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1964-03-24 第46回国会 衆議院 商工委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十四日(火曜日)     午後零時二分開議  出席委員    委員長 二階堂 進君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君    理事 始関 伊平君 理事 中川 俊思君  理事 早稻田柳右エ門君 理事 板川 正吾君    理事 久保田 豊君 理事 中村 重光君       内山 常雄君    浦野 幸男君       遠藤 三郎君    小沢 辰男君       海部 俊樹君    神田  博君       佐々木秀世君    田中 龍夫君       田中 正巳君    田中 六助君       中村 幸八君    野見山清造君       長谷川四郎君    南  好雄君       村上  勇君    大村 邦夫君       桜井 茂尚君    沢田 政治君       楯 兼次郎君    藤田 高敏君       森  義視君   米内山義一郎君       麻生 良方君    加藤  進君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         通商産業政務次         官       田中 榮一君         通商産業事務官         (大臣官房長) 川出 千速君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         中小企業庁長官 中野 正一君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    柏木 雄介君         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    山下 元利君         大蔵事務官         (国税庁直税部         長)      鳩山威一郎君         専  門  員 渡邊 一俊君     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業近代化資金助成法の一部を改正する法  律案内閣提出第七二号)  中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第七五号)  中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出第七三号)  通商に関する件(日韓貿易に関する問題)      ————◇—————
  2. 二階堂進

    ○二階堂委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業近代化資金助成法の一部を改正する法律案中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案及び中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案、以上三案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。桜井茂尚君。
  3. 桜井茂尚

    桜井委員 私はこの前、企業ということの定義につきまして大臣に御質問いたしましたが、あとで御答弁下さることになっておりましたので、ひとつ御回答をお願いいたします。
  4. 福田一

    福田(一)国務大臣 確かにこの前桜井委員からそういう御質問があったわけでありますが、まだ実は事務的に詰めておりませんので、あるいはあとで訂正をさしていただくかもしれませんが、私は、個人もしくは法人が、利益の追求といいますか、営利目的として、そうして事業を営むものを企業と見るべきである、こう考えます。
  5. 桜井茂尚

    桜井委員 ほぼそういうことだろうとは思いますが、では私から申し上げますから、大体そうだとお思いになったら……。企業定義につきましては、戦前の法律にはあまりございませんでした。戦後におきまして、これは多く中小企業の問題をめぐりましてそういう定義が使われるようになってまいりました。法律学者見解によりますと、たとえば大隅健一郎さんは、企業とは一定の計画に従い、継続的意図を持って常利行為を実現する独立の経済単位である、こう申しております。そのほか西原さん、石井さん、たくさん私調べてございますが、しかしたいして違いはございません。経済学者見解から参りますと、もちろんこれは資本主義の内部において行なわれるものであって、剰余価値を追求する私企業であるということになっております。岩波辞典をとりましてもそうでございます。したがって、大臣のおっしゃられたことの中に、計画的、継続的意図を持ってということをつけ加えれば、ほぼ学者の言うことと同じことだろうと思います。このことを大体お認めくださいましょうか。
  6. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のとおりだと思います。
  7. 桜井茂尚

    桜井委員 そういたしますと、実はこの前大臣がお帰りになったあとで、私いろいろと質問しておったわけでございますけれども、たとえば事業所の総数が、三十七年の統計によりましても、日本で三百五十六万事業所がある。そのうち個人事業所個人と申しましても一人ないし二人、そうしてまた家族だけでやっているというもの、家族だけの事業所の数がほぼ百数十万ありますし、一人ないし二人ということをとりますと、事業所のうちで二百万ございます。その中で最も多いのはもちろん小売り業であります。小売り業が二百三十八万、卸その他を入れまして二百八十万くらい。それから飲食店が三十万くらい、サービス業が八十万くらい、このくらいございますが、こういう分野におきましてはそれがことに多いのであります。一例を小売り業にとってみますると、月十万円以下の売り上げというのが七十二万ございます。月十万の売り上げといたしますと、二割五分所得を上げたといたしましても二万五千円でございます。そうしてまた、その三十七年の都市勤労者世帯収入平均を見ますると五万一千円でございます。そうして勤労者賃金を見ますると、平均賃金が二万九千円、しかるに十万の売り上げでは、夫婦二人でやりましても二万五千円の所得しかないとしますると、その中には利潤部分がないと思います。利潤部分がないといたしますると、これは企業であるかどうか。二十万にいたしましても、二人で働いて五万円であります。二十万以下になりますと、商業だけでも九十万ございます。これは企業であるかどうか。いま申し上げましたように、大臣お答えのとおり、利潤部分がなければ企業でないのです。しかるにそれがないと私は思いますが、大臣はいかにお考えでございますか。
  8. 福田一

    福田(一)国務大臣 私とあなたの応答の中でも、利潤を追求する、あるいは営利目的とする、こういう表現をいたしております。あなたは利潤を追求する、私は営利目的としている、こう言っている。目的としておることと現実利益が上がることは別問題であります。いままで十年間は現実利益が上がっておっても、しかしその後何らかの事由によって利益が上がらない、利潤が出てこないという場合において、それは企業でないとは言えないと思う。利潤を追求する、営利目的としておるというところに問題があると考えておるわけであります。
  9. 桜井茂尚

    桜井委員 目的としているということが客観的に実現しない場合それが客観性を持っていない場合、それは企業と行えるか。ですから継続的、計画的にということをあなたにお認めを願ったわけなんです。継続的、計画的に行なわれていく、しかも営利目的としておる——あなたは営利とおっしゃったから営利でもけっこうです。営利ということを目的にして継続的、計画的に行なったということは、客観的にそれが実現しているということがその背後になければならない。主観的にもうけようと思ったって、それは企業体と言えるか。主観的にそういうことを言ってみたって、現実性を持たない場合には幽霊じゃありませんか。その点のお答えを願います。
  10. 福田一

    福田(一)国務大臣 どうもちょっとむずかしい問題で、私ではお答えをしても御納得をいただかぬかと思いますが、しかし営利目的としておるということでありまして、目的とするという意味はどういうことか。利潤を追求するでもいいです。という意味は、本人が追求するのであって、ほかの人がそれを認めるか認めないかの問題じゃない。営利目的とするという場合は、本人目的としておるわけです。だから私は、客観的にほかのものとのレベルと比べてみてそれだけの利潤が上がらなくても、利潤を上げることを目的としておれば、それで企業だというふうに考えていいと思うのであります。
  11. 桜井茂尚

    桜井委員 それは犯罪でもそうでしょう。どろぼうをしよう、することを目的としたけれどもやらなかったら、どろぼうではないのです。目的としたけれども実現しなかった、企業現実に存在するかしないかということは、目的を持っているかいないかということだけではないでしょう。目的として営利行為を行なう、現実に行動し、そしてそれが客観性を持って——その場合失敗する場合もあります。ですから継続的、計画的な意図に基づいてそれが行なわれているということに重要性があるのだろうと思います。どうしてもそういうように強弁なさるなら、それもけっこうございますが、一国の大臣がおっしゃるのですから、私は言いのがれでなしに、もっと正確におっしゃっていただきたいと思うのです。現実にそういうところにおいては利潤部分が実現していない、このことだけは認めますか。
  12. 福田一

    福田(一)国務大臣 実現しておる方もあるし、平均賃金にまで達しない人もあろうかと思うのであります。
  13. 桜井茂尚

    桜井委員 私の申し上げておるのは、二万五千円の月収で利潤部分がありますかということを申し上げておるのです。二万五千円の所得しか上がらないものは、その中に利潤がございますかということを質問しているわけです。
  14. 福田一

    福田(一)国務大臣 たとえば一人の場合で、おばあさんがやっている、普通の場合だったらばちょっとどこへつとめてもどうもそれだけの収入はないという人は、二万五千円上げていれば相当いい利潤を上げているとも言えるでしょう。しかし今度は夫婦二人でやっていかなければならないということになるなら、それは利潤を上げていないという結論も出てくるかもしれません。私はやはりその個々の場合において考えるよりいたし方がないと考えております。
  15. 桜井茂尚

    桜井委員 主観的に個々の問題というよりも、現実統計が示している問題を私は申し上げておるわけです。一国の政治を行なう場合におきましては、現実通産省でお出しになっておる統計が問題だと思うのです。その統計が誤りであるというならば、私はその統計をつくった方を追及しなければなりませんが、統計を基準にいたしまして御質問申し上げておるわけです。そうした場合に、たとえば国民金融公庫なり信用保証協会保証をするといたしましても、信用保証協会にしても銀行の窓口を通じますから、したがって銀行がそれを貸すという場合に、貸すことができなくなる。この前国民金融公庫の方にもお伺いいたしたのでありますが、国民金融公庫貸し出し原則がどうなっているか、利益の中から元利を償還させるということを原則として貸し出しております、こう御回答をいただいております。銀行にいたしましても同様でありまして、初めから利潤のないものに金を貸し出すわけにはいかない。もしそれを貸し出すといたしますならば、大正十一年の大審院の判例にもございますけれども、それはその理事者背任行為になるわけであります。したがって、国民金融公庫が貸すこともできない、また信用保証協会保証してやりたくても保証することができない、こういう層の人たちが、たとえば商業をとってみただけでも、百二十八万のうち十万円以下の売り上げというものが七十二万もあるのだ。したがって、これらの層の人々原則として金融対象になっていない、あるいはまたおそらく租税対象にもなっていないでしょう。そういたしますと、金融によってこれらの人々を救うのだ、あるいは税金をまけてやっておるのだ、こう申しても、三百五十六万のうちのおそらく二百万に及ぶ圧倒的な部分はその対象から除外されておるということを申し上げたいのです。この点について大臣はどのようにお考えでございますか。
  16. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、売り上げが十万円以下というものも、いま申し上げたように、いろいろのものがあるから、もっと詳しく調べてみないと、いまあなたの申されたような結論にはならないかと思います。ただしそういう層があり得ると思いますが、いまあなたの言われたようなことを一応肯定して考えてみても、金融の問題については必ずしも私はあなたと意見は一致しないと思います。利潤を上げているものもあると思う。たとえば自分のうちを持って売り上げが十万円というのと、うちを借りて十万円しか売れないというのとはたいへんな違いがあります。いなかなんかでは、十万円の売り上げといえば、たいてい自分のうちを持っているのが普通相当多いと思います。そうなった場合に、ネットで二万五千円の収入がある、都会とは違いますから、いなかではやはり生活費も非常に安いと思います。もちろんそれがいわゆる標準の文化的生活になっているかどうかは別問題としても、従来のやり方からいって、一人なら一人、二人なら二人で二万円でやっている人ももちろんあります。家があり、家賃が要らないということでありますからね。あるいはまたそのほかにたんぼを持っている人もあるでしょう。一反歩か二反歩しかない、しかしそれは自分でつくっている、しかもそういう十万円くらいしかない売りあげを持っているというのも相当あると思います。実はわれわれのいなかで相当そういうのがたくさんありますから、おそらく各地にそういう方々がおありだと思う。だからいまあなたが仰せられた数字のうちでどれくらいがどうなるかということになりますと、それをもっと調べてみなければわからないと思います。が、そういうようにいま家を持っておられて十万円ということであれば、ちゃんと金融対象にはなると思います。それから今度はそういうことでなくて、いま家も持っていなければ、ほかに何らの収入もない、しかも借家である、そうしてそのくらいしか売り上げがないというような場合でも、奥さんがそれをやっておって、だんなさんがつとめに行っておるという場合もあります。あるいは子供がつとめに行っておるという場合もある、兄弟がつとめに行っておるという場合もある。そして共同生活をしているという場合もあるでしょう。だからこれもなかなかそういうことを全部調べ上げてみないとわからないかと思うのでありますが、しかしそういうつとめにもいかない、二人で家を借りてやって十万円しか売り上げがない、これはなるほどいわゆる完全に利潤がない層になるだろうと思う。これからはどうか知りませんが、しかしいままでのところは、たいていそういう人は何か仕事を持っております。あるいはそういう場合には、場合によっては失業救済事業のほうにつとめに行っているとか、あるいは職安のほうに行って職を求めている、それくらい収入の少ない人たちであると、たいていそういうことをいたしております。ほかにやはり国としていろいろの施策をやっておる面がございますから、私は一がいには言えないと思う。しかし、零細企業の方が非常に困っておられるということについては、私はあえてあなたの意見を全面的に否定しようとは思っておりません。
  17. 桜井茂尚

    桜井委員 大臣はだんだん本筋のりっぱなことをおっしゃっておるのですが、農業については兼業農ということが非常に政策対象となって大きな問題になっておる。しかるに商工関係においては、現実兼業が非常に多い、ことに商業サービス業においては多いのです。大臣のおっしゃるとおりです。しかるに、その兼業対策というものはいまだかつて商工業においてとられたことがない。少なくとも農業と同じようなウエートでもって取り上げられたということはありません。戦後におきまして、潜在失業プールが、農業におきましては農地制度改革家族制度改革によりましてだんだん潜在失業プール役割りを果たさなくなり、それが商業サービス部門に流れ込んでおる。したがいまして、現実にはそういう面が非常に多くなっているのです。ですからそういう兼業というものに対する対策というものに本格的に取り組む。そのためには、いま大臣がおっしゃられました調査を非常に必要としている。ですから、この前も私は、ほんとう利潤というものはどういう商売においてはどのくらいあるのだろうかということをお聞きしておったのでありますが、資料がわからないようでございますが、とにかくそういう研究調査をして提出してもらいたい、そして政策を今後打ち立てていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  18. 福田一

