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1963-05-29 第43回国会 衆議院 商工委員会農林水産委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年五月二十九日(水曜日)    午前十時十九分開議  出席委員   商工委員会    委員長 逢澤  寛君    理事 小川 平二君 理事 岡本  茂君    理事 白浜 仁吉君 理事 中村 幸八君    理事 南  好雄君 理事 板川 正吾君    理事 松平 忠久君       浦野 幸男君    遠藤 三郎君       大高  康君    神田  博君       仮谷 忠男君    笹本 一雄君       正示啓次郎君    田中 榮一君     早稻田柳右エ門君    岡田 利春君       久保田 豊君    多賀谷真稔君       中村 重光君    西村 力弥君   農林水産委員会    委員長 長谷川四郎君    理事 田口長治郎君 理事 丹羽 兵助君    理事 足鹿  覺君 理事 片島  港君    理事 東海林 稔君       仮谷 忠男君    川村善八郎君       倉成  正君    小枝 一雄君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       野口 忠夫君    安井 吉典君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         農林事務官         (農林経済局長)松岡  亮君         通商産業事務官         (軽工業局長) 倉八  正君  委員外出席者         通商産業事務官         (軽工業局化学         肥料部長)   石田  朗君         専  門  員 渡辺 一俊君     ————————————— 本日の会議に付した案件  輸出硫安売掛金経理臨時措置法案内閣提出第  一五四号)      ————◇—————   〔逢澤商工委員長委員長席に着   く〕
  2. 逢澤寛

    逢澤委員長 これより商工委員会農林水産委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職をつとめます。  内閣提出輸出硫安売掛金経理臨時措置法案を議題といたします。
  3. 逢澤寛

    逢澤委員長 本案についての説明は、お手元に配付してありまする資料によって御了解していただくことといたし、質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。足鹿覺
  4. 足鹿覺

    足鹿委員 輸出硫安売掛金経理臨時措置法案につきまして、若干の質疑通産大臣中心にいたしたいと存じます。  いわゆる繰り延べ償却の特例についての本法は、従来かつて例を見ない立法でありまして、法案そのもの一つ手続を規定したにすぎないのでありまして、問題はそれを取り巻く化学肥料工業肥料政策との関係、あるいは売り掛け赤字の発生した経緯なり、あるいはその背景をなす状況等が問題となるのでありまして、したがいまして、私は、法案そのもの内容は、ことざらにただすことは重要な意義を持っておらないと思う。問題はその根本にさかのぼってお尋ねをいたしたいと考えるのであります。私の質疑をいたします立場と申しますか、目的と申しますか、それは、本案昭和三十七年十二月二十五日の閣議決定による硫安工業対策の一環でありまして、輸出赤字解消対策は、肥料工業合理化近代化、そして体質改善対策と切り離しては考えられない一体的なものであると考えております。特に最近の肥料工業傾向は、硫安価格形成実態把握が困難となってきております。すなわち、硫安生産の六〇%が回収並びに副産硫安となっておりまするし、その製造形態も、総合化学産業の一生産品としての肥料、こういう形になっておりまして、そのコストを把握することはきわめて困難な実情にあるといわねばなりません。このような情勢でありますと同時に、またその販路の面を見ましても、内需輸出ともにその構成比が大きく変わってまいりまして、硫安消費は、昭和四十二年においては二〇%程度に低下することを、先般開かれました肥料審議会においても、当局は明らかに資料をもって示しておる。したがって、尿素高度化成の比重が大きくなっておることは、当局もよく御存じのことでございます。したがいまして、今次赤字対策はもとより、体質改善計画は、肥料工業政策であっても、肥料政策とはいえないのではないか。また閣議決定そのものも、肥料工業対策として打ち出しておるのでありまして、肥料対策という面がきわめて不明確である、こう申し上げても言い過ぎでないと考えておるのであります。私は、本法案審議を通じまして、肥料政策との関係を明らかにし、その問題の所在をお互いに検討いたしまして、今後の政府化学肥料工業肥料政策との関係の基本をただすことが、質疑目的でございます。したがいまして、必要によって農林大臣出席を求め、この関係をも明らかにしておきたいと存じておりますので、委員長においてよろしくお取り計らいをお願い申し上げたいと存ずるのであります。  先ほども申し上げましたように、最近の化学肥料工業進歩は、目ざましいものがあります。その結果、独自の肥料工業というものはだんだん少なくなり、また肥料そのもの生産方法も、先ほど述べましたように、著しく変化をしてきておるのであります。がしかし、肥料という商品現実生産をされ、それが商品として、内需であれ、輸出であれ、大きな問題であることには変わりはございません。したがいまして、私どもとしましては、この際農林大臣お尋ねをいたしておきたいのは、政府硫安工業対策対策融資との関係、まず政策融資についての基本的な考え方、その根拠等について、明らかにしていただきたいと思うのであります。  政府は、昨年の十二月二十五日、硫安工業合理化近代化体質改善並びに輸出赤字解消対策を決定し、本年度予算に、財政投融資計画によってばく大な政策融資を計上いたしました。つまり売り掛け金については百三億円、体質改善については百六億円、合計二百九億円というばく大な政策融資を決定いたしておりますが、一応売り掛け金については、本法案を提出することによって手続上の問題を解決したかのごとくでありますが、硫安工業体質改善に対する百六億の政策融資につきましては、この機会に明らかにせざるを得ないのでありまして、そういう点からまず伺っておきたいことは、輸出硫安売り掛け金各社別一覧表は、どうなっておりますか。どのような根拠によって、この百三億の政策融資を算出されたのでありますか。その考え方なり、基礎なり、また各社別一覧表をお示しになって、そしてそのよってきたるゆえんを、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。
  5. 福田一

    福田国務大臣 ただいま足鹿委員からの御質問でございますが、この百三億円を融資いたしました基礎についての数字については、事務の方からあとで御説明をさせていただきたいと思います。  一応どういうような考え方で二百九億円の金をつけていったかということについて、私からお答えをいたしたいと思います。  すでに足鹿委員は十分そういうことはおわかりではございますが、御承知のように、硫安二法をつくりましたときには、肥料、特に硫安が非常に高くて、しかも十分に供給される確信を持てなかったので、そこで十分な硫安を、しかもできるだけ安く農家に供給して、食糧増産の実をあげようという目的で、あの二法ができたわけであります。そういう場合に、内需の場合においては、価格決定においてバルクライン方式というのをとりましたが、海外輸出した場合に、当時の六十三ドル前後の硫安でありますと、当然赤字が出ます。しかし、その当時考えておったのは、五十二ドルくらいにまでトン当たり合理化をすれば黒字が出てくるというつもりで、あの二法を立案をいたしまして、そのときになって、五十二ドルで生産して、今度は海外へ五十六、七ドルで売れば、四ドルなり何なりの黒字が出るだろうというようなことから、いわゆる輸出会社というものをつくって、そこにマル公でといいますか、硫安を渡しまして、そしてこれを輸出させて、赤字はそこへプールしておく。将来黒字が出たときにこれで埋め合わせをするというような考え方でやってまいったのであります。ところが、事実は、こちらが合理化をしていく速度よりも、海外硫安に対するダンピングの値段のほうがずっと早く先走りをしていったという形から、黒字が出ることは一度もなくて、赤字累積ばかりであったわけであります。そしてそのいわゆる輸出会社にたまった赤字は、約二百十五億円にもなってしまったのでございますが、その二百十五億円というのは、表面の赤字であって、実質的にはどれくらい赤字になるかということを調べてみますと、約百二十五億円ということでございました。そこで、その間におきましても、今度の措置をとる以前において、約五十二億円前後のものにつきましては、合理化資金をつけたり、あるいはまた税制上の措置をすることによって、一応の赤字対策ができておる。したがって、残りの七十三億について何らかの措置をしなければならないということで、今度の百三億のいわゆる開銀融資というものを決定したわけであります。赤字が出てきた理由はそのとおりでありますが、いまあなたがお話しになったように、肥料の中に占める硫安のウエートといいますか、この範囲といいますか、それがだんだん狭まってきておるという状況でございまして、尿素とかあるいはその他の肥料がだんだん度合いを強めてまいっております。ところが、法律で規定をいたしておりますのは硫安対策だけでありますから、その意味では、いわゆる肥料対策というものが、昔は硫安だけすることによってほとんどやっていけたのでありますが、いまはもう硫安だけでは肥料対策にならぬじゃないかという議論も、もちろん成り立ってくるわけなのでございます。しかし、いずれにしても、そういう法律をつくって、赤字が出ておるものをそのままほうっておくというわけにはまいりません、何とか措置しなければならない。そして硫安会社がみんな困っておるのに、また措置のしようがないという段階にきておりますので、これに対する対策をまずきめよう、こういうことでございまして、昨年末踏み切ったわけであります。そのときに実は問題になったのは、ことしまだ肥料二法が存在しておって、いわゆる三十七年度の肥料年度のみならず、三十八年度の肥料年度についても、輸出をすれば赤字が出るじゃないか、それをどうするんだということが問題になったのでありますが、二百十五億の赤字に加うるに年間五十億前後の赤字が出るということになりますと、ことしの一月一日からの分は見ないということになっておりますから、われわれの推定しておるところでは、おそらくまだ七、八十億の赤字が出るのじゃないか。それをまためんどうを見なければならぬということになりますと、ますます資金をよけい使う。だから、この際はすみやかにこの前の赤字を処理する方針をきめ、今後出るであろうところの赤字については、これは各企業責任においてこれを処置するようにしてもらおう、政府としてはもう責任をとらないんだという形でこの問題の処理をしようということで、昨年の暮れに実はああいうような措置を決定したわけでございます。  そういうことでありまして、足鹿さんは専門家でいられるから、私が申し上げるまでもなく、これくらいのことはもう十分御承知のところではありますが、政府といたしましては、当初考えておったのとは違った結果が出てきておりますので、そこで硫安工業に対して七十三億円の実質赤字を埋めるという意味で、百三億円の開銀資金融資をした。そのあとの百六億円というものは、今後やはり硫安をできるだけ安く農家に供給をしなければならないという意味合いにおいて、合理化をまた促進させていく、こういう考え方でこれをつけたわけでございます。  こういうわけでございますので、われわれとしては、確かにあなたのお話しのように、今後どういうふうに肥料対策考えるかということは、これは非常に重要な問題でございますが、しかし、いま現実に二法が存在しておりまして、来年の七月末日まではあの法律は生きておるわけでございますから、そこで私たちとしては、少なくとも来たるべき今度の通常国会までには、各方面の意見も十分聞いた上で、肥料二法がなくなった後にどうしたらいいかという対策考えなければならない、こういうことに相なると思うのでございます。そこで、そのときにおける考え方はどうであるかということになりますと、これは皆さんからいろいろ御意見を聞かなければ、きのうも実はその御質問があったわけでございますが、私がここで言明するわけにはいきませんけれども、しかし、私のいまの考えで申し上げますならば、何といっても安い肥料を十分に農家に供給するという目的だけは、どういう形か知らぬが、考えていかなければならないのではないか。どういうふうにしてやるかというととは、これはまた十分に研究をしなければならぬのじゃないか、私はそういう考えを持っておりますけれども、この点は、まだ政府部内において十分に話したわけでもないし、まだ閣議で意思の統一をしたわけでもございませんが、この点はわれわれとしても十分注意をしていかなければならないのではないかということは、私はいまの時点においても申し上げることができる。ただしかし、それはどういうやり方でやるんだ、肥料二法をそのまま延ばすのか、あるいは肥料二法にかわる何かをつくるのか、どういうやり方をするのだということになりますと、これはひとつ十分研究をさしてもらった上で、皆さん方にまた次の機会に十分御検討を願うようにしていただきたい。いまの段階においてこれをどうするのだということは、まだわれわれとしては態度はきめておりません。こう申し上げざるを得たい、かように考えておるわけでございます。
  6. 倉八正

