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1963-06-26 第43回国会 衆議院 外務委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月二十六日(水曜日)    午前十一時一分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 安藤  學君 理事 正示啓次郎君    理事 福田 篤泰君 理事 古川 丈吉君    理事 松本 俊一君 理事 戸叶 里子君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       愛知 揆一君    伊藤宗一郎君       川村善八郎君    北澤 直吉君       椎熊 三郎君    森下 國雄君       黒田 寿男君    森島 守人君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務政務次官  飯塚 定輔君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (経済局長)  中山 賀博君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局賠償          部長)    宇山  厚君         通商産業事務官         (通商局市場第         一課長)    木村 庄一君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 六月二十六日  委員宇都宮徳馬辞任につき、その補欠として  伊藤宗一郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員伊藤宗一郎辞任につき、その補欠として  宇都宮徳馬君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国ビルマ運邦との間の経済及び技術協力  に関する協定及び千九百五十四年十一月五日に  ラングーンで署名された日本国ビルマ連邦と  の間の平和条約第五条1(a)(III)の規定に  基づくビルマ連邦要求に関する議定書締結  について承認を求める件(条約第二〇号)  通商に関する一方日本国他方オランダ王国及  びベルギールクセンブルグ経済同盟との間の  協定を改正する議定書及び一方日本国他方オ  ランダ王国びベルギールクセンブルグ経済  同盟との間の貿易関係に関する議定書締結に  ついて承認を求めるの件(条約第二四号)  通商に関する日本国フランス共和国との間の  協定及び関連議定書締結について承認を求め  るの件(条約第二五号)      ————◇—————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  日本国ビルマ連邦との間の経済及び技術協力に関する協定及び千九百五十四年十一月五日にラングーンで署名された日本国ビルマ連邦との間の平和条約第五条1(a)(III)の規定に基づくビルマ連邦要求に関する議定書締結について承認を求めるの件、通商に関する一方日本国他方オランダ王国及びベルギールクセンブルグ経済同盟との間の協定を改正する議定書及び一方日本国他方オランダ王国及びベルギールクセンブルグ経済同盟との間の貿易関係に関する議定書締結について承認を求めるの件及び通商に関する日本国フランス共和国との間の協定及び関連議定書締結について承認を求めるの件、以上三件を一括議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は昨日に続きまして、ただいまの議題についての質問を続けたいと思います。きのうちょうど参議院のほうから大臣の要請があったために中途はんぱになりましたので、その続きから始めていきたいと思います。  きのう条約局長が、シンガポールから日本戦争中に与えた被害に対して何とか考えてほしいということを言われてきている、しかしこれは平和条約の十四条の(a)の1項によるものではないし、しかし何らかの形で考えなければならないだろう、こういうふうなことを答弁されていたと思います。それで、この日本が与えた損害というものが一体どういうふうなものであったか、被害というものがどんなふうなものであったかということをある程度説明していただきたい。そして、それに対してどういう形で償いをされようとしているか、この点を伺いたいと思います。
  4. 後宮虎郎

    後宮政府委員 先方が申しております戦争損害といたしましては、あの地域の特殊性といたしまして、あそこを占領いたしました直後、あそこの華僑系統住民——人数についてはいろいろありまして、先方は五千と言っておりますし、こちらの調査では大体三千ぐらいというふうに見ているのでありますが、これを一般シビリアンであるにかかわらず虐殺したということ、これは一部にはゲリラ活動に従事しておった者もあったのでございますが、それの巻き添えで向こう住民も殺される結果になったという点が一つ。それから、あそこの華僑は非常に富裕な華僑でございますので、これが五千万マラヤ・ドル献金させられたということでございます。これにつきましては、強制献金だという主張と、むしろ華僑側のほうから自分たちの生命・財産あるいは営業の自由を獲得するために自発的に持ってきたんだという説と、いろいろありますが、ともかく現在はこれは強制献金であったということで向こうがやはり戦争損害一つとして要求しているわけでございます。それに対する補償措置の問題といたしましては、条約局長からも昨日回答がございましたように、法律的・条約的にはこちらは支払う義務はもうない、済んでいる、わがほうとしては、あそこの六千万マラヤ・ドルに及ぶ在外財産を取られておりますし、また、この問題のために相当数戦犯者の処刑も見ていることでありますから、法律的にはこれ以上する義務はないということでございますが、やはり、気持ちをなだめるためのゼスチュア向こう李総理ゼスチュアオブアトーンメントということばを使っておりますが、何かなだめるためのゼスチュアをしてくれということでございますので、どういう方法によってそれをするかにつきまして目下部内検討中であります。そういう段階でございます。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまのお話でわかりましたが、法的とか条約的には何ら根拠がないけれども日本政府としては何とか考えなければいけないということで、大体日本の軍部が与えた損害内容を説明されたわけですね。そうしますと、向こうから大体どのくらいのことを要求してきているかということが第一に問題になってくるのではないかと思いますが、その点はどんなふうになっておりますか。
  6. 後宮虎郎

