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1964-03-25 第46回国会 衆議院 運輸委員会日本国有鉄道の事故防止対策に関する小委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十五日(水曜日)    午後一時十七分開議  出席小委員    小委員長 細田 吉藏君       高橋清一郎君    高橋 禎一君       山田 彌一君    勝澤 芳雄君       久保 三郎君    泊谷 裕夫君       野間千代三君    内海  清君       玉置 一徳君  小委員外出席者         運 輸 委 員 西村 直己君         運 輸 委 員 井岡 大治君         日本国有鉄道常         務理事     川上 寿一君         参  考  人         (新国鉄労働組         合副委員長)  岩川 修二君         参  考  人         (国鉄労働組合         副委員長)   臼井  享君         参  考  人         (社会評論家) 神崎  清君         参  考  人         (国鉄動力車労         働組合副委員         長)      白水  久君         参  考  人         (中央大学講         師)      鶴見 勝男君         参  考  人         (日本放送協会         解説委員)   村野 賢哉君         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 三月二十五日  小委員内海清君同日委員辞任につき、その補欠  として玉置一徳君が委員長指名で小委員に選  任された。 同日  小委員玉置一徳君同日委員辞任につき、その補  欠として内海清君が委員長指名で小委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国有鉄道事故防止対策に関する件      ————◇—————
  2. 細田吉藏

    細田委員長 これより運輸委員会日本国有鉄道事故防止対策に関する小委員会を開会いたします。  国鉄事故防止対策について調査を進めます。  本日は、六名の参考人をお呼びいたしまして、国鉄事故防止対策の問題につきまして御意見を承ることといたしました。  参考人方々には御多忙のおり御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。何とぞそれぞれの立場から忌憚のない御意見を伺いたいと存じます。  なお、参考人方々の御意見の開陳時間は、お一人十分程度にしていただければけっこうかと存じます。なお、発言は、小委員長指名順に御発言を願うことといたします。  それでは神崎参考人よりお願いをいたします。
  3. 神崎清

    神崎参考人 お招きを受けました神崎でございます。  まず最初に、当委員会から配付を受けました国鉄参考資料のうち、国鉄の「第二次五箇年計画および昭和三十九年度保安対策費」という説明書を読んで、どうも納得できかねることがございまして、その点を申し上げてみたいと思います。  まず第一に、踏切対策でございます。それには三百億の費用をつぎ込み、大いに改善するようなことが書いてございます。金額の点は別として、国民の安全、事故防止立場からほんとうに改善されるのかどうか。私は品川区の住民でございまして、大井町駅と大森駅の間に関道踏切がございます。たいへん交通の激しいところで、東海道線京浜東北線横須賀線、大体一日に二千四百本ですか、列車電車が走っているところでございますが、従来ここに第一種の踏切、つまり踏切番がついておりまして、学校の側でも、子供交通事故から守るために、安全通学路ということでこの踏切を通らしておったのでございます。ところが、ことしの一月十八日に新橋保線区の人が近所の小学校にやってまいりまして、都合によって関道踏切番を廃止して、自動警報機片腕自動遮断機だけの第三種に変更することにしたから、さよう心得てもらいたいという通告があったわけでございます。学校側にしてみれば、いままで踏切番がいて、子供の通行を守っていてくれた。それが、踏切番がいなくなって、ちんちんの警報機片腕遮断機だけになったのでは、小さい子供学校がおくれそうだというのであわてて線路に飛び出したりしたのでは、事故を起こすかもしれぬ、そこでやむなく遠回りになるけれども、子供の安全を第一義に考えて、関道踏切を通らないように、通学路変更を余儀なくされた。校長先生の話では、そのとき新橋保線区の人の言い分でありますが、統計上では、踏切番のいる一種よりも、踏切番のいない無人踏切のほうが安全であると言ったそうであります。まるで踏切番のいないほうが安全なんだと思わせるような表現をして帰った。これはとんでもない間違いでございまして、やはり配付されました資料昭和三十八年度列車事故原因別月別発生状況とその内容について」という印刷物を見ましても、第一種では二件、三種では五件、無人踏切警報機なしでは十六件と出ている。やはり踏切番のいたほうが安全ということはわかり切っておるのでございます。にもかかわらず、この踏切番が廃止された。交通の量の非常に多いところで廃止されたということは、何もかにも新東海道線幹線工事にぶち込んでいる国鉄合理化方針が、口に安全輸送を唱えながらも、沿線の住民子供の安全を脅かしている一つの実例だと思います。厚生省の児童福祉白書には、日本児童はいまや危機的な段階にある、資本主義高度成長政策の陰で子供が犠性になっておる、交通事故の犠性者を調べてみると、子供死亡原因の第一位を占めておるという事実を訴えてございますが、この関道踏切踏切番廃止問題は、改善の中に改悪がひそんでいるし、一方的な通告で片づけようとしたところに、国民の利益、安全を無視した露骨な官僚主義があらわれているように思います。したがって、国鉄安全対策については、予算書の骨組みばかりでなく、局長権限で処理されているところの実施計画面にまで監督の目を光らせていただきたい。いやしくも日本国有鉄道であります。国民との間にあたたかい血が通う国鉄にするために、この踏切番廃止のような新しい危険負担住民子供にかけるような問題については、地方自治体、教育委員会学校、PTAなどとも相談して、その意見を聞いた上できめる事前協議の方法を考えていただきたい。具体的手段としては現行の踏切道改良促進法の改正と結びつけて検討をお願いしたい。願うところは、経費節減のために必要な踏切番まで切り捨てていくような人命軽視合理化方針に対して、国会の力でしっかりくぎを打ち込んでいただきたいということでございます。  第二に、国鉄報告書には、列車自動装置について、車内警報器など、これは赤信号が出ているとひとりでにベルが鳴り出し、かりに運転士が居眠りをしていても機械が知らしてくれる安全装置でございますが、国鉄説明書では、列車走行キロの約六〇%が設置区間になって、引き続き完成を急いでいるということで、それで一安心かと思うと、そうではない。昨年十二月二十四日付の読売新聞に機関車に同乗した記者のルポルタージュが出ております。これは沼津発上り急行高千穂号に乗ったのでありますが、「小田原に近づいたとき突然車内警報装置ベルが鳴った。同駅構内に先行の湘南電車が見える。十五キロののろのろ運転電車は横浜まで悩まされ通しで、車警はほとんど鳴りっぱなしだった。これが過密ダイヤの実態なのだろう。」この車警ベル鳴りっぱなしは、東京の山手線中央線ではもっと深刻な状態になっておるようです、運転台のそばで見ておりますと、信号の赤の連続区間車警ベル鳴りっぱなし、にもかかわらず、運転士スピードを少し落としただけで電車を走らせて、見ていてひやひやするのであります。朝夕のラッシュ時になると、電車じゅずつなぎになって、赤信号の中を走っている。国鉄当局説明によりますれば、列車列車の間には閉塞区間というものがあって、信号が赤から青に変わらなければ列車が動けないということになっているから、絶対に安全だというふうに聞かされておったのでありますが、実際は危険の赤信号が出ても列車を走らせている。事故拡大原因はこの辺にひそんでいるのじゃないかと思われます。これは一体どういうことかと運転士に聞いてみますと、赤信号が出ると車警ベルが鳴る。しかし、そのたびに車をとめていたのでは正常運転が保てない。過密ダイヤがこなせない。結局当局の命令によって、ぎりぎりの線、事故すれすれの線まで走らせている、これは見切り運転と言うのだそうでありますが、安全を第一に考えて列車が遅延すると、事故報告書を出さねばならないし、そのとき上役から、おまえは腕のない男だ、もっと要領よくやってくれといって圧迫がかかってくる。ひいては地位や昇進に響いてくるそういう不安がわいてくるということでございます。だから、国鉄近代化科学化機械化を誇る保安設備を強化した、充実したと言うけれども、実際は、赤信号連続の中、車警ベル鳴りっぱなしの中で、運転士の勘と熟練にたよってあぶない綱渡りのような運行をやっている。詳しい実情運転士の代表の方が出席しておられますからお聞き取り願いたいと思いますが、私として問題にしたいのは、国鉄当局がふだん過密ダイヤをこなすために赤信号車警ベルを無視するような危険な運転を強要しておきながら、一たん事故が起こると、運転士の不注意、信号無視であるといって責任運転士に転嫁する、あのずるいやり方、無責任な態度であります。これは、事故を起こして裁判になると、人命を無視してまでダイヤを守る必要はないというもっともな判決が出て、運転士は処罰される。けれども、無理な運転を押しつけているところの国鉄当局責任は見逃がされておるのが現状でございます。どうも片手落ちという感じがいたします。  結論として、事故防止策設備に金をかけることはもちろんでありますが、この過密ダイヤと、赤信号車警ベル無視の無理な運転のもつれた関係にメスを入れて、ほんとう安全輸送を実現できるような条件をつくり出すということだと思います。  なおほかに、一月二十九日、運輸大臣に提出されました国鉄特別監査委員会鶴見事故に関する報告を読んだ感想もございますし、また鶴見事故人命救助にあたりまして、活動がばらばらで、問題がたいへん多いようでございます。今後起こり得る大事故に備え、もっとがっちりした救援体制をつくり上げておく必要があるのじゃないかと痛感するわけでございますが、後ほどもし御質問があればお答えしたいと思います。  以上でございます。
  4. 細田吉藏

    細田委員長 ありがとうございました。  次に、鶴見参考人にお願いいたします。
  5. 鶴見勝男

    鶴見参考人 ただいま具体的な意見の陳述がございましたが、私、もう少し視角を変えまして申し上げます。  最近、国鉄をめぐりまして非常に重大事故が頻発している。さらに踏切事故あとを断たない。この踏切事故は、西欧におきましては国鉄のような発生件数に至っておらないのでありまして、たとえば、英国の場合などは、自動車日本の三倍、つまり千五百万台以上自動車がある。その英国におきまして踏切事故は年間を通じまして——国鉄の場合は大体一日に一件ぐらいずつ起こっておる、最近は件数では減っているそうでありますが。——英国の場合には一カ月に何件、こういう件数になっているようであります。こういうような点を考えてみますと、日本国鉄をめぐって起こっております事故には非常に深い根がある、かように考えざるを得ないのでございます。  そこで、個々対策につきましてはいろいろあると思いますが、しかし個人の対策だけでなしに、つまり国鉄の今後の事故をなくしていくために一体どういうような方向姿勢というものが必要なのであろうか。こういう点について考えてみる必要があるのではないかというふうに私は思っておりますので、その点を申し上げまして、きょう御出席になっております国会議員皆さん方にもぜひひとつ御助力を願って、国鉄事故がこれから少しでもなくなるように、絶滅ができるように、そういうような努力をお願いしたいと思いまして私の意見を申し上げるわけでございます。  第一点としまして、何と申しましても、最近の国鉄事故をめぐりまして一番の背景になっている事情の第一点は、これはたいへん抽象的なことになりまして申しわけないのでございますが、政府経済成長政策、これのひずみというものをどうしても忘れることができないと思います。御存じのように、日本経済の異常な成長というものは、民間設備投資が非常にふえて、そしてこれが回り回っていろいろな効果経済に及ぼしている、そして日本の高成長が可能になっているということがいわれております。私はそのとおりだと思うのでございますが、御承知のように、設備投資というのは、その効果というものが単なる投資された額にとどまらない。つまりその設備投資の何倍かの影響をその投資された地点に与えるということが明らかになっております。したがいまして、その設備投資がある地域集中するとししますと、そこにはその設備投資の額だけでない、いわば幾何級数的な影響というものが起こるわけでございます。現在、設備投資は御承知のように東海道ベルト地帯集中しておる現状でございます。したがいまして、この地域におきましては単なる人口増加に比例して旅客がふえるということでなしに、いわば旅客にしましても、設備投資影響が回り回りまして雇用が増大し、この雇用の増大というのは非常に交通性の高い人口でございますので、この地域におきましては通勤客の激増となってあらわれておるのでございます。たとえば戦前に比べまして、国鉄で送ります旅客は、定期旅客につきましては実に八倍の増加になっておるのでございます。一般客につきましても、これは全国平均でございますが約四倍、そういうふうになっておりますし、貨物につきましても約四倍の増になっておるのでございます。特に都市、つまり投資集中しております地点におきまして貨客が激増しておるというのが実情でございます。これに対しまして地方に参りますと、御存じのようにかんこ鳥が鳴いているというようなところがあるのでございまして、私は国鉄交通事故を今後絶滅していくためには、やはり政府のこういった非常に片寄った経済成長政策というものを国民の生活をよりよくする方向姿勢を切りかえていく、つまり非常にバランスのとれた経済を実現していただくという姿勢が必要ではないかと思います。そうしませんと、いつまでたっても都市におきましては、人口あるいは貨客集中というものが幾何級数的に進んでいく。したがって、それが事故に結びつくということになるのではないか、かように考えるのであります。これが第一点でございます。  第二点といたしましては、先ほどもちょっと触れたのでございますが、このように貨客が激増しておりますにもかかわりませず、国鉄投資不足というものは非常に顕著でございます。いま申し上げましたように、日本高度経済成長というものは民間設備投資中心でございますが、国鉄投資を見てみますと、これはちょっと古い数字でございますが、昭和三十年から三十六年にかけまして、この七年間で総額約七千三百億円の投資が見られております。これを同期間におきます民間設備投資の額に比べてみますと、たとえば電力におきましては二兆円をオーバーしておる。さらに機械部門などにつきましては一兆円をオーバーしておるという現状でございます。御承知のように日本国鉄日本最大企業体でございまして、非常に膨大な施設と人員を擁する企業でございます。その国鉄がこの七年間に投資いたしました額が、民間一つの産業のそれをさえ下回るという現状に立っておるわけでございまして、したがいまして、こういうところからどうしても過密ダイヤということが起きてこざるを得ない。したがって、非常に無理な輸送をやらざるを得ない。こういうことになっておるのが実情でございまして、私は第二点としまして、この国鉄投資不足というのを早急に強力に改善し、あるいは増強していくことが行なわれなければ、事故絶滅は期し得られないのではないかというふうに考える次第でございます。  ところが、第三点としまして私が申し上げたいのは、それでは国鉄投資をふやせば事故がなくなるか。しかし私は簡単にそうはいかないのじゃないかというふうに考えております。と申しますのは、現在の国鉄経営姿勢というものは、実は非常にもうけ主義になっておる。戦後特にこれは顕著になっておるのでございますが、国鉄経営のすべての中心もうけ主義になっておる。たとえば、どういうことをやっておるかと申しますと、交通業をやっていくのに、もうけ主義観点から一番いいのはスピードアップをやるということであります。スピードアップをやりますと、とにかく人件費はそのスピードアップをやっただけがまるまる浮いてしまう。さらに燃料費その他の経費につきましても、スピードアップした分はふえない、こういうことになってくるのでございまして、したがいまして、国鉄経営中心は基本的な投資を多少手控えても、まずスピードアップによって収益をあげ、かつ国鉄経費を節減するという政策に当然ならざるを得ないわけでございます。そのほか、この国鉄企業主義あるいはもうけ主義につきましては、保安対策その他について非常に国鉄が消極的だというのも、実はこれに投資いたしましても一銭も収益の増にならない、こういう点が非常にあるのでございまして、私は、単なる国鉄投資不足でなしに、国鉄投資不足背景にある、つまり先ほど申しましたように、民間設備投資額と比べて、国鉄投資は非常に少ないのでございますが、その少ない投資の大部分というものが、実はもうけの上がる電化とか、ディーゼル化とかその他のところに行ってしまう。もちろん東海道新幹線もそうでございますが、行ってしまう。したがいまして、国民の足の安全のための施設あるいは対策についてはほとんど顧みられない、こういう実情になっておる。したがいまして私は、投資不足ももちろんでございますが、この国鉄姿勢を、国民の足の安全、そういう観点から事故をなくすためにこの際姿勢を変えていただいて、企業主義もうけ主義についてもう少し反省をしていただきたい、かように考える次第でございます。  以上三点につきまして申し上げた次第でございます。
  6. 細田吉藏

    細田委員長 ありがとうだざいました。  次に、村野参考人にお願い申し上げます。
  7. 村野賢哉

    村野参考人 私は、科学技術的な面から少し国鉄事故について考えてみたいと思うのでございますが、いままでいろいろな国鉄重大事故が起きておりますが、個々ケースを見てみますと、それぞれ異なった原因が、特に直接的な原因においては異なったものがあるように見えるのでございます。しかし、これを一貫して見ますと、重大事故としてはそのほとんどが脱線転覆するということによって起こっているように思うのでございます。特に第一原因が、一つ線路において何らかの原因脱線転覆したそのあとに、並行している線路を走ってくる列車が、その脱線転覆によってそこが妨害されていることに気づかず、そこへ衝突して脱線転覆して、たくさんな乗客の死傷者を出すという例が多いように見受けます。最近の四つほどの重大事故、たとえば昭和三十一年でございましたか、参宮線六軒駅構内での事故、三十七年の三河島、続いて南武線で起こりました事故、また昨年秋の鶴見事故、このいずれをとりましても、最初ケース脱線転覆であります。そして隣の線路に別な列車が来て、そこへ乗り上げるということでございます。こういう点を考えてまいりますと、このいま四つあげました例の中でも、それぞれ脱線転覆を起こさせました原因は違ってはおります。たとえば参宮線三河島、これは私は比較的似たケースではないかと思いますが、特に貨物列車、あるいは参宮線の場合は列車でありましたが、いずれも信号見誤りかあるいは信号無視か、その点ははっきりしませんが、とにかく安全側線に乗り上げ、そして反対側レールに倒れ込んだところへ別な列車が乗り込んできたので、これは参宮線三河島の事故は、私は事故ケースとしては非常に似たケースであるというふうに考えております。それから、南武線の場合は、これは踏切障害原因であります。鶴見事故については、御承知のように貨車の脱線転覆であって、その的確な原因はまだはっきりしていないようでありますが、とにかくこうした脱線転覆という点を考えてまいりますと、レールの上からはずれたものはすでに鉄道でないというふうにも考えてまいりますと、この脱線転覆ということをとにかく何とかして防がなければいけないように思います。それには、とにかく昔から鉄道は、レールの上を車輪が走っておるにもかかわりませず、この車輪レールとの関係あるいは車体との問題というものの追及がいまだに十分に解決がついていないというところに、私は一つの大きな不安を持つものでございます。  次に、情報伝達網の不備と申しますか、特に信号回路について何か問題点があるような気がいたします。特に参宮線三河島、鶴見事故にいたしましても、その事故は、反対側レールを走ってくる列車に隣のレールで起こった事故が何ら信号回路にあらわれないようになっているということでございます。同じ線路の上では必ず前に列車が入っていれば、前の信号機関信号が出るということはわかっておりますが、隣の線路に故障が起きまして倒れかかる、つまり立体的に線路を閉塞している場合には、何ら信号回路にあらわれないということでございます。特に運転をされる方が、すべてこの信号を唯一のたよりにして運転をしているということから考えますと、この信号回路運転士にいかにどう伝達するかという点において、なお問題点があるように思います。ただ、最近、車内警報装置新幹線などに使われます集中制御方式とか新しい科学技術を応用した設備が着々つけられているということは、非常に喜ばしいことでありまして、そういう設備がつけられるということが絶対に必要ではあると思いますが、と同時になお現在つけられている車内警報装置で解決つかないものは、隣のレールに起こった事故信号回路にあらわれないという問題だと思います。また参宮線事故以後問題になりましたのは、一たん走り出した列車に対しては何ら基地駅から連絡がとれないということです。これは飛行機よりももっとぐあいが悪いということでございまして、参宮線の場合は、ふだんは交換通過駅であったものが臨時に停車交換駅になっているのを、すでに津駅を発車した機関士は知らずにおったということは、一つ先入観念として、信号がかりに、だいだい、赤に変わっていたとしても、当然通過するものという先入観念があるとすれば、錯誤をおかすということがあり得ると思います。そうした場合に、一たん走り出した列車ダイヤ変更をどうやって知らせるかということ、その当時すでに朝日の天声人語列車無線装置の絶対必要なことが書かれておりましたが、それがないままにその後三河島の事故につながったような気がいたします。そうして数日前ようやく実用化試験局の免許がおりたようでありますが、その駅と列車との間の無線連絡は一日も早くこれを完備する必要があろうかと私は思います。  次に過密ダイヤの問題でありますが、最近しきりに過密ダイヤ事故原因であるというふうに言われておりますが、私はこれには多少疑問を持っております。と申しますのは、一体線路にどの程度列車を入れたらこれが適正で、さらに過密になるかという点について、なお検討の余地があると思うからであります。特に現在の線路容量と申しますか、一つ線路に何個列車を入れればいいのかという点につきましては、信号機区間距離あるいは線路の保守、いろいろなスピードの違った列車が入っているとか、いろいろな条件によって変わってくるように聞いておりますが、そうした複雑なファクターによって、この線路容量と申しますか、入り得る列車の数が左右されるということ、こうした点を考えてまいりますと、こういう線路容量を低下させている条件を解決していくことによって列車の増発も可能になってくるということでございます。逆に申しますと、一体一本の線路に何本の列車を入れればどの程度安全なのか、列車を増発すればどの程度安全度が下がるのかといったようなことを、具体的に数字で示せるような式をつくり上げることだと思います。これはなかなかむずかしいことでございますし、私も国鉄当局に申し上げて、非常に苦心をして研究をしてくださっていることはよく知っておりますが、なお私としては、この安全度を数量化すること。一つ線路に何本列車を増発した場合には、踏切を何カ所立体交差に直す、あるいはそこに入れる列車の間隔をどうするとか、信号をどうする、そういった問題をここに一つ一つ数量化することによって基本的な式ができますと、これによって施設の改善する面も具体的にあらわれてくるように思うのでございます。  最後に、私はこういう対症療法的ないろいろの問題を取り上げましたが、今日の日本国鉄を含むあらゆる交通事故というものは、機械と人間とがいま対立している社会において、われわれ人間が今後機械をどう扱っていくかという根本問題にかかってくるように思います。特に、かつてのわれわれの社会はマン・ツー・マン——人間と人間との社会であったと思いますが、最近の科学技術が進歩した時代におきましては、機械と人間とが互いに協調しあってつくりあげている社会であろうと思います。そうした場合に、われわれが使いこなすはずの機械に逆に使いこなされている現実というものに私たちは気がつく必要があろうかと思います。特に明治以来、富国強兵的に、とにかく西欧先進国に追いつくために、西欧先進国で開発されました科学技術の成果を次々に取り入れておりますけれども、そういう科学技術の進歩による機械を使いこなしております西欧先進国は、人命尊重と申しますか、生命観というものは私たちと非常に大きな隔たりがあるように思います。特にキリスト教文化、キリスト教的な精神に支えられました西欧人は、人間が最もとおといものであるというキリスト教の考え方を根本にいたしまして、こういう機械を人間のために使いこなしてきているように思います。ところが、日本の場合は、仏教、神道にいたしましても、万物、あらゆるものに生命がある、人間も同じようなものであるという考え方から、人間だけが最もとおといものではない、あらゆるものが生命を持っているということから、生命観、特に人間尊重という面においてぼけているというふうに言う人たちも最近はあるわけであります。そうした根本的な人間生命観の違っているところへ、欧米でつくり上げられました科学技術の成果がそのまま持ち込まれているということに対して、私たちは日本人としての考え方を持つときが来ているように思います。そうした意味におきまして、私は、これからは、科学技術のこの百年ぐらいのものすごい進歩に対しまして、人間自体が数千年の昔からほとんど進歩をしていないというこの現実に思いをいたしますときに、このままいきますと、やがて人間が機械によって駆逐をされ、使いこなされる時代がやってくるような気がいたします。そういうことを考えますと、これから人間がますます進歩を急がなければいけない。そして機械の急激な進歩にある程度ブレーキをかけていく。機械の進歩にブレーキをかげながら、人間が追いついていく。そして機械の性格をよくのみ込み、プラスの面を生かすと同時に、そこに持つマイナスの狂暴性を人間がいかにコントロールしていくか、そういう点を私たちはこれから十分に考えていきませんと、いろいろな政策、いろいろな考え方、対症療法が行なわれたといたしましても、われわれの今日の社会というものは、機械文明によって次々とわれわれ人間が押し込められていくといったような気がするわけでございます。まことにかってな言い方でございましたが、以上申し述べさしていただいた次第であります。
  8. 細田吉藏

