってのメリットというものをはじきまして、そうして尿素の価格をきめてやっております。
  45. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、最高販売価格は告示になるわけですが、毎年度の取引価格というのは年度によって違うわけですね。二円とか三円とかあるいは五円、それより下回った価格メーカー側との取引が行なわれる、そういうことなんですか。表面は最高販売価格の契約であって、実質的には何かリベートというような形で、それより三円とか五円下で取引をしたということですか。立ち入るようですが、その点はどういうことですか。
  46. 真板武夫

    真板参考人 結局政府が一応提案される価格あるいは決定価格というのは、最高販売価格ですから、その価格で買わなければならぬということではございません。したがって、私のほうはその年々の需給状況によりまして、あるいはメーカーの実態に応じまして、多少そこにそういう措置をとっております。
  47. 芳賀貢

    芳賀委員 以上で私の質問を終わりますが、ちょうど十年前の二十九年の国会現行肥料二法が成立したわけで、私もその一員として審議してきたわけです。あの当時を顧みると、農協を中心とした生産者団体も、相当真剣に迫力のある態度で、いわゆる肥料二法の成立に対して熱意を燃やした。われわれとしても、審議の中において、政案というものを大幅に修正して通した経過があります。ところが、十年たった今日、失礼ではありますが、その気魄がないのです。あの当時は、農民利益を守るためには、権力に対抗してでも貫くという気魄があったが、最近はおとなになったせいか、どうも政府与党となれ合って、まあまあこの程度でいけばいいだろうということで、むしろ、農協が組合員である農民を説得するような立場に回った。これは皆さんから見れば、成長したというふうに自負されておるかもしれぬが、われわれから見ると、十年間における国会委員会の歴史を顧みた場合に、いささかもの足らぬ気がするわけです。特に今回の参考人の御意見を聞いても、須賀さんの意見もあなたの意見森川さんの意見も同じなんですね。同時に、農林大臣の意見も松岡さんの意見も、皆さんと同じことなんですよ。こういうことになると、もうこれで日本の農政は十分であるということで満足感にひたっておられるようにも思いますが、その点はどうなんですか。
  48. 真板武夫

    真板参考人 実は芳賀先生のおっしゃるように、何か今度は農協は初めから腰が抜けておるじゃないかというおしかりも受けたのでございますけれども、これは林先生の御質問にも関連するかと思うのでございます。お前たちの判断が間違っておるというおしかりを受けるかもしれないのですが、二法の再度延長ということがなかなか至難な情勢にある。それで、完全フリー段階になった場合に、私どもいろいろ想定いたしますと、完全フリーといっても、ほんとうの完全フリーかというと、そうではございませんので、メーカー側としますと、輸出入取引法に基づいて、輸出カルテルが当然結べることになります。そうしますと、それが反映して、どうしても国内でもかなりカルテル的な行動がとられる。そうすると、農村側のほうは丸腰になって、無法状態になった場合に、相手側のほうは、かなりカルテル的な色彩が濃という形になりますと、全体とし体農民利益になるかどうか。また市況の問題にいたしましても、林先生おっしゃったように、経過的には一時の過当競争でかなり安いものが出る公算が考えられます。しかし、安いものが出るということは、同時に、こういうような輸出好調の零囲気になって、また非常に高騰するという危険もあるし、またそれが全体としてはバランスがとれておるけれども、地区的にたとえば需給がアンバランスになると、そこに業者のつけ込むすきも非常に出てくる。したがって、私どもといたしましては、低位安定、とにかく漸進的に引き下げて、しかも安定した価格で農村に供給するというような立場、これが一番いいのではないかということを前提にいたしまして、実はこの法案賛成立場をとっております。同時に、それじゃお前たちはバルクのあれを放棄して何事かというおしかりを受ける点もございますけれども、私どもといたしましては、二法の大きな骨筋になるものはやはりバルクだと思うのです。したがって、バルクを主張する限りは、なかなかゆるい法律でもつくりにくい。したがって、二法をつくる段階農協と、それから十年たちましたいまの農協は、先生方におしかりを受けるかもしれぬですが、やや組織的に固まってきたのではないか。まだ不十分な点は多々ございます。しかし、あのときの段階からみれば、やや力がついてきたのではないかと思います。しかし、現在でも不十分でございますから、さらに一そう組織連動を固めて、自主交渉の場に臨んで、現在の価格基準について、将来の合理化メリットをどこまで農民が戦いとっていけるか、ここに組織の重点を置いて、メーカーと戦っていきたい、こういう実は気持ちでございます。ですから、どうも二法をお前ら放棄して腰抜けじゃないかというおしかりを受けると、実際私どももつらいのですけれども、そのようなことで、今後私どものやっていく上に——事業機関ですから、どうしても手ぬるい点が多々あると思うので、これは先生方の御鞭撻を仰がなければできないと思うのですけれども、そのような素っ裸でぶつかってみようという気持ちで、結論は林先生のおっしゃったように、この資本主義社会ですから、かなわぬかもわからぬですけれども、しかし、そういう過程を通じながら、さらに組織を鍛えていきたい。私どもとしては、精根を尽くして今後の自主交渉にこたえる、このように気持ちだけは張り切っておるわけなんです。どうぞひとつよろしく御鞭撻なり何なりを願いたいと思います。
  49. 高見三郎