    福田(一)国務大臣 中小企業に対する対策がおくれておるということについては、私も、いままで中小企業基本法ができるまでにも中小企業というものに対する施策はあったけれども、それほど積極的でなかったと思います。今度そういうような調査をすることになったのも、基本法ができて初めてそこへ本格的に取り組み出した。だから私はそういう資料その他もまだ十分でないということはよくわかります。おっしゃるとおりです。御要望のような地口に沿ってできるだけこまかく、そして業種別にいろいろの調査をいたしたいと思います。ただ、一ぺんに、あるいは一年の間にと言われても、いまの人数で、またいまの予算でできるかどうか私疑問でありますが、極力努力をいたしたいと思います。
  19. 桜井茂尚

    桜井委員 この間も大臣にちょっと申し上げたのですが、三十七年からあとにおきまして商業なら商業の絶対数が減ってきている。これは珍しいことなんです。画期的なことです。要するにいままで潜在失業プール役割りを果たしておったものが、だんだんにその分野からも人が出ていって潜在失業が解消していくという傾向にある。これは画期的なことですが、その場合、転業したくても転業できないという人がある。一例を申しますと、そういう仕事をしておりますると、たいがい売り掛け金買い掛け金があるものです。ですから、やめますと、買い掛け金の請求はむやみやたらに来ますけれども、売り掛け金はなかなか取りにくくなる。そしてまた自分がつとめに行ってしまえば、そういうところを坂って歩くという時間もないというようなために、現実の問題として、ほんとうはほかに、新しい雇用のほうに、会社なりどこかに働きに行きたい、そう思いながらも、そうしてまたそういう商業の場合現実に衰微しているのですから、思いながらもそれが転業ができない、こういう状態でじり貧傾向を続けてくる、こういう人が相当数あるわけです。この点につきましては、中小企業基本法におきましても、ちゃんとそういうものに対して転業促進をし、めんどうを見てやる、または業種を変える、仕事を変えるということについてもめんどうを見てやる、こう基本法に書いてある。しかるにそれに対する政府施策はないようでございますが、これはどのようにお考えでございますか。
  20. 福田一

    福田(一)国務大臣 確かにいまあなたの仰せになったような事態は、私も一、二知っております。具体的の例を知っております。それで非常に困っておるという人もあります。でありますから、こういうことについても、今後われわれ大いに施策なり対策考えていかなければならぬと思いますが、しかし、どういうふうにしてこれをどう処理したらいいかということについては、いまにわかにお答えはいたしかねると思います。今後研究の課題とさしていただきたいと思います。
  21. 桜井茂尚

    桜井委員 その点は御答弁で今後ということでございますから、やむを得ませんが、たとえば職業指導所、これはこちらの関係じゃないかもしれませんが、一つをとってみましても、そういう指導所が多くの場合には工場所在地、こういうところにあるわけなんです。ところが転業したいという人は、むしろいなかにいる。あるいは都市におきましても、わりあい離れたへんぴなほうにいる。商業サービス業が隆盛になって、現在でも一方では大都市においてはふえております。ところが、そこから離れるにしたがってつぶれる度合が激しくなっておる。しかも転業の場合に、職業指導所工場中心街にたいがいある。そういたしますと、やめたい、そして手に職をつけたいとしましても、遠くへ汽車に乗って習いに行かなければならない。これでは転業対策にもなっていないわけなんです。これは商工委員会ではどうかとは思いますけれども、そういうようなぐあいで、現在の職業指導なりそういういろいろな技術指導というようなものがすべて生産の所在地において行なわれ、会社工場側が必要とするような技術を養成する、こういう観点から行なわれておりまするから、したがって、困って転換したいという人のほうには、あたたかい手が差し伸べられないという結果になっておるわけです。そこに中高年層の就職というものが非常に困難にぶつかってくる、こういう問題があるわけです。こういう点につきまして大臣はどうお考えでございますか。
  22. 福田一

    福田(一)国務大臣 確かにいまあなたのおっしゃったことは、具体的に考えてみますと、適切な一つ施策、今後考えるべき施策だと思います。ただ、そういう場合におきましても、負債があり、同時にまた売り掛け金があるというような場合においても、実際にはそれほどそういうものは大きいものじゃありません。だから、そういう場合に転業したいということでまじめに話をつければ、私は案外、いなかなどではわりあいにお互いの理解し合う場合が多いと思う。ただ、実際に、それじゃ転業したい、そういう方面は解来しても、実際に職業習いに行くという場合においても、習いに行って、あとで雇ってもらえるかどうかという問題が一つあります。それから習いに行った場合に、宿舎や何かをどうしたらいいかという問題があります。これは私、習いに行く一番大きな隘路でないかと思います。たいてい技術養成所というのは県内に一カ所くらいは最近はできておりますから、何も一東京や大阪まで出てこないでもいいでしょう。名古屋へ行かぬでもいいけれども、しかし、実際にそこへ行って習おうという場合に、三時間も五時間もあるところへ通っていけない場合が多い。そういう例が多いでしょう。そうなると、やはりどこかへ行って下宿でもして習わなければいかぬということになる。そういうような人を何とか転業させることを考えるということは、これは私は一つのりっぱな施策になると思います。だから私が先ほど申し上げたのは、いろいろそういう問題もあると思いますから、これは必ずしも通産省だけの問題ではございませんが、今後ひとつ研究をさせていただきたい、こういうことを申し上げておるのでありまして、そういういまあなたが言われたような具体的な例をあげていただければ、これはいろいろわれわれが将来施策を推進する上では参考になると思います。
  23. 桜井茂尚

    桜井委員 私は、中小企業と一般にいわれておりながら、現実にはその範囲内とはいえないのじゃないか、むしろ中小企業対策ではないのじゃなかろうか、先ほど非常にしつこく定義の問題で申し上げましたけれども、そういうことをあいまいにしておく結果がこのように何か忘れ去られるような問題が生ずるのであって、この範囲企業ならば企業であるとはっきりするならば、そうすれば当然のこと金融政策あるいは租税政策等々において非常にやりやすいと思うのですけれども、それが先ほど申し上げましたとおり、ただ一人、二人でやっている人が現実には、統計を見ますと三百五十六万事業所のうちで二百万もある。こういうものは質的に本質的に迷うのじゃなかろうか。本質的に質的に違うものを一緒くたにして問題を論ずるところにこういう手抜かりがでてくるのじゃなかろうかと思うのですが、この点は大臣はいかがでありますか。
  24. 福田一

    福田(一)国務大臣 その点は先ほど申し上げましたように、私とあなたは意見が違うようであります。しかし具体的な問題として取り上げて処置をしていこうということについては、私は意見が一致してくると思います。
  25. 桜井茂尚

    桜井委員 最後に、一言でやめますが、大臣が、だいぶ意見が違う、逢うとおっしゃっておりますけれども、国民金融公庫のほうにお伺いいたしましたら、結局貸し出しは三十五万ということが大体の平均でございますし、しかもそれは月売り上げ三十五万なら三十五万ということをほぼめどにして貸し出しをするということが現実でございますし、国民金融公庫にいたしましてもそういう零細な方面には貸していないし、またいろいろな企業の全体から見ましても、国民金融公庫は全体の三割程度のものに貸し出している。商業の場合ですと、ほぼ二割五分くらいのところに貸し出している。したがって先ほど私が申しましたように、たとえば月二十万以下、一日の売り上げが七、八千以上というところを切ってみますと、小売りの中でもほぼ百二十八万という国民金融公庫対象になる層がはっきりと浮かび上がってくるわけです。現実に貸していないと国民金融公庫も言っている。信用保証協会のほうでも同様です。銀行対象にも現実にになってない。この現実になってないという点について、大臣はどのようにお考えですか。
  26. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、あなたが数字を申されておるのは、あなたも根拠があってお示しになったと思っておりますが、実はまだ長官から詳しくそういう点を聞いておりませんから、どうだとおっしゃっているのにお答えはいたしにくいと思いますが、将来といいますか、中小企業庁等からも聞いて、そうしてそういう事実になっておれば、それに対してまた何らかの政策的な方法がないかどうか、いまは国民金融公庫というものがあるけれども、それで全部が尽きておるものではないと思うので、必要とあればまた別のものをつくってもいいわけなんです。だから問題は、データの問題が実際に出てこないと対策は立てられないわけであります。それは中小企業基本法ができたばかりで、まだそこまで手が回っておりませんということを先ほども申し上げましたので、今後大いにさらにこまかいことも調査をして、そうして最後に残された子羊にもという聖書のことばがあるが、ああいうような意味政治をやってまいりたいというのが私の理想でございます。
  27. 桜井茂尚

    桜井委員 以上で終わります。
  28. 二階堂進

    ○二階堂委員長 中村重光君。
  29. 中村重光

    中村(重)委員 政務次官にお伺いします。  中小企業対策としていつも質疑をし、議論をされておりますが、金融上の問題、税制の問題、労働問題が——もちろん構造的な問題が根本にはなりますが、当面の対策としてはいま申し上げました三つがきわめて重要な、問題になるわけでございます。  そこで、金融問題等はずいぶん議論されたのでありますけれども、中小企業に対する租税措置の問題、これの質疑がまだ十分行なわれていない。中小企業庁長官は、中小企業のために六百億の減税をやった。ずいぶん税金は軽減されるという期待感を中小企業者は持っているわけであります。これは期待はずれになってもいけないことでありますので、この中小企業に対する税制というのですか、その対策が、大企業との比較の中において特に重要視されたのかどうか、その点をひとつ詳しく御説明を願いたいと思います。
  30. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 中小企業の減税問題につきましては、中村委員も御承知のとおりに、税制調査会等におきましても相当長期にわたりまして、細部にわたり、しかも非常に真剣に検討を続けられまして、先般政府に対しまして答申があったとおりでございます。政府といたしましてはこの線を中心にいたしまして、通産省通産省として中小企業に対する負担軽減、減税の問題の一つ対策を立てまして、この対策に基づきまして主管省である大蔵省に対しまして通産省意見として連絡をとり、また大蔵省に要望をいたしておったのであります。しかるところ大蔵省といたしましても、今回の減税につきましては中小企業全体の問題としまして、金融、労働あるいは設備近代化といったような問題と並行いたしまして、相当真剣に検討をしていただいたのでございます。ただ残念ではありますが、私どもの希望しておったような数字、率までには達していなかったのであります。しかし、この点は国の財政の全体の考え方からして、大所高所から、国の財政政策の上からやむを得ない。しかし通産省といたしましては、今後も中小企業の減税につきましては、従来と同じような方針に基づきまして努力をしていきたい、かように考えておる次第でございます。  なお、具体的な減税につきましては、先般中野長官からも具体的に申し上げたはずでございますが、具体的問題につきましては、中野長官から詳しい項目につきまして説明を述べさせたいと思います。
  31. 中村重光

    中村(重)委員 あなた方の中小企業に対する税制の基本的な態度——中小企業者は非常に内部保留がむずかしい。したがって、税金を重くするということになってくると、いよいよ内部留保ができなくなるわけです。ですから、中小企業者の自己資金というものを確保するという面からは、この税金問題というものはきわめて重要視していかなければならない、こういうことになるわけでありますが、基本的な態度として、大企業中小企業者との格差を解消する、ここに基本を置いて税制を考えていく。そういうことではなしに、大企業には国際競争力の強化であるとか、あるいは廃業構造を高度化する、成長性の高いものを特に重要視していかなければならないという考え方でもって、それに相当する税制をする、中小企業の場合もそうだ、こういうようなことでやっているのか、格差を解消するということに重点を置いて考えているのか、その点どうなんですか。
  32. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 もちろん仰せのごとくに、中小企業と大企業との間の格差を是正をし、同時にまた中小企業の社会的経済的地位の向上をはかっていきたい。そこに重点を置きまして、今回の減税問題につきましても、中小企業にできるだけの、自己賞金をつくらせたい、こういう点に重点を置きまして、それにはいろいろ法人税の減税の問題、あるいは地方税としましては個人事業税の減税の問題、そのほか白色申告、青色申告等につきましては法人税の引き下げ等、具体的にはやっておりまするが、できるだけ中小企業に自己資金を持たせまして、そして他からのいわゆる高利債等を借らせぬようにして、できれば自己資金で間に合わすということが原則でございますが、足らざるところは政府金融機関その他でもって補っていく、こういうところに重点を置いて考えているわけであります。
  33. 中村重光

    中村(重)委員 大蔵省の考え方はどうなんですか、私のただいまの質問に対して。
  34. 山下元利

    ○山下説明員 大蔵省といたしましても、三十九年度の税制改正におきましては、中小企業向けの減税につきましては大いに意を用いたところでございまして、総額千三百七十六億のうち、中小企業向け、減税は六百三十七億に相なっておるわけであります。所得税、法人税におきまして、それぞれ中小企業のために十分配意しておる次第でございます。
  35. 中村重光