    後宮政府委員 一番最近におきましては、大体二千万マラヤ・ドルですか、日本円にいたしましてざっと二十四億円くらい、このくらいの病院でも建ててくれたらという非公式の申し入れがございます。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、もしそういうふうな形で要求されて日本政府が応じるような場合には、賠償とかいう名前の点については、この条約以外のことになるわけですから、この条約を離れた問題として解決するのでしょうけれども、一体どういうふうな名前でもってこれをおやりになるか、それからまた、条約を新しくお結びになるか、その条約国会におかけになるか、この辺のことを大臣にお聞きしたいと思います。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 いまアジア局長から先方の最近の要求についてお話がございましたけれども、これが日本国会で問題になっておるということが先方にどういう影響を与えますか、ちょっと私も心配になるのでありますけれども、ただ、私どもとしては、前々から、この問題について日本としてなし得ることというのは、そんなに大きな金円で御心配することはむずかしかろうということは、私の前任者もやっておられたわけでございます。ゼスチュアオブアトーンメントという以上は、それにふさわしいサイザブルなものが一応頭の中で考えられるわけでございますので、そういう範囲内で何とか処置して、将来に向かってシンガポールとわが国との間の友好関係を棄損しないようにやりたいということでやっておるわけでございまして、どの程度のもので先方が承知し、当方もそれを容認できるというところがどんなことになるのかによって、いま御質問のどういう形のものにするかということがわかるわけで、いまだそういうところまで行っておりません。したがって国会に提案するかしないかの問題も、たとえば法律と予算範囲内であらためて協定国会に出さぬでもできるくらいのものなのか、それとも厳密に考えてこれをやはり国会に提案すべきものじゃないかという議論実体を見定めてからでないと、ちょっと私も答弁しきれないのでございまして、そういう点、実体の問題と形式の問題とあわせて、部内ではいま鋭意検討いたしておるわけでございまして、そういうことがもう少し判明してまいらないと、国会に対して責任を持って私は御答弁申し上げるというわけにいかぬわけであります。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 協定を結ぶまでの内容に行かないものであるかどうか、そういったこともいろいろと検討しているとおっしゃるのですけれども協定を結ばないでも済むような内容というのは、金額的な面ですか、それともどういう面でございますか。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 一応予算形式でたとえ賠償会計予算がきまりますと、これは賠償ではないわけですが、たとえばの話でございますが、賠償特別会計というようなもので一定の歳出権国会から与えられますと、その範囲内においてこまかい戦後処理をいままでもやってまいりまして、金額として大きなものでないものは、行政府責任でやらしていただいたものもありますので、そういうような程度のものであればそのように考えていいと思うのでございますけれども実体がどういうようなことになるのか、ただいまのところわかりませんので、まだ何とも申し上げられない。しかし、内容形式とも、いろいろな角度からいまわれわれのほうで検討いたしております。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 内容的なものでということでございますけれども先方は大体二十四億円くらいということを要求してきておるわけです。そうだとしますと、それほど少ない金額ではないと思うんです。結局国民の税金から出る問題でございます。そうかといって、やはり日本の国で一応被害を与えているのですから、そういう面も考えなければいけない。しかし、一方においては、イギリスがそこを統治していた、そういうふうないろいろな複雑な関係もあるわけでございますから、当然やはり私はこれは国会においてこの委員会で審議をすべきものであるというふうに考えるわけでございますけれども、それでは、外務大臣として、このくらいの内容であるならばそういう形をとらなくてもいいというその内容はどの程度のものであるかを、一ぺん参考のために伺わしていただきたい。というのは、今後におきましてもやはりいろいろなところで問題が出てくると思います。いろいろなところというよりも、もうじき出てくるような問題もあるように思いますので、そういう点を一ぺん、どの程度内容ならば出さなくてもいいんだということを説明してください。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 問題は、これはきのうの戸叶さんのお話の中でも、戸叶さんとしてはお気に召さなかった点として、つまり、賠償賠償としてはっきりしろ、経済協力経済協力としてはっきりしろ、経済協力の隠れみのの中で賠償的なものをやるなんということはすっきりしないじゃないかというようなお話がございましたけれども、今度の問題は賠償ではないわけでございます。してみると、一つの大きな範疇からいけば、経済協力あるいは技術協力——病院をつくるにいたしましても、お医者さんを送るにいたしましても、これは一つ医療技術の提供でございます。したがって、たとえば留学生の受け入れというようなことになりますると、既定予算がありまして、いままで十人受け入れておったのを二十人にするとかいうことは、私は国会の御承認を得なくても留学生対策予算執行という面でやれると思うのでございます。そういう意味では、行政権にこれはまかされておるわけであります。したがって、内容がそういう在来の確立した一つのプラクティスの中でさばき得るものかどうか。何か非常に異質なものが出てきて、これをどう処理するかということになると、これは国会承認を得なければならぬと思うのでございます。したがって、いま申し上げましたように、そういった点を、いま私どもとしては、この程度のことは考えてみようというような腹案を練っておるところでございます。それを分解するとこれは既定予算執行としてやれるじゃないかということであれば、あえて国会をわずらわすということのないようにしたいと思いますけれども、そうも言い切れない、折衝してみなければわからぬことでございまして、いまそういう段階であります。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 大臣のおっしゃろうとするところはよくわかるわけです。ビルマ賠償の今回の措置に対してきのう私が申し上げました、追加賠償というような印象をなくして違う名前をつけたんじゃないかということと、それからこのシンガポールのいまのお話とを結びつけたような形で説明されたんですが、私の言っているのはそうじゃないんです。ビルマ賠償の場合には、なぜ追加賠償のような印象をなくしてしまって経済及び技術協力に関する協定という名前にしたかということで、これは別個の問題です。今度のこのシンガポール請求権は、一体平和条約の十四条の(a)項に該当するのかしないのかということでいままで議論を進めてきたわけです。はっきりしたことは、該当しないんだ、そうして、日本の国で被害を与えたことは事実であるから適当な措置を考えようということまでは認めていらっしゃるけれども、それはどのくらいになるかはわからない、検討をするんだ、そうして、条約として出すか出さないかはいま考えている段階である、こういうふうに了解しておいていいわけでございますか。まだ出すとも出さないともきめていないということですが、しかし、何らかの形で報告はおやりになるわけですね。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 内容いかんによると思います。国会に出すべき性質のものか、予算執行でやれる性質のものか、そこを区分けして考えてみたいと思います。いずれにいたしましても、国会報告をいたします。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一つ、きのう条約局長が、十四条の(a)項の議論で、十年後の今日までイギリスは何らの賠償請求というようなことはしてこないし、いままで何の話もないから、もうそういうことはあり得ないと確信をするということをおっしゃったわけです。そうしますと、十四条の(a)項をそういうように解釈すると、平和条約三条沖繩の問題ですが、もちろん沖繩信託統治になるまでは司法行政立法三権アメリカが握っているというふうにきめてありますが、いまのような解釈で十四条を解釈するならば、沖繩に対してアメリカ信託統治を十年たっても何も言わないから、もう放棄したものと認めてもいいというように日本解釈していいんじゃないでしょうか。そうして、それまでは司法行政立法三権を持っているんだというように解釈していけば、もうそういう意思がないんだ、では施政権は返してもいいんじゃないかという、そういう議論日本政府としてはすべきじゃないかと思いますが、この点はどういうようにお考えになるのでしょうか。
  16. 中川融