    細田委員長 ありがとうございました。  次に、臼井参考人にお願いいたします。
  9. 臼井享

    ○臼井参考人 国鉄労働組合の副委員長をやっておりますので、国鉄職員の立場から参考意見を申し上げたいと思います。  委員会のほうから希望されました運輸省で出したところの「交通事故現状」、この中で国鉄事故原因を分析いたしておりますが、大きく分けまして外的な原因、内的な原因、それから自然災害による事故、こういうふうに分けております。外部の原因によるものとして、踏切事故列車妨害事故などをあげておりますし、部内の原因によるものとして、職員の取扱い誤り等の人的事故、それから車両故障あるいは施設機械的欠陥によるものなどをあげております。これらを見てまいりますと、設備などを改善強化することによって防げる部面と、人的に防げる部面と、大きく分けますと二つになるというふうに考えます。車両故障なり施設機械的欠陥などにつきましても、これらを保守し、運転をする、適時適切にこれらについて事故の起こらぬような措置をとる、こういう面では、きわめて人的要素も強いわけであります。ですから、車両の改善はもちろんでありますが、それらを修繕し検査をする、こういう場合の人的な考慮というものはきわめて必要だというふうに考えます。ですから、設備関係については、時間がありませんからきわめて簡単に申し上げて、人的な面について、時間の許す限り、例示をしながら御説明申し上げたいと思います。昭和三十六年に発足をしました第二次五カ年計画で、保安対策費は五カ年間に三百二十七億計上をされました。その後、事故等が起こりまして、三十七年——二年目でありますが、三百四十七億を追加いたしまして、六百七十四億で第二次五カ年計画を補正をしたわけであります。来年度の予算について検討いたしますと、これはまだあるのでありますが、このうち二百七億を予算化したい、こういうことであります。私どもは、設備関係の、踏切はもちろんでありますが、信号、車両その他いろいろの関係を積算をいたしますと、当面必要なものとして二千六百九十億を考えております。そういう意味では非常に開きがありますし、国鉄当局説明によりますと、来年度二百七億を実施することによって、金額的に大体当初計画の五〇%をこえる、こういう説明をいたしておるのでありますが、東海道新幹線が千九百億で当初予定をして、その後の物価の値上がりその他で、三千八百億なければ当初計画どおりの設備が完了しないという点から考えますと六百七十四億に対して金額的に五〇%をこえたということは、実体としては三〇%を割る設備にしかならないじゃないか、こういうふうに考えますので、この点に対する保安対策費増加というものは、きわめて緊急、必要な事項だというふうに私どもとしては考えておるところであります。これらについては鶴見先生からも、設備投資の不足ということで指摘をされておりますので、それらとの関係で十分判断をいただきたい、このように考えます。  次に人的関係について、私どもは七万四千八百人ほどの人数をふやしてほしい、こういうことを言っておりますが、国鉄当局は交渉の中で、設備投資は行なうが、人員をふやして安全を確保する意思はないということを言い切っております。この関係が実際の問題でどういうことになってあらわれているかということについて、二、三申し上げたいと思いますが、非常に運転関係ある車掌の関係で申し上げてみますと、戦前は、営業関係の実務を二年以上行なった者について適正な、試験を行ないまして、駅員車掌科という教習所に六カ月入所をさせます。出てまいりましてから三、四カ月見習い車掌として見習いさせてから専務車掌にする、こういうやり方をやっておりました。今日ではこの車掌科はほとんど入所者を出しておりません。実際どうやっているかと申しますと、実務をやった者について試験を行なって、見習い車掌として発令をして、数カ月の見習い期間で使わなければならない、それほど人員が逼迫をしている、こういうことになってきます。ですから教習所で六カ月間の実際の勉強をする期間を省略しているのが現状であります。信号操車科という、これは構内で入れかえに関係をする人たちでありますが、これも前には実務経歴二年程度の人を教習所に入れまして六カ月間専門的に勉強させる、こういうことを行なっておりましたが、最近はこれも教習所へ入れるということをいたしません。こういうふうにして養成機関によって、職員を一定期間教習所などに入れて専門的に教育をするということを人間が不足のために省略をしている、こういうところに問題があります。機関士関係にいたしましても、戦前は助士をやって、実務をやって、またその実務の長さによって一定の資格を与え機関士科に入れる、こういうやり方をやりまして、大体四年間の最短距離を経なければ機関士にしなかった。これが今日ではいろいろ事故等の関係があって、五年間、六十カ月に規定上は延長されておりますが、実際問題としては人が足りないので、ある局などではまだほんとうに職員に採用をしない、採用前提の試用員のまま機関助士科に入所をさせる、従前はこれについて実務期間一年程度の規定がありますが、そういうことが守られない、こういう現状にありまするし、機関士運転士などにつきましては教習所に入れるのでありますが、入れる場合の人数の余裕がありません。したがって、教習所に入れたあとはどうするかというと、予備員の運用をつらくしたり、または教習所に行く人数の少ない機関区などから助勤をとる、こういうやり方でやっておりまするところに、全体として部内で当然行なうべき教育、従前行なってきた教育をなおざりにしつつある、こういうことが人的面での問題になると思います。したがって、これらについては一定人数の養成定員というものを置きまして、適宜養成をしながら見習いをさせ、本務につかせるという措置をしなければならない、こういうふうに判断をいたします。  これらと関係をいたしまして臨時雇用員の問題が出てきているわけであります。現在季節波動、除雪、こういったほんとうに臨時でなく、職員と同じような立場で仕事をさせている臨時雇用員が常時一万三千名ほどおります。過日これについて団体交渉をいたしまして、運転関係した仕事は運転考査というものを受けて適正な人であるかどうかということを見ることになっております。ですから、そういうことを受けなければならない職については、臨時雇用員を使わないように、こういうことで話がつきました。その結果どういうことが起こったかといいますと、駅などで考えてみますと、小荷物とかまたは案内とか、こういった仕事について臨時雇用員を使います。これは運転考査を受けておりません。正規の職員にする場合には、欠員があると、構内の連結とか転轍とかいう運転考査を受ける職のほうに移ってしまう。ですから構内は常になれない人を使わなければならない。ホームのほうでせっかくなれてきたと思うと、構内のほうに行ってしまう。こういう現象はやはり人手不足から起こっていることになるわけであります。かてて加えまして最近近代化が非常に進みまして、蒸気機関車から電気機関車または気動車、電車というふうに、走る車種がどんどん変わってまいりました。そうすると運転する者はもちろん、検査する者にいたしましても、修理をする者にいたしましても、変わりました車種についての知識を十分与えてもらわなければならない、修理の方法なり検査の方法なりについても教育をしてもらわなければならない、こういう転換教育の問題が出てくるわけであります。この転換教育を十分にやりませんと、冒頭にあげましたような車両の故障等の発見が非常にむずかしくなるわけでありますが、これらについてもあまり人数が少ないために転換教育を十分行なうことができない、こういうところに問題があります。こういう人が少なくて仕事がふえてくるという関係をどういうふうにやるかというと、私どもの意見を反対にとりまして、たとえば一定期間走りました車というものを定期的に検査をする、こういうことがきまっておりますが、この一定のキロ数を延ばす、これは回帰キロの延長という専門的なことばを使っておりますが、回帰キロを延長することによって検修人員を節約する。たとえば二割回帰キロを延長いたしますと、検査したり修理したりする車が二割減ってくる、こういうことになるわけであります。そういうやり方をするし、また車掌の関係などにいたしましても、運転車掌といって運転専門の車掌が最後部に乗って、臨時停車をした場合に所要の措置をとることになっております。これらについて主要幹線の運転車掌を省略いたしまして、八百人ほどを減らしてしまった。このことについて組合と当局との間にいろいろ激論がありましたが、最終的には運転車掌の省略、こういうことが行なわれることになってまいりました。これらを全体の数字で見てまいりますと、昭和二十三年の国鉄の労働者は、全体で六十一万三千人おりました。昭和二十四年に定員法が通りまして五十万三千七十二名に、十一万人削減をされたのです。大体この時期の業務量と今日の業務量を比較いたしてみますと、人キロにいたしまして、これは旅客輸送量でございますが、二十五年から三十七年まで二倍強に増加をいたしております。それから貨物関係にいたしましても、二十五年から三十七年までに約二倍に増加をいたしております。一方これらを運ぶ客車、電車、気動単、貨車、こういうものについては二割ないし三割しか数がふえていない、線路の延長に関しましては一割弱であります。そうしますと、線路の延長は一割弱しか延びていない、走らせる車は二、三割しかふえていない、それで二倍の貨物と人を輸送しなければならない、こういうことになりますから、当然そこにスピードアップなりまたは効率をよくしていく、こういう関係が出てまいりまして、検修回帰キロの延長の問題などを発生いたします。そういうふうにふえた業務量に対して人数を考えてみますと、昭和三十八年度の予算定員は四十五万三千六百五十一名でありますから、定員法当時よりさらに五万人が減員になっておる、こういう関係がありまして、これらが人的面における緊張度の問題、業務量の増大に対して人が追いつかない問題、こういう問題に関係をしてきて、疲労の蓄積ということになってまいるわけであります。これらの関係について十分御判断をいただかなければならない、このように思います。  先生方も言われましたように、公共企業体でありますが、この企業性、もうけ主義が先行して、公共性が置き忘れられておる。輸送のためには安全、正確、迅速でございますが、迅速が先行して、正確または安全というものが度外視をされ、こういった重点の置き場所がさかさまになったところの運輸政策、こういうものが根本の事故原因であろう、こういう判断をいたしますが、設備投資の問題、人的面、この二つの面について十分御配慮をいただくことによって事故を防ぐために御協力を願いたい、このように考えて、私の陳述を終わります。
  10. 細田吉藏

    細田委員長 どうもありがとうございました。  次に、白水参考人にお願いいたします。
  11. 白水久

    ○白水参考人 私は国鉄動力車労組の副委員長をしておりますので、おもに動力車乗務員の立場から事故防止について意見を申し上げます。  国鉄運転事故をなくすには、第一には政府交通政策国鉄経営方針を営利第一主義から安全第一主義に改めることであります。第二には安全施設を完備し、動力車や車両、線路保安施設の保守を十分にすることであります。第三には線路を増設し、過密ダイヤを解消することであります。第四には業務量に見合った要員を十分配置し、労働条件を改善し、労働者の待遇改善を行なうことであり、思い切ったこれらの施策が必要であると思います。また国鉄の公共性から考えまして、安全施設線路の増設には国家投資を大幅に行なうべきであると考えます。  以下、各項目にわたって申し上げます。  まず、安全施設の問題でありますが、動力車労働組合といたしましては、先ほどのお話に出ました昭和三十一年の参宮線事故の際、車内信号機車内警報装置の設置、見通し不良信号機の改善、安全側線の改良などを中心に安全施設の改善について国鉄当局に強く要求しましたが、国鉄当局は私たちの要求に耳をかそうとせず、営利第一主義経営方針を改めようとしないばかりか、国鉄労働者に人減らし合理化を押しつけ、運転士二人乗りの廃止、列車防護のための後部車掌の廃止、検査修繕回帰キロの延長による検査修繕要員の削減、停車場運転関係要員の削減等を強行するのみで、ついに一昨年五月三日三河事故の発生となったのであります。  私たちは国民運動としての「鉄道事故をなくす会」活動を初め、鉄道事故の撲滅を期して幅広く運動を続けていましたが、残念なことにはその後も事故が続発し、昨年十一月九日三河事故から一年半にして再び鶴見の大事故が発生しました。  鶴見事故で特に指摘されたことは、過密ダイヤの問題であります。この過密ダイヤを解消するためには線路の増設が第一でありますが、交通政策として各種交通機関の輸送分野の確立や大都市交通緩和のため人口の地方分散が必要であると考えます。  次に、国鉄労働者の労働条件を改善し、待遇改善をしなければ国鉄事故はなくならないということについて申し上げます。  国鉄の労働者、特に動力車乗務員は非常に悪い施設や作業環境の中で、それを注意力と熟練によって補い、事故を未然に防止しておるという事実は見のがせません。昭和三十七年度における運転事故の総件数は二万二千百八十三件ありますが、そのうち部外原因のものが一万三千二百九件、災害が二千二百六件、部内原因のものは六千七百六十八件でありますが、未然防止の事故はその数倍に及ぶ件数報告されております。この状況はお手元にお配りをしました資料でおわかりのとおりであります。  動力車乗務員の運転作業の実態を知れば、事故の起きないのが不思議に思えると思います。たとえば東京−小田原間の特急こだまの場合、二百七十五メートルおきに信号と踏み切りを確認し、時間的には十二秒に一回信号と踏み切りを確認することになります。また上野−宇都宮間の準急日光号では二百三十四メートルごとに、時間的には十秒に一回信号と踏み切りを確認しなければなりません。大きな停車場では多数の信号機が設置され、同一個所にずらりと並んだ信号機を見分けることはたいへんなことであり、きびしい注意力と熟練が必要であり、列車自動停止装置がない場合は、万一間違えばたいへんなことになります。運転中の注意は信号や踏み切りだけではありません。機関士運転士には進路確認の注意義務がありますから、進路上とその付近の一切の障害の有無を確かめつつ運転し、しかももし障害物があった場合には、いつでもその前方に停止し得る態勢で運転しなければならないのであります。気笛吹警察標、信号警標、速度制限標、臨時信号機など瞬時といえども緊張をゆるめることができない状態のもとに複雑な機器の取り扱いを行ない、列車の定時運転を行なうのであります。  このような特殊な労働をしておる動力車乗務員の勤務時間の実態はどうでしょうか。一般地上勤務者と同じであります。実働時間ではむしろ動力車乗務員のほうが長いのであります。勤務形態が循環勤務であるため、通常十日から十五日間毎日出勤時刻と退勤時刻が異なり、夜間勤務に割り増し換算制がありませんから、昼夜とも一時間は一時間です。したがって、休養も満足にとれません。学校に行っておる子供たちと三日も四日も顔を合わせないこともしばしばでありますし、妻や子供と食事をともにすることもできないのです。食事時間は一定しませんので、胃腸障害を訴える者が多く、乗務間合いの食事など十分間食事は間々あることです。深夜出勤は交通機関がないので、前日出勤して区の休養室に泊まりますが、その施設も現在八千ベッドも不足していて、設備は劣悪ですから、十分の休養がとれず、早出出勤の時間は勤務時間に算入されませんから、ただ奉公です。  動力車乗務員の乗務行路は、A駅から出発してB駅に到着し、B駅からA駅に引き返す乗務行路が普通ですが、B駅における折り返し時間、すなわち行き先の折り返し地における待ち合わせ時間のうち一時間だけより勤務時間に算入されませんから、この折り返し地点における拘束時間はすべてただ奉公であり、うちにいる時間はますます少なくなります。深夜折り返し地で二時間程度の仮眠で引き返し乗務することもしばしばですが、そのつらさは言語に絶します。中途はんぱの仮眠がその後の乗務にどう影響するかはだれでも想像がつくでしょう。私たちは少なくとも行き先地で四時間眠れるダイヤ作成基準を要求していますが、実現しません。長時間乗務は事故のもとです。乗務員の時間短縮とダイヤ作成基準は早急に実施すべきであります。  次に、国鉄の宿舎の入居状況であります。このような動力車乗務員の勤務の特殊性から、乗務員は優先して国鉄宿舎に入居させるべきでありますが、乗務員の宿舎人居率は非常に低いのが実態であります。国鉄には昭和三十七年度末で九万四百六十二戸の宿舎がありますが、職員総数は四十五万二千六百八十八人ですから、二〇%の入居率です。このうち動力車乗務員は四千六百五十六人が入居し、総数五万九十八人に対してわずかに九・三%の入居率であります。このような状態は早急に是正されなければならないと考えます。  次に、動力車乗務員の要員は非常に不足をしております。国鉄輸送量は年々増加しています。なお当分はこの状態が続くでしょう。ところが国鉄では輸送増、列車増発を見込んだ養成を行なっていません。いつも計画輸送ぎりぎりの養成よりしていないのです。養成定員もありません。ですから臨時列車の要員が不足します。戦前は乗務員の必要数に関係なく定期的に養成を行なっていましたから、常に下職についている有資格者がいて、必要に応じて機関士や機関助士に発令できたのであります。養成は養成定員を置き、先を見越して計画実施すべきであると考えます。動力車乗務員の要員不足のために、年々膨大な年次有給休暇の不消化があります。消化率は八〇%前後であります。年休が計画的に抑制されることさえあります。このため少々の病気は無理して乗務するのが通例となっております。昨年十二月にかぜ薬を飲んで乗務したため列車追突の事故が起きました。かぜ薬に睡眠剤が入っていたのです。国鉄当局はこのようなかぜ薬は飲むなという指導をしております。しかしいいかぜ薬を国鉄当局がくれるわけでもなく、からだのぐあいが悪いからと言っても休ませてくれませんで、そして事故責任だけはとらされるのです。この乗務員は刑事事件で業務上過失往来危険ということで起訴されております。事故を起こしたらすぐ行政処分と刑事罰です。乗務員に過失がないとされておりました鶴見事故でも、最近また刑事事件として捜査が再開され、乗務員の取り調べが連日行なわれました。この事故原因は合理化、特に過密ダイヤにあることは明らかでありますが、事故の直接原因がつかめないので、またその責任を乗務員に押しつけようとしているのです。鉄道事故を一般の裁判制度で裁くことには無理があります。特別審判制度を早急に確立すべきだと考えます。  最後に、国鉄労働者の低賃金の問題であります。国鉄労働者の賃金は低く、安心して輸送業務の第一線で働くことができません。国鉄内部で見ましても、動力車乗務員と一般では俸給表は別になっておりますが、その差はわずかに四百円です。この四百円も、私たちの同一労働同一賃金の理念による職種別個別賃金、すなわち熟練度別個別賃金の要求に対し、昭和三十一年十二月二十四日仲裁裁定第一号、昭和三十二年二月二十一日仲裁裁定第二号により、初めて三百円の格差が認められ、自後三十五年四月十一日仲裁裁定第五十一号により三百五十円、そして三十八年四月から団体交渉によって四百円となったのであります。動力車乗務員の勤務の実態、責任の度合い、技術などから、一般と四百円の格差では納得がいきません。一般と動力車乗務員の本格的賃金格差については、労、使、第三者委員による職務評価委員会の結論待ちとなっておりますが、私たちとしては、その結論が延び延びとなっている実情から、国鉄当局との約束もあり、当面暫定として一〇%格差を要求しております。現在国鉄の基本給は平均三万円でありますから、一般との格差を三千円にするということであります。諸外国では、動力車乗務員の賃金は一般の二倍ぐらいが通例でありますから、一〇%格差は非常に内輪な要求であると考えます。  以上、鉄道輸送に求められるものは安全、正確、迅速でありまして、国鉄の安全綱領には「安全は輸送業務の最大の使命である。」とし、安全第一の業務遂行について、安全の確保に関する規程でこまかい指導綱領を出しております。しかし、この指導はかけ声ばかりで、実際は執務の厳正、確認の励行、連絡の徹底、指導訓練の強化、サプライズ・テストの実施など、精神面の強調のみで、私がただいままで述べましたいろいろの具体的な施策については、完全にいっていないのが実態であります。したがって、それらのことをすみやかに解消することが、真に国鉄から事故をなくすることだと考えます。  以上で終わります。
  12. 細田吉藏