  50. 稲富稜人

    ○稲富委員 実はただいま真板参考人からお話がありましたので、重ねて聞く必要もないかと思うのでありますが、いまの芳賀君が質問いたしましたことに関連があるといいますか、結論としてお尋ねいたしたいと思いますことは、大体真板参考人考え方というのは、現在の肥料二法が存続されることが非常に望ましいのだ、ところが、肥料二法の存続というものがなかなか困難な状態に立ち至ったので、やむなく今度の新法にわれわれは踏み切ったのだ、この新法ができることによって、肥料価格というものは、自主交渉によって、現在よりももっと安く農民のために提供できるような情勢がくるものだという見通しをつけて、そういう方向に将来われわれが戦っていきたいのだ、それだから、もうこの新法を支持するのはやむを得ないのだ、こういう結論のように聞いたのでありますが、その点を結論だけ伺っておきたい。
  51. 真板武夫

    真板参考人 私ども硫安価格につきましては、現時点の価格よりさらにひとつ引き下げる、これを実現したいという気持ちでいくつもりでございます。
  52. 稲富稜人

    ○稲富委員 これは須賀参考人にお聞きしたいと思うのでありますが、須賀参考人は先刻、将来の硫安価格の問題は自主交渉によって十分でき得るのだ、こういうような自信のある見通しの御説明があったのでございます。ただ問題は、自主交渉になって、肥料価格というものは、消費者側が希望するような価格にまとまるかどうかというところに大きな問題があると思うのです。なぜならば、現在の肥料メーカーは、御承知のように非常に数が多いし、生産コスト面においてもコストが非常に違う。現在の肥料メーカーというものに対して、それほど統制のとれた、自主的にこれをまとめ得るだけの自信がどれほどおありになるか、ここに問題があると思うのでありますが、この自主交渉によって、十分消費者側の要望に応じ得る、こういう心がまえがあるかどうか、それができるかどうか、この点私たちは非常に憂慮するわけでございますが、この点をひとつ承っておきたいと思うのです。
  53. 須賀賢二

    須賀参考人 御指摘のように、メーカーの数もかなり多いわけであります。これはどういうふうにまとめて交渉していくかということは、現実にその事態に入ってみませんと的確なことを申し上げかねますが、われわれといたしましては、今回の新法構想が打ち出されました段階におきまして、従来の二法のいき方を大幅に変えまして、今後は自主交渉値段をきめていくという精神をどうしても貫かねばならぬという考えは、非常に強く持っておるわけでございます。それで、ただいまお話がありましたように、消費者側が納得のいくような線に、メーカー側としてはメーカー内部をまとめ得るかという御質問でございます。どの辺が消費者側の納得のいく線であるか、これは今後の交渉によるわけでありますが、私どもといたしましては、従来の価格という一つの基準もあることでございまするし、全然新しく白地に字を書くような問題ではございませんので、おのずから両者誠意をもって交渉いたしますれば、妥当な良識的な線におさまるものではなかろうか、またそういうところへ持っていくというまとめ方はいたすつもりで、現在いろいろ準備をいたしておるわけでございます。
  54. 稲富稜人

    ○稲富委員 その点は、自由の取引ならば、過当競争によって生産コストの高いものは当然落ちていくということになるわけでございますが、現行法においても、価格決定の場合に、硫安協会として一番問題のあったのは、やはり生産コストが非常に違うということだと私は思うのでございます。そしてこれに対して同じメーカーのほうで、価格に対する統一というか、何かそこに統制のあるような状態ができればいいけれども、それもできないというようなことから、つい生産コストの高いもののめんどうを見なければならぬということになるのではないか。ここに私は問題が起こってくると思う。ところが、今回は自主交渉でございますから、なおさらそれをあなた方のほうでまとめるのに困難ではないか。事情は、それほどメーカーの生産コストがまちまちである。この点をわれわれは非常に憂慮するので、この自主交渉によって何とかなるのだ、何とかしなくてはいけない、そういう熱意のあるところはわかりますけれども、現在の状態においてそれがなし得るかどうか。たとえば今日まで肥料生産に対して合理化生産をやれということを政府は言っている。何も資金面に対するめんどうを見ないで、ただ合理化生産をやれと言うだけでは、実際の価格の値下げができないというような状態でございますので、現行のままで自主交渉に持っていけば、これは何とか解決するのだということではどうも弱いのではないか。もっと積極的な、自主交渉をやる以上は、生産者メーカーに対してはこういう交渉を持っていくのだというような見通しでもあるならば、その点承っておきたい。現行のままで、ただ自主交渉だけで何とか話をまとめていくということではなくして、もっと積極的に、自主交渉でまとめるのにはこういう腹案もあるのだというようなメーカー側の御意見でもありましたら、それを承りたいと思います。
  55. 須賀賢二