    中川政府委員 十四条の規定とそれから第三条規定と同じようなものじゃないかというお話だったのでございますけれども、私は必ずしも同じゃないと思います。十年たっても言ってこない事実は同じなわけでございます。しかしながら、三条のほうは、要するに、国連信託統治が提案されそれが可決されるまでの間は立法司法行政三権を持つんだという規定あとに書いてあるわけでありまして、政府が従来から申し上げておるのは、要するに、その規定は、結局、国連信託統治の制度が実現するまでの間アメリカにそういう三権を持つ権利がある、日本はそれを認めておるんだという趣旨で言っておるのでありまして、したがって、アメリカ国連信託統治を要請する、請求するということはまずないだろうという見通しは、政府として当然従来からも持っております。したがって、この十四条と同じだとおっしゃるのは、その前段だけでございまして、後段の、要するに、そういうことが実現するまではアメリカ三権を、持つという点については、十四条とは全然違った別個規定があるわけでございます。したがって、必ずしも、いま戸叶先生が言われたように、アメリカ国連信託統治請求しないからもう沖繩三権根拠がないんだというところまでは、われわれの解釈からいけば、そこまでは踏み切れるものではないし、また、そういうふうに論理づけるべきものでもない、かように考えておるのであります。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本人立場としては、十四条のほうを見れば期限がないのだから、またよそから賠償請求をしてくるのじゃないかという不安を持っていたわけです。私どももそういうことがありはしないかということを心配しておりました。しかし、条約局長大臣も、きのうはっきりと、そういうことはもう絶対ありませんと確信を持っておっしゃったわけです。その論理から言えば、やはり、十年たってそういうふうになるならば、沖繩の問題でも十年たっても何とも言っえこないのだから、当然施政権は返還してもいいのじゃないかというふうな論理で推し進めていっても、日本政府として、日本人として私はいいんじゃないかというふうに考えるわけでございますけれども、そういうことはやはり考えてはまずいのですか、外務大臣
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 予算委員会でも御答弁申し上げたのでございますが、その締結されました条約には忠実であること、これは憲法にもそういう規定がございますし、私どもは忠実に履行する義務があると思うのでございまして、平和条約というもの、これは個々の点を見ると気に食わぬことも多々ございますけれども、全体としては日本の戦後の安全と復興の基盤をつくったものとして評価すべきものだと私も心得ておりますので、この点は忠実に履行していきたい。忠実に履行をするという精神を日本政府が堅持しておることが沖繩問題の終局的な解決に私は寄与すると思うのでございまして、大前提としてそういう心がまえでおるわけなのでございます。そのほうが私は沖繩にかえって親切な道になるのだと存じておるわけでございまして、いまの体制のままであれこれとあげつらうということは、その気持ちはよくわかるけれども、大局的に見て賢明でないと私は私は思います。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまの大臣の御答弁ですけれども条約を私どもから解釈すれば、私がいま説明したような形になるし、また、日本人立場としては、沖繩施政権を返還してほしいという有力なる主張の一点になるのではないか、こういうふうに考えるものですから、いまのような意見を出したわけですけれども、この問題は本題とそれますから、またあとの機会にしたいと思います。  そこで、飯塚政務次官、せっかく署名にいらしたのですから、一点だけお聞きしたいと思うのですけれどもビルマ情勢をずっとごらんになっていらして、今後の日本との経済的な提携をするのに、どういうふうなものを一番向こうが望まれており、どういうものが成功をするかというような点で、見ていらしたビルマ情勢について説明をしていただきたい。
  20. 飯塚定輔