    中村(重)委員 どうもあなた方の中小企業者に対するところの減税というものは、一般的な農民、中小企業者、零細所得者というのをひっくるめる減税、これを中小企業者に対する減税だ、そういうことで数字をお示しになっている。一つ一つ取り上げて検討してみると、たとえば固定資産の耐用年数の問題、これに、中小企業と大企業との格差を解消する、この考え方の上に立って減税をやったということが言えますか。まずあなたの答弁の前に、政務次官、中小企業庁長官、どちらでもいい。そういうことが言えますか。あなたは先ほど私の質問に対して、大企業中小企業との関係を、その格差を縮めていくということを基本としてやっておるんだということを言われたのですが、そのことは具体的に裏づけされなければならない。それでは具体的な裏づけということは何なのか、まず通産省側から御答弁をしていただき、それから大蔵省の御答弁を伺いたい。
  36. 中野正一

    ○中野政府委員 固定資産税の耐用年数の短縮につきましては、中小企業なるがゆえに、特別に期間をよけい短縮するというようなことはやっておりません。これは税制、税法上の問題で、そういう要求もございました。また、そういうことを言うとぐあいが悪いのですが、自民党でいろいろ議論があった際にも、そういう点でやるべきじゃないかということで、私自身がおしかりを受けたようなこともございましたが、いろいろ大蔵省と相談しまして、これは税の体系上非常にむずかしい問題であるということで見送らざるを得なかったということもあります。
  37. 山下元利

    ○山下説明員 固定資産の耐久年数の短縮につきましては、目下その作業を進めておるところでございまして、最終的な結論が出ておるわけじゃございませんけれども、大体いまの見通しでは、全体で四百十一億のうち、中小企業といたしましては百四十億の短縮減税が計画されたわけでございます。耐用年数の短縮というのは、企業の内部留保の充実と設備の更新に資する目的を持っております。それにつきましては、中小企業においても大企業と同じように、このような短縮による減税を受け得ると考えておるわけでございます。
  38. 中村重光

    中村(重)委員 長官の率直な答弁で、それは追及することができなくなってしまった。しかし、答弁はそういうように率直にしてもらいたい。そうせぬと、問題の核心に触れることはできません。確かに中小企業に対する減税も行なわれた、それは認めます。ですけれども、中小企業の地位をいかに高めていくかということです。そのことは、大企業との格差を解消することにある。それから、中小企業同士の間にもいわゆる格差が拡大しつつあるわけでありますから、その格差をどうして押えていくか、それから地域間の格差、そういうことは金融上あるいは税制上、あらゆる点に十分慎重な取り組みをしていかなければならない、私はこういうことになると思います。いまの固定資産の耐用年数の問題にいたしましても、四百十一億ですね、それに中小企業に対しては百四十億、こういうことになりますが、こういう一つ一つ具体的に問題を取り上げて検討してみると、政務次官が先ほど御答弁になった、中小企業と大企業の格差を解消するという考え方、これは税法上の点から均衡をとるというところにウエートが置かれている。どんなに中小企業対策をおやりになっても、それよりも非常に強い立場にある大企業に対してはもっともっと力をつけてやるんですから、これは格差を縮小するのではなくて、格差を拡大していくんですよ。そういうことじゃだめですよ。だから私たちは、中小企業庁というのは通産省の中にあってはいかぬ、独立をして、中小企業者の利益をあくまで代表していくために中小企業省を設置しろということは、こういう点にあるわけなんです。非常に不親切なんですよ、中小企業者に対しては。いまの固定資産の耐用年数にいたしましても、たとえばレースの編み機のことを考えてみなさい。七十インチからしているでしょう。七十インチということになってくると、一台が二百万も三百万もする。手が出ませんよ、中小企業者の零細な業者は。これを五インチ下げて六十五インチぐらいにしてみませんか、七、八十万で入るのですよ。そういう点が不親切なんです。そういうことをしておいて、中小企業者のほうには減税をしました、中小企業庁長官はまるでにしきの御旗のように六百億減税をやったのだと言って、私たちが中身をよく詰めていないからと思って、数字だけでごまかそうとしておる。先ほどのような率直な御答弁もあるのだけれども、ときたま、これは知らぬだろうというわけで、数字だけを取り上げて中小企業に減税をしたのだということをおっしゃる。それではあなたの中小企業庁長官としてのほんとうの任務はつとまりません。もっと親切になければならない。大蔵省はこういうことに対してどうするのですか。
  39. 山下元利

    ○山下説明員 ただいまのレース編み機でございますが、個々の機械につきましてはただいま一々申し上げませんが、従来とも中小企業の機械の特別償却等につきましては十分気を配っておるところでございまして、今後ともその点につきましては慎重な配慮をしてまいりたい、かように思っております。
  40. 中村重光

    中村(重)委員 そういう抽象的な答弁ではだめなんだ。ことしは残念ながらこうなりました、しかしこれではいかぬと思っておりますから来年はどうしますという具体的な答弁をしてもらいたい。ここに落ちつくまでにはいろいろ問題があっただろうと思う。私は、中野さんが自民党の与党の諸君からいじめられるから、中野さんの答弁をとらえてあまりいろいろ言いたくないけれども、どうも大企業を代弁する与党の議員が多いから、中小企業利益を代弁する与党の議員諸公は、一人一人は善良でなかなかしっかりしておられるのだけれども、どうも大企業利益を代弁する人たちの圧力に屈せざるを得ないような形になってきておるが、こういうことではだめなんだ。中小企業のために具体的にどういう減税策をとっておるのかということについていろいろ検討されただろうと私は思うから、こういうことを三十九年度に実施すべく検討したのだけれども、とうとう力尽きてこういう形に落ちつきました、これではいかぬと思いますから来年はどういたしますと、もっと具体的に、中小企業人たちが期待を持ち得るような答弁をしてもらいたいと思うのです。
  41. 山下元利

    ○山下説明員 本年度の税制改正におきましても、たとえば輸出の特別償却の制度を簡素合理化いたしまして、その償却範囲を非常に広げたのでございますが、これはほかの特別償却とは重複を許さないというたてまえになっております。ただ中小企業者の機械等の割り増し償却につきましては重複を認める。つまり輸出の特別償却、中小企業者の機械等の割り増し償却も両方認められる。これはこれだけに限ったことでございまして、これらの点からいたしましても、われわれは中小企業者の処遇につきましては十分気を配っております。  それから、このたびの耐用年数の一五%短縮は、来年度また短縮するかどうかについてはまだきまっておりません。少なくとも今年で相当短縮されますので、一般的な短縮は来年は予想されないところでございますが、このような割り増し償却であるとか特別償却につきましては、従来同様、今後とも十分慎重に考えてまいりたい、かように考えております。
  42. 中野正一

    ○中野政府委員 いま御指摘の点は具体的な問題でございますので、詳細にわたってお聞きして措置してまいりたいと思いますが、いま大蔵省からも御返事がありましたような中小企業向けの機械の特別償却の対象になる機械の取り扱いの問題じゃないかと考えます。この問題につきましては、できるだけ中小企業者の合理化に資しますように、その対象となる範囲につきましては一々大蔵省のほうに通産省のほうから要求を出します。もちろんこれは要求を出して全部認められるわけではありませんが、要望が通るようにいたしまして、その過程において、われわれとしては中小企業の合理化に資するような機械はできるだけ取り上げるというようなことでやってまいりたいというふうに考えております。
  43. 中村重光

    中村(重)委員 租税特別措置法の関係ですね。このことについて、予算編成期にいろいろ中小企業者のための減税をもっと大幅にやるべしという検討がされたのではないかと思うのであります。そこらについても、具体的に検討の対象になった点をひとつ御説明願いたい。それから来年度はどういう態度で取り組むか、そういう具体的な考え方があれば、その点に対してもお答え願いたいと思います。それは最終的には来年度あなた方の考え方のとおりいかない場合もあり得ますよ。大臣もおりますし、えらい人がたくさんおりますから、いかないでしょうが、少なくともあなた方のかまえくらいはこの際明らかにしておいてもらわぬといけないと思います。お答え願いたいと思います。そのとおりにならなかったからといって、来年その言質をとっていろいろ言うわけでは決してありません。この際あなた方の真剣な取り組みくらいは聞かせてもらわなければならぬと思います。
  44. 山下元利

    ○山下説明員 租税特別措置法につきましては種々ございますが、このたびの租税特別措置法の改正で、特に中小企業のために意を用いた点について二、三申し上げておきますと、国際競争力強化のための税制措置といたしまして海外市場開拓準備金制度を創設したことでありますが、これについて場の開拓をされる場合には、普通の場合には千分の一五でありますのを、この場合には千分の二五まで認める。その二五までを、それぞれ中小企業が特定の商工組合に賦課金を納められた場合には、それについても課税は行なわれないようにするし、また商工組合においても課税が行なわれないようにいたし、海外市場開拓準備金という制度を創設いたしたわけでございますが、これは中小企業だけに限った問題でございます。  それからまた、先ほどもちょっとお話が出ておりましたが、合理化機械の特別償却につきましては、このたび耐用年数を一般的に一五%短縮するに伴いまして、この償却割合を、現在三分の一でありますところを四分の一に縮減いたしたわけでございますが、中小企業用の合理化機械につきましては、中小企業近代化という大きな政策目標に沿うように、これを特に初年度三分の一のままに据え置きました。したがいまして、一般的な耐用年数の一五%短縮、それから初年度三分の一というものの据え置きによりまして、中小企業近代化のためには大いに資するところがあるのではないか、かように考えておるわけであります。  なお、来年度の改正の方向につきましては、まだ私どもといたしましてはっきり申し上げることもできないのでありますが、今後とも中小企業につきましては十分な配慮をすべきことは当然であると考えております。
  45. 中村重光

    中村(重)委員 それからこの輸出振興の関係ですが、親企業から中小企業に対して証明書を出すということで検討て何か不合理な面があるというふうにお考えになりませんか。うまくいっていると思いますか、どうですか。
  46. 山下元利

    ○山下説明員 現行の輸出所得控除は三月三十一日で廃止されるわけでございますが、新しい制度によります海外市場開拓準備金の場合に、従来と同じように直接輸出の場合も間接輸出の場合も認めるわけでございます。従来とも間接輸出の場合におきまして、その証明書と手続につきまして、直接輸出の場合と違ったいろいろな問題がある。先生の御指摘のように、親企業中小企業の間におきまして証明書をもらうという点につきましていろいろ問題があるということは従来からも承っておるわけでございますが、ただ、そのように減税なりあるいは特別課税繰り延べをいたします関係上、間接輸出の場合におきましても証明制度を廃止するわけにはまいらないと考えております。したがいまして、この制度自体といたしましては、従来ともに証明書を出していただくことに相なっておりますけれども、実際面につきましていろいろ問題があるということは承っておりますので、制度の趣旨と実情とをどのように調和させていくかというふうな問題があるわけでございますが、今後とも、その点につきましては検討してまいりたいと考えております。
  47. 中村重光

    中村(重)委員 非常に答弁もしにくいだろうと思うのですが、不合理な点は改めたほうがいいと思います。大企業中小企業との力関係というのはいろいろと問題があるわけです。もう少し実情に即するような方法はありませんか。たとえば都道府県、市町村から企業のところに別に証明をもらわなくたっていいわけです。大企業のところに証明してもらうということになっても、大企業自体の利害に関係をしてまいりますから、なかなか証明なんというものは出さない。そして中小企業に対するところの減税には役立たないのです。あなた方のほうでそういうことはわかっているのだから、とるということには非常に重点を置くのだけれども、何か軽減してやるということについてはくふうが足りないですね。もっとくふうしなければならぬ。どうですか。
  48. 山下元利

    ○山下説明員 いまの御指摘の点につきましては、やはり輸出証明ということに関します限りは、それぞれの向きに応じたところで証明するなり、あるいは税関のところの証明書をもらうなりいたさなければならぬわけでございまして、先生のように市町村でやることは必ずしも適当ではないと考えておりますが、ただ輸出税制全般につきまして制度の簡素合理化をはかっておりますので、そうした点とにらみ合わせて、十分運営上遺憾のないことを期したいと考えております。
  49. 中村重光

    中村(重)委員 期したいだろうけれども、なかなか期することができない。だからこういう私の質問になってあらわれておるのですよ。それじゃだめなんです。中小企業庁長官、あなたはどう考えるか。どうも税金のことなんかあなたのほうの管轄ではないのだというような消極的な態度ではだめです。そこのところをどうお考えですか。
  50. 中野正一

    ○中野政府委員 いま御指摘の輸出所得控除あるいは今度通産省で輸出貢献企業の認定制度等、輸出振興のためにいろいろの制度をやるわけなんですが、その際にいつも一番悩みになるのはいま先生の御指摘になった点です。これを何とか改善しないと、結局二次、三次の下請あたりで実際に相当輸出をやっておる、たとえば一番いい例でいえば染色加工あたりはほんとうに直接輸出に貢献していることは間違いないのです。ところがなかなか税の優遇も受けにくい、またいろいろな優遇制度があってもなかなか受けにくいということは、私もかねがね感じておりまして、この点につきましては通産省の原局ともよく相談いたしまして、これは大蔵省だけの問題ではなくて、そういう証明制度の問題ですから、半分通産省が片棒をかついでおるわけでございますから、御指摘のような点を何とか改善したいというふうに苦心いたしておる次第でございます。
  51. 中村重光