    須賀参考人 新法が成立いたしました暁には、自主交渉に入るわけでありますが、お話のような具体的な点につきましては、メーカー側としてもまだ十分その体制を固めておるというような段階には参っておりません。あと数カ月の後に新法下の交渉を控えまして、それぞれメーカーとしてもそれに対応する態度をきめていくわけでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、自主交渉体制に入って新しい取りきめの方法によって価格がきまるといたしましても、現在のコストに相当の幅のありまする全工場が、価格の面で十分従来よりも満足するような姿に持っていくというような考え方考えているわけではないと思います。それはやはり、先ほど申しましたように、おのずから売り手と買い手の間できまります一本の価格でありまして、別々にきまるわけではございません。一本の価格としてきまるわけであります。その価格の幅にはおのずから限度があるわけであります。やはり各メーカーとして、新しい事態に対処いたしましてどういうふうに自分の企業を持っていくかということは、それぞれのメーカー立場考えておるわけでありまして、メーカーとしても、自主交渉によって価格がきまるということに対して、決して甘い考え方はとっておらないと思います。
  56. 稲富稜人

    ○稲富委員 最後に一言。自主交渉による価格決定というものも、この新法考えておるように簡単にはなかなかいかない、これはやはり消費者側と生産者側との意見の食い違い等もございましょうし、非常に困難性があるのだということだけは一応予想するだけの余地はある、予想しておかなければいけない、こういうことは言えると思いますが、その点どうでございますか。
  57. 須賀賢二

    須賀参考人 交渉経過といいますか、交渉のプロセスは、私は相当紆余曲折があるだろうと思います。相当時間をかけて結論を出すというような性質のものであると考えております。しかし、新法のもとにおいては、生産者需要者ともに自主交渉値段をきめるという考え方を貫いていくだけの覚悟を持ってやりますれば、私は、値段自主交渉によってきめられるものだというふうに確信をしております。
  58. 高見三郎