    細田委員長 ありがとうございました。  最後に、岩川参考人にお願いいたします。
  13. 岩川修二

    ○岩川参考人 私のほうから、新国鉄労働組合事故防止に対しましてどういう考え方を持っているかについて、具体的に申し上げてみたいと思います。  だれもが御承知のことと思っておりますが、国鉄におけるところの運転事故の防止につきましては、今日ほど要望されておる時期はないと思うわけであります。私たちは、この考え方に基づきまして、昭和三十七年五月二十三日、すなわち三河島事件が起きました直後でありますが、国鉄三組合と国鉄当局との間におきまして事故防止対策委員会を設置してまいったわけであります。鶴見事故の発生まで約一年六カ月間あったわけでありますが、この間にどういうことがなされてまいったかといいますと、皆さま方のお手元にこの小冊子を配付しておきましたが、御参考になっていただければ幸いだと思います。すなわち、いろいろな施設の改善を行なってまいったわけであります。  そこで、われわれはこの鶴見事故によって何を教えられたかということであります。今日国鉄が行なっておる事故防止対策委員会のみでは、この種の事故は防げないということであるわけです。したがって、私は、ただいま各参考人がいろいろ申し上げましたとおり、その理由につきましては先生方も十分に御承知になっておるものと思っております。しかし、国鉄の現況がこういう状態であるからわれわれが努力をしてもむだであるというような考え方で、この国民の要望というものを退けておったならば、いつまでたっても事故がなくならないという考え方に立って、いろいろ当局との間において事故に対するところの対策を、不満足ではありますが、一応練ってまいったわけであります。しかし依然としてこの事故はなくなっておらないわけでありますので、私は、どうすれば当面この事故が防げるか、また、基本的には何をしなければならぬかという点について申し上げてみたいと思うわけであります。  まず、私たちが当面にやらなければならないものは何でありますか。これは国鉄におけるところの重大事故、すなわちこの重大事故の何%が何によって起こっておるかという点を先に考えてみたいと私は思うわけであります。そこで、先ほど各参考人意見の中にも相当出てまいりましたが、すなわち国鉄重大事故——この重大事故というのは一応人間を死亡に至らしめた事故をさして私たちは言っておるわけでありますが、この十五年間におけるところの重大事故を調査してまいりますと、その五〇%というものが踏切障害から起こっておるという点をまず私たちは知らなければならないと思うわけです。それでは、国鉄におけるところの踏切の状態がどういうふうになっているかといいますと、神崎参考人のほうからも先ほど申し上げられたわけでありますが、非常にお粗末な状態になっておるわけであります。現在国鉄におけるところの踏切道は四万二千三十五カ所あるわけですが、この中で無防備の踏切、すなわちだれもいない、自動車なりそういうものが自由に通っておる踏切が三千六百カ所存在しているわけです。したがって、私たちは、まずこの三千六百カ所の踏切に対してどういうふうに処置すべきかという点が必要であろうと思います。これを処置することによって、この五〇%程度踏切重大事故というものが当面の対策としてなくなるのではないかと思うわけです。  そこで、まず第一点に私たちが考えていることは、すなわち関係機関と協議をいたしまして、危険を予想されるという踏切道については、全部踏切保安要員の配置を行なうべきだという考え方に立っております。次に、残りの踏切道については、すなわちあまり必要がないという関係については保安設備、すなわち自動装置というものを行なう必要があるという点を考えております。また、今日までのいろいろな踏切事故を見てまいりますと、踏切保安掛がいても事故が発生している面があるわけであります。また、保安設備が行なわれておっても事故に発展しておる場合があります。したがって、これらの点についてはどう行なっていくべきかということでありますが、私たちの考えておることは、現在自動化されておるところの踏切道については、なお一そう安全度を高めるという考え方に立って、早急に再調査を行なうべきだと思っております。したがって、この再調査を行なった上で、これは当然保安要員が必要であるという考え方に立つならば、当然保安要員の配置を行なっていく必要があるという点であります。  次に、列車密度について、先ほど過密ダイヤ等の点について各参考人のほうからいろいろ申し上げられたわけでありますが、これらの点につきましては、列車の密度も非常に高く、交通量が多い場合でありますので、そういう個所につきましては、これは早急に立体交差を行なうという点を考えていきたいと思います。すなわち、立体交差がいろいろ都合があっていま直ちにできないという個所については、道路の整理統合を行なうべきだと思っています。もちろんこういう状態に立ち至った場合は、国鉄だけではやれないと思いますので、十分皆さま方のお力をかりる場合も出てくると思いますが、一応踏切に関しましてはこの対策を行なうことによって、踏切から起きるところの重大事故の五%、これが私はなくなると思っております。  次に、当面の対策として私が申し上げたいことは、先ほど村野参考人のほうからも申し上げられたわけでありますが、すなわち併発事故——事故は単独の事故では重大事故にあまり至っておりません。事故が起きることによってそこに併発する場合、併発事故が非常に大きな事故に発展しておるわけです。併発事故を最もたくさん与えておるものは何かといいますと、踏切の次に考えられることは、列車または車両の脱線であろうと思うわけです。すなわち鶴見事故などにおいてもこの例が非常に強くあらわれておるわけでありますが、現在国鉄におけるところの一年間の脱線事故はどの程度あるかといいますと、三百件を上回っておる現状であるわけです。これがどういう理由によって起きてきておるかという点についてはあとで申し上げたいと思いますが、まずこれを解決することによってこの併発事故のある程度の部分が防げるのではないかという考え方に立っております。  それでは具体策としてはどういう考え方を持っておるかといいますと、まず第一に考えなければならぬことは、軌道整備基準の改善を行なうことによって、この軌道の安全を保持する必要があると思います。すなわち第一点に、軌道が安全かどうかという点を守っていくということです。これが第一点であります。  第二点は、現在国鉄では、軌道が完全であるかどうかという点で軌道試験というものをやっておりますが、この軌道試験車というのがお粗末ながら全国鉄に一台しかありません。大国鉄が軌道試験車一台でもって全国の軌道が完全であるかどうかという点を調査しておるわけですが、これでは事故が起きるのはふしぎではありません。そういう観点に立って、この軌道試験車というものをまず当面増備すべきであると私は考えております。  次に、先ほど臼井参考人並びに動労の白水参考人のほうからもいろいろ申し上げましたが、大事なことは、検修回帰キロの延長であります。すなわち、いままでは何キロ走れば車両並びに列車は検査しなければならないということであったわけですが、それがキロ数が非常に延長されてきておるということによって、不良客車また不良車両というものをすぐ見つけられないという状態に立っております。またその要員がどういう状態に立っておるかという点については、先ほど臼井参考人のほうから十分申し上げてありますので、私はここに申し上げる必要はないと思います。そういう状態ですから、この回帰キロの延長を行なっておる規則、これをまず改善する必要があるのじゃないか、こう思っております。これに伴って検修要員の増加、検修を強化することはもちろんのことであります。  以上、この具体策でもって、列車脱線、列車脱線から併発事故に発展し、大事故に入るという問題点が防げると私は思っております。  次に、過密ダイヤの問題であります。過密ダイヤにつきましては、いま世上問題になっておるわけですが、これを防ぐには、いろいろ政治的の施策なりそれから根本的な対策というものが必要である、それを待たずして過密ダイヤの解消はできないというような点がいろいろいわれておりますが、私はある程度過密ダイヤの解消というものは、やるという気があるならばやれるのではないかという考え方に立っております。  それでは具体策について申し上げてみたいと思いますが、まず第一点として、現在二分間隔とか一分何十秒といった間隔のもとで走っておるところの列車線路許容量のぎりぎりの線区につきましては、列車回数を危険度を見まして削減する必要があると思います。これは当然やらなければ、事故あとを断ちません。したがって、時間帯でもけっこうです。また区間でもけっこうです。どういう方法であろうと、この点を早急に検討してみる必要があるのではないかと私は思っております。  それから、これができないということであるならば、今日行なわれておるところの時差通勤でありますが、いろいろ時差通勤の問題で論議されておりますけれども、この時差通勤がある程度国家政策なり政府責任の上においてやってもらわれるということであるならば、ひとり国鉄当局が旗を振って時差通勤をしてもらいたいという場合とは違って、相当強力なものに発展すると思うわけであります。そういうことであるならば、この時差通勤によってある程度緩和をされ、したがって線路許容量ぎりぎりの線区については、列車回数の削減が可能になってくるのではないかという考え方に私は立っております。  次に、もう一つ考えなければならぬことは、通勤時間帯におけるところの貨物列車運転規制、これはいまほとんど行なっておりませんが、これを行なうべきだと思います。したがって、速度についても過密ダイヤをしいておる場所については、平行ダイヤを採用すべきだと思います。いまのダイヤを見ますと、列車によっては早く走っている列車もあるし、非常に速度の落ちておる列車もあります。したがって、こういうような過密ダイヤの中において、速度の違った列車を走らせるという点については非常に危険が増大すると思います。したがって、このダイヤを、私は、ある時間帯、非常に込んでおる時間帯に対しては運転時間というものを一定化して運転を行なっていくことによって、ここから生まれ出るところの事故を防ぐことが、当面の対策としては必要になってくるのではないかと思うわけです。過密ダイヤに対する根本的な対策に関しましては最後に申し上げてみますけれども、当面はこれが必要ではなかろうかと私は思います。  次に、一番問題になってくるのは、今日の国鉄重大事故、先ほど申し上げましたが、この重大事故の二三%が、国鉄当局に言わしむれば、すなわち職員の責任事故、過失によって起きておるということを言っておるわけです。踏切事故に次ぐこの重大事故の二三%が、われわれの責任の中において行なわれておるということを言っておるわけでありますが、われわれとしてはこれは受けるわけにはいかないわけであります。ではどうして受けるわけにはいかないかと言いますと、ただいま国鉄の置かれておる要員現状というような問題について、臼井参考人なり白水参考人のほうからいろいろお話があったわけですが、私も要員問題については同意見です。したがって、この問題についてただ一方的に国鉄の置かれておる現状から考えるならば、私たちはこのお考え方には賛成できないということをまず申し上げてみたいと思います。ところが、やはりこういう状態の中において、ただ、ではそういう状態であるから何もできないのか、何もしないのかということであっては、ここから来るところの二三%の事故は防げないと思います。したがって、私たちはそういう点に立って、いままで労使関係において、先ほど臼井参考人のほうからも申し上げましたように、運転従事員に関するところの適性検査ですか、こういう協約なり、訓練に関する協約を締結いたしまして、この中で訓練を行なってまいっております。しかし、先ほど申し上げましたように、年々スピードアップがされ、また量がふえてくる国鉄ダイヤとともに生きていくためには、この注意力だけにたよって事故を防止していくという政策については、私はこれは非常に問題があろうと思います。したがって、この二三%の事故をなくするにはどうするかという点でありますが、まず第一に、安全運転に必要な要員を早急に解決する必要があると思います。中身については、先ほど各参考人のほうから言ったとおりであります。  次に、いま一つ大事なことは、すなわち休養施設の改善と宿舎の完備であります。ただいま宿舎面について動労の副委員長のほうからいろいろお話があったわけですが、現在の休養施設の点について若干申し上げてみたいと思いますが、いまの国鉄の休養施設を見ますと、ほとんどが駅の構内にあります。そういう関係上、頭の上は列車が通る、わきは電車が通るということで、ず太い人間ならば寝ておられるけれども、神経のこまかい人間は寝ておられません。ほとんどそういう状態の中で四時間の睡眠時間を与えられ、直ちに起きて列車に乗った場合、どういう状態になるか、私が申し上げるまでもないと思います。したがってそういう点についてまず私は、休養設備の改善を行なう必要があるということであります。  以上、私がただいま申し上げた当面の対策というものを国鉄当局が直ちに実施をするということであるならば、私は、当面の事故対策として、重大事故の九〇%程度はなくなるものと確信をしております。もちろんこの政策をやっていくには、ひとり国鉄関係だけでは私はできないと思います。したがって、政府関係の援助、国民の理解というものがなければだめだと思いますので、何ぶんこの点について各先生方の配慮をお願いしておきたいということであります。  それから、いま一つ言いたいことは、今日国鉄事故防止対策委員会というものが設置されておるわけでありますが、この事故防止対策委員会というのは、すなわち国鉄内部の各組合と国鉄当局の間で行なっておるわけです。今日のように国鉄におけるところの重大事故がこれくらいの社会的な問題になっておるとき、私は、この事故防止対策委員会というものを、抜本的に改正する必要があるんじゃないかと思います。したがって、構成についても、国鉄の労使、それから政府代表、それから利用者代表というようなものにやはりこの中へ入ってもらって、総合的な事故防止対策を練っていくという点が成れば、この九〇%の問題はなくなるし、またわれわれの希望どおりいくと思います。  次に、基本的な対策でありますが、基本的な対策については、私は、今後の経済の発展というものが当然輸送需要になってくるという点はここ当分続くと思います。したがって、いまのような状態の中では、国鉄ダイヤの過密度を一つの例にとって申してみたいと思うわけですが、一本の列車をいま東海道線に増発した場合、どういう状態になるかといいますと、百回の行き違いが出てきます。一本の列車を増発するとそれだけの過密度になっております。それから単線区間ですが、東海道のように複線でなくて、単線区間、この線区で列車がかりに一時間おくれたといたしますと、これが所定の時間に戻るまでに二十四時間かかっております。こういうようなダイヤの状態の中で、今後国鉄輸送が円滑にいくか。それに伴って経済発展が円滑にいくかということになると、私は、これは非常に問題がある点ではなかろうかと思うわけです。したがって、将来こういう点を直すためには、やはり抜本的な対策を立てていく必要であると思います。したがって、ここに約五点ばかり申しておきます。  もちろんこれは、客貨分離、すなわち過密ダイヤの改正には主要幹線の客貨分離を含む線増を強力にやっていく必要があるという点。それから曲線部——車両の脱線が最も多く起こる部分ですが、この曲線部における線路間隔の増大を行なうこと。それから隣接線防護設備検討するとともに、線路上の障害物を探知するところの技術開発というものを早急に行なうべきだという意見です。もちろんこういう点については、いま直ちに行なえません。したがって、当然今後の課題となってくるわけですが、それに伴いまして第二次五カ年計画の中におけるところの予算その他については、臼井参考人のほうからも申し上げられたわけでありますが、私は、第三次計画の中には、この計画の予算を組むにあたって考えてもらいたいことは、すなわち輸送力の増強、これがもちろん第一であろうと思います。次に安全度、それから職員の待遇関係を含めたところの予算編成を行なうべきだと考えております。  以上の点について、基本的な対策と、それから当面行なうべき対策を申し上げて、岩川参考人意見にしたいと思います。
  14. 細田吉藏

    細田委員長 ありがとうございました。  これにて各参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  15. 細田吉藏

    細田委員長 これより質疑に入ります。  なお、この際申し上げておきたいと思いますが、村野参考人は放送の御都合があるそうで、少し早く退席をされたいということでございますので、特に村野参考人に対する質疑はお早くお願いしたいと思います。  質疑の通告がございますので、これを許します。勝澤芳雄君。
  16. 勝澤芳雄

    勝澤委員 それでは村野参考人だけ先に質問させていただきます。  村野さんのお話で、たいへん参考になったわけでありますけれども、車両とレール関係あるいは信号レール信号回路の問題、あるいは基地から列車への連絡、こういう問題の提起と、また解決の方法が述べられたわけであります。そうして、人間の進歩によって科学界をコントロールしなければならぬ、まさにそのとおりだと思うのであります。  そこで、もう少し突っ込んで、あなたの立場から見た事故の起きる原因といいますか、どういうふうな対策といいますか、そういうもののお考えを聞かせていただきたいと思います。  たとえば、一つの例を申し上げますと、昨日ライシャワー大使が子供に刺されました。そうしてその原因として言われることは、いや、彼は精神異常者だ、十日間も病院に入っておった、そうして今日の精神異常の状態が百万人もあるんだ、強制収容しなければならぬのが二十万人もあるんだ、しかし、施設がないんだ、こういうことです。その施設がない責任といいますか、社会の任務といいますか、そういうものが追及される。なおかつそこでもう一つの欠陥として出るのは、一月にこれは放火犯人だった、取り調べをした、その後の処置が不十分だった、こういう面が新しい問題としてそこに出てきておるわけです。そうしてその中で初めてこういう者に対する取り扱いが考えられる。しかし、やはり取り締まり以前に、人間の教育といいますか、社会全体のこういう人間に対する取り扱い、あるいはまた人間対人間の問題というものが十分行なわれずに、今日の機械文明といいますか、資本主義社会といいますか、こういうものが露骨に出ておるわけであります。そういう点から考えてみて、今日の事態から、あるいは将来の事態において、どういう形でこういう事故というものをなくしていく努力をしていかなければならぬのであろうか、こういう点についてまずお聞きしてみたいのであります。
  17. 村野賢哉

    村野参考人 どうもたいへんむずかしい問題で、私のような者がうまく答えられるかどうかわかりませんが、昨日の事例につきましては、社会が最近のように科学技術革新によって進歩いたしますと、次第に職務が分業化いたしまして、そのために責任の度合いが非常に不明確になってきておるというふうに思います。私どもが一応最近の科学技術革新時代において考えますことは、社会のいろいろな機構の中に自然科学的な方法を十分に取り入れた一つのテクニックが必要じゃないか、社会の機構をデザインし、それを運営していく面においても自然科学的な手法が必要じゃないかというふうに考えます。これを人によっては社会工学というような呼び方をする人もあるわけでございます。これはすべて社会に行なわれますいろいろな問題を自然科学的な方法でデータを分類いたしまして、それを整理して必要な式を立てる、そうしてその式に基づいて具体的に組み上げていくということでございます。  話を戻しまして、国鉄事故あるいは交通事故のような場合に考えてみますと、先ほどからいろいろな方が言われましたけれども、事故につながるあらゆる原因をすべてシラミつぶしに調べ上げていく、そうしてそのデータを分類整理していく、そしてそれが類似のものは一つの項にまとめ上げていく、そしてその中でどれが一番事故につながるウエートが大きいかという形でまとめ上げてまいりますと、全体の事故に対する原因というものの割合がはっきりしてくるのではないかと思うのであります。そうした意味の基礎的な研究というのが、これからあらゆる分野において行なわれていかないと、この社会における鉄道ばかりではなく、最近非常に頻発しております航空機事故その他の問題に対しましても、事故の解決は行なわれないのではないかというふうに考えます。  どうも十分なお答えになっていないような気がいたしますけれども、私はいまそんなふうに考えております。
  18. 勝澤芳雄

    勝澤委員 そこで事故の基礎的な原因というものを追求するということで、私もいろいろ経験をするのですが、事故原因というものを公平な立場で調査する機関というものが必要ではないだろうかという気が実はするわけです。たとえば国鉄事故が起きた、あるいは飛行機で事故が起きた、そのときに、監督官庁の立場から、あるいはその会社の立場からのみものをながめておって、真実な事故原因というものが出てくるだろうかどうだろうかという点について、私はたいへん疑問があるのですが、そういう点について、真実の事故原因を探究するための何かいい方法について御見解がありましたら、お聞かせ願いたいと思います。
  19. 村野賢哉

    村野参考人 私も前から多少気づいておりましたが、いろいろな事故がありました場合に、裁判にかかりますと、その裁判の場合には、これをお互いに一つの裁判のテクニックとして守り上げるために、たとえば当局側、あるいは組合なら組合側、それから被害を受けた乗客なら乗客側が最も自分に有利な条件をそこに集めてくるということによりまして、えてしてほんとう事故原因がそこに隠されてしまうのではないかということを私は前から考えております。そうした意味におきまして、先ほども岩川参考人が言われましたように、事故原因につきましては、従来の裁判の概念から離れた何か別な組織において、ほんとう事故原因を突きとめるというものが必要でないかと私思っております。裁判とは別に、そういうほんとうの意味の事故原因は何かということを最も科学的に検討する機関は当然必要であると考えております。
  20. 細田吉藏

