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1964-04-28 第46回国会 衆議院 国際労働条約第八十七号等特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月二十八日(火曜日)    午後一時四分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 安藤  覺君 理事 澁谷 直藏君    理事 田中 正巳君 理事 森山 欽司君    理事 河野  密君 理事 多賀谷真稔君    理事 野原  覺君       秋田 大助君    稻葉  修君       亀山 孝一君    佐々木秀世君       正示啓次郎君    田澤 吉郎君       渡海元三郎君    永田 亮一君       濱田 幸雄君    松浦周太郎君       有馬 輝武君    大出  俊君       小林  進君    田口 誠治君       安井 吉典君    山田 耻目君       栗山 礼行君    吉川 兼光君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         労 働 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         内閣法制局長官 林  修三君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務官         (管理局長)  小林  巖君         人事院事務官         (職員局長)  大塚 基弘君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房公務員制度         調査室長)   岡田 勝二君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君     ————————————— 本日の会議に付した案件  結社の自由及び団結権保護に関する条約(第  八十七号)の締結について承認を求めるの件(  条約第二号)  公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一号)  地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律  案(内閣提出第二号)  国家公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第三号)  地方公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第四号)      ————◇—————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  結社の自由及び団結権保護に関する条約(第八十七号)の締結について承認を求めるの件、公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案国家公務員法の一部を改正する法律案、及び地方公務員法の一部を改正する法律案の各案件一括して議題とし、前会に引き続き質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。河野密君。
  3. 河野密

    河野(密)委員 私は、日本社会党代表いたしまして、ただいま議題となっておりまする諸案件につきまして、主として総理大臣に御質問を申し上げたいと存じます。  国際労働条約第八十七号の批准案は、非常に長い懸案になっております。私は、冒頭に御質問申し上げたのは、池田総理がこのILO条約批准に対してどのような決意を持っておるかということをお尋ねいたしたいと思います。  池田総理は、本国会冒頭施政演説におきまして、ILO八十七号条約は必ず批准すると申されました。しかし、この池田総理の言明は、必ずしも今回に始まったことではないのであります。第四十三回国会施政演説においてもさように申されました。しかも、第四十三回の国会におきましては、両党の話し合いの結果に基づいて特別委員会がつくられ、世間からも非常に期待がかけられたと思います。また事実ある程度まで審議が進められたのでありまするが、結局は批准にまでこぎつけることができませんでした。今回ははたしてどうなるかということについて、一般も非常な期待と懸念とを持っておると思うのであります。私は、池田総理決意をお伺いしたいのは、多少困難があるかもしれない、あるいは大いなる困難があるかもしれない、しかし、そういういわゆる万難を排してでも必ず八十七号条約批准に持っていくのだ、こういう決意をお持ちでありますかどうでありますか、総理決意のほどをまず承りたいと存じます。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 お話のとおり、ILO八十七号条約批准は、他の関係国内法とともにぜひできるだけ早く実現いたしたいと努力しておるのであります。  御承知のとおり、三十五年の岸内閣以来たびたび国会に提案されましたが、いろいろな事情国会通過に至りません。しかし、この条約は、日本国際社会におきまして世界の平和と繁栄のために尽くす一つの方法でございます。私は、その意味からもぞひ今国会において通過させたい。ことにILO理事会におきましては、日本への調査団を差し向けるというふうな情勢に相なっておりますので、私はもう遷延を許さない事情に立ち至っていると考えるのであります。したがいまして、ぜひ今国会通過させたいという強い熱意を持っておることをここで申し上げておきます。
  5. 河野密

    河野(密)委員 池田総理大臣ILO八十七号条約批准についての非常な熱意を伺って、われわれも意を強うするものでありますが、事のついでに伺っておきます。  いま池田総理ILO八十七号条約国内諸法案件とこう申されましたが、そういたしますと、池田総理は、批准案件とともに関係国内法改正一括して提案しておるのであるから、通すならば一括してこれを通すのである、こういうふうに私は理解いたしました。不可分関係にある、政府もまた不可分一括審議一括採決というたてまえをあくまでもお貫きになる、こういうふうに私は拝承いたしました。これがしかるべきことであると存じまするが、総理の御意思もそこにあると思いますが、間違いございませんか。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 従来からもそういう考えでいっておりますし、また今回も一括審議を願い、一括通過を熱望しておるのであります。
  7. 河野密

