○岩川
参考人 私のほうから、新
国鉄労働組合が
事故防止に対しましてどういう考え方を持っているかについて、具体的に申し上げてみたいと思います。
だれもが御
承知のことと思っておりますが、
国鉄におけるところの
運転事故の防止につきましては、今日ほど要望されておる時期はないと思うわけであります。私たちは、この考え方に基づきまして、
昭和三十七年五月二十三日、すなわち
三河島事件が起きました直後でありますが、
国鉄三組合と
国鉄当局との間におきまして
事故防止対策委員会を設置してまいったわけであります。
鶴見事故の発生まで約一年六カ月間あったわけでありますが、この間にどういうことがなされてまいったかといいますと、皆さま方のお手元にこの小冊子を配付しておきましたが、御参考になっていただければ幸いだと思います。すなわち、いろいろな
施設の改善を行なってまいったわけであります。
そこで、われわれはこの
鶴見事故によって何を教えられたかということであります。今日
国鉄が行なっておる
事故防止対策委員会のみでは、この種の
事故は防げないということであるわけです。したがって、私は、ただいま各
参考人がいろいろ申し上げましたとおり、その理由につきましては先生方も十分に御
承知になっておるものと思っております。しかし、
国鉄の現況がこういう状態であるからわれわれが努力をしてもむだであるというような考え方で、この
国民の要望というものを退けておったならば、いつまでたっても
事故がなくならないという考え方に立って、いろいろ
当局との間において
事故に対するところの
対策を、不満足ではありますが、一応練ってまいったわけであります。しかし依然としてこの
事故はなくなっておらないわけでありますので、私は、どうすれば当面この
事故が防げるか、また、基本的には何をしなければならぬかという点について申し上げてみたいと思うわけであります。
まず、私たちが当面にやらなければならないものは何でありますか。これは
国鉄におけるところの
重大事故、すなわちこの
重大事故の何%が何によって起こっておるかという点を先に考えてみたいと私は思うわけであります。そこで、先ほど各
参考人の
意見の中にも相当出てまいりましたが、すなわち
国鉄の
重大事故——この
重大事故というのは一応人間を死亡に至らしめた
事故をさして私たちは言っておるわけでありますが、この十五年間におけるところの
重大事故を調査してまいりますと、その五〇%というものが
踏切障害から起こっておるという点をまず私たちは知らなければならないと思うわけです。それでは、
国鉄におけるところの
踏切の状態がどういうふうになっているかといいますと、
神崎参考人のほうからも先ほど申し上げられたわけでありますが、非常にお粗末な状態になっておるわけであります。現在
国鉄におけるところの
踏切道は四万二千三十五カ所あるわけですが、この中で無防備の
踏切、すなわちだれもいない、
自動車なりそういうものが自由に通っておる
踏切が三千六百カ所存在しているわけです。したがって、私たちは、まずこの三千六百カ所の
踏切に対してどういうふうに処置すべきかという点が必要であろうと思います。これを処置することによって、この五〇%
程度の
踏切重大事故というものが当面の
対策としてなくなるのではないかと思うわけです。
そこで、まず第一点に私たちが考えていることは、すなわち
関係機関と協議をいたしまして、危険を予想されるという
踏切道については、全部
踏切保安要員の配置を行なうべきだという考え方に立っております。次に、残りの
踏切道については、すなわちあまり必要がないという
関係については
保安設備、すなわち自動装置というものを行なう必要があるという点を考えております。また、今日までのいろいろな
踏切事故を見てまいりますと、
踏切保安掛がいても
事故が発生している面があるわけであります。また、
保安設備が行なわれておっても
事故に発展しておる場合があります。したがって、これらの点についてはどう行なっていくべきかということでありますが、私たちの考えておることは、現在自動化されておるところの