    中村(重)委員 この耐用年数の短縮の問題等も、先ほど私が触れましたように、あなたのほうでおわかりにならぬような点も実はあるのじゃないかと思うのです。大企業は非常に強い力でこうせよああせよということであなたのほうに強く要求される、ところが中小企業なかんずく零細企業というものはそういう要求する機会も少ないし、力もない。こういうことで、先ほど私はレース編み機の問題を取り上げたのですが、ともかく高性能、高能率だけに重点を置くということはいけないと思うのです。先ほど引例いたしましたレース編み機、そういう類似のものが非常に多いと思いますから、今度はそういう高性能、高能率という形について、耐用年数の短縮ということだけでなくて、それより以上にもっと力を尽くすことは、中小企業者に対してどう税金を軽くしてやるか、ここにウエートを置いていただかなければならぬと思います。いま短い時間で議論されたような点について、あなたが何か考えるところがあったか、もしそういう点もあるとお考えになられるならば、今後、どのような態度で取り組みをされるか、率直にひとつお聞かせ願いたいと思います。
  52. 山下元利

    ○山下説明員 このたびの耐用年数の短縮につきましては、各方面の御意見を十分に承っておりまして、その間、単に大企業のみならず、中小企業の御意見も十分拝聴して取り組んでおるわけであります。今後とも御指摘の点につきましては、中小企業の立場を十分に尊重いたしまして進めてまいりたいと考えております。
  53. 中村重光

    中村(重)委員 法人税の問題だとかあるいはまた個人事業税の問題、これは地方税になるわけでありますが、そういう問題でいろいろお尋ねしたいことがありますけれども、これは失礼な言い方ですけれども、課長さんに質問することも無理だろうと思いますから、委員長、またいずれ適当の機会をお与えいただきたいと思います。そういう場合に、大臣なりあるいは局長に来てもらって質問いたしたいと思います。  税金関係は以上にとどめますが、中小企業の公庫債のことについて、大蔵省はどなたかお見えですか。
  54. 二階堂進

    ○二階堂委員長 柏木財務調査官が見えておられます。
  55. 中村重光

    中村(重)委員 中小企業の公庫債ですが、これは非常に問題点があると思います。あなたのほうでも相当議論をされたと思いますが、問題になった点はどういう点なのか、まずその点をひとつ御説明願いたいと思います。
  56. 柏木雄介

    ○柏木説明員 日本の経済の今後の発展を考える場合に、中小企業の近代化を促進するということが非常に重要なことでございまして、その関係で、来年度の財政投融資計画等におきましても、中小企業金融機関関係貸し出しワクを大幅にふやすというふうにいたしたわけでございますが、その際に、原資をすべて資金運用部等の財政資金によってまかなうというだけでなくて、全体の貸し出し規模を拡大するためには財政資金だけに依存するのではなくて、さらに新たに民間資金を導入するという必要があるのではないか、そういうことが検討されまして、その意味合いにおきまして中小企業金融公庫の債券を発行するということになった次第でございます。
  57. 中村重光

    中村(重)委員 この公庫債は政保債ですか、公募債ですか。法案を見ましても明確でありません。
  58. 柏木雄介

    ○柏木説明員 政府保証債であります。
  59. 中村重光

    中村(重)委員 純粋の政府金融機関で債券を出すということが適当であるとあなたはお考えですか、どうですか。
  60. 柏木雄介

    ○柏木説明員 政府関係機関にはいろいろございまして、それぞれの機関の性質、性格に応じて考えるべきことだと思いますが、中小企業金融公庫につきましては政府保証債を出すことは適当だと考えております。
  61. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、低金利政策にこれは反してくると思う。七分三厘という形になってまいります。全国銀行が一般の大企業に融資をしておるものとのかね合い、いろいろな面からいきますと、これはむしろ低金利政策を放棄して高金利政策をとるという形になると思いますが、そこいらについての議論というものはなかったわけですか。
  62. 柏木雄介

    ○柏木説明員 中小企業金融公庫が債券を出すということが低金利政策に矛盾するというふうには考えておりません。低金利政策と申しますのは、何といっても長期にわたって日本の金利を国際金利水準にさや寄せしていくというのが大きな目標でございまして、その意味合いにおきまして最も必要なことは、日本経済の均衡ある発展成長であります。それに資することは間違いないと思いますので、中小公庫債の発行が低金利政策に矛盾するというようなことはないと考えております。
  63. 中村重光

    中村(重)委員 あなたのような答弁をすると、私があなたに質問をした問題点をはずしておるということになる。私が言っているのは、財政投融資という形になってまいりますと、六分五厘かそこらになるわけです。ところが政保債であったにいたしましても、この公債によるということになってきますと、七分三厘という形になってくれば、八厘の持ち出しになるじゃありませんか。それだけ低金利政策の圧力になることは明らかな事実であります。そういう点は問題にならなかったのか、こう言っているのです。
  64. 柏木雄介

    ○柏木説明員 先ほど申し上げましたように、来年度の財政投融資におきまして中小企業関係の資金をふやす、貸し付けワクをふやすことが非常に大事と考えまして、そのために昨年度に比べて大幅な資金の増加が行なわれたわけでございますが、その資金を全部財政資金でまかなうということはむずかしい、いま先生おっしゃいました六分五厘の金だけでもって大幅な増加を期待するということはむずかしいんじゃないか、その関係で、中小公庫に債券を発行さして、民間資金を導入することによって全体の資金量をふやすということが適当と考えられた次第でございます。おっしゃるように、政府保証債といたしますと七分以上の金になりますが、資金運用部から借りた場合に比べて若干の金利の引き上げはあるのでございますが、これは全体の資金量をふやす、中小企業に必要なる資金を確保するためにはやむを得ないんじゃないか、そういう意味において適当と考えた次第であります。
  65. 中村重光

    中村(重)委員 それはプラスアルファで考えられたというならば、ある程度了解できるところもあるわけですよ。そうじゃない。そこに問題があるわけです。中小企業者に対するところの金融をいかにつけていくか、それから先ほど来税金問題で議論をいたしましたように、中小企業者の内部留保というものをできるだけ多くしていく、こういう考え方の上に立つならば、できるだけ金利を引き下げていくという取り組みでなければならぬ。やるだけやった、そしてその上に積み上げて資金をたくさん出していくのだ、こういうことで公債政策をおとりになったと根本的に取り組みが間違っていると私は思っている。そういうことで言っているわけですが、そういう点は検討しなかったのか、いま一度お答えを願いたい。
  66. 柏木雄介

    ○柏木説明員 仰せのとおり、なるべく多くの安い財政資金を確保することが最も望ましいと存じます。しかし先ほど申し上げましたように、全体の財政投融資計画の中におきまして、それだけのものを中小企業のために確保するということはむずかしいと判断されました。しかるに一方では資金的に、どうしても量的に中小企業関係の金を確保する必要がある、そこで考えられましたのが中小公庫債の発行でございます。
  67. 中村重光

    中村(重)委員 事務当局のあなたにこういうことでいろいろお尋ねをしましても、答弁の範囲が私は限られているだろうと思います しかし 少なくともあなたは通産省関係の担当をやっておられるわけですから、もっと中小企業者に対するところの金融を大幅に確保していく、しかもその金融というものはできるだけ利子の安いものでなければならぬという考え方の上に立って取り組まなければ、先ほど来いろいろと申し上げましたように、中小企業というものはいつまでたっても格差の縮小なんということは考えられません。まあしかし、その問題は大臣にお尋ねをすることにいたします。  そこで、商工債との競合の問題は検討いたしましたか。
  68. 柏木雄介

    ○柏木説明員 政府関係三機関のうちで、いままで商工中金が債券を出しておる、そこへ中小公庫が債券を出すということは、両者が競合してまずい結果を来たすじゃないか、その点は先生御指摘のとおり問題点でございました。そこで、商工中金は御承知のように金融債でございまして、金融債は割引債、利付債いろいろございますが、その消化先と消化方法というか、そういうものとなるべく競合しないように中小公庫債の発行を考えたらどうか、したがいまして中小公庫の債券というものは政府保証債という形をとりまして、その発行あるいは性格等は現在商工中金が出しておりますものと異なりまして、中小公庫債の消化も商工中金の消化になるべく支障を与えないように配慮してまいりたい、そういうふうに考えております。でありますから、今度の中小公庫債の発行によって商工中金の消化に圧迫を加えるというか、障害になる、そういうふうにはならないように考えております。
  69. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、将来ともに政保債一本でいくということになりますか。
  70. 柏木雄介

    ○柏木説明員 将来と申しましても、どこまで将来を考えるかということもあろうと思いますが、少なくも現在の金融情勢が続く限りは、やはり商工中金債と競合しないためには、中小公庫債は政府保証債の形で発行するのが適当なんじゃないか。これは金融債を発行いたしておりますのは商工中金以外にも、興長銀がありますし、農林中金もありますし、いろいろな金融機関が金融債を出しておりますが、そういう金融債との競合もございます。したがいまして、将来情勢一変すればともかく、情勢が当分続くとすれば、中小公庫につきましては依然として政府保証債で出すということが望ましいと事務当
  71. 中村重光

    中村(重)委員 事務当局の考え方をこれ以上ただしましても、それ以上の発展した答弁はないと思います。  そこでお尋ねいたしますが、中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫の納付金制度というものがありますね。いわゆる国庫納付金ですが、その点はどうなっているのか、お答え願いたいことと、それから中小公庫と国民金融公庫利益はどの程度になっておるか。
  72. 柏木雄介

    ○柏木説明員 国庫納付金制度はございますが、中小公庫、国民公庫、いずれも現在は国庫に納付するほどの利益を出しておりませんので、現実には国庫納付というのは行なわれておりません。利益が出ております金額は、すべて貸し倒れ準備金の引き当てというか、貸し倒れ準備金に積み立てられておりまして、つまりその資金は全部公庫の内部に留保されることになっております。
  73. 中村重光

    中村(重)委員 通産大臣がお見えですから、いろいろお尋ねしたいことが多いわけでありますけれども、いま公庫債の問題について質疑をいたしておりましたので、ひとつ大臣見解を聞かしていただきたいと思います。  私は、純粋な政府金融機関で公債発行という形は好ましくない、こういう考え方の上に立って実は意見を申し上げ、また質疑もいたしておる。大臣はどのようにお考えですか。
  74. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、この中小企業関係の問題について、いわゆる政府三機関が金融をいたしております比率は九二%、民間金融のほうが九〇%以上ということになっておるわけでありますが、こういう点から考えてみま小企業に融資をするように行政指導をするということは、できることはできるがなかなか私はむずかしいと思う。そこで、そうなると、いわゆる政府関係金融機関でできるだけ多くのパーセンテージを占めさせて、それが中小企業向けに貸し付けができるというようなふうにできれば一番理想だと思う。そういう考え方を持っておるわけであります。そこで、今度の場合は、そういう意味での一つの新しい方向に踏み切った、こう考えるのでありますが、ただしかし、それが商工中金のいわゆる商工債の発行等に支障を来たすということになってはこれまた非常に問題があると思うので、それがないように考えながら、何かそういうふうに中小企業政府関係三公庫の資金ワクをできるだけふやすくふうがないかどうかということを今後とも考えてまいりたい、こう思っておるわけであります。したがって、今度の中小企業金融公庫債を発行したことが商工債に影響があるということであれば、これはあまりよくないことであります。これはいま政府委員が答弁いたしましたように極力避けるという考えでありますが、将来の考え方としては、何かできればそういうくふうをしてみたい、こういう意欲は持っております。
  75. 中村重光