    細田委員長 泊谷君。
  21. 泊谷裕夫

    泊谷委員 村野先生はNHKの解説委員でございます。この鉄道事故については一番国民影響力をお持ちの方なので、特にお尋ねをしてみたいと思うのですけれども、先ほど先生のお話で、特に国鉄信号回路の問題で、縦に強いが、横へ影響力を持つように考慮すべきである、こういう御説明がありました。そこで科学技術の面から見まして、鉄道事故というのは、出た件数よりも、端的に大事な人さまの命を奪ったそのことでずいぶんライトを浴びるわけですね。その現象面からながめてみて、いま先生のおっしゃられる横に対する事故対策というものを技術面で強く考えられなければならないと思うのですけれども、そこで先生が指摘されました横に信号回路影響力を持たすことを技術的に検討して、いつぐらいの時期にできると想定されておるだろうか。ということは、往年、先ほど臼井参考人、白水参考人からも話がありましたが、二百二、三十メートル間隔で信号機がある、十秒間隔で注意力を払わねばならぬという運転業務に携わるほうからいいますと、事故が起きた際に後方で防護に当たる者、言いかえると後部車掌というものを添乗さして、不測の事態には発炎筒をたいて横なり後方の列車にその信号を送致したものです。ところがいまはそれがなくなってしまっているです。ですから、先生が提起されました横に対する回路の影響力を持つのがどのぐらい科学的に検討されてできるものか、もし相当長時間を要するとすれば、いまこれだけきつい、密度の高いダイヤの中では、人為的にしかも先生は、もう一つの問題として、機械と人間の関係について、いまだ機械力に人間が追いつけない、この調和を考慮すべきであるというお説を述べられた。これらを考えてみまして、当面の措置としては、やはり後方防護、それから横の防護については人為的に後部車掌の添乗を従来どおりやったほうが近道なのであるか、それとも先生の指摘された横に影響力を持たせる回路の設定というものが早急にできるのであるか、その辺の見通しがもしあればお聞かせをいただければしあわせだと思うのです。
  22. 村野賢哉

    村野参考人 私が希望的に申し述べました横への回路ということにつきましては、前から国鉄の技術当局の方と懇談している機会もあるのでありますが、なかなかむずかしいというお答えでありまして、私もいま早急にそういううまい回路ができるというふうにはなかなか思いつけないのであります。しかし、最近のこうした事故を見てまいりますと、何とかしてこの高速度、高密度化しました列車運転には、信号というものの重大性を考えてまいります場合に、そうした事故原因につながります問題点は必ず情報として信号回路に入るべきだ、そういう根本的な考え方に立ちまして、これを何とか早く開発してほしいということを私は希望しているわけであります。いま御指摘のような点は確かにいろいろの問題点がございます。これは、鉄道に限らず、最近科学技術的な設備を導入しましたことによって、合理化がいろいろ行なわれております。しかしながら、たとえば電子計算機を入れました場合に、直ちに人員の削減が可能かといいますると、ある一時期においては人員は非常に増大するのが、どこの会社においてもそうであります。というのは、その機械を使いこなして全部がその機械の機能の上に乗り上げるまでには、いろいろなところでネックが出てまいります。機械にまかせましたところは非常にスピードアップもされ、確実になるのでありますが、その機械とつながる部分においていろいろな問題点が多く出ているわけであります。したがいまして、機械化いたしましてそれを合理化してほんとうに人員が機械に置きかえられるまでには、ある一定期間は必要である、そういたしますと、特にこの人命を預かる、安全につながる問題点におきましては、機械化直ちに人員削減というのは非常に私は無理があろうかと思います。ある期間においては、いままで人間が果たしてきた万能的な機能を機械が十分に果たし得るまでは、当然ある部分においては重複をさせて、そこに配置をする必要があろうかと私は考えておるわけでございます。これは、いまの科学技術ほんとうに人間が使いこなすためには、人間自体の万能性を機械に置きかえるまでの一つの期間というもの、そこにポイントを置いて考えていく必要があろうかと考えております。
  23. 泊谷裕夫

    泊谷委員 先生、重ねてもう一つ。先生の御説明科学技術面からお話を運ばれたので、これからお尋ねするのはどうかと思うのでありますが、もしお答えいただければと思うのです。前段のお話は、確かにいま当面の措置として後方防護の車掌なども併用して安全を守るべきだというお説に受け取りました。それはそれなりに私も共感を覚えるところでありますが、もう一つは、先生は、科学技術面から過密ダイヤ列車事故の主たる原因だということについては少し検討してみたらどうかと思う、むしろ線路許容量に対する列車密度の数量的なものをはじき出して、そして検討を加えてはどうだろう、こういうお話がなされたのでありますが、これから先は少し実体論なんです。鉄道で私は二十六年三カ月やっかいになったのですが、先ほどお話のありましたように、構内の入れかえに携わる職員も労使みんな同じです。百年の伝統の中でどんなささいな事故も起こさぬように、だんごになってやっておるのが実態です。しかし大きな目で見られるかどうかは疑問のあるところです。そうしますと、電車運転士なり、車掌なり、入れかえに携わる者は、往年やはり安全、正確、迅速というのが国有鉄道の旗じるしでありまして、特に時間内に作業をあげるというのが腕がよいと評価されておったのであります。先ほど臼井参考人並びに白水参考人からもお話がありましたように、また神崎先生も指摘されましたけれども、車内警報器は断続的に鳴るの、か本来あるべき姿なんですが、恒常的に鳴っておりながら、その列車を遅滞させると後続列車影響を与える、全体のダイヤを乱すというために、注意信号で徐行に入る、停止信号で一たん停止をし、また起動を開始する、こういう運行をしておるわけでありますが、この百年の間の国鉄職員の感情というのは、総じてそういう点にあると私は考えたいと思うのです。そうしますと、数量化というものが一つの科学的な論拠として出ました場合に、いまの国鉄の百年の伝統をもってとにかく時間を詰めて走ろうという気持ちとの調整をどういうふうにしたらよろしいものか、お考えがあればお聞かせをいただきたいと思います。
  24. 村野賢哉

    村野参考人 私が先ほど過密ダイヤの問題について多少疑問かあると申し上げましたのは、設備の改善によって線路容量というものは変化してくるものだということを実は申し上げたかったわけでございます。先ほどのお話にもございましたように、市内警報器が鳴りっぱなしという状態で、運転をしている人がきりきり舞いをさせられているということにつきましては、私は、電車が従来人間の手で運転されていたという考え方を早く脱却させなければならないところまで来ておると思うのです。そういう状態にあるときには、もうすでに車内警報から自動制御へと一部変わってきておりますように、機械運転をして、それを人間が監視をするという方向に移っていかなければならないと思います。先ほど私がマン…アンド…マシンと申し上げましたが、これは一つの例で恐縮でございますが、アメリカの例の防衛司令部のやり方を見てみますと、ミサイルを敵方から打ち込まれた場合に、非常に短い時間に、そのミサイルが本物であるか、あるいは敵方のおとりのものであるか、あるいは道を迷った飛行機なのであるか、そういうことを的確に判断して要撃態勢に移るような施設を、アラスカからイギリスにかけての強大なレーダー網を何重にも備えつけております。そしてアメリカのコロラドスプリングスにございます防衛司令部のスクリーンに空を通る物体が全部映るようになっております。しかし、これがしばしば問題になりましたように、敵のものだと誤認をいたしましてミサイルを発射する、あるいは水爆を持った飛行機を敵方に飛ばした場合には、これはあやまちであっても全面戦争になってしまう。最も極限のぎりぎりの状態でいま防衛体制をしいているわけでございます。そこで一番おそれるのは偶発的な事故でございます。アメリカはそれを防ぐためのどういう措置をとっているかと申しますと、機械と人間を非常に厳密に組み合わせているということでございます。機械を人間が監視をし、その人間を機械が監視をし、またその機械を人間が監視をするというつながりを持たせる。しかもその間に入っております人間は、ただ一人では非常に危険である。精神異常を起こす者もある、錯覚をする者もあるということで、機械の間に配置してある人間は必ず複数でございます。現にアメリカのその防衛体制の中に精神異常を起こして、機械の誤認操作をやった例がございますが、そうしたことから人間に対する一つの不信感がそこにあり、機械に対する不信感もある。そこでそのぎりぎりまで安全を高めるためにどうするかと申しますと、機械と人間とを極力組み合わせていくということでございまして、国鉄過密ダイヤというものを改善する一つの方法として、もちろん線路の増設ということ、これは行なうべきことだとは思いますけれども、今日のように高速度化してまいりますと、列車本数を減らしても間隔の時間数は非常に詰まってくる。そうなってまいりますと、この運転というものは当然機械化していく。そうしてそれを人間が監視をする。その間の人間の誤操作については、なお機械がチェックするという形まで高めていけば完ぺきなものになろうかと思いますが、しかし一つ列車にそれほど設備投資ができないといたしました場合には、この過密ダイヤというものの限界ももちろんございます。その場合にはほんとう過密ダイヤになる。ただし私は現在走っているのがほんとう過密ダイヤなのかどうかということについては、なお可能な設備の改善においてこの過密ダイヤを過密でなくすことができるのではないかということを考えておるものですから、先ほどそういうことを申し上げたわけでございます。
  25. 泊谷裕夫

    泊谷委員 最後にもう一点伺いたいのですが、村野先生を除いて、他の五先生は踏切を重要視して問題を提起されたのでありますが、この運輸省と国有鉄道資料によりますと、営業キロ対踏切数は日本の場合四百八十八メートルごとに一カ所ある形になっております。これは道路政策がほかの国のようにきちっとされておらない。鉄道を住宅ができたあとに持っていくということからこういう形になったのだと思いますが、カナダでは二千百六十二メートルごとに一カ所設置というような形で、踏切中心とする事故が急激にふえてきている。しかもこれは国鉄の部内責任でなく、他動的な力で、言いかえますと、ダンプカーが踏切障害を起こしたとか、あるいは三輪車が気動車に突っかけたとか、こういうことが数多く出ておるのでありますが、先生の指摘されるように、鉄道部内の技術的な面からこの問題を整理してながめてみますと、先ほど鶴見先生がいみじくも指摘されましたハイヤー、トラック、バスなどの車両、それから道路規制の問題、言いかえますと国鉄側からすれば他動的なもの、−生産量はイギリス、フランスとほとんど同じ領域にもう二、三年で達するといわれておりますが、フランス、イギリスは国外に半分ぐらい輸出しておるが、日本はココムの制限やチンコムの制限で輸出をとめられております。こういうことになってまいりますと、国鉄と私鉄も含めて、その他の他動的な路面交通を主にしておりますが、一般歩行者も含まると思うのでありますけれども、これらの関連において、先ほどは時間の関係でお考えが述べられなかったのではないかと思うのでありますが、もしお考えがあれば、せっかくの機会ですからお聞かせいただきたいと思います。
  26. 村野賢哉

    村野参考人 踏切事故につきましては、ほかの方が述べられると思って私ははずしたのでありますが、御指摘のとおり踏切事故が最も大きな部面を占めていることは御指摘のとおりでございます。この踏切につきましては、私は線路の安全度を高めるための最も大きなファクターであるというふうに考えております。ただこの踏切が全国に四万ぐらいあるそうでございますが、この踏切全部について設備をしなければならないかどうかについては、相当検討の必要があろうかと考えております。それはどういうことかと申しますと、私は一つの現象に対しましては、何か一つの臨界点というものがそこにあるのではないかと思います。あるいはこの例は当たっていないかもしれませんが、かつて戦後猛烈に電車が込みましたときに、軒並みに列車のガラス窓が割れ、ドアがこわされました。その後ガラスの強化もされたそうでありますが、いつの間にかこれが割れなくなりました。その電車の込み方はと見ておりますと、前よりもずいぶん楽になっておりますけれども、いまでは定員のやはり二〇〇%、三〇〇%の人を詰め込みながらもなおかつガラス窓は割れないで走るようになってきておるというような点を考えてまいりますと、ある一つの現象に対しては、これを徹底的にシラミつぶしにまで設備を整えないでも、あるパーセンテージそこをカバーするような設備をすれば、その現象は急速度に変形をするのではないか、私はそういったことを考えるわけでございます。そういう意味から、この問題はもう少し検討をする必要があろうかと思いますけれども、とにかく踏切は立体交差にすれば一番いいことはだれでもわかりますが、それにはたいへんな設備投資が要るということを考えますと、踏切につきましては、先ほど来お話がありましたように、まず踏切の整理ということが、まず第一に考えられてしかるべきだと思います。したがいまして、道路管理者と踏切道、鉄道との関係というものは、もっと密接に話し合うという必要があろうかと思います。かつての農道がそのまま踏切として、鉄道の上を渡っていたというものをいまなお残しておりますが、しかし現在は農家の生産も変わりまして、歩行でなくて、ほとんどが小型のトラクターを使って歩き回っているということになりますと、少しぐらい遠回りしても回れるということも起こってきておるわけでありまして、そうした意味から、現在非常に間隔の短い踏切道の整理ということは、当然地方公共団体などと協力してできるはずだと思います。  それからもう一つ、飛行機の例で申し上げますと、飛行機というものは、どちらかというと相当危険な交通機関だと思いますが、そのかわり飛行機を安全に運航するために、飛行機に対してはいろいろな面で非常に優先的な扱いをしておるように思います。飛行場におきましてもそうであります。特にレスキューに対しましては、わずか数十人か数百人の人々に対して飛行場であれだけの安全設備、救急設備を用意しているわけです。そうした飛行機という最先端をいく乗りものに対しましては、これが相当危険なものであるがために、これを安全に運航させるためにはあらゆる面で相当整った設備、それから飛ばせ方についても最優先のような扱いをさせておる。最近のようにジェット機が高速化すれば、ジェット機というものはあらゆるものに優先させていく。そういうことから考えてまいりまして、鉄道が非常に高速化してくる、大量輸送をして社会的に非常に大きな役割を果たす段階になりました場合には、これはやはり鉄道にそういった意味の優先権を相当与えて安全を守らせるというような社会的な常識と同時に、そういう施策があってしかるべきではないか。しかしその場合に、昔からの線路はあくまで鉄道が走るもので、それを渡るものではないというような一方的な言い方でなくて、十分な納得させ得る方法で踏切を整理していく。そして、この危険度も相当高いし、あるいはその安全度を守るためには踏切をどうしても直さなければいかぬのだという鉄道にある程度優先的な考え方を持たせるような方向に向けていいのではないかというふうに私は考えております。
  27. 細田吉藏

    細田委員長 野間君。
  28. 野間千代三

    ○野間小委員 村野先生、たいへん国鉄の問題を論理的に解明されておりますが、いま先生の言われる国鉄の安全という問題で、科学技術の進歩と人間の能力との共同作業が完全に行なわれれば、相当高い安全度が保たれるというお説ですが、私もそのとおりだと思います。問題は、今日のような都市人口集中、そういう中で国鉄の組織の問題ですが、国鉄はいま、利用者を対象にして、つまり運賃を対象にして独立採算ということがたてまえになっております。そうなってまいりますと、人命尊重の意味では、国鉄投資に対して、諸先生が言われるように、投資を十分にして科学技術との共同作業を完全にする、そうなるべきだと思うのですが、どうしても運賃はやはり公共性を持っておりますし、国民の負担もございますから、ある程度制限をされておる。ただ問題は、税金だけで、利用される人たちの設備を全部補うか、これの問題かあると思うのです。いまその中間的なかっこうになっておると思うのです。そういう意味で、国鉄のいまの独立採算ということと、もう一つは戦前のような鉄道省と、それから民間というような三つに分かれると思うのですが、いま先生の言われたような論理を発展していった場合に、国鉄の財政を考えた場合の国鉄の組織がどういうふうにあることが一番国民としても望ましいし、また科学技術との共同作業の方向国鉄を持っていく立場としてはいい、だろうかという点について、御意見がございましたら、お聞きしたいと思います。
  29. 村野賢哉

    村野参考人 私は、国鉄の運賃問題その他については専門でございませんが、ただ私が考えておりますことは、自分がどの程度利益をそれによって受けているかということを合理的に考える必要があろうかと思います。と申しますのは、感情的には確かに安いにこしたことはない。ベストなのはただなのが一番いいはずでございますが、しかし私は、自分が鉄道に乗って利益を受けているということを合理的に判断した場合には、その一つ企業体が、たとえば国鉄なら国鉄という企業体の存在を自分が認めるならば、その企業体が当然成り立っていくような形でその運賃なり何なりは代償として払うべきだと私は考えます。私は、これは非常に個人的な言い方でございますけれども、とかくただならそれにこしたことはない、なるべく安くしてほしいというようなことから、どうも鉄道に乗っている人たちを見ましても、不正乗車が多過ぎるように私は思います。こういったような点は、それがやがて運賃値上げとか、いろいろな問題になってきたときに、逆に劣等生が試験廃止論を唱えるような、ややそれに似たような形で、どちらかというとやや不正をしがちな人たちが運賃値上げの場合には付和雷同しているというような気がするのであります。まあこれは失言になろうかと思いますから取り消さしていただきますが、それにしましても、国鉄ほんとうに成り立っていくためには、もう一つその前にこういう公共企業体日本にどうして存在していかねばならないか、あるいは存在しなくてもいいのかどうかということを、やはり日本の現在の社会として私たちはいずれば考えなければならないと思います。私自身が、放送協会という一つの公共企業体にいて、その使命  を日ごろ考えておるせいもございますけれども、この自由主義日本の社会におきまして、そうした公共企業体の存在理由、それが理由があるならばどうそれを存在させていくか、そしてそこの持っておる本来の使命を果たさせていくかということを、私たちは感情を離れて合理的に考えてみる必要があろうかと思います。  国鉄のいろんな資産、いま私、はっきり数字を知りませんで、間違っておるかもしれませんが、多分一兆五、六千億かと私記憶しておりますが、それに対して年の利益がいまたしか五百億円ぐらいでございますか、そうしますと、たいへんに利益の割合はぐあいの悪い企業体である。なぜそうなっているかというようなことはやはりみんなで考えてみる必要があるのじゃないか。私はよく、国鉄はわれわれ国民の自家用車だという表現をするのであります。そういう意味で私は国鉄というものの存在を積極的に認めているつもりなんですが、そうした場合に、国民の自家用車を運転してくれる、まあわれわれの運転手に相当するかと思うのですが、そういう国鉄のあり方というものに対しては、私たちはやはり一つのオーナーといいますか、そういう車を持っている、あるいは利用している側の主人役として考えてみる必要が少しあろうかと思います。そしてその運転する人たちが困り果てている、あるいは車の償却にも困っておるというような状態で、もしわれわれがその車を酷使をさせているとすれば、やはりそこには反省すべき点もあるのじゃないか。そういった意味で、私はまじめに現在の国鉄のある姿というものを考えてみる必要があろう。まあこれはほんとうに私の個人的な考えでありますけれども、そう考えております。
  30. 久保三郎