    ○倉八政府委員 いま足鹿先生から御要求のありました輸出硫安売掛金各社別一覧表を用意してきております。
  7. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは一覧表資料として御配付をいただくことでけっこうでありますが、ただいま大臣は二つの御答弁をなさったと思うのです。赤字が出た原因は、他国硫安ダンピングが行なわれたこと、及び二法によるバルクライン方式、いわゆるバルクライン方式によって肥料企業者赤字累積した、こういうふうにおっしゃっております。また、肥料対策は、本法では解決がつかない、硫安工業合理化対策では解決がつかない、別途に検討するということでありますが、この問題についてはあとで触れますから、私の見た赤字原因というものについて一応申し上げて、大臣の御所信を承っておきたいのであります。  それは一口に言いますならば、過剰投資過剰生産が大きな原因であったということを通産大臣はお考えにならないでしょうか。具体的に申し上げるまでもありません、御存じでありましょうが、念のために述べますならば、二十八年から三十二年にわたる第一次合理化計画の示すところによりますと、当初の生産能力計画では、三百十一万九千トンが計画をされた。実績は四百三十六万二千トンという大きな数字になっております。つまり差し引き百二十万トンもオーバーし、これを国内消費に出すことはダブつきますから、勢い赤字を覚悟で輸出を余儀なくされるという形になり、また一部は滞貨ともなったという事実があるのであります。また、このオーバーした能力を基礎づけたものは設備関係であり、その資金について見ましても、合理化資金計画が二百三億二百万円であったものが、投下された実績は、六百三億二千八百万円の過剰設備投資となっております。これが金利負担の増大を来たし、赤字累積の第二の原因となったことは明らかでございます。それをややもすれば他国ダンピングや、また肥料二法のせいにすべてをなすりつけていくという考え方では、われわれは、企業家ならば別でありますが、政府自体としては公正を欠いた取り扱いではないか、かように断ぜざるを得ない。合理化目標は、昭和二十八年トン当たり六十五ドルを五十ドルに引き下げるということが、当初の第一次計画目標であった。これが合理化達成は五十五ドルちょっとでありまして、五ドル余の未達成となったのであります。これを四十キロ当たり十貫かますに換算しますならば、二十八年度が九百三十六円であったものが、実績は七百九十二円七十銭となったにすぎないのであります。明らかに第一次合理化計画目的達成しない。その半ばを達成したまま、第二次合理化計画、すなわち三十二年から三十八年の第二次合理化計画を樹立していかざるを得ない事態に追い込まれたのであります。政府みずからが計画の誤りをお認めになって、第二次計画というものをお立てになった。その第二次計画によりますと、アンモニアの生産能力生産実績については、生産能力は、最終年度において五百四十四万トンの計画に対して六百九十七万六千トンの実績でありまして、明らかに過剰設備による過剰生産傾向をまた再び第二次合理化計画においても示しているのであります。これに対する設備資金は、三十二年から三十八年までの間に四百八十億円に対し、驚くなかれ七百八十五億九千八百万円の巨額に達し、差し引き三百五億円の過剰投資になっているのであります。このような事態が明らかであるにもかかわらず、何かすぐに他国ダンピングのせいにする、肥料二法のバルクライン方式のせいにする、そして政府にしりをぬぐえという業界の圧力というか、言い分に耳を傾け、そして企業自体のこのような矛盾に対して、自主的な反省を与え、そして企業家自身が立ち直っていくだけの熱意と努力を促していくことが、一方においてなされなければならないにもかかわらず、二度も、第一次においても、第二次計画においても、同じような失敗——と言うと誤弊がありますが、欠陥を暴露しておるということは、これは通産省としては重大な責任があると私は思うのであります。一体、合理化目標の当初のトン当たり五十四ドルを四十七ドルに改定をされ、さらにこれを三十六年六月、四十三ドル四十七セントにしたことは、通産大臣も、当時の責任者ではありませんが、御承知であろうと思います。ついにこれはどの程度まで改定目標に到達するのか、いまだに見当もつかないというわけでありますが、この間、政府融資は八十億円に達しております。一体今度の赤字対策といい、合理化対策政策融資は、総合された合理化対策といわねばなりますまい。その合理化によるところのトン当たり目標はどこへつけて、このような先例を見ないばく大な政策融資をお考えになったのか。その目標はどこに置いておられますか。それを明らかにしていただきたい。
  8. 福田一

    福田国務大臣 お説のとおり、硫安工業につきましては、相当の設備の増設が行なわれてきておりますが、しかし、いまの数字は、硫安工業にもちろん関係はありますが、尿素高度化成その他も含めたもの全部についての数字であろうと、私は推察をいたしておるのであります。が、いずれにしても、そういうものを投入してきた今日の日本実態をよく見てみますと、最近の十年間における科学の進歩というものは、もう非常なスピードで諸外国においても進んできておりまして、いろいろの意味における新しい技術その他が開発されておったわけであります。そこで、そういう技術を取り入れなければいけないというので、各社がいろいろそれぞれの立場においてその技術の取り入れをはかった。その場合に、資金が予定よりはふえたというのが実相であると、私は考えておるのであります。そういうときにあたって、そういう技術は入れないでもよろしい、おまえのところの会社はもうそういう技術開発をせぬでもいいから、とにかく最初きめたとおりの仕事をせい、こういうところまでは政府としても干渉するわけにはいかないわけでございまして、したがって、資金はそれだけ投入したからといって、国のいわゆる合理化資金というものをそれだけ全部つけてやったかというと、そういうわけではない。自分のいわゆる系列融資といいますか、銀行その他といろいろ話をつけて資金繰りをしながら、そういうことをしたわけであります。そういうことをした結果において過剰生産になったのではないか、過剰生産があったために、今度はそれを安売りせざるを得なくなったのではないか、それが一つの大きな原因になる、あるいは金利負担がふえたということが、非常にまた会社経理を圧迫しているのではないかという話でありますが、それは、もちろんそういうことはあり得た、あったと思います。あなたのおっしゃるとおりだと思います。しかし、そういうことがあったとしても、うちはこういう技術を入れたい、こういうときに、政府として、そういう技術は入れぬでよろしい、もうほっとけ、こういうことを言えば、今度は入れないことによって生じた損害を政府として責任を持たなければならないということが、私は出てくると思うのでありまして、やはりその技術内容その他が非常にスピードが早く出ているときこそ、それを一々調べて、そしてこれはもう絶対にだいじょうぶだとか、これはもうだめだとか、そういうところまでは政府としても干渉はできないだろうと私は思う。だから、やはり会社がそういう技術を入れたいときに、それは絶対入れてはいけないと言うことはできない。その結果、やはりそれぞれの会社がおのおのの技術を入れてきた、こういうことになりますと、その結果として一種の過剰土産が出てきたということも、事実としてはおっしゃるとおりでございまして、否定はできないと思いますが、それを全部またわれわれの責任としていくのも、少しこの場合はむずかしい。一応この技術開発というものがわりあいに平面的に動いているときは別ですが、この十年の石油化学中心にした技術開発というものは、すばらしい勢いで動いていることは、足鹿さんはじめ皆さんの御承知のところでございまして、そういうときにおいて、各会社が新しい技術をできるだけ早く導入して、そして自分体質改善をはかるという意欲をあまり抑えてしまうということになったならば、日本のいわゆる産業全体のレベル・アップというものは、できなかったと思うのであります。今日、日本産業が一応ここまで出てきました。そうして輸出産業も、だんだん伸びてきた一つ原因は、やはりいま肥料工業においては若干のそういうマイナス面があったかもしれませんが、ほかの面において見ますと、ずいぶん技術を導入した結果、外国商品にも太刀打ちができ、またそれを圧倒して輸出ができたような場合も多々あるのでありまして、この点は、私は、特殊事情としてお認めを願わないわけにはいかないではないか、かように考えておるわけであります。
  9. 足鹿覺