    中村(重)委員 大臣のいま答弁されたような考え方の上に立って今回の百億の公庫債が発行されたというならばわかるのです。ところがプラスアルファになっていないのですね。財投の伸び率というのはこの百億を含めても高くないわけです。そこに問題がある。できるだけ中小企業者に対しては安い金利でもって金を使わせなければならぬわけです。ところが公庫債になってくと、財投の場合よりも八厘高いということになる。それだけ低金利の圧力になるわけです。これは問題が一つある。それから大臣がただいまお答えになりましたように、商工債との競合問題が出てくる。いま柏木さんにお尋ねいたしましたが、なるべくというようなこと以上のことは言えない。それは確かに心配しているわけです。それは当然です。ですからどうしても競合するという危険性というものは払拭できない、こういうことになる。これは問題になるわけです。ですから、いま大臣が、そういう道があるならばそれを開いておくことも適当である、こうおっしゃる、しかし、ただいま私が申し上げましたように、できるだけ政府出資であるとか財投であるとかいうことによってその額を伸ばして、その上に立って革命的中小企業政策を打ち立てるために新しい制度をここで考えるのだというならば了解できないこともありませんけれども、その努力がない。これは大蔵省にあなたが押し切られたという感が少なくとも今回の場合はあると思う。そうなんです。プラスアルファではないからです。もっと政府出資とか財投をあなたは強く要求すべきだった。そしていまそういう制度というものは、プラスアルファという形の上に立ってあなたは受け入れるということでなければならなかったと私は思う。私はあえて押し切られたというのはそういう意味で申し上げておる。
  76. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は実は押し切られたとは思っておらないのでございまして、なぜ押し切られたと思っておらないかというと、実は予算折衝のときにも大蔵大臣や大蔵省の連中——連中と言ったらおこられるかもしれぬが、次官以下たくさんおられて、党の三役もおられまして、その席でいま言ったようなことを私は実際に申し上げておる。今度御案内のように大体三公庫、商工中金が二四%増、それから国民金融公庫あるいは中小企業金融公庫が二一%増にいたしたわけでございますが、それでは足りないということであればそれはよくわかる。その点はわかりますが、しかし、これを四〇%にしたからそれじゃいま資金ワクがどれだけ全体として中小企業向けにふえるかということになると、九%のうちそれだけふえたということでは、全体にしてみればたいしたことにならない。そこで、私はむしろ問題は、一般市中銀行がどれだけ中小企業金融に力を入れてくれるかということがいまの場合においてはこの問題の焦点になる。これを特に考えなければいけないということをだめ押しをして、そうして平均の一四、五%というところであるけれども、それを二一%から二四%にしたということで、まあまあ私はこの程度で——これは何でも多いに越したことはありませんよ。多いに越したことはないが、まあこの程度でやむを得ない、こういうつもりで私は実は予算折衝に当たって妥結をしたわけであります。そこの点が違っておる。倍にしてみたって一八%になるかならないか。そうでしょう。倍額にしてみたところで、二〇%増とか何とかいっても、ともかく中小企業金融に向けておる資金というものは、一般市中銀行が九〇%で片方が一〇%足らずなんですから、それを倍にしても二〇%になるだけですから、それはしたほうがよいにきまっておりますけれども、しかし、そういうことは、今度またこの財投の関係その他を見てみると困難です。そういうことであるから私はあそこで話を自分の責任でやった。まあやむを得ないと思ったわけです。決して押し切られたというわけではありません。ですから、いまあなたは七分五厘とか七分三厘、金利が高くなるじゃないか、こうおっしゃるけれども、私はこれも考え方だと思う。市中銀行にまかしておったら、必ずその金が中小企業に行くとは限らない。ところが、中小企業金融公庫に集めてしまえば、これは中小企業に行くことだけは間違いない。だから私はそういうくふう、どういうふうにして商工中金と競合しないで金を集められるかという問題を今後研究はいたしたいとは思いますけれども、いまの中小企業は、実を言うと、金利が高いとか高くないよりも、金が借りられないで困っている。その金が借りられる多くの部分はやはり市中金融にたよっておるということになるのだから、市中金融でない三公庫のほうに金を集めるについてうまいくふうがあれば、私はそれは一つの方法である。それは、ものによっては安い金利のものもあるし、その次の金融については市中一般並みの金利だというものがあっても、私は何もやり方——これは私の専門じゃありませんから、これは私見としてお考え願いたいのだが、金利に差があるのができたって、何もたいした間違いではない。むしろそれよりは、中小企業金融ということから言えば、量をふやすことが問題ではないかということを実は考えておるわけであります。
  77. 中村重光

    中村(重)委員 押し切られていなかったとすれば、たいへんな問題です。いまあなたは、九%が倍にふえたって一八%だと言うが、政府関係機関の資金をふやしていくということに対する熱意が足りません。あなたがそういう考え方だから、九%であったものが八・七%に下がってきておるのです。通産大臣、それは、あなたは中小企業者の利益を守る役割りを果たさないことになる。さらにあなたが続けてお答えになった、市中金融機関の資金ワクをふやしていくことがよいのじゃないかということですが、この市中金融機関の、いわゆる全国銀行ですね、その資金ワクそれ自体、都市銀行等におきましては下がってきておるじゃありませんか。しかもこの公庫債を発行した場合において、おれは公庫債を引き受けたのだから、もう中小企業者に対する資金ワクはこれ以上拡大をする必要はないのだというので、公庫債を引き受けたことに藉口して、むしろこれを引き下げていくという危険性が起こってまいりますよ。あなたはそこまでお考えになりませんか、どうなんですか。
  78. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、これ以上は見解の相違になると思いますから、申し上げません。しかし中小企業金融に財政投融資をどれだけつけるかという問題と、一般の政府全体についての問題、これはいろいろあんばいして考えなければいかぬ。私はもちろん、中小企業に多いに越したことはありません。多いに越したことはないけれども、しかし、そのほかのものは必要ないとは言えないでしょう。だから、これは比較勘案の問題で、絶対量が多ければ、それはもっと取ったほうがよいにきまっておりますが、それはむずかしい問題です。それからもう一つの、百億円を中小企業金融公庫に出したのだから、もうおれのほうは中小企業への金融というものは努力しないでいいのだ、それは私は市中銀行をやっておられる人たちの、いわゆる銀行の持っておる使命に対する認識の問題に帰着するのではないかと思います。そういうことは、私は大蔵省のほうで十分ひとつ監督をしてもらえるだろうと思っております。私としては、やはり政府関係の三公庫にできるだけ金を集めて、集めればこれは必ず中小企業に行く。市中銀行が持っているのは、大企業へいてっしまうかもわからないし中小企業へいくかもわからない。これはうまく案分しろといったってなかなかむずかしい。しかし一ぺん中小企業金融公庫なり商工中金へ金を集めれば、これは必ず大企業へいかないで、循環していくことは別として、直接にはやはり中小企業へいきますから、そういうものをふやすくふうがあったらふやす考え方を持ってもいいんじゃないかというのも、私は一つ考え方だと思っておるわけであります。
  79. 中村重光

    中村(重)委員 いまのあなたの答弁は、私はむしろ詭弁だと言いたい。私がいま申し上げたようなことは、これは単なる杞憂じゃないと思う。中小企業者に対するところの資金ワクを拡大するという方向でなければならない。それが下がっているのですよ。ずっと伸びておって、いまあなたが言われるようなことならば、それは通産大臣、大いにがんばって、大蔵省にばんばん働きかけて中小企業に対する資金ワクを拡大した、こういうようなことで、いわゆるほんとうに不安がなく、安心感を与えるような形でやっておられるならば、これはいまのあなたの答弁を私は納得いたしますよ。そうじゃない、逆のやり方をやっているじゃありませんか。そうしていまあなたは百億の問題は、それは大蔵省のことだとおっしゃった。大蔵省はがんばるだろう。しかしあなたは通産大臣として中小企業金融問題を何とか緩和するような努力を最大限にやらなければならぬという考え方の上に立つならば、これは大蔵省の所管であるからということで、この問題を軽く片づけるということは私は間違いだと思う。さらにまたあなたは中小企業基本法の審議の際に、何と御答弁になりましたか。私たちは、全国銀行の集中融資、これをやめさせなければならない、中小企業に対するところの資金の貸し付けワクというものをきめなければならない、そういうことをやるべきだ、こういうことを言ったとき、あなたは、統制経済じゃないのだからそれはできないけれども、行政指導でそういうような形になるようにやりたいということを御答弁になっていらっしゃる。これは大蔵省の所管だからとはそのときおっしゃっておられません。ですけれども、遺憾ながら結果は逆の方向をたどっておるじゃありませんか。だから私は重要な問題点であるとして指摘をしておるわけです。あなたがまずおやりにならなければならぬことは、中小企業者に対する貸し付けワクをできるだけ拡大をするための最大限の努力をする。そうしてそこで実績を上げる。さらにまた財政投融資あるいは政府出資というものも、九%は一〇%へ、一五%へと拡大をする、投融資のワクを拡大をするという努力をされるべきだと私は思う。いまのあなたの答弁はきわめてうしろ向きの答弁であって、それではならぬと私は思うが、どうですか。
  80. 福田一

    福田(一)国務大臣 大蔵大臣がやってくれるだろうと思うというのは、全然まかせたという意味で言っておるのではない。所管は大蔵大臣だからということを言っておるのであります。もしやらなければこちらから大いに要請する、こういう意味でございますから、どうぞ誤解のないように願います。
  81. 中村重光

    中村(重)委員 時間がないようでありますから、きようはこれでおきまして、また後日質問することにいたします。
  82. 二階堂進

    ○二階堂委員長 本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時三十五分休憩      ————◇—————    午後六時十六分開議
  83. 二階堂進

    ○二階堂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  通商に関する件について調査を進めます。  日韓貿易に関する問題について質疑の通告がありますので、これを許可いたします。桜井茂尚君。
  84. 桜井茂尚

    桜井委員 日本と韓国との貿易の現状はどうなっておりましょうか。大体六二年まではこの通商白書に出ておりますが、昨年の状況はわかりませんので、お伺いいたしたいと思います。
  85. 福田一

    福田(一)国務大臣 数字のことでありますから、いま通商局長が参りますので、その節お答えいたします。
  86. 桜井茂尚

    桜井委員 それではその点は若干あとにいたしまして、六三年がわかりませんので、六二年の貿易を前提にいたしまして御質問をいたします。  六二年の日本の輸入は、魚介六百万ドル、米七百万ドル、ノリ百万ドル、黒鉛百万ドル、鉄鉱石五百万ドル、無煙炭四百万ドル、計二千三百万ドルでございます。ところが日本のほうの輸出はかなりございます。鉄鋼の一千八百万ドル、自動車の一千五百万ドル、繊維の一千六百万ドル、化学肥料の一千七百万ドル、機械類の五千三百万ドル、計一億一千九百万ドルでありまして、これは非常な片貿易であります。一億一千万ドルの差がございます。この決済方法はどのようになっておりますか。
  87. 福田一

    福田(一)国務大臣 その決済は一応順調に行なわれておると思っております。
  88. 桜井茂尚

    桜井委員 私は前に焦げつき債権があったと思うのでございますが、これはその後どのようになっており、どう処理なさるおつもりでございますか。
  89. 福田一

    福田(一)国務大臣 四千七百万ドルほどオープンアカウントにおきまして焦げつき債権があることは事実であります。これは一応ただいまたな上げをいたしておりますが、今後これは順次交渉をいたしまして支払いをするように話し合いがついておるわけであります。
  90. 桜井茂尚

    桜井委員 韓国は昨年から輸出入リンク制を実施するようになったと聞いております。この点はどうなっておりますか。
  91. 福田一

    福田(一)国務大臣 私はただいまのところリンク制を行なっておるとは承知いたしておりません。という意味は、やはりそれぞれ決済をしながら売買を行なっておる、貿易を行なっておるということでございます。
  92. 桜井茂尚

    桜井委員 私は、確かに輸出入リンク制を韓国がとっていると思うのでございますけれども、大臣が知らない……。
  93. 福田一

    福田(一)国務大臣 知らないんじゃありません。やってない。
  94. 桜井茂尚

    桜井委員 やってないのですか。それでは、韓国に輸出し得るもの、そして、今後輸出額の日本において増大するというようなものはどういうものがございましょうか。
  95. 福田一

    福田(一)国務大臣 いろいろなものを要望しておるようでございますが、機械類にしても繊維にしても、あるいは鉄鋼関係にしても肥料にしても、いろいろあると思います。要望しておるものはいろいろあると思っております。
  96. 桜井茂尚

    桜井委員 韓国にはもともと地下資源がございません。ほとんどないといってもいいくらい。あるのはお米です。それと木浦の近くに綿花が少しできる程度、それからあとは海産物でございます。こういう状況のもとにおいて、将来とも輸出入が円満に、日本のほうからは大臣のおっしゃるとおりに非常に伸びる。また非常に要望も多いと言われますが、しからばこちらのほうで買うものがあるのかどうか。よく聞きますと、中国貿易にいたしましてもソ連貿易にいたしましても、こちらから輸出するものはあるけれども買うものがないという御答弁を伺っておるのでございますが、韓国についてはどうでございましょう。
  97. 福田一

    福田(一)国務大臣 大体の傾向としてはお説のとおりだと思っております。
  98. 桜井茂尚

    桜井委員 中国やソ連に対しては、見返りに輸入するものがないから輸出の振興はなかなか困難だとおっしゃり、韓国に対してはそういうものはないけれども促進をする。これは何かロジックが合わぬような気がするのですが、差しつかえないのでございますか。
  99. 福田一

    福田(一)国務大臣 私はいまの段階において、やはり現金決済で処理をいたしておりますということを申し上げておるわけであります。すなわち、したがってこれが借款になりますか、そういうことであれば、いまのところこれは差し控えていかなければ、日本としてはそうそう向こうに出すわけにはいかないと思います。
  100. 桜井茂尚

    桜井委員 そういたしますと、いまのところ現金決済でできている、しかし将来、当分の間韓国において産業がない、そうした場合に韓国において、韓国の外貨が今後は豊かになるのだというお見通しでございますか。
  101. 福田一

    福田(一)国務大臣 これは韓国の問題でございますから、詳しいことは申し上げられませんが、しかしいまの段階において急に韓国にそうそう外貨がふえる見込みがあるとは思いません。
  102. 桜井茂尚