    飯塚政府委員 お答えする前に一言お礼を申し上げます。三月二十九日のビルマ調印の際、皆さんの御支援によってビルマに行かせていただきましたことを心からお礼申し上げます。  現地で、政情とか、建設の方途と申しますか、そういう点についていろいろ聞いて、あるいは見てまいりましたが、少し侮辱したことばかもしれませんけれども、非常に後進性が強いのでございます。ただ、政情については、いまのネ・ウィン将軍革命政権と申しますか、これは安定したものと考えております。したがって、これからも、日本政府ビルマとの提携といいますか・それを望んでおる意思が非常に強いネ・ウィン内閣だと思って見てまいりました。したがって、これからのビルマ経済情勢から見ると、日本からの消費的なものでなく、建設的な資本財と申しますか、そういうものによって、あるいはプラント輸出であるとか、そういうことによって協力していく、いわゆる経済協力ということを向こうでも望んでおるようだし、日本もそれを大いにやるべきであるということをまず第一に感じてまいったのでございます。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 具体的にどんなような産業の点を望んでおるか、また、それに対して日本がどういうふうなもので協力ができるというふうにお感じになっていらしたか、一、二の例をあげて説明していただきたい。
  22. 飯塚定輔

    飯塚政府委員 特に、ビルマとしては、農業、さらに工業の点について努力しておるようでございます。したがいまして、日本からも、農機具、トラクター、そういうものに対しての協力が非常に必要だと思いますし、それから、自動車あるいは農業用のポンプ、そういうものに対しても非常に望んでおるように見てまいったのであります。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一点だけお伺いしたいと思うのですが、私は、きのう、日本ビルマとの間の経済及び技術協力に関する協定というふうな名前で出してきて、一億四千万ドルという数字を出されたことに対して、いろいろと質問をしたわけです。それはどうしてかといいますと、国民は、ビルマに対して再検討条項があるし払ってもいいという気持ちがあるのだけれども、ただこの協定だけを出されたのでは賠償という感じがしないのだということで、いろいろ申し上げたわけです。  そこで、いま韓国情勢があいまいになっておりますから、おそらく日韓会談というものはちょっといまのところできないということを見通しとして私ども持っておりますけれども、この前からたいへん国会で問題になりました、何らかの形で提案をするというふうなことになってまいりましたときに、何かこれと同じような形の日本国韓国との間の経済及び何とかに関する協定みたいなことになって、ビルマと同じふうな形で、韓国にも払わなくていいものでも合法的な形をつくってやるようなことになりはしないかというふうなことを私はたいへん心配するわけでございますけれども、そういうことはあり得ないというふうに大臣はおっしゃり切ることができるでしょうか。この点を伺いたい。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国の場合は、請求権処理につきまして、請求権の問題を請求権を通じて解決するという方式を断念いたしまして、経済協力をする、そして有償・無償の経済協力をすることの随伴的な結果として請求権主張先方も取りやめるというふうな大筋の了解をやっているわけでございます。その細目について若干まだ意見の一致しないところがございますので、それをいま調整いたしておるわけでございますから、その点はもう戸叶先生も御承知のことと思うのでございます。いまあなたの言われるのは、そういうことと別に、国交正常化の前であれ、あとであれ、そのラインの経済協力と違った普通の意味経済協力というものをやるのかやらないのか、また、それで新しい協定をつくって実行するようなことを考えるのがどうかという御質問であろうと思うのですが、私はそういう必要はないと思っております。韓国に対して経済協力をやる場合でも、これは従来一般的に輸銀その他を通じまして展開いたしておりまする普通の意味経済協力でございまして、新しい協定を結んでやるということは、請求権にからんだ問題以外は、そういうことは私は考えておりません。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私ども心配をいたしましたのは、この前日韓問題についていろいろな質疑国会でやっておりましたところでは、請求権ということで解決するんではあまりにも向こうが不当な言い方をしてきて日本金額と合わないので、それを経済協力という形で解決しようとしたから、その経済協力の響きと、このビルマ経済協力というのとは、一般国民は同じに考えるわけですね。ビルマのほうは、当然日本が払わなければならないものなのにもかかわらず、その賠償の再検討条項によって払うんだという追加賠償の観念をすっかり捨ててしまっていて、経済及び技術協力に関するという名前にして、今度韓国の場合にも経済協力という名前を使うとすれば、まるで同じような内容国民が考えるというふうに私は心配をするわけでございます。したがって、いまの外務大臣の御答弁ではちょっとその点がはっきりしないように思いますが……。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 特別に協定を結んでやる場合は二種類ありまして、一つは、ただいま御審議いただいておりますビルマ経済・技術協定のように、これは無償でやるとか、あるいはこの協定にはそういう文言はありませんけれども一般の金利よりは非常に低い有利な金利で有償でやるというような特別な性格を持ったものが協定に盛り込まれる。そうでない場合は、普通の状態、普通の延べ払いでいくわけでございますから、こういうようなのは輸銀の普通のビジネスになるわけでございますから、特別な協定は要らぬ。それから、もう一つは、たとえば賠償協定なんかつくった場合に、あと、インドネシアにいたしましても、ビルマもそうでございますけれども経済協力政府がファシリテートするというような文言がございますが、ファシリテートするという意味は、特別な金利を設けようとか無償にするというようなことはできないわけでございまして、普通の言うところのビジネスとしての経済協力を促進するような道義的な一つ責任政府が持っておるというわけでございまして、それはいついつまでという期限がついておるわけでもないし、金額が、たとえばインドネシアの場合なんか四億ドルときまっておりましたが、それをいつまでの期限に年々どれだけやれというのではないので、そういうことは一般のビジネスとしてやる経済協力政府が側面からファシリテートするということを約束した性質のものでございます。  したがって、あなたの言われる特別な協定を結ぶというものは、先ほど申し上げましたように、韓国につきましては請求権にからんだ問題以外は私は考えておりません。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 韓国との問題はまた別の機会にしますが、それでは念のために最後に一点だけ確かめておきたいのは、日本としては今後どこに対しても賠償を払うことはあり得ない、こういうふうに了解してよろしいわけですか。これで賠償問題は終わったというふうに了解してよろしいわけですね。この点をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 さようでございます。
  29. 野田武夫