    河野(密)委員 私たちも、国内法案件とともに一括審議をし、一括通過をするということがこの際必要であろうと存じます。そういう意味合いにおいて、あくまでも総理がその所信を貫かれんことを期待してやまないわけであります。  次に御質問申し上げたいのは、先ほど総理大臣も申されましたように、ILOの本部におきましては、本年の二月十三日の理事会におきまして、八十七号条約批准の問題に関して日本調査団派遣することを決定いたしました。その調査団も三名である。デンマーク、ニュージーランド、スウェーデンの代表で構成する。こういうことで日本同意を求めて、意向を重ねてまいりましたが、日本政府は四月の二十日にこれに対して同意を与える旨の返答を出されたことも承っておるのであります。そこで、同意を与える返答を出した以上は、五月のうちにはおそらくILO理事会、あるいは調査団に選ばれた三名の者は、日本から参考人を招致いたしまして、事情を聴取した上で、来たる秋ごろに調査団日本に来るような結果になるものと思いますが、そのように承知してよろしいでございましまうか。
  8. 大橋武夫

    大橋国務大臣 一九六四年二月の第百五十八回理事会決定によりますと、調査団は次の三名で構成されます。委員長エリック・トライヤー氏、委員デビッド・コール氏、委員アーサーティンダル卿。この三名は、五月上句ジュネーブにおきまして第一回の会合を持たれまして、調査のスケジュール並びにその詳細の日時等につきましてはその際に打ち合わせをされるということでございます。仄聞するところによりますると、日本からの証人喚問等の手続は、おそらく七月ごろに予定されることと相なるのではないかと聞いております。
  9. 河野密

    河野(密)委員 かりに証人喚問が七月になったといたしましても、秋ごろには調査団日本に来る運びになることと思います。日本政府もまたこれを予想して、調査団派遣同意を与えたわけであります。  私は、この際総理大臣にお尋ねいたしまするのは、日本政府として調査団派遣同意を与えたのは、これはもっともなことであるし、当然のことであると存じます。しかし、調査団派遣されるということは、日本政府として好ましいことだとお考えになるか、あるいは面目に関する問題、不面目な問題であるとお考えになるか、こういう点でございます。もし不面目なものであるとお考えになるならば、調査団派遣決定され、あるいは調査団活動を開始する前にこの条約批准を断行して、調査団日本へ来なくてもよろしいというような事態をつくることが日本としては望ましいことではないか、また日本政府としてのとるべきことではないかと、かように私は考えるのでありますが、総理大臣の御所見を承ります。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 調査団が来られることは、お話のとおり、望ましいことではございません。したがいまして、われわれといたしましては、できるだけ早く御審議通過を願いたいと努力してまいったのでございます。先ほど来申し上げますごとく、いろいろな事情でこれが遅延したのでございます。しかし、今回におきましては、調査団が来る、来ないにかかわらず、ぜひやりたい、ましてや調査団が来るという段階になりましたら遷延を許さないということは、先ほど答えたとおりでございます。  ただ、私は、今回の調査団派遣につきまして日本政府がこれを応諾したということについて、仄聞するところ、ジュネーブ委員会は非常に日本に対して好感を持たれたようでございます。これは不幸中の幸いというか、やはりわれわれがILO委員会理事会を非常に重要視している。たとえばソ連をはじめとする共産圏諸国はこういう調査団を差し向けられることは拒否しております。しかし、これをわれわれが、そういう先例があるにもかかわらず応諾したということにつきましての日本政府立場は、非常に共産圏諸国とは違って、公正な立場として、何と申しますか、われわれの誠意は認めてくれたということは、不幸中の幸いと申しますか、とにかくわれわれの誠意はこれによってわかっていただけたということは私は喜んでおります。  しかし、いずれにいたしましても、早くこれを通過さして調査団の来訪の必要のないようにいたしたいと念願いたしております。
  11. 河野密