    桜井委員 六二年をとってみますと、従来もずっとそうなんなすが、韓国の輸入は全体で四億二千七百万ドル、輸出は五千五百万ドルでありまして、これはもう非常なアンバランスでございます。そしてこれを何とかやってきたのは、アメリカからの援助があったからであります。それだから今日までやってきておって、ともかく現金決済が大臣のおっしゃるとおり一応できたかもしれません、一部に焦げつきがありましても。しかしこの韓国におきましてアメリカの援助というものが今後ふえてくる、そうしていままでのように、いま私が申し上げましたように非常なアンバランスなんですが、これをふさぐほどアメリカからの援助が韓国にも増大する、このようにお考えでございますか。
  103. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、これはアメリカと韓国の問題でありますから、ここでお答えする限りではない思いますが、しかし新聞等から見てみますと、あまりふえない、むしろ減るような傾向にあると聞いております。
  104. 桜井茂尚

    桜井委員 したがって、韓国との貿易におきましては、アメリカのほうにおきましても、今年度の予算等を見ましても、援助がどうも減りそうですし、そういたしますと、韓国としましては非常に貿易のアンバランスがある。しかもそれをカバーするだけの生産物は今後とも当分期待できない。しかも、たとえば一例を引いてみますと、韓国の輸入しているものは、食料とか繊維とか石油等の消費財またはその原料であります。そして経済の拡大となるようなもの、そういうものは非常に乏しい。生産力の拡大になるようなものと思われるものは日本からいっておりますし、よその国からもいっておりますが、化学肥料の六千二百万ドル程度、それから先ほど私ちょっと申し上げました全世界から韓国は機械類を五千八百万ドル輸入しておりますが、そのうちの大部分五千三百万ドルはわが国であります。しかもその五千三百万ドルのうち、内容は何かと申しますと、それは自動車が一番多くて、あとはトランジスタラジオそれからラジオ、テレビ、電球、みんなこういう消費財なんです。韓国の生産力が基本的に拡大再生産に向かうというような、そういう意味の生産財、こういうものはわずかに一千万ドルしか六二年には輸入いたしておりません。こういうような状態で韓国の生産力が今後拡大するということは、これはなかなか期待できない。そればかりではない。この経済が拡大再生産に移るというためには、一つの何といいますか、はずみと申しますか、経済のある一定の蓄積がありまして、その蓄積が資本が回転するという形になりまして、拡大再生産にいくのでありまして、日本におきましてもかつて明治時代には地租というものがありましたでしょうし、いろいろなそういう何かがありまして、資本の蓄積があって初めて拡大再生産に向かっておる。東南アジアその他の国々がなかなか拡大再生産に向かえないというのも、経済の構造的なそういうところの基本的な点に問題があるからだろうと私は思います。韓国におきましても、東南アジアと同様に、一つは基本的に経済が単純再生産から拡大再生産に移っていく、そのはずみになるようなモメントが韓国において欠けているんじゃないか。この欠けているものを、そういう状況の韓国との関係におきまして、これをわれわれが日本と韓国で貿易を拡大するといいましても、これは日本の負担がただ単に増大していくということ以外に、何ら結果として得るものがないではなかろうかと思うのですが、その点はどうお考えでございますか。
  105. 福田一

    福田(一)国務大臣 低開発国との関係は、いまあなたのおっしゃるような関係だと思うのであります。韓国の場合も非常に似通ったものであります。だから貿易をしないわけではない、可能な範囲内において貿易をするということは、私は当然であると思います。いかに貿易の額が少なくなろうと大きくなろうと、向こうは非常に成長過程に入ろうとあるいは成長はとどまっておろうと、ともかくわれわれとしてはどこの国とも貿易はする、こういうたてまえで進むべきでありますから、いまあなたのおっしゃったように、韓国は経済的に大いに産業が発展するような動向にはなっておらないというようなことであっても、その限度においては貿易というものはあり得るものだと私は思うのであります。その貿易をできるだけ拡大する、こういうことでいくべきであると思っております。
  106. 桜井茂尚

    桜井委員 今度の日韓交渉におきまして、無償三億ドル、有償二億ドル、民間協力一億ドルということでございますが、六億ドルのお金を韓国に注ぎ込んだといたしましても、アメリカがすでに数十億ドルの援助をいたして、なおかつ現在のような状況であるところに、この六億ドルのお金を無償援助、有償援助としてやるのでございますが、その場合に、どのようにやったならば経済の拡大再生産に向かい得るのか。そしてまた、三千万以上の韓国の人口、これだけ大きなところにたったの五億ドルや六億ドル程度、大海の中につぎ込むようなものを持っていって、そしてほんとうに韓国経済の再建に協力できる、このようにお考えでございますか。
  107. 福田一

    福田(一)国務大臣 御案内のように、まだ韓国との間には何ら取りきめはきまっておりません。きまっておらない数字を基準にしてここでいろいろ論議をすることは誤解を招くおそれがあると思います。したがって、これがきまった上でお答えをいたしたいと思います。
  108. 桜井茂尚

    桜井委員 漁業問題がきまればほぼ問題の大詰めにくる、このように一般に言われておりまして、この問題はまだきまらないとおっしゃられましても、すでに公表され、もうほぼ両者で納得のいった問題だ、このように聞いておりますが、まだこの問題が動く余地があるのでございますか。
  109. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、動く余地があるかないかも知りません。要するに、すべての問題は一括して日韓交渉はきめるというのが政府の方針であります。したがって、いかにささいな問題であっても意見が一致しない限りは、日韓問題は解決しないのであります。したがって、今日の段階において、日韓問題が解決したというたてまえに基づいて、あるいは新聞あるいはその他のそういう話し合いが進んでいる段階の数字を基準にして私はお答えをすることは、かえって誤解を招くおそれがあると思いますから、きまった上でお答えするようにいたしたいと思います。
  110. 桜井茂尚

    桜井委員 韓国がアメリカからあれだけ膨大な援助を受けたにもかかわらず、現在、いま申し上げ、大臣も認めたような現象である。この場合に、アメリカにいたしましても、経済援助をする国、経済協力をする国に対しましては、国内改革をするように、大体その方針をいっておるようであります。韓国につきまして一番問題となるのは、六十万に及ぶ大軍をかかえ、そしてこれがあるということの中で、韓国の経済というものにそれだけの重荷になってきておる。この重荷がある限り、韓国が経済的に自立するということは非常に困難であろう。困難だからこそ、現実に、大臣も認めているとおりの状態になっている。しかるに、この六十万というようなこういう大軍が、現在の北鮮との関係その他においてなくなるという見通しがあるか。そのなくなるという見通しがなければ、韓国はやはり相も変らず、いかに日本で援助をいたそうとも、同じことになるのではなかろうかと思うのでございますが、北鮮との関係においてこういう軍備がなくなっていくんだ、こういう見通しはお持ちでございますか。
  111. 福田一

    福田(一)国務大臣 桜井さんの御質問でございますが、あなたも一応仮定の上に立ち、また、一応想像といいますか、予想を交えながら御質問をいただいておると思うのであります。これは無理もないことなんでありますが、私の立場からいたしまして、政府といたしまして、韓国がどのような形になり、どのようなことをするか、その場合においてこちらがどういう態度をとるか、こういうようなことは、今日いま日韓交渉が行なわれておる段階において、私はこれは有害であっても決してプラスではないと思います。だから、私はそういうことについてはお答えするのは差し控えさしていただきたい、こう思うのであります。あなたの御質問のお気持ちがわかっておらないで言っておるのではありません。しかし、こういうことはやはり外交問題でもございますし、そうしていま両方が話し合いをしておるわけです。だから、話し合いをしている段階で、向こうの国はどうなるかとかこうなるかとかいうことを言うことは、ある意味では失礼にもなります。ある意味ではまた間違った想像をするかもしれません。これはそういう間違った想像の上に立った討論をすることは、また意味がないと思うのであります。そこで、現実の問題についてならば、これは私はお答えできると思うのであります。また、そういうような韓国の問題等について国会であなたと私がお二人でお話し合いをするというなら、韓国は六十万の軍隊を持っていてたいへんだろう、二千六百万のところで六十万の軍隊を持っているのはたいへんだろうというようなお話は、よくわかるような気がいたします。しかし、それについては、韓国は韓国なりのまたいろいろな考えもあるし、独立国でもありますから、こういうことについて私が一々、想像を交えながらこういう公の席において言うことは差し控えさしていただくべきではないかと思うのであります。
  112. 桜井茂尚

    桜井委員 ちょっと韓国の問題はしばらくおきまして、現在の北鮮との貿易の現状はどのようになっておりましょうか。
  113. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 北鮮との貿易でございますが、六二年輸出入合計が九百三十万ドル、六三年にはそれが相当ふえまして、千四百八十万ドルになっております。なお、韓国との貿易でございますが、一九六二年は輸出が一億一千五百万ドル、輸入が二千四百万ドルでございまして、六三年は一−十一月でございますが、輸出が一億二千万ドル、輸入が三千百万ドルとなっております。
  114. 桜井茂尚

    桜井委員 私は満鉄におったことがあるのですが、そのときに、この間の戦争の前ですが、茂山に参りまして、茂山の鉄山というのが非常にりっぱな鉄山でございまして、日本におきましても、あの戦争遂行に際しては、茂山の鉄山というものが非常に経済的に重要な位置を占めておったはずであります。したがって、今日日本は鉄鉱を世界の各地から輸入しなければならないし、しかもこの製鉄の設備は非常に膨大化しておって、原料を確保するために全世界に奔走して、おる状況のようでございますが、茂山の鉄山の現況はどうでございますか。また、そこから日本への輸入はどうなっておりますか。
  115. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 茂山の鉄鉱石は、戦前、日本の製鉄業界でかなり使っておりまして、その品質等もわかっておりますので、事情が許せば、日本の製鉄業としてはそれを利用したいという気持ちを持っておるようであります。私も、最近の具体的な状況は必ずしも十分に存じておりませんけれども、あるわずかな数量でございますが、試験的に輸入をしたように聞いております。まだ金額、数量は必ずしも大きくなっておらないようであります。
  116. 桜井茂尚

    桜井委員 日本の産業界では、いま御答弁のありましたとおり、われわれ日本人がかつて開発した茂山というものにつきましては、なじみも深いし、さらに北鮮におきましては鉱産資源が非常にあるのであります。鉄以外の鉱産物にしましても、非常にたくさんの埋蔵量を持っております。したがって北鮮の場合におきましては、われわれが輸出した場合に輸入する資源というものに困るという現象は出てこないのじゃないか。少なくともわれわれがプラント類を輸出した場合に、そのプラントにより鉱山などが開発され、それの見返り物資として輸入するのに、おそらく困難はないし、それからまた、たとえば飼料でございますが、トウモロコシの類、または清津とかあるいは羅津、ああいうりっぱな港におきまして、漁業の方面におきましても南鮮よりもかえって発達しておる。そしてスジコ、タラコですか、ああいうものの輸入ということは、業界においても非常に期待しておるようでございます。農産物等におきましても、われわれの一番困っておる飼料の問題、これも現に多量にあるし、またデパートへ行って買うにも高くて困るタラコとか、こういうものもあり、資源はある。こういうような場合に、北朝鮮との貿易はなぜ促進しないのでございましょうか。
  117. 福田一

    福田(一)国務大臣 一応事情を通商局長から説明を申し上げます。
  118. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 北鮮との貿易につきましては、北鮮の現在の状況が、まだ日本との国交が全然ないところでございますので、いろいろな面での制約がございますが、私たちといたしましては、いわゆる商業ベースで普通に話がつくものにつきましては、できるだけその実現をはかるという気持ちでおるのでございます。最近商社、メーカー等の先方への出張等もございまして、かなり日本の業界の人と先方との接触も出てまいっておりますので、今後徐々に貿易も拡大していくのではないかと思っております。現在までの貿易の品目は、日本からの輸出は繊維、鋼材、雑貨等々でございまして、先方からは、先ほどお話がございました鉄鋼石、石炭、トウモロコシ、黒鉛等が輸入されておるのが実情でございます。
  119. 桜井茂尚