    足鹿委員 大臣、私の申し上げているのは、一応第一次、第二次合理化計画というものが策定をされ、それに基づいて政府が育成、援助しておる。したがって、コストダウン対策にいたしましても、当然政策介入があってしかるべきなんだ。それができないのでありますか。それはちょっとおかしい議論だと思うのです。あとで申し上げますが、そして業界は、口を開けば、硫安工業は不振でやっていけない、近くは日東化学例等を引用されて、世間一般には何か非常に肥料工業はもうからない工業である、斜陽産業だと宣伝をしておりますが、硫安各メーカーの経営状態について、どのように大臣は見ておいでになるのでありますか。私どもは、乏しい資料ではありますが、専門家の、しかも権威ある専門誌にあげられた配当率等を見ましても、専業八社の配当率は六・三五%でありまして、三十六年下期の剰余金は、七十二億一千四百万円に達しております。兼業八社の配当率は一一・三五%であり、剰余金は二百五十二億一千五百万円に達しておるのであります。これは日銀の統計が示しておるのでありまして、これを御否定になることはおそらくできますまい。したがって、赤字赤字と言いますけれども、その原因は、肥料二法でもなければ、政府合理化対策欠陥企業努力不足等から、みずからの責任に帰するところ大であるとお考えにならないのかどうかということを聞いておるのです。あなた方が政策介入ができないような第一次計画、第二次計画というものを策定し、これを業者の協力によっていろいろな援助、育成のための施策を講じられることは、ナンセンスではありませんか。ごく最近化学経済誌に載せられた山下氏の所論に見ましても、化学経済の五月号の四二三ページは、次のように述べておる。「今日の肥料工業の不況と石炭鉱業のそれとは全く異質な問題である。「肥料は不況産業」という認識は事実に反しておる。」「肥料専業企業群の中でも、肥料の売り上げ高が総売り上げの九二%を占める東北肥料が、三十六年度の決算では資本回転率が兼業の一流クラスなみ」いいですか、「兼業の一流クラスなみ、資本利益率は兼業の平均より高く、専業平均の二倍という事実があり、肥料のウェイトが高い会社は悪いという定説を裏切っている。」と、堂々と論じておるのであります。こういう事実に基づいてわれわれは申し上げておるのでありまして、架空の根拠によるものではございません。したがって、企業者自体のみずからの努力と、その努力の方向というものをわれわれはよく検討してみなければならないと思う。肥料工業は、特に硫安生産をだんだん減じ、先ほど述べましたように、尿素、化成肥料にこれを求めておる。そのほうが利潤率が高いのである。引き合うのである。でありますから、その一番引き合わない硫安場面のみを対象にして赤字だ、赤字だと言っておることは、専業メーカーにおいてすらも、ただいま述べましたように、赤字ではないとちゃんと一流の専門家が所論を発表しておられるところによっても明らかであり、もしかりにそれが百歩譲って赤字であったとしても、企業者自体としては、他の総合的な生産部門によって十分カバーされておることは、この統計の示すところではありませんか。先ほどの大臣の御答弁は、何もかにも政府政策介入はむずかしいようなお話でありますが、私どもは何もかにもとは言っておりません。少なくとも硫安合理化計画が、第一次、第二次ともに失敗をしておる。その責任をこの際明らかにし、いままでこれに対してはどういう政策介入をし、どういう実態をとらまえており、今後の対策に備えようとしておるのか、それを聞いておるのであります。その点間違いのないように、しかと御答弁を願っておきたいと思うわけであります。
  10. 福田一

    福田国務大臣 いまの御説明、御質問でございますが、私は、肥料工業のうちで、硫安部門、尿素の部門、高度化成の部門、いろいろあると思うのであります。硫安の部門においては、いままでわれわれがいろいろ研究をいたしました、調査をした結果でも、これはもうかっておらない、大体もうけはないということは事実であります。あなたのいまお話になりました東北肥料の場合におきましても、高度化成その他への転換をいたしまして、その結果において東北肥料がもうかった、いわゆる利益があがっておるということも事実であります。しかし、硫安部門だけをとった場合には、これはもうかっておらないというのが、私は事実ではなかろうかと思います。だから、肥料工業というものはもうからないものじゃない、肥料工業をやったからってもうかるんだという雑誌の原稿を書いた人の意見ももっとまとなところでありますが、だからといって、硫安という部門をとり出した場合に、それがもうかるものだと断定することも、いささか私は無理があろうかと思うのであります。この点は、この前審議会がありましたときに、東北肥料関係者である人から、雑誌の書いておるところは、それはこういうわけで相違をいたしておりますというお話があったんで、私も大体それを信用いたしておるわけでございます。でありますから、肥料というものと硫安というもの、硫安肥料の中に占めるウェートというものがだんだん変わってきておるのだということから、いろいろのこういうような問題も出てくるのではないかと思います。  なお、先ほど私が政策的にそういうことを指導はできないような印象を皆さんに与えたとすれば、それは間違いでありまして、当初予定しておったものより新しいものが——一年一年に新しい技術が出たり何かしますと、三年なり五年なりの計画をつくっておきましても、一年たたないうちにまた技術開発されるということになりましたときに、その一年前にきめた計画通りやりなさい、こういうことを言うわけにはいかない。やはりまた新しいものが出れば、それをまた認めてやらないわけにはいかないではないでしょうか。こういうことを実は申し上げたのでありまして、その技術導入ということを、全然もう当初予定したもの以外は一切認めないんだというわけにはいかないのであります。やはりそれは、当初予定したものももちろん入れるけれども、そのあとでまた新しく開発されてきたものについても、これを認めざるを得ないというような事情もございましたということを私が申し上げたことを、ひとつ御理解を賜わりたいと思うのであります。
  11. 足鹿覺

    足鹿委員 答弁を直されましたから、あえてこれ以上追及することは、先を急ぎますから、あとの所論の際にこれをただしていきたいと思いますが、十分にそういう点についてはお考えになるがよろしい。政策介入を伴わない保護育成などということは、これはいわばつかみ金をやるようなものであります。そういうことが私もどは妥当ではない、こういうことを申し上げておるのでありまして、しっかりとした合理化計画、それに基づく第一次、第二次計画というものが策定をされた実績は、明らかに過剰生産になっておるのであります。これは、先回の肥料審議会の際にも、需給計画改定をあなた方は諮問をされまして、私どもも率直にやむを得まいというので了承の旨を答申いたしました。別々からんだり、事実に反することを指摘して、あなた方を追及しようとしておるのではない。当然政府責任において処理すべきことをしなかった、このそしりは免れないと思うのです。輸出赤字に対する百三億円の政策融資を市中銀行金利との金利差で見ますと、十三年間に七十三億円になります。これは冒頭に私が大臣お尋ねをいたしました数字と一致しておりまして、このほかに、租税特別措置法による援助が加えられておる。これはよほど前のときでありますが、この赤字赤字という声がやかましくなって、そうして租税特別措置法による補てん措置が講ぜられました。それによりますと、企業経営上のメリットは五十一億八千五百万円に達する、租税特別措置によって、優遇措置が講ぜられております。これでは、金額百二十五億円をまるがかえで業者の赤字と称するものを補てんしておるのでありまして、これくらいの大きな政策をやりながら、二回も合理化計画を策定をしながら、それが目標の半分にも達しない責任というものは軽くないと、私は申し上げておるのであります。そういう点を真剣にあなた方としてはお考えにならなければならない。輸出売り掛け金の損金算入に際して講じられました租税特別措置によるものは、貸し倒れ準備金の取りくずしに関する特例、価格変動準備金の取りくずしに関する特別措置、新規重要物産の免税、寄付金の損金算入限度に関する特例、輸出売り掛け金の損金算入の算入期間を五年から十年に延長したものによるもの、以上のものが二十三億一千三百万円、次に従来どおりの輸出売り掛け金に対する輸出所得の控除制度が適用されておりますものが九億二千三百万円、尿素製造設備の特別償却による金利メリット二億八千九百万円、設備資金低利融資によるメリット十六億六千万円、合計五十一億八千五百万円というものをあなた方は過去においても補てんをしておいでになる。それと合わせますならば、全く全額の負担ではありませんか。そうして一方においては、すべての責任肥料二法に負わせ、消費者にとっては最も大事な算定方式、これを破棄しようとし、肥料二法を撤廃しようとして策動した。ついにならなくて、対策としては、この対策に肩がわりをしてきたような実情をわれわれは明らかにしておく必要があると思うのでありまして、ただ単に今回の百三億の政策融資のみならず、租税特別措置法に基づく業界への援助は五十一億八千五百万円、合わせて百二十五億円というものは全部政府でしりをぬぐっておいでになる。いかに輸出産業とはいえ、このような手厚い保護育成を受けながら、いまだに合理化計画目標も示されないということは、私どもは納得がまいりませんが、ともかくもこの事態というものは、明らかにしておきたい。通産大臣は、いま私が申し上げたことに対していかような見解を持っておいでになりますか。この積み上げられた手厚い保護の上に、さらに今度百六億の政策融資を行なって、今後の肥料工業肥料政策との関係をどのように対処されようとしておりますか。あと農林大臣にも伺いますが、政府の構造改善事業等を農村の場合見ましたときに、補助金の二百万、三百万の小さな事業にまで介入をして、融資一つをきめるにいたしましても、むずかしい計画書を山ほど出させ、締めに締め上げておるのであります。ところが、このような大企業家に対しては、おおばんぶるまいが行なわれるといっても言い過ぎでないと私は思う。おやりになるならなったで、効果をあげなかった場合に対しては、断固たる措置をお講じになることが、これが公平であろうかと思います。一方農村や中小企業者に対しては、どのような措置をあなた方おとりになっておるか。これは通産大臣の御所管の中小企業の場合でも、農林大臣の所管の農林政策のいろいろな補助、金融の面におきましても、格段の差がありまして、比べものになりません。損をしたならば、理屈がつけば政府がこれを補てんする、今回の措置は、こういう一つ先例を開くことになろうと思いますが、今後このような措置を他の産業にもおとりになる御所存でありますかどうか、この際明らかにしておいていただきたい。
  12. 福田一

    福田国務大臣 ただいまの御質問にお答えをいたしたいと思います。  お説のように、百二十五億の赤字に対する一応の手当をいたしておるのでありますが、前の五十何億のうちには、租税の分がございまして、これなどは、利益が出てきました場合にめんどうを見るというたてまえでございまして、利益が出ておらないときには、実質的には何らそれは効果を発揮しない面もございます。しかし、いま仰せになったように、一応それだけの赤字を見ておるじゃないかということは事実でありますが、今後のことを考えてみますと、ことしの一月から来年の九月までの硫安自体——高度化成とかほかの肥料は別といたしまして、硫安について数字をとってみますと、やはり硫安をつくっておる会社は、実質的に二十五億円ないし三十億円の赤、字が出てくるだろうと思うのでありますが、肥料二法が存在いたしておりますから、今後の審議会におきましても、いわゆるバルクライン方式をもって肥料の価格をきめるということにいたしますと、その三十億円の赤字は埋めるわけにはいきません。また、それは埋めませんということをはっきり言い渡してあるわけであります。したがって、肥料工業に対して非常に手厚いことをしておる、私は、肥料工業に対してかなり国が政策的にめんどうを見ておるということは認めます。しかし、肥料工業というものは、日本においては、化学工業をいままで育ててきたいわゆる中核体のような形になっております。いまや石油化学というものが出てきたからではございますけれども石油化学が出ない前における化学工業というものは、肥料工業を通じて育成されてきたといっても差しつかえないと思うのでございまして、そういう意味で国がある程度のめんどうを見ておったということは、仰せのとおりでございますけれども、しかし、もうかっておるものにまた上積みしてもうけさせたというのではなくて、非常に損をしておるのをどうやら埋め合わせてやったというところが、いまの実相ではないかと考えておるわけでございまして、肥料工業ということになると、先ほど仰せになったような問題が出ますが、硫安工業というものに限ってこれを考えました場合においては、私は、いま言ったような結果になってくるものと考えておるわけでございます。
  13. 逢澤寛