    高見委員長 林百郎君。
  59. 林百郎

    ○林委員 委員長の御了解で、一問だけなものですから、十分な質疑はできないと思いますが、私は特に森川さん、真板さんに御質問したいのです。  先ほどから森川さんもそうですし、須賀さんもそうおっしゃっているのですが、国内の条件が変わってきた。これはおそらく皆さんの言うことは、むしろ、過去は国内の過剰対策が重点だったけれども、今度は国内の不足対策考えなければいかぬような状況に変わってきておる、輸出が非常に好条件になってきているのだということをおっしゃっていると思うのです。私は本法案を通過させようという人たちのにしきの御旗がここにあるということを見抜いておるわけです。それでは現行法が制定されました昭和二十九年ごろ、はたして過剰対策のためにできたかと申しますと、これはもう須賀さんも御承知のとおり、昭和二十七年当時約四十万トン過剰在庫がありまして、これをインドへ大幅な安値で、国内価格よりもダンピングをした。その赤字が日本の国内の農民に転嫁されたということから、これは、このままにしておけないということで、現行二法ができ、最高価格を押えるという形で出てきたわけです。やはり現行二法の本質は、この赤字輸出対策をどうするかということであって、過剰対策でなかったわけですね。そうすると、今日やはりメーカー側の考えていることは、この赤字輸出対策をどうするか、ことにいまは若干好条件にあるけれども、この好条件が長続きするかどうかということに対する対策と、もう一つは、国内価格輸出価格を区別して、少なくとも輸出価格は、国際的な輸出価格というものが方々にありますから、これと対比すれば、さっき言った比例費ですか、これをカバーする程度で競争力をつけるよりしかたがない。そうすると、固定部分は国内に転嫁せざるを得ない。これはやはり赤字輸出対策メーカーの腹の中は、一つは、国際輸出価格と競争するためには、国内価格並みでは輸出できない。少なくとも西ドイツ的に考えて、比例費部分だけを最悪の場合は補う。固定費部分は国内でまかなうということと、やはりこの輸出の好況状態がどのくらい続くだろうということを考えておやりになっているのじゃないかというように私は考えるわけです。したがって、皆さんは状態が変わったからと言うけれども、かって二法がつくられた赤字輸出対策、それが農民に転嫁されるというためにつくられたこの法律、このことの本質は、いまも条件は変わっていないわけです。そのことについてどうお考えになるか。ことにメーカー側に百価数億余の、開発銀行をはじめ市中銀行が政府の考慮によって投資をし、合理化をし、そして税金の点についてもあらゆる考慮をして、赤字輸出については商法の特例を設けて、赤字償却を損失として埋めなくても配当できるようにという、あらゆる便宜をはかってきた。それはみんなわれわれの国民の税金や国民の財政的な負担でやっているわけなんです。そしてようやく合理化がやや完成を見、これからコストダウンしなければならないというときに、須賀さんとしては、はなはだ聞きにくいことと思いますけれども、カルテル方式でその合理化のメリットを継続しようというのは、あなた方が口でおっしゃることと腹の中がはたしてほんとうかどうかということを私は疑わざるを得ない。先ほどからあなたは、誠意を持って——何か政府質問のようになって恐縮でございますが、誠意を持ってきめれば合理的な価格がきめられると言うけれども現行二法だって、メーカー側が昭和三十七年に肥料審議会審議を拒否している結果、そしてこの合理化計画に対してどのような責任をとるかということが、いまもって明確にされていない状態で、生産農民立場に立って、そのことも考慮して、はたして誠意を持ってカルテル価格がきめられるかどうかということについて、私は疑わざるを得ない。真板さんのほんとうの腹は、メーカー側と妥協して自分の購買権を一手に握ろう。もしここでカルテルに協力しなくて自由にやられれば、あなたがいま持っている販売、購買権がくずれてしまう。そこで、若干メーカー側と妥協しても、全購連の持っている購買、販売のこの権利を自分で握ろうという気持ちが腹の中にあるのじゃないですか。われわれ国会議員は、皆さんのきれいなことばを聞いただけでは審議の責を果たせないので、あなた方の腹の中を推測しながら審議しませんと国会議員の任務が果たせませんので、あなた方の腹の中を一応お聞きしたいわけです。
  60. 須賀賢二

    須賀参考人 いまお尋ねの問題につきまして、詳しくお答えいたしますと相当時間がかかりますが、簡単に要点だけ一言お答え申し上げけす。  輸出赤字というものについて、今後メーカーはどういうふうに考えているかという問題でありますが、これは端的に申し上げますと、赤字が発生いたしませんならば何も問題はないわけです。それで、私どものほうは、今後の販売態度としましては、輸出赤字の出ないように売る、というのは、国内価格と同じ、少なくとも国内価格を下回らないように輸出するということで、目下努力しているわけであります。現実にだんだんそのさやは詰まってまいりまして、最近韓国に売りました硫安は、FOBで四十四ドル五十セントでありますが、これは輸出チャージその他をこまかく計算いたしますと、国内価格とのさやは非常に接近してきているわけです。われわれとしましては、引き続き輸出面の価格交渉について努力いたしましてそのさやを極力少なくするということで、企業としての自立採算を確立してまいりたい。国内価格を引き上げることによって輸出赤字をカバーするという考え方でなく、ちょうど国際的にも需給が緊張しておりますので、こういう機会をとらえまして、ただいま申し上げましたような方向で、硫安企業全体の収支のバランスをとっていきたいという考え方で臨んでいるのであります。
  61. 真板武夫

    真板参考人 先生の御意見は、こういうのは全購連の現在の供給力、権限を維持するためじゃないかということですが、私どもはこういうふうに考えているのです。全購連自身の行き方については、いろいろ従来御批判もございますし、私どもも仕事のしかた自身についていろいろ反省してまいらなければならぬ点は多々あると思いますけれども、ただ、六百万の農民がばらばらでは、独占が非常に進んだいまの段階ではいけないので、購買力なりあるいは販売力というものを集中することが、長期的に見れば農民利益になるのじゃないか。したがって、私どもいろいろ至らぬ点が多々ございますけれども、しかし、長期的には農民利益になろうということで、結局肥料の問題にしましても、低位に安定させる方向にしてまいろうという気持ちを十分持ってやっております。ですから、単に事業欲、経営欲という角度だけからやっておるのではありませんで、先生のいろいろの御意見をまた仕事の面に生かしてまいりたいと思いますので、どうぞひとつよろしくお願いいたします。
  62. 高見三郎

    高見委員長 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  参考人各位には貴重な御意見をお述べいただき、本案審査に資するところ大なるものがあったと存じます。まことにありがとう存じました。  午前の会議はこの程度とし、午後一時より商工委員会との連合審査会を開会いたします。  この際、休憩いたします。   午後零時五十分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