    河野(密)委員 政府調査団を受け入れるということで受諾をされましたことは、先ほど申し上げましたように非常に妥当なことであったと私たち考えるわけでございます。  そこで、この際政府にお尋ね申し上げたいのでありまするが、このILOの問題について、私は政府あるいは与党の部内に対して理解の及ばない、というと非常に語弊がありまするが、誤解をしておる向きがあるのではないかと思うのであります。と申しまするのは、この八十七号条約並びに国際労働機構そのものに対する認識がいささか至らない点があるのではないかと思うのであります。われわれといたしましては、八十七号条約国際労働機構根本に触れる基本的条約であって、加盟国批准したければ批准し、したくなければしないで済むという性質のものではないということを十分理解してほしいということ、したがって、批准問題がこじれると、今度は調査団を受け入れるから非常にけっこうなんでありまするが、もし派遣を拒否するような場合がありましたならば、おそらくILO機構におきましては日本非難決議案というものが提出されて、あるいは日本非難が決議されないとも限らないと思うのであります。もしそういう事態になった場合を予想いたしますると、日本国内で想像する以上に、私はその影響というものは日本にとってきびしいものがあると思うのであります。国際労働機関で批判されることが、国際信用の上にはもちろんのこと、国際経済貿易の前途に対してどういう影響があるかということについては、ややもすればこれを見のがす人の多いことは非常に残念であると思うのであります。  古いことを申し上げてたいへん恐縮でありますが、かつて戦前におきましてソシアル・ダンピングの問題が非常にやかましかったときに、私は日本労働代表としてジュネーブに行った経験を持っておりまするが、ソシアル・ダンピングというような決定ジュネーブ国際労働機関の舞台の上で論議され、あるいはそれが国際労働機関あるいは国際労働組合の人々に喧伝されるということは、どれだけ経済上、貿易影響を受けるかということを身にしみて私は感じてまいった一人であります。  そういう問題について、私は、政府には十分行き渡っておるとは思いまするが、政府並びに与党の皆さんに対して十分御理解が願いたいと思うのであります。ILO条約の問題これは労働問題に関する問題であるというようにお考えにならずに、これは経済の問題であり、貿易の問題に影響するのであり、日本国民国際信用に至大なる影響を持つものである、こういう点についての十分なる理解をお願いしたいと思うのであります。私は、この点について、もとより政府にそういう御理解が行き渡っておるとは存じまするが、昨日OECD加盟がいよいよ決定したのでありますが、OECDに加盟するという問題に対しましても、私の知る限りにおいては、企画庁長官はブラッセルでICFTUのベター書記長あるいはブラウンタール代表等と会談をしておるはずであります。そういうように、OECD労働諮問委員会というようなものの了解を得ることがある程度必要である、国際労働問題とはそういうものであるということについての十分なる御理解を、私は与党の各位にこの際願わなければならないと思うのでありますが、この点についての政府のお考え、したがって与党に対してそういう問題に対する理解を深めるために、政府はどういう態度をおとりになろうとしておるのであるか、これをひとつ伺いたいと思うのであります。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、御質問でございますが、政府はもちろん、わが党におきましても、ILO条約批准必要性は以前から認識しておるわけでございます。ただ、国内法との問題がありますので国会が通らなかったということであるのであります。私はいまさら党内にILO八十七号条約批准必要性をPRするとかなんとかという必要はないと思います。
  13. 河野密