    逢澤委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  14. 逢澤寛

    逢澤委員長 速記を始めて。
  15. 足鹿覺

    足鹿委員 では、事務的な問題について通産省の軽工業局長と農林省の事務当局に伺っておきますが、日本硫安輸出会社の買い入れ価格は、本融資制度に踏み切る決意をいたしましてから、先ほども大臣の御言明のとおり、本年一月一日よりFOB仕切りとなり、輸出赤字企業の負担となったわけであります。にもかかわらず、実際にはメーカーの間で輸出赤字のプールが行われておるのではないかということをわれわれは仄聞いたしておりますが、そういう事実についてお確かめになっておりますか。
  16. 倉八正

    ○倉八政府委員 輸出ブールにつきましては、硫安工業合理化及び輸出調整臨時措置法によってやっております。これは御存じのように、FOB仕切りにならない前もそういうことをやっておりまして、今度のFOB仕切りにしましてからも、輸出の秩序安定、内需の安定維持というのを続けていくということになっております。
  17. 足鹿覺

    足鹿委員 あなた方は、妥当としてお認めになるのですか。
  18. 倉八正

    ○倉八政府委員 輸出の場合に、硫安輸出会社という一手買い取り会社がございまして、その場合にプールをするということは、いまの輸出情勢、あるいは国内の供給の状態から見て、きわめて必要ではなかろうかと思います。と申しますのは、輸出がはるかに安いということも御存じのとおりでございますが、それをそういうプールをしなければ、国内にはみんな出したがるのでありまして——国内のほうが十何ドル高いのでありまして、全部出したがる。そうしますと、国内も非常に価格的に混乱すると思います。と同時に、また輸出先におきましても、日本輸出している先というものは、例外なしに一手買い付けをやっておるような国でありまして、そういう面から見ましても、プールをやりまして、各メーカーがそのプールを通じまして国内との調整をはかるということは、輸出政策からもきわめて当然だろうということを考えまして、プールを続けさしております。
  19. 足鹿覺

    足鹿委員 経済局長に伺いますが、内需対策と今後の肥料価格のあり方、それについては、どのように御検討になっておりますか。
  20. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 肥料二法が来年以降失効になりました際の対策につきましては、今後検討をいたしまして、通産省と十分御相談の上考え方をきめてまいりたいと考えておるものでありますが、当面内需につきまして私どもが今回の硫安工業対策につきまして考えてまいりましたことは、できるだけコストを安くしてもらう、そういう意味から、合理化資金をさらに出してもらうことは、われわれとしては非常にけっこうなことだと思います。それと需要の面もございまするが、回収硫安、副産硫安というものをできるだけ多くしてもらいたい。これは普通の合成硫安に比べまして、コストが安くできる性質のものでございます。輸出対策の面からいいましても、回収硫安、副産硫安の比重が高まることは、それだけ内需のほうにも、輸出のほうにも、いい影響があるであろう。それで今回の硫安工業対策合理化目標には、この回収硫安、副産硫安のウエートが相当高まって目標として掲げられております。そういうことは、内需の価格の上に非常にいい影響があるものと考えております。  それから、肥料二法は来年度まで有効でございますが、当面の価格の決定の方式につきましては、従来の方式を踏襲いたしまして、バルクライン方式でもって従来どおりのルートできめてまいるのが妥当であろう、こういうように考えておる次第でございます。
  21. 足鹿覺

    足鹿委員 軽工業局長お尋ねいたしますが、いまの経済局長の御答弁を聞いておりますと、回収硫安あるいは副産硫安等を今後たくさん製造して内需にも回していくということは、それだけ価格上においても有利であるという考え方で折衝しておるということであります。そのとおりだろうと思うのですが、問題は、先ほど私があなたにお尋ねをいたしました、FOB仕切りになった赤字を、各企業の負担としないで、赤字プールを行なうということは、これは肥料二法下にあって、すでに肥料二法の範囲を逸脱しておりますし、また今後も、ただいま松岡さんが御答弁になったような趣旨があったといたしましても、事実上においてプールが行なわれて、消費者価格にこれが織り込まれていく、こういう懸念も発生しないではございません。いま局長は御公認になりましたが、これは重大なことであります。輸出の場合だけプールを認めていくというのではない。このことは、内需の面においてもプールが行なわれる可能性が強い。一種の共販会社的な性格を現に持っておる。現在の肥料二法下にあっては、それは認められておりませんし、また先ほども言いましたように、今日までばく大な赤字は、そのままそっくり国が肩がわりをして援助しておる。肥料二法は現存しておるのですよ。そういう点について、このFOB仕切りによる赤字の負担というものをプールをいたして——それは企業者がそういう方法をとったといたしましても、そういうことを続けておれば、いつまでたっても合理化は進まない。コストダウンは事実上において目標に到達しない、こういう事態が出てまいります。これは大臣にお聞きしなければならぬことでありますが、赤字のプールを行なっても、これがずっと——肥料二法が今後どうなるかは別として、このままの姿でとにかく現在の近代化が進んでいきましても、企業群の中にあっては、日本特殊事情からいいまして、イギリスやイタリアやあるいはドイツのように、大工場生産ではない、各会社が工場を各地に分散をしております。したがって、実際上におきましては、今後思い切った対策が、たとえば廃棄する工場、そうして地域別に再編成をしていく、そしてでき得る限り近代的なものを入れてコストの安いものをつくっていくようにしていかなければ、上において肥料工業体質改善というものは、言うべくして困難であると私は見ておる。そういう意味からも、何でもプールをしていく。暗に共販制度をお認めになるのでありますか。
  22. 倉八正

    ○倉八政府委員 いまの制度は、御承知のように、国内にはマル公という制度がございまして、輸出は今度からFOB仕切り、こういうときに、実態を見てみますと、国内がいま大体五十一ドル八十二、三セントでございます。七百四十六円ということでございます。そうしますと、輸出が三十六ドル、こういうふうになっておりますと、それをプールしなければ、全部国内に流したがると思います。これは経済理論としては当然だろうと思います。十六ドルも安く輸出するよりも、国内に出したがるということになりますと、国内のいわゆる価格というのが、非常に変動するのではないかと思います。それはまあ一方から見れば、農民の方々から見れば、安く買えればいいじゃないかということにはなると思いますが、マル公制度を維持しまして、それをささえて適正な肥料の供給をやるという大きい目標が、ある場合にはそれがずっと下がる、ある場合にはまた変動するということでは、肥料の性質上非常にゆゆしい問題だろう、こういうふうに考えるのが第一点でございます。そして第二点の足鹿委員の御質問の、プールをお前のほうでするから、いわゆる悪い生産費の、高いコストの工場が生き延びるじゃないかということでございますが、それはプールのやり方によって十分調整できることでございます。たとえば、いま三十六ドルの輸出をした。ところが、プールしているのは国内マル公との差でございますが、ある工場は四十七ドルでできた、ある工場は五十ドルの生産費がかかったということでございますが、その国内と輸出との差をプールして、そこで資金の分け合いをするわけでございますから、悪い工場から——悪い工場というのは、生産費の高いという意味ですが、その工場から出した肥料というのは、その工場における取り分が少ないのでございまして、結局得はしないということになりまして、このプール制というのは、そういう意味におきましても、輸出の振興、国内の需給の安定、あるいはもう一つは低コストへの合理化を促進させるという刺激的な要素、ということを十分持っておるとわれわれは考えております。
  23. 足鹿覺

    足鹿委員 経済局長にお尋ねをいたしますが、先般の審議会に、三十七肥料年度におけるア系窒素肥料の需給計画の変更の承認を求められました。先ほど述べましたように、輸出が伸びたことに基づく需給計画の変更はやむを得ないと、われわれは率直にこれを承認いたしました。そこで問題は、そのときにも議論になったわけでありますが、諮問事項ではありませんし、結論を得なくて、いずれ国会においてこの法案がかかった際に明らかにしようということで散会したわけでありますが、需給計画改定によって、コストの引き下げは当然だと思うのです、理論的にいって。操短率が、改定前の需給計画によりますと、硫安の過剰出産になるから、八%の操短を見込むので、したがって、コストは下がらないから、したがって、内需向けの価格にも、年度半ばであるし、価格の引き下げは困難である、こういう御答弁でありました。しからば、いま目睫に控えておる三十八肥料年度に対して、この需給計画の変更に基づく操短率は、当初の操短率の半分以上を上回っておるのでありますから、当然その操短率によるコストは、三十八肥料年度にこれを織り込み、価格算定をしなければならぬと思います。また、いま議題になっております今回の赤字政策融資、今後の合理化融資等と相まって、さらに新しい要素によって、三十八肥料年度における内需価格というものは、当然大幅に下がらなければならぬと思う。赤字対策はこれで一応縁切り、企業家にとってはこれほどありがたいことはないでありましょう。合理化資金融資は新しく始まったばかりとはいえ、従来においても、資金は先ほども述べたように次々つぎ込まれておる。今回の百六億の合理化政策融資が功を奏するのは、若干の時間的ズレがあるといたしましても、三十七年度の需給計画の変更に伴う操短率の繰り上げ、これによるメリット、及び政策融資に基づく当然の帰結として、三十八肥料年度における内需価格の算定作業は、どのような段階に達しておりますか。また、私がいつも指摘しておりますが、硫安のみの価格問題を取り上げましても、もはや二法のワク外になっておる尿素あるいは高度化成等は、これによって規制することはできません。一応の基礎的な硫安の価格がきまりますから、これから算出したもので一応のめどはつくとはいえ、それ自体を規制することは困難だと思います。このように、需要の面といい、生産の面といい、著しくその構成が変わっておる新しい段階を迎えた内需肥料価格対策を、いかように今後対処される御所存であるか、これは当然事務当局としては慎重に具体的に御検討になっておる段階だと思いますが、発表される限度内一ぱいにおいて、この際明らかにしていただきたいと思います。
  24. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 来肥料年度硫安価格の決定に必要な硫安生産費の調査は、これから実際に工場について行なうことでございますが、ただいま考えられますることは、来肥料年度の価格の形成も、従来のルールに従って行なうべきである。これは肥料二法の存する限り、従来と同じルールに従っていくべきものと私ども考えておるのでございます。したがいまして、新しい合理化投資の効果が——これはいまお話がございましょうに、効果が発揮されるまでには、時間が必要でございますけれども、もしも来肥料年度にその効果があらわれまするならば、その合理化メリットも織り込まれるべきものであろう、かように考えるのでございます。  それから、先般の肥料審議会で御諮問いたしました需給計画の変更に伴いまして、当初の操業度の圧縮、つまり操短の緩和が行なわれるわけでありますが、その効果につきましては、これは理論的には、足鹿委員の御指摘になりましたように、当然コストを下げる効果があるわけでございます。そういうことでございますから、私どもも、これを原価計算につきましてしさいに検討したのでございます。しかし、その審議会の際にも通産省から説明がございましたように、当初の操短を織り込んだ価格を決定します際に、操短の影響で非常に値上がりの懸念があったわけでございますが、これを一般管理費等の圧縮によりまして、かなり引き締めたコスト計算が行なわれておるのであります。それらと対照しまして、今回の操短の緩和によりましてある程度コストは下がりますが、年度全体としては、必ずしも従来のコストに比べまして、それ以下に下がるというところまでにはいかない、こういうような結果が出ておりますので、これは今後の推移にもよりますが、今後の推移の結果として、さらに大きな変動がございましたならば、来肥料年度の価格において、その、要素を一つの参酌すべき問題として考える必要があるかと思いますが、今のところはそういうことでございます。  それから尿素高度化成等が、生産の構成の中で非常に高くなっておりまして、そのために、企業全体としての経営のいろいろな要素の配分が複雑になっておりますが、原価計算もしたがって非常にむずかしくなりつつあります。これは今度の合理化計画最終年度あたりにいきますと、非常にその辺の計算がむずかしくなるかと思いますが、当面は、なお従来の原価計算方式で、困難は増しますけれども、やはりこれが一番有力な資料になるものと私ども考えておるのでございます。もちろん尿素高度化成が増加した分は、計算はそのまま的確に出せないまでも、それを参酌すべき要素として考慮すべきであり、論議をすべきものと考えておりますが、しかし、従来の原価計算方式というものは、来肥料年度でも踏襲して、これを最も有力な資料として使うことができるのではないかと、農林省としては考えております。
  25. 足鹿覺