踏切道については、なお一そう安全度を高めるという考え方に立って、早急に再調査を行なうべきだと思っております。したがって、この再調査を行なった上で、これは当然保安要員が必要であるという考え方に立つならば、当然保安要員の配置を行なっていく必要があるという点であります。
次に、
列車密度について、先ほど
過密ダイヤ等の点について各
参考人のほうからいろいろ申し上げられたわけでありますが、これらの点につきましては、
列車の密度も非常に高く、
交通量が多い場合でありますので、そういう個所につきましては、これは早急に立体交差を行なうという点を考えていきたいと思います。すなわち、立体交差がいろいろ都合があっていま直ちにできないという個所については、道路の整理統合を行なうべきだと思っています。もちろんこういう状態に立ち至った場合は、
国鉄だけではやれないと思いますので、十分皆さま方のお力をかりる場合も出てくると思いますが、一応
踏切に関しましてはこの
対策を行なうことによって、
踏切から起きるところの
重大事故の五%、これが私はなくなると思っております。
次に、当面の
対策として私が申し上げたいことは、先ほど
村野参考人のほうからも申し上げられたわけでありますが、すなわち併発
事故——
事故は単独の
事故では
重大事故にあまり至っておりません。
事故が起きることによってそこに併発する場合、併発
事故が非常に大きな
事故に発展しておるわけです。併発
事故を最もたくさん与えておるものは何かといいますと、
踏切の次に考えられることは、
列車または車両の脱線であろうと思うわけです。すなわち
鶴見事故などにおいてもこの例が非常に強くあらわれておるわけでありますが、現在
国鉄におけるところの一年間の脱線
事故はどの
程度あるかといいますと、三百件を上回っておる
現状であるわけです。これがどういう理由によって起きてきておるかという点については
あとで申し上げたいと思いますが、まずこれを解決することによってこの併発
事故のある
程度の部分が防げるのではないかという考え方に立っております。
それでは具体策としてはどういう考え方を持っておるかといいますと、まず第一に考えなければならぬことは、軌道整備基準の改善を行なうことによって、この軌道の安全を保持する必要があると思います。すなわち第一点に、軌道が安全かどうかという点を守っていくということです。これが第一点であります。
第二点は、現在
国鉄では、軌道が完全であるかどうかという点で軌道試験というものをやっておりますが、この軌道試験車というのがお粗末ながら全
国鉄に一台しかありません。大
国鉄が軌道試験車一台でもって全国の軌道が完全であるかどうかという点を調査しておるわけですが、これでは
事故が起きるのはふしぎではありません。そういう
観点に立って、この軌道試験車というものをまず当面増備すべきであると私は考えております。
次に、先ほど臼井
参考人並びに動労の白水
参考人のほうからもいろいろ申し上げましたが、大事なことは、検修回帰キロの延長であります。すなわち、いままでは何キロ走れば車両並びに
列車は検査しなければならないということであったわけですが、それがキロ数が非常に延長されてきておるということによって、不良客車また不良車両というものをすぐ見つけられないという状態に立っております。またその要員がどういう状態に立っておるかという点については、先ほど臼井
参考人のほうから十分申し上げてありますので、私はここに申し上げる必要はないと思います。そういう状態ですから、この回帰キロの延長を行なっておる規則、これをまず改善する必要があるのじゃないか、こう思っております。これに伴って検修要員の
増加、検修を強化することはもちろんのことであります。
以上、この具体策でもって、
列車脱線、
列車脱線から併発
事故に発展し、大
事故に入るという
問題点が防げると私は思っております。
次に、
過密ダイヤの問題であります。
過密ダイヤにつきましては、いま世上問題になっておるわけですが、これを防ぐには、いろいろ政治的の施策なりそれから根本的な
対策というものが必要である、それを待たずして
過密ダイヤの解消はできないというような点がいろいろいわれておりますが、私はある
程度の
過密ダイヤの解消というものは、やるという気があるならばやれるのではないかという考え方に立っております。