    ○久保小委員 参考人方々に貴重な御意見を聞かないでお尋ねするのはたいへん失礼なのでございますが、実は外務委員会の連合審査で、私がこの前の質問から残っていたものですから向こうに行っていて、たいへん失礼しました。そこで村野さんお帰りだそうでありますので、いまのお話につけ加えて私は一言だけお尋ねをいたします。  いままでそれぞれの参考人方々から国鉄投資不足、特に安全対策に対する問題が出たと思うのでありますが、そこでいろんな御意見を集約した結論として、やはり投資不足という問題が出てくると思うのです。投資不足は、御承知のように世間でいわれており、国鉄自体も言っておるのだそうでありますが、大体一兆四、五千億というふうに踏んでおるわけであります。この中身について正確にどうかということは別として、大体たいへんな投資不足ということは、現実に汽車や電車に乗ってみてもおわかりのとおりだろうと思う。この投資不足を一挙に解決するということは、これはもちろんできません。一年や二年ではできません。しかし、長期にわたるといっても、そんなに長期までこのままの状態で待っておられないというので、いままで貴重な御意見があったのだと思うのです。われわれもそういうふうに考える。そこで、いまお話しのとおり、運賃と経営の問題、これはもちろんございます。しかし、第一次五カ年計画はたしか三十二年から始まりました。これは戦後老朽施設をさらに食いつぶしてまいって、桜木町とかあるいは洞爺丸というような問題ができて、これはもう老朽施設を取りかえなければならぬ。それにはどうしても五カ年計画でいこう、こういうことでいったのですが、これも二年目か三年目にもうくずれてしまった。いまやっているのは、御案内のとおり三十六年からのいわゆる第二次五カ年計画でありますが、これも予算のつけ方、その他で大体もう今年度一ばいでくずれたといっても過言ではないと思うのですね。そこで、この第一次、第二次ともに出発するときには運賃値上げというもので大体計算をしたのですね。そして運賃値上げでありますから、運賃値上げの一つの公約として、今後は電車にはそんなに詰め込まぬでもよろしい、今度はお盆などは別として普通は座れます、だから運賃値上げをがまんしてくださいということで、実は運賃値上げとからみ合いでやってきた。これも一つの理由にはなったのです。ところが、その財源の捻出の方法として、ただ単純な運賃値上げでやってきたところに私は一つ問題があると思う。国鉄の運賃値上げを毎年できるなら、これは別でありますが、運賃というのは、御説のとおりの見方も確かにこれは大きな分野としてあります。もういつでも、毎年上げていっていいかというと、これは日本経済の基盤をなすものだとすれば、これはまたなかなかむずかしい。そうだとすると、運賃値上げは四年に一ぺんか五年に一ぺんという  のが大体常識ととれますね。ところが、五カ年計画は五年なんだ。その間には、去年の春には、東海道新幹線は労賃が上がったとか、あるいは用地買収費が上がったとかいうようなことで実は膨大な穴ができた、こういう結果がありますが、われわれがいま考えておりますのは、たとえば一兆四、五千億の投資不足を、五カ年計画なら五カ年計画の中でまず安全輸送中心にして解決せなければならぬ、これがもう限界だ、ぎりぎり決着だというふうに実は深刻に考えておる。そこで財源の捻出方法なのです。これはやはり運賃値上げだけでいけるか。たとえば運賃値上げを認めるにいたしましても、われわれ自身はいまだそこまでは踏み切っておりませんが、かりに認めるにいたしましても、それだけではやはり第一次、第二次の二の舞いになる。ついては資産食いつぶしのメリットはどこへいったかというと、日本経済復興という大きな功績があったのだから、その功績に対するマイナスくらいは、これはこの際政府自身が税金から払うのが当然じゃないか、これはわれわれの試算では、目の子勘定になりますが、おおよそ三分の一くらいは政府が出資しろというのです。今日政府出資というのは幾らもございません。資産こそ引き継ぎましたが、金のほうはないですね。毎年の予算は政府からの財投にたよっておる。それからいまおあげになりました運賃収入のいわゆる余剰というか、利益というか、そういうものでやっておる。これだけではもう諮問委員会からも四十二年度には破産状況だ、こういう指摘があります。そういう意味からも政府出資にすべきだ、こういうふうに実は思っておる。  それからもう一つは、五カ年計画が、第一次、第二次にわたってくずれた理由は、これは政府がちっとも責任を負わぬ形になっております。御案内のとおり五カ年計画はございますが、道路や港湾と違いまして、国鉄の自前であります。政府はこれに対して別に正式に承認いたしておりません。そこでどうしても政府がこれを承認する、道路や港湾と同じように五カ年計画責任を持つという裏づけが必要じゃないか、こういうふうに現在思っていますが、そういう方向についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  31. 村野賢哉

    村野参考人 どうも私の一番苦手な御質問でございまして、私もなかなか国鉄のお金をどうやってふやしていったらいいかという名案を持ち合わせないのですが、ただ投資不足といいますか、国鉄投資のために運賃収入でカバーすることが無理なことは私もよくわかっております。そのためにいまのお話の財政投融資から千億あるいは二千億くらいの金が融通されているということでございましょうが、もちろん財投はほかのいろいろな建設分野にも使われておることになりますと、それだけでは十分に国鉄だけに使うわけにもいかない。御指摘のとおり、国家的に今度は別な形で政府の通常予算の中にそういうものが組まれていくということになれば、これは非常にけっこうなことだと思うのですが、ただその場合に私が一番心配いたしますのは、せっかく国有鉄道として民間経営のよさを取り入れるといったような考え方との矛盾がそこに出てこないかということ、これは私もはっきり解決策がないのですけれども、そういう気がいたします。つまり政府のそうした通常予算の中から国鉄に出資されることによって、国鉄国民の自家用車でなくなるおそれが出てくるということに対して、やはりそういう点でも国民自身がそこまで考えないで、自分のふところが痛まなければ国が出せばいいという単純な考えでなく、一つの公共企業体の行き方としてできるだけ自分で努力してみる、自己資金で努力してみる、そうして足りない分はできるだけ利息の安い借金をするということの方向に向く必要があろうかと私は思うのです。それが限度まで来たとおっしゃるなら、多少国鉄の性格が変わるかもしれないけれども、そういう手しか残されていないならやむを得ないかもしれません。しかし私が考えますのは、いま国鉄だけに交通運輸というものがかぶされている。日本交通行政全般に対しては多少不満がございます。特にようやく最近高速道路が建設途上にございますが、こうした高速道路、船、鉄道、場合によったら航空機、こういう四つの交通機関が総合的に運営されるということが必要なんじゃないか。おそらく日本国鉄に課せられた課題というものは、しゃれみたいですが、過大過ぎるということになるのじゃないかと思うのです。そういう意味で、いま国鉄に課せられているこの過大な要求が、日本の道路網が完備されるにつれて、あるいは姿を変えてくるかもしれないというようなことまで将来予想してまいりますと、いまの設備投資というものがどういう方向に向けられなければならないのか、国鉄設備投資はどの部面に重点が置かれなければならないのかということは、十分検討する必要があるのじゃないかと思います。そういう意味で安全問題が中心だといたしますと、やはり国鉄の使命は国民の自家用車として乗客の人命を尊重する安全運転であるという立場に立っていきますと、おのずからその投資方向である重点施策というものも変わってくるはずだ。東海道新幹線につきましては、現在の東海道輸送の需要から考えまして、私は必要なものだと思うのです。しかし、この建設が終わりましたあとについて、なおかつ次の高速鉄道をつくるか、あるいはこれをむしろ在来線の改良に向けるべきかということは、重大な岐路に立つ時期に来ておると思うのです。そういう意味で私は、高速鉄道の全国幹線化という前に、ひとつ在来線の改良——特に新幹線によって技術が非常に高められたと思うのです。新しい技術が開発された。その技術を在来線に導入すべきじゃないか。これは門外漢の意見だから当否はわかりませんが、私はそんなふうに考えているわけでございます。
  32. 久保三郎

    ○久保小委員 時間もありませんから、私どもの考えを今度補足して一応申し上げますが、御説のとおり、投資不足のいわゆる投資については、今日人命安全というのがないがしろ——と言っては語弊がありますが、非常におくれている、これに重点としてつぎ込むべきだ、こういうふうに一つは考えておるわけであります。もう一つは、道路や航空機の問題も、お説のとおり、将来の展望としては一つあるわけですね。しかし、日本国鉄というもののあり方については、やはり総合的な立場からその位置づけをしっかりしなければならぬと思います。そういう方向でやるとすれば、そのあとで、安全対策が終えてから、御説のとおり自分の上がりでペイしていくという投資方向はあってしかるべきだと私は思っておる。しかし何にしても、当面安全輸送について万全でない。その金はいまの企業性からいけば生み出すことが不可能であるというふうなことも一部にあるわけです。そういう意味で先ほどのように申し上げたわけです。以上です。
  33. 細田吉藏

  34. 玉置一徳

    玉置委員 あまりよく勉強しておいでになるので、私も感激して一つだけお伺いしたいのですが、過密ダイヤの点に関しましては私鉄も同じような傾向になっておると思うのです。日本国鉄と私鉄、並びに外国のこういった鉄道との事故発生の累計もしくはこの対策につきまして、非常に特異な、顕著な点がございましたら、御承知なすっておりましたらお教えをいただきたい、かように思います。
  35. 村野賢哉

    村野参考人 あまりよく勉強しておりませんですが、私鉄の過密ダイヤで御指摘になった分はほとんど通勤輸送でございますか——通勤輸送につきましては、お答えにならなかったらお許し願いたいと思うのですが、私触れなかったのですが、この問題は国鉄だけの問題として課するよりも、私は日本都市計画その他の全体の問題からやはり考えていかなければいけないと思います。たとえば、中央線とかその他の一方通行的な大量輸送をやって、片方はがらがらで走っているというような状態に対しましては、線路をふやすために、つまり輸送量をふやすために、改善するために投資すべきなのか、あるいはむしろ都市疎開を急速にやるほうに投資したほうがいいのかということについては、私はまだ結論を出しておりません。というのは、なぜ結論が出ないかといいますと、都市の分散化のためにかかる費用と、鉄道線路をふやすために投資すべき費用との比較がまだ私にできておりませんので、そういう意味で結論が出ておりませんが、気持ちとしては、やはり将来を考えた場合には、この際都市の分散化を急いでやらなければ、幾ら鉄道投資しても、それは非常にペイしない投資になってしまうのではないかというふうに私は考えております。
  36. 玉置一徳

    玉置委員 もう一点ちょっと。岩川参考人がおっしゃったことですが、村野先生にお伺いしたいのです。当面とりあえず時差出勤を政府責任を持って強力に指導する、このことは非常にいいと思うのです。たとえば学校の生徒を全部十時から始めるとかいうようなことで思い切った過密ダイヤの抜き方ができるのじゃないかというような考え方ができるのですが、先生は何か適切な事例をお考えになっておるかどうか。それから先般新線建設のあれが出ましたのですが、なるほど過密ダイヤを抜くために、貨物線をよそへよけるというようなもので、非常に必要な線の予定もあると思うのですが、それでなくて、先ほどの話じゃないのですけれども、高額の費用を投資いたしましてもあまり乗ってくれないだろうと思われるような予定線が一ぱいあるわけであります。こういう点は先ほどのお話で結論は見えておりますけれども、きびしく言えばどういうふうにお考えになっておるか、この際お伺いしたい。
  37. 村野賢哉

    村野参考人 俗に世間で言われている赤字路線ができるという件でございますか、これについては私はほんとうに必要なものならば赤字の路線でもつくらなければいけないのではないか、それが私は公共企業体一つの使命だと思います。これについては、私は、ですから世間で言うように赤字路線をどんどんつくるのはけしからぬというわけではありませんけれども、問題はその内容だと思います。それから都市輸送につきましては、当面は対症療法としては時差出勤しかうまい手はないと思います。特に東京の場合ですと、地下鉄に十路線の計画がございますが、この十路線が全部完成したとしても、建設省の交通関係資料を私がちょっと記憶している範囲では、たしか定員の二〇〇%をやはりこえる状態になる、その程度にしか改善できないというふうに私は記憶しておりますが、そういうことから考えますと、やはり東京の場合は、地下鉄をつくっても、なおかつあらゆる輸送機関をとにかくいま考えられるだけやっても、現在の都市形態ではさばき切れなくなるということを一つ考えます。  それから、しかしその当面の対策として地下鉄問題があるわけですが、いま一番問題になっているのは、おそらくその地下鉄の建設費が運賃に肩がわりしてきている。それによる国鉄あるいはほかの郊外電車との運賃差というものが今後問題になってくるかと思うのですが、これについてはやはり一つの大きな行政的な改正が必要になってくるんではないか、そういうふうに考えます。私自身は、いまの通勤輸送については前申し上げたとおり、当面は時差出勤以外にいい方法はないのではないか、はなはだ残念ですが、そう考えます。
  38. 細田吉藏

    細田委員長 村野参考人、本日はまことにありがとうございました。どうぞお先に……。  それでは質疑を続行いたします。勝澤芳雄君。
  39. 勝澤芳雄

    勝澤委員 鶴見参考人にお尋ねいたしますが、国鉄投資不足ということが盛んに言われているのです。私、この投資のあり方についてときどき疑問を持つのですが、交通機関との関連性であります。たとえば道路は国で投資をする、そしてその上にバスが走る、そのバスだけで採算がとられている。それから船のほうは、御案内のように、港湾がみな国の金で投資がされて、船だけで採算がとられている。飛行機のほうはどうかといえば、飛行場の施設一切がっさい国が投資をしている。飛行機だけで採算がとられている。そういう中で今度国鉄が自分で一切がっさい投資をして、そうして汽車を動かして、お互いの運賃調整を行なっている。だから投資のあり方というものを、国鉄レールから上だけが国鉄なんだ、あとのほうは国が投資をするんだという、実はこういう形の投資のしかたというものはないだろうかというふうに考えるわけです。国鉄を考えてみますと、いま御案内のように、利用者が負担をしてあとは全部借金でやっているわけです。国から一銭も投資がされていないわけであります。それ以上に今度は国鉄が国なりあるいは地方自治体なりに税金を納めている、こういう形で行なわれているわけです。ですから、そういう問題の調整を行なうならば、投資不足の問題の解決に少しはなるんじゃないか、こういう点を私は考えるのですが、そういう点に対する鶴見参考人のお考え方を聞かしてもらいたいと思います。
  40. 鶴見勝男

    鶴見参考人 いまの御質問の点は、いわゆる国鉄の公共負担の問題というふうに一般化できるのではないかと思うのです。ただ多少道路なり通路の建設費の負担の問題その他につきましては、ちょっとニュアンスが違っていると思うのですが、とにかく国鉄が現在その御質問の前にどういうふうな投資不足の状態になったかということを多少考えてみる必要もあるんじゃないかというふうに思うわけです。そういうことを私多少調べておるのでございますが、すでに第一次大我後、あのころ非常に国鉄輸送がやはり込みまして、当時の記録によりますと、お客さんを送ったり貨物を送るのに非常に危険な状態だったということが、実は運輸省の記録に載っておるわけであります。私そのころ実はまだ小さかったので、あまり自分では実感してないのですが、その後国鉄の基本的な施設というものがどういうふうになっておるかと申しますと、たとえば山手線にしましても、中央線のまわりにしましても、基本的にはやはり変わっていないというふうに言っていいのじゃないか。私も子供のころ中央線のところをよく用事があって通ったのでございますが、その当時と基本的な施設は変わっていない。もちろん山手、東北線の分離とか、その他部分的には非常に改良が行なわれておる。しかし基本的な国鉄輸送力という点から見ますと、依然して当時、つまり第一次大戦後非常に危険な状態だというようなことが議論されているほどの輸送力の不足の状態から変わっていない。太平洋戦争中に入りましてからは、御承知のようにほとんど投資は行なわれていない。むしろ貨車に増し積みをやって、相当無理な輸送をやっている。そうして施設、車両を酷使するというような状態になっている。そのままの状態で戦後国鉄がこれを引き継いだ。そういうことにもなってきているのが実情だと私は思います。したがいまして、どうしてもこのような国鉄投資不足を早急に改善しなければ、これは事故をなくすことが基本的にはできない。これは一般の方も認めておられるのじゃないかと思います。その問題にからんでいまの公共負担の問題を論ずると、私はちょっと違うと思うのです。そういう考え方も確かにあると思います。しかし、実はそれは枝葉の問題ではないか。考え方といたしましては、いろいろな考え方が出てくると思います。そういうことをいいますと、たとえば道路のほうでは、つまり自動車のほうでは、ガソリン税というものを取っているわけです。だから道路はわれわれが負担しているのじゃないか、そういうような意見も出てこようかと思います。いや、われわれはこの自動車運送業をやって非常に高い税金を払っている、つまりもうけてもみんな政府に持っていかれるんだ、しかし国鉄は税金を払っておるか、固定資産税だけは払っているけれども、しかしいわば政府に対して納める税金というものは全然納めなくていいじゃないか、株主配当もやらない、こういう点では非常にいいじゃないか、こういうような意見も出てこようかと思います。したがいまして、この問題はこの問題として、輸送力の増強をする資金をどうするかという問題と多少違うと私は思います。その点についての意見は、私自身実はまだはっきり固まっておりませんので、お答えができないような次第であります。しかし、やはり私はこの際国鉄に対しまして、事故をなくすという観点から、政府国鉄も、さらにその他民間におきましても独力に投資を行なう。ただし、これはかけ声だけではだめでございますので、これに対しましては強力な措置をとる。一例をあげますならば、これを法的に義務づけて、つまり事故が起こらないでいいような強力な案をつくりまして、そうしてこれを強力に実施する、こういう体制がなければいけないのではないかというふうに私自身は考えておるわけでございます。ただここで、私は先ほども申し上げたのでございますが、現在こういうような強力な法的な強制力で、国鉄輸送力をつけて安全な輸送が可能なようにしなければならないという一つの理由としましては、やはり現在の国鉄もうけ主義に走っておるということが実は指摘されるからでございます。交通機関というのは、これはほかの企業、あるいは工場の生産と違いまして、貴重な人命及び財産というものを限られた時間内に大量に輸送する、こういうような仕事をするのが交通機関であります。したがいまして、これは安全輸送という観点企業主義の考えというのは、一般の企業でございますと必ずしも対立しないで済むのに、交通企業の場合には必ず対立する、あるいは矛盾するということが出てくるわけでございます。先ほどから過密ダイヤの話がいろいろ出ておるのでございますが、現在の国鉄経営方針を見ますと、小は電車の清浄事業を下請に出すことから、大は最近起こっております小口混載会社をつくって、国鉄民間企業に乗り出す、トラック運送業に乗り出していくという大きな会社に至るまで、一切が実は企業主義立場から行なわれている、こういうふうに理解しておるわけでございます。したがいまして、よしんば現在ここに相当巨額な投資資金が国鉄に与えられたとしても、現在の国鉄もうけ主義からいきますと、この金が一番もうかるところにまず投資されてしまう、そういうことにならざるを得ないだろうと思います。つまりこの姿勢を変えないで、いたずらに国鉄に金を出しても、その金は国鉄のより採算に合うようなところにだけ投資されてしまう、こういう結果になってしまうと思いますので、国鉄に対します投資を早急に強力にふやしていくということには、やはり政府なり、あるいは国会がこれを十分に監視をするなり、やはり法的な強制力を持ったもので国鉄の緊急整備をやるようにしていくことがどうしても必要じゃないか。お答えにならないかと思うのでありますが、私はさように考えておるわけでございます。
  41. 勝澤芳雄

    勝澤委員 結論的に緊急な整備を行なうべきである、こういうお話です。私はよく問題にするのですが、国鉄の公共性、企業性は、限度を示せ、一体企業性はどこまでだ、公共性はどこまでだ、限度がなければ、締めれば締めるほど企業性になっていく、公共性を失っていく、だから安全の限度も不明確なままにどんどん企業採算のことに中心がいく、こういうことをよく言うわけでありますけれども、いまのままの形で投資をすればするほど企業性にばかり向けていく、こういうことはよくわかるわけでありますが、それをコントロールするために国会なり政府なりが干渉しなければならぬ。いまも現実に国鉄の予算はわれわれが国会で審議をしているわけでありますが、そういうたてまえからいきますと、一体国鉄の公共性とは何だろうか、企業性とは何だろうか、そうして安全性の限度については何だろうか、こういうような点についてもう少し御見解を賜りたいと思うのです。
  42. 鶴見勝男

    鶴見参考人 実はその問題にお答えしますと、やはり問題を少し歴史的に掘り下げてみる必要もあるんじゃないかというふうに考えます。明治三十九年から四十年にかけまして、一般の用に供する鉄道はすべてこれを国有とするという例の鉄道国有法が出たわけでございます。この背景に一体どういう事情があったかということを一応考えてみる必要があるんじゃないか。私はこの点につきましては、いろいろ事情があったと思うのですが、やはり一つは、鉄道経営というものが一般の企業と違って、つまり企業ベースに乗らないところが非常にあった。当時買収されました大私鉄の一部を除きましてほとんどが赤字であったわけです。そこでこういうような赤字の、いわゆる企業ベースに乗らない個々企業としては、経営採算が成り立たないものも実は国有化しまして、これを全国的な一本の鉄道経営にすることによりまして、ある程度この赤字をカバーし、全体としては採算が合うようになる、こういうような一つの理由があったのではないかというふうに考えます。それともう一つは、最近民営論その他も出ておったのでございますが、旅客及び貨物の運送というのは大なり小なり全国的につながっているということがあると思うのです。これはほかの企業とはだいぶ趣が違っておると思うのですが、こういうような事情も一つあって、国有化されたということもあるのですが、いずれにしましても、やはり個別企業としては採算に乗らないのが国有化されることによって採算に乗って、しかも、国民経済的にはペイするという、払うなことが国有化の背景にあったのではないか。したがいまして、現在公共性その他いろいろ言われておりますが、この問題はかなり考えてみる必要があるのではないか。歴史的に国鉄に与えられた使命というものが、国有化の当時の特殊事情から考えまして、私はやはり基本的には当時の事情と同じような事情があるというふうに考えていいじゃないか。したがって、国鉄がもしも国有化された当時のことをすっかり忘れてしまってと申しますか、当時のことも全然考えないということでいきますと、これは明らかに国有化以前の状態に返るということも十分考えられると思います。それを極端に進めていけば、つまり公共性という看板を全部やめてしまう、そして赤字路線を全部切って国鉄から離してしまうというような極端な政策国鉄が進んだ場合にどうなるか。これは私は非常に重大な問題ではないかと思われる。公共性と企業性の問題についてはいろいろ見解があるようでございますが、私は公共性、企業性ということを単純に理解してしまってはいけない、もう少し歴史的に国鉄に負わされた使命という大きい観点に立った公共性というものが考えられなければいけないのではないか、現在はあまりにも視野の狭い見解が少しあるように思うのでございます。  ちょっとお答えにならないようでありますが、私の考えは大体そんなところです。
  43. 勝澤芳雄

    勝澤委員 臼井参考人にお尋ねいたしますが、国鉄当局と組合との間に安全輸送の問題について協議が進められ、また国鉄の組合のほうから先般安全白書が出されて、それについての数字につきましても交渉を進めているという話を聞いているのです。当委員会におきましても、先般私の質問に対して川上常務理事から、国鉄の組合から出ておる安全白書に対する見解については、交渉が進んだ段階において答弁をしたいという回答があったわけでありますが、その後経過はどうなっておりますか。
  44. 臼井享