    河野(密)委員 与党に十分の理解が行き渡っておるならば私はけっこうでありますが、われわれの仄聞するところによりますると、必ずしもそうでないように見受けられまするので、私はこれを単なる労働問題の見地からだけでなしに、もっと広い視野からこの問題を考えてほしい。そういう問題をぜひとも大いにPRしていただかなければならないんじゃないか。もし与党に必要がないとすれば、少なくとも国民にはそういうPRをしていただく必要があろうと存ずるのであります。  次に私が御質問申し上げたいのは、このILO八十七号条約国内法との関係でございます。ILO八十七号条約は、御承知のように結社の自由についての問題を取り扱ったものでありまするが、その結社の自由についてILO八十七号条約においてその精神とするところはどういうところにあるか。こういうことを申しまするならば、本条約骨子は、私の見るところによれば、  労働者及び使用者とも結社の自由、団結の自由が保障されるということ。  第二に、これらについて何人からも制約を受けないこと。自主的、独立的に結社の自由を確保し得ること。  第三に、何人から、いわゆる行政機関から解散を命ぜられることがないということ。  第四に、連合体の組織は自由であるし、国際連合体に加盟することも自由であること。  労働者及び使用者団体は、権利の行使にあたって、国内法を尊重するという義務を持つけれども、国内法はその条約精神に反するものであってはならないこと。  次に、本条約適用除外例は警察官と軍隊であること。  それから、団結権の自由を確保し得るよう適当な措置を講ずる義務を負うこと。  こういうのが大体本条約骨子であると私は思うのであります。  そこで私がお尋ね申し上げたいのは、本条約国内法関係は、以上述べたように、国内法に対して尊重の義務を負うけれども、しかし国内法ILO精神に反するものであってはいけない。この点がILO条約国内法との関係の最も重要な問題であると思うのであります。  そこで、ILO八十七号条約国内法との関係を見るにあたって、まず第一に本条約と直接抵触するような、昨日も質問がございました公労法四条三項とか、公労法四条一項ただし書きとか、地公労法五条三項、地公法五十三条一項などというものは排除しなければならないということ。  それから第二番目に、本条約精神に合致しなければならないこと。団体交渉制限であるとか、あるいは政治活動制限であるとかいうような問題は、本条約精神に合致しないものであると考えられること。  第三に、本条約眼目である結社の自由が侵害されるようなことがあってはならない。従来労働組合職員団体等が有していた諸権利は、条約締結されるということを機会としてあくまでも保障されなければならない。ゆえなくしてこれを剥奪したり、剥奪を企図したりするというようなことがあってはならない。たとえば在籍専従とかチェックオフとかいう問題に対して、従来の慣行上許されておるものを、本条約締結機会としてこれを除去するというような企てはなさるべきものではないということ。  団結権の裏づけとして、団体交渉権というものは認められなければならない。  こういう点が、本条約国内法との関係においてきわめて重要な点であると私としては思うのであります。  この一々について総理にお尋ねするのはもとより適当でないかもしれませんが、少なくとも国内法との関係において、いま私が申し上げましたように、本条約眼目である結社の自由の精神というものが、前向きに解決されなければならない。そういう方向本国内法改正というものはなさるべきものである、こういう点について総理の御意見を承りたいと思います。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 あくまで条約批准する以上は、その条約精神を尊重していかなければならぬのが根本でございます。しこうしてまた他面、精神を尊重しながら、いままでの慣行を全然無視するかどうか、どちらが優先するかということになりますと、やはり私は精神に沿っていくべきである。その精神に著しく反しない限りにおいて、いかなるいままでの慣行を存続するかということに相なるかと思うのであります。だから、その点は、精神を生かしつつ前向きで、そして国情に沿ったような改正を試みるべきであると私は考えておるのであります。  具体的の問題につきましては、また関係当局より御答弁さしてけっこうだと思います。
  15. 大橋武夫