    足鹿委員 軽工業局長は、ただいまの松岡農林経済局長考え方を御了承になったものと認めてよろしゅうございますか。
  26. 倉八正

    ○倉八政府委員 私も、松岡さんの言われたとおり考えております。
  27. 足鹿覺

    足鹿委員 意見が一致したようでございますから、ぜひ需給計画改定によるメリットの問題、あるいは高度化成尿素の問題、あるいは今回の合理化融資のよってもたらされるメリットの問題等、諸般の要素をよく検討されまして、消費者の納得のいく、しかも政府がいろいろな保護育成措置を講じたにふさわしい内需価格を算出され、これを審議会はもちろん、農民に明らかにされることを期待しておりますが、この点は重要でありますので、後ほど、通産、農林大臣にさらに確かめたいと思います。  次に、合理化融資百六億円の算定基礎について伺いたい。本年度は、第二次計画最終年度でございます。現在、合理化関係資金は二百六十六億円でありまして、その四〇%、百六億円ということは、一応われわれも承知をいたしておりますが、この程度根拠では、私どもは納得はいかないのであります。先般来審議会においても、民間の権威ある雑誌に示されておるにもかかわらず、審議会にもお示しにならず、この委員会にも、その合理化融資百六億円の各社別計画内容というものはわからぬのでありますか。この間の資料をもう一ぺんよくごらんになって皆さんにお配りになれば、皆さんがどういう感じを持たれるかはおのずから明らかであります。雑誌にはちゃんと各社の名前をあげ、その事業対象に適用していく種目をあげておるのであります。それをあなた方は、ことさらにABCDを付して書いておられる。全く審議会の軽視というか、私どもを目が悪いものだとお考えになっておるようでありますが、硫安工業体質改善のための合理化工事の概要について、資料があればお示しを願いたいし、なければ、どういう理由でないのか、これを明らかにしていただきたい。
  28. 倉八正

    ○倉八政府委員 最初の、雑誌には書いてあるが、自分たちには知らせなかったということは、これはどういう経路でそういう雑誌に漏れたかわかりませんが、私自身も遺憾だと思います。その百六億円の根拠でございますが、これは昨年の十一月の終わりごろから、肥料対策を根本的に解決すべきだということが持ち上がりましたとき、各会社を三回くらいにわたって、いろいろ工事計画——これは五カ年の工事計画でありますが、その結果が百六億円になったわけでありまして、その年度別の計画というのは、はっきりいたしておりません。  それから、お尋ね各社別の工事計画内容を、資料があるならば出せ。それの資料につきましては、合理化内容を大別した資料は用意しておりまして、たとえばアンモニアの多角利用、あるいは肥料形態の転換、それがどのくらいの金額を要するか、どのくらいの金額を開銀その他に期待するか、その表ならばございます。
  29. 足鹿覺

    足鹿委員 その印刷物があったら、お示し願いたい。出せますか。
  30. 倉八正

    ○倉八政府委員 すぐ取り寄せます。
  31. 足鹿覺

    足鹿委員 さっさと出してください。そんなもの温存していないで、出してください。肝心なものをあなた方資料として出さない。開銀の肩がわり融資各社別一覧表というのを先ほどいただきましたが、資料のついででありますから申し上げますが、これはもう一つ欠けておるのじゃないでしょうか。輸出硫安売掛金各社別一覧表では、二百十五億四千万円は、確かに先ほどいただきました。しかし、これを開銀の肩がわりの融資各社別資料が落ちておるのじゃないですか。われわれが逆算をしてみましても、ある程度つかめるものが、あなた方からいただけないということは遺憾でありますが、なぜそういう大事な資料をあらかじめお配りにならないのでありますか。肩がわりの融資各社別一覧表を、私が逆算したものを申し上げて聞かせてあげましょうか。——持っているならお出しなさい。
  32. 倉八正

    ○倉八政府委員 その表は、案分比率を百三億円にかければ出るのでございます。というのは、百三億の分け方にはいろいろの考え方もあろうと思いますが、われわれは、この売掛金の比率に応じて百三億円を分けましたから、すぐ計算いたします。
  33. 足鹿覺

    足鹿委員 先ほどの資料といまの資料を早急に御配付を願いたい。  それから今度の融資根拠と今度の合理化計画目標でありますが、第二次合理化計画の四十三ドル四十八セント、つまり昭和三十六年九月四日、大臣会談の決定との関係はどうなるのでありますか。この計画を踏襲され、さらにこれを割った、もっと進んだ合理化計画目標にしておいでになるのでありますか。その点はいかがでありますか。
  34. 倉八正

    ○倉八政府委員 一昨年九月四日の四大臣の了解事項という四つの決定の中で、実施したものがすでに三つございます。その中の、肥料二法の存廃について検討するというのができておりませんが、あとは、開銀の融資、あるいは特別償却、その他全部政府でやったわけでありますが、それと今度の関係につきまして申し上げますと、いまお示しになりましたおとどしの九月四日は、第二次計画の中間の措置でございまして、それが四十三ドル四十八セントないし四十七ドルというものでありますが、それは今年、来肥料年度で終わるわけでございまして、さらにそれにおっつけまして、今度の百六億円というものを計上いたしまして、今後五年間でまた合理化努力を続けていこうということでございまして、そういう意味におきまして、第二次と第三次というのはつながりがある、こうわれわれは解釈しております。
  35. 足鹿覺

    足鹿委員 つながりがあるという程度ですか、局長。つながりがあるというようなことを私は聞いておるのではないのです。目標を聞いておるのです。
  36. 倉八正

    ○倉八政府委員 私は非常に口べたでありまして、そういうことを申し上げたと思いますが、第二次計画で四十七ドルでございますか、税込み四十七ドル五十セントくらいを実施しよう。その途中におきまして、硫安の非常なる不況に対しまして、何かしなくちゃいかぬ、それとあわせてまた合理化を進めようという意味で、そういう決定を見たわけであります。それはすでにいまでも着々と行なっておるわけであります。ただ、遺憾ながら、当時決定された四十七ドル前後の決定は、いまのところは実現を見ておりませんが、それで、来肥料年度はその計画に従って実施するし、今度百六億をきめましたのは、それもあわせて実施していこうということでございまして、そういう意味においてつながりがございます。
  37. 足鹿覺

    足鹿委員 そのつながりをどういうふうに集約されてお考えになっておるのでありますか。今回の合理化計画の特徴の一つは、硫安合理化目標原価が算定されていない点だろうと思うのです。これは御否定になれないと思う。硫安の出産構成比率を極力減少していくということが、計画中心になっておるようにわれわれは理解しておるのでありますが、いずれにいたしましても、当然第二次合理化計画最終年度に結び合わせて、目標額が定められなければならないと思います。局長の御答弁の限界では、それが出ないということであります。大臣に伺わなければそれは出ないということでありますか、あっても答弁しない。ということでありますか。そういうお考えでありますと、今度の赤字融資の問題とは、直接に法案そのものには関係はございませんが、冒頭に私が述べましたように、これは表裏一体をなすものである。また、過去につながる政府の保護育成に包括されるものである。したがって、いわば第三次合理化計画とでもいうべきものが、総合的な判断の上に打ち立てられて、それに向かって死にもの狂いの努力なくして——最近欧州のニトレックスの発生の問題を見ましても、これが今後極東市場、その他の市場にどのように出てくるかは、いまだわれわれが察知することはできませんが、これも大きな一つ日本輸出上の難点が、この点からも予想されてくると思います。だとするならば、当然二百九億に及ぶ政策融資目標をどこに置くか、その目標もなしに、ただ、つながりがある、大臣、いまこういう御答弁なんです。今回の百六億の政策融資合理化資金、これの根拠及びその目標お尋ねしておるわけであります。局長は、ただ、つながりがあるということだけおっしゃるのです。第二次計画の四十三ドル四十八セントというものとつながりがあるという答弁の一点ばりです。その程度で、大臣、こういう大きな政策融資をおやりになってよろしいのでありましょうか、この点を伺っておるのです。局長の御答弁がはっきりいたしませんので、幸い大臣がおいでになりましたから、これから大臣にひとつお伺いをいたします。
  38. 福田一