    ○臼井参考人 お答えいたします。事故防止委員会というのを持って、その中で話を進めているわけですがこの委員会を持ちました趣旨は、公労法八条で団体交渉の範囲は労働条件ということになっておりますから、具体的な労働条件だけの話では安全確保について不十分だというので、事故防止委員会というのを持ちまして、そこで労使が知恵を出し合って、国民の安全に関する要望にこたえたいということでやつてまいりました。設備関係の問題につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、組合側では当面二千六百九十億、当局側のほうでは五カ年計画で六百七十四億と非常に開きがあるわけであります。それで特に衆議院のほうは通りましたが、来度年予算の中では、二百七億ということでありますから、組合側では非常に不十分だ、当局側ではこの範囲内でことしはやらなければならない、こういうところで開きがあるわけであります。ただ問題になっておりましたのは、年末に総裁が政府と折衝いたしまして、債務負担の関係で四百億でありますか、それらと、予算を実行に移す場合の実行予算の段階で二百七億をどれだけふやすことができるかという点については、まだ話が煮詰まっておりません。ただ全体のワクには大きな開きがありますから、組合側では少ないとするなら、当局の考えをこの前聞き、ましたら、重点的地区に振り向けるべきだということについて具体的な話をこれからやろう、こういうふうにしておる段階にあります。ワクが組合の想定と当局側の提案との間に大きな開きがあって非常にやりずらい交渉になっておるという現状にあることを申し上げておきたいと思います。  それからもう一つの面で、事故防止委員会個々の面について話がとてもできないからというので、団体交渉に回そうという話になったのが要員問題であります。先ほど私もちょっと申し上げましたが、検修回帰キロの延長による人間の節約または後部車掌の節約廃止ということは安全度を落とすので、そういうことはもとに復して安全確保をはかるべきだという話をするわけ、でありますが、当局側のほうでは、個々の仕事をする条件については団体交渉でやってもいいけれども、何名という人数については団体交渉ではない、たとえば後部車掌を乗せるなら乗せればいいのであって、その人数をどう捻出するかということは当局側でやりたいと言われておりますから団交が行き詰まってしまいまして、もう一回事故防止委員会のほうに戻してやろう、こういう話に戻ってきております。ですから、設備関係の分については、額には大きな開きがあるのでありますが、当局側も設備はしていかなければならぬという方向については一致をしながら話をしておる。ただ、安全を守るためには人間も必要だという組合の意見に対しては、人間をふやすことが安全を守る道ではないという当局意見とまっこうからぶつかっておるのが現状であります。ただ、この交渉の中でいろいろやりとりしまして、先般皇后陛下が岡山からお帰りになられましたときに、当時三六協定は結ばれておりませんでした。それで名古屋、静岡、東京あたりはその列車が五時過ぎにかかりますので、どうしても超過勤務をしてくれという。われわれのほうは一般のお客さんを輸送しておる状態について、もし当局が自信を持って人をふやさぬでも安全が確保できるというなら、なぜそういう場合に超勤してでも人を配置しなければならぬのかという議論に発展したのであります。この問題に対しては、いま言ったように、まっこうから対立をしたままですというのが現状であります。
  45. 勝澤芳雄

    勝澤委員 かって当委員会事故の起きる原因について質問があったときに、当時の十河総裁から投資が不足だということが出まして、当時与党の委員の中からは、国鉄の要求どおりいつでも予算を通しておる、したがって投費不足というのは総裁の食言だといって問題になったことがあるんです。総裁がかわりまして、今日事故のあるのは投資不足ですということが政府の中にもようやくいま認められておるわけです。そうして今日では、国鉄の要求があったのをけったから安全輸送をやれるのではないかとか、こういう反論がなくなってきたということは、やはり指導層のものの考え方が変わってきていると思うのです。したがって、いま国鉄当局と組合と話をしている安全の問題につきましては、ただ単に国鉄当局、ただ単に国鉄組合というものではなくて、国民的な立場に立ってその企業を預っている両者が、やはり真摯な態度で真剣に、投資の不足がどこにあるのだ、そしてそれは人と物とを私は十分検討すべきであると思います。いま日井さんの意見で十分わかりましたので、また別の機会にそれは今度は当局側に十分聞いてみたいと存じます。  そこで次に、臨時雇用員というのは一万三千人もあるというお話を聞いたわけでありますけれども、国鉄のような職場の中で臨時雇用員というものには一体どういう仕事をさせているのか、そしてこれはいまの国全体の政策からいって、臨時雇用員、臨時人夫あるいは臨時工員というものを廃止せねばならぬ、常用化すというのがこのごろの労働事情であるにかかわらず、なぜこういう現象が起きているか、こういう点についてお尋ねいたします。
  46. 臼井享

    ○臼井参考人 年次はよく覚えておりませんが、七、八年前にこの問題が団体交渉の対象になりまして、季節波動、除雪などの以外の職員代用には原則として臨時雇用員は使わない、こういう約束が一回できたことがあります。しかし、これが臨時雇用員の全面解消までに至りませんで、最近になりまして当局側は臨時雇用員制度はどうしても残したい、こういう態度に変わってきております。私どもこれについては、職員の代用として臨時雇用員を入れる場合は、これは絶対に認めないという立場で話を進めているわけでありますが、現実に常時一万三千人程度いるというような実情であります。  これらの人がどういう仕事をしているかという御質問でありますが、非常に広範な仕事をいたしております。線路工手の仕事または駅の場合では、昔の駅手の仕事、荷扱いの仕事、それから電話などの場合には、将来の自動化を考慮いたしまして、欠員があっても臨時しか入れていない、こういうやり方をしていますし、それから清掃作業などの場合には、将来清掃業務を民間に委託する準備として臨時しか補充をしない、こういうやり方をやっていますから、各級機関で従前その仕事をやりながら全体の仕事を覚えて、そして逐次昇職をするという採用職は、ほとんどにわたって臨時雇用員が使われている。ただ、さっきも言いましたように、運転考査を受ける仕事については、安全の角度から絶対にいかぬという組合主張が入りまして、使わないということになっておりますが、一、二使ったところが出て労使間に問題になって直ちに直しました。しかし現実に非常に多くの臨時雇用員がいる状態でありますから、片方のほうで運転考査では臨時が使えぬということになりますと、臨時を使えるところから本採用としてそちらに持っていくということで非常に問題が出ている実情にあるわけです。  ですから組合側の考えといたしますと、臨時雇用員の現在の賃金が一日最低三百八十円くらいであります。これは局によって若干ずつ違います。これは団体交渉できめるべきだ。なぜかといいますと、たとえば線路工手の仕事をやっておりますと、われわれが当局と約束をした線路工手の賃金というのは最低七号なら七号から三十八号まで昇給によって上がるという労働条件が約束してあるわけです。臨時の場合には、職員の代用で同じ仕事をしていながら四百円とか四百五十円という非常に低い賃金で、昇給制度もありません。ですから、せっかく約束した線路工手という仕事についてはこういう時間でこういう賃金を払うという約束が、正規の職員はぐっと減らして臨時を入れることによってそこの賃金がダウンする、労働条件がダウンする、こういうところに私どもは問題がありますから、臨時雇用員の廃止に至るまでの間は職員と同等の待遇をすべきだ。  私ども非常に危険だと思いますのは、たとえば電話交換手などの場合には隔離した詰め所があります。あるいは機械が入っておりますから、一般の詰め所と離れている場合が多いわけですが、夜になりまして交代で寝る場合には、臨時雇用員がそこには一人しかいない、正規の職員が全然いない、こういうところで勤務しているような場合もあります。そういうことと、それから荷扱い手やその他の仕事もそうでありますが、この仕事については徹夜の人間は五名だ、こういうふうに一応きまっておるわけですが、その場合に三名が職員、二名が臨時、職員五名というふうにいくべきものを臨時を二名、しかも徹夜勤務にまで従事させる。こういうところに非常に問題があると思いますので、これらの解消については全体の人数のワクの拡大、その中で臨時雇用員の解消をはかるべきだという主張もあわせてやっているわけでありますが、先ほど申し上げましたような事情で交渉が進まないという事情にあるわけであります。
  47. 勝澤芳雄

    勝澤委員 次に運転に直接関係ある問題で、踏切保安要員の問題というのが最近よく叫ばれてきたわけでありますが、国鉄の中で踏切保安要員というのはいままであまり重要視されていない立場に置かれておったようでありますけれども、単独で個人の判断でやる作業でありますが、最近は踏切の保安掛というのは相当重要視され、人の選考の上でも待遇の上でも考えられておるのでしょうか。
  48. 臼井享

    ○臼井参考人 踏切保安掛の問題についていままで長いこと交渉をやってまいりました。待遇の面について若干改善はされておりますが、私どもまだまだ不十分だと思っております。これらについても今後交渉を続けなければならないと思っております。ただ問題なのは、内部的に踏切保安掛でありまして、道路交通に対する権限がないわけであります。ですから、外部のダンプカーの運転手その他通行人に対して規制する権限を持っていない。そのために、幾ら踏切警手の方が阻止しても一般通行人が聞かないという場合が出てくるわけであります。ですから、そういうものに対する法的措置をどうするかという問題、それから給与上の裏づけによる社会的地位の向上、こういう問題があるわけです。  それからもう一つ問題なのは、一人で勤務している踏切が非常に多いわけでありますから、この人が四時間の夜間睡眠をする場合には、ほかから代務が入る。この代務の人の待遇をどうするかという問題等が関連してくるわけであります。それから、離れているところになりますと、もし下痢などしておる場合にはどうするか、連絡方法その他についても非常に問題がある。踏切関係については、こういうような問題について最大努力していきたい。  それから踏切が出ましたから申し上げてみますと、いままで無人踏切で防備がなかったところを第三種のちんちん鳴る踏切に直す、こうなりますと、今度はそれを保守する電気関係の要員がどうしても必要になってきます。ところが、その設備投資機械はふえるけれども、さっきの問題と関連して保守要員はふえない。そのために、設備はできたが使えないというので袋をかぶせたままにしてあるところも出てくるような状態であります。  そういう意味で、踏切の保安度を上げるということについては、設備、それからその設備したものを動かす保安掛、もう一つはその機械を保守するほう、こういうものについていろいろ交渉を続けておりますが、予算定員のワクということになりまして、どうしても交渉が進まない部面に入るというふうに私どもは考えております。
  49. 勝澤芳雄

    勝澤委員 時間がありませんので、今度は白水参考人にお尋ねいたします。  先ほど白水参考人の御意見ですと、事故の起きないのがおかしいというような発言がありました。石田総裁も、過密ダイヤが続く限り事故が起きるのだというような発言をされておりまして、労使一体になって、これはどうも事故が起きると言われる。われわれとしてはたいへん心配な状態なんですが、そこで、それは別として、鉄道事故の場合に鉄道審判制度というものをお考えになられているようであります。先ほど私の質問に対しまして村野参考人からも同じような答弁がありましたが、鉄道審判制度というものについてのお考えを少しお聞かせ願いたいと思います。
  50. 白水久

    ○白水参考人 お答えいたします。特別審判法の問題につきましては、長い間要求をしまして、社会党のほうでも相当研究されていると聞いておるのですが、やはり現在の裁判制度のもとでこういう審判制度をつくることがどうかというような非常に専門的な問題があるようでありまして、まだ日の目を見ていないわけであります。しかし私たちが現在乗務をしていろいろ事故が発生をします。が、戦前はそうでもなかったわけですが、新憲法下における人命の尊重といいますか、民主主義の確立ということがあると思いますが、最近は事故が起きるとすぐ刑事問題になります。したがって、非常に悪い設備と悪い労働環境の中で運転作業に従事していながら、事故が起きると刑事罰、こういう形になるわけです。それで全国的に非常に多くの件数を持っておりますが、この裁判の進行状況を見ますと、率直にいってやはり一般の裁判官の方に裁かれるという形になるわけで、失礼な言い分かもしれませんが、専門的な立場でない方でありますから、やはり作業の状況なり運転士なり機関士の業務の実態ということをよく把握されないという面が確かに出てきております。したがいまして、私どもとしましてはそういうことでなく、やはり専門的な視野から審判をしてもらいたい、こういう考え方で、特別審判法については早急に制度化してもらいたいという要求を持っているわけです。したがいまして、法的措置につきましては非常にむずかしい問題もありましょうが、たとえば現在海難の問題につきましては海難審判法によって処理されるという面もあります。しかし、海難審判法によりますと、罰則もやはり入るわけですから、それらの問題について、自分たちの問題を処理するのに、自分たちを罰するような法律をつくることがいいのかどうかというような声もありますけれども、それでもしかし現在の一般の裁判制度のもとにおける処理よりもいいのではないかというような意見もありまして、いずれにいたしましても、この運転事故につきましては、特別の審判法によって、先ほど村野先生も言われましたように、事故原因の究明もあわせてやっていただきたい、こういうぐあいに考えております。
  51. 勝澤芳雄

    勝澤委員 以上で終わります。
  52. 細田吉藏

    細田委員長 泊谷君。
  53. 泊谷裕夫

    泊谷委員 臼井参考人一つ、それから次の問題は臼井、白水両参考人にお尋ねしたいと思うのですが、国鉄で出しております運転事故の推移を見ますと、昭和十一、二年を起点にして、今次の大戦で最高の山場になりまして、その後混乱して、また下降線をたどってきていますね。そして昭和三十六年の俗に言う十一万キロ白紙ダイヤ、ここからまた上昇の傾向を示しているわけです。しかし三河事故以来、信号忘失とか職員による事故は減少の傾向を示している。部外の他動的な力でふえてきているのですが、その昭和十一、二年のときの一番少ない数字の際における国鉄の改良費が二億円ですね。いまの価格にすれば、約四百倍の八百億程度になるのじゃないかと思うのですが、いまの走行キロの増に合わせて改良費はどの程度のものを必要と考えているか、これを臼井参考人に単刀直入にお尋ねをしたいと思います。  それから二人にお尋ねしたいのは、先ほど機関車乗務員のほうの関係は、二百四十メートルないし二百七十五メートルごとに、そして十秒間隔ですべてに気を配らなければならぬ、こういうお話がありましたが、俗に言う労働時間をオーバーすることでなしに、密度が高まる、負担荷重ですね、負担が荷重されたこの実態というものについて、先日運輸委員会国鉄当局にその資料の提示をお願いしておいたのですが、国労としてあるいは動労として、その全貌をかいつまんで一と言うとおかしいですが、骨組みになるものを短日数のうちに提示願えるかどうか、この点についてお答えをいただきたいと思うのです。
  54. 臼井享

    ○臼井参考人 あとの労働密度の点についてはある程度用意したのがありますから、整理をしてあとで提出したいと思います。  それから第一点の問題につきましては、これは改良費の関係でありますけれども、私ども具体的に数字をまだはじいておりません。ただ問題になりますのは、予算編成にあたりまして私ども当局側に説明を求めて意見を言うわけでありますが、これは団交の対象外ということで、意見は聞きっぱなし、言いっぱなしということになりますものですから、年々この問題についてわれわれの熱意が薄れてくる。最近事故が起こりましてから、先ほど全体的に説明しましたように、二千六百九十億という当面必要だと思われる金額などについては、ほとんどの部分が改良費で使ってもらいたい部分であります。ですから、そういう意味でいまの国鉄当局が考えている改良費では私どもは非常に少ない、こういうふうに思います。具体的な数字についてなお検討してあとで提出したいと思いますが、考え方としてはそんなふうに考えているということを申し上げておきたいと思います。
  55. 白水久

    ○白水参考人 機関士の労働密度の問題ですが、これは通常一人が一日に何キロ乗務するかということと、もう一つは実乗務率といいまして、機関士が乗務するまでに、出勤をしてから発車するまでに準備時間というのがあります。それから行く先の折り返し地においてまた準備時間がありまして、帰ってきてまた準備時間がある。その準備時間を勤務時間から除いて、すなわち実際ハンドルをとって運転する時間の率が何%になるかという二つで大体見ております。  それで、前者の一人当たり一日何キロ乗務しているか、この問題につきましては、電気機関車におきましては昭和二十三年度は六十六キロでありました。二十六年度は九十八・五キロだったわけです。三十六年度になりまして百二十・七キロ、それから蒸気機関車におきましては昭和二十三年度は六十二・五キロ、二十六年度は七十五・四キロ、三十六年度は七十七・五キロとなっております。それから後者の実乗務率でありますが、これは電気機関車におきましては二十三年度は五〇・三%、二十六年度は五九%、三十六年度は五八・一%、蒸気機関車におきましては二十三年度は三六・五%、二十六年度は四九二二%、三十六年度は四八・〇%でありまして、蒸気機関車の伸びはあまりないわけですが、電気機関車のほうにつきましては相当に労働密度が高まっているということが言えると思います。
  56. 泊谷裕夫

    泊谷委員 臼井参考人のほうから後刻資料提示が約束されたのですけれども、白水参考人のほうでも、いま話をされたようなものを数字にして資料の配付をお願いしたいと思います。
  57. 細田吉藏

    細田委員長 野間君。
  58. 野間千代三

    ○野間小委員 時間がございませんのでたいへん残念なんですが、一つは臼井参考人にお願いしたいのですが、先ほど参考人が言いましたように、業務量が非常に増大をしておる、にもかか  わらず職員数はそうふえてない、この問題が特に各車種の乗務員にやはり相当影響があると思う。あれは相当な年月をかけた訓練が必要でおりますし、実務が必要でしょう。そういう関係から見ますと、ふえていないわけですが、やはり安全上から見たり、あるいは職員の能力といいますか、体力といいますか、そういう面から見て、一定の基準が必要だと思う。実際にハンドルを持っている町間と乗務距離が相当関係があると思うのです。そういう点が、ここ数年人員がそう変わっていないという状況の中で、どういう操作をされているかという問題についての交渉の経過なり実態なりについて、ちょっと御説明をいただきたい。  それから次にもう一つ。回帰キロの延長というふうに言われましたが、検査規程がだいぶ改正をされている、それから回帰キロの延長が行なわれておるというふうに伺っておるのですが、この前の小委員会での当局側のほうから提出された事故ケース別の件数があるのですが、私どもとしては、そういう検査規程の改正、回帰キロの延長などは、事故は実際にはそうふえてないが、事故というものは絶無でなければならぬ、あってはならぬという観点からすると、やはりそういう検査規程の改正をしたり、延長をしたりすることは問題があるんじゃないかと言ったのです。そう問題はないという回答でしたけれども、実際に担当している職員側から見て、どういうふうに影響があったかという点について、もし資料なりがあれば、あるいは御答弁があれば、伺いたい。  それからもう一つは、神崎先生、先ほど御説明の中で、事故が起きて、そのあとの救援措置についてちょっと触れられておりましたが、もちろん事故がないことが必要なんですけれども、その場合のことも、やはり救援の体制として国鉄が持っておるべき必要なもの、十分必要であろうと思いますが、救援の問題とか、救護の問題、それから復旧の問題と両方あると思うのですが、先生が感じられた点はどういう点だったのですか。御説明を願いたいと思います。以上です。
  59. 臼井享