    野田委員長 森島守人君。
  30. 森島守人

    ○森島委員 私、きわめて簡単に質問したいと思います。ビルマ協定議定書の問題につきましては、私らとしては反対はしておりません。進んで御協力申し上げたいという気持で一ぱいでございます。ただ、ここに私がこれに関連して一、二問お聞きしたいのは、第一に、ビルマが再検討条項を持ち出することはないだろうかという心配は私たちも長年持っておりました。それで、重光外務大臣以来歴代の自民党政府に対しまして、そのおそれはないかということを警告もし、また注意も求めたのでございますが、そのつど、歴代の自民党内閣は、そのおそれは全然ないんだという答弁をもって終始してきたのでございます。しかし、いまここに協定ができるということになりますれば、その見通しが誤っておったということをもう事実によって証明したものと思うのでございまして、私は、外務大臣としては別にこの問題について責任があるということを申し上げるのではないのですが、見通しが誤っておったという点について何らか御感想を持っておられると思うのでございまして、これをひとつ明らかにしていただきたいと思うのであります。
  31. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのどおり、再検討条項主張はあるまいという御答弁を歴代の政府がいたした、しかるにこうなったということにつきまして、御指摘のとおりでございまして、これは政府の不明をおわびするより道はないわけでございますが、しかし、森島先生も御承知のように、ビルマ賠償協定ができたときに、これは一番最初でございましたし、インドネシア・フィリピン等がどのようなきまり方になるか、その当時としてはわからなかったわけでございまして、念のために再検討条項が入れられておったのでございます。それに応じて今度の措置が行なわれたわけでございまして、その他の国々には再検討条項というのはないわけでございますので、その点は、政府としても、万一の場合の一まつの、今後締結さるべき賠償協定内容が判然としなかったことに対する用心はしておったと思うのでございます。今度再検討条項に基づきまして交渉が始まり、経済技術協定ができたわけでございまして、その中身についてのいろいろな御批判はあろうと思いますけれども、こういう姿になったということは政府が夢寐だにも考えていなかったことではなかろうかと私は思うのであります。しかし、少なくとも、御指摘のように、当初政府が答弁されたとおりいかなったということに対しましては、不明を謝する以外にないと思います。
  32. 森島守人

    ○森島委員 ビルマ賠償協定ができましたときに、インドネシア、フィリピンがまだ問題になっていなかった、これは事実でございましょう。しかし、われわれの質問いたしましたのは、インドネシヤの賠償協定に関連し、フィリピンの賠償協定に関連して質問したわけでございまして、それに対して、政府は、再検討条項を持ち出すことはないであろうということで、事実において外務大臣の御答弁と違っておる。そういたしますれば、なおさら政府は歴代の政府の不明を謝するということは私は当然だと思う。いま外務大臣が謙虚に謝さなければならないとおっしゃったことを私は多といたします。  もう一問は、戸叶さんから大体質問が出ておりますので詳しいことは申し上げませんが、シンガポールの問題でございます。これは一年ほど前新聞にひんぴんと外電等が仏わってきましたので、当時私はこの問題を取り上げまして小坂外務大臣質問したのでございます。小坂外務大臣は、何を血迷ったのか、勘違いしたのか、私の質問に対して、悪かれというようなことはお互いに慎しみたいというふうなことを、まるで人をばかにしたような答弁をなさって、事実を明らかにされなかったことがございます。ただいまアジア局長からもシンガポール要求内容を大体お話しになりましたが、私は政府がこの内容をもう国民の前に明らかにすべき時期に達していると思うので、きわめて私は適切な措置であると思います。シンガポールのみならず、新聞の伝うるところによりますと、ほかのほうにも波及しないだろうかという懸念を表明している新聞もございます。名前をあげておるところによりますと、香港の問題が出ております。北ボルネオの問題が出ております。これらの国々からは何らか日本に対して非公式または公式に申し入れがあったことはございまますかどうですか。この点を明らかにしていただきたいと思います。
  33. 後宮虎郎