    福田国務大臣 今回の百六億の合理化資金の問題でありますが、これは、私は、合理化をして値段を安くしてくということは、国内に対しても安い肥料農家に供給できる方法であるし、また、海外へもこれが輸出できるようになれば、これはもうなお非常に効果をあげるのでありますから、願わしいことであると思います。いまの段階において、いま、しからばどれくらいかといえば、大体トン当たり五十二ドルであることは、足鹿さんも御承知の通りでありますが、これを四十四ドル前後まで下げるということは、私は、これはもう非常な仕事であろうと思うのでございますが、いままで一次計画、二次計画、実はあなたに御指摘を受けて、おしかりを受けておるところでありますが、なかなか所期の目的をあげていくわけにはいかなかった。事実、最初予定していたところまでは、実は値段を下げることができませんでした。今度の場合におきましても、目標を四十四ドルに置くとか、あるいは四十ドルに置くとかいうことを、私、言うことはできないわけではないと思いますけれども、あなたも冒頭で質問されたときに、大体硫安の価格というものは、価格自体の形成の内容が、非常に不確定要素みたいなものが入ってきてむずかしくなってしまった。だから、それは、御承知のように、硫安工業というものはもうほとんど兼業になりまして、その兼業の形態もいろいろございます。総掛費を硫安の部門にどう割り当てるか、また、そのほかの仕事との関連をどういうふうに割っていくかというようなことをやっていくと、なかなかむずかしい問題があることは、もう足鹿さんもおわかりを願っておるところでございます。したがって、この際はできるだけ下げる。四十何ドルというところまでいければ、それは非常にありがたい、非常にけっこうだと思うのです。そこまでいけるかどうか。いまそういうことを言ってみても、また違ったじゃないか、こういうことになりますと、もう一つ工業として、ほかの仕事は全然やらない、人もこれだけ使っている、大体今後のいわゆる物価の趨勢はこういうところである、原料は大体こういうことだというような工業でございますと、わりあいに二年後、三年後における値段というものもはっきり出し得る面もあるのですが、硫安については、いまあなたがよくおわかりのように、ほとんど兼業でございまして、しかも専業といっても、兼業のほうが多いような業種になってしまっている。しかも硫安価格形成自体も非常にむずかしいというような段階でございますので、われわれとしては、この際においては、あえてそういうような不確定要素を多分に含んだものはむしろはっきり出さないで、できるだけ下げる方向に持っていこうということで御理解を賜わりたい。  それからもう一つは、先ほども申し上げましたが、硫安の二法がございまして、そしてもうこれからは輸出会社には赤字としてためておくわけにいかないのでありますから、そうすると、ことしの一月から来年の四月までの赤字というようなもの、あるいはまた硫安二法というものをどういうふうに今度は持っていくかというような問題も、不確定でございます。そういうような未確定、不確定な要素の多分にあるこの段階において、あまりそう確定した値段のことは申し上げないほうが、私は良心的である、こういう方で、事務のほうでもそういうふうに御答弁を申し上げておるということを御理解を賜わりたいと思います。
  39. 足鹿覺

    足鹿委員 これは重要な問題だと思うのです。第二次合理化計画とつながりがある程度、むしろいまの大臣の御答弁によりますと、これよりも後退するような感を受けるわけですね。まことにもって不可解千万な態度と言わざるを得ない。山県四郎氏は、その論文の中で、「今回の体質改善計画の特徴の一つは、従来のごとく硫安合理化目標原価が算定されていない点であって、硫安生産比率を極力減少して行くことが計画中心である以上当然のこととも思われるが体質改善の成果について具体的数字の示されていないととは不安を感ずる点も多い。」と断定をしております。その通りだろうと思うのです。こういう公平な学識経験者の意見等も、大臣は率直に耳を傾けられ、硫安そのものの実態がつかみにくいといたしましても、あなた方の計画されておるものは、硫安生産構成比率を極力少なめていこうという考え方に立っておる。だとするならば、その少なめでいくことは、あなた方の考え方とするならば、先ほど松岡経済局長の御答弁にもありましたが、回収硫安、併産硫安、そうしたようなものに重点をはっきり定めて、そうして数字をはじかれることができないのでありますか。それはナンセンスじゃありませんか。私はおかしいと思う。たとえそれが困難な作業といえども努力をなさるということが、当然の責任だと私は思う。いわんやこの硫安工業対策には何とうたっておりますか。硫安工業の再建基礎を確立するとともに、今後における合理化近代化と体質の改善を一そう強力に推進して、健全な輸出産業としてこれを育成し云々と言っておる。健全な輸出産業として育成をするならば、ニトレックスの出現、それのアジアヘの市場進出等々とあわせ考えてみますならば、実力で戦っていくという確固たる決心と目標なくして、政府政策融資をむやみに行なってよいのでありますか。私は、そのことを聞いておるのであります。健全なる輸出産業としてこれを育成するということは、一体どういうことでありますか。現に相手があるのですよ、輸出産業としては。内需の問題はあとで触れますが、貿易の自由化によって、肥料の輸入を自由競争にまかしておしまいになる考えでありますか。要するにつながりのあるという程度の、合理化目標なしの、第二次合理化計画を後退せしめるがごとき口吻の大臣の意中にあるものは、一体何でありますか。もしもあれば、あるとおっしゃっていただきたい。できないならば、健全な輸出産業としてこれを育成するということは、どういうことでありますか。硫安は放棄するということでありますか。尿素高度化成で戦うのだ、硫安はやめるのだ、こういう方向でありますか。その点が不明確ではありませんか。もっとよくお考えになって、責任のある御答弁をわずらわしたいと思います。
  40. 福田一

    福田国務大臣 ただいまニトレックスのお話がございましたが、ほかの商品でございますと、いわゆる目標というか、大体のめどというものがついて、大体これくらいで売るだろうということが、いままでも明らかにされておりました。ところが、硫安の場合は、ニトレックスにいたしましても、ほかの場合におきましても、むやみにダンピングをしてまいります。こちらが合理化するより先に、どんどん値を下げておるわけであります。現在われわれの聞いておるところでは、三十ドルを割って売っておるところもあるということさえ聞いておるのでありまして、いわばそういう意味での競争相手として、ニトレックスというようなものを競争の相手にして、健全な合理化をはかり、輸出産業として育てていくということは、非常にむずかしいと思うのであります。これがいまの実態でございますから、なかなかむずかしい。ただ、私たちが考えておりますのは、できるだけ硫安のその会社の中におけるところの比率を下げることによって、たとえば三十六ドルとか七ドルで輸出をして、そのために赤字が出ても、企業全体としては損がないようにする。しかも、その赤字を今度は農家の方に転嫁させないようにする、こういう意味合理化をできるだけさしていく。すなわち、比率を少なくし、しかもまた十分な硫安農家に供給できるということが望ましいという姿で考えていっておるわけでございまして、ほんとうのことをいうと、そういうニトレックスみたいなものを相手にしたりなんかしてやるというのは、非常にむずかしい。ほかの鉄鋼とか電気機械とかということになりますと、原価というものはちゃんときまっておって、いよいよ競争するときには、延べ払いで対抗できるかどうかくらいのところで話がつく。もう向こう自体が——西ドイツをごらんなさってもわかるように、原価を切ってどんどん売ってくるというのが実相である。この硫安工業というものについて考えてみますときには、非常にそこにむずかしさがあるというわけであります。しかしながら、本来の目的というものは、われわれは農家に安い、しかも十分な硫安を提供するということを目的にしてやっておるのでございますから、その目的にできるだけすみやかに到達するような施策をやっていく、そういう意味では、やはり合理化をどんどん進めていかなければいけない、こう考えて処置をいたしておるわけであります。
  41. 足鹿覺

    足鹿委員 幾ら言っても明確になりません。明確にならないということは、自信がないということになります。それはそうですよ。どんなに大臣が御抗弁になりましても、これは健全な輸出産業として育成すると基本対策にうたった以上、これに対する目標なくして何をかいわんやであります。非常に遺憾でありまして、ただいまの御答弁をもってしては、われわれは絶対に承服はできません。  そこで、先ほども大臣が参議院へおいでになった間に両局長にお尋ねをいたしましたが、今度の合理化によって、国内価格の引き下げ方針をいかようにされますか、明らかにしていただきたい。ややもすれば、今回の硫安工業合理化対策を見ましても、国内価格を軽視する傾向がある。政府は、これ以上上げない方針のようでもあるようなことは言っておりますが、国内価格は据え置くというつもりでありますか。合理化のメリットは、国内価格に反映させるのかどうか。反映させるとすれば、国際価格水準を国内価格の目標とするのかどうか。この点が一点であります。同時に、輸出赤字が今後も出ると、先ほど局長はおっしゃった。これはすでにプールで処分しておるということでございます。このことは、別な角度から見れば、輸出赤字企業が負担し、絶対に国内価格に転嫁しない方針だとも、善意に解釈すれば受け取れますが、これに間違いはございませんか。大臣に、しかとこの二点をお尋ねをいたしておきたい。
  42. 福田一

    福田国務大臣 海外輸出価格を基準にしてきめるのかということでございますが、そういうわけではなくて、現行の肥料二法に基づくバルクライン方式によって今後も価格の決定をいたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。したがって、国内の場合に例をとりましても、企業努力が、企業における肥料のパーセンテージがうんと下がるとか、あるいはまた企業がその損失を吸収するとかいうことによって硫安の価格をきめるのではなくて、現行の二法の存在する以上は、この二法に基づくバルクライン方式でもって価格を決定してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  43. 足鹿覺