    ○臼井参考人 お答えいたします。乗務員の勤務の関係でありますが、全体的にいいますと、国鉄の仕事は、民間の装置産業と違いまして、設備投資して機械化したからといって、流れ作業になって労働生産性があがる、労働者をふやさぬでも生産があがるという仕事では大部分がないわけであります。そういう意味で、当局と私どもの話では、業務量がふえる、当然人員をふやさなければいかないんじゃないかというのが私どもの主張でありますが、当局側のほうは、設備投資をして、設備を改良しているからということで、基本的に対立をしています。乗務員の場合でいきますると、これは車掌でも、電車運転士機関士でも同じでありますが、勤務時間は従前とそう変わっておりません。ですから、列車をふやすという場合には乗務員の数はふやさなければならない、こういう現象が起こります。ただ列車の数をふやしただけふやさぬでもいいという部面があるのです。それはどういうことかといいますと、車掌なら車掌で、勤務時間が八時間ときまっておりまするから、それは乗る前の準備時間が一時間、乗っている実乗務時間、折り返しが一時間、最近ちょっとこれが変わりましたけれども、乗って帰ってきて三十分、こういう乗務のための準備時間、折り返しのための準備時間、おりてから車中での無札の旅客に対する発売、乗り越しの発売、これらの整理、こういう時間を含めましてやっているわけでありますが、このうちの実乗務時間は、スピードアップによっていままで八時間で乗ったキロ数がぐっと延びてしまうわけです。たとえば宇都宮から上野まで従前二時間半から二時間四十分が普通であります。最近の電車になりますと、これが二時間で走る。ですから、いままでですと大体一往復すれば、待ち時間、準備時間、おりてからの整理時間ということで一日の勤務時間に近かったわけですが、最近はスピードアップによって、行って帰って一応間以上余る。これが翌日の勤務に加算をされて勤務をするなり、また夜出てくるなりという勤務になるわけです。これは乗務員全体にそういうことをやりますから、スピードアップによって、民間の場合ですと、工場でベルトが流れてきて仕事をやる、こういう関係ですから、そのベルトが一割早くなったら労働者は悲鳴を上げてしまうわけです。ところが、乗務員の場合は、いま言いました例で宇都宮−上野間、停車場は同じ数あります。信号機についても何でも同じ数がある。自分がベルトに乗っておりますから、スピードが一割、二割上がっても同じ仕事をその時間帯でこなさなければならない、こういう労働強化によって、乗務員の数を列車数をふやしただけふやさぬでいい、こういう操作をされてくる。それから先ほど白水君からも話があったように、乗務が非常に不規則であります。この不規則な乗務について組合と当局が対立しているのは、始業、終業の時間が、ダイヤ改正があって新しい行路を組むわけです。どの列車で行って、どの列車で帰って、休んで、どの列車に乗る、こういうのをきめることによって、始業、終業の時間がきまるわけですから、これは組合側は、当然団体交渉できめるべきだとし、当局側は、これに  ついては、一日八時間、一週四十八時間におさまりさえすればどういう勤務をさしてもいいのだという。そこのところが、これは前時代的だと思うのですが、いまだに対立している。その辺の関係と、いま言いました乗務キロなどの関係、こういうものが非常にかぶさってきているのが乗務員の実情です。ですから、この種問題につきましては、白紙ダイヤ改正、それから最近では東海道新幹線開業に伴う大改正があると思います。そういう時期に、乗務の基準というものをどう設定するかということが人数をどうきめるかということと当然非常に関係があって、労使間の大きな問題になるだろうというふうに考えています。いままでのあらわれはそういうふうにあらわれてきています。  それから検査規程の改正、回帰キロの延長、こういうことをやって労働条件影響がないということが言われたというふうに聞きますが、これはきわめて実態を知らない不見識な発言だというふうに私どもは判断をします。それは、回帰キロが延長されますと、従前たとえば何万キロ走って入ってくるという車が二割なり三割なりよけい走ってからでないと入ってこないわけです。そうすると、当然故障も多くなるし、それからその人が検査をして一定期間責任を持つわけでありますから、その責任を持つ度合いについてかぶってくるわけであります。そういう意味で、検査の場合の回帰キロの延長または検査規程の改正というのは、その仕事をしたことによって責任を持つという場立で考えてみれば、延長したり改正するということが、労働条件、将来にわたる責任度にきわめて重要な影響がある。このところが対立をしています。それで、回帰キロを延長いたしますと、たとえば平均二割延長したとして、車の数が同じでありますとすれば、入ってくる両数が、一日平均なら一日平均、年間平均でもいいのですが、二割減ってくるという現実になります。それだけ仕事が減ったという理由で定員が減らされる。ところが、二割よけい走ってから入ってくるから、業務量は従前と同じ程度あるわけです。そういう関係を無視して、検査規程の改正、回帰キロの延長、こういうものについて、これは管理運営事項だという主張がなされて、労使間の激しい対立点になっている。ですから、私どもは、回帰キロを延長して、それで労働条件を一方で強化させながら、入ってくる両数によって人数をはじき出すというやり方で人数を減らすことによって安全度が低下される大きな問題だというので、冒頭申し上げた場合にこの問題を特に取り上げて私が説明をしたというふうに御理解を願いたい。
  60. 白水久

    ○白水参考人 乗務員のいわゆる使い方の合理化の問題ですけれども、これは、行先地における折り返しの場合、前後三十分ずつ一時間、これは勤務時間に入るわけです。ところが、その折り返し時間を短くしまして二十分くらいで折り返してしまう。そうすると、いままでたとえば一時間でありましたら、そこで四十分が浮いてしまう。こういう乗務員の運用の合理化をやっております。それから、基本的に言いますと、列車が走れば、乗務員はどうしても乗せなければならないわけです。したがって、増発した分はどうしても乗務員は乗せなければならない。こういう事情にあるわけですが、実は動力車の近代化と称しまして、現在機関車というものが非常に少なくなってきた。御承知のように機関車は電気機関車、蒸気機関車、ディーゼル機関車とあります。この機関車というものには現在の規定上、乗務員は必ず二人乗せなければならないことになっておりますし、二人乗らなければ運転作業はできないわけです。これは問題ないわけですが、最近、御承知のように電車化それからディーゼル車化、これが非常に激しく行なわれております。この電車化とディーゼル車化については一人乗務を基本にしております。この一人常務というものは非常に危険なわけですから、私たちは動力車にはすべて乗務員は二人乗せなさい、こういう要求をしておりますが、実際はほとんどの電車、ディーゼル車の列車は一人乗務であります。したがって、そういうところで人間の節約をしている。そのことが非常に危険な状態に結びついているというのが実情であります。  それから、先ほど機関士の労働密度の問題で質問されましたが、現在手元にありますのは電気機関車と蒸気機関車のみでありますが、いま言いましたディーゼル車の列車それから電車、これの労働密度は非常に高まっていると思います。この二つの問題につきましては、後ほど調査をして資料を提出したいと思います。
  61. 神崎清

    神崎参考人 鶴見事故の現場に参りまして、立花東鉄監理局長から説明を伺ったのでありますが、事故発生のときに、たまたま線路のわきに国鉄の職員がいたので第一報を受けた。それと同時に非常呼集をかけて、みんな献身的に働いてくれたということでございました。そこで、人命救助のために国鉄当局としてどういう手当てをしたかと言いましたら、それは一時間後に横浜診療所の国者と看識婦がかけつけてきた。特に今度は輸血の血液を持ってきたので、現場で手当てをして病院へ行くまでに輸血をしておったので、三河事故に比べてたいへんな進歩であると言われたのであります。それでは、現場の状況として阿鼻叫喚の姿になっておる、息も絶え絶えの重傷者、負傷者に対して国鉄としては一時間後には到着したけれども、一時間の間というものは手がつけられなかったということではないかと言いましたら、それには御返事がなかったのであります。実に三河事故の起こりましたあと、重いけがをされて長らく病院に入院しておられる方を私はお見舞いしたのであります。そうしますと、手を切るとか足を切るとか手術をした方が多いのですが、三時間も四時間も現場にほっておかれた。あのときも夜分でまっくらでありましたけれども、大ぜい、いろいろな人が入れかわり立ちかわりきて助けてくれたのでありますけれども、なおかつ見落としがあって、三時間、四時間たってしまった。ですから、医者の話を聞きますと、もう少し早く来てくれれば足を切らないで済んだかもしれない。ある人などは、壊疽が一ぱいその間に広がって、右足を切り落としたというような述懐を受けまして、急速な救出というものがいかに必要かということを痛感したのでございます。それで、現場にはもちろん、国鉄の診療所のお医者さん、中央病院のお医者さんがかけつける前に、近所の開業医の方がかけつける、あるいはインターンの学生が飛び込んでくる、あるいは救急車の消防夫もそれに参加するというようなことで救出が行なわれたのであります。しかしいずれも任意活動でありまして、自発的な活動であって、災害ができたからすぐ出動しなければならぬという形の救助体制はなかったように思われます。それで警察庁に問い合わしてみましたら、神奈川県警で、救出に出動したその反省会として、いろんな団体が入ってきた、警察、消防、国鉄はもちろんですが、それから自衛隊も来たし、それから在日米軍も出動してきた、そういう場合に、めいめいてんでんばらばらであって、いろいろ不都合なことが多かった、これはどうしても現場の活動というものを一元化するための行政的あるいは法制的措置が必要であるということが結論として記録に書かれておるということでございます。現在の段階でも関係官庁は国家行政組織法で一般的協力ということは規定されているけれども、協力義務というものは規定されてない。最近は消防法が一部改正になりまして、いままで任意で事実行為として行なわれていた救急活動が法制化されたわけでございます。そしてまた警察などの間には一般業務協定のようなものができておる。しかし国鉄の間には何もないということでございます。ですから、ああいった非常の大事故が発生すると、その場合の組織的な救助、特に人命の救助を中心とした救助体制というものがふだんから用意され訓練されていなければならないのじゃないか。関係法律を見てみますと、災害対策基本法とか災害救助法がございますが、その場合の災害というのは、大体において自然災害、暴風とか豪雨とか豪雪とか、津波とかいう自然災害を中心にして、それから非常に大きな火事、爆発とかいったもので、大規模の交通事故は入っていない。まあ政令で定める程度とありますが、この政令の中にも大規模の交通事故は入っていないということでございます。運輸委員会としては、この防止対策施設と訓練によってあくまで予防していくという観点からいろいろ対策を具体化していただくわけでございますが、国民としてはいつ大きな災害が起こるか、保証のない鉄道事故、一たん起これば大規模な犠牲を出す、それに対しても、ひとつこういう関連法律その他を検討されながら、何か確実な救助体制というものをお考えいただきたい。日本赤十字社などとも国鉄が契約するというようなことも一つの方法でしょう。聞くところによりますと、以前には、鉄道沿線のお医者さんには鉄道省から年間幾らというような契約があって、非常の際には出動してもらうという体制があったそうでございますが、戦後はそれも聞いておりません。また救出の道具にいたしましても、脱線した電車の下敷きになっている人を救い出すために、三河事故のときにはクレーン車がなくて、たしか一関の機関庫にあったクレーン車を急いで東京まで持ってきた。その間に何人かの人がなくなっているわけであります。今回の鶴見事故におきましては、クレーン車は自衛隊が持ってきて、そのクレーン車で車体を上げたということを聞いておりますが、これは何も自衛隊のお世話になる必要はないのでありまして、国鉄当局として、そういった必要な機具というものは整備しておくべきはずである。  以上、思いついたことでございますけれども、現場復旧と同時に、人命救助ということに優先を置いた救助体制の確立、これをひとつお考えいただきたい。お願いでございます。
  62. 野間千代三

    ○野間小委員 いまの神崎先生のお答え、それから当時新聞などでも、死生線上にあるから、一分の違いで不幸な事態になるというようなことがだいぶん出ておりました。こういう点は別の機会に、当局にどういう点を直したらいいのか伺いますが、あるいは夜間ですから、病院の体制なりあるいは指揮命令の体制なり、そういう問題も多少あると思います。これは別の機会にまた調査をしたいと思います。  それからあと一点、白水さんにちょっとお願いしたいんですが、先ほどのお話で、乗務時間の問題は一応規定できまっていると思うのですが、いまのような状態ですと、実乗務する距離、先ほどちょっとお話がありました距離が、やはり職員に与える影響が強い。むしろ乗務時間よりも距離が相当影響があるのじゃないか。そういう問題は危険上どうなるのかということと、それから要員上どういうふうに考えて対処しようとされておるか、この点だけひとつ……。
  63. 白水久

    ○白水参考人 一継続の運転時間の問題ですが、これにつきましては、現行の協約では、純運転時間は、昼間は四時間三十分、夜間は三時間四十五分となっております。それから連続無停車乗務、これは三時間ということになっております。それから内達一号といいまして、乗務員の運転勤務時間を規制した規定がありますが、これによりますと、二十二時から五時までのいわゆる深夜時間、これを二時間以上含む場合には、一継続の乗務時間は五時間、それからその他の場合は七時間、この規定しかないわけです。そのほかは、先ほど申し上げました労働協約で労働条件を規制をしている、そういう関係と、もう一つ、これも労働協約ですが、一継続の最高乗務キロ、これにつきましては、旅客列車については、EL、EC、DL、DCとあります。ELというのは電気機関車、ECというのは電車、DCというのはディーゼル旅客車、それからDLというのはディーゼル機関車、これでは第一制限キロと第二制限キロがありまして、第一制限キロにつきましては、EL、EC、DC、これは百九十キロです。それから第二制限キロは二百三十キロ。それから貨物列車につきましては、ELは第一制限が百六十五キロ、第二制限が二百五キロ、それからDLにつきましては、第一制限が百六十キロ、第二制限が二百キロ、こういうことになっております。いずれも、この第一制限キロをこえた場合は、運転士を二人乗務させるということでありまして、第二制限キロ以上をこえて乗務することはできないことになっております。結局長時間労働あるいは長距離乗務については、二人乗務で対処しているというのが実情であります。したがいまして、現在非常にスピードアップ化されておりまして、列車速度が高いものですから、いま指摘されましたように、距離の問題も問題になりますが、時間も非常に問題になる、こういう関係になるわけです。それで、大体いまの旅客列車でありますと、高速運転をしておりますから、私たちとしては連続運転については三時間が限度だと考えるわけです。しかし、現在のダイヤ編成、ダイヤ作成基準というものはございませんので、非常に長時間乗務が多い、こういう関係になっております。
  64. 玉置一徳

    玉置委員 岩川参考人にお尋ねいたします。時差出勤でやればかなり過密ダイヤの縮小に効果があるんじゃないか、こういうお話でございましたが、あなたのほうで何か具体的に試案でも、試算でもしたということはございませんか。
  65. 岩川修二

    ○岩川参考人 私は先ほど過密ダイヤを早急に解決していくためには、やはり時差出勤の協力以外にないということを申し上げたわけですが、では、それに対してどういうような施策を持っておるかということになると、私は、先ほど申し上げましたように、事故防止対策委員会の中では、いまの構成ではできないと思いますので、やはり政府代表なり利用者代表なり、そういうものを入れる。たとえば、先ほど臼井さんが各先生からの質問に対して申し上げておるように、いまの事故防止委員会ではほとんど事故防止委員会にならぬというような状態があるわけですから、そういうような中でいろいろな方法を講じていくべきだと思います。では、どういう対策が必要かということについては、現在われわれとしても検討しておりますので、ここ一両日の猶予さえ与えてもらいますれば、はっきりした提案を出してみたいと思います。
  66. 玉置一徳

    玉置委員 それらについてはひとつ後刻お出しをいただくことにいたしまして、関連しました事故防止委員会でございますが、いまもお話がありましたとおり、先刻からいろいろ議論が出ておりますように、どうしてももうかるほうへ資金が投資されやすい。したがって、一番肝心な国鉄でやるという安全運転の最低限まで崩れるおそれすらあるということでございますが、しからば事故防止委員会は、どういう構成で、どういう問題をやったらいいとお思いになるか、その運営及び構成についての御所見があれば伺いたい。
  67. 岩川修二

    ○岩川参考人 事故防止委員会の運営並びに構成ということでお話があったわけですが、これを申し上げる前に、現在国鉄事故防止委員会がどういう経過をたどっておるか、またどういう構成でやっておるか、どういう形の中で行なわれておるかという点をまず最初に申し上げておきたいと思うわけです。私は残念ながら、いまの国鉄における事故防止委員会は——すなわちイデオロギーの相違というものは、これは各組合が持っておるわけでありますが、別々の姿の中で行なっておる。これは鶴見事故によって事故防止委員会が必要だという要請のもとで設置されてきたものでありますが、不幸な状態でありますけれども、別々の姿の中で行なわれておる。したがって、なぜ事故防止委員会が国労対当局、新国労対当局、動労対当局の間で分かれていかなければならなかったかという理由については、これはまたいろいろ考え方の相違があると思います。もちろん先ほど臼井さんが二、三回答えておりましたけれども、すなわち大事なところへいくと、それは団体交渉だということをよく言うわけです。したがって事故防止委員会というのは、要員もあわせて、事故の防止に必要であるものであるならば、あらゆる部門にわたってある程度の権限を持たして、団体交渉以上のものにしなければ、事故防止委員会の価値はないと思う。したがって、そういう点から私は動労または私たち、それから国労という三者別々の中でやったし、また動労はこの問題について確かにここから抜けていった経歴も持っております。先ほど申し上げましたように、やはり一つになって、イデオロギーを超越した中でこの事故というものを解決していかなかったら、私は解決できないと思います。それにはやはり各組合が一つの場所でやれるだけの強力な事故防止委員会というものをつくっていくべきだということを申し上げたいと思います。
  68. 玉置一徳

    玉置委員 事故防止委員会は、それぞれ組合の三つの方がおいでになるわけでありますが、国民的視野から申し上げますと、どこまでも皆さん国鉄の方でございますので、ぜひともひとつこういうような形でもって、しかもでき得ればその他の方々もお入れいただいて、権威ある機関にしていただいてやっていただく、そのことが一般国民国鉄に乗りまして非常に安心して乗っていけるのじゃないか、かように思うのです。  そこでそういうことを聞きますと、労働組合が三つあるということが国鉄職員の調和を乱して、事故がややもすれば起こる原因じゃないかというような、しろうとのような意見をする人も巷間あるということも、悲しいかな、事実だと思います。私は決してそういうばかなことはあり得ないと思いますが、これにつきましてついでにひとつ岩川さんから御返答いただきたいと思うのです。
  69. 岩川修二

    ○岩川参考人 大事な意見だと思いますので、詳しく申し上げたいと思います。私も新組合をつくった指導者の一人としてよくよそへ行きまして、何かいろいろな会合に出ますと、いま国鉄の中で組合が三つあるから、いろいろ職場の中でそれらの対立が交差して事故に発展しておる点はないのかというようなことをよく私は耳にいたします。私は三十二年に組合を新しくつくりまして、今日まできて、そういうことを思われておるのが非常に残念でならぬので、いまここにはっきりその点を数字をあげて申し上げておきたいと思います。  ということは、まず当時三十二年に新潟に私たち組合をつくったわけですが、その後現在六万人近くになっております。この私たちの組合と各組合とが競合しておる地域に起きた事故、また新組合ができる前に起きたところの事故件数と今日の事故件数、そういう点を、一応いまここに数字を持っておりませんが、必要なら出してもけっこうです。いろいろ調査してみたことがあります。二、三カ月前だと思いますが、その際はっきりわかったことは、ほとんど変わっておらない、むしろ減少の方向にあるし、ただ一つ、これはどう解釈してもらってもいろいろ問題があると思うのですが、新潟の場合は一つの例としていまだかってなかったところの三百万時間の無事故達成記録を持っておる。これなどは新潟におけるところの組合分裂から端を発しまして、イデオロギーの相違から相当そういう暗い面が確かにあったと思います。だからそれがそれだけの達成を行なっておるという点についても、一つのそうでないという理由になろうと思うのです。それからいま一つはたぶんこの辺にもあろうと思うわけですが、ちょうど私この資料を見てまいりますと、各支社、鉄道管理局の増加と減少の事故件数を見てまいりますと、競合しておる地域すなわち大阪なり仙台なり新潟なり金沢なり、こういう地帯においては事故が極度に逆に減少しておるという風潮をここに示しておるという点では、私は必ずしも私の意見が正しいとか、そういうわけではないのですけれども、まず数字的な面から事故を示すならば、私は組合がイデオロギーの相違でかりに分かれたとしても、そういうような事故に発展することはない、これはこの数字によっても明らかになっておるのじゃないか、こう言えると思います。
  70. 玉置一徳

    玉置委員 国鉄の皆さん、そういうことは一切ない、私もこう確信をしておりましたが、ただそういう風評を打ち消す意味で御質問をしたわけです。  最後に白水動労副委員長さんにお伺いしたいのですが、たしかいまの総裁だったか、当局の側であったと思いますが、大事なお客さんを預かって運転をしておるのだから、これは特別昇給その他ほかの公労協とは別に考えなければいかぬのだというようなお話があったと私は記憶しておるのです。先ほどの休養施設その他につきましても、あなたのほうの組合員の満足できるような状態にそういうものがあるのか。あるいは給与のいろいろの面で、そういう観点から言えば満足できる状態にあるかどうかをちょっとお伺いをしたい。
  71. 白水久

    ○白水参考人 お答えします。非常に満足のいかない状態であるということにつきましては、壁頭申し上げたとおりでございます。  それから昇給の問題ですが、特別昇給をしてもらうのは非常にありがたいわけですが、現実は逆に一番昇給率が悪いわけです。なぜ悪いかといいますと、現在国鉄の昇給率は九五%です。したがって五%は昇給をしないわけです。それで欠格条項が設けられておりますが、欠格条項に当てはまらない人もその五%の中に含まれるわけであります。そうしますと、欠格条項だけで五%まかなえればいいのですが、はみ出ますから、結局だれかを落とさなければならない。その場合に非常に運転事故に際会する機会が多い乗務員は、いつも事故事故で昇給を落とされる、こういう実態ですから、むしろ逆で、昇給率が一番悪い、こういうかっこうになっております。
  72. 玉置一徳