それでは具体策について申し上げてみたいと思いますが、まず第一点として、現在二分間隔とか一分何十秒といった間隔のもとで走っておるところの
列車の
線路許容量のぎりぎりの線区につきましては、
列車回数を危険度を見まして削減する必要があると思います。これは当然やらなければ、
事故は
あとを断ちません。したがって、時間帯でもけっこうです。また区間でもけっこうです。どういう方法であろうと、この点を早急に
検討してみる必要があるのではないかと私は思っております。
それから、これができないということであるならば、今日行なわれておるところの時差通勤でありますが、いろいろ時差通勤の問題で論議されておりますけれども、この時差通勤がある
程度国家
政策なり
政府の
責任の上においてやってもらわれるということであるならば、ひとり
国鉄当局が旗を振って時差通勤をしてもらいたいという場合とは違って、相当強力なものに発展すると思うわけであります。そういうことであるならば、この時差通勤によってある
程度緩和をされ、したがって
線路許容量ぎりぎりの線区については、
列車回数の削減が可能になってくるのではないかという考え方に私は立っております。
次に、もう
一つ考えなければならぬことは、通勤時間帯におけるところの
貨物列車の
運転規制、これはいまほとんど行なっておりませんが、これを行なうべきだと思います。したがって、速度についても
過密ダイヤをしいておる場所については、平行
ダイヤを採用すべきだと思います。いまの
ダイヤを見ますと、
列車によっては早く走っている
列車もあるし、非常に速度の落ちておる
列車もあります。したがって、こういうような
過密ダイヤの中において、速度の違った
列車を走らせるという点については非常に危険が増大すると思います。したがって、この
ダイヤを、私は、ある時間帯、非常に込んでおる時間帯に対しては
運転時間というものを一定化して
運転を行なっていくことによって、ここから生まれ出るところの
事故を防ぐことが、当面の
対策としては必要になってくるのではないかと思うわけです。
過密ダイヤに対する根本的な
対策に関しましては最後に申し上げてみますけれども、当面はこれが必要ではなかろうかと私は思います。
次に、一番問題になってくるのは、今日の
国鉄の
重大事故、先ほど申し上げましたが、この
重大事故の二三%が、
国鉄当局に言わしむれば、すなわち職員の
責任事故、過失によって起きておるということを言っておるわけです。
踏切事故に次ぐこの
重大事故の二三%が、われわれの
責任の中において行なわれておるということを言っておるわけでありますが、われわれとしてはこれは受けるわけにはいかないわけであります。ではどうして受けるわけにはいかないかと言いますと、ただいま
国鉄の置かれておる要員
現状というような問題について、臼井
参考人なり白水
参考人のほうからいろいろお話があったわけですが、私も要員問題については同
意見です。したがって、この問題についてただ一方的に
国鉄の置かれておる
現状から考えるならば、私たちはこのお考え方には賛成できないということをまず申し上げてみたいと思います。ところが、やはりこういう状態の中において、ただ、ではそういう状態であるから何もできないのか、何もしないのかということであっては、ここから来るところの二三%の
事故は防げないと思います。したがって、私たちはそういう点に立って、いままで労使
関係において、先ほど臼井
参考人のほうからも申し上げましたように、
運転従事員に関するところの適性検査ですか、こういう協約なり、訓練に関する協約を締結いたしまして、この中で訓練を行なってまいっております。しかし、先ほど申し上げましたように、年々
スピード・
アップがされ、また量がふえてくる
国鉄の
ダイヤとともに生きていくためには、この注意力だけにたよって
事故を防止していくという
政策については、私はこれは非常に問題があろうと思います。したがって、この二三%の
事故をなくするにはどうするかという点でありますが、まず第一に、安全
運転に必要な要員を早急に解決する必要があると思います。中身については、先ほど各
参考人のほうから言ったとおりであります。
次に、いま