    足鹿委員 最後にお尋ねをいたして私の質疑を終わりますが、農林大臣がおいでになりました際は、農林大臣への質疑をお認めいただきたいと思います。  通産大臣にお伺いいたしますが、特定産業振興法によれば、化学肥料製造業は、特定産業から除くことになって一おるようでありますが、肥料につきましては、現行の二法が期限満了後、特別立去を考えておられるどうかということであります。これに関連をいたしまして、硫安工業対策によれば、先ほども述べましたように、健全な輸出産業として育成すると言っており、農業政策としての面には触れられておりません。現行二法の期限満了後の方針をどのように取り扱うのか、この点については、先般の審議会においても御指摘を申し上げておりますし、農林、通産両大臣間ではどのような方針で対処をされる御所存でありますか、これが第二点。  いま一つは、国内需要の確保のために、需給計画輸出数量の決定について、肥料二法が満了後においては、政府は何らかの規制を行なう方針でありますかどうか。大臣にかわって、経済局長も、その限界において御答弁のできる点は、御答弁を願いたい。  いま一つは、国内価格の決定について、政府は何らかの指示あるいは規制を行なう方針で対処しようとしておるのか。この点を明らかにしていただきたいと思います。  要するに、供給が需要に足りなかった時代の政府補助は、供給過剰の時代には、純理論の上からいったならば、われわれは通用しないと思うのです。通用するのは、メリットの下がった分は農民にもこれを分ける、輸出産業としてもこれを育成していく、そういう意味でこそ理論的にいって意味があるのであって、あなた方は、ややもすれば二法をじゃま者扱いにされ、業界では、この二法を目のかたきにしておられますが、これの果たした役割というものは、評価されてよろしいと思う。つまり供給が需要に足りなかった時代の政策としては、一応の成果をあげたと思う。だとするならば、供給過剰の時代には通用しないというならば、新しい段階に備えた政策目標というものなくして、いたずらに政策融資を行なうことにつきましては、問題が残らざるを得ない、かように私は存ずるのであります。要するに、政府政策介入もさることながら、業界自身の思い切ったくふう、対策、たとえば企業合同、老朽施設の廃棄、新しい分野への転換等が、必要ではないかと思うのであります。企業家として、いたずらに政府や政治家に頼むことによってのみいこうといたしますならば、第二の日東化学のような事態が出現することは、私は必然であろうと思います。要は、企業者の企業意欲を国策の線に沿わして、しかも農民に安い肥料輸出産業としての国際競争力に耐える力を企業家に与えていくということでありますならば、新しい段階における肥料工業政策肥料政策との問題が、おのずからそこに生じてくると思います。そういうねらいのものをお考えになっておるのであるか。まだ少し先のことであり、次の通常国会には何らかの対策考えて相談をするということでございますが、その構想について、通産、農林両当局は話し合いをした事実があるか。あるとするならば、私がいま指摘したように、特定産業振興法から化学肥料製造業を除いておるのであるから、何らかの処置を講ずるのか。講ずるとするならば、需給計画輸出数量の決定について、政府規制を行なうのか行なわないのか。国内価格の決定について政府は何らかの指示、規制を行なう方針かどうか。そういった点について協議し、検討を加えておるやいなや。こういう点を明らかにしていただきまして、私の質疑を終わりたいと思うのであります。さきに述べましたように、農林大臣がおいでになりましたらお願いいたします。
  44. 福田一

    福田国務大臣 ただいまの御質問は、肥料二法を今後どういうふうにしていくか、また、いずれにしても肥料行政というものを価格の面、輸出の面、その他から見てどういうふうに今後指導して、そして本来の目的を達するにはどうするかという御質問と解釈いたすのでございますが、これは私、まだその問題について農林省と私の通産省とで正式な会合を開いて調査はしておりませんが、今後そういう問題について十分研究をさせたいと考えております。要は、根幹は、あなたがおっしゃったように、あれは需要が多くて供給が少なかったときの法律でございました。いまは供給が相当多くなりつつあるという段階であり、しかもほかの肥料がたくさん出てきておるというような事態でもありますが、いずれにしても、問題は、この肥料をできるだけ農民に十分に、しかも安く与えるというのが第一目標でございまして、この目的達成するためにいかなる措置をとったらよいかという考え方で、いろいろいまあなたが御質問になったようなことが必要であるかどうかということを十分研究きせていただきまして、そうして二法は現存いたしておるのでございますから、二法がなくなる前に政府としての態度を決定して、もし法律を出す場合は、皆さん方に御審議を願うし、また、法律でない措置ができるということであれば、その理由等を十分御理解をしていただく、こういうふうに申し上げたいと存ずるのであります。  なお、このことについては、いま参議院に質問を中断して行ったときに、隣に農林大臣がおりましたから、私はそのときの考え方について、いわゆる農村に安くて十分な肥料を提供するということについては、こういうお答えをしておきましたと言ったら、いやそれは非常にけっこうであると言うて、農林、通産相一致した意見に相なっておるわけでありまして、この点はもう変わりがないのでありますが、それをいかにしてやるかということを、いまあなたは具体的の例をあげて御説明になったわけであります。そのことは、これから十分に各方面の意見を聞き、あなたの意見も十分に参考にしながら、勉強させていただきたい、かようにお答えをいたしたいと存じます。
  45. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 ただいま通産大臣からお答えがありましたとおりでございますが、農林省といたしましては、まだ通産省とも具体的な話し合いに入っておりませんし、農林大臣からも、具体的な方針はまだ指示を受けていないのであります。しかしながら、農林省といたしましては、次第に資料を整備して、今後の体制をどうするかということの研究に着手したいと考えております。そういうことで、いま通産大臣からお話がございましたように、今後の推移を相当検討する必要があると考えております。と申しますのは、肥料といいますか、特に硫安でありますが、これの自由化をどうするかという問題、それから今回実施されます合理化計画が、軌道に乗ると思いますが、これがどういうふうに実施されていくかということの推移を十分に見きわめまして、肥料二法失効後における対策を立てていきたい、こういうふうに現在のところ考えております。
  46. 逢澤寛

    逢澤委員長 安井吉典君。
  47. 安井吉典

    ○安井委員 いま、足鹿委員から全体的な問題につきまして論議が行なわれておりますので、私は多くをつけ加えるつもりはございません。特に私もちょっと会合がございますので、ごく簡単に一、二点お尋ねをして終わりたいと思います。  足鹿委員専門家ですが、私はしろうとですから、まず初めにごくプリミティブなお尋ねをしたいのですが、肥料政策は、これは農業政策と商工業政策と両面を持っておると思いますが、一体どっちにウェートを置いて政府はお考えになっているか、こういうことです。
  48. 福田一

    福田国務大臣 当初、需要が多くて供給が少なかったときには、むしろ農業政策に重点を置いて考えていて、肥料二法をつくりましたときには、農業政策のほうにウェートが多かったと思うのであります。ところが、現段階になってまいりますと、これに輸出目的というものが加わってまいりましたので、両方にウエートがかかってきたというのが、現段階だと考えておる次第であります。
  49. 安井吉典

    ○安井委員 国内では、肥料を使う農家の数は六百万戸、きょういただいた「輸出硫安売掛金各社別一覧表」ですが、ここに出ている会社は十九社です。数が多いからどうだというわけじゃありませんけれども、やはり国民の中におきまして肥料という問題に対して関心を持っておりますウエートは、これは何と言ってもやはり農民のほうが多いわけです。十九対六百万。ですから、私は、こういう比率でものを考えるという態度を政府はお忘れになったらいけないと思うのです。そういった面につきまして、いままでの問答の中にも若干出ていたような気がするわけでありますが、私がなぜそういうような問題を持ち出すかと言いますと、いま足鹿委員も触れておりましたいわゆる肥料二法の期限切れ後の措置についての政府のかまえを、そういうお答えの中から私は感じ取りたいと思ったものですから、問題の出し方もそういうふうにいたしたわけでありますが、かつてとの肥料二法につきまして、政府部内において、二法を全面的にやめてしまって、肥業工業振興法案ですか、そういった、つまり商工業政策的なかまえのごく勝った法律の体制をつくろうというかまえを一時なすったことがあるわけです。それはいろいろな事情のもとにおやめになったわけでありますが、そういうことを私ども記憶に持っておるものでありますから、そういうふうなかまえを一度おやりになったその政府が、とにもかくにも肥料二法を期限までは続けたいというお気持ちは、きょうはお述べになっておりますけれども、期限切れ後におきまして、はたしてほんとうに本来の意味内容のある、特に農業政策の含みを十分に持った法案が、この次にはたして生まれるかどうか、こういうようなことにつきまして、私どもは心配をするわけです。いまもいろいろ御答弁がございましたが、さらに私、通産大臣からこの点の御意見を承っておきたいと思うのです。
  50. 福田一

    福田国務大臣 お説のとおり、肥料をつくっておるのが十九、農民はたいへんな数でありまして、これは比較にもなりません。先ほど私が御答弁申し上げましたように、もちろんこれは農業問題として、農業のほうに重点を置いて考えるのでありますが、それに加味して、いわゆる通産関係輸出関係というものが加わったということばを申し上げておるのでありまして、重点はやはり農業に置いて考えたほうがよろしい、こういうふうに私は考えております。したがって、今後の問題についてもそういう態度であるべきでありますが、しかし、そういう場合においても、西ドイツのように、高い硫安なりあるいはその他の肥料を使わせても、買わせるときには高いものを買わせるけれども、これに対して補助金を出すということにすれば、実質的には安い肥料を供給したことになります。しかも数量においては十分であり、価格においてはやはり安いものを供給したということになるわけであります。だから、やり方はいろいろあろうと思うのでありますが、しかし、これを貫く精神は、やはり安い肥料を十分に供給するというところに目標を置いていかなければならぬ。そのやり方としては、いま言ったような自由企業みたいな形にしておいても、買ったものが高ければ、その分を補給してやるという考え方もあるわけでありますから、私は、これはどちらのほうをやったらいいのかというような問題も含めて、今後検討されると思うのでありまして、それは私は、先ほど足鹿さんから御質問がございましたけれども、十分研究をさしていただきたい、こう申し上げておるところでございます。
  51. 安井吉典

    ○安井委員 輸出産業の振興の問題につきましても、私若干申し上げたいこともあるわけでありますが、時間がございませんので、きょうはもう深く触れないことにいたしますが、この法案売り掛け金の問題でありますが、先ほどの御説明によりますと、十二月末の赤字二百二十億、うち実質赤字百二十五億、うち、措置済みが五十二億で、残七十三億が実質赤字というふうにつかんでおられるという御説明がございましたが、それと、ここでいただきました二百十五億という売り掛け金数字もございます。そこでこの法律におけるいわゆる特例措置の講ぜられる売り掛け金は、どこで押えるわけでありますか。その点ひとつ伺っておきたいと思います。
  52. 倉八正

    ○倉八政府委員 これは法律に即していえば、第一条の第一項でございますが、これをふえんして申し上げますと、今年の一月一日から輸出はFOB仕切りにいたしましたから、昨年の十二月三十一日現在の輸出売り掛け金がこの対象になるのでございまして、実質上の百二十五億ではございませんで、二百十五億がこの対象になりまして、十カ年で償却される、こういうことでございます。
  53. 安井吉典

    ○安井委員 これは商法の上におきましても、ちょっと例のない措置であります。それだけに、押え方をしっかりしておきませんと、どのメーカーも総合的な企業のわけですから、そういう中で、他種目のものまでがまじり込んでくる、そういうようなおそれもあるわけです。正確なチェックが必要になるわけでありますが、そのチェックをする額がこの額、そういうふうに心得ていいわけですね。
  54. 倉八正