    大橋国務大臣 改正法案条約との関係でございまするが、改正法案におきまして、公労法四条三項及び地公労法五条三項が職員でなければ組合組合員または役員となることができないことになっておりますが、これは条約の無差別加入の原則及び代表者選出の自由に抵触いたしまするから、廃止するのは当然でございます。  なお、これに伴いまして、非職員である組合員または役員につきましても、争議行為共謀教唆、扇動することを禁示いたしまするとともに、争議行為及びその共謀教唆、扇動を行なうことを内容といたしまする組合決定、指令は関係労働組合組合員及び役員を拘束しないということを明確にいたしまして、この趣旨をはっきりいたしたわけでございます。  次に、国家公務員法及び地方公務員法についても、公労法四条三項のごとき規定はございませんが、その規定のあるのと同様の解釈、運用が従来されてまいっておりますので、同条約に適合するように規定を明確化いたしたわけであります。  さらに、管理監督者及び機密事務取り扱い者は、一般職員の組織する職員団体に加入できないこととし、一定の要件を具備する職員団体を登録せしめ、当局登録職員団体には積極的に交渉に応ずるというたてまえを明らかにする。さらに、当局職員団体との秩序ある交渉確保のためのルールを明定する。これらはこの条約にありまする結社の自由を確保するという精神に基づいて必要と認めた改正点でございます。  公共企業体職員及び公務員につきまして、非職員組合役員となることができるということに改められまする結果、いわゆる従来からの在籍専従制度というものは、これを存続する合理的な理由がなくなりまするので、この際これを廃止することとし、ただ三年間は従来どおり経過的に認めることにいたしました。  また、地方公務員につきましては、すでに国家公務員法においてチェックオフが禁止せられておりまするので、この改正機会国家公務員法と歩調を同一にすることが、組合自主性を維持する上からいっても適当であり、条約精神に適合するものと考えたのであります。  さらに、政府人事管理を総合的に調整し、その責任体制を確立するために、中央人事行政機構を改革することにし、総理府総務長官国務大臣をもって充てますとともに、総理府人事局を設けることにいたしましたが、これは職員団体交渉の相手となりまする国務大臣及びその責任体制を明確にいたしますることが、これらの職員団体を認める趣旨からいって必要である。これは結社の自由ということを有効に制度上確保するという趣旨に出たものでございます。  さらに、国家公務員政治行為制限は、現行人事院規則で定められておりまするが、特に法律で定めることにいたしましたのは、これを丁重にいたすことが適当だ、かように考えた次第でございます。
  16. 河野密

    河野(密)委員 私のお尋ねした趣旨は、国内法との関係において条約精神に違反するものであってはならないという、そういう点を貫くために前向きの姿勢でもっていかなければならない。結社の自由を確保する、団結権を擁護するというところに問題の焦点があるのでありますから、かりに条約精神に反しない限りにおいては、私は、従来労働組合の力によって、あるいは労使間の慣行によって獲得したものは、この条約批准する機会においてそれを剥奪するというような態度はとるべきではない、こういうことを申し上げたのであります。これに対する御答弁が必ずしも得られなかったのでありますが、私はかたくそれを信じておるし、そういう方向において国内法との調整をはかるべきものだ、こういうふうに考えるわけであります。  現在の日本労働団体職員団体、いわゆる労使間を規制するところの法律というものは非常にたくさんあるわけであります。労働組合法あり、公共企業体等労働関係法、いわゆる公労法あり、地公労法国家公務員法地方公務員法等労使関係を規制する法律は非常にたくさんあるわけであります。このたくさんある関係上、たとえていうならば、団体交渉の問題についても、あるいは管理職の範囲の問題にいたしましても、それぞれの法律によって違っておる、統一されておらない、こういううらみがあるわけであります。説いてみるならば、国家公務員法によってつくられた職員団体は、国に対しては団交能力があり、地方公務員法によってつくられた職員団体は、地方自治体に対して団交能力がある。公労法地公労法による職員団体も、それぞれの使用者に対して団交能力を持っておる。このほかに、憲法に基づいて、必ずしもこれらの法律によらずしてつくられた団体団交能力はどうするのだ、連合体団交能力はどうするのだ、こういうような問題が残されるわけでございます。  そこで、私は、総理にお尋ねしたいのは、もし国内法改正というような問題をお考えになるとするならば、労働組合法あるいは公共企業体等労働関係法地公労法国公法地公法というふうに、たくさんに分かれておる労使関係を規制する法律、分散した現状は、繁雑であるとお考えにならないか、これをむしろ一本にまとめて、労使関係を規制するものは労働組合法一本によってなすべきである、こういうふうにお考えにならないか、統一すべきものとお考えにならないか、承りたいと思うのであります。
  17. 池田勇人