    後宮政府委員 北ボルネオにつきましては、何も非公式にも公式にも申し出があったことはございません。  それから、香港につきましては、あそこの国連協会の会長から、この間訪日しましたヒューム外相が途中香港に立ち寄りましたときに、やはり賠償要求というものが出ております。最近、一週間前ですが、ヒューム外相から国連協会委員長に返簡が参りまして、イギリスとしては香港の問題について賠償要求を出すつもりはないという回答が来たように承知しております。
  34. 森島守人

    ○森島委員 私その答弁で満足いたしますけれども、一方考えなければならぬことは、日本軍が現地においてやったことは実際残酷物語を地で行くようなものでございまして、その実情はここにおられる外務委員会の豊田専門員等は現地においてつぶさに承知しておられるはずでございます。高度経済成長政策の結果として日本がすでに大国に入っておるということを総理大臣自身誇っておられる時代でございますから、単に経済的方面における大国としてのみならず、平和憲法をすでに採択しておる日本といたしましては、世界至るところへ堂々と出ていけるように、私は道義的立場からもこの問題を十分御検討の上適当に御解決あらんことを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと存じます。  もう一点だけ最後にお伺いしたいのは、いま、シンガポールなんかの問題につきまして、協定になるかならぬかということは行政上の問題に付せられる、国会に出すか出さぬかは内容のいかんによってきめたいという外務大臣の答でございましたが、私は、協定といいますか、条約と申しますか、名称のいかんを問わず、国民経済的負担を負わすような、すなわち国民の権利義務に影響のある対外的な約束は国会に提出するんだというのが従来外務省条約局のとってきた態度である、こう思うのでございまして、この点につきましては慎重なる御考慮を願わねばならぬというふうに考えておるのでございます。これは、条約局長、そのとおりで間違いないのでしょう。
  35. 中川融

    中川政府委員 森島委員のおっしゃいましたとおり、新しく国民の権利義務関係ある事項をきめようという場合には、これは国会の御承認を得るという考えでおるわけでございます。先ほど大臣の申されましたのは、すでに何か別の形で国会の御承認を得ており行政府の権限にまかされた範囲内において処理できるような内容のものであれば、行政府だけで取りきめられるのじゃないかという御趣旨の御説明で、外務省のいままでとってまいりました方針を大臣はお答えされておると思います。
  36. 森島守人

    ○森島委員 それは新しくということをことさら付加されたようでございまけれども、この問題は私は新しい問題だと思うのでございまして、その点から考えましても、協定または条約その他取りきめ等のできました場合には国会にお出しになるのが日本国憲法の命じておるところであると信じておるのでございまして、その点十分御研究おき願いたい。
  37. 野田武夫

  38. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は、日本とベネルックス三国及び日本とフランスとの間の貿易関係に関する議定書の第一項、第二項の市場撹乱に対する輸入制限の問題について伺いたいと思うのですが、日本ではいまの政府はたいへんに貿易の自由化ということを急いでおられ、自由化政策をとっておられるようでございまけれども、その原則と今回のこの輸入制限との関係、どちらが優先するのか、この点をまず伺いたいと思います。
  39. 中山賀博

    ○中山政府委員 もちろん、このフランス、ベネルックスとの協定の中の大きな眼目は最恵国約款を設けることでございます。そうして、いままでは最恵国と申しておりましてもそこに一つの大きな制限があった。それはガットの場における制約であったわけでございます。そこで、今度はガット三十五条の援用は撤回いたしまして、その意味ではクリーンな最恵国約款をお互いに与え合うことになっているわけでございます。ただ、若干の品目につきまして、先方日本の商品による市場撹乱を憂い、われわれもまた先方との間にレシプロカルに市場撹乱の際の規定を設けるということになってセーフガードの条項が設けられた次第でございます。  そこで、この撤回されたあとのガット関係、それから最恵国約款ところセーフガードの関係でございますが、もちろん、バイラテラルな協定を結びました関係上、その条項に該当する市場撹乱の事実があった場合には、原則としてはそのバイテラルなもので解決する。しかしながら、その協定にはみ出したもの、たとえば、その協定で、市場撹乱の事実があったときに他方の締約国がいろいろな措置をとり得る、あるいは相談することになっておりますが、その約束からはみ出した場合にはどうなるかということになりまずければ、やはり最恵国の原則に返りガットの原則に返って問題が議論されることになっておるのでございます。
  40. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この協定にはみ出さないものは、市場撹乱のおそれがあるというので自由化政策とは相反する形である程度の制限、規制が行なわれる、こういうふうに了解していいわけですか。
  41. 中山賀博

    ○中山政府委員 自由化の政策に違反すると申しますよりも、最恵国約款の例外としてバイラテラルに処理されるというのが原則だと思います。
  42. 戸叶里子

    ○戸叶委員 結果的には同じじゃないのですか、言い方が違うだけであって。そうでしょう。そういうふうにおっしゃれば聞えはいいですけれども、事実としては私の言うのと同じことだと思うのです。そうなってきますと、日本のような輸出をしなければ経済が興与しないという国では相当迷惑をこうむる、輸出品に対して規制を設けられまして相当経済的に打撃を受けるというような面、打撃を受けるまでにいかなくても損をするような立場になるということが考えられますけれども、こういうことはあり得ないかどうか。
  43. 中山賀博