    ○倉八政府委員 おっしゃるとおりでございます。それで、この問題につきましては、売り掛け金というのは、硫安輸出会社に対する売り掛け金でありまして、十二月三十一日現在の売り掛け金というのは、はっきり確定いたしておりまして、これが今後さらに累積していくととはないわけで、非常にはっきり確定いたしております。
  55. 安井吉典

    ○安井委員 通産大臣にお伺いしたいわけでありますが、いま新たに行なわれようとしております合理化計画の、その目標がないということであります。これはもう先ほどからのやりとりを私もそばで伺っておりまして、どうしてもいままでの御質問に対するお答えの中では、納得しかねると思うのであります。これは私だけじゃない。だれが考えましても、政府は相当の資金融通、しかも低利の長期の資金、国民の資金を融通していく。こういうふうな体制の中で、それは合理化を進める。しかし、その合理化によって到達するととろはどこにいくんだというその説明がなくては、これは私だけじゃない、だれが聞いたって、国民は納得しないと思うわけです。先のわからないことを、あまりはっきりした数字を出さないほうが良心的だという表現をさっき申されたわけでありますが、私は、このような多額の金を一方において支出しておきながら、一体何のために出すのかわからない。それは安くするために、コストダウンをするために出すのだというかまえはわかります。これはまさかコストを上げるためにお出しになるということでないことだけはわかります。しかし、あくまでも最後はどういうところに行き着くのだという、その目標がないようでは、やはり国民は納得しかねると思うわけであります。一体何のための合理化か、こういうふうに言いたいわけでありますが、いかがでありますか。
  56. 福田一

    福田国務大臣 この問題は、合理化資金を出すことによって出るプラス、しかも今後は輸出によって実損を生ずる赤字、このプラス、マイナスいたしました結果の数字が、合理化目標になるべきだと私は思うのであります。実際には、もう補助もいたしませんし、何もしないという形になりますと、全体を総合してもけっこうでありますが、会社経理から見て、幾らでこの硫安ができるかということをきめるには、これからだんだん安くしていきますところのメリットが、プラスの要因であります。そしてその分は、いまの五十二ドルから引かなければならない要因になるわけであります。ところが、輸出のほうで実損を来たしますところの赤字というものは、これはその場合においてはマイナスの要因になるわけでございますから、それを相殺した上で実際にはこれくらいになるという数字を出すべきだと思うのであります。そのマイナスになる要因というものは、いまのところ、御承知のように不確定でございます。御承知のように、いままで硫安は毎年四十二ドルくらいで輸出されて、海外からどんどん中国へ入ってきたり、あるいはタイへ入ったり、朝鮮へ入ったりしたこともありますが、それが三十八ドルになり、三十六ドルになり、またそれが二十八ドルになり、一体これはどこへいくのだ、どうなるのだ、そのマイナス要因というものが、実際上非常につかみにくいという事態もあるわけであります。それが一点。  それから先ほども申し上げましたけれども硫安をつくりました場合に、その会社の中で硫安生産額が価格の面で一〇%だと、こう仮定しました場合に、総掛費をこれに一〇%入れるのか、あるいはまた八〇%、で済ますのか、あるいはこっちのほうは償却というか、どうせもう赤字なんだから、全然総掛費はかけないのだというふうな形にしておくか、そこら辺のところの会社経理のしかたというものがなかなかむずかしい。それを調べるのも困難であります。足鹿さんが言っておられるように、幾らでできるという価格をきめるのは、非常にむずかしくなっている。それが、いま肥料二法が時代に合わなくなった一つの要素でもあるということを識者はみな言っておられるのでございますが、それでございますから、いわゆる価格というものが、専業でもって硫安だけをつくっている会社で、何人の人を使って、利息が幾らでということでありますと、きちっと数字が出てくるのですが、その部分が、ある会社によっては二〇%、ある会社は一〇%、ある会社は七%、しかもその七%を生産する過程がまた違うのであります。いろいろありますから、そういうところで、なかなか価格の決定がむずかしいということもございますので、ここではっきりした数字を出さないほうが良心的だ、こういうふうにわれわれは申し上げておるわけであります。しかし、できるだけ合理化して安くするということについては、極力骨を折らせる。もちろん前の計画の四十四ドルどころではない。できれば三十ドルになったほうがいいのでありまして、あるいは二十五ドルになればもっといいだろうと思うのでありますが、架空の数字でそんなことを言ってみてもしかたがない。こういう意味で、私たちはできるだけ安くするのだ、こういうようなことをお答えいたしておるわけでございます。
  57. 安井吉典

    ○安井委員 大臣に申し上げたいのですが、ここで硫安合理化丸という船が日本を出て、太平洋を横断してアメリカに行く。しかし、これは途中において暴風がくるかもしれない。あるいはまた思いがけない気象条件が襲いかかるかもしれない。しかし、これはヨットで太平洋を渡ったあの青年のような、そんなおつもりで政府が太平洋を横断するのでは、私は困ると思う。少なくとも大国だと自称している日本政府が、これから向こうへ船をやるのですから、ヨットで自分一人で行くのと違うのです。その船の上に大勢の人が乗っているのですから、やはりあらゆる条件を考えながら、あらしが来ようと、あるいはまた思いがけない事故が起きようとも、そういうようなものを考慮に入れて、向こう岸にはいつごろ着くのだというくらいのお見込みは、堂々たる大国であります日本国の政府として、お出しになるのが当然じゃないかと私は思う。
  58. 福田一

    福田国務大臣 アメリカという場所がきまっていればお説のとおりでありますが、そもそもアメリカという場所が、実はきまっていないのです。方向は東のほうに向いて行くということはきまっておるのですが、いま言ったように、海外輸出がどれくらいになってくるかということがきまらないから、こっちが進むに従って向こうがまた移動してしまうかもしれない、こういう事態があるから、なかなかここのところはむづかしい、こういうふうに申し上げておるのでありまして、方向はきまっておるのですけれども、向こうもボートであって、それがちゃんと一カ所にいてくれればいいのですけれども、こっちがだんだん近づいていくと、向こうのボートが風で向こうへ行ってしまったということになると、予定が狂ってしまう、こういうことになるおそれがありますので、方向としては、東のほうに、どんどん安いほうに持っていく、こう申し上げておるわけでございます。
  59. 安井吉典

    ○安井委員 この支出される資金は、別にアメリカからただでもらったわけでもありませんし、国民の資金なわけです。しかも特定の会社にこれを出すわけですから、そういう無責任な姿勢で政府がおやりになるのでは、私は困ると思う。いまの段階でお出しになることができなくても、いずれは肥料二法の問題につきまして、これが期限切れにおいてはどう措置するかということを決定される時期に政府はくるわけでありますが、その段階においては、はっきりしたものをお出しになるべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  60. 福田一

    福田国務大臣 われわれも、皆さん方にものを審議していただくときには、ちゃんと一と一を足せば二であるというような形で出したいのでありますが、いま言ったように、向こうの値段のほうが動いていってしまうわけでございまして、こっちが幾ら追っかけても、追っかけるに従って向こうが逃げていってしまうというような形になっておるところに、ほかの輸出品とは違った姿があるということは御了解賜わりたいと思いますが、なるべくそれをわかりやすくするように努力せよという御趣旨に対しましては、御期待に沿うように努力いたしたいと思っております。
  61. 安井吉典

    ○安井委員 いずれにいたしましても、輸出赤字は、企業の負担として、国内価格にはその赤字を絶対に転嫁しないという政府の方針には、間違いないわけですね。
  62. 福田一

    福田国務大臣 われわれといたしましては、合理化資金を出しておる限りにおいては、そういうことを認めないつもりでございます。
  63. 安井吉典

    ○安井委員 時間がございませんので、続いて最後に、先ほど局長のほうから足鹿委員質問に対するお答えの中で、例の国内販売価格と輸出販売価格との間のギャップがあるために、販売競争が当然激化するということが予想されるわけでありますが、それが現在あまり起きていないという陰には、いわゆるプール制というふうな形で問題が処理されている、こういうような御説明があったわけでございますが、実態といたしましては、そのプールするやり方は、業者間でどういう仕組みでやっておられますか。
  64. 倉八正

    ○倉八政府委員 これは現在硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法の第十三条の規定によりまして、硫安輸出会社が各硫安メーカーから輸出用の硫安を買い取るわけであります。この買い取る数量は、通産、農林両大臣の承認に基づきまして、今期何トンというふうなことで買い取るわけであります。その買い取ります価格は、いままでは形式上の価格はマル公でございまして、実際上の価格は輸出価格でございますから、輸出赤字が出たわけでございます。そのマル公と実際の輸出価格との差額をプールしまして、そうして各メーカーの出荷の実績によってそれを分けるというふうな仕組みになっております。
  65. 安井吉典

    ○安井委員 一種のカルテルじゃないですか。
  66. 倉八正

    ○倉八政府委員 仰せのとおりに輸出カルテルでございます。これは正式に公取の同意も得ておりますし、また、いま申し上げました法律の十四条の規定によりまして、独禁法の適用が除外されております。
  67. 安井吉典

    ○安井委員 それは日本硫安輸出会社の買い入れという形ではなしに、企業赤字を負担するという形になっても、同様な措置でいくわけですか。
  68. 倉八正

    ○倉八政府委員 さっき足鹿先生の場合にもお答えしましたように、これは国内のいわゆる需給の安定と、それから輸出の振興をはかるという意味におきましても、しかも日本肥料を買っておる諸外国が、例外なく国内政府機関ないしそれに準じたものが一手に買っておりますから、このプールというのは、今後も続けていったほうがベターかとわれわれは考えております。
  69. 安井吉典

    ○安井委員 しかし、先ほど足鹿委員質問にありましたように、肥料二法の精神がここで根本的に踏みにじられておるといったような印象を受けるわけでありますが、いかがですか。
  70. 倉八正

    ○倉八政府委員 根本的な問題は、輸出の差損を国内に振りかけるのが肥料政策上きわめてまずいということでございまして、われわれといたしましては、国内におきましては、はっきりしたマル公がありますし、輸出については、いまのような政策をやりまして、国内と輸出を分けておるということにつきましては、この法の精神どおりに順奉しておる、こう信じております。
  71. 安井吉典

    ○安井委員 一応やめます。
  72. 逢澤寛

    逢澤委員長 以上で本連合審査会の質疑を終了するのでありますが、先刻の足鹿委員質疑に対する農林大臣の答弁は、文書を提出していただくことといたしたいと存じますから、御了承を願います。  以上で本連合審査会を終了いたします。    午後零時四十五分散会