    玉置委員 時間もございませんので、これで終わります。
  73. 細田吉藏

    細田委員長 久保三郎君。
  74. 久保三郎

    ○久保小委員 時間もだいぶたちましたので、参考人の方にはたいへん恐縮でありますが、再びおいでをいただくということもなかなか無理でありますので、私から二、三お尋ねをしたいと思います。  いまちょっと玉置君から話が出ましてそれにお答えがありましたが、組合が三つあるから事故が多いというようなことは、私もそういう話をしておることは初めて聞いたのであります。それはないというが、競合しておるところのほうがない、これもごく科学的でないので別に気にはしませんが、事故対策委員会というか労使の間で持たれているやつは、もちろんそれがどういう形で持たれても、ワク内での対策委員会でありますから、今日ただいまの時点では残念ながら予算面で大きな制約がある。予算面で制約があるばかりでなくて、投資不足が一兆円以上になっておるという現実のワク内でおやりになることでありますから、これは十分でないことは事実であります。ですからワク内でおやりになっておる労使の間の事故対策委員会は、むしろ問題点を労使の間で出し合って、これは率直にどうするかを自分でできなければ対外的にどうするか、こういう積極さがなければこれは意味をなさないわけなんで、これが団体交渉であるとかあるいはこの対策委員会でやるとかいうことじゃなくて、事故については、やはり一致した点としてそれが団体交渉権なり管理権に属するものであって、これはフリー・トーキングで問題点があれば出していくという方向へこれを持っていくべきだ、こういうふうに考えているわけです。そこで鶴見先生にお伺いをするわけでありますが、先ほどお述べになったように、国鉄の従来の投資傾向は、これは全く企業性と言ってはあるいは語弊があるかもしれませんが、企業性を追求するために投資をしていくというようなかっこうが出ておる。そこへ投資をすればするほど今度は、太平洋ベルト地帯一つをとりましても、交通が便利ならさらにこれに流れていくというふうな矛盾を重ねているわけでありますから、これを断ち切ることについては先生の御所論のとおり、これはやはり修正さるべき性格だと思うのです。しかしながら、現実に投資不足が一兆四、五千億であるというのは事実でありますから、この事実から回避することはできない。できないとすれば、先ほど村野参考人にお尋ねしたように、あらためてやはり投資をしていく、ただしその投資方向は、先ほど申し上げたように、安全対策第一ということでやっていくということだと思うのです。そこでその投資不足に対する財源はいかなるところから求めるかということが、詰まるところ当面の緊急課題だと私は思うのです。そこで私どもが先ほど申し上げたように、とにかく公共負担の問題がどうあろうが別として、今日までの国鉄の姿を顧みれば、やはり政府自体である程度責任を負う形をとるべきだ。そのためには目の子勘定で大体三分の一くらいは背負っていく、あと経営を圧迫しないという形からいっても財投、いわゆる借り入れ金と自己資金、運輸収入の利益というか、そういうものでやっていくのが正しいのではないかというようなことを考えているのでありますが、そういうことについてのお考えはどうでしょうか。
  75. 鶴見勝男

    鶴見参考人 一般の企業におきましては、いまお話がありましたような点に関する投資は、増資によってやるか、あるいは借り入れ、そのときの事情でいろいろ違ってくると思うのでございます。この点に関しまして、私はやはり従来の国鉄の資金捻出の方法というものはかなり問題があったのじゃないかというふうに個人的には考えております。その一つの具体的な例を申し上げますと、現在国鉄の内部資金としましては、七百億円あるいは六百億円に達します減価償却費、これが非常に大きな割合を占め、これに昨年度及び今年度、と申しましても、この三月で終わる三十八年度になるわけでございますが、約四百億円強の利益、これが内部資金の中心になっておると思うのです。  それで最初に、減価償却費につきましてどういった問題があるかと申しますと、実はこの減価償却費というのは、国鉄の総固定資産に対する毎年毎年の消耗を補っていく。したがいまして、国鉄が現在約二兆円近い資産があるわけでございますが、これは全国に分散しておるわけです。したがいまして、その減価償却費というものが、たとえば東海道線なりあるいは電化なりあるいはその他のところの投資に回りますと、これは結局どういうことになるかというと、国鉄の全資産のうち、全国的にばらまかなければならない減価償却費というものが、非常に片寄った形で結局投資されるということになってくる。それを逆に申しますと、現在の国鉄投資政策から申しますと、地方線とかあるいは減価償却の対象とならないようなところから、全く資産の食いつぶしが行なわれるというような実情になって、国鉄投資が内部資金という形では行なわれておる。これは非常に問題である。最近の国鉄のそういう投資政策というのは、これは言い力が少しおかしいかもしれませんが、つまり地域的な二重構造というものを交通の面から非常に激化するということになっておるのではないかというように私は内部資金の点については考えるわけであります。  利益金につきましても、これは問題があると私は思います。と申しますのは、利益金の全部をもしも資本の増となるような、いわば固定投資に向けられるならば、結局現在の利用者が全くこの負担を全部背負ってしまうということになるのではないか、もちろんその一部を投下することは当然だと思います。これは一般の会社の経営の場合でも当然こういうことをやっておるのでありますが、しかしもうけの全部をこういうようないわば資本の増になるようなところに投資をしてしまうということになって、それで輸送力をつけるということになれば、現在の利用者だけが負担してしまって、しかもその投資された効果というものは、これから利用される方が結局その投資からの恩恵を受けるというような矛盾が出てくる。つまり内部資金につきまして、いまのように、減価償却につきましてはそういうような問題がある、利益金につきましてもそういう問題があるわけであります。  私は、いまの御質問の点につきましては、基本的には政府がそういう金についてはめんどうを見るということがやはり方向として正しいのではないかというように考えております。ただ先ほど来からお話がありましたように政府が、めんどうを見ることによって、国鉄企業体としての独立性が失われるのではないかという意見もあろうかと思いますが、大体国鉄というものは政府に結びついている、いわば政府が株主であります。これから離れるということは今後も絶対にできない、そういう性格のものだと私は思います。したがいまして、外国の例にもあるわけでございますが、あるいは一般の企業常識という点から考えましても、基本的な輸送力をつける投資資金につきましては、原則として政府がめんどうを見る、ただしそのうち財投によるかあるいは出資金によるか、これはいろいろ問題があるところだと思いますが、しかし原則としては政府が見てやる。そして結局そういうふうになったからといって、その金がなくなるわけではないわけですね。現に国鉄の資産としてあるわけです。決して使ってしまうわけではないのでございますから、つまり政府の金をそういう形であげるだけ、そのことによって事故が救われるとすれば、国民経済的にもこれは非常なプラスになるわけであります。このように一般常識的に考えましても、やはり政府がこれについてめんどうを見ていく、そして剰余金につきましては、これはむしろサービスの向上になるように、そういうところに投資をやっていく。当然その剰余金というものは、これは高い運賃——というとおこられますが、悪いサービスと高い運賃で国鉄がかせいだものだと思います。当然これは一般の利用者に還元されるようなところへ投資をする、これがとられなければならない投資の資金の捻出ないしあるいは使い方じゃないか、かように考えるわけであります。
  76. 久保三郎

    ○久保小委員 もう時間もありませんから、最後に組合の方にお尋ねするのですが、一つは臼井さんにお伺いいたします。先ほどちょっと出ましたが、国鉄職員の労働の質とその対価である給与ですね。これについてたとえばどこの公社と同じではという比較論は間違っておると思います。そこで労働の質に応じた給与をこの際やらなければいけないのではなかろうかという考えが、政府にも国鉄当局にも実は初めて反省されてきたように私は思うのです。それから先般われわれのほうの国会議員が朝試乗をしたときに、それぞれの部署でアンケートをとりました。きょうまとめてきたのでありますが、その詳細をここで申し上げる必要はないと思いますけれども、非常に低いのでたまげていた。二十年やって二万円程度、しかもそれがたとえば内職につながるものだ。若い乗務員などで、あるいは国鉄職員で、極端な例かもしれませんが、うわさ話かもしれませんし、どこのだれという話で聞いたわけではありませんが、夜はバーに行って、バーテンでシェーカーを振っているのがあるという話をいっとき聞きました。それは、奥さんはもちろんのこと実は毛糸の編みものをやっている。ところが、徹夜明けで帰りました職員は、そのがちゃがちゃ音をさせながらも女房がやっているのを忍びながら休養をとる、そういうところにもやはりもっと綿密な調査があってしかるべきだと思うのであります。一つの例でありますが、そういう点からいっても、やはり労働の質に応じた給与、対価、これが支払われないところに、そういう無理というか、悪循環を来たして、それが長い目で見れば事故の大きな原因になりはしないか、こういうふうに思うのだが、そういう点についてどう考えていますか。  それからもう一つは昇給の問題、白水さんからいまお話がありましたが、国鉄の昇給は九五%であって成績がよくても、あとの残り五%は実は昇給ができない。昇給ができないというと、勤務評定というのもあるいはあるかもしれませんが、どういう評定をするかわかりませんが、事故を起こさずまじめにやっているのだが、まじめな人が百人いて、そのうちの五%だけはというと五人はだれか貧乏くじを引かなければならぬ。貧乏くじを引いた日には、質に応じた労働対価が払われないということと、さらにもう一つは、人並みに昇給ができない、こういうところの矛盾が、内部矛盾というか、気持ちの中の矛盾として非常なわだかまりになっていると思うのです。反面一〇〇%昇給できない原因、これをどう考えるかというと、最近は国鉄職員はどこに行っても企業性に徹し切っていると実際は私は見ているのです。何とかして成績をあげなければいかぬ、何とかして運輸収入を高めなければならぬ、各駅へ行ってみると、毎日の予定収入と月間の収入の予定を出して、それに何とかして追いつこうとしている。ところがこんなにやっていてもということで、もうそろそろ限界が来たということで、企業意識は今度は別な方向、悪い方向へ行く危険性があると私は見ているのだが、そういう点を含めて、白水さんはどういうふうに昇給の問題を考えられておるか、この二つで終わります。
  77. 臼井享

    ○臼井参考人 お答えいたします。  国鉄労働者の労働条件でありますが、これは歴史的に非常に問題のある勤務をしてまいっております。労働条件と給与の面でありますが、どうしても無定量の奉仕という昔の官吏の精神が残っておるわけであります。ここに一つ問題があると思います。半数近い労働者は、普通の日勤ではありません。ですから、一昼夜交代勤務というのを常時やるわけでありますから、朝出てきて、夜中に四時間程度睡眠をとって、翌朝まで勤務をする。引き継ぎをして帰りまして、朝めしを食って一寝入りして、夕方人ごこちがつく、これが一昼夜交代勤務の実態であります。そうしますと、これを隔晩でやりますから、二日に一晩ずつうちに泊る、これは駅の勤務が主であります。ですから、八時間働いて十六時間自分の時間があって、八時間が自分の時間で八時間寝る、これを一日の普通労働者の人生として考えました場合、鉄道に三十年つとめますと、人間らしい生活は十五年になってしまう。ですから、鉄道につとめている場合、一昼夜交代勤務をした場合には、人生の長さが極端にいえば半分になるという実態であります。  それから乗務員の場合には、先ほど白水参考人からもある程度説明になりましたが、たとえば東京の一番電車に乗る場合は交通機関がありません。勤務時間は、乗りだす前一時間が換算されるだけでありまして、前の日十時なり十一時には詰所に来て、非常に不十分な、電車が通ればがたがたするところで睡眠をとって、これは勤務時間にならない。それから終電車で上がりますと、これは帰れませんからそこに泊まらなければならぬ、こういうことで、ひどいのになりますと、一週間に三晩ぐらいしかうちに帰れないという行路が数多くあります。宇都宮の車掌区にありました例ですが、交番の引き方が非常に悪いために、仙台におりて、次に仙台から乗り出すまでの時間が非常に長いわけであります。これは勤務時間でありません。その間に仙台から宇都宮まで帰って、うちに五時間ぐらいいて、それで帰る。ですから、仙台から宇都宮を往復する時間は勤務時間でなく乗らなければならぬ、こういうような形で、非常に拘束時間が長い。それからもう一つは、私鉄の例もさっき出ましたけれども、日本の場合、私鉄は比較的近距離輸送でありますから、初電から終電までやりますと、そのあと列車がない、これが普通であります。国鉄の場合には昼間は主として通勤または旅客に重点を置きますから、夜中には貨物輸送になる。ですから、昼夜を分かたず同じようなダイヤで運ばなければならぬ、こういう労働条件にあります。それから人が休んだり何かする、休日等が続く盆、正月、こういう時期には、仕事が非常にかぶるという性格もありますし、屋外作業がほとんどでありまして、気象現象の影響を非常に受けやすい、こういうような仕事でありますし、もう一つは、一つ間違うと自分が死んでしまうし、旅客の命も奪う、絶対にやり直しのきかぬ仕事をしているという点が、極端に変わります。  そういうような仕事をいたしておりまして、現在賃金がどの程度かということを総体的に申し上げますと、平均年令は三十九才弱であります。勤続年数が十八年を少しこえております。扶養家族が本人を入れますと三・七、扶養家族だけで二・七が平均であります。これで扶養家族手当、東京などの地域給を入れまして、これは総裁、副総裁など役員を除いた、局長あたりまでを全部含めた平均で、三万二千円であります。高いほうがよけい取りますから、職の低いほうはこの基準でももっと低くなる、こういう状態になってきているわけであります。そういう状態の中で労働者は何とか生活をしなければならぬということになりますから、いまお話に出ましたような内職のところにどうしてもいかざるを得ない。私どもの女房も内職していますが、近所の職員ほとんどが内職しています。この間アンケートをとりましたところが、全国各地から出てまいりましたアンケートの中で、大なり小なり内職をしているのが、六〇%近くの人がやっている、こういう実情にあります、では、内職をしてないのはどうか、こういうことになりますと、これは内職というよりも本業的になりまして、農家で、おやじの名前で農業をやっておって、自分は内職はしてないけれども手伝いはするという、その家から通っているのが内職として出ていない、これを称して半農半鉄というのでありますが、そういう形でやっております。この間関西の家族代表が副総裁のところに陳情に参りまして、具体的な話として、あの辺では寝巻きを電気ミシンで縫っているようであります。内職を受けますと、電気ミシンを内職を出してくれるところで貸してくれる。電気ミシンでやりますと、子供学校へ出す、ちょうどその辺でお父ちゃんが帰ってくる、そこで寝なければならぬのですけれども、奥さんは電気ミシンを回さなければいかぬ、こういうことになって、お父さんが安眠できない、部屋はひん曲がった一部屋しかない、こういう状態で、一体どうしたらいいのかということを訴えておりました。そういうような状態でありますから、どうしてもこれらの面についてもう少し見てもらわなければいかぬ。  こういう原因ができました点は、昇給とも関連するわけでありますが、先ほどもちょっと説明しましたように、定員法で十一万人の人をやめさせる場合に、若いほうをやめさす、それからその後年度末に特別退職というので退職があるわけでありますが、採用しないで、五万人の人数を減らした。六十一万人から五万人を減らす操作の中で、現在の年齢にいたしまして三十四、五才から四十四、五才のところの職員の数が非常に多いわけです。ちょうちん型といわれますが、結局年度末退職があって、新規採用があって、それに若干の昇給資金を用意して、その差額と昇給資金で昇給を行なってまいったわけでありますが、国鉄の場合には昇給資金で用意された分だけで、新陳代謝が全然出なかったという時期があります。ですから、内部で昇給をさせるべき金が一般的に非常に少ない。これを千人以上の全産業の労働者で見てまいりますと、十五年ほどの間、統計的に見てまいりますと、労働者の平均年齢は同じであります。その賃金の上がりが私どもよりも若干よけい上がっている。そうなりますと、うちの平均の場合の上がり方はほかより低い。労働者がこの十数年間に年齢が七歳も八歳も古くなった。そうしますと、七歳、八歳の昇給する分に取り残されている。国鉄労働者はそれだけ低くなっている。こういう現象が出てまいりまして、国鉄労働者はいろいろな角度から調査がされたものがあります。労働省の賃金基本構造調査等で見ますと、平均賃金ではそう立ちおくれがないように見えまするけれども、各年齢帯の賃金を見てまいりますと、ひどいところは一万円も低い。こういう現象が出ておりまして、そのことが内職等になって、それで生活を維持する。そのために疲労が蓄積されて事故の遠因になる、こういうふうに私どもは判断をしております。それから、これらと関連をして、昇給問題についてあとで白水参考人からも補足があると思いますが、前に、そういうふうに昇給資金がない場合には、ほかの現業官庁、公社は欠格条項以外全部の昇給を行なっております。国鉄の場合にはその当時七〇%程度の昇給でありました。この当時の当局の主張というのは、昇給資金が足りない、だからこれでがまんをしてくれという主張でありました。組合のほうもいろいろ検討をいたしまして、それだったら一回の昇給金額を少なくして全体に広げる方法があるということで、そういう資金捻出についても検討して、当局と交渉に入ったわけでありますが、最近になりますと、国鉄当局の言い方は、とにかくいい者も悪い者も全部昇給させるという昇給制度には反対だ、金の問題ではない、落とすという根性の問題だ、こういうことになります。ですから、労使できめました病気で一カ月休んだら一回休むとか、こういうような欠格条項以外、大体三・五%の人が昇給できない。どういうやり方になっているかと申しますと、局から現場に昇給資金を落とす場合に、九五%マイナス一%、九四%しか落とさないわけです。そうすると、現場では上位職員が一〇〇%の昇給をいたすといたしますと、下部職員のほうは八〇%なり七〇%なりになってしまう。全体的に見ればそういう数字でありますが、個々に当てはめてみますと、東京駅なら東京駅で出札が幾つもあります。窓口に勤務している人は、一日交代でありますから、前の日に勤務した人と翌日勤務した人が違います。東京駅の出札係がきょうの人もあしたの人もどの窓口でも問題なしに勤務したということを一年続けたとしても、どうしても九四%程度の昇給であって、六人は落とせという金しかこない。こういうことになりますから、国鉄の職場は年に二回きわめて不愉快な空気になる。いなかの現場に参りましてこれを当てはめてみますと、駅には確かに十何名かおるわけでありますが、これは全部違う仕事に従事いたします。踏切にいる人、それから出札で切符を売る人、改札をする人、それから信号機を返すために転轍機の仕事をする人、小荷物の人、貨物の人、こういうように全部仕事が分かれております。仕事が分かれて、完全にその仕事をすると、勤務成績はどういうふうにはかるのか、こういうことで質問をしますと、とにかく百名のうち六、七人は悪いのがいるのだ、こういう労務管理の思想でこの資金についてどうしてもふやさないというのが今日までの交渉の現状でありまして、私どもはこの関係事故一つの大きな遠因になっているというふうに判断をするわけであります。  事故の問題について、数字上あらわれた事故と、先ほど村野先生が申された点と関係するわけでありますが、熱事故表彰制度というのがありまして、ある程度事故になる程度がいろいろあります。軽い事故、重い事故、そういう場合でも、できるだけ事故を隠蔽しよう、表ざたにすまい、そういうことによってこれはどれだけの長さこの駅が事故を起こさなかったということで表彰を受ける。こういう制度との関連か昇給問題等にあるわけであります。ですから、私どもは事故になるものについてはすべてこれは出して科学的に検討して防止するという方向をとるべきだと考えますが、現場長の点数の関係、それから職員もこれが事故になると昇給が落ちるという関係、そういうものが関連をいたしまして、非常に不愉快な職場環境を昇給制度がつくっているというふうに組合では判断をしております。
  78. 白水久

    ○白水参考人 お答えいたします。昇給の問題と企業意識の問題につきまして、臼井参考人と重複しないようにお答えしたいと思います。  労働者に支払われるべき賃金につきましては、労働の質と量によって支払うべきでありますから、他産業と比べたり公務員と比べたりする必要はないと思いますが、しかし、説明の都合上申し上げますと、現在三公社五現業あるいは公務員と比較をいたしまして、国鉄の賃金が一番悪くなっております。それはいろいろ原因がありますが、おもな原因は昇給制度にあると思います。ほかの三公社五現業あるいは公務員、これは一〇〇%昇給であります。しかし、国鉄は、悪いときは六五%、七五%という経過をたどって最近九五%になったわけです。戦後二、三回公務員との差を是正したことがありますが、今日また悪くなったということは、おもに昇給資金の不足からきております。そこで、九五%であとの五%は昇給ができない。九五%も欠格条項を除く九五%ですから、組合と当局と協定している欠格者は当然しないわけです。それを含めますと、まだ数字は高くなるわけです。したがって、この欠格を除く九五%の五%を落とす場合に、勤務評定の制度はありません。基準もありません。何らの指導もないわけです。したがって、現場長がふだんの勤務成績ということで判定をすると言っておりますが、科学的な判定は一つも行なわれておりません。端的に言うと、勘でやっていると言っても過言ではないと思うわけです。したがいまして、どうしてもそういう五%にひっかからないように一生懸命やるか、あるいは上司のきげんをとるというような問題もまだ残っております。したがいまして、このことが企業意識と結びつく関係もありまして、先ほど私が劈頭申し上げましたように、病気が起こって休みたいという場合でも、人が足りないから何とか乗ってくれないかと言われれば、無理をして乗務をする。あるいは非常に弱気の方は病気だということすら言えないわけです。したがって、先ほど事例を申し上げましたかぜ薬を飲んで乗務したために眠けを催して追突事故が起きたのは、この乗務員も病気だということが言えないままに乗務したわけです。それを刑事事件に問われている。こういう事態が発生しますので、これが事故原因になると考えるわけです。それから、この五%の人を落とすために現場長自体も非常に困っているわけです。そこで、非常に良心的な現場長は、落とす理由がないので、しかたがないから順番別でやろうじゃないかということで、この五%の人員を何年に一回落とします、こういう方式でやっている現場長もあるくらであります。したがいまして、現場長自体もこの五%の勤務成績の評定については非常に困っている。こういう実態がありますので、やはり昇給は一〇〇%やるべきだ、そして明朗な職場のもとに事故をなくする、こういうことが正しいと私は思います。
  79. 細田吉藏

    細田委員長 この際参考人各位に対しまして小委員会を代表して一言ごあさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見を承り、かつ各小委員の質疑に対しまして懇切丁寧にお答えをいただきましてまことにありがとうございました。本問題の今後の調査の上に貴重な参考となると存じまして、厚く御礼申し上げます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十分散会