    ○中山政府委員 もちろん、各品目について考えまして、市場撹乱の事実があるとして先方がこの条項を援用して一方的な措置をとることになりますと、その点から申しますれば確かにわれわれの輸出は阻害されるわけでございます。ただ、われわれといたしましては長い目で見て、たとえばベネルックスの市場あるいはフランスの市場、さらにはその背景にあるEECの市場を考えてまいりたいと思います。ということは、われわれとしましても、一時にある商品を相手市場にはんらんさせることによって一時の利益を得ようというわけじゃなくて、やはり長い目で見れば何らかの意味でオーダリー・マーケットにするということは必要でございまして、その意味から言いますれば、単に先方の利益だけじゃなくし、われわれのほうとしても、そういうものが事実上適用にならないように考慮して、いくという措置によって、具体的にそういうケースはまた防いでいけるじゃないか、かように考えております。
  44. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま具体的にそういうふうなことは防いでいけるのじゃないかという御答弁でございましたけれども、なかなかそううまくいかないと思うのです。特に、この措置は、ベネルックス三国とそれからフランスとの間において効力は持ちますけれども、これがまだ慣習法になっておらない。そうなってみますと、ほかの国との関係で、こういうものがあるために日本が規制をされるというような面も出てくるのじゃないかということを私は懸念をいたしますけれども、ほかの国との関係ではどういうふうな規制をされるのか、この点を伺っておきたいと思います。
  45. 中山賀博

    ○中山政府委員 セーフガードというものは最恵国約款あるいは自由化に対する重大な逸脱でございまして、この問題をわれわれとしてはもちろん真剣に考え、また重要なる問題として考えております。したがって、よその国からもいろいそれに類似した行動をとりたいという希望もある向きがございますが、たとえば、最近、ローデシア・ニアサランドから、三十五条援用を撤回することを考えるけれども、同時にセーフガードもほしいということを申してきたこともございますが、しかし、われわれといたしましては、そういうふうなことは、なるべく事実上の措置によって、つまり、われわれも自粛する、——たとえば、豪州などにつきましては、従来から話し合いで、問題が起こりそうになるとこちらが業界のほうへ自粛的な規制をとらせて、実際上向こうがそういう一方的な措置をとることのないように努力するということで、それがよき成績を示している事例もございまいますので、そういう意味でむしろ断わってまいっており、そういう意味では、制限的に解釈していきたい、かように考えております。
  46. 戸叶里子

    ○戸叶委員 経済局長は希望的なことを述べられているわけでございまして、これに対する裏づけの取りきめなり裏づけの条約というものがないわけでございますから、私どもとしては、実際問題として、日本のような輸出国としては、いまおっしゃったような希望的なことがうまくいくかどうかということが非常に問題になると思いますけれども、そういう問題は特に注意をしていただきたいということを要望したいと思うのです。  その次にお伺いしたいのは、日仏協定のほうの第四条の(b)項で、条約の適用外地域として、「ザール問題の解決に関する条約範囲内でドイツ連邦共和国に与えられており又は与えられることがある利益」とあるわけですけれども、これはザール地域と限ってでなくて、もっと広い範囲のドイツ連邦共和国全体にという意味ですか、それとも、ザール問題の解決に関する条約というふうな範囲と読めば、ザール地域というふうに限るわけですけれども、両方にとれるので、一体どっちのほうをさしているのか、伺いたいと思います。
  47. 中川融

    中川政府委員 これは、もちろん、ザール問題の解決に関する条約、その条約できめておる限度内でフランスがドイツに与えておる利益、こういうことでございます。したがって、それ以外に一般的にフランスがドイツに対して与えていることは全部除外するという趣旨ではないわけでございます。
  48. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ちょっと念のためにもう一度……。ザール問題に限ってドイツ連邦全体に与えているという意味ですね。
  49. 中川融

    中川政府委員 そういうことでございます。
  50. 戸叶里子

    ○戸叶委員 附属書に、「フランス共和国の海外領域」というところで、「フランス領の極南諸島及び南極地域」とあるわけですね。私ここでちょっと奇異に感じましたのは、南極条約は、その中で、南極大陸に対するどこの国の領土権というものも承認していないと思うのです。ところが、ここでフランスの海外領域として極南諸島とか南極地域ということを言われてその条約日本が署名すると、南極にフランスの固有領域があるのだということを認めたような結果になるので、南極条約に反するものではないかと思うのですが、この点はどういうふうに解釈したらよろしいでしょうか。
  51. 中川融