    池田国務大臣 労働関係と申しますか、奉仕関係と申しますか、いろいろ実態上違っておるものを一つにまとめるということは、いかがなものかと思います。たとえば国家公務員は、これはもう国家公共の利益に奉仕するという立場があるのであります。一般の民間の労働組合労使関係とは違っておる。それからまた、国の企業であります公共企業体等のほうの労使関係というものは、国家公務員に準じていろいろの規定が置かれておる。民間のそれと、国家公共のために設けられておる公共企業体というものと同一の取り扱いをするということは、これは少し無理ではないか。だから、その勤務関係、いろんな条件に適合した法律を設けて、ILO八十七号条約精神を生かしつつ正常な関係に持っていくことが、私は実際問題として適当だと考えておるのであります。
  18. 河野密

    河野(密)委員 この点については、残念ながら私は総理大臣と意見を異にするのであります。雇用関係という一点を考えてみるならば、国家公務員でありましても、あるいは地方公務員でありましても、あるいは公共企業体の従業員でありましても、一般労働者と何ら選ぶところがない。雇用関係という一点において、雇用関係を規制するものは、あるいは雇用関係において従業員がつくるところの団体を統制するという法律は、労働組合法というようなもの一本にするのがすっきりする、また、そうすべきである、こういうように考えるのであります。これをいろいろに残しておくところに、雇用関係をまちまちの法律の中にちりばめておるところに、私は現存の混迷の根源があると思うのでありまして、この点については切に政府の御検討を願いたいと思うのであります。  これと関連いたしまして、最近の経験に徴しましておそらく総理もお感じになったと思うのでありますが、総理大臣みずから乗り出されて解決をされた最近の春闘の問題について、私は総理大臣としても非常な御経験をなすったと思うのであります。と申しますのは、春闘を解決するにあたりまして、公社、公団というものは、労働組合側と交渉はするけれども、交渉をしたその要求に対して最後の決定を与える決定権を持っておらない。それにかわるものとして調停委員会という制度がある。調停委員会は、労使間の代表が出て、第三者を交えて審議をするわけでありますが、この調停委員会決定したものも、これが拘束力を持っておらないという。それならば、それがさらに仲裁裁定に移った場合に、仲裁裁定が決定しても、予算上、資金上の面において、政府には逃げ口上が残っておる。最後のきめ手は何かというならば、総理大臣の言質ということ以外にきめ手がなくなってくる。こういうことが現在の労働関係を複雑にしておるし、労働組合の運動を非常に複雑にしておるところの根本の理由ではないかと私は思うのであります。私は、総理大臣も過般の春闘の問題の解決に当たられて身をもって体験をされたと思うのでありますが、こういう八十七号条約批准機会として、これらの問題について根本的に再検討を加えられる、こういう御意思があるかないか、これを伺いたいと思うのであります。
  19. 池田勇人

    池田国務大臣 八十七号条約批准機会にというような取り扱いをすべきものじゃないと思う。八十七号条約精神は、前からもやはり労働関係につきましてはわれわれは考えていかなければならぬ重要な問題、今後におきましてもそうでございます。  ただ問題は、いまの結社の自由、団体行動の自由ということでございますが、公務員というものは国民の税金によってやっておるので、勤務関係からいってもおのずから違ってきておるわけであります。特別の奉仕関係にありますから、それはやはり守っていかなければならない。雇用関係と申しましても、それは守っていかなければならない。また、公共企業体の給与その他の勤務条件ということも、これは国家公益のために尽くしておるのでございますから、まだストを禁止するようないろいろな点をやっております。  そこでいまお話しのような労使の間の調停機関も設けられておる。しかし、この労使間の調停、公労委の問題にいたしましても、御承知のとおり、各企業体が給与総額を国会できめられております。予備費というものもございますけれども、いまの予算制度公共企業体規定から申しますと、その使用者が自由に団体交渉をやって、そうしてその金が制約なしに民間のようにできるわけのものじゃない。そこで、いまの予算制度あるいはいろいろな点につきまして、ILO八十七号条約批准機会にというのでなしに、私はいままでのいろいろな経験から申しまして、片一方のほうには国会承認を得るということは一つのあれだけれども、団交ということにつきましての範囲が非常に狭められる、こういうことで、これは何とか解決しなければならぬということは前から考えておったのでございます。  今回たまたまああいう事件が起きまして、われわれ真剣にこの問題を検討して、公共企業体であるという基本を曲げることなく、また労使関係がどうやったならばうまく調整できるかという点につきまして検討を加えようとしておるのであります。
  20. 河野密