    桜井委員 これは二十一日の新聞でございますけれども、アメリカの商務省におきましても中国禁輸を緩和する、要するに中共貿易を緩和する、このように言っておると新聞報道では書いております。そしてキューバのような直接のところはアメリカとしては困るのでございましょうけれども、アメリカ自体じゃなくて、アメリカから技術導入した第三国が共産圏貿易を進めるということについては、アメリカ自体も緩和していくんだという方針のようにこの新聞は伝えております。さらにまたアメリカの商工会議所ですか、業界におきましても、サンフランシスコを中心にし、何とか貿易を拡大していきたいという要望が出ているというように新聞が伝えております。こういうときに、北朝鮮との貿易となりますと非常に微々たるものでございます。現在、先ほどから申し上げておりますとおり、東南アジア等の低開発地域、これらの地域における貿易というものは、そう簡単に伸びるという要件を持っていない。こちらから援助すればともかくですが、そうでない限りにおきまして、現在のままの状態におきましては伸びる要件が非常に乏しい。南朝鮮にしても同様であります。しかるに北朝鮮におきましては、これは現に経済は拡大再生産に入っておる。一例を鉄鋼にとってみますると、鉄鋼はたしか六二年、百二万トン出しておるはずであります。百二万トンというといかにも小さいようでありますが、人口一千万で百二万トン。日本がかつて大東亜戦争の直前、最高のときにほぼ六百万トン程度だったでございましょう。そういたしますと、日本がその当時六千五百万の人口、この人口とそれと比較をいたしてみますならば、今日の北朝鮮の鉄鋼の生産高は、大東亜戦争直前の、日本の国力が一番充実したときの状態とほぼ等しいくらいにいっております。それはただ単に鉄鋼のみではございません。ほかの面におきましても総括的にそうなっておる。先ほど私申し上げましたとおり、経済が拡大再生産の方向に向かうはずみを持っておるし、現に経済の成長率はすばらしく発展いたしておる。こういうところとの貿易が非常に乏しくて、わずかに三千万ドル程度の貿易しか行なっていない。先ほどの御答弁ではそのようでございますが、もっともっと伸びる、現実にあるものを一つも伸ばそうとなさっていらっしゃらないような感じを受けるのでありますが、その根本には、何か朝鮮戦争中に閣議決定か何かで、北朝鮮とは直接の交渉は持たない、こういうようなことを決定なさったそうでございます。そしてまたそれがその後今日まで続いておって、それに今日も縛られて、諸外国に対しましては延べ払いをやっておる、全世界どこの国に対しても延べ払いをやっておる、しかるに北朝鮮に対してだけは延べ払いをやらない。これはどういうことなんでございますか。すでに戦争も終わって十数年たち、アメリカがこのように大きく転換しておるときに、当時の古い決定に縛られていまだに身動きがつかない、延べ払いはやらない、こういう考えでございますか。この辺で変わって、何か新しい方策をとろう、北鮮だけの延べ払いをやらないということを変えていくというお心持ちはございますか。
  120. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 ただいまお話しの点、補足的に私から最初に申し上げますが、昭和三十年に当時の国際情勢からいたしまして、政府としては北鮮との貿易その他の接触を認めないようにしようという申し合わせが、当時あったようでございます。最近になりまして情勢もかなり変わってまいっております。通産省といたしましては、民間からも強い要望がございますので、昨年以来、可能な範囲で貿易がしやすいように努力をしてまいっております。たとえば輸入する貨物につきまして、従来は北鮮との直航が認められませんでしたが、それもできるようにいたしました。また従来、輸出と輸入とを厳格に強制バーターで縛っておりましたけれども、その指定をやめまして、必ずしもバーターでなくてもよろしいということにいたしました。それから従来、為替決済が第三国経由でございましたが、それも直接の為替決済ができるというふうにいたしたわけでございます。ただ、何せ一般の外交関係などと違いますので、いろんな制約がございまして、まだまだ普通の正常な貿易関係を推し進めるところまでは至っておりませんけれども、わずかながらもそういうつもりで努力はいたしておる次第でございます。
  121. 桜井茂尚

    桜井委員 ソ連や中共に対しても延べ払いを認めておるのですが、北鮮にだけは延べ払いを認めてない。これを今後延べ払いを認めるという考えをお持ちでございますかどうですか、大臣お答えを願います。
  122. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほど局長からも申し上げたとおり、順次いままでの態度を緩和しながら、できるだけ貿易をしようということになっておりまして、ただいまのところまだ延べ払いの問題は民間において話が起きておりません。われわれのほうにもまだ話がきておらないわけであります。
  123. 桜井茂尚

    桜井委員 私のところにありまする資料によりますと、たとえば北鮮側のほうとしては、尿素肥料生産設備年間八万トンの能力、あるいはオクタールブタノール生産設備年四千トンないし五千トンのもの、それからDOP生産設備年産四千トンないし六千トン、ニトロン生産設備七千トンないし一万トン、火力発電設備五万キロワットアワー、合成ゴム生産設備、写真フィルム製造設備、あるいは貨物船、これらのものを、金額としてほぼ二千万英ポンドでございますが、こういうようなものをぜひ日本のほうから輸入したいという希望があるそうでございますけれども、大臣はそういうことは全然お聞きになったことはございませんか。
  124. 福田一

    福田(一)国務大臣 私はいまあげられたような個々の問題については実は聞いておりません。何かそういう希望があるというようなことは聞いております。
  125. 桜井茂尚

    桜井委員 これは相当大規模なプラント輸出でございまして、したがって、延べ払いをやる意志があるかないか、延べ払いをやる意志がないということになりますと、これは非常な差別待遇が相も変わらず継続していくことになります。しかるに、オランダはすでに延べ払いをやっております。イギリスもまた同様に輸出して、そのような方向にいこうということで、いま経済使節団の交換が行なわれております。非常に遠い諸国のほうから、そのようにどんどんと北鮮との貿易拡大が行なわれており、そして非常に近い——先ほども茂山の例を申し上げましたが、こういうようなことでわれわれも、実業界の中でさえもほしいし、また向こうのほうでもぜひとも日本から買いたいというような状況下にあるときに、なぜこういうものについて、諸外国よりも、西欧諸国よりも劣る交易条件でしか取引をやらないのか。このやらないという理由は何か。アメリカでさえも、もうけっこうだというように言っておる。そして西欧がやっておる。そして業界は欲しておるし、向こうも欲しておる。しかるに日本の政府は、それに対して北鮮だけにはやらぬ。これはどういうことか、その理由を教えていただきたいと思います。
  126. 福田一

    福田(一)国務大臣 アメリカがどういうあれをしたか私は知りませんが、貿易の問題についても外交の問題についても、すべてわれわれは自主的にやらなければいけない。よそがどうしたからこうだとか、あっちがこう言ったからどうだとか、そんな必要はない。自分の自主的立場でやるべきだ、こう思っております。まず基本観念を私は申し上げたわけであります。  そこでいまの問題でございますが、私は民間のほうからプラントの問題についてはまだ聞いておりません。それから、いままでのいろいろの経緯もあったでありましょうが、そういうこともできるだけ順次緩和するような傾向できておりますが、しかし韓国との場合においては確かに四千七百万ドルの焦げつきはありますけれども、ほかのものは全部現金決済である。向こうが貧乏であるかどうかは別にして、そうであります。ところが北鮮において、たとえばそれだけのプラントを輸出する場合でも、一五%とか二〇%の前払い金が外貨の関係であるのか、それからどれだけの支払い能力がその後あるのか、こういう問題もわれわれとしては考えてみなければならないと思います。そういうようなこと等から考えて、まだ具体的にそういう問題が起きてきておらないというのがいま実情であります。したがいまして、いま中共問題についてもよく出てくるのでありますが、現実に問題が出てきたときわれわれは考えればいいのでありまして、これをどうする、こうするということを最初から言う必要はない、条件その他いろいろの問題がこれを決定することになるわけであります。
  127. 桜井茂尚

    桜井委員 これはどうなんですか。現実に起きているのではないのでございますか。業界のほうが大臣に、その茂山の鉄山の鉄がほしいというのは言わなかった。先ほど通商局長の話によればそういう希望があったと言うし、大臣はそれは現実に起きてない、こうおっしゃる。そしてプラントのあれにしましても現実に起こってきておって、だから大臣は聞いたことがあるような気がするぐらいの返事をしているのですが、では現実に私なら私がこれこれのものをどうぞ輸出していただきたいと一緒にもし言ったと仮定して、延べ払いでやってくださいと私が申し上げたら、現実にわかったことなんだから、その場合は延べ払いを許可してくださいますか。
  128. 福田一

    福田(一)国務大臣 その場合においても、その当時の事情あるいは条件その他を勘案して決定するつももりであります。
  129. 桜井茂尚

    桜井委員 条件や事情が他国と同じであった場合には許可していただけますか。
  130. 福田一

    福田(一)国務大臣 その場合においても、信用の度合いその他が変わってくると思います。
  131. 桜井茂尚

    桜井委員 ですからその信用は、先ほど経済的な基礎的な分析を申し上げたのであって、輸入し得る物資はないのじゃなくてあるのだ。現実にあり、その上で支払い能力があるということを前提にしてお伺いしている。そしてそういうものがあるということをお認めになっていらっしゃる。それですから、そういう場合に認めていただけるか。そしてまた人事往来などにつきましても、今日まで北鮮の場合だけは許されてない。人事往来が許されなければ、条件をかけ合う、いろいろな契約を結ぶといったって結びようがない。その人事往来を押えているのは日本政府でしょう。そしてまた延べ払いをするかしないか、ほかの国々よりももし有利な条件だったら許す気があるのか、これも日本政府の腹一つだ。ですから人事往来を認めていただけるのかどうか。そして少なくとも政経分離でもけっこうですよ。中国については、おっしゃることが政経分離なんですから、北鮮の場合にもせめて政経分離でも、当面貿易を本格的に再開していく。われわれ日本としましては、大臣も御承知のとおり、ことしは第一の目標として輸出を振興しなければならぬ。日本経済のまさに危機であります。そして総理大臣もしょっちゅう言っているように、IMF八条国に入る、それで金融を引き締め、そして輸出しなければ、日本経済は重大問題になる、こうおっしゃっておる。その重大問題である輸出、この輸出をまさに解決できる方途があったら、しかも通商ベースでそれができるなら、やる気があるか、こういうことをお伺いしているわけです。みずから自分で首を絞める必要はないでしょう。そういう意味で、日本のわれわれ国民にとっても右利であると考えられる条件をそろえていったら、しからば延べ払いを許可してもらえますか。
  132. 福田一

    福田(一)国務大臣 そういう仮説のことにはお答えはいたしかねます。ただあなたがいま仰せになったように、鉄鉱について引き合いがある、こういいますが、鉄鉱はいままでにでもすでに原料の手当てを数年間はいたしております。そこで今度のような公定歩合の引き上げがあってどの程度生産が増大していくかわかりませが、そういう増大した場合には、そういうところからとれるかもしれません。しかし増大の度合いによっては、もうすでに相当伸びるということを前提にして手当てをいたしておりますから、そのときにまたそれ以外に、そのほうはキャンセルしてしまって、そして北鮮からとれるか、これは私は問題があるだろうかと思うのです。だからそういうことは具体的に問題があるのであって、こういうものとこういうものとを、こういう価格できめるんだ、そういうことが具体的にならないうちにこういうお答えをする限りではないと申し上げておるのであります。
  133. 桜井茂尚

    桜井委員 具体的にするために、少なくとも人の往来ができなければ交渉もできない、かけ合いもできない、商売もできない。だから人事の往来を認めていただけるか。それがなかったら、あなたのおっしゃるように具体的には永遠になりません。大臣のことですから御承知だろうと思う。昔のギリシァの哲人が言っています。問題は問題になったときにそれは九九%解決してあとは一飛びだ、問題を問題にしようとしなければ永遠に解決しません。ですから解決しようとするのかしないのか、そして貿易をほんとうに拡大しようとするのかしないのか、そしていま金融引き締めで設備が余っちゃうかもしらぬとおっしゃいますが、設備が余るような事態が生じたのでは通産大臣としてはお困りじゃないのですか。通産大臣としては、輸出をどんどん伸ばして、設備を遊ばせないようになさるのがあなたの仕事じゃないかと思う。設備を遊ばせないためにもそうしなければならないのじゃないのかということをお伺いしている。単なる仮定ではないのです。それは吉川さんのように、仮定には答えられません、仮定には答えられませんと一生言っておればそうかもしらぬのですけれども、その仮定を、問題を問題にしなければ永遠に解決できないから、問題を問題として発見するために、そのためにまずかけ合う、相談してみるという態度がまずなければならぬ。そういう心がまえがおありでございますか。
  134. 福田一

    福田(一)国務大臣 問題を問問題にしたときにはもう九九%解決だ、こういうお話でございますが、その問題にする時期については、あす問題にするのも前向きの考えなら、一年後に問題にするのも前向きである。しないとは申し上げておらない。順次解決をしていく、だんだんにやっていく、こういうことを言うておる。では出入国等の問題について、どういうわけでいまやっていないのかというお話でありますが、これは法務省の考え方でございますから、私としてはいまここでどうこうという——出入国の問題は法務省の所管ですから、これは私が申し上げる筋ではないと思いますけれども、しかし前向きでだんだん貿易をやる考えでおるということについては、これは間違いないと言えます。ただしかし、いついかなる時期からどれぐらいの金額、こういうことはいまここでは申し上げるわけにはいかない、こう言っておるわけであります。
  135. 桜井茂尚

    桜井委員 中共にも使節団が行っているのでしょう。そして向こうからも来ようとしている。そのときに北鮮にだけはそれができないという理由を、簡単でございますから聞かせていただきたい。これはいまの現実で、仮定じゃないのです。それがやっていない、できないという理由を聞かせていただきたい。
  136. 福田一

    福田(一)国務大臣 それは過去のいろいろの問題があって、そういうことがまだ尾を引いておるのだ、こう申し上げていいだろうと思います。
  137. 桜井茂尚

    桜井委員 ですから先ほど、閣議決定にまだ拘束されていらっしゃるのですか、こういうことを御質問しているのです。世の中が大きく変わり、これだけ世界の情勢が変わってきているのに、いまだに閣議決定に縛られて、そうして変えようとはしないのですか。輸出貿易ということが日本の本年度のほんとうに最重点施策であり、そうしていまここでわれわれがやらなければならない。ことに通産大臣としてはやらなければならない最大の任務である。このときに、世界の情勢が変わっておるときに、いまだに縛られていると自分自身御自覚なんでございますか。これはただ事実だけでけっこうです。
  138. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は少しも縛られておるとは思っておりません。過去の経緯、そういう問題を順次解消していく、こういう考え方でおるということでありまして、一つも縛られたものとは思っておりません。
  139. 桜井茂尚