    中川政府委員 この附属書に掲げておりますいわゆる南極地域というものは、まさしく南極条約の対象になっておるいわゆる南極にある、フランスが主張しておる一部分があるわけでありますが、その部分とフランスとの関係はこの条約の適用外だということをきめており、それを日本が認めたわけでございますが、しかし、これは、実は、フランスは一貫いたしまして、南極地域についての自国の領有権と申しますか、主権と申しますか、それの主張を捨てていないのであります。例の南極条約でも、各国が持っておる、いままで出しておる主張そのものには直接影響は与えない、しかしながら、今後は全然各国ともお互いに認めないのみならず、また各国とも、そういうほかの国のしておる主張というものを認める意味じゃないのだということははっきり言っておるわけであります。したがって、日本は、南極条約の署名国といたしまして、このフランスの南極に対する主張も認めていないわけでございます。にもかかわず、どうしてここに南極地域ということが出てきたかと申しますと、それは、すでにフランスがガットとの関係におきましてガットでいろいろフランスが除外例を認めてもらっておるわけでございますが、その中にフランスの南極地域との関係というものがすでにガットで認められて入っておるわけでございます。日本もガット加盟国としてすでにそれを認めておるわけでございます。それは、結局、日本から申しますれば、領有権を認めているわけではないけれども、もし万一かりにフランスのいわゆる南極地域とフネンスとの間に貿易がありとすれば、その貿易については例外的に通商条約最恵国待遇その他の適用外であるということを認めただけでございまして、領有権の主張は何も認めていないわけでございます。これは、この条約の適用外になっておる地域にいろいろな領有権に基づく例外もございますし、領有権でなくて、いわば特殊の緊密な関係があるからということで認めた例外もありますし、あるいは隣接区域だからということだけで認めた例外もあるわけでございまして、いろいろな例外があるわけでございまして、いわばそういう特殊の理由に基づく例外区域として日本は認めたわけでございます。  なお、この協定を交渉するにあたりまして、日本の代表団は、特にこの点につきましてフランスの注意を喚起いたしまして、これは日本としては領有権を認める意味ではないのだということを注意を喚起いたしております。したがって、その点ははっきりした形でこういう規定を認めておるわけであります。
  52. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本の代表が、フランスが南極に領有権を持っているということを認めているものではないと注意を喚起したということですけれども、もちろん、それを認めれば南極条約に違反するものですから、そういうものではないということを主張されたということはわかったのですけれども、これだけを見ますと、私どもはたいへんにふしぎに思うわけです。こういうことをすると、日本がフランスの南極における領有権を何か認めた形になりはしないかということを心配するわけです。もしもこれがフランスじゃない国で同じようなこういうようなことばが出てきた場合にはどういうことになるのですか。やはりそれは認められないのではないですか。フランスだからこういうことが言えたので、ほかの国だったら言えないということになりますと、ますます領有権問題というものがおかしくなってくるのではないかと思うのですけれども、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  53. 中川融

    中川政府委員 他の国で、たとえばやはり南極に同じような主張をしている国との間に日本通商条約を結ぶというような場合に、同じような問題が起こり得る可能性があるわけでありますが、日本としては、できるだけそういう疑わしいような問題は起こさないようにつとめるのが筋だと思います。したがって、フランスとの間にこういう例外を認めたからほかの国にも日本が例外を認めるということには必ずしもならないと思います。やはり、その際の諸般の状況によって、できるだけ日本の南極に対する立場というものに障害のないような形で処理すべきものだと考えております。
  54. 戸叶里子

    ○戸叶委員 けっこうです。
  55. 野田武夫

    野田委員長 他に御質疑はございませんか。  御質疑がございませんので、これにて三件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  56. 野田武夫

    野田委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  三件をいずれも承認すべきものと決するに御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、三件はいずれも承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。ただいま議決いたしました三件に対する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  59. 野田武夫

    野田委員長 議事進行の申し出がございます。これを許します。戸叶里子君。
  60. 戸叶里子

    ○戸叶委員 よく聞いていただきたいのですけれども、この間衆議院公報の六月二十日というのを私はずっと見ていました。そうしましたら、そこに正誤表を国会に配付したということが出ていたわけです。一体どこの正誤表かと思って念のために見てみましたら、海外移住事業団法の正誤表です。私は正誤表を出すのはけっこうだと思のですけれども、六月二十日に出していて、そうして、海外移住事業団法は委員会をいつ通ったですか、六月の十四日だと思うのです。十四日に通って、そして通ってしまってから正誤表が出ておるのです。一体こういうことでいいでしょうか。ここに書いてあるのは、印刷物中十三ぺ−ジの六行の「及びこれらに」は「及びこれに」の誤りであるというふうに出しておるのです。内容はそれほどでないかもしれませんけれども、もしもこれが重大な問題であったときにはたいへんな問題になる。委員会を通ってしまって、本会議も通ってしまって、あとから正誤表を出すというような、こういうばかなことが許されていいかどうか。これは審議し直さなければならない問題に発展する場合もあり得ると私は考えるわけです。こういうことは十分に注意をしていただきたいと思うのです。私は、誤植といいますか、重大な誤植だの、いろいろ申し上げますけれども、またこういうものを発見したということは残念でしかたがないのです。こういうことについて外務大臣はどうお考えになりますか、ちょっと御意見を伺いたいと思います。
  61. 大平正芳

    大平国務大臣 まことに遺憾でございまして、部下に厳重に警告いたしまして、そういうことのないように注意いたします。
  62. 野田武夫

    野田委員長 ただいまの戸叶委員の御発言はきわめて重要でございますから、今後できるだけ外務当局は御注意を願いたいということを委員長からも申し添えておきます。  本日はこれにて散会いたします。   午後零時三分散会      ————◇—————