    河野(密)委員 私は、雇用者があるいは公共団体であるから、あるいは私企業であるからということによって、それに雇われておる従業員の権利義務に差別があっていいものであるかどうかということは、残念ながら総理大臣と所見を異にするわけであります。  この点については、具体的に、たとえば東京都の事業である都電の従業員は争議権を持っていないが、それと同じ隣に乗り入れておる私企業の従業員は争議権を持っておる。これは、かりに公共企業に従事する労務者の賃金俸給が私企業のそれよりもいいといたしましても、私は問題になると思うのであります。いわんや、公共企業に従事する者の賃金俸給のほうが、私企業に従事する者の賃金俸給よりも低いということになって、高いものをもらっておる私企業の者は争議権を持っておる、団体交渉権も完全なものを持っておるが、公共団体に雇われている者はそれを持っておらない、こういうことはいかがであろうか、疑問を持つのは当然だと思うのであります。これをそのままに放置しておいて、現在の日本労働組合の問題を解決し得るとは私は考えられない。それが解決できるとお考えになるならば、これこそ、耳をおおうて鈴を盗むというようなたぐいのものじゃないかと思うのであります。  私はもっと直接な具体的なものを申し上げますと、たしか公全労法の二条か三条だったと思いますが、争議をしてはならないという団体が書いてあります。その中に、カッコして、郵政事業に関するものであって、その中に国際電信電話株式会社の委託する業務を含むと書いてある。国際電信電話株式会社は民間の会社でありますから、それに従事する従業員は、りっぱに争議権も持つし、団体交渉権も完全に持っておる。ところが、郵政事業に国際電信電話株式会社から委託されておるものは、これは持っておらない。私もいま問い合わせてみたのでありますが、たとえていうならば、この東京から国際電信電話の電報を打つ仕事をしている者はなんだが、たまたま国際電信電話株式会社の施設のない青森から電報を打つ、そういう仕事に従事する者は、これは争議権もなければ何もない、こういうような関係であります。そういうようなことが至るところにあるわけであります。これが私はこのままにしておいていいとは考えられない。どうしてもその労使関係を規制するものは、一本の法律で規制して、与えるものは与える、その与えた権利をいかに行使するかということは、これは良識をもってやるのだ、こういうところに指導していかなければ、ほんとうに労働運動は正常化しないのだ、こういうふうに私は思うのでありますが、総理大臣はいかがに考えますか。
  21. 池田勇人

    池田国務大臣 国家公務員とか、あるいは公共企業体、いわゆるその企業の性質によって差等がつけられておるのが現状でございます。私は、将来の立法論としてはいろいろ研究する必要があるかもわかりませんが、ただいまのところ、やはり企業の性質等からいって差等があるということは、いまのわが国におきましては適当ではないかと考えております。  また、電電公社は公共企業体である、国際電電のほうは民間企業だ、こういうふうになっている。それを今度は公共企業体にするかどうかという問題はありましょうけれども、電電公社とそれとの性質、全般の大きい意味での性質が違うところを考えれば、ある程度のそういうことはやむを得ないと考えておるのであります。最近における飛行なんかの問題も、これは民間会社でございますが、争議につきましては予告期間を設けるとか、やはりそのものの性質によっていろいろ違いが出てくることは、いまの社会の実情から、やむを得ない措置であり、適当なことだと考えております。
  22. 河野密