    桜井委員 閣議決定に閣僚が縛られないということになりますと、新しい閣議決定が何かなければならぬでしょうし、少なくとも通産大臣はその変更を閣議にはっきりとはかるべきだろうと思うのでございますが、そのつもりはございませんか。
  140. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいまそういう考えはございません。
  141. 桜井茂尚

    桜井委員 そうすると、閣議決定とはかってにやってよろしいのですか。通産大臣はその決定には縛られずにかってにものをやってよろしい、簡単なことですから、それを御質問します。
  142. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は閣議決定というものがあったとは聞いておりません。次官会議で決定があったというふうに聞いておりますが、閣議決定とは思っておりません。ただしそのことはどうであろうとも、順次これは解決をしていくという考え方でおるけれども、あすからとかあるいは半年後とか、そういうことはいま考えておらないと申し上げたのであります。それは過去のいろいろの経緯があるわけであろうと思うのであります。いろいろの経緯とは何だということになれば、そのことを一々皆さんにここで申し上げることはできないのであります。
  143. 桜井茂尚

    桜井委員 先ほど来お伺いしていても、ちっとも大臣お答えくださらない。仮定だ、仮定だと申しますが、何が仮定であり、何が現実であるかということの問題を整理しなければ、もはや質問を継続しても意味ないような状態でございます。  そこで私は、通産大臣としては、貿易振興をすることが当面の、少なくともことしの最大の任務である、このように考えておるのですが、これも仮定でございますか。
  144. 福田一

    福田(一)国務大臣 貿易振興はぜひしたいと考えております。しかし貿易振興をしたいと考えておるからといって、いままでの経緯をすべて無視をしなければならないというわけでもなければ、自主性を失ってまでやらなければならないというわけでもなければ、すべて自主性を持って問題に対処してまいりたい、こう思っておるのであります。
  145. 桜井茂尚

    桜井委員 非常にりっぱなことばを私聞いておりまして、うれしくなるのですが、自主性が非常におありのようですから、自主的にお考えを御答弁願いたい。他人によってどうだとかこうだとかいうことでなしに、自主的であるということは全責任を自分が負っているということであるし、したがってことばをあいまいにする必要のないことであって、明確に言って差しつかえないことが自主的であるということばの内容だろうと思う。したがって、あなたのいままでおっしゃっていることは、何か歯に衣を着せてかえって自主的じゃなく、あいまいにしているように私には感じられるのですが、北鮮との貿易は拡大する意志をあなたは自主的にお持ちでございますか、ないのですか。
  146. 福田一

    福田(一)国務大臣 順次拡大をいたしたいと思っております。これが私の自主的なお答えであります。
  147. 桜井茂尚

    桜井委員 その順次拡大する場合に障害になっているのが延べ払いだ、その延べ払いを北鮮にだけは認めてない、これはそれこそいままでの経緯でございましょう。それだから北鮮にだけはいままでは認めていなかったのだが、それは世界のいろいろな事情もあって、自主的じゃなかったかどうかそれは知りませんが、アメリカでさえが変わったのだから、この際そういう例外は取り払う意思はないか、こういうことをお伺いしておる。
  148. 福田一

    福田(一)国務大臣 たびたびお答えをいたしましたとおり、自主的に考えまして、いますぐやる意思はございません。
  149. 桜井茂尚

    桜井委員 そういたしますと、船舶がいままでは羅津なり清津なりに直航できなかった。それが今度は直航できるようになった。いま局長さんがそうおっしゃっておりましたが、これはもう何回ぐらい行っておりますか。
  150. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 ただいまつまびらかにいたしませんので、調べましてお答えいたしたいと思います。
  151. 桜井茂尚

    桜井委員 では調べてお答え願うとして、先ほどからいろいろ申し上げて大臣もだいぶ御了解願うし、そうだとおっしゃっておったのですが、朝鮮の場合、地下資源の関係、あるいは港との関係、あるいは電力との関係、いろいろな関係からいきまして、朝鮮という国、あの国は本来独立した民族統一国家という形で、南北が一緒になるという形でないと、経済的にもアンバランスで自立のできない国になってしまうおそれが非常に強い。これは現実でありまして、したがって南北の朝鮮の統一、そのことは経済的に朝鮮がほんとうに独立国家となるための前提ばかりでなしに、もちろん民族的な悲願でもあろうかと思います。そこで、こういう南北の統一につきまして、池田さんも統一には賛成だ、こうおっしゃっているんだが、そういたしますと、その南北の統一ということに賛成ならば、貿易という面を通じて、それを促進してやる。先ほどアメリカの対外援助のことを申し上げましたが、他国の人の幸福になるようにわれわれも努力する。しかもそれがほんとう意味でわれわれの日本の経済の発展にも一つながり、われわれの幸福ともつながる。そういうような形で政治が行なわれていく。このことがほんとう意味での大きな政治家としての大局的展望であろうと私は信じます。ただ単に商売人のごとく物を売りさえすればいいんだ、政治はこういうものではなかろうと思います。今日の世の中におきまして、外交と申しましても、ただ単にいわゆる外務省を通ずるような外交だけじゃなしに、経済のきずなによって結びつくところの外交、これがほんとう意味において実態心をつくり上げてまいります。そういう意味におきまして、この南北の統一ということがほんとうに念願ならば、選挙で統一するとか何で統一するとか、そういうことは二の次にいたしまして、貿易の面からいきましてそういうことを促進していく、経済的にそういう基盤をつくり上げていく、こういうことに努力をなさる気持ちはございませんか。
  152. 福田一

    福田(一)国務大臣 外交のうちにも経済外交という問題があることはあなたも御存じだと思います。私としましては外務省とよく連絡をとりながらやっていかなければならないと思っておりますが、いまの北鮮とそれから韓国との国際的な位置、あるいはその他の問題等を考えてみますと、われわれがそういうような措置をとることが、かえって誤解を招くおそれがある場合もあるでしょう。それからまたあるいは効果がある場合もあるかもしれません。私はいまにわかにそういうことは判断はいたしかねると思います。したがっていまの段階におきましては、私は両国の——両国のといいますか、北鮮と韓国の統一はわれわれとしては心から希望はいたしますけれども、貿易の関係においてこれを促進するという考え方は持っておりません。
  153. 桜井茂尚

    桜井委員 ちょっと話が矛盾しているように私はお伺いしますが、貿易を促進すると言って、しかし貿易の関係から南北朝鮮の生活水準の向上ということに協力する意思はない、このように聞いたのですが、それでよろしいのでございますか。
  154. 福田一

    福田(一)国務大臣 それはちょっと私の真意とは相隔たっておると思うのでありまして、私は今日の事態において、貿易を通じて韓国の統一に貢献するということは、いまのところ考えておらないということを申し上げたのであります。これはいろいろ実情はあなたのほうがよくおわかりだろうと思う。そういうようなことをすることがはたしてプラスになるかどうかという問題もあるでしょう。あるいはプラスになる面があるかもしれません。しかしマイナスの面になることがあるかもしれない。私はそういうことを貿易の面から考える必要はないと思います。
  155. 桜井茂尚

    桜井委員 日本の輸出を増大しなければならない。そして北鮮とは、先ほどのお話では、統一を促進するしないは別として、貿易は拡大する。しかし延べ払いは知らないし、人事往来も知らない、こういう御回答のように聞こえるわけです。しかし、もう一度繰り返して申し上げますが、アメリカをはじめ世界の大勢が大きく変わり、EECはもちろん、ドゴールはもちろん、現に北鮮との関係においては、オーストラリアもオランダもイギリスも、みな積極的に貿易をしておる段階のときに、われわれが日本国民の利益から考えてみても、われわれのところに希望されるプラントをわれわれが輸出する。しかも茂山の鉄山のごとく非常に優秀な、かつてわれわれが開発し、しかも日本の資本家もその輸入を希望しおって、そして先ほど申し上げました閣議決定か了承事項か知りませんけれども、それには大臣はもはや従わない。そういたしますると、大臣が現在お考えになっている対北鮮貿易の限界、これはどういうものなのか、こういうところをこういう順序でこういうぐあいにやっていきたいというお考えのほどを教えていただきたい。
  156. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいまあなたもおっしゃったように、イギリスは最近話をしだしたということであります。イギリスもいままではやらなかったのであります、失礼でありますがあなたのことばをかりて言えば。そういうふうに国々によっておのおの、やっていいものであってもいままでやらなかったところもあるわけです。日本の場合においても同じであり、自主的にこれはきめていく問題であります。  それから、あなたは環境がそういうふうになって整っておる、こうおっしゃっておるが、先ほどの鉄鉱の話も、ちょっとあなたは私の答弁を御理解していただけたかどうかと思うので、もう一ぺん申し上げますが、すでに鉄鋼業界は、豪州とかインドその他方々から鉄鉱を買う予定をいたしております。それも今後鉄鋼業界が相当生産が伸びるという予定でもって買い付けの予約をいたしております。開発もいたしております。それ以上に伸びるということになればもっと買わなければなりませんから、そういう場合においては私は茂山の問題なんかも当然考えられる一つであろう、こう申し上げておるのでありまして、何も伸びなくなるい。伸びることは伸びるが、その伸びるのに相応する原料の手当てはもう三、四年できておるはずであります。これは私はっきりは申し上げませんが、相当できておるはずであります。そのときにあたって、いまここでプラントを輸出したときに、すぐそのかわりとして鉄鉱をもらったら、鉄鉱だけだぶついてしまう。原料だけ格納しておくというわけにはいかないでしょう。だからそういうような意味で、ほしいものであっても、一応そういうような条件が整っておらなければ買えないことになるわけであります。だから具体的に問題が煮詰まってこなければ私はお答えすることができません、こう申し上げておるわけであります。
  157. 桜井茂尚

    桜井委員 一例を引いたら、また一例のほうに話がそれてしまった。私は一例を茂山にとった。先ほどはタラの子までとったのです。非鉄金属のごときは、これは相当輸入を希望しているだろうと思います。鉄鉱だけではありません。そして輸出する向こうのほうで、先ほど申し上げましたとおり具体的に輸入希望があり、そしてこちらから輸出しても見返りの物資があるんだ。そうすれば日本経済として貿易の拡大になるではありませんか。そうすれば、工場はフル操業して、中小企業が倒産しなくても済むようなことになりはしませんか。ですからなるべく中小企業が倒産しないためにも、労働者が失業しないためにも、貿易はぜひ伸ばしてほしい。それが政府の方針でございましょう。そういたしますならば、私が知っておる範囲でもこれだけの注文があるし、大臣のほうでも、聞いたかう程度のことであっても、そのことはすでに事実問題となっておることなんです。したがいまして今後そういうことを促進していく考えはないかということを繰り返し聞いているわけなんです。それで延べ払いというものが北鮮にだけ残っておる。繰り返し繰り返ししつこくお伺いしている理由は、これは仮定の問題であると大臣はおっしゃられますが、仮定ではなくて現実の問題です。政治が常に日進月歩して動いていく以上、あした契約する、まだ電話をかけてないから商売の取引きはまだ仮定だ、それで電話はかけません、こういうことになりますか。現実においてもはや買うんだと心をきめ、売りたいと心をきめているかどうかという現実の問題です。これは大臣の言う主体性の問題である、あなたの腹の中を聞きたい、こう言っているので、仮定じゃない。
  158. 福田一

    福田(一)国務大臣 電話をかけているのは業者同士でございまして、業者はやっておるかもしれませんが、私のところにはまだ何も話はございません。
  159. 桜井茂尚

    桜井委員 中共との関係におきましても人事の往来があるのでございますが、この商売でもってプラントの輸出、輸入ということにつきましても、売りたい買いたいといって——大臣のところに入る前の前提条件ですが、行きたいという場合には許可を願える状態にあるのでしょうか。まだだめなんでしょうか。要するに貿易を進めるについて、向こうから注文も来ているし、業者がこちらから行きたい、来てみたい、こういう場合に、日本政府としてそれを許可する気持ちがあるのかないのか。その場合通産大臣は、これはおれの管轄じゃないから、こうおっしゃるかもしれませんけれども、通産大臣としての方針、考え方としては、そういうことを閣議に頼み、あるいは法務省に行って、いまの状態はそういうことをさしてもらいたい状態であるから、出入国の自由を与えてやるように法務省のほうもはからってもらえぬか、こういうようなことを言う気持ちはございませんか。
  160. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいまのところは、私は積極的に法務省へそういうことを申し入れる意図はございません。ただし、だんだんとそういうような空気になっていくことは希望をいたしております。
  161. 桜井茂尚

    桜井委員 いまの問題につきましてこれ以上通産大臣にお伺いしても、法務省の関係のようでございますから、あとでそちらのほうに来てもらって質問をするということで、本日は終わります。
  162. 二階堂進

    ○二階堂委員長 次回は、明日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することにし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時二十六分散会