一つ大事なことは、すなわち休養
施設の改善と宿舎の完備であります。ただいま宿舎面について動労の副
委員長のほうからいろいろお話があったわけですが、現在の休養
施設の点について若干申し上げてみたいと思いますが、いまの
国鉄の休養
施設を見ますと、ほとんどが駅の構内にあります。そういう
関係上、頭の上は
列車が通る、わきは
電車が通るということで、ず太い人間ならば寝ておられるけれども、神経のこまかい人間は寝ておられません。ほとんどそういう状態の中で四時間の睡眠時間を与えられ、直ちに起きて
列車に乗った場合、どういう状態になるか、私が申し上げるまでもないと思います。したがってそういう点についてまず私は、休養
設備の改善を行なう必要があるということであります。
以上、私がただいま申し上げた当面の
対策というものを
国鉄当局が直ちに実施をするということであるならば、私は、当面の
事故対策として、
重大事故の九〇%
程度はなくなるものと確信をしております。もちろんこの
政策をやっていくには、ひとり
国鉄関係だけでは私はできないと思います。したがって、
政府関係の援助、
国民の理解というものがなければだめだと思いますので、何ぶんこの点について各先生方の配慮をお願いしておきたいということであります。
それから、いま
一つ言いたいことは、今日
国鉄に
事故防止対策委員会というものが設置されておるわけでありますが、この
事故防止対策委員会というのは、すなわち
国鉄内部の各組合と
国鉄当局の間で行なっておるわけです。今日のように
国鉄におけるところの
重大事故がこれくらいの社会的な問題になっておるとき、私は、この
事故防止対策委員会というものを、抜本的に改正する必要があるんじゃないかと思います。したがって、構成についても、
国鉄の労使、それから
政府代表、それから利用者代表というようなものにやはりこの中へ入ってもらって、総合的な
事故防止対策を練っていくという点が成れば、この九〇%の問題はなくなるし、またわれわれの希望どおりいくと思います。
次に、基本的な
対策でありますが、基本的な
対策については、私は、今後の
経済の発展というものが当然
輸送需要になってくるという点はここ当分続くと思います。したがって、いまのような状態の中では、
国鉄の
ダイヤの過密度を
一つの例にとって申してみたいと思うわけですが、一本の
列車をいま
東海道線に増発した場合、どういう状態になるかといいますと、百回の行き違いが出てきます。一本の
列車を増発するとそれだけの過密度になっております。それから単線区間ですが、
東海道のように複線でなくて、単線区間、この線区で
列車がかりに一時間おくれたといたしますと、これが所定の時間に戻るまでに二十四時間かかっております。こういうような
ダイヤの状態の中で、今後
国鉄の
輸送が円滑にいくか。それに伴って
経済発展が円滑にいくかということになると、私は、これは非常に問題がある点ではなかろうかと思うわけです。したがって、将来こういう点を直すためには、やはり抜本的な
対策を立てていく必要であると思います。したがって、ここに約五点ばかり申しておきます。
もちろんこれは、客貨分離、すなわち
過密ダイヤの改正には主要幹線の客貨分離を含む線増を強力にやっていく必要があるという点。それから曲線部——車両の脱線が最も多く起こる部分ですが、この曲線部における
線路間隔の増大を行なうこと。それから隣接線防護
設備を
検討するとともに、
線路上の障害物を探知するところの技術開発というものを早急に行なうべきだという
意見です。もちろんこういう点については、いま直ちに行なえません。したがって、当然今後の課題となってくるわけですが、それに伴いまして第二次五カ年
計画の中におけるところの予算その他については、臼井
参考人のほうからも申し上げられたわけでありますが、私は、第三次
計画の中には、この
計画の予算を組むにあたって考えてもらいたいことは、すなわち
輸送力の増強、これがもちろん第一であろうと思います。次に安全度、それから職員の待遇
関係を含めたところの予算編成を行なうべきだと考えております。
以上の点について、基本的な
対策と、それから当面行なうべき
対策を申し上げて、岩川
参考人の
意見にしたいと思います。