    河野(密)委員 私はいまの総理考え方には賛成することはできないわけでありまして、ただ、今度は国家公務員に対して、従来は各省まちまちで、また各機関まちまちでありましたのを、人事局を設けて統一的に公務員関係を規制されるということでありますが、人事局をお設けになるならば、それに対するものとして、雇用される人人が団体交渉を持ち、団体交渉権を獲得するというのが当然の筋道であると思うのであります。この点についても総理はどういうふうにお考えになるか。  また、公務員制度について審議会というようなものを設けて、それらの問題も含めて根本的に検討すべきである、私はこういうように考えておりまするが、総理はいかがにお考えになりますか。公務員制度審議会、仮称でありますが、そういうものについてのお考えをお持ちであるかどうですか、伺いたい。
  23. 池田勇人

    池田国務大臣 国務公務員のあり方につきまして、私は、内閣に人事局を設けて、そうして公務員関係を処理するほうが適当であると考えておるのであります。  なお、公務員全体の将来の問題につきましては、公務員制度調査会その他の適当な機関を設けて研究調査をしていくことは、適当じゃないかと思います。
  24. 河野密

    河野(密)委員 時間がまいりましたから、最後にお尋ね申しますが、労働法の発達の歴史を見ますると、いかなる場合でも、雇用者の側、雇う側においては、労働組合の発達、労働運動の進展ということを押えようとする、しかし、それを乗り越え乗り越えて自然に労働運動が伸びていく、その伸びていくところによって新しい法律がつくられていく、こういう歴史を繰り返しておると思うのであります。煩瑣でありますから例は申しませんが、労働組合の運動を通じて法律がつくられていく。だから、現行の法律に照らして違反しておるから、違法であるからということで、単なる、これを押えればよろしいのだという行き方では、問題の解決にならない。その方向がどちらの方向に向かって進んでいるかという、その点を見きわめていかなければならないと思うのであります。私は、最近ややもすれば、労働組合の運動、労働運動に対して、ただ取り締まりの見地からのみ、弾圧の見地からのみこれを考えるというような考え方があるならば、これは非常に遺憾なことである。労働組合運動というものは、現行の法律の不備な点をある意味においては突き破っていくところに新しい進展がある、こう思うのであります。いわんや、労働運動の先進国の例を見てみまするのに、国家公務員にいたしましても、地方公務員にいたしましても、団結権を持つ、団体交渉権を持つ、団体行動権を持つ、そういう方向にみな進んでいっているわけであります。そこで、日本公務員国家公務員地方公務員あるいは公共企業体の従業員等がそういう方向に向かって進もうとする意図、意欲を示すのは当然なことではないか。これをただ弾圧をもって臨む、あるいは抑えつければいいのだというような行き方では、問題の解決にはならない。現行法に照らして厳重に処罰すればよろしい、こういうようなことでは、解決にならないと思うのであります。その労働組合の進んでいく方向というものがどういう方向にあるかということ、それが国際的な水準に照らしてどう評価すべきであるかということが、私は問題解決のかぎではないかと思うのであります。この点につきまして、私は、総理大臣に、最近の春闘の経験等を照らし合わせて、いかにお考えになるか、承りたいと思うのであります。
  25. 池田勇人

    池田国務大臣 国家社会生活をしていく場合におきましては、ルールということが必要でございます。すなわち法律でございます。しかし、歴史は移り、われわれは流れにさからってはいけない。流れにさおさして進んでいかなければなりません。しかし、その流れが逆流れしたり、あるいはまた、非常な無理な速さで船がこわれるような流れにさおさすべきではないので、やはりおのずからそこに良識と、そしてお互いの協力ということがあってこそ、流れに沿っていくべきだと考えておるのであります。
  26. 河野密

    河野(密)委員 最後に、いろいろ御質問申し上げましたが、要は、私は八十七号条約批准の問題について総理決意を承って非常に意を強うしたわけでありますが、どうぞ総理が不退転の決意をもちまして、今国会を通して、竜頭蛇尾に終わることなく、必ず予期の成果をおさめられるように御期待をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  27. 倉石忠雄

    倉石委員長 次会は公報をもってお知らせすることといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後二時二分散会